映画館はどう対応すべきだった?

小川キャスター:
映画館スタッフの言葉を見ると、説明をしているのかなというふうにもとれるんですが、佐藤さんはこの説明をどのように感じますか?

佐藤さん:
今回のことはいくつかポイントがあると思うんですが、まず、前提としてぜひ知っていただきたいのは、障害者もできるだけ見やすいところ、いろんなところを選んで見たいっていう気持ちは同じようにあるんです。

小川キャスター:
車椅子の方が見られる席って結構端っこだったり後ろだったりしますよね。

佐藤さん:
定員100人ぐらいの小さいホールだと、一番前の端っこにしか車いすの席がなくて、ものすごいガラガラのときでも、ものすごい見にくいというのがあるので、まずその環境ですね。設備的に車いす席ってすごく限定されていて、見にくいという問題が根本的にあります。

それとともに、今回の場合は話し合いができなかったんじゃないかなと思いますね。

ですから、本人に話を聞いて、事業者の方が「ここまではできるけど、これはちょっと今の事情でできない」ということを言って、話し合っていれば、「そこは無理でも、こっちだったらいけるかな」という次の方策が見つけられたと思うんです。

だけど、そういうことがなくて、一方的に「次からは違うところに行ってください」と言われたら、それは「差別を受けたな」というふうに受け取ると思います。

喜入キャスター:
聞いてみないとわからない、話してみないと伝わらないことってあると思うんですが、そのきっかけを放棄しないというのが大事なところだと感じています。

今回の映画館のケースについて、障害者の権利に詳しい関哉直人弁護士は、「合理的配慮の要は“建設的対話”。お互いが理解しながら対話していたかが問題」と話しています。

さらに「原因の一つに、『現場の理解不足』。個人の責任にしないためにも、研修やマニュアル作成など、組織的な対応が必要」とも話しています。

真山さん:
多分こういうとき簡単に言うと、「もう少し障害者の立場で寄り添いましょう。以上、終わり」という感じがするんですが、寄り添うってすごい勘違いしてる方が多くて、自分が寄り添えばいいと思ってるんですよ。「私の寄り添い方はこうです」というところが、寄り添う方に対して、「私はこれでいいですか?」という一言を言えば、「そうじゃないんだ」って多分おっしゃると思うんですよね。そのコミュニケーションが足りていないから、ずっと衝突が起きていたんだと思います。

例えば、具体的に「私はどういうお手伝いができますか」と尋ねるとすると、佐藤さんはどのようにお答えになるんですか?

佐藤さん:
例えば、お店に入るとき段差があったら、「僕の場合は車椅子なんで、後ろから押してください」、それでOKです。そういうふうに、わからなくて怖くて、どうやったらいいかっていう不安もあるんだと思うんですが、まずは聞いてほしいです。

「こうやったら使えるようになるし、それが駄目でもこういう方法もあるから」ということをお互いに話し合っていくと、落としどころを見つけられると思うんです。

真山さん:
「何かお手伝いできることありませんか」から始まるってことですよね。勝手に思い込んでやられるのは迷惑ですよね。

ただ逆に、一つ間違うと「いいことをしているのに怒られた」と思ってしまうんですよ。だから最初の一言があれば、例えば、「今はいいです」という場合もありますよね。

だから、なぜ日本人はこんなにコミュニケーションが下手になったのか、すごい残念ですね。

小川キャスター:
それぞれの立場からしか見えない景色というのが必ずあるので、その景色をお互いに想像するということから始めるということなのかなというふうに思います。

佐藤さん:
ぜひ、話を聞いてもらって話し合うということです。