昨日は失礼いたしました、
まだちょっと注射をした方の腕が上がらないのですが更新再開しますー。
感想等いつもありがとうございます!
城外で整列、着替えまでして王都に入ると大歓声が耳に届いた。フィノイに続いて魔将討伐に成功したんだから市民の歓声はある意味当然とも言える。四天王を斃したこととかはヴァイン王国の国民にはあんまり関係ない話だが今回は王国領内での話だしな。
当初からの予定通り、主役は第一・第二両騎士団と総指揮官であるシュラム侯爵。その後ろに実際に魔将を倒した
最初からそのぐらいの位置になることが前提だったから別に不満はないし、正直これでも目立つぐらいだ。
それにしても少し前にいてパレードを見に来た民衆に手を振るマゼルたちを目にすると、本当に堂々としているなと思う。なんかもう住む世界が違うんじゃないかとさえ思わなくもないが、マゼルから見れば貴族の生活とかもそうだろうなあ。これも隣の芝生は青く見えるという奴なんだろうか。
ん、見物している列の中に見覚えのある顔の集団がいる。リリーと、あの女騎士さんにツェアフェルトの家騎士がその周囲に固まっているのは護衛付きって事になるのか。女騎士さんがマゼルの方ばっかり見てるのにちょっと笑ってしまった。軽くそっちに合図をしたらリリーが嬉しそうな顔してくれたがなんかむず痒い。
それにしてもちょっと前には俺は警備側、しかも臨時応援だったはずなんだよなあ。フィノイの時と比べても俺の位置は中心に近くなってきてるし、我ながら立場が変わったもんだ。胃が痛い。
王宮では陛下を前にして称賛のお言葉と報酬の話。バランスをとったなと思ったのは報酬面ではマゼルたちへが一番重かったことだ。まだ四天王の残りや魔王がいる以上資金はいくらあっても足りないはずという前提か、名誉は騎士団で実利は勇者という事なんだろう。
俺自身は王室直属の代官という立場もあって仕事をちゃんとこなしたという扱い。魔将退治に成功したのは騎士団と勇者殿のお力添えのおかげでございます、と国ご希望の返答をしておいてから報酬を頂戴する。
報酬は金銭が中心で、所謂名馬と言う奴も頂戴したがあんまり馬はありがたいと思わないんだよなあ。金銭は借金返済で結構な分がなくなるだろうけど基本的には気にしない。残りは俺の下で働いてくれた人たちに分けるか。アンハイムの復興にお力添えをお願いしたのは代官としての義務だ。
戦勝式典パーティーは後日という事になったんで今日はこのまま全員退席。というかウーヴェ爺さんが何か陛下に願い出ていたんで何か変更があったのかもしれん。しかしあの爺さんああいう場でも空気読まないのは心臓に毛が生えてるな。
「いきなり『ところで陛下、お話がございます』だからなあ」
「うん、さすがに僕も驚いた」
廊下を歩きながらマゼルと思わず苦笑いを交わす。爺さんとラウラは陛下や王太子殿下とそのまま相談を継続らしい。ルゲンツやフェリたちは一度解散で城下に戻った。のはいいんだが集合場所がなぜか
そして俺たち二人はお呼ばれして別行動。昼食にはちょっと早いぐらいの時間帯だから茶話という事だがそんなはずもないだろう。
「ヴェルナー・ファン・ツェアフェルトとマゼル・ハルティングだ」
「どうぞお通りください」
人払いのための騎士が立っている部屋に通してもらう。子爵らしい態度をとらないといけないとはいえ、俺より強そうな騎士相手にこの態度は胃が痛いわほんと。そしてある意味でもっと胃が痛くなる相手と再会でございます。
「呼び出して済まぬな、ヴェルナー卿とマゼル君」
「いえ、お待たせいたしまして申し訳ございません」
「お久しぶりです」
「お二人とも、気楽にしてください」
セイファート将爵からのお呼出しじゃ応じないわけにもいかない。早く帰ってひと眠りしたいぐらいなんだけどなあ。そしてなぜかファルケンシュタイン宰相閣下までご同席。護衛の騎士とかも最小限の数で、本当に私的呼び出し風だ。
ちなみにマゼルと将爵はアンハイムに騎士団と同行する前に一度顔を合わせたんだそうだ。そう考えると久しぶりとはいっても半月ぶりぐらいなのか。まあ俺の方でさえ半年会ってなかったわけじゃないけど。
「まずは二人ともご苦労じゃったな」
「いえ、予定通りですので」
「僕は最後に少しだけ手を貸しただけです」
席を勧められて茶を用意されて人払いされてからようやくそんな話が始まる。宰相閣下の意向で一応この場では礼儀不要という事にしてもらえたが、その配慮は俺よりマゼルに対してだろうな。
そのまま、まずはマゼルの話を聞く。四天王一人目とか魔将三人目とかの話だ。出現する敵の種類とかはともかく、進捗が予想外だ。
「三人も魔将を倒していたのか」
「アンハイムで四人目だね」
マゼルの奴はさらっというが、俺の想定していたよりペースが速い。話を聞くと俺があの急造した一の砦で指揮を執っている間にそのあたりまで進んだんだそうだ。
そして四天王二人目を前に一度王都に戻ってきたらアンハイムの進捗状況が来ていたんで、王太子殿下からの依頼でアンハイム攻防戦に参加することにした、という流れ。
殿下はむしろ
「僕もヴェルナーに負けてられないからね」
「別に競争してるんじゃないがなあ」
宰相閣下とか将爵の前にもかかわらず、思わず素で応じてしまった。いやほんと競争しなくていいから。むしろゆっくり攻略してくれ。そしてうーん、次は四天王二人目になるのか。そしてその次が四天王三人目と並行する王都襲撃イベントと。時間があんまりなさそうで怖い。
「ところでその件じゃがな、子爵。予定通りとはいえ本当にあれでよいのか」
「かまいません」
あれとは報酬の事か。実際、国の功績になることは予定通りなんだから特に問題を感じない。将爵の疑問に間髪入れずにそう答えると宰相と将爵が顔を見合わせて苦笑している。
「卿がそれでよいというのならそれでもよいが、本来、卿の功績はもっと評価されるべきなのじゃぞ」
「魔将に備えて子爵をアンハイムに配属したのは事実ですが、これほど短期間にあそこまで対応されるとは思っておりませんでした」
あ、あー。そうか。俺の方にこそタイムリミットがあったが王国側にはそんな必要性ないものなあ。ゆっくりでも確実に対応するだけでも十分だと思われていたわけか。いかん認識のずれがあった。とは言え今更だな。
「魔将には早めに対応すべきだと思っておりましたので」
「その通りではあるのですが」
うん、宰相閣下の言いたいことも解る。あっさり王都に戻ってくると他の貴族とかがうるさいとかあるんだろうからそこは何というか申し訳ない。しかも借金代官である俺の評判は悪くなっているはずだしな。
「卿に欲がないのはともかく、卿の下で働いている者たちに報酬が出せぬのでは困る。今回は国の側で対応するがもう少し欲を出すとよい」
「はい」
それは解る。貰うだけもらって他人に配るとかすればいいんだから次はそうしよう。
「まあ、王都で文官職についてもらうことは避けられぬのじゃがな」
「そうなのですか」
応じたのはマゼルだが俺としてもやや意外だ。アンハイムに追い返せという声があってもおかしくないと思ったんだが。
「正確にはしばらく軍から離れてもらう必要があっての。卿がトライオットに兵を動かした件も含めての事じゃが、妙な方から横槍が入るようになってな」
はてなんの事だろうと思い、少し考えて内心で頭を抱えてしまった。そっちか。そっちはさすがに想定していなかったが、考えてみればそう言うことがあってもおかしくない。やらかした。
マゼルが不思議そうな顔をしているんで問いかける形で確認する。
「トライオットの亡命貴族たちですか」
「そういう事じゃな。とはいっても別に卿の行動を非難しておるわけではない」
そのあたりの現実認識はあるので非難する筋はないとは思っているようだが、ヴァイン王国が魔将に対してまで戦いを挑むことで、逆に過剰な期待をさせてしまったらしい。
「一部じゃが、トライオット貴族の生き残りが国土復興のための協力をヴァイン王国に求めてきておるのじゃよ」
「兵力を出せと」
「武器や糧食、それに兵力もじゃな。その時には将として卿が指名される可能性が否応なく高くなっておる」
勘弁してくれ。そんな暇はないぞ。非礼にも現実で頭を抱えてしまった俺を見て宰相と将爵が笑っている。
「今のところまだ正確な情報は彼らのもとに入っておらぬじゃろうが、ある程度地の利を知り、更にあそこまで魔軍を手玉に取る策を講じたとなれば卿を指名してくることは確実じゃな」
「アンハイムの代官である子爵に対し、内々にですが娘や妹を嫁がせてもよい、という声もなかったわけではありません」
宰相殿がそんなおっかないことまで言ってきた。下心満載過ぎて笑うしかないな。というか亡命貴族の癖に嫁がせてもよいとか上から目線なのやめろ。
「そんなものはもちろんお断りいたします」
「婚約者がいるのに他国からという訳にはいかぬじゃろうな」
えーと、それアンハイムでの噂のはずなんですが。
切りがよくないのですが長くなりそうなのでここで切ります
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