Photo by Hiroshi Ishii from Flickr
とても幸福な出会いがありました。生まれてはじめて、ストリップを見てきたのです。
場所は東京のとある繁華街。その劇場の存在は知っていました。その奥にはラブホテル街があり、いつもお世話になっているアダルトショップの本店があります。なじみの一角ではありますが、ストリップとなるとこれまであまりに無縁で、劇場はその前をただ通りすぎるだけのところでした。先日、すてきな官能作家の女性からお誘いがあり、私はその禁断の場所についに足を踏み入れました。
告白すると、私はストリップに偏見がありました。薄暗い劇場で、扇情的なダンス(巧くない)が申しわけ程度に踊られ、ぎらぎらした欲望を隠そうともしない男たちの視線にさらされる。なんならシコっている人もいるんだろうな、と。いってみれば前時代的な、とはいえ大方の人が抱いているであろうイメージを私も持っていたのです。劇場に向かう道すがら、「私も観る前はそんなふうに思っていたけど、実際、観客の男性は踊り子さんへのリスペクトがあるんだよ」と友人から聞かされても、いまひとつピンときていませんでした。比較するものではないのかもしれませんが、私がときおり足を運ぶピンク映画館では、決して柄がいいとはいえない男性の率が非常に高いからです。
初めての観覧を終えたいまとなっては、男性観客のみなさんに「すみませんでした!!!」と最敬礼で謝っても足りないほどです。そこには、たしかなリスペクトがありました。斜陽といわれる業界を長年支えつづけてきた人たちには、スケベ心以外のものが確実にありました。そして、ストリップとはそうして支持を得るにたる極上のエロティック・エンタテインメントだと実感しました。
いえ、きっと、そうでない劇場、観客もあるのでしょう。現在は都内でも、7軒ほどしか劇場が残っていません。全国では22軒だそうです。それぞれの特性はあるはずですし、その日に出演する踊り子さんによって空気は変わると思われます。だからこそ、私は今回の初ストリップを〈幸福な出会い〉だと感じたのです。新春公演ということもあり、人気も実力も当代トップクラスの踊り子さんがそろい踏み。そんなスタークラスの女性たちだからか、ファンの方もみなさん紳士的で、劇場はたいへん和やかな雰囲気でした。
見せ場は、おっぴろげ
予備知識もないまま観たので、何もかもが驚きでした。舞台からは短い花道が伸び、先には回転舞台があります。観客はここをぐるりと取り囲むようにして座るわけです。かぶりつきの最前列など、お気に入りのポジションがある観客の方も少なくないようですね。回転舞台はただぐるぐる回るだけではなく、せり上がることもあります。これによって踊り子さんが舞台に寝た状態で大開脚すると、ちょうど座っている観客の目の高さで性器が満開となるわけです。ワオ!!
踊り子さんひとりひとりの流れは決まっていて、まずは肌の露出がほとんどない衣装でのダンスがあり、いったん衣装をチェンジし徐々に(あるいはしばらく踊った後、一気に)脱いでいきます。一連の曲調もいろいろで歌謡曲系、洋楽ストリート系、洋楽バラード系などさまざま。世界観もその人ごとに違い、「夕鶴」をベースにしたストーリー性のあるものから、なぜか映画泥棒モチーフのものまで実に個性的。後者を観たときはちょっと戸惑いましたね。ストリップなのにまったく官能的ではなく……。でも、冒頭のダンスは絶対エロと結びつけなければならないというルールもないようで、自由な表現の場なのだと見受けられました。
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