静岡市葵区の山間部にある清沢小学校。創立から150年超と長い歴史を誇るが、少子化の影響から2023年度限りで統廃合が決まっている。廃校を前に子供たちと地域の人が思い出を形にしようと集合写真の撮影に臨んだ。

地元住民が愛する“きよさわ”の地

静岡市を流れる藁科川上流の山間部に位置する緑と清流に囲まれた清沢地区。かつての安倍郡清沢村だ。

しかし、実は現在、静岡市に“清沢”という住所は存在しない。1969年に静岡市に編入された際に“清沢”という地名が消滅したことが理由なのだが、地元の人たちは今も愛着を込めて、“きよさわ”と呼んでいる。

廃校が決まっている清沢小学校
廃校が決まっている清沢小学校
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こうした中、今日に至るまで“きよさわ”の名が残っているが清沢小学校。2023年に創立150周年を迎えた市内でも屈指の歴史を誇る伝統校だ。

だが、全校児童は18人(2023年10月現在)。過疎化の影響から児童は減少の一途をたどり、2023年度をもって水見色小学校、中藁科小学校、中藁科小学校小布杉分校と統合され、廃校となることが決まっている。

そんな清沢小学校では廃校を前に、創立150周年を記念した集合写真を撮ることが企画された。

“劇的集合写真”をご存じですか?

とはいえ、“ただの”集合写真ではない。目指すのは“劇的集合写真”だ。

アイデアを出し合う子供たち
アイデアを出し合う子供たち

劇的集合写真「ジャパニメーションフォト」とは合成に頼ることなく、被写体が飛んだり跳ねたり、はたまた物を投げたりすることで、“劇的”で“リアル”な一瞬を切り取る作風のことで、いま企業のPRとしても注目を浴びている。今回の撮影は「ジャパニメーションフォト」の名付け親であり、この道の第一人者としても知られる静岡市出身の写真家・杉山雅彦さんが担当。子供たちのアイデアに耳を傾けながら構想を練る中で、杉山さんは「本当に自由で楽しく、おもしろい作品。『こんなことやっていたな』とか『こんなふざけていた時もあったな』という物が残るといい」と口にした。

迎えた撮影当日。保護者だけでなく、近隣の住民も駆け付け準備が進められていた。そこには消防団や警察官の姿も…。まさに地域をあげての一大イベントだ。

地域をあげて舞台を整える
地域をあげて舞台を整える

垂れ幕がちぎれたり、突然雨が降ったりとハプニングもあったが、小さなことは気にしない。明るく笑い飛ばしながら舞台を作り上げ、杉山さんが構図を調整していく。

一方、この頃 教室では撮影に向けてメイクが行われていた。それは先生も例外ではなく、顔の半分を灰色に塗られた村田淳 先生は「150年の重みを感じる」と戸惑いながらも笑顔を見せた。

そして、いざ撮影へ。杉山さんによれば「舞台は整った。あとはみなさんが楽しむだけ」とのことだ。

その教えを守るかのように、シャッターが切られている最中、方々で笑顔がはじけ、6年生の児童は「学校が無くなるのは悲しいが、最後の最後に良い写真が撮れてよかった」と満足げな様子を見せた。

あと半年もすれば清沢小学校から児童の笑い声も泣き声も何もかも消える。だが、18人の児童はこの先大きくなっても、この日のことを忘れることはないだろう。

撮影を終えた杉山さんは「『楽しむこと』『ふざけること』は大事なんだなと思ってもらえたらうれしい」と話した。そして、「100年、200年残る写真になったらよいな」と。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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