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「部下の視点の文章」と言う感想でふっと思ったのは
なぜか日本の居酒屋で
「俺の方が仕事押し付けられている」「いや私の方が」と
焼き鳥と日本酒で言い合うシーンでした…w
俺の人生、少なくとも記憶を取り戻してから大規模自然災害が起きた記憶はなかった。強いて言えば多少の豊作とか不作とかはあったが、誤差の範疇に収まる程度だ。飢餓、飢饉とか洪水とか、村がなくなるような災害は全く記憶がない。
火山の噴火記録がないのは納得できる。富士山なんか数百年単位で噴火しなかったしな。地震がないのは地理的要因という可能性もあるだろう。この世界での人生、十数年の間に飢饉のような災害がないのは偶然で済むかもしれない。
だが大規模風水害や、家が潰れるような規模の雪害といったものまで、百年は遡っても一度もないのはいくらなんでもおかしくないか。
伯爵領だけ超幸運って可能性もほんの少しだけあるが、国のどこかでそんなことが起きたら日記にぐらいは書き残すだろう。やはり全体で大規模自然災害がないと考えていい。
確かに古いRPGのゲームでは自然災害ってあんまりない。洪水で道が通れないとかいうイベントがあっても大体は黒幕のイベントボスを倒すと解決する。いやまあ、RPGでどうにもならない自然災害表現されても困るっちゃ困るが。
だが今俺が生きている世界では、これだけ自然があり人が住んでいるのに自然災害がない方がおかしいだろう。いくらファンタジーだからって不自然すぎる。どういうことだ。
いや、考えてみれば今までおかしいと思っていた部分のいくつかがそこに繋がっているのか。本から目を上げて思考を追いかける。
そもそも前世で自然科学ってものは自然を理解するところから始まったと言える。わかりやすい例が古代エジプトでナイル川の氾濫がいつ起きるのかとか、植物の種まきを始めるタイミングを計る指標として星を観測する所から天文学が派生したような場合だ。
初期天文学は星の位置を計る位置天文学だったが、やがてそれを計測し計算するという考え方から数学への道が開く。ゼロの発見や代数の発明といった点も自然科学が関係しているとさえいわれているぐらい。諸説あるから本当かどうかは知らんけど。
その意味で理数系学問の発展は自然を理解しようとするところから始まっていると言ってもいい。
実のところ錬金術も同じ自然理解からの流れになる。水を火にかけると水蒸気になってしまうという事を、何とか合理的に説明しようとした初期の錬金術師たちは、水の精霊に火の精霊を加えることで風の精霊に変化する、と彼らなりに合理的な回答を探しだした。もちろん後に否定はされるが、それでも彼らの時代、これは科学だったわけだ。
精霊に何かを加えると変化するという発想が、鉄の精霊に何かをプラスすると金の精霊になるのではないかという願望になり、錬金術イコール金儲けになったわけだがまあそこはいい。錬金術から化学が派生したという事がこの場合の問題だ。
王都の学園では天文学、錬金術といった部分の学業がない。俺は正直興味がなかったんで気にもしていなかったが、考えてみれば妙な感じだ。薬草学や商業科、工務科のような、すぐに使える実用的なものばかり。自然科学に関する部分が妙に薄い。
リリーや領内で九九を知らなかったのも変と言えば変だ。国にはあんな水道橋を作る技術があるのに数学を教える部分が軽い。数学と言うより算数のレベルさえおろそかになっている。権力者による知識の独占という可能性はあるが、この不自然なまでに偏っている違和感はそれだけじゃなさそうだ。
この世界、大規模自然災害のかわりに魔物が存在しているのか。
洪水や飢饉で命が失われない代わりに、魔物暴走や魔族により多くの命が失われていると仮定したらどうだろう。自然を理解しようとする自然科学分野がおろそかになる代わりに、魔物と戦うための魔術や魔道具が研究されている。
自然災害がないから自然を恐れ理解するという必要性がない。魔物は怖いが自然は空気のように当たり前にそこにあって、別に危険でもなんでもないとしたら。生きていくための障害となる対象の違いが前世とこの世界のそもそもの違いになる。
この世界、俺はただ単に脳筋世界と軽く考えていたが、自然を理解し把握しようという部分が欠落しているのが戦闘重視、脳筋世界に繋がっているのか。
いや、まてよ。星数えの塔には
そういえば古代王国の遺跡も建築物としては頑丈だ。高度な数学も必要になる建築学があったからこそ遺跡なんて形で残っているんだろう。
そもそもダンジョンってなんだ。語源はともかく、この世界では全部が全部墓って訳でもあるまい。地下に作る事が安全だった、つまり地上に何か問題があったからこそ地下に伸びていたんじゃないのか。それが自然災害である可能性は。
ダンジョンとされているものの中には、前世で言えば竜巻からのシェルターのような目的で作られたものがある可能性はないだろうか。あるいは
また、地下施設が遺跡レベルの、壁が破壊できない強度で作れる技術があったのなら、現在でも魔物対策用途とかを理由にした避難所が作れるはずだ。だが実際にはそういったものはない。せいぜい地下牢とか鉱山レベルだ。
鉱山の採掘をすることはできても、ダンジョンを含む地下施設を新しく作れないのは、地下施設を建造していく方法の大部分が失われているためで、残った技術などがごく一部に伝えられている秘伝のような扱いなのだとしたら。
自然の脅威がないから応用発展の必要性が著しく低いまま、徐々に教育の必然性まで廃れつつあるのが現在の状況、中世風に見える世界観だと仮定できるんじゃないか。
自然科学が軽んじられて自然科学から得られる技術だけ残っている。まるで技術というアプリは人類に与えるが、アプリを作るプログラム部分の知識は許さないと言わんばかりの世界。
古代王国時代、先代魔王復活、古代王国滅亡、先代魔王討伐、討伐後の混乱期、集権時代になる前の群雄割拠を経て、現在俺が生きている今の中世風時代とこの世界の歴史は流れているはず。その中で一部の技術だけが伝わっている、と考えると。
――“魔王”ってなんだ。
魔物が自然災害の代わりなのだとしたら、魔王の存在は何なのだろうか。古代王国時代、先代魔王の発生以前には魔法と共に天文学や数学の存在があったのだとしたら、古代王国滅亡でその部分の知識だけ消えたのは偶然なのか。
今のこの世界では魔法と魔物が理系知識への蓋にしか思えない。古代王国の装備の方が優秀な事や、ドロップアイテムが作成できない事も合わせて考えると、ゲームでのアイテムを超えた魔道具がいつまでたっても生み出されないのは、その部分の知識が失われているからでは。
だとするとその切っ掛けとでも言うべき先代魔王ってなんなんだ。そして今の魔王はそれと同じ存在なのか?
魔王が復活したと聴いてはいる。正確にはラウラが神託を受けている。けどその神託はどこまで信じていいんだ。それは本当に同じ先代魔王なのか。先代が生き返ったのか、魔王と呼ばれる地位が復活し、中身は何か別の存在なのか。
魔将軍はコアで復活するが四天王は復活しない。幹部のこの差が魔王には適用されるのか。“魔王”が存在なのか地位なのか、その違いはひょっとすると大きな差になるんじゃないか。
「ヴェルナー様、こちらですか? 申し訳ありませんがご相談が」
扉の外から呼びかけられて我に返る。危ない危ない。情報が足りない。今の情報量でこれ以上考えると、仮説の上に仮説を積み上げた迷路にはまり込む危険性が高い。だが重要な部分に指先が触れたような気がする。
時間制限がある分、ゲザリウスとかいう奴の方が優先順位が高いのは確かだが、後で必ず調べよう。今のところ調べる方法さえ思いつかんが。
面倒な疑問を抱え込んだなと思いながら、呼びかけに応じて明かりの下に戻ることにした。
「つまり、古いRPGで自然災害がない理由は魔物のせいだったんだよ!」
ΩΩΩ<「「「な、なんだってー!!」」」
一度このネタやってみたかったんですw
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