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ちょっとリアル状況がデスマに入ったので短めですー
ごめんなさい
まだ皆様が話を続けようとしている中で、王太子殿下が口を開いた。
「なるほど、効果はよくわかった。ヴェルナー卿、これを量産したいということだな」
「可能であれば騎士団や王城守備隊への実装までお任せいたしたく思います」
早く実用化してほしいけど金はかかるしと思ったんでそう言ったんだが、父が苦笑してそれ以外の方々が妙な視線を向けてきた。あれ? 俺なんかやらかしたか?
「装備はツェアフェルト家からではないのか」
「性能には自信もありますが運用面で自信がありません」
特に弓がね。弓ってどうしても訓練されていないと駄目なんだ。動かない的を狙うなら付け焼刃でもいいかもしれないが、実戦で使おうとすると相当に難しい。訓練されていない兵もいる籠城戦では弓矢より投げる石の方が命中率が高かったなんて笑えない話もある。そしてツェアフェルト家ではあまり積極的に弓兵を育成してこなかった。必要がなかったという方が近いか。今から育成するには時間も足りんし。
なので弓に比べれば格段に命中させやすい
「卿は欲がないのお」
セイファート将爵がどこか呆れた表情で口を開く。え、そんなことないですよと思ったが、そもそも貴族に生まれた時点で働かなくても食っていけるし、王都襲撃イベントで死ななきゃその後は贅沢しすぎない限り生きていくのに困ることもない。
前世と違って確かにあくせく働かなくてもいいもんだから物欲は少なくなっているかもしれないが、あんな風に呆れたように言われるとちょっと心外ではある。俺だって美味いもの食いたいし酒もいい奴が飲めるなら飲みたい。美術品とかにはあんまり興味はないけど。俺が絵が下手だからじゃないぞ。
もっとも将爵の反応もわからなくもない。個人武勇が重視される世界でもあり、武官と文官だと武官の方が評価が高めになるのも事実だ。いい装備を自分の家に優先させたいと思う家もあるだろう。
だがこっちとしては実用性が最優先。なにせツェアフェルトの兵力なんか王都全兵力から見れば何十分の一程度だ。具体的な数字は解らんが。うちだけ戦力を整えても王都全体をカバーできるはずもない。それならいっそ正規軍全体でのバージョンアップを期待するほうがいい。王太子殿下はその辺も含め気が付いてるっぽいけど。
「わかった。卿からの技術提供を受ける。ここにある鋳物師も公爵と相談して手配しよう。今日はご苦労だった」
「はっ」
「あ、あのっ」
王太子殿下に頭を下げたところで、横から声がかかった。ここまで興味深そうに見ていた
「ルーウェン殿下、何かありましたでしょうか」
「いえ、ぜひフィノイの件を伺ってみたくて」
この会話で何人かが微妙な表情をした。あ、そういう事か。そういえば俺もその件はリリーに言われたばっかりだわ。
「そのですね、えっと……」
「殿下、まずお願いがございます」
ちょっと非礼だが話の腰を折る。ルーウェン殿下がきょとんとした顔をした。自覚はないらしい。けど確かにこれは良くないな。
「殿下、王族が臣下にそのような口調は無用でございます。どうか臣下である私には何事もお命じください」
「え、でも……」
今度は躊躇してる。王族らしからぬ育ち方してるんだな。なんせゲームだと死亡報告しかなかったし、俺もこの世界じゃ全然興味なかったからその辺さっぱりわからん。まあそれはこの際どうでもいい。
「例えば、父君である王太子殿下も年長の宰相閣下にお命じになっております。普段からそのように会話をしていただきますよう」
「ええと……」
そう言ったんだがまだ困った顔をしている。うーん。ここは妥協点を見つけておくか。
「では、私を相手に練習をしてみてはいかがでしょうか」
「練習?」
「はい。いずれ殿下も他の者に命を下されるお立場になるお方です。今のうちに慣れておかれた方がよろしいかと」
「わ、わかった」
ようやく頷いた。まあそのうち慣れるだろう。あんまり偉そうになっても困るけど最低限の立場っていうものもあるからなあ。この性格なら暴君とか暗君にはならないと思うし。というかなってほしくないな。
「では子爵、フィノイの戦いについて聞きたい。敵を手玉に取ったと聞いたが」
いや誰だそんなこと言ったのは。噂に尾びれが付いてるのを内心で罵る。断固否定しておかんと。
「手玉に取ったという訳ではございません。ただ、敵の願望に応じたのみでございます」
「敵の願望?」
「大筋で申し上げれば、相手にはこうなればいい、という希望や願望があります。その願望がかなうような期待を持たせると、上手くいっているという油断となります。そこに罠を仕掛けたのです」
まあマゼルがいたからこその罠だが。マゼルがいなかったらどうしてただろうかと考えて無駄な想像なんでやめた。うまくいったからいいんだよ。
「そういうものなのか?」
「武芸でもなんでもそうだと思いますが、勝ったと思った瞬間が一番危ういものです」
古人曰く勝って兜の緒を締めよ。そう思った瞬間、自分の言葉で我に返った。王都の魔族、確かに結構な数は処分できたと思う。けどそれが油断になってないか。誰かがもし何かを仕掛けてくるならむしろこのタイミングじゃないかと思える。
俺がそう思って視線を向けると王太子殿下たちもこちらを見て頷いた。期せずして意見の一致を見たらしい。
「なるほど、敵を油断させるのだな」
「さようでございます」
俺が王太孫殿下と話を続けている間にさりげなく王太子殿下たちがその場を離れていくのを横目に見て、俺自身もどうするかを考え始めた。
王太孫殿下とそれなりに話をしてから執務室に戻ったが、まだ父は戻っていなかった。書類整理や、なんか知らんがお時間を頂戴したい旨の挨拶状やらを適当に処理しながら時間をつぶす。程なくして戻ってきた父がなんとも言えない視線を向けてきた。
「まずは試作品とやらの方はご苦労だった。それと、提案書も提出してその件でも色々聞かれた」
「ありがとうございます」
とりあえず一礼。なにか言いたげな表情に首をかしげてしまう。
「何か?」
「それはむしろ私が言いたい。お前は何がしたい?」
なんか随分哲学的な質問だな。とりあえず生き残ること? それ以後のことはそれから考えるというか、生き残ってからねとしか思ってないというか。素直にそう言うわけにはいかないのも確かなんだが。
とは言えそろそろ王都襲撃の可能性とかいう形で言及しておいたほうがいいような気もしている。そんな事を考えていたら父が苦笑と苛立ちを混ぜたようななんとも器用な表情で嘆息した。
「まあよい。覚悟しておけよ、ヴェルナー」
「はい?」
突然過ぎてなんのことやらさっぱりだ。だがそれ以上話をする気はなかったらしく、父が書類の山の方に目を落としたので俺も頭を下げて自分の執務室に戻る。うーん。なんかわからんがもやもやするなあ。
※ 父「お前致命傷になる前に一度痛い目を見てこい(意訳)」
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