ティーパーティーに転生した3人組   作:お前ら人間じゃねぇ!!

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ティーパーティーしたんだ!

 

 私は失敗した。

 人間の心が読めなかった私と人の心がなかった彼女はどこかですれ違い、破綻した。

 彼女と私はどこで間違えたのだろう。言葉?行動?何を間違えたのかわからない。でもなんとなく言ってしまった言葉を間違えたかなと思ったりもした。

 

 

「アリウスと共に襲うなら1人で襲ってください。夜にこの部屋で待っているので」

 

 

 こんな言葉を発してしまったことが私の過ちだったのだ。おそらく、きっと、多分、maybe。

 

 鼻息の荒いミカさんは私の腕は痛いほど締め付けている。骨は折れていないが内出血程度はなっているはずだ。そもそも振り解くことができないほどの力で抑えられているので無理矢理対抗することができない。

 ベッドの上ですので何かを壊す可能性や背骨を折られる可能性が少ないことだけは数少ない救い。言葉で時間は稼ぐことができそうです。

 

 

「ミカさん、落ち着いてください。1人で私の部屋を襲撃したのは褒めましょう。しかし早すぎて着替え途中に入ってきたのはいただけませんね」

「据え膳食わぬは男の恥、据え膳食わぬは男の恥、据え膳食わぬは男の恥」

「人の話を聞いてください。それと私は誘っていませんし、貴方の前世は知りませんが今は女性です」

 

 

 これは危ないですね。興奮状態で人の話を聞いていない。これでは言葉による説得はできない。まるで肉食獣。ンンンンン!!おっと、心のリンボが出ましたことをここにお詫び申し上げます。

 服も中途半端に着ているせいで足に絡まって逃げるには……人の助けを待つ以外ありえませんね。

 

 

「ハァハァ、ナギちゃんが悪いんだよ!自分を襲ってなんて言うから!」

「誰か助けてくださーい!!」

 

 

 精一杯の声で助けを呼んでいるとセーフハウスの木製の扉が開かれる。少し開いた隙間から白い髪の天使が顔を覗かせる。少しテンポを置いた後、桃色髪の少女が同じように顔を覗かせた。

 原作通りアズサさんとハナコさんが助けに来てくれたようだ。

 

 

「あ、ハナコさん!アズサさん!ちょうどいいところに!!助けてくだ……何で無言で扉を閉めようとしてるんですか!!お金でもなんでも払いますから!!」

 

 

 金ならある!!(どこぞのインド王子風)実家のお金やトリニティの資金は渡せませんがミカさんの筋肉で作り出したダイヤモンドを売ったお金を、セイアさんの未来予知を使った株で大儲けしたので都市を一つ作るくらいのお金をあげますから!

 

 

「何も問題はなさそうですね」

「そうだな、ヒフミや先生にも何も問題はなかったと連絡しておく」

 

 

 ガチャンという音が聞こえると同時に見えていた顔は見えなくなり、扉は綺麗に、そして丁寧に閉められた。私にとってその音は死の宣告。アズサさんの神秘であるアズラエルを表しているようだった。

 

 

「………なんでですか!?助けてくださいよ!そっ閉じするなんて酷いです!!」

 

 

 ミカさんが私の髪の毛に顔を近づけ、匂いを嗅ぐ。昨日、お風呂に入っていないので流石に恥ずかしい。それにミカさんの生暖かい鼻息が首筋に当たり、少し気持ちの悪い感触が伝わって鳥肌が立つ。

 左手が解放されるがミカさんの右手で優しく顎を持たれる。空いた左手でミカさんの体を押しているが動く気配が微塵もない。

 ミカさんの顔がだんだんと近づいてくる。もしかしなくとも……キスされるのでは?

 

 待ってほしい!私は前世を含めたら一度も……いや、一回は経験しましたね。

 そうではありません!だとしても今世でのキスは初めてですよ!初めては愛し合った人とするのが私の理想なんです!こんなところで誤解から無理矢理のキスなんて……嫌です…前世のキスも不本意なものなのに…!

 

 

「ミカさん今なら間に合います!」

「ナギちゃん……一緒に堕ちようか☆」

 

 

 ああ、私の初めては奪われるんだ。そう確信した瞬間、壁が一瞬で破壊され、瓦礫が飛ぶと同時にミカさんが水切りの石のように、何度も跳ねながら部屋の壁を壊し、外まで飛んでいく。

 一瞬の出来事で理解が追いつかなく、左手に付いていた血を見て、ミカさんが怪我をしていることを認識する。

 

 

「ミカさんが血を流すところなんて初めて見ました」

 

 

 これは私の血ではない。可能性があるとしたらミカさんの血。そして壁の壊れようやミカさんだけ狙えたところを見るに武器はアンチマテリアルライフル。でも不意打ちとはいえダイナマイトの直撃を喰らってかすり傷すら喰らわなかったミカさんに傷を付けるほどの銃なんて私は知らない。

 

 誰が何の目的でどういった攻撃をしたのかはわからない。しかし私を助けるために撃ったのは事実だ。その人に感謝を伝えることはできないが心の中で感謝を告げて、ぶっ飛ばされたミカさんを追いかける。

 

 

「あ、その前に服を着ないとですね」

 

 

 服をきちんと着替えて、リボンではなくネクタイをつけて倒れているミカさんを中庭で見つけた。

 頭から血を流しているが重症にはなっていない。なんならすでに回復しつつある。化け物ですか……。それにしてもミカさんが気絶するほどの攻撃ですか……レールガンか何かでも撃たれましたかね?

今はとりあえず治療するためにも助けを呼ばなくては。

 

 

「救急車ーーー!!」

 

 何もない夜空という虚空に消えた私の助けを求める声。

 

「誰かツッコミを入れてくれる人が恋しくなりますね……」

「いたぞ!桐藤ナギサだ!」

「聖園ミカが倒れているぞ」

「まさか、聖園ミカを1人で……」

「武闘派だったなんて……偽の情報を掴まされたなんて…!」

 

 

 ゾロゾロとアリウスの生徒たちがこちらに迫ってくる。私の大声で気づいたようだ。

 勘違いされている。絶対に勘違いされている!私1人でミカさんを倒せるわけがない。正義実現委員会の一般生徒より弱い私ですよ?

 

 

「覚悟しろ桐藤ナギサ!ここで──」

「救護!!!!」

「あっ……」

 

 その恐ろしくも頼もしい声が空から鳴り響き、天空から翼の生えた天使様が地面を砕き、アリウス生徒たちを粉砕しながら降臨した。その天使は海よりも綺麗な青の髪にミカさんよりも大きな胸、特殊部隊が使っているようなライオットシールドを地面にめり込ませているその姿に私はあの2人に思っている恐怖とは別の恐怖を感じた。

 

 

「怪我人はどこですか!」

「あ、そこのミカさんを……」

「ナギサさん、その手首の腫れは?」

「……さっきミカさんに押さえられた時に…」

「骨は…折れていませんね。内出血が酷いですし救護が必要です。今セリナが救急箱を待ってきますので安静にして待っていてください。ミカさんは私が運びますので」

 

 

 そう言いながら気絶しているミカさんを米俵のように抱えて、救護騎士団の部室の方角へ走って行った。

 私はやることがあるので待ってはいられないと思い、部室とは逆方向に向かおうと後ろを振り向く。桜の匂いを感じ、予想通り救護騎士団の鷲見セリナさんがいた。前世の頃から思っていたのですが、急に現れるのは少し怖いですね。

 

 

「大丈夫ですか?氷とガーゼ、タオルを持ってきました。これで応急処置するのでそこのベンチに座ってください」

「……ありがとうございます。ですがこの辺りは危ないですし、早く避難していただけると幸いです」

「危ないのはナギサ様もですよ。と言っても、言葉で止まる人ではないことは重々承知の上ですから。でもシスターフッドの方々を先ほど見かけたので襲撃者の制圧はもう直終わるはずです。終わったら部室に来てくださいね」

「……わかりました。行きますから、そんな疑いの目をこちらに向けないでください」

「仕方ありませんよ。肋骨が折れていても気にせずに仕事しようとしていた人が真面目に来るかどうかわかりませんから」

「その節は申し訳ございません」

 

 

 2年前。

 私が一年生の時の話。寝ぼけているミカさんに抱きつかれた結果肋骨が折れていた。しかしやるべき仕事も溜まっていたので、多少の痛みを無視していると団長に無理矢理誘拐されて、救護されてしまった。

 その話が救護騎士団内では有名らしく、私は要注意者になってしまった。

 

 

「はい、応急処置は済ませましたよ。できるだけ腕は使わないようにしてくださいね」

「ありがとうございます。では私はアリウスの生徒たちの対処に当たるので、失礼します」

 

 

 セリナさんに感謝を伝えて、倒されているであろうアリウスの生徒たちをどうするか考えていると胸ポケットに入れていたスマートフォンがバイブレーションを起こす。どうやら先生から電話がかかってきたようだ。

 

 

『“もしもし”』

「ビジネスシーンでのもしもしは禁句ですよ。それでどうかされました?」

『“アリウスの生徒たちを全員倒したけどそっちは大丈夫?”』

「アズサさんとハナコさんからは何と聞いていますか?」

『“……ナギサとミカで創世合体してたって…”』

「1万年と2000年前から愛してなんていませんよ。もちろん8000年過ぎた頃から恋しくもなっていませんし。あれは誤解なので気にしないでください。それはそうと2人にはテストが終わり次第、私の執務室に来ることを伝えておいてくださいね」

『“……ワカッタヨ”』

「わかっていただけて何よりです。アリウス生徒たちは私たちの方で何とかしますので先生は仮眠でもしてきてください。声から察するに昨日寝ていないでしょう。先生には彼女たちに合格を伝える義務があるのですから」

『“合格することを確信してるんだね”』

「我が校の自慢の生徒たちですから。この程度の壁はすんなりと乗り越えてきますよ。あと明日……いえ、今日ですね。今日の昼食は私がご馳走します。補習授業部の皆様にもお伝えください」

『“ナギサの料理は最高だからみんなも喜ぶよ。この前のパフェも今までで1番美味しかったよ”』

「……いつか刺されますよ」

『“ごめんなさい。でも美味しかったのは本当だよ”』

「……人たらし」

 

 

 そう呟いた後、電話を切って現場に行こうとすると再び電話がかかってきた。

 

 

「サクラコさん、どうされましたか?」

『ナギサさんお怪我はないですか?』

「おかげさまで無傷と言って差し支えないほどですよ」

『無事で何よりです。ところでアリウス生のこと相談があるのですが…』

「アリウス生をどうするか……ですね?シスターフッドの方にお願いしてもよろしいでしょうか?少し用事(お風呂と昼食作り、破壊されたセーフハウスの修理の依頼、今回の損害や消費した弾薬の補填)がありますので」

『お任せください。アリウス生徒は私たちシスターフッドが丁重に保護致しますので』

「ありがとうございます。それではこれにて失礼致します」

 

 

 私は勘違いさせやすい人と知っているから疑うことはありませんが、何も知らない人だと監禁や実験素材にしてそうに思えるのは何故なのでしょう。

 そんなことを考えていると肩に手が置かれた。

 

 

「その用事には保健室に行くのも含まれていますよね?」

「あ……申し訳ありません。今すぐ行きますから……」

 

 

 セリナさんの圧に押された私は救護騎士団の部室である保健室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黄金に輝く狐はトリニティの遥か遠くのビルの屋上で佇んでいた。

 

 

「ミカを1発で気絶させる威力か……しかし接近戦で使用するには少し使いづらいな、リロード時間が長すぎる。それに狙いを定めるのも予知頼りでスコープの必要性がない…」

 

 そう言いながら1メートルを超える大きさの銃から出ている煙を息で飛ばし、空薬莢をその辺に捨てる。

 

 

「それにしてもミカめ!ボク……私のナギサに手を出すなんて……羨ま…けしからんぞ!!」

 

 

 そんな変態FOXを横目にシマエナガは『第二部完!』という書かれた紙を掲げていた。

 


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