実は習近平政権が崩壊したら、もっと深刻な事態が待っている?

ウォールストリートと浙江財閥の暗躍
大原 浩 プロフィール

浙江財閥とは?

浙江財閥とは、19世紀末から20世紀初頭にかけて中国大陸で強い支配力を持っていたとされる、上海を本拠にする浙江省(や江蘇省)出身の金融資本の総称である。海外の大国の大資本と結び中国経済に強い支配力を及ぼしたので、米国ウォール・ストリートの中国版だと考えてもよいだろう。

第2次世界大戦中から戦後にかけて解体されたともいわれるが、私の中国の知人などの活動を見るとその力はいまだに健在だ。浙江財閥抜きには真の中国経済は語れないという感じがする。戦後財閥解体された日本でも、旧財閥グループが大きな力を持っている以上の存在感を持つといえよう。

その浙江財閥が鄧小平の改革・解放を支持し「中国の繁栄」を導いた。

2019年1月9日公開の「客家・鄧小平の遺産を失った中国共産党の『哀しき運命』を読む」で述べたように、現在の中国の繁栄の礎をつくったのは鄧小平であるから、その改革開放を強力にバックアップした浙江財閥は「中国の恩人」でもある。そして、江沢民派はその流れを継ぐ重要な存在だ。

しかし、江沢民派(支援する浙江財閥)は、同時にその「繁栄の果実を自らの懐に入れること」にも熱心であった。江沢民一族の「資産」は100兆円(日本の税収は年間60兆円ほど)という途方もない金額であるとも伝えられる。また、中国の経済のおおよそ半分を占めるとされる賄賂などの地下経済の資金の多くも浙江財閥に流れているといってよいだろう。つまり、中国の輝かしい経済的繁栄は江沢民派(支援する浙江財閥)によって実現されたのと同時に「巨大な腐敗」も彼らによってもたらされたのである。

実は、その腐敗しきった政治権力に挑み、大衆の支持を得て権力を掌握したのが習近平氏なのだ。

 

浙江財閥を中心とする権力層の搾取に怒った「捨ておかれた国民」が支持基盤だから、対米政策などで失敗が続いても習近平氏を簡単には権力の座から引きずり下ろせないのである。

習近平氏の思想は「毛沢東回帰」というとんでもないものではあるが、ウォール街やビッグテックなどの「腐敗権力」と真正面からぶつかるトランプ氏がヒーローとして称賛されるような人気があるといえよう。

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