ニュースリリース

レポート

ヨウ素の新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果
視覚的確認に成功

小林製薬株式会社(本社:大阪市、社長:小林章浩)は、ヨウ素の新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果を視覚的に確認しました。

※抗ウイルス効果:試験管内の試験において、細胞への感染性を持つウイルスが99.9%以上減少すること

研究の概要

過去にも、新型インフルエンザウイルスやSARS・MERSが報告され、世界保健機関(WHO)によるパンデミック宣言などがありました。最近では、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに生活者の感染症への対策意識はさらに高まっており、新型コロナウイルスの不活化に効果的な素材の検証が求められています。

今回の研究では、第三者研究機関(一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター)で行われた in vitro 実験(試験管内の実験)において、ヨウ素水溶液(0.5%)を新型コロナウイルスに作用させると不活化(感染性消失)することを確認しました。

従来よりも細胞変性の様子を視覚的に確認できる方法として、タイムラプス動画でも撮影を行いました。(図1)これによりヨウ素を作用させた場合の抗ウイルス効果を視覚的にも確認できました。(ヨウ素を作用させない場合には、新型コロナウイルスにより細胞が破壊、膨張、融合などの変化が生じている様子を捉えることができました。)

弊社では、以前からヨウ素等の抗ウイルス効果に関する基礎研究を続けております。今回の研究は、新型コロナウイルスに関する新たな知見として、感染症対策研究の一助として社会に貢献できるものと考えております。

(図1)タイムラプス動画による宿主細胞の撮影・観察

(図1)タイムラプス動画による宿主細胞の撮影・観察

※培養細胞での実験系であり、人体での現象を必ずしも反映するものではございません。

QRコード

タイムラプス動画をご覧いただけます。

YouTube:動画1分

研究の詳細

【目的】 ヨウ素水溶液の新型コロナウイルス不活化効果確認

【被験物質】ヨウ素水溶液(0.5%)、PBS(陰性対照)

【供試ウイルス】新型コロナウイルス(SARS-CoV-2/JPN/TY/WK-521

【作用時間】15秒

【方法】

  1. 1. 被験物質0.9mLにウイルス懸濁液0.1mL(>108 PFU/mL)を加え、十分に撹拌した。
  2. 2. 25℃で15秒間静置した。
  3. 3. ヨウ素水溶液にはチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、不活化することで反応を停止させた。
  4. 4. (3)液と陰性対照を宿主細胞(VeroE6/TMPRSS2 JCRB1819)に接種し、細胞変性の様子をタイムラプス動画にて撮影・観察した。(図1)
    また、約48時間後の細胞表面を走査電子顕微鏡にて撮影・観察した。(図2)
  5. 5. (3)液と陰性対照のウイルス感染価をプラーク測定法にて求めた。(図3)

【試験委託先】一般財団法人 日本繊維製品品質技術センター

【試験結果】

ヨウ素水溶液を作用させると細胞の変性が見られなくなりました。(不活化効果の確認)

(図2)走査電子顕微鏡による宿主細胞の撮影・観察

※赤矢印が細胞外にいる新型コロナウイルス (図2)走査電子顕微鏡による宿主細胞の撮影・観察
陰性対照においては新型コロナウイルスの粒子が確認され、繊毛構造に変性が見られましたが、ヨウ素水溶液を作用させた場合は新型コロナウイルスの粒子は確認されず、細胞自身も正常な状態であることが示唆されました。

(図3)プラーク測定法によるウイルス感染価の確認

(図3)プラーク測定法によるウイルス感染価の確認

※試験条件に基づいて実施した結果です。特定の医薬品の効能効果を示すものではありません。

ヨウ素水溶液(0.5%)はプラーク測定法において、新型コロナウイルスを99.999%以上不活化することが分かりました。

【用語解説】

  • ○新型コロナウイルス
    ニドウイルス目コロナウイルス科コロナウイルス亜科ベータコロナウイルスに分類されるウイルス。コロナウイルス科のウイルスは、表面にエンベロープという膜構造を有しており、このエンベローブ膜を壊すことで殺菌できる。
  • ○ヨウ素
    元素記号「Ⅰ」。酸化力により細胞膜などの膜構造を破壊することで殺菌作用を示すとされる。
  • ○宿主細胞
    ウイルスが感染し、自らを増殖させるための細胞のこと。本試験ではアフリカミドリザルの腎細胞(VeroE6/TMPRSS2 JCRB1819)を使用している。
  • ○タイムラプス動画
    タイムラプスは「時間(time)」「経過(lapse)」という意味で、専門的には低速度撮影や微速度撮影と呼ばれる撮影技法のこと。通常では見えにくい、ゆっくりとした動きを早めて見せることができる。
  • ○プラーク測定法
    ウイルスが感染する能力を測定する方法の一つ。ウイルスが感染し、変性が起こった細胞は染色しても染まらないため穴が開いたように見える。この染まらなかったプラークの部分を計数することでウイルス量を評価する。

以上

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