日中の経済から“有事”を考えるとー

一方、日中の経済交流の最前線で働く人は、対話を求めます。

沖縄国際大学出身の泉川友樹さん。国際貿易促進協会に勤務し、日本側と習近平氏の日中通訳を担当した経験も持ちます。

日本国際貿易促進協会 泉川友樹さん「私がやったなかで一番大きかったのは残留農薬の検査。ウーロン茶」

泉川さんは、中国の生産者や日本の当局の間に入り、トラブルを対話で解決してきました。

泉川さん「中国も違反が出そうな農薬は使わない方向になり今はない。日中が対立するのではなくコミュニケーションを取ることで安全性が確保された」

日中の経済交流はおととし、貿易総額 3714億ドル(当時38兆円)と過去最高を記録。日米の2165億ドルを大きく上回り、相互に深く依存した関係にあります。また台湾も人口の 1割近いおよそ200万人は中国大陸に渡ってビジネスをしているとされ、中台の経済交流も盛んです。

泉川さん「これが武力行使になるとぐちゃぐちゃになりますので、台湾だけでなくて中国大陸にも、もちろんアメリカ・日本にも大きな影響が出るのは間違いない。経済的な観点から見たら、台湾有事というのはよほどのことがない限り起こらない。では"よほどのこと"って何かということになるんです」

中国の指導体制も熟知する泉川さんは、中国が経済的利益を捨ててでも台湾に武力を行使するのは、台湾独立の意思が明確になる場合だと指摘します。

そのうえで-

泉川さん「台湾自身が統一してもいいと思わない限りは無理なわけですから、今の状況をそのまま続けて『戦争にならないようにしよう』というようなアプローチがおそらく必要だと思いますよね」

日本政府は強硬な統一はもちろん、台湾が急進的な独立に傾くこともどちらも支持しないことを明確にし、中国に台湾の現状維持を求めるべきではないか。そのためには、日本の急速な防衛力強化は対話の障害になるとみています。

東京では先週、4年ぶりの "日中対話" がありました。両国の外務・防衛当局の高官による『安保対話』です。

審議官「日中関係は 様々な課題とともに 数多くの課題や懸案に直面しています。安全保障分野において特に顕著であると言わざるを得ません」

中国気球の領空侵犯問題や、日本の抑止力強化など互いが持つ懸念を伝えたということですが、関係が悪化するなかでの開催は前向きな動き。
こうした対話の積み重ねが、不信が高まるなかでも有事を避ける重要な一歩なのかもしれません。