アメリカ・コネティカット州ニューヘイブンに本部を置くイェール大学。1701年創設で、世界の大学ランキングでは常に一桁の上位にあり、東アジア研究が盛んなことでも知られている(時事通信フォト)
「あと社会保障に絡めて成田さんが言ったという『かつて三島由紀夫がした通り』ってのもわかんないんだよね、三島由紀夫は自らの高齢化と老害化を事前に予防するために切腹した、ってエビデンスは皆無だし、メタファーにしたって違和感あるんだよ」
含みのある言葉だが、いろいろ考えさせられる。
「世代間対立って括るマスコミもあるけど、私はそれだけじゃないと思う。『老害を私たちの手で殺せ』じゃなくて『集団自決』って自分たちで死ね、ってことでしょう。それだけ強い言葉だってのに、この喩えには最終的な責任がない状態なんだよね、ちょっとずるいよね」
偶然かもしれないが別々の発言に「ずるい」が重なった。それでも、なんであれ意見は自由だし好きに発言するのは構わないのかもしれないが、冒頭の広告マンはそれについて「そういう話ではない」と、あくまで「広告の話」だとする。
「大前提として、キリンは『氷結』を売りたいのであって、別に高齢化問題を解決したいのではないでしょう。実際のところ、成田悠輔さんといえばこの発言、というイメージになっていることは否定できないですよね、他に学者さんとか知的な著名人を使いたいならいくらでもいますよね、キリンの広告の仕事なら引き受ける人もたくさんいるでしょう。なぜに成田悠輔?というのが率直な感想ですし、案の定の結果ですよね、本当に不思議です」
彼は重ねて「あくまで個人的な意見」としてこうも語る。
「ねじ込みがあったのかはわかりませんけど、起用に向けて相当なプッシュがあったことは確かだと思います。キリンの広告なんて、そうでないととれないのは当然ですからね。大勢の関わる仕事でなぜ成田悠輔だったのか、ここから先は憶測で言えませんけど、大きな力があったことは確かでしょう。私も経験しています。でもそれが成田悠輔、というのは本当に不思議です」
そしてこうも付け加える。
「『氷結』のプレスリリースには彼の売りとされる『イェール大学』の文字がないんです。『経済学者ならではの観点でコメント』『日常の晩酌も研究する学者である成田さん』とふんわりした表現しかありません。プロフィール欄も著書や出演番組のタイトルを除けばかなりふんわりしたもので、これだけの騒動の結果を見て言ってるわけじゃなく、成田悠輔である必然性ってなんだったのかな、と、なんどもおんなじ言葉ですいませんが、不思議としか言いようがないですね」