カルチャー

「ストリップ劇場は女子校みたい」「男の人も踊り子になりたい」劇場は多様なエロとの向き合い方を肯定する場所

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解放されているのは女性だけじゃない

 ところで、栗鳥巣は自らがストリップの客を演じる「栗田さん」という演目を持っている。栗鳥巣が迷惑な客の栗田さんを、相方が栗田さんに応援されるストリッパーを演じるというチームショーだ。

 栗田さんは演目中に調子外れのタンバリンを叩いたり、同じストリッパーのファンを阻害したりする困ったファン。その日もさんざん迷惑な応援をした栗田さんだが、帰宅して四畳一間の自宅で、ふと自分を省みて、「いったい自分は一人で何をしてるんだろう。もう死んでしまおうか」と落ち込む。すると、今まで迷惑行為を受けていたストリッパーがやってきて、栗田さんの服を引っぺがす。とたんに栗田さんはきれいなストリッパーに変身するのだ。

 ストリッパーになった栗田さんと、相方のストリッパーは2人でポーズを決めていく。しかし、最後の曲が終わると、また栗田さんは自分がストリッパーではなく、「おっさん」であることに気がつく。寂しく場内から出て行こうとする栗田さんを、ストリッパー役がもう一度舞台に引き戻して終演というストーリー。

 彼女が言うには、ストリップの客の中には男女問わず「踊り子になりたそうな人」がいるらしい。

「踊り子がつけてるような、キラキラしたアクセサリーをつけ出す男性もいます。そういう具体的な行動に移さなくても、口調も身振りも男性的でも、『心が乙女』だと感じる人はいるんですよね。そういう人の夢は、踊り子になることなんじゃないかな。『気持ち悪い』ってくくるのは簡単ですけど、男の人だからってそういう夢を見ていないとは言えないですよね」

 栗鳥巣はインタビューの最後に 「ストリップって、『そのうちなくなるかもしれない』と感じてるからもあると思うんですけど、性別や立場関係なくみんなで劇場を守っていこうという気持ちがある。平和な場所なんですよ」と語っていた。

 猥雑で何でもありで、それなのにどこか平和なストリップ劇場。その薄暗さに守られ、解放されているのは、実は女性だけではないのかもしれない。

おマン画をかかげる客とほほ笑む栗鳥巣さん

おマン画をかかげる客とほほ笑む栗鳥巣さん

※イラストは「新宿のストリップ劇場で岩下の新生姜演目をする踊り子、栗鳥巣さんを観た!(岩下の新生姜ミュージアム版)」(たなかときみ作)より

 

(取材・文/池田録)

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