[Mathematics] 高校生に積分を正しく教えるには-第2回-

2018.01.30 05:10 *Tue
Category:Mathematics



前回の記事の続きです.



今回は数学IIで積分を教えることを想定しています.



定積分



前回定義した不定積分に引き続き,以下では定積分を定義します.






定義



実数 a,b に対し, a<b であるとする.
abf(x)dx を, x=a から x=b までの y=f(x) のグラフの符号付き面積で定義する.



ここで,グラフの符号付き面積とは, x 軸とグラフ, x=a , x=b で囲まれた面積のうち, x 軸よりもグラフが上にあるときは正, x 軸よりもグラフが下にあるときは負であるとして足し合わせたグラフの面積であるとする.


integral.png




このように定めるとき,簡単な考察から,以下がわかります.



aaf(x)dx=0,



baf(x)dx+bcf(x)dx=acf(x)dx.



そこで, 下の公式で形式的に c=a とした式が成り立つようにするために,以下のように定めます.



baf(x)dx=abf(x)dx.



このとき,実は,積分は微分を用いて表せることがわかります.






定理(微積分学の基本定理)



c を関数 y=f(x) の定義域区間内の定数として,以下が成り立つ.



ddxcxf(t)dt=f(x).






つまり, c から x までの符号付き面積 Sc(x)=cxf(t)dt は関数 f(x) の原始関数の1つであると言っています.


integral2.png

この定理の証明は後回しにして,面積の求め方を確立しましょう.



F(x)f(x) の原始関数の1つとします.このとき,原始関数の差は定数でしたから,ある定数 C が存在して,



Sc(x)=F(x)+C



であることがわかります.



このとき, x=a から x=b までの面積は, Sc(b)Sc(a) ですから,以下のようになります.



abf(x)dx=Sc(b)Sc(a)=(F(b)+C)(F(a)+C)=F(b)F(a).



よって,面積は,原始関数を1つ求めれば,その差として書くことができるとわかります.記号として,一番右の式を,



F(b)F(a)=[F(x)]ab



と書くこともあります.



以上をまとめておきましょう.なお,以下を微積分学の基本定理という場合もあります.






系(微積分学の基本定理)



abf(x)dx=[F(x)]ab=F(b)F(a).






これで面積の求め方がわかりました.



さて,最後に定理の証明をしましょう.



integral3.png


上記のように文字を設定すれば,



Sc(x)_Sc(x+Δx)Sc(x)Sc(x)¯



より,それぞれの面積を置き換えて,



f(x)ΔxSc(x+Δx)Sc(x)f(x+Δx)Δx



両辺を Δx で割って,



f(x)Sc(x+Δx)Sc(x)Δxf(x+Δx).



この両辺で, Δx を限りなく 0 に近づければ,



f(x)Sc(x)f(x)



だから,



Sc(x)=f(x)



となって,証明が終わります.



今回のコメント



基本的には教科書の流れを大きく逸脱しましたが,教えるべきことは教えられていると思います.



高校生の多くは微積分学の基本定理のところで Sc(x) がでてくると思考が停止すると思うので,今回はあえて最初に定義を与えました.



とはいっても,実際計算させるときは最後の系を使うので, Sc(x) は記憶の彼方へ消えていくのかもしれませんが.



この教え方のいいところは,ちゃんと理解している子に対しても嘘をつかなくていいところです.一度このように教えて,教科書で復習すると,さらに理解が深まるんじゃないかなと個人的には思います.



この教え方でごまかしているのは,「面積」という言葉です.実は未定義語なのですが,幸運なことに長方形じゃないような図形もそれまでのカリキュラムで面積を求めるので(小学校で円の面積を扱う),おそらくすんなりいくのだと思います.



あと,面積が未定義語だというのは,まぁ,文系の人は知らない方が幸せなんじゃないかなと個人的には思います.理系は数学IIIでRiemann和の極限としてある程度しっかり教えます.次回はその辺を書きます.


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