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翌日の朝食もマゼルたちととり、俺は出仕。ラウラとウーヴェ爺さんの二人は王宮に泊まっていたそうだが今日、合流するとのことだ。
朝食後にマゼル、ルゲンツ、フェリ、エリッヒそれぞれにちょっと頼み事をしておく。フェリが「兄貴の頼みなら一件茶菓子一つで引き受けるよ」って言ってきたのには不覚にも笑った。
そして現在、出仕するなり呼び出されている状況でございます。以前は廊下ですれ違った際に横目で見られたりひそひそ話をされる程度だったのに挨拶をしてくる人が増えたな。
「ヴェルナー・ファン・ツェアフェルトだ」
「お待ちしておりました。どうぞ」
衛兵の口調が変わってるのも俺が子爵になってるせいもあるんだろうなあ。年齢的には学生の俺としては何というか違和感が凄い。王宮の装飾もあるがっしりした鎧着てる人に礼儀正しく接せられるって地味にプレッシャーがね。
「遅くなりまして申し訳ございません」
「早朝から呼びつけてすまぬな」
「臣下たる身であれば当然の事でございます」
ヒュベルトゥス王太子殿下から済まないとか言われると違和感がもっとすごいです、はい。そして
「まずは魔将の件だが、見事だった。卿のおかげで南方方面を必要以上に警戒する必要はなくなったな」
「独断での出兵をお詫びいたします」
計画案としては提出したが王をはじめとする閣僚全員の承諾を受けたわけじゃない以上、独断と言われても仕方がない。が、殿下は笑って応じた。
「勝てばよい、と言うものではないが、地位とは時に独断をする必要と覚悟を持つ者に与えるものだ。失敗した時の覚悟があったのであればそれで良い」
「恐れ入ります」
さらっとこれで済ませてくれるのは本当に有難いんだが、期待とかいろいろ重いです。そう思っていたら両手を机の上で組んでこっちを見てきた。マゼルもそうだがこの人もこういう態度が絵になるんだよなあ。
「それに、卿がわざわざ立ててくれた評判にはこちらも助かっている。軽挙妄動する人間がむこうから動いてくれるのはありがたい」
「は……」
「『借金代官、浪費子爵の一族に勇者の家族を預けるのは問題があるのでは』とふれ回っている者が何人かいる。その借金を誰が出して何に使われたのかには興味がないようだな」
借金という名で支援してくださいました殿下が楽しそうに笑ってらっしゃいます。それは何というか偶然の結果ではあるんだけど。とは言え確かに役に立ちそう。
「卿にはすまぬがもうしばらくこの噂をそのままにしたい。かまわぬか」
「殿下、それは」
「御意」
ラウラが何か言いかけたが俺の方は一向にかまわないんで素直に応じる。何ですかそのしょうがないなあという顔は。王太子殿下からの頼みとか断れるはずがないじゃないか。
「マゼルによく似ておるな」
「私もそう思います」
「ではその件はこちらで預かろう。それはそれとしてだ」
なんか爺さんとラウラが小声で話していたが殿下の発言に意識が一気に引っ張られた。
「私もウーヴェ老から予言書の話は聞いた。王都襲撃の可能性があるという事らしいな」
え、予言? と思ったが爺さんがこっちを見ている視線で大体理由は察した。そりゃ確かに二人分の記憶がありますなんて話はいきなり信用できんか。しかしそういうことにするんなら一言言っておいて欲しいんだけどなあ。
ラウラがここにいるのもひょっとしたらそれが理由か。ってひとまず返答しないわけにいかん。
「内容が正確かどうかの判断は難しいとは思います。ゲザリウスの事などもありますし」
「卿の知識にはゲザリウスの名はなかったという事だな。予言書に種類があるのだろうか」
「私にも判断する情報が不足しているため、軽々にお答えは致しかねます」
というかほんと、どういう設定にしたんですかね爺さん。話合わせるの大変なんだけど。
「解った。まず王都襲撃に関してはウーヴェ老の予言に基づく提案という事で、セイファート将爵を責任者として防衛計画を立案させる。卿も時々は参加してもらいたい」
「ありがとうございます」
「本来我らのやらねばならぬことだ。気にする必要はない」
これはでかい肩の荷が下りた。正直助かる。将爵なら俺が考えるより王都の事や兵力配置をわかっているだろうし。
「ただ、卿には一時的に軍務からは離れてもらう必要もある。卿も理解していると思うが」
「将爵から伺っております」
「うむ。そこで卿を臨時侍従とする。名目だけではあるが」
「侍従ですか」
「そのぐらいの地位でなければ王室特別書庫に入れないからな」
今なんか聞き捨てならん単語があったような。
「特別書庫、ですか」
「卿が知らぬのも無理はない。本来は王族や宰相、ウーヴェ老のような特別な立場の人間のみが知っている」
「古代王国関連の書庫ですか」
「その通りだ。卿にはそこで老の指定した内容の調査業務に当たってもらいたい」
まさか王城にそんなものがあったとは。いや、仮に建築技術とか古代王国のロステクでそれが残ってるという仮説が正しいとすれば、何かそれに関するものはあるだろうとは思っていたけど。
書庫というからには規模や収蔵数もそれなりだろうが、確かにそれは調べてみたい。じ、時間が。
「ただ当然のことながら、持ち出しは禁止している」
「当然の事かと存じます」
「一方で魔将の事など、古代王国時代と差異があるのも確かであるようだ。勇者に正確な情報を伝えてもらう必要もある。リリー・ハルティングを卿の補佐につけるので必要な部分は写し取ることを認めよう」
「は?」
いやいや、特別な書庫なんですよね。リリーは平民なんですが。いくらなんでも無茶な話だ。爺さんは平然としているがラウラですら憮然として……え、驚くんじゃなくて憮然としてる。ひょっとしてもう王室で内定済みなのかこれ。
「正式な任命書は数日中に用意する。それで問題はなかろう。よいな」
「……御意」
いや問題ありまくりだけど、殿下がそういうからには何かあるんだろう。何を考えてるんだこの人は。少なくとも妙な人間が近づけなくなるという事だけは間違いないけど他に何があるだろうか。
ええい、とりあえず考えることは後回しだ。気が付いたことを言っておかないと。
「殿下、それに第二王女殿下、一つ気が付いたことを申し上げたく」
「なんだ?」
「敵の行動についてです。フィノイでの事なのですが」
フィノイで魔軍がラウラを狙っていたことと、拉致しようとしていた事を思い出しつつ説明する。あの時にも違和感を覚えたが、考えてみれば妙な話だ。聖女が邪魔なら殺せばいいんだからな。だがアンハイムでの魔将の行動から一つ仮説が思い浮かぶ。
奴らは利用価値のある相手の体を奪おうとする傾向がある、という事だ。
「恐らくですが、
「ふむ……単純に外見だけという事ではないだろうな。卿はどう考えた?」
「わざわざ拉致まで試みるほどです。恐らくですが、《神託》の能力に関する事ではないかと」
「私も同感だ。老はどう見る」
「確かにあり得ますな。偽の神託で人間を混乱させようとする意図があったとも取れますが、もしや魔軍側に神託を得たい理由があるかも……ふむ」
爺さん考え込み始めやがった。あのー、王太子殿下の前なんですけどね。って殿下は殿下で放置してるし。この爺さんいろんな意味でフリーダムすぎ。
「つまり今後も引き続きラウラも狙われる可能性があるという事だな」
「確証はありませんが、そう考えておいた方がよいように思います」
「解った。ラウラ、マゼル君にはお前から説明して十分に気を付けておくように」
「解りました。ありがとうございます」
そんなやり取りを横目に見ながら思わず考え込む。この点もできれば調べておきたい点の一つだ。
フィノイで聞いたラウラに関する神託に対する悪意を感じる件や、魔物が
この世界の神はどう考えるべきなんだ。人間の味方なのだろうか。
感想等て指摘されている点のいくつかは自分でも修正したいのですが、
まとまった時間が取れるまでは修正できなさそうです…ご指摘に感謝申し上げます。
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