実際にこれに乗ってみて判った
事。
それは、2ストから4ストになっ
ても、ベスパの命名のきっかけ
となったスズメバチの音は完全
に消滅してはいないという事実。
2スト程顕著ではないが、独特
なビーンという蜂の羽音のよう
な音質を奏でる。
ある一定の回転以上になると
2ストとは異なるヒューンと
いう3バルブエンジンの4スト
モーター音に変化するが、ア
イドリングからの軽いレーシ
ングではスズメバチの羽音。
往年のベスパ独特のサウンド
テイストが4st新ベスパになっ
てもやや残されているのが面
白い。国産の4stスクーターの
音とは明らかに異なる。
これは実際に乗ってみるまで
知らなかった。
国産オートバイではカワサキ
がZ900RSの開発製造にあたり、
ノーマルマフラーの排気音に
こだわり抜いたという逸話が
あるが、もしかするとVespa
も開発過程で音質にもこだわ
った可能性もある。
Vespaは1946年に排気音から
イタリア語でスズメバチ=
vespaという車名が誕生した。
当時社主だったピアッジオ氏
が「この音はまるでスズメバ
チだ」と言ったので、それが
プロトタイプ以降の制式製品
名となった。
4ストエンジン世代になって
も、そのマインドがサウンド
テイストとして受け継がれて
いるのかも知れない。
ヨーロッパ各先進国の車作り
は、日本よりも遥かに伝統を
重んじる継承思想が徹底して
いるからだ。
これは英国車、ドイツ車、フ
ランス車、イタリア車におい
て顕著だ。特に二輪にあって
はその傾向性がかなり強い。
アメリカもハーレーなどは
そうした基本ベースを変更
しない姿勢で車作りに取り
組んで来た。最近でこそ変
化球車両を出して不評を買っ
たが。
欧米のメーカーは日本メー
カーのように次から次新機
軸の車を出してすぐに廃版
にするという事はしない。
メーカーの軸線があって伝統
を重んじる。
ユーザーにおいても大切に
乗り継いで行ける車であり、
製作者においても軸線がぶ
れない車作りをしている。
それは新型車にあっても、
それまでの自社のスタンス
を崩さないのだ。
イタリアのピアッジオ社が作
るVespaはその代表的な一つ
の車といえるだろう。