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小学5年生の「友達」は16歳年上 親以外の大人が子の「居場所」に…都内の民間団体が活動

 子どもの成長に、親でも、先生でもない大人が「 友達バディ 」として関わる活動を、東京都内の一般社団法人「We are Buddies(私たちは友達)」が続けている。子どもの心の支えになるだけでなく、参加する大人や親にも意味のある新しい関係だ。(田中文香)

一般社団法人We are Buddies代表理事の加藤愛梨さん(本人提供)

 「親以外に信頼できる大人の存在は、子どもにとって『心の居場所』になり、孤立を防ぐセーフティーネット(安全網)になる」

 住んでいたこともあるオランダで知った活動を参考に、2020年に団体を設立した加藤愛梨さん(34)は話す。

 子どもの対象年齢は5~18歳。一緒にいる時間が十分に取れないと感じた親の申し込みが多い。また、発達障害がある子や不登校の子なども参加している。

 「友達」となる大人は、信頼性を確保するために紹介制で、事務局による複数回の面談や研修を経る。20~30代で、子育てを経験していない人が多い。教師や保育士、看護師などを経験し、「肩書なしで1人の子どもとじっくり向き合いたい」と参加する人もいる。

 事務局は、居住地や性別などを考慮して、1対1のマッチングを行う。月に2回程度、密室にならないオープンな場所で、数時間を一緒に過ごしてもらう。運営は寄付などで賄い、子ども、大人とも参加費はかからない。

 活動は、都内だけでなく、群馬県内、千葉県市原市、長野市にも広がり、これまでに約120組が「友達」になった。

互いに楽しい時間

 小学5年の原田一花さん(11)と自営業の西田夏名葉さん(27)は、このプログラムで「友達」になって約2年半になる。

 「おいしそうにできたね」

 ある日のお昼時。2人は、都内にある民家のシェアリビングを借りて、一緒に昼食を作っていた。できあがったホットサンドイッチを食べながら、一花さんの学校にある遊具の話や、西田さんが昔好きだった遊びの話などで盛り上がった。

 一花さんの2歳上の兄は障害があり、じっとしていることや人混みが苦手。家族みんなで映画をみたり、ゆっくり買い物をしたりすることは難しいという。

 母親の愛さん(46)が「寂しい思いをしたり、気持ちを内に秘めたりすることがあるかもしれない」とこのプログラムに申し込んだ。

 一花さんと西田さんはこれまで、東京・原宿で買い物を楽しんだり、ゲームセンターで遊んだりしてきた。プログラムの期間が過ぎた後でも、時々、「友達」として遊びに行っている。

 西田さんは、大学生の頃、不登校の子に勉強を教えるなどした経験があるが、「支援でなく、日常生活の中で『対等な関係』で子どもと関わりたい」とプログラムに参加。一花さんと過ごすひとときは「様々な発見がある、充実した楽しい時間になっている」という。

 親にとっても、子どもの成長を共に見守る仲間ができるという意味がある。

 愛さんは「夏名葉さんになら言えること、一緒に経験できることがあって、一花の心を満たしてくれていると思う。ありのままの一花を受け入れてくれてありがたい」と話している。(2024年3月5日付の読売新聞朝刊に掲載された記事です)

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