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感想等いつもありがとうございます!

評価してくださっている方もいつの間にか一万人超えてました、嬉しいです!

確かに源魔力の方がそれっぽいかも? うーん、どっちがいいかなあ…

ともかく更新も頑張りますっ!

代官として~統治と軍務~
――147――

 あの後は大変だった。とにかく何を言っても爺さんは聞きゃしないんで、仮眠だけとった後に第二王女殿下(ラウラ)に相談という名で最低限の事情を説明して二人がかりで説得、どうにか陛下への説明は爺さんがやることに。

 その際なぜかラウラの方に謝罪されて慌てる羽目になったのまでがワンセット。


 ラウラによるとウーヴェ爺さんの破天荒っぷりは以前からで、いなくなった当日も出仕しなかったことを心配した陛下が侍従を向かわせたら、手紙だけ残していつの間にか古代王国の遺跡に調査に向かっていたらしい。

 悪い方ではないのですが、とラウラがフォローしていたが普通にめんどくさい爺さんだと思う。とは言うものの別に前世の世界でもトンデモ貴族とかいなかったわけじゃないんで個人的にめんどくさいという程度ではあるんだが。


 大体ピエール・ド・クランみたいに主君の財産を横領して出奔した挙句に国の元帥暗殺未遂をやらかすような奴とか、ただの詐欺師だろって自称カリオストロ伯爵とかが普通に出入りできていたのも前世貴族社会の一面。

 実際、事実の方が小説よりぶっ飛んでることって往々にして珍しくないんだよなあ。極端な話、象連れてアルプス超えました、なんてハンニバルの史実がなきゃラノベでもあり得ないとか言われそうなレベルの話だ。


 が、そこで引っかかってしまった。もし俺のゲームの記憶が正しいとしたら、という大前提が揺らいでいるのは事実だが、それでもそこを基準に考えると気になる。


 そもそも国王の教師までやった人が護衛もつけずに一人で迷宮(ダンジョン)入ってることがおかしい。爺さんがもともとああいう性格でラウラの言うような行動をとった事実があるとすると、その行動がもとであのシナリオになったということになる。

 一方、ゲームの方が先にあって、この世界の方が後からできたのだとすると、そのシナリオにあわせて爺さんがああいう性格に設定されたとも考えられる。


 卵が先か鶏が先かって話になりそうな気もするが、この場合どっちが先だったのかは重要なヒントになりそうな気がする。この記憶が事実かどうかという点も含め。


 とにかく爺さんの方がひと段落したら次は援軍の総指揮官であるシュラム侯爵が面会希望してきたんでそっちの仕事。光線指示棒(レーザーポインター)がいろいろやばいという事で機密扱いにしたいとの希望があった。

 俺も魔軍対策を前提に考えたんで問題ないと応じたらシュラム侯爵の名による布告で機密扱い、しかもラウラが連名。第二王女かつ聖女様の“お願い”で秘密にして欲しいって事になったから俺でさえ迂闊に口にできん。えらい大ごとになってしまった。うーむ。


 ただ一方で事情説明やら論功行賞やらなんやらの必要もあり、一度王都に同行して戻ってほしいとの言葉もあったんでそれには応じることに。悪い意味ではないという事でもあったし。


 その後代官として引継ぎのほかに戦没者慰霊だけはやった。俺の指揮下で亡くなった人たちへの俺がやるべき事だと思ったからだ。俺なりに最善を尽くしたつもりだが犠牲者が出ないわけじゃない。彼らの事を忘れてはいけないと心に刻む。

 代官として俺が責任者だったが聖女ラウラや勇者マゼルとそのメンバー、シュラム侯爵、第一・第二騎士団長も参加と列席者の規模が凄かった。


 その後、代官職をベーンケ卿に臨時で引き継ぐ業務に数日。幸いと言うかシュラム侯爵の連れてきた文官とかも協力してくれたんで数日で終わったが、その間慌ただしい事。なんかもうほんと疲れた。


 「あー、だるい」

 「貴族って大変なんだね。もっと優雅なんだと思ってた」

 「代わってくれと言えないのが辛いよ」


 そして現在、騎士団やシュラム侯爵の率いる軍、さらにマゼルたちも同行して王都へ移動中である。マゼルたちとの同行が許可されているのは俺を逮捕するとかそういう意図ではないというシュラム侯爵の好意だろう。

 マゼルが苦笑交じりに政治とかは自分には無理、とか言ってたがそのうちお前さんも貴族の仲間入りだ。覚悟しておけよ。


 ノイラートやシュンツェル、フレンセンたちは俺と同行して王都に戻ることになったが遠慮して別の馬車だ。まあマゼルたちが一緒なんだから下手な護衛はいらんか。後ラフェドとアイクシュテット卿の二人も王都についてきてる。

 アイクシュテット卿は俺の協力者と言う事で報酬も出るだろう。ラフェドは正直扱いに困ってるんだよなあ。なんだかんだで仕事はできる奴なんだが。


 「なんかアンハイムで会った時よりやつれてないかい、兄貴」

 「かもしれん」


 フェリのからかうような口調に苦笑いするしかない。この数日通して睡眠不足だ。昨日やっと移動中の馬車で熟睡できたぐらい。起きたら相当あれな顔してたのかラウラやエリッヒにまで笑われた。なんか悔しい。


 「しかしお前さんも随分強くなったなあ。俺勝てる自信がないぞ」

 「兄貴と戦う自信はおいらの方がないなあ。何て言うの? 戦ってその場では勝っても後で負けてそう」

 「ああ、それわかる」


 マゼルにまで言われた。過大評価だ。というかお前らの俺に対する評価ってどうなっているんだよ。


 「ツェアフェルト子爵の戦い方は(うま)かったですね」


 というのはエリッヒの言。俺自身はあまり自覚はなかったが、敵の視線を殺すのが上手らしい。マゼルやルゲンツが攻撃する一歩先に攻撃して牽制したり、相手が後衛に視線を向けるとその視線を遮ったりと、相手を自由にさせない戦い方をしていたそうだ。

 おかげで随分戦いやすかった、と評価してくれたが正直むず痒い。


 「足に杭の傷もあったし、肩には弩砲(バリスタ)も受けていた、片目も潰れていたから、もうボロボロだった魔将(ゲザリウス)を、止めだけ横からとっちゃったような気もしてるけどね」

 「それは気にしないでくれ」


 マゼルにはそう答える。というか別に誰が倒したんでも構わない。何となくだが奴は先につぶしておく必要があったような気がしていたのは事実だし。むしろ手遅れじゃなきゃいいんだが。


 「つまりヴェルナー(こいつ)を倒すには戦場でさっさと殺すのが一番と」

 「勝手に殺すな」


 ルゲンツの軽口に苦笑いで応じる。とは言え今後どうなるかねえ。なんせ魔将に狙われていた自覚があるからなあ。そう考えると実は王都にいるって状況は魔軍相手という観点だけで言えば安全になるのか。少なくともしばらくは。

 ラウラがそれに笑って応じる。


 「ツェアフェルト子爵を傷つけたら私が怒りますよ?」

 「うぇ、そいつはおっかねえ」

 「って言うか、まずリリーの姉ちゃんが泣くんじゃない」


 冗談だと解ってるからだろうがルゲンツが楽しそうに笑ってる横でフェリがそんな事をいいだした。なぜそこでリリーが出て来るんだと思ったがそういえば王都でも一度マゼルたちとあっているのか……あれ。


 「そういえばマゼルは王都でご両親にも会えたんだよな」

 「うん、伯爵のご厚意で一泊もさせてもらった」


 は?


 「うち(ツェアフェルト伯爵邸)に?」

 「はい。リリーさんとはうっかり深夜まで話し込んでしまいました。年の近い同性の知り合いは少なかったので楽しかったです」


 ラウラもそんな事を言い出した。本当かよ。


 「第二王女(ラウラ)殿下も泊まったのか」

 「うん」


 本人に聞くのは怖いんでマゼルに聞いたらあっさり頷いた。いやいやいやいや、一貴族家の邸宅に王女様が一泊って。いくら俺がいなかったとはいえ。


 「大丈夫ですよ、陛下と兄の許可を得ての事です」


 さらっと言わんでください。というか解っててやった……いや違うな。陛下か王太子殿下の一手か。ツェアフェルト家に対する信頼を表明しただけじゃなくて、何かほかにも考えがありそうだ。なんかもう今から胃が痛い。


 「いやだってリリーの姉ちゃんどう見たって兄貴に惚れてたっていてぇ!」

 「そう言うのは解ってても口にするもんじゃねぇ」


 フェリの頭にルゲンツが拳骨を落してた。何だって? 思わずマゼルの方を見たらなんか苦笑してやがる。吊り橋効果とかそういうもんじゃないのか。あれ確か一時的なもんだと聞いてるけど。


 「子爵の方はどのようにお考えなのですか?」


 ラウラがなんかとんでもないこと聞いてきやがった。楽しそうな顔ですねえ。このぐらいの歳の女の子は恋愛ネタ好きだというイメージがあるけどラウラもそうなんだろうか。というかルゲンツもフェリもそのニヤニヤ顔やめろ。


 王都に戻ってもなんか色々ありそうだと思わず現実逃避してしまった。

吊り橋効果って相手が難しいことを颯爽とこなしている姿を見たりしても起こるそうですね。


話の区切りもちょうどいいので、明日とあさっては

本編ではなく閑話を投稿します。あらかじめご了承ください。

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