April 15, 2009

日野市立中央図書館を見学しました5

日野市立中央図書館を見学しました

日野市立図書館の図書館活動が全国の市町村の手本となって現在の日本の公共図書館の形が出来上がったというのが図書館界の常識のようです。

「少子高齢化の進む瀬戸内海の離島を『図書館からのまちづくり』で活性化できないだろうか?」と考えている僕にとっては一度は見ておきたい図書館です。久しぶりに東京にきています。よい機会なので、早速、行ってみました。

日野市立中央図書館は中央線豊田駅から徒歩6分のところにありました。建物を見た第一印象は、思ったより小さかったのに驚きました。少し古い感じですがいぶし銀の光沢を放っていました。日本の図書館の歴史を飾る図書館として大切に使ってもらいたいと思いました。

この図書館の特徴は、1階には大人用の閲覧机がないことです。1階には子供の閲覧室と大人の読む本がつまった書架が並んでいます。閲覧机がないので来館者は椅子に腰をかけ、膝の上に本を置いて読んでいました。しかし、2階のレファレンスルームには立派な閲覧机が置いてありました。

なぜ、閲覧机がないのか、それはこの図書館が、?「こども」と、?「調べものをする人」と、?「本を借りに来る人」のためというコンセプトをきちんと守っているためです。椅子しか置いてないのは、「ここは本を選択するところです。本は家に持って帰って読んでください。」というメッセージです。

その昔、図書館とは、中学生、高校生、大学生が図書館の本を借りないで席だけ借りて学校の勉強をするところでした。
これを見た当時の日野市立図書館の館長が、学習できる閲覧机をなくして中・高・大学生を追い出し、市民が気軽に図書を借りたり、子どもに絵本を読ませたりできる図書館にしました。
日野市立図書館のこの考え方が支持されて、多くの図書館で学校の勉強をする中・高・大学生を追い出したり、別室(学習室)を設けるなどして、市民のための図書館をつくるようになりました。

また、職員が利用者と本を結びつけるナビゲーターになったり、学生や市井の研究者の研究資料集めの支援をしたり、サラリーマンやOLや技術者が仕事関係の調べ物ができるようにレファレンスブックや専門書を多く揃えました。
日本全体でみると、図書館側には予算や人材の問題があり、利用者側には図書館リテラシーが十分育ってないなど問題も多く日野市立図書館のレベルまで到達している図書館はまだ少ないようです。

今回の見学では、まず、全体の配置を確認したあと、書架を見てまわりました。確かに普通の町の図書館よりワンランクレベルの高い本がぎっしりと配架してありました。直感的に「これは資料購入費にだいぶお金がかかるぞ!」と思いました。

日野図書館1日野図書館2











「図書館からのまちづくりを勉強している者ですが、見学をさせていただけないでしょうか」と挨拶をすると、カウンターの職員さんがとても好意的です。概要説明のあと多くの資料も提供してくれました。見学者用のネームプレートも用意されており首に吊り下げました。見学者が多いようで手慣れた感じがしました。

「日本の図書館界を引っ張っている図書館は、やはり違うな!」と思いました。

2階のレファレンスルームに上がってみました。
とても多くのレファレンスブックがあります。隣の人と境の仕切られたキャレルデスクもあります。
「ここなら無線でインターネットに接続できるパソコンを持ち込んで、この資料を使ってSOHOなどスモールビジネスの事務所に使えそうだ。外部の連絡はマナーモードに設定した携帯電話を使って、着信があれば館外に出て・・・」などと良からぬことを考えました。

日野図書館3日野図書館4










日野図書館5日野市立中央図書館を出て平山城址公園駅に出ると駅前に平山図書館という小さな図書館がありました。

この図書館は日野市立中央図書館の分館です。

この図書館には、小説や文庫本、ハウツーものなど大衆的な本が多く配架されています。閲覧机もあり学校帰りの中学生、高校生も多く入っていました。

日野市立図書館だけでなく分館も見ることができてこの町の図書館政策が分かったような気がしました。

日本の独特のシステムとして、公共図書館の館長は町の顔役や教育関係の人が就任することが多いため、いまひとつ図書館司書の能力を引き出すことが出来ていません。
日野市立図書館の図書館長は図書館出身の図書館司書有資格者であり、図書館学をしっかりと勉強している人です。このため図書館職員も図書館の仕事に情熱を持って打ち込んでいるように感じました。
この図書館の見学を終えて、今、考えていることは、公共図書館の図書館長は図書館司書の有資格者でなければ「市民の図書館はできないな!」と痛感しています。

日野市立図書館の平成19年度データ
中央図書館 1館 分館 7館 移動自動車 1台 職員 42名(司書30名)
受入冊数 42,506冊(児童書 9,799冊)  蔵書数 730,564冊(児童書 149,668冊) 
 人口 172,657人 貸出数 1,478,248点 市民一人当貸出 8.57点 
 市一般会計決算額 A 53,778,785千円 図書館経費 B 617,459千円 B/A × 100 = 1.15%
 

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