ティーパーティーに転生した3人組   作:お前ら人間じゃねぇ!!

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今回は補習授業部視点

原作との変更点が伝わったらいいなと思います


そして高評価をくれたみんな!ありがとう!
仲間から力を貰った悟空がブロリーを倒した時の気持ちがわかった気がする


お礼

 

 

第3回補習テスト前日の夜。

 

 白洲アズサは合宿に使われている校舎を抜け出し、誰もいない廃校舎で錠前サオリと密会をしていた。

 

 

「アズサ、日程が……変わった」

「サオリ、大丈夫か?顔色が優れていないぞ」

「……少し夢見が悪いだけだ。それに悪夢ももう直終わる」

「そうか…」

 

 

 数日ぶりに会った家族とも言える人が変わりようにアズサは驚いていた。顔色の悪さ、昔よりも光を反射しない暗い瞳、そして今まで持っていなかった強者の色気ともいえる雰囲気がサオリの成長と苦労を表していた。

 

 

「それで日程についてだが明日の午前中だ、約束の場所で命令を待て」

「ま、待ってサオリ、明日は……」

「何か問題が?」

「ま、まだ準備ができていない。計画よりも日程を早めるのは、リスクが大きすぎる」

「いや、明日決行だ。これは確定事項、しっかり準備しておけ」

 

 

 夢の中とはいえあらゆる訓練を積んだサオリはアズサの動揺を見逃さなかった。何か嘘をついているんじゃないか?そんな考えが頭によぎるが、家族同然のアズサが自分たちを裏切るはずがないと思い、その考えを捨てる。

 

 

「明日になれば、全てが変わる。私たちアリウスにも、このトリニティにも、不可逆の大きな変化が起きることになる。

トリニティのティーパーティーのホスト、桐藤ナギサのヘイローを破壊する……そのためにお前はここにいるんだ」

「………」

「お前の実力は信頼している。上手くやれ、百合園セイアの時のように」

「……わかった。準備しておく」

 

 

 そう言い残しアズサは去ろうとする。しかしサオリは少し離れた距離からアズサに声をかけた。

 

 

「アズサ」

「………?」

「忘れていないだろうな、Vanitas vanitatum」

「…全ては虚しいもの。どんな努力も、成功も、失敗も……全ては最終的に、無意味なだけ。……一度だって、忘れたことはない」

 

 

 するとサオリは空を、金色に輝く月を見上げて言った。

 

 

「そうだ。全ては虚しい。それでも今を楽しまない理由にはならない」

「……!」

「カルペ・ディエム。この言葉を覚えておけ」

「……意味は?」

「死を忘れろ。今を楽しめだ」

 

 

 その言葉の意味をアズサはよく理解できなかった。それでも何故か心にその言葉が残り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。

 

 合宿場にある先生の部屋にヒフミは1人で訪れていた。

 

 

「こ、こんばんは、先生……ま、また起きていらっしゃいますか」

「“ヒフミも寝れない感じ?”」

「は、はい……」

 

 

 3回扉がノックされる音が部屋に響き、制服姿のハナコが入ってきた。

 

 

「私もきちゃいました♡」

「ハナコちゃん……」

 

 

 ハナコのいきなりの登場に少し驚いていると、再度扉が開かれ、次はコハルが入ってきた。

 

 

「みんな何してるの……」

「コハルちゃんまで……」

「明日は試験なのに、何してるのよ。休むことも大事だって言ったのはそっちでしょ……!?」

「まあ、そうなのですが……」

 

 

 素直に友達を心配して聞いてくるコハル相手にハナコも茶化すことができず、言葉を濁していた。

 

 

「なんかアズサも、どっか行っちゃったみたいだし……まあ、緊張する気持ちはすごく分かるけど……」

「そうですね。そんな時こそ楽しく会話しましょう。友達と一緒にいることは安らぎに繋がりますから」

「安らぎ…ですか?」

「ええ、私が補習授業部に来る前。つまり水着で学校を徘徊していた時の話です。いつものように噴水で水浴びをしているとおさ……アルコールの入ったジュースを飲んでいるナギサさんが現れました」

「“今、お酒って言おうとしたよね?”」

「アルコール入りジュースはお酒では?」

 

 

 みんなが抱いた当然の疑問を無視しながら、怪談話を語るように話していく。

 

 

「私は桐藤ナギサという人物を碌に知らずに、一方的に嫌っていました。しかし接してみると私の憧れに近い人になりました」

「ナギサ様が憧れに……」

「ハナコでもナギサ様に憧れるんだ……」

「はい。ナギサさんは私の心を丸裸にしたように全て見抜き、私が抱いていた不満を言葉に出されましたよ。あの時は顔や手足、そして敏感な部位も舐め回され、液体を流してしまいそうな気分でした」

「丸裸!敏感!!エッチなのはダメ!死刑!」

 

 

 ハナコの狙ったような発言に、コハルが死刑宣告をした。そんな初日から最終日まで、1日1回以上は確実にあったかなと思ってしまう先生とヒフミ。

 

 

「流してしまいそうになったのは涙ですよ?コハルちゃんは一体何と勘違いしたのですか?」

「えっ……」

「“ハナコ、話の続きをどうぞ”」

「つ、次の話が気になります!」

「……先生とヒフミちゃんがそう言うのなら……私を知った彼女は言いました「もしも、私が貴方に安心を与えれると言ったならどうしますか?」と。その言葉は真実であり、100%善意からの行動。トリニティの支配者である彼女がトリニティに相応しくないほどの慈愛を持ち、トリニティの支配者に相応しいほどのカリスマがあった。

だから私は彼女の言葉に従ったのでしょう」

 

 

 その場にいる、ハナコを除いた全員は驚くと同時に桐藤ナギサという人物の凄さを痛感する。

 先生にとっては生徒の1人して、自分の先生とも言えるナギサがハナコという少女の心を一瞬で見抜いたことに。

 ヒフミにとっては仲のいい先輩が自分には見せたことがない、支配者としての一面に。

 コハルにとっては数回話した程度あまり知らず、それでも自分が尊敬する先輩のツルギやハスミが純粋にナギサのことを尊敬していた事実を思い出した。

 

 

「そしてナギサさんは、一つの逃げ道としてこれを下さったのです」

 

 

 そう言うと鞄の中から取り出したのは、あの日渡されたほろ酔いグレープ味だった。

 

 

「“………酒!?”」

「ダメですよ!未成年飲酒は法律で禁止されていますよ!」

「エッチじゃないけどダメ!有罪!」

 

 

 キヴォトスにおいて、未成年飲酒は立派な犯罪である。学園都市という学生が市民の殆どな要素もあってか、公然猥褻よりも重い罪に問われるケースもあるほどだ。

 

 

「しかし気になるんですよね。彼女が先生に裏切り者を見つけ出すように頼み、意図的に第3回の補習テストを受けさせたかったのか……」

「意図的?」

「はい。第二回のテストはコハルちゃんやアズサちゃんがギリギリで合格できない問題を作ってきていました。偶然……と言いたいところですがあの人なら、そのくらいの事は簡単でしょう」

「……私のせいだ」

 

 

 ハナコが自身が感じた情報をまとめ、公表していると扉が開かれ、アズサが神妙な面持ちで入ってきた。

 

 

「アズサちゃん!?ど、どこに行ってたんですか……?」

「……」

「みんな、聞いて。話したいことがある」

「アズサちゃん……?」

「アズサ……?ど、どうしたの?具合でも悪いの?」

「アズサちゃん、身体が震えて……?」

 

 

 いつもとは違う、友人に心配な表情をみせるヒフミとコハル。それとは別に、ハナコは何も言わずにアズサを見ていた。

 

 

「……みんなにずっと、隠していたことがあった。でも、ここまで来たらもうこれ以上隠してはおけない……」

 

 

 その後、少しの間を置いて告白をした。

 

 

「……ティーパーティーのナギサが探している『トリニティの裏切り者』は、私だ」

「………はい?」

「……え?きゅ、急に何の話……?」

「………」

 

 

 ヒフミとコハルはアズサが何を言っているのかいまいち理解できていなかった。ハナコと先生だけが言葉の意味を理解して黙って聞いていた。生徒の罪の告白を。

 

 

「私はもともとアリウス分校の出身。今は書類上の身分を偽って、トリニティに潜入している」

「あ、アリウス?潜入……?」

「……」

「……えっと……何それ?アリウス……?どういうこと?」

「アリウス分校……かつてトリニティの連合に反対した、分派の学校です。その反発のせいでトラブルとなり、その後はキヴォトスのどこかに身を潜めてひっそりと過ごしていると聞きましたが……」

「そう、私はここに来るまで、ずっとアリウスの自治区にいた。アリウスとしての任務を受けて、今こうしてこの学園に潜入している……。

その任務というのが……ティーパーティーの桐藤ナギサ、彼女のヘイローを破壊すること」

「……っ!?」

「嘘でしょ!?そ、それってつまり……」

 

 

 あまりの衝撃的な事実にヒフミとコハルの2人は混乱を隠せない。今まで共に勉強を頑張ってきた友人が裏切り者を自白し、自分たちの先輩のヘイローを破壊……つまり、殺そうとしているからだ。

 

 

「アリウスはティーパーティーを消すためなら、なんでもしようという覚悟でいる。アリウスはまずティーパーティーのメンバーであるミカを騙して、私をこの学園に入れた。詳細は知らないけど、きっとトリニティと和解したいとか、そういう嘘をついたんだろう」

「……待ってください。その説明では不可解な点があります。ミカさんならナギサさんに相談するはずです。ナギサさんは頭ごなしに反対する人ではありませんから。もしアリウスがナギサさんのヘイローを破壊する目的で転入させようとして、その思惑に気づかないような人でもない」

「……ならどうして」

「おそらくですが、初めから知っていたのだと思います。ミカさんを騙そうとしていることも。自分が狙われていることも。

その上でアリウスを助けようと動いているのでしょう。だから補習授業部が作られ、アズサさんが落ち着ける環境を作った」

「ま、待って……急に何の話……?いや、嘘だとは思わないけど、別に今の私たちとは関係無いじゃん。

アリウスのことはよく分からないけど、それが私たちの補習授業部とどういう関係があるわけ……?アズサは何で急に、そんな話をしてるの……?」

「……」

「……」

「……」

 

 

 全員が沈黙して、先ほどまで騒がしかった部屋に静寂が訪れる。お互いの目を見合い、何を言えばいいかと考えているとアズサが口を開いた。

 

 

「明日の朝、アリウス分校の生徒たちがナギサを狙ってトリニティに潜入する。……私はナギサを守らなきゃいけない」

「……」

「あ、明日……!?」

「うん、私はそれをどうにか阻止しないと」

「…コハルちゃん、正義実現委員会のシフト表は貰っていますか?」

「えっ……一応貰ってるけど」

「見せてくれませんか?」

 

 

 そのお願いに応じたコハルが鞄の中からシフト表を取り出し、机の上に広げた。

 

 

「……明日は……ツルギさんもハスミさんも休みですか…」

 

 

 桐藤ナギサが校則を改正した結果、正義実現委員会には休日や有給がシフトで管理されるようになり、労働環境の改善が行われた。それが不幸を呼び、重要な日である明日に委員長と副委員長である剣先ツルギと羽川ハスミは働きすぎで桐藤ナギサ本人に有給を取らされていた。

 

 

「要人襲撃には最適な日ですね。アリウスもだいぶ頭が回るようです」

「ハナコちゃん……」

「ま、待って!おかしくない!?よ、よく分かんないけどアズサはティーパーティーをやっつけに来たんでしょ?なのに守るってどういうこと?話合わないじゃん!」

「それは……」

「……アズサちゃん自身は、最初からその目的でトリニティに来た。そういうことですね。最初からナギサさんを守るために、ナギサさんを襲撃する任務に参加した……いわば、二重スパイ。アリウス側には連絡係として、常に問題ないとずっと嘘の報告をしながら……本当は裏切るための準備をしていた。

……どうして、ナギサさんを守ろうとするんですか?それは、誰の命令で?」

 

 

 当然の疑問だ。ここで疑問に思わない方が不思議。その質問をされると分かっていた。

 

 

「…これは誰かに命令されたわけじゃない。私自身の判断だ。桐藤ナギサがいなければ、エデン条約は取り消しになってしまう。あの平和条約が無くなればこの先、キヴォトスの混乱はさらに深まるだろう。その時また、アリウスのような学園が生まれないとは思えない……」

 

 

 目が物語る。アズサの言っていることが真実であることを。そしてその覚悟を。黄金の精神とも言える、輝くほどに眩い心を。

 

 

「だから平和のために、ということですか?……とっても甘くて、夢のような話ですね。今回の条約の名前と同じくらい、虚しい響きです」

「……」

「アズサちゃんは嘘つきで、裏切り者だった…トリニティでも本当の姿を隠し、アリウスでも本音を隠していた。アズサちゃんの周辺には、アズサちゃんに騙された人たちしかいなかった、ずっと周りの全てをだましていた……そういうことで合っていますか?」

「ハナコちゃん……」

「……合っている。だからこそ私はナギサを助けたい。私のことを考えて行動してくれたのだから、今度は私がナギサのために動く番だ。それに…」

「「「それに?」」」

 

 

 偶然全員の言葉がハモる。まさに仲の良さを示しているようだ。

 

 

「パフェのお礼をまだ言えていない」

「………そうですね。パフェのお礼をナギサ様に言ってませんでしたね」

 

 

 全員の顔に笑顔が戻る。先ほどまでのシリアスな空気は消えていた。

 

 

「アズサちゃん、ごめんなさい。そしてありがとうございます。隠していた本心を話すという怖さは痛いほど理解できます。それでもアズサちゃんは私たちを信じて話してくれて嬉しかったです」

「最後に一つ聞かなければいけないことがあります。……アズサちゃんは……目的が終わったら…どうするのですか?」

「……ここにいたい。まだまだ知りたいことが、たくさんある。海とか、お祭りとか遊園地とか……行きたいところも、知りたいこともまだまだたくさんあって……」

「アズサちゃん……」

「それに家族に言われたんだ。全ては虚しい。でも今を楽しまない理由にはならないと。なら私は今を楽しみ続けるために抗おうと決めたんだ」

「……でしたら私たちがする行動は一つだけですね」

 

 

 ハナコは一息ついてから笑顔で言った。

 

 

「ナギサさんを助けに行きましょう。そして明日のテストに全員で合格するだけです」

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

 

 

 ハナコはアズサと共に、ナギサのセーフハウスの扉を開けた。ギィと少し古さを感じさせる音ともに2人の視界と聴覚は信じられないものを捉えてしまう。

 

 

「ハァハァ、ナギちゃんが悪いんだよ!自分を襲ってなんて言うから!」

「誰か助けてくださーい!!」

 

 

 なんと聖園ミカがシングルベッドの上で桐藤ナギサの両手を抑え込み、息を荒立てていた。

 あまりにも信じられない光景に脳が受け入れを拒否しているとハナコとアズサはナギサと目が合ってしまう。

 

 

「あ、ハナコさん!アズサさん!ちょうどいいところに!!助けてくだ……何で無言で扉を閉めようとしてるんですか!!お金でもなんでも払いますから!!」

「何も問題はなさそうですね」

「そうだな、ヒフミや先生にも何も問題はなかったと連絡しておく」

 

 

 ハナコは完全に扉を閉め切った。

 

 


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