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BelkinのThunderbolt4ケーブル(2m)は本当に万能なのか?

最終更新日 投稿日 2024年03月18日

記事中でも触れますが、この記事はBelkinのケーブルをdisる意図は一切ありません。むしろBelkinに落ち度が(ほぼ)無いのに、何故かときどき悪者扱いされる理由について解説するものです。

(免責)
情報が間違っていても責任取れません。ポエムです。
技術的に間違ってたらこっそり教えて下さい。
初投稿です。

イントロダクション

昨今、信号の高速化でUSBケーブルの最大ケーブル長はどんどん短くなっているわけですが、

  • モニターとドックをType-Cで繋ぎたい
  • ドックと机下のデスクトップPCをThunderboltで繋ぎたい

みたいなことを考え出すと、規定のケーブル長1の0.8mとか1mでは全く足りないという話になります。まあデスク下と繋ぎたいとなったら2mぐらいはできれば欲しいです。
またUSBケーブルの規格も沢山あって訳わからんので、とりあえず軽くググると「どうもThunderbolt4という規格はUSBの現行規格USB4の完全上位互換で、Thunderbolt4ケーブルを買っておけば間違いない」みたいな結論に至るわけです。

で、まあ「2m」「Thunderbolt4」のケーブルを買おうと思うとBelkinのケーブルが候補筆頭に上がって、「これを買っとけば万能で、全てのUSB規格にも対応できるだろう」と勘違いして罠にハマります。
Belkin Thunderbolt 4 ケーブル, 2M

具体的には、全部入りケーブルを買ったはずなのに、

  • スマホとかマザボのUSB-Cポートに繋ぐだけで「ゴミが入ってる」とかエラーが出る
  • AtoC変換のUSBアダプタ2を噛ませるとまともに動作しない

みたいな相性問題が発生して、「なんやこのクソケーブルゥ!」とキレ散らかすわけです。

この記事では、
BelkinのThunderbolt4 2mケーブルはなぜ「万能」ではないのか?
その理由やメカニズムと、おまけとして我々はどのケーブルを買うべきなのかについて解説します。
なお、記事中は別記がない限りBelkinケーブルとはこのThunderbolt4 2mケーブルを指します。

Belkinケーブルによってなぜ相性問題が起きるのか

端的にいうとBelkinケーブルはアクティブケーブルであり、アクティブケーブル非対応のUSBホスト(一部PCやスマホ)との間で相性問題が発生します。
これはUSB-IFがひどい規格を作ったのと、コストを削減したいUSBホストの実装側に問題があるためで、Belkin側はUSB-IFの規格に則った正しいケーブルを作っています。

Belkinの落ち度はこのBelkinケーブルがアクティブケーブルであることを万人に周知していないことだけです。下の「Active」の文字だけ見てこれがアクティブケーブルだとは普通気付けないです。EOLとかじゃなくてまだ売ってるって意味のアクティブにも見えるし。
ただまあ誇大広告ではないし、Thunderbolt自体アクティブケーブルか否かを意識させない設計思想っぽいので、冤罪で酷評レビューが書かれるのも已む無しってだけで悪いことをしたわけではありません。
Belkinの商品ページ
あと誤解ないように書いておくと、これの1mの方はパッシブケーブルです。

アクティブケーブルってまず何?

アクティブケーブルとは、信号補正回路等を使って普通のケーブルより長いケーブル長を実現できるケーブルです。これに対して普通のケーブルはパッシブケーブルと呼ばれます3
今回の話で重要なのは、アクティブケーブルは内部回路のためにケーブル単体で駆動電力が必要で、更にBelkinケーブルのようなUSB-C to USB-Cのアクティブケーブルは、従来のアクティブケーブルと違ってこの電力を給電する経路が特殊だということです。

アクティブケーブルとPD (PowerDelivery)

USB-Cが存在しなかった時代、USBはVBUSから常に5Vを取ることができました。なのでアクティブケーブル回路はこのVBUSから5Vを拝借すれば電源を確保できて非常に楽でした。
ところがUSB-CとPDが出現すると、このVBUSの電圧は〜20V以上の不定になり、さらにUSB-IFによりUSB-CtoCケーブルではVBUSからアクティブケーブルの電源を取ることが禁止されました。 アクティブケーブルは5Vの安定な電源を失ったわけです。
じゃあどこから取るのかというと、VConnというUSB-Cにある特殊端子4から最大1W(5V200mA)がホストからアクティブケーブルに供給されます。
で、このVConn端子ですが、実装がそこそこ面倒な割に、用途がほとんどPD(eMarker)とアクティブケーブル用電源しかなく5、PD非対応なら実装する旨味が非常に少ないです。
なので、ホスト側のデータ専用USB-C端子(PowerDelivery非対応)は、コスト削減諸々のためにその多くがVConnから1W取れるような回路設計になっていません(規格違反6)。例えばデスクトップPC裏のマザボのUSB-C(USB3.2)端子とかですね。真面目に設計してるマザボもあるかもしれませんが、僕が使ってたASUSマザボとかは駄目でしたね。
要するにこのようなデータ専用ポートにBelkinケーブルを刺しても、それなりの確率で満足に動かないわけです。

アクティブケーブルとコールドスタート

まあこれで「このUSB-Cポートはアクティブケーブル非対応なんだごめんね!」みたいな表示をPCやスマホが出してくれるならまだ救いがあったのですが、現実は更に厳しいです。
このような「アクティブケーブルのことを考えていないUSBホスト」にBelkinケーブルを指すとどうなるか順を追って見てみましょう。

まずUSB-Cはコールドスタートという仕組みが有り、ホスト、ケーブル、デバイスが全て接続されるまでは電源電圧を出しません。つまり、ホストにケーブルだけ刺してデバイスが空の状態では電源を供給しないわけです。

ここで、ホストがアクティブケーブルを想定しておらず、ケーブルがアクティブケーブルだった場合、アクティブケーブルはホストから内部駆動の電源を取ろうとします。
で、これをホストから見ると、デバイスが空=消費電力は0のはずなのに、ケーブルが刺さっているだけでなぜか結構な電力を消費している、というふうに見えます。
ホストはアクティブケーブルの存在を知らないので、これを 「ケーブルの短絡が起こっている」と誤認して、「ゴミが入ってる」のような的はずれなエラーを出します。

これがAmazonレビューにときどき出現する怪奇現象「ケーブル刺しただけでゴミ混入とエラーが出る」の正体です。 アクティブケーブルは悪くないのに、ホストが勝手にどこか短絡している!→ ケーブルが悪い!と断じてエラーを出すわけです。 Belkinケーブル君とばっちりで可哀想ですね。ゴミなのはUSBホストの方なのに。

エラーが出ないUSB-Cアクティブケーブル(違反)

真面目にUSB-IFの規格に従うと問題があるなら、逆に従わなければいいじゃない!
ということで、逆にこういう行儀の悪いUSBホストのためのUSB-Cアクティブケーブルというのも存在します(以下違反ケーブルと書きます)。具体名は出しませんが、このような違反ケーブルは何をしているかというと、USB-IFが禁止しているVBUSから5Vの駆動電圧を取ります。従来のアクティブケーブル方式ですね。VConnから電源を取らないのでマザボのUSB-C端子に刺しても動作します。
ここでおや?と疑問に思った人はとても勘が良くて、USB-CケーブルはVBUSにPDの高電圧が流れるからアクティブケーブルの電源使用を禁止してるわけで、
つまり違反ケーブルにPD電圧が流れると違反ケーブル内部回路が破壊されます。
しかもタチの悪いことに、ホストとデバイスはPDを使用するかどうかの選択権があるのに、USB-Cケーブルは必ず20V3Aを流せることとUSB-IFが決めてしまった7 ので、ケーブルからPDをしないように制限する方法がありません8
誰もケーブルの都合なんて聞いてくれないわけです。可哀想ですね。

まとめると、BelkinケーブルのようなUSB-IF規格を守った合法ケーブルと違反ケーブルは以下のような関係になります。
合法ケーブル: PDを流せるが、PD非対応ホストと相性がある
違反ケーブル: PD非対応ホストで動作するが、PDを流すと壊れる

つまり、万能のUSB-Cアクティブケーブルなど存在しないわけです。
全ての規格に対応する長いUSB-Cケーブルというのは幻想です。諦めてください。

Belkinケーブルと他のケーブルの選び方(2m編)

BelkinのThunderbolt4ケーブル(2m)・・・というかアクティブケーブル全体が万能ではないことは理解してもらえたと思います。ではこのケーブルは使い道無いの?駄目なの?と不安になるかもしれませんが、そんなことは決してありません。
とはいえ8000円(24年3月現在)もするケーブルなので、買うのに躊躇うこともあるでしょう。なので複数のシチュからこのケーブルを買うべきか見ていきます。ただし、長さが違うと話がガラッと変わるので、ここでは「2mケーブルが必要で、どのケーブルを選ぶべきか」に話を限定します。
ホスト、ケーブル、デバイスのうち一番性能が低いボトルネック部分で比較します。

  • Thunderbolt4、Thunderbolt3, USB4Gen3x2がボトルネック(40Gbps, つまり現状の最大速度構成9)

=> 買いましょう。Thunderbolt4が要件として必要な場合はBelkinケーブルが最善です。

  • USB4Gen3x1、USB4Gen2x2、USB3.2Gen2x2がボトルネック(20Gbps)

=> 買いましょう。USB4Gen2x2だけは2mのパッシブケーブルが存在します10が、値段も大して変わらないので3x1とかThunderbolt使いたくなったとき用にBelkinケーブルでいいと思います。

  • USB4Gen2×1、USB3.2Gen2x1がボトルネック(10Gbps)

=> 微妙なラインです。上記の20Gbpsや40Gbpsにシステムを上げていく予定がありそうなら買ってもいいですが、USB4Gen2x2の2mパッシブケーブルの方がデータ専用ポートとの互換性、値段の両面で優れています。10Gbpsぐらいだとマザボの後ろのUSB-Cに刺したいこともありそうなので、僕ならパッシブケーブルを選びます。

  • USB3.2Gen1x1がボトルネック(5Gbps) or USB2.0以下

=> パッシブケーブルで十分です。2mで高いアクティブケーブルなど買ってはいけません。

  • (おまけ) 変換アダプタでUSB-AとUSB-Cの両対応をしたい場合

=> アクティブケーブルとAtoC変換アダプタの相性は最悪です。規格違反アダプタ故にVConnなんてろくに対応しておらず、だいたい動きません。パッシブケーブルを買ってください。
どうしてもBelkinケーブルにアダプタをつけたくなったらサンワサプライの下のやつなら動くかもしれません。これだけはまともにVConnに供給してくれるっぽい。
USB3.2A-USB Type Cメス変換アダプタ AD-USB29CFA

終わりに

今回はBelkinのThunderbolt4ケーブル(2m)について書きましたが、他の真面目なThunderbolt4 2mケーブルも同様にアクティブケーブル特有の不具合が発生するはずです。
真面目な、と書いたのは、世の中には2mの中華製規格外Thunderbolt4 パッシブケーブルというものが山程存在するわけです。それらは当然信号補正をかけていないので、Thunderbolt4の信号が正しく通らない可能性を大いに含む一方で、アクティブケーブル問題を経験したユーザーにとっては「中華ケーブル > Belkinケーブル」という評価を付ける場合もあるでしょう。99%のユーザーが動くかどうかを重要視するのは当然です。
でもまあ本当はアクティブケーブルは無実で、邪悪なのはUSB-IFで、それでもって被害者なアクティブケーブルを正しく使ってあげて欲しい、そういうことを僕は伝えたかった、それだけです。(終わり)

(参考文献: 以下すべて2024/03/18参照)

USB-IF(https://www.usb.org/documents)

  • 「Universal Serial Bus Type-C Cable and Connector
    Specification (Release 2.3 October 2023)」
  • 「Universal Serial Bus 4 (USB4®) Specification (Version 2.0 June 2023)」

CQ出版社 インターフェース・デザイン・シリーズ

  • 野崎 原生/畑山 仁/池田 浩昭/永尾 裕樹/長野 英生/宮崎 仁 / 共著 「USB Type-Cのすべて」 (発行2020/01/01)
  • 池田 浩昭/野崎 原生/畑山 仁/志田 晟 /共著 「USB 3.2のすべて」 (発行2020/03/15)

じがへるつ工房(https://ghz-ws.booth.pm/)

  • 「Type-C電子工作クックブック」 (発行2023/05/08)
  • 「USB雑記帳」 (発行2020/02/08)
  1. 実はケーブル長ではなく信号減衰の値とかで決まっていますが、誤差なので割愛。

  2. USB-IF規格違反警察の方はお帰りください。違反だろうが実世界ではみんな使っています。

  3. 最近のUSB-CケーブルにはeMarkerというチップが入っていたりややこしいですが、eMarkerが入ってるだけならパッシブケーブルで、リピーター、リタイマ、リドライバみたいな信号補正をするのがアクティブケーブルです。

  4. 使ってないCCピンがVConnになるというとわかる人も多いかも。

  5. しかもPDの片方向だけ対応ならCCピンのプルアップという単純な方法があり、それだとアクティブケーブル電源1Wは取れない。

  6. データ流してるときは1W取れないと違反・・・なはず。自信がない。

  7. 全線光ファイバーのアクティブケーブルだけ免除されていますが、その場合は電力が0W。銅線ないため。

  8. eMarkerで公式にケーブルとして制限をかけられる電力下限が20V3A。eMarkerに5V3Aまでと記してもホストとデバイスがそれを守ってくれる保証は全くなく、祈るしか無い。

  9. Thunderbolt5とかUSB4 Gen4は24年3月現在、実製品が無いので除外。

  10. なぜか最新の規格(Cable and Connector
    Specification)だとパッシブで2mまで伸ばせることになっている謎。他はだいたい1mまでなのに。

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