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元就の長女2

前回元就の長女1で一次史料にはない元就の長女についてですが、
講義のノートやその他の資料から人質に取られたのは2歳の時という説が一般のようです。

数えで2歳って、実質1歳です。
そんな乳飲み子を人質に差し出さなければいけないってことは、
高橋氏と元就の間がかなり微妙になっていたということでしょう。

そもそも高橋氏と毛利氏は
永正の安芸国人一揆で共に一揆契約を結んでいます。
この時、高橋氏は高橋元光、毛利氏は毛利興元が連署し、
興元はこの後、高橋元光の妹を嫁に貰います。
しかし、元光は一揆契約後の3年後、永正12年に備後で戦死。
その後を甥の興光が継ぎます。
また、翌年永正13年には興元も死亡。
後を2歳の幸松丸が継ぎます。
ここで、縁が切れたかのように見えますが、
実は高橋氏の実権は元光の父、久光が握っており、
外孫・幸松丸の後見役として毛利氏に干渉したといわれています。

高橋氏は石見の国人ですが、居城の松尾城は安芸高田市美土里横田にあります。
えっと地図で見ると、神楽門前町の側です。
ん?
この間吉田から車で確か20分ぐらいだったので、めっちゃ近!
有田合戦のあった千代田より近いんじゃ・・・。
そりゃ干渉しますね。
しかも、高橋氏は毛利氏と同じ3千貫と言われていますが、
実質は石見・安芸の2カ国に1万2千貫の土地を持ち、
国人一揆の中で最大勢力を持っていました。

当時安芸武田氏は斜陽にあり、実質安芸で一番力のあった高橋久光ですが、
大永元(1521)年に備後攻めで死亡します。
勝っていたのに、油断から負けるという失態だったようで、
高橋氏はかなり打撃を受けたようです。
しかも、大永3(1523)年には幸松丸が死亡し、元就が家督を継ぎます。

頼れる久光を失った高橋弘厚・興光は、
鏡山城の戦いや有田合戦で頭角を示した元就を警戒していたはずです。
しかし、まだ高橋氏の方が勢力がありました。
そこで元就の家督相続時の混乱につけこんで、
人質の話を持ちかけたと考えることができます。
家督相続前に長男・隆元が生まれているので、
姉である長女が2歳でもおかしくありません。
そもそも、多治比にいた頃の元就は分家のためか記録がなく、
元就の結婚や隆元誕生もはっきりした記録が残っていません。
長女の記録がないのも多治比時代であると考えれば無理はありません。

また、元就の長女は幼くして人質先の高橋氏に殺されたとあるので、
長女が高橋氏滅亡時に殺されたのであれば、享禄3(1530)年で、
大永3(1523)年で2歳であったら、
9歳で殺されたことになるので伝承とも一致します。

ただ、本当に長女を見殺しにしたのか?という疑問はあります。

享禄2(1529)年、大内義興が死亡し、
ライバルの死に乗じて尼子経久が安芸・備後に手を伸ばしてきていました。
高橋氏は興光の名が示すように大内よりだったはずですが、
ここで尼子方よりの姿勢を取りました。
そのため元就は大内氏の力を借りて高橋氏を討ったというのが通説です。

しかし、高橋氏を攻めた享禄3(1530)年は、
尼子経久は実子・塩谷興久の謀反によりあわや負けるかという程追い詰められていました。
よって、すぐさま尼子氏が攻めてくることもなく、
高橋氏が尼子方についたとしてもそこまで脅威ではありません。
この時の元就は天野氏のようにできるだけ戦わずに味方に引き込む路線だったので、
尼子氏に寝返っただけで長女を失う危険を冒してまで高橋氏を攻める理由がありません。

よって考えられるのは
享禄2年にどうしても攻め込まないといけない理由ができた。
です。

陣営が変わった場所に人質を置いているのは危険です。
なので、高橋氏が陣営を変えた享禄2年に長女を逃がそうとしたが、
情報が漏れて殺されたのではないでしょうか?
そうすれば高橋氏に惨殺されたという伝承にもあいます。
実際、大内方に戻る時に、尼子に人質に取られていた家臣をひそかに逃がそうとしましたが、
やはり情報が漏れ、光永秀時は尼子の追手に討ち取られ、赤川就秀は重傷を負って帰ります。

似たようなことが長女の身にも降りかかったのではないでしょうか?
温厚そうな元就が、家中の反対を押し切って強引に物事を進める時はたいてい恨みなので、
長女を殺されたことが高橋氏誅伐に繋がったとすればすっきりします。
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主に毛利元就から浅野長勲までの安芸の歴史に関するブログです。初めての方は目次へどうぞ。

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