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アスリートの美学

浅田真央を強くするもの「自分があきらめてしまったら、そこで終わり」

第1回

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チームを率いる上で大切なのは、あきらめないこと

瞬間最高視聴率46.2%を記録したバンクーバー五輪。深夜帯ながら国民が見守ったソチ五輪。競技としてのフィギュアスケートは、浅田真央というスターの存在によって広く知られるものとなった。しかし、アイスショーに行ったことがないという人はまだまだ多いだろう。

競技にはないアイスショーの魅力を問うと、まさに全身から言葉が溢れ出したように浅田は語りはじめた。

「競技はやっぱりルールがあるので、衣装も規定があったり、照明や小道具を使うこともできません。自分に勝つことが、競技の醍醐味です。逆に、自分のやりたいことが全部できるのがアイスショーの魅力。衣装も小道具も自由ですし、照明やセットを使った演出もできる。スケーターとしては、お客様に楽しんでもらいたいという気持ちがショーの原動力。チケットを買って、時間を割いて観に来てくださったお客様に『来てよかった』『最高だった』と言っていただけることが、いちばんの喜びなんです」

フィギュアスケートとは孤独な競技でもある。練習では、コーチをはじめ、たくさんの人の支えはあるが、試合に挑むのは自分ひとり。60m×30mのリンクでたったひとり決められた時間を滑り切る。そこで起きる成功も、失敗も、拍手も、ため息も、すべてその身ひとつで受け止めなければいけない。

一方、アイスショーは集団芸術だ。特にプロデューサーも兼ねる浅田は、自分のビジョンを周囲に伝え、チームを一つにまとめ上げる技量が求められる。孤高の競技者だった浅田は、いかにチームビルディングに取り組んでいるのか。「私もまだ始まったばかりで、常に学びの連続。だから、何かを言える立場ではまったくないんです」と謙虚にかぶりを振って、こう言葉をつないだ。

「やっぱりあきらめないこと。自分があきらめてしまったら、そこで終わりなので」

あきらめないこと。この短いフレーズに、浅田真央の真髄がある気がした。

「こういうアイスショーをやりたいと言い出したのは私自身。そこに共感して、みんなが集まってくれたので、その気持ちを裏切るわけにはいかない。たとえどんなことがあってもあきらめないでやるという、その軸は絶対折れないようにしています」

リーダー・浅田真央は、言葉で周囲を導くタイプか、それとも背中で見せるタイプか。その質問に「どっちなんだろう……」と浅田が悩んでいると、「背中で見せるタイプだと思います」と周囲のスタッフがにこやかに証言した。

「自分が座長だからこそ絶対に練習に手を抜かないというのはもちろんあります。やっぱり上に立つ人が土台をしっかり固めないと、下にいる人たちの足場が崩れてしまう。時にはメリハリも必要ですが、気を引き締めるところは引き締めて、プロとして、これは遊びじゃないんだということを、私を見てわかってもらえたらということはいつも考えていますね」

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