ここにはご本人に「私が大学院をやめた理由」を書いてもらっています。多様な価値観・考え方に触れて、みなさん自身のキャリアを考える機会としてください。

退学を決めた理由

博士課程在籍期間: 2023.4.3-5 (3日間)、以後 休学の後に退学

 

大きな理由としては自分の価値観が変わったことです。

学問の追求と社会貢献はとても価値のある、崇高な目標であることに変わりはありません。そしてシステム生物学や数理など昔から興味があったことを勉強できることに嬉しさもありましたし、今でもそれは変わりません。

しかし振り返ってみると、今までの自分は何かを成し遂げることに喜びを感じ、そのために強制的に自分を奮い立たせてきた面がありました。その過程で「人とのコミュニケーション」に時間を割けなかった面があります。私にはその能力、配慮が欠けていました。

休学し、今まで以上に人とのコミュニケーションをとることに時間を割くことで、本当に大事にしたいもの、それは自分の友人、パートナー、家族との関係であることという結論に至りました。他人を大事にするためには、自分を大事にしなければなりません。その点で自分自身の健康にも目を向けるようになりました。

産婦人科専攻医1年目の体験が自分の精神・身体に大きな影響を与えていることは否定できません。2日に1回の当直/オンコールで慢性的な疲労の中で、重大な判断を迫られる分娩管理をする責任、地方特有の古い医療体制(医師主導、教育体制なし)での勤務に精神的・肉体的に蝕まれていました。一人で情報処理しなければならない量が増えていた、かつ精神的・身体的に万全の状態でなかったことが原因だと思うのですが、頭がうまく回らない感覚を始めて覚えました。このときからか、自分が目指す理想像と現実にこなすことができる仕事のバランスが崩れていったように思います。

しかしこのような濃い研修のおかげで、今ではどこで勤務しても外来管理や分娩管理ができるスキルを身につけることができたのは事実です。故に、清水研で大変な苦労をすることを想定はしていましたが、それを乗り越えればきっと大きな成長につながると考えていました。

しかし、情報処理量が自分のキャパを超えると、身体的精神的な不調としてフラッシュバックのように現れてしまうようです。

休学し、まとまった自由な時間の中で自分のペースで勉強をすることに今はとても充実感を感じています。精神的にも身体的にも健康な今の状態をキープしながら、自分が大事にしていきたいものを大切にしていこうと思うようになりました。

そういった価値観の変化の中で、パートナーの海外勤務で海外移住を検討していること、学びたい分野が広がったことなど、今現時点で環境が大きく変わろうとしている状況です。このような状況で復学を考えることはできませんでした。

以上より、退学をするという決断に至りました。