ティーパーティーに転生した3人組   作:お前ら人間じゃねぇ!!

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酒カス

 

 先生は夢を見る。狐の女の子とテラスで一緒にいる夢を。その女の子はずっと意味不明な会話を一方的にしてくる。

 

 

「つまるところ。愉悦とは他人の不幸を肴に酒を嗜み、嘲笑うこと。エデン条約は愉悦を作るための調理器具だ。ゲヘナとトリニティの和解。それは自由にすればいいと思う。

エデンとは天国の中にある庭のことを言う。このキヴォトスが天国なのか天国を作るからエデン条約なのかは私も知らない。

私が今から言う言葉を覚えていてくれ。『らせん階段』…!『カブト虫』!『廃墟の街』!『イチジクのタルト』!『カブト虫』!……『ドロローサへの道』!『カブト虫』!『特異点』!『ジョット』!『天使(エンジェル)』!『紫陽花』!『カブト虫』!『特異点』!『秘密の皇帝』!!

覚えたかい?もう一度言おう……え?長いから大丈夫だって……仕方がない。後は何を伝えようか……私の座右の銘でも教えよう。

「人の不幸は笑え、人の幸運も笑え」いい言葉だろう?」

 

 

 意識がだんだんと鮮明になって行く。悪魔のような夢から現実へと戻された先生は安心しながら、自室のベッドの上で言葉をこぼす。

 

「北緯28度24分 西経80度36分 新月を探さないと……」

 

 

 

 

 

 

数日前

 

 

 

 

「「「かんぱ〜い」」」

 

 冷たくて、麦で作られた黄金の飲み物を喉に流し込む。

 

「「「麦茶だこれ!!!」」」

 

 なんていつものネタをやったところで作戦会議に移る。まあ、私は本物のビールですけどね。

 

「アビドス編は終わりましたね」

「ナギちゃんが黒服と接触するなんて思いもよらなかったよ」

「ナギサは私達とは違い、貧弱なのだから気をつけたまえ。それとイベント前にトイレに行くのは大事だぞ」

「そのことはもういいんですよ!早くエデン条約編の作戦会議をしますよ」

「私とセイアちゃんの2人でベアトリーチェを殴り殺せばよくない?」

「はぁ、ミカは馬鹿だね。ナギサが心配しているのは歴史改変によるプレナパテス化だ。確かにミカの筋肉ならアリウスごとベアトリーチェを捻り潰せるだろうが、辞めておきたまえ」

「喧嘩したいの?」

「ナギサ!麻婆豆腐おかわり!」

 

 この2人作戦会議する気ありませんね。あと私の家に集まるのは何故?大きい家は好きではないので、所有しているマンションの一室に住んでいる。プライベートな空間が好きでこの部屋に住んでいる、しかしこの2人がいつも侵入してきて迷惑です。

 ミカさんが来た時は扉が壊され、セイアさんが来た時はピッキングされるのでもう諦めました。

 

「はい、激辛麻婆豆腐です」

 

 地獄と例えるのが不適切。地獄よりもヤバい赤色をした麻婆豆腐をセイアさんに提供した。前世の頃から料理をするのは好きなのですが激辛料理を作ったのは転生してからです。

 

「セイアちゃんはよくそんなゲテモノ食べられるよね。ナギちゃん!私には回鍋肉と炒飯!」

「この麻婆豆腐の美味しさがわからないなんて、ミカは子供舌だな。辛くない四川料理など醤油の無い寿司と同じだよ」

「セイアちゃんのは味覚がバグっている人しか食べないよ。実際にナギちゃんも作りはするけど食べないじゃん」

「ナギサはあまりの美味しさに涙を流して食べていたぞ」

「それ辛いだけだよ」

 

 この2人の喧嘩を尻目に巨大な中華鍋を大きく振って炒飯を作って行く。

 

 

「中華料理屋になった訳ではないのですが……炒飯できましたよ」

「ナギサが作るご飯はとても美味しいから仕方がないのだよ」

「そうだよナギちゃんが美味しいのが悪いんだよ☆この炒飯もパラパラで最高!」

「その言い方ですと私が食べられているみたいになるのでやめてください」

 

 

 

 その後、お昼ご飯を食べさせた後、メモを開いて今度こそ本当に作戦会議を開催した。

 

「アズサさんがセイアさんを爆殺する日は見えましたか?」

「あと三日後だ」

「大丈夫セイアちゃん、怖いなら泣いてもいいんだよ?」

「そう言うミカこそ、誰も殺さないように力加減の練習をするといい。この鉄球を渡しておこう。3日間のうちに圧縮させずに保持してみたまえ」

 

 

 その瞬間、ミカさんがセイアさんの後ろに回り込み、頭蓋骨を砕こうとアイアンクローをかけようとするが未来を見ていたセイアさんはデザートイーグルを抜き、ミカさんの顎に直撃させるも無傷であった。

 

 

「私の家で暴れないでください!それもこんな狭い部屋で!!」

「くらうじゃんね!! 超必殺 飛鳥文化アタック!仏教文化の重みを知れーッ!」

「貴方仏教じゃなくてキリスト教ですよね!?」

 

 

 ミカさんが回転しながらセイアさんに突撃する。しかし簡単に避けられ、私の寝室の壁が綺麗に破壊された。

 

 

 

「私の家を破壊しないでください!!!!」

 

 

 

 

 

三日後

 

 

「セイアさんは死んでくれましたか?」

「安心したまえナギサ」

 

 私が自分のために淹れたダージリンティーを優雅に飲んでいた。頭の上に乗ったペットのシマエナガ君は『残念だったな、トリックだよ』と書かれた紙を掲げていた。

 なんでこの人は執務室にいるのだろう。時刻的に襲撃は終わっているはずなのですが……

 

 

「なんで私がここにいるのか理解できていないようだね。……死体を偽装してきたのさ!」

「ミカさーん!セイアさんを4分の3殺しにしてください!」

 

 

 その言葉を発した瞬間、天井をぶち破り、一つの流星が飛来した。私はその流星にゴジラ・ゴジラ・ゴジラと名付けようと思った。

 

 

「死ねぇぇ!!」

「セイア!行きまーす!」キュピーン

 

 

 床にクレーターができるほどの力で地面を蹴ったミカさんが高速で動き、全ての攻撃が即死するほどの威力を持った攻撃の嵐。それに対してセイアさんは拳で全てカウンターを入れるがミカさんにはノーダメージのようだ。

 

 

「ナギちゃん!前に言ってたアレをやってあげて!」

「ナギサが何をしようと私にはダメージを与えることはできないことはミカも知っているだろう」

「本当にアレをするのですか!?恥ずかしいのですが」

「このゴミを倒すにはアレしかないじゃんね!」

「…っ!仕方ありません。………セイアさん!!おっぱい揉みますか!?」

 

 

 服のボタンを外し、下着を見せながら叫んだ。

 

「……あ、止まったじゃんね」

 

 

 脳の処理が間に合わなくてフリーズしたセイアさんの首の骨をミカさんが軽々と折ってしまう。バキバキという可愛らしい音ではなく、ゴギュラと聞いたことがないような音が壊れた執務室に響いた。

 

 ァァァァ!!恥ずかしい!!死にたい!!!とある生徒が見ていたら「エッチなのは駄目!死刑!」と言われそう。

 それとミカさん。鼻血がセイアの服に付着しているせいで血まみれで殺されたようにしか見えませんよ。

 

 

 

 

 

 

 そのまま救護騎士団に投げておくように命令した。ミネさんなら原作と同じ行動を取るでしょうから安心できます。

 私は色々と疲れてきたので散歩して、今は噴水に腰掛けながら一休みすることにした。

 

 すると後ろから声が聞こえた。振り返るとスクール水着で水浴びをしている浦和ハナコさんがいた。無視しようかと考えたがあちらも私を認識しているので逃げることはできそうにない。

 

「こんばんは。水浴びですか?いいですね」

「……あの、その手に持っている物は…」

「レモンジュースです。決してストロングでZEROなレモンチューハイではありませんよ。まあ、貴方には飲ませませんが」

 

 嘘です。お酒です。ストロングでZEROなレモンチューハイです。

 仕方ないじゃないですか。酒を飲んでいないとストレスで死にそうなんですから。紅茶なんかよりも酒ですよ酒。

 お酒は良い。ビール、ワイン、焼酎、ハイボール、ウイスキー、ウォッカ、ジン、梅酒、ブランデー。どんな物でも好き。アルコールは私の心を癒す最高の飲み物です。

 

 ハナコさんには騙せないでしょうが「酒ではなくジュースを飲んでいた」と言っておくことが大事なのです。もし私が酒を飲んでいるのがバレたとしても揉み消せますしね。

 

 

「…ナギサさんは私の行動に何も仰るつもりはないのですか?」

「確かに校則では駄目なことなのでしょうが……私は許します。これでもハナコさんの不満や行動を理解しているつもりですから。トリニティの勢力争いに疲れたのでしょう?」

「………」

 

 

 彼女は自分自身を虚飾して、疲労している。可哀想な子供だ。だから大人である私が殻を壊してあげる必要がある。しかしそれは私の役目ではなく先生の役目だ。私の出番ではない。

 

 

「もしも、私が貴方に安心を与えれると言ったならどうしますか?

人間は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる、名声を手に入れたり、人を支配したり、金もうけをするのも安心するためです。

結婚したり友人をつくったりするのも、安心するため。人のために役立つだとか、愛と平和のためにだとか、すべて自分を安心させるため。安心を求める事こそ人間の目的です。

だからこそ安心を望む君に安心を与えよう」

 

 

 ゴゴゴゴという音が鳴りそうなポーズを決めながら彼女に甘い言葉を囁く。今の私なら世界を止められる気がする。

 ザ・ワールド!時よ止まれ!!はい、止まりませんでした。

 

 

「安心とは具体的に……」

「……勢力争いに巻き込まれず、好き勝手にできる環境を用意する。そこで友人を作ってみるといい。

友人とはいいものだ。互いに安らぎを与え、喜びを分かち合い、苦難を共にする。

人生を豊かにするのは友人や家族の存在だ。私には友人がいない。だからこそ君には友人を作って欲しいのだよ」

「……ミカさんやセイアさんは友人ではないと言いたいのですか?」

「……誰があんなゴミカス共と友人ですか!知っていますか?人間と怪獣は友達になることはありませんし、私のような聖人と人の不幸を笑うクズは相互理解するのは不可能です!」

 

 

 私とあの2人は友人ではありません。同盟関係、利害一致、呉越同舟、共同戦線です。ブルーアーカイブのストーリーが終わったら始末してやりたいと考えているぐらいには敵です。

 あの人達のせいで酒が進んで仕方ありませんね。もう1缶飲み切ってしまいました。

 

 

「……ハナコさんはゆっくりでいいので他人を信用してみることをお勧めします」カシュッ

「あの……やっぱりそれって…」

「アルコールin麦ジュースです。この袋に入っているのはアルコールinブドウジュースです。決してお酒ではありません」

 

 

 散歩しながらお酒を飲む。これ以上に幸せな瞬間はありません。つまみを作りながらキッチンで飲むお酒も良いですが、月を見ながら飲む酒は格別です。特に今日のような眩しいほどの月が出ている夜は。

 

 私は鞄の中から一本の缶ジュースを取り出し、ハナコさんに渡す。

 

「これを渡しておきましょう。辛くなった時に飲んでください」

「……ほろ酔い……グレープ味…」

「ブドウ味のジュースです。アルコール度数3%なんてジュースと変わりありませんから。……もうすぐ正義実現委員会が見回りに来るはずですのでお暇させていただきます。

先ほど私が言ったことに乗ってみるというのなら正義実現委員会に捕まることですね。……強制はしません。貴方だけの選択を選んでください。選択するのは主人公だけではありませんから」

 

 

 さて、ミカさんが壊した執務室の修理を依頼するために修理費用、財政見積もり、削減できそうなポイントを見つけるための仕事をしましょうか。

 

 


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