予定よりちょっと遅れましたが今日から再開します!
更新頑張りますんで応援お願いしますー。
がさがさ、と周囲の木々を搔き分けて出てきたのは大きな棍棒を持っている二足歩行の人より大きな豚数体と、ナイフを持っている小男サイズの
「
「後で詳しくご説明しますが、さっきもやり合いました。どうも黒幕がいるようで」
ゴレツカさんに短く伝えつつ槍を構える。実のところ、待ち伏せまでは想定していたんだが、待ち伏せしていたレスラトガの兵士たちが魔物に襲撃されて全滅していたのには少し驚いた。
もし俺たちが先に来ていなければ、あのラフェドとやらは俺たちが処理した魔物に襲われていたかもしれない。多分ラフェドたちはマゼルの家族をここに連れ出すまでが黒幕の予定した役目だったんだろう。問題はどこまでレスラトガ側が状況を把握しているか、だな。
ひとまず先の事は考えない。まず目の前だ。ゴレツカさんと女性騎士がお互いを庇えるような位置を取り、周囲の仲間も馬車を守るようにしつつ相互に共闘できる陣形に移動する。
「警戒していた通りだ、落ち着いていけ」
「承知」
魔物暴走の時や商隊護衛の際に世話になった傭兵団長のゲッケさんが全体の指揮を執る。傭兵団の中ではベテランぞろいらしいが、本当にこの人たちは魔物討伐とか慣れているんだなあ。
見た目ややこしいが鬣犬男や豚男は
確かなのは多分今頃マゼルが戦っているはずの魔軍四天王の一人、エギビゴルの配下だってことだ。こいつらは領主に化けた魔族のいる町で宿の戦闘時に出てきたり、エギビゴルがいるダンジョンでのランダムエンカウントモンスターだからな。
どっちもレスラトガでのイベントだったから、この件も裏で糸を引いているのはエギビゴルなんだろう。物的証拠は皆無だがどうでもいいか。どうせ近いうちエギビゴルはマゼルが倒すだろうし。
「ひっ、ひぃっ!? 魔物がっ!?」
あ、目覚ましてたのか、あの御者。と言うかそんな声出したら襲われても知らんぞ。
ごふごふとか、がふがふとでも音を当てるべきなのかもしれんが、とにかくそんな声を上げて鬣犬男と豚男が走り出した。人間なんぞ相手じゃないって感じで策も何もなく突っ込んでくる。
ただの兵士なら恐れたかもしれんが、出てくることを想定しているこっちにそれは下策もいいところだ。その後ろから泥男もずるずる移動を始めたが、移動速度が違いすぎるから各個撃破できそうだ。豚と鬣犬はさっさと処分するか。
足の速い鬣犬男を逆に迎え撃つ。ナイフより大きく剣より短いサイズの武器だが、さび付いてるし何か塗ってあったりするようにも見えるから接近戦をする気はない。まずリーチを生かして一体を突き殺す。
味方の位置を確認しつつ大きく槍を横に振るって相手の数体を牽制。大振りしたんで隙があるように見えたのだろう、一体が脇から突っ込んできたんで距離を取るように下がる。突っ込んできた一体を突き倒し、別の相手は距離を詰めてきたところで横から女性騎士さんが両断した。
次いで俺の前に向かってきた、大きく棍棒を振り上げて突っ込んでくる豚男の動きを見ながら体を低くし足元を槍で薙ぐ。棍棒と槍でもリーチはこっちの方が長い。
片足を掬い上げるように斜めに薙ぎ払うと豚男が大きくのけぞった。そういえば魔物に弁慶の泣き所ってあるんだろうか。そもそもこの言葉が通じないか。
阿呆なことを考えてるうちに体勢を崩した相手を周囲の傭兵が切りつけ、すぐに距離を取った。タフな魔物相手はヒットアンドアウェイが基本だ。うかつに接近戦続けていると反撃で痛い目を見かねない。
怒り狂ったような声を上げた豚男が体勢を立て直そうとするところで今度は反対側の足を突く。また相手が体勢を崩したんで俺も槍を手繰り寄せて二人の剣にあわせて踏み出し胴体を刺し貫いた。この人たち動きが正確で助かるなあ。
しかしどうでもいいが豚男は体臭も息も臭いなおい。
ぱっと周囲を確認するとゴレツカさんと女性騎士が一体屠っていた。あそこ過剰戦力じゃね。その向こうでは俺たちと同じように槍一人と剣二人で戦っているのが三組と、一人で豚男一体倒してる人がいる。
勇者パーティーメンバーであるルゲンツの友人だし、傭兵隊長やってるぐらいだから実力はあるだろうと思っていたけど、ゲッケさん素で強ぇ。その配下の傭兵団構成員も魔物慣れしてるし、頼りになるな。
とりあえず負けそうなところはないんで、遠慮なく目の前の相手だけに集中する。泥男はもっともヒットアンドアウェイがやりやすいんで今のところそっちは考慮しなくていいし。
そう思っていたところで森から別の気配を感じた。とっさに馬車の方を庇えるように一歩下がる。次の瞬間、暗闇の中から何かがものすごい勢いで飛び出してきた。
狙われているのが俺か馬車かはっきりしない。まずは相手の動きを止めるために、突くのではなく薙いで様子見、と思ったんだが相手は横薙ぎにした槍先に当たる直前、急角度で上昇してそれを避けた。機動性高いな。
羽を生やしたそいつは空中で一度止まると上空から急角度で降下してくる。俺じゃなく馬車の方向だ。馬車を破壊する気だったのか馬車ごと持ち去るつもりだったのかはわからんが、それは悪手だね。
馬車の上にそいつが勢いよく飛び降り、馬車が揺れたことで小さくリリーが声を上げたと思ったら、それを何十倍も上回るようにそいつが野太く文字では表現しようがないような絶叫を上げた。うるせえ。いくらなんでも城内に気づかれるだろうがよ。
ラフェドや御者が魔族である場合も考慮して、さっき馬車に魔除け薬をいくつも投げてもらったからな。人間なら熱湯の中に勢いよく手を突っ込んだようなもんなんだろう。いやそんな経験ないからどのぐらい痛いのか知らんけど。
いずれにしても絶叫を上げて飛び退ろうとした相手を背後から貫く。手ごたえは悪くなかったが倒すまではいってない。そろそろ一撃で斃すのは無理か。だが槍の長さはうまく使えば相手を引きずり倒すこともできる。
体重をかけて半回転させ、相手を地べたに引きずり落とした。馬車の上から転がり落ちたそいつをゴレツカさんと女性騎士が躊躇なく斬りつける。ゴレツカさんの剣、相手の頭粉砕してないか。
やっぱりガーゴイルだったか。エギビゴルのいるダンジョンだとこいつ敏捷度が高くて最初に行動するから面倒くさい相手だったんだよな。
「ヴェルナー様、上にもう一体います!」
リリーの声に応じてとっさに上を向く。新手のガーゴイルが音もなく急降下してくるのを確認し、同時にいやな予感を覚えとっさに後ろに跳んだ。
その途端足元から腕が伸びる。
足場を確認して全力で槍を突き出す。ガーゴイルの口に穂先が入り込み、相手が勢いを落とさないままだったから後頭部まで貫通した。さらにその背中にゴレツカさんが剣を叩きつける。泥男の方は女性騎士さんが処理してくれていたようだ。
しっかり刺さったせいでちょっと苦労して槍を引き抜いたころには周囲の戦闘も一段落している。あー、後でちゃんと槍先を手入れしておかないと。俺自身があまり敵を倒すような戦果はなかったが、リリーにも怪我はないようだし良しとしよう。保険は使わずに済んだか。
「子爵、どうする?」
「何となく嫌な気もしますね」
ゴレツカさんの問いにそう応じる。さっきのガーゴイルの絶叫でレスラトガの兵士とかが出てきても嫌だし、四天王の部下では敵の攻撃方法に物理攻撃と共に魔法が使われだす。言ってしまえばガーゴイルまで含めてこの辺では雑魚の範疇だ。
いやゲームだとダンジョンでの出現モンスターであるガーゴイルはフィールドでは出てこなかったんだが。とりあえずその辺のずれはもうアーレア村で慣れたんで、この世界だとこういうものだと思う事にする。
問題は強い敵、特に
ゲームだとこの辺、天井のないフィールドでも普通に剣が届く距離に敵がいるんだよな。楽でいいというか羨ましいというか。ひょっとして何か見落としているのかもしれんが検証は後回しだ。
「全員撤収する。担当者は
「素材や魔石がもったいないな」
「その分報酬に色付けるから我慢してくれ」
傭兵の一人にそう反応すると、ゲッケさんも頷いてくれた。証拠は昼間のうちに倒した魔物の素材でも十分、リリーも無事だし三十六計逃げるに如かず。この世界で言っても通じないから口にはしないけど。
後はラフェドたちの身柄を確保してさっさと引き上げよう。
「では王都に」
ゴレツカさんに確認? 不要不要。どうせこの人は俺に同意するだけだろうし。そう判断して馬車も含めさっさと全員で王都近辺に移動する。根は残したかもしれんが欲をかきすぎて被害が出るより良しとするべきだ。
念のため城外で待機しておいてもらった
ゲッケさんたちとは王都に入ったところでお別れ。後日に追加報酬を支払うことを確約し、今日は酒代だけ渡す。
俺はこのままゴレツカさんと王城に足を向けて結果の報告だ。各地に人数を展開してるから撤収も早く行わないと各方面に迷惑をかけるからな。ラフェドたちも当然城の兵に引き渡す。
王城ではわざわざ王太子殿下と、父もいる会議室に俺とゴレツカさんが案内され、そこで報告を行った。といっても俺の方は全員無事、ほぼ計画通りでした、敵に魔物も出てきました、魔物の種類はこれこれ、各方面の撤収をお願いしますだけだ。
王都での状況も簡単に王太子殿下ではなくその部下さんたちから説明を受けたが、詳細は後日という事でご苦労だった、との返答を受けて今度は父と共に退出。ふう。
廊下に出たところで父に頭を下げる。
「ご迷惑をおかけしました」
「かまわん。ご苦労だったな」
これはアリーさんたち、つまりリリーの両親役を頼んだことも含めて政治的配慮の問題だ。要するに俺がリリーを奪い返した後で、二人してそのまま他国に亡命することがないように、という意味で。
名目上は色々と業務も振られていたんだろうが、実態はこの時間まで父は人質だったという事になる。ツェアフェルト邸のアリーさんたちも含めてな。リリーの両親役の二人も護衛が主要任務だが、俺に対する見張りも同時に担当していた事は間違いない。
俺もそれを承知で両親役をツェアフェルト関係者以外にお願いしたんでそれはいい。さすがにゴレツカ近衛騎士団副長が出てくるとは思わなかったし前線に出たかったってのも本心だろうけど。今頃ゴレツカさんが詳細な報告を行っているんだろうなあ。
その手の政治的配慮まで全部済ませての戦力配置だからとにかく神経を使った。ほんと手間増やしやがってあの野郎ども。
明日は午後から御礼行脚だな。フレンセンにリスト作りを指示しておこう。挨拶の順番とかが相手の面子に関わるんで、誰からお礼を申し上げるかの順序とかも重要なのよ。
なお後で知ったが俺たちが姿を消した後に現場に出てきたレスラトガの兵士と魔物が結構派手にやりあって死傷者も多数出たらしい。危なかった。
※鬣はヒゲではなくタテガミです。鬣犬でハイエナの漢字表記になります。
でもハイエナって猫科なんですよね……なんでこう書くようになったのか謎。
人名一覧はもうちょっとだけ進めて切りがよくなったところで入れますー。
★お願い★
いつもお読みいただきありがとうございます。
誤字報告もいつも本当に有難く受け取っておりますが、
この誤字報告システムには、システム上の問題があるため、
誤字報告にはコメントを入れないでいただけますようお願いいたします。
誤字報告は『報告された通りに』自動で書き直されるシステムなので、
報告にコメントが書き込まれていると、
コメントまでそのまま本文に書き込まれてしまいます。
つまり、括弧書きで修正意図とかが書き込まれていると、
本文にその部分も全部書き込まれてしまうのです。
これは「小説家になろう」のシステム的な問題ですので、
作者にはどうすることもできません。
報告そのものを削除するしかないのです。
せっかくご連絡いただけるご報告を
無視してしまう形になることも多々ありますので、
コメントを書き込まないよう、重ねてお願いいたします。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。・特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はパソコン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
作品の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。