大広間では朝から早々にいなくなった私達をパンジー達が待ってくれていた。
ひとまず落ち着いたらしいドラコが(さっきよりも大袈裟に)昨晩の冒険を語りだしたところで、グリフィンドールの机を確認する。
端の方にハリー達を見つけた。
ちゃんと手足は揃っているようだし怪我をした様子もない。よかった安心した。
ドラコの語る武勇伝にリアクションを返すパンジー達を眺めつつ、教職員テーブルの方も確認する。
ダンブルドア校長は今日もいらっしゃらない。
ハグリッドさんも。
スネイプ教授はいらっしゃらないけど、マクゴナガル教授はいらっしゃる。
とはいえ、あそこへ話しかけに行くのはちょっと注目を浴びすぎてしまうしなしだ。
次回の授業のときでいいか。
さて、怪我をしたユニコーンを探す罰則だったとドラコは言っていた。
これはユニコーンを治療のため保護するのと同時にその素材を悪用されないためではないだろうか。
ユニコーンは魔法省分類XXXXと、専門家の対処が求められる魔法生物だ。
理由としてはとても俊敏な生き物で純白の体毛は魔法に対する抵抗力が強く、丈夫。純粋な乙女を好むため男性では更に難易度が上がるためだと思われる。
あとは単純に貴重な生物なため乱獲を抑えるためとも考えられる。
なにせユニコーンの体毛は杖の芯にされる他、様々な魔法道具に使われているし、そのツノは魔法薬で重宝される。
ある種の文献によるとマグルの薬にもされるとか。
密猟者からしたらガリオン金貨が歩いているような生き物なのだ。
密猟者がホグワーツの『禁じられた森』に入ってこれるのかは疑問だが、少なくともあの森でユニコーンを襲える何かが活動しているのは間違いないということだ。
通常市場に出回るユニコーンの素材は彼らの生活圏に残された抜け毛や生え代わりのツノを採取することで供給されている。
ユニコーンを殺めることは禁忌とされており、魔法省からも厳罰に処される。
加えてユニコーンから『呪われる』とも言われている。
呪いの事実はどうあれ、ユニコーンの血が持つ効能は死体をも生かすほどらしい。
明らかに禁忌だし、素材としても出回らない。
それを素材とする魔法薬は閲覧禁止の戸棚にも取り扱いがあるか怪しい程だ。
まぁとにかく、ユニコーンは貴重な魔法生物であるということは間違いない。
……ユニコーンを傷つけた犯人と、賢者の石を欲しがっている犯人は同じ人……だとするとその目的は『延命』か『ガリオン金貨』か。
『延命』でしょうね。
危険と対価が釣り合わないし。
ハリー達の探求心と正義感が加速しそうだ。
「サルース?そろそろ行くわよー?」
「……?ドラコの話は終わったの?」
「終わったわ、ほらほら最後になっちゃう!」
確かに、気づけば広間には数える程の人数しかいない。
パンジーとダフネに促されるまま大広間を後にする。
ハリー達はすでに出ていってしまったようだ。