"#[番号]01/0001","#[題詞]雜歌 / 泊瀬朝倉宮御宇天皇代 [<大>泊瀬稚武天皇] / 天皇御製歌","#[原文]篭毛與 美篭母乳 布久思毛與 美夫君志持 此岳尓 菜採須兒 家吉閑名 告<紗>根 虚見津 山跡乃國者 押奈戸手 吾許曽居 師<吉>名倍手 吾己曽座 我<許>背齒 告目 家呼毛名雄母","#[訓読]篭もよ み篭持ち 堀串もよ み堀串持ち この岡に 菜摘ます子 家聞かな 告らさね そらみつ 大和の国は おしなべて 我れこそ居れ しきなべて 我れこそ座せ 我れこそば 告らめ 家をも名をも","#[仮名],こもよ,みこもち,ふくしもよ,みぶくしもち,このをかに,なつますこ,いへきかな,のらさね,そらみつ,やまとのくには,おしなべて,われこそをれ,しきなべて,われこそませ,われこそば,のらめ,いへをもなをも","#[左注]","#[校異]雑歌 [元][紀] <> / 太 -> 大 [紀][冷][文] / 吉 [玉小琴](塙)(楓) 告 /沙 -> 紗 [元][類][冷] / 告 -> 吉 [玉小琴] / 許者 -> 許 [元][類][古]","#[事項],雑歌,作者:雄略天皇,朝倉宮,野遊び,演劇,妻問い,予祝,枕詞,地名,奈良","#[訓異]
こもよ[寛],
みこもち[寛],
ふくしもよ[寛],
みぶくしもち,[寛]みふくしもち,
このをかに[寛],
なつますこ,[寛]なつむすこ,
いへきかな[寛],
のらさね,[寛]つけさね,
そらみつ[寛],
やまとのくには[寛],
おしなべて,[寛]おしなへて,
われこそをれ,[寛]われこそをらし,
しきなべて,[寛]つけなへて,
われこそませ[略],[寛]われこそをらし,
われこそば,[寛]われこそは,
のらめ,[寛]せなにはつけめ,
いへをもなをも[寛],
" "#[番号]01/0002","#[題詞]高市岡本宮御宇天皇代 [息長足日廣額天皇] / 天皇登香具山望國之時御製歌","#[原文]山常庭 村山有等 取與呂布 天乃香具山 騰立 國見乎為者 國原波 煙立龍 海原波 加萬目立多都 怜A國曽 蜻嶋 八間跡能國者","#[訓読]大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立ち立つ 海原は 鴎立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島 大和の国は","#[仮名],やまとには,むらやまあれど,とりよろふ,あめのかぐやま,のぼりたち,くにみをすれば,くにはらは,けぶりたちたつ,うなはらは,かまめたちたつ,うましくにぞ,あきづしま,やまとのくには","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:舒明天皇,飛鳥,国見,予祝,枕詞,地名,動物,奈良,土地讃美,寿歌","#[訓異]
やまとには[寛],
むらやまあれど,[寛]むらやまあれと,
とりよろふ[寛],
あめのかぐやま,[寛]あまのかくやま,
のぼりたち,[寛]のほりたち,
くにみをすれば,[寛]くにみをすれは,
くにはらは[寛],
けぶりたちたつ,[寛]けふりたちたつ,
うなはらは[寛],
かまめたちたつ[寛],
うましくにぞ,[寛]おもしろきくにそ,
あきづしま,[寛]あきつしま,
やまとのくには[寛],
" "#[番号]01/0003","#[題詞]天皇遊猟内野之時中皇命使間人連老獻歌","#[原文]八隅知之 我大王乃 朝庭 取撫賜 夕庭 伊縁立之 御執乃 梓弓之 奈加弭乃 音為奈利 朝猟尓 今立須良思 暮猟尓 今他田渚良之 御執<能> <梓>弓之 奈加弭乃 音為奈里","#[訓読]やすみしし 我が大君の 朝には 取り撫でたまひ 夕には い寄り立たしし み執らしの 梓の弓の 中弭の 音すなり 朝猟に 今立たすらし 夕猟に 今立たすらし み執らしの 梓の弓の 中弭の 音すなり","#[仮名],やすみしし,わがおほきみの,あしたには,とりなでたまひ,ゆふへには,いよりたたしし,みとらしの,あづさのゆみの,なかはずの,おとすなり,あさがりに,いまたたすらし,ゆふがりに,いまたたすらし,みとらしの,あづさのゆみの,なかはずの,おとすなり","#[左注]","#[校異]梓能 -> 能梓 [元]","#[事項],雑歌,作者:中皇命:間人老,五条市,代作,弓讃め,狩猟,宴席,地名,枕詞,寿歌","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
あしたには[寛],
とりなでたまひ,[寛]とりなてたまひ,
ゆふへには,[寛]ゆふへに,
いよりたたしし,[寛]いよせたててし,
みとらしの[寛],
あづさのゆみの,[寛]あつさのゆみの,
なかはずの,[寛]なかはすの,
おとすなり[寛],
あさがりに,[寛]あさかりに,
いまたたすらし[寛],
ゆふがりに,[寛]ゆふかりに,
いまたたすらし[寛],
みとらしの[寛],
あづさのゆみの,[寛]あつさのゆみの,
なかはずの,[寛]なかはすの,
おとすなり[寛],
" "#[番号]01/0004","#[題詞](天皇遊猟内野之時中皇命使間人連老獻歌)反歌","#[原文]玉尅春 内乃大野尓 馬數而 朝布麻須等六 其草深野","#[訓読]たまきはる宇智の大野に馬並めて朝踏ますらむその草深野","#[仮名],たまきはる,うちのおほのに,うまなめて,あさふますらむ,そのくさふかの","#[左注]","#[校異]尅 (塙)(楓) 剋","#[事項],雑歌,作者:中皇命:間人老,五条市,代作,弓讃め,狩猟,宴席,地名","#[訓異]
たまきはる[寛],
うちのおほのに[寛],
うまなめて[寛],
あさふますらむ[寛],
そのくさふかの,[寛]そのくさふけの,
" "#[番号]01/0005","#[題詞]幸讃岐國安益郡之時軍王見山作歌","#[原文]霞立 長春日乃 晩家流 和豆肝之良受 村肝乃 心乎痛見 奴要子鳥 卜歎居者 珠手次 懸乃宜久 遠神 吾大王乃 行幸能 山越風乃 獨<座> 吾衣手尓 朝夕尓 還比奴礼婆 大夫登 念有我母 草枕 客尓之有者 思遣 鶴寸乎白土 網能浦之 海處女等之 焼塩乃 念曽所焼 吾下情","#[訓読]霞立つ 長き春日の 暮れにける わづきも知らず むらきもの 心を痛み ぬえこ鳥 うら泣け居れば 玉たすき 懸けのよろしく 遠つ神 我が大君の 行幸の 山越す風の ひとり居る 我が衣手に 朝夕に 返らひぬれば 大夫と 思へる我れも 草枕 旅にしあれば 思ひ遣る たづきを知らに 網の浦の 海人娘子らが 焼く塩の 思ひぞ焼くる 我が下心","#[仮名],かすみたつ,ながきはるひの,くれにける,わづきもしらず,むらきもの,こころをいたみ,ぬえこどり,うらなけをれば,たまたすき,かけのよろしく,とほつかみ,わがおほきみの,いでましの,やまこすかぜの,ひとりをる,わがころもでに,あさよひに,かへらひぬれば,ますらをと,おもへるわれも,くさまくら,たびにしあれば,おもひやる,たづきをしらに,あみのうらの,あまをとめらが,やくしほの,おもひぞやくる,わがしたごころ","#[左注](右檢日本書紀 無幸於讃岐國 亦軍王未詳也 但山上憶良大夫類聚歌林曰 記曰 天皇十一年己亥冬十二月己巳朔壬午幸于伊<与>温湯宮[云々] 一<書> 是時 宮前在二樹木 此之二樹斑鳩比米二鳥大集 時勅多挂稲穂而養之 乃作歌[云々] 若疑従此便幸之歟)","#[校異]懸 [元][類][紀] 縣 / 居 -> 座 [元][類][古]","#[事項],雑歌,作者:軍王,望郷,香川,行幸,羈旅,大夫,枕詞,地名","#[訓異]
かすみたつ[寛],
ながきはるひの,[寛]なかきはるひの,
くれにける[寛],
わづきもしらず,[寛]わつきもしらす,
むらきもの[寛],
こころをいたみ[寛],
ぬえこどり,[寛]ぬえことり,
うらなけをれば[寛],
たまたすき[寛],
かけのよろしく[寛],
とほつかみ[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
いでましの,[寛]みゆきの,
やまこすかぜの,[寛]やまこしのかせの,
ひとりをる[寛],
わがころもでに,[寛]わかころもてに,
あさよひに,[寛]あさゆふに,
かへらひぬれば,[寛]かへらひぬれは,
ますらをと[寛],
おもへるわれも[寛],
くさまくら[寛],
たびにしあれば,[寛]たひにしあれは,
おもひやる[寛],
たづきをしらに,[寛]たつきをしらに,
あみのうらの[寛],
あまをとめらが,[寛]あまをとめらか,
やくしほの[寛],
おもひぞやくる,[寛]おもいそやくる,
わがしたごころ,[寛]わかしたこころ,
" "#[番号]01/0006","#[題詞](讃岐國安益郡之時軍王見山作歌)反歌","#[原文]山越乃 風乎時自見 寐<夜>不落 家在妹乎 懸而小竹櫃","#[訓読]山越しの風を時じみ寝る夜おちず家なる妹を懸けて偲ひつ","#[仮名],やまごしの,かぜをときじみ,ぬるよおちず,いへなるいもを,かけてしのひつ","#[左注]右檢日本書紀 無幸於讃岐國 亦軍王未詳也 但山上憶良大夫類聚歌林曰 記曰 天皇十一年己亥冬十二月己巳朔壬午幸于伊<与>温湯宮[云々] 一<書> 是時 宮前在二樹木 此之二樹斑鳩比米二鳥大集 時勅多挂稲穂而養之 乃作歌[云々] 若疑従此便幸之歟","#[校異]<> -> 夜 [西(右書)][元][類][冷] / 豫 -> 与 [元][類][古] / 書云 -> 書 [元][類][紀] / 乃 [元][紀] 仍","#[事項],雑歌,作者:軍王,望郷,香川,行幸,羈旅,大夫,地名","#[訓異]
やまごしの,[寛]やまこしの,
かぜをときじみ,[寛]かせをときしみ,
ぬるよおちず,[寛]ぬるよおちす,
いへなるいもを,[寛]いへあるいもを,
かけてしのひつ[寛],
" "#[番号]01/0007","#[題詞]明日香川原宮御宇天皇代 [天豊財重日足姫天皇] / 額田王歌 [未詳]","#[原文]金野乃 美草苅葺 屋杼礼里之 兎道乃宮子能 借五百礒所念","#[訓読]秋の野のみ草刈り葺き宿れりし宇治の宮処の仮廬し思ほゆ","#[仮名],あきののの,みくさかりふき,やどれりし,うぢのみやこの,かりいほしおもほゆ","#[左注]右檢山上憶良大夫類聚歌林曰 一書戊申年幸比良宮大御歌 但紀曰 五年春正月己卯朔辛巳天皇至自紀温湯 三月戊寅朔天皇幸吉野宮而肆宴焉 庚辰日天皇幸近江之平浦","#[校異]辰 [元][冷] 辰ム","#[事項],雑歌,作者:額田王,京都,回想,羈旅,地名","#[訓異]
あきののの[寛],
みくさかりふき[寛],
やどれりし,[寛]やとれりし,
うぢのみやこの,[寛]うちのみやこの,
かりいほしおもほゆ,[寛]かりいほしそおもふ,
" "#[番号]01/0008","#[題詞]後岡本宮御宇天皇代 [天豊財重日足姫天皇位後即位後岡本宮] / 額田王歌","#[原文]熟田津尓 船乗世武登 月待者 潮毛可奈比沼 今者許藝乞菜","#[訓読]熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな","#[仮名],にぎたつに,ふなのりせむと,つきまてば,しほもかなひぬ,いまはこぎいでな","#[左注]右檢山上憶良大夫類聚歌林曰 飛鳥岡本宮御宇天皇元年己丑九年丁<酉>十二月己巳朔壬午天皇大后幸于伊豫湯宮 後岡本宮馭宇天皇七年辛酉春正月丁酉朔<壬>寅御船西征 始就于海路 庚戌御船泊于伊豫熟田津石湯行宮 天皇御覧昔日猶存之物 當時忽起感愛之情 所以因製歌詠為之哀傷也 即此歌者天皇御製焉 但額田王歌者別有四首","#[校異]即位 [元][冷][紀](塙) 即 / 酋 -> 酉 [元][冷][紀] / 丙 -> 壬 [西(右書)][紀]","#[事項],雑歌,作者:額田王,道後温泉,愛媛,舟遊び,熟田津,代作,地名","#[訓異]
にぎたつに,[寛]にきたつに,
ふなのりせむと[寛],
つきまてば,[寛]つきまては,
しほもかなひぬ[寛],
いまはこぎいでな,[寛]いまはこきこな,
" "#[番号]01/0009","#[題詞]幸于紀温泉之時額田王作歌","#[原文]莫囂圓隣之大相七兄爪謁氣 吾瀬子之 射立為兼 五可新何本","#[訓読]莫囂円隣之大相七兄爪謁気我が背子がい立たせりけむ厳橿が本","#[仮名],*****,*******,わがせこが,いたたせりけむ,いつかしがもと","#[左注]","#[校異]謁 [元][類][紀] 湯","#[事項],雑歌,作者:額田王,紀州,和歌山,難訓,厳橿,斎橿,植物","#[訓異]
*****,[寛]ゆふつきの,
*******,[寛]あふきてとひし,
わがせこが,[寛]わかせこか,
いたたせりけむ,[寛]いたたせるかね,
いつかしがもと,[寛]いつかあはなむ,
" "#[番号]01/0010","#[題詞]中皇命徃于紀温泉之時御歌","#[原文]君之齒母 吾代毛所知哉 磐代乃 岡之草根乎 去来結手名","#[訓読]君が代も我が代も知るや岩代の岡の草根をいざ結びてな","#[仮名],きみがよも,わがよもしるや,いはしろの,をかのくさねを,いざむすびてな","#[左注](右檢山上憶良大夫類聚歌林曰 天皇御製歌[云々])","#[校異]磐 [元][冷][古] 盤","#[事項],雑歌,作者:中皇命:間人皇女,紀州,和歌山,羈旅,異伝,手向け,植物","#[訓異]
きみがよも,[寛]きみかよも,
わがよもしるや,[寛]わかよもしれや,
いはしろの[寛],
をかのくさねを[寛],
いざむすびてな,[寛]いさむすひてな,
" "#[番号]01/0011","#[題詞](中皇命徃于紀温泉之時御歌)","#[原文]吾勢子波 借廬作良須 草無者 小松下乃 草乎苅核","#[訓読]我が背子は仮廬作らす草なくは小松が下の草を刈らさね","#[仮名],わがせこは,かりほつくらす,かやなくは,こまつがしたの,かやをからさね","#[左注](右檢山上憶良大夫類聚歌林曰 天皇御製歌[云々])","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:中皇命:間人皇女,紀州,和歌山,異伝,羈旅,植物","#[訓異]
わがせこは,[寛]わかせこは,
かりほつくらす,[寛]かりいほつくらす,
かやなくは[寛],
こまつがしたの,[寛]こまつかしたの,
かやをからさね,[寛]かやをかりさね,
" "#[番号]01/0012","#[題詞](中皇命徃于紀温泉之時御歌)","#[原文]吾欲之 野嶋波見世追 底深伎 阿胡根能浦乃 珠曽不拾 [或頭云 吾欲 子嶋羽見遠]","#[訓読]我が欲りし野島は見せつ底深き阿胡根の浦の玉ぞ拾はぬ [或頭云 我が欲りし子島は見しを]","#[仮名],わがほりし,のしまはみせつ,そこふかき,あごねのうらの,たまぞひりはぬ,[わがほりし,こしまはみしを]","#[左注]右檢山上憶良大夫類聚歌林曰 天皇御製歌[云々]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:中皇命:間人皇女,紀州,和歌山,羈旅,異伝,魂触り","#[訓異]
わがほりし,[寛]わかほりし,
のしまはみせつ[寛],
そこふかき[寛],
あごねのうらの,[寛]あこねのうらの,
たまぞひりはぬ,[寛]たまそひろはす,
[わがほりし],
[こしまはみしを],[寛]しまはみつるを,
" "#[番号]01/0013","#[題詞]中大兄[近江宮御宇天皇]<三山歌>","#[原文]高山波 雲根火雄男志等 耳梨與 相諍競伎 神代従 如此尓有良之 古昔母 然尓有許曽 虚蝉毛 嬬乎 相<挌>良思吉","#[訓読]香具山は 畝傍を愛しと 耳成と 相争ひき 神代より かくにあるらし 古も しかにあれこそ うつせみも 妻を争ふらしき","#[仮名],かぐやまは,うねびををしと,みみなしと,あひあらそひき,かむよより,かくにあるらし,いにしへも,しかにあれこそ,うつせみも,つまを,あらそふらしき","#[左注]","#[校異]三山歌一首 -> 三山歌 [元][紀][古] / 格 -> 挌 [元][冷][文][紀]","#[事項],雑歌,作者:中大兄:天智,三山歌,兵庫,妻争い,羈旅,地名,伝説","#[訓異]
かぐやまは,[寛]かくやまは,
うねびををしと,[寛]うねひををしと,
みみなしと[寛],
あひあらそひき[寛],
かむよより,[寛]かみよより,
かくにあるらし,[寛]かかるにあらし,
いにしへも[寛],
しかにあれこそ[寛],
うつせみも[寛],
つまを[寛],
あらそふらしき,[寛]あひうつらしき,
" "#[番号]01/0014","#[題詞](中大兄[近江宮御宇天皇]<三山歌>)反歌","#[原文]高山与 耳梨山与 相之時 立見尓来之 伊奈美國波良","#[訓読]香具山と耳成山と闘ひし時立ちて見に来し印南国原","#[仮名],かぐやまと,みみなしやまと,あひしとき,たちてみにこし,いなみくにはら","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:中大兄:天智,三山歌,兵庫,妻争い,羈旅,地名,伝説","#[訓異]
かぐやまと,[寛]かくやまと,
みみなしやまと[寛],
あひしとき[寛],
たちてみにこし[寛],
いなみくにはら,[寛]いなひくにはら,

" "#[番号]01/0015","#[題詞]((中大兄[近江宮御宇天皇]<三山歌>)反歌)","#[原文]渡津海乃 豊旗雲尓 伊理比<紗>之 今夜乃月夜 清明己曽","#[訓読]海神の豊旗雲に入日さし今夜の月夜さやけくありこそ","#[仮名],わたつみの,とよはたくもに,いりひさし,こよひのつくよ,さやけくありこそ","#[左注]右一首歌今案不似反歌也 但舊本以此歌載於反歌 故今猶載此次 亦紀曰 天豊財重日足姫天皇先四年乙巳立天皇為皇太子","#[校異]祢 -> 紗 [澤潟注釈] [元][類][冷] 弥","#[事項],雑歌,作者:中大兄:天智,三山歌,兵庫,妻争い,羈旅","#[訓異]
わたつみの[寛],
とよはたくもに[寛],
いりひさし[寛],
こよひのつくよ,[寛]こよひのつきよ,
さやけくありこそ,[寛]すみあかくこそ,
" "#[番号]01/0016","#[題詞]近江大津宮御宇天皇代 [天命開別天皇謚曰天智天皇] / 天皇詔内大臣藤原朝臣競憐春山萬花之艶秋山千葉之彩時額田王以歌判之歌","#[原文]冬木成 春去来者 不喧有之 鳥毛来鳴奴 不開有之 花毛佐家礼抒 山乎茂 入而毛不取 草深 執手母不見 秋山乃 木葉乎見而者 黄葉乎婆 取而曽思努布 青乎者 置而曽歎久 曽許之恨之 秋山吾者","#[訓読]冬こもり 春さり来れば 鳴かずありし 鳥も来鳴きぬ 咲かずありし 花も咲けれど 山を茂み 入りても取らず 草深み 取りても見ず 秋山の 木の葉を見ては 黄葉をば 取りてぞ偲ふ 青きをば 置きてぞ嘆く そこし恨めし 秋山吾は","#[仮名],ふゆこもり,はるさりくれば,なかずありし,とりもきなきぬ,さかずありし,はなもさけれど,やまをしみ,いりてもとらず,くさふかみ,とりてもみず,あきやまの,このはをみては,もみちをば,とりてぞしのふ,あをきをば,おきてぞなげく,そこしうらめし,あきやまわれは","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:額田王,近江朝,大津,春秋優劣,植物,枕詞,宮廷","#[訓異]
ふゆこもり,[寛]ふゆこなり,
はるさりくれば,[寛]はるさりくれは,
なかずありし,[寛]なかさりし,
とりもきなきぬ[寛],
さかずありし,[寛]さかさりし,
はなもさけれど,[寛]はなもさけれと,
やまをしみ,[寛]やまをしけみ,
いりてもとらず,[寛]いりてもとらす,
くさふかみ[寛],
とりてもみず,[寛]とりてもみえす,
あきやまの[寛],
このはをみては[寛],
もみちをば,[寛]もみちをは,
とりてぞしのふ,[寛]とりてそしのふ,
あをきをば,[寛]あをきをは,
おきてぞなげく,[寛]おきてそなけく,
そこしうらめし,[寛]そこしうらみし,
あきやまわれは,[寛]あきやまそわれは,
" "#[番号]01/0017","#[題詞]額田王下近江國時<作>歌井戸王即和歌","#[原文]味酒 三輪乃山 青丹吉 奈良能山乃 山際 伊隠萬代 道隈 伊積流萬代尓 委曲毛 見管行武雄 數々毛 見放武八萬雄 情無 雲乃 隠障倍之也","#[訓読]味酒 三輪の山 あをによし 奈良の山の 山の際に い隠るまで 道の隈 い積もるまでに つばらにも 見つつ行かむを しばしばも 見放けむ山を 心なく 雲の 隠さふべしや","#[仮名],うまさけ,みわのやま,あをによし,ならのやまの,やまのまに,いかくるまで,みちのくま,いつもるまでに,つばらにも,みつつゆかむを,しばしばも,みさけむやまを,こころなく,くもの,かくさふべしや","#[左注](右二首歌山上憶良大夫類聚歌林曰 遷都近江國時 御覧三輪山御歌焉 日本書紀曰 六年丙寅春三月辛酉朔己卯遷都于近江)","#[校異]<> -> 作 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:額田王,天智,代作,三輪山,鎮魂,国魂,枕詞,地名","#[訓異]
うまさけ,[寛]うまさかの,
みわのやま[寛],
あをによし[寛],
ならのやまの[寛],
やまのまに,[寛]やまのはに,
いかくるまで,[寛]いかくるるまて,
みちのくま[寛],
いつもるまでに,[寛]いつもるまてに,
つばらにも,[寛]まくはしも,
みつつゆかむを[寛],
しばしばも,[寛]しはしはも,
みさけむやまを[寛],
こころなく,[寛]こころなき,
くもの[寛],
かくさふべしや,[寛]かくさふへしや,
" "#[番号]01/0018","#[題詞](額田王下近江國時<作>歌井戸王即和歌)反歌","#[原文]三輪山乎 然毛隠賀 雲谷裳 情有南畝 可苦佐布倍思哉","#[訓読]三輪山をしかも隠すか雲だにも心あらなも隠さふべしや","#[仮名],みわやまを,しかもかくすか,くもだにも,こころあらなも,かくさふべしや","#[左注]右二首歌山上憶良大夫類聚歌林曰 遷都近江國時 御覧三輪山御歌焉 日本書紀曰 六年丙寅春三月辛酉朔己卯遷都于近江","#[校異]畝 [類] 武","#[事項],雑歌,作者:額田王,天智,代作,三輪山,鎮魂,国魂,地名","#[訓異]
みわやまを,[寛]みはやまを,
しかもかくすか[寛],
くもだにも,[寛]くもたにも,
こころあらなも,[寛]こころあらなむ,
かくさふべしや,[寛]かくさふへしや,
" "#[番号]01/0019","#[題詞]((額田王下近江國時<作>歌井戸王即和歌)反歌)","#[原文]綜麻形乃 林始乃 狭野榛能 衣尓著成 目尓都久和我勢","#[訓読]綜麻形の林のさきのさ野榛の衣に付くなす目につく吾が背","#[仮名],へそかたの,はやしのさきの,さのはりの,きぬにつくなす,めにつくわがせ","#[左注]右一首歌今案不似和歌 但舊本載于此次 故以猶載焉","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:井戸王,三輪山,和歌,古歌,植物,枕詞","#[訓異]
へそかたの,[寛]そまかたの,
はやしのさきの,[寛]はやしはしめの,
さのはりの,[寛]さのはきの,
きぬにつくなす,[寛]ころもにきなし,
めにつくわがせ,[寛]めにつくわかせ,
" "#[番号]01/0020","#[題詞]天皇遊猟蒲生野時額田王作歌","#[原文]茜草指 武良前野逝 標野行 野守者不見哉 君之袖布流","#[訓読]あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る","#[仮名],あかねさす,むらさきのゆき,しめのゆき,のもりはみずや,きみがそでふる","#[左注](紀曰 天皇七年丁卯夏五月五日縦猟於蒲生野 于時<大>皇弟諸王内臣及群臣 皆悉従焉)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:額田王,滋賀,野遊び,求婚,宴席,枕詞,植物","#[訓異]
あかねさす[寛],
むらさきのゆき[寛],
しめのゆき[寛],
のもりはみずや,[寛]のもりはみすや,
きみがそでふる,[寛]きみかそてふる,
" "#[番号]01/0021","#[題詞](天皇遊猟蒲生野時額田王作歌)皇太子答御歌 [明日香宮御宇天皇謚曰天武天皇]","#[原文]紫草能 尓保敝類妹乎 尓苦久有者 人嬬故尓 吾戀目八方","#[訓読]紫のにほへる妹を憎くあらば人妻故に我れ恋ひめやも","#[仮名],むらさきの,にほへるいもを,にくくあらば,ひとづまゆゑに,われこひめやも","#[左注]紀曰 天皇七年丁卯夏五月五日縦猟於蒲生野 于時<大>皇弟諸王内臣及群臣 皆悉従焉","#[校異]天 -> 大 [元][冷][紀] / 皆悉 [元][冷] 悉皆","#[事項],雑歌,作者:大海人,天武,滋賀,野遊び,求婚,宴席,枕詞","#[訓異]
むらさきの,[寛]あきはきの,
にほへるいもを[寛],
にくくあらば,[寛]にくくあらは,
ひとづまゆゑに,[寛]ひとつまゆゑに,
われこひめやも,[寛]わかこひめやも,
" "#[番号]01/0022","#[題詞]明日香清御原宮天皇代 [天渟中原瀛真人天皇謚曰天武天皇] / 十市皇女参赴於伊勢神宮時見波多横山巌吹B刀自作歌","#[原文]河上乃 湯津盤村二 草武左受 常丹毛冀名 常處女煮手","#[訓読]川の上のゆつ岩群に草生さず常にもがもな常処女にて","#[仮名],かはのへの,ゆついはむらに,くさむさず,つねにもがもな,とこをとめにて","#[左注]吹B刀自未詳也 但紀曰 天皇四年乙亥春二月乙亥朔丁亥十市皇女阿閇皇女参赴於伊勢神宮","#[校異]盤 [文][温] 磐","#[事項],雑歌,作者:吹B刀自,十市皇女,阿閇皇女,三重,予祝","#[訓異]
かはのへの,[寛]かはかみの,
ゆついはむらに,[寛]ゆつはのむらに,
くさむさず,[寛]くさむさす,
つねにもがもな,[寛]つねにもかもな,
とこをとめにて[寛],
" "#[番号]01/0023","#[題詞]麻續王流於伊勢國伊良虞嶋之時人哀傷作歌","#[原文]打麻乎 麻續王 白水郎有哉 射等篭荷四間乃 珠藻苅麻須","#[訓読]打ち麻を麻続の王海人なれや伊良虞の島の玉藻刈ります","#[仮名],うちそを,をみのおほきみ,あまなれや,いらごのしまの,たまもかります","#[左注](右案日本紀曰 天皇四年乙亥夏四月戊戌朔乙卯三位麻續王有罪流于因幡 一子流伊豆嶋 一子流血鹿嶋也 是云配于伊勢國伊良虞嶋者 若疑後人縁歌辞而誤記乎)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:時人,麻続王,愛知,伝承,枕詞,地名,植物","#[訓異]
うちそを,[寛]うつあさを,
をみのおほきみ[寛],
あまなれや[寛],
いらごのしまの,[寛]いらこかしまの,
たまもかります[寛],
" "#[番号]01/0024","#[題詞](麻續王流於伊勢國伊良虞嶋之時人哀傷作歌)麻續王聞之感傷和歌","#[原文]空蝉之 命乎惜美 浪尓所濕 伊良虞能嶋之 玉藻苅食","#[訓読]うつせみの命を惜しみ波に濡れ伊良虞の島の玉藻刈り食す","#[仮名],うつせみの,いのちををしみ,なみにぬれ,いらごのしまの,たまもかりをす","#[左注]右案日本紀曰 天皇四年乙亥夏四月戊戌朔乙卯三位麻續王有罪流于因幡 一子流伊豆嶋 一子流血鹿嶋也 是云配于伊勢國伊良虞嶋者 若疑後人縁歌辞而誤記乎","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:麻続王,愛知,伝承,歌語り,枕詞,植物,地名","#[訓異]
うつせみの[寛],
いのちををしみ[寛],
なみにぬれ,[寛]なみにひて,
いらごのしまの,[寛]いらこのしまの,
たまもかりをす,[寛]たまもかります,
" "#[番号]01/0025","#[題詞]天皇御製歌","#[原文]三吉野之 耳我嶺尓 時無曽 雪者落家留 間無曽 雨者零計類 其雪乃 時無如 其雨乃 間無如 隈毛不落 <念>乍叙来 其山道乎","#[訓読]み吉野の 耳我の嶺に 時なくぞ 雪は降りける 間無くぞ 雨は降りける その雪の 時なきがごと その雨の 間なきがごと 隈もおちず 思ひつつぞ来る その山道を","#[仮名],みよしのの,みみがのみねに,ときなくぞ,ゆきはふりける,まなくぞ,あめはふりける,そのゆきの,ときなきがごと,そのあめの,まなきがごと,くまもおちず,おもひつつぞくる,そのやまみちを","#[左注]","#[校異]思 -> 念 [元][類][紀][古]","#[事項],雑歌,作者:大海人:天武,異伝,吉野,民謡,地名","#[訓異]
みよしのの[寛],
みみがのみねに,[寛]みかのみねに,
ときなくぞ,[寛]ときなくそ,
ゆきはふりける[寛],
まなくぞ,[寛]まなくそ,
あめはふりける,[寛]あめはふりなる,
そのゆきの[寛],
ときなきがごと,[寛]ときなきかこと,
そのあめの[寛],
まなきがごと,[寛]ひまなきかこと,
くまもおちず,[寛]くまもおちす,
おもひつつぞくる,[寛]おもひつつそくる,
そのやまみちを[寛],
" "#[番号]01/0026","#[題詞](天皇御製歌)或本歌","#[原文]三芳野之 耳我山尓 時自久曽 雪者落等言 無間曽 雨者落等言 其雪 不時如 其雨 無間如 隈毛不堕 思乍叙来 其山道乎","#[訓読]み吉野の 耳我の山に 時じくぞ 雪は降るといふ 間なくぞ 雨は降るといふ その雪の 時じきがごと その雨の 間なきがごと 隈もおちず 思ひつつぞ来る その山道を","#[仮名],みよしのの,みみがのやまに,ときじくぞ,ゆきはふるといふ,まなくぞ,あめはふるといふ,そのゆきの,ときじきがごと,そのあめの,まなきがごと,くまもおちず,おもひつつぞくる,そのやまみちを","#[左注]右句々相換因此重載焉","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大海人:天武,異伝,吉野,民謡,13/3260,13/3293,地名","#[訓異]
みよしのの[寛],
みみがのやまに,[寛]みかねに,
ときじくぞ,[寛]ときしくそ,
ゆきはふるといふ[寛],
まなくぞ,[寛]ひまなくそ,
あめはふるといふ[寛],
そのゆきの[寛],
ときじきがごと,[寛]ときならぬこと,
そのあめの[寛],
まなきがごと,[寛]ひまなきかこと,
くまもおちず,[寛]くまもおちす,
おもひつつぞくる,[寛]おもひつつそくる,
そのやまみちを[寛],
" "#[番号]01/0027","#[題詞]天皇幸于吉野宮時御製歌","#[原文]淑人乃 良跡吉見而 好常言師 芳野吉見<与> 良人四来三","#[訓読]淑き人のよしとよく見てよしと言ひし吉野よく見よ良き人よく見","#[仮名],よきひとの,よしとよくみて,よしといひし,よしのよくみよ,よきひとよくみ","#[左注]紀曰 八年己卯五月庚辰朔甲申幸于吉野宮","#[校異]多 -> 与 [元(朱)] [寛] 與 [西(右書)] 欲","#[事項],雑歌,作者:大海人:天武,吉野,行幸,地名,土地讃美","#[訓異]
よきひとの[寛],
よしとよくみて[寛],
よしといひし[寛],
よしのよくみよ[寛],
よきひとよくみ,[寛]よきひとよきみ,
" "#[番号]01/0028","#[題詞]藤原宮御宇天皇代[高天原廣野姫天皇 元年丁亥十一年譲位軽太子 <尊>号曰太上天皇] / 天皇御製歌","#[原文]春過而 夏来良之 白妙能 衣乾有 天之香来山","#[訓読]春過ぎて夏来るらし白栲の衣干したり天の香具山","#[仮名],はるすぎて,なつきたるらし,しろたへの,ころもほしたり,あめのかぐやま","#[左注]","#[校異]<> -> 尊 [元][冷][紀]","#[事項],雑歌,作者:持統天皇,飛鳥,季節,地名,枕詞","#[訓異]
はるすぎて,[寛]はるすきて,
なつきたるらし,[寛]なつきにけらし,
しろたへの[寛],
ころもほしたり,[寛]ころもさらせり,
あめのかぐやま,[寛]あまのかくやま,
" "#[番号]01/0029","#[題詞]過近江荒都時柿本朝臣人麻呂作歌","#[原文]玉手次 畝火之山乃 橿原乃 日知之御世従 [或云 自宮] 阿礼座師 神之<盡> 樛木乃 弥継嗣尓 天下 所知食之乎 [或云 食来] 天尓満 倭乎置而 青丹吉 平山乎超 [或云 虚見 倭乎置 青丹吉 平山越而] 何方 御念食可 [或云 所念計米可] 天離 夷者雖有 石走 淡海國乃 樂浪乃 大津宮尓 天下 所知食兼 天皇之 神之御言能 大宮者 此間等雖聞 大殿者 此間等雖云 春草之 茂生有 霞立 春日之霧流 [或云 霞立 春日香霧流 夏草香 繁成奴留] 百礒城之 大宮處 見者悲<毛> [或云 見者左夫思毛]","#[訓読]玉たすき 畝傍の山の 橿原の ひじりの御代ゆ [或云 宮ゆ] 生れましし 神のことごと 栂の木の いや継ぎ継ぎに 天の下 知らしめししを [或云 めしける] そらにみつ 大和を置きて あをによし 奈良山を越え [或云 そらみつ 大和を置き あをによし 奈良山越えて] いかさまに 思ほしめせか [或云 思ほしけめか] 天離る 鄙にはあれど 石走る 近江の国の 楽浪の 大津の宮に 天の下 知らしめしけむ 天皇の 神の命の 大宮は ここと聞けども 大殿は ここと言へども 春草の 茂く生ひたる 霞立つ 春日の霧れる [或云 霞立つ 春日か霧れる 夏草か 茂くなりぬる] ももしきの 大宮ところ 見れば悲しも [或云 見れば寂しも]","#[仮名],たまたすき,うねびのやまの,かしはらの,ひじりのみよゆ,[みやゆ],あれましし,かみのことごと,つがのきの,いやつぎつぎに,あめのした,しらしめししを,[めしける],そらにみつ,やまとをおきて,あをによし,ならやまをこえ,[そらみつ,やまとをおき,あをによし,ならやまこえて],いかさまに,おもほしめせか,[おもほしけめか],あまざかる,ひなにはあれど,いはばしる,あふみのくにの,ささなみの,おほつのみやに,あめのした,しらしめしけむ,すめろきの,かみのみことの,おほみやは,ここときけども,おほとのは,ここといへども,はるくさの,しげくおひたる,かすみたつ,はるひのきれる,[かすみたつ,はるひかきれる,なつくさか,しげくなりぬる],ももしきの,おほみやところ,みればかなしも,[みればさぶしも]","#[左注]","#[校異]書 -> 盡 [元][類][冷] / 母 -> 毛 [元][類][冷]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,荒都歌,大津,鎮魂,地名,枕詞,地名,滋賀","#[訓異]
たまたすき[寛],
うねびのやまの,[寛]うねひのやまの,
かしはらの[寛],
ひじりのみよゆ,[寛]ひしりのみよゆ,
[みやゆ],
あれましし[寛],
かみのことごと,[寛]かみのあらはす,
つがのきの,[寛]とかのきの,
いやつぎつぎに,[寛]いやつきつきに,
あめのした[寛],
しらしめししを[寛],
[めしける],
そらにみつ[寛],
やまとをおきて[寛],
あをによし[寛],
ならやまをこえ[寛],
[そらみつ,
やまとをおき,
あをによし,
ならやまこえて],
いかさまに[寛],
おもほしめせか,[寛]おほしめしてか,
[おもほしけめか],
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなにはあれど,[寛]ひなにはあれと,
いはばしる,[寛]いははしる,
あふみのくにの,[寛]あうみのくにの,
ささなみの[寛],
おほつのみやに[寛],
あめのした[寛],
しらしめしけむ[寛],
すめろきの[寛],
かみのみことの[寛],
おほみやは[寛],
ここときけども,[寛]ここときけとも,
おほとのは[寛],
ここといへども,[寛]ここといへとも,
はるくさの,[寛]わかくさの,
しげくおひたる,[寛]しけくおひたる,
かすみたつ[寛],
はるひのきれる[寛],
[かすみたつ,
はるひかきれる,
なつくさか,
しげくなりぬる],
ももしきの[寛],
おほみやところ[寛],
みればかなしも,[寛]みれはかなしも,
[みればさぶしも],
" "#[番号]01/0030","#[題詞](過近江荒都時柿本朝臣人麻呂作歌)反歌","#[原文]樂浪之 思賀乃辛碕 雖幸有 大宮人之 船麻知兼津","#[訓読]楽浪の志賀の辛崎幸くあれど大宮人の舟待ちかねつ","#[仮名],ささなみの,しがのからさき,さきくあれど,おほみやひとの,ふねまちかねつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,荒都歌,大津,鎮魂,地名,滋賀","#[訓異]
ささなみの[寛],
しがのからさき,[寛]しかのからさき,
さきくあれど,[寛]さきくあれと,
おほみやひとの[寛],
ふねまちかねつ[寛],
" "#[番号]01/0031","#[題詞]((過近江荒都時柿本朝臣人麻呂作歌)反歌)","#[原文]左散難弥乃 志我能 [一云 比良乃] 大和太 與杼六友 昔人二 亦母相目八毛 [一云 将會跡母戸八]","#[訓読]楽浪の志賀の [一云 比良の] 大わだ淀むとも昔の人にまたも逢はめやも [一云 逢はむと思へや]","#[仮名],ささなみの,しがの,[ひらの],おほわだ,よどむとも,むかしのひとに,またもあはめやも,[あはむとおもへや]","#[左注]","#[校異]二 [類][古] 尓","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,荒都歌,大津,鎮魂,地名,滋賀","#[訓異]
ささなみの[寛],
しがの,[寛]しかの,
[ひらの],
おほわだ,[寛]おほわた,
よどむとも,[寛]よとむとも,
むかしのひとに[寛],
またもあはめやも[寛],
[あはむとおもへや],
" "#[番号]01/0032","#[題詞]高市古人感傷近江舊堵作歌 [或書云高市連黒人]","#[原文]古 人尓和礼有哉 樂浪乃 故京乎 見者悲寸","#[訓読]古の人に我れあれや楽浪の古き都を見れば悲しき","#[仮名],いにしへの,ひとにわれあれや,ささなみの,ふるきみやこを,みればかなしき","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,荒都歌,大津,地名,滋賀","#[訓異]
いにしへの,[寛]ふるひとに,
ひとにわれあれや,[寛]われあるらめや,
ささなみの[寛],
ふるきみやこを[寛],
みればかなしき,[寛]みれはかなしき,
" "#[番号]01/0033","#[題詞](高市古人感傷近江舊堵作歌 [或書云高市連黒人])","#[原文]樂浪乃 國都美神乃 浦佐備而 荒有京 見者悲毛","#[訓読]楽浪の国つ御神のうらさびて荒れたる都見れば悲しも","#[仮名],ささなみの,くにつみかみの,うらさびて,あれたるみやこ,みればかなしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,荒都歌,大津,国魂,地名,滋賀","#[訓異]
ささなみの[寛],
くにつみかみの[寛],
うらさびて,[寛]うらさひて,
あれたるみやこ[寛],
みればかなしも,[寛]みれはかなしも,
" "#[番号]01/0034","#[題詞]幸于紀伊國時川嶋皇子御作歌 [或云山上臣憶良作]","#[原文]白浪乃 濱松之枝乃 手向草 幾代左右二賀 年乃經去良武 [一云 年者經尓計武]","#[訓読]白波の浜松が枝の手向け草幾代までにか年の経ぬらむ [一云 年は経にけむ]","#[仮名],しらなみの,はままつがえの,たむけくさ,いくよまでにか,としのへぬらむ,[としはへにけむ]","#[左注]日本紀曰朱鳥四年庚寅秋九月天皇幸紀伊國也","#[校異]曰 [冷][紀][細] 云","#[事項],雑歌,作者:川島皇子,山上憶良,代作,紀州,和歌山,行幸,植物,地名","#[訓異]
しらなみの[寛],
はままつがえの,[寛]はままつかえの,
たむけくさ[寛],
いくよまでにか,[寛]いくよまてにか,
としのへぬらむ[寛],
[としはへにけむ][寛],
" "#[番号]01/0035","#[題詞]越勢能山時阿閇皇女御作歌","#[原文]此也是能 倭尓四手者 我戀流 木路尓有云 名二負勢能山","#[訓読]これやこの大和にしては我が恋ふる紀路にありといふ名に負ふ背の山","#[仮名],これやこの,やまとにしては,あがこふる,きぢにありといふ,なにおふせのやま","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:阿閇皇女,羈旅,妹背,行幸,和歌山,紀州,地名,土地讃美","#[訓異]
これやこの[寛],
やまとにしては[寛],
あがこふる,[寛]わかこふる,
きぢにありといふ,[寛]きちにありといふ,
なにおふせのやま[寛],
" "#[番号]01/0036","#[題詞]幸于吉野宮之時柿本朝臣人麻呂作歌","#[原文]八隅知之 吾大王之 所聞食 天下尓 國者思毛 澤二雖有 山川之 清河内跡 御心乎 吉野乃國之 花散相 秋津乃野邊尓 宮柱 太敷座波 百礒城乃 大宮人者 船並弖 旦川渡 舟<競> 夕河渡 此川乃 絶事奈久 此山乃 弥高<思良>珠 水激 瀧之宮子波 見礼跡不飽可<問>","#[訓読]やすみしし 我が大君の きこしめす 天の下に 国はしも さはにあれども 山川の 清き河内と 御心を 吉野の国の 花散らふ 秋津の野辺に 宮柱 太敷きませば ももしきの 大宮人は 舟並めて 朝川渡る 舟競ひ 夕川渡る この川の 絶ゆることなく この山の いや高知らす 水激る 瀧の宮処は 見れど飽かぬかも","#[仮名],やすみしし,わがおほきみの,きこしめす,あめのしたに,くにはしも,さはにあれども,やまかはの,きよきかふちと,みこころを,よしののくにの,はなぢらふ,あきづののへに,みやばしら,ふとしきませば,ももしきの,おほみやひとは,ふねなめて,あさかはわたる,ふなぎほひ,ゆふかはわたる,このかはの,たゆることなく,このやまの,いやたかしらす,みづはしる,たきのみやこは,みれどあかぬかも","#[左注](右日本紀曰 三年己丑正月天皇幸吉野宮 八月幸吉野宮 四年庚寅二月幸吉野宮 五月幸吉野宮 五年辛卯正月幸吉野宮 四月幸吉野宮者 未詳知何月従駕作歌)","#[校異]並 [古][紀] 并 / 竟 -> 競 [元][類][紀] / 良思 -> 思良 [元][類][紀] / 聞 -> 問 [元][類][冷]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,吉野,離宮,行幸,従駕,宮廷讃美,国見,地名,枕詞","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
きこしめす[寛],
あめのしたに[寛],
くにはしも[寛],
さはにあれども,[寛]さはにあれとも,
やまかはの[寛],
きよきかふちと,[寛]きよきかうちと,
みこころを[寛],
よしののくにの[寛],
はなぢらふ,[寛]はなちらふ,
あきづののへに,[寛]あきつののへに,
みやばしら,[寛]みやはしら,
ふとしきませば,[寛]ふとしきませは,
ももしきの[寛],
おほみやひとは[寛],
ふねなめて[寛],
あさかはわたる,[寛]あさかはわたり,
ふなぎほひ,[寛]ふなきほひ,
ゆふかはわたる,[寛]ゆふかはわたり,
このかはの[寛],
たゆることな[寛]く,
このやまの[寛],
いやたかしらす,[寛]いやたかからし,
みづはしる,[寛]みつの,
たきのみやこは[寛],
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]01/0037","#[題詞](幸于吉野宮之時柿本朝臣人麻呂作歌)反歌","#[原文]雖見飽奴 吉野乃河之 常滑乃 絶事無久 復還見牟","#[訓読]見れど飽かぬ吉野の川の常滑の絶ゆることなくまたかへり見む","#[仮名],みれどあかぬ,よしののかはの,とこなめの,たゆることなく,またかへりみむ","#[左注](右日本紀曰 三年己丑正月天皇幸吉野宮 八月幸吉野宮 四年庚寅二月幸吉野宮 五月幸吉野宮 五年辛卯正月幸吉野宮 四月幸吉野宮者 未詳知何月従駕作歌)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,吉野,離宮,行幸,従駕,宮廷讃美,国見,地名","#[訓異]
みれどあかぬ,[寛]みれとあかぬ,
よしののかはの[寛],
とこなめの[寛],
たゆることなく[寛],
またかへりみむ[寛],
" "#[番号]01/0038","#[題詞](幸于吉野宮之時柿本朝臣人麻呂作歌)","#[原文]安見知之 吾大王 神長柄 神佐備世須登 <芳>野川 多藝津河内尓 高殿乎 高知座而 上立 國見乎為<勢><婆> 疊有 青垣山 々神乃 奉御調等 春部者 花挿頭持 秋立者 黄葉頭<刺>理 [一云 黄葉加射之] <逝>副 川之神母 大御食尓 仕奉等 上瀬尓 鵜川乎立 下瀬尓 小網刺渡 山川母 依弖奉流 神乃御代鴨","#[訓読]やすみしし 我が大君 神ながら 神さびせすと 吉野川 たぎつ河内に 高殿を 高知りまして 登り立ち 国見をせせば たたなはる 青垣山 山神の 奉る御調と 春へは 花かざし持ち 秋立てば 黄葉かざせり [一云 黄葉かざし] 行き沿ふ 川の神も 大御食に 仕へ奉ると 上つ瀬に 鵜川を立ち 下つ瀬に 小網さし渡す 山川も 依りて仕ふる 神の御代かも","#[仮名],やすみしし,わがおほきみ,かむながら,かむさびせすと,よしのかは,たぎつかふちに,たかとのを,たかしりまして,のぼりたち,くにみをせせば,たたなはる,あをかきやま,やまつみの,まつるみつきと,はるへは,はなかざしもち,あきたてば,もみちかざせり,[もみちばかざし],ゆきそふ,かはのかみも,おほみけに,つかへまつると,かみつせに,うかはをたち,しもつせに,さでさしわたす,やまかはも,よりてつかふる,かみのみよかも","#[左注](右日本紀曰 三年己丑正月天皇幸吉野宮 八月幸吉野宮 四年庚寅二月幸吉野宮 五月幸吉野宮 五年辛卯正月幸吉野宮 四月幸吉野宮者 未詳知何月従駕作歌)","#[校異]吉 -> 芳 [元][類][紀] / <> -> 勢 [冷] / 波 -> 婆 [元] / 判 -> 刺 [元][類][紀] / 遊 -> 逝 [元]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,吉野,離宮,行幸,従駕,宮廷讃美,国見,地名","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみ,[寛]わかおほきみの,
かむながら,[寛]かみなから,
かむさびせすと,[寛]かみさひせすと,
よしのかは[寛],
たぎつかふちに,[寛]たきつかうちに,
たかとのを[寛],
たかしりまして[寛],
のぼりたち,[寛]のほりたち,
くにみをせせば,[寛]くにみをすれは,
たたなはる[寛],
あをかきやま,[寛]あをかきやまの,
やまつみの[寛],
まつるみつきと[寛],
はるへは,[寛]はるへには,
はなかざしもち,[寛]はなかさしもち,
あきたてば,[寛]あきたては,
もみちかざせり,[寛]もみちかさせり,
[もみちばかざし],
ゆきそふ,[寛]ゆふ,
かはのかみも[寛],
おほみけに[寛],
つかへまつると[寛],
かみつせに[寛],
うかはをたち,[寛]うかはをたて,
しもつせに[寛],
さでさしわたす,[寛]さてさしわたす,
やまかはも[寛],
よりてつかふる[寛],
かみのみよかも[寛],
" "#[番号]01/0039","#[題詞](幸于吉野宮之時柿本朝臣人麻呂作歌)反歌","#[原文]山川毛 因而奉流 神長柄 多藝津河内尓 船出為加母","#[訓読]山川も依りて仕ふる神ながらたぎつ河内に舟出せすかも","#[仮名],やまかはも,よりてつかふる,かむながら,たぎつかふちに,ふなでせすかも","#[左注]右日本紀曰 三年己丑正月天皇幸吉野宮 八月幸吉野宮 四年庚寅二月幸吉野宮 五月幸吉野宮 五年辛卯正月幸吉野宮 四月幸吉野宮者 未詳知何月従駕作歌","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,吉野,離宮,行幸,従駕,宮廷讃美,国見,地名","#[訓異]
やまかはも[寛],
よりてつかふる[寛],
かむながら,[寛]かみなから,
たぎつかふちに,[寛]たきつかうちに,
ふなでせすかも,[寛]ふなてするかも,
" "#[番号]01/0040","#[題詞]幸于伊勢國時留京柿本朝臣人麻呂作歌","#[原文]鳴呼見乃浦尓 船乗為良武 D嬬等之 珠裳乃須十二 四寳三都良武香","#[訓読]嗚呼見の浦に舟乗りすらむをとめらが玉裳の裾に潮満つらむか","#[仮名],あみのうらに,ふなのりすらむ,をとめらが,たまものすそに,しほみつらむか","#[左注](右日本紀曰 朱鳥六年壬辰春三月丙寅朔戊辰浄<廣>肆廣瀬王等為留守官 於是中納言三輪朝臣高市麻呂脱其冠位E上於朝重諌曰 農作之前車駕未可以動 辛未天皇不従諌 遂幸伊勢 五月乙丑朔庚午御阿胡行宮)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,留京,留守,伊勢行幸,地名","#[訓異]
あみのうらに[寛],
ふなのりすらむ[寛],
をとめらが,[寛]をとめらか,
たまものすそに[寛],
しほみつらむか[寛],
" "#[番号]01/0041","#[題詞](幸于伊勢國時留京柿本朝臣人麻呂作歌)","#[原文]釼著 手節乃埼二 今<日>毛可母 大宮人之 玉藻苅良<武>","#[訓読]釧着く答志の崎に今日もかも大宮人の玉藻刈るらむ","#[仮名],くしろつく,たふしのさきに,けふもかも,おほみやひとの,たまもかるらむ","#[左注](右日本紀曰 朱鳥六年壬辰春三月丙寅朔戊辰浄<廣>肆廣瀬王等為留守官 於是中納言三輪朝臣高市麻呂脱其冠位E上於朝重諌曰 農作之前車駕未可以動 辛未天皇不従諌 遂幸伊勢 五月乙丑朔庚午御阿胡行宮)","#[校異]<> -> 日 [類][冷][紀] / 哉 -> 武 [類][冷][紀]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,留京,留守,伊勢行幸,地名,枕詞","#[訓異]
くしろつく,[寛]たちはきの,
たふしのさきに[寛],
けふもかも[寛],
おほみやひとの[寛],
たまもかるらむ[寛],
" "#[番号]01/0042","#[題詞](幸于伊勢國時留京柿本朝臣人麻呂作歌)","#[原文]潮左為二 五十等兒乃嶋邊 榜船荷 妹乗良六鹿 荒嶋廻乎","#[訓読]潮騒に伊良虞の島辺漕ぐ舟に妹乗るらむか荒き島廻を","#[仮名],しほさゐに,いらごのしまへ,こぐふねに,いものるらむか,あらきしまみを","#[左注](右日本紀曰 朱鳥六年壬辰春三月丙寅朔戊辰浄<廣>肆廣瀬王等為留守官 於是中納言三輪朝臣高市麻呂脱其冠位E上於朝重諌曰 農作之前車駕未可以動 辛未天皇不従諌 遂幸伊勢 五月乙丑朔庚午御阿胡行宮)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,留京,留守,伊勢行幸,地名","#[訓異]
しほさゐに[寛],
いらごのしまへ,[寛]いらこのしまへ,
こぐふねに,[寛]こくふねに,
いものるらむか[寛],
あらきしまみを,[寛]あらきしまわを,
" "#[番号]01/0043","#[題詞](幸于伊勢國時)當麻真人麻呂妻作歌","#[原文]吾勢枯波 何所行良武 己津物 隠乃山乎 今日香越等六","#[訓読]我が背子はいづく行くらむ沖つ藻の名張の山を今日か越ゆらむ","#[仮名],わがせこは,いづくゆくらむ,おきつもの,なばりのやまを,けふかこゆらむ","#[左注](右日本紀曰 朱鳥六年壬辰春三月丙寅朔戊辰浄<廣>肆廣瀬王等為留守官 於是中納言三輪朝臣高市麻呂脱其冠位E上於朝重諌曰 農作之前車駕未可以動 辛未天皇不従諌 遂幸伊勢 五月乙丑朔庚午御阿胡行宮)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:當麻真人麻呂妻,留京,留守,伊勢行幸,妻歌,枕詞,地名","#[訓異]
わがせこは,[寛]わかせこは,
いづくゆくらむ,[寛]いつちゆくらむ,
おきつもの[寛],
なばりのやまを,[寛]かくれのやまを,
けふかこゆらむ[寛],
" "#[番号]01/0044","#[題詞](幸于伊勢國時)石上大臣従駕作歌","#[原文]吾妹子乎 去来見乃山乎 高三香裳 日本能不所見 國遠見可聞","#[訓読]我妹子をいざ見の山を高みかも大和の見えぬ国遠みかも","#[仮名],わぎもこを,いざみのやまを,たかみかも,やまとのみえぬ,くにとほみかも","#[左注]右日本紀曰 朱鳥六年壬辰春三月丙寅朔戊辰以浄<廣>肆廣瀬王等為留守官 於是中納言三輪朝臣高市麻呂脱其冠位E上於朝重諌曰 農作之前車駕未可以動 辛未天皇不従諌 遂幸伊勢 五月乙丑朔庚午御阿胡行宮","#[校異]<> -> 廣 [西(右書)][元][冷][紀]","#[事項],雑歌,作者:石上麻呂,伊勢,行幸,三重,羈旅,望郷,枕詞,地名","#[訓異]
わぎもこを,[寛]わきもこを,
いざみのやまを,[寛]いさみのやまを,
たかみかも[寛],
やまとのみえぬ[寛],
くにとほみかも[寛],
" "#[番号]01/0045","#[題詞]軽皇子宿于安騎野時柿本朝臣人麻呂作歌","#[原文]八隅知之 吾大王 高照 日之皇子 神長柄 神佐備世須<等> 太敷為 京乎置而 隠口乃 泊瀬山者 真木立 荒山道乎 石根 禁樹押靡 坂鳥乃 朝越座而 玉限 夕去来者 三雪落 阿騎乃大野尓 旗須為寸 四能乎押靡 草枕 多日夜取世須 古昔念而","#[訓読]やすみしし 我が大君 高照らす 日の皇子 神ながら 神さびせすと 太敷かす 都を置きて 隠口の 初瀬の山は 真木立つ 荒き山道を 岩が根 禁樹押しなべ 坂鳥の 朝越えまして 玉限る 夕去り来れば み雪降る 安騎の大野に 旗すすき 小竹を押しなべ 草枕 旅宿りせす いにしへ思ひて","#[仮名],やすみしし,わがおほきみ,たかてらす,ひのみこ,かむながら,かむさびせすと,ふとしかす,みやこをおきて,こもりくの,はつせのやまは,まきたつ,あらきやまぢを,いはがね,さへきおしなべ,さかとりの,あさこえまして,たまかぎる,ゆふさりくれば,みゆきふる,あきのおほのに,はたすすき,しのをおしなべ,くさまくら,たびやどりせす,いにしへおもひて","#[左注]","#[校異]登 -> 等 [元][冷][紀]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,軽皇子,阿騎野,遊猟,狩猟,皇子讃歌,草壁皇子,追悼,大嘗祭,祭式,宇陀,地名,枕詞,植物","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみ,[寛]わかおほきみの,
たかてらす[寛],
ひのみこ,[寛]ひのわかみこは,
かむながら,[寛]かみなから,
かむさびせすと,[寛]かみさひせすと,
ふとしかす,[寛]ふとしきし,
みやこをおきて,[寛]みやこをおきに,
こもりくの[寛],
はつせのやまは[寛],
まきたつ,[寛]まきたてる,
あらきやまぢを,[寛]あらやまみちを,
いはがね,[寛]いはかねの,
さへきおしなべ,[寛]ふせきおしなみ,
さかとりの[寛],
あさこえまして,[寛]あさこゆまして,
たまかぎる,[寛]たまきはる,
ゆふさりくれば,[寛]ゆふさりくれは,
みゆきふる[寛],
あきのおほのに[寛],
はたすすき[寛],
しのをおしなべ,[寛]しのをおしなみ,
くさまくら[寛],
たびやどりせす,[寛]たひやとりせす,
いにしへおもひて,[寛]むかしおもひて,
" "#[番号]01/0046","#[題詞](軽皇子宿于安騎野時柿本朝臣人麻呂作歌)短歌","#[原文]阿騎乃<野>尓 宿旅人 打靡 寐毛宿良<目>八方 古部念尓","#[訓読]安騎の野に宿る旅人うち靡き寐も寝らめやもいにしへ思ふに","#[仮名],あきののに,やどるたびひと,うちなびき,いもぬらめやも,いにしへおもふに","#[左注]","#[校異]<> -> 野 [紀] / 自 -> 目 [類][紀]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,軽皇子,阿騎野,遊猟,狩猟,皇子讃歌,草壁皇子,追悼,大嘗祭,祭式,宇陀,地名","#[訓異]
あきののに[寛],
やどるたびひと,[寛]やとるたひひと,
うちなびき,[寛]うちなひき,
いもぬらめやも,[寛]いもねらしやも,
いにしへおもふに,[寛]いにしおもふに,
" "#[番号]01/0047","#[題詞]((軽皇子宿于安騎野時柿本朝臣人麻呂作歌)短歌)","#[原文]真草苅 荒野者雖有 葉 過去君之 形見跡曽来師","#[訓読]ま草刈る荒野にはあれど黄葉の過ぎにし君が形見とぞ来し","#[仮名],まくさかる,あらのにはあれど,もみちばの,すぎにしきみが,かたみとぞこし","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,軽皇子,阿騎野,遊猟,狩猟,皇子讃歌,草壁皇子,追悼,大嘗祭,祭式,宇陀,地名,枕詞","#[訓異]
まくさかる[寛],
あらのにはあれど[寛],
もみちばの,[寛]は,
すぎにしきみが,[寛]すぎゆくきみか,
かたみとぞこし,[寛]かたみとあとよりそこし,
" "#[番号]01/0048","#[題詞]((軽皇子宿于安騎野時柿本朝臣人麻呂作歌)短歌)","#[原文]東 野炎 立所見而 反見為者 月西渡","#[訓読]東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ","#[仮名],ひむがしの,のにかぎろひの,たつみえて,かへりみすれば,つきかたぶきぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,軽皇子,阿騎野,遊猟,狩猟,皇子讃歌,草壁皇子,追悼,大嘗祭,祭式,宇陀,地名","#[訓異]
ひむがしの,[寛]あずま
のにかぎろひの,[寛]ののけぶりの
たつみえて,[寛]たてるところみて,
かへりみすれば,[寛]かへりみすれは,
つきかたぶきぬ,[寛]つきかたふきぬ,
" "#[番号]01/0049","#[題詞]((軽皇子宿于安騎野時柿本朝臣人麻呂作歌)短歌)","#[原文]日雙斯 皇子命乃 馬副而 御猟立師斯 時者来向","#[訓読]日並の皇子の命の馬並めてみ狩り立たしし時は来向ふ","#[仮名],ひなみしの,みこのみことの,うまなめて,みかりたたしし,ときはきむかふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,軽皇子,阿騎野,遊猟,狩猟,皇子讃歌,草壁皇子,追悼,大嘗祭,祭式,宇陀,地名","#[訓異]
ひなみしの,[寛]ひなし,
みこのみことの[寛],
うまなめて,[寛]むまになめて,
みかりたたしし,[寛]みかりたちしし,
ときはきむかふ,[寛]ときはこむかふ,
" "#[番号]01/0050","#[題詞]藤原宮之役民作歌","#[原文]八隅知之 吾大王 高照 日<乃>皇子 荒妙乃 藤原我宇倍尓 食國乎 賣之賜牟登 都宮者 高所知武等 神長柄 所念奈戸二 天地毛 縁而有許曽 磐走 淡海乃國之 衣手能 田上山之 真木佐苦 桧乃嬬手乎 物乃布能 八十氏河尓 玉藻成 浮倍流礼 其乎取登 散和久御民毛 家忘 身毛多奈不知 鴨自物 水尓浮居而 吾作 日之御門尓 不知國 依巨勢道従 我國者 常世尓成牟 圖負留 神龜毛 新代登 泉乃河尓 持越流 真木乃都麻手乎 百不足 五十日太尓作 泝須<良>牟 伊蘇波久見者 神随尓有之","#[訓読]やすみしし 我が大君 高照らす 日の皇子 荒栲の 藤原が上に 食す国を 見したまはむと みあらかは 高知らさむと 神ながら 思ほすなへに 天地も 寄りてあれこそ 石走る 近江の国の 衣手の 田上山の 真木さく 桧のつまでを もののふの 八十宇治川に 玉藻なす 浮かべ流せれ 其を取ると 騒く御民も 家忘れ 身もたな知らず 鴨じもの 水に浮き居て 我が作る 日の御門に 知らぬ国 寄し巨勢道より 我が国は 常世にならむ 図負へる くすしき亀も 新代と 泉の川に 持ち越せる 真木のつまでを 百足らず 筏に作り 泝すらむ いそはく見れば 神ながらにあらし","#[仮名],やすみしし,わがおほきみ,たかてらす,ひのみこ,あらたへの,ふぢはらがうへに,をすくにを,めしたまはむと,みあらかは,たかしらさむと,かむながら,おもほすなへに,あめつちも,よりてあれこそ,いはばしる,あふみのくにの,ころもでの,たなかみやまの,まきさく,ひのつまでを,もののふの,やそうぢがはに,たまもなす,うかべながせれ,そをとると,さわくみたみも,いへわすれ,みもたなしらず,かもじもの,みづにうきゐて,わがつくる,ひのみかどに,しらぬくに,よしこせぢより,わがくには,とこよにならむ,あやおへる,くすしきかめも,あらたよと,いづみのかはに,もちこせる,まきのつまでを,ももたらず,いかだにつくり,のぼすらむ,いそはくみれば,かむながらにあらし","#[左注]右日本紀曰 朱鳥七年癸巳秋八月幸藤原宮地 八年甲午春正月幸藤原宮 冬十二月庚戌朔乙卯遷居藤原宮","#[校異]之 -> 乃 [元][類][冷][紀] / 郎 -> 良 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:役民,藤原,枕詞,地名","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみ,[寛]わかおほきみの,
たかてらす[寛],
ひのみこ,[寛]ひのわかみこは,
あらたへの[寛],
ふぢはらがうへに,[寛]ふちはらかうへに,
をすくにを,[寛]をしくにを,
めしたまはむと[寛],
みあらかは,[寛]みやこには,
たかしらさむと,[寛]たかしるらむと,
かむながら,[寛]かみなから,
おもほすなへに[寛],
あめつちも[寛],
よりてあれこそ[寛],
いはばしる,[寛]いははしる,
あふみのくにの,[寛]あはうみのくにの,
ころもでの,[寛]ころもての,
たなかみやまの[寛],
まきさく[寛],
ひのつまでを,[寛]ひのつまてを,
もののふの[寛],
やそうぢがはに,[寛]やそうちかはに,
たまもなす[寛],
うかべながせれ,[寛]うかへなかせれ,
そをとると[寛],
さわくみたみも[寛],
いへわすれ[寛],
みもたなしらず,[寛]みもたなしらす,
かもじもの,[寛]かもしもの,
みづにうきゐて,[寛]みつにうきさて,
わがつくる,[寛]わかつくる,
ひのみかどに,[寛]ひのみかとに,
しらぬくに,[寛]いそのくに,
よしこせぢより,[寛]よりこせちより,
わがくには,[寛]わかくには,
とこよにならむ[寛],
あやおへる,[寛]ふみおへる,
くすしきかめも,[寛]あやしきかめも,
あらたよと,[寛]あたらよと,
いづみのかはに,[寛]いつみのかはに,
もちこせる[寛],
まきのつまでを,[寛]まきのつまてを,
ももたらず,[寛]ももたらす,
いかだにつくり,[寛]いかたにつくり,
のぼすらむ,[寛]のほすらむ,
いそはくみれば,[寛]いそはくみるは,
かむながらにあらし,[寛]かみのままならし,
" "#[番号]01/0051","#[題詞]従明日香宮遷居藤原宮之後志貴皇子御作歌","#[原文]F女乃 袖吹反 明日香風 京都乎遠見 無用尓布久","#[訓読]采女の袖吹きかへす明日香風都を遠みいたづらに吹く","#[仮名],うねめの,そでふきかへす,あすかかぜ,みやこをとほみ,いたづらにふく","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:志貴皇子,荒都歌,飛鳥,地名","#[訓異]
うねめの,[寛]たをやめの,
そでふきかへす,[寛]そてふきかへす,
あすかかぜ,[寛]あすかかせ,
みやこをとほみ[寛],
いたづらにふく,[寛]いたつらにふく,
" "#[番号]01/0052","#[題詞]藤原宮御井歌","#[原文]八隅知之 和期大王 高照 日之皇子 麁妙乃 藤井我原尓 大御門 始賜而 埴安乃 堤上尓 在立之 見之賜者 日本乃 青香具山者 日經乃 大御門尓 春山<跡> 之美佐備立有 畝火乃 此美豆山者 日緯能 大御門尓 弥豆山跡 山佐備伊座 耳<為>之 青菅山者 背友乃 大御門尓 宣名倍 神佐備立有 名細 吉野乃山者 影友乃 大御門<従> 雲居尓曽 遠久有家留 高知也 天之御蔭 天知也 日<之>御影乃 水許曽婆 常尓有米 御井之清水","#[訓読]やすみしし 我ご大君 高照らす 日の皇子 荒栲の 藤井が原に 大御門 始めたまひて 埴安の 堤の上に あり立たし 見したまへば 大和の 青香具山は 日の経の 大御門に 春山と 茂みさび立てり 畝傍の この瑞山は 日の緯の 大御門に 瑞山と 山さびいます 耳成の 青菅山は 背面の 大御門に よろしなへ 神さび立てり 名ぐはし 吉野の山は かげともの 大御門ゆ 雲居にぞ 遠くありける 高知るや 天の御蔭 天知るや 日の御蔭の 水こそば とこしへにあらめ 御井のま清水","#[仮名],やすみしし,わごおほきみ,たかてらす,ひのみこ,あらたへの,ふぢゐがはらに,おほみかど,はじめたまひて,はにやすの,つつみのうへに,ありたたし,めしたまへば,やまとの,あをかぐやまは,ひのたての,おほみかどに,はるやまと,しみさびたてり,うねびの,このみづやまは,ひのよこの,おほみかどに,みづやまと,やまさびいます,みみなしの,あをすがやまは,そともの,おほみかどに,よろしなへ,かむさびたてり,なぐはし,よしののやまは,かげともの,おほみかどゆ,くもゐにぞ,とほくありける,たかしるや,あめのみかげ,あめしるや,ひのみかげの,みづこそば,とこしへにあらめ,みゐのましみづ","#[左注](右歌作者未詳)","#[校異]路 -> 跡 [古] / 高 -> 為 [万葉考] / 徒 -> 従 [元][類][紀] / <> -> 之 [元][類][古][冷][紀]","#[事項],雑歌,藤原,宮廷讃美,御井,枕詞,地名,奈良","#[訓異]
やすみしし[寛],
わごおほきみ,[寛]わかおほきみの,
たかてらす[寛],
ひのみこ,[寛]ひのわかみこ,
あらたへの[寛],
ふぢゐがはらに,[寛]ふちゐかはらに,
おほみかど,[寛]おほみかと,
はじめたまひて,[寛]はしめたまひて,
はにやすの[寛],
つつみのうへに[寛],
ありたたし[寛],
めしたまへば,[寛]みしたまへれは,
やまとの[寛],
あをかぐやまは,[寛]あをかくやまは,
ひのたての[寛],
おほみかどに,[寛]おほきみかとに,
はるやまと,[寛]はるやまち,
しみさびたてり,[寛]しみさひたてり,
うねびの,[寛]うねひの,
このみづやまは,[寛]このみつあまは,
ひのよこの,[寛]ひのぬきの,
おほみかどに,[寛]おほきみかとに,
みづやまと,[寛]みつやまと,
やまさびいます,[寛]やまさひいます,
みみなしの,[寛]みみたかの,
あをすがやまは,[寛]あをすけやまは,
そともの[寛],
おほみかどに,[寛]おほきみかとに,
よろしなへ[寛],
かむさびたてり,[寛]かみさひたてり,
なぐはし,[寛]なくわし,
よしののやまは[寛],
かげともの,[寛]かけともの,
おほみかどゆ,[寛]おほきみかとに,
くもゐにぞ,[寛]くもゐにそ,
とほくありける[寛],
たかしるや[寛],
あめのみかげ,[寛]あめのみかけ,
あめしるや[寛],
ひのみかげの,[寛]ひのみかけの,
みづこそば,[寛]みつこそは,
とこしへにあらめ,[寛]ときはにあらめ,
みゐのましみづ,[寛]みゐのきよみつ,
" "#[番号]01/0053","#[題詞](藤原宮御井歌)短歌","#[原文]藤原之 大宮都加倍 安礼衝哉 處女之友者 <乏>吉<呂>賀聞","#[訓読]藤原の大宮仕へ生れ付くや娘子がともは羨しきろかも","#[仮名],ふぢはらの,おほみやつかへ,あれつくや,をとめがともは,ともしきろかも","#[左注]右歌作者未詳","#[校異]之 -> 乏 [玉の小琴] / 召 -> 呂 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,藤原,宮廷讃美,御井,地名,奈良","#[訓異]
ふぢはらの,[寛]ふちはらの,
おほみやつかへ[寛],
あれつくや,[寛]あれせむや,
をとめがともは,[寛]をとめかともは,
ともしきろかも,[寛]しきりめすかも,
" "#[番号]01/0054","#[題詞]大寶元年辛丑秋九月太上天皇幸于紀<伊>國時歌","#[原文]巨勢山乃 列々椿 都良々々尓 見乍思奈 許湍乃春野乎","#[訓読]巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を","#[仮名],こせやまの,つらつらつばき,つらつらに,みつつしのはな,こせのはるのを","#[左注]右一首坂門人足","#[校異]紀国 -> 紀伊国 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,大宝1年9月,年紀,作者:坂門人足,紀伊行幸,和歌山,巨勢,従駕,羈旅,土地讃美,地名","#[訓異]
こせやまの[寛],
つらつらつばき,[寛]つらつらつはき,
つらつらに[寛],
みつつしのはな,[寛]みつつおもふな,
こせのはるのを[寛],
" "#[番号]01/0055","#[題詞](大寶元年辛丑秋九月太上天皇幸于紀<伊>國時歌)","#[原文]朝毛吉 木人乏母 亦打山 行来跡見良武 樹人友師母","#[訓読]あさもよし紀人羨しも真土山行き来と見らむ紀人羨しも","#[仮名],あさもよし,きひとともしも,まつちやま,ゆきくとみらむ,きひとともしも","#[左注]右一首調首淡海","#[校異]","#[事項],雑歌,大宝1年9月,年紀,作者:調首淡海,紀伊行幸,和歌山,亦打山,従駕,羈旅,土地讃美,地名,枕詞","#[訓異]
あさもよし,[寛]あさもよい,
きひとともしも[寛],
まつちやま[寛],
ゆきくとみらむ[寛],
きひとともしも[寛],
" "#[番号]01/0056","#[題詞](大寶元年辛丑秋九月太上天皇幸于紀<伊>國時歌)或本歌","#[原文]河上乃 列々椿 都良々々尓 雖見安可受 巨勢能春野者","#[訓読]川上のつらつら椿つらつらに見れども飽かず巨勢の春野は","#[仮名],かはかみの,つらつらつばき,つらつらに,みれどもあかず,こせのはるのは","#[左注]右一首春日蔵首老","#[校異]","#[事項],雑歌,大宝1年9月,年紀,作者:春日蔵首老,或本歌,巨勢,羈旅,土地讃美,地名,植物","#[訓異]
かはかみの[寛],
つらつらつばき,[寛]つらつらつはき,
つらつらに[寛],
みれどもあかず,[寛]みれともあかす,
こせのはるのは[寛],
" "#[番号]01/0057","#[題詞]二年壬寅太上天皇幸于参河國時歌","#[原文]引馬野尓 仁保布榛原 入乱 衣尓保波勢 多鼻能知師尓","#[訓読]引間野ににほふ榛原入り乱れ衣にほはせ旅のしるしに","#[仮名],ひくまのに,にほふはりはら,いりみだれ,ころもにほはせ,たびのしるしに","#[左注]右一首長忌寸奥麻呂","#[校異]","#[事項],雑歌,大宝2年,年紀,作者:長忌寸意吉麻呂,三河行幸,愛知,従駕,持統,羈旅,土地讃美,地名,植物","#[訓異]
ひくまのに[寛],
にほふはりはら,[寛]にほふはきはら,
いりみだれ,[寛]いちみたる,
ころもにほはせ[寛],
たびのしるしに[寛],
" "#[番号]01/0058","#[題詞](二年壬寅太上天皇幸于参河國時歌)","#[原文]何所尓可 船泊為良武 安礼乃埼 榜多味行之 棚無小舟","#[訓読]いづくにか船泊てすらむ安礼の崎漕ぎ廻み行きし棚無し小舟","#[仮名],いづくにか,ふなはてすらむ,あれのさき,こぎたみゆきし,たななしをぶね","#[左注]右一首高市連黒人","#[校異]","#[事項],雑歌,大宝2年,年紀,作者:高市黒人,三河行幸,愛知,従駕,持統,羈旅,地名","#[訓異]
いづくにか,[寛]いつこにか,
ふなはてすらむ[寛],
あれのさき[寛],
こぎたみゆきし,[寛]こきたみゆきし,
たななしをぶね,[寛]たななしをふね,
" "#[番号]01/0059","#[題詞]譽謝女王作歌","#[原文]流經 妻吹風之 寒夜尓 吾勢能君者 獨香宿良<武>","#[訓読]流らふる妻吹く風の寒き夜に我が背の君はひとりか寝らむ","#[仮名],ながらふる,つまふくかぜの,さむきよに,わがせのきみは,ひとりかぬらむ","#[左注]","#[校異]哉 -> 武 [西(訂正左書)][元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:誉謝女王,妻歌","#[訓異]
ながらふる,[寛]なからふる,
つまふくかぜの,[寛]つまふくかせの,
さむきよに[寛],
わがせのきみは,[寛]わかせのきみは,
ひとりかぬらむ[寛],
" "#[番号]01/0060","#[題詞]長皇子御歌","#[原文]暮相而 朝面無美 隠尓加 氣長妹之 廬利為里計武","#[訓読]宵に逢ひて朝面無み名張にか日長く妹が廬りせりけむ","#[仮名],よひにあひて,あしたおもなみ,なばりにか,けながくいもが,いほりせりけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:長皇子,地名,奈良","#[訓異]
よひにあひて[寛],
あしたおもなみ,[寛]あさかほなしみ,
なばりにか,[寛]かくれにか,
けながくいもが,[寛]けなかきいもか,
いほりせりけむ[寛],
" "#[番号]01/0061","#[題詞]舎人娘子従駕作歌","#[原文]<大>夫之 得物矢手挿 立向 射流圓方波 見尓清潔之","#[訓読]大丈夫のさつ矢手挟み立ち向ひ射る圓方は見るにさやけし","#[仮名],ますらをの,さつやたばさみ,たちむかひ,いるまとかたは,みるにさやけし","#[左注]","#[校異]丈 -> 大 [元][類][冷]","#[事項],雑歌,作者:舎人娘子,伊勢行幸,三重,従駕,国見,羈旅,土地讃美,地名","#[訓異]
ますらをの[寛],
さつやたばさみ,[寛]ともやたはさみ,
たちむかひ[寛],
いるまとかたは[寛],
みるにさやけし[寛],
" "#[番号]01/0062","#[題詞]三野連[名闕]入唐時春日蔵首老作歌","#[原文]在根良 對馬乃渡 々中尓 <幣>取向而 早還許年","#[訓読]在り嶺よし対馬の渡り海中に幣取り向けて早帰り来ね","#[仮名],ありねよし,つしまのわたり,わたなかに,ぬさとりむけて,はやかへりこね","#[左注]","#[校異]弊 -> 幣 [元][類][冷]","#[事項],雑歌,作者:春日老,三野連,入唐,餞別,地名,対馬","#[訓異]
ありねよし[寛],
つしまのわたり[寛],
わたなかに[寛],
ぬさとりむけて[寛],
はやかへりこね[寛],
" "#[番号]01/0063","#[題詞]山上臣憶良在大唐時憶本郷作歌","#[原文]去来子等 早日本邊 大伴乃 御津乃濱松 待戀奴良武","#[訓読]いざ子ども早く日本へ大伴の御津の浜松待ち恋ひぬらむ","#[仮名],いざこども,はやくやまとへ,おほともの,みつのはままつ,まちこひぬらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山上憶良,唐,望郷,地名","#[訓異]
いざこども,[寛]いさことも,
はやくやまとへ,[寛]はやひのもとへ,
おほともの[寛],
みつのはままつ[寛],
まちこひぬらむ[寛],
" "#[番号]01/0064","#[題詞]慶雲三年丙午幸于難波宮時 / 志貴皇子御作歌","#[原文]葦邊行 鴨之羽我比尓 霜零而 寒暮夕 <倭>之所念","#[訓読]葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて寒き夕は大和し思ほゆ","#[仮名],あしへゆく,かものはがひに,しもふりて,さむきゆふへは,やまとしおもほゆ","#[左注]","#[校異]和 -> 倭 [元][冷][紀]","#[事項],雑歌,慶雲3年,年紀,作者:志貴皇子,難波,行幸,従駕,大阪,望郷,文武,羈旅,動物,植物,地名","#[訓異]
あしへゆく[寛],
かものはがひに,[寛]かものはかひに,
しもふりて[寛],
さむきゆふへは[寛],
やまとしおもほゆ,[寛]やまとしそおもふ,
" "#[番号]01/0065","#[題詞](慶雲三年丙午幸于難波宮時)長皇子御歌","#[原文]霰打 安良礼松原 住吉<乃> 弟日娘与 見礼常不飽香聞","#[訓読]霰打つ安良礼松原住吉の弟日娘女と見れど飽かぬかも","#[仮名],あられうつ,あられまつばら,すみのえの,おとひをとめと,みれどあかぬかも","#[左注]","#[校異]之 -> 乃 [元][類][古][冷][紀]","#[事項],雑歌,慶雲3年,年紀,作者:長皇子,難波,行幸,従駕,大阪,地名讃美,文武,枕詞,地名","#[訓異]
あられうつ,[寛]あられふる,
あられまつばら,[寛]あられまつはら,
すみのえの[寛],
おとひをとめと[寛],
みれどあかぬかも,[寛]みれとあらぬかも,
" "#[番号]01/0066","#[題詞]太上天皇幸于難波宮時歌","#[原文]大伴乃 高師能濱乃 松之根乎 枕宿杼 家之所偲由","#[訓読]大伴の高師の浜の松が根を枕き寝れど家し偲はゆ","#[仮名],おほともの,たかしのはまの,まつがねを,まくらきぬれど,いへししのはゆ","#[左注]右一首置始東人","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:置始東人,難波,行幸,従駕,大阪,持統,望郷,羈旅,地名,植物","#[訓異]
おほともの[寛],
たかしのはまの[寛],
まつがねを,[寛]まつかねを,
まくらきぬれど,[寛]まくらねぬとか,
いへししのはゆ[寛],
" "#[番号]01/0067","#[題詞](太上天皇幸于難波宮時歌)","#[原文]旅尓之而 物戀<之伎><尓 鶴之>鳴毛 不所聞有世者 孤悲而死萬思","#[訓読]旅にしてもの恋ほしきに鶴が音も聞こえずありせば恋ひて死なまし","#[仮名],たびにして,ものこほしきに,たづがねも,きこえずありせば,こひてしなまし","#[左注]右一首高安大嶋","#[校異]<> -> 之伎<乃> [西(左右書)] / 乃 -> 尓鶴之 [全註釈][注釈] / 鳴(事)[西(左書)] -> 鳴 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:高安大嶋,難波,行幸,従駕,大阪,持統,望郷,羈旅,地名,動物","#[訓異]
たびにして,[寛]たひにして,
ものこほしきに,[寛]ものこひしきの,
たづがねも,[寛]なくことも,
きこえずありせば,[寛]きこえさりせは,
こひてしなまし[寛],
" "#[番号]01/0068","#[題詞](太上天皇幸于難波宮時歌)","#[原文]大伴乃 美津能濱尓有 忘貝 家尓有妹乎 忘而念哉","#[訓読]大伴の御津の浜なる忘れ貝家なる妹を忘れて思へや","#[仮名],おほともの,みつのはまなる,わすれがひ,いへなるいもを,わすれておもへや","#[左注]右一首身人部王","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:身人部王,難波,行幸,従駕,大阪,持統,望郷,地名,序詞","#[訓異]
おほともの[寛],
みつのはまなる,[寛]みつのはまにある,
わすれがひ,[寛]わすれかひ,
いへなるいもを,[寛]いへにあるいもを,
わすれておもへや[寛],
" "#[番号]01/0069","#[題詞](太上天皇幸于難波宮時歌)","#[原文]草枕 客去君跡 知麻世婆 <崖>之<埴>布尓 仁寶播散麻思<呼>","#[訓読]草枕旅行く君と知らませば岸の埴生ににほはさましを","#[仮名],くさまくら,たびゆくきみと,しらませば,きしのはにふに,にほはさましを","#[左注]右一首清江娘子進長皇子[姓氏未詳]","#[校異]婆 [元][類][紀] 波 / 岸 -> 崖 [元][類] / 垣 -> 埴 [元][類] / 乎 -> 呼 [元][類]","#[事項],雑歌,作者:清江娘子,長皇子,遊行女婦,難波,大阪,持統,恋歌,旅,地名","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびゆくきみと,[寛]たひゆくきみと,
しらませば,[寛]しらませは,
きしのはにふに[寛],
にほはさましを[寛],
" "#[番号]01/0070","#[題詞]太上天皇幸于吉野宮時高市連黒人作歌","#[原文]倭尓者 鳴而歟来良武 呼兒鳥 象乃中山 呼曽越奈流","#[訓読]大和には鳴きてか来らむ呼子鳥象の中山呼びぞ越ゆなる","#[仮名],やまとには,なきてかくらむ,よぶこどり,きさのなかやま,よびぞこゆなる","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,吉野,持統,行幸,大阪,従駕,望郷,地名,動物","#[訓異]
やまとには[寛],
なきてかくらむ[寛],
よぶこどり,[寛]よふことり,
きさのなかやま[寛],
よびぞこゆなる,[寛]よひそこゆなる,
" "#[番号]01/0071","#[題詞]大行天皇幸于難波宮時歌","#[原文]倭戀 寐之不所宿尓 情無 此渚崎<未>尓 多津鳴倍思哉","#[訓読]大和恋ひ寐の寝らえぬに心なくこの洲崎廻に鶴鳴くべしや","#[仮名],やまとこひ,いのねらえぬに,こころなく,このすさきみに,たづなくべしや","#[左注]右一首忍坂部乙麻呂","#[校異]<> -> 未 [元][類][冷][紀]","#[事項],雑歌,作者:忍坂部乙麻呂,文武,難波,行幸,大阪,従駕,望郷,動物,地名","#[訓異]
やまとこひ[寛],
いのねらえぬに,[寛]いのねられぬに,
こころなく[寛],
このすさきみに,[寛]ここのすさきに,
たづなくべしや,[寛]たつなくへしや,
" "#[番号]01/0072","#[題詞](大行天皇幸于難波宮時歌)","#[原文]玉藻苅 奥敝波不<榜> 敷妙<乃> 枕之邊人 忘可祢津藻","#[訓読]玉藻刈る沖へは漕がじ敷栲の枕のあたり忘れかねつも","#[仮名],たまもかる,おきへはこがじ,しきたへの,まくらのあたり,わすれかねつも","#[左注]右一首式部卿藤原宇合","#[校異]G -> 榜 [元] / 之 -> 乃 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:藤原宇合,難波,文武,行幸,大阪,従駕,植物,枕詞","#[訓異]
たまもかる[寛],
おきへはこがじ,[寛]おきへはこかし,
しきたへの[寛],
まくらのあたり[寛],
わすれかねつも[寛],
" "#[番号]01/0073","#[題詞](大行天皇幸于難波宮時歌)長皇子御歌","#[原文]吾妹子乎 早見濱風 倭有 吾松椿 不吹有勿勤","#[訓読]我妹子を早見浜風大和なる我を松椿吹かざるなゆめ","#[仮名],わぎもこを,はやみはまかぜ,やまとなる,あをまつつばき,ふかざるなゆめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:長皇子,望郷,難波,大阪,文武,従駕,行幸,地名,植物","#[訓異]
わぎもこを,[寛]わきもこを,
はやみはまかぜ,[寛]はやみはまかせ,
やまとなる[寛],
あをまつつばき,[寛]かかまつつはき,
ふかざるなゆめ,[寛]ふかさるなゆめ,
" "#[番号]01/0074","#[題詞]大行天皇幸于吉野宮時歌","#[原文]見吉野乃 山下風之 寒久尓 為當也今夜毛 我獨宿牟","#[訓読]み吉野の山のあらしの寒けくにはたや今夜も我が独り寝む","#[仮名],みよしのの,やまのあらしの,さむけくに,はたやこよひも,わがひとりねむ","#[左注]右一首或云 天皇御製歌","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:文武,吉野,行幸,望郷,妹,異伝,地名","#[訓異]
みよしのの[寛],
やまのあらしの,[寛]やましたかせの,
さむけくに[寛],
はたやこよひも[寛],
わがひとりねむ,[寛]われひとりねむ,
" "#[番号]01/0075","#[題詞](大行天皇幸于吉野宮時歌)","#[原文]宇治間山 朝風寒之 旅尓師手 衣應借 妹毛有勿久尓","#[訓読]宇治間山朝風寒し旅にして衣貸すべき妹もあらなくに","#[仮名],うぢまやま,あさかぜさむし,たびにして,ころもかすべき,いももあらなくに","#[左注]右一首長屋王","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:長屋王,吉野,行幸,妹,地名","#[訓異]
うぢまやま,[寛]うちまやま,
あさかぜさむし,[寛]あさかせさむし,
たびにして,[寛]たひにして,
ころもかすべき,[寛]ころもかすへき,
いももあらなくに[寛],
" "#[番号]01/0076","#[題詞]和銅元年戊申 / 天皇<御製>","#[原文]大夫之 鞆乃音為奈利 物部乃 大臣 楯立良思母","#[訓読]ますらをの鞆の音すなり物部の大臣盾立つらしも","#[仮名],ますらをの,とものおとすなり,もののふの,おほまへつきみ,たてたつらしも","#[左注]","#[校異]御製歌 -> 御製 [冷][紀]","#[事項],雑歌,和銅1年,年紀,作者:元明,和銅,儀式","#[訓異]
ますらをの[寛],
とものおとすなり[寛],
もののふの[寛],
おほまへつきみ,[寛]おほまうちきみ,
たてたつらしも[寛],
" "#[番号]01/0077","#[題詞](和銅元年戊申 / 天皇<御製>)御名部皇女奉和御歌","#[原文]吾大王 物莫御念 須賣神乃 嗣而賜流 吾莫勿久尓","#[訓読]吾が大君ものな思ほし皇神の継ぎて賜へる我なけなくに","#[仮名],わがおほきみ,ものなおもほし,すめかみの,つぎてたまへる,われなけなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,和銅1年,年紀,作者:御名部皇女,奉和","#[訓異]
わがおほきみ,[寛]わかみかと,
ものなおもほし,[寛]ものなおもほしそ,
すめかみの[寛],
つぎてたまへる,[寛]つきてたまへる,
われなけなくに,[寛]われならなくに,
" "#[番号]01/0078","#[題詞]和銅三年庚戌春二月従藤原宮遷于寧樂宮時御輿停長屋原<廻>望古郷<作歌> [一書云 太上天皇御製]","#[原文]飛鳥 明日香能里乎 置而伊奈婆 君之當者 不所見香聞安良武 [一云 君之當乎 不見而香毛安良牟]","#[訓読]飛ぶ鳥の明日香の里を置きて去なば君があたりは見えずかもあらむ [一云 君があたりを見ずてかもあらむ]","#[仮名],とぶとりの,あすかのさとを,おきていなば,きみがあたりは,みえずかもあらむ,[きみがあたりを,みずてかもあらむ]","#[左注]","#[校異]迥 -> 廻 [元][類] / 御作歌 -> 作歌 [類][古][冷][紀]","#[事項],雑歌,和銅3年,年紀,作者:元明,持統,古歌,転用,遷都,望郷,恋情,枕詞,愛惜","#[訓異]
とぶとりの,[寛]とふとりの,
あすかのさとを[寛],
おきていなば,[寛]おきていなは,
きみがあたりは,[寛]きみのあたりは,
みえずかもあらむ,[寛]みえぬかもあらむ,
[きみがあたりを,
みずてかもあらむ]
" "#[番号]01/0079","#[題詞]或本従藤原<京>遷于寧樂宮時歌","#[原文]天皇乃 御命畏美 柔備尓之 家乎擇 隠國乃 泊瀬乃川尓 H浮而 吾行河乃 川隈之 八十阿不落 万段 顧為乍 玉桙乃 道行晩 青<丹>吉 楢乃京師乃 佐保川尓 伊去至而 我宿有 衣乃上従 朝月夜 清尓見者 栲乃穂尓 夜之霜落 磐床等 川之<水>凝 冷夜乎 息言無久 通乍 作家尓 千代二手 来座多公与 吾毛通武","#[訓読]大君の 命畏み 柔びにし 家を置き こもりくの 泊瀬の川に 舟浮けて 我が行く川の 川隈の 八十隈おちず 万たび かへり見しつつ 玉桙の 道行き暮らし あをによし 奈良の都の 佐保川に い行き至りて 我が寝たる 衣の上ゆ 朝月夜 さやかに見れば 栲の穂に 夜の霜降り 岩床と 川の水凝り 寒き夜を 息むことなく 通ひつつ 作れる家に 千代までに 来ませ大君よ 我れも通はむ","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,にきびにし,いへをおき,こもりくの,はつせのかはに,ふねうけて,わがゆくかはの,かはくまの,やそくまおちず,よろづたび,かへりみしつつ,たまほこの,みちゆきくらし,あをによし,ならのみやこの,さほかはに,いゆきいたりて,わがねたる,ころものうへゆ,あさづくよ,さやかにみれば,たへのほに,よるのしもふり,いはとこと,かはのみづこり,さむきよを,やすむことなく,かよひつつ,つくれるいへに,ちよまでに,きませおほきみよ,われもかよはむ","#[左注](右歌<作>主未詳)","#[校異]宮京 -> 京 [元][類][冷][紀] / 川 [類][古] 河 / <> -> 丹 [西(右書)][類][古][冷][紀] / 氷 -> 水 [類][冷] / 来 [万葉考](塙)(楓) 尓","#[事項],雑歌,遷都,藤原,奈良,地名,枕詞","#[訓異]
おほきみの,[寛]すめろきの,
みことかしこみ[寛],
にきびにし,[寛]にきひにし,
いへをおき,[寛]いへをえらひて,
こもりくの[寛],
はつせのかはに[寛],
ふねうけて[寛],
わがゆくかはの,[寛]わかゆくかはの,
かはくまの[寛],
やそくまおちず,[寛]やそくまおちす,
よろづたび,[寛]よそつたひ,
かへりみしつつ[寛],
たまほこの[寛],
みちゆきくらし[寛],
あをによし[寛],
ならのみやこの[寛],
さほかはに[寛],
いゆきいたりて[寛],
わがねたる,[寛]わかねたる,
ころものうへゆ,[寛]ころものうへに,
あさづくよ,[寛]あさつくよ,
さやかにみれば,[寛]さやかにみれは,
たへのほに[寛],
よるのしもふり[寛],
いはとこと[寛],
かはのみづこり,[寛]かはのひこりて,
さむきよを,[寛]さゆるよを,
やすむことなく,[寛]やむこともなく,
かよひつつ[寛],
つくれるいへに[寛],
ちよまでに,[寛]ちよにて,
きませおほきみよ,[寛]きませおほきみと,
われもかよはむ[寛],
" "#[番号]01/0080","#[題詞](或本従藤原<京>遷于寧樂宮時歌)反歌","#[原文]青丹吉 寧樂乃家尓者 万代尓 吾母将通 忘跡念勿","#[訓読]あをによし奈良の家には万代に我れも通はむ忘ると思ふな","#[仮名],あをによし,ならのいへには,よろづよに,われもかよはむ,わするとおもふな","#[左注]右歌<作>主未詳","#[校異]<> -> 作 [西(右書)][冷][紀][文]","#[事項],雑歌,遷都,藤原,奈良,枕詞,地名","#[訓異]
あをによし[寛],
ならのいへには[寛],
よろづよに,[寛]よろつよに,
われもかよはむ[寛],
わするとおもふな[寛],
" "#[番号]01/0081","#[題詞]和銅五年壬子夏四月遣長田王于伊勢齋宮時山邊御井<作>歌","#[原文]山邊乃 御井乎見我弖利 神風乃 伊勢處女等 相見鶴鴨","#[訓読]山辺の御井を見がてり神風の伊勢娘子どもあひ見つるかも","#[仮名],やまのへの,みゐをみがてり,かむかぜの,いせをとめども,あひみつるかも","#[左注]","#[校異]依 -> 作 [西(補訂)]","#[事項],雑歌,和銅5年4月,年紀,作者:長田王,伊勢,三重,御井,土地讃美,和銅,地名,枕詞","#[訓異]
やまのへの[寛],
みゐをみがてり,[寛]みゐをみかてり,
かむかぜの,[寛]かみかせの,
いせをとめども,[寛]いせのをとめら,
あひみつるかも[寛],
" "#[番号]01/0082","#[題詞](和銅五年壬子夏四月遣長田王于伊勢齋宮時山邊御井<作>歌)","#[原文]浦佐夫流 情佐麻<祢>之 久堅乃 天之四具礼能 流相見者","#[訓読]うらさぶる心さまねしひさかたの天のしぐれの流らふ見れば","#[仮名],うらさぶる,こころさまねし,ひさかたの,あめのしぐれの,ながらふみれば","#[左注](右二首今案不似御井所<作> 若疑當時誦之古歌歟)","#[校異]弥 -> 祢 [代匠記精撰本]","#[事項],雑歌,和銅5年4月,年紀,作者:長田王,伊勢,三重,御井,古歌,転用,和銅,枕詞","#[訓異]
うらさぶる,[寛]うらさふる,
こころさまねし,[寛]こころさまみし,
ひさかたの[寛],
あめのしぐれの,[寛]あまのしくれの,
ながらふみれば,[寛]なかれあふみは,
" "#[番号]01/0083","#[題詞](和銅五年壬子夏四月遣長田王于伊勢齋宮時山邊御井<作>歌)","#[原文]海底 奥津白波 立田山 何時鹿越奈武 妹之當見武","#[訓読]海の底沖つ白波龍田山いつか越えなむ妹があたり見む","#[仮名],わたのそこ,おきつしらなみ,たつたやま,いつかこえなむ,いもがあたりみむ","#[左注]右二首今案不似御井所<作> 若疑當時誦之古歌歟","#[校異]<> -> 作 [西(訂正)][冷][紀]","#[事項],雑歌,和銅5年4月,年紀,作者:長田王,伊勢,三重,御井,古歌,転用,和銅,羈旅,望郷,地名,序詞","#[訓異]
わたのそこ,[寛]わたつみの,
おきつしらなみ[寛],
たつたやま[寛],
いつかこえなむ[寛],
いもがあたりみむ,[寛]いもかあたりみむ,
" "#[番号]01/0084","#[題詞]寧樂宮 / 長皇子與志貴皇子於佐紀宮倶宴歌","#[原文]秋去者 今毛見如 妻戀尓 鹿将鳴山曽 高野原之宇倍","#[訓読]秋さらば今も見るごと妻恋ひに鹿鳴かむ山ぞ高野原の上","#[仮名],あきさらば,いまもみるごと,つまごひに,かなかむやまぞ,たかのはらのうへ","#[左注]右一首長皇子","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:長皇子,志貴皇子,宴席,屏風歌,奈良,動物,地名","#[訓異]
あきさらば,
いまもみるごと,
つまごひに,
かなかむやまぞ,
たかのはらのうへ
" "#[番号]02/0085","#[題詞]相聞 / 難波高津宮御宇天皇代 [大鷦鷯天皇 謚曰仁徳天皇] / 磐姫皇后思天皇御作歌四首","#[原文]君之行 氣長成奴 山多都祢 迎加将行 <待尓>可将待","#[訓読]君が行き日長くなりぬ山尋ね迎へか行かむ待ちにか待たむ","#[仮名],きみがゆき,けながくなりぬ,やまたづね,むかへかゆかむ,まちにかまたむ","#[左注]右一首歌山上憶良臣類聚歌林載焉","#[校異]尓待 -> 待尓 [西(訂正)][紀][金][温]","#[事項],相聞,仁徳天皇,作者:磐姫皇后,律令,情詩,閨房詩,大阪,伝承,仮託,恋情,女歌","#[訓異]
きみがゆき,[寛]きみかゆき,
けながくなりぬ,[寛]けなかくなりぬ,
やまたづね,[寛]やまたつね,
むかへかゆかむ[寛],
まちにかまたむ[寛],
" "#[番号]02/0086","#[題詞](相聞 / 難波高津宮御宇天皇代 [大鷦鷯天皇 謚曰仁徳天皇] / 磐姫皇后思天皇御作歌四首)","#[原文]如此許 戀乍不有者 高山之 磐根四巻手 死奈麻死物<呼>","#[訓読]かくばかり恋ひつつあらずは高山の磐根しまきて死なましものを","#[仮名],かくばかり,こひつつあらずは,たかやまの,いはねしまきて,しなましものを","#[左注]","#[校異]乎 -> 呼 [金]","#[事項],相聞,仁徳天皇,作者:磐姫皇后,律令,情詩,閨房詩,大阪,伝承,仮託,恋情,女歌","#[訓異]
かくばかり,[寛]かくはかり,
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
たかやまの[寛],
いはねしまきて[寛],
しなましものを[寛],
" "#[番号]02/0087","#[題詞](相聞 / 難波高津宮御宇天皇代 [大鷦鷯天皇 謚曰仁徳天皇] / 磐姫皇后思天皇御作歌四首)","#[原文]在管裳 君乎者将待 打靡 吾黒髪尓 霜乃置萬代日","#[訓読]ありつつも君をば待たむうち靡く我が黒髪に霜の置くまでに","#[仮名],ありつつも,きみをばまたむ,うちなびく,わがくろかみに,しものおくまでに","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,仁徳天皇,作者:磐姫皇后,律令,情詩,閨房詩,大阪,伝承,仮託,恋情,女歌","#[訓異]
ありつつも[寛],
きみをばまたむ,[寛]きみをはまたむ,
うちなびく,[寛]うちなひき,
わがくろかみに,[寛]わかくろかみに,
しものおくまでに,[寛]しものおくまてに,
" "#[番号]02/0088","#[題詞](相聞 / 難波高津宮御宇天皇代 [大鷦鷯天皇 謚曰仁徳天皇] / 磐姫皇后思天皇御作歌四首)","#[原文]秋田之 穂上尓霧相 朝霞 何時邊乃方二 我戀将息","#[訓読]秋の田の穂の上に霧らふ朝霞いつへの方に我が恋やまむ","#[仮名],あきのたの,ほのへにきらふ,あさかすみ,いつへのかたに,あがこひやまむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,仁徳天皇,作者:磐姫皇后,律令,情詩,閨房詩,大阪,伝承,仮託,恋情,女歌","#[訓異]
あきのたの[寛],
ほのへにきらふ,[寛]ほのうへにきりあふ,
あさかすみ[寛],
いつへのかたに[寛],
あがこひやまむ,[寛]わかこひやまむ,
" "#[番号]02/0089","#[題詞](相聞 / 難波高津宮御宇天皇代 [大鷦鷯天皇 謚曰仁徳天皇] / 磐姫皇后思天皇御作歌四首)或本歌曰","#[原文]居明而 君乎者将待 奴婆珠<能> 吾黒髪尓 霜者零騰文","#[訓読]居明かして君をば待たむぬばたまの我が黒髪に霜は降るとも","#[仮名],ゐあかして,きみをばまたむ,ぬばたまの,わがくろかみに,しもはふるとも","#[左注]右一首古歌集中出","#[校異]乃 -> 能 [金][紀]","#[事項],相聞,仁徳天皇,作者:磐姫皇后,律令,情詩,閨房詩,或本歌,古歌集,大阪,伝承,仮託,恋情,女歌,枕詞","#[訓異]
ゐあかして[寛],
きみをばまたむ,[寛]きみをはまたむ,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
わがくろかみに,[寛]わかくろかみに,
しもはふるとも[寛],
" "#[番号]02/0090","#[題詞]古事記曰 軽太子奸軽太郎女 故其太子流於伊豫湯也 此時衣通王 不堪戀<慕>而追徃時歌曰","#[原文]君之行 氣長久成奴 山多豆乃 迎乎将徃 待尓者不待","#[訓読]君が行き日長くなりぬ山たづの迎へを行かむ待つには待たじ","#[仮名],きみがゆき,けながくなりぬ,やまたづの,むかへをゆかむ,まつにはまたじ","#[左注]右一首歌古事記与類聚<歌林>所説不同歌主亦異焉 因檢日本紀曰難波高津宮御宇大鷦鷯天皇廿二年春正月天皇語皇后納八田皇女将為妃 時皇后不聴 爰天皇歌以乞於皇后云々 卅年秋九月乙卯朔乙丑皇后遊行紀伊國到熊野岬 取其處之御綱葉而還 於是天皇伺皇后不在而娶八田皇女納於宮中時皇后 到難波濟 聞天皇合八田皇女大恨之云々 亦曰 遠飛鳥宮御宇雄朝嬬稚子宿祢天皇廿三年春<三>月甲午朔庚子 木梨軽皇子為太子 容姿佳麗見者自感 同母妹軽太娘皇女亦艶妙也云々 遂竊通乃悒懐少息 廿四年夏六月御羮汁凝以作氷 天皇異之卜其所由 卜者曰 有内乱 盖親々相奸乎云々 仍移太娘皇女於伊<豫>者 今案二代二時不見此歌也","#[校異]","#[事項],相聞,仁徳天皇,作者:磐姫皇后,律令,情詩,閨房詩,古事記,異伝,玉台新詠,軽皇女,大阪,伝承,仮託,恋情,女歌,植物,枕詞,伝誦","#[訓異]
きみがゆき,[寛]きみかゆき,
けながくなりぬ,[寛]けなかくなりぬ,
やまたづの,[寛]やまたつの,
むかへをゆかむ[寛],
まつにはまたじ,[寛]まちにはまたし,
" "#[番号]02/0091","#[題詞]近江大津宮御宇天皇代 [天命開別天皇 謚曰天智天皇] / 天皇賜鏡王女御歌一首","#[原文]妹之家毛 継而見麻思乎 山跡有 大嶋嶺尓 家母有猿尾 [一云 妹之當継而毛見武尓] [一云 家居麻之乎]","#[訓読]妹が家も継ぎて見ましを大和なる大島の嶺に家もあらましを [一云 妹があたり継ぎても見むに] [一云 家居らましを]","#[仮名],いもがいへも,つぎてみましを,やまとなる,おほしまのねに,いへもあらましを,[いもがあたり,つぎてもみむに][いへをらましを]","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:天智天皇,鏡王女,見る,国見,異伝,贈答,歌垣,奈良,地名","#[訓異]
いもがいへも,[寛]いもかいへも,
つぎてみましを,[寛]つきてみましを,
やまとなる[寛],
おほしまのねに,[寛]おほしまみねに,
いへもあらましを[寛],
[いもがあたり,
つぎてもみむに],
[いへをらましを],
" "#[番号]02/0092","#[題詞]鏡王女奉和御歌一首","#[原文]秋山之 樹下隠 逝水乃 吾許曽益目 御念従者","#[訓読]秋山の木の下隠り行く水の我れこそ益さめ御思ひよりは","#[仮名],あきやまの,このしたがくり,ゆくみづの,われこそまさめ,みおもひよりは","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:鏡王女,和,天智,贈答,歌垣,奈良,女歌","#[訓異]
あきやまの[寛],
このしたがくり,[寛]このしたかくれ,
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
われこそまさめ[寛],
みおもひよりは[寛],
" "#[番号]02/0093","#[題詞]内大臣藤原卿娉鏡王女時鏡王女贈内大臣歌一首","#[原文]玉匣 覆乎安美 開而行者 君名者雖有 吾名之惜<裳>","#[訓読]玉櫛笥覆ふを安み明けていなば君が名はあれど吾が名し惜しも","#[仮名],たまくしげ,おほふをやすみ,あけていなば,きみがなはあれど,わがなしをしも","#[左注]","#[校異]毛 -> 裳 [元][金][紀]","#[事項],相聞,恋愛,作者:鏡王女,藤原鎌足,娉,名前,贈答,歌垣,比喩","#[訓異]
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
おほふをやすみ,[寛]ををふをやすみ,
あけていなば,[寛]あけてゆかは,
きみがなはあれど,[寛]きみかなはあれと,
わがなしをしも,[寛]わかなしをしも,
" "#[番号]02/0094","#[題詞]内大臣藤原卿報贈鏡王女歌一首","#[原文]玉匣 将見圓山乃 狭名葛 佐不寐者遂尓 有勝麻之<自> [玉匣 三室戸山乃]","#[訓読]玉櫛笥みむろの山のさな葛さ寝ずはつひに有りかつましじ [玉くしげ三室戸山の]","#[仮名],たまくしげ,みむろのやまの,さなかづら,さねずはつひに,ありかつましじ,[たまくしげ,みむろとやまの]","#[左注]","#[校異]目 -> 自 [元][類]","#[事項],相聞,恋愛,作者:藤原鎌足,鏡王女,贈答,異伝,歌垣,枕詞,地名,植物,序詞","#[訓異]
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
みむろのやまの,[寛]みむまとやまの,
さなかづら,[寛]さねかつら,
さねずはつひに,[寛]さねすはつゐに,
ありかつましじ,[寛]ありかてましも,
[たまくしげ,
みむろとやまの]
" "#[番号]02/0095","#[題詞]内大臣藤原卿娶釆女安見<兒>時作歌一首","#[原文]吾者毛也 安見兒得有 皆人乃 得難尓為云 安見兒衣多利","#[訓読]我れはもや安見児得たり皆人の得かてにすとふ安見児得たり","#[仮名],われはもや,やすみこえたり,みなひとの,えかてにすとふ,やすみこえたり","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:藤原鎌足,安見児,采女,娶,宴席,歌謡,即興的,口誦","#[訓異]
われはもや[寛],
やすみこえたり[寛],
みなひとの[寛],
えかてにすとふ,[寛]えかてにすといふ,
やすみこえたり[寛],
" "#[番号]02/0096","#[題詞]久米禅師娉石川郎女時歌五首","#[原文]水薦苅 信濃乃真弓 吾引者 宇真人<佐>備而 不欲常将言可聞 [禅師]","#[訓読]み薦刈る信濃の真弓我が引かば貴人さびていなと言はむかも [禅師]","#[仮名],みこもかる,しなぬのまゆみ,わがひかば,うまひとさびて,いなといはむかも","#[左注]","#[校異]作 -> 佐 [元][金][類]","#[事項],相聞,作者:久米禅師,石川郎女,歌垣,求婚,掛け合い歌,枕詞,比喩","#[訓異]
みこもかる,[寛]みくさかる,
しなぬのまゆみ,[寛]しなののまゆみ,
わがひかば,[寛]わかひかは,
うまひとさびて,[寛]うまひとさひて,
いなといはむかも[寛],
" "#[番号]02/0097","#[題詞](久米禅師娉石川郎女時歌五首)","#[原文]三薦苅 信濃乃真弓 不引為而 強<佐>留行事乎 知跡言莫君二 [郎女]","#[訓読]み薦刈る信濃の真弓引かずして強ひさるわざを知ると言はなくに [郎女]","#[仮名],みこもかる,しなぬのまゆみ,ひかずして,しひさるわざを,しるといはなくに","#[左注]","#[校異]作 -> 佐 [元][金][類]","#[事項],相聞,作者:石川郎女,久米禅師,歌垣,拒否,掛け合い歌,比喩,枕詞","#[訓異]
みこもかる,[寛]みくさかる,
しなぬのまゆみ,[寛]しなののまゆみ,
ひかずして,[寛]ひかすして,
しひさるわざを,[寛]しひさるわさを,
しるといはなくに[寛],
" "#[番号]02/0098","#[題詞](久米禅師娉石川郎女時歌五首)","#[原文]梓弓 引者随意 依目友 後心乎 知勝奴鴨 [郎女]","#[訓読]梓弓引かばまにまに寄らめども後の心を知りかてぬかも [郎女]","#[仮名],あづさゆみ,ひかばまにまに,よらめども,のちのこころを,しりかてぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:石川郎女,久米禅師,歌垣,掛け合い歌,比喩","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
ひかばまにまに,[寛]ひかはまにまに,
よらめども,[寛]よらめとも,
のちのこころを[寛],
しりかてぬかも[寛],
" "#[番号]02/0099","#[題詞](久米禅師娉石川郎女時歌五首)","#[原文]梓弓 都良絃取波氣 引人者 後心乎 知人曽引 [禅師]","#[訓読]梓弓弦緒取りはけ引く人は後の心を知る人ぞ引く [禅師]","#[仮名],あづさゆみ,つらをとりはけ,ひくひとは,のちのこころを,しるひとぞひく","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:久米禅師,石川郎女,歌垣,掛け合い歌,比喩","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
つらをとりはけ[寛],
ひくひとは[寛],
のちのこころを[寛],
しるひとぞひく,[寛]しるひとそひく,
" "#[番号]02/0100","#[題詞](久米禅師娉石川郎女時歌五首)","#[原文]東人之 荷向篋乃 荷之緒尓毛 妹情尓 乗尓家留香問 [禅師]","#[訓読]東人の荷前の箱の荷の緒にも妹は心に乗りにけるかも [禅師]","#[仮名],あづまひとの,のさきのはこの,にのをにも,いもはこころに,のりにけるかも","#[左注]","#[校異]問 [元][類] 聞","#[事項],相聞,作者:久米禅師,石川郎女,歌垣,掛け合い歌,序詞","#[訓異]
あづまひとの,[寛]あつまの,
のさきのはこの[寛],
にのをにも[寛],
いもはこころに,[寛]いもかこころに,
のりにけるかも[寛],
" "#[番号]02/0101","#[題詞]大伴宿祢娉巨勢郎女時歌一首 [大伴宿祢諱曰安麻呂也難波朝右大臣大紫大伴長徳卿之第六子平城朝任大納言兼大将軍薨也]","#[原文]玉葛 實不成樹尓波 千磐破 神曽著常云 不成樹別尓","#[訓読]玉葛実ならぬ木にはちはやぶる神ぞつくといふならぬ木ごとに","#[仮名],たまかづら,みならぬきには,ちはやぶる,かみぞつくといふ,ならぬきごとに","#[左注]","#[校異]磐 [元][類] 盤","#[事項],相聞,作者:大伴安麻呂,巨勢郎女,掛け合い歌,植物,比喩","#[訓異]
たまかづら,[寛]たまかつら,
みならぬきには[寛],
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
かみぞつくといふ,[寛]かそつくとい,
ならぬきごとに,[寛]ならぬきことに,
" "#[番号]02/0102","#[題詞]巨勢郎女報贈歌一首 [即近江朝大納言巨勢人卿之女也]","#[原文]玉葛 花耳開而 不成有者 誰戀尓有目 吾孤悲念乎","#[訓読]玉葛花のみ咲きてならずあるは誰が恋にあらめ我れ恋ひ思ふを","#[仮名],たまかづら,はなのみさきて,ならずあるは,たがこひにあらめ,あはこひもふを","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:巨勢郎女,大伴安麻呂,掛け合い歌,植物,比喩","#[訓異]
たまかづら,[寛]たまかつら,
はなのみさきて[寛],
ならずあるは,[寛]ならすあるは,
たがこひにあらめ,[寛]たかこひにあらめ,
あはこひもふを,[寛]わかこひおもふを,
" "#[番号]02/0103","#[題詞]明日香清御原宮御宇天皇代 [天渟<中>原瀛真人天皇謚曰天武天皇] / 天皇賜藤原夫人御歌一首","#[原文]吾里尓 大雪落有 大原乃 古尓之郷尓 落巻者後","#[訓読]我が里に大雪降れり大原の古りにし里に降らまくは後","#[仮名],わがさとに,おほゆきふれり,おほはらの,ふりにしさとに,ふらまくはのち","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:天武天皇,藤原夫人,贈答,掛け合い歌,飛鳥,地名","#[訓異]
わがさとに,[寛]わかさとに,
おほゆきふれり[寛],
おほはらの[寛],
ふりにしさとに[寛],
ふらまくはのち[寛],
" "#[番号]02/0104","#[題詞]藤原夫人奉和歌一首","#[原文]吾岡之 於可美尓言而 令落 雪之摧之 彼所尓塵家武","#[訓読]我が岡のおかみに言ひて降らしめし雪のくだけしそこに散りけむ","#[仮名],わがをかの,おかみにいひて,ふらしめし,ゆきのくだけし,そこにちりけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:藤原夫人,天武天皇,贈答,掛け合い歌,飛鳥,地名","#[訓異]
わがをかの,
おかみにいひて,
ふらしめし,
ゆきのくだけし,
そこにちりけむ
" "#[番号]02/0105","#[題詞]藤原宮御宇天皇<代> [天皇謚曰持統天皇元年丁亥十一年譲位軽太子尊号曰太上天皇也] / 大津皇子竊下於伊勢神宮上来時大伯皇女御作歌二首","#[原文]吾勢I乎 倭邊遺登 佐夜深而 鷄鳴露尓 吾立所霑之","#[訓読]我が背子を大和へ遣るとさ夜更けて暁露に我れ立ち濡れし","#[仮名],わがせこを,やまとへやると,さよふけて,あかときつゆに,われたちぬれし","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伯皇女,大津皇子,伊勢神宮,悲劇,歌語り,斎宮,見送り,羈旅,三重,地名","#[訓異]
わがせこを,[寛]わかせこを,
やまとへやると[寛],
さよふけて[寛],
あかときつゆに,[寛]あかつきつゆに,
われたちぬれし,[寛]わかたちぬれれ,
" "#[番号]02/0106","#[題詞](大津皇子竊下於伊勢神宮上来時大伯皇女御作歌二首)","#[原文]二人行杼 去過難寸 秋山乎 如何君之 獨越武","#[訓読]ふたり行けど行き過ぎかたき秋山をいかにか君がひとり越ゆらむ","#[仮名],ふたりゆけど,ゆきすぎかたき,あきやまを,いかにかきみが,ひとりこゆらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伯皇女,大津皇子,伊勢神宮,悲劇,歌語り,斎宮,見送り,羈旅,三重,地名","#[訓異]
ふたりゆけど,[寛]ふたりゆけと,
ゆきすぎかたき,[寛]ゆきすきかたき,
あきやまを[寛],
いかにかきみが,[寛]いかにかきみか,
ひとりこゆらむ[寛],
" "#[番号]02/0107","#[題詞]大津皇子贈石川郎女御歌一首","#[原文]足日木乃 山之四付二 妹待跡 吾立所<沾> 山之四附二","#[訓読]あしひきの山のしづくに妹待つと我れ立ち濡れぬ山のしづくに","#[仮名],あしひきの,やまのしづくに,いもまつと,われたちぬれぬ,やまのしづくに","#[左注]","#[校異]沽 -> 沾 [金][細][京]","#[事項],相聞,作者:大津皇子,石川郎女,歌垣,掛け合い歌,歌語り,枕詞","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまのしづくに,[寛]やまのしつくに,
いもまつと[寛],
われたちぬれぬ[寛],
やまのしづくに,[寛]やまのしつくに,
" "#[番号]02/0108","#[題詞]石川郎女奉和歌一首","#[原文]吾乎待跡 君之<沾>計武 足日木能 山之四附二 成益物乎","#[訓読]我を待つと君が濡れけむあしひきの山のしづくにならましものを","#[仮名],あをまつと,きみがぬれけむ,あしひきの,やまのしづくに,ならましものを","#[左注]","#[校異]沽 -> 沾 [金][細][京]","#[事項],相聞,作者:石川郎女,大津皇子,歌垣,掛け合い歌,歌語り,枕詞","#[訓異]
あをまつと,[寛]われをまつと,
きみがぬれけむ,[寛]きみかぬれけむ,
あしひきの[寛],
やまのしづくに,[寛]やまのしつくに,
ならましものを[寛],
" "#[番号]02/0109","#[題詞]大津皇子竊婚石川女郎時津守連通占露其事皇子御作歌一首 <[未詳]>","#[原文]大船之 津守之占尓 将告登波 益為尓知而 我二人宿之","#[訓読]大船の津守が占に告らむとはまさしに知りて我がふたり寝し","#[仮名],おほぶねの,つもりがうらに,のらむとは,まさしにしりて,わがふたりねし","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大津皇子,石川郎女,津守通,占い,歌語り,枕詞","#[訓異]
おほぶねの,[寛]おほふねの,
つもりがうらに,[寛]つもりのうらに,
のらむとは,[寛]つけむとは,
まさしにしりて[寛],
わがふたりねし,[寛]わかふたりねし,
" "#[番号]02/0110","#[題詞]日並皇子尊贈賜石川女郎御歌一首 [女郎字曰大名兒也]","#[原文]大名兒 彼方野邊尓 苅草乃 束之間毛 吾忘目八","#[訓読]大名児を彼方野辺に刈る草の束の間も我れ忘れめや","#[仮名],おほなこを,をちかたのへに,かるかやの,つかのあひだも,われわすれめや","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:日並皇子:草壁皇子,石川郎女,大津皇子,大名兒,歌語り,序詞,植物","#[訓異]
おほなこを[寛],
をちかたのへに[寛],
かるかやの[寛],
つかのあひだも,[寛]つかのあひたも,
われわすれめや[寛],
" "#[番号]02/0111","#[題詞]幸于吉野宮時弓削皇子贈与額田王歌一首","#[原文]古尓 戀流鳥鴨 弓絃葉乃 三井能上従 <鳴><濟>遊久","#[訓読]いにしへに恋ふる鳥かも弓絃葉の御井の上より鳴き渡り行く","#[仮名],いにしへに,こふるとりかも,ゆづるはの,みゐのうへより,なきわたりゆく","#[左注]","#[校異]<> -> 鳴 [西(右書)][元][金] / 渡 -> 濟 [元][金]","#[事項],相聞,作者:弓削皇子,額田王,懐古,動物,贈答,吉野,行幸,動物,植物,持統","#[訓異]
いにしへに[寛],
こふるとりかも[寛],
ゆづるはの,[寛]ゆつるはの,
みゐのうへより[寛],
なきわたりゆく[寛],
" "#[番号]02/0112","#[題詞]額田王奉和歌一首 [従倭京進入]","#[原文]古尓 戀良武鳥者 霍公鳥 盖哉鳴之 吾<念>流<碁>騰","#[訓読]いにしへに恋ふらむ鳥は霍公鳥けだしや鳴きし我が念へるごと","#[仮名],いにしへに,こふらむとりは,ほととぎす,けだしやなきし,あがもへるごと","#[左注]","#[校異]戀 -> 念 [元][金][類][紀] / 其 -> 碁 [紀]","#[事項],相聞,作者:額田王,弓削皇子,贈答,懐古,吉野,行幸,動物,持統","#[訓異]
いにしへに[寛],
こふらむとりは[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
けだしやなきし,[寛]けたしやなきし,
あがもへるごと,[寛]わかこふること,
" "#[番号]02/0113","#[題詞]従吉野折取蘿生松柯遣時額田王奉入歌一首","#[原文]三吉野乃 玉松之枝者 波思吉香聞 君之御言乎 持而加欲波久","#[訓読]み吉野の玉松が枝ははしきかも君が御言を持ちて通はく","#[仮名],みよしのの,たままつがえは,はしきかも,きみがみことを,もちてかよはく","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:額田王,弓削皇子,吉野,行幸,地名,植物,持統","#[訓異]
みよしのの[寛],
たままつがえは,[寛]たままつかえは,
はしきかも[寛],
きみがみことを,[寛]きみかみことを,
もちてかよはく[寛],
" "#[番号]02/0114","#[題詞]但馬皇女在高市皇子宮時思穂積皇子御作歌一首","#[原文]秋田之 穂向乃所縁 異所縁 君尓因奈名 事痛有登母","#[訓読]秋の田の穂向きの寄れる片寄りに君に寄りなな言痛くありとも","#[仮名],あきのたの,ほむきのよれる,かたよりに,きみによりなな,こちたくありとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:但馬皇女,穂積皇子,恋愛,歌語り,高市皇子,植物","#[訓異]
あきのたの[寛],
ほむきのよれる,[寛]ほむけのよする,
かたよりに[寛],
きみによりなな[寛],
こちたくありとも,[寛]こなたかりとも,
" "#[番号]02/0115","#[題詞]勅穂積皇子遣近江志賀山寺時但馬皇女御作歌一首","#[原文]遺居<而> 戀管不有者 追及武 道之阿廻尓 標結吾勢","#[訓読]後れ居て恋ひつつあらずは追ひ及かむ道の隈廻に標結へ我が背","#[仮名],おくれゐて,こひつつあらずは,おひしかむ,みちのくまみに,しめゆへわがせ","#[左注]","#[校異]与 -> 而 [元][類][紀]","#[事項],相聞,作者:但馬皇女,穂積皇子,恋愛,歌語り","#[訓異]
おくれゐて[寛],
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
おひしかむ,[寛]おひゆかむ,
みちのくまみに,[寛]みちのくまわに,
しめゆへわがせ,[寛]しめゆへわかせ,
" "#[番号]02/0116","#[題詞]但馬皇女在高市皇子宮時竊接穂積皇子事既形而御作<歌>一首","#[原文]人事乎 繁美許知痛美 己世尓 未渡 朝川渡","#[訓読]人言を繁み言痛みおのが世にいまだ渡らぬ朝川渡る","#[仮名],ひとごとを,しげみこちたみ,おのがよに,いまだわたらぬ,あさかはわたる","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:但馬皇女,穂積皇子,恋愛,密通,歌語り,川渡り,うわさ,人言","#[訓異]
ひとごとを,[寛]ひとことを,
しげみこちたみ,[寛]しけみこちたみ,
おのがよに,[寛]おのかよに,
いまだわたらぬ,[寛]いまたわたらぬ,
あさかはわたる[寛],
" "#[番号]02/0117","#[題詞]舎人皇子御歌一首","#[原文]大夫哉 片戀将為跡 嘆友 鬼乃益卜雄 尚戀二家里","#[訓読]ますらをや片恋せむと嘆けども醜のますらをなほ恋ひにけり","#[仮名],ますらをや,かたこひせむと,なげけども,しこのますらを,なほこひにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:舎人皇子,大夫,恋愛","#[訓異]
ますらをや[寛],
かたこひせむと[寛],
なげけども,[寛]なけけとも,
しこのますらを[寛],
なほこひにけり[寛],
" "#[番号]02/0118","#[題詞]舎人娘子奉和歌一首","#[原文]<嘆>管 大夫之 戀礼許曽 吾髪結乃 漬而奴礼計礼","#[訓読]嘆きつつますらをのこの恋ふれこそ我が髪結ひの漬ちてぬれけれ","#[仮名],なげきつつ,ますらをのこの,こふれこそ,わがかみゆひの,ひちてぬれけれ","#[左注]","#[校異]歎 -> 嘆 [元][金] / 髪結 [元] 結髪","#[事項],相聞,作者:舎人娘子,大夫,恋愛","#[訓異]
なげきつつ,[寛]なけきつつ,
ますらをのこの[寛],
こふれこそ[寛],
わがかみゆひの,[寛]わかゆふかみの,
ひちてぬれけれ[寛],
" "#[番号]02/0119","#[題詞]弓削皇子思紀皇女御歌四首","#[原文]芳野河 逝瀬之早見 須臾毛 不通事無 有巨勢<濃>香問","#[訓読]吉野川行く瀬の早みしましくも淀むことなくありこせぬかも","#[仮名],よしのかは,ゆくせのはやみ,しましくも,よどむことなく,ありこせぬかも","#[左注]","#[校異]流 -> 濃 [西(右書)][元][金][紀] / 問 [類][古][紀] 聞","#[事項],相聞,作者:弓削皇子,紀皇女,恋愛,恋の停滞,地名","#[訓異]
よしのかは[寛],
ゆくせのはやみ[寛],
しましくも,[寛]しはらくも,
よどむことなく,[寛]たゆることなく,
ありこせぬかも[寛],
" "#[番号]02/0120","#[題詞](弓削皇子思紀皇女御歌四首)","#[原文]吾妹兒尓 戀乍不有者 秋芽之 咲而散去流 花尓有猿尾","#[訓読]我妹子に恋ひつつあらずは秋萩の咲きて散りぬる花にあらましを","#[仮名],わぎもこに,こひつつあらずは,あきはぎの,さきてちりぬる,はなにあらましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:弓削皇子,紀皇女,恋歌,磐姫皇后歌,反実仮想,散る花,植物","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こひつつあらずは,[寛]こひつあらすは,
あきはぎの,[寛]あきはきの,
さきてちりぬる[寛],
はなにあらましを[寛],
" "#[番号]02/0121","#[題詞](弓削皇子思紀皇女御歌四首)","#[原文]暮去者 塩満来奈武 住吉乃 淺鹿乃浦尓 玉藻苅手名","#[訓読]夕さらば潮満ち来なむ住吉の浅香の浦に玉藻刈りてな","#[仮名],ゆふさらば,しほみちきなむ,すみのえの,あさかのうらに,たまもかりてな","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:弓削皇子,紀皇女,恋歌,玉藻刈り,比喩,地名,植物","#[訓異]
ゆふさらば,[寛]ゆふされは,
しほみちきなむ[寛],
すみのえの[寛],
あさかのうらに[寛],
たまもかりてな[寛],
" "#[番号]02/0122","#[題詞](弓削皇子思紀皇女御歌四首)","#[原文]大船之 泊流登麻里能 絶多日二 物念痩奴 人能兒故尓","#[訓読]大船の泊つる泊りのたゆたひに物思ひ痩せぬ人の子故に","#[仮名],おほぶねの,はつるとまりの,たゆたひに,ものもひやせぬ,ひとのこゆゑに","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:弓削皇子,紀皇女,恋歌","#[訓異]
おほぶねの,[寛]おほふねの,
はつるとまりの[寛],
たゆたひに[寛],
ものもひやせぬ,[寛]ものおもひやせぬ,
ひとのこゆゑに[寛],
" "#[番号]02/0123","#[題詞]三方沙弥娶園臣生羽之女未經幾時臥病作歌三首","#[原文]多氣婆奴礼 多香根者長寸 妹之髪 此来不見尓 掻入津良武香 [三方沙弥]","#[訓読]たけばぬれたかねば長き妹が髪このころ見ぬに掻き入れつらむか [三方沙弥]","#[仮名],たけばぬれ,たかねばながき,いもがかみ,このころみぬに,かきいれつらむか","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:三方沙弥,園臣生羽女,恋歌,心配","#[訓異]
たけばぬれ,[寛]たけはぬれ,
たかねばながき,[寛]たかねはなかき,
いもがかみ,[寛]いもかかみ,
このころみぬに[寛],
かきいれつらむか,[寛]みたりつらむか,
" "#[番号]02/0124","#[題詞](三方沙弥娶園臣生羽之女未經幾時臥病作歌三首)","#[原文]人皆者 今波長跡 多計登雖言 君之見師髪 乱有等母 [娘子]","#[訓読]人皆は今は長しとたけと言へど君が見し髪乱れたりとも [娘子]","#[仮名],ひとみなは,いまはながしと,たけといへど,きみがみしかみ,みだれたりとも","#[左注]","#[校異]皆者 [元][紀] 者皆","#[事項],相聞,作者:園生羽女,三方沙弥,恋歌,なぐさめ,安心","#[訓異]
ひとみなは[寛],
いまはながしと,[寛]いまはなかしと,
たけといへど,[寛]たけといへと,
きみがみしかみ,[寛]きみかみしかみ,
みだれたりとも,[寛]みたれたれとも,
" "#[番号]02/0125","#[題詞](三方沙弥娶園臣生羽之女未經幾時臥病作歌三首)","#[原文]橘之 蔭履路乃 八衢尓 物乎曽念 妹尓不相而 [三方沙弥]","#[訓読]橘の蔭踏む道の八衢に物をぞ思ふ妹に逢はずして [三方沙弥]","#[仮名],たちばなの,かげふむみちの,やちまたに,ものをぞおもふ,いもにあはずして","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:三方沙弥,物思い,植物","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
かげふむみちの,[寛]かけふむみちの,
やちまたに[寛],
ものをぞおもふ,[寛]ものをそおもふ,
いもにあはずして,[寛]いもにあはすて,
" "#[番号]02/0126","#[題詞]石川女郎贈大伴宿祢田主歌一首 [即佐保大納言大伴卿<之>第二子 母曰巨勢朝臣也]","#[原文]遊士跡 吾者聞流乎 屋戸不借 吾乎還利 於曽能風流士","#[訓読]風流士と我れは聞けるをやど貸さず我れを帰せりおその風流士","#[仮名],みやびをと,われはきけるを,やどかさず,われをかへせり,おそのみやびを","#[左注]大伴田主字曰仲郎 容姿佳艶風流秀絶 見人聞者靡不歎息也 時有石川女郎 自成雙栖之感恒悲獨守之難 意欲寄書未逢良信 爰作方便而似賎嫗 己提堝子而到寝側 哽音J足叩戸諮曰 東隣貧女将取火来矣 於是仲郎 暗裏非識冒隠之形 慮外不堪拘接之計 任念取火就跡歸去也 明後女郎 既恥自媒之可愧 復恨心契之弗果 因作斯歌以贈謔<戯>焉","#[校異]","#[事項],相聞,作者:石川女郎,大伴田主,贈答,掛け合い,歌語り","#[訓異]
みやびをと,[寛]たはれをと,
われはきけるを[寛],
やどかさず,[寛]やとかさす,
われをかへせり[寛],
おそのみやびを,[寛]おそのたはれを,
" "#[番号]02/0127","#[題詞]大伴宿祢田主報贈<歌>一首","#[原文]遊士尓 吾者有家里 屋戸不借 令還吾曽 風流士者有","#[訓読]風流士に我れはありけりやど貸さず帰しし我れぞ風流士にはある","#[仮名],みやびをに,われはありけり,やどかさず,かへししわれぞ,みやびをにはある","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴田主,石川女郎,贈答,掛け合い,歌語り","#[訓異]
みやびをに,[寛]たはれをに,
われはありけり,[寛]われはありなり,
やどかさず,[寛]やとかさす,
かへししわれぞ,[寛]かへせるわれそ,
みやびをにはある,[寛]たはれをにある,
" "#[番号]02/0128","#[題詞]同石川女郎更贈大伴田主中郎歌一首","#[原文]吾聞之 耳尓好似 葦若<末>乃 足痛吾勢 勤多扶倍思","#[訓読]我が聞きし耳によく似る葦の末の足ひく我が背つとめ給ぶべし","#[仮名],わがききし,みみによくにる,あしのうれの,あしひくわがせ,つとめたぶべし","#[左注]右依中郎足疾贈此歌問訊也","#[校異]未 -> 末 [万葉考]","#[事項],相聞,作者:石川女郎,大伴田主,贈答,掛け合い,歌語り,植物","#[訓異]
わがききし,[寛]わかききし,
みみによくにる,[寛]みみによくには,
あしのうれの,[寛]あしかひの,
あしひくわがせ,[寛]あなへくわかせ,
つとめたぶべし,[寛]つとめたふへし,
" "#[番号]02/0129","#[題詞]大<津>皇子宮侍石川女郎贈大伴宿祢宿奈麻呂歌一首 [女郎字曰山田郎女也宿奈麻呂宿祢者大納言兼大将軍卿之第三子也]","#[原文]古之 嫗尓為而也 如此許 戀尓将沈 如手童兒 [戀乎<大>尓忍金手武多和良波乃如]","#[訓読]古りにし嫗にしてやかくばかり恋に沈まむ手童のごと [恋をだに忍びかねてむ手童のごと]","#[仮名],ふりにし,おみなにしてや,かくばかり,こひにしづまむ,たわらはのごと,[こひをだに,しのびかねてむ,たわらはのごと]","#[左注]","#[校異]伴 -> 津 [元][古][紀] / 大 [紀][温][矢] 太","#[事項],相聞,作者:石川女郎,大伴宿奈麻呂,大津皇子,山田郎女,恋歌,恋情","#[訓異]
ふりにし,[寛]いにしへの,
おみなにしてや,[寛]をうなにしてや,
かくばかり,[寛]かくはかり,
こひにしづまむ,[寛]こひにしつまむ,
たわらはのごと,[寛]たたわらはこと,
[こひをだに,
しのびかねてむ,
たわらはのごと]
" "#[番号]02/0130","#[題詞]長皇子与皇弟御歌一首","#[原文]丹生乃河 瀬者不渡而 由久遊久登 戀痛吾弟 乞通来祢","#[訓読]丹生の川瀬は渡らずてゆくゆくと恋痛し我が背いで通ひ来ね","#[仮名],にふのかは,せはわたらずて,ゆくゆくと,こひたしわがせ,いでかよひこね","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:長皇子,弓削皇子,弟,恋情,川渡り,同性,恋歌,地名,贈答","#[訓異]
にふのかは[寛],
せはわたらずて,[寛]せをはわたらて,
ゆくゆくと[寛],
こひたしわがせ,[寛]こひいたむわかせ,
いでかよひこね,[寛]こちかよひこね,
" "#[番号]02/0131","#[題詞]柿本朝臣人麻呂従石見國別妻上来時歌二首[并短歌]","#[原文]石見乃海 角乃浦廻乎 浦無等 人社見良目 滷無等 [一云 礒無登] 人社見良目 能咲八師 浦者無友 縦畫屋師 滷者 [一云 礒者] 無鞆 鯨魚取 海邊乎指而 和多豆乃 荒礒乃上尓 香青生 玉藻息津藻 朝羽振 風社依米 夕羽振流 浪社来縁 浪之共 彼縁此依 玉藻成 依宿之妹乎 [一云 波之伎余思 妹之手本乎] 露霜乃 置而之来者 此道乃 八十隈毎 萬段 顧為騰 弥遠尓 里者放奴 益高尓 山毛越来奴 夏草之 念思奈要而 志<怒>布良武 妹之門将見 靡此山","#[訓読]石見の海 角の浦廻を 浦なしと 人こそ見らめ 潟なしと [一云 礒なしと] 人こそ見らめ よしゑやし 浦はなくとも よしゑやし 潟は [一云 礒は] なくとも 鯨魚取り 海辺を指して 柔田津の 荒礒の上に か青なる 玉藻沖つ藻 朝羽振る 風こそ寄せめ 夕羽振る 波こそ来寄れ 波のむた か寄りかく寄り 玉藻なす 寄り寝し妹を [一云 はしきよし 妹が手本を] 露霜の 置きてし来れば この道の 八十隈ごとに 万たび かへり見すれど いや遠に 里は離りぬ いや高に 山も越え来ぬ 夏草の 思ひ萎へて 偲ふらむ 妹が門見む 靡けこの山","#[仮名],いはみのうみ,つののうらみを,うらなしと,ひとこそみらめ,かたなしと,[いそなしと],ひとこそみらめ,よしゑやし,うらはなくとも,よしゑやし,かたは,[いそは],なくとも,いさなとり,うみへをさして,にきたづの,ありそのうへに,かあをなる,たまもおきつも,あさはふる,かぜこそよせめ,ゆふはふる,なみこそきよれ,なみのむた,かよりかくより,たまもなす,よりねしいもを,[はしきよし,いもがたもとを],つゆしもの,おきてしくれば,このみちの,やそくまごとに,よろづたび,かへりみすれど,いやとほに,さとはさかりぬ,いやたかに,やまもこえきぬ,なつくさの,おもひしなえて,しのふらむ,いもがかどみむ,なびけこのやま","#[左注]","#[校異]奴 -> 怒 [元][紀][温]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,依羅娘子,離別,石見相聞歌,上京,地方官,島根,地名,枕詞,悲別","#[訓異]
いはみのうみ[寛],
つののうらみを,[寛]つののうらわを,
うらなしと,[寛]うらなみと,
ひとこそみらめ[寛],
かたなしと,[寛]かたなみと,
[いそなしと],
ひとこそみらめ[寛],
よしゑやし[寛],
うらはなくとも[寛],
よしゑやし[寛],
かたは[寛],
[いそは],
なくとも[寛],
いさなとり[寛],
うみへをさして,[寛]うなひをさして,
にきたづの,[寛]にきたつの,
ありそのうへに,[寛]あらいそのうへに,
かあをなる[寛],
たまもおきつも[寛],
あさはふる[寛],
かぜこそよせめ,[寛]かせこそよらめ,
ゆふはふる[寛],
なみこそきよれ[寛],
なみのむた[寛],
かよりかくより[寛],
たまもなす[寛],
よりねしいもを[寛],
[はしきよし,
いもがたもとを],
つゆしもの[寛],
おきてしくれば,[寛]おきてしくれは,
このみちの[寛],
やそくまごとに,[寛]やそくまことに,
よろづたび,[寛]よろつたひ,
かへりみすれど,[寛]かへりみすれと,
いやとほに[寛],
さとはさかりぬ,[寛]さとはぬ,
いやたかに,[寛]ますたかに,
やまもこえきぬ[寛],
なつくさの[寛],
おもひしなえて[寛],
しのふらむ[寛],
いもがかどみむ,[寛]いもかかとみむ,
なびけこのやま,[寛]なひけこのやま,
" "#[番号]02/0132","#[題詞](柿本朝臣人麻呂従石見國別妻上来時歌二首[并短歌])反歌二首","#[原文]石見乃也 高角山之 木際従 我振袖乎 妹見都良武香","#[訓読]石見のや高角山の木の間より我が振る袖を妹見つらむか","#[仮名],いはみのや,たかつのやまの,このまより,わがふるそでを,いもみつらむか","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,依羅娘子,離別,石見相聞歌,上京,地方官,島根,地名,悲別","#[訓異]
いはみのや[寛],
たかつのやまの[寛],
このまより[寛],
わがふるそでを,[寛]わかふるそてを,
いもみつらむか[寛],
" "#[番号]02/0133","#[題詞]((柿本朝臣人麻呂従石見國別妻上来時歌二首[并短歌])反歌二首)","#[原文]小竹之葉者 三山毛清尓 乱友 吾者妹思 別来礼婆","#[訓読]笹の葉はみ山もさやにさやげども我れは妹思ふ別れ来ぬれば","#[仮名],ささのはは,みやまもさやに,さやげども,われはいもおもふ,わかれきぬれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,依羅娘子,離別,石見相聞歌,上京,地方官,島根,悲別","#[訓異]
ささのはは[寛],
みやまもさやに[寛],
さやげども,[寛]みたれとも,
われはいもおもふ[寛],
わかれきぬれば,[寛]わかれきれは,
" "#[番号]02/0134","#[題詞](柿本朝臣人麻呂従石見國別妻上来時歌二首[并短歌])或本反歌曰","#[原文]石見尓有 高角山乃 木間従文 吾袂振乎 妹見監鴨","#[訓読]石見なる高角山の木の間ゆも我が袖振るを妹見けむかも","#[仮名],いはみなる,たかつのやまの,このまゆも,わがそでふるを,いもみけむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,依羅娘子,離別,石見相聞歌,上京,地方官,異伝,推敲,島根,地名,悲別","#[訓異]
いはみなる[寛],
たかつのやまの[寛],
このまゆも[寛],
わがそでふるを,[寛]わかそてふるを,
いもみけむかも[寛],
" "#[番号]02/0135","#[題詞](柿本朝臣人麻呂従石見國別妻上来時歌二首[并短歌])","#[原文]角<障>經 石見之海乃 言佐敝久 辛乃埼有 伊久里尓曽 深海松生流 荒礒尓曽 玉藻者生流 玉藻成 靡寐之兒乎 深海松乃 深目手思騰 左宿夜者 幾毛不有 延都多乃 別之来者 肝向 心乎痛 念乍 顧為騰 大舟之 渡乃山之 黄葉乃 散之乱尓 妹袖 清尓毛不見 嬬隠有 屋上乃 [一云 室上山] 山乃 自雲間 渡相月乃 雖惜 隠比来者 天傳 入日刺奴礼 大夫跡 念有吾毛 敷妙乃 衣袖者 通而<沾>奴","#[訓読]つのさはふ 石見の海の 言さへく 唐の崎なる 海石にぞ 深海松生ふる 荒礒にぞ 玉藻は生ふる 玉藻なす 靡き寝し子を 深海松の 深めて思へど さ寝し夜は 幾だもあらず 延ふ蔦の 別れし来れば 肝向ふ 心を痛み 思ひつつ かへり見すれど 大船の 渡の山の 黄葉の 散りの乱ひに 妹が袖 さやにも見えず 妻ごもる 屋上の [一云 室上山] 山の 雲間より 渡らふ月の 惜しけども 隠らひ来れば 天伝ふ 入日さしぬれ 大夫と 思へる我れも 敷栲の 衣の袖は 通りて濡れぬ","#[仮名],つのさはふ,いはみのうみの,ことさへく,からのさきなる,いくりにぞ,ふかみるおふる,ありそにぞ,たまもはおふる,たまもなす,なびきねしこを,ふかみるの,ふかめておもへど,さねしよは,いくだもあらず,はふつたの,わかれしくれば,きもむかふ,こころをいたみ,おもひつつ,かへりみすれど,おほぶねの,わたりのやまの,もみちばの,ちりのまがひに,いもがそで,さやにもみえず,つまごもる,やかみの,[むろかみやま],やまの,くもまより,わたらふつきの,をしけども,かくらひくれば,あまづたふ,いりひさしぬれ,ますらをと,おもへるわれも,しきたへの,ころものそでは,とほりてぬれぬ","#[左注]","#[校異]K -> 障 [元][金][紀] / 沽 -> 沾 [金][温][京]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,依羅娘子,離別,石見相聞歌,上京,地方官,島根,地名,枕詞,悲別","#[訓異]
つのさはふ[寛],
いはみのうみの[寛],
ことさへく[寛],
からのさきなる[寛],
いくりにぞ,[寛]いくりにそ,
ふかみるおふる[寛],
ありそにぞ,[寛]あらいそにそ,
たまもはおふる[寛],
たまもなす[寛],
なびきねしこを,[寛]なひきねしこを,
ふかみるの[寛],
ふかめておもへど,[寛]ふかめておもふと,
さねしよは,[寛]さぬるよは,
いくだもあらず,[寛]いくはくもあらす,
はふつたの[寛],
わかれしくれば,[寛]わかれしくれは,
きもむかふ,[寛]きもむかひ,
こころをいたみ[寛],
おもひつつ[寛],
かへりみすれど,[寛]かへりみすれと,
おほぶねの,[寛]おほふねの,
わたりのやまの[寛],
もみちばの,[寛]もみちはの,
ちりのまがひに,[寛]ちりのまかひに,
いもがそで,[寛]いもかそて,
さやにもみえず,[寛]さやにもみえす,
つまごもる,[寛]つまこもる,
やかみの[寛],
[むろかみやま],
やまの[寛],
くもまより[寛],
わたらふつきの,[寛]わたつきの,
をしけども,[寛]をしめとも,
かくらひくれば,[寛]かくろひくれは,
あまづたふ,[寛]あまつたふ,
いりひさしぬれ[寛],
ますらをと[寛],
おもへるわれも[寛],
しきたへの[寛],
ころものそでは,[寛]ころものそては,
とほりてぬれぬ[寛],
" "#[番号]02/0136","#[題詞](柿本朝臣人麻呂従石見國別妻上来時歌二首[并短歌])反歌二首","#[原文]青駒之 足掻乎速 雲居曽 妹之當乎 過而来計類 [一云 當者隠来計留]","#[訓読]青駒が足掻きを速み雲居にぞ妹があたりを過ぎて来にける [一云 あたりは隠り来にける]","#[仮名],あをこまが,あがきをはやみ,くもゐにぞ,いもがあたりを,すぎてきにける,[あたりは,かくりきにける]","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,依羅娘子,離別,石見相聞歌,上京,地方官,島根,地名,悲別","#[訓異]
あをこまが,[寛]あをこまの,
あがきをはやみ,[寛]あかきをはやみ,
くもゐにぞ,[寛]くもゐにそ,
いもがあたりを,[寛]いもかあたりを,
すぎてきにける,[寛]すきてきにける,
[あたりは,
かくりきにける]
" "#[番号]02/0137","#[題詞]((柿本朝臣人麻呂従石見國別妻上来時歌二首[并短歌])反歌二首)","#[原文]秋山尓 落黄葉 須臾者 勿散乱曽 妹之<當>将見 [一云 知里勿乱曽]","#[訓読]秋山に落つる黄葉しましくはな散り乱ひそ妹があたり見む [一云 散りな乱ひそ]","#[仮名],あきやまに,おつるもみちば,しましくは,なちりまがひそ,いもがあたりみむ,[ちりなまがひそ]","#[左注]","#[校異]雷 -> 當 [元][類]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,依羅娘子,離別,石見相聞歌,上京,地方官,島根,植物,悲別","#[訓異]
あきやまに[寛],
おつるもみちば,[寛]おつるもみちは,
しましくは,[寛]しはらくは,
なちりまがひそ,[寛]なちりみたれそ,
いもがあたりみむ,[寛]いもかあたりみむ,
[ちりなまがひそ]
" "#[番号]02/0138","#[題詞](柿本朝臣人麻呂従石見國別妻上来時歌二首[并短歌])或本歌一首[并短歌]","#[原文]石見之海 津乃浦乎無美 浦無跡 人社見良米 滷無跡 人社見良目 吉咲八師 浦者雖無 縦恵夜思 潟者雖無 勇魚取 海邊乎指而 柔田津乃 荒礒之上尓 蚊青生 玉藻息都藻 明来者 浪己曽来依 夕去者 風己曽来依 浪之共 彼依此依 玉藻成 靡吾宿之 敷妙之 妹之手本乎 露霜乃 置而之来者 此道之 八十隈毎 萬段 顧雖為 弥遠尓 里放来奴 益高尓 山毛超来奴 早敷屋師 吾嬬乃兒我 夏草乃 思志萎而 将嘆 角里将見 靡此山","#[訓読]石見の海 津の浦をなみ 浦なしと 人こそ見らめ 潟なしと 人こそ見らめ よしゑやし 浦はなくとも よしゑやし 潟はなくとも 鯨魚取り 海辺を指して 柔田津の 荒礒の上に か青なる 玉藻沖つ藻 明け来れば 波こそ来寄れ 夕されば 風こそ来寄れ 波のむた か寄りかく寄り 玉藻なす 靡き我が寝し 敷栲の 妹が手本を 露霜の 置きてし来れば この道の 八十隈ごとに 万たび かへり見すれど いや遠に 里離り来ぬ いや高に 山も越え来ぬ はしきやし 我が妻の子が 夏草の 思ひ萎えて 嘆くらむ 角の里見む 靡けこの山","#[仮名],いはみのうみ,つのうらをなみ,うらなしと,ひとこそみらめ,かたなしと,ひとこそみらめ,よしゑやし,うらはなくとも,よしゑやし,かたはなくとも,いさなとり,うみべをさして,にきたつの,ありそのうへに,かあをなる,たまもおきつも,あけくれば,なみこそきよれ,ゆふされば,かぜこそきよれ,なみのむた,かよりかくより,たまもなす,なびきわがねし,しきたへの,いもがたもとを,つゆしもの,おきてしくれば,このみちの,やそくまごとに,よろづたび,かへりみすれど,いやとほに,さとさかりきぬ,いやたかに,やまもこえきぬ,はしきやし,わがつまのこが,なつくさの,おもひしなえて,なげくらむ,つののさとみむ,なびけこのやま","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,依羅娘子,離別,石見相聞歌,上京,地方官,異伝,推敲,島根,地名,枕詞,悲別","#[訓異]
いはみのうみ[寛],
つのうらをなみ[寛],
うらなしと,[寛]うらなみと,
ひとこそみらめ[寛],
かたなしと,[寛]かたなみと,
ひとこそみらめ[寛],
よしゑやし,[寛]よしえやし,
うらはなくとも[寛],
よしゑやし[寛],
かたはなくとも[寛],
いさなとり[寛],
うみべをさして,[寛]うなひをさして,
にきたつの[寛],
ありそのうへに,[寛]あらいそのうへに,
かあをなる[寛],
たまもおきつも[寛],
あけくれば,[寛]あけくれは,
なみこそきよれ[寛],
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
かぜこそきよれ,[寛]かせこそきよれ,
なみのむた[寛],
かよりかくより[寛],
たまもなす[寛],
なびきわがねし,[寛]なひきわかねし,
しきたへの[寛],
いもがたもとを,[寛]いもかたもとを,
つゆしもの[寛],
おきてしくれば,[寛]おきてしくれは,
このみちの[寛],
やそくまごとに,[寛]やそくまことに,
よろづたび,[寛]よろつたひ,
かへりみすれど,[寛]かへりみすれと,
いやとほに[寛],
さとさかりきぬ[寛],
いやたかに,[寛]ますたかに,
やまもこえきぬ[寛],
はしきやし[寛],
わがつまのこが,[寛]わかつまのこか,
なつくさの[寛],
おもひしなえて[寛],
なげくらむ,[寛]なけくらむ,
つののさとみむ[寛],
なびけこのやま,[寛]なひけこのやま,
" "#[番号]02/0139","#[題詞]((柿本朝臣人麻呂従石見國別妻上来時歌二首[并短歌])或本歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]石見之海 打歌山乃 木際従 吾振袖乎 妹将見香","#[訓読]石見の海打歌の山の木の間より我が振る袖を妹見つらむか","#[仮名],いはみのうみ,うつたのやまの,このまより,わがふるそでを,いもみつらむか","#[左注]右歌躰雖同句々相替 因此重載","#[校異]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,依羅娘子,離別,石見相聞歌,上京,地方官,異伝,推敲,島根,地名,悲別","#[訓異]
いはみのうみ[寛],
うつたのやまの[寛],
このまより[寛],
わがふるそでを,[寛]わかふるそてを,
いもみつらむか[寛],
" "#[番号]02/0140","#[題詞]柿本朝臣人麻呂妻依羅娘子与人麻呂相別歌一首","#[原文]勿念跡 君者雖言 相時 何時跡知而加 吾不戀有牟","#[訓読]な思ひと君は言へども逢はむ時いつと知りてか我が恋ひずあらむ","#[仮名],なおもひと,きみはいへども,あはむとき,いつとしりてか,あがこひずあらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,依羅娘子,離別,石見相聞歌,上京,地方官,島根,地名,悲別","#[訓異]
なおもひと,[寛]おもふなと,
きみはいへども,[寛]きみはいへとも,
あはむとき[寛],
いつとしりてか[寛],
あがこひずあらむ,[寛]わかこひさらむ,
" "#[番号]02/0141","#[題詞]挽歌 / 後岡本宮御宇天皇代 [天豊財重日足姫天皇譲位後即後岡本宮] / 有間皇子自傷結松枝歌二首","#[原文]磐白乃 濱松之枝乎 引結 真幸有者 亦還見武","#[訓読]磐白の浜松が枝を引き結びま幸くあらばまた帰り見む","#[仮名],いはしろの,はままつがえを,ひきむすび,まさきくあらば,またかへりみむ","#[左注](右件歌等雖不挽柩之時所作<准>擬歌意 故以載于挽歌類焉)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:有間皇子,結び松,自傷,歌語り,謀反,羈旅,鎮魂,和歌山,地名","#[訓異]
いはしろの,[寛]いはしろ,
はままつがえを,[寛]はままつかえを,
ひきむすび,[寛]ひきむすひ,
まさきくあらば,[寛]まさきくあらは,
またかへりみむ[寛],
" "#[番号]02/0142","#[題詞](有間皇子自傷結松枝歌二首)","#[原文]家有者 笥尓盛飯乎 草枕 旅尓之有者 椎之葉尓盛","#[訓読]家にあれば笥に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る","#[仮名],いへにあれば,けにもるいひを,くさまくら,たびにしあれば,しひのはにもる","#[左注](右件歌等雖不挽柩之時所作<准>擬歌意 故以載于挽歌類焉)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:有間皇子,手向け,羈旅,鎮魂,和歌山,地名","#[訓異]
いへにあれば,[寛]いへにあれは,
けにもるいひを[寛],
くさまくら[寛],
たびにしあれば,[寛]たひにしあれは,
しひのはにもる[寛],
" "#[番号]02/0143","#[題詞]長忌寸意吉麻呂見結松哀咽歌二首","#[原文]磐代乃 <崖>之松枝 将結 人者反而 復将見鴨","#[訓読]磐代の岸の松が枝結びけむ人は帰りてまた見けむかも","#[仮名],いはしろの,きしのまつがえ,むすびけむ,ひとはかへりて,またみけむかも","#[左注](右件歌等雖不挽柩之時所作<准>擬歌意 故以載于挽歌類焉)","#[校異]岸 -> 崖 [金][元][古]","#[事項],挽歌,作者:長意吉麻呂,有間皇子,鎮魂,行幸,追悼,結び松,和歌山,地名,植物","#[訓異]
いはしろの[寛],
きしのまつがえ,[寛]きしのまつかえ,
むすびけむ,[寛]むひけむ,
ひとはかへりて[寛],
またみけむかも[寛],
" "#[番号]02/0144","#[題詞](長忌寸意吉麻呂見結松哀咽歌二首)","#[原文]磐代之 野中尓立有 結松 情毛不解 古所念[未詳]","#[訓読]磐代の野中に立てる結び松心も解けずいにしへ思ほゆ[未詳]","#[仮名],いはしろの,のなかにたてる,むすびまつ,こころもとけず,いにしへおもほゆ","#[左注](右件歌等雖不挽柩之時所作<准>擬歌意 故以載于挽歌類焉)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:長意吉麻呂,有間皇子,鎮魂,行幸,追悼,結び松,和歌山,地名,植物","#[訓異]
いはしろの[寛],
のなかにたてる[寛],
むすびまつ,[寛]むすひまつ,
こころもとけず,[寛]こころもとけす,
いにしへおもほゆ,[寛]むかしおもへは,
" "#[番号]02/0145","#[題詞]山上臣憶良追和歌一首","#[原文]鳥翔成 有我欲比管 見良目杼母 人社不知 松者知良武","#[訓読]鳥翔成あり通ひつつ見らめども人こそ知らね松は知るらむ","#[仮名],あまがけり,ありがよひつつ,みらめども,ひとこそしらね,まつはしるらむ","#[左注]右件歌等雖不挽柩之時所作<准>擬歌意 故以載于挽歌類焉","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:山上憶良,追和,長意吉麻呂,有間皇子,結び松,宴席,行幸,難訓,植物","#[訓異]
あまがけり,[寛]とりはなす,
ありがよひつつ,[寛]ありかよひつつ,
みらめども,[寛]みらめとも,
ひとこそしらね[寛],
まつはしるらむ[寛],
" "#[番号]02/0146","#[題詞]大寶元年辛丑幸于紀伊國時<見>結松歌一首 [柿本朝臣人麻呂歌集中出也]","#[原文]後将見跡 君之結有 磐代乃 子松之宇礼乎 又将見香聞","#[訓読]後見むと君が結べる磐代の小松がうれをまたも見むかも","#[仮名],のちみむと,きみがむすべる,いはしろの,こまつがうれを,またもみむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,柿本人麻呂歌集,結び松,和歌山,地名,植物","#[訓異]
のちみむと[寛],
きみがむすべる,[寛]きみかむすへる,
いはしろの[寛],
こまつがうれを,[寛]こまつかうれを,
またもみむかも,[寛]またみけむかも,
" "#[番号]02/0147","#[題詞]近江大津宮御宇天皇代 [天命開別天皇謚曰天智天皇] / 天皇聖躬不豫之時太后奉御歌一首","#[原文]天原 振放見者 大王乃 御壽者長久 天足有","#[訓読]天の原振り放け見れば大君の御寿は長く天足らしたり","#[仮名],あまのはら,ふりさけみれば,おほきみの,みいのちはながく,あまたらしたり","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:倭皇后,天智天皇,近江朝挽歌,寿詞,大津,滋賀県,地名","#[訓異]
あまのはら[寛],
ふりさけみれば,[寛]ふりさけみれは,
おほきみの[寛],
みいのちはながく,[寛]おほみいのちは,
あまたらしたり,[寛]なかくてたれり,
" "#[番号]02/0148","#[題詞]一書曰近江天皇聖躰不豫御病急時<太>后奉獻御歌一首","#[原文]青旗乃 木旗能上乎 賀欲布跡羽 目尓者雖視 直尓不相香裳","#[訓読]青旗の木幡の上を通ふとは目には見れども直に逢はぬかも","#[仮名],あをはたの,こはたのうへを,かよふとは,めにはみれども,ただにあはぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:倭皇后,天智天皇,近江朝挽歌,一書,幻想,大津,滋賀県,地名","#[訓異]
あをはたの[寛],
こはたのうへを[寛],
かよふとは[寛],
めにはみれども,[寛]めにはみれとも,
ただにあはぬかも,[寛]たたにあはぬかも,
" "#[番号]02/0149","#[題詞]天皇崩後之時倭太后御作歌一首","#[原文]人者縦 念息登母 玉蘰 影尓所見乍 不所忘鴨","#[訓読]人はよし思ひやむとも玉葛影に見えつつ忘らえぬかも","#[仮名],ひとはよし,おもひやむとも,たまかづら,かげにみえつつ,わすらえぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:倭皇后,天智天皇,近江朝挽歌,復活,鎮魂,魂よばひ,大津,滋賀県,地名","#[訓異]
ひとはよし,[寛]ひとはいさ,
おもひやむとも[寛],
たまかづら,[寛]たまかつら,
かげにみえつつ,[寛]かけにみえつつ,
わすらえぬかも,[寛]わすられぬかも,
" "#[番号]02/0150","#[題詞]天皇崩時婦人作歌一首 [姓氏未詳]","#[原文]空蝉師 神尓不勝者 離居而 朝嘆君 放居而 吾戀君 玉有者 手尓巻持而 衣有者 脱時毛無 吾戀 君曽伎賊乃夜 夢所見鶴","#[訓読]うつせみし 神に堪へねば 離れ居て 朝嘆く君 放り居て 我が恋ふる君 玉ならば 手に巻き持ちて 衣ならば 脱く時もなく 我が恋ふる 君ぞ昨夜の夜 夢に見えつる","#[仮名],うつせみし,かみにあへねば,はなれゐて,あさなげくきみ,さかりゐて,あがこふるきみ,たまならば,てにまきもちて,きぬならば,ぬくときもなく,あがこふる,きみぞきぞのよ,いめにみえつる","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:婦人,天智天皇,近江朝挽歌,鎮魂,復活,魂よばひ,大津,滋賀県,地名","#[訓異]
うつせみし[寛],
かみにあへねば,[寛]かみにたへねは,
はなれゐて[寛],
あさなげくきみ,[寛]あさなけくきみ,
さかりゐて,[寛]はなれゐて,
あがこふるきみ,[寛]わかこふるきみ,
たまならば,[寛]たまならは,
てにまきもちて[寛],
きぬならば,[寛]きぬならは,
ぬくときもなく,[寛]ぬくときもなみ,
あがこふる,[寛]わかこふる,
きみぞきぞのよ,[寛]きみそきそのよ,
いめにみえつる,[寛]ゆめにみえつる,
" "#[番号]02/0151","#[題詞]天皇大殯之時歌二首","#[原文]如是有乃 <懐>知勢婆 大御船 泊之登萬里人 標結麻思乎 [額田王]","#[訓読]かからむとかねて知りせば大御船泊てし泊りに標結はましを [額田王]","#[仮名],かからむと,かねてしりせば,おほみふね,はてしとまりに,しめゆはましを","#[左注]","#[校異]豫 -> 懐 [金][類][古] / 人 [古][紀] 尓","#[事項],挽歌,作者:額田王,天智天皇,近江朝挽歌,殯宮,魂よばひ,大津,滋賀県,地名","#[訓異]
かからむと[寛],
かねてしりせば,[寛]かねてしりせは,
おほみふね[寛],
はてしとまりに[寛],
しめゆはましを[寛],
" "#[番号]02/0152","#[題詞](天皇大殯之時歌二首)","#[原文]八隅知之 吾期大王乃 大御船 待可将戀 四賀乃辛埼 [舎人吉年]","#[訓読]やすみしし我ご大君の大御船待ちか恋ふらむ志賀の唐崎 [舎人吉年]","#[仮名],やすみしし,わごおほきみの,おほみふね,まちかこふらむ,しがのからさき","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人吉年,天智天皇,近江朝挽歌,殯宮,滋賀,地名,枕詞","#[訓異]
やすみしし[寛],
わごおほきみの,[寛]わかおほきみの,
おほみふね[寛],
まちかこふらむ,[寛]まちかこひなむ,
しがのからさき,[寛]しかのからさき,
" "#[番号]02/0153","#[題詞]<太>后御歌一首","#[原文]鯨魚取 淡海乃海乎 奥放而 榜来船 邊附而 榜来船 奥津加伊 痛勿波祢曽 邊津加伊 痛莫波祢曽 若草乃 嬬之 念鳥立","#[訓読]鯨魚取り 近江の海を 沖放けて 漕ぎ来る船 辺付きて 漕ぎ来る船 沖つ櫂 いたくな撥ねそ 辺つ櫂 いたくな撥ねそ 若草の 夫の 思ふ鳥立つ","#[仮名],いさなとり,あふみのうみを,おきさけて,こぎきたるふね,へつきて,こぎくるふね,おきつかい,いたくなはねそ,へつかい,いたくなはねそ,わかくさの,つまの,おもふとりたつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:倭皇后,天智天皇,鎮魂,近江朝挽歌,大津,滋賀県,地名","#[訓異]
いさなとり[寛],
あふみのうみを[寛],
おきさけて[寛],
こぎきたるふね,[寛]こきくるふね,
へつきて,[寛]へにつきて,
こぎくるふね,[寛]こきくるふね,
おきつかい[寛],
いたくなはねそ[寛],
へつかい[寛],
いたくなはねそ[寛],
わかくさの[寛],
つまの[寛],
おもふとりたつ[寛],
" "#[番号]02/0154","#[題詞]石川夫人歌一首","#[原文]神樂浪乃 大山守者 為誰<可> 山尓標結 君毛不有國","#[訓読]楽浪の大山守は誰がためか山に標結ふ君もあらなくに","#[仮名],ささなみの,おほやまもりは,たがためか,やまにしめゆふ,きみもあらなくに","#[左注]","#[校異]<> -> 可 [金][類][古]","#[事項],挽歌,作者:石川夫人,天智天皇,悲しみ,大津,滋賀県,地名","#[訓異]
ささなみの[寛],
おほやまもりは[寛],
たがためか,[寛]たかためか,
やまにしめゆふ[寛],
きみもあらなくに,[寛]きみもまさなくに,
" "#[番号]02/0155","#[題詞]従山科御陵退散之時額田王作歌一首","#[原文]八隅知之 和期大王之 恐也 御陵奉仕流 山科乃 鏡山尓 夜者毛 夜之盡 晝者母 日之盡 哭耳<呼> 泣乍在而哉 百礒城乃 大宮人者 去別南","#[訓読]やすみしし 我ご大君の 畏きや 御陵仕ふる 山科の 鏡の山に 夜はも 夜のことごと 昼はも 日のことごと 哭のみを 泣きつつありてや ももしきの 大宮人は 行き別れなむ","#[仮名],やすみしし,わごおほきみの,かしこきや,みはかつかふる,やましなの,かがみのやまに,よるはも,よのことごと,ひるはも,ひのことごと,ねのみを,なきつつありてや,ももしきの,おほみやひとは,ゆきわかれなむ","#[左注]","#[校異]乎 -> 呼 [金][類][紀]","#[事項],挽歌,作者:額田王,天智天皇,殯宮,京都,大津,滋賀県,地名","#[訓異]
やすみしし[寛],
わごおほきみの,[寛]わかおほきみの,
かしこきや,[寛]かしこみや,
みはかつかふる,[寛]みはかつかへる,
やましなの[寛],
かがみのやまに,[寛]かかみのやまに,
よるはも[寛],
よのことごと,[寛]よのつき,
ひるはも[寛],
ひのことごと,[寛]ひのつき,
ねのみを,[寛]ねにのみを,
なきつつありてや,[寛]なつつありてや,
ももしきの[寛],
おほみやひとは[寛],
ゆきわかれなむ[寛],
" "#[番号]02/0156","#[題詞]明日香清御原宮御宇天皇代 [天渟中原瀛真人天皇謚曰天武天皇] / 十市皇女薨時高市皇子尊御作歌三首","#[原文]三諸之 神之神須疑 已具耳矣自得見監乍共 不寝夜叙多","#[訓読]みもろの神の神杉已具耳矣自得見監乍共寝ねぬ夜ぞ多き","#[仮名],みもろの,かみのかむすぎ,*****,*******,いねぬよぞおほき","#[左注](紀曰七年<戊>寅夏四月丁亥朔癸巳十市皇女卒然病發薨於宮中)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:高市皇子,十市皇女,難訓,夢,復活,三輪山,奈良,地名","#[訓異]
みもろの,[寛]みもろのや,
かみのかむすぎ,[寛]かみのかみすき,
*****,[寛]いくにをしと,
*******,[寛]みけむつつとも,
いねぬよぞおほき,[寛]ねぬよそおほき,
" "#[番号]02/0157","#[題詞](十市皇女薨時高市皇子尊御作歌三首)","#[原文]神山之 山邊真蘇木綿 短木綿 如此耳故尓 長等思伎","#[訓読]三輪山の山辺真麻木綿短か木綿かくのみからに長くと思ひき","#[仮名],みわやまの,やまへまそゆふ,みじかゆふ,かくのみからに,ながくとおもひき","#[左注](紀曰七年<戊>寅夏四月丁亥朔癸巳十市皇女卒然病發薨於宮中)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:高市皇子,十市皇女,難訓,夢,復活,三輪山,奈良,地名","#[訓異]
みわやまの[寛],
やまへまそゆふ[寛],
みじかゆふ,[寛]みちかゆふ,
かくのみからに,[寛]かくのみゆゑに,
ながくとおもひき,[寛]なかくとおもひき,
" "#[番号]02/0158","#[題詞](十市皇女薨時高市皇子尊御作歌三首)","#[原文]山振之 立儀足 山清水 酌尓雖行 道之白鳴","#[訓読]山吹の立ちよそひたる山清水汲みに行かめど道の知らなく","#[仮名],やまぶきの,たちよそひたる,やましみづ,くみにゆかめど,みちのしらなく","#[左注]紀曰七年<戊>寅夏四月丁亥朔癸巳十市皇女卒然病發薨於宮中","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:高市皇子,十市皇女,難訓,夢,復活,山中他界","#[訓異]
やまぶきの,[寛]やまふきの,
たちよそひたる,[寛]さきたるやまの,
やましみづ,[寛]しみつをは,
くみにゆかめど,[寛]くみにゆかめと,
みちのしらなく[寛],
" "#[番号]02/0159","#[題詞]天皇崩之時大后御作歌一首","#[原文]八隅知之 我大王之 暮去者 召賜良之 明来者 問賜良志 神岳乃 山之黄葉乎 今日毛鴨 問給麻思 明日毛鴨 召賜萬旨 其山乎 振放見乍 暮去者 綾哀 明来者 裏佐備晩 荒妙乃 衣之袖者 乾時文無","#[訓読]やすみしし 我が大君の 夕されば 見したまふらし 明け来れば 問ひたまふらし 神岳の 山の黄葉を 今日もかも 問ひたまはまし 明日もかも 見したまはまし その山を 振り放け見つつ 夕されば あやに悲しみ 明け来れば うらさび暮らし 荒栲の 衣の袖は 干る時もなし","#[仮名],やすみしし,わがおほきみの,ゆふされば,めしたまふらし,あけくれば,とひたまふらし,かむおかの,やまのもみちを,けふもかも,とひたまはまし,あすもかも,めしたまはまし,そのやまを,ふりさけみつつ,ゆふされば,あやにかなしみ,あけくれば,うらさびくらし,あらたへの,ころものそでは,ふるときもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:持統天皇,天武天皇,殯宮,飛鳥,地名,枕詞,植物","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
めしたまふらし,[寛]めしたまへらし,
あけくれば,[寛]あけくれは,
とひたまふらし,[寛]とひたまへらし,
かむおかの,[寛]みわやまの,
やまのもみちを[寛],
けふもかも[寛],
とひたまはまし[寛],
あすもかも[寛],
めしたまはまし[寛],
そのやまを[寛],
ふりさけみつつ[寛],
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
あやにかなしみ,[寛]あやにかなしひ,
あけくれば,[寛]あけくれは,
うらさびくらし,[寛]うらさひくらし,
あらたへの[寛],
ころものそでは,[寛]ころものそては,
ふるときもなし,[寛]ひるときもなし,
" "#[番号]02/0160","#[題詞]一書曰天皇崩之時太上天皇御製歌二首","#[原文]燃火物 取而L而 福路庭 入澄不言八面 智男雲","#[訓読]燃ゆる火も取りて包みて袋には入ると言はずやも智男雲","#[仮名],もゆるひも,とりてつつみて,ふくろには,いるといはずやも,***","#[左注]","#[校異]澄 [古] 登 (塙) 燈","#[事項],挽歌,作者:持統天皇,天武天皇,難解,難訓,一書","#[訓異]
もゆるひも,[寛]ともしひも,
とりてつつみて[寛],
ふくろには[寛],
いるといはずやも,[寛]いるといはすや,
***,[寛]もちをのこくも,
" "#[番号]02/0161","#[題詞](一書曰天皇崩之時太上天皇御製歌二首)","#[原文]向南山 陳雲之 青雲之 星離去 月<矣>離而","#[訓読]北山にたなびく雲の青雲の星離り行き月を離れて","#[仮名],きたやまに,たなびくくもの,あをくもの,ほしさかりゆき,つきをはなれて","#[左注]","#[校異]牟 -> 矣 [金][紀]","#[事項],挽歌,作者:持統天皇,天武天皇,難解,一書","#[訓異]
きたやまに,[寛]きたやまの,
たなびくくもの,[寛]たなひくくもの,
あをくもの[寛],
ほしさかりゆき,[寛]ほしわかれゆき,
つきをはなれて,[寛]つきもわかれて,
" "#[番号]02/0162","#[題詞]天皇崩之後八年九月九日奉為御齋會之夜夢裏習賜御歌一首 [古歌集中出]","#[原文]明日香能 清御原乃宮尓 天下 所知食之 八隅知之 吾大王 高照 日之皇子 何方尓 所念食可 神風乃 伊勢能國者 奥津藻毛 靡足波尓 塩氣能味 香乎礼流國尓 味凝 文尓乏寸 高照 日之御子","#[訓読]明日香の 清御原の宮に 天の下 知らしめしし やすみしし 我が大君 高照らす 日の御子 いかさまに 思ほしめせか 神風の 伊勢の国は 沖つ藻も 靡みたる波に 潮気のみ 香れる国に 味凝り あやにともしき 高照らす 日の御子","#[仮名],あすかの,きよみのみやに,あめのした,しらしめしし,やすみしし,わがおほきみ,たかてらす,ひのみこ,いかさまに,おもほしめせか,かむかぜの,いせのくには,おきつもも,なみたるなみに,しほけのみ,かをれるくにに,うまこり,あやにともしき,たかてらす,ひのみこ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:持統天皇,天武天皇,夢,古歌集,復活,枕詞","#[訓異]
あすかの[寛],
きよみのみやに,[寛]きよみはらのみやに,
あめのした[寛],
しらしめしし[寛],
やすみしし[寛],
わがおほきみ,[寛]わかおほきみの,
たかてらす[寛],
ひのみこ,[寛]ひのわかみこは,
いかさまに[寛],
おもほしめせか,[寛]おほしめしてか,
かむかぜの,[寛]かみかせの,
いせのくには,[寛]いせのくにには,
おきつもも[寛],
なみたるなみに,[寛]なひきしなみに,
しほけのみ[寛],
かをれるくにに[寛],
うまこり,[寛]あちこりの,
あやにともしき[寛],
たかてらす,[寛]たかてる,
ひのみこ[寛],
" "#[番号]02/0163","#[題詞]藤原宮御宇天皇代 [高天原廣野姫天皇<天皇元年丁亥十一年譲位軽太子尊号曰太上天皇>] / 大津皇子薨之後大来皇女従伊勢齋宮上京之時御作歌二首","#[原文]神風<乃> 伊勢能國尓<母> 有益乎 奈何可来計武 君毛不有尓","#[訓読]神風の伊勢の国にもあらましを何しか来けむ君もあらなくに","#[仮名],かむかぜの,いせのくににも,あらましを,なにしかきけむ,きみもあらなくに","#[左注]","#[校異]之 -> 乃 [金][類][古][紀] / 毛 -> 母 [金][類][紀]","#[事項],挽歌,作者:大伯皇女,大津皇子,歌語り,哀悼,飛鳥,地名,枕詞","#[訓異]
かむかぜの,[寛]かみかせの,
いせのくににも[寛],
あらましを[寛],
なにしかきけむ,[寛]なににかきけむ,
きみもあらなくに[寛],
" "#[番号]02/0164","#[題詞](大津皇子薨之後大来皇女従伊勢齋宮上京之時御作歌二首)","#[原文]欲見 吾為君毛 不有尓 奈何可来計武 馬疲尓","#[訓読]見まく欲り我がする君もあらなくに何しか来けむ馬疲るるに","#[仮名],みまくほり,わがするきみも,あらなくに,なにしかきけむ,うまつかるるに","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:大伯皇女,大津皇子,歌語り,哀悼,飛鳥,地名,枕詞","#[訓異]
みまくほり[寛],
わがするきみも,[寛]わかせしきみも,
あらなくに[寛],
なにしかきけむ,[寛]なににかきなむ,
うまつかるるに,[寛]うまつからしに,
" "#[番号]02/0165","#[題詞]移葬大津皇子屍於葛城二上山之時大来皇女哀傷御作歌二首","#[原文]宇都曽見乃 人尓有吾哉 従明日者 二上山乎 弟世登吾将見","#[訓読]うつそみの人にある我れや明日よりは二上山を弟背と我が見む","#[仮名],うつそみの,ひとにあるわれや,あすよりは,ふたかみやまを,いろせとわがみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:大伯皇女,大津皇子,歌語り,哀悼,二上山,飛鳥,地名,枕詞","#[訓異]
うつそみの[寛],
ひとにあるわれや[寛],
あすよりは[寛],
ふたかみやまを[寛],
いろせとわがみむ,[寛]いろせとわれみむ,
" "#[番号]02/0166","#[題詞](移葬大津皇子屍於葛城二上山之時大来皇女哀傷御作歌二首)","#[原文]礒之於尓 生流馬酔木<乎> 手折目杼 令視倍吉君之 在常不言尓","#[訓読]磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど見すべき君が在りと言はなくに","#[仮名],いそのうへに,おふるあしびを,たをらめど,みすべききみが,ありといはなくに","#[左注]右一首今案不似移葬之歌 盖疑従伊勢神宮還京之時路上見花感傷哀咽作此歌乎","#[校異]<> -> 乎 [西(右書)][金][類][紀]","#[事項],挽歌,作者:大伯皇女,大津皇子,歌語り,哀悼,二上山,飛鳥,地名","#[訓異]
いそのうへに[寛],
おふるあしびを,[寛]おふるつつしを,
たをらめど,[寛]たをらめと,
みすべききみが,[寛]みすへききみか,
ありといはなくに[寛],
" "#[番号]02/0167","#[題詞]日並皇子尊殯宮之時柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌]","#[原文]天地之 <初時> 久堅之 天河原尓 八百萬 千萬神之 神集 々座而 神分 々之時尓 天照 日女之命 [一云 指上 日女之命] 天乎婆 所知食登 葦原乃 水穂之國乎 天地之 依相之極 所知行 神之命等 天雲之 八重掻別而 [一云 天雲之 八重雲別而] 神下 座奉之 高照 日之皇子波 飛鳥之 浄之宮尓 神随 太布座而 天皇之 敷座國等 天原 石門乎開 神上 々座奴 [一云 神登 座尓之可婆] 吾王 皇子之命乃 天下 所知食世者 春花之 貴在等 望月乃 満波之計武跡 天下 [一云 食國] 四方之人乃 大船之 思憑而 天水 仰而待尓 何方尓 御念食可 由縁母無 真弓乃岡尓 宮柱 太布座 御在香乎 高知座而 明言尓 御言不御問 日月之 數多成塗 其故 皇子之宮人 行方不知毛 [一云 刺竹之 皇子宮人 歸邊不知尓為]","#[訓読]天地の 初めの時 ひさかたの 天の河原に 八百万 千万神の 神集ひ 集ひいまして 神分り 分りし時に 天照らす 日女の命 [一云 さしのぼる 日女の命] 天をば 知らしめすと 葦原の 瑞穂の国を 天地の 寄り合ひの極み 知らしめす 神の命と 天雲の 八重かき別きて [一云 天雲の八重雲別きて] 神下し いませまつりし 高照らす 日の御子は 飛ぶ鳥の 清御原の宮に 神ながら 太敷きまして すめろきの 敷きます国と 天の原 岩戸を開き 神上り 上りいましぬ [一云 神登り いましにしかば] 我が大君 皇子の命の 天の下 知らしめしせば 春花の 貴くあらむと 望月の 満しけむと 天の下 食す国 四方の人の 大船の 思ひ頼みて 天つ水 仰ぎて待つに いかさまに 思ほしめせか つれもなき 真弓の岡に 宮柱 太敷きいまし みあらかを 高知りまして 朝言に 御言問はさぬ 日月の 数多くなりぬれ そこ故に 皇子の宮人 ゆくへ知らずも [一云 さす竹の 皇子の宮人 ゆくへ知らにす]","#[仮名],あめつちの,はじめのとき,ひさかたの,あまのかはらに,やほよろづ,ちよろづかみの,かむつどひ,つどひいまして,かむはかり,はかりしときに,あまてらす,ひるめのみこと,[さしのぼる,ひるめのみこと],あめをば,しらしめすと,あしはらの,みづほのくにを,あめつちの,よりあひのきはみ,しらしめす,かみのみことと,あまくもの,やへかきわきて,[あまくもの,やへくもわきて],かむくだし,いませまつりし,たかてらす,ひのみこは,とぶとりの,きよみのみやに,かむながら,ふとしきまして,すめろきの,しきますくにと,あまのはら,いはとをひらき,かむあがり,あがりいましぬ,[かむのぼり,いましにしかば],わがおほきみ,みこのみことの,あめのした,しらしめしせば,はるはなの,たふとくあらむと,もちづきの,たたはしけむと,あめのした,[をすくに],よものひとの,おほぶねの,おもひたのみて,あまつみづ,あふぎてまつに,いかさまに,おもほしめせか,つれもなき,まゆみのをかに,みやばしら,ふとしきいまし,みあらかを,たかしりまして,あさことに,みこととはさぬ,ひつきの,まねくなりぬれ,そこゆゑに,みこのみやひと,ゆくへしらずも,[さすたけの,みこのみやひと,ゆくへしらにす]","#[左注]","#[校異]初時之 -> 初時 [金][類][紀]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,草壁皇子,殯宮挽歌,高天原,天武天皇,神話,異伝,推敲,高市皇子,神話発想","#[訓異]
あめつちの[寛],
はじめのとき,[寛]はしめのときし,
ひさかたの[寛],
あまのかはらに[寛],
やほよろづ,[寛]やほよろつ,
ちよろづかみの,[寛]ちよろつかみの,
かむつどひ,[寛]かみあつめ,
つどひいまして,[寛]あつめいまして,
かむはかり[寛],
はかりしときに[寛],
あまてらす[寛],
ひるめのみこと,[寛]ひなめのみこと,
[さしのぼる,
ひるめのみこと],
あめをば,[寛]あめをは,
しらしめすと,[寛]しろしめさむと,
あしはらの[寛],
みづほのくにを,[寛]みつほのくにを,
あめつちの[寛],
よりあひのきはみ,[寛]よりあひのかきり,
しらしめす[寛],
かみのみことと[寛],
あまくもの[寛],
やへかきわきて[寛],
[あまくもの,
やへくもわきて],
かむくだし,[寛]かみくたり,
いませまつりし,[寛]いましをかへし,
たかてらす[寛],
ひのみこは,[寛]ひのわかみこは,
とぶとりの,[寛]あすかの,
きよみのみやに,[寛]きよめしみやに,
かむながら,[寛]かみのまに,
ふとしきまして[寛],
すめろきの[寛],
しきますくにと[寛],
あまのはら[寛],
いはとをひらき[寛],
かむあがり,[寛]かむあかり,
あがりいましぬ,[寛]あかりいましぬ,
[かむのぼり,
いましにしかば],
わがおほきみ,[寛]わかきみの,
みこのみことの[寛],
あめのした[寛],
しらしめしせば,[寛]しらしめしせは,
はるはなの[寛],
たふとくあらむと,[寛]かしこからむと,
もちづきの,[寛]もちつきの,
たたはしけむと,[寛]みちはしけむと,
あめのした[寛],
[をすくに],
よものひとの[寛],
おほぶねの,[寛]おほふねの,
おもひたのみて[寛],
あまつみづ,[寛]あまつみつ,
あふぎてまつに,[寛]あふきてまつに,
いかさまに[寛],
おもほしめせか,[寛]おほしめしてか,
つれもなき,[寛]ゆゑもなき,
まゆみのをかに[寛],
みやばしら,[寛]みやはしら,
ふとしきいまし,[寛]ふとしきまして,
みあらかを,[寛]みありかを,
たかしりまして[寛],
あさことに[寛],
みこととはさぬ,[寛]みこととはせす,
ひつきの[寛],
まねくなりぬれ,[寛]あまたになりぬ,
そこゆゑに,[寛]そのゆゑに,
みこのみやひと[寛],
ゆくへしらずも,[寛]ゆくへしらぬも,
[さすたけの,
みこのみやひと,
ゆくへしらにす]
" "#[番号]02/0168","#[題詞](日並皇子尊殯宮之時柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]久堅乃 天見如久 仰見之 皇子乃御門之 荒巻惜毛","#[訓読]ひさかたの天見るごとく仰ぎ見し皇子の御門の荒れまく惜しも","#[仮名],ひさかたの,あめみるごとく,あふぎみし,みこのみかどの,あれまくをしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,草壁皇子,殯宮挽歌,異伝,高市皇子,枕詞","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あめみるごとく,[寛]あめみることく,
あふぎみし,[寛]あふきみし,
みこのみかどの,[寛]みこのみかとの,
あれまくをしも[寛],
" "#[番号]02/0169","#[題詞]((日並皇子尊殯宮之時柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]茜刺 日者雖照者 烏玉之 夜渡月之 隠良久惜毛","#[訓読]あかねさす日は照らせれどぬばたまの夜渡る月の隠らく惜しも","#[仮名],あかねさす,ひはてらせれど,ぬばたまの,よわたるつきの,かくらくをしも","#[左注][<或本>以件歌為後皇子尊殯宮之時歌反也]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,草壁皇子,殯宮挽歌,異伝,高市皇子,枕詞","#[訓異]
あかねさす[寛],
ひはてらせれど,[寛]ひはてらせれと,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よわたるつきの[寛],
かくらくをしも,[寛]かくらくおしも,
" "#[番号]02/0170","#[題詞](日並皇子尊殯宮之時柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌])或本歌一首","#[原文]嶋宮 勾乃池之 放鳥 人目尓戀而 池尓不潜","#[訓読]嶋の宮まがりの池の放ち鳥人目に恋ひて池に潜かず","#[仮名],しまのみや,まがりのいけの,はなちとり,ひとめにこひて,いけにかづかず","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,草壁皇子,殯宮挽歌,或本,異伝,飛鳥,地名","#[訓異]
しまのみや[寛],
まがりのいけの,[寛]まかりのいけの,
はなちとり[寛],
ひとめにこひて[寛],
いけにかづかず,[寛]いけにかつかす,
" "#[番号]02/0171","#[題詞]皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首","#[原文]高光 我日皇子乃 萬代尓 國所知麻之 嶋宮<波>母","#[訓読]高照らす我が日の御子の万代に国知らさまし嶋の宮はも","#[仮名],たかてらす,わがひのみこの,よろづよに,くにしらさまし,しまのみやはも","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]婆 -> 波 [金][類][古][紀]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
たかてらす[寛],
わがひのみこの,[寛]わかひのみこの,
よろづよに,[寛]よろつよに,
くにしらさまし,[寛]くにしられまし,
しまのみやはも[寛],
" "#[番号]02/0172","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]嶋宮 上池有 放鳥 荒備勿行 君不座十方","#[訓読]嶋の宮上の池なる放ち鳥荒びな行きそ君座さずとも","#[仮名],しまのみや,うへのいけなる,はなちとり,あらびなゆきそ,きみまさずとも","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
しまのみや[寛],
うへのいけなる[寛],
はなちとり[寛],
あらびなゆきそ,[寛]あらひなゆきそ,
きみまさずとも,[寛]きみまさすとも,
" "#[番号]02/0173","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]高光 吾日皇子乃 伊座世者 嶋御門者 不荒有益乎","#[訓読]高照らす我が日の御子のいましせば島の御門は荒れずあらましを","#[仮名],たかてらす,わがひのみこの,いましせば,しまのみかどは,あれずあらましを","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
たかてらす[寛],
わがひのみこの,[寛]わかひのみこの,
いましせば,[寛]いましせは,
しまのみかどは,[寛]しまのみかとは,
あれずあらましを,[寛]あれさらましを,
" "#[番号]02/0174","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]外尓見之 檀乃岡毛 君座者 常都御門跡 侍宿為鴨","#[訓読]外に見し真弓の岡も君座せば常つ御門と侍宿するかも","#[仮名],よそにみし,まゆみのをかも,きみませば,とこつみかどと,とのゐするかも","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,殯宮挽歌,真弓岡,飛鳥,地名","#[訓異]
よそにみし[寛],
まゆみのをかも[寛],
きみませば,[寛]きみませは,
とこつみかどと,[寛]とこつみかとと,
とのゐするかも[寛],
" "#[番号]02/0175","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]夢尓谷 不見在之物乎 欝悒 宮出毛為鹿 佐日之<隈>廻乎","#[訓読]夢にだに見ずありしものをおほほしく宮出もするかさ桧の隈廻を","#[仮名],いめにだに,みずありしものを,おほほしく,みやでもするか,さひのくまみを","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]隅 -> 隈 [金][紀]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
いめにだに,[寛]ゆめにたに,
みずありしものを,[寛]みさりしものを,
おほほしく,[寛]おほつかな,
みやでもするか,[寛]みやいてもすか,
さひのくまみを,[寛]さひのくまわを,
" "#[番号]02/0176","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]天地与 共将終登 念乍 奉仕之 情違奴","#[訓読]天地とともに終へむと思ひつつ仕へまつりし心違ひぬ","#[仮名],あめつちと,ともにをへむと,おもひつつ,つかへまつりし,こころたがひぬ","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
あめつちと[寛],
ともにをへむと[寛],
おもひつつ[寛],
つかへまつりし[寛],
こころたがひぬ,[寛]こころたかひぬ,
" "#[番号]02/0177","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]朝日弖流 佐太乃岡邊尓 群居乍 吾等哭涙 息時毛無","#[訓読]朝日照る佐田の岡辺に群れ居つつ我が泣く涙やむ時もなし","#[仮名],あさひてる,さだのをかへに,むれゐつつ,わがなくなみた,やむときもなし","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,佐田岡,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
あさひてる[寛],
さだのをかへに,[寛]さたのをかへに,
むれゐつつ[寛],
わがなくなみた,[寛]わかなくなみた,
やむときもなし[寛],
" "#[番号]02/0178","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]御立為之 嶋乎見時 庭多泉 流涙 止曽金鶴","#[訓読]み立たしの島を見る時にはたづみ流るる涙止めぞかねつる","#[仮名],みたたしの,しまをみるとき,にはたづみ,ながるるなみた,とめぞかねつる","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
みたたしの,[寛]みたちせし,
しまをみるとき[寛],
にはたづみ,[寛]にはたつみ,
ながるるなみた,[寛]なかるるなみた,
とめぞかねつる,[寛]とめそかねつる,
" "#[番号]02/0179","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]橘之 嶋宮尓者 不飽鴨 佐<田>乃岡邊尓 侍宿為尓徃","#[訓読]橘の嶋の宮には飽かぬかも佐田の岡辺に侍宿しに行く","#[仮名],たちばなの,しまのみやには,あかぬかも,さだのをかへに,とのゐしにゆく","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]多 -> 田 [類][紀][温]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
しまのみやには[寛],
あかぬかも,[寛]あかすかも,
さだのをかへに,[寛]さたのをかへに,
とのゐしにゆく[寛],
" "#[番号]02/0180","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]御立為之 嶋乎母家跡 住鳥毛 荒備勿行 年替左右","#[訓読]み立たしの島をも家と棲む鳥も荒びな行きそ年かはるまで","#[仮名],みたたしの,しまをもいへと,すむとりも,あらびなゆきそ,としかはるまで","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
みたたしの,[寛]みたちせし,
しまをもいへと[寛],
すむとりも[寛],
あらびなゆきそ,[寛]あらひなゆきそ,
としかはるまで,[寛]としかはるまて,
" "#[番号]02/0181","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]御立為之 嶋之荒礒乎 今見者 不生有之草 生尓来鴨","#[訓読]み立たしの島の荒礒を今見れば生ひざりし草生ひにけるかも","#[仮名],みたたしの,しまのありそを,いまみれば,おひざりしくさ,おひにけるかも","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
みたたしの,[寛]みたちせし,
しまのありそを,[寛]しまのあらいそを,
いまみれば,[寛]けふみれは,
おひざりしくさ,[寛]おひさりしくさ,
おひにけるかも[寛],
" "#[番号]02/0182","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]鳥M立 飼之鴈乃兒 栖立<去>者 檀岡尓 飛反来年","#[訓読]鳥座立て飼ひし雁の子巣立ちなば真弓の岡に飛び帰り来ね","#[仮名],とぐらたて,かひしかりのこ,すだちなば,まゆみのをかに,とびかへりこね","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]M [類][紀] 垣 / <> -> 去 [西(右書)][類][紀]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,真弓岡,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
とぐらたて,[寛]とくらたち,
かひしかりのこ[寛],
すだちなば,[寛]すたちなは,
まゆみのをかに[寛],
とびかへりこね,[寛]とひかへりこね,
" "#[番号]02/0183","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]吾御門 千代常登婆尓 将榮等 念而有之 吾志悲毛","#[訓読]我が御門千代とことばに栄えむと思ひてありし我れし悲しも","#[仮名],わがみかど,ちよとことばに,さかえむと,おもひてありし,われしかなしも","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
わがみかど,[寛]わかみかと,
ちよとことばに,[寛]ちよとことはに,
さかえむと,[寛]さかへむと,
おもひてありし[寛],
われしかなしも[寛],
" "#[番号]02/0184","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]東乃 多藝能御門尓 雖伺侍 昨日毛今日毛 召言毛無","#[訓読]東のたぎの御門に侍へど昨日も今日も召す言もなし","#[仮名],ひむがしの,たぎのみかどに,さもらへど,きのふもけふも,めすこともなし","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
ひむがしの,[寛]ひむかの,
たぎのみかどに,[寛]たきのみかとに,
さもらへど,[寛]さもらへと,
きのふもけふも[寛],
めすこともなし[寛],
" "#[番号]02/0185","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]水傳 礒乃浦廻乃 石<上>乍自 木丘開道乎 又将見鴨","#[訓読]水伝ふ礒の浦廻の岩つつじ茂く咲く道をまたも見むかも","#[仮名],みなつたふ,いそのうらみの,いはつつじ,もくさくみちを,またもみむかも","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]<> -> 上 [金][類][紀]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
みなつたふ,[寛]みなつての,
いそのうらみの,[寛]いそのうらわの,
いはつつじ,[寛]いはつつし,
もくさくみちを[寛],
またもみむかも[寛],
" "#[番号]02/0186","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]一日者 千遍参入之 東乃 大寸御門乎 入不勝鴨","#[訓読]一日には千たび参りし東の大き御門を入りかてぬかも","#[仮名],ひとひには,ちたびまゐりし,ひむがしの,おほきみかどを,いりかてぬかも","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
ひとひには[寛],
ちたびまゐりし,[寛]ちたひまゐりし,
ひむがしの,[寛]ひむかしの,
おほきみかどを,[寛]たきのみかとを,
いりかてぬかも[寛],
" "#[番号]02/0187","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]所由無 佐太乃岡邊尓 反居者 嶋御橋尓 誰加住<N>無","#[訓読]つれもなき佐田の岡辺に帰り居ば島の御階に誰れか住まはむ","#[仮名],つれもなき,さだのをかへに,かへりゐば,しまのみはしに,たれかすまはむ","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]舞 -> N [金][類][古]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,佐田岡,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
つれもなき,[寛]つれもなく,
さだのをかへに,[寛]さたのをかへに,
かへりゐば,[寛]かへりゐは,
しまのみはしに[寛],
たれかすまはむ[寛],
" "#[番号]02/0188","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]<旦>覆 日之入去者 御立之 嶋尓下座而 嘆鶴鴨","#[訓読]朝ぐもり日の入り行けばみ立たしの島に下り居て嘆きつるかも","#[仮名],あさぐもり,ひのいりゆけば,みたたしの,しまにおりゐて,なげきつるかも","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]且 -> 旦 [金][類][古][紀]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
あさぐもり,[寛]あさくもり,
ひのいりゆけば,[寛]ひのいりゆけは,
みたたしの,[寛]みたちせし,
しまにおりゐて[寛],
なげきつるかも,[寛]なけきつるかも,
" "#[番号]02/0189","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]<旦>日照 嶋乃御門尓 欝悒 人音毛不為者 真浦悲毛","#[訓読]朝日照る嶋の御門におほほしく人音もせねばまうら悲しも","#[仮名],あさひてる,しまのみかどに,おほほしく,ひとおともせねば,まうらがなしも","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]且 -> 旦 [金][類][古][紀]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
あさひてる[寛],
しまのみかどに,[寛]しまのみかとに,
おほほしく,[寛]おほつかな,
ひとおともせねば,[寛]ひとおともせすは,
まうらがなしも,[寛]まうらかなしも,
" "#[番号]02/0190","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]真木柱 太心者 有之香杼 此吾心 鎮目金津毛","#[訓読]真木柱太き心はありしかどこの我が心鎮めかねつも","#[仮名],まきばしら,ふときこころは,ありしかど,このあがこころ,しづめかねつも","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
まきばしら,[寛]まきはしら,
ふときこころは[寛],
ありしかど,[寛]ありしかと,
このあがこころ,[寛]このわかこころ,
しづめかねつも,[寛]しつめかねつも,
" "#[番号]02/0191","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]毛許呂裳遠 春冬片設而 幸之 宇陀乃大野者 所念武鴨","#[訓読]けころもを時かたまけて出でましし宇陀の大野は思ほえむかも","#[仮名],けころもを,ときかたまけて,いでましし,うだのおほのは,おもほえむかも","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
けころもを[寛],
ときかたまけて,[寛]はるふゆまけて,
いでましし,[寛]みゆきせし,
うだのおほのは,[寛]うたのほのは,
おもほえむかも[寛],
" "#[番号]02/0192","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]朝日照 佐太乃岡邊尓 鳴鳥之 夜鳴變布 此年己呂乎","#[訓読]朝日照る佐田の岡辺に泣く鳥の夜哭きかへらふこの年ころを","#[仮名],あさひてる,さだのをかへに,なくとりの,よなきかへらふ,このとしころを","#[左注](右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,佐田岡,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
あさひてる[寛],
さだのをかへに,[寛]さたのをかへに,
なくとりの[寛],
よなきかへらふ[寛],
このとしころを[寛],
" "#[番号]02/0193","#[題詞](皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首)","#[原文]八多篭良我 夜晝登不云 行路乎 吾者皆悉 宮道叙為","#[訓読]畑子らが夜昼といはず行く道を我れはことごと宮道にぞする","#[仮名],はたこらが,よるひるといはず,ゆくみちを,われはことごと,みやぢにぞする","#[左注]右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:舎人,草壁皇子,柿本人麻呂,島の宮,殯宮挽歌,飛鳥,地名","#[訓異]
はたこらが,[寛]はたこらか,
よるひるといはず,[寛]よるひるといはす,
ゆくみちを[寛],
われはことごと,[寛]われはさなから,
みやぢにぞする,[寛]みやかとそする,
" "#[番号]02/0194","#[題詞]柿本朝臣人麻呂獻泊瀬部皇女忍坂部皇子歌一首[并短歌]","#[原文]飛鳥 明日香乃河之 上瀬尓 生玉藻者 下瀬尓 流觸經 玉藻成 彼依此依 靡相之 嬬乃命乃 多田名附 柔<膚>尚乎 劔刀 於身副不寐者 烏玉乃 夜床母荒良無 [一云 <阿>礼奈牟] 所虚故 名具鮫<兼>天 氣<田>敷藻 相屋常念而 [一云 公毛相哉登] 玉垂乃 越<能>大野之 旦露尓 玉裳者O打 夕霧尓 衣者<沾>而 草枕 旅宿鴨為留 不相君故","#[訓読]飛ぶ鳥の 明日香の川の 上つ瀬に 生ふる玉藻は 下つ瀬に 流れ触らばふ 玉藻なす か寄りかく寄り 靡かひし 嬬の命の たたなづく 柔肌すらを 剣太刀 身に添へ寝ねば ぬばたまの 夜床も荒るらむ [一云 荒れなむ] そこ故に 慰めかねて けだしくも 逢ふやと思ひて [一云 君も逢ふやと] 玉垂の 越智の大野の 朝露に 玉藻はひづち 夕霧に 衣は濡れて 草枕 旅寝かもする 逢はぬ君故","#[仮名],とぶとりの,あすかのかはの,かみつせに,おふるたまもは,しもつせに,ながれふらばふ,たまもなす,かよりかくより,なびかひし,つまのみことの,たたなづく,にきはだすらを,つるぎたち,みにそへねねば,ぬばたまの,よとこもあるらむ,[あれなむ],そこゆゑに,なぐさめかねて,けだしくも,あふやとおもひて,[きみもあふやと],たまだれの,をちのおほのの,あさつゆに,たまもはひづち,ゆふぎりに,ころもはぬれて,くさまくら,たびねかもする,あはぬきみゆゑ","#[左注](右或本曰 葬河嶋皇子越智野之時 獻泊瀬部皇女歌也 日本紀<云>朱鳥五年辛卯秋九月己巳朔丁丑浄大参皇子川嶋薨)","#[校異]庸 -> 膚 [金][矢][京] / 何 -> 阿 [類][紀] / 魚 -> 兼 [略解] / 留 -> 田 [金][類] / 乃 -> 能 [金][紀] / 沽 -> 沾 [金][温][京]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,泊瀬部皇女,忍坂皇子,代作,献呈挽歌,異伝,飛鳥,地名,枕詞","#[訓異]
とぶとりの,[寛]とふとりの,
あすかのかはの[寛],
かみつせに,[寛]のほりせに,
おふるたまもは[寛],
しもつせに,[寛]くたりせに,
ながれふらばふ,[寛]なかれふれふる,
たまもなす[寛],
かよりかくより[寛],
なびかひし,[寛]なひきあひし,
つまのみことの,[寛]いものみことの,
たたなづく,[寛]たたなつく,
にきはだすらを,[寛]やははたすらを,
つるぎたち,[寛]つるきたち,
みにそへねねば,[寛]みにそへねねは,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よとこもあるらむ[寛],
[あれなむ],
そこゆゑに,[寛]そこゆへに,
なぐさめかねて,[寛]なくさめてける,
けだしくも,[寛]しきも,
あふやとおもひて,[寛]あふやととおもひて,
[きみもあふやと],
たまだれの,[寛]たまたれの,
をちのおほのの,[寛]こすのおほのの,
あさつゆに[寛],
たまもはひづち,[寛]たまもはひつち,
ゆふぎりに,[寛]ゆふきりに,
ころもはぬれて[寛],
くさまくら[寛],
たびねかもする,[寛]たひねかもする,
あはぬきみゆゑ,[寛]あはぬきみゆへ,
" "#[番号]02/0195","#[題詞](柿本朝臣人麻呂獻泊瀬部皇女忍坂部皇子歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]敷妙乃 袖易之君 玉垂之 越野過去 亦毛将相八方 [一云 乎知野尓過奴]","#[訓読]敷栲の袖交へし君玉垂の越智野過ぎ行くまたも逢はめやも [一云 越智野に過ぎぬ]","#[仮名],しきたへの,そでかへしきみ,たまだれの,をちのすぎゆく,またもあはめやも,[をちのにすぎぬ]","#[左注]右或本曰 葬河嶋皇子越智野之時 獻泊瀬部皇女歌也 日本紀<云>朱鳥五年辛卯秋九月己巳朔丁丑浄大参皇子川嶋薨","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,泊瀬部皇女,忍坂皇子,代作,献呈挽歌,異伝,飛鳥,枕詞,地名","#[訓異]
しきたへの[寛],
そでかへしきみ,[寛]そてかへしきみ,
たまだれの,[寛]たまたれの,
をちのすぎゆく,[寛]こすのをすきて,
またもあはめやも,[寛]またもあはすやも,
[をちのにすぎぬ]
" "#[番号]02/0196","#[題詞]明日香皇女木P殯宮之時柿本<朝臣>人麻呂作歌一首[并短歌]","#[原文]飛鳥 明日香乃河之 上瀬 石橋渡 [一云 石浪] 下瀬 打橋渡 石橋 [一云 石浪] 生靡留 玉藻毛叙 絶者生流 打橋 生乎為礼流 川藻毛叙 干者波由流 何然毛 吾<王><能> 立者 玉藻之<母>許呂 臥者 川藻之如久 靡相之 宣君之 朝宮乎 忘賜哉 夕宮乎 背賜哉 宇都曽臣跡 念之時 春都者 花折挿頭 秋立者 黄葉挿頭 敷妙之 袖携 鏡成 雖見不Q 三五月之 益目頬染 所念之 君与時々 幸而 遊賜之 御食向 木P之宮乎 常宮跡 定賜 味澤相 目辞毛絶奴 然有鴨 [一云 所己乎之毛] 綾尓憐 宿兄鳥之 片戀嬬 [一云 為乍] 朝鳥 [一云 朝霧] 徃来為君之 夏草乃 念之萎而 夕星之 彼徃此去 大船 猶預不定見者 遣<悶>流 情毛不在 其故 為便知之也 音耳母 名耳毛不絶 天地之 弥遠長久 思将徃 御名尓懸世流 明日香河 及万代 早布屋師 吾王乃 形見何此焉","#[訓読]飛ぶ鳥の 明日香の川の 上つ瀬に 石橋渡し [一云 石なみ] 下つ瀬に 打橋渡す 石橋に [一云 石なみに] 生ひ靡ける 玉藻もぞ 絶ゆれば生ふる 打橋に 生ひををれる 川藻もぞ 枯るれば生ゆる なにしかも 我が大君の 立たせば 玉藻のもころ 臥やせば 川藻のごとく 靡かひし 宜しき君が 朝宮を 忘れたまふや 夕宮を 背きたまふや うつそみと 思ひし時に 春へは 花折りかざし 秋立てば 黄葉かざし 敷栲の 袖たづさはり 鏡なす 見れども飽かず 望月の いやめづらしみ 思ほしし 君と時々 出でまして 遊びたまひし 御食向ふ 城上の宮を 常宮と 定めたまひて あぢさはふ 目言も絶えぬ しかれかも [一云 そこをしも] あやに悲しみ ぬえ鳥の 片恋づま [一云 しつつ] 朝鳥の [一云 朝霧の] 通はす君が 夏草の 思ひ萎えて 夕星の か行きかく行き 大船の たゆたふ見れば 慰もる 心もあらず そこ故に 為むすべ知れや 音のみも 名のみも絶えず 天地の いや遠長く 偲ひ行かむ 御名に懸かせる 明日香川 万代までに はしきやし 我が大君の 形見かここを","#[仮名],とぶとり,あすかのかはの,かみつせに,いしはしわたし,[いしなみ],しもつせに,うちはしわたす,いしはしに,[いしなみに],おひなびける,たまももぞ,たゆればおふる,うちはしに,おひををれる,かはももぞ,かるればはゆる,なにしかも,わがおほきみの,たたせば,たまものもころ,こやせば,かはものごとく,なびかひし,よろしききみが,あさみやを,わすれたまふや,ゆふみやを,そむきたまふや,うつそみと,おもひしときに,はるへは,はなをりかざし,あきたてば,もみちばかざし,しきたへの,そでたづさはり,かがみなす,みれどもあかず,もちづきの,いやめづらしみ,おもほしし,きみとときとき,いでまして,あそびたまひし,みけむかふ,きのへのみやを,とこみやと,さだめたまひて,あぢさはふ,めこともたえぬ,しかれかも,[そこをしも],あやにかなしみ,ぬえどりの,かたこひづま,[しつつ],あさとりの,[あさぎりの],かよはすきみが,なつくさの,おもひしなえて,ゆふつづの,かゆきかくゆき,おほぶねの,たゆたふみれば,なぐさもる,こころもあらず,そこゆゑに,せむすべしれや,おとのみも,なのみもたえず,あめつちの,いやとほながく,しのひゆかむ,みなにかかせる,あすかがは,よろづよまでに,はしきやし,わがおほきみの,かたみかここを","#[左注]","#[校異]生 -> 王 [金][紀] / 乃 -> 能 [金][紀] / 如 -> 母 [金] / 預 [西(左筆)] 豫 / 問 -> 悶 [西(訂正)][金][類][温]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,明日香皇女,殯宮,飛鳥,地名,枕詞","#[訓異]
とぶとり,[寛]とふとりの,
あすかのかはの[寛],
かみつせに,[寛]のほりせに,
いしはしわたし,[寛]いははしわたし,
[いしなみ],
しもつせに,[寛]くたりせに,
うちはしわたす,[寛]うちはしわたし,
いしはしに,[寛]いしししの,
[いしなみに],
おひなびける,[寛]おひなひかせる,
たまももぞ,[寛]たまももそ,
たゆればおふる,[寛]たゆれはおふる,
うちはしに,[寛]うちはし,
おひををれる,[寛]おふるをすれる,
かはももぞ,[寛]かはももそ,
かるればはゆる,[寛]かるれははゆる,
なにしかも[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
たたせば,[寛]たちたれは,
たまものもころ,[寛]たまものことく,
こやせば,[寛]ころふせは,
かはものごとく,[寛]かはものことく,
なびかひし,[寛]なひきあひし,
よろしききみが,[寛]よろしききみか,
あさみやを[寛],
わすれたまふや[寛],
ゆふみやを[寛],
そむきたまふや[寛],
うつそみと[寛],
おもひしときに,[寛]おもひしときの,
はるへは,[寛]はるへには,
はなをりかざし,[寛]はなをりかさし,
あきたてば,[寛]あきたては,
もみちばかざし,[寛]もみちはかさし,
しきたへの[寛],
そでたづさはり,[寛]そてたつさはり,
かがみなす,[寛]かかみなす,
みれどもあかず,[寛]みれともあかす,
もちづきの,[寛]もちつきの,
いやめづらしみ,[寛]ましめつらしみ,
おもほしし,[寛]おもほへし,
きみとときとき[寛],
いでまして,[寛]みゆきして,
あそびたまひし,[寛]あそひたまひし,
みけむかふ[寛],
きのへのみやを,[寛]こかめのみやの,
とこみやと[寛],
さだめたまひて,[寛]さためたまひて,
あぢさはふ,[寛]あちさはふ,
めこともたえぬ,[寛]まこともたえぬ,
しかれかも,[寛]しかあるかも,
[そこをしも],
あやにかなしみ[寛],
ぬえどりの,[寛]ぬえとりの,
かたこひづま,[寛]かたこひつま,
[しつつ],
あさとりの[寛],
[あさぎりの],
かよはすきみが,[寛]かよひしきみか,
なつくさの[寛],
おもひしなえて[寛],
ゆふつづの,[寛]ゆふつつの,
かゆきかくゆき[寛],
おほぶねの,[寛]おほふねの,
たゆたふみれば,[寛]たゆたふみれは,
なぐさもる,[寛]おもひやる,
こころもあらず,[寛]こころもあらす,
そこゆゑに,[寛]そのゆゑを,
せむすべしれや,[寛]すへもしらしや,
おとのみも[寛],
なのみもたえず,[寛]なのみもたえす,
あめつちの[寛],
いやとほながく,[寛]いやとほなかく,
しのひゆかむ,[寛]おもひゆかむ,
みなにかかせる,[寛]みなにかけせる,
あすかがは,[寛]あすかかは,
よろづよまでに,[寛]よろつよまてに,
はしきやし[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
かたみかここを,[寛]かたみかここも,
" "#[番号]02/0197","#[題詞](明日香皇女木P殯宮之時柿本<朝臣>人麻呂作歌一首[并短歌])短歌二首","#[原文]明日香川 四我良美渡之 塞益者 進留水母 能杼尓賀有萬思 [一云 水乃与杼尓加有益]","#[訓読]明日香川しがらみ渡し塞かませば流るる水ものどにかあらまし [一云 水の淀にかあらまし]","#[仮名],あすかがは,しがらみわたし,せかませば,ながるるみづも,のどにかあらまし,[みづの,よどにかあらまし]","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,明日香皇女,殯宮,飛鳥,地名","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
しがらみわたし,[寛]しからみわたし,
せかませば,[寛]せかませは,
ながるるみづも,[寛]なかるるみつも,
のどにかあらまし,[寛]のとにかあらまし,
[みづの,
よどにかあらまし
" "#[番号]02/0198","#[題詞]((明日香皇女木P殯宮之時柿本<朝臣>人麻呂作歌一首[并短歌])短歌二首)","#[原文]明日香川 明日谷 [一云 左倍] 将見等 念八方 [一云 念香毛] 吾王 御名忘世奴 [一云 御名不所忘]","#[訓読]明日香川明日だに [一云 さへ] 見むと思へやも [一云 思へかも] 我が大君の御名忘れせぬ [一云 御名忘らえぬ]","#[仮名],あすかがは,あすだに[さへ]みむと,おもへやも,[おもへかも],わがおほきみの,みなわすれせぬ,[みなわすらえぬ]","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,明日香皇女,殯宮,飛鳥,地名","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
あすだに[さへ]みむと,[寛]あすたにみむと,
おもへやも[寛],
[おもへかも],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
みなわすれせぬ[寛],
[みなわすらえぬ],
" "#[番号]02/0199","#[題詞]高市皇子尊城上殯宮之時柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌]","#[原文]<挂>文 忌之伎鴨 [一云 由遊志計礼抒母] 言久母 綾尓畏伎 明日香乃 真神之原尓 久堅能 天都御門乎 懼母 定賜而 神佐扶跡 磐隠座 八隅知之 吾大王乃 所聞見為 背友乃國之 真木立 不破山越而 狛劔 和射見我原乃 行宮尓 安母理座而 天下 治賜 [一云 <掃>賜而] 食國乎 定賜等 鶏之鳴 吾妻乃國之 御軍士乎 喚賜而 千磐破 人乎和為跡 不奉仕 國乎治跡 [一云 掃部等] 皇子随 任賜者 大御身尓 大刀取帶之 大御手尓 弓取持之 御軍士乎 安騰毛比賜 齊流 鼓之音者 雷之 聲登聞麻R 吹響流 小角乃音母 [一云 笛之音波] 敵見有 虎可S吼登 諸人之 恊流麻R尓 [一云 聞<或>麻R] 指擧有 幡之靡者 冬木成 春去来者 野毎 著而有火之 [一云 冬木成 春野焼火乃] 風之共 靡如久 取持流 弓波受乃驟 三雪落 冬乃林尓 [一云 由布乃林] 飃可毛 伊巻渡等 念麻R 聞之恐久 [一云 諸人 見<或>麻R尓] 引放 箭<之>繁計久 大雪乃 乱而来礼 [一云 霰成 曽知余里久礼婆] 不奉仕 立向之毛 露霜之 消者消倍久 去鳥乃 相<競>端尓 [一云 朝霜之 消者消言尓 打蝉等 安良蘇布波之尓] 渡會乃 齋宮従 神風尓 伊吹<或>之 天雲乎 日之目毛不<令>見 常闇尓 覆賜而 定之 水穂之國乎 神随 太敷座而 八隅知之 吾大王之 天下 申賜者 萬代<尓> 然之毛将有登 [一云 如是毛安良無等] 木綿花乃 榮時尓 吾大王 皇子之御門乎 [一云 刺竹 皇子御門乎] 神宮尓 装束奉而 遣使 御門之人毛 白妙乃 麻衣著 <埴>安乃 門之原尓 赤根刺 日之盡 鹿自物 伊波比伏管 烏玉能 暮尓至者 大殿乎 振放見乍 鶉成 伊波比廻 雖侍候 佐母良比不得者 春鳥之 佐麻欲比奴礼者 嘆毛 未過尓 憶毛 未<不>盡者 言<左>敝久 百濟之原従 神葬 々伊座而 朝毛吉 木上宮乎 常宮等 高之奉而 神随 安定座奴 雖然 吾大王之 萬代跡 所念食而 作良志之 香<来>山之宮 萬代尓 過牟登念哉 天之如 振放見乍 玉手次 懸而将偲 恐有騰文","#[訓読]かけまくも ゆゆしきかも [一云 ゆゆしけれども] 言はまくも あやに畏き 明日香の 真神の原に ひさかたの 天つ御門を 畏くも 定めたまひて 神さぶと 磐隠ります やすみしし 我が大君の きこしめす 背面の国の 真木立つ 不破山超えて 高麗剣 和射見が原の 仮宮に 天降りいまして 天の下 治めたまひ [一云 掃ひたまひて] 食す国を 定めたまふと 鶏が鳴く 東の国の 御いくさを 召したまひて ちはやぶる 人を和せと 奉ろはぬ 国を治めと [一云 掃へと] 皇子ながら 任したまへば 大御身に 大刀取り佩かし 大御手に 弓取り持たし 御軍士を 率ひたまひ 整ふる 鼓の音は 雷の 声と聞くまで 吹き鳴せる 小角の音も [一云 笛の音は] 敵見たる 虎か吼ゆると 諸人の おびゆるまでに [一云 聞き惑ふまで] ささげたる 幡の靡きは 冬こもり 春さり来れば 野ごとに つきてある火の [一云 冬こもり 春野焼く火の] 風の共 靡くがごとく 取り持てる 弓弭の騒き み雪降る 冬の林に [一云 木綿の林] つむじかも い巻き渡ると 思ふまで 聞きの畏く [一云 諸人の 見惑ふまでに] 引き放つ 矢の繁けく 大雪の 乱れて来れ [一云 霰なす そちより来れば] まつろはず 立ち向ひしも 露霜の 消なば消ぬべく 行く鳥の 争ふはしに [一云 朝霜の 消なば消とふに うつせみと 争ふはしに] 渡会の 斎きの宮ゆ 神風に い吹き惑はし 天雲を 日の目も見せず 常闇に 覆ひ賜ひて 定めてし 瑞穂の国を 神ながら 太敷きまして やすみしし 我が大君の 天の下 申したまへば 万代に しかしもあらむと [一云 かくしもあらむと] 木綿花の 栄ゆる時に 我が大君 皇子の御門を [一云 刺す竹の 皇子の御門を] 神宮に 装ひまつりて 使はしし 御門の人も 白栲の 麻衣着て 埴安の 御門の原に あかねさす 日のことごと 獣じもの い匍ひ伏しつつ ぬばたまの 夕になれば 大殿を 振り放け見つつ 鶉なす い匍ひ廻り 侍へど 侍ひえねば 春鳥の さまよひぬれば 嘆きも いまだ過ぎぬに 思ひも いまだ尽きねば 言さへく 百済の原ゆ 神葬り 葬りいまして あさもよし 城上の宮を 常宮と 高く奉りて 神ながら 鎮まりましぬ しかれども 我が大君の 万代と 思ほしめして 作らしし 香具山の宮 万代に 過ぎむと思へや 天のごと 振り放け見つつ 玉たすき 懸けて偲はむ 畏かれども","#[仮名],かけまくも,ゆゆしきかも,[ゆゆしけれども],いはまくも,あやにかしこき,あすかの,まかみのはらに,ひさかたの,あまつみかどを,かしこくも,さだめたまひて,かむさぶと,いはがくります,やすみしし,わがおほきみの,きこしめす,そとものくにの,まきたつ,ふはやまこえて,こまつるぎ,わざみがはらの,かりみやに,あもりいまして,あめのした,をさめたまひ,[はらひたまひて],をすくにを,さだめたまふと,とりがなく,あづまのくにの,みいくさを,めしたまひて,ちはやぶる,ひとをやはせと,まつろはぬ,くにををさめと,[はらへと],みこながら,よさしたまへば,おほみみに,たちとりはかし,おほみてに,ゆみとりもたし,みいくさを,あどもひたまひ,ととのふる,つづみのおとは,いかづちの,こゑときくまで,ふきなせる,くだのおとも,[ふえのおとは],あたみたる,とらかほゆると,もろひとの,おびゆるまでに,[ききまどふまで],ささげたる,はたのなびきは,ふゆこもり,はるさりくれば,のごとに,つきてあるひの,[ふゆこもり,はるのやくひの],かぜのむた,なびくがごとく,とりもてる,ゆはずのさわき,みゆきふる,ふゆのはやしに,[ゆふのはやし],つむじかも,いまきわたると,おもふまで,ききのかしこく,[もろひとの,みまどふまでに],ひきはなつ,やのしげけく,おほゆきの,みだれてきたれ,[あられなす,そちよりくれば],まつろはず,たちむかひしも,つゆしもの,けなばけぬべく,ゆくとりの,あらそふはしに,[あさしもの,けなばけとふに,うつせみと,あらそふはしに],わたらひの,いつきのみやゆ,かむかぜに,いふきまとはし,あまくもを,ひのめもみせず,とこやみに,おほひたまひて,さだめてし,みづほのくにを,かむながら,ふとしきまして,やすみしし,わがおほきみの,あめのした,まをしたまへば,よろづよに,しかしもあらむと,[かくしもあらむと],ゆふばなの,さかゆるときに,わがおほきみ,みこのみかどを,[さすたけの,みこのみかどを],かむみやに,よそひまつりて,つかはしし,みかどのひとも,しろたへの,あさごろもきて,はにやすの,みかどのはらに,あかねさす,ひのことごと,ししじもの,いはひふしつつ,ぬばたまの,ゆふへになれば,おほとのを,ふりさけみつつ,うづらなす,いはひもとほり,さもらへど,さもらひえねば,はるとりの,さまよひぬれば,なげきも,いまだすぎぬに,おもひも,いまだつきねば,ことさへく,くだらのはらゆ,かみはぶり,はぶりいまして,あさもよし,きのへのみやを,とこみやと,たかくまつりて,かむながら,しづまりましぬ,しかれども,わがおほきみの,よろづよと,おもほしめして,つくらしし,かぐやまのみや,よろづよに,すぎむとおもへや,あめのごと,ふりさけみつつ,たまたすき,かけてしのはむ,かしこかれども","#[左注]","#[校異]桂 -> 挂 [金][類] / 拂 -> 掃 [金][類] / 惑 -> 或 [類][紀] / R [金][類](塙)(楓) 泥 / 惑 -> 或 [金][類] / <> -> 之 [金][紀] / 竟 -> 競 [西(補筆)][類][紀] / 惑 -> 或 [金][類] / 合 -> 令 [西(左筆)][金] / <> -> 尓 [金][類][紀] / 垣 -> 埴 [細][温][京] / <> -> 不 [金][類][紀] / 右 -> 左 [金] / 未 -> 来 [金][類][紀]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,高市皇子,殯宮,壬申の乱,飛鳥,地名,枕詞","#[訓異]
かけまくも[寛],
ゆゆしきかも[寛],
[ゆゆしけれども],
いはまくも[寛],
あやにかしこき[寛],
あすかの[寛],
まかみのはらに[寛],
ひさかたの[寛],
あまつみかどを,[寛]あまつみかとを,
かしこくも[寛],
さだめたまひて,[寛]さためたまひて,
かむさぶと,[寛]かみさふと,
いはがくります,[寛]いはかくれます,
やすみしし[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
きこしめす,[寛]きかしみし,
そとものくにの[寛],
まきたつ,[寛]まきたてる,
ふはやまこえて[寛],
こまつるぎ,[寛]こまつるき,
わざみがはらの,[寛]わさみかはらの,
かりみやに,[寛]かくみやに,
あもりいまして,[寛]やすもりまして,
あめのした[寛],
をさめたまひ,[寛]おさめたまひし,
[はらひたまひて],
をすくにを,[寛]をしくにを,
さだめたまふと,[寛]しつめたまふと,
とりがなく,[寛]とりかなく,
あづまのくにの,[寛]あつまのくにの,
みいくさを[寛],
めしたまひて,[寛]めしたまひつつ,
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
ひとをやはせと,[寛]かみをなこしと,
まつろはぬ[寛],
くにををさめと,[寛]くにをおさむと,
[はらへと],
みこながら,[寛]わかみこの,
よさしたまへば,[寛]ままにたまへは,
おほみみに[寛],
たちとりはかし,[寛]たちとりし,
おほみてに,[寛]おほに,
ゆみとりもたし,[寛]ゆみとりもし,
みいくさを[寛],
あどもひたまひ,[寛]あともひたまひ,
ととのふる[寛],
つづみのおとは,[寛]つつみのこゑは,
いかづちの,[寛]いかつちの,
こゑときくまで,[寛]こゑときくまて,
ふきなせる[寛],
くだのおとも,[寛]をつののこゑも,
[ふえのおとは],
あたみたる[寛],
とらかほゆると[寛],
もろひとの[寛],
おびゆるまでに,[寛]おひゆるまてに,
[ききまどふまで],
ささげたる,[寛]さしあくる,
はたのなびきは,[寛]はたのなひきは,
ふゆこもり,[寛]ふゆこなり,
はるさりくれば,[寛]はるさりくれは,
のごとに,[寛]のへことに,
つきてあるひの[寛],
[ふゆこもり,
はるのやくひの],
かぜのむた,[寛]かせのむた,
なびくがごとく,[寛]なひくかことく,
とりもてる,[寛]とりもたる,
ゆはずのさわき,[寛]ゆはすのうこき,
みゆきふる[寛],
ふゆのはやしに[寛],
[ゆふのはやし],
つむじかも,[寛]あらしかも,
いまきわたると[寛],
おもふまで,[寛]おもふまて,
ききのかしこく[寛],
[もろひとの,
みまどふまでに],
ひきはなつ[寛],
やのしげけく,[寛]やのしけらけく,
おほゆきの[寛],
みだれてきたれ,[寛]みたれてきたれ,
[あられなす,
そちよりくれば],
まつろはず,[寛]まつろはぬ,
たちむかひしも[寛],
つゆしもの[寛],
けなばけぬべく,[寛]けなはけぬへく,
ゆくとりの[寛],
あらそふはしに[寛],
[あさしもの,
けなばけとふに,
うつせみと,
あらそふはしに],
わたらひの[寛],
いつきのみやゆ,[寛]いつきのみやに,
かむかぜに,[寛]かみかせに,
いふきまとはし[寛],
あまくもを[寛],
ひのめもみせず,[寛]ひのめもみせす,
とこやみに[寛],
おほひたまひて[寛],
さだめてし,[寛]しつめてし,
みづほのくにを,[寛]みつほのくにを,
かむながら,[寛]かみのまに,
ふとしきまして[寛],
やすみしし[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
あめのした[寛],
まをしたまへば,[寛]まをしたまへは,
よろづよに,[寛]よろつよに,
しかしもあらむと,[寛]しかれもあらむと,
[かくしもあらむと],
ゆふばなの,[寛]ゆふはなの,
さかゆるときに[寛],
わがおほきみ,[寛]わかきみの,
みこのみかどを,[寛]みこのみかとを,
[さすたけの,
みこのみかどを],
かむみやに[寛],
よそひまつりて,[寛]かさりまつりて,
つかはしし,[寛]たてまたす,
みかどのひとも,[寛]みかとのひとも,
しろたへの[寛],
あさごろもきて,[寛]あさころもき,
はにやすの[寛],
みかどのはらに,[寛]みかとのはらに,
あかねさす[寛],
ひのことごと,[寛]ひのつくるまて,
ししじもの,[寛]しししもの,
いはひふしつつ[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
ゆふへになれば,[寛]ゆふへになれは,
おほとのを[寛],
ふりさけみつつ[寛],
うづらなす,[寛]うつらなす,
いはひもとほり[寛],
さもらへど,[寛]さもらへと,
さもらひえねば,[寛]さもらひえねは,
はるとりの,[寛]うくひすの,
さまよひぬれば,[寛]さまよひぬれは,
なげきも,[寛]なけきも,
いまだすぎぬに,[寛]いまたすきぬに,
おもひも[寛],
いまだつきねば,[寛]いまたつきねは,
ことさへく[寛],
くだらのはらゆ,[寛]くたらのはらに,
かみはぶり,[寛]たまはふり,
はぶりいまして,[寛]はふりいまして,
あさもよし,[寛]あさもよひ,
きのへのみやを,[寛]きのうへのみやを,
とこみやと[寛],
たかくまつりて,[寛]たかくしたてて,
かむながら,[寛]かみのまに,
しづまりましぬ,[寛]しつまりましぬ,
しかれども,[寛]しかれとも,
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
よろづよと,[寛]よろつよと,
おもほしめして[寛],
つくらしし[寛],
かぐやまのみや,[寛]かくやまのみや,
よろづよに,[寛]よろつよに,
すぎむとおもへや,[寛]すきむとおもへや,
あめのごと,[寛]あめのこと,
ふりさけみつつ[寛],
たまたすき[寛],
かけてしのはむ[寛],
かしこかれども,[寛]かしこけれとも,
" "#[番号]02/0200","#[題詞](高市皇子尊城上殯宮之時柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌])短歌二首","#[原文]久堅之 天所知流 君故尓 日月毛不知 戀渡鴨","#[訓読]ひさかたの天知らしぬる君故に日月も知らず恋ひわたるかも","#[仮名],ひさかたの,あめしらしぬる,きみゆゑに,ひつきもしらず,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,高市皇子,殯宮,飛鳥,地名","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あめしらしぬる,[寛]あめにしらるる,
きみゆゑに[寛],
ひつきもしらず,[寛]ひつきもしらす,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]02/0201","#[題詞]((高市皇子尊城上殯宮之時柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌])短歌二首)","#[原文]<埴>安乃 池之堤之 隠沼乃 去方乎不知 舎人者迷惑","#[訓読]埴安の池の堤の隠り沼のゆくへを知らに舎人は惑ふ","#[仮名],はにやすの,いけのつつみの,こもりぬの,ゆくへをしらに,とねりはまとふ","#[左注]","#[校異]垣 -> 埴 [紀]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,高市皇子,殯宮,飛鳥,地名","#[訓異]
はにやすの[寛],
いけのつつみの[寛],
こもりぬの,[寛]かくれぬの,
ゆくへをしらに,[寛]ゆくへをしらす,
とねりはまとふ[寛],
" "#[番号]02/0202","#[題詞](高市皇子尊城上殯宮之時柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌])或書反歌一首","#[原文]哭澤之 神社尓三輪須恵 雖祷祈 我王者 高日所知奴","#[訓読]哭沢の神社に三輪据ゑ祈れども我が大君は高日知らしぬ","#[仮名],なきさはの,もりにみわすゑ,いのれども,わがおほきみは,たかひしらしぬ","#[左注]右一首類聚歌林曰 桧隈女王怨泣澤神社之歌也 案日本紀<云>十年丙申秋七月辛丑朔庚戌後<皇子>尊薨","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:桧隈女王,高市皇子,殯宮,飛鳥,地名","#[訓異]
なきさはの[寛],
もりにみわすゑ[寛],
いのれども,[寛]いのれとも,
わがおほきみは,[寛]わかおほきみは,
たかひしらしぬ[寛],
" "#[番号]02/0203","#[題詞]但馬皇女薨後穂積皇子冬日雪落遥望御墓悲傷流涕御作歌一首","#[原文]零雪者 安播尓勿落 吉隠之 猪養乃岡之 塞為巻尓","#[訓読]降る雪はあはにな降りそ吉隠の猪養の岡の塞なさまくに","#[仮名],ふるゆきは,あはになふりそ,よなばりの,ゐかひのをかの,せきなさまくに","#[左注]","#[校異]塞 [金](塙)(楓) 寒 / 為 [桧嬬手](塙)(楓) 有","#[事項],挽歌,作者:穂積皇子,但馬皇女,初瀬,名張,地名","#[訓異]
ふるゆきは[寛],
あはになふりそ[寛],
よなばりの,[寛]よこもりの,
ゐかひのをかの[寛],
せきなさまくに,
" "#[番号]02/0204","#[題詞]弓削皇子薨時置始東人<作>歌一首[并短歌]","#[原文]安見知之 吾王 高光 日之皇子 久堅乃 天宮尓 神随 神等座者 其乎霜 文尓恐美 晝波毛 日之盡 夜羽毛 夜之盡 臥居雖嘆 飽不足香裳","#[訓読]やすみしし 我が大君 高照らす 日の御子 ひさかたの 天つ宮に 神ながら 神といませば そこをしも あやに畏み 昼はも 日のことごと 夜はも 夜のことごと 伏し居嘆けど 飽き足らぬかも","#[仮名],やすみしし,わがおほきみ,たかてらす,ひのみこ,ひさかたの,あまつみやに,かむながら,かみといませば,そこをしも,あやにかしこみ,ひるはも,ひのことごと,よるはも,よのことごと,ふしゐなげけど,あきたらぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:置始東人,弓削皇子,殯宮,枕詞","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみ,[寛]わかおほきみの,
たかてらす[寛],
ひのみこ,[寛]ひのわかみこは,
ひさかたの[寛],
あまつみやに,[寛]あめのみやに,
かむながら,[寛]かみのまに,
かみといませば,[寛]かみといませは,
そこをしも,[寛]それをしも,
あやにかしこみ[寛],
ひるはも[寛],
ひのことごと,[寛]ひのつき,
よるはも[寛],
よのことごと,[寛]よのつき,
ふしゐなげけど,[寛]ふしゐなけけと,
あきたらぬかも[寛],
" "#[番号]02/0205","#[題詞](弓削皇子薨時置始東人<作>歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]王者 神西座者 天雲之 五百重之下尓 隠賜奴","#[訓読]大君は神にしませば天雲の五百重が下に隠りたまひぬ","#[仮名],おほきみは,かみにしませば,あまくもの,いほへがしたに,かくりたまひぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:置始東人,弓削皇子,殯宮,現人神","#[訓異]
おほきみは[寛],
かみにしませば,[寛]かみにしませは,
あまくもの[寛],
いほへがしたに,[寛]いほへのしたに,
かくりたまひぬ,[寛]かくれたまひぬ,
" "#[番号]02/0206","#[題詞](弓削皇子薨時置始東人<作>歌一首[并短歌])又短歌一首","#[原文]神樂<浪>之 志賀左射礼浪 敷布尓 常丹跡君之 所念有計類","#[訓読]楽浪の志賀さざれ波しくしくに常にと君が思ほせりける","#[仮名],ささなみの,しがさざれなみ,しくしくに,つねにときみが,おもほせりける","#[左注]","#[校異]波 -> 浪 [金][紀]","#[事項],挽歌,作者:置始東人,弓削皇子,殯宮,異伝,序詞","#[訓異]
ささなみの[寛],
しがさざれなみ,[寛]しかさされなみ,
しくしくに[寛],
つねにときみが,[寛]つねにときみか,
おもほせりける,[寛]おほしたりける,
" "#[番号]02/0207","#[題詞]柿本朝臣人麻呂妻死之後泣血哀慟作歌二首[并短歌]","#[原文]天飛也 軽路者 吾妹兒之 里尓思有者 懃 欲見騰 不已行者 入目乎多見 真根久徃者 人應知見 狭根葛 後毛将相等 大船之 思憑而 玉蜻 磐垣淵之 隠耳 戀管在尓 度日乃 晩去之如 照月乃 雲隠如 奥津藻之 名延之妹者 黄葉乃 過伊去等 玉梓之 使之言者 梓弓 聲尓聞而 [一云 聲耳聞而] 将言為便 世武為便不知尓 聲耳乎 聞而有不得者 吾戀 千重之一隔毛 遣悶流 情毛有八等 吾妹子之 不止出見之 軽市尓 吾立聞者 玉手次 畝火乃山尓 喧鳥之 音母不所聞 玉桙 道行人毛 獨谷 似之不去者 為便乎無見 妹之名喚而 袖曽振鶴 [一云 名耳聞而有不得者]","#[訓読]天飛ぶや 軽の道は 我妹子が 里にしあれば ねもころに 見まく欲しけど やまず行かば 人目を多み 数多く行かば 人知りぬべみ さね葛 後も逢はむと 大船の 思ひ頼みて 玉かぎる 岩垣淵の 隠りのみ 恋ひつつあるに 渡る日の 暮れぬるがごと 照る月の 雲隠るごと 沖つ藻の 靡きし妹は 黄葉の 過ぎて去にきと 玉梓の 使の言へば 梓弓 音に聞きて [一云 音のみ聞きて] 言はむすべ 為むすべ知らに 音のみを 聞きてありえねば 我が恋ふる 千重の一重も 慰もる 心もありやと 我妹子が やまず出で見し 軽の市に 我が立ち聞けば 玉たすき 畝傍の山に 鳴く鳥の 声も聞こえず 玉桙の 道行く人も ひとりだに 似てし行かねば すべをなみ 妹が名呼びて 袖ぞ振りつる [一云 名のみを聞きてありえねば]","#[仮名],あまとぶや,かるのみちは,わぎもこが,さとにしあれば,ねもころに,みまくほしけど,やまずゆかば,ひとめをおほみ,まねくゆかば,ひとしりぬべみ,さねかづら,のちもあはむと,おほぶねの,おもひたのみて,たまかぎる,いはかきふちの,こもりのみ,こひつつあるに,わたるひの,くれぬるがごと,てるつきの,くもがくるごと,おきつもの,なびきしいもは,もみちばの,すぎていにきと,たまづさの,つかひのいへば,あづさゆみ,おとにききて,[おとのみききて],いはむすべ,せむすべしらに,おとのみを,ききてありえねば,あがこふる,ちへのひとへも,なぐさもる,こころもありやと,わぎもこが,やまずいでみし,かるのいちに,わがたちきけば,たまたすき,うねびのやまに,なくとりの,こゑもきこえず,たまほこの,みちゆくひとも,ひとりだに,にてしゆかねば,すべをなみ,いもがなよびて,そでぞふりつる,[なのみをききてありえねば]","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,妻,隠り妻,亡妻挽歌,枕詞","#[訓異]
あまとぶや,[寛]あまとふや,
かるのみちは,[寛]かるのみちをは,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
さとにしあれば,[寛]さとにしあれは,
ねもころに[寛],
みまくほしけど,[寛]みまくほりすと,
やまずゆかば,[寛]やますゆかは,
ひとめをおほみ[寛],
まねくゆかば,[寛]まねくゆかは,
ひとしりぬべみ,[寛]ひとしりぬへみ,
さねかづら,[寛]さねかつら,
のちもあはむと[寛],
おほぶねの,[寛]おほふねの,
おもひたのみて[寛],
たまかぎる,[寛]かけろふの,
いはかきふちの[寛],
こもりのみ,[寛]かくれのみ,
こひつつあるに[寛],
わたるひの[寛],
くれぬるがごと,[寛]くれゆくかこと,
てるつきの[寛],
くもがくるごと,[寛]くもかくること,
おきつもの[寛],
なびきしいもは,[寛]なひきしいもは,
もみちばの,[寛]もみちはの,
すぎていにきと,[寛]きていゆくと,
たまづさの,[寛]たまつさの,
つかひのいへば,[寛]つかひのいへは,
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
おとにききて,[寛]おとにききつつ,
[おとのみききて],
いはむすべ,[寛]いはむすへ,
せむすべしらに,[寛]せむすへしらに,
おとのみを[寛],
ききてありえねば,[寛]ききてありえねは,
あがこふる,[寛]わかこひの,
ちへのひとへも[寛],
なぐさもる,[寛]おひやる,
こころもありやと,[寛]こころもあれやと,
わぎもこが,[寛]わきもこし,
やまずいでみし,[寛]やますいてみし,
かるのいちに[寛],
わがたちきけば,[寛]わかたちきけは,
たまたすき[寛],
うねびのやまに,[寛]うねひのやまに,
なくとりの[寛],
こゑもきこえず,[寛]おともきこえす,
たまほこの[寛],
みちゆくひとも,[寛]みちゆきひとも,
ひとりだに,[寛]ひとりたに,
にてしゆかねば,[寛]にてしゆかねは,
すべをなみ,[寛]すへをなみ,
いもがなよびて,[寛]いもかなよひて,
そでぞふりつる,[寛]そてそふりつ,
[なのみをききてありえねば],[寛]なそのみききてありえねは,
" "#[番号]02/0208","#[題詞](柿本朝臣人麻呂妻死之後泣血哀慟作歌二首[并短歌])短歌二首","#[原文]秋山之 黄葉乎茂 迷流 妹乎将求 山道不知母 [一云 路不知而]","#[訓読]秋山の黄葉を茂み惑ひぬる妹を求めむ山道知らずも [一云 道知らずして]","#[仮名],あきやまの,もみちをしげみ,まどひぬる,いもをもとめむ,やまぢしらずも,[みちしらずして]","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,妻,山中他界,亡妻挽歌","#[訓異]
あきやまの[寛],
もみちをしげみ,[寛]もみちをしけみ,
まどひぬる,[寛]まとひぬる,
いもをもとめむ[寛],
やまぢしらずも,[寛]やまちしらすも,
[みちしらずして]
" "#[番号]02/0209","#[題詞]((柿本朝臣人麻呂妻死之後泣血哀慟作歌二首[并短歌])短歌二首)","#[原文]黄葉之 落去奈倍尓 玉梓之 使乎見者 相日所念","#[訓読]黄葉の散りゆくなへに玉梓の使を見れば逢ひし日思ほゆ","#[仮名],もみちばの,ちりゆくなへに,たまづさの,つかひをみれば,あひしひおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,妻,亡妻挽歌,枕詞,植物","#[訓異]
もみちばの,[寛]もみちはの,
ちりゆくなへに[寛],
たまづさの,[寛]たまつさの,
つかひをみれば,[寛]つかひをみれは,
あひしひおもほゆ[寛],
" "#[番号]02/0210","#[題詞](柿本朝臣人麻呂妻死之後泣血哀慟作歌二首[并短歌])","#[原文]打蝉等 念之時尓 [一云 宇都曽臣等 念之] 取持而 吾二人見之 T出之 堤尓立有 槻木之 己知碁<知>乃枝之 春葉之 茂之如久 念有之 妹者雖有 <憑有>之 兒等尓者雖有 世間乎 背之不得者 蜻火之 燎流荒野尓 白妙之 天領巾隠 鳥自物 朝立伊麻之弖 入日成 隠去之鹿齒 吾妹子之 形見尓置有 若兒<乃> 乞泣毎 取與 物之無者 <烏徳>自物 腋挟持 吾妹子与 二人吾宿之 枕付 嬬屋之内尓 晝羽裳 浦不樂晩之 夜者裳 氣衝明之 嘆友 世武為便不知尓 戀友 相因乎無見 大鳥<乃> 羽易乃山尓 吾戀流 妹者伊座等 人云者 石根左久見<手> 名積来之 吉雲曽無寸 打蝉等 念之妹之 珠蜻 髣髴谷裳 不見思者","#[訓読]うつせみと 思ひし時に [一云 うつそみと 思ひし] 取り持ちて 我がふたり見し 走出の 堤に立てる 槻の木の こちごちの枝の 春の葉の 茂きがごとく 思へりし 妹にはあれど 頼めりし 子らにはあれど 世間を 背きしえねば かぎるひの 燃ゆる荒野に 白栲の 天領巾隠り 鳥じもの 朝立ちいまして 入日なす 隠りにしかば 我妹子が 形見に置ける みどり子の 乞ひ泣くごとに 取り与ふ 物しなければ 男じもの 脇ばさみ持ち 我妹子と ふたり我が寝し 枕付く 妻屋のうちに 昼はも うらさび暮らし 夜はも 息づき明かし 嘆けども 為むすべ知らに 恋ふれども 逢ふよしをなみ 大鳥の 羽がひの山に 我が恋ふる 妹はいますと 人の言へば 岩根さくみて なづみ来し よけくもぞなき うつせみと 思ひし妹が 玉かぎる ほのかにだにも 見えなく思へば","#[仮名],うつせみと,おもひしときに,[うつそみと,おもひし],とりもちて,わがふたりみし,はしりでの,つつみにたてる,つきのきの,こちごちのえの,はるのはの,しげきがごとく,おもへりし,いもにはあれど,たのめりし,こらにはあれど,よのなかを,そむきしえねば,かぎるひの,もゆるあらのに,しろたへの,あまひれがくり,とりじもの,あさだちいまして,いりひなす,かくりにしかば,わぎもこが,かたみにおける,みどりこの,こひなくごとに,とりあたふ,ものしなければ,をとこじもの,わきばさみもち,わぎもこと,ふたりわがねし,まくらづく,つまやのうちに,ひるはも,うらさびくらし,よるはも,いきづきあかし,なげけども,せむすべしらに,こふれども,あふよしをなみ,おほとりの,はがひのやまに,あがこふる,いもはいますと,ひとのいへば,いはねさくみて,なづみこし,よけくもぞなき,うつせみと,おもひしいもが,たまかぎる,ほのかにだにも,みえなくおもへば","#[左注]","#[校異]智 -> 知 [金][紀][京] / <> -> 憑有 [西(右書)][類][紀] / <> -> 乃 [西(右書)][金][類][紀] / 鳥穂 -> 烏徳 [万葉考] / <> -> 乃 [金][類][紀] / 人之 -> 人 [紀] / 乎 -> 手 [類] / 等 [金][紀](塙) 跡","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,妻,異伝,亡妻挽歌,枕詞","#[訓異]
うつせみと[寛],
おもひしときに[寛],
[うつそみと,
おもひし],
とりもちて[寛],
わがふたりみし,[寛]わかふたりにし,
はしりでの,[寛]はしりいての,
つつみにたてる[寛],
つきのきの[寛],
こちごちのえの,[寛]こちこちのえの,
はるのはの[寛],
しげきがごとく,[寛]しけきかことく,
おもへりし[寛],
いもにはあれど,[寛]いもにはあれと,
たのめりし[寛],
こらにはあれど,[寛]こらにはあれと,
よのなかを[寛],
そむきしえねば,[寛]そむきしえねは,
かぎるひの,[寛]かけろふの,
もゆるあらのに[寛],
しろたへの[寛],
あまひれがくり,[寛]あまひれこもり,
とりじもの,[寛]とりしもの,
あさだちいまして,[寛]あさたちいまして,
いりひなす[寛],
かくりにしかば,[寛]かくれにしかは,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
かたみにおける[寛],
みどりこの,[寛]みとりこの,
こひなくごとに,[寛]こひなくことに,
とりあたふ[寛],
ものしなければ,[寛]ものしなけれは,
をとこじもの,[寛]とりほしも,
わきばさみもち,[寛]わきはさみもち,
わぎもこと,[寛]わきもこと,
ふたりわがねし,[寛]ふたりわかねし,
まくらづく,[寛]まくらつく,
つまやのうちに[寛],
ひるはも[寛],
うらさびくらし,[寛]うらふれくらし,
よるはも[寛],
いきづきあかし,[寛]いきつきあかし,
なげけども,[寛]なけけとも,
せむすべしらに,[寛]せむすへしらに,
こふれども,[寛]こふれとも,
あふよしをなみ[寛],
おほとりの[寛],
はがひのやまに,[寛]はかへのやまに,
あがこふる,[寛]わかこふる,
いもはいますと,[寛]いもはいませと,
ひとのいへば,[寛]ひとのいへは,
いはねさくみて,[寛]いはねさくみを,
なづみこし,[寛]なつみこし,
よけくもぞなき,[寛]よけくもそなき,
うつせみと[寛],
おもひしいもが,[寛]おもひしいもか,
たまかぎる,[寛]かけろふの,
ほのかにだにも,[寛]ほのかにたにも,
みえなくおもへば,[寛]みえぬおもひは,
" "#[番号]02/0211","#[題詞](柿本朝臣人麻呂妻死之後泣血哀慟作歌二首[并短歌])短歌二首","#[原文]去年見而之 秋乃月夜者 雖照 相見之妹者 弥年放","#[訓読]去年見てし秋の月夜は照らせれど相見し妹はいや年離る","#[仮名],こぞみてし,あきのつくよは,てらせれど,あひみしいもは,いやとしさかる","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,妻,亡妻挽歌","#[訓異]
こぞみてし,[寛]こそみてし,
あきのつくよは,[寛]あきのつきよは,
てらせれど,[寛]てらせとも,
あひみしいもは[寛],
いやとしさかる[寛],
" "#[番号]02/0212","#[題詞]((柿本朝臣人麻呂妻死之後泣血哀慟作歌二首[并短歌])短歌二首)","#[原文]衾道乎 引手乃山尓 妹乎置而 山徑徃者 生跡毛無","#[訓読]衾道を引手の山に妹を置きて山道を行けば生けりともなし","#[仮名],ふすまぢを,ひきでのやまに,いもをおきて,やまぢをゆけば,いけりともなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,妻,亡妻挽歌","#[訓異]
ふすまぢを,[寛]ふすまちを,
ひきでのやまに,[寛]ひきてのやまに,
いもをおきて[寛],
やまぢをゆけば,[寛]やまちをゆけは,
いけりともなし[寛],
" "#[番号]02/0213","#[題詞](柿本朝臣人麻呂妻死之後泣血哀慟作歌二首[并短歌])或本歌曰","#[原文]宇都曽臣等 念之時 携手 吾二見之 出立 百兄槻木 虚知期知尓 枝刺有如 春葉 茂如 念有之 妹庭雖在 恃有之 妹庭雖在 世中 背不得者 香切火之 燎流荒野尓 白栲 天領巾隠 鳥自物 朝立伊行而 入日成 隠西加婆 吾妹子之 形見尓置有 緑兒之 乞哭別 取委 物之無者 男自物 腋挾持 吾妹子與 二吾宿之 枕附 嬬屋内尓 <日>者 浦不怜晩之 夜者 息<衝>明之 雖嘆 為便不知 雖戀 相縁無 大鳥 羽易山尓 汝戀 妹座等 人云者 石根割見而 奈積来之 好雲叙無 宇都曽臣 念之妹我 灰而座者","#[訓読]うつそみと 思ひし時に たづさはり 我がふたり見し 出立の 百枝槻の木 こちごちに 枝させるごと 春の葉の 茂きがごとく 思へりし 妹にはあれど 頼めりし 妹にはあれど 世間を 背きしえねば かぎるひの 燃ゆる荒野に 白栲の 天領巾隠り 鳥じもの 朝立ちい行きて 入日なす 隠りにしかば 我妹子が 形見に置ける みどり子の 乞ひ泣くごとに 取り与ふ 物しなければ 男じもの 脇ばさみ持ち 我妹子と 二人我が寝し 枕付く 妻屋のうちに 昼は うらさび暮らし 夜は 息づき明かし 嘆けども 為むすべ知らに 恋ふれども 逢ふよしをなみ 大鳥の 羽がひの山に 汝が恋ふる 妹はいますと 人の言へば 岩根さくみて なづみ来し よけくもぞなき うつそみと 思ひし妹が 灰にてませば","#[仮名],うつそみと,おもひしときに,たづさはり,わがふたりみし,いでたちの,ももえつきのき,こちごちに,えださせるごと,はるのはの,しげきがごとく,おもへりし,いもにはあれど,たのめりし,いもにはあれど,よのなかを,そむきしえねば,かぎるひの,もゆるあらのに,しろたへの,あまひれがくり,とりじもの,あさだちいゆきて,いりひなす,かくりにしかば,わぎもこが,かたみにおける,みどりこの,こひなくごとに,とりあたふ,ものしなければ,をとこじもの,わきばさみもち,わぎもこと,ふたりわがねし,まくらづく,つまやのうちに,ひるは,うらさびくらし,よるは,いきづきあかし,なげけども,せむすべしらに,こふれども,あふよしをなみ,おほとりの,はがひのやまに,ながこふる,いもはいますと,ひとのいへば,いはねさくみて,なづみこし,よけくもぞなき,うつそみと,おもひしいもが,はひにてませば","#[左注]","#[校異]兄 [金][類] 足 / 妹 [金][類][紀] 姉 / 且 -> 日 [金][類] / 衡 -> 衝 [金][類][紀] / 戀 [金][類](塙) 眷","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,妻,異伝,亡妻挽歌,枕詞","#[訓異]
うつそみと[寛],
おもひしときに[寛],
たづさはり,[寛]たつさへて,
わがふたりみし,[寛]わかふたりみし,
いでたちの,[寛]いてたてる,
ももえつきのき[寛],
こちごちに,[寛]かちこちに,
えださせるごと,[寛]えたさせること,
はるのはの[寛],
しげきがごとく,[寛]しけれるかこと,
おもへりし[寛],
いもにはあれど,[寛]いもにはあれと,
たのめりし[寛],
いもにはあれど,[寛]いもにはあれと,
よのなかを[寛],
そむきしえねば,[寛]そむきしえねは,
かぎるひの,[寛]かけろふの,
もゆるあらのに[寛],
しろたへの[寛],
あまひれがくり,[寛]あまひれこもり,
とりじもの,[寛]とりしもの,
あさだちいゆきて,[寛]あさたちいゆきて,
いりひなす[寛],
かくりにしかば,[寛]かくれにしかは,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
かたみにおける[寛],
みどりこの,[寛]みとりこの,
こひなくごとに,[寛]こひなくことに,
とりあたふ,[寛]とりまかす,
ものしなければ,[寛]ものしなけれは,
をとこじもの,[寛]をのこしも,
わきばさみもち,[寛]わきはさみもち,
わぎもこと,[寛]わきもこと,
ふたりわがねし,[寛]ふたりわかねし,
まくらづく,[寛]まくらつく,
つまやのうちに[寛],
ひるは[寛],
うらさびくらし,[寛]うらふれくらし,
よるは[寛],
いきづきあかし,[寛]いきつきあかし,
なげけども,[寛]なけけとも,
せむすべしらに,[寛]せむすへしらす,
こふれども,[寛]こふれとも,
あふよしをなみ,[寛]あふよしもなみ,
おほとりの[寛],
はがひのやまに,[寛]はかへのやまに,
ながこふる,[寛]なかこふる,
いもはいますと[寛],
ひとのいへば,[寛]ひとのいへは,
いはねさくみて[寛],
なづみこし,[寛]なつみこし,
よけくもぞなき,[寛]よけくもそなき,
うつそみと,[寛]うそつみと,
おもひしいもが,[寛]おもひしいもか,
はひにてませば,[寛]はひにてませは,
" "#[番号]02/0214","#[題詞](柿本朝臣人麻呂妻死之後泣血哀慟作歌二首[并短歌])短歌三首","#[原文]去年見而之 秋月夜者 雖渡 相見之妹者 益年離","#[訓読]去年見てし秋の月夜は渡れども相見し妹はいや年離る","#[仮名],こぞみてし,あきのつくよは,わたれども,あひみしいもは,いやとしさかる","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,妻,異伝,亡妻挽歌","#[訓異]
こぞみてし,[寛]こそみてし,
あきのつくよは,[寛]あきのつきよは,
わたれども,[寛]わたれとも,
あひみしいもは[寛],
いやとしさかる[寛],
" "#[番号]02/0215","#[題詞]((柿本朝臣人麻呂妻死之後泣血哀慟作歌二首[并短歌])短歌三首)","#[原文]衾路 引出山 妹<置> 山路念邇 生刀毛無","#[訓読]衾道を引手の山に妹を置きて山道思ふに生けるともなし","#[仮名],ふすまぢを,ひきでのやまに,いもをおきて,やまぢおもふに,いけるともなし","#[左注]","#[校異]且 -> 置 [西(左書)][類][紀]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,妻,異伝,亡妻挽歌,枕詞","#[訓異]
ふすまぢを,[寛]ふすまちを,
ひきでのやまに,[寛]ひきてのやまに,
いもをおきて[寛],
やまぢおもふに,[寛]やまちおもふに,
いけるともなし,[寛]いけりともなし,
" "#[番号]02/0216","#[題詞]((柿本朝臣人麻呂妻死之後泣血哀慟作歌二首[并短歌])短歌三首)","#[原文]家来而 吾屋乎見者 玉床之 外向来 妹木枕","#[訓読]家に来て我が屋を見れば玉床の外に向きけり妹が木枕","#[仮名],いへにきて,わがやをみれば,たまどこの,ほかにむきけり,いもがこまくら","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,妻,異伝,亡妻挽歌","#[訓異]
いへにきて[寛],
わがやをみれば,[寛]わかやをみれは,
たまどこの,[寛]たまゆかの,
ほかにむきけり,[寛]おかにむきける,
いもがこまくら,[寛]いもかこまくら,
" "#[番号]02/0217","#[題詞]吉備津釆女死時柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌]","#[原文]秋山 下部留妹 奈用竹乃 騰遠依子等者 何方尓 念居可 栲紲之 長命乎 露己曽婆 朝尓置而 夕者 消等言 霧己曽婆 夕立而 明者 失等言 梓弓 音聞吾母 髣髴見之 事悔敷乎 布栲乃 手枕纒而 劔刀 身二副寐價牟 若草 其嬬子者 不怜弥可 念而寐良武 悔弥可 念戀良武 時不在 過去子等我 朝露乃如也 夕霧乃如也","#[訓読]秋山の したへる妹 なよ竹の とをよる子らは いかさまに 思ひ居れか 栲縄の 長き命を 露こそば 朝に置きて 夕は 消ゆといへ 霧こそば 夕に立ちて 朝は 失すといへ 梓弓 音聞く我れも おほに見し こと悔しきを 敷栲の 手枕まきて 剣太刀 身に添へ寝けむ 若草の その嬬の子は 寂しみか 思ひて寝らむ 悔しみか 思ひ恋ふらむ 時ならず 過ぎにし子らが 朝露のごと 夕霧のごと","#[仮名],あきやまの,したへるいも,なよたけの,とをよるこらは,いかさまに,おもひをれか,たくなはの,ながきいのちを,つゆこそば,あしたにおきて,ゆふへは,きゆといへ,きりこそば,ゆふへにたちて,あしたは,うすといへ,あづさゆみ,おときくわれも,おほにみし,ことくやしきを,しきたへの,たまくらまきて,つるぎたち,みにそへねけむ,わかくさの,そのつまのこは,さぶしみか,おもひてぬらむ,くやしみか,おもひこふらむ,ときならず,すぎにしこらが,あさつゆのごと,ゆふぎりのごと","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,吉備津采女,枕詞","#[訓異]
あきやまの[寛],
したへるいも[寛],
なよたけの,[寛]なゆたけの,
とをよるこらは[寛],
いかさまに[寛],
おもひをれか,[寛]おもひをりてか,
たくなはの[寛],
ながきいのちを,[寛]なかきいのちを,
つゆこそば,[寛]つゆこそは,
あしたにおきて[寛],
ゆふへは,[寛]ゆふへには,
きゆといへ,[寛]きえぬといへり,
きりこそば,[寛]きりこそは,
ゆふへにたちて[寛],
あしたは,[寛]あしたには,
うすといへ[寛],
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
おときくわれも[寛],
おほにみし,[寛]ほのにみし,
ことくやしきを[寛],
しきたへの[寛],
たまくらまきて[寛],
つるぎたち,[寛]つるきたち,
みにそへねけむ[寛],
わかくさの[寛],
そのつまのこは[寛],
さぶしみか,[寛]さひしみか,
おもひてぬらむ[寛],
くやしみか,
おもひこふらむ,
ときならず,[寛]ときならぬ,
すぎにしこらが,[寛]すきにしこらか,
あさつゆのごと,[寛]あさつゆのとや,
ゆふぎりのごと,[寛]ゆふきりのことや,
" "#[番号]02/0218","#[題詞](吉備津釆女死時柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌])短歌二首","#[原文]樂浪之 志賀津子等何 [一云 志賀乃津之子我] 罷道之 川瀬道 見者不怜毛","#[訓読]楽浪の志賀津の子らが [一云 志賀の津の子が] 罷り道の川瀬の道を見れば寂しも","#[仮名],ささなみの,しがつのこらが,[しがのつのこが],まかりぢの,かはせのみちを,みればさぶしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,吉備津采女,枕詞","#[訓異]
ささなみの[寛],
しがつのこらが,
[しがのつのこが],
まかりぢの,[寛]ゆくみちの,
かはせのみちを[寛],
みればさぶしも,[寛]みれはさひしも,
" "#[番号]02/0219","#[題詞]((吉備津釆女死時柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌])短歌二首)","#[原文]天數 凡津子之 相日 於保尓見敷者 今叙悔","#[訓読]そら数ふ大津の子が逢ひし日におほに見しかば今ぞ悔しき","#[仮名],そらかぞふ,おほつのこが,あひしひに,おほにみしかば,いまぞくやしき","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,吉備津采女,枕詞","#[訓異]
そらかぞふ,[寛]あまかそふ,
おほつのこが,[寛]おふしつのこか,
あひしひに,[寛]あひしひを,
おほにみしかば,[寛]おほにみしかは,
いまぞくやしき,[寛]いまそくやしき,
" "#[番号]02/0220","#[題詞]讃岐狭<岑>嶋視石中死人柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌]","#[原文]玉藻吉 讃岐國者 國柄加 雖見不飽 神柄加 幾許貴寸 天地 日月與共 満将行 神乃御面跡 次来 中乃水門従 <船>浮而 吾榜来者 時風 雲居尓吹尓 奥見者 跡位浪立 邊見者 白浪散動 鯨魚取 海乎恐 行<船>乃 梶引折而 彼此之 嶋者雖多 名細之 狭<岑>之嶋乃 荒礒面尓 廬作而見者 浪音乃 茂濱邊乎 敷妙乃 枕尓為而 荒床 自伏君之 家知者 徃而毛将告 妻知者 来毛問益乎 玉桙之 道太尓不知 欝悒久 待加戀良武 愛伎妻等者","#[訓読]玉藻よし 讃岐の国は 国からか 見れども飽かぬ 神からか ここだ貴き 天地 日月とともに 足り行かむ 神の御面と 継ぎ来る 那珂の港ゆ 船浮けて 我が漕ぎ来れば 時つ風 雲居に吹くに 沖見れば とゐ波立ち 辺見れば 白波騒く 鯨魚取り 海を畏み 行く船の 梶引き折りて をちこちの 島は多けど 名ぐはし 狭岑の島の 荒磯面に 廬りて見れば 波の音の 繁き浜辺を 敷栲の 枕になして 荒床に ころ臥す君が 家知らば 行きても告げむ 妻知らば 来も問はましを 玉桙の 道だに知らず おほほしく 待ちか恋ふらむ はしき妻らは","#[仮名],たまもよし,さぬきのくには,くにからか,みれどもあかぬ,かむからか,ここだたふとき,あめつち,ひつきとともに,たりゆかむ,かみのみおもと,つぎきたる,なかのみなとゆ,ふねうけて,わがこぎくれば,ときつかぜ,くもゐにふくに,おきみれば,とゐなみたち,へみれば,しらなみさわく,いさなとり,うみをかしこみ,ゆくふねの,かぢひきをりて,をちこちの,しまはおほけど,なぐはし,さみねのしまの,ありそもに,いほりてみれば,なみのおとの,しげきはまべを,しきたへの,まくらになして,あらとこに,ころふすきみが,いへしらば,ゆきてもつげむ,つましらば,きもとはましを,たまほこの,みちだにしらず,おほほしく,まちかこふらむ,はしきつまらは","#[左注]","#[校異]U -> 船 [類][紀][温] / U -> 船 [類][紀][温] / 峯 -> 岑 [類][紀][温] / 太 [類][紀](塙) 大","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,石中死人,行路死人,羈旅,香川,沙弥島,地名,枕詞","#[訓異]
たまもよし,[寛]たまもよき,
さぬきのくには[寛],
くにからか[寛],
みれどもあかぬ,[寛]みれともあかぬ,
かむからか,[寛]かみからか,
ここだたふとき,[寛]ここはかしこき,
あめつち,[寛]あめつちの,
ひつきとともに[寛],
たりゆかむ,[寛]みちゆかむ,
かみのみおもと[寛],
つぎきたる,[寛]つきてくる,
なかのみなとゆ[寛],
ふねうけて,[寛]ふねうけて,
わがこぎくれば,[寛]わかこきくれは,
ときつかぜ,[寛]ときつかせ,
くもゐにふくに[寛],
おきみれば,[寛]おきみれは,
とゐなみたち,[寛]あとゐなみたち,
へみれば,[寛]へをみれは,
しらなみさわく,[寛]しらなみとよみ,
いさなとり[寛],
うみをかしこみ[寛],
ゆくふねの[寛],
かぢひきをりて,[寛]かちひきをりて,
をちこちの[寛],
しまはおほけど,[寛]しまはおほかれと,
なぐはし,[寛]なくはし,
さみねのしまの[寛],
ありそもに,[寛]あらいそもに,
いほりてみれば,[寛]いほりつくりてみれは,
なみのおとの,[寛]なみのとの,
しげきはまべを,[寛]しけきはまへを,
しきたへの[寛],
まくらになして[寛],
あらとこに,[寛]あらとこと,
ころふすきみが,[寛]ころふすきみか,
いへしらば,[寛]いへしらは,
ゆきてもつげむ,[寛]ゆきてもつけむ,
つましらば,[寛]つましらは,
きもとはましを,[寛]きてもとはましを,
たまほこの[寛],
みちだにしらず,[寛]みちたにしらす,
おほほしく[寛],
まちかこふらむ[寛],
はしきつまらは[寛],
" "#[番号]02/0221","#[題詞](讃岐狭<岑>嶋視石中死人柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌])短歌二首","#[原文]妻毛有者 採而多宜麻之 <作>美乃山 野上乃宇波疑 過去計良受也","#[訓読]妻もあらば摘みて食げまし沙弥の山野の上のうはぎ過ぎにけらずや","#[仮名],つまもあらば,つみてたげまし,さみのやま,ののへのうはぎ,すぎにけらずや","#[左注]","#[校異]佐 -> 作 [金][類][古]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,石中死人,行路死人,羈旅,香川,沙弥島,地名","#[訓異]
つまもあらば,[寛]つまもあらは,
つみてたげまし,[寛]とりてかきまし,
さみのやま[寛],
ののへのうはぎ,[寛]のかみのうはき,
すぎにけらずや,[寛]すきにけらすや,
" "#[番号]02/0222","#[題詞]((讃岐狭<岑>嶋視石中死人柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌])短歌二首)","#[原文]奥波 来依荒礒乎 色妙乃 枕等巻而 奈世流君香聞","#[訓読]沖つ波来寄る荒礒を敷栲の枕とまきて寝せる君かも","#[仮名],おきつなみ,きよるありそを,しきたへの,まくらとまきて,なせるきみかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,石中死人,行路死人,羈旅,香川,沙弥島,地名","#[訓異]
おきつなみ[寛],
きよるありそを,[寛]きよるあらいそを,
しきたへの[寛],
まくらとまきて[寛],
なせるきみかも[寛],
" "#[番号]02/0223","#[題詞]柿本朝臣人麻呂在石見國臨死時自傷作歌一首","#[原文]鴨山之 磐根之巻有 吾乎鴨 不知等妹之 待乍将有","#[訓読]鴨山の岩根しまける我れをかも知らにと妹が待ちつつあるらむ","#[仮名],かもやまの,いはねしまける,われをかも,しらにといもが,まちつつあるらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,臨死,島根,虚構,歌語り,地名","#[訓異]
かもやまの[寛],
いはねしまける[寛],
われをかも[寛],
しらにといもが,[寛]しらすといもか,
まちつつあるらむ,[寛]まちつつあらむ,
" "#[番号]02/0224","#[題詞]柿本朝臣人麻呂死時妻依羅娘子作歌二首","#[原文]<且>今日々々々 吾待君者 石水之 貝尓 [一云 谷尓] 交而 有登不言八方","#[訓読]今日今日と我が待つ君は石川の峽に [一云 谷に] 交りてありといはずやも","#[仮名],けふけふと,わがまつきみは,いしかはの,かひに,[たにに],まじりて,ありといはずやも","#[左注]","#[校異]旦 -> 且 [紀][細][温]","#[事項],挽歌,作者:妻依羅娘子,柿本人麻呂,臨死,島根,歌語り,地名","#[訓異]
けふけふと[寛],
わがまつきみは,[寛]わかまつきみは,
いしかはの[寛],
かひに[寛],
[たにに],
まじりて,[寛]ましりて,
ありといはずやも,[寛]ありといはすやも,
" "#[番号]02/0225","#[題詞](柿本朝臣人麻呂死時妻依羅娘子作歌二首)","#[原文]直相者 相不勝 石川尓 雲立渡礼 見乍将偲","#[訓読]直の逢ひは逢ひかつましじ石川に雲立ち渡れ見つつ偲はむ","#[仮名],ただのあひは,あひかつましじ,いしかはに,くもたちわたれ,みつつしのはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:妻依羅娘子,柿本人麻呂,臨死,島根,歌語り,虚構,地名","#[訓異]
ただのあひは,[寛]たたにあはは,
あひかつましじ,[寛]あひもかねてむ,
いしかはに[寛],
くもたちわたれ[寛],
みつつしのはむ[寛],
" "#[番号]02/0226","#[題詞]丹比真人[名闕]擬柿本朝臣人麻呂之意報歌一首","#[原文]荒浪尓 縁来玉乎 枕尓置 吾此間有跡 誰将告","#[訓読]荒波に寄り来る玉を枕に置き我れここにありと誰れか告げなむ","#[仮名],あらなみに,よりくるたまを,まくらにおき,われここにありと,たれかつげなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:丹比真人,柿本人麻呂,追悼,歌語り","#[訓異]
あらなみに[寛],
よりくるたまを[寛],
まくらにおき,[寛]まくらにて,
われここにありと,[寛]われここなりと,
たれかつげなむ,[寛]たれかつけなむ,
" "#[番号]02/0227","#[題詞]或本歌曰","#[原文]天離 夷之荒野尓 君乎置而 念乍有者 生刀毛無","#[訓読]天離る鄙の荒野に君を置きて思ひつつあれば生けるともなし","#[仮名],あまざかる,ひなのあらのに,きみをおきて,おもひつつあれば,いけるともなし","#[左注]右一首歌作者未詳 但古本以此歌載於此次也","#[校異]","#[事項],柿本人麻呂,臨死,異伝,歌語り","#[訓異]
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなのあらのに[寛],
きみをおきて[寛],
おもひつつあれば,[寛]おもひつつあれは,
いけるともなし,[寛]いけりともなし,
" "#[番号]02/0228","#[題詞]寧樂宮 / 和銅四年歳次辛亥河邊宮人姫嶋松原見嬢子屍悲嘆作歌二首","#[原文]妹之名<者> 千代尓将流 姫嶋之 子松之末尓 蘿生萬代尓","#[訓読]妹が名は千代に流れむ姫島の小松がうれに蘿生すまでに","#[仮名],いもがなは,ちよにながれむ,ひめしまの,こまつがうれに,こけむすまでに","#[左注]","#[校異]<> -> 者 [西(右書)][金][類][古]","#[事項],挽歌,作者:河辺宮人,姫島,行路死人,歌語り,大阪,地名","#[訓異]
いもがなは,[寛]いもかなは,
ちよにながれむ,[寛]ちよになかれむ,
ひめしまの,[寛]ひめしまか,
こまつがうれに,[寛]こまつのうれに,
こけむすまでに,[寛]こけむすまてに,
" "#[番号]02/0229","#[題詞](和銅四年歳次辛亥河邊宮人姫嶋松原見嬢子屍悲嘆作歌二首)","#[原文]難波方 塩干勿有曽祢 沈之 妹之光儀乎 見巻苦流思母","#[訓読]難波潟潮干なありそね沈みにし妹が姿を見まく苦しも","#[仮名],なにはがた,しほひなありそね,しづみにし,いもがすがたを,みまくくるしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:河辺宮人,姫島,行路死人,歌語り,大阪,地名","#[訓異]
なにはがた,[寛]なにはかた,
しほひなありそね[寛],
しづみにし,[寛]しつみにし,
いもがすがたを,[寛]いもかすかたを,
みまくくるしも[寛],
" "#[番号]02/0230","#[題詞]霊龜元年歳次乙卯秋九月志貴親王<薨>時作歌一首[并短歌]","#[原文]梓弓 手取持而 大夫之 得物<矢>手<挾> 立向 高圓山尓 春野焼 野火登見左右 燎火乎 何如問者 玉桙之 道来人乃 泣涙 <W>X尓落者 白妙之 衣O漬而 立留 吾尓語久 何鴨 本名言 聞者 泣耳師所哭 語者 心曽痛 天皇之 神之御子之 御駕之 手火之光曽 幾許照而有","#[訓読]梓弓 手に取り持ちて ますらをの さつ矢手挟み 立ち向ふ 高円山に 春野焼く 野火と見るまで 燃ゆる火を 何かと問へば 玉鉾の 道来る人の 泣く涙 こさめに降れば 白栲の 衣ひづちて 立ち留まり 我れに語らく なにしかも もとなとぶらふ 聞けば 哭のみし泣かゆ 語れば 心ぞ痛き 天皇の 神の御子の いでましの 手火の光りぞ ここだ照りたる","#[仮名],あづさゆみ,てにとりもちて,ますらをの,さつやたばさみ,たちむかふ,たかまとやまに,はるのやく,のびとみるまで,もゆるひを,なにかととへば,たまほこの,みちくるひとの,なくなみた,こさめにふれば,しろたへの,ころもひづちて,たちとまり,われにかたらく,なにしかも,もとなとぶらふ,きけば,ねのみしなかゆ,かたれば,こころぞいたき,すめろきの,かみのみこの,いでましの,たひのひかりぞ,ここだてりたる","#[左注]?(右歌笠朝臣金村歌集出)","#[校異]失 -> 矢 [西(左朱書)][金][紀] / 狭 -> 挾 [矢][京] / V -> W [金][類] / 落者 [金][類] 落","#[事項],挽歌,霊亀1年9月,年紀,作者:笠金村,志貴皇子,奈良,地名","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
てにとりもちて[寛],
ますらをの[寛],
さつやたばさみ,[寛]ともやたはさみ,
たちむかふ[寛],
たかまとやまに[寛],
はるのやく[寛],
のびとみるまで,[寛]のひとみるまて,
もゆるひを[寛],
なにかととへば,[寛]いかにととへは,
たまほこの[寛],
みちくるひとの[寛],
なくなみた[寛],
こさめにふれば,[寛]こさめにふれは,
しろたへの[寛],
ころもひづちて,[寛]ころもひつちて,
たちとまり[寛],
われにかたらく[寛],
なにしかも,[寛]いつしかも,
もとなとぶらふ,[寛]もとのなとひて,
きけば,[寛]ききつれは,
ねのみしなかゆ,[寛]ねのみしそなく,
かたれば,[寛]かたらへは,
こころぞいたき,[寛]こころそいたき,
すめろきの[寛],
かみのみこの,[寛]かみのおほみこの,
いでましの,[寛]おほむたの,
たひのひかりぞ,[寛]たひのひかりそ,
ここだてりたる,[寛]ここたてりたる,
" "#[番号]02/0231","#[題詞](霊龜元年歳次乙卯秋九月志貴親王<薨>時作歌一首[并短歌])短歌二首","#[原文]高圓之 野邊乃秋芽子 徒 開香将散 見人無尓","#[訓読]高円の野辺の秋萩いたづらに咲きか散るらむ見る人なしに","#[仮名],たかまとの,のへのあきはぎ,いたづらに,さきかちるらむ,みるひとなしに","#[左注]?(右歌笠朝臣金村歌集出)","#[校異]","#[事項],挽歌,霊亀1年9月,年紀,作者:笠金村,志貴皇子,奈良,地名,植物","#[訓異]
たかまとの[寛],
のへのあきはぎ,[寛]のへのあきはき,
いたづらに,[寛]いたつらに,
さきかちるらむ[寛],
みるひとなしに[寛],
" "#[番号]02/0232","#[題詞]((霊龜元年歳次乙卯秋九月志貴親王<薨>時作歌一首[并短歌])短歌二首)","#[原文]御笠山 野邊徃道者 己伎太雲 繁荒有可 久尓有勿國","#[訓読]御笠山野辺行く道はこきだくも繁く荒れたるか久にあらなくに","#[仮名],みかさやま,のへゆくみちは,こきだくも,しげくあれたるか,ひさにあらなくに","#[左注]右歌笠朝臣金村歌集出","#[校異]","#[事項],挽歌,霊亀1年9月,年紀,作者:笠金村,志貴皇子,奈良,地名","#[訓異]
みかさやま[寛],
のへゆくみちは[寛],
こきだくも,[寛]こきたくも,
しげくあれたるか,[寛]しけくあれたるか,
ひさにあらなくに[寛],
" "#[番号]02/0233","#[題詞](霊龜元年歳次乙卯秋九月志貴親王<薨>時作歌一首[并短歌])或本歌曰","#[原文]高圓之 野邊乃秋芽子 勿散祢 君之形見尓 見管思奴播武","#[訓読]高円の野辺の秋萩な散りそね君が形見に見つつ偲はむ","#[仮名],たかまとの,のへのあきはぎ,なちりそね,きみがかたみに,みつつしぬはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,霊亀1年9月,年紀,志貴皇子,奈良,地名,植物","#[訓異]
たかまとの[寛],
のへのあきはぎ,[寛]のへのあきはき,
なちりそね[寛],
きみがかたみに,[寛]きみかかたみに,
みつつしぬはむ,[寛]みつつしのはむ,
" "#[番号]02/0234","#[題詞]((霊龜元年歳次乙卯秋九月志貴親王<薨>時作歌一首[并短歌])或本歌曰)","#[原文]三笠山 野邊従遊久道 己伎<太>久母 荒尓計類鴨 久尓有名國","#[訓読]御笠山野辺ゆ行く道こきだくも荒れにけるかも久にあらなくに","#[仮名],みかさやま,のへゆゆくみち,こきだくも,あれにけるかも,ひさにあらなくに","#[左注]","#[校異]大 -> 太 [金][古][京]","#[事項],挽歌,霊亀1年9月,年紀,志貴皇子,奈良,地名","#[訓異]
みかさやま[寛],
のへゆゆくみち,[寛]のへにゆくみち,
こきだくも,[寛]こきたくも,
あれにけるかも[寛],
ひさにあらなくに[寛],
" "#[番号]03/0235","#[題詞]雜歌 / 天皇御遊雷岳之時柿本朝臣人麻呂作歌一首","#[原文]皇者 神二四座者 天雲之 雷之上尓 廬為<流鴨>","#[訓読]大君は神にしませば天雲の雷の上に廬りせるかも","#[仮名],おほきみは,かみにしませば,あまくもの,いかづちのうへに,いほりせるかも","#[左注]右或本云獻忍壁皇子也 其歌曰 王 神座者 雲隠伊加土山尓 宮敷座","#[校異]鴨流 -> 流鴨 [西(訂正)][類][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,現人神,天皇讃美,宮廷讃美,飛鳥,地名,枕詞,忍壁皇子","#[訓異]
おほきみは,[寛]すめろきは,
かみにしませば,[寛]かみにしませは,
あまくもの[寛],
いかづちのうへに,[寛]いかつちのうへに,
いほりせるかも,[寛]いほりするかも,
" "#[番号]03/0235S","#[題詞]右或本云獻忍壁皇子也 其歌曰","#[原文]王 神座者 雲隠伊加土山尓 宮敷座","#[訓読]大君は神にしませば雲隠る雷山に宮敷きいます","#[仮名],おほきみは,かみにしませば,くもがくる,いかづちやまに,みやしきいます","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,現人神,天皇讃美,宮廷讃美,飛鳥,地名,枕詞,異伝,忍壁皇子","#[訓異]
おほきみは[寛],
かみにしませば,[寛]かみにしませは,
くもがくる,[寛]くもかくれ,
いかづちやまに,[寛]いかつちやまに,
みやしきいます[寛],
" "#[番号]03/0236","#[題詞]天皇賜志斐嫗御歌一首","#[原文]不聴跡雖云 強流志斐能我 強語 比者不聞而 朕戀尓家里","#[訓読]いなと言へど強ふる志斐のが強ひ語りこのころ聞かずて我れ恋ひにけり","#[仮名],いなといへど,しふるしひのが,しひかたり,このころきかずて,あれこひにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:持統,問答,志斐嫗","#[訓異]
いなといへど,[寛]いなといへと,
しふるしひのが,[寛]しふるしひのか,
しひかたり,[寛]しひことを,
このころきかずて,[寛]このころきかて,
あれこひにけり,[寛]われこひにけり,
" "#[番号]03/0237","#[題詞]志斐嫗奉和歌一首 [嫗名未詳]","#[原文]不聴雖謂 語礼々々常 詔許曽 志斐伊波奏 強<語>登言","#[訓読]いなと言へど語れ語れと宣らせこそ志斐いは申せ強ひ語りと詔る","#[仮名],いなといへど,かたれかたれと,のらせこそ,しひいはまをせ,しひかたりとのる","#[左注]","#[校異]話 -> 語 [紀]","#[事項],雑歌,作者:志斐嫗,持統,問答","#[訓異]
いなといへど,[寛]いなといへと,
かたれかたれと[寛],
のらせこそ,[寛]のれはこそ,
しひいはまをせ,[寛]しひてはまうせ,
しひかたりとのる,[寛]しひこととのる,
" "#[番号]03/0238","#[題詞]長忌寸意吉麻呂應詔歌一首","#[原文]大宮之 内二手所聞 網引為跡 網子調流 海人之呼聲","#[訓読]大宮の内まで聞こゆ網引すと網子ととのふる海人の呼び声","#[仮名],おほみやの,うちまできこゆ,あびきすと,あごととのふる,あまのよびこゑ","#[左注]右一首","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:長意吉麻呂,大阪,地名,応詔","#[訓異]
おほみやの[寛],
うちまできこゆ,[寛]うちまてきこゆ,
あびきすと,[寛]あひきすと,
あごととのふる,[寛]あこととのふる,
あまのよびこゑ,[寛]あまのよひこえ,
" "#[番号]03/0239","#[題詞]長皇子遊猟路池之時柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌]","#[原文]八隅知之 吾大王 高光 吾日乃皇子乃 馬並而 三猟立流 弱薦乎 猟路乃小野尓 十六社者 伊波比拝目 鶉己曽 伊波比廻礼 四時自物 伊波比拝 鶉成 伊波比毛等保理 恐等 仕奉而 久堅乃 天見如久 真十鏡 仰而雖見 春草之 益目頬四寸 吾於富吉美可聞","#[訓読]やすみしし 我が大君 高照らす 我が日の御子の 馬並めて 御狩り立たせる 若薦を 狩路の小野に 獣こそば い匍ひ拝め 鶉こそ い匍ひ廻れ 獣じもの い匍ひ拝み 鶉なす い匍ひ廻り 畏みと 仕へまつりて ひさかたの 天見るごとく まそ鏡 仰ぎて見れど 春草の いやめづらしき 我が大君かも","#[仮名],やすみしし,わがおほきみ,たかてらす,わがひのみこの,うまなめて,みかりたたせる,わかこもを,かりぢのをのに,ししこそば,いはひをろがめ,うづらこそ,いはひもとほれ,ししじもの,いはひをろがみ,うづらなす,いはひもとほり,かしこみと,つかへまつりて,ひさかたの,あめみるごとく,まそかがみ,あふぎてみれど,はるくさの,いやめづらしき,わがおほきみかも","#[左注]","#[校異]短歌 [西] 短謌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,長皇子,猟,大君讃美,枕詞","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみ,[寛]わかおほきみの,
たかてらす[寛],
わがひのみこの,[寛]わかひのみこの,
うまなめて[寛],
みかりたたせる,[寛]みかりにたたる,
わかこもを,[寛]わかくさを,
かりぢのをのに,[寛]かりちのをのに,
ししこそば,[寛]ししこそは,
いはひをろがめ,[寛]いはひふせらめ,
うづらこそ,[寛]うつらこそ,
いはひもとほれ[寛],
ししじもの,[寛]しししもの,
いはひをろがみ,[寛]いはひふせりて,
うづらなす,[寛]うつらなす,
いはひもとほり[寛],
かしこみと,[寛]かしこしと,
つかへまつりて[寛],
ひさかたの[寛],
あめみるごとく,[寛]あめみることく,
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
あふぎてみれど,[寛]あふきてみれと,
はるくさの,[寛]わかくさの,
いやめづらしき,[寛]ましめつらしき,
わがおほきみかも,[寛]わかおほきみかも,
" "#[番号]03/0240","#[題詞](長皇子遊猟路池之時柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]久堅乃 天歸月乎 網尓刺 我大王者 盖尓為有","#[訓読]ひさかたの天行く月を網に刺し我が大君は蓋にせり","#[仮名],ひさかたの,あめゆくつきを,あみにさし,わがおほきみは,きぬがさにせり","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,長皇子,大君讃美,枕詞","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あめゆくつきを[寛],
あみにさし[寛],
わがおほきみは,[寛]わかおほきみは,
きぬがさにせり,[寛]きぬかさにせり,
" "#[番号]03/0241","#[題詞](長皇子遊猟路池之時柿本朝臣人麻呂作歌一首[并短歌])或本反歌一首","#[原文]皇者 神尓之坐者 真木<乃>立 荒山中尓 海成可聞","#[訓読]大君は神にしませば真木の立つ荒山中に海を成すかも","#[仮名],おほきみは,かみにしませば,まきのたつ,あらやまなかに,うみをなすかも","#[左注]","#[校異]乃 -> 之 [類][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,長皇子,現人神,大君讃美,猟,異伝","#[訓異]
おほきみは,[寛]すめろきは,
かみにしませば,[寛]かみにしませは,
まきのたつ[寛],
あらやまなかに[寛],
うみをなすかも[寛],
" "#[番号]03/0242","#[題詞]弓削皇子遊吉野時御歌一首","#[原文]瀧上之 三船乃山尓 居雲乃 常将有等 和我不念久尓","#[訓読]滝の上の三船の山に居る雲の常にあらむと我が思はなくに","#[仮名],たきのうへの,みふねのやまに,ゐるくもの,つねにあらむと,わがおもはなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:弓削皇子,吉野,地名,不安","#[訓異]
たきのうへの[寛],
みふねのやまに[寛],
ゐるくもの[寛],
つねにあらむと[寛],
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]03/0243","#[題詞](弓削皇子遊吉野時御歌一首)春日王奉和歌一首","#[原文]王者 千歳<二>麻佐武 白雲毛 三船乃山尓 絶日安良米也","#[訓読]大君は千年に座さむ白雲も三船の山に絶ゆる日あらめや","#[仮名],おほきみは,ちとせにまさむ,しらくもも,みふねのやまに,たゆるひあらめや","#[左注]","#[校異]尓 -> 二 [類][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:春日王,弓削皇子,吉野,地名","#[訓異]
おほきみは[寛],
ちとせにまさむ[寛],
しらくもも[寛],
みふねのやまに[寛],
たゆるひあらめや[寛],
" "#[番号]03/0244","#[題詞](弓削皇子遊吉野時御歌一首)或本歌一首","#[原文]三吉野之 御船乃山尓 立雲之 常将在跡 我思莫苦二","#[訓読]み吉野の三船の山に立つ雲の常にあらむと我が思はなくに","#[仮名],みよしのの,みふねのやまに,たつくもの,つねにあらむと,わがおもはなくに","#[左注]右一首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,弓削皇子,吉野,異伝,地名,柿本人麻呂歌集,非略体","#[訓異]
みよしのの[寛],
みふねのやまに[寛],
たつくもの[寛],
つねにあらむと[寛],
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]03/0245","#[題詞]長田王被遣筑紫渡水嶋之時歌二首","#[原文]如聞 真貴久 奇母 神左備居賀 許礼能水嶋","#[訓読]聞きしごとまこと尊くくすしくも神さびをるかこれの水島","#[仮名],ききしごと,まことたふとく,くすしくも,かむさびをるか,これのみづしま","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:長田王,羈旅,土地讃美,水俣,熊本,地名","#[訓異]
ききしごと,[寛]ききしこと,
まことたふとく[寛],
くすしくも,[寛]あやしくも,
かむさびをるか,[寛]かみさひをるか,
これのみづしま,[寛]これのみつしま,
" "#[番号]03/0246","#[題詞](長田王被遣筑紫渡水嶋之時歌二首)","#[原文]葦北乃 野坂乃浦従 船出為而 水嶋尓将去 浪立莫勤","#[訓読]芦北の野坂の浦ゆ船出して水島に行かむ波立つなゆめ","#[仮名],あしきたの,のさかのうらゆ,ふなでして,みづしまにゆかむ,なみたつなゆめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:長田王,羈旅,水俣,熊本,地名","#[訓異]
あしきたの[寛],
のさかのうらゆ,[寛]のさかのうらに,
ふなでして,[寛]ふなてして,
みづしまにゆかむ,[寛]みつしまにゆかむ,
なみたつなゆめ[寛],
" "#[番号]03/0247","#[題詞]石川大夫和歌一首 [名闕]","#[原文]奥浪 邊波雖立 和我世故我 三船乃登麻里 瀾立目八方","#[訓読]沖つ波辺波立つとも我が背子が御船の泊り波立ためやも","#[仮名],おきつなみ,へなみたつとも,わがせこが,みふねのとまり,なみたためやも","#[左注]右今案 従四位下石川宮麻呂朝臣 慶雲年中任大貳 又正五位下石川朝臣吉美侯 神龜年中任小貳 不知兩人誰作此歌焉","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:石川大夫(宮麻呂:君子),長田王,羈旅,和歌","#[訓異]
おきつなみ[寛],
へなみたつとも[寛],
わがせこが,[寛]わかせこか,
みふねのとまり[寛],
なみたためやも[寛],
" "#[番号]03/0248","#[題詞]又長田王作歌一首","#[原文]隼人乃 薩麻乃迫門乎 雲居奈須 遠毛吾者 今日見鶴鴨","#[訓読]隼人の薩摩の瀬戸を雲居なす遠くも我れは今日見つるかも","#[仮名],はやひとの,さつまのせとを,くもゐなす,とほくもわれは,けふみつるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:長田王,羈旅,黒瀬戸,鹿児島,地名","#[訓異]
はやひとの[寛],
さつまのせとを[寛],
くもゐなす[寛],
とほくもわれは[寛],
けふみつるかも[寛],
" "#[番号]03/0249","#[題詞]柿本朝臣人麻呂覊旅歌八首","#[原文]三津埼 浪矣恐 隠江乃 舟公宣奴嶋尓","#[訓読]御津の崎波を畏み隠江の舟公宣奴嶋尓","#[仮名],みつのさき,なみをかしこみ,こもりえの,******","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,羈旅,難訓,大阪,地名","#[訓異]
みつのさき[寛],
なみをかしこみ[寛],
こもりえの[寛],
******,[寛]ふねこくきみか,ゆくかのしまに,
" "#[番号]03/0250","#[題詞](柿本朝臣人麻呂覊旅歌八首)","#[原文]珠藻苅 敏馬乎過 夏草之 野嶋之埼尓 舟近著奴","#[訓読]玉藻刈る敏馬を過ぎて夏草の野島が崎に船近づきぬ","#[仮名],たまもかる,みぬめをすぎて,なつくさの,のしまがさきに,ふねちかづきぬ","#[左注]一本云 處女乎過而 夏草乃 野嶋我埼尓 伊保里為吾等者","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,羈旅,兵庫,道行き,地名,枕詞","#[訓異]
たまもかる[寛],
みぬめをすぎて,[寛]みぬめをすきて,
なつくさの[寛],
のしまがさきに,[寛]のしまかさきに,
ふねちかづきぬ,[寛]ふねちかつきぬ,

をとめをすぎて,[寛]をとめをすきて,
なつくさの[寛],
のしまがさきに,[寛]のしまかさきに,
いほりすわれは[寛],
" "#[番号]03/0251","#[題詞](柿本朝臣人麻呂覊旅歌八首)","#[原文]粟路之 野嶋之前乃 濱風尓 妹之結 紐吹返","#[訓読]淡路の野島が崎の浜風に妹が結びし紐吹き返す","#[仮名],あはぢの,のしまがさきの,はまかぜに,いもがむすびし,ひもふきかへす","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,羈旅,望郷,兵庫,地名","#[訓異]
あはぢの,[寛]あはみちの,
のしまがさきの,[寛]のしまのさきの,
はまかぜに,[寛]はまかせに,
いもがむすびし,[寛]いもかむすひし,
ひもふきかへす[寛],
" "#[番号]03/0252","#[題詞](柿本朝臣人麻呂覊旅歌八首)","#[原文]荒栲 藤江之浦尓 鈴木釣 泉郎跡香将見 旅去吾乎","#[訓読]荒栲の藤江の浦に鱸釣る海人とか見らむ旅行く我れを","#[仮名],あらたへの,ふぢえのうらに,すずきつる,あまとかみらむ,たびゆくわれを","#[左注]一本云 白栲乃 藤江能浦尓 伊射利為流","#[校異]泉 [西(左書)][類][細] 白水","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,羈旅,霊触り,兵庫,異伝,地名,枕詞","#[訓異]
あらたへの[寛],
ふぢえのうらに,[寛]ふちえかうらに,
すずきつる,[寛]すすきつる,
あまとかみらむ,[寛]あまとかみらむ,
たびゆくわれを,[寛]たひゆくわれを,

しろたへの[寛],
ふぢえのうらに,[寛]ふちえのうらに,
いざりする,[寛]いさりする,
" "#[番号]03/0253","#[題詞](柿本朝臣人麻呂覊旅歌八首)","#[原文]稲日野毛 去過勝尓 思有者 心戀敷 可古能嶋所見 [一云 湖見]","#[訓読]稲日野も行き過ぎかてに思へれば心恋しき加古の島見ゆ [一云 水門見ゆ]","#[仮名],いなびのも,ゆきすぎかてに,おもへれば,こころこほしき,かこのしまみゆ,[みなとみゆ]","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,羈旅,土地讃美,異伝,兵庫,地名","#[訓異]
いなびのも,[寛]いなひのも,
ゆきすぎかてに,[寛]ゆきすきかてに,
おもへれば,[寛]おもへれは,
こころこほしき,[寛]こころこひしき,
かこのしまみゆ[寛],
[みなとみゆ]
" "#[番号]03/0254","#[題詞](柿本朝臣人麻呂覊旅歌八首)","#[原文]留火之 明大門尓 入日哉 榜将別 家當不見","#[訓読]燈火の明石大門に入らむ日や漕ぎ別れなむ家のあたり見ず","#[仮名],ともしびの,あかしおほとに,いらむひや,こぎわかれなむ,いへのあたりみず","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,羈旅,望郷,兵庫,枕詞,地名","#[訓異]
ともしびの,[寛]ともしひの,
あかしおほとに,[寛]あかしのなたに,
いらむひや,[寛]いるひにや,
こぎわかれなむ,[寛]こきわかれなむ,
いへのあたりみず,[寛]いへのあたりみゆ,
" "#[番号]03/0255","#[題詞](柿本朝臣人麻呂覊旅歌八首)","#[原文]天離 夷之長道従 戀来者 自明門 倭嶋所見 [一本云 家門當見由]","#[訓読]天離る鄙の長道ゆ恋ひ来れば明石の門より大和島見ゆ [一本云 家のあたり見ゆ]","#[仮名],あまざかる,ひなのながちゆ,こひくれば,あかしのとより,やまとしまみゆ,[いへのあたりみゆ]","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,羈旅,望郷,兵庫,地名,枕詞","#[訓異]
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなのながちゆ,[寛]ひなのなかちを,
こひくれば,[寛]こひくれは,
あかしのとより[寛],
やまとしまみゆ[寛],
[いへのあたりみゆ],[寛]やとあたりみゆ,
" "#[番号]03/0256","#[題詞](柿本朝臣人麻呂覊旅歌八首)","#[原文]飼飯海乃 庭好有之 苅薦乃 乱出所見 海人釣船","#[訓読]笥飯の海の庭よくあらし刈薦の乱れて出づ見ゆ海人の釣船","#[仮名],けひのうみの,にはよくあらし,かりこもの,みだれていづみゆ,あまのつりぶね","#[左注]一本云 武庫乃海 舳尓波有之 伊射里為流 海部乃釣船 浪上従所見","#[校異]海舳尓波 [紀]朱書 [全註釈] 海能尓波好 [訓 海の庭よくあらし]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,羈旅,魂触り,兵庫,地名,枕詞","#[訓異]
けひのうみの[寛],
にはよくあらし[寛],
かりこもの[寛],
みだれていづみゆ,[寛]みたれていてみゆ,
あまのつりぶね,[寛]あまのつりふね,

むこのうみ,[寛]むこのうみの,
にはよくあらし,[寛]ふねにはならし,
いざりする,[寛]いさりする,
あまのつりぶね,[寛]あまのつりふね,
なみのうへゆみゆ[寛],
" "#[番号]03/0257","#[題詞]鴨君足人香具山歌一首[并短歌]","#[原文]天降付 天之芳来山 霞立 春尓至婆 松風尓 池浪立而 櫻花 木乃晩茂尓 奥邊波 鴨妻喚 邊津方尓 味村左和伎 百礒城之 大宮人乃 退出而 遊船尓波 梶棹毛 無而不樂毛 己具人奈四二","#[訓読]天降りつく 天の香具山 霞立つ 春に至れば 松風に 池波立ちて 桜花 木の暗茂に 沖辺には 鴨妻呼ばひ 辺つ辺に あぢ群騒き ももしきの 大宮人の 退り出て 遊ぶ船には 楫棹も なくて寂しも 漕ぐ人なしに","#[仮名],あもりつく,あめのかぐやま,かすみたつ,はるにいたれば,まつかぜに,いけなみたちて,さくらばな,このくれしげに,おきへには,かもつまよばひ,へつへに,あぢむらさわき,ももしきの,おほみやひとの,まかりでて,あそぶふねには,かぢさをも,なくてさぶしも,こぐひとなしに","#[左注]?(右今案 遷都寧樂之後怜舊作此歌歟)","#[校異]歌 [西] 謌 / 短歌 [西] 短謌","#[事項],雑歌,作者:鴨足人,哀惜,荒都歌,高市皇子,飛鳥,地名,植物","#[訓異]
あもりつく[寛],
あめのかぐやま,[寛]あまのかくやま,
かすみたつ,[寛]かすみたち,
はるにいたれば,[寛]はるにいたれは,
まつかぜに,[寛]まつかせに,
いけなみたちて[寛],
さくらばな,[寛]さくらはな,
このくれしげに,[寛]このくれしけに,
おきへには[寛],
かもつまよばひ,[寛]かもめよはひて,
へつへに,[寛]へつかたに,
あぢむらさわき,[寛]あちむらさわき,
ももしきの[寛],
おほみやひとの[寛],
まかりでて,[寛]たちていてて,
あそぶふねには,[寛]あそふふねには,
かぢさをも,[寛]かちさほも,
なくてさぶしも,[寛]なくてさひしも,
こぐひとなしに,[寛]こくひとなしに,
" "#[番号]03/0258","#[題詞](鴨君足人香具山歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]人不榜 有雲知之 潜為 鴦与高部共 船上住","#[訓読]人漕がずあらくもしるし潜きする鴛鴦とたかべと船の上に棲む","#[仮名],ひとこがず,あらくもしるし,かづきする,をしとたかべと,ふねのうへにすむ","#[左注]?(右今案 遷都寧樂之後怜舊作此歌歟)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:鴨足人,哀惜,荒都歌,高市皇子,飛鳥,動物","#[訓異]
ひとこがず,[寛]ひとこかす,
あらくもしるし[寛],
かづきする,[寛]いさりする,
をしとたかべと,[寛]をしとたかへと,
ふねのうへにすむ[寛],
" "#[番号]03/0259","#[題詞]((鴨君足人香具山歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]何時間毛 神左備祁留鹿 香山之 <鉾>椙之本尓 薜生左右二","#[訓読]いつの間も神さびけるか香具山の桙杉の本に苔生すまでに","#[仮名],いつのまも,かむさびけるか,かぐやまの,ほこすぎのもとに,こけむすまでに","#[左注]?(右今案 遷都寧樂之後怜舊作此歌歟)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:鴨足人,哀惜,荒都歌,高市皇子,飛鳥,地名","#[訓異]
いつのまも,[寛]いつしかも,
かむさびけるか,[寛]かみさひけるか,
かぐやまの,[寛]かくやまの,
ほこすぎのもとに,[寛]むすきかもとに,
こけむすまでに,[寛]こけむすまてに,
" "#[番号]03/0260","#[題詞](鴨君足人香具山歌一首[并短歌])或本歌云","#[原文]天降就 神乃香山 打靡 春去来者 櫻花 木暗茂 松風丹 池浪飆 邊都遍者 阿遅村動 奥邊者 鴨妻喚 百式乃 大宮人乃 去出 榜来舟者 竿梶母 無而佐夫之毛 榜与雖思","#[訓読]天降りつく 神の香具山 うち靡く 春さり来れば 桜花 木の暗茂に 松風に 池波立ち 辺つ辺には あぢ群騒き 沖辺には 鴨妻呼ばひ ももしきの 大宮人の 退り出て 漕ぎける船は 棹楫も なくて寂しも 漕がむと思へど","#[仮名],あもりつく,かみのかぐやま,うちなびく,はるさりくれば,さくらばな,このくれしげに,まつかぜに,いけなみたち,へつへには,あぢむらさわき,おきへには,かもつまよばひ,ももしきの,おほみやひとの,まかりでて,こぎけるふねは,さをかぢも,なくてさぶしも,こがむとおもへど","#[左注]右今案 遷都寧樂之後怜舊作此歌歟","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:鴨足人,哀惜,荒都歌,高市皇子,飛鳥,地名","#[訓異]
あもりつく[寛],
かみのかぐやま,[寛]かみのかくやま,
うちなびく,[寛]うちなひき,
はるさりくれば,[寛]はるさりくれは,
さくらばな,[寛]さくらはな,
このくれしげに,[寛]このくれしけに,
まつかぜに,[寛]まつかせに,
いけなみたち,[寛]いけなみたちて,
へつへには[寛],
あぢむらさわき,[寛]あちむらさわき,
おきへには[寛],
かもつまよばひ,[寛]かもめよはひて,
ももしきの[寛],
おほみやひとの[寛],
まかりでて,[寛]ゆきいてて,
こぎけるふねは,[寛]こきこしふねは,
さをかぢも,[寛]さをかちも,
なくてさぶしも,[寛]なくてさふしも,
こがむとおもへど,[寛]こかむとおもへと,
" "#[番号]03/0261","#[題詞]柿本朝臣人麻呂獻新田部皇子歌一首[并短歌]","#[原文]八隅知之 吾大王 高輝 日之皇子 茂座 大殿於 久方 天傳来 <白>雪仕物 徃来乍 益及常世","#[訓読]やすみしし 我が大君 高照らす 日の御子 敷きいます 大殿の上に ひさかたの 天伝ひ来る 雪じもの 行き通ひつつ いや常世まで","#[仮名],やすみしし,わがおほきみ,たかてらす,ひのみこ,しきいます,おほとののうへに,ひさかたの,あまづたひくる,ゆきじもの,ゆきかよひつつ,いやとこよまで","#[左注]","#[校異]短歌 [西] 短謌 / 自 -> 白 [類][紀][細]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,新田部皇子,献呈歌,飛鳥,地名,枕詞","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみ,[寛]わかおほきみの,
たかてらす[寛],
ひのみこ,[寛]ひのわかみこの,
しきいます,[寛]しけくます,
おほとののうへに[寛],
ひさかたの[寛],
あまづたひくる,[寛]あまつたひこし,
ゆきじもの,[寛]ゆきしもの,
ゆきかよひつつ,[寛]ゆききつつませ,
いやとこよまで,[寛]とこよなるまて,
" "#[番号]03/0262","#[題詞](柿本朝臣人麻呂獻新田部皇子歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]矢釣山 木立不見 落乱 雪驪 朝樂毛","#[訓読]矢釣山木立も見えず降りまがふ雪に騒ける朝楽しも","#[仮名],やつりやま,こだちもみえず,ふりまがふ,ゆきにさわける,あしたたのしも","#[左注]","#[校異]矢 [細] 矣 / 釣 [類][紀][細] 駒 / 驪 [類] 驟","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,新田部皇子,献呈歌,飛鳥,地名","#[訓異]
やつりやま[寛],
こだちもみえず,[寛]こたちもみえす,
ふりまがふ,[寛]ちりまかふ,
ゆきにさわける,[寛]ゆきもはたらに,
あしたたのしも,[寛]まゐらくらくも,
" "#[番号]03/0263","#[題詞]従近江國上来時刑部垂麻呂作歌一首","#[原文]馬莫疾 打莫行 氣並而 見弖毛和我歸 志賀尓安良七國","#[訓読]馬ないたく打ちてな行きそ日ならべて見ても我が行く志賀にあらなくに","#[仮名],うまないたく,うちてなゆきそ,けならべて,みてもわがゆく,しがにあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:刑部垂麻呂,羈旅,土地讃美,滋賀,地名","#[訓異]
うまないたく[寛],
うちてなゆきそ[寛],
けならべて,[寛]いきなめて,
みてもわがゆく,[寛]みてもわかこむ,
しがにあらなくに,[寛]しかにあらなくに,
" "#[番号]03/0264","#[題詞]柿本朝臣人麻呂従近江國上来時至宇治河邊作歌一首","#[原文]物乃部能 八十氏河乃 阿白木尓 不知代經浪乃 去邊白不母","#[訓読]もののふの八十宇治川の網代木にいさよふ波のゆくへ知らずも","#[仮名],もののふの,やそうぢかはの,あじろきに,いさよふなみの,ゆくへしらずも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,羈旅,不安,宇治,京都,地名,枕詞","#[訓異]
もののふの[寛],
やそうぢかはの,[寛]やそうちかはの,
あじろきに,[寛]あしろきに,
いさよふなみの[寛],
ゆくへしらずも,[寛]ゆくへしらすも,
" "#[番号]03/0265","#[題詞]長忌寸奥麻呂歌一首","#[原文]苦毛 零来雨可 神之埼 狭野乃渡尓 家裳不有國","#[訓読]苦しくも降り来る雨か三輪の崎狭野の渡りに家もあらなくに","#[仮名],くるしくも,ふりくるあめか,みわのさき,さののわたりに,いへもあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:長意吉麻呂,羈旅,和歌山,苦難,地名","#[訓異]
くるしくも[寛],
ふりくるあめか[寛],
みわのさき[寛],
さののわたりに[寛],
いへもあらなくに[寛],
" "#[番号]03/0266","#[題詞]柿本朝臣人麻呂歌一首","#[原文]淡海乃海 夕浪千鳥 汝鳴者 情毛思<努>尓 古所念","#[訓読]近江の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのにいにしへ思ほゆ","#[仮名],あふみのうみ,ゆふなみちどり,ながなけば,こころもしのに,いにしへおもほゆ","#[左注]","#[校異]奴 -> 努 [西(補入)][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,羈旅,懐古,荒都歌,鎮魂,滋賀,地名,動物","#[訓異]
あふみのうみ[寛],
ゆふなみちどり,[寛]ゆふなみちとり,
ながなけば,[寛]なかなけは,
こころもしのに[寛],
いにしへおもほゆ[寛],
" "#[番号]03/0267","#[題詞]志貴皇子御歌一首","#[原文]牟佐々婢波 木末求跡 足日木乃 山能佐都雄尓 相尓来鴨","#[訓読]むささびは木末求むとあしひきの山のさつ男にあひにけるかも","#[仮名],むささびは,こぬれもとむと,あしひきの,やまのさつをに,あひにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:志貴皇子,猟,動物,枕詞","#[訓異]
むささびは,[寛]むささひは,
こぬれもとむと,[寛]こすゑもとむと,
あしひきの[寛],
やまのさつをに[寛],
あひにけるかも[寛],
" "#[番号]03/0268","#[題詞]長屋王故郷歌一首","#[原文]吾背子我 古家乃里之 明日香庭 乳鳥鳴成 <嬬>待不得而","#[訓読]我が背子が古家の里の明日香には千鳥鳴くなり妻待ちかねて","#[仮名],わがせこが,ふるへのさとの,あすかには,ちどりなくなり,つままちかねて","#[左注]右今案従明日香遷藤原宮之後作此歌歟","#[校異]嶋 -> 嬬 [注釈] / 歌 [西] 謌 [西(右書)] 歌","#[事項],雑歌,作者:長屋王,望郷,故郷,荒都歌,飛鳥,地名,動物","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
ふるへのさとの,[寛]いにしへのさとの,
あすかには[寛],
ちどりなくなり,[寛]ちとりなくなり,
つままちかねて,[寛]しままちかねて,
" "#[番号]03/0269","#[題詞]阿倍女郎屋部坂歌一首","#[原文]人不見者 我袖用手 将隠乎 所焼乍可将有 不服而来来","#[訓読]人見ずは我が袖もちて隠さむを焼けつつかあらむ着ずて来にけり","#[仮名],ひとみずは,わがそでもちて,かくさむを,やけつつかあらむ,きずてきにけり","#[左注]","#[校異]来来 [紀][細] 来々","#[事項],雑歌,作者:阿倍女郎,難解,恋愛,飛鳥,地名","#[訓異]
ひとみずは,[寛]しのひには,
わがそでもちて,[寛]わかそてもちて,
かくさむを[寛],
やけつつかあらむ[寛],
きずてきにけり,[寛]きすてきにけり,
" "#[番号]03/0270","#[題詞]高市連黒人覊旅歌八首","#[原文]客為而 物戀敷尓 山下 赤乃曽<保><船> 奥榜所見","#[訓読]旅にしてもの恋しきに山下の赤のそほ船沖を漕ぐ見ゆ","#[仮名],たびにして,ものこほしきに,やましたの,あけのそほふね,おきをこぐみゆ","#[左注]","#[校異]Y -> 保 [西(右書)][類][紀] / U -> 船 [類][紀][細]","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,羈旅,望郷","#[訓異]
たびにして,[寛]たひにして,
ものこほしきに[寛],
やましたの,[寛]やまもとの,
あけのそほふね[寛],
おきをこぐみゆ,[寛]おきにこくみゆ,
" "#[番号]03/0271","#[題詞](高市連黒人覊旅歌八首)","#[原文]櫻田部 鶴鳴渡 年魚市方 塩干二家良之 鶴鳴渡","#[訓読]桜田へ鶴鳴き渡る年魚市潟潮干にけらし鶴鳴き渡る","#[仮名],さくらだへ,たづなきわたる,あゆちがた,しほひにけらし,たづなきわたる","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,羈旅,名古屋,愛知,地名,動物","#[訓異]
さくらだへ,[寛]さくらたへ,
たづなきわたる,[寛]たつなきわたる,
あゆちがた,[寛]あゆちかた,
しほひにけらし[寛],
たづなきわたる,[寛]たつなきわたる,
" "#[番号]03/0272","#[題詞](高市連黒人覊旅歌八首)","#[原文]四極山 打越見者 笠縫之 嶋榜隠 棚無小舟","#[訓読]四極山うち越え見れば笠縫の島漕ぎ隠る棚なし小舟","#[仮名],しはつやま,うちこえみれば,かさぬひの,しまこぎかくる,たななしをぶね","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,羈旅,大阪,地名","#[訓異]
しはつやま[寛],
うちこえみれば,[寛]うちこえみれは,
かさぬひの[寛],
しまこぎかくる,[寛]しまこきかくる,
たななしをぶね,[寛]たななしをふね,
" "#[番号]03/0273","#[題詞](高市連黒人覊旅歌八首)","#[原文]礒前 榜手廻行者 近江海 八十之湊尓 鵠佐波二鳴 [未詳]","#[訓読]磯の崎漕ぎ廻み行けば近江の海八十の港に鶴さはに鳴く [未詳]","#[仮名],いそのさき,こぎたみゆけば,あふみのうみ,やそのみなとに,たづさはになく","#[左注]","#[校異]未詳 [類][紀](塙) <>","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,羈旅,琵琶湖,滋賀,地名,動物","#[訓異]
いそのさき,[寛]いそさきを,
こぎたみゆけば,[寛]こきたみゆけは,
あふみのうみ[寛],
やそのみなとに[寛],
たづさはになく,[寛]たつさはになく,
" "#[番号]03/0274","#[題詞](高市連黒人覊旅歌八首)","#[原文]吾船者 枚乃湖尓 榜将泊 奥部莫避 左夜深去来","#[訓読]我が舟は比良の港に漕ぎ泊てむ沖へな離りさ夜更けにけり","#[仮名],わがふねは,ひらのみなとに,こぎはてむ,おきへなさかり,さよふけにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,羈旅,琵琶湖,滋賀,地名","#[訓異]
わがふねは,[寛]わかふねは,
ひらのみなとに[寛],
こぎはてむ,[寛]こきはてむ,
おきへなさかり,[寛]おきへなゆきそ,
さよふけにけり[寛],
" "#[番号]03/0275","#[題詞](高市連黒人覊旅歌八首)","#[原文]何處 吾将宿 高嶋乃 勝野原尓 此日暮去者","#[訓読]いづくにか我は宿らむ高島の勝野の原にこの日暮れなば","#[仮名],いづくにか,われはやどらむ,たかしまの,かちののはらに,このひくれなば","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,羈旅,滋賀,地名","#[訓異]
いづくにか,[寛]いつこにか,
われはやどらむ,[寛]わかやとりせむ,
たかしまの[寛],
かちののはらに[寛],
このひくれなば,[寛]このひくれなは,
" "#[番号]03/0276","#[題詞](高市連黒人覊旅歌八首)","#[原文]妹母我母 一有加母 三河有 二見自道 別不勝鶴","#[訓読]妹も我れも一つなれかも三河なる二見の道ゆ別れかねつる","#[仮名],いももあれも,ひとつなれかも,みかはなる,ふたみのみちゆ,わかれかねつる","#[左注]一本云 水河乃 二見之自道 別者 吾勢毛吾文 獨可文将去","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,羈旅,異伝,愛知,地名","#[訓異]
いももあれも,[寛]いももわれも,
ひとつなれかも,[寛]ひとつなるかも,
みかはなる[寛],
ふたみのみちゆ,[寛]ふたみのみちに,
わかれかねつる[寛],

みかはの[寛],
ふたみのみちゆ,[寛]ふたみのみちに,
わかれなば,[寛]わかるれは,
わがせもわれも,[寛]わかせもわれも,
ひとりかもゆかむ[寛],
" "#[番号]03/0277","#[題詞](高市連黒人覊旅歌八首)","#[原文]速来而母 見手益物乎 山背 高槻村 散去奚留鴨","#[訓読]早来ても見てましものを山背の高の槻群散りにけるかも","#[仮名],はやきても,みてましものを,やましろの,たかのつきむら,ちりにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,羈旅,京都,地名,植物","#[訓異]
はやきても,[寛]とくきても,
みてましものを[寛],
やましろの[寛],
たかのつきむら,[寛]たかつきむらの,
ちりにけるかも[寛],
" "#[番号]03/0278","#[題詞]石川少郎歌一首","#[原文]然之海人者 軍布苅塩焼 無暇 髪梳乃<小>櫛 取毛不見久尓","#[訓読]志賀の海女は藻刈り塩焼き暇なみ櫛笥の小櫛取りも見なくに","#[仮名],しかのあまは,めかりしほやき,いとまなみ,くしげのをぐし,とりもみなくに","#[左注]右今案 石川朝臣君子号曰少郎子也","#[校異]少 -> 小 [古][矢]","#[事項],雑歌,作者:石川君子,羈旅,福岡,地名","#[訓異]
しかのあまは[寛],
めかりしほやき[寛],
いとまなみ[寛],
くしげのをぐし,[寛]くしけのをくし,
とりもみなくに[寛],
" "#[番号]03/0279","#[題詞]高市連黒人歌二首","#[原文]吾妹兒二 猪名野者令見都 名次山 角松原 何時可将示","#[訓読]我妹子に猪名野は見せつ名次山角の松原いつか示さむ","#[仮名],わぎもこに,ゐなのはみせつ,なすきやま,つののまつばら,いつかしめさむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,羈旅,兵庫,地名,土地讃美","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
ゐなのはみせつ[寛],
なすきやま,[寛]なつきやま,
つののまつばら,[寛]つののまつはら,
いつかしめさむ[寛],
" "#[番号]03/0280","#[題詞](高市連黒人歌二首)","#[原文]去来兒等 倭部早 白菅乃 真野乃榛原 手折而将歸","#[訓読]いざ子ども大和へ早く白菅の真野の榛原手折りて行かむ","#[仮名],いざこども,やまとへはやく,しらすげの,まののはりはら,たをりてゆかむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,羈旅,兵庫,地名,植物,枕詞","#[訓異]
いざこども,[寛]いさやこら,
やまとへはやく[寛],
しらすげの,[寛]しらすけの,
まののはりはら,[寛]まののはきはら,
たをりてゆかむ[寛],
" "#[番号]03/0281","#[題詞]黒人妻答歌一首","#[原文]白菅乃 真野之榛原 徃左来左 君社見良目 真野乃榛原","#[訓読]白菅の真野の榛原行くさ来さ君こそ見らめ真野の榛原","#[仮名],しらすげの,まののはりはら,ゆくさくさ,きみこそみらめ,まののはりはら","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高市黒人妻,羈旅,兵庫,地名,植物,枕詞","#[訓異]
しらすげの,[寛]しらすけの,
まののはりはら,[寛]まののはきはら,
ゆくさくさ[寛],
きみこそみらめ[寛],
まののはりはら,[寛]まののはきはら,
" "#[番号]03/0282","#[題詞]春日蔵首老歌一首","#[原文]角障經 石村毛不過 泊瀬山 何時毛将超 夜者深去通都","#[訓読]つのさはふ磐余も過ぎず泊瀬山いつかも越えむ夜は更けにつつ","#[仮名],つのさはふ,いはれもすぎず,はつせやま,いつかもこえむ,よはふけにつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:春日老,羈旅,飛鳥,地名,枕詞","#[訓異]
つのさはふ[寛],
いはれもすぎず,[寛]いはむらもすきす,
はつせやま[寛],
いつかもこえむ[寛],
よはふけにつつ[寛],
" "#[番号]03/0283","#[題詞]高市連黒人歌一首","#[原文]墨吉乃 得名津尓立而 見渡者 六兒乃泊従 出流船人","#[訓読]住吉の得名津に立ちて見わたせば武庫の泊りゆ出づる船人","#[仮名],すみのえの,えなつにたちて,みわたせば,むこのとまりゆ,いづるふなびと","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,羈旅,大阪,兵庫,地名","#[訓異]
すみのえの[寛],
えなつにたちて[寛],
みわたせば,[寛]みわたせは,
むこのとまりゆ,[寛]むこのとまりを,
いづるふなびと,[寛]いつるふなひと,
" "#[番号]03/0284","#[題詞]春日蔵首老歌一首","#[原文]焼津邊 吾去鹿齒 駿河奈流 阿倍乃市道尓 相之兒等羽裳","#[訓読]焼津辺に我が行きしかば駿河なる阿倍の市道に逢ひし子らはも","#[仮名],やきづへに,わがゆきしかば,するがなる,あべのいちぢに,あひしこらはも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:春日老,羈旅,静岡,恋愛,地名","#[訓異]
やきづへに,[寛]やいつへに,
わがゆきしかば,[寛]わかゆきしかは,
するがなる,[寛]するかなる,
あべのいちぢに,[寛]あへのいちちに,
あひしこらはも[寛],
" "#[番号]03/0285","#[題詞]丹比真人笠麻呂徃紀伊國超勢能山時作歌一首","#[原文]栲領巾乃 懸巻欲寸 妹名乎 此勢能山尓 懸者奈何将有 [一云 可倍波伊香尓安良牟]","#[訓読]栲領巾の懸けまく欲しき妹が名をこの背の山に懸けばいかにあらむ [一云 替へばいかにあらむ]","#[仮名],たくひれの,かけまくほしき,いもがなを,このせのやまに,かけばいかにあらむ,[かへばいかにあらむ]","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正右書)] 歌","#[事項],雑歌,作者:丹比笠麻呂,羈旅,土地讃美,和歌山,地名,枕詞","#[訓異]
たくひれの[寛],
かけまくほしき[寛],
いもがなを,[寛]いもかなを,
このせのやまに[寛],
かけばいかにあらむ,[寛]かけはいかかあらむ,
[かへばいかにあらむ]
" "#[番号]03/0286","#[題詞]春日蔵首老即和歌一首","#[原文]宜奈倍 吾背乃君之 負来尓之 此勢能山乎 妹者不喚","#[訓読]よろしなへ我が背の君が負ひ来にしこの背の山を妹とは呼ばじ","#[仮名],よろしなへ,わがせのきみが,おひきにし,このせのやまを,いもとはよばじ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:春日老,羈旅,土地讃美,和歌山,地名","#[訓異]
よろしなへ[寛],
わがせのきみが,[寛]わかせのきみの,
おひきにし[寛],
このせのやまを[寛],
いもとはよばじ,[寛]いもとはよはむ,
" "#[番号]03/0287","#[題詞]幸志賀時石上卿作歌一首 [名闕]","#[原文]此間為而 家八方何處 白雲乃 棚引山乎 超而来二家里","#[訓読]ここにして家やもいづく白雲のたなびく山を越えて来にけり","#[仮名],ここにして,いへやもいづく,しらくもの,たなびくやまを,こえてきにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:石上卿,羈旅,行幸,従駕,望郷,滋賀,地名","#[訓異]
ここにして,[寛]ここのにして,
いへやもいづく,[寛]いへやもいつこ,
しらくもの[寛],
たなびくやまを,[寛]たなひくやまを,
こえてきにけり[寛],
" "#[番号]03/0288","#[題詞]穂積朝臣老歌一首","#[原文]吾命之 真幸有者 亦毛将見 志賀乃大津尓 縁流白波","#[訓読]我が命のま幸くあらばまたも見む志賀の大津に寄する白波","#[仮名],わがいのちの,まさきくあらば,またもみむ,しがのおほつに,よするしらなみ","#[左注]右今案 不審幸行年月","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:穂積老,羈旅,予祝,大津,滋賀,地名","#[訓異]
わがいのちの,[寛]わかいのちし,
まさきくあらば,[寛]まさきくあらは,
またもみむ[寛],
しがのおほつに,[寛]しかのおほつに,
よするしらなみ[寛],
" "#[番号]03/0289","#[題詞]間人宿祢大浦初月歌二首","#[原文]天原 振離見者 白真弓 張而懸有 夜路者将吉","#[訓読]天の原振り放け見れば白真弓張りて懸けたり夜道はよけむ","#[仮名],あまのはら,ふりさけみれば,しらまゆみ,はりてかけたり,よみちはよけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:間人大浦,恋歌","#[訓異]
あまのはら[寛],
ふりさけみれば,[寛]ふりさけみれは,
しらまゆみ[寛],
はりてかけたり,[寛]はりてかけたる,
よみちはよけむ[寛],
" "#[番号]03/0290","#[題詞](間人宿祢大浦初月歌二首)","#[原文]椋橋乃 山乎高可 夜隠尓 出来月乃 光乏寸","#[訓読]倉橋の山を高みか夜隠りに出で来る月の光乏しき","#[仮名],くらはしの,やまをたかみか,よごもりに,いでくるつきの,ひかりともしき","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:間人大浦,初瀬,地名","#[訓異]
くらはしの[寛],
やまをたかみか[寛],
よごもりに,[寛]よこもりに,
いでくるつきの,[寛]いてくるつきの,
ひかりともしき[寛],
" "#[番号]03/0291","#[題詞]小田事勢能山歌一首","#[原文]真木葉乃 之奈布勢能山 之<努>波受而 吾超去者 木葉知家武","#[訓読]真木の葉のしなふ背の山偲はずて我が越え行けば木の葉知りけむ","#[仮名],まきのはの,しなふせのやま,しのはずて,わがこえゆけば,このはしりけむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 奴 -> 努 [類][紀]","#[事項],雑歌,作者:小田事,羈旅,和歌山,地名","#[訓異]
まきのはの[寛],
しなふせのやま[寛],
しのはずて,[寛]しるはすて,
わがこえゆけば,[寛]わかこえゆけは,
このはしりけむ[寛],
" "#[番号]03/0292","#[題詞]角麻呂歌四首","#[原文]久方乃 天之探女之 石船乃 泊師高津者 淺尓家留香裳","#[訓読]ひさかたの天の探女が岩船の泊てし高津はあせにけるかも","#[仮名],ひさかたの,あまのさぐめが,いはふねの,はてしたかつは,あせにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:角麻呂,羈旅,大阪,地名","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あまのさぐめが,[寛]あまのさくめか,
いはふねの[寛],
はてしたかつは[寛],
あせにけるかも[寛],
" "#[番号]03/0293","#[題詞](角麻呂歌四首)","#[原文]塩干乃 三津之海女乃 久具都持 玉藻将苅 率行見","#[訓読]潮干の御津の海女のくぐつ持ち玉藻刈るらむいざ行きて見む","#[仮名],しほひの,みつのあまの,くぐつもち,たまもかるらむ,いざゆきてみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:角麻呂,羈旅,大阪,地名,植物","#[訓異]
しほひの,[寛]しほかれの,
みつのあまの,[寛]みつのあまめの,
くぐつもち,[寛]くくつもち,
たまもかるらむ[寛],
いざゆきてみむ,[寛]いさゆきてみむ,
" "#[番号]03/0294","#[題詞](角麻呂歌四首)","#[原文]風乎疾 奥津白波 高有之 海人釣船 濱眷奴","#[訓読]風をいたみ沖つ白波高からし海人の釣舟浜に帰りぬ","#[仮名],かぜをいたみ,おきつしらなみ,たかからし,あまのつりぶね,はまにかへりぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:角麻呂,羈旅,大阪,地名","#[訓異]
かぜをいたみ,[寛]かせをいたみ,
おきつしらなみ[寛],
たかからし[寛],
あまのつりぶね,[寛]あまのつりふね,
はまにかへりぬ[寛],
" "#[番号]03/0295","#[題詞](角麻呂歌四首)","#[原文]清江乃 木笶松原 遠神 我王之 幸行處","#[訓読]住吉の岸の松原遠つ神我が大君の幸しところ","#[仮名],すみのえの,きしのまつばら,とほつかみ,わがおほきみの,いでましところ","#[左注]","#[校異]木 [紀] 野木","#[事項],雑歌,作者:角麻呂,羈旅,大阪,地名,枕詞","#[訓異]
すみのえの[寛],
きしのまつばら,[寛]きしのまつはら,
とほつかみ[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
いでましところ,[寛]みゆきしところ,
" "#[番号]03/0296","#[題詞]田口益人大夫任上野國司時至駿河浄見埼作歌二首","#[原文]廬原乃 浄見乃埼乃 見穂之浦乃 寛見乍 物念毛奈信","#[訓読]廬原の清見の崎の三保の浦のゆたけき見つつ物思ひもなし","#[仮名],いほはらの,きよみのさきの,みほのうらの,ゆたけきみつつ,ものもひもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:田口益人,羈旅,土地讃美,静岡,地名","#[訓異]
いほはらの[寛],
きよみのさきの[寛],
みほのうらの[寛],
ゆたけきみつつ,[寛]ゆたにみえつつ,
ものもひもなし,[寛]ものおもひもなし,
" "#[番号]03/0297","#[題詞](田口益人大夫任上野國司時至駿河浄見埼作歌二首)","#[原文]晝見騰 不飽田兒浦 大王之 命恐 夜見鶴鴨","#[訓読]昼見れど飽かぬ田子の浦大君の命畏み夜見つるかも","#[仮名],ひるみれど,あかぬたごのうら,おほきみの,みことかしこみ,よるみつるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:田口益人,羈旅,静岡,土地讃美,地名,大夫","#[訓異]
ひるみれど,[寛]ひるみれと,
あかぬたごのうら,[寛]あかぬたこのうら,
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
よるみつるかも[寛],
" "#[番号]03/0298","#[題詞]弁基歌一首","#[原文]亦打山 暮越行而 廬前乃 角太川原尓 獨可毛将宿","#[訓読]真土山夕越え行きて廬前の角太川原にひとりかも寝む","#[仮名],まつちやま,ゆふこえゆきて,いほさきの,すみだかはらに,ひとりかもねむ","#[左注]右或云 弁基者春日蔵首老之法師名也","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:弁基,羈旅,和歌山,地名","#[訓異]
まつちやま[寛],
ゆふこえゆきて[寛],
いほさきの[寛],
すみだかはらに,[寛]すみたかはらに,
ひとりかもねむ[寛],
" "#[番号]03/0299","#[題詞]大納言大伴卿歌一首 [未詳]","#[原文]奥山之 菅葉凌 零雪乃 消者将惜 雨莫零行年","#[訓読]奥山の菅の葉しのぎ降る雪の消なば惜しけむ雨な降りそね","#[仮名],おくやまの,すがのはしのぎ,ふるゆきの,けなばをしけむ,あめなふりそね","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人","#[訓異]
おくやまの[寛],
すがのはしのぎ,[寛]すかのはしのき,
ふるゆきの[寛],
けなばをしけむ,[寛]けなはおしけむ,
あめなふりそね,[寛]あめなふりこそ,
" "#[番号]03/0300","#[題詞]長屋王駐馬寧樂山作歌二首","#[原文]佐保過而 寧樂乃手祭尓 置幣者 妹乎目不離 相見染跡衣","#[訓読]佐保過ぎて奈良の手向けに置く幣は妹を目離れず相見しめとぞ","#[仮名],さほすぎて,ならのたむけに,おくぬさは,いもをめかれず,あひみしめとぞ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:長屋王,羈旅,手向け,奈良,望郷,地名","#[訓異]
さほすぎて,[寛]さほすきて,
ならのたむけに[寛],
おくぬさは[寛],
いもをめかれず,[寛]いもをめかれす,
あひみしめとぞ,[寛]あひみしめとそ,
" "#[番号]03/0301","#[題詞](長屋王駐馬寧樂山作歌二首)","#[原文]磐金之 凝敷山乎 超不勝而 哭者泣友 色尓将出八方","#[訓読]岩が根のこごしき山を越えかねて音には泣くとも色に出でめやも","#[仮名],いはがねの,こごしきやまを,こえかねて,ねにはなくとも,いろにいでめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:長屋王,羈旅,望郷,奈良,地名","#[訓異]
いはがねの,[寛]いはかねの,
こごしきやまを,[寛]ここしきやまを,
こえかねて[寛],
ねにはなくとも[寛],
いろにいでめやも,[寛]いろにいてめやも,
" "#[番号]03/0302","#[題詞]中納言阿倍廣庭卿歌一首","#[原文]兒等之家道 差間遠焉 野干<玉>乃 夜渡月尓 競敢六鴨","#[訓読]子らが家道やや間遠きをぬばたまの夜渡る月に競ひあへむかも","#[仮名],こらがいへぢ,ややまどほきを,ぬばたまの,よわたるつきに,きほひあへむかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 子 -> 玉 [西(左書)][類][細]","#[事項],雑歌,作者:阿倍広庭,恋愛","#[訓異]
こらがいへぢ,[寛]こらかいへち,
ややまどほきを,[寛]ややまとほきを,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よわたるつきに[寛],
きほひあへむかも[寛],
" "#[番号]03/0303","#[題詞]柿本朝臣人麻呂下筑紫國時海路作歌二首","#[原文]名細寸 稲見乃海之 奥津浪 千重尓隠奴 山跡嶋根者","#[訓読]名ぐはしき印南の海の沖つ波千重に隠りぬ大和島根は","#[仮名],なぐはしき,いなみのうみの,おきつなみ,ちへにかくりぬ,やまとしまねは","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,羈旅,望郷,兵庫,地名,枕詞","#[訓異]
なぐはしき,[寛]なくわしき,
いなみのうみの[寛],
おきつなみ[寛],
ちへにかくりぬ[寛],
やまとしまねは[寛],
" "#[番号]03/0304","#[題詞](柿本朝臣人麻呂下筑紫國時海路作歌二首)","#[原文]大王之 遠乃朝庭跡 蟻通 嶋門乎見者 神代之所念","#[訓読]大君の遠の朝廷とあり通ふ島門を見れば神代し思ほゆ","#[仮名],おほきみの,とほのみかどと,ありがよふ,しまとをみれば,かむよしおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,羈旅,兵庫,土地讃美,地名","#[訓異]
おほきみの,[寛]すめろおの,
とほのみかどと,[寛]とほのみかとと,
ありがよふ,[寛]ありかよふ,
しまとをみれば,[寛]しまとをみれは,
かむよしおもほゆ,[寛]かみよしそおもふ,
" "#[番号]03/0305","#[題詞]高市連黒人近江舊都歌一首","#[原文]如是故尓 不見跡云物乎 樂浪乃 舊都乎 令見乍本名","#[訓読]かく故に見じと言ふものを楽浪の旧き都を見せつつもとな","#[仮名],かくゆゑに,みじといふものを,ささなみの,ふるきみやこを,みせつつもとな","#[左注]右歌或本曰少辨作也 未審此少弁者也","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,少辨,近江荒都,荒都歌,大津,滋賀,異伝,地名","#[訓異]
かくゆゑに[寛],
みじといふものを,[寛]みしといふものを,
ささなみの[寛],
ふるきみやこを[寛],
みせつつもとな[寛],
" "#[番号]03/0306","#[題詞]幸伊勢國之時安貴王作歌一首","#[原文]伊勢海之 奥津白浪 花尓欲得 L而妹之 家L為","#[訓読]伊勢の海の沖つ白波花にもが包みて妹が家づとにせむ","#[仮名],いせのうみの,おきつしらなみ,はなにもが,つつみていもが,いへづとにせむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:安貴王,羈旅,望郷,伊勢,三重,地名","#[訓異]
いせのうみの[寛],
おきつしらなみ[寛],
はなにもが,[寛]はなにもか,
つつみていもが,[寛]つつみていもか,
いへづとにせむ,[寛]いへつとにせむ,
" "#[番号]03/0307","#[題詞]博通法師徃紀伊國見三穂石室作歌三首","#[原文]皮為酢寸 久米能若子我 伊座家留 [一云 家牟] 三穂乃石室者 雖見不飽鴨 [一云 安礼尓家留可毛]","#[訓読]はだ薄久米の若子がいましける [一云 けむ] 三穂の石室は見れど飽かぬかも [一云 荒れにけるかも]","#[仮名],はだすすき,くめのわくごが,いましける,[けむ],みほのいはやは,みれどあかぬかも,[あれにけるかも]","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:博通法師,羈旅,土地讃美,和歌山,枕詞,地名","#[訓異]
はだすすき,[寛]しのすすき,
くめのわくごが,[寛]くめのわかこか,
いましける[寛],
[けむ],
みほのいはやは[寛],
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
[あれにけるかも]
" "#[番号]03/0308","#[題詞](博通法師徃紀伊國見三穂石室作歌三首)","#[原文]常磐成 石室者今毛 安里家礼騰 住家類人曽 常無里家留","#[訓読]常磐なす石室は今もありけれど住みける人ぞ常なかりける","#[仮名],ときはなす,いはやはいまも,ありけれど,すみけるひとぞ,つねなかりける","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:博通法師,羈旅,和歌山,地名","#[訓異]
ときはなす,
いはやはいまも,
ありけれど,
すみけるひとぞ,
つねなかりける
" "#[番号]03/0309","#[題詞](博通法師徃紀伊國見三穂石室作歌三首)","#[原文]石室戸尓 立在松樹 汝乎見者 昔人乎 相見如之","#[訓読]石室戸に立てる松の木汝を見れば昔の人を相見るごとし","#[仮名],いはやとに,たてるまつのき,なをみれば,むかしのひとを,あひみるごとし","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:博通法師,羈旅,和歌山,地名,植物","#[訓異]
いはやとに[寛],
たてるまつのき,[寛]
なをみれば,[寛]なをみれは,
むかしのひとを[寛],
あひみるごとし,[寛]あひみることし,
" "#[番号]03/0310","#[題詞]門部王詠東市之樹作歌一首 [後賜姓大原真人氏也]","#[原文]東 市之殖木乃 木足左右 不相久美 宇倍<戀>尓家利","#[訓読]東の市の植木の木垂るまで逢はず久しみうべ恋ひにけり","#[仮名],ひむがしの,いちのうゑきの,こだるまで,あはずひさしみ,うべこひにけり","#[左注]","#[校異]吾戀 -> 戀 [類][紀]","#[事項],雑歌,作者:門部王,東市,奈良都,植物","#[訓異]
ひむがしの,[寛]ひむかしの,
いちのうゑきの,[寛]いちのうえきの,
こだるまで,[寛]こたるまて,
あはずひさしみ,[寛]あはぬきみうへ,
うべこひにけり,[寛]われこひにけり,
" "#[番号]03/0311","#[題詞]按作村主益人従豊前國上京時作歌一首","#[原文]梓弓 引豊國之 鏡山 不見久有者 戀敷牟鴨","#[訓読]梓弓引き豊国の鏡山見ず久ならば恋しけむかも","#[仮名],あづさゆみ,ひきとよくにの,かがみやま,みずひさならば,こほしけむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:按作益人,鏡山,豊前国,福岡県,羈旅,地名,枕詞","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
ひきとよくにの,[寛]ひくとよくにの,
かがみやま,[寛]かかみやま,
みずひさならば,[寛]みてひさならは,
こほしけむかも[寛],
" "#[番号]03/0312","#[題詞]式部卿藤原宇合卿被使改造難波堵之時作歌一首","#[原文]昔者社 難波居中跡 所言奚米 今者京引 都備仁鷄里","#[訓読]昔こそ難波田舎と言はれけめ今は都引き都びにけり","#[仮名],むかしこそ,なにはゐなかと,いはれけめ,いまはみやこひき,みやこびにけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:藤原宇合,難波,大阪,地名","#[訓異]
むかしこそ[寛],
なにはゐなかと[寛],
いはれけめ[寛],
いまはみやこひき,[寛]いまはみやひと,
みやこびにけり,[寛]そなはりにけり,
" "#[番号]03/0313","#[題詞]土理宣令歌一首","#[原文]見吉野之 瀧乃白浪 雖不知 語之告者 古所念","#[訓読]み吉野の滝の白波知らねども語りし継げばいにしへ思ほゆ","#[仮名],みよしのの,たきのしらなみ,しらねども,かたりしつげば,いにしへおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:土理宣令,吉野,地名","#[訓異]
みよしのの[寛],
たきのしらなみ[寛],
しらねども,[寛]しらねとも,
かたりしつげば,[寛]かたりしつけは,
いにしへおもほゆ,[寛]むかしおもほゆ,
" "#[番号]03/0314","#[題詞]波多朝臣<小>足歌一首","#[原文]小浪 礒越道有 能登湍河 音之清左 多藝通瀬毎尓","#[訓読]さざれ波礒越道なる能登瀬川音のさやけさたぎつ瀬ごとに","#[仮名],さざれなみ,いそこしぢなる,のとせがは,おとのさやけさ,たぎつせごとに","#[左注]","#[校異]少 -> 小 [類][古][温]","#[事項],雑歌,作者:波多小足,能登瀬川,滋賀県,羈旅,土地讃美,地名,枕詞","#[訓異]
さざれなみ,[寛]さされなみ,
いそこしぢなる,[寛]いそこせちなる,
のとせがは,[寛]のとせかは,
おとのさやけさ[寛],
たぎつせごとに,[寛]たきつせことに,
" "#[番号]03/0315","#[題詞]暮春之月幸芳野離宮時中納言大伴卿奉勅作歌一首[并短歌] [未逕奏上歌]","#[原文]見吉野之 芳野乃宮者 山可良志 貴有師 <水>可良思 清有師 天地与 長久 萬代尓 不改将有 行幸之<宮>","#[訓読]み吉野の 吉野の宮は 山からし 貴くあらし 川からし さやけくあらし 天地と 長く久しく 万代に 変はらずあらむ 幸しの宮","#[仮名],みよしのの,よしののみやは,やまからし,たふとくあらし,かはからし,さやけくあらし,あめつちと,ながくひさしく,よろづよに,かはらずあらむ,いでましのみや","#[左注]","#[校異]永 -> 水 [類] / 處 -> 宮 [類][紀]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,吉野,宮廷讃美,地名,土地讃美","#[訓異]
みよしのの[寛],
よしののみやは[寛],
やまからし[寛],
たふとくあらし,[寛]たふとかるらし,
かはからし,[寛]なかからし,
さやけくあらし,[寛]いさきよからし,
あめつちと[寛],
ながくひさしく,[寛]なかくひさしき,
よろづよに,[寛]よろつよに,
かはらずあらむ,[寛]かはらすあらむ,
いでましのみや,[寛]みゆきしみや
" "#[番号]03/0316","#[題詞](暮春之月幸芳野離宮時中納言大伴卿奉勅作歌一首并短歌 [未逕奏上歌])反歌","#[原文]昔見之 象乃小河乎 今見者 弥清 成尓来鴨","#[訓読]昔見し象の小川を今見ればいよよさやけくなりにけるかも","#[仮名],むかしみし,きさのをがはを,いまみれば,いよよさやけく,なりにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,吉野,地名,土地讃美","#[訓異]
むかしみし[寛],
きさのをがはを,[寛]きさのおかはを,
いまみれば,[寛]いまみれは,
いよよさやけく,[寛]いよいよきよく,
なりにけるかも[寛],
" "#[番号]03/0317","#[題詞]山部宿祢赤人望不盡山歌一首[并短歌]","#[原文]天地之 分時従 神左備手 高貴寸 駿河有 布士能高嶺乎 天原 振放見者 度日之 陰毛隠比 照月乃 光毛不見 白雲母 伊去波伐加利 時自久曽 雪者落家留 語告 言継将徃 不盡能高嶺者","#[訓読]天地の 別れし時ゆ 神さびて 高く貴き 駿河なる 富士の高嶺を 天の原 振り放け見れば 渡る日の 影も隠らひ 照る月の 光も見えず 白雲も い行きはばかり 時じくぞ 雪は降りける 語り継ぎ 言ひ継ぎ行かむ 富士の高嶺は","#[仮名],あめつちの,わかれしときゆ,かむさびて,たかくたふとき,するがなる,ふじのたかねを,あまのはら,ふりさけみれば,わたるひの,かげもかくらひ,てるつきの,ひかりもみえず,しらくもも,いゆきはばかり,ときじくぞ,ゆきはふりける,かたりつぎ,いひつぎゆかむ,ふじのたかねは","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 短歌 [西] 短謌","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,富士山,静岡,地名,土地讃美,羈旅","#[訓異]
あめつちの[寛],
わかれしときゆ,[寛]
かむさびて,[寛]かみさひて,
たかくたふとき[寛],
するがなる,[寛]するかなる,
ふじのたかねを,[寛]ふしのたかねを,
あまのはら[寛],
ふりさけみれば,[寛]ふりさけみれは,
わたるひの[寛],
かげもかくらひ,[寛]かけもかくろひ,
てるつきの[寛],
ひかりもみえず,[寛]ひかりもみえす,
しらくもも[寛],
いゆきはばかり,[寛]いゆきははかり,
ときじくぞ,[寛]ときしくそ,
ゆきはふりける[寛],
かたりつぎ,[寛]かたりつき,
いひつぎゆかむ,[寛]いひつきゆかむ,
ふじのたかねは,[寛]ふしのたかねは,
" "#[番号]03/0318","#[題詞](山部宿祢赤人望不盡山歌一首[并短歌])反歌","#[原文]田兒之浦従 打出而見者 真白衣 不盡能高嶺尓 雪波零家留","#[訓読]田子の浦ゆうち出でて見れば真白にぞ富士の高嶺に雪は降りける","#[仮名],たごのうらゆ,うちいでてみれば,ましろにぞ,ふじのたかねに,ゆきはふりける","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正右書)] 歌","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,富士山,静岡,土地讃美,国見,地名,羈旅","#[訓異]
たごのうらゆ,[寛]たこのうらに,
うちいでてみれば,[寛]うちいててみれは,
ましろにぞ,[寛]ましろにそ,
ふじのたかねに,[寛]ふしのたかねに,
ゆきはふりける[寛],
" "#[番号]03/0319","#[題詞]詠不盡山歌一首[并短歌]","#[原文]奈麻余美乃 甲斐乃國 打縁流 駿河能國与 己知其智乃 國之三中従 出<立>有 不盡能高嶺者 天雲毛 伊去波伐加利 飛鳥母 翔毛不上 燎火乎 雪以滅 落雪乎 火用消通都 言不得 名不知 霊母 座神香<聞> 石花海跡 名付而有毛 彼山之 堤有海曽 不盡河跡 人乃渡毛 其山之 水乃當焉 日本之 山跡國乃 鎮十方 座祇可間 寳十方 成有山可聞 駿河有 不盡能高峯者 雖見不飽香聞","#[訓読]なまよみの 甲斐の国 うち寄する 駿河の国と こちごちの 国のみ中ゆ 出で立てる 富士の高嶺は 天雲も い行きはばかり 飛ぶ鳥も 飛びも上らず 燃ゆる火を 雪もち消ち 降る雪を 火もち消ちつつ 言ひも得ず 名付けも知らず くすしくも います神かも せの海と 名付けてあるも その山の つつめる海ぞ 富士川と 人の渡るも その山の 水のたぎちぞ 日の本の 大和の国の 鎮めとも います神かも 宝とも なれる山かも 駿河なる 富士の高嶺は 見れど飽かぬかも","#[仮名],なまよみの,かひのくに,うちよする,するがのくにと,こちごちの,くにのみなかゆ,いでたてる,ふじのたかねは,あまくもも,いゆきはばかり,とぶとりも,とびものぼらず,もゆるひを,ゆきもちけち,ふるゆきを,ひもちけちつつ,いひもえず,なづけもしらず,くすしくも,いますかみかも,せのうみと,なづけてあるも,そのやまの,つつめるうみぞ,ふじかはと,ひとのわたるも,そのやまの,みづのたぎちぞ,ひのもとの,やまとのくにの,しづめとも,いますかみかも,たからとも,なれるやまかも,するがなる,ふじのたかねは,みれどあかぬかも","#[左注]?(右一首高橋連蟲麻呂之歌中出焉 以類載此)","#[校異]短歌 [西] 短謌 / 之 -> 立 [古] / <> -> 聞 [西(右書)][類][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂,富士山,静岡,枕詞,地名,土地讃美,羈旅","#[訓異]
なまよみの[寛],
かひのくに[寛],
うちよする[寛],
するがのくにと,[寛]するかのくにと,
こちごちの,[寛]こちこちの,
くにのみなかゆ,[寛]くにのさかひに,
いでたてる,[寛]いててしある,
ふじのたかねは,[寛]ふしのたかねは,
あまくもも[寛],
いゆきはばかり,[寛]いゆきははかり,
とぶとりも,[寛]とふとりも,
とびものぼらず,[寛]とひものほらす,
もゆるひを[寛],
ゆきもちけち,[寛]ゆきもてきやし,
ふるゆきを[寛],
ひもちけちつつ,[寛]ひもてけれつつ,
いひもえず,[寛]いひかねて,
なづけもしらず,[寛]なをもしられす,
くすしくも,[寛]あやしくも,
いますかみかも[寛],
せのうみと[寛],
なづけてあるも,[寛]なつけてあるも,
そのやまの[寛],
つつめるうみぞ,[寛]つつめるうみそ,
ふじかはと,[寛]ふしかはと,
ひとのわたるも[寛],
そのやまの[寛],
みづのたぎちぞ,[寛]みつのあたりそ,
ひのもとの[寛],
やまとのくにの[寛],
しづめとも,[寛]しつめとも,
いますかみかも[寛],
たからとも[寛],
なれるやまかも[寛],
するがなる,[寛]するかなる,
ふじのたかねは,[寛]ふしのたかねは,
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]03/0320","#[題詞](詠不盡山歌一首[并短歌])反歌","#[原文]不盡嶺尓 零置雪者 六月 十五日消者 其夜布里家利","#[訓読]富士の嶺に降り置く雪は六月の十五日に消ぬればその夜降りけり","#[仮名],ふじのねに,ふりおくゆきは,みなづきの,もちにけぬれば,そのよふりけり","#[左注]?(右一首高橋連蟲麻呂之歌中出焉 以類載此)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正右書)] 歌","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂,富士山,静岡,地名,土地讃美,羈旅","#[訓異]
ふじのねに,[寛]ふしのねに,
ふりおくゆきは[寛],
みなづきの,[寛]みなつきの,
もちにけぬれば,[寛]もちにけぬれは,
そのよふりけり[寛],
" "#[番号]03/0321","#[題詞]((詠不盡山歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]布士能嶺乎 高見恐見 天雲毛 伊去羽斤 田菜引物緒","#[訓読]富士の嶺を高み畏み天雲もい行きはばかりたなびくものを","#[仮名],ふじのねを,たかみかしこみ,あまくもも,いゆきはばかり,たなびくものを","#[左注]右一首高橋連蟲麻呂之歌中出焉 以類載此","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂,富士山,静岡,地名,土地讃美,羈旅","#[訓異]
ふじのねを,[寛]ふしのねを,
たかみかしこみ[寛],
あまくもも[寛],
いゆきはばかり,[寛]いゆきははかり,
たなびくものを,[寛]たなひくものを,
" "#[番号]03/0322","#[題詞]山部宿祢赤人至伊豫温泉作歌一首[并短歌]","#[原文]皇神祖之 神乃御言<乃> 敷座 國之盡 湯者霜 左波尓雖在 嶋山之 宣國跡 極此<疑> 伊豫能高嶺乃 射狭庭乃 崗尓立而 歌思 辞思為師 三湯之上乃 樹村乎見者 臣木毛 生継尓家里 鳴鳥之 音毛不更 遐代尓 神左備将徃 行幸處","#[訓読]すめろきの 神の命の 敷きませる 国のことごと 湯はしも さはにあれども 島山の 宣しき国と こごしかも 伊予の高嶺の 射狭庭の 岡に立たして 歌思ひ 辞思はしし み湯の上の 木群を見れば 臣の木も 生ひ継ぎにけり 鳴く鳥の 声も変らず 遠き代に 神さびゆかむ 幸しところ","#[仮名],すめろきの,かみのみことの,しきませる,くにのことごと,ゆはしも,さはにあれども,しまやまの,よろしきくにと,こごしかも,いよのたかねの,いざにはの,をかにたたして,うたおもひ,ことおもはしし,みゆのうへの,こむらをみれば,おみのきも,おひつぎにけり,なくとりの,こゑもかはらず,とほきよに,かむさびゆかむ,いでましところ","#[左注]","#[校異]短歌 [西] 短謌 / <> -> 乃 [西(右書)][紀][温] / 凝 -> 疑 [細] / 崗 [紀][細](塙) 岡 / 歌 [西] 謌 [西(右書)] 歌 [全註釈](塙)(楓) 敲","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,伊予温泉,道後温泉,愛媛,羈旅,植物,地名,国見,土地讃美","#[訓異]
すめろきの[寛],
かみのみことの[寛],
しきませる,[寛]しきます,
くにのことごと,[寛]くにしれ,
ゆはしも[寛],
さはにあれども,[寛]さはにあれとも,
しまやまの[寛],
よろしきくにと[寛],
こごしかも,[寛]ここしき,
いよのたかねの[寛],
いざにはの,[寛]いをにはの,
をかにたたして[寛],
うたおもひ,[寛]うたふおもひ,
ことおもはしし,[寛]いふおもひせし,
みゆのうへの[寛],
こむらをみれば,[寛]こむらをみれは,
おみのきも[寛],
おひつぎにけり,[寛]おひつきにけり,
なくとりの[寛],
こゑもかはらず,[寛]こゑもかはらす,
とほきよに[寛],
かむさびゆかむ,[寛]かみさひゆかむ,
いでましところ,[寛]みゆきしところ,
" "#[番号]03/0323","#[題詞](山部宿祢赤人至伊豫温泉作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]百式紀乃 大宮人之 飽田津尓 船乗将為 年之不知久","#[訓読]ももしきの大宮人の熟田津に船乗りしけむ年の知らなく","#[仮名],ももしきの,おほみやひとの,にきたつに,ふなのりしけむ,としのしらなく","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,伊予温泉,道後温泉,愛媛,羈旅,土地讃美,地名","#[訓異]
ももしきの[寛],
おほみやひとの[寛],
にきたつに[寛],
ふなのりしけむ[寛],
としのしらなく[寛],
" "#[番号]03/0324","#[題詞]登神岳山部宿祢赤人作歌一首[并短歌]","#[原文]三諸乃 神名備山尓 五百枝刺 繁生有 都賀乃樹乃 弥継<嗣>尓 玉葛 絶事無 在管裳 不止将通 明日香能 舊京師者 山高三 河登保志呂之 春日者 山四見容之 秋夜者 河四清之 <旦>雲二 多頭羽乱 夕霧丹 河津者驟 毎見 哭耳所泣 古思者","#[訓読]みもろの 神なび山に 五百枝さし しじに生ひたる 栂の木の いや継ぎ継ぎに 玉葛 絶ゆることなく ありつつも やまず通はむ 明日香の 古き都は 山高み 川とほしろし 春の日は 山し見がほし 秋の夜は 川しさやけし 朝雲に 鶴は乱れ 夕霧に かはづは騒く 見るごとに 音のみし泣かゆ いにしへ思へば","#[仮名],みもろの,かむなびやまに,いほえさし,しじにおひたる,つがのきの,いやつぎつぎに,たまかづら,たゆることなく,ありつつも,やまずかよはむ,あすかの,ふるきみやこは,やまたかみ,かはとほしろし,はるのひは,やましみがほし,あきのよは,かはしさやけし,あさくもに,たづはみだれ,ゆふぎりに,かはづはさわく,みるごとに,ねのみしなかゆ,いにしへおもへば","#[左注]","#[校異]飼 -> 嗣 [西(右書)][類][紀] / 且 -> 旦 [類][紀][温]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,神丘,神奈備山,飛鳥,荒都,枕詞,植物","#[訓異]
みもろの,[寛]みもろの,
かむなびやまに,[寛]かみなひやまに,
いほえさし[寛],
しじにおひたる,[寛]ししにおひたる,
つがのきの,[寛]とかのきの,
いやつぎつぎに,[寛]いやつきつきに,
たまかづら,[寛]たまかつら,
たゆることなく[寛],
ありつつも[寛],
やまずかよはむ,[寛]やますかよはむ,
あすかの[寛],
ふるきみやこは[寛],
やまたかみ[寛],
かはとほしろし[寛],
はるのひは[寛],
やましみがほし,[寛]やましみかほし,
あきのよは[寛],
かはしさやけし[寛],
あさくもに[寛],
たづはみだれ,[寛]たつはみたれて,
ゆふぎりに,[寛]ゆふきりに,
かはづはさわく,[寛]かはつはさわく,
みるごとに,[寛]みることに,
ねのみしなかゆ,[寛]ねにのみなかる,
いにしへおもへば,[寛]むかしおもへは,
" "#[番号]03/0325","#[題詞](登神岳山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]明日香河 川余藤不去 立霧乃 念應過 孤悲尓不有國","#[訓読]明日香河川淀さらず立つ霧の思ひ過ぐべき恋にあらなくに","#[仮名],あすかがは,かはよどさらず,たつきりの,おもひすぐべき,こひにあらなくに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(右書)] 歌","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,神丘,神奈備山,飛鳥,荒都,地名,鎮魂","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
かはよどさらず,[寛]かはよとさらす,
たつきりの[寛],
おもひすぐべき,[寛]おもひすくへき,
こひにあらなくに[寛],
" "#[番号]03/0326","#[題詞]門部王在難波見漁父燭光作歌一首 [後賜姓大原真人氏也]","#[原文]見渡者 明石之浦尓 焼火乃 保尓曽出流 妹尓戀久","#[訓読]見わたせば明石の浦に燭す火の穂にぞ出でぬる妹に恋ふらく","#[仮名],みわたせば,あかしのうらに,ともすひの,ほにぞいでぬる,いもにこふらく","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:門部王,難波,大阪,羈旅,望郷,地名","#[訓異]
みわたせば,[寛]みわたせは,
あかしのうらに[寛],
ともすひの,[寛]たけるひの,
ほにぞいでぬる,[寛]ほにそいてぬる,
いもにこふらく[寛],
" "#[番号]03/0327","#[題詞]或娘子等<贈>L乾鰒戯請通觀僧之咒願時通觀作歌一首","#[原文]海若之 奥尓持行而 雖放 宇礼牟曽此之 将死還生","#[訓読]海神の沖に持ち行きて放つともうれむぞこれがよみがへりなむ","#[仮名],わたつみの,おきにもちゆきて,はなつとも,うれむぞこれが,よみがへりなむ","#[左注]","#[校異]賜 -> 贈 [紀] / 歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:娘子,通観,奈良都,地名,諧謔","#[訓異]
わたつみの[寛],
おきにもちゆきて[寛],
はなつとも[寛],
うれむぞこれが,[寛]うれもそこれか,
よみがへりなむ,[寛]しにかへかいかん,
" "#[番号]03/0328","#[題詞]<大>宰少貳小野老朝臣歌一首","#[原文]青丹吉 寧樂乃京師者 咲花乃 薫如 今盛有","#[訓読]あをによし奈良の都は咲く花のにほふがごとく今盛りなり","#[仮名],あをによし,ならのみやこは,さくはなの,にほふがごとく,いまさかりなり","#[左注]","#[校異]太 -> 大 [古][紀][京]","#[事項],雑歌,作者:小野老,奈良都,都讃美,地名,枕詞,太宰府,福岡","#[訓異]
あをによし[寛],
ならのみやこは[寛],
さくはなの[寛],
にほふがごとく,[寛]にほふかことく,
いまさかりなり[寛],
" "#[番号]03/0329","#[題詞]防人司佑大伴四綱歌二首","#[原文]安見知之 吾王乃 敷座在 國中者 京師所念","#[訓読]やすみしし我が大君の敷きませる国の中には都し思ほゆ","#[仮名],やすみしし,わがおほきみの,しきませる,くにのうちには,みやこしおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴四綱,太宰府,福岡,望郷,地名,枕詞,望郷","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
しきませる[寛],
くにのうちには,[寛]くにのなかには,
みやこしおもほゆ,[寛]みやこしそおもふ,
" "#[番号]03/0330","#[題詞](防人司佑大伴四綱歌二首)","#[原文]藤浪之 花者盛尓 成来 平城京乎 御念八君","#[訓読]藤波の花は盛りになりにけり奈良の都を思ほすや君","#[仮名],ふぢなみの,はなはさかりに,なりにけり,ならのみやこを,おもほすやきみ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴四綱,太宰府,福岡,地名,望郷","#[訓異]
ふぢなみの,[寛]ふちなみの,
はなはさかりに[寛],
なりにけり[寛],
ならのみやこを[寛],
おもほすやきみ[寛],
" "#[番号]03/0331","#[題詞]帥大伴卿歌五首","#[原文]吾盛 復将變八方 殆 寧樂京乎 不見歟将成","#[訓読]我が盛りまたをちめやもほとほとに奈良の都を見ずかなりなむ","#[仮名],わがさかり,またをちめやも,ほとほとに,ならのみやこを,みずかなりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,福岡,望郷,地名","#[訓異]
わがさかり,[寛]わかさかり,
またをちめやも,[寛]またかへれはも,
ほとほとに[寛],
ならのみやこを[寛],
みずかなりなむ,[寛]みすかなりなむ,
" "#[番号]03/0332","#[題詞](帥大伴卿歌五首)","#[原文]吾命毛 常有奴可 昔見之 象<小>河乎 行見為","#[訓読]我が命も常にあらぬか昔見し象の小川を行きて見むため","#[仮名],わがいのちも,つねにあらぬか,むかしみし,きさのをがはを,ゆきてみむため","#[左注]","#[校異]少 -> 小 [類][細]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,福岡,望郷,地名","#[訓異]
わがいのちも,[寛]わかいのちも,
つねにあらぬか[寛],
むかしみし[寛],
きさのをがはを,[寛]きさのをかはを,
ゆきてみむため[寛],
" "#[番号]03/0333","#[題詞](帥大伴卿歌五首)","#[原文]淺茅原 曲曲二 物念者 故郷之 所念可聞","#[訓読]浅茅原つばらつばらにもの思へば古りにし里し思ほゆるかも","#[仮名],あさぢはら,つばらつばらに,ものもへば,ふりにしさとし,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,福岡,望郷,地名,枕詞","#[訓異]
あさぢはら,[寛]あさちはら,
つばらつばらに,[寛]とさまかくさまに,
ものもへば,[寛]ものおもへは,
ふりにしさとし,[寛]ふりにしさとの,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]03/0334","#[題詞](帥大伴卿歌五首)","#[原文]萱草 吾紐二付 香具山乃 故去之里乎 <忘>之為","#[訓読]忘れ草我が紐に付く香具山の古りにし里を忘れむがため","#[仮名],わすれくさ,わがひもにつく,かぐやまの,ふりにしさとを,わすれむがため","#[左注]","#[校異]不忘 -> 忘 [注釈]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,福岡,望郷,地名","#[訓異]
わすれくさ[寛],
わがひもにつく,[寛]わかひもにつく,
かぐやまの,[寛]かくやまの,
ふりにしさとを[寛],
わすれむがため,[寛]わすれぬかため,
" "#[番号]03/0335","#[題詞](帥大伴卿歌五首)","#[原文]吾行者 久者不有 夢乃和太 湍者不成而 淵有<乞>","#[訓読]我が行きは久にはあらじ夢のわだ瀬にはならずて淵にありこそ","#[仮名],わがゆきは,ひさにはあらじ,いめのわだ,せにはならずて,ふちにありこそ","#[左注]","#[校異]毛 -> 乞 [古義]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,福岡,望郷,地名","#[訓異]
わがゆきは,[寛]わかゆきは,
ひさにはあらじ,[寛]ひさにはあらし,
いめのわだ,[寛]ここのわた,
せにはならずて,[寛]せとはならすて,
ふちにありこそ,[寛]ふちとありとも,
" "#[番号]03/0336","#[題詞]沙弥満誓詠綿歌一首 [造筑紫觀音寺別當俗姓笠朝臣麻呂也]","#[原文]白縫 筑紫乃綿者 身箸而 未者<伎>袮杼 暖所見","#[訓読]しらぬひ筑紫の綿は身に付けていまだは着ねど暖けく見ゆ","#[仮名],しらぬひ,つくしのわたは,みにつけて,いまだはきねど,あたたけくみゆ","#[左注]","#[校異]妓 -> 伎 [類][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:沙弥満誓,笠麻呂,太宰府,福岡,枕詞,地名,比喩","#[訓異]
しらぬひ,[寛]しらぬひの,
つくしのわたは[寛],
みにつけて[寛],
いまだはきねど,[寛]いまたはきねと,
あたたけくみゆ,[寛]あたたかにみゆ,
" "#[番号]03/0337","#[題詞]山上憶良臣罷宴歌一首","#[原文]憶良等者 今者将罷 子将哭 其彼母毛 吾乎将待曽","#[訓読]憶良らは今は罷らむ子泣くらむそれその母も我を待つらむぞ","#[仮名],おくららは,いまはまからむ,こなくらむ,それそのははも,わをまつらむぞ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山上憶良,罷宴,太宰府,福岡,宴席,地名","#[訓異]
おくららは[寛],
いまはまからむ[寛],
こなくらむ[寛],
それそのははも,[寛]そのかのははも,
わをまつらむぞ,[寛]われをまたむそ,
" "#[番号]03/0338","#[題詞]<大>宰帥大伴卿讃酒歌十三首","#[原文]験無 物乎不念者 一坏乃 濁酒乎 可飲有良師","#[訓読]験なきものを思はずは一杯の濁れる酒を飲むべくあるらし","#[仮名],しるしなき,ものをおもはずは,ひとつきの,にごれるさけを,のむべくあるらし","#[左注]","#[校異]太 -> 大 [類][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,讃酒,太宰府,奈良,福岡,地名","#[訓異]
しるしなき[寛],
ものをおもはずは,[寛]ものをおもはすは,
ひとつきの[寛],
にごれるさけを,[寛]にこれるさけを,
のむべくあるらし,[寛]のむへくあらし,
" "#[番号]03/0339","#[題詞](<大>宰帥大伴卿讃酒歌十三首)","#[原文]酒名乎 聖跡負師 古昔 大聖之 言乃宜左","#[訓読]酒の名を聖と負ほせしいにしへの大き聖の言の宣しさ","#[仮名],さけのなを,ひじりとおほせし,いにしへの,おほきひじりの,ことのよろしさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,讃酒,太宰府,奈良,福岡,地名","#[訓異]
さけのなを[寛],
ひじりとおほせし,[寛]ひしりとおひし,
いにしへの[寛],
おほきひじりの,[寛]おほきひしりの,
ことのよろしさ[寛],
" "#[番号]03/0340","#[題詞](<大>宰帥大伴卿讃酒歌十三首)","#[原文]古之 七賢 人等毛 欲為物者 酒西有良師","#[訓読]いにしへの七の賢しき人たちも欲りせしものは酒にしあるらし","#[仮名],いにしへの,ななのさかしき,ひとたちも,ほりせしものは,さけにしあるらし","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,讃酒,太宰府,奈良,福岡,地名","#[訓異]
いにしへの[寛],
ななのさかしき,[寛]ななのかしこき,
ひとたちも,[寛]ひととらも,
ほりせしものは,[寛]ほりするものは,
さけにしあるらし[寛],
" "#[番号]03/0341","#[題詞](<大>宰帥大伴卿讃酒歌十三首)","#[原文]賢跡 物言従者 酒飲而 酔哭為師 益有良之","#[訓読]賢しみと物言ふよりは酒飲みて酔ひ泣きするしまさりたるらし","#[仮名],さかしみと,ものいふよりは,さけのみて,ゑひなきするし,まさりたるらし","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,讃酒,太宰府,奈良,福岡,地名","#[訓異]
さかしみと,[寛]かしこしと,
ものいふよりは[寛],
さけのみて[寛],
ゑひなきするし,[寛]えひなきするし,
まさりたるらし,[寛]まさりてあるらし,
" "#[番号]03/0342","#[題詞](<大>宰帥大伴卿讃酒歌十三首)","#[原文]将言為便 将為便不知 極 貴物者 酒西有良之","#[訓読]言はむすべ為むすべ知らず極まりて貴きものは酒にしあるらし","#[仮名],いはむすべ,せむすべしらず,きはまりて,たふときものは,さけにしあるらし","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,讃酒,太宰府,奈良,福岡,地名","#[訓異]
いはむすべ,[寛]いはむすへ,
せむすべしらず,[寛]せむすへしらす,
きはまりて[寛],
たふときものは,[寛]かしこきものは,
さけにしあるらし[寛],
" "#[番号]03/0343","#[題詞](<大>宰帥大伴卿讃酒歌十三首)","#[原文]中々尓 人跡不有者 酒壷二 成而師鴨 酒二染甞","#[訓読]なかなかに人とあらずは酒壷になりにてしかも酒に染みなむ","#[仮名],なかなかに,ひととあらずは,さかつぼに,なりにてしかも,さけにしみなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,讃酒,太宰府,奈良,福岡,地名","#[訓異]
なかなかに[寛],
ひととあらずは,[寛]ひととあらすは,
さかつぼに,[寛]さかつほに,
なりにてしかも[寛],
さけにしみなむ[寛].
" "#[番号]03/0344","#[題詞](<大>宰帥大伴卿讃酒歌十三首)","#[原文]痛醜 賢良乎為跡 酒不飲 人乎熟見<者> 猿二鴨似","#[訓読]あな醜賢しらをすと酒飲まぬ人をよく見ば猿にかも似む","#[仮名],あなみにく,さかしらをすと,さけのまぬ,ひとをよくみば,さるにかもにむ","#[左注]","#[校異]<> -> 者 [西(右書)][類][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,讃酒,太宰府,奈良,福岡,地名","#[訓異]
あなみにく[寛],
さかしらをすと[寛],
さけのまぬ,[寛]さけのまて,
ひとをよくみば,[寛]ひとをみくむは,
さるにかもにむ[寛],
" "#[番号]03/0345","#[題詞](<大>宰帥大伴卿讃酒歌十三首)","#[原文]價無 寳跡言十方 一坏乃 濁酒尓 豈益目八<方>","#[訓読]価なき宝といふとも一杯の濁れる酒にあにまさめやも","#[仮名],あたひなき,たからといふとも,ひとつきの,にごれるさけに,あにまさめやも","#[左注]","#[校異]<> -> 方 [類][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,讃酒,太宰府,奈良,福岡,地名","#[訓異]
あたひなき[寛],
たからといふとも[寛],
ひとつきの[寛],
にごれるさけに,[寛]にこれるさけに,
あにまさめやも,[寛]あにまさらめや,
" "#[番号]03/0346","#[題詞](<大>宰帥大伴卿讃酒歌十三首)","#[原文]夜光 玉跡言十方 酒飲而 情乎遣尓 豈若目八方","#[訓読]夜光る玉といふとも酒飲みて心を遣るにあにしかめやも","#[仮名],よるひかる,たまといふとも,さけのみて,こころをやるに,あにしかめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,讃酒,太宰府,奈良,福岡,地名","#[訓異]
よるひかる[寛],
たまといふとも[寛],
さけのみて[寛],
こころをやるに[寛],
あにしかめやも[寛],
" "#[番号]03/0347","#[題詞](<大>宰帥大伴卿讃酒歌十三首)","#[原文]世間之 遊道尓 <怜>者 酔泣為尓 可有良師","#[訓読]世間の遊びの道に楽しきは酔ひ泣きするにあるべくあるらし","#[仮名],よのなかの,あそびのみちに,たのしきは,ゑひなきするに,あるべくあるらし","#[左注]","#[校異]冷 -> 怜 [玉の小琴] (塙) 冷","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,讃酒,太宰府,奈良,福岡,地名","#[訓異]
よのなかの[寛],
あそびのみちに,[寛]あそひのみちに,
たのしきは,[寛]ましらはは,
ゑひなきするに[寛],
あるべくあるらし,[寛]ありぬへからし,
" "#[番号]03/0348","#[題詞](<大>宰帥大伴卿讃酒歌十三首)","#[原文]今代尓之 樂有者 来生者 蟲尓鳥尓毛 吾羽成奈武","#[訓読]この世にし楽しくあらば来む世には虫に鳥にも我れはなりなむ","#[仮名],このよにし,たのしくあらば,こむよには,むしにとりにも,われはなりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,讃酒,太宰府,奈良,福岡,地名","#[訓異]
このよにし[寛],
たのしくあらば,[寛]たのしくあらは,
こむよには[寛],
むしにとりにも[寛],
われはなりなむ[寛],
" "#[番号]03/0349","#[題詞](<大>宰帥大伴卿讃酒歌十三首)","#[原文]生者 遂毛死 物尓有者 今生在間者 樂乎有名","#[訓読]生ける者遂にも死ぬるものにあればこの世なる間は楽しくをあらな","#[仮名],いけるもの,つひにもしぬる,ものにあれば,このよなるまは,たのしくをあらな","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,讃酒,太宰府,奈良,福岡,地名","#[訓異]
いけるもの,[寛]いけるひと,
つひにもしぬる,[寛]つゐにもしぬる,
ものにあれば,[寛]ものにあれは,
このよなるまは[寛],
たのしくをあらな[寛],
" "#[番号]03/0350","#[題詞](<大>宰帥大伴卿讃酒歌十三首)","#[原文]黙然居而 賢良為者 飲酒而 酔泣為尓 尚不如来","#[訓読]黙居りて賢しらするは酒飲みて酔ひ泣きするになほしかずけり","#[仮名],もだをりて,さかしらするは,さけのみて,ゑひなきするに,なほしかずけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,讃酒,太宰府,奈良,福岡,地名","#[訓異]
もだをりて,[寛]たたにゐて,
さかしらするは[寛],
さけのみて[寛],
ゑひなきするに[寛],
なほしかずけり,[寛]なをしかすけり,
" "#[番号]03/0351","#[題詞]沙弥満誓歌一首","#[原文]世間乎 何物尓将譬 <旦>開 榜去師船之 跡無如","#[訓読]世間を何に譬へむ朝開き漕ぎ去にし船の跡なきごとし","#[仮名],よのなかを,なににたとへむ,あさびらき,こぎいにしふねの,あとなきごとし","#[左注]","#[校異]且 -> 旦 [古][紀][矢]","#[事項],雑歌,作者:沙弥満誓,無常,太宰府,福岡,地名","#[訓異]
よのなかを[寛],
なににたとへむ[寛],
あさびらき,[寛]あさひらき,
こぎいにしふねの,[寛]こきいにしふねの,
あとなきごとし,[寛]あとなきかこと,
" "#[番号]03/0352","#[題詞]若湯座王歌一首","#[原文]葦邊波 鶴之哭鳴而 湖風 寒吹良武 津乎能埼羽毛","#[訓読]葦辺には鶴がね鳴きて港風寒く吹くらむ津乎の崎はも","#[仮名],あしへには,たづがねなきて,みなとかぜ,さむくふくらむ,つをのさきはも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:若湯座王,津乎,滋賀県,羈旅,地名,動物","#[訓異]
あしへには[寛],
たづがねなきて,[寛]たつかねなきて,
みなとかぜ,[寛]みなとかせ,
さむくふくらむ,[寛]さむくふくらむ,
つをのさきはも[寛],
" "#[番号]03/0353","#[題詞]釋通觀歌一首","#[原文]見吉野之 高城乃山尓 白雲者 行憚而 棚引所見","#[訓読]み吉野の高城の山に白雲は行きはばかりてたなびけり見ゆ","#[仮名],みよしのの,たかきのやまに,しらくもは,ゆきはばかりて,たなびけりみゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:釈通観,吉野,地名","#[訓異]
みよしのの[寛],
たかきのやまに[寛],
しらくもは[寛],
ゆきはばかりて,[寛]ゆきははかりて,
たなびけりみゆ,[寛]たなひきてみゆ,
" "#[番号]03/0354","#[題詞]日置少老歌一首","#[原文]縄乃浦尓 塩焼火氣 夕去者 行過不得而 山尓棚引","#[訓読]縄の浦に塩焼く煙夕されば行き過ぎかねて山にたなびく","#[仮名],なはのうらに,しほやくけぶり,ゆふされば,ゆきすぎかねて,やまにたなびく","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:日置少老,縄の浦,兵庫,羈旅,地名","#[訓異]
なはのうらに[寛],
しほやくけぶり,[寛]しほやくけふり,
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
ゆきすぎかねて,[寛]ゆきすきかねて,
やまにたなびく,[寛]やまにたなひく,
" "#[番号]03/0355","#[題詞]生石村主真人歌一首","#[原文]大汝 小彦名乃 将座 志都乃石室者 幾代将經","#[訓読]大汝少彦名のいましけむ志都の石屋は幾代経にけむ","#[仮名],おほなむち,すくなひこなの,いましけむ,しつのいはやは,いくよへにけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:生石真人,静の岩屋,島根,羈旅,地名","#[訓異]
おほなむち[寛],
すくなひこなの[寛],
いましけむ,[寛]いましなむ,
しつのいはやは[寛],
いくよへにけむ,[寛]いくよへぬらむ,
" "#[番号]03/0356","#[題詞]上古麻呂歌一首","#[原文]今日可聞 明日香河乃 夕不離 川津鳴瀬之 清有良武 [或本歌發句云 明日香川今毛可毛等奈]","#[訓読]今日もかも明日香の川の夕さらずかはづ鳴く瀬のさやけくあるらむ [或本歌發句云 明日香川今もかもとな]","#[仮名],けふもかも,あすかのかはの,ゆふさらず,かはづなくせの,さやけくあるらむ,[あすかがは,いまもかもとな]","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:上古麻呂,飛鳥川,地名","#[訓異]
けふもかも[寛],
あすかのかはの[寛],
ゆふさらず,[寛]ゆふさらす,
かはづなくせの,[寛]かわつなくせの,
さやけくあるらむ,[寛]きよくあるらむ,
[あすかがは,いまもかもとな]
" "#[番号]03/0357","#[題詞]山部宿祢赤人歌六首","#[原文]縄浦従 背向尓所見 奥嶋 榜廻舟者 釣為良下","#[訓読]縄の浦ゆそがひに見ゆる沖つ島漕ぎ廻る舟は釣りしすらしも","#[仮名],なはのうらゆ,そがひにみゆる,おきつしま,こぎみるふねは,つりしすらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,縄の浦,兵庫,羈旅,地名","#[訓異]
なはのうらゆ,[寛]なはのうらを,
そがひにみゆる,[寛]そかひにみゆる,
おきつしま[寛],
こぎみるふねは,[寛]こきたむふねは,
つりしすらしも,[寛]つりをすらしも,
" "#[番号]03/0358","#[題詞](山部宿祢赤人歌六首)","#[原文]武庫浦乎 榜轉小舟 粟嶋矣 背尓見乍 乏小舟","#[訓読]武庫の浦を漕ぎ廻る小舟粟島をそがひに見つつ羨しき小舟","#[仮名],むこのうらを,こぎみるをぶね,あはしまを,そがひにみつつ,ともしきをぶね","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,武庫の浦,兵庫,羈旅,地名","#[訓異]
むこのうらを[寛],
こぎみるをぶね,[寛]こきたむをふね,
あはしまを[寛],
そがひにみつつ,[寛]そかひにみつつ,
ともしきをぶね,[寛]ともしきをふね,
" "#[番号]03/0359","#[題詞](山部宿祢赤人歌六首)","#[原文]阿倍乃嶋 宇乃住石尓 依浪 間無比来 日本師所念","#[訓読]阿倍の島鵜の住む磯に寄する波間なくこのころ大和し思ほゆ","#[仮名],あへのしま,うのすむいそに,よするなみ,まなくこのころ,やまとしおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,阿倍の島,大阪,和歌山,羈旅,望郷,地名","#[訓異]
あへのしま[寛],
うのすむいそに,[寛]うのすむいしに,
よするなみ,[寛]よるなみの,
まなくこのころ[寛],
やまとしおもほゆ[寛],
" "#[番号]03/0360","#[題詞](山部宿祢赤人歌六首)","#[原文]塩干去者 玉藻苅蔵 家妹之 濱L乞者 何矣示","#[訓読]潮干なば玉藻刈りつめ家の妹が浜づと乞はば何を示さむ","#[仮名],しほひなば,たまもかりつめ,いへのいもが,はまづとこはば,なにをしめさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,羈旅,植物,みやげ","#[訓異]
しほひなば,[寛]しほひなは,
たまもかりつめ[寛],
いへのいもが,[寛]いへのいもか,
はまづとこはば,[寛]はまつとこはは,
なにをしめさむ[寛],
" "#[番号]03/0361","#[題詞](山部宿祢赤人歌六首)","#[原文]秋風乃 寒朝開乎 佐農能岡 将超公尓 衣借益矣","#[訓読]秋風の寒き朝明を佐農の岡越ゆらむ君に衣貸さましを","#[仮名],あきかぜの,さむきあさけを,さぬのをか,こゆらむきみに,きぬかさましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,羈旅,地名,兵庫県","#[訓異]
あきかぜの,[寛]あきかせの,
さむきあさけを[寛],
さぬのをか,[寛]さののをか,
こゆらむきみに[寛],
きぬかさましを[寛],
" "#[番号]03/0362","#[題詞](山部宿祢赤人歌六首)","#[原文]美沙居 石轉尓生 名乗藻乃 名者告志<弖>余 親者知友","#[訓読]みさご居る磯廻に生ふるなのりその名は告らしてよ親は知るとも","#[仮名],みさごゐる,いそみにおふる,なのりその,なはのらしてよ,おやはしるとも","#[左注]","#[校異]五 -> 弖 [万葉集代匠記]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,羈旅,動物,植物,序詞","#[訓異]
みさごゐる,[寛]みさこゐる,
いそみにおふる,[寛]いそわにおふる,
なのりその[寛],
なはのらしてよ,[寛]なはつけしこよ,
おやはしるとも[寛],
" "#[番号]03/0363","#[題詞](山部宿祢赤人歌六首)或本歌曰","#[原文]美沙居 荒礒尓生 名乗藻乃 <吉>名者告世 父母者知友","#[訓読]みさご居る荒磯に生ふるなのりそのよし名は告らせ親は知るとも","#[仮名],みさごゐる,ありそにおふる,なのりその,よしなはのらせ,おやはしるとも","#[左注]","#[校異]告 -> 吉 [万葉集略解]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,羈旅,異伝,動物,植物,序詞","#[訓異]
みさごゐる,[寛]みさこゐる,
ありそにおふる,[寛]あらいそにおふる,
なのりその[寛],
よしなはのらせ,[寛]なのりはつけよ,
おやはしるとも[寛],
" "#[番号]03/0364","#[題詞]笠朝臣金村塩津山作歌二首","#[原文]大夫之 弓上振起 射都流矢乎 後将見人者 語継金","#[訓読]ますらをの弓末振り起し射つる矢を後見む人は語り継ぐがね","#[仮名],ますらをの,ゆずゑふりおこし,いつるやを,のちみむひとは,かたりつぐがね","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:笠金村,滋賀県,羈旅,地名","#[訓異]
ますらをの[寛],
ゆずゑふりおこし,[寛]ゆすえふりおこし,
いつるやを[寛],
のちみむひとは[寛],
かたりつぐがね,[寛]かたりつくかね,
" "#[番号]03/0365","#[題詞](笠朝臣金村塩津山作歌二首)","#[原文]塩津山 打越去者 我乗有 馬曽爪突 家戀良霜","#[訓読]塩津山打ち越え行けば我が乗れる馬ぞつまづく家恋ふらしも","#[仮名],しほつやま,うちこえゆけば,あがのれる,うまぞつまづく,いへこふらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:笠金村,滋賀県,羈旅,地名","#[訓異]
しほつやま[寛],
うちこえゆけば,[寛]うちこえゆけは,
あがのれる,[寛]わかのれる,
うまぞつまづく,[寛]うまそつまつく,
いへこふらしも[寛],
" "#[番号]03/0366","#[題詞]角鹿津乗船時笠朝臣金村作歌一首[并短歌]","#[原文]越海之 角鹿乃濱従 大舟尓 真梶貫下 勇魚取 海路尓出而 阿倍寸管 我榜行者 大夫乃 手結我浦尓 海未通女 塩焼炎 草枕 客之有者 獨為而 見知師無美 綿津海乃 手二巻四而有 珠手次 懸而之努櫃 日本嶋根乎","#[訓読]越の海の 角鹿の浜ゆ 大船に 真楫貫き下ろし 鯨魚取り 海道に出でて 喘きつつ 我が漕ぎ行けば ますらをの 手結が浦に 海女娘子 塩焼く煙 草枕 旅にしあれば ひとりして 見る験なみ 海神の 手に巻かしたる 玉たすき 懸けて偲ひつ 大和島根を","#[仮名],こしのうみの,つのがのはまゆ,おほぶねに,まかぢぬきおろし,いさなとり,うみぢにいでて,あへきつつ,わがこぎゆけば,ますらをの,たゆひがうらに,あまをとめ,しほやくけぶり,くさまくら,たびにしあれば,ひとりして,みるしるしなみ,わたつみの,てにまかしたる,たまたすき,かけてしのひつ,やまとしまねを","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:笠金村,敦賀,福井,羈旅,望郷,地名,枕詞","#[訓異]
こしのうみの[寛],
つのがのはまゆ,[寛]つのかのはまゆ,
おほぶねに,[寛]おほふねに,
まかぢぬきおろし,[寛]まかちぬきをろし,
いさなとり[寛],
うみぢにいでて,[寛]うみちにいてて,
あへきつつ[寛],
わがこぎゆけば,[寛]わかこきゆけは,
ますらをの[寛],
たゆひがうらに,[寛]たゆひかうらに,
あまをとめ[寛],
しほやくけぶり,[寛]しほやくけふり,
くさまくら[寛],
たびにしあれば,[寛]たひにしあれは,
ひとりして[寛],
みるしるしなみ[寛],
わたつみの[寛],
てにまかしたる[寛],
たまたすき[寛],
かけてしのひつ[寛],
やまとしまねを[寛],
" "#[番号]03/0367","#[題詞](角鹿津乗船時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]越海乃 手結之浦<矣> 客為而 見者乏見 日本思櫃","#[訓読]越の海の手結が浦を旅にして見れば羨しみ大和偲ひつ","#[仮名],こしのうみの,たゆひがうらを,たびにして,みればともしみ,やまとしのひつ","#[左注]","#[校異]原字不明 -> 矣 [西(訂正)]","#[事項],雑歌,作者:笠金村,敦賀,福井,羈旅,望郷,地名","#[訓異]
こしのうみの[寛],
たゆひがうらを,[寛]たゆひのうらを,
たびにして,[寛]たひにして,
みればともしみ,[寛]みれはともしみ,
やまとしのひつ,[寛]やまとおもひつ,
" "#[番号]03/0368","#[題詞]石上大夫歌一首","#[原文]大船二 真梶繁貫 大王之 御命恐 礒廻為鴨","#[訓読]大船に真楫しじ貫き大君の命畏み磯廻するかも","#[仮名],おほぶねに,まかぢしじぬき,おほきみの,みことかしこみ,いそみするかも","#[左注]右今案 石上朝臣乙麻呂任越前國守盖此大夫歟","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:石上乙麻呂,越前,福井,羈旅","#[訓異]
おほぶねに,[寛]おほふねに,
まかぢしじぬき,[寛]まかちしぬき,
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
いそみするかも,[寛]あさりするかも,
" "#[番号]03/0369","#[題詞](石上大夫歌一首)和歌一首","#[原文]物部乃 臣之壮士者 大王<之> 任乃随意 聞跡云物曽","#[訓読]物部の臣の壮士は大君の任けのまにまに聞くといふものぞ","#[仮名],もののふの,おみのをとこは,おほきみの,まけのまにまに,きくといふものぞ","#[左注]右作者未審 但笠朝臣金村之歌中出也","#[校異]歌 [西] 謌 / <> -> 之 [紀]","#[事項],雑歌,作者:石上乙麻呂,越前,福井,羈旅","#[訓異]
もののふの[寛],
おみのをとこは,[寛]おみのたけをは,
おほきみの[寛],
まけのまにまに,[寛]よさしのままに,
きくといふものぞ,[寛]きくといふものそ,
" "#[番号]03/0370","#[題詞]阿倍廣庭卿歌一首","#[原文]雨不零 殿雲流夜之 潤濕跡 戀乍居寸 君待香光","#[訓読]雨降らずとの曇る夜のぬるぬると恋ひつつ居りき君待ちがてり","#[仮名],あめふらず,とのぐもるよの,ぬるぬると,こひつつをりき,きみまちがてり","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:阿倍広庭,恋情,意味難解","#[訓異]
あめふらず,[寛]あめふらて,
とのぐもるよの,[寛]とのくもるよの,
ぬるぬると,[寛]ぬれひてと,
こひつつをりき[寛],
きみまちがてり,[寛]きみまちかてら,
" "#[番号]03/0371","#[題詞]出雲守門部王思京歌一首 [後賜大原真人氏也]","#[原文]飫海乃 河原之乳鳥 汝鳴者 吾佐保河乃 所念國","#[訓読]意宇の海の河原の千鳥汝が鳴けば我が佐保川の思ほゆらくに","#[仮名],おうのうみの,かはらのちどり,ながなけば,わがさほかはの,おもほゆらくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:門部王,羈旅,望郷,地名,動物","#[訓異]
おうのうみの[寛],
かはらのちどり,[寛]かはらのちとり,
ながなけば,[寛]なかなけは,
わがさほかはの,[寛]わかさほかはの,
おもほゆらくに[寛],
" "#[番号]03/0372","#[題詞]山部宿祢赤人登春日野作歌一首[并短歌]","#[原文]春日乎 春日山乃 高座之 御笠乃山尓 朝不離 雲居多奈引 容鳥能 間無數鳴 雲居奈須 心射左欲比 其鳥乃 片戀耳二 晝者毛 日之盡 夜者毛 夜之盡 立而居而 念曽吾為流 不相兒故荷","#[訓読]春日を 春日の山の 高座の 御笠の山に 朝さらず 雲居たなびき 貌鳥の 間なくしば鳴く 雲居なす 心いさよひ その鳥の 片恋のみに 昼はも 日のことごと 夜はも 夜のことごと 立ちて居て 思ひぞ我がする 逢はぬ子故に","#[仮名],はるひを,かすがのやまの,たかくらの,みかさのやまに,あささらず,くもゐたなびき,かほどりの,まなくしばなく,くもゐなす,こころいさよひ,そのとりの,かたこひのみに,ひるはも,ひのことごと,よるはも,よのことごと,たちてゐて,おもひぞわがする,あはぬこゆゑに","#[左注]","#[校異]短歌 [西] 短謌","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,春日野,奈良,野遊び,動物,地名,恋情,枕詞","#[訓異]
はるひを,[寛]はるのひを,
かすがのやまの,[寛]かすかのやまの,
たかくらの[寛],
みかさのやまに[寛],
あささらず,[寛]あささらす,
くもゐたなびき,[寛]くもゐたなひき,
かほどりの,[寛]かほとりの,
まなくしばなく,[寛]まなくしはなく,
くもゐなす[寛],
こころいさよひ[寛],
そのとりの[寛],
かたこひのみに[寛],
ひるはも[寛],
ひのことごと,[寛]ひのつきよるは,
よるはも,
よのことごと,[寛]もよのつきたちて,
たちてゐて,[寛]ゐておもひを,
おもひぞわがする,[寛]わかする,
あはぬこゆゑに,[寛]あはぬこゆへに,
" "#[番号]03/0373","#[題詞](山部宿祢赤人登春日野作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]高按之 三笠乃山尓 鳴<鳥>之 止者継流 <戀>哭為鴨","#[訓読]高座の御笠の山に鳴く鳥の止めば継がるる恋もするかも","#[仮名],たかくらの,みかさのやまに,なくとりの,やめばつがるる,こひもするかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / <> -> 鳥 [西(右書)][類][温] / <> -> 戀 [西(右書)][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,春日野,奈良,野遊び,恋情,動物,序詞,地名","#[訓異]
たかくらの[寛],
みかさのやまに[寛],
なくとりの[寛],
やめばつがるる,[寛]やめはつかるる,
こひもするかも[寛],
" "#[番号]03/0374","#[題詞]石上乙麻呂朝臣歌一首","#[原文]雨零者 将盖跡念有 笠乃山 人尓莫令盖 霑者漬跡裳","#[訓読]雨降らば着むと思へる笠の山人にな着せそ濡れは漬つとも","#[仮名],あめふらば,きむとおもへる,かさのやま,ひとになきせそ,ぬれはひつとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:石上乙麻呂,三笠山,桜井市笠,地名","#[訓異]
あめふらば,[寛]あめふれは,
きむとおもへる,[寛]ささむとおもへる,
かさのやま[寛],
ひとになきせそ,[寛]ひとにささすな,
ぬれはひつとも[寛],
" "#[番号]03/0375","#[題詞]湯原王芳野作歌一首","#[原文]吉野尓有 夏實之河乃 川余杼尓 鴨曽鳴成 山影尓之弖","#[訓読]吉野なる菜摘の川の川淀に鴨ぞ鳴くなる山蔭にして","#[仮名],よしのなる,なつみのかはの,かはよどに,かもぞなくなる,やまかげにして","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(右書)] 歌","#[事項],雑歌,作者:湯原王,吉野,地名,動物","#[訓異]
よしのなる[寛],
なつみのかはの[寛],
かはよどに,[寛]かはよとに,
かもぞなくなる,[寛]かもそなくなる,
やまかげにして,[寛]やまかけにして,
" "#[番号]03/0376","#[題詞]湯原王宴席歌二首","#[原文]秋津羽之 袖振妹乎 珠匣 奥尓念乎 見賜吾君","#[訓読]あきづ羽の袖振る妹を玉櫛笥奥に思ふを見たまへ我が君","#[仮名],あきづはの,そでふるいもを,たまくしげ,おくにおもふを,みたまへあがきみ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:湯原王,宴席,枕詞","#[訓異]
あきづはの,[寛]あきつはの,
そでふるいもを,[寛]そてふるいもを,
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
おくにおもふを[寛],
みたまへあがきみ,[寛]みたへわかきみ,
" "#[番号]03/0377","#[題詞](湯原王宴席歌二首)","#[原文]青山之 嶺乃白雲 朝尓食尓 恒見杼毛 目頬四吾君","#[訓読]青山の嶺の白雲朝に日に常に見れどもめづらし我が君","#[仮名],あをやまの,みねのしらくも,あさにけに,つねにみれども,めづらしあがきみ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:湯原王,宴席","#[訓異]
あをやまの[寛],
みねのしらくも[寛],
あさにけに[寛],
つねにみれども,[寛]つねにみれとも,
めづらしあがきみ,[寛]めつらしわかきみ,
" "#[番号]03/0378","#[題詞]山部宿祢赤人詠故太上大臣藤原家之山池歌一首","#[原文]昔者之 舊堤者 年深 池之瀲尓 水草生家里","#[訓読]いにしへの古き堤は年深み池の渚に水草生ひにけり","#[仮名],いにしへの,ふるきつつみは,としふかみ,いけのなぎさに,みくさおひにけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(右書)] 歌 / 生 [紀] 生尓","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,不比等,奈良,植物,地名","#[訓異]
いにしへの[寛],
ふるきつつみは[寛],
としふかみ,[寛]としふかき,
いけのなぎさに,[寛]いけのなきさに,
みくさおひにけり,[寛]みくさおいにけり,
" "#[番号]03/0379","#[題詞]大伴坂上郎女祭神歌一首[并短歌]","#[原文]久堅之 天原従 生来 神之命 奥山乃 賢木之枝尓 白香付 木綿取付而 齋戸乎 忌穿居 竹玉乎 繁尓貫垂 十六自物 膝折伏 手弱女之 押日取懸 如此谷裳 吾者<祈>奈牟 君尓不相可聞","#[訓読]ひさかたの 天の原より 生れ来る 神の命 奥山の 賢木の枝に しらか付け 木綿取り付けて 斎瓮を 斎ひ掘り据ゑ 竹玉を 繁に貫き垂れ 獣じもの 膝折り伏して たわや女の 襲取り懸け かくだにも 我れは祈ひなむ 君に逢はじかも","#[仮名],ひさかたの,あまのはらより,あれきたる,かみのみこと,おくやまの,さかきのえだに,しらかつけ,ゆふとりつけて,いはひへを,いはひほりすゑ,たかたまを,しじにぬきたれ,ししじもの,ひざをりふして,たわやめの,おすひとりかけ,かくだにも,あれはこひなむ,きみにあはじかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(右書)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 / 折 -> 祈 [紀]","#[事項],雑歌,作者:坂上郎女,奈良,神祭,枕詞,恋情,地名","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あまのはらより[寛],
あれきたる[寛],
かみのみこと,[寛]かみのみことは,
おくやまの[寛],
さかきのえだに,[寛]さかきのえたに,
しらかつけ[寛],
ゆふとりつけて[寛],
いはひへを[寛],
いはひほりすゑ[寛],
たかたまを[寛],
しじにぬきたれ,[寛]ししにぬきたれ,
ししじもの,[寛]しししもの,
ひざをりふして,[寛]ひさをりふせて,
たわやめの,[寛]たをやめか,
おすひとりかけ,[寛]あふひとりかけ,
かくだにも,[寛]かくたにも,
あれはこひなむ,[寛]われはをらなむ,
きみにあはじかも,[寛]きみにあはしかも,
" "#[番号]03/0380","#[題詞](大伴坂上郎女祭神歌一首[并短歌])反歌","#[原文]木綿疊 手取持而 如此谷母 吾波乞甞 君尓不相鴨","#[訓読]木綿畳手に取り持ちてかくだにも我れは祈ひなむ君に逢はじかも","#[仮名],ゆふたたみ,てにとりもちて,かくだにも,あれはこひなむ,きみにあはじかも","#[左注]右歌者 以天平五年冬十一月供祭大伴氏神之時 聊作此歌 故曰祭神歌","#[校異]歌 [西] 謌 / 此歌 [西] 此謌","#[事項],雑歌,作者:坂上郎女,奈良,神祭,恋情,地名","#[訓異]
ゆふたたみ[寛],
てにとりもちて[寛],
かくだにも,[寛]かくたにも,
あれはこひなむ,[寛]われはこひなむ,
きみにあはじかも,[寛]きみにあはしかも,
" "#[番号]03/0381","#[題詞]筑紫娘子贈行旅歌一首 [娘子字曰兒嶋]","#[原文]思家登 情進莫 風候 好為而伊麻世 荒其路","#[訓読]家思ふと心進むな風まもり好くしていませ荒しその道","#[仮名],いへもふと,こころすすむな,かぜまもり,よくしていませ,あらしそのみち","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:筑紫娘子,太宰府,福岡,餞別,羈旅,地名","#[訓異]
いへもふと,[寛]いへおもふと,
こころすすむな[寛],
かぜまもり,[寛]かせまちて,
よくしていませ[寛],
あらしそのみち,[寛]あらきそのみち,
" "#[番号]03/0382","#[題詞]登筑波岳丹比真人國人作歌一首[并短歌]","#[原文]鷄之鳴 東國尓 高山者 佐波尓雖有 <朋>神之 貴山乃 儕立乃 見<杲>石山跡 神代従 人之言嗣 國見為<築>羽乃山矣 冬木成 時敷<時>跡 不見而徃者 益而戀石見 雪消為 山道尚矣 名積叙吾来<煎>","#[訓読]鶏が鳴く 東の国に 高山は さはにあれども 二神の 貴き山の 並み立ちの 見が欲し山と 神世より 人の言ひ継ぎ 国見する 筑波の山を 冬こもり 時じき時と 見ずて行かば まして恋しみ 雪消する 山道すらを なづみぞ我が来る","#[仮名],とりがなく,あづまのくにに,たかやまは,さはにあれども,ふたかみの,たふときやまの,なみたちの,みがほしやまと,かむよより,ひとのいひつぎ,くにみする,つくはのやまを,ふゆこもり,ときじきときと,みずていかば,ましてこほしみ,ゆきげする,やまみちすらを,なづみぞわがける","#[左注]","#[校異]短歌 [西] 短謌 / 明 -> 朋 [万葉集童蒙抄] / 果 -> 杲 [矢] / 筑 -> 築 [西(訂正)][類][温][細] / <> -> 時 [西(右書)][類][紀][細] / 前一 -> 煎 [紀]","#[事項],雑歌,作者:丹比国人,筑波,茨城,山讃美,枕詞,地名","#[訓異]
とりがなく,[寛]とりかなく,
あづまのくにに,[寛]あつまのくにに,
たかやまは[寛],
さはにあれども,[寛]さはにあれとも,
ふたかみの,[寛]あきつかみの,
たふときやまの,[寛]かしこきやまの,
なみたちの,[寛]ともたちの,
みがほしやまと,[寛]みかほしやまと,
かむよより,[寛]かみよより,
ひとのいひつぎ,[寛]ひとのいひつき,
くにみする[寛],
つくはのやまを[寛],
ふゆこもり,[寛]ふゆこなり,
ときじきときと,[寛]とこしくときと,
みずていかば,[寛]みすていなは,
ましてこほしみ,[寛]ましてこひしみ,
ゆきげする,[寛]ゆきけする,
やまみちすらを[寛],
なづみぞわがける,[寛]なつみそわくるに,
" "#[番号]03/0383","#[題詞](登筑波岳丹比真人國人作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]築羽根矣 Z耳見乍 有金手 雪消乃道矣 名積来有鴨","#[訓読]筑波嶺を外のみ見つつありかねて雪消の道をなづみ来るかも","#[仮名],つくはねを,よそのみみつつ,ありかねて,ゆきげのみちを,なづみけるかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:丹比国人,筑波,茨城,山讃美,地名","#[訓異]
つくはねを[寛],
よそのみみつつ,[寛]よそにみなから,
ありかねて[寛],
ゆきげのみちを,[寛]ゆきけのみちを,
なづみけるかも,[寛]なつみくるかも,
" "#[番号]03/0384","#[題詞]山部宿祢赤人歌一首","#[原文]吾屋戸尓 韓藍<種>生之 雖干 不懲而亦毛 将蒔登曽念","#[訓読]我がやどに韓藍蒔き生ほし枯れぬれど懲りずてまたも蒔かむとぞ思ふ","#[仮名],わがやどに,からあゐまきおほし,かれぬれど,こりずてまたも,まかむとぞおもふ","#[左注]","#[校異]蘓 -> 種 [類][古]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,恋愛,比喩,植物","#[訓異]
わがやどに,[寛]わかやとに,
からあゐまきおほし,[寛]あらあゐつみはやし,
かれぬれど,[寛]かれぬとも,
こりずてまたも,[寛]こりすてまたも,
まかむとぞおもふ,[寛]まかむとそおもふ,
" "#[番号]03/0385","#[題詞]仙柘枝歌三首","#[原文]霰零 吉<志>美我高嶺乎 險跡 草取可奈和 妹手乎取","#[訓読]霰降り吉志美が岳をさがしみと草取りかなわ妹が手を取る","#[仮名],あられふり,きしみがたけを,さがしみと,くさとりかなわ,いもがてをとる","#[左注]右一首或云 吉野人味稲与柘枝<仙>媛歌也 但見柘枝傳無有此歌","#[校異]<> -> 志 [紀][古][温] / 和 [古][紀] 知 / <> -> 仙 [西(右書)][紀][古][温]","#[事項],雑歌,作者:味稲,仙媛,仙柘枝,吉野,伝承,異伝,杵島振,枕詞,地名","#[訓異]
あられふり,[寛]あられふる,
きしみがたけを,[寛]きしみかたけを,
さがしみと,[寛]さかしみと,
くさとりかなわ,[寛]くさとるかなや,
いもがてをとる,[寛]いもかてをとる,
" "#[番号]03/0386","#[題詞](仙柘枝歌三首)","#[原文]此暮 柘之左枝乃 流来者 a者不打而 不取香聞将有","#[訓読]この夕柘のさ枝の流れ来ば梁は打たずて取らずかもあらむ","#[仮名],このゆふへ,つみのさえだの,ながれこば,やなはうたずて,とらずかもあらむ","#[左注]右一首","#[校異]","#[事項],雑歌,仙媛,仙柘枝,吉野,伝承,植物,地名","#[訓異]
このゆふへ,[寛]このくれに,
つみのさえだの,[寛]つみのさえたの,
ながれこば,[寛]なかれこは,
やなはうたずて,[寛]やなはうたすて,
とらずかもあらむ,[寛]とらすかもあらむ,
" "#[番号]03/0387","#[題詞](仙柘枝歌三首)","#[原文]古尓 a打人乃 無有世伐 此間毛有益 柘之枝羽裳","#[訓読]いにしへに梁打つ人のなかりせばここにもあらまし柘の枝はも","#[仮名],いにしへに,やなうつひとの,なかりせば,ここにもあらまし,つみのえだはも","#[左注]右一首若宮年魚麻呂作","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:若宮年魚麻呂,味稲,仙媛,仙柘枝,吉野,伝承,植物,地名","#[訓異]
いにしへに[寛],
やなうつひとの[寛],
なかりせば,[寛]なかりせは,
ここにもあらまし,[寛]ここもあらまし,
つみのえだはも,[寛]つみのえたはも,
" "#[番号]03/0388","#[題詞]羈旅歌一首[并短歌]","#[原文]海若者 霊寸物香 淡路嶋 中尓立置而 白浪乎 伊与尓廻之 座待月 開乃門従者 暮去者 塩乎令満 明去者 塩乎令于 塩左為能 浪乎恐美 淡路嶋 礒隠居而 何時鴨 此夜乃将明跡<侍>従尓 寐乃不勝宿者 瀧上乃 淺野之雉 開去歳 立動良之 率兒等 安倍而榜出牟 尓波母之頭氣師","#[訓読]海神は くすしきものか 淡路島 中に立て置きて 白波を 伊予に廻らし 居待月 明石の門ゆは 夕されば 潮を満たしめ 明けされば 潮を干しむ 潮騒の 波を畏み 淡路島 礒隠り居て いつしかも この夜の明けむと さもらふに 寐の寝かてねば 滝の上の 浅野の雉 明けぬとし 立ち騒くらし いざ子ども あへて漕ぎ出む 庭も静けし","#[仮名],わたつみは,くすしきものか,あはぢしま,なかにたておきて,しらなみを,いよにめぐらし,ゐまちづき,あかしのとゆは,ゆふされば,しほをみたしめ,あけされば,しほをひしむ,しほさゐの,なみをかしこみ,あはぢしま,いそがくりゐて,いつしかも,このよのあけむと,さもらふに,いのねかてねば,たきのうへの,あさののきぎし,あけぬとし,たちさわくらし,いざこども,あへてこぎでむ,にはもしづけし","#[左注](右歌若宮年魚麻呂誦之 但未審作者)","#[校異]短歌 [西] 短謌 / 待 -> 侍 [細]","#[事項],雑歌,,羈旅,伝誦,若年魚麻呂,明石海峡,兵庫,地名,動物","#[訓異]
わたつみは[寛],
くすしきものか,[寛]あやしきものか,
あはぢしま,[寛]あはちしま,
なかにたておきて[寛],
しらなみを[寛],
いよにめぐらし,[寛]いよにめくらし,
ゐまちづき,[寛]ゐまてつき,
あかしのとゆは,[寛]あかしのとには,
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
しほをみたしめ,[寛]しほをみてしめ,
あけされば,[寛]あさされは,
しほをひしむ,[寛]しほをおさしめ,
しほさゐの,[寛]しほささめ,
なみをかしこみ,[寛]なみをかしよみ,
あはぢしま,[寛]あわちしま,
いそがくりゐて,[寛]いそかくれゐて,
いつしかも[寛],
このよのあけむと[寛],
さもらふに,[寛]まつよとに,
いのねかてねば,[寛]いのねられねは,
たきのうへの[寛],
あさののきぎし,[寛]あさののききす,
あけぬとし[寛],
たちさわくらし[寛],
いざこども,[寛]いさことも,
あへてこぎでむ,[寛]あへてこきいてむ,
にはもしづけし,[寛]にはもしつけし,
" "#[番号]03/0389","#[題詞](羈旅歌一首[并短歌])反歌","#[原文]嶋傳 敏馬乃埼乎 許藝廻者 日本戀久 鶴左波尓鳴","#[訓読]島伝ひ敏馬の崎を漕ぎ廻れば大和恋しく鶴さはに鳴く","#[仮名],しまつたひ,みぬめのさきを,こぎみれば,やまとこほしく,たづさはになく","#[左注]右歌若宮年魚麻呂誦之 但未審作者","#[校異]歌 [西] 謌 [西(右書)] 歌","#[事項],雑歌,羈旅,伝誦,若年魚麻呂,兵庫,望郷,地名,動物","#[訓異]
しまつたひ[寛],
みぬめのさきを[寛],
こぎみれば,[寛]こきためは,
やまとこほしく,[寛]やまとこひしく,
たづさはになく,[寛]たつさはになく,
" "#[番号]03/0390","#[題詞]譬喩歌 / 紀皇女御歌一首","#[原文]軽池之 b廻徃轉留 鴨尚尓 玉藻乃於丹 獨宿名久二","#[訓読]軽の池の浦廻行き廻る鴨すらに玉藻の上にひとり寝なくに","#[仮名],かるのいけの,うらみゆきみる,かもすらに,たまものうへに,ひとりねなくに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌 [西(右書)] 歌","#[事項],譬喩歌,作者:紀皇女,飛鳥,孤独,恋愛,動物","#[訓異]
かるのいけの[寛],
うらみゆきみる,[寛]いりえめくれる,
かもすらに[寛],
たまものうへに[寛],
ひとりねなくに[寛],
" "#[番号]03/0391","#[題詞]造筑紫觀世音寺別當沙弥満誓歌一首","#[原文]鳥総立 足柄山尓 船木伐 樹尓伐歸都 安多良船材乎","#[訓読]鳥総立て足柄山に船木伐り木に伐り行きつあたら船木を","#[仮名],とぶさたて,あしがらやまに,ふなぎきり,きにきりゆきつ,あたらふなぎを","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:沙弥満誓,恋愛,地名,太宰府,福岡","#[訓異]
とぶさたて,[寛]とふさたて,
あしがらやまに,[寛]あしからやまに,
ふなぎきり,[寛]ふなききり,
きにきりゆきつ,[寛]きにきりよせつ,
あたらふなぎを,[寛]あたらふなきそ,
" "#[番号]03/0392","#[題詞]<大>宰大監大伴宿祢百代梅歌一首","#[原文]烏珠之 其夜乃梅乎 手忘而 不折来家里 思之物乎","#[訓読]ぬばたまのその夜の梅をた忘れて折らず来にけり思ひしものを","#[仮名],ぬばたまの,そのよのうめを,たわすれて,をらずきにけり,おもひしものを","#[左注]","#[校異]太 -> 大 [紀][細]","#[事項],譬喩歌,作者:大伴百代,恋愛,枕詞,植物","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
そのよのうめを[寛],
たわすれて[寛],
をらずきにけり,[寛]をらてきにけり,
おもひしものを[寛],
" "#[番号]03/0393","#[題詞]満誓沙弥月歌一首","#[原文]不所見十方 孰不戀有米 山之末尓 射狭夜歴月乎 外見而思香","#[訓読]見えずとも誰れ恋ひざらめ山の端にいさよふ月を外に見てしか","#[仮名],みえずとも,たれこひざらめ,やまのはに,いさよふつきを,よそにみてしか","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:沙弥満誓,恋愛","#[訓異]
みえずとも,[寛]みえすとも,
たれこひざらめ,[寛]たれこひさらめ,
やまのはに[寛],
いさよふつきを[寛],
よそにみてしか[寛],
" "#[番号]03/0394","#[題詞]<余>明軍歌一首","#[原文]印結而 我定義之 住吉乃 濱乃小松者 後毛吾松","#[訓読]標結ひて我が定めてし住吉の浜の小松は後も我が松","#[仮名],しめゆひて,わがさだめてし,すみのえの,はまのこまつは,のちもわがまつ","#[左注]","#[校異]金 -> 余 [紀][細]","#[事項],譬喩歌,作者:余明軍,大阪,恋愛,植物","#[訓異]
しめゆひて[寛],
わがさだめてし,[寛]わかさためこし,
すみのえの[寛],
はまのこまつは[寛],
のちもわがまつ,[寛]のちもわかまつ,
" "#[番号]03/0395","#[題詞]笠女郎贈大伴宿祢家持歌三首","#[原文]<託>馬野尓 生流紫 衣染 未服而 色尓出来","#[訓読]託馬野に生ふる紫草衣に染めいまだ着ずして色に出でにけり","#[仮名],たくまのに,おふるむらさき,きぬにしめ,いまだきずして,いろにいでにけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(右書)] 歌 / 詫 -> 託 [類][紀][温] / 衣 [紀] 衣尓","#[事項],譬喩歌,作者:笠郎女,大伴家持,恋愛,植物,贈答","#[訓異]
たくまのに,[寛]つくまのに,
おふるむらさき[寛],
きぬにしめ,[寛]きぬにそめ,
いまだきずして,[寛]いまたきすして,
いろにいでにけり,[寛]いろにいてけり,
" "#[番号]03/0396","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌三首)","#[原文]陸奥之 真野乃草原 雖遠 面影為而 所見云物乎","#[訓読]陸奥の真野の草原遠けども面影にして見ゆといふものを","#[仮名],みちのくの,まののかやはら,とほけども,おもかげにして,みゆといふものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:笠郎女,大伴家持,恋愛,地名,贈答","#[訓異]
みちのくの[寛],
まののかやはら[寛],
とほけども,[寛]とほけれと,
おもかげにして,[寛]おもかけにして,
みゆといふものを[寛],
" "#[番号]03/0397","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌三首)","#[原文]奥山之 磐本菅乎 根深目手 結之情 忘不得裳","#[訓読]奥山の岩本菅を根深めて結びし心忘れかねつも","#[仮名],おくやまの,いはもとすげを,ねふかめて,むすびしこころ,わすれかねつも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:笠郎女,大伴家持,恋愛,植物,序詞,贈答","#[訓異]
おくやまの[寛],
いはもとすげを,[寛]いはもとすけを,
ねふかめて[寛],
むすびしこころ,[寛]むすひしこころ,
わすれかねつも[寛],
" "#[番号]03/0398","#[題詞]藤原朝臣八束梅歌二首 [八束後名真楯 房前第<三>子]","#[原文]妹家尓 開有梅之 何時毛々々々 将成時尓 事者将定","#[訓読]妹が家に咲きたる梅のいつもいつもなりなむ時に事は定めむ","#[仮名],いもがいへに,さきたるうめの,いつもいつも,なりなむときに,ことはさだめむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 二 -> 三 [矢][京]","#[事項],譬喩歌,作者:藤原八束,真楯,恋愛,植物","#[訓異]
いもがいへに,[寛]いもかいへに,
さきたるうめの[寛],
いつもいつも[寛],
なりなむときに[寛],
ことはさだめむ,[寛]ことはさためむ,
" "#[番号]03/0399","#[題詞](藤原朝臣八束梅歌二首 [八束後名真楯 房前第<三>子])","#[原文]妹家尓 開有花之 梅花 實之成名者 左右将為","#[訓読]妹が家に咲きたる花の梅の花実にしなりなばかもかくもせむ","#[仮名],いもがいへに,さきたるはなの,うめのはな,みにしなりなば,かもかくもせむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:藤原八束,真楯,恋愛,植物","#[訓異]
いもがいへに,[寛]いもかいへに,
さきたるはなの[寛],
うめのはな[寛],
みにしなりなば,[寛]みにしなりなは,
かもかくもせむ[寛],
" "#[番号]03/0400","#[題詞]大伴宿祢駿河麻呂梅歌一首","#[原文]梅花 開而落去登 人者雖云 吾標結之 枝将有八方","#[訓読]梅の花咲きて散りぬと人は言へど我が標結ひし枝にあらめやも","#[仮名],うめのはな,さきてちりぬと,ひとはいへど,わがしめゆひし,えだにあらめやも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],譬喩歌,作者:大伴駿河麻呂,恋愛,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
さきてちりぬと[寛],
ひとはいへど,[寛]ひとはいへと,
わがしめゆひし,[寛]わかしめゆひし,
えだにあらめやも,[寛]えたにあらむやも,
" "#[番号]03/0401","#[題詞]大伴坂上郎女宴親族之日吟歌一首","#[原文]山守之 有家留不知尓 其山尓 標結立而 結之辱為都","#[訓読]山守のありける知らにその山に標結ひ立てて結ひの恥しつ","#[仮名],やまもりの,ありけるしらに,そのやまに,しめゆひたてて,ゆひのはぢしつ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],譬喩歌,作者:坂上郎女,宴席,誦詠","#[訓異]
やまもりの[寛],
ありけるしらに[寛],
そのやまに[寛],
しめゆひたてて[寛],
ゆひのはぢしつ,[寛]ゆひのはちしつ,
" "#[番号]03/0402","#[題詞](大伴坂上郎女宴親族之日吟歌一首)大伴宿祢駿河麻呂即和歌一首","#[原文]山主者 盖雖有 吾妹子之 将結標乎 人将解八方","#[訓読]山守はけだしありとも我妹子が結ひけむ標を人解かめやも","#[仮名],やまもりは,けだしありとも,わぎもこが,ゆひけむしめを,ひととかめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:坂上郎女,宴席,誦詠","#[訓異]
やまもりは[寛],
けだしありとも,[寛]けたしありとも,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
ゆひけむしめを,[寛]ゆひてむしめを,
ひととかめやも[寛],
" "#[番号]03/0403","#[題詞]大伴宿祢家持贈同坂上家之大嬢歌一首","#[原文]朝尓食尓 欲見 其玉乎 如何為鴨 従手不離有牟","#[訓読]朝に日に見まく欲りするその玉をいかにせばかも手ゆ離れずあらむ","#[仮名],あさにけに,みまくほりする,そのたまを,いかにせばかも,てゆかれずあらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:大伴家持,坂上大嬢,恋愛,贈答","#[訓異]
あさにけに[寛],
みまくほりする[寛],
そのたまを[寛],
いかにせばかも,[寛]いもにしてかも,
てゆかれずあらむ,[寛]てにさけさらむ,
" "#[番号]03/0404","#[題詞]娘子報佐伯宿祢赤麻呂贈歌一首","#[原文]千磐破 神之社四 無有世伐 春日之野邊 粟種益乎","#[訓読]ちはやぶる神の社しなかりせば春日の野辺に粟蒔かましを","#[仮名],ちはやぶる,かみのやしろし,なかりせば,かすがののへに,あはまかましを","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],譬喩歌,作者:娘子,佐伯赤麻呂,地名,奈良,枕詞,植物,贈答,掛け合い,恋愛","#[訓異]
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
かみのやしろし[寛],
なかりせば,[寛]なかりせは,
かすがののへに,[寛]かすかののへに,
あはまかましを[寛],
" "#[番号]03/0405","#[題詞]佐伯宿祢赤麻呂更贈歌一首","#[原文]春日野尓 粟種有世伐 待鹿尓 継而行益乎 社師<怨>焉","#[訓読]春日野に粟蒔けりせば鹿待ちに継ぎて行かましを社し恨めし","#[仮名],かすがのに,あはまけりせば,ししまちに,つぎてゆかましを,やしろしうらめし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 留 -> 怨 [紀]","#[事項],譬喩歌,作者:佐伯赤麻呂,奈良,地名,動物,植物,掛け合い,贈答,恋愛","#[訓異]
かすがのに,[寛]かすかのに,
あはまけりせば,[寛]あはまけりせは,
ししまちに,[寛]またむかに,
つぎてゆかましを,[寛]つきてゆかましを,
やしろしうらめし,[寛]やしろはしるを,
" "#[番号]03/0406","#[題詞]娘子復報歌一首","#[原文]吾祭 神者不有 大夫尓 認有神曽 好應祀","#[訓読]我が祭る神にはあらず大夫に憑きたる神ぞよく祭るべし","#[仮名],わがまつる,かみにはあらず,ますらをに,つきたるかみぞ,よくまつるべし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],譬喩歌,作者:娘子,佐伯赤麻呂,贈答,掛け合い,恋愛","#[訓異]
わがまつる,[寛]わかまつる,
かみにはあらず,[寛]かみにはあらす,
ますらをに[寛],
つきたるかみぞ,[寛]つきたるかみそ,
よくまつるべし,[寛]よくまつるへき,
" "#[番号]03/0407","#[題詞]大伴宿祢駿河麻呂娉同坂上家之二嬢歌一首","#[原文]春霞 春日里之 殖子水葱 苗有跡云師 柄者指尓家牟","#[訓読]春霞春日の里の植ゑ子水葱苗なりと言ひし枝はさしにけむ","#[仮名],はるかすみ,かすがのさとの,うゑこなぎ,なへなりといひし,えはさしにけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:大伴駿河麻呂,坂上二嬢,奈良,地名,植物,贈答,恋愛","#[訓異]
はるかすみ[寛],
かすがのさとの,[寛]かすかのさとの,
うゑこなぎ,[寛]うゑこなき,
なへなりといひし[寛],
えはさしにけむ[寛],
" "#[番号]03/0408","#[題詞]大伴宿祢家持贈同坂上家之大嬢歌一首","#[原文]石竹之 其花尓毛我 朝旦 手取持而 不戀日将無","#[訓読]なでしこがその花にもが朝な朝な手に取り持ちて恋ひぬ日なけむ","#[仮名],なでしこが,そのはなにもが,あさなさな,てにとりもちて,こひぬひなけむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],譬喩歌,作者:大伴家持,坂上大嬢,恋愛,植物,贈答,恋情","#[訓異]
なでしこが,[寛]なてしこの,
そのはなにもが,[寛]そのはなにもか,
あさなさな[寛],
てにとりもちて[寛],
こひぬひなけむ[寛],
" "#[番号]03/0409","#[題詞]大伴宿祢駿河麻呂歌一首","#[原文]一日尓波 千重浪敷尓 雖念 奈何其玉之 手二巻<難>寸","#[訓読]一日には千重波しきに思へどもなぞその玉の手に巻きかたき","#[仮名],ひとひには,ちへなみしきに,おもへども,なぞそのたまの,てにまきかたき","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 對 -> 難 [西(貼紙訂正)][類][古][紀]","#[事項],譬喩歌,作者:大伴駿河麻呂,恋情","#[訓異]
ひとひには[寛],
ちへなみしきに[寛],
おもへども,[寛]おもへとも,
なぞそのたまの,[寛]なとそのたまの,
てにまきかたき[寛],
" "#[番号]03/0410","#[題詞]大伴坂上郎女橘歌一首","#[原文]橘乎 屋前尓殖生 立而居而 後雖悔 驗将有八方","#[訓読]橘を宿に植ゑ生ほし立ちて居て後に悔ゆとも験あらめやも","#[仮名],たちばなを,やどにうゑおほし,たちてゐて,のちにくゆとも,しるしあらめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:坂上郎女,植物","#[訓異]
たちばなを,[寛]たちはなを,
やどにうゑおほし,[寛]やとにうゑをほし,
たちてゐて[寛],
のちにくゆとも[寛],
しるしあらめやも[寛],
" "#[番号]03/0411","#[題詞](大伴坂上郎女橘歌一首)和歌一首","#[原文]吾妹兒之 屋前之橘 甚近 殖而師故二 不成者不止","#[訓読]我妹子がやどの橘いと近く植ゑてし故にならずはやまじ","#[仮名],わぎもこが,やどのたちばな,いとちかく,うゑてしゆゑに,ならずはやまじ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],譬喩歌,作者:坂上郎女,植物","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
やどのたちばな,[寛]やとのたちはな,
いとちかく,[寛]いとちかし,
うゑてしゆゑに[寛],
ならずはやまじ,[寛]ならすはやまし,
" "#[番号]03/0412","#[題詞]市原王歌一首","#[原文]伊奈太吉尓 伎須賣流玉者 無二 此方彼方毛 君之随意","#[訓読]いなだきにきすめる玉は二つなしかにもかくにも君がまにまに","#[仮名],いなだきに,きすめるたまは,ふたつなし,かにもかくにも,きみがまにまに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],譬喩歌,作者:市原王,難解","#[訓異]
いなだきに,[寛]いなたきに,
きすめるたまは[寛],
ふたつなし[寛],
かにもかくにも,[寛]こなたかなたも,
きみがまにまに,[寛]きみかまにまに,
" "#[番号]03/0413","#[題詞]大網公人主宴吟歌一首","#[原文]須麻乃海人之 塩焼衣乃 藤服 間遠之有者 未著穢","#[訓読]須磨の海女の塩焼き衣の藤衣間遠にしあればいまだ着なれず","#[仮名],すまのあまの,しほやききぬの,ふぢころも,まどほにしあれば,いまだきなれず","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],譬喩歌,作者:大網公人,宴席,誦詠,兵庫,地名","#[訓異]
すまのあまの[寛],
しほやききぬの[寛],
ふぢころも,[寛]ふちころも,
まどほにしあれば,[寛]まとほにしあれは,
いまだきなれず,[寛]いまたきなれす,
" "#[番号]03/0414","#[題詞]大伴宿祢家持歌一首","#[原文]足日木能 石根許其思美 菅根乎 引者難三等 標耳曽結焉","#[訓読]あしひきの岩根こごしみ菅の根を引かばかたみと標のみぞ結ふ","#[仮名],あしひきの,いはねこごしみ,すがのねを,ひかばかたみと,しめのみぞゆふ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],譬喩歌,作者:大伴家持,枕詞,植物,恋愛","#[訓異]
あしひきの[寛],
いはねこごしみ,[寛]いはねここしみ,
すがのねを,[寛]すかのねを,
ひかばかたみと,[寛]ひかはかたみと,
しめのみぞゆふ,[寛]しめのみそゆふ,
" "#[番号]03/0415","#[題詞]挽歌 / 上宮聖徳皇子出遊竹原井之時見龍田山死人悲傷御作歌一首 [小墾田宮御宇天皇代墾田宮御宇者豊御食炊屋姫天皇也諱額田謚推古]","#[原文]家有者 妹之手将纒 草枕 客尓臥有 此旅人A怜","#[訓読]家にあらば妹が手まかむ草枕旅に臥やせるこの旅人あはれ","#[仮名],いへにあらば,いもがてまかむ,くさまくら,たびにこやせる,このたびとあはれ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌 / 墾田 [細] 小墾田","#[事項],挽歌,作者:聖徳太子,行路死人,枕詞,奈良,地名","#[訓異]
いへにあらば,[寛]いへならは,
いもがてまかむ,[寛]いもかてまかむ,
くさまくら[寛],
たびにこやせる,[寛]たひにふしたる,
このたびとあはれ,[寛]このたひとあし,
" "#[番号]03/0416","#[題詞]大津皇子被死之時磐余池<陂>流涕御作歌一首","#[原文]百傳 磐余池尓 鳴鴨乎 今日耳見哉 雲隠去牟","#[訓読]百伝ふ磐余の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ","#[仮名],ももづたふ,いはれのいけに,なくかもを,けふのみみてや,くもがくりなむ","#[左注]右藤原宮朱鳥元年冬十月","#[校異]般 -> 陂 [類][紀]","#[事項],挽歌,作者:大津皇子,枕詞,動物,桜井,地名,辞世","#[訓異]
ももづたふ,[寛]ももつたふ,
いはれのいけに[寛],
なくかもを[寛],
けふのみみてや[寛],
くもがくりなむ,[寛]くもかくれなむ,
" "#[番号]03/0417","#[題詞]河内王葬豊前國鏡山之時手持女王作歌三首","#[原文]王之 親魄相哉 豊國乃 鏡山乎 宮登定流","#[訓読]大君の和魂あへや豊国の鏡の山を宮と定むる","#[仮名],おほきみの,にきたまあへや,とよくにの,かがみのやまを,みやとさだむる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],挽歌,河内王,作者:手持女王,福岡県,地名","#[訓異]
おほきみの[寛],
にきたまあへや,[寛]むつたまあへや,
とよくにの[寛],
かがみのやまを,[寛]かかみのやまを,
みやとさだむる,[寛]みやとさたむる,
" "#[番号]03/0418","#[題詞](河内王葬豊前國鏡山之時手持女王作歌三首)","#[原文]豊國乃 鏡山之 石戸立 隠尓計良思 雖待不来座","#[訓読]豊国の鏡の山の岩戸立て隠りにけらし待てど来まさず","#[仮名],とよくにの,かがみのやまの,いはとたて,こもりにけらし,まてどきまさず","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,河内王,作者:手持女王,福岡県,地名","#[訓異]
とよくにの[寛],
かがみのやまの,[寛]かかみのやまの,
いはとたて[寛],
こもりにけらし,[寛]かくれにけらし,
まてどきまさず,[寛]まてときまさす,
" "#[番号]03/0419","#[題詞](河内王葬豊前國鏡山之時手持女王作歌三首)","#[原文]石戸破 手力毛欲得 手弱寸 女有者 為便乃不知苦","#[訓読]岩戸破る手力もがも手弱き女にしあればすべの知らなく","#[仮名],いはとわる,たぢからもがも,たよわき,をみなにしあれば,すべのしらなく","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,河内王,作者:手持女王,悲嘆","#[訓異]
いはとわる[寛],
たぢからもがも,[寛]たちからもかな,
たよわき,[寛]てをよはき,
をみなにしあれば,[寛]をとめにしあれは,
すべのしらなく,[寛]すへのしらなく,
" "#[番号]03/0420","#[題詞]石田王卒之時丹生王作歌一首[并短歌]","#[原文]名湯竹乃 十縁皇子 狭丹頬相 吾大王者 隠久乃 始瀬乃山尓 神左備尓 伊都伎坐等 玉梓乃 人曽言鶴 於余頭礼可 吾聞都流 <狂>言加 我間都流母 天地尓 悔事乃 世開乃 悔言者 天雲乃 曽久敝能極 天地乃 至流左右二 杖策毛 不衝毛去而 夕衢占問 石卜以而 吾屋戸尓 御諸乎立而 枕邊尓 齋戸乎居 竹玉乎 無間貫垂 木綿手次 可比奈尓懸而 天有 左佐羅能小野之 七相菅 手取持而 久堅乃 天川原尓 出立而 潔身而麻之<乎> 高山乃 石穂乃上尓 伊座都<類>香物","#[訓読]なゆ竹の とをよる御子 さ丹つらふ 我が大君は こもりくの 初瀬の山に 神さびに 斎きいますと 玉梓の 人ぞ言ひつる およづれか 我が聞きつる たはことか 我が聞きつるも 天地に 悔しきことの 世間の 悔しきことは 天雲の そくへの極み 天地の 至れるまでに 杖つきも つかずも行きて 夕占問ひ 石占もちて 我が宿に みもろを立てて 枕辺に 斎瓮を据ゑ 竹玉を 間なく貫き垂れ 木綿たすき かひなに懸けて 天なる ささらの小野の 七節菅 手に取り持ちて ひさかたの 天の川原に 出で立ちて みそぎてましを 高山の 巌の上に いませつるかも","#[仮名],なゆたけの,とをよるみこ,さにつらふ,わがおほきみは,こもりくの,はつせのやまに,かむさびに,いつきいますと,たまづさの,ひとぞいひつる,およづれか,わがききつる,たはことか,わがききつるも,あめつちに,くやしきことの,よのなかの,くやしきことは,あまくもの,そくへのきはみ,あめつちの,いたれるまでに,つゑつきも,つかずもゆきて,ゆふけとひ,いしうらもちて,わがやどに,みもろをたてて,まくらへに,いはひへをすゑ,たかたまを,まなくぬきたれ,ゆふたすき,かひなにかけて,あめなる,ささらのをのの,ななふすげ,てにとりもちて,ひさかたの,あまのかはらに,いでたちて,みそぎてましを,たかやまの,いはほのうへに,いませつるかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 枉 -> 狂 [紀][温] / 身 -> 乎 [西(訂正)][類][紀][温] / 流 -> 類 [類][矢]","#[事項],挽歌,石田王,作者:丹生王,枕詞,桜井,地名,悲別,悲嘆","#[訓異]
なゆたけの[寛],
とをよるみこ[寛],
さにつらふ[寛],
わがおほきみは,[寛]わかおほきみは,
こもりくの[寛],
はつせのやまに[寛],
かむさびに,[寛]かみさひに,
いつきいますと[寛],
たまづさの,[寛]たまつさの,
ひとぞいひつる,[寛]ひとそいひつる,
およづれか,[寛]およつれか,
わがききつる,[寛]わかききつる,
たはことか,[寛]まかことか,
わがききつるも,[寛]わかききつるも,
あめつちに[寛],
くやしきことの[寛],
よのなかの[寛],
くやしきことは[寛],
あまくもの[寛],
そくへのきはみ[寛],
あめつちの[寛],
いたれるまでに,[寛]いたれるまてに,
つゑつきも[寛],
つかずもゆきて,[寛]つかすもゆきて,
ゆふけとひ[寛],
いしうらもちて,[寛]いしうらもちて,
わがやどに,[寛]わかやとに,
みもろをたてて[寛],
まくらへに[寛],
いはひへをすゑ[寛],
たかたまを[寛],
まなくぬきたれ[寛],
ゆふたすき[寛],
かひなにかけて[寛],
あめなる,[寛]あめにある,
ささらのをのの[寛],
ななふすげ,[寛]ななふすけ,
てにとりもちて[寛],
ひさかたの[寛],
あまのかはらに[寛],
いでたちて,[寛]いてたちて,
みそぎてましを,[寛]みそきてましを,
たかやまの[寛],
いはほのうへに[寛],
いませつるかも,[寛]いましつるかも,
" "#[番号]03/0421","#[題詞](石田王卒之時丹生王作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]逆言之 狂言等可聞 高山之 石穂乃上尓 君之臥有","#[訓読]およづれのたはこととかも高山の巌の上に君が臥やせる","#[仮名],およづれの,たはこととかも,たかやまの,いはほのうへに,きみがこやせる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,石田王,作者:丹生王,哀悼,悲嘆","#[訓異]
およづれの,[寛]さかことの,
たはこととかも,[寛]まかこととかも,
たかやまの[寛],
いはほのうへに[寛],
きみがこやせる,[寛]きみかふしたる,
" "#[番号]03/0422","#[題詞]((石田王卒之時丹生王作歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]石上 振乃山有 杉村乃 思過倍吉 君尓有名國","#[訓読]石上布留の山なる杉群の思ひ過ぐべき君にあらなくに","#[仮名],いそのかみ,ふるのやまなる,すぎむらの,おもひすぐべき,きみにあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,石田王,作者:丹生王,枕詞,哀悼,悲嘆,悲別","#[訓異]
いそのかみ[寛],
ふるのやまなる[寛],
すぎむらの,[寛]すきむらの,
おもひすぐべき,[寛]おもひすくへき,
きみにあらなくに[寛],
" "#[番号]03/0423","#[題詞]同石田王卒之時山前王哀傷作歌一首","#[原文]角障經 石村之道乎 朝不離 将歸人乃 念乍 通計萬<口>波 霍公鳥 鳴五月者 菖蒲 花橘乎 玉尓貫 [一云 貫交] 蘰尓将為登 九月能 四具礼能時者 黄葉乎 折挿頭跡 延葛乃 弥遠永 [一云 田葛根乃 弥遠長尓] 萬世尓 不絶等念而 [一云 大舟之 念憑而] 将通 君乎婆明日従 [一云 君乎従明日<者>] 外尓可聞見牟","#[訓読]つのさはふ 磐余の道を 朝さらず 行きけむ人の 思ひつつ 通ひけまくは 霍公鳥 鳴く五月には あやめぐさ 花橘を 玉に貫き [一云 貫き交へ] かづらにせむと 九月の しぐれの時は 黄葉を 折りかざさむと 延ふ葛の いや遠長く [一云 葛の根の いや遠長に] 万代に 絶えじと思ひて [一云 大船の 思ひたのみて] 通ひけむ 君をば明日ゆ [一云 君を明日ゆは] 外にかも見む","#[仮名],つのさはふ,いはれのみちを,あささらず,ゆきけむひとの,おもひつつ,かよひけまくは,ほととぎす,なくさつきには,あやめぐさ,はなたちばなを,たまにぬき,[ぬきまじへ],かづらにせむと,ながつきの,しぐれのときは,もみちばを,をりかざさむと,はふくずの,いやとほながく,[くずのねの,いやとほながに],よろづよに,たえじとおもひて,[おほぶねの,おもひたのみて],かよひけむ,きみをばあすゆ,[きみをあすゆは],よそにかもみむ","#[左注]右一首或云柿本朝臣人麻呂作","#[校異]歌 [西] 謌 / 石 -> 口 [類][古] / 香 -> 者 [類][古][紀]","#[事項],挽歌,石田王,作者:山前王:柿本人麻呂,異伝,枕詞,桜井,地名,代作","#[訓異]
つのさはふ[寛],
いはれのみちを,[寛]いはむらのみちを,
あささらず,[寛]あさかれす,
ゆきけむひとの,[寛]よりけむひとの,
おもひつつ[寛],
かよひけまくは,[寛]かよひけましは,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なくさつきには[寛],
あやめぐさ,[寛]あやめくさ,
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
たまにぬき[寛],
[ぬきまじへ],
かづらにせむと,[寛]かつらにせむと,
ながつきの,[寛]なかつきの,
しぐれのときは,[寛]しくれのときは,
もみちばを,[寛]もちはを,
をりかざさむと,[寛]をりてかさすと,
はふくずの,[寛]はふくすの,
いやとほながく,[寛]いやとほなかく,
[くずのねの,
いやとほながに],
よろづよに,[寛]よろつよに,
たえじとおもひて,[寛]たえしとおもひて,
[おほぶねの,
おもひたのみて],
かよひけむ[寛],
きみをばあすゆ,[寛]きみをはあすより,
[きみをあすゆは],
よそにかもみむ[寛],
" "#[番号]03/0424","#[題詞](同石田王卒之時山前王哀傷作歌一首)或本反歌二首","#[原文]隠口乃 泊瀬越女我 手二纒在 玉者乱而 有不言八方","#[訓読]こもりくの泊瀬娘子が手に巻ける玉は乱れてありと言はずやも","#[仮名],こもりくの,はつせをとめが,てにまける,たまはみだれて,ありといはずやも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],挽歌,石田王,作者:山前王,異伝,枕詞,桜井,地名","#[訓異]
こもりくの[寛],
はつせをとめが,[寛]はつせをとめか,
てにまける[寛],
たまはみだれて,[寛]たまはみたれて,
ありといはずやも,[寛]ありといはしやも,
" "#[番号]03/0425","#[題詞]((同石田王卒之時山前王哀傷作歌一首)或本反歌二首)","#[原文]河風 寒長谷乎 歎乍 公之阿流久尓 似人母逢耶","#[訓読]川風の寒き泊瀬を嘆きつつ君が歩くに似る人も逢へや","#[仮名],かはかぜの,さむきはつせを,なげきつつ,きみがあるくに,にるひともあへや","#[左注]右二首者或云紀皇女薨後山前<王>代石田王作之也","#[校異]<> -> 王 [西(右書)][古][矢]","#[事項],挽歌,石田王,作者:山前王,異伝,難解,桜井,地名","#[訓異]
かはかぜの,[寛]かはかせの,
さむきはつせを[寛],
なげきつつ,[寛]なけきつつ,
きみがあるくに,[寛]きみかあるくに,
にるひともあへや[寛],
" "#[番号]03/0426","#[題詞]柿本朝臣人麻呂見香具山屍悲慟作歌一首","#[原文]草枕 羈宿尓 誰嬬可 國忘有 家待<真>國","#[訓読]草枕旅の宿りに誰が嬬か国忘れたる家待たまくに","#[仮名],くさまくら,たびのやどりに,たがつまか,くにわすれたる,いへまたまくに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 莫 -> 真 [類][古][紀]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,行路死人,枕詞","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびのやどりに,[寛]たひのやとりに,
たがつまか,[寛]たかつまか,
くにわすれたる[寛],
いへまたまくに,[寛]いへまたなくに,
" "#[番号]03/0427","#[題詞]田口廣麻呂死之時刑部垂麻呂作歌一首","#[原文]百不足 八十隅坂尓 手向為者 過去人尓 盖相牟鴨","#[訓読]百足らず八十隈坂に手向けせば過ぎにし人にけだし逢はむかも","#[仮名],ももたらず,やそくまさかに,たむけせば,すぎにしひとに,けだしあはむかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],挽歌,作者:刑部垂麻呂,田口広麻呂,枕詞","#[訓異]
ももたらず,[寛]ももたらぬ,
やそくまさかに,[寛]やそすみさかに,
たむけせば,[寛]たむけせは,
すぎにしひとに,[寛]すきゆくひとに,
けだしあはむかも,[寛]けたしあはむかも,
" "#[番号]03/0428","#[題詞]土形娘子火葬泊瀬山時柿本朝臣人麻呂作歌一首","#[原文]隠口能 泊瀬山之 山際尓 伊佐夜歴雲者 妹鴨有牟","#[訓読]こもりくの初瀬の山の山の際にいさよふ雲は妹にかもあらむ","#[仮名],こもりくの,はつせのやまの,やまのまに,いさよふくもは,いもにかもあらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,土形娘子,枕詞,桜井,地名,火葬","#[訓異]
こもりくの[寛],
はつせのやまの[寛],
やまのまに,[寛]やまのはに,
いさよふくもは[寛],
いもにかもあらむ[寛],
" "#[番号]03/0429","#[題詞]溺死出雲娘子火葬吉野時柿本朝臣人麻呂作歌二首","#[原文]山際従 出雲兒等者 霧有哉 吉野山 嶺霏<d>","#[訓読]山の際ゆ出雲の子らは霧なれや吉野の山の嶺にたなびく","#[仮名],やまのまゆ,いづものこらは,きりなれや,よしののやまの,みねにたなびく","#[左注]","#[校異]c -> d [矢][京]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,出雲娘子,吉野,地名,火葬","#[訓異]
やまのまゆ,[寛]やまのはに,
いづものこらは,[寛]いつものこらは,
きりなれや[寛],
よしののやまの[寛],
みねにたなびく,[寛]みねにたなひく,
" "#[番号]03/0430","#[題詞](溺死出雲娘子火葬吉野時柿本朝臣人麻呂作歌二首)","#[原文]八雲刺 出雲子等 黒髪者 吉野川 奥名豆颯","#[訓読]八雲さす出雲の子らが黒髪は吉野の川の沖になづさふ","#[仮名],やくもさす,いづものこらが,くろかみは,よしののかはの,おきになづさふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂,出雲娘子,吉野,地名","#[訓異]
やくもさす,[寛]やくもたつ,
いづものこらが,[寛]いつものこらか,
くろかみは[寛],
よしののかはの[寛],
おきになづさふ,[寛]おきになつさふ,
" "#[番号]03/0431","#[題詞]過勝鹿真間娘子墓時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌] [東俗語云可豆思賀能麻末能弖胡]","#[原文]古昔 有家武人之 倭<文>幡乃 帶解替而 廬屋立 妻問為家武 勝壮鹿乃 真間之手兒名之 奥槨乎 此間登波聞杼 真木葉哉 茂有良武 松之根也 遠久寸 言耳毛 名耳母吾者 不<可>忘","#[訓読]いにしへに ありけむ人の 倭文幡の 帯解き交へて 伏屋立て 妻問ひしけむ 勝鹿の 真間の手児名が 奥つ城を こことは聞けど 真木の葉や 茂くあるらむ 松が根や 遠く久しき 言のみも 名のみも我れは 忘らゆましじ","#[仮名],いにしへに,ありけむひとの,しつはたの,おびときかへて,ふせやたて,つまどひしけむ,かつしかの,ままのてごなが,おくつきを,こことはきけど,まきのはや,しげくあるらむ,まつがねや,とほくひさしき,ことのみも,なのみもわれは,わすらゆましじ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 短歌 [西] 短謌 / 麻末能 [紀][類] 麻末之 / 父 -> 文 [紀][細] / 所 -> 可 [類][紀]","#[事項],挽歌,作者:山部赤人,真間娘子,鎮魂,伝説,東京,地名,葛飾","#[訓異]
いにしへに[寛],
ありけむひとの[寛],
しつはたの[寛],
おびときかへて,[寛]おひときかへて,
ふせやたて[寛],
つまどひしけむ,[寛]つまとひしけむ,
かつしかの[寛],
ままのてごなが,[寛]ままのてこなか,
おくつきを[寛],
こことはきけど,[寛]こことはきけと,
まきのはや[寛],
しげくあるらむ,[寛]しけくあるらむ,
まつがねや,[寛]まつかねや,
とほくひさしき[寛],
ことのみも[寛],
なのみもわれは[寛],
わすらゆましじ,[寛]わすられなくに,
" "#[番号]03/0432","#[題詞](過勝鹿真間娘子墓時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌] [東俗語云可豆思賀能麻末能弖胡])反歌","#[原文]吾毛見都 人尓毛将告 勝壮鹿之 間<々>能手兒名之 奥津城處","#[訓読]我れも見つ人にも告げむ勝鹿の真間の手児名が奥つ城ところ","#[仮名],われもみつ,ひとにもつげむ,かつしかの,ままのてごなが,おくつきところ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 間 -> 々 [類][古][紀]","#[事項],挽歌,作者:山部赤人,真間娘子,葛飾,東京,地名,鎮魂","#[訓異]
われもみつ[寛],
ひとにもつげむ,[寛]ひとにもつけむ,
かつしかの[寛],
ままのてごなが,[寛]ままのてこなか,
おくつきところ[寛],
" "#[番号]03/0433","#[題詞]((過勝鹿真間娘子墓時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌] [東俗語云可豆思賀能麻末能弖胡])反歌)","#[原文]勝壮鹿乃 真々乃入江尓 打靡 玉藻苅兼 手兒名志所念","#[訓読]葛飾の真間の入江にうち靡く玉藻刈りけむ手児名し思ほゆ","#[仮名],かつしかの,ままのいりえに,うちなびく,たまもかりけむ,てごなしおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:山部赤人,真間娘子,葛飾,東京,地名,懐旧,鎮魂","#[訓異]
かつしかの[寛],
ままのいりえに[寛],
うちなびく,[寛]うちなひく,
たまもかりけむ[寛],
てごなしおもほゆ,[寛]てこなしそおもふ,
" "#[番号]03/0434","#[題詞]和銅四年辛亥河邊宮人見姫嶋松原美人屍哀慟作歌四首","#[原文]加<座>e夜能 美保乃浦廻之 白管仕 見十方不怜 無人念者 [或云 見者悲霜 無人思丹]","#[訓読]風早の美穂の浦廻の白つつじ見れども寂しなき人思へば [或云 見れば悲しもなき人思ふに]","#[仮名],かざはやの,みほのうらみの,しらつつじ,みれどもさぶし,なきひとおもへば,[みればかなしも,なきひとおもふに]","#[左注](右案 年紀并所處<及>娘子屍作<歌>人名已見上也 但<歌>辞相違是非難別 因以累載於茲次焉)","#[校異]歌 [西] 謌 / 麻 -> 座 [万葉集略解]","#[事項],挽歌,和銅4年,年紀,作者:河辺宮人,行路死人,大阪,地名,植物","#[訓異]
かざはやの,[寛]かさはやの,
みほのうらみの,[寛]みほのうらわの,
しらつつじ,[寛]しらつつし,
みれどもさぶし,[寛]みれともさひし,
なきひとおもへば,[寛]なきひとおもへは,
[みればかなしも,[寛]みれはかなしも,
なきひとおもふに][寛],
" "#[番号]03/0435","#[題詞](和銅四年辛亥河邊宮人見姫嶋松原美人屍哀慟作歌四首)","#[原文]見津見津四 久米能若子我 伊觸家武 礒之草根乃 干巻惜裳","#[訓読]みつみつし久米の若子がい触れけむ礒の草根の枯れまく惜しも","#[仮名],みつみつし,くめのわくごが,いふれけむ,いそのくさねの,かれまくをしも","#[左注](右案 年紀并所處<及>娘子屍作<歌>人名已見上也 但<歌>辞相違是非難別 因以累載於茲次焉)","#[校異]","#[事項],挽歌,和銅4年,年紀,作者:河辺宮人,行路死人,大阪,地名,枕詞","#[訓異]
みつみつし[寛],
くめのわくごが,[寛]くめのわかこか,
いふれけむ[寛],
いそのくさねの[寛],
かれまくをしも[寛],
" "#[番号]03/0436","#[題詞](和銅四年辛亥河邊宮人見姫嶋松原美人屍哀慟作歌四首)","#[原文]人言之 繁比日 玉有者 手尓巻持而 不戀有益雄","#[訓読]人言の繁きこのころ玉ならば手に巻き持ちて恋ひずあらましを","#[仮名],ひとごとの,しげきこのころ,たまならば,てにまきもちて,こひずあらましを","#[左注](右案 年紀并所處<及>娘子屍作<歌>人名已見上也 但<歌>辞相違是非難別 因以累載於茲次焉)","#[校異]","#[事項],挽歌,和銅4年,年紀,作者:河辺宮人,行路死人,大阪,地名","#[訓異]
ひとごとの,[寛]ひとことの,
しげきこのころ,[寛]しけきこのころ,
たまならば,[寛]たまならは,
てにまきもちて[寛],
こひずあらましを,[寛]こひすあらましを,
" "#[番号]03/0437","#[題詞](和銅四年辛亥河邊宮人見姫嶋松原美人屍哀慟作歌四首)","#[原文]妹毛吾毛 清之河乃 河岸之 妹我可悔 心者不持","#[訓読]妹も我れも清みの川の川岸の妹が悔ゆべき心は持たじ","#[仮名],いももあれも,きよみのかはの,かはきしの,いもがくゆべき,こころはもたじ","#[左注]右案 年紀并所處<及>娘子屍作<歌>人名已見上也 但<歌>辞相違是非難別 因以累載於茲次焉","#[校異]乃 -> 及 [西(訂正)] / <> -> 歌 [西(右書)] 謌 [紀][温] / 歌 [西] 謌","#[事項],挽歌,和銅4年,年紀,作者:河辺宮人,行路死人,大阪,飛鳥川,地名","#[訓異]
いももあれも,[寛]いももわれも,
きよみのかはの[寛],
かはきしの[寛],
いもがくゆべき,[寛]いもかくゆへき,
こころはもたじ,[寛]こころはもたし,
" "#[番号]03/0438","#[題詞]神龜五年戊辰<大>宰帥大伴卿思戀故人歌三首","#[原文]愛 人之纒而師 敷細之 吾手枕乎 纒人将有哉","#[訓読]愛しき人のまきてし敷栲の我が手枕をまく人あらめや","#[仮名],うつくしき,ひとのまきてし,しきたへの,わがたまくらを,まくひとあらめや","#[左注]右一首別去而經數旬作歌","#[校異]太 -> 大 [類][古][紀] / 歌 [西] 謌","#[事項],挽歌,作者:大伴旅人,亡妻挽歌,神龜5年,年紀","#[訓異]
うつくしき[寛],
ひとのまきてし[寛],
しきたへの[寛],
わがたまくらを,[寛]わかたまくらを,
まくひとあらめや[寛],
" "#[番号]03/0439","#[題詞](神龜五年戊辰大宰帥<大>伴卿思戀故人歌三首)","#[原文]應還 時者成来 京師尓而 誰手本乎可 吾将枕","#[訓読]帰るべく時はなりけり都にて誰が手本をか我が枕かむ","#[仮名],かへるべく,ときはなりけり,みやこにて,たがたもとをか,わがまくらかむ","#[左注](右二首臨近向京之時作歌)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:大伴旅人,亡妻挽歌,神龜5年,年紀","#[訓異]
かへるべく,[寛]かへるへき,
ときはなりけり,[寛]ときにはなりぬ,
みやこにて[寛],
たがたもとをか,[寛]たかたもとをか,
わがまくらかむ,[寛]わかまくらせむ,
" "#[番号]03/0440","#[題詞](神龜五年戊辰大宰帥<大>伴卿思戀故人歌三首)","#[原文]在<京> 荒有家尓 一宿者 益旅而 可辛苦","#[訓読]都なる荒れたる家にひとり寝ば旅にまさりて苦しかるべし","#[仮名],みやこなる,あれたるいへに,ひとりねば,たびにまさりて,くるしかるべし","#[左注]右二首臨近向京之時作歌","#[校異]京師 -> 京 [類][紀]","#[事項],挽歌,作者:大伴旅人,亡妻挽歌,神龜5年,年紀","#[訓異]
みやこなる[寛],
あれたるいへに[寛],
ひとりねば,[寛]ひとりねは,
たびにまさりて,[寛]たひにまさりて,
くるしかるべし,[寛]くるしかるへし,
" "#[番号]03/0441","#[題詞]神龜六年己巳左大臣長屋王賜死之後倉橋部女王作歌一首","#[原文]大皇之 命恐 大荒城乃 時尓波不有跡 雲隠座","#[訓読]大君の命畏み大殯の時にはあらねど雲隠ります","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,おほあらきの,ときにはあらねど,くもがくります","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 大 [紀] 天","#[事項],挽歌,作者:倉橋部女王,長屋王,神龜6年,年紀","#[訓異]
おほきみの,[寛]すめろきの,
みことかしこみ[寛],
おほあらきの[寛],
ときにはあらねど,[寛]ときにはあらねと,
くもがくります,[寛]くもかくれます,
" "#[番号]03/0442","#[題詞]悲傷膳部王歌一首","#[原文]世間者 空物跡 将有登曽 此照月者 満闕為家流","#[訓読]世間は空しきものとあらむとぞこの照る月は満ち欠けしける","#[仮名],よのなかは,むなしきものと,あらむとぞ,このてるつきは,みちかけしける","#[左注]右一首作者未詳","#[校異]","#[事項],挽歌,膳部王,無常","#[訓異]
よのなかは[寛],
むなしきものと[寛],
あらむとぞ,[寛]あらむとそ,
このてるつきは[寛],
みちかけしける[寛],
" "#[番号]03/0443","#[題詞]天平元年己巳攝津國班田史生丈部龍麻呂自經死之時判官大伴宿祢三中作歌一首[并短歌]","#[原文]天雲之 向伏國 武士登 所云人者 皇祖 神之御門尓 外重尓 立候 内重尓 仕奉 玉葛 弥遠長 祖名文 継徃物与 母父尓 妻尓子等尓 語而 立西日従 帶乳根乃 母命者 齋忌戸乎 前坐置而 一手者 木綿取持 一手者 和細布奉 <平> 間幸座与 天地乃 神祇乞祷 何在 歳月日香 茵花 香君之 牛留鳥 名津匝来与 立居而 待監人者 王之 命恐 押光 難波國尓 荒玉之 年經左右二 白栲 衣不干 朝夕 在鶴公者 何方尓 念座可 欝蝉乃 惜此世乎 露霜 置而徃監 時尓不在之天","#[訓読]天雲の 向伏す国の ますらをと 言はれし人は 天皇の 神の御門に 外の重に 立ち侍ひ 内の重に 仕へ奉りて 玉葛 いや遠長く 祖の名も 継ぎ行くものと 母父に 妻に子どもに 語らひて 立ちにし日より たらちねの 母の命は 斎瓮を 前に据ゑ置きて 片手には 木綿取り持ち 片手には 和栲奉り 平けく ま幸くいませと 天地の 神を祈ひ祷み いかにあらむ 年月日にか つつじ花 にほへる君が にほ鳥の なづさひ来むと 立ちて居て 待ちけむ人は 大君の 命畏み おしてる 難波の国に あらたまの 年経るまでに 白栲の 衣も干さず 朝夕に ありつる君は いかさまに 思ひませか うつせみの 惜しきこの世を 露霜の 置きて去にけむ 時にあらずして","#[仮名],あまくもの,むかぶすくにの,ますらをと,いはれしひとは,すめろきの,かみのみかどに,とのへに,たちさもらひ,うちのへに,つかへまつりて,たまかづら,いやとほながく,おやのなも,つぎゆくものと,おもちちに,つまにこどもに,かたらひて,たちにしひより,たらちねの,ははのみことは,いはひへを,まへにすゑおきて,かたてには,ゆふとりもち,かたてには,にきたへまつり,たひらけく,まさきくいませと,あめつちの,かみをこひのみ,いかにあらむ,としつきひにか,つつじはな,にほへるきみが,にほとりの,なづさひこむと,たちてゐて,まちけむひとは,おほきみの,みことかしこみ,おしてる,なにはのくにに,あらたまの,としふるまでに,しろたへの,ころももほさず,あさよひに,ありつるきみは,いかさまに,おもひいませか,うつせみの,をしきこのよを,つゆしもの,おきていにけむ,ときにあらずして","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 / 乎 -> 平 [紀]","#[事項],挽歌,作者:大伴三中,丈部龍麻呂,枕詞,追悼,大阪,地名,天平1年,年紀","#[訓異]
あまくもの[寛],
むかぶすくにの,[寛]むかふすくにの,
ますらをと,[寛]もののふと,
いはれしひとは[寛],
すめろきの[寛],
かみのみかどに,[寛]かみのみかとに,
とのへに,[寛]とはに,
たちさもらひ,[寛]たちまち,
うちのへに,[寛]うちはに,
つかへまつりて,[寛]つかへ,
たまかづら,[寛]たまかつら,
いやとほながく,[寛]いやとほなかく,
おやのなも[寛],
つぎゆくものと,[寛]つきゆくものと,
おもちちに,[寛]ははちちに,
つまにこどもに,[寛]つまにこともに,
かたらひて[寛],
たちにしひより[寛],
たらちねの[寛],
ははのみことは[寛],
いはひへを[寛],
まへにすゑおきて[寛],
かたてには,[寛]ひとてには,
ゆふとりもち,[寛]ゆふとりもちて,
かたてには,[寛]ひとてには,
にきたへまつり,[寛]やまとほそぬのまつろふを,
たひらけく,
まさきくいませと,[寛]まさきくませと,
あめつちの[寛],
かみをこひのみ,[寛]かみにこひのみ,
いかにあらむ,[寛]いかならむ,
としつきひにか,[寛]としのつきひか,
つつじはな,[寛]つつしはな,
にほへるきみが,[寛]にほへるきみか,
にほとりの,[寛]ひたあみの,
なづさひこむと,[寛]なつさひこむと,
たちてゐて[寛],
まちけむひとは[寛],
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
おしてる,[寛]おしてるや,
なにはのくにに[寛],
あらたまの[寛],
としふるまでに,[寛]としふるまてに,
しろたへの[寛],
ころももほさず,[寛]ころもかはかす,
あさよひに,[寛]あさゆふに,
ありつるきみは[寛],
いかさまに[寛],
おもひいませか,[寛]おもひましてか,
うつせみの[寛],
をしきこのよを,[寛]おしきこのよを,
つゆしもの[寛],
おきていにけむ,[寛]おきてゆきけむ,
ときにあらずして,[寛]ときにあらすして,
" "#[番号]03/0444","#[題詞](天平元年己巳攝津國班田史生丈部龍麻呂自經死之時判官大伴宿祢三中作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]昨日社 公者在然 不思尓 濱松之<於> 雲棚引","#[訓読]昨日こそ君はありしか思はぬに浜松の上に雲にたなびく","#[仮名],きのふこそ,きみはありしか,おもはぬに,はままつのうへに,くもにたなびく","#[左注]","#[校異]上於 -> 於 [類][古][紀]","#[事項],挽歌,作者:大伴三中,丈部龍麻呂,大阪,地名,天平1年,年紀","#[訓異]
きのふこそ[寛],
きみはありしか[寛],
おもはぬに,[寛]おもはすに,
はままつのうへに[寛],
くもにたなびく,[寛]くもとたなひく,
" "#[番号]03/0445","#[題詞]((天平元年己巳攝津國班田史生丈部龍麻呂自經死之時判官大伴宿祢三中作歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]何時然跡 待牟妹尓 玉梓乃 事太尓不告 徃公鴨","#[訓読]いつしかと待つらむ妹に玉梓の言だに告げず去にし君かも","#[仮名],いつしかと,まつらむいもに,たまづさの,ことだにつげず,いにしきみかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:大伴三中,丈部龍麻呂,大阪,地名,枕詞,天平1年,年紀","#[訓異]
いつしかと[寛],
まつらむいもに[寛],
たまづさの,[寛]たまつさの,
ことだにつげず,[寛]ことたにつけす,
いにしきみかも,[寛]いぬるきみかも,
" "#[番号]03/0446","#[題詞]天平二年庚午冬十二月大宰帥<大>伴卿向京上道之時作歌五首","#[原文]吾妹子之 見師鞆浦之 天木香樹者 常世有跡 見之人曽奈吉","#[訓読]我妹子が見し鞆の浦のむろの木は常世にあれど見し人ぞなき","#[仮名],わぎもこが,みしとものうらの,むろのきは,とこよにあれど,みしひとぞなき","#[左注](右三首過鞆浦日作歌)","#[校異]太 -> 大 [類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:大伴旅人,亡妻挽歌,岡山,地名,天平2年12月,年紀","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
みしとものうらの[寛],
むろのきは[寛],
とこよにあれど,[寛]とこよにあれと,
みしひとぞなき,[寛]みしひとそなき,
" "#[番号]03/0447","#[題詞](天平二年庚午冬十二月大宰帥<大>伴卿向京上道之時作歌五首)","#[原文]鞆浦之 礒之室木 将見毎 相見之妹者 将所忘八方","#[訓読]鞆の浦の礒のむろの木見むごとに相見し妹は忘らえめやも","#[仮名],とものうらの,いそのむろのき,みむごとに,あひみしいもは,わすらえめやも","#[左注](右三首過鞆浦日作歌)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:大伴旅人,亡妻挽歌,岡山,地名,天平2年12月,年紀","#[訓異]
とものうらの[寛],
いそのむろのき[寛],
みむごとに,[寛]みむことに,
あひみしいもは[寛],
わすらえめやも,[寛]わすられぬやも,
" "#[番号]03/0448","#[題詞](天平二年庚午冬十二月大宰帥<大>伴卿向京上道之時作歌五首)","#[原文]礒上丹 根蔓室木 見之人乎 何在登問者 語将告可","#[訓読]礒の上に根延ふむろの木見し人をいづらと問はば語り告げむか","#[仮名],いそのうへに,ねばふむろのき,みしひとを,いづらととはば,かたりつげむか","#[左注]右三首過鞆浦日作歌","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],挽歌,作者:大伴旅人,亡妻挽歌,岡山,地名,植物,天平2年12月,年紀","#[訓異]
いそのうへに[寛],
ねばふむろのき,[寛]ねはふむろのき,
みしひとを[寛],
いづらととはば,[寛]いかなりととはは,
かたりつげむか,[寛]かたりつけむか,
" "#[番号]03/0449","#[題詞](天平二年庚午冬十二月大宰帥<大>伴卿向京上道之時作歌五首)","#[原文]与妹来之 敏馬能埼乎 還左尓 獨<之>見者 涕具末之毛","#[訓読]妹と来し敏馬の崎を帰るさにひとりし見れば涙ぐましも","#[仮名],いもとこし,みぬめのさきを,かへるさに,ひとりしみれば,なみたぐましも","#[左注](右二首過敏馬埼日作歌)","#[校異]而 -> 之 [古]","#[事項],挽歌,作者:大伴旅人,亡妻挽歌,兵庫,地名,天平2年12月,年紀","#[訓異]
いもとこし[寛],
みぬめのさきを[寛],
かへるさに[寛],
ひとりしみれば,[寛]ひとりしてみれは,
なみたぐましも,[寛]なみたくましも,
" "#[番号]03/0450","#[題詞](天平二年庚午冬十二月大宰帥<大>伴卿向京上道之時作歌五首)","#[原文]去左尓波 二吾見之 此埼乎 獨過者 情悲<喪> [一云 見毛左可受伎濃]","#[訓読]行くさにはふたり我が見しこの崎をひとり過ぐれば心悲しも [一云 見も放かず来ぬ]","#[仮名],ゆくさには,ふたりわがみし,このさきを,ひとりすぐれば,こころかなしも,[みもさかずきぬ]","#[左注]右二首過敏馬埼日作歌","#[校異]哀 -> 喪 [西(貼紙訂正)][古][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:大伴旅人,亡妻挽歌,兵庫,地名,天平2年12月,年紀","#[訓異]
ゆくさには[寛],
ふたりわがみし,[寛]ふたりわかみし,
このさきを[寛],
ひとりすぐれば,[寛]ひとりすくれは,
こころかなしも[寛],
[みもさかずきぬ]
" "#[番号]03/0451","#[題詞]還入故郷家即作歌三首","#[原文]人毛奈吉 空家者 草枕 旅尓益而 辛苦有家里","#[訓読]人もなき空しき家は草枕旅にまさりて苦しかりけり","#[仮名],ひともなき,むなしきいへは,くさまくら,たびにまさりて,くるしかりけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],挽歌,作者:大伴旅人,亡妻挽歌,奈良,地名,枕詞,天平2年12月,年紀","#[訓異]
ひともなき[寛],
むなしきいへは[寛],
くさまくら[寛],
たびにまさりて,[寛]たひにまさりて,
くるしかりけり[寛],
" "#[番号]03/0452","#[題詞](還入故郷家即作歌三首)","#[原文]与妹為而 二作之 吾山齋者 木高繁 成家留鴨","#[訓読]妹としてふたり作りし我が山斎は木高く茂くなりにけるかも","#[仮名],いもとして,ふたりつくりし,わがしまは,こだかくしげく,なりにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:大伴旅人,亡妻挽歌,奈良,地名,天平2年12月,年紀","#[訓異]
いもとして[寛],
ふたりつくりし[寛],
わがしまは,[寛]わかやまは,
こだかくしげく,[寛]こたかくしけく,
なりにけるかも[寛],
" "#[番号]03/0453","#[題詞](還入故郷家即作歌三首)","#[原文]吾妹子之 殖之梅樹 毎見 情咽都追 涕之流","#[訓読]我妹子が植ゑし梅の木見るごとに心咽せつつ涙し流る","#[仮名],わぎもこが,うゑしうめのき,みるごとに,こころむせつつ,なみたしながる","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:大伴旅人,亡妻挽歌,奈良,地名,植物,天平2年12月,年紀","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
うゑしうめのき[寛],
みるごとに,[寛]みることに,
こころむせつつ[寛],
なみたしながる[寛],
" "#[番号]03/0454","#[題詞]天平三年辛未秋七月大納言大伴卿薨之時歌六首","#[原文]愛八師 榮之君乃 伊座勢<婆> 昨日毛今日毛 吾乎召<麻>之乎","#[訓読]はしきやし栄えし君のいましせば昨日も今日も我を召さましを","#[仮名],はしきやし,さかえしきみの,いましせば,きのふもけふも,わをめさましを","#[左注](右五首資人<余>明軍不勝犬馬之慕心中感緒作歌)","#[校異]歌 [西] 謌 / 波 -> 婆 [類] / 座 -> 麻 [類][古][矢]","#[事項],挽歌,作者:余明軍,大伴旅人,奈良,地名,天平3年7月,年紀","#[訓異]
はしきやし,[寛]よしえやし,
さかえしきみの[寛],
いましせば,[寛]いましせは,
きのふもけふも[寛],
わをめさましを,[寛]われをめさましを,
" "#[番号]03/0455","#[題詞](天平三年辛未秋七月大納言大伴卿薨之時歌六首)","#[原文]如是耳 有家類物乎 芽子花 咲而有哉跡 問之君波母","#[訓読]かくのみにありけるものを萩の花咲きてありやと問ひし君はも","#[仮名],かくのみに,ありけるものを,はぎのはな,さきてありやと,とひしきみはも","#[左注](右五首資人<余>明軍不勝犬馬之慕心中感緒作歌)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:余明軍,大伴旅人,奈良,地名,植物,追悼,天平3年7月,年紀","#[訓異]
かくのみに,[寛]かくしのみ,
ありけるものを[寛],
はぎのはな,[寛]はきのはな,
さきてありやと[寛],
とひしきみはも[寛],
" "#[番号]03/0456","#[題詞](天平三年辛未秋七月大納言大伴卿薨之時歌六首)","#[原文]君尓戀 痛毛為便奈美 蘆鶴之 哭耳所泣 朝夕四天","#[訓読]君に恋ひいたもすべなみ葦鶴の哭のみし泣かゆ朝夕にして","#[仮名],きみにこひ,いたもすべなみ,あしたづの,ねのみしなかゆ,あさよひにして","#[左注](右五首資人<余>明軍不勝犬馬之慕心中感緒作歌)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:余明軍,大伴旅人,奈良,地名,枕詞,動物,天平3年7月,年紀","#[訓異]
きみにこひ[寛],
いたもすべなみ,[寛]いともすへなみ,
あしたづの,[寛]あしたつの,
ねのみしなかゆ,[寛]ねのみなかるる,
あさよひにして[寛],
" "#[番号]03/0457","#[題詞](天平三年辛未秋七月大納言大伴卿薨之時歌六首)","#[原文]遠長 将仕物常 念有之 君師不座者 心神毛奈思","#[訓読]遠長く仕へむものと思へりし君しまさねば心どもなし","#[仮名],とほながく,つかへむものと,おもへりし,きみしまさねば,こころどもなし","#[左注](右五首資人<余>明軍不勝犬馬之慕心中感緒作歌)","#[校異]君師 [類][古][紀] 君","#[事項],挽歌,作者:余明軍,大伴旅人,奈良,地名,天平3年7月,年紀","#[訓異]
とほながく,[寛]とほなかく,
つかへむものと[寛],
おもへりし[寛],
きみしまさねば,[寛]きみしまさねは,
こころどもなし,[寛]たましひもなし,
" "#[番号]03/0458","#[題詞](天平三年辛未秋七月大納言大伴卿薨之時歌六首)","#[原文]若子乃 匍匐多毛登保里 朝夕 哭耳曽吾泣 君無二四天","#[訓読]みどり子の匍ひたもとほり朝夕に哭のみぞ我が泣く君なしにして","#[仮名],みどりこの,はひたもとほり,あさよひに,ねのみぞわがなく,きみなしにして","#[左注]右五首資人<余>明軍不勝犬馬之慕心中感緒作歌","#[校異]金 -> 余 [古][紀] / 歌 [西] 謌","#[事項],挽歌,作者:余明軍,大伴旅人,奈良,地名,天平3年7月,年紀","#[訓異]
みどりこの,[寛]みとりこの,
はひたもとほり[寛],
あさよひに[寛],
ねのみぞわがなく,[寛]ねにそわかなく,
きみなしにして[寛],
" "#[番号]03/0459","#[題詞](天平三年辛未秋七月大納言大伴卿薨之時歌六首)","#[原文]見礼杼不飽 伊座之君我 黄葉乃 移伊去者 悲喪有香","#[訓読]見れど飽かずいましし君が黄葉のうつりい行けば悲しくもあるか","#[仮名],みれどあかず,いまししきみが,もみちばの,うつりいゆけば,かなしくもあるか","#[左注]右一首勅内礼正縣犬養宿祢人上使檢護卿病 而醫藥無驗逝水不留 因斯悲慟即作此歌","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:余明軍,大伴旅人,奈良,地名,天平3年7月,年紀","#[訓異]
みれどあかず,[寛]みれとあかぬ,
いまししきみが,[寛]いませしきみか,
もみちばの,[寛]もみちはの,
うつりいゆけば,[寛]うつりいゆけは,
かなしくもあるか[寛],
" "#[番号]03/0460","#[題詞]七年乙亥大伴坂上郎女悲嘆尼理願死去作歌一首[并短歌]","#[原文]栲角乃 新羅國従 人事乎 吉跡所聞而 問放流 親族兄弟 無國尓 渡来座而 大皇之 敷座國尓 内日指 京思美弥尓 里家者 左波尓雖在 何方尓 念鷄目鴨 都礼毛奈吉 佐保乃山邊<尓> 哭兒成 慕来座而 布細乃 宅乎毛造 荒玉乃 年緒長久 住乍 座之物乎 生者 死云事尓 不免 物尓之有者 憑有之 人乃盡 草<枕> 客有間尓 佐保河乎 朝河渡 春日野乎 背向尓見乍 足氷木乃 山邊乎指而 晩闇跡 隠益去礼 将言為便 将為須敝不知尓 徘徊 直獨而 白細之 衣袖不干 嘆乍 吾泣涙 有間山 雲居軽引 雨尓零寸八","#[訓読]栲づのの 新羅の国ゆ 人言を よしと聞かして 問ひ放くる 親族兄弟 なき国に 渡り来まして 大君の 敷きます国に うち日さす 都しみみに 里家は さはにあれども いかさまに 思ひけめかも つれもなき 佐保の山辺に 泣く子なす 慕ひ来まして 敷栲の 家をも作り あらたまの 年の緒長く 住まひつつ いまししものを 生ける者 死ぬといふことに 免れぬ ものにしあれば 頼めりし 人のことごと 草枕 旅なる間に 佐保川を 朝川渡り 春日野を そがひに見つつ あしひきの 山辺をさして 夕闇と 隠りましぬれ 言はむすべ 為むすべ知らに たもとほり ただひとりして 白栲の 衣袖干さず 嘆きつつ 我が泣く涙 有間山 雲居たなびき 雨に降りきや","#[仮名],たくづのの,しらきのくにゆ,ひとごとを,よしときかして,とひさくる,うがらはらから,なきくにに,わたりきまして,おほきみの,しきますくにに,うちひさす,みやこしみみに,さといへは,さはにあれども,いかさまに,おもひけめかも,つれもなき,さほのやまへに,なくこなす,したひきまして,しきたへの,いへをもつくり,あらたまの,としのをながく,すまひつつ,いまししものを,いけるもの,しぬといふことに,まぬかれぬ,ものにしあれば,たのめりし,ひとのことごと,くさまくら,たびなるほとに,さほがはを,あさかはわたり,かすがのを,そがひにみつつ,あしひきの,やまへをさして,ゆふやみと,かくりましぬれ,いはむすべ,せむすべしらに,たもとほり,ただひとりして,しろたへの,ころもでほさず,なげきつつ,わがなくなみた,ありまやま,くもゐたなびき,あめにふりきや","#[左注](右新羅國尼名曰理願也 遠感王徳歸化聖朝 於時寄住大納言大将軍大伴卿家 既逕數紀焉 惟以天平七年乙亥忽沈運病既<趣>泉界 於是大家石川命婦 依餌藥事 徃有間温泉而不會此喪 但郎女獨留葬送屍柩既訖 仍作此歌贈入温泉)","#[校異]歌 [西] 謌 別筆 歌 / <> -> 尓 [西(右書)][類][紀] / <> -> 枕 [西(右書)][類][紀]","#[事項],挽歌,作者:坂上郎女,理願,地名,奈良,枕詞,天平7年,年紀","#[訓異]
たくづのの,[寛]たくつのの,
しらきのくにゆ,[寛]しらきのくにに,
ひとごとを,[寛]ひとことを,
よしときかして[寛],
とひさくる[寛],
うがらはらから,[寛]やからはらから,
なきくにに[寛],
わたりきまして[寛],
おほきみの,[寛]すめろきの,
しきますくにに[寛],
うちひさす[寛],
みやこしみみに[寛],
さといへは[寛],
さはにあれども,[寛]さはにあれとも,
いかさまに[寛],
おもひけめかも[寛],
つれもなき[寛],
さほのやまへに[寛],
なくこなす[寛],
したひきまして[寛],
しきたへの[寛],
いへをもつくり[寛],
あらたまの[寛],
としのをながく,[寛]としのをなかく,
すまひつつ[寛],
いまししものを[寛],
いけるもの,[寛]いけるひと,
しぬといふことに[寛],
まぬかれぬ,[寛]まぬかれめ,
ものにしあれば,[寛]ものにしあれは,
たのめりし[寛],
ひとのことごと,[寛]ひとのことこと,
くさまくら[寛],
たびなるほとに,[寛]たひにあるまに,
さほがはを,[寛]さほかはを,
あさかはわたり[寛],
かすがのを,[寛]かすかのを,
そがひにみつつ,[寛]そかひにみつつ,
あしひきの[寛],
やまへをさして[寛],
ゆふやみと[寛],
かくりましぬれ,[寛]かくれましぬれ,
いはむすべ,[寛]いはむすへ,
せむすべしらに,[寛]せむすへしらに,
たもとほり,[寛]たちとまり,
ただひとりして,[寛]たたひとりして,
しろたへの[寛],
ころもでほさず,[寛]ころもてほさす,
なげきつつ,[寛]なけきつつ,
わがなくなみた,[寛]わかなくなみた,
ありまやま[寛],
くもゐたなびき,[寛]くもゐたなひき,
あめにふりきや[寛],
" "#[番号]03/0461","#[題詞](七年乙亥大伴坂上郎女悲嘆尼理願死去作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]留不得 壽尓之在者 敷細乃 家従者出而 雲隠去寸","#[訓読]留めえぬ命にしあれば敷栲の家ゆは出でて雲隠りにき","#[仮名],とどめえぬ,いのちにしあれば,しきたへの,いへゆはいでて,くもがくりにき","#[左注]右新羅國尼名曰理願也 遠感王徳歸化聖 於時寄住大納言大将軍大伴卿家既 逕數紀焉 惟以天平七年乙亥忽沈運病既<趣>泉界 於是大家石川命婦 依餌藥事 徃有間温泉而不會此喪 但郎女獨留葬送屍柩既訖 仍作此歌贈入温泉","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 趣 [西(右書)][類][温] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:坂上郎女,理願,枕詞,天平7年,年紀","#[訓異]
とどめえぬ,[寛]ととめえぬ,
いのちにしあれば,[寛]いのちにしあれは,
しきたへの[寛],
いへゆはいでて,[寛]いへをはいてて,
くもがくりにき,[寛]くもかくれにき,
" "#[番号]03/0462","#[題詞]十一年己卯夏六月大伴宿祢家持悲傷亡妾作歌一首","#[原文]従今者 秋風寒 将吹焉 如何獨 長夜乎将宿","#[訓読]今よりは秋風寒く吹きなむをいかにかひとり長き夜を寝む","#[仮名],いまよりは,あきかぜさむく,ふきなむを,いかにかひとり,ながきよをねむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 哥 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,妾,亡妻挽歌,天平11年6月,年紀","#[訓異]
いまよりは[寛],
あきかぜさむく,[寛]あきかせさむく,
ふきなむを[寛],
いかにかひとり,[寛]いかてかひとり,
ながきよをねむ,[寛]なかきよをねむ,
" "#[番号]03/0463","#[題詞](十一年己卯夏六月大伴宿祢家持悲傷亡妾作歌一首)弟大伴宿祢書持即和歌一首","#[原文]長夜乎 獨哉将宿跡 君之云者 過去人之 所念久尓","#[訓読]長き夜をひとりや寝むと君が言へば過ぎにし人の思ほゆらくに","#[仮名],ながきよを,ひとりやねむと,きみがいへば,すぎにしひとの,おもほゆらくに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:大伴書持,大伴家持,亡妻挽歌,天平11年6月,年紀","#[訓異]
ながきよを,[寛]なかきよを,
ひとりやねむと[寛],
きみがいへば,[寛]きみかいへは,
すぎにしひとの,[寛]すきにしひとの,
おもほゆらくに[寛],
" "#[番号]03/0464","#[題詞]又家持見砌上瞿麦花作歌一首","#[原文]秋去者 見乍思跡 妹之殖之 屋前乃石竹 開家流香聞","#[訓読]秋さらば見つつ偲へと妹が植ゑしやどのなでしこ咲きにけるかも","#[仮名],あきさらば,みつつしのへと,いもがうゑし,やどのなでしこ,さきにけるかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,亡妻挽歌,植物,天平11年6月,年紀","#[訓異]
あきさらば,[寛]あきさらは,
みつつしのへと,[寛]みつつおもへと,
いもがうゑし,[寛]いもかうゑし,
やどのなでしこ,[寛]やとのなてしこ,
さきにけるかも[寛],
" "#[番号]03/0465","#[題詞]移朔而後悲嘆秋風家持作歌一首","#[原文]虚蝉之 代者無常跡 知物乎 秋風寒 思努妣都流可聞","#[訓読]うつせみの世は常なしと知るものを秋風寒み偲ひつるかも","#[仮名],うつせみの,よはつねなしと,しるものを,あきかぜさむみ,しのひつるかも","#[左注]","#[校異]妣 [京] 比 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,亡妻挽歌,枕詞,天平11年6月,年紀","#[訓異]
うつせみの[寛],
よはつねなしと[寛],
しるものを[寛],
あきかぜさむみ,[寛]あきかせさむく,
しのひつるかも[寛],
" "#[番号]03/0466","#[題詞]又家持作歌一首[并短歌]","#[原文]吾屋前尓 花曽咲有 其乎見杼 情毛不行 愛八師 妹之有世婆 水鴨成 二人雙居 手折而毛 令見麻思物乎 打蝉乃 借有身在者 <露>霜乃 消去之如久 足日木乃 山道乎指而 入日成 隠去可婆 曽許念尓 胸己所痛 言毛不得 名付毛不知 跡無 世間尓有者 将為須辨毛奈思","#[訓読]我がやどに 花ぞ咲きたる そを見れど 心もゆかず はしきやし 妹がありせば 水鴨なす ふたり並び居 手折りても 見せましものを うつせみの 借れる身なれば 露霜の 消ぬるがごとく あしひきの 山道をさして 入日なす 隠りにしかば そこ思ふに 胸こそ痛き 言ひもえず 名づけも知らず 跡もなき 世間にあれば 為むすべもなし","#[仮名],わがやどに,はなぞさきたる,そをみれど,こころもゆかず,はしきやし,いもがありせば,みかもなす,ふたりならびゐ,たをりても,みせましものを,うつせみの,かれるみなれば,つゆしもの,けぬるがごとく,あしひきの,やまぢをさして,いりひなす,かくりにしかば,そこもふに,むねこそいたき,いひもえず,なづけもしらず,あともなき,よのなかにあれば,せむすべもなし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 / 霑 -> 露 [類]","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,亡妻挽歌,植物,枕詞,無常,天平11年6月,年紀","#[訓異]
わがやどに,[寛]わかやとに,
はなぞさきたる,[寛]はなそさきたる,
そをみれど,[寛]そをみれと,
こころもゆかず,[寛]こころもゆかす,
はしきやし,[寛]よしゑやし,
いもがありせば,[寛]いもかありせは,
みかもなす[寛],
ふたりならびゐ,[寛]ふたりならひゐ,
たをりても[寛],
みせましものを[寛],
うつせみの[寛],
かれるみなれば,[寛]かりのみなれは,
つゆしもの,[寛]とけしもの,
けぬるがごとく,[寛]きえゆくかことく,
あしひきの[寛],
やまぢをさして,[寛]やまちをさして,
いりひなす[寛],
かくりにしかば,[寛]かくれにしかは,
そこもふに,[寛]そこおもひに,
むねこそいたき,[寛]むねこそいため,
いひもえず,[寛]いひもかね,
なづけもしらず,[寛]なつけもしらす,
あともなき[寛],
よのなかにあれば,[寛]よのなかにあれは,
せむすべもなし,[寛]せむすへもなし,
" "#[番号]03/0467","#[題詞](又家持作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]時者霜 何時毛将有乎 情哀 伊去吾妹可 <若>子乎置而","#[訓読]時はしもいつもあらむを心痛くい行く我妹かみどり子を置きて","#[仮名],ときはしも,いつもあらむを,こころいたく,いゆくわぎもか,みどりこをおきて","#[左注]","#[校異]君 -> 若 [類][古]","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,亡妻挽歌,天平11年6月,年紀","#[訓異]
ときはしも[寛],
いつもあらむを[寛],
こころいたく[寛],
いゆくわぎもか,[寛]いゆくわきもか,
みどりこをおきて,[寛]みとりこをおきて,
" "#[番号]03/0468","#[題詞]((又家持作歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]出行 道知末世波 豫 妹乎将留 塞毛置末思乎","#[訓読]出でて行く道知らませばあらかじめ妹を留めむ関も置かましを","#[仮名],いでてゆく,みちしらませば,あらかじめ,いもをとどめむ,せきもおかましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,亡妻挽歌,天平11年6月,年紀","#[訓異]
いでてゆく,[寛]いててゆく,
みちしらませば,[寛]みちしらませは,
あらかじめ,[寛]かねてより,
いもをとどめむ,[寛]いもをととめむ,
せきもおかましを,[寛]
" "#[番号]03/0469","#[題詞]((又家持作歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]妹之見師 屋前尓花咲 時者經去 吾泣涙 未干尓","#[訓読]妹が見しやどに花咲き時は経ぬ我が泣く涙いまだ干なくに","#[仮名],いもがみし,やどにはなさき,ときはへぬ,わがなくなみた,いまだひなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,亡妻挽歌,天平11年6月,年紀","#[訓異]
いもがみし,[寛]いもかみし,
やどにはなさき,[寛]やとにはなさく,
ときはへぬ[寛],
わがなくなみた,[寛]わかなくなみた,
いまだひなくに,[寛]いまたひなくに,
" "#[番号]03/0470","#[題詞]悲緒未息更作歌五首","#[原文]如是耳 有家留物乎 妹毛吾毛 如千歳 憑有来","#[訓読]かくのみにありけるものを妹も我れも千年のごとく頼みたりけり","#[仮名],かくのみに,ありけるものを,いももあれも,ちとせのごとく,たのみたりけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,亡妻挽歌,天平11年6月,年紀","#[訓異]
かくのみに,[寛]かくしのみ,
ありけるものを[寛],
いももあれも,[寛]いももわれも,
ちとせのごとく,[寛]ちとせのことく,
たのみたりけり,[寛]たのみたりける,
" "#[番号]03/0471","#[題詞](悲緒未息更作歌五首)","#[原文]離家 伊麻須吾妹乎 停不得 山隠都礼 情神毛奈思","#[訓読]家離りいます我妹を留めかね山隠しつれ心どもなし","#[仮名],いへざかり,いますわぎもを,とどめかね,やまかくしつれ,こころどもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,亡妻挽歌,天平11年6月,年紀,悲嘆","#[訓異]
いへざかり,[寛]いへさかり,
いますわぎもを,[寛]いますわきもを,
とどめかね,[寛]ととかね,
やまかくしつれ,[寛]やまかくれつれ,
こころどもなし,[寛]たましひもなし,
" "#[番号]03/0472","#[題詞](悲緒未息更作歌五首)","#[原文]世間之 常如此耳跡 可都<知跡> 痛情者 不忍都毛","#[訓読]世間し常かくのみとかつ知れど痛き心は忍びかねつも","#[仮名],よのなかし,つねかくのみと,かつしれど,いたきこころは,しのびかねつも","#[左注]","#[校異]<> -> 知跡 [西(右書)][類][古][紀]","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,亡妻挽歌,天平11年6月,年紀","#[訓異]
よのなかし,[寛]よのなかの,
つねかくのみと[寛],
かつしれど,[寛]かつしれと,
いたきこころは,[寛]いたむこころは,
しのびかねつも,[寛]しのひかねつも,
" "#[番号]03/0473","#[題詞](悲緒未息更作歌五首)","#[原文]佐保山尓 多奈引霞 毎見 妹乎思出 不泣日者無","#[訓読]佐保山にたなびく霞見るごとに妹を思ひ出泣かぬ日はなし","#[仮名],さほやまに,たなびくかすみ,みるごとに,いもをおもひで,なかぬひはなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,亡妻挽歌,奈良,地名,天平11年6月,年紀","#[訓異]
さほやまに[寛],
たなびくかすみ,[寛]たなひくかすみ,
みるごとに,[寛]みることに,
いもをおもひで,[寛]いもをおもひいてて,
なかぬひはなし[寛],
" "#[番号]03/0474","#[題詞](悲緒未息更作歌五首)","#[原文]昔許曽 外尓毛見之加 吾妹子之 奥槨常念者 波之吉佐寳山","#[訓読]昔こそ外にも見しか我妹子が奥つ城と思へばはしき佐保山","#[仮名],むかしこそ,よそにもみしか,わぎもこが,おくつきとおもへば,はしきさほやま","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,亡妻挽歌,奈良,地名,天平11年6月,年紀","#[訓異]
むかしこそ[寛],
よそにもみしか[寛],
わぎもこが,[寛]わきもこか,
おくつきとおもへば,[寛]おくつきとおもへは,
はしきさほやま[寛],
" "#[番号]03/0475","#[題詞]十六年甲申春二月安積皇子薨之時内舎人大伴宿祢家持作歌六首","#[原文]<挂>巻母 綾尓恐之 言巻毛 齋忌志伎可物 吾王 御子乃命 萬代尓 食賜麻思 大日本 久邇乃京者 打靡 春去奴礼婆 山邊尓波 花咲乎為里 河湍尓波 年魚小狭走 弥日異 榮時尓 逆言之 狂言登加聞 白細尓 舎人装束而 和豆香山 御輿立之而 久堅乃 天所知奴礼 展轉 O打雖泣 将為須便毛奈思","#[訓読]かけまくも あやに畏し 言はまくも ゆゆしきかも 我が大君 皇子の命 万代に 見したまはまし 大日本 久迩の都は うち靡く 春さりぬれば 山辺には 花咲きををり 川瀬には 鮎子さ走り いや日異に 栄ゆる時に およづれの たはこととかも 白栲に 舎人よそひて 和束山 御輿立たして ひさかたの 天知らしぬれ 臥いまろび ひづち泣けども 為むすべもなし","#[仮名],かけまくも,あやにかしこし,いはまくも,ゆゆしきかも,わがおほきみ,みこのみこと,よろづよに,めしたまはまし,おほやまと,くにのみやこは,うちなびく,はるさりぬれば,やまへには,はなさきををり,かはせには,あゆこさばしり,いやひけに,さかゆるときに,およづれの,たはこととかも,しろたへに,とねりよそひて,わづかやま,みこしたたして,ひさかたの,あめしらしぬれ,こいまろび,ひづちなけども,せむすべもなし","#[左注](右三首二月三日作歌)","#[校異]歌 [西] 謌 / 桂 -> 挂 [矢(訂正消去)]","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,内舎人,安積皇子,京都,地名,枕詞,天平16年2月3日,年紀","#[訓異]
かけまくも[寛],
あやにかしこし[寛],
いはまくも[寛],
ゆゆしきかも,[寛]いはしきかも,
わがおほきみ,[寛]わかきみの,
みこのみこと,[寛]みこのみことの,
よろづよに,[寛]よろつよに,
めしたまはまし[寛],
おほやまと[寛],
くにのみやこは[寛],
うちなびく,[寛]うちひき,
はるさりぬれば,[寛]はるさりぬれは,
やまへには[寛],
はなさきををり,[寛]はなさきをせり,
かはせには[寛],
あゆこさばしり,[寛]あゆこさはしり,
いやひけに[寛],
さかゆるときに[寛],
およづれの,[寛]さかことの,
たはこととかも,[寛]まかこととかも,
しろたへに[寛],
とねりよそひて[寛],
わづかやま,[寛]わつかやま,
みこしたたして,[寛]みこしたてして,
ひさかたの[寛],
あめしらしぬれ,[寛]あめしられぬれ,
こいまろび,[寛]こひまろひ,
ひづちなけども,[寛]ひつちなけとも,
せむすべもなし,[寛]せむすへもなし,
" "#[番号]03/0476","#[題詞](十六年甲申春二月安積皇子薨之時内舎人大伴宿祢家持作歌六首)反歌","#[原文]吾王 天所知牟登 不思者 於保尓曽見谿流 和豆香蘇麻山","#[訓読]我が大君天知らさむと思はねばおほにぞ見ける和束杣山","#[仮名],わがおほきみ,あめしらさむと,おもはねば,おほにぞみける,わづかそまやま","#[左注](右三首二月三日作歌)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,内舎人,安積皇子,京都,地名,天平16年2月3日,年紀","#[訓異]
わがおほきみ,[寛]わかおほきみ,
あめしらさむと,[寛]あめしられむと,
おもはねば,[寛]おもはねは,
おほにぞみける,[寛]おほにそみける,
わづかそまやま,[寛]わつかそまやま,
" "#[番号]03/0477","#[題詞]((十六年甲申春二月安積皇子薨之時内舎人大伴宿祢家持作歌六首)反歌)","#[原文]足桧木乃 山左倍光 咲花乃 散去如寸 吾王香聞","#[訓読]あしひきの山さへ光り咲く花の散りぬるごとき我が大君かも","#[仮名],あしひきの,やまさへひかり,さくはなの,ちりぬるごとき,わがおほきみかも","#[左注]右三首二月三日作歌","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,内舎人,安積皇子,天平16年2月3日,年紀","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまさへひかり,[寛]やまさへてりて,
さくはなの[寛],
ちりぬるごとき,[寛]ちりゆくことき,
わがおほきみかも,[寛]わかおほきみかも,
" "#[番号]03/0478","#[題詞](十六年甲申春二月安積皇子薨之時内舎人大伴宿祢家持作歌六首)","#[原文]<挂>巻毛 文尓恐之 吾王 皇子之命 物乃負能 八十伴男乎 召集聚 率比賜比 朝猟尓 鹿猪踐<起> 暮猟尓 鶉雉履立 大御馬之 口抑駐 御心乎 見為明米之 活道山 木立之繁尓 咲花毛 移尓家里 世間者 如此耳奈良之 大夫之 心振起 劔刀 腰尓取佩 梓弓 靭取負而 天地与 弥遠長尓 万代尓 如此毛欲得跡 憑有之 皇子乃御門乃 五月蝿成 驟驂舎人者 白栲尓 <服>取著而 常有之 咲比振麻比 弥日異 更經<見>者 悲<呂>可聞","#[訓読]かけまくも あやに畏し 我が大君 皇子の命の もののふの 八十伴の男を 召し集へ 率ひたまひ 朝狩に 鹿猪踏み起し 夕狩に 鶉雉踏み立て 大御馬の 口抑へとめ 御心を 見し明らめし 活道山 木立の茂に 咲く花も うつろひにけり 世間は かくのみならし ますらをの 心振り起し 剣太刀 腰に取り佩き 梓弓 靫取り負ひて 天地と いや遠長に 万代に かくしもがもと 頼めりし 皇子の御門の 五月蝿なす 騒く舎人は 白栲に 衣取り着て 常なりし 笑ひ振舞ひ いや日異に 変らふ見れば 悲しきろかも","#[仮名],かけまくも,あやにかしこし,わがおほきみ,みこのみことの,もののふの,やそとものをを,めしつどへ,あどもひたまひ,あさがりに,ししふみおこし,ゆふがりに,とりふみたて,おほみまの,くちおさへとめ,みこころを,めしあきらめし,いくぢやま,こだちのしげに,さくはなも,うつろひにけり,よのなかは,かくのみならし,ますらをの,こころふりおこし,つるぎたち,こしにとりはき,あづさゆみ,ゆきとりおひて,あめつちと,いやとほながに,よろづよに,かくしもがもと,たのめりし,みこのみかどの,さばへなす,さわくとねりは,しろたへに,ころもとりきて,つねなりし,ゑまひふるまひ,いやひけに,かはらふみれば,かなしきろかも","#[左注](右三首三月廿四日作歌)","#[校異]桂 -> 挂 [矢] / 越 -> 起 [類][紀][温] / 靭 [細](塙) 靫 / <> -> 服 [西(右書)][類][紀][温] / <> -> 者 [西(右書)][類][紀][温] / 召 -> 呂 [類]","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,内舎人,安積皇子,枕詞,天平16年3月24日,年紀","#[訓異]
かけまくも[寛],
あやにかしこし[寛],
わがおほきみ,[寛]わかきの,
みこのみことの,[寛]みこのみこと,
もののふの[寛],
やそとものをを[寛],
めしつどへ,[寛]めしあつめ,
あどもひたまひ,[寛]いさよひたまひ,
あさがりに,[寛]あさかりに,
ししふみおこし[寛],
ゆふがりに,[寛]ゆふかりに,
とりふみたて,[寛]とりふみたてて,
おほみまの,[寛]おほみうまの,
くちおさへとめ[寛],
みこころを[寛],
めしあきらめし,[寛]みせあきらめし,
いくぢやま,[寛]いくめちやま,
こだちのしげに,[寛]こたちのししに,
さくはなも[寛],
うつろひにけり[寛],
よのなかは[寛],
かくのみならし[寛],
ますらをの[寛],
こころふりおこし[寛],
つるぎたち,[寛]つるきたち,
こしにとりはき,[寛]こしにとはき,
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
ゆきとりおひて[寛],
あめつちと,[寛]あつち,
いやとほながに,[寛]いやとなかに,
よろづよに,[寛]よろつよに,
かくしもがもと,[寛]かくしもかなと,
たのめりし[寛],
みこのみかどの,[寛]みこのみかとの,
さばへなす,[寛]さはへなす,
さわくとねりは[寛],
しろたへに[寛],
ころもとりきて[寛],
つねなりし[寛],
ゑまひふるまひ[寛],
いやひけに[寛],
かはらふみれば,[寛]かはらふみれは,
かなしきろかも,[寛]かなめしかも,
" "#[番号]03/0479","#[題詞](十六年甲申春二月安積皇子薨之時内舎人大伴宿祢家持作歌六首)反歌","#[原文]波之吉可聞 皇子之命乃 安里我欲比 見之活道乃 路波荒尓鷄里","#[訓読]はしきかも皇子の命のあり通ひ見しし活道の道は荒れにけり","#[仮名],はしきかも,みこのみことの,ありがよひ,めししいくぢの,みちはあれにけり","#[左注](右三首三月廿四日作歌)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,内舎人,安積皇子,天平16年3月24日,年紀","#[訓異]
はしきかも[寛],
みこのみことの[寛],
ありがよひ,[寛]ありかよひ,
めししいくぢの,[寛]みしいくめちの,
みちはあれにけり[寛],
" "#[番号]03/0480","#[題詞]((十六年甲申春二月安積皇子薨之時内舎人大伴宿祢家持作歌六首)反歌)","#[原文]大伴之 名負靭帶而 萬代尓 憑之心 何所可将寄","#[訓読]大伴の名に負ふ靫帯びて万代に頼みし心いづくか寄せむ","#[仮名],おほともの,なにおふゆきおびて,よろづよに,たのみしこころ,いづくかよせむ","#[左注]右三首三月廿四日作歌","#[校異]靭 [類](塙) 靫 / 歌 [西] 謌","#[事項],挽歌,作者:大伴家持,内舎人,安積皇子,天平16年3月24日,年紀","#[訓異]
おほともの[寛],
なにおふゆきおびて,[寛]なにおふゆきおひて,
よろづよに,[寛]よろつよに,
たのみしこころ[寛],
いづくかよせむ,[寛]いつくにかよせむ,
" "#[番号]03/0481","#[題詞]悲傷死妻高橋朝臣作歌一首[并短歌]","#[原文]白細之 袖指可倍弖 靡寐 吾黒髪乃 真白髪尓 成極 新世尓 共将有跡 玉緒乃 不絶射妹跡 結而石 事者不果 思有之 心者不遂 白妙之 手本矣別 丹杵火尓之 家従裳出而 緑兒乃 哭乎毛置而 朝霧 髣髴為乍 山代乃 相樂山乃 山際 徃過奴礼婆 将云為便 将為便不知 吾妹子跡 左宿之妻屋尓 朝庭 出立偲 夕尓波 入居嘆<會> 腋<挾> 兒乃泣<毎> 雄自毛能 負見抱見 朝鳥之 啼耳哭管 雖戀 効矣無跡 辞不問 物尓波在跡 吾妹子之 入尓之山乎 因鹿跡叙念","#[訓読]白栲の 袖さし交へて 靡き寝し 我が黒髪の ま白髪に なりなむ極み 新世に ともにあらむと 玉の緒の 絶えじい妹と 結びてし ことは果たさず 思へりし 心は遂げず 白栲の 手本を別れ にきびにし 家ゆも出でて みどり子の 泣くをも置きて 朝霧の おほになりつつ 山背の 相楽山の 山の際に 行き過ぎぬれば 言はむすべ 為むすべ知らに 我妹子と さ寝し妻屋に 朝には 出で立ち偲ひ 夕には 入り居嘆かひ 脇ばさむ 子の泣くごとに 男じもの 負ひみ抱きみ 朝鳥の 哭のみ泣きつつ 恋ふれども 験をなみと 言とはぬ ものにはあれど 我妹子が 入りにし山を よすかとぞ思ふ","#[仮名],しろたへの,そでさしかへて,なびきねし,わがくろかみの,ましらかに,なりなむきはみ,あらたよに,ともにあらむと,たまのをの,たえじいいもと,むすびてし,ことははたさず,おもへりし,こころはとげず,しろたへの,たもとをわかれ,にきびにし,いへゆもいでて,みどりこの,なくをもおきて,あさぎりの,おほになりつつ,やましろの,さがらかやまの,やまのまに,ゆきすぎぬれば,いはむすべ,せむすべしらに,わぎもこと,さねしつまやに,あしたには,いでたちしのひ,ゆふへには,いりゐなげかひ,わきばさむ,このなくごとに,をとこじもの,おひみむだきみ,あさとりの,ねのみなきつつ,こふれども,しるしをなみと,こととはぬ,ものにはあれど,わぎもこが,いりにしやまを,よすかとぞおもふ","#[左注](右三首七月廿日高橋朝臣作歌也 名字未審 但云奉膳之男子焉)","#[校異]舎 -> 會 [紀] / 狭 -> 挾 [紀][京] / 母 -> 毎 [万葉考]","#[事項],挽歌,作者:高橋,古老,老麻呂,亡妻挽歌,京都,枕詞,地名,天平16年7月20日,年紀","#[訓異]
しろたへの[寛],
そでさしかへて,[寛]そてさしかへて,
なびきねし,[寛]なひきねし,
わがくろかみの,[寛]わかくろかみの,
ましらかに[寛],
なりなむきはみ,[寛]なりきはまりて,
あらたよに[寛],
ともにあらむと[寛],
たまのをの[寛],
たえじいいもと,[寛]たえしやいもと,
むすびてし,[寛]むすひてし,
ことははたさず,[寛]ことははたさす,
おもへりし[寛],
こころはとげず,[寛]こころはとけす,
しろたへの[寛],
たもとをわかれ[寛],
にきびにし,[寛]にきひにし,
いへゆもいでて,[寛]いへしもいてて,
みどりこの,[寛]みとりこの,
なくをもおきて[寛],
あさぎりの,[寛]あさきりの,
おほになりつつ,[寛]ほのめかしつつ,
やましろの[寛],
さがらかやまの,[寛]さからのやまの,
やまのまに,[寛]やまのを,
ゆきすぎぬれば,[寛]ゆきすきぬれは,
いはむすべ,[寛]いはむすへ,
せむすべしらに,[寛]せむすへしらに,
わぎもこと,[寛]わきもこと,
さねしつまやに[寛],
あしたには[寛],
いでたちしのひ,[寛]いてたちしのひ,
ゆふへには[寛],
いりゐなげかひ,[寛]いりゐなけくや,
わきばさむ,[寛]わきはさむ,
このなくごとに,[寛]このなかしぬは,
をとこじもの,[寛]をのこしもの,
おひみむだきみ,[寛]おひみいたきみ,
あさとりの[寛],
ねのみなきつつ[寛],
こふれども,[寛]こふれとも,
しるしをなみと[寛],
こととはぬ[寛],
ものにはあれど,[寛]ものにはあrと,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
いりにしやまを[寛],
よすかとぞおもふ,[寛]よすかとそおもふ,
" "#[番号]03/0482","#[題詞](悲傷死妻高橋朝臣作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]打背見乃 世之事尓在者 外尓見之 山矣耶今者 因香跡思波牟","#[訓読]うつせみの世のことにあれば外に見し山をや今はよすかと思はむ","#[仮名],うつせみの,よのことにあれば,よそにみし,やまをやいまは,よすかとおもはむ","#[左注](右三首七月廿日高橋朝臣作歌也 名字未審 但云奉膳之男子焉)","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],挽歌,作者:高橋,古老,老麻呂,亡妻挽歌,天平16年7月20日,年紀","#[訓異]
うつせみの[寛],
よのことにあれば,[寛]よのことにあれは,
よそにみし[寛],
やまをやいまは[寛],
よすかとおもはむ[寛],
" "#[番号]03/0483","#[題詞]((悲傷死妻高橋朝臣作歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]朝鳥之 啼耳鳴六 吾妹子尓 今亦更 逢因矣無","#[訓読]朝鳥の哭のみし泣かむ我妹子に今またさらに逢ふよしをなみ","#[仮名],あさとりの,ねのみしなかゆ,わぎもこに,いままたさらに,あふよしをなみ","#[左注]右三首七月廿日高橋朝臣作歌也 名字未審 但云奉膳之男子焉","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],挽歌,作者:高橋,古老,老麻呂,亡妻挽歌,枕詞,天平16年7月20日,年紀","#[訓異]
あさとりの[寛],
ねのみしなかゆ,[寛]ねのみやなかむ,
わぎもこに,[寛]わきもこに,
いままたさらに[寛],
あふよしをなみ[寛],
" "#[番号]04/0484","#[題詞]相聞 / 難波天皇妹奉上在山跡皇兄御歌一首","#[原文]一日社 人母待<吉> 長氣乎 如此<耳>待者 有不得勝","#[訓読]一日こそ人も待ちよき長き日をかくのみ待たば有りかつましじ","#[仮名],ひとひこそ,ひともまちよき,ながきけを,かくのみまたば,ありかつましじ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 告 -> 吉 [元][紀][細] / 所 -> 耳 [玉の小琴]","#[事項],相聞,作者:難波天皇妹,仁徳,孝徳,間人皇女,中大兄,恋情,女歌","#[訓異]
ひとひこそ[寛],
ひともまちよき,[寛]ひともまつつけ,
ながきけを,[寛]なかきけを,
かくのみまたば,[寛]かくまたるれは,
ありかつましじ,[寛]ありえたへすも,
" "#[番号]04/0485","#[題詞]<崗>本天皇御製一首[并短歌]","#[原文]神代従 生継来者 人多 國尓波満而 味村乃 去来者行跡 吾戀流 君尓之不有者 晝波 日乃久流留麻弖 夜者 夜之明流寸食 念乍 寐宿難尓登 阿可思通良久茂 長此夜乎","#[訓読]神代より 生れ継ぎ来れば 人さはに 国には満ちて あぢ群の 通ひは行けど 我が恋ふる 君にしあらねば 昼は 日の暮るるまで 夜は 夜の明くる極み 思ひつつ 寐も寝かてにと 明かしつらくも 長きこの夜を","#[仮名],かむよより,あれつぎくれば,ひとさはに,くににはみちて,あぢむらの,かよひはゆけど,あがこふる,きみにしあらねば,ひるは,ひのくるるまで,よるは,よのあくるきはみ,おもひつつ,いもねかてにと,あかしつらくも,ながきこのよを","#[左注](右今案 高市<崗>本宮後<崗>本宮二代二帝各有異焉 但称<崗>本天皇未審其指)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 岳 -> 崗 [元][古][紀]","#[事項],相聞,作者:舒明,皇極,恋情,女歌,挽歌発想,枕詞","#[訓異]
かむよより,[寛]かみよより,
あれつぎくれば,[寛]あれつきくれは,
ひとさはに[寛],
くににはみちて[寛],
あぢむらの,[寛]あちむらの,
かよひはゆけど,[寛]いさとはゆけと,
あがこふる,[寛]わかこふる,
きみにしあらねば[寛],
ひるは[寛],
ひのくるるまで,[寛]ひのくるるまて,
よるは[寛],
よのあくるきはみ[寛],
おもひつつ[寛],
いもねかてにと[寛],
あかしつらくも[寛],
ながきこのよを,[寛]なかきこのよを,
" "#[番号]04/0486","#[題詞](<崗>本天皇御製一首[并短歌])反歌","#[原文]山羽尓 味村驂 去奈礼騰 吾者左夫思恵 君二四不<在>者","#[訓読]山の端にあぢ群騒き行くなれど我れは寂しゑ君にしあらねば","#[仮名],やまのはに,あぢむらさわき,ゆくなれど,われはさぶしゑ,きみにしあらねば","#[左注](右今案 高市<崗>本宮後<崗>本宮二代二帝各有異焉 但称<崗>本天皇未審其指)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 存 -> 在 [西(右書)][元][類]","#[事項],相聞,作者:舒明,皇極,恋情,挽歌発想","#[訓異]
やまのはに[寛],
あぢむらさわき,[寛]あちむらさわき,
ゆくなれど,[寛]ゆくなれと,
われはさぶしゑ,[寛]われはさふしゑ,
きみにしあらねば,[寛]きみにしあらねは,
" "#[番号]04/0487","#[題詞]((<崗>本天皇御製一首[并短歌])反歌)","#[原文]淡海路乃 鳥篭之山有 不知哉川 氣乃己呂其侶波 戀乍裳将有","#[訓読]近江道の鳥篭の山なる不知哉川日のころごろは恋ひつつもあらむ","#[仮名],あふみちの,とこのやまなる,いさやかは,けのころごろは,こひつつもあらむ","#[左注]右今案 高市<崗>本宮後<崗>本宮二代二帝各有異焉 但称<崗>本天皇未審其指","#[校異]岳 -> 崗 [元][古][紀] / 岳 -> 崗 [西(右書)][元][類][古][紀] / 岳 -> 崗 [西(右書)][元][類][古][紀]","#[事項],相聞,作者:舒明,皇極,恋情,序詞","#[訓異]
あふみちの[寛],
とこのやまなる[寛],
いさやかは[寛],
けのころごろは,[寛]けのころころは,
こひつつもあらむ[寛],
" "#[番号]04/0488","#[題詞]額田王思近江天皇作歌一首","#[原文]君待登 吾戀居者 我屋戸之 簾動之 秋風吹","#[訓読]君待つと我が恋ひ居れば我が宿の簾動かし秋の風吹く","#[仮名],きみまつと,あがこひをれば,わがやどの,すだれうごかし,あきのかぜふく","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:額田王,天智,恋情,待つ,漢詩","#[訓異]
きみまつと[寛],
あがこひをれば,[寛]わかこひをれは,
わがやどの,[寛]わかやとの,
すだれうごかし,[寛]すたれうこかし,
あきのかぜふく,[寛]あきのかせふく,
" "#[番号]04/0489","#[題詞]鏡王女作歌一首","#[原文]風乎太尓 戀流波乏之 風小谷 将来登時待者 何香将嘆","#[訓読]風をだに恋ふるは羨し風をだに来むとし待たば何か嘆かむ","#[仮名],かぜをだに,こふるはともし,かぜをだに,こむとしまたば,なにかなげかむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:鏡王女,額田王,天智,待つ","#[訓異]
かぜをだに,[寛]かせをたに,
こふるはともし[寛],
かぜをだに,[寛]かせをたに,
こむとしまたば,[寛]こむとしまたは,
なにかなげかむ,[寛]いかかなけかむ,
" "#[番号]04/0490","#[題詞]吹B刀自歌二首","#[原文]真野之浦乃 与騰<乃>継橋 情由毛 思哉妹之 伊目尓之所見","#[訓読]真野の浦の淀の継橋心ゆも思へや妹が夢にし見ゆる","#[仮名],まののうらの,よどのつぎはし,こころゆも,おもへやいもが,いめにしみゆる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 乃 [西(右書)][元][類][金]","#[事項],相聞,作者:吹B刀自,恋情,夢,皮肉,誤伝,伝承,序詞","#[訓異]
まののうらの[寛],
よどのつぎはし,[寛]よとのつきはし,
こころゆも[寛],
おもへやいもが,[寛]おもふやいもか,
いめにしみゆる[寛],
" "#[番号]04/0491","#[題詞](吹B刀自歌二首)","#[原文]河上乃 伊都藻之花乃 何時<々々> 来益我背子 時自異目八方","#[訓読]川上のいつ藻の花のいつもいつも来ませ我が背子時じけめやも","#[仮名],かはかみの,いつものはなの,いつもいつも,きませわがせこ,ときじけめやも","#[左注]","#[校異]<> -> 々々 [西(右書)][類][紀][細]","#[事項],相聞,作者:吹B刀自,勧誘,序詞","#[訓異]
かはかみの[寛],
いつものはなの[寛],
いつもいつも[寛],
きませわがせこ,[寛]きませわかせこ,
ときじけめやも,[寛]ときわかめやも,
" "#[番号]04/0492","#[題詞]田部忌寸櫟子任<大>宰時歌四首","#[原文]衣手尓 取等騰己保里 哭兒尓毛 益有吾乎 置而如何将為 [舎人吉年]","#[訓読]衣手に取りとどこほり泣く子にもまされる我れを置きていかにせむ [舎人吉年]","#[仮名],ころもでに,とりとどこほり,なくこにも,まされるわれを,おきていかにせむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 太 -> 大 [桂][元][金][紀]","#[事項],相聞,作者:田部櫟子,恋情,羈旅,離別,太宰府,任官","#[訓異]
ころもでに,[寛]ころもてに,
とりとどこほり,[寛]とりととこほり,
なくこにも[寛],
まされるわれを[寛],
おきていかにせむ,[寛]おきていかかせむ,
" "#[番号]04/0493","#[題詞](田部忌寸櫟子任<大>宰時歌四首)","#[原文]置而行者 妹将戀可聞 敷細乃 黒髪布而 長此夜乎 <[田部忌寸櫟子]>","#[訓読]置きていなば妹恋ひむかも敷栲の黒髪敷きて長きこの夜を <[田部忌寸櫟子]>","#[仮名],おきていなば,いもこひむかも,しきたへの,くろかみしきて,ながきこのよを","#[左注]","#[校異]<> -> 田部忌寸櫟子 [元][細]","#[事項],相聞,作者:田部櫟子,恋情,羈旅,離別,太宰府,任官,呪術,枕詞","#[訓異]
おきていなば,[寛]おきていかは,
いもこひむかも,[寛]いもこひむかも,
しきたへの[寛],
くろかみしきて[寛],
ながきこのよを,[寛]なかきこのよを,
" "#[番号]04/0494","#[題詞](田部忌寸櫟子任<大>宰時歌四首)","#[原文]吾妹兒乎 相令知 人乎許曽 戀之益者 恨三念","#[訓読]我妹子を相知らしめし人をこそ恋のまされば恨めしみ思へ","#[仮名],わぎもこを,あひしらしめし,ひとをこそ,こひのまされば,うらめしみおもへ","#[左注]","#[校異]乎 [元][紀][金](塙) 矣","#[事項],相聞,作者:田部櫟子,恋情,羈旅,離別,太宰府,任官","#[訓異]
わぎもこを,[寛]わきもこを,
あひしらしめし,[寛]あひしらせけむ,
ひとをこそ[寛],
こひのまされば,[寛]こひのまされは,
うらめしみおもへ,[寛]うらぬれみおもへ,
" "#[番号]04/0495","#[題詞](田部忌寸櫟子任<大>宰時歌四首)","#[原文]朝日影 尓保敝流山尓 照月乃 不Q君乎 山越尓置手","#[訓読]朝日影にほへる山に照る月の飽かざる君を山越しに置きて","#[仮名],あさひかげ,にほへるやまに,てるつきの,あかざるきみを,やまごしにおきて","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:田部櫟子,恋情,羈旅,離別,太宰府,任官","#[訓異]
あさひかげ,[寛]あさひかけ,
にほへるやまに[寛],
てるつきの[寛],
あかざるきみを,[寛]あかすかきみを,
やまごしにおきて,[寛]やまこしにおきて,
" "#[番号]04/0496","#[題詞]柿本朝臣人麻呂歌四首","#[原文]三熊野之 浦乃濱木綿 百重成 心者雖念 直不相鴨","#[訓読]み熊野の浦の浜木綿百重なす心は思へど直に逢はぬかも","#[仮名],みくまのの,うらのはまゆふ,ももへなす,こころはもへど,ただにあはぬかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,恋情,挽歌発想,贈答,紀州,和歌山,羈旅,序詞,地名,植物","#[訓異]
みくまのの[寛],
うらのはまゆふ[寛],
ももへなす,[寛]ももへなる,
こころはもへど,[寛]こころはおもへと,
ただにあはぬかも,[寛]たたにあはぬかも,
" "#[番号]04/0497","#[題詞](柿本朝臣人麻呂歌四首)","#[原文]古尓 有兼人毛 如吾歟 妹尓戀乍 宿不勝家牟","#[訓読]いにしへにありけむ人も我がごとか妹に恋ひつつ寐ねかてずけむ","#[仮名],いにしへに,ありけむひとも,あがごとか,いもにこひつつ,いねかてずけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,恋情,羈旅,和歌山,挽歌発想,昔","#[訓異]
いにしへに[寛],
ありけむひとも[寛],
あがごとか,[寛]わかことか,
いもにこひつつ[寛],
いねかてずけむ,[寛]いねかてにけむ,
" "#[番号]04/0498","#[題詞](柿本朝臣人麻呂歌四首)","#[原文]今耳之 行事庭不有 古 人曽益而 哭左倍鳴四","#[訓読]今のみのわざにはあらずいにしへの人ぞまさりて音にさへ泣きし","#[仮名],いまのみの,わざにはあらず,いにしへの,ひとぞまさりて,ねにさへなきし","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,恋情,羈旅,和歌山,挽歌発想","#[訓異]
いまのみの[寛],
わざにはあらず,[寛]わさにはあらす,
いにしへの[寛],
ひとぞまさりて,[寛]ひとそまさりて,
ねにさへなきし[寛],
" "#[番号]04/0499","#[題詞](柿本朝臣人麻呂歌四首)","#[原文]百重二物 来及毳常 念鴨 公之使乃 雖見不飽有<武>","#[訓読]百重にも来及かぬかもと思へかも君が使の見れど飽かずあらむ","#[仮名],ももへにも,きしかぬかもと,おもへかも,きみがつかひの,みれどあかずあらむ","#[左注]","#[校異]哉 -> 武 [桂][元][金][紀]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,恋情,使者","#[訓異]
ももへにも[寛],
きしかぬかもと,[寛]きをよへかもと,
おもへかも[寛],
きみがつかひの,[寛]きみかつかひの,
みれどあかずあらむ,[寛]みれとあかさらむ,
" "#[番号]04/0500","#[題詞]碁檀越徃伊勢國時留妻作歌一首","#[原文]神風之 伊勢乃濱荻 折伏 客宿也将為 荒濱邊尓","#[訓読]神風の伊勢の浜荻折り伏せて旅寝やすらむ荒き浜辺に","#[仮名],かむかぜの,いせのはまをぎ,をりふせて,たびねやすらむ,あらきはまへに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:碁檀越妻,伊勢,三重,羈旅,留守,枕詞,植物","#[訓異]
かむかぜの,[寛]かみかせの,
いせのはまをぎ,[寛]いせのはまおき,
をりふせて[寛],
たびねやすらむ,[寛]たひねやすらむ,
あらきはまへに[寛],
" "#[番号]04/0501","#[題詞]柿本朝臣人麻呂歌三首","#[原文]未通女等之 袖振山乃 水垣之 久時従 憶寸吾者","#[訓読]娘子らが袖布留山の瑞垣の久しき時ゆ思ひき我れは","#[仮名],をとめらが,そでふるやまの,みづかきの,ひさしきときゆ,おもひきわれは","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,歌垣,枕詞,序詞","#[訓異]
をとめらが,[寛]をとめらか,
そでふるやまの,[寛]そてふるやまの,
みづかきの,[寛]みつかきの,
ひさしきときゆ,[寛]ひさしきよより,
おもひきわれは[寛],
" "#[番号]04/0502","#[題詞](柿本朝臣人麻呂歌三首)","#[原文]夏野去 小<壮>鹿之角乃 束間毛 妹之心乎 忘而念哉","#[訓読]夏野行く牡鹿の角の束の間も妹が心を忘れて思へや","#[仮名],なつのゆく,をしかのつのの,つかのまも,いもがこころを,わすれておもへや","#[左注]","#[校異]牡 -> 壯 [金][紀]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,恋情,動物,序詞","#[訓異]
なつのゆく[寛],
をしかのつのの[寛],
つかのまも[寛],
いもがこころを,[寛]いもかこころを,
わすれておもへや[寛],
" "#[番号]04/0503","#[題詞](柿本朝臣人麻呂歌三首)","#[原文]珠衣乃 狭藍左謂沈 家妹尓 物不語来而 思金津裳","#[訓読]玉衣のさゐさゐしづみ家の妹に物言はず来にて思ひかねつも","#[仮名],たまきぬの,さゐさゐしづみ,いへのいもに,ものいはずきにて,おもひかねつも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂,恋情,別離,悲別,出発,羈旅","#[訓異]
たまきぬの[寛],
さゐさゐしづみ,[寛]さゐさゐしつみ,
いへのいもに[寛],
ものいはずきにて,[寛]ものいはすきにて,
おもひかねつも[寛],
" "#[番号]04/0504","#[題詞]柿本朝臣人麻呂妻歌一首","#[原文]君家尓 吾住坂乃 家道乎毛 吾者不忘 命不死者","#[訓読]君が家に我が住坂の家道をも我れは忘れじ命死なずは","#[仮名],きみがいへに,わがすみさかの,いへぢをも,われはわすれじ,いのちしなずは","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂妻,宇陀,恋情,難解,地名","#[訓異]
きみがいへに,[寛]きみかいへに,
わがすみさかの,[寛]われすみさかの,
いへぢをも,[寛]いへちをも,
われはわすれじ,[寛]われはわすれし,
いのちしなずは,[寛]いのちしなすは,
" "#[番号]04/0505","#[題詞]安倍女郎歌二首","#[原文]今更 何乎可将念 打靡 情者君尓 縁尓之物乎","#[訓読]今さらに何をか思はむうち靡き心は君に寄りにしものを","#[仮名],いまさらに,なにをかおもはむ,うちなびき,こころはきみに,よりにしものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:安倍女郎,恋情","#[訓異]
いまさらに[寛],
なにをかおもはむ[寛],
うちなびき,[寛]うちなひき,
こころはきみに[寛],
よりにしものを[寛],
" "#[番号]04/0506","#[題詞](安倍女郎歌二首)","#[原文]吾背子波 物莫念 事之有者 火尓毛水尓<母> 吾莫七國","#[訓読]我が背子は物な思ひそ事しあらば火にも水にも我れなけなくに","#[仮名],わがせこは,ものなおもひそ,ことしあらば,ひにもみづにも,われなけなくに","#[左注]","#[校異]毛 -> 母 [桂][元][紀]","#[事項],相聞,作者:安倍女郎,恋情","#[訓異]
わがせこは,[寛]わかせろは,
ものなおもひそ[寛],
ことしあらば,[寛]ことしあらは,
ひにもみづにも,[寛]ひにもみつにも,
われなけなくに,[寛]われならなくに,
" "#[番号]04/0507","#[題詞]駿河F女歌一首","#[原文]敷細乃 枕従久<々>流 涙二曽 浮宿乎思家類 戀乃繁尓","#[訓読]敷栲の枕ゆくくる涙にぞ浮寝をしける恋の繁きに","#[仮名],しきたへの,まくらゆくくる,なみたにぞ,うきねをしける,こひのしげきに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 久 -> 々 [元][金][紀]","#[事項],相聞,作者:駿河F女,恋情,枕詞","#[訓異]
しきたへの[寛],
まくらゆくくる,[寛]まくらをくくる,
なみたにぞ,[寛]なみたにそ,
うきねをしける[寛],
こひのしげきに,[寛]こひのしけきに,
" "#[番号]04/0508","#[題詞]三方沙弥歌一首","#[原文]衣手乃 別今夜従 妹毛吾母 甚戀名 相因乎奈美","#[訓読]衣手の別かる今夜ゆ妹も我れもいたく恋ひむな逢ふよしをなみ","#[仮名],ころもでの,わかるこよひゆ,いももあれも,いたくこひむな,あふよしをなみ","#[左注]","#[校異]母 [金][紀][細] 毛","#[事項],相聞,作者:三方沙弥,恋情,別離,羈旅,枕詞","#[訓異]
ころもでの,[寛]ころもての,
わかるこよひゆ,[寛]わくこよひより,
いももあれも,[寛]いももわれも,
いたくこひむな,[寛]いたくこひしな,
あふよしをなみ[寛],
" "#[番号]04/0509","#[題詞]丹比真人笠麻呂下筑紫國時作歌一首[并短歌]","#[原文]臣女乃 匣尓乗有 鏡成 見津乃濱邊尓 狭丹頬相 紐解不離 吾妹兒尓 戀乍居者 明晩乃 旦霧隠 鳴多頭乃 哭耳之所哭 吾戀流 干重乃一隔母 名草漏 情毛有哉跡 家當 吾立見者 青旗乃 葛木山尓 多奈引流 白雲隠 天佐我留 夷乃國邊尓 直向 淡路乎過 粟嶋乎 背尓見管 朝名寸二 水手之音喚 暮名寸二 梶之聲為乍 浪上乎 五十行左具久美 磐間乎 射徃廻 稲日都麻 浦箕乎過而 鳥自物 魚津左比去者 家乃嶋 荒礒之宇倍尓 打靡 四時二生有 莫告我 奈騰可聞妹尓 不告来二計謀","#[訓読]臣の女の 櫛笥に乗れる 鏡なす 御津の浜辺に さ丹つらふ 紐解き放けず 我妹子に 恋ひつつ居れば 明け暮れの 朝霧隠り 鳴く鶴の 音のみし泣かゆ 我が恋ふる 千重の一重も 慰もる 心もありやと 家のあたり 我が立ち見れば 青旗の 葛城山に たなびける 白雲隠る 天さがる 鄙の国辺に 直向ふ 淡路を過ぎ 粟島を そがひに見つつ 朝なぎに 水手の声呼び 夕なぎに 楫の音しつつ 波の上を い行きさぐくみ 岩の間を い行き廻り 稲日都麻 浦廻を過ぎて 鳥じもの なづさひ行けば 家の島 荒磯の上に うち靡き 繁に生ひたる なのりそが などかも妹に 告らず来にけむ","#[仮名],おみのめの,くしげにのれる,かがみなす,みつのはまべに,さにつらふ,ひもときさけず,わぎもこに,こひつつをれば,あけくれの,あさぎりごもり,なくたづの,ねのみしなかゆ,あがこふる,ちへのひとへも,なぐさもる,こころもありやと,いへのあたり,わがたちみれば,あをはたの,かづらきやまに,たなびける,しらくもがくる,あまさがる,ひなのくにべに,ただむかふ,あはぢをすぎ,あはしまを,そがひにみつつ,あさなぎに,かこのこゑよび,ゆふなぎに,かぢのおとしつつ,なみのうへを,いゆきさぐくみ,いはのまを,いゆきもとほり,いなびつま,うらみをすぎて,とりじもの,なづさひゆけば,いへのしま,ありそのうへに,うちなびき,しじにおひたる,なのりそが,などかもいもに,のらずきにけむ","#[左注]","#[校異]短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌","#[事項],相聞,作者:丹比笠麻呂,羈旅,恋情,別離,望郷,枕詞,地名,植物,大阪,兵庫,道行き","#[訓異]
おみのめの,[寛]まうとめの,
くしげにのれる,[寛]くしけにのする,
かがみなす,[寛]かかみなす,
みつのはまべに,[寛]みつのはまへに,
さにつらふ[寛],
ひもときさけず,[寛]ひもときさけす,
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こひつつをれば,[寛]こひつつゐは,
あけくれの[寛],
あさぎりごもり,[寛]あさきりこもり,
なくたづの,[寛]なくたつの,
ねのみしなかゆ,[寛]なきのみそなく,
あがこふる,[寛]わかこふる,
ちへのひとへも[寛],
なぐさもる,[寛]なくさむる,
こころもありやと[寛],
いへのあたり[寛],
わがたちみれば,[寛]わかたちみれは,
あをはたの[寛],
かづらきやまに,[寛]かつらきやまに,
たなびける,[寛]たなひける,
しらくもがくる,[寛]しらくもかくれ,
あまさがる,[寛]あまさかる,
ひなのくにべに,[寛]ひなのくにへに,
ただむかふ,[寛]たたむかふ,
あはぢをすぎ,[寛]あはちをすき,
あはしまを[寛],
そがひにみつつ,[寛]そかひにみつつ,
あさなぎに,[寛]あさなきに,
かこのこゑよび,[寛]かこのおとよひ,
ゆふなぎに,[寛]ゆふなきに,
かぢのおとしつつ,[寛]かちのおとしつつ,
なみのうへを[寛],
いゆきさぐくみ,[寛]いゆきさくくみ,
いはのまを[寛],
いゆきもとほり[寛],
いなびつま,[寛]いなひつま,
うらみをすぎて,[寛]うらみをすきて,
とりじもの,[寛]とりしもの,
なづさひゆけば,[寛]なつさひゆけは,
いへのしま[寛],
ありそのうへに,[寛]あらいそのうへに,
うちなびき,[寛]うちなひき,
しじにおひたる,[寛]ししにおひたる,
なのりそが,[寛]なのりそか,
などかもいもに,[寛]なとかもいもに,
のらずきにけむ,[寛]つけすきにけむ,
" "#[番号]04/0510","#[題詞](丹比真人笠麻呂下筑紫國時作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]白<細>乃 袖解更而 還来武 月日乎數而 徃而来猿尾","#[訓読]白栲の袖解き交へて帰り来む月日を数みて行きて来ましを","#[仮名],しろたへの,そでときかへて,かへりこむ,つきひをよみて,ゆきてこましを","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 妙 -> 細 [元][紀][類][古]","#[事項],相聞,作者:丹比笠麻呂,羈旅,別離,枕詞","#[訓異]
しろたへの[寛],
そでときかへて,[寛]そてときかへて,
かへりこむ[寛],
つきひをよみて,[寛]ほとをかそへて,
ゆきてこましを[寛],
" "#[番号]04/0511","#[題詞]幸伊勢國時當麻麻呂大夫妻作歌一首","#[原文]吾背子者 何處将行 己津物 隠之山乎 今日歟超良<武>","#[訓読]我が背子はいづく行くらむ沖つ藻の名張の山を今日か越ゆらむ","#[仮名],わがせこは,いづくゆくらむ,おきつもの,なばりのやまを,けふかこゆらむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 哉 -> 武 [西(訂正)][元][金][類]","#[事項],相聞,作者:當麻麻呂妻,行幸,伊勢,留守,重出,枕詞,地名","#[訓異]
わがせこは,[寛]わかせこは,
いづくゆくらむ,[寛]いつちゆくらむ,
おきつもの[寛],
なばりのやまを,[寛]かくれのやまを,
けふかこゆらむ[寛],
" "#[番号]04/0512","#[題詞]草嬢歌一首","#[原文]秋田之 穂田乃苅婆加 香縁相者 彼所毛加人之 吾乎事将成","#[訓読]秋の田の穂田の刈りばかか寄りあはばそこもか人の我を言成さむ","#[仮名],あきのたの,ほたのかりばか,かよりあはば,そこもかひとの,わをことなさむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],相聞,作者:草嬢,恋情,うわさ,序詞","#[訓異]
あきのたの[寛],
ほたのかりばか,[寛]ほたのかりはか,
かよりあはば,[寛]かよりあはは,
そこもかひとの[寛],
わをことなさむ,[寛]われをことなさむ,
" "#[番号]04/0513","#[題詞]志貴皇子御歌一首","#[原文]大原之 此市柴乃 何時鹿跡 吾念妹尓 今夜相有香裳","#[訓読]大原のこのいち柴のいつしかと我が思ふ妹に今夜逢へるかも","#[仮名],おほはらの,このいちしばの,いつしかと,あがおもふいもに,こよひあへるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:志貴皇子,恋情,逢会,植物,序詞","#[訓異]
おほはらの[寛],
このいちしばの,[寛]このいつしはの,
いつしかと[寛],
あがおもふいもに,[寛]わかおもふいもに,
こよひあへるかも[寛],
" "#[番号]04/0514","#[題詞]阿倍女郎歌一首","#[原文]吾背子之 盖世流衣之 針目不落 入尓家良之 我情副","#[訓読]我が背子が着せる衣の針目おちず入りにけらしも我が心さへ","#[仮名],わがせこが,けせるころもの,はりめおちず,いりにけらしも,あがこころさへ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 入 [紀] 入来","#[事項],相聞,作者:阿倍女郎,恋情","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
けせるころもの,[寛]きせるころもの,
はりめおちず,[寛]はりめおちす,
いりにけらしも,[寛]いりにけらしな,
あがこころさへ,[寛]わかこころさへ,
" "#[番号]04/0515","#[題詞]中臣朝臣東人贈阿倍女郎歌一首","#[原文]獨宿而 絶西紐緒 忌見跡 世武為便不知 哭耳之曽泣","#[訓読]ひとり寝て絶えにし紐をゆゆしみと為むすべ知らに音のみしぞ泣く","#[仮名],ひとりねて,たえにしひもを,ゆゆしみと,せむすべしらに,ねのみしぞなく","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:中臣東人,阿倍女郎,恋情,不安,不吉,贈答","#[訓異]
ひとりねて[寛],
たえにしひもを[寛],
ゆゆしみと[寛],
せむすべしらに,[寛]せむすへしらに,
ねのみしぞなく,[寛]ねのみしそなく,
" "#[番号]04/0516","#[題詞]阿倍女郎答歌一首","#[原文]吾以在 三相二搓流 絲用而 附手益物 今曽悔寸","#[訓読]我が持てる三相に搓れる糸もちて付けてましもの今ぞ悔しき","#[仮名],わがもてる,みつあひによれる,いともちて,つけてましもの,いまぞくやしき","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:阿倍女郎,中臣東人,贈答","#[訓異]
わがもてる,[寛]わかもてる,
みつあひによれる[寛],
いともちて[寛],
つけてましもの,[寛]つけてましものを,
いまぞくやしき,[寛]いまそくやしき,
" "#[番号]04/0517","#[題詞]大納言兼大将軍大伴卿歌一首","#[原文]神樹尓毛 手者觸云乎 打細丹 人妻跡云者 不觸物可聞","#[訓読]神木にも手は触るといふをうつたへに人妻といへば触れぬものかも","#[仮名],かむきにも,てはふるといふを,うつたへに,ひとづまといへば,ふれぬものかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴安麻呂,人妻","#[訓異]
かむきにも,[寛]さかきにも,
てはふるといふを[寛],
うつたへに[寛],
ひとづまといへば,[寛]ひとつまといへは,
ふれぬものかも[寛],
" "#[番号]04/0518","#[題詞]石川郎女歌一首 [即佐保大伴大家也]","#[原文]春日野之 山邊道乎 与曽理無 通之君我 不所見許呂香聞","#[訓読]春日野の山辺の道をよそりなく通ひし君が見えぬころかも","#[仮名],かすがのの,やまへのみちを,よそりなく,かよひしきみが,みえぬころかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 与 [西(貼紙)][元] 於","#[事項],相聞,作者:石川郎女(邑婆),大伴安麻呂,地名,奈良","#[訓異]
かすがのの,[寛]かすかのの,
やまへのみちを[寛],
よそりなく[寛],
かよひしきみが,[寛]かよひしきみか,
みえぬころかも[寛],
" "#[番号]04/0519","#[題詞]大伴女郎歌一首 [今城王之母也今城王後賜大原真人氏也]","#[原文]雨障 常為公者 久堅乃 昨夜雨尓 将懲鴨","#[訓読]雨障み常する君はひさかたの昨夜の夜の雨に懲りにけむかも","#[仮名],あまつつみ,つねするきみは,ひさかたの,きぞのよのあめに,こりにけむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴女郎,勧誘","#[訓異]
あまつつみ,[寛]あまさはり,
つねするきみは[寛],
ひさかたの[寛],
きぞのよのあめに,[寛]よふへのあめに,
こりにけむかも[寛],
" "#[番号]04/0520","#[題詞](大伴女郎歌一首 [今城王之母也今城王後賜大原真人氏也])後人追同歌一首","#[原文]久堅乃 雨毛落<粳> 雨乍見 於君副而 此日令晩","#[訓読]ひさかたの雨も降らぬか雨障み君にたぐひてこの日暮らさむ","#[仮名],ひさかたの,あめもふらぬか,あまつつみ,きみにたぐひて,このひくらさむ","#[左注]","#[校異]糠 -> 粳 [元][類][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴女郎,追同,枕詞","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あめもふらぬか[寛],
あまつつみ[寛],
きみにたぐひて,[寛]きみにたくひて,
このひくらさむ[寛],
" "#[番号]04/0521","#[題詞]藤原宇合大夫遷任上京時常陸娘子贈歌一首","#[原文]庭立 麻手苅干 布<暴> 東女乎 忘賜名","#[訓読]庭に立つ麻手刈り干し布曝す東女を忘れたまふな","#[仮名],にはにたつ,あさでかりほし,ぬのさらす,あづまをみなを,わすれたまふな","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 慕 -> 暴 [元]","#[事項],相聞,作者:常陸娘子,藤原宇合,餞別,植物","#[訓異]
にはにたつ[寛],
あさでかりほし,[寛]あさてかりほし,
ぬのさらす,[寛]しきしのふ,
あづまをみなを,[寛]あつまをとめを,
わすれたまふな[寛],
" "#[番号]04/0522","#[題詞]京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 [卿諱曰麻呂也]","#[原文]D嬬等之 珠篋有 玉櫛乃 神家武毛 妹尓阿波受有者","#[訓読]娘子らが玉櫛笥なる玉櫛の神さびけむも妹に逢はずあれば","#[仮名],をとめらが,たまくしげなる,たまくしの,かむさびけむも,いもにあはずあれば","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:藤原麻呂,坂上郎女,枕詞,序詞,贈答","#[訓異]
をとめらが,[寛]をとめらか,
たまくしげなる,[寛]たまくしけなる,
たまくしの[寛],
かむさびけむも,[寛]めつらしけむも,
いもにあはずあれば,[寛]いもにあはすあれは,
" "#[番号]04/0523","#[題詞](京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 [卿諱曰麻呂也])","#[原文]好渡 人者年母 有云乎 何時間曽毛 吾戀尓来","#[訓読]よく渡る人は年にもありといふをいつの間にぞも我が恋ひにける","#[仮名],よくわたる,ひとはとしにも,ありといふを,いつのまにぞも,あがこひにける","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:藤原麻呂,坂上郎女,贈答","#[訓異]
よくわたる[寛],
ひとはとしにも[寛],
ありといふを,[寛]ありてふを,
いつのまにぞも,[寛]いつのままそも,
あがこひにける,[寛]わかこひにける,
" "#[番号]04/0524","#[題詞](京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 [卿諱曰麻呂也])","#[原文]蒸被 奈胡也我下丹 雖臥 与妹不宿者 肌之寒霜","#[訓読]むし衾なごやが下に伏せれども妹とし寝ねば肌し寒しも","#[仮名],むしふすま,なごやがしたに,ふせれども,いもとしねねば,はだしさむしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:藤原麻呂,坂上郎女,孤独,贈答","#[訓異]
むしふすま,[寛]あつふすま,
なごやがしたに,[寛]なこやかしたに,
ふせれども,[寛]ふせれとも,
いもとしねねば,[寛]いもとしねねは,
はだしさむしも,[寛]はたしさむしも,
" "#[番号]04/0525","#[題詞](京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 [卿諱曰麻呂也])大伴郎女和歌四首","#[原文]狭穂河乃 小石踐渡 夜干玉之 黒馬之来夜者 年尓母有粳","#[訓読]佐保川の小石踏み渡りぬばたまの黒馬来る夜は年にもあらぬか","#[仮名],さほがはの,こいしふみわたり,ぬばたまの,くろまくるよは,としにもあらぬか","#[左注](右郎女者佐保大納言卿之女也 初嫁一品穂積皇子 被寵無儔而皇子薨之後時 藤原麻呂大夫娉之郎女焉 郎女家於坂上里 仍族氏号曰坂上郎女也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,藤原麻呂,恋情,贈答,地名,奈良,動物,枕詞","#[訓異]
さほがはの,[寛]さほかはの,
こいしふみわたり,[寛]さされふみわたり,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
くろまくるよは,[寛]こまのくるよは,
としにもあらぬか[寛],
" "#[番号]04/0526","#[題詞]((京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 [卿諱曰麻呂也])大伴郎女和歌四首)","#[原文]千鳥鳴 佐保乃河瀬之 小浪 止時毛無 吾戀者","#[訓読]千鳥鳴く佐保の川瀬のさざれ波やむ時もなし我が恋ふらくは","#[仮名],ちどりなく,さほのかはせの,さざれなみ,やむときもなし,あがこふらくは","#[左注](右郎女者佐保大納言卿之女也 初嫁一品穂積皇子 被寵無儔而皇子薨之後時 藤原麻呂大夫娉之郎女焉 郎女家於坂上里 仍族氏号曰坂上郎女也)","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,藤原麻呂,恋情,贈答,枕詞,動物,枕詞,地名,奈良","#[訓異]
ちどりなく,[寛]ちとりなく,
さほのかはせの[寛],
さざれなみ,[寛]さされなみ,
やむときもなし[寛],
あがこふらくは,[寛]わかこふらくに,
" "#[番号]04/0527","#[題詞]((京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 [卿諱曰麻呂也])大伴郎女和歌四首)","#[原文]将来云毛 不来時有乎 不来云乎 将来常者不待 不来云物乎","#[訓読]来むと言ふも来ぬ時あるを来じと言ふを来むとは待たじ来じと言ふものを","#[仮名],こむといふも,こぬときあるを,こじといふを,こむとはまたじ,こじといふものを","#[左注](右郎女者佐保大納言卿之女也 初嫁一品穂積皇子 被寵無儔而皇子薨之後時 藤原麻呂大夫娉之郎女焉 郎女家於坂上里 仍族氏号曰坂上郎女也)","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,藤原麻呂,贈答","#[訓異]
こむといふも[寛],
こぬときあるを[寛],
こじといふを,[寛]こしといふを,
こむとはまたじ,[寛]こむとはまたし,
こじといふものを,[寛]こしといふものを,
" "#[番号]04/0528","#[題詞]((京職藤原大夫贈大伴郎女歌三首 [卿諱曰麻呂也])大伴郎女和歌四首)","#[原文]千鳥鳴 佐保乃河門乃 瀬乎廣弥 打橋渡須 奈我来跡念者","#[訓読]千鳥鳴く佐保の川門の瀬を広み打橋渡す汝が来と思へば","#[仮名],ちどりなく,さほのかはとの,せをひろみ,うちはしわたす,ながくとおもへば","#[左注]右郎女者佐保大納言卿之女也 初嫁一品穂積皇子 被寵無儔而皇子薨之後時 藤原麻呂大夫娉之郎女焉 郎女家於坂上里 仍族氏号曰坂上郎女也","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,藤原麻呂,川渡り,贈答,動物,枕詞,奈良,地名","#[訓異]
ちどりなく,[寛]ちとりなく,
さほのかはとの[寛],
せをひろみ[寛],
うちはしわたす[寛],
ながくとおもへば,[寛]なかくとおもへは,
" "#[番号]04/0529","#[題詞]又大伴坂上郎女歌一首","#[原文]佐保河乃 涯之官能 <少>歴木莫苅焉 在乍毛 張之来者 立隠金","#[訓読]佐保川の岸のつかさの柴な刈りそねありつつも春し来たらば立ち隠るがね","#[仮名],さほがはの,きしのつかさの,しばなかりそね,ありつつも,はるしきたらば,たちかくるがね","#[左注]","#[校異]小 -> 少 [桂][元][古][紀]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,野遊び,奈良,地名,植物,贈答","#[訓異]
さほがはの,[寛]さほかはの,
きしのつかさの[寛],
しばなかりそね,[寛]しはなかりそね,
ありつつも[寛],
はるしきたらば,[寛]はるしきたらは,
たちかくるがね,[寛]たちかくるかに,
" "#[番号]04/0530","#[題詞]天皇賜海上女王御歌一首 [寧樂宮即位天皇也]","#[原文]赤駒之 越馬柵乃 緘結師 妹情者 疑毛奈思","#[訓読]赤駒の越ゆる馬柵の標結ひし妹が心は疑ひもなし","#[仮名],あかごまの,こゆるうませの,しめゆひし,いもがこころは,うたがひもなし","#[左注]右今案 此歌擬古之作也 但以時當便賜斯歌歟","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],相聞,作者:聖武天皇,海上女王,動物,序詞,贈答","#[訓異]
あかごまの,[寛]あかこまの,
こゆるうませの,[寛]こゆるうまおりの,
しめゆひし[寛],
いもがこころは,[寛]いもかこころは,
うたがひもなし,[寛]うたかひもなし,
" "#[番号]04/0531","#[題詞](天皇賜海上女王御歌一首 [寧樂宮即位天皇也])海上<王>奉和歌一首 [志貴皇子之女也]","#[原文]梓弓 爪引夜音之 遠音尓毛 君之御幸乎 聞之好毛","#[訓読]梓弓爪引く夜音の遠音にも君が御幸を聞かくしよしも","#[仮名],あづさゆみ,つまびくよおとの,とほとにも,きみがみゆきを,きかくしよしも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 女王 -> 王 [桂][元][古][紀]","#[事項],相聞,作者:聖武天皇,海上女王,贈答","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
つまびくよおとの,[寛]つまひくよとの,
とほとにも[寛],
きみがみゆきを,[寛]きみかみゆきを,
きかくしよしも,[寛]きくはしよしも,
" "#[番号]04/0532","#[題詞]大伴宿奈麻呂宿祢歌二首 [佐保大納言<卿>之第三子也]","#[原文]打日指 宮尓行兒乎 真悲見 留者苦 聴去者為便無","#[訓読]うちひさす宮に行く子をま悲しみ留むれば苦し遣ればすべなし","#[仮名],うちひさす,みやにゆくこを,まかなしみ,とむればくるし,やればすべなし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 卿 [西(右書)][桂] / <> -> 之 [桂][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴宿奈麻呂,枕詞","#[訓異]
うちひさす[寛],
みやにゆくこを[寛],
まかなしみ[寛],
とむればくるし,[寛]とむれはくるし,
やればすべなし,[寛]やれはすへなし
" "#[番号]04/0533","#[題詞](大伴宿奈麻呂宿祢歌二首 [佐保大納言<卿>之第三子也])","#[原文]難波方 塩干之名凝 飽左右二 人之見兒乎 吾四乏毛","#[訓読]難波潟潮干のなごり飽くまでに人の見る子を我れし羨しも","#[仮名],なにはがた,しほひのなごり,あくまでに,ひとのみるこを,われしともしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴宿奈麻呂,大阪,地名,序詞","#[訓異]
なにはがた,[寛]なにはかた,
しほひのなごり,[寛]しほひのなこり,
あくまでに,[寛]あくまてに,
ひとのみるこを[寛],
われしともしも[寛],
" "#[番号]04/0534","#[題詞]安貴王歌一首[并短歌]","#[原文]遠嬬 此間不在者 玉桙之 道乎多遠見 思空 安莫國 嘆虚 不安物乎 水空徃 雲尓毛欲成 高飛 鳥尓毛欲成 明日去而 於妹言問 為吾 妹毛事無 為妹 吾毛事無久 今裳見如 副而毛欲得","#[訓読]遠妻の ここにしあらねば 玉桙の 道をた遠み 思ふそら 安けなくに 嘆くそら 苦しきものを み空行く 雲にもがも 高飛ぶ 鳥にもがも 明日行きて 妹に言どひ 我がために 妹も事なく 妹がため 我れも事なく 今も見るごと たぐひてもがも","#[仮名],とほづまの,ここにしあらねば,たまほこの,みちをたどほみ,おもふそら,やすけなくに,なげくそら,くるしきものを,みそらゆく,くもにもがも,たかとぶ,とりにもがも,あすゆきて,いもにことどひ,あがために,いももことなく,いもがため,あれもことなく,いまもみるごと,たぐひてもがも","#[左注](右安貴王娶因幡八上釆女 係念極甚愛情尤盛 於時勅断不敬之罪退却本郷焉 于是王意悼怛聊作此歌也)","#[校異]歌 [西] 謌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌","#[事項],相聞,作者:安貴王,因幡八上釆女,恋情,離別,枕詞,悲別","#[訓異]
とほづまの,[寛]とほつまの,
ここにしあらねば,[寛]ここにあらねは,
たまほこの[寛],
みちをたどほみ,[寛]みちをたとほみ,
おもふそら[寛],
やすけなくに,[寛]やすからなくに,
なげくそら,[寛]なけくそら,
くるしきものを,[寛]やすからぬものを,
みそらゆく[寛],
くもにもがも,[寛]くもにもかもな,
たかとぶ,[寛]たかくとふ,
とりにもがも,[寛]とりにもかもな,
あすゆきて[寛],
いもにことどひ,[寛]いもにこととひ,
あがために,[寛]わかために,
いももことなく[寛],
いもがため,[寛]いもかため,
あれもことなく,[寛]われもことなく,
いまもみるごと,[寛]いまもみること,
たぐひてもがも,[寛]たくひてもかな,
" "#[番号]04/0535","#[題詞](安貴王歌一首[并短歌])反歌","#[原文]敷細乃 手枕不纒 間置而 年曽經来 不相念者","#[訓読]敷栲の手枕まかず間置きて年ぞ経にける逢はなく思へば","#[仮名],しきたへの,たまくらまかず,あひだおきて,としぞへにける,あはなくおもへば","#[左注]右安貴王娶因幡八上釆女 係念極甚愛情尤盛 於時勅断不敬之罪退却本郷焉 于是王意悼怛聊作此歌也","#[校異]","#[事項],相聞,作者:安貴王,因幡八上釆女,離別,恋情,枕詞,悲別","#[訓異]
しきたへの[寛],
たまくらまかず,[寛]たまくらまかす,
あひだおきて,[寛]へたておきて,
としぞへにける,[寛]としそへにける,
あはなくおもへば,[寛]あはぬおもひは,
" "#[番号]04/0536","#[題詞]門部王戀歌一首","#[原文]飫宇能海之 塩干乃<鹵>之 片念尓 思哉将去 道之永手呼","#[訓読]意宇の海の潮干の潟の片思に思ひや行かむ道の長手を","#[仮名],おうのうみの,しほひのかたの,かたもひに,おもひやゆかむ,みちのながてを","#[左注]右門部王任出雲守時娶部内娘子也 未有幾時 既絶徃来 累月之後更起愛心 仍作此歌贈致娘子","#[校異]歌 [西] 謌 / 滷 -> 鹵 [桂][元] / 歌 [西] 謌","#[事項],相聞,作者:門部王,恋情,島根,地名,序詞","#[訓異]
おうのうみの,[寛]をうのうみの,
しほひのかたの[寛],
かたもひに,[寛]かたおもひに,
おもひやゆかむ[寛],
みちのながてを,[寛]みちのなかてを,
" "#[番号]04/0537","#[題詞]高田女王贈今城王歌六首","#[原文]事清 甚毛莫言 一日太尓 君伊之哭者 痛寸<敢>物","#[訓読]言清くいたもな言ひそ一日だに君いしなくはあへかたきかも","#[仮名],こときよく,いともないひそ,ひとひだに,きみいしなくは,あへかたきかも","#[左注]","#[校異]取 -> 敢 [古義][新考][菊沢季生]","#[事項],相聞,作者:高田女王,今城王,恋情,贈答","#[訓異]
こときよく[寛],
いともないひそ,[寛]いたくもいはれ,
ひとひだに,[寛]ひとひたに,
きみいしなくは[寛],
あへかたきかも,[寛]いたききすそも,
" "#[番号]04/0538","#[題詞](高田女王贈今城王歌六首)","#[原文]他辞乎 繁言痛 不相有寸 心在如 莫思吾背<子>","#[訓読]人言を繁み言痛み逢はずありき心あるごとな思ひ我が背子","#[仮名],ひとごとを,しげみこちたみ,あはずありき,こころあるごと,なおもひわがせこ","#[左注]","#[校異]<> -> 子 [西(追補)][桂][紀]","#[事項],相聞,作者:高田女王,今城王,うわさ,贈答","#[訓異]
ひとごとを,[寛]ひとことを,
しげみこちたみ,[寛]しけみこちたみ,
あはずありき,[寛]あはさりき,
こころあるごと,[寛]こころあること,
なおもひわがせこ,[寛]おもふなわかせ,
" "#[番号]04/0539","#[題詞](高田女王贈今城王歌六首)","#[原文]吾背子師 遂常云者 人事者 繁有登毛 出而相麻志<乎>","#[訓読]我が背子し遂げむと言はば人言は繁くありとも出でて逢はましを","#[仮名],わがせこし,とげむといはば,ひとごとは,しげくありとも,いでてあはましを","#[左注]","#[校異]呼 -> 乎 [桂][元][紀][温]","#[事項],相聞,作者:高田女王,今城王,うわさ,贈答","#[訓異]
わがせこし,[寛]わかせこし,
とげむといはば,[寛]とけむといはは,
ひとごとは,[寛]ひとことは,
しげくありとも,[寛]しけくありとも,
いでてあはましを,[寛]いててあはましを,
" "#[番号]04/0540","#[題詞](高田女王贈今城王歌六首)","#[原文]吾背子尓 復者不相香常 思墓 今朝別之 為便無有都流","#[訓読]我が背子にまたは逢はじかと思へばか今朝の別れのすべなかりつる","#[仮名],わがせこに,またはあはじか,とおもへばか,けさのわかれの,すべなかりつる","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:高田女王,今城王,恋情,別れ,贈答","#[訓異]
わがせこに,[寛]わかせこに,
またはあはじか,[寛]またはあはしか,
とおもへばか,[寛]とおもへはか,
けさのわかれの[寛],
すべなかりつる,[寛]すへなかりつる,
" "#[番号]04/0541","#[題詞](高田女王贈今城王歌六首)","#[原文]現世尓波 人事繁 来生尓毛 将相吾背子 今不有十方","#[訓読]この世には人言繁し来む世にも逢はむ我が背子今ならずとも","#[仮名],このよには,ひとごとしげし,こむよにも,あはむわがせこ,いまならずとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:高田女王,今城王,うわさ,贈答","#[訓異]
このよには[寛],
ひとごとしげし,[寛]ひとことしけみ,
こむよにも[寛],
あはむわがせこ,[寛]あはむわかせこ,
いまならずとも,[寛]いまならすとも,
" "#[番号]04/0542","#[題詞](高田女王贈今城王歌六首)","#[原文]常不止 通之君我 使不来 今者不相跡 絶多比奴良思","#[訓読]常やまず通ひし君が使ひ来ず今は逢はじとたゆたひぬらし","#[仮名],つねやまず,かよひしきみが,つかひこず,いまはあはじと,たゆたひぬらし","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:高田女王,今城王,贈答","#[訓異]
つねやまず,[寛]とことはに,
かよひしきみが,[寛]かよひしきみか,
つかひこず,[寛]つかひこす,
いまはあはじと,[寛]いまはあはしと,
たゆたひぬらし[寛],
" "#[番号]04/0543","#[題詞]神龜元年甲子冬十月幸紀伊國之時為贈従駕人所誂娘子<作歌>一首[并短歌] <笠朝臣金村>","#[原文]天皇之 行幸乃随意 物部乃 八十伴雄与 出去之 愛夫者 天翔哉 軽路従 玉田次 畝火乎見管 麻裳吉 木道尓入立 真土山 越良武公者 黄葉乃 散飛見乍 親 吾者不念 草枕 客乎便宜常 思乍 公将有跡 安蘇々二破 且者雖知 之加須我仁 黙然得不在者 吾背子之 徃乃萬々 将追跡者 千遍雖念 手<弱>女 吾身之有者 道守之 将問答乎 言将遣 為便乎不知跡 立而爪衝","#[訓読]大君の 行幸のまにま もののふの 八十伴の男と 出で行きし 愛し夫は 天飛ぶや 軽の路より 玉たすき 畝傍を見つつ あさもよし 紀路に入り立ち 真土山 越ゆらむ君は 黄葉の 散り飛ぶ見つつ にきびにし 我れは思はず 草枕 旅をよろしと 思ひつつ 君はあらむと あそそには かつは知れども しかすがに 黙もえあらねば 我が背子が 行きのまにまに 追はむとは 千たび思へど 手弱女の 我が身にしあれば 道守の 問はむ答へを 言ひやらむ すべを知らにと 立ちてつまづく","#[仮名],おほきみの,みゆきのまにま,もののふの,やそとものをと,いでゆきし,うるはしづまは,あまとぶや,かるのみちより,たまたすき,うねびをみつつ,あさもよし,きぢにいりたち,まつちやま,こゆらむきみは,もみちばの,ちりとぶみつつ,にきびにし,われはおもはず,くさまくら,たびをよろしと,おもひつつ,きみはあらむと,あそそには,かつはしれども,しかすがに,もだもえあらねば,わがせこが,ゆきのまにまに,おはむとは,ちたびおもへど,たわやめの,わがみにしあれば,みちもりの,とはむこたへを,いひやらむ,すべをしらにと,たちてつまづく","#[左注]","#[校異]笠朝臣金村作歌 -> 作歌 [桂][元] / <> -> 笠朝臣金村 [桂][元] / 嫋 -> 弱 [桂][元][類][紀]","#[事項],相聞,作者:笠金村,代作,行幸,紀伊,妻,都,羈旅,枕詞,地名,神亀1年10月,年紀","#[訓異]
おほきみの,[寛]すめろきの,
みゆきのまにま,[寛]みゆきのままに,
もののふの[寛],
やそとものをと[寛],
いでゆきし,[寛]いてゆきし,
うるはしづまは,[寛]うつくしつまは,
あまとぶや,[寛]あまとふや,
かるのみちより[寛],
たまたすき[寛],
うねびをみつつ,[寛]うねひをみつつ,
あさもよし,[寛]あさもよい,
きぢにいりたち,[寛]きちにいりたち,
まつちやま[寛],
こゆらむきみは[寛],
もみちばの,[寛]もみちはの,
ちりとぶみつつ,[寛]ちりとふみつつ,
にきびにし,[寛]むつましき,
われはおもはず,[寛]われをはおもはし,
くさまくら[寛],
たびをよろしと,[寛]たひをたよりと,
おもひつつ[寛],
きみはあらむと[寛],
あそそには[寛],
かつはしれども,[寛]かつはしれとも,
しかすがに,[寛]しかすかに,
もだもえあらねば,[寛]もたえあらねは,
わがせこが,[寛]われせこか,
ゆきのまにまに[寛],
おはむとは[寛],
ちたびおもへど,[寛]ちたひおもへと,
たわやめの,[寛]たをやめの,
わがみにしあれば,[寛]わかみにしあれは,
みちもりの[寛],
とはむこたへを[寛],
いひやらむ[寛],
すべをしらにと,[寛]すへをしらすと,
たちてつまづく,[寛]たちてつまつく,
" "#[番号]04/0544","#[題詞](神龜元年甲子冬十月幸紀伊國之時為贈従駕人所誂娘子<作歌>一首[并短歌] <笠朝臣金村>)反歌","#[原文]後居而 戀乍不有者 木國乃 妹背乃山尓 有益物乎","#[訓読]後れ居て恋ひつつあらずは紀の国の妹背の山にあらましものを","#[仮名],おくれゐて,こひつつあらずは,きのくにの,いもせのやまに,あらましものを","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:笠金村,代作,行幸,紀伊,和歌山,妻,羈旅,地名,神亀1年10月,年紀","#[訓異]
おくれゐて,[寛]
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
きのくにの[寛],
いもせのやまに[寛],
あらましものを[寛],
" "#[番号]04/0545","#[題詞]((神龜元年甲子冬十月幸紀伊國之時為贈従駕人所誂娘子<作歌>一首[并短歌] <笠朝臣金村>)反歌)","#[原文]吾背子之 跡履求 追去者 木乃關守伊 将留鴨","#[訓読]我が背子が跡踏み求め追ひ行かば紀の関守い留めてむかも","#[仮名],わがせこが,あとふみもとめ,おひゆかば,きのせきもりい,とどめてむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠金村,代作,行幸,紀伊,和歌山,妻,羈旅,地名,神亀1年10月,年紀","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
あとふみもとめ[寛],
おひゆかば,[寛]おひゆかは,
きのせきもりい,[寛]きのせきもりや,
とどめてむかも,[寛]いととめむかも,
" "#[番号]04/0546","#[題詞]二年乙丑春三月幸三香原離宮之時得娘子<作歌>一首[并短歌] <笠朝臣金村>","#[原文]三香<乃>原 客之屋取尓 珠桙乃 道能去相尓 天雲之 外耳見管 言将問 縁乃無者 情耳 咽乍有尓 天地 神祇辞因而 敷細乃 衣手易而 自妻跡 憑有今夜 秋夜之 百夜乃長 有与宿鴨","#[訓読]三香の原 旅の宿りに 玉桙の 道の行き逢ひに 天雲の 外のみ見つつ 言問はむ よしのなければ 心のみ 咽せつつあるに 天地の 神言寄せて 敷栲の 衣手交へて 己妻と 頼める今夜 秋の夜の 百夜の長さ ありこせぬかも","#[仮名],みかのはら,たびのやどりに,たまほこの,みちのゆきあひに,あまくもの,よそのみみつつ,こととはむ,よしのなければ,こころのみ,むせつつあるに,あめつちの,かみことよせて,しきたへの,ころもでかへて,おのづまと,たのめるこよひ,あきのよの,ももよのながさ,ありこせぬかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 笠朝臣金村作歌 -> 作歌 [桂][元][紀] / <> -> 笠朝臣金村 [桂][元][紀] / 之 -> 乃 [桂][元]","#[事項],相聞,作者:笠金村,行幸,久邇京,京都,地名,枕詞,神亀2年3月,年紀","#[訓異]
みかのはら[寛],
たびのやどりに,[寛]たひのやとりに,
たまほこの[寛],
みちのゆきあひに[寛],
あまくもの[寛],
よそのみみつつ[寛],
こととはむ[寛],
よしのなければ,[寛]よしのなけれは,
こころのみ[寛],
むせつつあるに[寛],
あめつちの[寛],
かみことよせて[寛],
しきたへの,[寛]しきたえの,
ころもでかへて,[寛]ころもてかへて,
おのづまと,[寛]わかつまと,
たのめるこよひ[寛],
あきのよの[寛],
ももよのながさ,[寛]ももよのなかさ,
ありこせぬかも,[寛]あるよいもかも,
" "#[番号]04/0547","#[題詞](二年乙丑春三月幸三香原離宮之時得娘子<作歌>一首[并短歌] <笠朝臣金村>)反歌","#[原文]天雲之 外従見 吾妹兒尓 心毛身副 縁西鬼尾","#[訓読]天雲の外に見しより我妹子に心も身さへ寄りにしものを","#[仮名],あまくもの,よそにみしより,わぎもこに,こころもみさへ,よりにしものを","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],相聞,作者:笠金村,行幸,久邇京,京都,枕詞,地名,神亀2年3月","#[訓異]
あまくもの[寛],
よそにみしより[寛],
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こころもみさへ[寛],
よりにしものを[寛],
" "#[番号]04/0548","#[題詞]((二年乙丑春三月幸三香原離宮之時得娘子<作歌>一首[并短歌] <笠朝臣金村>)反歌)","#[原文]今夜之 早開者 為便乎無三 秋百夜乎 願鶴鴨","#[訓読]今夜の早く明けなばすべをなみ秋の百夜を願ひつるかも","#[仮名],こよひの,はやくあけなば,すべをなみ,あきのももよを,ねがひつるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠金村,行幸,久邇京,京都,地名,神亀2年3月","#[訓異]
こよひの,[寛]このよらの,
はやくあけなば,[寛]はやくあくれは,
すべをなみ,[寛]すへをなみ,
あきのももよを[寛],
ねがひつるかも,[寛]ねかひつるかも,
" "#[番号]04/0549","#[題詞]五年戊辰<大>宰少貳石川足人朝臣遷任餞于筑前國蘆城驛家歌三首","#[原文]天地之 神毛助与 草枕 羈行君之 至家左右","#[訓読]天地の神も助けよ草枕旅行く君が家にいたるまで","#[仮名],あめつちの,かみもたすけよ,くさまくら,たびゆくきみが,いへにいたるまで","#[左注](右三首作者未詳)","#[校異]歌 [西] 謌 / 太 -> 大 [桂][元][紀]","#[事項],相聞,石川足人,餞別,羈旅,枕詞,福岡,地名,神亀5年,年紀","#[訓異]
あめつちの[寛],
かみもたすけよ[寛],
くさまくら[寛],
たびゆくきみが,[寛]たひゆくきみか,
いへにいたるまで[寛],
" "#[番号]04/0550","#[題詞](五年戊辰<大>宰少貳石川足人朝臣遷任餞于筑前國蘆城驛家歌三首)","#[原文]大船之 念憑師 君之去者 吾者将戀名 直相左右二","#[訓読]大船の思ひ頼みし君が去なば我れは恋ひむな直に逢ふまでに","#[仮名],おほぶねの,おもひたのみし,きみがいなば,あれはこひむな,ただにあふまでに","#[左注](右三首作者未詳)","#[校異]","#[事項],相聞,石川足人,餞別,羈旅,恋情,福岡,地名,神亀5年,年紀","#[訓異]
おほぶねの,[寛]おほふねの,
おもひたのみし[寛],
きみがいなば,[寛]きみかいねは,
あれはこひむな,[寛]われはこひむな,
ただにあふまでに,[寛]たみあふまてに,
" "#[番号]04/0551","#[題詞](五年戊辰<大>宰少貳石川足人朝臣遷任餞于筑前國蘆城驛家歌三首)","#[原文]山跡道之 嶋乃浦廻尓 縁浪 間無牟 吾戀巻者","#[訓読]大和道の島の浦廻に寄する波間もなけむ我が恋ひまくは","#[仮名],やまとぢの,しまのうらみに,よするなみ,あひだもなけむ,あがこひまくは","#[左注]右三首作者未詳","#[校異]","#[事項],相聞,石川足人,餞別,羈旅,序詞,恋情,福岡,地名,神亀5年","#[訓異]
やまとぢの,[寛]やまとちの,
しまのうらみに,[寛]しまのうらわに,
よするなみ[寛],
あひだもなけむ,[寛]あひたなけむに,
あがこひまくは,[寛]わかこひまくは,
" "#[番号]04/0552","#[題詞]大伴宿祢三依歌一首","#[原文]吾君者 和氣乎波死常 念可毛 相夜不相<夜> 二走良武","#[訓読]我が君はわけをば死ねと思へかも逢ふ夜逢はぬ夜二走るらむ","#[仮名],あがきみは,わけをばしねと,おもへかも,あふよあはぬよ,ふたはしるらむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 夜 [西(右書)][桂][元]","#[事項],相聞,作者:大伴三依,怨恨,恋情","#[訓異]
あがきみは,[寛]わかきみは,
わけをばしねと,[寛]わけをはしねと,
おもへかも[寛],
あふよあはぬよ[寛],
ふたはしるらむ,[寛]ふたゆくならむ,
" "#[番号]04/0553","#[題詞]丹生女王贈<大>宰帥大伴卿歌二首","#[原文]天雲乃 遠隔乃極 遠鷄跡裳 情志行者 戀流物可聞","#[訓読]天雲のそくへの極み遠けども心し行けば恋ふるものかも","#[仮名],あまくもの,そくへのきはみ,とほけども,こころしゆけば,こふるものかも","#[左注]","#[校異]太 -> 大 [桂][元][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:丹生女王,大伴旅人,羈旅,贈答,恋情","#[訓異]
あまくもの[寛],
そくへのきはみ,[寛]へたてのきはめ,
とほけども,[寛]とほけとも,
こころしゆけば,[寛]こころしゆけは,
こふるものかも[寛],
" "#[番号]04/0554","#[題詞](丹生女王贈<大>宰帥大伴卿歌二首)","#[原文]古人乃 令食有 吉備能酒 <病>者為便無 貫簀賜牟","#[訓読]古人のたまへしめたる吉備の酒病めばすべなし貫簀賜らむ","#[仮名],ふるひとの,たまへしめたる,きびのさけ,やめばすべなし,ぬきすたばらむ","#[左注]","#[校異]痛 -> 病 [元][類][紀]","#[事項],相聞,作者:丹生女王,大伴旅人,贈答","#[訓異]
ふるひとの,[寛]いにしへの,
たまへしめたる,[寛]ひとののませる,
きびのさけ,[寛]きひのさけ,
やめばすべなし,[寛]やもははすへな,
ぬきすたばらむ,[寛]ぬきすたまはむ,
" "#[番号]04/0555","#[題詞]<大>宰帥大伴卿贈大貳丹比縣守卿遷任民部卿歌一首","#[原文]為君 醸之待酒 安野尓 獨哉将飲 友無二思手","#[訓読]君がため醸みし待酒安の野にひとりや飲まむ友なしにして","#[仮名],きみがため,かみしまちざけ,やすののに,ひとりやのまむ,ともなしにして","#[左注]","#[校異]太 -> 大 [桂][元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴旅人,丹比縣守,餞別,送別,太宰府,福岡,地名","#[訓異]
きみがため,[寛]きみかため,
かみしまちざけ,[寛]かみしまちさけ,
やすののに[寛],
ひとりやのまむ[寛],
ともなしにして[寛],
" "#[番号]04/0556","#[題詞]賀茂女王贈大伴宿祢三依歌一首 [故左大臣長屋王之女也]","#[原文]筑紫船 未毛不来者 豫 荒振公乎 見之悲左","#[訓読]筑紫船いまだも来ねばあらかじめ荒ぶる君を見るが悲しさ","#[仮名],つくしふね,いまだもこねば,あらかじめ,あらぶるきみを,みるがかなしさ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:賀茂女王,大伴三依,恨み,離別,贈答","#[訓異]
つくしふね[寛],
いまだもこねば,[寛]またもこされは,
あらかじめ,[寛]あらかしめ,
あらぶるきみを,[寛]あらふるきみを,
みるがかなしさ,[寛]みるかかなしさ,
" "#[番号]04/0557","#[題詞]土師宿祢水<道>従筑紫上京海路作歌二首","#[原文]大船乎 榜乃進尓 磐尓觸 覆者覆 妹尓因而者","#[訓読]大船を漕ぎの進みに岩に触れ覆らば覆れ妹によりては","#[仮名],おほぶねを,こぎのすすみに,いはにふれ,かへらばかへれ,いもによりては","#[左注]","#[校異]通 -> 道 [桂][元] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:土師水道,羈旅,送別,餞別,太宰府,福岡","#[訓異]
おほぶねを,[寛]おほふねを,
こぎのすすみに,[寛]こきのすすみに,
いはにふれ[寛],
かへらばかへれ,[寛]かへらはかへれ,
いもによりては[寛],
" "#[番号]04/0558","#[題詞](土師宿祢水<道>従筑紫上京海路作歌二首)","#[原文]千磐破 神之社尓 我<挂>師 幣者将賜 妹尓不相國","#[訓読]ちはやぶる神の社に我が懸けし幣は賜らむ妹に逢はなくに","#[仮名],ちはやぶる,かみのやしろに,わがかけし,ぬさはたばらむ,いもにあはなくに","#[左注]","#[校異]掛 -> 挂 [桂][元][紀]","#[事項],相聞,作者:土師水道,送別,太宰府,福岡,餞別,枕詞","#[訓異]
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
かみのやしろに[寛],
わがかけし,[寛]わかかけし,
ぬさはたばらむ,[寛]ぬさはたはらむ,
いもにあはなくに[寛],
" "#[番号]04/0559","#[題詞]<大>宰大監大伴宿祢百代戀歌四首","#[原文]事毛無 生来之物乎 老奈美尓 如是戀<乎>毛 吾者遇流香聞","#[訓読]事もなく生き来しものを老いなみにかかる恋にも我れは逢へるかも","#[仮名],こともなく,いきこしものを,おいなみに,かかるこひにも,われはあへるかも","#[左注]","#[校異]太 -> 大 [桂][元][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 于 -> 乎 [桂][元][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴百代,老齢,恋情","#[訓異]
こともなく[寛],
いきこしものを,[寛]ありこしものを,
おいなみに,[寛]おひなみに,
かかるこひにも[寛],
われはあへるかも[寛],
" "#[番号]04/0560","#[題詞](<大>宰大監大伴宿祢百代戀歌四首)","#[原文]孤悲死牟 後者何為牟 生日之 為社妹乎 欲見為礼","#[訓読]恋ひ死なむ後は何せむ生ける日のためこそ妹を見まく欲りすれ","#[仮名],こひしなむ,のちはなにせむ,いけるひの,ためこそいもを,みまくほりすれ","#[左注]","#[校異]後 [元][桂][紀] 時","#[事項],相聞,作者:大伴百代,恋情","#[訓異]
こひしなむ[寛],
のちはなにせむ[寛],
いけるひの[寛],
ためこそいもを[寛],
みまくほりすれ[寛],
" "#[番号]04/0561","#[題詞](<大>宰大監大伴宿祢百代戀歌四首)","#[原文]不念乎 思常云者 大野有 三笠社之 神思知三","#[訓読]思はぬを思ふと言はば大野なる御笠の杜の神し知らさむ","#[仮名],おもはぬを,おもふといはば,おほのなる,みかさのもりの,かみししらさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴百代,福岡,太宰府,地名,恋情","#[訓異]
おもはぬを[寛],
おもふといはば,[寛]おもふといはは,
おほのなる[寛],
みかさのもりの[寛],
かみししらさむ,[寛]かみししるらみ,
" "#[番号]04/0562","#[題詞](<大>宰大監大伴宿祢百代戀歌四首)","#[原文]無暇 人之眉根乎 徒 令掻乍 不相妹可聞","#[訓読]暇なく人の眉根をいたづらに掻かしめつつも逢はぬ妹かも","#[仮名],いとまなく,ひとのまよねを,いたづらに,かかしめつつも,あはぬいもかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴百代,怨恨,恋情","#[訓異]
いとまなく,[寛]いとまなき,
ひとのまよねを,[寛]ひとのまゆねを,
いたづらに,[寛]いたつらに,
かかしめつつも[寛],
あはぬいもかも[寛],
" "#[番号]04/0563","#[題詞]大伴坂上郎女歌二首","#[原文]黒髪二 白髪交 至耆 如是有戀庭 未相尓","#[訓読]黒髪に白髪交り老ゆるまでかかる恋にはいまだ逢はなくに","#[仮名],くろかみに,しろかみまじり,おゆるまで,かかるこひには,いまだあはなくに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,老齢,恋情","#[訓異]
くろかみに[寛],
しろかみまじり,[寛]しろかみましり,
おゆるまで,[寛]おひたれと,
かかるこひには[寛],
いまだあはなくに,[寛]あまたあはなくに,
" "#[番号]04/0564","#[題詞](大伴坂上郎女歌二首)","#[原文]山菅<之> 實不成事乎 吾尓所依 言礼師君者 与孰可宿良牟","#[訓読]山菅の実ならぬことを我れに寄せ言はれし君は誰れとか寝らむ","#[仮名],やますげの,みならぬことを,われによせ,いはれしきみは,たれとかぬらむ","#[左注]","#[校異]乃 -> 之 [桂][類][紀]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,戯笑,怨恨,植物,恋愛","#[訓異]
やますげの,[寛]やますけの,
みならぬことを[寛],
われによせ,[寛]われにより,
いはれしきみは[寛],
たれとかぬらむ[寛],
" "#[番号]04/0565","#[題詞]賀茂女王歌一首","#[原文]大伴乃 見津跡者不云 赤根指 照有月夜尓 直相在登聞","#[訓読]大伴の見つとは言はじあかねさし照れる月夜に直に逢へりとも","#[仮名],おほともの,みつとはいはじ,あかねさし,てれるつくよに,ただにあへりとも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:賀茂女王,うわさ,枕詞,掛詞,地名,大阪,恋愛","#[訓異]
おほともの[寛],
みつとはいはじ,[寛]みつとはいはし,
あかねさし[寛],
てれるつくよに,[寛]てれるつきよに,
ただにあへりとも,[寛]たたにあへりとも,
" "#[番号]04/0566","#[題詞]<大>宰大監大伴宿祢百代等贈驛使歌二首","#[原文]草枕 羈行君乎 愛見 副而曽来四 鹿乃濱邊乎","#[訓読]草枕旅行く君を愛しみたぐひてぞ来し志賀の浜辺を","#[仮名],くさまくら,たびゆくきみを,うるはしみ,たぐひてぞこし,しかのはまべを","#[左注]右一首大監大伴宿祢百代 / (以前天平二年庚午夏六月 帥大伴卿忽生瘡脚疾苦枕席 因此馳驛上奏 望請庶弟稲公姪胡麻呂欲語遺言者 勅右兵庫助大伴宿祢稲公治部少<丞>大伴宿祢胡麻呂兩人 給驛發遣令省卿病 而逕數<旬>幸得平復 于時稲公等以病既療 發府上京 於是大監大伴宿祢百代少典山口忌寸若麻呂及卿男家持等相送驛使 共到夷守驛家 聊飲悲別乃作此歌)","#[校異]太 -> 大 [桂][元][類] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴百代,送別,羈旅,恋情,枕詞,贈答","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびゆくきみを,[寛]たひゆくきみを,
うるはしみ,[寛]うつくしみ,
たぐひてぞこし,[寛]たくひてそこし,
しかのはまべを,[寛]しかのはまへを,
" "#[番号]04/0567","#[題詞](<大>宰大監大伴宿祢百代等贈驛使歌二首)","#[原文]周防在 磐國山乎 将超日者 手向好為与 荒其<道>","#[訓読]周防なる磐国山を越えむ日は手向けよくせよ荒しその道","#[仮名],すはなる,いはくにやまを,こえむひは,たむけよくせよ,あらしそのみち","#[左注]右一首少典山口忌寸若麻呂 / 以前天平二年庚午夏六月 帥大伴卿忽生瘡脚疾苦枕席 因此馳驛上奏 望請 庶弟稲公姪胡麻呂欲語遺言者 勅右兵庫助大伴宿祢稲公治部少<丞>大伴宿祢 胡麻呂兩人 給驛發遣令省卿病 而逕數<旬>幸得平復于時稲公等以病既療 發府上京 於是大監大伴宿祢百代少典山口忌寸若麻呂及卿男家持等相送驛使 共到夷守驛家 聊飲悲別乃作此歌","#[校異]庭 -> 道 [西(貼紙)][桂][元] / 蒸 -> 丞 [桂] / 看 -> 省 [桂][元][紀] / 句 -> 旬 [桂][元][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴百代,送別,羈旅,安全,山口,地名","#[訓異]
すはなる,[寛]すはうなる,
いはくにやまを[寛],
こえむひは[寛],
たむけよくせよ[寛],
あらしそのみち,[寛]あらきそのみち,
" "#[番号]04/0568","#[題詞]<大>宰帥大伴卿被任大納言臨入京之時府官人等餞卿筑前國蘆城驛家歌四首","#[原文]三埼廻之 荒礒尓縁 五百重浪 立毛居毛 我念流吉美","#[訓読]み崎廻の荒磯に寄する五百重波立ちても居ても我が思へる君","#[仮名],みさきみの,ありそによする,いほへなみ,たちてもゐても,あがもへるきみ","#[左注]右一首筑前掾門部連石足","#[校異]太 -> 大 [桂][元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:門部石足,大伴旅人,餞宴,送別,恋情,序詞,福岡,地名","#[訓異]
みさきみの,[寛]みさきわの,
ありそによする,[寛]あらいそによする,
いほへなみ[寛],
たちてもゐても[寛],
あがもへるきみ,[寛]わかおもへるきみ,
" "#[番号]04/0569","#[題詞](<大>宰帥大伴卿被任大納言臨入京之時府官人等餞卿筑前國蘆城驛家歌四首)","#[原文]辛人之 衣染云 紫之 情尓染而 所念鴨","#[訓読]韓人の衣染むといふ紫の心に染みて思ほゆるかも","#[仮名],からひとの,ころもそむといふ,むらさきの,こころにしみて,おもほゆるかも","#[左注](右二首大典麻田連陽春)","#[校異]","#[事項],相聞,作者:麻田陽春,大伴旅人,餞宴,恋情,送別,福岡,地名","#[訓異]
からひとの,[寛]あらひとの,
ころもそむといふ[寛],
むらさきの[寛],
こころにしみて[寛],
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]04/0570","#[題詞](<大>宰帥大伴卿被任大納言臨入京之時府官人等餞卿筑前國蘆城驛家歌四首)","#[原文]山跡邊 君之立日乃 近付者 野立鹿毛 動而曽鳴","#[訓読]大和へに君が発つ日の近づけば野に立つ鹿も響めてぞ鳴く","#[仮名],やまとへに,きみがたつひの,ちかづけば,のにたつしかも,とよめてぞなく","#[左注]右二首大典麻田連陽春","#[校異]","#[事項],相聞,作者:麻田陽春,大伴旅人,餞宴,恋情,送別,福岡,地名","#[訓異]
やまとへに,
きみがたつひの,
ちかづけば,
のにたつしかも,
とよめてぞなく
" "#[番号]04/0571","#[題詞](<大>宰帥大伴卿被任大納言臨入京之時府官人等餞卿筑前國蘆城驛家歌四首)","#[原文]月夜吉 河音清之 率此間 行毛不去毛 遊而将歸","#[訓読]月夜よし川の音清しいざここに行くも行かぬも遊びて行かむ","#[仮名],つくよよし,かはのおときよし,いざここに,ゆくもゆかぬも,あそびてゆかむ","#[左注]右一首防人佑大伴四綱","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴四綱,大伴旅人,餞宴,送別,福岡,地名","#[訓異]
つくよよし,[寛]つきよよし,
かはのおときよし,[寛]かはをときよし,
いざここに,[寛]いさここに,
ゆくもゆかぬも,[寛]ゆくもとまるも,
あそびてゆかむ,[寛]あそひてゆかむ,
" "#[番号]04/0572","#[題詞]<大>宰帥大伴卿上京之後沙弥満誓贈卿歌二首","#[原文]真十鏡 見不飽君尓 所贈哉 旦夕尓 左備乍将居","#[訓読]まそ鏡見飽かぬ君に後れてや朝夕にさびつつ居らむ","#[仮名],まそかがみ,みあかぬきみに,おくれてや,あしたゆふへに,さびつつをらむ","#[左注]","#[校異]太 -> 大 [桂][元][類] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:沙弥満誓,大伴旅人,恋情,送別,枕詞,福岡,地名","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
みあかぬきみに[寛],
おくれてや[寛],
あしたゆふへに[寛],
さびつつをらむ,[寛]さひつつをらむ,
" "#[番号]04/0573","#[題詞](<大>宰帥大伴卿上京之後沙弥満誓贈卿歌二首)","#[原文]野干玉之 黒髪變 白髪手裳 痛戀庭 相時有来","#[訓読]ぬばたまの黒髪変り白けても痛き恋には逢ふ時ありけり","#[仮名],ぬばたまの,くろかみかはり,しらけても,いたきこひには,あふときありけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:沙弥満誓,大伴旅人,恋情,送別,年齢,枕詞","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
くろかみかはり[寛],
しらけても[寛],
いたきこひには[寛],
あふときありけり[寛],
" "#[番号]04/0574","#[題詞]大納言大伴卿和歌二首","#[原文]此間在而 筑紫也何處 白雲乃 棚引山之 方西有良思","#[訓読]ここにありて筑紫やいづち白雲のたなびく山の方にしあるらし","#[仮名],ここにありて,つくしやいづち,しらくもの,たなびくやまの,かたにしあるらし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],相聞,作者:大伴旅人,和歌,羈旅,福岡,地名","#[訓異]
ここにありて[寛],
つくしやいづち,[寛]つくしやいつこ,
しらくもの[寛],
たなびくやまの,[寛]たなひくやまの,
かたにしあるらし[寛],
" "#[番号]04/0575","#[題詞](大納言大伴卿和歌二首)","#[原文]草香江之 入江二求食 蘆鶴乃 痛多豆多頭思 友無二指天","#[訓読]草香江の入江にあさる葦鶴のあなたづたづし友なしにして","#[仮名],くさかえの,いりえにあさる,あしたづの,あなたづたづし,ともなしにして","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴旅人,和歌,孤独,羈旅,大阪,地名,動物,序詞","#[訓異]
くさかえの[寛],
いりえにあさる[寛],
あしたづの,[寛]あしたつの,
あなたづたづし,[寛]あなたつたつし,
ともなしにして[寛],
" "#[番号]04/0576","#[題詞]<大>宰帥大伴卿上京之後筑後守葛井連大成悲嘆作歌一首","#[原文]従今者 城山道者 不樂牟 吾将通常 念之物乎","#[訓読]今よりは城の山道は寂しけむ我が通はむと思ひしものを","#[仮名],いまよりは,きのやまみちは,さぶしけむ,わがかよはむと,おもひしものを","#[左注]","#[校異]太 -> 大 [桂][元][類] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:葛井大成,大伴旅人,愛慕,福岡,地名,恋情","#[訓異]
いまよりは[寛],
きのやまみちは,[寛]きやまのみちは,
さぶしけむ,[寛]さひしけむ,
わがかよはむと,[寛]わかかよはむと,
おもひしものを[寛],
" "#[番号]04/0577","#[題詞]大納言大伴卿新袍贈攝津大夫高安王歌一首","#[原文]吾衣 人莫著曽 網引為 難波壮士乃 手尓者雖觸","#[訓読]我が衣人にな着せそ網引する難波壮士の手には触るとも","#[仮名],あがころも,ひとになきせそ,あびきする,なにはをとこの,てにはふるとも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴旅人,高安王,大阪,地名,贈答","#[訓異]
あがころも,[寛]わかきぬを,
ひとになきせそ[寛],
あびきする,[寛]あひきする,
なにはをとこの[寛],
てにはふるとも[寛],
" "#[番号]04/0578","#[題詞]大伴宿祢三依悲別歌一首","#[原文]天地与 共久 住波牟等 念而有師 家之庭羽裳","#[訓読]天地とともに久しく住まはむと思ひてありし家の庭はも","#[仮名],あめつちと,ともにひさしく,すまはむと,おもひてありし,いへのにははも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴三依,大伴旅人,挽歌発想","#[訓異]
あめつちと[寛],
ともにひさしく[寛],
すまはむと[寛],
おもひてありし[寛],
いへのにははも[寛],
" "#[番号]04/0579","#[題詞]<余>明軍與大伴宿祢家持歌二首 [明軍者大納言卿之資人也]","#[原文]奉見而 未時太尓 不更者 如年月 所念君","#[訓読]見まつりていまだ時だに変らねば年月のごと思ほゆる君","#[仮名],みまつりて,いまだときだに,かはらねば,としつきのごと,おもほゆるきみ","#[左注]","#[校異]金 -> 余 [桂][元][古][紀]","#[事項],相聞,作者:余明軍,大伴家持","#[訓異]
みまつりて[寛],
いまだときだに,[寛]いまたときたに,
かはらねば,[寛]かはらねは,
としつきのごと,[寛]としつきのこと,
おもほゆるきみ[寛],
" "#[番号]04/0580","#[題詞](<余>明軍與大伴宿祢家持歌二首 [明軍者大納言卿之資人也])","#[原文]足引乃 山尓生有 菅根乃 懃見巻 欲君可聞","#[訓読]あしひきの山に生ひたる菅の根のねもころ見まく欲しき君かも","#[仮名],あしひきの,やまにおひたる,すがのねの,ねもころみまく,ほしききみかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:余明軍,大伴家持,植物,序詞","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまにおひたる[寛],
すがのねの,[寛]すかのねの,
ねもころみまく[寛],
ほしききみかも[寛],
" "#[番号]04/0581","#[題詞]大伴坂上家之大娘報<贈>大伴宿祢家持歌四首","#[原文]生而有者 見巻毛不知 何如毛 将死与妹常 夢所見鶴","#[訓読]生きてあらば見まくも知らず何しかも死なむよ妹と夢に見えつる","#[仮名],いきてあらば,みまくもしらず,なにしかも,しなむよいもと,いめにみえつる","#[左注]","#[校異]賜 -> 贈 [桂][元][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上大嬢,大伴家持,夢,恋情,贈答","#[訓異]
いきてあらば,[寛]いきてあれは,
みまくもしらず,[寛]みまくもしらす,
なにしかも[寛],
しなむよいもと[寛],
いめにみえつる,[寛]ゆめにみえつる,
" "#[番号]04/0582","#[題詞](大伴坂上家之大娘報<贈>大伴宿祢家持歌四首)","#[原文]大夫毛 如此戀家流乎 幼婦之 戀情尓 比有目八方","#[訓読]ますらをもかく恋ひけるをたわやめの恋ふる心にたぐひあらめやも","#[仮名],ますらをも,かくこひけるを,たわやめの,こふるこころに,たぐひあらめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上大嬢,大伴家持,贈答","#[訓異]
ますらをも[寛],
かくこひけるを[寛],
たわやめの,[寛]たをやめの,
こふるこころに[寛],
たぐひあらめやも,[寛]ならへらめやも,
" "#[番号]04/0583","#[題詞](大伴坂上家之大娘報<贈>大伴宿祢家持歌四首)","#[原文]月草之 徙安久 念可母 我念人之 事毛告不来","#[訓読]月草のうつろひやすく思へかも我が思ふ人の言も告げ来ぬ","#[仮名],つきくさの,うつろひやすく,おもへかも,わがおもふひとの,こともつげこぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上大嬢,大伴家持,植物,枕詞,贈答","#[訓異]
つきくさの[寛],
うつろひやすく[寛],
おもへかも[寛],
わがおもふひとの,[寛]わかおもふひとの,
こともつげこぬ,[寛]こともつけこぬ,
" "#[番号]04/0584","#[題詞](大伴坂上家之大娘報<贈>大伴宿祢家持歌四首)","#[原文]春日山 朝立雲之 不居日無 見巻之欲寸 君毛有鴨","#[訓読]春日山朝立つ雲の居ぬ日なく見まくの欲しき君にもあるかも","#[仮名],かすがやま,あさたつくもの,ゐぬひなく,みまくのほしき,きみにもあるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上大嬢,大伴家持,恋情,奈良,地名,序詞,贈答","#[訓異]
かすがやま,[寛]かすかやま,
あさたつくもの[寛],
ゐぬひなく[寛],
みまくのほしき[寛],
きみにもあるかも[寛],
" "#[番号]04/0585","#[題詞]大伴坂上郎女歌一首","#[原文]出而将去 時之波将有乎 故 妻戀為乍 立而可去哉","#[訓読]出でていなむ時しはあらむをことさらに妻恋しつつ立ちていぬべしや","#[仮名],いでていなむ,ときしはあらむを,ことさらに,つまごひしつつ,たちていぬべしや","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,恋愛","#[訓異]
いでていなむ,[寛]いてていなむ,
ときしはあらむを[寛],
ことさらに[寛],
つまごひしつつ,[寛]つまこひしつつ,
たちていぬべしや,[寛]たちてゆくへしや,
" "#[番号]04/0586","#[題詞]大伴宿祢稲公贈田村大嬢歌一首 [大伴<宿>奈麻呂卿<之>女也]","#[原文]不相見者 不戀有益乎 妹乎見而 本名如此耳 戀者奈何将為","#[訓読]相見ずは恋ひずあらましを妹を見てもとなかくのみ恋ひばいかにせむ","#[仮名],あひみずは,こひずあらましを,いもをみて,もとなかくのみ,こひばいかにせむ","#[左注]右一首姉坂上郎女作","#[校異]宿祢 -> 宿 [西(訂正)][温][矢] / <> -> 之 [元][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴稲公,坂上郎女,田村大嬢,代作,恋情,贈答","#[訓異]
あひみずは,[寛]あひみすは,
こひずあらましを,[寛]こひさらましを,
いもをみて[寛],
もとなかくのみ[寛],
こひばいかにせむ,[寛]こひはいかにせむ,
" "#[番号]04/0587","#[題詞]笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首","#[原文]吾形見 々管之努波世 荒珠 年之緒長 吾毛将思","#[訓読]我が形見見つつ偲はせあらたまの年の緒長く我れも偲はむ","#[仮名],わがかたみ,みつつしのはせ,あらたまの,としのをながく,われもしのはむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,贈答,枕詞","#[訓異]
わがかたみ,[寛]わかかたみ,
みつつしのはせ[寛],
あらたまの[寛],
としのをながく,[寛]としのをなかく,
われもしのはむ,[寛]われもおもはむ,
" "#[番号]04/0588","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]白鳥能 飛羽山松之 待乍曽 吾戀度 此月比乎","#[訓読]白鳥の飛羽山松の待ちつつぞ我が恋ひわたるこの月ごろを","#[仮名],しらとりの,とばやままつの,まちつつぞ,あがこひわたる,このつきごろを","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,贈答,枕詞,奈良,地名,序詞","#[訓異]
しらとりの,[寛]しろとりの,
とばやままつの,[寛]とはやままつの,
まちつつぞ,[寛]まちつつそ,
あがこひわたる,[寛]わかこひわたる,
このつきごろを,[寛]このつきころを,
" "#[番号]04/0589","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]衣手乎 打廻乃里尓 有吾乎 不知曽人者 待跡不来家留","#[訓読]衣手を打廻の里にある我れを知らにぞ人は待てど来ずける","#[仮名],ころもでを,うちみのさとに,あるわれを,しらにぞひとは,まてどこずける","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,待つ,恋情,枕詞,奈良,地名,贈答","#[訓異]
ころもでを,[寛]ころもてを,
うちみのさとに,[寛]うちわのさとに,
あるわれを[寛],
しらにぞひとは,[寛]しらてそひとは,
まてどこずける,[寛]まてそこすける,
" "#[番号]04/0590","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]荒玉 年之經去者 今師波登 勤与吾背子 吾<名>告為莫","#[訓読]あらたまの年の経ぬれば今しはとゆめよ我が背子我が名告らすな","#[仮名],あらたまの,としのへぬれば,いましはと,ゆめよわがせこ,わがなのらすな","#[左注]","#[校異]<> -> 名 [西(右書)][元][紀]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,名,うわさ,贈答,枕詞","#[訓異]
あらたまの[寛],
としのへぬれば,[寛]としのへゆけは,
いましはと[寛],
ゆめよわがせこ,[寛]ゆめよわかせこ,
わがなのらすな,[寛]わかなつけすな,
" "#[番号]04/0591","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]吾念乎 人尓令知哉 玉匣 開阿氣津跡 夢西所見","#[訓読]我が思ひを人に知るれか玉櫛笥開きあけつと夢にし見ゆる","#[仮名],わがおもひを,ひとにしるれか,たまくしげ,ひらきあけつと,いめにしみゆる","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,うわさ,贈答,枕詞","#[訓異]
わがおもひを,[寛]わかおもひを,
ひとにしるれか,[寛]ひとにしらすや,
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
ひらきあけつと[寛],
いめにしみゆる,[寛]ゆめにしみゆる,
" "#[番号]04/0592","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]闇夜尓 鳴奈流鶴之 外耳 聞乍可将有 相跡羽奈之尓","#[訓読]闇の夜に鳴くなる鶴の外のみに聞きつつかあらむ逢ふとはなしに","#[仮名],やみのよに,なくなるたづの,よそのみに,ききつつかあらむ,あふとはなしに","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恨み,贈答,動物,序詞","#[訓異]
やみのよに,[寛]くらきよに,
なくなるたづの,[寛]なくなるたつの,
よそのみに,[寛]よそにのみ,
ききつつかあらむ[寛],
あふとはなしに[寛],
" "#[番号]04/0593","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]君尓戀 痛毛為便無見 楢山之 小松之下尓 立嘆鴨","#[訓読]君に恋ひいたもすべなみ奈良山の小松が下に立ち嘆くかも","#[仮名],きみにこひ,いたもすべなみ,ならやまの,こまつがしたに,たちなげくかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,待つ,奈良,地名,植物,贈答","#[訓異]
きみにこひ[寛],
いたもすべなみ,[寛]いともすへなみ,
ならやまの[寛],
こまつがしたに,[寛]こまつかしたに,
たちなげくかも,[寛]たちなけくかも,
" "#[番号]04/0594","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]吾屋戸之 暮陰草乃 白露之 消蟹本名 所念鴨","#[訓読]我がやどの夕蔭草の白露の消ぬがにもとな思ほゆるかも","#[仮名],わがやどの,ゆふかげくさの,しらつゆの,けぬがにもとな,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,植物,序詞,贈答","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
ゆふかげくさの,[寛]ゆふかけくさの,
しらつゆの[寛],
けぬがにもとな,[寛]けぬかにもとな,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]04/0595","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]吾命之 将全<牟>限 忘目八 弥日異者 念益十方","#[訓読]我が命の全けむ限り忘れめやいや日に異には思ひ増すとも","#[仮名],わがいのちの,またけむかぎり,わすれめや,いやひにけには,おもひますとも","#[左注]","#[校異]幸 -> 牟 [元]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,贈答","#[訓異]
わがいのちの,[寛]わかいのちの,
またけむかぎり,[寛]またけむかきり,
わすれめや[寛],
いやひにけには[寛],
おもひますとも[寛],
" "#[番号]04/0596","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]八百日徃 濱之沙毛 吾戀二 豈不益歟 奥嶋守","#[訓読]八百日行く浜の真砂も我が恋にあにまさらじか沖つ島守","#[仮名],やほかゆく,はまのまなごも,あがこひに,あにまさらじか,おきつしまもり","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,贈答,掛詞","#[訓異]
やほかゆく[寛],
はまのまなごも,[寛]はまのまさこも,
あがこひに,[寛]わかこひに,
あにまさらじか,[寛]あにまさらめや,
おきつしまもり[寛],
" "#[番号]04/0597","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]宇都蝉之 人目乎繁見 石走 間近<君>尓 戀度可聞","#[訓読]うつせみの人目を繁み石橋の間近き君に恋ひわたるかも","#[仮名],うつせみの,ひとめをしげみ,いしはしの,まちかききみに,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]<> -> 君 [西(左書)][元][紀]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,枕詞,贈答","#[訓異]
うつせみの[寛],
ひとめをしげみ,[寛]ひとめをしけみ,
いしはしの[寛],
まちかききみに[寛],
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]04/0598","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]戀尓毛曽 人者死為 水<無>瀬河 下従吾痩 月日異","#[訓読]恋にもぞ人は死にする水無瀬川下ゆ我れ痩す月に日に異に","#[仮名],こひにもぞ,ひとはしにする,みなせがは,したゆわれやす,つきにひにけに","#[左注]","#[校異]<> -> 無 [桂][元][紀]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋病,恋情,贈答","#[訓異]
こひにもぞ,[寛]こひにもそ,
ひとはしにする[寛],
みなせがは,[寛]みなせかは,
したゆわれやす,[寛]したにわれやす,
つきにひにけに[寛],
" "#[番号]04/0599","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]朝霧之 欝相見之 人故尓 命可死 戀渡鴨","#[訓読]朝霧のおほに相見し人故に命死ぬべく恋ひわたるかも","#[仮名],あさぎりの,おほにあひみし,ひとゆゑに,いのちしぬべく,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,贈答","#[訓異]
あさぎりの,[寛]あさきりの,
おほにあひみし,[寛]ほのにあひみし,
ひとゆゑに,[寛]ひとゆへに,
いのちしぬべく,[寛]いのちしぬへく,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]04/0600","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]伊勢海之 礒毛動尓 因流波 恐人尓 戀渡鴨","#[訓読]伊勢の海の礒もとどろに寄する波畏き人に恋ひわたるかも","#[仮名],いせのうみの,いそもとどろに,よするなみ,かしこきひとに,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,三重,地名,序詞,贈答","#[訓異]
いせのうみの[寛],
いそもとどろに,[寛]いそもととろに,
よするなみ[寛],
かしこきひとに[寛],
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]04/0601","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]従情毛 吾者不念寸 山河毛 隔莫國 如是戀常羽","#[訓読]心ゆも我は思はずき山川も隔たらなくにかく恋ひむとは","#[仮名],こころゆも,わはおもはずき,やまかはも,へだたらなくに,かくこひむとは","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,贈答","#[訓異]
こころゆも,[寛]こころにも,
わはおもはずき,[寛]われはおもはす,
やまかはも[寛],
へだたらなくに,[寛]へたたらなくに,
かくこひむとは[寛],
" "#[番号]04/0602","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]暮去者 物念益 見之人乃 言問為形 面景尓而","#[訓読]夕されば物思ひまさる見し人の言とふ姿面影にして","#[仮名],ゆふされば,ものもひまさる,みしひとの,こととふすがた,おもかげにして","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,贈答","#[訓異]
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
ものもひまさる,[寛]ものおもひまさる,
みしひとの[寛],
こととふすがた,[寛]こととひしさま,
おもかげにして,[寛]おもかけにして,
" "#[番号]04/0603","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]念西 死為物尓 有麻世波 千遍曽吾者 死變益","#[訓読]思ふにし死にするものにあらませば千たびぞ我れは死にかへらまし","#[仮名],おもひにし,しにするものに,あらませば,ちたびぞわれは,しにかへらまし","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,贈答","#[訓異]
おもひにし[寛],
しにするものに[寛],
あらませば,[寛]あらませは,
ちたびぞわれは,[寛]ちたひそわれは,
しにかへらまし[寛],
" "#[番号]04/0604","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]劔大刀 身尓取副常 夢見津 何如之恠曽毛 君尓相為","#[訓読]剣大刀身に取り添ふと夢に見つ何のさがぞも君に逢はむため","#[仮名],つるぎたち,みにとりそふと,いめにみつ,なにのさがぞも,きみにあはむため","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,夢,恋情,贈答","#[訓異]
つるぎたち,[寛]つるきたち,
みにとりそふと[寛],
いめにみつ,[寛]ゆめにみつ,
なにのさがぞも,[寛]なにのさとしそも,
きみにあはむため[寛],
" "#[番号]04/0605","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]天地之 神理 無者社 吾念君尓 不相死為目","#[訓読]天地の神の理なくはこそ我が思ふ君に逢はず死にせめ","#[仮名],あめつちの,かみのことわり,なくはこそ,あがおもふきみに,あはずしにせめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,贈答","#[訓異]
あめつちの[寛],
かみのことわり,[寛]かみもことはり,
なくはこそ[寛],
あがおもふきみに,[寛]わかおもふきみに,
あはずしにせめ,[寛]あはすしにせめ,
" "#[番号]04/0606","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]吾毛念 人毛莫忘 多奈和丹 浦吹風之 止時無有","#[訓読]我れも思ふ人もな忘れおほなわに浦吹く風のやむ時もなし","#[仮名],われもおもふ,ひともなわすれ,おほなわに,うらふくかぜの,やむときもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,贈答","#[訓異]
われもおもふ[寛],
ひともなわすれ,[寛]ひともわするな,
おほなわに[寛],
うらふくかぜの,[寛]うらふくかせの,
やむときもなし,[寛]やむときなかれ,
" "#[番号]04/0607","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]皆人乎 宿与殿金者 打礼杼 君乎之念者 寐不勝鴨","#[訓読]皆人を寝よとの鐘は打つなれど君をし思へば寐ねかてぬかも","#[仮名],みなひとを,ねよとのかねは,うつなれど,きみをしおもへば,いねかてぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,贈答","#[訓異]
みなひとを[寛],
ねよとのかねは[寛],
うつなれど,[寛]うつなれと,
きみをしおもへば,[寛]きみをしおもへは,
いねかてぬかも,[寛]いねかかてにかも,
" "#[番号]04/0608","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]不相念 人乎思者 大寺之 餓鬼之後尓 額衝如","#[訓読]相思はぬ人を思ふは大寺の餓鬼の後方に額つくごとし","#[仮名],あひおもはぬ,ひとをおもふは,おほてらの,がきのしりへに,ぬかつくごとし","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恨み,贈答","#[訓異]
あひおもはぬ[寛],
ひとをおもふは[寛],
おほてらの[寛],
がきのしりへに,[寛]かきのしりへに,
ぬかつくごとし,[寛]ぬかつくかこと,
" "#[番号]04/0609","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]従情毛 我者不念寸 又更 吾故郷尓 将還来者","#[訓読]心ゆも我は思はずきまたさらに我が故郷に帰り来むとは","#[仮名],こころゆも,わはおもはずき,またさらに,わがふるさとに,かへりこむとは","#[左注](右二首相別後更来贈)","#[校異]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恨み,贈答","#[訓異]
こころゆも,[寛]こころにも,
わはおもはずき,[寛]われはおもはす,
またさらに[寛],
わがふるさとに,[寛]わかふるさとに,
かへりこむとは[寛],
" "#[番号]04/0610","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)","#[原文]近有者 雖不見在乎 弥遠 君之伊座者 有不勝<自>","#[訓読]近くあれば見ねどもあるをいや遠く君がいまさば有りかつましじ","#[仮名],ちかくあれば,みねどもあるを,いやとほく,きみがいまさば,ありかつましじ","#[左注]右二首相別後更来贈","#[校異]目 -> 自 [西(訂正)][元][紀]","#[事項],相聞,作者:笠女郎,大伴家持,恋情,贈答","#[訓異]
ちかくあれば,[寛]ちかくあれは,
みねどもあるを,[寛]みねともあるを,
いやとほく,[寛]いやとほに,
きみがいまさば,[寛]きみかいまれなは,
ありかつましじ,[寛]ありてもたへし,
" "#[番号]04/0611","#[題詞](笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)大伴宿祢家持和<歌>二首","#[原文]今更 妹尓将相八跡 念可聞 幾許吾胸 欝悒将有","#[訓読]今さらに妹に逢はめやと思へかもここだ我が胸いぶせくあるらむ","#[仮名],いまさらに,いもにあはめやと,おもへかも,ここだあがむね,いぶせくあるらむ","#[左注]","#[校異]<> -> 歌 [西(右書)][元][金]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,笠女郎,贈答","#[訓異]
いまさらに[寛],
いもにあはめやと[寛],
おもへかも[寛],
ここだあがむね,[寛]ここたわかむね,
いぶせくあるらむ,[寛]いふかしからむ,
" "#[番号]04/0612","#[題詞]((笠女郎贈大伴宿祢家持歌廿四首)大伴宿祢家持和<歌>二首)","#[原文]中々者 黙毛有益<乎> 何為跡香 相見始兼 不遂尓","#[訓読]なかなかに黙もあらましを何すとか相見そめけむ遂げざらまくに","#[仮名],なかなかに,もだもあらましを,なにすとか,あひみそめけむ,とげざらまくに","#[左注]","#[校異]呼 -> 乎 [金][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,笠女郎,悔恨,恨み,贈答","#[訓異]
なかなかに[寛],
もだもあらましを,[寛]もたもあらましを,
なにすとか[寛],
あひみそめけむ[寛],
とげざらまくに,[寛]とけさらなくに,
" "#[番号]04/0613","#[題詞]山口女王贈大伴宿祢家持歌五首","#[原文]物念跡 人尓不<所>見常 奈麻強<尓> 常念弊利 在曽金津流","#[訓読]もの思ふと人に見えじとなまじひに常に思へりありぞかねつる","#[仮名],ものもふと,ひとにみえじと,なまじひに,つねにおもへり,ありぞかねつる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 所 [元][金][紀] / <> -> 尓 [元][金][紀]","#[事項],相聞,作者:山口女王,大伴家持,恋情,贈答","#[訓異]
ものもふと,[寛]ものおもふと,
ひとにみえじと,[寛]ひとにみせしと,
なまじひに,[寛]なましひに,
つねにおもへり[寛],
ありぞかねつる,[寛]ありそかねつる,
" "#[番号]04/0614","#[題詞](山口女王贈大伴宿祢家持歌五首)","#[原文]不相念 人乎也本名 白細之 袖漬左右二 哭耳四泣裳","#[訓読]相思はぬ人をやもとな白栲の袖漬つまでに音のみし泣くも","#[仮名],あひおもはぬ,ひとをやもとな,しろたへの,そでひつまでに,ねのみしなくも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:山口女王,大伴家持,贈答,怨恨","#[訓異]
あひおもはぬ[寛],
ひとをやもとな[寛],
しろたへの[寛],
そでひつまでに,[寛]そてひつまてに,
ねのみしなくも[寛],
" "#[番号]04/0615","#[題詞](山口女王贈大伴宿祢家持歌五首)","#[原文]吾背子者 不相念跡裳 敷細乃 君之枕者 夢<所>見乞","#[訓読]我が背子は相思はずとも敷栲の君が枕は夢に見えこそ","#[仮名],わがせこは,あひおもはずとも,しきたへの,きみがまくらは,いめにみえこそ","#[左注]","#[校異]尓 -> 所 [元][金][紀]","#[事項],相聞,作者:山口女王,大伴家持,恋情,贈答,枕詞,夢","#[訓異]
わがせこは,[寛]わかせこは,
あひおもはずとも,[寛]あひをもはすとも,
しきたへの[寛],
きみがまくらは,[寛]きみかまくらは,
いめにみえこそ,[寛]ゆめにみえこそ,
" "#[番号]04/0616","#[題詞](山口女王贈大伴宿祢家持歌五首)","#[原文]劔大刀 名惜雲 吾者無 君尓不相而 年之經去礼者","#[訓読]剣太刀名の惜しけくも我れはなし君に逢はずて年の経ぬれば","#[仮名],つるぎたち,なのをしけくも,われはなし,きみにあはずて,としのへぬれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:山口女王,大伴家持,うわさ,名,恋情,贈答","#[訓異]
つるぎたち,[寛]つるきたち,
なのをしけくも[寛],
われはなし[寛],
きみにあはずて,[寛]きみにあはすて,
としのへぬれば,[寛]としのへぬれは,
" "#[番号]04/0617","#[題詞](山口女王贈大伴宿祢家持歌五首)","#[原文]従蘆邊 満来塩乃 弥益荷 念歟君之 忘金鶴","#[訓読]葦辺より満ち来る潮のいや増しに思へか君が忘れかねつる","#[仮名],あしへより,みちくるしほの,いやましに,おもへかきみが,わすれかねつる","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:山口女王,大伴家持,恋情,贈答,序詞","#[訓異]
あしへより[寛],
みちくるしほの[寛],
いやましに[寛],
おもへかきみが,[寛]おもへかきみか,
わすれかねつる[寛],
" "#[番号]04/0618","#[題詞]大神女郎贈大伴宿祢家持歌一首","#[原文]狭夜中尓 友喚千鳥 物念跡 和備居時二 鳴乍本名","#[訓読]さ夜中に友呼ぶ千鳥物思ふとわびをる時に鳴きつつもとな","#[仮名],さよなかに,ともよぶちとり,ものもふと,わびをるときに,なきつつもとな","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],相聞,作者:大神女郎,大伴家持,恋情,動物,贈答","#[訓異]
さよなかに[寛],
ともよぶちとり,[寛]ともよふちとり,
ものもふと,[寛]ものおもふと,
わびをるときに,[寛]わひたるときに,
なきつつもとな[寛],
" "#[番号]04/0619","#[題詞]大伴坂上郎女怨恨歌一首[并短歌]","#[原文]押照 難波乃菅之 根毛許呂尓 君之聞四<手> 年深 長四云者 真十鏡 磨師情乎 縦手師 其日之極 浪之共 靡珠藻乃 云々 意者不持 大船乃 憑有時丹 千磐破 神哉将離 空蝉乃 人歟禁良武 通為 君毛不来座 玉梓之 使母不所見 成奴礼婆 痛毛為便無三 夜干玉乃 夜者須我良尓 赤羅引 日母至闇 雖嘆 知師乎無三 雖念 田付乎白二 幼婦常 言雲知久 手小童之 哭耳泣管 俳徊 君之使乎 待八兼手六","#[訓読]おしてる 難波の菅の ねもころに 君が聞こして 年深く 長くし言へば まそ鏡 磨ぎし心を ゆるしてし その日の極み 波の共 靡く玉藻の かにかくに 心は持たず 大船の 頼める時に ちはやぶる 神か離くらむ うつせみの 人か障ふらむ 通はしし 君も来まさず 玉梓の 使も見えず なりぬれば いたもすべなみ ぬばたまの 夜はすがらに 赤らひく 日も暮るるまで 嘆けども 験をなみ 思へども たづきを知らに たわや女と 言はくもしるく たわらはの 音のみ泣きつつ た廻り 君が使を 待ちやかねてむ","#[仮名],おしてる,なにはのすげの,ねもころに,きみがきこして,としふかく,ながくしいへば,まそかがみ,とぎしこころを,ゆるしてし,そのひのきはみ,なみのむた,なびくたまもの,かにかくに,こころはもたず,おほぶねの,たのめるときに,ちはやぶる,かみかさくらむ,うつせみの,ひとかさふらむ,かよはしし,きみもきまさず,たまづさの,つかひもみえず,なりぬれば,いたもすべなみ,ぬばたまの,よるはすがらに,あからひく,ひもくるるまで,なげけども,しるしをなみ,おもへども,たづきをしらに,たわやめと,いはくもしるく,たわらはの,ねのみなきつつ,たもとほり,きみがつかひを,まちやかねてむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] / 乎 -> 手 [金]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,怨恨,恋情,挽歌的手法,枕詞","#[訓異]
おしてる[寛],
なにはのすげの,[寛]なにはのすけの,
ねもころに[寛],
きみがきこして,[寛]きみかききしを,
としふかく[寛],
ながくしいへば,[寛]なかくしいへは,
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
とぎしこころを,[寛]ときしこころを,
ゆるしてし[寛],
そのひのきはみ[寛],
なみのむた[寛],
なびくたまもの,[寛]なひくたまもの,
かにかくに,[寛]とにかくに,
こころはもたず,[寛]こころはもたす,
おほぶねの,[寛]おほふねの,
たのめるときに[寛],
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
かみかさくらむ,[寛]かみやかれなむ,
うつせみの[寛],
ひとかさふらむ,[寛]ひとかいむらむ,
かよはしし,[寛]かよひせし,
きみもきまさず,[寛]きみもきまさす,
たまづさの,[寛]たまつさの,
つかひもみえず,[寛]つかひもみえす,
なりぬれば,[寛]なりぬれは,
いたもすべなみ,[寛]いともすへなみ,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よるはすがらに,[寛]よるはすからに,
あからひく[寛],
ひもくるるまで,[寛]ひもくるるまて,
なげけども,[寛]なけけとも,
しるしをなみ,[寛]しるしをなしみ,
おもへども,[寛]おもへとも,
たづきをしらに,[寛]たつきをしらに,
たわやめと,[寛]たをやめと,
いはくもしるく[寛],
たわらはの,[寛]わらはの,
ねのみなきつつ,[寛]ねのみなくつつ,
たもとほり,[寛]たちとまり,
きみがつかひを,[寛]きみかつかひを,
まちやかねてむ[寛],
" "#[番号]04/0620","#[題詞](大伴坂上郎女怨恨歌一首[并短歌])反歌","#[原文]従元 長謂管 不<令>恃者 如是念二 相益物歟","#[訓読]初めより長く言ひつつ頼めずはかかる思ひに逢はましものか","#[仮名],はじめより,ながくいひつつ,たのめずは,かかるおもひに,あはましものか","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 念 -> 令 [紀]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,悔恨,怨恨","#[訓異]
はじめより,[寛]はしめより,
ながくいひつつ,[寛]なかくいひつつ,
たのめずは,[寛]たのめすは,
かかるおもひに[寛],
あはましものか[寛],
" "#[番号]04/0621","#[題詞]西海道節度使判官佐伯宿祢東人妻贈夫君歌一首","#[原文]無間 戀尓可有牟 草枕 客有公之 夢尓之所見","#[訓読]間なく恋ふれにかあらむ草枕旅なる君が夢にし見ゆる","#[仮名],あひだなく,こふれにかあらむ,くさまくら,たびなるきみが,いめにしみゆる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:佐伯東人妻,羈旅,恋情,別離,贈答,枕詞","#[訓異]
あひだなく,[寛]ひまもなく,
こふれにかあらむ,[寛]こふるにかあらむ,
くさまくら[寛],
たびなるきみが,[寛]たひなるきみか,
いめにしみゆる,[寛]ゆめにしみゆる,
" "#[番号]04/0622","#[題詞](西海道節度使判官佐伯宿祢東人妻贈夫君歌一首)佐伯宿祢東人和歌一首","#[原文]草枕 客尓久 成宿者 汝乎社念 莫戀吾妹","#[訓読]草枕旅に久しくなりぬれば汝をこそ思へな恋ひそ我妹","#[仮名],くさまくら,たびにひさしく,なりぬれば,なをこそおもへ,なこひそわぎも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:佐伯東人,和歌,羈旅,別離,慰め,恋情,贈答,枕詞","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびにひさしく,[寛]たひにひさしく,
なりぬれば,[寛]なりぬれは,
なをこそおもへ,[寛]なれをこそおもへ,
なこひそわぎも,[寛]なこひそわきも,
" "#[番号]04/0623","#[題詞]池邊王宴誦歌一首","#[原文]松之葉尓 月者由移去 黄葉乃 過哉君之 不相夜多焉","#[訓読]松の葉に月はゆつりぬ黄葉の過ぐれや君が逢はぬ夜ぞ多き","#[仮名],まつのはに,つきはゆつりぬ,もみちばの,すぐれやきみが,あはぬよぞおほき","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:池邊王,伝誦,転用,怨恨,宴席,枕詞,植物,誦詠","#[訓異]
まつのはに[寛],
つきはゆつりぬ[寛],
もみちばの,[寛]もみちはの,
すぐれやきみが,[寛]すきぬやきみか,
あはぬよぞおほき,[寛]あはぬよおほく,
" "#[番号]04/0624","#[題詞]天皇思酒人女王御製歌一首 [女王者穂積皇子之孫女也]","#[原文]道相而 咲之柄尓 零雪乃 消者消香二 戀云君妹","#[訓読]道に逢ひて笑まししからに降る雪の消なば消ぬがに恋ふといふ我妹","#[仮名],みちにあひて,ゑまししからに,ふるゆきの,けなばけぬがに,こふといふわぎも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 咲 [元][金][紀] 嘆","#[事項],相聞,作者:聖武天皇,酒人女王,難解","#[訓異]
みちにあひて[寛],
ゑまししからに,[寛]ゑみせしからに,
ふるゆきの[寛],
けなばけぬがに,[寛]けなはけぬかに,
こふといふわぎも,[寛]こふてふわきも,
" "#[番号]04/0625","#[題詞]高安王L鮒贈娘子歌一首 [高安王者後賜姓大原真人氏]","#[原文]奥弊徃 邊去伊麻夜 為妹 吾漁有 藻臥束鮒","#[訓読]沖辺行き辺を行き今や妹がため我が漁れる藻臥束鮒","#[仮名],おきへゆき,へをゆきいまや,いもがため,わがすなどれる,もふしつかふな","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 弊 [元][紀] 幣","#[事項],相聞,作者:高安王,贈り物,動物","#[訓異]
おきへゆき[寛],
へをゆきいまや,[寛]へにゆきいまや,
いもがため,[寛]いもかため,
わがすなどれる,[寛]わかすなとれる,
もふしつかふな[寛],
" "#[番号]04/0626","#[題詞]八代女王獻天皇歌一首","#[原文]君尓因 言之繁乎 古郷之 明日香乃河尓 潔身為尓去 [一尾云龍田超 三津之濱邊尓 潔身四二由久]","#[訓読]君により言の繁きを故郷の明日香の川にみそぎしに行く [一尾云龍田越え御津の浜辺にみそぎしに行く]","#[仮名],きみにより,ことのしげきを,ふるさとの,あすかのかはに,みそぎしにゆく,[たつたこえ,みつのはまべに,みそぎしにゆく]","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:八代女王,聖武天皇,うわさ,飛鳥,地名","#[訓異]
きみにより[寛],
ことのしげきを,[寛]ことのしけきを,
ふるさとの[寛],
あすかのかはに[寛],
みそぎしにゆく,[寛]みそきにしゆく,
[たつたこえ[寛],
みつのはまべに,[寛]みつのはまへに,
みそぎしにゆく],[寛]みそきにしゆく,
" "#[番号]04/0627","#[題詞]娘子報贈佐伯宿祢赤麻呂歌一首","#[原文]吾手本 将巻跡念牟 大夫者 <變>水<f> 白髪生二有","#[訓読]我がたもとまかむと思はむ大夫は変若水求め白髪生ひにけり","#[仮名],わがたもと,まかむとおもはむ,ますらをは,をちみづもとめ,しらかおひにけり","#[左注]","#[校異]戀 -> 變 [元] / 定 -> f [岩波大系]","#[事項],相聞,作者:娘子,佐伯赤麻呂,諧謔,贈答,戯笑","#[訓異]
わがたもと,[寛]わかたもと,
まかむとおもはむ[寛],
ますらをは[寛],
をちみづもとめ,[寛]なみたにしつみ,
しらかおひにけり,[寛]しらかおひにたり,
" "#[番号]04/0628","#[題詞](娘子報贈佐伯宿祢赤麻呂歌一首)佐伯宿祢赤麻呂和歌一首","#[原文]白髪生流 事者不念 <變>水者 鹿煮藻闕二毛 求而将行","#[訓読]白髪生ふることは思はず変若水はかにもかくにも求めて行かむ","#[仮名],しらかおふる,ことはおもはず,をちみづは,かにもかくにも,もとめてゆかむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 戀 -> 變 [新訓]","#[事項],相聞,作者:佐伯赤麻呂,娘子,和歌","#[訓異]
しらかおふる[寛],
ことはおもはず,[寛]ことはおもはす,
をちみづは,[寛]なみたをは,
かにもかくにも[寛],
もとめてゆかむ,[寛]さためてゆかむ,
" "#[番号]04/0629","#[題詞]大伴四綱宴席歌一首","#[原文]奈何鹿 使之来流 君乎社 左右裳 待難為礼","#[訓読]何すとか使の来つる君をこそかにもかくにも待ちかてにすれ","#[仮名],なにすとか,つかひのきつる,きみをこそ,かにもかくにも,まちかてにすれ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴四綱,遅参,怨恨,宴席","#[訓異]
なにすとか,[寛]なにしにか,
つかひのきつる[寛],
きみをこそ[寛],
かにもかくにも,[寛]とにもかくにも,
まちかてにすれ[寛],
" "#[番号]04/0630","#[題詞]佐伯宿祢赤麻呂歌一首","#[原文]初花之 可散物乎 人事乃 繁尓因而 止息比者鴨","#[訓読]初花の散るべきものを人言の繁きによりてよどむころかも","#[仮名],はつはなの,ちるべきものを,ひとごとの,しげきによりて,よどむころかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:佐伯赤麻呂,比喩,うわさ,恋愛","#[訓異]
はつはなの[寛],
ちるべきものを,[寛]ちるへきものを,
ひとごとの,[寛]ひとことの,
しげきによりて,[寛]しけきによりて,
よどむころかも,[寛]とまるころかも,
" "#[番号]04/0631","#[題詞]湯原王贈娘子歌二首 [志貴皇子之子也]","#[原文]宇波弊無 物可聞人者 然許 遠家路乎 令還念者","#[訓読]うはへなきものかも人はしかばかり遠き家路を帰さく思へば","#[仮名],うはへなき,ものかもひとは,しかばかり,とほきいへぢを,かへさくおもへば","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],相聞,作者:湯原王,娘子,怨恨,贈答","#[訓異]
うはへなき[寛],
ものかもひとは[寛],
しかばかり,[寛]しかはかり,
とほきいへぢを,[寛]とほきいへちを,
かへさくおもへば,[寛]かへすとおもへは,
" "#[番号]04/0632","#[題詞](湯原王贈娘子歌二首 [志貴皇子之子也])","#[原文]目二破見而 手二破不所取 月内之 楓如 妹乎奈何責","#[訓読]目には見て手には取らえぬ月の内の楓のごとき妹をいかにせむ","#[仮名],めにはみて,てにはとらえぬ,つきのうちの,かつらのごとき,いもをいかにせむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:湯原王,娘子,贈答,植物,恋情","#[訓異]
めにはみて[寛],
てにはとらえぬ,[寛]てにはとられぬ,
つきのうちの[寛],
かつらのごとき,[寛]かつらのことき,
いもをいかにせむ[寛],
" "#[番号]04/0633","#[題詞](湯原王贈娘子歌二首 [志貴皇子之子也])娘子報贈歌二首","#[原文]幾許 思異目鴨 敷細之 枕片去 夢所見来之","#[訓読]ここだくも思ひけめかも敷栲の枕片さる夢に見え来し","#[仮名],ここだくも,おもひけめかも,しきたへの,まくらかたさる,いめにみえこし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,娘子,作者:湯原王,恋情,贈答,枕詞,恋情","#[訓異]
ここだくも,[寛]いくそはく,
おもひけめかも[寛],
しきたへの[寛],
まくらかたさる,[寛]まくらかたさり,
いめにみえこし,[寛]ゆめにみえこし,
" "#[番号]04/0634","#[題詞]((湯原王贈娘子歌二首 [志貴皇子之子也])娘子報贈歌二首)","#[原文]家二四手 雖見不飽乎 草枕 客毛妻与 有之乏左","#[訓読]家にして見れど飽かぬを草枕旅にも妻とあるが羨しさ","#[仮名],いへにして,みれどあかぬを,くさまくら,たびにもつまと,あるがともしさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:娘子,湯原王,揶揄,恋情,枕詞,贈答","#[訓異]
いへにして[寛],
みれどあかぬを,[寛]みれとあかぬを,
くさまくら[寛],
たびにもつまと,[寛]たひにもつまと,
あるがともしさ,[寛]あるかともしさ,
" "#[番号]04/0635","#[題詞]湯原王亦贈歌二首","#[原文]草枕 客者嬬者 雖率有 匣内之 珠社所念","#[訓読]草枕旅には妻は率たれども櫛笥のうちの玉をこそ思へ","#[仮名],くさまくら,たびにはつまは,ゐたれども,くしげのうちの,たまをこそおもへ","#[左注]","#[校異]念 [紀] 見","#[事項],相聞,作者:湯原王,娘子,二重,曖昧,枕詞,贈答","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびにはつまは,[寛]たひにはいもは,
ゐたれども,[寛]いたれとも,
くしげのうちの,[寛]はこのうちなる,
たまをこそおもへ,[寛]たまとこそおもへ,
" "#[番号]04/0636","#[題詞](湯原王亦贈歌二首)","#[原文]余衣 形見尓奉 布細之 枕不離 巻而左宿座","#[訓読]我が衣形見に奉る敷栲の枕を放けずまきてさ寝ませ","#[仮名],あがころも,かたみにまつる,しきたへの,まくらをさけず,まきてさねませ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:湯原王,娘子,形見,枕詞,贈答","#[訓異]
あがころも,[寛]わかきぬを,
かたみにまつる,[寛]かたみにまたす,
しきたへの[寛],
まくらをさけず,[寛]まくらからさす,
まきてさねませ[寛],
" "#[番号]04/0637","#[題詞]娘子復報贈歌一首","#[原文]吾背子之 形見之衣 嬬問尓 <余>身者不離 事不問友","#[訓読]我が背子が形見の衣妻どひに我が身は離けじ言とはずとも","#[仮名],わがせこが,かたみのころも,つまどひに,あがみはさけじ,こととはずとも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 余 [西(右書)][元][金][紀]","#[事項],相聞,作者:娘子,湯原王,形見,贈答","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
かたみのころも[寛],
つまどひに,[寛]つまとひに,
あがみはさけじ,[寛]わかみはさけし,
こととはずとも,[寛]こととはすとも,
" "#[番号]04/0638","#[題詞]湯原王亦贈歌一首","#[原文]直一夜 隔之可良尓 荒玉乃 月歟經去跡 心遮","#[訓読]ただ一夜隔てしからにあらたまの月か経ぬると心惑ひぬ","#[仮名],ただひとよ,へだてしからに,あらたまの,つきかへぬると,こころまどひぬ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],相聞,作者:湯原王,娘子,恋情,枕詞,贈答","#[訓異]
ただひとよ,[寛]たたひとよ,
へだてしからに,[寛]へたてしからに,
あらたまの[寛],
つきかへぬると[寛],
こころまどひぬ,[寛]おもほゆるかも,
" "#[番号]04/0639","#[題詞]娘子復報贈歌一首","#[原文]吾背子我 如是戀礼許曽 夜干玉能 夢所見管 寐不所宿家礼","#[訓読]我が背子がかく恋ふれこそぬばたまの夢に見えつつ寐ねらえずけれ","#[仮名],わがせこが,かくこふれこそ,ぬばたまの,いめにみえつつ,いねらえずけれ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:娘子,湯原王,夢,恋情,枕詞,贈答","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
かくこふれこそ[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
いめにみえつつ,[寛]ゆめにみえつつ,
いねらえずけれ,[寛]いねらえすけれ,
" "#[番号]04/0640","#[題詞]湯原王亦贈歌一首","#[原文]波之家也思 不遠里乎 雲<居>尓也 戀管将居 月毛不經國","#[訓読]はしけやし間近き里を雲居にや恋ひつつ居らむ月も経なくに","#[仮名],はしけやし,まちかきさとを,くもゐにや,こひつつをらむ,つきもへなくに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 井 -> 居 [元][金][紀]","#[事項],相聞,作者:湯原王,娘子,恋情,贈答","#[訓異]
はしけやし[寛],
まちかきさとを[寛],
くもゐにや[寛],
こひつつをらむ[寛],
つきもへなくに[寛],
" "#[番号]04/0641","#[題詞]娘子復報贈<歌>一首","#[原文]絶常云者 和備染責跡 焼大刀乃 隔付經事者 幸也吾君","#[訓読]絶ゆと言はばわびしみせむと焼大刀のへつかふことは幸くや我が君","#[仮名],たゆといはば,わびしみせむと,やきたちの,へつかふことは,さきくやあがきみ","#[左注]","#[校異]和歌 -> 歌 [元][金][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:娘子,湯原王,怨恨,離別,枕詞","#[訓異]
たゆといはば,[寛]たゆといへは,
わびしみせむと,[寛]わひしみせむと,
やきたちの[寛],
へつかふことは[寛],
さきくやあがきみ,[寛]よしやわかきみ,
" "#[番号]04/0642","#[題詞]湯原王歌一首","#[原文]吾妹兒尓 戀而乱<者> 久流部寸二 懸而縁与 余戀始","#[訓読]我妹子に恋ひて乱ればくるべきに懸けて寄せむと我が恋ひそめし","#[仮名],わぎもこに,こひてみだれば,くるべきに,かけてよせむと,あがこひそめし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 在 -> 者 [略解] / 懸 [金][元] 縣","#[事項],相聞,作者:湯原王,娘子,恋情,枕詞","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こひてみだれば,[寛]こひてみたるる,
くるべきに,[寛]くるへきに,
かけてよせむと,[寛]かけてしよしと,
あがこひそめし,[寛]わかこひそめし,
" "#[番号]04/0643","#[題詞]紀郎女怨恨歌三首 [鹿人大夫之女名曰小鹿也安貴王之妻也]","#[原文]世間之 女尓思有者 吾渡 痛背乃河乎 渡金目八","#[訓読]世の中の女にしあらば我が渡る痛背の川を渡りかねめや","#[仮名],よのなかの,をみなにしあらば,わがわたる,あなせのかはを,わたりかねめや","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],相聞,作者:紀郎女,河渡り,怨恨","#[訓異]
よのなかの[寛],
をみなにしあらば,[寛]をとめにしあらは,
わがわたる,[寛]わかわたる,
あなせのかはを[寛],
わたりかねめや[寛],
" "#[番号]04/0644","#[題詞](紀郎女怨恨歌三首 [鹿人大夫之女名曰小鹿也安貴王之妻也])","#[原文]今者吾羽 和備曽四二結類 氣乃緒尓 念師君乎 縦左<久>思者","#[訓読]今は我はわびぞしにける息の緒に思ひし君をゆるさく思へば","#[仮名],いまはわは,わびぞしにける,いきのをに,おもひしきみを,ゆるさくおもへば","#[左注]","#[校異]<> -> 久 [元][金][紀]","#[事項],相聞,作者:紀郎女,怨恨,離別","#[訓異]
いまはわは,[寛]いまはわれは,
わびぞしにける,[寛]わひそしにける,
いきのをに[寛],
おもひしきみを[寛],
ゆるさくおもへば,[寛]ゆるさくおもへは,
" "#[番号]04/0645","#[題詞](紀郎女怨恨歌三首 [鹿人大夫之女名曰小鹿也安貴王之妻也])","#[原文]白<細乃> 袖可別 日乎近見 心尓咽飯 哭耳四所泣","#[訓読]白栲の袖別るべき日を近み心にむせひ音のみし泣かゆ","#[仮名],しろたへの,そでわかるべき,ひをちかみ,こころにむせひ,ねのみしなかゆ","#[左注]","#[校異]妙之 -> 細乃 [元][金][紀]","#[事項],相聞,作者:紀郎女,離別,枕詞","#[訓異]
しろたへの[寛],
そでわかるべき,[寛]そてわかるへき,
ひをちかみ[寛],
こころにむせひ[寛],
ねのみしなかゆ,[寛]ねのみしなかる,
" "#[番号]04/0646","#[題詞]大伴宿祢駿河麻呂歌一首","#[原文]大夫之 思和備乍 遍多 嘆久嘆乎 不負物可聞","#[訓読]ますらをの思ひわびつつたびまねく嘆く嘆きを負はぬものかも","#[仮名],ますらをの,おもひわびつつ,たびまねく,なげくなげきを,おはぬものかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴駿河麻呂,恋情","#[訓異]
ますらをの[寛],
おもひわびつつ,[寛]おもひわひつつ,
たびまねく,[寛]あまたたひ,
なげくなげきを,[寛]なけくなけきを,
おはぬものかも[寛],
" "#[番号]04/0647","#[題詞]大伴坂上郎女歌一首","#[原文]心者 忘日無久 雖念 人之事社 繁君尓阿礼","#[訓読]心には忘るる日なく思へども人の言こそ繁き君にあれ","#[仮名],こころには,わするるひなく,おもへども,ひとのことこそ,しげききみにあれ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正復旧)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,遊戯的,うわさ","#[訓異]
こころには[寛],
わするるひなく[寛],
おもへども,[寛]おもへとも,
ひとのことこそ[寛],
しげききみにあれ,[寛]しけききみにあれ,
" "#[番号]04/0648","#[題詞]大伴宿祢駿河麻呂歌一首","#[原文]不相見而 氣長久成奴 比日者 奈何好去哉 言借吾妹","#[訓読]相見ずて日長くなりぬこの頃はいかに幸くやいふかし我妹","#[仮名],あひみずて,けながくなりぬ,このころは,いかにさきくや,いふかしわぎも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正復旧)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴駿河麻呂","#[訓異]
あひみずて,[寛]あひみすて,
けながくなりぬ,[寛]けなかくなりぬ,
このころは[寛],
いかにさきくや,[寛]いかによしゆきや,
いふかしわぎも,[寛]いふかかしわきも,
" "#[番号]04/0649","#[題詞]大伴坂上郎女歌一首","#[原文]夏葛之 不絶使乃 不通<有>者 言下有如 念鶴鴨","#[訓読]夏葛の絶えぬ使のよどめれば事しもあるごと思ひつるかも","#[仮名],なつくずの,たえぬつかひの,よどめれば,ことしもあるごと,おもひつるかも","#[左注]右坂上郎女者佐保大納言卿之女也 駿河麻呂此高市大卿之孫也 兩卿兄弟之家 女孫姑姪之族 是以題歌送答相問起居","#[校異]歌 [西] 謌 / <> -> 有 [元][金][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,停滞,使い,不安,枕詞,植物","#[訓異]
なつくずの,[寛]なつくすの,
たえぬつかひの[寛],
よどめれば,[寛]かよはねは,
ことしもあるごと,[寛]ことしもあること,
おもひつるかも[寛],
" "#[番号]04/0650","#[題詞]大伴宿祢三依離復相歡歌一首","#[原文]吾妹兒者 常世國尓 住家<良>思 昔見従 變若益尓家利","#[訓読]我妹子は常世の国に住みけらし昔見しより変若ましにけり","#[仮名],わぎもこは,とこよのくにに,すみけらし,むかしみしより,をちましにけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正復旧)] 歌 / 郎 -> 良 [元][金][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴三依,恋愛","#[訓異]
わぎもこは,[寛]わきもこは,
とこよのくにに[寛],
すみけらし[寛],
むかしみしより[寛],
をちましにけり,[寛]わかへましにけり,
" "#[番号]04/0651","#[題詞]大伴坂上郎女歌二首","#[原文]久堅乃 天露霜 置二家里 宅有人毛 待戀奴濫","#[訓読]ひさかたの天の露霜置きにけり家なる人も待ち恋ひぬらむ","#[仮名],ひさかたの,あめのつゆしも,おきにけり,いへなるひとも,まちこひぬらむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,枕詞","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あめのつゆしも,[寛]あまのつゆしも,
おきにけり[寛],
いへなるひとも,[寛]いへにあるひとも,
まちこひぬらむ[寛],
" "#[番号]04/0652","#[題詞](大伴坂上郎女歌二首)","#[原文]玉主尓 珠者授而 勝且毛 枕与吾者 率二将宿","#[訓読]玉守に玉は授けてかつがつも枕と我れはいざふたり寝む","#[仮名],たまもりに,たまはさづけて,かつがつも,まくらとわれは,いざふたりねむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,比喩,諦念","#[訓異]
たまもりに[寛],
たまはさづけて,[寛]たまはさつけて,
かつがつも,[寛]かつかつも,
まくらとわれは[寛],
いざふたりねむ,[寛]いさふたりねむ,
" "#[番号]04/0653","#[題詞]大伴宿祢駿河麻呂歌三首","#[原文]情者 不忘物乎 <儻> 不見日數多 月曽經去来","#[訓読]心には忘れぬものをたまさかに見ぬ日さまねく月ぞ経にける","#[仮名],こころには,わすれぬものを,たまさかに,みぬひさまねく,つきぞへにける","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 儻 [西(訂正)][元][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴駿河麻呂,弁解","#[訓異]
こころには[寛],
わすれぬものを[寛],
たまさかに,[寛]たまたまも,
みぬひさまねく,[寛]みぬひかすおほく,
つきぞへにける,[寛]つきそへにける,
" "#[番号]04/0654","#[題詞](大伴宿祢駿河麻呂歌三首)","#[原文]相見者 月毛不經尓 戀云者 乎曽呂登吾乎 於毛保寒毳","#[訓読]相見ては月も経なくに恋ふと言はばをそろと我れを思ほさむかも","#[仮名],あひみては,つきもへなくに,こふといはば,をそろとわれを,おもほさむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴駿河麻呂,恋愛","#[訓異]
あひみては[寛],
つきもへなくに[寛],
こふといはば,[寛]こふといへは,
をそろとわれを[寛],
おもほさむかも[寛],
" "#[番号]04/0655","#[題詞](大伴宿祢駿河麻呂歌三首)","#[原文]不念乎 思常云者 天地之 神祇毛知寒 邑礼左變","#[訓読]思はぬを思ふと言はば天地の神も知らさむ邑礼左変","#[仮名],おもはぬを,おもふといはば,あめつちの,かみもしらさむ,****","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴駿河麻呂,難訓,恋愛","#[訓異]
おもはぬを[寛],
おもふといはば,[寛]おもふといはは,
あめつちの[寛],
かみもしらさむ,[寛]かみもしるかに,
****,[寛]さとれてかはり,
" "#[番号]04/0656","#[題詞]大伴坂上郎女歌六首","#[原文]吾耳曽 君尓者戀流 吾背子之 戀云事波 言乃名具左曽","#[訓読]我れのみぞ君には恋ふる我が背子が恋ふといふことは言のなぐさぞ","#[仮名],あれのみぞ,きみにはこふる,わがせこが,こふといふことは,ことのなぐさぞ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正復旧)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,恋情","#[訓異]
あれのみぞ,[寛]われのみそ,
きみにはこふる[寛],
わがせこが,[寛]わかせこか,
こふといふことは[寛],
ことのなぐさぞ,[寛]ことのなくせそ,
" "#[番号]04/0657","#[題詞](大伴坂上郎女歌六首)","#[原文]不念常 日手師物乎 翼酢色之 變安寸 吾意可聞","#[訓読]思はじと言ひてしものをはねず色のうつろひやすき我が心かも","#[仮名],おもはじと,いひてしものを,はねずいろの,うつろひやすき,あがこころかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,煩悶,植物,枕詞","#[訓異]
おもはじと,[寛]おもはしと,
いひてしものを[寛],
はねずいろの,[寛]はねすいろの,
うつろひやすき[寛],
あがこころかも,[寛]わかこころかも,
" "#[番号]04/0658","#[題詞](大伴坂上郎女歌六首)","#[原文]雖念 知僧裳無跡 知物乎 奈何幾許 吾戀渡","#[訓読]思へども験もなしと知るものを何かここだく我が恋ひわたる","#[仮名],おもへども,しるしもなしと,しるものを,なにかここだく,あがこひわたる","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,恋情","#[訓異]
おもへども,[寛]おもへとも,
しるしもなしと[寛],
しるものを[寛],
なにかここだく,[寛]なそかくはかり,
あがこひわたる,[寛]わかこひわたる,
" "#[番号]04/0659","#[題詞](大伴坂上郎女歌六首)","#[原文]豫 人事繁 如是有者 四恵也吾背子 奥裳何如荒海藻","#[訓読]あらかじめ人言繁しかくしあらばしゑや我が背子奥もいかにあらめ","#[仮名],あらかじめ,ひとごとしげし,かくしあらば,しゑやわがせこ,おくもいかにあらめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,うわさ","#[訓異]
あらかじめ,[寛]かねてより,
ひとごとしげし,[寛]ひとことしけく,
かくしあらば,[寛]かくしあらは,
しゑやわがせこ,[寛]しゑやわかせこ,
おくもいかにあらめ,[寛]おきもいかかあらも,
" "#[番号]04/0660","#[題詞](大伴坂上郎女歌六首)","#[原文]汝乎与吾乎 人曽離奈流 乞吾君 人之中言 聞起名湯目","#[訓読]汝をと我を人ぞ離くなるいで我が君人の中言聞きこすなゆめ","#[仮名],なをとあを,ひとぞさくなる,いであがきみ,ひとのなかごと,ききこすなゆめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,うわさ","#[訓異]
なをとあを,[寛]なをとわを,
ひとぞさくなる,[寛]ひとそさくなる,
いであがきみ,[寛]いてわきみ,
ひとのなかごと,[寛]ひとのなかこと,
ききこすなゆめ,[寛]ききたつなゆめ,
" "#[番号]04/0661","#[題詞](大伴坂上郎女歌六首)","#[原文]戀々而 相有時谷 愛寸 事盡手四 長常念者","#[訓読]恋ひ恋ひて逢へる時だにうるはしき言尽してよ長くと思はば","#[仮名],こひこひて,あへるときだに,うるはしき,ことつくしてよ,ながくとおもはば","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,恋情","#[訓異]
こひこひて[寛],
あへるときだに,[寛]あへるときたに,
うるはしき,[寛]うつくしき,
ことつくしてよ[寛],
ながくとおもはば,[寛]なかくとおもはは,
" "#[番号]04/0662","#[題詞]市原王歌一首","#[原文]網兒之山 五百重隠有 佐堤乃埼 左手蝿師子之 夢二四所見","#[訓読]網児の山五百重隠せる佐堤の崎さで延へし子が夢にし見ゆる","#[仮名],あごのやま,いほへかくせる,さでのさき,さではへしこが,いめにしみゆる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:市原王,恋情,地名,三重県,夢","#[訓異]
あごのやま,[寛]あこのやま,
いほへかくせる[寛],
さでのさき,[寛]さてのさき,
さではへしこが,[寛]さてはへしこの,
いめにしみゆる,[寛]ゆめにしみゆる,
" "#[番号]04/0663","#[題詞]安<都>宿祢年足歌一首","#[原文]佐穂度 吾家之上二 鳴鳥之 音夏可思吉 愛妻之兒","#[訓読]佐保渡り我家の上に鳴く鳥の声なつかしきはしき妻の子","#[仮名],さほわたり,わぎへのうへに,なくとりの,こゑなつかしき,はしきつまのこ","#[左注]","#[校異]部 -> 都 [元] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:安都年足,恋情,奈良,地名,動物,序詞","#[訓異]
さほわたり[寛],
わぎへのうへに,[寛]わきへのうへに,
なくとりの[寛],
こゑなつかしき[寛],
はしきつまのこ,[寛]おもひつまのこ,
" "#[番号]04/0664","#[題詞]大伴宿祢像見歌一首","#[原文]石上 零十方雨二 将關哉 妹似相武登 言義之鬼尾","#[訓読]石上降るとも雨につつまめや妹に逢はむと言ひてしものを","#[仮名],いそのかみ,ふるともあめに,つつまめや,いもにあはむと,いひてしものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴像見,枕詞,恋情","#[訓異]
いそのかみ[寛],
ふるともあめに[寛],
つつまめや,[寛]さはらめや,
いもにあはむと[寛],
いひてしものを,[寛]ちきりしものを,
" "#[番号]04/0665","#[題詞]安倍朝臣蟲麻呂歌一首","#[原文]向座而 雖見不飽 吾妹子二 立離徃六 田付不知毛","#[訓読]向ひ居て見れども飽かぬ我妹子に立ち別れ行かむたづき知らずも","#[仮名],むかひゐて,みれどもあかぬ,わぎもこに,たちわかれゆかむ,たづきしらずも","#[左注]","#[校異]倍 [元] 陪 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:安倍蟲麻呂","#[訓異]
むかひゐて[寛],
みれどもあかぬ,[寛]みれともあかぬ,
わぎもこに,[寛]わきもこに,
たちわかれゆかむ[寛],
たづきしらずも,[寛]たつきしらすも,
" "#[番号]04/0666","#[題詞]大伴坂上郎女歌二首","#[原文]不相見者 幾久毛 不有國 幾許吾者 戀乍裳荒鹿","#[訓読]相見ぬは幾久さにもあらなくにここだく我れは恋ひつつもあるか","#[仮名],あひみぬは,いくひささにも,あらなくに,ここだくあれは,こひつつもあるか","#[左注](右大伴坂上郎女之母石川内命婦与安<陪>朝臣蟲満之母安曇外命婦同居姉妹 同氣之親焉 縁此郎女蟲満相見不踈相談既密 聊作戯歌以為問答也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,恋情","#[訓異]
あひみぬは,[寛]あひみては,
いくひささにも,[寛]いくひさしさも,
あらなくに[寛],
ここだくあれは,[寛]ここはくわれは,
こひつつもあるか[寛],
" "#[番号]04/0667","#[題詞](大伴坂上郎女歌二首)","#[原文]戀々而 相有物乎 月四有者 夜波隠良武 須臾羽蟻待","#[訓読]恋ひ恋ひて逢ひたるものを月しあれば夜は隠るらむしましはあり待て","#[仮名],こひこひて,あひたるものを,つきしあれば,よはこもるらむ,しましはありまて","#[左注]右大伴坂上郎女之母石川内命婦与安<陪>朝臣蟲満之母安曇外命婦同居姉妹 同氣之親焉 縁此郎女蟲満相見不踈相談既密 聊作戯歌以為問答也","#[校異]部 -> 陪 [元][類] 部 [紀][温][矢]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,引き留め","#[訓異]
こひこひて[寛],
あひたるものを[寛],
つきしあれば,[寛]つきしあれは,
よはこもるらむ[寛],
しましはありまて,[寛]しはしはありまて,
" "#[番号]04/0668","#[題詞]厚見王歌一首","#[原文]朝尓日尓 色付山乃 白雲之 可思過 君尓不有國","#[訓読]朝に日に色づく山の白雲の思ひ過ぐべき君にあらなくに","#[仮名],あさにけに,いろづくやまの,しらくもの,おもひすぐべき,きみにあらなくに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正復旧)] 歌","#[事項],相聞,作者:厚見王,恋情","#[訓異]
あさにけに,[寛]あさにひに,
いろづくやまの,[寛]いろつくやまの,
しらくもの[寛],
おもひすぐべき,[寛]おもひすくへき,
きみにあらなくに[寛],
" "#[番号]04/0669","#[題詞]春日王歌一首 [志貴皇子之子母曰多紀皇女也]","#[原文]足引之 山橘乃 色丹出<与> 語言継而 相事毛将有","#[訓読]あしひきの山橘の色に出でよ語らひ継ぎて逢ふこともあらむ","#[仮名],あしひきの,やまたちばなの,いろにいでよ,かたらひつぎて,あふこともあらむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 而 -> 与 [元][類][紀]","#[事項],相聞,作者:春日王,植物,序詞,うわさ","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまたちばなの,[寛]やまたちはなの,
いろにいでよ,[寛]いろにいてて,
かたらひつぎて,[寛]かたらひつきて,
あふこともあらむ[寛],
" "#[番号]04/0670","#[題詞]湯原王歌一首","#[原文]月讀之 光二来益 足疾乃 山<寸>隔而 不遠國","#[訓読]月読の光りに来ませあしひきの山きへなりて遠からなくに","#[仮名],つくよみの,ひかりにきませ,あしひきの,やまきへなりて,とほからなくに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 乎 -> 寸 [元][類][紀]","#[事項],相聞,作者:湯原王,勧誘","#[訓異]
つくよみの,[寛]つきよみの,
ひかりにきませ[寛],
あしひきの[寛],
やまきへなりて,[寛]やまをへたてて,
とほからなくに[寛],
" "#[番号]04/0671","#[題詞](湯原王歌一首)和歌一首 [不審作者]","#[原文]月讀之 光者清 雖照有 惑情 不堪念","#[訓読]月読の光りは清く照らせれど惑へる心思ひあへなくに","#[仮名],つくよみの,ひかりはきよく,てらせれど,まとへるこころ,おもひあへなくに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 惑 [紀] 或","#[事項],相聞,湯原王","#[訓異]
つくよみの,[寛]つきよみの,
ひかりはきよく[寛],
てらせれど,[寛]てらせとも,
まとへるこころ,[寛]まとふこころは,
おもひあへなくに,[寛]たへすおもほゆ,
" "#[番号]04/0672","#[題詞]安倍朝臣蟲麻呂歌一首","#[原文]倭文手纒 數二毛不有 壽持 奈何幾許 吾戀渡","#[訓読]しつたまき数にもあらぬ命もて何かここだく我が恋ひわたる","#[仮名],しつたまき,かずにもあらぬ,いのちもて,なにかここだく,あがこひわたる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:安倍蟲麻呂,恋情,枕詞","#[訓異]
しつたまき[寛],
かずにもあらぬ,[寛]かすにもあらぬ,
いのちもて[寛],
なにかここだく,[寛]なそかくはかり,
あがこひわたる,[寛]わかこひわたる,
" "#[番号]04/0673","#[題詞]大伴坂上郎女歌二首","#[原文]真十鏡 磨師心乎 縦者 後尓雖云 驗将在八方","#[訓読]まそ鏡磨ぎし心をゆるしてば後に言ふとも験あらめやも","#[仮名],まそかがみ,とぎしこころを,ゆるしてば,のちにいふとも,しるしあらめやも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,枕詞,後悔","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
とぎしこころを,[寛]ときしこころを,
ゆるしてば,[寛]ゆるしては,
のちにいふとも[寛],
しるしあらめやも[寛],
" "#[番号]04/0674","#[題詞](大伴坂上郎女歌二首)","#[原文]真玉付 彼此兼手 言齒五十戸<常> 相而後社 悔二破有跡五十戸","#[訓読]真玉つくをちこち兼ねて言は言へど逢ひて後こそ悔にはありといへ","#[仮名],またまつく,をちこちかねて,ことはいへど,あひてのちこそ,くいにはありといへ","#[左注]","#[校異]當 -> 常 [桂][元][類][紀]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,後悔,枕詞","#[訓異]
またまつく[寛],
をちこちかねて[寛],
ことはいへど,[寛]いひはいへと,
あひてのちこそ[寛],
くいにはありといへ[寛],
" "#[番号]04/0675","#[題詞]中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首","#[原文]娘子部四 咲澤二生流 花勝見 都毛不知 戀裳摺可聞","#[訓読]をみなへし佐紀沢に生ふる花かつみかつても知らぬ恋もするかも","#[仮名],をみなへし,さきさはにおふる,はなかつみ,かつてもしらぬ,こひもするかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 摺 [桂][類](塙) 揩 / 可 [元][類][紀] 香","#[事項],相聞,作者:中臣女郎,大伴家持,恋情,植物,奈良,地名,序詞,贈答","#[訓異]
をみなへし[寛],
さきさはにおふる,[寛]さくさはにおふる,
はなかつみ[寛],
かつてもしらぬ[寛],
こひもするかも[寛],
" "#[番号]04/0676","#[題詞](中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首)","#[原文]海底 奥乎深目手 吾念有 君二波将相 年者經十方","#[訓読]海の底奥を深めて我が思へる君には逢はむ年は経ぬとも","#[仮名],わたのそこ,おくをふかめて,あがおもへる,きみにはあはむ,としはへぬとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:中臣女郎,大伴家持,恋情,枕詞,贈答","#[訓異]
わたのそこ,[寛]わたつみの,
おくをふかめて,[寛]おきをふかめて,
あがおもへる,[寛]わかおもへる,
きみにはあはむ[寛],
としはへぬとも[寛],
" "#[番号]04/0677","#[題詞](中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首)","#[原文]春日山 朝居雲乃 欝 不知人尓毛 戀物香聞","#[訓読]春日山朝居る雲のおほほしく知らぬ人にも恋ふるものかも","#[仮名],かすがやま,あさゐるくもの,おほほしく,しらぬひとにも,こふるものかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:中臣女郎,大伴家持,恨み,奈良,地名,序詞,贈答","#[訓異]
かすがやま,[寛]かすかやま,
あさゐるくもの[寛],
おほほしく[寛],
しらぬひとにも[寛],
こふるものかも[寛],
" "#[番号]04/0678","#[題詞](中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首)","#[原文]直相而 見而者耳社 霊剋 命向 吾戀止眼","#[訓読]直に逢ひて見てばのみこそたまきはる命に向ふ我が恋やまめ","#[仮名],ただにあひて,みてばのみこそ,たまきはる,いのちにむかふ,あがこひやまめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:中臣女郎,大伴家持,枕詞,贈答","#[訓異]
ただにあひて,[寛]たたにあひて,
みてばのみこそ,[寛]みてはのみこそ,
たまきはる[寛],
いのちにむかふ[寛],
あがこひやまめ,[寛]わかこひやまめ,
" "#[番号]04/0679","#[題詞](中臣女郎贈大伴宿祢家持歌五首)","#[原文]不欲常云者 将強哉吾背 菅根之 念乱而 戀管母将有","#[訓読]いなと言はば強ひめや我が背菅の根の思ひ乱れて恋ひつつもあらむ","#[仮名],いなといはば,しひめやわがせ,すがのねの,おもひみだれて,こひつつもあらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:中臣女郎,大伴家持,恋情,枕詞,植物,贈答","#[訓異]
いなといはば,[寛]いなといはは,
しひめやわがせ,[寛]しひむやわかせ,
すがのねの,[寛]すかのねの,
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
こひつつもあらむ[寛],
" "#[番号]04/0680","#[題詞]大伴宿祢家持与交遊別歌三首","#[原文]盖毛 人之中言 聞可毛 幾許雖待 君之不来益","#[訓読]けだしくも人の中言聞かせかもここだく待てど君が来まさぬ","#[仮名],けだしくも,ひとのなかごと,きかせかも,ここだくまてど,きみがきまさぬ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,交遊,怨恨,うわさ","#[訓異]
けだしくも,[寛]けたしくも,
ひとのなかごと,[寛]ひとのなかこと,
きかせかも,[寛]きけるかも,
ここだくまてど,[寛]ここたくまてと,
きみがきまさぬ,[寛]きみかきまさぬ,
" "#[番号]04/0681","#[題詞](大伴宿祢家持与交遊別歌三首)","#[原文]中々尓 絶年云者 如此許 氣緒尓四而 吾将戀八方","#[訓読]なかなかに絶ゆとし言はばかくばかり息の緒にして我れ恋ひめやも","#[仮名],なかなかに,たゆとしいはば,かくばかり,いきのをにして,あれこひめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,交遊,恋情","#[訓異]
なかなかに[寛],
たゆとしいはば,[寛]たへてとしいはは,
かくばかり,[寛]かくはかり,
いきのをにして[寛],
あれこひめやも,[寛]わかこひめやも,
" "#[番号]04/0682","#[題詞](大伴宿祢家持与交遊別歌三首)","#[原文]将念 人尓有莫國 懃 情盡而 戀流吾毳","#[訓読]思ふらむ人にあらなくにねもころに心尽して恋ふる我れかも","#[仮名],おもふらむ,ひとにあらなくに,ねもころに,こころつくして,こふるあれかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,交遊,恋情","#[訓異]
おもふらむ,[寛]おもひなむ,
ひとにあらなくに[寛],
ねもころに[寛],
こころつくして[寛],
こふるあれかも,[寛]こふるわれかも,
" "#[番号]04/0683","#[題詞]大伴坂上郎女歌七首","#[原文]謂言之 恐國曽 紅之 色莫出曽 念死友","#[訓読]言ふ言の畏き国ぞ紅の色にな出でそ思ひ死ぬとも","#[仮名],いふことの,かしこきくにぞ,くれなゐの,いろにないでそ,おもひしぬとも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,うわさ,枕詞","#[訓異]
いふことの[寛],
かしこきくにぞ,[寛]さかなきくにそ,
くれなゐの[寛],
いろにないでそ,[寛]いろにないてそ,
おもひしぬとも[寛],
" "#[番号]04/0684","#[題詞](大伴坂上郎女歌七首)","#[原文]今者吾波 将死与吾背 生十方 吾二可縁跡 言跡云莫苦荷","#[訓読]今は我は死なむよ我が背生けりとも我れに依るべしと言ふといはなくに","#[仮名],いまはわは,しなむよわがせ,いけりとも,われによるべしと,いふといはなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,怨恨","#[訓異]
いまはわは,[寛]いまはわれは,
しなむよわがせ,[寛]しなむよわかせ,
いけりとも[寛],
われによるべしと,[寛]われによるへしと,
いふといはなくに[寛],
" "#[番号]04/0685","#[題詞](大伴坂上郎女歌七首)","#[原文]人事 繁哉君<之> 二鞘之 家乎隔而 戀乍将座","#[訓読]人言を繁みか君が二鞘の家を隔てて恋ひつつまさむ","#[仮名],ひとごとを,しげみかきみが,ふたさやの,いへをへだてて,こひつつまさむ","#[左注]","#[校異]乎 -> 之 [元]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,うわさ,恋情","#[訓異]
ひとごとを,[寛]ひとことを,
しげみかきみが,[寛]しけみやきみを,
ふたさやの[寛],
いへをへだてて,[寛]いへをへたてて,
こひつつまさむ,[寛]こひつつをらむ,
" "#[番号]04/0686","#[題詞](大伴坂上郎女歌七首)","#[原文]比者 千歳八徃裳 過与 吾哉然念 欲見鴨","#[訓読]このころは千年や行きも過ぎぬると我れやしか思ふ見まく欲りかも","#[仮名],このころは,ちとせやゆきも,すぎぬると,われかしかおもふ,みまくほりかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,恋情","#[訓異]
このころは,[寛]このころに,
ちとせやゆきも[寛],
すぎぬると,[寛]すきぬると,
われかしかおもふ,[寛]われやしかおもふ,
みまくほりかも[寛],
" "#[番号]04/0687","#[題詞](大伴坂上郎女歌七首)","#[原文]愛常 吾念情 速河之 雖塞々友 猶哉将崩","#[訓読]うるはしと我が思ふ心速川の塞きに塞くともなほや崩えなむ","#[仮名],うるはしと,あがもふこころ,はやかはの,せきにせくとも,なほやくえなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,恋情","#[訓異]
うるはしと,[寛]うつくしと,
あがもふこころ,[寛]わかおもふこころ,
はやかはの[寛],
せきにせくとも,[寛]せくとせくとも,
なほやくえなむ,[寛]なほやくつれむ,
" "#[番号]04/0688","#[題詞](大伴坂上郎女歌七首)","#[原文]青山乎 横g雲之 灼然 吾共咲為而 人二所知名","#[訓読]青山を横ぎる雲のいちしろく我れと笑まして人に知らゆな","#[仮名],あをやまを,よこぎるくもの,いちしろく,われとゑまして,ひとにしらゆな","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,うわさ,序詞","#[訓異]
あをやまを[寛],
よこぎるくもの,[寛]よこきるくもの,
いちしろく[寛],
われとゑまして,[寛]われとゑみして,
ひとにしらゆな,[寛]ひとにしらるな,
" "#[番号]04/0689","#[題詞](大伴坂上郎女歌七首)","#[原文]海山毛 隔莫國 奈何鴨 目言乎谷裳 幾許乏寸","#[訓読]海山も隔たらなくに何しかも目言をだにもここだ乏しき","#[仮名],うみやまも,へだたらなくに,なにしかも,めごとをだにも,ここだともしき","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,恋情","#[訓異]
うみやまも[寛],
へだたらなくに,[寛]へたたらなくに,
なにしかも[寛],
めごとをだにも,[寛]みることをたにも,
ここだともしき,[寛]ここたともしき,
" "#[番号]04/0690","#[題詞]大伴宿祢三依悲別歌一首","#[原文]照<月>乎 闇尓見成而 哭涙 衣<沾>津 干人無二","#[訓読]照る月を闇に見なして泣く涙衣濡らしつ干す人なしに","#[仮名],てるつきを,やみにみなして,なくなみだ,ころもぬらしつ,ほすひとなしに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 日 -> 月 [略解(宣長説)] / 沽 -> 沾 [紀][温][京]","#[事項],相聞,作者:大伴三依,離別,悲別","#[訓異]
てるつきを,[寛]てれるひを,
やみにみなして[寛],
なくなみだ,[寛]なくなみた,
ころもぬらしつ[寛],
ほすひとなしに[寛],
" "#[番号]04/0691","#[題詞]大伴宿祢家持贈娘子歌二首","#[原文]百礒城之 大宮人者 雖多有 情尓乗而 所念妹","#[訓読]ももしきの大宮人は多かれど心に乗りて思ほゆる妹","#[仮名],ももしきの,おほみやひとは,おほかれど,こころにのりて,おもほゆるいも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,娘子,恋情,枕詞,贈答","#[訓異]
ももしきの[寛],
おほみやひとは[寛],
おほかれど,[寛]おほかれと,
こころにのりて[寛],
おもほゆるいも[寛],
" "#[番号]04/0692","#[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌二首)","#[原文]得羽重無 妹二毛有鴨 如此許 人情乎 令盡念者","#[訓読]うはへなき妹にもあるかもかくばかり人の心を尽さく思へば","#[仮名],うはへなき,いもにもあるかも,かくばかり,ひとのこころを,つくさくおもへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,娘子,怨恨,贈答","#[訓異]
うはへなき[寛],
いもにもあるかも[寛],
かくばかり,[寛]かくはかり,
ひとのこころを[寛],
つくさくおもへば,[寛]つくすとおもへは,
" "#[番号]04/0693","#[題詞]大伴宿祢千室歌一首 [未詳]","#[原文]如此耳 戀哉将度 秋津野尓 多奈引雲能 過跡者無二","#[訓読]かくのみし恋ひやわたらむ秋津野にたなびく雲の過ぐとはなしに","#[仮名],かくのみし,こひやわたらむ,あきづのに,たなびくくもの,すぐとはなしに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴千室,和歌山,吉野,地名,序詞,恋情","#[訓異]
かくのみし,[寛]かくしのみ,
こひやわたらむ[寛],
あきづのに,[寛]あきつのに,
たなびくくもの,[寛]たなひくくもの,
すぐとはなしに,[寛]すくとはなしに,
" "#[番号]04/0694","#[題詞]廣河女王歌二首 [穂積皇子之孫女上道王之女也]","#[原文]戀草呼 力車二 七車 積而戀良苦 吾心柄","#[訓読]恋草を力車に七車積みて恋ふらく我が心から","#[仮名],こひくさを,ちからくるまに,ななくるま,つみてこふらく,わがこころから","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:廣河女王,恋情,比喩","#[訓異]
こひくさを[寛],
ちからくるまに[寛],
ななくるま[寛],
つみてこふらく[寛],
わがこころから,[寛]わかこころから,
" "#[番号]04/0695","#[題詞](廣河女王歌二首 [穂積皇子之孫女上道王之女也])","#[原文]戀者今葉 不有常吾羽 念乎 何處戀其 附見繋有","#[訓読]恋は今はあらじと我れは思へるをいづくの恋ぞつかみかかれる","#[仮名],こひはいまは,あらじとわれは,おもへるを,いづくのこひぞ,つかみかかれる","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:廣河女王,自嘲","#[訓異]
こひはいまは[寛],
あらじとわれは,[寛]あらしとわれは,
おもへるを,[寛]おもひしを,
いづくのこひぞ,[寛]いつこのこひそ,
つかみかかれる[寛],
" "#[番号]04/0696","#[題詞]石川朝臣廣成歌一首 [後賜<姓>高圓朝臣氏也]","#[原文]家人尓 戀過目八方 川津鳴 泉之里尓 年之歴去者","#[訓読]家人に恋過ぎめやもかはづ鳴く泉の里に年の経ぬれば","#[仮名],いへびとに,こひすぎめやも,かはづなく,いづみのさとに,としのへぬれば","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 姓 [西(右書)][紀][古]","#[事項],相聞,作者:石川廣成,京都,地名,恋情","#[訓異]
いへびとに,[寛]いへひとに,
こひすぎめやも,[寛]こひすきめやも,
かはづなく,[寛]かはつなく,
いづみのさとに,[寛]いつみのさとに,
としのへぬれば,[寛]としのへゆけは,
" "#[番号]04/0697","#[題詞]大伴宿祢像見歌三首","#[原文]吾聞尓 繋莫言 苅薦之 乱而念 君之直香曽","#[訓読]我が聞きに懸けてな言ひそ刈り薦の乱れて思ふ君が直香ぞ","#[仮名],わがききに,かけてないひそ,かりこもの,みだれておもふ,きみがただかぞ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],相聞,作者:大伴像見,恋情,枕詞","#[訓異]
わがききに,[寛]わかきに,
かけてないひそ[寛],
かりこもの[寛],
みだれておもふ,[寛]みたれておもふ,
きみがただかぞ,[寛]きみかたたかそ,
" "#[番号]04/0698","#[題詞](大伴宿祢像見歌三首)","#[原文]春日野尓 朝居雲之 敷布二 吾者戀益 月二日二異二","#[訓読]春日野に朝居る雲のしくしくに我れは恋ひ増す月に日に異に","#[仮名],かすがのに,あさゐるくもの,しくしくに,あれはこひます,つきにひにけに","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴像見,恋情,奈良,地名,序詞","#[訓異]
かすがのに,[寛]かすかのに,
あさゐるくもの[寛],
しくしくに[寛],
あれはこひます,[寛]われはこひます,
つきにひにけに[寛],
" "#[番号]04/0699","#[題詞](大伴宿祢像見歌三首)","#[原文]一瀬二波 千遍障良比 逝水之 後毛将相 今尓不有十方","#[訓読]一瀬には千たび障らひ行く水の後にも逢はむ今にあらずとも","#[仮名],ひとせには,ちたびさはらひ,ゆくみづの,のちにもあはむ,いまにあらずとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴像見,序詞,恋愛","#[訓異]
ひとせには[寛],
ちたびさはらひ,[寛]ちたひさはらひ,
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
のちにもあはむ,[寛]のちもあはなむ,
いまにあらずとも,[寛]いまにあらすとも,
" "#[番号]04/0700","#[題詞]大伴宿祢家持到娘子之門作歌一首","#[原文]如此為而哉 猶八将退 不近 道之間乎 煩参来而","#[訓読]かくしてやなほや罷らむ近からぬ道の間をなづみ参ゐ来て","#[仮名],かくしてや,なほやまからむ,ちかからぬ,みちのあひだを,なづみまゐきて","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,娘子,怨恨","#[訓異]
かくしてや[寛],
なほやまからむ,[寛]なほやかへらむ,
ちかからぬ[寛],
みちのあひだを,[寛]みちのあひたを,
なづみまゐきて,[寛]なつみまいりて,
" "#[番号]04/0701","#[題詞]河内百枝娘子贈大伴宿祢家持歌二首","#[原文]波都波都尓 人乎相見而 何将有 何日二箇 又外二将見","#[訓読]はつはつに人を相見ていかにあらむいづれの日にかまた外に見む","#[仮名],はつはつに,ひとをあひみて,いかにあらむ,いづれのひにか,またよそにみむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:河内百枝娘子,大伴家持,恋情","#[訓異]
はつはつに[寛],
ひとをあひみて[寛],
いかにあらむ,[寛]いかならむ,
いづれのひにか,[寛]いつれのひにか,
またよそにみむ[寛],
" "#[番号]04/0702","#[題詞](河内百枝娘子贈大伴宿祢家持歌二首)","#[原文]夜干玉之 其夜乃月夜 至于今日 吾者不忘 無間苦思念者","#[訓読]ぬばたまのその夜の月夜今日までに我れは忘れず間なくし思へば","#[仮名],ぬばたまの,そのよのつくよ,けふまでに,われはわすれず,まなくしおもへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:河内百枝娘子,大伴家持,恋情,枕詞","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
そのよのつくよ,[寛]そのよのつきよ,
けふまでに,[寛]けふまてに,
われはわすれず,[寛]われはわすれす,
まなくしおもへば,[寛]まなくしおもへは,
" "#[番号]04/0703","#[題詞]巫部麻蘇娘子歌二首","#[原文]吾背子乎 相見之其日 至于今日 吾衣手者 乾時毛奈志","#[訓読]我が背子を相見しその日今日までに我が衣手は干る時もなし","#[仮名],わがせこを,あひみしそのひ,けふまでに,わがころもでは,ふるときもなし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:巫部麻蘇娘子,恋情,涙","#[訓異]
わがせこを,[寛]わかせこを,
あひみしそのひ[寛],
けふまでに,[寛]けふまてに,
わがころもでは,[寛]わかころもては,
ふるときもなし,[寛]ひるときもなし,
" "#[番号]04/0704","#[題詞](巫部麻蘇娘子歌二首)","#[原文]栲縄之 永命乎 欲苦波 不絶而人乎 欲見社","#[訓読]栲縄の長き命を欲りしくは絶えずて人を見まく欲りこそ","#[仮名],たくなはの,ながきいのちを,ほりしくは,たえずてひとを,みまくほりこそ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:巫部麻蘇娘子,恋情,枕詞","#[訓異]
たくなはの[寛],
ながきいのちを,[寛]なかきいのちを,
ほりしくは,[寛]ほしけくは,
たえずてひとを,[寛]たへすてひとを,
みまくほりこそ[寛],
" "#[番号]04/0705","#[題詞]大伴宿祢家持贈童女歌一首","#[原文]葉根蘰 今為妹乎 夢見而 情内二 戀<渡>鴨","#[訓読]はねかづら今する妹を夢に見て心のうちに恋ひわたるかも","#[仮名],はねかづら,いまするいもを,いめにみて,こころのうちに,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]度 -> 渡 [類][紀][京]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,童女,恋情,夢,贈答","#[訓異]
はねかづら,[寛]はねかつら,
いまするいもを[寛],
いめにみて,[寛]ゆめにみて,
こころのうちに[寛],
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]04/0706","#[題詞]童女来報歌一首","#[原文]葉根蘰 今為妹者 無四呼 何妹其 幾許戀多類","#[訓読]はねかづら今する妹はなかりしをいづれの妹ぞここだ恋ひたる","#[仮名],はねかづら,いまするいもは,なかりしを,いづれのいもぞ,ここだこひたる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:童女,大伴家持,掛け合い,贈答","#[訓異]
はねかづら,[寛]はねかつら,
いまするいもは[寛],
なかりしを[寛],
いづれのいもぞ,[寛]いかなるいもそ,
ここだこひたる,[寛]ここたこひたる,
" "#[番号]04/0707","#[題詞]粟田<女>娘子贈大伴宿祢家持歌二首","#[原文]思遣 為便乃不知者 片h之 底曽吾者 戀成尓家類 <[注土h之中]>","#[訓読]思ひ遣るすべの知らねば片もひの底にぞ我れは恋ひ成りにける <[注土h之中]>","#[仮名],おもひやる,すべのしらねば,かたもひの,そこにぞあれは,こひなりにける","#[左注]","#[校異]<> -> 女 [元][紀][古] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 注土h之中 [桂][元]","#[事項],相聞,作者:粟田女娘子,大伴家持,恋情,枕詞,贈答","#[訓異]
おもひやる[寛],
すべのしらねば,[寛]すへのしらねは,
かたもひの[寛],
そこにぞあれは,[寛]そこにそあれは,
こひなりにける[寛],
" "#[番号]04/0708","#[題詞](粟田<女>娘子贈大伴宿祢家持歌二首)","#[原文]復毛将相 因毛有奴可 白細之 我衣手二 齋留目六","#[訓読]またも逢はむよしもあらぬか白栲の我が衣手にいはひ留めむ","#[仮名],またもあはむ,よしもあらぬか,しろたへの,わがころもでに,いはひとどめむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:粟田女娘子,大伴家持,恋情,再会,枕詞,贈答","#[訓異]
またもあはむ[寛],
よしもあらぬか[寛],
しろたへの[寛],
わがころもでに,[寛]わかころもてに,
いはひとどめむ,[寛]いはひととめむ,
" "#[番号]04/0709","#[題詞]豊前國娘子大宅女の歌一首 [未審姓氏]","#[原文]夕闇者 路多豆<多>頭四 待月而 行吾背子 其間尓母将見","#[訓読]夕闇は道たづたづし月待ちて行ませ我が背子その間にも見む","#[仮名],ゆふやみは,みちたづたづし,つきまちて,いませわがせこ,そのまにもみむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 多 [西(右書)][元][紀][温]","#[事項],相聞,作者:豊前國娘子大宅女,後朝","#[訓異]
ゆふやみは[寛],
みちたづたづし,[寛]みちたつたつし,
つきまちて[寛],
いませわがせこ,[寛]ゆかむわかせこ,
そのまにもみむ[寛],
" "#[番号]04/0710","#[題詞]安都扉娘子歌一首","#[原文]三空去 月之光二 直一目 相三師人<之> 夢西所見","#[訓読]み空行く月の光にただ一目相見し人の夢にし見ゆる","#[仮名],みそらゆく,つきのひかりに,ただひとめ,あひみしひとの,いめにしみゆる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 之 [西(右書)][元][紀][温]","#[事項],相聞,作者:安都扉娘子,夢","#[訓異]
みそらゆく[寛],
つきのひかりに[寛],
ただひとめ,[寛]たたひとめ,
あひみしひとの[寛],
いめにしみゆる,[寛]ゆめにしみゆる,
" "#[番号]04/0711","#[題詞]丹波大女娘子歌三首","#[原文]鴨鳥之 遊此池尓 木葉落而 浮心 吾不念國","#[訓読]鴨鳥の遊ぶこの池に木の葉落ちて浮きたる心我が思はなくに","#[仮名],かもどりの,あそぶこのいけに,このはおちて,うきたるこころ,わがおもはなくに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:丹波大女娘子,動物,恋情,序詞","#[訓異]
かもどりの,[寛]かもとりの,
あそぶこのいけに,[寛]あそふこのいけに,
このはおちて[寛],
うきたるこころ,[寛]うかへるこころ,
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]04/0712","#[題詞](丹波大女娘子歌三首)","#[原文]味酒呼 三輪之祝我 忌杉 手觸之罪歟 君二遇難寸","#[訓読]味酒を三輪の祝がいはふ杉手触れし罪か君に逢ひかたき","#[仮名],うまさけを,みわのはふりが,いはふすぎ,てふれしつみか,きみにあひかたき","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:丹波大女娘子,枕詞,恋情","#[訓異]
うまさけを,[寛]うまさかを,
みわのはふりが,[寛]みわのはふりか,
いはふすぎ,[寛]いはふすき,
てふれしつみか[寛],
きみにあひかたき[寛],
" "#[番号]04/0713","#[題詞](丹波大女娘子歌三首)","#[原文]垣穂成 人辞聞而 吾背子之 情多由多比 不合頃者","#[訓読]垣ほなす人言聞きて我が背子が心たゆたひ逢はぬこのころ","#[仮名],かきほなす,ひとごとききて,わがせこが,こころたゆたひ,あはぬこのころ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:丹波大女娘子,うわさ","#[訓異]
かきほなす[寛],
ひとごとききて,[寛]ひとことききて,
わがせこが,[寛]わかせこか,
こころたゆたひ[寛],
あはぬこのころ[寛],
" "#[番号]04/0714","#[題詞]大伴宿祢家持贈娘子歌七首","#[原文]情尓者 思渡跡 縁乎無三 外耳為而 嘆曽吾為","#[訓読]心には思ひわたれどよしをなみ外のみにして嘆きぞ我がする","#[仮名],こころには,おもひわたれど,よしをなみ,よそのみにして,なげきぞわがする","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,娘子,贈答","#[訓異]
こころには[寛],
おもひわたれど,[寛]おもひわたれと,
よしをなみ[寛],
よそのみにして,[寛]よそにのみして,
なげきぞわがする,[寛]なけきそわかする,
" "#[番号]04/0715","#[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌七首)","#[原文]千鳥鳴 佐保乃河門之 清瀬乎 馬打和多思 何時将通","#[訓読]千鳥鳴く佐保の川門の清き瀬を馬うち渡しいつか通はむ","#[仮名],ちどりなく,さほのかはとの,きよきせを,うまうちわたし,いつかかよはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,娘子,川渡り,奈良,地名,動物,贈答","#[訓異]
ちどりなく,[寛]ちとりなく,
さほのかはとの[寛],
きよきせを[寛],
うまうちわたし[寛],
いつかかよはむ,[寛]いかにかよはむ,
" "#[番号]04/0716","#[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌七首)","#[原文]夜晝 云別不知 吾戀 情盖 夢所見寸八","#[訓読]夜昼といふ別き知らず我が恋ふる心はけだし夢に見えきや","#[仮名],よるひると,いふわきしらず,あがこふる,こころはけだし,いめにみえきや","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,娘子,恋情,夢,恋情,贈答","#[訓異]
よるひると[寛],
いふわきしらず,[寛]いふわきしらす,
あがこふる,[寛]わかこふる,
こころはけだし,[寛]こころはけたし,
いめにみえきや,[寛]ゆめにみえきや,
" "#[番号]04/0717","#[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌七首)","#[原文]都礼毛無 将有人乎 獨念尓 吾念者 惑毛安流香","#[訓読]つれもなくあるらむ人を片思に我れは思へばわびしくもあるか","#[仮名],つれもなく,あるらむひとを,かたもひに,われはおもへば,わびしくもあるか","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,娘子,恨み,贈答","#[訓異]
つれもなく[寛],
あるらむひとを[寛],
かたもひに,[寛]かたおもひに,
われはおもへば,[寛]われしおもへは,
わびしくもあるか,[寛]まとひもあるか,
" "#[番号]04/0718","#[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌七首)","#[原文]不念尓 妹之咲N乎 夢見而 心中二 燎管曽呼留","#[訓読]思はぬに妹が笑ひを夢に見て心のうちに燃えつつぞ居る","#[仮名],おもはぬに,いもがゑまひを,いめにみて,こころのうちに,もえつつぞをる","#[左注]","#[校異]呼 [元] 乎","#[事項],相聞,作者:大伴家持,娘子,夢,恋情,贈答","#[訓異]
おもはぬに[寛],
いもがゑまひを,[寛]いもかゑまひを,
いめにみて,[寛]ゆめにみて,
こころのうちに[寛],
もえつつぞをる,[寛]もえつつそをる,
" "#[番号]04/0719","#[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌七首)","#[原文]大夫跡 念流吾乎 如此許 三礼二見津礼 片<念>男責","#[訓読]ますらをと思へる我れをかくばかりみつれにみつれ片思をせむ","#[仮名],ますらをと,おもへるわれを,かくばかり,みつれにみつれ,かたもひをせむ","#[左注]","#[校異]思 -> 念 [元][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,娘子,怨恨,贈答","#[訓異]
ますらをと[寛],
おもへるわれを[寛],
かくばかり,[寛]かくはかり,
みつれにみつれ[寛],
かたもひをせむ,[寛]かたおもひをせむ,
" "#[番号]04/0720","#[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌七首)","#[原文]村肝之 情揣而 如此許 余戀良<苦>乎 不知香安類良武","#[訓読]むらきもの心砕けてかくばかり我が恋ふらくを知らずかあるらむ","#[仮名],むらきもの,こころくだけて,かくばかり,あがこふらくを,しらずかあるらむ","#[左注]","#[校異]久 -> 苦 [元][紀][温]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,娘子,枕詞,恋情,贈答","#[訓異]
むらきもの[寛],
こころくだけて,[寛]こころくたけて,
かくばかり,[寛]かくはかり,
あがこふらくを,[寛]わかこふらくを,
しらずかあるらむ,[寛]しらすかあるらむ,
" "#[番号]04/0721","#[題詞]獻天皇歌一首 [大伴坂上郎女在佐保宅作也]","#[原文]足引乃 山二四居者 風流無三 吾為類和射乎 害目賜名","#[訓読]あしひきの山にしをれば風流なみ我がするわざをとがめたまふな","#[仮名],あしひきの,やまにしをれば,みやびなみ,わがするわざを,とがめたまふな","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,聖武天皇,佐保,枕詞,地名,贈答","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまにしをれば,[寛]やまにしをれは,
みやびなみ,[寛]よしをなみ,
わがするわざを,[寛]わかするわさを,
とがめたまふな,[寛]とかめたまふな,
" "#[番号]04/0722","#[題詞]大伴宿祢家持歌一首","#[原文]如是許 戀乍不有者 石木二毛 成益物乎 物不思四手","#[訓読]かくばかり恋ひつつあらずは石木にもならましものを物思はずして","#[仮名],かくばかり,こひつつあらずは,いはきにも,ならましものを,ものもはずして","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,恋情","#[訓異]
かくばかり,[寛]かくはかり,
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
いはきにも[寛],
ならましものを[寛],
ものもはずして,[寛]ものおもはすして,
" "#[番号]04/0723","#[題詞]大伴坂上郎女従跡見庄<賜>留宅女子大嬢歌一首[并短歌]","#[原文]常呼二跡 吾行莫國 小金門尓 物悲良尓 念有之 吾兒乃刀自緒 野干玉之 夜晝跡不言 念二思 吾身者痩奴 嘆丹師 袖左倍<沾>奴 如是許 本名四戀者 古郷尓 此月期呂毛 有勝益土","#[訓読]常世にと 我が行かなくに 小金門に もの悲しらに 思へりし 我が子の刀自を ぬばたまの 夜昼といはず 思ふにし 我が身は痩せぬ 嘆くにし 袖さへ濡れぬ かくばかり もとなし恋ひば 故郷に この月ごろも 有りかつましじ","#[仮名],とこよにと,わがゆかなくに,をかなどに,ものかなしらに,おもへりし,あがこのとじを,ぬばたまの,よるひるといはず,おもふにし,あがみはやせぬ,なげくにし,そでさへぬれぬ,かくばかり,もとなしこひば,ふるさとに,このつきごろも,ありかつましじ","#[左注](右歌報賜大嬢進歌也)","#[校異]贈賜 -> 賜 [元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 沽 -> 沾 [紀]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,坂上大嬢,愛情,枕詞,桜井","#[訓異]
とこよにと[寛],
わがゆかなくに,[寛]わかゆかなくに,
をかなどに,[寛]こかなとに,
ものかなしらに[寛],
おもへりし[寛],
あがこのとじを,[寛]わかこのとしの,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よるひるといはず,[寛]よるひるといはす,
おもふにし[寛],
あがみはやせぬ,[寛]わかみはやせぬ,
なげくにし,[寛]なけくにし,
そでさへぬれぬ,[寛]そてさへぬれぬ,
かくばかり,[寛]かくはかり,
もとなしこひば,[寛]もとなしこひは,
ふるさとに[寛],
このつきごろも,[寛]このつきころも,
ありかつましじ,[寛]ありかてましを,
" "#[番号]04/0724","#[題詞](大伴坂上郎女従跡見庄<賜>留宅女子大嬢歌一首[并短歌])反歌","#[原文]朝髪之 念乱而 如是許 名姉之戀曽 夢尓所見家留","#[訓読]朝髪の思ひ乱れてかくばかり汝姉が恋ふれぞ夢に見えける","#[仮名],あさかみの,おもひみだれて,かくばかり,なねがこふれぞ,いめにみえける","#[左注]右歌報賜大嬢進歌也","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 右歌 [西] 右謌 [西(訂正)] 右歌 / 進歌 [西] 進謌 [西(訂正)] 進歌","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,坂上大嬢,愛情,夢,枕詞,桜井","#[訓異]
あさかみの[寛],
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
かくばかり,[寛]かくはかり,
なねがこふれぞ,[寛]なにのこひそも,
いめにみえける,[寛]ゆめにみえける,
" "#[番号]04/0725","#[題詞]獻天皇歌二首 [大伴坂上郎女在春日里作也]","#[原文]二寶鳥乃 潜池水 情有者 君尓吾戀 情示左祢","#[訓読]にほ鳥の潜く池水心あらば君に我が恋ふる心示さね","#[仮名],にほどりの,かづくいけみづ,こころあらば,きみにあがこふる,こころしめさね","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,聖武天皇,動物,恋情,奈良","#[訓異]
にほどりの,[寛]にほとりの,
かづくいけみづ,[寛]かつくいけみつ,
こころあらば,[寛]こころあらは,
きみにあがこふる,[寛]きみにわかこひ,
こころしめさね[寛],
" "#[番号]04/0726","#[題詞](獻天皇歌二首 [大伴坂上郎女在春日里作也])","#[原文]外居而 戀乍不有者 君之家乃 池尓住云 鴨二有益雄","#[訓読]外に居て恋ひつつあらずは君が家の池に住むといふ鴨にあらましを","#[仮名],よそにゐて,こひつつあらずは,きみがいへの,いけにすむといふ,かもにあらましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,聖武天皇,動物,恋情,奈良","#[訓異]
よそにゐて[寛],
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
きみがいへの,[寛]きみかいへの,
いけにすむといふ[寛],
かもにあらましを[寛],
" "#[番号]04/0727","#[題詞]大伴宿祢家持贈坂上家大嬢歌二首 [<離>絶數年復會相聞徃来]","#[原文]萱草 吾下紐尓 著有跡 鬼乃志許草 事二思安利家理","#[訓読]忘れ草我が下紐に付けたれど醜の醜草言にしありけり","#[仮名],わすれくさ,わがしたひもに,つけたれど,しこのしこくさ,ことにしありけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 雖 -> 離 [桂][元][紀] / 復 [元][類] 後","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,植物","#[訓異]
わすれくさ[寛],
わがしたひもに,[寛]わかしたひもに,
つけたれど,[寛]つけたれと,
しこのしこくさ,[寛]おにのしこくさ,
ことにしありけり,[寛]ことにしありなり,
" "#[番号]04/0728","#[題詞](大伴宿祢家持贈坂上家大嬢歌二首 [<離>絶數年復會相聞徃来])","#[原文]人毛無 國母有粳 吾妹子与 携行而 副而将座","#[訓読]人もなき国もあらぬか我妹子とたづさはり行きて副ひて居らむ","#[仮名],ひともなき,くにもあらぬか,わぎもこと,たづさはりゆきて,たぐひてをらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答","#[訓異]
ひともなき[寛],
くにもあらぬか[寛],
わぎもこと,[寛]わきもこと,
たづさはりゆきて,[寛]たつさひゆきて,
たぐひてをらむ,[寛]たくひてをらむ,
" "#[番号]04/0729","#[題詞]大伴坂上大嬢贈大伴宿祢家持歌三首","#[原文]玉有者 手二母将巻乎 欝瞻乃 世人有者 手二巻難石","#[訓読]玉ならば手にも巻かむをうつせみの世の人なれば手に巻きかたし","#[仮名],たまならば,てにもまかむを,うつせみの,よのひとなれば,てにまきかたし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上大嬢,大伴家持,枕詞,贈答","#[訓異]
たまならば,[寛]たまならは,
てにもまかむを[寛],
うつせみの[寛],
よのひとなれば,[寛]よのひとあれは,
てにまきかたし[寛],
" "#[番号]04/0730","#[題詞](大伴坂上大嬢贈大伴宿祢家持歌三首)","#[原文]将相夜者 何時将有乎 何如為常香 彼夕相而 事之繁裳","#[訓読]逢はむ夜はいつもあらむを何すとかその宵逢ひて言の繁きも","#[仮名],あはむよは,いつもあらむを,なにすとか,そのよひあひて,ことのしげきも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上大嬢,大伴家持,うわさ,贈答","#[訓異]
あはむよは[寛],
いつもあらむを,[寛]いつしかあらむを,
なにすとか[寛],
そのよひあひて,[寛]かのよにあひて,
ことのしげきも,[寛]ことのしけきも,
" "#[番号]04/0731","#[題詞](大伴坂上大嬢贈大伴宿祢家持歌三首)","#[原文]吾名者毛 千名之五百名尓 雖立 君之名立者 惜社泣","#[訓読]我が名はも千名の五百名に立ちぬとも君が名立たば惜しみこそ泣け","#[仮名],わがなはも,ちなのいほなに,たちぬとも,きみがなたたば,をしみこそなけ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上大嬢,大伴家持,うわさ,名前,贈答","#[訓異]
わがなはも,[寛]わかなはも,
ちなのいほなに[寛],
たちぬとも[寛],
きみがなたたば,[寛]きみかなたたは,
をしみこそなけ[寛],
" "#[番号]04/0732","#[題詞]又大伴宿祢家持和歌三首","#[原文]今時者四 名之惜雲 吾者無 妹丹因者 千遍立十方","#[訓読]今しはし名の惜しけくも我れはなし妹によりては千たび立つとも","#[仮名],いましはし,なのをしけくも,われはなし,いもによりては,ちたびたつとも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,和歌,名前,うわさ,贈答","#[訓異]
いましはし[寛],
なのをしけくも[寛],
われはなし[寛],
いもによりては[寛],
ちたびたつとも,[寛]ちへにたつとも,
" "#[番号]04/0733","#[題詞](又大伴宿祢家持和歌三首)","#[原文]空蝉乃 代也毛二行 何為跡鹿 妹尓不相而 吾獨将宿","#[訓読]うつせみの世やも二行く何すとか妹に逢はずて我がひとり寝む","#[仮名],うつせみの,よやもふたゆく,なにすとか,いもにあはずて,わがひとりねむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,和歌,枕詞,贈答","#[訓異]
うつせみの[寛],
よやもふたゆく[寛],
なにすとか[寛],
いもにあはずて,[寛]いもにあはすて,
わがひとりねむ,[寛]わかひとりねむ,
" "#[番号]04/0734","#[題詞](又大伴宿祢家持和歌三首)","#[原文]吾念 如此而不有者 玉二毛我 真毛妹之 手二所纒<乎>","#[訓読]我が思ひかくてあらずは玉にもがまことも妹が手に巻かれなむ","#[仮名],わがおもひ,かくてあらずは,たまにもが,まこともいもが,てにまかれなむ","#[左注]","#[校異]牟 -> 乎 [元][類][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答","#[訓異]
わがおもひ,[寛]わかおもひ,
かくてあらずは,[寛]かくしてあらすは,
たまにもが,[寛]たまにもか,
まこともいもが,[寛]まこともいもか,
てにまかれなむ[寛],
" "#[番号]04/0735","#[題詞]同坂上大嬢贈家持歌一首","#[原文]春日山 霞多奈引 情具久 照月夜尓 獨鴨念","#[訓読]春日山霞たなびき心ぐく照れる月夜にひとりかも寝む","#[仮名],かすがやま,かすみたなびき,こころぐく,てれるつくよに,ひとりかもねむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上大嬢,大伴家持,奈良,地名,鬱屈,恋情,贈答","#[訓異]
かすがやま,[寛]かすかやま,
かすみたなびき,[寛]かすみたなひき,
こころぐく,[寛]こころくく,
てれるつくよに,[寛]てれるつきよに,
ひとりかもねむ[寛],
" "#[番号]04/0736","#[題詞]又家持和坂上大嬢歌一首","#[原文]月夜尓波 門尓出立 夕占問 足卜乎曽為之 行乎欲焉","#[訓読]月夜には門に出で立ち夕占問ひ足占をぞせし行かまくを欲り","#[仮名],つくよには,かどにいでたち,ゆふけとひ,あしうらをぞせし,ゆかまくをほり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,大伴坂上大嬢,贈答","#[訓異]
つくよには,[寛]つきよには,
かどにいでたち,[寛]かとにいてたち,
ゆふけとひ[寛],
あしうらをぞせし,[寛]あしうらをそせし,
ゆかまくをほり[寛],
" "#[番号]04/0737","#[題詞]同大嬢贈家持歌二首","#[原文]云々 人者雖云 若狭道乃 後瀬山之 後毛将<會>君","#[訓読]かにかくに人は言ふとも若狭道の後瀬の山の後も逢はむ君","#[仮名],かにかくに,ひとはいふとも,わかさぢの,のちせのやまの,のちもあはむきみ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 念 -> 會 [万葉考]","#[事項],相聞,作者:坂上大嬢,大伴家持,福井,地名,歌枕,贈答","#[訓異]
かにかくに[寛],
ひとはいふとも[寛],
わかさぢの,[寛]わかさちの,
のちせのやまの[寛],
のちもあはむきみ[寛],
" "#[番号]04/0738","#[題詞](同大嬢贈家持歌二首)","#[原文]世間之 苦物尓 有家良<之> 戀尓不勝而 可死念者","#[訓読]世の中の苦しきものにありけらし恋にあへずて死ぬべき思へば","#[仮名],よのなかの,くるしきものに,ありけらし,こひにあへずて,しぬべきおもへば","#[左注]","#[校異]久 -> 之 [元]","#[事項],相聞,作者:坂上大嬢,大伴家持,恋情,贈答","#[訓異]
よのなかの[寛],
くるしきものに[寛],
ありけらし,[寛]ありけらく,
こひにあへずて,[寛]こひにたへすて,
しぬべきおもへば,[寛]しぬへくおもへは,
" "#[番号]04/0739","#[題詞]又家持和坂上大嬢歌二首","#[原文]後湍山 後毛将相常 念社 可死物乎 至今日<毛>生有","#[訓読]後瀬山後も逢はむと思へこそ死ぬべきものを今日までも生けれ","#[仮名],のちせやま,のちもあはむと,おもへこそ,しぬべきものを,けふまでもいけれ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 毛 [西(右書)][桂][元][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,和歌,枕詞,福井,地名,歌枕,恋情,贈答","#[訓異]
のちせやま[寛],
のちもあはむと[寛],
おもへこそ,[寛]おもふこそ,
しぬべきものを,[寛]しぬへきものを,
けふまでもいけれ,[寛]けふまてもあれ,
" "#[番号]04/0740","#[題詞](又家持和坂上大嬢歌二首)","#[原文]事耳乎 後毛相跡 懃 吾乎令憑而 不相可聞","#[訓読]言のみを後も逢はむとねもころに我れを頼めて逢はざらむかも","#[仮名],ことのみを,のちもあはむと,ねもころに,われをたのめて,あはざらむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,怨恨,贈答","#[訓異]
ことのみを[寛],
のちもあはむと[寛],
ねもころに[寛],
われをたのめて[寛],
あはざらむかも,[寛]あへさらめかも,
" "#[番号]04/0741","#[題詞]更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首","#[原文]夢之相者 苦有家里 覺而 掻探友 手二毛不所觸者","#[訓読]夢の逢ひは苦しかりけりおどろきて掻き探れども手にも触れねば","#[仮名],いめのあひは,くるしかりけり,おどろきて,かきさぐれども,てにもふれねば","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,遊仙窟,夢,贈答","#[訓異]
いめのあひは,[寛]ゆめのあひは,
くるしかりけり[寛],
おどろきて,[寛]おとろきて,
かきさぐれども,[寛]かきさくれとも,
てにもふれねば,[寛]てにもふれねは,
" "#[番号]04/0742","#[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)","#[原文]一重耳 妹之将結 帶乎尚 三重可結 吾身者成","#[訓読]一重のみ妹が結ばむ帯をすら三重結ぶべく我が身はなりぬ","#[仮名],ひとへのみ,いもがむすばむ,おびをすら,みへむすぶべく,わがみはなりぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,遊仙窟,贈答","#[訓異]
ひとへのみ[寛],
いもがむすばむ,[寛]いもかむすひし,
おびをすら,[寛]おひをすら,
みへむすぶべく,[寛]みへむすふへく,
わがみはなりぬ,[寛]わかみはなりぬ,
" "#[番号]04/0743","#[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)","#[原文]吾戀者 千引乃石乎 七許 頚二将繋母 神之諸伏","#[訓読]我が恋は千引の石を七ばかり首に懸けむも神のまにまに","#[仮名],あがこひは,ちびきのいはを,ななばかり,くびにかけむも,かみのまにまに","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,比喩,贈答","#[訓異]
あがこひは,[寛]わかこひは,
ちびきのいはを,[寛]ちひきのいしを,
ななばかり,[寛]ななはかり,
くびにかけむも,[寛]くひにかけても,
かみのまにまに,[寛]かみのもろふし,
" "#[番号]04/0744","#[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)","#[原文]暮去者 屋戸開設而 吾将待 夢尓相見二 将来云比登乎","#[訓読]夕さらば屋戸開け設けて我れ待たむ夢に相見に来むといふ人を","#[仮名],ゆふさらば,やとあけまけて,われまたむ,いめにあひみに,こむといふひとを","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,遊仙窟,夢,贈答","#[訓異]
ゆふさらば,[寛]ゆふされは,
やとあけまけて[寛],
われまたむ[寛],
いめにあひみに,[寛]ゆめにあひみに,
こむといふひとを[寛],
" "#[番号]04/0745","#[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)","#[原文]朝夕二 将見時左倍也 吾妹之 雖見如不見 由戀四家武","#[訓読]朝夕に見む時さへや我妹子が見れど見ぬごとなほ恋しけむ","#[仮名],あさよひに,みむときさへや,わぎもこが,みれどみぬごと,なほこほしけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,恋情","#[訓異]
あさよひに,[寛]あさゆふに,
みむときさへや[寛],
わぎもこが,[寛]わきもこか,
みれどみぬごと,[寛]みれとみぬこと,
なほこほしけむ,[寛]なをこひしけむ,
" "#[番号]04/0746","#[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)","#[原文]生有代尓 吾者未見 事絶而 如是A怜 縫流嚢者","#[訓読]生ける世に我はいまだ見ず言絶えてかくおもしろく縫へる袋は","#[仮名],いけるよに,われはいまだみず,ことたえて,かくおもしろく,ぬへるふくろは","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答","#[訓異]
いけるよに[寛],
われはいまだみず,[寛]われはまたみす,
ことたえて[寛],
かくおもしろく,[寛]かくあはれけに,
ぬへるふくろは[寛],
" "#[番号]04/0747","#[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)","#[原文]吾妹兒之 形見乃服 下著而 直相左右者 吾将脱八方","#[訓読]我妹子が形見の衣下に着て直に逢ふまでは我れ脱かめやも","#[仮名],わぎもこが,かたみのころも,したにきて,ただにあふまでは,われぬかめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
かたみのころも[寛],
したにきて[寛],
ただにあふまでは,[寛]たたにあふまては,
われぬかめやも[寛],
" "#[番号]04/0748","#[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)","#[原文]戀死六 其毛同曽 奈何為二 人目他言 辞痛吾将為","#[訓読]恋ひ死なむそこも同じぞ何せむに人目人言言痛み我がせむ","#[仮名],こひしなむ,そこもおやじぞ,なにせむに,ひとめひとごと,こちたみわがせむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,うわさ,贈答","#[訓異]
こひしなむ[寛],
そこもおやじぞ,[寛]それもおなしそ,
なにせむに[寛],
ひとめひとごと,[寛]ひとめひとこと,
こちたみわがせむ,[寛]こちたくわれせむ,
" "#[番号]04/0749","#[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)","#[原文]夢二谷 所見者社有 如此許 不所見有者 戀而死跡香","#[訓読]夢にだに見えばこそあらめかくばかり見えずしあるは恋ひて死ねとか","#[仮名],いめにだに,みえばこそあれ,かくばかり,みえずてあるは,こひてしねとか","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,夢,贈答","#[訓異]
いめにだに,[寛]ゆめにたに,
みえばこそあれ,[寛]みえはこそあらめ,
かくばかり,[寛]かくはかり,
みえずてあるは,[寛]みえすてあるは,
こひてしねとか[寛],
" "#[番号]04/0750","#[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)","#[原文]念絶 和備西物尾 中々<荷> 奈何辛苦 相見始兼","#[訓読]思ひ絶えわびにしものを中々に何か苦しく相見そめけむ","#[仮名],おもひたえ,わびにしものを,なかなかに,なにかくるしく,あひみそめけむ","#[左注]","#[校異]尓 -> 荷 [桂][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,怨恨,後悔,恋情","#[訓異]
おもひたえ[寛],
わびにしものを,[寛]わひにしものを,
なかなかに[寛],
なにかくるしく[寛],
あひみそめけむ[寛],
" "#[番号]04/0751","#[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)","#[原文]相見而者 幾日毛不經乎 幾許久毛 <久>流比尓久流必 所念鴨","#[訓読]相見ては幾日も経ぬをここだくもくるひにくるひ思ほゆるかも","#[仮名],あひみては,いくかもへぬを,ここだくも,くるひにくるひ,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]<> -> 久 [西(右書)][桂][紀][温]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答","#[訓異]
あひみては[寛],
いくかもへぬを[寛],
ここだくも,[寛]ここはくも,
くるひにくるひ[寛],
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]04/0752","#[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)","#[原文]如是許 面影耳 所念者 何如将為 人目繁而","#[訓読]かくばかり面影にのみ思ほえばいかにかもせむ人目繁くて","#[仮名],かくばかり,おもかげにのみ,おもほえば,いかにかもせむ,ひとめしげくて","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,うわさ,贈答","#[訓異]
かくばかり,[寛]かくはかり,
おもかげにのみ,[寛]おもかけにのみ,
おもほえば,[寛]おもほへは,
いかにかもせむ[寛],
ひとめしげくて,[寛]ひとめしけくて,
" "#[番号]04/0753","#[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)","#[原文]相見者 須臾戀者 奈木六香登 雖念弥 戀益来","#[訓読]相見てはしましも恋はなぎむかと思へどいよよ恋ひまさりけり","#[仮名],あひみては,しましもこひは,なぎむかと,おもへどいよよ,こひまさりけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,恋情,贈答","#[訓異]
あひみては[寛],
しましもこひは,[寛]しはしもこひは,
なぎむかと,[寛]なきむかと,
おもへどいよよ,[寛]おもへといとと,
こひまさりけり[寛],
" "#[番号]04/0754","#[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)","#[原文]夜之穂杼呂 吾出而来者 吾妹子之 念有四九四 面影二三湯","#[訓読]夜のほどろ我が出でて来れば我妹子が思へりしくし面影に見ゆ","#[仮名],よのほどろ,わがいでてくれば,わぎもこが,おもへりしくし,おもかげにみゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,恋情","#[訓異]
よのほどろ,[寛]よのほとろ,
わがいでてくれば,[寛]わかいててくれは,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
おもへりしくし,[寛]おもへりしくよ,
おもかげにみゆ,[寛]おもかけにみゆ,
" "#[番号]04/0755","#[題詞](更大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌十五首)","#[原文]夜之穂杼呂 出都追来良久 遍多數 成者吾胸 截焼如","#[訓読]夜のほどろ出でつつ来らくたび数多くなれば我が胸断ち焼くごとし","#[仮名],よのほどろ,いでつつくらく,たびまねく,なればあがむね,たちやくごとし","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,遊仙窟,恋情","#[訓異]
よのほどろ,[寛]よのほとろ,
いでつつくらく,[寛]いてつつくらく,
たびまねく,[寛]あまたたひ,
なればあがむね,[寛]なれはわかむね,
たちやくごとし,[寛]きりやくかこと,
" "#[番号]04/0756","#[題詞]大伴田村家之大嬢贈妹坂上大嬢歌四首","#[原文]外居而 戀者苦 吾妹子乎 次相見六 事計為与","#[訓読]外に居て恋ふれば苦し我妹子を継ぎて相見む事計りせよ","#[仮名],よそにゐて,こふればくるし,わぎもこを,つぎてあひみむ,ことはかりせよ","#[左注](右田村大嬢坂上大嬢並是右大辨大伴宿奈麻呂卿之女也 卿居田村里号曰田村大嬢 但妹坂上<大>嬢者母居坂上里 仍曰坂上大嬢 于時姉妹諮問以歌贈答)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴田村大嬢,坂上大嬢,贈答","#[訓異]
よそにゐて[寛],
こふればくるし,[寛]こふれはくるし,
わぎもこを,[寛]わきもこを,
つぎてあひみむ,[寛]つきてあひみむ,
ことはかりせよ,[寛]ことはかりもよ,
" "#[番号]04/0757","#[題詞](大伴田村家之大嬢贈妹坂上大嬢歌四首)","#[原文]遠有者 和備而毛有乎 里近 有常聞乍 不見之為便奈沙","#[訓読]遠くあらばわびてもあらむを里近くありと聞きつつ見ぬがすべなさ","#[仮名],とほくあらば,わびてもあらむを,さとちかく,ありとききつつ,みぬがすべなさ","#[左注](右田村大嬢坂上大嬢並是右大辨大伴宿奈麻呂卿之女也 卿居田村里号曰田村大嬢 但妹坂上<大>嬢者母居坂上里 仍曰坂上大嬢 于時姉妹諮問以歌贈答)","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴田村大嬢,坂上大嬢,贈答","#[訓異]
とほくあらば,[寛]とほくあれは,
わびてもあらむを,[寛]わひてもあるを,
さとちかく[寛],
ありとききつつ[寛],
みぬがすべなさ,[寛]みぬかすへなさ,
" "#[番号]04/0758","#[題詞](大伴田村家之大嬢贈妹坂上大嬢歌四首)","#[原文]白雲之 多奈引山之 高々二 吾念妹乎 将見因毛我母","#[訓読]白雲のたなびく山の高々に我が思ふ妹を見むよしもがも","#[仮名],しらくもの,たなびくやまの,たかだかに,あがおもふいもを,みむよしもがも","#[左注](右田村大嬢坂上大嬢並是右大辨大伴宿奈麻呂卿之女也 卿居田村里号曰田村大嬢 但妹坂上<大>嬢者母居坂上里 仍曰坂上大嬢 于時姉妹諮問以歌贈答)","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴田村大嬢,坂上大嬢,贈答","#[訓異]
しらくもの[寛],
たなびくやまの,[寛]たなひくやまの,
たかだかに,[寛]たかたかに,
あがおもふいもを,[寛]わかおもふいもを,
みむよしもがも,[寛]みむよしもかも,
" "#[番号]04/0759","#[題詞](大伴田村家之大嬢贈妹坂上大嬢歌四首)","#[原文]何 時尓加妹乎 牟具良布能 穢屋戸尓 入将座","#[訓読]いかならむ時にか妹を葎生の汚なきやどに入りいませてむ","#[仮名],いかならむ,ときにかいもを,むぐらふの,きたなきやどに,いりいませてむ","#[左注]右田村大嬢坂上大嬢並是右大辨大伴宿奈麻呂卿之女也 卿居田村里号曰田村大嬢 但妹坂上<大>嬢者母居坂上里 仍曰坂上大嬢 于時姉妹諮問以歌贈答","#[校異]<> -> 大 [西(右書)][桂][元][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:田村大嬢,大伴坂上大嬢,植物,贈答","#[訓異]
いかならむ[寛],
ときにかいもを[寛],
むぐらふの,[寛]むくらふの,
きたなきやどに,[寛]けかしきやとに,
いりいませてむ,[寛]いりまさしめむ,
" "#[番号]04/0760","#[題詞]大伴坂上郎女従竹田庄<贈>女子大嬢歌二首","#[原文]打渡 竹田之原尓 鳴鶴之 間無時無 吾戀良久波","#[訓読]うち渡す武田の原に鳴く鶴の間なく時なし我が恋ふらくは","#[仮名],うちわたす,たけたのはらに,なくたづの,まなくときなし,あがこふらくは","#[左注]","#[校異]贈賜 -> 贈 [桂][元][古] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,大伴坂上大嬢,桜井,地名,動物,恋情,贈答","#[訓異]
うちわたす[寛],
たけたのはらに[寛],
なくたづの,[寛]なくたつの,
まなくときなし[寛],
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
" "#[番号]04/0761","#[題詞](大伴坂上郎女従竹田庄<贈>女子大嬢歌二首)","#[原文]早河之 湍尓居鳥之 縁乎奈弥 念而有師 吾兒羽裳A怜","#[訓読]早川の瀬に居る鳥のよしをなみ思ひてありし我が子はもあはれ","#[仮名],はやかはの,せにゐるとりの,よしをなみ,おもひてありし,あがこはもあはれ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:坂上郎女,大伴坂上大嬢,序詞,恋情,贈答","#[訓異]
はやかはの[寛],
せにゐるとりの[寛],
よしをなみ[寛],
おもひてありし[寛],
あがこはもあはれ,[寛]わかこはもあはれ,
" "#[番号]04/0762","#[題詞]紀女郎贈大伴宿祢家持歌二首 [女郎名曰小鹿也]","#[原文]神左夫跡 不欲者不有 八<多也八多> 如是為而後二 佐夫之家牟可聞","#[訓読]神さぶといなにはあらずはたやはたかくして後に寂しけむかも","#[仮名],かむさぶと,いなにはあらず,はたやはた,かくしてのちに,さぶしけむかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 也多八 -> 多也八多 [略解] 也八多 [西(右書)]","#[事項],相聞,作者:紀女郎,大伴家持,贈答,恋愛","#[訓異]
かむさぶと,[寛]かみさふと,
いなにはあらず,[寛]いなにはあらす,
はたやはた,[寛]ややおほは,
かくしてのちに[寛],
さぶしけむかも,[寛]さふしけむかも,
" "#[番号]04/0763","#[題詞](紀女郎贈大伴宿祢家持歌二首 [女郎名曰小鹿也])","#[原文]玉緒乎 沫緒二搓而 結有者 在手後二毛 不相在目八方","#[訓読]玉の緒を沫緒に搓りて結べらばありて後にも逢はざらめやも","#[仮名],たまのをを,あわをによりて,むすべらば,ありてのちにも,あはざらめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:紀女郎,大伴家持,恋愛","#[訓異]
たまのをを[寛],
あわをによりて,[寛]あはをによりて,
むすべらば,[寛]むすへらは,
ありてのちにも[寛],
あはざらめやも,[寛]あはさらめやも,
" "#[番号]04/0764","#[題詞](紀女郎贈大伴宿祢家持歌二首 [女郎名曰小鹿也])大伴宿祢家持和歌一首","#[原文]百年尓 老舌出而 与余牟友 吾者不Q 戀者益友","#[訓読]百年に老舌出でてよよむとも我れはいとはじ恋ひは増すとも","#[仮名],ももとせに,おいしたいでて,よよむとも,われはいとはじ,こひはますとも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,紀女郎,作者:大伴家持,老,恋情","#[訓異]
ももとせに[寛],
おいしたいでて,[寛]おいしたいてて,
よよむとも[寛],
われはいとはじ,[寛]われはいとはし,
こひはますとも[寛],
" "#[番号]04/0765","#[題詞]在久邇京思留寧樂宅坂上大嬢大伴宿祢家持作歌一首","#[原文]一隔山 重成物乎 月夜好見 門尓出立 妹可将待","#[訓読]一重山へなれるものを月夜よみ門に出で立ち妹か待つらむ","#[仮名],ひとへやま,へなれるものを,つくよよみ,かどにいでたち,いもかまつらむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,恋愛","#[訓異]
ひとへやま[寛],
へなれるものを[寛],
つくよよみ,[寛]つきよよみ,
かどにいでたち,[寛]かとにいてたち,
いもかまつらむ[寛],
" "#[番号]04/0766","#[題詞](在久邇京思留寧樂宅坂上大嬢大伴宿祢家持作歌一首)藤原郎女聞之即和歌一首","#[原文]路遠 不来常波知有 物可良尓 然曽将待 君之目乎保利","#[訓読]道遠み来じとは知れるものからにしかぞ待つらむ君が目を欲り","#[仮名],みちとほみ,こじとはしれる,ものからに,しかぞまつらむ,きみがめをほり","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,大伴家持,坂上大嬢,久邇京,作者:藤原郎女","#[訓異]
みちとほみ,[寛]みちともみ,
こじとはしれる,[寛]こしとはしれる,
ものからに[寛],
しかぞまつらむ,[寛]しかそまつらむ,
きみがめをほり,[寛]きみかめをほり,
" "#[番号]04/0767","#[題詞]大伴宿祢家持更贈大嬢歌二首","#[原文]都路乎 遠哉妹之 比来者 得飼飯而雖宿 夢尓不所見来","#[訓読]都路を遠みか妹がこのころはうけひて寝れど夢に見え来ぬ","#[仮名],みやこぢを,とほみかいもが,このころは,うけひてぬれど,いめにみえこぬ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,夢,贈答","#[訓異]
みやこぢを,[寛]みやこちを,
とほみかいもが,[寛]とほくやいもか,
このころは[寛],
うけひてぬれど,[寛]うけひてぬれと,
いめにみえこぬ,[寛]ゆめにみえこぬ,
" "#[番号]04/0768","#[題詞](大伴宿祢家持更贈大嬢歌二首)","#[原文]今所知 久邇乃京尓 妹二不相 久成 行而早見奈","#[訓読]今知らす久迩の都に妹に逢はず久しくなりぬ行きて早見な","#[仮名],いましらす,くにのみやこに,いもにあはず,ひさしくなりぬ,ゆきてはやみな","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,久邇京,地名,贈答","#[訓異]
いましらす,[寛]いまそしる,
くにのみやこに[寛],
いもにあはず,[寛]いもにあはす,
ひさしくなりぬ[寛],
ゆきてはやみな[寛],
" "#[番号]04/0769","#[題詞]大伴宿祢家持報贈紀女郎歌一首","#[原文]久堅之 雨之落日乎 直獨 山邊尓居者 欝有来","#[訓読]ひさかたの雨の降る日をただ独り山辺に居ればいぶせかりけり","#[仮名],ひさかたの,あめのふるひを,ただひとり,やまへにをれば,いぶせかりけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,紀女郎,久邇京,鬱屈,贈答","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あめのふるひを[寛],
ただひとり,[寛]たたひとり,
やまへにをれば,[寛]やまへにをれは,
いぶせかりけり,[寛]いふせかりけり,
" "#[番号]04/0770","#[題詞]大伴宿祢家持従久邇京贈坂上大嬢歌五首","#[原文]人眼多見 不相耳曽 情左倍 妹乎忘而 吾念莫國","#[訓読]人目多み逢はなくのみぞ心さへ妹を忘れて我が思はなくに","#[仮名],ひとめおほみ,あはなくのみぞ,こころさへ,いもをわすれて,わがおもはなくに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,久邇京,贈答","#[訓異]
ひとめおほみ[寛],
あはなくのみぞ,[寛]あはさるのみそ,
こころさへ[寛],
いもをわすれて[寛],
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]04/0771","#[題詞](大伴宿祢家持従久邇京贈坂上大嬢歌五首)","#[原文]偽毛 似付而曽為流 打布裳 真吾妹兒 吾尓戀目八","#[訓読]偽りも似つきてぞするうつしくもまこと我妹子我れに恋ひめや","#[仮名],いつはりも,につきてぞする,うつしくも,まことわぎもこ,われにこひめや","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,久邇京,怨恨,贈答","#[訓異]
いつはりも[寛],
につきてぞする,[寛]につきてそする,
うつしくも,[寛]たちしきも,
まことわぎもこ,[寛]まことわきもこ,
われにこひめや[寛],
" "#[番号]04/0772","#[題詞](大伴宿祢家持従久邇京贈坂上大嬢歌五首)","#[原文]夢尓谷 将所見常吾者 保杼毛友 不相志思<者> 諾不所見<有>武","#[訓読]夢にだに見えむと我れはほどけども相し思はねばうべ見えずあらむ","#[仮名],いめにだに,みえむとわれは,ほどけども,あひしおもはねば,うべみえずあらむ","#[左注]","#[校異]<> -> 者 [桂][元][紀] / <> -> 有 [桂][元][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,久邇京,夢,怨恨,贈答","#[訓異]
いめにだに,[寛]ゆめにたに,
みえむとわれは[寛],
ほどけども,[寛]ほとけとも,
あひしおもはねば,[寛]あひしおもはねは,
うべみえずあらむ,[寛]たへみえさらむ,
" "#[番号]04/0773","#[題詞](大伴宿祢家持従久邇京贈坂上大嬢歌五首)","#[原文]事不問 木尚味狭藍 諸<弟>等之 練乃村戸二 所詐来","#[訓読]言とはぬ木すらあじさゐ諸弟らが練りのむらとにあざむかえけり","#[仮名],こととはぬ,きすらあじさゐ,もろとらが,ねりのむらとに,あざむかえけり","#[左注]","#[校異]茅 -> 弟 [桂][古][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,久邇京,難解,植物,贈答,怨恨","#[訓異]
こととはぬ[寛],
きすらあじさゐ,[寛]きすらあちさゐ,
もろとらが,[寛]もろちらか,
ねりのむらとに[寛],
あざむかえけり,[寛]あさむかれけり,
" "#[番号]04/0774","#[題詞](大伴宿祢家持従久邇京贈坂上大嬢歌五首)","#[原文]百千遍 戀跡云友 諸<弟>等之 練乃言羽<者> 吾波不信","#[訓読]百千たび恋ふと言ふとも諸弟らが練りのことばは我れは頼まじ","#[仮名],ももちたび,こふといふとも,もろとらが,ねりのことばは,われはたのまじ","#[左注]","#[校異]茅 -> 弟 [桂] / 志 -> 者 [桂][元][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,久邇京,怨恨","#[訓異]
ももちたび,[寛]ももちたひ,
こふといふとも[寛],
もろとらが,[寛]もろちらか,
ねりのことばは,[寛]ねりのことはし,
われはたのまじ,[寛]われはたのます,
" "#[番号]04/0775","#[題詞]大伴宿祢家持贈紀女郎歌一首","#[原文]鶉鳴 故郷従 念友 何如裳妹尓 相縁毛無寸","#[訓読]鶉鳴く古りにし里ゆ思へども何ぞも妹に逢ふよしもなき","#[仮名],うづらなく,ふりにしさとゆ,おもへども,なにぞもいもに,あふよしもなき","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,紀女郎,動物,枕詞,贈答","#[訓異]
うづらなく,[寛]うつらなく,
ふりにしさとゆ,[寛]ふるきさとより,
おもへども,[寛]おもへとも,
なにぞもいもに,[寛]なにそもいもに,
あふよしもなき[寛],
" "#[番号]04/0776","#[題詞]紀女郎報贈家持歌一首","#[原文]事出之者 誰言尓有鹿 小山田之 苗代水乃 中与杼尓四手","#[訓読]言出しは誰が言にあるか小山田の苗代水の中淀にして","#[仮名],ことでしは,たがことにあるか,をやまだの,なはしろみづの,なかよどにして","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:紀女郎,大伴家持,贈答","#[訓異]
ことでしは,[寛]ことてしは,
たがことにあるか,[寛]たかことにあるか,
をやまだの,[寛]をやまたの,
なはしろみづの,[寛]なはしろみつの,
なかよどにして,[寛]なかよとにして,
" "#[番号]04/0777","#[題詞]大伴宿祢家持更贈紀女郎歌五首","#[原文]吾妹子之 屋戸乃籬乎 見尓徃者 盖従門 将返却可聞","#[訓読]我妹子がやどの籬を見に行かばけだし門より帰してむかも","#[仮名],わぎもこが,やどのまがきを,みにゆかば,けだしかどより,かへしてむかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,紀女郎,怨恨","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
やどのまがきを,[寛]やとのまかきを,
みにゆかば,[寛]みにゆかは,
けだしかどより,[寛]けたしかとより,
かへしてむかも,[寛]かへしてむかも,
" "#[番号]04/0778","#[題詞](大伴宿祢家持更贈紀女郎歌五首)","#[原文]打妙尓 前垣乃酢堅 欲見 将行常云哉 君乎見尓許曽","#[訓読]うつたへに籬の姿見まく欲り行かむと言へや君を見にこそ","#[仮名],うつたへに,まがきのすがた,みまくほり,ゆかむといへや,きみをみにこそ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,紀女郎,恋情","#[訓異]
うつたへに[寛],
まがきのすがた,[寛]まかきのすかた,
みまくほり[寛],
ゆかむといへや[寛],
きみをみにこそ[寛],
" "#[番号]04/0779","#[題詞](大伴宿祢家持更贈紀女郎歌五首)","#[原文]板盖之 黒木乃屋根者 山近之 明日取而 持将参来","#[訓読]板葺の黒木の屋根は山近し明日の日取りて持ちて参ゐ来む","#[仮名],いたぶきの,くろきのやねは,やまちかし,あすのひとりて,もちてまゐこむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,紀女郎,恋愛","#[訓異]
いたぶきの,[寛]いたふきの,
くろきのやねは[寛],
やまちかし[寛],
あすのひとりて,[寛]あすもとりては,
もちてまゐこむ,[寛]もてまゐりこむ,
" "#[番号]04/0780","#[題詞](大伴宿祢家持更贈紀女郎歌五首)","#[原文]黒樹取 草毛苅乍 仕目利 勤<和>氣登 将譽十方不有 [一云仕登母]","#[訓読]黒木取り草も刈りつつ仕へめどいそしきわけとほめむともあらず [一云仕ふとも]","#[仮名],くろきとり,かやもかりつつ,つかへめど,いそしきわけと,ほめむともあらず,[つかふとも]","#[左注]","#[校異]知 -> 和 [万葉考] / 母 [元][類] 毛","#[事項],相聞,作者:大伴家持,紀女郎,恋愛,戯笑","#[訓異]
くろきとり[寛],
かやもかりつつ[寛],
つかへめど,[寛]つかへめと,
いそしきわけと,[寛]ゆめしりゆきと,
ほめむともあらず,[寛]ほめむともあらす,
[つかふとも]
" "#[番号]04/0781","#[題詞](大伴宿祢家持更贈紀女郎歌五首)","#[原文]野干玉能 昨夜者令還 今夜左倍 吾乎還莫 路之長手<呼>","#[訓読]ぬばたまの昨夜は帰しつ今夜さへ我れを帰すな道の長手を","#[仮名],ぬばたまの,きぞはかへしつ,こよひさへ,われをかへすな,みちのながてを","#[左注]","#[校異]乎 -> 呼 [桂][元][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,紀女郎,枕詞,恋愛","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
きぞはかへしつ,[寛]よふへはかへる,
こよひさへ[寛],
われをかへすな[寛],
みちのながてを,[寛]みちのなかてを,
" "#[番号]04/0782","#[題詞]紀女郎L物贈友歌一首 [女郎名曰小鹿也]","#[原文]風高 邊者雖吹 為妹 袖左倍所<沾>而 苅流玉藻焉","#[訓読]風高く辺には吹けども妹がため袖さへ濡れて刈れる玉藻ぞ","#[仮名],かぜたかく,へにはふけども,いもがため,そでさへぬれて,かれるたまもぞ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 沽 -> 沾 [元][紀]","#[事項],相聞,作者:紀女郎,贈り物,植物","#[訓異]
かぜたかく,[寛]かせたかみ,
へにはふけども,[寛]へにはふけとも,
いもがため,[寛]いもかため,
そでさへぬれて,[寛]そてさへぬれて,
かれるたまもぞ,[寛]かれるたまもを,
" "#[番号]04/0783","#[題詞]大伴宿祢家持贈娘子歌三首","#[原文]前年之 先年従 至今年 戀跡奈何毛 妹尓相難","#[訓読]をととしの先つ年より今年まで恋ふれどなぞも妹に逢ひかたき","#[仮名],をととしの,さきつとしより,ことしまで,こふれどなぞも,いもにあひかたき","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,娘子,贈答,恋情","#[訓異]
をととしの[寛],
さきつとしより[寛],
ことしまで,[寛]ことしまて,
こふれどなぞも,[寛]こふれとなそも,
いもにあひかたき[寛],
" "#[番号]04/0784","#[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌三首)","#[原文]打乍二波 更毛不得言 夢谷 妹之<手>本乎 纒宿常思見者","#[訓読]うつつにはさらにもえ言はず夢にだに妹が手本を卷き寝とし見ば","#[仮名],うつつには,さらにもえいはず,いめにだに,いもがたもとを,まきぬとしみば","#[左注]","#[校異]牟 -> 手 [西(右書)][桂][元][紀]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,娘子,夢,恋情","#[訓異]
うつつには[寛],
さらにもえいはず,[寛]さらにもいはす,
いめにだに,[寛]ゆめにたに,
いもがたもとを,[寛]いもかたもとを,
まきぬとしみば,[寛]まきぬとしみは,
" "#[番号]04/0785","#[題詞](大伴宿祢家持贈娘子歌三首)","#[原文]吾屋戸之 草上白久 置露乃 壽母不有惜 妹尓不相有者","#[訓読]我がやどの草の上白く置く露の身も惜しからず妹に逢はずあれば","#[仮名],わがやどの,くさのうへしろく,おくつゆの,みもをしくあらず,いもにあはずあれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,娘子,恋情","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
くさのうへしろく[寛],
おくつゆの[寛],
みもをしくあらず,[寛]いのちもをしからす,
いもにあはずあれば,[寛]いもにあはされは,
" "#[番号]04/0786","#[題詞]大伴宿祢家持報贈藤原朝臣久須麻呂歌三首","#[原文]春之雨者 弥布落尓 梅花 未咲久 伊等若美可聞","#[訓読]春の雨はいやしき降るに梅の花いまだ咲かなくいと若みかも","#[仮名],はるのあめは,いやしきふるに,うめのはな,いまださかなく,いとわかみかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,藤原久須麻呂,比喩,求婚,植物,贈答","#[訓異]
はるのあめは[寛],
いやしきふるに[寛],
うめのはな[寛],
いまださかなく,[寛]いまたさかなく,
いとわかみかも[寛],
" "#[番号]04/0787","#[題詞](大伴宿祢家持報贈藤原朝臣久須麻呂歌三首)","#[原文]如夢 所念鴨 愛八師 君之使乃 麻祢久通者","#[訓読]夢のごと思ほゆるかもはしきやし君が使の数多く通へば","#[仮名],いめのごと,おもほゆるかも,はしきやし,きみがつかひの,まねくかよへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,藤原久須麻呂,贈答","#[訓異]
いめのごと,[寛]ゆめのこと,
おもほゆるかも[寛],
はしきやし,[寛]よしゑやし,
きみがつかひの,[寛]きみかつかひの,
まねくかよへば,[寛]まねくかよへは,
" "#[番号]04/0788","#[題詞](大伴宿祢家持報贈藤原朝臣久須麻呂歌三首)","#[原文]浦若見 花咲難寸 梅乎殖而 人之事重三 念曽吾為類","#[訓読]うら若み花咲きかたき梅を植ゑて人の言繁み思ひぞ我がする","#[仮名],うらわかみ,はなさきかたき,うめをうゑて,ひとのことしげみ,おもひぞわがする","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,藤原久須麻呂,比喩,うわさ,植物,贈答","#[訓異]
うらわかみ[寛],
はなさきかたき[寛],
うめをうゑて[寛],
ひとのことしげみ,[寛]ひとのことしけみ,
おもひぞわがする,[寛]おもひそわかする,
" "#[番号]04/0789","#[題詞]又家持贈藤原朝臣久須麻呂歌二首","#[原文]情八十一 所念可聞 春霞 軽引時二 事之通者","#[訓読]心ぐく思ほゆるかも春霞たなびく時に言の通へば","#[仮名],こころぐく,おもほゆるかも,はるかすみ,たなびくときに,ことのかよへば","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:大伴家持,藤原久須麻呂,贈答","#[訓異]
こころぐく,[寛]こころくく,
おもほゆるかも[寛],
はるかすみ[寛],
たなびくときに,[寛]たなひくときに,
ことのかよへば,[寛]ことのかよへは,
" "#[番号]04/0790","#[題詞](又家持贈藤原朝臣久須麻呂歌二首)","#[原文]春風之 聲尓四出名者 有去而 不有今友 君之随意","#[訓読]春風の音にし出なばありさりて今ならずとも君がまにまに","#[仮名],はるかぜの,おとにしいでなば,ありさりて,いまならずとも,きみがまにまに","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:大伴家持,藤原久須麻呂,贈答","#[訓異]
はるかぜの,[寛]はるかせの,
おとにしいでなば,[寛]おとにしいてなは,
ありさりて,[寛]ありゆきて,
いまならずとも,[寛]いまならすとも,
きみがまにまに,[寛]きみかまにまに,
" "#[番号]04/0791","#[題詞]藤原朝臣久須麻呂来報歌二首","#[原文]奥山之 磐影尓生流 菅根乃 懃吾毛 不相念有哉","#[訓読]奥山の岩蔭に生ふる菅の根のねもころ我れも相思はざれや","#[仮名],おくやまの,いはかげにおふる,すがのねの,ねもころわれも,あひおもはざれや","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],相聞,作者:藤原久須麻呂,大伴家持,植物,序詞,贈答","#[訓異]
おくやまの[寛],
いはかげにおふる,[寛]いはかけにおふる,
すがのねの,[寛]すかのねの,
ねもころわれも[寛],
あひおもはざれや,[寛]あひおもはされや,
" "#[番号]04/0792","#[題詞](藤原朝臣久須麻呂来報歌二首)","#[原文]春雨乎 待<常>二師有四 吾屋戸之 若木乃梅毛 未含有","#[訓読]春雨を待つとにしあらし我がやどの若木の梅もいまだふふめり","#[仮名],はるさめを,まつとにしあらし,わがやどの,わかきのうめも,いまだふふめり","#[左注]","#[校異]<> -> 常 [西(右書)][元][類][紀]","#[事項],相聞,作者:藤原久須麻呂,大伴家持,比喩,植物,贈答","#[訓異]
はるさめを[寛],
まつとにしあらし[寛],
わがやどの,[寛]わかやとの,
わかきのうめも[寛],
いまだふふめり,[寛]いまそくくめり,
" "#[番号]05/0793","#[題詞]雜歌 / <大>宰帥大伴卿報凶問歌一首 / 禍故重疊 凶問累集 永懐崩心之悲 獨流断腸之泣 但依兩君大助傾命纔継耳 [筆不盡言 古今所歎]","#[原文]余能奈可波 牟奈之伎母乃等 志流等伎子 伊与余麻須万須 加奈之可利家理","#[訓読]世間は空しきものと知る時しいよよますます悲しかりけり","#[仮名],よのなかは,むなしきものと,しるときし,いよよますます,かなしかりけり","#[左注]神龜五年六月二十三日","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 太 -> 大 [紀][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],作者:大伴旅人,哀悼,無常,仏教,太宰府,福岡,地名,神亀5年6月23日,年紀","#[訓異]
よのなかは[寛],
むなしきものと[寛],
しるときし[寛],
いよよますます[寛],
かなしかりけり[寛],
" "#[番号]05/0794","#[題詞]盖聞 四生起滅方夢皆空 三界漂流喩環不息 所以維摩大士在于方丈 有懐染疾之患 釋迦能仁坐於雙林 無免泥j之苦 故知 二聖至極不能拂力負之尋至 三千世界誰能逃黒闇之捜来 二鼠<競>走而度目之鳥旦飛 四蛇争侵而過隙之駒夕走 嗟乎痛哉 紅顏共三従長逝 素質与四徳永滅 何圖偕老違於要期 獨飛生於半路 蘭室屏風徒張 断腸之哀弥痛 枕頭明鏡空懸 染k之涙逾落 泉門一掩 無由再見 嗚呼哀哉 / 愛河波浪已先滅 苦海煩悩亦無結 従来厭離此穢土 本願託生彼浄刹 / 日本挽歌一首","#[原文]大王能 等保乃朝廷等 斯良農比 筑紫國尓 泣子那須 斯多比枳摩斯提 伊企陀<尓>母 伊摩陀夜周米受 年月母 伊摩他阿良祢婆 許々呂由母 於母波奴阿比陀尓 宇知那i枳 許夜斯努礼 伊波牟須弊 世武須弊斯良尓 石木乎母 刀比佐氣斯良受 伊弊那良婆 迦多知波阿良牟乎 宇良賣斯企 伊毛乃美許等能 阿礼乎婆母 伊可尓世与等可 尓保鳥能 布多利那良i為 加多良比斯 許々呂曽牟企弖 伊弊社可利伊摩須","#[訓読]大君の 遠の朝廷と しらぬひ 筑紫の国に 泣く子なす 慕ひ来まして 息だにも いまだ休めず 年月も いまだあらねば 心ゆも 思はぬ間に うち靡き 臥やしぬれ 言はむすべ 為むすべ知らに 岩木をも 問ひ放け知らず 家ならば 形はあらむを 恨めしき 妹の命の 我れをばも いかにせよとか にほ鳥の ふたり並び居 語らひし 心背きて 家離りいます","#[仮名],おほきみの,とほのみかどと,しらぬひ,つくしのくにに,なくこなす,したひきまして,いきだにも,いまだやすめず,としつきも,いまだあらねば,こころゆも,おもはぬあひだに,うちなびき,こやしぬれ,いはむすべ,せむすべしらに,いはきをも,とひさけしらず,いへならば,かたちはあらむを,うらめしき,いものみことの,あれをばも,いかにせよとか,にほどりの,ふたりならびゐ,かたらひし,こころそむきて,いへざかりいます","#[左注](神龜五年七月廿一日 筑前國守山上憶良上)","#[校異]于 [紀][細] 乎 / <> -> 競 [西(右書)][紀][細] / 歌 [西] 謌 / <> -> 尓 [西(右書)][紀][細]","#[事項],作者:山上憶良,大伴旅人,仏教,無常,哀悼,亡妻,太宰府,福岡,枕詞,地名,神亀5年7月21日,年紀","#[訓異]
おほきみの[寛],
とほのみかどと,[寛]とほのみかとと,
しらぬひ,[寛]しらぬひの,
つくしのくにに[寛],
なくこなす[寛],
したひきまして[寛],
いきだにも,[寛]いきたにも,
いまだやすめず,[寛]いまたやすめす,
としつきも[寛],
いまだあらねば,[寛]いまたあらねは,
こころゆも[寛],
おもはぬあひだに,[寛]おもはぬあひたに,
うちなびき,[寛]うちなひき,
こやしぬれ[寛],
いはむすべ,[寛]いはむすへ,
せむすべしらに,[寛]せむすへしらに,
いはきをも[寛],
とひさけしらず,[寛]とひさけしらす,
いへならば,[寛]いへならは,
かたちはあらむを[寛],
うらめしき[寛],
いものみことの[寛],
あれをばも,[寛]あれをはも,
いかにせよとか[寛],
にほどりの,[寛]にほとりの,
ふたりならびゐ,[寛]ふたりならひゐ,
かたらひし[寛],
こころそむきて[寛],
いへざかりいます,[寛]いへさかりいます,
" "#[番号]05/0795","#[題詞](盖聞 四生起滅方夢皆空 三界漂流喩環不息 所以維摩大士在于方丈 有懐染疾之患 釋迦能仁坐於雙林 無免泥j之苦 故知 二聖至極不能拂力負之尋至 三千世界誰能逃黒闇之捜来 二鼠<競>走而度目之鳥旦飛 四蛇争侵而過隙之駒夕走 嗟乎痛哉 紅顏共三従長逝 素質与四徳永滅 何圖偕老違於要期 獨飛生於半路 蘭室屏風徒張 断腸之哀弥痛 枕頭明鏡空懸 染k之涙逾落 泉門一掩 無由再見 嗚呼哀哉 / 愛河波浪已先滅 苦海煩悩亦無結 従来厭離此穢土 本願託生彼浄刹 / 日本挽歌一首)反歌","#[原文]伊弊尓由伎弖 伊可尓可阿我世武 摩久良豆久 都摩夜左夫斯久 於母保由倍斯母","#[訓読]家に行きていかにか我がせむ枕付く妻屋寂しく思ほゆべしも","#[仮名],いへにゆきて,いかにかあがせむ,まくらづく,つまやさぶしく,おもほゆべしも","#[左注](神龜五年七月廿一日 筑前國守山上憶良上)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],作者:山上憶良,大伴旅人,仏教,無常,哀悼,亡妻,太宰府,福岡,地名,神亀5年7月21日,年紀","#[訓異]
いへにゆきて[寛],
いかにかあがせむ,[寛]いかにかあかせむ,
まくらづく,[寛]まくらつく,
つまやさぶしく,[寛]つまやさふしく,
おもほゆべしも,[寛]おもほゆへしも,
" "#[番号]05/0796","#[題詞]((盖聞 四生起滅方夢皆空 三界漂流喩環不息 所以維摩大士在于方丈 有懐染疾之患 釋迦能仁坐於雙林 無免泥j之苦 故知 二聖至極不能拂力負之尋至 三千世界誰能逃黒闇之捜来 二鼠<競>走而度目之鳥旦飛 四蛇争侵而過隙之駒夕走 嗟乎痛哉 紅顏共三従長逝 素質与四徳永滅 何圖偕老違於要期 獨飛生於半路 蘭室屏風徒張 断腸之哀弥痛 枕頭明鏡空懸 染k之涙逾落 泉門一掩 無由再見 嗚呼哀哉 / 愛河波浪已先滅 苦海煩悩亦無結 従来厭離此穢土 本願託生彼浄刹 / 日本挽歌一首)反歌)","#[原文]伴之伎与之 加久乃未可良尓 之多比己之 伊毛我己許呂乃 須別毛須別那左","#[訓読]はしきよしかくのみからに慕ひ来し妹が心のすべもすべなさ","#[仮名],はしきよし,かくのみからに,したひこし,いもがこころの,すべもすべなさ","#[左注](神龜五年七月廿一日 筑前國守山上憶良上)","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,大伴旅人,仏教,無常,哀悼,亡妻,太宰府,福岡,地名,神亀5年7月21日,年紀","#[訓異]
はしきよし[寛],
かくのみからに[寛],
したひこし[寛],
いもがこころの,[寛]いもかこころの,
すべもすべなさ,[寛]すへもすへなさ,
" "#[番号]05/0797","#[題詞]((盖聞 四生起滅方夢皆空 三界漂流喩環不息 所以維摩大士在于方丈 有懐染疾之患 釋迦能仁坐於雙林 無免泥j之苦 故知 二聖至極不能拂力負之尋至 三千世界誰能逃黒闇之捜来 二鼠<競>走而度目之鳥旦飛 四蛇争侵而過隙之駒夕走 嗟乎痛哉 紅顏共三従長逝 素質与四徳永滅 何圖偕老違於要期 獨飛生於半路 蘭室屏風徒張 断腸之哀弥痛 枕頭明鏡空懸 染k之涙逾落 泉門一掩 無由再見 嗚呼哀哉 / 愛河波浪已先滅 苦海煩悩亦無結 従来厭離此穢土 本願託生彼浄刹 / 日本挽歌一首)反歌)","#[原文]久夜斯可母 可久斯良摩世婆 阿乎尓与斯 久奴知許等其等 美世摩斯母乃乎","#[訓読]悔しかもかく知らませばあをによし国内ことごと見せましものを","#[仮名],くやしかも,かくしらませば,あをによし,くぬちことごと,みせましものを","#[左注](神龜五年七月廿一日 筑前國守山上憶良上)","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,大伴旅人,仏教,無常,哀悼,亡妻,太宰府,福岡,地名,神亀5年7月21日,年紀","#[訓異]
くやしかも[寛],
かくしらませば,[寛]かくしらませは,
あをによし[寛],
くぬちことごと,[寛]くぬちことこと,
みせましものを[寛],
" "#[番号]05/0798","#[題詞]((盖聞 四生起滅方夢皆空 三界漂流喩環不息 所以維摩大士在于方丈 有懐染疾之患 釋迦能仁坐於雙林 無免泥j之苦 故知 二聖至極不能拂力負之尋至 三千世界誰能逃黒闇之捜来 二鼠<競>走而度目之鳥旦飛 四蛇争侵而過隙之駒夕走 嗟乎痛哉 紅顏共三従長逝 素質与四徳永滅 何圖偕老違於要期 獨飛生於半路 蘭室屏風徒張 断腸之哀弥痛 枕頭明鏡空懸 染k之涙逾落 泉門一掩 無由再見 嗚呼哀哉 / 愛河波浪已先滅 苦海煩悩亦無結 従来厭離此穢土 本願託生彼浄刹 / 日本挽歌一首)反歌)","#[原文]伊毛何美斯 阿布知乃波那波 知利奴倍斯 和何那久那美多 伊摩陀飛那久尓","#[訓読]妹が見し楝の花は散りぬべし我が泣く涙いまだ干なくに","#[仮名],いもがみし,あふちのはなは,ちりぬべし,わがなくなみた,いまだひなくに","#[左注](神龜五年七月廿一日 筑前國守山上憶良上)","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,大伴旅人,仏教,無常,哀悼,亡妻,太宰府,福岡,地名,神亀5年7月21日,年紀","#[訓異]
いもがみし,[寛]いもかみし,
あふちのはなは[寛],
ちりぬべし,[寛]ちりぬへし,
わがなくなみた,[寛]わかなくなみた,
いまだひなくに,[寛]いまたひなくに,
" "#[番号]05/0799","#[題詞]((盖聞 四生起滅方夢皆空 三界漂流喩環不息 所以維摩大士在于方丈 有懐染疾之患 釋迦能仁坐於雙林 無免泥j之苦 故知 二聖至極不能拂力負之尋至 三千世界誰能逃黒闇之捜来 二鼠<競>走而度目之鳥旦飛 四蛇争侵而過隙之駒夕走 嗟乎痛哉 紅顏共三従長逝 素質与四徳永滅 何圖偕老違於要期 獨飛生於半路 蘭室屏風徒張 断腸之哀弥痛 枕頭明鏡空懸 染k之涙逾落 泉門一掩 無由再見 嗚呼哀哉 / 愛河波浪已先滅 苦海煩悩亦無結 従来厭離此穢土 本願託生彼浄刹 / 日本挽歌一首)反歌)","#[原文]大野山 紀利多知<和>多流 和何那宜久 於伎蘇乃可是尓 紀利多知和多流","#[訓読]大野山霧立ちわたる我が嘆くおきその風に霧立ちわたる","#[仮名],おほのやま,きりたちわたる,わがなげく,おきそのかぜに,きりたちわたる","#[左注]神龜五年七月廿一日 筑前國守山上憶良上","#[校異]<> -> 和 [西(右書)][類][紀]","#[事項],作者:山上憶良,大伴旅人,仏教,無常,哀悼,亡妻,太宰府,福岡,地名,神亀5年7月21日,年紀","#[訓異]
おほのやま[寛],
きりたちわたる[寛],
わがなげく,[寛]わかなけく,
おきそのかぜに,[寛]おきそのかせに,
きりたちわたる[寛],
" "#[番号]05/0800","#[題詞]令反<或>情歌一首[并序] / 或有人 知敬父母忘於侍養 不顧妻子軽於脱l 自称<倍>俗先生 意氣雖揚青雲之上 身體猶在塵俗之中 未驗修行得道之聖 蓋是亡命山澤之民 所以指示三綱更開五教 遣之以歌令反其<或> 歌曰","#[原文]父母乎 美礼婆多布斗斯 妻子見礼婆 米具斯宇都久志 余能奈迦波 加久叙許等和理 母<智>騰利乃 可可良波志母与 由久弊斯良祢婆 宇既具都遠 奴伎都流其等久 布美奴伎提 由久智布比等波 伊波紀欲利 奈利提志比等迦 奈何名能良佐祢 阿米弊由迦婆 奈何麻尓麻尓 都智奈良婆 大王伊摩周 許能提羅周 日月能斯多波 雨麻久毛能 牟迦夫周伎波美 多尓具久能 佐和多流伎波美 企許斯遠周 久尓能麻保良叙 可尓迦久尓 保志伎麻尓麻尓 斯可尓波阿羅慈迦","#[訓読]父母を 見れば貴し 妻子見れば めぐし愛し 世間は かくぞことわり もち鳥の かからはしもよ ゆくへ知らねば 穿沓を 脱き棄るごとく 踏み脱きて 行くちふ人は 石木より なり出し人か 汝が名告らさね 天へ行かば 汝がまにまに 地ならば 大君います この照らす 日月の下は 天雲の 向伏す極み たにぐくの さ渡る極み 聞こし食す 国のまほらぞ かにかくに 欲しきまにまに しかにはあらじか","#[仮名],ちちははを,みればたふとし,めこみれば,めぐしうつくし,よのなかは,かくぞことわり,もちどりの,かからはしもよ,ゆくへしらねば,うけぐつを,ぬきつるごとく,ふみぬきて,ゆくちふひとは,いはきより,なりでしひとか,ながなのらさね,あめへゆかば,ながまにまに,つちならば,おほきみいます,このてらす,ひつきのしたは,あまくもの,むかぶすきはみ,たにぐくの,さわたるきはみ,きこしをす,くにのまほらぞ,かにかくに,ほしきまにまに,しかにはあらじか","#[左注](神龜五年七月廿一日於嘉摩郡撰定 筑前國守山上憶良)","#[校異]惑 -> 或 [紀][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 畏 -> 倍 [紀] / 歌令 [西] 謌令 [西(訂正)] 歌令 / 惑 -> 或 [紀][細] / <> -> 智 [西(右書)][紀][細] / 可可 [紀][細][温] 可々","#[事項],作者:山上憶良,国司,逃亡民,儒教,教喩,道教,福岡,地名,神亀5年7月21日,年紀","#[訓異]
ちちははを[寛],
みればたふとし,[寛]みれはたふとし,
めこみれば,[寛]めこみれは,
めぐしうつくし,[寛]めくしうつくし,
よのなかは[寛],
かくぞことわり,[寛]かくそことわり,
もちどりの,[寛]もちとりの,
かからはしもよ[寛],
ゆくへしらねば,[寛]ゆくへしらねは,
うけぐつを,[寛]うきくつを,
ぬきつるごとく,[寛]ぬきつることく,
ふみぬきて[寛],
ゆくちふひとは[寛],
いはきより[寛],
なりでしひとか,[寛]なりてしひとか,
ながなのらさね,[寛]なかなのらさね,
あめへゆかば,[寛]あめへゆかは,
ながまにまに,[寛]なかまにまに,
つちならば,[寛]つちならは,
おほきみいます[寛],
このてらす[寛],
ひつきのしたは[寛],
あまくもの[寛],
むかぶすきはみ,[寛]むかふすきはみ,
たにぐくの,[寛]たにくくの,
さわたるきはみ[寛],
きこしをす[寛],
くにのまほらぞ,[寛]くにのまほらそ,
かにかくに[寛],
ほしきまにまに[寛],
しかにはあらじか,[寛]しかにはあらしか,
" "#[番号]05/0801","#[題詞](令反<或>情歌一首[并序] / 或有人 知敬父母忘於侍養 不顧妻子軽於脱l 自称<倍>俗先生 意氣雖揚青雲之上 身體猶在塵俗之中 未驗修行得道之聖 蓋是亡命山澤之民 所以指示三綱更開五教 遣之以歌令反其<或> 歌曰)反歌","#[原文]比佐迦多能 阿麻遅波等保斯 奈保<々々>尓 伊弊尓可弊利提 奈利乎斯麻佐尓","#[訓読]ひさかたの天道は遠しなほなほに家に帰りて業を為まさに","#[仮名],ひさかたの,あまぢはとほし,なほなほに,いへにかへりて,なりをしまさに","#[左注](神龜五年七月廿一日於嘉摩郡撰定 筑前國守山上憶良)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 奈保 -> 々々 [類][紀][細]","#[事項],作者:山上憶良,国司,逃亡民,儒教,教喩,道教,福岡,枕詞,地名,神亀5年7月21日,年紀","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あまぢはとほし,[寛]あまちはとほし,
なほなほに[寛],
いへにかへりて[寛],
なりをしまさに[寛],
" "#[番号]05/0802","#[題詞]思子等歌一首[并序] / 釋迦如来金口正説 等思衆生如羅m羅 又説 愛無過子 至極大聖尚有愛子之心 況乎世間蒼生誰不愛子乎","#[原文]宇利<波><米婆> 胡藤母意母保由 久利波米婆 麻斯提斯農波由 伊豆久欲利 枳多利斯物能曽 麻奈迦比尓 母等奈可可利提 夜周伊斯奈佐農","#[訓読]瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ いづくより 来りしものぞ まなかひに もとなかかりて 安寐し寝さぬ","#[仮名],うりはめば,こどもおもほゆ,くりはめば,ましてしぬはゆ,いづくより,きたりしものぞ,まなかひに,もとなかかりて,やすいしなさぬ","#[左注](神龜五年七月廿一日於嘉摩郡撰定 筑前國守山上憶良)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 婆 -> 波 [紀][細][温] / <> -> 米婆 [西(右書)][紀][細]","#[事項],作者:山上憶良,愛子,仏教,福岡,子供,植物,神亀5年7月21日,年紀,地名","#[訓異]
うりはめば,[寛]うりはめは,
こどもおもほゆ,[寛]こともおもほゆ,
くりはめば,[寛]くりはめは,
ましてしぬはゆ,[寛]ましてしのはゆ,
いづくより,[寛]いつくより,
きたりしものぞ,[寛]きたりしものそ,
まなかひに[寛],
もとなかかりて[寛],
やすいしなさぬ[寛],
" "#[番号]05/0803","#[題詞](思子等歌一首[并序] / 釋迦如来金口正説 等思衆生如羅m羅 又説 愛無過子 至極大聖尚有愛子之心 況乎世間蒼生誰不愛子乎)反歌","#[原文]銀母 金母玉母 奈尓世武尓 麻佐礼留多可良 古尓斯迦米夜母","#[訓読]銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも","#[仮名],しろかねも,くがねもたまも,なにせむに,まされるたから,こにしかめやも","#[左注](神龜五年七月廿一日於嘉摩郡撰定 筑前國守山上憶良)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],作者:山上憶良,愛子,仏教,福岡,子供,神亀5年7月21日,年紀,地名","#[訓異]
しろかねも[寛],
くがねもたまも,[寛]くかねもたまも,
なにせむに[寛],
まされるたから[寛],
こにしかめやも[寛],
" "#[番号]05/0804","#[題詞]哀世間難住歌一首[并序] / 易集難排八大辛苦 難遂易盡百年賞樂 古人所歎今亦及之 所以因作一章之歌 以撥二毛之歎 其歌曰","#[原文]世間能 周弊奈伎物能波 年月波 奈何流々其等斯 等利都々伎 意比久留<母>能波 毛々久佐尓 勢米余利伎多流 遠等n良何 遠等n佐備周等 可羅多麻乎 多母等尓麻可志 [或有此句云 之路多倍乃 袖布利可伴之 久礼奈為乃 阿可毛須蘇i伎] 余知古良等 手多豆佐波利提 阿蘇比家武 等伎能佐迦利乎 等々尾迦祢 周具斯野利都礼 美奈乃和多 迦具漏伎可美尓 伊都乃麻可 斯毛乃布利家武 久礼奈為能 [一云 尓能保奈須] 意母提乃宇倍尓 伊豆久由可 斯和何伎多利斯 [一云 都祢奈利之 恵麻比麻欲i伎 散久伴奈能 宇都呂比<尓>家利 余乃奈可伴 可久乃未奈良之] 麻周羅遠乃 遠刀古佐備周等 都流伎多智 許志尓刀利波枳 佐都由美乎 多尓伎利物知提 阿迦胡麻尓 志都久良宇知意伎 波比能利提 阿蘇比阿留伎斯 余乃奈迦野 都祢尓阿利家留 遠等n良何 佐那周伊多斗乎 意斯比良伎 伊多度利与利提 麻<多麻>提乃 多麻提佐斯迦閇 佐祢斯欲能 伊久陀母阿羅祢婆 多都可豆<恵> 許志尓多何祢提 可由既婆 比等尓伊等波延 可久由既婆 比等尓邇久<麻>延 意余斯遠波 迦久能尾奈良志 多麻枳<波>流 伊能知遠志家騰 世武周弊母奈新","#[訓読]世間の すべなきものは 年月は 流るるごとし とり続き 追ひ来るものは 百種に 迫め寄り来る 娘子らが 娘子さびすと 唐玉を 手本に巻かし [白妙の 袖振り交はし 紅の 赤裳裾引き] よち子らと 手携はりて 遊びけむ 時の盛りを 留みかね 過ぐしやりつれ 蜷の腸 か黒き髪に いつの間か 霜の降りけむ 紅の [丹のほなす] 面の上に いづくゆか 皺が来りし [常なりし 笑まひ眉引き 咲く花の 移ろひにけり 世間は かくのみならし] ますらをの 男さびすと 剣太刀 腰に取り佩き さつ弓を 手握り持ちて 赤駒に 倭文鞍うち置き 這ひ乗りて 遊び歩きし 世間や 常にありける 娘子らが さ寝す板戸を 押し開き い辿り寄りて 真玉手の 玉手さし交へ さ寝し夜の いくだもあらねば 手束杖 腰にたがねて か行けば 人に厭はえ かく行けば 人に憎まえ 老よし男は かくのみならし たまきはる 命惜しけど 為むすべもなし","#[仮名],よのなかの,すべなきものは,としつきは,ながるるごとし,とりつつき,おひくるものは,ももくさに,せめよりきたる,をとめらが,をとめさびすと,からたまを,たもとにまかし,[しろたへの,そでふりかはし,くれなゐの,あかもすそひき],よちこらと,てたづさはりて,あそびけむ,ときのさかりを,とどみかね,すぐしやりつれ,みなのわた,かぐろきかみに,いつのまか,しものふりけむ,くれなゐの,[にのほなす],おもてのうへに,いづくゆか,しわがきたりし,[つねなりし,ゑまひまよびき,さくはなの,うつろひにけり,よのなかは,かくのみならし],ますらをの,をとこさびすと,つるぎたち,こしにとりはき,さつゆみを,たにぎりもちて,あかごまに,しつくらうちおき,はひのりて,あそびあるきし,よのなかや,つねにありける,をとめらが,さなすいたとを,おしひらき,いたどりよりて,またまでの,たまでさしかへ,さねしよの,いくだもあらねば,たつかづゑ,こしにたがねて,かゆけば,ひとにいとはえ,かくゆけば,ひとににくまえ,およしをは,かくのみならし,たまきはる,いのちをしけど,せむすべもなし","#[左注](神龜五年七月廿一日於嘉摩郡撰定 筑前國守山上憶良)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 / <> -> 母 [西(右書)][紀][細] / <> -> 尓 [西(右書)][紀][細] / <> -> 多麻 [西(右書)][細][温] / 慧 -> 恵 [紀][細] / 可 [西(右書)][矢][京] 可久 / <> -> 麻 [西(右書)][紀][細] / 麻 [紀][細](塙) 摩 / 婆 -> 波 [細][温]","#[事項],作者:山上憶良,仏教,無常,福岡,神亀5年7月21日,年紀,地名","#[訓異]
よのなかの[寛],
すべなきものは,[寛]すへなきものは,
としつきは[寛],
ながるるごとし,[寛]なかるることし,
とりつつき[寛],
おひくるものは[寛],
ももくさに[寛],
せめよりきたる[寛],
をとめらが,[寛]をとめらか,
をとめさびすと,[寛]をとめさひすと,
からたまを[寛],
たもとにまかし[寛],
[しろたへの,
そでふりかはし,
くれなゐの,
あかもすそひき],
よちこらと[寛],
てたづさはりて,[寛]てたつさはりて,
あそびけむ,[寛]あそひけむ,
ときのさかりを[寛],
とどみかね,[寛]ととみかね,
すぐしやりつれ,[寛]すくしやりつれ,
みなのわた[寛],
かぐろきかみに,[寛]かくろきかみに,
いつのまか[寛],
しものふりけむ[寛],
くれなゐの,[寛]くれなゐを,
[にのほなす],
おもてのうへに[寛],
いづくゆか,[寛]いつくゆか,
しわがきたりし,[寛]しわかきたりし,
[つねなりし,
ゑまひまよびき,
さくはなの,
うつろひにけり,
よのなかは,
かくのみならし],
ますらをの[寛],
をとこさびすと,[寛]をとこさひすと,
つるぎたち,[寛]つるきたち,
こしにとりはき[寛],
さつゆみを[寛],
たにぎりもちて,[寛]たにきりもちて,
あかごまに,[寛]あかこまに,
しつくらうちおき[寛],
はひのりて[寛],
あそびあるきし,[寛]あそひあるきし,
よのなかや,[寛]よのなかの,
つねにありける[寛],
をとめらが,[寛]をとめらか,
さなすいたとを[寛],
おしひらき[寛],
いたどりよりて,[寛]いたとりよりて,
またまでの,[寛]またまての,
たまでさしかへ,[寛]たまてさしかへ,
さねしよの[寛],
いくだもあらねば,[寛]いくたもあらねは,
たつかづゑ,[寛]たつかつゑ,
こしにたがねて,[寛]こしにたかねて,
かゆけば,[寛]かくゆきは,
ひとにいとはえ[寛],
かくゆけば,[寛]かくゆきは,
ひとににくまえ[寛],
およしをは[寛],
かくのみならし[寛],
たまきはる[寛],
いのちをしけど,[寛]いのちをしけと,
せむすべもなし,[寛]せむすへもなし,
" "#[番号]05/0805","#[題詞](哀世間難住歌一首[并序] / 易集難排八大辛苦 難遂易盡百年賞樂 古人所歎今亦及之 所以因作一章之歌 以撥二毛之歎 其歌曰)反歌","#[原文]等伎波奈周 <迦>久斯母何母等 意母閇騰母 余能許等奈礼婆 等登尾可祢都母","#[訓読]常磐なすかくしもがもと思へども世の事なれば留みかねつも","#[仮名],ときはなす,かくしもがもと,おもへども,よのことなれば,とどみかねつも","#[左注]神龜五年七月廿一日於嘉摩郡撰定 筑前國守山上憶良","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 加 -> 迦 [類][紀][温]","#[事項],作者:山上憶良,仏教,無常,福岡,地名,神亀5年7月21日,年紀","#[訓異]
ときはなす[寛],
かくしもがもと,[寛]かくしもと,
おもへども,[寛]おもへとも,
よのことなれば,[寛]よのことなれは,
とどみかねつも,[寛]ととみをかねつつも,
" "#[番号]05/0806","#[題詞]伏辱来書 具承芳旨 忽成隔漢之戀 復傷抱梁之意 唯羨去留無恙 遂待披雲耳 / 歌詞兩首 [<大>宰帥大伴卿]","#[原文]多都能馬母 伊麻勿愛弖之可 阿遠尓与志 奈良乃美夜古尓 由吉帝己牟丹米","#[訓読]龍の馬も今も得てしかあをによし奈良の都に行きて来むため","#[仮名],たつのまも,いまもえてしか,あをによし,ならのみやこに,ゆきてこむため","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 太 -> 大 [細][温]","#[事項],作者:大伴旅人,書簡,枕詞,望郷,恋情,贈答","#[訓異]
たつのまも[寛],
いまもえてしか[寛],
あをによし[寛],
ならのみやこに[寛],
ゆきてこむため[寛],
" "#[番号]05/0807","#[題詞](伏辱来書 具承芳旨 忽成隔漢之戀 復傷抱梁之意 唯羨去留無恙 遂待披雲耳 / 歌詞兩首 [<大>宰帥大伴卿])","#[原文]宇豆都仁波 安布余志勿奈子 奴<婆>多麻能 用流能伊昧仁越 都伎提美延許曽","#[訓読]うつつには逢ふよしもなしぬばたまの夜の夢にを継ぎて見えこそ","#[仮名],うつつには,あふよしもなし,ぬばたまの,よるのいめにを,つぎてみえこそ","#[左注]","#[校異]波 -> 婆 [類][古][紀]","#[事項],作者:大伴旅人,書簡,夢,恋情,贈答","#[訓異]
うつつには,
あふよしもなし,
ぬばたまの,
よるのいめにを,
つぎてみえこそ
" "#[番号]05/0808","#[題詞](伏辱来書 具承芳旨 忽成隔漢之戀 復傷抱梁之意 唯羨去留無恙 遂待披雲耳 / 歌詞兩首 [<大>宰帥大伴卿]) / 答歌二首","#[原文]多都乃麻乎 阿礼波毛等米牟 阿遠尓与志 奈良乃美夜古邇 許牟比等乃多仁","#[訓読]龍の馬を我れは求めむあをによし奈良の都に来む人のたに","#[仮名],たつのまを,あれはもとめむ,あをによし,ならのみやこに,こむひとのたに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 仁 [紀] 米","#[事項],作者:大伴旅人,書簡,枕詞,贈答","#[訓異]
たつのまを[寛],
あれはもとめむ[寛],
あをによし[寛],
ならのみやこに[寛],
こむひとのたに[寛],
" "#[番号]05/0809","#[題詞]((伏辱来書 具承芳旨 忽成隔漢之戀 復傷抱梁之意 唯羨去留無恙 遂待披雲耳 / 歌詞兩首 [<大>宰帥大伴卿]) / 答歌二首)","#[原文]多陀尓阿波須 阿良久毛於保久 志岐多閇乃 麻久良佐良受提 伊米尓之美延牟","#[訓読]直に逢はずあらくも多く敷栲の枕去らずて夢にし見えむ","#[仮名],ただにあはず,あらくもおほく,しきたへの,まくらさらずて,いめにしみえむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:大伴旅人,書簡,枕詞,夢,贈答","#[訓異]
ただにあはず,[寛]たたにあはす,
あらくもおほく[寛],
しきたへの[寛],
まくらさらずて,[寛]まくらさらすて,
いめにしみえむ[寛],
" "#[番号]05/0810","#[題詞]大伴淡等謹状 / 梧桐日本琴一面 [對馬結石山孫枝] / 此琴夢化娘子曰 余託根遥嶋之崇<巒> 晞o九陽之休光 長帶烟霞逍遥山川之阿 遠望風波出入鴈木之間 唯恐 百年之後空朽溝壑 偶遭良匠散為小琴不顧質麁音少 恒希君子左琴 即歌曰","#[原文]伊可尓安良武 日能等伎尓可母 許恵之良武 比等能比射乃倍 和我麻久良可武","#[訓読]いかにあらむ日の時にかも声知らむ人の膝の上我が枕かむ","#[仮名],いかにあらむ,ひのときにかも,こゑしらむ,ひとのひざのへ,わがまくらかむ","#[左注]","#[校異]蠻 -> 巒 [紀][細][温] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],作者:大伴旅人,創作,藤原房前,贈り物,老荘,朝隠,書簡,対馬,琴賦,天平1年10月7日,年紀","#[訓異]
いかにあらむ[寛],
ひのときにかも[寛],
こゑしらむ[寛],
ひとのひざのへ,[寛]ひとのひさのへ,
わがまくらかむ,[寛]わかまくらせむ,
" "#[番号]05/0811","#[題詞](大伴淡等謹状 / 梧桐日本琴一面 [對馬結石山孫枝] / 此琴夢化娘子曰 余託根遥嶋之崇<巒> 晞o九陽之休光 長帶烟霞逍遥山川之阿 遠望風波出入鴈木之間 唯恐 百年之後空朽溝壑 偶遭良匠散為小琴不顧質麁音少 恒希君子左琴 即歌曰)僕報詩詠曰","#[原文]許等々波奴 樹尓波安里等母 宇流波之吉 伎美我手奈礼能 許等尓之安流倍志","#[訓読]言とはぬ木にはありともうるはしき君が手馴れの琴にしあるべし","#[仮名],こととはぬ,きにはありとも,うるはしき,きみがたなれの,ことにしあるべし","#[左注]琴娘子答曰 / 敬奉徳音 幸甚々々 片事覺 即感於夢言慨然不得止黙 故附公使聊以進御耳 [謹状不具] / 天平元年十月七日附使進上 / 謹通 中衛高明閤下 謹空","#[校異]止黙 [矢][京] 黙止","#[事項],作者:大伴旅人,創作,藤原房前,贈り物,老荘,朝隠,書簡,対馬,天平1年10月7日,年紀","#[訓異]
こととはぬ[寛],
きにはありとも[寛],
うるはしき[寛],
きみがたなれの,[寛]きみかたなれの,
ことにしあるべし,[寛]ことにしあるへし,
" "#[番号]05/0812","#[題詞]跪承芳音 嘉懽交深 乃知 龍門之恩復厚蓬身之上 戀望殊念常心百倍 謹和白雲之什以奏野鄙之歌 房前謹状","#[原文]許等騰波奴 紀尓茂安理等毛 和何世古我 多那礼之美巨騰 都地尓意加米移母","#[訓読]言とはぬ木にもありとも我が背子が手馴れの御琴地に置かめやも","#[仮名],こととはぬ,きにもありとも,わがせこが,たなれのみこと,つちにおかめやも","#[左注]謹通 尊門 [記室] / 十一月八日附還使大監","#[校異]閤 [紀] 閣 / 空 [西(訂正)] 言 / 歌 [西] 謌","#[事項],作者:藤原房前,大伴旅人,書簡,天平1年11月8日,年紀","#[訓異]
こととはぬ[寛],
きにもありとも[寛],
わがせこが,[寛]わかせこか,
たなれのみこと[寛],
つちにおかめやも,[寛]つちにおかめいも,
" "#[番号]05/0813","#[題詞]筑前國怡土郡深江村子負原 臨海丘上有二石 大者長一尺二寸六分 圍一尺八寸六分 重十八斤五兩 小者長一尺一寸 圍一尺八寸 重十六斤十兩 並皆堕圓状如鷄子 其美好者不可勝論 所謂p尺璧是也 [或云 此二石者肥前國彼杵郡平敷之石 當占而取之] 去深江驛家二十許里近在路頭 公私徃来 莫不下馬跪拜 古老相傳曰 徃者息長足日女命征討新羅國之時 用茲兩石挿著御袖之中以為鎮懐 [實是御裳中矣] 所以行人敬拜此石 乃作歌曰","#[原文]可既麻久波 阿夜尓可斯故斯 多良志比n 可尾能弥許等 可良久尓遠 武氣多比良宜弖 弥許々呂遠 斯豆迷多麻布等 伊刀良斯弖 伊波比多麻比斯 麻多麻奈須 布多都能伊斯乎 世人尓 斯n斯多麻比弖 余呂豆余尓 伊比都具可祢等 和多能曽許 意枳都布可延乃 宇奈可美乃 故布乃波良尓 美弖豆可良 意可志多麻比弖 可武奈何良 可武佐備伊麻須 久志美多麻 伊麻能遠都豆尓 多布刀伎呂可N","#[訓読]かけまくは あやに畏し 足日女 神の命 韓国を 向け平らげて 御心を 鎮めたまふと い取らして 斎ひたまひし 真玉なす 二つの石を 世の人に 示したまひて 万代に 言ひ継ぐかねと 海の底 沖つ深江の 海上の 子負の原に 御手づから 置かしたまひて 神ながら 神さびいます 奇し御魂 今のをつづに 貴きろかむ","#[仮名],かけまくは,あやにかしこし,たらしひめ,かみのみこと,からくにを,むけたひらげて,みこころを,しづめたまふと,いとらして,いはひたまひし,またまなす,ふたつのいしを,よのひとに,しめしたまひて,よろづよに,いひつぐかねと,わたのそこ,おきつふかえの,うなかみの,こふのはらに,みてづから,おかしたまひて,かむながら,かむさびいます,くしみたま,いまのをつづに,たふときろかむ","#[左注](右事傳言那珂<郡>伊知郷蓑嶋人建部牛麻呂是也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],作者:山上憶良,伝説,鎮懐石,神功皇后,福岡,古事記,地名","#[訓異]
かけまくは[寛],
あやにかしこし[寛],
たらしひめ[寛],
かみのみこと[寛],
からくにを[寛],
むけたひらげて,[寛]むけたひらけて,
みこころを[寛],
しづめたまふと,[寛]しつめたまふと,
いとらして[寛],
いはひたまひし[寛],
またまなす[寛],
ふたつのいしを[寛],
よのひとに[寛],
しめしたまひて[寛],
よろづよに,[寛]よろつよに,
いひつぐかねと,[寛]いひつくかねと,
わたのそこ[寛],
おきつふかえの[寛],
うなかみの[寛],
こふのはらに[寛],
みてづから,[寛]みてつから,
おかしたまひて[寛],
かむながら,[寛]かむなから,
かむさびいます,[寛]かむさひいます,
くしみたま[寛],
いまのをつづに,[寛]いまのおつつに,
たふときろかむ,[寛]たふときろかも,
" "#[番号]05/0814","#[題詞](筑前國怡土郡深江村子負原 臨海丘上有二石 大者長一尺二寸六分 圍一尺八寸六分 重十八斤五兩 小者長一尺一寸 圍一尺八寸 重十六斤十兩 並皆堕圓状如鷄子 其美好者不可勝論 所謂p尺璧是也 [或云 此二石者肥前國彼杵郡平敷之石 當占而取之] 去深江驛家二十許里近在路頭 公私徃来 莫不下馬跪拜 古老相傳曰 徃者息長足日女命征討新羅國之時 用茲兩石挿著御袖之中以為鎮懐 [實是御裳中矣] 所以行人敬拜此石 乃作歌曰)","#[原文]阿米都知能 等母尓比佐斯久 伊比都夏等 許能久斯美多麻 志可志家良斯母","#[訓読]天地のともに久しく言ひ継げとこの奇し御魂敷かしけらしも","#[仮名],あめつちの,ともにひさしく,いひつげと,このくしみたま,しかしけらしも","#[左注]右事傳言那珂<郡>伊知郷蓑嶋人建部牛麻呂是也","#[校異]<> -> 郡 [西(右書)][紀][細][温]","#[事項],作者:山上憶良,伝説,鎮懐石,神功皇后,福岡,古事記,地名","#[訓異]
あめつちの[寛],
ともにひさしく[寛],
いひつげと,[寛]いひつけと,
このくしみたま[寛],
しかしけらしも[寛],
" "#[番号]05/0815","#[題詞]梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠","#[原文]武都紀多知 波流能吉多良婆 可久斯許曽 烏梅乎乎<岐>都々 多努之岐乎倍米[大貳紀卿]","#[訓読]正月立ち春の来らばかくしこそ梅を招きつつ楽しき終へめ[大貳紀卿]","#[仮名],むつきたち,はるのきたらば,かくしこそ,うめををきつつ,たのしきをへめ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 役 -> 促 [矢][京] / 詩 [細](塙) 請 / 利 -> 岐 [紀][細]","#[事項],梅花宴,作者:紀男人,琴歌譜,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,地名,植物,宴席","#[訓異]
むつきたち[寛],
はるのきたらば,[寛]はるのきたらは,
かくしこそ[寛],
うめををきつつ,[寛]うめをおりつつ,
たのしきをへめ[寛],
" "#[番号]05/0816","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]烏梅能波奈 伊麻佐家留期等 知利須義受 和我覇能曽能尓 阿利己世奴加毛[少貳小野大夫]","#[訓読]梅の花今咲けるごと散り過ぎず我が家の園にありこせぬかも[少貳小野大夫]","#[仮名],うめのはな,いまさけるごと,ちりすぎず,わがへのそのに,ありこせぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:小野老,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
いまさけるごと,[寛]いまさけること,
ちりすぎず,[寛]ちりすきす,
わがへのそのに,[寛]わかへのそのに,
ありこせぬかも[寛],
" "#[番号]05/0817","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]烏梅能波奈 佐吉多流僧能々 阿遠也疑波 可豆良尓須倍久 奈利尓家良受夜[少貳粟田大夫]","#[訓読]梅の花咲きたる園の青柳は蘰にすべくなりにけらずや[少貳粟田大夫]","#[仮名],うめのはな,さきたるそのの,あをやぎは,かづらにすべく,なりにけらずや","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:粟田人上,必登,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
さきたるそのの[寛],
あをやぎは,[寛]あをやきは,
かづらにすべく,[寛]かつらにすへく,
なりにけらずや,[寛]なりにけらすや,
" "#[番号]05/0818","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]波流佐礼婆 麻豆佐久耶登能 烏梅能波奈 比等利美都々夜 波流比久良佐武[筑前守山上大夫]","#[訓読]春さればまづ咲くやどの梅の花独り見つつや春日暮らさむ[筑前守山上大夫]","#[仮名],はるされば,まづさくやどの,うめのはな,ひとりみつつや,はるひくらさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:山上憶良,孤独,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
まづさくやどの,[寛]まつさくやとの,
うめのはな[寛],
ひとりみつつや[寛],
はるひくらさむ[寛],
" "#[番号]05/0819","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]余能奈可波 古飛斯宜志恵夜 加久之阿良婆 烏梅能波奈尓母 奈良麻之勿能怨[豊後守大伴大夫]","#[訓読]世の中は恋繁しゑやかくしあらば梅の花にもならましものを[豊後守大伴大夫]","#[仮名],よのなかは,こひしげしゑや,かくしあらば,うめのはなにも,ならましものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:大伴三依,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
よのなかは[寛],
こひしげしゑや,[寛]こひしきしゑや,
かくしあらば,[寛]かくしあらは,
うめのはなにも[寛],
ならましものを[寛],
" "#[番号]05/0820","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]烏梅能波奈 伊麻佐可利奈理 意母布度知 加射之尓斯弖奈 伊麻佐可利奈理[筑後守葛井大夫]","#[訓読]梅の花今盛りなり思ふどちかざしにしてな今盛りなり[筑後守葛井大夫]","#[仮名],うめのはな,いまさかりなり,おもふどち,かざしにしてな,いまさかりなり","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:葛井大成,古歌謡,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
いまさかりなり[寛],
おもふどち,[寛]おもふとち,
かざしにしてな,[寛]かさしにしてな,
いまさかりなり[寛],
" "#[番号]05/0821","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]阿乎夜奈義 烏梅等能波奈乎 遠理可射之 能弥弖能々知波 知利奴得母與斯[笠沙弥]","#[訓読]青柳梅との花を折りかざし飲みての後は散りぬともよし[笠沙弥]","#[仮名],あをやなぎ,うめとのはなを,をりかざし,のみてののちは,ちりぬともよし","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:沙弥満誓,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
あをやなぎ,[寛]あをやなき,
うめとのはなを[寛],
をりかざし,[寛]をりかさし,
のみてののちは[寛],
ちりぬともよし[寛],
" "#[番号]05/0822","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]和何則能尓 宇米能波奈知流 比佐可多能 阿米欲里由吉能 那何列久流加母[主人]","#[訓読]我が園に梅の花散るひさかたの天より雪の流れ来るかも[主人]","#[仮名],わがそのに,うめのはなちる,ひさかたの,あめよりゆきの,ながれくるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:大伴旅人,予祝,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
わがそのに,[寛]わかそのに,
うめのはなちる[寛],
ひさかたの[寛],
あめよりゆきの[寛],
ながれくるかも,[寛]なかれくるかも,
" "#[番号]05/0823","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]烏梅能波奈 知良久波伊豆久 志可須我尓 許能紀能夜麻尓 由企波布理都々[大監伴氏百代]","#[訓読]梅の花散らくはいづくしかすがにこの城の山に雪は降りつつ[大監伴氏百代]","#[仮名],うめのはな,ちらくはいづく,しかすがに,このきのやまに,ゆきはふりつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:大伴百代,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
ちらくはいづく,[寛]ちらくはいつく,
しかすがに,[寛]しかすかに,
このきのやまに[寛],
ゆきはふりつつ[寛],
" "#[番号]05/0824","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]烏梅乃波奈 知良麻久怨之美 和我曽乃々 多氣乃波也之尓 <于>具比須奈久母[小監阿氏奥嶋]","#[訓読]梅の花散らまく惜しみ我が園の竹の林に鴬鳴くも[小監阿氏奥嶋]","#[仮名],うめのはな,ちらまくをしみ,わがそのの,たけのはやしに,うぐひすなくも","#[左注]","#[校異]宇 -> 于 [類][紀][温]","#[事項],梅花宴,作者:安倍,阿刀,阿曇,奥嶋,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
ちらまくをしみ[寛],
わがそのの,[寛]わかそのの,
たけのはやしに[寛],
うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも,
" "#[番号]05/0825","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]烏梅能波奈 佐岐多流曽能々 阿遠夜疑遠 加豆良尓志都々 阿素i久良佐奈[小監土氏百村]","#[訓読]梅の花咲きたる園の青柳を蘰にしつつ遊び暮らさな[小監土氏百村]","#[仮名],うめのはな,さきたるそのの,あをやぎを,かづらにしつつ,あそびくらさな","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:土師百村,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
さきたるそのの[寛],
あをやぎを,[寛]あをやきを,
かづらにしつつ,[寛]かつらにしつつ,
あそびくらさな,[寛]あそひくらさな,
" "#[番号]05/0826","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]有知奈i久 波流能也奈宜等 和我夜度能 烏梅能波奈等遠 伊可尓可和可武[大典史氏大原]","#[訓読]うち靡く春の柳と我がやどの梅の花とをいかにか分かむ[大典史氏大原]","#[仮名],うちなびく,はるのやなぎと,わがやどの,うめのはなとを,いかにかわかむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:史大原,史部,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
うちなびく,[寛]うちなひく,
はるのやなぎと,[寛]はるのやなきと,
わがやどの,[寛]わかやとの,
うめのはなとを[寛],
いかにかわかむ[寛],
" "#[番号]05/0827","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]波流佐礼婆 許奴礼我久利弖 宇具比須曽 奈岐弖伊奴奈流 烏梅我志豆延尓[小典山氏若麻呂]","#[訓読]春されば木末隠りて鴬ぞ鳴きて去ぬなる梅が下枝に[小典山氏若麻呂]","#[仮名],はるされば,こぬれがくりて,うぐひすぞ,なきていぬなる,うめがしづえに","#[左注]","#[校異]利 [類][紀] 礼","#[事項],梅花宴,作者:山口若麻呂,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物,動物","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
こぬれがくりて,[寛]こぬれかくりて,
うぐひすぞ,[寛]うくひすそ,
なきていぬなる[寛],
うめがしづえに,[寛]うめかしつえに,
" "#[番号]05/0828","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]比等期等尓 乎理加射之都々 阿蘇倍等母 伊夜米豆良之岐 烏梅能波奈加母[大判事<丹>氏麻呂]","#[訓読]人ごとに折りかざしつつ遊べどもいやめづらしき梅の花かも[大判事<丹>氏麻呂]","#[仮名],ひとごとに,をりかざしつつ,あそべども,いやめづらしき,うめのはなかも","#[左注]","#[校異]舟 -> 丹 [類][紀][細]","#[事項],梅花宴,作者:丹治比,丹波,丹生,麻呂,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
ひとごとに,[寛]ひとことに,
をりかざしつつ,[寛]をりかさしつつ,
あそべども,[寛]あそへとも,
いやめづらしき,[寛]いやめつらしき,
うめのはなかも[寛],
" "#[番号]05/0829","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]烏梅能波奈 佐企弖知理奈波 佐久良<婆那> 都伎弖佐久倍久 奈利尓弖阿良受也[藥師張氏福子]","#[訓読]梅の花咲きて散りなば桜花継ぎて咲くべくなりにてあらずや[藥師張氏福子]","#[仮名],うめのはな,さきてちりなば,さくらばな,つぎてさくべく,なりにてあらずや","#[左注]","#[校異]波奈 -> 婆那 [類][紀][細]","#[事項],梅花宴,作者:張福子,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
さきてちりなば,[寛]さきてちりなは,
さくらばな,[寛]くらはな,
つぎてさくべく,[寛]つきてさくへく,
なりにてあらずや,[寛]なりにてあらすや,
" "#[番号]05/0830","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]萬世尓 得之波岐布得母 烏梅能波奈 多由流己等奈久 佐吉和多留倍子[筑前介佐氏子首]","#[訓読]万代に年は来経とも梅の花絶ゆることなく咲きわたるべし[筑前介佐氏子首]","#[仮名],よろづよに,としはきふとも,うめのはな,たゆることなく,さきわたるべし","#[左注]","#[校異]留 [細][温][矢] 流","#[事項],梅花宴,作者:佐伯子首,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
よろづよに,[寛]よろつよに,
としはきふとも,[寛]としはきのとも,
うめのはな[寛],
たゆることなく[寛],
さきわたるべし,[寛]さきわたるへし,
" "#[番号]05/0831","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]波流奈例婆 宇倍母佐枳多流 烏梅能波奈 岐美乎於母布得 用伊母祢奈久尓[壹岐守板氏安麻呂]","#[訓読]春なればうべも咲きたる梅の花君を思ふと夜寐も寝なくに[壹岐守板氏安麻呂]","#[仮名],はるなれば,うべもさきたる,うめのはな,きみをおもふと,よいもねなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:板持安麻呂,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
はるなれば,[寛]はるなれは,
うべもさきたる,[寛]うへもさきたる,
うめのはな[寛],
きみをおもふと[寛],
よいもねなくに[寛],
" "#[番号]05/0832","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]烏梅能波奈 乎利弖加射世留 母呂比得波 家布能阿比太波 多努斯久阿流倍斯[神司荒氏稲布]","#[訓読]梅の花折りてかざせる諸人は今日の間は楽しくあるべし[神司荒氏稲布]","#[仮名],うめのはな,をりてかざせる,もろひとは,けふのあひだは,たのしくあるべし","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:荒木田,荒木,荒田,新井田,稲布,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
をりてかざせる,[寛]をりてかさせる,
もろひとは[寛],
けふのあひだは,[寛]けふのあひたは,
たのしくあるべし,[寛]たのしくあるへし,
" "#[番号]05/0833","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]得志能波尓 波流能伎多良婆 可久斯己曽 烏梅乎加射之弖 多<努>志久能麻米[大令史野氏宿奈麻呂]","#[訓読]年のはに春の来らばかくしこそ梅をかざして楽しく飲まめ[大令史野氏宿奈麻呂]","#[仮名],としのはに,はるのきたらば,かくしこそ,うめをかざして,たのしくのまめ","#[左注]","#[校異]弩 -> 努 [類][紀][細]","#[事項],梅花宴,作者:大野,小野,三野,宿奈麻呂,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
としのはに[寛],
はるのきたらば,[寛]はるのきたらは,
かくしこそ[寛],
うめをかざして,[寛]うめをかさして,
たのしくのまめ[寛],
" "#[番号]05/0834","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]烏梅能波奈 伊麻佐加利奈利 毛々等利能 己恵能古保志枳 波流岐多流良斯[小令史田氏肥人]","#[訓読]梅の花今盛りなり百鳥の声の恋しき春来るらし[小令史田氏肥人]","#[仮名],うめのはな,いまさかりなり,ももとりの,こゑのこほしき,はるきたるらし","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:田口,田辺,太田,矢田,肥人,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物,季節,動物","#[訓異]
うめのはな[寛],
いまさかりなり[寛],
ももとりの[寛],
こゑのこほしき[寛],
はるきたるらし[寛],
" "#[番号]05/0835","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]波流佐良婆 阿波武等母比之 烏梅能波奈 家布能阿素i尓 阿比美都流可母[藥師高氏義通]","#[訓読]春さらば逢はむと思ひし梅の花今日の遊びに相見つるかも[藥師高氏義通]","#[仮名],はるさらば,あはむともひし,うめのはな,けふのあそびに,あひみつるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:高丘,高田,高橋,高向,高屋,高安,高,高麗,義道,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
はるさらば,[寛]はるさらは,
あはむともひし[寛],
うめのはな[寛],
けふのあそびに,[寛]けふのあそひに,
あひみつるかも[寛],
" "#[番号]05/0836","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]烏梅能波奈 多乎利加射志弖 阿蘇倍等母 阿岐太良奴比波 家布尓志阿利家利[陰陽師礒氏法麻呂]","#[訓読]梅の花手折りかざして遊べども飽き足らぬ日は今日にしありけり[陰陽師礒氏法麻呂]","#[仮名],うめのはな,たをりかざして,あそべども,あきだらぬひは,けふにしありけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:磯部,法麻呂,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
たをりかざして,[寛]たをりかさして,
あそべども,[寛]あそへとも,
あきだらぬひは,[寛]あきたらぬひは,
けふにしありけり[寛],
" "#[番号]05/0837","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]波流能努尓 奈久夜s隅比須 奈都氣牟得 和何弊能曽能尓 s米何波奈佐久[t師志氏大道]","#[訓読]春の野に鳴くや鴬なつけむと我が家の園に梅が花咲く[t師志氏大道]","#[仮名],はるののに,なくやうぐひす,なつけむと,わがへのそのに,うめがはなさく","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:志紀,大道,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物,動物","#[訓異]
はるののに[寛],
なくやうぐひす,[寛]なくやうくひす,
なつけむと[寛],
わがへのそのに,[寛]わかへのそのに,
うめがはなさく,[寛]うめかはなさく,
" "#[番号]05/0838","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]烏梅能波奈 知利麻我比多流 乎加肥尓波 宇具比須奈久母 波流加多麻氣弖[大隅目榎氏鉢麻呂]","#[訓読]梅の花散り乱ひたる岡びには鴬鳴くも春かたまけて[大隅目榎氏鉢麻呂]","#[仮名],うめのはな,ちりまがひたる,をかびには,うぐひすなくも,はるかたまけて","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:榎井,榎本,榎室,鉢麻呂,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物,動物","#[訓異]
うめのはな[寛],
ちりまがひたる,[寛]ちりまかひたる,
をかびには,[寛]をかひには,
うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも,
はるかたまけて[寛],
" "#[番号]05/0839","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]波流能努尓 紀理多知和多利 布流由岐得 比得能美流麻提 烏梅能波奈知流[筑前目田氏真上]","#[訓読]春の野に霧立ちわたり降る雪と人の見るまで梅の花散る[筑前目田氏真上]","#[仮名],はるののに,きりたちわたり,ふるゆきと,ひとのみるまで,うめのはなちる","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:田中,田辺,真上,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
はるののに[寛],
きりたちわたり[寛],
ふるゆきと[寛],
ひとのみるまで,[寛]ひとのみるまて,
うめのはなちる[寛],
" "#[番号]05/0840","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]<波流>楊那宜 可豆良尓乎利志 烏梅能波奈 多礼可有可倍志 佐加豆岐能倍尓[壹岐目村氏彼方]","#[訓読]春柳かづらに折りし梅の花誰れか浮かべし酒坏の上に[壹岐目村氏彼方]","#[仮名],はるやなぎ,かづらにをりし,うめのはな,たれかうかべし,さかづきのへに","#[左注]","#[校異]流波 -> 波流 [西(訂正記号)][類][紀]","#[事項],梅花宴,作者:村君,村国,村山,彼方,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
はるやなぎ,[寛]はるやなき,
かづらにをりし,[寛]かつらにをりし,
うめのはな[寛],
たれかうかべし,[寛]たれかうへし,
さかづきのへに,[寛]さかつききのへに,
" "#[番号]05/0841","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]于遇比須能 於登企久奈倍尓 烏梅能波奈 和企弊能曽能尓 佐伎弖知流美由[對馬目高氏老]","#[訓読]鴬の音聞くなへに梅の花我家の園に咲きて散る見ゆ[對馬目高氏老]","#[仮名],うぐひすの,おときくなへに,うめのはな,わぎへのそのに,さきてちるみゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:高丘,高田,高橋,高向,高屋,高安,高,高麗,老,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物,動物","#[訓異]
うぐひすの,[寛]うくひすの,
おときくなへに[寛],
うめのはな[寛],
わぎへのそのに,[寛]わきへのそのに,
さきてちるみゆ[寛],
" "#[番号]05/0842","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]和我夜度能 烏梅能之豆延尓 阿蘇i都々 宇具比須奈久毛 知良麻久乎之美[薩摩目高氏海人]","#[訓読]我がやどの梅の下枝に遊びつつ鴬鳴くも散らまく惜しみ[薩摩目高氏海人]","#[仮名],わがやどの,うめのしづえに,あそびつつ,うぐひすなくも,ちらまくをしみ","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:高丘,高田,高橋,高向,高屋,高安,高,高麗,海人,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物,動物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
うめのしづえに,[寛]うめのしつえに,
あそびつつ,[寛]あそひつつ,
うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも,
ちらまくをしみ[寛],
" "#[番号]05/0843","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]宇梅能波奈 乎理加射之都々 毛呂比登能 阿蘇夫遠美礼婆 弥夜古之叙毛布[土師氏御<道>]","#[訓読]梅の花折りかざしつつ諸人の遊ぶを見れば都しぞ思ふ[土師氏御<道>]","#[仮名],うめのはな,をりかざしつつ,もろひとの,あそぶをみれば,みやこしぞもふ","#[左注]","#[校異]通 -> 道 [紀][細]","#[事項],梅花宴,作者:土師御道,太宰府,福岡,望郷,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
をりかざしつつ,[寛]をりかさしつつ,
もろひとの[寛],
あそぶをみれば,[寛]あそふをみれは,
みやこしぞもふ,[寛]みやこしそおもふ,
" "#[番号]05/0844","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]伊母我陛邇 由岐可母不流登 弥流麻提尓 許々陀母麻我不 烏梅能波奈可毛[小野氏國堅]","#[訓読]妹が家に雪かも降ると見るまでにここだもまがふ梅の花かも[小野氏國堅]","#[仮名],いもがへに,ゆきかもふると,みるまでに,ここだもまがふ,うめのはなかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:小野國堅,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
いもがへに,[寛]いもかへに,
ゆきかもふると[寛],
みるまでに,[寛]みるまてに,
ここだもまがふ,[寛]ここたもまかふ,
うめのはなかも[寛],
" "#[番号]05/0845","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]宇具比須能 麻知迦弖尓勢斯 宇米我波奈 知良須阿利許曽 意母布故我多米[筑前拯門氏石足]","#[訓読]鴬の待ちかてにせし梅が花散らずありこそ思ふ子がため[筑前拯門氏石足]","#[仮名],うぐひすの,まちかてにせし,うめがはな,ちらずありこそ,おもふこがため","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,作者:門部石足,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物,動物","#[訓異]
うぐひすの,[寛]うくひすの,
まちかてにせし[寛],
うめがはな,[寛]うめかはな,
ちらずありこそ,[寛]ちらすありこそ,
おもふこがため,[寛]おもふこかため,
" "#[番号]05/0846","#[題詞](梅花歌卅二首[并序] / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封q而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <促>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以r情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠)","#[原文]可須美多都 那我岐波流卑乎 可謝勢例杼 伊野那都可子岐 烏梅能波那可毛[小野氏淡理]","#[訓読]霞立つ長き春日をかざせれどいやなつかしき梅の花かも[小野氏淡理]","#[仮名],かすみたつ,ながきはるひを,かざせれど,いやなつかしき,うめのはなかも","#[左注]","#[校異]波那 [類][矢][京] 波奈","#[事項],梅花宴,作者:小野田守,太宰府,福岡,天平2年1月13日,年紀,宴席,地名,植物","#[訓異]
かすみたつ[寛],
ながきはるひを,[寛]なかきはるひを,
かざせれど,[寛]かさせれと,
いやなつかしき[寛],
うめのはなかも[寛],
" "#[番号]05/0847","#[題詞]員外思故郷歌兩首","#[原文]和我佐可理 伊多久々多知奴 久毛尓得夫 久須利波武等母 麻多遠知米也母","#[訓読]我が盛りいたくくたちぬ雲に飛ぶ薬食むともまた変若めやも","#[仮名],わがさかり,いたくくたちぬ,くもにとぶ,くすりはむとも,またをちめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:大伴旅人,望郷,太宰府,福岡,老,神仙","#[訓異]
わがさかり,[寛]わかさかり,
いたくくたちぬ[寛],
くもにとぶ,[寛]くもにとふ,
くすりはむとも[寛],
またをちめやも[寛],
" "#[番号]05/0848","#[題詞](員外思故郷歌兩首)","#[原文]久毛尓得夫 久須利波牟用波 美也古弥婆 伊夜之吉阿何微 麻多越知奴倍之","#[訓読]雲に飛ぶ薬食むよは都見ばいやしき我が身また変若ぬべし","#[仮名],くもにとぶ,くすりはむよは,みやこみば,いやしきあがみ,またをちぬべし","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:大伴旅人,望郷,太宰府,福岡,老,神仙","#[訓異]
くもにとぶ,[寛]くもにとふ,
くすりはむよは[寛],
みやこみば,[寛]みやこみは,
いやしきあがみ,[寛]いやしきあかみ,
またをちぬべし,[寛]またをちぬへし,
" "#[番号]05/0849","#[題詞]後追和梅歌四首","#[原文]能許利多留 由棄仁末自例留 宇梅能半奈 半也久奈知利曽 由吉波氣奴等勿","#[訓読]残りたる雪に交れる梅の花早くな散りそ雪は消ぬとも","#[仮名],のこりたる,ゆきにまじれる,うめのはな,はやくなちりそ,ゆきはけぬとも","#[左注]","#[校異]留 [類][紀][細](塙) 流","#[事項],梅花宴,追和,大伴旅人,太宰府,福岡,植物","#[訓異]
のこりたる[寛],
ゆきにまじれる,[寛]ゆきにましれる,
うめのはな[寛],
はやくなちりそ[寛],
ゆきはけぬとも[寛],
" "#[番号]05/0850","#[題詞](後追和梅歌四首)","#[原文]由吉能伊呂遠 有<婆>比弖佐家流 有米能波奈 伊麻<左>加利奈利 弥牟必登母我聞","#[訓読]雪の色を奪ひて咲ける梅の花今盛りなり見む人もがも","#[仮名],ゆきのいろを,うばひてさける,うめのはな,いまさかりなり,みむひともがも","#[左注]","#[校異]波 -> 婆 [類][紀][細] / 佐 -> 左 [類][紀][細]","#[事項],梅花宴,追和,大伴旅人,太宰府,福岡,植物","#[訓異]
ゆきのいろを[寛],
うばひてさける,[寛]うはひてさける,
うめのはな[寛],
いまさかりなり[寛],
みむひともがも,[寛]みむひともかも,
" "#[番号]05/0851","#[題詞](後追和梅歌四首)","#[原文]和我夜度尓 左加里尓散家留 宇梅能波奈 知流倍久奈里奴 美牟必登聞我母","#[訓読]我がやどに盛りに咲ける梅の花散るべくなりぬ見む人もがも","#[仮名],わがやどに,さかりにさける,うめのはな,ちるべくなりぬ,みむひともがも","#[左注]","#[校異]","#[事項],梅花宴,追和,大伴旅人,太宰府,福岡,植物","#[訓異]
わがやどに,[寛]わかやとに,
さかりにさける,[寛]さかりにさける,
うめのはな[寛],
ちるべくなりぬ,[寛]ちるへくなりぬ,
みむひともがも,[寛]みむひともかも,
" "#[番号]05/0852","#[題詞](後追和梅歌四首)","#[原文]烏梅能波奈 伊米尓加多良久 美也備多流 波奈等阿例母布 左氣尓于可倍許曽 [一云 伊多豆良尓 阿例乎知良須奈 左氣尓<宇>可倍許曽]","#[訓読]梅の花夢に語らくみやびたる花と我れ思ふ酒に浮かべこそ [一云 いたづらに我れを散らすな酒に浮べこそ]","#[仮名],うめのはな,いめにかたらく,みやびたる,はなとあれもふ,さけにうかべこそ,[いたづらに,あれをちらすな,さけにうかべこそ]","#[左注]","#[校異]于 -> 宇 [類] (楓) 于 / 許 [類][紀][細](塙) 己","#[事項],梅花宴,追和,大伴旅人,太宰府,福岡,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
いめにかたらく[寛],
みやびたる,[寛]みやひたる,
はなとあれもふ[寛],
さけにうかべこそ,[寛]さけにうかへこそ,
[いたづらに,[寛]いたつらに,
あれをちらすな[寛],
さけにうかべこそ],[寛]さけにうかへこそ,
" "#[番号]05/0853","#[題詞]遊<於>松浦河序 / 余以暫徃松浦之縣逍遥 聊臨玉嶋之潭遊覧 忽値釣魚女子等也 花容無雙 光儀無匹 開柳葉於眉中發桃花於頬上 意氣凌雲 風流絶世 僕問曰 誰郷誰家兒等 若疑神仙者乎 娘等皆咲答曰 兒等者漁夫之舎兒 草菴之微者 無郷無家 何足稱云 唯性便水 復心樂山 或臨洛浦而徒羨<玉>魚 乍臥巫峡以空望烟霞 今以邂逅相遇貴客 不勝感應輙陳<u>曲 而今而後豈可非偕老哉 下官對曰 唯々 敬奉芳命 于時日落山西 驪馬将去 遂申懐抱 因贈詠歌曰","#[原文]阿佐<里><須流> 阿末能古等母等 比得波伊倍騰 美流尓之良延奴 有麻必等能古等","#[訓読]あさりする海人の子どもと人は言へど見るに知らえぬ貴人の子と","#[仮名],あさりする,あまのこどもと,ひとはいへど,みるにしらえぬ,うまひとのこと","#[左注]","#[校異]<> -> 於 [紀][細] / 王 -> 玉 [温] / 歎 -> u [細] / 歌 [西] 謌 / 理 -> 里 [類][紀][細] / 流須 -> 須流 [西(訂正記号)][類][紀][細]","#[事項],作者:大伴旅人,玉島川,巡行,創作,神功皇后,求婚,野遊び,地名","#[訓異]
あさりする[寛],
あまのこどもと,[寛]あまのこともと,
ひとはいへど,[寛]ひとはいへと,
みるにしらえぬ[寛],
うまひとのこと[寛],
" "#[番号]05/0854","#[題詞](遊<於>松浦河序 / 余以暫徃松浦之縣逍遥 聊臨玉嶋之潭遊覧 忽値釣魚女子等也 花容無雙 光儀無匹 開柳葉於眉中發桃花於頬上 意氣凌雲 風流絶世 僕問曰 誰郷誰家兒等 若疑神仙者乎 娘等皆咲答曰 兒等者漁夫之舎兒 草菴之微者 無郷無家 何足稱云 唯性便水 復心樂山 或臨洛浦而徒羨<玉>魚 乍臥巫峡以空望烟霞 今以邂逅相遇貴客 不勝感應輙陳<u>曲 而今而後豈可非偕老哉 下官對曰 唯々 敬奉芳命 于時日落山西 驪馬将去 遂申懐抱 因贈詠歌曰)答詩曰","#[原文]多麻之末能 許能可波加美尓 伊返波阿礼騰 吉美乎夜佐之美 阿良波佐受阿利吉","#[訓読]玉島のこの川上に家はあれど君をやさしみあらはさずありき","#[仮名],たましまの,このかはかみに,いへはあれど,きみをやさしみ,あらはさずありき","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:大伴旅人,玉島川,巡行,創作,神功皇后,求婚,野遊び,地名","#[訓異]
たましまの[寛],
このかはかみに[寛],
いへはあれど,[寛]いへはあれと,
きみをやさしみ[寛],
あらはさずありき,[寛]あらはさすありき,
" "#[番号]05/0855","#[題詞]蓬客等更贈歌三首","#[原文]麻都良河波 可波能世比可利 阿由都流等 多々勢流伊毛<何> 毛能須蘇奴例奴","#[訓読]松浦川川の瀬光り鮎釣ると立たせる妹が裳の裾濡れぬ","#[仮名],まつらがは,かはのせひかり,あゆつると,たたせるいもが,ものすそぬれぬ","#[左注]","#[校異]客等 [類](塙) 客 / 歌 [西] 謌 / 河 -> 何 [紀] (塙) 河","#[事項],作者:大伴旅人,玉島川,巡行,創作,遊仙窟,神功皇后,求婚,野遊び,地名","#[訓異]
まつらがは,[寛]まつらかは,
かはのせひかり[寛],
あゆつると[寛],
たたせるいもが,[寛]たたせるいもか,
ものすそぬれぬ[寛],
" "#[番号]05/0856","#[題詞](蓬客等更贈歌三首)","#[原文]麻都良奈流 多麻之麻河波尓 阿由都流等 多々世流古良何 伊弊遅斯良受毛","#[訓読]松浦なる玉島川に鮎釣ると立たせる子らが家道知らずも","#[仮名],まつらなる,たましまがはに,あゆつると,たたせるこらが,いへぢしらずも","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:大伴旅人,玉島川,巡行,創作,神功皇后,求婚,野遊び,地名","#[訓異]
まつらなる[寛],
たましまがはに,[寛]たましまかはに,
あゆつると[寛],
たたせるこらが,[寛]たたせるこらか,
いへぢしらずも,[寛]いへちしらすも,
" "#[番号]05/0857","#[題詞](蓬客等更贈歌三首)","#[原文]等富都比等 末都良能加波尓 和可由都流 伊毛我多毛等乎 和礼許曽末加米","#[訓読]遠つ人松浦の川に若鮎釣る妹が手本を我れこそ卷かめ","#[仮名],とほつひと,まつらのかはに,わかゆつる,いもがたもとを,われこそまかめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:大伴旅人,玉島川,巡行,創作,神功皇后,恋愛,求婚,野遊び,地名","#[訓異]
とほつひと[寛],
まつらのかはに[寛],
わかゆつる[寛],
いもがたもとを,[寛]いもかたもとを,
われこそまかめ[寛],
" "#[番号]05/0858","#[題詞]娘等更報歌三首","#[原文]和可由都流 麻都良能可波能 可波奈美能 奈美邇之母波婆 和礼故飛米夜母","#[訓読]若鮎釣る松浦の川の川なみの並にし思はば我れ恋ひめやも","#[仮名],わかゆつる,まつらのかはの,かはなみの,なみにしもはば,われこひめやも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],作者:娘等,大伴旅人,玉島川,巡行,創作,神功皇后,恋愛,求婚,野遊び,地名","#[訓異]
わかゆつる[寛],
まつらのかはの[寛],
かはなみの[寛],
なみにしもはば,[寛]なみにしもはは,
われこひめやも,[寛]われこひめやも,
" "#[番号]05/0859","#[題詞](娘等更報歌三首)","#[原文]波流佐礼婆 和伎覇能佐刀能 加波度尓波 阿由故佐婆斯留 吉美麻知我弖尓","#[訓読]春されば我家の里の川門には鮎子さ走る君待ちがてに","#[仮名],はるされば,わぎへのさとの,かはとには,あゆこさばしる,きみまちがてに","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:娘等,大伴旅人,玉島川,巡行,創作,神功皇后,恋愛,求婚,野遊び,地名","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
わぎへのさとの,[寛]わきへのさとの,
かはとには[寛],
あゆこさばしる,[寛]あゆこさはしる,
きみまちがてに,[寛]きみまちかてに,
" "#[番号]05/0860","#[題詞](娘等更報歌三首)","#[原文]麻都良我波 奈々勢能與騰波 与等武等毛 和礼波与騰麻受 吉美遠志麻多武","#[訓読]松浦川七瀬の淀は淀むとも我れは淀まず君をし待たむ","#[仮名],まつらがは,ななせのよどは,よどむとも,われはよどまず,きみをしまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:娘等,大伴旅人,玉島川,巡行,創作,神功皇后,恋愛,求婚,野遊び,地名","#[訓異]
まつらがは,[寛]まつらかは,
ななせのよどは,[寛]ななせのよとは,
よどむとも,[寛]よとむとも,
われはよどまず,[寛]われはよとます,
きみをしまたむ[寛],
" "#[番号]05/0861","#[題詞]後人追和之<詩>三首 [帥老]","#[原文]麻都良河波 <可>波能世波夜美 久礼奈為能 母能須蘇奴例弖 阿由可都流良<武>","#[訓読]松浦川川の瀬早み紅の裳の裾濡れて鮎か釣るらむ","#[仮名],まつらがは,かはのせはやみ,くれなゐの,ものすそぬれて,あゆかつるらむ","#[左注]","#[校異]謌 -> 詩 [類][紀][細] / 河 -> 可 [類][紀][細] / 哉 -> 武 [西(右書)][類][紀]","#[事項],作者:大伴旅人,玉島川,創作,追和,求婚,野遊び,地名","#[訓異]
まつらがは,[寛]まつらかは,
かはのせはやみ[寛],
くれなゐの[寛],
ものすそぬれて[寛],
あゆかつるらむ,[寛]あゆかるらむ,
" "#[番号]05/0862","#[題詞](後人追和之<詩>三首 [帥老])","#[原文]比等未奈能 美良武麻都良能 多麻志末乎 美受弖夜和礼波 故飛都々遠良武","#[訓読]人皆の見らむ松浦の玉島を見ずてや我れは恋ひつつ居らむ","#[仮名],ひとみなの,みらむまつらの,たましまを,みずてやわれは,こひつつをらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:大伴旅人,玉島川,創作,追和,求婚,野遊び,地名","#[訓異]
ひとみなの[寛],
みらむまつらの[寛],
たましまを[寛],
みずてやわれは,[寛]みすてやわれは,
こひつつをらむ[寛],
" "#[番号]05/0863","#[題詞](後人追和之<詩>三首 [帥老])","#[原文]麻都良河波 多麻斯麻能有良尓 和可由都流 伊毛良遠美良牟 比等能等母斯佐","#[訓読]松浦川玉島の浦に若鮎釣る妹らを見らむ人の羨しさ","#[仮名],まつらがは,たましまのうらに,わかゆつる,いもらをみらむ,ひとのともしさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:大伴旅人,玉島川,創作,追和,求婚,野遊び,地名","#[訓異]
まつらがは,[寛]まつらかは,
たましまのうらに[寛],
わかゆつる[寛],
いもらをみらむ,[寛]いもらをみをむ,
ひとのともしさ[寛],
" "#[番号]05/0864","#[題詞]宜啓 伏奉四月六日賜書 跪開封函 拜讀芳藻 心神開朗以懐泰初之月鄙懐除<v> 若披樂廣之天 至若羈旅邊城 懐古舊而傷志 年矢不停<憶>平生而落涙 但達人安排 君子無悶 伏冀 朝宜懐w之化暮存放龜之術 架張趙於百代 追松喬於千齡耳 兼奉垂示 梅<苑>芳席 群英x藻 松浦玉潭 仙媛贈答類否壇各言之作 疑衡皐税駕之篇 耽讀吟諷<感>謝歡怡 宜戀主之誠 誠逾犬馬仰徳之心 心同葵y 而碧海分地白雲隔天 徒積傾延 何慰勞緒 孟秋膺節 伏願萬祐日新 今因相撲部領使謹付片紙 宜謹啓 不次 / 奉和諸人梅花歌一首","#[原文]於久礼為天 那我古飛世殊波 弥曽能不乃 于梅能波奈尓<忘> 奈良麻之母能乎","#[訓読]後れ居て長恋せずは御園生の梅の花にもならましものを","#[仮名],おくれゐて,ながこひせずは,みそのふの,うめのはなにも,ならましものを","#[左注]","#[校異]私 -> v [細] / <> -> 憶 [西(右書)][紀][細] / 花 -> 苑 [細] / 戚 -> 感 [代匠記精撰本] / 誠 [紀][細][温] 々 / 心 [紀][細][温] 々 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 母 -> 忘 [類][細]","#[事項],作者:吉田宜,書簡,大伴旅人,梅花宴,唱和,植物,贈答,恋情","#[訓異]
おくれゐて[寛],
ながこひせずは,[寛]なかこひせすは,
みそのふの[寛],
うめのはなにも[寛],
ならましものを[寛],
" "#[番号]05/0865","#[題詞]和松浦仙媛歌一首","#[原文]伎弥乎麻都 々々良乃于良能 越等賣良波 等己与能久尓能 阿麻越等賣可<忘>","#[訓読]君を待つ松浦の浦の娘子らは常世の国の海人娘子かも","#[仮名],きみをまつ,まつらのうらの,をとめらは,とこよのくにの,あまをとめかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 忌 -> 忘 [類][細]","#[事項],作者:吉田宜,書簡,大伴旅人,松浦仙媛,唱和,地名,贈答","#[訓異]
きみをまつ[寛],
まつらのうらの[寛],
をとめらは[寛],
とこよのくにの[寛],
あまをとめかも[寛],
" "#[番号]05/0866","#[題詞]思君未盡重題二首","#[原文]波漏々々尓 於忘方由流可母 志良久毛能 <知>弊仁邊多天留 都久紫能君仁波","#[訓読]はろはろに思ほゆるかも白雲の千重に隔てる筑紫の国は","#[仮名],はろはろに,おもほゆるかも,しらくもの,ちへにへだてる,つくしのくには","#[左注](天平二年七月十日)","#[校異]々 [細] 婆 / 智 -> 知 [類][紀]","#[事項],作者:吉田宜,書簡,奈良,大伴旅人,地名,天平2年7月10日,年紀","#[訓異]
はろはろに,[寛]はるはるに,
おもほゆるかも[寛],
しらくもの[寛],
ちへにへだてる,[寛]ちへにへたてる,
つくしのくには[寛],
" "#[番号]05/0867","#[題詞](思君未盡重題二首)","#[原文]枳美可由伎 氣那<我>久奈理奴 奈良遅那留 志満乃己太知母 可牟佐飛仁家<里>","#[訓読]君が行き日長くなりぬ奈良道なる山斎の木立も神さびにけり","#[仮名],きみがゆき,けながくなりぬ,ならぢなる,しまのこだちも,かむさびにけり","#[左注]天平二年七月十日","#[校異]家 -> 我 [類][紀][細] / 理 -> 里 [類][紀][細]","#[事項],作者:吉田宜,書簡,奈良,大伴旅人,天平2年7月10日,年紀","#[訓異]
きみがゆき,[寛]きみかゆき,
けながくなりぬ,[寛]けなかくなりぬ,
ならぢなる,[寛]ならちなる,
しまのこだちも,[寛]しまのこたちも,
かむさびにけり,[寛]かむさひにけり,
" "#[番号]05/0868","#[題詞]憶良誠惶頓首謹啓 / 憶良聞 方岳諸侯 都督刺使 並依典法 巡行部下 察其風俗 意内多端口外難出 謹以三首之鄙歌 欲寫五蔵之欝結 其歌曰","#[原文]麻都良我多 佐欲比賣能故何 比列布利斯 夜麻能名乃<尾>夜 伎々都々遠良武","#[訓読]松浦県佐用姫の子が領巾振りし山の名のみや聞きつつ居らむ","#[仮名],まつらがた,さよひめのこが,ひれふりし,やまのなのみや,ききつつをらむ","#[左注](天平二年七月十一日 筑前國司山上憶良謹上)","#[校異]鄙歌 [西] 鄙謌 [西(左別筆訂正)] 鄙歌 / 歌曰 [西] 謌曰 / 列 [紀][細] 例 [類] 礼 / 美 -> 尾 [類][紀][細]","#[事項],作者:山上憶良,大伴旅人,太宰府,松浦佐用姫,天平2年7月11日,年紀,地名","#[訓異]
まつらがた,[寛]まつらかた,
さよひめのこが,[寛]さよひめのこか,
ひれふりし[寛],
やまのなのみや[寛],
ききつつをらむ[寛],
" "#[番号]05/0869","#[題詞](憶良誠惶頓首謹啓 / 憶良聞 方岳諸侯 都督刺使 並依典法 巡行部下 察其風俗 意内多端口外難出 謹以三首之鄙歌 欲寫五蔵之欝結 其歌曰)","#[原文]多良志比賣 可尾能美許等能 奈都良須等 美多々志世利斯 伊志遠多礼美吉 [一云 阿由都流等]","#[訓読]足姫神の命の魚釣らすとみ立たしせりし石を誰れ見き [一云 鮎釣ると]","#[仮名],たらしひめ,かみのみことの,なつらすと,みたたしせりし,いしをたれみき,[あゆつると]","#[左注](天平二年七月十一日 筑前國司山上憶良謹上)","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,大伴旅人,太宰府,松浦佐用姫,神功皇后,天平2年7月11日,年紀,推敲","#[訓異]
たらしひめ[寛],
かみのみことの[寛],
なつらすと[寛],
みたたしせりし[寛],
いしをたれみき[寛],
[あゆつると]
" "#[番号]05/0870","#[題詞](憶良誠惶頓首謹啓 / 憶良聞 方岳諸侯 都督刺使 並依典法 巡行部下 察其風俗 意内多端口外難出 謹以三首之鄙歌 欲寫五蔵之欝結 其歌曰)","#[原文]毛々可斯母 由加奴麻都良遅 家布由伎弖 阿須波吉奈武遠 奈尓可佐夜礼留","#[訓読]百日しも行かぬ松浦道今日行きて明日は来なむを何か障れる","#[仮名],ももがしも,ゆかぬまつらぢ,けふゆきて,あすはきなむを,なにかさやれる","#[左注]天平二年七月十一日 筑前國司山上憶良謹上","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,大伴旅人,太宰府,松浦佐用姫,天平2年7月11日,年紀,地名","#[訓異]
ももがしも,[寛]ももかしも,
ゆかぬまつらぢ,[寛]ゆかぬまつらち,
けふゆきて[寛],
あすはきなむを[寛],
なにかさやれる[寛],
" "#[番号]05/0871","#[題詞]大伴佐提比古郎子 特被朝命奉使藩國 艤棹言歸 稍赴蒼波 妾也松浦[佐用嬪面] 嗟此別易 歎彼會難 即登高山之嶺 遥望離去之船 悵然断肝<黯>然銷魂 遂脱領巾麾之 傍者莫不流涕 因号此山曰領巾麾之嶺也 乃作歌曰","#[原文]得保都必等 麻通良佐用比米 都麻胡非尓 比例布利之用利 於返流夜麻能奈","#[訓読]遠つ人松浦佐用姫夫恋ひに領巾振りしより負へる山の名","#[仮名],とほつひと,まつらさよひめ,つまごひに,ひれふりしより,おへるやまのな","#[左注]","#[校異]黙 -> 黯 [古] / 歌 [西] 謌","#[事項],山上憶良,鏡山,唐津,大伴佐提比古,松浦佐用姫,領布振伝説,地名","#[訓異]
とほつひと[寛],
まつらさよひめ[寛],
つまごひに,[寛]つまこひに,
ひれふりしより[寛],
おへるやまのな[寛],
" "#[番号]05/0872","#[題詞](大伴佐提比古郎子 特被朝命奉使藩國 艤棹言歸 稍赴蒼波 妾也松浦[佐用嬪面] 嗟此別易 歎彼會難 即登高山之嶺 遥望離去之船 悵然断肝<黯>然銷魂 遂脱領巾麾之 傍者莫不流涕 因号此山曰領巾麾之嶺也 乃作歌曰)後人追和","#[原文]夜麻能奈等 伊賓都夏等可母 佐用比賣何 許能野麻能閇仁 必例遠布利家<牟>","#[訓読]山の名と言ひ継げとかも佐用姫がこの山の上に領巾を振りけむ","#[仮名],やまのなと,いひつげとかも,さよひめが,このやまのへに,ひれをふりけむ","#[左注]","#[校異]何 [類][紀][細](塙) 河 / 無 -> 牟 [類][紀][細]","#[事項],山上憶良,鏡山,唐津,大伴佐提比古,松浦佐用姫,領布振伝説,地名","#[訓異]
やまのなと[寛],
いひつげとかも,[寛]いひつけとかも,
さよひめが,[寛]さよひめか,
このやまのへに[寛],
ひれをふりけむ[寛],
" "#[番号]05/0873","#[題詞](大伴佐提比古郎子 特被朝命奉使藩國 艤棹言歸 稍赴蒼波 妾也松浦[佐用嬪面] 嗟此別易 歎彼會難 即登高山之嶺 遥望離去之船 悵然断肝<黯>然銷魂 遂脱領巾麾之 傍者莫不流涕 因号此山曰領巾麾之嶺也 乃作歌曰)最後人追和","#[原文]余呂豆余尓 可多利都夏等之 許能多氣仁 比例布利家良之 麻通羅佐用嬪面","#[訓読]万世に語り継げとしこの丘に領巾振りけらし松浦佐用姫","#[仮名],よろづよに,かたりつげとし,このたけに,ひれふりけらし,まつらさよひめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],山上憶良,鏡山,唐津,大伴佐提比古,松浦佐用姫,領布振伝説,地名","#[訓異]
よろづよに,[寛]よろつよに,
かたりつげとし,[寛]かたりつけとし,
このたけに[寛],
ひれふりけらし[寛],
まつらさよひめ[寛],
" "#[番号]05/0874","#[題詞](大伴佐提比古郎子 特被朝命奉使藩國 艤棹言歸 稍赴蒼波 妾也松浦[佐用嬪面] 嗟此別易 歎彼會難 即登高山之嶺 遥望離去之船 悵然断肝<黯>然銷魂 遂脱領巾麾之 傍者莫不流涕 因号此山曰領巾麾之嶺也 乃作歌曰)最々後人追和二首","#[原文]宇奈波良能 意吉由久布祢遠 可弊礼等加 比礼布良斯家武 麻都良佐欲比賣","#[訓読]海原の沖行く船を帰れとか領巾振らしけむ松浦佐用姫","#[仮名],うなはらの,おきゆくふねを,かへれとか,ひれふらしけむ,まつらさよひめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],山上憶良,鏡山,唐津,大伴佐提比古,松浦佐用姫,領布振伝説,地名","#[訓異]
うなはらの[寛],
おきゆくふねを[寛],
かへれとか[寛],
ひれふらしけむ,[寛]ひれふらしなむ,
まつらさよひめ[寛],
" "#[番号]05/0875","#[題詞]((大伴佐提比古郎子 特被朝命奉使藩國 艤棹言歸 稍赴蒼波 妾也松浦[佐用嬪面] 嗟此別易 歎彼會難 即登高山之嶺 遥望離去之船 悵然断肝<黯>然銷魂 遂脱領巾麾之 傍者莫不流涕 因号此山曰領巾麾之嶺也 乃作歌曰)最々後人追和二首)","#[原文]由久布祢遠 布利等騰尾加祢 伊加婆加利 故保斯<苦>阿利家武 麻都良佐欲比賣","#[訓読]行く船を振り留みかねいかばかり恋しくありけむ松浦佐用姫","#[仮名],ゆくふねを,ふりとどみかね,いかばかり,こほしくありけむ,まつらさよひめ","#[左注]","#[校異]古 -> 苦 [京]","#[事項],山上憶良,鏡山,唐津,大伴佐提比古,松浦佐用姫,領布振伝説,地名","#[訓異]
ゆくふねを[寛],
ふりとどみかね,[寛]ふりととみかね,
いかばかり,[寛]いかはかり,
こほしくありけむ[寛],
まつらさよひめ[寛],
" "#[番号]05/0876","#[題詞]書殿餞酒日<倭>歌四首","#[原文]阿麻等夫夜 等利尓母賀母夜 美夜故<麻>提 意久利摩遠志弖 等比可弊流母能","#[訓読]天飛ぶや鳥にもがもや都まで送りまをして飛び帰るもの","#[仮名],あまとぶや,とりにもがもや,みやこまで,おくりまをして,とびかへるもの","#[左注]","#[校異]和 -> 倭 [類][紀][細] / 歌 [西] 謌 / 麻 [類][細] 摩 / 摩 -> 麻 [類][紀][温] / 摩 [紀][温] 麻","#[事項],山上憶良,大伴旅人,太宰府,福岡,餞別,帰京,宴席,地名","#[訓異]
あまとぶや,[寛]あまとふや,
とりにもがもや,[寛]とりにもかもや,
みやこまで,[寛]みやこまて,
おくりまをして[寛],
とびかへるもの,[寛]とひかへるもの,
" "#[番号]05/0877","#[題詞](書殿餞酒日<倭>歌四首)","#[原文]比等母祢能 宇良夫禮遠留尓 多都多夜麻 美麻知可豆加婆 和周良志奈牟迦","#[訓読]ひともねのうらぶれ居るに龍田山御馬近づかば忘らしなむか","#[仮名],ひともねの,うらぶれをるに,たつたやま,みまちかづかば,わすらしなむか","#[左注]","#[校異]","#[事項],山上憶良,大伴旅人,太宰府,福岡,餞別,帰京,宴席,地名","#[訓異]
ひともねの[寛],
うらぶれをるに,[寛]うらふれをるに,
たつたやま,[寛]たつたつやま,
みまちかづかば,[寛]みまちかつかは,
わすらしなむか,[寛]わすられなむか,
" "#[番号]05/0878","#[題詞](書殿餞酒日<倭>歌四首)","#[原文]伊比都々母 能知許曽斯良米 等乃斯久母 佐夫志計米夜母 吉美伊麻佐受斯弖","#[訓読]言ひつつも後こそ知らめとのしくも寂しけめやも君いまさずして","#[仮名],いひつつも,のちこそしらめ,とのしくも,さぶしけめやも,きみいまさずして","#[左注]","#[校異]","#[事項],山上憶良,大伴旅人,太宰府,福岡,餞別,帰京,宴席,地名","#[訓異]
いひつつも[寛],
のちこそしらめ[寛],
とのしくも[寛],
さぶしけめやも,[寛]さふしけめやも,
きみいまさずして,[寛]きみいまさすして,
" "#[番号]05/0879","#[題詞](書殿餞酒日<倭>歌四首)","#[原文]余呂豆余尓 伊麻志多麻比提 阿米能志多 麻乎志多麻波祢 美加<度>佐良受弖","#[訓読]万世にいましたまひて天の下奏したまはね朝廷去らずて","#[仮名],よろづよに,いましたまひて,あめのした,まをしたまはね,みかどさらずて","#[左注]","#[校異]<> -> 度 [西(右書)][類][紀][細]","#[事項],山上憶良,大伴旅人,太宰府,福岡,餞別,帰京,宴席,地名","#[訓異]
よろづよに,[寛]よろつよに,
いましたまひて[寛],
あめのした[寛],
まをしたまはね[寛],
みかどさらずて,[寛]みかとさらすて,
" "#[番号]05/0880","#[題詞]敢布私懐歌三首","#[原文]阿麻社迦留 比奈尓伊都等世 周麻比都々 美夜故能提夫利 和周良延尓家利","#[訓読]天離る鄙に五年住まひつつ都のてぶり忘らえにけり","#[仮名],あまざかる,ひなにいつとせ,すまひつつ,みやこのてぶり,わすらえにけり","#[左注](天平二年十二月六日筑前國守山上憶良謹上)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],作者:山上憶良,大伴旅人,太宰府,福岡,餞別,宴席,帰京,地名,天平2年12月6日,年紀","#[訓異]
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなにいつとせ[寛],
すまひつつ[寛],
みやこのてぶり,[寛]みやこのてふり,
わすらえにけり[寛],
" "#[番号]05/0881","#[題詞](敢布私懐歌三首)","#[原文]加久能<未>夜 伊吉豆伎遠良牟 阿良多麻能 吉倍由久等志乃 可伎利斯良受提","#[訓読]かくのみや息づき居らむあらたまの来経行く年の限り知らずて","#[仮名],かくのみや,いきづきをらむ,あらたまの,きへゆくとしの,かぎりしらずて","#[左注](天平二年十二月六日筑前國守山上憶良謹上)","#[校異]米 -> 未 [類][紀][細]","#[事項],作者:山上憶良,大伴旅人,太宰府,福岡,餞別,宴席,帰京,天平2年12月6日,年紀","#[訓異]
かくのみや[寛],
いきづきをらむ,[寛]いきつきをらむ,
あらたまの[寛],
きへゆくとしの[寛],
かぎりしらずて,[寛]かきりしらすて,
" "#[番号]05/0882","#[題詞](敢布私懐歌三首)","#[原文]阿我農斯能 美多麻々々比弖 波流佐良婆 奈良能美夜故尓 n佐宜多麻波祢","#[訓読]我が主の御霊賜ひて春さらば奈良の都に召上げたまはね","#[仮名],あがぬしの,みたまたまひて,はるさらば,ならのみやこに,めさげたまはね","#[左注]天平二年十二月六日筑前國守山上憶良謹上","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,大伴旅人,太宰府,福岡,餞別,宴席,帰京,天平2年12月6日","#[訓異]
あがぬしの,[寛]あかのしの,
みたまたまひて[寛],
はるさらば,[寛]はるさらは,
ならのみやこに[寛],
めさげたまはね,[寛]めさけたまはね,
" "#[番号]05/0883","#[題詞]三嶋王後追和松浦佐用嬪面歌一首","#[原文]於登尓吉<岐> 目尓波伊麻太見受 佐容比賣我 必礼布理伎等敷 吉民萬通良楊満","#[訓読]音に聞き目にはいまだ見ず佐用姫が領巾振りきとふ君松浦山","#[仮名],おとにきき,めにはいまだみず,さよひめが,ひれふりきとふ,きみまつらやま","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 伎 -> 岐 [類][紀][細]","#[事項],作者:三嶋王,松浦佐用姫,追和,領布振伝説,地名","#[訓異]
おとにきき[寛],
めにはいまだみず,[寛]めにはいまたみす,
さよひめが,[寛]さよひめか,
ひれふりきとふ[寛],
きみまつらやま[寛],
" "#[番号]05/0884","#[題詞]大伴君熊凝歌二首 [大典麻田陽春作]","#[原文]國遠伎 路乃長手遠 意保々斯久 計布夜須疑南 己等騰比母奈久","#[訓読]国遠き道の長手をおほほしく今日や過ぎなむ言どひもなく","#[仮名],くにとほき,みちのながてを,おほほしく,けふやすぎなむ,ことどひもなく","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],作者:麻田陽春,大伴熊凝,追悼,哀悼,行路死人","#[訓異]
くにとほき[寛],
みちのながてを,[寛]みちのなかてを,
おほほしく[寛],
けふやすぎなむ,[寛]こふやすきなむ,
ことどひもなく,[寛]こととひもなく,
" "#[番号]05/0885","#[題詞](大伴君熊凝歌二首 [大典麻田陽春作])","#[原文]朝露乃 既夜須伎我身 比等國尓 須疑加弖奴可母 意夜能目遠保利","#[訓読]朝露の消やすき我が身他国に過ぎかてぬかも親の目を欲り","#[仮名],あさつゆの,けやすきあがみ,ひとくにに,すぎかてぬかも,おやのめをほり","#[左注]","#[校異]露 [類][紀][細] 霧","#[事項],作者:麻田陽春,大伴熊凝,追悼,哀悼,行路死人","#[訓異]
あさつゆの[寛],
けやすきあがみ,[寛]けやすきわかみ,
ひとくにに[寛],
すぎかてぬかも,[寛]すきかてぬかも,
おやのめをほり[寛],
" "#[番号]05/0886","#[題詞]筑前國守山上憶良敬和為熊凝述其志歌六首[并序] / 大伴君熊凝者 肥後國益城郡人也 年十八歳 以天平三年六月十七日為相撲使某國司官位姓名従人 参向京都 為天不幸在路獲疾 即於安藝國佐伯郡高庭驛家身故也 臨終之時 長歎息曰 傳聞 假合之身易滅 泡沫之命難駐 所以千聖已去 百賢不留 况乎凡愚微者何能逃避 但我老親並在菴室 侍我過日 自有傷心之恨 望我違時 必致喪明之泣 哀哉我父痛哉我母 不患一身向死之途 唯悲二親在生之苦 今日長別 何世得覲 乃作歌六首而死 其歌曰","#[原文]宇知比佐受 宮弊能保留等 多羅知斯夜 波々何手波奈例 常斯良奴 國乃意久迦袁 百重山 越弖須<疑>由伎 伊都斯可母 京師乎美武等 意母比都々 迦多良比遠礼騰 意乃何身志 伊多波斯計礼婆 玉桙乃 道乃久麻尾尓 久佐太袁利 志<婆>刀利志伎提 等許自母能 宇知<許>伊布志提 意母比都々 奈宜伎布勢良久 國尓阿良婆 父刀利美麻之 家尓阿良婆 母刀利美麻志 世間波 迦久乃尾奈良志 伊奴時母能 道尓布斯弖夜 伊能知周<疑>南 [一云 和何余須疑奈牟]","#[訓読]うちひさす 宮へ上ると たらちしや 母が手離れ 常知らぬ 国の奥処を 百重山 越えて過ぎ行き いつしかも 都を見むと 思ひつつ 語らひ居れど おのが身し 労はしければ 玉桙の 道の隈廻に 草手折り 柴取り敷きて 床じもの うち臥い伏して 思ひつつ 嘆き伏せらく 国にあらば 父とり見まし 家にあらば 母とり見まし 世間は かくのみならし 犬じもの 道に伏してや 命過ぎなむ [一云 我が世過ぎなむ]","#[仮名],うちひさす,みやへのぼると,たらちしや,ははがてはなれ,つねしらぬ,くにのおくかを,ももへやま,こえてすぎゆき,いつしかも,みやこをみむと,おもひつつ,かたらひをれど,おのがみし,いたはしければ,たまほこの,みちのくまみに,くさたをり,しばとりしきて,とこじもの,うちこいふして,おもひつつ,なげきふせらく,くににあらば,ちちとりみまし,いへにあらば,ははとりみまし,よのなかは,かくのみならし,いぬじもの,みちにふしてや,いのちすぎなむ,[わがよすぎなむ]","#[左注]","#[校異]筑前國守山上憶良敬和 [紀][細](楓) 敬和・・・筑前國守・・・ / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 某 [紀][細](塙) ム / 作歌 [西] 作謌 / 歌曰 [西] 謌曰 / 凝 -> 疑 [類][紀][細] / 遠 [紀][細](塙) 袁 / 波 -> 婆 [類][温][細] / 計 -> 許 [代匠記(初稿)] / 凝 -> 疑 [類][紀][細]","#[事項],作者:山上憶良,大伴熊凝,追悼,哀悼,行路死人,儒教,孝養,無常","#[訓異]
うちひさす[寛],
みやへのぼると,[寛]みやへのほると,
たらちしや[寛],
ははがてはなれ,[寛]ははかてはなれ,
つねしらぬ[寛],
くにのおくかを[寛],
ももへやま[寛],
こえてすぎゆき,[寛]こえてすきゆき,
いつしかも[寛],
みやこをみむと[寛],
おもひつつ[寛],
かたらひをれど,[寛]かたらひをれと,
おのがみし,[寛]おのかみし,
いたはしければ,[寛]いたはしけれは,
たまほこの[寛],
みちのくまみに,[寛]みちのまに,
くさたをり[寛],
しばとりしきて,[寛]しはとりしきて,
とこじもの,[寛]とけしもの,
うちこいふして[寛],
おもひつつ[寛],
なげきふせらく,[寛]なけきふせらく,
くににあらば,[寛]くににあらは,
ちちとりみまし[寛],
いへにあらば,[寛]いへにあらは,
ははとりみまし[寛],
よのなかは[寛],
かくのみならし[寛],
いぬじもの,[寛]いぬしもの,
みちにふしてや[寛],
いのちすぎなむ,[寛]いのちすきなむ,
[わがよすぎなむ],[寛]わかよすきなむ,
" "#[番号]05/0887","#[題詞](筑前國守山上憶良敬和為熊凝述其志歌六首[并序] / 大伴君熊凝者 肥後國益城郡人也 年十八歳 以天平三年六月十七日為相撲使某國司官位姓名従人 参向京都 為天不幸在路獲疾 即於安藝國佐伯郡高庭驛家身故也 臨終之時 長歎息曰 傳聞 假合之身易滅 泡沫之命難駐 所以千聖已去 百賢不留 况乎凡愚微者何能逃避 但我老親並在菴室 侍我過日 自有傷心之恨 望我違時 必致喪明之泣 哀哉我父痛哉我母 不患一身向死之途 唯悲二親在生之苦 今日長別 何世得覲 乃作歌六首而死 其歌曰)","#[原文]多良知子能 波々何目美受提 意保々斯久 伊豆知武伎提可 阿我和可留良武","#[訓読]たらちしの母が目見ずておほほしくいづち向きてか我が別るらむ","#[仮名],たらちしの,ははがめみずて,おほほしく,いづちむきてか,あがわかるらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,大伴熊凝,追悼,哀悼,行路死人,儒教,孝養,無常","#[訓異]
たらちしの[寛],
ははがめみずて,[寛]ははかめみすて,
おほほしく[寛],
いづちむきてか,[寛]いつちむきてか,
あがわかるらむ,[寛]あかわかるらむ,
" "#[番号]05/0888","#[題詞](筑前國守山上憶良敬和為熊凝述其志歌六首[并序] / 大伴君熊凝者 肥後國益城郡人也 年十八歳 以天平三年六月十七日為相撲使某國司官位姓名従人 参向京都 為天不幸在路獲疾 即於安藝國佐伯郡高庭驛家身故也 臨終之時 長歎息曰 傳聞 假合之身易滅 泡沫之命難駐 所以千聖已去 百賢不留 况乎凡愚微者何能逃避 但我老親並在菴室 侍我過日 自有傷心之恨 望我違時 必致喪明之泣 哀哉我父痛哉我母 不患一身向死之途 唯悲二親在生之苦 今日長別 何世得覲 乃作歌六首而死 其歌曰)","#[原文]都祢斯良農 道乃長手袁 久礼々々等 伊可尓可由迦牟 可利弖波奈斯尓 [一云 可例比波奈之尓]","#[訓読]常知らぬ道の長手をくれくれといかにか行かむ糧はなしに [一云 干飯はなしに]","#[仮名],つねしらぬ,みちのながてを,くれくれと,いかにかゆかむ,かりてはなしに,[かれひはなしに]","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,大伴熊凝,追悼,哀悼,行路死人,儒教,孝養,無常","#[訓異]
つねしらぬ[寛],
みちのながてを,[寛]みちのなかてを,
くれくれと[寛],
いかにかゆかむ[寛],
かりてはなしに[寛],
[かれひはなしに][寛],
" "#[番号]05/0889","#[題詞](筑前國守山上憶良敬和為熊凝述其志歌六首[并序] / 大伴君熊凝者 肥後國益城郡人也 年十八歳 以天平三年六月十七日為相撲使某國司官位姓名従人 参向京都 為天不幸在路獲疾 即於安藝國佐伯郡高庭驛家身故也 臨終之時 長歎息曰 傳聞 假合之身易滅 泡沫之命難駐 所以千聖已去 百賢不留 况乎凡愚微者何能逃避 但我老親並在菴室 侍我過日 自有傷心之恨 望我違時 必致喪明之泣 哀哉我父痛哉我母 不患一身向死之途 唯悲二親在生之苦 今日長別 何世得覲 乃作歌六首而死 其歌曰)","#[原文]家尓阿利弖 波々何刀利美婆 奈具佐牟流 許々呂波阿良麻志 斯奈婆斯農等母 [一云 能知波志奴等母]","#[訓読]家にありて母がとり見ば慰むる心はあらまし死なば死ぬとも [一云 後は死ぬとも]","#[仮名],いへにありて,ははがとりみば,なぐさむる,こころはあらまし,しなばしぬとも,[のちはしぬとも]","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,大伴熊凝,追悼,哀悼,行路死人,儒教,孝養,無常,鎮魂","#[訓異]
いへにありて[寛],
ははがとりみば,[寛]ははかとりみは,
なぐさむる,[寛]なくさむる,
こころはあらまし[寛],
しなばしぬとも,[寛]しなはしぬとも,
[のちはしぬとも][寛],
" "#[番号]05/0890","#[題詞](筑前國守山上憶良敬和為熊凝述其志歌六首[并序] / 大伴君熊凝者 肥後國益城郡人也 年十八歳 以天平三年六月十七日為相撲使某國司官位姓名従人 参向京都 為天不幸在路獲疾 即於安藝國佐伯郡高庭驛家身故也 臨終之時 長歎息曰 傳聞 假合之身易滅 泡沫之命難駐 所以千聖已去 百賢不留 况乎凡愚微者何能逃避 但我老親並在菴室 侍我過日 自有傷心之恨 望我違時 必致喪明之泣 哀哉我父痛哉我母 不患一身向死之途 唯悲二親在生之苦 今日長別 何世得覲 乃作歌六首而死 其歌曰)","#[原文]出弖由伎斯 日乎可俗閇都々 家布々々等 阿袁麻多周良武 知々波々良波母 [一云 波々我迦奈斯佐]","#[訓読]出でて行きし日を数へつつ今日今日と我を待たすらむ父母らはも [一云 母が悲しさ]","#[仮名],いでてゆきし,ひをかぞへつつ,けふけふと,あをまたすらむ,ちちははらはも,[ははがかなしさ]","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,大伴熊凝,追悼,哀悼,行路死人,儒教,孝養,無常","#[訓異]
いでてゆきし,[寛]いててゆきし,
ひをかぞへつつ,[寛]ひをかそへつつ,
けふけふと[寛],
あをまたすらむ[寛],
ちちははらはも,[寛]ちちははをはも,
[ははがかなしさ],[寛]ははかかなしさ,
" "#[番号]05/0891","#[題詞](筑前國守山上憶良敬和為熊凝述其志歌六首[并序] / 大伴君熊凝者 肥後國益城郡人也 年十八歳 以天平三年六月十七日為相撲使某國司官位姓名従人 参向京都 為天不幸在路獲疾 即於安藝國佐伯郡高庭驛家身故也 臨終之時 長歎息曰 傳聞 假合之身易滅 泡沫之命難駐 所以千聖已去 百賢不留 况乎凡愚微者何能逃避 但我老親並在菴室 侍我過日 自有傷心之恨 望我違時 必致喪明之泣 哀哉我父痛哉我母 不患一身向死之途 唯悲二親在生之苦 今日長別 何世得覲 乃作歌六首而死 其歌曰)","#[原文]一世尓波 二遍美延農 知々波々袁 意伎弖夜奈何久 阿我和加礼南 [一云 相別南]","#[訓読]一世にはふたたび見えぬ父母を置きてや長く我が別れなむ [一云 相別れなむ]","#[仮名],ひとよには,ふたたびみえぬ,ちちははを,おきてやながく,あがわかれなむ,[あひわかれなむ]","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,大伴熊凝,追悼,哀悼,行路死人,儒教,孝養,無常","#[訓異]
ひとよには[寛],
ふたたびみえぬ,[寛]ふたたひみえぬ,
ちちははを[寛],
おきてやながく,[寛]をきてやなかく,
あがわかれなむ,[寛]あかわかれなむ,
[あひわかれなむ][寛],
" "#[番号]05/0892","#[題詞]貧窮問答歌一首[并短歌]","#[原文]風雜 雨布流欲乃 雨雜 雪布流欲波 為部母奈久 寒之安礼婆 堅塩乎 取都豆之呂比 糟湯酒 宇知須々呂比弖 之<z>夫可比 鼻i之i之尓 志可登阿良農 比宜可伎撫而 安礼乎於伎弖 人者安良自等 富己呂倍騰 寒之安礼婆 麻被 引可賀布利 布可多衣 安里能許等其等 伎曽倍騰毛 寒夜須良乎 和礼欲利母 貧人乃 父母波 飢寒良牟 妻子等波 乞々泣良牟 此時者 伊可尓之都々可 汝代者和多流 天地者 比呂之等伊倍杼 安我多米波 狭也奈里奴流 日月波 安可之等伊倍騰 安我多米波 照哉多麻波奴 人皆可 吾耳也之可流 和久良婆尓 比等々波安流乎 比等奈美尓 安礼母作乎 綿毛奈伎 布可多衣乃 美留乃其等 和々氣佐我礼流 可々布能尾 肩尓打懸 布勢伊保能 麻宜伊保乃内尓 直土尓 藁解敷而 父母波 枕乃可多尓 妻子等母波 足乃方尓 圍居而 憂吟 可麻度柔播 火氣布伎多弖受 許之伎尓波 久毛能須可伎弖 飯炊 事毛和須礼提 奴延鳥乃 能杼与比居尓 伊等乃伎提 短物乎 端伎流等 云之如 楚取 五十戸良我許恵波 寝屋度麻R 来立呼比奴 可久<婆>可里 須部奈伎物能可 世間乃道","#[訓読]風交り 雨降る夜の 雨交り 雪降る夜は すべもなく 寒くしあれば 堅塩を とりつづしろひ 糟湯酒 うちすすろひて しはぶかひ 鼻びしびしに しかとあらぬ ひげ掻き撫でて 我れをおきて 人はあらじと 誇ろへど 寒くしあれば 麻衾 引き被り 布肩衣 ありのことごと 着襲へども 寒き夜すらを 我れよりも 貧しき人の 父母は 飢ゑ凍ゆらむ 妻子どもは 乞ふ乞ふ泣くらむ この時は いかにしつつか 汝が世は渡る 天地は 広しといへど 我がためは 狭くやなりぬる 日月は 明しといへど 我がためは 照りやたまはぬ 人皆か 我のみやしかる わくらばに 人とはあるを 人並に 我れも作るを 綿もなき 布肩衣の 海松のごと わわけさがれる かかふのみ 肩にうち掛け 伏廬の 曲廬の内に 直土に 藁解き敷きて 父母は 枕の方に 妻子どもは 足の方に 囲み居て 憂へさまよひ かまどには 火気吹き立てず 甑には 蜘蛛の巣かきて 飯炊く ことも忘れて ぬえ鳥の のどよひ居るに いとのきて 短き物を 端切ると いへるがごとく しもと取る 里長が声は 寝屋処まで 来立ち呼ばひぬ かくばかり すべなきものか 世間の道","#[仮名],かぜまじり,あめふるよの,あめまじり,ゆきふるよは,すべもなく,さむくしあれば,かたしほを,とりつづしろひ,かすゆざけ,うちすすろひて,しはぶかひ,はなびしびしに,しかとあらぬ,ひげかきなでて,あれをおきて,ひとはあらじと,ほころへど,さむくしあれば,あさぶすま,ひきかがふり,ぬのかたきぬ,ありのことごと,きそへども,さむきよすらを,われよりも,まづしきひとの,ちちははは,うゑこゆらむ,めこどもは,こふこふなくらむ,このときは,いかにしつつか,ながよはわたる,あめつちは,ひろしといへど,あがためは,さくやなりぬる,ひつきは,あかしといへど,あがためは,てりやたまはぬ,ひとみなか,あのみやしかる,わくらばに,ひととはあるを,ひとなみに,あれもつくるを,わたもなき,ぬのかたぎぬの,みるのごと,わわけさがれる,かかふのみ,かたにうちかけ,ふせいほの,まげいほのうちに,ひたつちに,わらときしきて,ちちははは,まくらのかたに,めこどもは,あとのかたに,かくみゐて,うれへさまよひ,かまどには,ほけふきたてず,こしきには,くものすかきて,いひかしく,こともわすれて,ぬえどりの,のどよひをるに,いとのきて,みじかきものを,はしきると,いへるがごとく,しもととる,さとをさがこゑは,ねやどまで,きたちよばひぬ,かくばかり,すべなきものか,よのなかのみち","#[左注](山上憶良頓首謹上)","#[校異]歌 [西] 謌 / 可 -> z [定本] / 々 [代匠記精撰本](塙) 弖 / 波 -> 婆 [紀][細]","#[事項],作者:山上憶良,社会性,国司,貧窮","#[訓異]
かぜまじり,[寛]かせましり,
あめふるよの,[寛]あめのふるよの,
あめまじり,[寛]あめましり,
ゆきふるよは,[寛]ゆきのふるよは,
すべもなく,[寛]すへもなく,
さむくしあれば,[寛]さむくしあれは,
かたしほを[寛],
とりつづしろひ,[寛]とりつつしろひ,
かすゆざけ,[寛]かすゆさけ,
うちすすろひて[寛],
しはぶかひ,[寛]しかふかひ,
はなびしびしに,[寛]ひひしひしに,
しかとあらぬ[寛],
ひげかきなでて,[寛]ひけかきなてて,
あれをおきて[寛],
ひとはあらじと,[寛]ひとはあらしと,
ほころへど,[寛]ほころへと,
さむくしあれば,[寛]さむくしあれは,
あさぶすま,[寛]あさふすま,
ひきかがふり,[寛]ひきかかふり,
ぬのかたきぬ[寛],
ありのことごと,[寛]ありのことこと,
きそへども,[寛]きそへとも,
さむきよすらを,[寛]さむきよすらも,
われよりも[寛],
まづしきひとの,[寛]まつしきひとの,
ちちははは[寛],
うゑこゆらむ,[寛]うへさむからむ,
めこどもは,[寛]めこともは,
こふこふなくらむ,[寛]こひてなくらむ,
このときは[寛],
いかにしつつか[寛],
ながよはわたる,[寛]なかよはわたる,
あめつちは[寛],
ひろしといへど,[寛]ひろしといへと,
あがためは,[寛]あかためは,
さくやなりぬる[寛],
ひつきは[寛],
あかしといへど,[寛]あかしといへと,
あがためは,[寛]あかためは,
てりやたまはぬ[寛],
ひとみなか[寛],
あのみやしかる,[寛]われのみやしかる,
わくらばに,[寛]わくらはに,
ひととはあるを[寛],
ひとなみに[寛],
あれもつくるを[寛],
わたもなき[寛],
ぬのかたぎぬの,[寛]ぬのかたきぬの,
みるのごと,[寛]みるのこと,
わわけさがれる,[寛]わわけさかれる,
かかふのみ[寛],
かたにうちかけ[寛],
ふせいほの[寛],
まげいほのうちに,[寛]まきいほのうちに,
ひたつちに[寛],
わらときしきて[寛],
ちちははは[寛],
まくらのかたに[寛],
めこどもは,[寛]めこともは,
あとのかたに[寛],
かくみゐて,[寛]かこみゐて,
うれへさまよひ[寛],
かまどには,[寛]かまとには,
ほけふきたてず,[寛]けふりふきたてす,
こしきには[寛],
くものすかきて[寛],
いひかしく[寛],
こともわすれて[寛],
ぬえどりの,[寛]ぬえとりの,
のどよひをるに,[寛]のとよひをるに,
いとのきて[寛],
みじかきものを,[寛]みしかきものを,
はしきると[寛],
いへるがごとく,[寛]いへるかことく,
しもととる,[寛]とる,
さとをさがこゑは,[寛]いとらかこゑは,
ねやどまで,[寛]ねやとまて,
きたちよばひぬ,[寛]きたてよはひぬ,
かくばかり,[寛]かくはかり,
すべなきものか,[寛]すへなきものか,
よのなかのみち[寛],
" "#[番号]05/0893","#[題詞](貧窮問答歌一首[并短歌])","#[原文]世間乎 宇之等夜佐之等 於母倍杼母 飛立可祢都 鳥尓之安良祢婆","#[訓読]世間を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば","#[仮名],よのなかを,うしとやさしと,おもへども,とびたちかねつ,とりにしあらねば","#[左注]山上憶良頓首謹上","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,社会性,国司,貧窮","#[訓異]
よのなかを[寛],
うしとやさしと[寛],
おもへども,[寛]おもへとも,
とびたちかねつ,[寛]とひたちかねつ,
とりにしあらねば,[寛]とりにしあらねは,
" "#[番号]05/0894","#[題詞]好去好来歌一首[反歌二首]","#[原文]神代欲理 云傳久良久 虚見通 倭國者 皇神能 伊都久志吉國 言霊能 佐吉播布國等 加多利継 伊比都賀比計理 今世能 人母許等期等 目前尓 見在知在 人佐播尓 満弖播阿礼等母 高光 日御朝庭 神奈我良 愛能盛尓 天下 奏多麻比志 家子等 撰多麻比天 勅旨 [反云 大命]<戴>持弖 唐能 遠境尓 都加播佐礼 麻加利伊麻勢 宇奈原能 邊尓母奥尓母 神豆麻利 宇志播吉伊麻須 諸能 大御神等 船舳尓 [反云 布奈能閇尓] 道引麻<遠志> 天地能 大御神等 倭 大國霊 久堅能 阿麻能見虚喩 阿麻賀氣利 見渡多麻比 事畢 還日者 又更 大御神等 船舳尓 御手<打>掛弖 墨縄遠 播倍多留期等久 阿<遅>可遠志 智可能岫欲利 大伴 御津濱備尓 多太泊尓 美船播将泊 都々美無久 佐伎久伊麻志弖 速歸坐勢","#[訓読]神代より 言ひ伝て来らく そらみつ 大和の国は 皇神の 厳しき国 言霊の 幸はふ国と 語り継ぎ 言ひ継がひけり 今の世の 人もことごと 目の前に 見たり知りたり 人さはに 満ちてはあれども 高照らす 日の朝廷 神ながら 愛での盛りに 天の下 奏したまひし 家の子と 選ひたまひて 大御言 [反云 大みこと] 戴き持ちて もろこしの 遠き境に 遣はされ 罷りいませ 海原の 辺にも沖にも 神づまり 領きいます もろもろの 大御神たち 船舳に [反云 ふなのへに] 導きまをし 天地の 大御神たち 大和の 大国御魂 ひさかたの 天のみ空ゆ 天翔り 見わたしたまひ 事終り 帰らむ日には またさらに 大御神たち 船舳に 御手うち掛けて 墨縄を 延へたるごとく あぢかをし 値嘉の崎より 大伴の 御津の浜びに 直泊てに 御船は泊てむ 障みなく 幸くいまして 早帰りませ","#[仮名],かむよより,いひつてくらく,そらみつ,やまとのくには,すめかみの,いつくしきくに,ことだまの,さきはふくにと,かたりつぎ,いひつがひけり,いまのよの,ひともことごと,めのまへに,みたりしりたり,ひとさはに,みちてはあれども,たかてらす,ひのみかど,かむながら,めでのさかりに,あめのした,まをしたまひし,いへのこと,えらひたまひて,おほみこと,[おほみこと],いただきもちて,からくにの,とほきさかひに,つかはされ,まかりいませ,うなはらの,へにもおきにも,かむづまり,うしはきいます,もろもろの,おほみかみたち,ふなのへに,[ふなのへに],みちびきまをし,あめつちの,おほみかみたち,やまとの,おほくにみたま,ひさかたの,あまのみそらゆ,あまがけり,みわたしたまひ,ことをはり,かへらむひには,またさらに,おほみかみたち,ふなのへに,みてうちかけて,すみなはを,はへたるごとく,あぢかをし,ちかのさきより,おほともの,みつのはまびに,ただはてに,みふねははてむ,つつみなく,さきくいまして,はやかへりませ","#[左注](天平五年三月一日良宅對面獻三日 山上憶良謹上 大唐大使卿記室)","#[校異]歌 [西] 謌 / 反歌 [西] 反謌 [西(訂正)] 反歌 / 載 -> 戴 [代匠記精撰本] / 志遠 -> 遠志 [細] / 行 -> 打 [西(訂正)][紀][細] / 遠 [紀] 袁 / 庭 -> 遅 [紀][細] / 太 [紀] 大","#[事項],作者:山上憶良,多治比広成,遣唐使,餞別,羈旅,天平5年3月1日,年紀","#[訓異]
かむよより,[寛]かみよより,
いひつてくらく,[寛]いひつてけらく,
そらみつ,[寛]そらにみつ,
やまとのくには[寛],
すめかみの,[寛]すへかみの,
いつくしきくに[寛],
ことだまの,[寛]ことたまの,
さきはふくにと[寛],
かたりつぎ,[寛]かたりつき,
いひつがひけり,[寛]いひつかひけり,
いまのよの[寛],
ひともことごと,[寛]ひともことこと,
めのまへに[寛],
みたりしりたり,[寛]みまちま,
ひとさはに[寛],
みちてはあれども,[寛]みちてはあれとも,
たかてらす[寛],
ひのみかど,[寛]ひのみかとに,
かむながら,[寛]かみなから,
めでのさかりに,[寛]めくみのさかりに,
あめのした[寛],
まをしたまひし,[寛]まうしたまひし,
いへのこと[寛],
えらひたまひて[寛],
おほみこと[寛],
[おほみこと],
いただきもちて,[寛]のせもたしめて,
からくにの,[寛]もろこしの,
とほきさかひに[寛],
つかはされ[寛],
まかりいませ[寛],
うなはらの[寛],
へにもおきにも[寛],
かむづまり,[寛]かみつまり,
うしはきいます[寛],
もろもろの[寛],
おほみかみたち[寛],
ふなのへに[寛],
[ふなのへに],
みちびきまをし,[寛]みちひかましを,
あめつちの[寛],
おほみかみたち[寛],
やまとの,[寛]やまとなる,
おほくにみたま[寛],
ひさかたの[寛],
あまのみそらゆ[寛],
あまがけり,[寛]あまかけり,
みわたしたまひ[寛],
ことをはり,[寛]ことをへて,
かへらむひには[寛],
またさらに[寛],
おほみかみたち[寛],
ふなのへに[寛],
みてうちかけて[寛],
すみなはを[寛],
はへたるごとく,[寛]はへたることく,
あぢかをし,[寛]あてかをし,
ちかのさきより,[寛]ちかのくきより,
おほともの[寛],
みつのはまびに,[寛]みつのはまへに,
ただはてに,[寛]たたはてに,
みふねははてむ[寛],
つつみなく[寛],
さきくいまして[寛],
はやかへりませ[寛],
" "#[番号]05/0895","#[題詞](好去好来歌一首[反歌二首])反歌","#[原文]大伴 御津松原 可吉掃弖 和礼立待 速歸坐勢","#[訓読]大伴の御津の松原かき掃きて我れ立ち待たむ早帰りませ","#[仮名],おほともの,みつのまつばら,かきはきて,われたちまたむ,はやかへりませ","#[左注](天平五年三月一日良宅對面獻三日 山上憶良謹上 大唐大使卿記室)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],作者:山上憶良,多治比広成,遣唐使,餞別,羈旅,天平5年3月1日,年紀","#[訓異]
おほともの[寛],
みつのまつばら,[寛]みつのまつはら,
かきはきて[寛],
われたちまたむ[寛],
はやかへりませ[寛],
" "#[番号]05/0896","#[題詞]((好去好来歌一首[反歌二首])反歌)","#[原文]難波津尓 美船泊農等 吉許延許婆 紐解佐氣弖 多知婆志利勢武","#[訓読]難波津に御船泊てぬと聞こえ来ば紐解き放けて立ち走りせむ","#[仮名],なにはつに,みふねはてぬと,きこえこば,ひもときさけて,たちばしりせむ","#[左注]天平五年三月一日良宅對面獻三日 山上憶良謹上 大唐大使卿記室","#[校異]波 [類][紀][細] 破","#[事項],作者:山上憶良,多治比広成,遣唐使,餞別,羈旅,天平5年3月1日,年紀","#[訓異]
なにはつに[寛],
みふねはてぬと[寛],
きこえこば,[寛]きこえこは,
ひもときさけて[寛],
たちばしりせむ,[寛]たちはしりせむ,
" "#[番号]","#[題詞]沈痾自哀文 山上憶良作","#[原文]竊以 朝夕佃食山野者 猶無あ害而得度世 [謂常執弓箭不避六齋 所値禽獣不論大小孕及不孕並皆g食 以此為業者也] 晝夜釣漁河海者 尚有慶福而全經俗 [謂漁夫潜女各有所勤 男者手把竹竿能釣波浪之上 女者腰帶鑿篭潜採深潭之底者也] 况乎我従胎生迄于今日 自有修善之志 曽無作悪之心 [謂聞諸悪莫作諸善奉行之教也] 所以礼拜三寶 無日不勤[毎日誦經發露懺悔也] 敬重百神 鮮夜有闕 [謂敬拜天地諸神等也]嗟乎い哉 我犯何罪遭此重疾 [謂未知過去所造之罪 若是現前所犯之過無犯罪過何獲此病乎]
初沈痾已来 年月稍多 [謂經十餘年也] 是時<年>七十有四鬢髪斑白 筋力う贏 不但年老復加斯病 諺曰 痛瘡潅塩短材截端 此之<謂>也 四支不動 百節皆疼 身體太重 猶負鈞石 [廿四銖為一兩 十六兩為一斤 卅斤為一鈞 四鈞為<一>石 合一百廿斤也] 懸布欲立 如折翼之鳥倚杖且歩 比跛足之驢 吾以身已穿俗 心亦累塵 欲知禍之所伏 <祟>之所隠 龜卜之門 巫祝之室 無不徃問 若實若妄随其所教 奉<幣>帛 無不祈祷 然而弥有増苦 曽無減差 吾聞 前代多有良醫 救療蒼生病患 至若楡<柎>扁鵲華他秦和緩葛稚川陶隠居張仲景等皆是在世良醫 無不除愈也 [扁鵲姓秦字越人 勃海郡人也 割胸採心易而置之投以神藥 即寤如平也 華他字元<化> 沛國え人也 <若有病結積>沈<重>在内者 刳腸取病 縫復摩膏四五日差之] 追望件醫 非敢所及若逢聖醫神藥者 仰願割刳五蔵抄<探>百病 尋逹膏肓之お處 [盲鬲也心下為膏 攻之 不可逹之不及藥不至焉] 欲顯二竪之逃匿 [謂晉景公疾秦醫緩視而還者可謂為鬼所g也] 命根<既>盡 終其天年 尚為哀[聖人賢者一切含霊誰免此道乎] 何况生録未半為鬼<枉>g 顏色壮年為病横困者乎 在世大患 孰甚于此 [志恠記云 廣平前大守北海徐玄方之女年十八歳而死 其霊謂馮馬子曰 案我生録當壽八十餘歳 今為妖鬼所枉g已經四年 此遇馮馬子 乃得更活是也 内教云瞻浮州人壽百二十歳謹案此數非必不得過此 故壽延經云 有比丘名曰難逹 臨命終時詣佛請壽則延十八年 但善為者天地相畢 其壽夭者業報所招 随其脩短而為半也未盈斯t而か死去 故曰未半也 任<徴>君曰 病従口入 故君子節其飲食由斯言之 人遇疾病不必妖鬼 夫醫方諸家之廣説 飲食禁忌之厚訓知易行難之鈍情 三者盈目満耳由来久矣 抱朴子曰 人但不知其當死之日故不憂耳 若誠知羽き可得延期者 必将為之 以此而觀 乃知我病盖斯飲食所招而不能自治者<乎>] 帛公略説曰 伏思自勵以斯長生 々可貪也死可畏也 天地之大徳曰生 故死人不及生鼠 雖為王侯 一日絶氣積金如山 誰為富哉 威勢如海 誰為貴哉 遊仙窟曰 九泉下人 一錢不直 孔子曰 受之於天 不可變易者形也 受之於命 不可請益者<壽>也[見鬼谷先生相人書] 故知生之極貴命之至重 欲言々窮 何以言之欲慮々絶 何由慮之 惟以人無賢愚 世無古今 咸悉嗟歎 歳月競流晝夜不息 [曽子曰 徃而不反者年也 宣尼臨川之歎亦是矣也] 老疾相催朝<夕>侵動 一代<懽>樂未盡席前 [魏文惜時賢詩曰 未盡西苑夜劇作北<く>塵也] 千年愁苦更継坐後 [古詩云 人生不満百何懐千年憂矣] 若夫群生品類 莫不皆以有盡之身並求無窮之命 所以道人方士 自負丹經入於名山而合藥之者 養性怡神以求長生 抱朴子曰 神農云 百病不愈安得長生 帛公又曰 生好物也 死悪物也 若不幸而不得長生者 猶以生涯無病患者為福大哉 今吾為病見悩不得臥坐 向東向西莫知所為 無福至甚惣集于我 人願天従 如有實者 仰願 頓除此病頼得如平 以鼠為喩豈不愧乎 [已見上也]","#[訓読]竊(ひそか)に以(おもひみ)るに、朝夕山野に佃食(てんしょく)する者、猶ほあ害(さいがい)無く、世を度(わた)ることを得。[常に弓箭を執りて、六齋を避けず、値(あ)ふ所の禽獣、大小孕(はら)めると孕まざるを論ぜず、並に皆g(ころ)して食らひ、此を以て業(なりはひ)と為す者を謂ふ也]。晝夜河海に釣漁する者、尚慶福有りて、經俗を全(まっとう)す。[漁夫潜女各(おのおの)勤むる所あり、男は手に竹竿を把り、能く波浪の上に釣る。女は腰に鑿と篭を帶び、潜(かづ)きて深潭(しんたん)の底を採る者を謂ふ也] 况んや我胎生より今日迄(まで)自ら修善の志あり。曽て作悪の心無し。[諸悪莫作、諸善奉行の教を聞くを謂ふ也]。所以に三寶を礼拜し、日として勤めざること無く、[毎日誦經し、發露懺悔する也] 百神を敬重し、夜として闕くること有る鮮(な)し。[天地諸神等を敬拜するを謂ふ也] 嗟乎(ああ)い(はづかし)きかな。我何の罪を犯してか此の重疾に遭へる。[未だ過去に造る所の罪か、若しくは是れ現前に犯す所の過(あやまち)なるかを知らず、罪過を犯す無くして何ぞ此の病を獲む乎を謂ふ] 初めて痾(やまひ)に沈みしより已来(このかた)、年月稍(やくやく)多し。[十餘年を經たることを謂ふ也]。是の時、<年>七十有四、鬢髪斑白にして、筋力う贏(おうら)なり。但に年老ひたるのみにあらず、復た斯の病を加へたり。諺に曰く、痛き瘡(きず)は塩を潅(そそ)ぎ、短材は端を截(き)るといふは、此の<謂>(いひ)也。四支動かず、百節皆疼(いた)み、身體太(はなはだ)重きこと、猶ほ鈞石を負ふがごとし。[廿四銖を一兩と為す。十六兩を一斤(こん)と為す。卅斤を一鈞と為す。四鈞を<一>石と為す。合はせて一百廿斤也]。布を懸けて立たむと欲(おも)へば、翼折れたる鳥の如し。杖に倚(よ)りて歩まむとするに、足跛(な)へたる驢(うさぎうま)のごとし。吾、身已に俗を穿(うが)ち、心も亦塵に累(つなが)るるを以て、禍(わざわひ)の伏する所、<祟>の隠るる所を知らむと欲し、龜卜の門、巫祝の室、徃きて問はざる無し。若(も)しくは實、若しくは妄、其の教へる所に随ひ、<幣>帛を奉り、祈祷せざるは無し。然りて弥(いよよ)増苦あり。曽て減差なし。吾聞く、前代多く良醫有り。蒼生の病患を救療しき。楡<柎>、扁鵲、華他、秦の和、緩、葛稚川、陶隠居、張仲景等の若(ごと)きに至りては、皆是れ世に在りし良醫、除き愈(なお)さずといふこと無し。[扁鵲、姓は秦。字は越人。勃海郡の人なり。胸を割(さ)き、心を採り、易へて置き、投ずるに神藥を以てすれば、即ち寤めて平なるが如し。華他、字は元化。沛國、え(しょう)の人なり。若(もし)病の結積、沈重、内に在る者有らむに、腸を刳(さ)き病を取り、縫ひて復た膏を摩(す)る。四五日にして差(い)ゆ。] 件の醫(くすし)を追ひ望むとも、敢へて及(し)く所に非(あら)ず。若し聖醫神藥に逢はば、仰ぎ願はくは、五蔵を割(さ)き刳(えぐ)り、百病を抄探し、膏肓のお處(おうしょ)に尋ね逹(いた)り、[盲は鬲(かく)なり。心の下を膏と為す。之を攻(う)てども、可(よ)からず。之に逹するも及ばず。藥も至らず] 二竪の逃れ匿(かく)るるを顯(あら)はさまく欲りす。[晉の景公疾(や)む。秦の醫(くすし)緩、視て還りしを謂ふ。鬼の為にg(ころ)さゆと謂ふべし] 命根既に盡き、其の天年を終る。尚哀しと為す。[聖人賢者一切の含霊、誰か此の道を免(のが)れむや] 何ぞ况んや生録未だ半ばならず、鬼の枉g(おうさつ)と為り、顏色壮年にして病の横困と為らむをや。世に在る大患、孰(いづれ)か此より甚しからむ [志恠記に云く、廣平の前の大守、北海徐玄方の女、年十八歳にして死す。其の霊馮馬子に謂ひて曰く、我が生録を案(かんが)ふるに當に壽(よはひ)八十餘歳なるべし。今妖鬼の為に枉g(おうさつ)せられ、已に四年を經たり。此に馮馬子に遇ひて、乃ち更に活くるを得たること是なり。内教に云ふ。瞻浮州の人、壽百二十歳と。謹みて此の數を案ふるに必らずしも此を過ぐるを得ざるに非ず。故に壽延經に云く、比丘有り。名を難逹と曰ふ。命終る時に臨みて、佛に詣でて壽を請ひ、則ち十八年を延べたり。但し善なる者、天地と相ひ畢(おは)る。其の壽夭は、業報招く所にして、其の脩短に随ひ、半(なかば)と為る。未だ斯のt(さん)に盈(み)たずしてか(すみやか)に死去す。故に未だ半ならずと曰ふ。任徴君曰く、病は口より入る。故に君子は其の飲食を節す。斯(これ)に由りて言はば、人の疾病(やまひ)に遇ふは、必らずしも妖鬼にあらず。夫れ醫方諸家の廣説、飲食禁忌の厚訓、知ること易く、行ふこと難きの鈍情、三つは目に盈ち、耳に滿つこと由来久し。抱朴子に曰く、人は但(ただ)其の當に死なむ日を知らず。故に憂へず。若し誠に羽き(うかく)して期を延ぶることを得べしと知らば、必らず之を為さむ。此を以て觀れば、乃ち知る。我が病は、盖し斯れ飲食の招く所にして自ら治むること能はざる乎と] 帛公略説に曰く、伏して思ひ自ら勵むに斯の長生を以てす。々(せい)は貪(ぬさぼ)る可し。死は畏(い)む可し。天地の大徳を生と曰ふ。故に死人は生ける鼠に及(し)かず。王侯と為ると雖も、一日(ひとひ)氣(いき)を絶たば、積める金(くがね)山の如くありとも、誰が富(ゆたけし)と為さむ。威勢(いきほひ)海の如くありとも、誰が貴しと為(せ)む。遊仙窟に曰く、九泉下の人は、一錢だに直せずと。孔子曰く、之を天に受けて變(うつ)し易ふ可からぬ者は形なり。之を命に受けて請ひ益(くは)ふ可からぬ者は、壽(いのち)なり。[鬼谷先生の相人書に見ゆ] 故に生の極めて貴く、命の至りて重きことを知る。言はむと欲(おも)へば、々(こと)窮る。何を以てか言はむ。慮(おもひはか)らむと欲(おも)へば、々(おもひはかり)絶ゆ。何に由(より)てか慮(おもひはから)む。惟以(おもひみれば)人賢愚と無く、世古今と無く、咸悉(ことごとに)嗟歎(なげ)く。歳月競ひ流れて、晝夜息(いこ)はず。[曽子曰ふ、徃きて反(かえ)らぬ者は、年なり。宣尼川に臨む。歎も亦た是矣(ぞ)] 老疾相催(うなが)して朝夕に侵し動(さわ)く。一代の懽樂、未だ席前に盡きずして、[魏文時賢を惜しむ詩に曰く、未だ西苑の夜を盡くさず。劇(たちまち)に北<く>(ほくぼう)の塵と作る] 千年の愁苦更に坐後に継ぐ。[古詩に云く、人生百に滿たず。何ぞ千年の憂(うれひ)を懐(いだ)かむ] 夫れ群生品類(ぐんじょうほんるい)の若(ごと)きは、皆盡ること有る身を以て並びに窮無き命を求めずといふこと莫し。所以に道人方士の自ら丹經を負ひ、名山に入りて藥を合はする者は、性を養ひ神を怡(よろこ)びしめて以て長生を求む。抱朴子に曰く、神農云はく、百病愈(い)へずは安(いか)にぞ長生を得むと。帛公又曰く、生は好き物なり。死は悪しき物なり。若し不幸にして長生を得ずは、猶ほ生涯病患無き者を以て福(さきはひ)大(おほ)しと為さむ。今吾病の為に悩まさ見(れ)て臥坐(ふしゐ)すること得ず。東に向かひ、西に向かひ、為す所知ること莫し。福(さきはひ)無きことの至りて甚しき、惣(すべて)我に集まる。人願へば天従ふといへり。如し實(まこと)有らば、仰ぎ願はくは、頓(たちまち)に此の病を除き、頼(さきはひ)に平らかの如きを得むと。鼠を以て喩と為す。豈に愧(は)じざらむや [已に上に見ゆ]","#[仮名]","#[左注]","#[校異]<> -> 年 [西(右書)][紀][細][温] / <> -> 謂也 [西(右書)][紀][細][温] / <> -> 一 [西(右書)][細][温] / 崇 -> 祟 [定本] / 弊 -> 幣 [代匠記初稿本] / 樹 -> 柎 [細][温][矢] / 他 -> 化 [紀][細] / <> -> 若有病結積 [西(左書)][温][矢][京] / 重者 -> 重 [紀][細] / 採 -> 探 [紀][細][温] / <> -> 既 [西(右書)][紀][細][温] / 下 -> 年 [西(右書)][紀][温][細] / 狂 -> 枉 [細] / 微 -> 徴 [細] / 羽 [紀][細] 則 / 乎也 -> 乎 [細] / <> -> 壽 [西(右書)][紀][細][温] / 久 -> 夕 [西(右書)][紀][細][温] / 権 -> 懽 [温][矢][京] / 望 -> く [代匠記初稿本] / 藥之 [細][紀](塙) 藥","#[事項],作者:山上憶良,沈痾自哀文,仏教,老,病気,嘆き","#[訓異]
" "#[番号]","#[題詞]悲歎俗道假合即離易去難留詩一首[并序]","#[原文]竊以 釋慈之示教 [謂釋氏慈氏] 先開三歸 [謂歸依佛法僧] 五戒而化法界 [謂一不g生二不偸盗三不邪婬四不妄語五不飲酒] 周孔之垂訓前張三綱 [謂君臣父子夫婦] 五教以濟邦國 [謂父義母慈兄友弟順子孝]故知 引導雖二 得悟惟一也 但以世無恒質 所以陵谷更變 人無定期所以壽夭不同 撃目之間百齡已盡 申臂之頃 千代亦空 旦作席上之主夕為泉下之客白馬走来 黄泉何及 隴上青松空懸信劔 野中白楊但吹悲風是知 世俗本無隠遁之室 原野唯有長夜之臺 先聖已去 後賢不留 如有贖而可免者 古人誰無價金乎 未聞獨存遂見世終者 所以維摩大士疾玉體于方丈 釋迦能仁掩金容于雙樹 内教曰 不欲黒闇之後<来> 莫入徳天之先至 [徳天者生也 黒闇者死也] 故知生必有死 々若不欲不<如>不生 况乎縦覺始終之恒數 何慮存亡之大期者也 俗道變化猶撃目 人事經紀如申臂 空与浮雲行大虚 心力共盡無所寄","#[訓読]竊かに以(おもひみる)に、釋慈の示教 [釋氏、慈氏を謂ふ] 先に三歸 [佛法僧に歸依するを謂ふ] 五戒を開きて法界を化し、[一に不g生(ふせっしょう)、二に不偸盗、三に不邪婬、四に不妄語、五に不飲酒なるを謂ふ] 周孔の垂訓は前に三綱 [君臣父子夫婦を謂ふ] 五教を張りて以て邦國を濟(ととの)ふ。[父は義。母は慈。兄は友。弟は順。子は孝なるを謂ふ]故に知る。引導二つなりと雖も、悟を得るは惟れ一つ也。但(ただ)以世恒質なく、所以に陵谷更に變じ、人に定期なく、所以に壽夭同じからず。撃目の間、百齡已に盡き、申臂の頃、千代も亦た空し。旦には席上の主と作れども、夕には泉下の客と為る。白馬走り来るとも、黄泉何ぞ及(し)かむ。隴上の青松は空しく信劔を懸け、野中の白楊は但だ悲風に吹かる。是に知る、世俗本より隠遁の室なく、原野には唯だ長夜の臺のみありといふことを。先聖已に去り、後賢留まらず。如し贖(あがな)ひて免がる可きこと有らば、古人誰か價(あたひ)の金(くがね)無からむや。未だ獨り存(あ)りて遂に世の終を見る者を聞かず。所以に維摩大士は玉體を方丈に疾(や)み、釋迦能仁は金容を雙樹に掩(おほ)へり。内教に曰く、黒闇の後に来たるを欲せずは、徳天の先に至るを入るること莫かれ。[徳天は生なり。黒闇は死なり] 故に知る生まるれば必らず死有り。々若し欲せずんば、生まれざるに如かず。况んや縦(たとひ)始終の恒數を覺(さと)るも、何ぞ存亡の大期を慮(おもんば)からむ。 俗道の變化は猶ほ撃目のごとし。人事の經紀は申臂の如し。空しく浮雲と大虚を行き、心力共に盡きて寄る所無し。","#[仮名]","#[左注]","#[校異]酒 [紀][細](塙) 酒也 / 于 [紀][細] 乎 / <> -> 来 [西(右書)][紀][細][温] / 知 -> 如 [西(頭書)][温] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],作者:山上憶良,仏教,嘆き,無常","#[訓異]
" "#[番号]05/0897","#[題詞]老身重病經年辛苦及思兒等歌七首 [長一首短六首]","#[原文]霊剋 内限者 [謂瞻州人<壽>一百二十年也] 平氣久 安久母阿良牟遠 事母無 裳無母阿良牟遠 世間能 宇計久都良計久 伊等能伎提 痛伎瘡尓波 <鹹>塩遠 潅知布何其等久 益々母 重馬荷尓 表荷打等 伊布許等能其等 老尓弖阿留 我身上尓 病遠等 加弖阿礼婆 晝波母 歎加比久良志 夜波母 息豆伎阿可志 年長久 夜美志渡礼婆 月累 憂吟比 許等々々波 斯奈々等思騰 五月蝿奈周 佐和久兒等遠 宇都弖々波 死波不知 見乍阿礼婆 心波母延農 可尓<可>久尓 思和豆良比 祢能尾志奈可由","#[訓読]たまきはる うちの限りは [謂瞻州人<壽>一百二十年也] 平らけく 安くもあらむを 事もなく 喪なくもあらむを 世間の 憂けく辛けく いとのきて 痛き瘡には 辛塩を 注くちふがごとく ますますも 重き馬荷に 表荷打つと いふことのごと 老いにてある 我が身の上に 病をと 加へてあれば 昼はも 嘆かひ暮らし 夜はも 息づき明かし 年長く 病みしわたれば 月重ね 憂へさまよひ ことことは 死ななと思へど 五月蝿なす 騒く子どもを 打棄てては 死には知らず 見つつあれば 心は燃えぬ かにかくに 思ひ煩ひ 音のみし泣かゆ","#[仮名],たまきはる,うちのかぎりは,たひらけく,やすくもあらむを,こともなく,もなくもあらむを,よのなかの,うけくつらけく,いとのきて,いたききずには,からしほを,そそくちふがごとく,ますますも,おもきうまにに,うはにうつと,いふことのごと,おいにてある,あがみのうへに,やまひをと,くはへてあれば,ひるはも,なげかひくらし,よるはも,いきづきあかし,としながく,やみしわたれば,つきかさね,うれへさまよひ,ことことは,しななとおもへど,さばへなす,さわくこどもを,うつてては,しにはしらず,みつつあれば,こころはもえぬ,かにかくに,おもひわづらひ,ねのみしなかゆ","#[左注](天平五年六月丙申朔三日戊戌作)","#[校異]等 -> 壽 [紀][細] / け -> 鹹 [矢][京] / <> -> 可 [西(右書)][紀][細][温]","#[事項],作者:山上憶良,仏教,儒教,老,嘆き,子供,天平5年6月3日,年紀","#[訓異]
たまきはる[寛],
うちのかぎりは,[寛]うちのかきりは,
たひらけく,[寛]たいらけく,
やすくもあらむを[寛],
こともなく[寛],
もなくもあらむを[寛],
よのなかの[寛],
うけくつらけく[寛],
いとのきて[寛],
いたききずには,[寛]いたききすには,
からしほを[寛],
そそくちふがごとく,[寛]そそくちふかことく,
ますますも[寛],
おもきうまにに[寛],
うはにうつと[寛],
いふことのごと,[寛]いふことのこと,
おいにてある[寛],
あがみのうへに,[寛]わかみのうへに,
やまひをと[寛],
くはへてあれば,[寛]かてあれは,
ひるはも[寛],
なげかひくらし,[寛]なけかひくらし,
よるはも[寛],
いきづきあかし,[寛]いきつきあかし,
としながく,[寛]としなかく,
やみしわたれば,[寛]やみしわたれは,
つきかさね[寛],
うれへさまよひ[寛],
ことことは[寛],
しななとおもへど,[寛]しななとおもへと,
さばへなす,[寛]さはへなす,
さわくこどもを,[寛]さわくこともを,
うつてては[寛],
しにはしらず,[寛]しなむはしらす,
みつつあれば,[寛]みつつあれは,
こころはもえぬ[寛],
かにかくに[寛],
おもひわづらひ,[寛]おもひさつらひ,
ねのみしなかゆ[寛],
" "#[番号]05/0898","#[題詞](老身重病經年辛苦及思兒等歌七首 [長一首短六首])反歌","#[原文]奈具佐牟留 心波奈之尓 雲隠 鳴徃鳥乃 祢能尾志奈可由","#[訓読]慰むる心はなしに雲隠り鳴き行く鳥の音のみし泣かゆ","#[仮名],なぐさむる,こころはなしに,くもがくり,なきゆくとりの,ねのみしなかゆ","#[左注](天平五年六月丙申朔三日戊戌作)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],作者:山上憶良,仏教,儒教,老,嘆き,子供,天平5年6月3日,年紀","#[訓異]
なぐさむる,[寛]なくさむる,
こころはなしに[寛],
くもがくり,[寛]くもかくれ,
なきゆくとりの[寛],
ねのみしなかゆ[寛],
" "#[番号]05/0899","#[題詞]((老身重病經年辛苦及思兒等歌七首 [長一首短六首])反歌)","#[原文]周弊母奈久 苦志久阿礼婆 出波之利 伊奈々等思騰 許良尓<佐>夜利奴","#[訓読]すべもなく苦しくあれば出で走り去ななと思へどこらに障りぬ","#[仮名],すべもなく,くるしくあれば,いではしり,いななとおもへど,こらにさやりぬ","#[左注](天平五年六月丙申朔三日戊戌作)","#[校異]作 -> 佐 [類][紀][古][細]","#[事項],作者:山上憶良,仏教,儒教,老,嘆き,子供,天平5年6月3日,年紀","#[訓異]
すべもなく,[寛]すへもなく,
くるしくあれば,[寛]くるしくあれは,
いではしり,[寛]いててはしり,
いななとおもへど,[寛]いななとおもへと,
こらにさやりぬ[寛],
" "#[番号]05/0900","#[題詞]((老身重病經年辛苦及思兒等歌七首 [長一首短六首])反歌)","#[原文]富人能 家能子等能 伎留身奈美 久多志須都良牟 こ綿良波母","#[訓読]富人の家の子どもの着る身なみ腐し捨つらむ絹綿らはも","#[仮名],とみひとの,いへのこどもの,きるみなみ,くたしすつらむ,きぬわたらはも","#[左注](天平五年六月丙申朔三日戊戌作)","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,仏教,儒教,老,嘆き,子供,天平5年6月3日,年紀","#[訓異]
とみひとの[寛],
いへのこどもの,[寛]いへのこともの,
きるみなみ[寛],
くたしすつらむ[寛],
きぬわたらはも[寛],
" "#[番号]05/0901","#[題詞]((老身重病經年辛苦及思兒等歌七首 [長一首短六首])反歌)","#[原文]麁妙能 布衣遠陀尓 伎世難尓 可久夜歎敢 世牟周弊遠奈美","#[訓読]荒栲の布衣をだに着せかてにかくや嘆かむ為むすべをなみ","#[仮名],あらたへの,ぬのきぬをだに,きせかてに,かくやなげかむ,せむすべをなみ","#[左注](天平五年六月丙申朔三日戊戌作)","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,仏教,儒教,老,嘆き,子供,天平5年6月3日,年紀","#[訓異]
あらたへの[寛],
ぬのきぬをだに,[寛]ぬのきぬをたに,
きせかてに[寛],
かくやなげかむ,[寛]かくやなけかむ,
せむすべをなみ,[寛]せむすへをなみ,
" "#[番号]05/0902","#[題詞]((老身重病經年辛苦及思兒等歌七首 [長一首短六首])反歌)","#[原文]水沫奈須 微命母 栲縄能 千尋尓母何等 慕久良志都","#[訓読]水沫なすもろき命も栲縄の千尋にもがと願ひ暮らしつ","#[仮名],みなわなす,もろきいのちも,たくづなの,ちひろにもがと,ねがひくらしつ","#[左注](天平五年六月丙申朔三日戊戌作)","#[校異]","#[事項],作者:山上憶良,仏教,儒教,老,嘆き,子供,天平5年6月3日,年紀,枕詞","#[訓異]
みなわなす,[寛]みなはなす,
もろきいのちも[寛],
たくづなの,[寛]たくなはの,
ちひろにもがと,[寛]ちひろにもかと,
ねがひくらしつ,[寛]ねかひくらしつ,
" "#[番号]05/0903","#[題詞]((老身重病經年辛苦及思兒等歌七首 [長一首短六首])反歌)","#[原文]倭<文>手纒 數母不在 身尓波在等 千年尓母<何>等 意母保由留加母 [去神龜二年作之 但以<類>故更載於茲]","#[訓読]しつたまき数にもあらぬ身にはあれど千年にもがと思ほゆるかも [去る神龜二年之を作る。但し類を以ての故に更に茲に載す]","#[仮名],しつたまき,かずにもあらぬ,みにはあれど,ちとせにもがと,おもほゆるかも","#[左注]天平五年六月丙申朔三日戊戌作","#[校異]父 -> 文 [類][細] / 可 -> 何 [類][紀][古] / <> -> 類 [類][紀]","#[事項],作者:山上憶良,仏教,儒教,老,嘆き,子供,天平5年6月3日,枕詞","#[訓異]
しつたまき[寛],
かずにもあらぬ,[寛]かすにもあらぬ,
みにはあれど,[寛]みにはあれと,
ちとせにもがと,[寛]ちとせにもかと,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]05/0904","#[題詞]戀男子名古日歌三首 [長一首短二首]","#[原文]世人之 貴慕 七種之 寶毛我波 何為 和我中能 産礼出有 白玉之 吾子古日者 明星之 開朝者 敷多倍乃 登許能邊佐良受 立礼杼毛 居礼杼毛 登母尓戯礼 夕星乃 由布弊尓奈礼<婆> 伊射祢余登 手乎多豆佐波里 父母毛 表者奈佐我利 三枝之 中尓乎祢牟登 愛久 志我可多良倍婆 何時可毛 比等々奈理伊弖天 安志家口毛 与家久母見武登 大船乃 於毛比多能無尓 於毛波奴尓 横風乃 <尓布敷可尓> 覆来礼婆 世武須便乃 多杼伎乎之良尓 志路多倍乃 多須吉乎可氣 麻蘇鏡 弖尓登利毛知弖 天神 阿布藝許比乃美 地祇 布之弖額拜 可加良受毛 可賀利毛 神乃末尓麻尓等 立阿射里 我例乞能米登 須臾毛 余家久波奈之尓 漸々 可多知都久保里 朝々 伊布許等夜美 霊剋 伊乃知多延奴礼 立乎杼利 足須里佐家婢 伏仰 武祢宇知奈氣<吉> 手尓持流 安我古登<婆>之都 世間之道","#[訓読]世間の 貴び願ふ 七種の 宝も我れは 何せむに 我が中の 生れ出でたる 白玉の 我が子古日は 明星の 明くる朝は 敷栲の 床の辺去らず 立てれども 居れども ともに戯れ 夕星の 夕になれば いざ寝よと 手を携はり 父母も うへはなさがり さきくさの 中にを寝むと 愛しく しが語らへば いつしかも 人と成り出でて 悪しけくも 吉けくも見むと 大船の 思ひ頼むに 思はぬに 邪しま風の にふふかに 覆ひ来れば 為むすべの たどきを知らに 白栲の たすきを掛け まそ鏡 手に取り持ちて 天つ神 仰ぎ祈ひ祷み 国つ神 伏して額つき かからずも かかりも 神のまにまにと 立ちあざり 我れ祈ひ祷めど しましくも 吉けくはなしに やくやくに かたちつくほり 朝な朝な 言ふことやみ たまきはる 命絶えぬれ 立ち躍り 足すり叫び 伏し仰ぎ 胸打ち嘆き 手に持てる 我が子飛ばしつ 世間の道","#[仮名],よのなかの,たふとびねがふ,ななくさの,たからもわれは,なにせむに,わがなかの,うまれいでたる,しらたまの,あがこふるひは,あかぼしの,あくるあしたは,しきたへの,とこのへさらず,たてれども,をれども,ともにたはぶれ,ゆふつづの,ゆふへになれば,いざねよと,てをたづさはり,ちちははも,うへはなさがり,さきくさの,なかにをねむと,うつくしく,しがかたらへば,いつしかも,ひととなりいでて,あしけくも,よけくもみむと,おほぶねの,おもひたのむに,おもはぬに,よこしまかぜの,にふふかに,おほひきたれば,せむすべの,たどきをしらに,しろたへの,たすきをかけ,まそかがみ,てにとりもちて,あまつかみ,あふぎこひのみ,くにつかみ,ふしてぬかつき,かからずも,かかりも,かみのまにまにと,たちあざり,われこひのめど,しましくも,よけくはなしに,やくやくに,かたちつくほり,あさなさな,いふことやみ,たまきはる,いのちたえぬれ,たちをどり,あしすりさけび,ふしあふぎ,むねうちなげき,てにもてる,あがことばしつ,よのなかのみち","#[左注]?(右一首作者未詳 但以裁歌之體似於山上之操載此次焉)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 波 -> 婆 [紀][細] / 尓母布敷可尓布敷可尓 -> 尓布敷可尓 [新訓] / 都久 [代匠記精撰本](塙) 久都 / 古 -> 吉 [温][矢][京] / 波 -> 婆 [紀][細]","#[事項],山上憶良,仏教,儒教,孝養,子供,嘆き,枕詞","#[訓異]
よのなかの,[寛]よのひとの,
たふとびねがふ,[寛]たふともねかふ,
ななくさの[寛],
たからもわれは[寛],
なにせむに,[寛]なにかせし,
わがなかの,[寛]わかなかの,
うまれいでたる,[寛]むまれいてたる,
しらたまの[寛],
あがこふるひは,[寛]わかこふるひは,
あかぼしの,[寛]あかほしの,
あくるあしたは[寛],
しきたへの[寛],
とこのへさらず,[寛]とこのへさらす,
たてれども,[寛]たてれとも,
をれども,[寛]をれとも,
ともにたはぶれ,[寛]ともにたはふれ,
ゆふつづの,[寛]ゆふほしの,
ゆふへになれば,[寛]ゆふへになれは,
いざねよと,[寛]いさねよと,
てをたづさはり,[寛]てをたつさはり,
ちちははも[寛],
うへはなさがり,[寛]うへはなさかり,
さきくさの[寛],
なかにをねむと[寛],
うつくしく,[寛]おもはしく,
しがかたらへば,[寛]しかかたらへは,
いつしかも[寛],
ひととなりいでて,[寛]ひととなりいてて,
あしけくも[寛],
よけくもみむと[寛],
おほぶねの,[寛]おほふねの,
おもひたのむに[寛],
おもはぬに[寛],
よこしまかぜの,[寛]よこかせのにも,
にふふかに,[寛]にもしくしくかにふくかに,
おほひきたれば,[寛]おほひきぬれは,
せむすべの,[寛]せむすへの,
たどきをしらに,[寛]たときをしらに,
しろたへの[寛],
たすきをかけ[寛],
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
てにとりもちて[寛],
あまつかみ[寛],
あふぎこひのみ,[寛]あふきこひのみ,
くにつかみ[寛],
ふしてぬかつき[寛],
かからずも,[寛]かからすも,
かかりも[寛],
かみのまにまにと[寛],
たちあざり,[寛]たちあさり,
われこひのめど,[寛]われこひのめと,
しましくも,[寛]しはらくも,
よけくはなしに[寛],
やくやくに[寛],
かたちつくほり[寛],
あさなさな,[寛]あさなあさな,
いふことやみ[寛],
たまきはる[寛],
いのちたえぬれ[寛],
たちをどり,[寛]たちをとり,
あしすりさけび,[寛]あしすりさけひ,
ふしあふぎ,[寛]ふしあふき,
むねうちなげき,[寛]むねうちなけき,
てにもてる[寛],
あがことばしつ,[寛]あかことはしつ,
よのなかのみち[寛],
" "#[番号]05/0905","#[題詞](戀男子名古日歌三首 [長一首短二首])反歌","#[原文]和可家礼婆 道行之良士 末比波世武 之多敝乃使 於比弖登保良世","#[訓読]若ければ道行き知らじ賄はせむ黄泉の使負ひて通らせ","#[仮名],わかければ,みちゆきしらじ,まひはせむ,したへのつかひ,おひてとほらせ","#[左注]?(右一首作者未詳 但以裁歌之體似於山上之操載此次焉)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],山上憶良,仏教,儒教,孝養,子供,嘆き","#[訓異]
わかければ,[寛]わかけれは,
みちゆきしらじ,[寛]みちゆきしらし,
まひはせむ[寛],
したへのつかひ[寛],
おひてとほらせ[寛],
" "#[番号]05/0906","#[題詞]((戀男子名古日歌三首 [長一首短二首])反歌)","#[原文]布施於吉弖 吾波許比能武 阿射無加受 多太尓率去弖 阿麻治思良之米","#[訓読]布施置きて我れは祈ひ祷むあざむかず直に率行きて天道知らしめ","#[仮名],ふせおきて,われはこひのむ,あざむかず,ただにゐゆきて,あまぢしらしめ","#[左注]右一首作者未詳 但以裁歌之體似於山上之操載此次焉","#[校異]歌 [西] 謌 / 太 [類][細] 大","#[事項],山上憶良,仏教,儒教,孝養,子供,嘆き","#[訓異]
ふせおきて,[寛]ふしおきて,
われはこひのむ[寛],
あざむかず,[寛]あせむかす,
ただにゐゆきて,[寛]たたにゐゆきて,
あまぢしらしめ,[寛]あまちしらしめ,
" "#[番号]06/0907","#[題詞]雜歌 / 養老七年癸亥夏五月幸于芳野離宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌]","#[原文]瀧上之 御舟乃山尓 水枝指 四時尓<生>有 刀我乃樹能 弥継嗣尓 萬代 如是二<二>知三 三芳野之 蜻蛉乃宮者 神柄香 貴将有 國柄鹿 見欲将有 山川乎 清々 諾之神代従 定家良思母","#[訓読]瀧の上の 三船の山に 瑞枝さし 繁に生ひたる 栂の木の いや継ぎ継ぎに 万代に かくし知らさむ み吉野の 秋津の宮は 神からか 貴くあるらむ 国からか 見が欲しからむ 山川を 清みさやけみ うべし神代ゆ 定めけらしも","#[仮名],たきのうへの,みふねのやまに,みづえさし,しじにおひたる,とがのきの,いやつぎつぎに,よろづよに,かくししらさむ,みよしのの,あきづのみやは,かむからか,たふとくあるらむ,くにからか,みがほしくあらむ,やまかはを,きよみさやけみ,うべしかむよゆ,さだめけらしも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 作歌 [西] 作謌 [西(訂正)] 作歌 / 主 -> 生 [元][類][紀] / 三 -> 二 [元][類][古]","#[事項],雑歌,作者:笠金村,吉野,地名,行幸,従駕,宮廷讃美,離宮,養老7年5月,年紀,植物,枕詞","#[訓異]
たきのうへの[寛],
みふねのやまに[寛],
みづえさし,[寛]みつえさし,
しじにおひたる,[寛]ししにおひたる,
とがのきの,[寛]とかのきの,
いやつぎつぎに,[寛]いやつきつきに,
よろづよに,[寛]よろつよに,
かくししらさむ,[寛]かくににしらみ,
みよしのの[寛],
あきづのみやは,[寛]あきつのみやは,
かむからか,[寛]かみからか,
たふとくあるらむ,[寛]たふとかるらむ,
くにからか[寛],
みがほしくあらむ,[寛]みまほしからむ,
やまかはを[寛],
きよみさやけみ,[寛]さやけくすめり,
うべしかむよゆ,[寛]うへしかみよゆ,
さだめけらしも,[寛]さためけらしも,
" "#[番号]06/0908","#[題詞](雑歌 / 養老七年癸亥夏五月幸于芳野離宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]毎年 如是裳見<壮>鹿 三吉野乃 清河内之 多藝津白浪","#[訓読]年のはにかくも見てしかみ吉野の清き河内のたぎつ白波","#[仮名],としのはに,かくもみてしか,みよしのの,きよきかふちの,たぎつしらなみ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 牡 -> 壮 [元][金][類]","#[事項],雑歌,作者:笠金村,吉野,行幸,従駕,宮廷讃美,離宮,養老7年5月,年紀,地名","#[訓異]
としのはに[寛],
かくもみてしか[寛],
みよしのの[寛],
きよきかふちの,[寛]きよきかうちの,
たぎつしらなみ,[寛]たきつしらなみ,
" "#[番号]06/0909","#[題詞]((雑歌 / 養老七年癸亥夏五月幸于芳野離宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]山高三 白木綿花 落多藝追 瀧之河内者 雖見不飽香聞","#[訓読]山高み白木綿花におちたぎつ瀧の河内は見れど飽かぬかも","#[仮名],やまたかみ,しらゆふばなに,おちたぎつ,たきのかふちは,みれどあかぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:笠金村,吉野,行幸,従駕,宮廷讃美,離宮,養老7年5月,年紀","#[訓異]
やまたかみ[寛],
しらゆふばなに,[寛]しらゆふはなに,
おちたぎつ,[寛]おちたきつ,
たきのかふちは,[寛]たきのかわちは,
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]06/0910","#[題詞](雑歌 / 養老七年癸亥夏五月幸于芳野離宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])或本反<歌>曰","#[原文]神柄加 見欲賀藍 三吉野乃 瀧<乃>河内者 雖見不飽鴨","#[訓読]神からか見が欲しからむみ吉野の滝の河内は見れど飽かぬかも","#[仮名],かむからか,みがほしからむ,みよしのの,たきのかふちは,みれどあかぬかも","#[左注]","#[校異]謌歌 -> 歌 [西(訂正)] / <> -> 乃 [元][金][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:笠金村,吉野,行幸,従駕,宮廷讃美,離宮,養老7年5月,年紀,或本歌,異伝,地名","#[訓異]
かむからか,[寛]かみからか,
みがほしからむ,[寛]みまほしからむ,
みよしのの[寛],
たきのかふちは,[寛]たきつかうちは,
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]06/0911","#[題詞]((雑歌 / 養老七年癸亥夏五月幸于芳野離宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])或本反<歌>曰)","#[原文]三芳野之 秋津乃川之 万世尓 断事無 又還将見","#[訓読]み吉野の秋津の川の万代に絶ゆることなくまたかへり見む","#[仮名],みよしのの,あきづのかはの,よろづよに,たゆることなく,またかへりみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:笠金村,吉野,行幸,従駕,宮廷讃美,離宮,養老7年5月,年紀,或本歌,異伝,地名","#[訓異]
みよしのの[寛],
あきづのかはの,[寛]あきつのかはの,
よろづよに,[寛]よろつよに,
たゆることなく[寛],
またかへりみむ[寛],
" "#[番号]06/0912","#[題詞]((雑歌 / 養老七年癸亥夏五月幸于芳野離宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])或本反<歌>曰)","#[原文]泊瀬女 造木綿花 三吉野 瀧乃水沫 開来受屋","#[訓読]泊瀬女の造る木綿花み吉野の滝の水沫に咲きにけらずや","#[仮名],はつせめの,つくるゆふばな,みよしのの,たきのみなわに,さきにけらずや","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:笠金村,吉野,行幸,従駕,宮廷讃美,離宮,養老7年5月,年紀,或本歌,異伝,地名","#[訓異]
はつせめの[寛],
つくるゆふばな,[寛]つくるゆふはな,
みよしのの[寛],
たきのみなわに,[寛]たきのみなはに,
さきにけらずや,[寛]さききたらすや,
" "#[番号]06/0913","#[題詞]車持朝臣千年作歌一首[并短歌]","#[原文]味凍 綾丹乏敷 鳴神乃 音耳聞師 三芳野之 真木立山湯 見降者 川之瀬毎 開来者 朝霧立 夕去者 川津鳴奈<拝> 紐不解 客尓之有者 吾耳為而 清川原乎 見良久之惜蒙","#[訓読]味凝り あやにともしく 鳴る神の 音のみ聞きし み吉野の 真木立つ山ゆ 見下ろせば 川の瀬ごとに 明け来れば 朝霧立ち 夕されば かはづ鳴くなへ 紐解かぬ 旅にしあれば 我のみして 清き川原を 見らくし惜しも","#[仮名],うまこり,あやにともしく,なるかみの,おとのみききし,みよしのの,まきたつやまゆ,みおろせば,かはのせごとに,あけくれば,あさぎりたち,ゆふされば,かはづなくなへ,ひもとかぬ,たびにしあれば,わのみして,きよきかはらを,みらくしをしも","#[左注](右年月不審 但以歌類載於此次焉 / 或本云 養老七年五月幸于芳野離宮之時作)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 辨詳 -> 拝 [元][類][紀] [古](楓) 利","#[事項],雑歌,作者:車持千年,吉野,行幸,従駕,宮廷讃美,羈旅,養老7年5月,年紀,動物,地名,枕詞","#[訓異]
うまこり,[寛]あちこりの,
あやにともしく[寛],
なるかみの[寛],
おとのみききし[寛],
みよしのの[寛],
まきたつやまゆ[寛],
みおろせば,[寛]みくたせは,
かはのせごとに,[寛]かはのせことに,
あけくれば,[寛]あけくれは,
あさぎりたち,[寛]あさきりたちて,
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
かはづなくなへ,[寛]かはつなきなへ,
ひもとかぬ,[寛]ひもとかす,
たびにしあれば,[寛]たひにしあるは,
わのみして,[寛]われにして,
きよきかはらを[寛],
みらくしをしも[寛],
" "#[番号]06/0914","#[題詞](車持朝臣千年作歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]瀧上乃 三船之山者 雖<畏> 思忘 時毛日毛無","#[訓読]滝の上の三船の山は畏けど思ひ忘るる時も日もなし","#[仮名],たきのうへの,みふねのやまは,かしこけど,おもひわするる,ときもひもなし","#[左注](右年月不審 但以歌類載於此次焉 / 或本云 養老七年五月幸于芳野離宮之時作)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 畏 [西(右書)][元][金][類]","#[事項],雑歌,作者:車持千年,吉野,行幸,従駕,宮廷讃美,羈旅,養老7年5月,年紀,地名","#[訓異]
たきのうへの[寛],
みふねのやまは[寛],
かしこけど,[寛]かしこけと,
おもひわするる[寛],
ときもひもなし[寛],
" "#[番号]06/0915","#[題詞](車持朝臣千年作歌一首[并短歌])或本反歌曰","#[原文]千鳥鳴 三吉野川之 <川音> 止時梨二 所思<公>","#[訓読]千鳥泣くみ吉野川の川音のやむ時なしに思ほゆる君","#[仮名],ちどりなく,みよしのかはの,かはおとの,やむときなしに,おもほゆるきみ","#[左注](右年月不審 但以歌類載於此次焉 / 或本云 養老七年五月幸于芳野離宮之時作)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 音成 -> 川音 [金][紀] / 君 -> 公 [元][金][類]","#[事項],雑歌,作者:車持千年,吉野,行幸,従駕,宮廷讃美,羈旅,養老7年5月,年紀,或本歌,異伝,枕詞,動物,序詞","#[訓異]
ちどりなく,[寛]ちとりなく,
みよしのかはの[寛],
かはおとの,[寛]おとしなみ,
やむときなしに[寛],
おもほゆるきみ[寛],
" "#[番号]06/0916","#[題詞]((車持朝臣千年作歌一首[并短歌])或本反歌曰)","#[原文]茜刺 日不並二 吾戀 吉野之河乃 霧丹立乍","#[訓読]あかねさす日並べなくに我が恋は吉野の川の霧に立ちつつ","#[仮名],あかねさす,ひならべなくに,あがこひは,よしののかはの,きりにたちつつ","#[左注]右年月不審 但以歌類載於此次焉 / 或本云 養老七年五月幸于芳野離宮之時作","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 五 [元][金][紀] 正","#[事項],雑歌,作者:車持千年,吉野,行幸,従駕,讃美,羈旅,養老7年5月,年紀,或本歌,異伝,枕詞,恋情,地名","#[訓異]
あかねさす[寛],
ひならべなくに,[寛]ひをもへなくに,
あがこひは,[寛]わかこふる,
よしののかはの[寛],
きりにたちつつ[寛],
" "#[番号]06/0917","#[題詞]神龜元年甲子冬十月五日幸于紀伊國時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌]","#[原文]安見知之 和期大王之 常宮等 仕奉流 左日鹿野由 背<匕>尓所見 奥嶋 清波瀲尓 風吹者 白浪左和伎 潮干者 玉藻苅管 神代従 然曽尊吉 玉津嶋夜麻","#[訓読]やすみしし 我ご大君の 常宮と 仕へ奉れる 雑賀野ゆ そがひに見ゆる 沖つ島 清き渚に 風吹けば 白波騒き 潮干れば 玉藻刈りつつ 神代より しかぞ貴き 玉津島山","#[仮名],やすみしし,わごおほきみの,とこみやと,つかへまつれる,さひかのゆ,そがひにみゆる,おきつしま,きよきなぎさに,かぜふけば,しらなみさわき,しほふれば,たまもかりつつ,かむよより,しかぞたふとき,たまつしまやま","#[左注](右年月不記 但称従駕玉津嶋也 因今檢注行幸年月以載之焉)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 上 -> 匕 [西(右貼紙)][元][金]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,紀州,和歌山,行幸,神亀1年10月5日,年紀,土地讃美,羈旅,地名,枕詞","#[訓異]
やすみしし[寛],
わごおほきみの,[寛]わかおほきみの,
とこみやと[寛],
つかへまつれる[寛],
さひかのゆ[寛],
そがひにみゆる,[寛]そかひにみゆる,
おきつしま[寛],
きよきなぎさに,[寛]きよきなきさに,
かぜふけば,[寛]かせふけは,
しらなみさわき[寛],
しほふれば,[寛]しほひれは,
たまもかりつつ[寛],
かむよより,[寛]かみよより,
しかぞたふとき,[寛]しかそたふとき,
たまつしまやま[寛],
" "#[番号]06/0918","#[題詞](神龜元年甲子冬十月五日幸于紀伊國時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]奥嶋 荒礒之玉藻 潮干満 伊隠去者 所念武香聞","#[訓読]沖つ島荒礒の玉藻潮干満ちい隠りゆかば思ほえむかも","#[仮名],おきつしま,ありそのたまも,しほひみち,いかくりゆかば,おもほえむかも","#[左注](右年月不記 但称従駕玉津嶋也 因今檢注行幸年月以載之焉)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,紀州,和歌山,行幸,神亀1年10月5日,年紀,土地讃美,羈旅,地名","#[訓異]
おきつしま[寛],
ありそのたまも,[寛]あらいそのたまも,
しほひみち,[寛]しほみちて,
いかくりゆかば,[寛]いかくれゆかは,
おもほえむかも,[寛]おもほへむかも,
" "#[番号]06/0919","#[題詞]((神龜元年甲子冬十月五日幸于紀伊國時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]若浦尓 塩満来者 滷乎無美 葦邊乎指天 多頭鳴渡","#[訓読]若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る","#[仮名],わかのうらに,しほみちくれば,かたをなみ,あしへをさして,たづなきわたる","#[左注]右年月不記 但称従駕玉津嶋也 因今檢注行幸年月以載之焉","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,紀州,和歌山,行幸,土地讃美,羈旅,地名,動物,神亀1年10月5日,年紀","#[訓異]
わかのうらに[寛],
しほみちくれば,[寛]しほみちくれは,
かたをなみ[寛],
あしへをさして[寛],
たづなきわたる,[寛]たつなきわたる,
" "#[番号]06/0920","#[題詞]神龜二年乙丑夏五月幸于芳野離宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌]","#[原文]足引之 御山毛清 落多藝都 芳野<河>之 河瀬乃 浄乎見者 上邊者 千鳥數鳴 下邊者 河津都麻喚 百礒城乃 大宮人毛 越乞尓 思自仁思有者 毎見 文丹乏 玉葛 絶事無 萬代尓 如是霜願跡 天地之 神乎曽祷 恐有等毛","#[訓読]あしひきの み山もさやに 落ちたぎつ 吉野の川の 川の瀬の 清きを見れば 上辺には 千鳥しば鳴く 下辺には かはづ妻呼ぶ ももしきの 大宮人も をちこちに 繁にしあれば 見るごとに あやに乏しみ 玉葛 絶ゆることなく 万代に かくしもがもと 天地の 神をぞ祈る 畏くあれども","#[仮名],あしひきの,みやまもさやに,おちたぎつ,よしののかはの,かはのせの,きよきをみれば,かみへには,ちどりしばなく,しもべには,かはづつまよぶ,ももしきの,おほみやひとも,をちこちに,しじにしあれば,みるごとに,あやにともしみ,たまかづら,たゆることなく,よろづよに,かくしもがもと,あめつちの,かみをぞいのる,かしこくあれども","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 川 -> 河 [金][元][類]","#[事項],雑歌,作者:笠金村,吉野,行幸,宮廷讃美,神亀2年5月,年紀,枕詞,動物,地名","#[訓異]
あしひきの[寛],
みやまもさやに[寛],
おちたぎつ,[寛]おちたきつ,
よしののかはの[寛],
かはのせの[寛],
きよきをみれば,[寛]きよきをみれは,
かみへには[寛],
ちどりしばなく,[寛]ちとりしはなき,
しもべには,[寛]しもへには,
かはづつまよぶ,[寛]かはつつまよふ,
ももしきの[寛],
おほみやひとも[寛],
をちこちに[寛],
しじにしあれば,[寛]ししにしあれは,
みるごとに,[寛]ことみもに,
あやにともしみ,[寛]ともしみ,
たまかづら,[寛]たまかつら,
たゆることなく[寛],
よろづよに,[寛]よろつよに,
かくしもがもと,[寛]かくしもかなと,
あめつちの[寛],
かみをぞいのる,[寛]かみをそいのる,
かしこくあれども,[寛]かしこけれとも,
" "#[番号]06/0921","#[題詞](神龜二年乙丑夏五月幸于芳野離宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]萬代 見友将飽八 三芳野乃 多藝都河内乃 大宮所","#[訓読]万代に見とも飽かめやみ吉野のたぎつ河内の大宮所","#[仮名],よろづよに,みともあかめや,みよしのの,たぎつかふちの,おほみやところ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:笠金村,吉野,行幸,宮廷讃美,神亀2年5月,年紀,地名","#[訓異]
よろづよに,[寛]よろつよに,
みともあかめや[寛],
みよしのの[寛],
たぎつかふちの,[寛]たきつかうちの,
おほみやところ[寛],
" "#[番号]06/0922","#[題詞]((神龜二年乙丑夏五月幸于芳野離宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]人皆乃 壽毛吾母 三<吉>野乃 多吉能床磐乃 常有沼鴨","#[訓読]皆人の命も我れもみ吉野の滝の常磐の常ならぬかも","#[仮名],みなひとの,いのちもわれも,みよしのの,たきのときはの,つねならぬかも","#[左注]","#[校異]人皆 [元][類] 皆人 / 芳 -> 吉 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:笠金村,吉野,行幸,宮廷讃美,神亀2年5月,年紀,地名,序詞","#[訓異]
みなひとの,[寛]ひとみなの,
いのちもわれも[寛],
みよしのの[寛],
たきのときはの,[寛]たきのとこいはの,
つねならぬかも[寛],
" "#[番号]06/0923","#[題詞]山部宿祢赤人作歌二首[并短歌]","#[原文]八隅知之 和期大王乃 高知為 芳野宮者 立名附 青垣隠 河次乃 清河内曽 春部者 花咲乎遠里 秋去者 霧立渡 其山之 弥益々尓 此河之 絶事無 百石木能 大宮人者 常将通","#[訓読]やすみしし 我ご大君の 高知らす 吉野の宮は たたなづく 青垣隠り 川なみの 清き河内ぞ 春へは 花咲きををり 秋されば 霧立ちわたる その山の いやしくしくに この川の 絶ゆることなく ももしきの 大宮人は 常に通はむ","#[仮名],やすみしし,わごおほきみの,たかしらす,よしののみやは,たたなづく,あをかきごもり,かはなみの,きよきかふちぞ,はるへは,はなさきををり,あきされば,きりたちわたる,そのやまの,いやしくしくに,このかはの,たゆることなく,ももしきの,おほみやひとは,つねにかよはむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 去 [元][細] 部","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,吉野,行幸,宮廷讃美,地名,枕詞","#[訓異]
やすみしし[寛],
わごおほきみの,[寛]わかおほきみの,
たかしらす[寛],
よしののみやは[寛],
たたなづく,[寛]たたなつく,
あをかきごもり,[寛]あをかきこもり,
かはなみの[寛],
きよきかふちぞ,[寛]きよきかちそ,
はるへは,[寛]はるへには,
はなさきををり[寛],
あきされば,[寛]あきされは,
きりたちわたる,[寛]きりたちわたり,
そのやまの[寛],
いやしくしくに,[寛]いやますますに,
このかはの[寛],
たゆることなく[寛],
ももしきの,[寛]ものしきの,
おほみやひとは[寛],
つねにかよはむ[寛],
" "#[番号]06/0924","#[題詞](山部宿祢赤人作歌二首[并短歌])反歌二首","#[原文]三吉野乃 象山際乃 木末尓波 幾許毛散和口 鳥之聲可聞","#[訓読]み吉野の象山の際の木末にはここだも騒く鳥の声かも","#[仮名],みよしのの,きさやまのまの,こぬれには,ここだもさわく,とりのこゑかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,吉野,行幸,宮廷讃美,地名","#[訓異]
みよしのの[寛],
きさやまのまの,[寛]きさやまきはの,
こぬれには,[寛]こすゑには,
ここだもさわく,[寛]ここたもさわく,
とりのこゑかも[寛],
" "#[番号]06/0925","#[題詞]((山部宿祢赤人作歌二首[并短歌])反歌二首)","#[原文]烏玉之 夜之深去者 久木生留 清河原尓 知鳥數鳴","#[訓読]ぬばたまの夜の更けゆけば久木生ふる清き川原に千鳥しば鳴く","#[仮名],ぬばたまの,よのふけゆけば,ひさぎおふる,きよきかはらに,ちどりしばなく","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,吉野,行幸,宮廷讃美,地名,植物,動物,叙景","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よのふけゆけば,[寛]よのふけゆけは,
ひさぎおふる,[寛]ひさきおふる,
きよきかはらに[寛],
ちどりしばなく,[寛]ちとりしはなく,
" "#[番号]06/0926","#[題詞](山部宿祢赤人作歌二首[并短歌])","#[原文]安見知之 和期大王波 見吉野乃 飽津之小野笶 野上者 跡見居置而 御山者 射目立渡 朝猟尓 十六履起之 夕狩尓 十里さ立 馬並而 御<猟>曽立為 春之茂野尓","#[訓読]やすみしし 我ご大君は み吉野の 秋津の小野の 野の上には 跡見据ゑ置きて み山には 射目立て渡し 朝狩に 獣踏み起し 夕狩に 鳥踏み立て 馬並めて 御狩ぞ立たす 春の茂野に","#[仮名],やすみしし,わごおほきみは,みよしのの,あきづのをのの,ののへには,とみすゑおきて,みやまには,いめたてわたし,あさがりに,ししふみおこし,ゆふがりに,とりふみたて,うまなめて,みかりぞたたす,はるのしげのに","#[左注](右不審先後 但以便故載於此<次>)","#[校異]狩 -> 猟 [元][紀][細]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,吉野,行幸,宮廷讃美,地名,枕詞,動物","#[訓異]
やすみしし[寛],
わごおほきみは,[寛]わかおほきみは,
みよしのの[寛],
あきづのをのの,[寛]あきつのをのの,
ののへには,[寛]のかみには,
とみすゑおきて,[寛]あとみすゑおきて,
みやまには[寛],
いめたてわたし,[寛]せこたちわたり,
あさがりに,[寛]あさかりに,
ししふみおこし[寛],
ゆふがりに,[寛]ゆふかりに,
とりふみたて,[寛]とりふみたてて,
うまなめて[寛],
みかりぞたたす,[寛]みかりそたてし,
はるのしげのに,[寛]はるのしけのに,
" "#[番号]06/0927","#[題詞](山部宿祢赤人作歌二首[并短歌])反歌一首","#[原文]足引之 山毛野毛 御<猟>人 得物矢手<挟> 散動而有所見","#[訓読]あしひきの山にも野にも御狩人さつ矢手挾み騒きてあり見ゆ","#[仮名],あしひきの,やまにものにも,みかりひと,さつやたばさみ,さわきてありみゆ","#[左注]右不審先後 但以便故載於此<次>","#[校異]狩 -> 猟 [元][類][細] / 狭 -> 挟 [元][古][紀] / 歟 -> 次 [西(右書訂正)][元][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,吉野,行幸,宮廷讃美,狩猟,地名","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまにものにも[寛],
みかりひと[寛],
さつやたばさみ,[寛]ともやたはさみ,
さわきてありみゆ,[寛]みたれたるみゆ,
" "#[番号]06/0928","#[題詞]冬十月幸于難波宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌]","#[原文]忍照 難波乃國者 葦垣乃 古郷跡 人皆之 念息而 都礼母無 有之間尓 續麻成 長柄之宮尓 真木柱 太高敷而 食國乎 治賜者 奥鳥 味經乃原尓 物部乃 八十伴雄者 廬為而 都成有 旅者安礼十方","#[訓読]おしてる 難波の国は 葦垣の 古りにし里と 人皆の 思ひやすみて つれもなく ありし間に 続麻なす 長柄の宮に 真木柱 太高敷きて 食す国を 治めたまへば 沖つ鳥 味経の原に もののふの 八十伴の男は 廬りして 都成したり 旅にはあれども","#[仮名],おしてる,なにはのくには,あしかきの,ふりにしさとと,ひとみなの,おもひやすみて,つれもなく,ありしあひだに,うみをなす,ながらのみやに,まきはしら,ふとたかしきて,をすくにを,をさめたまへば,おきつとり,あぢふのはらに,もののふの,やそとものをは,いほりして,みやこなしたり,たびにはあれども","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌","#[事項],雑歌,作者:笠金村,難波,大阪,離宮,宮廷讃美,羈旅,枕詞,地名,神亀2年10月,年紀","#[訓異]
おしてる,[寛]おしてるや,
なにはのくには[寛],
あしかきの[寛],
ふりにしさとと[寛],
ひとみなの[寛],
おもひやすみて[寛],
つれもなく[寛],
ありしあひだに,[寛]ありしあひたに,
うみをなす[寛],
ながらのみやに,[寛]なからのみやに,
まきはしら[寛],
ふとたかしきて[寛],
をすくにを,[寛]をしくにを,
をさめたまへば,[寛]おさめたまへは,
おきつとり[寛],
あぢふのはらに,[寛]あちふのはらに,
もののふの[寛],
やそとものをは[寛],
いほりして[寛],
みやこなしたり,[寛]みやことなせり,
たびにはあれども,[寛]たひにはあれとも,
" "#[番号]06/0929","#[題詞](冬十月幸于難波宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]荒野等丹 里者雖有 大王之 敷座時者 京師跡成宿","#[訓読]荒野らに里はあれども大君の敷きます時は都となりぬ","#[仮名],あらのらに,さとはあれども,おほきみの,しきますときは,みやことなりぬ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:笠金村,難波,大阪,離宮,宮廷讃美,羈旅,地名,神亀2年10月,年紀","#[訓異]
あらのらに[寛],
さとはあれども,[寛]さとはあれとも,
おほきみの[寛],
しきますときは[寛],
みやことなりぬ[寛],
" "#[番号]06/0930","#[題詞]((冬十月幸于難波宮時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]海末通女 棚無小舟 榜出良之 客乃屋取尓 梶音所聞","#[訓読]海人娘女棚なし小舟漕ぎ出らし旅の宿りに楫の音聞こゆ","#[仮名],あまをとめ,たななしをぶね,こぎづらし,たびのやどりに,かぢのおときこゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:笠金村,難波,大阪,離宮,宮廷讃美,羈旅,地名,神亀2年10月,年紀","#[訓異]
あまをとめ[寛],
たななしをぶね,[寛]たななしをふね,
こぎづらし,[寛]こきいつらし,
たびのやどりに,[寛]たひのやとりに,
かぢのおときこゆ,[寛]かちをときこゆ,
" "#[番号]06/0931","#[題詞]車持朝臣千年作歌一首[并短歌]","#[原文]鯨魚取 濱邊乎清三 打靡 生玉藻尓 朝名寸二 千重浪縁 夕菜寸二 五百重<波>因 邊津浪之 益敷布尓 月二異二 日日雖見 今耳二 秋足目八方 四良名美乃 五十開廻有 住吉能濱","#[訓読]鯨魚取り 浜辺を清み うち靡き 生ふる玉藻に 朝なぎに 千重波寄せ 夕なぎに 五百重波寄す 辺つ波の いやしくしくに 月に異に 日に日に見とも 今のみに 飽き足らめやも 白波の い咲き廻れる 住吉の浜","#[仮名],いさなとり,はまへをきよみ,うちなびき,おふるたまもに,あさなぎに,ちへなみよせ,ゆふなぎに,いほへなみよす,へつなみの,いやしくしくに,つきにけに,ひにひにみとも,いまのみに,あきだらめやも,しらなみの,いさきめぐれる,すみのえのはま","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 浪 -> 波 [元][紀][細] / 日 [元][温][矢] 々","#[事項],雑歌,作者:車持千年,難波,大阪,住吉,離宮,宮廷讃美,羈旅,地名,枕詞","#[訓異]
いさなとり[寛],
はまへをきよみ[寛],
うちなびき,[寛]うちなひき,
おふるたまもに[寛],
あさなぎに,[寛]あさなきに,
ちへなみよせ,[寛]ちへになみよせ,
ゆふなぎに,[寛]ゆふなきに,
いほへなみよす,[寛]いほへなみよる,
へつなみの[寛],
いやしくしくに,[寛]ますしくしくに,
つきにけに[寛],
ひにひにみとも,[寛]ひひにみれとも,
いまのみに[寛],
あきだらめやも,[寛]あきたらめやも,
しらなみの[寛],
いさきめぐれる,[寛]いさきめくれる,
すみのえのはま[寛],
" "#[番号]06/0932","#[題詞](車持朝臣千年作歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]白浪之 千重来縁流 住吉能 岸乃黄土粉 二寶比天由香名","#[訓読]白波の千重に来寄する住吉の岸の埴生ににほひて行かな","#[仮名],しらなみの,ちへにきよする,すみのえの,きしのはにふに,にほひてゆかな","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:車持千年,難波,大阪,住吉,離宮,宮廷讃美,羈旅,地名","#[訓異]
しらなみの[寛],
ちへにきよする[寛],
すみのえの[寛],
きしのはにふに[寛],
にほひてゆかな[寛],
" "#[番号]06/0933","#[題詞]山部宿祢赤人作歌一首[并短歌]","#[原文]天地之 遠我如 日月之 長我如 臨照 難波乃宮尓 和期大王 國所知良之 御食都國 日之御調等 淡路乃 野嶋之海子乃 海底 奥津伊久利二 鰒珠 左盤尓潜出 船並而 仕奉之 貴見礼者","#[訓読]天地の 遠きがごとく 日月の 長きがごとく おしてる 難波の宮に 我ご大君 国知らすらし 御食つ国 日の御調と 淡路の 野島の海人の 海の底 沖つ海石に 鰒玉 さはに潜き出 舟並めて 仕へ奉るし 貴し見れば","#[仮名],あめつちの,とほきがごとく,ひつきの,ながきがごとく,おしてる,なにはのみやに,わごおほきみ,くにしらすらし,みけつくに,ひのみつきと,あはぢの,のしまのあまの,わたのそこ,おきついくりに,あはびたま,さはにかづきで,ふねなめて,つかへまつるし,たふとしみれば","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,難波,大阪,離宮,宮廷讃美,羈旅,地名,枕詞","#[訓異]
あめつちの[寛],
とほきがごとく,[寛]とほきかことく,
ひつきの[寛],
ながきがごとく,[寛]なかきかことく,
おしてる,[寛]をしてるや,
なにはのみやに[寛],
わごおほきみ,[寛]わかきみの,
くにしらすらし[寛],
みけつくに[寛],
ひのみつきと,[寛]ひひのみつきと,
あはぢの,[寛]あはみちの,
のしまのあまの[寛],
わたのそこ[寛],
おきついくりに[寛],
あはびたま,[寛]あはひたま,
さはにかづきで,[寛]さはにかつきて,
ふねなめて[寛],
つかへまつるし,[寛]つかへまつし,
たふとしみれば,[寛]かしこみみれは,
" "#[番号]06/0934","#[題詞](山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]朝名寸二 梶音所聞 三食津國 野嶋乃海子乃 船二四有良信","#[訓読]朝なぎに楫の音聞こゆ御食つ国野島の海人の舟にしあるらし","#[仮名],あさなぎに,かぢのおときこゆ,みけつくに,のしまのあまの,ふねにしあるらし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,難波,大阪,離宮,宮廷讃美,羈旅,地名,枕詞","#[訓異]
あさなぎに,[寛]あさなきに,
かぢのおときこゆ,[寛]かちのおときこゆ,
みけつくに[寛],
のしまのあまの,[寛]のしまのあまこの,
ふねにしあるらし[寛],
" "#[番号]06/0935","#[題詞]三年丙寅秋九月十五日幸於播磨國印南野時笠朝臣金村作歌一首[并短歌]","#[原文]名寸隅乃 船瀬従所見 淡路嶋 松<帆>乃浦尓 朝名藝尓 玉藻苅管 暮菜寸二 藻塩焼乍 海末通女 有跡者雖聞 見尓将去 餘四能無者 大夫之 情者梨荷 手弱女乃 念多和美手 俳徊 吾者衣戀流 船梶雄名三","#[訓読]名寸隅の 舟瀬ゆ見ゆる 淡路島 松帆の浦に 朝なぎに 玉藻刈りつつ 夕なぎに 藻塩焼きつつ 海人娘女 ありとは聞けど 見に行かむ よしのなければ ますらをの 心はなしに 手弱女の 思ひたわみて たもとほり 我れはぞ恋ふる 舟楫をなみ","#[仮名],なきすみの,ふなせゆみゆる,あはぢしま,まつほのうらに,あさなぎに,たまもかりつつ,ゆふなぎに,もしほやきつつ,あまをとめ,ありとはきけど,みにゆかむ,よしのなければ,ますらをの,こころはなしに,たわやめの,おもひたわみて,たもとほり,あれはぞこふる,ふなかぢをなみ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 机 -> 帆 [元][細][京]","#[事項],雑歌,作者:笠金村,播磨,兵庫,羈旅,恋情,神亀3年9月15日,年紀,地名,枕詞,植物","#[訓異]
なきすみの[寛],
ふなせゆみゆる,[寛]ふなせにみゆる,
あはぢしま,[寛]あはちしま,
まつほのうらに[寛],
あさなぎに,[寛]あさなきに,
たまもかりつつ[寛],
ゆふなぎに,[寛]ゆふなきに,
もしほやきつつ[寛],
あまをとめ[寛],
ありとはきけど,[寛]ありとはきけと,
みにゆかむ[寛],
よしのなければ,[寛]よしのなけれは,
ますらをの[寛],
こころはなしに[寛],
たわやめの[寛],
おもひたわみて[寛],
たもとほり,[寛]たちとまり,
あれはぞこふる,[寛]あれはそこふる,
ふなかぢをなみ,[寛]ふなかちをなみ,
" "#[番号]06/0936","#[題詞](三年丙寅秋九月十五日幸於播磨國印南野時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]玉藻苅 海未通女等 見尓将去 船梶毛欲得 浪高友","#[訓読]玉藻刈る海人娘子ども見に行かむ舟楫もがも波高くとも","#[仮名],たまもかる,あまをとめども,みにゆかむ,ふなかぢもがも,なみたかくとも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:笠金村,播磨,兵庫,羈旅,恋情,神亀3年9月15日,年紀,植物,地名","#[訓異]
たまもかる[寛],
あまをとめども,[寛]あまをとめらを,
みにゆかむ[寛],
ふなかぢもがも,[寛]ふなかちもかな,
なみたかくとも[寛],
" "#[番号]06/0937","#[題詞]((三年丙寅秋九月十五日幸於播磨國印南野時笠朝臣金村作歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]徃廻 雖見将飽八 名寸隅乃 船瀬之濱尓 四寸流思良名美","#[訓読]行き廻り見とも飽かめや名寸隅の舟瀬の浜にしきる白波","#[仮名],ゆきめぐり,みともあかめや,なきすみの,ふなせのはまに,しきるしらなみ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:笠金村,播磨,兵庫,羈旅,恋情,神亀3年9月15日,地名","#[訓異]
ゆきめぐり,[寛]ゆきかへり,
みともあかめや[寛],
なきすみの[寛],
ふなせのはまに[寛],
しきるしらなみ[寛],
" "#[番号]06/0938","#[題詞]山部宿祢赤人作歌一首[并短歌]","#[原文]八隅知之 吾大王乃 神随 高所知流 稲見野能 大海乃原笶 荒妙 藤井乃浦尓 鮪釣等 海人船散動 塩焼等 人曽左波尓有 浦乎吉美 宇倍毛釣者為 濱乎吉美 諾毛塩焼 蟻徃来 御覧母知師 清白濱","#[訓読]やすみしし 我が大君の 神ながら 高知らせる 印南野の 大海の原の 荒栲の 藤井の浦に 鮪釣ると 海人舟騒き 塩焼くと 人ぞさはにある 浦をよみ うべも釣りはす 浜をよみ うべも塩焼く あり通ひ 見さくもしるし 清き白浜","#[仮名],やすみしし,わがおほきみの,かむながら,たかしらせる,いなみのの,おふみのはらの,あらたへの,ふぢゐのうらに,しびつると,あまぶねさわき,しほやくと,ひとぞさはにある,うらをよみ,うべもつりはす,はまをよみ,うべもしほやく,ありがよひ,みさくもしるし,きよきしらはま","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 流 [元][紀] 須","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,播磨,兵庫,羈旅,土地讃美,枕詞,地名","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
かむながら,[寛]かみのまに,
たかしらせる,[寛]たかくしらせる,
いなみのの[寛],
おふみのはらの,[寛]おほうみのはらの,
あらたへの[寛],
ふぢゐのうらに,[寛]ふちゐのうらに,
しびつると,[寛]しひつると,
あまぶねさわき,[寛]あまふねとよみ,
しほやくと[寛],
ひとぞさはにある,[寛]ひとそさはにある,
うらをよみ[寛],
うべもつりはす,[寛]うへもつりはす,
はまをよみ[寛],
うべもしほやく,[寛]うへもしほやく,
ありがよひ,[寛]ありかよひ,
みさくもしるし,[寛]みらむもしるし,
きよきしらはま[寛],
" "#[番号]06/0939","#[題詞](山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌三首","#[原文]奥浪 邊波安美 射去為登 藤江乃浦尓 船曽動流","#[訓読]沖つ波辺波静けみ漁りすと藤江の浦に舟ぞ騒ける","#[仮名],おきつなみ,へなみしづけみ,いざりすと,ふぢえのうらに,ふねぞさわける","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,播磨,兵庫,羈旅,土地讃美,地名","#[訓異]
おきつなみ[寛],
へなみしづけみ,[寛]へなみしつけみ,
いざりすと,[寛]いさりすと,
ふぢえのうらに,[寛]ふちゑのうらに,
ふねぞさわける,[寛]ふねそとよめる,
" "#[番号]06/0940","#[題詞]((山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌三首)","#[原文]不欲見野乃 淺茅押靡 左宿夜之 氣長<在>者 家之小篠生","#[訓読]印南野の浅茅押しなべさ寝る夜の日長くしあれば家し偲はゆ","#[仮名],いなみのの,あさぢおしなべ,さぬるよの,けながくしあれば,いへししのはゆ","#[左注]","#[校異]有 -> 在 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,播磨,兵庫,羈旅,望郷,地名","#[訓異]
いなみのの[寛],
あさぢおしなべ,[寛]あさちおしなみ,
さぬるよの[寛],
けながくしあれば,[寛]けなかくあれは,
いへししのはゆ,[寛]いへししのふる,
" "#[番号]06/0941","#[題詞]((山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌三首)","#[原文]明方 潮干乃道乎 従明日者 下咲異六 家近附者","#[訓読]明石潟潮干の道を明日よりは下笑ましけむ家近づけば","#[仮名],あかしがた,しほひのみちを,あすよりは,したゑましけむ,いへちかづけば","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,播磨,兵庫,羈旅,望郷,地名","#[訓異]
あかしがた,[寛]あかしかた,
しほひのみちを[寛],
あすよりは[寛],
したゑましけむ,[寛]したうれしけむ,
いへちかづけば,[寛]いへちかつけは,
" "#[番号]06/0942","#[題詞]過辛荷嶋時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌]","#[原文]味澤相 妹目不數見而 敷細乃 枕毛不巻 櫻皮纒 作流舟二 真梶貫 吾榜来者 淡路乃 野嶋毛過 伊奈美嬬 辛荷乃嶋之 嶋際従 吾宅乎見者 青山乃 曽許十方不見 白雲毛 千重尓成来沼 許伎多武流 浦乃盡 徃隠 嶋乃埼々 隈毛不置 憶曽吾来 客乃氣長弥","#[訓読]あぢさはふ 妹が目離れて 敷栲の 枕もまかず 桜皮巻き 作れる船に 真楫貫き 我が漕ぎ来れば 淡路の 野島も過ぎ 印南嬬 辛荷の島の 島の際ゆ 我家を見れば 青山の そことも見えず 白雲も 千重になり来ぬ 漕ぎ廻むる 浦のことごと 行き隠る 島の崎々 隈も置かず 思ひぞ我が来る 旅の日長み","#[仮名],あぢさはふ,いもがめかれて,しきたへの,まくらもまかず,かにはまき,つくれるふねに,まかぢぬき,わがこぎくれば,あはぢの,のしまもすぎ,いなみつま,からにのしまの,しまのまゆ,わぎへをみれば,あをやまの,そこともみえず,しらくもも,ちへになりきぬ,こぎたむる,うらのことごと,ゆきかくる,しまのさきざき,くまもおかず,おもひぞわがくる,たびのけながみ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,羈旅,望郷,兵庫,枕詞,地名","#[訓異]
あぢさはふ,[寛]あちさはふ,
いもがめかれて,[寛]いもかめしはみすて,
しきたへの[寛],
まくらもまかず,[寛]まくらもまかす,
かにはまき[寛],
つくれるふねに[寛],
まかぢぬき,[寛]まかちぬき,
わがこぎくれば,[寛]わかこきくれは,
あはぢの,[寛]あはみちの,
のしまもすぎ,[寛]のしまもすきぬ,
いなみつま,[寛]いなひつま,
からにのしまの[寛],
しまのまゆ,[寛]しままより,
わぎへをみれば,[寛]わかやとをみれは,
あをやまの[寛],
そこともみえず,[寛]そこともみえす,
しらくもも[寛],
ちへになりきぬ[寛],
こぎたむる,[寛]こきたむる,
うらのことごと,[寛]うらのはてまて,
ゆきかくる,[寛]ゆきかくれ,
しまのさきざき,[寛]しまのさきさき,
くまもおかず,[寛]くまもおかす,
おもひぞわがくる,[寛]おもひそわかこし,
たびのけながみ,[寛]たひのけなかみ,
" "#[番号]06/0943","#[題詞](過辛荷嶋時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌三首","#[原文]玉藻苅 辛荷乃嶋尓 嶋廻為流 水烏二四毛有哉 家不念有六","#[訓読]玉藻刈る唐荷の島に島廻する鵜にしもあれや家思はずあらむ","#[仮名],たまもかる,からにのしまに,しまみする,うにしもあれや,いへおもはずあらむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,羈旅,望郷,兵庫,地名,植物","#[訓異]
たまもかる[寛],
からにのしまに[寛],
しまみする,[寛]あさりする,
うにしもあれや[寛],
いへおもはずあらむ,[寛]いへおもはさらむ,
" "#[番号]06/0944","#[題詞]((過辛荷嶋時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌三首)","#[原文]嶋隠 吾榜来者 乏毳 倭邊上 真熊野之船","#[訓読]島隠り我が漕ぎ来れば羨しかも大和へ上るま熊野の船","#[仮名],しまがくり,わがこぎくれば,ともしかも,やまとへのぼる,まくまののふね","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,羈旅,望郷,兵庫,地名","#[訓異]
しまがくり,[寛]しまかくれ,
わがこぎくれば,[寛]わかこきくれは,
ともしかも[寛],
やまとへのぼる,[寛]やまとへのほる,
まくまののふね,[寛]みくまののふね,
" "#[番号]06/0945","#[題詞]((過辛荷嶋時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌三首)","#[原文]風吹者 浪可将立跡 伺候尓 都太乃細江尓 浦隠居","#[訓読]風吹けば波か立たむとさもらひに都太の細江に浦隠り居り","#[仮名],かぜふけば,なみかたたむと,さもらひに,つだのほそえに,うらがくりをり","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,羈旅,兵庫,地名","#[訓異]
かぜふけば,[寛]かせふけは,
なみかたたむと[寛],
さもらひに,[寛]まつほとに,
つだのほそえに,[寛]つたのほそえに,
うらがくりをり,[寛]うらかくれゐす,
" "#[番号]06/0946","#[題詞]過<敏馬>浦時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌]","#[原文]御食向 淡路乃嶋二 直向 三犬女乃浦能 奥部庭 深海松採 浦廻庭 名告藻苅 深見流乃 見巻欲跡 莫告藻之 己名惜三 間使裳 不遣而吾者 生友奈重二","#[訓読]御食向ふ 淡路の島に 直向ふ 敏馬の浦の 沖辺には 深海松採り 浦廻には なのりそ刈る 深海松の 見まく欲しけど なのりその おのが名惜しみ 間使も 遣らずて我れは 生けりともなし","#[仮名],みけむかふ,あはぢのしまに,ただむかふ,みぬめのうらの,おきへには,ふかみるとり,うらみには,なのりそかる,ふかみるの,みまくほしけど,なのりその,おのがなをしみ,まつかひも,やらずてわれは,いけりともなし","#[左注](右作歌年月未詳也 但以類故載於此<次>)","#[校異]驚 -> 敏馬 [西(右書訂正)][元][紀][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,羈旅,兵庫,望郷,枕詞,地名,植物","#[訓異]
みけむかふ[寛],
あはぢのしまに,[寛]あはちのしまに,
ただむかふ,[寛]たたむかふ,
みぬめのうらの[寛],
おきへには[寛],
ふかみるとり,[寛]ふかみるつみ,
うらみには,[寛]うらわには,
なのりそかる,[寛]なのりそをかり,
ふかみるの[寛],
みまくほしけど,[寛]みまくほしみと,
なのりその[寛],
おのがなをしみ,[寛]おのかなをしみ,
まつかひも[寛],
やらずてわれは,[寛]やらすてわれは,
いけりともなし,[寛]いけりともなへに,
" "#[番号]06/0947","#[題詞](過<敏馬>浦時山部宿祢赤人作歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]為間乃海人之 塩焼衣乃 奈礼名者香 一日母君乎 忘而将念","#[訓読]須磨の海女の塩焼き衣の慣れなばか一日も君を忘れて思はむ","#[仮名],すまのあまの,しほやききぬの,なれなばか,ひとひもきみを,わすれておもはむ","#[左注]右作歌年月未詳也 但以類故載於此<次>","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歟 -> 次 [西(右書訂正)][元][紀][細]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,羈旅,兵庫,望郷,地名","#[訓異]
すまのあまの[寛],
しほやききぬの,[寛]しおやくきぬの,
なれなばか,[寛]なれなはか,
ひとひもきみを[寛],
わすれておもはむ[寛],
" "#[番号]06/0948","#[題詞]四年丁卯春正月勅諸王諸臣子等散禁於授刀寮時作歌一首[并短歌]","#[原文]真葛延 春日之山者 打靡 春去徃跡 山上丹 霞田名引 高圓尓 鴬鳴沼 物部乃 八十友能<壮>者 折<木>四哭之 来継<比日 如>此續 常丹有脊者 友名目而 遊物尾 馬名目而 徃益里乎 待難丹 吾為春乎 决巻毛 綾尓恐 言巻毛 湯々敷有跡 豫 兼而知者 千鳥鳴 其佐保川丹 石二生 菅根取而 之努布草 解除而益乎 徃水丹 潔而益乎 天皇之 御命恐 百礒城之 大宮人之 玉桙之 道毛不出 戀比日","#[訓読]ま葛延ふ 春日の山は うち靡く 春さりゆくと 山の上に 霞たなびく 高円に 鴬鳴きぬ もののふの 八十伴の男は 雁が音の 来継ぐこの頃 かく継ぎて 常にありせば 友並めて 遊ばむものを 馬並めて 行かまし里を 待ちかてに 我がする春を かけまくも あやに畏し 言はまくも ゆゆしくあらむと あらかじめ かねて知りせば 千鳥鳴く その佐保川に 岩に生ふる 菅の根採りて 偲ふ草 祓へてましを 行く水に みそぎてましを 大君の 命畏み ももしきの 大宮人の 玉桙の 道にも出でず 恋ふるこの頃","#[仮名],まくずはふ,かすがのやまは,うちなびく,はるさりゆくと,やまのへに,かすみたなびく,たかまとに,うぐひすなきぬ,もののふの,やそとものをは,かりがねの,きつぐこのころ,かくつぎて,つねにありせば,ともなめて,あそばむものを,うまなめて,ゆかましさとを,まちかてに,わがせしはるを,かけまくも,あやにかしこし,いはまくも,ゆゆしくあらむと,あらかじめ,かねてしりせば,ちどりなく,そのさほがはに,いはにおふる,すがのねとりて,しのふくさ,はらへてましを,ゆくみづに,みそぎてましを,おほきみの,みことかしこみ,ももしきの,おほみやひとの,たまほこの,みちにもいでず,こふるこのころ","#[左注](右神龜四年正月 數王子<及>諸臣子等 集於春日野而作打毬之樂 其日忽天陰 雨雷電 此時宮中無侍従及侍衛 勅行刑罰皆散禁於授刀寮而妄不得出道路 于時悒憤即作斯歌 [作者未詳])","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 上 [元](塙) 匕 / 牡 -> 壮 [元][紀][矢] / 不 -> 木 [元] / 皆石 -> 比日如 [万葉集略解]","#[事項],雑歌,奈良,神亀4年,大夫,枕詞,地名,神亀4年1月,年紀","#[訓異]
まくずはふ,[寛]まくすはふ,
かすがのやまは,[寛]かすかのやまは,
うちなびく,[寛]うちなひき,
はるさりゆくと[寛],
やまのへに[寛],
かすみたなびく,[寛]かすみたなひき,
たかまとに[寛],
うぐひすなきぬ,[寛]うくひすなきぬ,
もののふの[寛],
やそとものをは[寛],
かりがねの,[寛]をりふしもし,
きつぐこのころ,[寛]きつきみなし,
かくつぎて,[寛]ここにつき,
つねにありせば,[寛]つねにありせは,
ともなめて[寛],
あそばむものを,[寛]たわれむものを,
うまなめて[寛],
ゆかましさとを[寛],
まちかてに[寛],
わがせしはるを,[寛]わかするはるを,
かけまくも[寛],
あやにかしこし,[寛]あやにかしこく,
いはまくも[寛],
ゆゆしくあらむと,[寛]ゆゆしくあらはと,
あらかじめ,[寛]あらかしめ,
かねてしりせば,[寛]かねてしらせは,
ちどりなく,[寛]ちとりなく,
そのさほがはに,[寛]そのさほかはに,
いはにおふる,[寛]いそにおふる,
すがのねとりて,[寛]すかのねとりて,
しのふくさ[寛],
はらへてましを[寛],
ゆくみづに,[寛]ゆくみつに,
みそぎてましを,[寛]みそきてましを,
おほきみの,[寛]すめろきの,
みことかしこみ[寛],
ももしきの[寛],
おほみやひとの[寛],
たまほこの[寛],
みちにもいでず,[寛]みちにもいてす,
こふるこのころ[寛],
" "#[番号]06/0949","#[題詞](四年丁卯春正月勅諸王諸臣子等散禁於授刀寮時作歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]梅柳 過良久惜 佐保乃内尓 遊事乎 宮動々尓","#[訓読]梅柳過ぐらく惜しみ佐保の内に遊びしことを宮もとどろに","#[仮名],うめやなぎ,すぐらくをしみ,さほのうちに,あそびしことを,みやもとどろに","#[左注]右神龜四年正月 數王子<及>諸臣子等 集於春日野而作打毬之樂 其日忽天陰 雨雷電 此時宮中無侍従及侍衛 勅行刑罰皆散禁於授刀寮而妄不得出道路 于時悒憤即作斯歌 [作者未詳]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 乃 -> 及 [元][類][古] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,奈良,神亀4年,大夫,地名,神亀4年1月,年紀","#[訓異]
うめやなぎ,[寛]うめやなき,
すぐらくをしみ,[寛]すくらくをしみ,
さほのうちに[寛],
あそびしことを,[寛]あそひしことを,
みやもとどろに,[寛]みやもととろに,
" "#[番号]06/0950","#[題詞]五年戊辰幸于難波宮時作歌四首","#[原文]大王之 界賜跡 山守居 守云山尓 不入者不止","#[訓読]大君の境ひたまふと山守据ゑ守るといふ山に入らずはやまじ","#[仮名],おほきみの,さかひたまふと,やまもりすゑ,もるといふやまに,いらずはやまじ","#[左注](右笠朝臣金村之歌中出也 或云車持朝臣千年作<之>也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:笠金村歌集,車持千年,作者異伝,難波,大阪,比喩,恋愛,神亀5年,年紀,掛け合い,地名","#[訓異]
おほきみの[寛],
さかひたまふと[寛],
やまもりすゑ[寛],
もるといふやまに[寛],
いらずはやまじ,[寛]いらすはやまし,
" "#[番号]06/0951","#[題詞](五年戊辰幸于難波宮時作歌四首)","#[原文]見渡者 近物可良 石隠 加我欲布珠乎 不取不巳","#[訓読]見わたせば近きものから岩隠りかがよふ玉を取らずはやまじ","#[仮名],みわたせば,ちかきものから,いはがくり,かがよふたまを,とらずはやまじ","#[左注](右笠朝臣金村之歌中出也 或云車持朝臣千年作<之>也)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:笠金村歌集,車持千年,作者異伝,難波,大阪,比喩,恋愛,神亀5年,年紀,掛け合い,地名","#[訓異]
みわたせば,[寛]みわたせは,
ちかきものから[寛],
いはがくり,[寛]いそかくれ,
かがよふたまを,[寛]かかよふたまを,
とらずはやまじ,[寛]とらすはやまし,
" "#[番号]06/0952","#[題詞](五年戊辰幸于難波宮時作歌四首)","#[原文]韓衣 服楢乃里之 嶋待尓 玉乎師付牟 好人欲得食","#[訓読]韓衣着奈良の里の嶋松に玉をし付けむよき人もがも","#[仮名],からころも,きならのさとの,しままつに,たまをしつけむ,よきひともがも","#[左注](右笠朝臣金村之歌中出也 或云車持朝臣千年作<之>也)","#[校異]嶋 (塙)(楓) 嬬","#[事項],雑歌,作者:笠金村歌集,車持千年,作者異伝,難波,大阪,比喩,恋愛,神亀5年,年紀,女歌,掛け合い,枕詞,地名","#[訓異]
からころも[寛],
きならのさとの[寛],
しままつに[寛],
たまをしつけむ[寛],
よきひともがも,[寛]よきひともかな,
" "#[番号]06/0953","#[題詞](五年戊辰幸于難波宮時作歌四首)","#[原文]竿<壮>鹿之 鳴奈流山乎 越将去 日谷八君 當不相将有","#[訓読]さを鹿の鳴くなる山を越え行かむ日だにや君がはた逢はざらむ","#[仮名],さをしかの,なくなるやまを,こえゆかむ,ひだにやきみが,はたあはざらむ","#[左注]右笠朝臣金村之歌中出也 或云車持朝臣千年作<之>也","#[校異]牡 -> 壮 [元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 之 [元][紀][細]","#[事項],雑歌,作者:笠金村歌集,車持千年,作者異伝,難波,大阪,比喩,恋愛,神亀5年,年紀,望郷,女歌,掛け合い,動物,地名","#[訓異]
さをしかの[寛],
なくなるやまを[寛],
こえゆかむ,[寛]こえてゆかむ,
ひだにやきみが,[寛]ひたにやきみ,
はたあはざらむ,[寛]はたあはさらむ,
" "#[番号]06/0954","#[題詞]膳王歌一首","#[原文]朝波 海邊尓安左里為 暮去者 倭部越 鴈四乏母","#[訓読]朝は海辺にあさりし夕されば大和へ越ゆる雁し羨しも","#[仮名],あしたは,うみへにあさりし,ゆふされば,やまとへこゆる,かりしともしも","#[左注]右作歌之年不審<也> 但以歌類便載此次","#[校異]歌 [西] 謌 [西(別筆訂正)] 歌 / 越 [元][紀](塙) 超 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 也 [元][紀][細] / 以歌 [西] 以謌 [西(訂正)] 以歌","#[事項],雑歌,作者:膳王,羈旅,望郷,動物","#[訓異]
あしたは,[寛]あしたには,
うみへにあさりし,[寛]うなひにあさりし,
ゆふされば,[寛]こふされは,
やまとへこゆる,[寛]やまとひこゆる,
かりしともしも,[寛]
" "#[番号]06/0955","#[題詞]<大>宰少貳石<川>朝臣足人歌一首","#[原文]刺竹之 大宮人乃 家跡住 佐保能山乎者 思哉毛君","#[訓読]さす竹の大宮人の家と住む佐保の山をば思ふやも君","#[仮名],さすたけの,おほみやひとの,いへとすむ,さほのやまをば,おもふやもきみ","#[左注]","#[校異]太 -> 大 [元][紀][細] / 河 -> 川 [元][紀][温] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:石川足人,望郷,太宰府,福岡,地名,枕詞","#[訓異]
さすたけの[寛],
おほみやひとの[寛],
いへとすむ[寛],
さほのやまをば,[寛]さほのやまをは,
おもふやもきみ[寛],
" "#[番号]06/0956","#[題詞]帥大伴卿和歌一首","#[原文]八隅知之 吾大王乃 御食國者 日本毛此間毛 同登曽念","#[訓読]やすみしし我が大君の食す国は大和もここも同じとぞ思ふ","#[仮名],やすみしし,わがおほきみの,をすくには,やまともここも,おやじとぞおもふ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,福岡,大夫,王権,枕詞,地名","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
をすくには,[寛]みけくには,
やまともここも[寛],
おやじとぞおもふ,[寛]おやしとそおもふ,
" "#[番号]06/0957","#[題詞]冬十一月大宰官人等奉拜香椎廟訖退歸之時馬駐于香椎浦各述作懐歌 / 帥大伴卿歌一首","#[原文]去来兒等 香椎乃滷尓 白妙之 袖左倍所沾而 朝菜採手六","#[訓読]いざ子ども香椎の潟に白栲の袖さへ濡れて朝菜摘みてむ","#[仮名],いざこども,かしひのかたに,しろたへの,そでさへぬれて,あさなつみてむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,福岡,香椎,太宰府,地名,神亀5年11月,年紀","#[訓異]
いざこども,[寛]いさやこら,
かしひのかたに[寛],
しろたへの[寛],
そでさへぬれて,[寛]そてさへぬれて,
あさなつみてむ[寛],
" "#[番号]06/0958","#[題詞](冬十一月大宰官人等奉拜香椎廟訖退歸之時馬駐于香椎浦各述作懐歌)大貳小野老朝臣歌一首","#[原文]時風 應吹成奴 香椎滷 潮干b尓 玉藻苅而名","#[訓読]時つ風吹くべくなりぬ香椎潟潮干の浦に玉藻刈りてな","#[仮名],ときつかぜ,ふくべくなりぬ,かしひがた,しほひのうらに,たまもかりてな","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:小野老,福岡,香椎,太宰府,地名,植物,神亀5年11月,年紀","#[訓異]
ときつかぜ,[寛]ときつかせ,
ふくべくなりぬ,[寛]ふくへくなりぬ,
かしひがた,[寛]かしひかた,
しほひのうらに,[寛]しほひのきはに,
たまもかりてな[寛],
" "#[番号]06/0959","#[題詞](冬十一月大宰官人等奉拜香椎廟訖退歸之時馬駐于香椎浦各述作懐歌)豊前守宇努首男人歌一首","#[原文]徃還 常尓我見之 香椎滷 従明日後尓波 見縁母奈思","#[訓読]行き帰り常に我が見し香椎潟明日ゆ後には見むよしもなし","#[仮名],ゆきかへり,つねにわがみし,かしひがた,あすゆのちには,みむよしもなし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:宇努男人,福岡,香椎,太宰府,地名,神亀5年11月,年紀","#[訓異]
ゆきかへり[寛],
つねにわがみし,[寛]つねにわかみし,
かしひがた,[寛]かしひかた,
あすゆのちには,[寛]あすよりのちには,
みむよしもなし[寛],
" "#[番号]06/0960","#[題詞]帥大伴卿遥思芳野離宮作歌一首","#[原文]隼人乃 湍門乃磐母 年魚走 芳野之瀧<尓> 尚不及家里","#[訓読]隼人の瀬戸の巌も鮎走る吉野の瀧になほしかずけり","#[仮名],はやひとの,せとのいはほも,あゆはしる,よしののたきに,なほしかずけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 乃 -> 尓 [西(訂正)][元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,吉野,比較,鹿児島,黒瀬戸,山口,関門海峡,地名","#[訓異]
はやひとの[寛],
せとのいはほも[寛],
あゆはしる[寛],
よしののたきに[寛],
なほしかずけり,[寛]なをしかすけり,
" "#[番号]06/0961","#[題詞]帥大伴卿宿次田温泉聞鶴喧作歌一首","#[原文]湯原尓 鳴蘆多頭者 如吾 妹尓戀哉 時不定鳴","#[訓読]湯の原に鳴く葦鶴は我がごとく妹に恋ふれや時わかず鳴く","#[仮名],ゆのはらに,なくあしたづは,あがごとく,いもにこふれや,ときわかずなく","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,福岡,二日市温泉,妻,地名,動物,恋情","#[訓異]
ゆのはらに[寛],
なくあしたづは,[寛]なくあしたつは,
あがごとく,[寛]わかことく,
いもにこふれや[寛],
ときわかずなく,[寛]ときわかすなく,
" "#[番号]06/0962","#[題詞]天平二年庚午勅遣<擢>駿馬使大伴道足宿祢時歌一首","#[原文]奥山之 磐尓蘿生 恐毛 問賜鴨 念不堪國","#[訓読]奥山の岩に苔生し畏くも問ひたまふかも思ひあへなくに","#[仮名],おくやまの,いはにこけむし,かしこくも,とひたまふかも,おもひあへなくに","#[左注]右 勅使大伴道足宿祢饗于帥家 此日會集衆諸相誘驛使葛井連廣成言須作歌詞 登時廣成應聲即吟此歌","#[校異]推 -> 擢 [元][古][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 此歌 [西] 此謌 [西(訂正)] 此歌","#[事項],雑歌,作者:葛井広成,大伴道足,太宰府,福岡,宴席,地名,序詞,天平2年,年紀","#[訓異]
おくやまの[寛],
いはにこけむし,[寛]こけむして,
かしこくも,[寛]かしこみも,
とひたまふかも[寛],
おもひあへなくに,[寛]おもひたへなくに,
" "#[番号]06/0963","#[題詞]冬十一月大伴坂上郎女發帥家上道超筑前國宗形郡名兒山之時作歌一首","#[原文]大汝 小彦名能 神社者 名著始鷄目 名耳乎 名兒山跡負而 吾戀之 干重之一重裳 奈具<佐>米七國","#[訓読]大汝 少彦名の 神こそば 名付けそめけめ 名のみを 名児山と負ひて 我が恋の 千重の一重も 慰めなくに","#[仮名],おほなむち,すくなひこなの,かみこそば,なづけそめけめ,なのみを,なごやまとおひて,あがこひの,ちへのひとへも,なぐさめなくに","#[左注]","#[校異]名 [元][紀][細] 名々 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 作 -> 佐 [元][紀][細]","#[事項],雑歌,作者:坂上郎女,羈旅,福岡,望郷,恋情,天平2年11月,年紀,地名","#[訓異]
おほなむち[寛],
すくなひこなの[寛],
かみこそば,[寛]かみこそは,
なづけそめけめ,[寛]なつけそめけめ,
なのみを,[寛]なにのみを,
なごやまとおひて,[寛]なこやまとおひて,
あがこひの,[寛]わかこひの,
ちへのひとへも,[寛]
なぐさめなくに,[寛]なくさめなくに,
" "#[番号]06/0964","#[題詞]同坂上郎女向京海路見濱<貝>作歌一首","#[原文]吾背子尓 戀者苦 暇有者 拾而将去 戀忘貝","#[訓読]我が背子に恋ふれば苦し暇あらば拾ひて行かむ恋忘貝","#[仮名],わがせこに,こふればくるし,いとまあらば,ひりひてゆかむ,こひわすれがひ","#[左注]","#[校異]貝 [西(上書訂正)][紀] [寛永] 具 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:坂上郎女,羈旅,福岡,恋情,天平2年11月,年紀,地名,動物","#[訓異]
わがせこに,[寛]わかせこに,
こふればくるし,[寛]こふるはくるし,
いとまあらば,[寛]いとまあらは,
ひりひてゆかむ,[寛]ひろひてゆかむ,
こひわすれがひ,[寛]こひわすれかひ,
" "#[番号]06/0965","#[題詞]冬十二月<大>宰帥大伴卿上京<時>娘子作歌二首","#[原文]凡有者 左毛右毛将為乎 恐跡 振痛袖乎 忍而有香聞","#[訓読]おほならばかもかもせむを畏みと振りたき袖を忍びてあるかも","#[仮名],おほならば,かもかもせむを,かしこみと,ふりたきそでを,しのびてあるかも","#[左注](右大宰帥<大>伴卿兼任大納言向京上道 此日馬駐水城顧望府家 于時送卿府吏之中有遊行女婦 其字曰兒嶋也 於是娘子傷此易別嘆彼難會 拭涕自吟振袖之歌)","#[校異]太 -> 大 [元][類][紀] / <> -> 時 [元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:児島,遊行女婦,太宰府,大伴旅人,別離,恋情,福岡,天平2年12月,年紀,地名,餞別,宴席","#[訓異]
おほならば,[寛]おほならは,
かもかもせむを,[寛]さもtもせむを,
かしこみと,[寛]かしこしと,
ふりたきそでを,[寛]ふりたきそてを,
しのびてあるかも,[寛]しのひてあるかも,
" "#[番号]06/0966","#[題詞](冬十二月<大>宰帥大伴卿上京<時>娘子作歌二首)","#[原文]倭道者 雲隠有 雖然 余振袖乎 無礼登母布奈","#[訓読]大和道は雲隠りたりしかれども我が振る袖をなめしと思ふな","#[仮名],やまとぢは,くもがくりたり,しかれども,わがふるそでを,なめしともふな","#[左注]右大宰帥<大>伴卿兼任大納言向京上道 此日馬駐水城顧望府家 于時送卿府吏之中有遊行女婦 其字曰兒嶋也 於是娘子傷此易別嘆彼難會 拭涕自吟振袖之歌","#[校異]太 -> 大 [元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:児島,遊行女婦,太宰府,大伴旅人,別離,恋情,福岡,天平2年11月,年紀,餞別,宴席,地名","#[訓異]
やまとぢは,[寛]やまとちは,
くもがくりたり,[寛]くもかくれたり,
しかれども,[寛]しかれとも,
わがふるそでを,[寛]わかふるそてを,
なめしともふな,[寛]なけれともふな,
" "#[番号]06/0967","#[題詞]大納言大伴卿和歌二首","#[原文]日本道乃 吉備乃兒嶋乎 過而行者 筑紫乃子嶋 所念香聞","#[訓読]大和道の吉備の児島を過ぎて行かば筑紫の児島思ほえむかも","#[仮名],やまとぢの,きびのこしまを,すぎてゆかば,つくしのこしま,おもほえむかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 聞 [元][紀][温](塙) 裳","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,児島,太宰府,福岡,別離,恋情,遊行女婦,天平2年11月,餞別,宴席,地名","#[訓異]
やまとぢの,[寛]やまとちの,
きびのこしまを,[寛]きひのこしまを,
すぎてゆかば,[寛]すきてゆかは,
つくしのこしま[寛],
おもほえむかも[寛],
" "#[番号]06/0968","#[題詞](大納言大伴卿和歌二首)","#[原文]大夫跡 念在吾哉 水莖之 水城之上尓 泣将拭","#[訓読]ますらをと思へる我れや水茎の水城の上に涙拭はむ","#[仮名],ますらをと,おもへるわれや,みづくきの,みづきのうへに,なみたのごはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,児島,太宰府,福岡,別離,恋情,遊行女婦,天平2年11月,餞別,宴席,地名","#[訓異]
ますらをと[寛],
おもへるわれや[寛],
みづくきの,[寛]みつくきの,
みづきのうへに,[寛]みつきのうへに,
なみたのごはむ,[寛]なみたのこはむ,
" "#[番号]06/0969","#[題詞]三年辛未大納言大伴卿在寧樂家思故郷歌二首","#[原文]須臾 去而見<壮>鹿 神名火乃 淵者淺而 瀬二香成良武","#[訓読]しましくも行きて見てしか神なびの淵はあせにて瀬にかなるらむ","#[仮名],しましくも,ゆきてみてしか,かむなびの,ふちはあせにて,せにかなるらむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 牡 -> 壮 [元][類][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,望郷,奈良,天平3年,年紀,飛鳥,恋慕,地名","#[訓異]
しましくも,[寛]たたしはし,
ゆきてみてしか,[寛]ゆきてみてれか,
かむなびの,[寛]かひなひの,
ふちはあせにて,[寛]ふちはあさひて,
せにかなるらむ[寛],
" "#[番号]06/0970","#[題詞](三年辛未大納言大伴卿在寧樂家思故郷歌二首)","#[原文]指進乃 粟栖乃小野之 芽花 将落時尓之 行而手向六","#[訓読]指進の栗栖の小野の萩の花散らむ時にし行きて手向けむ","#[仮名],****の,くるすのをのの,はぎのはな,ちらむときにし,ゆきてたむけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴旅人,望郷,亡妻,恋慕,天平3年,年紀,飛鳥,地名,植物","#[訓異]
****の,[寛]さしすきの,
くるすのをのの[寛],
はぎのはな,[寛]はきのはな,
ちらむときにし[寛],
ゆきてたむけむ[寛],
" "#[番号]06/0971","#[題詞]四年壬申藤原宇合卿遣西海道節度使之時高橋連蟲麻呂作歌一首[并短歌]","#[原文]白雲乃 龍田山乃 露霜尓 色附時丹 打超而 客行<公>者 五百隔山 伊去割見 賊守 筑紫尓至 山乃曽伎 野之衣寸見世常 伴部乎 班遣之 山彦乃 将應極 谷潜乃 狭渡極 國方乎 見之賜而 冬<木>成 春去行者 飛鳥乃 早御来 龍田道之 岳邊乃路尓 丹管土乃 将薫時能 櫻花 将開時尓 山多頭能 迎参出六 <公>之来益者","#[訓読]白雲の 龍田の山の 露霜に 色づく時に うち越えて 旅行く君は 五百重山 い行きさくみ 敵守る 筑紫に至り 山のそき 野のそき見よと 伴の部を 班ち遣はし 山彦の 答へむ極み たにぐくの さ渡る極み 国形を 見したまひて 冬こもり 春さりゆかば 飛ぶ鳥の 早く来まさね 龍田道の 岡辺の道に 丹つつじの にほはむ時の 桜花 咲きなむ時に 山たづの 迎へ参ゐ出む 君が来まさば","#[仮名],しらくもの,たつたのやまの,つゆしもに,いろづくときに,うちこえて,たびゆくきみは,いほへやま,いゆきさくみ,あたまもる,つくしにいたり,やまのそき,ののそきみよと,とものへを,あかちつかはし,やまびこの,こたへむきはみ,たにぐくの,さわたるきはみ,くにかたを,めしたまひて,ふゆこもり,はるさりゆかば,とぶとりの,はやくきまさね,たつたぢの,をかへのみちに,につつじの,にほはむときの,さくらばな,さきなむときに,やまたづの,むかへまゐでむ,きみがきまさば","#[左注](右檢補任文八月十七日任東山々陰西海節度使)","#[校異]06/0971D01歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 君 -> 公 [元][類][紀] / <> -> 木 [元][類][紀] / 君 -> 公 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂,藤原宇合,羈旅,送別,大夫,天平4年8月17日,年紀,枕詞,植物,地名","#[訓異]
しらくもの[寛],
たつたのやまの[寛],
つゆしもに[寛],
いろづくときに,[寛]いろつくときに,
うちこえて[寛],
たびゆくきみは,[寛]たひゆくきみは,
いほへやま[寛],
いゆきさくみ,[寛]いゆきさくみて,
あたまもる[寛],
つくしにいたり[寛],
やまのそき[寛],
ののそきみよと[寛],
とものへを[寛],
あかちつかはし,[寛]わかちつかはし,
やまびこの,[寛]やまひこの,
こたへむきはみ[寛],
たにぐくの,[寛]たにくくの,
さわたるきはみ,[寛]さわたるきわみ,
くにかたを[寛],
めしたまひて,[寛]みせしたまひて,
ふゆこもり,[寛]ふゆこなり,
はるさりゆかば,[寛]はるさりゆけは,
とぶとりの,[寛]とふとりの,
はやくきまさね,[寛]はやみきたりて,
たつたぢの,[寛]たつたちの,
をかへのみちに[寛],
につつじの,[寛]につつしの,
にほはむときの[寛],
さくらばな,[寛]さくらはな,
さきなむときに[寛],
やまたづの,[寛]やまたつの,
むかへまゐでむ,[寛]むかへまゐてむ,
きみがきまさば,[寛]きみかきませは,
" "#[番号]06/0972","#[題詞](四年壬申藤原宇合卿遣西海道節度使之時高橋連蟲麻呂作歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]千萬乃 軍奈利友 言擧不為 取而可来 男常曽念","#[訓読]千万の軍なりとも言挙げせず取りて来ぬべき男とぞ思ふ","#[仮名],ちよろづの,いくさなりとも,ことあげせず,とりてきぬべき,をのことぞおもふ","#[左注]右檢補任文八月十七日任東山々陰西海節度使","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂,藤原宇合,羈旅,送別,大夫,天平4年8月17日,年紀","#[訓異]
ちよろづの,[寛]そこはくの,
いくさなりとも[寛],
ことあげせず,[寛]ことあけなす,
とりてきぬべき,[寛]とりてきぬへき,
をのことぞおもふ,[寛]たけをとそおもふ,
" "#[番号]06/0973","#[題詞]天皇賜酒節度使卿等御歌一首[并短歌]","#[原文]食國 遠乃御朝庭尓 汝等之 如是退去者 平久 吾者将遊 手抱而 我者将御在 天皇朕 宇頭乃御手以 掻撫曽 祢宜賜 打撫曽 祢宜賜 将還来日 相飲酒曽 此豊御酒者","#[訓読]食す国の 遠の朝廷に 汝らが かく罷りなば 平けく 我れは遊ばむ 手抱きて 我れはいまさむ 天皇我れ うづの御手もち かき撫でぞ ねぎたまふ うち撫でぞ ねぎたまふ 帰り来む日 相飲まむ酒ぞ この豊御酒は","#[仮名],をすくにの,とほのみかどに,いましらが,かくまかりなば,たひらけく,われはあそばむ,たむだきて,われはいまさむ,すめらわれ,うづのみてもち,かきなでぞ,ねぎたまふ,うちなでぞ,ねぎたまふ,かへりこむひ,あひのまむきぞ,このとよみきは","#[左注](右御歌者或云太上天皇御製也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短哥 [西(訂正)] 短歌","#[事項],雑歌,作者:聖武天皇,作者異伝,送別,大夫,天平4年,年紀,枕詞,餞別,宴席","#[訓異]
をすくにの,[寛]をしくにの,
とほのみかどに,[寛]とほのみかとに,
いましらが,[寛]なれかかく,
かくまかりなば,[寛]いててしゆけは,
たひらけく[寛],
われはあそばむ,[寛]われはあそはむ,
たむだきて,[寛]たにきりて,
われはいまさむ[寛],
すめらわれ,[寛]きみのわか,
うづのみてもち,[寛]うつのみてもて,
かきなでぞ,[寛]かきなてそ,
ねぎたまふ,[寛]ねきたまひ,
うちなでぞ,[寛]うちなてそ,
ねぎたまふ,[寛]ねきたまひ,
かへりこむひ[寛],
あひのまむきぞ,[寛]あひのまむさけそ,
このとよみきは[寛],
" "#[番号]06/0974","#[題詞](天皇賜酒節度使卿等御歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]大夫之 去跡云道曽 凡可尓 念而行勿 大夫之伴","#[訓読]大夫の行くといふ道ぞおほろかに思ひて行くな大夫の伴","#[仮名],ますらをの,ゆくといふみちぞ,おほろかに,おもひてゆくな,ますらをのとも","#[左注]右御歌者或云太上天皇御製也","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:聖武天皇,作者異伝,送別,大夫,天平4年,餞別,宴席","#[訓異]
ますらをの[寛],
ゆくといふみちぞ,[寛]ゆくといふみちそ,
おほろかに[寛],
おもひてゆくな[寛],
ますらをのとも[寛],
" "#[番号]06/0975","#[題詞]中納言安倍廣庭卿歌一首","#[原文]如是為管 在久乎好叙 霊剋 短命乎 長欲為流","#[訓読]かくしつつあらくをよみぞたまきはる短き命を長く欲りする","#[仮名],かくしつつ,あらくをよみぞ,たまきはる,みじかきいのちを,ながくほりする","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:安倍広庭,宴席,大夫,枕詞","#[訓異]
かくしつつ[寛],
あらくをよみぞ,[寛]あらくをよしそ,
たまきはる[寛],
みじかきいのちを,[寛]みしかきいのちを,
ながくほりする,[寛]なかくほりする,
" "#[番号]06/0976","#[題詞]五年癸酉超草香山時神社忌寸老麻呂作歌二首","#[原文]難波方 潮干乃奈凝 委曲見 在家妹之 待将問多米","#[訓読]難波潟潮干のなごりよく見てむ家なる妹が待ち問はむため","#[仮名],なにはがた,しほひのなごり,よくみてむ,いへなるいもが,まちとはむため","#[左注]","#[校異]歌 [西] 哥 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:神社老麻呂,難波,大阪,望郷,羈旅,土地讃美,天平5年,年紀,地名","#[訓異]
なにはがた,[寛]なにはかた,
しほひのなごり,[寛]しほひのなこり,
よくみてむ,[寛]まくはしみ,
いへなるいもが,[寛]いへなるいもか,
まちとはむため[寛],
" "#[番号]06/0977","#[題詞](五年癸酉超草香山時神社忌寸老麻呂作歌二首)","#[原文]直超乃 此徑尓<弖師> 押照哉 難波乃<海>跡 名附家良思<蒙>","#[訓読]直越のこの道にしておしてるや難波の海と名付けけらしも","#[仮名],ただこえの,このみちにして,おしてるや,なにはのうみと,なづけけらしも","#[左注]","#[校異]師弖 -> 弖師 [元][紀][細] / <> -> 海 [西(右書)][元][類] / 裳 -> 蒙 [元][細]","#[事項],雑歌,作者:神社老麻呂,難波,大阪,土地讃美,羈旅,天平5年,年紀,枕詞,地名","#[訓異]
ただこえの,[寛]たたこえの,
このみちにして[寛],
おしてるや[寛],
なにはのうみと[寛],
なづけけらしも,[寛]なつけけらしも,
" "#[番号]06/0978","#[題詞]山上臣憶良沈痾之時歌一首","#[原文]士也母 空應有 萬代尓 語續可 名者不立之而","#[訓読]士やも空しくあるべき万代に語り継ぐべき名は立てずして","#[仮名],をのこやも,むなしくあるべき,よろづよに,かたりつぐべき,なはたてずして","#[左注]右一首山上憶良臣沈痾之時 藤原<朝>臣八束使河邊朝臣東人 令問所疾之状 於是憶良臣報語已畢 有須拭涕悲嘆口吟此歌","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 朝 [元][紀][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:山上憶良,辞世,大夫,天平5年,年紀","#[訓異]
をのこやも,[寛]ひとなれは,
むなしくあるべき,[寛]むなしかるへし,
よろづよに[寛],
かたりつぐべき,[寛]かたりつくへき,
なはたてずして,[寛]なはたたすして,
" "#[番号]06/0979","#[題詞]大伴坂上郎女<与>姪家持従佐保還歸西宅歌一首","#[原文]吾背子我 著衣薄 佐保風者 疾莫吹 及<家>左右","#[訓読]我が背子が着る衣薄し佐保風はいたくな吹きそ家に至るまで","#[仮名],わがせこが,けるきぬうすし,さほかぜは,いたくなふきそ,いへにいたるまで","#[左注]","#[校異]輿 -> 与 [元][紀][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 宅 -> 家 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:坂上郎女,大伴家持,佐保,恋情,相聞的,地名,贈答","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
けるきぬうすし,[寛]きたるきぬうすし,
さほかぜは,[寛]さほかせは,
いたくなふきそ[寛],
いへにいたるまで,[寛]いへにいたるまて,
" "#[番号]06/0980","#[題詞]安倍朝臣蟲麻呂月歌一首","#[原文]雨隠 三笠乃山乎 高御香裳 月乃不出来 夜者更降管","#[訓読]雨隠り御笠の山を高みかも月の出で来ぬ夜はくたちつつ","#[仮名],あまごもり,みかさのやまを,たかみかも,つきのいでこぬ,よはくたちつつ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:安倍虫麻呂,題詠,地名,奈良","#[訓異]
あまごもり,[寛]あまこもり,
みかさのやまを[寛],
たかみかも[寛],
つきのいでこぬ,[寛]つきのいてこぬ,
よはくたちつつ,[寛]よはふけにつつ,
" "#[番号]06/0981","#[題詞]大伴坂上郎女月歌三首","#[原文]猟高乃 高圓山乎 高弥鴨 出来月乃 遅将光","#[訓読]狩高の高円山を高みかも出で来る月の遅く照るらむ","#[仮名],かりたかの,たかまとやまを,たかみかも,いでくるつきの,おそくてるらむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:坂上郎女,題詠,奈良,地名","#[訓異]
かりたかの,[寛]かるたかの,
たかまとやまを[寛],
たかみかも[寛],
いでくるつきの,[寛]いてくるつきの,
おそくてるらむ[寛],
" "#[番号]06/0982","#[題詞](大伴坂上郎女月歌三首)","#[原文]烏玉乃 夜霧立而 不清 照有月夜乃 見者悲沙","#[訓読]ぬばたまの夜霧の立ちておほほしく照れる月夜の見れば悲しさ","#[仮名],ぬばたまの,よぎりのたちて,おほほしく,てれるつくよの,みればかなしさ","#[左注]","#[校異]玉乃 [類][紀](塙) 玉","#[事項],雑歌,作者:坂上郎女,題詠,枕詞","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よぎりのたちて,[寛]よきりのたちて,
おほほしく,[寛]すまさるに,
てれるつくよの,[寛]てれるつきよの,
みればかなしさ,[寛]みれはかなしさ,
" "#[番号]06/0983","#[題詞](大伴坂上郎女月歌三首)","#[原文]山葉 左佐良榎<壮>子 天原 門度光 見良久之好藻","#[訓読]山の端のささら愛壮士天の原門渡る光見らくしよしも","#[仮名],やまのはの,ささらえをとこ,あまのはら,とわたるひかり,みらくしよしも","#[左注]右一首歌或云 月別名曰佐散良衣壮<士>也 縁此辞作此歌","#[校異]牡 -> 壮 [紀][温][矢] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 哥 / 此歌 [西] 此謌 / <> -> 士 [類][紀][細]","#[事項],雑歌,作者:坂上郎女,題詠,月","#[訓異]
やまのはの[寛],
ささらえをとこ[寛],
あまのはら[寛],
とわたるひかり[寛],
みらくしよしも[寛],
" "#[番号]06/0984","#[題詞]豊前<國>娘子月歌一首 [娘子字曰大宅姓氏未詳也]","#[原文]雲隠 去方乎無跡 吾戀 月哉君之 欲見為流","#[訓読]雲隠り去方をなみと我が恋ふる月をや君が見まく欲りする","#[仮名],くもがくり,ゆくへをなみと,あがこふる,つきをやきみが,みまくほりする","#[左注]","#[校異]<> -> 國 [西(右書)][紀][細][温] / 歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:豊前国娘子,大宅,題詠,恋情,相聞","#[訓異]
くもがくり,[寛]くもかくれ,
ゆくへをなみと,[寛]ゆくへをなしと,
あがこふる,[寛]わかこふる,
つきをやきみが,[寛]つきやきみかし,
みまくほりする[寛],
" "#[番号]06/0985","#[題詞]湯原王月歌二首","#[原文]天尓座 月讀<壮>子 幣者将為 今夜乃長者 五百夜継許増","#[訓読]天にます月読壮士賄はせむ今夜の長さ五百夜継ぎこそ","#[仮名],あめにます,つくよみをとこ,まひはせむ,こよひのながさ,いほよつぎこそ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 哥 / 牡 -> 壮 [紀][温][矢]","#[事項],雑歌,作者:湯原王,題詠,相聞","#[訓異]
あめにます[寛],
つくよみをとこ,[寛]つきよみをとこ,
まひはせむ[寛],
こよひのながさ,[寛]こよひのなかさ,
いほよつぎこそ,[寛]いほよつきこそ,
" "#[番号]06/0986","#[題詞](湯原王月歌二首)","#[原文]愛也思 不遠里乃 君来跡 大能備尓鴨 月之照有","#[訓読]はしきやし間近き里の君来むとおほのびにかも月の照りたる","#[仮名],はしきやし,まちかきさとの,きみこむと,おほのびにかも,つきのてりたる","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:湯原王,題詠,恋情,相聞","#[訓異]
はしきやし,[寛]よしえやし,
まちかきさとの[寛],
きみこむと,[寛]きみくやと,
おほのびにかも,[寛]おほのひにかも,
つきのてりたる,[寛]つきのてらせる,
" "#[番号]06/0987","#[題詞]藤原八束朝臣月歌一首","#[原文]待難尓 余為月者 妹之著 三笠山尓 隠而有来","#[訓読]待ちかてに我がする月は妹が着る御笠の山に隠りてありけり","#[仮名],まちかてに,わがするつきは,いもがきる,みかさのやまに,こもりてありけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:藤原八束,題詠,恋情,相聞,比喩,奈良,地名,枕詞","#[訓異]
まちかてに[寛],
わがするつきは,[寛]わかするつきは,
いもがきる,[寛]いもかきる,
みかさのやまに[寛],
こもりてありけり,[寛]かくれてありけり,
" "#[番号]06/0988","#[題詞]市原王宴祷父安貴王歌一首","#[原文]春草者 後<波>落易 巌成 常磐尓座 貴吾君","#[訓読]春草は後はうつろふ巌なす常盤にいませ貴き我が君","#[仮名],はるくさは,のちはうつろふ,いはほなす,ときはにいませ,たふときあがきみ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 者 -> 波 [類][紀][古]","#[事項],雑歌,作者:市原王,安貴王,寿歌,父,儒教,永遠,植物","#[訓異]
はるくさは[寛],
のちはうつろふ,[寛]のちはかれやすし,
いはほなす[寛],
ときはにいませ[寛],
たふときあがきみ,[寛]かしこきわかきみ,
" "#[番号]06/0989","#[題詞]湯原王打酒歌一首","#[原文]焼刀之 加度打放 大夫之 祷豊御酒尓 吾酔尓家里","#[訓読]焼太刀のかど打ち放ち大夫の寿く豊御酒に我れ酔ひにけり","#[仮名],やきたちの,かどうちはなち,ますらをの,ほくとよみきに,われゑひにけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:湯原王,謝酒,宴席","#[訓異]
やきたちの[寛],
かどうちはなち,[寛]かとうちはなつ,
ますらをの[寛],
ほくとよみきに,[寛]つくとよみきに,
われゑひにけり,[寛]われゑいにけり,
" "#[番号]06/0990","#[題詞]紀朝臣鹿人<跡>見茂岡之松樹歌一首","#[原文]茂岡尓 神佐備立而 榮有 千代松樹乃 歳之不知久","#[訓読]茂岡に神さび立ちて栄えたる千代松の木の年の知らなく","#[仮名],しげをかに,かむさびたちて,さかえたる,ちよまつのきの,としのしらなく","#[左注]","#[校異]<> -> 跡 [紀][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:紀鹿人,桜井,奈良,土地讃美,大伴荘園,植物,地名","#[訓異]
しげをかに,[寛]しけをかに,
かむさびたちて,[寛]かみさひたちて,
さかえたる,[寛]さかへたる,
ちよまつのきの[寛],
としのしらなく[寛],
" "#[番号]06/0991","#[題詞]同鹿人至泊瀬河邊作歌一首","#[原文]石走 多藝千流留 泊瀬河 絶事無 亦毛来而将見","#[訓読]石走りたぎち流るる泊瀬川絶ゆることなくまたも来て見む","#[仮名],いはばしり,たぎちながるる,はつせがは,たゆることなく,またもきてみむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:紀鹿人,桜井,奈良,土地讃美,大伴荘園,地名","#[訓異]
いはばしり,[寛]いしはしる,
たぎちながるる,[寛]たきちなかるる,
はつせがは,[寛]はつせかは,
たゆることなく[寛],
またもきてみむ[寛],
" "#[番号]06/0992","#[題詞]大伴坂上郎女詠元興寺之里歌一首","#[原文]古郷之 飛鳥者雖有 青丹吉 平城之明日香乎 見樂思好裳","#[訓読]故郷の飛鳥はあれどあをによし奈良の明日香を見らくしよしも","#[仮名],ふるさとの,あすかはあれど,あをによし,ならのあすかを,みらくしよしも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:坂上郎女,飛鳥,奈良,土地讃美,望郷,地名","#[訓異]
ふるさとの[寛],
あすかはあれど,[寛]あすかはあれと,
あをによし[寛],
ならのあすかを[寛],
みらくしよしも[寛],
" "#[番号]06/0993","#[題詞]同坂上郎女初月歌一首","#[原文]月立而 直三日月之 眉根掻 氣長戀之 君尓相有鴨","#[訓読]月立ちてただ三日月の眉根掻き日長く恋ひし君に逢へるかも","#[仮名],つきたちて,ただみかづきの,まよねかき,けながくこひし,きみにあへるかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:坂上郎女,相聞","#[訓異]
つきたちて[寛],
ただみかづきの,[寛]たたみかつきの,
まよねかき,[寛]まゆねかき,
けながくこひし,[寛]けなかくこひし,
きみにあへるかも[寛],
" "#[番号]06/0994","#[題詞]大伴宿祢家持初月歌一首","#[原文]振仰而 若月見者 一目見之 人乃眉引 所念可聞","#[訓読]振り放けて三日月見れば一目見し人の眉引き思ほゆるかも","#[仮名],ふりさけて,みかづきみれば,ひとめみし,ひとのまよびき,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:大伴家持,恋情,相聞,題詠,練習","#[訓異]
ふりさけて[寛],
みかづきみれば,[寛]みかつきみれは,
ひとめみし[寛],
ひとのまよびき,[寛]ひとのまよひき,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]06/0995","#[題詞]大伴坂上郎女宴親族歌一首","#[原文]如是為乍 遊飲與 草木尚 春者生管 秋者落去","#[訓読]かくしつつ遊び飲みこそ草木すら春は咲きつつ秋は散りゆく","#[仮名],かくしつつ,あそびのみこそ,くさきすら,はるはさきつつ,あきはちりゆく","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:坂上郎女,宴席,植物","#[訓異]
かくしつつ[寛],
あそびのみこそ,[寛]あそひのむとも,
くさきすら[寛],
はるはさきつつ,[寛]はるはもえつつ,
あきはちりゆく[寛],
" "#[番号]06/0996","#[題詞]六年甲戌海犬養宿祢岡麻呂應詔歌一首","#[原文]御民吾 生有驗在 天地之 榮時尓 相樂念者","#[訓読]御民我れ生ける験あり天地の栄ゆる時にあへらく思へば","#[仮名],みたみわれ,いけるしるしあり,あめつちの,さかゆるときに,あへらくおもへば","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:海犬養岡麻呂,応詔,天平6年,年紀","#[訓異]
みたみわれ,[寛]みたからの,
いけるしるしあり,[寛]わかいけるしるしあり,
あめつちの[寛],
さかゆるときに[寛],
あへらくおもへば,[寛]あふらくおもへは,
" "#[番号]06/0997","#[題詞]春三月幸于難波宮之時歌六首","#[原文]住吉乃 粉濱之四時美 開藻不見 隠耳哉 戀度南","#[訓読]住吉の粉浜のしじみ開けもみず隠りてのみや恋ひわたりなむ","#[仮名],すみのえの,こはまのしじみ,あけもみず,こもりてのみや,こひわたりなむ","#[左注]右一首作者未詳","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,行幸,羈旅,望郷,恋情,難波,大阪,天平6年3月,年紀,地名,動物","#[訓異]
すみのえの[寛],
こはまのしじみ,[寛]こはまのししみ,
あけもみず,[寛]あけもみす,
こもりてのみや,[寛]しのひてのみや,
こひわたりなむ[寛],
" "#[番号]06/0998","#[題詞](春三月幸于難波宮之時歌六首)","#[原文]如眉 雲居尓所見 阿波乃山 懸而榜舟 泊不知毛","#[訓読]眉のごと雲居に見ゆる阿波の山懸けて漕ぐ舟泊り知らずも","#[仮名],まよのごと,くもゐにみゆる,あはのやま,かけてこぐふね,とまりしらずも","#[左注]右一首船王作","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:船王,行幸,羈旅,大阪,難波,黒人,不安,恋情,天平6年3月,年紀,地名","#[訓異]
まよのごと,[寛]まゆのこと,
くもゐにみゆる[寛],
あはのやま[寛],
かけてこぐふね,[寛]かけてこくふね,
とまりしらずも,[寛]とまりしらすも,
" "#[番号]06/0999","#[題詞](春三月幸于難波宮之時歌六首)","#[原文]従千<沼>廻 雨曽零来 四八津之白水郎 <綱手>乾有 沾将堪香聞","#[訓読]茅渟廻より雨ぞ降り来る四極の海人綱手干したり濡れもあへむかも","#[仮名],ちぬみより,あめぞふりくる,しはつのあま,つなでほしたり,ぬれもあへむかも","#[左注]右一首遊覧住吉濱還宮之時道上守部王應詔作歌","#[校異]紹 -> 沼 [元][類][紀] / 網手綱 -> 綱手 [万葉集古義] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:守部王,行幸,羈旅,長意吉麻呂,大阪,天平6年3月,年紀,地名,応詔","#[訓異]
ちぬみより,[寛]ちぬわより,
あめぞふりくる,[寛]あめそふりくる,
しはつのあま[寛],
つなでほしたり,[寛]あみてなはほせり,
ぬれもあへむかも,[寛]ぬれてたへむかも,
" "#[番号]06/1000","#[題詞](春三月幸于難波宮之時歌六首)","#[原文]兒等之有者 二人将聞乎 奥渚尓 鳴成多頭乃 暁之聲","#[訓読]子らしあらばふたり聞かむを沖つ洲に鳴くなる鶴の暁の声","#[仮名],こらしあらば,ふたりきかむを,おきつすに,なくなるたづの,あかときのこゑ","#[左注]右一首守部王作","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:守部王,行幸,大阪,恋情,望郷,天平6年3月,年紀,地名","#[訓異]
こらしあらば,[寛]こらかあらは,
ふたりきかむを[寛],
おきつすに[寛],
なくなるたづの,[寛]なくなるたつの,
あかときのこゑ,[寛]あかつきのこゑ
" "#[番号]06/1001","#[題詞](春三月幸于難波宮之時歌六首)","#[原文]大夫者 御<猟>尓立之 未通女等者 赤裳須素引 清濱備乎","#[訓読]大夫は御狩に立たし娘子らは赤裳裾引く清き浜びを","#[仮名],ますらをは,みかりにたたし,をとめらは,あかもすそひく,きよきはまびを","#[左注]右一首山部宿祢赤人作","#[校異]臈 -> 猟 [西(左貼紙)][元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,行幸,大阪,難波,従駕,宮廷歌人,天平6年3月,年紀,地名","#[訓異]
ますらをは[寛],
みかりにたたし[寛],
をとめらは[寛],
あかもすそひく,[寛]あかもすそひき,
きよきはまびを,[寛]きよきはまへを,
" "#[番号]06/1002","#[題詞](春三月幸于難波宮之時歌六首)","#[原文]馬之歩 押止駐余 住吉之 岸乃黄土 尓保比而将去","#[訓読]馬の歩み抑へ留めよ住吉の岸の埴生ににほひて行かむ","#[仮名],うまのあゆみ,おさへとどめよ,すみのえの,きしのはにふに,にほひてゆかむ","#[左注]右一首安<倍>朝臣豊継作","#[校異]部 -> 倍 [元][細]","#[事項],雑歌,作者:安倍豊継,行幸,羈旅,土地讃美,大阪,難波,天平6年3月,地名","#[訓異]
うまのあゆみ[寛],
おさへとどめよ,[寛]をしてととめよ,
すみのえの[寛],
きしのはにふに[寛],
にほひてゆかむ[寛],
" "#[番号]06/1003","#[題詞]筑後守外従五位下葛井連大成遥見海人釣船作歌一首","#[原文]海D嬬 玉求良之 奥浪 恐海尓 船出為利所見","#[訓読]海女娘子玉求むらし沖つ波畏き海に舟出せり見ゆ","#[仮名],あまをとめ,たまもとむらし,おきつなみ,かしこきうみに,ふなでせりみゆ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:葛井大成,羈旅,佐賀,土地,叙景,漁夫,地名,属目","#[訓異]
あまをとめ[寛],
たまもとむらし[寛],
おきつなみ[寛],
かしこきうみに[寛],
ふなでせりみゆ,[寛]ふなてせりみゆ,
" "#[番号]06/1004","#[題詞]按作村主益人歌一首","#[原文]不所念 来座君乎 <佐>保<川>乃 河蝦不令聞 還都流香聞","#[訓読]思ほえず来ましし君を佐保川のかはづ聞かせず帰しつるかも","#[仮名],おもほえず,きまししきみを,さほがはの,かはづきかせず,かへしつるかも","#[左注]右内<匠>大属按作村主益人聊設<飲饌>以饗長官佐為王 未及日斜王既還歸 於時益人怜惜不Q之歸仍作此歌","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 左 -> 佐 [元][類][紀] / 河 -> 川 [元][類][紀] / 匠寮 -> 匠 [元][紀] / 饌飲 -> 飲饌 [元][紀] / 歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:按作益人,宴席,主人,もてなし,佐為王,別れ,哀惜,地名,奈良","#[訓異]
おもほえず,[寛]おもほえす,
きまししきみを,[寛]きませるきみを,
さほがはの,[寛]さほかはの,
かはづきかせず,[寛]かはつきかせて,
かへしつるかも,[寛]かへりつるかも,
" "#[番号]06/1005","#[題詞]八年丙子夏六月幸于芳野離宮之時山<邊>宿祢赤人應詔作歌一首[并短歌]","#[原文]八隅知之 我大王之 見給 芳野宮者 山高 雲曽軽引 河速弥 湍之聲曽清寸 神佐備而 見者貴久 宜名倍 見者清之 此山<乃> 盡者耳社 此河乃 絶者耳社 百師紀能 大宮所 止時裳有目","#[訓読]やすみしし 我が大君の 見したまふ 吉野の宮は 山高み 雲ぞたなびく 川早み 瀬の音ぞ清き 神さびて 見れば貴く よろしなへ 見ればさやけし この山の 尽きばのみこそ この川の 絶えばのみこそ ももしきの 大宮所 やむ時もあらめ","#[仮名],やすみしし,わがおほきみの,めしたまふ,よしののみやは,やまたかみ,くもぞたなびく,かははやみ,せのおとぞきよき,かむさびて,みればたふとき,よろしなへ,みればさやけし,このやまの,つきばのみこそ,このかはの,たえばのみこそ,ももしきの,おほみやところ,やむときもあらめ","#[左注]","#[校異]部 -> 邊 [元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短哥 / 久 (楓) 之 / 之 -> 乃 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,行幸,従駕,応詔,吉野,離宮,宮廷讃美,天平8年6月,年紀,地名","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおおきみの,
めしたまふ,[寛]みせたまふ,
よしののみやは[寛],
やまたかみ[寛],
くもぞたなびく,[寛]くもそたなひく,
かははやみ[寛],
せのおとぞきよき,[寛]せのおとそきよき,
かむさびて,[寛]かみさひて,
みればたふとき,[寛]みれはたふとく,
よろしなへ[寛],
みればさやけし,[寛]みれはさやけし,
このやまの[寛],
つきばのみこそ,[寛]つきはのみこそ,
このかはの[寛],
たえばのみこそ,[寛]たえはのみこそ,
ももしきの[寛],
おほみやところ[寛],
やむときもあらめ[寛],
" "#[番号]06/1006","#[題詞](八年丙子夏六月幸于芳野離宮之時山<邊>宿祢赤人應詔作歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]自神代 芳野宮尓 蟻通 高所知者 山河乎吉三","#[訓読]神代より吉野の宮にあり通ひ高知らせるは山川をよみ","#[仮名],かむよより,よしののみやに,ありがよひ,たかしらせるは,やまかはをよみ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:山部赤人,行幸,従駕,応詔,吉野,離宮,讃美,天平8年6月,年紀,地名","#[訓異]
かむよより,[寛]かみよより,
よしののみやに[寛],
ありがよひ,[寛]ありかよひ,
たかしらせるは,[寛]たかくしれるは,
やまかはをよみ[寛],
" "#[番号]06/1007","#[題詞]市原王悲獨子歌一首","#[原文]言不問 木尚妹與兄 有云乎 直獨子尓 有之苦者","#[訓読]言問はぬ木すら妹と兄とありといふをただ独り子にあるが苦しさ","#[仮名],こととはぬ,きすらいもとせと,ありといふを,ただひとりこに,あるがくるしさ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:市原王,独り,悲哀","#[訓異]
こととはぬ[寛],
きすらいもとせと,[寛]きすらいもとせ,
ありといふを[寛],
ただひとりこに,[寛]たたひとりこに,
あるがくるしさ,[寛]あるかくるしさ,
" "#[番号]06/1008","#[題詞]忌部首黒麻呂恨友し来歌一首","#[原文]山之葉尓 不知世經月乃 将出香常 我待君之 夜者更降管","#[訓読]山の端にいさよふ月の出でむかと我が待つ君が夜はくたちつつ","#[仮名],やまのはに,いさよふつきの,いでむかと,わがまつきみが,よはくたちつつ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:忌部黒麻呂,怨恨,待つ,宴席","#[訓異]
やまのはに[寛],
いさよふつきの[寛],
いでむかと,[寛]いてむかと,
わがまつきみが,[寛]わかまつきみか,
よはくたちつつ,[寛]よはふけにつつ,
" "#[番号]06/1009","#[題詞]冬十一月左大辨葛城王等賜姓橘氏之時御製歌一首","#[原文]橘者 實左倍花左倍 其葉左倍 枝尓霜雖降 益常葉之<樹>","#[訓読]橘は実さへ花さへその葉さへ枝に霜降れどいや常葉の木","#[仮名],たちばなは,みさへはなさへ,そのはさへ,えにしもふれど,いやとこはのき","#[左注]右冬十一月九日 従三位葛城王従四位上佐為王等 辞皇族之高名 賜外家之橘姓已訖 於時太上天皇々后共在于皇后宮 以為肆宴而即御製賀橘之歌 并賜御酒宿祢等也 或云 此歌一首太上天皇御歌 但天皇々后御歌各有一首者 其歌遺落未得<探>求焉 今檢案内 八年十一月九日葛城王等願橘宿祢之姓上表 以十七日依表乞賜橘宿祢","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 樹 [西(上書訂正)][元][類] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 此歌 [西] 此謌 [西(訂正)] 此歌 / 御歌 [西] 御哥 [西(訂正)] 御歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 其歌 [西] 其謌 [西(訂正)] 其歌 / 採 -> 探 [元][紀]","#[事項],雑歌,作者:聖武天皇,元正天皇,作者異伝,讃美,宴席,寿歌,祝い,天平8年11月,植物","#[訓異]
たちばなは,[寛]たちはなは,
みさへはなさへ[寛],
そのはさへ[寛],
えにしもふれど,[寛]えたにしもおけと,
いやとこはのき,[寛]ましとこはのき,
" "#[番号]06/1010","#[題詞]橘宿祢奈良麻呂應詔歌一首","#[原文]奥山之 真木葉凌 零雪乃 零者雖益 地尓落目八方","#[訓読]奥山の真木の葉しのぎ降る雪の降りは増すとも地に落ちめやも","#[仮名],おくやまの,まきのはしのぎ,ふるゆきの,ふりはますとも,つちにおちめやも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:橘奈良麻呂,応詔,寿歌,祝い,天平8年11月,植物","#[訓異]
おくやまの[寛],
まきのはしのぎ,[寛]まきのはしのき,
ふるゆきの[寛],
ふりはますとも[寛],
つちにおちめやも[寛],
" "#[番号]06/1011","#[題詞]冬十二月十二日歌N所之諸王臣子等集葛井連廣成家宴歌二首 / 比来古N盛興 古歳漸晩 理宜共盡古情同唱<古>歌 故擬此趣<輙>獻古曲二節 風流意氣之士儻有此集之中 争發念心々和古體","#[原文]我屋戸之 梅咲有跡 告遣者 来云似有 散去十方吉","#[訓読]我が宿の梅咲きたりと告げ遣らば来と言ふに似たり散りぬともよし","#[仮名],わがやどの,うめさきたりと,つげやらば,こといふににたり,ちりぬともよし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 宴歌 [西] 宴謌 [西(訂正)] 宴歌 / 此 -> 古 [元(赭)] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 輙 [西(右書)][類][紀]","#[事項],雑歌,古歌,唱和,伝誦,葛井広成,風流,天平8年12月12日,年紀,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
うめさきたりと[寛],
つげやらば,[寛]つけやらは,
こといふににたり,[寛]こてふににたり,
ちりぬともよし[寛],
" "#[番号]06/1012","#[題詞](冬十二月十二日歌N所之諸王臣子等集葛井連廣成家宴歌二首 / 比来古N盛興 古歳漸晩 理宜共盡古情同唱<古>歌 故擬此趣<輙>獻古曲二節 風流意氣之士儻有此集之中 争發念心々和古體)","#[原文]春去者 乎呼理尓乎呼里 鴬<之 鳴>吾嶋曽 不息通為","#[訓読]春さればををりにををり鴬の鳴く我が山斎ぞやまず通はせ","#[仮名],はるされば,ををりにををり,うぐひすの,なくわがしまぞ,やまずかよはせ","#[左注]","#[校異]<> -> 之鳴 [西(左書)][元][類][紀]","#[事項],雑歌,古歌,唱和,伝誦,葛井広成,風流,天平8年12月12日,年紀,動物","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
ををりにををり[寛],
うぐひすの,[寛]うくひすの,
なくわがしまぞ,[寛]なくわかしまそ,
やまずかよはせ,[寛]やますかよはせ,
" "#[番号]06/1013","#[題詞]九年丁丑春正月橘少卿并諸大夫等集弾正尹門部王家宴歌二首","#[原文]豫 公来座武跡 知麻世婆 門尓屋戸尓毛 珠敷益乎","#[訓読]あらかじめ君来まさむと知らませば門に宿にも玉敷かましを","#[仮名],あらかじめ,きみきまさむと,しらませば,かどにやどにも,たましかましを","#[左注]右一首主人門部王 [後賜姓大原真人氏也]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:門部王,宴席,歓迎,天平9年1月,年紀","#[訓異]
あらかじめ,[寛]かねてより,
きみきまさむと[寛],
しらませば,[寛]しらませは,
かどにやどにも,[寛]かとにやとにも,
たましかましを[寛],
" "#[番号]06/1014","#[題詞](九年丁丑春正月橘少卿并諸大夫等集弾正尹門部王家宴歌二首)","#[原文]前日毛 昨日毛<今>日毛 雖見 明日左倍見巻 欲寸君香聞","#[訓読]一昨日も昨日も今日も見つれども明日さへ見まく欲しき君かも","#[仮名],をとつひも,きのふもけふも,みつれども,あすさへみまく,ほしききみかも","#[左注]右一首橘宿祢文成 [即少卿之子也]","#[校異]尓 -> 今 [西(貼紙)][元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:橘文成,宴席,主人讃美,天平9年","#[訓異]
をとつひも,[寛]さきつひも,
きのふもけふも[寛],
みつれども,[寛]みつれとも,
あすさへみまく[寛],
ほしききみかも[寛],
" "#[番号]06/1015","#[題詞]榎井王後追和歌一首 [志貴親王之子也]","#[原文]玉敷而 待益欲利者 多鷄蘇香仁 来有今夜四 樂所念","#[訓読]玉敷きて待たましよりはたけそかに来る今夜し楽しく思ほゆ","#[仮名],たましきて,またましよりは,たけそかに,きたるこよひし,たのしくおもほゆ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:榎井王,追和,門部王,宴席","#[訓異]
たましきて[寛],
またましよりは[寛],
たけそかに[寛],
きたるこよひし[寛],
たのしくおもほゆ,[寛]たのくおもほゆ,
" "#[番号]06/1016","#[題詞]春二月諸大夫等集左少辨巨勢宿奈麻呂朝臣家宴歌一首","#[原文]海原之 遠渡乎 遊士之 遊乎将見登 莫津左比曽来之","#[訓読]海原の遠き渡りを風流士の遊ぶを見むとなづさひぞ来し","#[仮名],うなはらの,とほきわたりを,みやびをの,あそぶをみむと,なづさひぞこし","#[左注]右一首書白紙懸著屋壁也 題云 蓬莱仙媛所<化>嚢蘰 為風流秀才之士矣 斯凡客不所望見哉","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 化 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,巨勢宿奈麻呂,宴席,風流,神仙,遊び,天平9年2月","#[訓異]
うなはらの[寛],
とほきわたりを[寛],
みやびをの,[寛]たわれをの,
あそぶをみむと,[寛]あそふをみむと,
なづさひぞこし,[寛]なつさひそこし,
" "#[番号]06/1017","#[題詞]夏四月大伴坂上郎女奉拝賀茂神社之時便超相坂山望見近江海而晩頭還来作歌一首","#[原文]木綿疊 手向乃山乎 今日<越>而 何野邊尓 廬将為<吾>等","#[訓読]木綿畳手向けの山を今日越えていづれの野辺に廬りせむ我れ","#[仮名],ゆふたたみ,たむけのやまを,けふこえて,いづれののへに,いほりせむわれ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 超 -> 越 [元][類] / 子 -> 吾 [元][類][紀][細]","#[事項],雑歌,作者:坂上郎女,京都,羈旅,黒人,旅愁,天平9年4月","#[訓異]
ゆふたたみ[寛],
たむけのやまを[寛],
けふこえて[寛],
いづれののへに,[寛]いつれののへに,
いほりせむわれ,[寛]いほりせむこら,
" "#[番号]06/1018","#[題詞]十年戊寅元興寺之僧自嘆歌一首","#[原文]白珠者 人尓不所知 不知友縦 雖不知 吾之知有者 不知友任意","#[訓読]白玉は人に知らえず知らずともよし知らずとも我れし知れらば知らずともよし","#[仮名],しらたまは,ひとにしらえず,しらずともよし,しらずとも,われししれらば,しらずともよし","#[左注]右一首<或云> 元興寺之僧獨覺多智 未有顯聞 衆諸<狎>侮 因此僧作此歌 自嘆身才也","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 或云 [元][細] / 押 -> 狎 [代匠記精撰本] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:元興寺僧,孤高,天平10年,年紀","#[訓異]
しらたまは[寛],
ひとにしらえず,[寛]ひとにしられす,
しらずともよし,[寛]しらすともよし,
しらずとも,[寛]しらすとも,
われししれらば,[寛]われししれらは,
しらずともよし,[寛]しらすともよし,
" "#[番号]06/1019","#[題詞]石上乙麻呂卿配土左國之時歌三首[并短歌]","#[原文]石上 振乃尊者 弱女乃 或尓縁而 馬自物 縄取附 肉自物 弓笶圍而 王 命恐 天離 夷部尓退 古衣 又打山従 還来奴香聞","#[訓読]石上 布留の命は 手弱女の 惑ひによりて 馬じもの 縄取り付け 獣じもの 弓矢囲みて 大君の 命畏み 天離る 鄙辺に罷る 古衣 真土の山ゆ 帰り来ぬかも","#[仮名],いそのかみ,ふるのみことは,たわやめの,まどひによりて,うまじもの,なはとりつけ,ししじもの,ゆみやかくみて,おほきみの,みことかしこみ,あまざかる,ひなへにまかる,ふるころも,まつちのやまゆ,かへりこぬかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短哥 [西(訂正)] 短歌","#[事項],雑歌,石上乙麻呂,流罪,久米若賣,密通,天平11年,年紀,土佐,高知,同情,歌語り","#[訓異]
いそのかみ[寛],
ふるのみことは[寛],
たわやめの[寛],
まどひによりて,[寛]まとひによりて,
うまじもの,[寛]むましもの,
なはとりつけ,[寛]なはとりつけて,
ししじもの,[寛]しししもの,
ゆみやかくみて,[寛]ゆみやかこみて,
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなへにまかる,[寛]ひなへにまかり,
ふるころも[寛],
まつちのやまゆ,[寛]まつちやまより,
かへりこぬかも[寛],
" "#[番号]06/1020,1021","#[題詞](石上乙麻呂卿配土佐國之時歌三首[并短歌])","#[原文]王 命恐見 刺<並> 國尓出座 <愛>耶 吾背乃公<矣> 繋巻裳 湯々石恐石 住吉乃 荒人神 <船>舳尓 牛吐賜 付賜将 嶋之<埼>前 依賜将 礒乃埼前 荒浪 風尓不<令>遇 <莫>管見 身疾不有 急 令變賜根 本國部尓","#[訓読]大君の 命畏み さし並ぶ 国に出でます はしきやし 我が背の君を かけまくも ゆゆし畏し 住吉の 現人神 船舳に うしはきたまひ 着きたまはむ 島の崎々 寄りたまはむ 磯の崎々 荒き波 風にあはせず 障みなく 病あらせず 速けく 帰したまはね もとの国辺に","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,さしならぶ,くににいでます,はしきやし,わがせのきみを,かけまくも,ゆゆしかしこし,すみのえの,あらひとがみ,ふなのへに,うしはきたまひ,つきたまはむ,しまのさきざき,よりたまはむ,いそのさきざき,あらきなみ,かぜにあはせず,つつみなく,やまひあらせず,すむやけく,かへしたまはね,もとのくにへに","#[左注]","#[校異]並之 -> 並 [元][紀][細] / <> -> 愛 [万葉集注釈] / 矣 [西(上書訂正)][元][紀][細] / U -> 船 [元][紀][細] / 崎 -> 埼 [元][細] / 合 -> 令 [元][紀][細] / 草 -> 莫 [玉勝間]","#[事項],雑歌,石上乙麻呂,流罪,久米若賣,密通,天平11年,年紀,土佐,高知,同情,歌語り","#[訓異]
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
さしならぶ,[寛]さしなみし,
くににいでます,[寛]くににいてますや,
はしきやし,
わがせのきみを,[寛]わかせのきみを,
かけまくも[寛],
ゆゆしかしこし[寛],
すみのえの[寛],
あらひとがみ,[寛]あらひとかみの,
ふなのへに[寛],
うしはきたまひ[寛],
つきたまはむ[寛],
しまのさきざき,[寛]しまのさきさき,
よりたまはむ[寛],
いそのさきざき,[寛]いそのさきさき,
あらきなみ,[寛]あらなみの,
かぜにあはせず,[寛]かせにあはせす,
つつみなく,[寛]くさつつみ,
やまひあらせず,[寛]やまひあらせす,
すむやけく,[寛]すみやかに,
かへしたまはね,[寛]かはりたまはね,
もとのくにへに[寛],
" "#[番号]06/1022","#[題詞](石上乙麻呂卿配土佐國之時歌三首[并短歌])","#[原文]父公尓 吾者真名子叙 妣刀自尓 吾者愛兒叙 参昇 八十氏人乃 手向<為> 恐乃坂尓 <幣>奉 吾者叙追 遠杵土左道矣","#[訓読]父君に 我れは愛子ぞ 母刀自に 我れは愛子ぞ 参ゐ上る 八十氏人の 手向けする 畏の坂に 幣奉り 我れはぞ追へる 遠き土佐道を","#[仮名],ちちぎみに,われはまなごぞ,ははとじに,われはまなごぞ,まゐのぼる,やそうぢひとの,たむけする,かしこのさかに,ぬさまつり,われはぞおへる,とほきとさぢを","#[左注]","#[校異]為等 -> 為 [元][細] / 弊 -> 幣 [元][細]","#[事項],雑歌,石上乙麻呂,流罪,久米若賣,密通,天平11年,土佐,高知,同情,歌語り","#[訓異]
ちちぎみに,[寛]ちちきみに,
われはまなごぞ,[寛]われはまなこそ,
ははとじに,[寛]ははとしに,
われはまなごぞ,[寛]われはまなこそ,
まゐのぼる,[寛]まうのほり,
やそうぢひとの,[寛]やそうちひとの,
たむけする,[寛]たむけすと,
かしこのさかに[寛],
ぬさまつり[寛],
われはぞおへる,[寛]われはそおへる,
とほきとさぢを,[寛]とほきとさちを,
" "#[番号]06/1023","#[題詞](石上乙麻呂卿配土佐國之時歌三首[并短歌])反歌一首","#[原文]大埼乃 神之小濱者 雖小 百船<純>毛 過迹云莫國","#[訓読]大崎の神の小浜は狭けども百舟人も過ぐと言はなくに","#[仮名],おほさきの,かみのをばまは,せばけども,ももふなびとも,すぐといはなくに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 能 -> 純 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,石上乙麻呂,流罪,久米若賣,密通,天平11年,年紀,土佐,高知,同情,歌語り","#[訓異]
おほさきの[寛],
かみのをばまは,[寛]かみのをはまは,
せばけども,[寛]せはけれと,
ももふなびとも,[寛]ももふなひとも,
すぐといはなくに,[寛]すくといはなくに,
" "#[番号]06/1024","#[題詞]秋八月廿日宴右大臣橘家歌四首","#[原文]長門有 奥津借嶋 奥真經而 吾念君者 千歳尓母我毛","#[訓読]長門なる沖つ借島奥まへて我が思ふ君は千年にもがも","#[仮名],ながとなる,おきつかりしま,おくまへて,あがもふきみは,ちとせにもがも","#[左注]右一首長門守巨曽倍對馬朝臣","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:巨曽倍對馬,橘諸兄,天平11年8月20日,年紀,主人讃美,宴席,山口,長門,長寿,地名","#[訓異]
ながとなる,[寛]なかとなる,
おきつかりしま[寛],
おくまへて,[寛]おきまへて,
あがもふきみは,[寛]わかおもふきみは,
ちとせにもがも,[寛]ちとせにもかも,
" "#[番号]06/1025","#[題詞](秋八月廿日宴右大臣橘家歌四首)","#[原文]奥真經而 吾乎念流 吾背子者 千<年>五百歳 有巨勢奴香聞","#[訓読]奥まへて我れを思へる我が背子は千年五百年ありこせぬかも","#[仮名],おくまへて,われをおもへる,わがせこは,ちとせいほとせ,ありこせぬかも","#[左注]右一首右大臣和歌","#[校異]歳 -> 年 [元][類][紀] / 歌 [西] 哥 [西(訂正)] 謌","#[事項],雑歌,作者:橘諸兄,天平11年8月20日,年紀,宴席,長寿","#[訓異]
おくまへて,[寛]おきまへて,
われをおもへる[寛],
わがせこは,[寛]わかせこは,
ちとせいほとせ[寛],
ありこせぬかも[寛],
" "#[番号]06/1026","#[題詞](秋八月廿日宴右大臣橘家歌四首)","#[原文]百礒城乃 大宮人者 今日毛鴨 暇<无>跡 里尓不<出>将有","#[訓読]ももしきの大宮人は今日もかも暇をなみと里に出でずあらむ","#[仮名],ももしきの,おほみやひとは,けふもかも,いとまをなみと,さとにいでずあらむ","#[左注]右一首右大臣傳云 故豊嶋采女歌","#[校異]無 -> 无 [元][類] / 去 -> 出 [類][古] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:豊島采女,伝誦,橘諸兄,宴席,天平11年8月20日,年紀","#[訓異]
ももしきの[寛],
おほみやひとは[寛],
けふもかも[寛],
いとまをなみと,[寛]いとまなけれと,
さとにいでずあらむ,[寛]さとにゆかさらむ,
" "#[番号]06/1027","#[題詞](秋八月廿日宴右大臣橘家歌四首)","#[原文]橘 本尓道履 八衢尓 物乎曽念 人尓不所知","#[訓読]橘の本に道踏む八衢に物をぞ思ふ人に知らえず","#[仮名],たちばなの,もとにみちふむ,やちまたに,ものをぞおもふ,ひとにしらえず","#[左注]右一首右大辨高<橋>安麻呂卿語云 故豊嶋采女之作也 但或本云三方沙弥戀妻苑臣作歌也 然則豊嶋采女當時當所口吟此歌歟","#[校異]橘 -> 橋 [西(訂正)][元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 此歌 [西] 此謌 [西(訂正)] 此歌","#[事項],雑歌,作者:豊島采女,三方沙弥,伝誦,高橋安麻呂,宴席,古歌,植物,鬱屈,天平11年8月20日,年紀","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
もとにみちふむ[寛],
やちまたに[寛],
ものをぞおもふ,[寛]ものをりおもふ,
ひとにしらえず,[寛]ひとにしられぬ,
" "#[番号]06/1028","#[題詞]十一年己卯 天皇遊猟高圓野之時小獣<泄>走<都>里之中 於是適値勇士生而見獲即以此獣獻上御在所<副>歌一首 [獣名俗曰牟射佐妣]","#[原文]大夫之 高圓山尓 迫有者 里尓下来流 牟射佐i曽此","#[訓読]ますらをの高円山に迫めたれば里に下り来るむざさびぞこれ","#[仮名],ますらをの,たかまとやまに,せめたれば,さとにおりける,むざさびぞこれ","#[左注]右一首大伴坂上郎女作之也 但未逕奏而小獣死斃 因此獻歌停之","#[校異]泄 [西(上書訂正)][紀][細] / 堵 -> 都 [元][紀] / 製 -> 副 [西(訂正右書)][元][紀][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 之也 [元][紀](塙) 之 / 歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:坂上郎女,聖武天皇,遊猟,不奏,天平11年,年紀,動物,奈良,地名","#[訓異]
ますらをの[寛],
たかまとやまに[寛],
せめたれば,[寛]せめたれは,
さとにおりける,[寛]さとにおりくる,
むざさびぞこれ,[寛]むささひそこれ,
" "#[番号]06/1029","#[題詞]十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時河口行宮内舎人大伴宿祢家持作歌一首","#[原文]河口之 野邊尓廬而 夜乃歴者 妹之手本師 所念鴨","#[訓読]河口の野辺に廬りて夜の経れば妹が手本し思ほゆるかも","#[仮名],かはぐちの,のへにいほりて,よのふれば,いもがたもとし,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]太 -> 大 [紀][細][温] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:大伴家持,羈旅,行幸従駕,聖武天皇,伊勢,三重,天平12年10月,年紀,望郷,三重県,地名","#[訓異]
かはぐちの,[寛]かはくちの,
のへにいほりて[寛],
よのふれば,[寛]よのふれは,
いもがたもとし,[寛]いもかたもとし,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]06/1030","#[題詞](十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時)天皇御製歌一首","#[原文]妹尓戀 吾乃松原 見渡者 潮干乃滷尓 多頭鳴渡","#[訓読]妹に恋ひ吾の松原見わたせば潮干の潟に鶴鳴き渡る","#[仮名],いもにこひ,あがのまつばら,みわたせば,しほひのかたに,たづなきわたる","#[左注]右一首今案 吾松原在三重郡 相去河口行宮遠矣 若疑御在朝明行宮之時 所製御歌 傳者誤之歟","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:聖武天皇,望郷,行幸,羈旅,三重,天平12年10月,年紀,叙景,三重県,地名","#[訓異]
いもにこひ[寛],
あがのまつばら,[寛]わかのまつはら,
みわたせば,[寛]みわたせは,
しほひのかたに[寛],
たづなきわたる,[寛]たつなきわたる,
" "#[番号]06/1031","#[題詞](十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時)丹比屋主真人歌一首","#[原文]後尓之 <人>乎思久 四泥能埼 木綿取之泥而 <好>住跡其念","#[訓読]後れにし人を思はく思泥の崎木綿取り垂でて幸くとぞ思ふ","#[仮名],おくれにし,ひとをおもはく,しでのさき,ゆふとりしでて,さきくとぞおもふ","#[左注]右案此歌者不有此<行>之作乎 所以然言 勅大夫従河口行宮還京勿令従駕焉 何有詠思泥埼作歌哉","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 人 [西(右書)][元][類][紀] / 將 -> 好 [元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 行宮 -> 行 [元][類][紀][温] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:丹比屋主,行幸従駕,望郷,羈旅,三重,天平12年10月,年紀,家主,地名","#[訓異]
おくれにし[寛],
ひとをおもはく[寛],
しでのさき,[寛]してのさき,
ゆふとりしでて,[寛]ゆふとりしてて,
さきくとぞおもふ,[寛]すまむとそおもふ,
" "#[番号]06/1032","#[題詞](十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時)狭殘<行宮>大伴宿祢家持作歌二首","#[原文]天皇之 行幸之随 吾妹子之 手枕不巻 月曽歴去家留","#[訓読]大君の行幸のまにま我妹子が手枕まかず月ぞ経にける","#[仮名],おほきみの,みゆきのまにま,わぎもこが,たまくらまかず,つきぞへにける","#[左注]","#[校異]<> -> 大宮 [西(右書)][元][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:大伴家持,行幸従駕,望郷,羈旅,三重,天平12年10月,年紀,地名","#[訓異]
おほきみの,[寛]すめろきの,
みゆきのまにま,[寛]みゆきのままに,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
たまくらまかず,[寛]たまくらまかす,
つきぞへにける,[寛]つきそへにける,
" "#[番号]06/1033","#[題詞]((十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時)狭殘<行宮>大伴宿祢家持作歌二首)","#[原文]御食國 志麻乃海部有之 真熊野之 小船尓乗而 奥部榜所見","#[訓読]御食つ国志摩の海人ならしま熊野の小舟に乗りて沖へ漕ぐ見ゆ","#[仮名],みけつくに,しまのあまならし,まくまのの,をぶねにのりて,おきへこぐみゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴家持,叙景,羈旅,天平12年10月,年紀,三重,属目,地名","#[訓異]
みけつくに[寛],
しまのあまならし,[寛]しまのあすならし,
まくまのの,[寛]みくまのの,
をぶねにのりて,[寛]をふねにのりて,
おきへこぐみゆ,[寛]おきへこくみゆ,
" "#[番号]06/1034","#[題詞](十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時)美濃國多藝行宮大伴宿祢東人作歌一首","#[原文]従古 人之言来流 老人之 <變>若云水曽 名尓負瀧之瀬","#[訓読]いにしへゆ人の言ひ来る老人の変若つといふ水ぞ名に負ふ瀧の瀬","#[仮名],いにしへゆ,ひとのいひける,おいひとの,をつといふみづぞ,なにおふたきのせ","#[左注]","#[校異]戀 -> 變 [西(訂正左書)][元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:大伴東人,岐阜,羈旅,土地讃美,天平12年10月,年紀,養老瀧,地名","#[訓異]
いにしへゆ,[寛]むかしより,
ひとのいひける,[寛]ひとのいひくる,
おいひとの[寛],
をつといふみづぞ,[寛]わかゆてふみつそ,
なにおふたきのせ[寛],
" "#[番号]06/1035","#[題詞](十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時)大伴宿祢家持作歌一首","#[原文]田跡河之 瀧乎清美香 従古 <官>仕兼 多藝乃野之上尓","#[訓読]田跡川の瀧を清みかいにしへゆ宮仕へけむ多芸の野の上に","#[仮名],たどかはの,たきをきよみか,いにしへゆ,みやつかへけむ,たぎのののへに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 宮 -> 官 [元][類][古][細]","#[事項],雑歌,作者:大伴家持,岐阜,羈旅,宮廷讃美,大夫,天平12年10月,年紀,養老瀧,地名","#[訓異]
たどかはの,[寛]たとかはの,
たきをきよみか[寛],
いにしへゆ,[寛]むかしより,
みやつかへけむ[寛],
たぎのののへに,[寛]たきのののうへに,
" "#[番号]06/1036","#[題詞](十二年庚辰冬十月依<大>宰少貳藤原朝臣廣嗣謀反發軍 幸于伊勢國之時)不破行宮大伴宿祢家持作歌一首","#[原文]關無者 還尓谷藻 打行而 妹之手枕 巻手宿益乎","#[訓読]関なくは帰りにだにもうち行きて妹が手枕まきて寝ましを","#[仮名],せきなくは,かへりにだにも,うちゆきて,いもがたまくら,まきてねましを","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:大伴家持,羈旅,行幸従駕,望郷,天平12年10月,年紀,岐阜,地名","#[訓異]
せきなくは[寛],
かへりにだにも,[寛]かへりにたにも,
うちゆきて[寛],
いもがたまくら,[寛]いもかたまくら,
まきてねましを[寛],
" "#[番号]06/1037","#[題詞]十五年癸未秋八月十六日内舎人大伴宿祢家持讃久邇京作歌一首","#[原文]今造 久<邇>乃王都者 山河之 清見者 宇倍所知良之","#[訓読]今造る久迩の都は山川のさやけき見ればうべ知らすらし","#[仮名],いまつくる,くにのみやこは,やまかはの,さやけきみれば,うべしらすらし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 尓 -> 邇 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:大伴家持,宮廷讃美,京都,天平15年8月16日,地名","#[訓異]
いまつくる[寛],
くにのみやこは[寛],
やまかはの[寛],
さやけきみれば,[寛]きよくみゆれは,
うべしらすらし,[寛]うへしらるらし,
" "#[番号]06/1038","#[題詞]高丘河内連歌二首","#[原文]故郷者 遠毛不有 一重山 越我可良尓 念曽吾世思","#[訓読]故郷は遠くもあらず一重山越ゆるがからに思ひぞ我がせし","#[仮名],ふるさとは,とほくもあらず,ひとへやま,こゆるがからに,おもひぞわがせし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:高丘河内,望郷,京都,地名","#[訓異]
ふるさとは[寛],
とほくもあらず,[寛]とほくもあらす,
ひとへやま[寛],
こゆるがからに,[寛]こゆるわれからに,
おもひぞわがせし,[寛]おもひそわかせし,
" "#[番号]06/1039","#[題詞](高丘河内連歌二首)","#[原文]吾背子與 二人之居者 山高 里尓者月波 不曜十方余思","#[訓読]我が背子とふたりし居らば山高み里には月は照らずともよし","#[仮名],わがせこと,ふたりしをらば,やまたかみ,さとにはつきは,てらずともよし","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高丘河内,恋情,相聞,京都,地名","#[訓異]
わがせこと,[寛]わかせこと,
ふたりしをらば,[寛]ふたりしをれは,
やまたかみ[寛],
さとにはつきは[寛],
てらずともよし,[寛]てらすともよし,
" "#[番号]06/1040","#[題詞]安積親王宴左少辨藤原八束朝臣家之日内舎人大伴宿祢家持作歌一首","#[原文]久堅乃 雨者零敷 念子之 屋戸尓今夜者 明而将去","#[訓読]ひさかたの雨は降りしけ思ふ子がやどに今夜は明かして行かむ","#[仮名],ひさかたの,あめはふりしけ,おもふこが,やどにこよひは,あかしてゆかむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:大伴家持,安積皇子,藤原八束,宴席,京都,地名,久邇京","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あめはふりしけ,[寛]あめはふりしく,
おもふこが,[寛]おもふこの,
やどにこよひは,[寛]やとにこよひは,
あかしてゆかむ[寛],
" "#[番号]06/1041","#[題詞]十六年甲申春正月五日諸卿大夫集安倍蟲麻呂朝臣家宴歌一首 [作者不審]","#[原文]吾屋戸乃 君松樹尓 零雪<乃> 行者不去 待西将待","#[訓読]我がやどの君松の木に降る雪の行きには行かじ待にし待たむ","#[仮名],わがやどの,きみまつのきに,ふるゆきの,ゆきにはゆかじ,まちにしまたむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 之 -> 乃 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,安倍虫麻呂,宴席,京都,久邇京,地名,天平16年1月5日,年紀","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
きみまつのきに[寛],
ふるゆきの[寛],
ゆきにはゆかじ,[寛]ゆききはゆかし,
まちにしまたむ[寛],
" "#[番号]06/1042","#[題詞]同月十一日登活道岡集一株松下飲歌二首","#[原文]一松 幾代可歴流 吹風乃 聲之清者 年深香聞","#[訓読]一つ松幾代か経ぬる吹く風の音の清きは年深みかも","#[仮名],ひとつまつ,いくよかへぬる,ふくかぜの,おとのきよきは,としふかみかも","#[左注]右一首市原王作","#[校異]歌 [西] 哥 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:市原王,宴席,天平16年1月11日,年紀,寿,京都,久邇京,地名","#[訓異]
ひとつまつ[寛],
いくよかへぬる[寛],
ふくかぜの,[寛]ふくかせの,
おとのきよきは,[寛]こゑのすめるは,
としふかみかも,[寛]としふかきかも,
" "#[番号]06/1043","#[題詞](同月十一日登活道岡集一株松下飲歌二首)","#[原文]霊剋 壽者不知 松之枝 結情者 長等曽念","#[訓読]たまきはる命は知らず松が枝を結ぶ心は長くとぞ思ふ","#[仮名],たまきはる,いのちはしらず,まつがえを,むすぶこころは,ながくとぞおもふ","#[左注]右一首大伴宿祢家持作","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:大伴家持,宴席,天平16年1月11日,年紀,永遠,寿,京都,久邇京,地名","#[訓異]
たまきはる[寛],
いのちはしらず,[寛]いのちはしらす,
まつがえを,[寛]まつのえを,
むすぶこころは,[寛]むすふこころは,
ながくとぞおもふ,[寛]なかくとそおもふ,
" "#[番号]06/1044","#[題詞]傷惜寧樂京荒墟作歌三首 [作者不審]","#[原文]紅尓 深染西 情可母 寧樂乃京師尓 年之歴去倍吉","#[訓読]紅に深く染みにし心かも奈良の都に年の経ぬべき","#[仮名],くれなゐに,ふかくしみにし,こころかも,ならのみやこに,としのへぬべき","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,哀惜,平城京,荒都歌,奈良,地名","#[訓異]
くれなゐに[寛],
ふかくしみにし,[寛]ふかくそみにし,
こころかも[寛],
ならのみやこに[寛],
としのへぬべき,[寛]としのへぬへき,
" "#[番号]06/1045","#[題詞](傷惜寧樂京荒墟作歌三首 [作者不審])","#[原文]世間乎 常無物跡 今曽知 平城京師之 移徙見者","#[訓読]世間を常なきものと今ぞ知る奈良の都のうつろふ見れば","#[仮名],よのなかを,つねなきものと,いまぞしる,ならのみやこの,うつろふみれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,哀惜,平城京,荒都歌,無常,奈良,地名","#[訓異]
よのなかを[寛],
つねなきものと[寛],
いまぞしる,[寛]いまそしる,
ならのみやこの[寛],
うつろふみれば,[寛]うつろふみれは,
" "#[番号]06/1046","#[題詞](傷惜寧樂京荒墟作歌三首 [作者不審])","#[原文]石綱乃 又變若反 青丹吉 奈良乃都乎 又将見鴨","#[訓読]岩綱のまた変若ちかへりあをによし奈良の都をまたも見むかも","#[仮名],いはつなの,またをちかへり,あをによし,ならのみやこを,またもみむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,哀惜,平城京,荒都歌,奈良,京都","#[訓異]
いはつなの[寛],
またをちかへり,[寛]またわかかへり,
あをによし[寛],
ならのみやこを[寛],
またもみむかも[寛],
" "#[番号]06/1047","#[題詞]悲寧樂故郷作歌一首[并短歌]","#[原文]八隅知之 吾大王乃 高敷為 日本國者 皇祖乃 神之御代自 敷座流 國尓之有者 阿礼将座 御子之嗣継 天下 所知座跡 八百萬 千年矣兼而 定家牟 平城京師者 炎乃 春尓之成者 春日山 御笠之野邊尓 櫻花 木晩牢 皃鳥者 間無數鳴 露霜乃 秋去来者 射駒山 飛火賀<す>丹 芽乃枝乎 石辛見散之 狭男<壮>鹿者 妻呼令動 山見者 山裳見皃石 里見者 里裳住吉 物負之 八十伴緒乃 打經而 思<煎>敷者 天地乃 依會限 萬世丹 榮将徃迹 思煎石 大宮尚矣 恃有之 名良乃京矣 新世乃 事尓之有者 皇之 引乃真尓真荷 春花乃 遷日易 村鳥乃 旦立徃者 刺竹之 大宮人能 踏平之 通之道者 馬裳不行 人裳徃莫者 荒尓異類香聞","#[訓読]やすみしし 我が大君の 高敷かす 大和の国は すめろきの 神の御代より 敷きませる 国にしあれば 生れまさむ 御子の継ぎ継ぎ 天の下 知らしまさむと 八百万 千年を兼ねて 定めけむ 奈良の都は かぎろひの 春にしなれば 春日山 御笠の野辺に 桜花 木の暗隠り 貌鳥は 間なくしば鳴く 露霜の 秋さり来れば 生駒山 飛火が岳に 萩の枝を しがらみ散らし さを鹿は 妻呼び響む 山見れば 山も見が欲し 里見れば 里も住みよし もののふの 八十伴の男の うちはへて 思へりしくは 天地の 寄り合ひの極み 万代に 栄えゆかむと 思へりし 大宮すらを 頼めりし 奈良の都を 新代の ことにしあれば 大君の 引きのまにまに 春花の うつろひ変り 群鳥の 朝立ち行けば さす竹の 大宮人の 踏み平し 通ひし道は 馬も行かず 人も行かねば 荒れにけるかも","#[仮名],やすみしし,わがおほきみの,たかしかす,やまとのくには,すめろきの,かみのみよより,しきませる,くににしあれば,あれまさむ,みこのつぎつぎ,あめのした,しらしまさむと,やほよろづ,ちとせをかねて,さだめけむ,ならのみやこは,かぎろひの,はるにしなれば,かすがやま,みかさののへに,さくらばな,このくれがくり,かほどりは,まなくしばなく,つゆしもの,あきさりくれば,いこまやま,とぶひがたけに,はぎのえを,しがらみちらし,さをしかは,つまよびとよむ,やまみれば,やまもみがほし,さとみれば,さともすみよし,もののふの,やそとものをの,うちはへて,おもへりしくは,あめつちの,よりあひのきはみ,よろづよに,さかえゆかむと,おもへりし,おほみやすらを,たのめりし,ならのみやこを,あらたよの,ことにしあれば,おほきみの,ひきのまにまに,はるはなの,うつろひかはり,むらとりの,あさだちゆけば,さすたけの,おほみやひとの,ふみならし,かよひしみちは,うまもゆかず,ひともゆかねば,あれにけるかも","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 塊 -> す [元][細] / 牡 -> 壮 [元][紀][細][温] / 並 -> 煎 [定本] / 踏 [元][類](塙) 蹈","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,哀惜,平城京,荒都歌,動物,植物,奈良,地名","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
たかしかす,[寛]たかしきし,
やまとのくには[寛],
すめろきの[寛],
かみのみよより[寛],
しきませる[寛],
くににしあれば,[寛]くににしあれは,
あれまさむ[寛],
みこのつぎつぎ,[寛]みこのつきつき,
あめのした[寛],
しらしまさむと,[寛]しらしめませと,
やほよろづ,[寛]やほよろつ,
ちとせをかねて,[寛]ちともをかねて,
さだめけむ,[寛]さためけむ,
ならのみやこは[寛],
かぎろひの,[寛]かけろふの,
はるにしなれば,[寛]はるにしなれは,
かすがやま,[寛]かすかやま,
みかさののへに[寛],
さくらばな,[寛]さくらはな,
このくれがくり,[寛]このくれかくれ,
かほどりは,[寛]かほとりは,
まなくしばなく,[寛]まなくしはなく,
つゆしもの[寛],
あきさりくれば,[寛]あきさりくれは,
いこまやま[寛],
とぶひがたけに,[寛]とふひかくれに,
はぎのえを,[寛]はきのえを,
しがらみちらし,[寛]しからみちらし,
さをしかは[寛],
つまよびとよむ,[寛]つまよひとよめ,
やまみれば,[寛]やまみれは,
やまもみがほし,[寛]やまもみかほし,
さとみれば,[寛]さとみれは,
さともすみよし[寛],
もののふの[寛],
やそとものをの,[寛]やそともをの,
うちはへて[寛],
おもへりしくは,[寛]おもひなみしけは,
あめつちの[寛],
よりあひのきはみ,[寛]よりあはむかきり,
よろづよに,[寛]よろつよに,
さかえゆかむと[寛],
おもへりし,[寛]おもひにし,
おほみやすらを[寛],
たのめりし[寛],
ならのみやこを[寛],
あらたよの,[寛]あたらよの,
ことにしあれば,[寛]ことにしあれは,
おほきみの,[寛]すめろきの,
ひきのまにまに[寛],
はるはなの[寛],
うつろひかはり,[寛]うつろひやすく,
むらとりの[寛],
あさだちゆけば,[寛]あさたちゆけは,
さすたけの[寛],
おほみやひとの[寛],
ふみならし[寛],
かよひしみちは[寛],
うまもゆかず,[寛]うまもゆかす,
ひともゆかねば,[寛]ひともゆかねは,
あれにけるかも[寛],
" "#[番号]06/1048","#[題詞](悲寧樂故郷作歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]立易 古京跡 成者 道之志婆草 長生尓異<煎>","#[訓読]たち変り古き都となりぬれば道の芝草長く生ひにけり","#[仮名],たちかはり,ふるきみやこと,なりぬれば,みちのしばくさ,ながくおひにけり","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 利 -> 煎 [類][紀][細]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,哀惜,平城京,荒都歌,植物,奈良,地名","#[訓異]
たちかはり[寛],
ふるきみやこと[寛],
なりぬれば,[寛]なりぬれは,
みちのしばくさ,[寛]みちのしはくさ,
ながくおひにけり,[寛]なかくおひにけり,
" "#[番号]06/1049","#[題詞]((悲寧樂故郷作歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]名付西 奈良乃京之 荒行者 出立毎尓 嘆思益","#[訓読]なつきにし奈良の都の荒れゆけば出で立つごとに嘆きし増さる","#[仮名],なつきにし,ならのみやこの,あれゆけば,いでたつごとに,なげきしまさる","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,哀惜,平城京,荒都歌,奈良,地名","#[訓異]
なつきにし,[寛]なつけにし,
ならのみやこの[寛],
あれゆけば,[寛]あれゆけは,
いでたつごとに,[寛]いてたつことに,
なげきしまさる,[寛]なけきしますも,
" "#[番号]06/1050","#[題詞]讃久邇新京歌二首[并短歌]","#[原文]明津神 吾皇之 天下 八嶋之中尓 國者霜 多雖有 里者霜 澤尓雖有 山並之 宜國跡 川次之 立合郷跡 山代乃 鹿脊山際尓 宮柱 太敷奉 高知為 布當乃宮者 河近見 湍音叙清 山近見 鳥賀鳴慟 秋去者 山裳動響尓 左男鹿者 妻呼令響 春去者 岡邊裳繁尓 巌者 花開乎呼理 痛A怜 布當乃原 甚貴 大宮處 諾己曽 吾大王者 君之随 所聞賜而 刺竹乃 大宮此跡 定異等霜","#[訓読]現つ神 我が大君の 天の下 八島の内に 国はしも さはにあれども 里はしも さはにあれども 山なみの よろしき国と 川なみの たち合ふ里と 山背の 鹿背山の際に 宮柱 太敷きまつり 高知らす 布当の宮は 川近み 瀬の音ぞ清き 山近み 鳥が音響む 秋されば 山もとどろに さを鹿は 妻呼び響め 春されば 岡辺も繁に 巌には 花咲きををり あなあはれ 布当の原 いと貴 大宮所 うべしこそ 吾が大君は 君ながら 聞かしたまひて さす竹の 大宮ここと 定めけらしも","#[仮名],あきつかみ,わがおほきみの,あめのした,やしまのうちに,くにはしも,さはにあれども,さとはしも,さはにあれども,やまなみの,よろしきくにと,かはなみの,たちあふさとと,やましろの,かせやまのまに,みやばしら,ふとしきまつり,たかしらす,ふたぎのみやは,かはちかみ,せのおとぞきよき,やまちかみ,とりがねとよむ,あきされば,やまもとどろに,さをしかは,つまよびとよめ,はるされば,をかへもしじに,いはほには,はなさきををり,あなあはれ,ふたぎのはら,いとたふと,おほみやところ,うべしこそ,わがおほきみは,きみながら,きかしたまひて,さすたけの,おほみやここと,さだめけらしも","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,久邇京,新都讃美,動物,植物,京都,地名","#[訓異]
あきつかみ[寛],
わがおほきみの,[寛]わかすめろきの,
あめのした[寛],
やしまのうちに,[寛]やしまのなかに,
くにはしも[寛],
さはにあれども,[寛]おほくあれとも,
さとはしも[寛],
さはにあれども,[寛]さはにあれとも,
やまなみの[寛],
よろしきくにと[寛],
かはなみの[寛],
たちあふさとと[寛],
やましろの[寛],
かせやまのまに[寛],
みやばしら,[寛]みやはしら,
ふとしきまつり,[寛]ふとしきたてて,
たかしらす[寛],
ふたぎのみやは,[寛]ふたいのみやは,
かはちかみ[寛],
せのおとぞきよき,[寛]せおとそきよき,
やまちかみ[寛],
とりがねとよむ,[寛]とりかねいたむ,
あきされば,[寛]あきされは,
やまもとどろに,[寛]やまもととろに,
さをしかは[寛],
つまよびとよめ,[寛]つまよひとよめ,
はるされば,[寛]はるされは,
をかへもしじに,[寛]をかへもししに,
いはほには[寛],
はなさきををり[寛],
あなあはれ,[寛]いとあはれ,
ふたぎのはら,[寛]ふたいのはらに,
いとたふと,[寛]いとたかき,
おほみやところ[寛],
うべしこそ,[寛]うへしこそ,
わがおほきみは,[寛]わかおほきみは,
きみながら,[寛]きみかまに,
きかしたまひて[寛],
さすたけの[寛],
おほみやここと[寛],
さだめけらしも,[寛]さためけらしも,
" "#[番号]06/1051","#[題詞](讃久邇新京歌二首[并短歌])反歌二首","#[原文]三日原 布當乃野邊 清見社 大宮處 [一云 此跡標刺] 定異等霜","#[訓読]三香の原布当の野辺を清みこそ大宮所 [一云 ここと標刺し] 定めけらしも","#[仮名],みかのはら,ふたぎののへを,きよみこそ,おほみやところ,[こことしめさし],さだめけらしも","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,久邇京,新都讃美,京都,地名","#[訓異]
みかのはら[寛],
ふたぎののへを,[寛]ふたいののへを,
きよみこそ[寛],
おほみやところ[寛],
[こことしめさし],
さだめけらしも,[寛]さためけらしも,
" "#[番号]06/1052","#[題詞]((讃久邇新京歌二首[并短歌])反歌二首)","#[原文]<山>高来 川乃湍清石 百世左右 神之味将<徃> 大宮所","#[訓読]山高く川の瀬清し百代まで神しみゆかむ大宮所","#[仮名],やまたかく,かはのせきよし,ももよまで,かむしみゆかむ,おほみやところ","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]弓 -> 山 [万葉考] / <> -> 徃 [西(右書)][元][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,久邇京,新都讃美,京都,地名","#[訓異]
やまたかく[寛],
かはのせきよし[寛],
ももよまで,[寛]ももよまて,
かむしみゆかむ,[寛]かみのみゆかむ,
おほみやところ[寛],
" "#[番号]06/1053","#[題詞](讃久邇新京歌二首[并短歌])","#[原文]吾皇 神乃命乃 高所知 布當乃宮者 百樹成 山者木高之 落多藝都 湍音毛清之 鴬乃 来鳴春部者 巌者 山下耀 錦成 花咲乎呼里 左<壮>鹿乃 妻呼秋者 天霧合 之具礼乎疾 狭丹頬歴 黄葉散乍 八千年尓 安礼衝之乍 天下 所知食跡 百代尓母 不可易 大宮處","#[訓読]吾が大君 神の命の 高知らす 布当の宮は 百木盛り 山は木高し 落ちたぎつ 瀬の音も清し 鴬の 来鳴く春へは 巌には 山下光り 錦なす 花咲きををり さを鹿の 妻呼ぶ秋は 天霧らふ しぐれをいたみ さ丹つらふ 黄葉散りつつ 八千年に 生れ付かしつつ 天の下 知らしめさむと 百代にも 変るましじき 大宮所","#[仮名],わがおほきみ,かみのみことの,たかしらす,ふたぎのみやは,ももきもり,やまはこだかし,おちたぎつ,せのおともきよし,うぐひすの,きなくはるへは,いはほには,やましたひかり,にしきなす,はなさきををり,さをしかの,つまよぶあきは,あまぎらふ,しぐれをいたみ,さにつらふ,もみちちりつつ,やちとせに,あれつかしつつ,あめのした,しらしめさむと,ももよにも,かはるましじき,おほみやところ","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]牡 -> 壮 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,久邇京,新都讃美,京都,地名","#[訓異]
わがおほきみ,[寛]わかきみの,
かみのみことの[寛],
たかしらす[寛],
ふたぎのみやは,[寛]ふたいのみやは,
ももきもり,[寛]ももきなす,
やまはこだかし,[寛]やまはこたかし,
おちたぎつ,[寛]おちたきつ,
せのおともきよし,[寛]せおともきよし,
うぐひすの,[寛]うくひすの,
きなくはるへは[寛],
いはほには[寛],
やましたひかり[寛],
にしきなす[寛],
はなさきををり[寛],
さをしかの[寛],
つまよぶあきは,[寛]つまよふあきは,
あまぎらふ,[寛]あまきりあふ,
しぐれをいたみ,[寛]しくれをはやみ,
さにつらふ[寛],
もみちちりつつ[寛],
やちとせに[寛],
あれつかしつつ,[寛]あれつきしつつ,
あめのした[寛],
しらしめさむと[寛],
ももよにも[寛],
かはるましじき,[寛]かはるへからぬ,
おほみやところ[寛],
" "#[番号]06/1054","#[題詞](讃久邇新京歌二首[并短歌])反歌五首","#[原文]泉<川> 徃瀬乃水之 絶者許曽 大宮地 遷徃目","#[訓読]泉川行く瀬の水の絶えばこそ大宮所移ろひ行かめ","#[仮名],いづみがは,ゆくせのみづの,たえばこそ,おほみやところ,うつろひゆかめ","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 河 -> 川 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,久邇京,新都讃美,京都,地名","#[訓異]
いづみがは,[寛]いつみかは,
ゆくせのみづの,[寛]ゆくせのみつの,
たえばこそ,[寛]たえはこそ,
おほみやところ[寛],
うつろひゆかめ,[寛]うつりもゆかめ,
" "#[番号]06/1055","#[題詞]((讃久邇新京歌二首[并短歌])反歌五首)","#[原文]布當山 山並見者 百代尓毛 不可易 大宮處","#[訓読]布当山山なみ見れば百代にも変るましじき大宮所","#[仮名],ふたぎやま,やまなみみれば,ももよにも,かはるましじき,おほみやところ","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,久邇京,新都讃美,京都,地名","#[訓異]
ふたぎやま,[寛]ふたいやま,
やまなみみれば,[寛]やまなみみれは,
ももよにも[寛],
かはるましじき,[寛]かはるへからす,
おほみやところ[寛],
" "#[番号]06/1056","#[題詞]((讃久邇新京歌二首[并短歌])反歌五首)","#[原文]D嬬等之 續麻繁云 鹿脊之山 時之徃<者> 京師跡成宿","#[訓読]娘子らが続麻懸くといふ鹿背の山時しゆければ都となりぬ","#[仮名],をとめらが,うみをかくといふ,かせのやま,ときしゆければ,みやことなりぬ","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]去 -> 者 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,久邇京,新都讃美,京都,地名","#[訓異]
をとめらが,[寛]をとめらか,
うみをかくといふ[寛],
かせのやま[寛],
ときしゆければ,[寛]ときのゆけれは,
みやことなりぬ[寛],
" "#[番号]06/1057","#[題詞]((讃久邇新京歌二首[并短歌])反歌五首)","#[原文]鹿脊之山 樹立矣繁三 朝不去 寸鳴響為 鴬之音","#[訓読]鹿背の山木立を茂み朝さらず来鳴き響もす鴬の声","#[仮名],かせのやま,こだちをしげみ,あささらず,きなきとよもす,うぐひすのこゑ","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,久邇京,新都讃美,京都,地名","#[訓異]
かせのやま[寛],
こだちをしげみ,[寛]こたちをしけみ,
あささらず,[寛]あささらす,
きなきとよもす,[寛]きなきとよます,
うぐひすのこゑ,[寛]うくひすのこゑ
" "#[番号]06/1058","#[題詞]((讃久邇新京歌二首[并短歌])反歌五首)","#[原文]狛山尓 鳴霍公鳥 泉河 渡乎遠見 此間尓不通 [一云 渡遠哉 不通<有>武]","#[訓読]狛山に鳴く霍公鳥泉川渡りを遠みここに通はず [一云 渡り遠みか通はずあるらむ]","#[仮名],こまやまに,なくほととぎす,いづみがは,わたりをとほみ,ここにかよはず,[わたりとほみか,かよはずあるらむ]","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]者 -> 有 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,久邇京,新都讃美,京都,地名","#[訓異]
こまやまに[寛],
なくほととぎす,[寛]なくほとときす,
いづみがは,[寛]いつみかは,
わたりをとほみ[寛],
ここにかよはず,[寛]ここにかよはす,
[わたりとほみか,
かよはずあるらむ]
" "#[番号]06/1059","#[題詞]春日悲傷三香原荒墟作歌一首[并短歌]","#[原文]三香原 久邇乃京師者 山高 河之瀬清 在吉迹 人者雖云 在吉跡 吾者雖念 故去之 里尓四有者 國見跡 人毛不通 里見者 家裳荒有 波之異耶 如此在家留可 三諸著 鹿脊山際尓 開花之 色目列敷 百鳥之 音名束敷 在<杲>石 住吉里乃 荒樂苦惜哭","#[訓読]三香の原 久迩の都は 山高み 川の瀬清み 住みよしと 人は言へども ありよしと 我れは思へど 古りにし 里にしあれば 国見れど 人も通はず 里見れば 家も荒れたり はしけやし かくありけるか みもろつく 鹿背山の際に 咲く花の 色めづらしく 百鳥の 声なつかしく ありが欲し 住みよき里の 荒るらく惜しも","#[仮名],みかのはら,くにのみやこは,やまたかみ,かはのせきよみ,すみよしと,ひとはいへども,ありよしと,われはおもへど,ふりにし,さとにしあれば,くにみれど,ひともかよはず,さとみれば,いへもあれたり,はしけやし,かくありけるか,みもろつく,かせやまのまに,さくはなの,いろめづらしく,ももとりの,こゑなつかしく,ありがほし,すみよきさとの,あるらくをしも","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 在 [類](塙) 住 / 耶 (塙[全釈による]) 耶思 / 果 -> 杲 [細][矢][京]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,荒都歌,久邇京,京都,地名","#[訓異]
みかのはら[寛],
くにのみやこは[寛],
やまたかみ[寛],
かはのせきよみ,[寛]かはのせきよし,
すみよしと,[寛]ありよしと,
ひとはいへども,[寛]ひとはいへとも,
ありよしと[寛],
われはおもへど,[寛]われはおもへと,
ふりにし,[寛]ふるされし,
さとにしあれば,[寛]さとにしあれは,
くにみれど,[寛]くにみれと,
ひともかよはず,[寛]ひともかよはす,
さとみれば,[寛]さとみれは,
いへもあれたり[寛],
はしけやし[寛],
かくありけるか[寛],
みもろつく[寛],
かせやまのまに[寛],
さくはなの[寛],
いろめづらしく,[寛]いろめつらしく,
ももとりの[寛],
こゑなつかしく[寛],
ありがほし,[寛]ありかほし,
すみよきさとの,[寛]すみよしさとの,
あるらくをしも,[寛]あれらくをしも,
" "#[番号]06/1060","#[題詞](春日悲傷三香原荒墟作歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]三香原 久邇乃京者 荒去家里 大宮人乃 遷去礼者","#[訓読]三香の原久迩の都は荒れにけり大宮人のうつろひぬれば","#[仮名],みかのはら,くにのみやこは,あれにけり,おほみやひとの,うつろひぬれば","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,荒都歌,久邇京,京都,地名","#[訓異]
みかのはら[寛],
くにのみやこは[寛],
あれにけり[寛],
おほみやひとの[寛],
うつろひぬれば,[寛]うつりいぬれは,
" "#[番号]06/1061","#[題詞]((春日悲傷三香原荒墟作歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]咲花乃 色者不易 百石城乃 大宮人叙 立易<奚>流","#[訓読]咲く花の色は変らずももしきの大宮人ぞたち変りける","#[仮名],さくはなの,いろはかはらず,ももしきの,おほみやひとぞ,たちかはりける","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]去 -> 奚 [元][紀]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,荒都歌,久邇京,京都,地名","#[訓異]
さくはなの[寛],
いろはかはらず,[寛]いろはかはらす,
ももしきの[寛],
おほみやひとぞ,[寛]おほみやひとそ,
たちかはりける,[寛]たちかはりぬる,
" "#[番号]06/1062","#[題詞]難波宮作歌一首[并短歌]","#[原文]安見知之 吾大王乃 在通 名庭乃宮者 不知魚取 海片就而 玉拾 濱邊乎近見 朝羽振 浪之聲せ 夕薙丹 櫂合之聲所聆 暁之 寐覺尓聞者 海石之 塩干乃共 <b>渚尓波 千鳥妻呼 葭部尓波 鶴鳴動 視人乃 語丹為者 聞人之 視巻欲為 御食向 味原宮者 雖見不飽香聞","#[訓読]やすみしし 我が大君の あり通ふ 難波の宮は 鯨魚取り 海片付きて 玉拾ふ 浜辺を清み 朝羽振る 波の音騒き 夕なぎに 楫の音聞こゆ 暁の 寝覚に聞けば 海石の 潮干の共 浦洲には 千鳥妻呼び 葦辺には 鶴が音響む 見る人の 語りにすれば 聞く人の 見まく欲りする 御食向ふ 味経の宮は 見れど飽かぬかも","#[仮名],やすみしし,わがおほきみの,ありがよふ,なにはのみやは,いさなとり,うみかたづきて,たまひりふ,はまへをきよみ,あさはふる,なみのおとさわく,ゆふなぎに,かぢのおときこゆ,あかときの,ねざめにきけば,いくりの,しほひのむた,うらすには,ちどりつまよび,あしへには,たづがねとよむ,みるひとの,かたりにすれば,きくひとの,みまくほりする,みけむかふ,あぢふのみやは,みれどあかぬかも","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(別筆訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短哥 [西(訂正)] 短歌 / 納 -> b [万葉集略解]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,難波,大阪,新都讃美,地名","#[訓異]
やすみしし[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
ありがよふ,[寛]ありかよふ,
なにはのみやは[寛],
いさなとり[寛],
うみかたづきて,[寛]うみかたつきて,
たまひりふ,[寛]たまひろふ,
はまへをきよみ,[寛]はまへをちかみ,
あさはふる[寛],
なみのおとさわく,[寛]なみのおとさわき,
ゆふなぎに,[寛]ゆふなきに,
かぢのおときこゆ,[寛]かかひのおときこゆ,
あかときの,[寛]あかつきの,
ねざめにきけば,[寛]ねさめにきけは,
いくりの,[寛]あまいしの,
しほひのむた,[寛]しほひのむたに,
うらすには,[寛]いりすには,
ちどりつまよび,[寛]ちとりつまよひ,
あしへには[寛],
たづがねとよむ,[寛]たつかねとよみ,
みるひとの[寛],
かたりにすれば,[寛]かたりにすれは,
きくひとの[寛],
みまくほりする,[寛]みまくほりして,
みけむかふ[寛],
あぢふのみやは,[寛]あちふのみやは,
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]06/1063","#[題詞](難波宮作歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]有通 難波乃宮者 海近見 <漁>童女等之 乗船所見","#[訓読]あり通ふ難波の宮は海近み海人娘子らが乗れる舟見ゆ","#[仮名],ありがよふ,なにはのみやは,うみちかみ,あまをとめらが,のれるふねみゆ","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 漁 [西(右書)] 海 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,難波,大阪,新都讃美,地名","#[訓異]
ありがよふ,[寛]ありかよふ,
なにはのみやは[寛],
うみちかみ[寛],
あまをとめらが,[寛]あまをとめらか,
のれるふねみゆ[寛],
" "#[番号]06/1064","#[題詞]((難波宮作歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]塩干者 葦邊尓せ 白鶴乃 妻呼音者 宮毛動響二","#[訓読]潮干れば葦辺に騒く白鶴の妻呼ぶ声は宮もとどろに","#[仮名],しほふれば,あしへにさわく,しらたづの,つまよぶこゑは,みやもとどろに","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,難波,大阪,新都讃美,地名","#[訓異]
しほふれば,[寛]しほひれは,
あしへにさわく[寛],
しらたづの,[寛]あしたつの,
つまよぶこゑは,[寛]つまよふこゑは,
みやもとどろに,[寛]みやもととろに,
" "#[番号]06/1065","#[題詞]過敏馬浦時作歌一首[并短歌]","#[原文]八千桙之 神乃御世自 百船之 泊停跡 八嶋國 百船純乃 定而師 三犬女乃浦者 朝風尓 浦浪左和寸 夕浪尓 玉藻者来依 白沙 清濱部者 去還 雖見不飽 諾石社 見人毎尓 語嗣 偲家良思吉 百世歴而 所偲将徃 清白濱","#[訓読]八千桙の 神の御代より 百舟の 泊つる泊りと 八島国 百舟人の 定めてし 敏馬の浦は 朝風に 浦波騒き 夕波に 玉藻は来寄る 白真砂 清き浜辺は 行き帰り 見れども飽かず うべしこそ 見る人ごとに 語り継ぎ 偲ひけらしき 百代経て 偲はえゆかむ 清き白浜","#[仮名],やちほこの,かみのみよより,ももふねの,はつるとまりと,やしまくに,ももふなびとの,さだめてし,みぬめのうらは,あさかぜに,うらなみさわき,ゆふなみに,たまもはきよる,しらまなご,きよきはまへは,ゆきかへり,みれどもあかず,うべしこそ,みるひとごとに,かたりつぎ,しのひけらしき,ももよへて,しのはえゆかむ,きよきしらはま","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短哥 [西(訂正)] 短歌","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,羈旅,土地讃美,兵庫,地名","#[訓異]
やちほこの[寛],
かみのみよより[寛],
ももふねの[寛],
はつるとまりと[寛],
やしまくに[寛],
ももふなびとの,[寛]ももふなひとの,
さだめてし,[寛]さためてし,
みぬめのうらは[寛],
あさかぜに,[寛]あさかせに,
うらなみさわき[寛],
ゆふなみに[寛],
たまもはきよる[寛],
しらまなご,[寛]しらまなこ,
きよきはまへは[寛],
ゆきかへり[寛],
みれどもあかず,[寛]みれともあかす,
うべしこそ,[寛]うへしこそ,
みるひとごとに,[寛]みるひとことに,
かたりつぎ,[寛]かたりつき,
しのひけらしき[寛],
ももよへて[寛],
しのはえゆかむ,[寛]しのはれゆかむ,
きよきしらはま[寛],
" "#[番号]06/1066","#[題詞](過敏馬浦時作歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]真十鏡 見宿女乃浦者 百船 過而可徃 濱有<七>國","#[訓読]まそ鏡敏馬の浦は百舟の過ぎて行くべき浜ならなくに","#[仮名],まそかがみ,みぬめのうらは,ももふねの,すぎてゆくべき,はまならなくに","#[左注](右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 七 [西(上書訂正)][元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,羈旅,土地讃美,兵庫,地名","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
みぬめのうらは[寛],
ももふねの[寛],
すぎてゆくべき,[寛]すきてゆくへき,
はまならなくに[寛],
" "#[番号]06/1067","#[題詞]((過敏馬浦時作歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]濱清 浦愛見 神世自 千船湊 大和太乃濱","#[訓読]浜清み浦うるはしみ神代より千舟の泊つる大和太の浜","#[仮名],はまきよみ,うらうるはしみ,かむよより,ちふねのはつる,おほわだのはま","#[左注]右廿一首田邊福麻呂之歌集中出也","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:田辺福麻呂歌集,羈旅,土地讃美,兵庫,地名","#[訓異]
はまきよみ[寛],
うらうるはしみ,[寛]うらなつかしみ,
かむよより,[寛]かみよより,
ちふねのはつる,[寛]ちふねのとまる,
おほわだのはま,[寛]おほわたのはま,
" "#[番号]07/1068","#[題詞]雜歌 / 詠天","#[原文]天海丹 雲之波立 月船 星之林丹 榜隠所見","#[訓読]天の海に雲の波立ち月の舟星の林に漕ぎ隠る見ゆ","#[仮名],あめのうみに,くものなみたち,つきのふね,ほしのはやしに,こぎかくるみゆ","#[左注]右一首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体","#[訓異]
あめのうみに[寛],
くものなみたち[寛],
つきのふね[寛],
ほしのはやしに[寛],
こぎかくるみゆ,[寛]こきかくるみゆ,
" "#[番号]07/1069","#[題詞]詠月","#[原文]常者曽 不念物乎 此月之 過匿巻 惜夕香裳","#[訓読]常はさね思はぬものをこの月の過ぎ隠らまく惜しき宵かも","#[仮名],つねはさね,おもはぬものを,このつきの,すぎかくらまく,をしきよひかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌","#[訓異]
つねはさね,[寛]つねはさも,
おもはぬものを[寛],
このつきの[寛],
すぎかくらまく,[寛]すきかくれまく,
をしきよひかも[寛],
" "#[番号]07/1070","#[題詞](詠月)","#[原文]大夫之 弓上振起 <猟>高之 野邊副清 照月夜可聞","#[訓読]大夫の弓末振り起し狩高の野辺さへ清く照る月夜かも","#[仮名],ますらをの,ゆずゑふりおこし,かりたかの,のへさへきよく,てるつくよかも","#[左注]","#[校異]借 -> 猟 [類]","#[事項],雑歌,高円山,奈良,地名","#[訓異]
ますらをの[寛],
ゆずゑふりおこし,[寛]ゆすゑふりたて,
かりたかの,[寛]かるたかの,
のへさへきよく[寛],
てるつくよかも,[寛]てるつきよかも,
" "#[番号]07/1071","#[題詞](詠月)","#[原文]山末尓 不知夜歴月乎 将出香登 待乍居尓 夜曽降家類","#[訓読]山の端にいさよふ月を出でむかと待ちつつ居るに夜ぞ更けにける","#[仮名],やまのはに,いさよふつきを,いでむかと,まちつつをるに,よぞふけにける","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌","#[訓異]
やまのはに[寛],
いさよふつきを[寛],
いでむかと,[寛]いてむかと,
まちつつをるに[寛],
よぞふけにける,[寛]よそふけにける,
" "#[番号]07/1072","#[題詞](詠月)","#[原文]明日之夕 将照月夜者 片因尓 今夜尓因而 夜長有","#[訓読]明日の宵照らむ月夜は片寄りに今夜に寄りて夜長くあらなむ","#[仮名],あすのよひ,てらむつくよは,かたよりに,こよひによりて,よながくあらなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌","#[訓異]
あすのよひ,[寛]あすのよも,
てらむつくよは,[寛]てらむつきよは,
かたよりに[寛],
こよひによりて,[寛]
よながくあらなむ,[寛]よなかからなむ,
" "#[番号]07/1073","#[題詞](詠月)","#[原文]玉垂之 小簾之間通 獨居而 見驗無 暮月夜鴨","#[訓読]玉垂の小簾の間通しひとり居て見る験なき夕月夜かも","#[仮名],たまだれの,をすのまとほし,ひとりゐて,みるしるしなき,ゆふつくよかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌","#[訓異]
たまだれの,[寛]たまたれの,
をすのまとほし[寛],
ひとりゐて[寛],
みるしるしなき,[寛]みるしるしなみ,
ゆふつくよかも[寛],
" "#[番号]07/1074","#[題詞](詠月)","#[原文]春日山 押而照有 此月者 妹之庭母 清有家里","#[訓読]春日山おして照らせるこの月は妹が庭にもさやけくありけり","#[仮名],かすがやま,おしててらせる,このつきは,いもがにはにも,さやけくありけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,春日山,奈良,慕情,地名","#[訓異]
かすがやま,[寛]かすかやま,
おしててらせる,[寛]なへててらせる,
このつきは[寛],
いもがにはにも,[寛]いもかにはにも,
さやけくありけり,[寛]さやけかりけり,
" "#[番号]07/1075","#[題詞](詠月)","#[原文]海原之 道遠鴨 月讀 明少 夜者更下乍","#[訓読]海原の道遠みかも月読の光少き夜は更けにつつ","#[仮名],うなはらの,みちとほみかも,つくよみの,ひかりすくなき,よはふけにつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌","#[訓異]
うなはらの[寛],
みちとほみかも[寛],
つくよみの,[寛]つきよみの,
ひかりすくなき,[寛]ひかりすくなく,
よはふけにつつ[寛],
" "#[番号]07/1076","#[題詞](詠月)","#[原文]百師木之 大宮人之 退出而 遊今夜之 月清左","#[訓読]ももしきの大宮人の罷り出て遊ぶ今夜の月のさやけさ","#[仮名],ももしきの,おほみやひとの,まかりでて,あそぶこよひの,つきのさやけさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌","#[訓異]
ももしきの[寛],
おほみやひとの[寛],
まかりでて,[寛]たちいてて,
あそぶこよひの,[寛]あそふこよひの,
つきのさやけさ[寛],
" "#[番号]07/1077","#[題詞](詠月)","#[原文]夜干玉之 夜渡月乎 将留尓 西山邊尓 <塞>毛有粳毛","#[訓読]ぬばたまの夜渡る月を留めむに西の山辺に関もあらぬかも","#[仮名],ぬばたまの,よわたるつきを,とどめむに,にしのやまへに,せきもあらぬかも","#[左注]","#[校異]塞 [西(上書訂正)][類][紀][細]","#[事項],雑歌","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よわたるつきを[寛],
とどめむに,[寛]ととめむに,
にしのやまへに[寛],
せきもあらぬかも[寛],
" "#[番号]07/1078","#[題詞](詠月)","#[原文]此月之 此間来者 且今跡香毛 妹之出立 待乍将有","#[訓読]この月のここに来たれば今とかも妹が出で立ち待ちつつあるらむ","#[仮名],このつきの,ここにきたれば,いまとかも,いもがいでたち,まちつつあるらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌","#[訓異]
このつきの[寛],
ここにきたれば,[寛]このまにくれは,
いまとかも[寛],
いもがいでたち,[寛]いもかいてたち,
まちつつあるらむ,[寛]まちつつあらむ,
" "#[番号]07/1079","#[題詞](詠月)","#[原文]真十鏡 可照月乎 白妙乃 雲香隠流 天津霧鴨","#[訓読]まそ鏡照るべき月を白栲の雲か隠せる天つ霧かも","#[仮名],まそかがみ,てるべきつきを,しろたへの,くもかかくせる,あまつきりかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
てるべきつきを,[寛]てるへきつきを,
しろたへの[寛],
くもかかくせる[寛],
あまつきりかも[寛],
" "#[番号]07/1080","#[題詞](詠月)","#[原文]久方乃 天照月者 神代尓加 出反等六 年者經去乍","#[訓読]ひさかたの天照る月は神代にか出で反るらむ年は経につつ","#[仮名],ひさかたの,あまてるつきは,かむよにか,いでかへるらむ,としはへにつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あまてるつきは[寛],
かむよにか,[寛]かみよにか,
いでかへるらむ,[寛]いてかへるらむ,
としはへにつつ[寛],
" "#[番号]07/1081","#[題詞](詠月)","#[原文]烏玉之 夜渡月乎 A怜 吾居袖尓 露曽置尓鷄類","#[訓読]ぬばたまの夜渡る月をおもしろみ我が居る袖に露ぞ置きにける","#[仮名],ぬばたまの,よわたるつきを,おもしろみ,わがをるそでに,つゆぞおきにける","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よわたるつきを[寛],
おもしろみ,[寛]あはれとて,
わがをるそでに,[寛]わかをるそてに,
つゆぞおきにける,[寛]つゆそおきにける,
" "#[番号]07/1082","#[題詞](詠月)","#[原文]水底之 玉障清 可見裳 照月夜鴨 夜之深去者","#[訓読]水底の玉さへさやに見つべくも照る月夜かも夜の更けゆけば","#[仮名],みなそこの,たまさへさやに,みつべくも,てるつくよかも,よのふけゆけば","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌","#[訓異]
みなそこの[寛],
たまさへさやに,[寛]たまさへきよく,
みつべくも,[寛]みつへくも,
てるつくよかも,[寛]てるつきよかも,
よのふけゆけば,[寛]よのふけゆけは,
" "#[番号]07/1083","#[題詞](詠月)","#[原文]霜雲入 為登尓可将有 久堅之 夜<渡>月乃 不見念者","#[訓読]霜曇りすとにかあるらむ久方の夜渡る月の見えなく思へば","#[仮名],しもぐもり,すとにかあるらむ,ひさかたの,よわたるつきの,みえなくおもへば","#[左注]","#[校異]度 -> 渡 [類][紀][温]","#[事項],雑歌","#[訓異]
しもぐもり,[寛]しもくもり,
すとにかあるらむ,[寛]すとにかあらむ,
ひさかたの[寛],
よわたるつきの[寛],
みえなくおもへば,[寛]みえぬおもへは,
" "#[番号]07/1084","#[題詞](詠月)","#[原文]山末尓 不知夜經月乎 何時母 吾待将座 夜者深去乍","#[訓読]山の端にいさよふ月をいつとかも我は待ち居らむ夜は更けにつつ","#[仮名],やまのはに,いさよふつきを,いつとかも,わはまちをらむ,よはふけにつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,恋情","#[訓異]
やまのはに[寛],
いさよふつきを[寛],
いつとかも[寛],
わはまちをらむ,[寛]わかまちをらむ,
よはふけにつつ[寛],
" "#[番号]07/1085","#[題詞](詠月)","#[原文]妹之當 吾袖将振 木間従 出来月尓 雲莫棚引","#[訓読]妹があたり我が袖振らむ木の間より出で来る月に雲なたなびき","#[仮名],いもがあたり,わはそでふらむ,このまより,いでくるつきに,くもなたなびき","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,恋情","#[訓異]
いもがあたり,[寛]いもかあたり,
わはそでふらむ,[寛]わかそてふらむ,
このまより[寛],
いでくるつきに,[寛]いてくるつきに,
くもなたなびき,[寛]くもなたなひき,
" "#[番号]07/1086","#[題詞](詠月)","#[原文]靱懸流 伴雄廣伎 大伴尓 國将榮常 月者照良思","#[訓読]靫懸くる伴の男広き大伴に国栄えむと月は照るらし","#[仮名],ゆきかくる,とものをひろき,おほともに,くにさかえむと,つきはてるらし","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,寿歌","#[訓異]
ゆきかくる[寛],
とものをひろき[寛],
おほともに[寛],
くにさかえむと[寛],
つきはてるらし[寛],
" "#[番号]07/1087","#[題詞]詠雲","#[原文]痛足河 々浪立奴 巻目之 由槻我高仁 雲居立有良志","#[訓読]穴師川川波立ちぬ巻向の弓月が岳に雲居立てるらし","#[仮名],あなしがは,かはなみたちぬ,まきむくの,ゆつきがたけに,くもゐたてるらし","#[左注](右二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]立有 [細](塙) 立 / 志 [類][紀][温] 思","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,龍王山,奈良,非略体,地名","#[訓異]
あなしがは,[寛]あなしかは,
かはなみたちぬ[寛],
まきむくの,[寛]まきもくの,
ゆつきがたけに,[寛]ゆつきかたけに,
くもゐたてるらし,[寛]くもたてるらし,
" "#[番号]07/1088","#[題詞](詠雲)","#[原文]足引之 山河之瀬之 響苗尓 弓月高 雲立渡","#[訓読]あしひきの山川の瀬の鳴るなへに弓月が岳に雲立ちわたる","#[仮名],あしひきの,やまがはのせの,なるなへに,ゆつきがたけに,くもたちわたる","#[左注]右二首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,龍王山,奈良,非略体,枕詞,地名","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまがはのせの,[寛]やまかはのせの,
なるなへに[寛],
ゆつきがたけに,[寛]ゆつきかたけに,
くもたちわたる[寛],
" "#[番号]07/1089","#[題詞](詠雲)","#[原文]大海尓 嶋毛不在尓 海原 絶塔浪尓 立有白雲","#[訓読]大海に島もあらなくに海原のたゆたふ波に立てる白雲","#[仮名],おほうみに,しまもあらなくに,うなはらの,たゆたふなみに,たてるしらくも","#[左注]右一首伊勢従駕作","#[校異]","#[事項],雑歌,伊勢,三重県,羈旅,地名","#[訓異]
おほうみに[寛],
しまもあらなくに[寛],
うなはらの[寛],
たゆたふなみに,[寛]たゆたうなみに,
たてるしらくも[寛],
" "#[番号]07/1090","#[題詞]詠雨","#[原文]吾妹子之 赤裳裙之 将染O 今日之WX尓 吾共所沾<名>","#[訓読]我妹子が赤裳の裾のひづちなむ今日の小雨に我れさへ濡れな","#[仮名],わぎもこが,あかものすその,ひづちなむ,けふのこさめに,われさへぬれな","#[左注]","#[校異]者 -> 名 [元][類][紀][温]","#[事項],雑歌","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
あかものすその[寛],
ひづちなむ,[寛]そめひちむ,
けふのこさめに[寛],
われさへぬれな,[寛]われとぬれぬな,
" "#[番号]07/1091","#[題詞](詠雨)","#[原文]可融 雨者莫零 吾妹子之 形見之服 吾下尓著有","#[訓読]通るべく雨はな降りそ我妹子が形見の衣我れ下に着り","#[仮名],とほるべく,あめはなふりそ,わぎもこが,かたみのころも,あれしたにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌","#[訓異]
とほるべく,[寛]とほるへき,
あめはなふりそ[寛],
わぎもこが,[寛]わきもこか,
かたみのころも[寛],
あれしたにけり,[寛]われしたにきたり,
" "#[番号]07/1092","#[題詞]詠山","#[原文]動神之 音耳聞 巻向之 桧原山乎 今日見鶴鴨","#[訓読]鳴る神の音のみ聞きし巻向の桧原の山を今日見つるかも","#[仮名],なるかみの,おとのみききし,まきむくの,ひはらのやまを,けふみつるかも","#[左注](右三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,巻向,奈良,非略体,地名,枕詞","#[訓異]
なるかみの[寛],
おとのみききし,[寛]おとにのみきく,
まきむくの,[寛]まきもくの,
ひはらのやまを[寛],
けふみつるかも[寛],
" "#[番号]07/1093","#[題詞](詠山)","#[原文]三毛侶之 其山奈美尓 兒等手乎 巻向山者 継之宜霜","#[訓読]三諸のその山なみに子らが手を巻向山は継ぎしよろしも","#[仮名],みもろの,そのやまなみに,こらがてを,まきむくやまは,つぎしよろしも","#[左注](右三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,巻向,奈良,非略体,地名,枕詞","#[訓異]
みもろの[寛],
そのやまなみに[寛],
こらがてを,[寛]こらかてを,
まきむくやまは,[寛]まきもくやまは,
つぎしよろしも,[寛]つきてしよしも,
" "#[番号]07/1094","#[題詞](詠山)","#[原文]我衣 色<取>染 味酒 三室山 黄葉為在","#[訓読]我が衣色取り染めむ味酒三室の山は黄葉しにけり","#[仮名],あがころも,いろどりそめむ,うまさけ,みむろのやまは,もみちしにけり","#[左注]右三首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]服 -> 取 (塙) / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,三輪山,奈良,略体,地名,枕詞,季節","#[訓異]
あがころも,[寛]わかきぬの,
いろどりそめむ,[寛]いろきそめたり,
うまさけ,[寛]うまさかの,
みむろのやまは,[寛]みむろのやまの,
もみちしにけり,[寛]もみちしたるに,
" "#[番号]07/1095","#[題詞](詠山)","#[原文]三諸就 三輪山見者 隠口乃 始瀬之桧原 所念鴨","#[訓読]三諸つく三輪山見れば隠口の泊瀬の桧原思ほゆるかも","#[仮名],みもろつく,みわやまみれば,こもりくの,はつせのひはら,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,三輪山,奈良,地名,枕詞","#[訓異]
みもろつく[寛],
みわやまみれば,[寛]みわやまみれは,
こもりくの[寛],
はつせのひはら[寛],
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]07/1096","#[題詞](詠山)","#[原文]昔者之 事波不知乎 我見而毛 久成奴 天之香具山","#[訓読]いにしへのことは知らぬを我れ見ても久しくなりぬ天の香具山","#[仮名],いにしへの,ことはしらぬを,われみても,ひさしくなりぬ,あめのかぐやま","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,香具山,飛鳥,地名","#[訓異]
いにしへの[寛],
ことはしらぬを[寛],
われみても[寛],
ひさしくなりぬ[寛],
あめのかぐやま,[寛]あまのかくやま,
" "#[番号]07/1097","#[題詞](詠山)","#[原文]吾勢子乎 乞許世山登 人者雖云 君毛不来益 山之名尓有之","#[訓読]我が背子をこち巨勢山と人は言へど君も来まさず山の名にあらし","#[仮名],わがせこを,こちこせやまと,ひとはいへど,きみもきまさず,やまのなにあらし","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,序詞,恋情","#[訓異]
わがせこを,[寛]わかせこを,
こちこせやまと[寛],
ひとはいへど,[寛]ひとはいへと,
きみもきまさず,[寛]きみもきまさぬ,
やまのなにあらし[寛],
" "#[番号]07/1098","#[題詞](詠山)","#[原文]木道尓社 妹山在云 <玉>櫛上 二上山母 妹許曽有来","#[訓読]紀道にこそ妹山ありといへ玉櫛笥二上山も妹こそありけれ","#[仮名],きぢにこそ,いもやまありといへ,たまくしげ,ふたかみやまも,いもこそありけれ","#[左注]","#[校異]<> -> 玉 [万葉考]","#[事項],雑歌,二上山,地名,枕詞,恋情","#[訓異]
きぢにこそ,[寛]きちにこそ,
いもやまありといへ[寛],
たまくしげ,[寛]かつらきの,
ふたかみやまも[寛],
いもこそありけれ[寛],
" "#[番号]07/1099","#[題詞]詠岳","#[原文]片岡之 此向峯 椎蒔者 今年夏之 陰尓将<化>疑","#[訓読]片岡のこの向つ峰に椎蒔かば今年の夏の蔭にならむか","#[仮名],かたをかの,このむかつをに,しひまかば,ことしのなつの,かげにならむか","#[左注]","#[校異]比 -> 化 [万葉集古義]","#[事項],雑歌,王寺町,香芝町,奈良,地名","#[訓異]
かたをかの[寛],
このむかつをに,[寛]このたのみねに,
しひまかば,[寛]しゐまかは,
ことしのなつの[寛],
かげにならむか,[寛]かけになみむか,
" "#[番号]07/1100","#[題詞]詠河","#[原文]巻向之 病足之川由 徃水之 絶事無 又反将見","#[訓読]巻向の穴師の川ゆ行く水の絶ゆることなくまたかへり見む","#[仮名],まきむくの,あなしのかはゆ,ゆくみづの,たゆることなく,またかへりみむ","#[左注](右二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]病 [類][古][紀] 痛","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,巻向,奈良,非略体,地名,恋情","#[訓異]
まきむくの,[寛]まきもくの,
あなしのかはゆ[寛],
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
たゆることなく[寛],
またかへりみむ[寛],
" "#[番号]07/1101","#[題詞](詠河)","#[原文]黒玉之 夜去来者 巻向之 川音高之母 荒足鴨疾","#[訓読]ぬばたまの夜さり来れば巻向の川音高しもあらしかも疾き","#[仮名],ぬばたまの,よるさりくれば,まきむくの,かはとたかしも,あらしかもとき","#[左注]右二首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,巻向,奈良,非略体,地名,枕詞","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よるさりくれば,[寛]よるさりくれは,
まきむくの,[寛]まきもくの,
かはとたかしも,[寛]かはおとたかしも,
あらしかもとき[寛],
" "#[番号]07/1102","#[題詞](詠河)","#[原文]大王之 御笠山之 帶尓為流 細谷川之 音乃清也","#[訓読]大君の御笠の山の帯にせる細谷川の音のさやけさ","#[仮名],おほきみの,みかさのやまの,おびにせる,ほそたにがはの,おとのさやけさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,三笠山,奈良,地名,枕詞,叙景,土地讃美","#[訓異]
おほきみの[寛],
みかさのやまの[寛],
おびにせる,[寛]おひにせる,
ほそたにがはの,[寛]ほそたにかはの,
おとのさやけさ[寛],
" "#[番号]07/1103","#[題詞](詠河)","#[原文]今敷者 見目屋跡念之 三芳野之 大川余杼乎 今日見鶴鴨","#[訓読]今しくは見めやと思ひしみ吉野の大川淀を今日見つるかも","#[仮名],いましくは,みめやとおもひし,みよしのの,おほかはよどを,けふみつるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,吉野,地名,土地讃美","#[訓異]
いましくは[寛],
みめやとおもひし[寛],
みよしのの[寛],
おほかはよどを,[寛]おほかはよとを,
けふみつるかも[寛],
" "#[番号]07/1104","#[題詞](詠河)","#[原文]馬並而 三芳野河乎 欲見 打越来而曽 瀧尓遊鶴","#[訓読]馬並めてみ吉野川を見まく欲りうち越え来てぞ瀧に遊びつる","#[仮名],うまなめて,みよしのがはを,みまくほり,うちこえきてぞ,たきにあそびつる","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,吉野,地名","#[訓異]
うまなめて[寛],
みよしのがはを,[寛]みよしのかはを,
みまくほり[寛],
うちこえきてぞ,[寛]うちこえきてそ,
たきにあそびつる,[寛]たきにあそひつる,
" "#[番号]07/1105","#[題詞](詠河)","#[原文]音聞 目者末見 吉野川 六田之与杼乎 今日見鶴鴨","#[訓読]音に聞き目にはいまだ見ぬ吉野川六田の淀を今日見つるかも","#[仮名],おとにきき,めにはいまだみぬ,よしのがは,むつたのよどを,けふみつるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,吉野,地名,土地讃美","#[訓異]
おとにきき[寛],
めにはいまだみぬ,[寛]めにはまたみぬ,
よしのがは,[寛]よしのかは,
むつたのよどを,[寛]むつたのよとを,
けふみつるかも[寛],
" "#[番号]07/1106","#[題詞](詠河)","#[原文]河豆鳴 清川原乎 今日見而者 何時可越来而 見乍偲食","#[訓読]かはづ鳴く清き川原を今日見てはいつか越え来て見つつ偲はむ","#[仮名],かはづなく,きよきかはらを,けふみては,いつかこえきて,みつつしのはむ","#[左注]","#[校異]河 [類][紀](塙) 川","#[事項],雑歌,動物","#[訓異]
かはづなく,[寛]かはつなく,
きよきかはらを[寛],
けふみては[寛],
いつかこえきて[寛],
みつつしのはむ[寛],
" "#[番号]07/1107","#[題詞](詠河)","#[原文]泊瀬川 白木綿花尓 堕多藝都 瀬清跡 見尓来之吾乎","#[訓読]泊瀬川白木綿花に落ちたぎつ瀬をさやけみと見に来し我れを","#[仮名],はつせがは,しらゆふはなに,おちたぎつ,せをさやけみと,みにこしわれを","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,初瀬,奈良,地名,土地讃美","#[訓異]
はつせがは,[寛]はつせかは,
しらゆふはなに[寛],
おちたぎつ,[寛]おちたきつ,
せをさやけみと,[寛]せをさやけくと,
みにこしわれを[寛],
" "#[番号]07/1108","#[題詞](詠河)","#[原文]泊瀬川 流水尾之 湍乎早 井提越浪之 音之清久","#[訓読]泊瀬川流るる水脈の瀬を早みゐで越す波の音の清けく","#[仮名],はつせがは,ながるるみをの,せをはやみ,ゐでこすなみの,おとのきよけく","#[左注]","#[校異]提 [西(貼紙訂正)] 堤","#[事項],雑歌,初瀬,奈良,土地讃美,地名","#[訓異]
はつせがは,[寛]はつせかは,
ながるるみをの,[寛]なかるるみをの,
せをはやみ[寛],
ゐでこすなみの,[寛]ゐてこすなみの,
おとのきよけく,[寛]おとのさやけく,
" "#[番号]07/1109","#[題詞](詠河)","#[原文]佐桧乃熊 桧隅川之 瀬乎早 君之手取者 将縁言毳","#[訓読]さ桧の隈桧隈川の瀬を早み君が手取らば言寄せむかも","#[仮名],さひのくま,ひのくまがはの,せをはやみ,きみがてとらば,ことよせむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,飛鳥,恋愛,地名","#[訓異]
さひのくま[寛],
ひのくまがはの,[寛]ひのくまかはの,
せをはやみ[寛],
きみがてとらば,[寛]きみかてとらは,
ことよせむかも,[寛]よらむてうかも,
" "#[番号]07/1110","#[題詞](詠河)","#[原文]湯種蒔 荒木之小田矣 求跡 足結出所沾 此水之湍尓","#[訓読]ゆ種蒔くあらきの小田を求めむと足結ひ出で濡れぬこの川の瀬に","#[仮名],ゆだねまく,あらきのをだを,もとめむと,あゆひいでぬれぬ,このかはのせに","#[左注]","#[校異]出 [万葉集略解] 出 / 河 [類][紀](塙) 川","#[事項],雑歌,比喩,恋愛","#[訓異]
ゆだねまく,[寛]ゆたねまき,
あらきのをだを,[寛]あらきのをたを,
もとめむと[寛],
あゆひいでぬれぬ,[寛]あゆいてぬれぬ,
このかはのせに[寛],
" "#[番号]07/1111","#[題詞](詠河)","#[原文]古毛 如此聞乍哉 偲兼 此古河之 清瀬之音矣","#[訓読]いにしへもかく聞きつつか偲ひけむこの布留川の清き瀬の音を","#[仮名],いにしへも,かくききつつか,しのひけむ,このふるがはの,きよきせのとを","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,天理,地名,土地讃美","#[訓異]
いにしへも[寛],
かくききつつか,[寛]かくききつつや,
しのひけむ[寛],
このふるがはの,[寛]このふるかはの,
きよきせのとを,[寛]きよきせのおとを,
" "#[番号]07/1112","#[題詞](詠河)","#[原文]波祢蘰 今為妹乎 浦若三 去来率去河之 音之清左","#[訓読]はねかづら今する妹をうら若みいざ率川の音のさやけさ","#[仮名],はねかづら,いまするいもを,うらわかみ,いざいさかはの,おとのさやけさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,奈良,地名,土地讃美","#[訓異]
はねかづら,[寛]はねかつら,
いまするいもを[寛],
うらわかみ[寛],
いざいさかはの,[寛]いさいさかはの,
おとのさやけさ[寛],
" "#[番号]07/1113","#[題詞](詠河)","#[原文]此小川 白氣結 瀧至 八信井上尓 事上不為友","#[訓読]この小川霧ぞ結べるたぎちゆく走井の上に言挙げせねども","#[仮名],このをがは,きりぞむすべる,たぎちたる,はしりゐのへに,ことあげせねども","#[左注]","#[校異]瀧 [元][類][古] 流","#[事項],雑歌","#[訓異]
このをがは,[寛]このおかは,
きりぞむすべる,[寛]きりそむすへる,
たぎちたる,[寛]たきちゆく,
はしりゐのへに,[寛]はしりゐのうへに,
ことあげせねども,[寛]ことあけせねとも,
" "#[番号]07/1114","#[題詞](詠河)","#[原文]吾紐乎 妹手以而 結八川 又還見 万代左右荷","#[訓読]我が紐を妹が手もちて結八川またかへり見む万代までに","#[仮名],わがひもを,いもがてもちて,ゆふやがは,またかへりみむ,よろづよまでに","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,序詞,地名,土地讃美","#[訓異]
わがひもを,[寛]わかひもを,
いもがてもちて,[寛]いもかてもちて,
ゆふやがは,[寛]ゆふはかは,
またかへりみむ[寛],
よろづよまでに,[寛]よろつよまてに,
" "#[番号]07/1115","#[題詞](詠河)","#[原文]妹之紐 結八<河>内乎 古之 并人見等 此乎誰知","#[訓読]妹が紐結八河内をいにしへのみな人見きとここを誰れ知る","#[仮名],いもがひも,ゆふやかふちを,いにしへの,みなひとみきと,ここをたれしる","#[左注]","#[校異]川 -> 河 [元][類][古][紀]","#[事項],雑歌,序詞,土地讃美,地名","#[訓異]
いもがひも,[寛]いもかひも,
ゆふやかふちを,[寛]ゆふはかうちを,
いにしへの[寛],
みなひとみきと[寛],
ここをたれしる,[寛]これをたれしる,
" "#[番号]07/1116","#[題詞]詠露","#[原文]烏玉之 吾黒髪尓 落名積 天之露霜 取者消乍","#[訓読]ぬばたまの我が黒髪に降りなづむ天の露霜取れば消につつ","#[仮名],ぬばたまの,わがくろかみに,ふりなづむ,あめのつゆしも,とればけにつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,枕詞","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
わがくろかみに,[寛]わかくろかみに,
ふりなづむ,[寛]ふりなつむ,
あめのつゆしも,[寛]あまのつえしも,
とればけにつつ,[寛]とれはきえつつ,
" "#[番号]07/1117","#[題詞]詠花","#[原文]嶋廻為等 礒尓見之花 風吹而 波者雖縁 不取不止","#[訓読]島廻すと磯に見し花風吹きて波は寄すとも採らずはやまじ","#[仮名],しまみすと,いそにみしはな,かぜふきて,なみはよすとも,とらずはやまじ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌","#[訓異]
しまみすと,[寛]あさりすと,
いそにみしはな[寛],
かぜふきて,[寛]かせふきて,
なみはよすとも,[寛]なみはよるとも,
とらずはやまじ,[寛]とらすはやまし,
" "#[番号]07/1118","#[題詞]詠葉","#[原文]古尓 有險人母 如吾等架 弥和乃桧原尓 挿頭折兼","#[訓読]いにしへにありけむ人も我がごとか三輪の桧原にかざし折りけむ","#[仮名],いにしへに,ありけむひとも,わがごとか,みわのひはらに,かざしをりけむ","#[左注](右二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,三輪山,奈良,非略体,地名,悲嘆","#[訓異]
いにしへに[寛],
ありけむひとも[寛],
わがごとか,[寛]わかことか,
みわのひはらに,[寛]みわのひのくに,
かざしをりけむ,[寛]かさしをりけむ,
" "#[番号]07/1119","#[題詞](詠葉)","#[原文]徃川之 過去人之 手不折者 裏觸立 三和之桧原者","#[訓読]行く川の過ぎにし人の手折らねばうらぶれ立てり三輪の桧原は","#[仮名],ゆくかはの,すぎにしひとの,たをらねば,うらぶれたてり,みわのひはらは","#[左注]右二首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,三輪山,奈良,非略体,地名,悲嘆","#[訓異]
ゆくかはの[寛],
すぎにしひとの,[寛]すきゆくひとの,
たをらねば,[寛]たをらねは,
うらぶれたてり,[寛]うらふれたてり,
みわのひはらは[寛],
" "#[番号]07/1120","#[題詞]詠蘿","#[原文]三芳野之 青根我峯之 蘿席 誰将織 經緯無二","#[訓読]み吉野の青根が岳の蘿むしろ誰れか織りけむ経緯なしに","#[仮名],みよしのの,あをねがたけの,こけむしろ,たれかおりけむ,たてぬきなしに","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,吉野,地名,土地讃美","#[訓異]
みよしのの,[寛]みよしのは,
あをねがたけの,[寛]あをねかみねの,
こけむしろ[寛],
たれかおりけむ,[寛]たれかをりけむ,
たてぬきなしに[寛],
" "#[番号]07/1121","#[題詞]詠草","#[原文]妹<等所> 我通路 細竹為酢寸 我通 靡細竹原","#[訓読]妹らがり我が通ひ道の小竹すすき我れし通はば靡け小竹原","#[仮名],いもらがり,わがかよひぢの,しのすすき,われしかよはば,なびけしのはら","#[左注]","#[校異]所等 -> 等所","#[事項],雑歌,植物,恋情","#[訓異]
いもらがり,[寛]いもかりと,
わがかよひぢの,[寛]わかかよひちの,
しのすすき[寛],
われしかよはば,[寛]われしかよはは,
なびけしのはら,[寛]なひけしのはら,
" "#[番号]07/1122","#[題詞]詠鳥","#[原文]山際尓 渡秋沙乃 <行>将居 其河瀬尓 浪立勿湯目","#[訓読]山の際に渡るあきさの行きて居むその川の瀬に波立つなゆめ","#[仮名],やまのまに,わたるあきさの,ゆきてゐむ,そのかはのせに,なみたつなゆめ","#[左注]","#[校異]徃 -> 行 [類][紀]","#[事項],雑歌,動物,序詞","#[訓異]
やまのまに,[寛]やまのはに,
わたるあきさの[寛],
ゆきてゐむ[寛],
そのかはのせに,[寛]そのなはのせに,
なみたつなゆめ[寛],
" "#[番号]07/1123","#[題詞](詠鳥)","#[原文]佐保河之 清河原尓 鳴<知>鳥 河津跡二 忘金都毛","#[訓読]佐保川の清き川原に鳴く千鳥かはづと二つ忘れかねつも","#[仮名],さほがはの,きよきかはらに,なくちどり,かはづとふたつ,わすれかねつも","#[左注]","#[校異]智 -> 知 [類][紀][細]","#[事項],雑歌,奈良,地名,動物,恋情","#[訓異]
さほがはの,[寛]さほかはの,
きよきかはらに[寛],
なくちどり,[寛]なくちとり,
かはづとふたつ,[寛]かはつとふたつ,
わすれかねつも[寛],
" "#[番号]07/1124","#[題詞](詠鳥)","#[原文]佐保<川>尓 小驟千鳥 夜三更而 尓音聞者 宿不難尓","#[訓読]佐保川に騒ける千鳥さ夜更けて汝が声聞けば寐ねかてなくに","#[仮名],さほがはに,さわけるちどり,さよふけて,ながこゑきけば,いねかてなくに","#[左注]","#[校異]河 -> 川 [類][紀][温]","#[事項],雑歌,奈良,動物,地名,恋情","#[訓異]
さほがはに,[寛]さほかはに,
さわけるちどり,[寛]あそふちとりの,
さよふけて[寛],
ながこゑきけば,[寛]そのこゑきけは,
いねかてなくに,[寛]いねられなくに,
" "#[番号]07/1125","#[題詞]思故郷","#[原文]清湍尓 千鳥妻喚 山際尓 霞立良武 甘南備乃里","#[訓読]清き瀬に千鳥妻呼び山の際に霞立つらむ神なびの里","#[仮名],きよきせに,ちどりつまよび,やまのまに,かすみたつらむ,かむなびのさと","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,飛鳥,地名,動物","#[訓異]
きよきせに[寛],
ちどりつまよび,[寛]ちとりつまよふ,
やまのまに,[寛]やまのはに,
かすみたつらむ[寛],
かむなびのさと,[寛]かみなひのさと,
" "#[番号]07/1126","#[題詞](思故郷)","#[原文]年月毛 末經尓 明日香<川> 湍瀬由渡之 石走無","#[訓読]年月もいまだ経なくに明日香川瀬々ゆ渡しし石橋もなし","#[仮名],としつきも,いまだへなくに,あすかがは,せぜゆわたしし,いしはしもなし","#[左注]","#[校異]河 -> 川 [類][紀][古][紀]","#[事項],雑歌,飛鳥,地名","#[訓異]
としつきも[寛],
いまだへなくに,[寛]いまたへなくに,
あすかがは,[寛]あすかかは,
せぜゆわたしし,[寛]せせにわたしし,
いしはしもなし[寛],
" "#[番号]07/1127","#[題詞]詠井","#[原文]隕田寸津 走井水之 清有者 <癈>者吾者 去不勝可聞","#[訓読]落ちたぎつ走井水の清くあれば置きては我れは行きかてぬかも","#[仮名],おちたぎつ,はしりゐみづの,きよくあれば,おきてはわれは,ゆきかてぬかも","#[左注]","#[校異]度 -> 癈 [元][類][古]","#[事項],雑歌,地名","#[訓異]
おちたぎつ,[寛]おちたきつ,
はしりゐみづの,[寛]はしりゐみつの,
きよくあれば,[寛]きよけれは,
おきてはわれは,[寛]わたらはわれは,
ゆきかてぬかも[寛],
" "#[番号]07/1128","#[題詞](詠井)","#[原文]安志妣成 榮之君之 穿之井之 石井之水者 雖飲不飽鴨","#[訓読]馬酔木なす栄えし君が掘りし井の石井の水は飲めど飽かぬかも","#[仮名],あしびなす,さかえしきみが,ほりしゐの,いしゐのみづは,のめどあかぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,地名","#[訓異]
あしびなす,[寛]あしひなる,
さかえしきみが,[寛]さかえしきみか,
ほりしゐの,[寛]ほりしゐの,
いしゐのみづは,[寛]いはゐのみつは,
のめどあかぬかも,[寛]のめとあかぬかも,
" "#[番号]07/1129","#[題詞]詠<倭>琴","#[原文]琴取者 嘆先立 盖毛 琴之下樋尓 嬬哉匿有","#[訓読]琴取れば嘆き先立つけだしくも琴の下樋に妻や隠れる","#[仮名],こととれば,なげきさきだつ,けだしくも,ことのしたびに,つまやこもれる","#[左注]","#[校異]和 -> 倭 [元][類][紀][温]","#[事項],雑歌,恋愛","#[訓異]
こととれば,[寛]こととれは,
なげきさきだつ,[寛]なけきさきたつ,
けだしくも,[寛]けたしくも,
ことのしたびに,[寛]ことのしたひに,
つまやこもれる[寛],
" "#[番号]07/1130","#[題詞]芳野作","#[原文]神左振 磐根己凝敷 三芳野之 水分山乎 見者悲毛","#[訓読]神さぶる岩根こごしきみ吉野の水分山を見れば悲しも","#[仮名],かむさぶる,いはねこごしき,みよしのの,みくまりやまを,みればかなしも","#[左注]","#[校異]凝 [類][古][紀] 疑","#[事項],雑歌,吉野,羈旅,地名","#[訓異]
かむさぶる,[寛]かみさふる,
いはねこごしき,[寛]いはねここしき,
みよしのの[寛],
みくまりやまを,[寛]みつわけやまを,
みればかなしも,[寛]みれはかなしも,
" "#[番号]07/1131","#[題詞](芳野作)","#[原文]皆人之 戀三<芳>野 今日見者 諾母戀来 山川清見","#[訓読]皆人の恋ふるみ吉野今日見ればうべも恋ひけり山川清み","#[仮名],みなひとの,こふるみよしの,けふみれば,うべもこひけり,やまかはきよみ","#[左注]","#[校異]吉 -> 芳 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,吉野,羈旅,地名,恋情,土地讃美","#[訓異]
みなひとの[寛],
こふるみよしの[寛],
けふみれば,[寛]けふみれは,
うべもこひけり,[寛]うへもこひけり,
やまかはきよみ[寛],
" "#[番号]07/1132","#[題詞](芳野作)","#[原文]夢乃和太 事西在来 寤毛 見而来物乎 念四念者","#[訓読]夢のわだ言にしありけりうつつにも見て来るものを思ひし思へば","#[仮名],いめのわだ,ことにしありけり,うつつにも,みてけるものを,おもひしおもへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,吉野,羈旅,地名","#[訓異]
いめのわだ,[寛]ゆめのわた,
ことにしありけり[寛],
うつつにも[寛],
みてけるものを,[寛]みてこしものを,
おもひしおもへば,[寛]おもひしおもへは,
" "#[番号]07/1133","#[題詞](芳野作)","#[原文]皇祖神之 神宮人 冬薯蕷葛 弥常敷尓 吾反将見","#[訓読]すめろきの神の宮人ところづらいやとこしくに我れかへり見む","#[仮名],すめろきの,かみのみやひと,ところづら,いやとこしくに,われかへりみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,吉野,地名,土地讃美","#[訓異]
すめろきの[寛],
かみのみやひと[寛],
ところづら,[寛]さねかつら,
いやとこしくに,[寛]いやとこしきに,
われかへりみむ[寛],
" "#[番号]07/1134","#[題詞](芳野作)","#[原文]能野川 石迹柏等 時齒成 吾者通 万世左右二","#[訓読]吉野川巌と栢と常磐なす我れは通はむ万代までに","#[仮名],よしのがは,いはとかしはと,ときはなす,われはかよはむ,よろづよまでに","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,吉野,地名,土地讃美","#[訓異]
よしのがは,[寛]よしのかは,
いはとかしはと[寛],
ときはなす,[寛]ときはなる,
われはかよはむ[寛],
よろづよまでに,[寛]よろつよまてに,
" "#[番号]07/1135","#[題詞]山背作","#[原文]氏河齒 与杼湍無之 阿自呂人 舟召音 越乞所聞","#[訓読]宇治川は淀瀬なからし網代人舟呼ばふ声をちこち聞こゆ","#[仮名],うぢがはは,よどせなからし,あじろひと,ふねよばふこゑ,をちこちきこゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,京都,羈旅,地名,叙景","#[訓異]
うぢがはは,[寛]うちかははろろ,
よどせなからし,[寛]よとせなからし,
あじろひと,[寛]あしろひと,
ふねよばふこゑ,[寛]ふねよらこゑは,
をちこちきこゆ[寛],
" "#[番号]07/1136","#[題詞](山背作)","#[原文]氏河尓 生菅藻乎 河早 不取来尓家里 L為益緒","#[訓読]宇治川に生ふる菅藻を川早み採らず来にけりつとにせましを","#[仮名],うぢがはに,おふるすがもを,かははやみ,とらずきにけり,つとにせましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,京都,羈旅,地名","#[訓異]
うぢがはに,[寛]うちかはに,
おふるすがもを,[寛]おふるすかもを,
かははやみ[寛],
とらずきにけり,[寛]とらてきにけり,
つとにせましを,[寛]つとにしましを,
" "#[番号]07/1137","#[題詞](山背作)","#[原文]氏人之 譬乃足白 吾在者 今齒<与>良増 木積不来友","#[訓読]宇治人の譬への網代我れならば今は寄らまし木屑来ずとも","#[仮名],うぢひとの,たとへのあじろ,われならば,いまはよらまし,こつみこずとも","#[左注]","#[校異]王 -> 与 [万葉集略解] (塙[古義による]) 生","#[事項],雑歌,京都,羈旅,地名","#[訓異]
うぢひとの,[寛]うちひとの,
たとへのあじろ,[寛]たとへのあしろ,
われならば,[寛]われなれは,
いまはよらまし,[寛]いまはきよらそ,
こつみこずとも,[寛]こつみこすとも,
" "#[番号]07/1138","#[題詞](山背作)","#[原文]氏河乎 船令渡呼跡 雖喚 不所聞有之 楫音毛不為","#[訓読]宇治川を舟渡せをと呼ばへども聞こえざるらし楫の音もせず","#[仮名],うぢがはを,ふねわたせをと,よばへども,きこえざるらし,かぢのともせず","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,京都,羈旅,地名","#[訓異]
うぢがはを,[寛]うちかはを,
ふねわたせをと[寛],
よばへども,[寛]よはへとも,
きこえざるらし,[寛]きこへさるらし,
かぢのともせず,[寛]かちのおともせす,
" "#[番号]07/1139","#[題詞](山背作)","#[原文]千早人 氏川浪乎 清可毛 旅去人之 立難為","#[訓読]ちはや人宇治川波を清みかも旅行く人の立ちかてにする","#[仮名],ちはやひと,うぢがはなみを,きよみかも,たびゆくひとの,たちかてにする","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,京都,羈旅,地名","#[訓異]
ちはやひと[寛],
うぢがはなみを,[寛]うちかはなみを,
きよみかも,[寛]きよしかも,
たびゆくひとの,[寛]たひゆくひとの,
たちかてにする[寛],
" "#[番号]07/1140","#[題詞]攝津作","#[原文]志長鳥 居名野乎来者 有間山 夕霧立 宿者無<而> [一本云 猪名乃浦廻乎 榜来者]","#[訓読]しなが鳥猪名野を来れば有馬山夕霧立ちぬ宿りはなくて [一本云 猪名の浦みを漕ぎ来れば]","#[仮名],しながどり,ゐなのをくれば,ありまやま,ゆふぎりたちぬ,やどりはなくて,[ゐなのうらみを,こぎくれば]","#[左注]","#[校異]為 -> 而 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,兵庫,大阪,羈旅,動物,地名","#[訓異]
しながどり,[寛]しなかとり,
ゐなのをくれば,[寛]ゐなのをくれは,
ありまやま[寛],
ゆふぎりたちぬ,[寛]ゆふきりたちぬ,
やどりはなくて,[寛]やとはなくして,
[ゐなのうらみを,[寛]ゐなのうらわを,
こぎくれば],[寛]こきくれは,
" "#[番号]07/1141","#[題詞](攝津作)","#[原文]武庫河 水尾急<> 赤駒 足何久激 沾祁流鴨","#[訓読]武庫川の水脈を早みと赤駒の足掻くたぎちに濡れにけるかも","#[仮名],むこがはの,みををはやみと,あかごまの,あがくたぎちに,ぬれにけるかも","#[左注]","#[校異]嘉 -> <> [元][類]","#[事項],雑歌,兵庫,大阪,羈旅,地名","#[訓異]
むこがはの,[寛]むこかはの,
みををはやみと,[寛]みつをはやみか,
あかごまの,[寛]あかこまの,
あがくたぎちに,[寛]あかくそそきに,
ぬれにけるかも[寛],
" "#[番号]07/1142","#[題詞](攝津作)","#[原文]命 幸久吉 石流 垂水々乎 結飲都","#[訓読]命をし幸くよけむと石走る垂水の水をむすびて飲みつ","#[仮名],いのちをし,さきくよけむと,いはばしる,たるみのみづを,むすびてのみつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名","#[訓異]
いのちをし,[寛]いのちさち,
さきくよけむと,[寛]ひさしきよしも,
いはばしる,[寛]いはそそく,
たるみのみづを,[寛]たるみのみつを,
むすびてのみつ,[寛]むすひてのみつ,
" "#[番号]07/1143","#[題詞](攝津作)","#[原文]作夜深而 穿江水手鳴 松浦船 梶音高之 水尾早見鴨","#[訓読]さ夜更けて堀江漕ぐなる松浦舟楫の音高し水脈早みかも","#[仮名],さよふけて,ほりえこぐなる,まつらぶね,かぢのおとたかし,みをはやみかも","#[左注]","#[校異]船 [類][古][温] 舟","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名,叙景","#[訓異]
さよふけて[寛],
ほりえこぐなる,[寛]ほりえこくなる,
まつらぶね,[寛]まつらふね,
かぢのおとたかし,[寛]かちおとたかし,
みをはやみかも[寛],
" "#[番号]07/1144","#[題詞](攝津作)","#[原文]悔毛 満奴流塩鹿 墨江之 岸乃浦廻従 行益物乎","#[訓読]悔しくも満ちぬる潮か住吉の岸の浦廻ゆ行かましものを","#[仮名],くやしくも,みちぬるしほか,すみのえの,きしのうらみゆ,ゆかましものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名","#[訓異]
くやしくも[寛],
みちぬるしほか[寛],
すみのえの[寛],
きしのうらみゆ,[寛]きしのうらわに,
ゆかましものを[寛],
" "#[番号]07/1145","#[題詞](攝津作)","#[原文]為妹 貝乎拾等 陳奴乃海尓 所沾之袖者 雖涼常不干","#[訓読]妹がため貝を拾ふと茅渟の海に濡れにし袖は干せど乾かず","#[仮名],いもがため,かひをひりふと,ちぬのうみに,ぬれにしそでは,ほせどかわかず","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名","#[訓異]
いもがため,[寛]いもかため,
かひをひりふと,[寛]かひをひろふと,
ちぬのうみに[寛],
ぬれにしそでは,[寛]ぬれにしそては,
ほせどかわかず,[寛]ほせとかはかす,
" "#[番号]07/1146","#[題詞](攝津作)","#[原文]目頬敷 人乎吾家尓 住吉之 岸乃黄土 将見因毛欲得","#[訓読]めづらしき人を我家に住吉の岸の埴生を見むよしもがも","#[仮名],めづらしき,ひとをわぎへに,すみのえの,きしのはにふを,みむよしもがも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名","#[訓異]
めづらしき,[寛]めつらしき,
ひとをわぎへに,[寛]ひとをわかいへに,
すみのえの[寛],
きしのはにふを[寛],
みむよしもがも,[寛]みむよしもかな,
" "#[番号]07/1147","#[題詞](攝津作)","#[原文]暇有者 拾尓将徃 住吉之 岸因云 戀忘貝","#[訓読]暇あらば拾ひに行かむ住吉の岸に寄るといふ恋忘れ貝","#[仮名],いとまあらば,ひりひにゆかむ,すみのえの,きしによるといふ,こひわすれがひ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名,動物","#[訓異]
いとまあらば,[寛]いとまあらは,
ひりひにゆかむ,[寛]ひろひにゆかむ,
すみのえの[寛],
きしによるといふ,[寛]きしによるてふ,
こひわすれがひ,[寛]こひわすれかひ,
" "#[番号]07/1148","#[題詞](攝津作)","#[原文]馬雙而 今日吾見鶴 住吉之 岸之黄土 於万世見","#[訓読]馬並めて今日我が見つる住吉の岸の埴生を万代に見む","#[仮名],うまなめて,けふわがみつる,すみのえの,きしのはにふを,よろづよにみむ","#[左注]","#[校異]馬 [元][類](塙) 駒","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,土地讃美,地名","#[訓異]
うまなめて[寛],
けふわがみつる,[寛]けふわかみつる,
すみのえの[寛],
きしのはにふを[寛],
よろづよにみむ,[寛]よろつよにみむ,
" "#[番号]07/1149","#[題詞](攝津作)","#[原文]住吉尓 徃云道尓 昨日見之 戀忘貝 事二四有家里","#[訓読]住吉に行くといふ道に昨日見し恋忘れ貝言にしありけり","#[仮名],すみのえに,ゆくといふみちに,きのふみし,こひわすれがひ,ことにしありけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,望郷,地名,動物","#[訓異]
すみのえに[寛],
ゆくといふみちに[寛],
きのふみし[寛],
こひわすれがひ,[寛]こひわすれかひ,
ことにしありけり[寛],
" "#[番号]07/1150","#[題詞](攝津作)","#[原文]墨吉之 岸尓家欲得 奥尓邊尓 縁白浪 見乍将思","#[訓読]住吉の岸に家もが沖に辺に寄する白波見つつ偲はむ","#[仮名],すみのえの,きしにいへもが,おきにへに,よするしらなみ,みつつしのはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,望郷,地名","#[訓異]
すみのえの[寛],
きしにいへもが,[寛]きしにいへもか,
おきにへに[寛],
よするしらなみ[寛],
みつつしのはむ,[寛]みつつおもはむ,
" "#[番号]07/1151","#[題詞](攝津作)","#[原文]大伴之 三津之濱邊乎 打曝 因来浪之 逝方不知毛","#[訓読]大伴の御津の浜辺をうちさらし寄せ来る波のゆくへ知らずも","#[仮名],おほともの,みつのはまへを,うちさらし,よせくるなみの,ゆくへしらずも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名,不安","#[訓異]
おほともの[寛],
みつのはまへを[寛],
うちさらし[寛],
よせくるなみの[寛],
ゆくへしらずも,[寛]ゆくへしらすも,
" "#[番号]07/1152","#[題詞](攝津作)","#[原文]梶之音曽 髣髴為鳴 海末通女 奥藻苅尓 舟出為等思母 [一云 暮去者 梶之音為奈利]","#[訓読]楫の音ぞほのかにすなる海人娘子沖つ藻刈りに舟出すらしも [一云 夕されば楫の音すなり]","#[仮名],かぢのおとぞ,ほのかにすなる,あまをとめ,おきつもかりに,ふなですらしも,[ゆふされば,かぢのおとすなり]","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名","#[訓異]
かぢのおとぞ,[寛]かちのおとそ,
ほのかにすなる[寛],
あまをとめ[寛],
おきつもかりに[寛],
ふなですらしも,[寛]ふなてすらしも,
[ゆふされば,[寛]ゆふされは,
かぢのおとすなり],[寛]かちのおとすなり,
" "#[番号]07/1153","#[題詞](攝津作)","#[原文]住吉之 名兒之濱邊尓 馬立而 玉拾之久 常不所忘","#[訓読]住吉の名児の浜辺に馬立てて玉拾ひしく常忘らえず","#[仮名],すみのえの,なごのはまへに,うまたてて,たまひりひしく,つねわすらえず","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名","#[訓異]
すみのえの[寛],
なごのはまへに,[寛]なこのはまへに,
うまたてて[寛],
たまひりひしく,[寛]たまひろひしく,
つねわすらえず,[寛]つねわすられす,
" "#[番号]07/1154","#[題詞](攝津作)","#[原文]雨者零 借廬者作 何暇尓 吾兒之塩干尓 玉者将拾","#[訓読]雨は降る仮廬は作るいつの間に吾児の潮干に玉は拾はむ","#[仮名],あめはふる,かりいほはつくる,いつのまに,あごのしほひに,たまはひりはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名","#[訓異]
あめはふる[寛],
かりいほはつくる,[寛]かりほはつくる,
いつのまに[寛],
あごのしほひに,[寛]なこのしほひに,
たまはひりはむ,[寛]たまはひろはむ,
" "#[番号]07/1155","#[題詞](攝津作)","#[原文]奈呉乃海之 朝開之奈凝 今日毛鴨 礒之浦廻尓 乱而将有","#[訓読]名児の海の朝明のなごり今日もかも磯の浦廻に乱れてあるらむ","#[仮名],なごのうみの,あさけのなごり,けふもかも,いそのうらみに,みだれてあるらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名","#[訓異]
なごのうみの,[寛]なこのうみの,
あさけのなごり,[寛]あさけのなこり,
けふもかも[寛],
いそのうらみに,[寛]いそのうらわに,
みだれてあるらむ,[寛]みたれてあらむ,
" "#[番号]07/1156","#[題詞](攝津作)","#[原文]住吉之 遠里小野之 真榛以 須礼流衣乃 盛過去","#[訓読]住吉の遠里小野の真榛もち摺れる衣の盛り過ぎゆく","#[仮名],すみのえの,とほさとをのの,まはりもち,すれるころもの,さかりすぎゆく","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名","#[訓異]
すみのえの[寛],
とほさとをのの[寛],
まはりもち,[寛]まはきもて,
すれるころもの[寛],
さかりすぎゆく,[寛]さかりすきゆく,
" "#[番号]07/1157","#[題詞](攝津作)","#[原文]時風 吹麻久不知 阿胡乃海之 朝明之塩尓 玉藻苅奈","#[訓読]時つ風吹かまく知らず吾児の海の朝明の潮に玉藻刈りてな","#[仮名],ときつかぜ,ふかまくしらず,あごのうみの,あさけのしほに,たまもかりてな","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名","#[訓異]
ときつかぜ,[寛]ときつかせ,
ふかまくしらず,[寛]ふかまくしらす,
あごのうみの,[寛]あこのうみの,
あさけのしほに[寛],
たまもかりてな[寛],
" "#[番号]07/1158","#[題詞](攝津作)","#[原文]住吉之 奥津白浪 風吹者 来依留濱乎 見者浄霜","#[訓読]住吉の沖つ白波風吹けば来寄する浜を見れば清しも","#[仮名],すみのえの,おきつしらなみ,かぜふけば,きよするはまを,みればきよしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名,土地讃美","#[訓異]
すみのえの[寛],
おきつしらなみ[寛],
かぜふけば,[寛]かせふけは,
きよするはまを[寛],
みればきよしも,[寛]みれはきよしも,
" "#[番号]07/1159","#[題詞](攝津作)","#[原文]住吉之 岸之松根 打曝 縁来浪之 音之清羅","#[訓読]住吉の岸の松が根うちさらし寄せ来る波の音のさやけさ","#[仮名],すみのえの,きしのまつがね,うちさらし,よせくるなみの,おとのさやけさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名,土地讃美","#[訓異]
すみのえの[寛],
きしのまつがね,[寛]きしのまつかね,
うちさらし[寛],
よせくるなみの,[寛]よりくるなみの,
おとのさやけさ[寛],
" "#[番号]07/1160","#[題詞](攝津作)","#[原文]難波方 塩干丹立而 見渡者 淡路嶋尓 多豆渡所見","#[訓読]難波潟潮干に立ちて見わたせば淡路の島に鶴渡る見ゆ","#[仮名],なにはがた,しほひにたちて,みわたせば,あはぢのしまに,たづわたるみゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大阪,羈旅,地名,叙景,動物","#[訓異]
なにはがた,[寛]なにはかた,
しほひにたちて[寛],
みわたせば,[寛]みわたせは,
あはぢのしまに,[寛]あはちのしまに,
たづわたるみゆ,[寛]たつわたるみゆ,
" "#[番号]07/1161","#[題詞]覊旅作","#[原文]離家 旅西在者 秋風 寒暮丹 鴈喧<度>","#[訓読]家離り旅にしあれば秋風の寒き夕に雁鳴き渡る","#[仮名],いへざかり,たびにしあれば,あきかぜの,さむきゆふへに,かりなきわたる","#[左注]","#[校異]渡 -> 度 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,羈旅,羈旅,動物,叙景","#[訓異]
いへざかり,[寛]いへさかり,
たびにしあれば,[寛]たひにしあれは,
あきかぜの,[寛]あきかせの,
さむきゆふへに[寛],
かりなきわたる[寛],
" "#[番号]07/1162","#[題詞](覊旅作)","#[原文]圓方之 湊之渚鳥 浪立也 妻唱立而 邊近著毛","#[訓読]円方の港の洲鳥波立てや妻呼びたてて辺に近づくも","#[仮名],まとかたの,みなとのすどり,なみたてや,つまよびたてて,へにちかづくも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,三重県,松坂,地名,叙景","#[訓異]
まとかたの[寛],
みなとのすどり,[寛]みなとのすとり,
なみたてや,[寛]なみたては,
つまよびたてて,[寛]つまよひたてて,
へにちかづくも,[寛]へにちかつくも,
" "#[番号]07/1163","#[題詞](覊旅作)","#[原文]年魚市方 塩干家良思 知多乃浦尓 朝榜舟毛 奥尓依所見","#[訓読]年魚市潟潮干にけらし知多の浦に朝漕ぐ舟も沖に寄る見ゆ","#[仮名],あゆちがた,しほひにけらし,ちたのうらに,あさこぐふねも,おきによるみゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,名古屋,愛知,羈旅,叙景,地名","#[訓異]
あゆちがた,[寛]あゆちかた,
しほひにけらし[寛],
ちたのうらに[寛],
あさこぐふねも,[寛]あさこくふねも,
おきによるみゆ[寛],
" "#[番号]07/1164","#[題詞](覊旅作)","#[原文]塩干者 共滷尓出 鳴鶴之 音遠放 礒廻為等霜","#[訓読]潮干ればともに潟に出で鳴く鶴の声遠ざかる磯廻すらしも","#[仮名],しほふれば,ともにかたにいで,なくたづの,こゑとほざかる,いそみすらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,動物,叙景","#[訓異]
しほふれば,[寛]しほひれは,
ともにかたにいで,[寛]ともかたにいてて,
なくたづの,[寛]なくたつの,
こゑとほざかる,[寛]おととほさかる,
いそみすらしも,[寛]あさりすらしも,
" "#[番号]07/1165","#[題詞](覊旅作)","#[原文]暮名寸尓 求食為鶴 塩満者 奥浪高三 己妻喚","#[訓読]夕なぎにあさりする鶴潮満てば沖波高み己妻呼ばふ","#[仮名],ゆふなぎに,あさりするたづ,しほみてば,おきなみたかみ,おのづまよばふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,動物,叙景","#[訓異]
ゆふなぎに,[寛]ゆふなきに,
あさりするたづ,[寛]あさりするたつ,
しほみてば,[寛]しほみては,
おきなみたかみ[寛],
おのづまよばふ,[寛]おのかつまよふ,
" "#[番号]07/1166","#[題詞](覊旅作)","#[原文]古尓 有監人之 覓乍 衣丹揩牟 真野之榛原","#[訓読]いにしへにありけむ人の求めつつ衣に摺りけむ真野の榛原","#[仮名],いにしへに,ありけむひとの,もとめつつ,きぬにすりけむ,まののはりはら","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,神戸,兵庫,地名,植物","#[訓異]
いにしへに[寛],
ありけむひとの,[寛]ありけんひとの,
もとめつつ[寛],
きぬにすりけむ[寛],
まののはりはら,[寛]まののはきはら,
" "#[番号]07/1167","#[題詞](覊旅作)","#[原文]朝入為等 礒尓吾見之 莫告藻乎 誰嶋之 白水郎可将苅","#[訓読]あさりすと礒に我が見しなのりそをいづれの島の海人か刈りけむ","#[仮名],あさりすと,いそにわがみし,なのりそを,いづれのしまの,あまかかりけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,植物,比喩","#[訓異]
あさりすと[寛],
いそにわがみし,[寛]いそにわかみし,
なのりそを[寛],
いづれのしまの,[寛]いつれのしまの,
あまかかりけむ,[寛]あまかかるらむ,
" "#[番号]07/1168","#[題詞](覊旅作)","#[原文]今日毛可母 奥津玉藻者 白浪之 八重折之於丹 乱而将有","#[訓読]今日もかも沖つ玉藻は白波の八重をるが上に乱れてあるらむ","#[仮名],けふもかも,おきつたまもは,しらなみの,やへをるがうへに,みだれてあるらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,植物","#[訓異]
けふもかも[寛],
おきつたまもは[寛],
しらなみの[寛],
やへをるがうへに,[寛]やへおりのうへに,
みだれてあるらむ,[寛]みたれたるらむ,
" "#[番号]07/1169","#[題詞](覊旅作)","#[原文]近江之海 湖者八十 何尓加 <公>之舟泊 草結兼","#[訓読]近江の海港は八十ちいづくにか君が舟泊て草結びけむ","#[仮名],あふみのうみ,みなとはやそち,いづくにか,きみがふねはて,くさむすびけむ","#[左注]","#[校異]君 -> 公 [類][古][紀][温]","#[事項],雑歌,羈旅,滋賀,地名","#[訓異]
あふみのうみ[寛],
みなとはやそち[寛],
いづくにか,[寛]いつくにか,
きみがふねはて,[寛]きみかふねはて,
くさむすびけむ,[寛]くさむすひけむ,
" "#[番号]07/1170","#[題詞](覊旅作)","#[原文]佐左浪乃 連庫山尓 雲居者 雨會零智否 反来吾背","#[訓読]楽浪の連庫山に雲居れば雨ぞ降るちふ帰り来我が背","#[仮名],ささなみの,なみくらやまに,くもゐれば,あめぞふるちふ,かへりこわがせ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,滋賀,羈旅,地名,恋情","#[訓異]
ささなみの[寛],
なみくらやまに[寛],
くもゐれば,[寛]くもゐては,
あめぞふるちふ,[寛]あめそふるてふ,
かへりこわがせ,[寛]かへりこわかせ,
" "#[番号]07/1171","#[題詞](覊旅作)","#[原文]大御舟 竟而佐守布 高嶋之 三尾勝野之 奈伎左思所念","#[訓読]大御船泊ててさもらふ高島の三尾の勝野の渚し思ほゆ","#[仮名],おほみふね,はててさもらふ,たかしまの,みをのかつのの,なぎさしおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,滋賀,地名","#[訓異]
おほみふね[寛],
はててさもらふ[寛],
たかしまの[寛],
みをのかつのの,[寛]みをのかちのの,
なぎさしおもほゆ,[寛]なきさしそおもふ,
" "#[番号]07/1172","#[題詞](覊旅作)","#[原文]何處可 舟乗為家牟 高嶋之 香取乃浦従 己藝出来船","#[訓読]いづくにか舟乗りしけむ高島の香取の浦ゆ漕ぎ出来る舟","#[仮名],いづくにか,ふなのりしけむ,たかしまの,かとりのうらゆ,こぎでくるふね","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,滋賀,地名","#[訓異]
いづくにか,[寛]いつこにか,
ふなのりしけむ[寛],
たかしまの[寛],
かとりのうらゆ,[寛]かとりのうらに,
こぎでくるふね,[寛]こきいてくるふね,
" "#[番号]07/1173","#[題詞](覊旅作)","#[原文]斐太人之 真木流云 尓布乃河 事者雖通 船會不通","#[訓読]飛騨人の真木流すといふ丹生の川言は通へど舟ぞ通はぬ","#[仮名],ひだひとの,まきながすといふ,にふのかは,ことはかよへど,ふねぞかよはぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,岐阜県,小八賀川,謡物,地名","#[訓異]
ひだひとの,[寛]ひたひとの,
まきながすといふ,[寛]まきなかすてふ,
にふのかは[寛],
ことはかよへど,[寛]ことはかよへと,
ふねぞかよはぬ,[寛]ふねそかよはぬ,
" "#[番号]07/1174","#[題詞](覊旅作)","#[原文]霰零 鹿嶋之埼乎 浪高 過而夜将行 戀敷物乎","#[訓読]霰降り鹿島の崎を波高み過ぎてや行かむ恋しきものを","#[仮名],あられふり,かしまのさきを,なみたかみ,すぎてやゆかむ,こほしきものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,茨城,土地讃美,地名,枕詞","#[訓異]
あられふり[寛],
かしまのさきを[寛],
なみたかみ[寛],
すぎてやゆかむ,[寛]すきてやゆかむ,
こほしきものを,[寛]こひしきものを,
" "#[番号]07/1175","#[題詞](覊旅作)","#[原文]足柄乃 筥根飛超 行鶴乃 乏見者 日本之所念","#[訓読]足柄の箱根飛び越え行く鶴の羨しき見れば大和し思ほゆ","#[仮名],あしがらの,はこねとびこえ,ゆくたづの,ともしきみれば,やまとしおもほゆ","#[左注]","#[校異]1176と順序入れ替え [元][紀]","#[事項],雑歌,羈旅,神奈川,望郷,動物,地名","#[訓異]
あしがらの,[寛]あしからの,
はこねとびこえ,[寛]はこねとひこえ,
ゆくたづの,[寛]ゆくたつの,
ともしきみれば,[寛]ともしきみれは,
やまとしおもほゆ[寛],
" "#[番号]07/1176","#[題詞](覊旅作)","#[原文]夏麻引 海上滷乃 <奥>洲尓 鳥<者>簀竹跡 君者音文不為","#[訓読]夏麻引く海上潟の沖つ洲に鳥はすだけど君は音もせず","#[仮名],なつそびく,うなかみがたの,おきつすに,とりはすだけど,きみはおともせず","#[左注]","#[校異]奥津 -> 奥 [元][類][紀] / <> -> 者 [西(右書)][元][類][紀] / 君者 [類][古][紀] 君","#[事項],雑歌,羈旅,千葉,地名,動物","#[訓異]
なつそびく,[寛]なつそひく,
うなかみがたの,[寛]うなかみかたの,
おきつすに[寛],
とりはすだけど,[寛]とりはすたけと,
きみはおともせず,[寛]きみはおともせす,
" "#[番号]07/1177","#[題詞](覊旅作)","#[原文]若狭在 三方之海之 濱清美 伊徃變良比 見跡不飽可聞","#[訓読]若狭なる三方の海の浜清みい行き帰らひ見れど飽かぬかも","#[仮名],わかさなる,みかたのうみの,はまきよみ,いゆきかへらひ,みれどあかぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,福井,土地讃美,地名","#[訓異]
わかさなる[寛],
みかたのうみの[寛],
はまきよみ[寛],
いゆきかへらひ[寛],
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]07/1178","#[題詞](覊旅作)","#[原文]印南野者 徃過奴良之 天傳 日笠浦 波立見 [一云 思賀麻江者 許藝須疑奴良思]","#[訓読]印南野は行き過ぎぬらし天伝ふ日笠の浦に波立てり見ゆ [一云 飾磨江は漕ぎ過ぎぬらし]","#[仮名],いなみのは,ゆきすぎぬらし,あまづたふ,ひかさのうらに,なみたてりみゆ,[しかまえは,こぎすぎぬらし]","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,兵庫,地名,叙景","#[訓異]
いなみのは[寛],
ゆきすぎぬらし,[寛]ゆきすきぬらし,
あまづたふ,[寛]あまつたふ,
ひかさのうらに[寛],
なみたてりみゆ,[寛]なみたてるみゆ,
[しかまえは[寛],
こぎすぎぬらし],[寛]こきすきぬらし,
" "#[番号]07/1179","#[題詞](覊旅作)","#[原文]家尓之弖 吾者将戀名 印南野乃 淺茅之上尓 照之月夜乎","#[訓読]家にして我れは恋ひむな印南野の浅茅が上に照りし月夜を","#[仮名],いへにして,あれはこひむな,いなみのの,あさぢがうへに,てりしつくよを","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,兵庫,土地讃美,地名","#[訓異]
いへにして[寛],
あれはこひむな,[寛]われはこひむな,
いなみのの[寛],
あさぢがうへに,[寛]あさちかうへに,
てりしつくよを,[寛]てりしつきよを,
" "#[番号]07/1180","#[題詞](覊旅作)","#[原文]荒礒超 浪乎恐見 淡路嶋 不見哉将過<去> 幾許近乎","#[訓読]荒磯越す波を畏み淡路島見ずか過ぎなむここだ近きを","#[仮名],ありそこす,なみをかしこみ,あはぢしま,みずかすぎなむ,ここだちかきを","#[左注]","#[校異]<> -> 去 [元][類][古][紀]","#[事項],雑歌,羈旅,兵庫,地名","#[訓異]
ありそこす,[寛]あらいそこす,
なみをかしこみ[寛],
あはぢしま,[寛]あはちしま,
みずかすぎなむ,[寛]みすてやすきむ,
ここだちかきを,[寛]ここたちかきを,
" "#[番号]07/1181","#[題詞](覊旅作)","#[原文]朝霞 不止軽引 龍田山 船出将為日者 吾将戀香聞","#[訓読]朝霞止まずたなびく龍田山舟出せむ日は我れ恋ひむかも","#[仮名],あさかすみ,やまずたなびく,たつたやま,ふなでしなむひ,あれこひむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,龍田,奈良,地名","#[訓異]
あさかすみ[寛],
やまずたなびく,[寛]やますたなひく,
たつたやま[寛],
ふなでしなむひ,[寛]ふなてせむひは,
あれこひむかも,[寛]われこひむかも,
" "#[番号]07/1182","#[題詞](覊旅作)","#[原文]海人小船 帆毳張流登 見左右荷 鞆之浦廻二 浪立有所見","#[訓読]海人小舟帆かも張れると見るまでに鞆の浦廻に波立てり見ゆ","#[仮名],あまをぶね,ほかもはれると,みるまでに,とものうらみに,なみたてりみゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,広島,鞆の浦,地名,叙景","#[訓異]
あまをぶね,[寛]あまをふね,
ほかもはれると[寛],
みるまでに,[寛]みるまてに,
とものうらみに,[寛]とものうらわに,
なみたてりみゆ,[寛]なみたてるみゆ,
" "#[番号]07/1183","#[題詞](覊旅作)","#[原文]好去而 亦還見六 大夫乃 手二巻持在 鞆之浦廻乎","#[訓読]ま幸くてまたかへり見む大夫の手に巻き持てる鞆の浦廻を","#[仮名],まさきくて,またかへりみむ,ますらをの,てにまきもてる,とものうらみを","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,広島,鞆の浦,地名","#[訓異]
まさきくて,[寛]よしゆきて,
またかへりみむ[寛],
ますらをの[寛],
てにまきもてる,[寛]てにまきもたる,
とものうらみを,[寛]とものうらわを,
" "#[番号]07/1184","#[題詞](覊旅作)","#[原文]鳥自物 海二浮居而 <奥>浪 驂乎聞者 數悲哭","#[訓読]鳥じもの海に浮き居て沖つ波騒くを聞けばあまた悲しも","#[仮名],とりじもの,うみにうきゐて,おきつなみ,さわくをきけば,あまたかなしも","#[左注]","#[校異]奥津 -> 奥 [元][類][古][紀]","#[事項],雑歌,羈旅","#[訓異]
とりじもの,[寛]とりしもの,
うみにうきゐて[寛],
おきつなみ[寛],
さわくをきけば,[寛]さわくをきけは,
あまたかなしも[寛],
" "#[番号]07/1185","#[題詞](覊旅作)","#[原文]朝菜寸二 真梶榜出而 見乍来之 三津乃松原 浪越似所見","#[訓読]朝なぎに真楫漕ぎ出て見つつ来し御津の松原波越しに見ゆ","#[仮名],あさなぎに,まかぢこぎでて,みつつこし,みつのまつばら,なみごしにみゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,難波,大阪,地名,叙景","#[訓異]
あさなぎに,[寛]あさなきに,
まかぢこぎでて,[寛]まかちこきいてて,
みつつこし[寛],
みつのまつばら,[寛]みつのまつはら,
なみごしにみゆ,[寛]なみこしにみゆ,
" "#[番号]07/1186","#[題詞](覊旅作)","#[原文]朝入為流 海未通女等之 袖通 沾西衣 雖干跡不乾","#[訓読]あさりする海人娘子らが袖通り濡れにし衣干せど乾かず","#[仮名],あさりする,あまをとめらが,そでとほり,ぬれにしころも,ほせどかわかず","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅","#[訓異]
あさりする[寛],
あまをとめらが,[寛]あまをとめらか,
そでとほり,[寛]そてとほり,
ぬれにしころも[寛],
ほせどかわかず,[寛]ほせとかはかす,
" "#[番号]07/1187","#[題詞](覊旅作)","#[原文]網引為 海子哉見 飽浦 清荒礒 見来吾","#[訓読]網引する海人とか見らむ飽の浦の清き荒磯を見に来し我れを","#[仮名],あびきする,あまとかみらむ,あくのうらの,きよきありそを,みにこしわれを","#[左注]右一首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,羈旅,和歌山,略体,地名","#[訓異]
あびきする,[寛]あひきする,
あまとかみらむ,[寛]あまとやみらむ,
あくのうらの,[寛]あきのうらの,
きよきありそを,[寛]きよきあらいそを,
みにこしわれを[寛],
" "#[番号]07/1188","#[題詞](覊旅作)","#[原文]山超而 遠津之濱之 石管自 迄吾来 含而有待","#[訓読]山越えて遠津の浜の岩つつじ我が来るまでにふふみてあり待て","#[仮名],やまこえて,とほつのはまの,いはつつじ,わがくるまでに,ふふみてありまて","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,摂津,大阪,別離,地名","#[訓異]
やまこえて[寛],
とほつのはまの[寛],
いはつつじ,[寛]いはつつし,
わがくるまでに,[寛]わかきたるまて,
ふふみてありまて[寛],
" "#[番号]07/1189","#[題詞](覊旅作)","#[原文]大海尓 荒莫吹 四長鳥 居名之湖尓 舟泊左右手","#[訓読]大海にあらしな吹きそしなが鳥猪名の港に舟泊つるまで","#[仮名],おほうみに,あらしなふきそ,しながどり,ゐなのみなとに,ふねはつるまで","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,兵庫,動物,地名","#[訓異]
おほうみに[寛],
あらしなふきそ[寛],
しながどり,[寛]しなかとり,
ゐなのみなとに[寛],
ふねはつるまで,[寛]ふねはつるまて,
" "#[番号]07/1190","#[題詞](覊旅作)","#[原文]舟盡 可志振立而 廬利為 名子江乃濱邊 過不勝鳧","#[訓読]舟泊ててかし振り立てて廬りせむ名児江の浜辺過ぎかてぬかも","#[仮名],ふねはてて,かしふりたてて,いほりせむ,なごえのはまへ,すぎかてぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,大阪,土地讃美,地名","#[訓異]
ふねはてて[寛],
かしふりたてて[寛],
いほりせむ,[寛]いほりする,
なごえのはまへ,[寛]なこえのはまへ,
すぎかてぬかも,[寛]すきかてぬかも,
" "#[番号]07/1191","#[題詞](覊旅作)","#[原文]妹門 出入乃河之 瀬速見 吾馬爪衝 家思良下","#[訓読]妹が門出入の川の瀬を早み我が馬つまづく家思ふらしも","#[仮名],いもがかど,いでいりのかはの,せをはやみ,あがうまつまづく,いへもふらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,望郷,地名,枕詞","#[訓異]
いもがかど,[寛]いもかかと,
いでいりのかはの,[寛]いていりのかはの,
せをはやみ[寛],
あがうまつまづく,[寛]わかうまつまつく,
いへもふらしも,[寛]いへこふらしも,
" "#[番号]07/1192","#[題詞](覊旅作)","#[原文]白栲尓 丹保布信土之 山川尓 吾馬難 家戀良下","#[訓読]白栲ににほふ真土の山川に我が馬なづむ家恋ふらしも","#[仮名],しろたへに,にほふまつちの,やまがはに,あがうまなづむ,いへこふらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,望郷,紀州,和歌山,地名","#[訓異]
しろたへに[寛],
にほふまつちの[寛],
やまがはに,[寛]やまかはに,
あがうまなづむ,[寛]わかうまなつむ,
いへこふらしも[寛],
" "#[番号]07/1193","#[題詞](覊旅作)","#[原文]勢能山尓 直向 妹之山 事聴屋毛 打橋渡","#[訓読]背の山に直に向へる妹の山事許せやも打橋渡す","#[仮名],せのやまに,ただにむかへる,いものやま,ことゆるせやも,うちはしわたす","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,和歌山,地名","#[訓異]
せのやまに[寛],
ただにむかへる,[寛]たたにむかへる,
いものやま[寛],
ことゆるせやも,[寛]ことゆるすやも,
うちはしわたす[寛],
" "#[番号]07/1194","#[題詞](覊旅作)","#[原文]木國之 狭日鹿乃浦尓 出見者 海人之燎火 浪間従所見","#[訓読]紀の国の雑賀の浦に出で見れば海人の燈火波の間ゆ見ゆ","#[仮名],きのくにの,さひかのうらに,いでみれば,あまのともしび,なみのまゆみゆ","#[左注](右七首者藤原卿作 未審年月)","#[校異]以下、1207までは1222の後 [元][西][細] [寛]、国歌大観の順序に従う","#[事項],雑歌,作者:藤原房前,藤原麻呂,羈旅,和歌山,地名,叙景","#[訓異]
きのくにの[寛],
さひかのうらに[寛],
いでみれば,[寛]いてみれは,
あまのともしび,[寛]あまのともすひ,
なみのまゆみゆ,[寛]なみまよりみゆ,
" "#[番号]07/1195","#[題詞](覊旅作)","#[原文]麻衣 著者夏樫 木國之 妹背之山二 麻蒔吾妹","#[訓読]麻衣着ればなつかし紀の国の妹背の山に麻蒔く我妹","#[仮名],あさごろも,きればなつかし,きのくにの,いもせのやまに,あさまくわぎも","#[左注]右七首者藤原卿作 未審年月","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:藤原房前,藤原麻呂,羈旅,和歌山,地名,植物","#[訓異]
あさごろも,[寛]あさころも,
きればなつかし,[寛]きれはなつかし,
きのくにの[寛],
いもせのやまに[寛],
あさまくわぎも,[寛]あさまけわきも,
" "#[番号]07/1196","#[題詞](覊旅作)","#[原文]欲得L登 乞者令取 貝拾 吾乎沾莫 奥津白浪","#[訓読]つともがと乞はば取らせむ貝拾ふ我れを濡らすな沖つ白波","#[仮名],つともがと,こはばとらせむ,かひひりふ,われをぬらすな,おきつしらなみ","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅","#[訓異]
つともがと,[寛]いてつとと,
こはばとらせむ,[寛]こははとらせむ,
かひひりふ,[寛]かひひろふ,
われをぬらすな[寛],
おきつしらなみ[寛],
" "#[番号]07/1197","#[題詞](覊旅作)","#[原文]手取之 柄二忘跡 礒人之曰師 戀忘貝 言二師有来","#[訓読]手に取るがからに忘ると海人の言ひし恋忘れ貝言にしありけり","#[仮名],てにとるが,からにわすると,あまのいひし,こひわすれがひ,ことにしありけり","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,望郷,動物","#[訓異]
てにとるが,[寛]てにとりし,
からにわすると[寛],
あまのいひし[寛],
こひわすれがひ,[寛]こひわすれかひ,
ことにしありけり[寛],
" "#[番号]07/1198","#[題詞](覊旅作)","#[原文]求食為跡 礒二住鶴 暁去者 濱風寒弥 自妻喚毛","#[訓読]あさりすと礒に棲む鶴明けされば浜風寒み己妻呼ぶも","#[仮名],あさりすと,いそにすむたづ,あけされば,はまかぜさむみ,おのづまよぶも","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,望郷,動物","#[訓異]
あさりすと[寛],
いそにすむたづ,[寛]いそにすむたつ,
あけされば,[寛]あけゆけは,
はまかぜさむみ,[寛]はまかせさむみ,
おのづまよぶも,[寛]おのかつまよふも,
" "#[番号]07/1199","#[題詞](覊旅作)","#[原文]藻苅舟 奥榜来良之 妹之嶋 形見之浦尓 鶴翔所見","#[訓読]藻刈り舟沖漕ぎ来らし妹が島形見の浦に鶴翔る見ゆ","#[仮名],もかりふね,おきこぎくらし,いもがしま,かたみのうらに,たづかけるみゆ","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,叙景,植物","#[訓異]
もかりふね[寛],
おきこぎくらし,[寛]おきこきくらし,
いもがしま,[寛]いもかしま,
かたみのうらに[寛],
たづかけるみゆ,[寛]たつかけるみゆ,
" "#[番号]07/1200","#[題詞](覊旅作)","#[原文]吾舟者 従奥莫離 向舟 片待香光 従浦榜将會","#[訓読]我が舟は沖ゆな離り迎へ舟方待ちがてり浦ゆ漕ぎ逢はむ","#[仮名],わがふねは,おきゆなさかり,むかへぶね,かたまちがてり,うらゆこぎあはむ","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,望郷","#[訓異]
わがふねは,[寛]わかふねは,
おきゆなさかり,[寛]おきにさかるな,
むかへぶね,[寛]むかへふね,
かたまちがてり,[寛]かたまちかてら,
うらゆこぎあはむ,[寛]うらにこきあはむ,
" "#[番号]07/1201","#[題詞](覊旅作)","#[原文]大海之 水底豊三 立浪之 将依思有 礒之清左","#[訓読]大海の水底響み立つ波の寄らむと思へる礒のさやけさ","#[仮名],おほうみの,みなそことよみ,たつなみの,よせむとおもへる,いそのさやけさ","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,土地讃美","#[訓異]
おほうみの[寛],
みなそことよみ[寛],
たつなみの[寛],
よせむとおもへる,[寛]よらむとおもへる,
いそのさやけさ[寛],
" "#[番号]07/1202","#[題詞](覊旅作)","#[原文]自荒礒毛 益而思哉 玉之<裏> 離小嶋 夢<所>見","#[訓読]荒礒ゆもまして思へや玉の浦離れ小島の夢にし見ゆる","#[仮名],ありそゆも,ましておもへや,たまのうら,はなれこしまの,いめにしみゆる","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]浦 -> 裏 [元][類][古] / 石 -> 所 [類]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,和歌山,土地讃美,地名","#[訓異]
ありそゆも,[寛]あらいそにも,
ましておもへや,[寛]ましておもふや,
たまのうら,[寛]たまのうらの,
はなれこしまの[寛],
いめにしみゆる,[寛]ゆめにしみゆる,
" "#[番号]07/1203","#[題詞](覊旅作)","#[原文]礒上尓 爪木折焼 為汝等 吾潜来之 奥津白玉","#[訓読]礒の上に爪木折り焚き汝がためと我が潜き来し沖つ白玉","#[仮名],いそのうへに,つまきをりたき,ながためと,わがかづきこし,おきつしらたま","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅","#[訓異]
いそのうへに[寛],
つまきをりたき[寛],
ながためと,[寛]なかためと,
わがかづきこし,[寛]わかかつきこし,
おきつしらたま[寛],
" "#[番号]07/1204","#[題詞](覊旅作)","#[原文]濱清美 礒尓吾居者 見者 白水郎可将見 釣不為尓","#[訓読]浜清み礒に我が居れば見む人は海人とか見らむ釣りもせなくに","#[仮名],はまきよみ,いそにわがをれば,みむひとは,あまとかみらむ,つりもせなくに","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅","#[訓異]
はまきよみ[寛],
いそにわがをれば,[寛]いそにわかをれは,
みむひとは,[寛]よそひとは,
あまとかみらむ[寛],
つりもせなくに[寛],
" "#[番号]07/1205","#[題詞](覊旅作)","#[原文]奥津梶 漸々志夫乎 欲見 吾為里乃 隠久惜毛","#[訓読]沖つ楫やくやくしぶを見まく欲り我がする里の隠らく惜しも","#[仮名],おきつかぢ,やくやくしぶを,みまくほり,わがするさとの,かくらくをしも","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅","#[訓異]
おきつかぢ,[寛]おきつかち,
やくやくしぶを,[寛]しはしはしふを,
みまくほり[寛],
わがするさとの,[寛]わかするさとの,
かくらくをしも[寛],
" "#[番号]07/1206","#[題詞](覊旅作)","#[原文]奥津波 部都藻纒持 依来十方 君尓益有 玉将縁八方 [一云 沖津浪 邊<浪>布敷 縁来登母]","#[訓読]沖つ波辺つ藻巻き持ち寄せ来とも君にまされる玉寄せめやも [一云 沖つ波辺波しくしく寄せ来とも]","#[仮名],おきつなみ,へつもまきもち,よせくとも,きみにまされる,たまよせめやも,[おきつなみ,へなみしくしく,よせくとも]","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]波 -> 浪 [元][類][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,比喩","#[訓異]
おきつなみ[寛],
へつもまきもち,[寛]へつもまきもて,
よせくとも,[寛]よりくとも,
きみにまされる[寛],
たまよせめやも,[寛]たまよらむやも,
[おきつなみ[寛],
へなみしくしく[寛],
よせくとも],[寛]よりくとも,
" "#[番号]07/1207","#[題詞](覊旅作)","#[原文]粟嶋尓 許枳将渡等 思鞆 赤石門浪 未佐和来","#[訓読]粟島に漕ぎ渡らむと思へども明石の門波いまだ騒けり","#[仮名],あはしまに,こぎわたらむと,おもへども,あかしのとなみ,いまださわけり","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,兵庫,地名","#[訓異]
あはしまに[寛],
こぎわたらむと,[寛]こきわたらむと,
おもへども,[寛]おもへとも,
あかしのとなみ[寛],
いまださわけり,[寛]いまたさわけり,
" "#[番号]07/1208","#[題詞](覊旅作)","#[原文]妹尓戀 余越去者 勢能山之 妹尓不戀而 有之乏左","#[訓読]妹に恋ひ我が越え行けば背の山の妹に恋ひずてあるが羨しさ","#[仮名],いもにこひ,わがこえゆけば,せのやまの,いもにこひずて,あるがともしさ","#[左注]","#[校異]1210の次に配列 [類][古][紀] 以下、錯簡により「古集」注の該当歌を変更する。[西][寛]国歌大観の配列に従う","#[事項],雑歌,羈旅,和歌山,地名,望郷,土地讃美,恋情","#[訓異]
いもにこひ[寛],
わがこえゆけば,[寛]わかこえゆけは,
せのやまの[寛],
いもにこひずて,[寛]いもにこひすて,
あるがともしさ,[寛]あるかいもしさ,
" "#[番号]07/1209","#[題詞](覊旅作)","#[原文]人在者 母之最愛子曽 麻毛吉 木川邊之 妹与<背>山","#[訓読]人ならば母が愛子ぞあさもよし紀の川の辺の妹と背の山","#[仮名],ひとならば,ははがまなごぞ,あさもよし,きのかはのへの,いもとせのやま","#[左注]","#[校異]背之 -> 背 [類][古][紀]","#[事項],雑歌,羈旅,和歌山,地名","#[訓異]
ひとならば,[寛]ひとならは,
ははがまなごぞ,[寛]おやのまなこそ,
あさもよし,[寛]あさもよい,
きのかはのへの,[寛]きのかはつらの,
いもとせのやま[寛],
" "#[番号]07/1210","#[題詞](覊旅作)","#[原文]吾妹子尓 吾戀行者 乏雲 並居鴨 妹与勢能山","#[訓読]我妹子に我が恋ひ行けば羨しくも並び居るかも妹と背の山","#[仮名],わぎもこに,あがこひゆけば,ともしくも,ならびをるかも,いもとせのやま","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,古集,羈旅,望郷,和歌山,地名,望郷,恋情,土地讃美","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
あがこひゆけば,[寛]わかこひゆけは,
ともしくも[寛],
ならびをるかも,[寛]ならひをるかも,
いもとせのやま[寛],
" "#[番号]07/1211","#[題詞](覊旅作)","#[原文]妹當 今曽吾行 目耳谷 吾耳見乞 事不問侶","#[訓読]妹があたり今ぞ我が行く目のみだに我れに見えこそ言問はずとも","#[仮名],いもがあたり,いまぞわがゆく,めのみだに,われにみえこそ,こととはずとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,望郷,和歌山,地名","#[訓異]
いもがあたり,[寛]いもかあたり,
いまぞわがゆく,[寛]いまそわかゆく,
めのみだに,[寛]めにたにも,
われにみえこそ,[寛]われにみへこそ,
こととはずとも,[寛]こととはすとも,
" "#[番号]07/1212","#[題詞](覊旅作)","#[原文]足代過而 絲鹿乃山之 櫻花 不散在南 還来万代","#[訓読]足代過ぎて糸鹿の山の桜花散らずもあらなむ帰り来るまで","#[仮名],あてすぎて,いとかのやまの,さくらばな,ちらずもあらなむ,かへりくるまで","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,悲別,和歌山,地名,植物","#[訓異]
あてすぎて,[寛]あしろすきて,
いとかのやまの[寛],
さくらばな,[寛]さくらはな,
ちらずもあらなむ,[寛]ちらすもあらなむ,
かへりくるまで,[寛]かへりかるまて,
" "#[番号]07/1213","#[題詞](覊旅作)","#[原文]名草山 事西在来 吾戀 千重一重 名草目名國","#[訓読]名草山言にしありけり我が恋ふる千重の一重も慰めなくに","#[仮名],なぐさやま,ことにしありけり,あがこふる,ちへのひとへも,なぐさめなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,和歌山,望郷,地名","#[訓異]
なぐさやま,[寛]なくさやま,
ことにしありけり[寛],
あがこふる,[寛]わかこひの,
ちへのひとへも[寛],
なぐさめなくに,[寛]なくさめなくに,
" "#[番号]07/1214","#[題詞](覊旅作)","#[原文]安太部去 小為手乃山之 真木葉毛 久不見者 蘿生尓家里","#[訓読]安太へ行く小為手の山の真木の葉も久しく見ねば蘿生しにけり","#[仮名],あだへゆく,をすてのやまの,まきのはも,ひさしくみねば,こけむしにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,和歌山,地名,植物","#[訓異]
あだへゆく,[寛]あたへゆく,
をすてのやまの[寛],
まきのはも[寛],
ひさしくみねば,[寛]ひさしくみねは,
こけむしにけり,[寛]こけをひにけり,
" "#[番号]07/1215","#[題詞](覊旅作)","#[原文]玉津嶋 能見而伊座 青丹吉 平城有人之 待問者如何","#[訓読]玉津島よく見ていませあをによし奈良なる人の待ち問はばいかに","#[仮名],たまつしま,よくみていませ,あをによし,ならなるひとの,まちとはばいかに","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,和歌山,地名,枕詞","#[訓異]
たまつしま[寛],
よくみていませ[寛],
あをによし[寛],
ならなるひとの[寛],
まちとはばいかに,[寛]まちとははいかに,
" "#[番号]07/1216","#[題詞](覊旅作)","#[原文]塩満者 如何将為跡香 方便海之 神我手渡 海部未通女等","#[訓読]潮満たばいかにせむとか海神の神が手渡る海人娘子ども","#[仮名],しほみたば,いかにせむとか,わたつみの,かみがてわたる,あまをとめども","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅","#[訓異]
しほみたば,[寛]しほみたは,
いかにせむとか[寛],
わたつみの[寛],
かみがてわたる,[寛]かみかてわたる,
あまをとめども,[寛]あまのをとめら,
" "#[番号]07/1217","#[題詞](覊旅作)","#[原文]玉津嶋 見之善雲 吾無 京徃而 戀幕思者","#[訓読]玉津島見てしよけくも我れはなし都に行きて恋ひまく思へば","#[仮名],たまつしま,みてしよけくも,われはなし,みやこにゆきて,こひまくおもへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,和歌山,望郷,地名","#[訓異]
たまつしま[寛],
みてしよけくも[寛],
われはなし[寛],
みやこにゆきて[寛],
こひまくおもへば,[寛]こひまくおもへは,
" "#[番号]07/1218","#[題詞](覊旅作)","#[原文]黒牛乃海 紅丹穂經 百礒城乃 大宮人四 朝入為良霜","#[訓読]黒牛の海紅にほふももしきの大宮人しあさりすらしも","#[仮名],くろうしのうみ,くれなゐにほふ,ももしきの,おほみやひとし,あさりすらしも","#[左注](右七首者藤原卿作 未審年月)","#[校異]以下、錯簡により「藤原卿作」左注の該当歌を変更する","#[事項],雑歌,作者:藤原房前,藤原麻呂,羈旅,和歌山,地名,枕詞,叙景","#[訓異]
くろうしのうみ[寛],
くれなゐにほふ[寛],
ももしきの[寛],
おほみやひとし[寛],
あさりすらしも[寛],
" "#[番号]07/1219","#[題詞](覊旅作)","#[原文]若浦尓 白浪立而 奥風 寒暮者 山跡之所念","#[訓読]若の浦に白波立ちて沖つ風寒き夕は大和し思ほゆ","#[仮名],わかのうらに,しらなみたちて,おきつかぜ,さむきゆふへは,やまとしおもほゆ","#[左注](右七首者藤原卿作 未審年月)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:藤原房前,藤原麻呂,羈旅,和歌山,地名,望郷","#[訓異]
わかのうらに[寛],
しらなみたちて[寛],
おきつかぜ,[寛]おきつかせ,
さむきゆふへは,[寛]さむきゆふへは,
やまとしおもほゆ,[寛]やまとしそおもふ,
" "#[番号]07/1220","#[題詞](覊旅作)","#[原文]為妹 玉乎拾跡 木國之 湯等乃三埼二 此日鞍四通","#[訓読]妹がため玉を拾ふと紀伊の国の由良の岬にこの日暮らしつ","#[仮名],いもがため,たまをひりふと,きのくにの,ゆらのみさきに,このひくらしつ","#[左注](右七首者藤原卿作 未審年月)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:藤原房前,藤原麻呂,羈旅,和歌山,地名","#[訓異]
いもがため,[寛]いもかため,
たまをひりふと,[寛]たまをひろふと,
きのくにの[寛],
ゆらのみさきに[寛],
このひくらしつ[寛],
" "#[番号]07/1221","#[題詞](覊旅作)","#[原文]吾舟乃 梶者莫引 自山跡 戀来之心 未飽九二","#[訓読]我が舟の楫はな引きそ大和より恋ひ来し心いまだ飽かなくに","#[仮名],わがふねの,かぢはなひきそ,やまとより,こひこしこころ,いまだあかなくに","#[左注](右七首者藤原卿作 未審年月)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:藤原房前,藤原麻呂,羈旅,望郷","#[訓異]
わがふねの,[寛]わかふねの,
かぢはなひきそ,[寛]かちはなひきそ,
やまとより[寛],
こひこしこころ[寛],
いまだあかなくに,[寛]いまたあかなくに,
" "#[番号]07/1222","#[題詞](覊旅作)","#[原文]玉津嶋 雖見不飽 何為而 L持将去 不見人之為","#[訓読]玉津島見れども飽かずいかにして包み持ち行かむ見ぬ人のため","#[仮名],たまつしま,みれどもあかず,いかにして,つつみもちゆかむ,みぬひとのため","#[左注](右七首者藤原卿作 未審年月)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:藤原房前,藤原麻呂,羈旅,望郷,土地讃美,地名","#[訓異]
たまつしま[寛],
みれどもあかず,[寛]みれともあかす,
いかにして[寛],
つつみもちゆかむ,[寛]つつみもてゆかむ,
みぬひとのため[寛],
" "#[番号]07/1223","#[題詞](覊旅作)","#[原文]綿之底 奥己具舟乎 於邊将因 風毛吹額 波不立而","#[訓読]海の底沖漕ぐ舟を辺に寄せむ風も吹かぬか波立てずして","#[仮名],わたのそこ,おきこぐふねを,へによせむ,かぜもふかぬか,なみたてずして","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅","#[訓異]
わたのそこ[寛],
おきこぐふねを,[寛]おきこくふねを,
へによせむ[寛],
かぜもふかぬか,[寛]かせもふかぬか,
なみたてずして,[寛]なみたたすして,
" "#[番号]07/1224","#[題詞](覊旅作)","#[原文]大葉山 霞蒙 狭夜深而 吾船将泊 停不知文","#[訓読]大葉山霞たなびきさ夜更けて我が舟泊てむ泊り知らずも","#[仮名],おほばやま,かすみたなびき,さよふけて,わがふねはてむ,とまりしらずも","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,滋賀,地名,不安","#[訓異]
おほばやま,[寛]おおはやま,
かすみたなびき,[寛]かすみたなひき,
さよふけて[寛],
わがふねはてむ,[寛]わかふねはてむ,
とまりしらずも,[寛]とまりしらすも,
" "#[番号]07/1225","#[題詞](覊旅作)","#[原文]狭夜深而 夜中乃方尓 欝之苦 呼之舟人 泊兼鴨","#[訓読]さ夜更けて夜中の方におほほしく呼びし舟人泊てにけむかも","#[仮名],さよふけて,よなかのかたに,おほほしく,よびしふなびと,はてにけむかも","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅","#[訓異]
さよふけて[寛],
よなかのかたに[寛],
おほほしく[寛],
よびしふなびと,[寛]よひしふなひとと,
はてにけむかも,[寛]はてけむかも,
" "#[番号]07/1226","#[題詞](覊旅作)","#[原文]神前 荒石毛不所見 浪立奴 従何處将行 与奇道者無荷","#[訓読]三輪の崎荒磯も見えず波立ちぬいづくゆ行かむ避き道はなしに","#[仮名],みわのさき,ありそもみえず,なみたちぬ,いづくゆゆかむ,よきぢはなしに","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,和歌山,地名","#[訓異]
みわのさき[寛],
ありそもみえず,[寛]あらいそもみえす,
なみたちぬ,[寛]なみたたす,
いづくゆゆかむ,[寛]いつこよりゆかむ,
よきぢはなしに,[寛]よきみちはなしに,
" "#[番号]07/1227","#[題詞](覊旅作)","#[原文]礒立 奥邊乎見者 海藻苅舟 海人榜出良之 鴨翔所見","#[訓読]礒に立ち沖辺を見れば藻刈り舟海人漕ぎ出らし鴨翔る見ゆ","#[仮名],いそにたち,おきへをみれば,めかりぶね,あまこぎづらし,かもかけるみゆ","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,叙景","#[訓異]
いそにたち[寛],
おきへをみれば,[寛]おきへをみれは,
めかりぶね,[寛]もかりふね,
あまこぎづらし,[寛]あまこきいつらし,
かもかけるみゆ[寛],
" "#[番号]07/1228","#[題詞](覊旅作)","#[原文]風早之 三穂乃浦廻乎 榜舟之 船人動 浪立良下","#[訓読]風早の三穂の浦廻を漕ぐ舟の舟人騒く波立つらしも","#[仮名],かざはやの,みほのうらみを,こぐふねの,ふなびとさわく,なみたつらしも","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,和歌山,地名","#[訓異]
かざはやの,[寛]かさはやの,
みほのうらみを,[寛]みほのうらわを,
こぐふねの,[寛]こくふねの,
ふなびとさわく,[寛]ふなひとさわく,
なみたつらしも[寛],
" "#[番号]07/1229","#[題詞](覊旅作)","#[原文]吾舟者 <明>石之<湖>尓 榜泊牟 奥方莫放 狭夜深去来","#[訓読]我が舟は明石の水門に漕ぎ泊てむ沖へな離りさ夜更けにけり","#[仮名],わがふねは,あかしのみとに,こぎはてむ,おきへなさかり,さよふけにけり","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]明且 -> 明 [元][古] / 潮 -> 湖 [古][紀]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,兵庫,地名","#[訓異]
わがふねは,[寛]わかふねは,
あかしのみとに,[寛]あかしのはまに,
こぎはてむ,[寛]こきとめむ,
おきへなさかり,[寛]おきへさかるな,
さよふけにけり[寛],
" "#[番号]07/1230","#[題詞](覊旅作)","#[原文]千磐破 金之三<埼>乎 過鞆 吾者不忘 <壮>鹿之須賣神","#[訓読]ちはやぶる鐘の岬を過ぎぬとも我れは忘れじ志賀の皇神","#[仮名],ちはやぶる,かねのみさきを,すぎぬとも,われはわすれじ,しかのすめかみ","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]崎 -> 埼 [元][紀][温] / 牡 -> 壮 [紀]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,福岡,手向け,地名,枕詞","#[訓異]
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
かねのみさきを[寛],
すぎぬとも,[寛]すきぬとも,
われはわすれじ,[寛]われはわすれす,
しかのすめかみ[寛],
" "#[番号]07/1231","#[題詞](覊旅作)","#[原文]天霧相 日方吹羅之 水莖之 岡水門尓 波立渡","#[訓読]天霧らひひかた吹くらし水茎の岡の港に波立ちわたる","#[仮名],あまぎらひ,ひかたふくらし,みづくきの,をかのみなとに,なみたちわたる","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,福岡,地名,叙景","#[訓異]
あまぎらひ,[寛]あまきりあひ,
ひかたふくらし[寛],
みづくきの,[寛]みつくきの,
をかのみなとに[寛],
なみたちわたる[寛],
" "#[番号]07/1232","#[題詞](覊旅作)","#[原文]大海之 波者畏 然有十方 神乎齋祀而 船出為者如何","#[訓読]大海の波は畏ししかれども神を斎ひて舟出せばいかに","#[仮名],おほうみの,なみはかしこし,しかれども,かみをいはひて,ふなでせばいかに","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅","#[訓異]
おほうみの[寛],
なみはかしこし,[寛]なみはおそろし,
しかれども,[寛]しかれとも,
かみをいはひて,[寛]かみをたむけて,
ふなでせばいかに,[寛]ふなてせはいかに,
" "#[番号]07/1233","#[題詞](覊旅作)","#[原文]未通女等之 織機上乎 真櫛用 掻上栲嶋 波間従所見","#[訓読]娘子らが織る機の上を真櫛もち掻上げ栲島波の間ゆ見ゆ","#[仮名],をとめらが,おるはたのうへを,まくしもち,かかげたくしま,なみのまゆみゆ","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,島根,地名,序詞,叙景","#[訓異]
をとめらが,[寛]をとめらか,
おるはたのうへを,[寛]をるはたのうへを,
まくしもち,[寛]まくしもて,
かかげたくしま,[寛]かかけたくしま,
なみのまゆみゆ,[寛]なみまよりみゆ,
" "#[番号]07/1234","#[題詞](覊旅作)","#[原文]塩早三 礒廻荷居者 入潮為 海人鳥屋見濫 多比由久和礼乎","#[訓読]潮早み磯廻に居れば潜きする海人とや見らむ旅行く我れを","#[仮名],しほはやみ,いそみにをれば,かづきする,あまとやみらむ,たびゆくわれを","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅","#[訓異]
しほはやみ[寛],
いそみにをれば,[寛]いそわにをれは,
かづきする,[寛]あさりする,
あまとやみらむ,[寛]あまとやみられ,
たびゆくわれを,[寛]たひゆくわれを,
" "#[番号]07/1235","#[題詞](覊旅作)","#[原文]浪高之 奈何梶<執> 水鳥之 浮宿也應為 猶哉可榜","#[訓読]波高しいかに楫取り水鳥の浮寝やすべきなほや漕ぐべき","#[仮名],なみたかし,いかにかぢとり,みづとりの,うきねやすべき,なほやこぐべき","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]取 -> 執 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,動物","#[訓異]
なみたかし[寛],
いかにかぢとり,[寛]いかにかちとり,
みづとりの,[寛]みつとりの,
うきねやすべき,[寛]うきねやすへき,
なほやこぐべき,[寛]なをやこくへき,
" "#[番号]07/1236","#[題詞](覊旅作)","#[原文]夢耳 継而所見<乍> 竹嶋之 越礒波之 敷布所念","#[訓読]夢のみに継ぎて見えつつ高島の礒越す波のしくしく思ほゆ","#[仮名],いめのみに,つぎてみえつつ,たかしまの,いそこすなみの,しくしくおもほゆ","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]小 -> 乍 [万葉集古義]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,滋賀,地名,序詞,望郷","#[訓異]
いめのみに,[寛]ゆめにのみ,
つぎてみえつつ,[寛]つきてみゆれは,
たかしまの,[寛]ささしまの,
いそこすなみの[寛],
しくしくおもほゆ[寛],
" "#[番号]07/1237","#[題詞](覊旅作)","#[原文]静母 岸者波者 縁家留香 此屋通 聞乍居者","#[訓読]静けくも岸には波は寄せけるかこれの屋通し聞きつつ居れば","#[仮名],しづけくも,きしにはなみは,よせけるか,これのやとほし,ききつつをれば","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅","#[訓異]
しづけくも,[寛]しつかにも,
きしにはなみは[寛],
よせけるか,[寛]よりけるか,
これのやとほし[寛],
ききつつをれば,[寛]ききつつをれは,
" "#[番号]07/1238","#[題詞](覊旅作)","#[原文]竹嶋乃 阿戸白波者 動友 吾家思 五百入そ染","#[訓読]高島の安曇白波は騒けども我れは家思ふ廬り悲しみ","#[仮名],たかしまの,あどしらなみは,さわけども,われはいへおもふ,いほりかなしみ","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,滋賀,望郷,地名","#[訓異]
たかしまの[寛],
あどしらなみは,[寛]あとかはなみは,
さわけども,[寛]とよめとも,
われはいへおもふ[寛],
いほりかなしみ,[寛]いほりかなしも,
" "#[番号]07/1239","#[題詞](覊旅作)","#[原文]大海之 礒本由須理 立波之 将依念有 濱之浄奚久","#[訓読]大海の礒もと揺り立つ波の寄せむと思へる浜の清けく","#[仮名],おほうみの,いそもとゆすり,たつなみの,よせむとおもへる,はまのきよけく","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅","#[訓異]
おほうみの[寛],
いそもとゆすり[寛],
たつなみの[寛],
よせむとおもへる,[寛]よらむとおもへる,
はまのきよけく,[寛]はまのさやけく,
" "#[番号]07/1240","#[題詞](覊旅作)","#[原文]珠匣 見諸戸山<矣> 行之鹿齒 面白四手 古昔所念","#[訓読]玉櫛笥みもろと山を行きしかばおもしろくしていにしへ思ほゆ","#[仮名],たまくしげ,みもろとやまを,ゆきしかば,おもしろくして,いにしへおもほゆ","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]奚 -> 矣 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,三輪,奈良,懐旧,枕詞,地名","#[訓異]
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
みもろとやまを[寛],
ゆきしかば,[寛]ゆきしかは,
おもしろくして[寛],
いにしへおもほゆ,[寛]むかしおもほゆ,
" "#[番号]07/1241","#[題詞](覊旅作)","#[原文]黒玉之 玄髪山乎 朝越而 山下露尓 沾来鴨","#[訓読]ぬばたまの黒髪山を朝越えて山下露に濡れにけるかも","#[仮名],ぬばたまの,くろかみやまを,あさこえて,やましたつゆに,ぬれにけるかも","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,奈良,地名","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
くろかみやまを[寛],
あさこえて[寛],
やましたつゆに[寛],
ぬれにけるかも[寛],
" "#[番号]07/1242","#[題詞](覊旅作)","#[原文]足引之 山行暮 宿借者 妹立待而 宿将借鴨","#[訓読]あしひきの山行き暮らし宿借らば妹立ち待ちてやど貸さむかも","#[仮名],あしひきの,やまゆきぐらし,やどからば,いもたちまちて,やどかさむかも","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,枕詞","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまゆきぐらし,[寛]やまゆきくらし,
やどからば,[寛]やとからは,
いもたちまちて[寛],
やどかさむかも,[寛]やとかさむかも,
" "#[番号]07/1243","#[題詞](覊旅作)","#[原文]視渡者 近里廻乎 田本欲 今衣吾来 礼巾振之野尓","#[訓読]見わたせば近き里廻をた廻り今ぞ我が来る領巾振りし野に","#[仮名],みわたせば,ちかきさとみを,たもとほり,いまぞわがくる,ひれふりしのに","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅","#[訓異]
みわたせば,[寛]みわたせは,
ちかきさとみを,[寛]ちかきさとわを,
たもとほり[寛],
いまぞわがくる,[寛]いまそわかくれ,
ひれふりしのに[寛],
" "#[番号]07/1244","#[題詞](覊旅作)","#[原文]未通女等之 放髪乎 木綿山 雲莫蒙 家當将見","#[訓読]娘子らが放りの髪を由布の山雲なたなびき家のあたり見む","#[仮名],をとめらが,はなりのかみを,ゆふのやま,くもなたなびき,いへのあたりみむ","#[左注]?(右件歌者古集中出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,大分,望郷,序詞,地名","#[訓異]
をとめらが,[寛]をとめらか,
はなりのかみを,[寛]ふりわけかみを,
ゆふのやま[寛],
くもなたなびき,[寛]くもなかくしそ,
いへのあたりみむ[寛],
" "#[番号]07/1245","#[題詞](覊旅作)","#[原文]四可能白水郎乃 釣船之<た> 不堪 情念而 出而来家里","#[訓読]志賀の海人の釣舟の綱堪へずして心に思ひて出でて来にけり","#[仮名],しかのあまの,つりぶねのつな,あへなくも,こころにおもひて,いでてきにけり","#[左注](右件歌者古集中出)","#[校異]綱 -> た [元][紀]","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,福岡,地名","#[訓異]
しかのあまの[寛],
つりぶねのつな,[寛]つりふねのつな,
あへなくも,[寛]たへすして,
こころにおもひて[寛],
いでてきにけり,[寛]いててきにけり,
" "#[番号]07/1246","#[題詞](覊旅作)","#[原文]之加乃白水郎之 燒塩煙 風乎疾 立者不上 山尓軽引","#[訓読]志賀の海人の塩焼く煙風をいたみ立ちは上らず山にたなびく","#[仮名],しかのあまの,しほやくけぶり,かぜをいたみ,たちはのぼらず,やまにたなびく","#[左注]右件歌者古集中出","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:古集,羈旅,福岡,地名,叙景","#[訓異]
しかのあまの[寛],
しほやくけぶり,[寛]しほやくけふり,
かぜをいたみ,[寛]かせをいたみ,
たちはのぼらず,[寛]たちはのほらて,
やまにたなびく,[寛]やまにたなひく,
" "#[番号]07/1247","#[題詞](覊旅作)","#[原文]大穴道 少御神 作 妹勢能山 見吉","#[訓読]大汝少御神の作らしし妹背の山を見らくしよしも","#[仮名],おほなむち,すくなみかみの,つくらしし,いもせのやまを,みらくしよしも","#[左注](右四首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,羈旅,和歌山,土地讃美,略体,地名","#[訓異]
おほなむち[寛],
すくなみかみの[寛],
つくらしし,[寛]つくりたる,
いもせのやまを[寛],
みらくしよしも,[寛]みれはしよしも,
" "#[番号]07/1248","#[題詞](覊旅作)","#[原文]吾妹子 見偲 奥藻 花開在 我告与","#[訓読]我妹子と見つつ偲はむ沖つ藻の花咲きたらば我れに告げこそ","#[仮名],わぎもこと,みつつしのはむ,おきつもの,はなさきたらば,われにつげこそ","#[左注](右四首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,羈旅,略体,植物","#[訓異]
わぎもこと,[寛]わきもこか,
みつつしのはむ[寛],
おきつもの[寛],
はなさきたらば,[寛]はなさきたらは,
われにつげこそ,[寛]われにつけこよ,
" "#[番号]07/1249","#[題詞](覊旅作)","#[原文]君為 浮沼池 菱採 我染袖 沾在哉","#[訓読]君がため浮沼の池の菱摘むと我が染めし袖濡れにけるかも","#[仮名],きみがため,うきぬのいけの,ひしつむと,わがそめしそで,ぬれにけるかも","#[左注](右四首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,羈旅,島根,略体,植物,地名","#[訓異]
きみがため,[寛]きみかため,
うきぬのいけの[寛],
ひしつむと,[寛]ひしとると,
わがそめしそで,[寛]わかそめしそて,
ぬれにけるかも,[寛]ぬれにけるかな,
" "#[番号]07/1250","#[題詞](覊旅作)","#[原文]妹為 菅實採 行吾 山路惑 此日暮","#[訓読]妹がため菅の実摘みに行きし我れ山道に惑ひこの日暮らしつ","#[仮名],いもがため,すがのみつみに,ゆきしわれ,やまぢにまとひ,このひくらしつ","#[左注]右四首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,羈旅,略体,植物","#[訓異]
いもがため,[寛]いもかため,
すがのみつみに,[寛]すかのみとりて,
ゆきしわれ,[寛]ゆくわれを,
やまぢにまとひ,[寛]やまちまとひて,
このひくらしつ[寛],
" "#[番号]07/1251","#[題詞]問答","#[原文]佐保河尓 鳴成智鳥 何師鴨 川原乎思努比 益河上","#[訓読]佐保川に鳴くなる千鳥何しかも川原を偲ひいや川上る","#[仮名],さほがはに,なくなるちどり,なにしかも,かはらをしのひ,いやかはのぼる","#[左注](右二首詠鳥)(右十七首古歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,問答,奈良,伝誦,寓意,地名,動物","#[訓異]
さほがはに,[寛]さほかはに,
なくなるちどり,[寛]なくなるちとり,
なにしかも[寛],
かはらをしのひ[寛],
いやかはのぼる,[寛]いやかはのほる,
" "#[番号]07/1252","#[題詞](問答)","#[原文]人社者 意保尓毛言目 我幾許 師努布川原乎 標緒勿謹","#[訓読]人こそばおほにも言はめ我がここだ偲ふ川原を標結ふなゆめ","#[仮名],ひとこそば,おほにもいはめ,わがここだ,しのふかはらを,しめゆふなゆめ","#[左注]右二首詠鳥(右十七首古歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,問答,伝誦,寓意","#[訓異]
ひとこそば,[寛]ひとこそは,
おほにもいはめ[寛],
わがここだ,[寛]わかここた,
しのふかはらを[寛],
しめゆふなゆめ[寛],
" "#[番号]07/1253","#[題詞](問答)","#[原文]神樂浪之 思我津乃白水郎者 吾無二 潜者莫為 浪雖不立","#[訓読]楽浪の志賀津の海人は我れなしに潜きはなせそ波立たずとも","#[仮名],ささなみの,しがつのあまは,あれなしに,かづきはなせそ,なみたたずとも","#[左注](右二首詠白水郎)(右十七首古歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,問答,福岡,伝誦,寓意,地名","#[訓異]
ささなみの[寛],
しがつのあまは,[寛]しかつのあまは,
あれなしに,[寛]われなしに,
かづきはなせそ,[寛]いさりはなせそ,
なみたたずとも,[寛]なみたたすとも,
" "#[番号]07/1254","#[題詞](問答)","#[原文]大船尓 梶之母有奈牟 君無尓 潜為八方 波雖不起","#[訓読]大船に楫しもあらなむ君なしに潜きせめやも波立たずとも","#[仮名],おほぶねに,かぢしもあらなむ,きみなしに,かづきせめやも,なみたたずとも","#[左注]右二首詠白水郎(右十七首古歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,問答,伝誦,寓意","#[訓異]
おほぶねに,[寛]おほふねに,
かぢしもあらなむ,[寛]かちしもあらなむ,
きみなしに[寛],
かづきせめやも,[寛]いさりせめやも,
なみたたずとも,[寛]なみたたすとも,
" "#[番号]07/1255","#[題詞]臨時","#[原文]月草尓 衣曽染流 君之為 綵色衣 将摺跡念而","#[訓読]月草に衣ぞ染むる君がため斑の衣摺らむと思ひて","#[仮名],つきくさに,ころもぞそむる,きみがため,まだらのころも,すらむとおもひて","#[左注](右十七首古歌集出)","#[校異]綵 [元][類] 深","#[事項],雑歌,作者:古歌集,臨時,恋歌,植物,女歌","#[訓異]
つきくさに[寛],
ころもぞそむる,[寛]ころもそそむる,
きみがため,[寛]きみかため,
まだらのころも,[寛]いろとるころも,
すらむとおもひて[寛],
" "#[番号]07/1256","#[題詞](臨時)","#[原文]春霞 井上<従>直尓 道者雖有 君尓将相登 他廻来毛","#[訓読]春霞井の上ゆ直に道はあれど君に逢はむとた廻り来も","#[仮名],はるかすみ,ゐのうへゆただに,みちはあれど,きみにあはむと,たもとほりくも","#[左注](右十七首古歌集出)","#[校異]徒 -> 従 [元][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,臨時,恋歌,女歌","#[訓異]
はるかすみ[寛],
ゐのうへゆただに,[寛]ゐのうへにたに,
みちはあれど,[寛]みちはあれと,
きみにあはむと[寛],
たもとほりくも[寛],
" "#[番号]07/1257","#[題詞](臨時)","#[原文]道邊之 草深由利乃 花咲尓 咲之柄二 妻常可云也","#[訓読]道の辺の草深百合の花笑みに笑みしがからに妻と言ふべしや","#[仮名],みちのへの,くさふかゆりの,はなゑみに,ゑみしがからに,つまといふべしや","#[左注](右十七首古歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,臨時","#[訓異]
みちのへの[寛],
くさふかゆりの[寛],
はなゑみに[寛],
ゑみしがからに,[寛]ゑみせしからに,
つまといふべしや,[寛]つまといふへしや,
" "#[番号]07/1258","#[題詞](臨時)","#[原文]黙然不有跡 事之名種尓 云言乎 聞知良久波 少可者有来","#[訓読]黙あらじと言のなぐさに言ふことを聞き知れらくは悪しくはありけり","#[仮名],もだあらじと,ことのなぐさに,いふことを,ききしれらくは,あしくはありけり","#[左注](右十七首古歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,臨時,伝誦","#[訓異]
もだあらじと,[寛]もたあらしと,
ことのなぐさに,[寛]ことのなくさに,
いふことを[寛],
ききしれらくは,[寛]ききしるらくは,
あしくはありけり,[寛]すくなかりけり,
" "#[番号]07/1259","#[題詞](臨時)","#[原文]佐伯山 于花以之 哀我 <手>鴛取而者 花散鞆","#[訓読]佐伯山卯の花持ちし愛しきが手をし取りてば花は散るとも","#[仮名],さへきやま,うのはなまちし,かなしきが,てをしとりてば,はなはちるとも","#[左注](右十七首古歌集出)","#[校異]子 -> 手 [万葉集代匠記(初稿本)]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,臨時,広島,大阪,地名,植物","#[訓異]
さへきやま[寛],
うのはなまちし,[寛]うのはなもたし,
かなしきが,[寛]あはれわか,
てをしとりてば,[寛]こをしとりては,
はなはちるとも,[寛]はなちりぬとも,
" "#[番号]07/1260","#[題詞](臨時)","#[原文]不時 斑衣 服欲香 <嶋>針原 時二不有鞆","#[訓読]時ならぬ斑の衣着欲しきか島の榛原時にあらねども","#[仮名],ときならぬ,まだらのころも,きほしきか,しまのはりはら,ときにあらねども","#[左注](右十七首古歌集出)","#[校異]衣服 -> 嶋 [古]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,臨時,飛鳥,植物,地名","#[訓異]
ときならぬ[寛],
まだらのころも,[寛]またらころもの,
きほしきか[寛],
しまのはりはら,[寛]ころもはりはら,
ときにあらねども,[寛]ときにあらねとも,
" "#[番号]07/1261","#[題詞](臨時)","#[原文]山守之 里邊通 山道曽 茂成来 忘来下","#[訓読]山守の里へ通ひし山道ぞ茂くなりける忘れけらしも","#[仮名],やまもりの,さとへかよひし,やまみちぞ,しげくなりける,わすれけらしも","#[左注](右十七首古歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,譬喩,恋愛,怨恨","#[訓異]
やまもりの[寛],
さとへかよひし,[寛]さとへかよへる,
やまみちぞ,[寛]やまみちそ,
しげくなりける,[寛]しけくなりける,
わすれけらしも[寛],
" "#[番号]07/1262","#[題詞](臨時)","#[原文]足病之 山海石榴開 八<峯>越 鹿待君之 伊波比嬬可聞","#[訓読]あしひきの山椿咲く八つ峰越え鹿待つ君が斎ひ妻かも","#[仮名],あしひきの,やまつばきさく,やつをこえ,ししまつきみが,いはひつまかも","#[左注](右十七首古歌集出)","#[校異]岑 -> 峯 [類][古][紀] / [元][紀] 1263の次に配列","#[事項],雑歌,作者:古歌集,怨恨,恋愛,動物,枕詞,比喩","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまつばきさく,[寛]やまつはきさく,
やつをこえ,[寛]やつをこに,
ししまつきみが,[寛]しかまつきみか,
いはひつまかも[寛],
" "#[番号]07/1263","#[題詞](臨時)","#[原文]暁跡 夜烏雖鳴 此山上之 木末之於者 未静之","#[訓読]暁と夜烏鳴けどこの岡の木末の上はいまだ静けし","#[仮名],あかときと,よがらすなけど,このをかの,こぬれのうへは,いまだしづけし","#[左注](右十七首古歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,恋愛歌,動物","#[訓異]
あかときと,[寛]あかつきと,
よがらすなけど,[寛]よからすなけと,
このをかの[寛],
こぬれのうへは,[寛]こすゆのうへは,
いまだしづけし,[寛]いまたしつけし,
" "#[番号]07/1264","#[題詞](臨時)","#[原文]西市尓 但獨出而 眼不並 買師絹之 商自許里鴨","#[訓読]西の市にただ独り出でて目並べず買ひてし絹の商じこりかも","#[仮名],にしのいちに,ただひとりいでて,めならべず,かひてしきぬの,あきじこりかも","#[左注](右十七首古歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,譬喩,歌垣,恋愛,奈良,地名","#[訓異]
にしのいちに[寛],
ただひとりいでて,[寛]たたひとりいてて,
めならべず,[寛]めならはす,
かひてしきぬの,[寛]かへりしきぬの,
あきじこりかも,[寛]あきしこりかも,
" "#[番号]07/1265","#[題詞](臨時)","#[原文]今年去 新嶋守之 麻衣 肩乃間乱者 <誰>取見","#[訓読]今年行く新防人が麻衣肩のまよひは誰れか取り見む","#[仮名],ことしゆく,にひさきもりが,あさごろも,かたのまよひは,たれかとりみむ","#[左注](右十七首古歌集出)","#[校異]許誰 -> 誰 [元]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,防人,恋愛,妻,羈旅","#[訓異]
ことしゆく[寛],
にひさきもりが,[寛]にひさきもりか,
あさごろも,[寛]あさころも,
かたのまよひは[寛],
たれかとりみむ[寛],
" "#[番号]07/1266","#[題詞](臨時)","#[原文]大舟乎 荒海尓榜出 八船多氣 吾見之兒等之 目見者知之母","#[訓読]大船を荒海に漕ぎ出でや船たけ我が見し子らがまみはしるしも","#[仮名],おほぶねを,あるみにこぎで,やふねたけ,わがみしこらが,まみはしるしも","#[左注](右十七首古歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,羈旅,防人,望郷,恋愛","#[訓異]
おほぶねを,[寛]おほふねを,
あるみにこぎで,[寛]あるみにこきいて,
やふねたけ,[寛]やふねたき,
わがみしこらが,[寛]わかみしこらか,
まみはしるしも,[寛]めみはしるしも,
" "#[番号]07/1267","#[題詞]就所發思 [旋頭歌]","#[原文]百師木乃 大宮人之 踏跡所 奥浪 来不依有勢婆 不失有麻思乎","#[訓読]ももしきの大宮人の踏みし跡ところ沖つ波来寄らずありせば失せずあらましを","#[仮名],ももしきの,おほみやひとの,ふみしあとところ,おきつなみ,きよらずありせば,うせずあらましを","#[左注]右十七首古歌集出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:古歌集,旋頭歌,羈旅,枕詞","#[訓異]
ももしきの[寛],
おほみやひとの[寛],
ふみしあとところ,[寛]ふむあとところ,
おきつなみ[寛],
きよらずありせば,[寛]きよらさりせは,
うせずあらましを,[寛]うせさらましを,
" "#[番号]07/1268","#[題詞](就所發思)","#[原文]兒等手乎 巻向山者 常在常 過徃人尓 徃巻目八方","#[訓読]子らが手を巻向山は常にあれど過ぎにし人に行きまかめやも","#[仮名],こらがてを,まきむくやまは,つねにあれど,すぎにしひとに,ゆきまかめやも","#[左注](右二首柿本朝臣人麻呂<之>歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,奈良,哀悼,挽歌,恋愛,非略体,枕詞,地名","#[訓異]
こらがてを,[寛]こらかてを,
まきむくやまは,[寛]まきもくやまは,
つねにあれど,[寛]つねなれと,
すぎにしひとに,[寛]すきゆくひとに,
ゆきまかめやも[寛],
" "#[番号]07/1269","#[題詞](就所發思)","#[原文]巻向之 山邊響而 徃水之 三名沫如 世人吾等者","#[訓読]巻向の山辺響みて行く水の水沫のごとし世の人我れは","#[仮名],まきむくの,やまへとよみて,ゆくみづの,みなわのごとし,よのひとわれは","#[左注]右二首柿本朝臣人麻呂<之>歌集出","#[校異]<> -> 之 [元][紀][温] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,奈良,哀悼,無常,非略体,地名","#[訓異]
まきむくの,[寛]まきもむの,
やまへとよみて,[寛]やまへひひきて,
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
みなわのごとし,[寛]みなはのことし,
よのひとわれは[寛],
" "#[番号]07/1270","#[題詞]寄物發思","#[原文]隠口乃 泊瀬之山丹 照月者 盈ち為焉 人之常無","#[訓読]こもりくの泊瀬の山に照る月は満ち欠けしけり人の常なき","#[仮名],こもりくの,はつせのやまに,てるつきは,みちかけしけり,ひとのつねなき","#[左注]右一首古歌集出","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:古歌集,無常,奈良,枕詞,地名","#[訓異]
こもりくの[寛],
はつせのやまに[寛],
てるつきは[寛],
みちかけしけり,[寛]みちかけしてそ,
ひとのつねなき[寛],
" "#[番号]07/1271","#[題詞]行路","#[原文]遠有而 雲居尓所見 妹家尓 早将至 歩黒駒","#[訓読]遠くありて雲居に見ゆる妹が家に早く至らむ歩め黒駒","#[仮名],とほくありて,くもゐにみゆる,いもがいへに,はやくいたらむ,あゆめくろこま","#[左注]右一首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,非略体,動物","#[訓異]
とほくありて[寛],
くもゐにみゆる[寛],
いもがいへに,[寛]いもかいへに,
はやくいたらむ[寛],
あゆめくろこま[寛],
" "#[番号]07/1272","#[題詞]旋頭歌","#[原文]劔<後> 鞘納野 葛引吾妹 真袖以 著點等鴨 夏草苅母","#[訓読]大刀の後鞘に入野に葛引く我妹真袖もち着せてむとかも夏草刈るも","#[仮名],たちのしり,さやにいりのに,くずひくわぎも,まそでもち,きせてむとかも,なつくさかるも","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]従 -> 後 [古][紀]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,恋愛,非略体,植物,地名,枕詞","#[訓異]
たちのしり,[寛]たちしり,
さやにいりのに,[寛]さやにいるのに,
くずひくわぎも,[寛]くすひくわきも,
まそでもち,[寛]まそてもて,
きせてむとかも,[寛]きてむとてかも,
なつくさかるも,[寛]なつくすかるも,
" "#[番号]07/1273","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]住吉 波豆麻<公>之 馬乗衣 雜豆臈 漢女乎座而 縫衣叙","#[訓読]住吉の波豆麻の君が馬乗衣さひづらふ漢女を据ゑて縫へる衣ぞ","#[仮名],すみのえの,はづまのきみが,うまのりころも,さひづらふ,あやめをすゑて,ぬへるころもぞ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]君 -> 公 [元][古][紀][温]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,非略体,地名,大阪","#[訓異]
すみのえの,[寛]すみのえは,
はづまのきみが,[寛]つまのきみか,
うまのりころも,[寛]まそころも,
さひづらふ,[寛]さにつらふ,
あやめをすゑて,[寛]をとめをすへて,
ぬへるころもぞ,[寛]ぬへるころもそ,
" "#[番号]07/1274","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]住吉 出見濱 柴莫苅曽尼 未通女等 赤裳下 閏将徃見","#[訓読]住吉の出見の浜の柴な刈りそね娘子らが赤裳の裾の濡れて行かむ見む","#[仮名],すみのえの,いでみのはまの,しばなかりそね,をとめらが,あかものすその,ぬれてゆかむみむ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,非略体,地名,大阪","#[訓異]
すみのえの[寛],
いでみのはまの,[寛]いてみのはまの,
しばなかりそね,[寛]しはなかりそね,
をとめらが,[寛]をとめらか,
あかものすその[寛],
ぬれてゆかむみむ,[寛]ぬれてゆかむみゆ,
" "#[番号]07/1275","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]住吉 小田苅為子 賎鴨無 奴雖在 妹御為 私田苅","#[訓読]住吉の小田を刈らす子奴かもなき奴あれど妹がみためと私田刈る","#[仮名],すみのえの,をだをからすこ,やつこかもなき,やつこあれど,いもがみためと,わたくしだかる","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,略体,唱和,大阪,地名","#[訓異]
すみのえの[寛],
をだをからすこ,[寛]をたからするこ,
やつこかもなき,[寛]いやしかもなし,
やつこあれど,[寛]やつこあれと,
いもがみためと,[寛]いもかにために,
わたくしだかる,[寛]しのひたをかる,
" "#[番号]07/1276","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]池邊 小槻下 細竹苅嫌 其谷 <公>形見尓 監乍将偲","#[訓読]池の辺の小槻の下の小竹な刈りそねそれをだに君が形見に見つつ偲はむ","#[仮名],いけのへの,をつきのしたの,しのなかりそね,それをだに,きみがかたみに,みつつしのはむ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]君 -> 公 [元][古][紀][温]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,恋愛,非略体","#[訓異]
いけのへの,[寛]いけのへに,
をつきのしたの,[寛]をつきかしたの,
しのなかりそね[寛],
それをだに,[寛]それをたに,
きみがかたみに,[寛]きみかかたみに,
みつつしのはむ[寛],
" "#[番号]07/1277","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]天在 日賣菅原 草<莫>苅嫌 弥<那>綿 香烏髪 飽田志付勿","#[訓読]天なる日売菅原の草な刈りそね蜷の腸か黒き髪にあくたし付くも","#[仮名],あめなる,ひめすがはらの,くさなかりそね,みなのわた,かぐろきかみに,あくたしつくも","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]<> -> 莫 [西(右書)][紀][細][温] / <> -> 那 [西(右書)][元][紀][細]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,恋愛,非略体","#[訓異]
あめなる,[寛]あめにある,
ひめすがはらの,[寛]ひめすかはらの,
くさなかりそね[寛],
みなのわた[寛],
かぐろきかみに,[寛]かくろかみに,
あくたしつくも,[寛]あくたしつくな,
" "#[番号]07/1278","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]夏影 房之下<邇> 衣裁吾妹 裏儲 吾為裁者 差大裁","#[訓読]夏蔭の妻屋の下に衣裁つ我妹うら設けて我がため裁たばやや大に裁て","#[仮名],なつかげの,つまやのしたに,きぬたつわぎも,うらまけて,あがためたたば,ややおほにたて","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]庭 -> 邇 [元][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,恋愛,非略体","#[訓異]
なつかげの,[寛]なつかけの,
つまやのしたに,[寛]ねやのしたにて,
きぬたつわぎも,[寛]ころもたつわきも,
うらまけて[寛],
あがためたたば,[寛]わかためたたは,
ややおほにたて,[寛]やおほきにたて,
" "#[番号]07/1279","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]梓弓 引津邊在 莫謂花 及採 不相有目八方 勿謂花","#[訓読]梓弓引津の辺なるなのりその花摘むまでに逢はずあらめやもなのりその花","#[仮名],あづさゆみ,ひきつのへなる,なのりそのはな,つむまでに,あはずあらめやも,なのりそのはな","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,福岡,恋愛,非略体,枕詞,地名,植物,旋頭歌","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
ひきつのへなる,[寛]ひきつのへける,
なのりそのはな[寛],
つむまでに,[寛]つむまては,
あはずあらめやも,[寛]あはさらめやも,
なのりそのはな[寛],
" "#[番号]07/1280","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]撃日刺 宮路行丹 吾裳破 玉緒 念<妄> 家在矣","#[訓読]うちひさす宮道を行くに我が裳は破れぬ玉の緒の思ひ乱れて家にあらましを","#[仮名],うちひさす,みやぢをゆくに,わがもはやれぬ,たまのをの,おもひみだれて,いへにあらましを","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]委 -> 妄 (塙)","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,恋愛,非略体,枕詞","#[訓異]
うちひさす[寛],
みやぢをゆくに,[寛]みやちをゆくに,
わがもはやれぬ,[寛]わかもやふれぬ,
たまのをの[寛],
おもひみだれて,[寛]おもひすてても,
いへにあらましを[寛],
" "#[番号]07/1281","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]<公>為 手力勞 織在衣服<叙> 春去 何<色> 揩者吉","#[訓読]君がため手力疲れ織れる衣ぞ春さらばいかなる色に摺りてばよけむ","#[仮名],きみがため,たぢからつかれ,おれるころもぞ,はるさらば,いかなるいろに,すりてばよけむ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]君 -> 公 [元][古][紀][温] / 斜 -> 叙 [万葉集全釈] / 々 -> 色 [万葉集略解]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,恋愛,非略体","#[訓異]
きみがため,[寛]きみかため,
たぢからつかれ,[寛]てつからをれる,
おれるころもぞ,[寛]ころもきななめ,
はるさらば,[寛]はるさらは,
いかなるいろに,[寛]いかにやいかに,
すりてばよけむ,[寛]すりてはよけむ,
" "#[番号]07/1282","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]橋立 倉椅山 立白雲 見欲 我為苗 立白雲","#[訓読]はしたての倉橋山に立てる白雲見まく欲り我がするなへに立てる白雲","#[仮名],はしたての,くらはしやまに,たてるしらくも,みまくほり,わがするなへに,たてるしらくも","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,奈良,非略体,枕詞,地名","#[訓異]
はしたての[寛],
くらはしやまに[寛],
たてるしらくも[寛],
みまくほり[寛],
わがするなへに,[寛]わかするなへに,
たてるしらくも[寛],
" "#[番号]07/1283","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]橋立 倉椅川 石走者裳 壮子時 我度為 石走者裳","#[訓読]はしたての倉橋川の石の橋はも男盛りに我が渡りてし石の橋はも","#[仮名],はしたての,くらはしがはの,いしのはしはも,をざかりに,わがわたりてし,いしのはしはも","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,恋愛,追憶,非略体,奈良,地名,枕詞","#[訓異]
はしたての[寛],
くらはしがはの,[寛]くらはしかはの,
いしのはしはも[寛],
をざかりに,[寛]みさかりに,
わがわたりてし,[寛]わかわたしたり,
いしのはしはも[寛],
" "#[番号]07/1284","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]橋立 倉椅川 河静菅 余苅 笠裳不編 川静菅","#[訓読]はしたての倉橋川の川の静菅我が刈りて笠にも編まぬ川の静菅","#[仮名],はしたての,くらはしがはの,かはのしづすげ,わがかりて,かさにもあまぬ,かはのしづすげ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,奈良,旋頭歌,譬喩,恋愛,非略体,地名,枕詞","#[訓異]
はしたての[寛],
くらはしがはの,[寛]くらはしかはの,
かはのしづすげ,[寛]かはのしつすけ,
わがかりて,[寛]われかりて,
かさにもあまぬ,[寛]かさにもあます,
かはのしづすげ,[寛]かはのしつすけ,
" "#[番号]07/1285","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]春日尚 田立羸 公哀 若草 つ無公 田立羸","#[訓読]春日すら田に立ち疲る君は悲しも若草の妻なき君が田に立ち疲る","#[仮名],はるひすら,たにたちつかる,きみはかなしも,わかくさの,つまなききみが,たにたちつかる","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,恋愛,略体,からかい,枕詞","#[訓異]
はるひすら[寛],
たにたちつかる[寛],
きみはかなしも,[寛]きみはあはれ,
わかくさの[寛],
つまなききみが,[寛]つまなききみか,
たにたちつかる[寛],
" "#[番号]07/1286","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]開木代 来背社 草勿手折 己時 立雖榮 草勿手折","#[訓読]山背の久世の社の草な手折りそ我が時と立ち栄ゆとも草な手折りそ","#[仮名],やましろの,くせのやしろの,くさなたをりそ,わがときと,たちさかゆとも,くさなたをりそ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,譬喩,恋愛,略体,京都,地名","#[訓異]
やましろの[寛],
くせのやしろの,[寛]くせのやしろに,
くさなたをりそ[寛],
わがときと,[寛]おのかとき,
たちさかゆとも[寛],
くさなたをりそ[寛],
" "#[番号]07/1287","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]青角髪 依網原 人相鴨 石走 淡海縣 物語為","#[訓読]青みづら依網の原に人も逢はぬかも石走る近江県の物語りせむ","#[仮名],あをみづら,よさみのはらに,ひともあはぬかも,いはばしる,あふみあがたの,ものがたりせむ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,大阪,略体,枕詞,地名","#[訓異]
あをみづら,[寛]あをみつら,
よさみのはらに,[寛]よさみのはらの,
ひともあはぬかも,[寛]ひとにあへるかも,
いはばしる,[寛]いははしる,
あふみあがたの,[寛]あふみのかたの,
ものがたりせむ,[寛]ものかたりせむ,
" "#[番号]07/1288","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]水門 葦末葉 誰手折 吾背子 振手見 我手折","#[訓読]港の葦の末葉を誰れか手折りし我が背子が振る手を見むと我れぞ手折りし","#[仮名],みなとの,あしのうらばを,たれかたをりし,わがせこが,ふるてをみむと,われぞたをりし","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,恋愛,略体,植物","#[訓異]
みなとの,[寛]みなとなる,
あしのうらばを,[寛]あしのすゑはを,
たれかたをりし[寛],
わがせこが,[寛]わかせこか,
ふるてをみむと[寛],
われぞたをりし,[寛]われそたをりし,
" "#[番号]07/1289","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]垣越 犬召越 鳥猟為公 青山 <葉>茂山邊 馬安<公>","#[訓読]垣越しに犬呼び越して鳥猟する君青山の茂き山辺に馬休め君","#[仮名],かきごしに,いぬよびこして,とがりするきみ,あをやまの,しげきやまへに,うまやすめきみ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]等 -> 葉 [西(訂正右書)][元][古][紀] / 君 -> 公 [元][古][紀][温]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,誘い歌,略体,動物","#[訓異]
かきごしに,[寛]かきこしに,
いぬよびこして,[寛]いぬよひこして,
とがりするきみ,[寛]とかりするきみ,
あをやまの[寛],
しげきやまへに,[寛]しけきやまへに,
うまやすめきみ,[寛]うまやすめよきみ,
" "#[番号]07/1290","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]海底 奥玉藻之 名乗曽花 妹与吾 此何有跡 莫語之花","#[訓読]海の底沖つ玉藻のなのりその花妹と我れとここにしありとなのりその花","#[仮名],わたのそこ,おきつたまもの,なのりそのはな,いもとあれと,ここにしありと,なのりそのはな","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,恋愛,非略体,植物","#[訓異]
わたのそこ,[寛]わたつみの,
おきつたまもの[寛],
なのりそのはな[寛],
いもとあれと[寛],
ここにしありと,[寛]ここにありとな,
なのりそのはな[寛],
" "#[番号]07/1291","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]此岡 <草>苅小子 <勿>然苅 有乍 <公>来座 御馬草為","#[訓読]この岡に草刈るわらはなしか刈りそねありつつも君が来まさば御馬草にせむ","#[仮名],このをかに,くさかるわらは,なしかかりそね,ありつつも,きみがきまさむ,みまくさにせむ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]莫 -> 草 [西(訂正右書)][元][古][紀] / <> -> 勿 [元][紀] / 君 -> 公 [元][温][矢][京]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,略体,恋愛","#[訓異]
このをかに[寛],
くさかるわらは[寛],
なしかかりそね,[寛]しかなかりそ,
ありつつも[寛],
きみがきまさむ,[寛]きみかきまさむ,
みまくさにせむ[寛],
" "#[番号]07/1292","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]江林 次完也物 求吉 白栲 袖纒上 完待我背","#[訓読]江林に臥せる獣やも求むるによき白栲の袖巻き上げて獣待つ我が背","#[仮名],えはやしに,ふせるししやも,もとむるによき,しろたへの,そでまきあげて,ししまつわがせ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,非略体,歌垣,動物","#[訓異]
えはやしに[寛],
ふせるししやも,[寛]やとるししやも,
もとむるによき,[寛]もとめよき,
しろたへの[寛],
そでまきあげて,[寛]そてまきあけて,
ししまつわがせ,[寛]ししまつわかせ,
" "#[番号]07/1293","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]丸雪降 遠江 吾跡川楊 雖苅 亦生云 余跡川楊","#[訓読]霰降り遠つ淡海の吾跡川楊刈れどもまたも生ふといふ吾跡川楊","#[仮名],あられふり,とほつあふみの,あとかはやなぎ,かれども,またもおふといふ,あとかはやなぎ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,静岡,譬喩,略体,枕詞,植物,地名","#[訓異]
あられふり,[寛]あられふる,
とほつあふみの,[寛]とほつえにある,
あとかはやなぎ,[寛]あとかはやなき,
かれども,[寛]かりつとも,
またもおふといふ,[寛]またもおふてふ,
あとかはやなぎ,[寛]あとかはやなき,
" "#[番号]07/1294","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]朝月 日向山 月立所見 遠妻 持在人 看乍偲","#[訓読]朝月の日向の山に月立てり見ゆ遠妻を待ちたる人し見つつ偲はむ","#[仮名],あさづきの,ひむかのやまに,つきたてりみゆ,とほづまを,もちたるひとし,みつつしのはむ","#[左注]右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,旋頭歌,略体,望郷,宮崎,地名,枕詞","#[訓異]
あさづきの,[寛]あさつくひ,
ひむかのやまに,[寛]むかひのやまの,
つきたてりみゆ,[寛]つきたちてみゆ,
とほづまを,[寛]とほつまを,
もちたるひとし,[寛]もたらむひとや,
みつつしのはむ[寛],
" "#[番号]07/1295","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]春日在 三笠乃山二 月船出 遊士之 飲酒坏尓 陰尓所見管","#[訓読]春日なる御笠の山に月の舟出づ風流士の飲む酒杯に影に見えつつ","#[仮名],かすがなる,みかさのやまに,つきのふねいづ,みやびをの,のむさかづきに,かげにみえつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,旋頭歌,奈良,宴席,地名","#[訓異]
かすがなる,[寛]かすかなる,
みかさのやまに[寛],
つきのふねいづ,[寛]つきのふねいつ,
みやびをの,[寛]たはれをの,
のむさかづきに,[寛]のむさかつきに,
かげにみえつつ,[寛]かけにみへつつ,
" "#[番号]07/1296","#[題詞]譬喩歌 / 寄衣","#[原文]今造 斑衣服 面<影> 吾尓所念 末服友","#[訓読]今作る斑の衣面影に我れに思ほゆいまだ着ねども","#[仮名],いまつくる,まだらのころも,おもかげに,われにおもほゆ,いまだきねども","#[左注](右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 / 就 -> 影 (塙)","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,非略体","#[訓異]
いまつくる,[寛]いますへる,
まだらのころも,[寛]またらころもは,
おもかげに,[寛]めにつくと,
われにおもほゆ[寛],
いまだきねども,[寛]いまたきねとも,
" "#[番号]07/1297","#[題詞](寄衣)","#[原文]紅 衣染 雖欲 著丹穗哉 人可知","#[訓読]紅に衣染めまく欲しけども着てにほはばか人の知るべき","#[仮名],くれなゐに,ころもそめまく,ほしけども,きてにほはばか,ひとのしるべき","#[左注](右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,略体","#[訓異]
くれなゐに[寛],
ころもそめまく,[寛]ころもをそめて,
ほしけども,[寛]ほしけれと,
きてにほはばか,[寛]きてにほははや,
ひとのしるべき,[寛]ひとのしるへき,
" "#[番号]07/1298","#[題詞](寄衣)","#[原文]<干><各> 人雖云 織次 我廿物 白麻衣","#[訓読]かにかくに人は言ふとも織り継がむ我が機物の白麻衣","#[仮名],かにかくに,ひとはいふとも,おりつがむ,わがはたものの,しろあさごろも","#[左注](右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]千 -> 干 [万葉集古義] / 名 -> 各 [万葉集古義]","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,略体","#[訓異]
かにかくに,[寛]ちなにはも,
ひとはいふとも[寛],
おりつがむ,[寛]をりつかむ,
わがはたものの,[寛]わかはたものの,
しろあさごろも,[寛]しろあさころも,
" "#[番号]07/1299","#[題詞]寄玉","#[原文]安治村 十依海 船浮 白玉採 人所知勿","#[訓読]あぢ群のとをよる海に舟浮けて白玉採ると人に知らゆな","#[仮名],あぢむらの,とをよるうみに,ふねうけて,しらたまとると,ひとにしらゆな","#[左注](右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,略体,動物","#[訓異]
あぢむらの,[寛]あちむらの,
とをよるうみに,[寛]なをよるうみに,
ふねうけて[寛],
しらたまとると,[寛]しらたまとらむ,
ひとにしらゆな,[寛]ひとにしらすな,
" "#[番号]07/1300","#[題詞](寄玉)","#[原文]遠近 礒中在 白玉 人不知 見依鴨","#[訓読]をちこちの礒の中なる白玉を人に知らえず見むよしもがも","#[仮名],をちこちの,いそのなかなる,しらたまを,ひとにしらえず,みむよしもがも","#[左注](右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,略体","#[訓異]
をちこちの[寛],
いそのなかなる[寛],
しらたまを[寛],
ひとにしらえず,[寛]ひとにしらせて,
みむよしもがも,[寛]みるよしもかも,
" "#[番号]07/1301","#[題詞](寄玉)","#[原文]海神 手纒持在 玉故 石浦廻 潜為鴨","#[訓読]海神の手に巻き持てる玉故に礒の浦廻に潜きするかも","#[仮名],わたつみの,てにまきもてる,たまゆゑに,いそのうらみに,かづきするかも","#[左注](右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,略体","#[訓異]
わたつみの[寛],
てにまきもてる,[寛]てにまきもたる,
たまゆゑに[寛],
いそのうらみに,[寛]いそのうらわに,
かづきするかも,[寛]あさりするかも,
" "#[番号]07/1302","#[題詞](寄玉)","#[原文]海神 持在白玉 見欲 千遍告 潜為海子","#[訓読]海神の持てる白玉見まく欲り千たびぞ告りし潜きする海人","#[仮名],わたつみの,もてるしらたま,みまくほり,ちたびぞのりし,かづきするあま","#[左注](右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,略体","#[訓異]
わたつみの[寛],
もてるしらたま,[寛]もたるしらたま,
みまくほり[寛],
ちたびぞのりし,[寛]ちかへりつけつ,
かづきするあま,[寛]かつきするあま,
" "#[番号]07/1303","#[題詞](寄玉)","#[原文]潜為 海子雖告 海神 心不得 所見不云","#[訓読]潜きする海人は告れども海神の心し得ねば見ゆといはなくに","#[仮名],かづきする,あまはのれども,わたつみの,こころしえねば,みゆといはなくに","#[左注](右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,略体","#[訓異]
かづきする,[寛]かつきする,
あまはのれども,[寛]あまはつくとも,
わたつみの[寛],
こころしえねば,[寛]こころをえすて,
みゆといはなくに,[寛]みるといはなくに,
" "#[番号]07/1304","#[題詞]寄木","#[原文]天雲 棚引山 隠在 吾<下心> 木葉知","#[訓読]天雲のたなびく山の隠りたる我が下心木の葉知るらむ","#[仮名],あまくもの,たなびくやまの,こもりたる,あがしたごころ,このはしるらむ","#[左注](右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]忘 -> 下心 [万葉集略解]","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,略体","#[訓異]
あまくもの[寛],
たなびくやまの,[寛]たなひくやまに,
こもりたる,[寛]かくれたる,
あがしたごころ,[寛]われわすれめや,
このはしるらむ[寛],
" "#[番号]07/1305","#[題詞](寄木)","#[原文]雖見不飽 人國山 木葉 己心 名著念","#[訓読]見れど飽かぬ人国山の木の葉をし我が心からなつかしみ思ふ","#[仮名],みれどあかぬ,ひとくにやまの,このはをし,わがこころから,なつかしみおもふ","#[左注](右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,和歌山,恋愛,略体,地名","#[訓異]
みれどあかぬ,[寛]みれとあかぬ,
ひとくにやまの[寛],
このはをし,[寛]このはをそ,
わがこころから,[寛]おのかこころに,
なつかしみおもふ,[寛]なつかしくおもふ,
" "#[番号]07/1306","#[題詞]寄花","#[原文]是山 黄葉下 花矣我 小端見 反戀","#[訓読]この山の黄葉が下の花を我れはつはつに見てなほ恋ひにけり","#[仮名],このやまの,もみちのしたの,はなをわれ,はつはつにみて,なほこひにけり","#[左注](右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,略体","#[訓異]
このやまの[寛],
もみちのしたの[寛],
はなをわれ,[寛]はなをわか,
はつはつにみて[寛],
なほこひにけり,[寛]かへるこひしも,
" "#[番号]07/1307","#[題詞]寄川","#[原文]従此川 船可行 雖在 渡瀬別 守人有","#[訓読]この川ゆ舟は行くべくありといへど渡り瀬ごとに守る人のありて","#[仮名],このかはゆ,ふねはゆくべく,ありといへど,わたりぜごとに,もるひとのありて","#[左注](右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,障害,略体","#[訓異]
このかはゆ,[寛]このかはに,
ふねはゆくべく,[寛]ふねもこくへく,
ありといへど,[寛]ありといへと,
わたりぜごとに,[寛]わたるせことに,
もるひとのありて,[寛]まもるひとあり,
" "#[番号]07/1308","#[題詞]寄海","#[原文]大海 候水門 事有 従何方君 吾率凌","#[訓読]大海をさもらふ港事しあらばいづへゆ君は我を率しのがむ","#[仮名],おほうみを,さもらふみなと,ことしあらば,いづへゆきみは,わをゐしのがむ","#[左注](右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]海 [元] 船","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,略体","#[訓異]
おほうみを,[寛]おほうみの,
さもらふみなと,[寛]まもるみなとの,
ことしあらば,[寛]ことあるに,
いづへゆきみは,[寛]いつくにきみか,
わをゐしのがむ,[寛]われゐしのかむ,
" "#[番号]07/1309","#[題詞](寄海)","#[原文]風吹 海荒 明日言 應久 <公>随","#[訓読]風吹きて海は荒るとも明日と言はば久しくあるべし君がまにまに","#[仮名],かぜふきて,うみはあるとも,あすといはば,ひさしくあるべし,きみがまにまに","#[左注](右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]君 -> 公 [西(訂正右書)][元][類][紀]","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,略体","#[訓異]
かぜふきて,[寛]かせふきて,
うみはあるとも[寛],
あすといはば,[寛]あすといはは,
ひさしくあるべし,[寛]ひさしかるへし,
きみがまにまに,[寛]きみかまにまに,
" "#[番号]07/1310","#[題詞](寄海)","#[原文]雲隠 小嶋神之 恐者 目間 心間哉","#[訓読]雲隠る小島の神の畏けば目こそ隔てれ心隔てや","#[仮名],くもがくる,こしまのかみの,かしこけば,めこそへだてれ,こころへだてや","#[左注]右十五首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]","#[事項],譬喩歌,作者:柿本人麻呂歌集,恋愛,略体","#[訓異]
くもがくる,[寛]くもかくれ,
こしまのかみの,[寛]をしまのかみの,
かしこけば,[寛]かしこくは,
めこそへだてれ,[寛]めはへたつとも,
こころへだてや,[寛]こころへたつな,
" "#[番号]07/1311","#[題詞]寄衣","#[原文]橡 衣人<皆> 事無跡 曰師時従 欲服所念","#[訓読]橡の衣は人皆事なしと言ひし時より着欲しく思ほゆ","#[仮名],つるはみの,きぬはひとみな,ことなしと,いひしときより,きほしくおもほゆ","#[左注]","#[校異]者 -> 皆 [元][類][古][紀]","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物","#[訓異]
つるはみの[寛],
きぬはひとみな,[寛]きぬきしひとは,
ことなしと[寛],
いひしときより[寛],
きほしくおもほゆ,[寛]きまほしくおほゆ,
" "#[番号]07/1312","#[題詞](寄衣)","#[原文]凡尓 吾之念者 下服而 穢尓師衣乎 取而将著八方","#[訓読]おほろかに我れし思はば下に着てなれにし衣を取りて着めやも","#[仮名],おほろかに,われしおもはば,したにきて,なれにしきぬを,とりてきめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
おほろかに,[寛]おほよそに,
われしおもはば,[寛]われをおもはは,
したにきて[寛],
なれにしきぬを[寛],
とりてきめやも[寛],
" "#[番号]07/1313","#[題詞](寄衣)","#[原文]紅之 深染之衣 下著而 上取著者 事将成鴨","#[訓読]紅の深染めの衣下に着て上に取り着ば言なさむかも","#[仮名],くれなゐの,こそめのころも,したにきて,うへにとりきば,ことなさむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,うわさ","#[訓異]
くれなゐの[寛],
こそめのころも[寛],
したにきて[寛],
うへにとりきば,[寛]うへにとりきは,
ことなさむかも,[寛]ことならむかも,
" "#[番号]07/1314","#[題詞](寄衣)","#[原文]橡 解濯衣之 恠 殊欲服 此暮可聞","#[訓読]橡の解き洗ひ衣のあやしくもことに着欲しきこの夕かも","#[仮名],つるはみの,ときあらひきぬの,あやしくも,ことにきほしき,このゆふへかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物","#[訓異]
つるはみの[寛],
ときあらひきぬの[寛],
あやしくも[寛],
ことにきほしき[寛],
このゆふへかも[寛],
" "#[番号]07/1315","#[題詞](寄衣)","#[原文]橘之 嶋尓之居者 河遠 不曝縫之 吾下衣","#[訓読]橘の島にし居れば川遠みさらさず縫ひし我が下衣","#[仮名],たちばなの,しまにしをれば,かはとほみ,さらさずぬひし,あがしたごろも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,飛鳥,恋愛,後悔,地名","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
しまにしをれば,[寛]しまにしをれは,
かはとほみ[寛],
さらさずぬひし,[寛]さらさてぬひし,
あがしたごろも,[寛]わかしたころも,
" "#[番号]07/1316","#[題詞]寄絲","#[原文]河内女之 手染之絲乎 絡反 片絲尓雖有 将絶跡念也","#[訓読]河内女の手染めの糸を繰り返し片糸にあれど絶えむと思へや","#[仮名],かふちめの,てそめのいとを,くりかへし,かたいとにあれど,たえむとおもへや","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
かふちめの[寛],
てそめのいとを[寛],
くりかへし[寛],
かたいとにあれど,[寛]かたいとにあれと,
たえむとおもへや,[寛]たへむとおもへや,
" "#[番号]07/1317","#[題詞]寄玉","#[原文]海底 沈白玉 風吹而 海者雖荒 不取者不止","#[訓読]海の底沈く白玉風吹きて海は荒るとも取らずはやまじ","#[仮名],わたのそこ,しづくしらたま,かぜふきて,うみはあるとも,とらずはやまじ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
わたのそこ[寛],
しづくしらたま,[寛]しつくしらたま,
かぜふきて,[寛]かせふきて,
うみはあるとも[寛],
とらずはやまじ,[寛]とらすはやまし,
" "#[番号]07/1318","#[題詞](寄玉)","#[原文]底清 沈有玉乎 欲見 千遍曽告之 潜為白水郎","#[訓読]底清み沈ける玉を見まく欲り千たびぞ告りし潜きする海人","#[仮名],そこきよみ,しづけるたまを,みまくほり,ちたびぞのりし,かづきするあま","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
そこきよみ,[寛]そこきよし,
しづけるたまを,[寛]しつめるたまを,
みまくほり[寛],
ちたびぞのりし,[寛]ちたひそつけし,
かづきするあま,[寛]かつきするあま,
" "#[番号]07/1319","#[題詞](寄玉)","#[原文]大海之 水底照之 石著玉 齋而将採 風莫吹行年","#[訓読]大海の水底照らし沈く玉斎ひて採らむ風な吹きそね","#[仮名],おほうみの,みなそこてらし,しづくたま,いはひてとらむ,かぜなふきそね","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
おほうみの[寛],
みなそこてらし,[寛]みなそこてらす,
しづくたま,[寛]あはひたま,
いはひてとらむ[寛],
かぜなふきそね,[寛]かせなふきこそ,
" "#[番号]07/1320","#[題詞](寄玉)","#[原文]水底尓 沈白玉 誰故 心盡而 吾不念尓","#[訓読]水底に沈く白玉誰が故に心尽して我が思はなくに","#[仮名],みなそこに,しづくしらたま,たがゆゑに,こころつくして,わがおもはなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
みなそこに[寛],
しづくしらたま,[寛]しつくしらたま,
たがゆゑに,[寛]たかゆゑに,
こころつくして[寛],
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]07/1321","#[題詞](寄玉)","#[原文]世間 常如是耳加 結大王 白玉之緒 絶樂思者","#[訓読]世間は常かくのみか結びてし白玉の緒の絶ゆらく思へば","#[仮名],よのなかは,つねかくのみか,むすびてし,しらたまのをの,たゆらくおもへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
よのなかは[寛],
つねかくのみか[寛],
むすびてし,[寛]むすふきみ,
しらたまのをの[寛],
たゆらくおもへば,[寛]たえらくおもへは,
" "#[番号]07/1322","#[題詞](寄玉)","#[原文]伊勢海之 白水郎之嶋津我 鰒玉 取而後毛可 戀之将繁","#[訓読]伊勢の海の海人の島津が鰒玉採りて後もか恋の繁けむ","#[仮名],いせのうみの,あまのしまつが,あはびたま,とりてのちもか,こひのしげけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,動物","#[訓異]
いせのうみの[寛],
あまのしまつが,[寛]あまのしまつか,
あはびたま,[寛]あはひたま,
とりてのちもか[寛],
こひのしげけむ,[寛]こひのしけけむ,
" "#[番号]07/1323","#[題詞](寄玉)","#[原文]海之底 奥津白玉 縁乎無三 常如此耳也 戀度味試","#[訓読]海の底沖つ白玉よしをなみ常かくのみや恋ひわたりなむ","#[仮名],わたのそこ,おきつしらたま,よしをなみ,つねかくのみや,こひわたりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
わたのそこ[寛],
おきつしらたま[寛],
よしをなみ[寛],
つねかくのみや[寛],
こひわたりなむ[寛],
" "#[番号]07/1324","#[題詞](寄玉)","#[原文]葦根之 懃念而 結義之 玉緒云者 人将解八方","#[訓読]葦の根のねもころ思ひて結びてし玉の緒といはば人解かめやも","#[仮名],あしのねの,ねもころおもひて,むすびてし,たまのをといはば,ひととかめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,枕詞","#[訓異]
あしのねの[寛],
ねもころおもひて[寛],
むすびてし,[寛]むすひてし,
たまのをといはば,[寛]たまのをといはは,
ひととかめやも,[寛]ひととかむやも,
" "#[番号]07/1325","#[題詞](寄玉)","#[原文]白玉乎 手者不纒尓 匣耳 置有之人曽 玉令<詠>流","#[訓読]白玉を手には巻かずに箱のみに置けりし人ぞ玉嘆かする","#[仮名],しらたまを,てにはまかずに,はこのみに,おけりしひとぞ,たまなげかする","#[左注]","#[校異]泳 -> 詠 [元][類][細]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
しらたまを[寛],
てにはまかずに,[寛]てにはまかぬに,
はこのみに,[寛]はこにのみ,
おけりしひとぞ,[寛]おけりしひとそ,
たまなげかする,[寛]たまおほれする,
" "#[番号]07/1326","#[題詞](寄玉)","#[原文]照左豆我 手尓纒古須 玉毛欲得 其緒者替而 吾玉尓将為","#[訓読]照左豆が手に巻き古す玉もがもその緒は替へて我が玉にせむ","#[仮名],てるさづが,てにまきふるす,たまもがも,そのをはかへて,わがたまにせむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
てるさづが,[寛]てるさつか,
てにまきふるす[寛],
たまもがも,[寛]たまもかな,
そのをはかへて[寛],
わがたまにせむ,[寛]わかたまにせむ,
" "#[番号]07/1327","#[題詞](寄玉)","#[原文]秋風者 継而莫吹 海底 奥在玉乎 手纒左右二","#[訓読]秋風は継ぎてな吹きそ海の底沖なる玉を手に巻くまでに","#[仮名],あきかぜは,つぎてなふきそ,わたのそこ,おきなるたまを,てにまくまでに","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
あきかぜは,[寛]あきかせは,
つぎてなふきそ,[寛]つきてなふきそ,
わたのそこ[寛],
おきなるたまを[寛],
てにまくまでに,[寛]てにまくまてに,
" "#[番号]07/1328","#[題詞]寄日本琴","#[原文]伏膝 玉之小琴之 事無者 甚幾許 吾将戀也毛","#[訓読]膝に伏す玉の小琴の事なくはいたくここだく我れ恋ひめやも","#[仮名],ひざにふす,たまのをごとの,ことなくは,いたくここだく,あれこひめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
ひざにふす,[寛]ひさにふす,
たまのをごとの,[寛]たまのをことの,
ことなくは[寛],
いたくここだく,[寛]いとかくはかり,
あれこひめやも,[寛]わかこひむやも,
" "#[番号]07/1329","#[題詞]寄弓","#[原文]陸奥之 吾田多良真弓 著<絃>而 引者香人之 吾乎事将成","#[訓読]陸奥の安達太良真弓弦はけて引かばか人の我を言なさむ","#[仮名],みちのくの,あだたらまゆみ,つらはけて,ひかばかひとの,わをことなさむ","#[左注]","#[校異]絲 -> 絃 [元][古]","#[事項],譬喩歌,恋愛,うわさ,植物","#[訓異]
みちのくの[寛],
あだたらまゆみ,[寛]あたたらまゆみ,
つらはけて,[寛]つるすけて,
ひかばかひとの,[寛]ひけはかひとの,
わをことなさむ,[寛]われをことなさむ,
" "#[番号]07/1330","#[題詞](寄弓)","#[原文]南淵之 細川山 立檀 弓束<纒及> 人二不所知","#[訓読]南淵の細川山に立つ檀弓束巻くまで人に知らえじ","#[仮名],みなぶちの,ほそかはやまに,たつまゆみ,ゆづかまくまで,ひとにしらえじ","#[左注]","#[校異]級 -> 纒及 [古]","#[事項],譬喩歌,恋愛,うわさ,飛鳥,地名,植物","#[訓異]
みなぶちの,[寛]みなふちの,
ほそかはやまに[寛],
たつまゆみ[寛],
ゆづかまくまで,[寛]ゆつかまくまて,
ひとにしらえじ,[寛]ひとにしらるな,
" "#[番号]07/1331","#[題詞]寄山","#[原文]磐疊 恐山常 知管毛 吾者戀香 同等不有尓","#[訓読]岩畳畏き山と知りつつも我れは恋ふるか並にあらなくに","#[仮名],いはたたみ,かしこきやまと,しりつつも,あれはこふるか,なみにあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
いはたたみ[寛],
かしこきやまと[寛],
しりつつも[寛],
あれはこふるか,[寛]われはこふるか,
なみにあらなくに,[寛]ともならなくに,
" "#[番号]07/1332","#[題詞](寄山)","#[原文]石金之 <凝>敷山尓 入始而 山名付染 出不勝鴨","#[訓読]岩が根のこごしき山に入りそめて山なつかしみ出でかてぬかも","#[仮名],いはがねの,こごしきやまに,いりそめて,やまなつかしみ,いでかてぬかも","#[左注]","#[校異]凝木 -> 凝 [元]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
いはがねの,[寛]いはかねの,
こごしきやまに,[寛]ここしきやまに,
いりそめて[寛],
やまなつかしみ[寛],
いでかてぬかも,[寛]いてかてぬかも,
" "#[番号]07/1333","#[題詞](寄山)","#[原文]佐<穂>山乎 於凡尓見之鹿跡 今見者 山夏香思母 風吹莫勤","#[訓読]佐保山をおほに見しかど今見れば山なつかしも風吹くなゆめ","#[仮名],さほやまを,おほにみしかど,いまみれば,やまなつかしも,かぜふくなゆめ","#[左注]","#[校異]保 -> 穂 [元][類][紀]","#[事項],譬喩歌,恋愛,奈良,地名","#[訓異]
さほやまを[寛],
おほにみしかど,[寛]おほにみしかと,
いまみれば,[寛]いまみれは,
やまなつかしも[寛],
かぜふくなゆめ,[寛]かせふくなゆめ,
" "#[番号]07/1334","#[題詞](寄山)","#[原文]奥山之 於石蘿生 恐常 思情乎 何如裳勢武","#[訓読]奥山の岩に苔生し畏けど思ふ心をいかにかもせむ","#[仮名],おくやまの,いはにこけむし,かしこけど,おもふこころを,いかにかもせむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
おくやまの[寛],
いはにこけむし[寛],
かしこけど,[寛]かしこみと,
おもふこころを[寛],
いかにかもせむ[寛],
" "#[番号]07/1335","#[題詞](寄山)","#[原文]思て 痛文為便無 玉手次 雲飛山仁 吾印結","#[訓読]思ひあまりいたもすべなみ玉たすき畝傍の山に我れ標結ひつ","#[仮名],おもひあまり,いたもすべなみ,たまたすき,うねびのやまに,われしめゆひつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,橿原,奈良,恋愛,枕詞,地名","#[訓異]
おもひあまり[寛],
いたもすべなみ,[寛]いともすへなみ,
たまたすき[寛],
うねびのやまに,[寛]うねひのやまに,
われしめゆひつ,[寛]われしめむすふ,
" "#[番号]07/1336","#[題詞]寄草","#[原文]冬隠 春乃大野乎 焼人者 焼不足香文 吾情熾","#[訓読]冬こもり春の大野を焼く人は焼き足らねかも我が心焼く","#[仮名],ふゆこもり,はるのおほのを,やくひとは,やきたらねかも,わがこころやく","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,枕詞","#[訓異]
ふゆこもり[寛],
はるのおほのを[寛],
やくひとは[寛],
やきたらねかも,[寛]やきたらぬかも,
わがこころやく,[寛]わかこころやく,
" "#[番号]07/1337","#[題詞](寄草)","#[原文]葛城乃 高間草野 早知而 標指益乎 今悔拭","#[訓読]葛城の高間の草野早知りて標刺さましを今ぞ悔しき","#[仮名],かづらきの,たかまのかやの,はやしりて,しめささましを,いまぞくやしき","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,葛城,奈良,恋愛,後悔,地名","#[訓異]
かづらきの,[寛]かつらきの,
たかまのかやの,[寛]たかまのくさの,
はやしりて[寛],
しめささましを[寛],
いまぞくやしき,[寛]いまそくやしき,
" "#[番号]07/1338","#[題詞](寄草)","#[原文]吾屋前尓 生土針 従心毛 不想人之 衣尓須良由奈","#[訓読]我がやどに生ふるつちはり心ゆも思はぬ人の衣に摺らゆな","#[仮名],わがやどに,おふるつちはり,こころゆも,おもはぬひとの,きぬにすらゆな","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物","#[訓異]
わがやどに,[寛]わかやとに,
おふるつちはり[寛],
こころゆも,[寛]こころにも,
おもはぬひとの[寛],
きぬにすらゆな[寛],
" "#[番号]07/1339","#[題詞](寄草)","#[原文]鴨頭草丹 服色取 揩目伴 移變色登 称之苦沙","#[訓読]月草に衣色どり摺らめどもうつろふ色と言ふが苦しさ","#[仮名],つきくさに,ころもいろどり,すらめども,うつろふいろと,いふがくるしさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物","#[訓異]
つきくさに[寛],
ころもいろどり,[寛]ころもいろとり,
すらめども,[寛]すらめとも,
うつろふいろと[寛],
いふがくるしさ,[寛]いふかくるしさ,
" "#[番号]07/1340","#[題詞](寄草)","#[原文]紫 絲乎曽吾搓 足桧之 山橘乎 将貫跡念而","#[訓読]紫の糸をぞ我が搓るあしひきの山橘を貫かむと思ひて","#[仮名],むらさきの,いとをぞわがよる,あしひきの,やまたちばなを,ぬかむとおもひて","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物","#[訓異]
むらさきの[寛],
いとをぞわがよる,[寛]いとをそわれよる,
あしひきの[寛],
やまたちばなを,[寛]やまたちはなを,
ぬかむとおもひて[寛],
" "#[番号]07/1341","#[題詞](寄草)","#[原文]真珠付 越能菅原 吾不苅 人之苅巻 惜菅原","#[訓読]真玉つく越智の菅原我れ刈らず人の刈らまく惜しき菅原","#[仮名],またまつく,をちのすがはら,われからず,ひとのからまく,をしきすがはら","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物","#[訓異]
またまつく[寛],
をちのすがはら,[寛]こしのすかはふ,
われからず,[寛]われからて,
ひとのからまく[寛],
をしきすがはら,[寛]をしきすかはら,
" "#[番号]07/1342","#[題詞](寄草)","#[原文]山高 夕日隠奴 淺茅原 後見多米尓 標結申尾","#[訓読]山高み夕日隠りぬ浅茅原後見むために標結はましを","#[仮名],やまたかみ,ゆふひかくりぬ,あさぢはら,のちみむために,しめゆはましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物","#[訓異]
やまたかみ[寛],
ゆふひかくりぬ,[寛]ゆふひかくれぬ,
あさぢはら,[寛]あさちはら,
のちみむために[寛],
しめゆはましを[寛],
" "#[番号]07/1343","#[題詞](寄草)","#[原文]事痛者 左右将為乎 石代之 野邊之下草 吾之苅而者 [一云 紅之 寫心哉 於妹不相将有]","#[訓読]言痛くはかもかもせむを岩代の野辺の下草我れし刈りてば [一云 紅の現し心や妹に逢はずあらむ]","#[仮名],こちたくは,かもかもせむを,いはしろの,のへのしたくさ,われしかりてば,[くれなゐの,うつしこころや,いもにあはずあらむ]","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,異伝,和歌山,うわさ,地名","#[訓異]
こちたくは,[寛]ことたくは,
かもかもせむを,[寛]かにかくせむを,
いはしろの[寛],
のへのしたくさ[寛],
われしかりてば,[寛]われしかりては,
[くれなゐの[寛],
うつしこころや[寛],
いもにあはずあらむ],[寛]いもにあはさらむ,
" "#[番号]07/1344","#[題詞](寄草)","#[原文]真鳥住 卯名手之神社之 菅根乎 衣尓書付 令服兒欲得","#[訓読]真鳥棲む雲梯の杜の菅の根を衣にかき付け着せむ子もがも","#[仮名],まとりすむ,うなてのもりの,すがのねを,きぬにかきつけ,きせむこもがも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,橿原,奈良,恋愛,地名,植物","#[訓異]
まとりすむ[寛],
うなてのもりの[寛],
すがのねを,[寛]すかのねを,
きぬにかきつけ[寛],
きせむこもがも,[寛]きせむこもかな,
" "#[番号]07/1345","#[題詞](寄草)","#[原文]常不 人國山乃 秋津野乃 垣津幡鴛 夢見鴨","#[訓読]常ならぬ人国山の秋津野のかきつはたをし夢に見しかも","#[仮名],つねならぬ,ひとくにやまの,あきづのの,かきつはたをし,いめにみしかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,和歌山,恋愛,地名,植物","#[訓異]
つねならぬ[寛],
ひとくにやまの[寛],
あきづのの,[寛]あきつのの,
かきつはたをし[寛],
いめにみしかも,[寛]ゆめにみるかも,
" "#[番号]07/1346","#[題詞](寄草)","#[原文]姫押 生澤邊之 真田葛原 何時鴨絡而 我衣将服","#[訓読]をみなへし佐紀沢の辺の真葛原いつかも繰りて我が衣に着む","#[仮名],をみなへし,さきさはのへの,まくずはら,いつかもくりて,わがきぬにきむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,奈良,恋愛,植物,地名","#[訓異]
をみなへし[寛],
さきさはのへの,[寛]おふるさはへの,
まくずはら,[寛]まくすはら,
いつかもくりて[寛],
わがきぬにきむ,[寛]わかきぬにせむ,
" "#[番号]07/1347","#[題詞](寄草)","#[原文]於君似 草登見従 我標之 野山之淺茅 人莫苅根","#[訓読]君に似る草と見しより我が標めし野山の浅茅人な刈りそね","#[仮名],きみににる,くさとみしより,わがしめし,のやまのあさぢ,ひとなかりそね","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物","#[訓異]
きみににる[寛],
くさとみしより,[寛]くさとみるより,
わがしめし,[寛]わかしめし,
のやまのあさぢ,[寛]のやまのあさち,
ひとなかりそね[寛],
" "#[番号]07/1348","#[題詞](寄草)","#[原文]三嶋江之 玉江之薦乎 従標之 己我跡曽念 雖未苅","#[訓読]三島江の玉江の薦を標めしより己がとぞ思ふいまだ刈らねど","#[仮名],みしまえの,たまえのこもを,しめしより,おのがとぞおもふ,いまだからねど","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,大阪,恋愛,植物","#[訓異]
みしまえの[寛],
たまえのこもを[寛],
しめしより[寛],
おのがとぞおもふ,[寛]おのかとそおもふ,
いまだからねど,[寛]いまたからねと,
" "#[番号]07/1349","#[題詞](寄草)","#[原文]如是為<而>也 尚哉将老 三雪零 大荒木野之 小竹尓不有九二","#[訓読]かくしてやなほや老いなむみ雪降る大荒木野の小竹にあらなくに","#[仮名],かくしてや,なほやおいなむ,みゆきふる,おほあらきのの,しのにあらなくに","#[左注]","#[校異]<> -> 而 [西(右書)][元][類][紀]","#[事項],譬喩歌,奈良,恋愛,植物,地名","#[訓異]
かくしてや[寛],
なほやおいなむ[寛],
みゆきふる[寛],
おほあらきのの[寛],
しのにあらなくに,[寛]ささにあらなくに,
" "#[番号]07/1350","#[題詞](寄草)","#[原文]淡海之哉 八橋乃小竹乎 不造<笶>而 信有得哉 戀敷鬼<呼>","#[訓読]近江のや八橋の小竹を矢はがずてまことありえむや恋しきものを","#[仮名],あふみのや,やばせのしのを,やはがずて,まことありえむや,こほしきものを","#[左注]","#[校異]矢 -> 笶 [元][類][古][紀] / 乎 -> 呼 [元][紀]","#[事項],譬喩歌,滋賀県,恋愛,地名,植物","#[訓異]
あふみのや[寛],
やばせのしのを,[寛]やはせのしのを,
やはがずて,[寛]やにはかて,
まことありえむや,[寛]まことありとや,
こほしきものを,[寛]こひしきものを,
" "#[番号]07/1351","#[題詞](寄草)","#[原文]月草尓 衣者将<揩> 朝露尓 所沾而後者 <徙>去友","#[訓読]月草に衣は摺らむ朝露に濡れての後はうつろひぬとも","#[仮名],つきくさに,ころもはすらむ,あさつゆに,ぬれてののちは,うつろひぬとも","#[左注]","#[校異]摺 -> 揩 [元] / 徒 -> 徙 [元][古][温]","#[事項],譬喩歌,恋愛,移ろい,植物","#[訓異]
つきくさに[寛],
ころもはすらむ[寛],
あさつゆに[寛],
ぬれてののちは[寛],
うつろひぬとも[寛],
" "#[番号]07/1352","#[題詞](寄草)","#[原文]吾情 湯谷絶谷 浮蓴 邊毛奥毛 依<勝>益士","#[訓読]我が心ゆたにたゆたに浮蓴辺にも沖にも寄りかつましじ","#[仮名],あがこころ,ゆたにたゆたに,うきぬなは,へにもおきにも,よりかつましじ","#[左注]","#[校異]<> -> 勝 [西(右書)][元][類][紀]","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物","#[訓異]
あがこころ,[寛]わかこころ,
ゆたにたゆたに[寛],
うきぬなは[寛],
へにもおきにも[寛],
よりかつましじ,[寛]よりかたましを,
" "#[番号]07/1353","#[題詞]寄稲","#[原文]石上 振之早田乎 雖不秀 繩谷延与 守乍将居","#[訓読]石上布留の早稲田を秀でずとも縄だに延へよ守りつつ居らむ","#[仮名],いそのかみ,ふるのわさだを,ひでずとも,なはだにはへよ,もりつつをらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,奈良,恋愛,地名,植物","#[訓異]
いそのかみ[寛],
ふるのわさだを,[寛]ふるのわさたを,
ひでずとも,[寛]ひてすとも,
なはだにはへよ,[寛]しめたにはへよ,
もりつつをらむ[寛],
" "#[番号]07/1354","#[題詞]寄木","#[原文]白菅之 真野乃榛原 心従毛 不念<吾>之 衣尓<揩>","#[訓読]白菅の真野の榛原心ゆも思はぬ我れし衣に摺りつ","#[仮名],しらすげの,まののはりはら,こころゆも,おもはぬわれし,ころもにすりつ","#[左注]","#[校異]君 -> 吾 [元][類][紀] / 摺 -> 揩 [元]","#[事項],譬喩歌,兵庫,恋愛,植物,地名","#[訓異]
しらすげの,[寛]しらすけの,
まののはりはら,[寛]まののはきはら,
こころゆも,[寛]こころにも,
おもはぬわれし,[寛]おもはぬきみか,
ころもにすりつ,[寛]ころもにそする,
" "#[番号]07/1355","#[題詞](寄木)","#[原文]真木柱 作蘇麻人 伊左佐目丹 借廬之為跡 造計米八方","#[訓読]真木柱作る杣人いささめに仮廬のためと作りけめやも","#[仮名],まきばしら,つくるそまびと,いささめに,かりいほのためと,つくりけめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
まきばしら,[寛]まきはしら,
つくるそまびと,[寛]つくるそまひと,
いささめに[寛],
かりいほのためと,[寛]かりほのためと,
つくりけめやも[寛],
" "#[番号]07/1356","#[題詞](寄木)","#[原文]向峯尓 立有桃樹 <将>成哉等 人曽耳言為 汝情勤","#[訓読]向つ峰に立てる桃の木ならむやと人ぞささやく汝が心ゆめ","#[仮名],むかつをに,たてるもものき,ならむやと,ひとぞささやく,ながこころゆめ","#[左注]","#[校異]<> -> 将 [元][類][紀] / 為 [塙本] 焉 ","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物,歌垣","#[訓異]
むかつをに[寛],
たてるもものき[寛],
ならむやと,[寛]なりぬやと,
ひとぞささやく,[寛]ひとそささめきし,
ながこころゆめ,[寛]なかこころゆめ,
" "#[番号]07/1357","#[題詞](寄木)","#[原文]足乳根乃 母之其業 桑尚 願者衣尓 著常云物乎","#[訓読]たらちねの母がそのなる桑すらに願へば衣に着るといふものを","#[仮名],たらちねの,ははがそのなる,くはすらに,ねがへばきぬに,きるといふものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,枕詞,植物","#[訓異]
たらちねの[寛],
ははがそのなる,[寛]ははのそのなる,
くはすらに,[寛]くはもなほ,
ねがへばきぬに,[寛]ねかへはきぬに,
きるといふものを[寛],
" "#[番号]07/1358","#[題詞](寄木)","#[原文]波之吉也思 吾家乃毛桃 本繁 花耳開而 不成在目八方","#[訓読]はしきやし我家の毛桃本茂く花のみ咲きてならずあらめやも","#[仮名],はしきやし,わぎへのけもも,もとしげく,はなのみさきて,ならずあらめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物","#[訓異]
はしきやし[寛],
わぎへのけもも,[寛]わかいへのけもも,
もとしげく,[寛]もとしけく,
はなのみさきて[寛],
ならずあらめやも,[寛]ならさらめやも,
" "#[番号]07/1359","#[題詞](寄木)","#[原文]向岳之 若楓木 下枝取 花待伊間尓 嘆鶴鴨","#[訓読]向つ峰の若桂の木下枝取り花待つい間に嘆きつるかも","#[仮名],むかつをの,わかかつらのき,しづえとり,はなまついまに,なげきつるかも","#[左注]","#[校異]向 [元][類][古][紀] 南","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物","#[訓異]
むかつをの[寛],
わかかつらのき,[寛]わかかつらきの,
しづえとり,[寛]しつゑとり,
はなまついまに[寛],
なげきつるかも,[寛]なけきつるかも,
" "#[番号]07/1360","#[題詞]寄花","#[原文]氣緒尓 念有吾乎 山治左能 花尓香<公>之 移奴良武","#[訓読]息の緒に思へる我れを山ぢさの花にか君がうつろひぬらむ","#[仮名],いきのをに,おもへるわれを,やまぢさの,はなにかきみが,うつろひぬらむ","#[左注]","#[校異]君 -> 公 [元][類][古][紀]","#[事項],譬喩歌,恋愛,恨み,失恋,植物","#[訓異]
いきのをに[寛],
おもへるわれを[寛],
やまぢさの,[寛]やまちさの,
はなにかきみが,[寛]はなにかきみか,
うつろひぬらむ[寛],
" "#[番号]07/1361","#[題詞](寄花)","#[原文]墨吉之 淺澤小野之 垣津幡 衣尓揩著 将衣日不知毛","#[訓読]住吉の浅沢小野のかきつはた衣に摺り付け着む日知らずも","#[仮名],すみのえの,あささはをのの,かきつはた,きぬにすりつけ,きむひしらずも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,大阪,地名,植物","#[訓異]
すみのえの[寛],
あささはをのの[寛],
かきつはた[寛],
きぬにすりつけ[寛],
きむひしらずも,[寛]きむひしらすも,
" "#[番号]07/1362","#[題詞](寄花)","#[原文]秋去者 影毛将為跡 吾蒔之 韓藍之花乎 誰採家牟","#[訓読]秋さらば移しもせむと我が蒔きし韓藍の花を誰れか摘みけむ","#[仮名],あきさらば,うつしもせむと,わがまきし,からあゐのはなを,たれかつみけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,悔しさ,植物","#[訓異]
あきさらば,[寛]あきさらは,
うつしもせむと,[寛]かけにもせむと,
わがまきし,[寛]わかまきし,
からあゐのはなを[寛],
たれかつみけむ[寛],
" "#[番号]07/1363","#[題詞](寄花)","#[原文]春日野尓 咲有芽子者 片枝者 未含有 言勿絶行年","#[訓読]春日野に咲きたる萩は片枝はいまだふふめり言な絶えそね","#[仮名],かすがのに,さきたるはぎは,かたえだは,いまだふふめり,ことなたえそね","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,奈良,地名,植物","#[訓異]
かすがのに,[寛]かすかのに,
さきたるはぎは,[寛]さきたるはきは,
かたえだは,[寛]かたえたは,
いまだふふめり,[寛]いまたふふめり,
ことなたえそね,[寛]ことなたえこそ,
" "#[番号]07/1364","#[題詞](寄花)","#[原文]欲見 戀管待之 秋芽子者 花耳開而 不成可毛将有","#[訓読]見まく欲り恋ひつつ待ちし秋萩は花のみ咲きてならずかもあらむ","#[仮名],みまくほり,こひつつまちし,あきはぎは,はなのみさきて,ならずかもあらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物","#[訓異]
みまくほり[寛],
こひつつまちし[寛],
あきはぎは,[寛]あきはきは,
はなのみさきて[寛],
ならずかもあらむ,[寛]ならすかもあらむ,
" "#[番号]07/1365","#[題詞](寄花)","#[原文]吾妹子之 屋前之秋芽子 自花者 實成而許曽 戀益家礼","#[訓読]我妹子がやどの秋萩花よりは実になりてこそ恋ひまさりけれ","#[仮名],わぎもこが,やどのあきはぎ,はなよりは,みになりてこそ,こひまさりけれ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
やどのあきはぎ,[寛]やとのあきはき,
はなよりは[寛],
みになりてこそ[寛],
こひまさりけれ[寛],
" "#[番号]07/1366","#[題詞]寄鳥","#[原文]明日香川 七瀬之不行尓 住鳥毛 意有社 波不立目","#[訓読]明日香川七瀬の淀に住む鳥も心あれこそ波立てざらめ","#[仮名],あすかがは,ななせのよどに,すむとりも,こころあれこそ,なみたてざらめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,うわさ,飛鳥,地名,動物","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
ななせのよどに,[寛]ななせのよとに,
すむとりも[寛],
こころあれこそ,[寛]こころあれはこそ,
なみたてざらめ,[寛]なみたたさらめ,
" "#[番号]07/1367","#[題詞]寄獸","#[原文]三國山 木末尓住歴 武佐左妣乃 此待鳥如 吾<俟>将痩","#[訓読]三国山木末に住まふむささびの鳥待つごとく我れ待ち痩せむ","#[仮名],みくにやま,こぬれにすまふ,むささびの,とりまつごとく,われまちやせむ","#[左注]","#[校異]侯 -> 俟 [西(貼紙)][元][類][紀]","#[事項],譬喩歌,恋愛,地名,動物","#[訓異]
みくにやま[寛],
こぬれにすまふ,[寛]こすゑにすまふ,
むささびの,[寛]むささひの,
とりまつごとく,[寛]とりまつかこと,
われまちやせむ,[寛]わかまちやせし,
" "#[番号]07/1368","#[題詞]寄雲","#[原文]石倉之 小野従秋津尓 發渡 雲西裳在哉 時乎思将待","#[訓読]岩倉の小野ゆ秋津に立ちわたる雲にしもあれや時をし待たむ","#[仮名],いはくらの,をのゆあきづに,たちわたる,くもにしもあれや,ときをしまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,和歌山県,田辺市,地名","#[訓異]
いはくらの[寛],
をのゆあきづに,[寛]をのよりあきつに,
たちわたる[寛],
くもにしもあれや[寛],
ときをしまたむ[寛],
" "#[番号]07/1369","#[題詞]寄雷","#[原文]天雲 近光而 響神之 見者恐 不見者悲毛","#[訓読]天雲に近く光りて鳴る神の見れば畏し見ねば悲しも","#[仮名],あまくもに,ちかくひかりて,なるかみの,みればかしこし,みねばかなしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,序詞","#[訓異]
あまくもに[寛],
ちかくひかりて[寛],
なるかみの[寛],
みればかしこし,[寛]みれはかしこし,
みねばかなしも,[寛]みねはかなしも,
" "#[番号]07/1370","#[題詞]寄雨","#[原文]甚多毛 不零雨故 庭立水 太莫逝 人之應知","#[訓読]はなはだも降らぬ雨故にはたづみいたくな行きそ人の知るべく","#[仮名],はなはだも,ふらぬあめゆゑ,にはたづみ,いたくなゆきそ,ひとのしるべく","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,うわさ","#[訓異]
はなはだも,[寛]はなはたも,
ふらぬあめゆゑ[寛],
にはたづみ,[寛]にはたつみ,
いたくなゆきそ[寛],
ひとのしるべく,[寛]ひとのしるへく,
" "#[番号]07/1371","#[題詞](寄雨)","#[原文]久堅之 雨尓波不著乎 恠毛 吾袖者 干時無香","#[訓読]ひさかたの雨には着ぬをあやしくも我が衣手は干る時なきか","#[仮名],ひさかたの,あめにはきぬを,あやしくも,わがころもでは,ふるときなきか","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,枕詞","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あめにはきぬを[寛],
あやしくも[寛],
わがころもでは,[寛]わかころもては,
ふるときなきか,[寛]ひるときなきか,
" "#[番号]07/1372","#[題詞]寄月","#[原文]三空徃 月讀<壮>士 夕不去 目庭雖見 因縁毛無","#[訓読]み空行く月読壮士夕さらず目には見れども寄るよしもなし","#[仮名],みそらゆく,つくよみをとこ,ゆふさらず,めにはみれども,よるよしもなし","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [元][類][紀]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
みそらゆく[寛],
つくよみをとこ[寛],
ゆふさらず,[寛]ゆふさらす,
めにはみれども,[寛]めにはみれとも,
よるよしもなし[寛],
" "#[番号]07/1373","#[題詞](寄月)","#[原文]春日山 々高有良之 石上 菅根将見尓 月待難","#[訓読]春日山山高くあらし岩の上の菅の根見むに月待ちかたし","#[仮名],かすがやま,やまたかくあらし,いはのうへの,すがのねみむに,つきまちかたし","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,奈良,地名,植物","#[訓異]
かすがやま,[寛]かすかやま,
やまたかくあらし,[寛]やまたかからし,
いはのうへの[寛],
すがのねみむに,[寛]すかのねみむに,
つきまちかたし,[寛]つきまちかねぬ,
" "#[番号]07/1374","#[題詞](寄月)","#[原文]闇夜者 辛苦物乎 何時跡 吾待月毛 早毛照奴賀","#[訓読]闇の夜は苦しきものをいつしかと我が待つ月も早も照らぬか","#[仮名],やみのよは,くるしきものを,いつしかと,わがまつつきも,はやもてらぬか","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
やみのよは[寛],
くるしきものを[寛],
いつしかと[寛],
わがまつつきも,[寛]わかまつつきも,
はやもてらぬか[寛],
" "#[番号]07/1375","#[題詞](寄月)","#[原文]朝霜之 消安命 為誰 千歳毛欲得跡 吾念莫國","#[訓読]朝霜の消やすき命誰がために千年もがもと我が思はなくに","#[仮名],あさしもの,けやすきいのち,たがために,ちとせもがもと,わがおもはなくに","#[左注]右一首者不有譬喩歌類也 但闇夜歌人所心之故並作此歌 因以此歌載於此次","#[校異]譬喩歌 [西] 譬喩謌 [西(訂正)] 譬喩歌 / 作此歌 [西] 作此謌 [西(訂正)] 作此歌","#[事項],譬喩歌,恋愛,枕詞","#[訓異]
あさしもの[寛],
けやすきいのち[寛],
たがために,[寛]たかために,
ちとせもがもと,[寛]ちとせもかなと,
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]07/1376","#[題詞]寄赤土","#[原文]山跡之 宇陀乃真赤土 左丹著者 曽許裳香人之 吾乎言将成","#[訓読]大和の宇陀の真埴のさ丹付かばそこもか人の我を言なさむ","#[仮名],やまとの,うだのまはにの,さにつかば,そこもかひとの,わをことなさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,奈良,恋愛,うわさ,地名","#[訓異]
やまとの[寛],
うだのまはにの,[寛]うたのまはにの,
さにつかば,[寛]さにつか,
そこもかひとの,[寛]そこものかひとの,
わをことなさむ,[寛]われをことなさむ,
" "#[番号]07/1377","#[題詞]寄神","#[原文]木綿懸而 祭三諸乃 神佐備而 齋尓波不在 人目多見許<曽>","#[訓読]木綿懸けて祭る三諸の神さびて斎むにはあらず人目多みこそ","#[仮名],ゆふかけて,まつるみもろの,かむさびて,いむにはあらず,ひとめおほみこそ","#[左注]","#[校異]増 -> 曽 [元][類][矢][京]","#[事項],譬喩歌,恋愛,うわさ,三輪,奈良,地名","#[訓異]
ゆふかけて[寛],
まつるみもろの,[寛]まつるみむろの,
かむさびて,[寛]かみさひて,
いむにはあらず,[寛]いむにはあらす,
ひとめおほみこそ[寛],
" "#[番号]07/1378","#[題詞](寄神)","#[原文]木綿懸而 齋此神社 可超 所念可毛 戀之繁尓","#[訓読]木綿懸けて斎ふこの社越えぬべく思ほゆるかも恋の繁きに","#[仮名],ゆふかけて,いはふこのもり,こえぬべく,おもほゆるかも,こひのしげきに","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,三輪,奈良,地名","#[訓異]
ゆふかけて[寛],
いはふこのもり,[寛]いみしやしろも,
こえぬべく,[寛]こえぬへく,
おもほゆるかも[寛],
こひのしげきに,[寛]こひのしけきに,
" "#[番号]07/1379","#[題詞]寄河","#[原文]不絶逝 明日香川之 不逝有者 故霜有如 人之見國","#[訓読]絶えず行く明日香の川の淀めらば故しもあるごと人の見まくに","#[仮名],たえずゆく,あすかのかはの,よどめらば,ゆゑしもあるごと,ひとのみまくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,飛鳥,恋情,停滞,うわさ,地名","#[訓異]
たえずゆく,[寛]たえすゆく,
あすかのかはの[寛],
よどめらば,[寛]よとめらは,
ゆゑしもあるごと,[寛]ゆへしもあると,
ひとのみまくに,[寛]ひとのみらくに,
" "#[番号]07/1380","#[題詞](寄河)","#[原文]明日香川 湍瀬尓玉藻者 雖生有 四賀良美有者 靡不相","#[訓読]明日香川瀬々に玉藻は生ひたれどしがらみあれば靡きあはなくに","#[仮名],あすかがは,せぜにたまもは,おひたれど,しがらみあれば,なびきあはなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,飛鳥,恋情,恨み,地名","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
せぜにたまもは,[寛]せせにたまもは,
おひたれど,[寛]おひたれと,
しがらみあれば,[寛]しからみあれは,
なびきあはなくに,[寛]なひきもあはす,
" "#[番号]07/1381","#[題詞](寄河)","#[原文]廣瀬<河> 袖衝許 淺乎也 心深目手 吾念有良武","#[訓読]広瀬川袖漬くばかり浅きをや心深めて我が思へるらむ","#[仮名],ひろせがは,そでつくばかり,あさきをや,こころふかめて,わがおもへるらむ","#[左注]","#[校異]川 -> 河 [元][類][古][紀]","#[事項],譬喩歌,奈良,恋情,地名","#[訓異]
ひろせがは,[寛]ひろせかは,
そでつくばかり,[寛]そてつくはかり,
あさきをや[寛],
こころふかめて[寛],
わがおもへるらむ,[寛]わかおもへらむ,
" "#[番号]07/1382","#[題詞](寄河)","#[原文]泊瀬川 流水沫之 絶者許曽 吾念心 不遂登思齒目","#[訓読]泊瀬川流るる水沫の絶えばこそ我が思ふ心遂げじと思はめ","#[仮名],はつせがは,ながるるみなわの,たえばこそ,あがおもふこころ,とげじとおもはめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,奈良,恋情,地名","#[訓異]
はつせがは,[寛]はつせかは,
ながるるみなわの,[寛]なかるみなわの,
たえばこそ,[寛]たえはこそ,
あがおもふこころ,[寛]わかおもふこころ,
とげじとおもはめ,[寛]とけすとおもはめ,
" "#[番号]07/1383","#[題詞](寄河)","#[原文]名毛伎世婆 人可知見 山川之 瀧情乎 塞敢<而>有鴨","#[訓読]嘆きせば人知りぬべみ山川のたぎつ心を塞かへてあるかも","#[仮名],なげきせば,ひとしりぬべみ,やまがはの,たぎつこころを,せかへてあるかも","#[左注]","#[校異]与 -> 而 [西(訂正)][元][類][紀]","#[事項],譬喩歌,恋情,うわさ","#[訓異]
なげきせば,[寛]なけきせは,
ひとしりぬべみ,[寛]ひとしりぬへみ,
やまがはの,[寛]やまかはの,
たぎつこころを,[寛]たきつこころを,
せかへてあるかも,[寛]せかへたるかも,
" "#[番号]07/1384","#[題詞](寄河)","#[原文]水隠尓 氣衝餘 早川之 瀬者立友 人二将言八方","#[訓読]水隠りに息づきあまり早川の瀬には立つとも人に言はめやも","#[仮名],みごもりに,いきづきあまり,はやかはの,せにはたつとも,ひとにいはめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋情","#[訓異]
みごもりに,[寛]みこもりに,
いきづきあまり,[寛]いきつきあまり,
はやかはの[寛],
せにはたつとも[寛],
ひとにいはめやも[寛],
" "#[番号]07/1385","#[題詞]寄埋木","#[原文]真そ持 弓削河原之 埋木之 不可顕 事<尓>不有君","#[訓読]真鉋持ち弓削の川原の埋れ木のあらはるましじきことにあらなくに","#[仮名],まかなもち,ゆげのかはらの,うもれぎの,あらはるましじき,ことにあらなくに","#[左注]","#[校異]等 -> 尓 [元][類][古][紀]","#[事項],譬喩歌,大阪,恋情,人目,地名","#[訓異]
まかなもち,[寛]まかなもて,
ゆげのかはらの,[寛]ゆけのかはらの,
うもれぎの,[寛]むもれきの,
あらはるましじき,[寛]あらはるましき,
ことにあらなくに[寛],
" "#[番号]07/1386","#[題詞]寄海","#[原文]大船尓 真梶繁貫 水手出去之 奥<者>将深 潮者干去友","#[訓読]大船に真楫しじ貫き漕ぎ出なば沖は深けむ潮は干ぬとも","#[仮名],おほぶねに,まかぢしじぬき,こぎでなば,おきはふかけむ,しほはひぬとも","#[左注]","#[校異]<> -> 者 [元][類][古][紀]","#[事項],譬喩歌,恋情","#[訓異]
おほぶねに,[寛]おほふねに,
まかぢしじぬき,[寛]まかちししぬき,
こぎでなば,[寛]こきいてにし,
おきはふかけむ,[寛]おきはふかなむ,
しほはひぬとも[寛],
" "#[番号]07/1387","#[題詞](寄海)","#[原文]伏超従 去益物乎 間守尓 所打沾 浪不數為而","#[訓読]伏越ゆ行かましものをまもらふにうち濡らさえぬ波数まずして","#[仮名],ふしこえゆ,ゆかましものを,まもらふに,うちぬらさえぬ,なみよまずして","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋情","#[訓異]
ふしこえゆ,[寛]ふしこえに,
ゆかましものを,[寛]えかましものを,
まもらふに,[寛]ひまもりに,
うちぬらさえぬ,[寛]うちぬらされぬ,
なみよまずして,[寛]なみかそへすて
" "#[番号]07/1388","#[題詞](寄海)","#[原文]石灑 岸之浦廻尓 縁浪 邊尓来依者香 言之将繁","#[訓読]石そそき岸の浦廻に寄する波辺に来寄らばか言の繁けむ","#[仮名],いはそそき,きしのうらみに,よするなみ,へにきよらばか,ことのしげけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋情,うわさ","#[訓異]
いはそそき,[寛]いはそそく,
きしのうらみに,[寛]きしのうらわに,
よするなみ[寛],
へにきよらばか,[寛]へにきよれはか,
ことのしげけむ,[寛]ことのしけけむ,
" "#[番号]07/1389","#[題詞](寄海)","#[原文]礒之浦尓 来依白浪 反乍 過不勝者 <誰>尓絶多倍","#[訓読]礒の浦に来寄る白波返りつつ過ぎかてなくは誰れにたゆたへ","#[仮名],いそのうらに,きよるしらなみ,かへりつつ,すぎかてなくは,たれにたゆたへ","#[左注]","#[校異]雉 -> 誰 [元][類][古][紀]","#[事項],譬喩歌,恋情","#[訓異]
いそのうらに[寛],
きよるしらなみ[寛],
かへりつつ[寛],
すぎかてなくは,[寛]すきかてぬれは,
たれにたゆたへ,[寛]きしにたゆたへ,
" "#[番号]07/1390","#[題詞](寄海)","#[原文]淡海之海 浪恐登 風守 年者也将經去 榜者無二","#[訓読]近江の海波畏みと風まもり年はや経なむ漕ぐとはなしに","#[仮名],あふみのうみ,なみかしこみと,かぜまもり,としはやへなむ,こぐとはなしに","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,滋賀,恋情,琵琶湖,地名","#[訓異]
あふみのうみ[寛],
なみかしこみと,[寛]なみをそろしと,
かぜまもり,[寛]かせまもり,
としはやへなむ[寛],
こぐとはなしに,[寛]こくとはなしに,
" "#[番号]07/1391","#[題詞](寄海)","#[原文]朝奈藝尓 来依白浪 欲見 吾雖為 風許増不令依","#[訓読]朝なぎに来寄る白波見まく欲り我れはすれども風こそ寄せね","#[仮名],あさなぎに,きよるしらなみ,みまくほり,われはすれども,かぜこそよせね","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋情","#[訓異]
あさなぎに,[寛]あさなきに,
きよるしらなみ[寛],
みまくほり[寛],
われはすれども,[寛]われはすれとも,
かぜこそよせね,[寛]かせこそよせね,
" "#[番号]07/1392","#[題詞]寄浦沙","#[原文]紫之 名高浦之 愛子地 袖耳觸而 不寐香将成","#[訓読]紫の名高の浦の真砂土袖のみ触れて寝ずかなりなむ","#[仮名],むらさきの,なたかのうらの,まなごつち,そでのみふれて,ねずかなりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,和歌山,恋情,地名","#[訓異]
むらさきの[寛],
なたかのうらの[寛],
まなごつち,[寛]まなこちに,
そでのみふれて,[寛]そてのみふれて,
ねずかなりなむ,[寛]ねすかなりなむ,
" "#[番号]07/1393","#[題詞](寄浦沙)","#[原文]豊國之 <聞>之濱邊之 愛子地 真直之有者 何如将嘆","#[訓読]豊国の企救の浜辺の真砂土真直にしあらば何か嘆かむ","#[仮名],とよくにの,きくのはまへの,まなごつち,まなほにしあらば,なにかなげかむ","#[左注]","#[校異]間 -> 聞 [西(頭書)]","#[事項],譬喩歌,福岡県,恋愛,恨み,地名","#[訓異]
とよくにの[寛],
きくのはまへの,[寛]ままのはまへの,
まなごつち,[寛]まなこちの,
まなほにしあらば,[寛]まなをにしあらは,
なにかなげかむ,[寛]なにかなけかむ,
" "#[番号]07/1394","#[題詞]寄藻","#[原文]塩満者 入流礒之 草有哉 見良久少 戀良久乃太寸","#[訓読]潮満てば入りぬる礒の草なれや見らく少く恋ふらくの多き","#[仮名],しほみてば,いりぬるいその,くさなれや,みらくすくなく,こふらくのおほき","#[左注]","#[校異]太 [類][紀] 大","#[事項],譬喩歌,恋愛","#[訓異]
しほみてば,[寛]しほみては,
いりぬるいその[寛],
くさなれや[寛],
みらくすくなく[寛],
こふらくのおほき[寛],
" "#[番号]07/1395","#[題詞](寄藻)","#[原文]奥浪 依流荒礒之 名告藻者 心中尓 疾跡成有","#[訓読]沖つ波寄する荒礒のなのりそは心のうちに障みとなれり","#[仮名],おきつなみ,よするありその,なのりそは,こころのうちに,つつみとなれり","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋愛,植物","#[訓異]
おきつなみ[寛],
よするありその,[寛]よするあらいその,
なのりそは[寛],
こころのうちに[寛],
つつみとなれり,[寛]とくとなりけり,
" "#[番号]07/1396","#[題詞](寄藻)","#[原文]紫之 名高浦乃 名告藻之 於礒将靡 時待吾乎","#[訓読]紫の名高の浦のなのりその礒に靡かむ時待つ我れを","#[仮名],むらさきの,なたかのうらの,なのりその,いそになびかむ,ときまつわれを","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,和歌山,恋愛,地名,植物","#[訓異]
むらさきの[寛],
なたかのうらの[寛],
なのりその[寛],
いそになびかむ,[寛]いそになひかむ,
ときまつわれを[寛],
" "#[番号]07/1397","#[題詞](寄藻)","#[原文]荒礒超 浪者恐 然為蟹 海之玉藻之 憎者不有手","#[訓読]荒礒越す波は畏ししかすがに海の玉藻の憎くはあらずて","#[仮名],ありそこす,なみはかしこし,しかすがに,うみのたまもの,にくくはあらずて","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋情,植物","#[訓異]
ありそこす,[寛]あらいそこす,
なみはかしこし,[寛]なみはおそろし,
しかすがに,[寛]しかすかに,
うみのたまもの[寛],
にくくはあらずて,[寛]にくくはあらすて,
" "#[番号]07/1398","#[題詞]寄船","#[原文]神樂聲浪乃 四賀津之浦能 船乗尓 乗西意 常不所忘","#[訓読]楽浪の志賀津の浦の舟乗りに乗りにし心常忘らえず","#[仮名],ささなみの,しがつのうらの,ふなのりに,のりにしこころ,つねわすらえず","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,滋賀,琵琶湖,恋情,地名,序詞","#[訓異]
ささなみの,[寛]ささらなみの,
しがつのうらの,[寛]しかつのうらの,
ふなのりに[寛],
のりにしこころ[寛],
つねわすらえず,[寛]つねわすられす,
" "#[番号]07/1399","#[題詞](寄船)","#[原文]百傳 八十之嶋廻乎 榜船尓 乗<尓志>情 忘不得裳","#[訓読]百伝ふ八十の島廻を漕ぐ舟に乗りにし心忘れかねつも","#[仮名],ももづたふ,やそのしまみを,こぐふねに,のりにしこころ,わすれかねつも","#[左注]","#[校異]西 -> 尓志 [元][類][紀]","#[事項],譬喩歌,恋情,枕詞,序詞","#[訓異]
ももづたふ,[寛]ももつたふ,
やそのしまみを,[寛]やそのしまわを,
こぐふねに,[寛]こくふねに,
のりにしこころ[寛],
わすれかねつも[寛],
" "#[番号]07/1400","#[題詞](寄船)","#[原文]嶋傳 足速乃小舟 風守 年者也經南 相常齒無二","#[訓読]島伝ふ足早の小舟風まもり年はや経なむ逢ふとはなしに","#[仮名],しまづたふ,あばやのをぶね,かぜまもり,としはやへなむ,あふとはなしに","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋情","#[訓異]
しまづたふ,[寛]しまつたふ,
あばやのをぶね,[寛]あしはやのをふね,
かぜまもり,[寛]かせまもり,
としはやへなむ[寛],
あふとはなしに[寛],
" "#[番号]07/1401","#[題詞](寄船)","#[原文]水霧相 奥津小嶋尓 風乎疾見 船縁金都 心者念杼","#[訓読]水霧らふ沖つ小島に風をいたみ舟寄せかねつ心は思へど","#[仮名],みなぎらふ,おきつこしまに,かぜをいたみ,ふねよせかねつ,こころはおもへど","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋情,枕詞","#[訓異]
みなぎらふ,[寛]みなきりあひ,
おきつこしまに,[寛]おきつをしまに,
かぜをいたみ,[寛]かせをいたみ,
ふねよせかねつ[寛],
こころはおもへど,[寛]こころはおもへと,
" "#[番号]07/1402","#[題詞](寄船)","#[原文]殊放者 奥従酒甞 湊自 邊著經時尓 可放鬼香","#[訓読]こと放けば沖ゆ放けなむ港より辺著かふ時に放くべきものか","#[仮名],ことさけば,おきゆさけなむ,みなとより,へつかふときに,さくべきものか","#[左注]","#[校異]","#[事項],譬喩歌,恋情","#[訓異]
ことさけば,[寛]ことさらは,
おきゆさけなむ,[寛]おきにさけなめ,
みなとより[寛],
へつかふときに[寛],
さくべきものか,[寛]さくへきものか,
" "#[番号]07/1403","#[題詞]旋頭歌","#[原文]三幣帛取 神之祝我 鎮齋杉原 燎木伐 殆之國 手斧所取奴","#[訓読]御幣取り三輪の祝が斎ふ杉原薪伐りほとほとしくに手斧取らえぬ","#[仮名],みぬさとり,みわのはふりが,いはふすぎはら,たきぎこり,ほとほとしくに,てをのとらえぬ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],譬喩歌,旋頭歌,三輪,奈良,恋情,戯笑,地名","#[訓異]
みぬさとり,[寛]みぬさとる,
みわのはふりが,[寛]みわのはふりか,
いはふすぎはら,[寛]いはふすきはら,
たきぎこり,[寛]たききこり,
ほとほとしくに[寛],
てをのとらえぬ,[寛]てをのはとられぬ,
" "#[番号]07/1404","#[題詞]挽歌","#[原文]鏡成 吾見之君乎 阿婆乃野之 花橘之 珠尓拾都","#[訓読]鏡なす我が見し君を阿婆の野の花橘の玉に拾ひつ","#[仮名],かがみなす,わがみしきみを,あばののの,はなたちばなの,たまにひりひつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,奈良,地名,植物","#[訓異]
かがみなす,[寛]かかみなる,
わがみしきみを,[寛]わかみしきみを,
あばののの,[寛]あはののの,
はなたちばなの,[寛]はなたちはなの,
たまにひりひつ,[寛]たまにひろひつ,
" "#[番号]07/1405","#[題詞]","#[原文]蜻野S 人之懸者 朝蒔 君之所思而 嗟齒不病","#[訓読]秋津野を人の懸くれば朝撒きし君が思ほえて嘆きはやまず","#[仮名],あきづのを,ひとのかくれば,あさまきし,きみがおもほえて,なげきはやまず","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,吉野,地名","#[訓異]
あきづのを,[寛]あきつのを,
ひとのかくれば,[寛]ひとのかかれは,
あさまきし,[寛]まゐてまく,
きみがおもほえて,[寛]きみかおもほへて,
なげきはやまず,[寛]なけきはやます,
" "#[番号]07/1406","#[題詞]","#[原文]秋津野尓 朝居雲之 失去者 前裳今裳 無人所念","#[訓読]秋津野に朝居る雲の失せゆけば昨日も今日もなき人思ほゆ","#[仮名],あきづのに,あさゐるくもの,うせゆけば,きのふもけふも,なきひとおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,吉野,地名","#[訓異]
あきづのに,[寛]あきつのに,
あさゐるくもの[寛],
うせゆけば,[寛]うせゆけは,
きのふもけふも,[寛]むかしもいまも,
なきひとおもほゆ[寛],
" "#[番号]07/1407","#[題詞]","#[原文]隠口乃 泊瀬山尓 霞立 棚引雲者 妹尓鴨在武","#[訓読]隠口の泊瀬の山に霞立ちたなびく雲は妹にかもあらむ","#[仮名],こもりくの,はつせのやまに,かすみたち,たなびくくもは,いもにかもあらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,奈良,初瀬,地名","#[訓異]
こもりくの[寛],
はつせのやまに[寛],
かすみたち[寛],
たなびくくもは,[寛]たなひくくもは,
いもにかもあらむ[寛],
" "#[番号]07/1408","#[題詞]","#[原文]狂語香 逆言哉 隠口乃 泊瀬山尓 廬為云","#[訓読]たはことかおよづれことかこもりくの泊瀬の山に廬りせりといふ","#[仮名],たはことか,およづれことか,こもりくの,はつせのやまに,いほりせりといふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,初瀬,地名","#[訓異]
たはことか,[寛]まかことか,
およづれことか,[寛]さかさまことか,
こもりくの[寛],
はつせのやまに[寛],
いほりせりといふ,[寛]いほりすといふ,
" "#[番号]07/1409","#[題詞]","#[原文]秋山 黄葉A怜 浦觸而 入西妹者 待不来","#[訓読]秋山の黄葉あはれとうらぶれて入りにし妹は待てど来まさず","#[仮名],あきやまの,もみちあはれと,うらぶれて,いりにしいもは,まてどきまさず","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,亡妻歌,植物","#[訓異]
あきやまの,[寛]あきやまに,
もみちあはれと[寛],
うらぶれて,[寛]うらふれて,
いりにしいもは[寛],
まてどきまさず,[寛]まてときまさぬ,
" "#[番号]07/1410","#[題詞]","#[原文]世間者 信二代者 不徃有之 過妹尓 不相念者","#[訓読]世間はまこと二代はゆかざらし過ぎにし妹に逢はなく思へば","#[仮名],よのなかは,まことふたよは,ゆかざらし,すぎにしいもに,あはなくおもへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,亡妻歌","#[訓異]
よのなかは[寛],
まことふたよは,[寛]ことふたよはは,
ゆかざらし,[寛]ゆかさらし,
すぎにしいもに,[寛]すきにしいもに,
あはなくおもへば,[寛]あはぬおもへは,
" "#[番号]07/1411","#[題詞]","#[原文]福 何有人香 黒髪之 白成左右 妹之音乎聞","#[訓読]幸はひのいかなる人か黒髪の白くなるまで妹が声を聞く","#[仮名],さきはひの,いかなるひとか,くろかみの,しろくなるまで,いもがこゑをきく","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,亡妻歌","#[訓異]
さきはひの,[寛]さいわいの,
いかなるひとか[寛],
くろかみの[寛],
しろくなるまで,[寛]しろくなるまて,
いもがこゑをきく,[寛]いもかおとをきく,
" "#[番号]07/1412","#[題詞]","#[原文]吾背子乎 何處行目跡 辟竹之 背向尓宿之久 今思悔裳","#[訓読]我が背子をいづち行かめとさき竹のそがひに寝しく今し悔しも","#[仮名],わがせこを,いづちゆかめと,さきたけの,そがひにねしく,いましくやしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,後悔,枕詞","#[訓異]
わがせこを,[寛]わかせこを,
いづちゆかめと,[寛]いつちゆかめと,
さきたけの[寛],
そがひにねしく,[寛]そかひにねしく,
いましくやしも[寛],
" "#[番号]07/1413","#[題詞]","#[原文]庭津鳥 <可>鷄乃垂尾乃 乱尾乃 長心毛 不所念鴨","#[訓読]庭つ鳥鶏の垂り尾の乱れ尾の長き心も思ほえぬかも","#[仮名],にはつとり,かけのたりをの,みだれをの,ながきこころも,おもほえぬかも","#[左注]","#[校異]下 -> 可 [類][紀][温]","#[事項],挽歌,枕詞,動物,枕詞","#[訓異]
にはつとり[寛],
かけのたりをの[寛],
みだれをの,[寛]したりをの,
ながきこころも,[寛]なかきここrも,
おもほえぬかも[寛],
" "#[番号]07/1414","#[題詞]","#[原文]薦枕 相巻之兒毛 在者社 夜乃深良久毛 吾惜責","#[訓読]薦枕相枕きし子もあらばこそ夜の更くらくも我が惜しみせめ","#[仮名],こもまくら,あひまきしこも,あらばこそ,よのふくらくも,わがをしみせめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],挽歌,枕詞","#[訓異]
こもまくら[寛],
あひまきしこも[寛],
あらばこそ,[寛]あらはこそ,
よのふくらくも[寛],
わがをしみせめ,[寛]われをしみせめ,
" "#[番号]07/1415","#[題詞]","#[原文]玉梓能 妹者珠氈 足氷木乃 清山邊 蒔散<と>","#[訓読]玉梓の妹は玉かもあしひきの清き山辺に撒けば散りぬる","#[仮名],たまづさの,いもはたまかも,あしひきの,きよきやまへに,まけばちりぬる","#[左注]","#[校異]染 -> と [古]","#[事項],挽歌,亡妻歌,枕詞,葬儀","#[訓異]
たまづさの,[寛]たまつさの,
いもはたまかも[寛],
あしひきの[寛],
きよきやまへに[寛],
まけばちりぬる,[寛]まけはちりぬる,
" "#[番号]07/1416","#[題詞]或本歌曰","#[原文]玉梓之 妹者花可毛 足日木乃 此山影尓 麻氣者失留","#[訓読]玉梓の妹は花かもあしひきのこの山蔭に撒けば失せぬる","#[仮名],たまづさの,いもははなかも,あしひきの,このやまかげに,まけばうせぬる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],挽歌,亡妻歌,枕詞,葬儀","#[訓異]
たまづさの,[寛]たまつさの,
いもははなかも[寛],
あしひきの[寛],
このやまかげに,[寛]このやまかけに,
まけばうせぬる,[寛]まけはちりぬる,
" "#[番号]07/1417","#[題詞]羈旅歌","#[原文]名兒乃海乎 朝榜来者 海中尓 鹿子曽鳴成 A怜其水手","#[訓読]名児の海を朝漕ぎ来れば海中に鹿子ぞ鳴くなるあはれその鹿子","#[仮名],なこのうみを,あさこぎくれば,わたなかに,かこぞなくなる,あはれそのかこ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,大阪,地名,動物","#[訓異]
なこのうみを[寛],
あさこぎくれば,[寛]あさこきくれは,
わたなかに,[寛]うみなかに,
かこぞなくなる,[寛]かこそなくなる,
あはれそのかこ[寛],
" "#[番号]08/1418","#[題詞]春雜歌 / 志貴皇子懽御歌一首","#[原文]石激 垂見之上乃 左和良妣乃 毛要出春尓 成来鴨","#[訓読]石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも","#[仮名],いはばしる,たるみのうへの,さわらびの,もえいづるはるに,なりにけるかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 激 [類] 灑","#[事項],春雑歌,作者:志貴皇子,喜び,植物","#[訓異]
いはばしる,[寛]いはそそく,
たるみのうへの[寛],
さわらびの,[寛]さわらひの,
もえいづるはるに,[寛]もえいつるはるに,
なりにけるかも[寛],
" "#[番号]08/1419","#[題詞]鏡王女歌一首","#[原文]神奈備乃 伊波瀬乃社之 喚子鳥 痛莫鳴 吾戀益","#[訓読]神なびの石瀬の社の呼子鳥いたくな鳴きそ我が恋まさる","#[仮名],かむなびの,いはせのもりの,よぶこどり,いたくななきそ,あがこひまさる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:鏡王女,恋情,慕情,奈良,斑鳩町,地名,動物,枕詞","#[訓異]
かむなびの,[寛]かみなひの,
いはせのもりの[寛],
よぶこどり,[寛]よふことり,
いたくななきそ[寛],
あがこひまさる,[寛]わかこひまさる,
" "#[番号]08/1420","#[題詞]駿河釆女歌一首","#[原文]沫雪香 薄太礼尓零登 見左右二 流倍散波 何物之花其毛","#[訓読]沫雪かはだれに降ると見るまでに流らへ散るは何の花ぞも","#[仮名],あわゆきか,はだれにふると,みるまでに,ながらへちるは,なにのはなぞも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:駿河釆女,雪","#[訓異]
あわゆきか[寛],
はだれにふると,[寛]はたれにふると,
みるまでに,[寛]みるまてに,
ながらへちるは,[寛]なからへちるは,
なにのはなぞも,[寛]なにのはなそも,
" "#[番号]08/1421","#[題詞]尾張連歌二首 [名闕]","#[原文],春山之 開乃乎為<里>尓 春菜採 妹之白紐 見九四与四門","#[訓読]春山の咲きのををりに春菜摘む妹が白紐見らくしよしも","#[仮名],はるやまの,さきのををりに,はるなつむ,いもがしらひも,みらくしよしも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 黒 -> 里 [万葉考]","#[事項],春雑歌,作者:尾張連,野遊び,菜摘み,恋情,妻問い","#[訓異]
はるやまの[寛],
さきのををりに,[寛]さくのをすくるに,
はるなつむ,[寛]わかなつむ,
いもがしらひも,[寛]いもかしらひも,
みらくしよしも[寛],
" "#[番号]08/1422","#[題詞](尾張連歌二首 [名闕])","#[原文]打<靡> 春来良之 山際 遠木末乃 開徃見者","#[訓読]うち靡く春来るらし山の際の遠き木末の咲きゆく見れば","#[仮名],うちなびく,はるきたるらし,やまのまの,とほきこぬれの,さきゆくみれば","#[左注]","#[校異]麾 -> 靡 [類][紀][細]","#[事項],春雑歌,作者:尾張連,花,山遊び,野遊び,叙景","#[訓異]
うちなびく,[寛]うちなひき,
はるきたるらし,[寛]はるはきぬらし,
やまのまの,[寛]やまのはの,
とほきこぬれの,[寛]とほきこすゑの,
さきゆくみれば,[寛]さきゆくみれは,
" "#[番号]08/1423","#[題詞]中納言阿倍廣庭卿歌一首","#[原文]去年春 伊許自而殖之 吾屋外之 若樹梅者 花咲尓家里","#[訓読]去年の春いこじて植ゑし我がやどの若木の梅は花咲きにけり","#[仮名],こぞのはる,いこじてうゑし,わがやどの,わかきのうめは,はなさきにけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:阿倍広庭,植物","#[訓異]
こぞのはる,[寛]こそのはる,
いこじてうゑし,[寛]いこしてうゑし,
わがやどの,[寛]わかやとの,
わかきのうめは[寛],
はなさきにけり[寛],
" "#[番号]08/1424","#[題詞]山部宿祢赤人歌四首","#[原文]春野尓 須美礼採尓等 来師吾曽 野乎奈都可之美 一夜宿二来","#[訓読]春の野にすみれ摘みにと来し我れぞ野をなつかしみ一夜寝にける","#[仮名],はるののに,すみれつみにと,こしわれぞ,のをなつかしみ,ひとよねにける","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:山部赤人,野遊び,風流,恋情,植物","#[訓異]
はるののに[寛],
すみれつみにと[寛],
こしわれぞ,[寛]こしわれそ,
のをなつかしみ[寛],
ひとよねにける[寛],
" "#[番号]08/1425","#[題詞](山部宿祢赤人歌四首)","#[原文]足比奇乃 山櫻花 日並而 如是開有者 甚戀目夜裳","#[訓読]あしひきの山桜花日並べてかく咲きたらばいたく恋ひめやも","#[仮名],あしひきの,やまさくらばな,ひならべて,かくさきたらば,いたくこひめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,作者:山部赤人,野遊び,比喩,恋情,植物","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまさくらばな,[寛]やまさくらはな,
ひならべて,[寛]ひならへて,
かくさきたらば,[寛]かくしさけらは,
いたくこひめやも,[寛]いとこひめやも,
" "#[番号]08/1426","#[題詞](山部宿祢赤人歌四首)","#[原文]吾勢子尓 令見常念之 梅花 其十方不所見 雪乃零有者","#[訓読]我が背子に見せむと思ひし梅の花それとも見えず雪の降れれば","#[仮名],わがせこに,みせむとおもひし,うめのはな,それともみえず,ゆきのふれれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,作者:山部赤人,野遊び,植物","#[訓異]
わがせこに,[寛]わかせこに,
みせむとおもひし[寛],
うめのはな[寛],
それともみえず,[寛]それともみえす,
ゆきのふれれば,[寛]ゆきのふれれは,
" "#[番号]08/1427","#[題詞](山部宿祢赤人歌四首)","#[原文]従明日者 春菜将採跡 標之野尓 昨日毛今日<母> 雪波布利管","#[訓読]明日よりは春菜摘まむと標めし野に昨日も今日も雪は降りつつ","#[仮名],あすよりは,はるなつまむと,しめしのに,きのふもけふも,ゆきはふりつつ","#[左注]","#[校異]毛 -> 母 [類][紀]","#[事項],春雑歌,作者:山部赤人,野遊び,比喩","#[訓異]
あすよりは[寛],
はるなつまむと,[寛]わかなつまむと,
しめしのに[寛],
きのふもけふも[寛],
ゆきはふりつつ[寛],
" "#[番号]08/1428","#[題詞]草香山歌一首","#[原文]忍照 難波乎過而 打靡 草香乃山乎 暮晩尓 吾越来者 山毛世尓 咲有馬酔木乃 不悪 君乎何時 徃而早将見","#[訓読]おしてる 難波を過ぎて うち靡く 草香の山を 夕暮れに 我が越え来れば 山も狭に 咲ける馬酔木の 悪しからぬ 君をいつしか 行きて早見む","#[仮名],おしてる,なにはをすぎて,うちなびく,くさかのやまを,ゆふぐれに,わがこえくれば,やまもせに,さけるあしびの,あしからぬ,きみをいつしか,ゆきてはやみむ","#[左注]右一首依作者微不顕名字","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,東大阪市日下町,生駒山,羈旅,望郷,恋情,地名,植物,枕詞","#[訓異]
おしてる[寛],
なにはをすぎて,[寛]なにはをすきて,
うちなびく,[寛]うちなひく,
くさかのやまを[寛],
ゆふぐれに,[寛]ゆふくれに,
わがこえくれば,[寛]わかこえくれは,
やまもせに[寛],
さけるあしびの,[寛]さけるつつしの,
あしからぬ,[寛]にくからぬ,
きみをいつしか[寛],
ゆきてはやみむ[寛],
" "#[番号]08/1429","#[題詞]櫻花歌一首[并短歌]","#[原文]D嬬等之 頭挿乃多米尓 遊士之 蘰之多米等 敷座流 國乃波多弖尓 開尓鶏類 櫻花能 丹穂日波母安奈<尓>","#[訓読]娘子らが かざしのために 風流士の かづらのためと 敷きませる 国のはたてに 咲きにける 桜の花の にほひはもあなに","#[仮名],をとめらが,かざしのために,みやびをの,かづらのためと,しきませる,くにのはたてに,さきにける,さくらのはなの,にほひはもあなに","#[左注](右二首若宮年魚麻呂誦之)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 何 -> 尓 [類][紀][温]","#[事項],春雑歌,若宮年魚麻呂,伝誦,予祝,植物","#[訓異]
をとめらが,[寛]をとめらか,
かざしのために,[寛]かさしのために,
みやびをの,[寛]たはれを,
かづらのためと,[寛]かつらのためと,
しきませる[寛],
くにのはたてに[寛],
さきにける[寛],
さくらのはなの[寛],
にほひはもあなに,[寛]にほひはもいかに,
" "#[番号]08/1430","#[題詞](櫻花歌一首[并短歌])反歌","#[原文]去年之春 相有之君尓 戀尓手師 櫻花者 迎来良之母","#[訓読]去年の春逢へりし君に恋ひにてし桜の花は迎へけらしも","#[仮名],こぞのはる,あへりしきみに,こひにてし,さくらのはなは,むかへけらしも","#[左注]右二首若宮年魚麻呂誦之","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],春雑歌,若宮年魚麻呂,伝誦,恋愛,予祝,植物","#[訓異]
こぞのはる,[寛]こそのはる,
あへりしきみに[寛],
こひにてし[寛],
さくらのはなは[寛],
むかへけらしも,[寛]むかへくらしも,
" "#[番号]08/1431","#[題詞]山部宿祢赤人歌一首","#[原文]百濟野乃 芽古枝尓 待春跡 居之鴬 鳴尓鶏鵡鴨","#[訓読]百済野の萩の古枝に春待つと居りし鴬鳴きにけむかも","#[仮名],くだらのの,はぎのふるえに,はるまつと,をりしうぐひす,なきにけむかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],春雑歌,作者:山部赤人,奈良県,広陵町,地名,植物,動物","#[訓異]
くだらのの,[寛]くたらのの,
はぎのふるえに,[寛]はきのふるえに,
はるまつと[寛],
をりしうぐひす,[寛]すみしうくひす,
なきにけむかも[寛],
" "#[番号]08/1432","#[題詞]大伴坂上郎女柳歌二首","#[原文]吾背兒我 見良牟佐保道乃 青柳乎 手折而谷裳 見<縁>欲得","#[訓読]我が背子が見らむ佐保道の青柳を手折りてだにも見むよしもがも","#[仮名],わがせこが,みらむさほぢの,あをやぎを,たをりてだにも,みむよしもがも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 綵 -> 縁 [代匠記初稿本]","#[事項],春雑歌,作者:坂上郎女,奈良,佐保,望郷,恋情,羈旅,植物,地名","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
みらむさほぢの,[寛]みらむさほちの,
あをやぎを,[寛]あをやきを,
たをりてだにも,[寛]たをりてたにも,
みむよしもがも,[寛]みるいろにもか,
" "#[番号]08/1433","#[題詞](大伴坂上郎女柳歌二首)","#[原文]打上 佐保能河原之 青柳者 今者春部登 成尓鶏類鴨","#[訓読]うち上る佐保の川原の青柳は今は春へとなりにけるかも","#[仮名],うちのぼる,さほのかはらの,あをやぎは,いまははるへと,なりにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,作者:坂上郎女,奈良,佐保,地名,植物","#[訓異]
うちのぼる,[寛]うちあくる,
さほのかはらの[寛],
あをやぎは,[寛]あをやきは,
いまははるへと[寛],
なりにけるかも[寛],
" "#[番号]08/1434","#[題詞]大伴宿祢三林梅歌一首","#[原文]霜雪毛 未過者 不思尓 春日里尓 梅花見都","#[訓読]霜雪もいまだ過ぎねば思はぬに春日の里に梅の花見つ","#[仮名],しもゆきも,いまだすぎねば,おもはぬに,かすがのさとに,うめのはなみつ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:大伴三林,奈良,春日,地名,植物","#[訓異]
しもゆきも[寛],
いまだすぎねば,[寛]いまたすきねは,
おもはぬに,[寛]おもはすに,
かすがのさとに,[寛]かすかのさとに,
うめのはなみつ[寛],
" "#[番号]08/1435","#[題詞]厚見王歌一首","#[原文]河津鳴 甘南備河尓 陰所見<而> 今香開良武 山振乃花","#[訓読]かはづ鳴く神奈備川に影見えて今か咲くらむ山吹の花","#[仮名],かはづなく,かむなびかはに,かげみえて,いまかさくらむ,やまぶきのはな","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 而 [類][紀]","#[事項],春雑歌,作者:厚見王,飛鳥川,竜田川,地名,植物","#[訓異]
かはづなく,[寛]かはつなく,
かむなびかはに,[寛]かみなひかはに,
かげみえて,[寛]かけみえて,
いまかさくらむ,[寛]いまやさくらむ,
やまぶきのはな,[寛]やまふきのはな,
" "#[番号]08/1436","#[題詞]大伴宿祢村上梅歌二首","#[原文]含有常 言之梅我枝 今旦零四 沫雪二相而 将開可聞","#[訓読]含めりと言ひし梅が枝今朝降りし沫雪にあひて咲きぬらむかも","#[仮名],ふふめりと,いひしうめがえ,けさふりし,あわゆきにあひて,さきぬらむかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:大伴村上,植物","#[訓異]
ふふめりと[寛],
いひしうめがえ,[寛]いひしうめかえ,
けさふりし,[寛]けふふりし,
あわゆきにあひて[寛],
さきぬらむかも,[寛]さきにけはかも,
" "#[番号]08/1437","#[題詞](大伴宿祢村上梅歌二首)","#[原文]霞立 春日之里 梅花 山下風尓 落許須莫湯目","#[訓読]霞立つ春日の里の梅の花山のあらしに散りこすなゆめ","#[仮名],かすみたつ,かすがのさとの,うめのはな,やまのあらしに,ちりこすなゆめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,作者:大伴村上,奈良,春日,地名,植物","#[訓異]
かすみたつ[寛],
かすがのさとの,[寛]かすかのさとの,
うめのはな[寛],
やまのあらしに,[寛]やましたかせに,
ちりこすなゆめ[寛],
" "#[番号]08/1438","#[題詞]大伴宿祢駿河丸歌一首","#[原文]霞立 春日里之 梅花 波奈尓将問常 吾念奈久尓","#[訓読]霞立つ春日の里の梅の花花に問はむと我が思はなくに","#[仮名],かすみたつ,かすがのさとの,うめのはな,はなにとはむと,わがおもはなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,作者:大伴駿河麻呂,奈良,春日,地名,植物","#[訓異]
かすみたつ[寛],
かすがのさとの,[寛]かすかのさとの,
うめのはな[寛],
はなにとはむと[寛],
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]08/1439","#[題詞]中臣朝臣武良自歌一首","#[原文]時者今者 春尓成跡 三雪零 遠山邊尓 霞多奈婢久","#[訓読]時は今は春になりぬとみ雪降る遠山の辺に霞たなびく","#[仮名],ときはいまは,はるになりぬと,みゆきふる,とほやまのへに,かすみたなびく","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:中臣武良自,季節","#[訓異]
ときはいまは[寛],
はるになりぬと[寛],
みゆきふる[寛],
とほやまのへに,[寛]とほきやまへに,
かすみたなびく,[寛]かすみたなひく,
" "#[番号]08/1440","#[題詞]河邊朝臣東人歌一首","#[原文]春雨乃 敷布零尓 高圓 山能櫻者 何如有良武","#[訓読]春雨のしくしく降るに高円の山の桜はいかにかあるらむ","#[仮名],はるさめの,しくしくふるに,たかまとの,やまのさくらは,いかにかあるらむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:河辺東人,高円山,奈良,地名,植物","#[訓異]
はるさめの,[寛]はるのあめの,
しくしくふるに,[寛]しきしきふるに,
たかまとの[寛],
やまのさくらは[寛],
いかにかあるらむ[寛],
" "#[番号]08/1441","#[題詞]大伴宿祢家持鴬歌一首","#[原文]打霧之 雪者零乍 然為我二 吾宅乃苑尓 鴬鳴裳","#[訓読]うち霧らひ雪は降りつつしかすがに我家の苑に鴬鳴くも","#[仮名],うちきらし,ゆきはふりつつ,しかすがに,わぎへのそのに,うぐひすなくも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:大伴家持,動物,季節","#[訓異]
うちきらし[寛],
ゆきはふりつつ[寛],
しかすがに,[寛]しかすかに,
わぎへのそのに,[寛]わかへのそのに,
うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも,
" "#[番号]08/1442","#[題詞]大蔵少輔丹比屋主真人歌一首","#[原文]難波邊尓 人之行礼波 後居而 春菜採兒乎 見之悲也","#[訓読]難波辺に人の行ければ後れ居て春菜摘む子を見るが悲しさ","#[仮名],なにはへに,ひとのゆければ,おくれゐて,はるなつむこを,みるがかなしさ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:丹比屋主,菜摘み,大阪,恋情,地名","#[訓異]
なにはへに[寛],
ひとのゆければ,[寛]ひとのゆけれは,
おくれゐて[寛],
はるなつむこを,[寛]わかなつむこを,
みるがかなしさ,[寛]みるかかなしさ,
" "#[番号]08/1443","#[題詞]丹比真人乙麻呂歌一首 [屋主真人之第二子也]","#[原文]霞立 野上乃方尓 行之可波 鴬鳴都 春尓成良思","#[訓読]霞立つ野の上の方に行きしかば鴬鳴きつ春になるらし","#[仮名],かすみたつ,ののへのかたに,ゆきしかば,うぐひすなきつ,はるになるらし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:丹比乙麻呂,野遊び,動物,季節","#[訓異]
かすみたつ[寛],
ののへのかたに,[寛]のかみのかたに,
ゆきしかば,[寛]ゆくしかは,
うぐひすなきつ,[寛]うくひすなきつ,
はるになるらし[寛],
" "#[番号]08/1444","#[題詞]高田女王歌一首 [高安之女也]","#[原文]山振之 咲有野邊乃 都保須美礼 此春之雨尓 盛奈里鶏利","#[訓読]山吹の咲きたる野辺のつほすみれこの春の雨に盛りなりけり","#[仮名],やまぶきの,さきたるのへの,つほすみれ,このはるのあめに,さかりなりけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:高田女王,大原高安,高安王,植物,叙景","#[訓異]
やまぶきの,[寛]やまふきの,
さきたるのへの[寛],
つほすみれ[寛],
このはるのあめに,[寛]このはるさめに,
さかりなりけり[寛],
" "#[番号]08/1445","#[題詞]大伴坂上郎女歌一首","#[原文]風交 雪者雖零 實尓不成 吾宅之梅乎 花尓令落莫","#[訓読]風交り雪は降るとも実にならぬ我家の梅を花に散らすな","#[仮名],かぜまじり,ゆきはふるとも,みにならぬ,わぎへのうめを,はなにちらすな","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:坂上郎女,比喩,植物","#[訓異]
かぜまじり,[寛]かせませに,
ゆきはふるとも,[寛]ゆきはふれとも,
みにならぬ[寛],
わぎへのうめを,[寛]わきへのうめを,
はなにちらすな[寛],
" "#[番号]08/1446","#[題詞]大伴宿祢家持<春>雉歌一首","#[原文]春野尓 安佐留雉乃 妻戀尓 己我當乎 人尓令知管","#[訓読]春の野にあさる雉の妻恋ひにおのがあたりを人に知れつつ","#[仮名],はるののに,あさるきぎしの,つまごひに,おのがあたりを,ひとにしれつつ","#[左注]","#[校異]養 -> 春 [西(訂正)][紀][温][矢] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:大伴家持,動物","#[訓異]
はるののに,[寛]はるのに,
あさるきぎしの,[寛]あさるききすの,
つまごひに,[寛]つまこひに,
おのがあたりを,[寛]おのかあたりを,
ひとにしれつつ[寛],
" "#[番号]08/1447","#[題詞]大伴坂上郎女歌一首","#[原文]尋常 聞者苦寸 喚子鳥 音奈都炊 時庭成奴","#[訓読]世の常に聞けば苦しき呼子鳥声なつかしき時にはなりぬ","#[仮名],よのつねに,きけばくるしき,よぶこどり,こゑなつかしき,ときにはなりぬ","#[左注]右一首天平四年三月一日佐保宅作","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春雑歌,作者:坂上郎女,動物,季節","#[訓異]
よのつねに[寛],
きけばくるしき,[寛]きくはくるしき,
よぶこどり,[寛]よふことり,
こゑなつかしき,[寛]こえなつかしき,
ときにはなりぬ[寛],
" "#[番号]08/1448","#[題詞]春相聞 / 大伴宿祢家持贈坂上家之大嬢歌一首","#[原文]吾屋外尓 蒔之瞿麥 何時毛 花尓咲奈武 名蘇經乍見武","#[訓読]我がやどに蒔きしなでしこいつしかも花に咲きなむなそへつつ見む","#[仮名],わがやどに,まきしなでしこ,いつしかも,はなにさきなむ,なそへつつみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,恋情,植物","#[訓異]
わがやどに,[寛]わかやとに,
まきしなでしこ,[寛]まきしなてしこ,
いつしかも[寛],
はなにさきなむ,[寛]はなにさかなむ,
なそへつつみむ[寛],
" "#[番号]08/1449","#[題詞]大伴田村家<之>大嬢與妹坂上大嬢歌一首","#[原文]茅花抜 淺茅之原乃 都保須美礼 今盛有 吾戀苦波","#[訓読]茅花抜く浅茅が原のつほすみれ今盛りなり我が恋ふらくは","#[仮名],つばなぬく,あさぢがはらの,つほすみれ,いまさかりなり,あがこふらくは","#[左注]","#[校異]毛 -> 之 [代匠記初稿本] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春相聞,作者:田村大嬢,坂上大嬢,贈答,恋情,植物","#[訓異]
つばなぬく,[寛]つはなぬく,
あさぢがはらの,[寛]あさちかはらの,
つほすみれ[寛],
いまさかりなり,[寛]いまさかりあり,
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
" "#[番号]08/1450","#[題詞]大伴宿祢坂上郎女歌一首","#[原文]情具伎 物尓曽有鶏類 春霞 多奈引時尓 戀乃繁者","#[訓読]心ぐきものにぞありける春霞たなびく時に恋の繁きは","#[仮名],こころぐき,ものにぞありける,はるかすみ,たなびくときに,こひのしげきは","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春相聞,作者:坂上郎女,恋情","#[訓異]
こころぐき,[寛]こころくき,
ものにぞありける,[寛]ものにそありける,
はるかすみ[寛],
たなびくときに,[寛]たなひくときに,
こひのしげきは,[寛]こひのしけれは,
" "#[番号]08/1451","#[題詞]笠女郎贈大伴家持歌一首","#[原文]水鳥之 鴨乃羽色乃 春山乃 於保束無毛 所念可聞","#[訓読]水鳥の鴨の羽色の春山のおほつかなくも思ほゆるかも","#[仮名],みづどりの,かものはいろの,はるやまの,おほつかなくも,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春相聞,作者:笠郎女,大伴家持,贈答,恋情,動物","#[訓異]
みづどりの,[寛]みつとりの,
かものはいろの[寛],
はるやまの[寛],
おほつかなくも[寛],
おもほゆるかも,[寛]おほほゆるかも,
" "#[番号]08/1452","#[題詞]紀女郎歌一首 [名曰小鹿也]","#[原文]闇夜有者 宇倍毛不来座 梅花 開月夜尓 伊而麻左自常屋","#[訓読]闇ならばうべも来まさじ梅の花咲ける月夜に出でまさじとや","#[仮名],やみならば,うべもきまさじ,うめのはな,さけるつくよに,いでまさじとや","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春相聞,作者:紀女郎,小鹿,恋情,怨恨,植物,贈答","#[訓異]
やみならば,[寛]やみなれは,
うべもきまさじ,[寛]うへもきまさす,
うめのはな[寛],
さけるつくよに,[寛]さけるつきよに,
いでまさじとや,[寛]いてまさしとや,
" "#[番号]08/1453","#[題詞]天平五年癸酉春閏三月笠朝臣金村贈入唐使歌一首[并短歌]","#[原文]玉手次 不懸時無 氣緒尓 吾念公者 虚蝉之 <世人有者 大王之> 命恐 夕去者 鶴之妻喚 難波方 三津埼従 大舶尓 二梶繁貫 白浪乃 高荒海乎 嶋傳 伊別徃者 留有 吾者幣引 齋乍 公乎者将<待> 早還万世","#[訓読]玉たすき 懸けぬ時なく 息の緒に 我が思ふ君は うつせみの 世の人なれば 大君の 命畏み 夕されば 鶴が妻呼ぶ 難波潟 御津の崎より 大船に 真楫しじ貫き 白波の 高き荒海を 島伝ひ い別れ行かば 留まれる 我れは幣引き 斎ひつつ 君をば待たむ 早帰りませ","#[仮名],たまたすき,かけぬときなく,いきのをに,あがおもふきみは,うつせみの,よのひとなれば,おほきみの,みことかしこみ,ゆふされば,たづがつまよぶ,なにはがた,みつのさきより,おほぶねに,まかぢしじぬき,しらなみの,たかきあるみを,しまづたひ,いわかれゆかば,とどまれる,われはぬさひき,いはひつつ,きみをばまたむ,はやかへりませ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / <> -> 世人有者 大王之 [代匠記初稿本] / 徃 -> 待 [代匠記初稿本]","#[事項],春相聞,作者:笠金村,入唐使,贈答,送別,遣唐使,枕詞,地名,大阪,餞別,天平5年閏3月,年紀","#[訓異]
たまたすき[寛],
かけぬときなく[寛],
いきのをに[寛],
あがおもふきみは,[寛]わかおもふきみは,
うつせみの[寛],
よのひとなれば,
おほきみの,
みことかしこみ[寛],
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
たづがつまよぶ,[寛]たつのつまよふ,
なにはがた,[寛]なにはかた,
みつのさきより[寛],
おほぶねに,[寛]おほふねに,
まかぢしじぬき,[寛]まかちししぬき,
しらなみの[寛],
たかきあるみを[寛],
しまづたひ,[寛]しまつたひ,
いわかれゆかば,[寛]いわかれゆけは,
とどまれる,[寛]ととまれる,
われはぬさひき,[寛]われはたむけに,
いはひつつ[寛],
きみをばまたむ,[寛]きみをはやらむ,
はやかへりませ[寛],
" "#[番号]08/1454","#[題詞](天平五年癸酉春閏三月笠朝臣金村贈入唐使歌一首[并短歌])反歌","#[原文]波上従 所見兒嶋之 雲隠 穴氣衝之 相別去者","#[訓読]波の上ゆ見ゆる小島の雲隠りあな息づかし相別れなば","#[仮名],なみのうへゆ,みゆるこしまの,くもがくり,あないきづかし,あひわかれなば","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春相聞,作者:笠金村,入唐使,贈答,送別,遣唐使,餞別,天平5年閏3月,年紀","#[訓異]
なみのうへゆ[寛],
みゆるこしまの[寛],
くもがくり,[寛]くもかくれ,
あないきづかし,[寛]あないきつかし,
あひわかれなば,[寛]あひわかれなは,
" "#[番号]08/1455","#[題詞]((天平五年癸酉春閏三月笠朝臣金村贈入唐使歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]玉切 命向 戀従者 公之三舶乃 梶柄母我","#[訓読]たまきはる命に向ひ恋ひむゆは君が御船の楫柄にもが","#[仮名],たまきはる,いのちにむかひ,こひむゆは,きみがみふねの,かぢからにもが","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,作者:笠金村,入唐使,贈答,送別,遣唐使,枕詞,天平5年閏3月,年紀","#[訓異]
たまきはる[寛],
いのちにむかひ,[寛]いのちにむかふ,
こひむゆは,[寛]こひよりは,
きみがみふねの,[寛]きみかみふねの,
かぢからにもが,[寛]かちからもわか,
" "#[番号]08/1456","#[題詞]藤原朝臣廣嗣櫻花贈娘子歌一首","#[原文]此花乃 一与能内尓 百種乃 言曽隠有 於保呂可尓為莫","#[訓読]この花の一節のうちに百種の言ぞ隠れるおほろかにすな","#[仮名],このはなの,ひとよのうちに,ももくさの,ことぞこもれる,おほろかにすな","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春相聞,作者:藤原広嗣,娘子,贈答","#[訓異]
このはなの[寛],
ひとよのうちに[寛],
ももくさの[寛],
ことぞこもれる,[寛]ことそこもれる,
おほろかにすな[寛],
" "#[番号]08/1457","#[題詞]娘子和歌一首","#[原文]此花乃 一与能裏波 百種乃 言持不勝而 所折家良受也","#[訓読]この花の一節のうちは百種の言待ちかねて折らえけらずや","#[仮名],このはなの,ひとよのうちは,ももくさの,ことまちかねて,をらえけらずや","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],春相聞,藤原広嗣,作者:娘子,和歌,贈答","#[訓異]
このはなの[寛],
ひとよのうちは[寛],
ももくさの[寛],
ことまちかねて,[寛]こともちかねて,
をらえけらずや,[寛]をられけらすや,
" "#[番号]08/1458","#[題詞]厚見王贈久米女郎歌一首","#[原文]室戸在 櫻花者 今毛香聞 松風疾 地尓落良武","#[訓読]やどにある桜の花は今もかも松風早み地に散るらむ","#[仮名],やどにある,さくらのはなは,いまもかも,まつかぜはやみ,つちにちるらむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春相聞,作者:厚見王,久米女郎,贈答,比喩,心変わり,植物","#[訓異]
やどにある,[寛]やとにある,
さくらのはなは[寛],
いまもかも[寛],
まつかぜはやみ,[寛]まつかせはやみ,
つちにちるらむ[寛],
" "#[番号]08/1459","#[題詞]久米女郎報贈歌一首","#[原文]世間毛 常尓師不有者 室戸尓有 櫻花乃 不所比日可聞","#[訓読]世間も常にしあらねばやどにある桜の花の散れるころかも","#[仮名],よのなかも,つねにしあらねば,やどにある,さくらのはなの,ちれるころかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],春相聞,作者:久米女郎,贈答,厚見王,植物","#[訓異]
よのなかも[寛],
つねにしあらねば,[寛]つねにしあらねは,
やどにある,[寛]やとにある,
さくらのはなの[寛],
ちれるころかも[寛],
" "#[番号]08/1460","#[題詞]紀女郎贈大伴宿祢家持歌二首","#[原文]戯奴 [變云 和氣] 之為 吾手母須麻尓 春野尓 抜流茅花曽 御食而肥座","#[訓読]戯奴 [變云 わけ] がため我が手もすまに春の野に抜ける茅花ぞ食して肥えませ","#[仮名],わけ[わけ],がため,わがてもすまに,はるののに,ぬけるつばなぞ,めしてこえませ","#[左注](右折<攀>合歡花并茅花贈也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春相聞,作者:紀女郎,大伴家持,贈答,植物","#[訓異]
わけ[わけ],がため,[寛]わけかため,
わがてもすまに,[寛]わかてもすまに,
はるののに[寛],
ぬけるつばなぞ,[寛]ぬけるつはなそ,
めしてこえませ[寛],
" "#[番号]08/1461","#[題詞](紀女郎贈大伴宿祢家持歌二首)","#[原文]晝者咲 夜者戀宿 合歡木花 君耳将見哉 和氣佐倍尓見代","#[訓読]昼は咲き夜は恋ひ寝る合歓木の花君のみ見めや戯奴さへに見よ","#[仮名],ひるはさき,よるはこひぬる,ねぶのはな,きみのみみめや,わけさへにみよ","#[左注]右折<攀>合歡花并茅花贈也","#[校異]擧 -> 攀 [細][温][矢][京]","#[事項],春相聞,作者:紀女郎,大伴家持,贈答,植物","#[訓異]
ひるはさき[寛],
よるはこひぬる[寛],
ねぶのはな,[寛]ねふのはな,
きみのみみめや,[寛]きみのみみむや,
わけさへにみよ[寛],
" "#[番号]08/1462","#[題詞]大伴家持贈和歌二首","#[原文]吾君尓 戯奴者戀良思 給有 茅花手雖喫 弥痩尓夜須","#[訓読]我が君に戯奴は恋ふらし賜りたる茅花を食めどいや痩せに痩す","#[仮名],あがきみに,わけはこふらし,たばりたる,つばなをはめど,いややせにやす","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,作者:大伴家持,和歌,紀女郎,植物,贈答","#[訓異]
あがきみに,[寛]わかきみに,
わけはこふらし[寛],
たばりたる,[寛]たまひたる,
つばなをはめど,[寛]つはなをくへと,
いややせにやす[寛],
" "#[番号]08/1463","#[題詞](大伴家持贈和歌二首)","#[原文]吾妹子之 形見乃合歡木者 花耳尓 咲而盖 實尓不成鴨","#[訓読]我妹子が形見の合歓木は花のみに咲きてけだしく実にならじかも","#[仮名],わぎもこが,かたみのねぶは,はなのみに,さきてけだしく,みにならじかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,作者:大伴家持,和歌,紀女郎,植物,贈答","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
かたみのねぶは,[寛]かたみのねふは,
はなのみに[寛],
さきてけだしく,[寛]さきてけたしも,
みにならじかも,[寛]みにならぬかも,
" "#[番号]08/1464","#[題詞]大伴家持贈坂上大嬢歌一首","#[原文]春霞 軽引山乃 隔者 妹尓不相而 月曽經去来","#[訓読]春霞たなびく山のへなれれば妹に逢はずて月ぞ経にける","#[仮名],はるかすみ,たなびくやまの,へなれれば,いもにあはずて,つきぞへにける","#[左注]右従久邇京贈寧樂宅","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],春相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,恋情","#[訓異]
はるかすみ[寛],
たなびくやまの,[寛]たなひくやまの
へなれれば,[寛]へたたれは,
いもにあはずて,[寛]いもにあはすて,
つきぞへにける,[寛]つきそへにける,
" "#[番号]08/1465","#[題詞]夏雜歌 / 藤原夫人歌<一首> [明日香清御原<宮>御宇天皇之夫人也 字曰大原大刀自 即新田部皇子之母也]","#[原文]霍公鳥 痛莫鳴 汝音乎 五月玉尓 相貫左右二","#[訓読]霍公鳥いたくな鳴きそ汝が声を五月の玉にあへ貫くまでに","#[仮名],ほととぎす,いたくななきそ,ながこゑを,さつきのたまに,あへぬくまでに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 / <> -> 一首 [類][紀] / <> -> 宮 [紀][温][矢]","#[事項],夏雑歌,作者:藤原夫人,大原大刀自,天武天皇,新田部皇子,動物","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いたくななきそ[寛],
ながこゑを,[寛]なかこゑを,
さつきのたまに[寛],
あへぬくまでに,[寛]あひぬくまてに,
" "#[番号]08/1466","#[題詞]志貴皇子御歌一首","#[原文]神名火乃 磐瀬之<社>之 霍公鳥 毛無乃岳尓 何時来将鳴","#[訓読]神奈備の石瀬の社の霍公鳥毛無の岡にいつか来鳴かむ","#[仮名],かむなびの,いはせのもりの,ほととぎす,けなしのをかに,いつかきなかむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 杜 -> 社 [類][紀]","#[事項],夏雑歌,作者:志貴皇子,奈良,斑鳩,動物,地名","#[訓異]
かむなびの,[寛]かみなひの,
いはせのもりの[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
けなしのをかに,[寛]ならしのをかに,
いつかきなかむ[寛],
" "#[番号]08/1467","#[題詞]弓削皇子御歌一首","#[原文]霍公鳥 無流國尓毛 去而師香 其鳴音手 間者辛苦母","#[訓読]霍公鳥なかる国にも行きてしかその鳴く声を聞けば苦しも","#[仮名],ほととぎす,なかるくににも,ゆきてしか,そのなくこゑを,きけばくるしも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],夏雑歌,作者:弓削皇子,動物","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なかるくににも[寛],
ゆきてしか[寛],
そのなくこゑを[寛],
きけばくるしも,[寛]きけはくるしも,
" "#[番号]08/1468","#[題詞]小治田廣瀬王霍公鳥歌一首","#[原文]霍公鳥 音聞小野乃 秋風<尓> 芽開礼也 聲之乏寸","#[訓読]霍公鳥声聞く小野の秋風に萩咲きぬれや声の乏しき","#[仮名],ほととぎす,こゑきくをのの,あきかぜに,はぎさきぬれや,こゑのともしき","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 尓 [類][紀]","#[事項],夏雑歌,作者:小治田広瀬王,動物,植物","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
こゑきくをのの[寛],
あきかぜに,[寛]あきかせに,
はぎさきぬれや,[寛]はきさきたれや,
こゑのともしき[寛],
" "#[番号]08/1469","#[題詞]沙弥霍公鳥歌一首","#[原文]足引之 山霍公鳥 汝鳴者 家有妹 常所思","#[訓読]あしひきの山霍公鳥汝が鳴けば家なる妹し常に偲はゆ","#[仮名],あしひきの,やまほととぎす,ながなけば,いへなるいもし,つねにしのはゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,作者:沙弥,恋情,望郷,動物","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまほととぎす,[寛]やまほとときす,
ながなけば,[寛]なかなけは,
いへなるいもし,[寛]いへにあるいも,
つねにしのはゆ,[寛]つねにおもほゆ,
" "#[番号]08/1470","#[題詞]刀理宣令歌一首","#[原文]物部乃 石瀬之<社>乃 霍公鳥 今毛鳴奴<香> 山之常影尓","#[訓読]もののふの石瀬の社の霍公鳥今も鳴かぬか山の常蔭に","#[仮名],もののふの,いはせのもりの,ほととぎす,いまもなかぬか,やまのとかげに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(別筆訂正)] 歌 / 杜 -> 社 [西(訂正)][類][紀] / <> -> 香 [代匠記初稿本]","#[事項],夏雑歌,作者:刀理宣令,奈良,斑鳩,地名,動物","#[訓異]
もののふの[寛],
いはせのもりの[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いまもなかぬか[寛],
やまのとかげに,[寛]やまのとかけに,
" "#[番号]08/1471","#[題詞]山部宿祢赤人歌一首","#[原文]戀之家婆 形見尓将為跡 吾屋戸尓 殖之藤浪 今開尓家里","#[訓読]恋しけば形見にせむと我がやどに植ゑし藤波今咲きにけり","#[仮名],こひしけば,かたみにせむと,わがやどに,うゑしふぢなみ,いまさきにけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:山部赤人,恋情,植物","#[訓異]
こひしけば,[寛]こひしけは,
かたみにせむと[寛],
わがやどに,[寛]わかやとに,
うゑしふぢなみ,[寛]うえしふちなみ,
いまさきにけり[寛],
" "#[番号]08/1472","#[題詞]式部大輔石上堅魚朝臣歌一首","#[原文]霍公鳥 来鳴令響 宇乃花能 共也来之登 問麻思物乎","#[訓読]霍公鳥来鳴き響もす卯の花の伴にや来しと問はましものを","#[仮名],ほととぎす,きなきとよもす,うのはなの,ともにやこしと,とはましものを","#[左注]右神龜五年戊辰大宰帥大伴卿之妻大伴郎女遇病長逝焉 于時 勅使式部大輔石上朝臣堅魚遣<大>宰府弔喪并賜物也 其事既畢驛使及府諸卿大夫等共登記夷城而望遊之日乃作此歌","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 太 -> 大 [紀][温] / 歌 [西] 謌","#[事項],夏雑歌,作者:石上堅魚,太宰府,大伴旅人,動物,植物","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きなきとよもす,[寛]きなきとよます,
うのはなの[寛],
ともにやこしと[寛],
とはましものを[寛],
" "#[番号]08/1473","#[題詞]<大>宰帥大伴卿和歌一首","#[原文]橘之 花散里乃 霍公鳥 片戀為乍 鳴日四曽多寸","#[訓読]橘の花散る里の霍公鳥片恋しつつ鳴く日しぞ多き","#[仮名],たちばなの,はなちるさとの,ほととぎす,かたこひしつつ,なくひしぞおほき","#[左注]","#[校異]太 -> 大 [紀][温][矢] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,和歌,石上堅魚,非情,恋情,植物,動物","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
はなちるさとの[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
かたこひしつつ[寛],
なくひしぞおほき,[寛]なくひしそおほき,
" "#[番号]08/1474","#[題詞]大伴坂上郎女思筑紫大城山歌一首","#[原文]今毛可聞 大城乃山尓 霍公鳥 鳴令響良武 吾無礼杼毛","#[訓読]今もかも大城の山に霍公鳥鳴き響むらむ我れなけれども","#[仮名],いまもかも,おほきのやまに,ほととぎす,なきとよむらむ,われなけれども","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:坂上郎女,奈良,大野城,回顧,太宰府,地名,動物","#[訓異]
いまもかも[寛],
おほきのやまに[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なきとよむらむ[寛],
われなけれども,[寛]われなけれとも,
" "#[番号]08/1475","#[題詞]大伴坂上郎女霍公鳥歌一首","#[原文]何奇毛 幾許戀流 霍公鳥 鳴音聞者 戀許曽益礼","#[訓読]何しかもここだく恋ふる霍公鳥鳴く声聞けば恋こそまされ","#[仮名],なにしかも,ここだくこふる,ほととぎす,なくこゑきけば,こひこそまされ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 奇 [類][温] 哥","#[事項],夏雑歌,作者:坂上郎女,恋情,動物","#[訓異]
なにしかも[寛],
ここだくこふる,[寛]ここはくこふる,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なくこゑきけば,[寛]なくこゑきけは,
こひこそまされ[寛],
" "#[番号]08/1476","#[題詞]小治田朝臣廣耳歌一首","#[原文]獨居而 物念夕尓 霍公鳥 従此間鳴渡 心四有良思","#[訓読]ひとり居て物思ふ宵に霍公鳥こゆ鳴き渡る心しあるらし","#[仮名],ひとりゐて,ものもふよひに,ほととぎす,こゆなきわたる,こころしあるらし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:小治田広耳,恋情,動物","#[訓異]
ひとりゐて[寛],
ものもふよひに,[寛]ものおもふよひに,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
こゆなきわたる[寛],
こころしあるらし,[寛]こころしてあるらし,
" "#[番号]08/1477","#[題詞]大伴家持霍公鳥歌一首","#[原文]宇能花毛 未開者 霍公鳥 佐保乃山邊 来鳴令響","#[訓読]卯の花もいまだ咲かねば霍公鳥佐保の山辺に来鳴き響もす","#[仮名],うのはなも,いまださかねば,ほととぎす,さほのやまへに,きなきとよもす","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:大伴家持,佐保,奈良,動物,地名,植物","#[訓異]
うのはなも[寛],
いまださかねば,[寛]いまたさかねは,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
さほのやまへに,[寛]さほのやまへを,
きなきとよもす,[寛]きなきとよます,
" "#[番号]08/1478","#[題詞]大伴家持橘歌一首","#[原文]吾屋前之 花橘乃 何時毛 珠貫倍久 其實成奈武","#[訓読]我が宿の花橘のいつしかも玉に貫くべくその実なりなむ","#[仮名],わがやどの,はなたちばなの,いつしかも,たまにぬくべく,そのみなりなむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],夏雑歌,作者:大伴家持,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
はなたちばなの,[寛]はなたちはなの,
いつしかも[寛],
たまにぬくべく,[寛]たまにぬくへく,
そのみなりなむ[寛],
" "#[番号]08/1479","#[題詞]大伴家持晩蝉歌一首","#[原文]隠耳 居者欝悒 奈具左武登 出立聞者 来鳴日晩","#[訓読]隠りのみ居ればいぶせみ慰むと出で立ち聞けば来鳴くひぐらし","#[仮名],こもりのみ,をればいぶせみ,なぐさむと,いでたちきけば,きなくひぐらし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:大伴家持,鬱屈,動物","#[訓異]
こもりのみ,[寛]しのひのみ,
をればいぶせみ,[寛]をれはいふかし,
なぐさむと,[寛]なくさむと,
いでたちきけば,[寛]いてたちきけは,
きなくひぐらし,[寛]きなくひくらし,
" "#[番号]08/1480","#[題詞]大伴書持歌二首","#[原文]我屋戸尓 月押照有 霍公鳥 心有今夜 来鳴令響","#[訓読]我が宿に月おし照れり霍公鳥心あれ今夜来鳴き響もせ","#[仮名],わがやどに,つきおしてれり,ほととぎす,こころあれこよひ,きなきとよもせ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:大伴書持,動物","#[訓異]
わがやどに,[寛]わかやとに,
つきおしてれり[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
こころあれこよひ,[寛]こころあるこよひ,
きなきとよもせ,[寛]きなきとよませ,
" "#[番号]08/1481","#[題詞](大伴書持歌二首)","#[原文]我屋<戸>前乃 花橘尓 霍公鳥 今社鳴米 友尓相流時","#[訓読]我が宿の花橘に霍公鳥今こそ鳴かめ友に逢へる時","#[仮名],わがやどの,はなたちばなに,ほととぎす,いまこそなかめ,ともにあへるとき","#[左注]","#[校異]<> -> 戸 [類][紀]","#[事項],夏雑歌,作者:大伴書持,植物,動物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
はなたちばなに,[寛]はなたちはなに,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いまこそなかめ[寛],
ともにあへるとき[寛],
" "#[番号]08/1482","#[題詞]大伴清縄歌一首","#[原文]皆人之 待師宇能花 雖落 奈久霍公鳥 吾将忘哉","#[訓読]皆人の待ちし卯の花散りぬとも鳴く霍公鳥我れ忘れめや","#[仮名],みなひとの,まちしうのはな,ちりぬとも,なくほととぎす,われわすれめや","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:大伴清縄,植物,動物","#[訓異]
みなひとの[寛],
まちしうのはな[寛],
ちりぬとも,[寛]ちるといへと,
なくほととぎす,[寛]なくほとときす,
われわすれめや[寛],
" "#[番号]08/1483","#[題詞]奄君諸立歌一首","#[原文]吾背子之 屋戸乃橘 花乎吉美 鳴霍公鳥 見曽吾来之","#[訓読]我が背子が宿の橘花をよみ鳴く霍公鳥見にぞ我が来し","#[仮名],わがせこが,やどのたちばな,はなをよみ,なくほととぎす,みにぞわがこし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:奄君諸立,宴席,主人讃美,植物,動物","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
やどのたちばな,[寛]やとのたちはな,
はなをよみ[寛],
なくほととぎす,[寛]なくほとときす,
みにぞわがこし,[寛]みにそわかこし,
" "#[番号]08/1484","#[題詞]大伴坂上郎女歌一首","#[原文]霍公鳥 痛莫鳴 獨居而 寐乃不所宿 聞者苦毛","#[訓読]霍公鳥いたくな鳴きそひとり居て寐の寝らえぬに聞けば苦しも","#[仮名],ほととぎす,いたくななきそ,ひとりゐて,いのねらえぬに,きけばくるしも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:坂上郎女,動物","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いたくななきそ[寛],
ひとりゐて[寛],
いのねらえぬに,[寛]いのねらぬに,
きけばくるしも,[寛]きけはくるしも,
" "#[番号]08/1485","#[題詞]大伴家持唐棣花歌一首","#[原文],夏儲而 開有波祢受 久方乃 雨打零者 将移香","#[訓読]夏まけて咲きたるはねずひさかたの雨うち降らば移ろひなむか","#[仮名],なつまけて,さきたるはねず,ひさかたの,あめうちふらば,うつろひなむか","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:大伴家持,植物","#[訓異]
なつまけて[寛],
さきたるはねず,[寛]さきたるはねす,
ひさかたの[寛],
あめうちふらば,[寛]あめうちふらは,
うつろひなむか[寛],
" "#[番号]08/1486","#[題詞]大伴家持恨霍公鳥晩喧歌二首","#[原文]吾屋前之 花橘乎 霍公鳥 来不喧地尓 令落常香","#[訓読]我が宿の花橘を霍公鳥来鳴かず地に散らしてむとか","#[仮名],わがやどの,はなたちばなを,ほととぎす,きなかずつちに,ちらしてむとか","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:大伴家持,植物,動物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きなかずつちに,[寛]きなかてつちに,
ちらしてむとか,[寛]ちらしなむとか,
" "#[番号]08/1487","#[題詞](大伴家持恨霍公鳥晩喧歌二首)","#[原文]霍公鳥 不念有寸 木晩乃 如此成左右尓 奈何不来喧","#[訓読]霍公鳥思はずありき木の暗のかくなるまでに何か来鳴かぬ","#[仮名],ほととぎす,おもはずありき,このくれの,かくなるまでに,なにかきなかぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,作者:大伴家持,動物,怨恨","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
おもはずありき,[寛]おもはすありき,
このくれの[寛],
かくなるまでに,[寛]かくなるまてに,
なにかきなかぬ,[寛]なとかきなかぬ,
" "#[番号]08/1488","#[題詞]大伴家持懽霍公鳥歌一首","#[原文]何處者 鳴毛思仁家武 霍公鳥 吾家乃里尓 <今>日耳曽鳴","#[訓読]いづくには鳴きもしにけむ霍公鳥我家の里に今日のみぞ鳴く","#[仮名],いづくには,なきもしにけむ,ほととぎす,わぎへのさとに,けふのみぞなく","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 乃 [春][紀] 之 / <> -> 今 [西(右書)][類][紀][細]","#[事項],夏雑歌,作者:大伴家持,動物","#[訓異]
いづくには,[寛]いつこかは,
なきもしにけむ[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
わぎへのさとに,[寛]わきへのさとに,
けふのみぞなく,[寛]けふのみそなく,
" "#[番号]08/1489","#[題詞]大伴家持惜橘花歌一首","#[原文]吾屋前之 花橘者 落過而 珠尓可貫 實尓成二家利","#[訓読]我が宿の花橘は散り過ぎて玉に貫くべく実になりにけり","#[仮名],わがやどの,はなたちばなは,ちりすぎて,たまにぬくべく,みになりにけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:大伴家持,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
はなたちばなは,[寛]はなたちはなは,
ちりすぎて,[寛]ちりすきて,
たまにぬくべく,[寛]たまにぬくへく,
みになりにけり[寛],
" "#[番号]08/1490","#[題詞]大伴家持霍公鳥歌一首","#[原文]霍公鳥 雖待不来喧 <菖>蒲草 玉尓貫日乎 未遠美香","#[訓読]霍公鳥待てど来鳴かず菖蒲草玉に貫く日をいまだ遠みか","#[仮名],ほととぎす,まてどきなかず,あやめぐさ,たまにぬくひを,いまだとほみか","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 菖 [代匠記初稿本]","#[事項],夏雑歌,作者:大伴家持,動物,植物","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
まてどきなかず,[寛]まてときなかぬ,
あやめぐさ,[寛]あやめくさ,
たまにぬくひを[寛],
いまだとほみか,[寛]いまたとほみか,
" "#[番号]08/1491","#[題詞]大伴家持雨日聞霍公鳥喧歌一首","#[原文]宇乃花能 過者惜香 霍公鳥 雨間毛不置 従此間喧渡","#[訓読]卯の花の過ぎば惜しみか霍公鳥雨間も置かずこゆ鳴き渡る","#[仮名],うのはなの,すぎばをしみか,ほととぎす,あままもおかず,こゆなきわたる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:大伴家持,植物,動物","#[訓異]
うのはなの[寛],
すぎばをしみか,[寛]すきはをしみか,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
あままもおかず,[寛]あままもおかす,
こゆなきわたる[寛],
" "#[番号]08/1492","#[題詞]橘歌一首 [遊行女婦]","#[原文]君家乃 花橘者 成尓家利 花乃有時尓 相益物乎","#[訓読]君が家の花橘はなりにけり花のある時に逢はましものを","#[仮名],きみがいへの,はなたちばなは,なりにけり,はななるときに,あはましものを","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 花乃 [類][紀](塙) 花","#[事項],夏雑歌,作者:遊行女婦,宴席,植物","#[訓異]
きみがいへの,[寛]きみかいへの,
はなたちばなは,[寛]はなたちはなは,
なりにけり[寛],
はななるときに,[寛]はなのさかりに,
あはましものを[寛],
" "#[番号]08/1493","#[題詞]大伴村上橘歌一首","#[原文]吾屋前乃 花橘乎 霍公鳥 来鳴令動而 本尓令散都","#[訓読]我が宿の花橘を霍公鳥来鳴き響めて本に散らしつ","#[仮名],わがやどの,はなたちばなを,ほととぎす,きなきとよめて,もとにちらしつ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:大伴村上,植物,動物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きなきとよめて[寛],
もとにちらしつ[寛],
" "#[番号]08/1494","#[題詞]大伴家持霍公鳥歌二首","#[原文]夏山之 木末乃繁尓 霍公鳥 鳴響奈流 聲之遥佐","#[訓読]夏山の木末の茂に霍公鳥鳴き響むなる声の遥けさ","#[仮名],なつやまの,こぬれのしげに,ほととぎす,なきとよむなる,こゑのはるけさ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:大伴家持,動物,叙景","#[訓異]
なつやまの[寛],
こぬれのしげに,[寛]こすゑのしのに,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なきとよむなる[寛],
こゑのはるけさ[寛],
" "#[番号]08/1495","#[題詞](大伴家持霍公鳥歌二首)","#[原文]足引乃 許乃間立八十一 霍公鳥 如此聞始而 後将戀可聞","#[訓読]あしひきの木の間立ち潜く霍公鳥かく聞きそめて後恋ひむかも","#[仮名],あしひきの,このまたちくく,ほととぎす,かくききそめて,のちこひむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,作者:大伴家持,動物","#[訓異]
あしひきの[寛],
このまたちくく[寛],
ほととぎす,[寛]
かくききそめて[寛],
のちこひむかも[寛],
" "#[番号]08/1496","#[題詞]大伴家持石竹花歌一首","#[原文]吾屋前之 瞿麥乃花 盛有 手折而一目 令見兒毛我母","#[訓読]我が宿のなでしこの花盛りなり手折りて一目見せむ子もがも","#[仮名],わがやどの,なでしこのはな,さかりなり,たをりてひとめ,みせむこもがも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:大伴家持,恋情,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
なでしこのはな,[寛]なてしこのはな,
さかりなり[寛],
たをりてひとめ[寛],
みせむこもがも,[寛]みせむこもかも
" "#[番号]08/1497","#[題詞]惜不登筑波山歌一首","#[原文]筑波根尓 吾行利世波 霍公鳥 山妣兒令響 鳴麻志也其","#[訓読]筑波嶺に我が行けりせば霍公鳥山彦響め鳴かましやそれ","#[仮名],つくはねに,わがゆけりせば,ほととぎす,やまびことよめ,なかましやそれ","#[左注]右一首高橋連蟲麻呂之歌中出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,筑波,茨城,地名,動物","#[訓異]
つくはねに[寛],
わがゆけりせば,[寛]わかゆけりせは,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
やまびことよめ,[寛]やまひことよめ,
なかましやそれ[寛],
" "#[番号]08/1498","#[題詞]夏相聞 / 大伴坂上郎女歌一首","#[原文]無暇 不来之君尓 霍公鳥 吾如此戀常 徃而告社","#[訓読]暇なみ来まさぬ君に霍公鳥我れかく恋ふと行きて告げこそ","#[仮名],いとまなみ,きまさぬきみに,ほととぎす,あれかくこふと,ゆきてつげこそ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏相聞,作者:坂上郎女,勧誘,動物","#[訓異]
いとまなみ[寛],
きまさぬきみに,[寛]こさりしきみに,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
あれかくこふと,[寛]われかくこふと,
ゆきてつげこそ,[寛]ゆきてつけこそ,
" "#[番号]08/1499","#[題詞]大伴四縄宴吟歌一首","#[原文]事繁 君者不来益 霍公鳥 汝太尓来鳴 朝戸将開","#[訓読]言繁み君は来まさず霍公鳥汝れだに来鳴け朝戸開かむ","#[仮名],ことしげみ,きみはきまさず,ほととぎす,なれだにきなけ,あさとひらかむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏相聞,作者:大伴四綱,宴席,誦詠,女歌,うわさ,動物","#[訓異]
ことしげみ,[寛]ことしけみ,
きみはきまさず,[寛]きみはきまさす,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なれだにきなけ,[寛]なれたにきなけ,
あさとひらかむ[寛],
" "#[番号]08/1500","#[題詞]大伴坂上郎女歌一首","#[原文]夏野<之> 繁見丹開有 姫由理乃 不所知戀者 苦物曽","#[訓読]夏の野の茂みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものぞ","#[仮名],なつののの,しげみにさける,ひめゆりの,しらえぬこひは,くるしきものぞ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 乃 -> 之 [類][紀][矢][京]","#[事項],夏相聞,作者:坂上郎女,片思い,忍恋い,恋情,植物","#[訓異]
なつののの[寛],
しげみにさける,[寛]しけみにさける,
ひめゆりの[寛],
しらえぬこひは,[寛]しられぬこひは,
くるしきものぞ,[寛]くるしきものを,
" "#[番号]08/1501","#[題詞]小治田朝臣廣耳歌一首","#[原文]霍公鳥 鳴峯乃上能 宇乃花之 Q事有哉 君之不来益","#[訓読]霍公鳥鳴く峰の上の卯の花の憂きことあれや君が来まさぬ","#[仮名],ほととぎす,なくをのうへの,うのはなの,うきことあれや,きみがきまさぬ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏相聞,作者:小治田広耳,女の立場,宴席,恨み,植物,動物","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なくをのうへの[寛],
うのはなの[寛],
うきことあれや[寛],
きみがきまさぬ,[寛]きみかきまさぬ,
" "#[番号]08/1502","#[題詞]大伴坂上郎女歌一首","#[原文]五月之 花橘乎 為君 珠尓社貫 零巻惜美","#[訓読]五月の花橘を君がため玉にこそ貫け散らまく惜しみ","#[仮名],さつきの,はなたちばなを,きみがため,たまにこそぬけ,ちらまくをしみ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏相聞,作者:坂上郎女,植物","#[訓異]
さつきの[寛],
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
きみがため,[寛]きみかため,
たまにこそぬけ[寛],
ちらまくをしみ[寛],
" "#[番号]08/1503","#[題詞]紀朝臣豊河歌一首","#[原文]吾妹兒之 家乃垣内乃 佐由理花 由利登云者 不<欲>云二似","#[訓読]我妹子が家の垣内のさ百合花ゆりと言へるはいなと言ふに似る","#[仮名],わぎもこが,いへのかきつの,さゆりばな,ゆりといへるは,いなといふににる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 内乃 [類][紀](塙) 内 / 歌(謌) -> 欲 [新訓]","#[事項],夏相聞,作者:紀豊河,植物","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
いへのかきつの,[寛]やとのかきうちの,
さゆりばな,[寛]さゆりはな,
ゆりといへるは,[寛]ゆりとしいへは,
いなといふににる,[寛]うたはぬににる,
" "#[番号]08/1504","#[題詞]高安歌一首","#[原文]暇無 五月乎尚尓 吾妹兒我 花橘乎 不見可将過","#[訓読]暇なみ五月をすらに我妹子が花橘を見ずか過ぎなむ","#[仮名],いとまなみ,さつきをすらに,わぎもこが,はなたちばなを,みずかすぎなむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏相聞,作者:高安王,大原高安,植物","#[訓異]
いとまなみ,[寛]いとまなき,
さつきをすらに,[寛]さつきをひさに,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
みずかすぎなむ,[寛]みすかすくさむ,
" "#[番号]08/1505","#[題詞]大神女郎贈大伴家持歌一首","#[原文]霍公鳥 鳴之登時 君之家尓 徃跡追者 将至鴨","#[訓読]霍公鳥鳴きしすなはち君が家に行けと追ひしは至りけむかも","#[仮名],ほととぎす,なきしすなはち,きみがいへに,ゆけとおひしは,いたりけむかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏相聞,作者:大神女郎,大伴家持,贈答,動物","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なきしすなはち[寛],
きみがいへに,[寛]きみかいへに,
ゆけとおひしは,[寛]ゆけとをひしは,
いたりけむかも[寛],
" "#[番号]08/1506","#[題詞]大伴田村大嬢与妹坂上大嬢歌一首","#[原文]古郷之 奈良思乃岳能 霍公鳥 言告遣之 何如告寸八","#[訓読]故郷の奈良思の岡の霍公鳥言告げ遣りしいかに告げきや","#[仮名],ふるさとの,ならしのをかの,ほととぎす,ことつげやりし,いかにつげきや","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏相聞,作者:田村大嬢,坂上大嬢,贈答,地名,動物","#[訓異]
ふるさとの[寛],
ならしのをかの[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
ことつげやりし,[寛]ことつけやりし,
いかにつげきや,[寛]いかにつけきや,
" "#[番号]08/1507","#[題詞]大伴家持<攀>橘花贈坂上大嬢歌一首[并短歌]","#[原文]伊加登伊可等 有吾屋前尓 百枝刺 於布流橘 玉尓貫 五月乎近美 安要奴我尓 花咲尓家里 朝尓食尓 出見毎 氣緒尓 吾念妹尓 銅鏡 清月夜尓 直一眼 令覩麻而尓波 落許須奈 由<米>登云管 幾許 吾守物乎 宇礼多伎也 志許霍公鳥 暁之 裏悲尓 雖追雖追 尚来鳴而 徒 地尓令散者 為便乎奈美 <攀>而手折都 見末世吾妹兒","#[訓読]いかといかと ある我が宿に 百枝さし 生ふる橘 玉に貫く 五月を近み あえぬがに 花咲きにけり 朝に日に 出で見るごとに 息の緒に 我が思ふ妹に まそ鏡 清き月夜に ただ一目 見するまでには 散りこすな ゆめと言ひつつ ここだくも 我が守るものを うれたきや 醜霍公鳥 暁の うら悲しきに 追へど追へど なほし来鳴きて いたづらに 地に散らせば すべをなみ 攀ぢて手折りつ 見ませ我妹子","#[仮名],いかといかと,あるわがやどに,ももえさし,おふるたちばな,たまにぬく,さつきをちかみ,あえぬがに,はなさきにけり,あさにけに,いでみるごとに,いきのをに,あがおもふいもに,まそかがみ,きよきつくよに,ただひとめ,みするまでには,ちりこすな,ゆめといひつつ,ここだくも,わがもるものを,うれたきや,しこほととぎす,あかときの,うらがなしきに,おへどおへど,なほしきなきて,いたづらに,つちにちらせば,すべをなみ,よぢてたをりつ,みませわぎもこ","#[左注]","#[校異]擧 -> 攀 [紀][細][温] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 来 -> 米 [類][紀][細] / 擧 -> 攀 [類][紀][温]","#[事項],夏相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,植物,動物","#[訓異]
いかといかと[寛],
あるわがやどに,[寛]あるわかやとに,
ももえさし[寛],
おふるたちばな,[寛]おふるたちはな,
たまにぬく,[寛]たまにぬき,
さつきをちかみ[寛],
あえぬがに,[寛]あえぬかに,
はなさきにけり[寛],
あさにけに[寛],
いでみるごとに,[寛]いてみることに,
いきのをに[寛],
あがおもふいもに,[寛]わかおもふいもに,
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
きよきつくよに,[寛]きよきつきよに,
ただひとめ,[寛]たたひとめ,
みするまでには,[寛]みせむまてには,
ちりこすな[寛],
ゆめといひつつ[寛],
ここだくも,[寛]ここたくも,
わがもるものを,[寛]わかもるものを,
うれたきや[寛],
しこほととぎす,[寛]しこほとときす,
あかときの,[寛]あかつきの,
うらがなしきに,[寛]うらかなしきに,
おへどおへど,[寛]をへとをへと,
なほしきなきて[寛],
いたづらに,[寛]いたつらに,
つちにちらせば,[寛]つちにちらせは,
すべをなみ,[寛]すへをなみ,
よぢてたをりつ,[寛]よちてたをりつ,
みませわぎもこ,[寛]みませわきもこ,
" "#[番号]08/1508","#[題詞](大伴家持<攀>橘花贈坂上大嬢歌一首[并短歌])反歌","#[原文]望降 清月夜尓 吾妹兒尓 令覩常念之 屋前之橘","#[訓読]望ぐたち清き月夜に我妹子に見せむと思ひしやどの橘","#[仮名],もちぐたち,きよきつくよに,わぎもこに,みせむとおもひし,やどのたちばな","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 覩 [類][紀][矢][京](塙) 視","#[事項],夏相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,植物","#[訓異]
もちぐたち,[寛]もちくたち,
きよきつくよに,[寛]きよきつきよに,
わぎもこに,[寛]わきもこに,
みせむとおもひし[寛],
やどのたちばな,[寛]やとのたちはな,
" "#[番号]08/1509","#[題詞]((大伴家持<攀>橘花贈坂上大嬢歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]妹之見而 後毛将鳴 霍公鳥 花橘乎 地尓落津","#[訓読]妹が見て後も鳴かなむ霍公鳥花橘を地に散らしつ","#[仮名],いもがみて,のちもなかなむ,ほととぎす,はなたちばなを,つちにちらしつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,動物,植物","#[訓異]
いもがみて,[寛]いもかみて,
のちもなかなむ[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
つちにちらしつ[寛],
" "#[番号]08/1510","#[題詞]大伴家持贈紀女郎歌一首","#[原文]瞿麥者 咲而落去常 人者雖言 吾標之野乃 花尓有目八方","#[訓読]なでしこは咲きて散りぬと人は言へど我が標めし野の花にあらめやも","#[仮名],なでしこは,さきてちりぬと,ひとはいへど,わがしめしのの,はなにあらめやも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏相聞,作者:大伴家持,紀女郎,贈答,比喩,植物","#[訓異]
なでしこは,[寛]なてしこは,
さきてちりぬと[寛],
ひとはいへど,[寛]ひとはいへと,
わがしめしのの,[寛]わかしめしのの,
はなにあらめやも[寛],
" "#[番号]08/1511","#[題詞]秋雜歌 / 崗本天皇御製歌一首","#[原文]暮去者 小倉乃山尓 鳴鹿者 今夜波不鳴 寐<宿>家良思母","#[訓読]夕されば小倉の山に鳴く鹿は今夜は鳴かず寐ねにけらしも","#[仮名],ゆふされば,をぐらのやまに,なくしかは,こよひはなかず,いねにけらしも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 宿 [西(右書)][類][紀][細]","#[事項],秋雑歌,作者:舒明天皇,斉明天皇,地名,動物","#[訓異]
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
をぐらのやまに,[寛]をくらのやまに,
なくしかは,[寛]なくしかの,
こよひはなかず,[寛]こよひはなかす,
いねにけらしも[寛],
" "#[番号]08/1512","#[題詞]大津皇子御歌一首","#[原文]經毛無 緯毛不定 未通女等之 織黄葉尓 霜莫零","#[訓読]経もなく緯も定めず娘子らが織る黄葉に霜な降りそね","#[仮名],たてもなく,ぬきもさだめず,をとめらが,おるもみちばに,しもなふりそね","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:大津皇子,植物","#[訓異]
たてもなく[寛],
ぬきもさだめず,[寛]ぬきもさためす,
をとめらが,[寛]をとめらか,
おるもみちばに,[寛]をれるもみちに,
しもなふりそね[寛],
" "#[番号]08/1513","#[題詞]穂積皇子御歌二首","#[原文]今朝之旦開 鴈之鳴聞都 春日山 黄葉家良思 吾情痛之","#[訓読]今朝の朝明雁が音聞きつ春日山もみちにけらし我が心痛し","#[仮名],けさのあさけ,かりがねききつ,かすがやま,もみちにけらし,あがこころいたし","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:穂積皇子,奈良,動物,地名,季節","#[訓異]
けさのあさけ[寛],
かりがねききつ,[寛]かりかねききつ,
かすがやま,[寛]かすかやま,
もみちにけらし[寛],
あがこころいたし,[寛]わかこころいたし,
" "#[番号]08/1514","#[題詞](穂積皇子御歌二首)","#[原文]秋芽者 可咲有良之 吾屋戸之 淺茅之花乃 散去見者","#[訓読]秋萩は咲くべくあらし我がやどの浅茅が花の散りゆく見れば","#[仮名],あきはぎは,さくべくあらし,わがやどの,あさぢがはなの,ちりゆくみれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:穂積皇子,植物","#[訓異]
あきはぎは,[寛]あきはきは,
さくべくあらし,[寛]さきぬへからし,
わがやどの,[寛]わかやとの,
あさぢがはなの,[寛]あさちかはなの,
ちりゆくみれば,[寛]ちりゆくみれは,
" "#[番号]08/1515","#[題詞]但馬皇女御歌一首 [一書云子部王作]","#[原文]事繁 里尓不住者 今朝鳴之 鴈尓副而 去益物乎 [一云 國尓不有者]","#[訓読]言繁き里に住まずは今朝鳴きし雁にたぐひて行かましものを [一云 国にあらずは]","#[仮名],ことしげき,さとにすまずは,けさなきし,かりにたぐひて,ゆかましものを,[くににあらずは]","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:但馬皇女,うわさ,動物","#[訓異]
ことしげき,[寛]ことしけき,
さとにすまずは,[寛]さとにすますは,
けさなきし[寛],
かりにたぐひて,[寛]かりにたくひて,
ゆかましものを[寛],
[くににあらずは],[寛]くににあらすは,
" "#[番号]08/1516","#[題詞]山部王惜秋葉歌一首","#[原文]秋山尓 黄反木葉乃 移去者 更哉秋乎 欲見世武","#[訓読]秋山にもみつ木の葉のうつりなばさらにや秋を見まく欲りせむ","#[仮名],あきやまに,もみつこのはの,うつりなば,さらにやあきを,みまくほりせむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:山部王,植物,季節","#[訓異]
あきやまに[寛],
もみつこのはの,[寛]きはむこのはの,
うつりなば,[寛]うつろへは,
さらにやあきを[寛],
みまくほりせむ[寛],
" "#[番号]08/1517","#[題詞]長屋王歌一首","#[原文]味酒 三輪乃祝之 山照 秋乃黄葉<乃> 散莫惜毛","#[訓読]味酒三輪のはふりの山照らす秋の黄葉の散らまく惜しも","#[仮名],うまさけ,みわのはふりの,やまてらす,あきのもみちの,ちらまくをしも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 祝 [類](塙) 社 / <> -> 乃 [類][紀]","#[事項],秋雑歌,作者:長屋王,三輪,奈良,枕詞,地名,植物","#[訓異]
うまさけ,[寛]うまさかの,
みわのはふりの,[寛]みわのはふりか,
やまてらす[寛],
あきのもみちの[寛],
ちらまくをしも[寛],
" "#[番号]08/1518","#[題詞]山上<臣>憶良七夕歌十二首","#[原文]天漢 相向立而 吾戀之 君来益奈利 紐解設奈 [一云 向河]","#[訓読]天の川相向き立ちて我が恋ひし君来ますなり紐解き設けな [一云 川に向ひて]","#[仮名],あまのがは,あひむきたちて,あがこひし,きみきますなり,ひもときまけな,[かはにむかひて]","#[左注]右養老八年七月七日應令","#[校異]巨 -> 臣 [類][紀][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
あひむきたちて,[寛]こむかひたちて,
あがこひし,[寛]わかこひし,
きみきますなり[寛],
ひもときまけな,[寛]ひも*****,
[かはにむかひて],[寛]かはにむかひ,
" "#[番号]08/1519","#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)","#[原文]久方之 漢<瀬>尓 船泛而 今夜可君之 我許来益武","#[訓読]久方の天の川瀬に舟浮けて今夜か君が我がり来まさむ","#[仮名],ひさかたの,あまのかはせに,ふねうけて,こよひかきみが,わがりきまさむ","#[左注]右神亀元年七月七日夜左大臣宅","#[校異]漢 [京] 天漢 / <> -> 瀬 [類][矢]","#[事項],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あまのかはせに[寛],
ふねうけて[寛],
こよひかきみが,[寛]こよひかきみか,
わがりきまさむ,[寛]わかりきまさむ,
" "#[番号]08/1520","#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)","#[原文]牽牛者 織女等 天地之 別時<由> 伊奈宇之呂 河向立 <思>空 不安久尓 嘆空 不安久尓 青浪尓 望者多要奴 白雲尓 な者盡奴 如是耳也 伊伎都枳乎良牟 如是耳也 戀都追安良牟 佐丹塗之 小船毛賀茂 玉纒之 真可伊毛我母 [一云 小棹毛何毛] 朝奈藝尓 伊可伎渡 夕塩尓 [一云 夕倍尓毛] 伊許藝渡 久方之 天河原尓 天飛也 領巾可多思吉 真玉手乃 玉手指更 餘宿毛 寐而師可聞 [一云 伊毛左祢而師加] 秋尓安良受登母 [一云 秋不待登毛]","#[訓読]彦星は 織女と 天地の 別れし時ゆ いなうしろ 川に向き立ち 思ふそら 安けなくに 嘆くそら 安けなくに 青波に 望みは絶えぬ 白雲に 涙は尽きぬ かくのみや 息づき居らむ かくのみや 恋ひつつあらむ さ丹塗りの 小舟もがも 玉巻きの 真櫂もがも [一云 小棹もがも] 朝なぎに い掻き渡り 夕潮に [一云 夕にも] い漕ぎ渡り 久方の 天の川原に 天飛ぶや 領巾片敷き 真玉手の 玉手さし交へ あまた夜も 寐ねてしかも [一云 寐もさ寝てしか] 秋にあらずとも [一云 秋待たずとも]","#[仮名],ひこほしは,たなばたつめと,あめつちの,わかれしときゆ,いなうしろ,かはにむきたち,おもふそら,やすけなくに,なげくそら,やすけなくに,あをなみに,のぞみはたえぬ,しらくもに,なみたはつきぬ,かくのみや,いきづきをらむ,かくのみや,こひつつあらむ,さにぬりの,をぶねもがも,たままきの,まかいもがも,[をさをもがも],あさなぎに,いかきわたり,ゆふしほに,[ゆふべにも],いこぎわたり,ひさかたの,あまのかはらに,あまとぶや,ひれかたしき,またまでの,たまでさしかへ,あまたよも,いねてしかも,[いもさねてしか],あきにあらずとも,[あきまたずとも]","#[左注](右天平元年七月七日夜憶良仰觀天河 [一云帥家作])","#[校異]雨 -> 由 [西(訂正右書)][類][紀][細] / 宇 [童蒙抄](塙) 牟 / 意 -> 思 [類][紀][温]","#[事項],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕","#[訓異]
ひこほしは[寛],
たなばたつめと,[寛]たなはたつめと,
あめつちの[寛],
わかれしときゆ[寛],
いなうしろ[寛],
かはにむきたち[寛],
おもふそら[寛],
やすけなくに,[寛]やすからなくに,
なげくそら,[寛]なけくそら,
やすけなくに,[寛]やすからなくに,
あをなみに[寛],
のぞみはたえぬ,[寛]のそみはたえぬ,
しらくもに[寛],
なみたはつきぬ[寛],
かくのみや[寛],
いきづきをらむ,[寛]いきつきをらむ,
かくのみや[寛],
こひつつあらむ[寛],
さにぬりの[寛],
をぶねもがも,[寛]こふねもかも,
たままきの[寛],
まかいもがも,[寛]まかいもかも,
[をさをもがも],
あさなぎに,[寛]あさなきに,
いかきわたり[寛],
ゆふしほに[寛],
[ゆふべにも],
いこぎわたり,[寛]いこきわたり,
ひさかたの[寛],
あまのかはらに[寛],
あまとぶや,[寛]あまとふや,
ひれかたしき[寛],
またまでの,[寛]またまての,
たまでさしかへ,[寛]たまてさしかへ,
あまたよも,[寛]よいも,
いねてしかも,[寛]ねてしかも,
[いもさねてしか],
あきにあらずとも,[寛]あきにあらすとも,
[あきまたずとも],[寛]あきまたすとも,
" "#[番号]08/1521","#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)反歌","#[原文]風雲者 二岸尓 可欲倍杼母 吾遠嬬之 [一云 波之嬬乃] 事曽不通","#[訓読]風雲は二つの岸に通へども我が遠妻の [一云 愛し妻の] 言ぞ通はぬ","#[仮名],かぜくもは,ふたつのきしに,かよへども,わがとほづまの[はしつまの],ことぞかよはぬ","#[左注](右天平元年七月七日夜憶良仰觀天河 [一云 帥家作])","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕","#[訓異]
かぜくもは,[寛]かせくもは,
ふたつのきしに[寛],
かよへども,[寛]かよへとも,
わがとほづまの,[寛]わかとほつまの,
[はしつまの],
ことぞかよはぬ,[寛]ことそかよはぬ,
" "#[番号]08/1522","#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)","#[原文]多夫手二毛 投越都倍<吉> 天漢 敝太而礼婆可母 安麻多須辨奈吉","#[訓読]たぶてにも投げ越しつべき天の川隔てればかもあまたすべなき","#[仮名],たぶてにも,なげこしつべき,あまのがは,へだてればかも,あまたすべなき","#[左注]右天平元年七月七日夜憶良仰觀天河 [一云 帥家作]","#[校異]伎 -> 吉 [類][紀]","#[事項],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕","#[訓異]
たぶてにも,[寛]たふてにも,
なげこしつべき,[寛]なけこしつへき,
あまのがは,[寛]あまのかは,
へだてればかも,[寛]へたてれはかも,
あまたすべなき,[寛]あまたすへなき,
" "#[番号]08/1523","#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)","#[原文]秋風之 吹尓之日従 何時可登 吾待戀之 君曽来座流","#[訓読]秋風の吹きにし日よりいつしかと我が待ち恋ひし君ぞ来ませる","#[仮名],あきかぜの,ふきにしひより,いつしかと,あがまちこひし,きみぞきませる","#[左注](右天平二年七月八日夜帥家集會)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕","#[訓異]
あきかぜの,[寛]あきかせの,
ふきにしひより[寛],
いつしかと[寛],
あがまちこひし,[寛]わかまちこひし,
きみぞきませる,[寛]きみそきませる,
" "#[番号]08/1524","#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)","#[原文]天漢 伊刀河浪者 多々祢杼母 伺候難之 近此瀬呼","#[訓読]天の川いと川波は立たねどもさもらひかたし近きこの瀬を","#[仮名],あまのがは,いとかはなみは,たたねども,さもらひかたし,ちかきこのせを","#[左注](右天平二年七月八日夜帥家集會)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
いとかはなみは[寛],
たたねども,[寛]たたねとも,
さもらひかたし,[寛]うかかひかたし,
ちかきこのせを[寛],
" "#[番号]08/1525","#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)","#[原文]袖振者 見毛可波之都倍久 雖近 度為便無 秋西安良祢波","#[訓読]袖振らば見も交しつべく近けども渡るすべなし秋にしあらねば","#[仮名],そでふらば,みもかはしつべく,ちかけども,わたるすべなし,あきにしあらねば","#[左注](右天平二年七月八日夜帥家集會)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕","#[訓異]
そでふらば,[寛]そてふらは,
みもかはしつべく,[寛]みもかはしつへく,
ちかけども,[寛]ちかけれと,
わたるすべなし,[寛]わたるすへなし,
あきにしあらねば,[寛]あきにしあらねは,
" "#[番号]08/1526","#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)","#[原文]玉蜻蜒 髣髴所見而 別去者 毛等奈也戀牟 相時麻而波","#[訓読]玉かぎるほのかに見えて別れなばもとなや恋ひむ逢ふ時までは","#[仮名],たまかぎる,ほのかにみえて,わかれなば,もとなやこひむ,あふときまでは","#[左注]右天平二年七月八日夜帥家集會","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕","#[訓異]
たまかぎる,[寛]かけろふの,
ほのかにみえて[寛],
わかれなば,[寛]わかれなは,
もとなやこひむ[寛],
あふときまでは,[寛]あふときまては,
" "#[番号]08/1527","#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)","#[原文]牽牛之 迎嬬船 己藝出良之 <天>漢原尓 霧之立波","#[訓読]彦星の妻迎へ舟漕ぎ出らし天の川原に霧の立てるは","#[仮名],ひこほしの,つまむかへぶね,こぎづらし,あまのかはらに,きりのたてるは","#[左注]","#[校異]<> -> 天 [類][紀]","#[事項],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕","#[訓異]
ひこほしの[寛],
つまむかへぶね,[寛]つまむかへふね,
こぎづらし,[寛]こきいつらし,
あまのかはらに[寛],
きりのたてるは,[寛]きりのたてれは,
" "#[番号]08/1528","#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)","#[原文]霞立 天河原尓 待君登 伊徃<還>尓 裳襴所沾","#[訓読]霞立つ天の川原に君待つとい行き帰るに裳の裾濡れぬ","#[仮名],かすみたつ,あまのかはらに,きみまつと,いゆきかへるに,ものすそぬれぬ","#[左注]","#[校異]還程 -> 還 [類][紀]","#[事項],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕","#[訓異]
かすみたつ[寛],
あまのかはらに[寛],
きみまつと[寛],
いゆきかへるに,[寛]いかよふほとに,
ものすそぬれぬ[寛],
" "#[番号]08/1529","#[題詞](山上<臣>憶良七夕歌十二首)","#[原文]天河 浮津之浪音 佐和久奈里 吾待君思 舟出為良之母","#[訓読]天の川浮津の波音騒くなり我が待つ君し舟出すらしも","#[仮名],あまのがは,うきつのなみおと,さわくなり,わがまつきみし,ふなですらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:山上憶良,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
うきつのなみおと,[寛]うきつのなみと,
さわくなり[寛],
わがまつきみし,[寛]わかまつきみし,
ふなですらしも,[寛]ふなてすらしも,
" "#[番号]08/1530","#[題詞]大宰諸卿大夫并官人等宴筑前國蘆城驛家歌二首","#[原文]娘部思 秋芽子交 蘆城野 今日乎始而 萬代尓将見","#[訓読]をみなへし秋萩交る蘆城の野今日を始めて万世に見む","#[仮名],をみなへし,あきはぎまじる,あしきのの,けふをはじめて,よろづよにみむ","#[左注](右二首作者未詳)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,福岡県,太宰府,宴席,土地讃美,地名,植物","#[訓異]
をみなへし[寛],
あきはぎまじる,[寛]あきはきましり,
あしきのの,[寛]あしきのは,
けふをはじめて,[寛]けふをはしめて,
よろづよにみむ,[寛]よろつよにみむ,
" "#[番号]08/1531","#[題詞](大宰諸卿大夫并官人等宴筑前國蘆城驛家歌二首)","#[原文]珠匣 葦木乃河乎 今日見者 迄萬代 将忘八方","#[訓読]玉櫛笥蘆城の川を今日見ては万代までに忘らえめやも","#[仮名],たまくしげ,あしきのかはを,けふみては,よろづよまでに,わすらえめやも","#[左注]右二首作者未詳","#[校異]","#[事項],秋雑歌,福岡県,太宰府,宴席,土地讃美,枕詞,地名","#[訓異]
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
あしきのかはを[寛],
けふみては,[寛]けふみれは,
よろづよまでに,[寛]よろつよまてに,
わすらえめやも,[寛]わすられめやも,
" "#[番号]08/1532","#[題詞]笠朝臣金村伊香山作歌二首","#[原文]草枕 客行人毛 徃觸者 尓保比奴倍久毛 開流芽子香聞","#[訓読]草枕旅行く人も行き触ればにほひぬべくも咲ける萩かも","#[仮名],くさまくら,たびゆくひとも,ゆきふれば,にほひぬべくも,さけるはぎかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:笠金村,滋賀県,塩津,羈旅,土地讃美,枕詞,植物","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびゆくひとも,[寛]たひゆくひとも,
ゆきふれば,[寛]ゆきふれは,
にほひぬべくも,[寛]にほひぬへくも,
さけるはぎかも,[寛]さけるはきかも,
" "#[番号]08/1533","#[題詞](笠朝臣金村伊香山作歌二首)","#[原文]伊香山 野邊尓開有 芽子見者 公之家有 尾花之所念","#[訓読]伊香山野辺に咲きたる萩見れば君が家なる尾花し思ほゆ","#[仮名],いかごやま,のへにさきたる,はぎみれば,きみがいへなる,をばなしおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:笠金村,滋賀県,塩津,羈旅,望郷,地名,植物","#[訓異]
いかごやま,[寛]いかこやま,
のへにさきたる[寛],
はぎみれば,[寛]はきみれは,
きみがいへなる,[寛]きみかやとれる,
をばなしおもほゆ,[寛]をはなしそおもふ,
" "#[番号]08/1534","#[題詞]石川朝臣老夫歌一首","#[原文]娘部志 秋芽子折礼 玉桙乃 道去L跡 為乞兒","#[訓読]をみなへし秋萩折れれ玉桙の道行きづとと乞はむ子がため","#[仮名],をみなへし,あきはぎをれれ,たまほこの,みちゆきづとと,こはむこがため","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:石川老夫,旅みやげ,植物","#[訓異]
をみなへし[寛],
あきはぎをれれ,[寛]あきはきたをれ,
たまほこの[寛],
みちゆきづとと,[寛]みちゆきつとと,
こはむこがため,[寛]こはむこのため,
" "#[番号]08/1535","#[題詞]藤原宇合卿歌一首","#[原文]我背兒乎 何時曽且今登 待苗尓 於毛也者将見 秋風吹","#[訓読]我が背子をいつぞ今かと待つなへに面やは見えむ秋の風吹く","#[仮名],わがせこを,いつぞいまかと,まつなへに,おもやはみえむ,あきのかぜふく","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:藤原宇合,女歌,宴席","#[訓異]
わがせこを,[寛]わかせこを,
いつぞいまかと,[寛]いつそいまかと,
まつなへに[寛],
おもやはみえむ[寛],
あきのかぜふく,[寛]あきかせのふく,
" "#[番号]08/1536","#[題詞]縁達帥歌一首","#[原文]暮相而 朝面羞 隠野乃 芽子者散去寸 黄葉早續也","#[訓読]宵に逢ひて朝面なみ名張野の萩は散りにき黄葉早継げ","#[仮名],よひにあひて,あしたおもなみ,なばりのの,はぎはちりにき,もみちはやつげ","#[左注]","#[校異]謌 [温][矢][京] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:縁達帥,三重県,名張,羈旅,序詞,植物","#[訓異]
よひにあひて[寛],
あしたおもなみ,[寛]あさかほはつる,
なばりのの,[寛]かくれのの,
はぎはちりにき,[寛]はきはちりにき,
もみちはやつげ,[寛]もみちはやつけ,
" "#[番号]08/1537","#[題詞]山上<臣>憶良詠秋野花<歌>二首","#[原文]秋野尓 咲有花乎 指折 可伎數者 七種花 [其一]","#[訓読]秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花 [其一]","#[仮名],あきののに,さきたるはなを,およびをり,かきかぞふれば,ななくさのはな","#[左注]","#[校異]巨 -> 臣 [紀][細][温] / <> -> 歌 [類][矢][京]","#[事項],秋雑歌,作者:山上憶良,詠物詩,植物","#[訓異]
あきののに[寛],
さきたるはなを[寛],
およびをり,[寛]てをりて,
かきかぞふれば,[寛]かきかそふれは,
ななくさのはな[寛],
" "#[番号]08/1538","#[題詞](山上<臣>憶良詠秋野花<歌>二首)","#[原文]芽之花 乎花葛花 瞿麦之花 姫部志 又藤袴 朝皃之花 [其二]","#[訓読]萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花 [其二]","#[仮名],はぎのはな,をばなくずはな,なでしこのはな,をみなへし,またふぢはかま,あさがほのはな","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:山上憶良,秋七草,詠物歌,植物","#[訓異]
はぎのはな,[寛]はきのはな,
をばなくずはな,[寛]をはなくすはな,
なでしこのはな,[寛]なてしこのはな,
をみなへし[寛],
またふぢはかま,[寛]またふちはかま,
あさがほのはな,[寛]あさかほのはな,
" "#[番号]08/1539","#[題詞]天皇御製歌二首","#[原文]秋<田>乃 穂田乎鴈之鳴 闇尓 夜之穂杼呂尓毛 鳴渡可聞","#[訓読]秋の田の穂田を雁がね暗けくに夜のほどろにも鳴き渡るかも","#[仮名],あきのたの,ほたをかりがね,くらけくに,よのほどろにも,なきわたるかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 日 -> 田 [矢][京]","#[事項],秋雑歌,作者:聖武天皇,動物,季節,叙景","#[訓異]
あきのたの[寛],
ほたをかりがね,[寛]ほたをかりかね,
くらけくに,[寛]くらやみに,
よのほどろにも,[寛]よのほとろにも,
なきわたるかも[寛],
" "#[番号]08/1540","#[題詞](天皇御製歌二首)","#[原文]今朝乃旦開 鴈鳴寒 聞之奈倍 野邊能淺茅曽 色付丹来","#[訓読]今朝の朝明雁が音寒く聞きしなへ野辺の浅茅ぞ色づきにける","#[仮名],けさのあさけ,かりがねさむく,ききしなへ,のへのあさぢぞ,いろづきにける","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:聖武天皇,動物,季節","#[訓異]
けさのあさけ[寛],
かりがねさむく,[寛]かりかねさむみ,
ききしなへ[寛],
のへのあさぢぞ,[寛]のへのあさちそ,
いろづきにける,[寛]いろつきにける,
" "#[番号]08/1541","#[題詞]大宰帥大伴卿歌二首","#[原文]吾岳尓 棹<壮>鹿来鳴 先芽之 花嬬問尓 来鳴棹<壮>鹿","#[訓読]我が岡にさを鹿来鳴く初萩の花妻どひに来鳴くさを鹿","#[仮名],わがをかに,さをしかきなく,はつはぎの,はなつまどひに,きなくさをしか","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 牡 -> 壮 [定本] / 牡 -> 壮 [定本]","#[事項],秋雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,植物,動物","#[訓異]
わがをかに,[寛]わかをかに,
さをしかきなく[寛],
はつはぎの,[寛]はつはきの,
はなつまどひに,[寛]はなつまとひに,
きなくさをしか[寛],
" "#[番号]08/1542","#[題詞](大宰帥大伴卿歌二首)","#[原文]吾岳之 秋芽花 風乎痛 可落成 将見人裳欲得","#[訓読]我が岡の秋萩の花風をいたみ散るべくなりぬ見む人もがも","#[仮名],わがをかの,あきはぎのはな,かぜをいたみ,ちるべくなりぬ,みむひともがも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,植物,恋情","#[訓異]
わがをかの,[寛]わかをかの,
あきはぎのはな,[寛]あきはきのはな,
かぜをいたみ,[寛]かせをいたみ,
ちるべくなりぬ,[寛]ちるへくなりぬ,
みむひともがも,[寛]みむひともかな,
" "#[番号]08/1543","#[題詞]三原王歌一首","#[原文]秋露者 移尓有家里 水鳥乃 青羽乃山能 色付見者","#[訓読]秋の露は移しにありけり水鳥の青葉の山の色づく見れば","#[仮名],あきのつゆは,うつしにありけり,みづどりの,あをばのやまの,いろづくみれば","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:三原王,季節","#[訓異]
あきのつゆは[寛],
うつしにありけり,[寛]うつしなりけり,
みづどりの,[寛]みつとりの,
あをばのやまの,[寛]あをはのやまの,
いろづくみれば,[寛]いろつくみれは,
" "#[番号]08/1544","#[題詞]湯原王七夕歌二首","#[原文]牽牛之 念座良武 従情 見吾辛苦 夜之更降去者","#[訓読]彦星の思ひますらむ心より見る我れ苦し夜の更けゆけば","#[仮名],ひこほしの,おもひますらむ,こころより,みるわれくるし,よのふけゆけば","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:湯原王,七夕","#[訓異]
ひこほしの[寛],
おもひますらむ[寛],
こころより,[寛]こころゆも,
みるわれくるし[寛],
よのふけゆけば,[寛]よのふけゆけは,
" "#[番号]08/1545","#[題詞](湯原王七夕歌二首)","#[原文]織女之 袖續三更之 五更者 河瀬之鶴者 不鳴友吉","#[訓読]織女の袖継ぐ宵の暁は川瀬の鶴は鳴かずともよし","#[仮名],たなばたの,そでつぐよひの,あかときは,かはせのたづは,なかずともよし","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:湯原王,七夕","#[訓異]
たなばたの,[寛]たなはたの,
そでつぐよひの,[寛]そてつくよるの,
あかときは,[寛]あかつきは,
かはせのたづは,[寛]かはせのたつは,
なかずともよし,[寛]なかすともよし,
" "#[番号]08/1546","#[題詞]市原王七夕歌一首","#[原文]妹許登 吾去道乃 河有者 附目緘結跡 夜更降家類","#[訓読]妹がりと我が行く道の川しあればつくめ結ぶと夜ぞ更けにける","#[仮名],いもがりと,わがゆくみちの,かはしあれば,つくめむすぶと,よぞふけにける","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:市原王,七夕","#[訓異]
いもがりと,[寛]いもかりと,
わがゆくみちの,[寛]わかゆくみちの,
かはしあれば,[寛]かはのあれは,
つくめむすぶと,[寛]ひとめつつむと,
よぞふけにける,[寛]よそふけにける,
" "#[番号]08/1547","#[題詞]藤原朝臣八束歌一首","#[原文]棹四香能 芽二貫置有 露之白珠 相佐和仁 誰人可毛 手尓将巻知布","#[訓読]さを鹿の萩に貫き置ける露の白玉あふさわに誰れの人かも手に巻かむちふ","#[仮名],さをしかの,はぎにぬきおける,つゆのしらたま,あふさわに,たれのひとかも,てにまかむちふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:藤原八束,旋頭歌,比喩,恋歌,動物","#[訓異]
さをしかの[寛],
はぎにぬきおける,[寛]はきにぬきをける,
つゆのしらたま[寛],
あふさわに[寛],
たれのひとかも[寛],
てにまかむちふ[寛],
" "#[番号]08/1548","#[題詞]大伴坂上郎女晩芽子歌一首","#[原文]咲花毛 <乎曽>呂波Q 奥手有 長意尓 尚不如家里","#[訓読]咲く花もをそろはいとはしおくてなる長き心になほしかずけり","#[仮名],さくはなも,をそろはいとはし,おくてなる,ながきこころに,なほしかずけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 宇都 -> 乎曽 [類][紀]","#[事項],秋雑歌,作者:坂上郎女,比喩,恋歌","#[訓異]
さくはなも[寛],
をそろはいとはし,[寛]うつろはうきを,
おくてなる[寛],
ながきこころに,[寛]なかきこころに,
なほしかずけり,[寛]なをしかすけり,
" "#[番号]08/1549","#[題詞]典鑄正紀朝臣鹿人至衛門大尉大伴宿祢稲公跡見庄作歌一首","#[原文]射目立而 跡見乃岳邊之 瞿麦花 總手折 吾者将去 寧樂人之為","#[訓読]射目立てて跡見の岡辺のなでしこの花ふさ手折り我れは持ちて行く奈良人のため","#[仮名],いめたてて,とみのをかへの,なでしこのはな,ふさたをり,われはもちてゆく,ならひとのため","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:紀鹿人,大伴稲公,奈良県,桜井市,みやげ,別れ歌,地名,植物,旋頭歌","#[訓異]
いめたてて[寛],
とみのをかへの[寛],
なでしこのはな,[寛]なてしこのはな,
ふさたをり[寛],
われはもちてゆく,[寛]われはもていなむ,
ならひとのため[寛],
" "#[番号]08/1550","#[題詞]湯原王鳴鹿歌一首","#[原文]秋芽之 落乃乱尓 呼立而 鳴奈流鹿之 音遥者","#[訓読]秋萩の散りの乱ひに呼びたてて鳴くなる鹿の声の遥けさ","#[仮名],あきはぎの,ちりのまがひに,よびたてて,なくなるしかの,こゑのはるけさ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:湯原王,植物,動物,叙景","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
ちりのまがひに,[寛]ちりのまかひに,
よびたてて,[寛]よひたてて,
なくなるしかの[寛],
こゑのはるけさ[寛],
" "#[番号]08/1551","#[題詞]市原王歌一首","#[原文]待時而 落<鍾>礼能 <雨>零収 開朝香 山之将黄變","#[訓読]時待ちて降れるしぐれの雨やみぬ明けむ朝か山のもみたむ","#[仮名],ときまちて,ふれるしぐれの,あめやみぬ,あけむあしたか,やまのもみたむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 鐘 -> 鍾 [類][温][矢] / 雨令 -> 雨 [万葉集新考]","#[事項],秋雑歌,作者:市原王,季節","#[訓異]
ときまちて[寛],
ふれるしぐれの,[寛]おつるしくれの,
あめやみぬ,[寛]あめやみて,
あけむあしたか,[寛]あさかのやまの,
やまのもみたむ,[寛]うつろひぬらむ,
" "#[番号]08/1552","#[題詞]湯原王蟋蟀歌一首","#[原文]暮月夜 心毛思努尓 白露乃 置此庭尓 蟋蟀鳴毛","#[訓読]夕月夜心もしのに白露の置くこの庭にこほろぎ鳴くも","#[仮名],ゆふづくよ,こころもしのに,しらつゆの,おくこのにはに,こほろぎなくも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:湯原王,動物,季節,叙景","#[訓異]
ゆふづくよ,[寛]ゆふつくよ,
こころもしのに[寛],
しらつゆの[寛],
おくこのにはに[寛],
こほろぎなくも,[寛]きりきりすなくも,
" "#[番号]08/1553","#[題詞]衛門大尉大伴宿祢稲公歌一首","#[原文]<鍾>礼能雨 無間零者 三笠山 木末歴 色附尓家里","#[訓読]時雨の雨間なくし降れば御笠山木末あまねく色づきにけり","#[仮名],しぐれのあめ,まなくしふれば,みかさやま,こぬれあまねく,いろづきにけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 鐘 -> 鍾 [類]","#[事項],秋雑歌,作者:大伴稲公,奈良,地名,季節","#[訓異]
しぐれのあめ,[寛]しくれのあめ,
まなくしふれば,[寛]まなくしふれは,
みかさやま[寛],
こぬれあまねく,[寛]こすゑあまねく,
いろづきにけり,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]08/1554","#[題詞]大伴家持和歌一首","#[原文]皇之 御笠乃山能 秋黄葉 今日之<鍾>礼尓 散香過奈牟","#[訓読]大君の御笠の山の黄葉は今日の時雨に散りか過ぎなむ","#[仮名],おほきみの,みかさのやまの,もみちばは,けふのしぐれに,ちりかすぎなむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 鐘 -> 鍾 [類]","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,奈良,地名,植物","#[訓異]
おほきみの[寛],
みかさのやまの[寛],
もみちばは,[寛]もみちはは,
けふのしぐれに,[寛]けふのしくれに,
ちりかすぎなむ,[寛]ちりかすきなむ,
" "#[番号]08/1555","#[題詞]安貴王歌一首","#[原文]秋立而 幾日毛不有者 此宿流 朝開之風者 手本寒母","#[訓読]秋立ちて幾日もあらねばこの寝ぬる朝明の風は手本寒しも","#[仮名],あきたちて,いくかもあらねば,このねぬる,あさけのかぜは,たもとさむしも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:安貴王,季節,恋情","#[訓異]
あきたちて[寛],
いくかもあらねば,[寛]いくかもあらねは,
このねぬる[寛],
あさけのかぜは,[寛]あさけのかせは,
たもとさむしも[寛],
" "#[番号]08/1556","#[題詞]忌部首黒麻呂歌一首","#[原文]秋田苅 借蘆毛未壊者 鴈鳴寒 霜毛置奴我二","#[訓読]秋田刈る仮廬もいまだ壊たねば雁が音寒し霜も置きぬがに","#[仮名],あきたかる,かりいほもいまだ,こほたねば,かりがねさむし,しももおきぬがに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:忌部黒麻呂,動物,季節","#[訓異]
あきたかる[寛],
かりいほもいまだ,[寛]かりいほもいまた,
こほたねば,[寛]こほたねは,
かりがねさむし,[寛]かりかねさむし,
しももおきぬがに,[寛]しももおきぬかに,
" "#[番号]08/1557","#[題詞]故郷豊浦寺之尼私房宴歌三首","#[原文]明日香河 逝廻<丘>之 秋芽<子>者 今日零雨尓 落香過奈牟","#[訓読]明日香川行き廻る岡の秋萩は今日降る雨に散りか過ぎなむ","#[仮名],あすかがは,ゆきみるをかの,あきはぎは,けふふるあめに,ちりかすぎなむ","#[左注]右一首丹比真人國人","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 -> 謌 / 岳 -> 丘 [類][紀] / <> -> 子 [類][紀][温]","#[事項],秋雑歌,作者:丹比国人,飛鳥,宴席,豊浦寺,尼,地名,植物,季節","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
ゆきみるをかの,[寛]ゆききのをかの,
あきはぎは,[寛]あきはきは,
けふふるあめに[寛],
ちりかすぎなむ,[寛]ちりかすきなむ,
" "#[番号]08/1558","#[題詞](故郷豊浦寺之尼私房宴歌三首)","#[原文]鶉鳴 古郷之 秋芽子乎 思人共 相見都流可聞","#[訓読]鶉鳴く古りにし里の秋萩を思ふ人どち相見つるかも","#[仮名],うづらなく,ふりにしさとの,あきはぎを,おもふひとどち,あひみつるかも","#[左注](右二首沙弥尼等)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:沙弥尼,飛鳥,宴席,豊浦寺,動物,植物","#[訓異]
うづらなく,[寛]うつらなく,
ふりにしさとの[寛],
あきはぎを,[寛]あきはきを,
おもふひとどち,[寛]おもふひととち,
あひみつるかも[寛],
" "#[番号]08/1559","#[題詞](故郷豊浦寺之尼私房宴歌三首)","#[原文]秋芽子者 盛過乎 徒尓 頭刺不挿 還去牟跡哉","#[訓読]秋萩は盛り過ぐるをいたづらにかざしに挿さず帰りなむとや","#[仮名],あきはぎは,さかりすぐるを,いたづらに,かざしにささず,かへりなむとや","#[左注]右二首沙弥尼等","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:沙弥尼,飛鳥,宴席,豊浦寺,植物","#[訓異]
あきはぎは,[寛]あきはきは,
さかりすぐるを,[寛]さかりすくるを,
いたづらに,[寛]いたつらに,
かざしにささず,[寛]かさしにささて,
かへりなむとや[寛],
" "#[番号]08/1560","#[題詞]大伴坂上郎女跡見田庄作歌二首","#[原文]妹目乎 始見之埼乃 秋芽子者 此月其呂波 落許須莫湯目","#[訓読]妹が目を始見の崎の秋萩はこの月ごろは散りこすなゆめ","#[仮名],いもがめを,**みのさきの,あきはぎは,このつきごろは,ちりこすなゆめ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:坂上郎女,奈良県,桜井市,植物","#[訓異]
いもがめを,[寛]いもかめを,
**みのさきの,[寛]みそめしさきの,
あきはぎは,[寛]あきはきは,
このつきごろは,[寛]このつきころは,
ちりこすなゆめ[寛],
" "#[番号]08/1561","#[題詞](大伴坂上郎女跡見田庄作歌二首)","#[原文]吉名張乃 猪養山尓 伏鹿之 嬬呼音乎 聞之登聞思佐","#[訓読]吉隠の猪養の山に伏す鹿の妻呼ぶ声を聞くが羨しさ","#[仮名],よなばりの,ゐかひのやまに,ふすしかの,つまよぶこゑを,きくがともしさ","#[左注]","#[校異]聞 [類][紀](塙) 門","#[事項],秋雑歌,作者:坂上郎女,奈良県,桜井市,地名,動物","#[訓異]
よなばりの,[寛]ふなはりの,
ゐかひのやまに,[寛]さかひのやまに,
ふすしかの[寛],
つまよぶこゑを,[寛]つまよふこゑを,
きくがともしさ,[寛]きくかともしさ,
" "#[番号]08/1562","#[題詞]巫部麻蘇娘子鴈歌一首","#[原文]誰聞都 従此間鳴渡 鴈鳴乃 嬬呼音乃 <乏>知<在><乎>","#[訓読]誰れ聞きつこゆ鳴き渡る雁がねの妻呼ぶ声の羨しくもあるか","#[仮名],たれききつ,こゆなきわたる,かりがねの,つまよぶこゑの,ともしくもあるか","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 之 -> 乏 [万葉集略解] / 左 -> 在 [万葉集略解] / 守 -> 乎 [定本]","#[事項],秋雑歌,作者:巫部麻蘇娘子,恋情,恋歌,大伴家持,動物","#[訓異]
たれききつ[寛],
こゆなきわたる[寛],
かりがねの,[寛]かりかねの,
つまよぶこゑの,[寛]つまよふこゑの,
ともしくもあるか,[寛]ゆくをしらさす,
" "#[番号]08/1563","#[題詞]大伴家持和歌一首","#[原文]聞津哉登 妹之問勢流 鴈鳴者 真毛遠 雲隠奈利","#[訓読]聞きつやと妹が問はせる雁が音はまことも遠く雲隠るなり","#[仮名],ききつやと,いもがとはせる,かりがねは,まこともとほく,くもがくるなり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,和歌,巫部麻蘇娘子,恋歌,比喩,動物","#[訓異]
ききつやと[寛],
いもがとはせる,[寛]いものとはせる,
かりがねは,[寛]かりかねは,
まこともとほく[寛],
くもがくるなり,[寛]くもかくるなり,
" "#[番号]08/1564","#[題詞]<日>置長枝娘子歌一首","#[原文]秋付者 尾花我上尓 置露乃 應消毛吾者 所念香聞","#[訓読]秋づけば尾花が上に置く露の消ぬべくも我は思ほゆるかも","#[仮名],あきづけば,をばながうへに,おくつゆの,けぬべくもわは,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]曰 -> 日 [紀][細][温] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:日置長枝娘子,大伴家持,恋歌,恋情,植物","#[訓異]
あきづけば,[寛]あきつけは,
をばながうへに,[寛]をはなかうへに,
おくつゆの[寛],
けぬべくもわは,[寛]けぬへくもわれは,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]08/1565","#[題詞]大伴家持和歌一首","#[原文]吾屋戸乃 一村芽子乎 念兒尓 不令見殆 令散都類香聞","#[訓読]我が宿の一群萩を思ふ子に見せずほとほと散らしつるかも","#[仮名],わがやどの,ひとむらはぎを,おもふこに,みせずほとほと,ちらしつるかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,日置長枝娘子,恋歌,恋情,比喩,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとを,
ひとむらはぎを,[寛]ひとむらはきを,
おもふこに[寛],
みせずほとほと,[寛]みせてほとほと,
ちらしつるかも,[寛]ちらせつるかも,
" "#[番号]08/1566","#[題詞]大伴家持秋歌四首","#[原文]久堅之 雨間毛不置 雲隠 鳴曽去奈流 早田鴈之哭","#[訓読]久方の雨間も置かず雲隠り鳴きぞ行くなる早稲田雁がね","#[仮名],ひさかたの,あままもおかず,くもがくり,なきぞゆくなる,わさだかりがね","#[左注](右四首天平八年丙子秋九月作)","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,天平8年9月,年紀,動物,季節,叙景","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あままもおかず,[寛]あままもおかす,
くもがくり,[寛]くもかくれ,
なきぞゆくなる,[寛]なきそゆくなる,
わさだかりがね,[寛]わさたかりかね,
" "#[番号]08/1567","#[題詞](大伴家持秋歌四首)","#[原文]雲隠 鳴奈流鴈乃 去而将居 秋田之穂立 繁之所念","#[訓読]雲隠り鳴くなる雁の行きて居む秋田の穂立繁くし思ほゆ","#[仮名],くもがくり,なくなるかりの,ゆきてゐむ,あきたのほたち,しげくしおもほゆ","#[左注](右四首天平八年丙子秋九月作)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,天平8年9月,年紀,動物","#[訓異]
くもがくり,[寛]くもかくれ,
なくなるかりの[寛],
ゆきてゐむ,[寛]ゆきていむ,
あきたのほたち[寛],
しげくしおもほゆ,[寛]しけくしそおもふ,
" "#[番号]08/1568","#[題詞](大伴家持秋歌四首)","#[原文]雨隠 情欝悒 出見者 春日山者 色付二家利","#[訓読]雨隠り心いぶせみ出で見れば春日の山は色づきにけり","#[仮名],あまごもり,こころいぶせみ,いでみれば,かすがのやまは,いろづきにけり","#[左注](右四首天平八年丙子秋九月作)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,鬱屈,奈良,雨隠,天平8年9月,年紀,地名,季節","#[訓異]
あまごもり,[寛]あまこもり,
こころいぶせみ,[寛]こころゆかしみ,
いでみれば,[寛]いてみれは,
かすがのやまは,[寛]かすかのやまは,
いろづきにけり,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]08/1569","#[題詞](大伴家持秋歌四首)","#[原文]雨晴而 清照有 此月夜 又更而 雲勿田菜引","#[訓読]雨晴れて清く照りたるこの月夜またさらにして雲なたなびき","#[仮名],あめはれて,きよくてりたる,このつくよ,またさらにして,くもなたなびき","#[左注]右四首天平八年丙子秋九月作","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,天平8年9月,年紀","#[訓異]
あめはれて[寛],
きよくてりたる,[寛]きよくてらせる,
このつくよ,[寛]このつきよ,
またさらにして[寛],
くもなたなびき,[寛]くもなたなひき,
" "#[番号]08/1570","#[題詞]藤原朝臣八束歌二首","#[原文]此間在而 春日也何處 雨障 出而不行者 戀乍曽乎流","#[訓読]ここにありて春日やいづち雨障み出でて行かねば恋ひつつぞ居る","#[仮名],ここにありて,かすがやいづち,あまつつみ,いでてゆかねば,こひつつぞをる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:藤原八束,奈良,鬱屈,雨隠,地名,恋情","#[訓異]
ここにありて[寛],
かすがやいづち,[寛]かすかやいつこ,
あまつつみ,[寛]あまさはり,
いでてゆかねば,[寛]いててゆかねは,
こひつつぞをる,[寛]こひつつそをる,
" "#[番号]08/1571","#[題詞](藤原朝臣八束歌二首)","#[原文]春日野尓 <鍾>礼零所見 明日従者 黄葉頭刺牟 高圓乃山","#[訓読]春日野に時雨降る見ゆ明日よりは黄葉かざさむ高円の山","#[仮名],かすがのに,しぐれふるみゆ,あすよりは,もみちかざさむ,たかまとのやま","#[左注]","#[校異]鐘 -> 鍾 [類]","#[事項],秋雑歌,作者:藤原八束,奈良,地名","#[訓異]
かすがのに,[寛]かすかのに,
しぐれふるみゆ,[寛]しくれふるみゆ,
あすよりは[寛],
もみちかざさむ,[寛]もみちかささむ,
たかまとのやま[寛],
" "#[番号]08/1572","#[題詞]大伴家持白露歌一首","#[原文]吾屋戸乃 草花上之 白露乎 不令消而玉尓 貫物尓毛我","#[訓読]我が宿の尾花が上の白露を消たずて玉に貫くものにもが","#[仮名],わがやどの,をばながうへの,しらつゆを,けたずてたまに,ぬくものにもが","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
をばながうへの,[寛]をはなかうへの,
しらつゆを[寛],
けたずてたまに,[寛]けたすてたまに,
ぬくものにもが,[寛]ぬくものにもか,
" "#[番号]08/1573","#[題詞]大伴利上歌一首","#[原文]秋之雨尓 所沾乍居者 雖賎 吾妹之屋戸志 所念香聞","#[訓読]秋の雨に濡れつつ居ればいやしけど我妹が宿し思ほゆるかも","#[仮名],あきのあめに,ぬれつつをれば,いやしけど,わぎもがやどし,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:大伴利上,恋情","#[訓異]
あきのあめに[寛],
ぬれつつをれば,[寛]ぬれつつをれは,
いやしけど,[寛]やしけれと,
わぎもがやどし,[寛]わきもかやとし,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]08/1574","#[題詞]右大臣橘家宴歌七首","#[原文]雲上尓 鳴奈流鴈之 雖遠 君将相跡 手廻来津","#[訓読]雲の上に鳴くなる雁の遠けども君に逢はむとた廻り来つ","#[仮名],くものうへに,なくなるかりの,とほけども,きみにあはむと,たもとほりきつ","#[左注](右二首)( / 天平十年戊寅秋八月廿日)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,宴席,橘諸兄,天平10年8月20日,年紀,動物","#[訓異]
くものうへに[寛],
なくなるかりの[寛],
とほけども,[寛]とほけれと,
きみにあはむと[寛],
たもとほりきつ,[寛]たもとほりきつむ,
" "#[番号]08/1575","#[題詞](右大臣橘家宴歌七首)","#[原文]雲上尓 鳴都流鴈乃 寒苗 芽子乃下葉者 黄變可毛","#[訓読]雲の上に鳴きつる雁の寒きなへ萩の下葉はもみちぬるかも","#[仮名],くものうへに,なきつるかりの,さむきなへ,はぎのしたばは,もみちぬるかも","#[左注]右二首( / 天平十年戊寅秋八月廿日)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,宴席,橘諸兄,天平10年8月20日,年紀,植物","#[訓異]
くものうへに[寛],
なきつるかりの[寛],
さむきなへ[寛],
はぎのしたばは,[寛]はきのしたはは,
もみちぬるかも,[寛]うつろはかも,
" "#[番号]08/1576","#[題詞](右大臣橘家宴歌七首)","#[原文]此岳尓 小<壮>鹿履起 宇加O良比 可聞可<聞>為良久 君故尓許曽","#[訓読]この岡に小鹿踏み起しうかねらひかもかもすらく君故にこそ","#[仮名],このをかに,をしかふみおこし,うかねらひ,かもかもすらく,きみゆゑにこそ","#[左注]右一首長門守巨曽倍朝臣津嶋( / 天平十年戊寅秋八月廿日)","#[校異]牡 -> 壮 [定本] / 開 -> 聞 [代匠記精撰本]","#[事項],秋雑歌,作者:巨曽倍津嶋,宴席,橘諸兄,天平10年8月20日,年紀,主人讃美,動物","#[訓異]
このをかに[寛],
をしかふみおこし[寛],
うかねらひ[寛],
かもかもすらく,[寛]かもかくすらく,
きみゆゑにこそ,[寛]きみゆへにこそ,
" "#[番号]08/1577","#[題詞](右大臣橘家宴歌七首)","#[原文]秋野之 草花我末乎 押靡而 来之久毛知久 相流君可聞","#[訓読]秋の野の尾花が末を押しなべて来しくもしるく逢へる君かも","#[仮名],あきののの,をばながうれを,おしなべて,こしくもしるく,あへるきみかも","#[左注](右二首阿倍朝臣蟲麻呂)( / 天平十年戊寅秋八月廿日)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:阿倍虫麻呂,宴席,橘諸兄,天平10年8月20日,年紀,主人讃美,植物","#[訓異]
あきののの[寛],
をばながうれを,[寛]をはなかすゑを,
おしなべて,[寛]おしなへて,
こしくもしるく[寛],
あへるきみかも[寛],
" "#[番号]08/1578","#[題詞](右大臣橘家宴歌七首)","#[原文]今朝鳴而 行之鴈鳴 寒可聞 此野乃淺茅 色付尓家類","#[訓読]今朝鳴きて行きし雁が音寒みかもこの野の浅茅色づきにける","#[仮名],けさなきて,ゆきしかりがね,さむみかも,このののあさぢ,いろづきにける","#[左注]右二首阿倍朝臣蟲麻呂( / 天平十年戊寅秋八月廿日)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:阿倍虫麻呂,宴席,橘諸兄,天平10年8月20日,年紀,主人讃美,動物","#[訓異]
けさなきて,[寛]あさなきて,
ゆきしかりがね,[寛]ゆきしかりかね,
さむみかも[寛],
このののあさぢ,[寛]こののあさち,
いろづきにける,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]08/1579","#[題詞](右大臣橘家宴歌七首)","#[原文]朝扉開而 物念時尓 白露乃 置有秋芽子 所見喚鶏本名","#[訓読]朝戸開けて物思ふ時に白露の置ける秋萩見えつつもとな","#[仮名],あさとあけて,ものもふときに,しらつゆの,おけるあきはぎ,みえつつもとな","#[左注](右二首文忌寸馬養 / 天平十年戊寅秋八月廿日)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:文馬養,宴席,橘諸兄,天平10年8月20日,年紀,植物","#[訓異]
あさとあけて[寛],
ものもふときに,[寛]ものおもふときに,
しらつゆの[寛],
おけるあきはぎ,[寛]おけるあきはき,
みえつつもとな[寛],
" "#[番号]08/1580","#[題詞](右大臣橘家宴歌七首)","#[原文]棹<壮>鹿之 来立鳴野之 秋芽子者 露霜負而 落去之物乎","#[訓読]さを鹿の来立ち鳴く野の秋萩は露霜負ひて散りにしものを","#[仮名],さをしかの,きたちなくのの,あきはぎは,つゆしもおひて,ちりにしものを","#[左注]右二首文忌寸馬養 / 天平十年戊寅秋八月廿日","#[校異]牡 -> 壮 [紀]","#[事項],秋雑歌,作者:文馬養,宴席,橘諸兄,天平10年8月20日,年紀,動物,植物","#[訓異]
さをしかの[寛],
きたちなくのの[寛],
あきはぎは,[寛]あきはきは,
つゆしもおひて[寛],
ちりにしものを[寛],
" "#[番号]08/1581","#[題詞]橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首","#[原文]不手折而 落者惜常 我念之 秋黄葉乎 挿頭鶴鴨","#[訓読]手折らずて散りなば惜しと我が思ひし秋の黄葉をかざしつるかも","#[仮名],たをらずて,ちりなばをしと,わがおもひし,あきのもみちを,かざしつるかも","#[左注](右二首橘朝臣奈良麻呂)( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)","#[校異]朝臣 [類] 宿祢 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,植物","#[訓異]
たをらずて,[寛]たをらすて,
ちりなばをしと,[寛]ちりなはをしと,
わがおもひし,[寛]わかおもひし,
あきのもみちを[寛],
かざしつるかも,[寛]かさしつるかも,
" "#[番号]08/1582","#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)","#[原文]<希>将見 人尓令見跡 黄葉乎 手折曽我来師 雨零久仁","#[訓読]めづらしき人に見せむと黄葉を手折りぞ我が来し雨の降らくに","#[仮名],めづらしき,ひとにみせむと,もみちばを,たをりぞわがこし,あめのふらくに","#[左注]右二首橘朝臣奈良麻呂( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)","#[校異]布 -> 希 [万葉集略解]","#[事項],秋雑歌,作者:橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,植物","#[訓異]
めづらしき,[寛]しきてみむ,
ひとにみせむと[寛],
もみちばを,[寛]もみちはを,
たをりぞわがこし,[寛]たをりそわかこし,
あめのふらくに[寛],
" "#[番号]08/1583","#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)","#[原文]黄葉乎 令落<鍾>礼尓 所沾而来而 君之黄葉乎 挿頭鶴鴨","#[訓読]黄葉を散らす時雨に濡れて来て君が黄葉をかざしつるかも","#[仮名],もみちばを,ちらすしぐれに,ぬれてきて,きみがもみちを,かざしつるかも","#[左注]右一首久米女王( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)","#[校異]鐘 -> 鍾 [定本]","#[事項],秋雑歌,作者:久米女王,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,植物","#[訓異]
もみちばを,[寛]もみちはを,
ちらすしぐれに,[寛]ちらすしくれに,
ぬれてきて[寛],
きみがもみちを,[寛]きみかもみちを,
かざしつるかも,[寛]かさしつるかも,
" "#[番号]08/1584","#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)","#[原文]<希>将見跡 吾念君者 秋山<乃> 始<黄>葉尓 似許曽有家礼","#[訓読]めづらしと我が思ふ君は秋山の初黄葉に似てこそありけれ","#[仮名],めづらしと,あがおもふきみは,あきやまの,はつもみちばに,にてこそありけれ","#[左注]右一首長忌寸娘( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)","#[校異]布 -> 希 [万葉集略解] / <> -> 乃 [類][紀][温][矢] / <> -> 黄 [西(右書)][類][紀][細]","#[事項],秋雑歌,作者:長娘,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,主人讃美,植物","#[訓異]
めづらしと,[寛]しきてみむと,
あがおもふきみは,[寛]わかおもふきみは,
あきやまの[寛],
はつもみちばに,[寛]はつもみちはに,
にてこそありけれ[寛],
" "#[番号]08/1585","#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)","#[原文]平山乃 峯之黄葉 取者落 <鍾>礼能雨師 無間零良志","#[訓読]奈良山の嶺の黄葉取れば散る時雨の雨し間なく降るらし","#[仮名],ならやまの,みねのもみちば,とればちる,しぐれのあめし,まなくふるらし","#[左注]右一首内舎人縣犬養宿祢吉男( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)","#[校異]鐘 -> 鍾 [類]","#[事項],秋雑歌,作者:縣犬養吉男,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,地名,植物,奈良","#[訓異]
ならやまの,[寛]ひらやまの,
みねのもみちば,[寛]みねのもみちは,
とればちる,[寛]とれはちる,
しぐれのあめし,[寛]しくれのあめし,
まなくふるらし[寛],
" "#[番号]08/1586","#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)","#[原文]黄葉乎 落巻惜見 手折来而 今夜挿頭津 何物可将念","#[訓読]黄葉を散らまく惜しみ手折り来て今夜かざしつ何か思はむ","#[仮名],もみちばを,ちらまくをしみ,たをりきて,こよひかざしつ,なにかおもはむ","#[左注]右一首縣犬養宿祢持男( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:縣犬養持男,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,植物","#[訓異]
もみちばを,[寛]もみちはを,
ちらまくをしみ[寛],
たをりきて[寛],
こよひかざしつ,[寛]こよひかさしつ,
なにかおもはむ[寛],
" "#[番号]08/1587","#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)","#[原文]足引乃 山之黄葉 今夜毛加 浮去良武 山河之瀬尓","#[訓読]あしひきの山の黄葉今夜もか浮かび行くらむ山川の瀬に","#[仮名],あしひきの,やまのもみちば,こよひもか,うかびゆくらむ,やまがはのせに","#[左注]右一首大伴宿祢書持( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:大伴書持,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,植物","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまのもみちば,[寛]やまのもみちは,
こよひもか[寛],
うかびゆくらむ,[寛]うきていぬらむ,
やまがはのせに,[寛]やまかはのせに,
" "#[番号]08/1588","#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)","#[原文]平山乎 令丹黄葉 手折来而 今夜挿頭都 落者雖落","#[訓読]奈良山をにほはす黄葉手折り来て今夜かざしつ散らば散るとも","#[仮名],ならやまを,にほはすもみち,たをりきて,こよひかざしつ,ちらばちるとも","#[左注]右一首<三>手代人名( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)","#[校異]之 -> 三 [細]","#[事項],秋雑歌,作者:三手代人名,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,地名,奈良,植物","#[訓異]
ならやまを[寛],
にほはすもみち,[寛]にほすもみちは,
たをりきて[寛],
こよひかざしつ,[寛]こよひかさしつ,
ちらばちるとも,[寛]ちらはちるとも,
" "#[番号]08/1589","#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)","#[原文]露霜尓 逢有黄葉乎 手折来而 妹挿頭都 後者落十方","#[訓読]露霜にあへる黄葉を手折り来て妹とかざしつ後は散るとも","#[仮名],つゆしもに,あへるもみちを,たをりきて,いもはかざしつ,のちはちるとも","#[左注]右一首秦許遍麻呂( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:秦許遍麻呂,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,植物","#[訓異]
つゆしもに[寛],
あへるもみちを[寛],
たをりきて[寛],
いもはかざしつ,[寛]いもにかさしつ,
のちはちるとも[寛],
" "#[番号]08/1590","#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)","#[原文]十月 <鍾>礼尓相有 黄葉乃 吹者将落 風之随","#[訓読]十月時雨にあへる黄葉の吹かば散りなむ風のまにまに","#[仮名],かむなづき,しぐれにあへる,もみちばの,ふかばちりなむ,かぜのまにまに","#[左注]右一首大伴宿祢池主( / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也)","#[校異]鐘 -> 鍾 [類]","#[事項],秋雑歌,作者:大伴池主,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,植物","#[訓異]
かむなづき,[寛]かみなつき,
しぐれにあへる,[寛]しくれにあへる,
もみちばの,[寛]もみちはの,
ふかばちりなむ,[寛]ふかはちりなむ,
かぜのまにまに,[寛]かせのまにまに,
" "#[番号]08/1591","#[題詞](橘朝臣奈良麻呂結集宴歌十一首)","#[原文]黄葉乃 過麻久惜美 思共 遊今夜者 不開毛有奴香","#[訓読]黄葉の過ぎまく惜しみ思ふどち遊ぶ今夜は明けずもあらぬか","#[仮名],もみちばの,すぎまくをしみ,おもふどち,あそぶこよひは,あけずもあらぬか","#[左注]右一首内舎人大伴宿祢家持 / 以前冬十月十七日集於右大臣橘卿之舊宅宴飲也","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,橘奈良麻呂,宴席,天平10年10月17日,年紀,植物","#[訓異]
もみちばの,[寛]もみちはの,
すぎまくをしみ,[寛]すきまくをしみ,
おもふどち,[寛]おもふとち,
あそぶこよひは,[寛]あそふこよひは,
あけずもあらぬか,[寛]あけすもあらぬか,
" "#[番号]08/1592","#[題詞]大伴坂上郎女竹田庄作歌二首","#[原文]然不有 五百代小田乎 苅乱 田蘆尓居者 京師所念","#[訓読]しかとあらぬ五百代小田を刈り乱り田廬に居れば都し思ほゆ","#[仮名],しかとあらぬ,いほしろをだを,かりみだり,たぶせにをれば,みやこしおもほゆ","#[左注](右天平十一年己卯秋九月作)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:坂上郎女,奈良県,桜井市,望郷,天平11年9月,年紀,地名","#[訓異]
しかとあらぬ,[寛]たたならす,
いほしろをだを,[寛]いほしろをたを,
かりみだり,[寛]かりみたり,
たぶせにをれば,[寛]たふせにをれは,
みやこしおもほゆ[寛],
" "#[番号]08/1593","#[題詞](大伴坂上郎女竹田庄作歌二首)","#[原文]隠口乃 始瀬山者 色附奴 <鍾>礼乃雨者 零尓家良思母","#[訓読]隠口の泊瀬の山は色づきぬ時雨の雨は降りにけらしも","#[仮名],こもりくの,はつせのやまは,いろづきぬ,しぐれのあめは,ふりにけらしも","#[左注]右天平十一年己卯秋九月作","#[校異]鐘 -> 鍾 [類][矢]","#[事項],秋雑歌,作者:坂上郎女,奈良県,桜井市,天平11年9月,年紀,季節","#[訓異]
こもりくの[寛],
はつせのやまは[寛],
いろづきぬ,[寛]いろつきぬ,
しぐれのあめは,[寛]しくれのあめは,
ふりにけらしも[寛],
" "#[番号]08/1594","#[題詞]佛前唱歌一首","#[原文]思具礼能雨 無間莫零 紅尓 丹保敝流山之 落巻惜毛","#[訓読]時雨の雨間なくな降りそ紅ににほへる山の散らまく惜しも","#[仮名],しぐれのあめ,まなくなふりそ,くれなゐに,にほへるやまの,ちらまくをしも","#[左注]右冬十月皇后宮之維摩講 終日供養大唐高麗等種々音樂 尓乃唱此歌詞 弾琴者市原王 忍坂王[後賜姓大原真人赤麻呂也] 歌子者田口朝臣家守 河邊朝臣東人 置始連長谷等十數人也","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 謌 [温][矢][京] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,天平11年10月,年紀,光明皇后,誦唱","#[訓異]
しぐれのあめ,[寛]しくれのあめ,
まなくなふりそ[寛],
くれなゐに[寛],
にほへるやまの[寛],
ちらまくをしも[寛],
" "#[番号]08/1595","#[題詞]大伴宿祢像見歌一首","#[原文]秋芽子乃 枝毛十尾二 降露乃 消者雖消 色出目八方","#[訓読]秋萩の枝もとををに置く露の消なば消ぬとも色に出でめやも","#[仮名],あきはぎの,えだもとををに,おくつゆの,けなばけぬとも,いろにいでめやも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:大伴像見,恋愛,植物","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
えだもとををに,[寛]えたもとををに,
おくつゆの[寛],
けなばけぬとも,[寛]けなはけぬとも,
いろにいでめやも,[寛]いろにいてめやも,
" "#[番号]08/1596","#[題詞]大伴宿祢家持到娘子門作歌一首","#[原文]妹家之 門田乎見跡 打出来之 情毛知久 照月夜鴨","#[訓読]妹が家の門田を見むとうち出で来し心もしるく照る月夜かも","#[仮名],いもがいへの,かどたをみむと,うちいでこし,こころもしるく,てるつくよかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,恋愛,恋情","#[訓異]
いもがいへの,[寛]いもかいへの,
かどたをみむと,[寛]かとたをみむと,
うちいでこし,[寛]うちいてこし,
こころもしるく[寛],
てるつくよかも,[寛]てるつきよかも,
" "#[番号]08/1597","#[題詞]大伴宿祢家持秋歌三首","#[原文]秋野尓 開流秋芽子 秋風尓 靡流上尓 秋露置有","#[訓読]秋の野に咲ける秋萩秋風に靡ける上に秋の露置けり","#[仮名],あきののに,さけるあきはぎ,あきかぜに,なびけるうへに,あきのつゆおけり","#[左注](右天平十五年癸未秋八月見物色作)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,天平15年8月,年紀,植物,季節","#[訓異]
あきののに[寛],
さけるあきはぎ,[寛]さけりあきはき,
あきかぜに,[寛]あきかせに,
なびけるうへに,[寛]なひけるうへに,
あきのつゆおけり[寛],
" "#[番号]08/1598","#[題詞](大伴宿祢家持秋歌三首)","#[原文]棹<壮>鹿之 朝立野邊乃 秋芽子尓 玉跡見左右 置有白露","#[訓読]さを鹿の朝立つ野辺の秋萩に玉と見るまで置ける白露","#[仮名],さをしかの,あさたつのへの,あきはぎに,たまとみるまで,おけるしらつゆ","#[左注](右天平十五年癸未秋八月見物色作)","#[校異]牡 -> 壮 [紀]","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,天平15年8月,年紀,動物,植物","#[訓異]
さをしかの[寛],
あさたつのへの[寛],
あきはぎに,[寛]あきはきに,
たまとみるまで,[寛]たまとみるまて,
おけるしらつゆ[寛],
" "#[番号]08/1599","#[題詞](大伴宿祢家持秋歌三首)","#[原文]狭尾<壮>鹿乃 胸別尓可毛 秋芽子乃 散過鶏類 盛可毛行流","#[訓読]さを鹿の胸別けにかも秋萩の散り過ぎにける盛りかも去ぬる","#[仮名],さをしかの,むなわけにかも,あきはぎの,ちりすぎにける,さかりかもいぬる","#[左注]右天平十五年癸未秋八月見物色作","#[校異]牡 -> 壮 [紀]","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,天平15年8月,年紀,動物,植物","#[訓異]
さをしかの[寛],
むなわけにかも,[寛]むねわけにかも,
あきはぎの,[寛]あきはきの,
ちりすぎにける,[寛]ちりすきにける,
さかりかもいぬる[寛],
" "#[番号]08/1600","#[題詞]内舎人石川朝臣廣成歌二首","#[原文]妻戀尓 鹿鳴山邊之 秋芽子者 露霜寒 盛須疑由君","#[訓読]妻恋ひに鹿鳴く山辺の秋萩は露霜寒み盛り過ぎゆく","#[仮名],つまごひに,かなくやまへの,あきはぎは,つゆしもさむみ,さかりすぎゆく","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:石川広成,植物,動物,季節","#[訓異]
つまごひに,[寛]つまこひに,
かなくやまへの,[寛]しかなくやまの,
あきはぎは,[寛]あきはきは,
つゆしもさむみ[寛],
さかりすぎゆく,[寛]さかりすきゆく,
" "#[番号]08/1601","#[題詞](内舎人石川朝臣廣成歌二首)","#[原文]目頬布 君之家有 波奈須為寸 穂出秋乃 過良久惜母","#[訓読]めづらしき君が家なる花すすき穂に出づる秋の過ぐらく惜しも","#[仮名],めづらしき,きみがいへなる,はなすすき,ほにいづるあきの,すぐらくをしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:石川広成,宴席,植物,季節","#[訓異]
めづらしき,[寛]めつらしき,
きみがいへなる,[寛]きみかいへなる,
はなすすき[寛],
ほにいづるあきの,[寛]ほにいつるあきの,
すぐらくをしも,[寛]すきらくをしも,
" "#[番号]08/1602","#[題詞]大伴宿祢家持鹿鳴歌二首","#[原文]山妣姑乃 相響左右 妻戀尓 鹿鳴山邊尓 獨耳為手","#[訓読]山彦の相響むまで妻恋ひに鹿鳴く山辺に独りのみして","#[仮名],やまびこの,あひとよむまで,つまごひに,かなくやまへに,ひとりのみして","#[左注](右二首天平十五年癸未八月十六日作)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,天平15年8月16日,年紀,孤独,恋情,動物","#[訓異]
やまびこの,[寛]やまひこの,
あひとよむまで,[寛]あひとよむまて,
つまごひに,[寛]つまこひに,
かなくやまへに,[寛]しかなくやまへに,
ひとりのみして[寛],
" "#[番号]08/1603","#[題詞](大伴宿祢家持鹿鳴歌二首)","#[原文]<頃>者之 朝開尓聞者 足日木篦 山<呼>令響 狭尾<壮>鹿鳴哭","#[訓読]このころの朝明に聞けばあしひきの山呼び響めさを鹿鳴くも","#[仮名],このころの,あさけにきけば,あしひきの,やまよびとよめ,さをしかなくも","#[左注]右二首天平十五年癸未八月十六日作","#[校異]項 -> 頃 [紀] / 乎 -> 呼 [類][紀][矢][京] / <> -> 壮 [西(右書)][紀]","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,天平15年8月16日,年紀,動物,季節","#[訓異]
このころの[寛],
あさけにきけば,[寛]あさけにきけは,
あしひきの[寛],
やまよびとよめ,[寛]やまをとよまし,
さをしかなくも[寛],
" "#[番号]08/1604","#[題詞]大原真人今城傷惜寧樂故郷歌一首","#[原文]秋去者 春日山之 黄葉見流 寧樂乃京師乃 荒良久惜毛","#[訓読]秋されば春日の山の黄葉見る奈良の都の荒るらく惜しも","#[仮名],あきされば,かすがのやまの,もみちみる,ならのみやこの,あるらくをしも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:大原今城,奈良,荒都,地名","#[訓異]
あきされば,[寛]あきされは,
かすがのやまの,[寛]かすかのやまの,
もみちみる[寛],
ならのみやこの[寛],
あるらくをしも[寛],
" "#[番号]08/1605","#[題詞]大伴宿祢家持歌一首","#[原文]高圓之 野邊乃秋芽子 此日之 暁露尓 開兼可聞","#[訓読]高円の野辺の秋萩このころの暁露に咲きにけむかも","#[仮名],たかまとの,のへのあきはぎ,このころの,あかときつゆに,さきにけむかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,作者:大伴家持,奈良,地名,植物","#[訓異]
たかまとの[寛],
のへのあきはぎ,[寛]のへのあきはき,
このころの[寛],
あかときつゆに,[寛]あかつきつゆに,
さきにけむかも[寛],
" "#[番号]08/1606","#[題詞]秋相聞 / 額田王思近江天皇作歌一首","#[原文]君待跡 吾戀居者 我屋戸乃 簾令動 秋之風吹","#[訓読]君待つと我が恋ひをれば我が宿の簾動かし秋の風吹く","#[仮名],きみまつと,あがこひをれば,わがやどの,すだれうごかし,あきのかぜふく","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)]","#[事項],秋相聞,作者:額田王,天智天皇,恋情","#[訓異]
きみまつと[寛],
あがこひをれば,[寛]わかこひをれは,
わがやどの,[寛]わかやとの,
すだれうごかし,[寛]すたれうこかし,
あきのかぜふく,[寛]あきのかせふく,
" "#[番号]08/1607","#[題詞]鏡王女作歌一首","#[原文]風乎谷 戀者乏 風乎谷 将来常思待者 何如将嘆","#[訓読]風をだに恋ふるは羨し風をだに来むとし待たば何か嘆かむ","#[仮名],かぜをだに,こふるはともし,かぜをだに,こむとしまたば,なにかなげかむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:鏡王女,天智天皇,恋情","#[訓異]
かぜをだに,[寛]かせをたに,
こふるはともし,[寛]こふれはともし,
かぜをだに,[寛]かせをたに,
こむとしまたば,[寛]こむとしまたは,
なにかなげかむ,[寛]いかかなけかむ,
" "#[番号]08/1608","#[題詞]弓削皇子御歌一首","#[原文]秋芽子之 上尓置有 白露乃 消可毛思奈萬思 戀管不有者","#[訓読]秋萩の上に置きたる白露の消かもしなまし恋ひつつあらずは","#[仮名],あきはぎの,うへにおきたる,しらつゆの,けかもしなまし,こひつつあらずは","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:弓削皇子,恋情,植物","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
うへにおきたる[寛],
しらつゆの[寛],
けかもしなまし[寛],
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
" "#[番号]08/1609","#[題詞]丹比真人歌一首 [名闕]","#[原文]宇陀乃野之 秋芽子師弩藝 鳴鹿毛 妻尓戀樂苦 我者不益","#[訓読]宇陀の野の秋萩しのぎ鳴く鹿も妻に恋ふらく我れにはまさじ","#[仮名],うだののの,あきはぎしのぎ,なくしかも,つまにこふらく,われにはまさじ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:丹比真人,奈良県,地名,植物,動物","#[訓異]
うだののの,[寛]うたののの,
あきはぎしのぎ,[寛]あきはきしのき,
なくしかも[寛],
つまにこふらく[寛],
われにはまさじ,[寛]われにはまさし,
" "#[番号]08/1610","#[題詞]丹生女王贈大宰帥大伴卿歌一首","#[原文]高圓之 秋野上乃 瞿麦之花 丁<壮>香見 人之挿頭師 瞿麦之花","#[訓読]高円の秋野の上のなでしこの花うら若み人のかざししなでしこの花","#[仮名],たかまとの,あきののうへの,なでしこのはな,うらわかみ,ひとのかざしし,なでしこのはな","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 牡 -> 壮 [紀][温][矢]","#[事項],秋相聞,作者:丹生女王,大伴旅人,奈良,旋頭歌,贈答,地名,植物","#[訓異]
たかまとの[寛],
あきののうへの[寛],
なでしこのはな,[寛]なてしこのはな,
うらわかみ[寛],
ひとのかざしし,[寛]ひとのかさしし,
なでしこのはな,[寛]なてしこのはな,
" "#[番号]08/1611","#[題詞]笠縫女王歌一首 [六人部王之女母曰田形皇女也]","#[原文]足日木乃 山下響 鳴鹿之 事乏可母 吾情都末","#[訓読]あしひきの山下響め鳴く鹿の言ともしかも我が心夫","#[仮名],あしひきの,やましたとよめ,なくしかの,ことともしかも,わがこころつま","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:笠縫女王,六人部王,田形皇女,忍恋い,動物","#[訓異]
あしひきの[寛],
やましたとよめ,[寛]やましたとよみ,
なくしかの[寛],
ことともしかも[寛],
わがこころつま,[寛]わかこころつま,
" "#[番号]08/1612","#[題詞]石川賀係女郎歌一首","#[原文]神佐夫等 不許者不有 秋草乃 結之紐乎 解者悲哭","#[訓読]神さぶといなにはあらず秋草の結びし紐を解くは悲しも","#[仮名],かむさぶと,いなにはあらず,あきくさの,むすびしひもを,とくはかなしも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:石川賀係女郎","#[訓異]
かむさぶと,[寛]かみさふと,
いなにはあらず,[寛]きかすはあらす,
あきくさの[寛],
むすびしひもを,[寛]むすひしひもを,
とくはかなしも[寛],
" "#[番号]08/1613","#[題詞]賀茂女王歌一首 [長屋王之女母曰阿倍朝臣也]","#[原文]秋野乎 旦徃鹿乃 跡毛奈久 念之君尓 相有今夜香","#[訓読]秋の野を朝行く鹿の跡もなく思ひし君に逢へる今夜か","#[仮名],あきののを,あさゆくしかの,あともなく,おもひしきみに,あへるこよひか","#[左注]右歌或云椋橋部女王作 或云笠縫女王作","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:賀茂女王,長屋王,阿倍朝臣,異伝,椋橋部女王,笠縫女王,動物","#[訓異]
あきののを[寛],
あさゆくしかの[寛],
あともなく[寛],
おもひしきみに[寛],
あへるこよひか[寛],
" "#[番号]08/1614","#[題詞]遠江守櫻井王奉天皇歌一首","#[原文]九月之 其始鴈乃 使尓毛 念心者 <所>聞来奴鴨","#[訓読]九月のその初雁の使にも思ふ心は聞こえ来ぬかも","#[仮名],ながつきの,そのはつかりの,つかひにも,おもふこころは,きこえこぬかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 可 -> 所 [代匠記初稿本]","#[事項],秋相聞,作者:桜井王,聖武天皇,大夫,動物","#[訓異]
ながつきの,[寛]なかつきの,
そのはつかりの[寛],
つかひにも[寛],
おもふこころは[寛],
きこえこぬかも[寛],
" "#[番号]08/1615","#[題詞]天皇賜報和御歌一首","#[原文]大乃浦之 其長濱尓 縁流浪 寛公乎 念<比>日 [大浦者遠江國之海濱名也]","#[訓読]大の浦のその長浜に寄する波ゆたけく君を思ふこのころ [大浦者遠江國之海濱名也]","#[仮名],おほのうらの,そのながはまに,よするなみ,ゆたけくきみを,おもふこのころ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 大乃 [類][古](塙) 大 / 此 -> 比 [古][温][京]","#[事項],秋相聞,作者:聖武天皇,桜井王,和歌,静岡県,地名","#[訓異]
おほのうらの[寛],
そのながはまに,[寛]そのなかはまに,
よするなみ[寛],
ゆたけくきみを[寛],
おもふこのころ[寛],
" "#[番号]08/1616","#[題詞]笠女郎<贈>大伴宿祢家持歌一首","#[原文]毎朝 吾見屋戸乃 瞿麦之 花尓毛君波 有許世奴香裳","#[訓読]朝ごとに我が見る宿のなでしこの花にも君はありこせぬかも","#[仮名],あさごとに,わがみるやどの,なでしこの,はなにもきみは,ありこせぬかも","#[左注]","#[校異]賜 -> 贈 [紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:笠郎女,大伴家持,贈答,恋情,植物","#[訓異]
あさごとに,[寛]あさことに,
わがみるやどの,[寛]わかみるやとの,
なでしこの,[寛]なてしこの,
はなにもきみは[寛],
ありこせぬかも[寛],
" "#[番号]08/1617","#[題詞]山口女王<贈>大伴宿祢家持歌一首","#[原文]秋芽子尓 置有露乃 風吹而 落涙者 留不勝都毛","#[訓読]秋萩に置きたる露の風吹きて落つる涙は留めかねつも","#[仮名],あきはぎに,おきたるつゆの,かぜふきて,おつるなみたは,とどめかねつも","#[左注]","#[校異]賜 -> 贈 [紀][温][矢][京] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:山口女王,大伴家持,贈答,恋情,植物","#[訓異]
あきはぎに,[寛]あきはきに,
おきたるつゆの[寛],
かぜふきて,[寛]かせふきて,
おつるなみたは[寛],
とどめかねつも,[寛]ととめかねつも,
" "#[番号]08/1618","#[題詞]湯原王<贈>娘子歌一首","#[原文]玉尓貫 不令消賜良牟 秋芽子乃 宇礼和々良葉尓 置有白露","#[訓読]玉に貫き消たず賜らむ秋萩の末わくらばに置ける白露","#[仮名],たまにぬき,けたずたばらむ,あきはぎの,うれわくらばに,おけるしらつゆ","#[左注]","#[校異]賜 -> 贈 [紀][温][矢][京] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:湯原王,娘子,贈答,植物","#[訓異]
たまにぬき[寛],
けたずたばらむ,[寛]けさてたまらむ,
あきはぎの,[寛]あきはきの,
うれわくらばに,[寛]うれわわらはに,
おけるしらつゆ[寛],
" "#[番号]08/1619","#[題詞]大伴家持至姑坂上郎女竹田庄作歌一首","#[原文]玉桙乃 道者雖遠 愛哉師 妹乎相見尓 出而曽吾来之","#[訓読]玉桙の道は遠けどはしきやし妹を相見に出でてぞ我が来し","#[仮名],たまほこの,みちはとほけど,はしきやし,いもをあひみに,いでてぞわがこし","#[左注](右二首天平十一年己卯秋八月作)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:大伴家持,坂上郎女,奈良,桜井市,天平11年8月,年紀,枕詞","#[訓異]
たまほこの[寛],
みちはとほけど,[寛]みちはとほけれと,
はしきやし,[寛]よしゑやし,
いもをあひみに[寛],
いでてぞわがこし,[寛]いててそわかこし,
" "#[番号]08/1620","#[題詞]大伴坂上郎女和歌一首","#[原文]荒玉之 月立左右二 来不益者 夢西見乍 思曽吾勢思","#[訓読]あらたまの月立つまでに来まさねば夢にし見つつ思ひぞ我がせし","#[仮名],あらたまの,つきたつまでに,きまさねば,いめにしみつつ,おもひぞわがせし","#[左注]右二首天平十一年己卯秋八月作","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],秋相聞,作者:坂上郎女,和歌,大伴家持,天平11年8月,年紀","#[訓異]
あらたまの[寛],
つきたつまでに,[寛]つきたつまてに,
きまさねば,[寛]きまさねは,
いめにしみつつ,[寛]ゆめにしみつつ,
おもひぞわがせし,[寛]おもそわかせし,
" "#[番号]08/1621","#[題詞]巫部麻蘇娘子歌一首","#[原文]吾屋前<之> 芽子花咲有 見来益 今二日許 有者将落","#[訓読]我が宿の萩花咲けり見に来ませいま二日だみあらば散りなむ","#[仮名],わがやどの,はぎはなさけり,みにきませ,いまふつかだみ,あらばちりなむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 乃 -> 之 [類][紀]","#[事項],秋相聞,作者:巫部麻蘇娘子,勧誘,恋情,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
はぎはなさけり,[寛]はきのはなさけり,
みにきませ[寛],
いまふつかだみ,[寛]いまふつかはかり,
あらばちりなむ,[寛]あらはちりなむ,
" "#[番号]08/1622","#[題詞]大伴田村大嬢与<妹>坂上大嬢歌二首","#[原文]吾屋戸乃 秋之芽子開 夕影尓 今毛見師香 妹之光儀乎","#[訓読]我が宿の秋の萩咲く夕影に今も見てしか妹が姿を","#[仮名],わがやどの,あきのはぎさく,ゆふかげに,いまもみてしか,いもがすがたを","#[左注]","#[校異]<> -> 妹 [西(右書)][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:田村大嬢,坂上大嬢,贈答,与歌,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
あきのはぎさく,[寛]あきのはきさく,
ゆふかげに,[寛]ゆふかけに,
いまもみてしか[寛],
いもがすがたを,[寛]いもかすかたを,
" "#[番号]08/1623","#[題詞](大伴田村大嬢与<妹>坂上大嬢歌二首)","#[原文]吾屋戸尓 黄變蝦手 毎見 妹乎懸管 不戀日者無","#[訓読]我が宿にもみつ蝦手見るごとに妹を懸けつつ恋ひぬ日はなし","#[仮名],わがやどに,もみつかへるて,みるごとに,いもをかけつつ,こひぬひはなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,作者:田村大嬢,坂上大嬢,贈答,与歌,植物","#[訓異]
わがやどに,[寛]わかやとに,
もみつかへるて,[寛]もみつるかへて,
みるごとに,[寛]みることに,
いもをかけつつ[寛],
こひぬひはなし[寛],
" "#[番号]08/1624","#[題詞]坂上大娘秋稲蘰贈大伴宿祢家持歌一首","#[原文]吾之蒔有 早田之穂立 造有 蘰曽見乍 師弩波世吾背","#[訓読]我が蒔ける早稲田の穂立作りたるかづらぞ見つつ偲はせ我が背","#[仮名],わがまける,わさだのほたち,つくりたる,かづらぞみつつ,しのはせわがせ","#[左注](右三首天平十一年己卯秋九月徃来)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 蒔 [類][紀] 業","#[事項],秋相聞,作者:坂上大嬢,大伴家持,贈答,天平11年9月,年紀,植物","#[訓異]
わがまける,[寛]わかわさなる,
わさだのほたち,[寛]わさたのほたて,
つくりたる[寛],
かづらぞみつつ,[寛]かつらそみつつ,
しのはせわがせ,[寛]しのはせわかせ,
" "#[番号]08/1625","#[題詞]大伴宿祢家持報贈歌一首","#[原文]吾妹兒之 業跡造有 秋田 早穂乃蘰 雖見不飽可聞","#[訓読]我妹子が業と作れる秋の田の早稲穂のかづら見れど飽かぬかも","#[仮名],わぎもこが,なりとつくれる,あきのたの,わさほのかづら,みれどあかぬかも","#[左注](右三首天平十一年己卯秋九月徃来)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:大伴家持,贈答,天平11年9月,年紀,植物,讃美","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
なりとつくれる,[寛]わさとつくれる,
あきのたの[寛],
わさほのかづら,[寛]わさほのかつら,
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]08/1626","#[題詞]<又>報脱著身衣贈家持歌一首","#[原文]秋風之 寒比日 下尓将服 妹之形見跡 可都毛思努播武","#[訓読]秋風の寒きこのころ下に着む妹が形見とかつも偲はむ","#[仮名],あきかぜの,さむきこのころ,したにきむ,いもがかたみと,かつもしのはむ","#[左注]右三首天平十一年己卯秋九月徃来","#[校異]又 [西(上書訂正)][紀][温][矢] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:大伴家持,贈答,天平11年9月,年紀","#[訓異]
あきかぜの,[寛]あきかせの,
さむきこのころ[寛],
したにきむ[寛],
いもがかたみと,[寛]いもかかたみと,
かつもしのはむ[寛],
" "#[番号]08/1627","#[題詞]大伴宿祢家持<攀>非時藤花并芽子黄葉二物贈坂上大嬢歌二首","#[原文]吾屋前之 非時藤之 目頬布 今毛見<壮>鹿 妹之咲容乎","#[訓読]我が宿の時じき藤のめづらしく今も見てしか妹が笑まひを","#[仮名],わがやどの,ときじきふぢの,めづらしく,いまもみてしか,いもがゑまひを","#[左注](右二首天平十二年庚辰夏六月徃来)","#[校異]擧 -> 攀 [紀][温][矢] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 牡 -> 壮 [紀]","#[事項],秋相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,天平12年6月,年紀,贈答,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
ときじきふぢの,[寛]ときならぬふちの,
めづらしく,[寛]めつらしく,
いまもみてしか[寛],
いもがゑまひを,[寛]いもかゑまひを,
" "#[番号]08/1628","#[題詞](大伴宿祢家持<攀>非時藤花并芽子黄葉二物贈坂上大嬢歌二首)","#[原文]吾屋前之 芽子乃下葉者 秋風毛 未吹者 如此曽毛美照","#[訓読]我が宿の萩の下葉は秋風もいまだ吹かねばかくぞもみてる","#[仮名],わがやどの,はぎのしたばは,あきかぜも,いまだふかねば,かくぞもみてる","#[左注]右二首天平十二年庚辰夏六月徃来","#[校異]","#[事項],秋相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,天平12年6月,年紀,贈答,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
はぎのしたばは,[寛]はきのしたはは,
あきかぜも,[寛]あきかせも,
いまだふかねば,[寛]いまたふかねは,
かくぞもみてる,[寛]かくそもみてる,
" "#[番号]08/1629","#[題詞]大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌一首[并短歌]","#[原文]叩々 物乎念者 将言為便 将為々便毛奈之 妹与吾 手携而 旦者 庭尓出立 夕者 床打拂 白細乃 袖指代而 佐寐之夜也 常尓有家類 足日木能 山鳥許曽婆 峯向尓 嬬問為云 打蝉乃 人有我哉 如何為跡可 一日一夜毛 離居而 嘆戀良武 許己念者 胸許曽痛 其故尓 情奈具夜登 高圓乃 山尓毛野尓母 打行而 遊徃杼 花耳 丹穂日手有者 毎見 益而所思 奈何為而 忘物曽 戀云物呼","#[訓読]ねもころに 物を思へば 言はむすべ 為むすべもなし 妹と我れと 手携さはりて 朝には 庭に出で立ち 夕には 床うち掃ひ 白栲の 袖さし交へて さ寝し夜や 常にありける あしひきの 山鳥こそば 峰向ひに 妻問ひすといへ うつせみの 人なる我れや 何すとか 一日一夜も 離り居て 嘆き恋ふらむ ここ思へば 胸こそ痛き そこ故に 心なぐやと 高円の 山にも野にも うち行きて 遊び歩けど 花のみ にほひてあれば 見るごとに まして偲はゆ いかにして 忘れむものぞ 恋といふものを","#[仮名],ねもころに,ものをおもへば,いはむすべ,せむすべもなし,いもとあれと,てたづさはりて,あしたには,にはにいでたち,ゆふへには,とこうちはらひ,しろたへの,そでさしかへて,さねしよや,つねにありける,あしひきの,やまどりこそば,をむかひに,つまどひすといへ,うつせみの,ひとなるわれや,なにすとか,ひとひひとよも,さかりゐて,なげきこふらむ,ここおもへば,むねこそいたき,そこゆゑに,こころなぐやと,たかまとの,やまにものにも,うちゆきて,あそびあるけど,はなのみ,にほひてあれば,みるごとに,ましてしのはゆ,いかにして,わすれむものぞ,こひといふものを","#[左注]","#[校異]短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 婆 [類][紀] 波 / 呼 [類][細][温] 乎","#[事項],秋相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,恋情,奈良,地名","#[訓異]
ねもころに,[寛]いたみいたみ,
ものをおもへば,[寛]ものをおもへは,
いはむすべ,[寛]いはむすへ,
せむすべもなし,[寛]せむすへもなし,
いもとあれと,[寛]いもとわれ,
てたづさはりて,[寛]てたつさはりて,
あしたには[寛],
にはにいでたち,[寛]にはにいてたち,
ゆふへには[寛],
とこうちはらひ[寛],
しろたへの[寛],
そでさしかへて,[寛]そてさしかへて,
さねしよや[寛],
つねにありける[寛],
あしひきの[寛],
やまどりこそば,[寛]やまとりこそは,
をむかひに[寛],
つまどひすといへ,[寛]つまとひすといへ,
うつせみの[寛],
ひとなるわれや[寛],
なにすとか[寛],
ひとひひとよも[寛],
さかりゐて,[寛]はなれゐて,
なげきこふらむ,[寛]なけきこふらむ,
ここおもへば,[寛]ここおもへは,
むねこそいたき,[寛]むねこそいため,
そこゆゑに,[寛]そのゆゑに,
こころなぐやと,[寛]こころなくやと,
たかまとの[寛],
やまにものにも[寛],
うちゆきて[寛],
あそびあるけど,[寛]あそひてゆけと,
はなのみ,[寛]はなのみに,
にほひてあれば,[寛]にほひてあれは,
みるごとに,[寛]みることに,
ましてしのはゆ,[寛]ましておもほゆ,
いかにして[寛],
わすれむものぞ,[寛]わするるものそ,
こひといふものを[寛],
" "#[番号]08/1630","#[題詞](大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌一首[并短歌])反歌","#[原文]高圓之 野邊乃容花 面影尓 所見乍妹者 忘不勝裳","#[訓読]高円の野辺のかほ花面影に見えつつ妹は忘れかねつも","#[仮名],たかまとの,のへのかほばな,おもかげに,みえつついもは,わすれかねつも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,贈答,奈良,地名,植物","#[訓異]
たかまとの[寛],
のへのかほばな,[寛]のへのかほはな,
おもかげに,[寛]おもかけに,
みえつついもは[寛],
わすれかねつも[寛],
" "#[番号]08/1631","#[題詞]大伴宿祢家持贈安倍女郎歌一首","#[原文]今造 久邇能京尓 秋夜乃 長尓獨 宿之苦左","#[訓読]今造る久迩の都に秋の夜の長きにひとり寝るが苦しさ","#[仮名],いまつくる,くにのみやこに,あきのよの,ながきにひとり,ぬるがくるしさ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:大伴家持,安倍女郎,贈答,久邇京,恋情,京都","#[訓異]
いまつくる[寛],
くにのみやこに[寛],
あきのよの[寛],
ながきにひとり,[寛]なかきにひとり,
ぬるがくるしさ,[寛]ぬるかくるしさ,
" "#[番号]08/1632","#[題詞]大伴宿祢家持従久邇京贈留寧樂宅坂上大娘歌一首","#[原文]足日木乃 山邊尓居而 秋風之 日異吹者 妹乎之曽念","#[訓読]あしひきの山辺に居りて秋風の日に異に吹けば妹をしぞ思ふ","#[仮名],あしひきの,やまへにをりて,あきかぜの,ひにけにふけば,いもをしぞおもふ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:大伴家持,坂上大嬢,久邇京,恋情,京都","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまへにをりて[寛],
あきかぜの,[寛]あきかせの,
ひにけにふけば,[寛]ひにけにふけは,
いもをしぞおもふ,[寛]いもをしそおもふ,
" "#[番号]08/1633","#[題詞]或者贈尼歌二首","#[原文]手母須麻尓 殖之芽子尓也 還者 雖見不飽 情将盡","#[訓読]手もすまに植ゑし萩にやかへりては見れども飽かず心尽さむ","#[仮名],てもすまに,うゑしはぎにや,かへりては,みれどもあかず,こころつくさむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,尼,贈答,植物","#[訓異]
てもすまに[寛],
うゑしはぎにや,[寛]うゑしはきにや,
かへりては[寛],
みれどもあかず,[寛]みれともあかす,
こころつくさむ[寛],
" "#[番号]08/1634","#[題詞](或者贈尼歌二首)","#[原文]衣手尓 水澁付左右 殖之田乎 引板吾波倍 真守有栗子","#[訓読]衣手に水渋付くまで植ゑし田を引板我が延へまもれる苦し","#[仮名],ころもでに,みしぶつくまで,うゑしたを,ひきたわがはへ,まもれるくるし","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,作者:尼,贈答","#[訓異]
ころもでに,[寛]ころもてに,
みしぶつくまで,[寛]みしふつくまて,
うゑしたを[寛],
ひきたわがはへ,[寛]ひきたわれはへ,
まもれるくるし[寛],
" "#[番号]08/1635","#[題詞]尼作頭句并大伴宿祢家持所誂尼續末句等和歌一首","#[原文]佐保河之 水乎塞上而 殖之田乎 [尼作] 苅流早飯者 獨奈流倍思 [家持續]","#[訓読]佐保川の水を堰き上げて植ゑし田を [尼作] 刈れる初飯はひとりなるべし [家持續]","#[仮名],さほがはの,みづをせきあげて,うゑしたを,かれるはついひは,ひとりなるべし","#[左注]","#[校異]句等 [矢][京] 句 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋相聞,作者:尼,大伴家持,連歌,地名,奈良","#[訓異]
さほがはの,[寛]さほかはの,
みづをせきあげて,[寛]みつをせきあけて,
うゑしたを[寛],
かれるはついひは,[寛]かるわさいひは,
ひとりなるべし,[寛]ひとりなるへし,
" "#[番号]08/1636","#[題詞]冬雜歌 / 舎人娘子雪歌一首","#[原文]大口能 真神之原尓 零雪者 甚莫零 家母不有國","#[訓読]大口の真神の原に降る雪はいたくな降りそ家もあらなくに","#[仮名],おほくちの,まかみのはらに,ふるゆきは,いたくなふりそ,いへもあらなくに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:舎人娘子,飛鳥,羈旅,地名","#[訓異]
おほくちの[寛],
まかみのはらに[寛],
ふるゆきは[寛],
いたくなふりそ[寛],
いへもあらなくに[寛],
" "#[番号]08/1637","#[題詞]太上天皇御製歌一首","#[原文]波太須珠寸 尾花逆葺 黒木用 造有室者 迄萬代","#[訓読]はだすすき尾花逆葺き黒木もち造れる室は万代までに","#[仮名],はだすすき,をばなさかふき,くろきもち,つくれるむろは,よろづよまでに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:元正天皇,室讃め,宴席,長屋王,植物","#[訓異]
はだすすき,[寛]はたすすき,
をばなさかふき,[寛]をはなさかふき,
くろきもち[寛],
つくれるむろは,[寛]つくれるやとは,
よろづよまでに,[寛]よろつよまてに,
" "#[番号]08/1638","#[題詞]天皇御製歌一首","#[原文]青丹吉 奈良乃山有 黒木用 造有室者 雖居座不飽可聞","#[訓読]あをによし奈良の山なる黒木もち造れる室は座せど飽かぬかも","#[仮名],あをによし,ならのやまなる,くろきもち,つくれるむろは,ませどあかぬかも","#[左注]右聞之御在左大臣長屋王佐保宅肆宴御製","#[校異]","#[事項],冬雑歌,作者:聖武天皇,長屋王,宴席,室讃め,奈良,地名","#[訓異]
あをによし[寛],
ならのやまなる[寛],
くろきもち,[寛]くろきもて,
つくれるむろは,[寛]つくれるやとは,
ませどあかぬかも,[寛]をれとあかすかも,
" "#[番号]08/1639","#[題詞]<大>宰帥大伴卿冬日見雪憶京歌一首","#[原文]沫雪 保杼呂保杼呂尓 零敷者 平城京師 所念可聞","#[訓読]沫雪のほどろほどろに降りしけば奈良の都し思ほゆるかも","#[仮名],あわゆきの,ほどろほどろに,ふりしけば,ならのみやこし,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 太 -> 大 [類][紀][細] / 保杼呂 [類](塙) 々々々","#[事項],冬雑歌,作者:大伴旅人,望郷,太宰府,福岡県,地名","#[訓異]
あわゆきの[寛],
ほどろほどろに,[寛]ほとろほとろに,
ふりしけば,[寛]ふりしけは,
ならのみやこし[寛],
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]08/1640","#[題詞]<大>宰帥大伴卿梅歌一首","#[原文]吾岳尓 盛開有 梅花 遺有雪乎 乱鶴鴨","#[訓読]我が岡に盛りに咲ける梅の花残れる雪をまがへつるかも","#[仮名],わがをかに,さかりにさける,うめのはな,のこれるゆきを,まがへつるかも","#[左注]","#[校異]太 -> 大 [類][紀][細] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:大伴旅人,太宰府,福岡県,地名,植物","#[訓異]
わがをかに,[寛]わかをかに,
さかりにさける[寛],
うめのはな[寛],
のこれるゆきを[寛],
まがへつるかも,[寛]まかへをるかも,
" "#[番号]08/1641","#[題詞]角朝臣廣辨雪梅歌<一首>","#[原文]沫雪尓 所落開有 梅花 君之許遣者 与曽倍弖牟可聞","#[訓読]沫雪に降らえて咲ける梅の花君がり遣らばよそへてむかも","#[仮名],あわゆきに,ふらえてさける,うめのはな,きみがりやらば,よそへてむかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 一首 [紀][細]","#[事項],冬雑歌,作者:角廣辨,植物","#[訓異]
あわゆきに,[寛]あはゆきに,
ふらえてさける,[寛]ふられてさける,
うめのはな[寛],
きみがりやらば,[寛]きみかりやらは,
よそへてむかも[寛],
" "#[番号]08/1642","#[題詞]安倍朝臣奥道雪歌一首","#[原文]棚霧合 雪毛零奴可 梅花 不開之代尓 曽倍而谷将見","#[訓読]たな霧らひ雪も降らぬか梅の花咲かぬが代にそへてだに見む","#[仮名],たなぎらひ,ゆきもふらぬか,うめのはな,さかぬがしろに,そへてだにみむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:安倍奥道,植物","#[訓異]
たなぎらひ,[寛]たなきりあひ,
ゆきもふらぬか[寛],
うめのはな[寛],
さかぬがしろに,[寛]さかぬかはりに,
そへてだにみむ,[寛]そへてたにみむ,
" "#[番号]08/1643","#[題詞]若櫻部朝臣君足雪歌一首","#[原文]天霧之 雪毛零奴可 灼然 此五柴尓 零巻乎将見","#[訓読]天霧らし雪も降らぬかいちしろくこのいつ柴に降らまくを見む","#[仮名],あまぎらし,ゆきもふらぬか,いちしろく,このいつしばに,ふらまくをみむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:若桜部君足,植物","#[訓異]
あまぎらし,[寛]あまきりし,
ゆきもふらぬか[寛],
いちしろく[寛],
このいつしばに,[寛]このいつしはに,
ふらまくをみむ[寛],
" "#[番号]08/1644","#[題詞]三野連石守梅歌一首","#[原文]引攀而 折者可落 梅花 袖尓古寸入津 染者雖染","#[訓読]引き攀ぢて折らば散るべみ梅の花袖に扱入れつ染まば染むとも","#[仮名],ひきよぢて,をらばちるべみ,うめのはな,そでにこきいれつ,しまばしむとも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:三野石守,植物","#[訓異]
ひきよぢて,[寛]ひきよちて,
をらばちるべみ,[寛]をらはちるへく,
うめのはな[寛],
そでにこきいれつ,[寛]そてにこきいれつ,
しまばしむとも,[寛]そまはそむとも,
" "#[番号]08/1645","#[題詞]巨勢朝臣宿奈麻呂雪歌一首","#[原文]吾屋前之 冬木乃上尓 零雪乎 梅花香常 打見都流香裳","#[訓読]我が宿の冬木の上に降る雪を梅の花かとうち見つるかも","#[仮名],わがやどの,ふゆきのうへに,ふるゆきを,うめのはなかと,うちみつるかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:巨勢宿奈麻呂,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
ふゆきのうへに[寛],
ふるゆきを[寛],
うめのはなかと[寛],
うちみつるかも[寛],
" "#[番号]08/1646","#[題詞]小治田朝臣東麻呂雪歌一首","#[原文]夜干玉乃 今夜之雪尓 率所沾名 将開朝尓 消者惜家牟","#[訓読]ぬばたまの今夜の雪にいざ濡れな明けむ朝に消なば惜しけむ","#[仮名],ぬばたまの,こよひのゆきに,いざぬれな,あけむあしたに,けなばをしけむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:小治田東麻呂,枕詞","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
こよひのゆきに[寛],
いざぬれな,[寛]いさぬれな,
あけむあしたに[寛],
けなばをしけむ,[寛]けなはをしけむ,
" "#[番号]08/1647","#[題詞]忌部首黒麻呂雪歌一首","#[原文]梅花 枝尓可散登 見左右二 風尓乱而 雪曽落久類","#[訓読]梅の花枝にか散ると見るまでに風に乱れて雪ぞ降り来る","#[仮名],うめのはな,えだにかちると,みるまでに,かぜにみだれて,ゆきぞふりくる","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:忌部黒麻呂,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
えだにかちると,[寛]えたにかちると,
みるまでに,[寛]みるまてに,
かぜにみだれて,[寛]かせにみたれて,
ゆきぞふりくる,[寛]ゆきをちりくる,
" "#[番号]08/1648","#[題詞]紀少鹿女郎梅歌一首","#[原文]十二月尓者 沫雪零跡 不知可毛 梅花開 含不有而","#[訓読]十二月には沫雪降ると知らねかも梅の花咲くふふめらずして","#[仮名],しはすには,あわゆきふると,しらねかも,うめのはなさく,ふふめらずして","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:紀少鹿女郎,植物","#[訓異]
しはすには[寛],
あわゆきふると,[寛]あはゆきふると,
しらねかも,[寛]しらぬかも,
うめのはなさく,[寛]めのはなさく,
ふふめらずして,[寛]つほめらすして,
" "#[番号]08/1649","#[題詞]大伴宿祢家持雪梅歌一首","#[原文]今日零之 雪尓競而 我屋前之 冬木梅者 花開二家里","#[訓読]今日降りし雪に競ひて我が宿の冬木の梅は花咲きにけり","#[仮名],けふふりし,ゆきにきほひて,わがやどの,ふゆきのうめは,はなさきにけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:大伴家持,植物","#[訓異]
けふふりし[寛],
ゆきにきほひて[寛],
わがやどの,[寛]わかやとの,
ふゆきのうめは[寛],
はなさきにけり[寛],
" "#[番号]08/1650","#[題詞]御在西池邊肆宴歌一首","#[原文]池邊乃 松之末葉尓 零雪者 五百重零敷 明日左倍母将見","#[訓読]池の辺の松の末葉に降る雪は五百重降りしけ明日さへも見む","#[仮名],いけのへの,まつのうらばに,ふるゆきは,いほへふりしけ,あすさへもみむ","#[左注]右一首作者未詳 但堅子阿倍朝臣虫麻呂傳誦之","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,阿倍虫麻呂,宴席,肆宴,伝誦,宮廷,植物","#[訓異]
いけのへの[寛],
まつのうらばに,[寛]まつのすゑはに,
ふるゆきは[寛],
いほへふりしけ[寛],
あすさへもみむ[寛],
" "#[番号]08/1651","#[題詞]大伴坂上郎女歌一首","#[原文]沫雪乃 比日續而 如此落者 梅始花 散香過南","#[訓読]沫雪のこのころ継ぎてかく降らば梅の初花散りか過ぎなむ","#[仮名],あわゆきの,このころつぎて,かくふらば,うめのはつはな,ちりかすぎなむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:坂上郎女,植物","#[訓異]
あわゆきの,[寛]あはゆきの,
このころつぎて,[寛]ひなへにつきて,
かくふらば,[寛]かくふれは,
うめのはつはな[寛],
ちりかすぎなむ,[寛]ちりかすきなむ,
" "#[番号]08/1652","#[題詞]他田廣津娘子梅歌一首","#[原文]梅花 折毛不折毛 見都礼杼母 今夜能花尓 尚不如家利","#[訓読]梅の花折りも折らずも見つれども今夜の花になほしかずけり","#[仮名],うめのはな,をりもをらずも,みつれども,こよひのはなに,なほしかずけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:他田廣津娘子,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
をりもをらずも,[寛]をりもをらすも,
みつれども,[寛]みつれとも,
こよひのはなに[寛],
なほしかずけり,[寛]なほしかすけり,
" "#[番号]08/1653","#[題詞]縣犬養娘子依梅發思歌一首","#[原文]如今 心乎常尓 念有者 先咲花乃 地尓将落八方","#[訓読]今のごと心を常に思へらばまづ咲く花の地に落ちめやも","#[仮名],いまのごと,こころをつねに,おもへらば,まづさくはなの,つちにおちめやも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:縣犬養娘子","#[訓異]
いまのごと,[寛]いまのこと,
こころをつねに[寛],
おもへらば,[寛]おもへらは,
まづさくはなの,[寛]まつさくはなの,
つちにおちめやも[寛],
" "#[番号]08/1654","#[題詞]大伴坂上郎女雪歌一首","#[原文]松影乃 淺茅之上乃 白雪乎 不令消将置 言者可聞奈吉","#[訓読]松蔭の浅茅の上の白雪を消たずて置かむことはかもなき","#[仮名],まつかげの,あさぢのうへの,しらゆきを,けたずておかむ,ことはかもなき","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬雑歌,作者:坂上郎女,植物","#[訓異]
まつかげの,[寛]まつかけの,
あさぢのうへの,[寛]あさちかうへの,
しらゆきを[寛],
けたずておかむ,[寛]けたすておかむ,
ことはかもなき,[寛]いへはかもなき,
" "#[番号]08/1655","#[題詞]冬相聞 / 三國真人人足歌一首","#[原文]高山之 菅葉之努藝 零雪之 消跡可曰毛 戀乃繁鶏鳩","#[訓読]高山の菅の葉しのぎ降る雪の消ぬと言ふべくも恋の繁けく","#[仮名],たかやまの,すがのはしのぎ,ふるゆきの,けぬといふべくも,こひのしげけく","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬相聞,作者:三国人足,恋情,植物","#[訓異]
たかやまの[寛],
すがのはしのぎ,[寛]すかのはしのき,
ふるゆきの[寛],
けぬといふべくも,[寛]けぬとかいふも,
こひのしげけく,[寛]こひのしけけく,
" "#[番号]08/1656","#[題詞]大伴坂上郎女歌一首","#[原文]酒杯尓 梅花浮 念共 飲而後者 落去登母与之","#[訓読]酒杯に梅の花浮かべ思ふどち飲みての後は散りぬともよし","#[仮名],さかづきに,うめのはなうかべ,おもふどち,のみてののちは,ちりぬともよし","#[左注](右酒者<官>禁制称 京中閭里不得集宴 但親々一二飲樂聴許者 縁此和人作此發句焉)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬相聞,作者:坂上郎女,禁酒,植物,贈答","#[訓異]
さかづきに,[寛]さかつきに,
うめのはなうかべ,[寛]うめのはなうけて,
おもふどち,[寛]おもふとち,
のみてののちは[寛],
ちりぬともよし[寛],
" "#[番号]08/1657","#[題詞]和歌一首","#[原文]官尓毛 縦賜有 今夜耳 将欲酒可毛 散許須奈由米","#[訓読]官にも許したまへり今夜のみ飲まむ酒かも散りこすなゆめ","#[仮名],つかさにも,ゆるしたまへり,こよひのみ,のまむさけかも,ちりこすなゆめ","#[左注]右酒者<官>禁制称 京中閭里不得集宴 但親々一二飲樂聴許者 縁此和人作此發句焉","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 宮 -> 官 [類][紀][古]","#[事項],冬相聞,禁酒,贈答","#[訓異]
つかさにも[寛],
ゆるしたまへり,[寛]ゆるしたまへる,
こよひのみ[寛],
のまむさけかも[寛],
ちりこすなゆめ[寛],
" "#[番号]08/1658","#[題詞]藤<皇>后奉天皇御歌一首","#[原文]吾背兒与 二有見麻世波 幾許香 此零雪之 懽有麻思","#[訓読]我が背子とふたり見ませばいくばくかこの降る雪の嬉しくあらまし","#[仮名],わがせこと,ふたりみませば,いくばくか,このふるゆきの,うれしくあらまし","#[左注]","#[校異]原 -> 皇 [西(訂正右書)][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬相聞,作者:光明皇后,聖武天皇","#[訓異]
わがせこと,[寛]わかせこと,
ふたりみませば,[寛]ふたりみませは,
いくばくか,[寛]いくはくか,
このふるゆきの[寛],
うれしくあらまし,[寛]うれしからまし,
" "#[番号]08/1659","#[題詞]他田廣津娘子歌一首","#[原文]真木乃於尓 零置有雪乃 敷布毛 所念可聞 佐夜問吾背","#[訓読]真木の上に降り置ける雪のしくしくも思ほゆるかもさ夜問へ我が背","#[仮名],まきのうへに,ふりおけるゆきの,しくしくも,おもほゆるかも,さよとへわがせ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬相聞,作者:他田廣津娘子,勧誘,植物","#[訓異]
まきのうへに[寛],
ふりおけるゆきの[寛],
しくしくも[寛],
おもほゆるかも[寛],
さよとへわがせ,[寛]さよとふわかせ,
" "#[番号]08/1660","#[題詞]大伴宿祢駿河麻呂歌一首","#[原文]梅花 令落冬風 音耳 聞之吾妹乎 見良久志吉裳","#[訓読]梅の花散らすあらしの音のみに聞きし我妹を見らくしよしも","#[仮名],うめのはな,ちらすあらしの,おとのみに,ききしわぎもを,みらくしよしも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬相聞,作者:大伴駿河麻呂,植物,恋情","#[訓異]
うめのはな[寛],
ちらすあらしの[寛],
おとのみに,[寛]おとにのみ,
ききしわぎもを,[寛]ききしわきもを,
みらくしよしも[寛],
" "#[番号]08/1661","#[題詞]紀少鹿女郎歌一首","#[原文]久方乃 月夜乎清美 梅花 心開而 吾念有公","#[訓読]久方の月夜を清み梅の花心開けて我が思へる君","#[仮名],ひさかたの,つくよをきよみ,うめのはな,こころひらけて,あがおもへるきみ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬相聞,作者:紀少鹿女郎,恋情,枕詞,植物","#[訓異]
ひさかたの[寛],
つくよをきよみ,[寛]つきよをきよみ,
うめのはな[寛],
こころひらけて[寛],
あがおもへるきみ,[寛]わかおもへるきみ,
" "#[番号]08/1662","#[題詞]大伴田村大娘与妹坂上大娘歌一首","#[原文]沫雪之 可消物乎 至今<尓> 流經者 妹尓相曽","#[訓読]沫雪の消ぬべきものを今までに流らへぬるは妹に逢はむとぞ","#[仮名],あわゆきの,けぬべきものを,いままでに,ながらへぬるは,いもにあはむとぞ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 尓 [類][紀]","#[事項],冬相聞,作者:田村大嬢,坂上大嬢,贈答","#[訓異]
あわゆきの,[寛]あはゆきの,
けぬべきものを,[寛]けぬへきものを,
いままでに,[寛]いままてに,
ながらへぬるは,[寛]なからへぬれは,
いもにあはむとぞ,[寛]いもにあへるそ,
" "#[番号]08/1663","#[題詞]大伴宿祢家持歌一首","#[原文]沫雪乃 庭尓零敷 寒夜乎 手枕不纒 一香聞将宿","#[訓読]沫雪の庭に降り敷き寒き夜を手枕まかずひとりかも寝む","#[仮名],あわゆきの,にはにふりしき,さむきよを,たまくらまかず,ひとりかもねむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬相聞,作者:大伴家持,恋情","#[訓異]
あわゆきの,[寛]あはゆきの,
にはにふりしき[寛],
さむきよを[寛],
たまくらまかず,[寛]たまくらまかす,
ひとりかもねむ[寛],
" "#[番号]09/1664","#[題詞]雜歌 / 泊瀬朝倉宮御宇大泊瀬幼武天<皇>御製歌一首","#[原文]暮去者 小椋山尓 臥鹿之 今夜者不鳴 寐家良霜","#[訓読]夕されば小倉の山に伏す鹿の今夜は鳴かず寐ねにけらしも","#[仮名],ゆふされば,をぐらのやまに,ふすしかの,こよひはなかず,いねにけらしも","#[左注]右或本云崗本天皇御製 不審正指 因以累戴","#[校異]歌 [西] 謌 / 皇天皇 -> 皇 [藍][壬][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:雄略天皇,舒明天皇,斉明天皇,作者異伝,重出,地名,動物","#[訓異]
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
をぐらのやまに,[寛]をくらのやまに,
ふすしかの[寛],
こよひはなかず,[寛]こよひはなかす,
いねにけらしも[寛],
" "#[番号]09/1665","#[題詞]崗本宮御宇天皇幸紀伊國時歌二首","#[原文]為妹 吾玉拾 奥邊有 玉縁持来 奥津白浪","#[訓読]妹がため我れ玉拾ふ沖辺なる玉寄せ持ち来沖つ白波","#[仮名],いもがため,われたまひりふ,おきへなる,たまよせもちこ,おきつしらなみ","#[左注](右二首作者未詳)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:斉明天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名","#[訓異]
いもがため,[寛]いもかため,
われたまひりふ,[寛]われたまひろふ,
おきへなる[寛],
たまよせもちこ,[寛]たまよせもてこ,
おきつしらなみ[寛],
" "#[番号]09/1666","#[題詞](崗本宮御宇天皇幸紀伊國時歌二首)","#[原文]朝霧尓 沾尓之衣 不干而 一哉君之 山道将越","#[訓読]朝霧に濡れにし衣干さずしてひとりか君が山道越ゆらむ","#[仮名],あさぎりに,ぬれにしころも,ほさずして,ひとりかきみが,やまぢこゆらむ","#[左注]右二首作者未詳","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:斉明天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,留守","#[訓異]
あさぎりに,[寛]あさきりに,
ぬれにしころも[寛],
ほさずして,[寛]ほさすして,
ひとりかきみが,[寛]ひとりやきみか,
やまぢこゆらむ,[寛]やまちこゆらむ,
" "#[番号]09/1667","#[題詞]大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首","#[原文]為妹 我玉求 於伎邊有 白玉依来 於伎都白浪","#[訓読]妹がため我れ玉求む沖辺なる白玉寄せ来沖つ白波","#[仮名],いもがため,あれたまもとむ,おきへなる,しらたまよせこ,おきつしらなみ","#[左注]右一首上見既畢 但歌辞小換 年代相違 因以累戴","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,重出,地名,大宝1年10月,年紀","#[訓異]
いもがため,[寛]いもかため,
あれたまもとむ,[寛]われたまもとむ,
おきへなる[寛],
しらたまよせこ[寛],
おきつしらなみ[寛],
" "#[番号]09/1668","#[題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)","#[原文]白埼者 幸在待 大船尓 真梶繁貫 又将顧","#[訓読]白崎は幸くあり待て大船に真梶しじ貫きまたかへり見む","#[仮名],しらさきは,さきくありまて,おほぶねに,まかぢしじぬき,またかへりみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,土地讃美,地名,大宝1年10月,年紀","#[訓異]
しらさきは[寛],
さきくありまて[寛],
おほぶねに,[寛]おほふねに,
まかぢしじぬき,[寛]まかちししぬき,
またかへりみむ[寛],
" "#[番号]09/1669","#[題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)","#[原文]三名部乃浦 塩莫満 鹿嶋在 釣為海人乎 見變来六","#[訓読]南部の浦潮な満ちそね鹿島なる釣りする海人を見て帰り来む","#[仮名],みなべのうら,しほなみちそね,かしまなる,つりするあまを,みてかへりこむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,土地讃美,地名,大宝1年10月,年紀","#[訓異]
みなべのうら,[寛]みなへのうら,
しほなみちそね,[寛]しほなみちそ,
かしまなる[寛],
つりするあまを[寛],
みてかへりこむ[寛],
" "#[番号]09/1670","#[題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)","#[原文]朝開 滂出而我者 湯羅前 釣為海人乎 見<反>将来","#[訓読]朝開き漕ぎ出て我れは由良の崎釣りする海人を見て帰り来む","#[仮名],あさびらき,こぎでてわれは,ゆらのさき,つりするあまを,みてかへりこむ","#[左注]","#[校異]變 -> 反 [藍][壬][類]","#[事項],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,土地讃美,地名,大宝1年10月,年紀","#[訓異]
あさびらき,[寛]あさひらき,
こぎでてわれは,[寛]こきいててわれは,
ゆらのさき[寛],
つりするあまを[寛],
みてかへりこむ[寛],
" "#[番号]09/1671","#[題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)","#[原文]湯羅乃前 塩乾尓祁良志 白神之 礒浦箕乎 敢而滂動","#[訓読]由良の崎潮干にけらし白神の礒の浦廻をあへて漕ぐなり","#[仮名],ゆらのさき,しほひにけらし,しらかみの,いそのうらみを,あへてこぐなり","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,大宝1年10月,年紀","#[訓異]
ゆらのさき[寛],
しほひにけらし[寛],
しらかみの[寛],
いそのうらみを[寛],
あへてこぐなり,[寛]あへてこきとよむ,
" "#[番号]09/1672","#[題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)","#[原文]黒牛方 塩干乃浦乎 紅 玉裾須蘇延 徃者誰妻","#[訓読]黒牛潟潮干の浦を紅の玉裳裾引き行くは誰が妻","#[仮名],くろうしがた,しほひのうらを,くれなゐの,たまもすそびき,ゆくはたがつま","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,恋情,大宝1年10月,年紀","#[訓異]
くろうしがた,[寛]くろうしかた,
しほひのうらを[寛],
くれなゐの[寛],
たまもすそびき,[寛]たまもすそひき,
ゆくはたがつま,[寛]ゆくはたかつま,
" "#[番号]09/1673","#[題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)","#[原文]風莫乃 濱之白浪 徒 於斯依久流 見人無 [一云 於斯依来藻] ","#[訓読]風莫の浜の白波いたづらにここに寄せ来る見る人なしに [一云 ここに寄せ来も] ","#[仮名],かざなしの,はまのしらなみ,いたづらに,ここによせくる,みるひとなしに,[ここによせくも]","#[左注]右一首山上<臣>憶良類聚歌林曰 長忌寸意吉麻呂應詔作此歌","#[校異]莫 (塙) 草 / 臣 [西(上書訂正)][藍][壬][紀] / 歌林 [西] 謌林 [西(訂正)] 歌林 / 此歌 [西] 此謌 [西(訂正)] 此歌","#[事項],雑歌,長意吉麻呂,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,大宝1年10月,年紀,異伝,推敲","#[訓異]
かざなしの,[寛]かさなきの,
はまのしらなみ[寛],
いたづらに,[寛]いたつらに,
ここによせくる,[寛]ここによりくる,
みるひとなしに[寛],
[ここによせくも],[寛]ここによりくも,
" "#[番号]09/1674","#[題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)","#[原文]我背兒我 使将来歟跡 出立之 此松原乎 今日香過南","#[訓読]我が背子が使来むかと出立のこの松原を今日か過ぎなむ","#[仮名],わがせこが,つかひこむかと,いでたちの,このまつばらを,けふかすぎなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,大宝1年10月,年紀","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
つかひこむかと[寛],
いでたちの,[寛]いてたちし,
このまつばらを,[寛]このまつはらを,
けふかすぎなむ,[寛]いふかすきなむ,
" "#[番号]09/1675","#[題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)","#[原文]藤白之 三坂乎越跡 白栲之 我衣乎者 所沾香裳","#[訓読]藤白の御坂を越ゆと白栲の我が衣手は濡れにけるかも","#[仮名],ふぢしろの,みさかをこゆと,しろたへの,わがころもでは,ぬれにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,大宝1年10月,年紀","#[訓異]
ふぢしろの,[寛]ふちしろの,
みさかをこゆと[寛],
しろたへの[寛],
わがころもでは,[寛]わかころもては,
ぬれにけるかも[寛],
" "#[番号]09/1676","#[題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)","#[原文]勢能山尓 黄葉常敷 神岳之 山黄葉者 今日散濫","#[訓読]背の山に黄葉常敷く神岳の山の黄葉は今日か散るらむ","#[仮名],せのやまに,もみちつねしく,かむをかの,やまのもみちは,けふかちるらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,望郷,地名,大宝1年10月,年紀","#[訓異]
せのやまに[寛],
もみちつねしく,[寛]もみちとこしく,
かむをかの,[寛]みわやまの,
やまのもみちは[寛],
けふかちるらむ[寛],
" "#[番号]09/1677","#[題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)","#[原文]山跡庭 聞徃歟 大我野之 竹葉苅敷 廬為有跡者","#[訓読]大和には聞こえも行くか大我野の竹葉刈り敷き廬りせりとは","#[仮名],やまとには,きこえもゆくか,おほがのの,たかはかりしき,いほりせりとは","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,大宝1年10月,年紀","#[訓異]
やまとには[寛],
きこえもゆくか[寛],
おほがのの,[寛]おほかのの,
たかはかりしき[寛],
いほりせりとは[寛],
" "#[番号]09/1678","#[題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)","#[原文]木國之 昔弓雄之 響矢用 鹿取靡 坂上尓曽安留","#[訓読]紀の国の昔弓雄の鳴り矢もち鹿取り靡けし坂の上にぞある","#[仮名],きのくにの,むかしさつをの,なりやもち,かとりなびけし,さかのうへにぞある","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,大宝1年10月,年紀","#[訓異]
きのくにの[寛],
むかしさつをの,[寛]むかしゆみをの,
なりやもち,[寛]かふらもて,
かとりなびけし,[寛]しかとりなひく,
さかのうへにぞある,[寛]さかのへにそある,
" "#[番号]09/1679","#[題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)","#[原文]城國尓 不止将徃来 妻社 妻依来西尼 妻常言長柄 [一云 嬬賜尓毛 嬬云長<良>] ","#[訓読]紀の国にやまず通はむ妻の杜妻寄しこせね妻といひながら [一云 妻賜はにも妻といひながら] ","#[仮名],きのくにに,やまずかよはむ,つまのもり,つまよしこせね,つまといひながら,[つまたまはにも,つまといひながら]","#[左注]右一首或云坂上忌寸人長作","#[校異]良 -> 柄 [藍][壬][類][紀]","#[事項],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,大宝1年10月,年紀","#[訓異]
きのくにに[寛],
やまずかよはむ,[寛]やますかよはむ,
つまのもり,[寛]つまもこそ,
つまよしこせね,[寛]つまよりこさね,
つまといひながら,[寛]つまといひなから,
[つまたまはにも,[寛]つまたまのにも,
つまといひながら],[寛]つまといひなから,
" "#[番号]09/1680","#[題詞]後人歌二首","#[原文]朝裳吉 木方徃君我 信土山 越濫今日曽 雨莫零根","#[訓読]あさもよし紀へ行く君が真土山越ゆらむ今日ぞ雨な降りそね","#[仮名],あさもよし,きへゆくきみが,まつちやま,こゆらむけふぞ,あめなふりそね","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,和歌山,餞別,留守,地名","#[訓異]
あさもよし,[寛]あさもよい,
きへゆくきみが,[寛]きへゆくきみか,
まつちやま[寛],
こゆらむけふぞ,[寛]こゆらむけふそ,
あめなふりそね[寛],
" "#[番号]09/1681","#[題詞](後人歌二首)","#[原文]後居而 吾戀居者 白雲 棚引山乎 今日香越濫","#[訓読]後れ居て我が恋ひ居れば白雲のたなびく山を今日か越ゆらむ","#[仮名],おくれゐて,あがこひをれば,しらくもの,たなびくやまを,けふかこゆらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,餞別,留守","#[訓異]
おくれゐて[寛],
あがこひをれば,[寛]わかこひをれは,
しらくもの[寛],
たなびくやまを,[寛]たなひくやまを,
けふかこゆらむ[寛],
" "#[番号]09/1682","#[題詞]獻忍壁皇子歌一首 [詠仙人形]","#[原文]常之<倍>尓 夏冬徃哉 裘 扇不放 山住人","#[訓読]とこしへに夏冬行けや裘扇放たぬ山に住む人","#[仮名],とこしへに,なつふゆゆけや,かはごろも,あふぎはなたぬ,やまにすむひと","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 陪 -> 倍 [藍][壬][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,献呈歌,詠物,忍壁皇子,非略体","#[訓異]
とこしへに[寛],
なつふゆゆけや[寛],
かはごろも,[寛]かはころも,
あふぎはなたぬ,[寛]あふきはなたす,
やまにすむひと[寛],
" "#[番号]09/1683","#[題詞]獻舎人皇子歌二首","#[原文]妹手 取而引与治 に手折 吾刺可 花開鴨","#[訓読]妹が手を取りて引き攀ぢふさ手折り我がかざすべく花咲けるかも","#[仮名],いもがてを,とりてひきよぢ,ふさたをり,わがかざすべく,はなさけるかも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,献呈歌,舎人皇子,非略体","#[訓異]
いもがてを,[寛]いもかてを,
とりてひきよぢ,[寛]とりてひきよち,
ふさたをり,[寛]うつたをり,
わがかざすべく,[寛]わかかさすへき,
はなさけるかも[寛],
" "#[番号]09/1684","#[題詞](獻舎人皇子歌二首)","#[原文]春山者 散過去鞆 三和山者 未含 君持勝尓","#[訓読]春山は散り過ぎぬとも三輪山はいまだふふめり君待ちかてに","#[仮名],はるやまは,ちりすぎぬとも,みわやまは,いまだふふめり,きみまちかてに","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,献呈歌,舎人皇子,奈良,桜井,非略体,地名","#[訓異]
はるやまは[寛],
ちりすぎぬとも,[寛]ちりすくれとも,
みわやまは[寛],
いまだふふめり,[寛]いまたつほめり,
きみまちかてに,[寛]きみまつかてに,
" "#[番号]09/1685","#[題詞]泉河邊間人宿祢作歌二首","#[原文]河瀬 激乎見者 玉藻鴨 散乱而在 川常鴨","#[訓読]川の瀬のたぎつを見れば玉藻かも散り乱れたる川の常かも","#[仮名],かはのせの,たぎつをみれば,たまもかも,ちりみだれたる,かはのつねかも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 玉藻 [類][古](塙) 玉","#[事項],雑歌,柿本人麻呂歌集,作者:間人宿祢,木津川,京都,羈旅,非略体,地名","#[訓異]
かはのせの[寛],
たぎつをみれば,[寛]たきるをみれは,
たまもかも[寛],
ちりみだれたる,[寛]ちりみたれてある,
かはのつねかも,[寛]このかはとかも,
" "#[番号]09/1686","#[題詞](泉河邊間人宿祢作歌二首)","#[原文]孫星 頭刺玉之 嬬戀 乱祁良志 此川瀬尓","#[訓読]彦星のかざしの玉の妻恋ひに乱れにけらしこの川の瀬に","#[仮名],ひこほしの,かざしのたまの,つまごひに,みだれにけらし,このかはのせに","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]","#[事項],雑歌,柿本人麻呂歌集,七夕,作者:間人宿祢,木津川,京都,羈旅,非略体","#[訓異]
ひこほしの[寛],
かざしのたまの,[寛]かさしのたまの,
つまごひに,[寛]つまこひに,
みだれにけらし,[寛]みたれにけらし,
このかはのせに[寛],
" "#[番号]09/1687","#[題詞]鷺坂作歌一首","#[原文]白鳥 鷺坂山 松影 宿而徃奈 夜毛深徃乎","#[訓読]白鳥の鷺坂山の松蔭に宿りて行かな夜も更けゆくを","#[仮名],しらとりの,さぎさかやまの,まつかげに,やどりてゆかな,よもふけゆくを","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名","#[訓異]
しらとりの[寛],
さぎさかやまの,[寛]さきさかやまの,
まつかげに,[寛]まつかけに,
やどりてゆかな,[寛]やとりてゆくな,
よもふけゆくを,[寛]よもふけゆくを,
" "#[番号]09/1688","#[題詞]名木河作歌二首","#[原文]ぬ干 人母在八方 沾衣乎 家者夜良奈 羈印","#[訓読]あぶり干す人もあれやも濡れ衣を家には遣らな旅のしるしに","#[仮名],あぶりほす,ひともあれやも,ぬれぎぬを,いへにはやらな,たびのしるしに","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名,望郷","#[訓異]
あぶりほす,[寛]あふりほす,
ひともあれやも[寛],
ぬれぎぬを,[寛]ぬれきぬを,
いへにはやらな[寛],
たびのしるしに,[寛]たひのしるしに,
" "#[番号]09/1689","#[題詞](名木河作歌二首)","#[原文]在衣邊 著而榜尼 杏人 濱過者 戀布在奈利","#[訓読]あり衣辺につきて漕がさね杏人の浜を過ぐれば恋しくありなり","#[仮名],ありそへに,つきてこがさね,からひとの,はまをすぐれば,こほしくありなり","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名,望郷","#[訓異]
ありそへに[寛],
つきてこがさね,[寛]つきてこくあま,
からひとの[寛],
はまをすぐれば,[寛]はまをすくれは,
こほしくありなり,[寛]こひしくあるなり,
" "#[番号]09/1690","#[題詞]高島作歌二首","#[原文]高嶋之 阿渡川波者 驟鞆 吾者家思 宿加奈之弥","#[訓読]高島の阿渡川波は騒けども我れは家思ふ宿り悲しみ","#[仮名],たかしまの,あどかはなみは,さわけども,われはいへおもふ,やどりかなしみ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,滋賀県,羈旅,非略体,望郷,地名","#[訓異]
たかしまの[寛],
あどかはなみは,[寛]あとかはなみは,
さわけども,[寛]さわけとも,
われはいへおもふ[寛],
やどりかなしみ,[寛]たひねかなしみ,
" "#[番号]09/1691","#[題詞](高島作歌二首)","#[原文]客在者 三更刺而 照月 高嶋山 隠惜毛","#[訓読]旅なれば夜中をさして照る月の高島山に隠らく惜しも","#[仮名],たびにあれば,よなかをさして,てるつきの,たかしまやまに,かくらくをしも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]刺 (塙) 判","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,滋賀県,羈旅,非略体,地名","#[訓異]
たびにあれば,[寛]たひにあれは,
よなかをさして[寛],
てるつきの[寛],
たかしまやまに[寛],
かくらくをしも[寛],
" "#[番号]09/1692","#[題詞]紀伊國作歌二首","#[原文]吾戀 妹相佐受 玉浦丹 衣片敷 一鴨将寐","#[訓読]我が恋ふる妹は逢はさず玉の浦に衣片敷き独りかも寝む","#[仮名],あがこふる,いもはあはさず,たまのうらに,ころもかたしき,ひとりかもねむ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,和歌山,羈旅,非略体,地名,望郷","#[訓異]
あがこふる,[寛]わかこふる,
いもはあはさず,[寛]いもにあはさす,
たまのうらに[寛],
ころもかたしき[寛],
ひとりかもねむ[寛],
" "#[番号]09/1693","#[題詞](紀伊國作歌二首)","#[原文]玉匣 開巻惜 ね夜矣 袖可礼而 一鴨将寐","#[訓読]玉櫛笥明けまく惜しきあたら夜を衣手離れて独りかも寝む","#[仮名],たまくしげ,あけまくをしき,あたらよを,ころもでかれて,ひとりかもねむ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]寐 [類] 宿","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,和歌山,羈旅,非略体,望郷","#[訓異]
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
あけまくをしき[寛],
あたらよを[寛],
ころもでかれて,[寛]ころもてかれて,
ひとりかもねむ[寛],
" "#[番号]09/1694","#[題詞]鷺坂作歌一首","#[原文]細比礼乃 鷺坂山 白管自 吾尓尼保波<尼> 妹尓示","#[訓読]栲領巾の鷺坂山の白つつじ我れににほはに妹に示さむ","#[仮名],たくひれの,さぎさかやまの,しらつつじ,われににほはね,いもにしめさむ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 弖 -> 尼 [藍][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名,植物,みやげ,望郷","#[訓異]
たくひれの[寛],
さぎさかやまの,[寛]さきさかやまの,
しらつつじ,[寛]しらつつし,
われににほはね,[寛]われににほはて,
いもにしめさむ[寛],
" "#[番号]09/1695","#[題詞]泉河作歌一首","#[原文]妹門 入出見川乃 床奈馬尓 三雪遣 未冬鴨","#[訓読]妹が門入り泉川の常滑にみ雪残れりいまだ冬かも","#[仮名],いもがかど,いりいづみがはの,とこなめに,みゆきのこれり,いまだふゆかも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,木津川,京都,羈旅,非略体,地名","#[訓異]
いもがかど,[寛]いもかかと,
いりいづみがはの,[寛]いりいつみかはの,
とこなめに[寛],
みゆきのこれり[寛],
いまだふゆかも,[寛]いまたふゆかも,
" "#[番号]09/1696","#[題詞]名木河作歌三首","#[原文]衣手乃 名木之川邊乎 春雨 吾立沾等 家念良武可","#[訓読]衣手の名木の川辺を春雨に我れ立ち濡ると家思ふらむか","#[仮名],ころもでの,なきのかはへを,はるさめに,われたちぬると,いへおもふらむか","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名,望郷","#[訓異]
ころもでの,[寛]ころもての,
なきのかはへを[寛],
はるさめに[寛],
われたちぬると[寛],
いへおもふらむか[寛],
" "#[番号]09/1697","#[題詞](名木河作歌三首)","#[原文]家人 使在之 春雨乃 与久列杼吾<等>乎 沾念者","#[訓読]家人の使ひにあらし春雨の避くれど我れを濡らさく思へば","#[仮名],いへびとの,つかひにあらし,はるさめの,よくれどわれを,ぬらさくおもへば","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]<> -> 等 [藍][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,望郷","#[訓異]
いへびとの,[寛]いへひとの,
つかひにあらし,[寛]つかひなるらし,
はるさめの[寛],
よくれどわれを,[寛]よくれとわれを,
ぬらさくおもへば,[寛]ぬらすとおもへは,
" "#[番号]09/1698","#[題詞](名木河作歌三首)","#[原文]ぬ干 人母在八方 家人 春雨須良乎 間使尓為","#[訓読]あぶり干す人もあれやも家人の春雨すらを間使ひにする","#[仮名],あぶりほす,ひともあれやも,いへびとの,はるさめすらを,まつかひにする","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,望郷","#[訓異]
あぶりほす,[寛]あふりほす,
ひともあれやも[寛],
いへびとの,[寛]いへひとの,
はるさめすらを[寛],
まつかひにする[寛],
" "#[番号]09/1699","#[題詞]宇治河作歌二首","#[原文]巨椋乃 入江響奈理 射目人乃 伏見何田井尓 鴈渡良之","#[訓読]巨椋の入江響むなり射目人の伏見が田居に雁渡るらし","#[仮名],おほくらの,いりえとよむなり,いめひとの,ふしみがたゐに,かりわたるらし","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名,動物","#[訓異]
おほくらの[寛],
いりえとよむなり,[寛]いりえひひくなり,
いめひとの[寛],
ふしみがたゐに,[寛]ふしみかたゑに,
かりわたるらし[寛],
" "#[番号]09/1700","#[題詞](宇治河作歌二首)","#[原文]金風 山吹瀬乃 響苗 天雲翔 鴈相鴨","#[訓読]秋風に山吹の瀬の鳴るなへに天雲翔る雁に逢へるかも","#[仮名],あきかぜに,やまぶきのせの,なるなへに,あまくもかける,かりにあへるかも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]雁相 [藍][類][古] 相","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名","#[訓異]
あきかぜに,[寛]あきかせの,
やまぶきのせの,[寛]やまふきのせの,
なるなへに[寛],
あまくもかける[寛],
かりにあへるかも[寛],
" "#[番号]09/1701","#[題詞]獻弓削皇子歌三首","#[原文]佐宵中等 夜者深去良斯 鴈音 所聞空 月渡見","#[訓読]さ夜中と夜は更けぬらし雁が音の聞こゆる空ゆ月渡る見ゆ","#[仮名],さよなかと,よはふけぬらし,かりがねの,きこゆるそらゆ,つきわたるみゆ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,弓削皇子,献呈歌,非略体,動物","#[訓異]
さよなかと[寛],
よはふけぬらし[寛],
かりがねの,[寛]かりかねの,
きこゆるそらゆ,[寛]きこゆるそらに,
つきわたるみゆ[寛],
" "#[番号]09/1702","#[題詞](獻弓削皇子歌三首)","#[原文]妹當 茂苅音 夕霧 来鳴而過去 及乏","#[訓読]妹があたり繁き雁が音夕霧に来鳴きて過ぎぬすべなきまでに","#[仮名],いもがあたり,しげきかりがね,ゆふぎりに,きなきてすぎぬ,すべなきまでに","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,弓削皇子,献呈歌,非略体,動物","#[訓異]
いもがあたり,[寛]いもかあたり,
しげきかりがね,[寛]しけきかりかね,
ゆふぎりに,[寛]ゆふきりに,
きなきてすぎぬ,[寛]きなきてすきぬ,
すべなきまでに,[寛]ともしきまてに,
" "#[番号]09/1703","#[題詞](獻弓削皇子歌三首)","#[原文]雲隠 鴈鳴時 秋山 黄葉片待 時者雖過","#[訓読]雲隠り雁鳴く時は秋山の黄葉片待つ時は過ぐれど","#[仮名],くもがくり,かりなくときは,あきやまの,もみちかたまつ,ときはすぐれど","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,弓削皇子,献呈歌,非略体,動物,植物,季節","#[訓異]
くもがくり,[寛]くもかくれ,
かりなくときは,[寛]かりなくときに,
あきやまの[寛],
もみちかたまつ[寛],
ときはすぐれど,[寛]ときは****,
" "#[番号]09/1704","#[題詞]獻舎人皇子歌二首","#[原文]に手折 多武山霧 茂鴨 細川瀬 波驟祁留","#[訓読]ふさ手折り多武の山霧繁みかも細川の瀬に波の騒ける","#[仮名],ふさたをり,たむのやまきり,しげみかも,ほそかはのせに,なみのさわける","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,舎人皇子,献呈歌,飛鳥,非略体,地名","#[訓異]
ふさたをり,[寛]うちたをる,
たむのやまきり[寛],
しげみかも,[寛]しけきかも,
ほそかはのせに[寛],
なみのさわける,[寛]なみさわきける,
" "#[番号]09/1705","#[題詞](獻舎人皇子歌二首)","#[原文]冬木成 春部戀而 殖木 實成時 片待吾等叙","#[訓読]冬こもり春へを恋ひて植ゑし木の実になる時を片待つ我れぞ","#[仮名],ふゆこもり,はるへをこひて,うゑしきの,みになるときを,かたまつわれぞ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,舎人皇子,献呈歌,非略体,季節","#[訓異]
ふゆこもり,[寛]ふゆこなり,
はるへをこひて[寛],
うゑしきの[寛],
みになるときを[寛],
かたまつわれぞ,[寛]かたまつわれそ,
" "#[番号]09/1706","#[題詞]舎人皇子御歌一首","#[原文]黒玉 夜霧立 衣手 高屋於 霏d麻天尓","#[訓読]ぬばたまの夜霧は立ちぬ衣手の高屋の上にたなびくまでに","#[仮名],ぬばたまの,よぎりはたちぬ,ころもでの,たかやのうへに,たなびくまでに","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,舎人皇子,桜井,飛鳥,非略体,地名","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よぎりはたちぬ,[寛]よきりはたちぬ,
ころもでの,[寛]ころもての,
たかやのうへに[寛],
たなびくまでに,[寛]たなひくまてに,
" "#[番号]09/1707","#[題詞]鷺坂作歌一首","#[原文]山代 久世乃鷺坂 自神代 春者張乍 秋者散来","#[訓読]山背の久世の鷺坂神代より春は張りつつ秋は散りけり","#[仮名],やましろの,くぜのさぎさか,かむよより,はるははりつつ,あきはちりけり","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名","#[訓異]
やましろの[寛],
くぜのさぎさか,[寛]くせのさきさか,
かむよより,[寛]かみよより,
はるははりつつ[寛],
あきはちりけり[寛],
" "#[番号]09/1708","#[題詞]泉河邊作歌一首","#[原文]春草 馬咋山自 越来奈流 鴈使者 宿過奈利","#[訓読]春草を馬咋山ゆ越え来なる雁の使は宿り過ぐなり","#[仮名],はるくさを,うまくひやまゆ,こえくなる,かりのつかひは,やどりすぐなり","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集所出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,木津川,京都,羈旅,非略体,動物","#[訓異]
はるくさを[寛],
うまくひやまゆ,[寛]うまくひやまを,
こえくなる[寛],
かりのつかひは[寛],
やどりすぐなり,[寛]やとすきぬなり,
" "#[番号]09/1709","#[題詞]獻弓削皇子歌一首","#[原文]御食向 南淵山之 巌者 落波太列可 削遺有","#[訓読]御食向ふ南淵山の巌には降りしはだれか消え残りたる","#[仮名],みけむかふ,みなぶちやまの,いはほには,ふりしはだれか,きえのこりたる","#[左注]右柿本朝臣人麻呂之歌集所出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,弓削皇子,飛鳥,献呈歌,非略体,地名,季節","#[訓異]
みけむかふ[寛],
みなぶちやまの,[寛]みなふちやまの,
いはほには[寛],
ふりしはだれか,[寛]ちるなみたらか,
きえのこりたる,[寛]けつりのこせる,
" "#[番号]09/1710","#[題詞]","#[原文]吾妹兒之 赤裳<O>塗而 殖之田乎 苅将蔵 倉無之濱","#[訓読]我妹子が赤裳ひづちて植ゑし田を刈りて収めむ倉無の浜","#[仮名],わぎもこが,あかもひづちて,うゑしたを,かりてをさめむ,くらなしのはま","#[左注](右二首或云柿本朝臣人麻呂作)","#[校異]泥 -> O [藍][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,福岡県,中津市,地名","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
あかもひづちて,[寛]あかもひつちて,
うゑしたを[寛],
かりてをさめむ[寛],
くらなしのはま[寛],
" "#[番号]09/1711","#[題詞]","#[原文]百<轉> 八十之嶋廻乎 榜雖来 粟小嶋者 雖見不足可聞","#[訓読]百伝ふ八十の島廻を漕ぎ来れど粟の小島は見れど飽かぬかも","#[仮名],ももづたふ,やそのしまみを,こぎくれど,あはのこしまは,みれどあかぬかも","#[左注]右二首或云柿本朝臣人麻呂作","#[校異]轉之 -> 轉 [藍][類][古][紀] / 者 [類][古][紀] 志","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,羈旅,淡路,粟島,土地讃美,地名","#[訓異]
ももづたふ,[寛]ももつての,
やそのしまみを,[寛]やそのしまわを,
こぎくれど,[寛]こきくれと,
あはのこしまは[寛],
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]09/1712","#[題詞]登筑波山詠月一首","#[原文]天原 雲無夕尓 烏玉乃 宵度月乃 入巻ね毛","#[訓読]天の原雲なき宵にぬばたまの夜渡る月の入らまく惜しも","#[仮名],あまのはら,くもなきよひに,ぬばたまの,よわたるつきの,いらまくをしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,茨城,羈旅,地名","#[訓異]
あまのはら[寛],
くもなきよひに[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よわたるつきの[寛],
いらまくをしも[寛],
" "#[番号]09/1713","#[題詞]幸芳野離宮時歌二首","#[原文]瀧上乃 三船山従 秋津邊 来鳴度者 誰喚兒鳥","#[訓読]滝の上の三船の山ゆ秋津辺に来鳴き渡るは誰れ呼子鳥","#[仮名],たきのうへの,みふねのやまゆ,あきづへに,きなきわたるは,たれよぶこどり","#[左注](右<二>首作者未詳)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,吉野,離宮,行幸,地名,動物","#[訓異]
たきのうへの[寛],
みふねのやまゆ,[寛]みふねやまより,
あきづへに,[寛]あきつへに,
きなきわたるは[寛],
たれよぶこどり,[寛]たれよふことり,
" "#[番号]09/1714","#[題詞](幸芳野離宮時歌二首)","#[原文]落多藝知 流水之 磐觸 与杼賣類与杼尓 月影所見","#[訓読]落ちたぎち流るる水の岩に触れ淀める淀に月の影見ゆ","#[仮名],おちたぎち,ながるるみづの,いはにふれ,よどめるよどに,つきのかげみゆ","#[左注]右<二>首作者未詳","#[校異]三 -> 二 [藍][矢] (楓) 三","#[事項],雑歌,吉野,離宮,行幸,叙景","#[訓異]
おちたぎち,[寛]おちたきち,
ながるるみづの,[寛]なかるるみつの,
いはにふれ[寛],
よどめるよどに,[寛]よとめるよとに,
つきのかげみゆ,[寛]つきのかけみゆ,
" "#[番号]09/1715","#[題詞]槐本歌一首","#[原文]樂<浪>之 平山風之 海吹者 釣為海人之 袂變所見","#[訓読]楽浪の比良山風の海吹けば釣りする海人の袖返る見ゆ","#[仮名],ささなみの,ひらやまかぜの,うみふけば,つりするあまの,そでかへるみゆ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 波 -> 浪 [藍][壬][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,滋賀県,琵琶湖,羈旅,地名,叙景","#[訓異]
ささなみの[寛],
ひらやまかぜの,[寛]ひらやまかせの,
うみふけば,[寛]うみふけは,
つりするあまの[寛],
そでかへるみゆ,[寛]そてかへるみゆ,
" "#[番号]09/1716","#[題詞]山上歌一首","#[原文]白那弥<乃> 濱松之木乃 手酬草 幾世左右二箇 年薄經濫","#[訓読]白波の浜松の木の手向けくさ幾代までにか年は経ぬらむ","#[仮名],しらなみの,はままつのきの,たむけくさ,いくよまでにか,としはへぬらむ","#[左注]右一首或云川嶋皇子御作歌","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 之 -> 乃 [藍][壬][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:山上憶良,川島皇子,異伝,重出,和歌山,羈旅,地名","#[訓異]
しらなみの[寛],
はままつのきの[寛],
たむけくさ[寛],
いくよまでにか,[寛]いくよまてにか,
としはへぬらむ[寛],
" "#[番号]09/1717","#[題詞]春日歌一首","#[原文]三川之 淵瀬物不落 左提刺尓 衣手<潮> 干兒波無尓","#[訓読]三川の淵瀬もおちず小網さすに衣手濡れぬ干す子はなしに","#[仮名],みつかはの,ふちせもおちず,さでさすに,ころもでぬれぬ,ほすこはなしに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 湖 -> 潮 [類][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:春日蔵首老,滋賀県,愛知,羈旅","#[訓異]
みつかはの[寛],
ふちせもおちず,[寛]ふちせもおちぬ,
さでさすに,[寛]さてけしに,
ころもでぬれぬ,[寛]ころもてぬれぬ,
ほすこはなしに[寛],
" "#[番号]09/1718","#[題詞]高市歌一首","#[原文]足利思<代> 榜行舟薄 高嶋之 足速之水門尓 極尓<監>鴨","#[訓読]率ひて漕ぎ行く舟は高島の安曇の港に泊てにけむかも","#[仮名],あどもひて,こぎゆくふねは,たかしまの,あどのみなとに,はてにけむかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 伐 -> 代 [濫][壬][類][紀] / 濫 -> 監 [類][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:高市黒人,琵琶湖,滋賀県,羈旅,地名","#[訓異]
あどもひて,[寛]あしりをは,
こぎゆくふねは,[寛]こきゆくふねは,
たかしまの[寛],
あどのみなとに,[寛]あとのみなとに,
はてにけむかも[寛],
" "#[番号]09/1719","#[題詞]春日蔵歌一首","#[原文]照月遠 雲莫隠 嶋陰尓 吾船将極 留不知毛","#[訓読]照る月を雲な隠しそ島蔭に我が舟泊てむ泊り知らずも","#[仮名],てるつきを,くもなかくしそ,しまかげに,わがふねはてむ,とまりしらずも","#[左注]右一首或本云 小辨作也 或記姓氏無記名字 或称名号不称姓氏 然依古記 便以次載 凡如此類下皆放焉","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 辨 [藍][紀][温](塙) 弁 / 放 [文][細][温] 效","#[事項],雑歌,作者:春日蔵首老,小辨,異伝,羈旅","#[訓異]
てるつきを[寛],
くもなかくしそ[寛],
しまかげに,[寛]しまかけに,
わがふねはてむ,[寛]わかふねはてむ,
とまりしらずも,[寛]とまりしらすも,
" "#[番号]09/1720","#[題詞]元仁歌三首","#[原文]馬屯而 打集越来 今日見鶴 芳野之川乎 何時将顧","#[訓読]馬並めてうち群れ越え来今日見つる吉野の川をいつかへり見む","#[仮名],うまなめて,うちむれこえき,けふみつる,よしののかはを,いつかへりみむ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 今日 [壬][類](塙) 今","#[事項],雑歌,柿本人麻呂歌集,作者:元仁,吉野,羈旅,非略体,地名","#[訓異]
うまなめて,[寛]うまなへて,
うちむれこえき[寛],
けふみつる,[寛]いふみつる,
よしののかはを[寛],
いつかへりみむ[寛],
" "#[番号]09/1721","#[題詞](元仁歌三首)","#[原文]辛苦 晩去日鴨 吉野川 清河原乎 雖見不飽君","#[訓読]苦しくも暮れゆく日かも吉野川清き川原を見れど飽かなくに","#[仮名],くるしくも,くれゆくひかも,よしのがは,きよきかはらを,みれどあかなくに","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],雑歌,柿本人麻呂歌集,作者:元仁,吉野,土地讃美,羈旅,非略体,地名","#[訓異]
くるしくも[寛],
くれゆくひかも[寛],
よしのがは,[寛]よしのかは,
きよきかはらを[寛],
みれどあかなくに,[寛]みれとあかなくに,
" "#[番号]09/1722","#[題詞](元仁歌三首)","#[原文]吉野川 河浪高見 多寸能浦乎 不視歟成嘗 戀布<真>國","#[訓読]吉野川川波高み滝の浦を見ずかなりなむ恋しけまくに","#[仮名],よしのがは,かはなみたかみ,たきのうらを,みずかなりなむ,こほしけまくに","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]莫 -> 真 [壬][類][古]","#[事項],雑歌,柿本人麻呂歌集,作者:元仁,吉野,羈旅,土地讃美,非略体,地名","#[訓異]
よしのがは,[寛]よしのかは,
かはなみたかみ[寛],
たきのうらを[寛],
みずかなりなむ,[寛]みすかなりなむ,
こほしけまくに,[寛]こひしきまくに,
" "#[番号]09/1723","#[題詞]絹歌一首","#[原文]河蝦鳴 六田乃河之 川楊乃 根毛居侶雖見 不飽<河>鴨","#[訓読]かわづ鳴く六田の川の川柳のねもころ見れど飽かぬ川かも","#[仮名],かはづなく,むつたのかはの,かはやぎの,ねもころみれど,あかぬかはかも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 君 -> 河 [壬][類][古][紀]","#[事項],雑歌,柿本人麻呂歌集,作者:絹,吉野,土地讃美,羈旅,非略体,地名,動物","#[訓異]
かはづなく,[寛]かはつなく,
むつたのかはの[寛],
かはやぎの,[寛]かはやなきの,
ねもころみれど,[寛]ねもころみれと,
あかぬかはかも,[寛]あかぬきみかも,
" "#[番号]09/1724","#[題詞]嶋足歌一首","#[原文]欲見 来之久毛知久 吉野川 音清左 見二友敷","#[訓読]見まく欲り来しくもしるく吉野川音のさやけさ見るにともしく","#[仮名],みまくほり,こしくもしるく,よしのがは,おとのさやけさ,みるにともしく","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,柿本人麻呂歌集,作者:嶋足,吉野,土地讃美,羈旅,非略体,地名","#[訓異]
みまくほり[寛],
こしくもしるく[寛],
よしのがは,[寛]よしのかは,
おとのさやけさ[寛],
みるにともしく,[寛]みるにともしき,
" "#[番号]09/1725","#[題詞]麻呂歌一首","#[原文]古之 賢人之 遊兼 吉野川原 雖見不飽鴨","#[訓読]いにしへの賢しき人の遊びけむ吉野の川原見れど飽かぬかも","#[仮名],いにしへの,さかしきひとの,あそびけむ,よしののかはら,みれどあかぬかも","#[左注]右柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,柿本人麻呂歌集,作者:麻呂,吉野,羈旅,土地讃美,非略体,地名","#[訓異]
いにしへの[寛],
さかしきひとの[寛],
あそびけむ,[寛]あそひけむ,
よしののかはら[寛],
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]09/1726","#[題詞]丹比真人歌一首","#[原文]難波方 塩干尓出<而> 玉藻苅 海未通<女>等 汝名告左祢","#[訓読]難波潟潮干に出でて玉藻刈る海人娘子ども汝が名告らさね","#[仮名],なにはがた,しほひにいでて,たまもかる,あまをとめども,ながなのらさね","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 而 [壬][類][古][紀] / <> -> 女 [代匠記精撰本]","#[事項],雑歌,作者:丹比真人,大阪,羈旅,妻問い,地名","#[訓異]
なにはがた,[寛]なにはかた,
しほひにいでて,[寛]しほひにいてて,
たまもかる[寛],
あまをとめども,[寛]あまのをとめら,
ながなのらさね,[寛]なかなつけさね,
" "#[番号]09/1727","#[題詞]和歌一首","#[原文]朝入為流 人跡乎見座 草枕 客去人尓 妾<名>者不<教>","#[訓読]あさりする人とを見ませ草枕旅行く人に我が名は告らじ","#[仮名],あさりする,ひととをみませ,くさまくら,たびゆくひとに,わがなはのらじ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / <> -> 名 [万葉集新考] / 敷 -> 教 [万葉集略解]","#[事項],雑歌,和歌,答え,羈旅,大阪,妻問い","#[訓異]
あさりする[寛],
ひととをみませ[寛],
くさまくら[寛],
たびゆくひとに,[寛]たひゆくひとな,
わがなはのらじ,[寛]つまにはしかし,
" "#[番号]09/1728","#[題詞]石川卿歌一首","#[原文]名草目而 今夜者寐南 従明日波 戀鴨行武 従此間別者","#[訓読]慰めて今夜は寝なむ明日よりは恋ひかも行かむこゆ別れなば","#[仮名],なぐさめて,こよひはねなむ,あすよりは,こひかもゆかむ,こゆわかれなば","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:石川年足,石川宮麻呂,羈旅,恋情","#[訓異]
なぐさめて,[寛]なくさめて,
こよひはねなむ[寛],
あすよりは[寛],
こひかもゆかむ[寛],
こゆわかれなば,[寛]いまわかれなは,
" "#[番号]09/1729","#[題詞]宇合卿歌三首","#[原文]暁之 夢所見乍 梶嶋乃 石<超>浪乃 敷弖志所念","#[訓読]暁の夢に見えつつ梶島の礒越す波のしきてし思ほゆ","#[仮名],あかときの,いめにみえつつ,かぢしまの,いそこすなみの,しきてしおもほゆ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 越 -> 超 [藍][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:藤原宇合,羈旅,望郷,九州,京都,地名","#[訓異]
あかときの,[寛]あかつきの,
いめにみえつつ,[寛]ゆめにみえつつ,
かぢしまの,[寛]かちしまの,
いそこすなみの[寛],
しきてしおもほゆ,[寛]しきてしそおもふ,
" "#[番号]09/1730","#[題詞](宇合卿歌三首)","#[原文]山品之 石田乃小野之 母蘇原 見乍哉公之 山道越良武","#[訓読]山科の石田の小野のははそ原見つつか君が山道越ゆらむ","#[仮名],やましなの,いはたのをのの,ははそはら,みつつかきみが,やまぢこゆらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:藤原宇合,京都,留守,羈旅,地名","#[訓異]
やましなの[寛],
いはたのをのの[寛],
ははそはら[寛],
みつつかきみが,[寛]みつつやきみか,
やまぢこゆらむ,[寛]やまちこゆらむ,
" "#[番号]09/1731","#[題詞](宇合卿歌三首)","#[原文]山科乃 石田社尓 布<麻>越者 蓋吾妹尓 直相鴨","#[訓読]山科の石田の杜に幣置かばけだし我妹に直に逢はむかも","#[仮名],やましなの,いはたのもりに,ぬさおかば,けだしわぎもに,ただにあはむかも","#[左注]","#[校異]靡 -> 麻 [藍][壬][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:藤原宇合,京都,羈旅,望郷,手向け,地名","#[訓異]
やましなの[寛],
いはたのもりに[寛],
ぬさおかば,[寛]ふみこえは,
けだしわぎもに,[寛]けたしわきもに,
ただにあはむかも,[寛]たたにあはむかも,
" "#[番号]09/1732","#[題詞]碁師歌二首","#[原文]<祖>母山 霞棚引 左夜深而 吾舟将泊 等万里不知母","#[訓読]大葉山霞たなびきさ夜更けて我が舟泊てむ泊り知らずも","#[仮名],おほばやま,かすみたなびき,さよふけて,わがふねはてむ,とまりしらずも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 祖 [万葉集略解]","#[事項],雑歌,作者:碁師,滋賀県,琵琶湖,重出,羈旅,寂寥,地名","#[訓異]
おほばやま,[寛]おもやまに,
かすみたなびき,[寛]かすみたななき,
さよふけて[寛],
わがふねはてむ,[寛]わかふねはてむ,
とまりしらずも,[寛]とまりしらすも,
" "#[番号]09/1733","#[題詞](碁師歌二首)","#[原文]思乍 雖来々不勝而 水尾埼 真長乃浦乎 又顧津","#[訓読]思ひつつ来れど来かねて三尾の崎真長の浦をまたかへり見つ","#[仮名],おもひつつ,くれどきかねて,みをのさき,まながのうらを,またかへりみつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:碁師,滋賀県,琵琶湖,羈旅,地名","#[訓異]
おもひつつ[寛],
くれどきかねて,[寛]くれときかねて,
みをのさき,[寛]みをかさき,
まながのうらを,[寛]まなかのうらを,
またかへりみつ[寛],
" "#[番号]09/1734","#[題詞]小辨歌一首","#[原文]高嶋之 足利湖乎 滂過而 塩津菅浦 今<香>将滂","#[訓読]高島の安曇の港を漕ぎ過ぎて塩津菅浦今か漕ぐらむ","#[仮名],たかしまの,あどのみなとを,こぎすぎて,しほつすがうら,いまかこぐらむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 辨 [藍][類] 弁 / 者 -> 香 [藍][壬][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:少辨,滋賀県,琵琶湖,羈旅,道行き,地名","#[訓異]
たかしまの[寛],
あどのみなとを,[寛]あとのみなとを,
こぎすぎて,[寛]こきすきて,
しほつすがうら,[寛]しほつすかうら,
いまかこぐらむ,[寛]いまかこくらむ,
" "#[番号]09/1735","#[題詞]伊保麻呂歌一首","#[原文]吾疊 三重乃河原之 礒裏尓 如是鴨跡 鳴河蝦可物","#[訓読]我が畳三重の川原の礒の裏にかくしもがもと鳴くかはづかも","#[仮名],わがたたみ,みへのかはらの,いそのうらに,かくしもがもと,なくかはづかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:伊保麻呂,三重県,内部川,羈旅,地名","#[訓異]
わがたたみ,[寛]わかたたみ,
みへのかはらの[寛],
いそのうらに[寛],
かくしもがもと,[寛]かはかりかもと,
なくかはづかも,[寛]なくかはつかも,
" "#[番号]09/1736","#[題詞]式部大倭芳野作歌一首","#[原文]山高見 白木綿花尓 落多藝津 夏身之川門 雖見不飽香開","#[訓読]山高み白木綿花に落ちたぎつ夏身の川門見れど飽かぬかも","#[仮名],やまたかみ,しらゆふばなに,おちたぎつ,なつみのかはと,みれどあかぬかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:式部大倭,吉野,土地讃美,羈旅,地名","#[訓異]
やまたかみ[寛],
しらゆふばなに,[寛]しらゆふはなに,
おちたぎつ,[寛]おちたきつ,
なつみのかはと[寛],
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]09/1737","#[題詞]兵部川原歌一首","#[原文]大瀧乎 過而夏箕尓 傍為而 浄川瀬 見何明沙","#[訓読]大滝を過ぎて夏身に近づきて清き川瀬を見るがさやけさ","#[仮名],おほたきを,すぎてなつみに,ちかづきて,きよきかはせを,みるがさやけさ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:兵部川原,吉野,土地讃美,羈旅,地名","#[訓異]
おほたきを[寛],
すぎてなつみに,[寛]すきてなつみに,
ちかづきて,[寛]そひてゐて,
きよきかはせを[寛],
みるがさやけさ,[寛]みるかさやけさ,
" "#[番号]09/1738","#[題詞]詠上総末珠名娘子一首[并短歌]","#[原文]水長鳥 安房尓継有 梓弓 末乃珠名者 胸別之 廣吾妹 腰細之 須軽娘子之 其姿之 端正尓 如花 咲而立者 玉桙乃 道<徃>人者 己行 道者不去而 不召尓 門至奴 指並 隣之君者 <預> 己妻離而 不乞尓 鎰左倍奉 人<皆乃> 如是迷有者 容艶 縁而曽妹者 多波礼弖有家留 ","#[訓読]しなが鳥 安房に継ぎたる 梓弓 周淮の珠名は 胸別けの 広き我妹 腰細の すがる娘子の その顔の きらきらしきに 花のごと 笑みて立てれば 玉桙の 道行く人は おのが行く 道は行かずて 呼ばなくに 門に至りぬ さし並ぶ 隣の君は あらかじめ 己妻離れて 乞はなくに 鍵さへ奉る 人皆の かく惑へれば たちしなひ 寄りてぞ妹は たはれてありける ","#[仮名],しながとり,あはにつぎたる,あづさゆみ,すゑのたまなは,むなわけの,ひろきわぎも,こしぼその,すがるをとめの,そのかほの,きらきらしきに,はなのごと,ゑみてたてれば,たまほこの,みちゆくひとは,おのがゆく,みちはゆかずて,よばなくに,かどにいたりぬ,さしならぶ,となりのきみは,あらかじめ,おのづまかれて,こはなくに,かぎさへまつる,ひとみなの,かくまとへれば,たちしなひ,よりてぞいもは,たはれてありける","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 行 -> 徃 [藍][類][紀] / 豫 -> 預 [藍][壬][類][紀] / 乃皆 -> 皆乃 [藍][類][温]","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,千葉,美女伝説,枕詞,地名","#[訓異]
しながとり,[寛]しなかとり,
あはにつぎたる,[寛]あはにつきたる,
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
すゑのたまなは[寛],
むなわけの[寛],
ひろきわぎも,[寛]ひろけきわきも,
こしぼその,[寛]こしほその,
すがるをとめの,[寛]すかるをとめか,
そのかほの[寛],
きらきらしきに,[寛]うつくしけさに,
はなのごと,[寛]はなのこと,
ゑみてたてれば,[寛]ゑみてたてれは,
たまほこの[寛],
みちゆくひとは,[寛]みちゆきひとは,
おのがゆく,[寛]おのかゆく,
みちはゆかずて,[寛]みちはゆかすて,
よばなくに,[寛]よはなくは,
かどにいたりぬ,[寛]かとにいたりぬ,
さしならぶ,[寛]さしならふ,
となりのきみは[寛],
あらかじめ,[寛]かねてより,
おのづまかれて,[寛]さかつまかれて,
こはなくに[寛],
かぎさへまつる,[寛]かきさへまたれ,
ひとみなの,[寛]ひとのみな,
かくまとへれば,[寛]かくまとへるは,
たちしなひ,[寛]かほよきに,
よりてぞいもは,[寛]よりてそいもは,
たはれてありける[寛],
" "#[番号]09/1739","#[題詞](詠上総末珠名娘子一首[并短歌])反歌","#[原文]金門尓之 人乃来立者 夜中母 身者田菜不知 出曽相来","#[訓読]金門にし人の来立てば夜中にも身はたな知らず出でてぞ逢ひける","#[仮名],かなとにし,ひとのきたてば,よなかにも,みはたなしらず,いでてぞあひける","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,千葉,美女伝説,地名","#[訓異]
かなとにし[寛],
ひとのきたてば,[寛]ひとのきたては,
よなかにも[寛],
みはたなしらず,[寛]みはたなしすら,
いでてぞあひける,[寛]いてそあひける,
" "#[番号]09/1740","#[題詞]詠水江浦嶋子一首[并短歌]","#[原文]春日之 霞時尓 墨吉之 岸尓出居而 釣船之 得<乎>良布見者 <古>之 事曽所念 水江之 浦嶋兒之 堅魚釣 鯛釣矜 及七日 家尓毛不来而 海界乎 過而榜行尓 海若 神之女尓 邂尓 伊許藝T 相誂良比 言成之賀婆 加吉結 常代尓至 海若 神之宮乃 内隔之 細有殿尓 携 二人入居而 耆不為 死不為而 永世尓 有家留物乎 世間之 愚人<乃> 吾妹兒尓 告而語久 須臾者 家歸而 父母尓 事毛告良比 如明日 吾者来南登 言家礼婆 妹之答久 常世邊 復變来而 如今 将相跡奈良婆 此篋 開勿勤常 曽己良久尓 堅目師事乎 墨吉尓 還来而 家見跡 <宅>毛見金手 里見跡 里毛見金手 恠常 所許尓念久 従家出而 三歳之間尓 <垣>毛無 家滅目八跡 此筥乎 開而見手歯 <如>本 家者将有登 玉篋 小披尓 白雲之 自箱出而 常世邊 棚引去者 立走 S袖振 反側 足受利四管 頓 情消失奴 若有之 皮毛皺奴 黒有之 髪毛白斑奴 <由>奈由奈波 氣左倍絶而 後遂 壽死祁流 水江之 浦嶋子之 家地見 ","#[訓読]春の日の 霞める時に 住吉の 岸に出で居て 釣舟の とをらふ見れば いにしへの ことぞ思ほゆる 水江の 浦島の子が 鰹釣り 鯛釣りほこり 七日まで 家にも来ずて 海境を 過ぎて漕ぎ行くに 海神の 神の娘子に たまさかに い漕ぎ向ひ 相とぶらひ 言成りしかば かき結び 常世に至り 海神の 神の宮の 内のへの 妙なる殿に たづさはり ふたり入り居て 老いもせず 死にもせずして 長き世に ありけるものを 世間の 愚か人の 我妹子に 告りて語らく しましくは 家に帰りて 父母に 事も告らひ 明日のごと 我れは来なむと 言ひければ 妹が言へらく 常世辺に また帰り来て 今のごと 逢はむとならば この櫛笥 開くなゆめと そこらくに 堅めし言を 住吉に 帰り来りて 家見れど 家も見かねて 里見れど 里も見かねて あやしみと そこに思はく 家ゆ出でて 三年の間に 垣もなく 家失せめやと この箱を 開きて見てば もとのごと 家はあらむと 玉櫛笥 少し開くに 白雲の 箱より出でて 常世辺に たなびきぬれば 立ち走り 叫び袖振り こいまろび 足ずりしつつ たちまちに 心消失せぬ 若くありし 肌も皺みぬ 黒くありし 髪も白けぬ ゆなゆなは 息さへ絶えて 後つひに 命死にける 水江の 浦島の子が 家ところ見ゆ ","#[仮名],はるのひの,かすめるときに,すみのえの,きしにいでゐて,つりぶねの,とをらふみれば,いにしへの,ことぞおもほゆる,みづのえの,うらしまのこが,かつをつり,たひつりほこり,なぬかまで,いへにもこずて,うなさかを,すぎてこぎゆくに,わたつみの,かみのをとめに,たまさかに,いこぎむかひ,あひとぶらひ,ことなりしかば,かきむすび,とこよにいたり,わたつみの,かみのみやの,うちのへの,たへなるとのに,たづさはり,ふたりいりゐて,おいもせず,しにもせずして,ながきよに,ありけるものを,よのなかの,おろかひとの,わぎもこに,のりてかたらく,しましくは,いへにかへりて,ちちははに,こともかたらひ,あすのごと,われはきなむと,いひければ,いもがいへらく,とこよへに,またかへりきて,いまのごと,あはむとならば,このくしげ,ひらくなゆめと,そこらくに,かためしことを,すみのえに,かへりきたりて,いへみれど,いへもみかねて,さとみれど,さともみかねて,あやしみと,そこにおもはく,いへゆいでて,みとせのあひだに,かきもなく,いへうせめやと,このはこを,ひらきてみてば,もとのごと,いへはあらむと,たまくしげ,すこしひらくに,しらくもの,はこよりいでて,とこよへに,たなびきぬれば,たちはしり,さけびそでふり,こいまろび,あしずりしつつ,たちまちに,こころけうせぬ,わかくありし,はだもしわみぬ,くろくありし,かみもしらけぬ,ゆなゆなは,いきさへたえて,のちつひに,いのちしにける,みづのえの,うらしまのこが,いへところみゆ","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 / 手 -> 乎 [西(訂正右書)][壬][細][温][矢] / 吉 -> 古 [西(訂正右書)][藍][壬][類] / 之 -> 乃 [藍][壬][類] / 宅 [西(上書訂正)][藍][壬][類] / 墻 -> 垣 [藍][類][紀] / 如来 -> 如 [藍][類] / 反 [藍][類](塙) 返 / <> -> 由 [西(右書)][藍][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,浦島伝説,若狭,地名,枕詞","#[訓異]
はるのひの[寛],
かすめるときに[寛],
すみのえの[寛],
きしにいでゐて,[寛]きしにいてゐて,
つりぶねの,[寛]つりふねの,
とをらふみれば,[寛]とをらふみれは,
いにしへの[寛],
ことぞおもほゆる,[寛]ことそおほゆる,
みづのえの,[寛]すみのえの,
うらしまのこが,[寛]うらしまのこか,
かつをつり[寛],
たひつりほこり,[寛]たひつりかねて、
なぬかまで,[寛]なぬかまて,
いへにもこずて,[寛]いへにもこすて,
うなさかを,[寛]うみきはを,
すぎてこぎゆくに,[寛]すきてこきゆくに,
わたつみの[寛],
かみのをとめに[寛],
たまさかに[寛],
いこぎむかひ,[寛]いこきわしらひ,
あひとぶらひ,[寛]かたらひ,
ことなりしかば,[寛]ことなれしかは,
かきむすび,[寛]かきつらね,
とこよにいたり[寛],
わたつみの[寛],
かみのみやの[寛],
うちのへの,[寛]なかのへの,
たへなるとのに[寛],
たづさはり,[寛]たつさはり,
ふたりいりゐて[寛],
おいもせず,[寛]おいもせす,
しにもせずして,[寛]しにもせすして,
ながきよに,[寛]なかきよに,
ありけるものを[寛],
よのなかの[寛],
おろかひとの,[寛]しれたるひとの,
わぎもこに,[寛]わきもこに,
のりてかたらく,[寛]つけてかたらく,
しましくは,[寛]しはらくは,
いへにかへりて[寛],
ちちははに[寛],
こともかたらひ,[寛]こともつけらひ,
あすのごと,[寛]あすのこと,
われはきなむと[寛],
いひければ,[寛]いひけれは,
いもがいへらく,[寛]いもかいへらく,
とこよへに[寛],
またかへりきて[寛],
いまのごと,[寛]けふのこと,
あはむとならば,[寛]あはむとならは,
このくしげ,[寛]このはこを,
ひらくなゆめと[寛],
そこらくに[寛],
かためしことを[寛],
すみのえに[寛],
かへりきたりて[寛],
いへみれど,[寛]いへみれと,
いへもみかねて[寛],
さとみれど,[寛]さとみれと,
さともみかねて[寛],
あやしみと,[寛]あやしとそ,
そこにおもはく[寛],
いへゆいでて,[寛]いへいてて,
みとせのあひだに,[寛]みとせのほとに,
かきもなく[寛],
いへうせめやと,[寛]いへもうせめやと,
このはこを[寛],
ひらきてみてば,[寛]ひらきてみては,
もとのごと,[寛]もとのこと,
いへはあらむと[寛],
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
すこしひらくに[寛],
しらくもの[寛],
はこよりいでて,[寛]はこよりいてて,
とこよへに[寛],
たなびきぬれば,[寛]たなひきぬれは,
たちはしり[寛],
さけびそでふり,[寛]さけひそてふり,
こいまろび,[寛]こひまろひ,
あしずりしつつ,[寛]あしすりしつつ,
たちまちに[寛],
こころけうせぬ,[寛]こころきゆうせぬ,
わかくありし,[寛]わかかりし,
はだもしわみぬ,[寛]かはもしはみぬ,
くろくありし,[寛]くろかりし,
かみもしらけぬ[寛],
ゆなゆなは[寛],
いきさへたえて[寛],
のちつひに,[寛]のちつゐに,
いのちしにける[寛],
みづのえの,[寛]すみのえの,
うらしまのこが,[寛]うらしまのこか,
いへところみゆ,[寛]いへところみむ,
" "#[番号]09/1741","#[題詞](詠水江浦嶋子一首[并短歌])反歌","#[原文]常世邊 可住物乎 劔刀 己之<行>柄 於曽也是君","#[訓読]常世辺に住むべきものを剣大刀汝が心からおそやこの君","#[仮名],とこよへに,すむべきものを,つるぎたち,ながこころから,おそやこのきみ","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 心 -> 行 [藍][壬][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,浦島伝説,若狭,地名","#[訓異]
とこよへに[寛],
すむべきものを,[寛]すむへきものを,
つるぎたち,[寛]つるきたち,
ながこころから,[寛]なかこころから,
おそやこのきみ[寛],
" "#[番号]09/1742","#[題詞]見河内大橋獨去娘子歌一首[并短歌]","#[原文]級照 片足羽河之 左丹塗 大橋之上従 紅 赤裳<數>十引 山藍用 <揩>衣服而 直獨 伊渡為兒者 若草乃 夫香有良武 橿實之 獨歟将宿 問巻乃 欲我妹之 家乃不知久 ","#[訓読]しな照る 片足羽川の さ丹塗りの 大橋の上ゆ 紅の 赤裳裾引き 山藍もち 摺れる衣着て ただ独り い渡らす子は 若草の 夫かあるらむ 橿の実の 独りか寝らむ 問はまくの 欲しき我妹が 家の知らなく ","#[仮名],しなでる,かたしはがはの,さにぬりの,おほはしのうへゆ,くれなゐの,あかもすそびき,やまあゐもち,すれるきぬきて,ただひとり,いわたらすこは,わかくさの,つまかあるらむ,かしのみの,ひとりかぬらむ,とはまくの,ほしきわぎもが,いへのしらなく","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 摺 ->揩 [紀] / <> -> 數 [西(右書)][藍][壬][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,大阪,美女,孤独,枕詞,地名","#[訓異]
しなでる,[寛]しなてるや,
かたしはがはの,[寛]かたあすはかはの,
さにぬりの[寛],
おほはしのうへゆ[寛],
くれなゐの[寛],
あかもすそびき,[寛]あかもすそひき,
やまあゐもち,[寛]やまあゐもて,
すれるきぬきて[寛],
ただひとり,[寛]たたひとり,
いわたらすこは[寛],
わかくさの[寛],
つまかあるらむ[寛],
かしのみの[寛],
ひとりかぬらむ[寛],
とはまくの[寛],
ほしきわぎもが,[寛]ほしきわきもか,
いへのしらなく[寛],
" "#[番号]09/1743","#[題詞](見河内大橋獨去娘子歌一首[并短歌])反歌","#[原文]大橋之 頭尓家有者 心悲久 獨去兒尓 屋戸借申尾","#[訓読]大橋の頭に家あらばま悲しく独り行く子に宿貸さましを","#[仮名],おほはしの,つめにいへあらば,まかなしく,ひとりゆくこに,やどかさましを","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,大阪,美女,孤独,地名","#[訓異]
おほはしの[寛],
つめにいへあらば,[寛]ほとりにいへあらは,
まかなしく[寛],
ひとりゆくこに[寛],
やどかさましを,[寛]やとかさましを,
" "#[番号]09/1744","#[題詞]見武蔵小埼沼鴨作歌一首","#[原文]前玉之 小埼乃沼尓 鴨曽翼霧 己尾尓 零置流霜乎 掃等尓有斯","#[訓読]埼玉の小埼の沼に鴨ぞ羽霧るおのが尾に降り置ける霜を掃ふとにあらし","#[仮名],さきたまの,をさきのぬまに,かもぞはねきる,おのがをに,ふりおけるしもを,はらふとにあらし","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,埼玉,旋頭歌,地名","#[訓異]
さきたまの[寛],
をさきのぬまに,[寛]をさきのいけに,
かもぞはねきる,[寛]かもそはねきる,
おのがをに,[寛]おのかみに,
ふりおけるしもを[寛],
はらふとにあらし[寛],
" "#[番号]09/1745","#[題詞]那賀郡曝井歌一首","#[原文]三栗乃 中尓向有 曝井之 不絶将通 従所尓妻毛我","#[訓読]三栗の那賀に向へる曝井の絶えず通はむそこに妻もが","#[仮名],みつぐりの,なかにむかへる,さらしゐの,たえずかよはむ,そこにつまもが","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,埼玉,羈旅,土地讃美,枕詞,地名","#[訓異]
みつぐりの,[寛]みつくりの,
なかにむかへる[寛],
さらしゐの[寛],
たえずかよはむ,[寛]たへすかよはむ,
そこにつまもが,[寛]そこにつまもか,
" "#[番号]09/1746","#[題詞]手綱濱歌一首","#[原文]遠妻四 高尓有世婆 不知十方 手綱乃濱能 尋来名益","#[訓読]遠妻し多賀にありせば知らずとも手綱の浜の尋ね来なまし","#[仮名],とほづまし,たかにありせば,しらずとも,たづなのはまの,たづねきなまし","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城県,望郷,土地讃美,地名","#[訓異]
とほづまし,[寛]とほつまし,
たかにありせば,[寛]たかにありせは,
しらずとも,[寛]しらすとも,
たづなのはまの,[寛]たつなのはまの,
たづねきなまし,[寛]たつねきなまし,
" "#[番号]09/1747","#[題詞]春三月諸卿大夫等下難波時歌二首[并短歌]","#[原文]白雲之 龍田山之 瀧上之 小鞍嶺尓 開乎為流 櫻花者 山高 風之不息者 春雨之 継而零者 最末枝者 落過去祁利 下枝尓 遺有花者 須臾者 落莫乱 草枕 客去君之 及還来 ","#[訓読]白雲の 龍田の山の 瀧の上の 小椋の嶺に 咲きををる 桜の花は 山高み 風しやまねば 春雨の 継ぎてし降れば ほつ枝は 散り過ぎにけり 下枝に 残れる花は しましくは 散りな乱ひそ 草枕 旅行く君が 帰り来るまで ","#[仮名],しらくもの,たつたのやまの,たきのうへの,をぐらのみねに,さきををる,さくらのはなは,やまたかみ,かぜしやまねば,はるさめの,つぎてしふれば,ほつえは,ちりすぎにけり,しづえに,のこれるはなは,しましくは,ちりなまがひそ,くさまくら,たびゆくきみが,かへりくるまで","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短哥 [西(訂正)] 短歌","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,奈良,餞別,天平6年3月,年紀,難波,大阪,地名,枕詞,植物","#[訓異]
しらくもの[寛],
たつたのやまの[寛],
たきのうへの[寛],
をぐらのみねに,[寛]をくらのみねに,
さきををる,[寛]さきをせる,
さくらのはなは[寛],
やまたかみ[寛],
かぜしやまねば,[寛]かせしやまねは,
はるさめの[寛],
つぎてしふれば,[寛]つきてしふれは,
ほつえは[寛],
ちりすぎにけり,[寛]ちりすきにけり,
しづえに,[寛]したつえに,
のこれるはなは[寛],
しましくは,[寛]しはらくは,
ちりなまがひそ,[寛]ちりなみたれそ,
くさまくら[寛],
たびゆくきみが,[寛]たひゆくきみか,
かへりくるまで,[寛]かへりくるまて,
" "#[番号]09/1748","#[題詞](春三月諸卿大夫等下難波時歌二首[并短歌])反歌","#[原文]吾去者 七日<者>不過 龍田彦 勤此花乎 風尓莫落","#[訓読]我が行きは七日は過ぎじ龍田彦ゆめこの花を風にな散らし","#[仮名],わがゆきは,なぬかはすぎじ,たつたひこ,ゆめこのはなを,かぜになちらし","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 者 [藍][壬][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,奈良,餞別,天平6年3月,年紀,難波,大阪,風神,鎮花,地名,植物","#[訓異]
わがゆきは,[寛]わかゆきは,
なぬかはすぎじ,[寛]なぬかはすきし,
たつたひこ[寛],
ゆめこのはなを[寛],
かぜになちらし,[寛]かせにちらすな,
" "#[番号]09/1749","#[題詞](春三月諸卿大夫等下難波時歌二首[并短歌])","#[原文]白雲乃 立田山乎 夕晩尓 打越去者 瀧上之 櫻花者 開有者 落過祁里 含有者 可開継 許知<期>智乃 花之盛尓 雖不見<在> 君之三行者 今西應有 ","#[訓読]白雲の 龍田の山を 夕暮れに うち越え行けば 瀧の上の 桜の花は 咲きたるは 散り過ぎにけり ふふめるは 咲き継ぎぬべし こちごちの 花の盛りに あらずとも 君がみ行きは 今にしあるべし ","#[仮名],しらくもの,たつたのやまを,ゆふぐれに,うちこえゆけば,たきのうへの,さくらのはなは,さきたるは,ちりすぎにけり,ふふめるは,さきつぎぬべし,こちごちの,はなのさかりに,あらずとも,きみがみゆきは,いまにしあるべし","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]斯 -> 期 [藍][類][紀] / 左右 -> 在 [新訓万葉集] (塙) 左右","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,奈良,餞別,天平6年3月,年紀,難波,大阪,風神,鎮花,地名,枕詞,植物","#[訓異]
しらくもの[寛],
たつたのやまを[寛],
ゆふぐれに,[寛]ゆふくれに,
うちこえゆけば,[寛]うちこえゆけは,
たきのうへの[寛],
さくらのはなは[寛],
さきたるは[寛],
ちりすぎにけり,[寛]ちりすきにけり,
ふふめるは,[寛]つほめるは,
さきつぎぬべし,[寛]さきつきぬへし,
こちごちの,[寛]こちこちの,
はなのさかりに[寛],
あらずとも,[寛]みなとまて,
きみがみゆきは,[寛]きみかみゆきは,
いまにしあるべし,[寛]いまにしあるへし,
" "#[番号]09/1750","#[題詞](春三月諸卿大夫等下難波時歌二首[并短歌])反歌","#[原文]暇有者 魚津柴比渡 向峯之 櫻花毛 折末思物緒","#[訓読]暇あらばなづさひ渡り向つ峰の桜の花も折らましものを","#[仮名],いとまあらば,なづさひわたり,むかつをの,さくらのはなも,をらましものを","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,奈良,餞別,天平6年3月,年紀,難波,大阪,風神,鎮花,植物","#[訓異]
いとまあらば,[寛]いとまあらは,
なづさひわたり,[寛]なつさひわたり,
むかつをの[寛],
さくらのはなも[寛],
をらましものを[寛],
" "#[番号]09/1751","#[題詞]難波經宿明日還来之時歌一首[并短歌]","#[原文]嶋山乎 射徃廻流 河副乃 丘邊道従 昨日己曽 吾<超>来壮鹿 一夜耳 宿有之柄二 <峯>上之 櫻花者 瀧之瀬従 落堕而流 君之将見 其日左右庭 山下之 風莫吹登 打越而 名二負有社尓 風祭為奈 ","#[訓読]島山を い行き廻れる 川沿ひの 岡辺の道ゆ 昨日こそ 我が越え来しか 一夜のみ 寝たりしからに 峰の上の 桜の花は 瀧の瀬ゆ 散らひて流る 君が見む その日までには 山おろしの 風な吹きそと うち越えて 名に負へる杜に 風祭せな ","#[仮名],しまやまを,いゆきめぐれる,かはそひの,をかへのみちゆ,きのふこそ,わがこえこしか,ひとよのみ,ねたりしからに,をのうへの,さくらのはなは,たきのせゆ,ちらひてながる,きみがみむ,そのひまでには,やまおろしの,かぜなふきそと,うちこえて,なにおへるもりに,かざまつりせな","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 越 -> 超 [藍][紀] / 岑 -> 峯 [藍][紀][矢][京]","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,龍田,大阪,天平6年3月,年紀,風祭り,風神,地名,植物","#[訓異]
しまやまを[寛],
いゆきめぐれる,[寛]いゆきもとほる,
かはそひの[寛],
をかへのみちゆ,[寛]をかへのみちに,
きのふこそ[寛],
わがこえこしか,[寛]わかこえこしか,
ひとよのみ[寛],
ねたりしからに[寛],
をのうへの[寛],
さくらのはなは[寛],
たきのせゆ,[寛]たきのせに,
ちらひてながる,[寛]おちてなかれぬ,
きみがみむ,[寛]きみかみむ,
そのひまでには,[寛]そのひまてには,
やまおろしの[寛],
かぜなふきそと,[寛]かせなふきそと,
うちこえて,[寛]うちこゆて,
なにおへるもりに[寛],
かざまつりせな,[寛]かさまつりせな,
" "#[番号]09/1752","#[題詞](難波經宿明日還来之時歌一首[并短歌])反歌","#[原文]射行相乃 <坂>之踏本尓 開乎為流 櫻花乎 令見兒毛欲得","#[訓読]い行き逢ひの坂のふもとに咲きををる桜の花を見せむ子もがも","#[仮名],いゆきあひの,さかのふもとに,さきををる,さくらのはなを,みせむこもがも","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 / 坂上 -> 坂 [藍][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,龍田,大阪,天平6年3月,年紀,鎮花,地名,植物","#[訓異]
いゆきあひの[寛],
さかのふもとに[寛],
さきををる,[寛]さきをせる,
さくらのはなを[寛],
みせむこもがも,[寛]みせむこもかな,
" "#[番号]09/1753","#[題詞]検税使大伴卿登筑波山時歌一首[并短歌]","#[原文]衣手 常陸國 二並 筑波乃山乎 欲見 君来座登 熱尓 汗可伎奈氣 木根取 嘯鳴登 <峯>上乎 <公>尓令見者 男神毛 許賜 女神毛 千羽日給而 時登無 雲居雨零 筑波嶺乎 清照 言借石 國之真保良乎 委曲尓 示賜者 歡登 紐之緒解而 家如 解而曽遊 打靡 春見麻之従者 夏草之 茂者雖在 今日之樂者 ","#[訓読]衣手 常陸の国の 二並ぶ 筑波の山を 見まく欲り 君来ませりと 暑けくに 汗かき嘆げ 木の根取り うそぶき登り 峰の上を 君に見すれば 男神も 許したまひ 女神も ちはひたまひて 時となく 雲居雨降る 筑波嶺を さやに照らして いふかりし 国のまほらを つばらかに 示したまへば 嬉しみと 紐の緒解きて 家のごと 解けてぞ遊ぶ うち靡く 春見ましゆは 夏草の 茂くはあれど 今日の楽しさ ","#[仮名],ころもで,ひたちのくにの,ふたならぶ,つくはのやまを,みまくほり,きみきませりと,あつけくに,あせかきなげ,このねとり,うそぶきのぼり,をのうへを,きみにみすれば,をかみも,ゆるしたまひ,めかみも,ちはひたまひて,ときとなく,くもゐあめふる,つくはねを,さやにてらして,いふかりし,くにのまほらを,つばらかに,しめしたまへば,うれしみと,ひものをときて,いへのごと,とけてぞあそぶ,うちなびく,はるみましゆは,なつくさの,しげくはあれど,けふのたのしさ","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 岑 -> 峯 [藍][類][紀][矢] / 君 -> 公 [藍][類][紀][温]","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城,国見,歌垣,大伴旅人,道足,地名,枕詞","#[訓異]
ころもで,[寛]ころもての,
ひたちのくにの[寛],
ふたならぶ,[寛]ふたなみの,
つくはのやまを[寛],
みまくほり[寛],
きみきませりと,[寛]きみかきますと,
あつけくに,[寛]あつけきに,
あせかきなげ,[寛]あせかきなけ,
このねとり,[寛]きねとりする,
うそぶきのぼり,[寛]うそふきのほり,
をのうへを[寛],
きみにみすれば,[寛]きみにみすれは,
をかみも,[寛]をのかみも,
ゆるしたまひ,[寛]ゆるしたまへり,
めかみも,[寛]めのかみも,
ちはひたまひて[寛],
ときとなく[寛],
くもゐあめふる,[寛]くもゐあめふり,
つくはねを[寛],
さやにてらして,[寛]きよめてらして,
いふかりし,[寛]こととひし,
くにのまほらを[寛],
つばらかに,[寛]まくはしに,
しめしたまへば,[寛]しめしたまへは,
うれしみと[寛],
ひものをときて[寛],
いへのごと,[寛]いへのこと,
とけてぞあそぶ,[寛]ときてそあそふ,
うちなびく,[寛]うちなひき,
はるみましゆは,[寛]はるみましよりは,
なつくさの[寛],
しげくはあれど,[寛]しけくはあれと,
けふのたのしさ[寛],
" "#[番号]09/1754","#[題詞](検税使大伴卿登筑波山時歌一首[并短歌])反歌","#[原文]今日尓 何如将及 筑波嶺 昔人之 将来其日毛","#[訓読]今日の日にいかにかしかむ筑波嶺に昔の人の来けむその日も","#[仮名],けふのひに,いかにかしかむ,つくはねに,むかしのひとの,きけむそのひも","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城,国見,歌垣,大伴旅人,道足,地名","#[訓異]
けふのひに[寛],
いかにかしかむ,[寛]いかかをよはむ,
つくはねに[寛],
むかしのひとの[寛],
きけむそのひも[寛],
" "#[番号]09/1755","#[題詞]詠霍公鳥一首[并短歌]","#[原文]鴬之 生卵乃中尓 霍公鳥 獨所生而 己父尓 似而者不鳴 己母尓 似而者不鳴 宇能花乃 開有野邊従 飛翻 来鳴令響 橘之 花乎居令散 終日 雖喧聞吉 幣者将為 遐莫去 吾屋戸之 花橘尓 住度鳥 ","#[訓読]鴬の 卵の中に 霍公鳥 独り生れて 己が父に 似ては鳴かず 己が母に 似ては鳴かず 卯の花の 咲きたる野辺ゆ 飛び翔り 来鳴き響もし 橘の 花を居散らし ひねもすに 鳴けど聞きよし 賄はせむ 遠くな行きそ 我が宿の 花橘に 住みわたれ鳥 ","#[仮名],うぐひすの,かひごのなかに,ほととぎす,ひとりうまれて,ながちちに,にてはなかず,ながははに,にてはなかず,うのはなの,さきたるのへゆ,とびかけり,きなきとよもし,たちばなの,はなをゐちらし,ひねもすに,なけどききよし,まひはせむ,とほくなゆきそ,わがやどの,はなたちばなに,すみわたれとり","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 哥 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,動物,植物","#[訓異]
うぐひすの,[寛]うくひすの,
かひごのなかに,[寛]かひこのなかに,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
ひとりうまれて[寛],
ながちちに,[寛]さかちちに,
にてはなかず,[寛]にてはなかす,
ながははに,[寛]さかははに,
にてはなかず,[寛]にてはなかす,
うのはなの[寛],
さきたるのへゆ,[寛]さけるのへより,
とびかけり,[寛]とひかへり,
きなきとよもし,[寛]きなきとよまし,
たちばなの,[寛]たちはなの,
はなをゐちらし[寛],
ひねもすに[寛],
なけどききよし,[寛]なけとききよし,
まひはせむ[寛],
とほくなゆきそ[寛],
わがやどの,[寛]わかやとの,
はなたちばなに,[寛]はなたちはなに,
すみわたれとり[寛],
" "#[番号]09/1756","#[題詞](詠霍公鳥一首[并短歌])反歌","#[原文]掻霧之 雨零夜乎 霍公鳥 鳴而去成 A怜其鳥","#[訓読]かき霧らし雨の降る夜を霍公鳥鳴きて行くなりあはれその鳥","#[仮名],かききらし,あめのふるよを,ほととぎす,なきてゆくなり,あはれそのとり","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,動物","#[訓異]
かききらし[寛],
あめのふるよを[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なきてゆくなり[寛],
あはれそのとり[寛],
" "#[番号]09/1757","#[題詞]登筑波山歌一首[并短歌]","#[原文]草枕 客之憂乎 名草漏 事毛有<哉>跡 筑波嶺尓 登而見者 尾花落 師付之田井尓 鴈泣毛 寒来喧奴 新治乃 鳥羽能淡海毛 秋風尓 白浪立奴 筑波嶺乃 吉久乎見者 長氣尓 念積来之 憂者息沼 ","#[訓読]草枕 旅の憂へを 慰もる こともありやと 筑波嶺に 登りて見れば 尾花散る 師付の田居に 雁がねも 寒く来鳴きぬ 新治の 鳥羽の淡海も 秋風に 白波立ちぬ 筑波嶺の よけくを見れば 長き日に 思ひ積み来し 憂へはやみぬ ","#[仮名],くさまくら,たびのうれへを,なぐさもる,こともありやと,つくはねに,のぼりてみれば,をばなちる,しつくのたゐに,かりがねも,さむくきなきぬ,にひばりの,とばのあふみも,あきかぜに,しらなみたちぬ,つくはねの,よけくをみれば,ながきけに,おもひつみこし,うれへはやみぬ","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 武 -> 哉 [藍][類]","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城,山讃美,旅愁,東国,関東,枕詞,地名","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびのうれへを,[寛]たひのうれへを,
なぐさもる,[寛]なくさむる,
こともありやと,[寛]こともあらむと,
つくはねに[寛],
のぼりてみれば,[寛]のほりてみれは,
をばなちる,[寛]をはなちる,
しつくのたゐに[寛],
かりがねも,[寛]かりかねも,
さむくきなきぬ[寛],
にひばりの,[寛]にひはりの,
とばのあふみも,[寛]とはのあふみも,
あきかぜに,[寛]あきかせに,
しらなみたちぬ[寛],
つくはねの[寛],
よけくをみれば,[寛]よけくをみれは,
ながきけに,[寛]なかきけに,
おもひつみこし[寛],
うれへはやみぬ[寛],
" "#[番号]09/1758","#[題詞](登筑波山歌一首[并短歌])反歌","#[原文]筑波嶺乃 須蘇廻乃田井尓 秋田苅 妹許将遺 黄葉手折奈","#[訓読]筑波嶺の裾廻の田居に秋田刈る妹がり遣らむ黄葉手折らな","#[仮名],つくはねの,すそみのたゐに,あきたかる,いもがりやらむ,もみちたをらな","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城,旅愁,東国,関東,地名,植物","#[訓異]
つくはねの[寛],
すそみのたゐに,[寛]すそわのたゐに,
あきたかる[寛],
いもがりやらむ,[寛]いもかりやらむ,
もみちたをらな,[寛]もみちたをりな,
" "#[番号]09/1759","#[題詞]登筑波嶺為の歌會日作歌一首[并短歌]","#[原文]鷲住 筑波乃山之 裳羽服津乃 其津乃上尓 率而 未通女<壮>士之 徃集 加賀布の歌尓 他妻尓 吾毛交牟 吾妻尓 他毛言問 此山乎 牛掃神之 従来 不禁行事叙 今日耳者 目串毛勿見 事毛咎莫 [の歌者東俗語曰賀我比]","#[訓読]鷲の住む 筑波の山の 裳羽服津の その津の上に 率ひて 娘子壮士の 行き集ひ かがふかがひに 人妻に 我も交らむ 我が妻に 人も言問へ この山を うしはく神の 昔より 禁めぬわざぞ 今日のみは めぐしもな見そ 事もとがむな [の歌は、東の俗語に賀我比と曰ふ]","#[仮名],わしのすむ,つくはのやまの,もはきつの,そのつのうへに,あどもひて,をとめをとこの,ゆきつどひ,かがふかがひに,ひとづまに,われもまじらむ,わがつまに,ひともこととへ,このやまを,うしはくかみの,むかしより,いさめぬわざぞ,けふのみは,めぐしもなみそ,こともとがむな","#[左注](右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 / 作歌 [西] 作謌 [西(訂正)] 作歌 / 短歌 [西] 短哥 [西(訂正)] 短歌 / 牡 -> 壮 [元][藍][類] / 歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城,歌垣,東国,関東,地名","#[訓異]
わしのすむ[寛],
つくはのやまの[寛],
もはきつの[寛],
そのつのうへに[寛],
あどもひて,[寛]いさなひて,
をとめをとこの[寛],
ゆきつどひ,[寛]ゆきつとひ,
かがふかがひに,[寛]かかふかかひに,
ひとづまに,[寛]ひとつまに,
われもまじらむ,[寛]われもかよはむ,
わがつまに,[寛]わかつまに,
ひともこととへ[寛],
このやまを[寛],
うしはくかみの[寛],
むかしより[寛],
いさめぬわざぞ,[寛]いさめぬわさそ,
けふのみは[寛],
めぐしもなみそ,[寛]めくしもみるな,
こともとがむな,[寛]こともとかむな,
" "#[番号]09/1760","#[題詞](登筑波嶺為の歌會日作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]男神尓 雲立登 斯具礼零 沾通友 吾将反哉","#[訓読]男神に雲立ち上りしぐれ降り濡れ通るとも我れ帰らめや","#[仮名],をかみに,くもたちのぼり,しぐれふり,ぬれとほるとも,われかへらめや","#[左注]右件歌者高橋連蟲麻呂歌集中出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌集 [西] 謌集 [西(訂正)] 歌集","#[事項],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城,歌垣,東国,関東","#[訓異]
をかみに,[寛]をのかみに,
くもたちのぼり,[寛]くもたちのほり,
しぐれふり,[寛]しくれふり,
ぬれとほるとも[寛],
われかへらめや[寛],
" "#[番号]09/1761","#[題詞]詠鳴<鹿>一首[并短歌]","#[原文]三諸之 神邊山尓 立向 三垣乃山尓 秋芽子之 妻巻六跡 朝月夜 明巻鴦視 足日木乃 山響令動 喚立鳴毛 ","#[訓読]三諸の 神奈備山に たち向ふ 御垣の山に 秋萩の 妻をまかむと 朝月夜 明けまく惜しみ あしひきの 山彦響め 呼びたて鳴くも ","#[仮名],みもろの,かむなびやまに,たちむかふ,みかきのやまに,あきはぎの,つまをまかむと,あさづくよ,あけまくをしみ,あしひきの,やまびことよめ,よびたてなくも","#[左注](右件歌或云柿本朝臣人麻呂作)","#[校異]鹿謌 -> 鹿 [元][藍][類][紀] / 歌 [西] 哥 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,異伝,飛鳥,秋,地名,植物,動物","#[訓異]
みもろの[寛],
かむなびやまに,[寛]かみなひやまに,
たちむかふ,[寛]たちむかひ,
みかきのやまに[寛],
あきはぎの,[寛]あきはきの,
つまをまかむと[寛],
あさづくよ,[寛]あさつくよ,
あけまくをしみ[寛],
あしひきの[寛],
やまびことよめ,[寛]やまひことよみ,
よびたてなくも,[寛]よひたちなくも,
" "#[番号]09/1762","#[題詞](詠鳴<鹿>一首[并短歌])反歌","#[原文]明日之夕 不相有八方 足日木<乃> 山彦令動 呼立哭毛","#[訓読]明日の宵逢はざらめやもあしひきの山彦響め呼びたて鳴くも","#[仮名],あすのよひ,あはざらめやも,あしひきの,やまびことよめ,よびたてなくも","#[左注]右件歌或云柿本朝臣人麻呂作","#[校異]歌 [西] 謌 / 之 -> 乃 [元][藍][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],雑歌,作者:柿本人麻呂,異伝,飛鳥,秋,動物","#[訓異]
あすのよひ,[寛]あすのよに,
あはざらめやも,[寛]あはさらめやも,
あしひきの[寛],
やまびことよめ,[寛]やまひことよみ,
よびたてなくも,[寛]よひたちなくも,
" "#[番号]09/1763","#[題詞]沙弥女王歌一首","#[原文]倉橋之 山乎高歟 夜牢尓 出来月之 片待難","#[訓読]倉橋の山を高みか夜隠りに出で来る月の片待ちかたき","#[仮名],くらはしの,やまをたかみか,よごもりに,いでくるつきの,かたまちかたき","#[左注]右一首間人宿祢大浦歌中既見 但末一句相換 亦作歌兩主不敢正指 因以累載","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 作歌 [西] 作謌 [西(訂正)] 作歌","#[事項],雑歌,作者:沙弥女王,間人大浦,異伝,飛鳥,地名","#[訓異]
くらはしの[寛],
やまをたかみか[寛],
よごもりに,[寛]よこもりに,
いでくるつきの,[寛]いてくるつきの,
かたまちかたき[寛],
" "#[番号]09/1764","#[題詞]七夕歌一首[并短歌]","#[原文]久堅乃 天漢尓 上瀬尓 珠橋渡之 下湍尓 船浮居 雨零而 風不吹登毛 風吹而 雨不落等物 裳不令濕 不息来益常 <玉>橋渡須 ","#[訓読]久方の 天の川に 上つ瀬に 玉橋渡し 下つ瀬に 舟浮け据ゑ 雨降りて 風吹かずとも 風吹きて 雨降らずとも 裳濡らさず やまず来ませと 玉橋渡す ","#[仮名],ひさかたの,あまのかはに,かみつせに,たまはしわたし,しもつせに,ふねうけすゑ,あめふりて,かぜふかずとも,かぜふきて,あめふらずとも,もぬらさず,やまずきませと,たまはしわたす","#[左注](右件歌或云中衛大将藤原北卿宅作也)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 王 -> 玉","#[事項],雑歌,作者:藤原房前,七夕,宴席","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あまのかはに,[寛]あまのかはらに,
かみつせに,[寛]のほりせに,
たまはしわたし[寛],
しもつせに,[寛]くたりせに,
ふねうけすゑ,[寛]ふねうけすゑて,
あめふりて[寛],
かぜふかずとも,[寛]かせふかすとも,
かぜふきて,[寛]かせふきて,
あめふらずとも,[寛]あめふらすとも,
もぬらさず,[寛]もぬらさす,
やまずきませと,[寛]やまてきませと,
たまはしわたす[寛],
" "#[番号]09/1765","#[題詞](七夕歌一首[并短歌])反歌","#[原文]天漢 霧立渡 且今日<々々々> 吾待君之 船出為等霜","#[訓読]天の川霧立ちわたる今日今日と我が待つ君し舟出すらしも","#[仮名],あまのがは,きりたちわたる,けふけふと,わがまつきみし,ふなですらしも","#[左注]右件歌或云中衛大将藤原北卿宅作也","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 且今日 -> 々々々 [元][藍] / 歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:藤原房前,七夕,宴席","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
きりたちわたる,[寛]きりたちわたり,
けふけふと[寛],
わがまつきみし,[寛]わかまつきみか,
ふなですらしも,[寛]ふなてすらしも,
" "#[番号]09/1766","#[題詞]相聞 / 振田向宿祢退筑紫國時歌一首","#[原文]吾妹兒者 久志呂尓有奈武 左手乃 吾奥手<二> 纒而去麻師乎","#[訓読]我妹子は釧にあらなむ左手の我が奥の手に巻きて去なましを","#[仮名],わぎもこは,くしろにあらなむ,ひだりての,わがおくのてに,まきていなましを","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 尓 -> 二 [元][藍][類][紀]","#[事項],相聞,作者:振田向,恋情,福岡,餞別,離別","#[訓異]
わぎもこは,[寛]わきもこは,
くしろにあらなむ[寛],
ひだりての,[寛]ひたりての,
わがおくのてに,[寛]わかおくのてに,
まきていなましを[寛],
" "#[番号]09/1767","#[題詞]抜氣大首任筑紫時娶豊前國娘子紐兒作歌三首","#[原文]豊國乃 加波流波吾宅 紐兒尓 伊都我里座者 革流波吾家","#[訓読]豊国の香春は我家紐児にいつがり居れば香春は我家","#[仮名],とよくにの,かはるはわぎへ,ひものこに,いつがりをれば,かはるはわぎへ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:抜氣大首,豊前國娘子紐兒,福岡,恋愛,地名","#[訓異]
とよくにの[寛],
かはるはわぎへ,[寛]かはるはわきへ,
ひものこに[寛],
いつがりをれば,[寛]いつかりませは,
かはるはわぎへ,[寛]かはるはわきへ,
" "#[番号]09/1768","#[題詞](抜氣大首任筑紫時娶豊前國娘子紐兒作歌三首)","#[原文]石上 振乃早田乃 穂尓波不出 心中尓 戀流<比>日","#[訓読]石上布留の早稲田の穂には出でず心のうちに恋ふるこのころ","#[仮名],いそのかみ,ふるのわさだの,ほにはいでず,こころのうちに,こふるこのころ","#[左注]","#[校異]此 -> 比 [元][類][紀][温]","#[事項],相聞,作者:抜氣大首,豊前國娘子紐兒,恋情,福岡,地名","#[訓異]
いそのかみ[寛],
ふるのわさだの,[寛]ふるのわさたの,
ほにはいでず,[寛]ほにはいてす,
こころのうちに[寛],
こふるこのころ,[寛]こるるこのころ,
" "#[番号]09/1769","#[題詞](抜氣大首任筑紫時娶豊前國娘子紐兒作歌三首)","#[原文]如是耳志 戀思度者 霊剋 命毛吾波 惜雲奈師","#[訓読]かくのみし恋ひしわたればたまきはる命も我れは惜しけくもなし","#[仮名],かくのみし,こひしわたれば,たまきはる,いのちもわれは,をしけくもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:抜氣大首,豊前國娘子紐兒,恋情,枕詞","#[訓異]
かくのみし[寛],
こひしわたれば,[寛]こひしわたらは,
たまきはる[寛],
いのちもわれは[寛],
をしけくもなし[寛],
" "#[番号]09/1770","#[題詞]大神大夫任長門守時集三輪河邊宴歌二首","#[原文]三諸乃 <神>能於婆勢流 泊瀬河 水尾之不断者 吾忘礼米也","#[訓読]みもろの神の帯ばせる泊瀬川水脈し絶えずは我れ忘れめや","#[仮名],みもろの,かみのおばせる,はつせがは,みをしたえずは,われわすれめや","#[左注](右二首古集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> -> 神 [西(右書)][元][類][古][紀]","#[事項],相聞,三輪高市麻呂,古集,餞別,宴席,地名","#[訓異]
みもろの[寛],
かみのおばせる,[寛]かみのおはせる,
はつせがは,[寛]はつせかは,
みをしたえずは,[寛]みをのたえすは,
われわすれめや[寛],
" "#[番号]09/1771","#[題詞](大神大夫任長門守時集三輪河邊宴歌二首)","#[原文]於久礼居而 吾波也将戀 春霞 多奈妣久山乎 君之越去者","#[訓読]後れ居て我れはや恋ひむ春霞たなびく山を君が越え去なば","#[仮名],おくれゐて,あれはやこひむ,はるかすみ,たなびくやまを,きみがこえいなば","#[左注]右二首古集中出","#[校異]集 [西(右書)] 謌集","#[事項],相聞,三輪高市麻呂,古集,餞別,宴席,地名","#[訓異]
おくれゐて[寛],
あれはやこひむ,[寛]われはやこひむ,
はるかすみ[寛],
たなびくやまを,[寛]たなひくやまを,
きみがこえいなば,[寛]きみかこえいなは,
" "#[番号]09/1772","#[題詞]大神大夫任筑紫國時阿倍大夫作歌一首","#[原文]於久礼居而 吾者哉将戀 稲見野乃 秋芽子見都津 去奈武子故尓","#[訓読]後れ居て我れはや恋ひむ印南野の秋萩見つつ去なむ子故に","#[仮名],おくれゐて,あれはやこひむ,いなみのの,あきはぎみつつ,いなむこゆゑに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,三輪高市麻呂,作者:阿倍大夫,阿倍広庭,餞別,宴席,地名,植物","#[訓異]
おくれゐて[寛],
あれはやこひむ,[寛]われはやこひむ,
いなみのの[寛],
あきはぎみつつ,[寛]あきはきみつつ,
いなむこゆゑに,[寛]いなむこゆへに,
" "#[番号]09/1773","#[題詞]獻弓削皇子歌一首","#[原文]神南備 神依<板>尓 為杉乃 念母不過 戀之茂尓","#[訓読]神なびの神寄せ板にする杉の思ひも過ぎず恋の繁きに","#[仮名],かむなびの,かみよせいたに,するすぎの,おもひもすぎず,こひのしげきに","#[左注](右三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 杉 -> 板 [西(右書)][元][類][紀]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂歌集,献呈歌,弓削皇子,恋情,非略体,植物,地名","#[訓異]
かむなびの,[寛]かみなひの,
かみよせいたに,[寛]かみよりいたに,
するすぎの,[寛]するすきの,
おもひもすぎず,[寛]おもひもすきす,
こひのしげきに,[寛]こひのしけきに,
" "#[番号]09/1774","#[題詞]獻舎人皇子歌二首","#[原文]垂乳根乃 母之命乃 言尓有者 年緒長 憑過武也","#[訓読]たらちねの母の命の言にあらば年の緒長く頼め過ぎむや","#[仮名],たらちねの,ははのみことの,ことにあらば,としのをながく,たのめすぎむや","#[左注](右三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂歌集,舎人皇子,献呈歌,恋情,女歌,非略体,枕詞","#[訓異]
たらちねの[寛],
ははのみことの[寛],
ことにあらば,[寛]ことにあらは,
としのをながく,[寛]としのをなかく,
たのめすぎむや,[寛]たのみすきむや,
" "#[番号]09/1775","#[題詞](獻舎人皇子歌二首)","#[原文]泊瀬河 夕渡来而 我妹兒何 家門 近舂二家里","#[訓読]泊瀬川夕渡り来て我妹子が家の金門に近づきにけり","#[仮名],はつせがは,ゆふわたりきて,わぎもこが,いへのかなとに,ちかづきにけり","#[左注]右三首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂歌集,舎人皇子,献呈歌,恋情,奈良,川渡り,非略体,地名","#[訓異]
はつせがは,[寛]はつせかは,
ゆふわたりきて[寛],
わぎもこが,[寛]わきもこか,
いへのかなとに,[寛]いへのみかとは,
ちかづきにけり,[寛]ちかつきにけり,
" "#[番号]09/1776","#[題詞]石川大夫遷任上京時播磨娘子贈歌二首","#[原文]絶等寸笶 山之<峯>上乃 櫻花 将開春部者 君<之>将思","#[訓読]絶等寸の山の峰の上の桜花咲かむ春へは君し偲はむ","#[仮名],たゆらきの,やまのをのへの,さくらばな,さかむはるへは,きみをしのはむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 岑 -> 峯 [元][類][紀][温] / 乎 -> 之 [元][藍]","#[事項],相聞,作者:石川君子,播磨娘子,餞別,別れ,姫路,兵庫,枕詞,植物","#[訓異]
たゆらきの[寛],
やまのをのへの[寛],
さくらばな,[寛]さくらはな,
さかむはるへは[寛],
きみをしのはむ,[寛]きみをおもはむ,
" "#[番号]09/1777","#[題詞](石川大夫遷任上京時播磨娘子贈歌二首)","#[原文]君無者 奈何身将装餝 匣有 黄楊之小梳毛 将取跡毛不念","#[訓読]君なくはなぞ身装はむ櫛笥なる黄楊の小櫛も取らむとも思はず","#[仮名],きみなくは,なぞみよそはむ,くしげなる,つげのをぐしも,とらむともおもはず","#[左注]","#[校異]","#[事項],相聞,作者:石川君子,播磨娘子,餞別,別れ,姫路,兵庫","#[訓異]
きみなくは[寛],
なぞみよそはむ,[寛]なそみかさらむ,
くしげなる,[寛]くしけなる,
つげのをぐしも,[寛]つけのをくしも,
とらむともおもはず,[寛]とらむともはす,
" "#[番号]09/1778","#[題詞]藤井連遷任上京時娘子贈歌一首","#[原文]従明日者 吾波孤悲牟奈 名欲<山 石>踏平之 君我越去者","#[訓読]明日よりは我れは恋ひむな名欲山岩踏み平し君が越え去なば","#[仮名],あすよりは,あれはこひむな,なほりやま,いはふみならし,きみがこえいなば","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 岩 -> 山石 [西(訂正)][元][藍][類]","#[事項],相聞,作者:娘子,遊行女婦,藤井広成,藤井大成,餞別,別れ,大分県,地名","#[訓異]
あすよりは[寛],
あれはこひむな,[寛]われはこひむな,
なほりやま[寛],
いはふみならし[寛],
きみがこえいなば,[寛]きみかこえいなは,
" "#[番号]09/1779","#[題詞]藤井連和歌一首","#[原文]命乎志 麻勢久可願 名欲山 石踐平之 復亦毛来武","#[訓読]命をしま幸くもがも名欲山岩踏み平しまたまたも来む","#[仮名],いのちをし,まさきくもがも,なほりやま,いはふみならし,またまたもこむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:藤井広成,藤井大成,大分県,餞別,再会,娘子,地名","#[訓異]
いのちをし[寛],
まさきくもがも,[寛]ませひさしかれ,
なほりやま[寛],
いはふみならし,[寛]いしふみならし,
またまたもこむ[寛],
" "#[番号]09/1780","#[題詞]鹿嶋郡苅野橋別大伴卿歌一首[并短歌]","#[原文]<牡>牛乃 三宅之<滷>尓 指向 鹿嶋之埼尓 狭丹塗之 小船儲 玉纒之 小梶繁貫 夕塩之 満乃登等美尓 三船子呼 阿騰母比立而 喚立而 三船出者 濱毛勢尓 後奈<美>居而 反側 戀香裳将居 足垂之 泣耳八将哭 海上之 其津乎指而 君之己藝歸者 ","#[訓読]ことひ牛の 三宅の潟に さし向ふ 鹿島の崎に さ丹塗りの 小舟を設け 玉巻きの 小楫繁貫き 夕潮の 満ちのとどみに 御船子を 率ひたてて 呼びたてて 御船出でなば 浜も狭に 後れ並み居て こいまろび 恋ひかも居らむ 足すりし 音のみや泣かむ 海上の その津を指して 君が漕ぎ行かば ","#[仮名],ことひうしの,みやけのかたに,さしむかふ,かしまのさきに,さにぬりの,をぶねをまけ,たままきの,をかぢしじぬき,ゆふしほの,みちのとどみに,みふなこを,あどもひたてて,よびたてて,みふねいでなば,はまもせに,おくれなみゐて,こいまろび,こひかもをらむ,あしすりし,ねのみやなかむ,うなかみの,そのつをさして,きみがこぎゆかば","#[左注](右二首高橋連蟲麻呂之歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 牝 -> 牡 [元][藍][紀] / 酒 -> 滷 [万葉考] / <> -> 美 [万葉略解]","#[事項],相聞,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城県,鹿島,大伴旅人,大伴道足,送別歌,餞別,宴席,地名","#[訓異]
ことひうしの[寛],
みやけのかたに,[寛]みやけのさけに,
さしむかふ[寛],
かしまのさきに[寛],
さにぬりの[寛],
をぶねをまけ,[寛]をふねまうけて,
たままきの[寛],
をかぢしじぬき,[寛]をかちししぬき,
ゆふしほの[寛],
みちのとどみに,[寛]みちのととみに,
みふなこを[寛],
あどもひたてて,[寛]あともひたてて,
よびたてて,[寛]よひたてて,
みふねいでなば,[寛]みふねいてなは,
はまもせに[寛],
おくれなみゐて,[寛]おくれなをりて,
こいまろび,[寛]こひまろひ,
こひかもをらむ[寛],
あしすりし[寛],
ねのみやなかむ[寛],
うなかみの[寛],
そのつをさして[寛],
きみがこぎゆかば,[寛]きみかこきいなは,
" "#[番号]09/1781","#[題詞](鹿嶋郡苅野橋別大伴卿歌一首[并短歌])反歌","#[原文]海津路乃 名木名六時毛 渡七六 加九多都波二 船出可為八","#[訓読]海つ道のなぎなむ時も渡らなむかく立つ波に船出すべしや","#[仮名],うみつぢの,なぎなむときも,わたらなむ,かくたつなみに,ふなですべしや","#[左注]右二首高橋連蟲麻呂之歌集中出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌集 [元][類][紀](塙) 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城県,鹿島,大伴旅人,大伴道足,送別歌,餞別,宴席,地名","#[訓異]
うみつぢの,[寛]うみつちの,
なぎなむときも,[寛]なきなむときも,
わたらなむ[寛],
かくたつなみに[寛],
ふなですべしや,[寛]ふなてかすへしや,
" "#[番号]09/1782","#[題詞]与妻歌一首","#[原文]雪己曽波 春日消良米 心佐閇 消失多列夜 言母不徃来","#[訓読]雪こそば春日消ゆらめ心さへ消え失せたれや言も通はぬ","#[仮名],ゆきこそば,はるひきゆらめ,こころさへ,きえうせたれや,こともかよはぬ","#[左注](右二首柿本朝臣人麻呂之歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂歌集,恨み歌,妻,非略体","#[訓異]
ゆきこそば,[寛]ゆきこそは,
はるひきゆらめ[寛],
こころさへ[寛],
きえうせたれや[寛],
こともかよはぬ[寛],
" "#[番号]09/1783","#[題詞]妻和歌一首","#[原文]松反 四臂而有八羽 三栗 中上不来 麻呂等言八子","#[訓読]松返りしひてあれやは三栗の中上り来ぬ麻呂といふ奴","#[仮名],まつがへり,しひてあれやは,みつぐりの,なかのぼりこぬ,まろといふやつこ","#[左注]右二首柿本朝臣人麻呂之歌集中出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂歌集,戯歌,妻,夫,非略体,枕詞","#[訓異]
まつがへり,[寛]まつかへり,
しひてあれやは,[寛]しひにてあれやは,
みつぐりの,[寛]みつくりの,
なかのぼりこぬ,[寛]なかにゐこぬ,
まろといふやつこ,[寛]まろといははこ,
" "#[番号]09/1784","#[題詞]贈入唐使歌一首","#[原文]海若之 何神乎 齋祈者歟 徃方毛来方毛 <船>之早兼","#[訓読]海神のいづれの神を祈らばか行くさも来さも船の早けむ","#[仮名],わたつみの,いづれのかみを,いのらばか,ゆくさもくさも,ふねのはやけむ","#[左注]右一首渡海年<記>未詳","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 舶 -> 船 [元][藍][紀] / 紀 -> 記 [元][類]","#[事項],相聞,遣唐使,餞別,送別,無事,安全,贈答","#[訓異]
わたつみの[寛],
いづれのかみを,[寛]いつれのかみを,
いのらばか,[寛]たむけはか,
ゆくさもくさも[寛],
ふねのはやけむ[寛],
" "#[番号]09/1785","#[題詞]神龜五年戊辰秋八月歌一首[并短歌]","#[原文]人跡成 事者難乎 和久良婆尓 成吾身者 死毛生毛 <公>之随意常 念乍 有之間尓 虚蝉乃 代人有者 大王之 御命恐美 天離 夷治尓登 朝鳥之 朝立為管 群鳥之 群立行者 留居而 吾者将戀奈 不見久有者 ","#[訓読]人となる ことはかたきを わくらばに なれる我が身は 死にも生きも 君がまにまと 思ひつつ ありし間に うつせみの 世の人なれば 大君の 命畏み 天離る 鄙治めにと 朝鳥の 朝立ちしつつ 群鳥の 群立ち行かば 留まり居て 我れは恋ひむな 見ず久ならば ","#[仮名],ひととなる,ことはかたきを,わくらばに,なれるあがみは,しにもいきも,きみがまにまと,おもひつつ,ありしあひだに,うつせみの,よのひとなれば,おほきみの,みことかしこみ,あまざかる,ひなをさめにと,あさとりの,あさだちしつつ,むらとりの,むらだちゆかば,とまりゐて,あれはこひむな,みずひさならば","#[左注](右件五首笠朝臣金村之歌中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短哥 / 君 -> 公 [元][藍][紀][温]","#[事項],相聞,作者:笠金村歌集,神亀5年8月,年紀,女歌,送別,枕詞","#[訓異]
ひととなる[寛],
ことはかたきを[寛],
わくらばに,[寛]わくらはに,
なれるあがみは,[寛]なれるわかみは,
しにもいきも[寛],
きみがまにまと,[寛]きみかままにと,
おもひつつ[寛],
ありしあひだに,[寛]ありしあひたに,
うつせみの[寛],
よのひとなれば,[寛]よのひとなれは,
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなをさめにと[寛],
あさとりの[寛],
あさだちしつつ,[寛]あさたてしつつ,
むらとりの[寛],
むらだちゆかば,[寛]むらたちゆけは,
とまりゐて[寛],
あれはこひむな,[寛]われはこひむな,
みずひさならば,[寛]みてひさにあらは,
" "#[番号]09/1786","#[題詞](神龜五年戊辰秋八月歌一首[并短歌])反歌","#[原文]三越道之 雪零山乎 将越日者 留有吾乎 懸而小竹葉背","#[訓読]み越道の雪降る山を越えむ日は留まれる我れを懸けて偲はせ","#[仮名],みこしぢの,ゆきふるやまを,こえむひは,とまれるわれを,かけてしのはせ","#[左注](右件五首笠朝臣金村之歌中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(別筆訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:笠金村歌集,神亀5年8月,年紀,女歌,送別,地名,餞別","#[訓異]
みこしぢの,[寛]みこしちの,
ゆきふるやまを[寛],
こえむひは[寛],
とまれるわれを[寛],
かけてしのはせ[寛],
" "#[番号]09/1787","#[題詞]天平元年己巳冬十二月歌一首[并短歌]","#[原文]虚蝉乃 世人有者 大王之 御命恐弥 礒城嶋能 日本國乃 石上 振里尓 紐不解 丸寐乎為者 吾衣有 服者奈礼奴 毎見 戀者雖益 色二山上復有山者 一可知美 冬夜之 明毛不得呼 五十母不宿二 吾歯曽戀流 妹之直香仁 ","#[訓読]うつせみの 世の人なれば 大君の 命畏み 敷島の 大和の国の 石上 布留の里に 紐解かず 丸寝をすれば 我が着たる 衣はなれぬ 見るごとに 恋はまされど 色に出でば 人知りぬべみ 冬の夜の 明かしもえぬを 寐も寝ずに 我れはぞ恋ふる 妹が直香に ","#[仮名],うつせみの,よのひとなれば,おほきみの,みことかしこみ,しきしまの,やまとのくにの,いそのかみ,ふるのさとに,ひもとかず,まろねをすれば,あがきたる,ころもはなれぬ,みるごとに,こひはまされど,いろにいでば,ひとしりぬべみ,ふゆのよの,あかしもえぬを,いもねずに,あれはぞこふる,いもがただかに","#[左注](右件五首笠朝臣金村之歌中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(別筆訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(別筆訂正)] 短歌 / 色 [西(右書)] 色色","#[事項],相聞,作者:笠金村歌集,天平1年12月,年紀,天理,奈良,羈旅,恋情,地名,枕詞","#[訓異]
うつせみの[寛],
よのひとなれば,[寛]よのひとなれは,
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
しきしまの[寛],
やまとのくにの[寛],
いそのかみ[寛],
ふるのさとに,[寛]ふりにしさとに,
ひもとかず,[寛]ひもとかす,
まろねをすれば,[寛]まろねをすれは,
あがきたる,[寛]わかきたる,
ころもはなれぬ[寛],
みるごとに,[寛]みることに,
こひはまされど,[寛]こひはまされと,
いろにいでば,[寛]いろいろに,やまのへにまたあるやまは,
ひとしりぬべみ,[寛]ひとしりぬへみ,
ふゆのよの[寛],
あかしもえぬを[寛],
いもねずに,[寛]いもねすに,
あれはぞこふる,[寛]われはそこふる,
いもがただかに,[寛]いもかたたかに,
" "#[番号]09/1788","#[題詞](天平元年己巳冬十二月歌一首[并短歌])反歌","#[原文]振山従 直見渡 京二曽 寐不宿戀流 遠不有尓","#[訓読]布留山ゆ直に見わたす都にぞ寐も寝ず恋ふる遠くあらなくに","#[仮名],ふるやまゆ,ただにみわたす,みやこにぞ,いもねずこふる,とほくあらなくに","#[左注](右件五首笠朝臣金村之歌中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:笠金村歌集,天平1年12月,年紀,天理,奈良,羈旅,恋情,地名","#[訓異]
ふるやまゆ,[寛]ふるやまに,
ただにみわたす,[寛]たたにみわたす,
みやこにぞ,[寛]みやこにそ,
いもねずこふる,[寛]いねすてこるる,
とほくあらなくに,[寛]とほからなくに,
" "#[番号]09/1789","#[題詞]((天平元年己巳冬十二月歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]吾妹兒之 結手師紐乎 将解八方 絶者絶十方 直二相左右二","#[訓読]我妹子が結ひてし紐を解かめやも絶えば絶ゆとも直に逢ふまでに","#[仮名],わぎもこが,ゆひてしひもを,とかめやも,たえばたゆとも,ただにあふまでに","#[左注]右件五首笠朝臣金村之歌中出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:笠金村歌集,天平1年12月,年紀,天理,奈良,羈旅,恋情","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
ゆひてしひもを[寛],
とかめやも[寛],
たえばたゆとも,[寛]たえはたゆとも,
ただにあふまでに,[寛]たたにあふまてに,
" "#[番号]09/1790","#[題詞]天平五年癸酉遣唐使舶發難波入海之時親母贈子歌一首[并短歌]","#[原文]秋芽子乎 妻問鹿許曽 一子二 子持有跡五十戸 鹿兒自物 吾獨子之 草枕 客二師徃者 竹珠乎 密貫垂 齋戸尓 木綿取四手而 忌日管 吾思吾子 真好去有欲得 ","#[訓読]秋萩を 妻どふ鹿こそ 独り子に 子持てりといへ 鹿子じもの 我が独り子の 草枕 旅にし行けば 竹玉を 繁に貫き垂れ 斎瓮に 木綿取り垂でて 斎ひつつ 我が思ふ我子 ま幸くありこそ ","#[仮名],あきはぎを,つまどふかこそ,ひとりこに,こもてりといへ,かこじもの,あがひとりこの,くさまくら,たびにしゆけば,たかたまを,しじにぬきたれ,いはひへに,ゆふとりしでて,いはひつつ,あがおもふあこ,まさきくありこそ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌","#[事項],相聞,作者:遣唐使母,母親,愛情,送別,羈旅,餞別,安全,天平5年,年紀,植物,動物,枕詞","#[訓異]
あきはぎを,[寛]あきはきを,
つまどふかこそ,[寛]つまとふかこそ,
ひとりこに,[寛]ひとつこふたつ,
こもてりといへ,[寛]こもたりといへ,
かこじもの,[寛]かこしもの,
あがひとりこの,[寛]わかひとりこの,
くさまくら[寛],
たびにしゆけば,[寛]たひにしゆけは,
たかたまを[寛],
しじにぬきたれ,[寛]ししにぬきたれ,
いはひへに[寛],
ゆふとりしでて,[寛]ゆふとりしてて,
いはひつつ[寛],
あがおもふあこ,[寛]わかおおふわかこ,
まさきくありこそ,[寛]まよしこきてかなな,
" "#[番号]09/1791","#[題詞](天平五年癸酉遣唐使舶發難波入海之時親母贈子歌一首[并短歌])反歌","#[原文]客人之 宿将為野尓 霜降者 吾子羽L 天乃鶴群","#[訓読]旅人の宿りせむ野に霜降らば我が子羽ぐくめ天の鶴群","#[仮名],たびひとの,やどりせむのに,しもふらば,あがこはぐくめ,あめのたづむら","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:遣唐使母,母親,愛情,送別,羈旅,餞別,安全,天平5年,年紀,動物","#[訓異]
たびひとの,[寛]たひひとの,
やどりせむのに,[寛]やとりせむのに,
しもふらば,[寛]しもふらは,
あがこはぐくめ,[寛]わかこはくくめ,
あめのたづむら,[寛]あまのつるむら,
" "#[番号]09/1792","#[題詞]思娘子作歌一首[并短歌]","#[原文]白玉之 人乃其名矣 中々二 辞緒<下>延 不遇日之 數多過者 戀日之 累行者 思遣 田時乎白土 肝向 心摧而 珠手次 不懸時無 口不息 吾戀兒矣 玉釧 手尓取持而 真十鏡 直目尓不視者 下桧山 下逝水乃 上丹不出 吾念情 安虚歟毛 ","#[訓読]白玉の 人のその名を なかなかに 言を下延へ 逢はぬ日の 数多く過ぐれば 恋ふる日の 重なりゆけば 思ひ遣る たどきを知らに 肝向ふ 心砕けて 玉たすき 懸けぬ時なく 口やまず 我が恋ふる子を 玉釧 手に取り持ちて まそ鏡 直目に見ねば したひ山 下行く水の 上に出でず 我が思ふ心 安きそらかも ","#[仮名],しらたまの,ひとのそのなを,なかなかに,ことをしたはへ,あはぬひの,まねくすぐれば,こふるひの,かさなりゆけば,おもひやる,たどきをしらに,きもむかふ,こころくだけて,たまたすき,かけぬときなく,くちやまず,あがこふるこを,たまくしろ,てにとりもちて,まそかがみ,ただめにみねば,したひやま,したゆくみづの,うへにいでず,あがおもふこころ,やすきそらかも","#[左注](右三首田邊福麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 不 -> 下 [元][藍][紀]","#[事項],相聞,作者:田辺福麻呂歌集,恋情,枕詞","#[訓異]
しらたまの[寛],
ひとのそのなを[寛],
なかなかに[寛],
ことをしたはへ,[寛]ことのをのへす,
あはぬひの[寛],
まねくすぐれば,[寛]あまたすくれは,
こふるひの[寛],
かさなりゆけば,[寛]かさなりゆけは,
おもひやる[寛],
たどきをしらに,[寛]たときをしらに,
きもむかふ,[寛]きもむかひ,
こころくだけて,[寛]こころくたけて,
たまたすき[寛],
かけぬときなく[寛],
くちやまず,[寛]くちやます,
あがこふるこを,[寛]わかこふるこを,
たまくしろ,[寛]たまたまき,
てにとりもちて[寛],
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
ただめにみねば,[寛]たためにみすは,
したひやま[寛],
したゆくみづの,[寛]したゆくみつの,
うへにいでず,[寛]うへにいてす,
あがおもふこころ,[寛]わかなもふこころ,
やすきそらかも[寛],
" "#[番号]09/1793","#[題詞](思娘子作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]垣保成 人之横辞 繁香裳 不遭日數多 月乃經良武","#[訓読]垣ほなす人の横言繁みかも逢はぬ日数多く月の経ぬらむ","#[仮名],かきほなす,ひとのよここと,しげみかも,あはぬひまねく,つきのへぬらむ","#[左注](右三首田邊福麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:田辺福麻呂歌集,恋情,うわさ","#[訓異]
かきほなす[寛],
ひとのよここと[寛],
しげみかも,[寛]しけきかも,
あはぬひまねく,[寛]あはぬひあまた,
つきのへぬらむ[寛],
" "#[番号]09/1794","#[題詞]((思娘子作歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]立易 月重而 難不遇 核不所忘 面影思天","#[訓読]たち変り月重なりて逢はねどもさね忘らえず面影にして","#[仮名],たちかはり,つきかさなりて,あはねども,さねわすらえず,おもかげにして","#[左注]右三首田邊福麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],相聞,作者:田辺福麻呂歌集,恋情","#[訓異]
たちかはり,[寛]たちかはる,
つきかさなりて[寛],
あはねども,[寛]あはされと,
さねわすらえず,[寛]さねわすられす,
おもかげにして,[寛]おもかけにして,
" "#[番号]09/1795","#[題詞]挽歌 / 宇治若郎子宮所歌一首","#[原文]妹等許 今木乃嶺 茂立 嬬待木者 古人見祁牟","#[訓読]妹らがり今木の嶺に茂り立つ嬬松の木は古人見けむ","#[仮名],いもらがり,いまきのみねに,しげりたつ,つままつのきは,ふるひとみけむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,宇治若郎子,京都,宇治,植物","#[訓異]
いもらがり,[寛]いもらかり,
いまきのみねに[寛],
しげりたつ,[寛]なみたてる,
つままつのきは[寛],
ふるひとみけむ[寛],
" "#[番号]09/1796","#[題詞]紀伊國作歌四首","#[原文]黄葉之 過去子等 携 遊礒麻 見者悲裳","#[訓読]黄葉の過ぎにし子らと携はり遊びし礒を見れば悲しも","#[仮名],もみちばの,すぎにしこらと,たづさはり,あそびしいそを,みればかなしも","#[左注](右五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂歌集,紀伊,和歌山,行幸,恋情,亡妻,非略体,地名","#[訓異]
もみちばの,[寛]もみちはの,
すぎにしこらと,[寛]すきゆくこらと,
たづさはり,[寛]あつさひて,
あそびしいそを,[寛]あそひしいそま,
みればかなしも,[寛]みれはかなしも,
" "#[番号]09/1797","#[題詞](紀伊國作歌四首)","#[原文]塩氣立 荒礒丹者雖在 徃水之 過去妹之 方見等曽来","#[訓読]潮気立つ荒礒にはあれど行く水の過ぎにし妹が形見とぞ来し","#[仮名],しほけたつ,ありそにはあれど,ゆくみづの,すぎにしいもが,かたみとぞこし","#[左注](右五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂歌集,紀伊,和歌山,行幸,悲嘆,亡妻,非略体,地名","#[訓異]
しほけたつ[寛],
ありそにはあれど,[寛]あらそにはあと,
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
すぎにしいもが,[寛]すきゆくいもか,
かたみとぞこし,[寛]かたみとそくる,
" "#[番号]09/1798","#[題詞](紀伊國作歌四首)","#[原文]古家丹 妹等吾見 黒玉之 久漏牛方乎 見佐府<下>","#[訓読]いにしへに妹と我が見しぬばたまの黒牛潟を見れば寂しも","#[仮名],いにしへに,いもとわがみし,ぬばたまの,くろうしがたを,みればさぶしも","#[左注](右五首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]下玉 -> 下 [西(朱訂正)][元][藍][類]","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂歌集,紀伊,和歌山,行幸,悲嘆,恋情,亡妻,非略体,地名","#[訓異]
いにしへに,[寛]ふるいへに,
いもとわがみし,[寛]いもとわかあし,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
くろうしがたを,[寛]くろうしかたを,
みればさぶしも,[寛]みれはさふしも,
" "#[番号]09/1799","#[題詞](紀伊國作歌四首)","#[原文]<玉>津嶋 礒之裏<未>之 真名<子>仁文 尓保比去名 妹觸險","#[訓読]玉津島礒の浦廻の真砂にもにほひて行かな妹も触れけむ","#[仮名],たまつしま,いそのうらみの,まなごにも,にほひてゆかな,いももふれけむ","#[左注]右五首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]<> -> 玉 [西(左書)][元][藍][類] / 末 -> 未 [元] / <> -> 子 [紀] / 比 (塙) 比弖 (楓) 比尓","#[事項],挽歌,作者:柿本人麻呂歌集,紀伊,和歌山,行幸,悲嘆,恋情,亡妻,非略体,地名","#[訓異]
たまつしま[寛],
いそのうらみの,[寛]いそのうらまの,
まなごにも,[寛]まなこにも,
にほひてゆかな[寛],
いももふれけむ[寛],
" "#[番号]09/1800","#[題詞]過足柄坂見死人作歌一首","#[原文]小垣内之 麻矣引干 妹名根之 作服異六 白細乃 紐緒毛不解 一重結 帶矣三重結 <苦>伎尓 仕奉而 今谷裳 國尓退而 父妣毛 妻矣毛将見跡 思乍 徃祁牟君者 鳥鳴 東國能 恐耶 神之三坂尓 和霊乃 服寒等丹 烏玉乃 髪者乱而 邦問跡 國矣毛不告 家問跡 家矣毛不云 益荒夫乃 去能進尓 此間偃有 ","#[訓読]小垣内の 麻を引き干し 妹なねが 作り着せけむ 白栲の 紐をも解かず 一重結ふ 帯を三重結ひ 苦しきに 仕へ奉りて 今だにも 国に罷りて 父母も 妻をも見むと 思ひつつ 行きけむ君は 鶏が鳴く 東の国の 畏きや 神の御坂に 和妙の 衣寒らに ぬばたまの 髪は乱れて 国問へど 国をも告らず 家問へど 家をも言はず ますらをの 行きのまにまに ここに臥やせる ","#[仮名],をかきつの,あさをひきほし,いもなねが,つくりきせけむ,しろたへの,ひもをもとかず,ひとへゆふ,おびをみへゆひ,くるしきに,つかへまつりて,いまだにも,くににまかりて,ちちははも,つまをもみむと,おもひつつ,ゆきけむきみは,とりがなく,あづまのくにの,かしこきや,かみのみさかに,にきたへの,ころもさむらに,ぬばたまの,かみはみだれて,くにとへど,くにをものらず,いへとへど,いへをもいはず,ますらをの,ゆきのまにまに,ここにこやせる","#[左注](右七首田邊福麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 苦侍 -> 苦 [元][藍][類][紀]","#[事項],挽歌,作者:田辺福麻呂歌集,行路死人,箱根,静岡,羈旅,鎮魂,地名,枕詞","#[訓異]
をかきつの,[寛]をかきうちの,
あさをひきほし[寛],
いもなねが,[寛]いもなねの,
つくりきせけむ[寛],
しろたへの[寛],
ひもをもとかず,[寛]ひもをもとかす,
ひとへゆふ[寛],
おびをみへゆひ,[寛]おひをみへゆひ,
くるしきに[寛],
つかへまつりて[寛],
いまだにも,[寛]いまたにも,
くににまかりて,[寛]くににかへりて,
ちちははも[寛],
つまをもみむと[寛],
おもひつつ[寛],
ゆきけむきみは[寛],
とりがなく,[寛]とりかなく,
あづまのくにの,[寛]あつまのくにの,
かしこきや,[寛]かしこみや,
かみのみさかに[寛],
にきたへの,[寛]にきたまの,
ころもさむらに,[寛]ころものむらに,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
かみはみだれて,[寛]かみはみたれて,
くにとへど,[寛]くにとへと,
くにをものらず,[寛]くにをもつけす,
いへとへど,[寛]いへとへと,
いへをもいはず,[寛]いへをもいはす,
ますらをの[寛],
ゆきのまにまに,[寛]ゆきのすすみに,
ここにこやせる,[寛]ここにふしたり,
" "#[番号]09/1801","#[題詞]過葦屋處女墓時作歌一首[并短歌]","#[原文]古之 益荒丁子 各競 妻問為祁牟 葦屋乃 菟名日處女乃 奥城矣 吾立見者 永世乃 語尓為乍 後人 偲尓世武等 玉桙乃 道邊近 磐構 作冢矣 天雲乃 退部乃限 此道矣 去人毎 行因 射立嘆日 或人者 啼尓毛哭乍 語嗣 偲継来 處女等賀 奥城所 吾并 見者悲喪 古思者 ","#[訓読]古への ますら壮士の 相競ひ 妻問ひしけむ 葦屋の 菟原娘子の 奥城を 我が立ち見れば 長き世の 語りにしつつ 後人の 偲ひにせむと 玉桙の 道の辺近く 岩構へ 造れる塚を 天雲の そくへの極み この道を 行く人ごとに 行き寄りて い立ち嘆かひ ある人は 哭にも泣きつつ 語り継ぎ 偲ひ継ぎくる 娘子らが 奥城処 我れさへに 見れば悲しも 古へ思へば ","#[仮名],いにしへの,ますらをとこの,あひきほひ,つまどひしけむ,あしのやの,うなひをとめの,おくつきを,わがたちみれば,ながきよの,かたりにしつつ,のちひとの,しのひにせむと,たまほこの,みちののへちかく,いはかまへ,つくれるつかを,あまくもの,そくへのきはみ,このみちを,ゆくひとごとに,ゆきよりて,いたちなげかひ,あるひとは,ねにもなきつつ,かたりつぎ,しのひつぎくる,をとめらが,おくつきところ,われさへに,みればかなしも,いにしへおもへば","#[左注](右七首田邊福麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌","#[事項],挽歌,作者:田辺福麻呂歌集,兵庫県,芦屋,妻争い,鎮魂,伝説,うない娘子,地名","#[訓異]
いにしへの[寛],
ますらをとこの,[寛]ますらをのこの,
あひきほひ[寛],
つまどひしけむ,[寛]つまとひしけむ,
あしのやの[寛],
うなひをとめの[寛],
おくつきを[寛],
わがたちみれば,[寛]わかたちみれは,
ながきよの,[寛]なかきよの,
かたりにしつつ[寛],
のちひとの,[寛]のちのひと,
しのひにせむと[寛],
たまほこの[寛],
みちののへちかく[寛],
いはかまへ[寛],
つくれるつかを[寛],
あまくもの[寛],
そくへのきはみ,[寛]しりへのかきり,
このみちを[寛],
ゆくひとごとに,[寛]ゆくひとことに,
ゆきよりて[寛],
いたちなげかひ,[寛]いたちなけかひ,
あるひとは,[寛]わひひとは,
ねにもなきつつ[寛],
かたりつぎ,[寛]かたりつき,
しのひつぎくる,[寛]しのひつきくる,
をとめらが,[寛]をとめらか,
おくつきところ[寛],
われさへに,[寛]われした,
みればかなしも,[寛]みれはかなしも,
いにしへおもへば,[寛]むかしおもへは,
" "#[番号]09/1802","#[題詞](過葦屋處女墓時作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]古乃 小竹田丁子乃 妻問石 菟會處女乃 奥城叙此","#[訓読]古への信太壮士の妻問ひし菟原娘子の奥城ぞこれ","#[仮名],いにしへの,しのだをとこの,つまどひし,うなひをとめの,おくつきぞこれ","#[左注](右七首田邊福麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:田辺福麻呂歌集,兵庫県,芦屋,妻争い,鎮魂,伝説,うない娘子,地名","#[訓異]
いにしへの[寛],
しのだをとこの,[寛]ささたをのこの,
つまどひし,[寛]つまとひし,
うなひをとめの[寛],
おくつきぞこれ,[寛]おきつきそこれ,
" "#[番号]09/1803","#[題詞]((過葦屋處女墓時作歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]語継 可良仁文幾許 戀布矣 直目尓見兼 古丁子","#[訓読]語り継ぐからにもここだ恋しきを直目に見けむ古へ壮士","#[仮名],かたりつぐ,からにもここだ,こほしきを,ただめにみけむ,いにしへをとこ","#[左注](右七首田邊福麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],挽歌,作者:田辺福麻呂歌集,兵庫県,芦屋,妻争い,鎮魂,伝説,うない娘子,地名","#[訓異]
かたりつぐ,[寛]かたりつく,
からにもここだ,[寛]からにもここた,
こほしきを,[寛]こひしきを,
ただめにみけむ,[寛]たためにみけむ,
いにしへをとこ,[寛]むかしのをのこ,
" "#[番号]09/1804","#[題詞]哀弟死去作歌一首[并短歌]","#[原文]父母賀 成乃任尓 箸向 弟乃命者 朝露乃 銷易杵壽 神之共 荒競不勝而 葦原乃 水穂之國尓 家無哉 又還不来 遠津國 黄泉乃界丹 蔓都多乃 各<々>向々 天雲乃 別石徃者 闇夜成 思迷匍匐 所射十六乃 意矣痛 葦垣之 思乱而 春鳥能 啼耳鳴乍 味澤相 宵晝不<知> 蜻蜒火之 心所燎管 悲悽別焉","#[訓読]父母が 成しのまにまに 箸向ふ 弟の命は 朝露の 消やすき命 神の共 争ひかねて 葦原の 瑞穂の国に 家なみか また帰り来ぬ 遠つ国 黄泉の境に 延ふ蔦の おのが向き向き 天雲の 別れし行けば 闇夜なす 思ひ惑はひ 射ゆ鹿の 心を痛み 葦垣の 思ひ乱れて 春鳥の 哭のみ泣きつつ あぢさはふ 夜昼知らず かぎろひの 心燃えつつ 嘆く別れを ","#[仮名],ちちははが,なしのまにまに,はしむかふ,おとのみことは,あさつゆの,けやすきいのち,かみのむた,あらそひかねて,あしはらの,みづほのくにに,いへなみか,またかへりこぬ,とほつくに,よみのさかひに,はふつたの,おのがむきむき,あまくもの,わかれしゆけば,やみよなす,おもひまとはひ,いゆししの,こころをいたみ,あしかきの,おもひみだれて,はるとりの,ねのみなきつつ,あぢさはふ,よるひるしらず,かぎろひの,こころもえつつ,なげくわかれを","#[左注](右七首田邊福麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 各 -> 々 [元][藍][類][紀] / 云 -> 知 [元][藍] (楓) 云","#[事項],挽歌,作者:田辺福麻呂歌集,哀悼,悲嘆,枕詞","#[訓異]
ちちははが,[寛]ちちははか,
なしのまにまに[寛],
はしむかふ[寛],
おとのみことは,[寛]なせのみことは,
あさつゆの[寛],
けやすきいのち[寛],
かみのむた[寛],
あらそひかねて[寛],
あしはらの[寛],
みづほのくにに,[寛]みつほのくにに,
いへなみか,[寛]いへなしや,
またかへりこぬ[寛],
とほつくに[寛],
よみのさかひに[寛],
はふつたの[寛],
おのがむきむき,[寛]おのかむきむき,
あまくもの[寛],
わかれしゆけば,[寛]わかれしゆけは,
やみよなす[寛],
おもひまとはひ,[寛]おもひまとはし,
いゆししの,[寛]いるししの,
こころをいたみ[寛],
あしかきの[寛],
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
はるとりの,[寛]うくひすの,
ねのみなきつつ,[寛]なきになきつつ,
あぢさはふ,[寛]あちさはふ,
よるひるしらず,[寛]よるひるいはす,
かぎろひの,[寛]かけろふの,
こころもえつつ[寛],
なげくわかれを,[寛]なけくわかれを,
" "#[番号]09/1805","#[題詞](哀弟死去作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]別而裳 復毛可遭 所念者 心乱 吾戀目八方 [一云 意盡而] ","#[訓読]別れてもまたも逢ふべく思ほえば心乱れて我れ恋ひめやも [一云 心尽して]","#[仮名],わかれても,またもあふべく,おもほえば,こころみだれて,あれこひめやも,[こころつくして]","#[左注](右七首田邊福麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:田辺福麻呂歌集,哀悼,悲嘆","#[訓異]
わかれても[寛],
またもあふべく,[寛]またもあふへく,
おもほえば,[寛]おもほへは,
こころみだれて,[寛]こころみたれて,
あれこひめやも,[寛]われこひめやも,
[こころつくして],[寛]こころつきて,
" "#[番号]09/1806","#[題詞]((哀弟死去作歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]蘆桧木笶 荒山中尓 送置而 還良布見者 情苦喪","#[訓読]あしひきの荒山中に送り置きて帰らふ見れば心苦しも","#[仮名],あしひきの,あらやまなかに,おくりおきて,かへらふみれば,こころぐるしも","#[左注]右七首田邊福麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:田辺福麻呂歌集,哀悼,悲嘆,枕詞","#[訓異]
あしひきの[寛],
あらやまなかに[寛],
おくりおきて[寛],
かへらふみれば,[寛]かへらふみれは,
こころぐるしも,[寛]こころくるしも,
" "#[番号]09/1807","#[題詞]詠勝鹿真間娘子歌一首[并短歌]","#[原文]鶏鳴 吾妻乃國尓 古昔尓 有家留事登 至今 不絶言来 勝<壮>鹿乃 真間乃手兒奈我 麻衣尓 青衿著 直佐麻乎 裳者織服而 髪谷母 掻者不梳 履乎谷 不著雖行 錦綾之 中丹L有 齋兒毛 妹尓将及哉 望月之 満有面輪二 如花 咲而立有者 夏蟲乃 入火之如 水門入尓 船己具如久 歸香具礼 人乃言時 幾時毛 不生物<呼> 何為跡歟 身乎田名知而 浪音乃 驟湊之 奥津城尓 妹之臥勢流 遠代尓 有家類事乎 昨日霜 将見我其登毛 所念可聞","#[訓読]鶏が鳴く 東の国に 古へに ありけることと 今までに 絶えず言ひける 勝鹿の 真間の手児名が 麻衣に 青衿着け ひたさ麻を 裳には織り着て 髪だにも 掻きは梳らず 沓をだに はかず行けども 錦綾の 中に包める 斎ひ子も 妹にしかめや 望月の 足れる面わに 花のごと 笑みて立てれば 夏虫の 火に入るがごと 港入りに 舟漕ぐごとく 行きかぐれ 人の言ふ時 いくばくも 生けらじものを 何すとか 身をたな知りて 波の音の 騒く港の 奥城に 妹が臥やせる 遠き代に ありけることを 昨日しも 見けむがごとも 思ほゆるかも","#[仮名],とりがなく,あづまのくにに,いにしへに,ありけることと,いままでに,たえずいひける,かつしかの,ままのてごなが,あさぎぬに,あをくびつけ,ひたさをを,もにはおりきて,かみだにも,かきはけづらず,くつをだに,はかずゆけども,にしきあやの,なかにつつめる,いはひこも,いもにしかめや,もちづきの,たれるおもわに,はなのごと,ゑみてたてれば,なつむしの,ひにいるがごと,みなといりに,ふねこぐごとく,ゆきかぐれ,ひとのいふとき,いくばくも,いけらじものを,なにすとか,みをたなしりて,なみのおとの,さわくみなとの,おくつきに,いもがこやせる,とほきよに,ありけることを,きのふしも,みけむがごとも,おもほゆるかも","#[左注](右五首高橋連蟲麻呂之歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 牡 -> 壮 [元][藍][類][紀] / 乎 -> 呼 [元][藍][類]","#[事項],挽歌,作者:高橋虫麻呂歌集,葛飾,東京,伝説,自殺,惜別,枕詞,地名","#[訓異]
とりがなく,[寛]とりかなく,
あづまのくにに,[寛]あつまのくにに,
いにしへに[寛],
ありけることと[寛],
いままでに,[寛]いままてに,
たえずいひける,[寛]たえすいひくる,
かつしかの[寛],
ままのてごなが,[寛]ままのてこなか,
あさぎぬに,[寛]あさきぬに,
あをくびつけ,[寛]あをふすまきて,
ひたさをを[寛],
もにはおりきて,[寛]もにはをりきて,
かみだにも,[寛]かみたにも,
かきはけづらず,[寛]かきはけつらす,
くつをだに,[寛]くつをたに,
はかずゆけども,[寛]はかてゆけとも,
にしきあやの[寛],
なかにつつめる[寛],
いはひこも[寛],
いもにしかめや[寛],
もちづきの,[寛]もちつきの,
たれるおもわに,[寛]みてるおもわに,
はなのごと,[寛]はなのこと,
ゑみてたてれば,[寛]ゑみてたてれは,
なつむしの[寛],
ひにいるがごと,[寛]ひにいるかこと,
みなといりに[寛],
ふねこぐごとく,[寛]ふねこくことく,
ゆきかぐれ,[寛]ゆきかくれ,
ひとのいふとき[寛],
いくばくも,[寛]いくときも,
いけらじものを,[寛]いけらぬものを,
なにすとか[寛],
みをたなしりて[寛],
なみのおとの[寛],
さわくみなとの[寛],
おくつきに,[寛]おきつきに,
いもがこやせる,[寛]いもかふしせる,
とほきよに[寛],
ありけることを[寛],
きのふしも[寛],
みけむがごとも,[寛]みもむかことも,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]09/1808","#[題詞](詠勝鹿真間娘子歌一首[并短歌])反歌","#[原文]勝<壮>鹿之 真間之井見者 立平之 水は家<武> 手兒名之所念","#[訓読]勝鹿の真間の井見れば立ち平し水汲ましけむ手児名し思ほゆ","#[仮名],かつしかの,ままのゐみれば,たちならし,みづくましけむ,てごなしおもほゆ","#[左注](右五首高橋連蟲麻呂之歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 牡 -> 壮 [元][古][類][紀] / 牟 -> 武 [元][藍][類][紀]","#[事項],挽歌,作者:高橋虫麻呂歌集,葛飾,東京,伝説,自殺,惜別,地名","#[訓異]
かつしかの[寛],
ままのゐみれば,[寛]ままのゐみれは,
たちならし[寛],
みづくましけむ,[寛]みつをくみけむ,
てごなしおもほゆ,[寛]てこなしそおもふ,
" "#[番号]09/1809","#[題詞]見菟原處女墓歌一首[并短歌]","#[原文]葦屋之 菟名負處女之 八年兒之 片生之時従 小放尓 髪多久麻弖尓 並居 家尓毛不所見 虚木綿乃 牢而座在者 見而師香跡 <悒>憤時之 垣廬成 人之誂時 智<弩><壮>士 宇奈比<壮>士乃 廬八燎 須酒師競 相結婚 為家類時者 焼大刀乃 手頴押祢利 白檀弓 <靫>取負而 入水 火尓毛将入跡 立向 競時尓 吾妹子之 母尓語久 倭<文>手纒 賎吾之故 大夫之 荒争見者 雖生 應合有哉 <宍>串呂 黄泉尓将待跡 隠沼乃 下延置而 打歎 妹之去者 血沼<壮>士 其夜夢見 取次寸 追去祁礼婆 後有 菟原<壮>士伊 仰天 S於良妣 ひ地 牙喫建怒而 如己男尓 負而者不有跡 懸佩之 小劔取佩 冬ふ蕷都良 尋去祁礼婆 親族共 射歸集 永代尓 標将為跡 遐代尓 語将継常 處女墓 中尓造置 <壮>士墓 此方彼方二 造置有 故縁聞而 雖不知 新喪之如毛 哭泣鶴鴨 ","#[訓読]葦屋の 菟原娘子の 八年子の 片生ひの時ゆ 小放りに 髪たくまでに 並び居る 家にも見えず 虚木綿の 隠りて居れば 見てしかと いぶせむ時の 垣ほなす 人の問ふ時 茅渟壮士 菟原壮士の 伏屋焚き すすし競ひ 相よばひ しける時は 焼太刀の 手かみ押しねり 白真弓 靫取り負ひて 水に入り 火にも入らむと 立ち向ひ 競ひし時に 我妹子が 母に語らく しつたまき いやしき我が故 ますらをの 争ふ見れば 生けりとも 逢ふべくあれや ししくしろ 黄泉に待たむと 隠り沼の 下延へ置きて うち嘆き 妹が去ぬれば 茅渟壮士 その夜夢に見 とり続き 追ひ行きければ 後れたる 菟原壮士い 天仰ぎ 叫びおらび 地を踏み きかみたけびて もころ男に 負けてはあらじと 懸け佩きの 小太刀取り佩き ところづら 尋め行きければ 親族どち い行き集ひ 長き代に 標にせむと 遠き代に 語り継がむと 娘子墓 中に造り置き 壮士墓 このもかのもに 造り置ける 故縁聞きて 知らねども 新喪のごとも 哭泣きつるかも ","#[仮名],あしのやの,うなひをとめの,やとせこの,かたおひのときゆ,をばなりに,かみたくまでに,ならびをる,いへにもみえず,うつゆふの,こもりてをれば,みてしかと,いぶせむときの,かきほなす,ひとのとふとき,ちぬをとこ,うなひをとこの,ふせやたき,すすしきほひ,あひよばひ,しけるときは,やきたちの,たかみおしねり,しらまゆみ,ゆきとりおひて,みづにいり,ひにもいらむと,たちむかひ,きほひしときに,わぎもこが,ははにかたらく,しつたまき,いやしきわがゆゑ,ますらをの,あらそふみれば,いけりとも,あふべくあれや,ししくしろ,よみにまたむと,こもりぬの,したはへおきて,うちなげき,いもがいぬれば,ちぬをとこ,そのよいめにみ,とりつづき,おひゆきければ,おくれたる,うなひをとこい,あめあふぎ,さけびおらび,つちをふみ,きかみたけびて,もころをに,まけてはあらじと,かけはきの,をだちとりはき,ところづら,とめゆきければ,うがらどち,いゆきつどひ,ながきよに,しるしにせむと,とほきよに,かたりつがむと,をとめはか,なかにつくりおき,をとこはか,このもかのもに,つくりおける,ゆゑよしききて,しらねども,にひものごとも,ねなきつるかも","#[左注](右五首高橋連蟲麻呂之歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / は -> 悒 [元][藍][紀] / 奴 -> 弩 [元][藍] / 牡 -> 壮 [元][藍][類] / 靭 -> 靫 [元][藍] / 父 -> 文 [元][紀] / 完 -> 宍 [元][藍] / 牡 -> 壮 [元][藍][類] / 牡 -> 壮 [元][藍][類] / 牡 -> 壮 [元][藍][類]","#[事項],挽歌,作者:高橋虫麻呂歌集,芦屋,兵庫,うない娘子,伝説,妻争い,地名","#[訓異]
あしのやの[寛],
うなひをとめの[寛],
やとせこの[寛],
かたおひのときゆ,[寛]かたおひのときに,
をばなりに,[寛]をはなちに,
かみたくまでに,[寛]かみたくまてに,
ならびをる,[寛]ならひゐて,
いへにもみえず,[寛]いへにもみえす,
うつゆふの,[寛]そらゆふの,
こもりてをれば,[寛]かくれてませは,
みてしかと[寛],
いぶせむときの,[寛]いふせきときし,
かきほなす[寛],
ひとのとふとき,[寛]ひとのいとむとき,
ちぬをとこ[寛],
うなひをとこの[寛],
ふせやたき,[寛]ふせやもえ,
すすしきほひ,[寛]すすしきほひて,
あひよばひ,[寛]あひたはけ,
しけるときは,[寛]しけるときには,
やきたちの[寛],
たかみおしねり,[寛]たかひおしねり,
しらまゆみ[寛],
ゆきとりおひて[寛],
みづにいり,[寛]みつにいり,
ひにもいらむと[寛],
たちむかひ[寛],
きほひしときに,[寛]いそひしときに,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
ははにかたらく[寛],
しつたまき[寛],
いやしきわがゆゑ,[寛]いやしきわかゆへ,
ますらをの[寛],
あらそふみれば,[寛]あらそふみれは,
いけりとも[寛],
あふべくあれや,[寛]あふへくあれや,
ししくしろ[寛],
よみにまたむと[寛],
こもりぬの,[寛]かくれぬの,
したはへおきて,[寛]したおきて,
うちなげき,[寛]うちなけき,
いもがいぬれば,[寛]いもかいぬれは,
ちぬをとこ[寛],
そのよいめにみ,[寛]そのよゆめみて,
とりつづき,[寛]とりつつき,
おひゆきければ,[寛]をひゆきけれは,
おくれたる[寛],
うなひをとこい,[寛]うなひをとこも,
あめあふぎ,[寛]いあふきて,
さけびおらび,[寛]さけひをらひて,
つちをふみ,[寛]ちつにふして,
きかみたけびて,[寛]きかみたけひて,
もころをに[寛],
まけてはあらじと,[寛]まけてはあらしと,
かけはきの[寛],
をだちとりはき,[寛]をたちとりはき,
ところづら,[寛]さねかつら,
とめゆきければ,[寛]つきてゆけれは,
うがらどち,[寛]やからとも,
いゆきつどひ,[寛]いゆきあつまり,
ながきよに,[寛]なかきよに,
しるしにせむと,[寛]しめさむと,
とほきよに[寛],
かたりつがむと,[寛]かたりつかむと,
をとめはか,[寛]をとめつか,
なかにつくりおき[寛],
をとこはか,[寛]をとこつか,
このもかのもに,[寛]こなたかなたに,
つくりおける,[寛]つくりおけり,
ゆゑよしききて,[寛]ゆへよしききて,
しらねども,[寛]しらねとも,
にひものごとも,[寛]いひものことも,
ねなきつるかも[寛],
" "#[番号]09/1810","#[題詞](見菟原處女墓歌一首[并短歌])反歌","#[原文]葦屋之 宇奈比處女之 奥槨乎 徃来跡見者 哭耳之所泣","#[訓読]芦屋の菟原娘子の奥城を行き来と見れば哭のみし泣かゆ","#[仮名],あしのやの,うなひをとめの,おくつきを,ゆきくとみれば,ねのみしなかゆ","#[左注](右五首高橋連蟲麻呂之歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:高橋虫麻呂歌集,芦屋,兵庫,うない娘子,伝説,妻争い,地名","#[訓異]
あしのやの[寛],
うなひをとめの,[寛]うなひをとめか,
おくつきを,[寛]おきつきを,
ゆきくとみれば,[寛]ゆきくとみては,
ねのみしなかゆ,[寛]ねのみしなかる,
" "#[番号]09/1811","#[題詞]((見菟原處女墓歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]墓上之 木枝靡有 如聞 陳努<壮>士尓之 <依>家良信母","#[訓読]墓の上の木の枝靡けり聞きしごと茅渟壮士にし寄りにけらしも","#[仮名],はかのうへの,このえなびけり,ききしごと,ちぬをとこにし,よりにけらしも","#[左注]右五首高橋連蟲麻呂之歌集中出","#[校異]牡 -> 壮 [元][藍][類] / 依倍 -> 依 [元][藍][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],挽歌,作者:高橋虫麻呂歌集,芦屋,兵庫,うない娘子,伝説,妻争い,地名","#[訓異]
はかのうへの,[寛]つかのうへの,
このえなびけり,[寛]このえなひけり,
ききしごと,[寛]きくかこと,
ちぬをとこにし[寛],
よりにけらしも,[寛]よるへけらしも,
" "#[番号]10/1812","#[題詞]春雜歌","#[原文]久方之 天芳山 此夕 霞霏d 春立下","#[訓読]ひさかたの天の香具山この夕霞たなびく春立つらしも","#[仮名],ひさかたの,あめのかぐやま,このゆふへ,かすみたなびく,はるたつらしも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],春雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,飛鳥,地名,枕詞,季節","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あめのかぐやま,[寛]あまのかくやま,
このゆふへ[寛],
かすみたなびく,[寛]かすみたなひく,
はるたつらしも[寛],
" "#[番号]10/1813","#[題詞]","#[原文]巻向之 桧原丹立流 春霞 欝之思者 名積米八方","#[訓読]巻向の桧原に立てる春霞おほにし思はばなづみ来めやも","#[仮名],まきむくの,ひはらにたてる,はるかすみ,おほにしおもはば,なづみこめやも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]","#[事項],春雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,桜井,奈良,地名,季節","#[訓異]
まきむくの,[寛]まきもくの,
ひはらにたてる[寛],
はるかすみ[寛],
おほにしおもはば,[寛]くれしおもひは,
なづみこめやも,[寛]なつみけめやも,
" "#[番号]10/1814","#[題詞]","#[原文]古 人之殖兼 杉枝 霞<霏>d 春者来良之","#[訓読]いにしへの人の植ゑけむ杉が枝に霞たなびく春は来ぬらし","#[仮名],いにしへの,ひとのうゑけむ,すぎがえに,かすみたなびく,はるはきぬらし","#[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]<> -> 霏 [西(左書)][元][類][紀] / 之 [元][類](塙) 芝","#[事項],春雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,植物,季節","#[訓異]
いにしへの[寛],
ひとのうゑけむ[寛],
すぎがえに,[寛]すきかゑに,
かすみたなびく,[寛]かすみたなひく,
はるはきぬらし[寛],
" "#[番号]10/1815","#[題詞]","#[原文]子等我手乎 巻向山丹 春去者 木葉凌而 霞霏d","#[訓読]子らが手を巻向山に春されば木の葉しのぎて霞たなびく","#[仮名],こらがてを,まきむくやまに,はるされば,このはしのぎて,かすみたなびく","#[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]凌 [元][類] 陵","#[事項],春雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,桜井,奈良,地名,枕詞,季節","#[訓異]
こらがてを,[寛]こらかてを,
まきむくやまに,[寛]まきもくやまに,
はるされば,[寛]はるされは,
このはしのぎて,[寛]このはしのきて,
かすみたなびく,[寛]かすみたなひく,
" "#[番号]10/1816","#[題詞]","#[原文]玉蜻 夕去来者 佐豆人之 弓月我高荷 霞霏d","#[訓読]玉かぎる夕さり来ればさつ人の弓月が岳に霞たなびく","#[仮名],たまかぎる,ゆふさりくれば,さつひとの,ゆつきがたけに,かすみたなびく","#[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]","#[事項],春雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,桜井,奈良,地名,枕詞,季節","#[訓異]
たまかぎる,[寛]かけろふの,
ゆふさりくれば,[寛]ゆふさりくれは,
さつひとの[寛],
ゆつきがたけに,[寛]ゆつきかたけに,
かすみたなびく,[寛]かすみたなひく,
" "#[番号]10/1817","#[題詞]","#[原文]今朝去而 明日者来牟等 云子鹿丹 旦妻山丹 霞霏d","#[訓読]今朝行きて明日には来なむと云子鹿丹朝妻山に霞たなびく","#[仮名],けさゆきて,あすにはきなむと,****,あさづまやまに,かすみたなびく","#[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]牟 [元][類] 年 / 鹿丹 [元] 庶","#[事項],春雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,御所市,奈良県,地名,季節","#[訓異]
けさゆきて,[寛]けふゆきて,
あすにはきなむと,[寛]あすはこむといふ,
****,[寛]こかに,
あさづまやまに,[寛]あさつまやまに,
かすみたなびく,[寛]かすみたなひく,
" "#[番号]10/1818","#[題詞]","#[原文]子等名丹 關之宜 朝妻之 片山木之尓 霞多奈引","#[訓読]子らが名に懸けのよろしき朝妻の片山崖に霞たなびく","#[仮名],こらがなに,かけのよろしき,あさづまの,かたやまきしに,かすみたなびく","#[左注]右柿本朝臣人麻呂歌集出","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],春雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,御所市,奈良県,地名,季節,序詞","#[訓異]
こらがなに,[寛]これかなに,
かけのよろしき,[寛]つけのよろしき,
あさづまの,[寛]あさつまの,
かたやまきしに[寛],
かすみたなびく,[寛]かすみたなひく,
" "#[番号]10/1819","#[題詞]詠鳥","#[原文]打霏 春立奴良志 吾門之 柳乃宇礼尓 鴬鳴都","#[訓読]うち靡く春立ちぬらし我が門の柳の末に鴬鳴きつ","#[仮名],うちなびく,はるたちぬらし,わがかどの,やなぎのうれに,うぐひすなきつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,季節,植物,動物","#[訓異]
うちなびく,[寛]うちなひき,
はるたちぬらし[寛],
わがかどの,[寛]わかかとの,
やなぎのうれに,[寛]やなきのうれに,
うぐひすなきつ,[寛]うくひすなきつ,
" "#[番号]10/1820","#[題詞](詠鳥)","#[原文]梅花 開有岳邊尓 家居者 乏毛不有 鴬之音","#[訓読]梅の花咲ける岡辺に家居れば乏しくもあらず鴬の声","#[仮名],うめのはな,さけるをかへに,いへをれば,ともしくもあらず,うぐひすのこゑ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,動物,季節","#[訓異]
うめのはな[寛],
さけるをかへに[寛],
いへをれば,[寛]いへゐせは,
ともしくもあらず,[寛]ともしくもあらし,
うぐひすのこゑ,[寛]うくひすのこゑ
" "#[番号]10/1821","#[題詞](詠鳥)","#[原文]春霞 流共尓 青柳之 枝<喙>持而 鴬鳴毛","#[訓読]春霞流るるなへに青柳の枝くひ持ちて鴬鳴くも","#[仮名],はるかすみ,ながるるなへに,あをやぎの,えだくひもちて,うぐひすなくも","#[左注]","#[校異]啄 -> 喙 [元][類]","#[事項],春雑歌,植物,動物,季節","#[訓異]
はるかすみ[寛],
ながるるなへに,[寛]なかるるなへに,
あをやぎの,[寛]あをやきの,
えだくひもちて,[寛]えたくひもちて,
うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも,
" "#[番号]10/1822","#[題詞](詠鳥)","#[原文]吾瀬子乎 莫越山能 喚子鳥 君喚變瀬 夜之不深刀尓","#[訓読]我が背子を莫越の山の呼子鳥君呼び返せ夜の更けぬとに","#[仮名],わがせこを,なこしのやまの,よぶこどり,きみよびかへせ,よのふけぬとに","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,地名,動物,枕詞","#[訓異]
わがせこを,[寛]わかせこを,
なこしのやまの[寛],
よぶこどり,[寛]よふことり,
きみよびかへせ,[寛]きみよひかへせ,
よのふけぬとに[寛],
" "#[番号]10/1823","#[題詞](詠鳥)","#[原文]朝井代尓 来鳴<杲>鳥 汝谷文 君丹戀八 時不終鳴","#[訓読]朝ゐでに来鳴く貌鳥汝れだにも君に恋ふれや時終へず鳴く","#[仮名],あさゐでに,きなくかほどり,なれだにも,きみにこふれや,ときをへずなく","#[左注]","#[校異]果 -> 杲 [類][矢]","#[事項],春雑歌,動物,恋情","#[訓異]
あさゐでに,[寛]あさゐてに,
きなくかほどり,[寛]きなくかほとり,
なれだにも,[寛]なれたにも,
きみにこふれや[寛],
ときをへずなく,[寛]ときをへすなく,
" "#[番号]10/1824","#[題詞](詠鳥)","#[原文]冬隠 春去来之 足比木乃 山二文野二文 鴬鳴裳","#[訓読]冬こもり春さり来ればあしひきの山にも野にも鴬鳴くも","#[仮名],ふゆこもり,はるさりくれば,あしひきの,やまにものにも,うぐひすなくも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,枕詞,動物,季節","#[訓異]
ふゆこもり[寛],
はるさりくれば,[寛]はるさりくらし,
あしひきの[寛],
やまにものにも[寛],
うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも,
" "#[番号]10/1825","#[題詞](詠鳥)","#[原文]紫之 根延横野之 春野庭 君乎懸管 鴬名雲","#[訓読]紫草の根延ふ横野の春野には君を懸けつつ鴬鳴くも","#[仮名],むらさきの,ねばふよこのの,はるのには,きみをかけつつ,うぐひすなくも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,大阪市,地名,動物,植物,枕詞,季節","#[訓異]
むらさきの[寛],
ねばふよこのの,[寛]ねはふよこのの,
はるのには[寛],
きみをかけつつ[寛],
うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも,
" "#[番号]10/1826","#[題詞](詠鳥)","#[原文]春之<在>者 妻乎求等 鴬之 木末乎傳 鳴乍本名","#[訓読]春されば妻を求むと鴬の木末を伝ひ鳴きつつもとな","#[仮名],はるされば,つまをもとむと,うぐひすの,こぬれをつたひ,なきつつもとな","#[左注]","#[校異]去 -> 在 [元][類][紀]","#[事項],春雑歌,季節,動物","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
つまをもとむと[寛],
うぐひすの,[寛]うくひすの,
こぬれをつたひ,[寛]こすゑをつたひ,
なきつつもとな[寛],
" "#[番号]10/1827","#[題詞](詠鳥)","#[原文]春日有 羽買之山従 <狭>帆之内敝 鳴徃成者 孰喚子鳥","#[訓読]春日なる羽がひの山ゆ佐保の内へ鳴き行くなるは誰れ呼子鳥","#[仮名],かすがなる,はがひのやまゆ,さほのうちへ,なきゆくなるは,たれよぶこどり","#[左注]","#[校異]猿 -> 狭 [元][類]","#[事項],春雑歌,奈良,春日,地名,動物,恋情","#[訓異]
かすがなる,[寛]かすかなる,
はがひのやまゆ,[寛]はかひのやまゆ,
さほのうちへ[寛],
なきゆくなるは[寛],
たれよぶこどり,[寛]たれよふことり,
" "#[番号]10/1828","#[題詞](詠鳥)","#[原文]不答尓 勿喚動曽 喚子鳥 佐保乃山邊乎 上下二","#[訓読]答へぬにな呼び響めそ呼子鳥佐保の山辺を上り下りに","#[仮名],こたへぬに,なよびとよめそ,よぶこどり,さほのやまへを,のぼりくだりに","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,佐保,奈良,地名,動物","#[訓異]
こたへぬに[寛],
なよびとよめそ,[寛]なよひとよみそ,
よぶこどり,[寛]よふことり,
さほのやまへを[寛],
のぼりくだりに,[寛]のほりくたりに,
" "#[番号]10/1829","#[題詞](詠鳥)","#[原文]梓弓 春山近 家居之 續而聞良牟 鴬之音","#[訓読]梓弓春山近く家居れば継ぎて聞くらむ鴬の声","#[仮名],あづさゆみ,はるやまちかく,いへをれば,つぎてきくらむ,うぐひすのこゑ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,枕詞,動物,季節","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
はるやまちかく[寛],
いへをれば,[寛]いへゐして,
つぎてきくらむ,[寛]つきてきくらむ,
うぐひすのこゑ,[寛]うくひすのこえ,
" "#[番号]10/1830","#[題詞](詠鳥)","#[原文]打靡 春去来者 小竹之末丹 尾羽打觸而 鴬鳴毛","#[訓読]うち靡く春さり来れば小竹の末に尾羽打ち触れて鴬鳴くも","#[仮名],うちなびく,はるさりくれば,しののうれに,をはうちふれて,うぐひすなくも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,動物,季節","#[訓異]
うちなびく,[寛]うちなひき,
はるさりくれば,[寛]はるさりくれは,
しののうれに,[寛]しののめに,
をはうちふれて[寛],
うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも,
" "#[番号]10/1831","#[題詞](詠鳥)","#[原文]朝霧尓 之<努>々尓所沾而 喚子鳥 三船山従 喧渡所見","#[訓読]朝霧にしののに濡れて呼子鳥三船の山ゆ鳴き渡る見ゆ","#[仮名],あさぎりに,しののにぬれて,よぶこどり,みふねのやまゆ,なきわたるみゆ","#[左注]","#[校異]怒 -> 努 [元][類]","#[事項],春雑歌,吉野,地名,動物,季節,叙景","#[訓異]
あさぎりに,[寛]あさきりに,
しののにぬれて,[寛]しぬぬにぬれて,
よぶこどり,[寛]よふことり,
みふねのやまゆ,[寛]みふねのやまに,
なきわたるみゆ[寛],
" "#[番号]10/1832","#[題詞]<詠雪>","#[原文]打靡 春去来者 然為蟹 天雲霧相 雪者零管","#[訓読]うち靡く春さり来ればしかすがに天雲霧らひ雪は降りつつ","#[仮名],うちなびく,はるさりくれば,しかすがに,あまくもきらひ,ゆきはふりつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,季節","#[訓異]
うちなびく,[寛]うちなひき,
はるさりくれば,[寛]はるさりくれは,
しかすがに,[寛]しかすかに,
あまくもきらひ,[寛]あまくもきりあひ,
ゆきはふりつつ[寛],
" "#[番号]10/1833","#[題詞](詠雪)","#[原文]梅花 零覆雪乎 L持 君令見跡 取者消管","#[訓読]梅の花降り覆ふ雪を包み持ち君に見せむと取れば消につつ","#[仮名],うめのはな,ふりおほふゆきを,つつみもち,きみにみせむと,とればけにつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,季節","#[訓異]
うめのはな[寛],
ふりおほふゆきを,[寛]ふりををふゆきを,
つつみもち,[寛]つつみもて,
きみにみせむと[寛],
とればけにつつ,[寛]とれはきへつつ,
" "#[番号]10/1834","#[題詞](詠雪)","#[原文]梅花 咲落過奴 然為蟹 白雪庭尓 零重管","#[訓読]梅の花咲き散り過ぎぬしかすがに白雪庭に降りしきりつつ","#[仮名],うめのはな,さきちりすぎぬ,しかすがに,しらゆきにはに,ふりしきりつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,季節","#[訓異]
うめのはな[寛],
さきちりすぎぬ,[寛]さきちりすきぬ,
しかすがに,[寛]しかすかに,
しらゆきにはに[寛],
ふりしきりつつ,[寛]ふりかさねつつ,
" "#[番号]10/1835","#[題詞](詠雪)","#[原文]今更 雪零目八方 蜻火之 燎留春部常 成西物乎","#[訓読]今さらに雪降らめやもかぎろひの燃ゆる春へとなりにしものを","#[仮名],いまさらに,ゆきふらめやも,かぎろひの,もゆるはるへと,なりにしものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,季節","#[訓異]
いまさらに[寛],
ゆきふらめやも[寛],
かぎろひの,[寛]かけろふの,
もゆるはるへと,[寛]もゆるはるひと,
なりにしものを[寛],
" "#[番号]10/1836","#[題詞](詠雪)","#[原文]風交 雪者零乍 然為蟹 霞田菜引 春去尓来","#[訓読]風交り雪は降りつつしかすがに霞たなびき春さりにけり","#[仮名],かぜまじり,ゆきはふりつつ,しかすがに,かすみたなびき,はるさりにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,季節","#[訓異]
かぜまじり,[寛]かせましり,
ゆきはふりつつ[寛],
しかすがに,[寛]しかすかに,
かすみたなびき,[寛]かすみたなひき,
はるさりにけり[寛],
" "#[番号]10/1837","#[題詞](詠雪)","#[原文]山際尓 鴬喧而 打靡 春跡雖念 雪落布沼","#[訓読]山の際に鴬鳴きてうち靡く春と思へど雪降りしきぬ","#[仮名],やまのまに,うぐひすなきて,うちなびく,はるとおもへど,ゆきふりしきぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,動物,季節","#[訓異]
やまのまに,[寛]やまのはに,
うぐひすなきて,[寛]うくひすなきて,
うちなびく,[寛]うちなひき,
はるとおもへど,[寛]はるとおもへと,
ゆきふりしきぬ[寛],
" "#[番号]10/1838","#[題詞](詠雪)","#[原文]峯上尓 零置雪師 風之共 此聞散良思 春者雖有","#[訓読]峰の上に降り置ける雪し風の共ここに散るらし春にはあれども","#[仮名],をのうへに,ふりおけるゆきし,かぜのむた,ここにちるらし,はるにはあれども","#[左注]右一首筑波山作","#[校異]","#[事項],春雑歌,茨城県,地名,季節","#[訓異]
をのうへに,[寛]みねのうへに,
ふりおけるゆきし[寛],
かぜのむた,[寛]かせのむた,
ここにちるらし[寛],
はるにはあれども,[寛]はるにはあれとも,
" "#[番号]10/1839","#[題詞](詠雪)","#[原文]為君 山田之澤 恵具採跡 雪消之水尓 裳裾所沾","#[訓読]君がため山田の沢にゑぐ摘むと雪消の水に裳の裾濡れぬ","#[仮名],きみがため,やまたのさはに,ゑぐつむと,ゆきげのみづに,ものすそぬれぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,地名,植物,恋情","#[訓異]
きみがため,[寛]きみかため,
やまたのさはに[寛],
ゑぐつむと,[寛]ゑくつむと,
ゆきげのみづに,[寛]ゆきけのみつに,
ものすそぬれぬ[寛],
" "#[番号]10/1840","#[題詞](詠雪)","#[原文]梅枝尓 鳴而移<徙> 鴬之 翼白妙尓 沫雪曽落","#[訓読]梅が枝に鳴きて移ろふ鴬の羽白妙に沫雪ぞ降る","#[仮名],うめがえに,なきてうつろふ,うぐひすの,はねしろたへに,あわゆきぞふる","#[左注]","#[校異]徒 -> 徙 [西(訂正)][温][矢][京]","#[事項],春雑歌,植物,動物,季節","#[訓異]
うめがえに,[寛]うめかえに,
なきてうつろふ[寛],
うぐひすの,[寛]うくひすの,
はねしろたへに[寛],
あわゆきぞふる,[寛]あはゆきそふる,
" "#[番号]10/1841","#[題詞](詠雪)","#[原文]山高三 零来雪乎 梅花 <落>鴨来跡 念鶴鴨 [一云 梅花 開香裳落跡] ","#[訓読]山高み降り来る雪を梅の花散りかも来ると思ひつるかも [一云 梅の花咲きかも散ると] ","#[仮名],やまたかみ,ふりくるゆきを,うめのはな,ちりかもくると,おもひつるかも,[うめのはな,さきかもちると]","#[左注](右二首問答)","#[校異]<> -> 落 [西(右書)][元][類][紀]","#[事項],春雑歌,問答,植物,季節","#[訓異]
やまたかみ[寛],
ふりくるゆきを[寛],
うめのはな,[寛]むめのはな,
ちりかもくると[寛],
おもひつるかも[寛],
[うめのはな[寛],
さきかもちると][寛],
" "#[番号]10/1842","#[題詞](詠雪)","#[原文]除雪而 梅莫戀 足曳之 山片就而 家居為流君","#[訓読]雪をおきて梅をな恋ひそあしひきの山片付きて家居せる君","#[仮名],ゆきをおきて,うめをなこひそ,あしひきの,やまかたづきて,いへゐせるきみ","#[左注]右二首問答","#[校異]","#[事項],春雑歌,問答,植物","#[訓異]
ゆきをおきて[寛],
うめをなこひそ[寛],
あしひきの[寛],
やまかたづきて,[寛]やまかたつきて,
いへゐせるきみ[寛],
" "#[番号]10/1843","#[題詞]詠霞","#[原文]昨日社 年者極之賀 春霞 春日山尓 速立尓来","#[訓読]昨日こそ年は果てしか春霞春日の山に早立ちにけり","#[仮名],きのふこそ,としははてしか,はるかすみ,かすがのやまに,はやたちにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,奈良,地名,季節","#[訓異]
きのふこそ[寛],
としははてしか,[寛]としはくれしか,
はるかすみ[寛],
かすがのやまに,[寛]かすかのやまに,
はやたちにけり[寛],
" "#[番号]10/1844","#[題詞](詠霞)","#[原文]寒過 暖来良思 朝烏指 滓鹿能山尓 霞軽引","#[訓読]冬過ぎて春来るらし朝日さす春日の山に霞たなびく","#[仮名],ふゆすぎて,はるきたるらし,あさひさす,かすがのやまに,かすみたなびく","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,奈良,地名,季節","#[訓異]
ふゆすぎて,[寛]ふゆすきて,
はるきたるらし,[寛]はるはきぬらし,
あさひさす[寛],
かすがのやまに,[寛]かすかのやまに,
かすみたなびく,[寛]かすみたなひく,
" "#[番号]10/1845","#[題詞](詠霞)","#[原文]鴬之 春成良思 春日山 霞棚引 夜目見侶","#[訓読]鴬の春になるらし春日山霞たなびく夜目に見れども","#[仮名],うぐひすの,はるになるらし,かすがやま,かすみたなびく,よめにみれども","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,奈良,地名,動物,季節","#[訓異]
うぐひすの,[寛]うくひすの,
はるになるらし[寛],
かすがやま,[寛]かすかやま,
かすみたなびく,[寛]かすみたなひく,
よめにみれども,[寛]よめにみれとも,
" "#[番号]10/1846","#[題詞]詠柳","#[原文]霜干 冬柳者 見人之 蘰可為 目生来鴨","#[訓読]霜枯れの冬の柳は見る人のかづらにすべく萌えにけるかも","#[仮名],しもがれの,ふゆのやなぎは,みるひとの,かづらにすべく,もえにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,季節","#[訓異]
しもがれの,[寛]しもかれの,
ふゆのやなぎは,[寛]ふゆのやなきは,
みるひとの[寛],
かづらにすべく,[寛]かつらにすへく,
もえにけるかも[寛],
" "#[番号]10/1847","#[題詞](詠柳)","#[原文]淺緑 染懸有跡 見左右二 春楊者 目生来鴨","#[訓読]浅緑染め懸けたりと見るまでに春の柳は萌えにけるかも","#[仮名],あさみどり,そめかけたりと,みるまでに,はるのやなぎは,もえにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,季節,叙景","#[訓異]
あさみどり,[寛]あさみとり,
そめかけたりと[寛],
みるまでに,[寛]みるまてに,
はるのやなぎは,[寛]はるのやなきは,
もえにけるかも[寛],
" "#[番号]10/1848","#[題詞](詠柳)","#[原文]山際尓 雪者零管 然為我二 此河楊波 毛延尓家留可聞","#[訓読]山の際に雪は降りつつしかすがにこの川楊は萌えにけるかも","#[仮名],やまのまに,ゆきはふりつつ,しかすがに,このかはやぎは,もえにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,季節,叙景","#[訓異]
やまのまに,[寛]やまのはに,
ゆきはふりつつ[寛],
しかすがに,[寛]しかすかに,
このかはやぎは,[寛]このかはやなきは,
もえにけるかも[寛],
" "#[番号]10/1849","#[題詞](詠柳)","#[原文]山際之 雪<者>不消有乎 水飯合 川之副者 目生来鴨","#[訓読]山の際の雪は消ずあるをみなぎらふ川の沿ひには萌えにけるかも","#[仮名],やまのまの,ゆきはけずあるを,みなぎらふ,かはのそひには,もえにけるかも","#[左注]","#[校異]<> -> 者 [元][類][紀]","#[事項],春雑歌,季節","#[訓異]
やまのまの,[寛]やまのはの,
ゆきはけずあるを,[寛]ゆきはきえぬを,
みなぎらふ,[寛]なかれあふ,
かはのそひには,[寛]かはのそへれは,
もえにけるかも[寛],
" "#[番号]10/1850","#[題詞](詠柳)","#[原文]朝旦 吾見柳 鴬之 来居而應鳴 森尓早奈礼","#[訓読]朝な朝な我が見る柳鴬の来居て鳴くべく森に早なれ","#[仮名],あさなさな,わがみるやなぎ,うぐひすの,きゐてなくべく,もりにはやなれ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,動物,季節,植物","#[訓異]
あさなさな[寛],
わがみるやなぎ,[寛]わかみるやなき,
うぐひすの,[寛]うくひすの,
きゐてなくべく,[寛]きゐてなくへき,
もりにはやなれ[寛],
" "#[番号]10/1851","#[題詞](詠柳)","#[原文]青柳之 絲乃細紗 春風尓 不乱伊間尓 令視子裳欲得","#[訓読]青柳の糸のくはしさ春風に乱れぬい間に見せむ子もがも","#[仮名],あをやぎの,いとのくはしさ,はるかぜに,みだれぬいまに,みせむこもがも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,恋情","#[訓異]
あをやぎの,[寛]あをやきの,
いとのくはしさ,[寛]いとのほそさを,
はるかぜに,[寛]はるかせに,
みだれぬいまに,[寛]みたれすいまに,
みせむこもがも,[寛]みせむこもかな,
" "#[番号]10/1852","#[題詞](詠柳)","#[原文]百礒城 大宮人之 蘰有 垂柳者 雖見不飽鴨","#[訓読]ももしきの大宮人のかづらけるしだり柳は見れど飽かぬかも","#[仮名],ももしきの,おほみやひとの,かづらける,しだりやなぎは,みれどあかぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,枕詞,季節","#[訓異]
ももしきの[寛],
おほみやひとの[寛],
かづらける,[寛]かつらける,
しだりやなぎは,[寛]したりやなきは,
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]10/1853","#[題詞](詠柳)","#[原文]梅花 取持見者 吾屋前之 柳乃眉師 所念可聞","#[訓読]梅の花取り持ち見れば我が宿の柳の眉し思ほゆるかも","#[仮名],うめのはな,とりもちみれば,わがやどの,やなぎのまよし,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]持 [元][類][紀] 持而","#[事項],春雑歌,植物,恋情","#[訓異]
うめのはな[寛],
とりもちみれば,[寛]とりもちみれは,
わがやどの,[寛]わかやとの,
やなぎのまよし,[寛]やなきのまゆし,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]10/1854","#[題詞]詠花","#[原文]鴬之 木傳梅乃 移者 櫻花之 時片設奴","#[訓読]鴬の木伝ふ梅のうつろへば桜の花の時かたまけぬ","#[仮名],うぐひすの,こづたふうめの,うつろへば,さくらのはなの,ときかたまけぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,動物,植物,季節","#[訓異]
うぐひすの,[寛]うくひすの,
こづたふうめの,[寛]こつたふうめの,
うつろへば,[寛]うつろへは,
さくらのはなの[寛],
ときかたまけぬ[寛],
" "#[番号]10/1855","#[題詞](詠花)","#[原文]櫻花 時者雖不過 見人之 戀盛常 今之将落","#[訓読]桜花時は過ぎねど見る人の恋ふる盛りと今し散るらむ","#[仮名],さくらばな,ときはすぎねど,みるひとの,こふるさかりと,いましちるらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,季節","#[訓異]
さくらばな,[寛]さくらはな,
ときはすぎねど,[寛]ときはすきねと,
みるひとの[寛],
こふるさかりと,[寛]こひのさかりと,
いましちるらむ[寛],
" "#[番号]10/1856","#[題詞](詠花)","#[原文]我刺 柳絲乎 吹乱 風尓加妹之 梅乃散覧","#[訓読]我がかざす柳の糸を吹き乱る風にか妹が梅の散るらむ","#[仮名],わがかざす,やなぎのいとを,ふきみだる,かぜにかいもが,うめのちるらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,季節","#[訓異]
わがかざす,[寛]わかかさす,
やなぎのいとを,[寛]やなきのいとを,
ふきみだる,[寛]ふきみたる,
かぜにかいもが,[寛]かせにかいもか,
うめのちるらむ[寛],
" "#[番号]10/1857","#[題詞](詠花)","#[原文]毎年 梅者開友 空蝉之 <世>人<我>羊蹄 春無有来","#[訓読]年のはに梅は咲けどもうつせみの世の人我れし春なかりけり","#[仮名],としのはに,うめはさけども,うつせみの,よのひとわれし,はるなかりけり","#[左注]","#[校異]<> -> 世 [西(右書)][元][類][紀],君 -> 我 [代精]","#[事項],春雑歌,植物,枕詞","#[訓異]
としのはに[寛],
うめはさけども,[寛]うめはさけとも,
うつせみの[寛],
よのひとわれし,[寛]よのひときみし,
はるなかりけり[寛],
" "#[番号]10/1858","#[題詞](詠花)","#[原文]打細尓 鳥者雖<不>喫 縄延 守巻欲寸 梅花鴨","#[訓読]うつたへに鳥は食まねど縄延へて守らまく欲しき梅の花かも","#[仮名],うつたへに,とりははまねど,なははへて,もらまくほしき,うめのはなかも","#[左注]","#[校異]子 -> 不 [元][類][紀]","#[事項],春雑歌,動物,植物,比喩,恋情","#[訓異]
うつたへに[寛],
とりははまねど,[寛]とりははまねと,
なははへて,[寛]しめはへて,
もらまくほしき[寛],
うめのはなかも[寛],
" "#[番号]10/1859","#[題詞](詠花)","#[原文]馬並而 高山<部>乎 白妙丹 令艶色有者 梅花鴨","#[訓読]馬並めて多賀の山辺を白栲ににほはしたるは梅の花かも","#[仮名],うまなめて,たかのやまへを,しろたへに,にほはしたるは,うめのはなかも","#[左注]","#[校異]<> -> 部 [矢][京]","#[事項],春雑歌,京都府,地名,枕詞,植物,叙景","#[訓異]
うまなめて[寛],
たかのやまへを,[寛]たかきやまへを,
しろたへに[寛],
にほはしたるは[寛],
うめのはなかも[寛],
" "#[番号]10/1860","#[題詞](詠花)","#[原文]花咲而 實者不成登裳 長氣 所念鴨 山振之花","#[訓読]花咲きて実はならねども長き日に思ほゆるかも山吹の花","#[仮名],はなさきて,みはならねども,ながきけに,おもほゆるかも,やまぶきのはな","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,比喩","#[訓異]
はなさきて[寛],
みはならねども,[寛]みはからねとも,
ながきけに,[寛]なかきけに,
おもほゆるかも[寛],
やまぶきのはな,[寛]やまふきのはな,
" "#[番号]10/1861","#[題詞](詠花)","#[原文]能登河之 水底并尓 光及尓 三笠乃山者 咲来鴨","#[訓読]能登川の水底さへに照るまでに御笠の山は咲きにけるかも","#[仮名],のとがはの,みなそこさへに,てるまでに,みかさのやまは,さきにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,奈良,地名,叙景,季節","#[訓異]
のとがはの,[寛]のとかはの,
みなそこさへに[寛],
てるまでに,[寛]てるまてに,
みかさのやまは[寛],
さきにけるかも[寛],
" "#[番号]10/1862","#[題詞](詠花)","#[原文]見雪者 未冬有 然為蟹 春霞立 梅者散乍","#[訓読]雪見ればいまだ冬なりしかすがに春霞立ち梅は散りつつ","#[仮名],ゆきみれば,いまだふゆなり,しかすがに,はるかすみたち,うめはちりつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,季節","#[訓異]
ゆきみれば,[寛]ゆきみれは,
いまだふゆなり,[寛]いまたふゆなり,
しかすがに,[寛]しかすかに,
はるかすみたち[寛],
うめはちりつつ[寛],
" "#[番号]10/1863","#[題詞](詠花)","#[原文]去年咲之 久木今開 徒 土哉将堕 見人名四二","#[訓読]去年咲きし久木今咲くいたづらに地にか落ちむ見る人なしに","#[仮名],こぞさきし,ひさぎいまさく,いたづらに,つちにかおちむ,みるひとなしに","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,叙景","#[訓異]
こぞさきし,[寛]こそさきし,
ひさぎいまさく,[寛]ひさきいまさく,
いたづらに,[寛]いたつらに,
つちにかおちむ,[寛]つちにやおちむ,
みるひとなしに[寛],
" "#[番号]10/1864","#[題詞](詠花)","#[原文]足日木之 山間照 櫻花 是春雨尓 散去鴨","#[訓読]あしひきの山の際照らす桜花この春雨に散りゆかむかも","#[仮名],あしひきの,やまのまてらす,さくらばな,このはるさめに,ちりゆかむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,枕詞,植物,叙景","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまのまてらす[寛],
さくらばな,[寛]さくらはな,
このはるさめに[寛],
ちりゆかむかも[寛],
" "#[番号]10/1865","#[題詞](詠花)","#[原文]打靡 春避来之 山際 最木末乃 咲徃見者","#[訓読]うち靡く春さり来らし山の際の遠き木末の咲きゆく見れば","#[仮名],うちなびく,はるさりくらし,やまのまの,とほきこぬれの,さきゆくみれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,季節,叙景","#[訓異]
うちなびく,[寛]うちなひき,
はるさりくらし[寛],
やまのまの,[寛]やまのはの,
とほきこぬれの,[寛]ひさきのすゑの,
さきゆくみれば,[寛]さきゆくみれは,
" "#[番号]10/1866","#[題詞](詠花)","#[原文]春雉鳴 高圓邊丹 櫻花 散流歴 見人毛我<母>","#[訓読]雉鳴く高円の辺に桜花散りて流らふ見む人もがも","#[仮名],きぎしなく,たかまとのへに,さくらばな,ちりてながらふ,みむひともがも","#[左注]","#[校異]裳 -> 母 [類][紀]","#[事項],春雑歌,奈良,地名,動物,植物,哀惜","#[訓異]
きぎしなく,[寛]ききすなく,
たかまとのへに[寛],
さくらばな,[寛]さくらはな,
ちりてながらふ,[寛]ちりなからふる,
みむひともがも,[寛]みるひともかも,
" "#[番号]10/1867","#[題詞](詠花)","#[原文]阿保山之 佐宿木花者 今日毛鴨 散乱 見人無二","#[訓読]阿保山の桜の花は今日もかも散り乱ふらむ見る人なしに","#[仮名],あほやまの,さくらのはなは,けふもかも,ちりまがふらむ,みるひとなしに","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,地名,植物,哀惜","#[訓異]
あほやまの[寛],
さくらのはなは,[寛]さねきのはなは,
けふもかも[寛],
ちりまがふらむ,[寛]ちりまかふらむ,
みるひとなしに[寛],
" "#[番号]10/1868","#[題詞](詠花)","#[原文]川津鳴 吉野河之 瀧上乃 馬酔之花會 置末勿動","#[訓読]かはづ鳴く吉野の川の滝の上の馬酔木の花ぞはしに置くなゆめ","#[仮名],かはづなく,よしののかはの,たきのうへの,あしびのはなぞ,はしにおくなゆめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,吉野,地名,植物,動物","#[訓異]
かはづなく,[寛]かはつなく,
よしののかはの[寛],
たきのうへの[寛],
あしびのはなぞ,[寛]あしひのはなそ,
はしにおくなゆめ,[寛]をくにまもなき,
" "#[番号]10/1869","#[題詞](詠花)","#[原文]春雨尓 相争不勝而 吾屋前之 櫻花者 開始尓家里","#[訓読]春雨に争ひかねて我が宿の桜の花は咲きそめにけり","#[仮名],はるさめに,あらそひかねて,わがやどの,さくらのはなは,さきそめにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,植物,季節","#[訓異]
はるさめに[寛],
あらそひかねて[寛],
わがやどの,[寛]わかやとの,
さくらのはなは[寛],
さきそめにけり[寛],
" "#[番号]10/1870","#[題詞](詠花)","#[原文]春雨者 甚勿零 櫻花 未見尓 散巻惜裳","#[訓読]春雨はいたくな降りそ桜花いまだ見なくに散らまく惜しも","#[仮名],はるさめは,いたくなふりそ,さくらばな,いまだみなくに,ちらまくをしも","#[左注]","#[校異]春 [類] 春乃","#[事項],春雑歌,植物,哀惜","#[訓異]
はるさめは,[寛]はるあめは,
いたくなふりそ[寛],
さくらばな,[寛]さくらはな,
いまだみなくに,[寛]いまたみなくに,
ちらまくをしも[寛],
" "#[番号]10/1871","#[題詞](詠花)","#[原文]春去者 散巻惜 梅花 片時者不咲 含而毛欲得","#[訓読]春されば散らまく惜しき梅の花しましは咲かずふふみてもがも","#[仮名],はるされば,ちらまくをしき,うめのはな,しましはさかず,ふふみてもがも","#[左注]","#[校異]梅 [矢][京] 桜","#[事項],春雑歌,植物,哀惜","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
ちらまくをしき[寛],
うめのはな,[寛]さくらはな,
しましはさかず,[寛]しはしはさかて,
ふふみてもがも,[寛]つほみてもかな,
" "#[番号]10/1872","#[題詞](詠花)","#[原文]見渡者 春日之野邊尓 霞立 開艶者 櫻花鴨","#[訓読]見わたせば春日の野辺に霞立ち咲きにほへるは桜花かも","#[仮名],みわたせば,かすがののへに,かすみたち,さきにほへるは,さくらばなかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,奈良,地名,植物,季節,叙景","#[訓異]
みわたせば,[寛]みわたせは,
かすがののへに,[寛]かすかののへに,
かすみたち[寛],
さきにほへるは[寛],
さくらばなかも,[寛]さくらはなかも,
" "#[番号]10/1873","#[題詞](詠花)","#[原文]何時鴨 此夜乃将明 鴬之 木傳落 <梅>花将見","#[訓読]いつしかもこの夜の明けむ鴬の木伝ひ散らす梅の花見む","#[仮名],いつしかも,このよのあけむ,うぐひすの,こづたひちらす,うめのはなみむ","#[左注]","#[校異]<> -> 梅 [西(右書)][類][紀][矢]","#[事項],春雑歌,動物,植物","#[訓異]
いつしかも[寛],
このよのあけむ[寛],
うぐひすの,[寛]うくひすの,
こづたひちらす,[寛]こつたひちらす,
うめのはなみむ[寛],
" "#[番号]10/1874","#[題詞]詠月","#[原文]春霞 田菜引今日之 暮三伏一向夜 不穢照良武 高松之野尓","#[訓読]春霞たなびく今日の夕月夜清く照るらむ高松の野に","#[仮名],はるかすみ,たなびくけふの,ゆふづくよ,きよくてるらむ,たかまつののに","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,奈良,高円,地名,叙景","#[訓異]
はるかすみ[寛],
たなびくけふの,[寛]たなひくけふの,
ゆふづくよ,[寛]ゆふつくよ,
きよくてるらむ[寛],
たかまつののに,[寛]たかまとののに,
" "#[番号]10/1875","#[題詞](詠月)","#[原文]春去者 紀之許能暮之 夕月夜 欝束無裳 山陰尓指天 [一云 春去者 木陰多 暮月夜] ","#[訓読]春されば木の木の暗の夕月夜おほつかなしも山蔭にして [一云 春されば木の暗多み夕月夜] ","#[仮名],はるされば,きのこのくれの,ゆふづくよ,おほつかなしも,やまかげにして,[はるされば,このくれおほみ,ゆふづくよ]","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,異伝","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
きのこのくれの[寛],
ゆふづくよ,[寛]ゆふつくよ,
おほつかなしも[寛],
やまかげにして,[寛]やまかけにして,
[はるされば,[寛]はるされは,
このくれおほみ,[寛]こかくれおほき,
ゆふづくよ],[寛]ゆふつくよ,
" "#[番号]10/1876","#[題詞](詠月)","#[原文]朝霞 春日之晩者 従木間 移歴月乎 何時可将待","#[訓読]朝霞春日の暮は木の間より移ろふ月をいつとか待たむ","#[仮名],あさかすみ,はるひのくれは,このまより,うつろふつきを,いつとかまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌","#[訓異]
あさかすみ[寛],
はるひのくれは[寛],
このまより[寛],
うつろふつきを[寛],
いつとかまたむ,[寛]いつしかまたむ,
" "#[番号]10/1877","#[題詞]詠雨","#[原文]春之雨尓 有来物乎 立隠 妹之家道尓 此日晩都","#[訓読]春の雨にありけるものを立ち隠り妹が家道にこの日暮らしつ","#[仮名],はるのあめに,ありけるものを,たちかくり,いもがいへぢに,このひくらしつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,恋情","#[訓異]
はるのあめに[寛],
ありけるものを[寛],
たちかくり,[寛]たちかくれ,
いもがいへぢに,[寛]いもかいへちに,
このひくらしつ[寛],
" "#[番号]10/1878","#[題詞]詠河","#[原文]今徃而 聞物尓毛我 明日香川 春雨零而 瀧津湍音乎","#[訓読]今行きて聞くものにもが明日香川春雨降りてたぎつ瀬の音を","#[仮名],いまゆきて,きくものにもが,あすかがは,はるさめふりて,たぎつせのおとを","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,飛鳥,地名,望郷","#[訓異]
いまゆきて[寛],
きくものにもが,[寛]きくものにもか,
あすかがは,[寛]あすかかは,
はるさめふりて[寛],
たぎつせのおとを,[寛]たきつせのおとを,
" "#[番号]10/1879","#[題詞]詠煙","#[原文]春日野尓 煙立所見 D嬬等四 春野之菟芽子 採而煮良思文","#[訓読]春日野に煙立つ見ゆ娘子らし春野のうはぎ摘みて煮らしも","#[仮名],かすがのに,けぶりたつみゆ,をとめらし,はるののうはぎ,つみてにらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,奈良,地名,植物,野遊び","#[訓異]
かすがのに,[寛]かすかのに,
けぶりたつみゆ,[寛]けふりたつみゆ,
をとめらし[寛],
はるののうはぎ,[寛]はるののをはき,
つみてにらしも[寛],
" "#[番号]10/1880","#[題詞]野遊","#[原文]春日野之 淺茅之上尓 念共 遊今日 忘目八方","#[訓読]春日野の浅茅が上に思ふどち遊ぶ今日の日忘らえめやも","#[仮名],かすがのの,あさぢがうへに,おもふどち,あそぶけふのひ,わすらえめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,奈良,地名,野遊び,宴席","#[訓異]
かすがのの,[寛]かすかのの,
あさぢがうへに,[寛]あさちかうへに,
おもふどち,[寛]おもふとち,
あそぶけふのひ,[寛]あそふけふをは,
わすらえめやも,[寛]わすられめやも,
" "#[番号]10/1881","#[題詞](野遊)","#[原文]春霞 立春日野乎 徃還 吾者相見 弥年之黄土","#[訓読]春霞立つ春日野を行き返り我れは相見むいや年のはに","#[仮名],はるかすみ,たつかすがのを,ゆきかへり,われはあひみむ,いやとしのはに","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,奈良,地名,宴席,野遊び","#[訓異]
はるかすみ[寛],
たつかすがのを,[寛]たつかすかのを,
ゆきかへり[寛],
われはあひみむ[寛],
いやとしのはに[寛],
" "#[番号]10/1882","#[題詞](野遊)","#[原文]春野尓 意将述跡 <念>共 来之今日者 不晩毛荒粳","#[訓読]春の野に心延べむと思ふどち来し今日の日は暮れずもあらぬか","#[仮名],はるののに,こころのべむと,おもふどち,こしけふのひは,くれずもあらぬか","#[左注]","#[校異]命 -> 念 [西(訂正)][類][古][紀]","#[事項],春雑歌,野遊び","#[訓異]
はるののに[寛],
こころのべむと,[寛]こころやらむと,
おもふどち,[寛]おもふとち,
こしけふのひは,[寛]きたりしけふは,
くれずもあらぬか,[寛]くれすもあらぬか,
" "#[番号]10/1883","#[題詞](野遊)","#[原文]百礒城之 大宮人者 暇有也 梅乎挿頭而 此間集有","#[訓読]ももしきの大宮人は暇あれや梅をかざしてここに集へる","#[仮名],ももしきの,おほみやひとは,いとまあれや,うめをかざして,ここにつどへる","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,野遊び,枕詞,植物","#[訓異]
ももしきの[寛],
おほみやひとは[寛],
いとまあれや[寛],
うめをかざして,[寛]うめをかさして,
ここにつどへる,[寛]ここにつとへり,
" "#[番号]10/1884","#[題詞]歎舊","#[原文]寒過 暖来者 年月者 雖新有 人者舊去","#[訓読]冬過ぎて春し来れば年月は新たなれども人は古りゆく","#[仮名],ふゆすぎて,はるしきたれば,としつきは,あらたなれども,ひとはふりゆく","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,移ろい,問答","#[訓異]
ふゆすぎて,[寛]ふゆすきて,
はるしきたれば,[寛]はるしきぬれは,
としつきは[寛],
あらたなれども,[寛]あらたまれとも,
ひとはふりゆく[寛],
" "#[番号]10/1885","#[題詞](歎舊)","#[原文]物皆者 新吉 唯 人者舊之 應宜","#[訓読]物皆は新たしきよしただしくも人は古りにしよろしかるべし","#[仮名],ものみなは,あらたしきよし,ただしくも,ひとはふりにし,よろしかるべし","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,移ろい,問答","#[訓異]
ものみなは[寛],
あらたしきよし,[寛]あたらしきよし,
ただしくも,[寛]ただひとは,
ひとはふりにし,[寛]ふりぬるのみそ,
よろしかるべし,[寛]よろしかるへき,
" "#[番号]10/1886","#[題詞]懽逢","#[原文]佐吉之 里<行>之鹿歯 春花乃 益希見 君相有香開","#[訓読]住吉の里行きしかば春花のいやめづらしき君に逢へるかも","#[仮名],すみのえの,さとゆきしかば,はるはなの,いやめづらしき,きみにあへるかも","#[左注]","#[校異]得 -> 行 [万葉考]","#[事項],春雑歌,大阪,地名,枕詞,恋愛","#[訓異]
すみのえの[寛],
さとゆきしかば,[寛]さとをえしかは,
はるはなの[寛],
いやめづらしき,[寛]ましめつらしみ,
きみにあへるかも[寛],
" "#[番号]10/1887","#[題詞]旋頭歌","#[原文]春日在 三笠乃山尓 月母出奴可母 佐紀山尓 開有櫻之 花乃可見","#[訓読]春日なる御笠の山に月も出でぬかも佐紀山に咲ける桜の花の見ゆべく","#[仮名],かすがなる,みかさのやまに,つきもいでぬかも,さきやまに,さけるさくらの,はなのみゆべく","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],春雑歌,奈良,地名,植物,旋頭歌","#[訓異]
かすがなる,[寛]かすかなる,
みかさのやまに[寛],
つきもいでぬかも,[寛]つきもいてぬかも,
さきやまに[寛],
さけるさくらの[寛],
はなのみゆべく,[寛]はなのみるへく,
" "#[番号]10/1888","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]白雪之 常敷冬者 過去家良霜 春霞 田菜引野邊之 鴬鳴焉","#[訓読]白雪の常敷く冬は過ぎにけらしも春霞たなびく野辺の鴬鳴くも","#[仮名],しらゆきの,つねしくふゆは,すぎにけらしも,はるかすみ,たなびくのへの,うぐひすなくも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春雑歌,動物,季節,旋頭歌","#[訓異]
しらゆきの[寛],
つねしくふゆは,[寛]とこしくふゆは,
すぎにけらしも,[寛]すきにけらしも,
はるかすみ[寛],
たなびくのへの,[寛]たなひくのへの,
うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも,
" "#[番号]10/1889","#[題詞]譬喩歌","#[原文]吾屋前之 毛桃之下尓 月夜指 下心吉 菟楯項者","#[訓読]我が宿の毛桃の下に月夜さし下心よしうたてこのころ","#[仮名],わがやどの,けもものしたに,つくよさし,したこころよし,うたてこのころ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],春雑歌,植物,比喩","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
けもものしたに[寛],
つくよさし,[寛]つきよさし,
したこころよし[寛],
うたてこのころ[寛],
" "#[番号]10/1890","#[題詞]春相聞","#[原文]春<山> <友>鴬 鳴別 <眷>益間 思御吾","#[訓読]春山の友鴬の泣き別れ帰ります間も思ほせ我れを","#[仮名],はるやまの,ともうぐひすの,なきわかれ,かへりますまも,おもほせわれを","#[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]日野 -> 山 [新校] / 犬 -> 友 [類] / 春春 -> 眷 [西(訂正)][細][京]","#[事項],春相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,動物,恋情,序詞","#[訓異]
はるやまの,[寛]かすかのに,
ともうぐひすの,[寛]いぬるうくひす,
なきわかれ[寛],
かへりますまも,[寛]かへりますほと,
おもほせわれを,[寛]おもひますわれ,
" "#[番号]10/1891","#[題詞]","#[原文]冬隠 春開花 手折以 千遍限 戀渡鴨","#[訓読]冬こもり春咲く花を手折り持ち千たびの限り恋ひわたるかも","#[仮名],ふゆこもり,はるさくはなを,たをりもち,ちたびのかぎり,こひわたるかも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]","#[事項],春相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情","#[訓異]
ふゆこもり[寛],
はるさくはなを[寛],
たをりもち,[寛]をりもちて,
ちたびのかぎり,[寛]ちへのかきりも,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]10/1892","#[題詞]","#[原文]春山 霧惑在 鴬 我益 物念哉","#[訓読]春山の霧に惑へる鴬も我れにまさりて物思はめやも","#[仮名],はるやまの,きりにまとへる,うぐひすも,われにまさりて,ものもはめやも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]","#[事項],春相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,動物,恋情","#[訓異]
はるやまの[寛],
きりにまとへる[寛],
うぐひすも,[寛]うくひすも,
われにまさりて[寛],
ものもはめやも,[寛]ものおもはめや,
" "#[番号]10/1893","#[題詞]","#[原文]出見 向岡 本繁 開在花 不成不止","#[訓読]出でて見る向ひの岡に本茂く咲きたる花のならずはやまじ","#[仮名],いでてみる,むかひのをかに,もとしげく,さきたるはなの,ならずはやまじ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]","#[事項],春相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,比喩,恋情","#[訓異]
いでてみる,[寛]いててみる,
むかひのをかに,[寛]むかひのをかの,
もとしげく,[寛]もとしけく,
さきたるはなの[寛],
ならずはやまじ,[寛]ならすはやまし,
" "#[番号]10/1894","#[題詞]","#[原文]霞發 春永日 戀暮 夜深去 妹相鴨","#[訓読]霞立つ春の長日を恋ひ暮らし夜も更けゆくに妹も逢はぬかも","#[仮名],かすみたつ,はるのながひを,こひくらし,よもふけゆくに,いももあはぬかも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]","#[事項],春相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
かすみたつ[寛],
はるのながひを,[寛]はるのなかひを,
こひくらし[寛],
よもふけゆくに,[寛]よのふけゆけは,
いももあはぬかも,[寛]いもにあへるかも,
" "#[番号]10/1895","#[題詞]","#[原文]春去 先三枝 幸命在 後相 莫戀吾妹","#[訓読]春さればまづさきくさの幸くあらば後にも逢はむな恋ひそ我妹","#[仮名],はるされば,まづさきくさの,さきくあらば,のちにもあはむ,なこひそわぎも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]","#[事項],春相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
まづさきくさの,[寛]まつさきくさの,
さきくあらば,[寛]さきくあらは,
のちにもあはむ,[寛]のちもあひみむな,
なこひそわぎも,[寛]なこひそわきもこ,
" "#[番号]10/1896","#[題詞]","#[原文]春去 為垂柳 十緒 妹心 乗在鴨","#[訓読]春さればしだり柳のとををにも妹は心に乗りにけるかも","#[仮名],はるされば,しだりやなぎの,とををにも,いもはこころに,のりにけるかも","#[左注]右柿本朝臣人麻呂歌集出","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],春相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
しだりやなぎの,[寛]したりやなきの,
とををにも[寛],
いもはこころに,[寛]いもかこころに,
のりにけるかも[寛],
" "#[番号]10/1897","#[題詞]寄鳥","#[原文]春之在者 伯勞鳥之草具吉 雖不所見 吾者見<将遣> 君之當<乎>婆","#[訓読]春さればもずの草ぐき見えずとも我れは見やらむ君があたりをば","#[仮名],はるされば,もずのくさぐき,みえずとも,われはみやらむ,きみがあたりをば","#[左注]","#[校異]遣将 -> 将遣 [元][矢][京] / <> -> 乎 [元][類][紀]","#[事項],春相聞,植物,恋情","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
もずのくさぐき,[寛]もすのくさくき,
みえずとも,[寛]みえすとも,
われはみやらむ[寛],
きみがあたりをば,[寛]きみかあたりは,
" "#[番号]10/1898","#[題詞](寄鳥)","#[原文]容鳥之 間無數鳴 春野之 草根乃繁 戀毛為鴨","#[訓読]貌鳥の間なくしば鳴く春の野の草根の繁き恋もするかも","#[仮名],かほどりの,まなくしばなく,はるののの,くさねのしげき,こひもするかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,動物,恋情","#[訓異]
かほどりの,[寛]かほとりの,
まなくしばなく,[寛]まなくしはなく,
はるののの[寛],
くさねのしげき,[寛]くさねのしけき,
こひもするかも[寛],
" "#[番号]10/1899","#[題詞]寄花","#[原文]春去者 宇乃花具多思 吾越之 妹我垣間者 荒来鴨","#[訓読]春されば卯の花ぐたし我が越えし妹が垣間は荒れにけるかも","#[仮名],はるされば,うのはなぐたし,わがこえし,いもがかきまは,あれにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,植物,恋情","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
うのはなぐたし,[寛]うのはなくたし,
わがこえし,[寛]わかこえし,
いもがかきまは,[寛]いもかかきまは,
あれにけるかも[寛],
" "#[番号]10/1900","#[題詞](寄花)","#[原文]梅花 咲散苑尓 吾将去 君之使乎 片待香花光","#[訓読]梅の花咲き散る園に我れ行かむ君が使を片待ちがてり","#[仮名],うめのはな,さきちるそのに,われゆかむ,きみがつかひを,かたまちがてり","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,植物,恋情","#[訓異]
うめのはな[寛],
さきちるそのに[寛],
われゆかむ[寛],
きみがつかひを,[寛]きみかつかひを,
かたまちがてり,[寛]かたまちかてら,
" "#[番号]10/1901","#[題詞](寄花)","#[原文]藤浪 咲春野尓 蔓葛 下夜之戀者 久雲在","#[訓読]藤波の咲く春の野に延ふ葛の下よし恋ひば久しくもあらむ","#[仮名],ふぢなみの,さくはるののに,はふくずの,したよしこひば,ひさしくもあらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,植物,恋情,忍び恋","#[訓異]
ふぢなみの,[寛]ふちなみの,
さくはるののに,[寛]さけるはるのに,
はふくずの,[寛]はふくすの,
したよしこひば,[寛]したよのこひは,
ひさしくもあらむ,[寛]ひさしくもあり,
" "#[番号]10/1902","#[題詞](寄花)","#[原文]春野尓 霞棚引 咲花乃 如是成二手尓 不逢君可母","#[訓読]春の野に霞たなびき咲く花のかくなるまでに逢はぬ君かも","#[仮名],はるののに,かすみたなびき,さくはなの,かくなるまでに,あはぬきみかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,植物,恋情,恨み","#[訓異]
はるののに[寛],
かすみたなびき,[寛]かすみたなひき,
さくはなの[寛],
かくなるまでに,[寛]かくなるまてに,
あはぬきみかも[寛],
" "#[番号]10/1903","#[題詞](寄花)","#[原文]吾瀬子尓 吾戀良久者 奥山之 馬酔花之 今盛有","#[訓読]我が背子に我が恋ふらくは奥山の馬酔木の花の今盛りなり","#[仮名],わがせこに,あがこふらくは,おくやまの,あしびのはなの,いまさかりなり","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,植物,恋情","#[訓異]
わがせこに,[寛]わかせこに,
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
おくやまの[寛],
あしびのはなの,[寛]つつしのはなの,
いまさかりなり[寛],
" "#[番号]10/1904","#[題詞](寄花)","#[原文]梅花 四垂柳尓 折雜 花尓供養者 君尓相可毛","#[訓読]梅の花しだり柳に折り交へ花に供へば君に逢はむかも","#[仮名],うめのはな,しだりやなぎに,をりまじへ,はなにそなへば,きみにあはむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,植物,恋情","#[訓異]
うめのはな[寛],
しだりやなぎに,[寛]したりやなきに,
をりまじへ,[寛]をりませて,
はなにそなへば,[寛]はなにそなへは,
きみにあはむかも[寛],
" "#[番号]10/1905","#[題詞](寄花)","#[原文]姫部思 咲野尓生 白管自 不知事以 所言之吾背","#[訓読]をみなへし佐紀野に生ふる白つつじ知らぬこともち言はえし我が背","#[仮名],をみなへし,さきのにおふる,しらつつじ,しらぬこともち,いはえしわがせ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,奈良,地名,植物,序詞","#[訓異]
をみなへし[寛],
さきのにおふる,[寛]さくのにおふる,
しらつつじ,[寛]しらつつし,
しらぬこともち,[寛]しらぬこともて,
いはえしわがせ,[寛]いはれしわかせ,
" "#[番号]10/1906","#[題詞](寄花)","#[原文]梅花 吾者不令落 青丹吉 平城之人 来管見之根","#[訓読]梅の花我れは散らさじあをによし奈良なる人も来つつ見るがね","#[仮名],うめのはな,われはちらさじ,あをによし,ならなるひとも,きつつみるがね","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,植物,枕詞","#[訓異]
うめのはな[寛],
われはちらさじ,[寛]われはちらさし,
あをによし[寛],
ならなるひとも,[寛]ならなるひとの,
きつつみるがね,[寛]きつつみるかね,
" "#[番号]10/1907","#[題詞](寄花)","#[原文]如是有者 何如殖兼 山振乃 止時喪哭 戀良苦念者","#[訓読]かくしあらば何か植ゑけむ山吹のやむ時もなく恋ふらく思へば","#[仮名],かくしあらば,なにかうゑけむ,やまぶきの,やむときもなく,こふらくおもへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,植物,恋情","#[訓異]
かくしあらば,[寛]かくしあらは,
なにかうゑけむ[寛],
やまぶきの,[寛]やまふきの,
やむときもなく[寛],
こふらくおもへば,[寛]こふらくおもへは,
" "#[番号]10/1908","#[題詞]寄霜","#[原文]春去者 水草之上尓 置霜乃 消乍毛我者 戀度鴨","#[訓読]春されば水草の上に置く霜の消につつも我れは恋ひわたるかも","#[仮名],はるされば,みくさのうへに,おくしもの,けにつつもあれは,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,恋情","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
みくさのうへに[寛],
おくしもの[寛],
けにつつもあれは,[寛]けつつもわれは,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]10/1909","#[題詞]寄霞","#[原文]春霞 山棚引 欝 妹乎相見 後戀毳","#[訓読]春霞山にたなびきおほほしく妹を相見て後恋ひむかも","#[仮名],はるかすみ,やまにたなびき,おほほしく,いもをあひみて,のちこひむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,恋情,季節","#[訓異]
はるかすみ[寛],
やまにたなびき,[寛]やまにたなひく,
おほほしく,[寛]おほつかな,
いもをあひみて[寛],
のちこひむかも[寛],
" "#[番号]10/1910","#[題詞](寄霞)","#[原文]春霞 立尓之日従 至今日 吾戀不止 本之繁家波 [一云 片念尓指天] ","#[訓読]春霞立ちにし日より今日までに我が恋やまず本の繁けば [一云 片思にして] ","#[仮名],はるかすみ,たちにしひより,けふまでに,あがこひやまず,もとのしげけば,[かたもひにして]","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,恋情","#[訓異]
はるかすみ[寛],
たちにしひより[寛],
けふまでに,[寛]けふまてに,
あがこひやまず,[寛]わかこひやます,
もとのしげけば,[寛]もとのしけけは,
[かたもひにして],[寛]かたおもひにして,
" "#[番号]10/1911","#[題詞](寄霞)","#[原文]左丹頬經 妹乎念登 霞立 春日毛晩尓 戀度可母","#[訓読]さ丹つらふ妹を思ふと霞立つ春日もくれに恋ひわたるかも","#[仮名],さにつらふ,いもをおもふと,かすみたつ,はるひもくれに,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]母 [元][類](塙) 毛","#[事項],春相聞,恋情,季節","#[訓異]
さにつらふ[寛],
いもをおもふと[寛],
かすみたつ[寛],
はるひもくれに[寛],
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]10/1912","#[題詞](寄霞)","#[原文]霊寸春 吾山之於尓 立霞 雖立雖座 君之随意","#[訓読]たまきはる我が山の上に立つ霞立つとも居とも君がまにまに","#[仮名],たまきはる,わがやまのうへに,たつかすみ,たつともうとも,きみがまにまに","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,枕詞,序詞,恋情","#[訓異]
たまきはる[寛],
わがやまのうへに,[寛]わかやまのうへに,
たつかすみ[寛],
たつともうとも,[寛]たちてもゐても,
きみがまにまに,[寛]きみかまにまに,
" "#[番号]10/1913","#[題詞](寄霞)","#[原文]見渡者 春日之野邊 立霞 見巻之欲 君之容儀香","#[訓読]見わたせば春日の野辺に立つ霞見まくの欲しき君が姿か","#[仮名],みわたせば,かすがののへに,たつかすみ,みまくのほしき,きみがすがたか","#[左注]","#[校異]邊 [西(右書)] 邊尓","#[事項],春相聞,奈良,地名,恋情","#[訓異]
みわたせば,[寛]みわたせは,
かすがののへに,[寛]かすかののへに,
たつかすみ[寛],
みまくのほしき[寛],
きみがすがたか,[寛]きみかすかたか,
" "#[番号]10/1914","#[題詞](寄霞)","#[原文]戀乍毛 今日者暮都 霞立 明日之春日乎 如何将晩","#[訓読]恋ひつつも今日は暮らしつ霞立つ明日の春日をいかに暮らさむ","#[仮名],こひつつも,けふはくらしつ,かすみたつ,あすのはるひを,いかにくらさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,恋情","#[訓異]
こひつつも[寛],
けふはくらしつ[寛],
かすみたつ[寛],
あすのはるひを[寛],
いかにくらさむ,[寛]いかてくらさむ,
" "#[番号]10/1915","#[題詞]寄雨","#[原文]吾背子尓 戀而為便莫 春雨之 零別不知 出而来可聞","#[訓読]我が背子に恋ひてすべなみ春雨の降るわき知らず出でて来しかも","#[仮名],わがせこに,こひてすべなみ,はるさめの,ふるわきしらず,いでてこしかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,恋情","#[訓異]
わがせこに,[寛]わかせこに,
こひてすべなみ,[寛]こひてすへなみ,
はるさめの[寛],
ふるわきしらず,[寛]ふるわきしらす,
いでてこしかも,[寛]いててこしかも,
" "#[番号]10/1916","#[題詞](寄雨)","#[原文]今更 君者伊不徃 春雨之 情乎人之 不知有名國","#[訓読]今さらに君はい行かじ春雨の心を人の知らずあらなくに","#[仮名],いまさらに,きみはいゆかじ,はるさめの,こころをひとの,しらずあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,恋情","#[訓異]
いまさらに[寛],
きみはいゆかじ,[寛]きみはいゆくな,
はるさめの[寛],
こころをひとの[寛],
しらずあらなくに,[寛]しらさをなくに,
" "#[番号]10/1917","#[題詞](寄雨)","#[原文]春雨尓 衣甚 将通哉 七日四零者 七<日>不来哉","#[訓読]春雨に衣はいたく通らめや七日し降らば七日来じとや","#[仮名],はるさめに,ころもはいたく,とほらめや,なぬかしふらば,なぬかこじとや","#[左注]","#[校異]夜 -> 日 [元][類][紀]","#[事項],春相聞,恋情,雨隠り","#[訓異]
はるさめに[寛],
ころもはいたく[寛],
とほらめや[寛],
なぬかしふらば,[寛]なぬかしふらは,
なぬかこじとや,[寛]ななよこしとや,
" "#[番号]10/1918","#[題詞](寄雨)","#[原文]梅花 令散春雨 多零 客尓也君之 廬入西留良武","#[訓読]梅の花散らす春雨いたく降る旅にや君が廬りせるらむ","#[仮名],うめのはな,ちらすはるさめ,いたくふる,たびにやきみが,いほりせるらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,植物,恋情,雨隠り","#[訓異]
うめのはな[寛],
ちらすはるさめ[寛],
いたくふる,[寛]さはにふる,
たびにやきみが,[寛]たひにやきみか,
いほりせるらむ[寛],
" "#[番号]10/1919","#[題詞]寄草","#[原文]國栖等之 春菜将採 司馬乃野之 數君麻 思比日","#[訓読]国栖らが春菜摘むらむ司馬の野のしばしば君を思ふこのころ","#[仮名],くにすらが,はるなつむらむ,しまののの,しばしばきみを,おもふこのころ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,吉野,地名,植物,恋情","#[訓異]
くにすらが,[寛]くにすらか,
はるなつむらむ,[寛]わかなつむらむ,
しまののの,[寛]しはののの,
しばしばきみを,[寛]しはしはきみを,
おもふこのころ[寛],
" "#[番号]10/1920","#[題詞](寄草)","#[原文]春草之 繁吾戀 大海 方徃浪之 千重積","#[訓読]春草の繁き我が恋大海の辺に行く波の千重に積もりぬ","#[仮名],はるくさの,しげきあがこひ,おほうみの,へにゆくなみの,ちへにつもりぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,恋情","#[訓異]
はるくさの[寛],
しげきあがこひ,[寛]しけきわかこひ,
おほうみの[寛],
へにゆくなみの,[寛]かたゆくなみの,
ちへにつもりぬ[寛],
" "#[番号]10/1921","#[題詞](寄草)","#[原文]不明 公乎相見而 菅根乃 長春日乎 孤<悲>渡鴨","#[訓読]おほほしく君を相見て菅の根の長き春日を恋ひわたるかも","#[仮名],おほほしく,きみをあひみて,すがのねの,ながきはるひを,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]戀 -> 悲 [元][類][紀]","#[事項],春相聞,植物,恋情","#[訓異]
おほほしく,[寛]ほのかにも,
きみをあひみて[寛],
すがのねの,[寛]すがのねの,
ながきはるひを,[寛]なかきはるひを,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]10/1922","#[題詞]寄松","#[原文]梅花 咲而落去者 吾妹乎 将来香不来香跡 吾待乃木曽","#[訓読]梅の花咲きて散りなば我妹子を来むか来じかと我が松の木ぞ","#[仮名],うめのはな,さきてちりなば,わぎもこを,こむかこじかと,わがまつのきぞ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,植物,恋情","#[訓異]
うめのはな[寛],
さきてちりなば,[寛]さきてちりなは,
わぎもこを,[寛]わきもこを,
こむかこじかと,[寛]こむかこしかと,
わがまつのきぞ,[寛]わかまつのきそ,
" "#[番号]10/1923","#[題詞]寄雲","#[原文]白檀弓 今春山尓 去雲之 逝哉将別 戀敷物乎","#[訓読]白真弓今春山に行く雲の行きや別れむ恋しきものを","#[仮名],しらまゆみ,いまはるやまに,ゆくくもの,ゆきやわかれむ,こほしきものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,枕詞,恋情,序詞","#[訓異]
しらまゆみ[寛],
いまはるやまに[寛],
ゆくくもの[寛],
ゆきやわかれむ[寛],
こほしきものを,[寛]こひしきものを,
" "#[番号]10/1924","#[題詞]贈蘰","#[原文]大夫之 伏居嘆而 造有 四垂柳之 蘰為吾妹","#[訓読]大夫の伏し居嘆きて作りたるしだり柳のかづらせ我妹","#[仮名],ますらをの,ふしゐなげきて,つくりたる,しだりやなぎの,かづらせわぎも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,植物,恋情","#[訓異]
ますらをの[寛],
ふしゐなげきて,[寛]ふしゐなけきて,
つくりたる[寛],
しだりやなぎの,[寛]したりやなきの,
かづらせわぎも,[寛]かつらせよわきも,
" "#[番号]10/1925","#[題詞]<悲>別","#[原文]朝戸出乃 君之儀乎 曲不見而 長春日乎 戀八九良三","#[訓読]朝戸出の君が姿をよく見ずて長き春日を恋ひや暮らさむ","#[仮名],あさとでの,きみがすがたを,よくみずて,ながきはるひを,こひやくらさむ","#[左注]","#[校異]非 -> 悲 [西(訂正)][元][紀][矢]","#[事項],春相聞,恋情","#[訓異]
あさとでの,[寛]あさといての,
きみがすがたを,[寛]きみかよそひを,
よくみずて,[寛]みすて,
ながきはるひを,[寛]なかきはるひを,
こひやくらさむ[寛],
" "#[番号]10/1926","#[題詞](問答)","#[原文]春山之 馬酔花之 不悪 公尓波思恵也 所因友好","#[訓読]春山の馬酔木の花の悪しからぬ君にはしゑや寄そるともよし","#[仮名],はるやまの,あしびのはなの,あしからぬ,きみにはしゑや,よそるともよし","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,植物,序詞,恋情","#[訓異]
はるやまの[寛],
あしびのはなの,[寛]つつしのはなの,
あしからぬ,[寛]にくからぬ,
きみにはしゑや[寛],
よそるともよし,[寛]よりぬともよし,
" "#[番号]10/1927","#[題詞](問答)","#[原文]石上 振乃神杉 神備<西> 吾八更々 戀尓相尓家留","#[訓読]石上布留の神杉神びにし我れやさらさら恋にあひにける","#[仮名],いそのかみ,ふるのかむすぎ,かむびにし,われやさらさら,こひにあひにける","#[左注]右一首不有春歌而猶以和故載於茲次","#[校異]而 -> 西 [元][類] / 歌 [西] 謌","#[事項],春相聞,奈良,地名,植物,恋情","#[訓異]
いそのかみ[寛],
ふるのかむすぎ,[寛]ふるのかみすき,
かむびにし,[寛]かみひても,
われやさらさら[寛],
こひにあひにける[寛],
" "#[番号]10/1928","#[題詞](問答)","#[原文]狭野方波 實尓雖不成 花耳 開而所見社 戀之名草尓","#[訓読]さのかたは実にならずとも花のみに咲きて見えこそ恋のなぐさに","#[仮名],さのかたは,みにならずとも,はなのみに,さきてみえこそ,こひのなぐさに","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,植物,恋情,問答","#[訓異]
さのかたは[寛],
みにならずとも,[寛]みにならすとも,
はなのみに,[寛]はなにのみ,
さきてみえこそ,[寛]さきてみへこそ,
こひのなぐさに,[寛]こひのなくさに,
" "#[番号]10/1929","#[題詞](問答)","#[原文]狭野方波 實尓成西乎 今更 春雨零而 花将咲八方","#[訓読]さのかたは実になりにしを今さらに春雨降りて花咲かめやも","#[仮名],さのかたは,みになりにしを,いまさらに,はるさめふりて,はなさかめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,植物,恋情,問答","#[訓異]
さのかたは[寛],
みになりにしを[寛],
いまさらに[寛],
はるさめふりて[寛],
はなさかめやも[寛],
" "#[番号]10/1930","#[題詞](問答)","#[原文]梓弓 引津邊有 莫告藻之 花咲及二 不會君毳","#[訓読]梓弓引津の辺なるなのりその花咲くまでに逢はぬ君かも","#[仮名],あづさゆみ,ひきつのへなる,なのりその,はなさくまでに,あはぬきみかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,福岡県,地名,植物,恋情,問答","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
ひきつのへなる[寛],
なのりその,[寛]なのりそか,
はなさくまでに,[寛]はなさくまてに,
あはぬきみかも[寛],
" "#[番号]10/1931","#[題詞](問答)","#[原文]川上之 伊都藻之花乃 何時々々 来座吾背子 時自異目八方","#[訓読]川の上のいつ藻の花のいつもいつも来ませ我が背子時じけめやも","#[仮名],かはのうへの,いつものはなの,いつもいつも,きませわがせこ,ときじけめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,序詞,植物,恋情,問答","#[訓異]
かはのうへの,[寛]かはかみの,
いつものはなの[寛],
いつもいつも[寛],
きませわがせこ,[寛]きませわかせこ,
ときじけめやも,[寛]ときおかめやも,
" "#[番号]10/1932","#[題詞](問答)","#[原文]春雨之 不止零々 吾戀 人之目尚矣 不令相見","#[訓読]春雨のやまず降る降る我が恋ふる人の目すらを相見せなくに","#[仮名],はるさめの,やまずふるふる,あがこふる,ひとのめすらを,あひみせなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,恋情,問答","#[訓異]
はるさめの[寛],
やまずふるふる,[寛]やますふるふる,
あがこふる,[寛]わかこふる,
ひとのめすらを[寛],
あひみせなくに,[寛]あひみせさらむ,
" "#[番号]10/1933","#[題詞](問答)","#[原文]吾妹子尓 戀乍居者 春雨之 彼毛知如 不止零乍","#[訓読]我妹子に恋ひつつ居れば春雨のそれも知るごとやまず降りつつ","#[仮名],わぎもこに,こひつつをれば,はるさめの,それもしるごと,やまずふりつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,恋情,問答","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こひつつをれば,[寛]こひつつをれは,
はるさめの[寛],
それもしるごと,[寛]かれもしること,
やまずふりつつ,[寛]やますふりつつ,
" "#[番号]10/1934","#[題詞](問答)","#[原文]相不念 妹哉本名 菅根乃 長春日乎 念晩牟","#[訓読]相思はぬ妹をやもとな菅の根の長き春日を思ひ暮らさむ","#[仮名],あひおもはぬ,いもをやもとな,すがのねの,ながきはるひを,おもひくらさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,恋情,問答,植物","#[訓異]
あひおもはぬ[寛],
いもをやもとな[寛],
すがのねの,[寛]すかのねの,
ながきはるひを,[寛]なかきはるひを,
おもひくらさむ[寛],
" "#[番号]10/1935","#[題詞](問答)","#[原文]春去者 先鳴鳥乃 鴬之 事先立之 君乎之将待","#[訓読]春さればまづ鳴く鳥の鴬の言先立ちし君をし待たむ","#[仮名],はるされば,まづなくとりの,うぐひすの,ことさきだちし,きみをしまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,動物,恋情,問答","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
まづなくとりの,[寛]まつなくとりの,
うぐひすの,[寛]うくひすの,
ことさきだちし,[寛]ことさきたてし,
きみをしまたむ[寛],
" "#[番号]10/1936","#[題詞](問答)","#[原文]相不念 将有兒故 玉緒 長春日乎 念晩久","#[訓読]相思はずあるらむ子ゆゑ玉の緒の長き春日を思ひ暮らさく","#[仮名],あひおもはず,あるらむこゆゑ,たまのをの,ながきはるひを,おもひくらさく","#[左注]","#[校異]","#[事項],春相聞,問答,恋情","#[訓異]
あひおもはず,[寛]あひおもはす,
あるらむこゆゑ,[寛]あらむこゆゑに,
たまのをの[寛],
ながきはるひを,[寛]なかきはるひを,
おもひくらさく[寛],
" "#[番号]10/1937","#[題詞]夏雜歌 / 詠鳥","#[原文]大夫<之> 出立向 故郷之 神名備山尓 明来者 柘之左枝尓 暮去者 小松之若末尓 里人之 聞戀麻田 山彦乃 答響萬田 霍公鳥 都麻戀為良思 左夜中尓鳴 ","#[訓読]大夫の 出で立ち向ふ 故郷の 神なび山に 明けくれば 柘のさ枝に 夕されば 小松が末に 里人の 聞き恋ふるまで 山彦の 相響むまで 霍公鳥 妻恋ひすらし さ夜中に鳴く ","#[仮名],ますらをの,いでたちむかふ,ふるさとの,かむなびやまに,あけくれば,つみのさえだに,ゆふされば,こまつがうれに,さとびとの,ききこふるまで,やまびこの,あひとよむまで,ほととぎす,つまごひすらし,さよなかになく","#[左注](右古歌集中出)","#[校異]歌 [西] 謌 / 丹 -> 之 [元][類]","#[事項],夏雑歌,古歌集,飛鳥,地名,動物,恋情,植物,羈旅","#[訓異]
ますらをの,[寛]ますらをに,
いでたちむかふ,[寛]いてたちむかふ,
ふるさとの[寛],
かむなびやまに,[寛]かみなひやまに,
あけくれば,[寛]あけくれは,
つみのさえだに,[寛]つみのさゑたに,
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
こまつがうれに,[寛]こまつかうれに,
さとびとの,[寛]さとひとの,
ききこふるまで,[寛]ききこふるまて,
やまびこの,[寛]やまひこの,
あひとよむまで,[寛]こたふるまてに,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
つまごひすらし,[寛]つまこひすらし,
さよなかになく[寛],
" "#[番号]10/1938","#[題詞](詠鳥)反歌","#[原文]客尓為而 妻戀為良思 霍公鳥 神名備山尓 左夜深而鳴","#[訓読]旅にして妻恋すらし霍公鳥神なび山にさ夜更けて鳴く","#[仮名],たびにして,つまごひすらし,ほととぎす,かむなびやまに,さよふけてなく","#[左注]右古歌集中出","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],夏雑歌,古歌集,飛鳥,地名,動物,恋情,羈旅","#[訓異]
たびにして,[寛]たひにして,
つまごひすらし,[寛]つまこひすらし,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
かむなびやまに,[寛]かみなひやまに,
さよふけてなく[寛],
" "#[番号]10/1939","#[題詞](詠鳥)","#[原文]霍公鳥 汝始音者 於吾欲得 五月之珠尓 交而将貫","#[訓読]霍公鳥汝が初声は我れにもが五月の玉に交へて貫かむ","#[仮名],ほととぎす,ながはつこゑは,われにもが,さつきのたまに,まじへてぬかむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,動物,植物","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
ながはつこゑは,[寛]なかはつこゑは,
われにもが,[寛]われにかも,
さつきのたまに[寛],
まじへてぬかむ,[寛]まちへてぬかむ,
" "#[番号]10/1940","#[題詞](詠鳥)","#[原文]朝霞 棚引野邊 足桧木乃 山霍公鳥 何時来将鳴","#[訓読]朝霞たなびく野辺にあしひきの山霍公鳥いつか来鳴かむ","#[仮名],あさかすみ,たなびくのへに,あしひきの,やまほととぎす,いつかきなかむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,動物","#[訓異]
あさかすみ[寛],
たなびくのへに,[寛]たなひくのへに,
あしひきの[寛],
やまほととぎす,[寛]やまほとときす,
いつかきなかむ[寛],
" "#[番号]10/1941","#[題詞](詠鳥)","#[原文]旦<霧> 八重山越而 喚孤鳥 吟八汝来 屋戸母不有九<二>","#[訓読]朝霧の八重山越えて呼子鳥鳴きや汝が来る宿もあらなくに","#[仮名],あさぎりの,やへやまこえて,よぶこどり,なきやながくる,やどもあらなくに","#[左注]","#[校異]霞 -> 霧 [類] / 三 -> 二 [西(訂正)][元][類][紀]","#[事項],夏雑歌,枕詞,動物,叙景","#[訓異]
あさぎりの,[寛]あさかすみ,
やへやまこえて[寛],
よぶこどり,[寛]よふことり,
なきやながくる,[寛]なきやなかくる,
やどもあらなくに,[寛]やともあらなくに,
" "#[番号]10/1942","#[題詞](詠鳥)","#[原文]霍公鳥 <鳴>音聞哉 宇能花乃 開落岳尓 田葛引D嬬","#[訓読]霍公鳥鳴く声聞くや卯の花の咲き散る岡に葛引く娘女","#[仮名],ほととぎす,なくこゑきくや,うのはなの,さきちるをかに,くずひくをとめ","#[左注]","#[校異]<> -> 鳴 [西(右書)][元][類][紀] / 葛 [万葉集略解](塙) 草","#[事項],夏雑歌,動物,植物,叙景","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なくこゑきくや,[寛]なくこえきくや,
うのはなの[寛],
さきちるをかに[寛],
くずひくをとめ,[寛]たくさひくいも,
" "#[番号]10/1943","#[題詞](詠鳥)","#[原文]月夜吉 鳴霍公鳥 欲見 吾草取有 見人毛欲得","#[訓読]月夜よみ鳴く霍公鳥見まく欲り我れ草取れり見む人もがも","#[仮名],つくよよみ,なくほととぎす,みまくほり,われくさとれり,みむひともがも","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,動物,恋情","#[訓異]
つくよよみ,[寛]つきよよし,
なくほととぎす,[寛]なくほとときす,
みまくほり[寛],
われくさとれり,[寛]わかさをとれる,
みむひともがも,[寛]みむひともかな,
" "#[番号]10/1944","#[題詞](詠鳥)","#[原文]藤浪之 散巻惜 霍公鳥 今城岳S 鳴而越奈利","#[訓読]藤波の散らまく惜しみ霍公鳥今城の岡を鳴きて越ゆなり","#[仮名],ふぢなみの,ちらまくをしみ,ほととぎす,いまきのをかを,なきてこゆなり","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,地名,植物,動物,叙景","#[訓異]
ふぢなみの,[寛]ふちなみの,
ちらまくをしみ[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いまきのをかを[寛],
なきてこゆなり[寛],
" "#[番号]10/1945","#[題詞](詠鳥)","#[原文]旦霧 八重山越而 霍公鳥 宇能花邊柄 鳴越来","#[訓読]朝霧の八重山越えて霍公鳥卯の花辺から鳴きて越え来ぬ","#[仮名],あさぎりの,やへやまこえて,ほととぎす,うのはなへから,なきてこえきぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,枕詞,動物,叙景","#[訓異]
あさぎりの,[寛]あさきりの,
やへやまこえて,[寛]やへやまこゑて,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
うのはなへから[寛],
なきてこえきぬ,[寛]なきてこゆらし,
" "#[番号]10/1946","#[題詞](詠鳥)","#[原文]木高者 曽木不殖 霍公鳥 来鳴令響而 戀令益","#[訓読]木高くはかつて木植ゑじ霍公鳥来鳴き響めて恋まさらしむ","#[仮名],こだかくは,かつてきうゑじ,ほととぎす,きなきとよめて,こひまさらしむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,動物","#[訓異]
こだかくは,[寛]こたかくは,
かつてきうゑじ,[寛]かつてきうゑし,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きなきとよめて,[寛]きなきとよみて,
こひまさらしむ[寛],
" "#[番号]10/1947","#[題詞](詠鳥)","#[原文]難相 君尓逢有夜 霍公鳥 他時従者 今<社>鳴目","#[訓読]逢ひかたき君に逢へる夜霍公鳥他時ゆは今こそ鳴かめ","#[仮名],あひかたき,きみにあへるよ,ほととぎす,あだしときゆは,いまこそなかめ","#[左注]","#[校異]杜 -> 社 [元][類][紀]","#[事項],夏雑歌,動物","#[訓異]
あひかたき[寛],
きみにあへるよ[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
あだしときゆは,[寛]ことときよりは,
いまこそなかめ[寛],
" "#[番号]10/1948","#[題詞](詠鳥)","#[原文]木晩之 暮闇有尓 [一云 有者] 霍公鳥 何處乎家登 鳴渡良<武> ","#[訓読]木の暗の夕闇なるに [一云 なれば] 霍公鳥いづくを家と鳴き渡るらむ ","#[仮名],このくれの,ゆふやみなるに[なれば],ほととぎす,いづくをいへと,なきわたるらむ","#[左注]","#[校異]哉 -> 武 [元][紀][矢][京]","#[事項],夏雑歌,動物,叙景","#[訓異]
このくれの[寛],
ゆふやみなるに[寛],
[なれば],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いづくをいへと,[寛]いつこをいへと,
なきわたるらむ[寛],
" "#[番号]10/1949","#[題詞](詠鳥)","#[原文]霍公鳥 今朝之旦明尓 鳴都流波 君将聞可 朝宿疑将寐","#[訓読]霍公鳥今朝の朝明に鳴きつるは君聞きけむか朝寐か寝けむ","#[仮名],ほととぎす,けさのあさけに,なきつるは,きみききけむか,あさいかねけむ","#[左注]","#[校異]1949〜1951順序に錯簡","#[事項],夏雑歌,動物,問いかけ","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
けさのあさけに[寛],
なきつるは[寛],
きみききけむか,[寛]きみきくらむか,
あさいかねけむ,[寛]あさいかぬらむ,
" "#[番号]10/1950","#[題詞](詠鳥)","#[原文]霍公鳥 花橘之 枝尓居而 鳴響者 花波散乍","#[訓読]霍公鳥花橘の枝に居て鳴き響もせば花は散りつつ","#[仮名],ほととぎす,はなたちばなの,えだにゐて,なきとよもせば,はなはちりつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,動物,植物,叙景","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
はなたちばなの,[寛]はなたちはなの,
えだにゐて,[寛]えたにゐて,
なきとよもせば,[寛]なきとよませは,
はなはちりつつ[寛],
" "#[番号]10/1951","#[題詞](詠鳥)","#[原文]慨哉 四去霍公鳥 今社者 音之干蟹 来喧響目","#[訓読]うれたきや醜霍公鳥今こそば声の嗄るがに来鳴き響めめ","#[仮名],うれたきや,しこほととぎす,いまこそば,こゑのかるがに,きなきとよめめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,動物","#[訓異]
うれたきや,[寛]よしえやし,
しこほととぎす,[寛]ゆくほとときす,
いまこそば,[寛]いまこそは,
こゑのかるがに,[寛]こゑのかるかに,
きなきとよめめ,[寛]きなきとよまめ,
" "#[番号]10/1952","#[題詞](詠鳥)","#[原文]今夜乃 於保束無荷 霍公鳥 喧奈流聲之 音乃遥左","#[訓読]今夜のおほつかなきに霍公鳥鳴くなる声の音の遥けさ","#[仮名],こよひの,おほつかなきに,ほととぎす,なくなるこゑの,おとのはるけさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,動物,叙景","#[訓異]
こよひの,[寛]このよらの,
おほつかなきに[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なくなるこゑの[寛],
おとのはるけさ[寛],
" "#[番号]10/1953","#[題詞](詠鳥)","#[原文]五月山 宇能花月夜 霍公鳥 雖聞不飽 又鳴鴨","#[訓読]五月山卯の花月夜霍公鳥聞けども飽かずまた鳴かぬかも","#[仮名],さつきやま,うのはなづくよ,ほととぎす,きけどもあかず,またなかぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,植物,動物","#[訓異]
さつきやま[寛],
うのはなづくよ,[寛]うのはなつきよ,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きけどもあかず,[寛]きけともあかす,
またなかぬかも,[寛]またなかむかも,
" "#[番号]10/1954","#[題詞](詠鳥)","#[原文]霍公鳥 来居裳鳴香 吾屋前乃 花橘乃 地二落六見牟","#[訓読]霍公鳥来居も鳴かぬか我がやどの花橘の地に落ちむ見む","#[仮名],ほととぎす,きゐもなかぬか,わがやどの,はなたちばなの,つちにおちむみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,動物,植物","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きゐもなかぬか,[寛]ゐてもなくか,
わがやどの,[寛]わかやとの,
はなたちばなの,[寛]はなたちはなの,
つちにおちむみむ[寛],
" "#[番号]10/1955","#[題詞](詠鳥)","#[原文]霍公鳥 厭時無 菖蒲 蘰将為日 従此鳴度礼","#[訓読]霍公鳥いとふ時なしあやめぐさかづらにせむ日こゆ鳴き渡れ","#[仮名],ほととぎす,いとふときなし,あやめぐさ,かづらにせむひ,こゆなきわたれ","#[左注]","#[校異]菖 [元][類] 昌","#[事項],夏雑歌,動物,植物","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いとふときなし[寛],
あやめぐさ,[寛]あやめくさ,
かづらにせむひ,[寛]かつらにせむとひ,
こゆなきわたれ[寛],
" "#[番号]10/1956","#[題詞](詠鳥)","#[原文]山跡庭 啼而香将来 霍公鳥 汝鳴毎 無人所念","#[訓読]大和には鳴きてか来らむ霍公鳥汝が鳴くごとになき人思ほゆ","#[仮名],やまとには,なきてかくらむ,ほととぎす,ながなくごとに,なきひとおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,奈良,地名,動物,懐古","#[訓異]
やまとには[寛],
なきてかくらむ[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
ながなくごとに,[寛]なかなくことに,
なきひとおもほゆ[寛],
" "#[番号]10/1957","#[題詞](詠鳥)","#[原文]宇能花乃 散巻惜 霍公鳥 野出山入 来鳴令動","#[訓読]卯の花の散らまく惜しみ霍公鳥野に出で山に入り来鳴き響もす","#[仮名],うのはなの,ちらまくをしみ,ほととぎす,のにいでやまにいり,きなきとよもす","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,植物,動物,叙景","#[訓異]
うのはなの[寛],
ちらまくをしみ[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
のにいでやまにいり,[寛]のにいてやまにいり,
きなきとよもす,[寛]きなきとよます,
" "#[番号]10/1958","#[題詞](詠鳥)","#[原文]橘之 林乎殖 霍公鳥 常尓冬及 住度金","#[訓読]橘の林を植ゑむ霍公鳥常に冬まで棲みわたるがね","#[仮名],たちばなの,はやしをうゑむ,ほととぎす,つねにふゆまで,すみわたるがね","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,植物,動物","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
はやしをうゑむ[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
つねにふゆまで,[寛]つねにふゆまて,
すみわたるがね,[寛]すみわたるかね,
" "#[番号]10/1959","#[題詞](詠鳥)","#[原文]雨へ之 雲尓副而 霍公鳥 指春日而 従此鳴度","#[訓読]雨晴れの雲にたぐひて霍公鳥春日をさしてこゆ鳴き渡る","#[仮名],あまばれの,くもにたぐひて,ほととぎす,かすがをさして,こゆなきわたる","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,奈良,地名,動物,叙景","#[訓異]
あまばれの,[寛]あまはりの,
くもにたぐひて,[寛]くもにたくひて,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
かすがをさして,[寛]かすかをさして,
こゆなきわたる[寛],
" "#[番号]10/1960","#[題詞](詠鳥)","#[原文]物念登 不宿旦開尓 霍公鳥 鳴而左度 為便無左右二","#[訓読]物思ふと寐ねぬ朝明に霍公鳥鳴きてさ渡るすべなきまでに","#[仮名],ものもふと,いねぬあさけに,ほととぎす,なきてさわたる,すべなきまでに","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,動物","#[訓異]
ものもふと,[寛]ものおもふと,
いねぬあさけに[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なきてさわたる[寛],
すべなきまでに,[寛]すへなきまてに,
" "#[番号]10/1961","#[題詞](詠鳥)","#[原文]吾衣 於君令服与登 霍公鳥 吾乎領 袖尓来居管","#[訓読]我が衣を君に着せよと霍公鳥我れをうながす袖に来居つつ","#[仮名],わがきぬを,きみにきせよと,ほととぎす,われをうながす,そでにきゐつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,動物","#[訓異]
わがきぬを,[寛]わかきぬを,
きみにきせよと[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
われをうながす,[寛]われをしらせて,
そでにきゐつつ,[寛]そてにきゐつつ,
" "#[番号]10/1962","#[題詞](詠鳥)","#[原文]本人 霍公鳥乎八 希将見 今哉汝来 戀乍居者","#[訓読]本つ人霍公鳥をやめづらしく今か汝が来る恋ひつつ居れば","#[仮名],もとつひと,ほととぎすをや,めづらしく,いまかながくる,こひつつをれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,動物","#[訓異]
もとつひと[寛],
ほととぎすをや,[寛]ほとときすをや,
めづらしく,[寛]まれにみむ,
いまかながくる,[寛]いまやなかくる,
こひつつをれば,[寛]こひつつえをれは,
" "#[番号]10/1963","#[題詞](詠鳥)","#[原文]如是許 雨之零尓 霍公鳥 宇<乃>花山尓 猶香将鳴","#[訓読]かくばかり雨の降らくに霍公鳥卯の花山になほか鳴くらむ","#[仮名],かくばかり,あめのふらくに,ほととぎす,うのはなやまに,なほかなくらむ","#[左注]","#[校異]之 -> 乃 [元][類][紀]","#[事項],夏雑歌,動物,叙景","#[訓異]
かくばかり,[寛]かくはかり,
あめのふらくに,[寛]あめのふふくに,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
うのはなやまに[寛],
なほかなくらむ,[寛]なをかなくらむ,
" "#[番号]10/1964","#[題詞]詠蝉","#[原文]黙然毛将有 時母鳴奈武 日晩乃 物念時尓 鳴管本名","#[訓読]黙もあらむ時も鳴かなむひぐらしの物思ふ時に鳴きつつもとな","#[仮名],もだもあらむ,ときもなかなむ,ひぐらしの,ものもふときに,なきつつもとな","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,動物","#[訓異]
もだもあらむ,[寛]もたもあらむ,
ときもなかなむ[寛],
ひぐらしの,[寛]ひくらしの,
ものもふときに,[寛]ものおもふときに,
なきつつもとな[寛],
" "#[番号]10/1965","#[題詞]詠榛","#[原文]思子之 衣将摺尓 々保比与 嶋之榛原 秋不立友","#[訓読]思ふ子が衣摺らむににほひこそ島の榛原秋立たずとも","#[仮名],おもふこが,ころもすらむに,にほひこそ,しまのはりはら,あきたたずとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,飛鳥,地名,植物","#[訓異]
おもふこが,[寛]おもふこの,
ころもすらむに[寛],
にほひこそ,[寛]にほひせよ,
しまのはりはら,[寛]しまのはきはら,
あきたたずとも,[寛]あきたたすとも,
" "#[番号]10/1966","#[題詞]詠花","#[原文]風散 花橘S 袖受而 為君御跡 思鶴鴨","#[訓読]風に散る花橘を袖に受けて君がみ跡と偲ひつるかも","#[仮名],かぜにちる,はなたちばなを,そでにうけて,きみがみあとと,しのひつるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,植物,恋情","#[訓異]
かぜにちる,[寛]かせにちる,
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
そでにうけて,[寛]そてにうけて,
きみがみあとと,[寛]きみかみためと,
しのひつるかも,[寛]おもひつるかも,
" "#[番号]10/1967","#[題詞](詠花)","#[原文]香細寸 花橘乎 玉貫 将送妹者 三礼而毛有香","#[訓読]かぐはしき花橘を玉に貫き贈らむ妹はみつれてもあるか","#[仮名],かぐはしき,はなたちばなを,たまにぬき,おくらむいもは,みつれてもあるか","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,植物,恋情","#[訓異]
かぐはしき,[寛]かくはしき,
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
たまにぬき[寛],
おくらむいもは[寛],
みつれてもあるか[寛],
" "#[番号]10/1968","#[題詞](詠花)","#[原文]霍公鳥 来鳴響 橘之 花散庭乎 将見人八孰","#[訓読]霍公鳥来鳴き響もす橘の花散る庭を見む人や誰れ","#[仮名],ほととぎす,きなきとよもす,たちばなの,はなちるにはを,みむひとやたれ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,動物,植物","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きなきとよもす,[寛]きなきとよます,
たちばなの,[寛]たちはなの,
はなちるにはを[寛],
みむひとやたれ[寛],
" "#[番号]10/1969","#[題詞](詠花)","#[原文]吾屋前之 花橘者 落尓家里 悔時尓 相在君鴨","#[訓読]我が宿の花橘は散りにけり悔しき時に逢へる君かも","#[仮名],わがやどの,はなたちばなは,ちりにけり,くやしきときに,あへるきみかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,植物,恨み","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
はなたちばなは,[寛]はなたちはなは,
ちりにけり[寛],
くやしきときに[寛],
あへるきみかも[寛],
" "#[番号]10/1970","#[題詞](詠花)","#[原文]見渡者 向野邊乃 石竹之 落巻惜毛 雨莫零行年","#[訓読]見わたせば向ひの野辺のなでしこの散らまく惜しも雨な降りそね","#[仮名],みわたせば,むかひののへの,なでしこの,ちらまくをしも,あめなふりそね","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,植物","#[訓異]
みわたせば,[寛]みわたせは,
むかひののへの[寛],
なでしこの,[寛]なてしこの,
ちらまくをしも[寛],
あめなふりそね,[寛]あめなふりこそ,
" "#[番号]10/1971","#[題詞](詠花)","#[原文]雨間開而 國見毛将為乎 故郷之 花橘者 散家<武>可聞","#[訓読]雨間明けて国見もせむを故郷の花橘は散りにけむかも","#[仮名],あままあけて,くにみもせむを,ふるさとの,はなたちばなは,ちりにけむかも","#[左注]","#[校異]牟 -> 武 [元][類][紀]","#[事項],夏雑歌,植物,季節","#[訓異]
あままあけて[寛],
くにみもせむを[寛],
ふるさとの[寛],
はなたちばなは,[寛]はなたちはなは,
ちりにけむかも[寛],
" "#[番号]10/1972","#[題詞](詠花)","#[原文]野邊見者 瞿麦之花 咲家里 吾待秋者 近就良思母","#[訓読]野辺見ればなでしこの花咲きにけり我が待つ秋は近づくらしも","#[仮名],のへみれば,なでしこのはな,さきにけり,わがまつあきは,ちかづくらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,植物,季節","#[訓異]
のへみれば,[寛]のへみれは,
なでしこのはな,[寛]なてしこのはな,
さきにけり[寛],
わがまつあきは,[寛]わかまつあきは,
ちかづくらしも,[寛]ちかつくらしも,
" "#[番号]10/1973","#[題詞](詠花)","#[原文]吾妹子尓 相市乃花波 落不過 今咲有如 有与奴香聞","#[訓読]我妹子に楝の花は散り過ぎず今咲けるごとありこせぬかも","#[仮名],わぎもこに,あふちのはなは,ちりすぎず,いまさけるごと,ありこせぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,植物,枕詞,惜別","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
あふちのはなは[寛],
ちりすぎず,[寛]ちりすきす,
いまさけるごと,[寛]いまさけること,
ありこせぬかも,[寛]ありそはぬかも,
" "#[番号]10/1974","#[題詞](詠花)","#[原文]春日野之 藤者散去而 何物鴨 御狩人之 折而将挿頭","#[訓読]春日野の藤は散りにて何をかもみ狩の人の折りてかざさむ","#[仮名],かすがのの,ふぢはちりにて,なにをかも,みかりのひとの,をりてかざさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,奈良,地名,植物,季節","#[訓異]
かすがのの,[寛]かすかのの,
ふぢはちりにて,[寛]ふちはちりゆきて,
なにをかも[寛],
みかりのひとの[寛],
をりてかざさむ,[寛]おりてかささむ,
" "#[番号]10/1975","#[題詞](詠花)","#[原文]不時 玉乎曽連有 宇能花乃 五月乎待者 可久有","#[訓読]時ならず玉をぞ貫ける卯の花の五月を待たば久しくあるべみ","#[仮名],ときならず,たまをぞぬける,うのはなの,さつきをまたば,ひさしくあるべみ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,植物","#[訓異]
ときならず,[寛]ときならぬ,
たまをぞぬける,[寛]たまをそぬける,
うのはなの[寛],
さつきをまたば,[寛]さつきをまたは,
ひさしくあるべみ,[寛]ひさしかるへく,
" "#[番号]10/1976","#[題詞]問答","#[原文]宇能花乃 咲落岳従 霍公鳥 鳴而沙<度> 公者聞津八","#[訓読]卯の花の咲き散る岡ゆ霍公鳥鳴きてさ渡る君は聞きつや","#[仮名],うのはなの,さきちるをかゆ,ほととぎす,なきてさわたる,きみはききつや","#[左注]","#[校異]沙 [元] 紗 / 渡 -> 度 [元][類][紀]","#[事項],夏雑歌,問答,植物,動物","#[訓異]
うのはなの[寛],
さきちるをかゆ,[寛]さきちるをかに,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なきてさわたる[寛],
きみはききつや[寛],
" "#[番号]10/1977","#[題詞](問答)","#[原文]聞津八跡 君之問世流 霍公鳥 小竹野尓所沾而 従此鳴綿類","#[訓読]聞きつやと君が問はせる霍公鳥しののに濡れてこゆ鳴き渡る","#[仮名],ききつやと,きみがとはせる,ほととぎす,しののにぬれて,こゆなきわたる","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏雑歌,問答,動物,叙景","#[訓異]
ききつやと[寛],
きみがとはせる,[寛]きみかとはせる,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
しののにぬれて[寛],
こゆなきわたる[寛],
" "#[番号]10/1978","#[題詞]譬喩歌","#[原文]橘 花落里尓 通名者 山霍公鳥 将令響鴨","#[訓読]橘の花散る里に通ひなば山霍公鳥響もさむかも","#[仮名],たちばなの,はなちるさとに,かよひなば,やまほととぎす,とよもさむかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],夏雑歌,植物,動物","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
はなちるさとに[寛],
かよひなば,[寛]かよひなは,
やまほととぎす,[寛]やまほとときす,
とよもさむかも,[寛]とよませむかも,
" "#[番号]10/1979","#[題詞]夏相聞 / 寄鳥","#[原文]春之在者 酢軽成野之 霍公鳥 保等穂跡妹尓 不相来尓家里","#[訓読]春さればすがるなす野の霍公鳥ほとほと妹に逢はず来にけり","#[仮名],はるされば,すがるなすのの,ほととぎす,ほとほといもに,あはずきにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏相聞,動物","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
すがるなすのの,[寛]すかるなるのの,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
ほとほといもに[寛],
あはずきにけり,[寛]あはすきにけり,
" "#[番号]10/1980","#[題詞](寄鳥)","#[原文]五月山 花橘尓 霍公鳥 隠合時尓 逢有公鴨","#[訓読]五月山花橘に霍公鳥隠らふ時に逢へる君かも","#[仮名],さつきやま,はなたちばなに,ほととぎす,こもらふときに,あへるきみかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏相聞,動物,植物","#[訓異]
さつきやま[寛],
はなたちばなに,[寛]はなたちはなに,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
こもらふときに,[寛]かくらふときに,
あへるきみかも[寛],
" "#[番号]10/1981","#[題詞](寄鳥)","#[原文]霍公鳥 来鳴五月之 短夜毛 獨宿者 明不得毛","#[訓読]霍公鳥来鳴く五月の短夜もひとりし寝れば明かしかねつも","#[仮名],ほととぎす,きなくさつきの,みじかよも,ひとりしぬれば,あかしかねつも","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏相聞,動物,植物,恋情","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きなくさつきの[寛],
みじかよも,[寛]みしかよも,
ひとりしぬれば,[寛]ひとりしぬれは,
あかしかねつも[寛],
" "#[番号]10/1982","#[題詞]寄蝉","#[原文]日倉足者 時常雖鳴 我戀 手弱女我者 不定哭","#[訓読]ひぐらしは時と鳴けども片恋にたわや女我れは時わかず泣く","#[仮名],ひぐらしは,ときとなけども,かたこひに,たわやめわれは,ときわかずなく","#[左注]","#[校異]我 [元][類][紀](塙) 於","#[事項],夏相聞,動物,恋情","#[訓異]
ひぐらしは,[寛]ひくらしは,
ときとなけども,[寛]ときとなけとも,
かたこひに,[寛]わかこふる,
たわやめわれは,[寛]たをやめわれは,
ときわかずなく,[寛]さたまらすなく,
" "#[番号]10/1983","#[題詞]寄草","#[原文]人言者 夏野乃草之 繁友 妹与吾<師> 携宿者","#[訓読]人言は夏野の草の繁くとも妹と我れとし携はり寝ば","#[仮名],ひとごとは,なつののくさの,しげくとも,いもとあれとし,たづさはりねば","#[左注]","#[校異]<> -> 師 [元][類][紀]","#[事項],夏相聞,植物,恋情","#[訓異]
ひとごとは,[寛]ひとことは,
なつののくさの[寛],
しげくとも,[寛]しけくとも,
いもとあれとし,[寛]いもとわれとし,
たづさはりねば,[寛]たつさわりねは,
" "#[番号]10/1984","#[題詞](寄草)","#[原文]廼者之 戀乃繁久 夏草乃 苅掃友 生布如","#[訓読]このころの恋の繁けく夏草の刈り掃へども生ひしくごとし","#[仮名],このころの,こひのしげけく,なつくさの,かりはらへども,おひしくごとし","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏相聞,植物,恋情","#[訓異]
このころの[寛],
こひのしげけく,[寛]こひのしけけく,
なつくさの[寛],
かりはらへども,[寛]かりはらふとも,
おひしくごとし,[寛]おひしくかこと,
" "#[番号]10/1985","#[題詞](寄草)","#[原文]真田葛延 夏野之繁 如是戀者 信吾命 常有目八<面>","#[訓読]ま葛延ふ夏野の繁くかく恋ひばまこと我が命常ならめやも","#[仮名],まくずはふ,なつののしげく,かくこひば,まことわがいのち,つねならめやも","#[左注]","#[校異]方 -> 面 [元][類]","#[事項],夏相聞,恋情","#[訓異]
まくずはふ,[寛]まくすはふ,
なつののしげく,[寛]なつののしけく,
かくこひば,[寛]かくこひは,
まことわがいのち,[寛]まことわかいのち,
つねならめやも[寛],
" "#[番号]10/1986","#[題詞](寄草)","#[原文]吾耳哉 如是戀為良武 <垣>津旗 丹<頬合>妹者 如何将有","#[訓読]我れのみやかく恋すらむかきつはた丹つらふ妹はいかにかあるらむ","#[仮名],あれのみや,かくこひすらむ,かきつはた,につらふいもは,いかにかあるらむ","#[左注]","#[校異]垣 [西(上書訂正)][元][紀] / 類令 -> 頬合 [元][類]","#[事項],夏相聞,恋情,植物","#[訓異]
あれのみや,[寛]われのみや,
かくこひすらむ[寛],
かきつはた[寛],
につらふいもは,[寛]にほへるいもは,
いかにかあるらむ,[寛]いかにもあらむ,
" "#[番号]10/1987","#[題詞]寄花","#[原文]片搓尓 絲S曽吾搓 吾背兒之 花橘乎 将貫跡母日手","#[訓読]片縒りに糸をぞ我が縒る我が背子が花橘を貫かむと思ひて","#[仮名],かたよりに,いとをぞわがよる,わがせこが,はなたちばなを,ぬかむとおもひて","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏相聞,植物","#[訓異]
かたよりに[寛],
いとをぞわがよる,[寛]いとをそわかよる,
わがせこが,[寛]わかせこか,
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
ぬかむとおもひて,[寛]ぬかむともひて,
" "#[番号]10/1988","#[題詞](寄花)","#[原文]鴬之 徃来垣根乃 宇能花之 厭事有哉 君之不来座","#[訓読]鴬の通ふ垣根の卯の花の憂きことあれや君が来まさぬ","#[仮名],うぐひすの,かよふかきねの,うのはなの,うきことあれや,きみがきまさぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏相聞,動物,植物","#[訓異]
うぐひすの,[寛]うくひすの,
かよふかきねの[寛],
うのはなの[寛],
うきことあれや[寛],
きみがきまさぬ,[寛]きみかきまさぬ,
" "#[番号]10/1989","#[題詞](寄花)","#[原文]宇能花之 開登波無二 有人尓 戀也将渡 獨念尓指天","#[訓読]卯の花の咲くとはなしにある人に恋ひやわたらむ片思にして","#[仮名],うのはなの,さくとはなしに,あるひとに,こひやわたらむ,かたもひにして","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏相聞,植物,恋情","#[訓異]
うのはなの[寛],
さくとはなしに[寛],
あるひとに[寛],
こひやわたらむ[寛],
かたもひにして,[寛]かたおもひにして,
" "#[番号]10/1990","#[題詞](寄花)","#[原文]吾社葉 憎毛有目 吾屋前之 花橘乎 見尓波不来鳥屋","#[訓読]我れこそば憎くもあらめ我がやどの花橘を見には来じとや","#[仮名],われこそば,にくくもあらめ,わがやどの,はなたちばなを,みにはこじとや","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏相聞,植物","#[訓異]
われこそば,[寛]われこそは,
にくくもあらめ[寛],
わがやどの,[寛]わかやとの,
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
みにはこじとや,[寛]みにはこしとや,
" "#[番号]10/1991","#[題詞](寄花)","#[原文]霍公鳥 来鳴動 岡<邊>有 藤浪見者 君者不来登夜","#[訓読]霍公鳥来鳴き響もす岡辺なる藤波見には君は来じとや","#[仮名],ほととぎす,きなきとよもす,をかへなる,ふぢなみみには,きみはこじとや","#[左注]","#[校異]部 -> 邊 [類][紀]","#[事項],夏相聞,動物,植物,勧誘","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きなきとよもす,[寛]きなきとよます,
をかへなる[寛],
ふぢなみみには,[寛]ふちなみみれは,
きみはこじとや,[寛]きみはこしとや,
" "#[番号]10/1992","#[題詞](寄花)","#[原文]隠耳 戀者苦 瞿麦之 花尓開出与 朝旦将見","#[訓読]隠りのみ恋ふれば苦しなでしこの花に咲き出よ朝な朝な見む","#[仮名],こもりのみ,こふればくるし,なでしこの,はなにさきでよ,あさなさなみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏相聞,植物","#[訓異]
こもりのみ,[寛]かくしのみ,
こふればくるし,[寛]こふれはくるし,
なでしこの,[寛]なてしこの,
はなにさきでよ,[寛]はなにさきいて,
あさなさなみむ[寛],
" "#[番号]10/1993","#[題詞](寄花)","#[原文]外耳 見筒戀牟 紅乃 末採花之 色不出友","#[訓読]外のみに見つつ恋ひなむ紅の末摘花の色に出でずとも","#[仮名],よそのみに,みつつこひなむ,くれなゐの,すゑつむはなの,いろにいでずとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏相聞,植物","#[訓異]
よそのみに,[寛]よそにのみ,
みつつこひなむ,[寛]みつつやこひむ,
くれなゐの[寛],
すゑつむはなの,[寛]すえつむはなの,
いろにいでずとも,[寛]いろにいてすとも,
" "#[番号]10/1994","#[題詞]寄露","#[原文]夏草乃 露別衣 不著尓 我衣手乃 干時毛名寸","#[訓読]夏草の露別け衣着けなくに我が衣手の干る時もなき","#[仮名],なつくさの,つゆわけごろも,つけなくに,わがころもでの,ふるときもなき","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏相聞,植物","#[訓異]
なつくさの[寛],
つゆわけごろも,[寛]つゆわけころも,
つけなくに,[寛]きもせぬに,
わがころもでの,[寛]わかころもての,
ふるときもなき,[寛]ひるときもなき,
" "#[番号]10/1995","#[題詞]寄日","#[原文]六月之 地副割而 照日尓毛 吾袖将乾哉 於君不相四手","#[訓読]六月の地さへ裂けて照る日にも我が袖干めや君に逢はずして","#[仮名],みなづきの,つちさへさけて,てるひにも,わがそでひめや,きみにあはずして","#[左注]","#[校異]","#[事項],夏相聞,恋情","#[訓異]
みなづきの,[寛]みなつきの,
つちさへさけて[寛],
てるひにも[寛],
わがそでひめや,[寛]わかそてひめや,
きみにあはずして,[寛]きみにあはすして,
" "#[番号]10/1996","#[題詞]秋雜歌 / 七夕","#[原文]天漢 水左閇而照 舟竟 舟人 妹等所見寸哉","#[訓読]天の川水さへに照る舟泊てて舟なる人は妹と見えきや","#[仮名],あまのがは,みづさへにてる,ふねはてて,ふねなるひとは,いもとみえきや","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
みづさへにてる,[寛]みつさへにてる,
ふねはてて,[寛]ふなわたり,
ふねなるひとは,[寛]ふねこくひとに,
いもとみえきや,[寛]いもとみえすや,
" "#[番号]10/1997","#[題詞](七夕)","#[原文]久方之 天漢原丹 奴延鳥之 裏歎座<都> 乏諸手丹","#[訓読]久方の天の川原にぬえ鳥のうら歎げましつすべなきまでに","#[仮名],ひさかたの,あまのかはらに,ぬえどりの,うらなげましつ,すべなきまでに","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]津 -> 都 [元][類]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あまのかはらに[寛],
ぬえどりの,[寛]ぬえとりの,
うらなげましつ,[寛]うらなきましつ,
すべなきまでに,[寛]ともしきまてに,
" "#[番号]10/1998","#[題詞](七夕)","#[原文]吾戀 嬬者知遠 徃船乃 過而應来哉 事毛告火","#[訓読]我が恋を嬬は知れるを行く舟の過ぎて来べしや言も告げなむ","#[仮名],あがこひを,つまはしれるを,ゆくふねの,すぎてくべしや,こともつげなむ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あがこひを,[寛]わかこひを,
つまはしれるを,[寛]いもはしれるを,
ゆくふねの,[寛]こくふねの,
すぎてくべしや,[寛]すきてくへしや,
こともつげなむ,[寛]こともつけらひ,
" "#[番号]10/1999","#[題詞](七夕)","#[原文]朱羅引 色妙子 數見者 人妻故 吾可戀奴","#[訓読]赤らひく色ぐはし子をしば見れば人妻ゆゑに我れ恋ひぬべし","#[仮名],あからひく,いろぐはしこを,しばみれば,ひとづまゆゑに,あれこひぬべし","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あからひく[寛],
いろぐはしこを,[寛]しきたへのこを,
しばみれば,[寛]しはみれは,
ひとづまゆゑに,[寛]ひとつまこゑに,
あれこひぬべし,[寛]われこひぬへし,
" "#[番号]10/2000","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 安渡丹 船浮而 秋立待等 妹告与具","#[訓読]天の川安の渡りに舟浮けて秋立つ待つと妹に告げこそ","#[仮名],あまのがは,やすのわたりに,ふねうけて,あきたつまつと,いもにつげこそ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
やすのわたりに[寛],
ふねうけて[寛],
あきたつまつと,[寛]あきたちまつと,
いもにつげこそ,[寛]いもにつけよく,
" "#[番号]10/2001","#[題詞](七夕)","#[原文]従蒼天 徃来吾等須良 汝故 天漢道 名積而叙来","#[訓読]大空ゆ通ふ我れすら汝がゆゑに天の川道をなづみてぞ来し","#[仮名],おほそらゆ,かよふわれすら,ながゆゑに,あまのかはぢを,なづみてぞこし","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
おほそらゆ,[寛]おほそらに,
かよふわれすら[寛],
ながゆゑに,[寛]なれゆゑに,
あまのかはぢを,[寛]あまのかはちを,
なづみてぞこし,[寛]なつみてそくる,
" "#[番号]10/2002","#[題詞](七夕)","#[原文]八千<戈> 神自御世 乏つ 人知尓来 告思者","#[訓読]八千桙の神の御代よりともし妻人知りにけり継ぎてし思へば","#[仮名],やちほこの,かみのみよより,ともしづま,ひとしりにけり,つぎてしおもへば","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]才 -> 戈 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
やちほこの[寛],
かみのみよより[寛],
ともしづま,[寛]ともしつま,
ひとしりにけり[寛],
つぎてしおもへば,[寛]つきてしおもへは,
" "#[番号]10/2003","#[題詞](七夕)","#[原文]吾等戀 丹穂面 今夕母可 天漢原 石枕巻","#[訓読]我が恋ふる丹のほの面わこよひもか天の川原に石枕まく","#[仮名],あがこふる,にのほのおもわ,こよひもか,あまのかはらに,いしまくらまく","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あがこふる,[寛]わかこふる,
にのほのおもわ,[寛]にのほのおもは,
こよひもか[寛],
あまのかはらに[寛],
いしまくらまく,[寛]いそまくらまく,
" "#[番号]10/2004","#[題詞](七夕)","#[原文]己つ 乏子等者 竟津 荒礒巻而寐 君待難","#[訓読]己夫にともしき子らは泊てむ津の荒礒巻きて寝む君待ちかてに","#[仮名],おのづまに,ともしきこらは,はてむつの,ありそまきてねむ,きみまちかてに","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
おのづまに,[寛]おのかつま,
ともしきこらは[寛],
はてむつの,[寛]あらそひつ,
ありそまきてねむ,[寛]あらいそまきて,
きみまちかてに,[寛]ねまくまちかね,
" "#[番号]10/2005","#[題詞](七夕)","#[原文]天地等 別之時従 自つ 然叙<年>而在 金待吾者","#[訓読]天地と別れし時ゆ己が妻しかぞ年にある秋待つ我れは","#[仮名],あめつちと,わかれしときゆ,おのがつま,しかぞとしにある,あきまつわれは","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]手 -> 年 [万葉集童蒙抄]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あめつちと[寛],
わかれしときゆ[寛],
おのがつま,[寛]おのかつま,
しかぞとしにある,[寛]しかそてにある,
あきまつわれは[寛],
" "#[番号]10/2006","#[題詞](七夕)","#[原文]孫星 嘆須つ 事谷毛 告<尓>叙来鶴 見者苦弥","#[訓読]彦星は嘆かす妻に言だにも告げにぞ来つる見れば苦しみ","#[仮名],ひこほしは,なげかすつまに,ことだにも,つげにぞきつる,みればくるしみ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]余 -> 尓 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
ひこほしは,[寛]ひこほしの,
なげかすつまに,[寛]なけかすいもか,
ことだにも,[寛]ことたにも,
つげにぞきつる,[寛]つけにそきつる,
みればくるしみ,[寛]みれはくるしみ,
" "#[番号]10/2007","#[題詞](七夕)","#[原文]久方 天印等 水無<川> 隔而置之 神世之恨","#[訓読]ひさかたの天つしるしと水無し川隔てて置きし神代し恨めし","#[仮名],ひさかたの,あまつしるしと,みなしがは,へだてておきし,かむよしうらめし","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]河 -> 川 [元][類][京]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あまつしるしと,[寛]あまのしるしと,
みなしがは,[寛]みなせかは,
へだてておきし,[寛]へたてておきし,
かむよしうらめし,[寛]かみよのうらみ,
" "#[番号]10/2008","#[題詞](七夕)","#[原文]黒玉 宵霧隠 遠鞆 妹傳 速告与","#[訓読]ぬばたまの夜霧に隠り遠くとも妹が伝へは早く告げこそ","#[仮名],ぬばたまの,よぎりにこもり,とほくとも,いもがつたへは,はやくつげこそ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よぎりにこもり,[寛]よきりこもりて,
とほくとも[寛],
いもがつたへは,[寛]いもしつたへは,
はやくつげこそ,[寛]はやくつけこよ,
" "#[番号]10/2009","#[題詞](七夕)","#[原文]汝戀 妹命者 飽足尓 袖振所見都 及雲隠","#[訓読]汝が恋ふる妹の命は飽き足らに袖振る見えつ雲隠るまで","#[仮名],ながこふる,いものみことは,あきだらに,そでふるみえつ,くもがくるまで","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
ながこふる,[寛]なかこふる,
いものみことは[寛],
あきだらに,[寛]あくまてに,
そでふるみえつ,[寛]そてふりみえつ,
くもがくるまで,[寛]くもかくるまて,
" "#[番号]10/2010","#[題詞](七夕)","#[原文]夕星毛 徃来天道 及何時鹿 仰而将待 月人<壮>","#[訓読]夕星も通ふ天道をいつまでか仰ぎて待たむ月人壮士","#[仮名],ゆふつづも,かよふあまぢを,いつまでか,あふぎてまたむ,つきひとをとこ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]牡 -> 壮 [元][類]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
ゆふつづも,[寛]ゆふつつも,
かよふあまぢを,[寛]かよふあまちを,
いつまでか,[寛]いつまてか,
あふぎてまたむ,[寛]あふきてまたむ,
つきひとをとこ[寛],
" "#[番号]10/2011","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 已向立而 戀等尓 事谷将告 つ言及者","#[訓読]天の川い向ひ立ちて恋しらに言だに告げむ妻と言ふまでは","#[仮名],あまのがは,いむかひたちて,こひしらに,ことだにつげむ,つまといふまでは","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
いむかひたちて,[寛]こむかひたちて,
こひしらに,[寛]こふらくに,
ことだにつげむ,[寛]ことたにつけむ,
つまといふまでは,[寛]つまとふまては,
" "#[番号]10/2012","#[題詞](七夕)","#[原文]水良玉 五百<都>集乎 解毛不<見> 吾者干可太奴 相日待尓","#[訓読]白玉の五百つ集ひを解きもみず我は干しかてぬ逢はむ日待つに","#[仮名],しらたまの,いほつつどひを,ときもみず,わはほしかてぬ,あはむひまつに","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]部 -> 都 [元][類] / 及 -> 見 [西(訂正右書)][元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
しらたまの[寛],
いほつつどひを,[寛]いほつつとひを,
ときもみず,[寛]ときもみす,
わはほしかてぬ,[寛]われはかかたぬ,
あはむひまつに[寛],
" "#[番号]10/2013","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 水陰草 金風 靡見者 時来之","#[訓読]天の川水蔭草の秋風に靡かふ見れば時は来にけり","#[仮名],あまのがは,みづかげくさの,あきかぜに,なびかふみれば,ときはきにけり","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]之 [元][類](塙) 々","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
みづかげくさの,[寛]みつかけくさの,
あきかぜに,[寛]あきかせに,
なびかふみれば,[寛]なひくをみれは,
ときはきにけり,[寛]ときはきぬらし,
" "#[番号]10/2014","#[題詞](七夕)","#[原文]吾等待之 白芽子開奴 今谷毛 尓寶比尓徃奈 越方人邇","#[訓読]我が待ちし秋萩咲きぬ今だにもにほひに行かな彼方人に","#[仮名],わがまちし,あきはぎさきぬ,いまだにも,にほひにゆかな,をちかたひとに","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
わがまちし,[寛]わかまちし,
あきはぎさきぬ,[寛]あきはきさきぬ,
いまだにも,[寛]いまたにも,
にほひにゆかな[寛],
をちかたひとに[寛],
" "#[番号]10/2015","#[題詞](七夕)","#[原文]吾世子尓 裏戀居者 天<漢> 夜船滂動 梶音所聞","#[訓読]我が背子にうら恋ひ居れば天の川夜舟漕ぐなる楫の音聞こゆ","#[仮名],わがせこに,うらこひをれば,あまのがは,よふねこぐなる,かぢのおときこゆ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]河 -> 漢 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
わがせこに,[寛]わかせこに,
うらこひをれば,[寛]うらこひをれは,
あまのがは,[寛]あまのかは,
よふねこぐなる,[寛]よふねこきとよみ,
かぢのおときこゆ,[寛]かちおときこゆ,
" "#[番号]10/2016","#[題詞](七夕)","#[原文]真氣長 戀心自 白風 妹音所聴 紐解徃名","#[訓読]ま日長く恋ふる心ゆ秋風に妹が音聞こゆ紐解き行かな","#[仮名],まけながく,こふるこころゆ,あきかぜに,いもがおときこゆ,ひもときゆかな","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
まけながく,[寛]まけなかく,
こふるこころゆ,[寛]こふるこころし,
あきかぜに,[寛]あきかせに,
いもがおときこゆ,[寛]いもかおときこゆ,
ひもときゆかな[寛],
" "#[番号]10/2017","#[題詞](七夕)","#[原文]戀敷者 氣長物乎 今谷 乏<之>牟可哉 可相夜谷","#[訓読]恋ひしくは日長きものを今だにもともしむべしや逢ふべき夜だに","#[仮名],こひしくは,けながきものを,いまだにも,ともしむべしや,あふべきよだに","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]<> -> 之 [元][紀]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
こひしくは,[寛]こひしけは,
けながきものを,[寛]けなかきものを,
いまだにも,[寛]いまたにも,
ともしむべしや,[寛]ともしむへしや,
あふべきよだに,[寛]あふへきよたに,
" "#[番号]10/2018","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 去歳渡代 遷閇者 河瀬於踏 夜深去来","#[訓読]天の川去年の渡りで移ろへば川瀬を踏むに夜ぞ更けにける","#[仮名],あまのがは,こぞのわたりで,うつろへば,かはせをふむに,よぞふけにける","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
こぞのわたりで,[寛]こそのわたりは,
うつろへば,[寛]うつろへは,
かはせをふむに[寛],
よぞふけにける,[寛]よそふけにける,
" "#[番号]10/2019","#[題詞](七夕)","#[原文]自古 擧而之服 不顧 天河津尓 年序經去来","#[訓読]いにしへゆあげてし服も顧みず天の川津に年ぞ経にける","#[仮名],いにしへゆ,あげてしはたも,かへりみず,あまのかはづに,としぞへにける","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
いにしへゆ,[寛]むかしより,
あげてしはたも,[寛]あけてしころも,
かへりみず,[寛]かへりみす,
あまのかはづに,[寛]あまのかはつに,
としぞへにける,[寛]としそへにける,
" "#[番号]10/2020","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 夜船滂而 雖明 将相等念夜 袖易受将有","#[訓読]天の川夜船を漕ぎて明けぬとも逢はむと思ふ夜袖交へずあらむ","#[仮名],あまのがは,よふねをこぎて,あけぬとも,あはむとおもふよ,そでかへずあらむ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
よふねをこぎて,[寛]よふねをこきて,
あけぬとも[寛],
あはむとおもふよ[寛],
そでかへずあらむ,[寛]そてかへすあれや,
" "#[番号]10/2021","#[題詞](七夕)","#[原文]遥ほ等 手枕易 寐夜 鶏音莫動 明者雖明","#[訓読]遠妻と手枕交へて寝たる夜は鶏がねな鳴き明けば明けぬとも","#[仮名],とほづまと,たまくらかへて,ねたるよは,とりがねななき,あけばあけぬとも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
とほづまと,[寛]とほつまと,
たまくらかへて[寛],
ねたるよは[寛],
とりがねななき,[寛]とりかねなくな,
あけばあけぬとも,[寛]あけはあくとも,
" "#[番号]10/2022","#[題詞](七夕)","#[原文]相見久 Q雖不足 稲目 明去来理 舟出為牟つ","#[訓読]相見らく飽き足らねどもいなのめの明けさりにけり舟出せむ妻","#[仮名],あひみらく,あきだらねども,いなのめの,あけさりにけり,ふなでせむつま","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あひみらく,[寛]あひみまく,
あきだらねども,[寛]あきたらねとも,
いなのめの[寛],
あけさりにけり,[寛]あけゆきにけり,
ふなでせむつま,[寛]ふなてせむいも,
" "#[番号]10/2023","#[題詞](七夕)","#[原文]左尼始而 何太毛不在者 白栲 帶可乞哉 戀毛不<過>者","#[訓読]さ寝そめていくだもあらねば白栲の帯乞ふべしや恋も過ぎねば","#[仮名],さねそめて,いくだもあらねば,しろたへの,おびこふべしや,こひもすぎねば","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]遏 -> 過 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
さねそめて[寛],
いくだもあらねば,[寛]いくたもあらねは,
しろたへの[寛],
おびこふべしや,[寛]おひこふへしや,
こひもすぎねば,[寛]こひもつきねは,
" "#[番号]10/2024","#[題詞](七夕)","#[原文]万世 携手居而 相見鞆 念可過 戀<尓>有莫國","#[訓読]万代にたづさはり居て相見とも思ひ過ぐべき恋にあらなくに","#[仮名],よろづよに,たづさはりゐて,あひみとも,おもひすぐべき,こひにあらなくに","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]奈 -> 尓 [元][類]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
よろづよに,[寛]よろつよに,
たづさはりゐて,[寛]たつさゐゐて,
あひみとも[寛],
おもひすぐべき,[寛]おもひすくへき,
こひにあらなくに,[寛]こひならなくに,
" "#[番号]10/2025","#[題詞](七夕)","#[原文]万世 可照月毛 雲隠 苦物叙 将相登雖念","#[訓読]万代に照るべき月も雲隠り苦しきものぞ逢はむと思へど","#[仮名],よろづよに,てるべきつきも,くもがくり,くるしきものぞ,あはむとおもへど","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
よろづよに,[寛]よろつよに,
てるべきつきも,[寛]てるへきつきも,
くもがくり,[寛]くもかくれ,
くるしきものぞ,[寛]くるしきものそ,
あはむとおもへど,[寛]あはむとおもへと,
" "#[番号]10/2026","#[題詞](七夕)","#[原文]白雲 五百遍隠 雖遠 夜不去将見 妹當者","#[訓読]白雲の五百重に隠り遠くとも宵さらず見む妹があたりは","#[仮名],しらくもの,いほへにかくり,とほくとも,よひさらずみむ,いもがあたりは","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
しらくもの[寛],
いほへにかくり,[寛]いほへかくして,
とほくとも,[寛]とほけとも,
よひさらずみむ,[寛]よかれせすみむ,
いもがあたりは,[寛]いもかあたりは,
" "#[番号]10/2027","#[題詞](七夕)","#[原文]為我登 織女之 其屋戸尓 織白布 織弖兼鴨","#[訓読]我がためと織女のそのやどに織る白栲は織りてけむかも","#[仮名],あがためと,たなばたつめの,そのやどに,おるしろたへは,おりてけむかも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あがためと,[寛]わかためと,
たなばたつめの,[寛]たなはたつめの,
そのやどに,[寛]そのやとに,
おるしろたへは,[寛]をるしらぬのは,
おりてけむかも,[寛]をりてけむかも,
" "#[番号]10/2028","#[題詞](七夕)","#[原文]君不相 久時 織服 白栲衣 垢附麻弖尓","#[訓読]君に逢はず久しき時ゆ織る服の白栲衣垢付くまでに","#[仮名],きみにあはず,ひさしきときゆ,おるはたの,しろたへころも,あかつくまでに","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
きみにあはず,[寛]きみにあはて,
ひさしきときゆ,[寛]ひさしきときに,
おるはたの,[寛]をりきたる,
しろたへころも[寛],
あかつくまでに,[寛]あかつくまてに,
" "#[番号]10/2029","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 梶音聞 孫星 与織女 今夕相霜","#[訓読]天の川楫の音聞こゆ彦星と織女と今夜逢ふらしも","#[仮名],あまのがは,かぢのおときこゆ,ひこほしと,たなばたつめと,こよひあふらしも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
かぢのおときこゆ,[寛]かちのおときこゆ,
ひこほしと[寛],
たなばたつめと,[寛]たなはたつめと,
こよひあふらしも[寛],
" "#[番号]10/2030","#[題詞](七夕)","#[原文]秋去者 <川>霧 天川 河向居而 戀夜多","#[訓読]秋されば川霧立てる天の川川に向き居て恋ふる夜ぞ多き","#[仮名],あきされば,かはぎりたてる,あまのがは,かはにむきゐて,こふるよぞおほき","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]河 -> 川 [元][類] / 霧 [温](塙) 霧立","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あきされば,[寛]あきされは,
かはぎりたてる,[寛]かはきりたちて,
あまのがは,[寛]あまのかは,
かはにむきゐて,[寛]かはにむかひて,
こふるよぞおほき,[寛]こふるよそおほき,
" "#[番号]10/2031","#[題詞](七夕)","#[原文]吉哉 雖不直 奴延鳥 浦嘆居 告子鴨","#[訓読]よしゑやし直ならずともぬえ鳥のうら嘆げ居りと告げむ子もがも","#[仮名],よしゑやし,ただならずとも,ぬえどりの,うらなげをりと,つげむこもがも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,略体,七夕","#[訓異]
よしゑやし[寛],
ただならずとも,[寛]たたならすとも,
ぬえどりの,[寛]ぬえとりの,
うらなげをりと,[寛]うらなきをると,
つげむこもがも,[寛]つけむこもかも,
" "#[番号]10/2032","#[題詞](七夕)","#[原文]一年邇 七夕耳 相人之 戀毛不<過>者 夜深徃久毛 [一云 不盡者 佐宵曽明尓来] ","#[訓読]一年に七日の夜のみ逢ふ人の恋も過ぎねば夜は更けゆくも [一云 尽きねばさ夜ぞ明けにける] ","#[仮名],ひととせに,なぬかのよのみ,あふひとの,こひもすぎねば,よはふけゆくも,[つきねば,さよぞあけにける]","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]遏 -> 過 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
ひととせに[寛],
なぬかのよのみ[寛],
あふひとの[寛],
こひもすぎねば,[寛]こひもつきねは,
よはふけゆくも[寛],
[つきねば,[寛]つきねは,
さよぞあけにける],[寛]さよそあけにける,
" "#[番号]10/2033","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 安川原 定而神競者磨待無","#[訓読]天の川安の川原定而神競者磨待無","#[仮名],あまのがは,やすのかはら*,*****,*******,*******","#[左注]此歌一首庚辰年作之 / 右柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
やすのかはら*,[寛]やすのかはらの,
*****,[寛]さたまりて,
*******,[寛]こころくらへは,
*******,[寛]ときまつなくに,
" "#[番号]10/2034","#[題詞](七夕)","#[原文]棚機之 五百機立而 織布之 秋去衣 孰取見","#[訓読]織女の五百機立てて織る布の秋さり衣誰れか取り見む","#[仮名],たなばたの,いほはたたてて,おるぬのの,あきさりごろも,たれかとりみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
たなばたの,[寛]たなはたの,
いほはたたてて[寛],
おるぬのの,[寛]をるぬのの,
あきさりごろも,[寛]あきさりころも,
たれかとりみむ,[寛]たれかともみむ,
" "#[番号]10/2035","#[題詞](七夕)","#[原文]年有而 今香将巻 烏玉之 夜霧隠 遠妻手乎","#[訓読]年にありて今か巻くらむぬばたまの夜霧隠れる遠妻の手を","#[仮名],としにありて,いまかまくらむ,ぬばたまの,よぎりこもれる,とほづまのてを","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
としにありて[寛],
いまかまくらむ,[寛]いまかまかなむ,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よぎりこもれる,[寛]よきりこもりき,
とほづまのてを,[寛]とほつまのてを,
" "#[番号]10/2036","#[題詞](七夕)","#[原文]吾待之 秋者来沼 妹与吾 何事在曽 紐不解在牟","#[訓読]我が待ちし秋は来りぬ妹と我れと何事あれぞ紐解かずあらむ","#[仮名],わがまちし,あきはきたりぬ,いもとあれと,なにことあれぞ,ひもとかずあらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
わがまちし,[寛]わかまちし,
あきはきたりぬ[寛],
いもとあれと,[寛]いもとわれ,
なにことあれぞ,[寛]なにことあれそ,
ひもとかずあらむ,[寛]ひもとかさらむ,
" "#[番号]10/2037","#[題詞](七夕)","#[原文]年之戀 今夜盡而 明日従者 如常哉 吾戀居牟","#[訓読]年の恋今夜尽して明日よりは常のごとくや我が恋ひ居らむ","#[仮名],としのこひ,こよひつくして,あすよりは,つねのごとくや,あがこひをらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
としのこひ[寛],
こよひつくして[寛],
あすよりは[寛],
つねのごとくや,[寛]つねのことくや,
あがこひをらむ,[寛]わかこひをらむ,
" "#[番号]10/2038","#[題詞](七夕)","#[原文]不合者 氣長物乎 天漢 隔又哉 吾戀将居","#[訓読]逢はなくは日長きものを天の川隔ててまたや我が恋ひ居らむ","#[仮名],あはなくは,けながきものを,あまのがは,へだててまたや,あがこひをらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あはなくは,[寛]あはさるは,
けながきものを,[寛]けなかきものを,
あまのがは,[寛]あまのかは,
へだててまたや,[寛]へたててまたや,
あがこひをらむ,[寛]わかこひをらむ,
" "#[番号]10/2039","#[題詞](七夕)","#[原文]戀家口 氣長物乎 可合有 夕谷君之 不来益有良武","#[訓読]恋しけく日長きものを逢ふべくある宵だに君が来まさずあるらむ","#[仮名],こひしけく,けながきものを,あふべくある,よひだにきみが,きまさずあるらむ","#[左注]","#[校異]武 [元][類][紀](塙) 牟","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
こひしけく[寛],
けながきものを,[寛]けなかきものを,
あふべくある,[寛]あふへくある,
よひだにきみが,[寛]よにたにきみか,
きまさずあるらむ,[寛]きまささるらむ,
" "#[番号]10/2040","#[題詞](七夕)","#[原文]牽牛 与織女 今夜相 天漢門尓 浪立勿謹","#[訓読]彦星と織女と今夜逢ふ天の川門に波立つなゆめ","#[仮名],ひこほしと,たなばたつめと,こよひあふ,あまのかはとに,なみたつなゆめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
ひこほしと[寛],
たなばたつめと,[寛]たなはたつめと,
こよひあふ,[寛]こよひあはむ,
あまのかはとに[寛],
なみたつなゆめ[寛],
" "#[番号]10/2041","#[題詞](七夕)","#[原文]秋風 吹漂蕩 白雲者 織女之 天津領巾毳","#[訓読]秋風の吹きただよはす白雲は織女の天つ領巾かも","#[仮名],あきかぜの,ふきただよはす,しらくもは,たなばたつめの,あまつひれかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あきかぜの,[寛]あきかせの,
ふきただよはす,[寛]ふきたたよはす,
しらくもは[寛],
たなばたつめの,[寛]たなはたつめの,
あまつひれかも[寛],
" "#[番号]10/2042","#[題詞](七夕)","#[原文]數裳 相不見君矣 天漢 舟出速為 夜不深間","#[訓読]しばしばも相見ぬ君を天の川舟出早せよ夜の更けぬ間に","#[仮名],しばしばも,あひみぬきみを,あまのがは,ふなではやせよ,よのふけぬまに","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
しばしばも,[寛]しはしはも,
あひみぬきみを[寛],
あまのがは,[寛]あまのかは,
ふなではやせよ,[寛]ふなてはやせよ,
よのふけぬまに[寛],
" "#[番号]10/2043","#[題詞](七夕)","#[原文]秋風之 清夕 天漢 舟滂度 月人<壮>子","#[訓読]秋風の清き夕に天の川舟漕ぎ渡る月人壮士","#[仮名],あきかぜの,きよきゆふへに,あまのがは,ふねこぎわたる,つきひとをとこ","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [類][紀][温]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あきかぜの,[寛]あきかせの,
きよきゆふへに[寛],
あまのがは,[寛]あまのかは,
ふねこぎわたる,[寛]ふねこきわたる,
つきひとをとこ[寛],
" "#[番号]10/2044","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 霧立度 牽牛之 楫音所聞 夜深徃","#[訓読]天の川霧立ちわたり彦星の楫の音聞こゆ夜の更けゆけば","#[仮名],あまのがは,きりたちわたり,ひこほしの,かぢのおときこゆ,よのふけゆけば","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
きりたちわたり,[寛]きりたちわたる,
ひこほしの[寛],
かぢのおときこゆ,[寛]かちのおときこゆ,
よのふけゆけば,[寛]よのふけゆけは,
" "#[番号]10/2045","#[題詞](七夕)","#[原文]君舟 今滂来良之 天漢 霧立度 此川瀬","#[訓読]君が舟今漕ぎ来らし天の川霧立ちわたるこの川の瀬に","#[仮名],きみがふね,いまこぎくらし,あまのがは,きりたちわたる,このかはのせに","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
きみがふね,[寛]きみかふね,
いまこぎくらし,[寛]いまこきくらし,
あまのがは,[寛]あまのかは,
きりたちわたる[寛],
このかはのせに[寛],
" "#[番号]10/2046","#[題詞](七夕)","#[原文]秋風尓 河浪起 ま 八十舟津 三舟停","#[訓読]秋風に川波立ちぬしましくは八十の舟津にみ舟留めよ","#[仮名],あきかぜに,かはなみたちぬ,しましくは,やそのふなつに,みふねとどめよ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あきかぜに,[寛]あきかせに,
かはなみたちぬ[寛],
しましくは,[寛]しはらくは,
やそのふなつに[寛],
みふねとどめよ,[寛]みふねととめむ,
" "#[番号]10/2047","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 <河>聲清之 牽牛之 秋滂船之 浪せ香","#[訓読]天の川川の音清し彦星の秋漕ぐ舟の波のさわきか","#[仮名],あまのがは,かはのおときよし,ひこほしの,あきこぐふねの,なみのさわきか","#[左注]","#[校異]川 -> 河 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
かはのおときよし,[寛]かはおときよし,
ひこほしの[寛],
あきこぐふねの,[寛]あきこくふねの,
なみのさわきか,[寛]なみのさわくか,
" "#[番号]10/2048","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 <河>門立 吾戀之 君来奈里 紐解待 [一云 天<河> <川>向立] ","#[訓読]天の川川門に立ちて我が恋ひし君来ますなり紐解き待たむ [一云 天の川川に向き立ち] ","#[仮名],あまのがは,かはとにたちて,あがこひし,きみきますなり,ひもときまたむ,[あまのがは,かはにむきたち]","#[左注]","#[校異]川 -> 河 [元][類][紀] / 川 -> 河 [元][紀][温] / 河 -> 川 [元][紀][温]","#[事項],秋雑歌,七夕,異伝","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
かはとにたちて[寛],
あがこひし,[寛]わかこひし,
きみきますなり[寛],
ひもときまたむ[寛],
[あまのがは,[寛]あまのかは,
かはにむきたち],[寛]かはむきたち,
" "#[番号]10/2049","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 <河>門座而 年月 戀来君 今夜會可母","#[訓読]天の川川門に居りて年月を恋ひ来し君に今夜逢へるかも","#[仮名],あまのがは,かはとにをりて,としつきを,こひこしきみに,こよひあへるかも","#[左注]","#[校異]川 -> 河 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
かはとにをりて,[寛]かはとにさつつ,
としつきを[寛],
こひこしきみに[寛],
こよひあへるかも[寛],
" "#[番号]10/2050","#[題詞](七夕)","#[原文]明日従者 吾玉床乎 打拂 公常不宿 孤可母寐","#[訓読]明日よりは我が玉床をうち掃ひ君と寐ねずてひとりかも寝む","#[仮名],あすよりは,あがたまどこを,うちはらひ,きみといねずて,ひとりかもねむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あすよりは[寛],
あがたまどこを,[寛]わかたまゆかを,
うちはらひ[寛],
きみといねずて,[寛]きみとはゑすて,
ひとりかもねむ[寛],
" "#[番号]10/2051","#[題詞](七夕)","#[原文]天原 徃射跡 白檀 挽而隠在 月人<壮>子","#[訓読]天の原行きて射てむと白真弓引きて隠れる月人壮士","#[仮名],あまのはら,ゆきていてむと,しらまゆみ,ひきてこもれる,つきひとをとこ","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [類][紀][温]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのはら[寛],
ゆきていてむと,[寛]ゆきてやいると,
しらまゆみ[寛],
ひきてこもれる,[寛]ひきてかくせる,
つきひとをとこ[寛],
" "#[番号]10/2052","#[題詞](七夕)","#[原文]此夕 零来雨者 男星之 早滂船之 賀伊乃散鴨","#[訓読]この夕降りくる雨は彦星の早漕ぐ舟の櫂の散りかも","#[仮名],このゆふへ,ふりくるあめは,ひこほしの,はやこぐふねの,かいのちりかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
このゆふへ[寛],
ふりくるあめは[寛],
ひこほしの[寛],
はやこぐふねの,[寛]はやこくふねの,
かいのちりかも,[寛]かいのちるかも,
" "#[番号]10/2053","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 八十瀬霧合 男星之 時待船 今滂良之","#[訓読]天の川八十瀬霧らへり彦星の時待つ舟は今し漕ぐらし","#[仮名],あまのがは,やそせきらへり,ひこほしの,ときまつふねは,いましこぐらし","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
やそせきらへり,[寛]やそせきりあふ,
ひこほしの[寛],
ときまつふねは[寛],
いましこぐらし,[寛]いまかこくらし,
" "#[番号]10/2054","#[題詞](七夕)","#[原文]風吹而 河浪起 引船丹 度裳来 夜不降間尓","#[訓読]風吹きて川波立ちぬ引き船に渡りも来ませ夜の更けぬ間に","#[仮名],かぜふきて,かはなみたちぬ,ひきふねに,わたりもきませ,よのふけぬまに","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
かぜふきて,[寛]かせふきて,
かはなみたちぬ[寛],
ひきふねに,[寛]ひくふねに,
わたりもきませ[寛],
よのふけぬまに[寛],
" "#[番号]10/2055","#[題詞](七夕)","#[原文]天河 遠<渡>者 無友 公之舟出者 年尓社候","#[訓読]天の川遠き渡りはなけれども君が舟出は年にこそ待て","#[仮名],あまのがは,とほきわたりは,なけれども,きみがふなでは,としにこそまて","#[左注]","#[校異]度 -> 渡 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
とほきわたりは[寛],
なけれども,[寛]なけれとも,
きみがふなでは,[寛]きみかふなては,
としにこそまて[寛],
" "#[番号]10/2056","#[題詞](七夕)","#[原文]天<漢> 打橋度 妹之家道 不止通 時不待友","#[訓読]天の川打橋渡せ妹が家道やまず通はむ時待たずとも","#[仮名],あまのがは,うちはしわたせ,いもがいへぢ,やまずかよはむ,ときまたずとも","#[左注]","#[校異]河 -> 漢 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
うちはしわたせ,[寛]うちはしわたす,
いもがいへぢ,[寛]いもかいへち,
やまずかよはむ,[寛]やますかよはむ,
ときまたずとも,[寛]ときまたすとも,
" "#[番号]10/2057","#[題詞](七夕)","#[原文]月累 吾思妹 會夜者 今之七夕 續巨勢奴鴨","#[訓読]月重ね我が思ふ妹に逢へる夜は今し七夜を継ぎこせぬかも","#[仮名],つきかさね,あがおもふいもに,あへるよは,いましななよを,つぎこせぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
つきかさね[寛],
あがおもふいもに,[寛]わかおもふいもに,
あへるよは[寛],
いましななよを,[寛]このなぬかのよ,
つぎこせぬかも[寛],
" "#[番号]10/2058","#[題詞](七夕)","#[原文]年丹装 吾舟滂 天河 風者吹友 浪立勿忌","#[訓読]年に装ふ我が舟漕がむ天の川風は吹くとも波立つなゆめ","#[仮名],としによそふ,わがふねこがむ,あまのがは,かぜはふくとも,なみたつなゆめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
としによそふ[寛],
わがふねこがむ,[寛]わかふねこかむ,
あまのがは,[寛]あまのかは,
かぜはふくとも,[寛]かせはふくとも,
なみたつなゆめ[寛],
" "#[番号]10/2059","#[題詞](七夕)","#[原文]天河 浪者立友 吾舟者 率滂出 夜之不深間尓","#[訓読]天の川波は立つとも我が舟はいざ漕ぎ出でむ夜の更けぬ間に","#[仮名],あまのがは,なみはたつとも,わがふねは,いざこぎいでむ,よのふけぬまに","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
なみはたつとも[寛],
わがふねは,[寛]わかふねは,
いざこぎいでむ,[寛]いさこきいてむ,
よのふけぬまに[寛],
" "#[番号]10/2060","#[題詞](七夕)","#[原文]直今夜 相有兒等尓 事問母 未為而 左夜曽明二来","#[訓読]ただ今夜逢ひたる子らに言どひもいまだせずしてさ夜ぞ明けにける","#[仮名],ただこよひ,あひたるこらに,ことどひも,いまだせずして,さよぞあけにける","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
ただこよひ,[寛]たたこよひ,
あひたるこらに[寛],
ことどひも,[寛]こととひも,
いまだせずして,[寛]いまたせすして,
さよぞあけにける,[寛]さよそあけにける,
" "#[番号]10/2061","#[題詞](七夕)","#[原文]天河 白浪高 吾戀 公之舟出者 今為下","#[訓読]天の川白波高し我が恋ふる君が舟出は今しすらしも","#[仮名],あまのがは,しらなみたかし,あがこふる,きみがふなでは,いましすらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
しらなみたかし,[寛]しらなみたかく,
あがこふる,[寛]わかこふる,
きみがふなでは,[寛]きみかふなては,
いましすらしも,[寛]いまそすらしも,
" "#[番号]10/2062","#[題詞](七夕)","#[原文]機 さ木持徃而 天<漢> 打橋度 公之来為","#[訓読]機物のまね木持ち行きて天の川打橋渡す君が来むため","#[仮名],はたものの,まねきもちゆきて,あまのがは,うちはしわたす,きみがこむため","#[左注]","#[校異]河 -> 漢 [元][類]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
はたものの[寛],
まねきもちゆきて,[寛]ふみきもていて,
あまのがは,[寛]あまのかは,
うちはしわたす[寛],
きみがこむため,[寛]きみかこむため,
" "#[番号]10/2063","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 霧立上 棚幡乃 雲衣能 飄袖鴨","#[訓読]天の川霧立ち上る織女の雲の衣のかへる袖かも","#[仮名],あまのがは,きりたちのぼる,たなばたの,くものころもの,かへるそでかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
きりたちのぼる,[寛]きりたちのほる,
たなばたの,[寛]たなはたの,
くものころもの[寛],
かへるそでかも,[寛]かへるそてかも,
" "#[番号]10/2064","#[題詞](七夕)","#[原文]古 織義之八多乎 此暮 衣縫而 君待吾乎","#[訓読]いにしへゆ織りてし服をこの夕衣に縫ひて君待つ我れを","#[仮名],いにしへゆ,おりてしはたを,このゆふへ,ころもにぬひて,きみまつわれを","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
いにしへゆ,[寛]いにしへに,
おりてしはたを[寛],
このゆふへ[寛],
ころもにぬひて[寛],
きみまつわれを[寛],
" "#[番号]10/2065","#[題詞](七夕)","#[原文]足玉母 手珠毛由良尓 織旗乎 公之御衣尓 縫将堪可聞","#[訓読]足玉も手玉もゆらに織る服を君が御衣に縫ひもあへむかも","#[仮名],あしだまも,ただまもゆらに,おるはたを,きみがみけしに,ぬひもあへむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あしだまも,[寛]あしたまも,
ただまもゆらに,[寛]てたまもゆらに,
おるはたを,[寛]をるはたを,
きみがみけしに,[寛]きみかみけしに,
ぬひもあへむかも,[寛]ぬひあへむかも,
" "#[番号]10/2066","#[題詞](七夕)","#[原文]擇月日 逢義之有者 別乃 惜有君者 明日副裳欲得","#[訓読]月日えり逢ひてしあれば別れまく惜しくある君は明日さへもがも","#[仮名],つきひえり,あひてしあれば,わかれまく,をしくあるきみは,あすさへもがも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
つきひえり[寛],
あひてしあれば,[寛]あひてしあれは,
わかれまく,[寛]わかれちの,
をしくあるきみは,[寛]をしかるきみは,
あすさへもがも,[寛]あすさへもかな,
" "#[番号]10/2067","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 渡瀬深弥 泛船而 掉来君之 楫<音>所聞","#[訓読]天の川渡り瀬深み舟浮けて漕ぎ来る君が楫の音聞こゆ","#[仮名],あまのがは,わたりぜふかみ,ふねうけて,こぎくるきみが,かぢのおときこゆ","#[左注]","#[校異]之音 -> 音 [元][類]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
わたりぜふかみ,[寛]わたるせふかみ,
ふねうけて[寛],
こぎくるきみが,[寛]さしくるきみか,
かぢのおときこゆ,[寛]かちのおときこゆ,
" "#[番号]10/2068","#[題詞](七夕)","#[原文]天原 振放見者 天漢 霧立渡 公者来良志","#[訓読]天の原降り放け見れば天の川霧立ちわたる君は来ぬらし","#[仮名],あまのはら,ふりさけみれば,あまのがは,きりたちわたる,きみはきぬらし","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのはら[寛],
ふりさけみれば,[寛]ふりさけみれは,
あまのがは,[寛]あまのかは,
きりたちわたる[寛],
きみはきぬらし[寛],
" "#[番号]10/2069","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 瀬毎幣 奉 情者君乎 幸来座跡","#[訓読]天の川瀬ごとに幣をたてまつる心は君を幸く来ませと","#[仮名],あまのがは,せごとにぬさを,たてまつる,こころはきみを,さきくきませと","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
せごとにぬさを,[寛]せことにぬさを,
たてまつる[寛],
こころはきみを[寛],
さきくきませと,[寛]さきくいませと,
" "#[番号]10/2070","#[題詞](七夕)","#[原文]久<堅>之 天河津尓 舟泛而 君待夜等者 不明毛有寐鹿","#[訓読]久方の天の川津に舟浮けて君待つ夜らは明けずもあらぬか","#[仮名],ひさかたの,あまのかはづに,ふねうけて,きみまつよらは,あけずもあらぬか","#[左注]","#[校異]方 -> 堅 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あまのかはづに,[寛]まのかはつに,
ふねうけて[寛],
きみまつよらは[寛],
あけずもあらぬか,[寛]あけすもあらぬか,
" "#[番号]10/2071","#[題詞](七夕)","#[原文]天河 足沾渡 君之手毛 未枕者 夜之深去良久","#[訓読]天の川なづさひ渡る君が手もいまだまかねば夜の更けぬらく","#[仮名],あまのがは,なづさひわたる,きみがても,いまだまかねば,よのふけぬらく","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
なづさひわたる,[寛]あしぬれわたる,
きみがても,[寛]きみかても,
いまだまかねば,[寛]いまたまかねは,
よのふけぬらく,[寛]よのふけぬらし,
" "#[番号]10/2072","#[題詞](七夕)","#[原文]渡守 船度世乎跡 呼音之 不至者疑 梶<聲之>不為","#[訓読]渡り守舟渡せをと呼ぶ声の至らねばかも楫の音のせぬ","#[仮名],わたりもり,ふねわたせをと,よぶこゑの,いたらねばかも,かぢのおとのせぬ","#[左注]","#[校異]之聲 -> 聲之 [元][類]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
わたりもり[寛],
ふねわたせをと[寛],
よぶこゑの,[寛]よふこゑの,
いたらねばかも,[寛]いたらねはかも,
かぢのおとのせぬ,[寛]かちのおとせぬ,
" "#[番号]10/2073","#[題詞](七夕)","#[原文]真氣長 河向立 有之袖 今夜巻跡 念之吉沙","#[訓読]ま日長く川に向き立ちありし袖今夜巻かむと思はくがよさ","#[仮名],まけながく,かはにむきたち,ありしそで,こよひまかむと,おもはくがよさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
まけながく,[寛]まけなかく,
かはにむきたち[寛],
ありしそで,[寛]たりしそて,
こよひまかむと[寛],
おもはくがよさ,[寛]おもへるかよさ,
" "#[番号]10/2074","#[題詞](七夕)","#[原文]天<河> 渡湍毎 思乍 来之雲知師 逢有久念者","#[訓読]天の川渡り瀬ごとに思ひつつ来しくもしるし逢へらく思へば","#[仮名],あまのがは,わたりぜごとに,おもひつつ,こしくもしるし,あへらくおもへば","#[左注]","#[校異]漢 -> 河 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
わたりぜごとに,[寛]わたるせことに,
おもひつつ[寛],
こしくもしるし[寛],
あへらくおもへば,[寛]あへらくおもへは,
" "#[番号]10/2075","#[題詞](七夕)","#[原文]人左倍也 見不継将有 牽牛之 嬬喚舟之 近附徃乎 [一云 見乍有良武] ","#[訓読]人さへや見継がずあらむ彦星の妻呼ぶ舟の近づき行くを [一云 見つつあるらむ] ","#[仮名],ひとさへや,みつがずあらむ,ひこほしの,つまよぶふねの,ちかづきゆくを,[みつつあるらむ]","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
ひとさへや[寛],
みつがずあらむ,[寛]みつかすあらむ,
ひこほしの[寛],
つまよぶふねの,[寛]つまよふふねの,
ちかづきゆくを,[寛]ちかつきゆくを,
[みつつあるらむ][寛],
" "#[番号]10/2076","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 瀬乎早鴨 烏珠之 夜者闌尓乍 不合牽牛","#[訓読]天の川瀬を早みかもぬばたまの夜は更けにつつ逢はぬ彦星","#[仮名],あまのがは,せをはやみかも,ぬばたまの,よはふけにつつ,あはぬひこほし","#[左注]","#[校異]闌 [元][類] 開","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
せをはやみかも[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よはふけにつつ[寛],
あはぬひこほし[寛],
" "#[番号]10/2077","#[題詞](七夕)","#[原文]渡守 舟早渡世 一年尓 二遍徃来 君尓有勿久尓","#[訓読]渡り守舟早渡せ一年にふたたび通ふ君にあらなくに","#[仮名],わたりもり,ふねはやわたせ,ひととせに,ふたたびかよふ,きみにあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
わたりもり[寛],
ふねはやわたせ[寛],
ひととせに[寛],
ふたたびかよふ,[寛]ふたたひかよふ,
きみにあらなくに[寛],
" "#[番号]10/2078","#[題詞](七夕)","#[原文]玉葛 不絶物可良 佐宿者 年之度尓 直一夜耳","#[訓読]玉葛絶えぬものからさ寝らくは年の渡りにただ一夜のみ","#[仮名],たまかづら,たえぬものから,さぬらくは,としのわたりに,ただひとよのみ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
たまかづら,[寛]たまかつら,
たえぬものから[寛],
さぬらくは[寛],
としのわたりに[寛],
ただひとよのみ,[寛]たたひとよのみ,
" "#[番号]10/2079","#[題詞](七夕)","#[原文]戀日者 <食>長物乎 今夜谷 令乏應哉 可相物乎","#[訓読]恋ふる日は日長きものを今夜だにともしむべしや逢ふべきものを","#[仮名],こふるひは,けながきものを,こよひだに,ともしむべしや,あふべきものを","#[左注]","#[校異]氣 -> 食 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
こふるひは[寛],
けながきものを,[寛]けなかきものを,
こよひだに,[寛]こよひたに,
ともしむべしや,[寛]ともしむへしや,
あふべきものを,[寛]あふへきものを,
" "#[番号]10/2080","#[題詞](七夕)","#[原文]織女之 今夜相奈婆 如常 明日乎阻而 年者将長","#[訓読]織女の今夜逢ひなば常のごと明日を隔てて年は長けむ","#[仮名],たなばたの,こよひあひなば,つねのごと,あすをへだてて,としはながけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
たなばたの,[寛]たなはたの,
こよひあひなば,[寛]こよひあひなは,
つねのごと,[寛]つねのこと,
あすをへだてて,[寛]あすをへたてて,
としはながけむ,[寛]としはなかけれ,
" "#[番号]10/2081","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 棚橋渡 織女之 伊渡左牟尓 棚橋渡","#[訓読]天の川棚橋渡せ織女のい渡らさむに棚橋渡せ","#[仮名],あまのがは,たなはしわたせ,たなばたの,いわたらさむに,たなはしわたせ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
たなはしわたせ,[寛]たなはしわたす,
たなばたの,[寛]たなはたの,
いわたらさむに[寛],
たなはしわたせ,[寛]たなはしわたす,
" "#[番号]10/2082","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 河門八十有 何尓可 君之三船乎 吾待将居","#[訓読]天の川川門八十ありいづくにか君がみ舟を我が待ち居らむ","#[仮名],あまのがは,かはとやそあり,いづくにか,きみがみふねを,わがまちをらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
かはとやそあり[寛],
いづくにか,[寛]いつこにか,
きみがみふねを,[寛]きみかみふねを,
わがまちをらむ,[寛]わかまちをらむ,
" "#[番号]10/2083","#[題詞](七夕)","#[原文]秋風乃 吹西日従 天漢 瀬尓出立 待登告許曽","#[訓読]秋風の吹きにし日より天の川瀬に出で立ちて待つと告げこそ","#[仮名],あきかぜの,ふきにしひより,あまのがは,せにいでたちて,まつとつげこそ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あきかぜの,[寛]あきかせの,
ふきにしひより[寛],
あまのがは,[寛]あまのかは,
せにいでたちて,[寛]せにいてたちて,
まつとつげこそ,[寛]まつとつけこそ,
" "#[番号]10/2084","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 去年之渡湍 有二家里 君<之>将来 道乃不知久","#[訓読]天の川去年の渡り瀬荒れにけり君が来まさむ道の知らなく","#[仮名],あまのがは,こぞのわたりぜ,あれにけり,きみがきまさむ,みちのしらなく","#[左注]","#[校異]<> -> 之 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
こぞのわたりぜ,[寛]こそのわたりせ,
あれにけり[寛],
きみがきまさむ,[寛]きみかきまさむ,
みちのしらなく[寛],
" "#[番号]10/2085","#[題詞](七夕)","#[原文]天漢 湍瀬尓白浪 雖高 直渡来沼 時者苦三","#[訓読]天の川瀬々に白波高けども直渡り来ぬ待たば苦しみ","#[仮名],あまのがは,せぜにしらなみ,たかけども,ただわたりきぬ,またばくるしみ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
せぜにしらなみ,[寛]せせにしらなみ,
たかけども,[寛]たかけれと,
ただわたりきぬ,[寛]たたわたりきぬ,
またばくるしみ,[寛]まてはくるしみ,
" "#[番号]10/2086","#[題詞](七夕)","#[原文]牽牛之 嬬喚舟之 引<綱>乃 将絶跡君乎 吾<之>念勿國","#[訓読]彦星の妻呼ぶ舟の引き綱の絶えむと君を我が思はなくに","#[仮名],ひこほしの,つまよぶふねの,ひきづなの,たえむときみを,わがおもはなくに","#[左注]","#[校異]綱 [西(上書訂正)][元][類][紀] / 久 -> 之 [万葉考]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
ひこほしの[寛],
つまよぶふねの,[寛]つまよふふねの,
ひきづなの,[寛]ひくつなの,
たえむときみを[寛],
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]10/2087","#[題詞](七夕)","#[原文]渡守 舟出為将出 今夜耳 相見而後者 不相物可毛","#[訓読]渡り守舟出し出でむ今夜のみ相見て後は逢はじものかも","#[仮名],わたりもり,ふなでしいでむ,こよひのみ,あひみてのちは,あはじものかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
わたりもり[寛],
ふなでしいでむ,[寛]ふなてしいてむ,
こよひのみ[寛],
あひみてのちは[寛],
あはじものかも,[寛]あはしものかも,
" "#[番号]10/2088","#[題詞](七夕)","#[原文]吾隠有 楫棹無而 渡守 舟将借八方 須臾者有待","#[訓読]我が隠せる楫棹なくて渡り守舟貸さめやもしましはあり待て","#[仮名],わがかくせる,かぢさをなくて,わたりもり,ふねかさめやも,しましはありまて","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
わがかくせる,[寛]わかかくせる,
かぢさをなくて,[寛]かちさほなくて,
わたりもり[寛],
ふねかさめやも[寛],
しましはありまて,[寛]しはしはありまて,
" "#[番号]10/2089","#[題詞](七夕)","#[原文]乾坤之 初時従 天漢 射向居而 一年丹 兩遍不遭 妻戀尓 物念人 天漢 安乃川原乃 有通 出々乃渡丹 具穂船乃 艫丹裳舳丹裳 船装 真梶繁<抜> 旗<芒> 本葉裳具世丹 秋風乃 吹<来>夕丹 天<河> 白浪凌 落沸 速湍渉 稚草乃 妻手枕迹 大<舟>乃 思憑而 滂来等六 其夫乃子我 荒珠乃 年緒長 思来之 戀将盡 七月 七日之夕者 吾毛悲焉 ","#[訓読]天地の 初めの時ゆ 天の川 い向ひ居りて 一年に ふたたび逢はぬ 妻恋ひに 物思ふ人 天の川 安の川原の あり通ふ 出の渡りに そほ舟の 艫にも舳にも 舟装ひ ま楫しじ貫き 旗すすき 本葉もそよに 秋風の 吹きくる宵に 天の川 白波しのぎ 落ちたぎつ 早瀬渡りて 若草の 妻を巻かむと 大船の 思ひ頼みて 漕ぎ来らむ その夫の子が あらたまの 年の緒長く 思ひ来し 恋尽すらむ 七月の 七日の宵は 我れも悲しも ","#[仮名],あめつちの,はじめのときゆ,あまのがは,いむかひをりて,ひととせに,ふたたびあはぬ,つまごひに,ものもふひと,あまのがは,やすのかはらの,ありがよふ,いでのわたりに,そほぶねの,ともにもへにも,ふなよそひ,まかぢしじぬき,はたすすき,もとはもそよに,あきかぜの,ふきくるよひに,あまのがは,しらなみしのぎ,おちたぎつ,はやせわたりて,わかくさの,つまをまかむと,おほぶねの,おもひたのみて,こぎくらむ,そのつまのこが,あらたまの,としのをながく,おもひこし,こひつくすらむ,ふみつきの,なぬかのよひは,われもかなしも","#[左注]","#[校異]出々 (塙)(楓) 出 / <> -> 抜 [西(右書)][元][類][紀] / 荒 -> 芒 [万葉考] / <> -> 来 [元][類][紀] / 川 -> 河 [元][類][紀] / 船 -> 舟 [元][紀]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あめつちの[寛],
はじめのときゆ,[寛]はしめのときゆ,
あまのがは,[寛]あまのかは,
いむかひをりて[寛],
ひととせに[寛],
ふたたびあはぬ,[寛]ふたたひあはぬ,
つまごひに,[寛]つまこひに,
ものもふひと,[寛]おのおもふひと,
あまのがは,[寛]あまのかは,
やすのかはらの[寛],
ありがよふ,[寛]ありかよひ,
いでのわたりに,[寛]ててのわたりに,
そほぶねの,[寛]くほふねの,
ともにもへにも[寛],
ふなよそひ[寛],
まかぢしじぬき,[寛]まかちししぬき,
はたすすき,[寛]はたあられ,
もとはもそよに,[寛]もとはもくせに,
あきかぜの,[寛]あきかせの,
ふきくるよひに,[寛]ふきくるくれに,
あまのがは,[寛]あまのかは,
しらなみしのぎ,[寛]しらなみしのき,
おちたぎつ,[寛]おちたきつ,
はやせわたりて[寛],
わかくさの[寛],
つまをまかむと,[寛]つまたまくらと,
おほぶねの,[寛]おほふねの,
おもひたのみて[寛],
こぎくらむ,[寛]こきくらむ,
そのつまのこが,[寛]そのつまのこか,
あらたまの[寛],
としのをながく,[寛]としのをなかく,
おもひこし[寛],
こひつくすらむ,[寛]こひはつきけむ,
ふみつきの,[寛]はつあき,
なぬかのよひは[寛],
われもかなしも[寛],
" "#[番号]10/2090","#[題詞](七夕)反歌","#[原文]狛錦 紐解易之 天人乃 妻問夕叙 吾裳将偲","#[訓読]高麗錦紐解きかはし天人の妻問ふ宵ぞ我れも偲はむ","#[仮名],こまにしき,ひもときかはし,あめひとの,つまどふよひぞ,われもしのはむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
こまにしき[寛],
ひもときかはし[寛],
あめひとの,[寛]ひこほしの,
つまどふよひぞ,[寛]つまとふよひそ,
われもしのはむ[寛],
" "#[番号]10/2091","#[題詞](七夕)(反歌)","#[原文]彦星之 <河>瀬渡 左小舟乃 得行而将泊 河津石所念","#[訓読]彦星の川瀬を渡るさ小舟のえ行きて泊てむ川津し思ほゆ","#[仮名],ひこほしの,かはせをわたる,さをぶねの,えゆきてはてむ,かはづしおもほゆ","#[左注]","#[校異]川 -> 河 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
ひこほしの[寛],
かはせをわたる[寛],
さをぶねの,[寛]さをふねの,
えゆきてはてむ,[寛]とゆきてはてむ,
かはづしおもほゆ,[寛]かはつしそおもふ,
" "#[番号]10/2092","#[題詞](七夕)","#[原文]天地跡 別之時従 久方乃 天驗常 <定>大王 天之河原尓 璞 月累而 妹尓相 時候跡 立待尓 吾衣手尓 秋風之 吹反者 立<座> 多土伎乎不知 村肝 心不欲 解衣 思乱而 何時跡 吾待今夜 此川 行長 有得鴨 ","#[訓読]天地と 別れし時ゆ 久方の 天つしるしと 定めてし 天の川原に あらたまの 月重なりて 妹に逢ふ 時さもらふと 立ち待つに 我が衣手に 秋風の 吹きかへらへば 立ちて居て たどきを知らに むらきもの 心いさよひ 解き衣の 思ひ乱れて いつしかと 我が待つ今夜 この川の 流れの長く ありこせぬかも ","#[仮名],あめつちと,わかれしときゆ,ひさかたの,あまつしるしと,さだめてし,あまのかはらに,あらたまの,つきかさなりて,いもにあふ,ときさもらふと,たちまつに,わがころもでに,あきかぜの,ふきかへらへば,たちてゐて,たどきをしらに,むらきもの,こころいさよひ,とききぬの,おもひみだれて,いつしかと,わがまつこよひ,このかはの,ながれのながく,ありこせぬかも","#[左注]","#[校異]弖 -> 定 [元][類][紀] / 坐 -> 座 [元][類][紀] / 欲 [万葉集古義](塙)(楓) 知欲比","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
あめつちと[寛],
わかれしときゆ[寛],
ひさかたの[寛],
あまつしるしと,[寛]あましるしとて,
さだめてし,[寛]おほきみの,
あまのかはらに[寛],
あらたまの[寛],
つきかさなりて,[寛]つきをかさねて,
いもにあふ[寛],
ときさもらふと,[寛]ときしをまつと,
たちまつに[寛],
わがころもでに,[寛]わかころもてに,
あきかぜの,[寛]あきかせの,
ふきかへらへば,[寛]ふきしかへせは,
たちてゐて[寛],
たどきをしらに[寛]たつきをしらす,
むらきもの[寛],
こころいさよひ,[寛]こころおほえす,
とききぬの[寛],
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
いつしかと[寛],
わがまつこよひ,[寛]わかまつこよひ,
このかはの[寛],
ながれのながく,[寛]ゆきなかく,
ありこせぬかも,[寛]あるとかも,
" "#[番号]10/2093","#[題詞](七夕)反歌","#[原文]妹尓相 時片待跡 久方乃 天之漢原尓 月叙經来","#[訓読]妹に逢ふ時片待つとひさかたの天の川原に月ぞ経にける","#[仮名],いもにあふ,ときかたまつと,ひさかたの,あまのかはらに,つきぞへにける","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],秋雑歌,七夕","#[訓異]
いもにあふ[寛],
ときかたまつと[寛],
ひさかたの[寛],
あまのかはらに[寛],
つきぞへにける,[寛]つきそへにける,
" "#[番号]10/2094","#[題詞]詠花","#[原文]竿志鹿之 心相念 秋芽子之 <鍾>礼零丹 落僧惜毛","#[訓読]さを鹿の心相思ふ秋萩のしぐれの降るに散らくし惜しも","#[仮名],さをしかの,こころあひおもふ,あきはぎの,しぐれのふるに,ちらくしをしも","#[左注](右二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]鐘 -> 鍾 [紀]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,動物,植物,季節","#[訓異]
さをしかの[寛],
こころあひおもふ[寛],
あきはぎの,[寛]あきはきの,
しぐれのふるに,[寛]しくれのふるに,
ちらくしをしも,[寛]ちりそふをしも,
" "#[番号]10/2095","#[題詞](詠花)","#[原文]夕去 野邊秋芽子 末若 露枯 金待難","#[訓読]夕されば野辺の秋萩うら若み露にぞ枯るる秋待ちかてに","#[仮名],ゆふされば,のへのあきはぎ,うらわかみ,つゆにぞかるる,あきまちかてに","#[左注]右二首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,季節","#[訓異]
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
のへのあきはぎ,[寛]のへのあきはき,
うらわかみ,[寛]すゑわかみ,
つゆにぞかるる,[寛]つゆにしかれて,
あきまちかてに,[寛]あきまちかたし,
" "#[番号]10/2096","#[題詞](詠花)","#[原文]真葛原 名引秋風 <毎吹> 阿太乃大野之 芽子花散","#[訓読]真葛原靡く秋風吹くごとに阿太の大野の萩の花散る","#[仮名],まくずはら,なびくあきかぜ,ふくごとに,あだのおほのの,はぎのはなちる","#[左注]","#[校異]吹毎 -> 毎吹 [元][類]","#[事項],秋雑歌,奈良県,五条市,地名,植物,季節","#[訓異]
まくずはら,[寛]まくすはら,
なびくあきかぜ,[寛]なひくあきかせ,
ふくごとに,[寛]ふくことに,
あだのおほのの,[寛]あたのおほのの,
はぎのはなちる,[寛]はきのはなちる,
" "#[番号]10/2097","#[題詞](詠花)","#[原文]鴈鳴之 来喧牟日及 見乍将有 此芽子原尓 雨勿零根","#[訓読]雁がねの来鳴かむ日まで見つつあらむこの萩原に雨な降りそね","#[仮名],かりがねの,きなかむひまで,みつつあらむ,このはぎはらに,あめなふりそね","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物,植物","#[訓異]
かりがねの,[寛]かりかねの,
きなかむひまで,[寛]きなかむひまて,
みつつあらむ[寛],
このはぎはらに,[寛]このはきはらに,
あめなふりそね[寛],
" "#[番号]10/2098","#[題詞](詠花)","#[原文]奥山尓 住云男鹿之 初夜不去 妻問芽子乃 散久惜裳","#[訓読]奥山に棲むといふ鹿の夕さらず妻どふ萩の散らまく惜しも","#[仮名],おくやまに,すむといふしかの,よひさらず,つまどふはぎの,ちらまくをしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物,植物","#[訓異]
おくやまに[寛],
すむといふしかの,[寛]すむてふしかの,
よひさらず,[寛]よひさらす,
つまどふはぎの,[寛]つまとふはきの,
ちらまくをしも[寛],
" "#[番号]10/2099","#[題詞](詠花)","#[原文]白露乃 置巻惜 秋芽子乎 折耳折而 置哉枯","#[訓読]白露の置かまく惜しみ秋萩を折りのみ折りて置きや枯らさむ","#[仮名],しらつゆの,おかまくをしみ,あきはぎを,をりのみをりて,おきやからさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
しらつゆの[寛],
おかまくをしみ[寛],
あきはぎを,[寛]あきはきを,
をりのみをりて[寛],
おきやからさむ[寛],
" "#[番号]10/2100","#[題詞](詠花)","#[原文]秋田苅 借廬之宿 <丹>穂經及 咲有秋芽子 雖見不飽香聞","#[訓読]秋田刈る仮廬の宿りにほふまで咲ける秋萩見れど飽かぬかも","#[仮名],あきたかる,かりいほのやどり,にほふまで,さけるあきはぎ,みれどあかぬかも","#[左注]","#[校異]尓 -> 丹 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,植物,叙景","#[訓異]
あきたかる[寛],
かりいほのやどり,[寛]かりほのやとり,
にほふまで,[寛]にほふまて,
さけるあきはぎ,[寛]さけるあきはき,
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]10/2101","#[題詞](詠花)","#[原文]吾衣 <揩>有者不在 高松之 野邊行之者 芽子之<揩>類曽","#[訓読]我が衣摺れるにはあらず高松の野辺行きしかば萩の摺れるぞ","#[仮名],あがころも,すれるにはあらず,たかまつの,のへゆきしかば,はぎのすれるぞ","#[左注]","#[校異]摺 -> 揩 [元] / 摺 -> 揩 [元]","#[事項],秋雑歌,奈良,高円,地名,植物","#[訓異]
あがころも,[寛]わかきぬを,
すれるにはあらず,[寛]すれるにはあらす,
たかまつの,[寛]たかまとの,
のへゆきしかば,[寛]のへゆきしかは,
はぎのすれるぞ,[寛]はきのすれるそ,
" "#[番号]10/2102","#[題詞](詠花)","#[原文]此暮 秋風吹奴 白露尓 荒争芽子之 明日将咲見","#[訓読]この夕秋風吹きぬ白露に争ふ萩の明日咲かむ見む","#[仮名],このゆふへ,あきかぜふきぬ,しらつゆに,あらそふはぎの,あすさかむみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
このゆふへ[寛],
あきかぜふきぬ,[寛]あきかせふきぬ,
しらつゆに[寛],
あらそふはぎの,[寛]あらそふはきの,
あすさかむみむ[寛],
" "#[番号]10/2103","#[題詞](詠花)","#[原文]秋風 冷成<奴 馬>並而 去来於野行奈 芽子花見尓","#[訓読]秋風は涼しくなりぬ馬並めていざ野に行かな萩の花見に","#[仮名],あきかぜは,すずしくなりぬ,うまなめて,いざのにゆかな,はぎのはなみに","#[左注]","#[校異]駑 -> 奴馬 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
あきかぜは,[寛]あきかせは,
すずしくなりぬ,[寛]すすしくなりぬ,
うまなめて[寛],
いざのにゆかな,[寛]いさのにゆかな,
はぎのはなみに,[寛]はきのはなみに,
" "#[番号]10/2104","#[題詞](詠花)","#[原文]朝<杲> 朝露負 咲雖云 暮陰社 咲益家礼","#[訓読]朝顔は朝露負ひて咲くといへど夕影にこそ咲きまさりけれ","#[仮名],あさがほは,あさつゆおひて,さくといへど,ゆふかげにこそ,さきまさりけれ","#[左注]","#[校異]果 -> 杲 [元][紀]","#[事項],秋雑歌,植物,叙景","#[訓異]
あさがほは,[寛]あさかほは,
あさつゆおひて[寛],
さくといへど,[寛]さくといへと,
ゆふかげにこそ,[寛]ゆふかけにこそ,
さきまさりけれ[寛],
" "#[番号]10/2105","#[題詞](詠花)","#[原文]春去者 霞隠 不所見有師 秋芽子咲 折而将挿頭","#[訓読]春されば霞隠りて見えずありし秋萩咲きぬ折りてかざさむ","#[仮名],はるされば,かすみがくりて,みえずありし,あきはぎさきぬ,をりてかざさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
かすみがくりて,[寛]かすみかくれて,
みえずありし,[寛]みえさりし,
あきはぎさきぬ,[寛]あきはきさけり,
をりてかざさむ,[寛]をりてかささむ,
" "#[番号]10/2106","#[題詞](詠花)","#[原文]沙額田乃 野邊乃秋芽子 時有者 今盛有 折而将挿頭","#[訓読]沙額田の野辺の秋萩時なれば今盛りなり折りてかざさむ","#[仮名],さぬかたの,のへのあきはぎ,ときなれば,いまさかりなり,をりてかざさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,地名,植物","#[訓異]
さぬかたの[寛],
のへのあきはぎ,[寛]のへのあきはき,
ときなれば,[寛]ときしあれは,
いまさかりなり[寛],
をりてかざさむ,[寛]をりてかささむ,
" "#[番号]10/2107","#[題詞](詠花)","#[原文]事更尓 衣者不<揩> 佳人部為 咲野之芽子尓 丹穂日而将居","#[訓読]ことさらに衣は摺らじをみなへし佐紀野の萩ににほひて居らむ","#[仮名],ことさらに,ころもはすらじ,をみなへし,さきののはぎに,にほひてをらむ","#[左注]","#[校異]摺 -> 揩 [元][類]","#[事項],秋雑歌,奈良,地名,植物","#[訓異]
ことさらに[寛],
ころもはすらじ,[寛]ころもはすらし,
をみなへし[寛],
さきののはぎに,[寛]さくののはきに,
にほひてをらむ[寛],
" "#[番号]10/2108","#[題詞](詠花)","#[原文]秋風者 急<々>吹来 芽子花 落巻惜三 競<立見>","#[訓読]秋風は疾く疾く吹き来萩の花散らまく惜しみ競ひ立たむ見む","#[仮名],あきかぜは,とくとくふきこ,はぎのはな,ちらまくをしみ,きほひたたむみむ","#[左注]","#[校異]之 -> 々 [元][紀][温][矢] / 竟 -> 立見 [万葉考]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
あきかぜは,[寛]あきかせは,
とくとくふきこ,[寛]はやしふきけり,
はぎのはな,[寛]はきのはな,
ちらまくをしみ[寛],
きほひたたむみむ,[寛]おほろおほろに,
" "#[番号]10/2109","#[題詞](詠花)","#[原文]我屋前之 芽子之若末長 秋風之 吹南時尓 将開跡思<手>","#[訓読]我が宿の萩の末長し秋風の吹きなむ時に咲かむと思ひて","#[仮名],わがやどの,はぎのうれながし,あきかぜの,ふきなむときに,さかむとおもひて","#[左注]","#[校異]乎 -> 手 [類]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
はぎのうれながし,[寛]はきのわかたち,
あきかぜの,[寛]あきかせの,
ふきなむときに[寛],
さかむとおもひて,[寛]さかむとおもふを,
" "#[番号]10/2110","#[題詞](詠花)","#[原文]人皆者 芽子乎秋云 縦吾等者 乎花之末乎 秋跡者将言","#[訓読]人皆は萩を秋と言ふよし我れは尾花が末を秋とは言はむ","#[仮名],ひとみなは,はぎをあきといふ,よしわれは,をばながうれを,あきとはいはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
ひとみなは[寛],
はぎをあきといふ,[寛]はきをあきといふ,
よしわれは,[寛]いなわれは,
をばながうれを,[寛]をはなかすえを,
あきとはいはむ[寛],
" "#[番号]10/2111","#[題詞](詠花)","#[原文]玉梓 公之使乃 手折来有 此秋芽子者 雖見不飽鹿裳","#[訓読]玉梓の君が使の手折り来るこの秋萩は見れど飽かぬかも","#[仮名],たまづさの,きみがつかひの,たをりける,このあきはぎは,みれどあかぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
たまづさの,[寛]たまつさの,
きみがつかひの,[寛]きみかつかひの,
たをりける,[寛]たをりくる,
このあきはぎは,[寛]このあきはきは,
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]10/2112","#[題詞](詠花)","#[原文]吾屋前尓 開有秋芽子 常有者 我待人尓 令見猿物乎","#[訓読]我がやどに咲ける秋萩常ならば我が待つ人に見せましものを","#[仮名],わがやどに,さけるあきはぎ,つねならば,わがまつひとに,みせましものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
わがやどに,[寛]わかやとに,
さけるあきはぎ,[寛]さけるあきはき,
つねならば,[寛]つねならは,
わがまつひとに,[寛]わかまつひとゆ,
みせましものを[寛],
" "#[番号]10/2113","#[題詞](詠花)","#[原文]手寸<十>名相 殖之名知久 出見者 屋前之早芽子 咲尓家類香聞","#[訓読]手寸十名相植ゑしなしるく出で見れば宿の初萩咲きにけるかも","#[仮名],*****,うゑしなしるく,いでみれば,やどのはつはぎ,さきにけるかも","#[左注]","#[校異]<> -> 十 [西(右書)][元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,植物,難訓","#[訓異]
*****,[寛]たきそなへ,
うゑしなしるく[寛],
いでみれば,[寛]いてみれは,
やどのはつはぎ,[寛]やとのはつはき,
さきにけるかも[寛],
" "#[番号]10/2114","#[題詞](詠花)","#[原文]吾屋外尓 殖生有 秋芽子乎 誰標刺 吾尓不所知","#[訓読]我が宿に植ゑ生ほしたる秋萩を誰れか標刺す我れに知らえず","#[仮名],わがやどに,うゑおほしたる,あきはぎを,たれかしめさす,われにしらえず","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
わがやどに,[寛]わかやとに,
うゑおほしたる[寛],
あきはぎを,[寛]あきはきを,
たれかしめさす[寛],
われにしらえず,[寛]われにしらせて,
" "#[番号]10/2115","#[題詞](詠花)","#[原文]手取者 袖并丹覆 美人部師 此白露尓 散巻惜","#[訓読]手に取れば袖さへにほふをみなへしこの白露に散らまく惜しも","#[仮名],てにとれば,そでさへにほふ,をみなへし,このしらつゆに,ちらまくをしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
てにとれば,[寛]てにとれは,
そでさへにほふ,[寛]そてさへにをふ,
をみなへし[寛],
このしらつゆに[寛],
ちらまくをしも[寛],
" "#[番号]10/2116","#[題詞](詠花)","#[原文]白露尓 荒争金手 咲芽子 散惜兼 雨莫零根","#[訓読]白露に争ひかねて咲ける萩散らば惜しけむ雨な降りそね","#[仮名],しらつゆに,あらそひかねて,さけるはぎ,ちらばをしけむ,あめなふりそね","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
しらつゆに[寛],
あらそひかねて[寛],
さけるはぎ,[寛]さけるはき,
ちらばをしけむ,[寛]ちらはをしけむ,
あめなふりそね[寛],
" "#[番号]10/2117","#[題詞](詠花)","#[原文]D嬬等<尓> 行相乃速稲乎 苅時 成来下 芽子花咲","#[訓読]娘女らに行相の早稲を刈る時になりにけらしも萩の花咲く","#[仮名],をとめらに,ゆきあひのわせを,かるときに,なりにけらしも,はぎのはなさく","#[左注]","#[校異]<> -> 尓 [類][紀]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
をとめらに[寛],
ゆきあひのわせを[寛],
かるときに[寛],
なりにけらしも[寛],
はぎのはなさく,[寛]はきのはなさく,
" "#[番号]10/2118","#[題詞](詠花)","#[原文]朝霧之 棚引小野之 芽子花 今哉散濫 未Q尓","#[訓読]朝霧のたなびく小野の萩の花今か散るらむいまだ飽かなくに","#[仮名],あさぎりの,たなびくをのの,はぎのはな,いまかちるらむ,いまだあかなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,季節","#[訓異]
あさぎりの,[寛]あさきりの,
たなびくをのの,[寛]たなひくをのの,
はぎのはな,[寛]はきのはな,
いまかちるらむ,[寛]いまやちるらむ,
いまだあかなくに,[寛]いまたあかなくに,
" "#[番号]10/2119","#[題詞](詠花)","#[原文]戀之久者 形見尓為与登 吾背子我 殖之秋芽子 花咲尓家里","#[訓読]恋しくは形見にせよと我が背子が植ゑし秋萩花咲きにけり","#[仮名],こひしくは,かたみにせよと,わがせこが,うゑしあきはぎ,はなさきにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
こひしくは[寛],
かたみにせよと[寛],
わがせこが,[寛]わかせこか,
うゑしあきはぎ,[寛]うゑしあきはき,
はなさきにけり[寛],
" "#[番号]10/2120","#[題詞](詠花)","#[原文]秋芽子 戀不盡跡 雖念 思恵也安多良思 又将相八方","#[訓読]秋萩に恋尽さじと思へどもしゑやあたらしまたも逢はめやも","#[仮名],あきはぎに,こひつくさじと,おもへども,しゑやあたらし,またもあはめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,恋情","#[訓異]
あきはぎに,[寛]あきはきに,
こひつくさじと,[寛]こひつくさしと,
おもへども,[寛]おもへとも,
しゑやあたらし[寛],
またもあはめやも,[寛]またあはむやも,
" "#[番号]10/2121","#[題詞](詠花)","#[原文]秋風者 日異吹奴 高圓之 野邊之秋芽子 散巻惜裳","#[訓読]秋風は日に異に吹きぬ高円の野辺の秋萩散らまく惜しも","#[仮名],あきかぜは,ひにけにふきぬ,たかまとの,のへのあきはぎ,ちらまくをしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良,地名,植物","#[訓異]
あきかぜは,[寛]あきかせは,
ひにけにふきぬ[寛],
たかまとの[寛],
のへのあきはぎ,[寛]のへのあきはき,
ちらまくをしも[寛],
" "#[番号]10/2122","#[題詞](詠花)","#[原文]大夫之 心者無而 秋芽子之 戀耳八方 奈積而有南","#[訓読]大夫の心はなしに秋萩の恋のみにやもなづみてありなむ","#[仮名],ますらをの,こころはなしに,あきはぎの,こひのみにやも,なづみてありなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
ますらをの[寛],
こころはなしに[寛],
あきはぎの,[寛]あきはきの,
こひのみにやも,[寛]こひにのみやも,
なづみてありなむ,[寛]なつみてあらなむ,
" "#[番号]10/2123","#[題詞](詠花)","#[原文]吾待之 秋者来奴 雖然 芽子之花曽毛 未開家類","#[訓読]我が待ちし秋は来たりぬしかれども萩の花ぞもいまだ咲かずける","#[仮名],わがまちし,あきはきたりぬ,しかれども,はぎのはなぞも,いまださかずける","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
わがまちし,[寛]わかまちし,
あきはきたりぬ[寛],
しかれども,[寛]しかれとも,
はぎのはなぞも,[寛]はきのはなそも,
いまださかずける,[寛]またまかすける,
" "#[番号]10/2124","#[題詞](詠花)","#[原文]欲見 吾待戀之 秋芽子者 枝毛思美三荷 花開二家里","#[訓読]見まく欲り我が待ち恋ひし秋萩は枝もしみみに花咲きにけり","#[仮名],みまくほり,あがまちこひし,あきはぎは,えだもしみみに,はなさきにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,属目","#[訓異]
みまくほり[寛],
あがまちこひし,[寛]わかまちこひし,
あきはぎは,[寛]あきはきは,
えだもしみみに,[寛]えたもしみみに,
はなさきにけり[寛],
" "#[番号]10/2125","#[題詞](詠花)","#[原文]春日野之 芽子落者 朝東 風尓副而 此間尓落来根","#[訓読]春日野の萩し散りなば朝東風の風にたぐひてここに散り来ね","#[仮名],かすがのの,はぎしちりなば,あさごちの,かぜにたぐひて,ここにちりこね","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良,地名,植物","#[訓異]
かすがのの,[寛]かすかのの,
はぎしちりなば,[寛]はきしちりなは,
あさごちの,[寛]あさこちの,
かぜにたぐひて,[寛]かせにたくひて,
ここにちりこね[寛],
" "#[番号]10/2126","#[題詞](詠花)","#[原文]秋芽子者 於鴈不相常 言有者香 [一云 言有可聞] 音乎聞而者 花尓散去流 ","#[訓読]秋萩は雁に逢はじと言へればか [一云 言へれかも] 声を聞きては花に散りぬる","#[仮名],あきはぎは,かりにあはじと,いへればか,[いへれかも],こゑをききては,はなにちりぬる","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物,植物,異伝","#[訓異]
あきはぎは,[寛]あきはきは,
かりにあはじと,[寛]かりにあはしと,
いへればか,[寛]いへれはか,
[いへれかも],
こゑをききては[寛],
はなにちりぬる[寛],
" "#[番号]10/2127","#[題詞](詠花)","#[原文]秋去者 妹令視跡 殖之芽子 露霜負而 散来毳","#[訓読]秋さらば妹に見せむと植ゑし萩露霜負ひて散りにけるかも","#[仮名],あきさらば,いもにみせむと,うゑしはぎ,つゆしもおひて,ちりにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
あきさらば,[寛]あきされは,
いもにみせむと[寛],
うゑしはぎ,[寛]うえしはき,
つゆしもおひて[寛],
ちりにけるかも[寛],
" "#[番号]10/2128","#[題詞]詠鴈","#[原文]秋風尓 山跡部越 鴈鳴者 射矢遠放 雲隠筒","#[訓読]秋風に大和へ越ゆる雁がねはいや遠ざかる雲隠りつつ","#[仮名],あきかぜに,やまとへこゆる,かりがねは,いやとほざかる,くもがくりつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良,地名,動物","#[訓異]
あきかぜに,[寛]あきかせに,
やまとへこゆる,[寛]やまとひこゆる,
かりがねは,[寛]かりかねは,
いやとほざかる,[寛]いやとほさかる,
くもがくりつつ,[寛]くもかくれつつ,
" "#[番号]10/2129","#[題詞](詠鴈)","#[原文]明闇之 朝霧隠 鳴而去 鴈者言戀 於妹告社","#[訓読]明け暮れの朝霧隠り鳴きて行く雁は我が恋妹に告げこそ","#[仮名],あけぐれの,あさぎりごもり,なきてゆく,かりはあがこひ,いもにつげこそ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物","#[訓異]
あけぐれの,[寛]あけくれの,
あさぎりごもり,[寛]あさきりかくれ,
なきてゆく[寛],
かりはあがこひ,[寛]かりはわかこひ,
いもにつげこそ,[寛]いもにつけこそ,
" "#[番号]10/2130","#[題詞](詠鴈)","#[原文]吾屋戸尓 鳴之鴈哭 雲上尓 今夜喧成 國方可聞遊群","#[訓読]我が宿に鳴きし雁がね雲の上に今夜鳴くなり国へかも行く","#[仮名],わがやどに,なきしかりがね,くものうへに,こよひなくなり,くにへかもゆく","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物","#[訓異]
わがやどに,[寛]わかやとに,
なきしかりがね,[寛]なきしかりかね,
くものうへに[寛],
こよひなくなり[寛],
くにへかもゆく,[寛]くにつかたかも,
" "#[番号]10/2131","#[題詞](詠鴈)","#[原文]左小<壮>鹿之 妻問時尓 月乎吉三 切木四之泣所聞 今時来等霜","#[訓読]さを鹿の妻どふ時に月をよみ雁が音聞こゆ今し来らしも","#[仮名],さをしかの,つまどふときに,つきをよみ,かりがねきこゆ,いましくらしも","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [定本万葉集]","#[事項],秋雑歌,動物","#[訓異]
さをしかの[寛],
つまどふときに,[寛]つまとふときに,
つきをよみ[寛],
かりがねきこゆ,[寛]かりかねきこゆ,
いましくらしも[寛],
" "#[番号]10/2132","#[題詞](詠鴈)","#[原文]天雲之 外鴈鳴 従聞之 薄垂霜零 寒此夜者 [一云 弥益々尓 戀許曽増焉] ","#[訓読]天雲の外に雁が音聞きしよりはだれ霜降り寒しこの夜は [一云 いやますますに恋こそまされ] ","#[仮名],あまくもの,よそにかりがね,ききしより,はだれしもふり,さむしこのよは,[いやますますに,こひこそまされ]","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物,恋情","#[訓異]
あまくもの[寛],
よそにかりがね,[寛]よそにかりかね,
ききしより[寛],
はだれしもふり,[寛]はたれしもふり,
さむしこのよは[寛],
[いやますますに[寛],
こひこそまされ][寛],
" "#[番号]10/2133","#[題詞](詠鴈)","#[原文]秋田 吾苅婆可能 過去者 鴈之喧所聞 冬方設而","#[訓読]秋の田の我が刈りばかの過ぎぬれば雁が音聞こゆ冬かたまけて","#[仮名],あきのたの,わがかりばかの,すぎぬれば,かりがねきこゆ,ふゆかたまけて","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物,季節","#[訓異]
あきのたの[寛],
わがかりばかの,[寛]わかかりはかの,
すぎぬれば,[寛]すきゆけは,
かりがねきこゆ,[寛]かりかねきこゆ,
ふゆかたまけて[寛],
" "#[番号]10/2134","#[題詞](詠鴈)","#[原文]葦邊在 荻之葉左夜藝 秋風之 吹来苗丹 鴈鳴渡 [一云 秋風尓 鴈音所聞 今四来霜] ","#[訓読]葦辺なる荻の葉さやぎ秋風の吹き来るなへに雁鳴き渡る [一云 秋風に雁が音聞こゆ今し来らしも] ","#[仮名],あしへなる,をぎのはさやぎ,あきかぜの,ふきくるなへに,かりなきわたる,[あきかぜに,かりがねきこゆ,いましくらしも]","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,動物,異伝","#[訓異]
あしへなる[寛],
をぎのはさやぎ,[寛]をきのはさやき,
あきかぜの,[寛]あきかせの,
ふきくるなへに[寛],
かりなきわたる[寛],
[あきかぜに,[寛]あきかせに,
かりがねきこゆ,[寛]かりかねきこゆ,
いましくらしも][寛],
" "#[番号]10/2135","#[題詞](詠鴈)","#[原文]押照 難波穿江之 葦邊者 鴈宿有疑 霜乃零尓","#[訓読]おしてる難波堀江の葦辺には雁寝たるかも霜の降らくに","#[仮名],おしてる,なにはほりえの,あしへには,かりねたるかも,しものふらくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,大阪,地名,動物,植物","#[訓異]
おしてる[寛],
なにはほりえの[寛],
あしへには[寛],
かりねたるかも[寛],
しものふらくに[寛],
" "#[番号]10/2136","#[題詞](詠鴈)","#[原文]秋風尓 山飛越 鴈鳴之 聲遠離 雲隠良思","#[訓読]秋風に山飛び越ゆる雁がねの声遠ざかる雲隠るらし","#[仮名],あきかぜに,やまとびこゆる,かりがねの,こゑとほざかる,くもがくるらし","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物,属目","#[訓異]
あきかぜに,[寛]あきかせに,
やまとびこゆる,[寛]やまとひこゆる,
かりがねの,[寛]かりかねの,
こゑとほざかる,[寛]こえとほさかる,
くもがくるらし,[寛]くもかくるらし,
" "#[番号]10/2137","#[題詞](詠鴈)","#[原文]朝尓徃 鴈之鳴音者 如吾 物<念>可毛 聲之悲","#[訓読]朝に行く雁の鳴く音は我がごとく物思へれかも声の悲しき","#[仮名],あさにゆく,かりのなくねは,あがごとく,ものもへれかも,こゑのかなしき","#[左注]","#[校異]尓 -> 念 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,動物","#[訓異]
あさにゆく[寛],
かりのなくねは[寛],
あがごとく,[寛]わかことく,
ものもへれかも,[寛]ものおもふかも,
こゑのかなしき,[寛]こえのかなしき,
" "#[番号]10/2138","#[題詞](詠鴈)","#[原文]多頭我鳴乃 今朝鳴奈倍尓 鴈鳴者 何處指香 雲隠良<武>","#[訓読]鶴がねの今朝鳴くなへに雁がねはいづくさしてか雲隠るらむ","#[仮名],たづがねの,けさなくなへに,かりがねは,いづくさしてか,くもがくるらむ","#[左注]","#[校異]哉 -> 武 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,動物","#[訓異]
たづがねの,[寛]たつかねの,
けさなくなへに[寛],
かりがねは,[寛]かりかねは,
いづくさしてか,[寛]いつこさしてか,
くもがくるらむ,[寛]くもかくるらむ,
" "#[番号]10/2139","#[題詞](詠鴈)","#[原文]野干玉之 夜<渡>鴈者 欝 幾夜乎歴而鹿 己名乎告","#[訓読]ぬばたまの夜渡る雁はおほほしく幾夜を経てかおのが名を告る","#[仮名],ぬばたまの,よわたるかりは,おほほしく,いくよをへてか,おのがなをのる","#[左注]","#[校異]度 -> 渡 [元][類]","#[事項],秋雑歌,枕詞,動物","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よわたるかりは[寛],
おほほしく,[寛]おほつかな,
いくよをへてか[寛],
おのがなをのる,[寛]おのかなをよふ,
" "#[番号]10/2140","#[題詞](詠鴈)","#[原文]璞 年之經徃者 阿跡念登 夜渡吾乎 問人哉誰","#[訓読]あらたまの年の経ゆけばあどもふと夜渡る我れを問ふ人や誰れ","#[仮名],あらたまの,としのへゆけば,あどもふと,よわたるわれを,とふひとやたれ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,枕詞","#[訓異]
あらたまの[寛],
としのへゆけば,[寛]としのへゆけは,
あどもふと,[寛]あともふと,
よわたるわれを[寛],
とふひとやたれ[寛],
" "#[番号]10/2141","#[題詞]詠鹿鳴","#[原文]比日之 秋朝開尓 霧隠 妻呼雄鹿之 音之亮左","#[訓読]このころの秋の朝明に霧隠り妻呼ぶ鹿の声のさやけさ","#[仮名],このころの,あきのあさけに,きりごもり,つまよぶしかの,こゑのさやけさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物,叙景","#[訓異]
このころの[寛],
あきのあさけに[寛],
きりごもり,[寛]きりかくれ,
つまよぶしかの,[寛]つまよふしかの,
こゑのさやけさ,[寛]こゑのはるけさ,
" "#[番号]10/2142","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]左男<壮>鹿之 妻整登 鳴音之 将至極 靡芽子原","#[訓読]さを鹿の妻ととのふと鳴く声の至らむ極み靡け萩原","#[仮名],さをしかの,つまととのふと,なくこゑの,いたらむきはみ,なびけはぎはら","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [元]","#[事項],秋雑歌,動物,植物","#[訓異]
さをしかの[寛],
つまととのふと[寛],
なくこゑの[寛],
いたらむきはみ,[寛]いたらむかきり,
なびけはぎはら,[寛]なひけはきはら,
" "#[番号]10/2143","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]於君戀 裏觸居者 敷野之 秋芽子凌 左<小壮>鹿鳴裳","#[訓読]君に恋ひうらぶれ居れば敷の野の秋萩しのぎさを鹿鳴くも","#[仮名],きみにこひ,うらぶれをれば,しきののの,あきはぎしのぎ,さをしかなくも","#[左注]","#[校異]牡 -> 小壮 [元]","#[事項],秋雑歌,動物,植物,恋情,地名","#[訓異]
きみにこひ[寛],
うらぶれをれば,[寛]うらふれをれは,
しきののの[寛],
あきはぎしのぎ,[寛]あきはきしのき,
さをしかなくも[寛],
" "#[番号]10/2144","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]鴈来 芽子者散跡 左小<壮>鹿之 鳴成音毛 裏觸丹来","#[訓読]雁は来ぬ萩は散りぬとさを鹿の鳴くなる声もうらぶれにけり","#[仮名],かりはきぬ,はぎはちりぬと,さをしかの,なくなるこゑも,うらぶれにけり","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [元]","#[事項],秋雑歌,,動物,植物,季節","#[訓異]
かりはきぬ[寛],
はぎはちりぬと,[寛]はきはちりぬと,
さをしかの[寛],
なくなるこゑも,[寛]なくなるこえも,
うらぶれにけり,[寛]うらふれにけり,
" "#[番号]10/2145","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]秋芽子之 戀裳不盡者 左<壮>鹿之 聲伊續伊継 戀許増益焉","#[訓読]秋萩の恋も尽きねばさを鹿の声い継ぎい継ぎ恋こそまされ","#[仮名],あきはぎの,こひもつきねば,さをしかの,こゑいつぎいつぎ,こひこそまされ","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [元]","#[事項],秋雑歌,植物,動物,恋情","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
こひもつきねば,[寛]こひもつきねは,
さをしかの[寛],
こゑいつぎいつぎ,[寛]こゑいつきいつき,
こひこそまされ[寛],
" "#[番号]10/2146","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]山近 家哉可居 左小<壮>鹿乃 音乎聞乍 宿不勝鴨","#[訓読]山近く家や居るべきさを鹿の声を聞きつつ寐ねかてぬかも","#[仮名],やまちかく,いへやをるべき,さをしかの,こゑをききつつ,いねかてぬかも","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [類]","#[事項],秋雑歌,動物,恋情","#[訓異]
やまちかく[寛],
いへやをるべき,[寛]いへやすむへき,
さをしかの[寛],
こゑをききつつ[寛],
いねかてぬかも[寛],
" "#[番号]10/2147","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]山邊尓 射去薩雄者 雖大有 山尓文野尓文 沙小<壮>鹿鳴母","#[訓読]山の辺にい行くさつ男は多かれど山にも野にもさを鹿鳴くも","#[仮名],やまのへに,いゆくさつをは,さはにあれど,やまにものにも,さをしかなくも","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [元][類]","#[事項],秋雑歌,動物,叙景","#[訓異]
やまのへに[寛],
いゆくさつをは[寛],
さはにあれど,[寛]おほかれと,
やまにものにも,[寛]やまにせのにせ,
さをしかなくも[寛],
" "#[番号]10/2148","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]足日木<笶> 山従来世波 左小<壮>鹿之 妻呼音 聞益物乎","#[訓読]あしひきの山より来せばさを鹿の妻呼ぶ声を聞かましものを","#[仮名],あしひきの,やまよりきせば,さをしかの,つまよぶこゑを,きかましものを","#[左注]","#[校異]笑 -> 笶 [西(訂正)][元] / 牡 -> 壮 [元][類]","#[事項],秋雑歌,枕詞,動物","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまよりきせば,[寛]やまよりきせは,
さをしかの[寛],
つまよぶこゑを,[寛]つまよふこゑを,
きかましものを[寛],
" "#[番号]10/2149","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]山邊庭 薩雄乃<祢>良比 恐跡 小<壮>鹿鳴成 妻之眼乎欲焉","#[訓読]山辺にはさつ男のねらひ畏けどを鹿鳴くなり妻が目を欲り","#[仮名],やまへには,さつをのねらひ,かしこけど,をしかなくなり,つまがめをほり","#[左注]","#[校異]尓 -> 祢 [元][矢][京] / 牡 -> 壮 [元][類]","#[事項],秋雑歌,動物","#[訓異]
やまへには[寛],
さつをのねらひ[寛],
かしこけど,[寛]おそるれと,
をしかなくなり[寛],
つまがめをほり,[寛]つまのめをほり,
" "#[番号]10/2150","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]秋芽子之 散去見 欝三 妻戀為良思 棹<壮>鹿鳴母","#[訓読]秋萩の散りゆく見ればおほほしみ妻恋すらしさを鹿鳴くも","#[仮名],あきはぎの,ちりゆくみれば,おほほしみ,つまごひすらし,さをしかなくも","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [元][類]","#[事項],秋雑歌,植物,動物","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
ちりゆくみれば,[寛]ちりゆくみれは,
おほほしみ,[寛]いふかしみ,
つまごひすらし,[寛]つまこひすらし,
さをしかなくも[寛],
" "#[番号]10/2151","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]山遠 京尓之有者 狭小<壮>鹿之 妻呼音者 乏毛有香","#[訓読]山遠き都にしあればさを鹿の妻呼ぶ声は乏しくもあるか","#[仮名],やまとほき,みやこにしあれば,さをしかの,つまよぶこゑは,ともしくもあるか","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [元][類]","#[事項],秋雑歌,植物,動物","#[訓異]
やまとほき[寛],
みやこにしあれば,[寛]さとにしあれは,
さをしかの[寛],
つまよぶこゑは,[寛]つまよふこゑは,
ともしくもあるか[寛],
" "#[番号]10/2152","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]秋芽子之 散過去者 左<小壮>鹿者 和備鳴将為名 不見者乏焉","#[訓読]秋萩の散り過ぎゆかばさを鹿はわび鳴きせむな見ずはともしみ","#[仮名],あきはぎの,ちりすぎゆかば,さをしかは,わびなきせむな,みずはともしみ","#[左注]","#[校異]牡 -> 小壮 [元][類]","#[事項],秋雑歌,植物,動物","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
ちりすぎゆかば,[寛]ちりすきゆけは,
さをしかは[寛],
わびなきせむな,[寛]わひなきせむな,
みずはともしみ,[寛]みねはともしみ,
" "#[番号]10/2153","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]秋芽子之 咲有野邊者 左小<壮>鹿曽 露乎別乍 嬬問四家類","#[訓読]秋萩の咲きたる野辺はさを鹿ぞ露を別けつつ妻どひしける","#[仮名],あきはぎの,さきたるのへは,さをしかぞ,つゆをわけつつ,つまどひしける","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [元][類]","#[事項],秋雑歌,植物,動物","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
さきたるのへは,[寛]さけるのへには,
さをしかぞ,[寛]さをしかそ,
つゆをわけつつ[寛],
つまどひしける,[寛]つまとひしける,
" "#[番号]10/2154","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]奈何<壮>鹿之 和備鳴為成 蓋毛 秋野之芽子也 繁将落","#[訓読]なぞ鹿のわび鳴きすなるけだしくも秋野の萩や繁く散るらむ","#[仮名],なぞしかの,わびなきすなる,けだしくも,あきののはぎや,しげくちるらむ","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [元][類]","#[事項],秋雑歌,動物,植物","#[訓異]
なぞしかの,[寛]なにしかの,
わびなきすなる,[寛]わひなきすなる,
けだしくも,[寛]けたしくも,
あきののはぎや,[寛]あきののはきや,
しげくちるらむ,[寛]しけくちるをれ,
" "#[番号]10/2155","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]秋芽子之 開有野邊 左<壮>鹿者 落巻惜見 鳴去物乎","#[訓読]秋萩の咲たる野辺にさを鹿は散らまく惜しみ鳴き行くものを","#[仮名],あきはぎの,さきたるのへに,さをしかは,ちらまくをしみ,なきゆくものを","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [元][類]","#[事項],秋雑歌,植物,動物","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
さきたるのへに[寛],
さをしかは[寛],
ちらまくをしみ[寛],
なきゆくものを[寛],
" "#[番号]10/2156","#[題詞](詠鹿鳴)","#[原文]足日木乃 山之跡陰尓 鳴鹿之 聲聞為八方 山田守酢兒","#[訓読]あしひきの山の常蔭に鳴く鹿の声聞かすやも山田守らす子","#[仮名],あしひきの,やまのとかげに,なくしかの,こゑきかすやも,やまたもらすこ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,枕詞,動物","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまのとかげに,[寛]やまのとかけに,
なくしかの[寛],
こゑきかすやも[寛],
やまたもらすこ,[寛]やまたもるすこ,
" "#[番号]10/2157","#[題詞]詠蝉","#[原文]暮影 来鳴日晩之 幾許 毎日聞跡 不足音可聞","#[訓読]夕影に来鳴くひぐらしここだくも日ごとに聞けど飽かぬ声かも","#[仮名],ゆふかげに,きなくひぐらし,ここだくも,ひごとにきけど,あかぬこゑかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物,季節","#[訓異]
ゆふかげに,[寛]ゆふかけに,
きなくひぐらし,[寛]きなくひくらし,
ここだくも,[寛]ここたくの,
ひごとにきけど,[寛]ひことにきけと,
あかぬこゑかも[寛],
" "#[番号]10/2158","#[題詞]詠<蟋>","#[原文]秋風之 寒吹奈倍 吾屋前之 淺茅之本尓 蟋蟀鳴毛","#[訓読]秋風の寒く吹くなへ我が宿の浅茅が本にこほろぎ鳴くも","#[仮名],あきかぜの,さむくふくなへ,わがやどの,あさぢがもとに,こほろぎなくも","#[左注]","#[校異]蟋蟀 -> 蟋 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,動物,季節","#[訓異]
あきかぜの,[寛]あきかせの,
さむくふくなへ[寛],
わがやどの,[寛]わかやとの,
あさぢがもとに,[寛]あさちかもとに,
こほろぎなくも,[寛]きりきりすなくも,
" "#[番号]10/2159","#[題詞](詠<蟋>)","#[原文]影草乃 生有屋外之 暮陰尓 鳴蟋蟀者 雖聞不足可聞","#[訓読]蔭草の生ひたる宿の夕影に鳴くこほろぎは聞けど飽かぬかも","#[仮名],かげくさの,おひたるやどの,ゆふかげに,なくこほろぎは,きけどあかぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物","#[訓異]
かげくさの,[寛]かけくさの,
おひたるやどの,[寛]おひたるやとの,
ゆふかげに,[寛]ゆふかけに,
なくこほろぎは,[寛]なくきりきりすは,
きけどあかぬかも,[寛]きけとあかぬかも,
" "#[番号]10/2160","#[題詞](詠<蟋>)","#[原文]庭草尓 村雨落而 蟋蟀之 鳴音聞者 秋付尓家里","#[訓読]庭草に村雨降りてこほろぎの鳴く声聞けば秋づきにけり","#[仮名],にはくさに,むらさめふりて,こほろぎの,なくこゑきけば,あきづきにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物,季節","#[訓異]
にはくさに[寛],
むらさめふりて[寛],
こほろぎの,[寛]きりきりす,
なくこゑきけば,[寛]なくこゑきけは,
あきづきにけり,[寛]あきつきにけり,
" "#[番号]10/2161","#[題詞]詠蝦","#[原文]三吉野乃 石本不避 鳴川津 諾文鳴来 河乎浄","#[訓読]み吉野の岩もとさらず鳴くかはづうべも鳴きけり川をさやけみ","#[仮名],みよしのの,いはもとさらず,なくかはづ,うべもなきけり,かはをさやけみ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,吉野,地名,動物,叙景","#[訓異]
みよしのの[寛],
いはもとさらず,[寛]いはもとさらす,
なくかはづ,[寛]なくかはつ,
うべもなきけり,[寛]うへもなきけり,
かはをさやけみ[寛],
" "#[番号]10/2162","#[題詞](詠蝦)","#[原文]神名火之 山下動 去水丹 川津鳴成 秋登将云鳥屋","#[訓読]神なびの山下響み行く水にかはづ鳴くなり秋と言はむとや","#[仮名],かむなびの,やましたとよみ,ゆくみづに,かはづなくなり,あきといはむとや","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,飛鳥,地名,動物,季節","#[訓異]
かむなびの,[寛]かみなひの,
やましたとよみ[寛],
ゆくみづに,[寛]ゆくみつに,
かはづなくなり,[寛]かはつなくなり,
あきといはむとや[寛],
" "#[番号]10/2163","#[題詞](詠蝦)","#[原文]草枕 客尓物念 吾聞者 夕片設而 鳴川津可聞","#[訓読]草枕旅に物思ひ我が聞けば夕かたまけて鳴くかはづかも","#[仮名],くさまくら,たびにものもひ,わがきけば,ゆふかたまけて,なくかはづかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,枕詞,動物,叙景","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびにものもひ,[寛]たひにものおもふ,
わがきけば,[寛]わかきけは,
ゆふかたまけて[寛],
なくかはづかも,[寛]なくかはつかも,
" "#[番号]10/2164","#[題詞](詠蝦)","#[原文]瀬呼速見 落當知足 白浪尓 <河>津鳴奈里 朝夕毎","#[訓読]瀬を早み落ちたぎちたる白波にかはづ鳴くなり朝夕ごとに","#[仮名],せをはやみ,おちたぎちたる,しらなみに,かはづなくなり,あさよひごとに","#[左注]","#[校異]川 -> 河 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,動物","#[訓異]
せをはやみ[寛],
おちたぎちたる,[寛]おちたきちたる,
しらなみに[寛],
かはづなくなり,[寛]かはつなくなり,
あさよひごとに,[寛]あさよひことに,
" "#[番号]10/2165","#[題詞](詠蝦)","#[原文]上瀬尓 河津妻呼 暮去者 衣手寒三 妻将枕跡香","#[訓読]上つ瀬にかはづ妻呼ぶ夕されば衣手寒み妻まかむとか","#[仮名],かみつせに,かはづつまよぶ,ゆふされば,ころもでさむみ,つままかむとか","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物","#[訓異]
かみつせに[寛],
かはづつまよぶ,[寛]かはつつまよふ,
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
ころもでさむみ,[寛]ころもてさむみ,
つままかむとか[寛],
" "#[番号]10/2166","#[題詞]詠鳥","#[原文]妹手<呼> 取石池之 浪間従 鳥音異鳴 秋過良之","#[訓読]妹が手を取石の池の波の間ゆ鳥が音異に鳴く秋過ぎぬらし","#[仮名],いもがてを,とろしのいけの,なみのまゆ,とりがねけになく,あきすぎぬらし","#[左注]","#[校異]乎 -> 呼 [元][類]","#[事項],秋雑歌,大阪府,高石市,地名,枕詞,動物,季節","#[訓異]
いもがてを,[寛]いもかてを,
とろしのいけの[寛],
なみのまゆ,[寛]なみまより,
とりがねけになく,[寛]とりのこゑなく,
あきすぎぬらし,[寛]あきすきぬらし,
" "#[番号]10/2167","#[題詞](詠鳥)","#[原文]秋野之 草花我末 鳴<百舌>鳥 音聞濫香 片聞吾妹","#[訓読]秋の野の尾花が末に鳴くもずの声聞きけむか片聞け我妹","#[仮名],あきののの,をばながうれに,なくもずの,こゑききけむか,かたきけわぎも","#[左注]","#[校異]舌百 -> 百舌 [類] / 濫 [元][類][紀](塙) 監","#[事項],秋雑歌,植物,動物","#[訓異]
あきののの[寛],
をばながうれに,[寛]をはなかすゑに,
なくもずの,[寛]なくもすの,
こゑききけむか,[寛]こゑきくらむか,
かたきけわぎも,[寛]かたきくわかも,
" "#[番号]10/2168","#[題詞]詠露","#[原文]冷芽子丹 置白霧 朝々 珠<年>曽見流 置白霧","#[訓読]秋萩に置ける白露朝な朝な玉としぞ見る置ける白露","#[仮名],あきはぎに,おけるしらつゆ,あさなさな,たまとしぞみる,おけるしらつゆ","#[左注]","#[校異]斗 -> 年 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,植物,属目","#[訓異]
あきはぎに,[寛]あきはきに,
おけるしらつゆ[寛],
あさなさな[寛],
たまとしぞみる,[寛]たまとそみゆる,
おけるしらつゆ[寛],
" "#[番号]10/2169","#[題詞](詠露)","#[原文]暮立之 雨落毎 [一云 打零者] 春日野之 尾花之上乃 白霧所念 ","#[訓読]夕立ちの雨降るごとに [一云 うち降れば] 春日野の尾花が上の白露思ほゆ ","#[仮名],ゆふだちの,あめふるごとに[うちふれば],かすがのの,をばながうへの,しらつゆおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良,地名,植物","#[訓異]
ゆふだちの,[寛]ゆふたちの,
あめふるごとに,[寛]あめふることに,
[うちふれば],
かすがのの,[寛]かすかのの,
をばながうへの,[寛]をはなかうへの,
しらつゆおもほゆ[寛],
" "#[番号]10/2170","#[題詞](詠露)","#[原文]秋芽子之 枝毛十尾丹 露霜置 寒毛時者 成尓家類可聞","#[訓読]秋萩の枝もとををに露霜置き寒くも時はなりにけるかも","#[仮名],あきはぎの,えだもとををに,つゆしもおき,さむくもときは,なりにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,季節","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
えだもとををに,[寛]えたもとををに,
つゆしもおき[寛],
さむくもときは[寛],
なりにけるかも[寛],
" "#[番号]10/2171","#[題詞](詠露)","#[原文]白露 与秋芽子者 戀乱 別事難 吾情可聞","#[訓読]白露と秋萩とには恋ひ乱れ別くことかたき我が心かも","#[仮名],しらつゆと,あきはぎとには,こひみだれ,わくことかたき,あがこころかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
しらつゆと,[寛]しらつえと,
あきはぎとには,[寛]あきのはきとは,
こひみだれ,[寛]こひみたれ,
わくことかたき[寛],
あがこころかも,[寛]わかこころかも,
" "#[番号]10/2172","#[題詞](詠露)","#[原文]吾屋戸之 麻花押靡 置露尓 手觸吾妹兒 落巻毛将見","#[訓読]我が宿の尾花押しなべ置く露に手触れ我妹子散らまくも見む","#[仮名],わがやどの,をばなおしなべ,おくつゆに,てふれわぎもこ,ちらまくもみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
をばなおしなべ,[寛]をはなおしなみ,
おくつゆに[寛],
てふれわぎもこ,[寛]てふれわきもこ,
ちらまくもみむ[寛],
" "#[番号]10/2173","#[題詞](詠露)","#[原文]白露乎 取者可消 去来子等 露尓争而 芽子之遊将為","#[訓読]白露を取らば消ぬべしいざ子ども露に競ひて萩の遊びせむ","#[仮名],しらつゆを,とらばけぬべし,いざこども,つゆにきほひて,はぎのあそびせむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
しらつゆを[寛],
とらばけぬべし,[寛]とらはけぬへし,
いざこども,[寛]いてことも,
つゆにきほひて,[寛]つゆにいあひて,
はぎのあそびせむ,[寛]はきのあそひせむ,
" "#[番号]10/2174","#[題詞](詠露)","#[原文]秋田苅 借廬乎作 吾居者 衣手寒 露置尓家留","#[訓読]秋田刈る仮廬を作り我が居れば衣手寒く露ぞ置きにける","#[仮名],あきたかる,かりいほをつくり,わがをれば,ころもでさむく,つゆぞおきにける","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,季節","#[訓異]
あきたかる[寛],
かりいほをつくり[寛],
わがをれば,[寛]わかをれは,
ころもでさむく,[寛]ころもてさむし,
つゆぞおきにける,[寛]つゆおきにける,
" "#[番号]10/2175","#[題詞](詠露)","#[原文]日来之 秋風寒 芽子之花 令散白露 置尓来下","#[訓読]このころの秋風寒し萩の花散らす白露置きにけらしも","#[仮名],このころの,あきかぜさむし,はぎのはな,ちらすしらつゆ,おきにけらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,季節","#[訓異]
このころの[寛],
あきかぜさむし,[寛]あきかせさむし,
はぎのはな,[寛]はきのはな,
ちらすしらつゆ[寛],
おきにけらしも[寛],
" "#[番号]10/2176","#[題詞](詠露)","#[原文]秋田苅 苫手揺奈利 白露<志> 置穂田無跡 告尓来良思 [一云 告尓来良思母] ","#[訓読]秋田刈る苫手動くなり白露し置く穂田なしと告げに来ぬらし [一云 告げに来らしも] ","#[仮名],あきたかる,とまでうごくなり,しらつゆし,おくほだなしと,つげにきぬらし,[つげにくらしも]","#[左注]","#[校異]者 -> 志 [元][紀]","#[事項],秋雑歌,異伝","#[訓異]
あきたかる[寛],
とまでうごくなり,[寛]とまてうこくなり,
しらつゆし,[寛]しらつゆは,
おくほだなしと,[寛]おくほたなしと,
つげにきぬらし,[寛]つけにきぬらし,
[つげにくらしも],[寛]つけにけらしも,
" "#[番号]10/2177","#[題詞]詠山","#[原文]春者毛要 夏者緑丹 紅之 綵色尓所見 秋山可聞","#[訓読]春は萌え夏は緑に紅のまだらに見ゆる秋の山かも","#[仮名],はるはもえ,なつはみどりに,くれなゐの,まだらにみゆる,あきのやまかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,属目,季節","#[訓異]
はるはもえ[寛],
なつはみどりに,[寛]なつはみとりに,
くれなゐの[寛],
まだらにみゆる,[寛]にしきにみゆる,
あきのやまかも[寛],
" "#[番号]10/2178","#[題詞]詠黄葉","#[原文]妻隠 矢野神山 露霜尓 々寶比始 散巻惜","#[訓読]妻ごもる矢野の神山露霜ににほひそめたり散らまく惜しも","#[仮名],つまごもる,やののかむやま,つゆしもに,にほひそめたり,ちらまくをしも","#[左注](右二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,地名,季節","#[訓異]
つまごもる,[寛]つまこもる,
やののかむやま,[寛]やののかみやま,
つゆしもに[寛],
にほひそめたり[寛],
ちらまくをしも[寛],
" "#[番号]10/2179","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]朝露尓 染始 秋山尓 <鍾>礼莫零 在渡金","#[訓読]朝露ににほひそめたる秋山にしぐれな降りそありわたるがね","#[仮名],あさつゆに,にほひそめたる,あきやまに,しぐれなふりそ,ありわたるがね","#[左注]右二首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]鐘 -> 鍾 [元][紀] / 歌 [西] 謌","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,季節","#[訓異]
あさつゆに[寛],
にほひそめたる,[寛]そめはしめたる,
あきやまに[寛],
しぐれなふりそ,[寛]しくれなふりそ,
ありわたるがね,[寛]ありわたるかね,
" "#[番号]10/2180","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]九月乃 <鍾>礼乃雨丹 沾通 春日之山者 色付丹来","#[訓読]九月のしぐれの雨に濡れ通り春日の山は色づきにけり","#[仮名],ながつきの,しぐれのあめに,ぬれとほり,かすがのやまは,いろづきにけり","#[左注]","#[校異]鐘 -> 鍾 [元][紀]","#[事項],秋雑歌,奈良,地名,季節,属目","#[訓異]
ながつきの,[寛]なかつきの,
しぐれのあめに,[寛]しくれのあめに,
ぬれとほり[寛],
かすがのやまは,[寛]かすかのやまは,
いろづきにけり,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]10/2181","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]鴈鳴之 寒朝開之 露有之 春日山乎 令黄物者","#[訓読]雁が音の寒き朝明の露ならし春日の山をもみたすものは","#[仮名],かりがねの,さむきあさけの,つゆならし,かすがのやまを,もみたすものは","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良,地名,動物","#[訓異]
かりがねの,[寛]かりかねの,
さむきあさけの[寛],
つゆならし[寛],
かすがのやまを,[寛]かすかのやまを,
もみたすものは[寛],
" "#[番号]10/2182","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]比日之 暁露丹 吾屋前之 芽子乃下葉者 色付尓家里","#[訓読]このころの暁露に我がやどの萩の下葉は色づきにけり","#[仮名],このころの,あかときつゆに,わがやどの,はぎのしたばは,いろづきにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,季節","#[訓異]
このころの[寛],
あかときつゆに,[寛]あかつきつゆに,
わがやどの,[寛]わかやとの,
はぎのしたばは,[寛]はきのしたはは,
いろづきにけり,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]10/2183","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]鴈<音>者 今者来鳴沼 吾待之 黄葉早継 待者辛苦母","#[訓読]雁がねは今は来鳴きぬ我が待ちし黄葉早継げ待たば苦しも","#[仮名],かりがねは,いまはきなきぬ,わがまちし,もみちはやつげ,またばくるしも","#[左注]","#[校異]鳴 -> 音 [元][類][温][京]","#[事項],秋雑歌,動物,植物","#[訓異]
かりがねは,[寛]かりかねは,
いまはきなきぬ[寛],
わがまちし,[寛]わかまちし,
もみちはやつげ,[寛]もみちはやつけ,
またばくるしも,[寛]まてはくるしも,
" "#[番号]10/2184","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]秋山乎 謹人懸勿 忘西 其黄葉乃 所思君","#[訓読]秋山をゆめ人懸くな忘れにしその黄葉の思ほゆらくに","#[仮名],あきやまを,ゆめひとかくな,わすれにし,そのもみちばの,おもほゆらくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
あきやまを[寛],
ゆめひとかくな[寛],
わすれにし[寛],
そのもみちばの,[寛]そのもみちはの,
おもほゆらくに,[寛]おもほゆるきみ,
" "#[番号]10/2185","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]大坂乎 吾越来者 二上尓 黄葉流 志具礼零乍","#[訓読]大坂を我が越え来れば二上に黄葉流るしぐれ降りつつ","#[仮名],おほさかを,わがこえくれば,ふたかみに,もみちばながる,しぐれふりつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良県,地名,植物,季節","#[訓異]
おほさかを[寛],
わがこえくれば,[寛]わかこえくれは,
ふたかみに[寛],
もみちばながる,[寛]もみちはなかる,
しぐれふりつつ,[寛]しくれふりつつ,
" "#[番号]10/2186","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]秋去者 置白露尓 吾門乃 淺茅何浦葉 色付尓家里","#[訓読]秋されば置く白露に我が門の浅茅が末葉色づきにけり","#[仮名],あきされば,おくしらつゆに,わがかどの,あさぢがうらば,いろづきにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,季節","#[訓異]
あきされば,[寛]あきされは,
おくしらつゆに[寛],
わがかどの,[寛]わかかとの,
あさぢがうらば,[寛]あさちかうらは,
いろづきにけり,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]10/2187","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]妹之袖 巻来乃山之 朝露尓 仁寶布黄葉之 散巻惜裳","#[訓読]妹が袖巻来の山の朝露ににほふ黄葉の散らまく惜しも","#[仮名],いもがそで,まききのやまの,あさつゆに,にほふもみちの,ちらまくをしも","#[左注]","#[校異]巻 [元][類](塙) 莫","#[事項],秋雑歌,地名,枕詞,植物,季節","#[訓異]
いもがそで,[寛]いもかてそ,
まききのやまの[寛],
あさつゆに[寛],
にほふもみちの,[寛]にほふもみちの,
ちらまくをしも[寛],
" "#[番号]10/2188","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]黄葉之 丹穂日者繁 然鞆 妻梨木乎 手折可佐寒","#[訓読]黄葉のにほひは繁ししかれども妻梨の木を手折りかざさむ","#[仮名],もみちばの,にほひはしげし,しかれども,つまなしのきを,たをりかざさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
もみちばの,[寛]もみちはの,
にほひはしげし,[寛]にほひはしけし,
しかれども,[寛]しかれとも,
つまなしのきを[寛],
たをりかざさむ,[寛]たをりかささむ,
" "#[番号]10/2189","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]露霜乃 寒夕之 秋風丹 黄葉尓来毛 妻梨之木者","#[訓読]露霜の寒き夕の秋風にもみちにけらし妻梨の木は","#[仮名],つゆしもの,さむきゆふへの,あきかぜに,もみちにけらし,つまなしのきは","#[左注]","#[校異]毛 (塙)(楓) 之","#[事項],秋雑歌,植物,属目,季節","#[訓異]
つゆしもの[寛],
さむきゆふへの[寛],
あきかぜに,[寛]あきかせに,
もみちにけらし,[寛]もみちにけりも,
つまなしのきは[寛],
" "#[番号]10/2190","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]吾門之 淺茅色就 吉魚張能 浪柴乃野之 黄葉散良新","#[訓読]我が門の浅茅色づく吉隠の浪柴の野の黄葉散るらし","#[仮名],わがかどの,あさぢいろづく,よなばりの,なみしばののの,もみちちるらし","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,桜井市,地名,植物,季節","#[訓異]
わがかどの,[寛]わかかとの,
あさぢいろづく,[寛]あさちいろつく,
よなばりの,[寛]よなはりの,
なみしばののの,[寛]なみしはののの,
もみちちるらし,[寛]もみちちるらし,
" "#[番号]10/2191","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]鴈之鳴乎 聞鶴奈倍尓 高松之 野上<乃>草曽 色付尓家留","#[訓読]雁が音を聞きつるなへに高松の野の上の草ぞ色づきにける","#[仮名],かりがねを,ききつるなへに,たかまつの,ののうへのくさぞ,いろづきにける","#[左注]","#[校異]之 -> 乃 [元][類][紀][温]","#[事項],秋雑歌,奈良,高円,地名,動物,植物,季節,属目","#[訓異]
かりがねを,[寛]かりかねを,
ききつるなへに[寛],
たかまつの,[寛]たかまとの,
ののうへのくさぞ,[寛]ののうへのくさそ,
いろづきにける,[寛]いろつきにける,
" "#[番号]10/2192","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]吾背兒我 白細衣 徃觸者 應染毛 黄變山可聞","#[訓読]我が背子が白栲衣行き触ればにほひぬべくももみつ山かも","#[仮名],わがせこが,しろたへころも,ゆきふれば,にほひぬべくも,もみつやまかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,季節,属目","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
しろたへころも[寛],
ゆきふれば,[寛]ゆきふれは,
にほひぬべくも,[寛]うつりぬへくも,
もみつやまかも[寛],
" "#[番号]10/2193","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]秋風之 日異吹者 水莫能 岡之木葉毛 色付尓家里","#[訓読]秋風の日に異に吹けば水茎の岡の木の葉も色づきにけり","#[仮名],あきかぜの,ひにけにふけば,みづくきの,をかのこのはも,いろづきにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,季節,属目","#[訓異]
あきかぜの,[寛]あきかせの,
ひにけにふけば,[寛]ひにけにふけは,
みづくきの,[寛]みつくきの,
をかのこのはも[寛],
いろづきにけり,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]10/2194","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]鴈鳴乃 来鳴之共 韓衣 裁田之山者 黄始南","#[訓読]雁がねの来鳴きしなへに韓衣龍田の山はもみちそめたり","#[仮名],かりがねの,きなきしなへに,からころも,たつたのやまは,もみちそめたり","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良県,生駒郡,地名,動物,植物,枕詞,季節","#[訓異]
かりがねの,[寛]かりかねの,
きなきしなへに,[寛]きなきしともに,
からころも[寛],
たつたのやまは[寛],
もみちそめたり,[寛]もみちそめたり,
" "#[番号]10/2195","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]鴈之鳴 聲聞苗荷 明日従者 借香能山者 黄始南","#[訓読]雁がねの声聞くなへに明日よりは春日の山はもみちそめなむ","#[仮名],かりがねの,こゑきくなへに,あすよりは,かすがのやまは,もみちそめなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良,地名,動物,季節","#[訓異]
かりがねの,[寛]かりかねの,
こゑきくなへに[寛],
あすよりは,[寛]あすかよりは,
かすがのやまは,[寛]かすかのやまは,
もみちそめなむ[寛],
" "#[番号]10/2196","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]四具礼能雨 無間之零者 真木葉毛 争不勝而 色付尓家里","#[訓読]しぐれの雨間なくし降れば真木の葉も争ひかねて色づきにけり","#[仮名],しぐれのあめ,まなくしふれば,まきのはも,あらそひかねて,いろづきにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,季節","#[訓異]
しぐれのあめ,[寛]しくれのあめ,
まなくしふれば,[寛]まなくしふれは,
まきのはも[寛],
あらそひかねて[寛],
いろづきにけり,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]10/2197","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]灼然 四具礼乃雨者 零勿國 大城山者 色付尓家里 [謂大城山者 在筑前<國>御笠郡之大野山頂 号曰大城者也]","#[訓読]いちしろくしぐれの雨は降らなくに大城の山は色づきにけり [謂大城山者 在筑前<國>御笠郡之大野山頂 号曰大城者也]","#[仮名],いちしろく,しぐれのあめは,ふらなくに,おほきのやまは,いろづきにけり","#[左注]","#[校異]<> -> 國 [元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,福岡県,太宰府,地名,季節,属目","#[訓異]
いちしろく[寛],
しぐれのあめは,[寛]しくれのあめは,
ふらなくに[寛],
おほきのやまは[寛],
いろづきにけり,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]10/2198","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]風吹者 黄葉散乍 小雲 吾松原 清在莫國","#[訓読]風吹けば黄葉散りつつすくなくも吾の松原清くあらなくに","#[仮名],かぜふけば,もみちちりつつ,すくなくも,あがのまつばら,きよくあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,三重県,地名,植物","#[訓異]
かぜふけば,[寛]かせふけは,
もみちちりつつ[寛],
すくなくも,[寛]しはらくも,
あがのまつばら,[寛]わかまつはらは,
きよくあらなくに,[寛]きよからなくに,
" "#[番号]10/2199","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]物念 隠座而 今日見者 春日山者 色就尓家里","#[訓読]物思ふと隠らひ居りて今日見れば春日の山は色づきにけり","#[仮名],ものもふと,こもらひをりて,けふみれば,かすがのやまは,いろづきにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良,地名,季節,属目","#[訓異]
ものもふと,[寛]ものおもふと,
こもらひをりて,[寛]しのひにをりて,
けふみれば,[寛]けふみれは,
かすがのやまは,[寛]かすかのやまは,
いろづきにけり,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]10/2200","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]九月 白露負而 足日木乃 山之将黄變 見幕下吉","#[訓読]九月の白露負ひてあしひきの山のもみたむ見まくしもよし","#[仮名],ながつきの,しらつゆおひて,あしひきの,やまのもみたむ,みまくしもよし","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,枕詞,季節,植物","#[訓異]
ながつきの,[寛]なかつきの,
しらつゆおひて[寛],
あしひきの[寛],
やまのもみたむ,[寛]やまのもみちむ,
みまくしもよし[寛],
" "#[番号]10/2201","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]妹許跡 馬鞍置而 射駒山 撃越来者 紅葉散筒","#[訓読]妹がりと馬に鞍置きて生駒山うち越え来れば黄葉散りつつ","#[仮名],いもがりと,うまにくらおきて,いこまやま,うちこえくれば,もみちちりつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良県,地名,植物,季節,属目","#[訓異]
いもがりと,[寛]いもかりと,
うまにくらおきて[寛],
いこまやま[寛],
うちこえくれば,[寛]うちこえくれは,
もみちちりつつ[寛],
" "#[番号]10/2202","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]黄葉為 時尓成良之 月人 楓枝乃 色付見者","#[訓読]黄葉する時になるらし月人の桂の枝の色づく見れば","#[仮名],もみちする,ときになるらし,つきひとの,かつらのえだの,いろづくみれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,季節,属目","#[訓異]
もみちする[寛],
ときになるらし[寛],
つきひとの[寛],
かつらのえだの,[寛]かつらのえたの,
いろづくみれば,[寛]いろつくみれは,
" "#[番号]10/2203","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]里異 霜者置良之 高松 野山司之 色付見者","#[訓読]里ゆ異に霜は置くらし高松の野山づかさの色づく見れば","#[仮名],さとゆけに,しもはおくらし,たかまつの,のやまづかさの,いろづくみれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良,高円,地名,季節,属目","#[訓異]
さとゆけに,[寛]さともけに,
しもはおくらし[寛],
たかまつの,[寛]たかまとの,
のやまづかさの,[寛]のやまのつかさの,
いろづくみれば,[寛]いろつくみれは,
" "#[番号]10/2204","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]秋風之 日異吹者 露重 芽子之下葉者 色付来","#[訓読]秋風の日に異に吹けば露を重み萩の下葉は色づきにけり","#[仮名],あきかぜの,ひにけにふけば,つゆをおもみ,はぎのしたばは,いろづきにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,季節,属目","#[訓異]
あきかぜの,[寛]あきかせの,
ひにけにふけば,[寛]ひにけにふけは,
つゆをおもみ,[寛]つゆをもみ,
はぎのしたばは,[寛]はきのしたはは,
いろづきにけり,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]10/2205","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]秋芽子乃 下葉赤 荒玉乃 月之歴去者 風疾鴨","#[訓読]秋萩の下葉もみちぬあらたまの月の経ぬれば風をいたみかも","#[仮名],あきはぎの,したばもみちぬ,あらたまの,つきのへぬれば,かぜをいたみかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,季節","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
したばもみちぬ,[寛]したはもみちぬ,
あらたまの[寛],
つきのへぬれば,[寛]つきのへゆけは,
かぜをいたみかも,[寛]かせをいたみかも,
" "#[番号]10/2206","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]真十鏡 見名淵山者 今日鴨 白露置而 黄葉将散","#[訓読]まそ鏡南淵山は今日もかも白露置きて黄葉散るらむ","#[仮名],まそかがみ,みなぶちやまは,けふもかも,しらつゆおきて,もみちちるらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,飛鳥,地名,季節,枕詞","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
みなぶちやまは,[寛]みなふちやまは,
けふもかも[寛],
しらつゆおきて[寛],
もみちちるらむ[寛],
" "#[番号]10/2207","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]吾屋戸之 淺茅色付 吉魚張之 夏身之上尓 四具礼零疑","#[訓読]我がやどの浅茅色づく吉隠の夏身の上にしぐれ降るらし","#[仮名],わがやどの,あさぢいろづく,よなばりの,なつみのうへに,しぐれふるらし","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良県,桜井市,地名,植物,季節","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
あさぢいろづく,[寛]あさちいろつく,
よなばりの,[寛]よなはりの,
なつみのうへに[寛],
しぐれふるらし,[寛]しくれふるらし,
" "#[番号]10/2208","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]鴈鳴之 寒鳴従 水茎之 岡乃葛葉者 色付尓来","#[訓読]雁がねの寒く鳴きしゆ水茎の岡の葛葉は色づきにけり","#[仮名],かりがねの,さむくなきしゆ,みづくきの,をかのくずはは,いろづきにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,枕詞,動物,植物,季節","#[訓異]
かりがねの,[寛]かりかねの,
さむくなきしゆ,[寛]さむくなくより,
みづくきの,[寛]みつくきの,
をかのくずはは,[寛]をかのくすはは,
いろづきにけり,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]10/2209","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]秋芽子之 下葉乃黄葉 於花継 時過去者 後将戀鴨","#[訓読]秋萩の下葉の黄葉花に継ぎ時過ぎゆかば後恋ひむかも","#[仮名],あきはぎの,したばのもみち,はなにつぎ,ときすぎゆかば,のちこひむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
したばのもみち,[寛]したはのもみち,
はなにつぎ,[寛]はなにつく,
ときすぎゆかば,[寛]ときすきゆけは,
のちこひむかも[寛],
" "#[番号]10/2210","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]明日香河 黄葉流 葛木 山之木葉者 今之<落>疑","#[訓読]明日香川黄葉流る葛城の山の木の葉は今し散るらし","#[仮名],あすかがは,もみちばながる,かづらきの,やまのこのはは,いましちるらし","#[左注]","#[校異]散 -> 落 [元][類]","#[事項],秋雑歌,飛鳥,地名,植物,季節","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
もみちばながる,[寛]もみちはなかる,
かづらきの,[寛]かつらきの,
やまのこのはは[寛],
いましちるらし[寛],
" "#[番号]10/2211","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]妹之紐 解登結而 立田山 今許曽黄葉 始而有家礼","#[訓読]妹が紐解くと結びて龍田山今こそもみちそめてありけれ","#[仮名],いもがひも,とくとむすびて,たつたやま,いまこそもみち,そめてありけれ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良県,生駒郡,地名,植物,季節","#[訓異]
いもがひも,[寛]いもかひも,
とくとむすびて,[寛]とくとむすひて,
たつたやま[寛],
いまこそもみち[寛],
そめてありけれ,[寛]はしめたりけれ,
" "#[番号]10/2212","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]鴈鳴之 <寒>喧之従 春日有 三笠山者 色付丹家里","#[訓読]雁がねの寒く鳴きしゆ春日なる御笠の山は色づきにけり","#[仮名],かりがねの,さむくなきしゆ,かすがなる,みかさのやまは,いろづきにけり","#[左注]","#[校異]<> -> 寒 [新校]","#[事項],秋雑歌,奈良,地名,動物,季節,属目","#[訓異]
かりがねの,[寛]かりかねの,
さむくなきしゆ,[寛]さはきにしより,
かすがなる,[寛]かすかなる,
みかさのやまは[寛],
いろづきにけり,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]10/2213","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]比者之 五更露尓 吾屋戸乃 秋之芽子原 色付尓家里","#[訓読]このころの暁露に我が宿の秋の萩原色づきにけり","#[仮名],このころの,あかときつゆに,わがやどの,あきのはぎはら,いろづきにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,季節,属目","#[訓異]
このころの[寛],
あかときつゆに,[寛]あかつきつゆに,
わがやどの,[寛]わかやとの,
あきのはぎはら,[寛]あきのはきはら,
いろづきにけり,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]10/2214","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]夕去者 鴈之越徃 龍田山 四具礼尓競 色付尓家里","#[訓読]夕されば雁の越え行く龍田山しぐれに競ひ色づきにけり","#[仮名],ゆふされば,かりのこえゆく,たつたやま,しぐれにきほひ,いろづきにけり","#[左注]","#[校異]尓 [元][類](塙) 丹","#[事項],秋雑歌,奈良県,生駒郡,地名,動物,季節,属目","#[訓異]
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
かりのこえゆく[寛],
たつたやま[寛],
しぐれにきほひ,[寛]しくれにきほひ,
いろづきにけり,[寛]いろつきにけり,
" "#[番号]10/2215","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]左夜深而 四具礼勿零 秋芽子之 本葉之黄葉 落巻惜裳","#[訓読]さ夜更けてしぐれな降りそ秋萩の本葉の黄葉散らまく惜しも","#[仮名],さよふけて,しぐれなふりそ,あきはぎの,もとはのもみち,ちらまくをしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,哀惜,季節","#[訓異]
さよふけて[寛],
しぐれなふりそ,[寛]しくれなふりそ,
あきはぎの,[寛]あきはきの,
もとはのもみち[寛],
ちらまくをしも[寛],
" "#[番号]10/2216","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]古郷之 始黄葉乎 手折<以> 今日曽吾来 不見人之為","#[訓読]故郷の初黄葉を手折り持ち今日ぞ我が来し見ぬ人のため","#[仮名],ふるさとの,はつもみちばを,たをりもち,けふぞわがこし,みぬひとのため","#[左注]","#[校異]以而 -> 以 [元][類]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
ふるさとの[寛],
はつもみちばを,[寛]はつもみちはを,
たをりもち[寛],
けふぞわがこし,[寛]けふそわかくる,
みぬひとのため[寛],
" "#[番号]10/2217","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]君之家<乃> 黄葉早者 落 四具礼乃雨尓 所沾良之母","#[訓読]君が家の黄葉は早く散りにけりしぐれの雨に濡れにけらしも","#[仮名],きみがいへの,もみちばははやく,ちりにけり,しぐれのあめに,ぬれにけらしも","#[左注]","#[校異]乃之 -> 乃 [紀] / 早者 (塙) 者早","#[事項],秋雑歌,植物,季節","#[訓異]
きみがいへの,[寛]きみかいへの,
もみちばははやく,[寛]もみちははやく,
ちりにけり[寛],
しぐれのあめに,[寛]しくれのあめに,
ぬれにけらしも[寛],
" "#[番号]10/2218","#[題詞](詠黄葉)","#[原文]一年 二遍不行 秋山乎 情尓不飽 過之鶴鴨","#[訓読]一年にふたたび行かぬ秋山を心に飽かず過ぐしつるかも","#[仮名],ひととせに,ふたたびゆかぬ,あきやまを,こころにあかず,すぐしつるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,季節","#[訓異]
ひととせに[寛],
ふたたびゆかぬ,[寛]ふたたひゆかぬ,
あきやまを[寛],
こころにあかず,[寛]こころにあかす,
すぐしつるかも,[寛]すこしつるかも,
" "#[番号]10/2219","#[題詞]詠水田","#[原文]足曳之 山田佃子 不秀友 縄谷延与 守登知金","#[訓読]あしひきの山田作る子秀でずとも縄だに延へよ守ると知るがね","#[仮名],あしひきの,やまたつくるこ,ひでずとも,なはだにはへよ,もるとしるがね","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,比喩","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまたつくるこ[寛],
ひでずとも,[寛]ひてすとも,
なはだにはへよ,[寛]しめたにはへよ,
もるとしるがね,[寛]もるとしるかね,
" "#[番号]10/2220","#[題詞](詠水田)","#[原文]左小<壮>鹿之 妻喚山之 岳邊在 早田者不苅 霜者雖零","#[訓読]さを鹿の妻呼ぶ山の岡辺なる早稲田は刈らじ霜は降るとも","#[仮名],さをしかの,つまよぶやまの,をかへなる,わさだはからじ,しもはふるとも","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [元][類]","#[事項],秋雑歌,動物,比喩","#[訓異]
さをしかの[寛],
つまよぶやまの,[寛]つまよふやまの,
をかへなる[寛],
わさだはからじ,[寛]わさたはからし,
しもはふるとも[寛],
" "#[番号]10/2221","#[題詞](詠水田)","#[原文]<我>門尓 禁田乎見者 沙穂内之 秋芽子為酢寸 所念鴨","#[訓読]我が門に守る田を見れば佐保の内の秋萩すすき思ほゆるかも","#[仮名],わがかどに,もるたをみれば,さほのうちの,あきはぎすすき,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]祇 -> 我 [西(右書)][元][類][紀]","#[事項],秋雑歌,植物,季節","#[訓異]
わがかどに,[寛]わかかとに,
もるたをみれば,[寛]もるたをみれは,
さほのうちの[寛],
あきはぎすすき,[寛]あきはきすすき,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]10/2222","#[題詞]詠河","#[原文]暮不去 河蝦鳴成 三和河之 清瀬音乎 聞師吉毛","#[訓読]夕さらずかはづ鳴くなる三輪川の清き瀬の音を聞かくしよしも","#[仮名],ゆふさらず,かはづなくなる,みわがはの,きよきせのおとを,きかくしよしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良県,桜井市,地名,動物,土地讃美","#[訓異]
ゆふさらず,[寛]ゆふさらす,
かはづなくなる,[寛]かはつなくなり,
みわがはの,[寛]みわかはの,
きよきせのおとを[寛],
きかくしよしも,[寛]きくはしよしも,
" "#[番号]10/2223","#[題詞]詠月","#[原文]天海 月船浮 桂梶 懸而滂所見 月人<壮>子","#[訓読]天の海に月の舟浮け桂楫懸けて漕ぐ見ゆ月人壮士","#[仮名],あめのうみに,つきのふねうけ,かつらかぢ,かけてこぐみゆ,つきひとをとこ","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [類][紀][温]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
あめのうみに[寛],
つきのふねうけ[寛],
かつらかぢ,[寛]かつらかち,
かけてこぐみゆ,[寛]かけてこくみゆ,
つきひとをとこ[寛],
" "#[番号]10/2224","#[題詞](詠月)","#[原文]此夜等者 沙夜深去良之 鴈鳴乃 所聞空従 月立度","#[訓読]この夜らはさ夜更けぬらし雁が音の聞こゆる空ゆ月立ち渡る","#[仮名],このよらは,さよふけぬらし,かりがねの,きこゆるそらゆ,つきたちわたる","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物,属目","#[訓異]
このよらは[寛],
さよふけぬらし[寛],
かりがねの,[寛]かりかねの,
きこゆるそらゆ,[寛]きこゆるそらに,
つきたちわたる[寛],
" "#[番号]10/2225","#[題詞](詠月)","#[原文]吾背子之 挿頭之芽子尓 置露乎 清見世跡 月者照良思","#[訓読]我が背子がかざしの萩に置く露をさやかに見よと月は照るらし","#[仮名],わがせこが,かざしのはぎに,おくつゆを,さやかにみよと,つきはてるらし","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,属目","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
かざしのはぎに,[寛]かさしのはきに,
おくつゆを[寛],
さやかにみよと[寛],
つきはてるらし[寛],
" "#[番号]10/2226","#[題詞](詠月)","#[原文]無心 秋月夜之 物念跡 寐不所宿 照乍本名","#[訓読]心なき秋の月夜の物思ふと寐の寝らえぬに照りつつもとな","#[仮名],こころなき,あきのつくよの,ものもふと,いのねらえぬに,てりつつもとな","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,季節,風景讃美","#[訓異]
こころなき[寛],
あきのつくよの,[寛]あきのつきよの,
ものもふと,[寛]ものおもふと,
いのねらえぬに,[寛]いのねられぬに,
てりつつもとな[寛],
" "#[番号]10/2227","#[題詞](詠月)","#[原文]不念尓 四具礼乃雨者 零有跡 天雲霽而 月夜清焉","#[訓読]思はぬにしぐれの雨は降りたれど天雲晴れて月夜さやけし","#[仮名],おもはぬに,しぐれのあめは,ふりたれど,あまくもはれて,つくよさやけし","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,讃美","#[訓異]
おもはぬに,[寛]おもはすに,
しぐれのあめは,[寛]しくれのあめは,
ふりたれど,[寛]ふりたれと,
あまくもはれて[寛],
つくよさやけし,[寛]つきよきよきを,
" "#[番号]10/2228","#[題詞](詠月)","#[原文]芽子之花 開乃乎再入緒 見代跡可聞 月夜之清 戀益良國","#[訓読]萩の花咲きのををりを見よとかも月夜の清き恋まさらくに","#[仮名],はぎのはな,さきのををりを,みよとかも,つくよのきよき,こひまさらくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物","#[訓異]
はぎのはな,[寛]はきのはな,
さきのををりを,[寛]さくのをふたりを,
みよとかも[寛],
つくよのきよき,[寛]つきよのきよき,
こひまさらくに,[寛]こひますらくに,
" "#[番号]10/2229","#[題詞](詠月)","#[原文]白露乎 玉作有 九月 在明之月夜 雖見不飽可聞","#[訓読]白露を玉になしたる九月の有明の月夜見れど飽かぬかも","#[仮名],しらつゆを,たまになしたる,ながつきの,ありあけのつくよ,みれどあかぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,讃美","#[訓異]
しらつゆを[寛],
たまになしたる[寛],
ながつきの,[寛]なかつきの,
ありあけのつくよ,[寛]ありあけのつきよ,
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]10/2230","#[題詞]詠風","#[原文]戀乍裳 稲葉掻別 家居者 乏不有 秋之暮風","#[訓読]恋ひつつも稲葉かき別け家居れば乏しくもあらず秋の夕風","#[仮名],こひつつも,いなばかきわけ,いへをれば,ともしくもあらず,あきのゆふかぜ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,季節","#[訓異]
こひつつも[寛],
いなばかきわけ,[寛]いなはかきわけ,
いへをれば,[寛]いへゐせは,
ともしくもあらず,[寛]ともしくもあらし,
あきのゆふかぜ,[寛]あきのゆふかせ,
" "#[番号]10/2231","#[題詞](詠風)","#[原文]芽子花 咲有野邊 日晩之乃 鳴奈流共 秋風吹","#[訓読]萩の花咲きたる野辺にひぐらしの鳴くなるなへに秋の風吹く","#[仮名],はぎのはな,さきたるのへに,ひぐらしの,なくなるなへに,あきのかぜふく","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,動物,季節","#[訓異]
はぎのはな,[寛]はきのはな,
さきたるのへに[寛],
ひぐらしの,[寛]ひくらしの,
なくなるなへに,[寛]なくなるともに,
あきのかぜふく,[寛]あきかせのふく,
" "#[番号]10/2232","#[題詞](詠風)","#[原文]秋山之 木葉文未赤者 今旦吹風者 霜毛置應久","#[訓読]秋山の木の葉もいまだもみたねば今朝吹く風は霜も置きぬべく","#[仮名],あきやまの,このはもいまだ,もみたねば,けさふくかぜは,しももおきぬべく","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,季節","#[訓異]
あきやまの[寛],
このはもいまだ,[寛]このはもいまた,
もみたねば,[寛]もみたねは,
けさふくかぜは,[寛]けさふくかせは,
しももおきぬべく,[寛]しももおきぬへく,
" "#[番号]10/2233","#[題詞]詠芳","#[原文]高松之 此峯迫尓 笠立而 盈盛有 秋香乃吉者","#[訓読]高松のこの峰も狭に笠立てて満ち盛りたる秋の香のよさ","#[仮名],たかまつの,このみねもせに,かさたてて,みちさかりたる,あきのかのよさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,奈良,高円,地名,讃美,季節","#[訓異]
たかまつの,[寛]たかまとの,
このみねもせに[寛],
かさたてて,[寛]かさたちて,
みちさかりたる,[寛]みちさかりなる,
あきのかのよさ[寛],
" "#[番号]10/2234","#[題詞]詠雨","#[原文]一日 千重敷布 我戀 妹當 為暮零礼見","#[訓読]一日には千重しくしくに我が恋ふる妹があたりにしぐれ降れ見む","#[仮名],ひとひには,ちへしくしくに,あがこふる,いもがあたりに,しぐれふれみむ","#[左注]右一首柿本朝臣人<麻呂>之歌集出","#[校異]麿 -> 麻呂 [元][紀][温] / 歌 [西] 謌","#[事項],秋雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,恋情,季節","#[訓異]
ひとひには[寛],
ちへしくしくに,[寛]ちへにしきしき,
あがこふる,[寛]わかこふる,
いもがあたりに,[寛]いもかあたりに,
しぐれふれみむ,[寛]しくれふれみむ,
" "#[番号]10/2235","#[題詞](詠雨)","#[原文]秋田苅 客乃廬入尓 四具礼零 我袖沾 干人無二","#[訓読]秋田刈る旅の廬りにしぐれ降り我が袖濡れぬ干す人なしに","#[仮名],あきたかる,たびのいほりに,しぐれふり,わがそでぬれぬ,ほすひとなしに","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,羈旅","#[訓異]
あきたかる[寛],
たびのいほりに,[寛]たひのいほりに,
しぐれふり,[寛]しくれふり,
わがそでぬれぬ,[寛]わかそてぬれぬ,
ほすひとなしに[寛],
" "#[番号]10/2236","#[題詞](詠雨)","#[原文]玉手次 不懸時無 吾戀 此具礼志零者 沾乍毛将行","#[訓読]玉たすき懸けぬ時なし我が恋はしぐれし降らば濡れつつも行かむ","#[仮名],たまたすき,かけぬときなし,あがこひは,しぐれしふらば,ぬれつつもゆかむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,枕詞,恋情","#[訓異]
たまたすき[寛],
かけぬときなし[寛],
あがこひは,[寛]わかこひは,
しぐれしふらば,[寛]しくれしふらは,
ぬれつつもゆかむ[寛],
" "#[番号]10/2237","#[題詞](詠雨)","#[原文]黄葉乎 令落四具礼能 零苗尓 夜副衣寒 一之宿者","#[訓読]黄葉を散らすしぐれの降るなへに夜さへぞ寒きひとりし寝れば","#[仮名],もみちばを,ちらすしぐれの,ふるなへに,よさへぞさむき,ひとりしぬれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,植物,季節,恋情","#[訓異]
もみちばを,[寛]もみちはを,
ちらすしぐれの,[寛]ちらすしくれの,
ふるなへに[寛],
よさへぞさむき,[寛]よさへそさむき,
ひとりしぬれば,[寛]ひとりしぬれは,
" "#[番号]10/2238","#[題詞]詠霜","#[原文]天飛也 鴈之翅乃 覆羽之 何處漏香 霜之零異牟","#[訓読]天飛ぶや雁の翼の覆ひ羽のいづく漏りてか霜の降りけむ","#[仮名],あまとぶや,かりのつばさの,おほひばの,いづくもりてか,しものふりけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋雑歌,動物,季節","#[訓異]
あまとぶや,[寛]あまとふや,
かりのつばさの,[寛]かりのつはさの,
おほひばの,[寛]ををひはの,
いづくもりてか,[寛]いつこもりてか,
しものふりけむ,[寛]しものふりなむ,
" "#[番号]10/2239","#[題詞]秋相聞","#[原文]金山 舌日下 鳴鳥 音<谷>聞 何嘆","#[訓読]秋山のしたひが下に鳴く鳥の声だに聞かば何か嘆かむ","#[仮名],あきやまの,したひがしたに,なくとりの,こゑだにきかば,なにかなげかむ","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]<> -> 谷 [元][類][紀]","#[事項],秋相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,動物,恋情","#[訓異]
あきやまの[寛],
したひがしたに,[寛]したひかしたに,
なくとりの[寛],
こゑだにきかば,[寛]こゑたにきかは,
なにかなげかむ,[寛]なにかなけかむ,
" "#[番号]10/2240","#[題詞]","#[原文]誰彼 我莫問 九月 露沾乍 君待吾","#[訓読]誰ぞかれと我れをな問ひそ九月の露に濡れつつ君待つ我れを","#[仮名],たぞかれと,われをなとひそ,ながつきの,つゆにぬれつつ,きみまつわれを","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
たぞかれと,[寛]たれかれと,
われをなとひそ[寛],
ながつきの,[寛]なかつきの,
つゆにぬれつつ[寛],
きみまつわれを[寛],
" "#[番号]10/2241","#[題詞]","#[原文]秋夜 霧發渡 <凡>々 夢見 妹形矣","#[訓読]秋の夜の霧立ちわたりおほほしく夢にぞ見つる妹が姿を","#[仮名],あきのよの,きりたちわたり,おほほしく,いめにぞみつる,いもがすがたを","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]夙 -> 凡 [万葉考]","#[事項],秋相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
あきのよの[寛],
きりたちわたり,[寛]きりたちわたる,
おほほしく,[寛]あさなさな,
いめにぞみつる,[寛]ゆめのことみる,
いもがすがたを,[寛]いもかすかたを,
" "#[番号]10/2242","#[題詞]","#[原文]秋野 尾花末 生靡 心妹 依鴨","#[訓読]秋の野の尾花が末の生ひ靡き心は妹に寄りにけるかも","#[仮名],あきののの,をばながうれの,おひなびき,こころはいもに,よりにけるかも","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],秋相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情","#[訓異]
あきののの[寛],
をばながうれの,[寛]をはなかすゑの,
おひなびき,[寛]おとなひく,
こころはいもに[寛],
よりにけるかも[寛],
" "#[番号]10/2243","#[題詞]","#[原文]秋山 霜零覆 木葉落 歳雖行 我忘八","#[訓読]秋山に霜降り覆ひ木の葉散り年は行くとも我れ忘れめや","#[仮名],あきやまに,しもふりおほひ,このはちり,としはゆくとも,われわすれめや","#[左注]右柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],秋相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
あきやまに[寛],
しもふりおほひ,[寛]しもふりををひ,
このはちり,[寛]このはちる,
としはゆくとも[寛],
われわすれめや[寛],
" "#[番号]10/2244","#[題詞]寄水田","#[原文]住吉之 岸乎田尓墾 蒔稲 乃而及苅 不相公鴨","#[訓読]住吉の岸を田に墾り蒔きし稲かくて刈るまで逢はぬ君かも","#[仮名],すみのえの,きしをたにはり,まきしいね,かくてかるまで,あはぬきみかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,大阪,地名,恋情","#[訓異]
すみのえの[寛],
きしをたにはり[寛],
まきしいね,[寛]まきしいねの,
かくてかるまで,[寛]しかもかるまち,
あはぬきみかも[寛],
" "#[番号]10/2245","#[題詞](寄水田)","#[原文]剱後 玉纒田井尓 及何時可 妹乎不相見 家戀将居","#[訓読]太刀の後玉纒田居にいつまでか妹を相見ず家恋ひ居らむ","#[仮名],たちのしり,たままきたゐに,いつまでか,いもをあひみず,いへこひをらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,地名,恋情","#[訓異]
たちのしり[寛],
たままきたゐに,[寛]たままくたゐに,
いつまでか,[寛]いつまてか,
いもをあひみず,[寛]いもをあひみす,
いへこひをらむ[寛],
" "#[番号]10/2246","#[題詞](寄水田)","#[原文]秋田之 穂<上>置 白露之 可消吾者 所念鴨","#[訓読]秋の田の穂の上に置ける白露の消ぬべくも我は思ほゆるかも","#[仮名],あきのたの,ほのうへにおける,しらつゆの,けぬべくもわは,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]上尓 -> 上 [類][紀][温]","#[事項],秋相聞,植物","#[訓異]
あきのたの[寛],
ほのうへにおける[寛],
しらつゆの[寛],
けぬべくもわは,[寛]けぬへくわれは,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]10/2247","#[題詞](寄水田)","#[原文]秋田之 穂向之所依 片縁 吾者物念 都礼無物乎","#[訓読]秋の田の穂向きの寄れる片寄りに我れは物思ふつれなきものを","#[仮名],あきのたの,ほむきのよれる,かたよりに,われはものもふ,つれなきものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
あきのたの[寛],
ほむきのよれる,[寛]おむけのよする,
かたよりに[寛],
われはものもふ,[寛]われはものおもふ,
つれなきものを[寛],
" "#[番号]10/2248","#[題詞](寄水田)","#[原文]秋田<苅> 借廬作 五目入為而 有藍君S 将見依毛欲<得>","#[訓読]秋田刈る仮廬を作り廬りしてあるらむ君を見むよしもがも","#[仮名],あきたかる,かりいほをつくり,いほりして,あるらむきみを,みむよしもがも","#[左注]","#[校異]田 [元][類][紀] 山 / S -> 苅 [万葉考] / 将 -> 得 [元][類][紀][温]","#[事項],秋相聞,恋情","#[訓異]
あきたかる,[寛]あきのたを,
かりいほをつくり,[寛]かりいほつくり,
いほりして[寛],
あるらむきみを[寛],
みむよしもがも,[寛]みむよしもかも,
" "#[番号]10/2249","#[題詞](寄水田)","#[原文]鶴鳴之 所聞田井尓 五百入為而 吾客有跡 於妹告社","#[訓読]鶴が音の聞こゆる田居に廬りして我れ旅なりと妹に告げこそ","#[仮名],たづがねの,きこゆるたゐに,いほりして,われたびなりと,いもにつげこそ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,動物,羈旅","#[訓異]
たづがねの,[寛]たつかねの,
きこゆるたゐに[寛],
いほりして[寛],
われたびなりと,[寛]われたひなりと,
いもにつげこそ,[寛]いもにつけこそ,
" "#[番号]10/2250","#[題詞](寄水田)","#[原文]春霞 多奈引田居尓 廬付而 秋田苅左右 令思良久","#[訓読]春霞たなびく田居に廬つきて秋田刈るまで思はしむらく","#[仮名],はるかすみ,たなびくたゐに,いほつきて,あきたかるまで,おもはしむらく","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,恋情","#[訓異]
はるかすみ[寛],
たなびくたゐに,[寛]たなひくたゐに,
いほつきて,[寛]いほりして,
あきたかるまで,[寛]あきたかるまて,
おもはしむらく[寛],
" "#[番号]10/2251","#[題詞](寄水田)","#[原文]橘乎 守部乃五十戸之 門田年稲 苅時過去 不来跡為等霜","#[訓読]橘を守部の里の門田早稲刈る時過ぎぬ来じとすらしも","#[仮名],たちばなを,もりべのさとの,かどたわせ,かるときすぎぬ,こじとすらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,地名,植物,枕詞,恋情","#[訓異]
たちばなを,[寛]たちはなを,
もりべのさとの,[寛]もりへのいへの,
かどたわせ,[寛]かとたわせ,
かるときすぎぬ,[寛]かるときすきぬ,
こじとすらしも,[寛]こしとすらしも,
" "#[番号]10/2252","#[題詞]寄露","#[原文]秋芽子之 開散野邊之 暮露尓 沾乍来益 夜者深去鞆","#[訓読]秋萩の咲き散る野辺の夕露に濡れつつ来ませ夜は更けぬとも","#[仮名],あきはぎの,さきちるのへの,ゆふつゆに,ぬれつつきませ,よはふけぬとも","#[左注]","#[校異]鞆 [元][類][紀] 韓","#[事項],秋相聞,植物,勧誘","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
さきちるのへの[寛],
ゆふつゆに[寛],
ぬれつつきませ[寛],
よはふけぬとも[寛],
" "#[番号]10/2253","#[題詞](寄露)","#[原文]色付相 秋之露霜 莫零<根> 妹之手本乎 不纒今夜者","#[訓読]色づかふ秋の露霜な降りそね妹が手本をまかぬ今夜は","#[仮名],いろづかふ,あきのつゆしも,なふりそね,いもがたもとを,まかぬこよひは","#[左注]","#[校異]<> -> 根 [元][類]","#[事項],秋相聞,恋情","#[訓異]
いろづかふ,[寛]いろつきあふ,
あきのつゆしも[寛],
なふりそね[寛],
いもがたもとを,[寛]いもかたもとを,
まかぬこよひは[寛],
" "#[番号]10/2254","#[題詞](寄露)","#[原文]秋芽子之 上尓置有 白露之 消鴨死猿 戀<乍>不有者","#[訓読]秋萩の上に置きたる白露の消かもしなまし恋ひつつあらずは","#[仮名],あきはぎの,うへにおきたる,しらつゆの,けかもしなまし,こひつつあらずは","#[左注]","#[校異]尓 -> 乍 [万葉考] / 猿 [元][類](塙) ミ","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
うへにおきたる[寛],
しらつゆの[寛],
けかもしなまし[寛],
こひつつあらずは,[寛]こひにあらすは,
" "#[番号]10/2255","#[題詞](寄露)","#[原文]吾屋前 秋芽子上 置露 市白霜 吾戀目八面","#[訓読]我が宿の秋萩の上に置く露のいちしろくしも我れ恋ひめやも","#[仮名],わがやどの,あきはぎのうへに,おくつゆの,いちしろくしも,あれこひめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
あきはぎのうへに,[寛]あきはきのうへに,
おくつゆの[寛],
いちしろくしも[寛],
あれこひめやも,[寛]わかこひめやも,
" "#[番号]10/2256","#[題詞](寄露)","#[原文]秋穂乎 之努尓<押>靡 置露 消鴨死益 戀乍不有者","#[訓読]秋の穂をしのに押しなべ置く露の消かもしなまし恋ひつつあらずは","#[仮名],あきのほを,しのにおしなべ,おくつゆの,けかもしなまし,こひつつあらずは","#[左注]","#[校異]狎 -> 押 [元][類][紀]","#[事項],秋相聞,恋情","#[訓異]
あきのほを[寛],
しのにおしなべ,[寛]しのにおしなみ,
おくつゆの[寛],
けかもしなまし[寛],
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
" "#[番号]10/2257","#[題詞](寄露)","#[原文]露霜尓 衣袖所沾而 今谷毛 妹許行名 夜者雖深","#[訓読]露霜に衣手濡れて今だにも妹がり行かな夜は更けぬとも","#[仮名],つゆしもに,ころもでぬれて,いまだにも,いもがりゆかな,よはふけぬとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,恋情","#[訓異]
つゆしもに[寛],
ころもでぬれて,[寛]ころもてぬれて,
いまだにも,[寛]いまたにも,
いもがりゆかな,[寛]いもかりやらな,
よはふけぬとも[寛],
" "#[番号]10/2258","#[題詞](寄露)","#[原文]秋芽子之 枝毛十尾尓 置霧之 消毳死猿 戀乍不有者","#[訓読]秋萩の枝もとををに置く露の消かもしなまし恋ひつつあらずは","#[仮名],あきはぎの,えだもとををに,おくつゆの,けかもしなまし,こひつつあらずは","#[左注]","#[校異]猿 [元][類](塙) ヱ","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
えだもとををに,[寛]えたもとををに,
おくつゆの[寛],
けかもしなまし[寛],
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
" "#[番号]10/2259","#[題詞](寄露)","#[原文]秋芽子之 上尓白霧 毎置 見管曽思<怒>布 君之光儀<呼>","#[訓読]秋萩の上に白露置くごとに見つつぞ偲ふ君が姿を","#[仮名],あきはぎの,うへにしらつゆ,おくごとに,みつつぞしのふ,きみがすがたを","#[左注]","#[校異]努 -> 怒 [元][類][紀] / 乎 -> 呼 [元][類][紀]","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
うへにしらつゆ[寛],
おくごとに,[寛]おくことに,
みつつぞしのふ,[寛]みつつそしのふ,
きみがすがたを,[寛]きみかすかたを,
" "#[番号]10/2260","#[題詞]寄風","#[原文]吾妹子者 衣丹有南 秋風之 寒比来 下著益乎","#[訓読]我妹子は衣にあらなむ秋風の寒きこのころ下に着ましを","#[仮名],わぎもこは,ころもにあらなむ,あきかぜの,さむきこのころ,したにきましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,恋情","#[訓異]
わぎもこは,[寛]わきもこは,
ころもにあらなむ,[寛]きぬにあらなむ,
あきかぜの,[寛]あきかせの,
さむきこのころ[寛],
したにきましを[寛],
" "#[番号]10/2261","#[題詞](寄風)","#[原文]泊瀬風 如是吹三更者 及何時 衣片敷 吾一将宿","#[訓読]泊瀬風かく吹く宵はいつまでか衣片敷き我がひとり寝む","#[仮名],はつせかぜ,かくふくよひは,いつまでか,ころもかたしき,わがひとりねむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,初瀬,地名,恋情","#[訓異]
はつせかぜ,[寛]はつせかせ,
かくふくよひは,[寛]かくふくよはは,
いつまでか,[寛]いつまてか,
ころもかたしき[寛],
わがひとりねむ,[寛]わかひとりねむ,
" "#[番号]10/2262","#[題詞]寄雨","#[原文]秋芽子乎 令落長雨之 零比者 一起居而 戀夜曽大寸","#[訓読]秋萩を散らす長雨の降るころはひとり起き居て恋ふる夜ぞ多き","#[仮名],あきはぎを,ちらすながめの,ふるころは,ひとりおきゐて,こふるよぞおほき","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
あきはぎを,[寛]あきはきを,
ちらすながめの,[寛]ちらすなかめの,
ふるころは[寛],
ひとりおきゐて[寛],
こふるよぞおほき,[寛]こふるよそおほき,
" "#[番号]10/2263","#[題詞](寄雨)","#[原文]九月 四具礼乃雨之 山霧 烟寸<吾>胸 誰乎見者将息 [一云 十月 四具礼乃雨降] ","#[訓読]九月のしぐれの雨の山霧のいぶせき我が胸誰を見ばやまむ [一云 十月しぐれの雨降り] ","#[仮名],ながつきの,しぐれのあめの,やまぎりの,いぶせきあがむね,たをみばやまむ,[かむなづき,しぐれのあめふり]","#[左注]","#[校異]吾告 -> 吾 [万葉集略解]","#[事項],秋相聞,恋情,鬱屈,異伝","#[訓異]
ながつきの,[寛]なかつきの,
しぐれのあめの,[寛]しくれのあめの,
やまぎりの,[寛]やまきりの,
いぶせきあがむね,[寛]けふきわかむね,
たをみばやまむ,[寛]たれをみはやまむ,
[かむなづき,[寛]かみなつき,
しぐれのあめふり],[寛]しくれのあめふり,
" "#[番号]10/2264","#[題詞]寄蟋","#[原文]蟋蟀之 待歡 秋夜乎 寐驗無 枕与吾者","#[訓読]こほろぎの待ち喜ぶる秋の夜を寝る験なし枕と我れは","#[仮名],こほろぎの,まちよろこぶる,あきのよを,ぬるしるしなし,まくらとわれは","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,動物,恋情","#[訓異]
こほろぎの,[寛]きりきりす,
まちよろこぶる,[寛]まちよろこへる,
あきのよを[寛],
ぬるしるしなし[寛],
まくらとわれは[寛],
" "#[番号]10/2265","#[題詞]寄蝦","#[原文]朝霞 鹿火屋之下尓 鳴蝦 聲谷聞者 吾将戀八方","#[訓読]朝霞鹿火屋が下に鳴くかはづ声だに聞かば我れ恋ひめやも","#[仮名],あさかすみ,かひやがしたに,なくかはづ,こゑだにきかば,あれこひめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,動物,恋情","#[訓異]
あさかすみ[寛],
かひやがしたに,[寛]かひやかしたに,
なくかはづ,[寛]なくかはつ,
こゑだにきかば,[寛]こゑたにきかは,
あれこひめやも,[寛]われこひめやも,
" "#[番号]10/2266","#[題詞]寄鴈","#[原文]出去者 天飛鴈之 可泣美 且今<日>々々々云二 年曽經去家類","#[訓読]出でて去なば天飛ぶ雁の泣きぬべみ今日今日と言ふに年ぞ経にける","#[仮名],いでていなば,あまとぶかりの,なきぬべみ,けふけふといふに,としぞへにける","#[左注]","#[校異]且 -> 日 [元][類][紀]","#[事項],秋相聞,動物,恋情","#[訓異]
いでていなば,[寛]いてていなは,
あまとぶかりの,[寛]あまとふかりの,
なきぬべみ,[寛]なきぬへみ,
けふけふといふに[寛],
としぞへにける,[寛]としそへにける,
" "#[番号]10/2267","#[題詞]寄鹿","#[原文]左小<壮>鹿之 朝伏小野之 草若美 隠不得而 於人所知名","#[訓読]さを鹿の朝伏す小野の草若み隠らひかねて人に知らゆな","#[仮名],さをしかの,あさふすをのの,くさわかみ,かくらひかねて,ひとにしらゆな","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [類]","#[事項],秋相聞,動物,秘密","#[訓異]
さをしかの[寛],
あさふすをのの[寛],
くさわかみ[寛],
かくらひかねて,[寛]かくろひかねて,
ひとにしらゆな,[寛]ひとにしらるな,
" "#[番号]10/2268","#[題詞](寄鹿)","#[原文]左小<壮>鹿之 小野<之>草伏 灼然 吾不問尓 人乃知良久","#[訓読]さを鹿の小野の草伏いちしろく我がとはなくに人の知れらく","#[仮名],さをしかの,をののくさぶし,いちしろく,わがとはなくに,ひとのしれらく","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [定本] / <> -> 之 [類][紀]","#[事項],秋相聞,動物,秘密","#[訓異]
さをしかの[寛],
をののくさぶし,[寛]をののくさふし,
いちしろく[寛],
わがとはなくに,[寛]わかとはさるに,
ひとのしれらく,[寛]ひとのしるらく,
" "#[番号]10/2269","#[題詞]寄鶴","#[原文]今夜乃 暁降 鳴鶴之 念不過 戀許増益也","#[訓読]今夜の暁ぐたち鳴く鶴の思ひは過ぎず恋こそまされ","#[仮名],こよひの,あかときぐたち,なくたづの,おもひはすぎず,こひこそまされ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,動物,恋情","#[訓異]
こよひの,[寛]このよらの,
あかときぐたち,[寛]あかつきくたち,
なくたづの,[寛]なくたつの,
おもひはすぎず,[寛]おもひはすきす,
こひこそまされ[寛],
" "#[番号]10/2270","#[題詞]寄草","#[原文]道邊之 乎花我下之 思草 今更尓 何物可将念","#[訓読]道の辺の尾花が下の思ひ草今さらさらに何をか思はむ","#[仮名],みちのへの,をばながしたの,おもひぐさ,いまさらさらに,なにをかおもはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
みちのへの[寛],
をばながしたの,[寛]をはなかしたの,
おもひぐさ,[寛]おもひくさ,
いまさらさらに,[寛]いまさらなにの,
なにをかおもはむ,[寛]ものかおもはむ,
" "#[番号]10/2271","#[題詞]寄花","#[原文]草深三 蟋多 鳴屋前 芽子見公者 何時来益牟","#[訓読]草深みこほろぎさはに鳴くやどの萩見に君はいつか来まさむ","#[仮名],くさぶかみ,こほろぎさはに,なくやどの,はぎみにきみは,いつかきまさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,動物,恋情","#[訓異]
くさぶかみ,[寛]くさふかみ,
こほろぎさはに,[寛]きりきりすいたく,
なくやどの,[寛]なくやとに,
はぎみにきみは,[寛]はきみにきみは,
いつかきまさむ[寛],
" "#[番号]10/2272","#[題詞](寄花)","#[原文]秋就者 水草花乃 阿要奴蟹 思跡不知 直尓不相在者","#[訓読]秋づけば水草の花のあえぬがに思へど知らじ直に逢はざれば","#[仮名],あきづけば,みくさのはなの,あえぬがに,おもへどしらじ,ただにあはざれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
あきづけば,[寛]あきつけは,
みくさのはなの[寛],
あえぬがに,[寛]あにぬかに,
おもへどしらじ,[寛]おもへとしらし,
ただにあはざれば,[寛]たにあはされは,
" "#[番号]10/2273","#[題詞](寄花)","#[原文]何為等加 君乎将Q 秋芽子乃 其始花之 歡寸物乎","#[訓読]何すとか君をいとはむ秋萩のその初花の嬉しきものを","#[仮名],なにすとか,きみをいとはむ,あきはぎの,そのはつはなの,うれしきものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,問答","#[訓異]
なにすとか[寛],
きみをいとはむ[寛],
あきはぎの,[寛]あきはきの,
そのはつはなの[寛],
うれしきものを[寛],
" "#[番号]10/2274","#[題詞](寄花)","#[原文]展轉 戀者死友 灼然 色庭不出 朝容皃之花","#[訓読]臥いまろび恋ひは死ぬともいちしろく色には出でじ朝顔の花","#[仮名],こいまろび,こひはしぬとも,いちしろく,いろにはいでじ,あさがほのはな","#[左注]","#[校異]轉 [元][類] 傳","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
こいまろび,[寛]こひまろひ,
こひはしぬとも[寛],
いちしろく[寛],
いろにはいでじ,[寛]いろにはいてし,
あさがほのはな,[寛]あさかほのはな,
" "#[番号]10/2275","#[題詞](寄花)","#[原文]言出而 云<者>忌染 朝皃乃 穂庭開不出 戀為鴨","#[訓読]言に出でて云はばゆゆしみ朝顔の穂には咲き出ぬ恋もするかも","#[仮名],ことにいでて,いはばゆゆしみ,あさがほの,ほにはさきでぬ,こひもするかも","#[左注]","#[校異]<> -> 者 [元][類][紀]","#[事項],秋相聞,植物,恋情,秘密","#[訓異]
ことにいでて,[寛]ことにいてて,
いはばゆゆしみ,[寛]いははいみしみ,
あさがほの,[寛]あさかほの,
ほにはさきでぬ,[寛]ほにはさきいてす,
こひもするかも,[寛]こひをするかも,
" "#[番号]10/2276","#[題詞](寄花)","#[原文]鴈鳴之 始音聞而 開出有 屋前之秋芽子 見来吾世古","#[訓読]雁がねの初声聞きて咲き出たる宿の秋萩見に来我が背子","#[仮名],かりがねの,はつこゑききて,さきでたる,やどのあきはぎ,みにこわがせこ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,動物,植物,勧誘","#[訓異]
かりがねの,[寛]かりかねの,
はつこゑききて[寛],
さきでたる,[寛]さきてたる,
やどのあきはぎ,[寛]やとのあきはき,
みにこわがせこ,[寛]みにこわかせこ,
" "#[番号]10/2277","#[題詞](寄花)","#[原文]左小<壮>鹿之 入野乃為酢寸 初尾花 何時<加> 妹之<手将>枕","#[訓読]さを鹿の入野のすすき初尾花いづれの時か妹が手まかむ","#[仮名],さをしかの,いりののすすき,はつをばな,いづれのときか,いもがてまかむ","#[左注]","#[校異]牡 -> 壮 [類] / 如 -> 加 [元][紀][温] / 将手 -> 手将 [元][類][紀]","#[事項],秋相聞,地名,動物,植物","#[訓異]
さをしかの[寛],
いりののすすき,[寛]いるののすすき,
はつをばな,[寛]はつをはな,
いづれのときか,[寛]いつしかいもか,
いもがてまかむ,[寛]いもかたまくらにせむ,
" "#[番号]10/2278","#[題詞](寄花)","#[原文]戀日之 氣長有者 三苑圃能 辛藍花之 色出尓来","#[訓読]恋ふる日の日長くしあればみ園生の韓藍の花の色に出でにけり","#[仮名],こふるひの,けながくしあれば,みそのふの,からあゐのはなの,いろにいでにけり","#[左注]","#[校異]三 [元][紀] 吾","#[事項],秋相聞,植物,恋情,露見","#[訓異]
こふるひの[寛],
けながくしあれば,[寛]けなかくあれは,
みそのふの[寛],
からあゐのはなの[寛],
いろにいでにけり,[寛]いろにいてにけり,
" "#[番号]10/2279","#[題詞](寄花)","#[原文]吾郷尓 今咲花乃 娘部<四> 不堪情 尚戀二家里","#[訓読]我が里に今咲く花のをみなへし堪へぬ心になほ恋ひにけり","#[仮名],わがさとに,いまさくはなの,をみなへし,あへぬこころに,なほこひにけり","#[左注]","#[校異]四敝之 -> 四 [定本]","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
わがさとに,[寛]わかさとに,
いまさくはなの[寛],
をみなへし[寛],
あへぬこころに,[寛]たへすこころに,
なほこひにけり[寛],
" "#[番号]10/2280","#[題詞](寄花)","#[原文]芽子花 咲有乎見者 君不相 真毛久二 成来鴨","#[訓読]萩の花咲けるを見れば君に逢はずまことも久になりにけるかも","#[仮名],はぎのはな,さけるをみれば,きみにあはず,まこともひさに,なりにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
はぎのはな,[寛]はきのはな,
さけるをみれば,[寛]さけるをみれは,
きみにあはず,[寛]きみにあはて,
まこともひさに[寛],
なりにけるかも[寛],
" "#[番号]10/2281","#[題詞](寄花)","#[原文]朝露尓 咲酢左乾垂 鴨頭草之 日斜共 可消所念","#[訓読]朝露に咲きすさびたる月草の日くたつなへに消ぬべく思ほゆ","#[仮名],あさつゆに,さきすさびたる,つきくさの,ひくたつなへに,けぬべくおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
あさつゆに[寛],
さきすさびたる,[寛]さきすさひたる,
つきくさの[寛],
ひくたつなへに,[寛]ひたくるともに,
けぬべくおもほゆ,[寛]けぬへくおもほゆ,
" "#[番号]10/2282","#[題詞](寄花)","#[原文]長夜乎 於君戀乍 不生者 開而落西 花有益乎","#[訓読]長き夜を君に恋ひつつ生けらずは咲きて散りにし花ならましを","#[仮名],ながきよを,きみにこひつつ,いけらずは,さきてちりにし,はなならましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,恋情","#[訓異]
ながきよを,[寛]なかきよを,
きみにこひつつ[寛],
いけらずは,[寛]いけらすは,
さきてちりにし[寛],
はなならましを,[寛]はなにあらましを,
" "#[番号]10/2283","#[題詞](寄花)","#[原文]吾妹兒尓 相坂山之 皮為酢寸 穂庭開不出 戀<度>鴨","#[訓読]我妹子に逢坂山のはだすすき穂には咲き出ず恋ひわたるかも","#[仮名],わぎもこに,あふさかやまの,はだすすき,ほにはさきでず,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]渡 -> 度 [元][類][紀]","#[事項],秋相聞,京都,地名,植物,恋情","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
あふさかやまの[寛],
はだすすき,[寛]しのすすき,
ほにはさきでず,[寛]ほにはさきいてす,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]10/2284","#[題詞](寄花)","#[原文]率尓 今毛欲見 秋芽子之 四搓二将有 妹之光儀乎","#[訓読]いささめに今も見が欲し秋萩のしなひにあるらむ妹が姿を","#[仮名],いささめに,いまもみがほし,あきはぎの,しなひにあるらむ,いもがすがたを","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
いささめに,[寛]いさなみに,
いまもみがほし,[寛]いまもみてしか,
あきはぎの,[寛]あきはきの,
しなひにあるらむ,[寛]しなひにあらむ,
いもがすがたを,[寛]いもかすかたを,
" "#[番号]10/2285","#[題詞](寄花)","#[原文]秋芽子之 花野乃為酢寸 穂庭不出 吾戀度 隠嬬波母","#[訓読]秋萩の花野のすすき穂には出でず我が恋ひわたる隠り妻はも","#[仮名],あきはぎの,はなののすすき,ほにはいでず,あがこひわたる,こもりづまはも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,恋情,秘密","#[訓異]
あきはぎの,[寛]あきはきの,
はなののすすき[寛],
ほにはいでず,[寛]ほにはいてす,
あがこひわたる,[寛]わかこひわたる,
こもりづまはも,[寛]こもりつまはも,
" "#[番号]10/2286","#[題詞](寄花)","#[原文]吾屋戸尓 開秋芽子 散過而 實成及丹 於君不相鴨","#[訓読]我が宿に咲きし秋萩散り過ぎて実になるまでに君に逢はぬかも","#[仮名],わがやどに,さきしあきはぎ,ちりすぎて,みになるまでに,きみにあはぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
わがやどに,[寛]わかやとに,
さきしあきはぎ,[寛]さけるあきはき,
ちりすぎて,[寛]ちりすきて,
みになるまでに,[寛]みになるまてに,
きみにあはぬかも[寛],
" "#[番号]10/2287","#[題詞](寄花)","#[原文]吾屋前之 芽子開二家里 不落間尓 早来可見 平城里人","#[訓読]我が宿の萩咲きにけり散らぬ間に早来て見べし奈良の里人","#[仮名],わがやどの,はぎさきにけり,ちらぬまに,はやきてみべし,ならのさとびと","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,勧誘","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
はぎさきにけり,[寛]はきさきにけり,
ちらぬまに[寛],
はやきてみべし,[寛]はやきてみへし,
ならのさとびと,[寛]ならのさとひと,
" "#[番号]10/2288","#[題詞](寄花)","#[原文]石走 間々生有 皃花乃 花西有来 在筒見者","#[訓読]石橋の間々に生ひたるかほ花の花にしありけりありつつ見れば","#[仮名],いしはしの,ままにおひたる,かほばなの,はなにしありけり,ありつつみれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物","#[訓異]
いしはしの[寛],
ままにおひたる[寛],
かほばなの,[寛]かほはなの,
はなにしありけり[寛],
ありつつみれば,[寛]ありつつみれは,
" "#[番号]10/2289","#[題詞](寄花)","#[原文]藤原 古郷之 秋芽子者 開而落去寸 君待不得而","#[訓読]藤原の古りにし里の秋萩は咲きて散りにき君待ちかねて","#[仮名],ふぢはらの,ふりにしさとの,あきはぎは,さきてちりにき,きみまちかねて","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,奈良,地名,植物,恋情","#[訓異]
ふぢはらの,[寛]ふちはらの,
ふりにしさとの[寛],
あきはぎは,[寛]あきはきは,
さきてちりにき[寛],
きみまちかねて[寛],
" "#[番号]10/2290","#[題詞](寄花)","#[原文]秋芽子乎 落過沼蛇 手折持 雖見不怜 君西不有者","#[訓読]秋萩を散り過ぎぬべみ手折り持ち見れども寂し君にしあらねば","#[仮名],あきはぎを,ちりすぎぬべみ,たをりもち,みれどもさぶし,きみにしあらねば","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
あきはぎを,[寛]あきはきを,
ちりすぎぬべみ,[寛]ちりすきぬへみ,
たをりもち,[寛]たをりもて,
みれどもさぶし,[寛]みれともさひし,
きみにしあらねば,[寛]きみにしあらねは,
" "#[番号]10/2291","#[題詞](寄花)","#[原文]朝開 夕者消流 鴨頭草<乃> 可消戀毛 吾者為鴨","#[訓読]朝咲き夕は消ぬる月草の消ぬべき恋も我れはするかも","#[仮名],あしたさき,ゆふへはけぬる,つきくさの,けぬべきこひも,あれはするかも","#[左注]","#[校異]<> -> 乃 [元][古][紀]","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
あしたさき[寛],
ゆふへはけぬる[寛],
つきくさの[寛],
けぬべきこひも,[寛]けぬへきこひも,
あれはするかも,[寛]われはするかも,
" "#[番号]10/2292","#[題詞](寄花)","#[原文]蜒野之 尾花苅副 秋芽子之 花乎葺核 君之借廬","#[訓読]秋津野の尾花刈り添へ秋萩の花を葺かさね君が仮廬に","#[仮名],あきづのの,をばなかりそへ,あきはぎの,はなをふかさね,きみがかりほに","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,吉野,地名,植物","#[訓異]
あきづのの,[寛]あきつのの,
をばなかりそへ,[寛]をはなかりそへ,
あきはぎの,[寛]あきはきの,
はなをふかさね,[寛]はなをふきさね,
きみがかりほに,[寛]きみかかりいほ
" "#[番号]10/2293","#[題詞](寄花)","#[原文]咲友 不知師有者 黙然将有 此秋芽子乎 令視管本名","#[訓読]咲けりとも知らずしあらば黙もあらむこの秋萩を見せつつもとな","#[仮名],さけりとも,しらずしあらば,もだもあらむ,このあきはぎを,みせつつもとな","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物","#[訓異]
さけりとも,[寛]さきぬとも,
しらずしあらば,[寛]しらすしあらは,
もだもあらむ,[寛]もたもあらむ,
このあきはぎを,[寛]このあきはきを,
みせつつもとな[寛],
" "#[番号]10/2294","#[題詞]寄山","#[原文]秋去者 鴈飛越 龍田山 立而毛居而毛 君乎思曽念","#[訓読]秋されば雁飛び越ゆる龍田山立ちても居ても君をしぞ思ふ","#[仮名],あきされば,かりとびこゆる,たつたやま,たちてもゐても,きみをしぞおもふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,奈良,地名,動物,恋情","#[訓異]
あきされば,[寛]あきされは,
かりとびこゆる,[寛]かりとひこゆる,
たつたやま[寛],
たちてもゐても[寛],
きみをしぞおもふ,[寛]きみをしそおもふ,
" "#[番号]10/2295","#[題詞]寄黄葉","#[原文]我屋戸之 田葛葉日殊 色付奴 不<来>座君者 何情曽毛","#[訓読]我が宿の葛葉日に異に色づきぬ来まさぬ君は何心ぞも","#[仮名],わがやどの,くずはひにけに,いろづきぬ,きまさぬきみは,なにごころぞも","#[左注]","#[校異]<> -> 来 [元][類][紀]","#[事項],秋相聞,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
くずはひにけに,[寛]くすはひにけに,
いろづきぬ,[寛]いろつきぬ,
きまさぬきみは[寛],
なにごころぞも,[寛]なにこころそも,
" "#[番号]10/2296","#[題詞](寄黄葉)","#[原文]足引乃 山佐奈葛 黄變及 妹尓不相哉 吾戀将居","#[訓読]あしひきの山さな葛もみつまで妹に逢はずや我が恋ひ居らむ","#[仮名],あしひきの,やまさなかづら,もみつまで,いもにあはずや,あがこひをらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,恋情","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまさなかづら,[寛]やまさなかつら,
もみつまで,[寛]もみつまて,
いもにあはずや,[寛]いもにあはすや,
あがこひをらむ,[寛]わかこひをらむ,
" "#[番号]10/2297","#[題詞](寄黄葉)","#[原文]黄葉之 過不勝兒乎 人妻跡 見乍哉将有 戀敷物乎","#[訓読]黄葉の過ぎかてぬ子を人妻と見つつやあらむ恋しきものを","#[仮名],もみちばの,すぎかてぬこを,ひとづまと,みつつやあらむ,こほしきものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,恋情,植物,恋情","#[訓異]
もみちばの,[寛]もみちはの,
すぎかてぬこを,[寛]すきかてぬこを,
ひとづまと,[寛]ひとつまと,
みつつやあらむ[寛],
こほしきものを,[寛]こひしきものを,
" "#[番号]10/2298","#[題詞]寄月","#[原文]於君戀 之奈要浦觸 吾居者 秋風吹而 月斜焉","#[訓読]君に恋ひ萎えうらぶれ我が居れば秋風吹きて月かたぶきぬ","#[仮名],きみにこひ,しなえうらぶれ,わがをれば,あきかぜふきて,つきかたぶきぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,恋情,恋情","#[訓異]
きみにこひ[寛],
しなえうらぶれ,[寛]しなえうらふれ,
わがをれば,[寛]わかをれは,
あきかぜふきて,[寛]あきかせふきて,
つきかたぶきぬ,[寛]つきかたふきぬ,
" "#[番号]10/2299","#[題詞](寄月)","#[原文]秋夜之 月疑意君者 雲隠 須臾不見者 幾許戀敷","#[訓読]秋の夜の月かも君は雲隠りしましく見ねばここだ恋しき","#[仮名],あきのよの,つきかもきみは,くもがくり,しましくみねば,ここだこほしき","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,恋情","#[訓異]
あきのよの[寛],
つきかもきみは[寛],
くもがくり,[寛]くもかくれ,
しましくみねば,[寛]しはしもみねは,
ここだこほしき,[寛]ここらこひしき,
" "#[番号]10/2300","#[題詞](寄月)","#[原文]九月之 在明能月夜 有乍毛 君之来座者 吾将戀八方","#[訓読]九月の有明の月夜ありつつも君が来まさば我れ恋ひめやも","#[仮名],ながつきの,ありあけのつくよ,ありつつも,きみがきまさば,あれこひめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,恋情","#[訓異]
ながつきの,[寛]なかつきの,
ありあけのつくよ,[寛]ありあけのつきよ,
ありつつも[寛],
きみがきまさば,[寛]きみかきまさは,
あれこひめやも,[寛]われこひむやも,
" "#[番号]10/2301","#[題詞]寄夜","#[原文]忍咲八師 不戀登為跡 金風之 寒吹夜者 君乎之曽念","#[訓読]よしゑやし恋ひじとすれど秋風の寒く吹く夜は君をしぞ思ふ","#[仮名],よしゑやし,こひじとすれど,あきかぜの,さむくふくよは,きみをしぞおもふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,恋情","#[訓異]
よしゑやし[寛],
こひじとすれど,[寛]こひしとすれと,
あきかぜの,[寛]あきかせの,
さむくふくよは[寛],
きみをしぞおもふ,[寛]きみをしそおもふ,
" "#[番号]10/2302","#[題詞](寄夜)","#[原文]<或>者之 痛情無跡 将念 秋之長夜乎 <寤><臥>耳","#[訓読]ある人のあな心なと思ふらむ秋の長夜を寝覚め臥すのみ","#[仮名],あるひとの,あなこころなと,おもふらむ,あきのながよを,ねざめふすのみ","#[左注]","#[校異]惑 -> 或 [元][紀] / 寐 -> 寤 [元] / 師 -> 臥 [元][類]","#[事項],秋相聞,恋情,孤独","#[訓異]
あるひとの,[寛]わひひとの,
あなこころなと[寛],
おもふらむ[寛],
あきのながよを,[寛]あきのなかよを,
ねざめふすのみ,[寛]ねさめしてのみ,
" "#[番号]10/2303","#[題詞](寄夜)","#[原文]秋夜乎 長跡雖言 積西 戀盡者 短有家里","#[訓読]秋の夜を長しと言へど積もりにし恋を尽せば短くありけり","#[仮名],あきのよを,ながしといへど,つもりにし,こひをつくせば,みじかくありけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,恋愛","#[訓異]
あきのよを[寛],
ながしといへど,[寛]なかしといへと,
つもりにし[寛],
こひをつくせば,[寛]こひをつくせは,
みじかくありけり,[寛]みしかかりけり,
" "#[番号]10/2304","#[題詞]寄衣","#[原文]秋都葉尓 々寶敝流衣 吾者不服 於君奉者 夜毛著金","#[訓読]秋つ葉ににほへる衣我れは着じ君に奉らば夜も着るがね","#[仮名],あきつはに,にほへるころも,あれはきじ,きみにまつらば,よるもきるがね","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,恋愛","#[訓異]
あきつはに[寛],
にほへるころも[寛],
あれはきじ,[寛]われはきし,
きみにまつらば,[寛]きみにまたせは,
よるもきるがね,[寛]よるもきるかね,
" "#[番号]10/2305","#[題詞]問答","#[原文]旅尚 襟解物乎 事繁三 丸宿吾為 長此夜","#[訓読]旅にすら紐解くものを言繁みまろ寝ぞ我がする長きこの夜を","#[仮名],たびにすら,ひもとくものを,ことしげみ,まろねぞわがする,ながきこのよを","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,うわさ,問答","#[訓異]
たびにすら,[寛]たひにすら,
ひもとくものを[寛],
ことしげみ,[寛]ことしけみ,
まろねぞわがする,[寛]まろねわれする,
ながきこのよを,[寛]なかきこのよを,
" "#[番号]10/2306","#[題詞](問答)","#[原文]四具礼零 暁月夜 紐不解 戀君跡 居益物","#[訓読]しぐれ降る暁月夜紐解かず恋ふらむ君と居らましものを","#[仮名],しぐれふる,あかときづくよ,ひもとかず,こふらむきみと,をらましものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,恋情,恋情,問答","#[訓異]
しぐれふる,[寛]しくれふる,
あかときづくよ,[寛]あかつきつきよ,
ひもとかず,[寛]ひもとかす,
こふらむきみと,[寛]こひしききみと,
をらましものを[寛],
" "#[番号]10/2307","#[題詞](問答)","#[原文]於黄葉 置白露之 色葉二毛 不出跡念者 事之繁家口","#[訓読]黄葉に置く白露の色端にも出でじと思へば言の繁けく","#[仮名],もみちばに,おくしらつゆの,いろはにも,いでじとおもへば,ことのしげけく","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,問答,うわさ","#[訓異]
もみちばに,[寛]もみちはに,
おくしらつゆの[寛],
いろはにも[寛],
いでじとおもへば,[寛]いてしとおもへは,
ことのしげけく,[寛]ことのしけけく,
" "#[番号]10/2308","#[題詞](問答)","#[原文]雨零者 瀧都山川 於石觸 君之摧 情者不持","#[訓読]雨降ればたぎつ山川岩に触れ君が砕かむ心は持たじ","#[仮名],あめふれば,たぎつやまがは,いはにふれ,きみがくだかむ,こころはもたじ","#[左注]右一首不類秋歌而以和載之也","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],秋相聞,問答","#[訓異]
あめふれば,[寛]あめふれは,
たぎつやまがは,[寛]たきつやまかは,
いはにふれ[寛],
きみがくだかむ,[寛]きみかくたかむ,
こころはもたじ,[寛]こころはもたし,
" "#[番号]10/2309","#[題詞]譬喩歌","#[原文]祝部等之 齋經社之 黄葉毛 標縄越而 落云物乎","#[訓読]祝らが斎ふ社の黄葉も標縄越えて散るといふものを","#[仮名],はふりらが,いはふやしろの,もみちばも,しめなはこえて,ちるといふものを","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],秋相聞,植物,比喩","#[訓異]
はふりらが,[寛]はふりらか,
いはふやしろの[寛],
もみちばも,[寛]もみちはも,
しめなはこえて[寛],
ちるといふものを,[寛]ちるてふものを,
" "#[番号]10/2310","#[題詞]旋頭歌","#[原文]蟋蟀之 吾床隔尓 鳴乍本名 起居管 君尓戀尓 宿不勝尓","#[訓読]こほろぎの我が床の辺に鳴きつつもとな起き居つつ君に恋ふるに寐ねかてなくに","#[仮名],こほろぎの,あがとこのへに,なきつつもとな,おきゐつつ,きみにこふるに,いねかてなくに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],秋相聞,動物,旋頭歌,恋情","#[訓異]
こほろぎの,[寛]きりきりす,
あがとこのへに,[寛]わかゆかのへに,
なきつつもとな[寛],
おきゐつつ[寛],
きみにこふるに[寛],
いねかてなくに,[寛]いのねられぬに,
" "#[番号]10/2311","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]皮為酢寸 穂庭開不出 戀乎吾為 玉蜻 直一目耳 視之人故尓","#[訓読]はだすすき穂には咲き出ぬ恋をぞ我がする玉かぎるただ一目のみ見し人ゆゑに","#[仮名],はだすすき,ほにはさきでぬ,こひをぞあがする,たまかぎる,ただひとめのみ,みしひとゆゑに","#[左注]","#[校異]","#[事項],秋相聞,植物,旋頭歌,恋情","#[訓異]
はだすすき,[寛]しのすすき,
ほにはさきでぬ,[寛]ほにはさきいてす,
こひをぞあがする,[寛]こひをわかする,
たまかぎる,[寛]かけろふの,
ただひとめのみ,[寛]たたひとめのみ,
みしひとゆゑに[寛],
" "#[番号]10/2312","#[題詞]冬雜歌","#[原文]我袖尓 雹手走 巻隠 不消有 妹為見","#[訓読]我が袖に霰た走る巻き隠し消たずてあらむ妹が見むため","#[仮名],わがそでに,あられたばしる,まきかくし,けたずてあらむ,いもがみむため","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出也)","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],冬雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,恋愛","#[訓異]
わがそでに,[寛]わかそてに,
あられたばしる,[寛]あられたはしり,
まきかくし[寛],
けたずてあらむ,[寛]けすともあれや,
いもがみむため,[寛]いもかみむため,
" "#[番号]10/2313","#[題詞]","#[原文]足曳之 山鴨高 巻向之 木志乃子松二 三雪落来","#[訓読]あしひきの山かも高き巻向の崖の小松にみ雪降りくる","#[仮名],あしひきの,やまかもたかき,まきむくの,きしのこまつに,みゆきふりくる","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出也)","#[校異]","#[事項],冬雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,桜井,地名,叙景","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまかもたかき[寛],
まきむくの,[寛]まきもくの,
きしのこまつに[寛],
みゆきふりくる,[寛]みゆきふりけり,
" "#[番号]10/2314","#[題詞]","#[原文]巻向之 桧原毛未 雲居者 子松之末由 沫雪流","#[訓読]巻向の桧原もいまだ雲居ねば小松が末ゆ沫雪流る","#[仮名],まきむくの,ひはらもいまだ,くもゐねば,こまつがうれゆ,あわゆきながる","#[左注](右柿本朝臣人麻呂之歌集出也)","#[校異]","#[事項],冬雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,桜井,地名,叙景","#[訓異]
まきむくの,[寛]まきもくの,
ひはらもいまだ,[寛]ひはらもいまた,
くもゐねば,[寛]くもゐねは,
こまつがうれゆ,[寛]こまつかすゑに,
あわゆきながる,[寛]あはゆきそふる,
" "#[番号]10/2315","#[題詞]","#[原文]足引 山道不知 白<み><む> 枝母等乎々尓 雪落者 [或云 枝毛多和々々] ","#[訓読]あしひきの山道も知らず白橿の枝もとををに雪の降れれば [或云 枝もたわたわ] ","#[仮名],あしひきの,やまぢもしらず,しらかしの,えだもとををに,ゆきのふれれば,[えだもたわたわ]","#[左注]右柿本朝臣人麻呂之歌集出也 但<件>一首 [或本云三方沙弥作]","#[校異]歌 [西] 謌 / 杜 -> み [万葉集略解] / 材 [西(右書)] -> む [万葉集略解] / <> -> 件 [元][紀]","#[事項],冬雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,叙景","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまぢもしらず,[寛]やまちもしらす,
しらかしの[寛],
えだもとををに,[寛]えたもとををに,
ゆきのふれれば,[寛]ゆきのふれれは,
[えだもたわたわ],[寛]えたもたわたわ,
" "#[番号]10/2316","#[題詞]詠雪","#[原文]奈良山乃 峯尚霧合 宇倍志社 前垣之下乃 雪者不消家礼","#[訓読]奈良山の嶺なほ霧らふうべしこそ籬が下の雪は消ずけれ","#[仮名],ならやまの,みねなほきらふ,うべしこそ,まがきがしたの,ゆきはけずけれ","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬雑歌,奈良,地名,季節","#[訓異]
ならやまの[寛],
みねなほきらふ,[寛]みねなほきりあふ,
うべしこそ,[寛]うへしこそ,
まがきがしたの,[寛]まかきのしたの,
ゆきはけずけれ,[寛]ゆきはけすけれ,
" "#[番号]10/2317","#[題詞](詠雪)","#[原文]殊落者 袖副沾而 可通 将落雪之 空尓消二管","#[訓読]こと降らば袖さへ濡れて通るべく降りなむ雪の空に消につつ","#[仮名],ことふらば,そでさへぬれて,とほるべく,ふりなむゆきの,そらにけにつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬雑歌","#[訓異]
ことふらば,[寛]ことふらは,
そでさへぬれて,[寛]それさへぬれて,
とほるべく,[寛]とおるへく,
ふりなむゆきの,[寛]ふらむをゆきの,
そらにけにつつ[寛],
" "#[番号]10/2318","#[題詞](詠雪)","#[原文]夜乎寒三 朝戸乎開 出見者 庭毛薄太良尓 三雪落有 [一云 庭裳保杼呂尓 雪曽零而有] ","#[訓読]夜を寒み朝戸を開き出で見れば庭もはだらにみ雪降りたり [一云 庭もほどろに 雪ぞ降りたる] ","#[仮名],よをさむみ,あさとをひらき,いでみれば,にはもはだらに,みゆきふりたり,[にはもほどろに,ゆきぞふりたる]","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬雑歌,属目","#[訓異]
よをさむみ[寛],
あさとをひらき,[寛]あさとをあけて,
いでみれば,[寛]いてみれは,
にはもはだらに,[寛]にはもはたらに,
みゆきふりたり[寛],
[にはもほどろに,[寛]にはもほとろに,
ゆきぞふりたる],[寛]ゆきそふりてある,
" "#[番号]10/2319","#[題詞](詠雪)","#[原文]暮去者 衣袖寒之 高松之 山木毎 雪曽零有","#[訓読]夕されば衣手寒し高松の山の木ごとに雪ぞ降りたる","#[仮名],ゆふされば,ころもでさむし,たかまつの,やまのきごとに,ゆきぞふりたる","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬雑歌,高円,奈良,地名,叙景","#[訓異]
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
ころもでさむし,[寛]ころもてさむし,
たかまつの,[寛]たかまとの,
やまのきごとに,[寛]やまのきことに,
ゆきぞふりたる,[寛]ゆきそふりたる,
" "#[番号]10/2320","#[題詞](詠雪)","#[原文]吾袖尓 零鶴雪毛 流去而 妹之手本 伊行觸<粳>","#[訓読]我が袖に降りつる雪も流れ行きて妹が手本にい行き触れぬか","#[仮名],わがそでに,ふりつるゆきも,ながれゆきて,いもがたもとに,いゆきふれぬか","#[左注]","#[校異]糠 -> 粳 [元][類]","#[事項],冬雑歌,恋愛","#[訓異]
わがそでに,[寛]わかそてに,
ふりつるゆきも[寛],
ながれゆきて,[寛]なからへて,
いもがたもとに,[寛]いもかたもとに,
いゆきふれぬか[寛],
" "#[番号]10/2321","#[題詞](詠雪)","#[原文]沫雪者 今日者莫零 白妙之 袖纒将干 人毛不有<君>","#[訓読]沫雪は今日はな降りそ白栲の袖まき干さむ人もあらなくに","#[仮名],あわゆきは,けふはなふりそ,しろたへの,そでまきほさむ,ひともあらなくに","#[左注]","#[校異]悪 -> 君 [類][紀]","#[事項],冬雑歌,恋愛","#[訓異]
あわゆきは[寛],
けふはなふりそ[寛],
しろたへの[寛],
そでまきほさむ,[寛]そてまきほさむ,
ひともあらなくに[寛],
" "#[番号]10/2322","#[題詞](詠雪)","#[原文]甚多毛 不零雪故 言多毛 天三空者 <陰>相管","#[訓読]はなはだも降らぬ雪ゆゑこちたくも天つみ空は雲らひにつつ","#[仮名],はなはだも,ふらぬゆきゆゑ,こちたくも,あまつみそらは,くもらひにつつ","#[左注]","#[校異]隠 -> 陰 [元][類][紀]","#[事項],冬雑歌,叙景","#[訓異]
はなはだも,[寛]はなはたも,
ふらぬゆきゆゑ,[寛]あらぬゆきゆゑ
こちたくも[寛],
あまつみそらは,[寛]あまのみそらは,
くもらひにつつ,[寛]くもりあひつつ,
" "#[番号]10/2323","#[題詞](詠雪)","#[原文]吾背子乎 且今々々 出見者 沫雪零有 庭毛保杼呂尓","#[訓読]我が背子を今か今かと出で見れば沫雪降れり庭もほどろに","#[仮名],わがせこを,いまかいまかと,いでみれば,あわゆきふれり,にはもほどろに","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬雑歌,属目,恋愛","#[訓異]
わがせこを,[寛]わかせこを,
いまかいまかと,[寛]けふかけふかと,
いでみれば,[寛]いてみれは,
あわゆきふれり,[寛]あはゆきふれり,
にはもほどろに,[寛]にはもほとろに,
" "#[番号]10/2324","#[題詞](詠雪)","#[原文]足引 山尓白者 我屋戸尓 昨日暮 零之雪疑意","#[訓読]あしひきの山に白きは我が宿に昨日の夕降りし雪かも","#[仮名],あしひきの,やまにしろきは,わがやどに,きのふのゆふへ,ふりしゆきかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬雑歌,叙景","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまにしろきは[寛],
わがやどに,[寛]わかやとに,
きのふのゆふへ,[寛]きのふのくれに,
ふりしゆきかも[寛],
" "#[番号]10/2325","#[題詞]詠花","#[原文]誰苑之 梅花毛 久堅之 消月夜尓 幾許散来","#[訓読]誰が園の梅の花ぞもひさかたの清き月夜にここだ散りくる","#[仮名],たがそのの,うめのはなぞも,ひさかたの,きよきつくよに,ここだちりくる","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬雑歌,属目,植物","#[訓異]
たがそのの,[寛]たかそのの,
うめのはなぞも,[寛]うめのはなそも,
ひさかたの[寛],
きよきつくよに,[寛]きよきつきよに,
ここだちりくる,[寛]ここらちりくる,
" "#[番号]10/2326","#[題詞](詠花)","#[原文]梅花 先開枝<乎> 手折而者 L常名付而 与副手六香聞","#[訓読]梅の花まづ咲く枝を手折りてばつとと名付けてよそへてむかも","#[仮名],うめのはな,まづさくえだを,たをりてば,つととなづけて,よそへてむかも","#[左注]","#[校異]<> -> 乎 [元][類][紀]","#[事項],冬雑歌,植物,比喩","#[訓異]
うめのはな[寛],
まづさくえだを,[寛]まつさくえたを,
たをりてば,[寛]たをりては,
つととなづけて,[寛]つととなつけて,
よそへてむかも[寛],
" "#[番号]10/2327","#[題詞](詠花)","#[原文]誰苑之 梅尓可有家武 幾許毛 開有可毛 見我欲左右手二","#[訓読]誰が園の梅にかありけむここだくも咲きてあるかも見が欲しまでに","#[仮名],たがそのの,うめにかありけむ,ここだくも,さきてあるかも,みがほしまでに","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬雑歌,比喩,植物","#[訓異]
たがそのの,[寛]たかそのの,
うめにかありけむ[寛],
ここだくも,[寛]ここたくも,
さきてあるかも,[寛]さけるかもみて,
みがほしまでに,[寛]わかおもふまてに,
" "#[番号]10/2328","#[題詞](詠花)","#[原文]来可視 人毛不有尓 吾家有 梅<之>早花 落十方吉","#[訓読]来て見べき人もあらなくに我家なる梅の初花散りぬともよし","#[仮名],きてみべき,ひともあらなくに,わぎへなる,うめのはつはな,ちりぬともよし","#[左注]","#[校異]<> -> 之 [元][類][紀]","#[事項],冬雑歌,植物","#[訓異]
きてみべき,[寛]きてみへき,
ひともあらなくに[寛],
わぎへなる,[寛]わきへなる,
うめのはつはな[寛],
ちりぬともよし,[寛]てりぬともよし,
" "#[番号]10/2329","#[題詞](詠花)","#[原文]雪寒三 咲者不開 梅花 縦比来者 然而毛有金","#[訓読]雪寒み咲きには咲かぬ梅の花よしこのころはかくてもあるがね","#[仮名],ゆきさむみ,さきにはさかぬ,うめのはな,よしこのころは,かくてもあるがね","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬雑歌,植物","#[訓異]
ゆきさむみ[寛],
さきにはさかぬ,[寛]さきにはさかて,
うめのはな[寛],
よしこのころは[寛],
かくてもあるがね,[寛]さてもあるかね,
" "#[番号]10/2330","#[題詞]詠露","#[原文]為妹 末枝梅乎 手折登波 下枝之露尓 沾<尓>家類可聞","#[訓読]妹がためほつ枝の梅を手折るとは下枝の露に濡れにけるかも","#[仮名],いもがため,ほつえのうめを,たをるとは,しづえのつゆに,ぬれにけるかも","#[左注]","#[校異]<> -> 尓 [元][類]","#[事項],冬雑歌,植物","#[訓異]
いもがため,[寛]いもかため,
ほつえのうめを[寛],
たをるとは[寛],
しづえのつゆに,[寛]しつえのつゆに,
ぬれにけるかも[寛],
" "#[番号]10/2331","#[題詞]詠黄葉","#[原文]八田乃野之 淺茅色付 有乳山 峯之沫雪 <寒>零良之","#[訓読]八田の野の浅茅色づく有乳山嶺の沫雪寒く降るらし","#[仮名],やたののの,あさぢいろづく,あらちやま,みねのあわゆき,さむくふるらし","#[左注]","#[校異]<> -> 寒 [西(右書)][元][類][紀][細]","#[事項],冬雑歌,奈良,福井,地名,叙景","#[訓異]
やたののの[寛],
あさぢいろづく,[寛]あさちいろつく,
あらちやま[寛],
みねのあわゆき,[寛]みねのあはゆき,
さむくふるらし[寛],
" "#[番号]10/2332","#[題詞]詠月","#[原文]左夜深者 出来牟月乎 高山之 峯白雲 将隠鴨","#[訓読]さ夜更けば出で来む月を高山の嶺の白雲隠すらむかも","#[仮名],さよふけば,いでこむつきを,たかやまの,みねのしらくも,かくすらむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬雑歌","#[訓異]
さよふけば,[寛]さよふけは,
いでこむつきを,[寛]いてこむつきを,
たかやまの[寛],
みねのしらくも[寛],
かくすらむかも,[寛]かくれてむかも,
" "#[番号]10/2333","#[題詞]冬相聞","#[原文]零雪 虚空可消 雖戀 相依無 月經在","#[訓読]降る雪の空に消ぬべく恋ふれども逢ふよしなしに月ぞ経にける","#[仮名],ふるゆきの,そらにけぬべく,こふれども,あふよしなしに,つきぞへにける","#[左注]右柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]","#[事項],冬相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
ふるゆきの[寛],
そらにけぬべく,[寛]そらにけぬへく,
こふれども,[寛]こふれとも,
あふよしなしに,[寛]あふよしをなみ,
つきぞへにける,[寛]つきそへにける,
" "#[番号]10/2334","#[題詞]","#[原文]<阿和>雪 千<重>零敷 戀為来 食永我 見偲","#[訓読]沫雪は千重に降りしけ恋ひしくの日長き我れは見つつ偲はむ","#[仮名],あわゆきは,ちへにふりしけ,こひしくの,けながきわれは,みつつしのはむ","#[左注]右柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]沫 -> 阿和 [元][類][紀][温] / 里 -> 重 [元] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌","#[事項],冬相聞,作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
あわゆきは,[寛]あはゆきの,
ちへにふりしけ,[寛]ちさとふりしき,
こひしくの,[寛]こひしくは,
けながきわれは,[寛]けなかくわれや,
みつつしのはむ[寛],
" "#[番号]10/2335","#[題詞]寄露","#[原文]咲出照 梅之下枝<尓> 置露之 可消於妹 戀頃者","#[訓読]咲き出照る梅の下枝に置く露の消ぬべく妹に恋ふるこのころ","#[仮名],さきでてる,うめのしづえに,おくつゆの,けぬべくいもに,こふるこのころ","#[左注]","#[校異]<> -> 尓 [元][類][紀]","#[事項],冬相聞,植物,恋情","#[訓異]
さきでてる,[寛]さきいてたる,
うめのしづえに,[寛]うめのしつえに,
おくつゆの[寛],
けぬべくいもに,[寛]けぬへくいもに,
こふるこのころ[寛],
" "#[番号]10/2336","#[題詞]寄霜","#[原文]甚毛 夜深勿行 道邊之 湯小竹之於尓 霜降夜焉","#[訓読]はなはだも夜更けてな行き道の辺の斎笹の上に霜の降る夜を","#[仮名],はなはだも,よふけてなゆき,みちのへの,ゆささのうへに,しものふるよを","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬相聞,植物,逢会","#[訓異]
はなはだも,[寛]はなはたも,
よふけてなゆき,[寛]よふけてゆくな,
みちのへの[寛],
ゆささのうへに,[寛]ゆささかうへに,
しものふるよを[寛],
" "#[番号]10/2337","#[題詞]寄雪","#[原文]小竹葉尓 薄太礼零覆 消名羽鴨 将忘云者 益所念","#[訓読]笹の葉にはだれ降り覆ひ消なばかも忘れむと言へばまして思ほゆ","#[仮名],ささのはに,はだれふりおほひ,けなばかも,わすれむといへば,ましておもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬相聞,植物,恋情","#[訓異]
ささのはに[寛],
はだれふりおほひ,[寛]はたれふりををひ,
けなばかも,[寛]けなはかも,
わすれむといへば,[寛]わぬれむといへは,
ましておもほゆ[寛],
" "#[番号]10/2338","#[題詞](寄雪)","#[原文]霰落 板<玖>風吹 寒夜也 旗野尓今夜 吾獨寐牟","#[訓読]霰降りいたく風吹き寒き夜や旗野に今夜我が独り寝む","#[仮名],あられふり,いたくかぜふき,さむきよや,はたのにこよひ,わがひとりねむ","#[左注]","#[校異]敢 -> 玖 [古義]","#[事項],冬相聞,奈良,飛鳥,地名,孤独,恋情","#[訓異]
あられふり,[寛]みそれふり,
いたくかぜふき,[寛]いたまかせふき,
さむきよや[寛],
はたのにこよひ[寛],
わがひとりねむ,[寛]わかひとりねむ,
" "#[番号]10/2339","#[題詞](寄雪)","#[原文]吉名張乃 野木尓零覆 白雪乃 市白霜 将戀吾鴨","#[訓読]吉隠の野木に降り覆ふ白雪のいちしろくしも恋ひむ我れかも","#[仮名],よなばりの,のぎにふりおほふ,しらゆきの,いちしろくしも,こひむあれかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬相聞,桜井,地名,恋情,序詞","#[訓異]
よなばりの,[寛]よなはりの,
のぎにふりおほふ,[寛]のきにふりををふ,
しらゆきの[寛],
いちしろくしも[寛],
こひむあれかも,[寛]こひむわれかも,
" "#[番号]10/2340","#[題詞](寄雪)","#[原文]一眼見之 人尓戀良久 天霧之 零来雪之 可消所念","#[訓読]一目見し人に恋ふらく天霧らし降りくる雪の消ぬべく思ほゆ","#[仮名],ひとめみし,ひとにこふらく,あまぎらし,ふりくるゆきの,けぬべくおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬相聞,恋情","#[訓異]
ひとめみし[寛],
ひとにこふらく[寛],
あまぎらし,[寛]あまきらし,
ふりくるゆきの[寛],
けぬべくおもほゆ,[寛]けぬへくおもほゆ,
" "#[番号]10/2341","#[題詞](寄雪)","#[原文]思出 時者為便無 豊國之 木綿山雪之 可消<所>念","#[訓読]思ひ出づる時はすべなみ豊国の由布山雪の消ぬべく思ほゆ","#[仮名],おもひいづる,ときはすべなみ,とよくにの,ゆふやまゆきの,けぬべくおもほゆ","#[左注]","#[校異]可 -> 所 [西(右書)][元][類][紀]","#[事項],冬相聞,大分,地名,懐旧,恋情,序詞","#[訓異]
おもひいづる,[寛]おもひいつる,
ときはすべなみ,[寛]ときはすへなみ,
とよくにの[寛],
ゆふやまゆきの[寛],
けぬべくおもほゆ,[寛]けぬへくおもほゆ,
" "#[番号]10/2342","#[題詞](寄雪)","#[原文]如夢 君乎相見而 天霧之 落来雪之 可消所念","#[訓読]夢のごと君を相見て天霧らし降りくる雪の消ぬべく思ほゆ","#[仮名],いめのごと,きみをあひみて,あまぎらし,ふりくるゆきの,けぬべくおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬相聞,恋情,序詞","#[訓異]
いめのごと,[寛]ゆめのこと,
きみをあひみて[寛],
あまぎらし,[寛]あまきらし,
ふりくるゆきの[寛],
けぬべくおもほゆ,[寛]けぬへくおもほゆ,
" "#[番号]10/2343","#[題詞](寄雪)","#[原文]吾背子之 言愛美 出去者 裳引将知 雪勿零","#[訓読]我が背子が言うるはしみ出でて行かば裳引きしるけむ雪な降りそね","#[仮名],わがせこが,ことうるはしみ,いでてゆかば,もびきしるけむ,ゆきなふりそね","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬相聞,逢会","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
ことうるはしみ,[寛]ことうつくしみ,
いでてゆかば,[寛]いててゆけは,
もびきしるけむ,[寛]もひきもしらむ,
ゆきなふりそね,[寛]ゆきなふりこそ,
" "#[番号]10/2344","#[題詞](寄雪)","#[原文]梅花 其跡毛不所見 零雪之 市白兼名 間使遣者 [一云 零雪尓 間使遣者 其将知<奈>] ","#[訓読]梅の花それとも見えず降る雪のいちしろけむな間使遣らば [一云 降る雪に間使遣らばそれと知らなむ] ","#[仮名],うめのはな,それともみえず,ふるゆきの,いちしろけむな,まつかひやらば,[ふるゆきに,まつかひやらば,それとしらなむ]","#[左注]","#[校異]名 -> 奈 [元][類][紀]","#[事項],冬相聞,植物,序詞","#[訓異]
うめのはな[寛],
それともみえず,[寛]それともみえす,
ふるゆきの[寛],
いちしろけむな[寛],
まつかひやらば,[寛]まつかひやらは,
[ふるゆきに[寛],
まつかひやらば,[寛]まつかひやらは,
それとしらなむ],[寛]それしりなむな,
" "#[番号]10/2345","#[題詞](寄雪)","#[原文]天霧相 零来雪之 消友 於君合常 流經度","#[訓読]天霧らひ降りくる雪の消なめども君に逢はむとながらへわたる","#[仮名],あまぎらひ,ふりくるゆきの,けなめども,きみにあはむと,ながらへわたる","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬相聞,恋情","#[訓異]
あまぎらひ,[寛]あまきりあひ,
ふりくるゆきの[寛],
けなめども,[寛]けゆれとも,
きみにあはむと[寛],
ながらへわたる,[寛]なからへわたる,
" "#[番号]10/2346","#[題詞](寄雪)","#[原文]窺良布 跡見山雪之 灼然 戀者妹名 人将知可聞","#[訓読]うかねらふ跡見山雪のいちしろく恋ひば妹が名人知らむかも","#[仮名],うかねらふ,とみやまゆきの,いちしろく,こひばいもがな,ひとしらむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬相聞,桜井,地名,恋情","#[訓異]
うかねらふ,[寛]うからふと,
とみやまゆきの,[寛]みるやまゆきの,
いちしろく[寛],
こひばいもがな,[寛]こひはいもかな,
ひとしらむかも[寛],
" "#[番号]10/2347","#[題詞](寄雪)","#[原文]海小船 泊瀬乃山尓 落雪之 消長戀師 君之音曽為流","#[訓読]海人小舟泊瀬の山に降る雪の日長く恋ひし君が音ぞする","#[仮名],あまをぶね,はつせのやまに,ふるゆきの,けながくこひし,きみがおとぞする","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬相聞,桜井,地名,恋情","#[訓異]
あまをぶね,[寛]あまをふね,
はつせのやまに[寛],
ふるゆきの[寛],
けながくこひし,[寛]けなかくこひし,
きみがおとぞする,[寛]きみかをとそする,
" "#[番号]10/2348","#[題詞](寄雪)","#[原文]和射美能 嶺徃過而 零雪乃 Q毛無跡 白其兒尓","#[訓読]和射見の嶺行き過ぎて降る雪のいとひもなしと申せその子に","#[仮名],わざみの,みねゆきすぎて,ふるゆきの,いとひもなしと,まをせそのこに","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬相聞,岐阜県,関ヶ原,地名","#[訓異]
わざみの,[寛]わさみのの,
みねゆきすぎて,[寛]みねゆきすきて,
ふるゆきの[寛],
いとひもなしと,[寛]うとみもなしと,
まをせそのこに,[寛]まうせそのこに,
" "#[番号]10/2349","#[題詞]寄花","#[原文]吾屋戸尓 開有梅乎 月夜好美 夕々令見 君乎祚待也","#[訓読]我が宿に咲きたる梅を月夜よみ宵々見せむ君をこそ待て","#[仮名],わがやどに,さきたるうめを,つくよよみ,よひよひみせむ,きみをこそまて","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬相聞,植物","#[訓異]
わがやどに,[寛]わかやとに,
さきたるうめを[寛],
つくよよみ,[寛]つきよよみ,
よひよひみせむ,[寛]よなよなみせむ,
きみをこそまて,[寛]きみをそまつや,
" "#[番号]10/2350","#[題詞]寄夜","#[原文]足桧木乃 山下風波 雖不吹 君無夕者 豫寒毛","#[訓読]あしひきの山のあらしは吹かねども君なき宵はかねて寒しも","#[仮名],あしひきの,やまのあらしは,ふかねども,きみなきよひは,かねてさむしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],冬相聞,恋情","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまのあらしは,[寛]やましたかせは,
ふかねども,[寛]ふかねとも,
きみなきよひは[寛],
かねてさむしも[寛],
" "#[番号]11/2351","#[題詞]旋頭歌","#[原文]新室 壁草苅邇 御座給根 草如 依逢未通女者 公随","#[訓読]新室の壁草刈りにいましたまはね草のごと寄り合ふ娘子は君がまにまに","#[仮名],にひむろの,かべくさかりに,いましたまはね,くさのごと,よりあふをとめは,きみがまにまに","#[左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,野遊び,旋頭歌,求婚","#[訓異]
にひむろの[寛],
かべくさかりに,[寛]かへくさかりに,
いましたまはね,[寛]みましたまはね,
くさのごと,[寛]くさのこと,
よりあふをとめは[寛],
きみがまにまに,[寛]きみかまにまに,
" "#[番号]11/2352","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]新室 踏静子之 手玉鳴裳 玉如 所照公乎 内等白世","#[訓読]新室を踏み鎮む子が手玉鳴らすも玉のごと照らせる君を内にと申せ","#[仮名],にひむろを,ふみしづむこが,ただまならすも,たまのごと,てらせるきみを,うちにとまをせ","#[左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,求婚,新室ほがい,祝い,旋頭歌","#[訓異]
にひむろを,[寛]にひむろの,
ふみしづむこが,[寛]ふむしつのこし,
ただまならすも,[寛]たたまならしも,
たまのごと,[寛]たまのこと,
てらせるきみを,[寛]てりたるきみを,
うちにとまをせ[寛],
" "#[番号]11/2353","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]長谷 弓槻下 吾隠在妻 赤根刺 所光月夜邇 人見點鴨 [一云 人見豆良牟可] ","#[訓読]泊瀬の斎槻が下に我が隠せる妻あかねさし照れる月夜に人見てむかも [一云 人見つらむか] ","#[仮名],はつせの,ゆつきがしたに,わがかくせるつま,あかねさし,てれるつくよに,ひとみてむかも,[ひとみつらむか]","#[左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,旋頭歌,隠妻,枕詞,奈良,植物,地名","#[訓異]
はつせの[寛],
ゆつきがしたに,[寛]ゆつきかしたに,
わがかくせるつま,[寛]わかかくせるつま,
あかねさし[寛],
てれるつくよに,[寛]てれるつきよに,
ひとみてむかも[寛],
[ひとみつらむか][寛],
" "#[番号]11/2354","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]健男之 念乱而 隠在其妻 天地 通雖<光> 所顕目八方 [一云 大夫乃 思多鶏備弖] ","#[訓読]ますらをの思ひ乱れて隠せるその妻天地に通り照るともあらはれめやも [一云 ますらをの思ひたけびて] ","#[仮名],ますらをの,おもひみだれて,かくせるそのつま,あめつちに,とほりてるとも,あらはれめやも,[ますらをの,おもひたけびて]","#[左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]先 -> 光 [文][紀][温]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,旋頭歌,隠妻,恋情","#[訓異]
ますらをの[寛],
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
かくせるそのつま[寛],
あめつちに,[寛]あめつちの,
とほりてるとも,[寛]かよひてるとも,
あらはれめやも[寛],
[ますらをの[寛],
おもひたけびて],[寛]おもひたけひて,
" "#[番号]11/2355","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]恵得 吾念妹者 早裳死耶 雖生 吾邇應依 人云名國","#[訓読]愛しと我が思ふ妹は早も死なぬか生けりとも我れに寄るべしと人の言はなくに","#[仮名],うつくしと,あがおもふいもは,はやもしなぬか,いけりとも,われによるべしと,ひとのいはなくに","#[左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,旋頭歌,恋情","#[訓異]
うつくしと,[寛]めくまむと,
あがおもふいもは,[寛]わかおもふいもは,
はやもしなぬか,[寛]はやくもしねや,
いけりとも[寛],
われによるべしと,[寛]われによるへしと,
ひとのいはなくに[寛],
" "#[番号]11/2356","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]狛錦 紐片<叙> 床落邇祁留 明夜志 将来得云者 取置<待>","#[訓読]高麗錦紐の片方ぞ床に落ちにける明日の夜し来なむと言はば取り置きて待たむ","#[仮名],こまにしき,ひものかたへぞ,とこにおちにける,あすのよし,きなむといはば,とりおきてまたむ","#[左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]釼 -> 叙 [嘉][文][紀] / 得 -> 待 [嘉][文][紀]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,旋頭歌,比喩,女歌,恋情","#[訓異]
こまにしき[寛],
ひものかたへぞ,[寛]ひものかたへそ,
とこにおちにける[寛],
あすのよし[寛],
きなむといはば,[寛]きなむといはは,
とりおきてまたむ[寛],
" "#[番号]11/2357","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]朝戸出 公足結乎 閏露原 早起 出乍吾毛 裳下閏奈","#[訓読]朝戸出の君が足結を濡らす露原早く起き出でつつ我れも裳裾濡らさな","#[仮名],あさとでの,きみがあゆひを,ぬらすつゆはら,はやくおき,いでつつわれも,もすそぬらさな","#[左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,旋頭歌,恋情,後朝","#[訓異]
あさとでの,[寛]あさといての,
きみがあゆひを,[寛]きみかあゆひを,
ぬらすつゆはら[寛],
はやくおき,[寛]はやくおきて,
いでつつわれも,[寛]いてつつわれも,
もすそぬらさな,[寛]ものすそぬれな,
" "#[番号]11/2358","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]何為 命本名 永欲為 雖生 吾念妹 安不相","#[訓読]何せむに命をもとな長く欲りせむ生けりとも我が思ふ妹にやすく逢はなくに","#[仮名],なにせむに,いのちをもとな,ながくほりせむ,いけりとも,あがおもふいもに,やすくあはなくに","#[左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,旋頭歌,恋情","#[訓異]
なにせむに,[寛]なにせんに,
いのちをもとな[寛],
ながくほりせむ,[寛]なかくほりせむ,
いけりとも[寛],
あがおもふいもに,[寛]わかおもふいもに,
やすくあはなくに[寛],
" "#[番号]11/2359","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]息緒 吾雖念 人目多社 吹風 有數々 應相物","#[訓読]息の緒に我れは思へど人目多みこそ吹く風にあらばしばしば逢ふべきものを","#[仮名],いきのをに,われはおもへど,ひとめおほみこそ,ふくかぜに,あらばしばしば,あふべきものを","#[左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,旋頭歌","#[訓異]
いきのをに[寛],
われはおもへど,[寛]われにおもへと,
ひとめおほみこそ[寛],
ふくかぜに,[寛]ふくかせの,
あらばしばしば,[寛]あらはしはしは,
あふべきものを,[寛]あふへきものを,
" "#[番号]11/2360","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]人祖 未通女兒居 守山邊柄 朝々 通公 不来哀","#[訓読]人の親処女児据ゑて守山辺から朝な朝な通ひし君が来ねば悲しも","#[仮名],ひとのおや,をとめこすゑて,もるやまへから,あさなさな,かよひしきみが,こねばかなしも","#[左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,旋頭歌,序詞","#[訓異]
ひとのおや,[寛]ひとのおやの,
をとめこすゑて[寛],
もるやまへから[寛],
あさなさな,[寛]あさなあさな,
かよひしきみが,[寛]かよひしきみか,
こねばかなしも,[寛]こぬはかなしも,
" "#[番号]11/2361","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]天在 一棚橋 何将行 穉草 妻所云 足<壮>嚴","#[訓読]天なる一つ棚橋いかにか行かむ若草の妻がりと言はば足飾りせむ","#[仮名],あめなる,ひとつたなはし,いかにかゆかむ,わかくさの,つまがりといはば,あしかざりせむ","#[左注](右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]牡 -> 壮 [嘉][紀][温][矢]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,旋頭歌,恋情","#[訓異]
あめなる,[寛]あめにある,
ひとつたなはし[寛],
いかにかゆかむ,[寛]いかてゆくらむ,
わかくさの[寛],
つまがりといはば,[寛]つまかりといふ,
あしかざりせむ,[寛]あしをうつくし,
" "#[番号]11/2362","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]開木代 来背若子 欲云余 相狭丸 吾欲云 開木代来背","#[訓読]山背の久背の若子が欲しと言ふ我れあふさわに我れを欲しと言ふ山背の久世","#[仮名],やましろの,くせのわくごが,ほしといふわれ,あふさわに,われをほしといふ,やましろのくぜ","#[左注]右十二首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,京都,求婚,旋頭歌","#[訓異]
やましろの[寛],
くせのわくごが,[寛]くせのわかこか,
ほしといふわれ[寛],
あふさわに[寛],
われをほしといふ,[寛]わかほしといふ,
やましろのくぜ,[寛]やましろのくせ,
" "#[番号]11/2363","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]岡前 多未足道乎 人莫通 在乍毛 公之来 曲道為","#[訓読]岡の崎廻みたる道を人な通ひそありつつも君が来まさむ避き道にせむ","#[仮名],をかのさき,たみたるみちを,ひとなかよひそ,ありつつも,きみがきまさむ,よきみちにせむ","#[左注](右五首古歌集中出)","#[校異]","#[事項],古歌集,旋頭歌,恋情","#[訓異]
をかのさき,[寛]をかさきの,
たみたるみちを,[寛]をみたるみちを,
ひとなかよひそ[寛],
ありつつも[寛],
きみがきまさむ,[寛]きみかきまさむ,
よきみちにせむ[寛],
" "#[番号]11/2364","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]玉垂 小簾之寸鶏吉仁 入通来根 足乳根之 母我問者 風跡将申","#[訓読]玉垂の小簾のすけきに入り通ひ来ねたらちねの母が問はさば風と申さむ","#[仮名],たまだれの,をすのすけきに,いりかよひこね,たらちねの,ははがとはさば,かぜとまをさむ","#[左注](右五首古歌集中出)","#[校異]","#[事項],古歌集,恋情,勧誘,旋頭歌","#[訓異]
たまだれの,[寛]たまたれの,
をすのすけきに,[寛]こすのすけきに,
いりかよひこね,[寛]いりかよひきね,
たらちねの[寛],
ははがとはさば,[寛]ははかとはれは,
かぜとまをさむ,[寛]かせとまうさむ,
" "#[番号]11/2365","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]内日左須 宮道尓相之 人妻<め> 玉緒之 念乱而 宿夜四曽多寸","#[訓読]うちひさす宮道に逢ひし人妻ゆゑに玉の緒の思ひ乱れて寝る夜しぞ多き","#[仮名],うちひさす,みやぢにあひし,ひとづまゆゑに,たまのをの,おもひみだれて,ぬるよしぞおほき","#[左注](右五首古歌集中出)","#[校異]垢 -> め [嘉][文][細]","#[事項],古歌集,旋頭歌,恋情,枕詞","#[訓異]
うちひさす[寛],
みやぢにあひし,[寛]みやちにあへりし,
ひとづまゆゑに,[寛]ひとつまゆゑに,
たまのをの[寛],
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
ぬるよしぞおほき,[寛]ぬるよしそおほき,
" "#[番号]11/2366","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]真十鏡 見之賀登念 妹相可聞 玉緒之 絶有戀之 繁比者","#[訓読]まそ鏡見しかと思ふ妹も逢はぬかも玉の緒の絶えたる恋の繁きこのころ","#[仮名],まそかがみ,みしかとおもふ,いももあはぬかも,たまのをの,たえたるこひの,しげきこのころ","#[左注](右五首古歌集中出)","#[校異]","#[事項],古歌集,枕詞,旋頭歌,恋情","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
みしかとおもふ[寛],
いももあはぬかも,[寛]いもにあはむかも,
たまのをの[寛],
たえたるこひの[寛],
しげきこのころ,[寛]しけきこのころ,
" "#[番号]11/2367","#[題詞](旋頭歌)","#[原文]海原乃 路尓乗哉 吾戀居 大舟之 由多尓将有 人兒由恵尓","#[訓読]海原の道に乗りてや我が恋ひ居らむ大船のゆたにあるらむ人の子ゆゑに","#[仮名],うなはらの,みちにのりてや,あがこひをらむ,おほぶねの,ゆたにあるらむ,ひとのこゆゑに","#[左注]右五首古歌集中出","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],古歌集,旋頭歌,恋情,枕詞","#[訓異]
うなはらの[寛],
みちにのりてや[寛],
あがこひをらむ,[寛]わかこひをらむ,
おほぶねの,[寛]おほふねの,
ゆたにあるらむ[寛],
ひとのこゆゑに[寛],
" "#[番号]11/2368","#[題詞]正述心緒","#[原文]垂乳根乃 母之手放 如是許 無為便事者 未為國","#[訓読]たらちねの母が手離れかくばかりすべなきことはいまだせなくに","#[仮名],たらちねの,ははがてはなれ,かくばかり,すべなきことは,いまだせなくに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,枕詞,恋情","#[訓異]
たらちねの[寛],
ははがてはなれ,[寛]ははのてそきて,
かくばかり,[寛]かくはかり,
すべなきことは,[寛]すへなきことは,
いまだせなくに,[寛]いまたせなくに,
" "#[番号]11/2369","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人所寐 味宿不寐 早敷八四 公目尚 欲嘆 [或本歌云 公矣思尓 暁来鴨] ","#[訓読]人の寝る味寐は寝ずてはしきやし君が目すらを欲りし嘆かむ [或本歌云 君を思ふに明けにけるかも] ","#[仮名],ひとのぬる,うまいはねずて,はしきやし,きみがめすらを,ほりしなげかむ,[きみをおもふに,あけにけるかも]","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
ひとのぬる[寛],
うまいはねずて,[寛]うまいもねすて,
はしきやし[寛],
きみがめすらを,[寛]きみかめをすら,
ほりしなげかむ,[寛]ほしみなけくか,
[きみをおもふに[寛],
あけにけるかも][寛],
" "#[番号]11/2370","#[題詞](正述心緒)","#[原文]戀死 戀死耶 玉鉾 路行人 事告<無>","#[訓読]恋ひしなば恋ひも死ねとや玉桙の道行く人の言も告げなく","#[仮名],こひしなば,こひもしねとや,たまほこの,みちゆくひとの,こともつげなく","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]兼 -> 無 [嘉]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,枕詞","#[訓異]
こひしなば,[寛]こひしなは,
こひもしねとや[寛],
たまほこの[寛],
みちゆくひとの,[寛]みちゆきひとに,
こともつげなく,[寛]こともつけなむ,
" "#[番号]11/2371","#[題詞](正述心緒)","#[原文]心 千遍雖念 人不云 吾戀つ 見依鴨","#[訓読]心には千重に思へど人に言はぬ我が恋妻を見むよしもがも","#[仮名],こころには,ちへにおもへど,ひとにいはぬ,あがこひづまを,みむよしもがも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,隠妻","#[訓異]
こころには[寛],
ちへにおもへど,[寛]ちへにおもへと,
ひとにいはぬ[寛],
あがこひづまを,[寛]わかこひつまを,
みむよしもがも,[寛]みるよしもかも,
" "#[番号]11/2372","#[題詞](正述心緒)","#[原文]是量 戀物 知者 遠可見 有物","#[訓読]かくばかり恋ひむものぞと知らませば遠くも見べくあらましものを","#[仮名],かくばかり,こひむものぞと,しらませば,とほくもみべく,あらましものを","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
かくばかり,[寛]かくはかり,
こひむものぞと,[寛]こひしきものと,
しらませば,[寛]しらませは,
とほくもみべく,[寛]よそにみるへく,
あらましものを,[寛]ありけるものを,
" "#[番号]11/2373","#[題詞](正述心緒)","#[原文]何時 不戀時 雖不有 夕方<任> 戀無乏","#[訓読]いつはしも恋ひぬ時とはあらねども夕かたまけて恋ひはすべなし","#[仮名],いつはしも,こひぬときとは,あらねども,ゆふかたまけて,こひはすべなし","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]枉 -> 任 [嘉]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
いつはしも,[寛]いつとても,
こひぬときとは[寛],
あらねども,[寛]あらねとも,
ゆふかたまけて[寛],
こひはすべなし,[寛]こひはすへなし,
" "#[番号]11/2374","#[題詞](正述心緒)","#[原文]是耳 戀度 玉切 不知命 歳經管","#[訓読]かくのみし恋ひやわたらむたまきはる命も知らず年は経につつ","#[仮名],かくのみし,こひやわたらむ,たまきはる,いのちもしらず,としはへにつつ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,枕詞","#[訓異]
かくのみし,[寛]かくしのみ,
こひやわたらむ[寛],
たまきはる[寛],
いのちもしらず,[寛]いのちもしらす,
としはへにつつ[寛],
" "#[番号]11/2375","#[題詞](正述心緒)","#[原文]吾以後 所生人 如我 戀為道 相与勿湯目","#[訓読]我れゆ後生まれむ人は我がごとく恋する道にあひこすなゆめ","#[仮名],われゆのち,うまれむひとは,あがごとく,こひするみちに,あひこすなゆめ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
われゆのち,[寛]わかのちに,
うまれむひとは,[寛]むまれむひとも,
あがごとく,[寛]わかことく,
こひするみちに[寛],
あひこすなゆめ,[寛]あひあふなゆめ,
" "#[番号]11/2376","#[題詞](正述心緒)","#[原文]健男 現心 吾無 夜晝不云 戀度","#[訓読]ますらをの現し心も我れはなし夜昼といはず恋ひしわたれば","#[仮名],ますらをの,うつしごころも,われはなし,よるひるといはず,こひしわたれば","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
ますらをの[寛],
うつしごころも,[寛]うつしこころも,
われはなし[寛],
よるひるといはず,[寛]よるひるいはす,
こひしわたれば,[寛]こひしわたれは,
" "#[番号]11/2377","#[題詞](正述心緒)","#[原文]何為 命継 吾妹 不戀前 死物","#[訓読]何せむに命継ぎけむ我妹子に恋ひぬ前にも死なましものを","#[仮名],なにせむに,いのちつぎけむ,わぎもこに,こひぬさきにも,しなましものを","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
なにせむに,[寛]なにせんに,
いのちつぎけむ,[寛]いのちつきけむ,
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こひぬさきにも,[寛]こひせぬさきに,
しなましものを,[寛]しなまくものを,
" "#[番号]11/2378","#[題詞](正述心緒)","#[原文]吉恵哉 不来座公 何為 不Q吾 戀乍居","#[訓読]よしゑやし来まさぬ君を何せむにいとはず我れは恋ひつつ居らむ","#[仮名],よしゑやし,きまさぬきみを,なにせむに,いとはずあれは,こひつつをらむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
よしゑやし[寛],
きまさぬきみを[寛],
なにせむに,[寛]なにすとか,
いとはずあれは,[寛]うとますわれは,
こひつつをらむ[寛],
" "#[番号]11/2379","#[題詞](正述心緒)","#[原文]見度 近渡乎 廻 今哉来座 戀居","#[訓読]見わたせば近き渡りをた廻り今か来ますと恋ひつつぞ居る","#[仮名],みわたせば,ちかきわたりを,たもとほり,いまかきますと,こひつつぞをる","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
みわたせば,[寛]みわたせは,
ちかきわたりを[寛],
たもとほり[寛],
いまかきますと,[寛]いまやきますと,
こひつつぞをる,[寛]こひつつそをる,
" "#[番号]11/2380","#[題詞](正述心緒)","#[原文]早敷哉 誰障鴨 玉桙 路見遺 公不来座","#[訓読]はしきやし誰が障ふれかも玉桙の道見忘れて君が来まさぬ","#[仮名],はしきやし,たがさふれかも,たまほこの,みちみわすれて,きみがきまさぬ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
はしきやし[寛],
たがさふれかも,[寛]たかさへてかも,
たまほこの[寛],
みちみわすれて,[寛]みちわすられて,
きみがきまさぬ,[寛]きみかきまさぬ,
" "#[番号]11/2381","#[題詞](正述心緒)","#[原文]公目 見欲 是二夜 千歳如 吾戀哉","#[訓読]君が目を見まく欲りしてこの二夜千年のごとも我は恋ふるかも","#[仮名],きみがめを,みまくほりして,このふたよ,ちとせのごとも,あはこふるかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
きみがめを,[寛]きみかめを,
みまくほりして[寛],
このふたよ[寛],
ちとせのごとも,[寛]ちとせのことも,
あはこふるかも,[寛]わかこふるかな,
" "#[番号]11/2382","#[題詞](正述心緒)","#[原文]打日刺 宮道人 雖満行 吾念公 正一人","#[訓読]うち日さす宮道を人は満ち行けど我が思ふ君はただひとりのみ","#[仮名],うちひさす,みやぢをひとは,みちゆけど,あがおもふきみは,ただひとりのみ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,枕詞","#[訓異]
うちひさす[寛],
みやぢをひとは,[寛]みやちのひとは,
みちゆけど,[寛]みちゆけと,
あがおもふきみは,[寛]わかおもふきみは,
ただひとりのみ,[寛]たたひとりのみ,
" "#[番号]11/2383","#[題詞](正述心緒)","#[原文]世中 常如 雖念 半手不<忘> 猶戀在","#[訓読]世の中は常かくのみと思へどもはたた忘れずなほ恋ひにけり","#[仮名],よのなかは,つねかくのみと,おもへども,はたたわすれず,なほこひにけり","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]忌 -> 忘 [文][紀][細]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
よのなかは,[寛]よのなかに,
つねかくのみと,[寛]つねかくそとは,
おもへども,[寛]おもへとも,
はたたわすれず,[寛]はてはわすれす,
なほこひにけり,[寛]なをこひにけり,
" "#[番号]11/2384","#[題詞](正述心緒)","#[原文]我勢古波 幸座 遍来 我告来 人来鴨","#[訓読]我が背子は幸くいますと帰り来と我れに告げ来む人も来ぬかも","#[仮名],わがせこは,さきくいますと,かへりくと,あれにつげこむ,ひともこぬかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,女歌","#[訓異]
わがせこは,[寛]わかせこは,
さきくいますと[寛],
かへりくと,[寛]かへりきて,
あれにつげこむ,[寛]われにつけこむ,
ひともこぬかも,[寛]ひとのくるかも,
" "#[番号]11/2385","#[題詞](正述心緒)","#[原文]<麁>玉 五年雖經 吾戀 跡無戀 不止恠","#[訓読]あらたまの五年経れど我が恋の跡なき恋のやまなくあやし","#[仮名],あらたまの,いつとせふれど,あがこひの,あとなきこひの,やまなくあやし","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]簾 -> 麁 [嘉][文][紀]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情","#[訓異]
あらたまの[寛],
いつとせふれど,[寛]いつとせふれと,
あがこひの,[寛]わかこふる,
あとなきこひの[寛],
やまなくあやし,[寛]やまぬあやしも,
" "#[番号]11/2386","#[題詞](正述心緒)","#[原文]石尚 行應通 建男 戀云事 後悔在","#[訓読]巌すら行き通るべきますらをも恋といふことは後悔いにけり","#[仮名],いはほすら,ゆきとほるべき,ますらをも,こひといふことは,のちくいにけり","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
いはほすら[寛],
ゆきとほるべき,[寛]ゆきとほるへき,
ますらをも[寛],
こひといふことは,[寛]こひてふことは,
のちくいにけり,[寛]のちのくゐあり,
" "#[番号]11/2387","#[題詞](正述心緒)","#[原文]日<位> 人可知 今日 如千歳 有与鴨","#[訓読]日並べば人知りぬべし今日の日は千年のごともありこせぬかも","#[仮名],ひならべば,ひとしりぬべし,けふのひは,ちとせのごとも,ありこせぬかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]促 -> 位 [細]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,うわさ","#[訓異]
ひならべば,[寛]ひくれなは,
ひとしりぬべし,[寛]ひとしりぬへし,
けふのひは,[寛]けふのひの,
ちとせのごとも,[寛]ちとせのことく,
ありこせぬかも,[寛]あるよしもかも,
" "#[番号]11/2388","#[題詞](正述心緒)","#[原文]立座 <態>不知 雖念 妹不告 間使不来","#[訓読]立ちて居てたづきも知らず思へども妹に告げねば間使も来ず","#[仮名],たちてゐて,たづきもしらず,おもへども,いもにつげねば,まつかひもこず","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]熊 -> 態 [西(訂正)][文][細][温]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
たちてゐて,[寛]たちゐする,
たづきもしらず,[寛]わさもしられす,
おもへども,[寛]おもへとも,
いもにつげねば,[寛]いもにつけねは,
まつかひもこず,[寛]まつかひもこす,
" "#[番号]11/2389","#[題詞](正述心緒)","#[原文]烏玉 是夜莫明 朱引 朝行公 待苦","#[訓読]ぬばたまのこの夜な明けそ赤らひく朝行く君を待たば苦しも","#[仮名],ぬばたまの,このよなあけそ,あからひく,あさゆくきみを,またばくるしも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情,女歌,後朝","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
このよなあけそ[寛],
あからひく[寛],
あさゆくきみを[寛],
またばくるしも,[寛]まてはくるしも,
" "#[番号]11/2390","#[題詞](正述心緒)","#[原文]戀為 死為物 有<者> 我身千遍 死反","#[訓読]恋するに死するものにあらませば我が身は千たび死にかへらまし","#[仮名],こひするに,しにするものに,あらませば,あがみはちたび,しにかへらまし","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]<> -> 者 [嘉][文][紀][細]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
こひするに,[寛]こひをして,
しにするものに[寛],
あらませば,[寛]あらませは,
あがみはちたび,[寛]わかみはちたひ,
しにかへらまし[寛],
" "#[番号]11/2391","#[題詞](正述心緒)","#[原文]玉響 昨夕 見物 今朝 可戀物","#[訓読]玉かぎる昨日の夕見しものを今日の朝に恋ふべきものか","#[仮名],たまかぎる,きのふのゆふへ,みしものを,けふのあしたに,こふべきものか","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情","#[訓異]
たまかぎる,[寛]たまゆらに,
きのふのゆふへ[寛],
みしものを[寛],
けふのあしたに,[寛]けふのあしたは,
こふべきものか,[寛]こふへきものか,
" "#[番号]11/2392","#[題詞](正述心緒)","#[原文]中々 不見有 従相見 戀心 益念","#[訓読]なかなかに見ずあらましを相見てゆ恋ほしき心まして思ほゆ","#[仮名],なかなかに,みずあらましを,あひみてゆ,こほしきこころ,ましておもほゆ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
なかなかに[寛],
みずあらましを,[寛]みさりしよりも,
あひみてゆ,[寛]あひみては,
こほしきこころ,[寛]こひしきこころ,
ましておもほゆ[寛],
" "#[番号]11/2393","#[題詞](正述心緒)","#[原文]玉桙 道不行為有者 惻隠 此有戀 不相","#[訓読]玉桙の道行かずあらばねもころのかかる恋には逢はざらましを","#[仮名],たまほこの,みちゆかずあらば,ねもころの,かかるこひには,あはざらましを","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]行為 (塙) 行","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情","#[訓異]
たまほこの[寛],
みちゆかずあらば,[寛]みちをゆかすしあらませは,
ねもころの,[寛]しのひにかかる,
かかるこひには,
あはざらましを,[寛]こひにあはましや,
" "#[番号]11/2394","#[題詞](正述心緒)","#[原文]朝影 吾身成 玉垣入 風所見 去子故","#[訓読]朝影に我が身はなりぬ玉かきるほのかに見えて去にし子ゆゑに","#[仮名],あさかげに,あがみはなりぬ,たまかきる,ほのかにみえて,いにしこゆゑに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,枕詞","#[訓異]
あさかげに,[寛]あさかけに,
あがみはなりぬ,[寛]わかみはなりぬ,
たまかきる,[寛]たまかきの,
ほのかにみえて,[寛]すきまにみえて,
いにしこゆゑに,[寛]いにしこゆへに,
" "#[番号]11/2395","#[題詞](正述心緒)","#[原文]行々 不相妹故 久方 天露霜 <沾>在哉","#[訓読]行き行きて逢はぬ妹ゆゑひさかたの天露霜に濡れにけるかも","#[仮名],ゆきゆきて,あはぬいもゆゑ,ひさかたの,あまつゆしもに,ぬれにけるかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]沽 -> 沾 [文][細][温]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,枕詞","#[訓異]
ゆきゆきて,[寛]ゆけとゆけと,
あはぬいもゆゑ,[寛]あはぬいもゆへ,
ひさかたの[寛],
あまつゆしもに[寛],
ぬれにけるかも,[寛]ぬれにたるかな,
" "#[番号]11/2396","#[題詞](正述心緒)","#[原文]玉坂 吾見人 何有 依以 亦一目見","#[訓読]たまさかに我が見し人をいかならむよしをもちてかまた一目見む","#[仮名],たまさかに,わがみしひとを,いかならむ,よしをもちてか,またひとめみむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
たまさかに[寛],
わがみしひとを,[寛]わかみしひとは,
いかならむ[寛],
よしをもちてか,[寛]よしをもちてや,
またひとめみむ,[寛]またひとめみむ,
" "#[番号]11/2397","#[題詞](正述心緒)","#[原文]ま 不見戀 吾妹 日々来 事繁","#[訓読]しましくも見ぬば恋ほしき我妹子を日に日に来れば言の繁けく","#[仮名],しましくも,みぬばこほしき,わぎもこを,ひにひにくれば,ことのしげけく","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,うわさ","#[訓異]
しましくも,[寛]しはらくも,
みぬばこほしき,[寛]みねはこひしみ,
わぎもこを,[寛]わきもこに,
ひにひにくれば,[寛]ひにひにくれは,
ことのしげけく,[寛]ことのしけけむ,
" "#[番号]11/2398","#[題詞](正述心緒)","#[原文]<玉>切 及世定 恃 公依 事繁","#[訓読]たまきはる世までと定め頼みたる君によりてし言の繁けく","#[仮名],たまきはる,よまでとさだめ,たのみたる,きみによりてし,ことのしげけく","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]年 -> 玉 [万葉集略解]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,枕詞,うわさ","#[訓異]
たまきはる,[寛]としきはる,
よまでとさだめ,[寛]よまてさためて,
たのみたる,[寛]たのめぬる,
きみによりてし,[寛]きみによりても,
ことのしげけく,[寛]ことのしけけむ,
" "#[番号]11/2399","#[題詞](正述心緒)","#[原文]朱引 秦不經 雖寐 心異 我不念","#[訓読]赤らひく肌も触れずて寐ぬれども心を異には我が思はなくに","#[仮名],あからひく,はだもふれずて,いぬれども,こころをけには,わがおもはなくに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
あからひく[寛],
はだもふれずて,[寛]はたもふれすて,
いぬれども,[寛]ねたれとも,
こころをけには,[寛]こころにことに,
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]11/2400","#[題詞](正述心緒)","#[原文]伊田何 極太甚 利心 及失念 戀故","#[訓読]いで何かここだはなはだ利心の失するまで思ふ恋ゆゑにこそ","#[仮名],いでなにか,ここだはなはだ,とごころの,うするまでおもふ,こひゆゑにこそ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
いでなにか,[寛]いていかに,
ここだはなはだ,[寛]きはみはなはた,
とごころの,[寛]とこころの,
うするまでおもふ,[寛]うするまておもふ,
こひゆゑにこそ,[寛]こふらくのゆゑ,
" "#[番号]11/2401","#[題詞](正述心緒)","#[原文]戀死 戀死哉 我妹 吾家門 過行","#[訓読]恋ひ死なば恋ひも死ねとか我妹子が我家の門を過ぎて行くらむ","#[仮名],こひしなば,こひもしねとか,わぎもこが,わぎへのかどを,すぎてゆくらむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
こひしなば,[寛]こひしなは,
こひもしねとか,[寛]こひもしねとや,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
わぎへのかどを,[寛]わきへのかとを,
すぎてゆくらむ,[寛]すきてゆくらむ,
" "#[番号]11/2402","#[題詞](正述心緒)","#[原文]妹當 遠見者 恠 吾戀 相依無","#[訓読]妹があたり遠くも見ればあやしくも我れは恋ふるか逢ふよしなしに","#[仮名],いもがあたり,とほくもみれば,あやしくも,あれはこふるか,あふよしなしに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
いもがあたり,[寛]いもかあたり,
とほくもみれば,[寛]とほくみゆれは,
あやしくも[寛],
あれはこふるか,[寛]われはこふるか,
あふよしなしに,[寛]あふよしをなみ,
" "#[番号]11/2403","#[題詞](正述心緒)","#[原文]玉久世 清川原 身秡為 齋命 妹為","#[訓読]玉くせの清き川原にみそぎして斎ふ命は妹がためこそ","#[仮名],たまくせの,きよきかはらに,みそぎして,いはふいのちは,いもがためこそ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]秡 [万葉集略解](塙) 祓","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,京都,恋情","#[訓異]
たまくせの[寛],
きよきかはらに[寛],
みそぎして,[寛]みそきして,
いはふいのちは,[寛]いのるいのちも,
いもがためこそ,[寛]いもかためなり,
" "#[番号]11/2404","#[題詞](正述心緒)","#[原文]思依 見依 物有 一日間 忘念","#[訓読]思ひ寄り見ては寄りにしものにあれば一日の間も忘れて思へや","#[仮名],おもひより,みてはよりにし,ものにあれば,ひとひのあひだも,わすれておもへや","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
おもひより,[寛]おもふより,
みてはよりにし,[寛]みるよりものは,
ものにあれば,[寛]あるものを,
ひとひのあひだも,[寛]ひとひへたつる,
わすれておもへや,[寛]わするとおもふな,
" "#[番号]11/2405","#[題詞](正述心緒)","#[原文]垣廬鳴 人雖云 狛錦 紐解開 公無","#[訓読]垣ほなす人は言へども高麗錦紐解き開けし君ならなくに","#[仮名],かきほなす,ひとはいへども,こまにしき,ひもときあけし,きみならなくに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,うわさ,枕詞","#[訓異]
かきほなす[寛],
ひとはいへども,[寛]ひとはいへとも,
こまにしき[寛],
ひもときあけし,[寛]ひもときあくる,
きみならなくに,[寛]きみもなきかも,
" "#[番号]11/2406","#[題詞](正述心緒)","#[原文]狛錦 紐解開 夕<谷> 不知有命 戀有","#[訓読]高麗錦紐解き開けて夕だに知らずある命恋ひつつかあらむ","#[仮名],こまにしき,ひもときあけて,ゆふへだに,しらずあるいのち,こひつつかあらむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]戸 -> 谷 [万葉考]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情","#[訓異]
こまにしき[寛],
ひもときあけて[寛],
ゆふへだに,[寛]ゆふへとも,
しらずあるいのち,[寛]しらさるいのち,
こひつつかあらむ[寛],
" "#[番号]11/2407","#[題詞](正述心緒)","#[原文]百積 船潜納 八占刺 母雖問 其名不謂","#[訓読]百積の船隠り入る八占さし母は問ふともその名は告らじ","#[仮名],ももさかの,ふねかくりいる,やうらさし,はははとふとも,そのなはのらじ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,女歌,占い","#[訓異]
ももさかの,[寛]ももさか,
ふねかくりいる,[寛]ふねかつきいる,
やうらさし,[寛]やうらさして,
はははとふとも[寛],
そのなはのらじ,[寛]そのなはいはし,
" "#[番号]11/2408","#[題詞](正述心緒)","#[原文]眉根削 鼻鳴紐解 待哉 何時見 念<吾>","#[訓読]眉根掻き鼻ひ紐解け待つらむかいつかも見むと思へる我れを","#[仮名],まよねかき,はなひひもとけ,まつらむか,いつかもみむと,おもへるわれを","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]吾君 -> 吾 [嘉]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
まよねかき,[寛]まゆねかき,
はなひひもとけ,[寛]はなひひもとき,
まつらむか,[寛]まつらむや,
いつかもみむと,[寛]いつしかみんと,
おもへるわれを,[寛]おもふわかきみ,
" "#[番号]11/2409","#[題詞](正述心緒)","#[原文]君戀 浦經居 悔 我裏紐 結手徒","#[訓読]君に恋ひうらぶれ居れば悔しくも我が下紐の結ふ手いたづらに","#[仮名],きみにこひ,うらぶれをれば,くやしくも,わがしたびもの,ゆふていたづらに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
きみにこひ,[寛]きみこふと,
うらぶれをれば,[寛]うらふれをれは,
くやしくも[寛],
わがしたびもの,[寛]わかしたひもを,
ゆふていたづらに,[寛]むすひてたたに,
" "#[番号]11/2410","#[題詞](正述心緒)","#[原文]璞之 年者竟杼 敷白之 袖易子少 忘而念哉","#[訓読]あらたまの年は果つれど敷栲の袖交へし子を忘れて思へや","#[仮名],あらたまの,としははつれど,しきたへの,そでかへしこを,わすれておもへや","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,枕詞,恋情","#[訓異]
あらたまの[寛],
としははつれど,[寛]としはくるると,
しきたへの[寛],
そでかへしこを,[寛]そてかはししを,
わすれておもへや[寛],
" "#[番号]11/2411","#[題詞](正述心緒)","#[原文]白細布 袖小端 見柄 如是有戀 吾為鴨","#[訓読]白栲の袖をはつはつ見しからにかかる恋をも我れはするかも","#[仮名],しろたへの,そでをはつはつ,みしからに,かかるこひをも,あれはするかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,枕詞","#[訓異]
しろたへの[寛],
そでをはつはつ,[寛]そてをはつかに,
みしからに[寛],
かかるこひをも[寛],
あれはするかも,[寛]われはするかも,
" "#[番号]11/2412","#[題詞](正述心緒)","#[原文]我妹 戀無乏 夢見 吾雖念 不所寐","#[訓読]我妹子に恋ひすべながり夢に見むと我れは思へど寐ねらえなくに","#[仮名],わぎもこに,こひすべながり,いめにみむと,われはおもへど,いねらえなくに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こひすべながり,[寛]こひてすへなみ,
いめにみむと,[寛]ゆめみむと,
われはおもへど,[寛]われはおもへと,
いねらえなくに,[寛]いねられなくに,
" "#[番号]11/2413","#[題詞](正述心緒)","#[原文]故無 吾裏紐 令解 人莫知 及正逢","#[訓読]故もなく我が下紐を解けしめて人にな知らせ直に逢ふまでに","#[仮名],ゆゑもなく,わがしたびもを,とけしめて,ひとになしらせ,ただにあふまでに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,うわさ","#[訓異]
ゆゑもなく,[寛]ゆへなしに,
わがしたびもを,[寛]わかしたひもの,
とけしめて,[寛]とけたるを,
ひとになしらせ,[寛]ひとにしらすな,
ただにあふまでに,[寛]たたにあふまて,
" "#[番号]11/2414","#[題詞](正述心緒)","#[原文]戀事 意追不得 出行者 山川 不知来","#[訓読]恋ふること慰めかねて出でて行けば山を川をも知らず来にけり","#[仮名],こふること,なぐさめかねて,いでてゆけば,やまをかはをも,しらずきにけり","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
こふること[寛],
なぐさめかねて,[寛]なくさめかねて,
いでてゆけば,[寛]いてゆけは,
やまをかはをも,[寛]やまかはしらす,
しらずきにけり,[寛]きにけるものを,
" "#[番号]11/2415","#[題詞]寄物陳思","#[原文]處女等乎 袖振山 水垣<乃> 久時由 念来吾等者","#[訓読]娘子らを袖振る山の瑞垣の久しき時ゆ思ひけり我れは","#[仮名],をとめらを,そでふるやまの,みづかきの,ひさしきときゆ,おもひけりわれは","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]<> -> 乃 [嘉][類]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,序詞,恋情,歌垣,奈良,天理,地名,枕詞","#[訓異]
をとめらを[寛],
そでふるやまの,[寛]そてふるやまの,
みづかきの,[寛]みつかきの,
ひさしきときゆ,[寛]ひさしきよより,
おもひけりわれは,[寛]おもひきわれは,
" "#[番号]11/2416","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]千早振 神持在 命 誰為 長欲為","#[訓読]ちはやぶる神の持たせる命をば誰がためにかも長く欲りせむ","#[仮名],ちはやぶる,かみのもたせる,いのちをば,たがためにかも,ながくほりせむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,枕詞","#[訓異]
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
かみのもたせる,[寛]かみのたもてる,
いのちをば,[寛]いのちをも,
たがためにかも,[寛]たかためにかは,
ながくほりせむ,[寛]なかくほりふる,
" "#[番号]11/2417","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]石上 振神杉 神成 戀我 更為鴨","#[訓読]石上布留の神杉神さぶる恋をも我れはさらにするかも","#[仮名],いそのかみ,ふるのかむすぎ,かむさぶる,こひをもあれは,さらにするかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,序詞,恋情,奈良,天理,地名","#[訓異]
いそのかみ[寛],
ふるのかむすぎ,[寛]ふるのかみすき,
かむさぶる,[寛]かみとなる,
こひをもあれは,[寛]こひをもわれは,
さらにするかも[寛],
" "#[番号]11/2418","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]何 名負神 幣嚮奉者 吾念妹 夢谷見","#[訓読]いかならむ名負ふ神に手向けせば我が思ふ妹を夢にだに見む","#[仮名],いかならむ,なおふかみにし,たむけせば,あがおもふいもを,いめにだにみむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
いかならむ[寛],
なおふかみにし,[寛]かみにぬさをも,
たむけせば,[寛]たむけはか,
あがおもふいもを,[寛]わかおもふいもを,
いめにだにみむ,[寛]ゆめにたにみむ,
" "#[番号]11/2419","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]天地 言名絶 有 汝吾 相事止","#[訓読]天地といふ名の絶えてあらばこそ汝と我れと逢ふことやまめ","#[仮名],あめつちと,いふなのたえて,あらばこそ,いましとあれと,あふことやまめ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
あめつちと[寛],
いふなのたえて[寛],
あらばこそ,[寛]あらはこそ,
いましとあれと,[寛]なれにわかあふ,
あふことやまめ,[寛]こともやみなめ,
" "#[番号]11/2420","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]月見 國同 山隔 愛妹 隔有鴨","#[訓読]月見れば国は同じぞ山へなり愛し妹はへなりたるかも","#[仮名],つきみれば,くにはおやじぞ,やまへなり,うつくしいもは,へなりたるかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
つきみれば,[寛]つきみれは,
くにはおやじぞ,[寛]くにはおなしく,
やまへなり,[寛]やまへたて,
うつくしいもは[寛],
へなりたるかも,[寛]へたてたるかも,
" "#[番号]11/2421","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]も路者 石踏山 無鴨 吾待公 馬爪盡","#[訓読]来る道は岩踏む山はなくもがも我が待つ君が馬つまづくに","#[仮名],くるみちは,いはふむやまは,なくもがも,わがまつきみが,うまつまづくに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,女歌","#[訓異]
くるみちは[寛],
いはふむやまは,[寛]いしふむやまも,
なくもがも,[寛]なくもかも,
わがまつきみが,[寛]わかまつきみか,
うまつまづくに,[寛]うまつまつくも,
" "#[番号]11/2422","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]石根踏 重成山 雖不有 不相日數 戀度鴨","#[訓読]岩根踏みへなれる山はあらねども逢はぬ日まねみ恋ひわたるかも","#[仮名],いはねふみ,へなれるやまは,あらねども,あはぬひまねみ,こひわたるかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
いはねふみ[寛],
へなれるやまは,[寛]かさなるやまは,
あらねども,[寛]あらねとも,
あはぬひまねみ,[寛]あはぬひあまた,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]11/2423","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]路後 深津嶋山 ま 君目不見 苦有","#[訓読]道の後深津島山しましくも君が目見ねば苦しかりけり","#[仮名],みちのしり,ふかつしまやま,しましくも,きみがめみねば,くるしかりけり","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞,広島,福山,地名","#[訓異]
みちのしり[寛],
ふかつしまやま[寛],
しましくも,[寛]しはらくも,
きみがめみねば,[寛]きみかめみねは,
くるしかりけり[寛],
" "#[番号]11/2424","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]紐鏡 能登香山 誰故 君来座在 紐不開寐","#[訓読]紐鏡能登香の山も誰がゆゑか君来ませるに紐解かず寝む","#[仮名],ひもかがみ,のとかのやまも,たがゆゑか,きみきませるに,ひもとかずねむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情,地名","#[訓異]
ひもかがみ,[寛]ひもかかみ,
のとかのやまも[寛],
たがゆゑか,[寛]たかゆゑか,
きみきませるに[寛],
ひもとかずねむ,[寛]ひもとかすねむ,
" "#[番号]11/2425","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]山科 強田山 馬雖在 歩吾来 汝念不得","#[訓読]山科の木幡の山を馬はあれど徒歩より我が来し汝を思ひかねて","#[仮名],やましなの,こはたのやまを,うまはあれど,かちよりわがこし,なをおもひかねて","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,京都,地名,恋情,羈旅","#[訓異]
やましなの[寛],
こはたのやまを,[寛]こはたのやまに,
うまはあれど,[寛]うまはあれと,
かちよりわがこし,[寛]かちよりわれく,
なをおもひかねて,[寛]なれをおもひかね,
" "#[番号]11/2426","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]遠山 霞被 益遐 妹目不見 吾戀","#[訓読]遠山に霞たなびきいや遠に妹が目見ねば我れ恋ひにけり","#[仮名],とほやまに,かすみたなびき,いやとほに,いもがめみねば,あれこひにけり","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞","#[訓異]
とほやまに,[寛]とをやまに,
かすみたなびき,[寛]かすみたなひき,
いやとほに[寛],
いもがめみねば,[寛]いもかめみすて,
あれこひにけり,[寛]わかこふるかも,
" "#[番号]11/2427","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]是川 瀬々敷浪 布々 妹心 乗在鴨","#[訓読]宇治川の瀬々のしき波しくしくに妹は心に乗りにけるかも","#[仮名],うぢかはの,せぜのしきなみ,しくしくに,いもはこころに,のりにけるかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,序詞,京都,地名,恋情","#[訓異]
うぢかはの,[寛]このかはの,
せぜのしきなみ,[寛]せせのしきなみ,
しくしくに[寛],
いもはこころに,[寛]いもかこころに,
のりにけるかも,[寛]のりにたるかも,
" "#[番号]11/2428","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]千早人 宇治度 速瀬 不相有 後我つ","#[訓読]ちはや人宇治の渡りの瀬を早み逢はずこそあれ後も我が妻","#[仮名],ちはやひと,うぢのわたりの,せをはやみ,あはずこそあれ,のちもわがつま","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,京都,地名,序詞,恋情","#[訓異]
ちはやひと[寛],
うぢのわたりの,[寛]うちのわたりの,
せをはやみ,[寛]はやきせに,
あはずこそあれ,[寛]あはすありとも,
のちもわがつま,[寛]のちもわかつま,
" "#[番号]11/2429","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]早敷哉 不相子故 徒 是川瀬 裳襴潤","#[訓読]はしきやし逢はぬ子ゆゑにいたづらに宇治川の瀬に裳裾濡らしつ","#[仮名],はしきやし,あはぬこゆゑに,いたづらに,うぢがはのせに,もすそぬらしつ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,京都,地名,恋情","#[訓異]
はしきやし[寛],
あはぬこゆゑに,[寛]あはぬこゆへに,
いたづらに,[寛]いたつらに,
うぢがはのせに,[寛]このかはのせに,
もすそぬらしつ,[寛]ものすそぬらす,
" "#[番号]11/2430","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]是川 水阿和逆纒 行水 事不反 思始為","#[訓読]宇治川の水泡さかまき行く水の事かへらずぞ思ひ染めてし","#[仮名],うぢかはの,みなあわさかまき,ゆくみづの,ことかへらずぞ,おもひそめてし","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,京都,序詞,恋情","#[訓異]
うぢかはの,[寛]このかはの,
みなあわさかまき[寛],
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
ことかへらずぞ,[寛]ことかへさすそ,
おもひそめてし[寛],
" "#[番号]11/2431","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]鴨川 後瀬静 後相 妹者我 雖不今","#[訓読]鴨川の後瀬静けく後も逢はむ妹には我れは今ならずとも","#[仮名],かもがはの,のちせしづけく,のちもあはむ,いもにはわれは,いまならずとも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,京都,恋情,地名,序詞","#[訓異]
かもがはの,[寛]かもかはの,
のちせしづけく,[寛]のちせしつなみ,
のちもあはむ[寛],
いもにはわれは,[寛]いもにはわれよ,
いまならずとも,[寛]けふならすとも,
" "#[番号]11/2432","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]言出 云忌々 山川之 當都心 塞耐在","#[訓読]言に出でて言はばゆゆしみ山川のたぎつ心を塞かへたりけり","#[仮名],ことにいでて,いはばゆゆしみ,やまがはの,たぎつこころを,せかへたりけり","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,比喩","#[訓異]
ことにいでて,[寛]ことにいてて,
いはばゆゆしみ,[寛]いははゆゆしみ,
やまがはの,[寛]やまかはの,
たぎつこころを,[寛]たきつこころを,
せかへたりけり,[寛]せきそかねたる,
" "#[番号]11/2433","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]水上 如數書 吾命 妹相 受日鶴鴨","#[訓読]水の上に数書くごとき我が命妹に逢はむとうけひつるかも","#[仮名],みづのうへに,かずかくごとき,わがいのち,いもにあはむと,うけひつるかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,無常,誓約,水占","#[訓異]
みづのうへに,[寛]みつのうへに,
かずかくごとき,[寛]かすかくことき,
わがいのち,[寛]わかいのちを,
いもにあはむと[寛],
うけひつるかも[寛],
" "#[番号]11/2434","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]荒礒越 外徃波乃 外心 吾者不思 戀而死鞆","#[訓読]荒礒越し外行く波の外心我れは思はじ恋ひて死ぬとも","#[仮名],ありそこし,ほかゆくなみの,ほかごころ,われはおもはじ,こひてしぬとも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,序詞,恋情","#[訓異]
ありそこし,[寛]あらいそこえ,
ほかゆくなみの[寛],
ほかごころ,[寛]ほかこころ,
われはおもはじ,[寛]われはおもはし,
こひてしぬとも[寛],
" "#[番号]11/2435","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]淡海々 奥白浪 雖不知 妹所云 七日越来","#[訓読]近江の海沖つ白波知らずとも妹がりといはば七日越え来む","#[仮名],あふみのうみ,おきつしらなみ,しらずとも,いもがりといはば,なぬかこえこむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,琵琶湖,滋賀,序詞,恋情","#[訓異]
あふみのうみ,[寛]あうみのうみ,
おきつしらなみ[寛],
しらずとも,[寛]しらすとも,
いもがりといはば,[寛]いもかりといはは,
なぬかこえこむ[寛],
" "#[番号]11/2436","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]大船 香取海 慍下 何有人 物不念有","#[訓読]大船の香取の海にいかり下ろしいかなる人か物思はずあらむ","#[仮名],おほぶねの,かとりのうみに,いかりおろし,いかなるひとか,ものもはずあらむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,茨城,地名,枕詞,比喩,恋情","#[訓異]
おほぶねの,[寛]おほふねの,
かとりのうみに[寛],
いかりおろし[寛],
いかなるひとか[寛],
ものもはずあらむ,[寛]ものおもはさらむ,
" "#[番号]11/2437","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]奥藻 隠障浪 五百重浪 千重敷々 戀度鴨","#[訓読]沖つ裳を隠さふ波の五百重波千重しくしくに恋ひわたるかも","#[仮名],おきつもを,かくさふなみの,いほへなみ,ちへしくしくに,こひわたるかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,序詞,恋情","#[訓異]
おきつもを[寛],
かくさふなみの[寛],
いほへなみ[寛],
ちへしくしくに,[寛]ちへしきしきに,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]11/2438","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]人事 ま吾妹 縄手引 従海益 深念","#[訓読]人言はしましぞ我妹綱手引く海ゆまさりて深くしぞ思ふ","#[仮名],ひとごとは,しましぞわぎも,つなてひく,うみゆまさりて,ふかくしぞおもふ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,うわさ,恋情","#[訓異]
ひとごとは,[寛]ひとことは,
しましぞわぎも,[寛]しはらくわきも,
つなてひく[寛],
うみゆまさりて,[寛]うみよりまして,
ふかくしぞおもふ,[寛]ふかくしそおもふ,
" "#[番号]11/2439","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]淡海 奥嶋山 奥儲 吾念妹 事繁","#[訓読]近江の海沖つ島山奥まけて我が思ふ妹が言の繁けく","#[仮名],あふみのうみ,おきつしまやま,おくまけて,あがおもふいもが,ことのしげけく","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,琵琶湖,滋賀,序詞,恋情,うわさ","#[訓異]
あふみのうみ[寛],
おきつしまやま[寛],
おくまけて,[寛]おきまけて,
あがおもふいもが,[寛]わかおもふいもに,
ことのしげけく,[寛]ことのしけけむ,
" "#[番号]11/2440","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]近江海 奥滂船 重下 蔵公之 事待吾序","#[訓読]近江の海沖漕ぐ舟のいかり下ろし隠りて君が言待つ我れぞ","#[仮名],あふみのうみ,おきこぐふねの,いかりおろし,こもりてきみが,ことまつわれぞ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]重 [古] 重石","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,地名,琵琶湖,滋賀,恋情,序詞","#[訓異]
あふみのうみ[寛],
おきこぐふねの,[寛]おきこくふねに,
いかりおろし[寛],
こもりてきみが,[寛]かくれてきみか,
ことまつわれぞ,[寛]ことまつわれそ,
" "#[番号]11/2441","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]隠沼 従裏戀者 無乏 妹名告 忌物矣","#[訓読]隠り沼の下ゆ恋ふればすべをなみ妹が名告りつ忌むべきものを","#[仮名],こもりぬの,したゆこふれば,すべをなみ,いもがなのりつ,いむべきものを","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
こもりぬの,[寛]かくれぬの,
したゆこふれば,[寛]したにこふれは,
すべをなみ,[寛]すへをなみ,
いもがなのりつ,[寛]いもかなつけつ,
いむべきものを,[寛]ゆゆしきものを,
" "#[番号]11/2442","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]大土 採雖盡 世中 盡不得物 戀在","#[訓読]大地は取り尽すとも世の中の尽しえぬものは恋にしありけり","#[仮名],おほつちは,とりつくすとも,よのなかの,つくしえぬものは,こひにしありけり","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
おほつちは,[寛]おほつちも,
とりつくすとも,[寛]とれはつくれと,
よのなかの,[寛]よのなかに,
つくしえぬものは,[寛]つきせぬものは,
こひにしありけり,[寛]こひにさりけり,
" "#[番号]11/2443","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]隠處 澤泉在 石根 通念 吾戀者","#[訓読]隠りどの沢泉なる岩が根も通してぞ思ふ我が恋ふらくは","#[仮名],こもりどの,さはいづみにある,いはがねも,とほしてぞおもふ,あがこふらくは","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
こもりどの,[寛]こもりつの,
さはいづみにある,[寛]さはいつみなる,
いはがねも,[寛]いはねをも,
とほしてぞおもふ,[寛]とほしておもふ,
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
" "#[番号]11/2444","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]白檀 石邊山 常石有 命哉 戀乍居","#[訓読]白真弓石辺の山の常磐なる命なれやも恋ひつつ居らむ","#[仮名],しらまゆみ,いしへのやまの,ときはなる,いのちなれやも,こひつつをらむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,枕詞,序詞","#[訓異]
しらまゆみ[寛],
いしへのやまの,[寛]いそへのやまの,
ときはなる[寛],
いのちなれやも,[寛]いのちならはや,
こひつつをらむ[寛],
" "#[番号]11/2445","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]淡海々 沈白玉 不知 従戀者 今益","#[訓読]近江の海沈く白玉知らずして恋ひせしよりは今こそまされ","#[仮名],あふみのうみ,しづくしらたま,しらずして,こひせしよりは,いまこそまされ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,琵琶湖,滋賀,恋情,序詞","#[訓異]
あふみのうみ[寛],
しづくしらたま,[寛]しつくしらたま,
しらずして,[寛]しらすして,
こひせしよりは[寛],
いまこそまされ,[寛]いまそまされる,
" "#[番号]11/2446","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]白玉 纒持 従今 吾玉為 知時谷","#[訓読]白玉を巻きてぞ持てる今よりは我が玉にせむ知れる時だに","#[仮名],しらたまを,まきてぞもてる,いまよりは,わがたまにせむ,しれるときだに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,比喩,恋情","#[訓異]
しらたまを[寛],
まきてぞもてる,[寛]まきてもたれは,
いまよりは[寛],
わがたまにせむ,[寛]わかたまにせむ,
しれるときだに,[寛]しるときたにも,
" "#[番号]11/2447","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]白玉 従手纒 不<忘> 念 何畢","#[訓読]白玉を手に巻きしより忘れじと思ひけらくは何か終らむ","#[仮名],しらたまを,てにまきしより,わすれじと,おもひけらくは,なにかをはらむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]忌 -> 忘 [類][紀][細]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,比喩","#[訓異]
しらたまを[寛],
てにまきしより[寛],
わすれじと,[寛]わすれしと,
おもひけらくは,[寛]おもひしことは,
なにかをはらむ,[寛]いつかやむへき,
" "#[番号]11/2448","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]<白>玉 間開乍 貫緒 縛依 後相物","#[訓読]白玉の間開けつつ貫ける緒もくくり寄すれば後もあふものを","#[仮名],しらたまの,あひだあけつつ,ぬけるをも,くくりよすれば,のちもあふものを","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]烏 -> 白 [万葉考] [西(右書)] 焉 / 後 (塙) 復","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,比喩,恋情","#[訓異]
しらたまの,[寛]ぬはたまの,
あひだあけつつ,[寛]ひましふみつつ,
ぬけるをも,[寛]ひものをの,
くくりよすれば,[寛]むすひてしより,
のちもあふものを,[寛]のちあふものか,
" "#[番号]11/2449","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]香山尓 雲位桁曵 於保々思久 相見子等乎 後戀牟鴨","#[訓読]香具山に雲居たなびきおほほしく相見し子らを後恋ひむかも","#[仮名],かぐやまに,くもゐたなびき,おほほしく,あひみしこらを,のちこひむかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,飛鳥,地名,奈良,序詞,恋情","#[訓異]
かぐやまに,[寛]かくやまに,
くもゐたなびき,[寛]くもゐたなひき,
おほほしく[寛],
あひみしこらを[寛],
のちこひむかも[寛],
" "#[番号]11/2450","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]雲間従 狭や月乃 於保々思久 相見子等乎 見因鴨","#[訓読]雲間よりさ渡る月のおほほしく相見し子らを見むよしもがも","#[仮名],くもまより,さわたるつきの,おほほしく,あひみしこらを,みむよしもがも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,序詞,恋情","#[訓異]
くもまより[寛],
さわたるつきの[寛],
おほほしく[寛],
あひみしこらを[寛],
みむよしもがも,[寛]みるよしもかも,
" "#[番号]11/2451","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]天雲 依相遠 雖不相 異手枕 吾纒哉","#[訓読]天雲の寄り合ひ遠み逢はずとも異し手枕我れまかめやも","#[仮名],あまくもの,よりあひとほみ,あはずとも,あたしたまくら,われまかめやも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
あまくもの[寛],
よりあひとほみ[寛],
あはずとも,[寛]あはすとも,
あたしたまくら[寛],
われまかめやも,[寛]われはまかめや,
" "#[番号]11/2452","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]雲谷 灼發 意追 見乍<居> 及直相","#[訓読]雲だにもしるくし立たば慰めて見つつも居らむ直に逢ふまでに","#[仮名],くもだにも,しるくしたたば,なぐさめて,みつつもをらむ,ただにあふまでに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]為 -> 居 [万葉考]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
くもだにも,[寛]くもたにも,
しるくしたたば,[寛]しるくしたたは,
なぐさめて,[寛]なくさめに,
みつつもをらむ,[寛]みつつもれてむ,
ただにあふまでに,[寛]たたにあふまてに,
" "#[番号]11/2453","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]春楊 葛山 發雲 立座 妹念","#[訓読]春柳葛城山に立つ雲の立ちても居ても妹をしぞ思ふ","#[仮名],はるやなぎ,かづらきやまに,たつくもの,たちてもゐても,いもをしぞおもふ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞,奈良,地名,枕詞","#[訓異]
はるやなぎ,[寛]はるやなき,
かづらきやまに,[寛]かつらきやまに,
たつくもの[寛],
たちてもゐても[寛],
いもをしぞおもふ,[寛]いもをしそおもふ,
" "#[番号]11/2454","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]春日山 雲座隠 雖遠 家不念 公念","#[訓読]春日山雲居隠りて遠けども家は思はず君をしぞ思ふ","#[仮名],かすがやま,くもゐかくりて,とほけども,いへはおもはず,きみをしぞおもふ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,奈良,地名,恋情,羈旅,望郷","#[訓異]
かすがやま,[寛]かすかやま,
くもゐかくりて,[寛]くもゐかくれて,
とほけども,[寛]とほけれと,
いへはおもはず,[寛]いへはおもはす,
きみをしぞおもふ,[寛]きみをしそおもふ,
" "#[番号]11/2455","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]我故 所云妹 高山之 峯朝霧 過兼鴨","#[訓読]我がゆゑに言はれし妹は高山の嶺の朝霧過ぎにけむかも","#[仮名],わがゆゑに,いはれしいもは,たかやまの,みねのあさぎり,すぎにけむかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,うわさ","#[訓異]
わがゆゑに,[寛]わかゆゑに,
いはれしいもは[寛],
たかやまの[寛],
みねのあさぎり,[寛]みねのあさきり,
すぎにけむかも,[寛]すきにけむかも,
" "#[番号]11/2456","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]烏玉 黒髪山 山草 小雨零敷 益々所<思>","#[訓読]ぬばたまの黒髪山の山菅に小雨降りしきしくしく思ほゆ","#[仮名],ぬばたまの,くろかみやまの,やますげに,こさめふりしき,しくしくおもほゆ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]念 -> 思 [嘉][文][類][紀]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,奈良,地名,植物,枕詞,恋情,序詞","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
くろかみやまの[寛],
やますげに,[寛]やますけに,
こさめふりしき[寛],
しくしくおもほゆ,[寛]ますますそおもふ,
" "#[番号]11/2457","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]大野 小雨被敷 木本 時依来 我念人","#[訓読]大野らに小雨降りしく木の下に時と寄り来ね我が思ふ人","#[仮名],おほのらに,こさめふりしく,このもとに,ときとよりこね,わがおもふひと","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
おほのらに,[寛]おほのらの,
こさめふりしく[寛],
このもとに[寛],
ときとよりこね,[寛]ときとよりこよ,
わがおもふひと,[寛]わかおもふひと,
" "#[番号]11/2458","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]朝霜 消々 念乍 何此夜 明鴨","#[訓読]朝霜の消なば消ぬべく思ひつついかにこの夜を明かしてむかも","#[仮名],あさしもの,けなばけぬべく,おもひつつ,いかにこのよを,あかしてむかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,枕詞","#[訓異]
あさしもの[寛],
けなばけぬべく,[寛]けなはけなまく,
おもひつつ[寛],
いかにこのよを,[寛]いかてこのよを,
あかしてむかも,[寛]あかしなむかも,
" "#[番号]11/2459","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾背兒我 濱行風 弥急 急事 益不相有","#[訓読]我が背子が浜行く風のいや早に言を早みかいや逢はずあらむ","#[仮名],わがせこが,はまゆくかぜの,いやはやに,ことをはやみか,いやあはずあらむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞,うわさ","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
はまゆくかぜの,[寛]はまゆくかせの,
いやはやに[寛],
ことをはやみか,[寛]はやことまして,
いやあはずあらむ,[寛]あはすやあらむ,
" "#[番号]11/2460","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]遠妹 振仰見 偲 是月面 雲勿棚引","#[訓読]遠き妹が振り放け見つつ偲ふらむこの月の面に雲なたなびき","#[仮名],とほきいもが,ふりさけみつつ,しのふらむ,このつきのおもに,くもなたなびき","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,望郷","#[訓異]
とほきいもが,[寛]とほつまの,
ふりさけみつつ[寛],
しのふらむ[寛],
このつきのおもに[寛],
くもなたなびき,[寛]くもなたなひき,
" "#[番号]11/2461","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]山葉 追出月 端々 妹見鶴 及戀","#[訓読]山の端を追ふ三日月のはつはつに妹をぞ見つる恋ほしきまでに","#[仮名],やまのはを,おふみかつきの,はつはつに,いもをぞみつる,こほしきまでに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞","#[訓異]
やまのはを,[寛]やまのはに,
おふみかつきの,[寛]さしいつるつきの,
はつはつに[寛],
いもをぞみつる,[寛]いもをそみつる,
こほしきまでに,[寛]こひしきまてに,
" "#[番号]11/2462","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]我妹 吾矣念者 真鏡 照出月 影所見来","#[訓読]我妹子し我れを思はばまそ鏡照り出づる月の影に見え来ね","#[仮名],わぎもこし,われをおもはば,まそかがみ,てりいづるつきの,かげにみえこね","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
わぎもこし,[寛]わきもこか,
われをおもはば,[寛]われをおもはは,
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
てりいづるつきの,[寛]てりいつるつきの,
かげにみえこね,[寛]かけにみえこね,
" "#[番号]11/2463","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]久方 天光月 隠去 何名副 妹偲","#[訓読]久方の天照る月の隠りなば何になそへて妹を偲はむ","#[仮名],ひさかたの,あまてるつきの,かくりなば,なにになそへて,いもをしのはむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あまてるつきの[寛],
かくりなば,[寛]かくれなは,
なにになそへて,[寛]なにのそへて,
いもをしのはむ[寛],
" "#[番号]11/2464","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]若月 清不見 雲隠 見欲 宇多手比日","#[訓読]三日月のさやにも見えず雲隠り見まくぞ欲しきうたてこのころ","#[仮名],みかづきの,さやにもみえず,くもがくり,みまくぞほしき,うたてこのころ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,鬱屈,序詞","#[訓異]
みかづきの,[寛]みかつきの,
さやにもみえず,[寛]さやかにみえす,
くもがくり,[寛]くもかくれ,
みまくぞほしき,[寛]みまくそほしき,
うたてこのころ,[寛]うたたこのころ,
" "#[番号]11/2465","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]我背兒尓 吾戀居者 吾屋戸之 草佐倍思 浦乾来","#[訓読]我が背子に我が恋ひ居れば我が宿の草さへ思ひうらぶれにけり","#[仮名],わがせこに,あがこひをれば,わがやどの,くささへおもひ,うらぶれにけり","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,恋情,女歌,植物","#[訓異]
わがせこに,[寛]わかせこに,
あがこひをれば,[寛]わかこひをれは,
わがやどの,[寛]わかやとの,
くささへおもひ[寛],
うらぶれにけり,[寛]うらかれにけり,
" "#[番号]11/2466","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]朝茅原 小野印 <空>事 何在云 公待","#[訓読]浅茅原小野に標結ふ空言をいかなりと言ひて君をし待たむ","#[仮名],あさぢはら,をのにしめゆふ,むなことを,いかなりといひて,きみをしまたむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]室 -> 空 [嘉][文][類][紀]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,野遊び,女歌,恋情","#[訓異]
あさぢはら,[寛]あさちはら,
をのにしめゆふ[寛],
むなことを,[寛]そらことを,
いかなりといひて[寛],
きみをしまたむ,[寛]きみをはまたむ,
" "#[番号]11/2467","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]路邊 草深百合之 後云 妹命 我知","#[訓読]道の辺の草深百合の後もと言ふ妹が命を我れ知らめやも","#[仮名],みちのへの,くさふかゆりの,のちもといふ,いもがいのちを,われしらめやも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞,植物","#[訓異]
みちのへの[寛],
くさふかゆりの[寛],
のちもといふ,[寛]のちにてふ,
いもがいのちを,[寛]いもかみことを,
われしらめやも,[寛]われはしらめや,
" "#[番号]11/2468","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]<湖>葦 交在草 知草 人皆知 吾裏念","#[訓読]港葦に交じれる草のしり草の人皆知りぬ我が下思ひは","#[仮名],みなとあしに,まじれるくさの,しりくさの,ひとみなしりぬ,わがしたもひは","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]潮 -> 湖 [類][古]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,うわさ,序詞,恋情,植物","#[訓異]
みなとあしに[寛],
まじれるくさの,[寛]ましれるくさの,
しりくさの[寛],
ひとみなしりぬ[寛],
わがしたもひは,[寛]わかしたおもひ,
" "#[番号]11/2469","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]山<萵>苣 白露重 浦經 心深 吾戀不止","#[訓読]山ぢさの白露重みうらぶれて心も深く我が恋やまず","#[仮名],やまぢさの,しらつゆおもみ,うらぶれて,こころもふかく,あがこひやまず","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]萬 -> 萵 [嘉]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞,植物","#[訓異]
やまぢさの,[寛]やまちさの,
しらつゆおもみ,[寛]しらつゆをもみ,
うらぶれて,[寛]うらふれて,
こころもふかく,[寛]こころにふかく,
あがこひやまず,[寛]わかこひやます,
" "#[番号]11/2470","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]<湖> 核延子菅 不竊隠 公戀乍 有不勝鴨","#[訓読]港にさ根延ふ小菅ぬすまはず君に恋ひつつありかてぬかも","#[仮名],みなとに,さねばふこすげ,ぬすまはず,きみにこひつつ,ありかてぬかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]潮 -> 湖 [類][古]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情,序詞","#[訓異]
みなとに[寛],
さねばふこすげ,[寛]ねはふこすけの,
ぬすまはず,[寛]しのひすてて,
きみにこひつつ[寛],
ありかてぬかも[寛],
" "#[番号]11/2471","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]山代 泉小菅 凡浪 妹心 吾不念","#[訓読]山背の泉の小菅なみなみに妹が心を我が思はなくに","#[仮名],やましろの,いづみのこすげ,なみなみに,いもがこころを,わがおもはなくに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,序詞,恋情,地名,京都","#[訓異]
やましろの[寛],
いづみのこすげ,[寛]いつみのこすけ,
なみなみに,[寛]をしなみに,
いもがこころを,[寛]いもかこころを,
わがおもはなくに,[寛]われはおもはす,
" "#[番号]11/2472","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]見渡 三室山 石穂菅 惻隠吾 片念為 [一云 三諸山之 石小菅] ","#[訓読]見わたしの三室の山の巌菅ねもころ我れは片思ぞする [一云 みもろの山の岩小菅] ","#[仮名],みわたしの,みむろのやまの,いはほすげ,ねもころわれは,かたもひぞする,[みもろのやまの,いはこすげ]","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,奈良,三輪,地名,植物,序詞,恋情,片思い,異伝","#[訓異]
みわたしの,[寛]みわたせは,
みむろのやまの[寛],
いはほすげ,[寛]いはほすけ,
ねもころわれは,[寛]しのひてわれは,
かたもひぞする,[寛]かたおもひをする,
[みもろのやまの[寛],
いはこすげ],[寛]いはこすけ,
" "#[番号]11/2473","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]菅根 惻隠君 結為 我紐緒 解人不有","#[訓読]菅の根のねもころ君が結びてし我が紐の緒を解く人もなし","#[仮名],すがのねの,ねもころきみが,むすびてし,わがひものをを,とくひともなし","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情,失恋,枕詞","#[訓異]
すがのねの,[寛]すかのねの,
ねもころきみが,[寛]しのひにきみか,
むすびてし,[寛]むすひてし,
わがひものをを,[寛]わかひものをを
とくひともなし,[寛]とくひとあらめや,
" "#[番号]11/2474","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]山菅 乱戀耳 令為乍 不相妹鴨 年經乍","#[訓読]山菅の乱れ恋のみせしめつつ逢はぬ妹かも年は経につつ","#[仮名],やますげの,みだれこひのみ,せしめつつ,あはぬいもかも,としはへにつつ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,枕詞,恋情","#[訓異]
やますげの,[寛]やますけの,
みだれこひのみ,[寛]みたれこひのみ,
せしめつつ,[寛]せさせつつ,
あはぬいもかも[寛],
としはへにつつ[寛],
" "#[番号]11/2475","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]我屋戸 甍子太草 雖生 戀忘草 見未生","#[訓読]我が宿の軒にしだ草生ひたれど恋忘れ草見れどいまだ生ひず","#[仮名],わがやどは,のきにしだくさ,おひたれど,こひわすれくさ,みれどいまだおひず","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情","#[訓異]
わがやどは,[寛]わかやとの,
のきにしだくさ,[寛]のきのしたくさ,
おひたれど,[寛]おふれとも,
こひわすれくさ[寛],
みれどいまだおひず,[寛]みれとまたおひす,
" "#[番号]11/2476","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]打田 稗數多 雖有 擇為我 夜一人宿","#[訓読]打つ田には稗はしあまたありといへど選えし我れぞ夜をひとり寝る","#[仮名],うつたには,ひえはしあまた,ありといへど,えらえしわれぞ,よをひとりぬる","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情","#[訓異]
うつたには,[寛]うつたにも,
ひえはしあまた,[寛]ひえはかすあまた,
ありといへど,[寛]ありといへと,
えらえしわれぞ,[寛]えられしわれを,
よをひとりぬる,[寛]よるひとりぬる,
" "#[番号]11/2477","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]足引 名負山菅 押伏 君結 不相有哉","#[訓読]あしひきの名負ふ山菅押し伏せて君し結ばば逢はずあらめやも","#[仮名],あしひきの,なおふやますげ,おしふせて,きみしむすばば,あはずあらめやも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,植物,恋情","#[訓異]
あしひきの[寛],
なおふやますげ,[寛]なにおふやますけ,
おしふせて[寛],
きみしむすばば,[寛]きみしむすはは,
あはずあらめやも,[寛]あはすあらめや,
" "#[番号]11/2478","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]秋柏 潤和川邊 細竹目 人不顏面 <公无>勝","#[訓読]秋柏潤和川辺の小竹の芽の人には忍び君に堪へなくに","#[仮名],あきかしは,うるわかはへの,しののめの,ひとにはしのび,きみにあへなくに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]君無 -> 公无 [嘉][類]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,植物,枕詞,序詞,恋情","#[訓異]
あきかしは[寛],
うるわかはへの,[寛]ぬるやかはへの,
しののめの,[寛]しののめに,
ひとにはしのび,[寛]ひともあひみし,
きみにあへなくに,[寛]きみにまさらし,
" "#[番号]11/2479","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]核葛 後相 夢耳 受日度 年經乍","#[訓読]さね葛後も逢はむと夢のみにうけひわたりて年は経につつ","#[仮名],さねかづら,のちもあはむと,いめのみに,うけひわたりて,としはへにつつ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,枕詞,恋情","#[訓異]
さねかづら,[寛]さねかつら,
のちもあはむと[寛],
いめのみに,[寛]ゆめにのみ,
うけひわたりて,[寛]うけひそわたる,
としはへにつつ[寛],
" "#[番号]11/2480","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]路邊 壹師花 灼然 人皆知 我戀つ [或本歌<曰> 灼然 人知尓家里 継而之念者] ","#[訓読]道の辺のいちしの花のいちしろく人皆知りぬ我が恋妻は [或本歌曰 いちしろく人知りにけり継ぎてし思へば] ","#[仮名],みちのへの,いちしのはなの,いちしろく,ひとみなしりぬ,あがこひづまは,[いちしろく,ひとしりにけり,つぎてしおもへば]","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 / 云 -> 曰 [嘉][類]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,序詞,うわさ,露見,異伝","#[訓異]
みちのへの[寛],
いちしのはなの[寛],
いちしろく[寛],
ひとみなしりぬ[寛],
あがこひづまは,[寛]わかこひつまは,
[いちしろく[寛],
ひとしりにけり[寛],
つぎてしおもへば],[寛]つきてしおもへは,
" "#[番号]11/2481","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]大野 跡状不知 印結 有不得 吾眷","#[訓読]大野らにたどきも知らず標結ひてありかつましじ我が恋ふらくは","#[仮名],おほのらに,たづきもしらず,しめゆひて,ありかつましじ,あがこふらくは","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞,比喩","#[訓異]
おほのらに,[寛]おほのらの,
たづきもしらず,[寛]あとかたしらす,
しめゆひて[寛],
ありかつましじ,[寛]ありともえめや,
あがこふらくは,[寛]わかかへりみむ,
" "#[番号]11/2482","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]水底 生玉藻 打靡 心依 戀比日","#[訓読]水底に生ふる玉藻のうち靡き心は寄りて恋ふるこのころ","#[仮名],みなそこに,おふるたまもの,うちなびき,こころはよりて,こふるこのころ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,序詞,植物,恋情","#[訓異]
みなそこに[寛],
おふるたまもの[寛],
うちなびき,[寛]うちなひき,
こころはよりて,[寛]こころはよせて,
こふるこのころ[寛],
" "#[番号]11/2483","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]敷栲之 衣手離而 玉藻成 靡可宿濫 和乎待難尓","#[訓読]敷栲の衣手離れて玉藻なす靡きか寝らむ我を待ちかてに","#[仮名],しきたへの,ころもでかれて,たまもなす,なびきかぬらむ,わをまちかてに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,枕詞,髪","#[訓異]
しきたへの[寛],
ころもでかれて,[寛]ころもてかれて,
たまもなす,[寛]たまもなる,
なびきかぬらむ,[寛]なひきかぬらむ,
わをまちかてに[寛],
" "#[番号]11/2484","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]君不来者 形見為等 我二人 殖松木 君乎待出牟","#[訓読]君来ずは形見にせむと我がふたり植ゑし松の木君を待ち出でむ","#[仮名],きみこずは,かたみにせむと,わがふたり,うゑしまつのき,きみをまちいでむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,植物,勧誘,恋情","#[訓異]
きみこずは,[寛]きみこすは,
かたみにせむと[寛],
わがふたり,[寛]われふたり,
うゑしまつのき[寛],
きみをまちいでむ,[寛]きみをまちいてむ,
" "#[番号]11/2485","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]袖振 可見限 吾雖有 其松枝 隠在","#[訓読]袖振らば見ゆべき限り我れはあれどその松が枝に隠らひにけり","#[仮名],そでふらば,みゆべきかぎり,われはあれど,そのまつがえに,かくらひにけり","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,女歌,後朝,別れ,植物","#[訓異]
そでふらば,[寛]そてふるを,
みゆべきかぎり,[寛]みるへきかきり,
われはあれど,[寛]われはあれと,
そのまつがえに,[寛]そのまつかえに,
かくらひにけり,[寛]かくれたりけり,
" "#[番号]11/2486","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]珍海 濱邊小松 根深 吾戀度 人子め","#[訓読]茅渟の海の浜辺の小松根深めて我れ恋ひわたる人の子ゆゑに","#[仮名],ちぬのうみの,はまへのこまつ,ねふかめて,あれこひわたる,ひとのこゆゑに","#[左注]或本歌<曰> 血沼之海之 塩干能小松 根母己呂尓 戀屋度 人兒故尓 /(以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]歌 [西] 謌 / 云 -> 曰 [嘉][類][紀]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,大阪,植物,恋情,序詞,掛詞,地名","#[訓異]
ちぬのうみの[寛],
はまへのこまつ[寛],
ねふかめて[寛],
あれこひわたる,[寛]わかこひわたる,
ひとのこゆゑに[寛],
" "#[番号]11/2486S","#[題詞](寄物陳思)或本歌<曰>","#[原文]血沼之海之 塩干能小松 根母己呂尓 戀屋度 人兒故尓","#[訓読]茅渟の海の潮干の小松ねもころに恋ひやわたらむ人の子ゆゑに","#[仮名]ちぬのうみの,しほひのこまつ,ねもころに,こひやわたらむ,ひとのこゆゑに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,大阪,地名,植物,序詞,恋情","#[訓異]
ちぬのうみの[寛],
しほひのこまつ[寛],
ねもころに[寛],
こひやわたらむ[寛],
ひとのこゆゑに[寛],
" "#[番号]11/2487","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]平山 子松末 有廉叙波 我思妹 不相止<者>","#[訓読]奈良山の小松が末のうれむぞは我が思ふ妹に逢はずやみなむ","#[仮名],ならやまの,こまつがうれの,うれむぞは,あがおもふいもに,あはずやみなむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]看 -> 者 [嘉][文][類][紀] (塙) 去","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,奈良,地名,序詞,恋情,植物","#[訓異]
ならやまの[寛],
こまつがうれの,[寛]こまつかうれに,
うれむぞは,[寛]あれこそは,
あがおもふいもに,[寛]わかおもふいもに,
あはずやみなむ,[寛]あはすやみなめ,
" "#[番号]11/2488","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]礒上 立廻香<樹> 心哀 何深目 念始","#[訓読]礒の上に立てるむろの木ねもころに何しか深め思ひそめけむ","#[仮名],いそのうへに,たてるむろのき,ねもころに,なにしかふかめ,おもひそめけむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]瀧 -> 樹 [万葉考]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,序詞,恋情","#[訓異]
いそのうへに[寛],
たてるむろのき,[寛]たちまふたきの,
ねもころに,[寛]こころいたく,
なにしかふかめ,[寛]なにのふかめて,
おもひそめけむ[寛],
" "#[番号]11/2489","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]橘 本我立 下枝取 成哉君 問子等","#[訓読]橘の本に我を立て下枝取りならむや君と問ひし子らはも","#[仮名],たちばなの,もとにわをたて,しづえとり,ならむやきみと,とひしこらはも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
もとにわをたて,[寛]もとにわれたち,
しづえとり,[寛]しつえとり,
ならむやきみと,[寛]なりぬやきみと,
とひしこらはも[寛],
" "#[番号]11/2490","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]天雲尓 翼打附而 飛鶴乃 多頭々々思鴨 君不座者","#[訓読]天雲に翼打ちつけて飛ぶ鶴のたづたづしかも君しまさねば","#[仮名],あまくもに,はねうちつけて,とぶたづの,たづたづしかも,きみしまさねば","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,動物,序詞,恋情","#[訓異]
あまくもに[寛],
はねうちつけて[寛],
とぶたづの,[寛]とふたつの,
たづたづしかも,[寛]たつたつしかも,
きみしまさねば,[寛]きみしまさねは,
" "#[番号]11/2491","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]妹戀 不寐朝明 男為鳥 従是此度 妹使","#[訓読]妹に恋ひ寐ねぬ朝明にをし鳥のこゆかく渡る妹が使か","#[仮名],いもにこひ,いねぬあさけに,をしどりの,こゆかくわたる,いもがつかひか","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,動物,恋情","#[訓異]
いもにこひ,[寛]いもこふと,
いねぬあさけに[寛],
をしどりの,[寛]をしとりの,
こゆかくわたる,[寛]ここにわたる,
いもがつかひか,[寛]いもかつかひか,
" "#[番号]11/2492","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]念 餘者 丹穂鳥 足<沾>来 人見鴨","#[訓読]思ひにしあまりにしかばにほ鳥のなづさひ来しを人見けむかも","#[仮名],おもひにし,あまりにしかば,にほどりの,なづさひこしを,ひとみけむかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]沽 -> 沾 [文][細][温]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,動物,うわさ,他人,恋情,難渋,枕詞","#[訓異]
おもひにし,[寛]おもふにし,
あまりにしかば,[寛]あまりにしかは,
にほどりの,[寛]にほとりの,
なづさひこしを,[寛]あしぬれたるを,
ひとみけむかも[寛],
" "#[番号]11/2493","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]高山 峯行完 <友>衆 袖不振来 忘念勿","#[訓読]高山の嶺行くししの友を多み袖振らず来ぬ忘ると思ふな","#[仮名],たかやまの,みねゆくししの,ともをおほみ,そでふらずきぬ,わするとおもふな","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]支 -> 友 [嘉][文][紀]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,動物,序詞,別離,送別","#[訓異]
たかやまの[寛],
みねゆくししの[寛],
ともをおほみ,[寛]ともおほみ,
そでふらずきぬ,[寛]そてふりこぬを,
わするとおもふな[寛],
" "#[番号]11/2494","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]大船 真楫繁拔 榜間 極太戀 年在如何","#[訓読]大船に真楫しじ貫き漕ぐほともここだ恋ふるを年にあらばいかに","#[仮名],おほぶねに,まかぢしじぬき,こぐほとも,ここだこふるを,としにあらばいかに","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,船旅,羈旅","#[訓異]
おほぶねに,[寛]おほふねに,
まかぢしじぬき,[寛]まかちししぬき,
こぐほとも,[寛]こくほとを,
ここだこふるを,[寛]いたくなこひそ,
としにあらばいかに,[寛]としにあるいかに,
" "#[番号]11/2495","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]足常 母養子 眉隠 隠在妹 見依鴨","#[訓読]たらつねの母が養ふ蚕の繭隠り隠れる妹を見むよしもがも","#[仮名],たらつねの,ははがかふこの,まよごもり,こもれるいもを,みむよしもがも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情,序詞","#[訓異]
たらつねの,[寛]たらちねの,
ははがかふこの,[寛]ははのかふこの,
まよごもり,[寛]まゆこもり,
こもれるいもを[寛],
みむよしもがも,[寛]みるよしもかも,
" "#[番号]11/2496","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]肥人 額髪結在 染木綿 染心 我忘哉 [一云 所忘目八方] ","#[訓読]肥人の額髪結へる染木綿の染みにし心我れ忘れめや [一云 忘らえめやも] ","#[仮名],こまひとの,ぬかがみゆへる,しめゆふの,しみにしこころ,われわすれめや,[わすらえめやも]","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,肥前,熊本,地名,序詞,植物,恋情,思い出,餞別,異伝","#[訓異]
こまひとの[寛],
ぬかがみゆへる,[寛]ひたひかみゆへる,
しめゆふの,[寛]そめこのふ,
しみにしこころ,[寛]そめしこころを,
われわすれめや[寛],
[わすらえめやも],[寛]わすらしめやも,
" "#[番号]11/2497","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]早人 名負夜音 灼然 吾名謂 つ恃","#[訓読]隼人の名に負ふ夜声のいちしろく我が名は告りつ妻と頼ませ","#[仮名],はやひとの,なにおふよごゑの,いちしろく,わがなはのりつ,つまとたのませ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,序詞,薩摩,地名,露見,恋情,女歌,名告り","#[訓異]
はやひとの[寛],
なにおふよごゑの,[寛]なにおふよこゑ,
いちしろく[寛],
わがなはのりつ,[寛]わかなをいはし,
つまとたのませ,[寛]つまとたのまむ,
" "#[番号]11/2498","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]剱刀 諸刃利 足踏 死々 公依","#[訓読]剣大刀諸刃の利きに足踏みて死なば死なむよ君によりては","#[仮名],つるぎたち,もろはのときに,あしふみて,しなばしなむよ,きみによりては","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情","#[訓異]
つるぎたち,[寛]つるきたち,
もろはのときに[寛],
あしふみて,[寛]あしをふみ,
しなばしなむよ,[寛]しににもしなむ,
きみによりては,[寛]きみによりなは,
" "#[番号]11/2499","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]我妹 戀度 劔刀 名惜 念不得","#[訓読]我妹子に恋ひしわたれば剣大刀名の惜しけくも思ひかねつも","#[仮名],わぎもこに,こひしわたれば,つるぎたち,なのをしけくも,おもひかねつも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,うわさ,名前,恋情","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こひしわたれば,[寛]こひしわたれは,
つるぎたち,[寛]つるきたち,
なのをしけくも[寛],
おもひかねつも,[寛]おもほえぬかも,
" "#[番号]11/2500","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]朝月 日向黄楊櫛 雖舊 何然公 見不飽","#[訓読]朝月の日向黄楊櫛古りぬれど何しか君が見れど飽かざらむ","#[仮名],あさづきの,ひむかつげくし,ふりぬれど,なにしかきみが,みれどあかざらむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,序詞,宮崎,時間","#[訓異]
あさづきの,[寛]あさつくひ,
ひむかつげくし,[寛]むかふつけくし,
ふりぬれど,[寛]ふりぬれと,
なにしかきみが,[寛]なにしかきみか,
みれどあかざらむ,[寛]みれとあかれぬ,
" "#[番号]11/2501","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]里遠 眷浦經 真鏡 床重不去 夢所見与","#[訓読]里遠み恋ひうらぶれぬまそ鏡床の辺去らず夢に見えこそ","#[仮名],さとどほみ,こひうらぶれぬ,まそかがみ,とこのへさらず,いめにみえこそ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情","#[訓異]
さとどほみ,[寛]さととほみ,
こひうらぶれぬ,[寛]うらふれにけり,
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
とこのへさらず,[寛]ゆかのへさらす,
いめにみえこそ,[寛]ゆめにはみえよ,
" "#[番号]11/2502","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]真鏡 手取以 朝々 雖見君 飽事無","#[訓読]まそ鏡手に取り持ちて朝な朝な見れども君は飽くこともなし","#[仮名],まそかがみ,てにとりもちて,あさなさな,みれどもきみは,あくこともなし","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
てにとりもちて[寛],
あさなさな[寛],
みれどもきみは,[寛]みれともきみを,
あくこともなし[寛],
" "#[番号]11/2503","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]夕去 床重不去 黄楊枕 <何>然汝 主待固","#[訓読]夕されば床の辺去らぬ黄楊枕何しか汝れが主待ちかたき","#[仮名],ゆふされば,とこのへさらぬ,つげまくら,なにしかなれが,ぬしまちかたき","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]射 -> 何 [万葉考]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,女歌,空虚,","#[訓異]
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
とこのへさらぬ,[寛]ゆかのへさらぬ,
つげまくら,[寛]つけまくら,
なにしかなれが,[寛]いつしかなれか,
ぬしまちかたき,[寛]ぬしまちかたし,
" "#[番号]11/2504","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]解衣 戀乱乍 浮沙 生吾 <有>度鴨","#[訓読]解き衣の恋ひ乱れつつ浮き真砂生きても我れはありわたるかも","#[仮名],とききぬの,こひみだれつつ,うきまなご,いきてもわれは,ありわたるかも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]戀 -> 有 [嘉]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情","#[訓異]
とききぬの[寛],
こひみだれつつ,[寛]こひみたれつつ,
うきまなご,[寛]うきてのみ,
いきてもわれは,[寛]まなこなすわか,
ありわたるかも,[寛]こひわたるかも,
" "#[番号]11/2505","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]梓弓 引不許 有者 此有戀 不相","#[訓読]梓弓引きてゆるさずあらませばかかる恋にはあはざらましを","#[仮名],あづさゆみ,ひきてゆるさず,あらませば,かかるこひには,あはざらましを","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情,嘆き,女歌","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
ひきてゆるさず,[寛]ひきてゆるさす,
あらませば,[寛]あらませは,
かかるこひには[寛],
あはざらましを,[寛]あはさらましを,
" "#[番号]11/2506","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]事霊 八十衢 夕占問 占正謂 妹相依","#[訓読]言霊の八十の街に夕占問ふ占まさに告る妹は相寄らむ","#[仮名],ことだまの,やそのちまたに,ゆふけとふ,うらまさにのる,いもはあひよらむ","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,占い,恋情","#[訓異]
ことだまの,[寛]ことたまの,
やそのちまたに[寛],
ゆふけとふ[寛],
うらまさにのる,[寛]うらまさにいへ,
いもはあひよらむ,[寛]いもにあひよらむ,
" "#[番号]11/2507","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]玉桙 路徃占 占相 妹逢 我謂","#[訓読]玉桙の道行き占に占なへば妹に逢はむと我れに告りつも","#[仮名],たまほこの,みちゆきうらに,うらなへば,いもにあはむと,われにのりつも","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,占い,恋情","#[訓異]
たまほこの[寛],
みちゆきうらに[寛],
うらなへば,[寛]うらなへは,
いもにあはむと[寛],
われにのりつも,[寛]われにいひつる,
" "#[番号]11/2508","#[題詞]問答","#[原文]皇祖乃 神御門乎 懼見等 侍従時尓 相流公鴨","#[訓読]すめろぎの神の御門を畏みとさもらふ時に逢へる君かも","#[仮名],すめろぎの,かみのみかどを,かしこみと,さもらふときに,あへるきみかも","#[左注](右二首 / 以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,序詞","#[訓異]
すめろぎの,[寛]すめろきの,
かみのみかどを,[寛]かみのみかとを,
かしこみと[寛],
さもらふときに,[寛]さふらふときに,
あへるきみかも[寛],
" "#[番号]11/2509","#[題詞](問答)","#[原文]真祖鏡 雖見言哉 玉限 石垣淵乃 隠而在つ","#[訓読]まそ鏡見とも言はめや玉かぎる岩垣淵の隠りたる妻","#[仮名],まそかがみ,みともいはめや,たまかぎる,いはがきふちの,こもりたるつま","#[左注]右二首( / 以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,枕詞,恋情","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
みともいはめや[寛],
たまかぎる,[寛]たまきはる,
いはがきふちの,[寛]いはかきふちの,
こもりたるつま,[寛]かくれたるつま,
" "#[番号]11/2510","#[題詞](問答)","#[原文]赤駒之 足我枳速者 雲居尓毛 隠徃序 袖巻吾妹","#[訓読]赤駒が足掻速けば雲居にも隠り行かむぞ袖まけ我妹","#[仮名],あかごまが,あがきはやけば,くもゐにも,かくりゆかむぞ,そでまけわぎも","#[左注](右三首 / 以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,通い","#[訓異]
あかごまが,[寛]あかこまの,
あがきはやけば,[寛]あかきはやくは,
くもゐにも[寛],
かくりゆかむぞ,[寛]かくれゆかむそ,
そでまけわぎも,[寛]そてまくわきも,
" "#[番号]11/2511","#[題詞](問答)","#[原文]隠口乃 豊泊瀬道者 常<滑>乃 恐道曽 戀由眼","#[訓読]こもりくの豊泊瀬道は常滑のかしこき道ぞ恋ふらくはゆめ","#[仮名],こもりくの,とよはつせぢは,とこなめの,かしこきみちぞ,こふらくはゆめ","#[左注](右三首 / 以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]消 -> 滑 [西(訂正)][嘉][文][紀]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,枕詞,女歌,奈良,地名","#[訓異]
こもりくの[寛],
とよはつせぢは,[寛]とよはつせちは,
とこなめの[寛],
かしこきみちぞ,[寛]かしこきみちそ,
こふらくはゆめ[寛],
" "#[番号]11/2512","#[題詞](問答)","#[原文]味酒之 三毛侶乃山尓 立月之 見我欲君我 馬之<音>曽為","#[訓読]味酒のみもろの山に立つ月の見が欲し君が馬の音ぞする","#[仮名],うまさけの,みもろのやまに,たつつきの,みがほしきみが,うまのおとぞする","#[左注]右三首( / 以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]足音 -> 音 [嘉]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,女歌,枕詞,三輪山,奈良,地名","#[訓異]
うまさけの,[寛]うまさかの,
みもろのやまに[寛],
たつつきの[寛],
みがほしきみが,[寛]みかほきわかうまの,
うまのおとぞする,[寛]あのおとそする,
" "#[番号]11/2513","#[題詞](問答)","#[原文]雷神 小動 刺雲 雨零耶 君将留","#[訓読]鳴る神の少し響みてさし曇り雨も降らぬか君を留めむ","#[仮名],なるかみの,すこしとよみて,さしくもり,あめもふらぬか,きみをとどめむ","#[左注](右二首 / 以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,女歌,後朝","#[訓異]
なるかみの[寛],
すこしとよみて,[寛]しはしとよみて,
さしくもり[寛],
あめもふらぬか,[寛]あめのふらはや,
きみをとどめむ,[寛]きみやとまらむ,
" "#[番号]11/2514","#[題詞](問答)","#[原文]雷神 小動 雖不零 吾将留 妹留者","#[訓読]鳴る神の少し響みて降らずとも我は留まらむ妹し留めば","#[仮名],なるかみの,すこしとよみて,ふらずとも,わはとどまらむ,いもしとどめば","#[左注]右二首( / 以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,後朝","#[訓異]
なるかみの[寛],
すこしとよみて,[寛]しはしとよみて,
ふらずとも,[寛]ふらすとも,
わはとどまらむ,[寛]われはとまらむ,
いもしとどめば,[寛]いもしととめは,
" "#[番号]11/2515","#[題詞](問答)","#[原文]布細布 枕動 夜不寐 思人 後相物","#[訓読]敷栲の枕響みて夜も寝ず思ふ人には後も逢ふものを","#[仮名],しきたへの,まくらとよみて,よるもねず,おもふひとには,のちもあふものを","#[左注](以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情","#[訓異]
しきたへの[寛],
まくらとよみて,[寛]まくらうこきて,
よるもねず,[寛]よるもねす,
おもふひとには[寛],
のちもあふものを,[寛]のちもあはむも,
" "#[番号]11/2516","#[題詞](問答)","#[原文]敷細布 枕人 事問哉 其枕 苔生負為","#[訓読]敷栲の枕は人に言とへやその枕には苔生しにたり","#[仮名],しきたへの,まくらはひとに,こととへや,そのまくらには,こけむしにたり","#[左注]右二首 / 以前一百四十九首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,答歌","#[訓異]
しきたへの[寛],
まくらはひとに,[寛]まくらせしひと,
こととへや[寛],
そのまくらには[寛],
こけむしにたり[寛],
" "#[番号]11/2517","#[題詞]正述心緒","#[原文]足千根乃 母尓障良婆 無用 伊麻思毛吾毛 事應成","#[訓読]たらちねの母に障らばいたづらに汝も我れも事なるべしや","#[仮名],たらちねの,ははにさはらば,いたづらに,いましもあれも,ことなるべしや","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,障害,母親","#[訓異]
たらちねの[寛],
ははにさはらば,[寛]ははにさはらは,
いたづらに,[寛]いたつらに,
いましもあれも,[寛]いましもわれも,
ことなるべしや,[寛]ことやなるへき,
" "#[番号]11/2518","#[題詞](正述心緒)","#[原文]吾妹子之 吾呼送跡 白細布乃 袂漬左右二 哭四所念","#[訓読]我妹子が我れを送ると白栲の袖漬つまでに泣きし思ほゆ","#[仮名],わぎもこが,われをおくると,しろたへの,そでひつまでに,なきしおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,送別,後朝,恋情","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
われをおくると[寛],
しろたへの[寛],
そでひつまでに,[寛]そてひつまてに,
なきしおもほゆ[寛],
" "#[番号]11/2519","#[題詞](正述心緒)","#[原文]奥山之 真木乃板戸乎 押開 思恵也出来根 後者何将為","#[訓読]奥山の真木の板戸を押し開きしゑや出で来ね後は何せむ","#[仮名],おくやまの,まきのいたとを,おしひらき,しゑやいでこね,のちはなにせむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
おくやまの[寛],
まきのいたとを[寛],
おしひらき[寛],
しゑやいでこね,[寛]しゑやいてこね,
のちはなにせむ,[寛]のちはいかかせむ,
" "#[番号]11/2520","#[題詞](正述心緒)","#[原文]苅薦能 一重S敷而 紗眠友 君共宿者 冷雲梨","#[訓読]刈り薦の一重を敷きてさ寝れども君とし寝れば寒けくもなし","#[仮名],かりこもの,ひとへをしきて,さぬれども,きみとしぬれば,さむけくもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,共寝","#[訓異]
かりこもの[寛],
ひとへをしきて[寛],
さぬれども,[寛]さぬれとも,
きみとしぬれば,[寛]きみとしぬれは,
さむけくもなし,[寛]ひやけくもなし,
" "#[番号]11/2521","#[題詞](正述心緒)","#[原文]垣幡 丹<頬>經君S 率尓 思出乍 嘆鶴鴨","#[訓読]かきつはた丹つらふ君をいささめに思ひ出でつつ嘆きつるかも","#[仮名],かきつはた,につらふきみを,いささめに,おもひいでつつ,なげきつるかも","#[左注]","#[校異]刺 -> 頬 [類][紀][細][温]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
かきつはた[寛],
につらふきみを,[寛]にほへるきみを,
いささめに,[寛]いさなみに,
おもひいでつつ,[寛]おもひいてつつ,
なげきつるかも,[寛]なけきつるかも,
" "#[番号]11/2522","#[題詞](正述心緒)","#[原文]恨登 思狭名<盤> 在之者 外耳見之 心者雖念","#[訓読]恨めしと思ふさなはにありしかば外のみぞ見し心は思へど","#[仮名],うらめしと,おもふさなはに,ありしかば,よそのみぞみし,こころはおもへど","#[左注]","#[校異]磐 -> 盤 [嘉][文][紀]","#[事項],恨み,恋歌","#[訓異]
うらめしと,[寛]うらみむと,
おもふさなはに,[寛]おもふかせなは,
ありしかば,[寛]ありしには,
よそのみぞみし,[寛]よそにのみみし,
こころはおもへど,[寛]こころはおもへと,
" "#[番号]11/2523","#[題詞](正述心緒)","#[原文]散<頬>相 色者不出 小文 心中 吾念名君","#[訓読]さ丹つらふ色には出でず少なくも心のうちに我が思はなくに","#[仮名],さにつらふ,いろにはいでず,すくなくも,こころのうちに,わがおもはなくに","#[左注]","#[校異]刺 -> 頬 [嘉][文][紀]","#[事項],枕詞,恨み,恋歌","#[訓異]
さにつらふ[寛],
いろにはいでず,[寛]いろにはいてす,
すくなくも[寛],
こころのうちに[寛],
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]11/2524","#[題詞](正述心緒)","#[原文]吾背子尓 直相者社 名者立米 事之通尓 何其故","#[訓読]我が背子に直に逢はばこそ名は立ため言の通ひに何かそこゆゑ","#[仮名],わがせこに,ただにあはばこそ,なはたため,ことのかよひに,なにかそこゆゑ","#[左注]","#[校異]","#[事項],うわさ,女歌","#[訓異]
わがせこに,[寛]わかせこに,
ただにあはばこそ,[寛]たたにあははこそ,
なはたため[寛],
ことのかよひに[寛],
なにかそこゆゑ,[寛]なにそそのゆへ,
" "#[番号]11/2525","#[題詞](正述心緒)","#[原文]懃 片<念>為歟 比者之 吾情利乃 生戸裳名寸","#[訓読]ねもころに片思ひすれかこのころの我が心どの生けるともなき","#[仮名],ねもころに,かたもひすれか,このころの,あがこころどの,いけるともなき","#[左注]","#[校異]思 -> 念 [嘉][細][京]","#[事項],片思い,恋歌","#[訓異]
ねもころに,[寛]ねむころに,
かたもひすれか,[寛]かたきもひするか,
このころの[寛],
あがこころどの,[寛]わかこころとの,
いけるともなき,[寛]いけりともなき,
" "#[番号]11/2526","#[題詞](正述心緒)","#[原文]将待尓 到者妹之 懽跡 咲儀乎 徃而早見","#[訓読]待つらむに至らば妹が嬉しみと笑まむ姿を行きて早見む","#[仮名],まつらむに,いたらばいもが,うれしみと,ゑまむすがたを,ゆきてはやみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋歌","#[訓異]
まつらむに[寛],
いたらばいもが,[寛]いたらはいもか,
うれしみと[寛],
ゑまむすがたを,[寛]えまむすかたを,
ゆきてはやみむ[寛],
" "#[番号]11/2527","#[題詞](正述心緒)","#[原文]誰此乃 吾屋戸来喚 足千根乃 母尓所嘖 物思吾呼","#[訓読]誰れぞこの我が宿来呼ぶたらちねの母に嘖はえ物思ふ我れを","#[仮名],たれぞこの,わがやどきよぶ,たらちねの,ははにころはえ,ものもふわれを","#[左注]","#[校異]","#[事項],障害,恋歌,母親,枕詞","#[訓異]
たれぞこの,[寛]たれそこの,
わがやどきよぶ,[寛]わかやときよふ,
たらちねの[寛],
ははにころはえ,[寛]ははにいはされ,
ものもふわれを,[寛]ものおもふわれを,
" "#[番号]11/2528","#[題詞](正述心緒)","#[原文]左不宿夜者 千夜毛有十万 我背子之 思可悔 心者不持","#[訓読]さ寝ぬ夜は千夜もありとも我が背子が思ひ悔ゆべき心は持たじ","#[仮名],さねぬよは,ちよもありとも,わがせこが,おもひくゆべき,こころはもたじ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋歌","#[訓異]
さねぬよは[寛],
ちよもありとも[寛],
わがせこが,[寛]わかせこか,
おもひくゆべき,[寛]おもひくゆへき,
こころはもたじ,[寛]こころはもたし,
" "#[番号]11/2529","#[題詞](正述心緒)","#[原文]家人者 路毛四美三荷 雖<徃>来 吾待妹之 使不来鴨","#[訓読]家人は道もしみみに通へども我が待つ妹が使来ぬかも","#[仮名],いへびとは,みちもしみみに,かよへども,わがまついもが,つかひこぬかも","#[左注]","#[校異]<> -> 徃 [嘉][紀]","#[事項],嘆き,恋歌,使者","#[訓異]
いへびとは,[寛]いへひとは,
みちもしみみに[寛],
かよへども,[寛]かよへとも,
わがまついもが,[寛]わかまついもか,
つかひこぬかも[寛],
" "#[番号]11/2530","#[題詞](正述心緒)","#[原文]璞之 寸戸我竹垣 編目従毛 妹志所見者 吾戀目八方","#[訓読]あらたまの寸戸が竹垣網目ゆも妹し見えなば我れ恋ひめやも","#[仮名],あらたまの,きへがたけがき,あみめゆも,いもしみえなば,あれこひめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
あらたまの[寛],
きへがたけがき,[寛]すこかたけかき,
あみめゆも,[寛]あみめにも,
いもしみえなば,[寛]いもしみえなは,
あれこひめやも,[寛]われこひめやも,
" "#[番号]11/2531","#[題詞](正述心緒)","#[原文]吾背子我 其名不謂跡 玉切 命者棄 忘賜名","#[訓読]我が背子がその名告らじとたまきはる命は捨てつ忘れたまふな","#[仮名],わがせこが,そのなのらじと,たまきはる,いのちはすてつ,わすれたまふな","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,うわさ,名前,恋情","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
そのなのらじと,[寛]そのないはしと,
たまきはる[寛],
いのちはすてつ[寛],
わすれたまふな[寛],
" "#[番号]11/2532","#[題詞](正述心緒)","#[原文]凡者 誰将見鴨 黒玉乃 我玄髪乎 靡而将居","#[訓読]おほならば誰が見むとかもぬばたまの我が黒髪を靡けて居らむ","#[仮名],おほならば,たがみむとかも,ぬばたまの,わがくろかみを,なびけてをらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋歌,女歌","#[訓異]
おほならば,[寛]おほよそは,
たがみむとかも,[寛]たれみむとかも,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
わがくろかみを,[寛]わかくろかみを,
なびけてをらむ,[寛]なひきてをらむ,
" "#[番号]11/2533","#[題詞](正述心緒)","#[原文]面忘 何有人之 為物焉 言者為<金>津 継手志<念>者","#[訓読]面忘れいかなる人のするものぞ我れはしかねつ継ぎてし思へば","#[仮名],おもわすれ,いかなるひとの,するものぞ,われはしかねつ,つぎてしおもへば","#[左注]","#[校異]念 -> 金 [嘉][文][紀] / 金 -> 念 [西(訂正右書)][嘉][文][紀]","#[事項],女歌,疎遠,恋情","#[訓異]
おもわすれ[寛],
いかなるひとの[寛],
するものぞ,[寛]するものそ,
われはしかねつ[寛],
つぎてしおもへば,[寛]つきてしおもへは,
" "#[番号]11/2534","#[題詞](正述心緒)","#[原文]不相思 人之故可 璞之 年緒長 言戀将居","#[訓読]相思はぬ人のゆゑにかあらたまの年の緒長く我が恋ひ居らむ","#[仮名],あひおもはぬ,ひとのゆゑにか,あらたまの,としのをながく,あがこひをらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恨み,女歌,枕詞,恋情","#[訓異]
あひおもはぬ[寛],
ひとのゆゑにか[寛],
あらたまの[寛],
としのをながく,[寛]としのをなかく,
あがこひをらむ,[寛]わかこひをらむ,
" "#[番号]11/2535","#[題詞](正述心緒)","#[原文]凡乃 行者不念 言故 人尓事痛 所云物乎","#[訓読]おほろかの心は思はじ我がゆゑに人に言痛く言はれしものを","#[仮名],おほろかの,こころはおもはじ,わがゆゑに,ひとにこちたく,いはれしものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],うわさ,恋情","#[訓異]
おほろかの,[寛]おほよその,
こころはおもはじ,[寛]わさはおもはす,
わがゆゑに,[寛]わかゆゑに,
ひとにこちたく[寛],
いはれしものを[寛],
" "#[番号]11/2536","#[題詞](正述心緒)","#[原文]氣緒尓 妹乎思念者 年月之 徃覧別毛 不所念鳧","#[訓読]息の緒に妹をし思へば年月の行くらむ別も思ほえぬかも","#[仮名],いきのをに,いもをしおもへば,としつきの,ゆくらむわきも,おもほえぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],片恋い,恋情","#[訓異]
いきのをに[寛],
いもをしおもへば,[寛]いもをおもへは,
としつきの[寛],
ゆくらむわきも[寛],
おもほえぬかも[寛],
" "#[番号]11/2537","#[題詞](正述心緒)","#[原文]足千根乃 母尓不所知 吾持留 心<者>吉恵 君之随意","#[訓読]たらちねの母に知らえず我が持てる心はよしゑ君がまにまに","#[仮名],たらちねの,ははにしらえず,わがもてる,こころはよしゑ,きみがまにまに","#[左注]","#[校異]<> -> 者 [嘉][文][紀]","#[事項],枕詞,母親,女歌","#[訓異]
たらちねの[寛],
ははにしらえず,[寛]ははにしらせす,
わがもてる,[寛]わかもたる,
こころはよしゑ[寛],
きみがまにまに,[寛]きみかまにまに,
" "#[番号]11/2538","#[題詞](正述心緒)","#[原文]獨寝等 ゆ朽目八方 綾席 緒尓成及 君乎之将待","#[訓読]ひとり寝と薦朽ちめやも綾席緒になるまでに君をし待たむ","#[仮名],ひとりぬと,こもくちめやも,あやむしろ,をになるまでに,きみをしまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋情,植物","#[訓異]
ひとりぬと[寛],
こもくちめやも[寛],
あやむしろ[寛],
をになるまでに,[寛]をになるまてに,
きみをしまたむ[寛],
" "#[番号]11/2539","#[題詞](正述心緒)","#[原文]相見者 千歳八去流 否乎鴨 我哉然念 待公難尓","#[訓読]相見ては千年やいぬるいなをかも我れやしか思ふ君待ちかてに","#[仮名],あひみては,ちとせやいぬる,いなをかも,われやしかおもふ,きみまちかてに","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋情","#[訓異]
あひみては[寛],
ちとせやいぬる[寛],
いなをかも[寛],
われやしかおもふ[寛],
きみまちかてに[寛],
" "#[番号]11/2540","#[題詞](正述心緒)","#[原文]振別之 髪乎短弥 <青>草乎 髪尓多久濫 妹乎師<僧>於母布","#[訓読]振分けの髪を短み青草を髪にたくらむ妹をしぞ思ふ","#[仮名],ふりわけの,かみをみじかみ,あをくさを,かみにたくらむ,いもをしぞおもふ","#[左注]","#[校異]春 -> 青 [嘉][紀] / 曽 -> 僧 [嘉][文][細]","#[事項],植物,恋情","#[訓異]
ふりわけの[寛],
かみをみじかみ,[寛]かみをみしかみ,
あをくさを,[寛]わかくさを,
かみにたくらむ[寛],
いもをしぞおもふ,[寛]いもをしそおもふ,
" "#[番号]11/2541","#[題詞](正述心緒)","#[原文]徊俳 徃箕之里尓 妹乎置而 心空在 土者踏鞆","#[訓読]た廻り行箕の里に妹を置きて心空にあり地は踏めども","#[仮名],たもとほり,ゆきみのさとに,いもをおきて,こころそらにあり,つちはふめども","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,恋情","#[訓異]
たもとほり,[寛]たちとまり,
ゆきみのさとに[寛],
いもをおきて[寛],
こころそらにあり,[寛]こころそらなり,
つちはふめども,[寛]つちはふめとも,
" "#[番号]11/2542","#[題詞](正述心緒)","#[原文]若草乃 新手枕乎 巻始而 夜哉将間 二八十一不在國","#[訓読]若草の新手枕をまきそめて夜をや隔てむ憎くあらなくに","#[仮名],わかくさの,にひたまくらを,まきそめて,よをやへだてむ,にくくあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
わかくさの[寛],
にひたまくらを,[寛]にゐたまくらを,
まきそめて[寛],
よをやへだてむ,[寛]よをやへたてむ,
にくくあらなくに[寛],
" "#[番号]11/2543","#[題詞](正述心緒)","#[原文]吾戀之 事毛語 名草目六 君之使乎 待八金手六","#[訓読]我が恋ふることも語らひ慰めむ君が使を待ちやかねてむ","#[仮名],あがこふる,こともかたらひ,なぐさめむ,きみがつかひを,まちやかねてむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋情,使者","#[訓異]
あがこふる,[寛]わかこひの,
こともかたらひ[寛],
なぐさめむ,[寛]なくさめむ,
きみがつかひを,[寛]きみかつかひを,
まちやかねてむ[寛],
" "#[番号]11/2544","#[題詞](正述心緒)","#[原文]<寤>者 相縁毛無 夢谷 間無見君 戀尓可死","#[訓読]うつつには逢ふよしもなし夢にだに間なく見え君恋ひに死ぬべし","#[仮名],うつつには,あふよしもなし,いめにだに,まなくみえきみ,こひにしぬべし","#[左注]","#[校異]寐 -> 寤 [嘉][文][紀][細]","#[事項],女歌,恋情,夢","#[訓異]
うつつには[寛],
あふよしもなし[寛],
いめにだに,[寛]ゆめにたに,
まなくみえきみ,[寛]まなくみむきみ,
こひにしぬべし,[寛]こひにしぬへし,
" "#[番号]11/2545","#[題詞](正述心緒)","#[原文]誰彼登 問者将答 為便乎無 君之使乎 還鶴鴨","#[訓読]誰ぞかれと問はば答へむすべをなみ君が使を帰しやりつも","#[仮名],たぞかれと,とはばこたへむ,すべをなみ,きみがつかひを,かへしやりつも","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,使者,母親","#[訓異]
たぞかれと,[寛]たそかれと,
とはばこたへむ,[寛]とははこたへむ,
すべをなみ,[寛]すへをなみ,
きみがつかひを,[寛]きみかつかひを,
かへしやりつも,[寛]かへしつるかも,
" "#[番号]11/2546","#[題詞](正述心緒)","#[原文]不念丹 到者妹之 歡三跡 咲牟眉曵 所思鴨","#[訓読]思はぬに至らば妹が嬉しみと笑まむ眉引き思ほゆるかも","#[仮名],おもはぬに,いたらばいもが,うれしみと,ゑまむまよびき,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
おもはぬに,[寛]おもはすに,
いたらばいもが,[寛]いたらはいもか,
うれしみと[寛],
ゑまむまよびき,[寛]ゑまむまたひき,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]11/2547","#[題詞](正述心緒)","#[原文]如是許 将戀物衣常 不念者 妹之手本乎 不纒夜裳有寸","#[訓読]かくばかり恋ひむものぞと思はねば妹が手本をまかぬ夜もありき","#[仮名],かくばかり,こひむものぞと,おもはねば,いもがたもとを,まかぬよもありき","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
かくばかり,[寛]かくはかり,
こひむものぞと,[寛]こひむものそと,
おもはねば,[寛]おもはねは,
いもがたもとを,[寛]いもかたもとを,
まかぬよもありき[寛],
" "#[番号]11/2548","#[題詞](正述心緒)","#[原文]如是谷裳 吾者戀南 玉梓之 君之使乎 待也金手武","#[訓読]かくだにも我れは恋ひなむ玉梓の君が使を待ちやかねてむ","#[仮名],かくだにも,あれはこひなむ,たまづさの,きみがつかひを,まちやかねてむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,枕詞,使者","#[訓異]
かくだにも,[寛]かくたにも,
あれはこひなむ,[寛]われはこひなむ,
たまづさの,[寛]たまつさの,
きみがつかひを,[寛]きみかつかひを,
まちやかねてむ[寛],
" "#[番号]11/2549","#[題詞](正述心緒)","#[原文]妹戀 吾哭涕 敷妙 木枕通而 袖副所沾 [或本歌<曰> 枕通而 巻者寒母] ","#[訓読]妹に恋ひ我が泣く涙敷栲の木枕通り袖さへ濡れぬ [或本歌曰 枕通りてまけば寒しも] ","#[仮名],いもにこひ,わがなくなみた,しきたへの,こまくらとほり,そでさへぬれぬ,[まくらとほりて,まけばさむしも]","#[左注]","#[校異]通而 [嘉](塙) 通 / 歌 [西] 謌 / 云 -> 曰 [嘉][紀]","#[事項],恋情,枕詞","#[訓異]
いもにこひ,[寛]いもこふと,
わがなくなみた,[寛]わかなくなみた,
しきたへの[寛],
こまくらとほり,[寛]まくらとほりて,
そでさへぬれぬ,[寛]そてさへぬれぬ,
[まくらとほりて[寛],
まけばさむしも],[寛]まけはさむしも,
" "#[番号]11/2550","#[題詞](正述心緒)","#[原文]立念 居毛曽念 紅之 赤裳下引 去之儀乎","#[訓読]立ちて思ひ居てもぞ思ふ紅の赤裳裾引き去にし姿を","#[仮名],たちておもひ,ゐてもぞおもふ,くれなゐの,あかもすそびき,いにしすがたを","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
たちておもひ[寛],
ゐてもぞおもふ,[寛]ゐてもそおもふ,
くれなゐの[寛],
あかもすそびき,[寛]あかもすそひき,
いにしすがたを,[寛]いにしすかたを,
" "#[番号]11/2551","#[題詞](正述心緒)","#[原文]念之 餘者 為便無三 出曽行 其門乎見尓","#[訓読]思ひにしあまりにしかばすべをなみ出でてぞ行きしその門を見に","#[仮名],おもひにし,あまりにしかば,すべをなみ,いでてぞゆきし,そのかどをみに","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
おもひにし,[寛]おもふにし,
あまりにしかば,[寛]あまりにしかは,
すべをなみ,[寛]すへをなみ,
いでてぞゆきし,[寛]いててそゆきし,
そのかどをみに,[寛]そのかとをみに,
" "#[番号]11/2552","#[題詞](正述心緒)","#[原文]情者 千遍敷及 雖念 使乎将遣 為便之不知久","#[訓読]心には千重しくしくに思へども使を遣らむすべの知らなく","#[仮名],こころには,ちへしくしくに,おもへども,つかひをやらむ,すべのしらなく","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,使者","#[訓異]
こころには[寛],
ちへしくしくに,[寛]ちへにしくしく,
おもへども,[寛]おもへとも,
つかひをやらむ[寛],
すべのしらなく,[寛]すへのしらなく,
" "#[番号]11/2553","#[題詞](正述心緒)","#[原文]夢耳 見尚幾許 戀吾者 <寤>見者 益而如何有","#[訓読]夢のみに見てすらここだ恋ふる我はうつつに見てばましていかにあらむ","#[仮名],いめのみに,みてすらここだ,こふるあは,うつつにみてば,ましていかにあらむ","#[左注]","#[校異]寐 -> 寤 [嘉][文][紀]","#[事項],恋情","#[訓異]
いめのみに,[寛]ゆめにのみ,
みてすらここだ,[寛]みてすらここた,
こふるあは,[寛]こふるわれは,
うつつにみてば,[寛]うつつにみては,
ましていかにあらむ,[寛]ましていかならむ,
" "#[番号]11/2554","#[題詞](正述心緒)","#[原文]對面者 面隠流 物柄尓 継而見巻能 欲公毳","#[訓読]相見ては面隠さゆるものからに継ぎて見まくの欲しき君かも","#[仮名],あひみては,おもかくさゆる,ものからに,つぎてみまくの,ほしききみかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
あひみては,[寛]むかへれは,
おもかくさゆる,[寛]おもかくれする,
ものからに[寛],
つぎてみまくの,[寛]つきてみまくの,
ほしききみかも[寛],
" "#[番号]11/2555","#[題詞](正述心緒)","#[原文]旦<戸>乎 速莫開 味澤相 目之乏流君 今夜来座有","#[訓読]朝戸を早くな開けそあぢさはふ目が欲る君が今夜来ませる","#[仮名],あさとを,はやくなあけそ,あぢさはふ,めがほるきみが,こよひきませる","#[左注]","#[校異]戸遣 -> 戸 [嘉]","#[事項],女歌,恋情","#[訓異]
あさとを,[寛]あさとやりを,
はやくなあけそ[寛],
あぢさはふ,[寛]あちさはふ,
めがほるきみが,[寛]めのほるきみか,
こよひきませる[寛],
" "#[番号]11/2556","#[題詞](正述心緒)","#[原文]玉垂之 小簀之垂簾乎 徃褐 寐者不眠友 君者通速為","#[訓読]玉垂の小簾の垂簾を行きかちに寐は寝さずとも君は通はせ","#[仮名],たまだれの,をすのたれすを,ゆきかちに,いはなさずとも,きみはかよはせ","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,母親","#[訓異]
たまだれの,[寛]たまたれの,
をすのたれすを,[寛]こすのたれすを,
ゆきかちに[寛],
いはなさずとも,[寛]いをはねねとも,
きみはかよはせ,[寛]きみはかよはす,
" "#[番号]11/2557","#[題詞](正述心緒)","#[原文]垂乳根乃 母白者 公毛余毛 相鳥羽梨丹 <年>可經","#[訓読]たらちねの母に申さば君も我れも逢ふとはなしに年ぞ経ぬべき","#[仮名],たらちねの,ははにまをさば,きみもあれも,あふとはなしに,としぞへぬべき","#[左注]","#[校異]者 [嘉] 七 / 羊 -> 年 [嘉][文][紀]","#[事項],女歌,母親,","#[訓異]
たらちねの[寛],
ははにまをさば,[寛]ははにまうさは,
きみもあれも[寛],
あふとはなしに[寛],
としぞへぬべき,[寛]としはへぬへし,
" "#[番号]11/2558","#[題詞](正述心緒)","#[原文]愛等 思篇来師 莫忘登 結之紐乃 解樂念者","#[訓読]愛しと思へりけらしな忘れと結びし紐の解くらく思へば","#[仮名],うつくしと,おもへりけらし,なわすれと,むすびしひもの,とくらくおもへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌","#[訓異]
うつくしと[寛],
おもへりけらし,[寛]おもひにけらし,
なわすれと,[寛]わするなと,
むすびしひもの,[寛]むすひしひもの,
とくらくおもへば,[寛]とくらくおもへは,
" "#[番号]11/2559","#[題詞](正述心緒)","#[原文]昨日見而 今日社間 吾妹兒之 幾<許>継手 見巻欲毛","#[訓読]昨日見て今日こそ隔て我妹子がここだく継ぎて見まくし欲しも","#[仮名],きのふみて,けふこそへだて,わぎもこが,ここだくつぎて,みまくしほしも","#[左注]","#[校異]<> -> 許 [西(右書)][嘉][文][紀]","#[事項],恋情","#[訓異]
きのふみて[寛],
けふこそへだて,[寛]けふこそあひた,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
ここだくつぎて,[寛]ここたくつきて,
みまくしほしも,[寛]みまくほしかも,
" "#[番号]11/2560","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人毛無 古郷尓 有人乎 愍久也君之 戀尓令死","#[訓読]人もなき古りにし里にある人をめぐくや君が恋に死なする","#[仮名],ひともなき,ふりにしさとに,あるひとを,めぐくやきみが,こひにしなする","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋情","#[訓異]
ひともなき,[寛]ひともなく,
ふりにしさとに[寛],
あるひとを[寛],
めぐくやきみが,[寛]めくくやきみか,
こひにしなする,[寛]こひにしにせむ,
" "#[番号]11/2561","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人事之 繁間守而 相十方八 反吾上尓 事之将繁","#[訓読]人言の繁き間守りて逢ふともやなほ我が上に言の繁けむ","#[仮名],ひとごとの,しげきまもりて,あふともや,なほわがうへに,ことのしげけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋情,うわさ","#[訓異]
ひとごとの,[寛]ひとことの,
しげきまもりて,[寛]しけきまもりて,
あふともや,[寛]あへりとも,
なほわがうへに,[寛]やへわかうへに,
ことのしげけむ,[寛]ことのしけけむ,
" "#[番号]11/2562","#[題詞](正述心緒)","#[原文]里人之 言縁妻乎 荒垣之 外也吾将見 悪有名國","#[訓読]里人の言寄せ妻を荒垣の外にや我が見む憎くあらなくに","#[仮名],さとびとの,ことよせづまを,あらかきの,よそにやわがみむ,にくくあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],うわさ","#[訓異]
さとびとの,[寛]さとひとの,
ことよせづまを,[寛]ことよせつまを,
あらかきの[寛],
よそにやわがみむ,[寛]よそにやわかみむ,
にくくあらなくに,[寛]にくからなくに,
" "#[番号]11/2563","#[題詞](正述心緒)","#[原文]他眼守 君之随尓 余共尓 夙興乍 裳<裾>所沾","#[訓読]人目守る君がまにまに我れさへに早く起きつつ裳の裾濡れぬ","#[仮名],ひとめもる,きみがまにまに,われさへに,はやくおきつつ,ものすそぬれぬ","#[左注]","#[校異]裙 -> 裾 [嘉][文][紀]","#[事項],恋情,女歌,後朝","#[訓異]
ひとめもる[寛],
きみがまにまに,[寛]きみかまにまに,
われさへに,[寛]われともに,
はやくおきつつ,[寛]つとにおきつつ,
ものすそぬれぬ[寛],
" "#[番号]11/2564","#[題詞](正述心緒)","#[原文]夜干玉之 妹之黒髪 今夜毛加 吾無床尓 靡而宿良武","#[訓読]ぬばたまの妹が黒髪今夜もか我がなき床に靡けて寝らむ","#[仮名],ぬばたまの,いもがくろかみ,こよひもか,あがなきとこに,なびけてぬらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
いもがくろかみ,[寛]いもかくろかみ,
こよひもか[寛],
あがなきとこに,[寛]われなきとこに,
なびけてぬらむ,[寛]なひきてぬらむ,
" "#[番号]11/2565","#[題詞](正述心緒)","#[原文]花細 葦垣越尓 直一目 相視之兒故 千遍嘆津","#[訓読]花ぐはし葦垣越しにただ一目相見し子ゆゑ千たび嘆きつ","#[仮名],はなぐはし,あしかきごしに,ただひとめ,あひみしこゆゑ,ちたびなげきつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,垣間見","#[訓異]
はなぐはし,[寛]はなくはし,
あしかきごしに,[寛]あしかきこしに,
ただひとめ,[寛]たたひとめ,
あひみしこゆゑ[寛],
ちたびなげきつ,[寛]ちへになけきつ,
" "#[番号]11/2566","#[題詞](正述心緒)","#[原文]色出而 戀者人見而 應知 情中之 隠妻波母","#[訓読]色に出でて恋ひば人見て知りぬべし心のうちの隠り妻はも","#[仮名],いろにいでて,こひばひとみて,しりぬべし,こころのうちの,こもりづまはも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,隠妻","#[訓異]
いろにいでて,[寛]いろにいてて,
こひばひとみて,[寛]こひはひとみて,
しりぬべし,[寛]しりぬへし,
こころのうちの[寛],
こもりづまはも,[寛]こもりつまはも,
" "#[番号]11/2567","#[題詞](正述心緒)","#[原文]相見而<者> 戀名草六跡 人者雖云 見後尓曽毛 戀益家類","#[訓読]相見ては恋慰むと人は言へど見て後にぞも恋まさりける","#[仮名],あひみては,こひなぐさむと,ひとはいへど,みてのちにぞも,こひまさりける","#[左注]","#[校異]<> -> 者 [西(左書)][嘉][文][紀]","#[事項],恋情","#[訓異]
あひみては[寛],
こひなぐさむと,[寛]こひなくさむと,
ひとはいへど,[寛]ひとはいへと,
みてのちにぞも,[寛]みてのちにそも,
こひまさりける[寛],
" "#[番号]11/2568","#[題詞](正述心緒)","#[原文]凡 吾之念者 如是許 難御門乎 退出米也母","#[訓読]おほろかに我れし思はばかくばかり難き御門を罷り出めやも","#[仮名],おほろかに,われしおもはば,かくばかり,かたきみかどを,まかりでめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
おほろかに,[寛]おほよそに,
われしおもはば,[寛]われしおもはは,
かくばかり,[寛]かくはかり,
かたきみかどを,[寛]かたきみかとを,
まかりでめやも,[寛]たちいてぬやも,
" "#[番号]11/2569","#[題詞](正述心緒)","#[原文]将念 其人有哉 烏玉之 毎夜君之 夢西所見 [或本歌<曰> 夜晝不云 吾戀渡] ","#[訓読]思ふらむその人なれやぬばたまの夜ごとに君が夢にし見ゆる [或本歌曰 夜昼と言はずあが恋ひわたる] ","#[仮名],おもふらむ,そのひとなれや,ぬばたまの,よごとにきみが,いめにしみゆる,[よるひるといはず,あがこひわたる]","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 云 -> 曰 [嘉]","#[事項],恋情,夢,女歌,異伝","#[訓異]
おもふらむ,[寛]おもせけむ,
そのひとなれや[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よごとにきみが,[寛]よことにきみか,
いめにしみゆる,[寛]ゆめにしみゆる,
[よるひるといはず,[寛]よるひるいはす,
あがこひわたる],[寛]わかこひわたる,
" "#[番号]11/2570","#[題詞](正述心緒)","#[原文]如是耳 戀者可死 足乳根之 母毛告都 不止通為","#[訓読]かくのみし恋ひば死ぬべみたらちねの母にも告げずやまず通はせ","#[仮名],かくのみし,こひばしぬべみ,たらちねの,ははにもつげず,やまずかよはせ","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,母親","#[訓異]
かくのみし,[寛]かくしのみ,
こひばしぬべみ,[寛]こひはしぬへし,
たらちねの[寛],
ははにもつげず,[寛]ははにもつけつ,
やまずかよはせ,[寛]やますかよはせ,
" "#[番号]11/2571","#[題詞](正述心緒)","#[原文]大夫波 友之驂尓 名草溢 心毛将有 我衣苦寸","#[訓読]大夫は友の騒きに慰もる心もあらむ我れぞ苦しき","#[仮名],ますらをは,とものさわきに,なぐさもる,こころもあらむ,われぞくるしき","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌","#[訓異]
ますらをは[寛],
とものさわきに,[寛]とものそめきに,
なぐさもる,[寛]なくさみち,
こころもあらむ[寛],
われぞくるしき,[寛]われそくるしき,
" "#[番号]11/2572","#[題詞](正述心緒)","#[原文]偽毛 似付曽為 何時従鹿 不見人戀尓 人之死為","#[訓読]偽りも似つきてぞするいつよりか見ぬ人恋ふに人の死せし","#[仮名],いつはりも,につきてぞする,いつよりか,みぬひとごひに,ひとのしにせし","#[左注]","#[校異]尓 (塙)(楓) 等","#[事項],女歌,恨み","#[訓異]
いつはりも[寛],
につきてぞする,[寛]につきてそする,
いつよりか,[寛]いつくにか,
みぬひとごひに,[寛]みぬひとこひに,
ひとのしにせし,[寛]ひとのししする,
" "#[番号]11/2573","#[題詞](正述心緒)","#[原文]情左倍 奉有君尓 何物乎鴨 不云言此跡 吾将竊食","#[訓読]心さへ奉れる君に何をかも言はず言ひしと我がぬすまはむ","#[仮名],こころさへ,まつれるきみに,なにをかも,いはずいひしと,わがぬすまはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌","#[訓異]
こころさへ[寛],
まつれるきみに,[寛]またせるきみに,
なにをかも[寛],
いはずいひしと,[寛]いはすいひしと,
わがぬすまはむ,[寛]わかぬすまはむ,
" "#[番号]11/2574","#[題詞](正述心緒)","#[原文]面忘 太尓毛得為也登 手握而 雖打不寒 戀<云>奴","#[訓読]面忘れだにもえすやと手握りて打てども懲りず恋といふ奴","#[仮名],おもわすれ,だにもえすやと,たにぎりて,うてどもこりず,こひといふやつこ","#[左注]","#[校異]之 -> 云 [嘉][類]","#[事項],女歌","#[訓異]
おもわすれ[寛],
だにもえすやと,[寛]たにもえすやと,
たにぎりて,[寛]たにきりて,
うてどもこりず,[寛]うてともこりす,
こひといふやつこ,[寛]こひのやつこは,
" "#[番号]11/2575","#[題詞](正述心緒)","#[原文]希将見 君乎見常衣 左手之 執弓方之 眉根掻礼","#[訓読]めづらしき君を見むとこそ左手の弓取る方の眉根掻きつれ","#[仮名],めづらしき,きみをみむとこそ,ひだりての,ゆみとるかたの,まよねかきつれ","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌","#[訓異]
めづらしき,[寛]まれにみむ,
きみをみむとこそ,[寛]きみをみむとそ,
ひだりての,[寛]ひたりての,
ゆみとるかたの[寛],
まよねかきつれ,[寛]まゆねかきつれ,
" "#[番号]11/2576","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人間守 蘆垣越尓 吾妹子乎 相見之柄二 事曽左太多寸","#[訓読]人間守り葦垣越しに我妹子を相見しからに言ぞさだ多き","#[仮名],ひとまもり,あしかきごしに,わぎもこを,あひみしからに,ことぞさだおほき","#[左注]","#[校異]","#[事項],垣間見,うわさ","#[訓異]
ひとまもり,[寛]ひとまもる,
あしかきごしに,[寛]あしかきこしゆ,
わぎもこを,[寛]わきもこを,
あひみしからに[寛],
ことぞさだおほき,[寛]ことそさたおほき,
" "#[番号]11/2577","#[題詞](正述心緒)","#[原文]今谷毛 目莫令乏 不相見而 将戀<年>月 久家真國","#[訓読]今だにも目な乏しめそ相見ずて恋ひむ年月久しけまくに","#[仮名],いまだにも,めなともしめそ,あひみずて,こひむとしつき,ひさしけまくに","#[左注]","#[校異]羊 -> 年 [嘉][文][紀][細]","#[事項],女歌","#[訓異]
いまだにも,[寛]いまたにも,
めなともしめそ[寛],
あひみずて,[寛]あひみすて,
こひむとしつき[寛],
ひさしけまくに,[寛]ひさしけなくに,
" "#[番号]11/2578","#[題詞](正述心緒)","#[原文]朝宿髪 吾者不梳 愛 君之手枕 觸義之鬼尾","#[訓読]朝寝髪我れは梳らじうるはしき君が手枕触れてしものを","#[仮名],あさねがみ,われはけづらじ,うるはしき,きみがたまくら,ふれてしものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,後朝","#[訓異]
あさねがみ,[寛]あさねかみ,
われはけづらじ,[寛]われはけつらし,
うるはしき,[寛]うつくしき,
きみがたまくら,[寛]きみかたまくら,
ふれてしものを[寛],
" "#[番号]11/2579","#[題詞](正述心緒)","#[原文]早去而 何時君乎 相見等 念之情 今曽水葱少熱","#[訓読]早行きていつしか君を相見むと思ひし心今ぞなぎぬる","#[仮名],はやゆきて,いつしかきみを,あひみむと,おもひしこころ,いまぞなぎぬる","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,逢会","#[訓異]
はやゆきて[寛],
いつしかきみを[寛],
あひみむと[寛],
おもひしこころ[寛],
いまぞなぎぬる,[寛]いまそなきぬる,
" "#[番号]11/2580","#[題詞](正述心緒)","#[原文]面形之 忘戸在者 小豆鳴 男士物屋 戀乍将居","#[訓読]面形の忘るとあらばあづきなく男じものや恋ひつつ居らむ","#[仮名],おもかたの,わするとあらば,あづきなく,をとこじものや,こひつつをらむ","#[左注]","#[校異]戸 (塙)(楓) 左","#[事項],恋情","#[訓異]
おもかたの,[寛]おもかけの,
わするとあらば,[寛]わするとならは,
あづきなく,[寛]あちきなく,
をとこじものや,[寛]をのこしものや,
こひつつをらむ[寛],
" "#[番号]11/2581","#[題詞](正述心緒)","#[原文]言云者 三々二田八酢四 小九毛 心中二 我念羽奈九二","#[訓読]言に言へば耳にたやすし少なくも心のうちに我が思はなくに","#[仮名],ことにいへば,みみにたやすし,すくなくも,こころのうちに,わがもはなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
ことにいへば,[寛]ことにいへは,
みみにたやすし[寛],
すくなくも[寛],
こころのうちに[寛],
わがもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]11/2582","#[題詞](正述心緒)","#[原文]小豆奈九 何<狂>言 今更 小童言為流 老人二四手","#[訓読]あづきなく何のたはこと今さらに童言する老人にして","#[仮名],あづきなく,なにのたはこと,いまさらに,わらはごとする,おいひとにして","#[左注]","#[校異]枉 -> 狂 [万葉集略解]","#[事項],自嘲","#[訓異]
あづきなく,[寛]あちきなく,
なにのたはこと,[寛]なにのまかこと,
いまさらに[寛],
わらはごとする,[寛]わらはことする,
おいひとにして[寛],
" "#[番号]11/2583","#[題詞](正述心緒)","#[原文]相見而 幾久毛 不有尓 如<年>月 所思可聞","#[訓読]相見ては幾久さにもあらなくに年月のごと思ほゆるかも","#[仮名],あひみては,いくびささにも,あらなくに,としつきのごと,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]羊 -> 年 [嘉][紀][温]","#[事項],恋情","#[訓異]
あひみては[寛],
いくびささにも,[寛]いくひさしさも,
あらなくに[寛],
としつきのごと,[寛]としつきのこと,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]11/2584","#[題詞](正述心緒)","#[原文]大夫登 念有吾乎 如是許 令戀波 小可者在来","#[訓読]ますらをと思へる我れをかくばかり恋せしむるは悪しくはありけり","#[仮名],ますらをと,おもへるわれを,かくばかり,こひせしむるは,あしくはありけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
ますらをと[寛],
おもへるわれを[寛],
かくばかり,[寛]かくはかり,
こひせしむるは[寛],
あしくはありけり,[寛]うへにさりける,
" "#[番号]11/2585","#[題詞](正述心緒)","#[原文]如是為乍 吾待印 有鴨 世人皆乃 常不在國","#[訓読]かくしつつ我が待つ験あらぬかも世の人皆の常にあらなくに","#[仮名],かくしつつ,わがまつしるし,あらぬかも,よのひとみなの,つねにあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋情","#[訓異]
かくしつつ[寛],
わがまつしるし,[寛]わかまつしるし,
あらぬかも,[寛]あらむかも,
よのひとみなの[寛],
つねにあらなくに,[寛]つねならてくに,
" "#[番号]11/2586","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人事 茂君 玉梓之 使不遣 忘跡思名","#[訓読]人言を繁みと君に玉梓の使も遣らず忘ると思ふな","#[仮名],ひとごとを,しげみときみに,たまづさの,つかひもやらず,わするとおもふな","#[左注]","#[校異]","#[事項],うわさ,","#[訓異]
ひとごとを,[寛]ひとことを,
しげみときみに,[寛]しいくてきみに,
たまづさの,[寛]たまつさの,
つかひもやらず,[寛]つかひもやらす,
わするとおもふな[寛],
" "#[番号]11/2587","#[題詞](正述心緒)","#[原文]大原 <古>郷 妹置 吾稲金津 夢所見乞","#[訓読]大原の古りにし里に妹を置きて我れ寐ねかねつ夢に見えこそ","#[仮名],おほはらの,ふりにしさとに,いもをおきて,われいねかねつ,いめにみえこそ","#[左注]","#[校異]故 -> 古 [嘉][紀][細] / 乞 (塙)(楓) 乍","#[事項],地名,飛鳥,恋情","#[訓異]
おほはらの[寛],
ふりにしさとに[寛],
いもをおきて[寛],
われいねかねつ[寛],
いめにみえこそ,[寛]ゆめにみえこそ,
" "#[番号]11/2588","#[題詞](正述心緒)","#[原文]夕去者 公来座跡 待夜之 名凝衣今 宿不勝為","#[訓読]夕されば君来まさむと待ちし夜のなごりぞ今も寐ねかてにする","#[仮名],ゆふされば,きみきまさむと,まちしよの,なごりぞいまも,いねかてにする","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,待つ,女歌","#[訓異]
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
きみきまさむと,[寛]きみきますかと,
まちしよの[寛],
なごりぞいまも,[寛]なこりそいまも,
いねかてにする[寛],
" "#[番号]11/2589","#[題詞](正述心緒)","#[原文]不相思 公者在良思 黒玉 夢不見 受旱宿跡","#[訓読]相思はず君はあるらしぬばたまの夢にも見えずうけひて寝れど","#[仮名],あひおもはず,きみはあるらし,ぬばたまの,いめにもみえず,うけひてぬれど","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌","#[訓異]
あひおもはず,[寛]あひおもはす,
きみはあるらし[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
いめにもみえず,[寛]ゆめにもみえす,
うけひてぬれど,[寛]うけひてぬれと,
" "#[番号]11/2590","#[題詞](正述心緒)","#[原文]石根踏 夜道不行 念跡 妹依者 忍金津毛","#[訓読]岩根踏み夜道は行かじと思へれど妹によりては忍びかねつも","#[仮名],いはねふみ,よみちはゆかじと,おもへれど,いもによりては,しのびかねつも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
いはねふみ[寛],
よみちはゆかじと,[寛]よみちゆかしと,
おもへれど,[寛]おもへとも,
いもによりては[寛],
しのびかねつも,[寛]しのひかねつも,
" "#[番号]11/2591","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人事 茂間守跡 不相在 終八子等 面忘南","#[訓読]人言の繁き間守ると逢はずあらばつひにや子らが面忘れなむ","#[仮名],ひとごとの,しげきまもると,あはずあらば,つひにやこらが,おもわすれなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],うわさ","#[訓異]
ひとごとの,[寛]ひとことの,
しげきまもると,[寛]しけきまもると,
あはずあらば,[寛]あはされは,
つひにやこらが,[寛]つゐにはこらか,
おもわすれなむ[寛],
" "#[番号]11/2592","#[題詞](正述心緒)","#[原文]戀死 後何為 吾命 生日社 見幕欲為礼","#[訓読]恋死なむ後は何せむ我が命生ける日にこそ見まく欲りすれ","#[仮名],こひしなむ,のちはなにせむ,わがいのち,いけるひにこそ,みまくほりすれ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
こひしなむ[寛],
のちはなにせむ[寛],
わがいのち,[寛]わかいのち,
いけるひにこそ[寛],
みまくほりすれ[寛],
" "#[番号]11/2593","#[題詞](正述心緒)","#[原文]敷細 枕動而 宿不所寝 物念此夕 急明鴨","#[訓読]敷栲の枕響みて寐ねらえず物思ふ今夜早も明けぬかも","#[仮名],しきたへの,まくらとよみて,いねらえず,ものもふこよひ,はやもあけぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
しきたへの[寛],
まくらとよみて,[寛]まくらうこきて,
いねらえず,[寛]いねられす,
ものもふこよひ,[寛]ものおもふこよひ,
はやもあけぬかも,[寛]はやあけむかも,
" "#[番号]11/2594","#[題詞](正述心緒)","#[原文]不徃吾 来跡可夜 門不閇 L怜吾妹子 待筒在","#[訓読]行かぬ我れを来むとか夜も門閉さずあはれ我妹子待ちつつあるらむ","#[仮名],ゆかぬわれを,こむとかよるも,かどささず,あはれわぎもこ,まちつつあるらむ","#[左注]","#[校異]子 [細](塙) 之","#[事項],恋情","#[訓異]
ゆかぬわれを,[寛]ゆかめわれ,
こむとかよるも,[寛]くとかよかとも,
かどささず,[寛]ささすして,
あはれわぎもこ,[寛]あはれわきもこ,
まちつつあるらむ,[寛]まちつつあらむ,
" "#[番号]11/2595","#[題詞](正述心緒)","#[原文]夢谷 何鴨不所見 雖所見 吾鴨迷 戀茂尓","#[訓読]夢にだに何かも見えぬ見ゆれども我れかも惑ふ恋の繁きに","#[仮名],いめにだに,なにかもみえぬ,みゆれども,われかもまとふ,こひのしげきに","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
いめにだに,[寛]ゆめにたに,
なにかもみえぬ[寛],
みゆれども,[寛]みゆれとも,
われかもまとふ[寛],
こひのしげきに,[寛]こひのしけきに,
" "#[番号]11/2596","#[題詞](正述心緒)","#[原文]名草漏 心莫二 如是耳 戀也度 月日殊 [或本歌<曰> 奥津浪 敷而耳八方 戀度奈牟] ","#[訓読]慰もる心はなしにかくのみし恋ひやわたらむ月に日に異に [或本歌曰 沖つ波しきてのみやも恋ひわたりなむ] ","#[仮名],なぐさもる,こころはなしに,かくのみし,こひやわたらむ,つきにひにけに,[おきつなみ,しきてのみやも,こひわたりなむ]","#[左注]","#[校異]云 -> 曰 [嘉]","#[事項],恋情,異伝","#[訓異]
なぐさもる,[寛]なくさむる,
こころはなしに[寛],
かくのみし,[寛]かくしのみ,
こひやわたらむ[寛],
つきにひにけに[寛],
[おきつなみ[寛],
しきてのみやも[寛],
こひわたりなむ][寛],
" "#[番号]11/2597","#[題詞](正述心緒)","#[原文]何為而 忘物 吾妹子丹 戀益跡 所忘莫苦二","#[訓読]いかにして忘れむものぞ我妹子に恋はまされど忘らえなくに","#[仮名],いかにして,わすれむものぞ,わぎもこに,こひはまされど,わすらえなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
いかにして[寛],
わすれむものぞ,[寛]わするるものそ,
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こひはまされど,[寛]こひはまされと,
わすらえなくに,[寛]わすられなくに,
" "#[番号]11/2598","#[題詞](正述心緒)","#[原文]遠有跡 公衣戀流 玉桙乃 里人皆尓 吾戀八方","#[訓読]遠くあれど君にぞ恋ふる玉桙の里人皆に我れ恋ひめやも","#[仮名],とほくあれど,きみにぞこふる,たまほこの,さとひとみなに,あれこひめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,枕詞,女歌","#[訓異]
とほくあれど,[寛]とほくあれと,
きみにぞこふる,[寛]きみにそこふる,
たまほこの[寛],
さとひとみなに[寛],
あれこひめやも,[寛]われこひめやも,
" "#[番号]11/2599","#[題詞](正述心緒)","#[原文]驗無 戀毛為<鹿> <暮>去者 人之手枕而 将寐兒故","#[訓読]験なき恋をもするか夕されば人の手まきて寝らむ子ゆゑに","#[仮名],しるしなき,こひをもするか,ゆふされば,ひとのてまきて,ぬらむこゆゑに","#[左注]","#[校異]無 [嘉][細] 无 / <> -> 鹿 [嘉][古][紀] / 暮 [西(上書訂正)][嘉][古][紀]","#[事項],恋情","#[訓異]
しるしなき[寛],
こひをもするか[寛],
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
ひとのてまきて[寛],
ぬらむこゆゑに,[寛]ねなむこゆゑに,
" "#[番号]11/2600","#[題詞](正述心緒)","#[原文]百世下 千代下生 有目八方 吾念妹乎 置嘆","#[訓読]百代しも千代しも生きてあらめやも我が思ふ妹を置きて嘆かむ","#[仮名],ももよしも,ちよしもいきて,あらめやも,あがおもふいもを,おきてなげかむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
ももよしも[寛],
ちよしもいきて[寛],
あらめやも[寛],
あがおもふいもを,[寛]わかおもふいもを,
おきてなげかむ,[寛]おきてなけかむ,
" "#[番号]11/2601","#[題詞](正述心緒)","#[原文]現毛 夢毛吾者 不思寸 振有公尓 此間将會十羽","#[訓読]うつつにも夢にも我れは思はずき古りたる君にここに逢はむとは","#[仮名],うつつにも,いめにもわれは,おもはずき,ふりたるきみに,ここにあはむとは","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
うつつにも[寛],
いめにもわれは,[寛]ゆめにもわれは,
おもはずき,[寛]おもはさりき,
ふりたるきみに[寛],
ここにあはむとは[寛],
" "#[番号]11/2602","#[題詞](正述心緒)","#[原文]黒髪 白髪左右跡 結大王 心一乎 今解目八方","#[訓読]黒髪の白髪までと結びてし心ひとつを今解かめやも","#[仮名],くろかみの,しらかみまでと,むすびてし,こころひとつを,いまとかめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,浮気","#[訓異]
くろかみの[寛],
しらかみまでと,[寛]しらかみまてと,
むすびてし,[寛]むすふきみ,
こころひとつを[寛],
いまとかめやも[寛],
" "#[番号]11/2603","#[題詞](正述心緒)","#[原文]心乎之 君尓奉跡 念有者 縦比来者 戀乍乎将有","#[訓読]心をし君に奉ると思へればよしこのころは恋ひつつをあらむ","#[仮名],こころをし,きみにまつると,おもへれば,よしこのころは,こひつつをあらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋情","#[訓異]
こころをし[寛],
きみにまつると,[寛]きみにまたすと,
おもへれば,[寛]おもへれは,
よしこのころは[寛],
こひつつをあらむ[寛],
" "#[番号]11/2604","#[題詞](正述心緒)","#[原文]念出而 哭者雖泣 灼然 人之可知 嘆為勿謹","#[訓読]思ひ出でて音には泣くともいちしろく人の知るべく嘆かすなゆめ","#[仮名],おもひいでて,ねにはなくとも,いちしろく,ひとのしるべく,なげかすなゆめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌","#[訓異]
おもひいでて,[寛]おもひてて,
ねにはなくとも[寛],
いちしろく[寛],
ひとのしるべく,[寛]ひとのしるへく,
なげかすなゆめ,[寛]なけきすなゆめ,
" "#[番号]11/2605","#[題詞](正述心緒)","#[原文]玉桙之 道去夫利尓 不思 妹乎相見而 戀比鴨","#[訓読]玉桙の道行きぶりに思はぬに妹を相見て恋ふるころかも","#[仮名],たまほこの,みちゆきぶりに,おもはぬに,いもをあひみて,こふるころかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情,片思い","#[訓異]
たまほこの[寛],
みちゆきぶりに,[寛]みちゆきふりに,
おもはぬに,[寛]おもはすに,
いもをあひみて[寛],
こふるころかも[寛],
" "#[番号]11/2606","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人目多 常如是耳志 候者 何時 吾不戀将有","#[訓読]人目多み常かくのみしさもらはばいづれの時か我が恋ひずあらむ","#[仮名],ひとめおほみ,つねかくのみし,さもらはば,いづれのときか,あがこひずあらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],うわさ,恋情","#[訓異]
ひとめおほみ[寛],
つねかくのみし[寛],
さもらはば,[寛]またませは,
いづれのときか,[寛]いつれのときか,
あがこひずあらむ,[寛]わかこひさらむ,
" "#[番号]11/2607","#[題詞](正述心緒)","#[原文]敷細之 衣手可礼天 吾乎待登 在<濫>子等者 面影尓見","#[訓読]敷栲の衣手離れて我を待つとあるらむ子らは面影に見ゆ","#[仮名],しきたへの,ころもでかれて,わをまつと,あるらむこらは,おもかげにみゆ","#[左注]","#[校異]監 -> 濫 [西(右貼紙)][嘉][古][紀]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
しきたへの[寛],
ころもでかれて,[寛]ころもてかれて,
わをまつと,[寛]われをまつと,
あるらむこらは,[寛]ありけむこらは,
おもかげにみゆ,[寛]おもかけにみゆ,
" "#[番号]11/2608","#[題詞](正述心緒)","#[原文]妹之袖 別之日従 白細乃 衣片敷 戀管曽寐留","#[訓読]妹が袖別れし日より白栲の衣片敷き恋ひつつぞ寝る","#[仮名],いもがそで,わかれしひより,しろたへの,ころもかたしき,こひつつぞぬる","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
いもがそで,[寛]いもかそて,
わかれしひより[寛],
しろたへの[寛],
ころもかたしき[寛],
こひつつぞぬる,[寛]こひつつそぬる,
" "#[番号]11/2609","#[題詞](正述心緒)","#[原文]白細之 袖者間結奴 我妹子我 家當乎 不止振四二","#[訓読]白栲の袖はまゆひぬ我妹子が家のあたりをやまず振りしに","#[仮名],しろたへの,そではまゆひぬ,わぎもこが,いへのあたりを,やまずふりしに","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
しろたへの[寛],
そではまゆひぬ,[寛]そてはまよひぬ,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
いへのあたりを,[寛]いへのあふりを,
やまずふりしに,[寛]やますふりしに,
" "#[番号]11/2610","#[題詞](正述心緒)","#[原文]夜干玉之 吾黒髪乎 引奴良思 乱而反 戀度鴨","#[訓読]ぬばたまの我が黒髪を引きぬらし乱れてさらに恋ひわたるかも","#[仮名],ぬばたまの,わがくろかみを,ひきぬらし,みだれてさらに,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,女歌,恋情","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
わがくろかみを,[寛]わかくろかみを,
ひきぬらし[寛],
みだれてさらに,[寛]みたれてかへり,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]11/2611","#[題詞](正述心緒)","#[原文]今更 君之手枕 巻宿米也 吾紐緒乃 解都追本名","#[訓読]今さらに君が手枕まき寝めや我が紐の緒の解けつつもとな","#[仮名],いまさらに,きみがたまくら,まきぬめや,わがひものをの,とけつつもとな","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌","#[訓異]
いまさらに[寛],
きみがたまくら,[寛]きみかたまくら,
まきぬめや,[寛]まきねめや,
わがひものをの,[寛]わかひものをの,
とけつつもとな[寛],
" "#[番号]11/2612","#[題詞](正述心緒)","#[原文]白細布<乃> 袖觸而夜 吾背子尓 吾戀落波 止時裳無","#[訓読]白栲の袖触れてし夜我が背子に我が恋ふらくはやむ時もなし","#[仮名],しろたへの,そでふれてしよ,わがせこに,あがこふらくは,やむときもなし","#[左注]","#[校異]之 -> 乃 [嘉][文][紀] / 而 (塙) 西","#[事項],枕詞,女歌,恋情","#[訓異]
しろたへの[寛],
そでふれてしよ,[寛]そてをふれてや,
わがせこに,[寛]わかせこに,
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
やむときもなし,[寛]やむときもなき,
" "#[番号]11/2613","#[題詞](正述心緒)","#[原文]夕卜尓毛 占尓毛告有 今夜谷 不来君乎 何時将待","#[訓読]夕占にも占にも告れる今夜だに来まさぬ君をいつとか待たむ","#[仮名],ゆふけにも,うらにものれる,こよひだに,きまさぬきみを,いつとかまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],占い,恋情,女歌","#[訓異]
ゆふけにも[寛],
うらにものれる,[寛]うらにもつけある,
こよひだに,[寛]こよひたに,
きまさぬきみを[寛],
いつとかまたむ,[寛]いつしかまたむ,
" "#[番号]11/2614","#[題詞](正述心緒)","#[原文]眉根掻 下言借見 思有尓 去家人乎 相見鶴鴨","#[訓読]眉根掻き下いふかしみ思へるにいにしへ人を相見つるかも","#[仮名],まよねかき,したいふかしみ,おもへるに,いにしへひとを,あひみつるかも","#[左注]或本歌<曰> 眉根掻 誰乎香将見跡 思乍 氣長戀之 妹尓相鴨 / 一書歌曰 眉根掻 下伊布可之美 念有之 妹之容儀乎 今日見都流香裳","#[校異]云 -> 曰 [嘉][紀]","#[事項],女歌","#[訓異]
まよねかき[寛],
したいふかしみ[寛],
おもへるに[寛],
いにしへひとを[寛],
あひみつるかも[寛],
" "#[番号]11/2614S1","#[題詞](正述心緒)或本歌<曰>","#[原文]眉根掻 誰乎香将見跡 思乍 氣長戀之 妹尓相鴨","#[訓読]眉根掻き誰をか見むと思ひつつ日長く恋ひし妹に逢へるかも","#[仮名],まよねかき,たれをかみむと,おもひつつ,けながくこひし,いもにあへるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],異伝","#[訓異]
まよねかき[寛],
たれをかみむと[寛],
おもひつつ[寛],
けながくこひし,[寛]けなかくこひし,
いもにあへるかも[寛],
" "#[番号]11/2614S2","#[題詞](正述心緒)一書歌曰","#[原文]眉根掻 下伊布可之美 念有之 妹之容儀乎 今日見都流香裳","#[訓読]眉根掻き下いふかしみ思へりし妹が姿を今日見つるかも","#[仮名],まよねかき,したいふかしみ,おもへりし,いもがすがたを,けふみつるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],異伝","#[訓異]
まよねかき[寛],
したいふかしみ[寛],
おもへりし[寛],
いもがすがたを,[寛]いもかすかたを,
けふみつるかも[寛],
" "#[番号]11/2615","#[題詞](正述心緒)","#[原文]敷栲乃 枕巻而 妹与吾 寐夜者無而 <年>曽經来","#[訓読]敷栲の枕をまきて妹と我れと寝る夜はなくて年ぞ経にける","#[仮名],しきたへの,まくらをまきて,いもとあれと,ぬるよはなくて,としぞへにける","#[左注]","#[校異]無 [嘉][細] 无 / 羊 -> 年 [嘉][文][紀]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
しきたへの[寛],
まくらをまきて[寛],
いもとあれと,[寛]いもとわれ,
ぬるよはなくて[寛],
としぞへにける,[寛]としそへにける,
" "#[番号]11/2616","#[題詞](正述心緒)","#[原文]奥山之 真木<乃>板戸乎 音速見 妹之當乃 <霜>上尓宿奴","#[訓読]奥山の真木の板戸を音早み妹があたりの霜の上に寝ぬ","#[仮名],おくやまの,まきのいたとを,おとはやみ,いもがあたりの,しものうへにねぬ","#[左注]","#[校異]之 -> 乃 [嘉][類] / 霜 [西(上書訂正)][嘉][文][類]","#[事項]","#[訓異]
おくやまの[寛],
まきのいたとを[寛],
おとはやみ[寛],
いもがあたりの,[寛]いもかあたりの,
しものうへにねぬ[寛],
" "#[番号]11/2617","#[題詞](正述心緒)","#[原文]足日木能 山櫻戸乎 開置而 吾待君乎 誰留流","#[訓読]あしひきの山桜戸を開け置きて我が待つ君を誰れか留むる","#[仮名],あしひきの,やまさくらとを,あけおきて,わがまつきみを,たれかとどむる","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,植物,女歌","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまさくらとを[寛],
あけおきて[寛],
わがまつきみを,[寛]わかまつきみを,
たれかとどむる,[寛]たれかととむる,
" "#[番号]11/2618","#[題詞](正述心緒)","#[原文]月夜好三 妹二相跡 直道柄 吾者雖来 夜其深去来","#[訓読]月夜よみ妹に逢はむと直道から我れは来つれど夜ぞ更けにける","#[仮名],つくよよみ,いもにあはむと,ただちから,われはきつれど,よぞふけにける","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
つくよよみ,[寛]つきよよみ,
いもにあはむと[寛],
ただちから,[寛]たたちから,
われはきつれど,[寛]われはくれとも,
よぞふけにける,[寛]よそふけにける,
" "#[番号]11/2619","#[題詞]寄物陳思","#[原文]朝影尓 吾身者成 辛衣 襴之不相而 久成者","#[訓読]朝影に我が身はなりぬ韓衣裾のあはずて久しくなれば","#[仮名],あさかげに,あがみはなりぬ,からころも,すそのあはずて,ひさしくなれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,序詞,衣","#[訓異]
あさかげに,[寛]あさかけに,
あがみはなりぬ,[寛]わかみはなりぬ,
からころも[寛],
すそのあはずて,[寛]すそのあはすて,
ひさしくなれば,[寛]ひさしくなれは,
" "#[番号]11/2620","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]解衣之 思乱而 雖戀 何如汝之故跡 問人毛無","#[訓読]解き衣の思ひ乱れて恋ふれどもなぞ汝がゆゑと問ふ人もなき","#[仮名],とききぬの,おもひみだれて,こふれども,なぞながゆゑと,とふひともなき","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,女歌,衣","#[訓異]
とききぬの[寛],
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
こふれども,[寛]こふれとも,
なぞながゆゑと,[寛]なそなかゆゑと,
とふひともなき,[寛]とふひともなし,
" "#[番号]11/2621","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]摺衣 著有跡夢見津 <寤>者 孰人之 言可将繁","#[訓読]摺り衣着りと夢に見つうつつにはいづれの人の言か繁けむ","#[仮名],すりころも,けりといめにみつ,うつつには,いづれのひとの,ことかしげけむ","#[左注]","#[校異]寐 -> 寤 [西(貼紙)]","#[事項],衣,うわさ","#[訓異]
すりころも[寛],
けりといめにみつ,[寛]きるとゆめみつ,
うつつには[寛],
いづれのひとの,[寛]いつれのひとの,
ことかしげけむ,[寛]ことかしけけむ,
" "#[番号]11/2622","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]志賀乃白水<郎>之 塩焼衣 雖穢 戀云物者 忘金津毛","#[訓読]志賀の海人の塩焼き衣なれぬれど恋といふものは忘れかねつも","#[仮名],しかのあまの,しほやきころも,なれぬれど,こひといふものは,わすれかねつも","#[左注]","#[校異]浪 -> 郎 [西(右貼紙)][嘉][文][類][紀]","#[事項],福岡,地名,衣,序詞","#[訓異]
しかのあまの[寛],
しほやきころも[寛],
なれぬれど,[寛]なるといへと,
こひといふものは,[寛]こひてのものは,
わすれかねつも[寛],
" "#[番号]11/2623","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]呉藍之 八塩乃衣 朝旦 穢者雖為 益希将見裳","#[訓読]紅の八しほの衣朝な朝な馴れはすれどもいやめづらしも","#[仮名],くれなゐの,やしほのころも,あさなさな,なれはすれども,いやめづらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],衣,色,染色,恋情,女歌","#[訓異]
くれなゐの[寛],
やしほのころも[寛],
あさなさな[寛],
なれはすれども,[寛]なれはすれとも,
いやめづらしも,[寛]もしめつらしも,
" "#[番号]11/2624","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]紅之 深染衣 色深 染西鹿齒蚊 遺不得鶴","#[訓読]紅の深染めの衣色深く染みにしかばか忘れかねつる","#[仮名],くれなゐの,こそめのころも,いろふかく,しみにしかばか,わすれかねつる","#[左注]","#[校異]","#[事項],染色,色,衣,恋情,女歌","#[訓異]
くれなゐの[寛],
こそめのころも[寛],
いろふかく[寛],
しみにしかばか,[寛]そみにしかはか,
わすれかねつる[寛],
" "#[番号]11/2625","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]不相尓 夕卜乎問常 幣尓置尓 吾衣手者 又曽可續","#[訓読]逢はなくに夕占を問ふと幣に置くに我が衣手はまたぞ継ぐべき","#[仮名],あはなくに,ゆふけをとふと,ぬさにおくに,わがころもでは,またぞつぐべき","#[左注]","#[校異]","#[事項],衣,待つ","#[訓異]
あはなくに[寛],
ゆふけをとふと[寛],
ぬさにおくに[寛],
わがころもでは,[寛]わかころもては,
またぞつぐべき,[寛]またそつくへき,
" "#[番号]11/2626","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]古衣 打棄人者 秋風之 立来時尓 物念物其","#[訓読]古衣打棄つる人は秋風の立ちくる時に物思ふものぞ","#[仮名],ふるころも,うつつるひとは,あきかぜの,たちくるときに,ものもふものぞ","#[左注]","#[校異]","#[事項],衣,比喩","#[訓異]
ふるころも[寛],
うつつるひとは,[寛]うちすてひとは,
あきかぜの,[寛]あきかせの,
たちくるときに[寛],
ものもふものぞ,[寛]ものおもふものそ,
" "#[番号]11/2627","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]波祢蘰 今為妹之 浦若見 咲見慍見 著四紐解","#[訓読]はねかづら今する妹がうら若み笑みみ怒りみ付けし紐解く","#[仮名],はねかづら,いまするいもが,うらわかみ,ゑみみいかりみ,つけしひもとく","#[左注]","#[校異]","#[事項]","#[訓異]
はねかづら,[寛]はねかつら,
いまするいもが,[寛]いまするいもか,
うらわかみ[寛],
ゑみみいかりみ[寛],
つけしひもとく,[寛]きてしひもとく,
" "#[番号]11/2628","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]去家之 倭文旗帶乎 結垂 孰云人毛 君者不益","#[訓読]いにしへの倭文機帯を結び垂れ誰れといふ人も君にはまさじ","#[仮名],いにしへの,しつはたおびを,むすびたれ,たれといふひとも,きみにはまさじ","#[左注]一書歌<曰> 古之 狭織之帶乎 結垂 誰之能人毛 君尓波不益","#[校異]歌 [西] 謌 / 云 -> 曰 [類][文][紀]","#[事項],衣,序詞,女歌","#[訓異]
いにしへの[寛],
しつはたおびを,[寛]しつはたをひを,
むすびたれ,[寛]むすひたれ,
たれといふひとも[寛],
きみにはまさじ,[寛]きみにはまさし,
" "#[番号]11/2628S","#[題詞](寄物陳思)一書歌<曰>","#[原文]古之 狭織之帶乎 結垂 誰之能人毛 君尓波不益","#[訓読]いにしへの狭織の帯を結び垂れ誰れしの人も君にはまさじ ","#[仮名],いにしへの,さおりのおびを,むすびたれ,たれしのひとも,きみにはまさじ","#[左注]","#[校異]","#[事項],異伝,衣,序詞,女歌","#[訓異]
いにしへの[寛],
さおりのおびを,[寛]さをりのをひを,
むすびたれ,[寛]むすひたれ,
たれしのひとも[寛],
きみにはまさじ,[寛]きみにはまさし,
" "#[番号]11/2629","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]不相友 吾波不怨 此枕 吾等念而 枕手左宿座","#[訓読]逢はずとも我れは恨みじこの枕我れと思ひてまきてさ寝ませ","#[仮名],あはずとも,われはうらみじ,このまくら,われとおもひて,まきてさねませ","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌","#[訓異]
あはずとも,[寛]あはすとも,
われはうらみじ,[寛]われはうらみし,
このまくら[寛],
われとおもひて[寛],
まきてさねませ[寛],
" "#[番号]11/2630","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]結紐 解日遠 敷細 吾木枕 蘿生来","#[訓読]結へる紐解かむ日遠み敷栲の我が木枕は苔生しにけり","#[仮名],ゆへるひも,とかむひとほみ,しきたへの,わがこまくらは,こけむしにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,女歌,閨怨","#[訓異]
ゆへるひも,[寛]むすふひも,
とかむひとほみ[寛],
しきたへの[寛],
わがこまくらは,[寛]わかこまくらに,
こけむしにけり,[寛]こけをいにけり,
" "#[番号]11/2631","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]夜干玉之 黒髪色天 長夜S 手枕之上尓 妹待覧蚊","#[訓読]ぬばたまの黒髪敷きて長き夜を手枕の上に妹待つらむか","#[仮名],ぬばたまの,くろかみしきて,ながきよを,たまくらのうへに,いもまつらむか","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋愛,枕詞,","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
くろかみしきて[寛],
ながきよを,[寛]なかきよを,
たまくらのうへに[寛],
いもまつらむか[寛],
" "#[番号]11/2632","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]真素鏡 直二四妹乎 不相見者 我戀不止 年者雖經","#[訓読]まそ鏡直にし妹を相見ずは我が恋やまじ年は経ぬとも","#[仮名],まそかがみ,ただにしいもを,あひみずは,あがこひやまじ,としはへぬとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
ただにしいもを,[寛]たたにしいもを,
あひみずは,[寛]あひみすは,
あがこひやまじ,[寛]わかこひやまし,
としはへぬとも,[寛]としはへめとも,
" "#[番号]11/2633","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]真十鏡 手取持手 朝旦 将見時禁屋 戀之将繁","#[訓読]まそ鏡手に取り持ちて朝な朝な見む時さへや恋の繁けむ","#[仮名],まそかがみ,てにとりもちて,あさなさな,みむときさへや,こひのしげけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
てにとりもちて[寛],
あさなさな[寛],
みむときさへや[寛],
こひのしげけむ,[寛]こひのしけけむ,
" "#[番号]11/2634","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]里遠 戀和備尓家里 真十鏡 面影不去 夢所見社","#[訓読]里遠み恋わびにけりまそ鏡面影去らず夢に見えこそ","#[仮名],さとどほみ,こひわびにけり,まそかがみ,おもかげさらず,いめにみえこそ","#[左注]右一首上見柿本朝臣人麻呂之歌中也 但以句々相換 故載於茲","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂,枕詞,恋愛","#[訓異]
さとどほみ,[寛]さととほみ,
こひわびにけり,[寛]こひわひにけり,
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
おもかげさらず,[寛]おもかけさらす,
いめにみえこそ,[寛]ゆめにみえこそ,
" "#[番号]11/2635","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]剱刀 身尓佩副流 大夫也 戀云物乎 忍金手武","#[訓読]剣大刀身に佩き添ふる大夫や恋といふものを忍びかねてむ","#[仮名],つるぎたち,みにはきそふる,ますらをや,こひといふものを,しのびかねてむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
つるぎたち,[寛]つるきたち,
みにはきそふる[寛],
ますらをや[寛],
こひといふものを,[寛]こひてふものを,
しのびかねてむ,[寛]しのひかねてむ,
" "#[番号]11/2636","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]剱刀 諸刃之於荷 去觸而 所g鴨将死 戀管不有者","#[訓読]剣大刀諸刃の上に行き触れて死にかもしなむ恋ひつつあらずは","#[仮名],つるぎたち,もろはのうへに,ゆきふれて,しにかもしなむ,こひつつあらずは","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
つるぎたち,[寛]つるきたち,
もろはのうへに[寛],
ゆきふれて[寛],
しにかもしなむ[寛],
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
" "#[番号]11/2637","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]<ら> 鼻乎曽嚏鶴 劔刀 身副妹之 思来下","#[訓読]うち鼻ひ鼻をぞひつる剣大刀身に添ふ妹し思ひけらしも","#[仮名],うちはなひ,はなをぞひつる,つるぎたち,みにそふいもし,おもひけらしも","#[左注]","#[校異]晒 -> ら [古]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
うちはなひ,[寛]うちなけき,
はなをぞひつる,[寛]をそひつる,
つるぎたち,[寛]つるきたち,
みにそふいもし,[寛]みにそふいもか,
おもひけらしも[寛],
" "#[番号]11/2638","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]梓弓 末之腹野尓 鷹田為 君之弓食之 将絶跡念甕屋","#[訓読]梓弓末のはら野に鳥狩する君が弓弦の絶えむと思へや","#[仮名],あづさゆみ,すゑのはらのに,とがりする,きみがゆづるの,たえむとおもへや","#[左注]","#[校異]","#[事項],比喩,枕詞,恋愛,地名,大阪府","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
すゑのはらのに[寛],
とがりする,[寛]とかりする,
きみがゆづるの,[寛]きみかゆつるの,
たえむとおもへや[寛],
" "#[番号]11/2639","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]葛木之 其津彦真弓 荒木尓毛 憑也君之 吾之名告兼","#[訓読]葛城の襲津彦真弓新木にも頼めや君が我が名告りけむ","#[仮名],かづらきの,そつびこまゆみ,あらきにも,たのめやきみが,わがなのりけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,女歌,うわさ,恋愛","#[訓異]
かづらきの,[寛]かつらきの,
そつびこまゆみ,[寛]そつひこまゆみ,
あらきにも[寛],
たのめやきみが,[寛]たのめやきみか,
わがなのりけむ,[寛]わかなつけけむ,
" "#[番号]11/2640","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]梓弓 引見<弛>見 不来者<不来> 来者<来其>乎奈何 不来者来者其乎","#[訓読]梓弓引きみ緩へみ来ずは来ず来ば来そをなぞ来ずは来ばそを","#[仮名],あづさゆみ,ひきみゆるへみ,こずはこず,こばこそをなぞ,こずはこばそを","#[左注]","#[校異]絶 -> 弛 [嘉][類][古] / 々々 -> 不来 [嘉][類] / 其々 -> 来其 [古]","#[事項],枕詞,女歌,恋愛","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
ひきみゆるへみ[寛],
こずはこず,[寛]こすはこす,
こばこそをなぞ,[寛]こはこそをなそ,
こずはこばそを,[寛]こすはこはそを,
" "#[番号]11/2641","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]時守之 打鳴鼓 數見者 辰尓波成 不相毛恠","#[訓読]時守の打ち鳴す鼓数みみれば時にはなりぬ逢はなくもあやし","#[仮名],ときもりの,うちなすつづみ,よみみれば,ときにはなりぬ,あはなくもあやし","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,時報","#[訓異]
ときもりの[寛],
うちなすつづみ,[寛]うちなすつつみ,
よみみれば,[寛]かそふれは,
ときにはなりぬ[寛],
あはなくもあやし,[寛]あはぬもあやし,
" "#[番号]11/2642","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]燈之 陰尓蚊蛾欲布 虚蝉之 妹蛾咲状思 面影尓所見","#[訓読]燈火の影にかがよふうつせみの妹が笑まひし面影に見ゆ","#[仮名],ともしびの,かげにかがよふ,うつせみの,いもがゑまひし,おもかげにみゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋愛","#[訓異]
ともしびの,[寛]ともしひの,
かげにかがよふ,[寛]かけにかかよふ,
うつせみの[寛],
いもがゑまひし,[寛]いもかゑめりし,
おもかげにみゆ,[寛]おもかけにみゆ,
" "#[番号]11/2643","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]玉戈之 道行疲 伊奈武思侶 敷而毛君乎 将見因<母>鴨","#[訓読]玉桙の道行き疲れ稲席しきても君を見むよしもがも","#[仮名],たまほこの,みちゆきつかれ,いなむしろ,しきてもきみを,みむよしもがも","#[左注]","#[校異]毛 -> 母 [嘉][文][類]","#[事項],枕詞,序詞,女歌,恋愛","#[訓異]
たまほこの[寛],
みちゆきつかれ[寛],
いなむしろ[寛],
しきてもきみを[寛],
みむよしもがも,[寛]みむよしもかも,
" "#[番号]11/2644","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]小墾田之 板田乃橋之 壊者 従桁将去 莫戀吾妹","#[訓読]小治田の板田の橋の壊れなば桁より行かむな恋ひそ我妹","#[仮名],をはりだの,いただのはしの,こほれなば,けたよりゆかむ,なこひそわぎも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良県,明日香,恋愛","#[訓異]
をはりだの,[寛]をはりたの,
いただのはしの,[寛]いたたのはしの,
こほれなば,[寛]こほれなは,
けたよりゆかむ[寛],
なこひそわぎも
" "#[番号]11/2645","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]宮材引 泉之追馬喚犬二 立民乃 息時無 戀<渡>可聞","#[訓読]宮材引く泉の杣に立つ民のやむ時もなく恋ひわたるかも","#[仮名],みやぎひく,いづみのそまに,たつたみの,やむときもなく,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]度 -> 渡 [嘉][文][類]","#[事項],地名,京都府,序詞,恋愛","#[訓異]
みやぎひく,[寛]みやきひく,
いづみのそまに,[寛]いつみのそまに,
たつたみの[寛],
やむときもなく[寛],
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]11/2646","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]住吉乃 津守網引之 浮笶緒乃 得干蚊将去 戀管不有者","#[訓読]住吉の津守網引のうけの緒の浮かれか行かむ恋ひつつあらずは","#[仮名],すみのえの,つもりあびきの,うけのをの,うかれかゆかむ,こひつつあらずは","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,大阪府,序詞,恋愛","#[訓異]
すみのえの[寛],
つもりあびきの,[寛]つもりあひきの,
うけのをの[寛],
うかれかゆかむ,[寛]うかひかゆかむ,
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
" "#[番号]11/2647","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]東細布 従空延越 遠見社 目言踈良米 絶跡間也","#[訓読]手作りを空ゆ引き越し遠みこそ目言離るらめ絶ゆと隔てや","#[仮名],てづくりを,そらゆひきこし,とほみこそ,めことかるらめ,たゆとへだてや","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋愛","#[訓異]
てづくりを,[寛]よこくもの,
そらゆひきこし,[寛]そらにひきこす,
とほみこそ[寛],
めことかるらめ,[寛]まことうとからめ,
たゆとへだてや,[寛]たゆとへたつや,
" "#[番号]11/2648","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]云<々> 物者不念 斐太人乃 打墨縄之 直一道二","#[訓読]かにかくに物は思はじ飛騨人の打つ墨縄のただ一道に","#[仮名],かにかくに,ものはおもはじ,ひだひとの,うつすみなはの,ただひとみちに","#[左注]","#[校異]云 -> 々 [嘉][文][細][京]","#[事項],序詞,恋愛,女歌","#[訓異]
かにかくに[寛],
ものはおもはじ,[寛]ものはおもはす,
ひだひとの,[寛]ひたひとの,
うつすみなはの[寛],
ただひとみちに,[寛]たたひとすちに,
" "#[番号]11/2649","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]足日木之 山田守翁 置蚊火之 <下>粉枯耳 余戀居久","#[訓読]あしひきの山田守る翁が置く鹿火の下焦れのみ我が恋ひ居らむ","#[仮名],あしひきの,やまたもるをぢが,おくかひの,したこがれのみ,あがこひをらむ","#[左注]","#[校異]<> -> 下 [西(訂正)][嘉][文][類][紀]","#[事項],枕詞,序詞,恋愛","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまたもるをぢが,[寛]やまたもるをの,
おくかひの[寛],
したこがれのみ,[寛]したこかれのみ,
あがこひをらむ,[寛]わかこひをらく,
" "#[番号]11/2650","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]十寸板持 盖流板目乃 不<合>相者 如何為跡可 吾宿始兼","#[訓読]そき板もち葺ける板目のあはざらばいかにせむとか我が寝そめけむ","#[仮名],そきいたもち,ふけるいための,あはざらば,いかにせむとか,わがねそめけむ","#[左注]","#[校異]令 -> 合 [嘉][類][古][紀]","#[事項],序詞,恋愛,女歌,不安","#[訓異]
そきいたもち,[寛]そきいたもて,
ふけるいための,[寛]ふけるいたまの,
あはざらば,[寛]あはさらは,
いかにせむとか[寛],
わがねそめけむ,[寛]わかねそめなむ,
" "#[番号]11/2651","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]難波人 葦火燎屋之 酢<四>手雖有 己妻許増 常目頬次吉","#[訓読]難波人葦火焚く屋の煤してあれどおのが妻こそ常めづらしき","#[仮名],なにはひと,あしひたくやの,すしてあれど,おのがつまこそ,つねめづらしき","#[左注]","#[校異]原字不明 -> 四 [西(上書訂正)][嘉][文][類][紀]","#[事項],序詞,恋愛","#[訓異]
なにはひと[寛],
あしひたくやの[寛],
すしてあれど,[寛]すすたれと,
おのがつまこそ,[寛]おのかつまこそ,
つねめづらしき,[寛]とこめつふしき,
" "#[番号]11/2652","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]妹之髪 上小竹葉野之 放駒 蕩去家良思 不合思者","#[訓読]妹が髪上げ竹葉野の放れ駒荒びにけらし逢はなく思へば","#[仮名],いもがかみ,あげたかはのの,はなれごま,あらびにけらし,あはなくおもへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,,恋愛,不安","#[訓異]
いもがかみ,[寛]いもかかみ,
あげたかはのの,[寛]あけささはのの,
はなれごま,[寛]はなれこま,
あらびにけらし,[寛]あれゆきならし,
あはなくおもへば,[寛]あはぬおもへは,
" "#[番号]11/2653","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]馬音之 跡杼登毛為者 松蔭尓 出曽見鶴 若君香跡","#[訓読]馬の音のとどともすれば松蔭に出でてぞ見つるけだし君かと","#[仮名],うまのおとの,とどともすれば,まつかげに,いでてぞみつる,けだしきみかと","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋愛","#[訓異]
うまのおとの[寛],
とどともすれば,[寛]ととともすれは,
まつかげに,[寛]まつかけに,
いでてぞみつる,[寛]いててそみつる,
けだしきみかと,[寛]もしはきみかと,
" "#[番号]11/2654","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]君戀 寝不宿朝明 誰乗流 馬足音 吾聞為","#[訓読]君に恋ひ寐ねぬ朝明に誰が乗れる馬の足の音ぞ我れに聞かする","#[仮名],きみにこひ,いねぬあさけに,たがのれる,うまのあのおとぞ,われにきかする","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋愛,女歌","#[訓異]
きみにこひ,[寛]きみこふと,
いねぬあさけに[寛],
たがのれる,[寛]たれのれる,
うまのあのおとぞ,[寛]うまのあしおとそ,
われにきかする[寛],
" "#[番号]11/2655","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]紅之 襴引道乎 中置而 妾哉将通 公哉将来座 [一云 須蘇衝河乎 又曰 待香将待] ","#[訓読]紅の裾引く道を中に置きて我れは通はむ君か来まさむ [一云 裾漬く川を 又曰 待ちにか待たむ] ","#[仮名],くれなゐの,すそびくみちを,なかにおきて,われかかよはむ,きみかきまさむ,[すそつくかはを,まちにかまたむ]","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋愛","#[訓異]
くれなゐの[寛],
すそびくみちを,[寛]すそひくみちを,
なかにおきて[寛],
われかかよはむ,[寛]われやかよはむ,
きみかきまさむ,[寛]きみやきまさむ,
[すそつくかはを[寛],
まちにかまたむ][寛],
" "#[番号]11/2656","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]天飛也 軽乃社之 齋槻 幾世及将有 隠嬬其毛","#[訓読]天飛ぶや軽の社の斎ひ槻幾代まであらむ隠り妻ぞも","#[仮名],あまとぶや,かるのやしろの,いはひつき,いくよまであらむ,こもりづまぞも","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,地名,奈良県,明日香,歌垣,忍び妻,秘密,恋愛,序詞,植物","#[訓異]
あまとぶや,[寛]あまとふや,
かるのやしろの[寛],
いはひつき[寛],
いくよまであらむ,[寛]いくよまてあらむ,
こもりづまぞも,[寛]こもりつまそも,
" "#[番号]11/2657","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]神名火尓 紐呂寸立而 雖忌 人心者 間守不敢物","#[訓読]神なびにひもろき立てて斎へども人の心はまもりあへぬもの","#[仮名],かむなびに,ひもろきたてて,いはへども,ひとのこころは,まもりあへぬもの","#[左注]","#[校異]","#[事項],怨み","#[訓異]
かむなびに,[寛]かみなひに,
ひもろきたてて,[寛]ひもろきたてて,
いはへども,[寛]いむといへと,
ひとのこころは[寛],
まもりあへぬもの,[寛]まもりあへぬかも,
" "#[番号]11/2658","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]天雲之 八重雲隠 鳴神之 音<耳尓>八方 聞度南","#[訓読]天雲の八重雲隠り鳴る神の音のみにやも聞きわたりなむ","#[仮名],あまくもの,やへくもがくり,なるかみの,おとのみにやも,ききわたりなむ","#[左注]","#[校異]尓耳 -> 耳尓 [嘉][類]","#[事項],序詞,うわさ,女歌","#[訓異]
あまくもの[寛],
やへくもがくり,[寛]やへくもかくれ,
なるかみの[寛],
おとのみにやも,[寛]おとにのみやも,
ききわたりなむ[寛],
" "#[番号]11/2659","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]争者 神毛悪為 縦咲八師 世副流君之 悪有莫君尓","#[訓読]争へば神も憎ますよしゑやしよそふる君が憎くあらなくに","#[仮名],あらそへば,かみもにくます,よしゑやし,よそふるきみが,にくくあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌","#[訓異]
あらそへば,[寛]あらかへは,
かみもにくます,[寛]かみもにくみす,
よしゑやし[寛],
よそふるきみが,[寛]よそふるきみか,
にくくあらなくに,[寛]にくからなくに,
" "#[番号]11/2660","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]夜並而 君乎来座跡 千石破 神社乎 不祈日者無","#[訓読]夜並べて君を来ませとちはやぶる神の社を祷まぬ日はなし","#[仮名],よならべて,きみをきませと,ちはやぶる,かみのやしろを,のまぬひはなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,枕詞,恋愛","#[訓異]
よならべて,[寛]よならへて,
きみをきませと[寛],
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
かみのやしろを[寛],
のまぬひはなし,[寛]ねかぬひはなし,
" "#[番号]11/2661","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]霊治波布 神毛吾者 打棄乞 四恵也壽之 ね無","#[訓読]霊ぢはふ神も我れをば打棄てこそしゑや命の惜しけくもなし","#[仮名],たまぢはふ,かみもわれをば,うつてこそ,しゑやいのちの,をしけくもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,怨み,恋愛","#[訓異]
たまぢはふ,[寛]たまちはふ,
かみもわれをば,[寛]かみをもわれは,
うつてこそ,[寛]うちすてき,
しゑやいのちの[寛],
をしけくもなし[寛],
" "#[番号]11/2662","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾妹兒 又毛相等 千羽八振 神社乎 不祷日者無","#[訓読]我妹子にまたも逢はむとちはやぶる神の社を祷まぬ日はなし","#[仮名],わぎもこに,またもあはむと,ちはやぶる,かみのやしろを,のまぬひはなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
またもあはむと[寛],
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
かみのやしろを[寛],
のまぬひはなし,[寛]ねかぬひはなし,
" "#[番号]11/2663","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]千葉破 神之伊垣毛 可越 今者吾名之 惜無","#[訓読]ちはやぶる神の斎垣も越えぬべし今は我が名の惜しけくもなし","#[仮名],ちはやぶる,かみのいかきも,こえぬべし,いまはわがなの,をしけくもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,うわさ","#[訓異]
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
かみのいかきも[寛],
こえぬべし,[寛]こえぬへし,
いまはわがなの,[寛]いまはわかなの,
をしけくもなし[寛],
" "#[番号]11/2664","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]暮月夜 暁闇夜乃 朝影尓 吾身者成奴 汝乎念金丹","#[訓読]夕月夜暁闇の朝影に我が身はなりぬ汝を思ひかねに","#[仮名],ゆふづくよ,あかときやみの,あさかげに,あがみはなりぬ,なをおもひかねに","#[左注]","#[校異]丹 [古義](塙)(楓) 手","#[事項],恋愛","#[訓異]
ゆふづくよ,[寛]ゆふつくよ,
あかときやみの,[寛]あかつきやみの,
あさかげに,[寛]あさかけに,
あがみはなりぬ,[寛]わかみはなりぬ,
なをおもひかねに,[寛]なれをおもふかに,
" "#[番号]11/2665","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]月之有者 明覧別裳 不知而 寐吾来乎 人見兼鴨","#[訓読]月しあれば明くらむ別も知らずして寝て我が来しを人見けむかも","#[仮名],つきしあれば,あくらむわきも,しらずして,ねてわがこしを,ひとみけむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],うわさ,不安,恋愛","#[訓異]
つきしあれば,[寛]つきしあれは,
あくらむわきも[寛],
しらずして,[寛]しらすして,
ねてわがこしを,[寛]ねてわかこしを,
ひとみけむかも[寛],
" "#[番号]11/2666","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]妹目之 見巻欲家口 <夕>闇之 木葉隠有 月待如","#[訓読]妹が目の見まく欲しけく夕闇の木の葉隠れる月待つごとし","#[仮名],いもがめの,みまくほしけく,ゆふやみの,このはごもれる,つきまつごとし","#[左注]","#[校異]久 -> 夕 [西(訂正)][嘉][類][紀]","#[事項],恋愛","#[訓異]
いもがめの,[寛]いもかめの,
みまくほしけく[寛],
ゆふやみの[寛],
このはごもれる,[寛]このはこもれる,
つきまつごとし,[寛]つきまつかこと,
" "#[番号]11/2667","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]真袖持 床打拂 君待跡 居之間尓 月傾","#[訓読]真袖持ち床うち掃ひ君待つと居りし間に月かたぶきぬ","#[仮名],まそでもち,とこうちはらひ,きみまつと,をりしあひだに,つきかたぶきぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋愛,女歌,怨恨","#[訓異]
まそでもち,[寛]まそてもて,
とこうちはらひ[寛],
きみまつと[寛],
をりしあひだに,[寛]をりしあひたに,
つきかたぶきぬ,[寛]つきかたふきぬ,
" "#[番号]11/2668","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]二上尓 隠經月之 雖惜 妹之田本乎 加流類比来","#[訓読]二上に隠らふ月の惜しけども妹が手本を離るるこのころ","#[仮名],ふたかみに,かくらふつきの,をしけども,いもがたもとを,かるるこのころ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良県,恋愛,序詞","#[訓異]
ふたかみに[寛],
かくらふつきの,[寛]かくろふつきの,
をしけども,[寛]をしけれと,
いもがたもとを,[寛]いもかたもとを,
かるるこのころ[寛],
" "#[番号]11/2669","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾背子之 振放見乍 将嘆 清月夜尓 雲莫田名引","#[訓読]我が背子が振り放け見つつ嘆くらむ清き月夜に雲なたなびき","#[仮名],わがせこが,ふりさけみつつ,なげくらむ,きよきつくよに,くもなたなびき","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋愛,女歌","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
ふりさけみつつ[寛],
なげくらむ,[寛]なけくらむ,
きよきつくよに,[寛]きよきつきよに,
くもなたなびき,[寛]くもなたなひき,
" "#[番号]11/2670","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]真素鏡 清月夜之 湯<徙>去者 念者不止 戀社益","#[訓読]まそ鏡清き月夜のゆつりなば思ひはやまず恋こそまさめ","#[仮名],まそかがみ,きよきつくよの,ゆつりなば,おもひはやまず,こひこそまさめ","#[左注]","#[校異]徒 -> 徙 [寛]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
きよきつくよの,[寛]きよきつきよの,
ゆつりなば,[寛]ゆつろへは,
おもひはやまず,[寛]おもひはやます,
こひこそまさめ,[寛]こひこそまされ,
" "#[番号]11/2671","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]今夜之 在開月夜 在乍文 公S置者 待人無","#[訓読]今夜の有明月夜ありつつも君をおきては待つ人もなし","#[仮名],こよひの,ありあけつくよ,ありつつも,きみをおきては,まつひともなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋愛","#[訓異]
こよひの,[寛]このよらの,
ありあけつくよ,[寛]ありあけのつきよ,
ありつつも[寛],
きみをおきては[寛],
まつひともなし[寛],
" "#[番号]11/2672","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]此山之 嶺尓近跡 吾見鶴 月之空有 戀毛為鴨","#[訓読]この山の嶺に近しと我が見つる月の空なる恋もするかも","#[仮名],このやまの,みねにちかしと,わがみつる,つきのそらなる,こひもするかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋愛","#[訓異]
このやまの[寛],
みねにちかしと[寛],
わがみつる,[寛]わかみつる,
つきのそらなる[寛],
こひもするかも[寛],
" "#[番号]11/2673","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]烏玉乃 夜渡月之 湯移去者 更哉妹尓 吾戀将居","#[訓読]ぬばたまの夜渡る月のゆつりなばさらにや妹に我が恋ひ居らむ","#[仮名],ぬばたまの,よわたるつきの,ゆつりなば,さらにやいもに,あがこひをらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よわたるつきの[寛],
ゆつりなば,[寛]ゆつろへは,
さらにやいもに[寛],
あがこひをらむ,[寛]わかこひをらむ,
" "#[番号]11/2674","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]朽網山 夕居雲 薄徃者 余者将戀名 公之目乎欲","#[訓読]朽網山夕居る雲の薄れゆかば我れは恋ひむな君が目を欲り","#[仮名],くたみやま,ゆふゐるくもの,うすれゆかば,あれはこひむな,きみがめをほり","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,大分県,女歌,恋愛","#[訓異]
くたみやま[寛],
ゆふゐるくもの[寛],
うすれゆかば,[寛]うすらかは,
あれはこひむな,[寛]われはこひむな,
きみがめをほり,[寛]きみかめをほり,
" "#[番号]11/2675","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]君之服 三笠之山尓 居雲乃 立者継流 戀為鴨","#[訓読]君が着る御笠の山に居る雲の立てば継がるる恋もするかも","#[仮名],きみがきる,みかさのやまに,ゐるくもの,たてばつがるる,こひもするかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良県,枕詞,序詞,恋愛","#[訓異]
きみがきる,[寛]きみかきる,
みかさのやまに[寛],
ゐるくもの[寛],
たてばつがるる,[寛]たてはつかるる,
こひもするかも,[寛]こひをするかも,
" "#[番号]11/2676","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]久堅之 天飛雲尓 在而然 君相見 落日莫死","#[訓読]ひさかたの天飛ぶ雲にありてしか君をば相見むおつる日なしに","#[仮名],ひさかたの,あまとぶくもに,ありてしか,きみをばあひみむ,おつるひなしに","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あまとぶくもに,[寛]あまとふくもに,
ありてしか[寛],
きみをばあひみむ,[寛]きみにあひみて,
おつるひなしに,[寛]つるひなしに,
" "#[番号]11/2677","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]佐保乃内従 下風之 吹礼波 還者胡粉 歎夜衣大寸","#[訓読]佐保の内ゆあらしの風の吹きぬれば帰りは知らに嘆く夜ぞ多き","#[仮名],さほのうちゆ,あらしのかぜの,ふきぬれば,かへりはしらに,なげくよぞおほき","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良県,女歌,閨怨","#[訓異]
さほのうちゆ,[寛]さほのうちに,
あらしのかぜの,[寛]あらしふけれは,
ふきぬれば,[寛]かへるさへ,
かへりはしらに,[寛]くたけてなけき,
なげくよぞおほき,[寛]ぬるよしおほき,
" "#[番号]11/2678","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]級子八師 不吹風故 玉匣 開而左宿之 吾其悔寸","#[訓読]はしきやし吹かぬ風ゆゑ玉櫛笥開けてさ寝にし我れぞ悔しき","#[仮名],はしきやし,ふかぬかぜゆゑ,たまくしげ,あけてさねにし,あれぞくやしき","#[左注]","#[校異]子 [万葉考](塙)(楓) 寸","#[事項],枕詞,女歌,怨恨","#[訓異]
はしきやし,[寛]よしゑやし,
ふかぬかぜゆゑ,[寛]ふかぬかせゆゑ,
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
あけてさねにし[寛],
あれぞくやしき,[寛]われつくやしき,
" "#[番号]11/2679","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]窓超尓 月臨照而 足桧乃 下風吹夜者 公乎之其念","#[訓読]窓越しに月おし照りてあしひきのあらし吹く夜は君をしぞ思ふ","#[仮名],まどごしに,つきおしてりて,あしひきの,あらしふくよは,きみをしぞおもふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
まどごしに,[寛]まとこしに,
つきおしてりて,[寛]つきさしいりて,
あしひきの[寛],
あらしふくよは[寛],
きみをしぞおもふ,[寛]きみをしそおもふ,
" "#[番号]11/2680","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]河千鳥 住澤上尓 立霧之 市白兼名 相言始而言","#[訓読]川千鳥棲む沢の上に立つ霧のいちしろけむな相言ひそめてば","#[仮名],かはちどり,すむさはのうへに,たつきりの,いちしろけむな,あひいひそめてば","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,鳥,動物,うわさ","#[訓異]
かはちどり,[寛]かはちとり,
すむさはのうへに[寛],
たつきりの[寛],
いちしろけむな[寛],
あひいひそめてば,[寛]あひいひそめては,
" "#[番号]11/2681","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾背子之 使乎待跡 笠毛不著 出乍其見之 雨落久尓","#[訓読]我が背子が使を待つと笠も着ず出でつつぞ見し雨の降らくに","#[仮名],わがせこが,つかひをまつと,かさもきず,いでつつぞみし,あめのふらくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋愛","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
つかひをまつと[寛],
かさもきず,[寛]かさもきす,
いでつつぞみし,[寛]いてつつそみし,
あめのふらくに[寛],
" "#[番号]11/2682","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]辛衣 君尓内<著> 欲見 戀其晩師之 雨零日乎","#[訓読]韓衣君にうち着せ見まく欲り恋ひぞ暮らしし雨の降る日を","#[仮名],からころも,きみにうちきせ,みまくほり,こひぞくらしし,あめのふるひを","#[左注]","#[校異]原字不明 -> 著 [西(上書訂正)][嘉][類][紀]","#[事項],恋愛,女歌","#[訓異]
からころも[寛],
きみにうちきせ[寛],
みまくほり[寛],
こひぞくらしし,[寛]こひそくらしし,
あめのふるひを[寛],
" "#[番号]11/2683","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]彼方之 赤土少屋尓 W<X>零 床共所沾 於身副我妹","#[訓読]彼方の埴生の小屋に小雨降り床さへ濡れぬ身に添へ我妹","#[仮名],をちかたの,はにふのをやに,こさめふり,とこさへぬれぬ,みにそへわぎも","#[左注]","#[校異]<> -> X [西(左貼紙)][類][細][紀]","#[事項],地名,大阪府,京都府,恋愛,逢会","#[訓異]
をちかたの[寛],
はにふのをやに,[寛]はにふのこやに,
こさめふり[寛],
とこさへぬれぬ[寛],
みにそへわぎも,[寛]みにそへわきも,
" "#[番号]11/2684","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]笠無登 人尓者言<手> 雨乍見 留之君我 容儀志所念","#[訓読]笠なしと人には言ひて雨障み留まりし君が姿し思ほゆ","#[仮名],かさなしと,ひとにはいひて,あまつつみ,とまりしきみが,すがたしおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋愛,追懐","#[訓異]
かさなしと[寛],
ひとにはいひて[寛],
あまつつみ[寛],
とまりしきみが,[寛]とまりしきみか,
すがたしおもほゆ,[寛]すかたしそおもふ,
" "#[番号]11/2685","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]妹門 去過不勝都 久方乃 雨毛零奴可 其乎因将為","#[訓読]妹が門行き過ぎかねつひさかたの雨も降らぬかそをよしにせむ","#[仮名],いもがかど,ゆきすぎかねつ,ひさかたの,あめもふらぬか,そをよしにせむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋愛","#[訓異]
いもがかど,[寛]いもかかと,
ゆきすぎかねつ,[寛]ゆきすきかねつ,
ひさかたの[寛],
あめもふらぬか[寛],
そをよしにせむ[寛],
" "#[番号]11/2686","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]夜占問 吾袖尓置 <白>露乎 於公令視跡 取者<消>管","#[訓読]夕占問ふ我が袖に置く白露を君に見せむと取れば消につつ","#[仮名],ゆふけとふ,わがそでにおく,しらつゆを,きみにみせむと,とればけにつつ","#[左注]","#[校異]<> -> 白 [嘉][細] / 清 -> 消 [西(訂正右書)][嘉][文][紀]","#[事項],女歌","#[訓異]
ゆふけとふ[寛],
わがそでにおく,[寛]わかころもてに,
しらつゆを,[寛]おくつゆを,
きみにみせむと[寛],
とればけにつつ,[寛]とれはきえつつ,
" "#[番号]11/2687","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]櫻麻乃 苧原之下草 露有者 令明而射去 母者雖知","#[訓読]桜麻の麻生の下草露しあれば明かしてい行け母は知るとも","#[仮名],さくらをの,をふのしたくさ,つゆしあれば,あかしていゆけ,はははしるとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,女歌,恋愛","#[訓異]
さくらをの,[寛]さくらあさの,
をふのしたくさ,[寛]をうのしたくさ,
つゆしあれば,[寛]つゆしあれは,
あかしていゆけ[寛],
はははしるとも[寛],
" "#[番号]11/2688","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]待不得而 内者不入 白細布之 吾袖尓 露者置奴鞆","#[訓読]待ちかねて内には入らじ白栲の我が衣手に露は置きぬとも","#[仮名],まちかねて,うちにはいらじ,しろたへの,わがころもでに,つゆはおきぬとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,女歌,恋情","#[訓異]
まちかねて[寛],
うちにはいらじ,[寛]うちにはいらし,
しろたへの[寛],
わがころもでに,[寛]わかころもてに,
つゆはおきぬとも[寛],
" "#[番号]11/2689","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]朝露之 消安吾身 雖老 又若反 君乎思将待","#[訓読]朝露の消やすき我が身老いぬともまたをちかへり君をし待たむ","#[仮名],あさつゆの,けやすきあがみ,おいぬとも,またをちかへり,きみをしまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,女歌,恋情","#[訓異]
あさつゆの[寛],
けやすきあがみ,[寛]けやすきわかみ,
おいぬとも,[寛]をいぬとも,
またをちかへり,[寛]またわかかへり,
きみをしまたむ[寛],
" "#[番号]11/2690","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]白細布乃 吾袖尓 露者置 妹者不相 猶<豫>四手","#[訓読]白栲の我が衣手に露は置き妹は逢はさずたゆたひにして","#[仮名],しろたへの,わがころもでに,つゆはおき,いもはあはさず,たゆたひにして","#[左注]","#[校異]預 -> 豫 [西(左貼紙)][嘉][類][文]","#[事項],枕詞,女歌,恋情","#[訓異]
しろたへの[寛],
わがころもでに,[寛]わかころもてに,
つゆはおき,[寛]つゆはおきて,
いもはあはさず,[寛]いもにはあはす,
たゆたひにして[寛],
" "#[番号]11/2691","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]云<々> 物者不念 朝露之 吾身一者 君之随意","#[訓読]かにかくに物は思はじ朝露の我が身ひとつは君がまにまに","#[仮名],かにかくに,ものはおもはじ,あさつゆの,あがみひとつは,きみがまにまに","#[左注]","#[校異]云 -> 々 [嘉][類][文][細]","#[事項],枕詞,女歌,恋情","#[訓異]
かにかくに[寛],
ものはおもはじ,[寛]ものはおもはす,
あさつゆの[寛],
あがみひとつは,[寛]わかみひとつは,
きみがまにまに,[寛]きみかまにまに,
" "#[番号]11/2692","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]夕凝 霜置来 朝戸出<尓> 甚踐而 人尓所知名","#[訓読]夕凝りの霜置きにけり朝戸出にいたくし踏みて人に知らゆな","#[仮名],ゆふこりの,しもおきにけり,あさとでに,いたくしふみて,ひとにしらゆな","#[左注]","#[校異]<> -> 尓 [嘉][文][紀]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
ゆふこりの[寛],
しもおきにけり[寛],
あさとでに,[寛]あさといてに,
いたくしふみて,[寛]あとふみつけて,
ひとにしらゆな,[寛]ひとにしらるな,
" "#[番号]11/2693","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]如是許 戀乍不有者 朝尓日尓 妹之将履 地尓有申尾","#[訓読]かくばかり恋ひつつあらずは朝に日に妹が踏むらむ地にあらましを","#[仮名],かくばかり,こひつつあらずは,あさにけに,いもがふむらむ,つちにあらましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
かくばかり,[寛]かくはかり,
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
あさにけに,[寛]あさにひに,
いもがふむらむ,[寛]いもかふむらむ,
つちにあらましを[寛],
" "#[番号]11/2694","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]足日木之 山鳥尾乃 一峰越 一目見之兒尓 應戀鬼香","#[訓読]あしひきの山鳥の尾の一峰越え一目見し子に恋ふべきものか","#[仮名],あしひきの,やまどりのをの,ひとをこえ,ひとめみしこに,こふべきものか","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,動物,恋情","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまどりのをの,[寛]やまとりのをの,
ひとをこえ[寛],
ひとめみしこに[寛],
こふべきものか,[寛]こふへきものか,
" "#[番号]11/2695","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾妹子尓 相縁乎無 駿河有 不盡乃高嶺之 焼管香将有","#[訓読]我妹子に逢ふよしをなみ駿河なる富士の高嶺の燃えつつかあらむ","#[仮名],わぎもこに,あふよしをなみ,するがなる,ふじのたかねの,もえつつかあらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,静岡県,恋情,序詞","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
あふよしをなみ[寛],
するがなる,[寛]するかなる,
ふじのたかねの,[寛]ふしのたかねの,
もえつつかあらむ[寛],
" "#[番号]11/2696","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]荒熊之 住云山之 師齒迫山 責而雖問 汝名者不告","#[訓読]荒熊のすむといふ山の師歯迫山責めて問ふとも汝が名は告らじ","#[仮名],あらぐまの,すむといふやまの,しはせやま,せめてとふとも,ながなはのらじ","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,地名,序詞,恋情","#[訓異]
あらぐまの,[寛]あらくまの,
すむといふやまの[寛],
しはせやま[寛],
せめてとふとも[寛],
ながなはのらじ,[寛]なかなはつけし,
" "#[番号]11/2697","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]妹之名毛 吾名毛立者 惜社 布仕能高嶺之 燎乍渡","#[訓読]妹が名も我が名も立たば惜しみこそ富士の高嶺の燃えつつわたれ","#[仮名],いもがなも,わがなもたたば,をしみこそ,ふじのたかねの,もえつつわたれ","#[左注]或歌曰 君名毛 妾名毛立者 惜己曽 不盡乃高山之 燎乍毛居","#[校異]","#[事項],地名,静岡県,名前,うわさ,恋情,序詞","#[訓異]
いもがなも,[寛]いもかなも,
わがなもたたば,[寛]わかなもたたは,
をしみこそ[寛],
ふじのたかねの,[寛]ふしのたかねの,
もえつつわたれ[寛],
" "#[番号]11/2697S","#[題詞](寄物陳思)或歌曰","#[原文]君名毛 妾名毛立者 惜己曽 不盡乃高山之 燎乍毛居","#[訓読]君が名も我が名も立たば惜しみこそ富士の高嶺の燃えつつも居れ ","#[仮名],きみがなも,わがなもたたば,をしみこそ,ふじのたかねの,もえつつもをれ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,序詞,地名,静岡県,名前,うわさ,恋情","#[訓異]
きみがなも,[寛]きみかなも,
わがなもたたば,[寛]わかなもたたは,
をしみこそ[寛],
ふじのたかねの,[寛]ふしのたかねの,
もえつつもをれ,[寛]もえつつもをる,
" "#[番号]11/2698","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]徃而見而 来戀敷 朝香方 山越置代 宿不勝鴨","#[訓読]行きて見て来れば恋ほしき朝香潟山越しに置きて寐ねかてぬかも","#[仮名],ゆきてみて,くればこほしき,あさかがた,やまごしにおきて,いねかてぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,大阪府,序詞,恋情","#[訓異]
ゆきてみて[寛],
くればこほしき,[寛]きてそこひしき,
あさかがた,[寛]あさかかた,
やまごしにおきて,[寛]やまこしにききて,
いねかてぬかも[寛],
" "#[番号]11/2699","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]安太人<乃> 八名打度 瀬速 意者雖念 直不相鴨","#[訓読]阿太人の梁打ち渡す瀬を早み心は思へど直に逢はぬかも","#[仮名],あだひとの,やなうちわたす,せをはやみ,こころはおもへど,ただにあはぬかも","#[左注]","#[校異]之 -> 乃 [嘉][古][紀]","#[事項],地名,奈良県,五条市,序詞,恋情","#[訓異]
あだひとの,[寛]あたひとの,
やなうちわたす[寛],
せをはやみ[寛],
こころはおもへど,[寛]こころはおもへと,
ただにあはぬかも,[寛]たたにあはぬかも,
" "#[番号]11/2700","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]玉蜻 石垣淵之 隠庭 伏<雖>死 汝名羽不謂","#[訓読]玉かぎる岩垣淵の隠りには伏して死ぬとも汝が名は告らじ","#[仮名],たまかぎる,いはかきふちの,こもりには,ふしてしぬとも,ながなはのらじ","#[左注]","#[校異]以 -> 雖 [万葉考]","#[事項],恋情,枕詞,序詞,名前","#[訓異]
たまかぎる,[寛]かけろふの,
いはかきふちの[寛],
こもりには,[寛]かくれには,
ふしてしぬとも[寛],
ながなはのらじ,[寛]なかなはいはし,
" "#[番号]11/2701","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]明日香川 明日文将渡 石走 遠心者 不思鴨","#[訓読]明日香川明日も渡らむ石橋の遠き心は思ほえぬかも","#[仮名],あすかがは,あすもわたらむ,いしはしの,とほきこころは,おもほえぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,明日香,奈良県,序詞","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
あすもわたらむ[寛],
いしはしの[寛],
とほきこころは[寛],
おもほえぬかも[寛],
" "#[番号]11/2702","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]飛鳥川 水徃増 弥日異 戀乃増者 在勝<申><自>","#[訓読]明日香川水行きまさりいや日異に恋のまさらばありかつましじ","#[仮名],あすかがは,みづゆきまさり,いやひけに,こひのまさらば,ありかつましじ","#[左注]","#[校異]甲 -> 申 [嘉][類][古] / 目 -> 自 [橋本進吉説]","#[事項],地名,明日香,奈良県,序詞,恋情","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
みづゆきまさり,[寛]みつゆきまさり,
いやひけに[寛],
こひのまさらば,[寛]こひのまされは,
ありかつましじ,[寛]ありかてぬかも,
" "#[番号]11/2703","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]真薦苅 大野川原之 水隠 戀来之妹之 紐解吾者","#[訓読]ま薦刈る大野川原の水隠りに恋ひ来し妹が紐解く我れは","#[仮名],まこもかる,おほのがはらの,みごもりに,こひこしいもが,ひもとくわれは","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,地名,序詞,恋情","#[訓異]
まこもかる[寛],
おほのがはらの,[寛]おほのかはらの,
みごもりに,[寛]みこもりに,
こひこしいもが,[寛]こひこしいもか,
ひもとくわれは[寛],
" "#[番号]11/2704","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]悪氷木<乃> 山下動 逝水之 時友無雲 戀度鴨","#[訓読]あしひきの山下響み行く水の時ともなくも恋ひわたるかも","#[仮名],あしひきの,やましたとよみ,ゆくみづの,ときともなくも,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]之 -> 乃 [嘉][類][古]","#[事項],枕詞,序詞,恋情","#[訓異]
あしひきの[寛],
やましたとよみ[寛],
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
ときともなくも[寛],
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]11/2705","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]愛八師 不相君故 徒尓 此川瀬尓 玉裳<沾>津","#[訓読]はしきやし逢はぬ君ゆゑいたづらにこの川の瀬に玉裳濡らしつ","#[仮名],はしきやし,あはぬきみゆゑ,いたづらに,このかはのせに,たまもぬらしつ","#[左注]","#[校異]沽 -> 沾 [文][細][温]","#[事項],女歌,川渡り,恋情","#[訓異]
はしきやし,[寛]よしえやし,
あはぬきみゆゑ[寛],
いたづらに,[寛]いたつらに,
このかはのせに[寛],
たまもぬらしつ[寛],
" "#[番号]11/2706","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]泊湍<川> 速見早湍乎 結上而 不飽八妹登 問師公羽裳","#[訓読]泊瀬川早み早瀬をむすび上げて飽かずや妹と問ひし君はも","#[仮名],はつせがは,はやみはやせを,むすびあげて,あかずやいもと,とひしきみはも","#[左注]","#[校異]河 -> 川 [嘉][文][類][紀]","#[事項],地名,奈良県,長谷,女歌,恋情","#[訓異]
はつせがは,[寛]はつせかは,
はやみはやせを[寛],
むすびあげて,[寛]むすひあけて,
あかずやいもと,[寛]あかすやいもと,
とひしきみはも[寛],
" "#[番号]11/2707","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]青山之 石垣沼間乃 水隠尓 戀哉<将>度 相縁乎無","#[訓読]青山の岩垣沼の水隠りに恋ひやわたらむ逢ふよしをなみ","#[仮名],あをやまの,いはかきぬまの,みごもりに,こひやわたらむ,あふよしをなみ","#[左注]","#[校異]<> -> 将 [嘉][類]","#[事項],恋情,序詞","#[訓異]
あをやまの[寛],
いはかきぬまの[寛],
みごもりに,[寛]みこもりに,
こひやわたらむ[寛],
あふよしをなみ[寛],
" "#[番号]11/2708","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]四長鳥 居名山響尓 行水乃 名耳所縁之 内妻波母 [一云 名<耳>所縁而 戀管哉将在] ","#[訓読]しなが鳥猪名山響に行く水の名のみ寄そりし隠り妻はも [一云 名のみ寄そりて恋ひつつやあらむ] ","#[仮名],しながどり,ゐなやまとよに,ゆくみづの,なのみよそりし,こもりづまはも,[なのみよそりて,こひつつやあらむ]","#[左注]","#[校異]耳之 -> 耳 [嘉]","#[事項],動物,枕詞,大阪府池田市,序詞,恋情,異伝","#[訓異]
しながどり,[寛]しなかとり,
ゐなやまとよに[寛],
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
なのみよそりし,[寛]なにのみよせし,
こもりづまはも,[寛]つまはも,
[なのみよそりて,[寛]なのみしよせて,
こひつつやあらむ][寛],
" "#[番号]11/2709","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾妹子 吾戀樂者 水有者 之賀良三<超>而 應逝衣思 [或本歌發句云 相不思 人乎念久] ","#[訓読]我妹子に我が恋ふらくは水ならばしがらみ越して行くべく思ほゆ [或本歌發句云 相思はぬ人を思はく] ","#[仮名],わぎもこに,あがこふらくは,みづならば,しがらみこして,ゆくべくおもほゆ,[あひおもはぬ,ひとをおもはく]","#[左注]","#[校異]越 -> 超 [嘉][文][類][紀] / 衣 (塙)(楓) 所","#[事項],恋情,異伝","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
みづならば,[寛]みつならは,
しがらみこして,[寛]しからみこゑて,
ゆくべくおもほゆ,[寛]ゆくへくそおもふ,
[あひおもはぬ,[寛]あひおもはす,
ひとをおもはく][寛],
" "#[番号]11/2710","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]狗上之 鳥籠山尓有 不知也河 不知二五寸許瀬 余名告奈","#[訓読]犬上の鳥籠の山なる不知哉川いさとを聞こせ我が名告らすな","#[仮名],いぬかみの,とこのやまなる,いさやかは,いさとをきこせ,わがなのらすな","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,滋賀県,彦根市,序詞,名前","#[訓異]
いぬかみの[寛],
とこのやまなる[寛],
いさやかは[寛],
いさとをきこせ,[寛]いわとをきこせ,
わがなのらすな,[寛]わかなつけすな,
" "#[番号]11/2711","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]奥山之 木葉隠而 行水乃 音聞従 常不所忘","#[訓読]奥山の木の葉隠りて行く水の音聞きしより常忘らえず","#[仮名],おくやまの,このはがくりて,ゆくみづの,おとききしより,つねわすらえず","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋情,うわさ","#[訓異]
おくやまの[寛],
このはがくりて,[寛]このはかくれて,
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
おとききしより[寛],
つねわすらえず,[寛]つねわすられす,
" "#[番号]11/2712","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]言急者 中波余騰益 水無河 絶跡云事乎 有超名湯目","#[訓読]言急くは中は淀ませ水無川絶ゆといふことをありこすなゆめ","#[仮名],こととくは,なかはよどませ,みなしがは,たゆといふことを,ありこすなゆめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,うわさ,女歌","#[訓異]
こととくは[寛],
なかはよどませ,[寛]なかはよとまし,
みなしがは,[寛]みなせかは,
たゆといふことを,[寛]たゆてふことを,
ありこすなゆめ[寛],
" "#[番号]11/2713","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]明日香河 逝湍乎早見 将速登 待良武妹乎 此日晩津","#[訓読]明日香川行く瀬を早み早けむと待つらむ妹をこの日暮らしつ","#[仮名],あすかがは,ゆくせをはやみ,はやけむと,まつらむいもを,このひくらしつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,明日香,奈良県,序詞,恋情","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
ゆくせをはやみ[寛],
はやけむと,[寛]はやみむと,
まつらむいもを[寛],
このひくらしつ[寛],
" "#[番号]11/2714","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]物部乃 八十氏川之 急瀬 立不得戀毛 吾為鴨 [一云 立而毛君者 忘金津藻] ","#[訓読]もののふの八十宇治川の早き瀬に立ちえぬ恋も我れはするかも [一云 立ちても君は忘れかねつも] ","#[仮名],もののふの,やそうぢがはの,はやきせに,たちえぬこひも,あれはするかも,[たちてもきみは,わすれかねつも]","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,地名,京都府,序詞,恋情,異伝","#[訓異]
もののふの[寛],
やそうぢがはの,[寛]やそうちかはの,
はやきせに[寛],
たちえぬこひも,[寛]たちあへぬこひも,
あれはするかも,[寛]われはするかも,
[たちてもきみは[寛],
わすれかねつも][寛],
" "#[番号]11/2715","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]神名火 打廻前乃 石淵 隠而耳八 吾戀居","#[訓読]神なびの打廻の崎の岩淵の隠りてのみや我が恋ひ居らむ","#[仮名],かむなびの,うちみのさきの,いはぶちの,こもりてのみや,あがこひをらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,奈良県,明日香,序詞,恋情","#[訓異]
かむなびの,[寛]かみなひを,
うちみのさきの,[寛]うちにふさきの,
いはぶちの,[寛]いはふちに,
こもりてのみや,[寛]かくれてのみや,
あがこひをらむ,[寛]わかこひをらむ,
" "#[番号]11/2716","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]自高山 出来水 石觸 破衣念 妹不相夕者","#[訓読]高山ゆ出で来る水の岩に触れ砕けてぞ思ふ妹に逢はぬ夜は","#[仮名],たかやまゆ,いでくるみづの,いはにふれ,くだけてぞおもふ,いもにあはぬよは","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,序詞","#[訓異]
たかやまゆ,[寛]たかねより,
いでくるみづの,[寛]いてくるみつの,
いはにふれ[寛],
くだけてぞおもふ,[寛]われてそおもふ,
いもにあはぬよは[寛],
" "#[番号]11/2717","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]朝東風尓 井<堤超>浪之 世<染>似裳 不相鬼故 瀧毛響動二","#[訓読]朝東風にゐで越す波の外目にも逢はぬものゆゑ瀧もとどろに","#[仮名],あさごちに,ゐでこすなみの,よそめにも,あはぬものゆゑ,たきもとどろに","#[左注]","#[校異]提越 -> 堤超 [類] / 蝶 -> 染 [万葉考]","#[事項],恋情,序詞,うわさ","#[訓異]
あさごちに,[寛]あさこちに,
ゐでこすなみの,[寛]ゐてこすなみの,
よそめにも,[寛]せてうにも,
あはぬものゆゑ[寛],
たきもとどろに,[寛]たきもととろに,
" "#[番号]11/2718","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]高山之 石本瀧千 逝水之 音尓者不立 戀而雖死","#[訓読]高山の岩もとたぎち行く水の音には立てじ恋ひて死ぬとも","#[仮名],たかやまの,いはもとたぎち,ゆくみづの,おとにはたてじ,こひてしぬとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,序詞,うわさ","#[訓異]
たかやまの[寛],
いはもとたぎち,[寛]いはもとたきち,
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
おとにはたてじ,[寛]おとにはたてし,
こひてしぬとも[寛],
" "#[番号]11/2719","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]隠沼乃 下尓戀者 飽不足 人尓語都 可忌物乎","#[訓読]隠り沼の下に恋ふれば飽き足らず人に語りつ忌むべきものを","#[仮名],こもりぬの,したにこふれば,あきだらず,ひとにかたりつ,いむべきものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,うわさ,枕詞","#[訓異]
こもりぬの,[寛]かくれぬの,
したにこふれば,[寛]したにこふれは,
あきだらず,[寛]あきたらす,
ひとにかたりつ[寛],
いむべきものを,[寛]いむへきものを,
" "#[番号]11/2720","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]水鳥乃 鴨之住池之 下樋無 欝悒君 今日見鶴鴨","#[訓読]水鳥の鴨の棲む池の下樋なみいぶせき君を今日見つるかも","#[仮名],みづとりの,かものすむいけの,したびなみ,いぶせききみを,けふみつるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,序詞","#[訓異]
みづとりの,[寛]みつとりの,
かものすむいけの[寛],
したびなみ,[寛]したひなみ,
いぶせききみを,[寛]ゆかしききみを,
けふみつるかも[寛],
" "#[番号]11/2721","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]玉藻苅 井<堤>乃四賀良美 薄可毛 戀乃余杼女留 吾情可聞","#[訓読]玉藻刈るゐでのしがらみ薄みかも恋の淀める我が心かも","#[仮名],たまもかる,ゐでのしがらみ,うすみかも,こひのよどめる,あがこころかも","#[左注]","#[校異]提 -> 堤 [西(訂正)][文]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
たまもかる[寛],
ゐでのしがらみ,[寛]ゐてのしからみ,
うすみかも,[寛]うすきかも,
こひのよどめる,[寛]こひのよとめる,
あがこころかも,[寛]わかこころかも,
" "#[番号]11/2722","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾妹子之 笠乃借手乃 和射見野尓 吾者入跡 妹尓告乞","#[訓読]我妹子が笠のかりての和射見野に我れは入りぬと妹に告げこそ","#[仮名],わぎもこが,かさのかりての,わざみのに,われはいりぬと,いもにつげこそ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,岐阜県,関ヶ原,序詞,羈旅,恋愛,望郷","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
かさのかりての[寛],
わざみのに,[寛]わさみのに,
われはいりぬと[寛],
いもにつげこそ,[寛]いもにつけこそ,
" "#[番号]11/2723","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]數多不有 名乎霜惜三 埋木之 下<従>其戀 去方不知而","#[訓読]あまたあらぬ名をしも惜しみ埋れ木の下ゆぞ恋ふるゆくへ知らずて","#[仮名],あまたあらぬ,なをしもをしみ,うもれぎの,したゆぞこふる,ゆくへしらずて","#[左注]","#[校異]徒 -> 従 [嘉][文][類][紀]","#[事項],恋情,うわさ,枕詞","#[訓異]
あまたあらぬ,[寛]あまたあふぬ,
なをしもをしみ[寛],
うもれぎの,[寛]むもれきの,
したゆぞこふる,[寛]したにそこふる,
ゆくへしらずて,[寛]ゆくへしらすて,
" "#[番号]11/2724","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]冷風之 千江之浦廻乃 木積成 心者依 後者雖不知","#[訓読]秋風の千江の浦廻の木屑なす心は寄りぬ後は知らねど","#[仮名],あきかぜの,ちえのうらみの,こつみなす,こころはよりぬ,のちはしらねど","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,序詞,恋情","#[訓異]
あきかぜの,[寛]あきかせの,
ちえのうらみの,[寛]ちえのうらわの,
こつみなす,[寛]こつみなる,
こころはよりぬ[寛],
のちはしらねど,[寛]のちはしらねと,
" "#[番号]11/2725","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]白細<砂> 三津之黄土 色出而 不云耳衣 我戀樂者","#[訓読]白真砂御津の埴生の色に出でて言はなくのみぞ我が恋ふらくは","#[仮名],しらまなご,みつのはにふの,いろにいでて,いはなくのみぞ,あがこふらくは","#[左注]","#[校異]妙 -> 砂 [嘉][文][類][紀]","#[事項],地名,大阪府,序詞,うわさ,恋情","#[訓異]
しらまなご,[寛]しらまなこ,
みつのはにふの[寛],
いろにいでて,[寛]いろにいてて,
いはなくのみぞ,[寛]いはすてのみそ,
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
" "#[番号]11/2726","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]風不吹 浦尓浪立 無名乎 吾者負香 逢者無二 [一云 女跡念而] ","#[訓読]風吹かぬ浦に波立ちなき名をも我れは負へるか逢ふとはなしに [一云 女と思ひて] ","#[仮名],かぜふかぬ,うらになみたち,なきなをも,われはおへるか,あふとはなしに,[をみなとおもひて]","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,うわさ,恋愛,異伝","#[訓異]
かぜふかぬ,[寛]かせふかぬ,
うらになみたち,[寛]うらになみたつ,
なきなをも[寛],
われはおへるか,[寛]われはおふかも,
あふとはなしに[寛],
[をみなとおもひて]
" "#[番号]11/2727","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]酢蛾嶋之 夏身乃浦尓 依浪 間文置 吾不念君","#[訓読]酢蛾島の夏身の浦に寄する波間も置きて我が思はなくに","#[仮名],すがしまの,なつみのうらに,よするなみ,あひだもおきて,わがおもはなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,三重県,菅島,序詞,恋情","#[訓異]
すがしまの,[寛]すかしまの,
なつみのうらに[寛],
よするなみ,[寛]よるなみの,
あひだもおきて,[寛]あひたもおきて,
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]11/2728","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]淡海之海 奥津嶋山 奥間經而 我念妹之 言繁<苦>","#[訓読]近江の海沖つ島山奥まへて我が思ふ妹が言の繁けく","#[仮名],あふみのうみ,おきつしまやま,おくまへて,あがおもふいもが,ことのしげけく","#[左注]","#[校異]之海 [嘉][古] 之 / <> -> 苦 [嘉][類][古]","#[事項],地名,琵琶湖,滋賀県,序詞,うわさ,恋愛","#[訓異]
あふみのうみ[寛],
おきつしまやま[寛],
おくまへて,[寛]おきまへて,
あがおもふいもが,[寛]わかおもふいもか,
ことのしげけく,[寛]ことのしけけむ,
" "#[番号]11/2729","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]霰零 遠<津>大浦尓 縁浪 縦毛依十万 憎不有君","#[訓読]霰降り遠つ大浦に寄する波よしも寄すとも憎くあらなくに","#[仮名],あられふり,とほつおほうらに,よするなみ,よしもよすとも,にくくあらなくに","#[左注]","#[校異]<> -> 津 [西(訂正)][嘉][文][類]","#[事項],枕詞,地名,滋賀県,西浅井町,序詞,恋愛","#[訓異]
あられふり,[寛]あられふる,
とほつおほうらに[寛],
よするなみ,[寛]よるなみの,
よしもよすとも,[寛]よしもよしとも,
にくくあらなくに,[寛]にくからなくに,
" "#[番号]11/2730","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]木海之 名高之浦尓 依浪 音高鳧 不相子故尓","#[訓読]紀の海の名高の浦に寄する波音高きかも逢はぬ子ゆゑに","#[仮名],きのうみの,なたかのうらに,よするなみ,おとだかきかも,あはぬこゆゑに","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,和歌山県,海南市,序詞,うわさ,恋愛","#[訓異]
きのうみの[寛],
なたかのうらに[寛],
よするなみ,[寛]よるなみの,
おとだかきかも,[寛]おとたかしかも,
あはぬこゆゑに,[寛]あはぬこゆへに,
" "#[番号]11/2731","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]牛窓之 浪乃塩左猪 嶋響 所依之<君> 不相鴨将有","#[訓読]牛窓の波の潮騒島響み寄そりし君は逢はずかもあらむ","#[仮名],うしまどの,なみのしほさゐ,しまとよみ,よそりしきみは,あはずかもあらむ","#[左注]","#[校異]君尓 -> 君 [嘉][類]","#[事項],地名,岡山県,牛窓町,うわさ,女歌,序詞","#[訓異]
うしまどの,[寛]うしまとの,
なみのしほさゐ[寛],
しまとよみ,[寛]しまひひき,
よそりしきみは,[寛]よられしきみに,
あはずかもあらむ,[寛]あはすかもあらむ,
" "#[番号]11/2732","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]奥波 邊浪之来縁 左太能浦之 此左太過而 後将戀可聞","#[訓読]沖つ波辺波の来寄る佐太の浦のこのさだ過ぎて後恋ひむかも","#[仮名],おきつなみ,へなみのきよる,さだのうらの,このさだすぎて,のちこひむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,序詞,恋情","#[訓異]
おきつなみ[寛],
へなみのきよる[寛],
さだのうらの,[寛]さたのうらの,
このさだすぎて,[寛]このさたすきて,
のちこひむかも[寛],
" "#[番号]11/2733","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]白浪之 来縁嶋乃 荒礒尓毛 有申物尾 戀乍不有者","#[訓読]白波の来寄する島の荒礒にもあらましものを恋ひつつあらずは","#[仮名],しらなみの,きよするしまの,ありそにも,あらましものを,こひつつあらずは","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
しらなみの[寛],
きよするしまの[寛],
ありそにも,[寛]あらいそにも,
あらましものを[寛],
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
" "#[番号]11/2734","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]塩満者 水沫尓浮 細砂裳 吾者生鹿 戀者不死而","#[訓読]潮満てば水泡に浮かぶ真砂にも我はなりてしか恋ひは死なずて","#[仮名],しほみてば,みなわにうかぶ,まなごにも,わはなりてしか,こひはしなずて","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
しほみてば,[寛]しほみては,
みなわにうかぶ,[寛]みなはにうかふ,
まなごにも,[寛]まなこにも,
わはなりてしか,[寛]われはなりしか,
こひはしなずて,[寛]こひはしなすて,
" "#[番号]11/2735","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]住吉之 城師乃浦箕尓 布浪之 數妹乎 見因欲得","#[訓読]住吉の岸の浦廻にしく波のしくしく妹を見むよしもがも","#[仮名],すみのえの,きしのうらみに,しくなみの,しくしくいもを,みむよしもがも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,大阪府,住吉,序詞,恋情","#[訓異]
すみのえの[寛],
きしのうらみに[寛],
しくなみの,[寛]しきなみの,
しくしくいもを,[寛]かすにもいもを,
みむよしもがも,[寛]みるよしもかな,
" "#[番号]11/2736","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]風緒痛 甚振浪能 間無 吾念君者 相念濫香","#[訓読]風をいたみいたぶる波の間なく我が思ふ君は相思ふらむか","#[仮名],かぜをいたみ,いたぶるなみの,あひだなく,あがおもふきみは,あひおもふらむか","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋情,女歌","#[訓異]
かぜをいたみ,[寛]かせをいたみ,
いたぶるなみの,[寛]いたふるなみの,
あひだなく,[寛]あひたなく,
あがおもふいもは,[寛]わかおもふきみは,
あひおもふらむか[寛],
" "#[番号]11/2737","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]大伴之 三津乃白浪 間無 我戀良苦乎 人之不知久","#[訓読]大伴の御津の白波間なく我が恋ふらくを人の知らなく","#[仮名],おほともの,みつのしらなみ,あひだなく,あがこふらくを,ひとのしらなく","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,大阪府,序詞,恋情,女歌","#[訓異]
おほともの[寛],
みつのしらなみ[寛],
あひだなく,[寛]あひたなく,
あがこふらくを,[寛]わかこふらくを,
ひとのしらなく[寛],
" "#[番号]11/2738","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]大船乃 絶多經海尓 重石下 何如為鴨 吾戀将止","#[訓読]大船のたゆたふ海にいかり下ろしいかにせばかも我が恋やまむ","#[仮名],おほぶねの,たゆたふうみに,いかりおろし,いかにせばかも,あがこひやまむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋情","#[訓異]
おほぶねの,[寛]おほふねの,
たゆたふうみに[寛],
いかりおろし[寛],
いかにせばかも,[寛]いかにしてかも,
あがこひやまむ,[寛]わかこひやまむ,
" "#[番号]11/2739","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]水沙兒居 奥<麁>礒尓 縁浪 徃方毛不知 吾戀久波","#[訓読]みさご居る沖つ荒礒に寄する波ゆくへも知らず我が恋ふらくは","#[仮名],みさごゐる,おきつありそに,よするなみ,ゆくへもしらず,あがこふらくは","#[左注]","#[校異]原字不明 -> 麁 [西(上書訂正)][嘉][文][類]","#[事項],動物,鳥,序詞,恋情","#[訓異]
みさごゐる,[寛]みさこゐる,
おきつありそに,[寛]おきのあらいそに,
よするなみ,[寛]よるなみの,
ゆくへもしらず,[寛]ゆくへもしらす,
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
" "#[番号]11/2740","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]大船之 <艫毛舳>毛 依浪 <依>友吾者 君之<任>意","#[訓読]大船の艫にも舳にも寄する波寄すとも我れは君がまにまに","#[仮名],おほぶねの,ともにもへにも,よするなみ,よすともわれは,きみがまにまに","#[左注]","#[校異]舳毛艫 -> 艫毛舳 [嘉][類][古] / <> -> 依 [西(訂正)][嘉][文][類][紀] / 随 -> 任 [嘉][類]","#[事項],恋情,序詞,女歌","#[訓異]
おほぶねの,[寛]おほふねの,
ともにもへにも,[寛]へにもともにも,
よするなみ,[寛]よるなみの,
よすともわれは,[寛]よるともわれは,
きみがまにまに,[寛]きみかまにまに,
" "#[番号]11/2741","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]大海二 立良武浪者 間将有 公二戀等九 止時毛梨","#[訓読]大海に立つらむ波は間あらむ君に恋ふらくやむ時もなし","#[仮名],おほうみに,たつらむなみは,あひだあらむ,きみにこふらく,やむときもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
おほうみに[寛],
たつらむなみは[寛],
あひだあらむ,[寛]まもあらむに,
きみにこふらく[寛],
やむときもなし[寛],
" "#[番号]11/2742","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]<壮>鹿海部乃 火氣焼立而 燎塩乃 辛戀毛 吾為鴨","#[訓読]志賀の海人の煙焼き立て焼く塩の辛き恋をも我れはするかも","#[仮名],しかのあまの,けぶりやきたて,やくしほの,からきこひをも,あれはするかも","#[左注]右一首或云石川君子朝臣作之","#[校異]牡 -> 壮 [古]","#[事項],作者:石川君子,作者異伝,地名,福岡県,志賀島,序詞,恋愛","#[訓異]
しかのあまの[寛],
けぶりやきたて,[寛]けふりやきたて,
やくしほの[寛],
からきこひをも[寛],
あれはするかも,[寛]われはするかも,
" "#[番号]11/2743","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]中々二 君二不戀者 <枚>浦乃 白水郎有申尾 玉藻苅管","#[訓読]なかなかに君に恋ひずは比良の浦の海人ならましを玉藻刈りつつ","#[仮名],なかなかに,きみにこひずは,ひらのうらの,あまならましを,たまもかりつつ","#[左注]或本歌曰 中々尓 君尓不戀波 留<牛馬>浦之 海部尓有益男 珠藻苅<々>","#[校異]牧 -> 枚 [類][古][紀] / 鳥 -> 牛馬 [嘉] / 苅 -> 々 [嘉][類][文][細]","#[事項],地名,滋賀県,比良,植物,恋愛","#[訓異]
なかなかに[寛],
きみにこひずは,[寛]きみにこひすは,
ひらのうらの[寛],
あまならましを[寛],
たまもかりつつ[寛],
" "#[番号]11/2743S","#[題詞](寄物陳思)或本歌曰","#[原文]中々尓 君尓不戀波 留<牛馬>浦之 海部尓有益男 珠藻苅<々> ","#[訓読]なかなかに君に恋ひずは縄の浦の海人にあらましを玉藻刈る刈る ","#[仮名],なかなかに,きみにこひずは,なはのうらの,あまにあらましを,たまもかるかる","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,兵庫県,相生市,恋愛,植物,異伝","#[訓異]
なかなかに[寛],
きみにこひずは,[寛]きみにこひすは,
なはのうらの,[寛]あみのうらの,
あまにあらましを[寛],
たまもかるかる[寛],
" "#[番号]11/2744","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]鈴寸取 海部之燭火 外谷 不見人故 戀比日","#[訓読]鱸取る海人の燈火外にだに見ぬ人ゆゑに恋ふるこのころ","#[仮名],すずきとる,あまのともしび,よそにだに,みぬひとゆゑに,こふるこのころ","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,魚,枕詞,序詞,恋情","#[訓異]
すずきとる,[寛]すすきとる,
あまのともしび,[寛]あまのともしひ,
よそにだに,[寛]よそにたに,
みぬひとゆゑに,[寛]みぬひとゆへに,
こふるこのころ[寛],
" "#[番号]11/2745","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]湊入之 葦別小<舟> 障多見 吾念<公>尓 不相頃者鴨","#[訓読]港入りの葦別け小舟障り多み我が思ふ君に逢はぬころかも","#[仮名],みなといりの,あしわけをぶね,さはりおほみ,あがおもふきみに,あはぬころかも","#[左注]","#[校異]船 -> 舟 [嘉][文] / 君 -> 公 [嘉][文][類][紀]","#[事項],序詞,うわさ,障害,恋情","#[訓異]
みなといりの[寛],
あしわけをぶね,[寛]あしわけをふね,
さはりおほみ[寛],
あがおもふきみに,[寛]わかおもふきみに,
あはぬころかも[寛],
" "#[番号]11/2746","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]庭浄 奥方榜出 海舟乃 執梶間無 戀為鴨","#[訓読]庭清み沖へ漕ぎ出る海人舟の楫取る間なき恋もするかも","#[仮名],にはきよみ,おきへこぎづる,あまぶねの,かぢとるまなき,こひもするかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋情","#[訓異]
にはきよみ[寛],
おきへこぎづる,[寛]おきへこきいつる,
あまぶねの,[寛]あまふねの,
かぢとるまなき,[寛]かちとるまなき,
こひもするかも[寛],
" "#[番号]11/2747","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]味鎌之 塩津乎射而 水手船之 名者謂手師乎 不相将有八方","#[訓読]あぢかまの塩津をさして漕ぐ船の名は告りてしを逢はざらめやも","#[仮名],あぢかまの,しほつをさして,こぐふねの,なはのりてしを,あはざらめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,滋賀県,塩津,序詞,恋愛,怨み","#[訓異]
あぢかまの,[寛]あちかまの,
しほつをさして[寛],
こぐふねの,[寛]こくふねの,
なはのりてしを,[寛]なはいひてしを,
あはざらめやも,[寛]あはさらめやも,
" "#[番号]11/2748","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]大<船>尓 葦荷苅積 四美見似裳 妹心尓 乗来鴨","#[訓読]大船に葦荷刈り積みしみみにも妹は心に乗りにけるかも","#[仮名],おほぶねに,あしにかりつみ,しみみにも,いもはこころに,のりにけるかも","#[左注]","#[校異]舟 -> 船 [嘉][類][京]","#[事項],序詞,植物,恋情","#[訓異]
おほぶねに,[寛]おほふねに,
あしにかりつみ[寛],
しみみにも[寛],
いもはこころに,[寛]いもかこころに,
のりにけるかも[寛],
" "#[番号]11/2749","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]驛路尓 引舟渡 直乗尓 妹情尓 乗来鴨","#[訓読]駅路に引き舟渡し直乗りに妹は心に乗りにけるかも","#[仮名],はゆまぢに,ひきふねわたし,ただのりに,いもはこころに,のりにけるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋情","#[訓異]
はゆまぢに,[寛]はいまちに,
ひきふねわたし[寛],
ただのりに,[寛]たたのりに,
いもはこころに,[寛]いもかこころに,
のりにけるかも[寛],
" "#[番号]11/2750","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾妹子 不相久 馬下乃 阿倍橘乃 蘿生左右","#[訓読]我妹子に逢はず久しもうましもの安倍橘の苔生すまでに","#[仮名],わぎもこに,あはずひさしも,うましもの,あへたちばなの,こけむすまでに","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,恋情","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
あはずひさしも,[寛]あはてひさしも,
うましもの[寛],
あへたちばなの,[寛]あへたちはなの,
こけむすまでに,[寛]こけのむすまて,
" "#[番号]11/2751","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]味乃住 渚沙乃入江之 荒礒松 我乎待兒等波 但一耳","#[訓読]あぢの住む渚沙の入江の荒礒松我を待つ子らはただ独りのみ","#[仮名],あぢのすむ,すさのいりえの,ありそまつ,あをまつこらは,ただひとりのみ","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,地名,植物,序詞,恋愛","#[訓異]
あぢのすむ,[寛]あちのすむ,
すさのいりえの[寛],
ありそまつ,[寛]あらいそのまつ,
あをまつこらは,[寛]われをまつこらは,
ただひとりのみ,[寛]たたひとりのみ,
" "#[番号]11/2752","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾妹兒乎 聞都賀野邊能 靡合歡木 吾者隠不得 間無念者","#[訓読]我妹子を聞き都賀野辺のしなひ合歓木我れは忍びず間なくし思へば","#[仮名],わぎもこを,ききつがのへの,しなひねぶ,われはしのびず,まなくしおもへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,植物,序詞,恋情","#[訓異]
わぎもこを,[寛]わきもこを,
ききつがのへの,[寛]ききつかのへの,
しなひねぶ,[寛]なひきねふ,
われはしのびず,[寛]われはしのひえす,
まなくしおもへば,[寛]まなくおもへは,
" "#[番号]11/2753","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]浪間従 所見小嶋 濱久木 久成奴 君尓不相四手","#[訓読]波の間ゆ見ゆる小島の浜久木久しくなりぬ君に逢はずして","#[仮名],なみのまゆ,みゆるこしまの,はまひさぎ,ひさしくなりぬ,きみにあはずして","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,序詞,恋情","#[訓異]
なみのまゆ,[寛]なみまより,
みゆるこしまの[寛],
はまひさぎ,[寛]はまひさき,
ひさしくなりぬ[寛],
きみにあはずして,[寛]きみにあはすして,
" "#[番号]11/2754","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]朝柏 閏八河邊之 小竹之眼笶 思而宿者 夢所見来","#[訓読]朝柏潤八川辺の小竹の芽の偲ひて寝れば夢に見えけり","#[仮名],あさかしは,うるやかはへの,しののめの,しのひてぬれば,いめにみえけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,地名,序詞,恋情","#[訓異]
あさかしは[寛],
うるやかはへの,[寛]ぬるやかはへの,
しののめの[寛],
しのひてぬれば,[寛]おもひてぬれは,
いめにみえけり,[寛]ゆめにみえけり,
" "#[番号]11/2755","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]淺茅原 苅標刺而 空事文 所縁之君之 辞鴛鴦将待","#[訓読]浅茅原刈り標さして空言も寄そりし君が言をし待たむ","#[仮名],あさぢはら,かりしめさして,むなことも,よそりしきみが,ことをしまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,うわさ,女歌,恋愛","#[訓異]
あさぢはら,[寛]あさちはら,
かりしめさして[寛],
むなことも,[寛]そらことも,
よそりしきみが,[寛]よせてしきみか,
ことをしまたむ[寛],
" "#[番号]11/2756","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]月草之 借有命 在人乎 何知而鹿 後毛将相<云>","#[訓読]月草の借れる命にある人をいかに知りてか後も逢はむと言ふ","#[仮名],つきくさの,かれるいのちに,あるひとを,いかにしりてか,のちもあはむといふ","#[左注]","#[校異]公 -> 云 [西(訂正)][嘉][文][類]","#[事項],植物,枕詞,女歌","#[訓異]
つきくさの[寛],
かれるいのちに,[寛]かりなるいのち,
あるひとを[寛],
いかにしりてか[寛],
のちもあはむといふ,[寛]のちもあはむてふ,
" "#[番号]11/2757","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]王之 御笠尓縫有 在間菅 有管雖看 事無吾妹","#[訓読]大君の御笠に縫へる有間菅ありつつ見れど事なき我妹","#[仮名],おほきみの,みかさにぬへる,ありますげ,ありつつみれど,ことなきわぎも","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,枕詞,序詞,地名,兵庫県,有馬,恋愛","#[訓異]
おほきみの[寛],
みかさにぬへる[寛],
ありますげ,[寛]ありますけ,
ありつつみれど,[寛]ありつつみれと,
ことなきわぎも,[寛]ことなきわきも,
" "#[番号]11/2758","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]菅根之 懃妹尓 戀西 益卜<男>心 不所念鳧","#[訓読]菅の根のねもころ妹に恋ふるにし大夫心思ほえぬかも","#[仮名],すがのねの,ねもころいもに,こふるにし,ますらをごころ,おもほえぬかも","#[左注]","#[校異]思而 -> 男 [万葉集略解(宣長説)]","#[事項],植物,恋情,枕詞","#[訓異]
すがのねの,[寛]すかのねの,
ねもころいもに[寛],
こふるにし,[寛]こひせまし,
ますらをごころ,[寛]うらおもふこころ,
おもほえぬかも[寛],
" "#[番号]11/2759","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾屋戸之 穂蓼古幹 採生之 實成左右二 君乎志将待","#[訓読]我が宿の穂蓼古幹摘み生し実になるまでに君をし待たむ","#[仮名],わがやどの,ほたでふるから,つみおほし,みになるまでに,きみをしまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,比喩,女歌,恋愛","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
ほたでふるから,[寛]ほたてふるから,
つみおほし,[寛]つみはやし,
みになるまでに,[寛]みになるまてに,
きみをしまたむ[寛],
" "#[番号]11/2760","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]足桧之 山澤徊具乎 採将去 日谷毛相<為> 母者責十方","#[訓読]あしひきの山沢ゑぐを摘みに行かむ日だにも逢はせ母は責むとも","#[仮名],あしひきの,やまさはゑぐを,つみにゆかむ,ひだにもあはせ,はははせむとも","#[左注]","#[校異]将 -> 為 [嘉][類]","#[事項],枕詞,植物,女歌,恋情","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまさはゑぐを,[寛]やまさはゑくを,
つみにゆかむ,[寛]つみゆかむ,
ひだにもあはせ,[寛]ひたにもあはむ,
はははせむとも,[寛]はははいふとも,
" "#[番号]11/2761","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]奥山之 石本菅乃 根深毛 所思鴨 吾念妻者","#[訓読]奥山の岩本菅の根深くも思ほゆるかも我が思ひ妻は","#[仮名],おくやまの,いはもとすげの,ねふかくも,おもほゆるかも,あがおもひづまは","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,序詞,恋情","#[訓異]
おくやまの[寛],
いはもとすげの,[寛]いはもとすけの,
ねふかくも[寛],
おもほゆるかも,[寛]おほほゆるかも,
あがおもひづまは,[寛]わかおもひつまは,
" "#[番号]11/2762","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]蘆垣之 中之似兒草 尓故余漢 我共咲為而 人尓所知名","#[訓読]葦垣の中の和草にこやかに我れと笑まして人に知らゆな","#[仮名],あしかきの,なかのにこぐさ,にこやかに,われとゑまして,ひとにしらゆな","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,うわさ,女歌,序詞","#[訓異]
あしかきの[寛],
なかのにこぐさ,[寛]なかのにこくさ,
にこやかに,[寛]にこよかに,
われとゑまして,[寛]われとゑみして,
ひとにしらゆな,[寛]ひとにしらるな,
" "#[番号]11/2763","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]紅之 淺葉乃野良尓 苅草乃 束之間毛 吾忘渚菜","#[訓読]紅の浅葉の野らに刈る草の束の間も我を忘らすな","#[仮名],くれなゐの,あさはののらに,かるかやの,つかのあひだも,あをわすらすな","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,序詞,地名,女歌,恋愛","#[訓異]
くれなゐの[寛],
あさはののらに[寛],
かるかやの[寛],
つかのあひだも,[寛]つかのあひたも,
あをわすらすな,[寛]われわすれなな,
" "#[番号]11/2764","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]為妹 壽遺在 苅<薦>之 思乱而 應死物乎","#[訓読]妹がため命残せり刈り薦の思ひ乱れて死ぬべきものを","#[仮名],いもがため,いのちのこせり,かりこもの,おもひみだれて,しぬべきものを","#[左注]","#[校異]薦 [西(上書訂正)][嘉][文][類]","#[事項],植物,枕詞,恋情","#[訓異]
いもがため,[寛]いもかため,
いのちのこせり[寛],
かりこもの[寛],
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
しぬべきものを,[寛]しぬへきものを,
" "#[番号]11/2765","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾妹子尓 戀乍不有者 苅薦之 思乱而 可死鬼乎","#[訓読]我妹子に恋つつあらずは刈り薦の思ひ乱れて死ぬべきものを","#[仮名],わぎもこに,こひつつあらずは,かりこもの,おもひみだれて,しぬべきものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,恋情,枕詞","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
かりこもの[寛],
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
しぬべきものを,[寛]しぬへきものを,
" "#[番号]11/2766","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]三嶋江之 入江之薦乎 苅尓社 吾乎婆公者 念有来","#[訓読]三島江の入江の薦を刈りにこそ我れをば君は思ひたりけれ","#[仮名],みしまえの,いりえのこもを,かりにこそ,われをばきみは,おもひたりけれ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,大阪府,大阪市,植物,序詞,恋愛,女歌","#[訓異]
みしまえの[寛],
いりえのこもを[寛],
かりにこそ[寛],
われをばきみは,[寛]われをはきみは,
おもひたりけれ[寛],
" "#[番号]11/2767","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]足引乃 山橘之 色出而 吾戀南雄 <人>目難為名","#[訓読]あしひきの山橘の色に出でて我は恋なむを人目難みすな","#[仮名],あしひきの,やまたちばなの,いろにいでて,あはこひなむを,ひとめかたみすな","#[左注]","#[校異]八 -> 人 [万葉考]","#[事項],枕詞,植物,序詞,うわさ,恋情","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまたちばなの,[寛]やまたちはなの,
いろにいでて,[寛]いろにいてて,
あはこひなむを,[寛]わかこひなむを,
ひとめかたみすな,[寛]やめかたくすな,
" "#[番号]11/2768","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]葦多頭乃 颯入江乃 白菅乃 知為等 乞痛鴨","#[訓読]葦鶴の騒く入江の白菅の知らせむためと言痛かるかも","#[仮名],あしたづの,さわくいりえの,しらすげの,しらせむためと,こちたかるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,鳥,植物,序詞,うわさ,恋愛","#[訓異]
あしたづの,[寛]あしたつの,
さわくいりえの[寛],
しらすげの,[寛]しらすけの,
しらせむためと,[寛]しられむためと,
こちたかるかも,[寛]こひいたむかも,
" "#[番号]11/2769","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾背子尓 吾戀良久者 夏草之 苅除十方 生及如","#[訓読]我が背子に我が恋ふらくは夏草の刈り除くれども生ひしくごとし","#[仮名],わがせこに,あがこふらくは,なつくさの,かりそくれども,おひしくごとし","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,女歌,恋愛,自嘲","#[訓異]
わがせこに,[寛]わかせこに,
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
なつくさの[寛],
かりそくれども,[寛]かりそくれとも,
おひしくごとし,[寛]おひしくかこと,
" "#[番号]11/2770","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]道邊乃 五柴原能 何時毛々々々 人之将縦 言乎思将待","#[訓読]道の辺のいつ柴原のいつもいつも人の許さむ言をし待たむ","#[仮名],みちのへの,いつしばはらの,いつもいつも,ひとのゆるさむ,ことをしまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,序詞,恋愛","#[訓異]
みちのへの[寛],
いつしばはらの,[寛]いつしははらの,
いつもいつも[寛],
ひとのゆるさむ[寛],
ことをしまたむ[寛],
" "#[番号]11/2771","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾妹子之 袖乎憑而 真野浦之 小菅乃笠乎 不著而来二来有","#[訓読]我妹子が袖を頼みて真野の浦の小菅の笠を着ずて来にけり","#[仮名],わぎもこが,そでをたのみて,まののうらの,こすげのかさを,きずてきにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,兵庫県,神戸市,植物,恋情","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
そでをたのみて,[寛]そてをたのみて,
まののうらの[寛],
こすげのかさを,[寛]こすけのかさを,
きずてきにけり,[寛]きすてきにけり,
" "#[番号]11/2772","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]真野池之 小菅乎笠尓 不縫為<而> 人之遠名乎 可立物可","#[訓読]真野の池の小菅を笠に縫はずして人の遠名を立つべきものか","#[仮名],まののいけの,こすげをかさに,ぬはずして,ひとのとほなを,たつべきものか","#[左注]","#[校異]<> -> 而 [嘉][文][類][紀]","#[事項],地名,兵庫県,神戸市,うわさ,恋愛","#[訓異]
まののいけの[寛],
こすげをかさに,[寛]こすけをかさに,
ぬはずして,[寛]ぬはすして,
ひとのとほなを[寛],
たつべきものか,[寛]たつへきものか,
" "#[番号]11/2773","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]刺竹 齒隠有 吾背子之 吾許不来者 吾将戀八方","#[訓読]さす竹の世隠りてあれ我が背子が我がりし来ずは我れ恋めやも","#[仮名],さすたけの,よごもりてあれ,わがせこが,わがりしこずは,あれこひめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
さすたけの[寛],
よごもりてあれ,[寛]はにかくれたる,
わがせこが,[寛]わかせこか,
わがりしこずは,[寛]わかりしこすは,
あれこひめやも,[寛]われこひめやも,
" "#[番号]11/2774","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]神南備能 淺小竹原乃 美 妾思公之 聲之知家口","#[訓読]神奈備の浅小竹原のうるはしみ我が思ふ君が声のしるけく","#[仮名],かむなびの,あさぢのはらの,うるはしみ,あがおもふきみが,こゑのしるけく","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋愛,地名","#[訓異]
かむなびの,[寛]かみなひの,
あさぢのはらの,[寛]あささのはらの,
うるはしみ,[寛]をみなへし,
あがおもふきみが,[寛]おもへるきみか,
こゑのしるけく,[寛]こゑのしるけく,
" "#[番号]11/2775","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]山高 谷邊蔓在 玉葛 絶時無 見因毛欲得","#[訓読]山高み谷辺に延へる玉葛絶ゆる時なく見むよしもがも","#[仮名],やまたかみ,たにへにはへる,たまかづら,たゆるときなく,みむよしもがも","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,序詞,恋愛","#[訓異]
やまたかみ[寛],
たにへにはへる[寛],
たまかづら,[寛]たまかつら,
たゆるときなく[寛],
みむよしもがも,[寛]みるよしもかな,
" "#[番号]11/2776","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]道邊 草冬野丹 履干 吾立待跡 妹告乞","#[訓読]道の辺の草を冬野に踏み枯らし我れ立ち待つと妹に告げこそ","#[仮名],みちのへの,くさをふゆのに,ふみからし,われたちまつと,いもにつげこそ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋愛","#[訓異]
みちのへの[寛],
くさをふゆのに[寛],
ふみからし[寛],
われたちまつと[寛],
いもにつげこそ,[寛]いもにつけこそ,
" "#[番号]11/2777","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]疊薦 隔編數 通者 道之柴草 不生有申尾","#[訓読]畳薦へだて編む数通はさば道の芝草生ひずあらましを","#[仮名],たたみこも,へだてあむかず,かよはさば,みちのしばくさ,おひずあらましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,枕詞,恋愛","#[訓異]
たたみこも[寛],
へだてあむかず,[寛]へたてあむかす,
かよはさば,[寛]かよひせは,
みちのしばくさ,[寛]みちのしはくさ,
おひずあらましを,[寛]おひさらましを,
" "#[番号]11/2778","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]水底尓 生玉藻之 生不出 縦比者 如是而将通","#[訓読]水底に生ふる玉藻の生ひ出でずよしこのころはかくて通はむ","#[仮名],みなそこに,おふるたまもの,おひいでず,よしこのころは,かくてかよはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,序詞,うわさ,人目,恋愛","#[訓異]
みなそこに[寛],
おふるたまもの[寛],
おひいでず,[寛]おひていてす,
よしこのころは[寛],
かくてかよはむ[寛],
" "#[番号]11/2779","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]海原之 奥津縄乗 打靡 心裳<四>怒尓 所念鴨","#[訓読]海原の沖つ縄海苔うち靡き心もしのに思ほゆるかも","#[仮名],うなはらの,おきつなはのり,うちなびき,こころもしのに,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]原字不明 -> 四 [西(上書訂正)][嘉][文][類][紀]","#[事項],植物,序詞,恋情","#[訓異]
うなはらの[寛],
おきつなはのり[寛],
うちなびき,[寛]うちなひき,
こころもしのに[寛],
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]11/2780","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]紫之 名高乃浦之 靡藻之 情者妹尓 因西鬼乎","#[訓読]紫の名高の浦の靡き藻の心は妹に寄りにしものを","#[仮名],むらさきの,なたかのうらの,なびきもの,こころはいもに,よりにしものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,和歌山県,海南市,枕詞,序詞,恋愛","#[訓異]
むらさきの[寛],
なたかのうらの[寛],
なびきもの,[寛]なひきもの,
こころはいもに[寛],
よりにしものを[寛],
" "#[番号]11/2781","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]海底 奥乎深目手 生藻之 最今社 戀者為便無寸","#[訓読]海の底奥を深めて生ふる藻のもとも今こそ恋はすべなき","#[仮名],わたのそこ,おきをふかめて,おふるもの,もともいまこそ,こひはすべなき","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,序詞,恋愛","#[訓異]
わたのそこ,[寛]わたつみの,
おきをふかめて[寛],
おふるもの[寛],
もともいまこそ,[寛]いともいまこそ,
こひはすべなき,[寛]こひはすへなき,
" "#[番号]11/2782","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]左寐蟹齒 孰共毛宿常 奥藻之 名延之君之 言待吾乎","#[訓読]さ寝がには誰れとも寝めど沖つ藻の靡きし君が言待つ我れを","#[仮名],さぬがには,たれともぬめど,おきつもの,なびきしきみが,ことまつわれを","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,女歌","#[訓異]
さぬがには,[寛]さねかには,
たれともぬめど,[寛]たれともぬれと,
おきつもの[寛],
なびきしきみが,[寛]なひきしきみか,
ことまつわれを[寛],
" "#[番号]11/2783","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾妹子之 奈何跡裳吾 不思者 含花之 穂應咲","#[訓読]我妹子が何とも我れを思はねばふふめる花の穂に咲きぬべし","#[仮名],わぎもこが,なにともわれを,おもはねば,ふふめるはなの,ほにさきぬべし","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,比喩,恋情","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
なにともわれを[寛],
おもはねば,[寛]おもはねは,
ふふめるはなの[寛],
ほにさきぬべし,[寛]ほにさきぬへし,
" "#[番号]11/2784","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]隠庭 戀而死鞆 三苑原之 鶏冠草花乃 色二出目八<方>","#[訓読]隠りには恋ひて死ぬともみ園生の韓藍の花の色に出でめやも","#[仮名],こもりには,こひてしぬとも,みそのふの,からあゐのはなの,いろにいでめやも","#[左注]","#[校異]目 -> 方 [嘉][文][類][紀]","#[事項],植物,序詞,恋情","#[訓異]
こもりには,[寛]しのひには,
こひてしぬとも,[寛]こひてぬぬとも,
みそのふの[寛],
からあゐのはなの[寛],
いろにいでめやも,[寛]いろにいてめやも,
" "#[番号]11/2785","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]開花者 雖過時有 我戀流 心中者 止時毛梨","#[訓読]咲く花は過ぐる時あれど我が恋ふる心のうちはやむ時もなし","#[仮名],さくはなは,すぐるときあれど,あがこふる,こころのうちは,やむときもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
さくはなは[寛],
すぐるときあれど,[寛]すくるときあれと,
あがこふる,[寛]わかこふる,
こころのうちは[寛],
やむときもなし[寛],
" "#[番号]11/2786","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]山振之 尓保敝流妹之 翼酢色乃 赤裳之為形 夢所見管","#[訓読]山吹のにほへる妹がはねず色の赤裳の姿夢に見えつつ","#[仮名],やまぶきの,にほへるいもが,はねずいろの,あかものすがた,いめにみえつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,植物,恋情","#[訓異]
やまぶきの,[寛]やまふきの,
にほへるいもが,[寛]にほへるいもか,
はねずいろの,[寛]はねすいろの,
あかものすがた,[寛]あかものすかた,
いめにみえつつ,[寛]ゆめにみえつつ,
" "#[番号]11/2787","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]天地之 依相極 玉緒之 不絶常念 妹之當見津","#[訓読]天地の寄り合ひの極み玉の緒の絶えじと思ふ妹があたり見つ","#[仮名],あめつちの,よりあひのきはみ,たまのをの,たえじとおもふ,いもがあたりみつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,羈旅,望郷,喜び,恋愛","#[訓異]
あめつちの[寛],
よりあひのきはみ,[寛]よりあはむかきり,
たまのをの[寛],
たえじとおもふ,[寛]たえしとおもふ,
いもがあたりみつ,[寛]いもかあたりみつ,
" "#[番号]11/2788","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]生緒尓 念者苦 玉緒乃 絶天乱名 知者知友","#[訓読]息の緒に思へば苦し玉の緒の絶えて乱れな知らば知るとも","#[仮名],いきのをに,おもへばくるし,たまのをの,たえてみだれな,しらばしるとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情,人目","#[訓異]
いきのをに,[寛]いおのをに,
おもへばくるし,[寛]おもへはくるし,
たまのをの[寛],
たえてみだれな,[寛]たえてみたれな,
しらばしるとも,[寛]しらはしるとも,
" "#[番号]11/2789","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]玉緒之 絶而有戀之 乱者 死巻耳其 又毛不相為而","#[訓読]玉の緒の絶えたる恋の乱れなば死なまくのみぞまたも逢はずして","#[仮名],たまのをの,たえたるこひの,みだれなば,しなまくのみぞ,またもあはずして","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
たまのをの[寛],
たえたるこひの[寛],
みだれなば,[寛]みたるれは,
しなまくのみぞ,[寛]しなまくのみそ,
またもあはずして,[寛]またもあはすして,
" "#[番号]11/2790","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]玉緒之 久栗縁乍 末終 去者不別 同緒将有","#[訓読]玉の緒のくくり寄せつつ末つひに行きは別れず同じ緒にあらむ","#[仮名],たまのをの,くくりよせつつ,すゑつひに,ゆきはわかれず,おなじをにあらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,序詞,恋情","#[訓異]
たまのをの[寛],
くくりよせつつ[寛],
すゑつひに,[寛]すゑつゐに,
ゆきはわかれず,[寛]ゆきはわかれて,
おなじをにあらむ,[寛]おなしをにあらむ,
" "#[番号]11/2791","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]片絲用 貫有玉之 緒乎弱 乱哉為南 人之可知","#[訓読]片糸もち貫きたる玉の緒を弱み乱れやしなむ人の知るべく","#[仮名],かたいともち,ぬきたるたまの,ををよわみ,みだれやしなむ,ひとのしるべく","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,比喩,序詞,人目","#[訓異]
かたいともち,[寛]かたいともて,
ぬきたるたまの[寛],
ををよわみ,[寛]ををよはみ,
みだれやしなむ,[寛]みたれやしなむ,
ひとのしるべく,[寛]ひとのしるへく,
" "#[番号]11/2792","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]玉緒之 <寫>意哉 年月乃 行易及 妹尓不逢将有","#[訓読]玉の緒の現し心や年月の行きかはるまで妹に逢はずあらむ","#[仮名],たまのをの,うつしごころや,としつきの,ゆきかはるまで,いもにあはずあらむ","#[左注]","#[校異]嶋 -> 寫 [万葉集略解(宣長説)]","#[事項],恋情,枕詞","#[訓異]
たまのをの[寛],
うつしごころや,[寛]しまこころにや,
としつきの[寛],
ゆきかはるまで,[寛]ゆきかはるまて,
いもにあはずあらむ,[寛]いもにあはさらむ,
" "#[番号]11/2793","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]玉緒之 間毛不置 欲見 吾思妹者 家遠在而","#[訓読]玉の緒の間も置かず見まく欲り我が思ふ妹は家遠くありて","#[仮名],たまのをの,あひだもおかず,みまくほり,あがおもふいもは,いへどほくありて","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,枕詞","#[訓異]
たまのをの[寛],
あひだもおかず,[寛]あいたもおかす,
みまくほり[寛],
あがおもふいもは,[寛]わかおもふいもは,
いへどほくありて,[寛]いへとほくありて,
" "#[番号]11/2794","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]隠津之 澤立見尓有 石根従毛 達而念 君尓相巻者","#[訓読]隠り津の沢たつみなる岩根ゆも通してぞ思ふ君に逢はまくは","#[仮名],こもりづの,さはたつみなる,いはねゆも,とほしてぞおもふ,きみにあはまくは","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,女歌,人目","#[訓異]
こもりづの,[寛]こもりつの,
さはたつみなる,[寛]さはたちみなる,
いはねゆも,[寛]いはねをも,
とほしてぞおもふ,[寛]とほしておもふ,
きみにあはまくは[寛],
" "#[番号]11/2795","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]木國之 飽等濱之 礒貝之 我者不忘 <年>者雖歴","#[訓読]紀の国の飽等の浜の忘れ貝我れは忘れじ年は経ぬとも","#[仮名],きのくにの,あくらのはまの,わすれがひ,われはわすれじ,としはへぬとも","#[左注]","#[校異]羊 -> 年 [嘉][類][古][紀]","#[事項],地名,和歌山県,序詞,恋情","#[訓異]
きのくにの[寛],
あくらのはまの[寛],
わすれがひ,[寛]わすれかひ,
われはわすれじ,[寛]われはわすれす,
としはへぬとも,[寛]としはふれとも,
" "#[番号]11/2796","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]水泳 玉尓接有 礒貝之 獨戀耳 <年>者經管","#[訓読]水くくる玉に交じれる磯貝の片恋ひのみに年は経につつ","#[仮名],みづくくる,たまにまじれる,いそかひの,かたこひのみに,としはへにつつ","#[左注]","#[校異]羊 -> 年 [嘉][類][古][紀]","#[事項],序詞,恋情","#[訓異]
みづくくる,[寛]みなそこの,
たまにまじれる,[寛]たまにましれる,
いそかひの[寛],
かたこひのみに[寛],
としはへにつつ[寛],
" "#[番号]11/2797","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]住吉之 濱尓縁云 打背貝 實無言以 余将戀八方","#[訓読]住吉の浜に寄るといふうつせ貝実なき言もち我れ恋ひめやも","#[仮名],すみのえの,はまによるといふ,うつせがひ,みなきこともち,あれこひめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,大阪府,住吉,序詞,恋情","#[訓異]
すみのえの[寛],
はまによるといふ,[寛]はまによるてふ,
うつせがひ,[寛]うつせかひ,
みなきこともち,[寛]みなきこともて,
あれこひめやも,[寛]われこひめやも,
" "#[番号]11/2798","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]伊勢乃白水郎之 朝魚夕菜尓 潜云 鰒貝之 獨念荷指天","#[訓読]伊勢の海人の朝な夕なに潜くといふ鰒の貝の片思にして","#[仮名],いせのあまの,あさなゆふなに,かづくといふ,あはびのかひの,かたもひにして","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,三重県,伊勢,序詞,恋情","#[訓異]
いせのあまの[寛],
あさなゆふなに[寛],
かづくといふ,[寛]かつくてふ,
あはびのかひの,[寛]あはひのかひの,
かたもひにして,[寛]かたおもひにして,
" "#[番号]11/2799","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]人事乎 繁跡君乎 鶉鳴 人之古家尓 相<語>而遣都","#[訓読]人言を繁みと君を鶉鳴く人の古家に語らひて遣りつ","#[仮名],ひとごとを,しげみときみを,うづらなく,ひとのふるへに,かたらひてやりつ","#[左注]","#[校異]誥 -> 語 [嘉][類][紀]","#[事項],動物,うわさ,恋情,女歌,枕詞,鳥","#[訓異]
ひとごとを,[寛]ひとことを,
しげみときみを,[寛]しけしときみを,
うづらなく,[寛]うつらなく,
ひとのふるへに,[寛]ひとのいにしへに,
かたらひてやりつ,[寛]あひいひてやりつ,
" "#[番号]11/2800","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]旭時等 鶏鳴成 縦恵也思 獨宿夜者 開者雖明","#[訓読]暁と鶏は鳴くなりよしゑやしひとり寝る夜は明けば明けぬとも","#[仮名],あかときと,かけはなくなり,よしゑやし,ひとりぬるよは,あけばあけぬとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,女歌,自嘲,恋愛,鳥","#[訓異]
あかときと,[寛]あかつきと,
かけはなくなり,[寛]とりはなくなり,
よしゑやし,[寛]よしえやし,
ひとりぬるよは[寛],
あけばあけぬとも,[寛]あけはあくとも,
" "#[番号]11/2801","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]大海之 荒礒之渚鳥 朝名旦名 見巻欲乎 不所見公可聞","#[訓読]大海の荒礒の洲鳥朝な朝な見まく欲しきを見えぬ君かも","#[仮名],おほうみの,ありそのすどり,あさなさな,みまくほしきを,みえぬきみかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,女歌,序詞,恋情,鳥","#[訓異]
おほうみの[寛],
ありそのすどり,[寛]あらいそのすとり,
あさなさな,[寛]あさなあさな,
みまくほしきを[寛],
みえぬきみかも[寛],
" "#[番号]11/2802","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]念友 念毛金津 足桧之 山鳥尾之 永此夜乎","#[訓読]思へども思ひもかねつあしひきの山鳥の尾の長きこの夜を","#[仮名],おもへども,おもひもかねつ,あしひきの,やまどりのをの,ながきこのよを","#[左注]或本歌<曰> 足日木乃 山鳥之尾乃 四垂尾乃 長永夜乎 一鴨将宿","#[校異]云 -> 曰 [嘉][類][紀]","#[事項],枕詞,動物,恋情,序詞,鳥","#[訓異]
おもへども,[寛]おもへとも,
おもひもかねつ[寛],
あしひきの[寛],
やまどりのをの,[寛]やまとりのをの,
ながきこのよを,[寛]なかきこのよを,
" "#[番号]11/2802S","#[題詞](寄物陳思)或本歌<曰>","#[原文]足日木乃 山鳥之尾乃 四垂尾乃 長永夜乎 一鴨将宿 ","#[訓読]あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む ","#[仮名],あしひきの,やまどりのをの,しだりをの,ながながしよを,ひとりかもねむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,動物,序詞,恋情,女歌,異伝,鳥","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまどりのをの,[寛]やまとりのをの,
しだりをの,[寛]したりをの,
ながながしよを,[寛]なかなかしよを,
ひとりかもねむ[寛],
" "#[番号]11/2803","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]里中尓 鳴奈流鶏之 喚立而 甚者不鳴 隠妻羽毛 [一云 里動 鳴成鶏] ","#[訓読]里中に鳴くなる鶏の呼び立てていたくは泣かぬ隠り妻はも [一云 里響め鳴くなる鶏の] ","#[仮名],さとなかに,なくなるかけの,よびたてて,いたくはなかぬ,こもりづまはも,[さととよめ,なくなるかけの]","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,序詞,異伝,恋情,鳥","#[訓異]
さとなかに[寛],
なくなるかけの[寛],
よびたてて,[寛]よひたてて,
いたくはなかぬ,[寛]いたくはなかす,
こもりづまはも,[寛]こもりつまはも,
[さととよめ,[寛]さととよみ,
なくなるかけの],[寛]なくなるかけ,
" "#[番号]11/2804","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]高山尓 高部左渡 高々尓 余待公乎 待将出可聞","#[訓読]高山にたかべさ渡り高々に我が待つ君を待ち出でむかも","#[仮名],たかやまに,たかべさわたり,たかたかに,わがまつきみを,まちいでむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,鳥,序詞,女歌,恋情","#[訓異]
たかやまに,[寛]かくやまに,
たかべさわたり,[寛]たかへさわたり,
たかたかに[寛],
わがまつきみを,[寛]わかまつきみを,
まちいでむかも,[寛]まちいてむかも,
" "#[番号]11/2805","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]伊勢能海従 鳴来鶴乃 音杼侶毛 君之所聞者 吾将戀八方","#[訓読]伊勢の海ゆ鳴き来る鶴の音どろも君が聞こさば我れ恋ひめやも","#[仮名],いせのうみゆ,なきくるたづの,おとどろも,きみがきこさば,あれこひめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,三重県,伊勢,動物,鳥,序詞,女歌,恋情","#[訓異]
いせのうみゆ,[寛]いせのうみに,
なきくるたづの,[寛]なきけるたつの,
おとどろも,[寛]おととろも,
きみがきこさば,[寛]きみかきこゑは,
あれこひめやも,[寛]われこひむやも,
" "#[番号]11/2806","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾妹兒尓 戀尓可有牟 奥尓住 鴨之浮宿之 安雲無","#[訓読]我妹子に恋ふれにかあらむ沖に棲む鴨の浮寝の安けくもなし","#[仮名],わぎもこに,こふれにかあらむ,おきにすむ,かものうきねの,やすけくもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,鳥,序詞,恋情","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こふれにかあらむ,[寛]こふるにかあらむ,
おきにすむ[寛],
かものうきねの[寛],
やすけくもなし[寛],
" "#[番号]11/2807","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]可旭 千鳥數鳴 白細乃 君之手枕 未Q君","#[訓読]明けぬべく千鳥しば鳴く白栲の君が手枕いまだ飽かなくに","#[仮名],あけぬべく,ちとりしばなく,しろたへの,きみがたまくら,いまだあかなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,鳥,枕詞,女歌,恋情","#[訓異]
あけぬべく,[寛]あけぬへく,
ちとりしばなく,[寛]ちとりしはなく,
しろたへの[寛],
きみがたまくら,[寛]きみかたまくら,
いまだあかなくに,[寛]いまたあかなくに,
" "#[番号]11/2808","#[題詞]問答","#[原文]眉根掻 鼻火紐解 待八方 何時毛将見跡 戀来吾乎","#[訓読]眉根掻き鼻ひ紐解け待てりやもいつかも見むと恋ひ来し我れを","#[仮名],まよねかき,はなひひもとけ,まてりやも,いつかもみむと,こひこしわれを","#[左注]右上見柿本朝臣人麻呂之歌中 但以問答故累載於茲也 ( / 右二首)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,非略体,恋情","#[訓異]
まよねかき,[寛]まゆねかき,
はなひひもとけ,[寛]はなひひもとき,
まてりやも,[寛]まためやも,
いつかもみむと[寛],
こひこしわれを[寛],
" "#[番号]11/2809","#[題詞](問答)","#[原文]今日有者 鼻<火鼻火之> 眉可由見 思之言者 君西在来","#[訓読]今日なれば鼻ひ鼻ひし眉かゆみ思ひしことは君にしありけり","#[仮名],けふなれば,はなひはなひし,まよかゆみ,おもひしことは,きみにしありけり","#[左注]右二首","#[校異]之々々火 -> 火鼻火之 [万葉集略解]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
けふなれば,[寛]けふなれは,
はなひはなひし,[寛]はなしはなしひ,
まよかゆみ,[寛]まゆかゆみ,
おもひしことは[寛],
きみにしありけり[寛],
" "#[番号]11/2810","#[題詞](問答)","#[原文]音耳乎 聞而哉戀 犬馬鏡 <直目>相而 戀巻裳太口","#[訓読]音のみを聞きてや恋ひむまそ鏡直目に逢ひて恋ひまくもいたく","#[仮名],おとのみを,ききてやこひむ,まそかがみ,ただめにあひて,こひまくもいたく","#[左注](右二首)","#[校異]目直 -> 直目 [新校]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
おとのみを[寛],
ききてやこひむ[寛],
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
ただめにあひて,[寛]めにたたにみて,
こひまくもいたく,[寛]こひまくもおほく,
" "#[番号]11/2811","#[題詞](問答)","#[原文]此言乎 聞跡<平> 真十鏡 照月夜裳 闇耳見","#[訓読]この言を聞かむとならしまそ鏡照れる月夜も闇のみに見つ","#[仮名],このことを,きかむとならし,まそかがみ,てれるつくよも,やみのみにみつ","#[左注]右二首","#[校異]乎 -> 平 [万葉集新考]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
このことを[寛],
きかむとならし,[寛]きくとにやあらむ,
まそかがみ,[寛]まくかかみ,
てれるつくよも,[寛]てれるつきよも,
やみのみにみつ,[寛]やみにのみみゆ,
" "#[番号]11/2812","#[題詞](問答)","#[原文]吾妹兒尓 戀而為便無<三> 白細布之 袖反之者 夢所見也","#[訓読]我妹子に恋ひてすべなみ白栲の袖返ししは夢に見えきや","#[仮名],わぎもこに,こひてすべなみ,しろたへの,そでかへししは,いめにみえきや","#[左注](右二首)","#[校異]<> -> 三 [嘉][細]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こひてすべなみ,[寛]こひてすへなみ,
しろたへの[寛],
そでかへししは,[寛]そてかへししは,
いめにみえきや,[寛]ゆめにみえきや,
" "#[番号]11/2813","#[題詞](問答)","#[原文]吾背子之 袖反夜之 夢有之 真毛君尓 如相有","#[訓読]我が背子が袖返す夜の夢ならしまことも君に逢ひたるごとし","#[仮名],わがせこが,そでかへすよの,いめならし,まこともきみに,あひたるごとし","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],女歌,恋情","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
そでかへすよの,[寛]そてかへすよの,
いめならし,[寛]ゆめならし,
まこともきみに[寛],
あひたるごとし,[寛]あへりしかこと,
" "#[番号]11/2814","#[題詞](問答)","#[原文]吾戀者 名草目金津 真氣長 夢不所見而 <年>之經去礼者","#[訓読]我が恋は慰めかねつま日長く夢に見えずて年の経ぬれば","#[仮名],あがこひは,なぐさめかねつ,まけながく,いめにみえずて,としのへぬれば","#[左注](右二首)","#[校異]羊 -> 年 [嘉][文][紀][細]","#[事項],恋情","#[訓異]
あがこひは,[寛]わかこひは,
なぐさめかねつ,[寛]なくさめかねつ,
まけながく,[寛]まけなかく,
いめにみえずて,[寛]ゆめにみえすて,
としのへぬれば,[寛]としのへぬれは,
" "#[番号]11/2815","#[題詞](問答)","#[原文]真氣永 夢毛不所見 雖絶 吾之片戀者 止時毛不有","#[訓読]ま日長く夢にも見えず絶えぬとも我が片恋はやむ時もあらじ","#[仮名],まけながく,いめにもみえず,たえぬとも,あがかたこひは,やむときもあらじ","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
まけながく,[寛]まけなかく,
いめにもみえず,[寛]ゆめにもみえす,
たえぬとも,[寛]たゆれとも,
あがかたこひは,[寛]わかかたこひは,
やむときもあらじ,[寛]やむときもなし,
" "#[番号]11/2816","#[題詞](問答)","#[原文]浦觸而 物莫念 天雲之 絶多不心 吾念莫國","#[訓読]うらぶれて物な思ひそ天雲のたゆたふ心我が思はなくに","#[仮名],うらぶれて,ものなおもひそ,あまくもの,たゆたふこころ,わがおもはなくに","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
うらぶれて,[寛]うらふれて,
ものなおもひそ[寛],
あまくもの[寛],
たゆたふこころ[寛],
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]11/2817","#[題詞](問答)","#[原文]浦觸而 物者不念 水無瀬川 有而毛水者 逝云物乎","#[訓読]うらぶれて物は思はじ水無瀬川ありても水は行くといふものを","#[仮名],うらぶれて,ものはおもはじ,みなせがは,ありてもみづは,ゆくといふものを","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],恋愛","#[訓異]
うらぶれて,[寛]うらふれて,
ものはおもはじ,[寛]ものはおもはし,
みなせがは,[寛]みなせかは,
ありてもみづは,[寛]ありてもみつは,
ゆくといふものを,[寛]ゆくてふものを,
" "#[番号]11/2818","#[題詞](問答)","#[原文]垣津旗 開沼之菅乎 笠尓縫 将著日乎待尓 <年>曽經去来","#[訓読]かきつはた佐紀沼の菅を笠に縫ひ着む日を待つに年ぞ経にける","#[仮名],かきつはた,さきぬのすげを,かさにぬひ,きむひをまつに,としぞへにける","#[左注](右二首)","#[校異]羊 -> 年 [嘉][文][類][紀]","#[事項],植物,比喩,恋情,地名,奈良県,佐紀町","#[訓異]
かきつはた[寛],
さきぬのすげを,[寛]さくぬのすけを,
かさにぬひ[寛],
きむひをまつに[寛],
としぞへにける,[寛]としそへにける,
" "#[番号]11/2819","#[題詞](問答)","#[原文]臨照 難波菅笠 置古之 後者誰将著 笠有莫國","#[訓読]おしてる難波菅笠置き古し後は誰が着む笠ならなくに","#[仮名],おしてる,なにはすがかさ,おきふるし,のちはたがきむ,かさならなくに","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],植物,枕詞,大阪府,難波,怨恨","#[訓異]
おしてる,[寛]おしてるや,
なにはすがかさ,[寛]なにはすかかさ,
おきふるし,[寛]よきふるし,
のちはたがきむ,[寛]のちはたかきむ,
かさならなくに[寛],
" "#[番号]11/2820","#[題詞](問答)","#[原文]如是谷裳 妹乎待南 左夜深而 出来月之 傾二手荷","#[訓読]かくだにも妹を待ちなむさ夜更けて出で来し月のかたぶくまでに","#[仮名],かくだにも,いもをまちなむ,さよふけて,いでこしつきの,かたぶくまでに","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
かくだにも,[寛]かくたにも,
いもをまちなむ,[寛]いもをまたなむ,
さよふけて[寛],
いでこしつきの,[寛]いてくるつきの,
かたぶくまでに,[寛]かたふくまてに,
" "#[番号]11/2821","#[題詞](問答)","#[原文]木間従 移歴月之 影惜 俳徊尓 左夜深去家里","#[訓読]木の間より移ろふ月の影を惜しみ立ち廻るにさ夜更けにけり","#[仮名],このまより,うつろふつきの,かげををしみ,たちもとほるに,さよふけにけり","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],恋愛","#[訓異]
このまより[寛],
うつろふつきの[寛],
かげををしみ,[寛]かけをしみ,
たちもとほるに,[寛]たちやすらふに,
さよふけにけり[寛],
" "#[番号]11/2822","#[題詞](問答)","#[原文]栲領布乃 白濱浪乃 不肯縁 荒振妹尓 戀乍曽居 [一云 戀流己呂可母] ","#[訓読]栲領布の白浜波の寄りもあへず荒ぶる妹に恋ひつつぞ居る [一云 恋ふるころかも] ","#[仮名],たくひれの,しらはまなみの,よりもあへず,あらぶるいもに,こひつつぞをる,[こふるころかも]","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情,異伝,序詞","#[訓異]
たくひれの[寛],
しらはまなみの[寛],
よりもあへず,[寛]よりもあへす,
あらぶるいもに,[寛]あらふるいもに,
こひつつぞをる,[寛]こひつつそをる,
[こふるころかも][寛],
" "#[番号]11/2823","#[題詞](問答)","#[原文]加敝良末尓 君社吾尓 栲領巾之 白濱浪乃 縁時毛無","#[訓読]かへらまに君こそ我れに栲領巾の白浜波の寄る時もなき","#[仮名],かへらまに,きみこそわれに,たくひれの,しらはまなみの,よるときもなき","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],枕詞,怨恨","#[訓異]
かへらまに[寛],
きみこそわれに[寛],
たくひれの[寛],
しらはまなみの[寛],
よるときもなき,[寛]よるときもなし,
" "#[番号]11/2824","#[題詞](問答)","#[原文]念人 <将>来跡知者 八重六倉 覆庭尓 珠布益乎","#[訓読]思ふ人来むと知りせば八重葎覆へる庭に玉敷かましを","#[仮名],おもふひと,こむとしりせば,やへむぐら,おほへるにはに,たましかましを","#[左注](右二首)","#[校異]徃 -> 将 [西(訂正右書)][嘉][文][類][紀]","#[事項],植物,女歌","#[訓異]
おもふひと[寛],
こむとしりせば,[寛]こむとしりせは,
やへむぐら,[寛]やへむくら,
おほへるにはに,[寛]はひたるにはに,
たましかましを[寛],
" "#[番号]11/2825","#[題詞](問答)","#[原文]玉敷有 家毛何将為 八重六倉 覆小屋毛 妹与居者","#[訓読]玉敷ける家も何せむ八重葎覆へる小屋も妹と居りせば","#[仮名],たましける,いへもなにせむ,やへむぐら,おほへるこやも,いもとをりせば","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],植物,恋愛","#[訓異]
たましける[寛],
いへもなにせむ[寛],
やへむぐら,[寛]やへむくら,
おほへるこやも,[寛]はひたるこやも,
いもとをりせば,[寛]いもとしすまは,
" "#[番号]11/2826","#[題詞](問答)","#[原文]如是為乍 有名草目手 玉緒之 絶而別者 為便可無","#[訓読]かくしつつあり慰めて玉の緒の絶えて別ればすべなかるべし","#[仮名],かくしつつ,ありなぐさめて,たまのをの,たえてわかれば,すべなかるべし","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
かくしつつ[寛],
ありなぐさめて,[寛]ありなくさめて,
たまのをの[寛],
たえてわかれば,[寛]たえてわかれは,
すべなかるべし,[寛]すへなかるへく,
" "#[番号]11/2827","#[題詞](問答)","#[原文]紅 花西有者 衣袖尓 染著持而 可行所念","#[訓読]紅の花にしあらば衣手に染め付け持ちて行くべく思ほゆ","#[仮名],くれなゐの,はなにしあらば,ころもでに,そめつけもちて,ゆくべくおもほゆ","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],恋情,別れ","#[訓異]
くれなゐの[寛],
はなにしあらば,[寛]はなにしあらは,
ころもでに,[寛]ころもてに,
そめつけもちて[寛],
ゆくべくおもほゆ,[寛]ゆくへくそおもふ,
" "#[番号]11/2828","#[題詞]譬喩","#[原文]紅之 深染乃衣乎 下著者 人之見久尓 仁寳比将出鴨","#[訓読]紅の深染めの衣を下に着ば人の見らくににほひ出でむかも","#[仮名],くれなゐの,こそめのきぬを,したにきば,ひとのみらくに,にほひいでむかも","#[左注](右二首寄衣喩思)","#[校異]","#[事項],人目,うわさ,比喩","#[訓異]
くれなゐの[寛],
こそめのきぬを[寛],
したにきば,[寛]したにきは,
ひとのみらくに[寛],
にほひいでむかも,[寛]にほひいてむかも,
" "#[番号]11/2829","#[題詞](譬喩)","#[原文]衣霜 多在南 取易而 著者也君之 面忘而有","#[訓読]衣しも多くあらなむ取り替へて着ればや君が面忘れたる","#[仮名],ころもしも,おほくあらなむ,とりかへて,きればやきみが,おもわすれたる","#[左注]右二首寄衣喩思","#[校異]","#[事項],皮肉,恋愛","#[訓異]
ころもしも[寛],
おほくあらなむ[寛],
とりかへて[寛],
きればやきみが,[寛]きてはやきみか,
おもわすれたる,[寛]おもわすれせむ,
" "#[番号]11/2830","#[題詞](譬喩)","#[原文]梓弓 弓束巻易 中見刺 更雖引 君之随意","#[訓読]梓弓弓束巻き替へ中見さしさらに引くとも君がまにまに","#[仮名],あづさゆみ,ゆづかまきかへ,なかみさし,さらにひくとも,きみがまにまに","#[左注]右一首寄弓喩思","#[校異]","#[事項],比喩,恋愛","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
ゆづかまきかへ,[寛]ゆつかまきかへ,
なかみさし,[寛]あてみては,
さらにひくとも[寛],
きみがまにまに,[寛]きみかまにまに,
" "#[番号]11/2831","#[題詞](譬喩)","#[原文]水沙兒居 渚座船之 夕塩乎 将待従者 吾社益","#[訓読]みさご居る洲に居る舟の夕潮を待つらむよりは我れこそまされ","#[仮名],みさごゐる,すにゐるふねの,ゆふしほを,まつらむよりは,われこそまされ","#[左注]右一首寄船喩思","#[校異]","#[事項],動物,,恋情","#[訓異]
みさごゐる,[寛]みさこゐる,
すにゐるふねの,[寛]すにをるふねの,
ゆふしほを[寛],
まつらむよりは[寛],
われこそまされ,[寛]われこそまさめ,
" "#[番号]11/2832","#[題詞](譬喩)","#[原文]山河尓 筌乎伏而 不肯盛 <年>之八歳乎 吾竊N師","#[訓読]山川に筌を伏せて守りもあへず年の八年を我がぬすまひし","#[仮名],やまがはに,うへをふせて,もりもあへず,としのやとせを,わがぬすまひし","#[左注]右一首寄魚喩思","#[校異]羊 -> 年 [嘉][文][類][紀]","#[事項],比喩,恋愛,戯笑","#[訓異]
やまがはに,[寛]やまかはに,
うへをふせて,[寛]うへをふせおきて,
もりもあへず,[寛]もりかへに,
としのやとせを[寛],
わがぬすまひし,[寛]わかぬすまひし,
" "#[番号]11/2833","#[題詞](譬喩)","#[原文]葦鴨之 多集池水 雖溢 儲溝方尓 吾将越八方","#[訓読]葦鴨のすだく池水溢るともまけ溝の辺に我れ越えめやも","#[仮名],あしがもの,すだくいけみづ,はふるとも,まけみぞのへに,われこえめやも","#[左注]右一首寄水喩思","#[校異]","#[事項],動物,鳥,恋愛","#[訓異]
あしがもの,[寛]あしかもの,
すだくいけみづ,[寛]すたくいけみつ,
はふるとも,[寛]まさるとも,
まけみぞのへに,[寛]まけみそかたに,
われこえめやも[寛],
" "#[番号]11/2834","#[題詞](譬喩)","#[原文]日本之 室原乃毛桃 本繁 言大王物乎 不成不止","#[訓読]大和の室生の毛桃本繁く言ひてしものをならずはやまじ","#[仮名],やまとの,むろふのけもも,もとしげく,いひてしものを,ならずはやまじ","#[左注]右一首寄菓喩思","#[校異]","#[事項],地名,奈良県,室生,植物,序詞,恋愛","#[訓異]
やまとの,[寛]ひのもとの,
むろふのけもも[寛],
もとしげく,[寛]もとしけみ,
いひてしものを,[寛]わかきみものを,
ならずはやまじ,[寛]ならすはやまし,
" "#[番号]11/2835","#[題詞](譬喩)","#[原文]真葛延 小野之淺茅乎 自心毛 人引目八面 吾莫名國","#[訓読]ま葛延ふ小野の浅茅を心ゆも人引かめやも我がなけなくに","#[仮名],まくずはふ,をののあさぢを,こころゆも,ひとひかめやも,わがなけなくに","#[左注](右四首寄草喩思)","#[校異]","#[事項],植物,恋愛","#[訓異]
まくずはふ,[寛]まくすはふ,
をののあさぢを,[寛]をののあさちを,
こころゆも[寛],
ひとひかめやも[寛],
わがなけなくに,[寛]われならなくに,
" "#[番号]11/2836","#[題詞](譬喩)","#[原文]三嶋菅 未苗在 時待者 不著也将成 三嶋菅笠","#[訓読]三島菅いまだ苗なり時待たば着ずやなりなむ三島菅笠","#[仮名],みしますげ,いまだなへなり,ときまたば,きずやなりなむ,みしますがかさ","#[左注](右四首寄草喩思)","#[校異]","#[事項],植物,恋愛,地名,大阪府","#[訓異]
みしますげ,[寛]みしますけ,
いまだなへなり,[寛]いまたなへなり,
ときまたば,[寛]ときまたは,
きずやなりなむ,[寛]きすやなりなむ,
みしますがかさ,[寛]みしますかかさ,
" "#[番号]11/2837","#[題詞](譬喩)","#[原文]三吉野之 水具麻我菅乎 不編尓 苅耳苅而 将乱跡也","#[訓読]み吉野の水隈が菅を編まなくに刈りのみ刈りて乱りてむとや","#[仮名],みよしのの,みぐまがすげを,あまなくに,かりのみかりて,みだりてむとや","#[左注](右四首寄草喩思)","#[校異]","#[事項],地名,奈良県,吉野,植物,恋愛,女歌","#[訓異]
みよしのの[寛],
みぐまがすげを,[寛]みくまかすけを,
あまなくに[寛],
かりのみかりて[寛],
みだりてむとや,[寛]みたれなむとや,
" "#[番号]11/2838","#[題詞](譬喩)","#[原文]河上尓 洗若菜之 流来而 妹之當乃 瀬社因目","#[訓読]川上に洗ふ若菜の流れ来て妹があたりの瀬にこそ寄らめ","#[仮名],かはかみに,あらふわかなの,ながれきて,いもがあたりの,せにこそよらめ","#[左注]右四首寄草喩思","#[校異]","#[事項],植物,恋愛","#[訓異]
かはかみに[寛],
あらふわかなの[寛],
ながれきて,[寛]なかれきて,
いもがあたりの,[寛]いもかあたりの,
せにこそよらめ[寛],
" "#[番号]11/2839","#[題詞](譬喩)","#[原文]如是為哉 猶八成牛鳴 大荒木之 浮田之<社>之 標尓不有尓","#[訓読]かくしてやなほやまもらむ大荒木の浮田の社の標にあらなくに","#[仮名],かくしてや,なほやまもらむ,おほあらきの,うきたのもりの,しめにあらなくに","#[左注]右一首寄標喩思","#[校異]成 [紀] 戌 / 杜 -> 社 [嘉][類][紀][文]","#[事項],地名,奈良県,五条市,恋愛","#[訓異]
かくしてや[寛],
なほやまもらむ,[寛]なをややみなむ,
おほあらきの[寛],
うきたのもりの[寛],
しめにあらなくに,[寛]しめならなくに,
" "#[番号]11/2840","#[題詞](譬喩)","#[原文]幾多毛 不零雨故 吾背子之 三名乃幾許 瀧毛動響二","#[訓読]いくばくも降らぬ雨ゆゑ我が背子が御名のここだく瀧もとどろに","#[仮名],いくばくも,ふらぬあめゆゑ,わがせこが,みなのここだく,たきもとどろに","#[左注]右一首寄瀧喩思","#[校異]","#[事項],うわさ,恋愛,女歌","#[訓異]
いくばくも,[寛]いくはくも,
ふらぬあめゆゑ,[寛]ふらぬあめゆへ,
わがせこが,[寛]わかせこか,
みなのここだく,[寛]みなのここたく,
たきもとどろに,[寛]たきもととろに,
" "#[番号]12/2841","#[題詞]正述心緒","#[原文]我背子之 朝明形 吉不見 今日間 戀暮鴨","#[訓読]我が背子が朝明の姿よく見ずて今日の間を恋ひ暮らすかも","#[仮名],わがせこが,あさけのすがた,よくみずて,けふのあひだを,こひくらすかも","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,女歌,恋情,後朝","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
あさけのすがた,[寛]あさけのすかた,
よくみずて,[寛]よくみすて,
けふのあひだを,[寛]けふのあひたを,
こひくらすかも[寛],
" "#[番号]12/2842","#[題詞](正述心緒)","#[原文]我心 等望使念 新夜 一夜不落 夢見<与>","#[訓読]我が心ともしみ思ふ新夜の一夜もおちず夢に見えこそ","#[仮名],あがこころ,ともしみおもふ,あらたよの,ひとよもおちず,いめにみえこそ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]<> -> 与 [新訓]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,女歌,恋情","#[訓異]
あがこころ,[寛]わかこころと,
ともしみおもふ,[寛]のそみおもへは,
あらたよの,[寛]あたらよの,
ひとよもおちず,[寛]ひとよもおちす,
いめにみえこそ,[寛]ゆめにみえけり,
" "#[番号]12/2843","#[題詞](正述心緒)","#[原文]<愛> 我念妹 人皆 如去見耶 手不纒為","#[訓読]愛しと我が思ふ妹を人皆の行くごと見めや手にまかずして","#[仮名],うつくしと,あがおもふいもを,ひとみなの,ゆくごとみめや,てにまかずして","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]与愛 -> 愛 [新訓]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
うつくしと[寛],
あがおもふいもを,[寛]わかおもふいもを,
ひとみなの,[寛]もとみなの,
ゆくごとみめや,[寛]いまゆきみるや,
てにまかずして,[寛]てにまかすして,
" "#[番号]12/2844","#[題詞](正述心緒)","#[原文]<比>日 寐之不寐 敷細布 手枕纒 寐欲","#[訓読]このころの寐の寝らえぬは敷栲の手枕まきて寝まく欲りこそ","#[仮名],このころの,いのねらえぬは,しきたへの,たまくらまきて,ねまくほりこそ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]此 -> 比 [西(朱筆訂正)][元][紀][細]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,枕詞","#[訓異]
このころの[寛],
いのねらえぬは,[寛]いのねらえぬに,
しきたへの[寛],
たまくらまきて[寛],
ねまくほりこそ,[寛]ねまくほしけむ,
" "#[番号]12/2845","#[題詞](正述心緒)","#[原文]<忘>哉 語 意遣 雖過不過 猶戀","#[訓読]忘るやと物語りして心遣り過ぐせど過ぎずなほ恋ひにけり","#[仮名],わするやと,ものがたりして,こころやり,すぐせどすぎず,なほこひにけり","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]忌 -> 忘 [細][温][矢][京]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
わするやと,[寛]わすれめや,
ものがたりして,[寛]ものかたりして,
こころやり[寛],
すぐせどすぎず,[寛]すくれとすきす,
なほこひにけり,[寛]なをこひしくて,
" "#[番号]12/2846","#[題詞](正述心緒)","#[原文]夜不寐 安不有 白細布 衣不脱 及直相","#[訓読]夜も寝ず安くもあらず白栲の衣は脱かじ直に逢ふまでに","#[仮名],よるもねず,やすくもあらず,しろたへの,ころもはぬかじ,ただにあふまでに","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情","#[訓異]
よるもねず,[寛]よるもねす,
やすくもあらず,[寛]やすくもあらす,
しろたへの[寛],
ころもはぬかじ,[寛]ころももぬかし,
ただにあふまでに,[寛]たたにあふまて,
" "#[番号]12/2847","#[題詞](正述心緒)","#[原文]後相 吾莫戀 妹雖云 戀間 年經乍","#[訓読]後も逢はむ我にな恋ひそと妹は言へど恋ふる間に年は経につつ","#[仮名],のちもあはむ,われになこひそと,いもはいへど,こふるあひだに,としはへにつつ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
のちもあはむ,[寛]のちにあはむ,
われになこひそと,[寛]われをこふなと,
いもはいへど,[寛]いもはいへと,
こふるあひだに,[寛]こふるあひたに,
としはへにつつ[寛],
" "#[番号]12/2848","#[題詞](正述心緒)","#[原文]不直<相> 有諾 夢谷 何人 事繁 [或本歌曰 <寤>者 諾毛不相 夢左倍] ","#[訓読]直に会はずあるはうべなり夢にだに何しか人の言の繁けむ [或本歌曰 うつつにはうべも逢はなく夢にさへ] ","#[仮名],ただにあはず,あるはうべなり,いめにだに,なにしかひとの,ことのしげけむ,[うつつには,うべもあはなく,いめにさへ]","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]相者 -> 相 [元][紀][細][温] / 寝 -> 寤 [万葉拾穂抄]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,異伝,,恋情,うわさ","#[訓異]
ただにあはず,[寛]たたにあはす,
あるはうべなり,[寛]あるはことはり,
いめにだに,[寛]ゆめにたに,
なにしかひとの,[寛]いかなるひとの,
ことのしげけむ,[寛]ことのしけけむ,
[うつつには[寛],
うべもあはなく,[寛]うへもあはすて,
いめにさへ],[寛]ゆめにさへ,
" "#[番号]12/2849","#[題詞](正述心緒)","#[原文]烏玉 彼夢 見継哉 袖乾日無 吾戀矣","#[訓読]ぬばたまのその夢にだに見え継ぐや袖干る日なく我れは恋ふるを","#[仮名],ぬばたまの,そのいめにだに,みえつぐや,そでふるひなく,あれはこふるを","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
そのいめにだに,[寛]そのよのゆめに,
みえつぐや,[寛]みつききや,
そでふるひなく,[寛]そてほすひなき,
あれはこふるを,[寛]わかこふらくを,
" "#[番号]12/2850","#[題詞](正述心緒)","#[原文]現 直不相 夢谷 相見与 我戀國","#[訓読]うつつには直には逢はず夢にだに逢ふと見えこそ我が恋ふらくに","#[仮名],うつつには,ただにはあはず,いめにだに,あふとみえこそ,あがこふらくに","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
うつつには[寛],
ただにはあはず,[寛]たたにもあはす,
いめにだに,[寛]ゆめにたに,
あふとみえこそ,[寛]あふとはみえよ,
あがこふらくに,[寛]わかこふらくに,
" "#[番号]12/2851","#[題詞]寄物陳思","#[原文]人所見 表結 人不見 裏紐開 戀日太","#[訓読]人の見る上は結びて人の見ぬ下紐開けて恋ふる日ぞ多き","#[仮名],ひとのみる,うへはむすびて,ひとのみぬ,したひもあけて,こふるひぞおほき","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情,人目,女歌","#[訓異]
ひとのみる,[寛]ひとめには,
うへはむすびて,[寛]うへもむすひて,
ひとのみぬ,[寛]しのひには,
したひもあけて,[寛]したひもとけて,
こふるひぞおほき,[寛]こふるひそおほき,
" "#[番号]12/2852","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]人言 繁時 吾妹 衣有 裏服矣","#[訓読]人言の繁き時には我妹子し衣にありせば下に着ましを","#[仮名],ひとごとの,しげきときには,わぎもこし,ころもにありせば,したにきましを","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,うわさ,恋情","#[訓異]
ひとごとの,[寛]ひとことの,
しげきときには,[寛]しけれるときに,
わぎもこし,[寛]わきもこか,
ころもにありせば,[寛]ころもなりせは,
したにきましを[寛],
" "#[番号]12/2853","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]真珠<服> 遠兼 念 一重衣 一人服寐","#[訓読]真玉つくをちをし兼ねて思へこそ一重の衣ひとり着て寝れ","#[仮名],またまつく,をちをしかねて,おもへこそ,ひとへのころも,ひとりきてぬれ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]眼 -> 服 [古]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情","#[訓異]
またまつく,[寛]しらたまも,
をちをしかねて,[寛]めにやとほけむ,
おもへこそ,[寛]おもひつつ,
ひとへのころも,[寛]ひとへころもを,
ひとりきてぬれ,[寛]ひとりきてぬる,
" "#[番号]12/2854","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]白細布 我紐緒 不絶間 戀結為 及相日","#[訓読]白栲の我が紐の緒の絶えぬ間に恋結びせむ逢はむ日までに","#[仮名],しろたへの,わがひものをの,たえぬまに,こひむすびせむ,あはむひまでに","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,恋情","#[訓異]
しろたへの[寛],
わがひものをの,[寛]わかひものをの,
たえぬまに,[寛]たえすまに,
こひむすびせむ,[寛]こひむすひせむ,
あはむひまでに,[寛]あはむひまてに,
" "#[番号]12/2855","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]新<治> 今作路 清 聞鴨 妹於事矣","#[訓読]新治の今作る道さやかにも聞きてけるかも妹が上のことを","#[仮名],にひはりの,いまつくるみち,さやかにも,ききてけるかも,いもがうへのことを","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]治 [西(上書訂正)][類][古][紀]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,序詞,恋情,うわさ","#[訓異]
にひはりの[寛],
いまつくるみち[寛],
さやかにも,[寛]さやけくも,
ききてけるかも,[寛]きこえけるかも,
いもがうへのことを,[寛]いもかうへのこと,
" "#[番号]12/2856","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]山代 石田<社> 心鈍 手向為在 妹相難","#[訓読]山背の石田の社に心おそく手向けしたれや妹に逢ひかたき","#[仮名],やましろの,いはたのもりに,こころおそく,たむけしたれや,いもにあひかたき","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]杜 -> 社 [西(朱書訂正)][類][紀][温]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,京都府,伏見,恋情","#[訓異]
やましろの[寛],
いはたのもりに[寛],
こころおそく[寛],
たむけしたれや,[寛]たむけしたれは,
いもにあひかたき[寛],
" "#[番号]12/2857","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]菅根之 惻隠々々 照日 乾哉吾袖 於妹不相為","#[訓読]菅の根のねもころごろに照る日にも干めや我が袖妹に逢はずして","#[仮名],すがのねの,ねもころごろに,てるひにも,ひめやわがそで,いもにあはずして","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,枕詞,植物,恋情","#[訓異]
すがのねの,[寛]すかのねの,
ねもころごろに,[寛]しのひしのひに,
てるひにも,[寛]てらすひに,
ひめやわがそで,[寛]ほすやわかそて,
いもにあはずして,[寛]いもにあはすして,
" "#[番号]12/2858","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]妹戀 不寐朝 吹風 妹經者 吾与經","#[訓読]妹に恋ひ寐ねぬ朝明に吹く風は妹にし触れば我れさへに触れ","#[仮名],いもにこひ,いねぬあさけに,ふくかぜは,いもにしふれば,われさへにふれ","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]与 [細] 共","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,恋情","#[訓異]
いもにこひ[寛],
いねぬあさけに,[寛]いねぬあしたに,
ふくかぜは,[寛]ふくかせの,
いもにしふれば,[寛]いもにふれなは,
われさへにふれ,[寛]われとふれなむ,
" "#[番号]12/2859","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]飛鳥川 高川避紫 越来 信今夜 不明行哉","#[訓読]明日香川高川避かし越ゑ来しをまこと今夜は明けずも行かぬか","#[仮名],あすかがは,たかがはよかし,こゑこしを,まことこよひは,あけずもゆかぬか","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]高 (塙)(楓) 奈 / 避紫 [万葉集新考](塙)(楓) 柴避","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,明日香,奈良県,恋愛,川渡り,難渋","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
たかがはよかし,[寛]たかかはとほし,
こゑこしを,[寛]こえてくる,
まことこよひは,[寛]つかひはこよひ,
あけずもゆかぬか,[寛]あけすゆかめや,
" "#[番号]12/2860","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]八<釣>川 水底不絶 行水 續戀 是比歳 [或本歌曰 水尾母不絶] ","#[訓読]八釣川水底絶えず行く水の継ぎてぞ恋ふるこの年ころを [或本歌曰 水脈も絶えせず] ","#[仮名],やつりがは,みなそこたえず,ゆくみづの,つぎてぞこふる,このとしころを,[みをもたえせず]","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]鈎 -> 釣 [紀][温]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,明日香,奈良県,異伝,恋情,序詞","#[訓異]
やつりがは,[寛]やつりかは,
みなそこたえず,[寛]みなそこたえす,
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
つぎてぞこふる,[寛]つきてそこふる,
このとしころを,[寛]このとしころは,
[みをもたえせず],[寛]みをもたえせす,
" "#[番号]12/2861","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]礒上 生小松 名惜 人不知 戀渡鴨","#[訓読]礒の上に生ふる小松の名を惜しみ人に知らえず恋ひわたるかも","#[仮名],いそのうへに,おふるこまつの,なををしみ,ひとにしらえず,こひわたるかも","#[左注]或本歌曰 巌上尓 立小松 名惜 人尓者不云 戀渡鴨 (右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,人目,うわさ,恋情,序詞","#[訓異]
いそのうへに[寛],
おふるこまつの[寛],
なををしみ[寛],
ひとにしらえず,[寛]ひとにしられす,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]12/2861S","#[題詞](寄物陳思)或本歌曰","#[原文]巌上尓 立小松 名惜 人尓者不云 戀渡鴨","#[訓読]岩の上に立てる小松の名を惜しみ人には言はず恋ひわたるかも ","#[仮名],いはのうへに,たてるこまつの,なををしみ,ひとにはいはず,こひわたるかも","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,序詞,植物,人目,うわさ,恋情,異伝","#[訓異]
いはのうへに[寛],
たてるこまつの[寛],
なををしみ[寛],
ひとにはいはず,[寛]ひとにはいはて,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]12/2862","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]山川 水陰生 山草 不止妹 所念鴨","#[訓読]山川の水陰に生ふる山菅のやまずも妹は思ほゆるかも","#[仮名],やまがはの,みづかげにおふる,やますげの,やまずもいもは,おもほゆるかも","#[左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,序詞,恋情","#[訓異]
やまがはの,[寛]やまかはの,
みづかげにおふる,[寛]みかけにおふる,
やますげの,[寛]やますけの,
やまずもいもは,[寛]やますもいもか,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]12/2863","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]淺葉野 立神古 菅根 惻隠誰故 吾不戀 [或本歌曰 誰葉野尓 立志奈比垂] ","#[訓読]浅葉野に立ち神さぶる菅の根のねもころ誰がゆゑ我が恋ひなくに [或本歌曰 誰が葉野に立ちしなひたる] ","#[仮名],あさはのに,たちかむさぶる,すがのねの,ねもころたがゆゑ,あがこひなくに,[たがはのに,たちしなひたる]","#[左注]右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,序詞,恋情,異伝","#[訓異]
あさはのに[寛],
たちかむさぶる,[寛]たつみわこすけ,
すがのねの,[寛]ねかくれて,
ねもころたがゆゑ,[寛]たれゆへにかは,
あがこひなくに,[寛]わかこひさらむ,
[たがはのに,[寛]たかはのに,
たちしなひたる][寛],
" "#[番号]12/2864","#[題詞]正述心緒","#[原文]吾背子乎 且今々々跡 待居尓 夜更深去者 嘆鶴鴨","#[訓読]我が背子を今か今かと待ち居るに夜の更けゆけば嘆きつるかも","#[仮名],わがせこを,いまかいまかと,まちゐるに,よのふけゆけば,なげきつるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
わがせこを,[寛]わかせこを,
いまかいまかと[寛],
まちゐるに,[寛]まちをるに,
よのふけゆけば,[寛]よのふけゆけは,
なげきつるかも,[寛]なけきつるかも,
" "#[番号]12/2865","#[題詞](正述心緒)","#[原文]玉釼 巻宿妹母 有者許増 夜之長毛 歡有倍吉","#[訓読]玉釧まき寝る妹もあらばこそ夜の長けくも嬉しくあるべき","#[仮名],たまくしろ,まきぬるいもも,あらばこそ,よのながけくも,うれしくあるべき","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋愛","#[訓異]
たまくしろ,[寛]たまつるき,
まきぬるいもも[寛],
あらばこそ,[寛]あらはこそ,
よのながけくも,[寛]よのなかけきも,
うれしくあるべき,[寛]うれしかるへき,
" "#[番号]12/2866","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人妻尓 言者誰事 酢衣乃 此紐解跡 言者孰言","#[訓読]人妻に言ふは誰が言さ衣のこの紐解けと言ふは誰が言","#[仮名],ひとづまに,いふはたがこと,さごろもの,このひもとけと,いふはたがこと","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,歌謡","#[訓異]
ひとづまに,[寛]ひとつまに,
いふはたがこと,[寛]いふはたかこと,
さごろもの,[寛]さころもの,
このひもとけと[寛],
いふはたがこと,[寛]いふはたかこと,
" "#[番号]12/2867","#[題詞](正述心緒)","#[原文]如是許 将戀物其跡 知者 其夜者由多尓 有益物乎","#[訓読]かくばかり恋ひむものぞと知らませばその夜はゆたにあらましものを","#[仮名],かくばかり,こひむものぞと,しらませば,そのよはゆたに,あらましものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,未練","#[訓異]
かくばかり,[寛]かくはかり,
こひむものぞと,[寛]こひむものそと,
しらませば,[寛]しらませは,
そのよはゆたに[寛],
あらましものを[寛],
" "#[番号]12/2868","#[題詞](正述心緒)","#[原文]戀乍毛 後将相跡 思許増 己命乎 長欲為礼","#[訓読]恋ひつつも後も逢はむと思へこそおのが命を長く欲りすれ","#[仮名],こひつつも,のちもあはむと,おもへこそ,おのがいのちを,ながくほりすれ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
こひつつも[寛],
のちもあはむと,[寛]のちにあはむと,
おもへこそ[寛],
おのがいのちを,[寛]おのかいのちを,
ながくほりすれ,[寛]なかくほりすれ,
" "#[番号]12/2869","#[題詞](正述心緒)","#[原文]今者吾者 将死与吾妹 不相而 念渡者 安毛無","#[訓読]今は我は死なむよ我妹逢はずして思ひわたれば安けくもなし","#[仮名],いまはわは,しなむよわぎも,あはずして,おもひわたれば,やすけくもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
いまはわは,[寛]いまはわれ,
しなむよわぎも,[寛]しなむよわきも,
あはずして,[寛]あはすして,
おもひわたれば,[寛]おもひわたれは,
やすけくもなし[寛],
" "#[番号]12/2870","#[題詞](正述心緒)","#[原文]我背子之 将来跡語之 夜者過去 思咲八更々 思許理来目八面","#[訓読]我が背子が来むと語りし夜は過ぎぬしゑやさらさらしこり来めやも","#[仮名],わがせこが,こむとかたりし,よはすぎぬ,しゑやさらさら,しこりこめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,怨恨,恋愛","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
こむとかたりし[寛],
よはすぎぬ,[寛]よはすきぬ,
しゑやさらさら[寛],
しこりこめやも[寛],
" "#[番号]12/2871","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人言之 讒乎聞而 玉<桙>之 道毛不相常 云吾妹","#[訓読]人言の讒しを聞きて玉桙の道にも逢はじと言へりし我妹","#[仮名],ひとごとの,よこしをききて,たまほこの,みちにもあはじと,いへりしわぎも","#[左注]","#[校異]杵 -> 桙 [細][温][矢][京]","#[事項],うわさ,枕詞,恋愛","#[訓異]
ひとごとの,[寛]ひとことの,
よこしをききて,[寛]よこすをききて,
たまほこの[寛],
みちにもあはじと,[寛]みちにもあはす,
いへりしわぎも,[寛]つねいふわきも,
" "#[番号]12/2872","#[題詞](正述心緒)","#[原文]不相毛 懈常念者 弥益二 人言繁 所聞来可聞","#[訓読]逢はなくも憂しと思へばいや増しに人言繁く聞こえ来るかも","#[仮名],あはなくも,うしとおもへば,いやましに,ひとごとしげく,きこえくるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],うわさ,恋愛","#[訓異]
あはなくも,[寛]あはぬをも,
うしとおもへば,[寛]うしとおもへは,
いやましに[寛],
ひとごとしげく,[寛]ひとことしけく,
きこえくるかも,[寛]きこえこむかも,
" "#[番号]12/2873","#[題詞](正述心緒)","#[原文]里人毛 謂告我祢 縦咲也思 戀而毛将死 誰名将有哉","#[訓読]里人も語り継ぐがねよしゑやし恋ひても死なむ誰が名ならめや","#[仮名],さとびとも,かたりつぐがね,よしゑやし,こひてもしなむ,たがなならめや","#[左注]","#[校異]","#[事項],うわさ,人目,恋愛","#[訓異]
さとびとも,[寛]さとひとも,
かたりつぐがね,[寛]いひつくかねに,
よしゑやし[寛],
こひてもしなむ[寛],
たがなならめや,[寛]たかなならめや,
" "#[番号]12/2874","#[題詞](正述心緒)","#[本文]り 使乎無跡 情乎曽 使尓遣之 夢所見哉","#[訓読]確かなる使をなみと心をぞ使に遣りし夢に見えきや","#[仮名],たしかなる,つかひをなみと,こころをぞ,つかひにやりし,いめにみえきや","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋愛","#[訓異]
たしかなる[寛],
つかひをなみと,[寛]つかひをなしと,
こころをぞ,[寛]こころをそ,
つかひにやりし[寛],
いめにみえきや,[寛]ゆめにみえきや,
" "#[番号]12/2875","#[題詞](正述心緒)","#[原文]天地尓 小不至 大夫跡 思之吾耶 <雄>心毛無寸","#[訓読]天地に少し至らぬ大夫と思ひし我れや雄心もなき","#[仮名],あめつちに,すこしいたらぬ,ますらをと,おもひしわれや,をごころもなき","#[左注]","#[校異]雄 [西(上書訂正)][元][紀][細][温]","#[事項],恋情","#[訓異]
あめつちに[寛],
すこしいたらぬ[寛],
ますらをと[寛],
おもひしわれや[寛],
をごころもなき,[寛]をこころもなき,
" "#[番号]12/2876","#[題詞](正述心緒)","#[原文]里近 家<哉>應居 此吾目之 人目乎為乍 戀繁口","#[訓読]里近く家や居るべきこの我が目の人目をしつつ恋の繁けく","#[仮名],さとちかく,いへやをるべき,このわがめの,ひとめをしつつ,こひのしげけく","#[左注]","#[校異]武 -> 哉 [西(右書訂正)][元][紀][細][温] / 目之 [元] 目","#[事項],うわさ,人目,恋情","#[訓異]
さとちかく[寛],
いへやをるべき,[寛]いへやをるへき,
このわがめの,[寛]このわかめの,
ひとめをしつつ[寛],
こひのしげけく,[寛]こひのしけけく,
" "#[番号]12/2877","#[題詞](正述心緒)","#[原文]何時奈毛 不<戀>有登者 雖不有 得田直比来 戀之繁母","#[訓読]いつはなも恋ひずありとはあらねどもうたてこのころ恋し繁しも","#[仮名],いつはなも,こひずありとは,あらねども,うたてこのころ,こひししげしも","#[左注]","#[校異]戀奈毛 -> 戀 [西(訂正)][紀][細][温]","#[事項],恋情","#[訓異]
いつはなも,[寛]いつとなも,
こひずありとは,[寛]こひすありとは,
あらねども,[寛]あらねとも,
うたてこのころ,[寛]うたたこのころ,
こひししげしも,[寛]こひのしけきも,
" "#[番号]12/2878","#[題詞](正述心緒)","#[原文]黒玉之 宿而之晩乃 物念尓 割西る者 息時裳無","#[訓読]ぬばたまの寐ねてし宵の物思ひに裂けにし胸はやむ時もなし","#[仮名],ぬばたまの,いねてしよひの,ものもひに,さけにしむねは,やむときもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
いねてしよひの,[寛]ねてのゆふへの,
ものもひに,[寛]ものおもひに,
さけにしむねは[寛],
やむときもなし[寛],
" "#[番号]12/2879","#[題詞](正述心緒)","#[原文]三空去 名之惜毛 吾者無 不相日數多 年之經者","#[訓読]み空行く名の惜しけくも我れはなし逢はぬ日まねく年の経ぬれば","#[仮名],みそらゆく,なのをしけくも,われはなし,あはぬひまねく,としのへぬれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],うわさ,恋情","#[訓異]
みそらゆく[寛],
なのをしけくも[寛],
われはなし[寛],
あはぬひまねく,[寛]あはぬひあまた,
としのへぬれば,[寛]としのへぬれは,
" "#[番号]12/2880","#[題詞](正述心緒)","#[原文]得管二毛 今毛見<壮>鹿 夢耳 手本纒宿登 見者辛苦毛 [或本歌發<句>曰 吾妹兒乎] ","#[訓読]うつつにも今も見てしか夢のみに手本まき寝と見るは苦しも [或本歌發<句>曰 我妹子を] ","#[仮名],うつつにも,いまもみてしか,いめのみに,たもとまきぬと,みるはくるしも,[わぎもこを]","#[左注]","#[校異]社 -> 壮 [元][細][紀] / 勺 -> 句 [元][紀][細]","#[事項],異伝,恋情","#[訓異]
うつつにも[寛],
いまもみてしか[寛],
いめのみに,[寛]ゆめにのみ,
たもとまきぬと[寛],
みるはくるしも,[寛]みれはくるしも,
[わぎもこを],[寛]わきもこを,
" "#[番号]12/2881","#[題詞](正述心緒)","#[原文]立而居 為便乃田時毛 今者無 妹尓不相而 月之經去者 [或本歌曰 君之目不見而 月之經去者] ","#[訓読]立ちて居てすべのたどきも今はなし妹に逢はずて月の経ぬれば [或本歌曰 君が目見ずて月の経ぬれば] ","#[仮名],たちてゐて,すべのたどきも,いまはなし,いもにあはずて,つきのへぬれば,[きみがめみずて,つきのへぬれば]","#[左注]","#[校異]","#[事項],異伝,恋情","#[訓異]
たちてゐて,[寛]たちてゐる,
すべのたどきも,[寛]すへのたときも,
いまはなし[寛],
いもにあはずて,[寛]いもにあはすて,
つきのへぬれば,[寛]つきのへゆけは,
[きみがめみずて,[寛]きみかめみすて,
つきのへぬれば],[寛]つきのへゆけは,
" "#[番号]12/2882","#[題詞](正述心緒)","#[原文]不相而 戀度等母 忘哉 弥日異者 思益等母","#[訓読]逢はずして恋ひわたるとも忘れめやいや日に異には思ひ増すとも","#[仮名],あはずして,こひわたるとも,わすれめや,いやひにけには,おもひますとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
あはずして,[寛]あはすして,
こひわたるとも,[寛]こひわたるも,
わすれめや[寛],
いやひにけには[寛],
おもひますとも[寛],
" "#[番号]12/2883","#[題詞](正述心緒)","#[原文]外目毛 君之光儀乎 見而者社 吾戀山目 命不死者 [一云 壽向 吾戀止目] ","#[訓読]外目にも君が姿を見てばこそ我が恋やまめ命死なずは [一云 命に向ふ我が恋やまめ] ","#[仮名],よそめにも,きみがすがたを,みてばこそ,あがこひやまめ,いのちしなずは,[いのちにむかふ,あがこひやまめ]","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,異伝","#[訓異]
よそめにも[寛],
きみがすがたを,[寛]きみかすかたを,
みてばこそ,[寛]みてはこそ,
あがこひやまめ,[寛]われこひやまめ,
いのちしなずは,[寛]いのちしなすは,
[いのちにむかふ[寛],
あがこひやまめ],[寛]わかこひやまめ,
" "#[番号]12/2884","#[題詞](正述心緒)","#[原文]戀管母 今日者在目杼 玉匣 将開明日 如何将暮","#[訓読]恋ひつつも今日はあらめど玉櫛笥明けなむ明日をいかに暮らさむ","#[仮名],こひつつも,けふはあらめど,たまくしげ,あけなむあすを,いかにくらさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
こひつつも[寛],
けふはあらめど,[寛]けふはあらめと,
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
あけなむあすを[寛],
いかにくらさむ,[寛]いかてくらさむ,
" "#[番号]12/2885","#[題詞](正述心緒)","#[原文]左夜深而 妹乎念出 布妙之 枕毛衣世二 <嘆>鶴鴨","#[訓読]さ夜更けて妹を思ひ出で敷栲の枕もそよに嘆きつるかも","#[仮名],さよふけて,いもをおもひいで,しきたへの,まくらもそよに,なげきつるかも","#[左注]","#[校異]歎 -> 嘆 [元][紀][細][温]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
さよふけて[寛],
いもをおもひいで,[寛]いもをおもひてて,
しきたへの[寛],
まくらもそよに[寛],
なげきつるかも,[寛]なけきつるかも,
" "#[番号]12/2886","#[題詞](正述心緒)","#[原文]他言者 真言痛 成友 彼所将障 吾尓不有國","#[訓読]人言はまこと言痛くなりぬともそこに障らむ我れにあらなくに","#[仮名],ひとごとは,まことこちたく,なりぬとも,そこにさはらむ,われにあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],うわさ,恋情","#[訓異]
ひとごとは,[寛]ひとことは,
まことこちたく[寛],
なりぬとも[寛],
そこにさはらむ[寛],
われにあらなくに[寛],
" "#[番号]12/2887","#[題詞](正述心緒)","#[原文]立居 田時毛不知 吾意 天津空有 土者踐鞆","#[訓読]立ちて居てたどきも知らず我が心天つ空なり地は踏めども","#[仮名],たちてゐて,たどきもしらず,あがこころ,あまつそらなり,つちはふめども","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
たちてゐて,[寛]たちゐする,
たどきもしらず,[寛]たときもしらす,
あがこころ,[寛]わかこころ,
あまつそらなり[寛],
つちはふめども,[寛]つちはふめとも,
" "#[番号]12/2888","#[題詞](正述心緒)","#[原文]世間之 人辞常 所念莫 真曽戀之 不相日乎多美","#[訓読]世の中の人のことばと思ほすなまことぞ恋ひし逢はぬ日を多み","#[仮名],よのなかの,ひとのことばと,おもほすな,まことぞこひし,あはぬひをおほみ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
よのなかの[寛],
ひとのことばと,[寛]ひとのことはと,
おもほすな[寛],
まことぞこひし,[寛]まことそこひし,
あはぬひをおほみ[寛],
" "#[番号]12/2889","#[題詞](正述心緒)","#[原文]乞如何 吾幾許戀流 吾妹子之 不相跡言流 事毛有莫國","#[訓読]いで如何に我がここだ恋ふる我妹子が逢はじと言へることもあらなくに","#[仮名],いでいかに,あがここだこふる,わぎもこが,あはじといへる,こともあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
いでいかに,[寛]いていかに,
あがここだこふる,[寛]わかかくこふる,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
あはじといへる,[寛]あはしといへる,
こともあらなくに[寛],
" "#[番号]12/2890","#[題詞](正述心緒)","#[原文]夜干玉之 夜乎長鴨 吾背子之 夢尓夢西 所見還良武","#[訓読]ぬばたまの夜を長みかも我が背子が夢に夢にし見えかへるらむ","#[仮名],ぬばたまの,よをながみかも,わがせこが,いめにいめにし,みえかへるらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よをながみかも,[寛]よをなかみかも,
わがせこが,[寛]わかせこか,
いめにいめにし,[寛]ゆめにゆめにし,
みえかへるらむ[寛],
" "#[番号]12/2891","#[題詞](正述心緒)","#[原文]荒玉之 年緒長 如此戀者 信吾命 全有目八面","#[訓読]あらたまの年の緒長くかく恋ひばまこと我が命全くあらめやも","#[仮名],あらたまの,としのをながく,かくこひば,まことわがいのち,またくあらめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
あらたまの[寛],
としのをながく,[寛]としのをなかく,
かくこひば,[寛]かくこひは,
まことわがいのち,[寛]まことわかいのち,
またくあらめやも,[寛]またからめやも,
" "#[番号]12/2892","#[題詞](正述心緒)","#[原文]思遣 為便乃田時毛 吾者無 不相數多 月之經去者","#[訓読]思ひ遣るすべのたどきも我れはなし逢はずてまねく月の経ぬれば","#[仮名],おもひやる,すべのたどきも,われはなし,あはずてまねく,つきのへぬれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
おもひやる[寛],
すべのたどきも,[寛]すへのたときも,
われはなし[寛],
あはずてまねく,[寛]あはすてあまた,
つきのへぬれば,[寛]つきのへゆけは,
" "#[番号]12/2893","#[題詞](正述心緒)","#[原文]朝去而 暮者来座 君故尓 忌々久毛吾者 歎鶴鴨","#[訓読]朝去にて夕は来ます君ゆゑにゆゆしくも我は嘆きつるかも","#[仮名],あしたいにて,ゆふへはきます,きみゆゑに,ゆゆしくもわは,なげきつるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
あしたいにて,[寛]あさゆきて,
ゆふへはきます[寛],
きみゆゑに,[寛]きみゆへに,
ゆゆしくもわは,[寛]ゆゆしくもわれは,
なげきつるかも,[寛]なけきつるかも,
" "#[番号]12/2894","#[題詞](正述心緒)","#[原文]従聞 物乎念者 我る者 破而摧而 鋒心無","#[訓読]聞きしより物を思へば我が胸は破れて砕けて利心もなし","#[仮名],ききしより,ものをおもへば,あがむねは,われてくだけて,とごころもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
ききしより[寛],
ものをおもへば,[寛]ものをおもへは,
あがむねは,[寛]わかむねは,
われてくだけて,[寛]われてくたけて,
とごころもなし,[寛]とこころもなし,
" "#[番号]12/2895","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人言乎 繁三言痛三 我妹子二 去月従 未相可母","#[訓読]人言を繁み言痛み我妹子に去にし月よりいまだ逢はぬかも","#[仮名],ひとごとを,しげみこちたみ,わぎもこに,いにしつきより,いまだあはぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],うわさ,恋情","#[訓異]
ひとごとを,[寛]ひとことを,
しげみこちたみ,[寛]しけみこちたみ,
わぎもこに,[寛]わきもこに,
いにしつきより[寛],
いまだあはぬかも,[寛]いまたあはぬかも,
" "#[番号]12/2896","#[題詞](正述心緒)","#[原文]歌方毛 曰管毛有鹿 吾有者 地庭不落 空消生","#[訓読]うたがたも言ひつつもあるか我れならば地には落ちず空に消なまし","#[仮名],うたがたも,いひつつもあるか,われならば,つちにはおちず,そらにけなまし","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
うたがたも,[寛]うたかたも,
いひつつもあるか[寛],
われならば,[寛]われならは,
つちにはおちず,[寛]つちにはおちし,
そらにけなまし[寛],
" "#[番号]12/2897","#[題詞](正述心緒)","#[原文]何 日之時可毛 吾妹子之 裳引之容儀 朝尓食尓将見","#[訓読]いかならむ日の時にかも我妹子が裳引きの姿朝に日に見む","#[仮名],いかならむ,ひのときにかも,わぎもこが,もびきのすがた,あさにけにみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
いかならむ,[寛]いかならん,
ひのときにかも[寛],
わぎもこが,[寛]わきもこか,
もびきのすがた,[寛]もひきのすかた,
あさにけにみむ[寛],
" "#[番号]12/2898","#[題詞](正述心緒)","#[原文]獨居而 戀者辛苦 玉手次 不懸将忘 言量欲","#[訓読]ひとり居て恋ふるは苦し玉たすき懸けず忘れむ事計りもが","#[仮名],ひとりゐて,こふるはくるし,たまたすき,かけずわすれむ,ことはかりもが","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
ひとりゐて[寛],
こふるはくるし[寛],
たまたすき[寛],
かけずわすれむ,[寛]かけてわすれむ,
ことはかりもが,[寛]ことはかりせよ,
" "#[番号]12/2899","#[題詞](正述心緒)","#[原文]中々二 黙然毛有申尾 小豆無 相見始而毛 吾者戀香","#[訓読]なかなかに黙もあらましをあづきなく相見そめても我れは恋ふるか","#[仮名],なかなかに,もだもあらましを,あづきなく,あひみそめても,あれはこふるか","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
なかなかに[寛],
もだもあらましを,[寛]もたもあらましを,
あづきなく,[寛]あちきなく,
あひみそめても[寛],
あれはこふるか,[寛]われはこふるか,
" "#[番号]12/2900","#[題詞](正述心緒)","#[原文]吾妹子之 咲眉引 面影 懸而本名 所念可毛","#[訓読]我妹子が笑まひ眉引き面影にかかりてもとな思ほゆるかも","#[仮名],わぎもこが,ゑまひまよびき,おもかげに,かかりてもとな,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
ゑまひまよびき,[寛]ゑまひまよひき,
おもかげに,[寛]おもかけに,
かかりてもとな[寛],
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]12/2901","#[題詞](正述心緒)","#[原文]赤根指 日之暮去者 為便乎無三 千遍嘆而 戀乍曽居","#[訓読]あかねさす日の暮れゆけばすべをなみ千たび嘆きて恋ひつつぞ居る","#[仮名],あかねさす,ひのくれゆけば,すべをなみ,ちたびなげきて,こひつつぞをる","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
あかねさす[寛],
ひのくれゆけば,[寛]ひのくれゆけは,
すべをなみ,[寛]すへをなみ,
ちたびなげきて,[寛]ちへになけきて,
こひつつぞをる,[寛]こひつつそをる,
" "#[番号]12/2902","#[題詞](正述心緒)","#[原文]吾戀者 夜晝不別 百重成 情之念者 甚為便無","#[訓読]我が恋は夜昼わかず百重なす心し思へばいたもすべなし","#[仮名],あがこひは,よるひるわかず,ももへなす,こころしおもへば,いたもすべなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
あがこひは,[寛]わかこひは,
よるひるわかず,[寛]よるひるわかす,
ももへなす,[寛]ももへなる,
こころしおもへば,[寛]こころしおもへは,
いたもすべなし,[寛]いともすへなし,
" "#[番号]12/2903","#[題詞](正述心緒)","#[原文]五十殿寸太 薄寸眉根乎 徒 令掻管 不相人可母","#[訓読]いとのきて薄き眉根をいたづらに掻かしめつつも逢はぬ人かも","#[仮名],いとのきて,うすきまよねを,いたづらに,かかしめつつも,あはぬひとかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
いとのきて[寛],
うすきまよねを,[寛]うすきまゆねを,
いたづらに,[寛]いたつらに,
かかしめつつも[寛],
あはぬひとかも[寛],
" "#[番号]12/2904","#[題詞](正述心緒)","#[原文]戀々而 後裳将相常 名草漏 心四無者 五十寸手有目八面","#[訓読]恋ひ恋ひて後も逢はむと慰もる心しなくは生きてあらめやも","#[仮名],こひこひて,のちもあはむと,なぐさもる,こころしなくは,いきてあらめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
こひこひて[寛],
のちもあはむと[寛],
なぐさもる,[寛]なくさむる,
こころしなくは[寛],
いきてあらめやも[寛],
" "#[番号]12/2905","#[題詞](正述心緒)","#[原文]幾 不生有命乎 戀管曽 吾者氣衝 人尓不所知","#[訓読]いくばくも生けらじ命を恋ひつつぞ我れは息づく人に知らえず","#[仮名],いくばくも,いけらじいのちを,こひつつぞ,われはいきづく,ひとにしらえず","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
いくばくも,[寛]いくはくも,
いけらじいのちを,[寛]いけらしいのちを,
こひつつぞ,[寛]こひつつそ,
われはいきづく,[寛]われはいきつく,
ひとにしらえず,[寛]ひとにしられす,
" "#[番号]12/2906","#[題詞](正述心緒)","#[原文]他國尓 結婚尓行而 大刀之緒毛 未解者 左夜曽明家流","#[訓読]他国によばひに行きて大刀が緒もいまだ解かねばさ夜ぞ明けにける","#[仮名],ひとくにに,よばひにゆきて,たちがをも,いまだとかねば,さよぞあけにける","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋愛","#[訓異]
ひとくにに[寛],
よばひにゆきて,[寛]よはひにゆきて,
たちがをも,[寛]たちのをも,
いまだとかねば,[寛]またとけされは,
さよぞあけにける,[寛]さよそあけにける,
" "#[番号]12/2907","#[題詞](正述心緒)","#[原文]大夫之 <聡>神毛 今者無 戀之奴尓 吾者可死","#[訓読]ますらをの聡き心も今はなし恋の奴に我れは死ぬべし","#[仮名],ますらをの,さときこころも,いまはなし,こひのやつこに,われはしぬべし","#[左注]","#[校異]聴 -> 聡 [西(訂正頭書)][元][紀][細][温]","#[事項],恋情","#[訓異]
ますらをの[寛],
さときこころも[寛],
いまはなし[寛],
こひのやつこに[寛],
われはしぬべし,[寛]われはしぬへし,
" "#[番号]12/2908","#[題詞](正述心緒)","#[原文]常如是 戀者辛苦 ま毛 心安目六 事計為与","#[訓読]常かくし恋ふれば苦ししましくも心休めむ事計りせよ","#[仮名],つねかくし,こふればくるし,しましくも,こころやすめむ,ことはかりせよ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
つねかくし,[寛]つねにかく,
こふればくるし,[寛]こふれはくるし,
しましくも,[寛]しはらくも,
こころやすめむ[寛],
ことはかりせよ[寛],
" "#[番号]12/2909","#[題詞](正述心緒)","#[原文]凡尓 吾之念者 人妻尓 有云妹尓 戀管有米也","#[訓読]おほろかに我れし思はば人妻にありといふ妹に恋ひつつあらめや","#[仮名],おほろかに,われしおもはば,ひとづまに,ありといふいもに,こひつつあらめや","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
おほろかに,[寛]おほよそに,
われしおもはば,[寛]われしおもはは,
ひとづまに,[寛]ひとつまに,
ありといふいもに[寛],
こひつつあらめや[寛],
" "#[番号]12/2910","#[題詞](正述心緒)","#[原文]心者 千重百重 思有杼 人目乎多見 妹尓不相可母","#[訓読]心には千重に百重に思へれど人目を多み妹に逢はぬかも","#[仮名],こころには,ちへにももへに,おもへれど,ひとめをおほみ,いもにあはぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,人目,うわさ","#[訓異]
こころには[寛],
ちへにももへに[寛],
おもへれど,[寛]おもへれと,
ひとめをおほみ[寛],
いもにあはぬかも[寛],
" "#[番号]12/2911","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人目多見 眼社忍礼 小毛 心中尓 吾念莫國","#[訓読]人目多み目こそ忍ぶれすくなくも心のうちに我が思はなくに","#[仮名],ひとめおほみ,めこそしのぶれ,すくなくも,こころのうちに,わがおもはなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],人目,うわさ,恋情","#[訓異]
ひとめおほみ[寛],
めこそしのぶれ,[寛]めこそしのふれ,
すくなくも[寛],
こころのうちに[寛],
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]12/2912","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人見而 事害目不為 夢尓吾 今夜将至 屋戸閇勿勤","#[訓読]人の見て言とがめせぬ夢に我れ今夜至らむ宿閉すなゆめ","#[仮名],ひとのみて,こととがめせぬ,いめにわれ,こよひいたらむ,やどさすなゆめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],人目,うわさ,恋情","#[訓異]
ひとのみて[寛],
こととがめせぬ,[寛]こととかめせぬ,
いめにわれ,[寛]ゆめにわれ,
こよひいたらむ[寛],
やどさすなゆめ,[寛]やとさすなゆめ,
" "#[番号]12/2913","#[題詞](正述心緒)","#[原文]何時左右二 将生命曽 凡者 戀乍不有者 死上有","#[訓読]いつまでに生かむ命ぞおほかたは恋ひつつあらずは死なましものを","#[仮名],いつまでに,いかむいのちぞ,おほかたは,こひつつあらずは,しなましものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
いつまでに,[寛]いつまてに,
いかむいのちぞ,[寛]いかむいのちそ,
おほかたは,[寛]おほよそは,
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
しなましものを,[寛]しぬるまされり,
" "#[番号]12/2914","#[題詞](正述心緒)","#[原文]<愛>等 念吾妹乎 夢見而 起而探尓 無之不怜","#[訓読]愛しと思ふ我妹を夢に見て起きて探るになきが寂しさ","#[仮名],うつくしと,おもふわぎもを,いめにみて,おきてさぐるに,なきがさぶしさ","#[左注]","#[校異]愛 [西(上書訂正)][元][紀][細][温]","#[事項],恋情,遊仙窟","#[訓異]
うつくしと[寛],
おもふわぎもを,[寛]おもふわきもを,
いめにみて,[寛]ゆめにみて,
おきてさぐるに,[寛]おきてさくるに,
なきがさぶしさ,[寛]なきかさひしさ,
" "#[番号]12/2915","#[題詞](正述心緒)","#[原文]妹登曰者 無礼恐 然為蟹 懸巻欲 言尓有鴨","#[訓読]妹と言はばなめし畏ししかすがに懸けまく欲しき言にあるかも","#[仮名],いもといはば,なめしかしこし,しかすがに,かけまくほしき,ことにあるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋愛","#[訓異]
いもといはば,[寛]いもといへは,
なめしかしこし,[寛]なけれかしこし,
しかすがに,[寛]しかすかに,
かけまくほしき[寛],
ことにあるかも,[寛]われにあるかも,
" "#[番号]12/2916","#[題詞](正述心緒)","#[原文]玉勝間 相登云者 誰有香 相有時左倍 面隠為","#[訓読]玉かつま逢はむと言ふは誰れなるか逢へる時さへ面隠しする","#[仮名],たまかつま,あはむといふは,たれなるか,あへるときさへ,おもかくしする","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
たまかつま[寛],
あはむといふは[寛],
たれなるか[寛],
あへるときさへ[寛],
おもかくしする,[寛]おもかくれする,
" "#[番号]12/2917","#[題詞](正述心緒)","#[原文]寤香 妹之来座有 夢可毛 吾香惑流 戀之繁尓","#[訓読]うつつにか妹が来ませる夢にかも我れか惑へる恋の繁きに","#[仮名],うつつにか,いもがきませる,いめにかも,われかまとへる,こひのしげきに","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
うつつにか[寛],
いもがきませる,[寛]いもかきませる,
いめにかも,[寛]ゆめにかも,
われかまとへる[寛],
こひのしげきに,[寛]こひのしけきに,
" "#[番号]12/2918","#[題詞](正述心緒)","#[原文]大方者 何鴨将戀 言擧不為 妹尓依宿牟 年者近<綬>","#[訓読]おほかたは何かも恋ひむ言挙げせず妹に寄り寝む年は近きを","#[仮名],おほかたは,なにかもこひむ,ことあげせず,いもによりねむ,としはちかきを","#[左注]","#[校異]絞 -> 綬 [元][紀][矢][京]","#[事項],恋情","#[訓異]
おほかたは[寛],
なにかもこひむ[寛],
ことあげせず,[寛]ことあけせす,
いもによりねむ[寛],
としはちかきを[寛],
" "#[番号]12/2919","#[題詞](正述心緒)","#[原文]二為而 結之紐乎 一為而 吾者解不見 直相及者","#[訓読]ふたりして結びし紐をひとりして我れは解きみじ直に逢ふまでは","#[仮名],ふたりして,むすびしひもを,ひとりして,あれはときみじ,ただにあふまでは","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,羈旅","#[訓異]
ふたりして[寛],
むすびしひもを,[寛]むすひしひもを,
ひとりして[寛],
あれはときみじ,[寛]われはときみし,
ただにあふまでは,[寛]たたにあふまては,
" "#[番号]12/2920","#[題詞](正述心緒)","#[原文]終命 此者不念 唯毛 妹尓不相 言乎之曽念","#[訓読]終へむ命ここは思はずただしくも妹に逢はざることをしぞ思ふ","#[仮名],をへむいのち,ここはおもはず,ただしくも,いもにあはざる,ことをしぞおもふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
をへむいのち,[寛]しなむいのち,
ここはおもはず,[寛]ころはおもはす,
ただしくも,[寛]たたしくも,
いもにあはざる,[寛]いもにあはさる,
ことをしぞおもふ,[寛]ことをしそおもふ,
" "#[番号]12/2921","#[題詞](正述心緒)","#[原文]幼婦者 同情 須臾 止時毛無久 将見等曽念","#[訓読]たわや女は同じ心にしましくもやむ時もなく見てむとぞ思ふ","#[仮名],たわやめは,おやじこころに,しましくも,やむときもなく,みてむとぞおもふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
たわやめは,[寛]をとめこは,
おやじこころに,[寛]おなしこころに,
しましくも,[寛]しはらくも,
やむときもなく[寛],
みてむとぞおもふ,[寛]みなむとそおもふ,
" "#[番号]12/2922","#[題詞](正述心緒)","#[原文]夕去者 於君将相跡 念許<増> 日之晩毛 れ有家礼","#[訓読]夕さらば君に逢はむと思へこそ日の暮るらくも嬉しくありけれ","#[仮名],ゆふさらば,きみにあはむと,おもへこそ,ひのくるらくも,うれしくありけれ","#[左注]","#[校異]憎 -> 増 [元][紀][温][京]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
ゆふさらば,[寛]ゆふされは,
きみにあはむと[寛],
おもへこそ[寛],
ひのくるらくも[寛],
うれしくありけれ,[寛]うれしかりなれ,
" "#[番号]12/2923","#[題詞](正述心緒)","#[原文]直今日毛 君尓波相目跡 人言乎 繁不相而 戀度鴨","#[訓読]ただ今日も君には逢はめど人言を繁み逢はずて恋ひわたるかも","#[仮名],ただけふも,きみにはあはめど,ひとごとを,しげみあはずて,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,うわさ,女歌","#[訓異]
ただけふも,[寛]たたけふも,
きみにはあはめど,[寛]きみにはあはめと,
ひとごとを,[寛]ひとことを,
しげみあはずて,[寛]しけみあはすて,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]12/2924","#[題詞](正述心緒)","#[原文]世間尓 戀将繁跡 不念者 君之手本乎 不枕夜毛有寸","#[訓読]世の中に恋繁けむと思はねば君が手本をまかぬ夜もありき","#[仮名],よのなかに,こひしげけむと,おもはねば,きみがたもとを,まかぬよもありき","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
よのなかに[寛],
こひしげけむと,[寛]こひしけけむと,
おもはねば,[寛]おもはねは,
きみがたもとを,[寛]きみかたもとを,
まかぬよもありき[寛],
" "#[番号]12/2925","#[題詞](正述心緒)","#[原文]緑兒之 為社乳母者 求云 乳飲哉君之 於毛求覧","#[訓読]みどり子のためこそ乳母は求むと言へ乳飲めや君が乳母求むらむ","#[仮名],みどりこの,ためこそおもは,もとむといへ,ちのめやきみが,おももとむらむ","#[左注]","#[校異]社 [西(訂正)] 杜","#[事項],恋愛,女歌,戯歌","#[訓異]
みどりこの,[寛]みとりこし,
ためこそおもは,[寛]すもりめのとは,
もとむといへ,[寛]もとむてふ,
ちのめやきみが,[寛]ちのめやきみか,
おももとむらむ[寛],
" "#[番号]12/2926","#[題詞](正述心緒)","#[原文]悔毛 老尓来鴨 我背子之 求流乳母尓 行益物乎","#[訓読]悔しくも老いにけるかも我が背子が求むる乳母に行かましものを","#[仮名],くやしくも,おいにけるかも,わがせこが,もとむるおもに,ゆかましものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋愛,戯歌","#[訓異]
くやしくも[寛],
おいにけるかも,[寛]おひにけるかも,
わがせこが,[寛]わかせこか,
もとむるおもに,[寛]とむるめのとに,
ゆかましものを[寛],
" "#[番号]12/2927","#[題詞](正述心緒)","#[原文]浦觸而 可例西袖S 又巻者 過西戀<以> 乱今可聞","#[訓読]うらぶれて離れにし袖をまたまかば過ぎにし恋い乱れ来むかも","#[仮名],うらぶれて,かれにしそでを,またまかば,すぎにしこひい,みだれこむかも","#[左注]","#[校異]也 -> 以 [元]","#[事項],恋情","#[訓異]
うらぶれて,[寛]うらふれて,
かれにしそでを,[寛]かれにしそてを,
またまかば,[寛]またまかは,
すぎにしこひい,[寛]すきにしこひや,
みだれこむかも,[寛]みたれこむかも,
" "#[番号]12/2928","#[題詞](正述心緒)","#[原文]各寺師 人死為良思 妹尓戀 日異羸沼 人丹不所知","#[訓読]おのがじし人死にすらし妹に恋ひ日に異に痩せぬ人に知らえず","#[仮名],おのがじし,ひとしにすらし,いもにこひ,ひにけにやせぬ,ひとにしらえず","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
おのがじし,[寛]おのかしし,
ひとしにすらし[寛],
いもにこひ[寛],
ひにけにやせぬ[寛],
ひとにしらえず,[寛]ひとにしらせす,
" "#[番号]12/2929","#[題詞](正述心緒)","#[原文]夕々 吾立待尓 若雲 君不来益者 應辛苦","#[訓読]宵々に我が立ち待つにけだしくも君来まさずは苦しかるべし","#[仮名],よひよひに,わがたちまつに,けだしくも,きみきまさずは,くるしかるべし","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
よひよひに[寛],
わがたちまつに,[寛]わかたちまつに,
けだしくも,[寛]そこはくも,
きみきまさずは,[寛]きみきまさすは,
くるしかるべし,[寛]くるしかるへし,
" "#[番号]12/2930","#[題詞](正述心緒)","#[原文]生代尓 戀云物乎 相不見者 戀中尓毛 吾曽苦寸","#[訓読]生ける世に恋といふものを相見ねば恋のうちにも我れぞ苦しき","#[仮名],いけるよに,こひといふものを,あひみねば,こひのうちにも,われぞくるしき","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
いけるよに[寛],
こひといふものを,[寛]こひてふものを,
あひみねば,[寛]あひみねは,
こひのうちにも[寛],
われぞくるしき,[寛]われそくるしき,
" "#[番号]12/2931","#[題詞](正述心緒)","#[原文]念管 座者苦毛 夜干玉之 夜尓至者 吾社湯龜","#[訓読]思ひつつ居れば苦しもぬばたまの夜に至らば我れこそ行かめ","#[仮名],おもひつつ,をればくるしも,ぬばたまの,よるにいたらば,われこそゆかめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,女歌,恋情","#[訓異]
おもひつつ[寛],
をればくるしも,[寛]をれはくるしも,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よるにいたらば,[寛]よるにしならは,
われこそゆかめ[寛],
" "#[番号]12/2932","#[題詞](正述心緒)","#[原文]情庭 燎而念杼 虚蝉之 人目乎繁 妹尓不相鴨","#[訓読]心には燃えて思へどうつせみの人目を繁み妹に逢はぬかも","#[仮名],こころには,もえておもへど,うつせみの,ひとめをしげみ,いもにあはぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],人目,うわさ,恋情","#[訓異]
こころには[寛],
もえておもへど,[寛]もえておもへと,
うつせみの[寛],
ひとめをしげみ,[寛]ひとめをしけみ,
いもにあはぬかも[寛],
" "#[番号]12/2933","#[題詞](正述心緒)","#[原文]不相念 公者雖座 肩戀丹 吾者衣戀 君之光儀","#[訓読]相思はず君はまさめど片恋に我れはぞ恋ふる君が姿に","#[仮名],あひおもはず,きみはまさめど,かたこひに,あれはぞこふる,きみがすがたに","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
あひおもはず,[寛]あひおもはす,
きみはまさめど,[寛]きみはませとも,
かたこひに[寛],
あれはぞこふる,[寛]あれはそこふる,
きみがすがたに,[寛]きみかすかたを,
" "#[番号]12/2934","#[題詞](正述心緒)","#[原文]味澤相 目者非不飽 携 不問事毛 苦勞有来","#[訓読]あぢさはふ目は飽かざらねたづさはり言とはなくも苦しくありけり","#[仮名],あぢさはふ,めはあかざらね,たづさはり,こととはなくも,くるしくありけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
あぢさはふ,[寛]あちさはふ,
めはあかざらね,[寛]
たづさはり,[寛]たつさはり,
こととはなくも,[寛]とはれぬことも,
くるしくありけり,[寛]くるしかりけり,
" "#[番号]12/2935","#[題詞](正述心緒)","#[原文]璞之 年緒永 何時左右鹿 我戀将居 壽不知而","#[訓読]あらたまの年の緒長くいつまでか我が恋ひ居らむ命知らずて","#[仮名],あらたまの,としのをながく,いつまでか,あがこひをらむ,いのちしらずて","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
あらたまの[寛],
としのをながく,[寛]としのをなかく,
いつまでか,[寛]いつまてか,
あがこひをらむ,[寛]わかこひをらむ,
いのちしらずて,[寛]いおちしらすて,
" "#[番号]12/2936","#[題詞](正述心緒)","#[原文]今者吾者 指南与我兄 戀為者 一夜一日毛 安毛無","#[訓読]今は我は死なむよ我が背恋すれば一夜一日も安けくもなし","#[仮名],いまはわは,しなむよわがせ,こひすれば,ひとよひとひも,やすけくもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
いまはわは,[寛]いまはわれは,
しなむよわがせ,[寛]しなむよわかせ,
こひすれば,[寛]こひすれは,
ひとよひとひも[寛],
やすけくもなし[寛],
" "#[番号]12/2937","#[題詞](正述心緒)","#[原文]白細布之 袖<折>反 戀者香 妹之容儀乃 夢二四三湯流","#[訓読]白栲の袖折り返し恋ふればか妹が姿の夢にし見ゆる","#[仮名],しろたへの,そでをりかへし,こふればか,いもがすがたの,いめにしみゆる","#[左注]","#[校異]打 -> 折 [元][紀][細][温]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
しろたへの[寛],
そでをりかへし,[寛]そてをりかへし,
こふればか,[寛]こふれはか,
いもがすがたの,[寛]いもかすかたの,
いめにしみゆる,[寛]ゆめにしみゆる,
" "#[番号]12/2938","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人言乎 繁三毛人髪三 我兄子乎 目者雖見 相因毛無","#[訓読]人言を繁み言痛み我が背子を目には見れども逢ふよしもなし","#[仮名],ひとごとを,しげみこちたみ,わがせこを,めにはみれども,あふよしもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],うわさ,女歌,恋情","#[訓異]
ひとごとを,[寛]ひとことを,
しげみこちたみ,[寛]しけみこちたみ,
わがせこを,[寛]わかせこを,
めにはみれども,[寛]めにはみれとも,
あふよしもなし[寛],
" "#[番号]12/2939","#[題詞](正述心緒)","#[原文]戀云者 薄事有 雖然 我者不忘 戀者死十万","#[訓読]恋と言へば薄きことなりしかれども我れは忘れじ恋ひは死ぬとも","#[仮名],こひといへば,うすきことなり,しかれども,われはわすれじ,こひはしぬとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
こひといへば,[寛]こひといへは,
うすきことなり,[寛]うすきことあり,
しかれども,[寛]しかれとも,
われはわすれじ,[寛]われはわすれす,
こひはしぬとも[寛],
" "#[番号]12/2940","#[題詞](正述心緒)","#[原文]中々二 死者安六 出日之 入別不知 吾四九流四毛","#[訓読]なかなかに死なば安けむ出づる日の入る別知らぬ我れし苦しも","#[仮名],なかなかに,しなばやすけむ,いづるひの,いるわきしらぬ,われしくるしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
なかなかに[寛],
しなばやすけむ,[寛]しなはやすけむ,
いづるひの,[寛]いつるひの,
いるわきしらぬ,[寛]いるわきしらす,
われしくるしも[寛],
" "#[番号]12/2941","#[題詞](正述心緒)","#[原文]念八流 <跡>状毛我者 今者無 妹二不相而 年之經行者","#[訓読]思ひ遣るたどきも我れは今はなし妹に逢はずて年の経ぬれば","#[仮名],おもひやる,たどきもわれは,いまはなし,いもにあはずて,としのへぬれば","#[左注]","#[校異]<> -> 跡 [元][紀][細][温]","#[事項],恋情","#[訓異]
おもひやる,[寛]おもはると,
たどきもわれは,[寛]かたちもわれは,
いまはなし[寛],
いもにあはずて,[寛]いもにあはすて,
としのへぬれば,[寛]としのへゆけは,
" "#[番号]12/2942","#[題詞](正述心緒)","#[原文]吾兄子尓 戀跡二四有四 小兒之 夜哭乎為乍 宿不勝苦者","#[訓読]我が背子に恋ふとにしあらしみどり子の夜泣きをしつつ寐ねかてなくは","#[仮名],わがせこに,こふとにしあらし,みどりこの,よなきをしつつ,いねかてなくは","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
わがせこに,[寛]わかせこに,
こふとにしあらし,[寛]こふとにしあらし,
みどりこの,[寛]みとりこの,
よなきをしつつ[寛],
いねかてなくは,[寛]いねかてらくは,
" "#[番号]12/2943","#[題詞](正述心緒)","#[原文]我命之 長欲家口 偽乎 好為人乎 執許乎","#[訓読]我が命の長く欲しけく偽りをよくする人を捕ふばかりを","#[仮名],わがいのちの,ながくほしけく,いつはりを,よくするひとを,とらふばかりを","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,怨恨,戯歌","#[訓異]
わがいのちの,[寛]わかいのちの,
ながくほしけく,[寛]なかくほしけく,
いつはりを[寛],
よくするひとを[寛],
とらふばかりを,[寛]とらふはかりを,
" "#[番号]12/2944","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人言 繁跡妹 不相 情裏 戀比日","#[訓読]人言を繁みと妹に逢はずして心のうちに恋ふるこのころ","#[仮名],ひとごとを,しげみといもに,あはずして,こころのうちに,こふるこのころ","#[左注]","#[校異]","#[事項],うわさ,恋情","#[訓異]
ひとごとを,[寛]ひとことを,
しげみといもに,[寛]しけしといもに,
あはずして,[寛]あはすして,
こころのうちに[寛],
こふるこのころ[寛],
" "#[番号]12/2945","#[題詞](正述心緒)","#[原文]玉<梓>之 君之使乎 待之夜乃 名凝其今毛 不宿夜乃大寸","#[訓読]玉梓の君が使を待ちし夜のなごりぞ今も寐ねぬ夜の多き","#[仮名],たまづさの,きみがつかひを,まちしよの,なごりぞいまも,いねぬよのおほき","#[左注]","#[校異]桙 -> 梓 [西(左書)][元][紀][細][温]","#[事項],枕詞,恋情,女歌","#[訓異]
たまづさの,[寛]たまつさの,
きみがつかひを,[寛]きみかつかひを,
まちしよの[寛],
なごりぞいまも,[寛]なこりそいまも,
いねぬよのおほき[寛],
" "#[番号]12/2946","#[題詞](正述心緒)","#[原文]玉桙之 道尓行相而 外目耳毛 見者吉子乎 何時鹿将待","#[訓読]玉桙の道に行き逢ひて外目にも見ればよき子をいつとか待たむ","#[仮名],たまほこの,みちにゆきあひて,よそめにも,みればよきこを,いつとかまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
たまほこの[寛],
みちにゆきあひて[寛],
よそめにも[寛],
みればよきこを,[寛]みれはよきこを,
いつとかまたむ,[寛]いつしかまたむ,
" "#[番号]12/2947","#[題詞](正述心緒)","#[原文]念西 餘西鹿齒 為便乎無美 吾者五十日手寸 應忌鬼尾","#[訓読]思ひにしあまりにしかばすべをなみ我れは言ひてき忌むべきものを","#[仮名],おもひにし,あまりにしかば,すべをなみ,われはいひてき,いむべきものを","#[左注]或本歌曰 門出而 吾反側乎 人見<監>可毛 [一云 無乏 出行 家當見] 柿本朝臣人麻呂歌集云 尓保鳥之 奈<津>柴<比>来乎 人見鴨","#[校異]濫 -> 監 [元][紀][細][温] / 流 -> 津 [元][紀][細][温] / 汁 -> 比 [西(訂正右書)][紀][細][温]","#[事項],異伝,非略体,恋情,うわさ,作者:柿本人麻呂歌集","#[訓異]
おもひにし[寛],
あまりにしかば,[寛]あまりにしかは,
すべをなみ,[寛]すへをなみ,
われはいひてき[寛],
いむべきものを,[寛]いむへきものを,
" "#[番号]12/2947S1","#[題詞](正述心緒)或本歌曰","#[原文]門出而 吾反側乎 人見<監>可毛 [一云 無乏 出行 家當見]","#[訓読]門に出でて我が臥い伏すを人見けむかも [一云 すべをなみ出でてぞ行きし家のあたり見に]","#[仮名],かどにいでて,わがこいふすを,ひとみけむかも,[,すべをなみ,いでてぞゆきし,いへのあたりみに]","#[左注]","#[校異]","#[事項],異伝,或本,恋情,うわさ,人目","#[訓異]
かどにいでて,[寛]かとにいてて,
わがこいふすを,[寛]わかこひふすを,
ひとみけむかも,[寛]ひとみけるかも,
[,すべをなみ,[寛]すへなくも,
いでてぞゆきし,[寛]いてあるきてそ,
いへのあたりみに],[寛]いへのあたりみし,
" "#[番号]12/2947S2","#[題詞](正述心緒)柿本朝臣人麻呂歌集云","#[原文]尓保鳥之 奈<津>柴<比>来乎 人見鴨 ","#[訓読]にほ鳥のなづさひ来しを人見けむかも","#[仮名]にほどりの,なづさひこしを,ひとみけむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,異伝,非略体,恋情,枕詞,人目","#[訓異]
にほどりの,[寛]にほとりの,
なづさひこしを,[寛]なつさひこしを,
ひとみけむかも,[寛]ひとみけんかも,
" "#[番号]12/2948","#[題詞](正述心緒)","#[原文]明日者 其門将去 出而見与 戀有容儀 數知兼","#[訓読]明日の日はその門行かむ出でて見よ恋ひたる姿あまたしるけむ","#[仮名],あすのひは,そのかどゆかむ,いでてみよ,こひたるすがた,あまたしるけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
あすのひは,[寛]あけむひは,
そのかどゆかむ,[寛]そのかとゆかむ,
いでてみよ,[寛]いててみよ,
こひたるすがた,[寛]こひたるすかた,
あまたしるけむ[寛],
" "#[番号]12/2949","#[題詞](正述心緒)","#[原文]得田價異 心欝悒 事計 吉為吾兄子 相有時谷","#[訓読]うたて異に心いぶせし事計りよくせ我が背子逢へる時だに","#[仮名],うたてけに,こころいぶせし,ことはかり,よくせわがせこ,あへるときだに","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋情","#[訓異]
うたてけに,[寛]うたかへる,
こころいぶせし,[寛]こころいふかし,
ことはかり[寛],
よくせわがせこ,[寛]よくせよわかせこ,
あへるときだに,[寛]あへるときたに,
" "#[番号]12/2950","#[題詞](正述心緒)","#[原文]吾妹子之 夜戸出乃光儀 見而之従 情空有 地者雖踐","#[訓読]我妹子が夜戸出の姿見てしより心空なり地は踏めども","#[仮名],わぎもこが,よとでのすがた,みてしより,こころそらなり,つちはふめども","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
よとでのすがた,[寛]よとてのすかた,
みてしより[寛],
こころそらなり,[寛]こころそらなる,
つちはふめども,[寛]つちはふめとも,
" "#[番号]12/2951","#[題詞](正述心緒)","#[原文]海石榴市之 八十衢尓 立平之 結紐乎 解巻惜毛","#[訓読]海石榴市の八十の街に立ち平し結びし紐を解かまく惜しも","#[仮名],つばいちの,やそのちまたに,たちならし,むすびしひもを,とかまくをしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,桜井,奈良県,恋情,歌垣","#[訓異]
つばいちの,[寛]つはいちの,
やそのちまたに[寛],
たちならし[寛],
むすびしひもを,[寛]むすひしひもを,
とかまくをしも[寛],
" "#[番号]12/2952","#[題詞](正述心緒)","#[原文]吾<齡>之 衰去者 白細布之 袖乃<狎>尓思 君乎母准其念","#[訓読]我が命の衰へぬれば白栲の袖のなれにし君をしぞ思ふ","#[仮名],わがいのちの,おとろへぬれば,しろたへの,そでのなれにし,きみをしぞおもふ","#[左注]","#[校異]歯 -> 齡 [紀][細][温][矢] / 押 -> 狎 [細][矢][京]","#[事項],枕詞,恋情,女歌","#[訓異]
わがいのちの,[寛]わかよはひ,
おとろへぬれば,[寛]おとろへゆけは,
しろたへの[寛],
そでのなれにし,[寛]そてのなれにし,
きみをしぞおもふ,[寛]きみをしそおもふ,
" "#[番号]12/2953","#[題詞](正述心緒)","#[原文]戀君 吾哭<涕> 白妙 袖兼所漬 為便母奈之","#[訓読]君に恋ひ我が泣く涙白栲の袖さへ漬ちてせむすべもなし","#[仮名],きみにこひ,わがなくなみた,しろたへの,そでさへひちて,せむすべもなし","#[左注]","#[校異]泣 -> 涕 [紀][細][温][矢]","#[事項],枕詞,恋情,女歌","#[訓異]
きみにこひ,[寛]きみこふと,
わがなくなみた,[寛]わかなくなみた,
しろたへの[寛],
そでさへひちて,[寛]そてさへひちて,
せむすべもなし,[寛]せむすへもなし,
" "#[番号]12/2954","#[題詞](正述心緒)","#[原文]従今者 不相跡為也 白妙之 我衣袖之 干時毛奈吉","#[訓読]今よりは逢はじとすれや白栲の我が衣手の干る時もなき","#[仮名],いまよりは,あはじとすれや,しろたへの,わがころもでの,ふるときもなき","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情,不安","#[訓異]
いまよりは[寛],
あはじとすれや,[寛]あはしとすれや,
しろたへの[寛],
わがころもでの,[寛]わかころもての,
ふるときもなき,[寛]ひるときもなき,
" "#[番号]12/2955","#[題詞](正述心緒)","#[原文]夢可登 情班 月數<多> 干西君之 事之通者","#[訓読]夢かと心惑ひぬ月まねく離れにし君が言の通へば","#[仮名],いめかと,こころまどひぬ,つきまねく,かれにしきみが,ことのかよへば","#[左注]","#[校異]多二 -> 多 [元][温][矢][京]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
いめかと,[寛]ゆめかとも,
こころまどひぬ,[寛]おもひわかめや,
つきまねく,[寛]つきひさに,
かれにしきみが,[寛]かれにしきみか,
ことのかよへば,[寛]ことのかよへは,
" "#[番号]12/2956","#[題詞](正述心緒)","#[原文]未玉之 年月兼而 烏玉乃 夢尓所見 君之容儀者","#[訓読]あらたまの年月かねてぬばたまの夢に見えけり君が姿は","#[仮名],あらたまの,としつきかねて,ぬばたまの,いめにみえけり,きみがすがたは","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情,女歌","#[訓異]
あらたまの[寛],
としつきかねて[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
いめにみえけり,[寛]ゆめにそみゆる,
きみがすがたは,[寛]きみかすかたは,
" "#[番号]12/2957","#[題詞](正述心緒)","#[原文]従今者 雖戀妹尓 将相<哉>母 床邊不離 夢<尓>所見乞","#[訓読]今よりは恋ふとも妹に逢はめやも床の辺去らず夢に見えこそ","#[仮名],いまよりは,こふともいもに,あはめやも,とこのへさらず,いめにみえこそ","#[左注]","#[校異]哉乃 -> 哉 [元][紀][細][温] / <> -> 尓 [元]","#[事項],恋情","#[訓異]
いまよりは[寛],
こふともいもに[寛],
あはめやも[寛],
とこのへさらず,[寛]とこのへさらす,
いめにみえこそ,[寛]ゆめにみえこそ,
" "#[番号]12/2958","#[題詞](正述心緒)","#[原文]人見而 言害目不為 夢谷 不止見与 我戀将息","#[訓読]人の見て言とがめせぬ夢にだにやまず見えこそ我が恋やまむ","#[仮名],ひとのみて,こととがめせぬ,いめにだに,やまずみえこそ,あがこひやまむ","#[左注]或本歌頭云 人目多 直者不相","#[校異]","#[事項],異伝,人目,うわさ,恋情","#[訓異]
ひとのみて[寛],
こととがめせぬ,[寛]こととかめせぬ,
いめにだに,[寛]ゆめにたに,
やまずみえこそ,[寛]やますをみえよ,
あがこひやまむ,[寛]わかこひやめむ,
" "#[番号]12/2958S","#[題詞](正述心緒)或本歌頭云","#[原文]人目多 直者不相","#[訓読]人目多み直には逢はず ","#[仮名],ひとめおほみ,ただにはあはず,,,","#[左注]","#[校異]","#[事項],異伝,人目,うわさ,恋情","#[訓異]
ひとめおほみ[寛],
ただにはあはず,[寛]たたにはあはす,
" "#[番号]12/2959","#[題詞](正述心緒)","#[原文]現者 言絶有 夢谷 嗣而所見与 直相左右二","#[訓読]うつつには言も絶えたり夢にだに継ぎて見えこそ直に逢ふまでに","#[仮名],うつつには,こともたえたり,いめにだに,つぎてみえこそ,ただにあふまでに","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
うつつには[寛],
こともたえたり,[寛]ことたえたれや,
いめにだに,[寛]ゆめにたに,
つぎてみえこそ,[寛]つきてもみえよ,
ただにあふまでに,[寛]たたにあふまてに,
" "#[番号]12/2960","#[題詞](正述心緒)","#[原文]虚蝉之 宇都思情毛 吾者無 妹乎不相見而 年之經去者","#[訓読]うつせみの現し心も我れはなし妹を相見ずて年の経ぬれば","#[仮名],うつせみの,うつしごころも,われはなし,いもをあひみずて,としのへぬれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
うつせみの[寛],
うつしごころも,[寛]うつしこころも,
われはなし[寛],
いもをあひみずて,[寛]いもをあひみて,
としのへぬれば,[寛]としのへゆけは,
" "#[番号]12/2961","#[題詞](正述心緒)","#[原文]虚蝉之 常辞登 雖念 継而之聞者 心遮焉","#[訓読]うつせみの常のことばと思へども継ぎてし聞けば心惑ひぬ","#[仮名],うつせみの,つねのことばと,おもへども,つぎてしきけば,こころまどひぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
うつせみの[寛],
つねのことばと,[寛]つねのことはと,
おもへども,[寛]おもへとも,
つぎてしきけば,[寛]つきてしきけは,
こころまどひぬ,[寛]こころはなきぬ,
" "#[番号]12/2962","#[題詞](正述心緒)","#[原文]白<細>之 袖不數而<宿> 烏玉之 今夜者<早毛> 明<者>将開","#[訓読]白栲の袖離れて寝るぬばたまの今夜は早も明けば明けなむ","#[仮名],しろたへの,そでかれてぬる,ぬばたまの,こよひははやも,あけばあけなむ","#[左注]","#[校異]妙 -> 細 [元][紀][細][温] / <> -> 宿 [細] / 不寝 -> 早毛 [西(訂正左書)][元][紀][細] / <> -> 者 [元][細]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
しろたへの[寛],
そでかれてぬる,[寛]そてかへすして,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
こよひははやも[寛],
あけばあけなむ,[寛]あけはあけなむ,
" "#[番号]12/2963","#[題詞](正述心緒)","#[原文]白細之 手本寛久 人之宿 味宿者不寐哉 戀将渡","#[訓読]白栲の手本ゆたけく人の寝る味寐は寝ずや恋ひわたりなむ","#[仮名],しろたへの,たもとゆたけく,ひとのぬる,うまいはねずや,こひわたりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
しろたへの[寛],
たもとゆたけく[寛],
ひとのぬる[寛],
うまいはねずや,[寛]うまいはねすや,
こひわたりなむ[寛],
" "#[番号]12/2964","#[題詞]寄物陳思","#[原文]如是耳 在家流君乎 衣尓有者 下毛将著跡 <吾>念有家留","#[訓読]かくのみにありける君を衣にあらば下にも着むと我が思へりける","#[仮名],かくのみに,ありけるきみを,きぬにあらば,したにもきむと,わがおもへりける","#[左注]","#[校異]吾 [西(上書訂正)][元][類][古]","#[事項],女歌,恋情,衣","#[訓異]
かくのみに,[寛]かくしのみ,
ありけるきみを[寛],
きぬにあらば,[寛]きぬにあらは,
したにもきむと[寛],
わがおもへりける,[寛]わかおもへりける,
" "#[番号]12/2965","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]橡之 袷衣 裏尓為者 吾将強八方 君之不来座","#[訓読]橡の袷の衣裏にせば我れ強ひめやも君が来まさぬ","#[仮名],つるはみの,あはせのころも,うらにせば,われしひめやも,きみがきまさぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋情,怨恨,序詞,衣","#[訓異]
つるはみの[寛],
あはせのころも,[寛]あはせのきぬの,
うらにせば,[寛]うらにせは,
われしひめやも[寛],
きみがきまさぬ,[寛]きみかきまさぬ,
" "#[番号]12/2966","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]紅 薄染衣 淺尓 相見之人尓 戀比日可聞","#[訓読]紅の薄染め衣浅らかに相見し人に恋ふるころかも","#[仮名],くれなゐの,うすそめころも,あさらかに,あひみしひとに,こふるころかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],衣,恋情,序詞","#[訓異]
くれなゐの[寛],
うすそめころも[寛],
あさらかに,[寛]あさはかに,
あひみしひとに[寛],
こふるころかも[寛],
" "#[番号]12/2967","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]年之經者 見管偲登 妹之言思 衣乃<縫>目 見者哀裳","#[訓読]年の経ば見つつ偲へと妹が言ひし衣の縫目見れば悲しも","#[仮名],としのへば,みつつしのへと,いもがいひし,ころものぬひめ,みればかなしも","#[左注]","#[校異]継 -> 縫 [西(訂正右書)][元][古][紀]","#[事項],恋情,形見,衣,羈旅","#[訓異]
としのへば,[寛]としのへは,
みつつしのへと[寛],
いもがいひし,[寛]いもかいひし,
ころものぬひめ,[寛]きぬのぬひめを,
みればかなしも[寛],みれはかなしも,
" "#[番号]12/2968","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]橡之 一重衣 裏毛無 将有兒故 戀渡可聞","#[訓読]橡の一重の衣うらもなくあるらむ子ゆゑ恋ひわたるかも","#[仮名],つるはみの,ひとへのころも,うらもなく,あるらむこゆゑ,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],衣,恋情,序詞","#[訓異]
つるはみの[寛],
ひとへのころも,[寛]ひとへころもの,
うらもなく[寛],
あるらむこゆゑ,[寛]あるらむこゆへ,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]12/2969","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]解衣之 念乱而 雖戀 何之故其跡 問人毛無","#[訓読]解き衣の思ひ乱れて恋ふれども何のゆゑぞと問ふ人もなし","#[仮名],とききぬの,おもひみだれて,こふれども,なにのゆゑぞと,とふひともなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],衣,恋情,枕詞","#[訓異]
とききぬの[寛],
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
こふれども,[寛]こふれとも,
なにのゆゑぞと,[寛]なにのゆへそと,
とふひともなし[寛],
" "#[番号]12/2970","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]桃花褐 淺等乃衣 淺尓 念而妹尓 将相物香裳","#[訓読]桃染めの浅らの衣浅らかに思ひて妹に逢はむものかも","#[仮名],ももそめの,あさらのころも,あさらかに,おもひていもに,あはむものかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,衣,序詞","#[訓異]
ももそめの,[寛]あらそめの,
あさらのころも[寛],
あさらかに,[寛]あさはかに,
おもひていもに[寛],
あはむものかも[寛],
" "#[番号]12/2971","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]大王之 塩焼海部乃 藤衣 穢者雖為 弥希将見毛","#[訓読]大君の塩焼く海人の藤衣なれはすれどもいやめづらしも","#[仮名],おほきみの,しほやくあまの,ふぢころも,なれはすれども,いやめづらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,序詞,衣,恋愛","#[訓異]
おほきみの[寛],
しほやくあまの[寛],
ふぢころも,[寛]ふちころも,
なれはすれども,[寛]なれはすれとも,
いやめづらしも,[寛]いやめつらしも,
" "#[番号]12/2972","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]赤帛之 純裏衣 長欲 我念君之 不所見比者鴨","#[訓読]赤絹の純裏の衣長く欲り我が思ふ君が見えぬころかも","#[仮名],あかきぬの,ひたうらのきぬ,ながくほり,あがおもふきみが,みえぬころかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],衣,序詞,女歌,恋愛,不安","#[訓異]
あかきぬの[寛],
ひたうらのきぬ,[寛]すみうらころも,
ながくほり,[寛]なかくほり,
あがおもふきみが,[寛]わかおもふきみか,
みえぬころかも[寛],
" "#[番号]12/2973","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]真玉就 越乞兼而 結鶴 言下紐之 <所>解日有米也","#[訓読]真玉つくをちこち兼ねて結びつる我が下紐の解くる日あらめや","#[仮名],またまつく,をちこちかねて,むすびつる,わがしたびもの,とくるひあらめや","#[左注]","#[校異]之 [西(朱書消去)] / <> -> 所 [西(朱筆右書)][元][類][古]","#[事項],枕詞,恋愛,後朝,紐","#[訓異]
またまつく[寛],
をちこちかねて[寛],
むすびつる,[寛]むすひつる,
わがしたびもの,[寛]わかしたひもの,
とくるひあらめや[寛],
" "#[番号]12/2974","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]紫 帶之結毛 解毛不見 本名也妹尓 戀度南","#[訓読]紫の帯の結びも解きもみずもとなや妹に恋ひわたりなむ","#[仮名],むらさきの,おびのむすびも,ときもみず,もとなやいもに,こひわたりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],帯,恋情","#[訓異]
むらさきの[寛],
おびのむすびも,[寛]おひのむすふも,
ときもみず,[寛]とくもみす,
もとなやいもに[寛],
こひわたりなむ[寛],
" "#[番号]12/2975","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]高麗錦 紐之結毛 解不放 齋而待杼 驗無可聞","#[訓読]高麗錦紐の結びも解き放けず斎ひて待てど験なきかも","#[仮名],こまにしき,ひものむすびも,ときさけず,いはひてまてど,しるしなきかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],紐,恋情","#[訓異]
こまにしき[寛],
ひものむすびも,[寛]ひものむすひも,
ときさけず,[寛]ときさけす,
いはひてまてど,[寛]いはひてまてと,
しるしなきかも[寛],
" "#[番号]12/2976","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]紫 我下紐乃 色尓不出 戀可毛将痩 <相>因乎無見","#[訓読]紫の我が下紐の色に出でず恋ひかも痩せむ逢ふよしをなみ","#[仮名],むらさきの,わがしたひもの,いろにいでず,こひかもやせむ,あふよしをなみ","#[左注]","#[校異]<> -> 相 [西(右書)][元][類][紀]","#[事項],紐,恋情,序詞","#[訓異]
むらさきの[寛],
わがしたひもの,[寛]わかしたひもの,
いろにいでず,[寛]いろにいてす,
こひかもやせむ[寛],
あふよしをなみ[寛],
" "#[番号]12/2977","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]何故可 不思将有 紐緒之 心尓入而 戀布物乎","#[訓読]何ゆゑか思はずあらむ紐の緒の心に入りて恋しきものを","#[仮名],なにゆゑか,おもはずあらむ,ひものをの,こころにいりて,こほしきものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],紐,枕詞,恋情","#[訓異]
なにゆゑか,[寛]なにゆへか,
おもはずあらむ,[寛]おもはすあらむ,
ひものをの[寛],
こころにいりて[寛],
こほしきものを,[寛]こひしきものを,
" "#[番号]12/2978","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]真十鏡 見座吾背子 吾形見 将持辰尓 将不相哉","#[訓読]まそ鏡見ませ我が背子我が形見待てらむ時に逢はざらめやも","#[仮名],まそかがみ,みませわがせこ,わがかたみ,まてらむときに,あはざらめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情,女歌,鏡","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
みませわがせこ,[寛]みませわかせこ
わがかたみ,[寛]わかかたみ,
まてらむときに,[寛]もたらむときに,
あはざらめやも,[寛]あはすあらめや,
" "#[番号]12/2979","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]真十鏡 直目尓君乎 見者許増 命對 吾戀止目","#[訓読]まそ鏡直目に君を見てばこそ命に向ふ我が恋やまめ","#[仮名],まそかがみ,ただめにきみを,みてばこそ,いのちにむかふ,あがこひやまめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],鏡,女歌,恋情,枕詞","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
ただめにきみを,[寛]たためにきみを,
みてばこそ,[寛]みてはこそ,
いのちにむかふ[寛],
あがこひやまめ,[寛]わかこひやまめ,
" "#[番号]12/2980","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]犬馬鏡 見不飽妹尓 不相而 月之經去者 生友名師","#[訓読]まそ鏡見飽かぬ妹に逢はずして月の経ゆけば生けりともなし","#[仮名],まそかがみ,みあかぬいもに,あはずして,つきのへゆけば,いけりともなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],鏡,枕詞,恋情","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
みあかぬいもに[寛],
あはずして,[寛]あはすして,
つきのへゆけば,[寛]つきのへゆけは,
いけりともなし[寛],
" "#[番号]12/2981","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]祝部等之 齋三諸乃 犬馬鏡 懸而偲 相人毎","#[訓読]祝部らが斎くみもろのまそ鏡懸けて偲ひつ逢ふ人ごとに","#[仮名],はふりらが,いつくみもろの,まそかがみ,かけてしのひつ,あふひとごとに","#[左注]","#[校異]","#[事項],鏡,序詞,恋情","#[訓異]
はふりらが,[寛]はふりらか,
いつくみもろの,[寛]いはふみむろの,
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
かけてしのひつ,[寛]かけてそしのふ,
あふひとごとに,[寛]あふひとことに,
" "#[番号]12/2982","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]針者有杼 妹之無者 将著哉跡 吾乎令煩 絶紐之緒","#[訓読]針はあれど妹しなければ付けめやと我れを悩まし絶ゆる紐の緒","#[仮名],はりはあれど,いもしなければ,つけめやと,われをなやまし,たゆるひものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋愛,針,紐","#[訓異]
はりはあれど,[寛]はりはあれと,
いもしなければ,[寛]いもしなけれは,
つけめやと,[寛]つけぬやと,
われをなやまし[寛],
たゆるひものを[寛],
" "#[番号]12/2983","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]高麗劔 己之景迹故 外耳 見乍哉君乎 戀渡奈牟","#[訓読]高麗剣我が心から外のみに見つつや君を恋ひわたりなむ","#[仮名],こまつるぎ,わがこころから,よそのみに,みつつやきみを,こひわたりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,女歌,剣,恋情","#[訓異]
こまつるぎ,[寛]こまつるき,
わがこころから,[寛]さかかけゆへに,
よそのみに,[寛]よそにのみ,
みつつやきみを[寛],
こひわたりなむ[寛],
" "#[番号]12/2984","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]劔大刀 名之惜毛 吾者無 比来之間 戀之繁尓","#[訓読]剣大刀名の惜しけくも我れはなしこのころの間の恋の繁きに","#[仮名],つるぎたち,なのをしけくも,われはなし,このころのまの,こひのしげきに","#[左注]","#[校異]","#[事項],剣,枕詞,恋情,人目,うわさ","#[訓異]
つるぎたち,[寛]つるきたち,
なのをしけくも[寛],
われはなし[寛],
このころのまの[寛],
こひのしげきに,[寛]こひのしけきに,
" "#[番号]12/2985","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]梓弓 末者師不知 雖然 真坂者<君>尓 縁西物乎","#[訓読]梓弓末はし知らずしかれどもまさかは君に寄りにしものを","#[仮名],あづさゆみ,すゑはししらず,しかれども,まさかはきみに,よりにしものを","#[左注]一本歌曰 梓弓 末乃多頭吉波 雖不知 心者君尓 因之物乎","#[校異]吾 -> 君 [類][紀][細]","#[事項],枕詞,弓,枕詞,恋情","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
すゑはししらず,[寛]すゑはししらす,
しかれども,[寛]しかれとも,
まさかはきみに[寛],
よりにしものを[寛],
" "#[番号]12/2985S","#[題詞](寄物陳思)一本歌曰","#[原文]梓弓 末乃多頭吉波 雖不知 心者君尓 因之物乎","#[訓読]梓弓末のたづきは知らねども心は君に寄りにしものを ","#[仮名],あづさゆみ,すゑのたづきは,しらねども,こころはきみに,よりにしものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],弓,枕詞,女歌,恋情,異伝","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
すゑのたづきは,[寛]すゑのたつきは,
しらねども,[寛]しらねとも,
こころはきみに[寛],
よりにしものを[寛],
" "#[番号]12/2986","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]梓弓 引見<緩>見 思見而 既心齒 因尓思物乎","#[訓読]梓弓引きみ緩へみ思ひみてすでに心は寄りにしものを","#[仮名],あづさゆみ,ひきみゆるへみ,おもひみて,すでにこころは,よりにしものを","#[左注]","#[校異]縦 -> 緩 [西(貼紙)]","#[事項],弓,枕詞,恋情","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
ひきみゆるへみ[寛],
おもひみて[寛],
すでにこころは,[寛]すてにこころは,
よりにしものを[寛],
" "#[番号]12/2987","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]梓弓 引而不<緩> 大夫哉 戀云物乎 忍不得牟","#[訓読]梓弓引きて緩へぬ大夫や恋といふものを忍びかねてむ","#[仮名],あづさゆみ,ひきてゆるへぬ,ますらをや,こひといふものを,しのびかねてむ","#[左注]","#[校異]縦 -> 緩 [西(貼紙)][元][類]","#[事項],弓,恋情,枕詞","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
ひきてゆるへぬ,[寛]ひきてゆるへす,
ますらをや[寛],
こひといふものを,[寛]こひてふものを,
しのびかねてむ,[寛]しのひかねてむ,
" "#[番号]12/2988","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]梓弓 末中一伏三起 不通有之 君者會奴 嗟羽将息","#[訓読]梓弓末の中ごろ淀めりし君には逢ひぬ嘆きはやめむ","#[仮名],あづさゆみ,すゑのなかごろ,よどめりし,きみにはあひぬ,なげきはやめむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情,弓","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
すゑのなかごろ,[寛]すゑなかためて,
よどめりし,[寛]ゆかさりし,
きみにはあひぬ[寛],
なげきはやめむ,[寛]なけきはやめむ,
" "#[番号]12/2989","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]今更 何壮鹿将念 梓弓 引見縦見 縁西鬼乎","#[訓読]今さらに何をか思はむ梓弓引きみ緩へみ寄りにしものを","#[仮名],いまさらに,なにをかおもはむ,あづさゆみ,ひきみゆるへみ,よりにしものを","#[左注]","#[校異]縦 [元][類](塙) 弛","#[事項],弓,枕詞,恋情","#[訓異]
いまさらに[寛],
なにをかおもはむ[寛],
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
ひきみゆるへみ[寛],
よりにしものを[寛],
" "#[番号]12/2990","#[題詞](寄物陳思)","#[本文]D嬬等之 <續>麻之多<田>有 打麻<懸> 續時無<三> 戀度鴨","#[訓読]娘子らが績み麻のたたり打ち麻懸けうむ時なしに恋ひわたるかも","#[仮名],をとめらが,うみをのたたり,うちそかけ,うむときなしに,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]漬 -> 續 [西(訂正右書)][元][類][古][紀] / 患 -> 田 [元][類][古][紀] / <> -> 懸 [西(補筆訂正)][元][類][古][紀] / 三 -> 二 [類][古][紀]","#[事項],序詞,麻,恋情","#[訓異]
をとめらが,[寛]をとめらか,
うみをのたたり[寛],
うちそかけ,[寛]うちをかけ,
うむときなしに[寛],
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]12/2991","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]垂乳根之 母我養蚕乃 眉隠 馬聲蜂音石花蜘ろ荒鹿 異母二不相而","#[訓読]たらちねの母が飼ふ蚕の繭隠りいぶせくもあるか妹に逢はずして","#[仮名],たらちねの,ははがかふこの,まよごもり,いぶせくもあるか,いもにあはずして","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,繭,恋情,戯書","#[訓異]
たらちねの[寛],
ははがかふこの,[寛]ははかかふこの,
まよごもり,[寛]まゆこもり,
いぶせくもあるか,[寛]いふせくもあるか,
いもにあはずして,[寛]いもにあはすて,
" "#[番号]12/2992","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]玉手次 不懸者辛苦 懸垂者 續手見巻之 欲寸君可毛","#[訓読]玉たすき懸けねば苦し懸けたれば継ぎて見まくの欲しき君かも","#[仮名],たまたすき,かけねばくるし,かけたれば,つぎてみまくの,ほしききみかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,襷,枕詞","#[訓異]
たまたすき[寛],
かけねばくるし,[寛]かけねはくるし,
かけたれば,[寛]かけたれは,
つぎてみまくの,[寛]つきてみまくの,
ほしききみかも[寛],
" "#[番号]12/2993","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]紫 綵色之蘰 花八香尓 今日見人尓 後将戀鴨","#[訓読]紫のまだらのかづら花やかに今日見し人に後恋ひむかも","#[仮名],むらさきの,まだらのかづら,はなやかに,けふみしひとに,のちこひむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,序詞","#[訓異]
むらさきの[寛],
まだらのかづら,[寛]いろのかつらの,
はなやかに[寛],
けふみしひとに,[寛]けふみるひとに,
のちこひむかも[寛],
" "#[番号]12/2994","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]玉蘰 不懸時無 戀<友> 何如妹尓 相時毛名寸","#[訓読]玉葛懸けぬ時なく恋ふれども何しか妹に逢ふ時もなき","#[仮名],たまかづら,かけぬときなく,こふれども,なにしかいもに,あふときもなき","#[左注]","#[校異]支 -> 友 [元][類][紀][細]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
たまかづら,[寛]たまかつら,
かけぬときなく[寛],
こふれども,[寛]こふれとも,
なにしかいもに,[寛]なにそもいもに,
あふときもなき[寛],
" "#[番号]12/2995","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]相因之 出来左右者 疊薦 重編數 夢西将見","#[訓読]逢ふよしの出でくるまでは畳薦隔て編む数夢にし見えむ","#[仮名],あふよしの,いでくるまでは,たたみこも,へだてあむかず,いめにしみえむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],比喩,植物,恋情","#[訓異]
あふよしの[寛],
いでくるまでは,[寛]いてくるまては,
たたみこも[寛],
へだてあむかず,[寛]かさねあむかす,
いめにしみえむ,[寛]ゆめにしみえむ,
" "#[番号]12/2996","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]白香付 木綿者花物 事社者 何時之真枝毛 常不所忘","#[訓読]しらかつく木綿は花もの言こそばいつのまえだも常忘らえね","#[仮名],しらかつく,ゆふははなもの,ことこそば,いつのまえだも,つねわすらえね","#[左注]","#[校異]枝 [万葉考](塙)(楓) 坂","#[事項],植物,枕詞,怨恨,","#[訓異]
しらかつく[寛],
ゆふははなもの,[寛]ゆふははなかも,
ことこそば,[寛]ことこそは,
いつのまえだも,[寛]いつのさねきも,
つねわすらえね,[寛]つねわすられね,
" "#[番号]12/2997","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]石上 振之高橋 高々尓 妹之将待 夜曽深去家留","#[訓読]石上布留の高橋高々に妹が待つらむ夜ぞ更けにける","#[仮名],いそのかみ,ふるのたかはし,たかたかに,いもがまつらむ,よぞふけにける","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,序詞,地名,天理,奈良県,恋愛","#[訓異]
いそのかみ[寛],
ふるのたかはし[寛],
たかたかに[寛],
いもがまつらむ,[寛]いもかまつらむ,
よぞふけにける,[寛]よそふけにける,
" "#[番号]12/2998","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]湊入之 葦別小船 障多 今来吾乎 不通跡念莫","#[訓読]港入りの葦別け小舟障り多み今来む我れを淀むと思ふな","#[仮名],みなといりの,あしわけをぶね,さはりおほみ,いまこむわれを,よどむとおもふな","#[左注]或本歌曰 湊入尓 蘆別小船 障多 君尓不相而 年曽經来","#[校異]","#[事項],序詞,恋情,植物","#[訓異]
みなといりの[寛],
あしわけをぶね,[寛]あしわけをふね,
さはりおほみ[寛],
いまこむわれを,[寛]いまくるわれを,
よどむとおもふな,[寛]こすとおもふな,
" "#[番号]12/2998S","#[題詞](寄物陳思)或本歌曰","#[原文]湊入尓 蘆別小船 障多 君尓不相而 年曽經来 ","#[訓読]港入りに葦別け小舟障り多み君に逢はずて年ぞ経にける ","#[仮名],みなといりに,あしわけをぶね,さはりおほみ,きみにあはずて,としぞへにける","#[左注]","#[校異]","#[事項],異伝,植物,恋情,女歌","#[訓異]
みなといりに[寛],
あしわけをぶね,[寛]あしわけをふね,
さはりおほみ[寛],
きみにあはずて,[寛]きみにあはすて,
としぞへにける,[寛]としそへにける,
" "#[番号]12/2999","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]水乎多 上尓種蒔 比要乎多 擇擢之業曽 吾獨宿","#[訓読]水を多み上田に種蒔き稗を多み選らえし業ぞ我がひとり寝る","#[仮名],みづをおほみ,あげにたねまき,ひえをおほみ,えらえしわざぞ,わがひとりぬる","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,比喩,怨恨","#[訓異]
みづをおほみ,[寛]みつをおほみ,
あげにたねまき,[寛]あけにたねまき,
ひえをおほみ[寛],
えらえしわざぞ,[寛]えられしゆへり,
わがひとりぬる,[寛]わかひとりぬる,
" "#[番号]12/3000","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]霊合者 相宿物乎 小山田之 鹿猪田禁如 母之守為裳 [一云 母之守之師] ","#[訓読]魂合へば相寝るものを小山田の鹿猪田守るごと母し守らすも [一云 母が守らしし] ","#[仮名],たまあへば,あひぬるものを,をやまだの,ししだもるごと,ははしもらすも,[ははがもらしし]","#[左注]","#[校異]","#[事項],異伝,動物,障害,恋愛","#[訓異]
たまあへば,[寛]たまあへは,
あひぬるものを[寛],
をやまだの,[寛]をやまたの,
ししだもるごと,[寛]ししたもること,
ははしもらすも[寛],
[ははがもらしし],[寛]ははかもらしし,
" "#[番号]12/3001","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]春日野尓 照有暮日之 外耳 君乎相見而 今曽悔寸","#[訓読]春日野に照れる夕日の外のみに君を相見て今ぞ悔しき","#[仮名],かすがのに,てれるゆふひの,よそのみに,きみをあひみて,いまぞくやしき","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良,序詞,後悔,恋愛","#[訓異]
かすがのに,[寛]かすかのに,
てれるゆふひの[寛],
よそのみに,[寛]よそにのみ,
きみをあひみて[寛],
いまぞくやしき,[寛]いまそくやしき,
" "#[番号]12/3002","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]足日木乃 従山出流 月待登 人尓波言而 妹待吾乎","#[訓読]あしひきの山より出づる月待つと人には言ひて妹待つ我れを","#[仮名],あしひきの,やまよりいづる,つきまつと,ひとにはいひて,いもまつわれを","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋愛","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまよりいづる,[寛]やまよりいつる,
つきまつと[寛],
ひとにはいひて[寛],
いもまつわれを[寛],
" "#[番号]12/3003","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]夕月夜 五更闇之 不明 見之人故 戀渡鴨","#[訓読]夕月夜暁闇のおほほしく見し人ゆゑに恋ひわたるかも","#[仮名],ゆふづくよ,あかときやみの,おほほしく,みしひとゆゑに,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋情","#[訓異]
ゆふづくよ,[寛]ゆふつくよ,
あかときやみの,[寛]あかつきやみの,
おほほしく,[寛]ほのかにも,
みしひとゆゑに,[寛]みしひとゆへに,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]12/3004","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]久堅之 天水虚尓 照<月>之 将失日社 吾戀止目","#[訓読]久方の天つみ空に照る月の失せなむ日こそ我が恋止まめ","#[仮名],ひさかたの,あまつみそらに,てるつきの,うせなむひこそ,あがこひやまめ","#[左注]","#[校異]日 -> 月 [西(右書)][元][類]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あまつみそらに[寛],
てるつきの,[寛]てれるひの,
うせなむひこそ[寛],
あがこひやまめ,[寛]わかこひやまめ,
" "#[番号]12/3005","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]十五日 出之月乃 高々尓 君乎座而 何物乎加将念","#[訓読]十五日に出でにし月の高々に君をいませて何をか思はむ","#[仮名],もちのひに,いでにしつきの,たかたかに,きみをいませて,なにをかおもはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋情","#[訓異]
もちのひに[寛],
いでにしつきの,[寛]いてにしつきの,
たかたかに[寛],
きみをいませて[寛],
なにをかおもはむ[寛],
" "#[番号]12/3006","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]月夜好 門尓出立 足占為而 徃時禁八 妹二不相有","#[訓読]月夜よみ門に出で立ち足占して行く時さへや妹に逢はずあらむ","#[仮名],つくよよみ,かどにいでたち,あしうらして,ゆくときさへや,いもにあはずあらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,不安,占い","#[訓異]
つくよよみ,[寛]つきよよみ,
かどにいでたち,[寛]かとにいてたち,
あしうらして[寛],
ゆくときさへや[寛],
いもにあはずあらむ,[寛]いもにあはさらむ,
" "#[番号]12/3007","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]野干玉 夜渡月之 清者 吉見而申尾 君之光儀乎","#[訓読]ぬばたまの夜渡る月のさやけくはよく見てましを君が姿を","#[仮名],ぬばたまの,よわたるつきの,さやけくは,よくみてましを,きみがすがたを","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情,後朝,女歌","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よわたるつきの[寛],
さやけくは[寛],
よくみてましを[寛],
きみがすがたを,[寛]きみかすかたを,
" "#[番号]12/3008","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]足引之 山<呼>木高三 暮月乎 何時君乎 待之苦沙","#[訓読]あしひきの山を木高み夕月をいつかと君を待つが苦しさ","#[仮名],あしひきの,やまをこだかみ,ゆふつきを,いつかときみを,まつがくるしさ","#[左注]","#[校異]乎 -> 呼 [元][細][矢][京]","#[事項],枕詞,恋情,序詞,女歌","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまをこだかみ,[寛]やまをこたかみ,
ゆふつきを[寛],
いつかときみを[寛],
まつがくるしさ,[寛]まつかくるしさ,
" "#[番号]12/3009","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]橡之 衣解洗 又打山 古人尓者 猶不如家利","#[訓読]橡の衣解き洗ひ真土山本つ人にはなほしかずけり","#[仮名],つるはみの,きぬときあらひ,まつちやま,もとつひとには,なほしかずけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,植物,地名,和歌山,序詞,恋愛","#[訓異]
つるはみの[寛],
きぬときあらひ[寛],
まつちやま[寛],
もとつひとには[寛],
なほしかずけり,[寛]なほしかすけり,
" "#[番号]12/3010","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]佐保川之 川浪不立 静雲 君二副而 明日兼欲得","#[訓読]佐保川の川波立たず静けくも君にたぐひて明日さへもがも","#[仮名],さほがはの,かはなみたたず,しづけくも,きみにたぐひて,あすさへもがも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良,序詞,女歌,恋愛","#[訓異]
さほがはの,[寛]さほかはの,
かはなみたたず,[寛]かはなみたたす,
しづけくも,[寛]しつけくも,
きみにたぐひて,[寛]きみにたくひて,
あすさへもがも,[寛]あすさへもかも,
" "#[番号]12/3011","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾妹兒尓 衣借香之 宜寸川 因毛有額 妹之目乎将見","#[訓読]我妹子に衣春日の宜寸川よしもあらぬか妹が目を見む","#[仮名],わぎもこに,ころもかすがの,よしきがは,よしもあらぬか,いもがめをみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良,序詞,恋情","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
ころもかすがの,[寛]ころもかすかの,
よしきがは,[寛]よしきかは,
よしもあらぬか[寛],
いもがめをみむ,[寛]いもかめをみむ,
" "#[番号]12/3012","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]登能雲入 雨零川之 左射礼浪 間無毛君者 所念鴨","#[訓読]との曇り雨布留川のさざれ波間なくも君は思ほゆるかも","#[仮名],とのぐもり,あめふるかはの,さざれなみ,まなくもきみは,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋情","#[訓異]
とのぐもり,[寛]とのくもり,
あめふるかはの[寛],
さざれなみ,[寛]さされなみ,
まなくもきみは[寛],
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]12/3013","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾妹兒哉 安乎忘為莫 石上 袖振川之 将絶跡念倍也","#[訓読]我妹子や我を忘らすな石上袖布留川の絶えむと思へや","#[仮名],わぎもこや,あをわすらすな,いそのかみ,そでふるかはの,たえむとおもへや","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,天理,奈良,序詞,恋情","#[訓異]
わぎもこや,[寛]わきもこや,
あをわすらすな[寛],
いそのかみ[寛],
そでふるかはの,[寛]そてふるかはの,
たえむとおもへや[寛],
" "#[番号]12/3014","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]神山之 山下響 逝水之 水尾不絶者 後毛吾妻","#[訓読]三輪山の山下響み行く水の水脈し絶えずは後も我が妻","#[仮名],みわやまの,やましたとよみ,ゆくみづの,みをしたえずは,のちもわがつま","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,桜井,奈良,序詞,恋愛","#[訓異]
みわやまの,[寛]かみやまの,
やましたとよみ[寛],
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
みをしたえずは,[寛]みをしたえすは,
のちもわがつま,[寛]のちもわかつま,
" "#[番号]12/3015","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]如神 所聞瀧之 白浪乃 面知君之 不所見比日","#[訓読]神のごと聞こゆる瀧の白波の面知る君が見えぬこのころ","#[仮名],かみのごと,きこゆるたきの,しらなみの,おもしるきみが,みえぬこのころ","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,女歌,恋愛","#[訓異]
かみのごと,[寛]かみのこと,
きこゆるたきの[寛],
しらなみの[寛],
おもしるきみが,[寛]おもしるきみか,
みえぬこのころ[寛],
" "#[番号]12/3016","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]山川之 瀧尓益流 戀為登曽 人知尓来 無間念者","#[訓読]山川の瀧にまされる恋すとぞ人知りにける間なくし思へば","#[仮名],やまがはの,たきにまされる,こひすとぞ,ひとしりにける,まなくしおもへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],人目,うわさ,恋情","#[訓異]
やまがはの,[寛]やまかはの,
たきにまされる[寛],
こひすとぞ,[寛]こひすとそ,
ひとしりにける[寛],
まなくしおもへば,[寛]まなくおもへは,
" "#[番号]12/3017","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]足桧木之 山川水之 音不出 人之子め 戀渡青頭鶏","#[訓読]あしひきの山川水の音に出でず人の子ゆゑに恋ひわたるかも","#[仮名],あしひきの,やまがはみづの,おとにいでず,ひとのこゆゑに,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]桧木 [元][類][古](塙) 桧","#[事項],枕詞,うわさ,序詞,恋情","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまがはみづの,[寛]やまかはみつの,
おとにいでず,[寛]おとにいてす,
ひとのこゆゑに,[寛]ひとのこゆへに,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]12/3018","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]高湍尓有 能登瀬乃川之 後将合 妹者吾者 今尓不有十万","#[訓読]高湍なる能登瀬の川の後も逢はむ妹には我れは今にあらずとも","#[仮名],たかせなる,のとせのかはの,のちもあはむ,いもにはわれは,いまにあらずとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良,近江,滋賀県,序詞,恋情","#[訓異]
たかせなる,[寛]たかせくる,
のとせのかはの[寛],
のちもあはむ,[寛]のちにあはむ,
いもにはわれは[寛],
いまにあらずとも,[寛]いまにあらすとも,
" "#[番号]12/3019","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]浣衣 取替河之 <河>余杼能 不通牟心 思兼都母","#[訓読]洗ひ衣取替川の川淀の淀まむ心思ひかねつも","#[仮名],あらひきぬ,とりかひがはの,かはよどの,よどまむこころ,おもひかねつも","#[左注]","#[校異]川 -> 河 [元][古][紀]","#[事項],地名,摂津,大阪,奈良,序詞,恋愛","#[訓異]
あらひきぬ[寛],
とりかひがはの,[寛]とりかへかはの,
かはよどの,[寛]かはよとの,
よどまむこころ,[寛]たえさらむこころ,
おもひかねつも[寛],
" "#[番号]12/3020","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]斑鳩之 因可<乃>池之 宜毛 君乎不言者 念衣吾為流","#[訓読]斑鳩の因可の池のよろしくも君を言はねば思ひぞ我がする","#[仮名],いかるがの,よるかのいけの,よろしくも,きみをいはねば,おもひぞわがする","#[左注]","#[校異]及 -> 乃 [元][類][古][紀]","#[事項],地名,奈良,序詞,うわさ,恋愛","#[訓異]
いかるがの,[寛]いかるかの,
よるかのいけの[寛],
よろしくも[寛],
きみをいはねば,[寛]きみをいはねは,
おもひぞわがする,[寛]おもひそわかする,
" "#[番号]12/3021","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]絶沼之 下従者将戀 市白久 人之可知 歎為米也母","#[訓読]隠り沼の下ゆは恋ひむいちしろく人の知るべく嘆きせめやも","#[仮名],こもりぬの,したゆはこひむ,いちしろく,ひとのしるべく,なげきせめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,うわさ,人目,恋情","#[訓異]
こもりぬの[寛],
したゆはこひむ,[寛]したにはこひは,
いちしろく[寛],
ひとのしるべく,[寛]ひとのしるへく,
なげきせめやも,[寛]なけきせめやも,
" "#[番号]12/3022","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]去方無三 隠有小沼乃 下思尓 吾曽物念 頃者之間","#[訓読]ゆくへなみ隠れる小沼の下思に我れぞ物思ふこのころの間","#[仮名],ゆくへなみ,こもれるをぬの,したもひに,われぞものもふ,このころのあひだ","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋情","#[訓異]
ゆくへなみ[寛],
こもれるをぬの,[寛]こもれるいけの,
したもひに,[寛]したおもひに,
われぞものもふ,[寛]われそものおもふ,
このころのあひだ,[寛]このころのまは,
" "#[番号]12/3023","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]隠沼乃 下従戀餘 白浪之 灼然出 人之可知","#[訓読]隠り沼の下ゆ恋ひあまり白波のいちしろく出でぬ人の知るべく","#[仮名],こもりぬの,したゆこひあまり,しらなみの,いちしろくいでぬ,ひとのしるべく","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情,うわさ,人目","#[訓異]
こもりぬの[寛],
したゆこひあまり,[寛]したにこひあまり,
しらなみの[寛],
いちしろくいでぬ,[寛]いちしろくいてぬ,
ひとのしるべく,[寛]ひとのしるへく,
" "#[番号]12/3024","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]妹目乎 見巻欲江之 小浪 敷而戀乍 有跡告乞","#[訓読]妹が目を見まく堀江のさざれ波しきて恋ひつつありと告げこそ","#[仮名],いもがめを,みまくほりえの,さざれなみ,しきてこひつつ,ありとつげこそ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,大阪,掛詞,序詞,恋情","#[訓異]
いもがめを,[寛]いもかめを,
みまくほりえの[寛],
さざれなみ,[寛]ささらなみ,
しきてこひつつ[寛],
ありとつげこそ,[寛]ありとつけこそ,
" "#[番号]12/3025","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]石走 垂水之水能 早敷八師 君尓戀良久 吾情柄","#[訓読]石走る垂水の水のはしきやし君に恋ふらく我が心から","#[仮名],いはばしる,たるみのみづの,はしきやし,きみにこふらく,わがこころから","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,序詞,恋情","#[訓異]
いはばしる,[寛]いしはしる,
たるみのみづの,[寛]たるみのみつの,
はしきやし[寛],
きみにこふらく[寛],
わがこころから,[寛]わかこころから,
" "#[番号]12/3026","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]君者不来 吾者故無 立浪之 敷和備思 如此而不来跡也","#[訓読]君は来ず我れは故なみ立つ波のしくしくわびしかくて来じとや","#[仮名],きみはこず,われはゆゑなみ,たつなみの,しくしくわびし,かくてこじとや","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋情,女歌,不安,怨恨","#[訓異]
きみはこず,[寛]きみはこす,
われはゆゑなみ,[寛]われはゆへなみ,
たつなみの[寛],
しくしくわびし,[寛]しはしはわひし,
かくてこじとや,[寛]かくてこしとや,
" "#[番号]12/3027","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]淡海之海 邊多波人知 奥浪 君乎置者 知人毛無","#[訓読]近江の海辺は人知る沖つ波君をおきては知る人もなし","#[仮名],あふみのうみ,へたはひとしる,おきつなみ,きみをおきては,しるひともなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,滋賀県,比喩,恋情","#[訓異]
あふみのうみ[寛],
へたはひとしる[寛],
おきつなみ[寛],
きみをおきては[寛],
しるひともなし[寛],
" "#[番号]12/3028","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]大海之 底乎深目而 結<義>之 妹心者 疑毛無","#[訓読]大海の底を深めて結びてし妹が心はうたがひもなし","#[仮名],おほうみの,そこをふかめて,むすびてし,いもがこころは,うたがひもなし","#[左注]","#[校異]美 -> 義 [西(貼紙)][元][類][紀][細]","#[事項],掛詞,恋愛","#[訓異]
おほうみの[寛],
そこをふかめて[寛],
むすびてし,[寛]むすひてし,
いもがこころは,[寛]いもかこころは,
うたがひもなし,[寛]うたかひもなし,
" "#[番号]12/3029","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]貞能b尓 依流白浪 無間 思乎如何 妹尓難相","#[訓読]佐太の浦に寄する白波間なく思ふを何か妹に逢ひかたき","#[仮名],さだのうらに,よするしらなみ,あひだなく,おもふをなにか,いもにあひかたき","#[左注]","#[校異]b [元][細] 納","#[事項],地名,序詞,恋情","#[訓異]
さだのうらに,[寛]さたのうらに,
よするしらなみ[寛],
あひだなく,[寛]あひたなく,
おもふをなにか,[寛]おもふをなにそ,
いもにあひかたき[寛],
" "#[番号]12/3030","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]念出而 為便無時者 天雲之 奥香裳不知 戀乍曽居","#[訓読]思ひ出でてすべなき時は天雲の奥処も知らず恋ひつつぞ居る","#[仮名],おもひいでて,すべなきときは,あまくもの,おくかもしらず,こひつつぞをる","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,序詞","#[訓異]
おもひいでて,[寛]おもひてて,
すべなきときは,[寛]すへなきときは,
あまくもの[寛],
おくかもしらず,[寛]おくかもしらす,
こひつつぞをる,[寛]こひつつそをる,
" "#[番号]12/3031","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]天雲乃 絶多比安 心<有>者 吾乎莫憑 待者苦毛","#[訓読]天雲のたゆたひやすき心あらば我れをな頼めそ待たば苦しも","#[仮名],あまくもの,たゆたひやすき,こころあらば,われをなたのめそ,またばくるしも","#[左注]","#[校異]<> -> 有 [西(挿入)][元][類][紀]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
あまくもの[寛],
たゆたひやすき[寛],
こころあらば,[寛]こころあらは,
われをなたのめそ,[寛]われをたのむな,
またばくるしも,[寛]まてはくるしも,
" "#[番号]12/3032","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]君之當 見乍母将居 伊駒山 雲莫蒙 雨者雖零","#[訓読]君があたり見つつも居らむ生駒山雲なたなびき雨は降るとも","#[仮名],きみがあたり,みつつもをらむ,いこまやま,くもなたなびき,あめはふるとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良,恋情","#[訓異]
きみがあたり,[寛]きみかあたり,
みつつもをらむ[寛],
いこまやま[寛],
くもなたなびき,[寛]くもなかくしそ,
あめはふるとも[寛],
" "#[番号]12/3033","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]中々二 如何知兼 吾山尓 焼流火氣能 外見申尾","#[訓読]なかなかに何か知りけむ我が山に燃ゆる煙の外に見ましを","#[仮名],なかなかに,なにかしりけむ,わがやまに,もゆるけぶりの,よそにみましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,後悔,恋情,怨恨","#[訓異]
なかなかに[寛],
なにかしりけむ,[寛]なににしりけむ,
わがやまに,[寛]わかやまに,
もゆるけぶりの,[寛]もゆるけふりの,
よそにみましを[寛],
" "#[番号]12/3034","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]吾妹兒尓 戀為便名鴈 る乎熱 旦戸開者 所見霧可聞","#[訓読]我妹子に恋ひすべながり胸を熱み朝戸開くれば見ゆる霧かも","#[仮名],わぎもこに,こひすべながり,むねをあつみ,あさとあくれば,みゆるきりかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こひすべながり,[寛]こひすへなかり,
むねをあつみ,[寛]むねをやき,
あさとあくれば,[寛]あさとあくれは,
みゆるきりかも[寛],
" "#[番号]12/3035","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]暁之 朝霧隠 反羽二 如何戀乃 色<丹>出尓家留","#[訓読]暁の朝霧隠りかへらばに何しか恋の色に出でにける","#[仮名],あかときの,あさぎりごもり,かへらばに,なにしかこひの,いろにいでにける","#[左注]","#[校異]舟 -> 丹 [西(訂正)][元][類][紀]","#[事項],恋情","#[訓異]
あかときの,[寛]あかつきの,
あさぎりごもり,[寛]あさきりこもり,
かへらばに,[寛]かへるさに,
なにしかこひの,[寛]いかてかこひの,
いろにいでにける,[寛]いろにいてにける,
" "#[番号]12/3036","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]思出 時者為便無 佐保山尓 立雨霧乃 應消所念","#[訓読]思ひ出づる時はすべなみ佐保山に立つ雨霧の消ぬべく思ほゆ","#[仮名],おもひいづる,ときはすべなみ,さほやまに,たつあまぎりの,けぬべくおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良,序詞,恋情","#[訓異]
おもひいづる,[寛]おもひいつる,
ときはすべなみ,[寛]ときはすへなみ,
さほやまに[寛],
たつあまぎりの,[寛]たつあまきりの,
けぬべくおもほゆ,[寛]けぬへくおもほゆ,
" "#[番号]12/3037","#[題詞](寄物陳思)","#[本文]g目山 徃反道之 朝霞 髣髴谷八 妹尓不相牟","#[訓読]殺目山行き返り道の朝霞ほのかにだにや妹に逢はざらむ","#[仮名],きりめやま,ゆきかへりぢの,あさがすみ,ほのかにだにや,いもにあはざらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,和歌山,序詞,恋情","#[訓異]
きりめやま[寛],
ゆきかへりぢの,[寛]ゆきはふみちの,
あさがすみ,[寛]あさかすみ,
ほのかにだにや,[寛]ほのかにたにや,
いもにあはざらむ,[寛]いもにあはさらむ,
" "#[番号]12/3038","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]如此将戀 物等知者 夕置而 旦者消流 露有申尾","#[訓読]かく恋ひむものと知りせば夕置きて朝は消ぬる露ならましを","#[仮名],かくこひむ,ものとしりせば,ゆふへおきて,あしたはけぬる,つゆならましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
かくこひむ[寛],
ものとしりせば,[寛]ものとしりせは,
ゆふへおきて[寛],
あしたはけぬる,[寛]あしたはきゆる,
つゆならましを[寛],
" "#[番号]12/3039","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]暮置而 旦者消流 白露之 可消戀毛 吾者為鴨","#[訓読]夕置きて朝は消ぬる白露の消ぬべき恋も我れはするかも","#[仮名],ゆふへおきて,あしたはけぬる,しらつゆの,けぬべきこひも,あれはするかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
ゆふへおきて[寛],
あしたはけぬる,[寛]あしたはきゆる,
しらつゆの[寛],
けぬべきこひも,[寛]けぬへきこひも,
あれはするかも,[寛]われはするかも,
" "#[番号]12/3040","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]後遂尓 <妹>将相跡 旦露之 命者生有 戀者雖繁","#[訓読]後つひに妹は逢はむと朝露の命は生けり恋は繁けど","#[仮名],のちつひに,いもはあはむと,あさつゆの,いのちはいけり,こひはしげけど","#[左注]","#[校異]妹尓 -> 妹 [元][紀][細]","#[事項],恋情","#[訓異]
のちつひに,[寛]のちつゐに,
いもはあはむと,[寛]いもにあはむと,
あさつゆの[寛],
いのちはいけり[寛],
こひはしげけど,[寛]こひはしけれと,
" "#[番号]12/3041","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]朝旦 草上白 置露乃 消者共跡 云師君者毛","#[訓読]朝な朝な草の上白く置く露の消なばともにと言ひし君はも","#[仮名],あさなさな,くさのうへしろく,おくつゆの,けなばともにと,いひしきみはも","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,女歌,挽歌発想,恋情","#[訓異]
あさなさな[寛],
くさのうへしろく[寛],
おくつゆの[寛],
けなばともにと,[寛]きえはともにと,
いひしきみはも[寛],
" "#[番号]12/3042","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]朝日指 春日能小野尓 置露乃 可消吾身 惜雲無","#[訓読]朝日さす春日の小野に置く露の消ぬべき我が身惜しけくもなし","#[仮名],あさひさす,かすがのをのに,おくつゆの,けぬべきあがみ,をしけくもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良,序詞,女歌,恋情","#[訓異]
あさひさす[寛],
かすがのをのに,[寛]かすかのをのに,
おくつゆの[寛],
けぬべきあがみ,[寛]けぬへきわかみ,
をしけくもなし[寛],
" "#[番号]12/3043","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]露霜乃 消安我身 雖老 又若反 君乎思将待","#[訓読]露霜の消やすき我が身老いぬともまたをちかへり君をし待たむ","#[仮名],つゆしもの,けやすきあがみ,おいぬとも,またをちかへり,きみをしまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,恋情,枕詞","#[訓異]
つゆしもの[寛],
けやすきあがみ,[寛]けやすきわかみ,
おいぬとも,[寛]おひぬとも,
またをちかへり,[寛]またわかかへり,
きみをしまたむ[寛],
" "#[番号]12/3044","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]待君<常> 庭耳居者 打靡 吾黒髪尓 <霜>曽置尓家留","#[訓読]君待つと庭のみ居ればうち靡く我が黒髪に霜ぞ置きにける","#[仮名],きみまつと,にはのみをれば,うちなびく,わがくろかみに,しもぞおきにける","#[左注]或本歌尾句云 白細之 吾衣手尓 露曽置尓家留","#[校異]常常 -> 常 [西(訂正)][元][類][紀] / 耳 [万葉集古義](楓) 西 / 云 [元] 曰","#[事項],異伝,女歌,恋情","#[訓異]
きみまつと[寛],
にはのみをれば,[寛]にはにしをれは,
うちなびく,[寛]うちなひき,
わがくろかみに,[寛]わかくろかみに,
しもぞおきにける,[寛]しもそおきにける,
" "#[番号]12/3044S","#[題詞](寄物陳思)或本歌尾句云","#[原文]白細之 吾衣手尓 露曽置尓家留 ","#[訓読]白栲の我が衣手に露ぞ置きにける ","#[仮名],しろたへの,わがころもでに,つゆぞおきにける","#[左注]","#[校異]","#[事項],異伝,女歌,恋情","#[訓異]
しろたへの[寛],
わがころもでに,[寛]わかころもてに,
つゆぞおきにける,[寛]つゆそおきにける,
" "#[番号]12/3045","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]朝<霜>乃 可消耳也 時無二 思将度 氣之緒尓為而","#[訓読]朝霜の消ぬべくのみや時なしに思ひわたらむ息の緒にして","#[仮名],あさしもの,けぬべくのみや,ときなしに,おもひわたらむ,いきのをにして","#[左注]","#[校異]露 -> 霜 [西(訂正貼紙][元][類][紀]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
あさしもの[寛],
けぬべくのみや,[寛]けぬへくのみや,
ときなしに[寛],
おもひわたらむ[寛],
いきのをにして[寛],
" "#[番号]12/3046","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]左佐浪之 波越安ま仁 落小雨 間文置而 吾不念國","#[訓読]楽浪の波越すあざに降る小雨間も置きて我が思はなくに","#[仮名],ささなみの,なみこすあざに,ふるこさめ,あひだもおきて,わがおもはなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,地名,滋賀県,序詞","#[訓異]
ささなみの[寛],
なみこすあざに,[寛]なみこすあさに,
ふるこさめ[寛],
あひだもおきて,[寛]あひたもおきて,
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]12/3047","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]神左備而 巌尓生 松根之 君心者 忘不得毛","#[訓読]神さびて巌に生ふる松が根の君が心は忘れかねつも","#[仮名],かむさびて,いはほにおふる,まつがねの,きみがこころは,わすれかねつも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,植物,女歌","#[訓異]
かむさびて,[寛]かみさひて,
いはほにおふる[寛],
まつがねの,[寛]まつかねの,
きみがこころは,[寛]きみかこころは,
わすれかねつも[寛],
" "#[番号]12/3048","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]御猟為 鴈羽之小野之 <櫟柴之> 奈礼波不益 戀社益","#[訓読]み狩りする雁羽の小野の櫟柴のなれはまさらず恋こそまされ","#[仮名],みかりする,かりはのをのの,ならしばの,なれはまさらず,こひこそまされ","#[左注]","#[校異]柏 -> 櫟柴之 [紀][細][温][矢]","#[事項],地名,植物,序詞,恋情","#[訓異]
みかりする[寛],
かりはのをのの[寛],
ならしばの,[寛]ならしはの,
なれはまさらず,[寛]なれはまさらて,
こひこそまされ[寛],
" "#[番号]12/3049","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]櫻麻之 麻原<乃>下草 早生者 妹之下紐 下解有申尾","#[訓読]桜麻の麻生の下草早く生ひば妹が下紐解かずあらましを","#[仮名],さくらをの,をふのしたくさ,はやくおひば,いもがしたびも,とかずあらましを","#[左注]","#[校異]<> -> 乃 [元][類][紀]","#[事項],序詞,恋情,植物","#[訓異]
さくらをの,[寛]さくらあさの,
をふのしたくさ[寛],
はやくおひば,[寛]はやくおきは,
いもがしたびも,[寛]いもかしたひも,
とかずあらましを,[寛]とけさらましを,
" "#[番号]12/3050","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]春日野尓 淺茅標結 断米也登 吾念人者 弥遠長尓","#[訓読]春日野に浅茅標結ひ絶えめやと我が思ふ人はいや遠長に","#[仮名],かすがのに,あさぢしめゆひ,たえめやと,わがおもふひとは,いやとほながに","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良,植物,恋情,永遠","#[訓異]
かすがのに,[寛]かすかのに,
あさぢしめゆひ,[寛]あさちしめゆひ,
たえめやと[寛],
わがおもふひとは,[寛]わかおもふひとは,
いやとほながに,[寛]いやとほなかに,
" "#[番号]12/3051","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]足桧木之 山菅根之 懃 吾波曽戀流 君之光儀乎","#[訓読]あしひきの山菅の根のねもころに我れはぞ恋ふる君が姿を","#[仮名],あしひきの,やますがのねの,ねもころに,あれはぞこふる,きみがすがたを","#[左注]或本歌曰 吾念人乎 将見因毛我母","#[校異]桧木 [元][類][紀] 桧","#[事項],異伝,枕詞,植物,序詞,恋情","#[訓異]
あしひきの[寛],
やますがのねの,[寛]やますかのねの,
ねもころに[寛],
あれはぞこふる,[寛]われはそこふる,
きみがすがたを,[寛]きみかすかたを,
" "#[番号]12/3051S","#[題詞](寄物陳思)或本歌曰","#[原文]吾念人乎 将見因毛我母 ","#[訓読]我が思ふ人を見むよしもがも ","#[仮名],わがおもふひとを,みむよしもがも","#[左注]","#[校異]","#[事項],異伝,恋情","#[訓異]
わがおもふひとを,[寛]わかおもふひとを,
みむよしもがも,[寛]みむよしもかも,
" "#[番号]12/3052","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]垣津旗 開澤生 菅根之 絶跡也君之 不所見頃者","#[訓読]かきつはた佐紀沢に生ふる菅の根の絶ゆとや君が見えぬこのころ","#[仮名],かきつはた,さきさはにおふる,すがのねの,たゆとやきみが,みえぬこのころ","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,枕詞,奈良,恋情,不安","#[訓異]
かきつはた[寛],
さきさはにおふる,[寛]さくさはにおふる,
すがのねの,[寛]すかのねの,
たゆとやきみが,[寛]たゆとやきみか,
みえぬこのころ[寛],
" "#[番号]12/3053","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]足桧木乃 山菅根之 懃 不止念者 於妹将相可聞","#[訓読]あしひきの山菅の根のねもころにやまず思はば妹に逢はむかも","#[仮名],あしひきの,やますがのねの,ねもころに,やまずおもはば,いもにあはむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,枕詞,恋情,序詞","#[訓異]
あしひきの[寛],
やますがのねの,[寛]やますかのねの,
ねもころに[寛],
やまずおもはば,[寛]やますおもはは,
いもにあはむかも[寛],
" "#[番号]12/3054","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]相不念 有物乎鴨 菅根乃 懃懇 吾念有良武","#[訓読]相思はずあるものをかも菅の根のねもころごろに我が思へるらむ","#[仮名],あひおもはず,あるものをかも,すがのねの,ねもころごろに,わがもへるらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,枕詞,恋情,怨恨","#[訓異]
あひおもはず,[寛]あひおもはす,
あるものをかも[寛],
すがのねの,[寛]すかのねの,
ねもころごろに,[寛]ねもころころに,
わがもへるらむ,[寛]わかおもへらむ,
" "#[番号]12/3055","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]山菅之 不止而公乎 念可母 吾心神之 頃者名寸","#[訓読]山菅のやまずて君を思へかも我が心どのこの頃はなき","#[仮名],やますげの,やまずてきみを,おもへかも,あがこころどの,このころはなき","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,枕詞,恋情","#[訓異]
やますげの,[寛]やますけの,
やまずてきみを,[寛]やますてきみを,
おもへかも[寛],
あがこころどの,[寛]わかたましひの,
このころはなき[寛],
" "#[番号]12/3056","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]妹門 去過不得而 草結 風吹解勿 又将顧 [一云 直相麻<弖>尓]","#[訓読]妹が門行き過ぎかねて草結ぶ風吹き解くなまたかへり見む [一云 直に逢ふまでに] ","#[仮名],いもがかど,ゆきすぎかねて,くさむすぶ,かぜふきとくな,またかへりみむ,[ただにあふまでに]","#[左注]","#[校異]土 -> 弖 [古][紀][細]","#[事項],異伝,恋情","#[訓異]
いもがかど,[寛]いもかかと,
ゆきすぎかねて,[寛]ゆきすきかねて,
くさむすぶ,[寛]くさむすふ,
かぜふきとくな,[寛]かせふきとくな,
またかへりみむ[寛],
[ただにあふまでに],[寛]たたにあふまてに,
" "#[番号]12/3057","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]淺茅原 茅生丹足踏 意具美 吾念兒等之 家當見津 [一云 妹之家當見津] ","#[訓読]浅茅原茅生に足踏み心ぐみ我が思ふ子らが家のあたり見つ [一云 妹が家のあたり見つ] ","#[仮名],あさぢはら,ちふにあしふみ,こころぐみ,あがもふこらが,いへのあたりみつ,[いもが,いへのあたりみつ]","#[左注]","#[校異]","#[事項],異伝,恋情","#[訓異]
あさぢはら,[寛]あさちはら,
ちふにあしふみ[寛],
こころぐみ,[寛]こころくみ,
あがもふこらが,[寛]わかおもふこらか,
いへのあたりみつ[寛],
[いもが,[寛]いもか,
いへのあたりみつ][寛],
" "#[番号]12/3058","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]内日刺 宮庭有跡 鴨頭草之 移情 吾思名國","#[訓読]うちひさす宮にはあれど月草のうつろふ心我が思はなくに","#[仮名],うちひさす,みやにはあれど,つきくさの,うつろふこころ,わがおもはなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,植物,恋愛","#[訓異]
うちひさす[寛],
みやにはあれど,[寛]みやにはあれと,
つきくさの[寛],
うつろふこころ,[寛]うつしこころは,
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]12/3059","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]百尓千尓 人者雖言 月草之 移情 吾将持八方","#[訓読]百に千に人は言ふとも月草のうつろふ心我れ持ためやも","#[仮名],ももにちに,ひとはいふとも,つきくさの,うつろふこころ,われもためやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,うわさ,恋愛","#[訓異]
ももにちに[寛],
ひとはいふとも[寛],
つきくさの[寛],
うつろふこころ,[寛]うつしこころは,
われもためやも[寛],
" "#[番号]12/3060","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]萱草 吾紐尓著 時常無 念度者 生跡文奈思","#[訓読]忘れ草我が紐に付く時となく思ひわたれば生けりともなし","#[仮名],わすれくさ,わがひもにつく,ときとなく,おもひわたれば,いけりともなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,恋情","#[訓異]
わすれくさ[寛],
わがひもにつく,[寛]わかひもにつく,
ときとなく[寛],
おもひわたれば,[寛]おもひわたれは,
いけりともなし[寛],
" "#[番号]12/3061","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]五更之 目不酔草跡 此乎谷 見乍座而 吾止偲為","#[訓読]暁の目覚まし草とこれをだに見つついまして我れと偲はせ","#[仮名],あかときの,めさましくさと,これをだに,みつついまして,われをしのはせ","#[左注]","#[校異]止 (塙)(楓) 少","#[事項],女歌,形見,恋愛","#[訓異]
あかときの,[寛]あかつきの,
めさましくさと[寛],
これをだに,[寛]これをたに,
みつついまして[寛],
われをしのはせ,[寛]われししのはせ,
" "#[番号]12/3062","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]萱草 垣毛繁森 雖殖有 鬼之志許草 猶戀尓家利","#[訓読]忘れ草垣もしみみに植ゑたれど醜の醜草なほ恋ひにけり","#[仮名],わすれくさ,かきもしみみに,うゑたれど,しこのしこくさ,なほこひにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,恋情","#[訓異]
わすれくさ[寛],
かきもしみみに[寛],
うゑたれど,[寛]うゑたれと,
しこのしこくさ,[寛]おにのしこくさ,
なほこひにけり[寛],
" "#[番号]12/3063","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]淺茅原 小野尓標結 空言毛 将相跡令聞 戀之名種尓","#[訓読]浅茅原小野に標結ふ空言も逢はむと聞こせ恋のなぐさに","#[仮名],あさぢはら,をのにしめゆふ,むなことも,あはむときこせ,こひのなぐさに","#[左注]或本歌曰 将来知志 君矣志将待 又見柿本朝臣人麻呂歌集 然落<句小>異耳","#[校異]勺少 -> 句小 [元][類]","#[事項],恋情,異伝,柿本人麻呂歌集","#[訓異]
あさぢはら,[寛]あさちふの,
をのにしめゆふ[寛],
むなことも,[寛]そらことも,
あはむときこせ,[寛]あはむときかせ,
こひのなぐさに,[寛]こひのなくさに,
" "#[番号]12/3063S","#[題詞](寄物陳思)或本歌曰","#[原文]将来知志 君矣志将待 ","#[訓読]来むと知らせし君をし待たむ ","#[仮名],こむとしらせし,きみをしまたむ","#[左注]又見柿本朝臣人麻呂歌集 然落<句小>異耳","#[校異]","#[事項],異伝,恋情","#[訓異]
こむとしらせし[寛],
きみをしまたむ[寛],
" "#[番号]12/3064","#[題詞](寄物陳思)","#[本文]<人皆>之 笠尓縫云 有間菅 在而後尓毛 相等曽念","#[訓読]人皆の笠に縫ふといふ有間菅ありて後にも逢はむとぞ思ふ","#[仮名],ひとみなの,かさにぬふといふ,ありますげ,ありてのちにも,あはむとぞおもふ","#[左注]","#[校異]皆人 -> 人皆 [元][紀][温][矢]","#[事項],植物,序詞,恋情","#[訓異]
ひとみなの[寛],
かさにぬふといふ,[寛]かさにぬふてふ,
ありますげ,[寛]ありますけ,
ありてのちにも[寛],
あはむとぞおもふ,[寛]あはむとそおもふ,
" "#[番号]12/3065","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]三吉野之 蜻乃小野尓 苅草之 念乱而 宿夜四曽多","#[訓読]み吉野の秋津の小野に刈る草の思ひ乱れて寝る夜しぞ多き","#[仮名],みよしのの,あきづのをのに,かるかやの,おもひみだれて,ぬるよしぞおほき","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,吉野,奈良,植物,序詞,恋情","#[訓異]
みよしのの[寛],
あきづのをのに,[寛]あきつのをのに,
かるかやの[寛],
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
ぬるよしぞおほき,[寛]ぬるよしそおほき,
" "#[番号]12/3066","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]妹待跡 三笠乃山之 山菅之 不止八将戀 命不死者","#[訓読]妹待つと御笠の山の山菅の止まずや恋ひむ命死なずは","#[仮名],いもまつと,みかさのやまの,やますげの,やまずやこひむ,いのちしなずは","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良,植物,序詞,恋情","#[訓異]
いもまつと[寛],
みかさのやまの[寛],
やますげの,[寛]やますけの,
やまずやこひむ,[寛]やますやこひむ,
いのちしなずは,[寛]いのちしなすは,
" "#[番号]12/3067","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]谷迫 峯邊延有 玉葛 令蔓之<有>者 年二不来友 [一云 石葛 令蔓之有者]","#[訓読]谷狭み嶺辺に延へる玉葛延へてしあらば年に来ずとも [一云 岩つなの延へてしあらば]","#[仮名],たにせまみ,みねへにはへる,たまかづら,はへてしあらば,としにこずとも,[いはつなの,はへてしあらば]","#[左注]","#[校異]<> -> 有 [元][類][紀]","#[事項],異伝,植物,序詞,恋情","#[訓異]
たにせまみ,[寛]たにせはみ,
みねへにはへる[寛],
たまかづら,[寛]たまかつら,
はへてしあらば,[寛]はへてしあらは,
としにこずとも,[寛]としにこすとも,
[いはつなの,[寛]いはつたの,
はへてしあらば],[寛]はへてしあらは,
" "#[番号]12/3068","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]水茎之 岡乃田葛葉緒 吹變 面知兒等之 不見比鴨","#[訓読]水茎の岡の葛葉を吹きかへし面知る子らが見えぬころかも","#[仮名],みづくきの,をかのくずはを,ふきかへし,おもしるこらが,みえぬころかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,恋情,序詞","#[訓異]
みづくきの,[寛]みつくきの,
をかのくずはを,[寛]をかのくすはを,
ふきかへし[寛],
おもしるこらが,[寛]おもしるこらか,
みえぬころかも[寛],
" "#[番号]12/3069","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]赤駒之 射去羽計 真田葛原 何傳言 直将吉","#[訓読]赤駒のい行きはばかる真葛原何の伝て言直にしよけむ","#[仮名],あかごまの,いゆきはばかる,まくずはら,なにのつてこと,ただにしよけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,植物,序詞,恋情,女歌","#[訓異]
あかごまの,[寛]あかこまの,
いゆきはばかる,[寛]いゆきははかり,
まくずはら,[寛]まくすはら,
なにのつてこと[寛],
ただにしよけむ,[寛]たたにしよけむ,
" "#[番号]12/3070","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]木綿疊 田上山之 狭名葛 在去之毛 <今>不有十万","#[訓読]木綿畳田上山のさな葛ありさりてしも今ならずとも","#[仮名],ゆふたたみ,たなかみやまの,さなかづら,ありさりてしも,いまならずとも","#[左注]","#[校異]令 -> 今 [童蒙抄]","#[事項],地名,滋賀県,枕詞,植物,序詞,恋情","#[訓異]
ゆふたたみ[寛],
たなかみやまの[寛],
さなかづら,[寛]さなかつら,
ありさりてしも[寛],
いまならずとも,[寛]あらしめすとも,
" "#[番号]12/3071","#[題詞](寄物陳思)","#[本文]<丹>波道之 大江乃山之 真玉葛 絶牟乃心 我不思","#[訓読]丹波道の大江の山のさな葛絶えむの心我が思はなくに","#[仮名],たにはぢの,おほえのやまの,さなかづら,たえむのこころ,わがおもはなくに","#[左注]","#[校異]舟 -> 丹 [西(訂正)][元][類][紀]","#[事項],地名,京都,植物,序詞,恋情","#[訓異]
たにはぢの,[寛]たにはちの,
おほえのやまの[寛],
さなかづら,[寛]さなかつら,
たえむのこころ[寛],
わがおもはなくに,[寛]われはおもはす,
" "#[番号]12/3072","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]大埼之 有礒乃渡 延久受乃 徃方無哉 戀度南","#[訓読]大崎の荒礒の渡り延ふ葛のゆくへもなくや恋ひわたりなむ","#[仮名],おほさきの,ありそのわたり,はふくずの,ゆくへもなくや,こひわたりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,和歌山,植物,序詞,恋情","#[訓異]
おほさきの[寛],
ありそのわたり[寛],
はふくずの,[寛]はふくすの,
ゆくへもなくや[寛],
こひわたりなむ[寛],
" "#[番号]12/3073","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]木綿L [一云 疊] 白月山之 佐奈葛 後毛必 将相等曽念 [或本歌曰 将絶跡妹乎 吾念莫久尓] ","#[訓読]木綿包み [一云 畳] 白月山のさな葛後もかならず逢はむとぞ思ふ [或本歌曰 絶えむと妹を我が思はなくに] ","#[仮名],ゆふづつみ[たたみ],しらつきやまの,さなかづら,のちもかならず,あはむとぞおもふ,[たえむといもを,わがおもはなくに]","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,地名,植物,序詞,恋情","#[訓異]
ゆふづつみ[たたみ],[寛]ゆふつつみ[]
しらつきやまの[寛],
さなかづら,[寛]さなかつら,
のちもかならず,[寛]のちもかならす,
あはむとぞおもふ,[寛]あはむとそおもふ,
[たえむといもを[寛],
わがおもはなくに],[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]12/3074","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]唐棣花色之 移安 情有者 年乎曽寸經 事者不絶而","#[訓読]はねず色のうつろひやすき心あれば年をぞ来経る言は絶えずて","#[仮名],はねずいろの,うつろひやすき,こころあれば,としをぞきふる,ことはたえずて","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
はねずいろの,[寛]はねすいろの,
うつろひやすき[寛],
こころあれば,[寛]こころあれは,
としをぞきふる,[寛]としをそきふる,
ことはたえずて,[寛]ことはたえすて,
" "#[番号]12/3075","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]如此為而曽 人之死云 藤浪乃 直一目耳 見之人故尓","#[訓読]かくしてぞ人は死ぬといふ藤波のただ一目のみ見し人ゆゑに","#[仮名],かくしてぞ,ひとはしぬといふ,ふぢなみの,ただひとめのみ,みしひとゆゑに","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,恋情","#[訓異]
かくしてぞ,[寛]かくしてそ,
ひとはしぬといふ,[寛]ひとのしぬてふ,
ふぢなみの,[寛]ふちなみの,
ただひとめのみ,[寛]たたひとめのみ,
みしひとゆゑに,[寛]みしひとゆへに,
" "#[番号]12/3076","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]住吉之 敷津之浦乃 名告藻之 名者告而之乎 不相毛恠","#[訓読]住吉の敷津の浦のなのりその名は告りてしを逢はなくも怪し","#[仮名],すみのえの,しきつのうらの,なのりその,なはのりてしを,あはなくもあやし","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,大阪,植物,序詞,恋情","#[訓異]
すみのえの[寛],
しきつのうらの[寛],
なのりその,[寛]なのりそか,
なはのりてしを[寛],
あはなくもあやし,[寛]あはぬもあやし,
" "#[番号]12/3077","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]三佐呉集 荒礒尓生流 勿謂藻乃 吉名者不<告> 父母者知鞆","#[訓読]みさご居る荒礒に生ふるなのりそのよし名は告らじ親は知るとも","#[仮名],みさごゐる,ありそにおふる,なのりその,よしなはのらじ,おやはしるとも","#[左注]","#[校異]吉 -> 告 [類][紀] / 鞆 [元][類](塙)(楓) 等毛","#[事項],動物,植物,序詞,恋情,人目","#[訓異]
みさごゐる,[寛]みさこゐる,
ありそにおふる,[寛]あらいそにおふる,
なのりその[寛],
よしなはのらじ,[寛]よしなはのらし,
おやはしるとも[寛],
" "#[番号]12/3078","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]浪之共 靡玉藻乃 片念尓 吾念人之 言乃繁家口","#[訓読]波の共靡く玉藻の片思に我が思ふ人の言の繁けく","#[仮名],なみのむた,なびくたまもの,かたもひに,わがおもふひとの,ことのしげけく","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,序詞,恋情","#[訓異]
なみのむた[寛],
なびくたまもの,[寛]なひくたまもの,
かたもひに,[寛]かたおもひに,
わがおもふひとの,[寛]わかおもふひとの,
ことのしげけく,[寛]ことのしけけく,
" "#[番号]12/3079","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]海若之 奥津玉藻乃 靡将寐 早来座君 待者苦毛","#[訓読]わたつみの沖つ玉藻の靡き寝む早来ませ君待たば苦しも","#[仮名],わたつみの,おきつたまもの,なびきねむ,はやきませきみ,またばくるしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,序詞,恋情,女歌","#[訓異]
わたつみの[寛],
おきつたまもの[寛],
なびきねむ,[寛]なひきねむ,
はやきませきみ[寛],
またばくるしも,[寛]まてはくるしも,
" "#[番号]12/3080","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]海若之 奥尓生有 縄<乗>乃 名者曽不告 戀者雖死","#[訓読]わたつみの沖に生ひたる縄海苔の名はかつて告らじ恋ひは死ぬとも","#[仮名],わたつみの,おきにおひたる,なはのりの,なはかつてのらじ,こひはしねとも","#[左注]","#[校異]垂 -> 乗 [西(朱筆訂正)][元][類][紀]","#[事項],植物,序詞,恋情","#[訓異]
わたつみの[寛],
おきにおひたる[寛],
なはのりの[寛],
なはかつてのらじ,[寛]なはそものらし,
こひはしねとも,[寛]こひはしぬとも,
" "#[番号]12/3081","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]玉緒乎 片緒尓搓而 緒乎弱弥 乱時尓 不戀有目八方","#[訓読]玉の緒を片緒に縒りて緒を弱み乱るる時に恋ひずあらめやも","#[仮名],たまのをを,かたをによりて,ををよわみ,みだるるときに,こひずあらめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋情","#[訓異]
たまのをを[寛],
かたをによりて,[寛]かたをによりし,
ををよわみ,[寛]ををよはみ,
みだるるときに,[寛]みたるるときに,
こひずあらめやも,[寛]こひさらめやも,
" "#[番号]12/3082","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]君尓不相 久成宿 玉緒之 長命之 惜雲無","#[訓読]君に逢はず久しくなりぬ玉の緒の長き命の惜しけくもなし","#[仮名],きみにあはず,ひさしくなりぬ,たまのをの,ながきいのちの,をしけくもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,枕詞,恋情","#[訓異]
きみにあはず,[寛]きみにあはて,
ひさしくなりぬ[寛],
たまのをの[寛],
ながきいのちの,[寛]なかきいのちの,
をしけくもなし[寛],
" "#[番号]12/3083","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]戀事 益今者 玉緒之 絶而乱而 可死所念","#[訓読]恋ふることまされる今は玉の緒の絶えて乱れて死ぬべく思ほゆ","#[仮名],こふること,まされるいまは,たまのをの,たえてみだれて,しぬべくおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
こふること[寛],
まされるいまは,[寛]まされはいまは,
たまのをの[寛],
たえてみだれて,[寛]たえてみたれて,
しぬべくおもほゆ,[寛]しぬへくおもほゆ,
" "#[番号]12/3084","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]海處女 潜取云 忘貝 代二毛不忘 妹之容儀者","#[訓読]海人娘子潜き採るといふ忘れ貝世にも忘れじ妹が姿は","#[仮名],あまをとめ,かづきとるといふ,わすれがひ,よにもわすれじ,いもがすがたは","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋情","#[訓異]
あまをとめ[寛],
かづきとるといふ,[寛]かつきとるてふ,
わすれがひ,[寛]わすれかひ,
よにもわすれじ,[寛]よにもわすれし,
いもがすがたは,[寛]いもかすかたは,
" "#[番号]12/3085","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]朝影尓 吾身者成奴 玉蜻 髣髴所見而 徃之兒故尓","#[訓読]朝影に我が身はなりぬ玉かぎるほのかに見えて去にし子ゆゑに","#[仮名],あさかげに,あがみはなりぬ,たまかぎる,ほのかにみえて,いにしこゆゑに","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情","#[訓異]
あさかげに,[寛]あさかけに,
あがみはなりぬ,[寛]わかみはなりぬ,
たまかぎる,[寛]かけろふの,
ほのかにみえて[寛],
いにしこゆゑに,[寛]いにしこゆへに,
" "#[番号]12/3086","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]中々二 人跡不在者 桑子尓毛 成益物乎 玉之緒<許>","#[訓読]なかなかに人とあらずは桑子にもならましものを玉の緒ばかり","#[仮名],なかなかに,ひととあらずは,くはこにも,ならましものを,たまのをばかり","#[左注]","#[校異]計 -> 許 [元][類][紀]","#[事項],恋情","#[訓異]
なかなかに[寛],
ひととあらずは,[寛]ひととあらすは,
くはこにも[寛],
ならましものを[寛],
たまのをばかり,[寛]たまのをはかり,
" "#[番号]12/3087","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]真菅吉 宗我乃河原尓 鳴千鳥 間無吾背子 吾戀者","#[訓読]ま菅よし宗我の川原に鳴く千鳥間なし我が背子我が恋ふらくは","#[仮名],ますげよし,そがのかはらに,なくちどり,まなしわがせこ,あがこふらくは","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,枕詞,植物,地名,奈良,恋情,序詞","#[訓異]
ますげよし,[寛]ますけよき,
そがのかはらに,[寛]そかのかはらに,
なくちどり,[寛]なくちとり,
まなしわがせこ,[寛]まなしわかせこ,
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
" "#[番号]12/3088","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]戀衣 著<楢>乃山尓 鳴鳥之 間無<時無> 吾戀良苦者","#[訓読]恋衣着奈良の山に鳴く鳥の間なく時なし我が恋ふらくは","#[仮名],こひごろも,きならのやまに,なくとりの,まなくときなし,あがこふらくは","#[左注]","#[校異]猶 -> 楢 [西(訂正)][紀][温][矢] / 無時 -> 時無 [元][紀][温]","#[事項],奈良,掛詞,序詞,恋情","#[訓異]
こひごろも,[寛]こひころも,
きならのやまに[寛],
なくとりの[寛],
まなくときなし[寛],
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
" "#[番号]12/3089","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]遠津人 猟道之池尓 住鳥之 立毛居毛 君乎之曽念","#[訓読]遠つ人狩道の池に住む鳥の立ちても居ても君をしぞ思ふ","#[仮名],とほつひと,かりぢのいけに,すむとりの,たちてもゐても,きみをしぞおもふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,地名,榛原,奈良,序詞,恋情","#[訓異]
とほつひと[寛],
かりぢのいけに,[寛]かりちのいけに,
すむとりの[寛],
たちてもゐても[寛],
きみをしぞおもふ,[寛]きみをしそおもふ,
" "#[番号]12/3090","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]葦邊徃 鴨之羽音之 聲耳 聞管本名 戀度鴨","#[訓読]葦辺行く鴨の羽音の音のみに聞きつつもとな恋ひわたるかも","#[仮名],あしへゆく,かものはおとの,おとのみに,ききつつもとな,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,植物,序詞,うわさ,恋情","#[訓異]
あしへゆく[寛],
かものはおとの[寛],
おとのみに,[寛]おとにのみ,
ききつつもとな[寛],
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]12/3091","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]鴨尚毛 己之妻共 求食為而 所遺間尓 戀云物乎","#[訓読]鴨すらもおのが妻どちあさりして後るる間に恋ふといふものを","#[仮名],かもすらも,おのがつまどち,あさりして,おくるるあひだに,こふといふものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,恋情","#[訓異]
かもすらも[寛],
おのがつまどち,[寛]おのかつまとち,
あさりして[寛],
おくるるあひだに,[寛]おくるるほとに,
こふといふものを[寛],
" "#[番号]12/3092","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]白檀 斐太乃細江之 菅鳥乃 妹尓戀哉 寐宿金鶴","#[訓読]白真弓斐太の細江の菅鳥の妹に恋ふれか寐を寝かねつる","#[仮名],しらまゆみ,ひだのほそえの,すがどりの,いもにこふれか,いをねかねつる","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,地名,動物,恋情,序詞","#[訓異]
しらまゆみ[寛],
ひだのほそえの,[寛]ひたのほそえの,
すがどりの,[寛]すかとりの,
いもにこふれか,[寛]いもにこふれや,
いをねかねつる[寛],
" "#[番号]12/3093","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]小竹之上尓 来居而鳴<鳥> 目乎安見 人妻め尓 吾戀二来","#[訓読]小竹の上に来居て鳴く鳥目を安み人妻ゆゑに我れ恋ひにけり","#[仮名],しののうへに,きゐてなくとり,めをやすみ,ひとづまゆゑに,あれこひにけり","#[左注]","#[校異]<> -> 鳥 [西(左書)][元][類][紀]","#[事項],植物,序詞,恋情","#[訓異]
しののうへに,[寛]ささのうへに,
きゐてなくとり[寛],
めをやすみ[寛],
ひとづまゆゑに,[寛]ひとつまゆゑに,
あれこひにけり,[寛]われこひにけり,
" "#[番号]12/3094","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]物念常 不宿起有 旦開者 和備弖鳴成 鶏左倍","#[訓読]物思ふと寐ねず起きたる朝明にはわびて鳴くなり庭つ鳥さへ","#[仮名],ものもふと,いねずおきたる,あさけには,わびてなくなり,にはつとりさへ","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,恋情","#[訓異]
ものもふと,[寛]ものおもふと,
いねずおきたる,[寛]いねすおきたる,
あさけには[寛],
わびてなくなり,[寛]わひてなくなり,
にはつとりさへ,[寛]かけのとりさへ,
" "#[番号]12/3095","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]朝烏 早勿鳴 吾背子之 旦開之容儀 見者悲毛","#[訓読]朝烏早くな鳴きそ我が背子が朝明の姿見れば悲しも","#[仮名],あさがらす,はやくななきそ,わがせこが,あさけのすがた,みればかなしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,女歌,後朝","#[訓異]
あさがらす,[寛]あさからす,
はやくななきそ[寛],
わがせこが,[寛]わかせこか,
あさけのすがた,[寛]あさけのすかた,
みればかなしも,[寛]みれはかなしも,
" "#[番号]12/3096","#[題詞](寄物陳思)","#[本文]わゐ越尓 麦咋駒乃 雖詈 猶戀久 思不勝焉","#[訓読]馬柵越しに麦食む駒の罵らゆれど猶し恋しく思ひかねつも","#[仮名],ませごしに,むぎはむこまの,のらゆれど,なほしこひしく,おもひかねつも","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,序詞,恋情","#[訓異]
ませごしに,[寛]ませこしに,
むぎはむこまの,[寛]むきはむこまの,
のらゆれど,[寛]のらるれと,
なほしこひしく,[寛]なほもこひしく,
おもひかねつも,[寛]おもひかてぬを,
" "#[番号]12/3097","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]左桧隈 <桧隈>河尓 駐馬 馬尓水令飲 吾外将見","#[訓読]さ桧隈桧隈川に馬留め馬に水飼へ我れ外に見む","#[仮名],さひのくま,ひのくまかはに,うまとどめ,うまにみづかへ,われよそにみむ","#[左注]","#[校異]々々 -> 桧隈 [元][類][紀]","#[事項],地名,明日香,奈良,動物,恋情,歌垣","#[訓異]
さひのくま[寛],
ひのくまかはに[寛],
うまとどめ,[寛]うまとめて,
うまにみづかへ,[寛]うまにみつかへ,
われよそにみむ[寛],
" "#[番号]12/3098","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]於能礼故 所詈而居者 ゑ馬之 面高夫駄尓 乗而應来哉","#[訓読]おのれゆゑ罵らえて居れば青馬の面高夫駄に乗りて来べしや","#[仮名],おのれゆゑ,のらえてをれば,あをうまの,おもたかぶだに,のりてくべしや","#[左注]右一首 平群文屋朝臣益人傳云 昔<多>紀皇女竊嫁高安王被嘖之時 御作<此>歌 但高安王左降任<之>伊与國守也","#[校異]聞 -> 多 [吉永登説] / <> -> 此 [元][類][紀] / <> -> 之 [西(右書)][元][紀][温]","#[事項],動物,怨恨,伝承,歌語り,紀皇女,高安王,平群文屋益人","#[訓異]
おのれゆゑ,[寛]おのれゆへ,
のらえてをれば,[寛]のられてをれは,
あをうまの,[寛]あしけうまの,
おもたかぶだに,[寛]おもたかふたに,
のりてくべしや,[寛]のりてくへしや,
" "#[番号]12/3099","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]紫草乎 草跡別々 伏鹿之 野者殊異為而 心者同","#[訓読]紫草を草と別く別く伏す鹿の野は異にして心は同じ","#[仮名],むらさきを,くさとわくわく,ふすしかの,のはことにして,こころはおやじ","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,動物,恋情","#[訓異]
むらさきを[寛],
くさとわくわく,[寛]くさとわけわけ,
ふすしかの[寛],
のはことにして[寛],
こころはおやじ,[寛]こころはおなし,
" "#[番号]12/3100","#[題詞](寄物陳思)","#[原文]不想乎 想常云者 真鳥住 卯名手乃<社>之 神<思>将御知","#[訓読]思はぬを思ふと言はば真鳥住む雲梯の杜の神し知らさむ","#[仮名],おもはぬを,おもふといはば,まとりすむ,うなてのもりの,かみししらさむ","#[左注]","#[校異]杜 -> 社 [元][類][温] / 忌 -> 思 [元][古][紀]","#[事項],怨恨,皮肉,恋愛,動物,地名,橿原市,奈良","#[訓異]
おもはぬを[寛],
おもふといはば,[寛]おもふといはは,
まとりすむ[寛],
うなてのもりの[寛],
かみししらさむ,[寛]かみししるらむ,
" "#[番号]12/3101","#[題詞]問答歌","#[原文]紫者 灰指物曽 海石榴市之 八十街尓 相兒哉誰","#[訓読]紫は灰さすものぞ海石榴市の八十の街に逢へる子や誰れ","#[仮名],むらさきは,はひさすものぞ,つばいちの,やそのちまたに,あへるこやたれ","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],地名,奈良,桜井,歌垣,染色,問いかけ,求婚","#[訓異]
むらさきは[寛],
はひさすものぞ,[寛]はひさすものそ,
つばいちの,[寛]つはいちの,
やそのちまたに[寛],
あへるこやたれ[寛],
" "#[番号]12/3102","#[題詞](問答歌)","#[原文]足千根乃 母之召名乎 雖白 路行人乎 孰跡知而可","#[訓読]たらちねの母が呼ぶ名を申さめど道行く人を誰れと知りてか","#[仮名],たらちねの,ははがよぶなを,まをさめど,みちゆくひとを,たれとしりてか","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],歌垣,枕詞,求婚拒否","#[訓異]
たらちねの[寛],
ははがよぶなを,[寛]ははのめすなを,
まをさめど,[寛]まうさめと,
みちゆくひとを,[寛]みちゆきひとを,
たれとしりてか[寛],
" "#[番号]12/3103","#[題詞](問答歌)","#[原文]不相 然将有 玉<梓>之 使乎谷毛 待八金<手>六","#[訓読]逢はなくはしかもありなむ玉梓の使をだにも待ちやかねてむ","#[仮名],あはなくは,しかもありなむ,たまづさの,つかひをだにも,まちやかねてむ","#[左注](右二首)","#[校異]桙 -> 梓 [元][紀][細] / 手 [西(上書訂正)][元][古][紀]","#[事項],女歌,恋情,枕詞","#[訓異]
あはなくは,[寛]あはさらむ,
しかもありなむ,[寛]しかはありとも,
たまづさの,[寛]たまつさの,
つかひをだにも,[寛]つかひをたにも,
まちやかねてむ[寛],
" "#[番号]12/3104","#[題詞](問答歌)","#[原文]将相者 千遍雖念 蟻通 人眼乎多 戀乍衣居","#[訓読]逢はむとは千度思へどあり通ふ人目を多み恋つつぞ居る","#[仮名],あはむとは,ちたびおもへど,ありがよふ,ひとめをおほみ,こひつつぞをる","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],人目,恋情,うわさ","#[訓異]
あはむとは[寛],
ちたびおもへど,[寛]ちへにおもへと,
ありがよふ,[寛]ありかよふ,
ひとめをおほみ[寛],
こひつつぞをる,[寛]こひつつそをる,
" "#[番号]12/3105","#[題詞](問答歌)","#[原文]人目太 直不相而 盖雲 吾戀死者 誰名将有裳","#[訓読]人目多み直に逢はずてけだしくも我が恋ひ死なば誰が名ならむも","#[仮名],ひとめおほみ,ただにあはずて,けだしくも,あがこひしなば,たがなならむも","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],人目,うわさ,恋情","#[訓異]
ひとめおほみ[寛],
ただにあはずて,[寛]たたにあはすて,
けだしくも,[寛]けたしくも,
あがこひしなば,[寛]わかこひしなは,
たがなならむも,[寛]たかなかあらむも,
" "#[番号]12/3106","#[題詞](問答歌)","#[原文]相見 欲為者 従君毛 吾曽益而 伊布可思美為也","#[訓読]相見まく欲しきがためは君よりも我れぞまさりていふかしみする","#[仮名],あひみまく,ほしきがためは,きみよりも,われぞまさりて,いふかしみする","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],女歌,恋情","#[訓異]
あひみまく[寛],
ほしきがためは,[寛]ほしみしすれは,
きみよりも[寛],
われぞまさりて,[寛]われそまさりて,
いふかしみする[寛],
" "#[番号]12/3107","#[題詞](問答歌)","#[原文]空蝉之 人目乎繁 不相而 年之經者 生跡毛奈思","#[訓読]うつせみの人目を繁み逢はずして年の経ぬれば生けりともなし","#[仮名],うつせみの,ひとめをしげみ,あはずして,としのへぬれば,いけりともなし","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],人目,うわさ,恋情","#[訓異]
うつせみの[寛],
ひとめをしげみ,[寛]ひとめをしけみ,
あはずして,[寛]あはすして,
としのへぬれば,[寛]としのへぬれは,
いけりともなし[寛],
" "#[番号]12/3108","#[題詞](問答歌)","#[原文]空蝉之 人目繁者 夜干玉之 夜夢乎 次而所見欲","#[訓読]うつせみの人目繁くはぬばたまの夜の夢にを継ぎて見えこそ","#[仮名],うつせみの,ひとめしげくは,ぬばたまの,よるのいめにを,つぎてみえこそ","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],枕詞,人目,うわさ,恋情","#[訓異]
うつせみの[寛],
ひとめしげくは,[寛]ひとめしけくは,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よるのいめにを,[寛]よるのゆめにを,
つぎてみえこそ,[寛]つきてみまなし,
" "#[番号]12/3109","#[題詞](問答歌)","#[原文]慇懃 憶吾妹乎 人言之 繁尓因而 不通比日可聞","#[訓読]ねもころに思ふ我妹を人言の繁きによりて淀むころかも","#[仮名],ねもころに,おもふわぎもを,ひとごとの,しげきによりて,よどむころかも","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],人目,うわさ,恋情","#[訓異]
ねもころに[寛],
おもふわぎもを,[寛]おもふわきもを,
ひとごとの,[寛]ひとことの,
しげきによりて,[寛]しけきによりて,
よどむころかも,[寛]あはぬころかも,
" "#[番号]12/3110","#[題詞](問答歌)","#[原文]人言之 繁思有者 君毛吾毛 将絶常云而 相之物鴨","#[訓読]人言の繁くしあらば君も我れも絶えむと言ひて逢ひしものかも","#[仮名],ひとごとの,しげくしあらば,きみもあれも,たえむといひて,あひしものかも","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],人目,うわさ,恋情","#[訓異]
ひとごとの,[寛]ひとことの,
しげくしあらば,[寛]しけくしあれは,
きみもあれも,[寛]きみもわれも,
たえむといひて[寛],
あひしものかも[寛],
" "#[番号]12/3111","#[題詞](問答歌)","#[原文]為便毛無 片戀乎為登 比日尓 吾可死者 夢所見哉","#[訓読]すべもなき片恋をすとこの頃に我が死ぬべきは夢に見えきや","#[仮名],すべもなき,かたこひをすと,このころに,わがしぬべきは,いめにみえきや","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
すべもなき,[寛]すへもなく,
かたこひをすと[寛],
このころに[寛],
わがしぬべきは,[寛]わかしぬへきは,
いめにみえきや,[寛]ゆめにみえきや,
" "#[番号]12/3112","#[題詞](問答歌)","#[原文]夢見而 衣乎取服 装束間尓 妹之使曽 先尓来","#[訓読]夢に見て衣を取り着装ふ間に妹が使ぞ先立ちにける","#[仮名],いめにみて,ころもをとりき,よそふまに,いもがつかひぞ,さきだちにける","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
いめにみて,[寛]ゆめにみて,
ころもをとりき[寛],
よそふまに[寛],
いもがつかひぞ,[寛]いもかつかひそ,
さきだちにける,[寛]さきたちにける,
" "#[番号]12/3113","#[題詞](問答歌)","#[原文]在有而 後毛将相登 言耳乎 堅要管 相者無尓","#[訓読]ありありて後も逢はむと言のみを堅く言ひつつ逢ふとはなしに","#[仮名],ありありて,のちもあはむと,ことのみを,かたくいひつつ,あふとはなしに","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],怨恨,恋情","#[訓異]
ありありて[寛],
のちもあはむと[寛],
ことのみを,[寛]いふのみを,
かたくいひつつ,[寛]かたみにしつつ,
あふとはなしに[寛],
" "#[番号]12/3114","#[題詞](問答歌)","#[原文]極而 吾毛相登 思友 人之言社 繁君尓有","#[訓読]きはまりて我れも逢はむと思へども人の言こそ繁き君にあれ","#[仮名],きはまりて,われもあはむと,おもへども,ひとのことこそ,しげききみにあれ","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],恋情,うわさ,女歌","#[訓異]
きはまりて[寛],
われもあはむと[寛],
おもへども,[寛]おもへとも,
ひとのことこそ[寛],
しげききみにあれ,[寛]しけききみにあれ,
" "#[番号]12/3115","#[題詞](問答歌)","#[原文]氣緒尓 言氣築之 妹尚乎 人妻有跡 聞者悲毛","#[訓読]息の緒に我が息づきし妹すらを人妻なりと聞けば悲しも","#[仮名],いきのをに,わがいきづきし,いもすらを,ひとづまなりと,きけばかなしも","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
いきのをに[寛],
わがいきづきし,[寛]わかいきつきし,
いもすらを[寛],
ひとづまなりと,[寛]ひとつまありと,
きけばかなしも,[寛]きけはかなしも,
" "#[番号]12/3116","#[題詞](問答歌)","#[原文]我故尓 痛勿和備曽 後遂 不相登要之 言毛不有尓","#[訓読]我がゆゑにいたくなわびそ後つひに逢はじと言ひしこともあらなくに","#[仮名],わがゆゑに,いたくなわびそ,のちつひに,あはじといひし,こともあらなくに","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],恋愛,慰め,女歌","#[訓異]
わがゆゑに,[寛]われゆへに,
いたくなわびそ,[寛]いたくなわひそ,
のちつひに,[寛]のちつゐに,
あはじといひし,[寛]あはしといひし,
こともあらなくに[寛],
" "#[番号]12/3117","#[題詞](問答歌)","#[原文]門立而 戸毛閇而有乎 何處従鹿 妹之入来而 夢所見鶴","#[訓読]門立てて戸も閉したるをいづくゆか妹が入り来て夢に見えつる","#[仮名],かどたてて,ともさしてあるを,いづくゆか,いもがいりきて,いめにみえつる","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],恋情","#[訓異]
かどたてて,[寛]かとたてて,
ともさしてあるを,[寛]ともとちてあるを,
いづくゆか,[寛]いつくゆか,
いもがいりきて,[寛]いもかいりきて,
いめにみえつる,[寛]ゆめにみえつる,
" "#[番号]12/3118","#[題詞](問答歌)","#[原文]門立而 戸者雖闔 盗人之 穿穴従 入而所見牟","#[訓読]門立てて戸は閉したれど盗人の穿れる穴より入りて見えけむ","#[仮名],かどたてて,とはさしたれど,ぬすびとの,ほれるあなより,いりてみえけむ","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
かどたてて,[寛]かとたてて,
とはさしたれど,[寛]とはさしたれと,
ぬすびとの,[寛]ぬすひとの,
ほれるあなより,[寛]ゑれるあなより,
いりてみえけむ[寛],
" "#[番号]12/3119","#[題詞](問答歌)","#[原文]従明日者 戀乍将<去> 今夕弾 速初夜従 綏解我妹","#[訓読]明日よりは恋ひつつ行かむ今夜だに早く宵より紐解け我妹","#[仮名],あすよりは,こひつつゆかむ,こよひだに,はやくよひより,ひもとけわぎも","#[左注](右二首)","#[校異]在 -> 去 [元]","#[事項],恋情","#[訓異]
あすよりは[寛],
こひつつゆかむ,[寛]こひつつあらむ,
こよひだに,[寛]こよひたに,
はやくよひより,[寛]はやくよひより,
ひもとけわぎも,[寛]ひもとけわきも,
" "#[番号]12/3120","#[題詞](問答歌)","#[原文]今更 将寐哉我背子 荒田<夜>之 全夜毛不落 夢所見欲","#[訓読]今さらに寝めや我が背子新夜の一夜もおちず夢に見えこそ","#[仮名],いまさらに,ねめやわがせこ,あらたよの,ひとよもおちず,いめにみえこそ","#[左注]右二首","#[校異]寐 -> 夜 [元]","#[事項],恋情,女歌","#[訓異]
いまさらに[寛],
ねめやわがせこ,[寛]ねむやわかせこ,
あらたよの,[寛]あらたまの,
ひとよもおちず,[寛]またよもおちす,
いめにみえこそ,[寛]ゆめにみまほし,
" "#[番号]12/3121","#[題詞](問答歌)","#[原文]吾<勢>子之 使乎待跡 笠不著 出乍曽見之 雨零尓","#[訓読]我が背子が使を待つと笠も着ず出でつつぞ見し雨の降らくに","#[仮名],わがせこが,つかひをまつと,かさもきず,いでつつぞみし,あめのふらくに","#[左注](右二首)","#[校異]背 -> 勢 [元][紀][細]","#[事項],女歌,恋情","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
つかひをまつと[寛],
かさもきず,[寛]かさもきて,
いでつつぞみし,[寛]いてつつそみし,
あめのふらくに[寛],
" "#[番号]12/3122","#[題詞](問答歌)","#[原文]無心 雨尓毛有鹿 人目守 乏妹尓 今日谷相<乎>","#[訓読]心なき雨にもあるか人目守り乏しき妹に今日だに逢はむを","#[仮名],こころなき,あめにもあるか,ひとめもり,ともしきいもに,けふだにあはむを","#[左注]右二首","#[校異]牟 -> 乎 [元][紀][温]","#[事項],人目,うわさ,恋情","#[訓異]
こころなき[寛],
あめにもあるか[寛],
ひとめもり,[寛]ひとめもる,
ともしきいもに[寛],
けふだにあはむを,[寛]けふたにあはむを,
" "#[番号]12/3123","#[題詞](問答歌)","#[原文]直獨 宿杼宿不得而 白細 袖乎笠尓著 沾乍曽来","#[訓読]ただひとり寝れど寝かねて白栲の袖を笠に着濡れつつぞ来し","#[仮名],ただひとり,ぬれどねかねて,しろたへの,そでをかさにき,ぬれつつぞこし","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情,難渋","#[訓異]
ただひとり,[寛]たたひとり,
ぬれどねかねて,[寛]ぬれとねかねて,
しろたへの[寛],
そでをかさにき,[寛]そてをかさにき,
ぬれつつぞこし,[寛]ぬれつつそくる,
" "#[番号]12/3124","#[題詞](問答歌)","#[原文]雨毛零 夜毛更深利 今更 君将行哉 紐解設<名>","#[訓読]雨も降り夜も更けにけり今さらに君去なめやも紐解き設けな","#[仮名],あめもふり,よもふけにけり,いまさらに,きみいなめやも,ひもときまけな","#[左注]右二首","#[校異]名 [西(上書訂正)][元][類][紀]","#[事項],女歌,恋情","#[訓異]
あめもふり,[寛]あめもふる,
よもふけにけり[寛],
いまさらに[寛],
きみいなめやも,[寛]きみはゆかめや,
ひもときまけな[寛],
" "#[番号]12/3125","#[題詞](問答歌)","#[原文]久堅乃 雨零日乎 我門尓 蓑笠不蒙而 来有人哉誰","#[訓読]ひさかたの雨の降る日を我が門に蓑笠着ずて来る人や誰れ","#[仮名],ひさかたの,あめのふるひを,わがかどに,みのかさきずて,けるひとやたれ","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],枕詞,恋愛,女歌","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あめのふるひを[寛],
わがかどに,[寛]わかかとに,
みのかさきずて,[寛]みのかさきすて,
けるひとやたれ,[寛]くるひとやたれ,
" "#[番号]12/3126","#[題詞](問答歌)","#[原文]纒向之 病足乃山尓 雲居乍 雨者雖零 所<沾>乍<焉>来","#[訓読]巻向の穴師の山に雲居つつ雨は降れども濡れつつぞ来し","#[仮名],まきむくの,あなしのやまに,くもゐつつ,あめはふれども,ぬれつつぞこし","#[左注]右二首","#[校異]沽 -> 沾 [細][京] / 為 -> 焉 [元][類][紀][温]","#[事項],地名,桜井,奈良,難渋,恋愛","#[訓異]
まきむくの,[寛]まきもくの,
あなしのやまに[寛],
くもゐつつ[寛],
あめはふれども,[寛]あめはふれとも,
ぬれつつぞこし,[寛]ぬれつつそくる,
" "#[番号]12/3127","#[題詞]羇旅發思","#[原文]度會 大川邊 若歴木 吾久在者 妹戀鴨","#[訓読]度会の大川の辺の若久木我が久ならば妹恋ひむかも","#[仮名],わたらひの,おほかはのへの,わかひさぎ,わがひさならば,いもこひむかも","#[左注](右四首柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,地名,三重県,伊勢,植物,序詞,恋愛,羈旅","#[訓異]
わたらひの[寛],
おほかはのへの[寛],
わかひさぎ,[寛]わかくぬき,
わがひさならば,[寛]われひさにあらは,
いもこひむかも[寛],
" "#[番号]12/3128","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]吾妹子 夢見来 倭路 度瀬別 手向吾為","#[訓読]我妹子を夢に見え来と大和道の渡り瀬ごとに手向けぞ我がする","#[仮名],わぎもこを,いめにみえこと,やまとぢの,わたりぜごとに,たむけぞわがする","#[左注](右四首柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,奈良,恋情,羈旅","#[訓異]
わぎもこを,[寛]わきもこを,
いめにみえこと,[寛]ゆめにみえこと,
やまとぢの,[寛]やまとちの,
わたりぜごとに,[寛]わたるせことに,
たむけぞわがする,[寛]たむけわれする,
" "#[番号]12/3129","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]櫻花 開哉散 <及>見 誰此 所見散行","#[訓読]桜花咲きかも散ると見るまでに誰れかもここに見えて散り行く","#[仮名],さくらばな,さきかもちると,みるまでに,たれかもここに,みえてちりゆく","#[左注](右四首柿本朝臣人麻呂歌集出)","#[校異]乃 -> 及 [元][紀][細]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,植物,恋情,羈旅","#[訓異]
さくらばな,[寛]さくらはな,
さきかもちると,[寛]さきてやちると,
みるまでに,[寛]みるまてに,
たれかもここに,[寛]たれかここにて,
みえてちりゆく,[寛]ちりゆくをみむ,
" "#[番号]12/3130","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]豊洲 聞濱松 心<哀> 何妹 相云始","#[訓読]豊国の企救の浜松ねもころに何しか妹に相言ひそめけむ","#[仮名],とよくにの,きくのはままつ,ねもころに,なにしかいもに,あひいひそめけむ","#[左注]右四首柿本朝臣人麻呂歌集出","#[校異]裳 -> 哀 [元][類]","#[事項],作者:柿本人麻呂歌集,略体,福岡,北九州市,地名,序詞,恋情,羈旅","#[訓異]
とよくにの[寛],
きくのはままつ[寛],
ねもころに,[寛]こころにも,
なにしかいもに,[寛]なにとていもか,
あひいひそめけむ,[寛]あひしそめけむ,
" "#[番号]12/3131","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]月易而 君乎婆見登 念鴨 日毛不易為而 戀之重","#[訓読]月変へて君をば見むと思へかも日も変へずして恋の繁けむ","#[仮名],つきかへて,きみをばみむと,おもへかも,ひもかへずして,こひのしげけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,羈旅","#[訓異]
つきかへて[寛],
きみをばみむと,[寛]きみをはみむと,
おもへかも,[寛]おもかも,
ひもかへずして,[寛]ひもかへすして,
こひのしげけむ,[寛]こひのしけけき,
" "#[番号]12/3132","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]莫去跡 變毛来哉常 顧尓 雖徃不歸 道之長手矣","#[訓読]な行きそと帰りも来やとかへり見に行けど帰らず道の長手を","#[仮名],なゆきそと,かへりもくやと,かへりみに,ゆけどかへらず,みちのながてを","#[左注]","#[校異]歸 [元] 満","#[事項],恋情,羈旅","#[訓異]
なゆきそと[寛],
かへりもくやと[寛],
かへりみに[寛],
ゆけどかへらず,[寛]ゆけとかへらす,
みちのながてを,[寛]みちのなかてを,
" "#[番号]12/3133","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]去家而 妹乎念出 灼然 人之應知 <歎>将為鴨","#[訓読]旅にして妹を思ひ出でいちしろく人の知るべく嘆きせむかも","#[仮名],たびにして,いもをおもひいで,いちしろく,ひとのしるべく,なげきせむかも","#[左注]","#[校異]欲 -> 歎 [西(訂正右書)][元][紀][温]","#[事項],羈旅,恋情,望郷","#[訓異]
たびにして,[寛]たひにして,
いもをおもひいで,[寛]いもをおもひいて,
いちしろく[寛],
ひとのしるべく,[寛]ひとのしるへく,
なげきせむかも,[寛]なけきせむかも,
" "#[番号]12/3134","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]里離 遠有莫國 草枕 旅登之思者 尚戀来","#[訓読]里離り遠くあらなくに草枕旅とし思へばなほ恋ひにけり","#[仮名],さとさかり,とほくあらなくに,くさまくら,たびとしおもへば,なほこひにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,恋情,望郷","#[訓異]
さとさかり,[寛]さとはなれ,
とほくあらなくに,[寛]とほからなくに,
くさまくら[寛],
たびとしおもへば,[寛]たひとしおもへは,
なほこひにけり,[寛]なをこひにけり,
" "#[番号]12/3135","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]近有者 名耳毛聞而 名種目津 今夜従戀乃 益々南","#[訓読]近くあれば名のみも聞きて慰めつ今夜ゆ恋のいやまさりなむ","#[仮名],ちかくあれば,なのみもききて,なぐさめつ,こよひゆこひの,いやまさりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,恋情,望郷,うわさ","#[訓異]
ちかくあれば,[寛]ちかけれは,
なのみもききて[寛],
なぐさめつ,[寛]なくさめつ,
こよひゆこひの,[寛]こよひそこひの,
いやまさりなむ[寛],
" "#[番号]12/3136","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]客在而 戀者辛苦 何時毛 京行而 君之目乎将見","#[訓読]旅にありて恋ふれば苦しいつしかも都に行きて君が目を見む","#[仮名],たびにありて,こふればくるし,いつしかも,みやこにゆきて,きみがめをみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,恋情,望郷","#[訓異]
たびにありて,[寛]たひにありて,
こふればくるし,[寛]こふれはくるし,
いつしかも[寛],
みやこにゆきて[寛],
きみがめをみむ,[寛]きみかめをみむ,
" "#[番号]12/3137","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]遠有者 光儀者不所見 如常 妹之咲者 面影為而","#[訓読]遠くあれば姿は見えず常のごと妹が笑まひは面影にして","#[仮名],とほくあれば,すがたはみえず,つねのごと,いもがゑまひは,おもかげにして","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,望郷,恋情","#[訓異]
とほくあれば,[寛]とほなれは,
すがたはみえず,[寛]すかたはみえす,
つねのごと,[寛]つねのこと,
いもがゑまひは,[寛]いもかゑまひは,
おもかげにして,[寛]おもかけにして,
" "#[番号]12/3138","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]年毛不歴 反来甞跡 朝影尓 将待妹之 面影所見","#[訓読]年も経ず帰り来なむと朝影に待つらむ妹し面影に見ゆ","#[仮名],としもへず,かへりこなむと,あさかげに,まつらむいもし,おもかげにみゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,恋情,望郷","#[訓異]
としもへず,[寛]としもへす,
かへりこなむと,[寛]かへりきなめと,
あさかげに,[寛]あさかけに,
まつらむいもし,[寛]まつらむいもか,
おもかげにみゆ,[寛]おもかけにみけむ,
" "#[番号]12/3139","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]玉桙之 道尓出立 別来之 日従于念 忘時無","#[訓読]玉桙の道に出で立ち別れ来し日より思ふに忘る時なし","#[仮名],たまほこの,みちにいでたち,わかれこし,ひよりおもふに,わするときなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,羈旅,恋情,望郷","#[訓異]
たまほこの[寛],
みちにいでたち,[寛]みちにいてたち,
わかれこし[寛],
ひよりおもふに[寛],
わするときなし,[寛]わするるときなし,
" "#[番号]12/3140","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]波之寸八師 志賀在戀尓毛 有之鴨 君所遺而 戀敷念者","#[訓読]はしきやししかある恋にもありしかも君に後れて恋しき思へば","#[仮名],はしきやし,しかあるこひに,ありしかも,きみにおくれて,こほしきおもへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,望郷,恋情,女歌,遊行女婦","#[訓異]
はしきやし[寛],
しかあるこひに,[寛]しかあるこひにも,
ありしかも[寛],
きみにおくれて[寛],
こほしきおもへば,[寛]こひしきおもへは,
" "#[番号]12/3141","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]草枕 客之悲 有苗尓 妹乎相見而 後将戀可聞","#[訓読]草枕旅の悲しくあるなへに妹を相見て後恋ひむかも","#[仮名],くさまくら,たびのかなしく,あるなへに,いもをあひみて,のちこひむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,枕詞,恋情,遊行女婦","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびのかなしく,[寛]たひのかなしく,
あるなへに[寛],
いもをあひみて[寛],
のちこひむかも[寛],
" "#[番号]12/3142","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]國遠 直不相 夢谷 吾尓所見社 相日左右二","#[訓読]国遠み直には逢はず夢にだに我れに見えこそ逢はむ日までに","#[仮名],くにとほみ,ただにはあはず,いめにだに,われにみえこそ,あはむひまでに","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,望郷,恋情","#[訓異]
くにとほみ[寛],
ただにはあはず,[寛]たたにはあはす,
いめにだに,[寛]ゆめにたに,
われにみえこそ[寛],
あはむひまでに,[寛]あはむひまてに,
" "#[番号]12/3143","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]如是将戀 物跡知者 吾妹兒尓 言問麻思乎 今之悔毛","#[訓読]かく恋ひむものと知りせば我妹子に言問はましを今し悔しも","#[仮名],かくこひむ,ものとしりせば,わぎもこに,こととはましを,いましくやしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,羈旅,望郷","#[訓異]
かくこひむ[寛],
ものとしりせば,[寛]ものとしりせは,
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こととはましを[寛],
いましくやしも[寛],
" "#[番号]12/3144","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]客夜之 久成者 左丹頬合 紐開不離 戀流比日","#[訓読]旅の夜の久しくなればさ丹つらふ紐解き放けず恋ふるこのころ","#[仮名],たびのよの,ひさしくなれば,さにつらふ,ひもときさけず,こふるこのころ","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,枕詞,恋情,望郷","#[訓異]
たびのよの,[寛]たひのよの,
ひさしくなれば,[寛]ひさしくなれは,
さにつらふ[寛],
ひもときさけず,[寛]ひもときさけす,
こふるこのころ[寛],
" "#[番号]12/3145","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]吾妹兒之 阿<乎>偲良志 草枕 旅之丸寐尓 下紐解","#[訓読]我妹子し我を偲ふらし草枕旅のまろ寝に下紐解けぬ","#[仮名],わぎもこし,あをしのふらし,くさまくら,たびのまろねに,したびもとけぬ","#[左注]","#[校異]手 -> 乎 [西(訂正右書)][元][類][紀]","#[事項],枕詞,恋情,望郷,羈旅","#[訓異]
わぎもこし,[寛]わきもこか,
あをしのふらし[寛],
くさまくら[寛],
たびのまろねに,[寛]たひのまろねに,
したびもとけぬ,[寛]したひもとけぬ,
" "#[番号]12/3146","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]草枕 旅之衣 紐解 所念鴨 此年比者","#[訓読]草枕旅の衣の紐解けて思ほゆるかもこの年ころは","#[仮名],くさまくら,たびのころもの,ひもとけて,おもほゆるかも,このとしころは","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,恋情,望郷,羈旅","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびのころもの,[寛]たひのころもの,
ひもとけて[寛],
おもほゆるかも[寛],
このとしころは,[寛]このとしこひは,
" "#[番号]12/3147","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]草枕 客之紐解 家之妹志 吾乎待不得而 歎良霜","#[訓読]草枕旅の紐解く家の妹し我を待ちかねて嘆かふらしも","#[仮名],くさまくら,たびのひもとく,いへのいもし,わをまちかねて,なげかふらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,枕詞,望郷,恋情","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびのひもとく,[寛]たひのひもとく,
いへのいもし[寛],
わをまちかねて[寛],
なげかふらしも,[寛]なけきすらしも,
" "#[番号]12/3148","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]玉釼 巻寝志妹乎 月毛不經 置而八将越 此山岫","#[訓読]玉釧まき寝し妹を月も経ず置きてや越えむこの山の崎","#[仮名],たまくしろ,まきねしいもを,つきもへず,おきてやこえむ,このやまのさき","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,羈旅,恋情,望郷,臨場表現","#[訓異]
たまくしろ,[寛]たまつるき,
まきねしいもを[寛],
つきもへず,[寛]よもつかす,
おきてやこえむ[寛],
このやまのさき,[寛]このやまのくき,
" "#[番号]12/3149","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]梓弓 末者不知杼 愛美 君尓副而 山道越来奴","#[訓読]梓弓末は知らねど愛しみ君にたぐひて山道越え来ぬ","#[仮名],あづさゆみ,すゑはしらねど,うるはしみ,きみにたぐひて,やまぢこえきぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,羈旅,女歌,遊行女婦","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
すゑはしらねど,[寛]すゑはしらねと,
うるはしみ,[寛]うつくしみ,
きみにたぐひて,[寛]きみにたくひて,
やまぢこえきぬ,[寛]やまちこえきぬ,
" "#[番号]12/3150","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]霞立 春長日乎 奥香無 不知山道乎 戀乍可将来","#[訓読]霞立つ春の長日を奥処なく知らぬ山道を恋ひつつか来む","#[仮名],かすみたつ,はるのながひを,おくかなく,しらぬやまぢを,こひつつかこむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,恋情","#[訓異]
かすみたつ[寛],
はるのながひを,[寛]はるのなかひを,
おくかなく[寛],
しらぬやまぢを,[寛]しらぬやまちを,
こひつつかこむ[寛],
" "#[番号]12/3151","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]外耳 君乎相見而 木綿牒 手向乃山乎 明日香越将去","#[訓読]外のみに君を相見て木綿畳手向けの山を明日か越え去なむ","#[仮名],よそのみに,きみをあひみて,ゆふたたみ,たむけのやまを,あすかこえいなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,羈旅,遊行女婦,恋情","#[訓異]
よそのみに,[寛]よそにのみ,
きみをあひみて[寛],
ゆふたたみ[寛],
たむけのやまを[寛],
あすかこえいなむ,[寛]あすかこえなむ,
" "#[番号]12/3152","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]玉勝間 安倍嶋山之 暮露尓 旅宿得為也 長此夜乎","#[訓読]玉かつま安倍島山の夕露に旅寝えせめや長きこの夜を","#[仮名],たまかつま,あへしまやまの,ゆふつゆに,たびねえせめや,ながきこのよを","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,地名,孤独,羈旅","#[訓異]
たまかつま[寛],
あへしまやまの[寛],
ゆふつゆに[寛],
たびねえせめや,[寛]たひねはえすや,
ながきこのよを,[寛]なかきこのよを,
" "#[番号]12/3153","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]三雪零 越乃大山 行過而 何日可 我里乎将見","#[訓読]み雪降る越の大山行き過ぎていづれの日にか我が里を見む","#[仮名],みゆきふる,こしのおほやま,ゆきすぎて,いづれのひにか,わがさとをみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,北陸,石川,富山,恋情,望郷,羈旅","#[訓異]
みゆきふる[寛],
こしのおほやま[寛],
ゆきすぎて,[寛]ゆきすきて,
いづれのひにか,[寛]いつれのひにか,
わがさとをみむ,[寛]わかさとをみむ,
" "#[番号]12/3154","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]乞吾駒 早去欲 亦打山 将待妹乎 去而速見牟","#[訓読]いで我が駒早く行きこそ真土山待つらむ妹を行きて早見む","#[仮名],いであがこま,はやくゆきこそ,まつちやま,まつらむいもを,ゆきてはやみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,和歌山,望郷,羈旅,恋情","#[訓異]
いであがこま,[寛]いてあかこま,
はやくゆきこそ,[寛]はやくゆかむよ,
まつちやま[寛],
まつらむいもを[寛],
ゆきてはやみむ[寛],
" "#[番号]12/3155","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]悪木山 木<末>悉 明日従者 靡有社 妹之當将見","#[訓読]悪木山木末ことごと明日よりは靡きてありこそ妹があたり見む","#[仮名],あしきやま,こぬれことごと,あすよりは,なびきてありこそ,いもがあたりみむ","#[左注]","#[校異]未 -> 末 [元][類][古][紀]","#[事項],地名,福岡県,恋情,望郷,羈旅","#[訓異]
あしきやま[寛],
こぬれことごと,[寛]こすゑこそりて,
あすよりは[寛],
なびきてありこそ,[寛]なひきたるこそ,
いもがあたりみむ,[寛]いもかあたりみむ,
" "#[番号]12/3156","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]鈴鹿河 八十瀬渡而 誰故加 夜越尓将越 妻毛不在君","#[訓読]鈴鹿川八十瀬渡りて誰がゆゑか夜越えに越えむ妻もあらなくに","#[仮名],すずかがは,やそせわたりて,たがゆゑか,よごえにこえむ,つまもあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,三重県,羈旅,恋愛","#[訓異]
すずかがは,[寛]すすかかは,
やそせわたりて[寛],
たがゆゑか,[寛]たれゆへか,
よごえにこえむ,[寛]よこゑにこえむ,
つまもあらなくに[寛],
" "#[番号]12/3157","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]吾妹兒尓 又毛相海之 安河 安寐毛不宿尓 戀度鴨","#[訓読]我妹子にまたも近江の安の川安寐も寝ずに恋ひわたるかも","#[仮名],わぎもこに,またもあふみの,やすのかは,やすいもねずに,こひわたるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,滋賀,序詞,恋情,望郷","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
またもあふみの[寛],
やすのかは,[寛]やすかはの,
やすいもねずに,[寛]やすいもねすに,
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]12/3158","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]客尓有而 物乎曽念 白浪乃 邊毛奥毛 依者無尓","#[訓読]旅にありてものをぞ思ふ白波の辺にも沖にも寄るとはなしに","#[仮名],たびにありて,ものをぞおもふ,しらなみの,へにもおきにも,よるとはなしに","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,遊行女婦,鬱屈,恋情","#[訓異]
たびにありて,[寛]たひにありて,
ものをぞおもふ,[寛]ものをそおもふ,
しらなみの[寛],
へにもおきにも[寛],
よるとはなしに[寛],
" "#[番号]12/3159","#[題詞](羇旅發思)","#[本文]<湖>轉尓 満来塩能 弥益二 戀者雖剰 不所忘鴨","#[訓読]港廻に満ち来る潮のいや増しに恋はまされど忘らえぬかも","#[仮名],みなとみに,みちくるしほの,いやましに,こひはまされど,わすらえぬかも","#[左注]","#[校異]潮 ->湖 [元][古][紀]","#[事項],羈旅,遊行女婦,序詞,恋情","#[訓異]
みなとみに,[寛]みなとわに,
みちくるしほの[寛],
いやましに[寛],
こひはまされど,[寛]こひはまされと,
わすらえぬかも,[寛]わすられぬかも,
" "#[番号]12/3160","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]奥浪 邊浪之来依 貞浦乃 此左太過而 後将戀鴨","#[訓読]沖つ波辺波の来寄る佐太の浦のこのさだ過ぎて後恋ひむかも","#[仮名],おきつなみ,へなみのきよる,さだのうらの,このさだすぎて,のちこひむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,序詞,遊行女婦,恋情,羈旅","#[訓異]
おきつなみ[寛],
へなみのきよる[寛],
さだのうらの,[寛]さたのうらの,
このさだすぎて,[寛]このさたすきて,
のちこひむかも[寛],
" "#[番号]12/3161","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]在千方 在名草目而 行目友 家有妹伊 将欝悒","#[訓読]在千潟あり慰めて行かめども家なる妹いいふかしみせむ","#[仮名],ありちがた,ありなぐさめて,ゆかめども,いへなるいもい,いふかしみせむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,枕詞,羈旅,遊行女婦","#[訓異]
ありちがた,[寛]ありちかた,
ありなぐさめて,[寛]ありなくさめて,
ゆかめども,[寛]ゆかめとも,
いへなるいもい,[寛]いへなるいもや,
いふかしみせむ[寛],
" "#[番号]12/3162","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]水咫衝石 心盡而 念鴨 此間毛本名 夢西所見","#[訓読]みをつくし心尽して思へかもここにももとな夢にし見ゆる","#[仮名],みをつくし,こころつくして,おもへかも,ここにももとな,いめにしみゆる","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,羈旅,恋情,望郷","#[訓異]
みをつくし[寛],
こころつくして[寛],
おもへかも,[寛]おもかも,
ここにももとな,[寛]このまももとな,
いめにしみゆる,[寛]ゆめにしみゆる,
" "#[番号]12/3163","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]吾妹兒尓 觸者無二 荒礒廻尓 吾衣手者 所<沾>可母","#[訓読]我妹子に触るとはなしに荒礒廻に我が衣手は濡れにけるかも","#[仮名],わぎもこに,ふるとはなしに,ありそみに,わがころもでは,ぬれにけるかも","#[左注]","#[校異]沽 -> 沾 [京]","#[事項],羈旅,恋情,望郷","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
ふるとはなしに[寛],
ありそみに,[寛]あらそわに,
わがころもでは,[寛]わかころもては,
ぬれにけるかも[寛],
" "#[番号]12/3164","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]室之浦之 湍戸之埼有 鳴嶋之 礒越浪尓 所<沾>可聞","#[訓読]室の浦の瀬戸の崎なる鳴島の磯越す波に濡れにけるかも","#[仮名],むろのうらの,せとのさきなる,なきしまの,いそこすなみに,ぬれにけるかも","#[左注]","#[校異]沽 -> 沾 [京]","#[事項],地名,室津,兵庫県,御津町,金ヶ崎,君島,望郷,恋情,掛詞,羈旅","#[訓異]
むろのうらの[寛],
せとのさきなる[寛],
なきしまの[寛],
いそこすなみに[寛],
ぬれにけるかも[寛],

" "#[番号]12/3165","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]霍公鳥 飛幡之浦尓 敷浪乃 屡君乎 将見因毛鴨","#[訓読]霍公鳥飛幡の浦にしく波のしくしく君を見むよしもがも","#[仮名],ほととぎす,とばたのうらに,しくなみの,しくしくきみを,みむよしもがも","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,枕詞,地名,福岡県,北九州市,戸畑,序詞,恋情,望郷,羈旅","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
とばたのうらに,[寛]とはたのうらに,
しくなみの,[寛]しきなみの,
しくしくきみを,[寛]しはしはきみを,
みむよしもがも,[寛]みむよしもかも,
" "#[番号]12/3166","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]吾妹兒乎 外耳哉将見 越懈乃 子難<懈>乃 嶋楢名君","#[訓読]我妹子を外のみや見む越の海の子難の海の島ならなくに","#[仮名],わぎもこを,よそのみやみむ,こしのうみの,こがたのうみの,しまならなくに","#[左注]","#[校異]懈 [西(上書訂正)][元][紀][温]","#[事項],地名,北陸,石川,富山,恋情,羈旅,遊行女婦","#[訓異]
わぎもこを,[寛]わきもこを,
よそのみやみむ[寛],
こしのうみの,[寛]おちのうみの,
こがたのうみの,[寛]こかたのうみの,
しまならなくに[寛],
" "#[番号]12/3167","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]浪間従 雲位尓所見 粟嶋之 不相物故 吾尓所依兒等","#[訓読]波の間ゆ雲居に見ゆる粟島の逢はぬものゆゑ我に寄そる子ら","#[仮名],なみのまゆ,くもゐにみゆる,あはしまの,あはぬものゆゑ,わによそるこら","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,地名,序詞,うわさ,恋愛","#[訓異]
なみのまゆ,[寛]なみまより,
くもゐにみゆる[寛],
あはしまの[寛],
あはぬものゆゑ,[寛]あはぬものゆへ,
わによそるこら,[寛]われによるこら,
" "#[番号]12/3168","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]衣袖之 真若之浦之 愛子地 間無時無 吾戀钁","#[訓読]衣手の真若の浦の真砂地間なく時なし我が恋ふらくは","#[仮名],ころもでの,まわかのうらの,まなごつち,まなくときなし,あがこふらくは","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,地名,和歌の浦,和歌山,序詞,恋情,望郷,羈旅","#[訓異]
ころもでの,[寛]ころもての,
まわかのうらの[寛],
まなごつち,[寛]まなこちの,
まなくときなし,[寛]まなしときなし,
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
" "#[番号]12/3169","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]能登海尓 釣為海部之 射去火之 光尓伊徃 月待香光","#[訓読]能登の海に釣する海人の漁り火の光りにいませ月待ちがてり","#[仮名],のとのうみに,つりするあまの,いざりひの,ひかりにいませ,つきまちがてり","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,地名,能登,石川,遊行女婦,誘い歌","#[訓異]
のとのうみに[寛],
つりするあまの[寛],
いざりひの[寛],
ひかりにいませ[寛],
つきまちがてり,[寛]つきまちかてら,
" "#[番号]12/3170","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]思香乃白水郎乃 <釣>為燭有 射去火之 髣髴妹乎 将見因毛欲得","#[訓読]志賀の海人の釣りし燭せる漁り火のほのかに妹を見むよしもがも","#[仮名],しかのあまの,つりしともせる,いざりひの,ほのかにいもを,みむよしもがも","#[左注]","#[校異]鉤 -> 釣 [元][紀][温][京]","#[事項],地名,福岡,序詞,恋情,望郷,羈旅","#[訓異]
しかのあまの[寛],
つりしともせる,[寛]つりにともせる,
いざりひの,[寛]いさりひの,
ほのかにいもを[寛],
みむよしもがも,[寛]みるよしもかな,
" "#[番号]12/3171","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]難波方 水手出船之 遥々 別来礼杼 忘金津毛","#[訓読]難波潟漕ぎ出る舟のはろはろに別れ来ぬれど忘れかねつも","#[仮名],なにはがた,こぎづるふねの,はろはろに,わかれきぬれど,わすれかねつも","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,大阪,序詞,恋情,望郷","#[訓異]
なにはがた,[寛]なにはかた,
こぎづるふねの,[寛]こきいつるふねの,
はろはろに,[寛]はるはると,
わかれきぬれど,[寛]わかれてくれと,
わすれかねつも[寛],
" "#[番号]12/3172","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]浦廻榜 <熊>野舟附 目頬志久 懸不思 月毛日毛無","#[訓読]浦廻漕ぐ熊野舟つきめづらしく懸けて思はぬ月も日もなし","#[仮名],うらみこぐ,くまのぶねつき,めづらしく,かけておもはぬ,つきもひもなし","#[左注]","#[校異]能 -> 熊 [代匠記初校本]","#[事項],序詞,羈旅,恋情,望郷","#[訓異]
うらみこぐ,[寛]うらわこく,
くまのぶねつき,[寛]よしのふなつき,
めづらしく,[寛][寛]めつらしく,
かけておもはぬ[寛],
つきもひもなし[寛],
" "#[番号]12/3173","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]松浦舟 乱穿江之 水尾早 楫取間無 所念鴨","#[訓読]松浦舟騒く堀江の水脈早み楫取る間なく思ほゆるかも","#[仮名],まつらぶね,さわくほりえの,みをはやみ,かぢとるまなく,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,大阪,羈旅,望郷,序詞,恋情","#[訓異]
まつらぶね,[寛]まつらふね,
さわくほりえの,[寛]みたれほりえの,
みをはやみ[寛],
かぢとるまなく,[寛]かちとるまなく,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]12/3174","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]射去為 海部之楫音 湯<按>干 妹心 乗来鴨","#[訓読]漁りする海人の楫音ゆくらかに妹は心に乗りにけるかも","#[仮名],いざりする,あまのかぢおと,ゆくらかに,いもはこころに,のりにけるかも","#[左注]","#[校異]鞍 -> 按 [元][類]","#[事項],序詞,恋情,羈旅,遊行女婦","#[訓異]
いざりする,[寛]いさりする,
あまのかぢおと,[寛]あまのかちおと,
ゆくらかに[寛],
いもはこころに,[寛]いもかこころに,
のりにけるかも[寛],
" "#[番号]12/3175","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]若乃浦尓 袖左倍<沾>而 忘貝 拾杼妹者 不所忘尓","#[訓読]和歌の浦に袖さへ濡れて忘れ貝拾へど妹は忘らえなくに","#[仮名],わかのうらに,そでさへぬれて,わすれがひ,ひりへどいもは,わすらえなくに","#[左注][或本歌末句云 忘可祢都母]","#[校異]若乃 [元][類](塙)(楓) 若 / 沽 -> 沾 [京]","#[事項],地名,和歌山,異伝,恋情,望郷","#[訓異]
わかのうらに[寛],
そでさへぬれて,[寛]そてさへぬれて,
わすれがひ,[寛]わすれかひ,
ひりへどいもは,[寛]ひろへといもは,
わすらえなくに,[寛]わすられなくに,
" "#[番号]12/3175S","#[題詞](羇旅發思)[或本歌末句云]","#[原文][忘可祢都母]","#[訓読][忘れかねつも] ","#[仮名],[わすれかねつも]","#[左注]","#[校異]","#[事項],異伝,羈旅,恋情,望郷","#[訓異]
[わすれかねつも][寛],
" "#[番号]12/3176","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]草枕 羈西居者 苅薦之 擾妹尓 不戀日者無","#[訓読]草枕旅にし居れば刈り薦の乱れて妹に恋ひぬ日はなし","#[仮名],くさまくら,たびにしをれば,かりこもの,みだれていもに,こひぬひはなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,羈旅,恋情,望郷","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびにしをれば,[寛]たひにしふれは,
かりこもの[寛],
みだれていもに,[寛]みたれていもに,
こひぬひはなし[寛],
" "#[番号]12/3177","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]然海部之 礒尓苅干 名告藻之 名者告手師乎 如何相難寸","#[訓読]志賀の海人の礒に刈り干すなのりその名は告りてしを何か逢ひかたき","#[仮名],しかのあまの,いそにかりほす,なのりその,なはのりてしを,なにかあひかたき","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,福岡,植物,序詞,女歌,羈旅,遊行女婦","#[訓異]
しかのあまの[寛],
いそにかりほす[寛],
なのりその,[寛]なのりそか,
なはのりてしを,[寛]なはつけてしを,
なにかあひかたき,[寛]なそあひかたき,
" "#[番号]12/3178","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]國遠見 念勿和備曽 風之共 雲之行如 言者将通","#[訓読]国遠み思ひなわびそ風の共雲の行くごと言は通はむ","#[仮名],くにとほみ,おもひなわびそ,かぜのむた,くものゆくごと,ことはかよはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],羈旅,女歌,旅立ち,恋情","#[訓異]
くにとほみ[寛],
おもひなわびそ,[寛]おもひなわひそ,
かぜのむた,[寛]かせのむた,
くものゆくごと,[寛]くものゆくこと,
ことはかよはむ,[寛]われはかよはむ,
" "#[番号]12/3179","#[題詞](羇旅發思)","#[原文]留西 人乎念尓 蜒野 居白雲 止時無","#[訓読]留まりにし人を思ふに秋津野に居る白雲のやむ時もなし","#[仮名],とまりにし,ひとをおもふに,あきづのに,ゐるしらくもの,やむときもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,地名,和歌山,吉野,奈良,恋情,望郷","#[訓異]
とまりにし[寛],
ひとをおもふに[寛],
あきづのに,[寛]あきつのに,
ゐるしらくもの[寛],
やむときもなし[寛],
" "#[番号]12/3180","#[題詞]悲別歌","#[原文]浦毛無 去之君故 朝旦 本名焉戀 相跡者無杼","#[訓読]うらもなく去にし君ゆゑ朝な朝なもとなぞ恋ふる逢ふとはなけど","#[仮名],うらもなく,いにしきみゆゑ,あさなさな,もとなぞこふる,あふとはなけど","#[左注]","#[校異]","#[事項],恋情,後朝,旅立ち,女歌,別れ","#[訓異]
うらもなく[寛],
いにしきみゆゑ[寛],
あさなさな[寛],
もとなぞこふる,[寛]もとなそこふる,
あふとはなけど,[寛]あふとはなしと,
" "#[番号]12/3181","#[題詞](悲別歌)","#[原文]白細之 君之下紐 吾<左>倍尓 今日結而名 将相日之為","#[訓読]白栲の君が下紐我れさへに今日結びてな逢はむ日のため","#[仮名],しろたへの,きみがしたびも,われさへに,けふむすびてな,あはむひのため","#[左注]","#[校異]佐 -> 左 [元][類]","#[事項],枕詞,女歌,恋情,別れ","#[訓異]
しろたへの[寛],
きみがしたびも,[寛]きみかしたひも,
われさへに[寛],
けふむすびてな,[寛]けふむすひてな,
あはむひのため[寛],
" "#[番号]12/3182","#[題詞](悲別歌)","#[原文]白妙之 袖之別者 雖<惜> 思乱而 赦鶴鴨","#[訓読]白栲の袖の別れは惜しけども思ひ乱れて許しつるかも","#[仮名],しろたへの,そでのわかれは,をしけども,おもひみだれて,ゆるしつるかも","#[左注]","#[校異]借 -> 惜 [元][類][紀]","#[事項],枕詞,別れ,恋情","#[訓異]
しろたへの[寛],
そでのわかれは,[寛]そてのわかれは,
をしけども,[寛]おしけれと,
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
ゆるしつるかも[寛],
" "#[番号]12/3183","#[題詞](悲別歌)","#[原文]京師邊 君者去之乎 孰解可 言紐緒乃 結手懈毛","#[訓読]都辺に君は去にしを誰が解けか我が紐の緒の結ふ手たゆきも","#[仮名],みやこへに,きみはいにしを,たがとけか,わがひものをの,ゆふてたゆきも","#[左注]","#[校異]紐 [元][古] 紐乃","#[事項],女歌,遊行女婦,羈旅,恋情","#[訓異]
みやこへに[寛],
きみはいにしを[寛],
たがとけか,[寛]たれとけか,
わがひものをの,[寛]わかひものをの,
ゆふてたゆきも,[寛]むすひてとけも,
" "#[番号]12/3184","#[題詞](悲別歌)","#[原文]草枕 <客>去君乎 人目多 袖不振為而 安萬田悔毛","#[訓読]草枕旅行く君を人目多み袖振らずしてあまた悔しも","#[仮名],くさまくら,たびゆくきみを,ひとめおほみ,そでふらずして,あまたくやしも","#[左注]","#[校異]谷 -> 客 [元][類][紀]","#[事項],枕詞,羈旅,人目,うわさ,別れ,後悔,恋情","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびゆくきみを,[寛]たひゆくきみを,
ひとめおほみ[寛],
そでふらずして,[寛]そてふらすして,
あまたくやしも[寛],
" "#[番号]12/3185","#[題詞](悲別歌)","#[原文]白銅鏡 手二取持而 見常不足 君尓所贈而 生跡文無","#[訓読]まそ鏡手に取り持ちて見れど飽かぬ君に後れて生けりともなし","#[仮名],まそかがみ,てにとりもちて,みれどあかぬ,きみにおくれて,いけりともなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,恋情,別れ","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
てにとりもちて[寛],
みれどあかぬ,[寛]みれとあかぬ,
きみにおくれて[寛],
いけりともなし[寛],
" "#[番号]12/3186","#[題詞](悲別歌)","#[原文]陰夜之 田時毛不知 山越而 徃座君者 何時将待","#[訓読]曇り夜のたどきも知らぬ山越えています君をばいつとか待たむ","#[仮名],くもりよの,たどきもしらぬ,やまこえて,いますきみをば,いつとかまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],女歌,羈旅,恋情","#[訓異]
くもりよの[寛],
たどきもしらぬ,[寛]たときもしらす,
やまこえて[寛],
いますきみをば,[寛]いますきみをは,
いつとかまたむ,[寛]いつしかまたむ,
" "#[番号]12/3187","#[題詞](悲別歌)","#[本文]<立>名付 青垣山之 隔者 數君乎 言不<問>可聞","#[訓読]たたなづく青垣山の隔なりなばしばしば君を言問はじかも","#[仮名],たたなづく,あをかきやまの,へなりなば,しばしばきみを,こととはじかも","#[左注]","#[校異]田立 -> 立 [西(訂正貼紙][元][紀][温] / 同 -> 問 [元][類][紀]","#[事項],別離,恋情","#[訓異]
たたなづく,[寛]たたなつく,
あをかきやまの[寛],
へなりなば,[寛]へたつれは,
しばしばきみを,[寛]しはしはきみを,
こととはじかも,[寛]こととはぬかも,
" "#[番号]12/3188","#[題詞](悲別歌)","#[原文]朝霞 蒙山乎 越而去者 吾波将戀奈 至于相日","#[訓読]朝霞たなびく山を越えて去なば我れは恋ひむな逢はむ日までに","#[仮名],あさがすみ,たなびくやまを,こえていなば,あれはこひむな,あはむひまでに","#[左注]","#[校異]","#[事項],別離,恋情,女歌","#[訓異]
あさがすみ,[寛]あさかすみ,
たなびくやまを,[寛]たなひくやまを,
こえていなば,[寛]こえていなは,
あれはこひむな,[寛]われはこひむな,
あはむひまでに,[寛]あはむひまてに,
" "#[番号]12/3189","#[題詞](悲別歌)","#[原文]足桧乃 山者百重 雖隠 妹者不忘 直相左右二 [一云 雖隠 君乎思苦 止時毛無] ","#[訓読]あしひきの山は百重に隠すとも妹は忘れじ直に逢ふまでに [一云 隠せども君を思はくやむ時もなし] ","#[仮名],あしひきの,やまはももへに,かくすとも,いもはわすれじ,ただにあふまでに,[かくせども,きみをおもはく,やむときもなし]","#[左注]","#[校異]","#[事項],異伝,枕詞,恋情,羈旅,女歌","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまはももへに[寛],
かくすとも[寛],
いもはわすれじ,[寛]ともはわすれし,
ただにあふまでに,[寛]たたにあふまてに,
[かくせども,[寛]かくせとも,
きみをおもはく[寛],
やむときもなし][寛],
" "#[番号]12/3190","#[題詞](悲別歌)","#[原文]雲居<有> 海山超而 伊徃名者 吾者将戀名 後者相宿友","#[訓読]雲居なる海山越えてい行きなば我れは恋ひむな後は逢ひぬとも","#[仮名],くもゐなる,うみやまこえて,いゆきなば,あれはこひむな,のちはあひぬとも","#[左注]","#[校異]者 -> 有 [元][類][紀]","#[事項],恋情,別離,羈旅","#[訓異]
くもゐなる[寛],
うみやまこえて[寛],
いゆきなば,[寛]いゆきなは,
あれはこひむな,[寛]われはこひむな,
のちはあひぬとも[寛],
" "#[番号]12/3191","#[題詞](悲別歌)","#[原文]不欲恵八<師> 不戀登為杼 木綿間山 越去之公之 所念良國","#[訓読]よしゑやし恋ひじとすれど木綿間山越えにし君が思ほゆらくに","#[仮名],よしゑやし,こひじとすれど,ゆふまやま,こえにしきみが,おもほゆらくに","#[左注]","#[校異]跡 -> 師 [元][紀]","#[事項],地名,別離,羈旅,恋情","#[訓異]
よしゑやし[寛],
こひじとすれど,[寛]こひしとすれと,
ゆふまやま[寛],
こえにしきみが,[寛]こえにしきみか,
おもほゆらくに[寛],
" "#[番号]12/3192","#[題詞](悲別歌)","#[原文]草蔭之 荒藺之埼乃 笠嶋乎 見乍可君之 山道超良無 [一云 三坂越良牟] ","#[訓読]草蔭の荒藺の崎の笠島を見つつか君が山道越ゆらむ [一云 み坂越ゆらむ] ","#[仮名],くさかげの,あらゐのさきの,かさしまを,みつつかきみが,やまぢこゆらむ,[みさかこゆらむ]","#[左注]","#[校異]","#[事項],枕詞,地名,羈旅,恋情,女歌","#[訓異]
くさかげの,[寛]くさかけの,
あらゐのさきの[寛],
かさしまを[寛],
みつつかきみが,[寛]みつつかきみか,
やまぢこゆらむ,[寛]やまちこゆらむ,
[みさかこゆらむ][寛],
" "#[番号]12/3193","#[題詞](悲別歌)","#[原文]玉勝間 嶋熊山之 夕晩 獨可君之 山道将越 [一云 暮霧尓 長戀為乍 寐不勝可母] ","#[訓読]玉かつま島熊山の夕暮れにひとりか君が山道越ゆらむ [一云 夕霧に長恋しつつ寐ねかてぬかも] ","#[仮名],たまかつま,しまくまやまの,ゆふぐれに,ひとりかきみが,やまぢこゆらむ,[ゆふぎりに,ながこひしつつ,いねかてぬかも]","#[左注]","#[校異]","#[事項],異伝,地名,羈旅,女歌,恋情","#[訓異]
たまかつま[寛],
しまくまやまの[寛],
ゆふぐれに,[寛]ゆふくれに,
ひとりかきみが,[寛]ひとりかきみか,
やまぢこゆらむ,[寛]やまちこゆらむ,
[ゆふぎりに,[寛]ゆふきりに,
ながこひしつつ,[寛]なかこひしつつ,
いねかてぬかも][寛],
" "#[番号]12/3194","#[題詞](悲別歌)","#[原文]氣緒尓 吾念君者 鶏鳴 東方重坂乎 今日可越覧","#[訓読]息の緒に我が思ふ君は鶏が鳴く東の坂を今日か越ゆらむ","#[仮名],いきのをに,あがおもふきみは,とりがなく,あづまのさかを,けふかこゆらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,枕詞,羈旅,女歌,恋情","#[訓異]
いきのをに[寛],
あがおもふきみは,[寛]わかおもふきみは,
とりがなく,[寛]とりかかく,
あづまのさかを,[寛]あつまのさかを,
けふかこゆらむ,[寛]いふかこえらむ,
" "#[番号]12/3195","#[題詞](悲別歌)","#[原文]磐城山 直越来益 礒埼 許奴美乃濱尓 吾立将待","#[訓読]磐城山直越え来ませ礒崎の許奴美の浜に我れ立ち待たむ","#[仮名],いはきやま,ただこえきませ,いそさきの,こぬみのはまに,われたちまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,静岡県,女歌,恋情,羈旅","#[訓異]
いはきやま[寛],
ただこえきませ,[寛]たたこえきませ,
いそさきの[寛],
こぬみのはまに[寛],
われたちまたむ[寛],
" "#[番号]12/3196","#[題詞](悲別歌)","#[原文]春日野之 淺茅之原尓 後居而 時其友無 吾戀良苦者","#[訓読]春日野の浅茅が原に遅れ居て時ぞともなし我が恋ふらくは","#[仮名],かすがのの,あさぢがはらに,おくれゐて,ときぞともなし,あがこふらくは","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良,恋情,女歌,歌垣","#[訓異]
かすがのの,[寛]かすかのの,
あさぢがはらに,[寛]あさちかはらに,
おくれゐて[寛],
ときぞともなし,[寛]ときそともなし,
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
" "#[番号]12/3197","#[題詞](悲別歌)","#[原文]住吉乃 崖尓向有 淡路嶋 A怜登君乎 不言日者无","#[訓読]住吉の岸に向へる淡路島あはれと君を言はぬ日はなし","#[仮名],すみのえの,きしにむかへる,あはぢしま,あはれときみを,いはぬひはなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,大阪,序詞,兵庫,淡路,恋愛,羈旅","#[訓異]
すみのえの[寛],
きしにむかへる[寛],
あはぢしま,[寛]あはちしま,
あはれときみを[寛],
いはぬひはなし[寛],
" "#[番号]12/3198","#[題詞](悲別歌)","#[原文]明日従者 将行乃河之 出去者 留吾者 戀乍也将有","#[訓読]明日よりはいなむの川の出でて去なば留まれる我れは恋ひつつやあらむ","#[仮名],あすよりは,いなむのかはの,いでていなば,とまれるあれは,こひつつやあらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,加古川,兵庫,序詞,女歌,不安,恋情,羈旅","#[訓異]
あすよりは[寛],
いなむのかはの,[寛]いなみのかはの,
いでていなば,[寛]いてていなは,
とまれるあれは,[寛]とまれるわれは,
こひつつやあらむ[寛],
" "#[番号]12/3199","#[題詞](悲別歌)","#[原文]海之底 奥者恐 礒廻従 <水>手運徃為 月者雖經過","#[訓読]海の底沖は畏し礒廻より漕ぎ廻みいませ月は経ぬとも","#[仮名],わたのそこ,おきはかしこし,いそみより,こぎたみいませ,つきはへぬとも","#[左注]","#[校異]水水 -> 水 [元][類][紀]","#[事項],羈旅,女歌,不安","#[訓異]
わたのそこ[寛],
おきはかしこし,[寛]おきはおそろし,
いそみより,[寛]いそわより,
こぎたみいませ,[寛]こきたみいませ,
つきはへぬとも[寛],
" "#[番号]12/3200","#[題詞](悲別歌)","#[原文]飼飯乃浦尓 依流白浪 敷布二 妹之容儀者 所念香毛","#[訓読]飼飯の浦に寄する白波しくしくに妹が姿は思ほゆるかも","#[仮名],けひのうらに,よするしらなみ,しくしくに,いもがすがたは,おもほゆるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,淡路,兵庫,序詞,恋情,望郷,羈旅","#[訓異]
けひのうらに[寛],
よするしらなみ[寛],
しくしくに[寛],
いもがすがたは,[寛]いもかすかたは,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]12/3201","#[題詞](悲別歌)","#[原文]時風 吹飯乃濱尓 出居乍 贖命者 妹之為社","#[訓読]時つ風吹飯の浜に出で居つつ贖ふ命は妹がためこそ","#[仮名],ときつかぜ,ふけひのはまに,いでゐつつ,あかふいのちは,いもがためこそ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,枕詞,大阪,岬町深日,恋情,望郷,手向け,羈旅","#[訓異]
ときつかぜ,[寛]ときつかせ,
ふけひのはまに[寛],
いでゐつつ,[寛]いてゐつつ,
あかふいのちは[寛],
いもがためこそ,[寛]いもかためこそ,
" "#[番号]12/3202","#[題詞](悲別歌)","#[原文]柔田津尓 舟乗<将>為跡 聞之苗 如何毛君之 所見不来将<有>","#[訓読]熟田津に舟乗りせむと聞きしなへ何ぞも君が見え来ずあるらむ","#[仮名],にきたつに,ふなのりせむと,ききしなへ,なにぞもきみが,みえこずあるらむ","#[左注]","#[校異]時 -> 将 [西(朱筆左書][紀][細][温] / 者 -> 有 [元][類][紀]","#[事項],地名,松山,愛媛県,女歌","#[訓異]
にきたつに[寛],
ふなのりせむと[寛],
ききしなへ,[寛]ききしなへに,
なにぞもきみが,[寛]なにかもきみか,
みえこずあるらむ,[寛]みえこさるさむ,
" "#[番号]12/3203","#[題詞](悲別歌)","#[原文]三沙呉居 渚尓居舟之 榜出去者 裏戀監 後者會宿友","#[訓読]みさご居る洲に居る舟の漕ぎ出なばうら恋しけむ後は逢ひぬとも","#[仮名],みさごゐる,すにゐるふねの,こぎでなば,うらごほしけむ,のちはあひぬとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],動物,別離,出発,遊行女婦,羈旅","#[訓異]
みさごゐる,[寛]みさこゐる
すにゐるふねの,[寛]すにをるふねの,
こぎでなば,[寛]こきいてなは,
うらごほしけむ,[寛]うらこひしけむ,
のちはあひぬとも[寛],
" "#[番号]12/3204","#[題詞](悲別歌)","#[原文]玉葛 無<恙>行核 山菅乃 思乱而 戀乍将待","#[訓読]玉葛幸くいまさね山菅の思ひ乱れて恋ひつつ待たむ","#[仮名],たまかづら,さきくいまさね,やますげの,おもひみだれて,こひつつまたむ","#[左注]","#[校異]怠 -> 恙 [元]","#[事項],枕詞,植物,恋情,女歌","#[訓異]
たまかづら,[寛]たまかつら,
さきくいまさね,[寛]たえすゆかさね,
やますげの,[寛]やますけの,
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
こひつつまたむ[寛],
" "#[番号]12/3205","#[題詞](悲別歌)","#[原文]後居而 戀乍不有者 田籠之浦乃 海部有申尾 珠藻苅々","#[訓読]後れ居て恋ひつつあらずは田子の浦の海人ならましを玉藻刈る刈る","#[仮名],おくれゐて,こひつつあらずは,たごのうらの,あまならましを,たまもかるかる","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,静岡,遊行女婦,女歌,羈旅,恋情","#[訓異]
おくれゐて[寛],
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
たごのうらの,[寛]たこのうらの,
あまならましを[寛],
たまもかるかる[寛],
" "#[番号]12/3206","#[題詞](悲別歌)","#[原文]筑紫道之 荒礒乃玉藻 苅鴨 君久 待不来","#[訓読]筑紫道の荒礒の玉藻刈るとかも君が久しく待てど来まさぬ","#[仮名],つくしぢの,ありそのたまも,かるとかも,きみがひさしく,まてどきまさぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],植物,女歌,羈旅","#[訓異]
つくしぢの,[寛]つくしちの,
ありそのたまも,[寛]あらいそのたまも,
かるとかも,[寛]かりにかも,
きみがひさしく,[寛]きみかひさしく,
まてどきまさぬ,[寛]まてとこさらむ,
" "#[番号]12/3207","#[題詞](悲別歌)","#[原文]荒玉乃 年緒永 照月 不Q君八 明日別南","#[訓読]あらたまの年の緒長く照る月の飽かざる君や明日別れなむ","#[仮名],あらたまの,としのをながく,てるつきの,あかざるきみや,あすわかれなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],序詞,枕詞,女歌,別離,遊行女婦,羈旅","#[訓異]
あらたまの[寛],
としのをながく,[寛]としのをなかく,
てるつきの[寛],
あかざるきみや,[寛]あかれぬきみや,
あすわかれなむ[寛],
" "#[番号]12/3208","#[題詞](悲別歌)","#[原文]久将在 君念尓 久堅乃 清月夜毛 闇夜耳見","#[訓読]久にあらむ君を思ふにひさかたの清き月夜も闇の夜に見ゆ","#[仮名],ひさにあらむ,きみをおもふに,ひさかたの,きよきつくよも,やみのよにみゆ","#[左注]","#[校異]耳 (塙) 所","#[事項],枕詞,旅立ち,女歌,不安,恋情","#[訓異]
ひさにあらむ[寛],
きみをおもふに[寛],
ひさかたの[寛],
きよきつくよも,[寛]きよきつきよも,
やみのよにみゆ,[寛]やみにのみみゆ,
" "#[番号]12/3209","#[題詞](悲別歌)","#[原文]春日在 三笠乃山尓 居雲乎 出見毎 君乎之曽念","#[訓読]春日なる御笠の山に居る雲を出で見るごとに君をしぞ思ふ","#[仮名],かすがなる,みかさのやまに,ゐるくもを,いでみるごとに,きみをしぞおもふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],地名,奈良,恋情,羈旅,女歌","#[訓異]
かすがなる,[寛]かすかなる,
みかさのやまに[寛],
ゐるくもを[寛],
いでみるごとに,[寛]いてみることに,
きみをしぞおもふ,[寛]きみをしそおもふ,
" "#[番号]12/3210","#[題詞](悲別歌)","#[原文]足桧木乃 片山雉 立徃牟 君尓後而 打四鶏目八方","#[訓読]あしひきの片山雉立ち行かむ君に後れてうつしけめやも","#[仮名],あしひきの,かたやまきぎし,たちゆかむ,きみにおくれて,うつしけめやも","#[左注]","#[校異]桧木 [元][類] 桧","#[事項],枕詞,動物,序詞,旅立ち,羈旅,恋情,女歌","#[訓異]
あしひきの[寛],
かたやまきぎし,[寛]かたやまききす,
たちゆかむ[寛],
きみにおくれて[寛],
うつしけめやも,[寛]うしけめやも,
" "#[番号]12/3211","#[題詞]問答<歌>","#[原文]玉緒乃 <徙>心哉 八十梶懸 水手出牟船尓 後而将居","#[訓読]玉の緒の現し心や八十楫懸け漕ぎ出む船に後れて居らむ","#[仮名],たまのをの,うつしこころや,やそかかけ,こぎでむふねに,おくれてをらむ","#[左注](右二首)","#[校異]<> -> 歌 [元][紀] / 徒 -> 徙 [矢]","#[事項],枕詞,出発,羈旅,女歌,恋情","#[訓異]
たまのをの[寛],
うつしこころや[寛],
やそかかけ[寛],
こぎでむふねに,[寛]こきいてむふねに,
おくれてをらむ[寛],
" "#[番号]12/3212","#[題詞](問答歌)","#[原文]八十梶懸 嶋隠去者 吾妹兒之 留登将振 袖不所見可聞","#[訓読]八十楫懸け島隠りなば我妹子が留まれと振らむ袖見えじかも","#[仮名],やそかかけ,しまがくりなば,わぎもこが,とまれとふらむ,そでみえじかも","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],羈旅,船出,袖振り,羈旅,出発,恋情","#[訓異]
やそかかけ,[寛]やそかかく,
しまがくりなば,[寛]しまかくれなは,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
とまれとふらむ[寛],
そでみえじかも,[寛]そてみえしかも,
" "#[番号]12/3213","#[題詞](問答歌)","#[原文]十月 鍾礼乃雨丹 <沾>乍哉 君之行疑 宿可借疑","#[訓読]十月しぐれの雨に濡れつつか君が行くらむ宿か借るらむ","#[仮名],かむなづき,しぐれのあめに,ぬれつつか,きみがゆくらむ,やどかかるらむ","#[左注](右二首)","#[校異]沽 -> 沾 [矢][京]","#[事項],羈旅,女歌,恋情","#[訓異]
かむなづき,[寛]かみなつき,
しぐれのあめに,[寛]しくれのあめに,
ぬれつつか,[寛]ぬれつつや,
きみがゆくらむ,[寛]きみかゆくらむ,
やどかかるらむ,[寛]やとかかるらむ,
" "#[番号]12/3214","#[題詞](問答歌)","#[原文]十月 <雨>間毛不置 零尓西者 誰里<之> 宿可借益","#[訓読]十月雨間も置かず降りにせばいづれの里の宿か借らまし","#[仮名],かむなづき,あままもおかず,ふりにせば,いづれのさとの,やどかからまし","#[左注]右二首","#[校異]々 -> 雨 [元][紀][温] / 之間 -> 之 [元][類]","#[事項],羈旅","#[訓異]
かむなづき,[寛]かみなつき,
あままもおかず,[寛]あままもおかす,
ふりにせば,[寛]ふりにせは,
いづれのさとの,[寛]たかさとのまに,
やどかからまし,[寛]やとかからまし,
" "#[番号]12/3215","#[題詞](問答歌)","#[原文]白妙乃 袖之別乎 難見為而 荒津之濱 屋取為鴨","#[訓読]白栲の袖の別れを難みして荒津の浜に宿りするかも","#[仮名],しろたへの,そでのわかれを,かたみして,あらつのはまに,やどりするかも","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],地名,福岡,出発,惜別,羈旅,恋情","#[訓異]
しろたへの[寛],
そでのわかれを,[寛]そてのわかれを,
かたみして[寛],
あらつのはまに[寛],
やどりするかも,[寛]やとりするかも,
" "#[番号]12/3216","#[題詞](問答歌)","#[原文]草枕 羈行君乎 荒津左右 送来 <飽>不足社","#[訓読]草枕旅行く君を荒津まで送りぞ来ぬる飽き足らねこそ","#[仮名],くさまくら,たびゆくきみを,あらつまで,おくりぞきぬる,あきだらねこそ","#[左注]右二首","#[校異]飽 [西(上書訂正)][元][類][紀]","#[事項],地名,福岡,枕詞,送別,恋情,惜別,女歌,遊行女婦","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびゆくきみを,[寛]たひゆくきみを,
あらつまで,[寛]あらつまて,
おくりぞきぬる,[寛]おくりくるとも,
あきだらねこそ,[寛]あきたらすこそ,
" "#[番号]12/3217","#[題詞](問答歌)","#[原文]荒津海 吾幣奉 将齋 早<還>座 面變不為","#[訓読]荒津の海我れ幣奉り斎ひてむ早帰りませ面変りせず","#[仮名],あらつのうみ,われぬさまつり,いはひてむ,はやかへりませ,おもがはりせず","#[左注](右二首)","#[校異]速 -> 還 [西(訂正右書)][元][類][紀]","#[事項],地名,福岡,手向け,出発,遊行女婦,送別,羈旅,恋情","#[訓異]
あらつのうみ[寛],
われぬさまつり[寛],
いはひてむ[寛],
はやかへりませ[寛],
おもがはりせず,[寛]おもかはりせて,
" "#[番号]12/3218","#[題詞](問答歌)","#[本文]<旦>々 筑紫乃方乎 出見乍 哭耳吾泣 痛毛為便無三","#[訓読]朝な朝な筑紫の方を出で見つつ音のみぞ我が泣くいたもすべなみ","#[仮名],あさなさな,つくしのかたを,いでみつつ,ねのみぞあがなく,いたもすべなみ","#[左注]右二首","#[校異]且 -> 旦 [元][類][紀][矢]","#[事項],羈旅,恋情,地名,福岡,九州","#[訓異]
あさなさな[寛],
つくしのかたを[寛],
いでみつつ,[寛]いてみつつ,
ねのみぞあがなく,[寛]ねのみわれなく,
いたもすべなみ,[寛]いともすへなみ,
" "#[番号]12/3219","#[題詞](問答歌)","#[原文]豊國乃 聞之長濱 去晩 日之昏去者 妹食序念","#[訓読]豊国の企救の長浜行き暮らし日の暮れゆけば妹をしぞ思ふ","#[仮名],とよくにの,きくのながはま,ゆきくらし,ひのくれゆけば,いもをしぞおもふ","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],地名,福岡,北九州市,恋情,望郷,羈旅","#[訓異]
とよくにの[寛],
きくのながはま,[寛]きくのなかはま,
ゆきくらし[寛],
ひのくれゆけば,[寛]ひのくれゆけは,
いもをしぞおもふ,[寛]いもをしそおもふ,
" "#[番号]12/3220","#[題詞](問答歌)","#[原文]豊國能 聞乃高濱 高々二 君待夜等者 左夜深来","#[訓読]豊国の企救の高浜高々に君待つ夜らはさ夜更けにけり","#[仮名],とよくにの,きくのたかはま,たかたかに,きみまつよらは,さよふけにけり","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],地名,福岡,北九州市,序詞,遊行女婦,羈旅","#[訓異]
とよくにの[寛],
きくのたかはま[寛],
たかたかに[寛],
きみまつよらは[寛],
さよふけにけり[寛],
" "#[番号]13/3221","#[題詞]雜歌","#[原文]冬<木>成 春去来者 朝尓波 白露置 夕尓波 霞多奈妣久 汗瑞能振 樹奴礼我之多尓 鴬鳴母 ","#[訓読]冬こもり 春さり来れば 朝には 白露置き 夕には 霞たなびく 汗瑞能振 木末が下に 鴬鳴くも ","#[仮名],ふゆこもり,はるさりくれば,あしたには,しらつゆおき,ゆふへには,かすみたなびく,****,こぬれがしたに,うぐひすなくも","#[左注]右一首","#[校異]歌 [西] 謌 / 不 -> 木 [元][天][類]","#[事項],雑歌,難訓,動物,国見歌,春","#[訓異]
ふゆこもり,[寛]ふゆこなり,
はるさりくれば,[寛]はるさりくれは,
あしたには[寛],
しらつゆおき,[寛]しらつゆおきて,
ゆふへには[寛],
かすみたなびく,[寛]かすみたなひく,
,****,[寛]あめのふる,
こぬれがしたに,[寛]こぬれかしたに,
うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも,
" "#[番号]13/3222","#[題詞]","#[原文]三諸者 人之守山 本邊者 馬酔木花開 末邊方 椿花開 浦妙 山曽 泣兒守山 ","#[訓読]みもろは 人の守る山 本辺は 馬酔木花咲き 末辺は 椿花咲く うらぐはし山ぞ 泣く子守る山 ","#[仮名],みもろは,ひとのもるやま,もとへは,あしびはなさき,すゑへは,つばきはなさく,うらぐはしやまぞ,なくこもるやま","#[左注]右一首","#[校異]","#[事項],雑歌,植物,山讃美,神山,三輪山,明日香,地名","#[訓異]
みもろは,[寛]みむろは,
ひとのもるやま[寛],
もとへは,[寛]もとへには,
あしびはなさき,[寛]つつしはなさき,
すゑへは,[寛]すゑへには,
つばきはなさく,[寛]つはきはなさく,
うらぐはしやまぞ,[寛]うらくはしやまそ,
なくこもるやま[寛],
" "#[番号]13/3223","#[題詞]","#[原文]霹靂之 日香天之 九月乃 <鍾>礼乃落者 鴈音文 未来鳴 甘南備乃 清三田屋乃 垣津田乃 池之堤<之> 百不足 <五十>槻枝丹 水枝指 秋赤葉 真割持 小鈴<文>由良尓 手弱女尓 吾者有友 引攀而 峯文十遠仁 に手折 吾者持而徃 公之頭刺荷 ","#[訓読]かむとけの 日香空の 九月の しぐれの降れば 雁がねも いまだ来鳴かぬ 神なびの 清き御田屋の 垣つ田の 池の堤の 百足らず 斎槻の枝に 瑞枝さす 秋の黄葉 まき持てる 小鈴もゆらに 手弱女に 我れはあれども 引き攀ぢて 枝もとををに ふさ手折り 我は持ちて行く 君がかざしに ","#[仮名],かむとけの,**そらの,ながつきの,しぐれのふれば,かりがねも,いまだきなかぬ,かむなびの,きよきみたやの,かきつたの,いけのつつみの,ももたらず,いつきのえだに,みづえさす,あきのもみちば,まきもてる,をすずもゆらに,たわやめに,われはあれども,ひきよぢて,えだもとををに,ふさたをり,わはもちてゆく,きみがかざしに","#[左注](右二首)","#[校異]鐘 -> 鍾 [天][類][紀] / <> -> 之 [西(左書)][元][天][類] / く -> 五十 [万葉考] / 父 -> 文 [元][天][紀]","#[事項],雑歌,動物,枕詞,神祭り,寿歌,秋,植物,宴席,三輪山,地名","#[訓異]
かむとけの,[寛]かみとけの,
**そらの,[寛]ひかるみそらの,
ながつきの,[寛]なかつきの,
しぐれのふれば,[寛]しくれのふれは,
かりがねも,[寛]かりかねも,
いまだきなかぬ,[寛]いまたきなかす,
かむなびの,[寛]かみなひの,
きよきみたやの[寛],
かきつたの[寛],
いけのつつみの[寛],
ももたらず,[寛]ももたらす,
いつきのえだに,[寛]みそのつきえに,
みづえさす,[寛]みつえさす,
あきのもみちば,[寛]あきのもみちは,
まきもてる,[寛]まさけもち,
をすずもゆらに,[寛]をすすもゆらに,
たわやめに[寛],
われはあれども,[寛]われはあれとも,
ひきよぢて,[寛]ひきよちて,
えだもとををに,[寛]みねもとををに,
ふさたをり,[寛]うちたをり,
わはもちてゆく,[寛]われはもてゆき,
きみがかざしに,[寛]きみかかさしに,
" "#[番号]13/3224","#[題詞]反歌","#[原文]獨耳 見者戀染 神名火乃 山黄葉 手折来君","#[訓読]ひとりのみ見れば恋しみ神なびの山の黄葉手折り来り君","#[仮名],ひとりのみ,みればこほしみ,かむなびの,やまのもみちば,たをりけりきみ","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],雑歌,寿歌,植物,宴席,三輪山,地名","#[訓異]
ひとりのみ[寛],
みればこほしみ,[寛]みれはこひしみ,
かむなびの,[寛]かみなひの,
やまのもみちば,[寛]やまのもみちは,
たをりけりきみ,[寛]たをりこむきみ,
" "#[番号]13/3225","#[題詞]","#[原文]天雲之 影<塞>所見 隠来<矣> 長谷之河者 浦無蚊 船之依不来 礒無蚊 海部之釣不為 吉咲八師 浦者無友 吉畫矢寺 礒者無友 奥津浪 諍榜入来 白水郎之釣船 ","#[訓読]天雲の 影さへ見ゆる こもりくの 泊瀬の川は 浦なみか 舟の寄り来ぬ 礒なみか 海人の釣せぬ よしゑやし 浦はなくとも よしゑやし 礒はなくとも 沖つ波 競ひ漕入り来 海人の釣舟 ","#[仮名],あまくもの,かげさへみゆる,こもりくの,はつせのかはは,うらなみか,ふねのよりこぬ,いそなみか,あまのつりせぬ,よしゑやし,うらはなくとも,よしゑやし,いそはなくとも,おきつなみ,きほひこぎりこ,あまのつりぶね","#[左注](右二首)","#[校異]寒 -> 塞 [元][天] / 笑 -> 矣 [西(訂正)][元][天][類] / 諍 [古][類][天] 淨","#[事項],雑歌,枕詞,地名,桜井,奈良,寿歌,土地讃美","#[訓異]
あまくもの[寛],
かげさへみゆる,[寛]かけさえみ,
こもりくの,
はつせのかはは,[寛]せのかはは,
うらなみか,[寛]うらなきか,
ふねのよりこぬ[寛],
いそなみか,[寛]いそなか,
あまのつりせぬ[寛],
よしゑやし[寛],
うらはなくとも[寛],
よしゑやし[寛],
いそはなくとも[寛],
おきつなみ[寛],
きほひこぎりこ,[寛]いそひこきいりこ,
あまのつりぶね,[寛]あにまのつりふね,
" "#[番号]13/3226","#[題詞]反歌","#[原文]沙邪礼浪 浮而流 長谷河 可依礒之 無蚊不怜也","#[訓読]さざれ波浮きて流るる泊瀬川寄るべき礒のなきが寂しさ","#[仮名],さざれなみ,うきてながるる,はつせがは,よるべきいその,なきがさぶしさ","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],雑歌,地名,奈良,桜井,土地讃美,寿歌","#[訓異]
さざれなみ,[寛]さされなみ,
うきてながるる,[寛]うきてなかるる,
はつせがは,[寛]はつせかは,
よるべきいその,[寛]よるへきいその,
なきがさぶしさ,[寛]なきかさひしさ,
" "#[番号]13/3227","#[題詞]","#[原文]葦原笶 水穂之國丹 手向為跡 天降座兼 五百万 千万神之 神代従 云續来在 甘南備乃 三諸山者 春去者 春霞立 秋徃者 紅丹穂經 <甘>甞備乃 三諸乃神之 帶為 明日香之河之 水尾速 生多米難 石枕 蘿生左右二 新夜乃 好去通牟 事計 夢尓令見社 劔刀 齋祭 神二師座者 ","#[訓読]葦原の 瑞穂の国に 手向けすと 天降りましけむ 五百万 千万神の 神代より 言ひ継ぎ来る 神なびの みもろの山は 春されば 春霞立つ 秋行けば 紅にほふ 神なびの みもろの神の 帯ばせる 明日香の川の 水脈早み 生しためかたき 石枕 苔生すまでに 新夜の 幸く通はむ 事計り 夢に見せこそ 剣太刀 斎ひ祭れる 神にしませば ","#[仮名],あしはらの,みづほのくにに,たむけすと,あもりましけむ,いほよろづ,ちよろづかみの,かむよより,いひつぎきたる,かむなびの,みもろのやまは,はるされば,はるかすみたつ,あきゆけば,くれなゐにほふ,かむなびの,みもろのかみの,おばせる,あすかのかはの,みをはやみ,むしためかたき,いしまくら,こけむすまでに,あらたよの,さきくかよはむ,ことはかり,いめにみせこそ,つるぎたち,いはひまつれる,かみにしませば","#[左注](右三首 但或書此短歌一首無有載之也)","#[校異]耳 -> 甘 [西(訂正)][天][紀][細]","#[事項],雑歌,枕詞,地名,明日香,奈良,寿歌,神祭り,賀歌,新婚,永遠,婚礼","#[訓異]
あしはらの[寛],
みづほのくにに,[寛]みつほのくにに,
たむけすと[寛],
あもりましけむ[寛],
いほよろづ,[寛]いほよろつ,
ちよろづかみの,[寛]ちよろつかみの,
かむよより,[寛]かみよより,
いひつぎきたる,[寛]いひつききてある,
かむなびの,[寛]かみなひの,
みもろのやまは,[寛]みものやまは,
はるされば,[寛]はるされは,
はるかすみたつ,[寛]はるかすみたち,
あきゆけば,[寛]あきゆけは,
くれなゐにほふ[寛],
かむなびの,[寛]かみなひの,
みもろのかみの[寛],
おばせる,[寛]おひにせる,
あすかのかはの[寛],
みをはやみ[寛],
むしためかたき,[寛]いきためかたき,
いしまくら,[寛]いはまくら,
こけむすまでに,[寛]こけむすまてに,
あらたよの,[寛]あたらよの,
さきくかよはむ,[寛]よしゆきかよはむ,
ことはかり[寛],
いめにみせこそ,[寛]ゆめにみえこそ,
つるぎたち,[寛]つるきたち,
いはひまつれる,[寛]いはひまつらむ,
かみにしませば,[寛]かみにしいまさは,
" "#[番号]13/3228","#[題詞]反歌","#[原文]神名備能 三諸之山丹 隠蔵杉 思将過哉 蘿生左右","#[訓読]神なびの三諸の山に斎ふ杉思ひ過ぎめや苔生すまでに","#[仮名],かむなびの,みもろのやまに,いはふすぎ,おもひすぎめや,こけむすまでに","#[左注](右三首 但或書此短歌一首無有載之也)","#[校異]","#[事項],雑歌,地名,明日香,奈良,寿歌,賀歌,新婚,永遠,婚礼","#[訓異]
かむなびの,[寛]かみなひの,
みもろのやまに,[寛]みむろのやまに,
いはふすぎ,[寛]かくれたる,
おもひすぎめや,[寛]すきしすきむや,
こけむすまでに,[寛]こけのむすまて,
" "#[番号]13/3229","#[題詞](反歌)","#[原文]五十串立 神酒座奉 神主部之 雲聚<玉>蔭 見者乏文","#[訓読]斎串立てみわ据ゑ奉る祝部がうずの玉かげ見ればともしも","#[仮名],いぐしたて,みわすゑまつる,はふりへが,うずのたまかげ,みればともしも","#[左注]右三首 但或書此短歌一首無有載之也","#[校異]王 -> 玉 [元][天][類]","#[事項],雑歌,婚礼,神祭り,寿歌,新婚","#[訓異]
いぐしたて,[寛]いくしたて,
みわすゑまつる[寛],
はふりへが,[寛]かみぬしの,
うずのたまかげ,[寛]うすのたまかけ,
みればともしも,[寛]みれはともしも,
" "#[番号]13/3230","#[題詞]","#[原文]帛S 楢従出而 水蓼 穂積至 鳥網張 坂手乎過 石走 甘南備山丹 朝宮 仕奉而 吉野部登 入座見者 古所念 ","#[訓読]みてぐらを 奈良より出でて 水蓼 穂積に至り 鳥網張る 坂手を過ぎ 石走る 神なび山に 朝宮に 仕へ奉りて 吉野へと 入ります見れば いにしへ思ほゆ ","#[仮名],みてぐらを,ならよりいでて,みづたで,ほづみにいたり,となみはる,さかてをすぎ,いはばしる,かむなびやまに,あさみやに,つかへまつりて,よしのへと,いりますみれば,いにしへおもほゆ","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],雑歌,道行き,行幸,地名,明日香,吉野,奈良,聖武天皇","#[訓異]
みてぐらを,[寛]みてくらを,
ならよりいでて,[寛]ならよりいてて,
みづたで,[寛]みつたての,
ほづみにいたり,[寛]ほつみにいたり,
となみはる,[寛]とあみはる,
さかてをすぎ,[寛]さかとをすきて,
いはばしる,[寛]いははしる,
かむなびやまに,[寛]かみなひやまに,
あさみやに[寛],
つかへまつりて[寛],
よしのへと[寛],
いりますみれば,[寛]いりますみれは,
いにしへおもほゆ,[寛]むかしおもほゆ,
" "#[番号]13/3231","#[題詞]反歌","#[原文]月日 攝友 久經流 三諸之山 礪津宮地","#[訓読]月は日は変らひぬとも久に経る三諸の山の離宮ところ","#[仮名],つきはひは,かはらひぬとも,ひさにふる,みもろのやまの,とつみやところ","#[左注]右二首 但或本歌曰 故王都跡津宮地也","#[校異]","#[事項],雑歌,地名,明日香,奈良,聖武天皇,宮廷讃美,寿歌","#[訓異]
つきはひは,[寛]つきもひも,
かはらひぬとも,[寛]かはりゆくとも,
ひさにふる[寛],
みもろのやまの[寛],
とつみやところ[寛],
" "#[番号]13/3231S","#[題詞](反歌)右二首 但或本歌曰","#[原文]故王都跡津宮地","#[訓読]古き都の離宮ところ ","#[仮名]ふるきみやこの,とつみやところ","#[左注]也","#[校異]","#[事項],雑歌,明日香,奈良,宮廷讃美,聖武天皇,寿歌","#[訓異]
ふるきみやこの[寛],
とつみやところ[寛],
" "#[番号]13/3232","#[題詞]","#[原文]斧取而 丹生桧山 木折来而 筏尓作 二梶貫 礒榜廻乍 嶋傳 雖見不飽 三吉野乃 瀧動々 落白浪 ","#[訓読]斧取りて 丹生の桧山の 木伐り来て 筏に作り 真楫貫き 礒漕ぎ廻つつ 島伝ひ 見れども飽かず み吉野の 瀧もとどろに 落つる白波 ","#[仮名],をのとりて,にふのひやまの,きこりきて,いかだにつくり,まかぢぬき,いそこぎみつつ,しまづたひ,みれどもあかず,みよしのの,たきもとどろに,おつるしらなみ","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],雑歌,地名,吉野,奈良,川讃美,","#[訓異]
をのとりて[寛],
にふのひやまの[寛],
きこりきて[寛],
いかだにつくり,[寛]ふねにつくりて,
まかぢぬき,[寛]まかちぬき,
いそこぎみつつ,[寛]いそこきたみつ,
しまづたひ,[寛]しまつたひ,
みれどもあかず,[寛]みれともあかす,
みよしのの[寛],
たきもとどろに,[寛]たきもととろに,
おつるしらなみ,[寛]きつるしらなみ,
" "#[番号]13/3233","#[題詞]反歌","#[原文]三芳野 瀧動々 落白浪 留西 妹見<西>巻 欲白浪","#[訓読]み吉野の瀧もとどろに落つる白波留まりにし妹に見せまく欲しき白波","#[仮名],みよしのの,たきもとどろに,おつるしらなみ,とまりにし,いもにみせまく,ほしきしらなみ","#[左注]右二首","#[校異]<> -> 西 [天][類]","#[事項],雑歌,地名,吉野,奈良,旋頭歌,土地讃美,望郷","#[訓異]
みよしのの[寛],
たきもとどろに,[寛]たきもととろに,
おつるしらなみ[寛],
とまりにし[寛],
いもにみせまく,[寛]いもをみまく,
ほしきしらなみ[寛],
" "#[番号]13/3234","#[題詞]","#[原文]八隅知之 和期大皇 高照 日之皇子之 聞食 御食都國 神風之 伊勢乃國者 國見者之毛 山見者 高貴之 河見者 左夜氣久清之 水門成 海毛廣之 見渡 嶋名高之 己許乎志毛 間細美香母 <挂>巻毛 文尓恐 山邊乃 五十師乃原 尓内日刺 大宮都可倍 朝日奈須 目細毛 暮日奈須 浦細毛 春山之 四名比盛而 秋山之 色名付思吉 百礒城之 大宮人者 天地 与日月共 万代尓母我 ","#[訓読]やすみしし 我ご大君 高照らす 日の御子の きこしをす 御食つ国 神風の 伊勢の国は 国見ればしも 山見れば 高く貴し 川見れば さやけく清し 水門なす 海もゆたけし 見わたす 島も名高し ここをしも まぐはしみかも かけまくも あやに畏き 山辺の 五十師の原に うちひさす 大宮仕へ 朝日なす まぐはしも 夕日なす うらぐはしも 春山の しなひ栄えて 秋山の 色なつかしき ももしきの 大宮人は 天地 日月とともに 万代にもが ","#[仮名],やすみしし,わごおほきみ,たかてらす,ひのみこの,きこしをす,みけつくに,かむかぜの,いせのくには,くにみればしも,やまみれば,たかくたふとし,かはみれば,さやけくきよし,みなとなす,うみもゆたけし,みわたす,しまもなたかし,ここをしも,まぐはしみかも,かけまくも,あやにかしこき,やまのへの,いしのはらに,うちひさす,おほみやつかへ,あさひなす,まぐはしも,ゆふひなす,うらぐはしも,はるやまの,しなひさかえて,あきやまの,いろなつかしき,ももしきの,おほみやひとは,あめつち,ひつきとともに,よろづよにもが","#[左注](右二首)","#[校異]桂 -> 挂 [西(訂正貼紙)][元][天][類]","#[事項],雑歌,地名,伊勢,三重県,枕詞,行幸従駕,宮廷讃美,土地讃美","#[訓異]
やすみしし[寛],
わごおほきみ,[寛]わかおほきみの,
たかてらす[寛],
ひのみこの,[寛]ひのわかみこの,
きこしをす[寛],
みけつくに[寛],
かむかぜの,[寛]かみかせの,
いせのくには[寛],
くにみればしも,[寛]くにみれはしも,
やまみれば,[寛]やまみれは,
たかくたふとし[寛],
かはみれば,[寛]かはみれは,
さやけくきよし[寛],
みなとなす[寛],
うみもゆたけし[寛],
みわたす,[寛]みわたせる,
しまもなたかし,[寛]しまのなたかし,
ここをしも[寛],
まぐはしみかも,[寛]まくはしみかも,
かけまくも[寛],
あやにかしこき[寛],
やまのへの[寛],
いしのはらに,[寛]いそしのはらに,
うちひさす[寛],
おほみやつかへ[寛],
あさひなす[寛],
まぐはしも,[寛]まくはしも,
ゆふひなす[寛],
うらぐはしも,[寛]うらくはしも,
はるやまの[寛],
しなひさかえて,[寛]しなひさかへて,
あきやまの[寛],
いろなつかしき[寛],
ももしきの[寛],
おほみやひとは[寛],
あめつち,[寛]あめつちと,
ひつきとともに[寛],
よろづよにもが,[寛]よろつよにもか,
" "#[番号]13/3235","#[題詞]反歌","#[原文]山邊乃 五十師乃御井者 自然 成錦乎 張流山可母","#[訓読]山辺の五十師の御井はおのづから成れる錦を張れる山かも","#[仮名],やまのへの,いしのみゐは,おのづから,なれるにしきを,はれるやまかも","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],雑歌,地名,伊勢,三重県,井戸,土地讃美,行幸従駕","#[訓異]
やまのへの[寛],
いしのみゐは,[寛]いそしのみゐは,
おのづから,[寛]をのつから,
なれるにしきを[寛],
はれるやまかも[寛],
" "#[番号]13/3236","#[題詞]","#[原文]空見津 倭國 青丹吉 常山越而 山代之 管木之原 血速舊 于遅乃渡 瀧屋之 阿後尼之原尾 千歳尓 闕事無 万歳尓 有通将得 山科之 石田之社之 須馬神尓 奴左取向而 吾者越徃 相坂山遠 ","#[訓読]そらみつ 大和の国 あをによし 奈良山越えて 山背の 管木の原 ちはやぶる 宇治の渡り 瀧つ屋の 阿後尼の原を 千年に 欠くることなく 万代に あり通はむと 山科の 石田の杜の すめ神に 幣取り向けて 我れは越え行く 逢坂山を ","#[仮名],そらみつ,やまとのくに,あをによし,ならやまこえて,やましろの,つつきのはら,ちはやぶる,うぢのわたり,たぎつやの,あごねのはらを,ちとせに,かくることなく,よろづよに,ありがよはむと,やましなの,いはたのもりの,すめかみに,ぬさとりむけて,われはこえゆく,あふさかやまを","#[左注](右三首)","#[校異]","#[事項],雑歌,枕詞,道行き,地名,奈良,京都,羈旅,土地讃美,安全祈願","#[訓異]
そらみつ[寛],
やまとのくに[寛],
あをによし[寛],
ならやまこえて[寛],
やましろの[寛],
つつきのはら[寛],
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
うぢのわたり,[寛]うちのわたり,
たぎつやの,[寛]たきのやの,
あごねのはらを,[寛]あこにのはらを,
ちとせに,[寛]ちともに,
かくることなく[寛],
よろづよに,[寛]よろつよに,
ありがよはむと,[寛]ありかよはむと,
やましなの[寛],
いはたのもりの[寛],
すめかみに[寛],
ぬさとりむけて[寛],
われはこえゆく,[寛]われはこえゆかむ,
あふさかやまを[寛],
" "#[番号]13/3237","#[題詞]或本歌曰","#[原文]緑丹吉 平山過而 物部之 氏川渡 未通女等尓 相坂山丹 手向草 絲取置而 我妹子尓 相海之海之 奥浪 来因濱邊乎 久礼々々登 獨<曽>我来 妹之目乎欲 ","#[訓読]あをによし 奈良山過ぎて もののふの 宇治川渡り 娘子らに 逢坂山に 手向け草 幣取り置きて 我妹子に 近江の海の 沖つ波 来寄る浜辺を くれくれと ひとりぞ我が来る 妹が目を欲り ","#[仮名],あをによし,ならやますぎて,もののふの,うぢかはわたり,をとめらに,あふさかやまに,たむけくさ,ぬさとりおきて,わぎもこに,あふみのうみの,おきつなみ,きよるはまへを,くれくれと,ひとりぞわがくる,いもがめをほり","#[左注](右三首)","#[校異]丹 [元][天](塙) 青 / 雷 -> 曽 [元][天][紀]","#[事項],雑歌,異伝,枕詞,地名,奈良,京都,羈旅,滋賀,琵琶湖,望郷","#[訓異]
あをによし[寛],
ならやますぎて,[寛]ならやますきて,
もののふの[寛],
うぢかはわたり,[寛]うちかはわたり,
をとめらに[寛],
あふさかやまに[寛],
たむけくさ[寛],
ぬさとりおきて,[寛]いとりおきつつ,
わぎもこに,[寛]わきもこに,
あふみのうみの[寛],
おきつなみ[寛],
きよるはまへを[寛],
くれくれと[寛],
ひとりぞわがくる,[寛]ひとりそわかくる,
いもがめをほり,[寛]いもかめをほり,
" "#[番号]13/3238","#[題詞]反歌","#[原文]相坂乎 打出而見者 淡海之海 白木綿花尓 浪立渡","#[訓読]逢坂をうち出でて見れば近江の海白木綿花に波立ちわたる","#[仮名],あふさかを,うちいでてみれば,あふみのうみ,しらゆふばなに,なみたちわたる","#[左注]右三首","#[校異]","#[事項],雑歌,京都,滋賀,琵琶湖,地名,羈旅,土地讃美,叙景","#[訓異]
あふさかを[寛],
うちいでてみれば,[寛]うちいててみれは,
あふみのうみ[寛],
しらゆふばなに,[寛]しらゆふはなに,
なみたちわたる[寛],
" "#[番号]13/3239","#[題詞]","#[原文]近江之海 泊八十有 八十嶋之 嶋之埼邪伎 安利立有 花橘乎 末枝尓 毛知引懸 仲枝尓 伊加流我懸 下枝尓 <比>米乎懸 己之母乎 取久乎不知 己之父乎 取久乎思良尓 伊蘇婆比座与 伊可流我等<比>米登 ","#[訓読]近江の海 泊り八十あり 八十島の 島の崎々 あり立てる 花橘を ほつ枝に もち引き懸け 中つ枝に 斑鳩懸け 下枝に 比米を懸け 汝が母を 取らくを知らに 汝が父を 取らくを知らに いそばひ居るよ 斑鳩と比米と ","#[仮名],あふみのうみ,とまりやそあり,やそしまの,しまのさきざき,ありたてる,はなたちばなを,ほつえに,もちひきかけ,なかつえに,いかるがかけ,しづえに,ひめをかけ,ながははを,とらくをしらに,ながちちを,とらくをしらに,いそばひをるよ,いかるがとひめと","#[左注]右一首","#[校異]此 -> 比 [元][天][細] / 此 -> 比 [元][天][細]","#[事項],雑歌,地名,滋賀,琵琶湖,動物,童謡,風喩,風俗,民謡","#[訓異]
あふみのうみ[寛],
とまりやそあり[寛],
やそしまの[寛],
しまのさきざき,[寛]しまのさきさき,
ありたてる[寛],
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
ほつえに[寛],
もちひきかけ[寛],
なかつえに[寛],
いかるがかけ,[寛]いかるかかけ,
しづえに,[寛]しつえに,
ひめをかけ,[寛]しめをかけ,
ながははを,[寛]さかははを,
とらくをしらに,[寛]とらくをしらす,
ながちちを,[寛]さかちちを,
とらくをしらに[寛],
いそばひをるよ,[寛]いそはひをるよ,
いかるがとひめと,[寛]いかるかとしめと,
" "#[番号]13/3240","#[題詞]","#[原文]王 命恐 雖見不飽 楢山越而 真木積 泉河乃 速瀬 <竿>刺渡 千速振 氏渡乃 多企都瀬乎 見乍渡而 近江道乃 相坂山丹 手向為 吾越徃者 樂浪乃 志我能韓埼 幸有者 又反見 道前 八十阿毎 嗟乍 吾過徃者 弥遠丹 里離来奴 弥高二 山<文>越来奴 劔刀 鞘従拔出而 伊香胡山 如何吾将為 徃邊不知而 ","#[訓読]大君の 命畏み 見れど飽かぬ 奈良山越えて 真木積む 泉の川の 早き瀬を 棹さし渡り ちはやぶる 宇治の渡りの たきつ瀬を 見つつ渡りて 近江道の 逢坂山に 手向けして 我が越え行けば 楽浪の 志賀の唐崎 幸くあらば またかへり見む 道の隈 八十隈ごとに 嘆きつつ 我が過ぎ行けば いや遠に 里離り来ぬ いや高に 山も越え来ぬ 剣太刀 鞘ゆ抜き出でて 伊香胡山 いかにか我がせむ ゆくへ知らずて ","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,みれどあかぬ,ならやまこえて,まきつむ,いづみのかはの,はやきせを,さをさしわたり,ちはやぶる,うぢのわたりの,たきつせを,みつつわたりて,あふみぢの,あふさかやまに,たむけして,わがこえゆけば,ささなみの,しがのからさき,さきくあらば,またかへりみむ,みちのくま,やそくまごとに,なげきつつ,わがすぎゆけば,いやとほに,さとさかりきぬ,いやたかに,やまもこえきぬ,つるぎたち,さやゆぬきいでて,いかごやま,いかにかわがせむ,ゆくへしらずて","#[左注](右二首)","#[校異]t -> 竿 [元][天][紀] / 父 -> 文 [西(訂正)][元][天][細]","#[事項],雑歌,枕詞,地名,道行き,奈良,京都,滋賀,序詞,羈旅,旅愁","#[訓異]
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
みれどあかぬ,[寛]みれとあかす,
ならやまこえて[寛],
まきつむ,[寛]まきつめる,
いづみのかはの,[寛]いつみのかはの,
はやきせを[寛],
さをさしわたり[寛],
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
うぢのわたりの,[寛]うちのわたりの,
たきつせを[寛],
みつつわたりて[寛],
あふみぢの,[寛]あふみちの,
あふさかやまに[寛],
たむけして[寛],
わがこえゆけば,[寛]わかこえゆけは,
ささなみの[寛],
しがのからさき,[寛]しかのからさき,
さきくあらば,[寛]さきくあらは,
またかへりみむ[寛],
みちのくま[寛],
やそくまごとに,[寛]やそくまことに,
なげきつつ,[寛]なけきつつ,
わがすぎゆけば,[寛]わかすきゆけは,
いやとほに[寛],
さとさかりきぬ[寛],
いやたかに[寛],
やまもこえきぬ[寛],
つるぎたち,[寛]つるきたち,
さやゆぬきいでて,[寛]さやをぬきいてて,
いかごやま,[寛]いかこやま,
いかにかわがせむ,[寛]いかかわかせむ,
ゆくへしらずて,[寛]ゆくへしらすて,
" "#[番号]13/3241","#[題詞]反歌","#[原文]天地乎 <歎>乞祷 幸有者 又<反>見 思我能韓埼","#[訓読]天地を嘆き祈ひ祷み幸くあらばまたかへり見む志賀の唐崎","#[仮名],あめつちを,なげきこひのみ,さきくあらば,またかへりみむ,しがのからさき","#[左注]右二首 但此短歌者 或書云穂積朝臣老配於佐渡之時作歌者也","#[校異]難 -> 歎 [万葉考] / <> -> 反 [西(右書)][元][天][類] / 者 [西(朱書消去)]","#[事項],雑歌,地名,滋賀,羈旅,手向け,穂積老,","#[訓異]
あめつちを[寛],
なげきこひのみ,[寛]こひねきかたし,
さきくあらば,[寛]さきくあらは,
またかへりみむ[寛],
しがのからさき,[寛]しかのからさき,
" "#[番号]13/3242","#[題詞]","#[原文]百岐年 三野之國之 高北之 八十一隣之宮尓 日向尓 行靡闕矣 有登聞而 吾通<道>之 奥十山 <三>野之山 <靡>得 人雖跡 如此依等 人雖衝 無意山之 奥礒山 三野之山 ","#[訓読]ももきね 美濃の国の 高北の くくりの宮に 日向ひに 行靡闕矣 ありと聞きて 我が行く道の 奥十山 美濃の山 靡けと 人は踏めども かく寄れと 人は突けども 心なき山の 奥十山 美濃の山 ","#[仮名],ももきね,みののくにの,たかきたの,くくりのみやに,ひむかひに,*******,ありとききて,わがゆくみちの,おきそやま,みののやま,なびけと,ひとはふめども,かくよれと,ひとはつけども,こころなきやまの,おきそやま,みののやま","#[左注]右一首","#[校異]道 [西(上書訂正)][元][天][紀] / <> -> 三 [西(右書)][元][天][紀] / 靡 [西(上書訂正)][元][天][紀]","#[事項],雑歌,枕詞,地名,岐阜,羈旅,旅愁,難訓,景行天皇","#[訓異]
ももきね,[寛]ももくきね,
みののくにの[寛],
たかきたの[寛],
くくりのみやに[寛],
ひむかひに[寛],
*******,[寛]ゆきなひかくを,
ありとききて[寛],
わがゆくみちの,[寛]わかかよひちの,
おきそやま[寛],
みののやま[寛],
なびけと,[寛]なひかすと,
ひとはふめども,[寛]ひとはふめとも,
かくよれと[寛],
ひとはつけども,[寛]ひとはつけとも,
こころなきやまの[寛],
おきそやま[寛],
みののやま[寛],
" "#[番号]13/3243","#[題詞]","#[原文]處女等之 <麻>笥垂有 續麻成 長門之浦丹 朝奈祇尓 満来塩之 夕奈祇尓 依来波乃 <彼>塩乃 伊夜益舛二 彼浪乃 伊夜敷布二 吾妹子尓 戀乍来者 阿胡乃海之 荒礒之於丹 濱菜採 海部處女等 纓有 領巾文光蟹 手二巻流 玉毛湯良羅尓 白栲乃 袖振所見津 相思羅霜 ","#[訓読]娘子らが 麻笥に垂れたる 続麻なす 長門の浦に 朝なぎに 満ち来る潮の 夕なぎに 寄せ来る波の その潮の いやますますに その波の いやしくしくに 我妹子に 恋ひつつ来れば 阿胡の海の 荒礒の上に 浜菜摘む 海人娘子らが うながせる 領布も照るがに 手に巻ける 玉もゆららに 白栲の 袖振る見えつ 相思ふらしも ","#[仮名],をとめらが,をけにたれたる,うみをなす,ながとのうらに,あさなぎに,みちくるしほの,ゆふなぎに,よせくるなみの,そのしほの,いやますますに,そのなみの,いやしくしくに,わぎもこに,こひつつくれば,あごのうみの,ありそのうへに,はまなつむ,あまをとめらが,うなげる,ひれもてるがに,てにまける,たまもゆららに,しろたへの,そでふるみえつ,あひおもふらしも","#[左注](右二首)","#[校異]床 -> 麻 [元][天][類] / 波 -> 彼 [類] / 舛 [元][天][類](塙) 升","#[事項],雑歌,序詞,地名,広島,山口,倉橋島,桂浜,望郷,土地讃美,恋情,羈旅","#[訓異]
をとめらが,[寛]をとめらか,
をけにたれたる[寛],
うみをなす[寛],
ながとのうらに,[寛]なかとのうらに,
あさなぎに,[寛]あさなきに,
みちくるしほの[寛],
ゆふなぎに,[寛]ゆふなきに,
よせくるなみの,[寛]よりくるなみの,
そのしほの,[寛]なみしほの,
いやますますに[寛],
そのなみの[寛],
いやしくしくに[寛],
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こひつつくれば,[寛]こひつつくれは,
あごのうみの,[寛]あこのうみの,
ありそのうへに,[寛]あらいそのうへに,
はまなつむ[寛],
あまをとめらが,[寛]あまをとめらか,
うなげる,[寛]まつひたる,
ひれもてるがに,[寛]ひれもてるかに,
てにまける[寛],
たまもゆららに[寛],
しろたへの[寛],
そでふるみえつ,[寛]そてふりみせつ,
あひおもふらしも[寛],
" "#[番号]13/3244","#[題詞]反歌","#[原文]阿胡乃海之 荒礒之上之 少浪 吾戀者 息時毛無","#[訓読]阿胡の海の荒礒の上のさざれ波我が恋ふらくはやむ時もなし","#[仮名],あごのうみの,ありそのうへの,さざれなみ,あがこふらくは,やむときもなし","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],雑歌,羈旅,地名,呉市,広島,望郷,羈旅,恋情","#[訓異]
あごのうみの,[寛]あこのうみの,
ありそのうへの,[寛]あらいそのうへの,
さざれなみ,[寛]ささらなみ,
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
やむときもなし[寛],
" "#[番号]13/3245","#[題詞]","#[原文]天橋<文> 長雲鴨 高山<文> 高雲鴨 月夜見乃 持有越水 伊取来而 公奉而 越得之<旱>物 ","#[訓読]天橋も 長くもがも 高山も 高くもがも 月夜見の 持てるをち水 い取り来て 君に奉りて をち得てしかも ","#[仮名],あまはしも,ながくもがも,たかやまも,たかくもがも,つくよみの,もてるをちみづ,いとりきて,きみにまつりて,をちえてしかも","#[左注](右二首)","#[校異]父 -> 文 [西(訂正)][元][天][紀] / 父 -> 文 [西(訂正)][元][天][紀] / 早 -> 旱 [元]","#[事項],雑歌,寿歌,若返り","#[訓異]
あまはしも[寛],
ながくもがも,[寛]なかくもかも,
たかやまも[寛],
たかくもがも,[寛]たかくもかも,
つくよみの,[寛]つきよみの,
もてるをちみづ,[寛]もちこせるみつ,
いとりきて[寛],
きみにまつりて,[寛]きみはつかへて,
をちえてしかも,[寛]こゆるとしはやも,
" "#[番号]13/3246","#[題詞]反歌","#[原文]天有哉 月日如 吾思有 君之日異 老落惜文","#[訓読]天なるや月日のごとく我が思へる君が日に異に老ゆらく惜しも","#[仮名],あめなるや,つきひのごとく,あがおもへる,きみがひにけに,おゆらくをしも","#[左注]右二首","#[校異]君 [元][天][類](塙)(楓) 公","#[事項],雑歌,寿歌,若返り","#[訓異]
あめなるや,[寛]あめにあるや,
つきひのごとく,[寛]つきひのことく,
あがおもへる,[寛]わかおもへる,
きみがひにけに,[寛]きみかひにけに,
おゆらくをしも,[寛]おいらくをしも,
" "#[番号]13/3247","#[題詞]","#[原文]沼名河之 底奈流玉 求而 得之玉可毛 拾而 得之玉可毛 安多良思吉 君之 老落惜毛 ","#[訓読]沼名川の 底なる玉 求めて 得し玉かも 拾ひて 得し玉かも あたらしき 君が 老ゆらく惜しも ","#[仮名],ぬながはの,そこなるたま,もとめて,えしたまかも,ひりひて,えしたまかも,あたらしき,きみが,おゆらくをしも","#[左注]右一首","#[校異]","#[事項],雑歌,地名,新潟,姫川,序詞,寿歌,老","#[訓異]
ぬながはの,[寛]ぬなかはの,
そこなるたま,[寛]そこなるたまは,
もとめて,[寛]もとめつつ,
えしたまかも,[寛]えてしたまかも,
ひりひて,[寛]ひろひつつ,
えしたまかも,[寛]えてしたまかも,
あたらしき[寛],
きみが,[寛]きみか,
おゆらくをしも,[寛]おいらくをしも,
" "#[番号]13/3248","#[題詞]相聞","#[原文]式嶋之 山跡之土丹 人多 満而雖有 藤浪乃 思纒 若草乃 思就西 君<目>二 戀八将明 長此夜乎 ","#[訓読]磯城島の 大和の国に 人さはに 満ちてあれども 藤波の 思ひまつはり 若草の 思ひつきにし 君が目に 恋ひや明かさむ 長きこの夜を ","#[仮名],しきしまの,やまとのくにに,ひとさはに,みちてあれども,ふぢなみの,おもひまつはり,わかくさの,おもひつきにし,きみがめに,こひやあかさむ,ながきこのよを","#[左注](右二首)","#[校異]自 -> 目 [元][類]","#[事項],相聞,女歌,地名,日本,嘆息,恋情","#[訓異]
しきしまの[寛],
やまとのくにに[寛],
ひとさはに[寛],
みちてあれども,[寛]いはみてあれと,
ふぢなみの,[寛]ふちなみの,
おもひまつはり,[寛]おもひまとひし,
わかくさの[寛],
おもひつきにし[寛],
きみがめに,[寛]きみよりに,
こひやあかさむ[寛],
ながきこのよを,[寛]なかきこのよを,
" "#[番号]13/3249","#[題詞]反歌","#[原文]式嶋乃 山跡乃土丹 人二 有年念者 難可将嗟","#[訓読]磯城島の大和の国に人ふたりありとし思はば何か嘆かむ","#[仮名],しきしまの,やまとのくにに,ひとふたり,ありとしおもはば,なにかなげかむ","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],相聞,地名,日本,女歌,嘆息,恋情","#[訓異]
しきしまの[寛],
やまとのくにに[寛],
ひとふたり[寛],
ありとしおもはば,[寛]ありとしおもはは,
なにかなげかむ,[寛]なにかなけかむ,
" "#[番号]13/3250","#[題詞]","#[原文]蜻嶋 倭之國者 神柄跡 言擧不為國 雖然 吾者事上為 天地之 神<文>甚 吾念 心不知哉 徃影乃 月<文>經徃者 玉限 日<文>累 念戸鴨 胸不安 戀烈鴨 心痛 末逐尓 君丹不會者 吾命乃 生極 戀乍<文> 吾者将度 犬馬鏡 正目君乎 相見天者社 吾戀八鬼目 ","#[訓読]蜻蛉島 大和の国は 神からと 言挙げせぬ国 しかれども 我れは言挙げす 天地の 神もはなはだ 我が思ふ 心知らずや 行く影の 月も経ゆけば 玉かぎる 日も重なりて 思へかも 胸の苦しき 恋ふれかも 心の痛き 末つひに 君に逢はずは 我が命の 生けらむ極み 恋ひつつも 我れは渡らむ まそ鏡 直目に君を 相見てばこそ 我が恋やまめ ","#[仮名],あきづしま,やまとのくには,かむからと,ことあげせぬくに,しかれども,われはことあげす,あめつちの,かみもはなはだ,わがおもふ,こころしらずや,ゆくかげの,つきもへゆけば,たまかぎる,ひもかさなりて,おもへかも,むねのくるしき,こふれかも,こころのいたき,すゑつひに,きみにあはずは,わがいのちの,いけらむきはみ,こひつつも,われはわたらむ,まそかがみ,ただめにきみを,あひみてばこそ,あがこひやまめ","#[左注](右<五>首)","#[校異]父 -> 文 [元][天][紀] / 父 -> 文 [西(訂正)][元][天][紀] / 父 -> 文 [西(訂正)][元][天][紀] / 父 -> 文 [元][天][紀]","#[事項],相聞,地名,日本,女歌,恋情,送別","#[訓異]
あきづしま,[寛]あきつしま,
やまとのくには[寛],
かむからと,[寛]かみからと,
ことあげせぬくに,[寛]ことあけせぬくに,
しかれども,[寛]しかれとも,
われはことあげす,[寛]われはことあけす,
あめつちの[寛],
かみもはなはだ,[寛]かみもはなはた,
わがおもふ,[寛]わかおもふ,
こころしらずや,[寛]こころしらすや,
ゆくかげの,[寛]ゆくかけの,
つきもへゆけば,[寛]つきもへゆけは,
たまかぎる,[寛]たまきはる,
ひもかさなりて[寛],
おもへかも[寛],
むねのくるしき,[寛]むねやすからす,
こふれかも[寛],
こころのいたき,[寛]こころいたまし,
すゑつひに,[寛]すゑつゐに,
きみにあはずは,[寛]きみにあはすは,
わがいのちの,[寛]わかいのちの,
いけらむきはみ[寛],
こひつつも[寛],
われはわたらむ[寛],
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
ただめにきみを,[寛]まさめにきみを,
あひみてばこそ,[寛]あひみてはこそ,
あがこひやまめ,[寛]わかこひやまめ,
" "#[番号]13/3251","#[題詞]反歌","#[原文]大舟能 思憑 君故尓 盡心者 惜雲梨","#[訓読]大船の思ひ頼める君ゆゑに尽す心は惜しけくもなし","#[仮名],おほぶねの,おもひたのめる,きみゆゑに,つくすこころは,をしけくもなし","#[左注](右<五>首)","#[校異]","#[事項],相聞,女歌,恋情,枕詞,送別","#[訓異]
おほぶねの,[寛]おほふねの,
おもひたのめる[寛],
きみゆゑに,[寛]きみゆへに,
つくすこころは[寛],
をしけくもなし[寛],
" "#[番号]13/3252","#[題詞]","#[原文]久堅之 王都乎置而 草枕 羈徃君乎 何時可将待","#[訓読]ひさかたの都を置きて草枕旅行く君をいつとか待たむ","#[仮名],ひさかたの,みやこをおきて,くさまくら,たびゆくきみを,いつとかまたむ","#[左注](右<五>首)","#[校異]","#[事項],相聞,枕詞,送別,女歌,恋情","#[訓異]
ひさかたの[寛],
みやこをおきて[寛],
くさまくら[寛],
たびゆくきみを,[寛]たひゆくきみを,
いつとかまたむ,[寛]いつしかまたむ,
" "#[番号]13/3253","#[題詞]柿本朝臣人麻呂歌集歌曰","#[原文]葦原 水穂國者 神在随 事擧不為國 雖然 辞擧叙吾為 言幸 真福座跡 恙無 福座者 荒礒浪 有毛見登 百重波 千重浪尓敷 言上為吾 <[言上為吾]>","#[訓読]葦原の 瑞穂の国は 神ながら 言挙げせぬ国 しかれども 言挙げぞ我がする 言幸く ま幸くませと 障みなく 幸くいまさば 荒礒波 ありても見むと 百重波 千重波しきに 言挙げす我れは <[言挙げす我れは]>","#[仮名],あしはらの,みづほのくには,かむながら,ことあげせぬくに,しかれども,ことあげぞわがする,ことさきく,まさきくませと,つつみなく,さきくいまさば,ありそなみ,ありてもみむと,ももへなみ,ちへなみしきに,ことあげすわれは [ことあげすわれは]","#[左注](右<五>首)","#[校異]<> -> [言上為吾] [元][天][類](塙)(楓) ","#[事項],相聞,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,枕詞,送別,遣唐使","#[訓異]
あしはらの[寛],
みづほのくには,[寛]みつほのくには,
かむながら,[寛]かみのまに,
ことあげせぬくに,[寛]ことあけせぬくに,
しかれども,[寛]しかれとも,
ことあげぞわがする,[寛]ことあけそわかする,
ことさきく[寛],
まさきくませと[寛],
つつみなく,[寛]つつかなく,
さきくいまさば,[寛]さきくいまさは,
ありそなみ,[寛]あらいそなみ,
ありてもみむと[寛],
ももへなみ[寛],
ちへなみしきに,[寛]ちへなみにしき,
ことあげすわれは,[寛]ことあけするわれ,
[ことあげすわれは],
" "#[番号]13/3254","#[題詞]反歌","#[原文]志貴嶋 倭國者 事霊之 所佐國叙 真福在与具","#[訓読]磯城島の大和の国は言霊の助くる国ぞま幸くありこそ","#[仮名],しきしまの,やまとのくには,ことだまの,たすくるくにぞ,まさきくありこそ","#[左注]右<五>首","#[校異]佐 [元] 佑 / 三 -> 五 [西(訂正)][元][天]","#[事項],相聞,枕詞,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,送別,遣唐使","#[訓異]
しきしまの[寛],
やまとのくには[寛],
ことだまの,[寛]ことたまの,
たすくるくにぞ,[寛]たすくるくにそ,
まさきくありこそ,[寛]まさきくあれよく,
" "#[番号]13/3255","#[題詞]","#[原文]従古 言續来口 戀為者 不安物登 玉緒之 継而者雖云 處女等之 心乎胡粉 其将知 因之無者 夏麻引 命<方>貯 借薦之 心文小竹荷 人不知 本名曽戀流 氣之緒丹四天 ","#[訓読]古ゆ 言ひ継ぎけらく 恋すれば 苦しきものと 玉の緒の 継ぎては言へど 娘子らが 心を知らに そを知らむ よしのなければ 夏麻引く 命かたまけ 刈り薦の 心もしのに 人知れず もとなぞ恋ふる 息の緒にして ","#[仮名],いにしへゆ,いひつぎけらく,こひすれば,くるしきものと,たまのをの,つぎてはいへど,をとめらが,こころをしらに,そをしらむ,よしのなければ,なつそびく,いのちかたまけ,かりこもの,こころもしのに,ひとしれず,もとなぞこふる,いきのをにして","#[左注](右三首)","#[校異]号 -> 方 [元][天]","#[事項],相聞,枕詞,恋情","#[訓異]
いにしへゆ,[寛]むかしより,
いひつぎけらく,[寛]いひつきくらく,
こひすれば,[寛]こひすれは,
くるしきものと,[寛]やすからめものと,
たまのをの[寛],
つぎてはいへど,[寛]つきてはいへと,
をとめらが,[寛]をとめらか,
こころをしらに,[寛]こころをくたき,
そをしらむ[寛],
よしのなければ,[寛]よしのなけれは,
なつそびく,[寛]なつそひく,
いのちかたまけ,[寛]みことをつみて,
かりこもの[寛],
こころもしのに[寛],
ひとしれず,[寛]ひとしれす,
もとなぞこふる,[寛]もとなそこふる,
いきのをにして[寛],
" "#[番号]13/3256","#[題詞]反歌","#[原文]數々丹 不思人z 雖有 ま<文>吾者 忘枝沼鴨","#[訓読]しくしくに思はず人はあるらめどしましくも我は忘らえぬかも","#[仮名],しくしくに,おもはずひとは,あるらめど,しましくもわは,わすらえぬかも","#[左注](右三首)","#[校異]父 -> 文 [元][天][紀]","#[事項],相聞,恋情,片思い","#[訓異]
しくしくに,[寛]かすかすに,
おもはずひとは,[寛]おもはぬひとは,
あるらめど,[寛]ありといへと,
しましくもわは,[寛]しはしもわれは,
わすらえぬかも,[寛]わすれえぬかも,
" "#[番号]13/3257","#[題詞]","#[原文]直不来 自此巨勢道柄 石椅跡 名積序吾来 戀天窮見","#[訓読]直に来ずこゆ巨勢道から岩せ踏みなづみぞ我が来し恋ひてすべなみ","#[仮名],ただにこず,こゆこせぢから,いはせふみ,なづみぞわがこし,こひてすべなみ","#[左注]或本以此歌一首為之紀伊國之 濱尓縁云 鰒珠 拾尓登謂而 徃之君 何時到来歌之反歌也 具見下也 <但>依古本亦<累>載茲 / 右三首","#[校異]<> -> 但 [元][天][古] / 累 [西(上書訂正)][元][天][古]","#[事項],相聞,地名,奈良,恋情,異伝","#[訓異]
ただにこず,[寛]たたにこぬ,
こゆこせぢから,[寛]このこせちから,
いはせふみ,[寛]いしはしと,
なづみぞわがこし,[寛]なつみそわかくる,
こひてすべなみ,[寛]こひてすへなみ,
" "#[番号]13/3257S","#[題詞]或本以此歌一首為之","#[原文]紀伊國之 濱尓縁云 鰒珠 拾尓登謂而 徃之君 何時到来 ","#[訓読]紀の国の 浜に寄るとふ あわび玉 拾ひにと言ひて 行きし君 いつ来まさむ ","#[仮名],きのくにの,はまによるとふ,あはびたま,ひりひにといひて,ゆきしきみ,いつきまさむ","#[左注]歌之反歌也 具見下也 <但>依古本亦<累>載茲 / 右三首","#[校異]乎 -> 少 [西(朱書訂正)][元][天]","#[事項],相聞,地名,和歌山,異伝","#[訓異]
きのくにの[寛],
はまによるとふ,[寛]はまによるといふ,
あはびたま,[寛]あはひたま,
ひりひにといひて,[寛]ひろひにといひて,
ゆきしきみ[寛],
いつきまさむ,[寛]いつきまさむと,
" "#[番号]13/3258","#[題詞]","#[原文]荒玉之 年者来去而 玉梓之 使之不来者 霞立 長春日乎 天地丹 思足椅 帶乳根笶 母之養蚕之 眉隠 氣衝渡 吾戀 心中<少> 人丹言 物西不有者 松根 松事遠 天傳 日之闇者 白木綿之 吾衣袖裳 通手沾沼 ","#[訓読]あらたまの 年は来ゆきて 玉梓の 使の来ねば 霞立つ 長き春日を 天地に 思ひ足らはし たらちねの 母が飼ふ蚕の 繭隠り 息づきわたり 我が恋ふる 心のうちを 人に言ふ ものにしあらねば 松が根の 待つこと遠み 天伝ふ 日の暮れぬれば 白栲の 我が衣手も 通りて濡れぬ ","#[仮名],あらたまの,としはきゆきて,たまづさの,つかひのこねば,かすみたつ,ながきはるひを,あめつちに,おもひたらはし,たらちねの,ははがかふこの,まよごもり,いきづきわたり,あがこふる,こころのうちを,ひとにいふ,ものにしあらねば,まつがねの,まつこととほみ,あまつたふ,ひのくれぬれば,しろたへの,わがころもでも,とほりてぬれぬ","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],相聞,枕詞,女歌,恋情,片思い","#[訓異]
あらたまの[寛],
としはきゆきて[寛],
たまづさの,[寛]たまつさの,
つかひのこねば,[寛]つかひのこねは,
かすみたつ[寛],
ながきはるひを,[寛]なかきはるひを,
あめつちに[寛],
おもひたらはし[寛],
たらちねの[寛],
ははがかふこの,[寛]ははのかふこの,
まよごもり,[寛]まゆこもり,
いきづきわたり,[寛]いきつきわたり,
あがこふる,[寛]わかこふる,
こころのうちを[寛],
ひとにいふ[寛],
ものにしあらねば,[寛]ものにしあらねは,
まつがねの,[寛]まつかねの,
まつこととほみ,[寛]まつこととほし,
あまつたふ[寛],
ひのくれぬれば,[寛]ひのくれぬれは,
しろたへの,[寛]しらゆふの,
わがころもでも,[寛]わかころもても,
とほりてぬれぬ[寛],
" "#[番号]13/3259","#[題詞]反歌","#[原文]如是耳師 相不思有者 天雲之 外衣君者 可有々来","#[訓読]かくのみし相思はずあらば天雲の外にぞ君はあるべくありける","#[仮名],かくのみし,あひおもはずあらば,あまくもの,よそにぞきみは,あるべくありける","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],相聞,枕詞,恋情,女歌","#[訓異]
かくのみし[寛],
あひおもはずあらば,[寛]あひおもはさらは,
あまくもの[寛],
よそにぞきみは,[寛]よそにそきみは,
あるべくありける,[寛]あるへかりける,
" "#[番号]13/3260","#[題詞]","#[原文]小<治>田之 年魚道之水乎 問無曽 人者は云 時自久曽 人者飲云 は人之 無間之如 飲人之 不時之如 吾妹子尓 吾戀良久波 已時毛無 ","#[訓読]小治田の 年魚道の水を 間なくぞ 人は汲むといふ 時じくぞ 人は飲むといふ 汲む人の 間なきがごと 飲む人の 時じきがごと 我妹子に 我が恋ふらくは やむ時もなし ","#[仮名],をはりだの,あゆぢのみづを,まなくぞ,ひとはくむといふ,ときじくぞ,ひとはのむといふ,くむひとの,まなきがごと,のむひとの,ときじきがごと,わぎもこに,あがこふらくは,やむときもなし","#[左注](右三首)","#[校異]沼 -> 治 [元][天][類]","#[事項],相聞,異伝,民謡,地名,明日香,恋情","#[訓異]
をはりだの,[寛]おぬまたの,
あゆぢのみづを,[寛]あゆちのみつを,
まなくぞ,[寛]ひまなくそ,
ひとはくむといふ,[寛]ひとはくむてふ,
ときじくぞ,[寛]ときしくそ,
ひとはのむといふ,[寛]ひとはのむてふ,
くむひとの[寛],
まなきがごと,[寛]ひまなきかこと,
のむひとの[寛],
ときじきがごと,[寛]ときなきかこと,
わぎもこに,[寛]わきもこに,
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
やむときもなし[寛],
" "#[番号]13/3261","#[題詞]反歌","#[原文]思遣 為便乃田付毛 今者無 於君不相而 <年>之歴去者","#[訓読]思ひ遣るすべのたづきも今はなし君に逢はずて年の経ぬれば","#[仮名],おもひやる,すべのたづきも,いまはなし,きみにあはずて,としのへぬれば","#[左注]今案 此反歌謂之於君不相者於理不合也 宣言於妹不相也 / (右三首)","#[校異]羊 -> 年 [西(訂正)][元][天][紀]","#[事項],相聞,恋情,女歌","#[訓異]
おもひやる[寛],
すべのたづきも,[寛]すへのたつきも,
いまはなし[寛],
きみにあはずて,[寛]きみにあはすて,
としのへぬれば,[寛]としのへぬれは,
" "#[番号]13/3261S","#[題詞](反歌)今案 此反歌謂之於君不相者於理不合也","#[原文]妹不相","#[訓読]妹に会わず","#[仮名],いもにあはず","#[左注]宣言於也 /(右三首)","#[校異]","#[事項],相聞,恋情,女歌,編纂者","#[訓異]
いもにあはず,
" "#[番号]13/3262","#[題詞]或本反歌曰","#[原文]ゐ垣 久時従 戀為者 吾帶緩 朝夕毎","#[訓読]瑞垣の久しき時ゆ恋すれば我が帯緩ふ朝宵ごとに","#[仮名],みづかきの,ひさしきときゆ,こひすれば,わがおびゆるふ,あさよひごとに","#[左注]右三首","#[校異]","#[事項],相聞,異伝,枕詞,恋情,遊仙窟,中国文学","#[訓異]
みづかきの,[寛]みつかきの,
ひさしきときゆ,[寛]ひさしきよより,
こひすれば,[寛]こひすれは,
わがおびゆるふ,[寛]わかおひゆるふ,
あさよひごとに,[寛]あさゆふことに,
" "#[番号]13/3263","#[題詞]","#[原文]己母理久乃 泊瀬之河之 上瀬尓 伊杭乎打 下湍尓 真杭乎挌 伊杭尓波 鏡乎懸 真杭尓波 真玉乎懸 真珠奈須 我念妹毛 鏡成 我念妹毛 有跡謂者社 國尓毛 家尓毛由可米 誰故可将行 ","#[訓読]こもりくの 泊瀬の川の 上つ瀬に 斎杭を打ち 下つ瀬に 真杭を打ち 斎杭には 鏡を懸け 真杭には 真玉を懸け 真玉なす 我が思ふ妹も 鏡なす 我が思ふ妹も ありといはばこそ 国にも 家にも行かめ 誰がゆゑか行かむ ","#[仮名],こもりくの,はつせのかはの,かみつせに,いくひをうち,しもつせに,まくひをうち,いくひには,かがみをかけ,まくひには,またまをかけ,またまなす,あがおもふいもも,かがみなす,あがおもふいもも,ありといはばこそ,くににも,いへにもゆかめ,たがゆゑかゆかむ","#[左注]檢古事記曰 件歌者木梨之軽太子自死之時所作者也 / (右三首)","#[校異]","#[事項],相聞,地名,桜井,奈良,歌語り,悲別,恋情,木梨軽太子,伝承","#[訓異]
こもりくの[寛],
はつせのかはの[寛],
かみつせに[寛],
いくひをうち[寛],
しもつせに[寛],
まくひをうち[寛],
いくひには[寛],
かがみをかけ,[寛]かかみをかけ,
まくひには[寛],
またまをかけ[寛],
またまなす[寛],
あがおもふいもも,[寛]わかおもふいもも,
かがみなす,[寛]かかみなす,
あがおもふいもも,[寛]わかおもふいもも,
ありといはばこそ,[寛]ありといははこそ,
くににも[寛],
いへにもゆかめ[寛],
たがゆゑかゆかむ,[寛]たれゆへかゆかむ,
" "#[番号]13/3264","#[題詞]反歌","#[原文]年渡 麻弖尓毛人者 有云乎 何時之間曽母 吾戀尓来","#[訓読]年渡るまでにも人はありといふをいつの間にぞも我が恋ひにける","#[仮名],としわたる,までにもひとは,ありといふを,いつのまにぞも,あがこひにける","#[左注](右三首)","#[校異]","#[事項],相聞,恋情,七夕","#[訓異]
としわたる[寛],
までにもひとは,[寛]まてにもひとは,
ありといふを[寛],
いつのまにぞも,[寛]いつのまにそも,
あがこひにける,[寛]わかこひにける,
" "#[番号]13/3265","#[題詞]或書反歌曰","#[原文]世間乎 倦迹思而 家出為 吾哉難二加 還而将成","#[訓読]世の中を憂しと思ひて家出せし我れや何にか還りてならむ","#[仮名],よのなかを,うしとおもひて,いへでせし,われやなににか,かへりてならむ","#[左注]右三首","#[校異]","#[事項],相聞,異伝,嘆息","#[訓異]
よのなかを[寛],
うしとおもひて[寛],
いへでせし,[寛]いへてせし,
われやなににか[寛],
かへりてならむ[寛],
" "#[番号]13/3266","#[題詞]","#[原文]春去者 花咲乎呼里 秋付者 丹之穂尓黄色 味酒乎 神名火山之 帶丹為留 明日香之河乃 速瀬尓 生玉藻之 打靡 情者因而 朝露之 消者可消 戀久毛 知久毛相 隠都麻鴨 ","#[訓読]春されば 花咲ををり 秋づけば 丹のほにもみつ 味酒を 神奈備山の 帯にせる 明日香の川の 早き瀬に 生ふる玉藻の うち靡き 心は寄りて 朝露の 消なば消ぬべく 恋ひしくも しるくも逢へる 隠り妻かも ","#[仮名],はるされば,はなさきををり,あきづけば,にのほにもみつ,うまさけを,かむなびやまの,おびにせる,あすかのかはの,はやきせに,おふるたまもの,うちなびき,こころはよりて,あさつゆの,けなばけぬべく,こひしくも,しるくもあへる,こもりづまかも","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],相聞,恋情,地名,明日香,奈良,枕詞,序詞","#[訓異]
はるされば,[寛]はるされは,
はなさきををり[寛],
あきづけば,[寛]あきつけは,
にのほにもみつ,[寛]にのほにきはむ,
うまさけを,[寛]うまさかを,
かむなびやまの,[寛]かみなひやまの,
おびにせる,[寛]おひにせる,
あすかのかはの[寛],
はやきせに[寛],
おふるたまもの[寛],
うちなびき,[寛]うちなひき,
こころはよりて[寛],
あさつゆの[寛],
けなばけぬべく,[寛]けなはけぬへく,
こひしくも,[寛]こふらくも,
しるくもあへる[寛],
こもりづまかも,[寛]こもりつまかも,
" "#[番号]13/3267","#[題詞]反歌","#[原文]明日香河 瀬湍之珠藻之 打靡 情者妹尓 <因>来鴨","#[訓読]明日香川瀬々の玉藻のうち靡き心は妹に寄りにけるかも","#[仮名],あすかがは,せぜのたまもの,うちなびき,こころはいもに,よりにけるかも","#[左注]右二首","#[校異]自 -> 因 [天][類][紀]","#[事項],相聞,地名,明日香,奈良,恋情,序詞","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
せぜのたまもの,[寛]せせのたまもの,
うちなびき,[寛]うちなひき,
こころはいもに[寛],
よりにけるかも[寛],
" "#[番号]13/3268","#[題詞]","#[原文]三諸之 神奈備山従 登能陰 雨者落来奴 雨霧相 風左倍吹奴 大口乃 真神之原従 思管 還尓之人 家尓到伎也 ","#[訓読]みもろの 神奈備山ゆ との曇り 雨は降り来ぬ 天霧らひ 風さへ吹きぬ 大口の 真神の原ゆ 思ひつつ 帰りにし人 家に至りきや ","#[仮名],みもろの,かむなびやまゆ,とのぐもり,あめはふりきぬ,あまぎらひ,かぜさへふきぬ,おほくちの,まかみのはらゆ,おもひつつ,かへりにしひと,いへにいたりきや","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],相聞,地名,三輪,明日香,奈良,女歌","#[訓異]
みもろの,[寛]みむろの,
かむなびやまゆ,[寛]かみなひやまに,
とのぐもり,[寛]とのくもり,
あめはふりきぬ[寛],
あまぎらひ,[寛]あまきりあひ,
かぜさへふきぬ,[寛]かせさへふきぬ,
おほくちの[寛],
まかみのはらゆ,[寛]まかみのはらに,
おもひつつ[寛],
かへりにしひと[寛],
いへにいたりきや[寛],
" "#[番号]13/3269","#[題詞]反歌","#[原文]還尓之 人乎念等 野干玉之 彼夜者吾毛 宿毛寐金<手>寸","#[訓読]帰りにし人を思ふとぬばたまのその夜は我れも寐も寝かねてき","#[仮名],かへりにし,ひとをおもふと,ぬばたまの,そのよはわれも,いもねかねてき","#[左注]右二首","#[校異]手 [西(上書訂正)][元][天][紀]","#[事項],相聞,枕詞,恋情,女歌","#[訓異]
かへりにし[寛],
ひとをおもふと[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
そのよはわれも[寛],
いもねかねてき[寛],
" "#[番号]13/3270","#[題詞]","#[原文]刺将焼 小屋之四忌屋尓 掻将棄 破薦乎敷而 所<挌>将折 鬼之四忌手乎 指易而 将宿君故 赤根刺 晝者終尓 野干玉之 夜者須柄尓 此床乃 比師跡鳴左右 嘆鶴鴨 ","#[訓読]さし焼かむ 小屋の醜屋に かき棄てむ 破れ薦を敷きて 打ち折らむ 醜の醜手を さし交へて 寝らむ君ゆゑ あかねさす 昼はしみらに ぬばたまの 夜はすがらに この床の ひしと鳴るまで 嘆きつるかも ","#[仮名],さしやかむ,こやのしこやに,かきうてむ,やれごもをしきて,うちをらむ,しこのしこてを,さしかへて,ぬらむきみゆゑ,あかねさす,ひるはしみらに,ぬばたまの,よるはすがらに,このとこの,ひしとなるまで,なげきつるかも","#[左注](右二首)","#[校異]掻 -> 挌 [元]","#[事項],相聞,枕詞,女歌,恋情,戯笑,宴席","#[訓異]
さしやかむ,[寛]さすやかむ,
こやのしこやに,[寛]こやのしきやに,
かきうてむ,[寛]かきすてむ,
やれごもをしきて,[寛]やれこもをしきて,
うちをらむ,[寛]かかれをれらむ,
しこのしこてを,[寛]おにのしきてを,
さしかへて[寛],
ぬらむきみゆゑ,[寛]ねなむきみゆへ,
あかねさす[寛],
ひるはしみらに[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よるはすがらに,[寛]よるはすからに,
このとこの[寛],
ひしとなるまで,[寛]ひしとなるまて,
なげきつるかも,[寛]なけきつるかも,
" "#[番号]13/3271","#[題詞]反歌","#[原文]我情 焼毛吾有 愛八師 君尓戀毛 我之心柄","#[訓読]我が心焼くも我れなりはしきやし君に恋ふるも我が心から","#[仮名],わがこころ,やくもわれなり,はしきやし,きみにこふるも,わがこころから","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],相聞,恋情,女歌","#[訓異]
わがこころ,[寛]わかこころ,
やくもわれなり[寛],
はしきやし,[寛]よしゑやし,
きみにこふるも[寛],
わがこころから,[寛]わかこころから,
" "#[番号]13/3272","#[題詞]","#[原文]打延而 思之小野者 不遠 其里人之 標結等 聞手師日従 立良久乃 田付毛不知 居久乃 於久鴨不知 親<之> 己<之>家尚乎 草枕 客宿之如久 思空 不安物乎 嗟空 過之不得物乎 天雲之 行莫々 蘆垣乃 思乱而 乱麻乃 麻笥乎無登 吾戀流 千重乃一重母 人不令知 本名也戀牟 氣之緒尓為而 ","#[訓読]うちはへて 思ひし小野は 遠からぬ その里人の 標結ふと 聞きてし日より 立てらくの たづきも知らず 居らくの 奥処も知らず にきびにし 我が家すらを 草枕 旅寝のごとく 思ふそら 苦しきものを 嘆くそら 過ぐしえぬものを 天雲の ゆくらゆくらに 葦垣の 思ひ乱れて 乱れ麻の をけをなみと 我が恋ふる 千重の一重も 人知れず もとなや恋ひむ 息の緒にして ","#[仮名],うちはへて,おもひしをのは,とほからぬ,そのさとびとの,しめゆふと,ききてしひより,たてらくの,たづきもしらず,をらくの,おくかもしらず,にきびにし,わがいへすらを,くさまくら,たびねのごとく,おもふそら,くるしきものを,なげくそら,すぐしえぬものを,あまくもの,ゆくらゆくらに,あしかきの,おもひみだれて,みだれをの,をけをなみと,あがこふる,ちへのひとへも,ひとしれず,もとなやこひむ,いきのをにして","#[左注](右二首)","#[校異]々 -> 之 [類] / <> -> 之 [元][天] / 麻笥 [元][天][類] 司","#[事項],相聞,恋情,失恋,枕詞","#[訓異]
うちはへて[寛],
おもひしをのは[寛],
とほからぬ,[寛]とほからす,
そのさとびとの,[寛]そのさとひとの,
しめゆふと[寛],
ききてしひより[寛],
たてらくの,[寛]たつらくの,
たづきもしらず,[寛]たつきもしらす,
をらくの,[寛]をるらくの,
おくかもしらず,[寛]おくかもしらす,
にきびにし,[寛]おやおやの,
わがいへすらを,[寛]さかいへすらを,
くさまくら[寛],
たびねのごとく,[寛]たひねのことく,
おもふそら[寛],
くるしきものを,[寛]やすからぬものを,
なげくそら,[寛]なけくそら,
すぐしえぬものを,[寛]すこしえぬものを,
あまくもの[寛],
ゆくらゆくらに,[寛]ゆかまくまくに,
あしかきの[寛],
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
みだれをの,[寛]みたれをの,
をけをなみと,[寛]をのけをなみと,
あがこふる,[寛]わかこふる,
ちへのひとへも[寛],
ひとしれず,[寛]ひとしれす,
もとなやこひむ[寛],
いきのをにして[寛],
" "#[番号]13/3273","#[題詞]反歌","#[原文]二無 戀乎思為者 常帶乎 三重可結 我身者成","#[訓読]二つなき恋をしすれば常の帯を三重結ぶべく我が身はなりぬ","#[仮名],ふたつなき,こひをしすれば,つねのおびを,みへむすぶべく,あがみはなりぬ","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],相聞,恋情,失恋,遊仙窟","#[訓異]
ふたつなき,[寛]ふたなみに,
こひをしすれば,[寛]こひをしすれは,
つねのおびを,[寛]つねのおひを,
みへむすぶべく,[寛]みへにゆふへく,
あがみはなりぬ,[寛]わかみはなりぬ,
" "#[番号]13/3274","#[題詞]","#[原文]為須部乃 田付S不知 石根乃 興凝敷道乎 石床笶 根延門S 朝庭 出居而嘆 夕庭 入居而思 白桍乃 吾衣袖S 折反 獨之寐者 野干玉 黒髪布而 人寐 味眠不睡而 大舟乃 徃良行羅二 思乍 吾睡夜等呼 <讀文>将敢鴨 ","#[訓読]為むすべの たづきを知らに 岩が根の こごしき道を 岩床の 根延へる門を 朝には 出で居て嘆き 夕には 入り居て偲ひ 白栲の 我が衣手を 折り返し ひとりし寝れば ぬばたまの 黒髪敷きて 人の寝る 味寐は寝ずて 大船の ゆくらゆくらに 思ひつつ 我が寝る夜らを 数みもあへむかも ","#[仮名],せむすべの,たづきをしらに,いはがねの,こごしきみちを,いはとこの,ねばへるかどを,あしたには,いでゐてなげき,ゆふへには,いりゐてしのひ,しろたへの,わがころもでを,をりかへし,ひとりしぬれば,ぬばたまの,くろかみしきて,ひとのぬる,うまいはねずて,おほぶねの,ゆくらゆくらに,おもひつつ,わがぬるよらを,よみもあへむかも","#[左注](右二首)","#[校異]續父 -> 讀文 [元][類]","#[事項],相聞,女歌,恋情,孤独,枕詞","#[訓異]
せむすべの,[寛]せむすへの,
たづきをしらに,[寛]たつきをしらに,
いはがねの,[寛]いはかねの,
こごしきみちを,[寛]ここしきみちを,
いはとこの[寛],
ねばへるかどを,[寛]ねはへるかとを,
あしたには,[寛]あさにはに,
いでゐてなげき,[寛]いてさてなけき,
ゆふへには,[寛]ゆふにはに,
いりゐてしのひ,[寛]いりゐておもひ,
しろたへの[寛],
わがころもでを,[寛]わかころもてを,
をりかへし[寛],
ひとりしぬれば,[寛]ひとりしぬれは,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
くろかみしきて[寛],
ひとのぬる[寛],
うまいはねずて,[寛]うまいはねすて,
おほぶねの,[寛]おほふねの,
ゆくらゆくらに[寛],
おもひつつ[寛],
わがぬるよらを,[寛]わかぬるよらを,
よみもあへむかも,[寛]つきもあへむかも,
" "#[番号]13/3275","#[題詞]反歌","#[原文]一眠 夜t跡 雖思 戀茂二 情利文梨","#[訓読]ひとり寝る夜を数へむと思へども恋の繁きに心どもなし","#[仮名],ひとりぬる,よをかぞへむと,おもへども,こひのしげきに,こころどもなし","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],相聞,恋情,女歌,孤独","#[訓異]
ひとりぬる[寛],
よをかぞへむと,[寛]よをかそへむと,
おもへども,[寛]おもへとも,
こひのしげきに,[寛]こひのしけきに,
こころどもなし,[寛]こころともなし,
" "#[番号]13/3276","#[題詞]","#[原文]百不足 山田道乎 浪雲乃 愛妻跡 不語 別之来者 速川之 徃<文>不知 衣袂笶 反裳不知 馬自物 立而爪衝 為須部乃 田付乎白粉 物部乃 八十乃心S 天地二 念足橋 玉相者 君来益八跡 吾嗟 八尺之嗟 玉<桙>乃 道来人乃 立留 何常問者 答遣 田付乎不知 散釣相 君名日者 色出 人<可>知 足日木能 山従出 月待跡 人者云而 君待吾乎 ","#[訓読]百足らず 山田の道を 波雲の 愛し妻と 語らはず 別れし来れば 早川の 行きも知らず 衣手の 帰りも知らず 馬じもの 立ちてつまづき 為むすべの たづきを知らに もののふの 八十の心を 天地に 思ひ足らはし 魂合はば 君来ますやと 我が嘆く 八尺の嘆き 玉桙の 道来る人の 立ち留まり いかにと問はば 答へ遣る たづきを知らに さ丹つらふ 君が名言はば 色に出でて 人知りぬべみ あしひきの 山より出づる 月待つと 人には言ひて 君待つ我れを ","#[仮名],ももたらず,やまたのみちを,なみくもの,うつくしづまと,かたらはず,わかれしくれば,はやかはの,ゆきもしらず,ころもでの,かへりもしらず,うまじもの,たちてつまづき,せむすべの,たづきをしらに,もののふの,やそのこころを,あめつちに,おもひたらはし,たまあはば,きみきますやと,わがなげく,やさかのなげき,たまほこの,みちくるひとの,たちとまり,いかにととはば,こたへやる,たづきをしらに,さにつらふ,きみがないはば,いろにいでて,ひとしりぬべみ,あしひきの,やまよりいづる,つきまつと,ひとにはいひて,きみまつわれを","#[左注](右二首)","#[校異]父 -> 文 [西(訂正)][元][天][類] / 杵 -> 桙 [天][類][温] / 不 -> 可 [類][紀][温]","#[事項],相聞,問答,枕詞,地名,桜井,奈良,女歌,歌劇","#[訓異]
ももたらず,[寛]ももたらす,
やまたのみちを[寛],
なみくもの[寛],
うつくしづまと,[寛]うつくしつまと,
かたらはず,[寛]かたらはて,
わかれしくれば,[寛]わかれしくれは,
はやかはの[寛],
ゆきもしらず,[寛]ゆくへもしらす,
ころもでの,[寛]ころもての,
かへりもしらず,[寛]かへるもしらす,
うまじもの,[寛]うましもの,
たちてつまづき,[寛]たちてつまつき,
せむすべの,[寛]せむすへの,
たづきをしらに,[寛]たつきをしらに,
もののふの[寛],
やそのこころを[寛],
あめつちに[寛],
おもひたらはし[寛],
たまあはば,[寛]たまあはは,
きみきますやと[寛],
わがなげく,[寛]わかなけく,
やさかのなげき,[寛]やさかのなけき,
たまほこの[寛],
みちくるひとの[寛],
たちとまり[寛],
いかにととはば,[寛]いかにととへは,
こたへやる[寛],
たづきをしらに,[寛]たつきをしらに,
さにつらふ[寛],
きみがないはば,[寛]きみかないはは,
いろにいでて,[寛]いろにいてて,
ひとしりぬべみ,[寛]ひとしりぬへみ,
あしひきの[寛],
やまよりいづる,[寛]やまよりいつる,
つきまつと[寛],
ひとにはいひて[寛],
きみまつわれを[寛],
" "#[番号]13/3277","#[題詞]反歌","#[原文]眠不睡 吾思君者 何處邊 今<夜>誰与可 雖待不来","#[訓読]寐も寝ずに我が思ふ君はいづくへに今夜誰れとか待てど来まさぬ","#[仮名],いもねずに,あがおもふきみは,いづくへに,こよひたれとか,まてどきまさぬ","#[左注]右二首","#[校異]身 -> 夜 [万葉考]","#[事項],相聞,女歌,恋情","#[訓異]
いもねずに,[寛]いをもねす,
あがおもふきみは,[寛]わかおもふきみは,
いづくへに,[寛]いつこにそ,
こよひたれとか,[寛]このみたれとか,
まてどきまさぬ,[寛]まてときまさぬ,
" "#[番号]13/3278","#[題詞]","#[原文]赤駒 厩立 黒駒 厩立而 彼乎飼 吾徃如 思妻 心乗而 高山 峯之手折丹 射目立 十六待如 床敷而 吾待君 犬莫吠行<年> ","#[訓読]赤駒を 馬屋に立て 黒駒を 馬屋に立てて そを飼ひ 我が行くがごと 思ひ妻 心に乗りて 高山の 嶺のたをりに 射目立てて 鹿猪待つがごと 床敷きて 我が待つ君を 犬な吠えそね ","#[仮名],あかごまを,うまやにたて,くろこまを,うまやにたてて,そをかひ,わがゆくがごと,おもひづま,こころにのりて,たかやまの,みねのたをりに,いめたてて,ししまつがごと,とこしきて,わがまつきみを,いぬなほえそね","#[左注](右二首)","#[校異]君 [元][天][類](塙)(楓) 公 / 羊 -> 年 [元][天][類]","#[事項],相聞,動物,問答,歌劇,女歌","#[訓異]
あかごまを,[寛]あかこまの,
うまやにたて,[寛]うまやをたて,
くろこまを,[寛]くろこまの,
うまやにたてて,[寛]うまやをたてて,
そをかひ,[寛]かれをかひ,
わがゆくがごと,[寛]わかゆくかこと,
おもひづま,[寛]おもひつま,
こころにのりて[寛],
たかやまの[寛],
みねのたをりに[寛],
いめたてて[寛],
ししまつがごと,[寛]ししまつかこと,
とこしきて[寛],
わがまつきみを,[寛]わかまつきみを,
いぬなほえそね,[寛]いぬなほえこそ,
" "#[番号]13/3279","#[題詞]反歌","#[原文]蘆垣之 末掻別而 君越跡 人丹勿告 事者棚知","#[訓読]葦垣の末かき分けて君越ゆと人にな告げそ事はたな知れ","#[仮名],あしかきの,すゑかきわけて,きみこゆと,ひとになつげそ,ことはたなしれ","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],相聞,女歌,恋情,人目","#[訓異]
あしかきの[寛],
すゑかきわけて[寛],
きみこゆと[寛],
ひとになつげそ,[寛]ひとになつけそ,
ことはたなしれ,[寛]ことはたなしり,
" "#[番号]13/3280","#[題詞]","#[原文]<妾>背兒者 雖待来不益 天原 振左氣見者 黒玉之 夜毛深去来 左夜深而 荒風乃吹者 立<待留> 吾袖尓 零雪者 凍渡奴 今更 公来座哉 左奈葛 後毛相得 名草武類 心乎持而 <二>袖持 床打拂 卯管庭 君尓波不相 夢谷 相跡所見社 天之足夜<乎> ","#[訓読]我が背子は 待てど来まさず 天の原 振り放け見れば ぬばたまの 夜も更けにけり さ夜更けて あらしの吹けば 立ち待てる 我が衣手に 降る雪は 凍りわたりぬ 今さらに 君来まさめや さな葛 後も逢はむと 慰むる 心を持ちて ま袖もち 床うち掃ひ うつつには 君には逢はず 夢にだに 逢ふと見えこそ 天の足り夜を ","#[仮名],わがせこは,まてどきまさず,あまのはら,ふりさけみれば,ぬばたまの,よもふけにけり,さよふけて,あらしのふけば,たちまてる,わがころもでに,ふるゆきは,こほりわたりぬ,いまさらに,きみきまさめや,さなかづら,のちもあはむと,なぐさむる,こころをもちて,まそでもち,とこうちはらひ,うつつには,きみにはあはず,いめにだに,あふとみえこそ,あめのたりよを","#[左注](右四首)","#[校異]妄 -> 妾 [元][天][紀] / 留待 -> 待留 [新校] / 三 -> 二 (塙) / 于 -> 乎 [元][天][類]","#[事項],相聞,枕詞,女歌,恋情","#[訓異]
わがせこは,[寛]わかせこは,
まてどきまさず,[寛]まてときまさす,
あまのはら[寛],
ふりさけみれば,[寛]ふりさけみれは,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よもふけにけり[寛],
さよふけて[寛],
あらしのふけば,[寛]あらしのふけは,
たちまてる,[寛]たちとまり,
わがころもでに,[寛]まつわかそてに,
ふるゆきは[寛],
こほりわたりぬ[寛],
いまさらに[寛],
きみきまさめや[寛],
さなかづら,[寛]さなかつら,
のちもあはむと[寛],
なぐさむる,[寛]なくさむる,
こころをもちて[寛],
まそでもち,[寛]みそてもて,
とこうちはらひ[寛],
うつつには[寛],
きみにはあはず,[寛]きみにはあはす,
いめにだに,[寛]ゆめにたに,
あふとみえこそ[寛],
あめのたりよを,[寛]あまのあしやに,
" "#[番号]13/3281","#[題詞]或本歌曰","#[原文]吾背子者 待跡不来 鴈音<文> 動而寒 烏玉乃 宵文深去来 左夜深跡 阿下乃吹者 立待尓 吾衣袖尓 置霜<文> 氷丹左叡渡 落雪母 凍渡奴 今更 君来目八 左奈葛 後<文>将會常 大舟乃 思憑迹 現庭 君者不相 夢谷 相所見欲 天之足夜尓 ","#[訓読]我が背子は 待てど来まさず 雁が音も 響みて寒し ぬばたまの 夜も更けにけり さ夜更くと あらしの吹けば 立ち待つに 我が衣手に 置く霜も 氷にさえわたり 降る雪も 凍りわたりぬ 今さらに 君来まさめや さな葛 後も逢はむと 大船の 思ひ頼めど うつつには 君には逢はず 夢にだに 逢ふと見えこそ 天の足り夜に ","#[仮名],わがせこは,まてどきまさず,かりがねも,とよみてさむし,ぬばたまの,よもふけにけり,さよふくと,あらしのふけば,たちまつに,わがころもでに,おくしもも,ひにさえわたり,ふるゆきも,こほりわたりぬ,いまさらに,きみきまさめや,さなかづら,のちもあはむと,おほぶねの,おもひたのめど,うつつには,きみにはあはず,いめにだに,あふとみえこそ,あめのたりよに","#[左注](右四首)","#[校異]毛 -> 文 [天][類][紀] / 父 -> 文 [西(訂正)][天][紀][温] / 父 -> 文 [西(訂正)][元][天][類]","#[事項],相聞,異伝,枕詞,恋情,女歌","#[訓異]
わがせこは,[寛]わかせこは,
まてどきまさず,[寛]まてときまさす,
かりがねも,[寛]かりかねも,
とよみてさむし[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よもふけにけり[寛],
さよふくと[寛],
あらしのふけば,[寛]あらしのふけは,
たちまつに[寛],
わがころもでに,[寛]わかころもてに,
おくしもも[寛],
ひにさえわたり,[寛]ひにさゑわたり,
ふるゆきも[寛],
こほりわたりぬ[寛],
いまさらに[寛],
きみきまさめや[寛],
さなかづら,[寛]さなかつら,
のちもあはむと[寛],
おほぶねの,[寛]おほふねの,
おもひたのめど,[寛]おもひたのめと,
うつつには[寛],
きみにはあはず,[寛]きみにはあはす,
いめにだに,[寛]ゆめにたに,
あふとみえこそ,[寛]あふとみまほし,
あめのたりよに,[寛]あまのあしやに,
" "#[番号]13/3282","#[題詞]反歌","#[原文]衣袖丹 山下吹而 寒夜乎 君不来者 獨鴨寐","#[訓読]衣手にあらしの吹きて寒き夜を君来まさずはひとりかも寝む","#[仮名],ころもでに,あらしのふきて,さむきよを,きみきまさずは,ひとりかもねむ","#[左注](右四首)","#[校異]","#[事項],相聞,女歌,恋情,孤独","#[訓異]
ころもでに,[寛]ころもてに,
あらしのふきて,[寛]やまおろしふきて,
さむきよを[寛],
きみきまさずは,[寛]きみきまさすは,
ひとりかもねむ[寛],
" "#[番号]13/3283","#[題詞]","#[原文]今更 戀友君<二> 相目八毛 眠夜乎不落 夢所見欲","#[訓読]今さらに恋ふとも君に逢はめやも寝る夜をおちず夢に見えこそ","#[仮名],いまさらに,こふともきみに,あはめやも,ぬるよをおちず,いめにみえこそ","#[左注]右四首","#[校異]尓 -> 二 [元][天]","#[事項],相聞,恋情,女歌","#[訓異]
いまさらに[寛],
こふともきみに[寛],
あはめやも[寛],
ぬるよをおちず,[寛]ぬるよをおちす,
いめにみえこそ,[寛]ゆめにみまほし,
" "#[番号]13/3284","#[題詞]","#[原文]菅根之 根毛一伏三向凝呂尓 吾念有 妹尓緑而者 言之禁毛 無在乞常 齋戸乎 石相穿居 竹珠乎 無間貫垂 天地之 神祇乎曽吾祈 甚毛為便無見 ","#[訓読]菅の根の ねもころごろに 我が思へる 妹によりては 言の忌みも なくありこそと 斎瓮を 斎ひ掘り据ゑ 竹玉を 間なく貫き垂れ 天地の 神をぞ我が祷む いたもすべなみ ","#[仮名],すがのねの,ねもころごろに,あがおもへる,いもによりては,ことのいみも,なくありこそと,いはひへを,いはひほりすゑ,たかたまを,まなくぬきたれ,あめつちの,かみをぞわがのむ,いたもすべなみ,,,,,,いもによりては,,,きみにより,きみがまにまに","#[左注]今案 不可言之因妹者 應謂之縁君也 何則反歌云<公>之随意焉 / (右五首)","#[校異]公 [西(上書訂正)][元][天][類]","#[事項],相聞,枕詞,人目,うわさ,恋情,掛け合い歌,神祭り","#[訓異]
すがのねの,[寛]すかのねの,
ねもころごろに,[寛]ねもころころに,
あがおもへる,[寛]わかおもへる,
いもによりては[寛],
ことのいみも[寛],
なくありこそと,[寛]なくてもかなと,
いはひへを[寛],
いはひほりすゑ,[寛]いはひほりすへ,
たかたまを[寛],
まなくぬきたれ[寛],
あめつちの[寛],
かみをぞわがのむ,[寛]かみのそわかいのる,
いたもすべなみ,[寛]いともすへなみ,
,,,,,いもによりては,
,,きみにより,
きみがまにまに,
" "#[番号]13/3285","#[題詞]反歌","#[原文]足千根乃 母尓毛不謂 L有之 心者縦 <公>之随意","#[訓読]たらちねの母にも言はずつつめりし心はよしゑ君がまにまに","#[仮名],たらちねの,ははにもいはず,つつめりし,こころはよしゑ,きみがまにまに","#[左注](右五首)","#[校異]君 -> 公 [元][天][紀]","#[事項],相聞,枕詞,女歌,掛け合い歌,恋情","#[訓異]
たらちねの[寛],
ははにもいはず,[寛]ははにもいはす,
つつめりし[寛],
こころはよしゑ,[寛]こころはゆるす,
きみがまにまに,[寛]きみかまにまに,
" "#[番号]13/3286","#[題詞]或本歌曰","#[原文]玉手<次> 不懸時無 吾念有 君尓依者 倭<文>幣乎 手取持而 竹珠S 之自二貫垂 天地之 神S曽吾乞 痛毛須部奈見 ","#[訓読]玉たすき 懸けぬ時なく 我が思へる 君によりては しつ幣を 手に取り持ちて 竹玉を 繁に貫き垂れ 天地の 神をぞ我が祷む いたもすべなみ ","#[仮名],たまたすき,かけぬときなく,あがおもへる,きみによりては,しつぬさを,てにとりもちて,たかたまを,しじにぬきたれ,あめつちの,かみをぞわがのむ,いたもすべなみ","#[左注](右五首)","#[校異]吹 -> 次 [元][天][温] / 父 -> 文 [元]","#[事項],相聞,女歌,恋情,神祭り","#[訓異]
たまたすき[寛],
かけぬときなく[寛],
あがおもへる,[寛]わかおもへる,
きみによりては[寛],
しつぬさを[寛],
てにとりもちて[寛],
たかたまを[寛],
しじにぬきたれ,[寛]ししにぬきたれ,
あめつちの[寛],
かみをぞわがのむ,[寛]かみをそわかこふ,
いたもすべなみ,[寛]いたもすへなみ,
" "#[番号]13/3287","#[題詞]反歌","#[原文]乾坤乃 神乎祷而 吾戀 公以必 不相在目八","#[訓読]天地の神を祈りて我が恋ふる君いかならず逢はずあらめやも","#[仮名],あめつちの,かみをいのりて,あがこふる,きみいかならず,あはずあらめやも","#[左注](右五首)","#[校異]","#[事項],相聞,女歌,恋情,神祭り","#[訓異]
あめつちの[寛],
かみをいのりて[寛],
あがこふる,[寛]わかこふる,
きみいかならず,[寛]きみにかならす,
あはずあらめやも,[寛]あはさらめやも,
" "#[番号]13/3288","#[題詞]或本歌曰","#[原文]大船之 思憑而 木<妨>己 弥遠長 我念有 君尓依而者 言之故毛 無有欲得 木綿手次 肩荷取懸 忌戸乎 齋穿居 玄黄之 神祇二衣吾祈 甚毛為便無見 ","#[訓読]大船の 思ひ頼みて さな葛 いや遠長く 我が思へる 君によりては 言の故も なくありこそと 木綿たすき 肩に取り懸け 斎瓮を 斎ひ掘り据ゑ 天地の 神にぞ我が祷む いたもすべなみ ","#[仮名],おほぶねの,おもひたのみて,さなかづら,いやとほながく,あがおもへる,きみによりては,ことのゆゑも,なくありこそと,ゆふたすき,かたにとりかけ,いはひへを,いはひほりすゑ,あめつちの,かみにぞわがのむ,いたもすべなみ","#[左注]右五首","#[校異]始 -> 妨 [元][類]","#[事項],相聞,枕詞,恋情,神祭り,女歌","#[訓異]
おほぶねの,[寛]おほふねの,
おもひたのみて[寛],
さなかづら,[寛]こしをのれ,
いやとほながく,[寛]いやとほなかく,
あがおもへる,[寛]わかおもへる,
きみによりては[寛],
ことのゆゑも,[寛]ことのゆへも,
なくありこそと,[寛]なくてもかなと,
ゆふたすき[寛],
かたにとりかけ[寛],
いはひへを[寛],
いはひほりすゑ,[寛]いはひほりすへ,
あめつちの[寛],
かみにぞわがのむ,[寛]かみにそわかいのる,
いたもすべなみ,[寛]いともすへなみ,
" "#[番号]13/3289","#[題詞]","#[原文]御佩乎 劔池之 蓮葉尓 渟有水之 徃方無 我為時尓 應相登 相有君乎 莫寐等 母寸巨勢友 吾情 清隅之池之 池底 吾者不<忘> 正相左右二 ","#[訓読]み佩かしを 剣の池の 蓮葉に 溜まれる水の ゆくへなみ 我がする時に 逢ふべしと 逢ひたる君を な寐ねそと 母聞こせども 我が心 清隅の池の 池の底 我れは忘れじ 直に逢ふまでに ","#[仮名],みはかしを,つるぎのいけの,はちすばに,たまれるみづの,ゆくへなみ,わがするときに,あふべしと,あひたるきみを,ないねそと,ははきこせども,あがこころ,きよすみのいけの,いけのそこ,われはわすれじ,ただにあふまでに","#[左注](右二首)","#[校異]忍 -> 忘 [万葉集童蒙抄]","#[事項],相聞,枕詞,地名,奈良,橿原,女歌,序詞,恋情","#[訓異]
みはかしを[寛],
つるぎのいけの,[寛]つるきのいけの,
はちすばに,[寛]はちすはに,
たまれるみづの,[寛]たまれるみつの,
ゆくへなみ[寛],
わがするときに,[寛]わかせるときに,
あふべしと,[寛]あはむと,
あひたるきみを[寛],
ないねそと,[寛]なねりよと,
ははきこせども,[寛]ははきこせとも,
あがこころ,[寛]わかこころ,
きよすみのいけの[寛],
いけのそこ[寛],
われはわすれじ,[寛]われはしのひす,
ただにあふまでに,[寛]たたにあふまてに,
" "#[番号]13/3290","#[題詞]反歌","#[原文]古之 神乃時従 會計良思 今心<文> 常不所<忘>","#[訓読]いにしへの神の時より逢ひけらし今の心も常忘らえず","#[仮名],いにしへの,かみのときより,あひけらし,いまのこころも,つねわすらえず","#[左注]右二首","#[校異]父 -> 文 [西(訂正)][元][天][紀] / 念 -> 忘 [代匠記精撰本]","#[事項],相聞,女歌,恋情","#[訓異]
いにしへの[寛],
かみのときより,[寛]かみのみよより,
あひけらし[寛],
いまのこころも[寛],
つねわすらえず,[寛]つねわすられす,
" "#[番号]13/3291","#[題詞]","#[原文]三芳野之 真木立山尓 青生 山菅之根乃 慇懃 吾念君者 天皇之 遣之万々 [或本云 王 命恐] 夷離 國治尓登 [或本云 天踈 夷治尓等] 群鳥之 朝立行者 後有 我可将戀奈 客有者 君可将思 言牟為便 将為須便不知 [或書有 足日木 山之木末尓 句也] 延津田乃 歸之 [或本無歸之句也] 別之數 惜物可聞 ","#[訓読]み吉野の 真木立つ山に 青く生ふる 山菅の根の ねもころに 我が思ふ君は 大君の 任けのまにまに [或本云 大君の 命かしこみ] 鄙離る 国治めにと [或本云 天離る 鄙治めにと] 群鳥の 朝立ち去なば 後れたる 我れか恋ひむな 旅ならば 君か偲はむ 言はむすべ 為むすべ知らに [或書有 あしひきの 山の木末に 句也] 延ふ蔦の 行きの [或本無歸之句也] 別れのあまた 惜しきものかも ","#[仮名],みよしのの,まきたつやまに,あをくおふる,やますがのねの,ねもころに,あがおもふきみは,おほきみの,まけのまにまに,[おほきみの,みことかしこみ],ひなざかる,くにをさめにと,[あまざかる,ひなをさめにと],むらとりの,あさだちいなば,おくれたる,あれかこひむな,たびならば,きみかしのはむ,いはむすべ,せむすべしらに,[あしひきの,やまのこぬれに],はふつたの,ゆきの,わかれのあまた,をしきものかも","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],相聞,女歌,送別,枕詞,赴任,恋情,大君,地名,奈良,吉野","#[訓異]
みよしのの[寛],
まきたつやまに[寛],
あをくおふる,[寛]あをみおふる,
やますがのねの,[寛]やますかのねの,
ねもころに[寛],
あがおもふきみは,[寛]わかおもふきみは,
おほきみの,[寛]すめろきの,
まけのまにまに,[寛]つかはししまま,
[おほきみの,
みことかしこみ],
ひなざかる,[寛]ひなさかる,
くにをさめにと,[寛]くにおさめにと,
[あまざかる,
ひなをさめにと],
むらとりの[寛],
あさだちいなば,[寛]あさたちゆけは,
おくれたる[寛],
あれかこひむな,[寛]われかこひむな,
たびならば,[寛]たひなれは,
きみかしのはむ,[寛]きみかおもはむ,
いはむすべ,[寛]いはむすへ,
せむすべしらに,[寛]せむすへしらす,
[あしひきの,
やまのこぬれに],
はふつたの[寛],
ゆきの,[寛]かへりにし,
わかれのあまた[寛],
をしきものかも[寛],
" "#[番号]13/3292","#[題詞]反歌","#[原文]打蝉之 命乎長 有社等 留吾者 五十羽旱将待","#[訓読]うつせみの命を長くありこそと留まれる我れは斎ひて待たむ","#[仮名],うつせみの,いのちをながく,ありこそと,とまれるわれは,いはひてまたむ","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],相聞,女歌,送別","#[訓異]
うつせみの[寛],
いのちをながく,[寛]いのちをなかく,
ありこそと,[寛]あれこそと,
とまれるわれは,[寛]ととまるわれは,
いはひてまたむ[寛],
" "#[番号]13/3293","#[題詞]","#[原文]三吉野之 御金高尓 間無序 雨者落云 不時曽 雪者落云 其雨 無間如 彼雪 不時如 間不落 吾者曽戀 妹之正香尓 ","#[訓読]み吉野の 御金が岳に 間なくぞ 雨は降るといふ 時じくぞ 雪は降るといふ その雨の 間なきがごと その雪の 時じきがごと 間もおちず 我れはぞ恋ふる 妹が直香に ","#[仮名],みよしのの,みかねがたけに,まなくぞ,あめはふるといふ,ときじくぞ,ゆきはふるといふ,そのあめの,まなきがごと,そのゆきの,ときじきがごと,まもおちず,あれはぞこふる,いもがただかに","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],相聞,天武,異伝,民謡,恋情,吉野,地名,奈良,伝承","#[訓異]
みよしのの[寛],
みかねがたけに,[寛]みかねのたけに,
まなくぞ,[寛]ひまなくそ,
あめはふるといふ[寛],
ときじくぞ,[寛]ときなくそ,
ゆきはふるといふ[寛],
そのあめの[寛],
まなきがごと,[寛]ひまなきかこと,
そのゆきの[寛],
ときじきがごと,[寛]ときならぬこと,
まもおちず,[寛]ひまもおちす,
あれはぞこふる,[寛]われはそこふる,
いもがただかに,[寛]いもかまさかに,
" "#[番号]13/3294","#[題詞]反歌","#[原文]三雪落 吉野之高二 居雲之 外丹見子尓 戀度可聞","#[訓読]み雪降る吉野の岳に居る雲の外に見し子に恋ひわたるかも","#[仮名],みゆきふる,よしののたけに,ゐるくもの,よそにみしこに,こひわたるかも","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],相聞,地名,吉野,奈良,序詞,恋情","#[訓異]
みゆきふる[寛],
よしののたけに[寛],
ゐるくもの[寛],
よそにみしこに[寛],
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]13/3295","#[題詞]","#[原文]打久津 三宅乃原従 常土 足迹貫 夏草乎 腰尓魚積 如何有哉 人子故曽 通簀<文>吾子 諾々名 母者不知 諾々名 父者不知 蜷腸 香黒髪丹 真木綿持 阿邪左結垂 日本之 黄<楊>乃小櫛乎 抑刺 <卜>細子 彼曽吾つ ","#[訓読]うちひさつ 三宅の原ゆ 直土に 足踏み貫き 夏草を 腰になづみ いかなるや 人の子ゆゑぞ 通はすも我子 うべなうべな 母は知らじ うべなうべな 父は知らじ 蜷の腸 か黒き髪に 真木綿もち あざさ結ひ垂れ 大和の 黄楊の小櫛を 押へ刺す うらぐはし子 それぞ我が妻 ","#[仮名],うちひさつ,みやけのはらゆ,ひたつちに,あしふみぬき,なつくさを,こしになづみ,いかなるや,ひとのこゆゑぞ,かよはすもあこ,うべなうべな,はははしらじ,うべなうべな,ちちはしらじ,みなのわた,かぐろきかみに,まゆふもち,あざさゆひたれ,やまとの,つげのをぐしを,おさへさす,うらぐはしこ,それぞわがつま","#[左注](右二首)","#[校異]常 [元][天] 當 / 父 -> 文 [元][天][類] / 揚 -> 楊 [天][類] / 々 -> 卜 [新校]","#[事項],相聞,枕詞,地名,奈良,田原本,問答,親子,歌垣,民謡","#[訓異]
うちひさつ,[寛]うつくつの,
みやけのはらゆ,[寛]みやけのはらに,
ひたつちに[寛],
あしふみぬき,[寛]あとをつらねて,
なつくさを[寛],
こしになづみ,[寛]こしになつみて,
いかなるや[寛],
ひとのこゆゑぞ,[寛]ひとのこゆへそ,
かよはすもあこ,[寛]かよはすもわかこ,
うべなうべな,[寛]うへうへな,
はははしらじ,[寛]はははしられは,
うべなうべな,[寛]うへうへな,
ちちはしらじ,[寛]ちちはしられす,
みなのわた[寛],
かぐろきかみに,[寛]かくろきかみに,
まゆふもち,[寛]まゆふもて,
あざさゆひたれ,[寛]あささゆひたれ,
やまとの,[寛]ひのもとの,
つげのをぐしを,[寛]つけのをくしを,
おさへさす[寛],
うらぐはしこ,[寛]さすたへのこは,
それぞわがつま,[寛]それそわかつま,
" "#[番号]13/3296","#[題詞]反歌","#[原文]父母尓 不令知子故 三宅道乃 夏野草乎 菜積来鴨","#[訓読]父母に知らせぬ子ゆゑ三宅道の夏野の草をなづみ来るかも","#[仮名],ちちははに,しらせぬこゆゑ,みやけぢの,なつののくさを,なづみけるかも","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],相聞,歌垣,民謡,地名,奈良,田原本,難渋,恋愛","#[訓異]
ちちははに[寛],
しらせぬこゆゑ,[寛]しらせぬこゆへ,
みやけぢの,[寛]みやけちの,
なつののくさを[寛],
なづみけるかも,[寛]なつみくるかも,
" "#[番号]13/3297","#[題詞]","#[原文]玉田次 不懸時無 吾念 妹西不會波 赤根刺 日者之弥良尓 烏玉之 夜者酢辛二 眠不睡尓 妹戀丹 生流為便無 ","#[訓読]玉たすき 懸けぬ時なく 我が思ふ 妹にし逢はねば あかねさす 昼はしみらに ぬばたまの 夜はすがらに 寐も寝ずに 妹に恋ふるに 生けるすべなし ","#[仮名],たまたすき,かけぬときなく,あがおもふ,いもにしあはねば,あかねさす,ひるはしみらに,ぬばたまの,よるはすがらに,いもねずに,いもにこふるに,いけるすべなし","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],相聞,枕詞,恋情","#[訓異]
たまたすき[寛],
かけぬときなく[寛],
あがおもふ,[寛]わかおもふ,
いもにしあはねば,[寛]いもにしあはねは,
あかねさす[寛],
ひるはしみらに[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よるはすがらに,[寛]よるはすからに,
いもねずに,[寛]いもねすに,
いもにこふるに,[寛]いもをこふるに,
いけるすべなし,[寛]いけるすへなみ,
" "#[番号]13/3298","#[題詞]反歌","#[原文]縦恵八師 二々火四吾妹 生友 各鑿社吾 戀度七目","#[訓読]よしゑやし死なむよ我妹生けりともかくのみこそ我が恋ひわたりなめ","#[仮名],よしゑやし,しなむよわぎも,いけりとも,かくのみこそあが,こひわたりなめ","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],相聞,恋情","#[訓異]
よしゑやし[寛],
しなむよわぎも,[寛]しなむよわきも,
いけりとも[寛],
かくのみこそあが,[寛]かくのみこそわか,
こひわたりなめ[寛],
" "#[番号]13/3299","#[題詞]","#[原文]見渡尓 妹等者立志 是方尓 吾者立而 思虚 不安國 嘆虚 不安國 左丹と之 小舟毛鴨 玉纒之 小楫毛鴨 榜渡乍毛 相語妻遠","#[訓読]見わたしに 妹らは立たし この方に 我れは立ちて 思ふそら 安けなくに 嘆くそら 安けなくに さ丹塗りの 小舟もがも 玉巻きの 小楫もがも 漕ぎ渡りつつも 語らふ妻を","#[仮名],みわたしに,いもらはたたし,このかたに,われはたちて,おもふそら,やすけなくに,なげくそら,やすけなくに,さにぬりの,をぶねもがも,たままきの,をかぢもがも,こぎわたりつつも,かたらふつまを","#[左注]或本歌頭句云 己母理久乃 波都世乃加波乃 乎知可多尓 伊母良波多々志 己乃加多尓 和礼波多知弖 / 右一首","#[校異]","#[事項],相聞,恋情,七夕","#[訓異]
みわたしに[寛],
いもらはたたし[寛],
このかたに[寛],
われはたちて[寛],
おもふそら[寛],
やすけなくに,[寛]やすからなくに,
なげくそら,[寛]なけくそら,
やすけなくに,[寛]やすからなくに,
さにぬりの[寛],
をぶねもがも,[寛]をふねもかも,
たままきの[寛],
をかぢもがも,[寛]をかいもかも,
こぎわたりつつも,[寛]こきわたりつつも,
かたらふつまを,[寛]あひかたらめを,
" "#[番号]13/3299S","#[題詞]或本歌頭句云","#[原文]己母理久乃 波都世乃加波乃 乎知可多尓 伊母良波多々志 己乃加多尓 和礼波多知弖","#[訓読]こもりくの 泊瀬の川の 彼方に 妹らは立たし この方に 我れは立ちて ","#[仮名],こもりくの,はつせのかはの,をちかたに,いもらはたたし,このかたに,われはたちて","#[左注]右一首","#[校異]","#[事項],相聞,地名,桜井,奈良,異伝","#[訓異]
こもりくの[寛],
はつせのかはの[寛],
をちかたに[寛],
いもらはたたし[寛],
このかたに[寛],
われはたちて[寛],
" "#[番号]13/3300","#[題詞]","#[原文]忍照 難波乃埼尓 引登 赤曽朋舟 曽朋舟尓 綱取繋 引豆良比 有雙雖為 日豆良賓 有雙雖為 有雙不得叙 所言西我身 ","#[訓読]おしてる 難波の崎に 引き泝る 赤のそほ舟 そほ舟に 網取り懸け 引こづらひ ありなみすれど 言ひづらひ ありなみすれど ありなみえずぞ 言はえにし我が身 ","#[仮名],おしてる,なにはのさきに,ひきのぼる,あけのそほぶね,そほぶねに,あみとりかけ,ひこづらひ,ありなみすれど,いひづらひ,ありなみすれど,ありなみえずぞ,いはえにしあがみ","#[左注]右一首","#[校異]","#[事項],相聞,枕詞,地名,大阪,うわさ,女歌,民謡","#[訓異]
おしてる,[寛]おしてるや,
なにはのさきに[寛],
ひきのぼる,[寛]ひきのほる,
あけのそほぶね,[寛]あけのそほふね,
そほぶねに,[寛]そほふねに,
あみとりかけ,[寛]つなとりかけ,
ひこづらひ,[寛]ひきつらひ,
ありなみすれど,[寛]ありなみすれと,
いひづらひ,[寛]いひつらひ,
ありなみすれど,[寛]ありなみすれと,
ありなみえずぞ,[寛]ありなみえすそ,
いはえにしあがみ,[寛]いはれにしわかみ,
" "#[番号]13/3301","#[題詞]","#[原文]神風之 伊勢<乃>海之 朝奈伎尓 来依深海松 暮奈藝尓 来因俣海松 深海松乃 深目師吾乎 俣海松乃 復去反 都麻等不言登可聞 思保世流君 ","#[訓読]神風の 伊勢の海の 朝なぎに 来寄る深海松 夕なぎに 来寄る俣海松 深海松の 深めし我れを 俣海松の また行き帰り 妻と言はじとかも 思ほせる君 ","#[仮名],かむかぜの,いせのうみの,あさなぎに,きよるふかみる,ゆふなぎに,きよるまたみる,ふかみるの,ふかめしわれを,またみるの,またゆきかへり,つまといはじとかも,おもほせるきみ","#[左注]右一首","#[校異]之 -> 乃 [元][天][類]","#[事項],相聞,地名,伊勢,三重県,枕詞,女歌,民謡,植物,怨恨","#[訓異]
かむかぜの,[寛]かみかせの,
いせのうみの[寛],
あさなぎに,[寛]あさなきに,
きよるふかみる[寛],
ゆふなぎに,[寛]ゆふなきに,
きよるまたみる[寛],
ふかみるの[寛],
ふかめしわれを[寛],
またみるの[寛],
またゆきかへり[寛],
つまといはじとかも,[寛]つまといはしとかも,
おもほせるきみ[寛],
" "#[番号]13/3302","#[題詞]","#[原文]紀伊國之 室之江邊尓 千<年>尓 障事無 万世尓 如是将<在>登 大舟之 思恃而 出立之 清瀲尓 朝名寸二 来依深海松 夕難岐尓 来依縄法 深海松之 深目思子等遠 縄法之 引者絶登夜 散度人之 行之屯尓 鳴兒成 行取左具利 梓弓 弓腹振起 志乃岐羽矣 二手<狭> 離兼 人斯悔 戀思者 ","#[訓読]紀の国の 牟婁の江の辺に 千年に 障ることなく 万代に かくしもあらむと 大船の 思ひ頼みて 出立の 清き渚に 朝なぎに 来寄る深海松 夕なぎに 来寄る縄海苔 深海松の 深めし子らを 縄海苔の 引けば絶ゆとや 里人の 行きの集ひに 泣く子なす 行き取り探り 梓弓 弓腹振り起し しのぎ羽を 二つ手挟み 放ちけむ 人し悔しも 恋ふらく思へば ","#[仮名],きのくにの,むろのえのへに,ちとせに,さはることなく,よろづよに,かくしもあらむと,おほぶねの,おもひたのみて,いでたちの,きよきなぎさに,あさなぎに,きよるふかみる,ゆふなぎに,きよるなはのり,ふかみるの,ふかめしこらを,なはのりの,ひけばたゆとや,さとびとの,ゆきのつどひに,なくこなす,ゆきとりさぐり,あづさゆみ,ゆばらふりおこし,しのぎはを,ふたつたばさみ,はなちけむ,ひとしくやしも,こふらくおもへば","#[左注]右一首","#[校異]羊 -> 年 [元][天][類] / 有 -> 在 [元][天][類] / 狭 -> 挟 [元][天][類]","#[事項],相聞,地名,和歌山,田辺,枕詞,植物,民謡,戯笑","#[訓異]
きのくにの[寛],
むろのえのへに,[寛]むろのうみへに,
ちとせに[寛],
さはることなく[寛],
よろづよに,[寛]よろつよに,
かくしもあらむと,[寛]かくしあらむと,
おほぶねの,[寛]おほふねの,
おもひたのみて[寛],
いでたちの,[寛]いてたちし,
きよきなぎさに,[寛]きよきなきさに,
あさなぎに,[寛]あさなきに,
きよるふかみる[寛],
ゆふなぎに,[寛]ゆふなきに,
きよるなはのり[寛],
ふかみるの[寛],
ふかめしこらを[寛],
なはのりの[寛],
ひけばたゆとや,[寛]ひけはたゆとや,
さとびとの,[寛]さとひとの,
ゆきのつどひに,[寛]ゆきしつとふに,
なくこなす[寛],
ゆきとりさぐり,[寛]ゆきとりさくり,
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
ゆばらふりおこし,[寛]ゆすゑふりおこし,
しのぎはを,[寛]しのきはを,
ふたつたばさみ,[寛]ふたつたはさみ,
はなちけむ[寛],
ひとしくやしも[寛],
こふらくおもへば,[寛]こひしとおもへは,
" "#[番号]13/3303","#[題詞]","#[原文]里人之 吾丹告樂 <汝>戀 愛妻者 黄葉之 散乱有 神名火之 此山邊柄 [或本云 彼山邊] 烏玉之 黒馬尓乗而 河瀬乎 七湍渡而 裏觸而 妻者會登 人曽告鶴 ","#[訓読]里人の 我れに告ぐらく 汝が恋ふる うつくし夫は 黄葉の 散り乱ひたる 神なびの この山辺から [或本云 その山辺] ぬばたまの 黒馬に乗りて 川の瀬を 七瀬渡りて うらぶれて 夫は逢ひきと 人ぞ告げつる ","#[仮名],さとびとの,あれにつぐらく,ながこふる,うつくしづまは,もみちばの,ちりまがひたる,かむなびの,このやまへから,[そのやまへ],ぬばたまの,くろまにのりて,かはのせを,ななせわたりて,うらぶれて,つまはあひきと,ひとぞつげつる","#[左注](右二首)","#[校異]汝 [西(上書訂正)][元][天][類]","#[事項],相聞,女歌,挽歌,恋情,枕詞","#[訓異]
さとびとの,[寛]さとひとの,
あれにつぐらく,[寛]われにつくらく,
ながこふる,[寛]なかこふる,
うつくしづまは,[寛]うつくしつまは,
もみちばの,[寛]もみちはの,
ちりまがひたる,[寛]ちりまかひたる,
かむなびの,[寛]かみなひの,
このやまへから[寛],
[そのやまへ],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
くろまにのりて,[寛]くろうまにのりて,
かはのせを[寛],
ななせわたりて[寛],
うらぶれて,[寛]うらふれて,
つまはあひきと,[寛]つまはあひつと,
ひとぞつげつる,[寛]ひとそつけつる,
" "#[番号]13/3304","#[題詞]反歌","#[原文]不聞而 黙然有益乎 何如文 <公>之正香乎 人之告鶴","#[訓読]聞かずして黙もあらましを何しかも君が直香を人の告げつる","#[仮名],きかずして,もだもあらましを,なにしかも,きみがただかを,ひとのつげつる","#[左注]右二首","#[校異]君 -> 公 [元][天][紀]","#[事項],相聞,女歌,恋情,挽歌","#[訓異]
きかずして,[寛]きかすして,
もだもあらましを,[寛]もたしあらましを,
なにしかも[寛],
きみがただかを,[寛]きみかまさかを,
ひとのつげつる,[寛]ひとのつけつる,
" "#[番号]13/3305","#[題詞]問答","#[原文]物不念 道行去毛 青山乎 振放見者 茵花 香<未>通女 櫻花 盛未通女 汝乎曽母 吾丹依云 吾S毛曽 汝丹依云 荒山毛 人師依者 余所留跡序云 汝心勤 ","#[訓読]物思はず 道行く行くも 青山を 振り放け見れば つつじ花 にほえ娘子 桜花 栄え娘子 汝れをぞも 我れに寄すといふ 我れをもぞ 汝れに寄すといふ 荒山も 人し寄すれば 寄そるとぞいふ 汝が心ゆめ ","#[仮名],ものもはず,みちゆくゆくも,あをやまを,ふりさけみれば,つつじばな,にほえをとめ,さくらばな,さかえをとめ,なれをぞも,われによすといふ,われをもぞ,なれによすといふ,あらやまも,ひとしよすれば,よそるとぞいふ,ながこころゆめ","#[左注](右五首)","#[校異]末 -> 未 [元][天][類]","#[事項],問答,歌垣,求婚,恋情","#[訓異]
ものもはず,[寛]ものおもはて,
みちゆくゆくも,[寛]みちゆきなむも,
あをやまを[寛],
ふりさけみれば,[寛]ふりさけみれは,
つつじばな,[寛]つつしはな,
にほえをとめ,[寛]にほへるをとめ,
さくらばな,[寛]さくらはな,
さかえをとめ,[寛]さかへるをとめ,
なれをぞも,[寛]なれをそも,
われによすといふ,[寛]われによるといふ,
われをもぞ,[寛]われをもそ,
なれによすといふ,[寛]なれによるといふ,
あらやまも[寛],
ひとしよすれば,[寛]ひとしよるには,
よそるとぞいふ,[寛]わかもとにととむとそいふ,
ながこころゆめ,[寛]なかこころゆめ,
" "#[番号]13/3306","#[題詞]反歌","#[原文]何為而 戀止物序 天地乃 神乎祷迹 吾八思益","#[訓読]いかにして恋やむものぞ天地の神を祈れど我れは思ひ増す","#[仮名],いかにして,こひやむものぞ,あめつちの,かみをいのれど,われはおもひます","#[左注](右五首)","#[校異]","#[事項],問答,恋情,歌垣","#[訓異]
いかにして[寛],
こひやむものぞ,[寛]こひやむものそ,
あめつちの[寛],
かみをいのれど,[寛]かみをいのれと,
われはおもひます,[寛]われやおもはまし,
" "#[番号]13/3307","#[題詞]","#[原文]然有社 <年>乃八歳S 鑚髪乃 吾同子S過 橘 末枝乎過而 此河能 下<文>長 汝情待 ","#[訓読]しかれこそ 年の八年を 切り髪の よち子を過ぎ 橘の ほつ枝を過ぎて この川の 下にも長く 汝が心待て ","#[仮名],しかれこそ,としのやとせを,きりかみの,よちこをすぎ,たちばなの,ほつえをすぎて,このかはの,したにもながく,ながこころまて","#[左注](右五首)","#[校異]羊 -> 年 [元][天][類] / 父 -> 文 [元][天][紀]","#[事項],問答,恋情,女歌,序詞","#[訓異]
しかれこそ,[寛]しかあれこそ,
としのやとせを[寛],
きりかみの,[寛]きるかみの,
よちこをすぎ,[寛]わかみをすきて,
たちばなの,[寛]たちはなの,
ほつえをすぎて,[寛]ほつえをすきて,
このかはの[寛],
したにもながく,[寛]したにもなかく,
ながこころまて,[寛]なかこころまて,
" "#[番号]13/3308","#[題詞]反歌","#[原文]天地之 神尾母吾者 祷而寸 戀云物者 都不止来","#[訓読]天地の神をも我れは祈りてき恋といふものはかつてやまずけり","#[仮名],あめつちの,かみをもわれは,いのりてき,こひといふものは,かつてやまずけり","#[左注](右五首)","#[校異]","#[事項],問答,女歌,恋情","#[訓異]
あめつちの[寛],
かみをもわれは[寛],
いのりてき[寛],
こひといふものは,[寛]こひてふものは,
かつてやまずけり,[寛]すへてやますけり,
" "#[番号]13/3309","#[題詞]柿本朝臣人麻呂之集歌","#[原文]物不念 路行去裳 青山乎 振酒見者 都追慈花 尓太遥越賣 作樂花 佐可遥越賣 汝乎叙母 吾尓依云 吾乎叙物 汝尓依云 汝者如何念也 念社 歳八<年>乎 斬髪 与知子乎過 橘之 末枝乎須具里 此川之 下母長久 汝心待 ","#[訓読]物思はず 道行く行くも 青山を 振り放け見れば つつじ花 にほえ娘子 桜花 栄え娘子 汝れをぞも 我れに寄すといふ 我れをぞも 汝れに寄すといふ 汝はいかに思ふや 思へこそ 年の八年を 切り髪の よち子を過ぎ 橘の ほつ枝をすぐり この川の 下にも長く 汝が心待て ","#[仮名],ものもはず,みちゆくゆくも,あをやまを,ふりさけみれば,つつじばな,にほえをとめ,さくらばな,さかえをとめ,なれをぞも,われによすといふ,われをぞも,なれによすといふ,なはいかにおもふや,おもへこそ,としのやとせを,きりかみの,よちこをすぎ,たちばなの,ほつえをすぐり,このかはの,したにもながく,ながこころまて","#[左注]右五首","#[校異]羊 -> 年 [元][天][類]","#[事項],問答,作者:柿本人麻呂歌集,非略体,異伝,恋情,女歌,歌垣","#[訓異]
ものもはず,[寛]ものおもはて,
みちゆくゆくも,[寛]みちゆきなむも,
あをやまを[寛],
ふりさけみれば,[寛]ふりさけみれは,
つつじばな,[寛]つつしはな,
にほえをとめ,[寛]にほえるをとめ,
さくらばな,[寛]さくらはな,
さかえをとめ,[寛]さかえるをとめ,
なれをぞも,[寛]なれをそも,
われによすといふ,[寛]われによるといふ,
われをぞも,[寛]われをそも,
なれによすといふ,[寛]なれによるといふ,
なはいかにおもふや,[寛]なれはいかにおもへや,
おもへこそ[寛],
としのやとせを[寛],
きりかみの,[寛]きるかみと,
よちこをすぎ,[寛]わかみをすくり,
たちばなの,[寛]たちはなの,
ほつえをすぐり,[寛]ほつえをすくり,
このかはの[寛],
したにもながく,[寛]したにもなかく,
ながこころまて,[寛]なかこころまて,
" "#[番号]13/3310","#[題詞]","#[原文]隠口乃 泊瀬乃國尓 左結婚丹 吾来者 棚雲利 雪者零来 左雲理 雨者落来 野鳥 雉動 家鳥 可鶏毛鳴 左夜者明 此夜者昶奴 入而<且>将眠 此戸開為 ","#[訓読]隠口の 泊瀬の国に さよばひに 我が来れば たな曇り 雪は降り来 さ曇り 雨は降り来 野つ鳥 雉は響む 家つ鳥 鶏も鳴く さ夜は明け この夜は明けぬ 入りてかつ寝む この戸開かせ ","#[仮名],こもりくの,はつせのくにに,さよばひに,わがきたれば,たなぐもり,ゆきはふりく,さぐもり,あめはふりく,のつとり,きぎしはとよむ,いへつとり,かけもなく,さよはあけ,このよはあけぬ,いりてかつねむ,このとひらかせ","#[左注](右四首)","#[校異]旦 -> 且 [元][天][類]","#[事項],問答,地名,榛原,奈良,枕詞,動物,求婚,妻問い","#[訓異]
こもりくの[寛],
はつせのくにに[寛],
さよばひに,[寛]さよはひに,
わがきたれば,[寛]わかきたれれは,
たなぐもり,[寛]たなくもり,
ゆきはふりく,[寛]ゆきはふりきぬ,
さぐもり,[寛]さくもり,
あめはふりく,[寛]あめはふりきぬ,
のつとり[寛],
きぎしはとよむ,[寛]ききすもとよみ,
いへつとり[寛],
かけもなく[寛],
さよはあけ[寛],
このよはあけぬ[寛],
いりてかつねむ,[寛]いりてあさねむ,
このとひらかせ,[寛]このとあけせよ,
" "#[番号]13/3311","#[題詞]反歌","#[原文]隠来乃 泊瀬小國丹 妻有者 石者履友 猶来々","#[訓読]隠口の泊瀬小国に妻しあれば石は踏めどもなほし来にけり","#[仮名],こもりくの,はつせをぐにに,つましあれば,いしはふめども,なほしきにけり","#[左注](右四首)","#[校異]","#[事項],問答,妻問い,地名,奈良,榛原,枕詞","#[訓異]
こもりくの[寛],
はつせをぐにに,[寛]はつせをくにに,
つましあれば,[寛]つましあれは,
いしはふめども,[寛]いしはふめとも,
なほしきにけり,[寛]なほそきにける,
" "#[番号]13/3312","#[題詞]","#[原文]隠口乃 長谷小國 夜延為 吾天皇寸与 奥床仁 母者睡有 外床丹 父者寐有 起立者 母可知 出行者 父可知 野干<玉>之 夜者昶去奴 幾許雲 不念如 隠つ香聞 ","#[訓読]隠口の 泊瀬小国に よばひせす 我が天皇よ 奥床に 母は寐ねたり 外床に 父は寐ねたり 起き立たば 母知りぬべし 出でて行かば 父知りぬべし ぬばたまの 夜は明けゆきぬ ここだくも 思ふごとならぬ 隠り妻かも ","#[仮名],こもりくの,はつせをぐにに,よばひせす,わがすめろきよ,おくとこに,はははいねたり,とどこに,ちちはいねたり,おきたたば,ははしりぬべし,いでてゆかば,ちちしりぬべし,ぬばたまの,よはあけゆきぬ,ここだくも,おもふごとならぬ,こもりづまかも","#[左注](右四首)","#[校異]王 -> 玉 [元][天][類]","#[事項],問答,妻問い,恋情,枕詞,地名,榛原,奈良,拒否,女歌","#[訓異]
こもりくの[寛],
はつせをぐにに,[寛]はつせをくにに,
よばひせす,[寛]よはひして,
わがすめろきよ,[寛]わかすめろきよ,
おくとこに[寛],
はははいねたり,[寛]はははねてあり,
とどこに,[寛]そととこに,
ちちはいねたり,[寛]ちちはねてあり,
おきたたば,[寛]おきたたは,
ははしりぬべし,[寛]ははしりぬへし,
いでてゆかば,[寛]いてゆかは,
ちちしりぬべし,[寛]ちちしりぬへみ,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よはあけゆきぬ[寛],
ここだくも,[寛]ここたくも,
おもふごとならぬ,[寛]おもふことならぬ,
こもりづまかも,[寛]こもりつまかも,
" "#[番号]13/3313","#[題詞]反歌","#[原文]川瀬之 石迹渡 野干玉之 黒馬之来夜者 常二有沼鴨","#[訓読]川の瀬の石踏み渡りぬばたまの黒馬来る夜は常にあらぬかも","#[仮名],かはのせの,いしふみわたり,ぬばたまの,くろまくるよは,つねにあらぬかも","#[左注]右四首","#[校異]","#[事項],問答,枕詞,動物,恋情,妻問い","#[訓異]
かはのせの[寛],
いしふみわたり,[寛]いはとわたりて,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
くろまくるよは,[寛]こまのくるよは,
つねにあらぬかも[寛],
" "#[番号]13/3314","#[題詞]","#[原文]次嶺經 山背道乎 人都末乃 馬従行尓 己夫之 歩従行者 毎見 哭耳之所泣 曽許思尓 心之痛之 垂乳根乃 母之形見跡 吾持有 真十見鏡尓 蜻領巾 負並持而 馬替吾背 ","#[訓読]つぎねふ 山背道を 人夫の 馬より行くに 己夫し 徒歩より行けば 見るごとに 音のみし泣かゆ そこ思ふに 心し痛し たらちねの 母が形見と 我が持てる まそみ鏡に 蜻蛉領巾 負ひ並め持ちて 馬買へ我が背 ","#[仮名],つぎねふ,やましろぢを,ひとづまの,うまよりゆくに,おのづまし,かちよりゆけば,みるごとに,ねのみしなかゆ,そこおもふに,こころしいたし,たらちねの,ははがかたみと,わがもてる,まそみかがみに,あきづひれ,おひなめもちて,うまかへわがせ","#[左注](右四首)","#[校異]","#[事項],問答,枕詞,京都,動物,女歌,恋愛","#[訓異]
つぎねふ,[寛]つきねふ,
やましろぢを,[寛]やましろのみちを,
ひとづまの,[寛]ひとつまの,
うまよりゆくに[寛],
おのづまし,[寛]さかつまの,
かちよりゆけば,[寛]かちよりゆけは,
みるごとに,[寛]みることに,
ねのみしなかゆ,[寛]ねのみしなかる,
そこおもふに,[寛]そこおもひに,
こころしいたし[寛],
たらちねの[寛],
ははがかたみと,[寛]ははのかたみと,
わがもてる,[寛]わかもたる,
まそみかがみに,[寛]まそみかかみに,
あきづひれ,[寛]あきつひれ,
おひなめもちて,[寛]おひそへもちて,
うまかへわがせ,[寛]うまかへわかせ,
" "#[番号]13/3315","#[題詞]反歌","#[原文]泉<川> 渡瀬深見 吾世古我 旅行衣 蒙沾鴨","#[訓読]泉川渡り瀬深み我が背子が旅行き衣ひづちなむかも","#[仮名],いづみがは,わたりぜふかみ,わがせこが,たびゆきごろも,ひづちなむかも","#[左注](右四首)","#[校異]河 -> 川 [元][天][類]","#[事項],問答,地名,京都,木津川,女歌,恋愛","#[訓異]
いづみがは,[寛]いつみかは,
わたりぜふかみ,[寛]わたるせふかみ,
わがせこが,[寛]わかせこか,
たびゆきごろも,[寛]たひゆくころも,
ひづちなむかも,[寛]*****かも,
" "#[番号]13/3316","#[題詞]或本反歌曰","#[原文]清鏡 雖持吾者 記無 君之歩行 名積去見者","#[訓読]まそ鏡持てれど我れは験なし君が徒歩よりなづみ行く見れば","#[仮名],まそかがみ,もてれどわれは,しるしなし,きみがかちより,なづみゆくみれば","#[左注](右四首)","#[校異]","#[事項],問答,異伝,恋愛,女歌","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
もてれどわれは,[寛]もたれとわれは,
しるしなし[寛],
きみがかちより,[寛]きみかかちより,
なづみゆくみれば,[寛]なつみさるみは,
" "#[番号]13/3317","#[題詞]","#[原文]馬替者 妹歩行将有 縦恵八子 石者雖履 吾二行","#[訓読]馬買はば妹徒歩ならむよしゑやし石は踏むとも我はふたり行かむ","#[仮名],うまかはば,いもかちならむ,よしゑやし,いしはふむとも,わはふたりゆかむ","#[左注]右四首","#[校異]","#[事項],問答,愛情","#[訓異]
うまかはば,[寛]うまかはは,
いもかちならむ,[寛]いもかちならむ,
よしゑやし[寛],
いしはふむとも[寛],
わはふたりゆかむ,[寛]われふたりゆかむ,
" "#[番号]13/3318","#[題詞]","#[原文]木國之 濱因云 <鰒>珠 将拾跡云而 妹乃山 勢能山越而 行之君 何時来座跡 玉桙之 道尓出立 夕卜乎 吾問之可婆 夕卜之 吾尓告良久 吾妹兒哉 汝待君者 奥浪 来因白珠 邊浪之 緑<流>白珠 求跡曽 君之不来益 拾登曽 公者不来益 久有 今七日許 早有者 今二日許 将有等曽 君<者>聞之二々 勿戀吾妹 ","#[訓読]紀の国の 浜に寄るといふ 鰒玉 拾はむと言ひて 妹の山 背の山越えて 行きし君 いつ来まさむと 玉桙の 道に出で立ち 夕占を 我が問ひしかば 夕占の 我れに告らく 我妹子や 汝が待つ君は 沖つ波 来寄る白玉 辺つ波の 寄する白玉 求むとぞ 君が来まさぬ 拾ふとぞ 君は来まさぬ 久ならば いま七日ばかり 早くあらば いま二日ばかり あらむとぞ 君は聞こしし な恋ひそ我妹 ","#[仮名],きのくにの,はまによるといふ,あはびたま,ひりはむといひて,いものやま,せのやまこえて,ゆきしきみ,いつきまさむと,たまほこの,みちにいでたち,ゆふうらを,わがとひしかば,ゆふうらの,われにつぐらく,わぎもこや,ながまつきみは,おきつなみ,きよるしらたま,へつなみの,よするしらたま,もとむとぞ,きみがきまさぬ,ひりふとぞ,きみはきまさぬ,ひさならば,いまなぬかばかり,はやくあらば,いまふつかばかり,あらむとぞ,きみはきこしし,なこひそわぎも","#[左注](右五首)","#[校異]蝮 -> 鰒 [元][天][類] / 浪 -> 流 [西(訂正右書)][元][天][類] / <> -> 者 [西(左書)][元][天][類]","#[事項],問答,地名,和歌山,女歌,恋情,送別","#[訓異]
きのくにの[寛],
はまによるといふ[寛],
あはびたま,[寛]あはひたま,
ひりはむといひて,[寛]ひろはむといひて,
いものやま[寛],
せのやまこえて[寛],
ゆきしきみ[寛],
いつきまさむと[寛],
たまほこの[寛],
みちにいでたち,[寛]みちにいてたち,
ゆふうらを[寛],
わがとひしかば,[寛]わかとひしかは,
ゆふうらの[寛],
われにつぐらく,[寛]われにつくらく,
わぎもこや,[寛]わきもこや,
ながまつきみは,[寛]なかまつきみは,
おきつなみ[寛],
きよるしらたま[寛],
へつなみの[寛],
よするしらたま[寛],
もとむとぞ,[寛]もとむとそ,
きみがきまさぬ,[寛]きみかきまさす,
ひりふとぞ,[寛]ひろふとそ,
きみはきまさぬ[寛],
ひさならば,[寛]ひさにあらは,
いまなぬかばかり,[寛]いまなぬかはかり,
はやくあらば,[寛]とくあらは,
いまふつかばかり,[寛]いまふつかはかり,
あらむとぞ,[寛]あらむとそ,
きみはきこしし,[寛]きみはききこし,
なこひそわぎも,[寛]なこひそわきも,
" "#[番号]13/3319","#[題詞]反歌","#[原文]杖衝毛 不衝毛吾者 行目友 公之将来 道之不知苦","#[訓読]杖つきもつかずも我れは行かめども君が来まさむ道の知らなく","#[仮名],つゑつきも,つかずもわれは,ゆかめども,きみがきまさむ,みちのしらなく","#[左注](右五首)","#[校異]","#[事項],問答,女歌,恋情,送別","#[訓異]
つゑつきも,[寛]つえつきも,
つかずもわれは,[寛]つかてもわれは,
ゆかめども,[寛]ゆかめとも,
きみがきまさむ,[寛]きみかきまさむ,
みちのしらなく[寛],
" "#[番号]13/3320","#[題詞]","#[原文]直不徃 此従巨勢道柄 石瀬踏 求曽吾来 戀而為便奈見","#[訓読]直に行かずこゆ巨勢道から石瀬踏み求めぞ我が来し恋ひてすべなみ","#[仮名],ただにゆかず,こゆこせぢから,いはせふみ,もとめぞわがこし,こひてすべなみ","#[左注](右五首)","#[校異]","#[事項],問答,地名,奈良,御所市,恋情,女歌","#[訓異]
ただにゆかず,[寛]たたにこぬ,
こゆこせぢから,[寛]このこせちから,
いはせふみ[寛],
もとめぞわがこし,[寛]とめそわかける,
こひてすべなみ,[寛]こひてすへなみ,
" "#[番号]13/3321","#[題詞]","#[原文]左夜深而 今者明奴登 開戸手 木部行君乎 何時可将待","#[訓読]さ夜更けて今は明けぬと戸を開けて紀へ行く君をいつとか待たむ","#[仮名],さよふけて,いまはあけぬと,とをあけて,きへゆくきみを,いつとかまたむ","#[左注](右五首)","#[校異]","#[事項],問答,女歌,地名,和歌山,送別,恋情","#[訓異]
さよふけて[寛],
いまはあけぬと[寛],
とをあけて[寛],
きへゆくきみを[寛],
いつとかまたむ,[寛]いつしかまたむ,
" "#[番号]13/3322","#[題詞]","#[原文]門座 郎子内尓 雖至 痛之戀者 今還金","#[訓読]門に居る我が背は宇智に至るともいたくし恋ひば今帰り来む","#[仮名],かどにゐる,わがせはうちに,いたるとも,いたくしこひば,いまかへりこむ","#[左注]右五首","#[校異]","#[事項],問答,地名,奈良県,五条市,占い","#[訓異]
かどにゐる,[寛]かとにをる,
わがせはうちに,[寛]をとめはうちに,
いたるとも[寛],
いたくしこひば,[寛]いたくしこひは,
いまかへりこむ[寛],
" "#[番号]13/3323","#[題詞]譬喩歌","#[原文]師名立 都久麻左野方 息長之 遠智能小菅 不連尓 伊苅持来 不敷尓 伊苅持来而 置而 吾乎令偲 息長之 遠智能子菅 ","#[訓読]しなたつ 筑摩さのかた 息長の 越智の小菅 編まなくに い刈り持ち来 敷かなくに い刈り持ち来て 置きて 我れを偲はす 息長の 越智の小菅 ","#[仮名],しなたつ,つくまさのかた,おきながの,をちのこすげ,あまなくに,いかりもちき,しかなくに,いかりもちきて,おきて,われをしのはす,おきながの,をちのこすげ","#[左注]右一首","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],譬喩歌,枕詞,地名,滋賀県,米原,女歌,民謡,歌垣","#[訓異]
しなたつ,[寛]しなたてる,
つくまさのかた,[寛]つくまさのかく,
おきながの,[寛]おきなかの,
をちのこすげ,[寛]とほちのこすけ,
あまなくに[寛],
いかりもちき[寛],
しかなくに[寛],
いかりもちきて[寛],
おきて[寛],
われをしのはす,[寛]われをしのはむ,
おきながの,[寛]おきなかの,
をちのこすげ,[寛]とほちのこすけ,
" "#[番号]13/3324","#[題詞]挽歌","#[原文]<挂>纒毛 文恐 藤原 王都志弥美尓 人下 満雖有 君下 大座常 徃向 <年>緒長 仕来 君之御門乎 如天 仰而見乍 雖畏 思憑而 何時可聞 日足座而 十五月之 多田波思家武登 吾思 皇子命者 春避者 殖槻於之 遠人 待之下道湯 登之而 國見所遊 九月之 四具礼<乃>秋者 大殿之 砌志美弥尓 露負而 靡<芽>乎 珠<手>次 懸而所偲 三雪零 冬朝者 刺楊 根張梓矣 御手二 所取賜而 所遊 我王矣 烟立 春日暮 喚犬追馬鏡 雖見不飽者 万歳 如是霜欲得常 大船之 憑有時尓 涙言 目鴨迷 大殿矣 振放見者 白細布 餝奉而 内日刺 宮舎人方 [一云 者] 雪穂 麻衣服者 夢鴨 現前鴨跡 雲入夜之 迷間 朝裳吉 城於道従 角障經 石村乎見乍 神葬 々奉者 徃道之 田付S不知 雖思 印手無見 雖歎 奥香乎無見 御袖 徃觸之松矣 言不問 木雖在 荒玉之 立月毎 天原 振放見管 珠手次 懸而思名 雖恐有 ","#[訓読]かけまくも あやに畏し 藤原の 都しみみに 人はしも 満ちてあれども 君はしも 多くいませど 行き向ふ 年の緒長く 仕へ来し 君の御門を 天のごと 仰ぎて見つつ 畏けど 思ひ頼みて いつしかも 日足らしまして 望月の 満しけむと 我が思へる 皇子の命は 春されば 植槻が上の 遠つ人 松の下道ゆ 登らして 国見遊ばし 九月の しぐれの秋は 大殿の 砌しみみに 露負ひて 靡ける萩を 玉たすき 懸けて偲はし み雪降る 冬の朝は 刺し柳 根張り梓を 大御手に 取らし賜ひて 遊ばしし 我が大君を 霞立つ 春の日暮らし まそ鏡 見れど飽かねば 万代に かくしもがもと 大船の 頼める時に 泣く我れ 目かも迷へる 大殿を 振り放け見れば 白栲に 飾りまつりて うちひさす 宮の舎人も [一云 は] 栲のほの 麻衣着れば 夢かも うつつかもと 曇り夜の 迷へる間に あさもよし 城上の道ゆ つのさはふ 磐余を見つつ 神葬り 葬りまつれば 行く道の たづきを知らに 思へども 験をなみ 嘆けども 奥処をなみ 大御袖 行き触れし松を 言問はぬ 木にはありとも あらたまの 立つ月ごとに 天の原 振り放け見つつ 玉たすき 懸けて偲はな 畏くあれども ","#[仮名],かけまくも,あやにかしこし,ふぢはらの,みやこしみみに,ひとはしも,みちてあれども,きみはしも,おほくいませど,ゆきむかふ,としのをながく,つかへこし,きみのみかどを,あめのごと,あふぎてみつつ,かしこけど,おもひたのみて,いつしかも,ひたらしまして,もちづきの,たたはしけむと,わがもへる,みこのみことは,はるされば,うゑつきがうへの,とほつひと,まつのしたぢゆ,のぼらして,くにみあそばし,ながつきの,しぐれのあきは,おほとのの,みぎりしみみに,つゆおひて,なびけるはぎを,たまたすき,かけてしのはし,みゆきふる,ふゆのあしたは,さしやなぎ,ねはりあづさを,おほみてに,とらしたまひて,あそばしし,わがおほきみを,かすみたつ,はるのひくらし,まそかがみ,みれどあかねば,よろづよに,かくしもがもと,おほぶねの,たのめるときに,なくわれ,めかもまとへる,おほとのを,ふりさけみれば,しろたへに,かざりまつりて,うちひさす,みやのとねりも[は],たへのほの,あさぎぬければ,いめかも,うつつかもと,くもりよの,まとへるほどに,あさもよし,きのへのみちゆ,つのさはふ,いはれをみつつ,かむはぶり,はぶりまつれば,ゆくみちの,たづきをしらに,おもへども,しるしをなみ,なげけども,おくかをなみ,おほみそで,ゆきふれしまつを,こととはぬ,きにはありとも,あらたまの,たつつきごとに,あまのはら,ふりさけみつつ,たまたすき,かけてしのはな,かしこくあれども","#[左注](右二首)","#[校異]歌 [西] 謌 / 桂 -> 挂 [天][紀] / 羊 -> 年 [元][天][類] / 之 -> 乃 [元][天][類] / 芽子 -> 芽 [元][天][類] / 多 -> 手 [元][天][類]","#[事項],挽歌,地名,藤原,奈良,皇子挽歌,献呈挽歌,枕詞","#[訓異]
かけまくも[寛],
あやにかしこし[寛],
ふぢはらの,[寛]ふちはらの,
みやこしみみに[寛],
ひとはしも[寛],
みちてあれども,[寛]みちてあれとも,
きみはしも[寛],
おほくいませど,[寛]おほくいませと,
ゆきむかふ[寛],
としのをながく,[寛]としのをなかく,
つかへこし,[寛]つかへきて,
きみのみかどを,[寛]きみかみかとを,
あめのごと,[寛]そらのこと,
あふぎてみつつ,[寛]あふきてみつつ,
かしこけど,[寛]おそるれと,
おもひたのみて[寛],
いつしかも[寛],
ひたらしまして,[寛]ひたらまして,
もちづきの,[寛]もちつきの,
たたはしけむと[寛],
わがもへる,[寛]わかおもふ,
みこのみことは[寛],
はるされば,[寛]はるされは,
うゑつきがうへの,[寛]うえつきのうへの,
とほつひと[寛],
まつのしたぢゆ,[寛]まちししたみちゆ,
のぼらして,[寛]のほらして,
くにみあそばし,[寛]くにみあそはせ,
ながつきの,[寛]なかつきの,
しぐれのあきは,[寛]しくれのあきは,
おほとのの[寛],
みぎりしみみに,[寛]みきりしみみに,
つゆおひて[寛],
なびけるはぎを,[寛]なひけるはきを,
たまたすき[寛],
かけてしのはし,[寛]かけてしのはむ,
みゆきふる[寛],
ふゆのあしたは[寛],
さしやなぎ,[寛]さすやなき,
ねはりあづさを,[寛]ねはるあつさを,
おほみてに,[寛]みてに,
とらしたまひて[寛],
あそばしし,[寛]あそひし,
わがおほきみを,[寛]わかきみを,
かすみたつ[寛],
はるのひくらし[寛],
まそかがみ,[寛]まそかみ,
みれどあかねば,[寛]みれとあかねは,
よろづよに,[寛]よろつよに,
かくしもがもと,[寛]かくしもかなと,
おほぶねの,[寛]おほふねの,
たのめるときに[寛],
なくわれ,[寛]なくわれか,
めかもまとへる,[寛]めかもまよへる,
おほとのを[寛],
ふりさけみれば,[寛]ふりさけみれは,
しろたへに,[寛]しろたへの,
かざりまつりて,[寛]かさりまつりて,
うちひさす[寛],
みやのとねりも[は][寛],
たへのほの,[寛]たへのほに,
あさぎぬければ,[寛]あさきぬきるは,
いめかも,[寛]ゆめかもや,
うつつかもと,[寛]うつつかもやと,
くもりよの[寛],
まとへるほどに,[寛]まよへるほとに,
あさもよし,[寛]あさもよい,
きのへのみちゆ,[寛]きのうへちより,
つのさはふ[寛],
いはれをみつつ,[寛]いはむらをみつつ,
かむはぶり,[寛]たまはふり,
はぶりまつれば,[寛]はふりまつれは,
ゆくみちの[寛],
たづきをしらに,[寛]たつきをしらに,
おもへども,[寛]おもへとも,
しるしをなみ,[寛]しるしをなみと,
なげけども,[寛]なけけとも,
おくかをなみ,[寛]おくかをなしみ,
おほみそで,[寛]みそての,
ゆきふれしまつを[寛],
こととはぬ,[寛]こととはす,
きにはありとも,[寛]きにはあれとも,
あらたまの[寛],
たつつきごとに,[寛]たつつきことに,
あまのはら[寛],
ふりさけみつつ[寛],
たまたすき[寛],
かけてしのはな,[寛]かけておもふな,
かしこくあれども,[寛]かしこけれとも,
" "#[番号]13/3325","#[題詞]反歌","#[原文]角障經 石村山丹 白栲 懸有雲者 皇可聞","#[訓読]つのさはふ磐余の山に白栲にかかれる雲は大君にかも","#[仮名],つのさはふ,いはれのやまに,しろたへに,かかれるくもは,おほきみにかも","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],挽歌,地名,桜井,奈良,枕詞,皇子挽歌","#[訓異]
つのさはふ[寛],
いはれのやまに,[寛]いはむらやまに,
しろたへに,[寛]しろたへの,
かかれるくもは[寛],
おほきみにかも[寛],
" "#[番号]13/3326","#[題詞]","#[原文]礒城嶋之 日本國尓 何方 御念食可 津礼毛無 城上宮尓 大殿乎 都可倍奉而 殿隠 々座者 朝者 召而使 夕者 召而使 遣之 舎人之子等者 行鳥之 群而待 有雖待 不召賜者 劔刀 磨之心乎 天雲尓 念散之 展轉 土打哭杼母 飽不足可聞 ","#[訓読]礒城島の 大和の国に いかさまに 思ほしめせか つれもなき 城上の宮に 大殿を 仕へまつりて 殿隠り 隠りいませば 朝には 召して使ひ 夕には 召して使ひ 使はしし 舎人の子らは 行く鳥の 群がりて待ち あり待てど 召したまはねば 剣大刀 磨ぎし心を 天雲に 思ひはぶらし 臥いまろび ひづち哭けども 飽き足らぬかも ","#[仮名],しきしまの,やまとのくにに,いかさまに,おもほしめせか,つれもなき,きのへのみやに,おほとのを,つかへまつりて,とのごもり,こもりいませば,あしたには,めしてつかひ,ゆふへには,めしてつかひ,つかはしし,とねりのこらは,ゆくとりの,むらがりてまち,ありまてど,めしたまはねば,つるぎたち,とぎしこころを,あまくもに,おもひはぶらし,こいまろび,ひづちなけども,あきだらぬかも","#[左注]右一首","#[校異]","#[事項],挽歌,地名,田原本,奈良,皇子挽歌,枕詞","#[訓異]
しきしまの[寛],
やまとのくにに[寛],
いかさまに[寛],
おもほしめせか,[寛]おほしめしてか,
つれもなき,[寛]つれもなく,
きのへのみやに,[寛]きのうへのみやに,
おほとのを[寛],
つかへまつりて[寛],
とのごもり,[寛]とのくもり,
こもりいませば,[寛]こもりいませは,
あしたには[寛],
めしてつかひ,[寛]めさしてつかへ,
ゆふへには[寛],
めしてつかひ,[寛]めさしてつかへ,
つかはしし[寛],
とねりのこらは[寛],
ゆくとりの[寛],
むらがりてまち,[寛]むらかりてまち,
ありまてど,[寛]ありまてと,
めしたまはねば,[寛]めしたまはねは,
つるぎたち,[寛]つるきたち,
とぎしこころを,[寛]ときしこころを,
あまくもに[寛],
おもひはぶらし,[寛]おもひしちらし,
こいまろび,[寛]こひまろひ,
ひづちなけども,[寛]ひつちなけとも,
あきだらぬかも,[寛]あきたらぬかも,
" "#[番号]13/3327","#[題詞]","#[原文]百小竹之 三野王 金厩 立而飼駒 角厩 立而飼駒 草社者 取而飼<曰戸> 水社者 は而飼<曰戸> 何然 大分青馬之 鳴立鶴 ","#[訓読]百小竹の 三野の王 西の馬屋に 立てて飼ふ駒 東の馬屋に 立てて飼ふ駒 草こそば 取りて飼ふと言へ 水こそば 汲みて飼ふと言へ 何しかも 葦毛の馬の いなき立てつる ","#[仮名],ももしのの,みののおほきみ,にしのうまやに,たててかふこま,ひむがしのうまやに,たててかふこま,くさこそば,とりてかふといへ,みづこそば,くみてかふといへ,なにしかも,あしげのうまの,いなきたてつる","#[左注](右二首)","#[校異]旱 -> 曰戸 [岩波古典大系] / 旱 -> 曰戸 [岩波古典大系]","#[事項],挽歌,枕詞,動物,美努王,譬喩,皇子挽歌","#[訓異]
ももしのの,[寛]ももささの,
みののおほきみ[寛],
にしのうまやに,[寛]にしのうまや,
たててかふこま[寛],
ひむがしのうまやに,[寛]ひむかしのうまや,
たててかふこま[寛],
くさこそば,[寛]くさこそは,
とりてかふといへ,[寛]とりてかへかに,
みづこそば,[寛]みつこそは,
くみてかふといへ,[寛]くみてかへかに,
なにしかも[寛],
あしげのうまの,[寛]あしけのうまの,
いなきたてつる,[寛]いはへたてつる,
" "#[番号]13/3328","#[題詞]反歌","#[原文]衣袖 大分青馬之 嘶音 情有鳧 常従異鳴","#[訓読]衣手葦毛の馬のいなく声心あれかも常ゆ異に鳴く","#[仮名],ころもで,あしげのうまの,いなくこゑ,こころあれかも,つねゆけになく","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],挽歌,枕詞,動物,皇子挽歌","#[訓異]
ころもで,[寛]ころもての,
あしげのうまの,[寛]あしけのうまの,
いなくこゑ,[寛]なくこえも,
こころあれかも,[寛]こころあるかも,
つねゆけになく,[寛]つねにけになく,
" "#[番号]13/3329","#[題詞]","#[原文]白雲之 棚曳國之 青雲之 向伏國乃 天雲 下有人者 妾耳鴨 君尓戀濫 吾耳鴨 夫君尓戀礼薄 天地 満言 戀鴨 る之病有 念鴨 意之痛 妾戀叙 日尓異尓益 何時橋物 不戀時等者 不有友 是九月乎 吾背子之 偲丹為与得 千世尓物 偲渡登 万代尓 語都我部等 始而之 此九月之 過莫呼 伊多母為便無見 荒玉之 月乃易者 将為須部乃 田度伎乎不知 石根之 許凝敷道之 石床之 根延門尓 朝庭 出座而嘆 夕庭 入座戀乍 烏玉之 黒髪敷而 人寐 味寐者不宿尓 大船之 行良行良尓 思乍 吾寐夜等者 數物不敢<鴨> ","#[訓読]白雲の たなびく国の 青雲の 向伏す国の 天雲の 下なる人は 我のみかも 君に恋ふらむ 我のみかも 君に恋ふれば 天地に 言を満てて 恋ふれかも 胸の病みたる 思へかも 心の痛き 我が恋ぞ 日に異にまさる いつはしも 恋ひぬ時とは あらねども この九月を 我が背子が 偲ひにせよと 千代にも 偲ひわたれと 万代に 語り継がへと 始めてし この九月の 過ぎまくを いたもすべなみ あらたまの 月の変れば 為むすべの たどきを知らに 岩が根の こごしき道の 岩床の 根延へる門に 朝には 出で居て嘆き 夕には 入り居恋ひつつ ぬばたまの 黒髪敷きて 人の寝る 味寐は寝ずに 大船の ゆくらゆくらに 思ひつつ 我が寝る夜らは 数みもあへぬかも ","#[仮名],しらくもの,たなびくくにの,あをくもの,むかぶすくにの,あまくもの,したなるひとは,あのみかも,きみにこふらむ,あのみかも,きみにこふれば,あめつちに,ことをみてて,こふれかも,むねのやみたる,おもへかも,こころのいたき,あがこひぞ,ひにけにまさる,いつはしも,こひぬときとは,あらねども,このながつきを,わがせこが,しのひにせよと,ちよにも,しのひわたれと,よろづよに,かたりつがへと,はじめてし,このながつきの,すぎまくを,いたもすべなみ,あらたまの,つきのかはれば,せむすべの,たどきをしらに,いはがねの,こごしきみちの,いはとこの,ねばへるかどに,あしたには,いでゐてなげき,ゆふへには,いりゐこひつつ,ぬばたまの,くろかみしきて,ひとのぬる,うまいはねずに,おほぶねの,ゆくらゆくらに,おもひつつ,わがぬるよらは,よみもあへぬかも","#[左注]右一首","#[校異]鴫 -> 鴨 [類][細]","#[事項],挽歌,女歌,恋情,枕詞","#[訓異]
しらくもの[寛],
たなびくくにの,[寛]たなひくくにの,
あをくもの[寛],
むかぶすくにの,[寛]むかふすくにの,
あまくもの[寛],
したなるひとは,[寛]したにあるひとは,
あのみかも,[寛]われのみかも,
きみにこふらむ[寛],
あのみかも,[寛]われのみかも,
きみにこふれば,[寛]つまにこふれは,
あめつちに[寛],
ことをみてて,[寛]ことはをみてて,
こふれかも,[寛]こふるかも,
むねのやみたる[寛],
おもへかも[寛],
こころのいたき[寛],
あがこひぞ,[寛]わかこひそ,
ひにけにまさる[寛],
いつはしも[寛],
こひぬときとは[寛],
あらねども,[寛]あらねとも,
このながつきを,[寛]このなかつきを,
わがせこが,[寛]わかせこか,
しのひにせよと[寛],
ちよにも,[寛]ちとせにも,
しのひわたれと[寛],
よろづよに,[寛]よろつよに,
かたりつがへと,[寛]かたりつかへと,
はじめてし,[寛]はしめてし,
このながつきの,[寛]このなかつきの,
すぎまくを,[寛]すきまくを,
いたもすべなみ,[寛]いともすへなみ,
あらたまの[寛],
つきのかはれば,[寛]つきのかはれは,
せむすべの,[寛]せむすへの,
たどきをしらに,[寛]たときをしらに,
いはがねの,[寛]いはかねの,
こごしきみちの,[寛]ここしみちの,
いはとこの[寛],
ねばへるかどに,[寛]ねはへるかとに,
あしたには,[寛]あさにはに,
いでゐてなげき,[寛]いてゐてなけき,
ゆふへには,[寛]ゆふにはに,
いりゐこひつつ[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
くろかみしきて[寛],
ひとのぬる[寛],
うまいはねずに,[寛]うまいはねすに,
おほぶねの,[寛]おほふねの,
ゆくらゆくらに[寛],
おもひつつ[寛],
わがぬるよらは,[寛]わかぬるよらは,
よみもあへぬかも,[寛]かそへもあへすなく,
" "#[番号]13/3330","#[題詞]","#[原文]隠来之 長谷之川之 上瀬尓 鵜矣八頭漬 下瀬尓 鵜矣八頭漬 上瀬之 <年>魚矣令咋 下瀬之 鮎矣令咋 麗妹尓 鮎遠惜 <麗妹尓 鮎矣惜> 投左乃 遠離居而 思空 不安國 嘆空 不安國 衣社薄 其破者 <継>乍物 又母相登言 玉社者 緒之絶薄 八十一里喚鶏 又物逢登曰 又毛不相物者 つ尓志有来 ","#[訓読]隠口の 泊瀬の川の 上つ瀬に 鵜を八つ潜け 下つ瀬に 鵜を八つ潜け 上つ瀬の 鮎を食はしめ 下つ瀬の 鮎を食はしめ くはし妹に 鮎を惜しみ くはし妹に 鮎を惜しみ 投ぐるさの 遠ざかり居て 思ふそら 安けなくに 嘆くそら 安けなくに 衣こそば それ破れぬれば 継ぎつつも またも合ふといへ 玉こそば 緒の絶えぬれば くくりつつ またも合ふといへ またも逢はぬものは 妻にしありけり ","#[仮名],こもりくの,はつせのかはの,かみつせに,うをやつかづけ,しもつせに,うをやつかづけ,かみつせの,あゆをくはしめ,しもつせの,あゆをくはしめ,くはしいもに,あゆををしみ,くはしいもに,あゆををしみ,なぐるさの,とほざかりゐて,おもふそら,やすけなくに,なげくそら,やすけなくに,きぬこそば,それやれぬれば,つぎつつも,またもあふといへ,たまこそば,をのたえぬれば,くくりつつ,またもあふといへ,またもあはぬものは,つまにしありけり","#[左注](右三首)","#[校異]羊 -> 年 [元][天][類] / <> -> 麗妹尓 鮎矣惜 [元][天][類] / 縫 -> 継 [元][温]","#[事項],挽歌,枕詞,地名,榛原,桜井,奈良,亡妻歌","#[訓異]
こもりくの[寛],
はつせのかはの[寛],
かみつせに,[寛]のほりせに,
うをやつかづけ,[寛]うをやつひたし,
しもつせに[寛],
うをやつかづけ,[寛]うをやつひたし,
かみつせの[寛],
あゆをくはしめ[寛],
しもつせの[寛],
あゆをくはしめ[寛],
くはしいもに,[寛]くはしめに,
あゆををしみ,[寛]あゆをあたらし,
くはしいもに,
あゆををしみ,
なぐるさの,[寛]なくさの,
とほざかりゐて,[寛]とほさかりゐて,
おもふそら[寛],
やすけなくに,[寛]やすからなくに,
なげくそら,[寛]なけくそら,
やすけなくに,[寛]やすからなくに,
きぬこそば,[寛]きぬこそは,
それやれぬれば,[寛]それやれぬれは,
つぎつつも,[寛]ぬひつつも,
またもあふといへ[寛],
たまこそば,[寛]たまこそは,
をのたえぬれば,[寛]をのたえぬれは,
くくりつつ[寛],
またもあふといへ[寛],
またもあはぬものは[寛],
つまにしありけり[寛],
" "#[番号]13/3331","#[題詞]","#[原文]隠来之 長谷之山 青幡之 忍坂山者 走出之 宜山之 出立之 妙山叙 惜 山之 荒巻惜毛 ","#[訓読]隠口の 泊瀬の山 青旗の 忍坂の山は 走出の よろしき山の 出立の くはしき山ぞ あたらしき 山の 荒れまく惜しも ","#[仮名],こもりくの,はつせのやま,あをはたの,おさかのやまは,はしりでの,よろしきやまの,いでたちの,くはしきやまぞ,あたらしき,やまの,あれまくをしも","#[左注](右三首)","#[校異]","#[事項],挽歌,枕詞,地名,桜井,奈良,亡妻歌,歌謡,山讃美","#[訓異]
こもりくの[寛],
はつせのやま[寛],
あをはたの[寛],
おさかのやまは,[寛]おしさかやまは,
はしりでの,[寛]はしりいての,
よろしきやまの[寛],
いでたちの,[寛]いてたちの,
くはしきやまぞ,[寛]くはしきやまそ,
あたらしき[寛],
やまの[寛],
あれまくをしも[寛],
" "#[番号]13/3332","#[題詞]","#[原文]高山 与海社者 山随 如此毛現 海随 然真有目 人者<花>物曽 空蝉与人 ","#[訓読]高山と 海とこそば 山ながら かくもうつしく 海ながら しかまことならめ 人は花ものぞ うつせみ世人 ","#[仮名],たかやまと,うみとこそば,やまながら,かくもうつしく,うみながら,しかまことならめ,ひとははなものぞ,うつせみよひと","#[左注]右三首","#[校異]宛 -> 花 [元][天][類]","#[事項],挽歌,歌謡,無常","#[訓異]
たかやまと[寛],
うみとこそば,[寛]うみこそは,
やまながら,[寛]やまのまに,
かくもうつしく,[寛]かくもうつなひ,
うみながら,[寛]うみのまに,
しかまことならめ,[寛]しかすなをならめ,
ひとははなものぞ,[寛]ひとはあたものそ,
うつせみよひと,[寛]うつせみのよひと,
" "#[番号]13/3333","#[題詞]","#[原文]王之 御命恐 秋津嶋 倭雄過而 大伴之 御津之濱邊従 大舟尓 真梶繁貫 旦名伎尓 水<手>之音為乍 夕名寸尓 梶音為乍 行師君 何時来座登 <大>卜置而 齋度尓 <狂>言哉 人之言釣 我心 盡之山之 黄葉之 散過去常 公之正香乎 ","#[訓読]大君の 命畏み 蜻蛉島 大和を過ぎて 大伴の 御津の浜辺ゆ 大船に 真楫しじ貫き 朝なぎに 水手の声しつつ 夕なぎに 楫の音しつつ 行きし君 いつ来まさむと 占置きて 斎ひわたるに たはことか 人の言ひつる 我が心 筑紫の山の 黄葉の 散りて過ぎぬと 君が直香を ","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,あきづしま,やまとをすぎて,おほともの,みつのはまへゆ,おほぶねに,まかぢしじぬき,あさなぎに,かこのこゑしつつ,ゆふなぎに,かぢのおとしつつ,ゆきしきみ,いつきまさむと,うらおきて,いはひわたるに,たはことか,ひとのいひつる,あがこころ,つくしのやまの,もみちばの,ちりてすぎぬと,きみがただかを","#[左注](右二首)","#[校異]干 -> 手 / 大夕 -> 大 [元][類] / 抂 -> 狂 [天][温]","#[事項],挽歌,女歌,地名,奈良,大阪,福岡,羈旅,道行き,行旅死,枕詞","#[訓異]
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
あきづしま,[寛]あきつしま,
やまとをすぎて,[寛]やまとをすきて,
おほともの[寛],
みつのはまへゆ[寛],
おほぶねに,[寛]おほふねに,
まかぢしじぬき,[寛]まかちししぬき,
あさなぎに,[寛]あさなきに,
かこのこゑしつつ,[寛]かこのおとしつつ,
ゆふなぎに,[寛]ゆふなきに,
かぢのおとしつつ,[寛]かねのおとしつつ,
ゆきしきみ[寛],
いつきまさむと[寛],
うらおきて,[寛]おほゆふけおきて,
いはひわたるに[寛],
たはことか,[寛]まかことや,
ひとのいひつる[寛],
あがこころ,[寛]わかこころ,
つくしのやまの[寛],
もみちばの,[寛]もみちはの,
ちりてすぎぬと,[寛]ちりてすきぬと,
きみがただかを,[寛]きみかまさかを,
" "#[番号]13/3334","#[題詞]反歌","#[原文]<狂>言哉 人之云鶴 玉緒乃 長登君者 言手師物乎","#[訓読]たはことか人の言ひつる玉の緒の長くと君は言ひてしものを","#[仮名],たはことか,ひとのいひつる,たまのをの,ながくときみは,いひてしものを","#[左注]右二首","#[校異]抂 -> 狂 [温]","#[事項],挽歌,行旅死,女歌","#[訓異]
たはことか,[寛]まかことや,
ひとのいひつる[寛],
たまのをの[寛],
ながくときみは,[寛]なかくときみは,
いひてしものを[寛],
" "#[番号]13/3335","#[題詞]","#[原文]玉桙之 道去人者 足桧木之 山行野徃 直海 川徃渡 不知魚取 海道荷出而 惶八 神之渡者 吹風母 和者不吹 立浪母 踈不立 跡座浪之 塞道麻 誰心 勞跡鴨 直渡異六 <直渡異六> ","#[訓読]玉桙の 道行く人は あしひきの 山行き野行き にはたづみ 川行き渡り 鯨魚取り 海道に出でて 畏きや 神の渡りは 吹く風も のどには吹かず 立つ波も おほには立たず とゐ波の 塞ふる道を 誰が心 いたはしとかも 直渡りけむ 直渡りけむ ","#[仮名],たまほこの,みちゆくひとは,あしひきの,やまゆきのゆき,にはたづみ,かはゆきわたり,いさなとり,うみぢにいでて,かしこきや,かみのわたりは,ふくかぜも,のどにはふかず,たつなみも,おほにはたたず,とゐなみの,ささふるみちを,たがこころ,いたはしとかも,ただわたりけむ,ただわたりけむ","#[左注](右九首)","#[校異]塞 [天][類] 立塞 / <> -> 直渡異六 [元][類]","#[事項],挽歌,枕詞,行路死人,鎮魂","#[訓異]
たまほこの[寛],
みちゆくひとは,[寛]みちゆきひとは,
あしひきの[寛],
やまゆきのゆき[寛],
にはたづみ,[寛]ひたす,
かはゆきわたり[寛],
いさなとり[寛],
うみぢにいでて,[寛]うみちにいてて,
かしこきや,[寛]かしこみや,
かみのわたりは[寛],
ふくかぜも,[寛]ふくかせも,
のどにはふかず,[寛]のとにはふかす,
たつなみも[寛],
おほにはたたず,[寛]おほにたたすと,
とゐなみの,[寛]たかなみの,
ささふるみちを,[寛]ふさけるみちを,
たがこころ,[寛]たかこころ,
いたはしとかも[寛],
ただわたりけむ,[寛]たたわたりけむ,
ただわたりけむ
" "#[番号]13/3336","#[題詞]","#[原文]鳥音之 所聞海尓 高山麻 障所為而 奥藻麻 枕所為 <蛾>葉之 衣<谷>不服尓 不知魚取 海之濱邊尓 浦裳無 所宿有人者 母父尓 真名子尓可有六 若を之 妻香有異六 思布 言傳八跡 家問者 家乎母不告 名問跡 名谷母不告 哭兒如 言谷不語 思鞆 悲物者 世間有 <世間有> ","#[訓読]鳥が音の 聞こゆる海に 高山を 隔てになして 沖つ藻を 枕になし ひむし羽の 衣だに着ずに 鯨魚取り 海の浜辺に うらもなく 臥やせる人は 母父に 愛子にかあらむ 若草の 妻かありけむ 思ほしき 言伝てむやと 家問へば 家をも告らず 名を問へど 名だにも告らず 泣く子なす 言だにとはず 思へども 悲しきものは 世間にぞある 世間にぞある ","#[仮名],とりがねの,きこゆるうみに,たかやまを,へだてになして,おきつもを,まくらになし,ひむしはの,きぬだにきずに,いさなとり,うみのはまへに,うらもなく,こやせるひとは,おもちちに,まなごにかあらむ,わかくさの,つまかありけむ,おもほしき,ことつてむやと,いへとへば,いへをものらず,なをとへど,なだにものらず,なくこなす,ことだにとはず,おもへども,かなしきものは,よのなかにぞある,よのなかにぞある","#[左注](右九首)","#[校異]我 -> 蛾 [元][天][類] / 浴 -> 谷 [類] / <> -> 世間有 [元][天]","#[事項],挽歌,行路死人,鎮魂","#[訓異]
とりがねの,[寛]とりのねの,
きこゆるうみに[寛],
たかやまを[寛],
へだてになして,[寛]へたてとなして,
おきつもを[寛],
まくらになし,[寛]まくらとなして,
ひむしはの,[寛]かはのきぬ,
きぬだにきずに,[寛]すすきてきぬに,
いさなとり[寛],
うみのはまへに[寛],
うらもなく[寛],
こやせるひとは,[寛]ねてあるひとは,
おもちちに,[寛]ははちちに,
まなごにかあらむ,[寛]まなこにかあらむ,
わかくさの[寛],
つまかありけむ[寛],
おもほしき,[寛]おもはしき,
ことつてむやと,[寛]ことつてめやと,
いへとへば,[寛]いへとへは,
いへをものらず,[寛]いへをもつけす,
なをとへど,[寛]なをとへと,
なだにものらず,[寛]なたにもつけす,
なくこなす,[寛]なくこのこと,
ことだにとはず,[寛]ことたにつけす,
おもへども,[寛]おもへとも,
かなしきものは[寛],
よのなかにぞある,[寛]よのなかなれや,
よのなかにぞある
" "#[番号]13/3337","#[題詞]反歌","#[原文]母父毛 妻毛子等毛 高々二 来跡<待>異六 人之悲<紗>","#[訓読]母父も妻も子どもも高々に来むと待ちけむ人の悲しさ","#[仮名],おもちちも,つまもこどもも,たかたかに,こむとまちけむ,ひとのかなしさ","#[左注](右九首)","#[校異]待 [西(上書訂正)][元][天][類] / 沙 -> 紗 [元][天][類]","#[事項],挽歌,行路死人,鎮魂","#[訓異]
おもちちも,[寛]ははちちも,
つまもこどもも,[寛]つまもこともも,
たかたかに[寛],
こむとまちけむ[寛],
ひとのかなしさ[寛],
" "#[番号]13/3338","#[題詞]","#[原文]蘆桧木乃 山道者将行 風吹者 浪之塞 海道者不行","#[訓読]あしひきの山道は行かむ風吹けば波の塞ふる海道は行かじ","#[仮名],あしひきの,やまぢはゆかむ,かぜふけば,なみのささふる,うみぢはゆかじ","#[左注](右九首)","#[校異]","#[事項],挽歌,羈旅,枕詞","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまぢはゆかむ,[寛]やまちはゆかむ,
かぜふけば,[寛]かせふけは,
なみのささふる,[寛]なみのふさける,
うみぢはゆかじ,[寛]うみちはゆかし,
" "#[番号]13/3339","#[題詞]或本歌 / 備後國神嶋濱調使首見屍作歌一首[并短歌]","#[原文]玉桙之 道尓出立 葦引乃 野行山行 潦 川徃渉 鯨名取 海路丹出而 吹風裳 母穂丹者不吹 立浪裳 箟跡丹者不起 恐耶 神之渡乃 敷浪乃 寄濱部丹 高山矣 部立丹置而 <b>潭矣 枕丹巻而 占裳無 偃為<公>者 母父之 愛子丹裳在将 稚草之 妻裳有将等 家問跡 家道裳不云 名矣問跡 名谷裳不告 誰之言矣 勞鴨 腫浪能 恐海矣 直渉異将 ","#[訓読]玉桙の 道に出で立ち あしひきの 野行き山行き にはたづみ 川行き渡り 鯨魚取り 海道に出でて 吹く風も おほには吹かず 立つ波も のどには立たぬ 畏きや 神の渡りの しき波の 寄する浜辺に 高山を 隔てに置きて 浦ぶちを 枕に巻きて うらもなく こやせる君は 母父が 愛子にもあらむ 若草の 妻もあらむと 家問へど 家道も言はず 名を問へど 名だにも告らず 誰が言を いたはしとかも とゐ波の 畏き海を 直渡りけむ ","#[仮名],たまほこの,みちにいでたち,あしひきの,のゆきやまゆき,にはたづみ,かはゆきわたり,いさなとり,うみぢにいでて,ふくかぜも,おほにはふかず,たつなみも,のどにはたたぬ,かしこきや,かみのわたりの,しきなみの,よするはまへに,たかやまを,へだてにおきて,うらぶちを,まくらにまきて,うらもなく,こやせるきみは,おもちちが,まなごにもあらむ,わかくさの,つまもあらむと,いへとへど,いへぢもいはず,なをとへど,なだにものらず,たがことを,いたはしとかも,とゐなみの,かしこきうみを,ただわたりけむ","#[左注](右九首)","#[校異]歌 [西] 謌 / 納 -> b [元][紀] / 君 -> 公 [元][天][類] / 将等 [元][天][類] 等将","#[事項],挽歌,羈旅,行路死人,広島県,福山,地名,枕詞,異伝,或本歌,調使首","#[訓異]
たまほこの[寛],
みちにいでたち,[寛]みちにいてたち,
あしひきの[寛],
のゆきやまゆき[寛],
にはたづみ,[寛]ひたすかは,
かはゆきわたり,[寛]ゆきわたりては,
いさなとり[寛],
うみぢにいでて,[寛]うみちにいてて,
ふくかぜも,[寛]ふくかせも,
おほにはふかず,[寛]おほにはふかす,
たつなみも[寛],
のどにはたたぬ,[寛]のとにはたたす,
かしこきや,[寛]かしこみや,
かみのわたりの[寛],
しきなみの[寛],
よするはまへに[寛],
たかやまを[寛],
へだてにおきて,[寛]へたてにおきて,
うらぶちを,[寛]いるふちを,
まくらにまきて[寛],
うらもなく[寛],
こやせるきみは,[寛]ふれたるきみは,
おもちちが,[寛]ははちちの,
まなごにもあらむ,[寛]まなこにもあらむ,
わかくさの[寛],
つまもあらむと[寛],
いへとへど,[寛]いへとへと,
いへぢもいはず,[寛]いへちもいはす,
なをとへど,[寛]なをとへと,
なだにものらず,[寛]なたにもつけす,
たがことを,[寛]たかことを,
いたはしとかも[寛],
とゐなみの,[寛]ゆふなみの,
かしこきうみを[寛],
ただわたりけむ,[寛]たたわたりけむ,
" "#[番号]13/3340","#[題詞]反歌","#[原文]母父裳 妻裳子等裳 高々丹 来<将>跡待 人乃悲","#[訓読]母父も妻も子どもも高々に来むと待つらむ人の悲しさ","#[仮名],おもちちも,つまもこどもも,たかたかに,こむとまつらむ,ひとのかなしさ","#[左注](右九首)","#[校異]<> -> 将 [元][天][類]","#[事項],挽歌,異伝,行路死人,鎮魂,或本歌,羈旅,調使首","#[訓異]
おもちちも,[寛]ははちちも,
つまもこどもも,[寛]つまもこともも,
たかたかに[寛],
こむとまつらむ,[寛]こむとまちなむ,
ひとのかなしさ[寛],
" "#[番号]13/3341","#[題詞]","#[原文]家人乃 将待物矣 津煎裳無 荒礒矣巻而 偃有<公>鴨","#[訓読]家人の待つらむものをつれもなき荒礒を巻きて寝せる君かも","#[仮名],いへびとの,まつらむものを,つれもなき,ありそをまきて,なせるきみかも","#[左注](右九首)","#[校異]君 -> 公 [元][天][類]","#[事項],挽歌,行路死人,鎮魂,或本歌,異伝,羈旅,調使首","#[訓異]
いへびとの,[寛]いへひとの,
まつらむものを[寛],
つれもなき,[寛]つにもなく,
ありそをまきて,[寛]あらいそをまきて,
なせるきみかも,[寛]ふせるきみかも,
" "#[番号]13/3342","#[題詞]","#[原文]<b>潭 偃為<公>矣 今日々々跡 将来跡将待 妻之可奈思母","#[訓読]浦ぶちにこやせる君を今日今日と来むと待つらむ妻し悲しも","#[仮名],うらぶちに,こやせるきみを,けふけふと,こむとまつらむ,つましかなしも","#[左注](右九首)","#[校異]納 -> b [元][紀] / 君 -> 公 [元][天][類]","#[事項],挽歌,行路死人,鎮魂,或本歌,異伝,羈旅,調使首","#[訓異]
うらぶちに,[寛]いるふちに,
こやせるきみを,[寛]ふしたるきみを,
けふけふと[寛],
こむとまつらむ[寛],
つましかなしも,[寛]つまのかなしも,
" "#[番号]13/3343","#[題詞]","#[原文]<b>浪 来依濱丹 津煎裳無 偃為<公>賀 家道不知裳","#[訓読]浦波の来寄する浜につれもなくこやせる君が家道知らずも","#[仮名],うらなみの,きよするはまに,つれもなく,ふしたるきみが,いへぢしらずも","#[左注]右九首","#[校異]納 -> b [元][紀] / 君 -> 公 [元][天][類]","#[事項],挽歌,行路死人,鎮魂,或本歌,異伝,羈旅,調使首","#[訓異]
うらなみの,[寛]いるなみの,
きよするはまに[寛],
つれもなく,[寛]つにもなく,
ふしたるきみが,[寛]ふしたるきみか,
いへぢしらずも,[寛]いへちしらすも,
" "#[番号]13/3344","#[題詞]","#[原文]此月者 君将来跡 大舟之 思憑而 何時可登 吾待居者 黄葉之 過行跡 玉梓之 使之云者 螢成 髣髴聞而 大<土>乎 <火>穂跡<而 立>居而 去方毛不知 朝霧乃 思<或>而 杖不足 八尺乃嘆 々友 記乎無見跡 何所鹿 君之将座跡 天雲乃 行之随尓 所射完乃 行<文>将死跡 思友 道之不知者 獨居而 君尓戀尓 哭耳思所泣 ","#[訓読]この月は 君来まさむと 大船の 思ひ頼みて いつしかと 我が待ち居れば 黄葉の 過ぎてい行くと 玉梓の 使の言へば 蛍なす ほのかに聞きて 大地を ほのほと踏みて 立ちて居て ゆくへも知らず 朝霧の 思ひ迷ひて 杖足らず 八尺の嘆き 嘆けども 験をなみと いづくにか 君がまさむと 天雲の 行きのまにまに 射ゆ鹿猪の 行きも死なむと 思へども 道の知らねば ひとり居て 君に恋ふるに 哭のみし泣かゆ ","#[仮名],このつきは,きみきまさむと,おほぶねの,おもひたのみて,いつしかと,わがまちをれば,もみちばの,すぎていゆくと,たまづさの,つかひのいへば,ほたるなす,ほのかにききて,おほつちを,ほのほとふみて,たちてゐて,ゆくへもしらず,あさぎりの,おもひまとひて,つゑたらず,やさかのなげき,なげけども,しるしをなみと,いづくにか,きみがまさむと,あまくもの,ゆきのまにまに,いゆししの,ゆきもしなむと,おもへども,みちのしらねば,ひとりゐて,きみにこふるに,ねのみしなかゆ","#[左注](右二首)","#[校異]士 -> 土 [天] / 太 -> 火 [元][天][類] / 立而 -> 而立 [元][天] / 惑 -> 或 [元][天] / 父 -> 文 [元][天][類]","#[事項],挽歌,女歌,赴任,悲別,防人妻","#[訓異]
このつきは[寛],
きみきまさむと,[寛]きみもきなむと,
おほぶねの,[寛]おほふねの,
おもひたのみて[寛],
いつしかと[寛],
わがまちをれば,[寛]わかまちをれは,
もみちばの,[寛]もみちはの,
すぎていゆくと,[寛]すきてゆきぬと,
たまづさの,[寛]たまつさの,
つかひのいへば,[寛]つかひのいへは,
ほたるなす[寛],
ほのかにききて[寛],
おほつちを,[寛]ますらをを,
ほのほとふみて,[寛]はたととのふと,
たちてゐて[寛],
ゆくへもしらず,[寛]ゆくへもしらす,
あさぎりの,[寛]あさきりの,
おもひまとひて[寛],
つゑたらず,[寛]つえたらぬ,
やさかのなげき,[寛]やさかのなけき,
なげけども,[寛]なけけとも,
しるしをなみと[寛],
いづくにか,[寛]いつくにか,
きみがまさむと,[寛]きみかまさむと,
あまくもの[寛],
ゆきのまにまに[寛],
いゆししの,[寛]いるししの,
ゆきもしなむと[寛],
おもへども,[寛]おもへとも,
みちのしらねば,[寛]みちのしらねは,
ひとりゐて[寛],
きみにこふるに[寛],
ねのみしなかゆ,[寛]ねのみしなかる,
" "#[番号]13/3345","#[題詞]反歌","#[原文]葦邊徃 鴈之翅乎 見別 <公>之佩具之 投箭之所思","#[訓読]葦辺行く雁の翼を見るごとに君が帯ばしし投矢し思ほゆ","#[仮名],あしへゆく,かりのつばさを,みるごとに,きみがおばしし,なげやしおもほゆ","#[左注]右二首 但或云 此短歌者<防>人之妻所作也 然則應知長歌亦此同作焉","#[校異]君 -> 公 [元][天][類] / 防 [西(上書訂正)][元][天][紀]","#[事項],挽歌,動物,女歌,悲別,防人妻","#[訓異]
あしへゆく[寛],
かりのつばさを,[寛]かりのつはさを,
みるごとに,[寛]みわかれて,
きみがおばしし,[寛]きみかおひこし,
なげやしおもほゆ,[寛]なくやしそおもふ,
" "#[番号]13/3346","#[題詞]","#[原文]欲見者 雲居所見 愛 十羽能松原 小子等 率和出将見 琴酒者 國丹放甞 別避者 宅仁離南 乾坤之 神志恨之 草枕 此羈之氣尓 妻應離哉 ","#[訓読]見欲しきは 雲居に見ゆる うるはしき 鳥羽の松原 童ども いざわ出で見む こと放けば 国に放けなむ こと放けば 家に放けなむ 天地の 神し恨めし 草枕 この旅の日に 妻放くべしや ","#[仮名],みほしきは,くもゐにみゆる,うるはしき,とばのまつばら,わらはども,いざわいでみむ,ことさけば,くににさけなむ,ことさけば,いへにさけなむ,あめつちの,かみしうらめし,くさまくら,このたびのけに,つまさくべしや","#[左注](右二首)","#[校異]","#[事項],挽歌,地名,亡妻歌,羈旅,行旅死","#[訓異]
みほしきは,[寛]みまくほりは,
くもゐにみゆる,[寛]くもゐにみえて,
うるはしき,[寛]うつくしき,
とばのまつばら,[寛]とはのまつはら,
わらはども,[寛]みとりこと,
いざわいでみむ,[寛]いさやいてみむ,
ことさけば,[寛]ことさけは,
くににさけなむ[寛],
ことさけば,[寛]わかれなは,
いへにさけなむ,[寛]いへにかれなむ,
あめつちの[寛],
かみしうらめし[寛],
くさまくら[寛],
このたびのけに,[寛]このたひのけに,
つまさくべしや,[寛]つまかるへしや,
" "#[番号]13/3347","#[題詞]反歌","#[原文]草枕 此羈之氣尓 妻<放> 家道思 生為便無","#[訓読]草枕この旅の日に妻離り家道思ふに生けるすべなし","#[仮名],くさまくら,このたびのけに,つまさかり,いへぢおもふに,いけるすべなし","#[左注]或本歌曰 羈之氣二為而 / 右二首","#[校異]敬 -> 放 [元][天][類]","#[事項],挽歌,枕詞,亡妻歌,羈旅,行旅死","#[訓異]
くさまくら[寛],
このたびのけに,[寛]このたひのけに,
つまさかり[寛],
いへぢおもふに,[寛]いへちおもへは,
いけるすべなし,[寛]いけるすへなし,
" "#[番号]13/3347S","#[題詞]或本歌曰","#[原文]羈之氣二為而","#[訓読]旅の日にして ","#[仮名],たびのけにして","#[左注]右二首","#[校異]","#[事項],挽歌,亡妻歌,羈旅,行旅死","#[訓異]
たびのけにして[寛],
" "#[番号]14/3348","#[題詞]東歌","#[原文]奈都素妣久 宇奈加美我多能 於伎都渚尓 布袮波等<杼>米牟 佐欲布氣尓家里","#[訓読]夏麻引く海上潟の沖つ洲に船は留めむさ夜更けにけり","#[仮名],なつそびく,うなかみがたの,おきつすに,ふねはとどめむ,さよふけにけり","#[左注]右一首上総國歌","#[校異]抒 -> 杼 [類][古][京]","#[事項],東歌,千葉県,枕詞,市原市,地名","#[訓異]
なつそびく,[寛]なつそひく,
うなかみがたの,[寛]うなかみかたの,
おきつすに[寛],
ふねはとどめむ,[寛]ふねはととめむ,
さよふけにけり[寛],
" "#[番号]14/3349","#[題詞]","#[原文]可豆思加乃 麻萬能宇良<未>乎 許具布祢能 布奈妣等佐和久 奈美多都良思母","#[訓読]葛飾の真間の浦廻を漕ぐ船の船人騒く波立つらしも","#[仮名],かづしかの,ままのうらみを,こぐふねの,ふなびとさわく,なみたつらしも","#[左注]右一首下総國歌","#[校異]末 -> 未 [万葉集古義]","#[事項],東歌,千葉県,地名,葛飾区,市原市,景物","#[訓異]
かづしかの,[寛]かつしかの,
ままのうらみを,[寛]ままのうらまを,
こぐふねの,[寛]こくふねの,
ふなびとさわく,[寛]ふなひとさわく,
なみたつらしも[寛],
" "#[番号]14/3350","#[題詞]","#[原文]筑波祢乃 尓比具波麻欲能 伎奴波安礼杼 伎美我美家思志 安夜尓伎保思母","#[訓読]筑波嶺の新桑繭の衣はあれど君が御衣しあやに着欲しも","#[仮名],つくはねの,にひぐはまよの,きぬはあれど,きみがみけしし,あやにきほしも","#[左注]或本歌曰 多良知祢能 又云 安麻多伎保思母 / (右二首常陸國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,茨城県,筑波山,地名,,恋愛,新婚,婚姻","#[訓異]
つくはねの[寛],
にひぐはまよの,[寛]にひくはまゆの,
きぬはあれど,[寛]きぬはあれと,
きみがみけしし,[寛]きみかみけしし,
あやにきほしも[寛],
" "#[番号]14/3350S","#[題詞]或本歌曰 又云","#[原文]多良知祢能 安麻多伎保思母","#[訓読]たらちねの あまた着欲しも ","#[仮名]たらちねの,あまたきほしも","#[左注](右二首常陸國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,茨城県,異伝,筑波山,新婚,恋愛","#[訓異]
たらちねの[寛],
あまたきほしも[寛],
" "#[番号]14/3351","#[題詞]","#[原文]筑波祢尓 由伎可母布良留 伊奈乎可母 加奈思吉兒呂我 尓努保佐流可母","#[訓読]筑波嶺に雪かも降らるいなをかも愛しき子ろが布乾さるかも","#[仮名],つくはねに,ゆきかもふらる,いなをかも,かなしきころが,にのほさるかも","#[左注]右二首常陸國歌","#[校異]","#[事項],東歌,茨城県,筑波山,地名,恋情,景物","#[訓異]
つくはねに[寛],
ゆきかもふらる[寛],
いなをかも[寛],
かなしきころが,[寛]かなしきころか,
にのほさるかも[寛],
" "#[番号]14/3352","#[題詞]","#[原文]信濃奈流 須我能安良能尓 保登等藝須 奈久許恵伎氣<婆> 登伎須疑尓家里","#[訓読]信濃なる須我の荒野に霍公鳥鳴く声聞けば時過ぎにけり","#[仮名],しなぬなる,すがのあらのに,ほととぎす,なくこゑきけば,ときすぎにけり","#[左注]右一首信濃國歌","#[校異]波 -> 婆 [紀][細]","#[事項],東歌,長野県,地名,真田町,菅平,動物,別離,農事,女歌","#[訓異]
しなぬなる,[寛]しなのなる,
すがのあらのに,[寛]すかのあらのに,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なくこゑきけば,[寛]なくこゑきけは,
ときすぎにけり,[寛]ときすきにけり,
" "#[番号]14/3353","#[題詞]相聞","#[原文]阿良多麻能 伎倍乃波也之尓 奈乎多弖天 由伎可都麻思自 移乎佐伎太多尼","#[訓読]あらたまの伎倍の林に汝を立てて行きかつましじ寐を先立たね","#[仮名],あらたまの,きへのはやしに,なをたてて,ゆきかつましじ,いをさきだたね","#[左注](右二首遠江國歌)","#[校異]伎 [類][細](塙) 吉","#[事項],東歌,相聞,静岡県,枕詞,地名,浜名市,歌謡,歌垣,民謡,恋愛","#[訓異]
あらたまの[寛],
きへのはやしに[寛],
なをたてて[寛],
ゆきかつましじ,[寛]ゆきかつましし,
いをさきだたね,[寛]いをさきたたに,
" "#[番号]14/3354","#[題詞]","#[原文]伎倍比等乃 萬太良夫須麻尓 和多佐波太 伊利奈麻之母乃 伊毛我乎杼許尓","#[訓読]伎倍人のまだら衾に綿さはだ入りなましもの妹が小床に","#[仮名],きへひとの,まだらぶすまに,わたさはだ,いりなましもの,いもがをどこに","#[左注]右二首遠江國歌","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,静岡県,地名,浜名市,恋愛,歌垣,歌謡,民謡","#[訓異]
きへひとの[寛],
まだらぶすまに,[寛]またらふすまに,
わたさはだ,[寛]わたさはた,
いりなましもの[寛],
いもがをどこに,[寛]いもかをとこに,
" "#[番号]14/3355","#[題詞]","#[原文]安麻乃波良 不自能之婆夜麻 己能久礼能 等伎由都利奈波 阿波受可母安良牟","#[訓読]天の原富士の柴山この暗の時ゆつりなば逢はずかもあらむ","#[仮名],あまのはら,ふじのしばやま,このくれの,ときゆつりなば,あはずかもあらむ","#[左注](右五首駿河國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,静岡県,富士山,地名,歌垣,歌謡,民謡,恋愛","#[訓異]
あまのはら[寛],
ふじのしばやま,[寛]ふしのしはやま,
このくれの[寛],
ときゆつりなば,[寛]ときゆつりなは,
あはずかもあらむ,[寛]あはすかもあらむ,
" "#[番号]14/3356","#[題詞]","#[原文]不盡能祢乃 伊夜等保奈我伎 夜麻治乎毛 伊母我理登倍婆 氣尓餘婆受吉奴","#[訓読]富士の嶺のいや遠長き山道をも妹がりとへばけによばず来ぬ","#[仮名],ふじのねの,いやとほながき,やまぢをも,いもがりとへば,けによばずきぬ","#[左注](右五首駿河國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,静岡県,富士山,地名,恋愛","#[訓異]
ふじのねの,[寛]ふしのねの,
いやとほながき,[寛]いやとほなかき,
やまぢをも,[寛]やまちをも,
いもがりとへば,[寛]いもかりとへは,
けによばずきぬ,[寛]けによはすきぬ,
" "#[番号]14/3357","#[題詞]","#[原文]可須美為流 布時能夜麻備尓 和我伎奈婆 伊豆知武吉弖加 伊毛我奈氣可牟","#[訓読]霞居る富士の山びに我が来なばいづち向きてか妹が嘆かむ","#[仮名],かすみゐる,ふじのやまびに,わがきなば,いづちむきてか,いもがなげかむ","#[左注](右五首駿河國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,静岡県,富士山,地名,恋情,別離,後朝","#[訓異]
かすみゐる[寛],
ふじのやまびに,[寛]ふしのやまへに,
わがきなば,[寛]わかきなは,
いづちむきてか,[寛]いつちむきてか,
いもがなげかむ,[寛]いもかなけかむ,
" "#[番号]14/3358","#[題詞]","#[原文]佐奴良久波 多麻乃緒婆可里 <古>布良久波 布自能多可祢乃 奈流佐波能其登","#[訓読]さ寝らくは玉の緒ばかり恋ふらくは富士の高嶺の鳴沢のごと","#[仮名],さぬらくは,たまのをばかり,こふらくは,ふじのたかねの,なるさはのごと","#[左注]或本歌曰 麻可奈思美 奴良久波思家良久 佐奈良久波 伊豆能多可祢能 奈流佐波奈須与 一本歌曰 阿敝良久波 多麻能乎思家也 古布良久波 布自乃多可祢尓 布流由伎奈須毛 / (右五首駿河國歌)","#[校異]右 -> 古 [西(訂正右書)][類][紀][温] / 久波 [細](塙) 久","#[事項],東歌,相聞,静岡県,富士山,地名,恋情,歌謡,民謡,歌垣","#[訓異]
さぬらくは[寛],
たまのをばかり,[寛]たまのをはかり,
こふらくは[寛],
ふじのたかねの,[寛]ふしのたかねの,
なるさはのごと,[寛]なるさはのこと,
" "#[番号]14/3358S1","#[題詞]或本歌曰","#[原文]麻可奈思美 奴良久波思家良久 佐奈良久波 伊豆能多可祢能 奈流佐波奈須与","#[訓読]ま愛しみ寝らくはしけらくさ鳴らくは伊豆の高嶺の鳴沢なすよ","#[仮名]まかなしみ,ぬらくはしけらく,さならくは,いづのたかねの,なるさはなすよ","#[左注](右五首駿河國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,静岡県,地名,伊豆,天城山,うわさ,人目,恋愛,歌垣,民謡,歌謡","#[訓異]
まかなしみ[寛],
ぬらくはしけらく[寛],
さならくは,[寛]ならくは,
いづのたかねの,[寛]いつのたかねの,
なるさはなすよ[寛],
" "#[番号]14/3358S2","#[題詞]一本歌曰","#[原文]阿敝良久波 多麻能乎思家也 古布良久波 布自乃多可祢尓 布流由伎奈須毛","#[訓読]逢へらくは玉の緒しけや恋ふらくは富士の高嶺に降る雪なすも","#[仮名]あへらくは,たまのをしけや,こふらくは,ふじのたかねに,ふるゆきなすも","#[左注](右五首駿河國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,静岡県,富士山,地名,恋情,歌垣,民謡,歌謡","#[訓異]
あへらくは[寛],
たまのをしけや[寛],
こふらくは[寛],
ふじのたかねに,[寛]ふしのたかねに,
ふるゆきなすも[寛],
" "#[番号]14/3359","#[題詞]","#[原文]駿河能宇美 於思敝尓於布流 波麻都豆良 伊麻思乎多能美 波播尓多我比奴 [一云 於夜尓多我比奴] ","#[訓読]駿河の海おし辺に生ふる浜つづら汝を頼み母に違ひぬ [一云 親に違ひぬ] ","#[仮名],するがのうみ,おしへにおふる,はまつづら,いましをたのみ,ははにたがひぬ,[おやにたがひぬ]","#[左注]右五首駿河國歌","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,静岡県,駿河湾,地名,植物,恋情,異伝,歌謡,歌垣,民謡","#[訓異]
するがのうみ,[寛]するかのうみ,
おしへにおふる[寛],
はまつづら,[寛]はまつつら,
いましをたのみ[寛],
ははにたがひぬ,[寛]ははにたかひぬ,
[おやにたがひぬ],[寛]おやにたかひぬ,
" "#[番号]14/3360","#[題詞]","#[原文]伊豆乃宇美尓 多都思良奈美能 安里都追毛 都藝奈牟毛能乎 <美>太礼志米梅楊","#[訓読]伊豆の海に立つ白波のありつつも継ぎなむものを乱れしめめや","#[仮名],いづのうみに,たつしらなみの,ありつつも,つぎなむものを,みだれしめめや","#[左注]或本歌曰 之良久毛能 多延都追母 都我牟等母倍也 美太礼曽米家武 / 右一首伊豆國歌","#[校異]<> -> 美 [西(右書)][類][紀][細]","#[事項],東歌,相聞,静岡県,地名,伊豆,女歌,恋情,序詞","#[訓異]
いづのうみに,[寛]いつのうみに,
たつしらなみの[寛],
ありつつも[寛],
つぎなむものを,[寛]つきなむものを,
みだれしめめや,[寛]みたれしめめや,
" "#[番号]14/3360S","#[題詞]或本歌曰","#[原文]之良久毛能 多延都追母 都我牟等母倍也 美太礼曽米家武","#[訓読]白雲の絶えつつも継がむと思へや乱れそめけむ ","#[仮名],しらくもの,たえつつも,つがむともへや,みだれそめけむ","#[左注]右一首伊豆國歌","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,静岡県,異伝,女歌,恋情,序詞","#[訓異]
しらくもの[寛],
たえつつも[寛],
つがむともへや,[寛]つかむともへや,
みだれそめけむ,[寛]みたれそめけむ,
" "#[番号]14/3361","#[題詞]","#[原文]安思我良能 乎弖毛許乃母尓 佐須和奈乃 可奈流麻之豆美 許呂安礼比毛等久","#[訓読]足柄のをてもこのもにさすわなのかなるましづみ子ろ我れ紐解く","#[仮名],あしがらの,をてもこのもに,さすわなの,かなるましづみ,ころあれひもとく","#[左注](右十二首相模國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,神奈川県,地名,足柄,序詞,恋愛,狩猟,民謡,歌謡","#[訓異]
あしがらの,[寛]あしからの,
をてもこのもに[寛],
さすわなの[寛],
かなるましづみ,[寛]かなるましつみ,
ころあれひもとく[寛],
" "#[番号]14/3362","#[題詞]","#[原文]相模祢乃 乎美祢見所久思 和須礼久流 伊毛我名欲妣弖 吾乎祢之奈久奈","#[訓読]相模嶺の小峰見そくし忘れ来る妹が名呼びて我を音し泣くな","#[仮名],さがむねの,をみねみそくし,わすれくる,いもがなよびて,あをねしなくな","#[左注]或本歌曰 武蔵祢能 乎美祢見可久思 和須礼<遊>久 伎美我名可氣弖 安乎祢思奈久流 / (右十二首相模國歌)","#[校異]所 [岩波大系](塙)(楓) 可 / <> -> 遊 [西(右書)][元][類][古][紀]","#[事項],東歌,相聞,神奈川県,地名,丹沢,別離,恋情,異伝","#[訓異]
さがむねの,[寛]さかみねの,
をみねみそくし[寛],
わすれくる[寛],
いもがなよびて,[寛]いもかなよひて,
あをねしなくな,[寛]わをねしなくな,
" "#[番号]14/3362S","#[題詞]或本歌曰","#[原文]武蔵祢能 乎美祢見可久思 和須礼<遊>久 伎美我名可氣弖 安乎祢思奈久流","#[訓読]武蔵嶺の小峰見隠し忘れ行く君が名懸けて我を音し泣くる","#[仮名],むざしねの,をみねみかくし,わすれゆく,きみがなかけて,あをねしなくる","#[左注](右十二首相模國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,神奈川県,異伝,地名,別離,恋情","#[訓異]
むざしねの,[寛]むさしねの,
をみねみかくし[寛],
わすれゆく[寛],
きみがなかけて,[寛]きみかなかけて,
あをねしなくる[寛],
" "#[番号]14/3363","#[題詞]","#[原文]和我世古乎 夜麻登敝夜利弖 麻都之太須 安思我良夜麻乃 須疑乃木能末可","#[訓読]我が背子を大和へ遣りて待つしだす足柄山の杉の木の間か","#[仮名],わがせこを,やまとへやりて,まつしだす,あしがらやまの,すぎのこのまか","#[左注](右十二首相模國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,神奈川県,女歌,別離,悲別,地名,足柄,掛詞","#[訓異]
わがせこを,[寛]わかせこを,
やまとへやりて[寛],
まつしだす,[寛]まつしたす,
あしがらやまの,[寛]あしからやまの,
すぎのこのまか,[寛]すきのこのまか,
" "#[番号]14/3364","#[題詞]","#[原文]安思我良能 波I祢乃夜麻尓 安波麻吉弖 實登波奈礼留乎 阿波奈久毛安夜思","#[訓読]足柄の箱根の山に粟蒔きて実とはなれるを粟無くもあやし","#[仮名],あしがらの,はこねのやまに,あはまきて,みとはなれるを,あはなくもあやし","#[左注]或本歌末句曰 波布久受能 比可波与利己祢 思多奈保那保尓 / (右十二首相模國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,神奈川県,箱根,地名,足柄,掛詞,植物,恋情,農事,民謡,歌謡,異伝","#[訓異]
あしがらの,[寛]あしからの,
はこねのやまに[寛],
あはまきて[寛],
みとはなれるを[寛],
あはなくもあやし[寛],
" "#[番号]14/3364S","#[題詞]或本歌末句曰","#[原文]波布久受能 比可波与利己祢 思多奈保那保尓 ","#[訓読]延ふ葛の引かば寄り来ね下なほなほに ","#[仮名],はふくずの,ひかばよりこね,したなほなほに","#[左注](右十二首相模國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,神奈川県,異伝,序詞,恋情,民謡,歌謡","#[訓異]
はふくずの,[寛]はふくすの,
ひかばよりこね,[寛]ひかはよりこね,
したなほなほに[寛],
" "#[番号]14/3365","#[題詞]","#[原文]可麻久良乃 美胡之能佐吉能 伊波久叡乃 伎美我久由倍伎 己許呂波母多自","#[訓読]鎌倉の見越しの崎の岩崩えの君が悔ゆべき心は持たじ","#[仮名],かまくらの,みごしのさきの,いはくえの,きみがくゆべき,こころはもたじ","#[左注](右十二首相模國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,神奈川県,地名,鎌倉,稲村が崎,序詞,恋情","#[訓異]
かまくらの[寛],
みごしのさきの,[寛]みこしのさきの,
いはくえの,[寛]いはひえの,
きみがくゆべき,[寛]きみかくゆへき,
こころはもたじ,[寛]こころはもたし,
" "#[番号]14/3366","#[題詞]","#[原文]麻可奈思美 佐祢尓和波由久 可麻久良能 美奈能瀬河泊尓 思保美都奈武賀","#[訓読]ま愛しみさ寝に我は行く鎌倉の水無瀬川に潮満つなむか","#[仮名],まかなしみ,さねにわはゆく,かまくらの,みなのせがはに,しほみつなむか","#[左注](右十二首相模國歌)","#[校異]泊 [元][類][古] 伯","#[事項],東歌,相聞,神奈川県,鎌倉,稲背川,地名,恋愛","#[訓異]
まかなしみ[寛],
さねにわはゆく[寛],
かまくらの[寛],
みなのせがはに,[寛]みなのせかはに,
しほみつなむか[寛],
" "#[番号]14/3367","#[題詞]","#[原文]母毛豆思麻 安之我良乎夫祢 安流吉於保美 目許曽可流良米 己許呂波毛倍杼","#[訓読]百づ島足柄小舟歩き多み目こそ離るらめ心は思へど","#[仮名],ももづしま,あしがらをぶね,あるきおほみ,めこそかるらめ,こころはもへど","#[左注](右十二首相模國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,神奈川県,足柄,女歌,恋情,皮肉,揶揄,民謡,歌謡","#[訓異]
ももづしま,[寛]ももつしま,
あしがらをぶね,[寛]あしからをふね,
あるきおほみ[寛],
めこそかるらめ[寛],
こころはもへど,[寛]こころはもへと,
" "#[番号]14/3368","#[題詞]","#[原文]阿之我利能 刀比能可布知尓 伊豆流湯能 余尓母多欲良尓 故呂河伊波奈久尓","#[訓読]あしがりの土肥の河内に出づる湯のよにもたよらに子ろが言はなくに","#[仮名],あしがりの,とひのかふちに,いづるゆの,よにもたよらに,ころがいはなくに","#[左注](右十二首相模國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,神奈川県,湯河原町,地名,恋情,序詞","#[訓異]
あしがりの,[寛]あしかりの,
とひのかふちに[寛],
いづるゆの,[寛]いつるゆの,
よにもたよらに[寛],
ころがいはなくに,[寛]ここかいはなくに,
" "#[番号]14/3369","#[題詞]","#[原文]阿之我利乃 麻萬能古須氣乃 須我麻久良 安是加麻可左武 許呂勢多麻久良","#[訓読]あしがりの麻万の小菅の菅枕あぜかまかさむ子ろせ手枕","#[仮名],あしがりの,ままのこすげの,すがまくら,あぜかまかさむ,ころせたまくら","#[左注](右十二首相模國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,神奈川県,地名,足柄,植物,民謡,歌垣,歌謡,口説き,恋愛","#[訓異]
あしがりの,[寛]あしかりの,
ままのこすげの,[寛]ままのこすけの,
すがまくら,[寛]すかまくら,
あぜかまかさむ,[寛]あせかまかさむ,
ころせたまくら,[寛]ここせたまくら,
" "#[番号]14/3370","#[題詞]","#[原文]安思我里乃 波故祢能祢呂乃 尓古具佐能 波奈都豆麻奈礼也 比母登可受祢牟","#[訓読]あしがりの箱根の嶺ろのにこ草の花つ妻なれや紐解かず寝む","#[仮名],あしがりの,はこねのねろの,にこぐさの,はなつつまなれや,ひもとかずねむ","#[左注](右十二首相模國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,神奈川県,箱根,植物,序詞,恋情,怨恨,地名","#[訓異]
あしがりの,[寛]あしかりの,
はこねのねろの[寛],
にこぐさの,[寛]にこくさの,
はなつつまなれや[寛],
ひもとかずねむ,[寛]ひもとかすねむ,
" "#[番号]14/3371","#[題詞]","#[原文]安思我良乃 美佐可加思古美 久毛利欲能 阿我志多婆倍乎 許知弖都流可<毛>","#[訓読]足柄のみ坂畏み曇り夜の我が下ばへをこち出つるかも","#[仮名],あしがらの,みさかかしこみ,くもりよの,あがしたばへを,こちでつるかも","#[左注](右十二首相模國歌)","#[校異]母 -> 毛 [元][類][古][細]","#[事項],東歌,相聞,神奈川県,足柄,恋情,うわさ,地名","#[訓異]
あしがらの,[寛]あしからの,
みさかかしこみ[寛],
くもりよの[寛],
あがしたばへを,[寛]あかしたはへを,
こちでつるかも,[寛]こちてつるかも,
" "#[番号]14/3372","#[題詞]","#[原文]相模治乃 余呂伎能波麻乃 麻奈胡奈須 兒良波可奈之久 於毛波流留可毛","#[訓読]相模道の余綾の浜の真砂なす子らは愛しく思はるるかも","#[仮名],さがむぢの,よろぎのはまの,まなごなす,こらはかなしく,おもはるるかも","#[左注]右十二首相模國歌","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,神奈川県,大磯,地名,序詞,恋情","#[訓異]
さがむぢの,[寛]さかむちの,
よろぎのはまの,[寛]よろきのはまの,
まなごなす,[寛]まなこなす,
こらはかなしく[寛],
おもはるるかも[寛],
" "#[番号]14/3373","#[題詞]","#[原文]多麻河泊尓 左良須弖豆久利 佐良左良尓 奈仁曽許能兒乃 己許太可奈之伎","#[訓読]多摩川にさらす手作りさらさらになにぞこの子のここだ愛しき","#[仮名],たまかはに,さらすてづくり,さらさらに,なにぞこのこの,ここだかなしき","#[左注](右九首武蔵國歌)","#[校異]泊 [元][古] 伯","#[事項],東歌,相聞,埼玉県,東京都,多摩川,恋情,地名","#[訓異]
たまかはに[寛],
さらすてづくり,[寛]さらすてつくり,
さらさらに[寛],
なにぞこのこの,[寛]なにそこのこの,
ここだかなしき,[寛]ここたかなしき,
" "#[番号]14/3374","#[題詞]","#[原文]武蔵野尓 宇良敝可多也伎 麻左弖尓毛 乃良奴伎美我名 宇良尓R尓家里","#[訓読]武蔵野に占部肩焼きまさでにも告らぬ君が名占に出にけり","#[仮名],むざしのに,うらへかたやき,まさでにも,のらぬきみがな,うらにでにけり","#[左注](右九首武蔵國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,埼玉県,東京都,地名,女歌,うわさ,人目,恋愛","#[訓異]
むざしのに,[寛]むさしのに,
うらへかたやき[寛],
まさでにも,[寛]まさてにも,
のらぬきみがな,[寛]のらぬきみかな,
うらにでにけり,[寛]うらにてにけり,
" "#[番号]14/3375","#[題詞]","#[原文]武蔵野乃 乎具奇我吉藝志 多知和可礼 伊尓之与比欲利 世呂尓安波奈布与","#[訓読]武蔵野のをぐきが雉立ち別れ去にし宵より背ろに逢はなふよ","#[仮名],むざしのの,をぐきがきぎし,たちわかれ,いにしよひより,せろにあはなふよ","#[左注](右九首武蔵國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,埼玉県,東京都,地名,動物,序詞,女歌,悲別,恋情","#[訓異]
むざしのの,[寛]むさしのの,
をぐきがきぎし,[寛]をくきかきけし,
たちわかれ[寛],
いにしよひより[寛],
せろにあはなふよ[寛],
" "#[番号]14/3376","#[題詞]","#[原文]古非思家波 素弖毛布良武乎 牟射志野乃 宇家良我波奈乃 伊呂尓豆奈由米","#[訓読]恋しけば袖も振らむを武蔵野のうけらが花の色に出なゆめ","#[仮名],こひしけば,そでもふらむを,むざしのの,うけらがはなの,いろにづなゆめ","#[左注]或本歌曰 伊可尓思弖 古非波可伊毛尓 武蔵野乃 宇家良我波奈乃 伊呂尓R受安良牟 / (右九首武蔵國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,埼玉県,東京都,地名,植物,うわさ,人目,恋情,女歌","#[訓異]
こひしけば,[寛]こひしけは,
そでもふらむを,[寛]そてもふらむを,
むざしのの,[寛]むさしのの,
うけらがはなの,[寛]うけらかはなの,
いろにづなゆめ,[寛]いろにつなゆめ,
" "#[番号]14/3376S","#[題詞]或本歌曰","#[原文]伊可尓思弖 古非波可伊毛尓 武蔵野乃 宇家良我波奈乃 伊呂尓R受安良牟 ","#[訓読]いかにして恋ひばか妹に武蔵野のうけらが花の色に出ずあらむ ","#[仮名],いかにして,こひばかいもに,むざしのの,うけらがはなの,いろにでずあらむ","#[左注](右九首武蔵國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,埼玉県,東京都,異伝,地名,植物,恋情,序詞","#[訓異]
いかにして[寛],
こひばかいもに,[寛]こひはかいもに,
むざしのの,[寛]むさしのの,
うけらがはなの,[寛]うけらかはなの,
いろにでずあらむ,[寛]いろにてすあらむ,
" "#[番号]14/3377","#[題詞]","#[原文]武蔵野乃 久佐波母呂武吉 可毛可久母 伎美我麻尓末尓 吾者余利尓思乎","#[訓読]武蔵野の草葉もろ向きかもかくも君がまにまに我は寄りにしを","#[仮名],むざしのの,くさはもろむき,かもかくも,きみがまにまに,わはよりにしを","#[左注](右九首武蔵國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,埼玉県,東京都,地名,女歌,怨恨,恋情,序詞","#[訓異]
むざしのの,[寛]むさしのの,
くさはもろむき[寛],
かもかくも[寛],
きみがまにまに,[寛]きみかまにまに,
わはよりにしを,[寛]われはよりにしを,
" "#[番号]14/3378","#[題詞]","#[原文]伊利麻治能 於保屋我波良能 伊波為都良 比可婆奴流々々 和尓奈多要曽祢","#[訓読]入間道の於保屋が原のいはゐつら引かばぬるぬる我にな絶えそね","#[仮名],いりまぢの,おほやがはらの,いはゐつら,ひかばぬるぬる,わになたえそね","#[左注](右九首武蔵國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,埼玉県,地名,入間,植物,序詞,恋情,民謡,歌垣,歌謡","#[訓異]
いりまぢの,[寛]いりまちの,
おほやがはらの,[寛]おほやかはらの,
いはゐつら[寛],
ひかばぬるぬる,[寛]ひかはぬるぬる,
わになたえそね[寛],
" "#[番号]14/3379","#[題詞]","#[原文]和我世故乎 安杼可母伊波武 牟射志野乃 宇家良我波奈乃 登吉奈伎母能乎","#[訓読]我が背子をあどかも言はむ武蔵野のうけらが花の時なきものを","#[仮名],わがせこを,あどかもいはむ,むざしのの,うけらがはなの,ときなきものを","#[左注](右九首武蔵國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,埼玉県,東京都,地名,植物,女歌,序詞","#[訓異]
わがせこを,[寛]わかせこを,
あどかもいはむ,[寛]あとかもいはむ,
むざしのの,[寛]むさしのの,
うけらがはなの,[寛]うけらかはなの
ときなきものを[寛],
" "#[番号]14/3380","#[題詞]","#[原文]佐吉多萬能 津尓乎流布祢乃 可是乎伊多美 都奈波多由登毛 許登奈多延曽祢","#[訓読]埼玉の津に居る船の風をいたみ綱は絶ゆとも言な絶えそね","#[仮名],さきたまの,つにをるふねの,かぜをいたみ,つなはたゆとも,ことなたえそね","#[左注](右九首武蔵國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,埼玉県,地名,行田,序詞,恋情,女歌,民謡,歌謡","#[訓異]
さきたまの[寛],
つにをるふねの[寛],
かぜをいたみ,[寛]かせをいたみ,
つなはたゆとも[寛],
ことなたえそね[寛],
" "#[番号]14/3381","#[題詞]","#[原文]奈都蘇妣久 宇奈比乎左之弖 等夫登利乃 伊多良武等曽与 阿我之多波倍思","#[訓読]夏麻引く宇奈比をさして飛ぶ鳥の至らむとぞよ我が下延へし","#[仮名],なつそびく,うなひをさして,とぶとりの,いたらむとぞよ,あがしたはへし","#[左注]右九首武蔵國歌","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,埼玉県,東京都,地名,枕詞,序詞,恋情","#[訓異]
なつそびく,[寛]なつそひく,
うなひをさして[寛],
とぶとりの,[寛]とふとりの,
いたらむとぞよ,[寛]いたらむとそよ,
あがしたはへし,[寛]あかしたはへし,
" "#[番号]14/3382","#[題詞]","#[原文]宇麻具多能 祢呂乃佐左葉能 都由思母能 奴礼弖和伎奈婆 汝者故布婆曽毛","#[訓読]馬来田の嶺ろの笹葉の露霜の濡れて我来なば汝は恋ふばぞも","#[仮名],うまぐたの,ねろのささはの,つゆしもの,ぬれてわきなば,なはこふばぞも","#[左注](右二首上総國歌)","#[校異]毛 [元][類] 母","#[事項],東歌,相聞,千葉県,木更津,地名,恋情,悲別","#[訓異]
うまぐたの,[寛]うまくたの,
ねろのささはの[寛],
つゆしもの[寛],
ぬれてわきなば,[寛]ぬれてわきなは,
なはこふばぞも,[寛]なはこふはそも,
" "#[番号]14/3383","#[題詞]","#[原文]宇麻具多能 祢呂尓可久里為 可久太尓毛 久尓乃登保可婆 奈我目保里勢牟","#[訓読]馬来田の嶺ろに隠り居かくだにも国の遠かば汝が目欲りせむ","#[仮名],うまぐたの,ねろにかくりゐ,かくだにも,くにのとほかば,ながめほりせむ","#[左注]右二首上総國歌","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,千葉県,地名,木更津,羈旅,恋情,望郷","#[訓異]
うまぐたの,[寛]うまくたの,
ねろにかくりゐ[寛],
かくだにも,[寛]かくたにも,
くにのとほかば,[寛]くにのとほかは,
ながめほりせむ,[寛]なかめほりせむ,
" "#[番号]14/3384","#[題詞]","#[原文]可都思加能 麻末能手兒奈乎 麻許登可聞 和礼尓余須等布 麻末乃弖胡奈乎","#[訓読]葛飾の真間の手児名をまことかも我れに寄すとふ真間の手児名を","#[仮名],かづしかの,ままのてごなを,まことかも,われによすとふ,ままのてごなを","#[左注](右四首下総國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,千葉県,地名,伝説,恋愛,民謡,歌謡","#[訓異]
かづしかの,[寛]かつしかの,
ままのてごなを,[寛]ままのてこなを,
まことかも[寛],
われによすとふ[寛],
ままのてごなを,[寛]ままのてこなを,
" "#[番号]14/3385","#[題詞]","#[原文]可豆思賀能 麻萬能手兒奈我 安里之<可婆> 麻末乃於須比尓 奈美毛登杼呂尓","#[訓読]葛飾の真間の手児名がありしかば真間のおすひに波もとどろに","#[仮名],かづしかの,ままのてごなが,ありしかば,ままのおすひに,なみもとどろに","#[左注](右四首下総國歌)","#[校異]婆可 -> 可婆 [細]","#[事項],東歌,相聞,千葉県,地名,葛飾,伝説,市川","#[訓異]
かづしかの,[寛]かつしかの,
ままのてごなが,[寛]ままのてこなか,
ありしかば,[寛]ありしかは,
ままのおすひに[寛],
なみもとどろに,[寛]なみもととろに,
" "#[番号]14/3386","#[題詞]","#[原文]尓保杼里能 可豆思加和世乎 尓倍須登毛 曽能可奈之伎乎 刀尓多弖米也母","#[訓読]にほ鳥の葛飾早稲をにへすともその愛しきを外に立てめやも","#[仮名],にほどりの,かづしかわせを,にへすとも,そのかなしきを,とにたてめやも","#[左注](右四首下総國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,千葉県,地名,葛飾,新嘗,祭り,恋情,女歌","#[訓異]
にほどりの,[寛]にほとりの,
かづしかわせを,[寛]かつしかわせを,
にへすとも[寛],
そのかなしきを[寛],
とにたてめやも[寛],
" "#[番号]14/3387","#[題詞]","#[原文]安能於登世受 由可牟古馬母我 可豆思加乃 麻末乃都藝波思 夜麻受可欲波牟","#[訓読]足の音せず行かむ駒もが葛飾の真間の継橋やまず通はむ","#[仮名],あのおとせず,ゆかむこまもが,かづしかの,ままのつぎはし,やまずかよはむ","#[左注]右四首下総國歌","#[校異]豆 [元][類](塙) 都","#[事項],東歌,相聞,千葉県,地名,葛飾,市川,恋情","#[訓異]
あのおとせず,[寛]あのおとせす,
ゆかむこまもが,[寛]ゆかむこまもか,
かづしかの,[寛]かつしかの,
ままのつぎはし,[寛]ままのつきはし,
やまずかよはむ,[寛]やますかよはむ,
" "#[番号]14/3388","#[題詞]","#[原文]筑波祢乃 祢呂尓可須美為 須宜可提尓 伊伎豆久伎美乎 為祢弖夜良佐祢","#[訓読]筑波嶺の嶺ろに霞居過ぎかてに息づく君を率寝て遣らさね","#[仮名],つくはねの,ねろにかすみゐ,すぎかてに,いきづくきみを,ゐねてやらさね","#[左注](右十首常陸國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,茨城県,地名,筑波山,女歌,歌垣,勧誘,恋愛","#[訓異]
つくはねの[寛],
ねろにかすみゐ[寛],
すぎかてに,[寛]すきかてに,
いきづくきみを,[寛]いきつくきみを,
ゐねてやらさね[寛],
" "#[番号]14/3389","#[題詞]","#[原文]伊毛我可度 伊夜等保曽吉奴 都久波夜麻 可久礼奴保刀尓 蘇提婆布利弖奈","#[訓読]妹が門いや遠そきぬ筑波山隠れぬほとに袖は振りてな","#[仮名],いもがかど,いやとほそきぬ,つくはやま,かくれぬほとに,そではふりてな","#[左注](右十首常陸國歌)","#[校異]婆 [類] 波","#[事項],東歌,相聞,茨城県,筑波山,地名,別離,羈旅,恋情","#[訓異]
いもがかど,[寛]いもかかと,
いやとほそきぬ[寛],
つくはやま[寛],
かくれぬほとに[寛],
そではふりてな,[寛]そてはふりてな,
" "#[番号]14/3390","#[題詞]","#[原文]筑波祢尓 可加奈久和之能 祢乃未乎可 奈伎和多里南牟 安布登波奈思尓","#[訓読]筑波嶺にかか鳴く鷲の音のみをか泣きわたりなむ逢ふとはなしに","#[仮名],つくはねに,かかなくわしの,ねのみをか,なきわたりなむ,あふとはなしに","#[左注](右十首常陸國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,茨城県,地名,筑波山,動物,序詞,恋情,別離","#[訓異]
つくはねに[寛],
かかなくわしの[寛],
ねのみをか[寛],
なきわたりなむ[寛],
あふとはなしに[寛],
" "#[番号]14/3391","#[題詞]","#[原文]筑波祢尓 曽我比尓美由流 安之保夜麻 安志可流登我毛 左祢見延奈久尓","#[訓読]筑波嶺にそがひに見ゆる葦穂山悪しかるとがもさね見えなくに","#[仮名],つくはねに,そがひにみゆる,あしほやま,あしかるとがも,さねみえなくに","#[左注](右十首常陸國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,茨城県,地名,筑波山,足尾山,序詞,恋情","#[訓異]
つくはねに[寛],
そがひにみゆる,[寛]しかひにみゆる,
あしほやま[寛],
あしかるとがも,[寛]あしかるとかも,
さねみえなくに[寛],
" "#[番号]14/3392","#[題詞]","#[原文]筑波祢乃 伊波毛等杼呂尓 於都流美豆 代尓毛多由良尓 和我於毛波奈久尓","#[訓読]筑波嶺の岩もとどろに落つる水よにもたゆらに我が思はなくに","#[仮名],つくはねの,いはもとどろに,おつるみづ,よにもたゆらに,わがおもはなくに","#[左注](右十首常陸國歌)","#[校異]於毛 [元] 毛","#[事項],東歌,相聞,茨城県,地名,筑波山,序詞,恋情","#[訓異]
つくはねの[寛],
いはもとどろに,[寛]いはもととろに,
おつるみづ,[寛]おつるみつ,
よにもたゆらに[寛],
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]14/3393","#[題詞]","#[原文]筑波祢乃 乎弖毛許能母尓 毛利敝須恵 波播已毛礼杼母 多麻曽阿比尓家留","#[訓読]筑波嶺のをてもこのもに守部据ゑ母い守れども魂ぞ会ひにける","#[仮名],つくはねの,をてもこのもに,もりへすゑ,ははいもれども,たまぞあひにける","#[左注](右十首常陸國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,茨城県,地名,筑波山,女歌,恋情","#[訓異]
つくはねの[寛],
をてもこのもに[寛],
もりへすゑ[寛],
ははいもれども,[寛]ははこもれとも,
たまぞあひにける,[寛]たまそあひにける,
" "#[番号]14/3394","#[題詞]","#[原文]左其呂毛能 乎豆久波祢呂能 夜麻乃佐吉 和須<良>許婆古曽 那乎可家奈波賣","#[訓読]さ衣の小筑波嶺ろの山の崎忘ら来ばこそ汝を懸けなはめ","#[仮名],さごろもの,をづくはねろの,やまのさき,わすらこばこそ,なをかけなはめ","#[左注](右十首常陸國歌)","#[校異]良延 -> 良 [元][類]","#[事項],東歌,相聞,茨城県,地名,筑波山,別離,恋情,羈旅","#[訓異]
さごろもの,[寛]さころもの,
をづくはねろの,[寛]をつくはねろの,
やまのさき[寛],
わすらこばこそ,[寛]わすらえこはこそ,
なをかけなはめ[寛],
" "#[番号]14/3395","#[題詞]","#[原文]乎豆久波乃 祢呂尓都久多思 安比太欲波 佐波<太>奈利努乎 萬多祢天武可聞","#[訓読]小筑波の嶺ろに月立し間夜はさはだなりぬをまた寝てむかも","#[仮名],をづくはの,ねろにつくたし,あひだよは,さはだなりぬを,またねてむかも","#[左注](右十首常陸國歌)","#[校異]太尓 -> 太 [元][紀][細][矢]","#[事項],東歌,相聞,茨城県,筑波山,地名,序詞,恋情","#[訓異]
をづくはの,[寛]をつくはの,
ねろにつくたし[寛],
あひだよは,[寛]あひたよは,
さはだなりぬを,[寛]さはたなりぬを,
またねてむかも[寛],
" "#[番号]14/3396","#[題詞]","#[原文]乎都久波乃 之氣吉許能麻欲 多都登利能 目由可汝乎見牟 左祢射良奈久尓","#[訓読]小筑波の茂き木の間よ立つ鳥の目ゆか汝を見むさ寝ざらなくに","#[仮名],をづくはの,しげきこのまよ,たつとりの,めゆかなをみむ,さねざらなくに","#[左注](右十首常陸國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,茨城県,地名,筑波山,恋情,別離,羈旅","#[訓異]
をづくはの,[寛]をつくはの,
しげきこのまよ,[寛]しけきこのまよ,
たつとりの[寛],
めゆかなをみむ[寛],
さねざらなくに,[寛]さねさらなくに,
" "#[番号]14/3397","#[題詞]","#[原文]比多知奈流 奈左可能宇美乃 多麻毛許曽 比氣波多延須礼 阿杼可多延世武","#[訓読]常陸なる浪逆の海の玉藻こそ引けば絶えすれあどか絶えせむ","#[仮名],ひたちなる,なさかのうみの,たまもこそ,ひけばたえすれ,あどかたえせむ","#[左注]右十首常陸國歌","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,茨城県,地名,北浦,植物,恋情","#[訓異]
ひたちなる[寛],
なさかのうみの[寛],
たまもこそ[寛],
ひけばたえすれ,[寛]ひけはたえすれ,
あどかたえせむ,[寛]あとかたえせむ,
" "#[番号]14/3398","#[題詞]","#[原文]比等未奈乃 許等波多由登毛 波尓思奈能 伊思井乃手兒我 許<登>奈多延曽祢","#[訓読]人皆の言は絶ゆとも埴科の石井の手児が言な絶えそね","#[仮名],ひとみなの,ことはたゆとも,はにしなの,いしゐのてごが,ことなたえそね","#[左注](右四首信濃國歌)","#[校異]等 -> 登 [元][類][古][紀]","#[事項],東歌,相聞,長野県,埴科,地名,伝説,恋情","#[訓異]
ひとみなの[寛],
ことはたゆとも[寛],
はにしなの[寛],
いしゐのてごが,[寛]いしゐのてこか,
ことなたえそね[寛],
" "#[番号]14/3399","#[題詞]","#[原文]信濃道者 伊麻能波里美知 可里婆祢尓 安思布麻之<奈牟> 久都波氣和我世","#[訓読]信濃道は今の墾り道刈りばねに足踏ましなむ沓はけ我が背","#[仮名],しなぬぢは,いまのはりみち,かりばねに,あしふましなむ,くつはけわがせ","#[左注](右四首信濃國歌)","#[校異]牟奈 -> 奈牟 [元]","#[事項],東歌,相聞,長野県,女歌,木曽路,地名,恋愛","#[訓異]
しなぬぢは,[寛]しなのちは,
いまのはりみち[寛],
かりばねに,[寛]かりはねに,
あしふましなむ,[寛]あしふましむな,
くつはけわがせ,[寛]くつはけわかせ,
" "#[番号]14/3400","#[題詞]","#[原文]信濃奈流 知具麻能河泊能 左射礼思母 伎弥之布美弖婆 多麻等比呂波牟","#[訓読]信濃なる千曲の川のさざれ石も君し踏みてば玉と拾はむ","#[仮名],しなぬなる,ちぐまのかはの,さざれしも,きみしふみてば,たまとひろはむ","#[左注](右四首信濃國歌)","#[校異]泊 [元] 伯","#[事項],東歌,相聞,長野県,千曲川,地名,女歌,恋情","#[訓異]
しなぬなる,[寛]しなのなる,
ちぐまのかはの,[寛]ちくまのかはの,
さざれしも,[寛]さされしも,
きみしふみてば,[寛]きみしふみては,
たまとひろはむ[寛],
" "#[番号]14/3401","#[題詞]","#[原文]中麻奈尓 宇伎乎流布祢能 許藝弖奈婆 安布許等可多思 家布尓思安良受波","#[訓読]なかまなに浮き居る船の漕ぎ出なば逢ふことかたし今日にしあらずは","#[仮名],なかまなに,うきをるふねの,こぎでなば,あふことかたし,けふにしあらずは","#[左注]右四首信濃國歌","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,長野県,地名,千曲川,別離,女歌,恋情,羈旅","#[訓異]
なかまなに[寛],
うきをるふねの[寛],
こぎでなば,[寛]こきてなは,
あふことかたし[寛],
けふにしあらずは,[寛]けふにしあらすは,
" "#[番号]14/3402","#[題詞]","#[原文]比能具礼尓 宇須比乃夜麻乎 古由流日波 勢奈能我素R母 佐夜尓布良思都","#[訓読]日の暮れに碓氷の山を越ゆる日は背なのが袖もさやに振らしつ","#[仮名],ひのぐれに,うすひのやまを,こゆるひは,せなのがそでも,さやにふらしつ","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,碓氷,別離,女歌,恋情,羈旅","#[訓異]
ひのぐれに,[寛]ひのくれに,
うすひのやまを[寛],
こゆるひは[寛],
せなのがそでも,[寛]せなのかそても,
さやにふらしつ[寛],
" "#[番号]14/3403","#[題詞]","#[原文]安我古非波 麻左香毛可奈思 久佐麻久良 多胡能伊利野乃 於<久>母可奈思母","#[訓読]我が恋はまさかも愛し草枕多胡の入野の奥も愛しも","#[仮名],あがこひは,まさかもかなし,くさまくら,たごのいりのの,おくもかなしも","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]父 -> 久 [代匠記初稿本]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,枕詞,地名,多胡,吉井町,序詞,恋情","#[訓異]
あがこひは,[寛]あかこひは,
まさかもかなし[寛],
くさまくら[寛],
たごのいりのの,[寛]たこのいりのの,
おくもかなしも[寛],
" "#[番号]14/3404","#[題詞]","#[原文]可美都氣努 安蘇能麻素武良 可伎武太伎 奴礼杼安加奴乎 安杼加安我世牟","#[訓読]上つ毛野安蘇のま麻むらかき抱き寝れど飽かぬをあどか我がせむ","#[仮名],かみつけの,あそのまそむら,かきむだき,ぬれどあかぬを,あどかあがせむ","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,序詞,恋情","#[訓異]
かみつけの[寛],
あそのまそむら[寛],
かきむだき,[寛]かきむたき,
ぬれどあかぬを,[寛]ぬれとあかぬを,
あどかあがせむ,[寛]あとかあかせむ,
" "#[番号]14/3405","#[題詞]","#[原文]可美都氣努 乎度能多杼里我 可波治尓毛 兒良波安波奈毛 比等理能未思弖","#[訓読]上つ毛野乎度の多杼里が川路にも子らは逢はなもひとりのみして","#[仮名],かみつけの,をどのたどりが,かはぢにも,こらはあはなも,ひとりのみして","#[左注]或本歌曰 可美都氣乃 乎野乃多杼里我 安波治尓母 世奈波安波奈母 美流比登奈思尓 / (右廿二首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,恋情","#[訓異]
かみつけの[寛],
をどのたどりが,[寛]をとのたとりか,
かはぢにも,[寛]かはちにも,
こらはあはなも[寛],
ひとりのみして[寛],
" "#[番号]14/3405S","#[題詞]或本歌曰","#[原文]可美都氣乃 乎野乃多杼里我 安波治尓母 世奈波安波奈母 美流比登奈思尓","#[訓読]上つ毛野小野の多杼里があはぢにも背なは逢はなも見る人なしに ","#[仮名],かみつけの,をののたどりが,あはぢにも,せなはあはなも,みるひとなしに","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,女歌,恋情","#[訓異]
かみつけの[寛],
をののたどりが,[寛]をののたとりか,
あはぢにも,[寛]あはちにも,
せなはあはなも[寛],
みるひとなしに[寛],
" "#[番号]14/3406","#[題詞]","#[原文]可美都氣野 左野乃九久多知 乎里波夜志 安礼波麻多牟恵 許登之許受登母","#[訓読]上つ毛野佐野の茎立ち折りはやし我れは待たむゑ来とし来ずとも","#[仮名],かみつけの,さののくくたち,をりはやし,あれはまたむゑ,ことしこずとも","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,高崎,女歌,恋情","#[訓異]
かみつけの[寛],
さののくくたち[寛],
をりはやし[寛],
あれはまたむゑ[寛],
ことしこずとも,[寛]ことしこすとも,
" "#[番号]14/3407","#[題詞]","#[原文]可美都氣努 麻具波思麻度尓 安佐日左指 麻伎良波之母奈 安利都追見礼婆","#[訓読]上つ毛野まぐはしまとに朝日さしまきらはしもなありつつ見れば","#[仮名],かみつけの,まぐはしまとに,あさひさし,まきらはしもな,ありつつみれば","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,序詞,恋愛,逢会","#[訓異]
かみつけの[寛],
まぐはしまとに,[寛]まくはしまとに,
あさひさし[寛],
まきらはしもな[寛],
ありつつみれば,[寛]ありつつみれは,
" "#[番号]14/3408","#[題詞]","#[原文]尓比多夜麻 祢尓波都可奈那 和尓余曽利 波之奈流兒良師 安夜尓可奈思<母>","#[訓読]新田山嶺にはつかなな我に寄そりはしなる子らしあやに愛しも","#[仮名],にひたやま,ねにはつかなな,わによそり,はしなるこらし,あやにかなしも","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]毛 -> 母 [元][類][古][紀]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,太田市,金山,うわさ,恋情","#[訓異]
にひたやま[寛],
ねにはつかなな[寛],
わによそり[寛],
はしなるこらし[寛],
あやにかなしも[寛],
" "#[番号]14/3409","#[題詞]","#[原文]伊香保呂尓 安麻久母伊都藝 可奴麻豆久 比等登於多波布 伊射祢志米刀羅","#[訓読]伊香保ろに天雲い継ぎかぬまづく人とおたはふいざ寝しめとら","#[仮名],いかほろに,あまくもいつぎ,かぬまづく,ひととおたはふ,いざねしめとら","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]奴 [元] 努","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,伊香保,人目,うわさ,恋情","#[訓異]
いかほろに[寛],
あまくもいつぎ,[寛]あまくもいつき,
かぬまづく,[寛]かぬまつく,
ひととおたはふ[寛],
いざねしめとら,[寛]いさねしめとら,
" "#[番号]14/3410","#[題詞]","#[原文]伊香保呂能 蘇比乃波里波良 祢毛己呂尓 於久乎奈加祢曽 麻左可思余加婆","#[訓読]伊香保ろの沿ひの榛原ねもころに奥をなかねそまさかしよかば","#[仮名],いかほろの,そひのはりはら,ねもころに,おくをなかねそ,まさかしよかば","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,伊香保,序詞,恋情","#[訓異]
いかほろの[寛],
そひのはりはら[寛],
ねもころに[寛],
おくをなかねそ[寛],
まさかしよかば,[寛]まさかしよかは,
" "#[番号]14/3411","#[題詞]","#[原文]多胡能祢尓 与西都奈波倍弖 与須礼騰毛 阿尓久夜斯豆之 曽能可<抱>与吉尓","#[訓読]多胡の嶺に寄せ綱延へて寄すれどもあにくやしづしその顔よきに","#[仮名],たごのねに,よせつなはへて,よすれども,あにくやしづし,そのかほよきに","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]之 [元] 久 / 把 -> 抱 [矢]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,多胡,吉井町,序詞,怨恨,恋情,口説き","#[訓異]
たごのねに,[寛]たこのねに,
よせつなはへて[寛],
よすれども,[寛]よすれとも,
あにくやしづし,[寛]あにくやしつの,
そのかほよきに[寛],
" "#[番号]14/3412","#[題詞]","#[原文]賀美都家野 久路保乃祢呂乃 久受葉我多 可奈師家兒良尓 伊夜射可里久母","#[訓読]上つ毛野久路保の嶺ろの葛葉がた愛しけ子らにいや離り来も","#[仮名],かみつけの,くろほのねろの,くずはがた,かなしけこらに,いやざかりくも","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,赤城山,序詞,恋情","#[訓異]
かみつけの[寛],
くろほのねろの[寛],
くずはがた,[寛]くすはかた,
かなしけこらに[寛],
いやざかりくも,[寛]いやさかりくも,
" "#[番号]14/3413","#[題詞]","#[原文]刀祢河泊乃 可波世毛思良受 多太和多里 奈美尓安布能須 安敝流伎美可母","#[訓読]利根川の川瀬も知らず直渡り波にあふのす逢へる君かも","#[仮名],とねがはの,かはせもしらず,ただわたり,なみにあふのす,あへるきみかも","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]泊 [元] 伯","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,利根川,序詞,女歌,恋愛","#[訓異]
とねがはの,[寛]とねかはの,
かはせもしらず,[寛]かはせもしらす,
ただわたり,[寛]たたわたり,
なみにあふのす[寛],
あへるきみかも[寛],
" "#[番号]14/3414","#[題詞]","#[原文]伊香保呂能 夜左可能為提尓 多都努自能 安良波路萬代母 佐祢乎佐祢弖婆","#[訓読]伊香保ろのやさかのゐでに立つ虹の現はろまでもさ寝をさ寝てば","#[仮名],いかほろの,やさかのゐでに,たつのじの,あらはろまでも,さねをさねてば","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,伊香保,序詞,人目,恋愛,逢会","#[訓異]
いかほろの[寛],
やさかのゐでに,[寛]やさかのゐてに,
たつのじの,[寛]たつのしの,
あらはろまでも,[寛]あらはろまても,
さねをさねてば,[寛]さねをさねては,
" "#[番号]14/3415","#[題詞]","#[原文]可美都氣努 伊可保乃奴麻尓 宇恵古奈<宜> 可久古非牟等夜 多祢物得米家武","#[訓読]上つ毛野伊香保の沼に植ゑ小水葱かく恋ひむとや種求めけむ","#[仮名],かみつけの,いかほのぬまに,うゑこなぎ,かくこひむとや,たねもとめけむ","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]伎 -> 宜 [元][類][古]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,伊香保,植物,譬喩,恋情,反省","#[訓異]
かみつけの[寛],
いかほのぬまに[寛],
うゑこなぎ,[寛]うゑこなき,
かくこひむとや[寛],
たねもとめけむ[寛],
" "#[番号]14/3416","#[題詞]","#[原文]可美都氣努 可保夜我奴麻能 伊波為都良 比可波奴礼都追 安乎奈多要曽祢","#[訓読]上つ毛野可保夜が沼のいはゐつら引かばぬれつつ我をな絶えそね","#[仮名],かみつけの,かほやがぬまの,いはゐつら,ひかばぬれつつ,あをなたえそね","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,植物,序詞,採草歌,恋情","#[訓異]
かみつけの[寛],
かほやがぬまの,[寛]かほやかぬまの,
いはゐつら[寛],
ひかばぬれつつ,[寛]ひかはぬれつつ,
あをなたえそね[寛],
" "#[番号]14/3417","#[題詞]","#[原文]可美都氣努 伊奈良能奴麻乃 於保為具左 与曽尓見之欲波 伊麻許曽麻左礼 [柿本朝臣人麻呂歌集出也]","#[訓読]上つ毛野伊奈良の沼の大藺草外に見しよは今こそまされ [柿本朝臣人麻呂歌集出也]","#[仮名],かみつけの,いならのぬまの,おほゐぐさ,よそにみしよは,いまこそまされ","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,植物,序詞,恋情,作者:柿本人麻呂歌集","#[訓異]
かみつけの[寛],
いならのぬまの[寛],
おほゐぐさ,[寛]おほゐくさ,
よそにみしよは[寛],
いまこそまされ[寛],
" "#[番号]14/3418","#[題詞]","#[原文]可美都氣<努> 佐野田能奈倍能 武良奈倍尓 許登波佐太米都 伊麻波伊可尓世母","#[訓読]上つ毛野佐野田の苗のむら苗に事は定めつ今はいかにせも","#[仮名],かみつけの,さのだのなへの,むらなへに,ことはさだめつ,いまはいかにせも","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]奴 -> 努 [元][類]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,佐野,高崎,恋情","#[訓異]
かみつけの[寛],
さのだのなへの,[寛]さのたのなへの,
むらなへに[寛],
ことはさだめつ,[寛]ことはさためつ,
いまはいかにせも[寛],
" "#[番号]14/3419","#[題詞]","#[原文]伊可保世欲 奈可中次下 於毛比度路 久麻許曽之都等 和須礼西奈布母","#[訓読]伊香保せよ奈可中次下思ひどろくまこそしつと忘れせなふも","#[仮名],いかほせよ,*******,おもひどろ,くまこそしつと,わすれせなふも","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]次 [元][類][古] 吹","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,難訓,恋情","#[訓異]
いかほせよ[寛],
*******,[寛]なかなかしなに,
おもひどろ,[寛]おもひとろ,
くまこそしつと[寛],
わすれせなふも[寛],
" "#[番号]14/3420","#[題詞]","#[原文]可美都氣努 佐野乃布奈波之 登里波奈之 於也波左久礼騰 和波左可流賀倍","#[訓読]上つ毛野佐野の舟橋取り離し親は放くれど我は離るがへ","#[仮名],かみつけの,さののふなはし,とりはなし,おやはさくれど,わはさかるがへ","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,高崎,恋情,女歌,序詞","#[訓異]
かみつけの[寛],
さののふなはし[寛],
とりはなし[寛],
おやはさくれど,[寛]おやはさくれと,
わはさかるがへ,[寛]わはさかるかへ,
" "#[番号]14/3421","#[題詞]","#[原文]伊香保祢尓 可未奈那里曽祢 和我倍尓波 由恵波奈家杼母 兒良尓与里弖曽","#[訓読]伊香保嶺に雷な鳴りそね我が上には故はなけども子らによりてぞ","#[仮名],いかほねに,かみななりそね,わがへには,ゆゑはなけども,こらによりてぞ","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,伊香保,恋情","#[訓異]
いかほねに[寛],
かみななりそね[寛],
わがへには,[寛]わかへには,
ゆゑはなけども,[寛]ゆゑはなけとも,
こらによりてぞ,[寛]こらによりてそ,
" "#[番号]14/3422","#[題詞]","#[原文]伊可保可是 布久日布加奴日 安里登伊倍杼 安我古非能未思 等伎奈可里家利","#[訓読]伊香保風吹く日吹かぬ日ありと言へど我が恋のみし時なかりけり","#[仮名],いかほかぜ,ふくひふかぬひ,ありといへど,あがこひのみし,ときなかりけり","#[左注](右廿二首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,伊香保,恋情","#[訓異]
いかほかぜ,[寛]いかほかせ,
ふくひふかぬひ[寛],
ありといへど,[寛]ありといへと,
あがこひのみし,[寛]あかこひのみし,
ときなかりけり[寛],
" "#[番号]14/3423","#[題詞]","#[原文]可美都氣努 伊可抱乃祢呂尓 布路与伎能 遊吉須宜可提奴 伊毛賀伊敝乃安多里","#[訓読]上つ毛野伊香保の嶺ろに降ろ雪の行き過ぎかてぬ妹が家のあたり","#[仮名],かみつけの,いかほのねろに,ふろよきの,ゆきすぎかてぬ,いもがいへのあたり","#[左注]右廿二首上野國歌","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,群馬県,地名,伊香保,序詞,恋情","#[訓異]
かみつけの[寛],
いかほのねろに[寛],
ふろよきの,[寛]ふるよきの,
ゆきすぎかてぬ,[寛]ゆきすきかてぬ,
いもがいへのあたり,[寛]いもかいへのあたり,
" "#[番号]14/3424","#[題詞]","#[原文]之母都家野 美可母乃夜麻能 許奈良能須 麻具波思兒呂波 多賀家可母多牟","#[訓読]下つ毛野みかもの山のこ楢のすまぐはし子ろは誰が笥か持たむ","#[仮名],しもつけの,みかものやまの,こならのす,まぐはしころは,たがけかもたむ","#[左注](右二首下野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,栃木県,地名,太田和山,植物,序詞,恋情","#[訓異]
しもつけの[寛],
みかものやまの[寛],
こならのす[寛],
まぐはしころは,[寛]まくはしころは,
たがけかもたむ,[寛]たかけかもたむ,
" "#[番号]14/3425","#[題詞]","#[原文]志母都家<努> 安素乃河泊良欲 伊之布<麻>受 蘇良由登伎奴与 奈我己許呂能礼","#[訓読]下つ毛野阿蘇の川原よ石踏まず空ゆと来ぬよ汝が心告れ","#[仮名],しもつけの,あそのかはらよ,いしふまず,そらゆときぬよ,ながこころのれ","#[左注]右二首下野國歌","#[校異]<> -> 努 [西(右書)][元][類][古][紀] / 泊 [元] 伯 / 麻努 -> 麻 [西(訂正)][元][類][古][紀]","#[事項],東歌,相聞,栃木県,地名,恋情,口説き,求婚","#[訓異]
しもつけの[寛],
あそのかはらよ[寛],
いしふまず,[寛]いしふます,
そらゆときぬよ[寛],
ながこころのれ,[寛]なかこころのれ,
" "#[番号]14/3426","#[題詞]","#[原文]安比豆祢能 久尓乎佐杼抱美 安波奈波婆 斯努比尓勢毛等 比毛牟須婆佐祢","#[訓読]会津嶺の国をさ遠み逢はなはば偲ひにせもと紐結ばさね","#[仮名],あひづねの,くにをさどほみ,あはなはば,しのひにせもと,ひもむすばさね","#[左注](右三首陸奥國歌)","#[校異]毛 [細] 牟","#[事項],東歌,相聞,福島県,東北地方,地名,会津,磐梯山,悲別,恋情","#[訓異]
あひづねの,[寛]あひつねの,
くにをさどほみ,[寛]くにをさとほみ,
あはなはば,[寛]あはなはは,
しのひにせもと[寛],
ひもむすばさね,[寛]ひもむすはさね,
" "#[番号]14/3427","#[題詞]","#[原文]筑紫奈留 尓抱布兒由恵尓 美知能久乃 可刀利乎登女乃 由比思比毛等久","#[訓読]筑紫なるにほふ子ゆゑに陸奥の可刀利娘子の結ひし紐解く","#[仮名],つくしなる,にほふこゆゑに,みちのくの,かとりをとめの,ゆひしひもとく","#[左注](右三首陸奥國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,福島県,東北地方,地名,筑紫,福岡,遊行女婦,浮気,恋愛,防人","#[訓異]
つくしなる[寛],
にほふこゆゑに[寛],
みちのくの[寛],
かとりをとめの[寛],
ゆひしひもとく[寛],
" "#[番号]14/3428","#[題詞]","#[原文]安太多良乃 祢尓布須思之能 安里都々毛 安礼波伊多良牟 祢度奈佐利曽祢","#[訓読]安達太良の嶺に伏す鹿猪のありつつも我れは至らむ寝処な去りそね","#[仮名],あだたらの,ねにふすししの,ありつつも,あれはいたらむ,ねどなさりそね","#[左注]右三首陸奥國歌","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,福島県,東北地方,地名,二本松市,安達太良山,動物,序詞,恋情","#[訓異]
あだたらの,[寛]あたたらの,
ねにふすししの[寛],
ありつつも[寛],
あれはいたらむ[寛],
ねどなさりそね,[寛]ねとなさりそね,
" "#[番号]14/3429","#[題詞]譬喩歌","#[原文]等保都安布美 伊奈佐保曽江乃 水乎都久思 安礼乎多能米弖 安佐麻之物能乎","#[訓読]遠江引佐細江のみをつくし我れを頼めてあさましものを","#[仮名],とほつあふみ,いなさほそえの,みをつくし,あれをたのめて,あさましものを","#[左注]右一首遠江國歌","#[校異]","#[事項],東歌,譬喩歌,静岡県,地名,浜名湖,怨恨,恋愛","#[訓異]
とほつあふみ[寛],
いなさほそえの[寛],
みをつくし[寛],
あれをたのめて[寛],
あさましものを[寛],
" "#[番号]14/3430","#[題詞]","#[原文]斯太能宇良乎 阿佐許求布祢波 与志奈之尓 許求良米可母与 <余>志許佐流良米","#[訓読]志太の浦を朝漕ぐ船はよしなしに漕ぐらめかもよよしこさるらめ","#[仮名],しだのうらを,あさこぐふねは,よしなしに,こぐらめかもよ,よしこさるらめ","#[左注]右一首駿河國歌","#[校異]奈 -> 余 [元]","#[事項],東歌,譬喩歌,静岡県,地名,後朝,恋愛","#[訓異]
しだのうらを,[寛]したのうらを,
あさこぐふねは,[寛]あさこくふねは,
よしなしに[寛],
こぐらめかもよ,[寛]こくらめかもよ,
よしこさるらめ[寛],
" "#[番号]14/3431","#[題詞]","#[原文]阿之我里乃 安伎奈乃夜麻尓 比古布祢乃 斯利比可志母與 許己波故賀多尓","#[訓読]足柄の安伎奈の山に引こ船の後引かしもよここばこがたに","#[仮名],あしがりの,あきなのやまに,ひこふねの,しりひかしもよ,ここばこがたに","#[左注](右三首相模國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,譬喩歌,神奈川県,地名,恋愛","#[訓異]
あしがりの,[寛]あしかりの,
あきなのやまに[寛],
ひこふねの[寛],
しりひかしもよ[寛],
ここばこがたに,[寛]ここはこかたに,
" "#[番号]14/3432","#[題詞]","#[原文]阿之賀利乃 和乎可鶏夜麻能 可頭乃木能 和乎可豆佐祢母 可豆佐可受等母","#[訓読]足柄のわを可鶏山のかづの木の我をかづさねも門さかずとも","#[仮名],あしがりの,わをかけやまの,かづのきの,わをかづさねも,かづさかずとも","#[左注](右三首相模國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,譬喩歌,神奈川県,地名,植物,恋愛","#[訓異]
あしがりの,[寛]あしかりの,
わをかけやまの[寛],
かづのきの,[寛]かつのきの,
わをかづさねも,[寛]わをかつさねも,
かづさかずとも,[寛]かつさかすとも,
" "#[番号]14/3433","#[題詞]","#[原文]多伎木許流 可麻久良夜麻能 許太流木乎 麻都等奈我伊波婆 古非都追夜安良牟","#[訓読]薪伐る鎌倉山の木垂る木を松と汝が言はば恋ひつつやあらむ","#[仮名],たきぎこる,かまくらやまの,こだるきを,まつとながいはば,こひつつやあらむ","#[左注]右三首相模國歌","#[校異]","#[事項],東歌,譬喩歌,神奈川県,鎌倉,地名,掛詞,恋情","#[訓異]
たきぎこる,[寛]たききこる,
かまくらやまの[寛],
こだるきを,[寛]こたるきを,
まつとながいはば,[寛]まつとなかいはは,
こひつつやあらむ[寛],
" "#[番号]14/3434","#[題詞]","#[原文]可美都家野 安蘇夜麻都豆良 野乎比呂美 波比尓思物能乎 安是加多延世武","#[訓読]上つ毛野阿蘇山つづら野を広み延ひにしものをあぜか絶えせむ","#[仮名],かみつけの,あそやまつづら,のをひろみ,はひにしものを,あぜかたえせむ","#[左注](右三首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,譬喩歌,群馬県,地名,恋情","#[訓異]
かみつけの[寛],
あそやまつづら,[寛]あそやまつつら,
のをひろみ[寛],
はひにしものを[寛],
あぜかたえせむ,[寛]あせかたえせむ,
" "#[番号]14/3435","#[題詞]","#[原文]伊可保呂乃 蘇比乃波里波良 和我吉奴尓 都伎与良之母与 比多敝登於毛敝婆","#[訓読]伊香保ろの沿ひの榛原我が衣に着きよらしもよひたへと思へば","#[仮名],いかほろの,そひのはりはら,わがきぬに,つきよらしもよ,ひたへとおもへば","#[左注](右三首上野國歌)","#[校異]","#[事項],東歌,譬喩歌,群馬県,地名,伊香保,恋愛","#[訓異]
いかほろの[寛],
そひのはりはら[寛],
わがきぬに,[寛]わかきぬに,
つきよらしもよ[寛],
ひたへとおもへば,[寛]たへとおもへは,
" "#[番号]14/3436","#[題詞]","#[原文]志良登保布 乎尓比多夜麻乃 毛流夜麻乃 宇良賀礼勢奈<那> 登許波尓毛我母","#[訓読]しらとほふ小新田山の守る山のうら枯れせなな常葉にもがも","#[仮名],しらとほふ,をにひたやまの,もるやまの,うらがれせなな,とこはにもがも","#[左注]右三首上野國歌","#[校異]<> -> 那 [西(右書)][元][紀][温]","#[事項],東歌,譬喩歌,群馬県,地名,太田市,金山,恋情","#[訓異]
しらとほふ[寛],
をにひたやまの[寛],
もるやまの[寛],
うらがれせなな,[寛]うらかれせなな,
とこはにもがも,[寛]とこはにもかも,
" "#[番号]14/3437","#[題詞]","#[原文]美知乃久能 安太多良末由美 波自伎於伎弖 西良思馬伎那婆 都良波可馬可毛","#[訓読]陸奥の安達太良真弓はじき置きて反らしめきなば弦はかめかも","#[仮名],みちのくの,あだたらまゆみ,はじきおきて,せらしめきなば,つらはかめかも","#[左注]右一首陸奥國歌","#[校異]","#[事項],東歌,譬喩歌,福島県,東北地方,地名,二本松市,安達太良山,女歌,浮気,恋愛","#[訓異]
みちのくの,[寛]みちのくの,
あだたらまゆみ,[寛]あたたらまゆみ,
はじきおきて,[寛]はしきおきて,
せらしめきなば,[寛]せらしめきなは,
つらはかめかも[寛],
" "#[番号]14/3438","#[題詞]雜歌","#[原文]都武賀野尓 須受我於等伎許由 可牟思太能 等能乃奈可知師 登我里須良思母","#[訓読]都武賀野に鈴が音聞こゆ可牟思太の殿のなかちし鳥猟すらしも","#[仮名],つむがのに,すずがおときこゆ,かむしだの,とののなかちし,とがりすらしも","#[左注]或本歌曰 美都我野尓 又曰 和久胡思 ","#[校異]","#[事項],東歌,雑歌,地名,静岡県,鷹狩り,狩り讃美","#[訓異]
つむがのに,[寛]つむかのに,
すずがおときこゆ,[寛]すすかおときこゆ,
かむしだの,[寛]かむしたの,
とののなかちし[寛],
とがりすらしも,[寛]とかりすらしも,
" "#[番号]14/3438S","#[題詞]或本歌曰 又曰","#[原文]美都我野尓 和久胡思 ","#[訓読]美都我野に 若子し ","#[仮名],みつがのに ,わくごし,","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,雑歌,地名,異伝,狩り讃美","#[訓異]
みつがのに,[寛]みつかのに,
わくごし,[寛]わくこし,
" "#[番号]14/3439","#[題詞]","#[原文]須受我祢乃 波由馬宇馬夜能 都追美井乃 美都乎多麻倍奈 伊毛我多太手欲","#[訓読]鈴が音の早馬駅家の堤井の水を給へな妹が直手よ","#[仮名],すずがねの,はゆまうまやの,つつみゐの,みづをたまへな,いもがただてよ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,雑歌,宿駅,宴席,歌謡","#[訓異]
すずがねの,[寛]すすかねの,
はゆまうまやの[寛],
つつみゐの[寛],
みづをたまへな,[寛]みつをたまへな,
いもがただてよ,[寛]いもかたたてよ,
" "#[番号]14/3440","#[題詞]","#[原文]許乃河泊尓 安佐菜安良布兒 奈礼毛安礼毛 余知乎曽母弖流 伊R兒多婆里尓 [一云 麻之毛安礼母] ","#[訓読]この川に朝菜洗ふ子汝れも我れもよちをぞ持てるいで子給りに [一云 ましも我れも] ","#[仮名],このかはに,あさなあらふこ,なれもあれも,よちをぞもてる,いでこたばりに,[ましもあれも]","#[左注]","#[校異]泊 [元][紀] 伯","#[事項],東歌,雑歌,戯笑,宴席,異伝,歌謡,東歌","#[訓異]
このかはに[寛],
あさなあらふこ[寛],
なれもあれも[寛],
よちをぞもてる,[寛]ちよをそもてる,
いでこたばりに,[寛]いてこたはりに,
[ましもあれも][寛],
" "#[番号]14/3441","#[題詞]","#[原文]麻等保久能 久毛為尓見由流 伊毛我敝尓 伊都可伊多良武 安由賣安我古麻","#[訓読]ま遠くの雲居に見ゆる妹が家にいつか至らむ歩め我が駒","#[仮名],まとほくの,くもゐにみゆる,いもがへに,いつかいたらむ,あゆめあがこま","#[左注]柿本朝臣人麻呂歌集曰 等保久之弖 又曰 安由賣久路古<麻> ","#[校異]麿 -> 麻 [元][類][紀]","#[事項],東歌,雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,異伝,羈旅,恋情,望郷","#[訓異]
まとほくの[寛],
くもゐにみゆる[寛],
いもがへに,[寛]いもかへに,
いつかいたらむ[寛],
あゆめあがこま,[寛]あゆめあかこま,
" "#[番号]14/3441S","#[題詞]柿本朝臣人麻呂歌集曰 又曰","#[原文]等保久之弖 安由賣久路古<麻> ","#[訓読]遠くして 歩め黒駒 ","#[仮名],とほくして ,あゆめくろこま","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,雑歌,異伝,作者:柿本人麻呂歌集,羈旅,恋情,望郷","#[訓異]
とほくして[寛],
あゆめくろこま[寛],
" "#[番号]14/3442","#[題詞]","#[原文]安豆麻治乃 手兒乃欲妣左賀 古要我祢弖 夜麻尓可祢牟毛 夜杼里波奈之尓","#[訓読]東道の手児の呼坂越えがねて山にか寝むも宿りはなしに","#[仮名],あづまぢの,てごのよびさか,こえがねて,やまにかねむも,やどりはなしに","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,雑歌,地名,静岡県,蒲原町,羈旅,難渋","#[訓異]
あづまぢの,[寛]あつまちの,
てごのよびさか,[寛]てこのよひさか,
こえがねて,[寛]こえかねて,
やまにかねむも[寛],
やどりはなしに,[寛]やとりはなしに,
" "#[番号]14/3443","#[題詞]","#[原文]宇良毛奈久 和我由久美知尓 安乎夜宜乃 波里弖多弖礼波 物能毛比弖都母","#[訓読]うらもなく我が行く道に青柳の張りて立てれば物思ひ出つも","#[仮名],うらもなく,わがゆくみちに,あをやぎの,はりてたてれば,ものもひでつも","#[左注]","#[校異]弖 [元][類][古] 豆","#[事項],東歌,雑歌,植物,羈旅,望郷","#[訓異]
うらもなく[寛],
わがゆくみちに,[寛]わかゆくみちに,
あをやぎの,[寛]あをやきの,
はりてたてれば,[寛]はりてたてれは,
ものもひでつも,[寛]ものもひつつも,
" "#[番号]14/3444","#[題詞]","#[原文]伎波都久乃 乎加能久君美良 和礼都賣杼 故尓毛<美>多奈布 西奈等都麻佐祢","#[訓読]伎波都久の岡のくくみら我れ摘めど籠にも満たなふ背なと摘まさね","#[仮名],きはつくの,をかのくくみら,われつめど,こにもみたなふ,せなとつまさね","#[左注]","#[校異]乃 -> 美 [万葉考]","#[事項],東歌,雑歌,地名,茨城県,真壁郡,植物,野遊び,掛け合い,女歌,歌垣,歌謡,恋愛","#[訓異]
きはつくの[寛],
をかのくくみら[寛],
われつめど,[寛]われつめと,
こにもみたなふ,[寛]こにものたなふ,
せなとつまさね[寛],
" "#[番号]14/3445","#[題詞]","#[原文]美奈刀<能> 安之我奈可那流 多麻古須氣 可利己和我西古 等許乃敝太思尓","#[訓読]港の葦が中なる玉小菅刈り来我が背子床の隔しに","#[仮名],みなとの,あしがなかなる,たまこすげ,かりこわがせこ,とこのへだしに","#[左注]","#[校異]安之能 -> 能 [元][類][古][紀] [西(訂正左書)] 能也","#[事項],東歌,雑歌,植物,女歌,恋愛","#[訓異]
みなとの[寛],
あしがなかなる,[寛]あしかなかなる,
たまこすげ,[寛]たまこすけ,
かりこわがせこ,[寛]かりこわかせこ,
とこのへだしに,[寛]とこのへたしに,
" "#[番号]14/3446","#[題詞]","#[原文]伊毛奈呂我 都可布河泊豆乃 佐<左良乎疑> 安志等比<登>其等 加多理与良斯毛","#[訓読]妹なろが使ふ川津のささら荻葦と人言語りよらしも","#[仮名],いもなろが,つかふかはづの,ささらをぎ,あしとひとごと,かたりよらしも","#[左注]","#[校異]泊 [元][紀] 伯 / 左良乎疑 [西(上書訂正)][元][類][紀] / 等 -> 登 [元][類][紀]","#[事項],東歌,雑歌,植物,うわさ,譬喩,恋愛,遊行女婦","#[訓異]
いもなろが,[寛]いもなろか,
つかふかはづの,[寛]つかふかはつの,
ささらをぎ,[寛]ささらをき,
あしとひとごと,[寛]あしとひとこと,
かたりよらしも[寛],
" "#[番号]14/3447","#[題詞]","#[原文]久佐可氣乃 安努奈由可武等 波里之美知 阿努波由加受弖 阿良久佐太知奴","#[訓読]草蔭の安努な行かむと墾りし道安努は行かずて荒草立ちぬ","#[仮名],くさかげの,あのなゆかむと,はりしみち,あのはゆかずて,あらくさだちぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,雑歌,植物,地名,静岡県,浮島沼,枕詞,新道,譬喩","#[訓異]
くさかげの,[寛]くさかけの,
あのなゆかむと,[寛]あのとなゆかむと,
はりしみち[寛],
あのはゆかずて,[寛]あのとはゆかすて,
あらくさだちぬ,[寛]あらくさたちぬ,
" "#[番号]14/3448","#[題詞]","#[原文]波奈治良布 己能牟可都乎乃 乎那能乎能 比自尓都久麻提 伎美我与母賀母","#[訓読]花散らふこの向つ峰の乎那の峰のひじにつくまで君が代もがも","#[仮名],はなぢらふ,このむかつをの,をなのをの,ひじにつくまで,きみがよもがも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,雑歌,地名,静岡県,引佐郡,三日ヶ町,尾奈山,寿歌,長久","#[訓異]
はなぢらふ,[寛]はなちらふ,
このむかつをの[寛],
をなのをの[寛],
ひじにつくまで,[寛]ひしにつくさま,
きみがよもがも,[寛]きみかよもかも,
" "#[番号]14/3449","#[題詞]","#[原文]思路多倍乃 許呂母能素R乎 麻久良我欲 安麻許伎久見由 奈美多都奈由米","#[訓読]白栲の衣の袖を麻久良我よ海人漕ぎ来見ゆ波立つなゆめ","#[仮名],しろたへの,ころものそでを,まくらがよ,あまこぎくみゆ,なみたつなゆめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,雑歌,枕詞,地名,茨城県,古川市,掛詞","#[訓異]
しろたへの[寛],
ころものそでを,[寛]ころものそてを,
まくらがよ,[寛]まくらかよ,
あまこぎくみゆ,[寛]あまこきくみゆ,
なみたつなゆめ[寛],
" "#[番号]14/3450","#[題詞]","#[原文]乎久佐乎等 乎具佐受家乎等 斯抱布祢乃 那良敝弖美礼婆 乎具佐可<知>馬利","#[訓読]乎久佐男と乎具佐受家男と潮舟の並べて見れば乎具佐勝ちめり","#[仮名],をくさをと,をぐさずけをと,しほぶねの,ならべてみれば,をぐさかちめり","#[左注]","#[校異]利 -> 知 [類]","#[事項],東歌,雑歌,地名,宴席,戯笑","#[訓異]
をくさをと[寛],
をぐさずけをと,[寛]をくさすけをと,
しほぶねの,[寛]しほふねの,
ならべてみれば,[寛]ならへてみれは,
をぐさかちめり,[寛]をくさかりめり,
" "#[番号]14/3451","#[題詞]","#[原文]左奈都良能 乎可尓安波麻伎 可奈之伎我 <古>麻波多具等毛 和波素登毛波自","#[訓読]左奈都良の岡に粟蒔き愛しきが駒は食ぐとも我はそとも追じ","#[仮名],さなつらの,をかにあはまき,かなしきが,こまはたぐとも,わはそともはじ","#[左注]","#[校異]古 [西(上書訂正)][元][類][紀]","#[事項],東歌,雑歌,地名,植物,動物,女歌,宴席","#[訓異]
さなつらの[寛],
をかにあはまき[寛],
かなしきが,[寛]かなしきか,
こまはたぐとも,[寛]こまはたくとも,
わはそともはじ,[寛]わはそともはし,
" "#[番号]14/3452","#[題詞]","#[原文]於毛思路伎 野乎婆奈夜吉曽 布流久左尓 仁比久佐麻自利 於非波於布流我尓","#[訓読]おもしろき野をばな焼きそ古草に新草交り生ひは生ふるがに","#[仮名],おもしろき,のをばなやきそ,ふるくさに,にひくさまじり,おひはおふるがに","#[左注]","#[校異]左 [元][類] 佐","#[事項],東歌,雑歌,野焼き","#[訓異]
おもしろき[寛],
のをばなやきそ,[寛]のをはなやきそ,
ふるくさに[寛],
にひくさまじり,[寛]にひくさましり,
おひはおふるがに,[寛]おひはおふるかに,
" "#[番号]14/3453","#[題詞]","#[原文]可是<能>等能 登抱吉和伎母賀 吉西斯伎奴 多母登乃久太利 麻欲比伎尓家利","#[訓読]風の音の遠き我妹が着せし衣手本のくだりまよひ来にけり","#[仮名],かぜのとの,とほきわぎもが,きせしきぬ,たもとのくだり,まよひきにけり","#[左注]","#[校異]乃 -> 能 [元][類]","#[事項],東歌,雑歌,枕詞,羈旅,望郷","#[訓異]
かぜのとの,[寛]かせのとの,
とほきわぎもが,[寛]とほきわきもか,
きせしきぬ[寛],
たもとのくだり,[寛]たもとのくたり,
まよひきにけり[寛],
" "#[番号]14/3454","#[題詞]","#[原文]尓波尓多都 安佐提古夫須麻 許余比太尓 都麻余之許西祢 安佐提古夫須麻","#[訓読]庭に立つ麻手小衾今夜だに夫寄しこせね麻手小衾","#[仮名],にはにたつ,あさでこぶすま,こよひだに,つまよしこせね,あさでこぶすま","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,雑歌,植物,恋情","#[訓異]
にはにたつ[寛],
あさでこぶすま,[寛]あさてこふすま,
こよひだに,[寛]こよひたに,
つまよしこせね,[寛]つまよしこさね,
あさでこぶすま,[寛]あさてこふすま,
" "#[番号]14/3455","#[題詞]相聞","#[原文]古非思家婆 伎麻世和我勢古 可伎都楊疑 宇礼都美可良思 和礼多知麻多牟","#[訓読]恋しけば来ませ我が背子垣つ柳末摘み枯らし我れ立ち待たむ","#[仮名],こひしけば,きませわがせこ,かきつやぎ,うれつみからし,われたちまたむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,女歌,恋情,植物","#[訓異]
こひしけば,[寛]こひしけは,
きませわがせこ,[寛]きませわかせこ,
かきつやぎ,[寛]かきつやき,
うれつみからし[寛],
われたちまたむ[寛],
" "#[番号]14/3456","#[題詞]","#[原文]宇都世美能 夜蘇許登乃敝波 思氣久等母 安良蘇比可祢弖 安乎許登奈須那","#[訓読]うつせみの八十言のへは繁くとも争ひかねて我を言なすな","#[仮名],うつせみの,やそことのへは,しげくとも,あらそひかねて,あをことなすな","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,うわさ,恋愛,女歌","#[訓異]
うつせみの[寛],
やそことのへは,[寛]よそことのへは,
しげくとも,[寛]しけくとも,
あらそひかねて[寛],
あをことなすな[寛],
" "#[番号]14/3457","#[題詞]","#[原文]宇知日佐須 美夜能和我世波 夜麻<登>女乃 比射麻久其登尓 安乎和須良須奈","#[訓読]うちひさす宮の我が背は大和女の膝まくごとに我を忘らすな","#[仮名],うちひさす,みやのわがせは,やまとめの,ひざまくごとに,あをわすらすな","#[左注]","#[校異]等 -> 登 [元][類][古][紀]","#[事項],東歌,相聞,恋愛,不安,別離,女歌","#[訓異]
うちひさす[寛],
みやのわがせは,[寛]みやのわかせは,
やまとめの[寛],
ひざまくごとに,[寛]ひさまくことに,
あをわすらすな[寛],
" "#[番号]14/3458","#[題詞]","#[原文]奈勢能古夜 等里乃乎加恥志 奈可太乎礼 安乎祢思奈久与 伊久豆君麻弖尓","#[訓読]汝背の子や等里の岡道しなかだ折れ我を音し泣くよ息づくまでに","#[仮名],なせのこや,とりのをかちし,なかだをれ,あをねしなくよ,いくづくまでに","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,恋情,後朝,女歌","#[訓異]
なせのこや[寛],
とりのをかちし[寛],
なかだをれ,[寛]なかたをれ,
あをねしなくよ[寛],
いくづくまでに,[寛]いきつくまてに,
" "#[番号]14/3459","#[題詞]","#[原文]伊祢都氣波 可加流安我<手>乎 許余比毛可 等能乃和久胡我 等里弖奈氣可武","#[訓読]稲つけばかかる我が手を今夜もか殿の若子が取りて嘆かむ","#[仮名],いねつけば,かかるあがてを,こよひもか,とののわくごが,とりてなげかむ","#[左注]","#[校異]手 [西(上書訂正)][元][類][紀]","#[事項],東歌,相聞,女歌,作業歌,恋愛","#[訓異]
いねつけば,[寛]いねつけは,
かかるあがてを,[寛]かかるあかてを,
こよひもか[寛],
とののわくごが,[寛]とののわくこか,
とりてなげかむ,[寛]とりてなけかむ,
" "#[番号]14/3460","#[題詞]","#[原文]多礼曽許能 屋能戸於曽夫流 尓布奈未尓 和<我>世乎夜里弖 伊波布許能戸乎","#[訓読]誰れぞこの屋の戸押そぶる新嘗に我が背を遣りて斎ふこの戸を","#[仮名],たれぞこの,やのとおそぶる,にふなみに,わがせをやりて,いはふこのとを","#[左注]","#[校異]家 -> 我 [元][類][古]","#[事項],東歌,相聞,女歌,新嘗,咎め歌,妻問い","#[訓異]
たれぞこの,[寛]たれそこの,
やのとおそぶる,[寛]やとのおそふる,
にふなみに[寛],
わがせをやりて,[寛]わけせをやりて,
いはふこのとを[寛],
" "#[番号]14/3461","#[題詞]","#[原文]安是登伊敝可 佐宿尓安波奈久尓 真日久礼弖 与比奈波許奈尓 安家奴思太久流","#[訓読]あぜと言へかさ寝に逢はなくにま日暮れて宵なは来なに明けぬしだ来る","#[仮名],あぜといへか,さねにあはなくに,まひくれて,よひなはこなに,あけぬしだくる","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,女歌,恋情,妻問い,怨恨","#[訓異]
あぜといへか,[寛]あせといへか,
さねにあはなくに[寛],
まひくれて[寛],
よひなはこなに[寛],
あけぬしだくる,[寛]あけぬしたくる,
" "#[番号]14/3462","#[題詞]","#[原文]安志比奇乃 夜末佐波妣登乃 比登佐波尓 麻奈登伊布兒我 安夜尓可奈思佐","#[訓読]あしひきの山沢人の人さはにまなと言ふ子があやに愛しさ","#[仮名],あしひきの,やまさはびとの,ひとさはに,まなといふこが,あやにかなしさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,枕詞,恋情","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまさはびとの,[寛]やまさはひとの,
ひとさはに[寛],
まなといふこが,[寛]まなといふこか,
あやにかなしさ[寛],
" "#[番号]14/3463","#[題詞]","#[原文]麻等保久能 野尓毛安波奈牟 己許呂奈久 佐刀乃美奈可尓 安敝流世奈可母","#[訓読]ま遠くの野にも逢はなむ心なく里のみ中に逢へる背なかも","#[仮名],まとほくの,のにもあはなむ,こころなく,さとのみなかに,あへるせなかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,人目,うわさ,恋愛,女歌","#[訓異]
まとほくの[寛],
のにもあはなむ[寛],
こころなく[寛],
さとのみなかに,[寛]さとのみなかみ,
あへるせなかも[寛],
" "#[番号]14/3464","#[題詞]","#[原文]比登其登乃 之氣吉尓余里弖 麻乎其母能 於夜自麻久良波 和波麻可自夜毛","#[訓読]人言の繁きによりてまを薦の同じ枕は我はまかじやも","#[仮名],ひとごとの,しげきによりて,まをごもの,おやじまくらは,わはまかじやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,うわさ,恋愛,女歌","#[訓異]
ひとごとの,[寛]ひとことの,
しげきによりて,[寛]しけきによりて,
まをごもの,[寛]まをこもの,
おやじまくらは,[寛]おやしまくらは,
わはまかじやも,[寛]わはまかしやも,
" "#[番号]14/3465","#[題詞]","#[原文]巨麻尓思吉 比毛登伎佐氣弖 奴流我倍尓 安杼世呂登可母 安夜尓可奈之伎","#[訓読]高麗錦紐解き放けて寝るが上にあどせろとかもあやに愛しき","#[仮名],こまにしき,ひもときさけて,ぬるがへに,あどせろとかも,あやにかなしき","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情,女歌","#[訓異]
こまにしき[寛],
ひもときさけて[寛],
ぬるがへに,[寛]ぬるかへに,
あどせろとかも,[寛]あとせろとかも,
あやにかなしき[寛],
" "#[番号]14/3466","#[題詞]","#[原文]麻可奈思美 奴礼婆許登尓豆 佐祢奈敝波 己許呂乃緒呂尓 能里弖可奈思母","#[訓読]ま愛しみ寝れば言に出さ寝なへば心の緒ろに乗りて愛しも","#[仮名],まかなしみ,ぬればことにづ,さねなへば,こころのをろに,のりてかなしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,うわさ,恋情,女歌","#[訓異]
まかなしみ[寛],
ぬればことにづ,[寛]ぬれはことにつ,
さねなへば,[寛]さねなへは,
こころのをろに[寛],
のりてかなしも[寛],
" "#[番号]14/3467","#[題詞]","#[原文]於久夜麻能 真木乃伊多度乎 等杼登之弖 和<我>比良可武尓 伊利伎弖奈左祢","#[訓読]奥山の真木の板戸をとどとして我が開かむに入り来て寝さね","#[仮名],おくやまの,まきのいたとを,とどとして,わがひらかむに,いりきてなさね","#[左注]","#[校異]我 [西(上書訂正)][元][類][古][紀]","#[事項],東歌,相聞,妻問い,恋愛","#[訓異]
おくやまの[寛],
まきのいたとを[寛],
とどとして,[寛]とととして,
わがひらかむに,[寛]わかひらかむに,
いりきてなさね[寛],
" "#[番号]14/3468","#[題詞]","#[原文]夜麻杼里乃 乎呂能<波>都乎尓 可賀美可家 刀奈布倍美許曽 奈尓与曽利鶏米","#[訓読]山鳥の峰ろのはつをに鏡懸け唱ふべみこそ汝に寄そりけめ","#[仮名],やまとりの,をろのはつをに,かがみかけ,となふべみこそ,なによそりけめ","#[左注]","#[校異]<> -> 波 [西(左書)][元][類][紀]","#[事項],東歌,相聞,うわさ,恋愛,神祭り","#[訓異]
やまとりの[寛],
をろのはつをに[寛],
かがみかけ,[寛]かかみかけ,
となふべみこそ,[寛]となふへみこそ,
なによそりけめ[寛],
" "#[番号]14/3469","#[題詞]","#[原文]由布氣尓毛 許余比登乃良路 和賀西奈波 阿是曽母許与比 与斯呂伎麻左奴","#[訓読]夕占にも今夜と告らろ我が背なはあぜぞも今夜寄しろ来まさぬ","#[仮名],ゆふけにも,こよひとのらろ,わがせなは,あぜぞもこよひ,よしろきまさぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,女歌,妻問い,恋情","#[訓異]
ゆふけにも[寛],
こよひとのらろ[寛],
わがせなは,[寛]わかせなは,
あぜぞもこよひ,[寛]あせそもこよひ,
よしろきまさぬ[寛],
" "#[番号]14/3470","#[題詞]","#[原文]安比見弖波 千等世夜伊奴流 伊奈乎加<母> 安礼也思加毛布 伎美末知我弖尓 [柿本朝臣人麻呂歌集出也]","#[訓読]相見ては千年やいぬるいなをかも我れやしか思ふ君待ちがてに [柿本朝臣人麻呂歌集出也]","#[仮名],あひみては,ちとせやいぬる,いなをかも,あれやしかもふ,きみまちがてに","#[左注]","#[校異]毛 -> 母 [類][紀]","#[事項],東歌,相聞,女歌,恋情,作者:柿本人麻呂歌集","#[訓異]
あひみては[寛],
ちとせやいぬる[寛],
いなをかも[寛],
あれやしかもふ[寛],
きみまちがてに,[寛]きみまちかてに,
" "#[番号]14/3471","#[題詞]","#[原文]思麻良久波 祢都追母安良牟乎 伊米能未尓 母登奈見要都追 安乎祢思奈久流","#[訓読]しまらくは寝つつもあらむを夢のみにもとな見えつつ我を音し泣くる","#[仮名],しまらくは,ねつつもあらむを,いめのみに,もとなみえつつ,あをねしなくる","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情,女歌","#[訓異]
しまらくは[寛],
ねつつもあらむを[寛],
いめのみに[寛],
もとなみえつつ[寛],
あをねしなくる[寛],
" "#[番号]14/3472","#[題詞]","#[原文]比登豆麻等 安是可曽乎伊波牟 志可良<婆>加 刀奈里乃伎奴乎 可里弖伎奈波毛","#[訓読]人妻とあぜかそを言はむしからばか隣の衣を借りて着なはも","#[仮名],ひとづまと,あぜかそをいはむ,しからばか,となりのきぬを,かりてきなはも","#[左注]","#[校異]波 -> 婆 [元][紀][古]","#[事項],東歌,相聞,怨恨,恋情","#[訓異]
ひとづまと,[寛]ひとつまと,
あぜかそをいはむ,[寛]あせかそをいはむ,
しからばか,[寛]しからはか,
となりのきぬを[寛],
かりてきなはも[寛],
" "#[番号]14/3473","#[題詞]","#[原文]左努夜麻尓 宇都也乎能登乃 等抱可騰母 祢毛等可兒呂賀 於<母>尓美要都留","#[訓読]左努山に打つや斧音の遠かども寝もとか子ろが面に見えつる","#[仮名],さのやまに,うつやをのとの,とほかども,ねもとかころが,おもにみえつる","#[左注]","#[校異]由 -> 母 [万葉考]","#[事項],東歌,相聞,地名,群馬県,高崎市,栃木県,佐野市,羈旅,恋情,序詞","#[訓異]
さのやまに[寛],
うつやをのとの[寛],
とほかども,[寛]とほかとも,
ねもとかころが,[寛]ねもとかころか,
おもにみえつる,[寛]おゆにみえつる,
" "#[番号]14/3474","#[題詞]","#[原文]宇恵太氣能 毛登左倍登与美 伊R弖伊奈婆 伊豆思牟伎弖可 伊毛我奈氣可牟","#[訓読]植ゑ竹の本さへ響み出でて去なばいづし向きてか妹が嘆かむ","#[仮名],うゑだけの,もとさへとよみ,いでていなば,いづしむきてか,いもがなげかむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,羈旅,別離,恋愛,植物","#[訓異]
うゑだけの,[寛]うえたけの,
もとさへとよみ[寛],
いでていなば,[寛]いてていなは,
いづしむきてか,[寛]いつしむきてか,
いもがなげかむ,[寛]いもかなけかむ,
" "#[番号]14/3475","#[題詞]","#[原文]古非都追母 乎良牟等須礼杼 遊布麻夜万 可久礼之伎美乎 於母比可祢都母","#[訓読]恋ひつつも居らむとすれど遊布麻山隠れし君を思ひかねつも","#[仮名],こひつつも,をらむとすれど,ゆふまやま,かくれしきみを,おもひかねつも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,女歌,別離,羈旅","#[訓異]
こひつつも[寛],
をらむとすれど,[寛]をらむとすれと,
ゆふまやま[寛],
かくれしきみを[寛],
おもひかねつも[寛],
" "#[番号]14/3476","#[題詞]","#[原文]宇倍兒奈波 和奴尓故布奈毛 多刀都久能 努賀奈敝由家婆 故布思可流奈母","#[訓読]うべ子なは我ぬに恋ふなも立と月のぬがなへ行けば恋しかるなも","#[仮名],うべこなは,わぬにこふなも,たとつくの,ぬがなへゆけば,こふしかるなも","#[左注]或本歌末句曰 奴我奈敝由家杼 和<奴><由賀>乃敝波","#[校異]努 -> 奴 [元][類][紀] / 賀由 -> 由賀 [万葉集略解]","#[事項],東歌,相聞,羈旅,恋情","#[訓異]
うべこなは,[寛]うへこなは,
わぬにこふなも[寛],
たとつくの[寛],
ぬがなへゆけば,[寛]ぬかなへゆけは,
こふしかるなも[寛],
" "#[番号]14/3476S","#[題詞]或本歌末句曰","#[原文]奴我奈敝由家杼 和<奴><由賀>乃敝波","#[訓読]ぬがなへ行けど我ぬ行がのへば ","#[仮名],ぬがなへゆけど,わぬゆがのへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情,異伝","#[訓異]
ぬがなへゆけど,[寛]のかなへゆけと,
わぬゆがのへば,[寛]わのかゆのへは,
" "#[番号]14/3477","#[題詞]","#[原文]安都麻道乃 手兒乃欲婢佐可 古要弖伊奈婆 安礼波古非牟奈 能知波安比奴登母","#[訓読]東路の手児の呼坂越えて去なば我れは恋ひむな後は逢ひぬとも","#[仮名],あづまぢの,てごのよびさか,こえていなば,あれはこひむな,のちはあひぬとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,静岡県,蒲原町,羈旅,恋情","#[訓異]
あづまぢの,[寛]あつまちの,
てごのよびさか,[寛]てこのよひさか,
こえていなば,[寛]こえていなは,
あれはこひむな[寛],
のちはあひぬとも[寛],
" "#[番号]14/3478","#[題詞]","#[原文]等保斯等布 故奈乃思良祢尓 阿抱思太毛 安波乃敝思太毛 奈尓己曽与佐礼","#[訓読]遠しとふ故奈の白嶺に逢ほしだも逢はのへしだも汝にこそ寄され","#[仮名],とほしとふ,こなのしらねに,あほしだも,あはのへしだも,なにこそよされ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,群馬県,白根山,石川県,白山,うわさ,恋愛,羈旅","#[訓異]
とほしとふ[寛],
こなのしらねに[寛],
あほしだも,[寛]あほしたも,
あはのへしだも,[寛]あはのへしたも,
なにこそよされ[寛],
" "#[番号]14/3479","#[題詞]","#[原文]安可見夜麻 久左祢可利曽氣 安波須賀倍 安良蘇布伊毛之 安夜尓可奈之毛","#[訓読]安可見山草根刈り除け逢はすがへ争ふ妹しあやに愛しも","#[仮名],あかみやま,くさねかりそけ,あはすがへ,あらそふいもし,あやにかなしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,栃木県,佐野市,赤見町,恋愛","#[訓異]
あかみやま[寛],
くさねかりそけ[寛],
あはすがへ,[寛]あはすかへ,
あらそふいもし[寛],
あやにかなしも[寛],
" "#[番号]14/3480","#[題詞]","#[原文]於保伎美乃 美己等可思古美 可奈之伊毛我 多麻久良波奈礼 欲太知伎努可母","#[訓読]大君の命畏み愛し妹が手枕離れ夜立ち来のかも","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,かなしいもが,たまくらはなれ,よだちきのかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,防人,恋情,羈旅,出発,別離","#[訓異]
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
かなしいもが,[寛]かなしいもか,
たまくらはなれ[寛],
よだちきのかも,[寛]よたちきぬかも,
" "#[番号]14/3481","#[題詞]","#[原文]安利伎奴乃 佐恵々々之豆美 伊敝能伊母尓 毛乃伊波受伎尓弖 於毛比具流之母","#[訓読]あり衣のさゑさゑしづみ家の妹に物言はず来にて思ひ苦しも","#[仮名],ありきぬの,さゑさゑしづみ,いへのいもに,ものいはずきにて,おもひぐるしも","#[左注]柿本朝臣人麻呂歌集中出 見上已<訖>也","#[校異]説 -> 訖 [類][紀][古][矢]","#[事項],東歌,相聞,作者:柿本人麻呂歌集,重出,羈旅,出発,別離,恋情","#[訓異]
ありきぬの[寛],
さゑさゑしづみ,[寛]さゑさゑしつみ,
いへのいもに[寛],
ものいはずきにて,[寛]もののいはすきにて,
おもひぐるしも,[寛]おもひくるしも,
" "#[番号]14/3482","#[題詞]","#[原文]可良許呂毛 須蘇乃宇知可倍 安波祢杼毛 家思吉己許呂乎 安我毛波奈久尓","#[訓読]韓衣裾のうち交へ逢はねども異しき心を我が思はなくに","#[仮名],からころも,すそのうちかへ,あはねども,けしきこころを,あがもはなくに","#[左注]或本歌曰 可良己呂母 須素能宇知可比 阿波奈敝婆 祢奈敝乃可良尓 許等多可利都母 ","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋愛,序詞","#[訓異]
からころも[寛],
すそのうちかへ[寛],
あはねども,[寛]あはねとも,
けしきこころを[寛],
あがもはなくに,[寛]あかもはなくに,
" "#[番号]14/3482S","#[題詞]或本歌曰","#[原文]可良己呂母 須素能宇知可比 阿波奈敝婆 祢奈敝乃可良尓 許等多可利都母 ","#[訓読]韓衣裾のうち交ひ逢はなへば寝なへのからに言痛かりつも ","#[仮名]からころも,すそのうちかひ,あはなへば,ねなへのからに,ことたかりつも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,うわさ,恋愛,異伝","#[訓異]
からころも[寛],
すそのうちかひ[寛],
あはなへば,[寛]あはなへは,
ねなへのからに[寛],
ことたかりつも[寛],
" "#[番号]14/3483","#[題詞]","#[原文]比流等家波 等<家>奈敝比毛乃 和賀西奈尓 阿比与流等可毛 欲流等家也須家","#[訓読]昼解けば解けなへ紐の我が背なに相寄るとかも夜解けやすけ","#[仮名],ひるとけば,とけなへひもの,わがせなに,あひよるとかも,よるとけやすけ","#[左注]","#[校異]<> -> 家 [西(右書)][元][類][古][紀]","#[事項],東歌,相聞,女歌,恋情,妻問い","#[訓異]
ひるとけば,[寛]ひるとけは,
とけなへひもの[寛],
わがせなに,[寛]わかせなに,
あひよるとかも[寛],
よるとけやすけ,[寛]よるとけやする,
" "#[番号]14/3484","#[題詞]","#[原文]安左乎良乎 遠家尓布須左尓 宇麻受登毛 安須伎西佐米也 伊射西乎騰許尓","#[訓読]麻苧らを麻笥にふすさに績まずとも明日着せさめやいざせ小床に","#[仮名],あさをらを,をけにふすさに,うまずとも,あすきせさめや,いざせをどこに","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋愛","#[訓異]
あさをらを[寛],
をけにふすさに[寛],
うまずとも,[寛]うますとも,
あすきせさめや[寛],
いざせをどこに,[寛]いささをとこに,
" "#[番号]14/3485","#[題詞]","#[原文]都流伎多知 身尓素布伊母乎 等里見我祢 哭乎曽奈伎都流 手兒尓安良奈久尓","#[訓読]剣大刀身に添ふ妹を取り見がね音をぞ泣きつる手児にあらなくに","#[仮名],つるぎたち,みにそふいもを,とりみがね,ねをぞなきつる,てごにあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,枕詞,恋愛","#[訓異]
つるぎたち,[寛]つるきたち,
みにそふいもを[寛],
とりみがね,[寛]とりみかね,
ねをぞなきつる,[寛]ねをそなきつる,
てごにあらなくに,[寛]てこにあらなくに,
" "#[番号]14/3486","#[題詞]","#[原文]可奈思伊毛乎 由豆加奈倍麻伎 母許呂乎乃 許登等思伊波婆 伊夜可多麻斯尓","#[訓読]愛し妹を弓束並べ巻きもころ男のこととし言はばいや勝たましに","#[仮名],かなしいもを,ゆづかなべまき,もころをの,こととしいはば,いやかたましに","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情,逢会","#[訓異]
かなしいもを[寛],
ゆづかなべまき,[寛]ゆつかなへまき,
もころをの[寛],
こととしいはば,[寛]こととしいはは,
いやかたましに[寛],
" "#[番号]14/3487","#[題詞]","#[原文]安豆左由美 須恵尓多麻末吉 可久須酒曽 宿莫奈那里尓思 於久乎可奴加奴","#[訓読]梓弓末に玉巻きかくすすぞ寝なななりにし奥をかぬかぬ","#[仮名],あづさゆみ,すゑにたままき,かくすすぞ,ねなななりにし,おくをかぬかぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
すゑにたままき[寛],
かくすすぞ,[寛]かくすすそ,
ねなななりにし[寛],
おくをかぬかぬ[寛],
" "#[番号]14/3488","#[題詞]","#[原文]於布之毛等 許乃母登夜麻乃 麻之波尓毛 能良奴伊毛我名 可多尓伊弖牟可母","#[訓読]生ふしもとこの本山のましばにも告らぬ妹が名かたに出でむかも","#[仮名],おふしもと,このもとやまの,ましばにも,のらぬいもがな,かたにいでむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,うわさ,植物,不安,恋愛","#[訓異]
おふしもと[寛],
このもとやまの[寛],
ましばにも,[寛]ましはにも,
のらぬいもがな,[寛]のらぬいもかな,
かたにいでむかも,[寛]かたにいてむかも,
" "#[番号]14/3489","#[題詞]","#[原文]安豆左由美 欲良能夜麻邊能 之牙可久尓 伊毛呂乎多弖天 左祢度波良布母","#[訓読]梓弓欲良の山辺の茂かくに妹ろを立ててさ寝処払ふも","#[仮名],あづさゆみ,よらのやまへの,しげかくに,いもろをたてて,さねどはらふも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,枕詞,恋愛","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
よらのやまへの[寛],
しげかくに,[寛]しけかくに,
いもろをたてて[寛],
さねどはらふも,[寛]さねとはらふも,
" "#[番号]14/3490","#[題詞]","#[原文]安都左由美 須恵波余里祢牟 麻左可許曽 比等目乎於保美 奈乎波思尓於家礼 [柿本朝臣人麻呂歌集出也]","#[訓読]梓弓末は寄り寝むまさかこそ人目を多み汝をはしに置けれ [柿本朝臣人麻呂歌集出也]","#[仮名],あづさゆみ,すゑはよりねむ,まさかこそ,ひとめをおほみ,なをはしにおけれ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,人目,うわさ,枕詞,恋情,作者:柿本人麻呂歌集","#[訓異]
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
すゑはよりねむ[寛],
まさかこそ[寛],
ひとめをおほみ[寛],
なをはしにおけれ[寛],
" "#[番号]14/3491","#[題詞]","#[原文]楊奈疑許曽 伎礼波伴要須礼 余能比等乃 古非尓思奈武乎 伊可尓世余等曽","#[訓読]柳こそ伐れば生えすれ世の人の恋に死なむをいかにせよとぞ","#[仮名],やなぎこそ,きればはえすれ,よのひとの,こひにしなむを,いかにせよとぞ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,植物,恋情,女歌","#[訓異]
やなぎこそ,[寛]やなきこそ,
きればはえすれ,[寛]きれははえすれ,
よのひとの[寛],
こひにしなむを[寛],
いかにせよとぞ,[寛]いかにせよとそ,
" "#[番号]14/3492","#[題詞]","#[原文]乎夜麻田乃 伊氣能都追美尓 左須楊奈疑 奈里毛奈良受毛 奈等布多里波母","#[訓読]小山田の池の堤にさす柳成りも成らずも汝と二人はも","#[仮名],をやまだの,いけのつつみに,さすやなぎ,なりもならずも,なとふたりはも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,植物,恋情","#[訓異]
をやまだの,[寛]をやまたの,
いけのつつみに[寛],
さすやなぎ,[寛]さすやなき,
なりもならずも,[寛]なりもならすも,
なとふたりはも[寛],
" "#[番号]14/3493","#[題詞]","#[原文]於曽波夜母 奈乎許曽麻多賣 牟可都乎能 四比乃故夜提能 安比波多<我>波自","#[訓読]遅速も汝をこそ待ため向つ峰の椎の小やで枝の逢ひは違はじ","#[仮名],おそはやも,なをこそまため,むかつをの,しひのこやでの,あひはたがはじ","#[左注]或本歌曰 於曽波夜毛 伎美乎思麻多武 牟可都乎能 思比乃佐要太能 登吉波須具登母 ","#[校異]家 -> 我 [元][類]","#[事項],東歌,相聞,植物,恋情,異伝","#[訓異]
おそはやも[寛],
なをこそまため[寛],
むかつをの[寛],
しひのこやでの,[寛]しひのこやての,
あひはたがはじ,[寛]あひはたかはし,
" "#[番号]14/3493S","#[題詞]或本歌曰","#[原文]於曽波夜毛 伎美乎思麻多武 牟可都乎能 思比乃佐要太能 登吉波須具登母 ","#[訓読]遅速も君をし待たむ向つ峰の椎のさ枝の時は過ぐとも ","#[仮名],おそはやも,きみをしまたむ,むかつをの,しひのさえだの,ときはすぐとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,異伝,植物,恋情","#[訓異]
おそはやも[寛],
きみをしまたむ[寛],
むかつをの[寛],
しひのさえだの,[寛]しひのさえたの,
ときはすぐとも,[寛]ときはすくとも,
" "#[番号]14/3494","#[題詞]","#[原文]兒毛知夜麻 和可加敝流弖能 毛美都麻弖 宿毛等和波毛布 汝波安杼可毛布","#[訓読]子持山若かへるでのもみつまで寝もと我は思ふ汝はあどか思ふ","#[仮名],こもちやま,わかかへるでの,もみつまで,ねもとわはもふ,なはあどかもふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,群馬県,子持村,恋情,植物","#[訓異]
こもちやま[寛],
わかかへるでの,[寛]わかかへるての,
もみつまで,[寛]もみつまて,
ねもとわはもふ[寛],
なはあどかもふ,[寛]なはあとかもふ,
" "#[番号]14/3495","#[題詞]","#[原文]伊波保呂乃 蘇比能和可麻都 可藝里登也 伎美我伎麻左奴 宇良毛等奈久文","#[訓読]巌ろの沿ひの若松限りとや君が来まさぬうらもとなくも","#[仮名],いはほろの,そひのわかまつ,かぎりとや,きみがきまさぬ,うらもとなくも","#[左注]","#[校異]文 [細] 毛","#[事項],東歌,相聞,植物,怨恨,恋情,女歌","#[訓異]
いはほろの[寛],
そひのわかまつ[寛],
かぎりとや,[寛]かきりとや,
きみがきまさぬ,[寛]きみかきまさぬ,
うらもとなくも[寛],
" "#[番号]14/3496","#[題詞]","#[原文]多知婆奈乃 古婆乃波奈里我 於毛布奈牟 己許呂宇都久思 伊弖安礼波伊可奈","#[訓読]橘の古婆の放髪が思ふなむ心うつくしいで我れは行かな","#[仮名],たちばなの,こばのはなりが,おもふなむ,こころうつくし,いであれはいかな","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,神奈川県,川崎市,恋情","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
こばのはなりが,[寛]こはのはなりか,
おもふなむ[寛],
こころうつくし[寛],
いであれはいかな,[寛]いてあれはいかな,
" "#[番号]14/3497","#[題詞]","#[原文]可波加美能 祢自路多可我夜 安也尓阿夜尓 左宿佐寐弖許曽 己登尓弖尓思可","#[訓読]川上の根白高萱あやにあやにさ寝さ寝てこそ言に出にしか","#[仮名],かはかみの,ねじろたかがや,あやにあやに,さねさねてこそ,ことにでにしか","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,植物,恋愛,譬喩,うわさ","#[訓異]
かはかみの[寛],
ねじろたかがや,[寛]ねしろたかかや,
あやにあやに[寛],
さねさねてこそ[寛],
ことにでにしか,[寛]ことにてにしか,
" "#[番号]14/3498","#[題詞]","#[原文]宇奈波良乃 根夜波良古須氣 安麻多安礼婆 伎美波和須良酒 和礼和須流礼夜","#[訓読]海原の根柔ら小菅あまたあれば君は忘らす我れ忘るれや","#[仮名],うなはらの,ねやはらこすげ,あまたあれば,きみはわすらす,われわするれや","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,植物,譬喩,女歌,怨恨,恋情","#[訓異]
うなはらの[寛],
ねやはらこすげ,[寛]ねやはらこすけ,
あまたあれば,[寛]あまたあれは,
きみはわすらす[寛],
われわするれや,[寛]われはするれや,
" "#[番号]14/3499","#[題詞]","#[原文]乎可尓与西 和我可流加夜能 佐祢加夜能 麻許等奈其夜波 祢呂等敝奈香母","#[訓読]岡に寄せ我が刈る萱のさね萱のまことなごやは寝ろとへなかも","#[仮名],をかによせ,わがかるかやの,さねかやの,まことなごやは,ねろとへなかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,植物,譬喩,恋愛,勧誘","#[訓異]
をかによせ[寛],
わがかるかやの,[寛]わかかるかやの,
さねかやの[寛],
まことなごやは,[寛]まことなこやは,
ねろとへなかも[寛],
" "#[番号]14/3500","#[題詞]","#[原文]牟良佐伎波 根乎可母乎布流 比等乃兒能 宇良我奈之家乎 祢乎遠敝奈久尓","#[訓読]紫草は根をかも終ふる人の子のうら愛しけを寝を終へなくに","#[仮名],むらさきは,ねをかもをふる,ひとのこの,うらがなしけを,ねををへなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,植物,譬喩,恋愛","#[訓異]
むらさきは[寛],
ねをかもをふる[寛],
ひとのこの[寛],
うらがなしけを,[寛]うらかなしけを,
ねををへなくに[寛],
" "#[番号]14/3501","#[題詞]","#[原文]安波乎呂能 乎呂田尓於波流 多波美豆良 比可婆奴流奴留 安乎許等奈多延","#[訓読]安波峰ろの峰ろ田に生はるたはみづら引かばぬるぬる我を言な絶え","#[仮名],あはをろの,をろたにおはる,たはみづら,ひかばぬるぬる,あをことなたえ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,千葉県,植物,序詞,女歌,恋情","#[訓異]
あはをろの[寛],
をろたにおはる[寛],
たはみづら,[寛]たはみつら,
ひかばぬるぬる,[寛]ひかはぬるぬる,
あをことなたえ[寛],
" "#[番号]14/3502","#[題詞]","#[原文]和我目豆麻 比等波左久礼杼 安佐我保能 等思佐倍己其登 和波佐可流我倍","#[訓読]我が目妻人は放くれど朝顔のとしさへこごと我は離るがへ","#[仮名],わがめづま,ひとはさくれど,あさがほの,としさへこごと,わはさかるがへ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情,人目,枕詞","#[訓異]
わがめづま,[寛]わかまつま,
ひとはさくれど,[寛]ひとはさくれと,
あさがほの,[寛]あさかほの,
としさへこごと,[寛]としさへここと,
わはさかるがへ,[寛]わはさかるかへ,
" "#[番号]14/3503","#[題詞]","#[原文]安齊可我多 志保悲乃由多尓 於毛敝良婆 宇家良我波奈乃 伊呂尓弖米也母","#[訓読]安齊可潟潮干のゆたに思へらばうけらが花の色に出めやも","#[仮名],あせかがた,しほひのゆたに,おもへらば,うけらがはなの,いろにでめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,植物,恋情,序詞","#[訓異]
あせかがた,[寛]あさかかた,
しほひのゆたに[寛],
おもへらば,[寛]おもへらは,
うけらがはなの,[寛]うけらかはなの,
いろにでめやも,[寛]いろにてめやも,
" "#[番号]14/3504","#[題詞]","#[原文]波流敝左久 布治能宇良葉乃 宇良夜須尓 左奴流夜曽奈伎 兒呂乎之毛倍婆","#[訓読]春へ咲く藤の末葉のうら安にさ寝る夜ぞなき子ろをし思へば","#[仮名],はるへさく,ふぢのうらばの,うらやすに,さぬるよぞなき,ころをしもへば","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,植物,序詞,恋情","#[訓異]
はるへさく[寛],
ふぢのうらばの,[寛]ふちのうらはの,
うらやすに[寛],
さぬるよぞなき,[寛]さぬるよそなき,
ころをしもへば,[寛]ころをしもへは,
" "#[番号]14/3505","#[題詞]","#[原文]宇知比佐都 美夜能瀬河泊能 可保婆奈能 孤悲天香眠良武 <伎>曽母許余比毛","#[訓読]うちひさつ宮能瀬川のかほ花の恋ひてか寝らむ昨夜も今夜も","#[仮名],うちひさつ,みやのせがはの,かほばなの,こひてかぬらむ,きぞもこよひも","#[左注]","#[校異]泊 [元] 伯 / <> -> 伎 [西(左書)][元][類][古]","#[事項],東歌,相聞,地名,長野県,植物,恋情","#[訓異]
うちひさつ,[寛]うちひさす,
みやのせがはの,[寛]みやのせかはの,
かほばなの,[寛]かほはなの,
こひてかぬらむ[寛],
きぞもこよひも,[寛]きそもこよひも,
" "#[番号]14/3506","#[題詞]","#[原文]尓比牟路能 許騰伎尓伊多礼婆 波太須酒伎 穂尓弖之伎美我 見延奴己能許呂","#[訓読]新室のこどきに至ればはだすすき穂に出し君が見えぬこのころ","#[仮名],にひむろの,こどきにいたれば,はだすすき,ほにでしきみが,みえぬこのころ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,諸物,恋情,女歌","#[訓異]
にひむろの[寛],
こどきにいたれば,[寛]こときにいたれは,
はだすすき,[寛]はたすすき,
ほにでしきみが,[寛]ほにてしきみか,
みえぬこのころ[寛],
" "#[番号]14/3507","#[題詞]","#[原文]多尓世婆美 弥<年>尓波比多流 多麻可豆良 多延武能己許呂 和我母波奈久尓","#[訓読]谷狭み峰に延ひたる玉葛絶えむの心我が思はなくに","#[仮名],たにせばみ,みねにはひたる,たまかづら,たえむのこころ,わがもはなくに","#[左注]","#[校異]羊 -> 年 [類][古][紀]","#[事項],東歌,相聞,植物,序詞,恋情","#[訓異]
たにせばみ,[寛]たにせはみ,
みねにはひたる[寛],
たまかづら,[寛]たまかつら,
たえむのこころ[寛],
わがもはなくに,[寛]わかもはなくに,
" "#[番号]14/3508","#[題詞]","#[原文]芝付乃 御宇良佐伎奈流 根都古具佐 安比見受安良婆 安礼古非米夜母","#[訓読]芝付の御宇良崎なるねつこ草相見ずあらば我れ恋ひめやも","#[仮名],しばつきの,みうらさきなる,ねつこぐさ,あひみずあらば,あれこひめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,神奈川県,植物,恋情,序詞","#[訓異]
しばつきの,[寛]しはつきの,
みうらさきなる[寛],
ねつこぐさ,[寛]ねつこくさ,
あひみずあらば,[寛]あひみすあらは,
あれこひめやも[寛],
" "#[番号]14/3509","#[題詞]","#[原文]多久夫須麻 之良夜麻可是能 宿奈敝杼母 古呂賀於曽伎能 安路許曽要志母","#[訓読]栲衾白山風の寝なへども子ろがおそきのあろこそえしも","#[仮名],たくぶすま,しらやまかぜの,ねなへども,ころがおそきの,あろこそえしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情,地名,石川県","#[訓異]
たくぶすま,[寛]たくふすま,
しらやまかぜの,[寛]しらやまかせの,
ねなへども,[寛]ねなへとも,
ころがおそきの,[寛]ころかおそきの,
あろこそえしも[寛],
" "#[番号]14/3510","#[題詞]","#[原文]美蘇良由久 <君>母尓毛我母奈 家布由伎弖 伊母尓許等<杼>比 安須可敝里許武","#[訓読]み空行く雲にもがもな今日行きて妹に言どひ明日帰り来む","#[仮名],みそらゆく,くもにもがもな,けふゆきて,いもにことどひ,あすかへりこむ","#[左注]","#[校異]君尓 -> 君 [西(訂正)][類][紀][細] / 抒 -> 杼 [類][紀][細]","#[事項],東歌,相聞,恋情,羈旅,別離","#[訓異]
みそらゆく[寛],
くもにもがもな,[寛]くもにもかもな,
けふゆきて[寛],
いもにことどひ,[寛]いもにこととひ,
あすかへりこむ[寛],
" "#[番号]14/3511","#[題詞]","#[原文]安乎祢呂尓 多奈婢久君母能 伊佐欲比尓 物能乎曽於毛布 等思乃許能己呂","#[訓読]青嶺ろにたなびく雲のいさよひに物をぞ思ふ年のこのころ","#[仮名],あをねろに,たなびくくもの,いさよひに,ものをぞおもふ,としのこのころ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情","#[訓異]
あをねろに[寛],
たなびくくもの,[寛]たなひくくもの,
いさよひに[寛],
ものをぞおもふ,[寛]ものあをそおもふ,
としのこのころ[寛],
" "#[番号]14/3512","#[題詞]","#[原文]比登祢呂尓 伊波流毛能可良 安乎祢呂尓 伊佐欲布久母能 余曽里都麻波母","#[訓読]一嶺ろに言はるものから青嶺ろにいさよふ雲の寄そり妻はも","#[仮名],ひとねろに,いはるものから,あをねろに,いさよふくもの,よそりづまはも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情,うわさ","#[訓異]
ひとねろに[寛],
いはるものから[寛],
あをねろに[寛],
いさよふくもの[寛],
よそりづまはも,[寛]よそりつまはも,
" "#[番号]14/3513","#[題詞]","#[原文]由布佐礼婆 美夜麻乎左良奴 尓努具母能 安是可多要牟等 伊比之兒呂<波>母","#[訓読]夕さればみ山を去らぬ布雲のあぜか絶えむと言ひし子ろはも","#[仮名],ゆふされば,みやまをさらぬ,にのぐもの,あぜかたえむと,いひしころはも","#[左注]","#[校異]婆 -> 波 [元]","#[事項],東歌,相聞,序詞,恋情","#[訓異]
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
みやまをさらぬ[寛],
にのぐもの,[寛]にのくもの,
あぜかたえむと,[寛]あせかたえむと,
いひしころはも[寛],
" "#[番号]14/3514","#[題詞]","#[原文]多可伎祢尓 久毛能都久能須 和礼左倍尓 伎美尓都吉奈那 多可祢等毛比弖","#[訓読]高き嶺に雲のつくのす我れさへに君につきなな高嶺と思ひて","#[仮名],たかきねに,くものつくのす,われさへに,きみにつきなな,たかねともひて","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情","#[訓異]
たかきねに[寛],
くものつくのす[寛],
われさへに[寛],
きみにつきなな[寛],
たかねともひて[寛],
" "#[番号]14/3515","#[題詞]","#[原文]阿我於毛乃 和須礼牟之太波 久尓波布利 祢尓多都久毛乎 見都追之努波西","#[訓読]我が面の忘れむしだは国はふり嶺に立つ雲を見つつ偲はせ","#[仮名],あがおもの,わすれむしだは,くにはふり,ねにたつくもを,みつつしのはせ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,女歌,恋情,望郷,羈旅","#[訓異]
あがおもの,[寛]あかおもの,
わすれむしだは,[寛]わすれむしたは,
くにはふり[寛],
ねにたつくもを[寛],
みつつしのはせ[寛],
" "#[番号]14/3516","#[題詞]","#[原文]對馬能祢波 之多具毛安良南敷 可牟能祢尓 多奈婢久君毛乎 見都追思努<波>毛","#[訓読]対馬の嶺は下雲あらなふ可牟の嶺にたなびく雲を見つつ偲はも","#[仮名],つしまのねは,したぐもあらなふ,かむのねに,たなびくくもを,みつつしのはも","#[左注]","#[校異]婆 -> 波 [元][類][紀]","#[事項],東歌,相聞,地名,対馬,長崎県,望郷,羈旅,防人","#[訓異]
つしまのねは[寛],
したぐもあらなふ,[寛]したくもあらなふ,
かむのねに[寛],
たなびくくもを,[寛]たなひくくもを,
みつつしのはも[寛],
" "#[番号]14/3517","#[題詞]","#[原文]思良久毛能 多要尓之伊毛乎 阿是西呂等 許己呂尓能里弖 許己婆可那之家","#[訓読]白雲の絶えにし妹をあぜせろと心に乗りてここば愛しけ","#[仮名],しらくもの,たえにしいもを,あぜせろと,こころにのりて,ここばかなしけ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情,別離","#[訓異]
しらくもの[寛],
たえにしいもを[寛],
あぜせろと,[寛]あせせろと,
こころにのりて[寛],
ここばかなしけ,[寛]ここはかなしけ,
" "#[番号]14/3518","#[題詞]","#[原文]伊波能倍尓 伊可賀流久毛能 可努麻豆久 比等曽於多波布 伊射祢之賣刀良","#[訓読]岩の上にいかかる雲のかのまづく人ぞおたはふいざ寝しめとら","#[仮名],いはのへに,いかかるくもの,かのまづく,ひとぞおたはふ,いざねしめとら","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,序詞,恋情","#[訓異]
いはのへに[寛],
いかかるくもの[寛],
かのまづく,[寛]かぬまつく,
ひとぞおたはふ,[寛]ひとそおたはふ,
いざねしめとら,[寛]いさねしめとら,
" "#[番号]14/3519","#[題詞]","#[原文]奈我波伴尓 己良例安波由久 安乎久毛能 伊弖来和伎母兒 安必見而由可武","#[訓読]汝が母に嘖られ我は行く青雲の出で来我妹子相見て行かむ","#[仮名],ながははに,こられあはゆく,あをくもの,いでこわぎもこ,あひみてゆかむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情","#[訓異]
ながははに,[寛]なかははに,
こられあはゆく[寛],
あをくもの[寛],
いでこわぎもこ,[寛]いてこわきもこ,
あひみてゆかむ[寛],
" "#[番号]14/3520","#[題詞]","#[原文]於毛可多能 和須礼牟之太波 於抱野呂尓 多奈婢久君母乎 見都追思努波牟","#[訓読]面形の忘れむしだは大野ろにたなびく雲を見つつ偲はむ","#[仮名],おもかたの,わすれむしだは,おほのろに,たなびくくもを,みつつしのはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情,望郷,羈旅","#[訓異]
おもかたの[寛],
わすれむしだは,[寛]わすれむしたは,
おほのろに[寛],
たなびくくもを,[寛]たなひくくもを,
みつつしのはむ[寛],
" "#[番号]14/3521","#[題詞]","#[原文]可良須等布 於保乎曽杼里能 麻左R尓毛 伎麻左奴伎美乎 許呂久等曽奈久","#[訓読]烏とふ大をそ鳥のまさでにも来まさぬ君をころくとぞ鳴く","#[仮名],からすとふ,おほをそとりの,まさでにも,きまさぬきみを,ころくとぞなく","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,動物,恋情,女歌","#[訓異]
からすとふ[寛],
おほをそとりの[寛],
まさでにも,[寛]まさてにも,
きまさぬきみを[寛],
ころくとぞなく,[寛]ころくとそなく,
" "#[番号]14/3522","#[題詞]","#[原文]伎曽許曽波 兒呂等左宿之香 久毛能宇倍由 奈伎由久多豆乃 麻登保久於毛保由","#[訓読]昨夜こそば子ろとさ寝しか雲の上ゆ鳴き行く鶴の間遠く思ほゆ","#[仮名],きぞこそば,ころとさねしか,くものうへゆ,なきゆくたづの,まとほくおもほゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,動物,恋情","#[訓異]
きぞこそば,[寛]きそこそは,
ころとさねしか[寛],
くものうへゆ[寛],
なきゆくたづの,[寛]なきゆくたつの,
まとほくおもほゆ[寛],
" "#[番号]14/3523","#[題詞]","#[原文]佐可故要弖 阿倍乃田能毛尓 為流多豆乃 等毛思吉伎美波 安須左倍母我毛","#[訓読]坂越えて安倍の田の面に居る鶴のともしき君は明日さへもがも","#[仮名],さかこえて,あへのたのもに,ゐるたづの,ともしききみは,あすさへもがも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,静岡県,序詞,動物,恋情,女歌","#[訓異]
さかこえて[寛],
あへのたのもに[寛],
ゐるたづの,[寛]あるたつの,
ともしききみは[寛],
あすさへもがも,[寛]あすさへもかも,
" "#[番号]14/3524","#[題詞]","#[原文]麻乎其母能 布能<末>知可久弖 安波奈敝波 於吉都麻可母能 奈氣伎曽安我須流","#[訓読]まを薦の節の間近くて逢はなへば沖つま鴨の嘆きぞ我がする","#[仮名],まをごもの,ふのまちかくて,あはなへば,おきつまかもの,なげきぞあがする","#[左注]","#[校異]未 -> 末 [細]","#[事項],東歌,相聞,植物,動物,序詞,恋情","#[訓異]
まをごもの,[寛]まをこもの,
ふのまちかくて,[寛]ふのみちかくて,
あはなへば,[寛]あはなへは,
おきつまかもの[寛],
なげきぞあがする,[寛]なけきそあかする,
" "#[番号]14/3525","#[題詞]","#[原文]水久君野尓 可母能波抱能須 兒呂我宇倍尓 許等乎呂波敝而 伊麻太宿奈布母","#[訓読]水久君野に鴨の這ほのす子ろが上に言緒ろ延へていまだ寝なふも","#[仮名],みくくのに,かものはほのす,ころがうへに,ことをろはへて,いまだねなふも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,動物,恋情","#[訓異]
みくくのに[寛],
かものはほのす[寛],
ころがうへに,[寛]ころかうへに,
ことをろはへて[寛],
いまだねなふも,[寛]いまたねなふも,
" "#[番号]14/3526","#[題詞]","#[原文]奴麻布多都 可欲波等里我栖 安我己許呂 布多由久奈母等 奈与母波里曽祢","#[訓読]沼二つ通は鳥が巣我が心二行くなもとなよ思はりそね","#[仮名],ぬまふたつ,かよはとりがす,あがこころ,ふたゆくなもと,なよもはりそね","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋愛","#[訓異]
ぬまふたつ[寛],
かよはとりがす,[寛]かよはとりかせ,
あがこころ,[寛]あかこころ,
ふたゆくなもと[寛],
なよもはりそね[寛],
" "#[番号]14/3527","#[題詞]","#[原文]於吉尓須毛 乎加母乃毛己呂 也左可杼利 伊伎豆久伊毛乎 於伎弖伎努可母","#[訓読]沖に住も小鴨のもころ八尺鳥息づく妹を置きて来のかも","#[仮名],おきにすも,をかものもころ,やさかどり,いきづくいもを,おきてきのかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,動物,羈旅,別離,恋情,出発","#[訓異]
おきにすも[寛],
をかものもころ[寛],
やさかどり,[寛]やさかとり,
いきづくいもを,[寛]いきつくくいもを,
おきてきのかも,[寛]おきてきぬかも,
" "#[番号]14/3528","#[題詞]","#[原文]水都等利乃 多々武与曽比尓 伊母能良尓 毛乃伊波受伎尓弖 於毛比可祢都母","#[訓読]水鳥の立たむ装ひに妹のらに物言はず来にて思ひかねつも","#[仮名],みづとりの,たたむよそひに,いものらに,ものいはずきにて,おもひかねつも","#[左注]","#[校異]乃 [元][類](塙) 能 / 母 [元][類][細](塙) 毛","#[事項],東歌,相聞,羈旅,出発,別離,恋情","#[訓異]
みづとりの,[寛]みつとりの,
たたむよそひに[寛],
いものらに[寛],
ものいはずきにて,[寛]ものいはすきにて,
おもひかねつも[寛],
" "#[番号]14/3529","#[題詞]","#[原文]等夜乃野尓 乎佐藝祢良波里 乎佐乎左毛 祢奈敝古由恵尓 波伴尓許呂波要","#[訓読]等夜の野に兎ねらはりをさをさも寝なへ子ゆゑに母に嘖はえ","#[仮名],とやののに,をさぎねらはり,をさをさも,ねなへこゆゑに,ははにころはえ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,動物,恋愛","#[訓異]
とやののに[寛],
をさぎねらはり,[寛]をさきねらはり,
をさをさも[寛],
ねなへこゆゑに[寛],
ははにころはえ[寛],
" "#[番号]14/3530","#[題詞]","#[原文]左乎思鹿能 布須也久草無良 見要受等母 兒呂我可奈門欲 由可久之要思母","#[訓読]さを鹿の伏すや草むら見えずとも子ろが金門よ行かくしえしも","#[仮名],さをしかの,ふすやくさむら,みえずとも,ころがかなとよ,ゆかくしえしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,動物,恋愛,序詞","#[訓異]
さをしかの[寛],
ふすやくさむら[寛],
みえずとも,[寛]みえすとも,
ころがかなとよ,[寛]ころかかなとよ,
ゆかくしえしも[寛],
" "#[番号]14/3531","#[題詞]","#[原文]伊母乎許曽 安比美尓許思可 麻欲婢吉能 与許夜麻敝呂能 思之奈須於母敝流","#[訓読]妹をこそ相見に来しか眉引きの横山辺ろの獣なす思へる","#[仮名],いもをこそ,あひみにこしか,まよびきの,よこやまへろの,ししなすおもへる","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,枕詞,恋愛,怨恨,動物","#[訓異]
いもをこそ[寛],
あひみにこしか[寛],
まよびきの,[寛]まよひきの,
よこやまへろの[寛],
ししなすおもへる[寛]
" "#[番号]14/3532","#[題詞]","#[原文]波流能野尓 久佐波牟古麻能 久知夜麻受 安乎思努布良武 伊敝乃兒呂波母","#[訓読]春の野に草食む駒の口やまず我を偲ふらむ家の子ろはも","#[仮名],はるののに,くさはむこまの,くちやまず,あをしのふらむ,いへのころはも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,動物,序詞,恋情,望郷,羈旅","#[訓異]
はるののに[寛],
くさはむこまの[寛],
くちやまず,[寛]くちやます,
あをしのふらむ[寛],
いへのころはも[寛],
" "#[番号]14/3533","#[題詞]","#[原文]比登乃兒乃 可奈思家之太波 々麻渚杼里 安奈由牟古麻能 乎之家口母奈思","#[訓読]人の子の愛しけしだは浜洲鳥足悩む駒の惜しけくもなし","#[仮名],ひとのこの,かなしけしだは,はますどり,あなゆむこまの,をしけくもなし","#[左注]","#[校異]乃 [元][類] 能","#[事項],東歌,相聞,動物,恋情","#[訓異]
ひとのこの[寛],
かなしけしだは,[寛]かなしけしたは,
はますどり,[寛]はますとり,
あなゆむこまの[寛],
をしけくもなし[寛],
" "#[番号]14/3534","#[題詞]","#[原文]安可胡麻我 可度弖乎思都々 伊弖可天尓 世之乎見多弖思 伊敝能兒良波母","#[訓読]赤駒が門出をしつつ出でかてにせしを見立てし家の子らはも","#[仮名],あかごまが,かどでをしつつ,いでかてに,せしをみたてし,いへのこらはも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,動物,羈旅,別離,望郷,出発","#[訓異]
あかごまが,[寛]あかこまか,
かどでをしつつ,[寛]かとてをしつつ,
いでかてに,[寛]いてかてに,
せしをみたてし[寛],
いへのこらはも[寛],
" "#[番号]14/3535","#[題詞]","#[原文]於能我乎遠 於保尓奈於毛比曽 尓波尓多知 恵麻須我可良尓 古麻尓安布毛能乎","#[訓読]己が命をおほにな思ひそ庭に立ち笑ますがからに駒に逢ふものを","#[仮名],おのがをを,おほになおもひそ,にはにたち,ゑますがからに,こまにあふものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,動物,恋情,慰撫","#[訓異]
おのがをを,[寛]おのかをを
おほになおもひそ[寛],
にはにたち[寛],
ゑますがからに,[寛]えますわれからに,
こまにあふものを[寛],
" "#[番号]14/3536","#[題詞]","#[原文]安加胡麻乎 宇知弖左乎妣吉 己許呂妣吉 伊可奈流勢奈可 和我理許武等伊布","#[訓読]赤駒を打ちてさ緒引き心引きいかなる背なか我がり来むと言ふ","#[仮名],あかごまを,うちてさをびき,こころひき,いかなるせなか,わがりこむといふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,動物,女歌,怨恨,恋愛,序詞","#[訓異]
あかごまを,[寛]あかこまを,
うちてさをびき,[寛]うちてさをひき,
こころひき[寛],
いかなるせなか[寛],
わがりこむといふ,[寛]わかりこむといふ,
" "#[番号]14/3537","#[題詞]","#[原文]久敝胡之尓 武藝波武古宇馬能 波都々々尓 安比見之兒良之 安夜尓可奈思母","#[訓読]くへ越しに麦食む小馬のはつはつに相見し子らしあやに愛しも","#[仮名],くへごしに,むぎはむこうまの,はつはつに,あひみしこらし,あやにかなしも","#[左注]或本歌曰 宇麻勢胡之 牟伎波武古麻能 波都々々尓 仁必波太布礼思 古呂之可奈思母 ","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,異伝,動物,序詞,恋情","#[訓異]
くへごしに,[寛]くへこしに,
むぎはむこうまの,[寛]むきはむこうまの,
はつはつに,[寛]はつはつて,
あひみしこらし[寛],
あやにかなしも[寛],
" "#[番号]14/3537S","#[題詞]或本歌曰","#[原文]宇麻勢胡之 牟伎波武古麻能 波都々々尓 仁必波太布礼思 古呂之可奈思母 ","#[訓読]馬柵越し麦食む駒のはつはつに新肌触れし子ろし愛しも ","#[仮名],うませごし,むぎはむこまの,はつはつに,にひはだふれし,ころしかなしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,異伝,恋情,序詞","#[訓異]
うませごし,[寛]うませこし,
むぎはむこまの,[寛]むきはむこまの,
はつはつに[寛],
にひはだふれし,[寛]にひはたふれし,
ころしかなしも[寛],
" "#[番号]14/3538","#[題詞]","#[原文]比呂波之乎 宇馬古思我祢弖 己許呂能未 伊母我理夜里弖 和波己許尓思天","#[訓読]広橋を馬越しがねて心のみ妹がり遣りて我はここにして","#[仮名],ひろはしを,うまこしがねて,こころのみ,いもがりやりて,わはここにして","#[左注]或本歌發句曰 乎波夜之尓 古麻乎波左佐氣","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,異伝,うわさ,恋情,動物","#[訓異]
ひろはしを[寛],
うまこしがねて,[寛]うまこしかねて,
こころのみ[寛],
いもがりやりて,[寛]いもかりやりて,
わはここにして[寛],
" "#[番号]14/3538S","#[題詞]或本歌發句曰","#[原文]乎波夜之尓 古麻乎波左佐氣","#[訓読]小林に駒を馳ささげ","#[仮名],をばやしに,こまをはささげ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,異伝,恋情","#[訓異]
をばやしに,[寛]をはやしに,
こまをはささげ,[寛]こまをはささけ
" "#[番号]14/3539","#[題詞]","#[原文]安受乃宇敝尓 古馬乎都奈伎弖 安夜抱可等 比等豆麻古呂乎 伊吉尓和我須流","#[訓読]あずの上に駒を繋ぎて危ほかど人妻子ろを息に我がする","#[仮名],あずのうへに,こまをつなぎて,あやほかど,ひとづまころを,いきにわがする","#[左注]","#[校異]豆 [類] 都","#[事項],東歌,相聞,序詞,恋情,動物","#[訓異]
あずのうへに,[寛]あすのうへに,
こまをつなぎて,[寛]こまをつなきて,
あやほかど,[寛]あやほかと,
ひとづまころを,[寛]ひとまつころを,
いきにわがする,[寛]いきにわかする,
" "#[番号]14/3540","#[題詞]","#[原文]左和多里能 手兒尓伊由伎安比 安可胡麻我 安我伎乎波夜未 許等登波受伎奴","#[訓読]左和多里の手児にい行き逢ひ赤駒が足掻きを速み言問はず来ぬ","#[仮名],さわたりの,てごにいゆきあひ,あかごまが,あがきをはやみ,こととはずきぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,群馬県,動物,恋情","#[訓異]
さわたりの[寛],
てごにいゆきあひ,[寛]てこにいゆきあひ,
あかごまが,[寛]あかこまか,
あがきをはやみ,[寛]あかきをはやみ,
こととはずきぬ,[寛]こととはすきぬ,
" "#[番号]14/3541","#[題詞]","#[原文]安受倍可良 古麻<能>由胡能須 安也波刀文 比<登>豆麻古呂乎 麻由可西良布母","#[訓読]あずへから駒の行ごのす危はとも人妻子ろをまゆかせらふも","#[仮名],あずへから,こまのゆごのす,あやはとも,ひとづまころを,まゆかせらふも","#[左注]","#[校異]乃 -> 能 [元][類] / 等 -> 登 [元][類]","#[事項],東歌,相聞,動物,序詞,訓義未詳,恋愛","#[訓異]
あずへから[寛],
こまのゆごのす,[寛]こまのゆこのす,
あやはとも[寛],
ひとづまころを,[寛]ひとつまころを,
まゆかせらふも[寛]
" "#[番号]14/3542","#[題詞]","#[原文]<佐>射礼伊思尓 古馬乎波佐世弖 己許呂伊多美 安我毛布伊毛我 伊敝<能>安多里可聞","#[訓読]さざれ石に駒を馳させて心痛み我が思ふ妹が家のあたりかも","#[仮名],さざれいしに,こまをはさせて,こころいたみ,あがもふいもが,いへのあたりかも","#[左注]","#[校異]伊 -> 佐 [西(訂正右書)][元][類][紀] / 乃 -> 能 [元][類]","#[事項],東歌,相聞,動物,恋愛,妻問い","#[訓異]
さざれいしに,[寛]さされいしに,
こまをはさせて[寛],
こころいたみ[寛],
あがもふいもが,[寛]あかもふいもか,
いへのあたりかも[寛],
" "#[番号]14/3543","#[題詞]","#[原文]武路我夜乃 都留能都追美乃 那利奴賀尓 古呂波伊敝<杼>母 伊末太<年>那久尓","#[訓読]むろがやの都留の堤の成りぬがに子ろは言へどもいまだ寝なくに","#[仮名],むろがやの,つるのつつみの,なりぬがに,ころはいへども,いまだねなくに","#[左注]","#[校異]抒 -> 杼 [類][細] / 羊 -> 年 [元][類][紀]","#[事項],東歌,相聞,地名,山梨県,上野原町,恋情","#[訓異]
むろがやの,[寛]むろかやの,
つるのつつみの[寛],
なりぬがに,[寛]なりぬかに,
ころはいへども,[寛]ころはいへとも,
いまだねなくに,[寛]いまたねなくに,
" "#[番号]14/3544","#[題詞]","#[原文]阿須可河泊 之多尓其礼留乎 之良受思天 勢奈那登布多理 左宿而久也思母","#[訓読]あすか川下濁れるを知らずして背ななと二人さ寝て悔しも","#[仮名],あすかがは,したにごれるを,しらずして,せななとふたり,さねてくやしも","#[左注]","#[校異]泊 [元][類][紀] 伯","#[事項],東歌,相聞,明日香,奈良,地名,浮気,恋情,後悔,怨恨","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
したにごれるを,[寛]したにこれるを,
しらずして,[寛]しらすして,
せななとふたり[寛],
さねてくやしも[寛],
" "#[番号]14/3545","#[題詞]","#[原文]安須可河泊 世久登之里世波 安麻多欲母 為祢弖己麻思乎 世久得四里世<婆>","#[訓読]あすか川堰くと知りせばあまた夜も率寝て来ましを堰くと知りせば","#[仮名],あすかがは,せくとしりせば,あまたよも,ゐねてこましを,せくとしりせば","#[左注]","#[校異]泊 [元][紀] 伯 / 波 -> 婆 [元][類][紀]","#[事項],東歌,相聞,明日香,奈良,地名,恋情","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
せくとしりせば,[寛]せくとしりせは,
あまたよも[寛],
ゐねてこましを[寛],
せくとしりせば,[寛]せくとしりせは,
" "#[番号]14/3546","#[題詞]","#[原文]安乎楊木能 波良路可波刀尓 奈乎麻都等 西美度波久末受 多知度奈良須母","#[訓読]青柳の張らろ川門に汝を待つと清水は汲まず立ち処平すも","#[仮名],あをやぎの,はらろかはとに,なをまつと,せみどはくまず,たちどならすも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,植物,女歌,恋情","#[訓異]
あをやぎの,[寛]あをやきの,
はらろかはとに[寛],
なをまつと[寛],
せみどはくまず,[寛]せみとはくます,
たちどならすも,[寛]たちとならすも,
" "#[番号]14/3547","#[題詞]","#[原文]阿遅乃須牟 須沙能伊利江乃 許母理沼乃 安奈伊伎豆加思 美受比佐尓指天","#[訓読]あぢの棲む須沙の入江の隠り沼のあな息づかし見ず久にして","#[仮名],あぢのすむ,すさのいりえの,こもりぬの,あないきづかし,みずひさにして","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,動物,恋情,序詞","#[訓異]
あぢのすむ,[寛]あちのすむ,
すさのいりえの[寛],
こもりぬの[寛],
あないきづかし,[寛]あないきつかし,
みずひさにして,[寛]みすひさにして,
" "#[番号]14/3548","#[題詞]","#[原文]奈流世<呂>尓 木都能余須奈須 伊等能伎提 可奈思家世呂尓 比等佐敝余須母","#[訓読]鳴る瀬ろにこつの寄すなすいとのきて愛しけ背ろに人さへ寄すも","#[仮名],なるせろに,こつのよすなす,いとのきて,かなしけせろに,ひとさへよすも","#[左注]","#[校異]路 -> 呂 [元][類]","#[事項],東歌,相聞,うわさ,恋情","#[訓異]
なるせろに[寛],
こつのよすなす,[寛]きつのよすなす,
いとのきて[寛],
かなしけせろに[寛],
ひとさへよすも[寛],
" "#[番号]14/3549","#[題詞]","#[原文]多由比我多 志保弥知和多流 伊豆由可母 加奈之伎世呂我 和賀利可欲波牟","#[訓読]多由比潟潮満ちわたるいづゆかも愛しき背ろが我がり通はむ","#[仮名],たゆひがた,しほみちわたる,いづゆかも,かなしきせろが,わがりかよはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,福井県,恋情,女歌,妻問い","#[訓異]
たゆひがた,[寛]たゆひかた,
しほみちわたる[寛],
いづゆかも,[寛]いつゆかも,
かなしきせろが,[寛]かなしきせろか,
わがりかよはむ,[寛]わかりかよはむ,
" "#[番号]14/3550","#[題詞]","#[原文]於志弖伊奈等 伊祢波都可祢杼 奈美乃保能 伊多夫良思毛与 伎曽比登里宿而","#[訓読]おしていなと稲は搗かねど波の穂のいたぶらしもよ昨夜ひとり寝て","#[仮名],おしていなと,いねはつかねど,なみのほの,いたぶらしもよ,きぞひとりねて","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情,作業歌,歌謡,孤独","#[訓異]
おしていなと[寛],
いねはつかねど,[寛]いねはつかねと,
なみのほの[寛],
いたぶらしもよ,[寛]いたふらしもよ,
きぞひとりねて,[寛]きそひとりねて,
" "#[番号]14/3551","#[題詞]","#[原文]阿遅可麻能 可多尓左久奈美 比良湍尓母 比毛登久毛能可 加奈思家乎於吉弖","#[訓読]阿遅可麻の潟にさく波平瀬にも紐解くものか愛しけを置きて","#[仮名],あぢかまの,かたにさくなみ,ひらせにも,ひもとくものか,かなしけをおきて","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,恋情,女歌,序詞,浮気","#[訓異]
あぢかまの,[寛]あちかまの,
かたにさくなみ[寛],
ひらせにも[寛],
ひもとくものか,[寛]ももとくものか,
かなしけをおきて,[寛]かなしけをおきて,
" "#[番号]14/3552","#[題詞]","#[原文]麻都我宇良尓 佐和恵宇良太知 麻比<登>其等 於毛抱須奈母呂 和賀母抱乃須毛","#[訓読]まつが浦にさわゑうら立ちま人言思ほすなもろ我が思ほのすも","#[仮名],まつがうらに,さわゑうらだち,まひとごと,おもほすなもろ,わがもほのすも","#[左注]","#[校異]等 -> 登 [元][類][紀]","#[事項],東歌,相聞,地名,宮城県,福島県,うわさ,恋愛,女歌","#[訓異]
まつがうらに,[寛]まつかうらに,
さわゑうらだち,[寛]さわゑうらたち,
まひとごと,[寛]まひとこと
おもほすなもろ[寛],
わがもほのすも,[寛]わかもほのすも,
" "#[番号]14/3553","#[題詞]","#[原文]安治可麻能 可家能水奈刀尓 伊流思保乃 許弖多受久毛可 伊里弖祢麻久母","#[訓読]あじかまの可家の港に入る潮のこてたずくもが入りて寝まくも","#[仮名],あぢかまの,かけのみなとに,いるしほの,こてたずくもが,いりてねまくも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,愛知県,序詞,うわさ,恋情","#[訓異]
あぢかまの,[寛]あちかまの,
かけのみなとに[寛],
いるしほの[寛],
こてたずくもが,[寛]こてたすくもか,
いりてねまくも[寛],
" "#[番号]14/3554","#[題詞]","#[原文]伊毛我奴流 等許<能>安多理尓 伊波具久留 水都尓母我毛与 伊里弖祢末久母","#[訓読]妹が寝る床のあたりに岩ぐくる水にもがもよ入りて寝まくも","#[仮名],いもがぬる,とこのあたりに,いはぐくる,みづにもがもよ,いりてねまくも","#[左注]","#[校異]乃 -> 能 [元][類]","#[事項],東歌,相聞,恋情","#[訓異]
いもがぬる,[寛]いもかぬる,
とこのあたりに[寛],
いはぐくる,[寛]いはくくる,
みづにもがもよ,[寛]みつにもかもよ,
いりてねまくも[寛],
" "#[番号]14/3555","#[題詞]","#[原文]麻久良我乃 許我能和多利乃 可良加治乃 於<登>太可思母奈 宿莫敝兒由恵尓","#[訓読]麻久良我の許我の渡りの韓楫の音高しもな寝なへ子ゆゑに","#[仮名],まくらがの,こがのわたりの,からかぢの,おとだかしもな,ねなへこゆゑに","#[左注]","#[校異]等 -> 登 [類][細]","#[事項],東歌,相聞,地名,茨城県,古河,序詞,うわさ,恋愛","#[訓異]
まくらがの,[寛]まくらかの,
こがのわたりの,[寛]こかのわたりの,
からかぢの,[寛]からかちの,
おとだかしもな,[寛]おとたかしもな,
ねなへこゆゑに[寛],
" "#[番号]14/3556","#[題詞]","#[原文]思保夫祢能 於可礼婆可奈之 左宿都礼婆 比登其等思氣志 那乎杼可母思武","#[訓読]潮船の置かれば愛しさ寝つれば人言繁し汝をどかもしむ","#[仮名],しほぶねの,おかればかなし,さねつれば,ひとごとしげし,なをどかもしむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,枕詞,恋情,うわさ","#[訓異]
しほぶねの,[寛]しほふねの,
おかればかなし,[寛]おかれはかなし,
さねつれば,[寛]さねつれは,
ひとごとしげし,[寛]ひとことしけし,
なをどかもしむ,[寛]なをとかもしむ,
" "#[番号]14/3557","#[題詞]","#[原文]奈夜麻思家 比登都麻可母与 許具布祢能 和須礼波勢奈那 伊夜母比麻須尓","#[訓読]悩ましけ人妻かもよ漕ぐ舟の忘れはせなないや思ひ増すに","#[仮名],なやましけ,ひとづまかもよ,こぐふねの,わすれはせなな,いやもひますに","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,序詞,恋情","#[訓異]
なやましけ[寛],
ひとづまかもよ,[寛]ひとつまかもよ,
こぐふねの,[寛]こくふねの,
わすれはせなな[寛],
いやもひますに[寛],
" "#[番号]14/3558","#[題詞]","#[原文]安波受之弖 由加婆乎思家牟 麻久良我能 許賀己具布祢尓 伎美毛安波奴可毛","#[訓読]逢はずして行かば惜しけむ麻久良我の許我漕ぐ船に君も逢はぬかも","#[仮名],あはずして,ゆかばをしけむ,まくらがの,こがこぐふねに,きみもあはぬかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,茨城県,古河,遊行女婦,女歌","#[訓異]
あはずして,[寛]あはすして,
ゆかばをしけむ,[寛]ゆかはをしけむ,
まくらがの,[寛]まくらかの,
こがこぐふねに,[寛]こかこくふねに,
きみもあはぬかも[寛],
" "#[番号]14/3559","#[題詞]","#[原文]於保夫祢乎 倍由毛登母由毛 可多米提之 許曽能左刀妣等 阿良波左米可母","#[訓読]大船を舳ゆも艫ゆも堅めてし許曽の里人あらはさめかも","#[仮名],おほぶねを,へゆもともゆも,かためてし,こそのさとびと,あらはさめかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,序詞,うわさ,恋愛,地名","#[訓異]
おほぶねを,[寛]おほふねを,
へゆもともゆも[寛],
かためてし[寛],
こそのさとびと,[寛]こそのさとひと,
あらはさめかも[寛],
" "#[番号]14/3560","#[題詞]","#[原文]麻可祢布久 尓布能麻曽保乃 伊呂尓R<弖> 伊波奈久能未曽 安我古布良久波","#[訓読]ま金ふく丹生のま朱の色に出て言はなくのみぞ我が恋ふらくは","#[仮名],まかねふく,にふのまそほの,いろにでて,いはなくのみぞ,あがこふらくは","#[左注]","#[校異]々 -> 弖 [元][類]","#[事項],東歌,相聞,地名,奈良,吉野,岐阜,序詞,うわさ,恋情","#[訓異]
まかねふく[寛],
にふのまそほの[寛],
いろにでて,[寛]いろにてて,
いはなくのみぞ,[寛]いはなくのみそ,
あがこふらくは,[寛]あかこふらくは,
" "#[番号]14/3561","#[題詞]","#[原文]可奈刀田乎 安良我伎麻由美 比賀刀礼婆 阿米乎万刀能須 伎美乎等麻刀母","#[訓読]金門田を荒垣ま斎み日が照れば雨を待とのす君をと待とも","#[仮名],かなとだを,あらがきまゆみ,ひがとれば,あめをまとのす,きみをとまとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,序詞,恋情,女歌","#[訓異]
かなとだを,[寛]かなとてを,
あらがきまゆみ,[寛]あらかきまゆみ,
ひがとれば,[寛]ひかのれは,
あめをまとのす[寛],
きみをとまとも[寛],
" "#[番号]14/3562","#[題詞]","#[原文]安里蘇夜尓 於布流多麻母乃 宇知奈婢伎 比登里夜宿良牟 安乎麻知可祢弖","#[訓読]荒礒やに生ふる玉藻のうち靡きひとりや寝らむ我を待ちかねて","#[仮名],ありそやに,おふるたまもの,うちなびき,ひとりやぬらむ,あをまちかねて","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,植物,序詞,恋情,孤独","#[訓異]
ありそやに[寛],
おふるたまもの[寛],
うちなびき,[寛]うちなひき,
ひとりやぬらむ[寛],
あをまちかねて[寛],
" "#[番号]14/3563","#[題詞]","#[原文]比多我多能 伊蘇乃和可米乃 多知美太要 和乎可麻都那毛 伎曽毛己余必母","#[訓読]比多潟の礒のわかめの立ち乱え我をか待つなも昨夜も今夜も","#[仮名],ひたがたの,いそのわかめの,たちみだえ,わをかまつなも,きぞもこよひも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,茨城県,植物,序詞,恋情","#[訓異]
ひたがたの,[寛]ひたかたの,
いそのわかめの[寛],
たちみだえ,[寛]たちみたえ,
わをかまつなも[寛],
きぞもこよひも,[寛]きそもこよひも,
" "#[番号]14/3564","#[題詞]","#[原文]古須氣呂乃 宇良布久可是能 安騰須酒香 可奈之家兒呂乎 於毛比須吾左牟","#[訓読]古須気ろの浦吹く風のあどすすか愛しけ子ろを思ひ過ごさむ","#[仮名],こすげろの,うらふくかぜの,あどすすか,かなしけころを,おもひすごさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,地名,東京都,小菅町,恋情","#[訓異]
こすげろの,[寛]こすけろの,
うらふくかぜの,[寛]うらふくかせの,
あどすすか,[寛]あとすすか,
かなしけころを[寛],
おもひすごさむ,[寛]おもひすこさむ,
" "#[番号]14/3565","#[題詞]","#[原文]可能古呂等 宿受夜奈里奈牟 波太須酒伎 宇良野乃夜麻尓 都久可多与留母","#[訓読]かの子ろと寝ずやなりなむはだすすき宇良野の山に月片寄るも","#[仮名],かのころと,ねずやなりなむ,はだすすき,うらののやまに,つくかたよるも","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,植物,地名,長野県,恋情","#[訓異]
かのころと[寛],
ねずやなりなむ,[寛]ねすやなりなむ,
はだすすき,[寛]はたすすき,
うらののやまに[寛],
つくかたよるも[寛],
" "#[番号]14/3566","#[題詞]","#[原文]和伎毛古尓 安我古非思奈婆 曽和敝可毛 加未尓於保世牟 己許呂思良受弖","#[訓読]我妹子に我が恋ひ死なばそわへかも神に負ほせむ心知らずて","#[仮名],わぎもこに,あがこひしなば,そわへかも,かみにおほせむ,こころしらずて","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
あがこひしなば,[寛]あかこひしなは,
そわへかも[寛],
かみにおほせむ[寛],
こころしらずて,[寛]こころしらすて,
" "#[番号]14/3567","#[題詞]防人歌","#[原文]於伎弖伊可婆 伊毛婆麻可奈之 母知弖由久 安都佐能由美乃 由都可尓母我毛","#[訓読]置きて行かば妹はま愛し持ちて行く梓の弓の弓束にもがも","#[仮名],おきていかば,いもはまかなし,もちてゆく,あづさのゆみの,ゆづかにもがも","#[左注](右二首<問>答)","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,恋情,出発","#[訓異]
おきていかば,[寛]おきていかは,
いもはまかなし[寛],
もちてゆく[寛],
あづさのゆみの,[寛]あつさのゆみの,
ゆづかにもがも,[寛]ゆつかにもかも,
" "#[番号]14/3568","#[題詞]","#[原文]於久礼為弖 古非波久流思母 安佐我里能 伎美我由美尓母 奈良麻思物能乎","#[訓読]後れ居て恋ひば苦しも朝猟の君が弓にもならましものを","#[仮名],おくれゐて,こひばくるしも,あさがりの,きみがゆみにも,ならましものを","#[左注]右二首<問>答","#[校異]問 [西(訂正右書)][紀][細][温]","#[事項],東歌,相聞,女歌,恋情,出発","#[訓異]
おくれゐて[寛],
こひばくるしも,[寛]こひはくるしも,
あさがりの,[寛]あさかりの,
きみがゆみにも,[寛]きみかゆみにも,
ならましものを[寛],
" "#[番号]14/3569","#[題詞]","#[原文]佐伎母理尓 多知之安佐氣乃 可奈刀R尓 手婆奈礼乎思美 奈吉思兒良<波>母","#[訓読]防人に立ちし朝開の金戸出にたばなれ惜しみ泣きし子らはも","#[仮名],さきもりに,たちしあさけの,かなとでに,たばなれをしみ,なきしこらはも","#[左注]","#[校異]婆 -> 波 [類]","#[事項],東歌,相聞,防人,出発,羈旅,望郷,恋情","#[訓異]
さきもりに[寛],
たちしあさけの[寛],
かなとでに,[寛]かなとてに,
たばなれをしみ,[寛]てはなれをしみ,
なきしこらはも[寛],
" "#[番号]14/3570","#[題詞]","#[原文]安之能葉尓 由布宜里多知弖 可母我鳴乃 左牟伎由布敝思 奈乎波思努波牟","#[訓読]葦の葉に夕霧立ちて鴨が音の寒き夕し汝をば偲はむ","#[仮名],あしのはに,ゆふぎりたちて,かもがねの,さむきゆふへし,なをばしのはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,動物,望郷,恋情","#[訓異]
あしのはに[寛],
ゆふぎりたちて,[寛]ゆふきりたちて,
かもがねの,[寛]かもかねの,
さむきゆふへし[寛],
なをばしのはむ,[寛]なをはしのはむ,
" "#[番号]14/3571","#[題詞]","#[原文]於能豆麻乎 比登乃左刀尓於吉 於保々思久 見都々曽伎奴流 許能美知乃安比太","#[訓読]己妻を人の里に置きおほほしく見つつぞ来ぬるこの道の間","#[仮名],おのづまを,ひとのさとにおき,おほほしく,みつつぞきぬる,このみちのあひだ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,相聞,防人,望郷,不安,恋情","#[訓異]
おのづまを,[寛]おのつまを,
ひとのさとにおき[寛],
おほほしく[寛],
みつつぞきぬる,[寛]みつつそきぬる,
このみちのあひだ,[寛]このみちのあひた,
" "#[番号]14/3572","#[題詞]譬喩歌","#[原文]安杼毛敝可 阿自久麻<夜>末乃 由豆流波乃 布敷麻留等伎尓 可是布可受可母","#[訓読]あど思へか阿自久麻山の弓絃葉のふふまる時に風吹かずかも","#[仮名],あどもへか,あじくまやまの,ゆづるはの,ふふまるときに,かぜふかずかも","#[左注]","#[校異]<> -> 夜 [西(下書)][類][紀][細]","#[事項],東歌,譬喩歌,地名,茨城県,子飼山,植物,婚姻","#[訓異]
あどもへか,[寛]あともへか,
あじくまやまの,[寛]あしくまやまの,
ゆづるはの,[寛]ゆつるはの,
ふふまるときに[寛],
かぜふかずかも,[寛]かせふかすかも,
" "#[番号]14/3573","#[題詞]","#[原文]安之比奇能 夜麻可都良加氣 麻之波尓母 衣我多奇可氣乎 於吉夜可良佐武","#[訓読]あしひきの山かづらかげましばにも得がたきかげを置きや枯らさむ","#[仮名],あしひきの,やまかづらかげ,ましばにも,えがたきかげを,おきやからさむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,譬喩歌,植物,婚姻","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまかづらかげ,[寛]やまかつらかけ,
ましばにも,[寛]ましはにも,
えがたきかげを,[寛]えかたきかけを,
おきやからさむ[寛],
" "#[番号]14/3574","#[題詞]","#[原文]乎佐刀奈流 波奈多知波奈乎 比伎余治弖 乎良無登須礼杼 宇良和可美許曽","#[訓読]小里なる花橘を引き攀ぢて折らむとすれどうら若みこそ","#[仮名],をさとなる,はなたちばなを,ひきよぢて,をらむとすれど,うらわかみこそ","#[左注]","#[校異]","#[事項],東歌,譬喩歌,植物,婚姻","#[訓異]
をさとなる[寛],
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
ひきよぢて,[寛]ひきよちて,
をらむとすれど,[寛]をらむとすれと,
うらわかみこそ[寛],
" "#[番号]14/3575","#[題詞]","#[原文]美夜自呂乃 <須>可敝尓多弖流 可保我波奈 莫佐吉伊<R>曽祢 許米弖思努波武","#[訓読]美夜自呂のすかへに立てるかほが花な咲き出でそねこめて偲はむ","#[仮名],みやじろの,すかへにたてる,かほがはな,なさきいでそね,こめてしのはむ","#[左注]","#[校異]渚 -> 須 [類][古] / 弖 -> R [類][紀]","#[事項],東歌,譬喩歌,地名,植物,恋情","#[訓異]
みやじろの,[寛]みやしろの,
すかへにたてる,[寛]をかへにたてる,
かほがはな,[寛]かほかはな,
なさきいでそね,[寛]なさきいてそね,
こめてしのはむ[寛],
" "#[番号]14/3576","#[題詞]","#[原文]奈波之呂乃 <古>奈宜我波奈乎 伎奴尓須里 奈流留麻尓末仁 安是可加奈思家","#[訓読]苗代の小水葱が花を衣に摺りなるるまにまにあぜか愛しけ","#[仮名],なはしろの,こなぎがはなを,きぬにすり,なるるまにまに,あぜかかなしけ","#[左注]","#[校異]告 -> 古 [西(訂正頭書)][元][類][紀]","#[事項],東歌,譬喩歌,植物,恋情","#[訓異]
なはしろの[寛],
こなぎがはなを,[寛]こなきかはなを,
きぬにすり[寛],
なるるまにまに[寛],
あぜかかなしけ,[寛]あせかかなしけ,
" "#[番号]14/3577","#[題詞]挽歌","#[原文]可奈思伊毛乎 伊都知由可米等 夜麻須氣乃 曽我比尓宿思久 伊麻之久夜思母","#[訓読]愛し妹をいづち行かめと山菅のそがひに寝しく今し悔しも","#[仮名],かなしいもを,いづちゆかめと,やますげの,そがひにねしく,いましくやしも","#[左注]以前歌詞未得勘知國土山川之名也","#[校異]","#[事項],東歌,挽歌,植物,恋情,後悔,恋愛","#[訓異]
かなしいもを[寛],
いづちゆかめと,[寛]いつちゆかめと,
やますげの,[寛]やますけの,
そがひにねしく,[寛]そかひにねしく,
いましくやしも[寛],
" "#[番号]15/3578","#[題詞]遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌","#[原文]武庫能浦乃 伊里江能渚鳥 羽具久毛流 伎美乎波奈礼弖 古非尓之奴倍之","#[訓読]武庫の浦の入江の洲鳥羽ぐくもる君を離れて恋に死ぬべし","#[仮名],むこのうらの,いりえのすどり,はぐくもる,きみをはなれて,こひにしぬべし","#[左注](右十一首贈答)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,贈答,地名,兵庫県,武庫川,動物,女歌,悲別,序詞,恋情,羈旅,出発,難波,大阪","#[訓異]
むこのうらの[寛],
いりえのすどり,[寛]いりえのすとり,
はぐくもる,[寛]はくくもる,
きみをはなれて[寛],
こひにしぬべし,[寛]こひにしぬへし,
" "#[番号]15/3579","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]大船尓 伊母能流母能尓 安良麻勢<婆> 羽具久美母知弖 由可麻之母能乎","#[訓読]大船に妹乗るものにあらませば羽ぐくみ持ちて行かましものを","#[仮名],おほぶねに,いものるものに,あらませば,はぐくみもちて,ゆかましものを","#[左注](右十一首贈答)","#[校異]波 -> 婆 [類]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,贈答,恋情,悲別,出発,羈旅,難波,大阪","#[訓異]
おほぶねに,[寛]おほふねに,
いものるものに[寛],
あらませば,[寛]あらませは,
はぐくみもちて,[寛]はくくみもちて,
ゆかましものを[寛],
" "#[番号]15/3580","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]君之由久 海邊乃夜杼尓 奇里多々婆 安我多知奈氣久 伊伎等之理麻勢","#[訓読]君が行く海辺の宿に霧立たば我が立ち嘆く息と知りませ","#[仮名],きみがゆく,うみへのやどに,きりたたば,あがたちなげく,いきとしりませ","#[左注](右十一首贈答)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,贈答,女歌,羈旅,出発,悲別,恋情,難波,大阪","#[訓異]
きみがゆく,[寛]きみかゆく,
うみへのやどに,[寛]うみへのやとに,
きりたたば,[寛]きりたたは,
あがたちなげく,[寛]あかたちなけく,
いきとしりませ[寛],
" "#[番号]15/3581","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]秋佐良婆 安比見牟毛能乎 奈尓之可母 奇里尓多都倍久 奈氣伎之麻佐牟","#[訓読]秋さらば相見むものを何しかも霧に立つべく嘆きしまさむ","#[仮名],あきさらば,あひみむものを,なにしかも,きりにたつべく,なげきしまさむ","#[左注](右十一首贈答)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,贈答,悲別,羈旅,出発,慰撫,恋愛,難波,大阪","#[訓異]
あきさらば,[寛]あきさらは,
あひみむものを[寛],
なにしかも[寛],
きりにたつべく,[寛]きりにたつへく,
なげきしまさむ,[寛]なけきしまさむ,
" "#[番号]15/3582","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]大船乎 安流美尓伊太之 伊麻須君 都追牟許等奈久 波也可敝里麻勢","#[訓読]大船を荒海に出だしいます君障むことなく早帰りませ","#[仮名],おほぶねを,あるみにいだし,いますきみ,つつむことなく,はやかへりませ","#[左注](右十一首贈答)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,贈答,女歌,羈旅,出発,悲別,餞別,恋愛,難波,大阪","#[訓異]
おほぶねを,[寛]おほふねを,
あるみにいだし,[寛]あるみにいたし,
いますきみ[寛],
つつむことなく[寛],
はやかへりませ[寛],
" "#[番号]15/3583","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]真幸而 伊毛我伊波伴伐 於伎都奈美 知敝尓多都等母 佐波里安良米也母","#[訓読]ま幸くて妹が斎はば沖つ波千重に立つとも障りあらめやも","#[仮名],まさきくて,いもがいははば,おきつなみ,ちへにたつとも,さはりあらめやも","#[左注](右十一首贈答)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,贈答,羈旅,出発,悲別,恋愛,難波,大阪","#[訓異]
まさきくて[寛],
いもがいははば,[寛]いもかいははは,
おきつなみ[寛],
ちへにたつとも[寛],
さはりあらめやも[寛],
" "#[番号]15/3584","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]和可礼奈波 宇良我奈之家武 安我許呂母 之多尓乎伎麻勢 多太尓安布麻弖尓","#[訓読]別れなばうら悲しけむ我が衣下にを着ませ直に逢ふまでに","#[仮名],わかれなば,うらがなしけむ,あがころも,したにをきませ,ただにあふまでに","#[左注](右十一首贈答)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,贈答,羈旅,女歌,恋情,出発,悲別,難波,大阪","#[訓異]
わかれなば,[寛]わかれなは,
うらがなしけむ,[寛]うらかなしけむ,
あがころも,[寛]あかころも,
したにをきませ[寛],
ただにあふまでに,[寛]たたにあふまてに,
" "#[番号]15/3585","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]和伎母故我 之多尓毛伎余等 於久理多流 許呂母能比毛乎 安礼等可米也母","#[訓読]我妹子が下にも着よと贈りたる衣の紐を我れ解かめやも","#[仮名],わぎもこが,したにもきよと,おくりたる,ころものひもを,あれとかめやも","#[左注](右十一首贈答)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,贈答,羈旅,恋情,出発,難波,大阪","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
したにもきよと[寛],
おくりたる[寛],
ころものひもを[寛],
あれとかめやも[寛],
" "#[番号]15/3586","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]和我由恵尓 於毛比奈夜勢曽 秋風能 布可武曽能都奇 安波牟母能由恵","#[訓読]我がゆゑに思ひな痩せそ秋風の吹かむその月逢はむものゆゑ","#[仮名],わがゆゑに,おもひなやせそ,あきかぜの,ふかむそのつき,あはむものゆゑ","#[左注](右十一首贈答)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,贈答,出発,悲別,餞別,羈旅,恋情,難波,大阪","#[訓異]
わがゆゑに,[寛]わかゆゑに,
おもひなやせそ[寛],
あきかぜの,[寛]あきかせの,
ふかむそのつき[寛],
あはむものゆゑ[寛],
" "#[番号]15/3587","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]多久夫須麻 新羅邊伊麻須 伎美我目乎 家布可安須可登 伊波比弖麻多牟","#[訓読]栲衾新羅へいます君が目を今日か明日かと斎ひて待たむ","#[仮名],たくぶすま,しらきへいます,きみがめを,けふかあすかと,いはひてまたむ","#[左注](右十一首贈答)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,贈答,地名,韓国,枕詞,悲別,羈旅,餞別,女歌,難波,大阪","#[訓異]
たくぶすま,[寛]たくふすま,
しらきへいます[寛],
きみがめを,[寛]きみかめを,
けふかあすかと[寛],
いはひてまたむ[寛],
" "#[番号]15/3588","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]波呂波呂尓 於<毛>保由流可母 之可礼杼毛 異情乎 安我毛波奈久尓","#[訓読]はろはろに思ほゆるかもしかれども異しき心を我が思はなくに","#[仮名],はろはろに,おもほゆるかも,しかれども,けしきこころを,あがもはなくに","#[左注]右十一首贈答","#[校異]母 -> 毛 [類][紀]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,贈答,羈旅,悲別,出発,恋愛,難波,大阪","#[訓異]
はろはろに[寛],
おもほゆるかも[寛],
しかれども,[寛]しかれとも,
けしきこころを,[寛]あたしこころを,
あがもはなくに,[寛]あかもはなくに,
" "#[番号]15/3589","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]由布佐礼婆 比具良之伎奈久 伊故麻山 古延弖曽安我久流 伊毛我目乎保里","#[訓読]夕さればひぐらし来鳴く生駒山越えてぞ我が来る妹が目を欲り","#[仮名],ゆふされば,ひぐらしきなく,いこまやま,こえてぞあがくる,いもがめをほり","#[左注]右一首秦間満","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,作者:秦間満,地名,奈良,難波,大阪,出発,羈旅,恋情","#[訓異]
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
ひぐらしきなく,[寛]ひくらしきなく,
いこまやま[寛],
こえてぞあがくる,[寛]こえてそあかくる,
いもがめをほり,[寛]いもかめをほり,
" "#[番号]15/3590","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]伊毛尓安波受 安良婆須敝奈美 伊波祢布牟 伊故麻乃山乎 故延弖曽安我久流","#[訓読]妹に逢はずあらばすべなみ岩根踏む生駒の山を越えてぞ我が来る","#[仮名],いもにあはず,あらばすべなみ,いはねふむ,いこまのやまを,こえてぞあがくる","#[左注]右一首ま還私家陳思","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,地名,奈良,難波,大阪,出発,恋情,羈旅","#[訓異]
いもにあはず,[寛]いもにあはす,
あらばすべなみ,[寛]あらはすへなみ,
いはねふむ[寛],
いこまのやまを[寛],
こえてぞあがくる,[寛]こえてそあかくる,
" "#[番号]15/3591","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]妹等安里之 時者安礼杼毛 和可礼弖波 許呂母弖佐牟伎 母能尓曽安里家流","#[訓読]妹とありし時はあれども別れては衣手寒きものにぞありける","#[仮名],いもとありし,ときはあれども,わかれては,ころもでさむき,ものにぞありける","#[左注](右三首臨發之時作歌)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,悲別,羈旅,恋情,出発,難波,大阪","#[訓異]
いもとありし[寛],
ときはあれども,[寛]ときはあれとも,
わかれては[寛],
ころもでさむき,[寛]ころもてさむき,
ものにぞありける,[寛]ものにそありける,
" "#[番号]15/3592","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]海原尓 宇伎祢世武夜者 於伎都風 伊多久奈布吉曽 妹毛安良奈久尓","#[訓読]海原に浮寝せむ夜は沖つ風いたくな吹きそ妹もあらなくに","#[仮名],うなはらに,うきねせむよは,おきつかぜ,いたくなふきそ,いももあらなくに","#[左注](右三首臨發之時作歌)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,悲別,出発,難波,大阪,恋情","#[訓異]
うなはらに[寛],
うきねせむよは[寛],
おきつかぜ,[寛]おきつかせ,
いたくなふきそ[寛],
いももあらなくに[寛],
" "#[番号]15/3593","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]大伴能 美津尓布奈能里 許藝出而者 伊都礼乃思麻尓 伊保里世武和礼","#[訓読]大伴の御津に船乗り漕ぎ出てはいづれの島に廬りせむ我れ","#[仮名],おほともの,みつにふなのり,こぎでては,いづれのしまに,いほりせむわれ","#[左注]右三首臨發之時作歌","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,出発,難波,大阪,地名","#[訓異]
おほともの[寛],
みつにふなのり[寛],
こぎでては,[寛]こきいてては,
いづれのしまに,[寛]いつれのしまに,
いほりせむわれ[寛],
" "#[番号]15/3594","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]之保麻都等 安里家流布祢乎 思良受之弖 久夜之久妹乎 和可礼伎尓家利","#[訓読]潮待つとありける船を知らずして悔しく妹を別れ来にけり","#[仮名],しほまつと,ありけるふねを,しらずして,くやしくいもを,わかれきにけり","#[左注](右八首乗船入海路上作歌)","#[校異]之 [類][細] 志","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,悲別,恋情,難波,大阪","#[訓異]
しほまつと[寛],
ありけるふねを[寛],
しらずして,[寛]しらすして,
くやしくいもを[寛],
わかれきにけり[寛],
" "#[番号]15/3595","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]安佐妣良伎 許藝弖天久礼婆 牟故能宇良能 之保非能可多尓 多豆我許恵須毛","#[訓読]朝開き漕ぎ出て来れば武庫の浦の潮干の潟に鶴が声すも","#[仮名],あさびらき,こぎでてくれば,むこのうらの,しほひのかたに,たづがこゑすも","#[左注](右八首乗船入海路上作歌)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,地名,兵庫県,武庫川,動物,出発,羈旅,叙景,難波,大阪","#[訓異]
あさびらき,[寛]あさひらき,
こぎでてくれば,[寛]こきててくれは,
むこのうらの[寛],
しほひのかたに[寛],
たづがこゑすも,[寛]たつかこゑすも,
" "#[番号]15/3596","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]和伎母故我 可多美尓見牟乎 印南都麻 之良奈美多加弥 与曽尓可母美牟","#[訓読]我妹子が形見に見むを印南都麻白波高み外にかも見む","#[仮名],わぎもこが,かたみにみむを,いなみつま,しらなみたかみ,よそにかもみむ","#[左注](右八首乗船入海路上作歌)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,悲別,望郷,地名,加古川,兵庫","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
かたみにみむを[寛],
いなみつま[寛],
しらなみたかみ[寛],
よそにかもみむ[寛],
" "#[番号]15/3597","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]和多都美能 於伎津之良奈美 多知久良思 安麻乎等女等母 思麻我久<流>見由","#[訓読]わたつみの沖つ白波立ち来らし海人娘子ども島隠る見ゆ","#[仮名],わたつみの,おきつしらなみ,たちくらし,あまをとめども,しまがくるみゆ","#[左注](右八首乗船入海路上作歌)","#[校異]礼 -> 流 [紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,叙景,兵庫","#[訓異]
わたつみの[寛],
おきつしらなみ[寛],
たちくらし[寛],
あまをとめども,[寛]あまをとめらも,
しまがくるみゆ,[寛]しまかくるみゆ,
" "#[番号]15/3598","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]奴波多麻能 欲波安氣奴良之 多麻能宇良尓 安佐里須流多豆 奈伎和多流奈里","#[訓読]ぬばたまの夜は明けぬらし玉の浦にあさりする鶴鳴き渡るなり","#[仮名],ぬばたまの,よはあけぬらし,たまのうらに,あさりするたづ,なきわたるなり","#[左注](右八首乗船入海路上作歌)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,枕詞,地名,岡山県,倉敷市,動物,叙景,羈旅","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よはあけぬらし[寛],
たまのうらに[寛],
あさりするたづ,[寛]あさりするたつ,
なきわたるなり[寛],
" "#[番号]15/3599","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]月余美能 比可里乎伎欲美 神嶋乃 伊素<未>乃宇良由 船出須和礼波","#[訓読]月読の光りを清み神島の礒廻の浦ゆ船出す我れは","#[仮名],つくよみの,ひかりをきよみ,かみしまの,いそみのうらゆ,ふなですわれは","#[左注](右八首乗船入海路上作歌)","#[校異]末 -> 未 [細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,地名,広島,福山市,羈旅","#[訓異]
つくよみの,[寛]つきよみの,
ひかりをきよみ[寛],
かみしまの[寛],
いそみのうらゆ,[寛]いそまのうらゆ,
ふなですわれは,[寛]ふなてすわれは,
" "#[番号]15/3600","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]波奈礼蘇尓 多弖流牟漏能木 宇多我多毛 比左之伎時乎 須疑尓家流香母","#[訓読]離れ礒に立てるむろの木うたがたも久しき時を過ぎにけるかも","#[仮名],はなれそに,たてるむろのき,うたがたも,ひさしきときを,すぎにけるかも","#[左注](右八首乗船入海路上作歌)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,福山,広島","#[訓異]
はなれそに[寛],
たてるむろのき[寛],
うたがたも,[寛]うたかたも,
ひさしきときを[寛],
すぎにけるかも,[寛]すきにけるかも,
" "#[番号]15/3601","#[題詞](遣新羅使人等悲別贈答及海路慟情陳思并當所誦之古歌)","#[原文]之麻思久母 比等利安里宇流 毛能尓安礼也 之麻能牟漏能木 波奈礼弖安流良武","#[訓読]しましくもひとりありうるものにあれや島のむろの木離れてあるらむ","#[仮名],しましくも,ひとりありうる,ものにあれや,しまのむろのき,はなれてあるらむ","#[左注]右八首乗船入海路上作歌","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,福山,広島","#[訓異]
しましくも[寛],
ひとりありうる[寛],
ものにあれや[寛],
しまのむろのき[寛],
はなれてあるらむ[寛],
" "#[番号]15/3602","#[題詞]當所誦詠古歌","#[原文]安乎尓余志 奈良能美夜古尓 多奈妣家流 安麻能之良久毛 見礼杼安可奴加毛","#[訓読]あをによし奈良の都にたなびける天の白雲見れど飽かぬかも","#[仮名],あをによし,ならのみやこに,たなびける,あまのしらくも,みれどあかぬかも","#[左注]右一首詠雲","#[校異]歌 [西] 謌 [紀][温] 哥","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,古歌,誦詠,枕詞,望郷,羈旅,転用","#[訓異]
あをによし[寛],
ならのみやこに[寛],
たなびける,[寛]たなひける,
あまのしらくも[寛],
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]15/3603","#[題詞](當所誦詠古歌)","#[原文]安乎<楊>疑能 延太伎里於呂之 湯種蒔 忌忌伎美尓 故非和多流香母","#[訓読]青楊の枝伐り下ろしゆ種蒔きゆゆしき君に恋ひわたるかも","#[仮名],あをやぎの,えだきりおろし,ゆだねまき,ゆゆしききみに,こひわたるかも","#[左注](右三首戀歌)","#[校異]揚 -> 楊 [類][紀][温]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,古歌,誦詠,転用,望郷,恋情,植物,羈旅","#[訓異]
あをやぎの,[寛]あをやきの,
えだきりおろし,[寛]えたきりおろし,
ゆだねまき,[寛]ゆたねまき,
ゆゆしききみに[寛],
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]15/3604","#[題詞](當所誦詠古歌)","#[原文]妹我素弖 和可礼弖比左尓 奈里奴礼杼 比登比母伊毛乎 和須礼弖於毛倍也","#[訓読]妹が袖別れて久になりぬれど一日も妹を忘れて思へや","#[仮名],いもがそで,わかれてひさに,なりぬれど,ひとひもいもを,わすれておもへや","#[左注](右三首戀歌)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,古歌,誦詠,恋情,望郷,羈旅,転用","#[訓異]
いもがそで,[寛]いもかそて,
わかれてひさに[寛],
なりぬれど,[寛]なりぬれと,
ひとひもいもを[寛],
わすれておもへや[寛],
" "#[番号]15/3605","#[題詞](當所誦詠古歌)","#[原文]和多都美乃 宇美尓伊弖多流 思可麻河<泊> 多延無日尓許曽 安我故非夜麻米","#[訓読]わたつみの海に出でたる飾磨川絶えむ日にこそ我が恋やまめ","#[仮名],わたつみの,うみにいでたる,しかまがは,たえむひにこそ,あがこひやまめ","#[左注]右三首戀歌","#[校異]伯 -> 泊 [古][細][温]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,古歌,誦詠,枕詞,恋情,望郷,兵庫,姫路,船場川,転用,羈旅","#[訓異]
わたつみの[寛],
うみにいでたる,[寛]うみにいてたる,
しかまがは,[寛]しかまかは,
たえむひにこそ[寛],
あがこひやまめ,[寛]あかこひやまめ,
" "#[番号]15/3606","#[題詞](當所誦詠古歌)","#[原文]多麻藻可流 乎等女乎須疑弖 奈都久佐能 野嶋我左吉尓 伊保里須和礼波","#[訓読]玉藻刈る処女を過ぎて夏草の野島が崎に廬りす我れは","#[仮名],たまもかる,をとめをすぎて,なつくさの,のしまがさきに,いほりすわれは","#[左注]柿本朝臣人麻呂歌曰 敏馬乎須疑弖 又曰 布祢知可豆伎奴 ","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,古歌,誦詠,柿本人麻呂,枕詞,地名,兵庫,淡路,異伝,道行き,羈旅,転用","#[訓異]
たまもかる[寛],
をとめをすぎて,[寛]をとめをすきて,
なつくさの[寛],
のしまがさきに,[寛]のしまかさきに,
いほりすわれは[寛],
" "#[番号]15/3606S","#[題詞](當所誦詠古歌)柿本朝臣人麻呂歌曰 又曰","#[原文]敏馬乎須疑弖 布祢知可豆伎奴","#[訓読]敏馬を過ぎて 船近づきぬ","#[仮名],みぬめをすぎて ,ふねちかづきぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,古歌,誦詠,作者:柿本人麻呂,地名,兵庫,異伝,道行き,羈旅,転用","#[訓異]
みぬめをすぎて,[寛]みぬめをすきて,
ふねちかづきぬ,[寛]ふねちかつきぬ,
" "#[番号]15/3607","#[題詞](當所誦詠古歌)","#[原文]之路多倍能 藤江能宇良尓 伊<射>里須流 安麻等也見良武 多妣由久和礼乎","#[訓読]白栲の藤江の浦に漁りする海人とや見らむ旅行く我れを","#[仮名],しろたへの,ふぢえのうらに,いざりする,あまとやみらむ,たびゆくわれを","#[左注]柿本朝臣人麻呂歌曰 安良多倍乃 又曰 須受吉都流 安麻登香見良武","#[校異]時 -> 射 [西(訂正)][類][紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,古歌,誦詠,枕詞,地名,兵庫,明石,羈旅,柿本人麻呂,異伝,転用","#[訓異]
しろたへの[寛],
ふぢえのうらに,[寛]ふちえのうらに,
いざりする,[寛]いさりする,
あまとやみらむ[寛],
たびゆくわれを,[寛]たひゆくわれを,
" "#[番号]15/3607S","#[題詞](當所誦詠古歌)柿本朝臣人麻呂歌曰 又曰","#[原文]安良多倍乃 須受吉都流 安麻登香見良武","#[訓読]荒栲の 鱸釣る海人とか見らむ ","#[仮名],あらたへの ,すずきつる,あまとかみらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,古歌,誦詠,異伝,作者:柿本人麻呂,枕詞,羈旅,転用","#[訓異]
あらたへの[寛],
すずきつる,[寛]すすきつる,
あまとかみらむ[寛],
" "#[番号]15/3608","#[題詞](當所誦詠古歌)","#[原文]安麻射可流 比奈乃奈我道乎 孤悲久礼婆 安可思能門欲里 伊敝乃安多里見由","#[訓読]天離る鄙の長道を恋ひ来れば明石の門より家のあたり見ゆ","#[仮名],あまざかる,ひなのながちを,こひくれば,あかしのとより,いへのあたりみゆ","#[左注]柿本朝臣人麻呂歌曰 夜麻等思麻見由","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,古歌,誦詠,異伝,柿本人麻呂,羈旅,地名,明石,兵庫,望郷,転用","#[訓異]
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなのながちを,[寛]ひなのなかちを,
こひくれば,[寛]こひくれは,
あかしのとより[寛],
いへのあたりみゆ[寛],
" "#[番号]15/3608S","#[題詞](當所誦詠古歌)柿本朝臣人麻呂歌曰","#[原文]夜麻等思麻見由 ","#[訓読]大和島見ゆ ","#[仮名],やまとしまみゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,古歌,誦詠,異伝,作者:柿本人麻呂,大和,奈良,地名,明石,羈旅,望郷,転用","#[訓異]
やまとしまみゆ[寛],
" "#[番号]15/3609","#[題詞](當所誦詠古歌)","#[原文]武庫能宇美能 尓波余久安良之 伊射里須流 安麻能都里船 奈美能宇倍由見由","#[訓読]武庫の海の庭よくあらし漁りする海人の釣舟波の上ゆ見ゆ","#[仮名],むこのうみの,にはよくあらし,いざりする,あまのつりぶね,なみのうへゆみゆ","#[左注]柿本朝臣人麻呂歌曰 氣比乃宇美能 又曰 可里許毛能 美<太>礼弖出見由 安麻能都里船","#[校異]多 -> 太 [類][紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,古歌,誦詠,羈旅,地名,西宮,兵庫,柿本人麻呂,異伝,叙景,土地讃美,転用","#[訓異]
むこのうみの[寛],
にはよくあらし[寛],
いざりする,[寛]いさりする,
あまのつりぶね,[寛]あまのつりふね,
なみのうへゆみゆ[寛],
" "#[番号]15/3609S","#[題詞](當所誦詠古歌)柿本朝臣人麻呂歌曰 又曰","#[原文]氣比乃宇美能 可里許毛能 美<太>礼弖出見由 安麻能都里船","#[訓読]笥飯の海の 刈り薦の乱れて出づ見ゆ海人の釣船 ","#[仮名],けひのうみの ,かりこもの,みだれていづみゆ,あまのつりぶね","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,古歌,誦詠,羈旅,枕詞,異伝,作者:柿本人麻呂,叙景,土地讃美,地名,淡路,兵庫,転用","#[訓異]
けひのうみの[寛],
かりこもの[寛],
みだれていづみゆ,[寛]みたれていてみゆ,
あまのつりぶね,[寛]あまのつりふね,
" "#[番号]15/3610","#[題詞](當所誦詠古歌)","#[原文]安胡乃宇良尓 布奈能里須良牟 乎等女良我 安可毛能須素尓 之保美都良武賀","#[訓読]安胡の浦に舟乗りすらむ娘子らが赤裳の裾に潮満つらむか","#[仮名],あごのうらに,ふなのりすらむ,をとめらが,あかものすそに,しほみつらむか","#[左注]柿本朝臣人麻呂歌曰 安美能宇良 又曰 多<麻>母能須蘇尓","#[校異]麻能 -> 麻 [西(訂正)][類][紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,古歌,誦詠,地名,異伝,柿本人麻呂,羈旅,転用","#[訓異]
あごのうらに,[寛]あこのうらに,
ふなのりすらむ[寛],
をとめらが,[寛]をとめらか,
あかものすそに[寛],
しほみつらむか[寛],
" "#[番号]15/3610S","#[題詞](當所誦詠古歌)柿本朝臣人麻呂歌曰 又曰","#[原文]安美能宇良 多<麻>母能須蘇尓 ","#[訓読]嗚呼見の浦 玉裳の裾に ","#[仮名],あみのうら ,たまものすそに","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,古歌,誦詠,地名,三重県,異伝,作者:柿本人麻呂,転用","#[訓異]
あみのうら[寛],
たまものすそに[寛],
" "#[番号]15/3611","#[題詞]七夕歌一首","#[原文]於保夫祢尓 麻可治之自奴伎 宇奈波良乎 許藝弖天和多流 月人乎登I","#[訓読]大船に真楫しじ貫き海原を漕ぎ出て渡る月人壮士","#[仮名],おほぶねに,まかぢしじぬき,うなはらを,こぎでてわたる,つきひとをとこ","#[左注]右柿本朝臣人麻呂歌","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,作者:柿本人麻呂,転用,古歌,誦詠,七夕,羈旅","#[訓異]
おほぶねに,[寛]おほふねに,
まかぢしじぬき,[寛]まかてししぬき,
うなはらを[寛],
こぎでてわたる,[寛]こきててわたる,
つきひとをとこ[寛],
" "#[番号]15/3612","#[題詞]備後國水調郡長井浦舶泊之夜作歌三首","#[原文]安乎尓与之 奈良能美也故尓 由久比等毛我母 久左麻久良 多妣由久布祢能 登麻利都ん武仁 [旋頭歌也]","#[訓読]あをによし奈良の都に行く人もがも草枕旅行く船の泊り告げむに [旋頭歌也]","#[仮名],あをによし,ならのみやこに,ゆくひともがも,くさまくら,たびゆくふねの,とまりつげむに","#[左注]右一首大判官","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,広島,三原,作者:壬生宇太麻呂,枕詞,旋頭歌,羈旅,望郷","#[訓異]
あをによし[寛],
ならのみやこに[寛],
ゆくひともがも,[寛]ゆくひともかも,
くさまくら[寛],
たびゆくふねの,[寛]たひゆくふねの,
とまりつげむに,[寛]とまりつけむに,
" "#[番号]15/3613","#[題詞](備後國水調郡長井浦舶泊之夜作歌三首)","#[原文]海原乎 夜蘇之麻我久里 伎奴礼杼母 奈良能美也故波 和須礼可祢都母","#[訓読]海原を八十島隠り来ぬれども奈良の都は忘れかねつも","#[仮名],うなはらを,やそしまがくり,きぬれども,ならのみやこは,わすれかねつも","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,広島,三原,望郷,羈旅","#[訓異]
うなはらを[寛],
やそしまがくり,[寛]やそしまかくり,
きぬれども,[寛]きぬれとも,
ならのみやこは[寛],
わすれかねつも[寛],
" "#[番号]15/3614","#[題詞](備後國水調郡長井浦舶泊之夜作歌三首)","#[原文]可敝流散尓 伊母尓見勢武尓 和多都美乃 於伎都白玉 比利比弖由賀奈","#[訓読]帰るさに妹に見せむにわたつみの沖つ白玉拾ひて行かな","#[仮名],かへるさに,いもにみせむに,わたつみの,おきつしらたま,ひりひてゆかな","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,広島,三原,羈旅,みやげ,魂触り","#[訓異]
かへるさに[寛],
いもにみせむに[寛],
わたつみの[寛],
おきつしらたま[寛],
ひりひてゆかな[寛],
" "#[番号]15/3615","#[題詞]風速浦舶泊之夜作歌二首","#[原文]和我由恵仁 妹奈氣久良之 風早能 宇良能於伎敝尓 奇里多奈妣家利","#[訓読]我がゆゑに妹嘆くらし風早の浦の沖辺に霧たなびけり","#[仮名],わがゆゑに,いもなげくらし,かざはやの,うらのおきへに,きりたなびけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,広島,安芸津町,望郷,羈旅,叙景","#[訓異]
わがゆゑに,[寛]わかゆゑに,
いもなげくらし,[寛]いもなけくらし,
かざはやの,[寛]かさはやの,
うらのおきへに[寛],
きりたなびけり,[寛]きりたなひけり,
" "#[番号]15/3616","#[題詞](風速浦舶泊之夜作歌二首)","#[原文]於伎都加是 伊多久布伎勢波 和伎毛故我 奈氣伎能奇里尓 安可麻之母能乎","#[訓読]沖つ風いたく吹きせば我妹子が嘆きの霧に飽かましものを","#[仮名],おきつかぜ,いたくふきせば,わぎもこが,なげきのきりに,あかましものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,広島,安芸津町,望郷,羈旅","#[訓異]
おきつかぜ,[寛]おきつかせ,
いたくふきせば,[寛]いたくふきせは,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
なげきのきりに,[寛]なけきのきりに,
あかましものを[寛],
" "#[番号]15/3617","#[題詞]安藝國長門嶋舶泊礒邊作歌五首","#[原文]伊波婆之流 多伎毛登杼呂尓 鳴蝉乃 許恵乎之伎氣婆 京師之於毛保由","#[訓読]石走る瀧もとどろに鳴く蝉の声をし聞けば都し思ほゆ","#[仮名],いはばしる,たきもとどろに,なくせみの,こゑをしきけば,みやこしおもほゆ","#[左注]右一首大石蓑麻呂","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,望郷,広島,倉橋島,作者:大石蓑麻呂","#[訓異]
いはばしる,[寛]いははしる,
たきもとどろに,[寛]たきもととろに,
なくせみの[寛],
こゑをしきけば,[寛]こゑをしきけは,
みやこしおもほゆ[寛],
" "#[番号]15/3618","#[題詞](安藝國長門嶋舶泊礒邊作歌五首)","#[原文]夜麻河<泊>能 伎欲吉可波世尓 安蘇倍杼母 奈良能美夜故波 和須礼可祢都母","#[訓読]山川の清き川瀬に遊べども奈良の都は忘れかねつも","#[仮名],やまがはの,きよきかはせに,あそべども,ならのみやこは,わすれかねつも","#[左注]","#[校異]伯 -> 泊 [類][細][温]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,広島,倉橋島,望郷,羈旅,宴席","#[訓異]
やまがはの,[寛]やまかはの,
きよきかはせに[寛],
あそべども,[寛]あそへとも,
ならのみやこは[寛],
わすれかねつも[寛],
" "#[番号]15/3619","#[題詞](安藝國長門嶋舶泊礒邊作歌五首)","#[原文]伊蘇乃麻由 多藝都山河 多延受安良婆 麻多母安比見牟 秋加多麻氣弖","#[訓読]礒の間ゆたぎつ山川絶えずあらばまたも相見む秋かたまけて","#[仮名],いそのまゆ,たぎつやまがは,たえずあらば,またもあひみむ,あきかたまけて","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,広島,倉橋島,望郷,羈旅","#[訓異]
いそのまゆ[寛],
たぎつやまがは,[寛]たきつやまかは,
たえずあらば,[寛]たえすあらは,
またもあひみむ[寛],
あきかたまけて[寛],
" "#[番号]15/3620","#[題詞](安藝國長門嶋舶泊礒邊作歌五首)","#[原文]故悲思氣美 奈具左米可祢弖 比具良之能 奈久之麻可氣尓 伊保利須流可母","#[訓読]恋繁み慰めかねてひぐらしの鳴く島蔭に廬りするかも","#[仮名],こひしげみ,なぐさめかねて,ひぐらしの,なくしまかげに,いほりするかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,広島,倉橋島,望郷,羈旅","#[訓異]
こひしげみ,[寛]こひしけみ,
なぐさめかねて,[寛]なくさめかねて,
ひぐらしの,[寛]ひくらしの,
なくしまかげに,[寛]なくしまかけに,
いほりするかも[寛],
" "#[番号]15/3621","#[題詞](安藝國長門嶋舶泊礒邊作歌五首)","#[原文]和我伊能知乎 奈我刀能之麻能 小松原 伊久与乎倍弖加 可武佐備和多流","#[訓読]我が命を長門の島の小松原幾代を経てか神さびわたる","#[仮名],わがいのちを,ながとのしまの,こまつばら,いくよをへてか,かむさびわたる","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,広島,倉橋島,土地讃美,羈旅","#[訓異]
わがいのちを,[寛]わかいのちを,
ながとのしまの,[寛]なかとのしまの,
こまつばら,[寛]こまつはら,
いくよをへてか[寛],
かむさびわたる,[寛]かむさひわたる,
" "#[番号]15/3622","#[題詞]従長門浦舶<出>之夜仰觀月光作歌三首","#[原文]月余美乃 比可里乎伎欲美 由布奈藝尓 加古能己恵欲妣 宇良<未>許具可聞","#[訓読]月読みの光りを清み夕なぎに水手の声呼び浦廻漕ぐかも","#[仮名],つくよみの,ひかりをきよみ,ゆふなぎに,かこのこゑよび,うらみこぐかも","#[左注]","#[校異]出 [西(上書訂正)][紀][細] / 末 -> 未 [万葉集古義]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,船出,出発,広島,倉橋島","#[訓異]
つくよみの,[寛]つきよみの,
ひかりをきよみ[寛],
ゆふなぎに,[寛]ゆふなきに,
かこのこゑよび,[寛]かこのこゑよひ,
うらみこぐかも,[寛]うらみこくかも,
" "#[番号]15/3623","#[題詞](従長門浦舶<出>之夜仰觀月光作歌三首)","#[原文]山乃波尓 月可多夫氣婆 伊射里須流 安麻能等毛之備 於伎尓奈都佐布","#[訓読]山の端に月傾けば漁りする海人の燈火沖になづさふ","#[仮名],やまのはに,つきかたぶけば,いざりする,あまのともしび,おきになづさふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,出発,広島,倉橋島,叙景,船出","#[訓異]
やまのはに[寛],
つきかたぶけば,[寛]つきかたふけは,
いざりする,[寛]いさりする,
あまのともしび,[寛]あまのともしひ,
おきになづさふ,[寛]おきになつさふ,
" "#[番号]15/3624","#[題詞](従長門浦舶<出>之夜仰觀月光作歌三首)","#[原文]和礼乃未夜 欲布祢波許具登 於毛敝礼婆 於伎敝能可多尓 可治能於等須奈里","#[訓読]我れのみや夜船は漕ぐと思へれば沖辺の方に楫の音すなり","#[仮名],われのみや,よふねはこぐと,おもへれば,おきへのかたに,かぢのおとすなり","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,広島,倉橋島,出発,羈旅,船出,叙景","#[訓異]
われのみや[寛],
よふねはこぐと,[寛]よふねはこくと,
おもへれば,[寛]おもへれは,
おきへのかたに[寛],
かぢのおとすなり,[寛]かちのおとすなり,
" "#[番号]15/3625","#[題詞]古挽歌一首[并短歌]","#[原文]由布左礼婆 安之敝尓佐和伎 安氣久礼婆 於伎尓奈都佐布 可母須良母 都麻等多具比弖 和我尾尓波 之毛奈布里曽等 之<路>多倍乃 波祢左之可倍弖 宇知波良比 左宿等布毛能乎 由久美都能 可敝良奴其等久 布久可是能 美延奴我其登久 安刀毛奈吉 与能比登尓之弖 和可礼尓之 伊毛我伎世弖思 奈礼其呂母 蘇弖加多思吉弖 比登里可母祢牟 ","#[訓読]夕されば 葦辺に騒き 明け来れば 沖になづさふ 鴨すらも 妻とたぐひて 我が尾には 霜な降りそと 白栲の 羽さし交へて うち掃ひ さ寝とふものを 行く水の 帰らぬごとく 吹く風の 見えぬがごとく 跡もなき 世の人にして 別れにし 妹が着せてし なれ衣 袖片敷きて ひとりかも寝む ","#[仮名],ゆふされば,あしへにさわき,あけくれば,おきになづさふ,かもすらも,つまとたぐひて,わがをには,しもなふりそと,しろたへの,はねさしかへて,うちはらひ,さぬとふものを,ゆくみづの,かへらぬごとく,ふくかぜの,みえぬがごとく,あともなき,よのひとにして,わかれにし,いもがきせてし,なれごろも,そでかたしきて,ひとりかもねむ","#[左注](右丹比大夫悽愴亡妻歌)","#[校異]歌 [西] 謌 / 露 -> 路 [類][紀]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,挽歌,転用,古歌,作者:丹比大夫,笠麻呂,羈旅,悲別,望郷,広島,倉橋島","#[訓異]
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
あしへにさわき[寛],
あけくれば,[寛]あけくれは,
おきになづさふ,[寛]おきになつさふ,
かもすらも[寛],
つまとたぐひて,[寛]つまとたくひて,
わがをには,[寛]わかみには,
しもなふりそと[寛],
しろたへの[寛],
はねさしかへて[寛],
うちはらひ[寛],
さぬとふものを,[寛]さ*とふものを
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
かへらぬごとく,[寛]かへらぬことく,
ふくかぜの,[寛]ふくかせの,
みえぬがごとく,[寛]みえぬかことく,
あともなき[寛],
よのひとにして[寛],
わかれにし[寛],
いもがきせてし,[寛]いもかきせてし,
なれごろも,[寛]なれころも,
そでかたしきて,[寛]そてかたしきて,
ひとりかもねむ[寛],
" "#[番号]15/3626","#[題詞](古挽歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]多都我奈伎 安之<敝>乎左之弖 等妣和多類 安奈多頭多頭志 比等里佐奴礼婆","#[訓読]鶴が鳴き葦辺をさして飛び渡るあなたづたづしひとりさ寝れば","#[仮名],たづがなき,あしへをさして,とびわたる,あなたづたづし,ひとりさぬれば","#[左注]右丹比大夫悽愴亡妻歌","#[校異]倍 -> 敝 [紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,挽歌,転用,古歌,作者:丹比大夫,笠麻呂,羈旅,悲別,望郷,広島,倉橋島","#[訓異]
たづがなき,[寛]たつかなき,
あしへをさして[寛],
とびわたる,[寛]とひわたる,
あなたづたづし,[寛]あなたつたつし,
ひとりさぬれば,[寛]ひとりさぬれは,
" "#[番号]15/3627","#[題詞]属物發思歌一首[并短歌]","#[原文]安佐散礼婆 伊毛我手尓麻久 可我美奈須 美津能波麻備尓 於保夫祢尓 真可治之自奴伎 可良久尓々 和多理由加武等 多太牟可布 美奴面乎左指天 之保麻知弖 美乎妣伎由氣婆 於伎敝尓波 之良奈美多可美 宇良<未>欲理 許藝弖和多礼婆 和伎毛故尓 安波治乃之麻波 由布左礼婆 久毛為可久里奴 左欲布氣弖 由久敝乎之良尓 安我己許呂 安可志能宇良尓 布祢等米弖 宇伎祢乎詞都追 和多都美能 於<枳>敝乎見礼婆 伊射理須流 安麻能乎等女波 小船乗 都良々尓宇家里 安香等吉能 之保美知久礼婆 安之辨尓波 多豆奈伎和多流 安左奈藝尓 布奈弖乎世牟等 船人毛 鹿子毛許恵欲妣 柔保等里能 奈豆左比由氣婆 伊敝之麻婆 久毛為尓美延奴 安我毛敝流 許己呂奈具也等 波夜久伎弖 美牟等於毛比弖 於保夫祢乎 許藝和我由氣婆 於伎都奈美 多可久多知伎奴 与曽能<未>尓 見都追須疑由伎 多麻能宇良尓 布祢乎等杼米弖 波麻備欲里 宇良伊蘇乎見都追 奈久古奈須 祢能未之奈可由 和多都美能 多麻伎能多麻乎 伊敝都刀尓 伊毛尓也良牟等 比里比登里 素弖尓波伊礼弖 可敝之也流 都可比奈家礼婆 毛弖礼杼毛 之留思乎奈美等 麻多於伎都流可毛 ","#[訓読]朝されば 妹が手にまく 鏡なす 御津の浜びに 大船に 真楫しじ貫き 韓国に 渡り行かむと 直向ふ 敏馬をさして 潮待ちて 水脈引き行けば 沖辺には 白波高み 浦廻より 漕ぎて渡れば 我妹子に 淡路の島は 夕されば 雲居隠りぬ さ夜更けて ゆくへを知らに 我が心 明石の浦に 船泊めて 浮寝をしつつ わたつみの 沖辺を見れば 漁りする 海人の娘子は 小舟乗り つららに浮けり 暁の 潮満ち来れば 葦辺には 鶴鳴き渡る 朝なぎに 船出をせむと 船人も 水手も声呼び にほ鳥の なづさひ行けば 家島は 雲居に見えぬ 我が思へる 心なぐやと 早く来て 見むと思ひて 大船を 漕ぎ我が行けば 沖つ波 高く立ち来ぬ 外のみに 見つつ過ぎ行き 玉の浦に 船を留めて 浜びより 浦礒を見つつ 泣く子なす 音のみし泣かゆ わたつみの 手巻の玉を 家づとに 妹に遣らむと 拾ひ取り 袖には入れて 帰し遣る 使なければ 持てれども 験をなみと また置きつるかも ","#[仮名],あさされば,いもがてにまく,かがみなす,みつのはまびに,おほぶねに,まかぢしじぬき,からくにに,わたりゆかむと,ただむかふ,みぬめをさして,しほまちて,みをひきゆけば,おきへには,しらなみたかみ,うらみより,こぎてわたれば,わぎもこに,あはぢのしまは,ゆふされば,くもゐかくりぬ,さよふけて,ゆくへをしらに,あがこころ,あかしのうらに,ふねとめて,うきねをしつつ,わたつみの,おきへをみれば,いざりする,あまのをとめは,をぶねのり,つららにうけり,あかときの,しほみちくれば,あしべには,たづなきわたる,あさなぎに,ふなでをせむと,ふなびとも,かこもこゑよび,にほどりの,なづさひゆけば,いへしまは,くもゐにみえぬ,あがもへる,こころなぐやと,はやくきて,みむとおもひて,おほぶねを,こぎわがゆけば,おきつなみ,たかくたちきぬ,よそのみに,みつつすぎゆき,たまのうらに,ふねをとどめて,はまびより,うらいそをみつつ,なくこなす,ねのみしなかゆ,わたつみの,たまきのたまを,いへづとに,いもにやらむと,ひりひとり,そでにはいれて,かへしやる,つかひなければ,もてれども,しるしをなみと,またおきつるかも","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 末 -> 未 [万葉集古義] / 枳 [西(上書訂正)][紀][細][温] / 末 -> 未 [西(訂正)][細][紀][温]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,地名,道行き,羈旅,大阪,兵庫,岡山,広島,倉橋島,序詞,枕詞,望郷,孤独","#[訓異]
あさされば,[寛]あさされは,
いもがてにまく,[寛]いもかてにまく,
かがみなす,[寛]かかみなす,
みつのはまびに,[寛]みつのはまひに,
おほぶねに,[寛]おほふねに,
まかぢしじぬき,[寛]まかちししぬき,
からくにに[寛],
わたりゆかむと[寛],
ただむかふ,[寛]たたむかふ,
みぬめをさして[寛],
しほまちて[寛],
みをひきゆけば,[寛]みをひきゆけは,
おきへには[寛],
しらなみたかみ[寛],
うらみより[寛],
こぎてわたれば,[寛]こきてわたれは,
わぎもこに,[寛]わきもこに,
あはぢのしまは,[寛]あはちのしまは,
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
くもゐかくりぬ[寛],
さよふけて[寛],
ゆくへをしらに[寛],
あがこころ,[寛]あかこころ,
あかしのうらに[寛],
ふねとめて[寛],
うきねをしつつ,[寛]
わたつみの[寛],
おきへをみれば,[寛]おきへをみれは,
いざりする,[寛]いさりする,
あまのをとめは[寛],
をぶねのり,[寛]をふねのり,
つららにうけり[寛],
あかときの[寛],
しほみちくれば,[寛]しほみちくれは,
あしべには,[寛]あしへには,
たづなきわたる,[寛]たつなきわたる,
あさなぎに,[寛]あさなきに,
ふなでをせむと,[寛]ふなてをせむと,
ふなびとも,[寛]ふなひとも,
かこもこゑよび,[寛]かこもこゑよひ,
にほどりの,[寛]にほとりの,
なづさひゆけば,[寛]なつさひゆけは,
いへしまは[寛],
くもゐにみえぬ[寛],
あがもへる,[寛]あかもへる,
こころなぐやと,[寛]こころなくやと,
はやくきて[寛],
みむとおもひて[寛],
おほぶねを,[寛]おほふねを,
こぎわがゆけば,[寛]わきわかゆけは,
おきつなみ[寛],
たかくたちきぬ[寛],
よそのみに[寛],
みつつすぎゆき,[寛]みつつすきゆき,
たまのうらに,[寛]たまのをらに,
ふねをとどめて,[寛]ふねをととめて,
はまびより,[寛]はまひより,
うらいそをみつつ[寛],
なくこなす[寛],
ねのみしなかゆ[寛],
わたつみの[寛],
たまきのたまを[寛],
いへづとに,[寛]いへつとに,
いもにやらむと[寛],
ひりひとり[寛],
そでにはいれて,[寛]そてにはいれて,
かへしやる[寛],
つかひなければ,[寛]つかひなけれは,
もてれども,[寛]もてれとも,
しるしをなみと[寛],
またおきつるかも[寛],
" "#[番号]15/3628","#[題詞](属物發思歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]多麻能宇良能 於伎都之良多麻 比利敝礼杼 麻多曽於伎都流 見流比等乎奈美","#[訓読]玉の浦の沖つ白玉拾へれどまたぞ置きつる見る人をなみ","#[仮名],たまのうらの,おきつしらたま,ひりへれど,またぞおきつる,みるひとをなみ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,望郷,地名,岡山,倉敷,広島,倉橋島,孤独","#[訓異]
たまのうらの[寛],
おきつしらたま[寛],
ひりへれど,[寛]ひりへれと,
またぞおきつる,[寛]またそおきつる,
みるひとをなみ[寛],
" "#[番号]15/3629","#[題詞]((属物發思歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]安伎左良婆 和<我>布祢波弖牟 和須礼我比 与世伎弖於家礼 於伎都之良奈美","#[訓読]秋さらば我が船泊てむ忘れ貝寄せ来て置けれ沖つ白波","#[仮名],あきさらば,わがふねはてむ,わすれがひ,よせきておけれ,おきつしらなみ","#[左注]","#[校異]<> -> 我 [西(左書)][紀][細][温]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,望郷,広島,倉橋島,孤独","#[訓異]
あきさらば,[寛]あきさらは,
わがふねはてむ,[寛]わかふねはてむ,
わすれがひ,[寛]わすれかひ,
よせきておけれ[寛],
おきつしらなみ[寛],
" "#[番号]15/3630","#[題詞]周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首","#[原文]真可治奴伎 布祢之由加受波 見礼杼安可奴 麻里布能宇良尓 也杼里世麻之乎","#[訓読]真楫貫き船し行かずは見れど飽かぬ麻里布の浦に宿りせましを","#[仮名],まかぢぬき,ふねしゆかずは,みれどあかぬ,まりふのうらに,やどりせましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,土地讃美,山口,岩国,地名","#[訓異]
まかぢぬき,[寛]まかちぬき,
ふねしゆかずは,[寛]ふねしゆかすは,
みれどあかぬ,[寛]みれとあかぬ,
まりふのうらに[寛],
やどりせましを,[寛]やとりせましを,
" "#[番号]15/3631","#[題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首)","#[原文]伊都之可母 見牟等於毛比師 安波之麻乎 与曽尓也故非無 由久与思<乎>奈美","#[訓読]いつしかも見むと思ひし粟島を外にや恋ひむ行くよしをなみ","#[仮名],いつしかも,みむとおもひし,あはしまを,よそにやこひむ,ゆくよしをなみ","#[左注]","#[校異]於 -> 乎 [類][紀]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,地名,山口,岩国,土地讃美,恋情,羈旅","#[訓異]
いつしかも[寛],
みむとおもひし[寛],
あはしまを[寛],
よそにやこひむ[寛],
ゆくよしをなみ[寛],
" "#[番号]15/3632","#[題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首)","#[原文]大船尓 可之布里多弖天 波麻藝欲伎 麻里布能宇良尓 也杼里可世麻之","#[訓読]大船にかし振り立てて浜清き麻里布の浦に宿りかせまし","#[仮名],おほぶねに,かしふりたてて,はまぎよき,まりふのうらに,やどりかせまし","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,山口,岩国,地名,土地讃美","#[訓異]
おほぶねに,[寛]おほふねに,
かしふりたてて[寛],
はまぎよき,[寛]はまきよき,
まりふのうらに[寛],
やどりかせまし,[寛]やとりかせまし,
" "#[番号]15/3633","#[題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首)","#[原文]安波思麻能 安波自等於毛布 伊毛尓安礼也 夜須伊毛祢受弖 安我故非和多流","#[訓読]粟島の逢はじと思ふ妹にあれや安寐も寝ずて我が恋ひわたる","#[仮名],あはしまの,あはじとおもふ,いもにあれや,やすいもねずて,あがこひわたる","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,地名,岩国,山口,望郷,恋情,羈旅","#[訓異]
あはしまの[寛],
あはじとおもふ,[寛]あはしとおもふ,
いもにあれや[寛],
やすいもねずて,[寛]やすいもねすて,
あがこひわたる,[寛]あかこひわたる,
" "#[番号]15/3634","#[題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首)","#[原文]筑紫道能 可太能於保之麻 思末志久母 見祢婆古非思吉 伊毛乎於伎弖伎奴","#[訓読]筑紫道の可太の大島しましくも見ねば恋しき妹を置きて来ぬ","#[仮名],つくしぢの,かだのおほしま,しましくも,みねばこひしき,いもをおきてきぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,地名,岡山,山口,岩国,望郷,恋情","#[訓異]
つくしぢの,[寛]つくしちの,
かだのおほしま,[寛]かたのおほしま,
しましくも[寛],
みねばこひしき,[寛]みねはこひしき,
いもをおきてきぬ[寛],
" "#[番号]15/3635","#[題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首)","#[原文]伊毛我伊敝治 知可久安里世婆 見礼杼安可奴 麻里布能宇良乎 見世麻思毛能乎","#[訓読]妹が家路近くありせば見れど飽かぬ麻里布の浦を見せましものを","#[仮名],いもがいへぢ,ちかくありせば,みれどあかぬ,まりふのうらを,みせましものを","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,地名,山口,岩国,望郷,恋情,土地讃美","#[訓異]
いもがいへぢ,[寛]いもかいへち,
ちかくありせば,[寛]ちかくありせは,
みれどあかぬ,[寛]みれとあかぬ,
まりふのうらを[寛],
みせましものを[寛],
" "#[番号]15/3636","#[題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首)","#[原文]伊敝妣等波 可敝里波也許等 伊波比之麻 伊波比麻都良牟 多妣由久和礼乎","#[訓読]家人は帰り早来と伊波比島斎ひ待つらむ旅行く我れを","#[仮名],いへびとは,かへりはやこと,いはひしま,いはひまつらむ,たびゆくわれを","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,地名,山口,上関町,望郷,掛詞","#[訓異]
いへびとは,[寛]いへひとは,
かへりはやこと[寛],
いはひしま[寛],
いはひまつらむ[寛],
たびゆくわれを,[寛]たひゆくわれを,
" "#[番号]15/3637","#[題詞](周防國玖河郡麻里布浦行之時作歌八首)","#[原文]久左麻久良 多妣由久比等乎 伊波比之麻 伊久与布流末弖 伊波比伎尓家牟","#[訓読]草枕旅行く人を伊波比島幾代経るまで斎ひ来にけむ","#[仮名],くさまくら,たびゆくひとを,いはひしま,いくよふるまで,いはひきにけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,枕詞,羈旅,地名,山口,上関町,土地讃美,掛詞","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびゆくひとを,[寛]たひゆくひとを,
いはひしま[寛],
いくよふるまで,[寛]いくよふるまて,
いはひきにけむ[寛],
" "#[番号]15/3638","#[題詞]過大嶋鳴門而經再宿之後追作歌二首","#[原文]巨礼也己能 名尓於布奈流門能 宇頭之保尓 多麻毛可流登布 安麻乎等女杼毛","#[訓読]これやこの名に負ふ鳴門のうづ潮に玉藻刈るとふ海人娘子ども","#[仮名],これやこの,なにおふなるとの,うづしほに,たまもかるとふ,あまをとめども","#[左注]右一首田邊秋庭","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,土地讃美,山口,大畠瀬戸,叙景,追想","#[訓異]
これやこの[寛],
なにおふなるとの[寛],
うづしほに,[寛]うつしほに,
たまもかるとふ[寛],
あまをとめども,[寛]あまをとめとも,
" "#[番号]15/3639","#[題詞](過大嶋鳴門而經再宿之後追作歌二首)","#[原文]奈美能宇倍尓 宇伎祢世之欲比 安杼毛倍香 許己呂我奈之久 伊米尓美要都流","#[訓読]波の上に浮き寝せし宵あど思へか心悲しく夢に見えつる","#[仮名],なみのうへに,うきねせしよひ,あどもへか,こころがなしく,いめにみえつる","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,山口,大畠瀬戸,追想,望郷","#[訓異]
なみのうへに[寛],
うきねせしよひ[寛],
あどもへか,[寛]あともへか,
こころがなしく,[寛]こころかなしく,
いめにみえつる[寛],
" "#[番号]15/3640","#[題詞]熊毛浦舶泊之夜作歌四首","#[原文]美夜故邊尓 由可牟船毛我 可里許母能 美太礼弖於毛布 許登都ん夜良牟","#[訓読]都辺に行かむ船もが刈り薦の乱れて思ふ言告げやらむ","#[仮名],みやこへに,ゆかむふねもが,かりこもの,みだれておもふ,ことつげやらむ","#[左注]右一首羽栗","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羽栗,枕詞,山口,上関町,望郷,羈旅","#[訓異]
みやこへに[寛],
ゆかむふねもが,[寛]ゆかむふねもか,
かりこもの,[寛]かりももの,
みだれておもふ,[寛]みたれておもふ,
ことつげやらむ,[寛]ことつけやらむ,
" "#[番号]15/3641","#[題詞](熊毛浦舶泊之夜作歌四首)","#[原文]安可等伎能 伊敝胡悲之伎尓 宇良<未>欲理 可治乃於等須流波 安麻乎等女可母","#[訓読]暁の家恋しきに浦廻より楫の音するは海人娘子かも","#[仮名],あかときの,いへごひしきに,うらみより,かぢのおとするは,あまをとめかも","#[左注]","#[校異]末 -> 未 [万葉集古義]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,山口,上関町,望郷,叙景","#[訓異]
あかときの[寛],
いへごひしきに,[寛]いへこひしきに,
うらみより,[寛]うらまより,
かぢのおとするは,[寛]かちそおとするは,
あまをとめかも[寛],
" "#[番号]15/3642","#[題詞](熊毛浦舶泊之夜作歌四首)","#[原文]於枳敝欲理 之保美知久良之 可良能宇良尓 安佐里須流多豆 奈伎弖佐和伎奴","#[訓読]沖辺より潮満ち来らし可良の浦にあさりする鶴鳴きて騒きぬ","#[仮名],おきへより,しほみちくらし,からのうらに,あさりするたづ,なきてさわきぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,山口,上関町,叙景","#[訓異]
おきへより[寛],
しほみちくらし[寛],
からのうらに[寛],
あさりするたづ,[寛]あさりするたつ,
なきてさわきぬ[寛],
" "#[番号]15/3643","#[題詞](熊毛浦舶泊之夜作歌四首)","#[原文]於吉敝欲里 布奈妣等能煩流 与妣与勢弖 伊射都氣也良牟 多婢能也登里乎","#[訓読]沖辺より船人上る呼び寄せていざ告げ遣らむ旅の宿りを","#[仮名],おきへより,ふなびとのぼる,よびよせて,いざつげやらむ,たびのやどりを","#[左注]一云 多妣能夜杼里乎 伊射都氣夜良奈","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,山口,上関町,望郷,異伝","#[訓異]
おきへより[寛],
ふなびとのぼる,[寛]ふなひとのほる,
よびよせて,[寛]よひよせて,
いざつげやらむ,[寛]いさつけやらむ,
たびのやどりを,[寛]たひのやとりを,
" "#[番号]15/3643S","#[題詞](熊毛浦舶泊之夜作歌四首)一云","#[原文]多妣能夜杼里乎 伊射都氣夜良奈 ","#[訓読]旅の宿りをいざ告げ遣らな ","#[仮名],たびのやどりを,いざつげやらな","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,異伝,羈旅,山口,上関町,望郷","#[訓異]
たびのやどりを,[寛]たひのやとりを,
いざつげやらな,[寛]いさつけやらむ,
" "#[番号]15/3644","#[題詞]佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首","#[原文]於保伎美能 美許等可之故美 於保<夫>祢能 由伎能麻尓末<尓> 夜杼里須流可母","#[訓読]大君の命畏み大船の行きのまにまに宿りするかも","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,おほぶねの,ゆきのまにまに,やどりするかも","#[左注]右一首雪宅麻呂","#[校異]布 -> 夫 [類][紀][細] / <> -> 尓 [西(右書)][類][紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,大分,中津市,作者:雪宅麻呂,不安","#[訓異]
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
おほぶねの,[寛]おほふねの,
ゆきのまにまに[寛],
やどりするかも,[寛]やとりするかも,
" "#[番号]15/3645","#[題詞](佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首)","#[原文]和伎毛故波 伴也母許奴可登 麻都良牟乎 於伎尓也須麻牟 伊敝都可受之弖","#[訓読]我妹子は早も来ぬかと待つらむを沖にや住まむ家つかずして","#[仮名],わぎもこは,はやもこぬかと,まつらむを,おきにやすまむ,いへつかずして","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,大分,中津市,望郷,不安","#[訓異]
わぎもこは,[寛]わきもこは,
はやもこぬかと[寛],
まつらむを[寛],
おきにやすまむ[寛],
いへつかずして,[寛]いへつかすして,
" "#[番号]15/3646","#[題詞](佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首)","#[原文]宇良<未>欲里 許藝許之布祢乎 風波夜美 於伎都美宇良尓 夜杼里須流可毛","#[訓読]浦廻より漕ぎ来し船を風早み沖つみ浦に宿りするかも","#[仮名],うらみより,こぎこしふねを,かぜはやみ,おきつみうらに,やどりするかも","#[左注]","#[校異]末 -> 未 [万葉集古義]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,大分,中津市,不安","#[訓異]
うらみより,[寛]うらまより,
こぎこしふねを,[寛]こきこしふねを,
かぜはやみ,[寛]かせはやみ,
おきつみうらに[寛],
やどりするかも,[寛]やとりするかも,
" "#[番号]15/3647","#[題詞](佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首)","#[原文]和伎毛故我 伊可尓於毛倍可 奴婆多末能 比登欲毛於知受 伊米尓之美由流","#[訓読]我妹子がいかに思へかぬばたまの一夜もおちず夢にし見ゆる","#[仮名],わぎもこが,いかにおもへか,ぬばたまの,ひとよもおちず,いめにしみゆる","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,大分,中津市,望郷,枕詞,不安","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わちもこか,
いかにおもへか[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
ひとよもおちず,[寛]ひとよもおちす,
いめにしみゆる[寛],
" "#[番号]15/3648","#[題詞](佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首)","#[原文]宇奈波良能 於伎敝尓等毛之 伊射流火波 安可之弖登母世 夜麻登思麻見無","#[訓読]海原の沖辺に灯し漁る火は明かして灯せ大和島見む","#[仮名],うなはらの,おきへにともし,いざるひは,あかしてともせ,やまとしまみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,大分,中津市,望郷","#[訓異]
うなはらの[寛],
おきへにともし[寛],
いざるひは,[寛]いさるひは,
あかしてともせ[寛],
やまとしまみむ[寛]
" "#[番号]15/3649","#[題詞](佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首)","#[原文]可母自毛能 宇伎祢乎須礼婆 美奈能和多 可具呂伎可美尓 都由曽於伎尓家類","#[訓読]鴨じもの浮寝をすれば蜷の腸か黒き髪に露ぞ置きにける","#[仮名],かもじもの,うきねをすれば,みなのわた,かぐろきかみに,つゆぞおきにける","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,大分,中津市,漂泊,不安","#[訓異]
かもじもの,[寛]かもしもの,
うきねをすれば,[寛]うきねをすれは,
みなのわた[寛],
かぐろきかみに,[寛]かくろきかみに,
つゆぞおきにける,[寛]つゆそおきにける,
" "#[番号]15/3650","#[題詞](佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首)","#[原文]比左可多能 安麻弖流月波 見都礼杼母 安我母布伊毛尓 安波奴許呂可毛","#[訓読]ひさかたの天照る月は見つれども我が思ふ妹に逢はぬころかも","#[仮名],ひさかたの,あまてるつきは,みつれども,あがもふいもに,あはぬころかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,枕詞,大分,中津市,望郷,恋情","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あまてるつきは[寛],
みつれども,[寛]みつれとも,
あがもふいもに,[寛]あかもふいもに,
あはぬころかも[寛],
" "#[番号]15/3651","#[題詞](佐婆海中忽遭逆風漲浪漂流經宿而後幸得順風到著豊前國下毛郡分間浦 於是追怛艱難悽惆作八首)","#[原文]奴波多麻能 欲和多流月者 波夜毛伊弖奴香文 宇奈波良能 夜蘇之麻能宇倍由 伊毛我安多里見牟 [旋頭歌也]","#[訓読]ぬばたまの夜渡る月は早も出でぬかも海原の八十島の上ゆ妹があたり見む [旋頭歌也]","#[仮名],ぬばたまの,よわたるつきは,はやもいでぬかも,うなはらの,やそしまのうへゆ,いもがあたりみむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,旋頭歌,枕詞,大分,中津市,望郷","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よわたるつきは[寛],
はやもいでぬかも,[寛]はやもいてぬかも,
うなはらの[寛],
やそしまのうへゆ[寛],
いもがあたりみむ,[寛]いもかあたりみむ,
" "#[番号]15/3652","#[題詞]至筑紫舘遥望本郷悽愴作歌四首","#[原文]之賀能安麻能 一日毛於知受 也久之保能 可良伎孤悲乎母 安礼波須流香母","#[訓読]志賀の海人の一日もおちず焼く塩のからき恋をも我れはするかも","#[仮名],しかのあまの,ひとひもおちず,やくしほの,からきこひをも,あれはするかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,地名,福岡,志賀島,恋情,羈旅,序詞,望郷","#[訓異]
しかのあまの[寛],
ひとひもおちず,[寛]ひとひもおちす,
やくしほの[寛],
からきこひをも[寛],
あれはするかも[寛],
" "#[番号]15/3653","#[題詞](至筑紫舘遥望本郷悽愴作歌四首)","#[原文]思可能宇良尓 伊射里須流安麻 伊敝<妣>等能 麻知古布良牟尓 安可思都流宇乎","#[訓読]志賀の浦に漁りする海人家人の待ち恋ふらむに明かし釣る魚","#[仮名],しかのうらに,いざりするあま,いへびとの,まちこふらむに,あかしつるうを","#[左注]","#[校異]比 -> 妣 [類][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,地名,福岡,志賀島,叙景,羈旅,望郷","#[訓異]
しかのうらに[寛],
いざりするあま[寛],
いへびとの,[寛]いへひとの,
まちこふらむに[寛],
あかしつるうを[寛],
" "#[番号]15/3654","#[題詞](至筑紫舘遥望本郷悽愴作歌四首)","#[原文]可之布江尓 多豆奈吉和多流 之可能宇良尓 於枳都之良奈美 多知之久良思母","#[訓読]可之布江に鶴鳴き渡る志賀の浦に沖つ白波立ちし来らしも","#[仮名],かしふえに,たづなきわたる,しかのうらに,おきつしらなみ,たちしくらしも","#[左注]一云 美知之伎奴良思","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,地名,福岡,志賀島,叙景,異伝","#[訓異]
かしふえに[寛],
たづなきわたる,[寛]たつなきわたる,
しかのうらに[寛],
おきつしらなみ[寛],
たちしくらしも[寛],
" "#[番号]15/3654S","#[題詞](至筑紫舘遥望本郷悽愴作歌四首)一云","#[原文]美知之伎奴良思 ","#[訓読]満ちし来ぬらし ","#[仮名],みちしきぬらし","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,異伝,羈旅,福岡,志賀島,叙景","#[訓異]
みちしきぬらし[寛],
" "#[番号]15/3655","#[題詞](至筑紫舘遥望本郷悽愴作歌四首)","#[原文]伊麻欲理波 安伎豆吉奴良之 安思比奇能 夜麻末都可氣尓 日具良之奈伎奴","#[訓読]今よりは秋づきぬらしあしひきの山松蔭にひぐらし鳴きぬ","#[仮名],いまよりは,あきづきぬらし,あしひきの,やままつかげに,ひぐらしなきぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,福岡,枕詞,恋情,叙景","#[訓異]
いまよりは[寛],
あきづきぬらし,[寛]あきつきぬらし,
あしひきの[寛],
やままつかげに,[寛]やままつかけに,
ひぐらしなきぬ,[寛]ひくらしなきぬ,
" "#[番号]15/3656","#[題詞]七夕仰觀天漢各陳所思作歌三首","#[原文]安伎波疑尓 々保敝流和我母 奴礼奴等母 伎美我美布祢能 都奈之等理弖婆","#[訓読]秋萩ににほへる我が裳濡れぬとも君が御船の綱し取りてば","#[仮名],あきはぎに,にほへるわがも,ぬれぬとも,きみがみふねの,つなしとりてば","#[左注]右一首大使","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,作者:阿倍継麻呂,羈旅,七夕,織女,女歌,宴席,福岡","#[訓異]
あきはぎに,[寛]あきはきに,
にほへるわがも,[寛]にほへるわかも,
ぬれぬとも[寛],
きみがみふねの,[寛]きみかみふねの,
つなしとりてば,[寛]つなしとりては,
" "#[番号]15/3657","#[題詞](七夕仰觀天漢各陳所思作歌三首)","#[原文]等之尓安里弖 比等欲伊母尓安布 比故保思母 和礼尓麻佐里弖 於毛布良米也母","#[訓読]年にありて一夜妹に逢ふ彦星も我れにまさりて思ふらめやも","#[仮名],としにありて,ひとよいもにあふ,ひこほしも,われにまさりて,おもふらめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,七夕,宴席,望郷,恋情,福岡","#[訓異]
としにありて[寛],
ひとよいもにあふ[寛],
ひこほしも[寛],
われにまさりて[寛],
おもふらめやも[寛],
" "#[番号]15/3658","#[題詞](七夕仰觀天漢各陳所思作歌三首)","#[原文]由布豆久欲 可氣多知与里安比 安麻能我波 許具布奈妣等乎 見流我等母之佐","#[訓読]夕月夜影立ち寄り合ひ天の川漕ぐ船人を見るが羨しさ","#[仮名],ゆふづくよ,かげたちよりあひ,あまのがは,こぐふなびとを,みるがともしさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,七夕,宴席,望郷,恋情,福岡","#[訓異]
ゆふづくよ,[寛]ゆふつくよ,
かげたちよりあひ,[寛]かけたちよりあひ,
あまのがは,[寛]あまのかは,
こぐふなびとを,[寛]こくふなひとを,
みるがともしさ,[寛]みるかともしさ,
" "#[番号]15/3659","#[題詞]海邊望月作九首","#[原文]安伎可是波 比尓家尓布伎奴 和伎毛故波 伊都登<加>和礼乎 伊波比麻都良牟","#[訓読]秋風は日に異に吹きぬ我妹子はいつとか我れを斎ひ待つらむ","#[仮名],あきかぜは,ひにけにふきぬ,わぎもこは,いつとかわれを,いはひまつらむ","#[左注]大使之第二男","#[校異]可 -> 加 [類][紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,作者:阿倍継麻呂次男,羈旅,望郷,恋情,福岡","#[訓異]
あきかぜは,[寛]あきかせは,
ひにけにふきぬ[寛],
わぎもこは,[寛]わきもこは,
いつとかわれを[寛],
いはひまつらむ[寛],
" "#[番号]15/3660","#[題詞](海邊望月作九首)","#[原文]可牟佐夫流 安良都能左伎尓 与須流奈美 麻奈久也伊毛尓 故非和多里奈牟","#[訓読]神さぶる荒津の崎に寄する波間なくや妹に恋ひわたりなむ","#[仮名],かむさぶる,あらつのさきに,よするなみ,まなくやいもに,こひわたりなむ","#[左注]右一首土師<稲>足","#[校異]楯 -> 稲 [西(訂正右書)][紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,地名,福岡,羈旅,望郷,枕詞,作者:土師稲足,恋情","#[訓異]
かむさぶる,[寛]かむさふる,
あらつのさきに[寛],
よするなみ[寛],
まなくやいもに[寛],
こひわたりなむ[寛],
" "#[番号]15/3661","#[題詞](海邊望月作九首)","#[原文]可是能牟多 与世久流奈美尓 伊射里須流 安麻乎等女良我 毛能須素奴礼奴","#[訓読]風の共寄せ来る波に漁りする海人娘子らが裳の裾濡れぬ","#[仮名],かぜのむた,よせくるなみに,いざりする,あまをとめらが,ものすそぬれぬ","#[左注]一云 安麻乃乎等賣我 毛能須蘇奴礼<濃>","#[校異]奴 -> 濃 [類][紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,福岡,叙景,羈旅,異伝","#[訓異]
かぜのむた,[寛]かせのむた,
よせくるなみに[寛],
いざりする,[寛]いさりする,
あまをとめらが,[寛]あまをとめらか,
ものすそぬれぬ[寛],
" "#[番号]15/3661S","#[題詞](海邊望月作九首)一云","#[原文]安麻乃乎等賣我 毛能須蘇奴礼<濃>","#[訓読]海人の娘子が裳の裾濡れぬ ","#[仮名],あまのをとめが,ものすそぬれぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,福岡,叙景,異伝","#[訓異]
あまのをとめが,[寛]あまのをとめか,
ものすそぬれぬ[寛],
" "#[番号]15/3662","#[題詞](海邊望月作九首)","#[原文]安麻能波良 布里佐氣見礼婆 欲曽布氣尓家流 与之恵也之 比<等>里奴流欲波 安氣婆安氣奴等母","#[訓読]天の原振り放け見れば夜ぞ更けにけるよしゑやしひとり寝る夜は明けば明けぬとも","#[仮名],あまのはら,ふりさけみれば,よぞふけにける,よしゑやし,ひとりぬるよは,あけばあけぬとも","#[左注]右一首旋頭歌也","#[校異]等 [西(上書訂正)][紀][細][温]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,旋頭歌,孤独,恋情,望郷,福岡","#[訓異]
あまのはら[寛],
ふりさけみれば,[寛]ふりさけみれは,
よぞふけにける,[寛]よそふけにける,
よしゑやし[寛],
ひとりぬるよは[寛],
あけばあけぬとも,[寛]あけはあけぬとも,
" "#[番号]15/3663","#[題詞](海邊望月作九首)","#[原文]和多都美能 於伎都奈波能里 久流等伎登 伊毛我麻都良牟 月者倍尓都追","#[訓読]わたつみの沖つ縄海苔来る時と妹が待つらむ月は経につつ","#[仮名],わたつみの,おきつなはのり,くるときと,いもがまつらむ,つきはへにつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,植物,羈旅,福岡,望郷,漂泊","#[訓異]
わたつみの[寛],
おきつなはのり[寛],
くるときと[寛],
いもがまつらむ,[寛]いもかまつらむ,
つきはへにつつ[寛],
" "#[番号]15/3664","#[題詞](海邊望月作九首)","#[原文]之可能宇良尓 伊射里須流安麻 安氣久礼婆 宇良未許具良之 可治能於等伎許由","#[訓読]志賀の浦に漁りする海人明け来れば浦廻漕ぐらし楫の音聞こゆ","#[仮名],しかのうらに,いざりするあま,あけくれば,うらみこぐらし,かぢのおときこゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,地名,志賀島,叙景,福岡","#[訓異]
しかのうらに[寛],
いざりするあま,[寛]いさりするあま,
あけくれば,[寛]あけくれは,
うらみこぐらし,[寛]うらまこくらし,
かぢのおときこゆ,[寛]かちのおときこゆ,
" "#[番号]15/3665","#[題詞](海邊望月作九首)","#[原文]伊母乎於毛比 伊能祢良延奴尓 安可等吉能 安左宜理其問理 可里我祢曽奈久","#[訓読]妹を思ひ寐の寝らえぬに暁の朝霧隠り雁がねぞ鳴く","#[仮名],いもをおもひ,いのねらえぬに,あかときの,あさぎりごもり,かりがねぞなく","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,望郷,動物,福岡","#[訓異]
いもをおもひ[寛],
いのねらえぬに[寛],
あかときの[寛],
あさぎりごもり,[寛]あさきりこもり,
かりがねぞなく,[寛]かりかねそなく,
" "#[番号]15/3666","#[題詞](海邊望月作九首)","#[原文]由布佐礼婆 安伎可是左牟思 和伎母故我 等伎安良比其呂母 由伎弖波也伎牟","#[訓読]夕されば秋風寒し我妹子が解き洗ひ衣行きて早着む","#[仮名],ゆふされば,あきかぜさむし,わぎもこが,ときあらひごろも,ゆきてはやきむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,福岡,望郷,漂泊","#[訓異]
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
あきかぜさむし,[寛]あきかせさむし,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
ときあらひごろも,[寛]ときあらひころも,
ゆきてはやきむ[寛],
" "#[番号]15/3667","#[題詞](海邊望月作九首)","#[原文]和我多妣波 比左思久安良思 許能安我家流 伊毛我許呂母能 阿可都久見礼婆","#[訓読]我が旅は久しくあらしこの我が着る妹が衣の垢つく見れば","#[仮名],わがたびは,ひさしくあらし,このあがける,いもがころもの,あかつくみれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,福岡,望郷,漂泊","#[訓異]
わがたびは,[寛]わかたひは,
ひさしくあらし[寛],
このあがける,[寛]このあかける,
いもがころもの,[寛]いもかころもの,
あかつくみれば,[寛]あかつくみれは,
" "#[番号]15/3668","#[題詞]到筑前國志麻郡之韓亭舶泊經三日於時夜月之光皎々流照奄對此<華>旅情悽噎各陳心緒聊以裁歌六首","#[原文]於保伎美能 等保能美可度登 於毛敝礼杼 氣奈我久之安礼婆 古非尓家流可母","#[訓読]大君の遠の朝廷と思へれど日長くしあれば恋ひにけるかも","#[仮名],おほきみの,とほのみかどと,おもへれど,けながくしあれば,こひにけるかも","#[左注]右一首大使","#[校異]花([西(訂正左書)]美 -> 華 [紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,作者:阿倍継麻呂,羈旅,恋情,望郷,福岡,韓亭","#[訓異]
おほきみの[寛],
とほのみかどと,[寛]とほのみかとと,
おもへれど,[寛]おもへれと,
けながくしあれば,[寛]けなかくしあれは,
こひにけるかも[寛],
" "#[番号]15/3669","#[題詞](到筑前國志麻郡之韓亭舶泊經三日於時夜月之光皎々流照奄對此<華>旅情悽噎各陳心緒聊以裁歌六首)","#[原文]多妣尓安礼杼 欲流波火等毛之 乎流和礼乎 也未尓也伊毛我 古非都追安流良牟","#[訓読]旅にあれど夜は火灯し居る我れを闇にや妹が恋ひつつあるらむ","#[仮名],たびにあれど,よるはひともし,をるわれを,やみにやいもが,こひつつあるらむ","#[左注]右一首大判官","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,作者:壬生宇太麻呂,羈旅,望郷,恋情,福岡,韓亭","#[訓異]
たびにあれど,[寛]たひにあれと,
よるはひともし,[寛]よすはひともし,
をるわれを[寛],
やみにやいもが,[寛]やみにやいもか,
こひつつあるらむ[寛],
" "#[番号]15/3670","#[題詞](到筑前國志麻郡之韓亭舶泊經三日於時夜月之光皎々流照奄對此<華>旅情悽噎各陳心緒聊以裁歌六首)","#[原文]可良等麻里 能<許>乃宇良奈美 多々奴日者 安礼杼母伊敝尓 古非奴日者奈之","#[訓読]韓亭能許の浦波立たぬ日はあれども家に恋ひぬ日はなし","#[仮名],からとまり,のこのうらなみ,たたぬひは,あれどもいへに,こひぬひはなし","#[左注]","#[校異]許 [西(上書訂正)][類][紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,福岡,韓亭,地名,能許島,恋情,望郷,羈旅","#[訓異]
からとまり[寛],
のこのうらなみ[寛],
たたぬひは[寛],
あれどもいへに,[寛]あれともいへに,
こひぬひはなし[寛],
" "#[番号]15/3671","#[題詞](到筑前國志麻郡之韓亭舶泊經三日於時夜月之光皎々流照奄對此<華>旅情悽噎各陳心緒聊以裁歌六首)","#[原文]奴婆多麻乃 欲和多流月尓 安良麻世婆 伊敝奈流伊毛尓 安比弖許麻之乎","#[訓読]ぬばたまの夜渡る月にあらませば家なる妹に逢ひて来ましを","#[仮名],ぬばたまの,よわたるつきに,あらませば,いへなるいもに,あひてこましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,福岡,韓亭,羈旅,望郷,枕詞","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よわたるつきに[寛],
あらませば,[寛]あらませは,
いへなるいもに[寛],
あひてこましを[寛],
" "#[番号]15/3672","#[題詞](到筑前國志麻郡之韓亭舶泊經三日於時夜月之光皎々流照奄對此<華>旅情悽噎各陳心緒聊以裁歌六首)","#[原文]比左可多能 月者弖利多里 伊刀麻奈久 安麻能伊射里波 等毛之安敝里見由","#[訓読]ひさかたの月は照りたり暇なく海人の漁りは灯し合へり見ゆ","#[仮名],ひさかたの,つきはてりたり,いとまなく,あまのいざりは,ともしあへりみゆ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,枕詞,羈旅,福岡,韓亭,叙景","#[訓異]
ひさかたの[寛],
つきはてりたり[寛],
いとまなく[寛],
あまのいざりは,[寛]あまのいさりは,
ともしあへりみゆ[寛],
" "#[番号]15/3673","#[題詞](到筑前國志麻郡之韓亭舶泊經三日於時夜月之光皎々流照奄對此<華>旅情悽噎各陳心緒聊以裁歌六首)","#[原文]可是布氣婆 於吉都思良奈美 可之故美等 能許能等麻里尓 安麻多欲曽奴流","#[訓読]風吹けば沖つ白波畏みと能許の亭にあまた夜ぞ寝る","#[仮名],かぜふけば,おきつしらなみ,かしこみと,のこのとまりに,あまたよぞぬる","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,福岡,韓亭,地名,能許島,漂泊,波待ち","#[訓異]
かぜふけば,[寛]かせふけは,
おきつしらなみ[寛],
かしこみと[寛],
のこのとまりに[寛],
あまたよぞぬる,[寛]あまたよそぬる,
" "#[番号]15/3674","#[題詞]引津亭舶泊之作歌七首","#[原文]久左麻久良 多婢乎久流之美 故非乎礼婆 可也能山邊尓 草乎思香奈久毛","#[訓読]草枕旅を苦しみ恋ひ居れば可也の山辺にさを鹿鳴くも","#[仮名],くさまくら,たびをくるしみ,こひをれば,かやのやまへに,さをしかなくも","#[左注](右二首大判官)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,地名,福岡,可也山,引津亭,動物,望郷,漂泊,作者:壬生宇太麻呂","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびをくるしみ,[寛]たひをくるしみ,
こひをれば,[寛]こひをれは,
かやのやまへに[寛],
さをしかなくも[寛],
" "#[番号]15/3675","#[題詞](引津亭舶泊之作歌七首)","#[原文]於吉都奈美 多可久多都日尓 安敝利伎等 美夜古能比等波 伎吉弖家牟可母","#[訓読]沖つ波高く立つ日にあへりきと都の人は聞きてけむかも","#[仮名],おきつなみ,たかくたつひに,あへりきと,みやこのひとは,ききてけむかも","#[左注]右二首大判官","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,作者:壬生宇太麻呂,羈旅,望郷,福岡,可也山,引津亭","#[訓異]
おきつなみ[寛],
たかくたつひに[寛],
あへりきと[寛],
みやこのひとは[寛],
ききてけむかも[寛],
" "#[番号]15/3676","#[題詞](引津亭舶泊之作歌七首)","#[原文]安麻等夫也 可里乎都可比尓 衣弖之可母 奈良能弥夜故尓 許登都ん夜良武","#[訓読]天飛ぶや雁を使に得てしかも奈良の都に言告げ遣らむ","#[仮名],あまとぶや,かりをつかひに,えてしかも,ならのみやこに,ことつげやらむ","#[左注]","#[校異]ん [類] 氣","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,動物,望郷,枕詞,福岡,引津亭","#[訓異]
あまとぶや,[寛]あまとふや,
かりをつかひに[寛],
えてしかも[寛],
ならのみやこに[寛],
ことつげやらむ,[寛]こなつけやらむ,
" "#[番号]15/3677","#[題詞](引津亭舶泊之作歌七首)","#[原文]秋野乎 尓保波須波疑波 佐家礼杼母 見流之留思奈之 多婢尓師安礼婆","#[訓読]秋の野をにほはす萩は咲けれども見る験なし旅にしあれば","#[仮名],あきののを,にほはすはぎは,さけれども,みるしるしなし,たびにしあれば","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,植物,漂泊,旅情,望郷,福岡,引津亭","#[訓異]
あきののを[寛],
にほはすはぎは,[寛]にほはすはきは,
さけれども,[寛]さけれとも,
みるしるしなし[寛],
たびにしあれば,[寛]たひにしあれは,
" "#[番号]15/3678","#[題詞](引津亭舶泊之作歌七首)","#[原文]伊毛乎於毛比 伊能祢良延奴尓 安伎乃野尓 草乎思香奈伎都 追麻於毛比可祢弖","#[訓読]妹を思ひ寐の寝らえぬに秋の野にさを鹿鳴きつ妻思ひかねて","#[仮名],いもをおもひ,いのねらえぬに,あきののに,さをしかなきつ,つまおもひかねて","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,動物,望郷,羈旅,福岡,引津亭","#[訓異]
いもをおもひ[寛],
いのねらえぬに[寛],
あきののに[寛],
さをしかなきつ[寛],
つまおもひかねて[寛],
" "#[番号]15/3679","#[題詞](引津亭舶泊之作歌七首)","#[原文]於保夫祢尓 真可治之自奴伎 等吉麻都等 和礼波於毛倍杼 月曽倍尓家流","#[訓読]大船に真楫しじ貫き時待つと我れは思へど月ぞ経にける","#[仮名],おほぶねに,まかぢしじぬき,ときまつと,われはおもへど,つきぞへにける","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,福岡,引津亭","#[訓異]
おほぶねに,[寛]おほふねに,
まかぢしじぬき,[寛]まかちししぬき,
ときまつと[寛],
われはおもへど,[寛]われはおもへと,
つきぞへにける,[寛]つきそへにける,
" "#[番号]15/3680","#[題詞](引津亭舶泊之作歌七首)","#[原文]欲乎奈我美 伊能年良延奴尓 安之比奇能 山妣故等余米 佐乎思賀奈君母","#[訓読]夜を長み寐の寝らえぬにあしひきの山彦響めさを鹿鳴くも","#[仮名],よをながみ,いのねらえぬに,あしひきの,やまびことよめ,さをしかなくも","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,福岡,引津亭,羈旅,動物,枕詞,望郷","#[訓異]
よをながみ,[寛]よをなかみ,
いのねらえぬに[寛],
あしひきの[寛],
やまびことよめ,[寛]やまひことよめ,
さをしかなくも[寛],
" "#[番号]15/3681","#[題詞]肥前國松浦郡狛嶋亭舶泊之夜遥望海浪各慟旅心作歌七首","#[原文]可敝里伎弖 見牟等於毛比之 和我夜度能 安伎波疑須々伎 知里尓家武可聞","#[訓読]帰り来て見むと思ひし我が宿の秋萩すすき散りにけむかも","#[仮名],かへりきて,みむとおもひし,わがやどの,あきはぎすすき,ちりにけむかも","#[左注]右一首秦田麻呂","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,佐賀県,唐津市,神集島,植物,望郷,作者:秦田麻呂","#[訓異]
かへりきて[寛],
みむとおもひし[寛],
わがやどの,[寛]わかやとの,
あきはぎすすき,[寛]あきはきすすき,
ちりにけむかも[寛],
" "#[番号]15/3682","#[題詞](肥前國松浦郡狛嶋亭舶泊之夜遥望海浪各慟旅心作歌七首)","#[原文]安米都知能 可未乎許比都々 安礼麻多武 波夜伎万世伎美 麻多婆久流思母","#[訓読]天地の神を祈ひつつ我れ待たむ早来ませ君待たば苦しも","#[仮名],あめつちの,かみをこひつつ,あれまたむ,はやきませきみ,またばくるしも","#[左注]右一首娘子","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,佐賀県,唐津市,神集島,遊行女婦,宴席,女歌,作者:娘子","#[訓異]
あめつちの[寛],
かみをこひつつ[寛],
あれまたむ[寛],
はやきませきみ[寛],
またばくるしも,[寛]またはくるしも,
" "#[番号]15/3683","#[題詞](肥前國松浦郡狛嶋亭舶泊之夜遥望海浪各慟旅心作歌七首)","#[原文]伎美乎於毛比 安我古非万久波 安良多麻乃 多都追奇其等尓 与久流日毛安良自","#[訓読]君を思ひ我が恋ひまくはあらたまの立つ月ごとに避くる日もあらじ","#[仮名],きみをおもひ,あがこひまくは,あらたまの,たつつきごとに,よくるひもあらじ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,佐賀県,唐津市,神集島,女歌,恋情","#[訓異]
きみをおもひ[寛],
あがこひまくは,[寛]あかこひまくは,
あらたまの[寛],
たつつきごとに,[寛]たつつきことに,
よくるひもあらじ,[寛]よくるひもあらし,
" "#[番号]15/3684","#[題詞](肥前國松浦郡狛嶋亭舶泊之夜遥望海浪各慟旅心作歌七首)","#[原文]秋夜乎 奈我美尓可安良武 奈曽許々波 伊能祢良要奴毛 比等里奴礼婆可","#[訓読]秋の夜を長みにかあらむなぞここば寐の寝らえぬもひとり寝ればか","#[仮名],あきのよを,ながみにかあらむ,なぞここば,いのねらえぬも,ひとりぬればか","#[左注]","#[校異]々 [類][細] 己","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,佐賀県,唐津市,神集島,孤独,恋情","#[訓異]
あきのよを[寛],
ながみにかあらむ,[寛]なかみにかあらむ,
なぞここば,[寛]なそここは,
いのねらえぬも[寛],
ひとりぬればか,[寛]ひとりぬれはか,
" "#[番号]15/3685","#[題詞](肥前國松浦郡狛嶋亭舶泊之夜遥望海浪各慟旅心作歌七首)","#[原文]多良思比賣 御舶波弖家牟 松浦乃宇美 伊母我麻都<倍>伎 月者倍尓都々","#[訓読]足日女御船泊てけむ松浦の海妹が待つべき月は経につつ","#[仮名],たらしひめ,みふねはてけむ,まつらのうみ,いもがまつべき,つきはへにつつ","#[左注]","#[校異]敝 -> 倍 [類]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,佐賀県,唐津市,神集島,伝説,神功皇后,望郷,地名","#[訓異]
たらしひめ[寛],
みふねはてけむ[寛],
まつらのうみ[寛],
いもがまつべき,[寛]いもかまつへき,
つきはへにつつ[寛],
" "#[番号]15/3686","#[題詞](肥前國松浦郡狛嶋亭舶泊之夜遥望海浪各慟旅心作歌七首)","#[原文]多婢奈礼婆 於毛比多要弖毛 安里都礼杼 伊敝尓安流伊毛之 於母比我奈思母","#[訓読]旅なれば思ひ絶えてもありつれど家にある妹し思ひ悲しも","#[仮名],たびなれば,おもひたえても,ありつれど,いへにあるいもし,おもひがなしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,佐賀県,唐津市,神集島,望郷","#[訓異]
たびなれば,[寛]たひなれは,
おもひたえても[寛],
ありつれど,[寛]ありつれと,
いへにあるいもし[寛],
おもひがなしも,[寛]おもひかなしも,
" "#[番号]15/3687","#[題詞](肥前國松浦郡狛嶋亭舶泊之夜遥望海浪各慟旅心作歌七首)","#[原文]安思必奇能 山等妣古<由>留 可里我祢波 美也故尓由加波 伊毛尓安比弖許祢","#[訓読]あしひきの山飛び越ゆる鴈がねは都に行かば妹に逢ひて来ね","#[仮名],あしひきの,やまとびこゆる,かりがねは,みやこにゆかば,いもにあひてこね","#[左注]","#[校異]田 -> 由 [類][紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,佐賀県,唐津市,神集島,枕詞,動物,望郷","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまとびこゆる,[寛]やまとひこゆる,
かりがねは,[寛]かりかねは,
みやこにゆかば,[寛]みやこにゆかは,
いもにあひてこね[寛],
" "#[番号]15/3688","#[題詞]到壹岐嶋雪連宅満忽遇鬼病死去之時作歌一首[并短歌]","#[原文]須賣呂伎能 等保能朝庭等 可良國尓 和多流和我世波 伊敝妣等能 伊波比麻多祢可 多太<未>可母 安夜麻知之家牟 安吉佐良婆 可敝里麻左牟等 多良知祢能 波々尓麻乎之弖 等伎毛須疑 都奇母倍奴礼婆 今日可許牟 明日可蒙許武登 伊敝<妣>等波 麻知故布良牟尓 等保能久尓 伊麻太毛都可受 也麻等乎毛 登保久左可里弖 伊波我祢乃 安良伎之麻祢尓 夜杼理須流君 ","#[訓読]天皇の 遠の朝廷と 韓国に 渡る我が背は 家人の 斎ひ待たねか 正身かも 過ちしけむ 秋去らば 帰りまさむと たらちねの 母に申して 時も過ぎ 月も経ぬれば 今日か来む 明日かも来むと 家人は 待ち恋ふらむに 遠の国 いまだも着かず 大和をも 遠く離りて 岩が根の 荒き島根に 宿りする君 ","#[仮名],すめろきの,とほのみかどと,からくにに,わたるわがせは,いへびとの,いはひまたねか,ただみかも,あやまちしけむ,あきさらば,かへりまさむと,たらちねの,ははにまをして,ときもすぎ,つきもへぬれば,けふかこむ,あすかもこむと,いへびとは,まちこふらむに,とほのくに,いまだもつかず,やまとをも,とほくさかりて,いはがねの,あらきしまねに,やどりするきみ","#[左注](右三首挽歌)","#[校異]短歌 [西] 短謌 / 末 -> 未 [万葉集略解] / 乎 [古][細] 于 / 比 -> 妣 [類][古]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,壱岐,挽歌,雪宅麻呂,枕詞,行路死人,長崎","#[訓異]
すめろきの[寛],
とほのみかどと,[寛]とほのみかとと,
からくにに[寛],
わたるわがせは,[寛]わたるわかせは,
いへびとの,[寛]いへひとの,
いはひまたねか[寛],
ただみかも,[寛]たたまかも,
あやまちしけむ[寛],
あきさらば,[寛]あきさらは,
かへりまさむと[寛],
たらちねの[寛],
ははにまをして[寛],
ときもすぎ,[寛]ときもすき,
つきもへぬれば,[寛]つきもへぬれは,
けふかこむ[寛],
あすかもこむと[寛],
いへびとは,[寛]いへひとは,
まちこふらむに[寛],
とほのくに,[寛]とをのくに,
いまだもつかず,[寛]いまたもつかす,
やまとをも[寛],
とほくさかりて[寛],
いはがねの,[寛]いはかねの,
あらきしまねに[寛],
やどりするきみ,[寛]やとりするきみ,
" "#[番号]15/3689","#[題詞](到壹岐嶋雪連宅満忽遇鬼病死去之時作歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]伊波多野尓 夜杼里須流伎美 伊敝妣等乃 伊豆良等和礼乎 等<波婆>伊可尓伊波牟","#[訓読]岩田野に宿りする君家人のいづらと我れを問はばいかに言はむ","#[仮名],いはたのに,やどりするきみ,いへびとの,いづらとわれを,とはばいかにいはむ","#[左注](右三首挽歌)","#[校異]婆波 -> 波婆 [代匠記初稿本]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,挽歌,羈旅,壱岐,雪宅麻呂,地名,行路死人,長崎","#[訓異]
いはたのに[寛],
やどりするきみ,[寛]やとりするきみ,
いへびとの,[寛]いへひとの,
いづらとわれを,[寛]いつらとわれを,
とはばいかにいはむ,[寛]とははいかにいはむ,
" "#[番号]15/3690","#[題詞]((到壹岐嶋雪連宅満忽遇鬼病死去之時作歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]与能奈可波 都祢可久能未等 和可礼奴流 君尓也毛登奈 安我孤悲由加牟","#[訓読]世間は常かくのみと別れぬる君にやもとな我が恋ひ行かむ","#[仮名],よのなかは,つねかくのみと,わかれぬる,きみにやもとな,あがこひゆかむ","#[左注]右三首挽歌","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,挽歌,羈旅,壱岐,雪宅麻呂,恋情,長崎","#[訓異]
よのなかは[寛],
つねかくのみと[寛],
わかれぬる[寛],
きみにやもとな[寛],
あがこひゆかむ,[寛]あかこひゆかむ,
" "#[番号]15/3691","#[題詞]","#[原文]天地等 登毛尓母我毛等 於毛比都々 安里家牟毛能乎 波之家也思 伊敝乎波奈礼弖 奈美能宇倍由 奈豆佐比伎尓弖 安良多麻能 月日毛伎倍奴 可里我祢母 都藝弖伎奈氣婆 多良知祢能 波々母都末良母 安<佐>都由尓 毛能須蘇比都知 由布疑里尓 己呂毛弖奴礼弖 左伎久之毛 安流良牟其登久 伊R見都追 麻都良牟母能乎 世間能 比登<乃>奈氣伎<波> 安比於毛波奴 君尓安礼也母 安伎波疑能 知良敝流野邊乃 波都乎花 可里保尓布<伎>弖 久毛婆奈礼 等保伎久尓敝能 都由之毛能 佐武伎山邊尓 夜杼里世流良牟 ","#[訓読]天地と ともにもがもと 思ひつつ ありけむものを はしけやし 家を離れて 波の上ゆ なづさひ来にて あらたまの 月日も来経ぬ 雁がねも 継ぎて来鳴けば たらちねの 母も妻らも 朝露に 裳の裾ひづち 夕霧に 衣手濡れて 幸くしも あるらむごとく 出で見つつ 待つらむものを 世間の 人の嘆きは 相思はぬ 君にあれやも 秋萩の 散らへる野辺の 初尾花 仮廬に葺きて 雲離れ 遠き国辺の 露霜の 寒き山辺に 宿りせるらむ ","#[仮名],あめつちと,ともにもがもと,おもひつつ,ありけむものを,はしけやし,いへをはなれて,なみのうへゆ,なづさひきにて,あらたまの,つきひもきへぬ,かりがねも,つぎてきなけば,たらちねの,ははもつまらも,あさつゆに,ものすそひづち,ゆふぎりに,ころもでぬれて,さきくしも,あるらむごとく,いでみつつ,まつらむものを,よのなかの,ひとのなげきは,あひおもはぬ,きみにあれやも,あきはぎの,ちらへるのへの,はつをばな,かりほにふきて,くもばなれ,とほきくにへの,つゆしもの,さむきやまへに,やどりせるらむ","#[左注](右三首葛井連子老作挽歌)","#[校異]左 -> 佐 [類][紀] / 能 -> 乃 [類][紀][細] / 婆 -> 波 [類][紀] / 疑 -> 伎 [類][古][紀]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,挽歌,雪宅麻呂,作者:葛井子老,枕詞,哀悼,壱岐,長崎","#[訓異]
あめつちと[寛],
ともにもがもと,[寛]ともにもかもと,
おもひつつ[寛],
ありけむものを[寛],
はしけやし[寛],
いへをはなれて[寛],
なみのうへゆ[寛],
なづさひきにて,[寛]なつさひきにて,
あらたまの[寛],
つきひもきへぬ[寛],
かりがねも,[寛]かりかねも,
つぎてきなけば,[寛]つきてちなけは,
たらちねの[寛],
ははもつまらも[寛],
あさつゆに[寛],
ものすそひづち,[寛]ものすそひつち,
ゆふぎりに,[寛]ゆふきりに,
ころもでぬれて,[寛]ころもてぬれて,
さきくしも[寛],
あるらむごとく,[寛]あるらむことく,
いでみつつ,[寛]いてみつつ,
まつらむものを[寛],
よのなかの[寛],
ひとのなげきは,[寛]ひとのなけきは,
あひおもはぬ[寛],
きみにあれやも[寛],
あきはぎの,[寛]あきはきの,
ちらへるのへの[寛],
はつをばな,[寛]はつをはな,
かりほにふきて[寛],
くもばなれ,[寛]くもはなれ,
とほきくにへの[寛],
つゆしもの[寛],
さむきやまへに[寛],
やどりせるらむ,[寛]やとりせるらむ,
" "#[番号]15/3692","#[題詞]反歌二首","#[原文]波之家也思 都麻毛古杼毛母 多可多加尓 麻都良牟伎美也 之麻我久礼奴流","#[訓読]はしけやし妻も子どもも高々に待つらむ君や島隠れぬる","#[仮名],はしけやし,つまもこどもも,たかたかに,まつらむきみや,しまがくれぬる","#[左注](右三首葛井連子老作挽歌)","#[校異]之 (塙) 々","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,挽歌,雪宅麻呂,作者:葛井子老,哀悼,壱岐,長崎","#[訓異]
はしけやし[寛],
つまもこどもも,[寛]つまもこともも,
たかたかに[寛],
まつらむきみや[寛],
しまがくれぬる,[寛]しまかくれぬる,
" "#[番号]15/3693","#[題詞](反歌二首)","#[原文]毛美知葉能 知里奈牟山尓 夜杼里奴流 君乎麻都良牟 比等之可奈之母","#[訓読]黄葉の散りなむ山に宿りぬる君を待つらむ人し悲しも","#[仮名],もみちばの,ちりなむやまに,やどりぬる,きみをまつらむ,ひとしかなしも","#[左注]右三首葛井連子老作挽歌","#[校異]之 [類][細] 思","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,挽歌,雪宅麻呂,作者:葛井子老,枕詞,哀悼,壱岐,長崎","#[訓異]
もみちばの,[寛]もみちはの,
ちりなむやまに[寛],
やどりぬる,[寛]やとりぬる,
きみをまつらむ[寛],
ひとしかなしも,[寛]ひとのかなしも,
" "#[番号]15/3694","#[題詞]","#[原文]和多都美能 <可>之故伎美知乎 也須家口母 奈久奈夜美伎弖 伊麻太尓母 毛奈久由可牟登 由吉能安末能 保都手乃宇良敝乎 可多夜伎弖 由加武<等>須流尓 伊米能其等 美知能蘇良治尓 和可礼須流伎美 ","#[訓読]わたつみの 畏き道を 安けくも なく悩み来て 今だにも 喪なく行かむと 壱岐の海人の ほつての占部を 肩焼きて 行かむとするに 夢のごと 道の空路に 別れする君 ","#[仮名],わたつみの,かしこきみちを,やすけくも,なくなやみきて,いまだにも,もなくゆかむと,ゆきのあまの,ほつてのうらへを,かたやきて,ゆかむとするに,いめのごと,みちのそらぢに,わかれするきみ","#[左注](右三首六鯖作挽歌)","#[校異]下 -> 可 [類][古][紀] / 土 -> 等 [岩波大系](塙)(楓)","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,挽歌,作者:六人部鯖麻呂,哀悼,雪宅麻呂,地名,壱岐,長崎","#[訓異]
わたつみの[寛],
かしこきみちを[寛],
やすけくも[寛],
なくなやみきて[寛],
いまだにも,[寛]いまたにも,
もなくゆかむと[寛],
ゆきのあまの[寛],
ほつてのうらへを[寛],
かたやきて[寛],
ゆかむとするに[寛],
いめのごと,[寛]いめのこと,
みちのそらぢに,[寛]みちのそらちに,
わかれするきみ[寛],
" "#[番号]15/3695","#[題詞]反歌二首","#[原文]牟可之欲里 伊比<祁>流許等乃 可良久尓能 可良久毛己許尓 和可礼須留可聞","#[訓読]昔より言ひけることの韓国のからくもここに別れするかも","#[仮名],むかしより,いひけることの,からくにの,からくもここに,わかれするかも","#[左注](右三首六鯖作挽歌)","#[校異]都 -> 祁 [類][紀]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,挽歌,作者:六人部鯖麻呂,哀悼,雪宅麻呂,地名,序詞,壱岐,長崎","#[訓異]
むかしより[寛],
いひけることの[寛],
からくにの[寛],
からくもここに[寛],
わかれするかも[寛],
" "#[番号]15/3696","#[題詞](反歌二首)","#[原文]新羅奇敝可 伊敝尓可加反流 由吉能之麻 由加牟多登伎毛 於毛比可祢都母","#[訓読]新羅へか家にか帰る壱岐の島行かむたどきも思ひかねつも","#[仮名],しらきへか,いへにかかへる,ゆきのしま,ゆかむたどきも,おもひかねつも","#[左注]右三首六鯖作挽歌","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,挽歌,作者:六人部鯖麻呂,哀悼,雪宅麻呂,地名,壱岐,長崎","#[訓異]
しらきへか[寛],
いへにかかへる[寛],
ゆきのしま[寛],
ゆかむたどきも,[寛]ゆかむたときも,
おもひかねつも[寛],
" "#[番号]15/3697","#[題詞]到對馬嶋淺茅浦舶泊之時不得順風經停五箇日於是瞻望物華各陳慟心作歌三首","#[原文]毛母布祢乃 波都流對馬能 安佐治山 志具礼能安米尓 毛美多比尓家里","#[訓読]百船の泊つる対馬の浅茅山しぐれの雨にもみたひにけり","#[仮名],ももふねの,はつるつしまの,あさぢやま,しぐれのあめに,もみたひにけり","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,長崎,対馬,叙景,羈旅,地名","#[訓異]
ももふねの[寛],
はつるつしまの[寛],
あさぢやま,[寛]あさちやま,
しぐれのあめに,[寛]しくれのあめに,
もみたひにけり[寛],
" "#[番号]15/3698","#[題詞](到對馬嶋淺茅浦舶泊之時不得順風經停五箇日於是瞻望物華各陳慟心作歌三首)","#[原文]安麻射可流 比奈尓毛月波 弖礼々杼母 伊毛曽等保久波 和可礼伎尓家流","#[訓読]天離る鄙にも月は照れれども妹ぞ遠くは別れ来にける","#[仮名],あまざかる,ひなにもつきは,てれれども,いもぞとほくは,わかれきにける","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,長崎,対馬,望郷,枕詞","#[訓異]
あまざかる[寛],
ひなにもつきは[寛],
てれれども,[寛]てれれとも,
いもぞとほくは,[寛]いもそとほくは,
わかれきにける[寛],
" "#[番号]15/3699","#[題詞](到對馬嶋淺茅浦舶泊之時不得順風經停五箇日於是瞻望物華各陳慟心作歌三首)","#[原文]安伎左礼婆 於久都由之毛尓 安倍受之弖 京師乃山波 伊呂豆伎奴良牟","#[訓読]秋去れば置く露霜にあへずして都の山は色づきぬらむ","#[仮名],あきされば,おくつゆしもに,あへずして,みやこのやまは,いろづきぬらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,長崎,対馬,望郷","#[訓異]
あきされば,[寛]あきされは,
おくつゆしもに[寛],
あへずして,[寛]あへすして,
みやこのやまは[寛],
いろづきぬらむ,[寛]いろつきぬらむ,
" "#[番号]15/3700","#[題詞]竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首","#[原文]安之比奇能 山下比可流 毛美知葉能 知里能麻河比波 計布仁聞安流香母","#[訓読]あしひきの山下光る黄葉の散りの乱ひは今日にもあるかも","#[仮名],あしひきの,やましたひかる,もみちばの,ちりのまがひは,けふにもあるかも","#[左注]右一首大使","#[校異]<> -> 各 [類][細] / 流 [類][細](塙) 留","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,長崎,対馬,叙景,作者:阿倍継麻呂","#[訓異]
あしひきの[寛],
やましたひかる[寛],
もみちばの,[寛]もみちはの,
ちりのまがひは,[寛]ちりのまかひは,
けふにもあるかも[寛],
" "#[番号]15/3701","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]多可之伎能 母美知乎見礼婆 和藝毛故我 麻多牟等伊比之 等伎曽伎尓家流","#[訓読]竹敷の黄葉を見れば我妹子が待たむと言ひし時ぞ来にける","#[仮名],たかしきの,もみちをみれば,わぎもこが,またむといひし,ときぞきにける","#[左注]右一首副使","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,長崎,対馬,地名,望郷,作者:大伴三中","#[訓異]
たかしきの[寛],
もみちをみれば,[寛]もみちをみれは,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
またむといひし[寛],
ときぞきにける,[寛]ときそきにける,
" "#[番号]15/3702","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]多可思吉能 宇良<未>能毛美知 <和>礼由伎弖 可敝里久流末R 知里許須奈由米","#[訓読]竹敷の浦廻の黄葉我れ行きて帰り来るまで散りこすなゆめ","#[仮名],たかしきの,うらみのもみち,われゆきて,かへりくるまで,ちりこすなゆめ","#[左注]右一首大判官","#[校異]末 -> 未 [万葉集古義] / <> -> 和 [西(左書)][類][紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,長崎,対馬,地名,叙景,作者:壬生宇太麻呂","#[訓異]
たかしきの[寛],
うらみのもみち,[寛]うらまのもみち,
われゆきて[寛],
かへりくるまで,[寛]かへりくるまて,
ちりこすなゆめ[寛],
" "#[番号]15/3703","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]多可思吉能 宇敝可多山者 久礼奈為能 也之保能伊呂尓 奈里尓家流香聞","#[訓読]竹敷の宇敝可多山は紅の八しほの色になりにけるかも","#[仮名],たかしきの,うへかたやまは,くれなゐの,やしほのいろに,なりにけるかも","#[左注]右一首小判官","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,長崎,対馬,地名,叙景,作者:大蔵麻呂","#[訓異]
たかしきの[寛],
うへかたやまは[寛],
くれなゐの[寛],
やしほのいろに[寛],
なりにけるかも[寛],
" "#[番号]15/3704","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]毛美知婆能 知良布山邊由 許具布祢能 尓保比尓米R弖 伊R弖伎尓家里","#[訓読]黄葉の散らふ山辺ゆ漕ぐ船のにほひにめでて出でて来にけり","#[仮名],もみちばの,ちらふやまへゆ,こぐふねの,にほひにめでて,いでてきにけり","#[左注](右二首對馬娘子名玉槻)","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,長崎,対馬,遊行女婦,作者:玉槻,女歌","#[訓異]
もみちばの,[寛]もみちはの,
ちらふやまへゆ[寛],
こぐふねの,[寛]こくふねの,
にほひにめでて,[寛]にほひにめてて,
いでてきにけり,[寛]いててきにけり,
" "#[番号]15/3705","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]多可思吉能 多麻毛奈<婢>可之 己<藝>R奈牟 君我美布祢乎 伊都等可麻多牟","#[訓読]竹敷の玉藻靡かし漕ぎ出なむ君がみ船をいつとか待たむ","#[仮名],たかしきの,たまもなびかし,こぎでなむ,きみがみふねを,いつとかまたむ","#[左注]右二首對馬娘子名玉槻","#[校異]比 -> 婢 [類][紀][細] / 伎 -> 藝 [類][紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,長崎,対馬,地名,遊行女婦,作者:玉槻,女歌","#[訓異]
たかしきの[寛],
たまもなびかし,[寛]たまもなひかし,
こぎでなむ,[寛]こきてなむ,
きみがみふねを,[寛]きみかみふねを,
いつとかまたむ[寛],
" "#[番号]15/3706","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]多麻之家流 伎欲吉奈藝佐乎 之保美弖婆 安可受和礼由久 可反流左尓見牟","#[訓読]玉敷ける清き渚を潮満てば飽かず我れ行く帰るさに見む","#[仮名],たましける,きよきなぎさを,しほみてば,あかずわれゆく,かへるさにみむ","#[左注]右一首大使","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,土地讃美,長崎,対馬,作者:阿倍継麻呂","#[訓異]
たましける[寛],
きよきなぎさを,[寛]きよきなきさを,
しほみてば,[寛]しほみては,
あかずわれゆく,[寛]あかすわれゆく,
かへるさにみむ[寛],
" "#[番号]15/3707","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]安伎也麻能 毛美知乎可射之 和我乎礼婆 宇良之保美知久 伊麻太安可奈久尓","#[訓読]秋山の黄葉をかざし我が居れば浦潮満ち来いまだ飽かなくに","#[仮名],あきやまの,もみちをかざし,わがをれば,うらしほみちく,いまだあかなくに","#[左注]右一首副使","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,土地讃美,長崎,対馬,作者:壬生宇太麻呂","#[訓異]
あきやまの[寛],
もみちをかざし,[寛]もみちをかさし,
わがをれば,[寛]わかをれは,
うらしほみちく[寛],
いまだあかなくに,[寛]いまたあかなくに,
" "#[番号]15/3708","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]毛能毛布等 比等尓波美要<緇> 之多婢毛能 思多由故布流尓 都<奇>曽倍尓家流","#[訓読]物思ふと人には見えじ下紐の下ゆ恋ふるに月ぞ経にける","#[仮名],ものもふと,ひとにはみえじ,したびもの,したゆこふるに,つきぞへにける","#[左注]右一首大使","#[校異]ア -> 緇 [紀][温] / 哥 -> 奇 [西(訂正)][類][紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,望郷,長崎,対馬,作者:阿倍継麻呂","#[訓異]
ものもふと[寛],
ひとにはみえじ,[寛]ひとにはみえし,
したびもの,[寛]したひもの,
したゆこふるに[寛],
つきぞへにける,[寛]つきそへにける,
" "#[番号]15/3709","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]伊敝豆刀尓 可比乎比里布等 於伎敝欲里 与世久流奈美尓 許呂毛弖奴礼奴","#[訓読]家づとに貝を拾ふと沖辺より寄せ来る波に衣手濡れぬ","#[仮名],いへづとに,かひをひりふと,おきへより,よせくるなみに,ころもでぬれぬ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,長崎,対馬,望郷,みやげ","#[訓異]
いへづとに,[寛]いへつとに,
かひをひりふと[寛],
おきへより[寛],
よせくるなみに[寛],
ころもでぬれぬ,[寛]ころもてぬれぬ,
" "#[番号]15/3710","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]之保非奈<婆> 麻多母和礼許牟 伊射遊賀武 於伎都志保佐為 多可久多知伎奴","#[訓読]潮干なばまたも我れ来むいざ行かむ沖つ潮騒高く立ち来ぬ","#[仮名],しほひなば,またもわれこむ,いざゆかむ,おきつしほさゐ,たかくたちきぬ","#[左注]","#[校異]波 -> 婆 [類]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,対馬,長崎","#[訓異]
しほひなば,[寛]しほひなは,
またもわれこむ[寛],
いざゆかむ,[寛]いさゆかむ,
おきつしほさゐ[寛],
たかくたちきぬ[寛],
" "#[番号]15/3711","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]和我袖波 多毛登等保里弖 奴礼奴等母 故非和須礼我比 等良受波由可自","#[訓読]我が袖は手本通りて濡れぬとも恋忘れ貝取らずは行かじ","#[仮名],わがそでは,たもととほりて,ぬれぬとも,こひわすれがひ,とらずはゆかじ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,対馬,長崎,望郷","#[訓異]
わがそでは,[寛]わかそては,
たもととほりて[寛],
ぬれぬとも[寛],
こひわすれがひ,[寛]こひわすれかひ,
とらずはゆかじ,[寛]とらすはゆかし,
" "#[番号]15/3712","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]奴<婆>多麻能 伊毛我保須倍久 安良奈久尓 和我許呂母弖乎 奴礼弖伊可尓勢牟","#[訓読]ぬばたまの妹が干すべくあらなくに我が衣手を濡れていかにせむ","#[仮名],ぬばたまの,いもがほすべく,あらなくに,わがころもでを,ぬれていかにせむ","#[左注]","#[校異]波 -> 婆 [類][古]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,枕詞,羈旅,対馬,長崎,望郷","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
いもがほすべく,[寛]いもかほすへく,
あらなくに[寛],
わがころもでを,[寛]わかころもてを,
ぬれていかにせむ[寛],
" "#[番号]15/3713","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]毛美知婆波 伊麻波宇都呂布 和伎毛故我 麻多牟等伊比之 等伎能倍由氣婆","#[訓読]黄葉は今はうつろふ我妹子が待たむと言ひし時の経ゆけば","#[仮名],もみちばは,いまはうつろふ,わぎもこが,またむといひし,ときのへゆけば","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,望郷,対馬,長崎","#[訓異]
もみちばは,[寛]
いまはうつろふ[寛],
わぎもこが,[寛]わきもこか,
またむといひし[寛],
ときのへゆけば,[寛]ときのへゆけは,
" "#[番号]15/3714","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]安<伎>佐礼婆 故非之美伊母乎 伊米尓太尓 比左之久見牟乎 安氣尓家流香聞","#[訓読]秋されば恋しみ妹を夢にだに久しく見むを明けにけるかも","#[仮名],あきされば,こひしみいもを,いめにだに,ひさしくみむを,あけにけるかも","#[左注]","#[校異]藝 -> 伎 [紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,恋情,羈旅,望郷,対馬,長崎","#[訓異]
あきされば,[寛]あきされは,
こひしみいもを[寛],
いめにだに,[寛]いめにたに,
ひさしくみむを[寛],
あけにけるかも[寛],
" "#[番号]15/3715","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]比等里能未 伎奴流許呂毛能 比毛等加婆 多礼可毛由波牟 伊敝杼保久之弖","#[訓読]ひとりのみ着寝る衣の紐解かば誰れかも結はむ家遠くして","#[仮名],ひとりのみ,きぬるころもの,ひもとかば,たれかもゆはむ,いへどほくして","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,望郷,恋情,孤独,対馬,長崎","#[訓異]
ひとりのみ[寛],
きぬるころもの[寛],
ひもとかば,[寛]ひもとかは,
たれかもゆはむ[寛],
いへどほくして,[寛]いへとほくして,
" "#[番号]15/3716","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]安麻久毛能 多由多比久礼婆 九月能 毛未知能山毛 宇都呂比尓家里","#[訓読]天雲のたゆたひ来れば九月の黄葉の山もうつろひにけり","#[仮名],あまくもの,たゆたひくれば,ながつきの,もみちのやまも,うつろひにけり","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,叙景,羈旅,対馬,長崎","#[訓異]
あまくもの[寛],
たゆたひくれば,[寛]たゆたひくれは,
ながつきの,[寛]なかつきの,
もみちのやまも[寛],
うつろひにけり[寛],
" "#[番号]15/3717","#[題詞](竹敷浦舶泊之時<各>陳心緒作歌十八首)","#[原文]多婢尓弖<毛> <母>奈久波也許<登> 和伎毛故我 牟須妣思比毛波 奈礼尓家流香聞","#[訓読]旅にても喪なく早来と我妹子が結びし紐はなれにけるかも","#[仮名],たびにても,もなくはやこと,わぎもこが,むすびしひもは,なれにけるかも","#[左注]","#[校異]母 -> 毛 [類] / 毛 -> 母 [類] / 等 -> 登 [類][古][紀]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,望郷,対馬,長崎","#[訓異]
たびにても,[寛]たひにても,
もなくはやこと[寛],
わぎもこが,[寛]わきもこか,
むすびしひもは,[寛]むすひしひもは,
なれにけるかも[寛],
" "#[番号]15/3718","#[題詞]廻来筑紫海路入京到播磨國家嶋之時作歌五首","#[原文]伊敝之麻波 奈尓許曽安里家礼 宇奈波良乎 安我古非伎都流 伊毛母安良奈久尓","#[訓読]家島は名にこそありけれ海原を我が恋ひ来つる妹もあらなくに","#[仮名],いへしまは,なにこそありけれ,うなはらを,あがこひきつる,いももあらなくに","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,地名,姫路,兵庫,羈旅,孤独,望郷,帰途","#[訓異]
いへしまは[寛],
なにこそありけれ[寛],
うなはらを[寛],
あがこひきつる,[寛]あかこひきつる,
いももあらなくに[寛],
" "#[番号]15/3719","#[題詞](廻来筑紫海路入京到播磨國家嶋之時作歌五首)","#[原文]久左麻久良 多婢尓比左之久 安良米也等 伊毛尓伊比之乎 等之能倍奴良久","#[訓読]草枕旅に久しくあらめやと妹に言ひしを年の経ぬらく","#[仮名],くさまくら,たびにひさしく,あらめやと,いもにいひしを,としのへぬらく","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,枕詞,羈旅,望郷,帰途,姫路,兵庫","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびにひさしく,[寛]たひにやさしく,
あらめやと[寛],
いもにいひしを[寛],
としのへぬらく[寛],
" "#[番号]15/3720","#[題詞](廻来筑紫海路入京到播磨國家嶋之時作歌五首)","#[原文]和伎毛故乎 由伎弖波也美武 安波治之麻 久毛為尓見延奴 伊敝都久良之母","#[訓読]我妹子を行きて早見む淡路島雲居に見えぬ家つくらしも","#[仮名],わぎもこを,ゆきてはやみむ,あはぢしま,くもゐにみえぬ,いへづくらしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,地名,淡路,兵庫,姫路,望郷,帰途,羈旅","#[訓異]
わぎもこを,[寛]わきもこを,
ゆきてはやみむ[寛],
あはぢしま,[寛]あはちしま,
くもゐにみえぬ[寛],
いへづくらしも,[寛]いへつくらしも,
" "#[番号]15/3721","#[題詞](廻来筑紫海路入京到播磨國家嶋之時作歌五首)","#[原文]奴婆多麻能 欲安可之母布<祢>波 許藝由可奈 美都能波麻末都 麻知故非奴良武","#[訓読]ぬばたまの夜明かしも船は漕ぎ行かな御津の浜松待ち恋ひぬらむ","#[仮名],ぬばたまの,よあかしもふねは,こぎゆかな,みつのはままつ,まちこひぬらむ","#[左注]","#[校異]弥 -> 祢 [類][紀][細]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,枕詞,地名,大阪,難波,兵庫,姫路,帰途","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よあかしもふねは[寛],
こぎゆかな,[寛]こきゆかな,
みつのはままつ[寛],
まちこひぬらむ[寛],
" "#[番号]15/3722","#[題詞](廻来筑紫海路入京到播磨國家嶋之時作歌五首)","#[原文]大伴乃 美津能等麻里尓 布祢波弖々 多都多能山乎 伊都可故延伊加武","#[訓読]大伴の御津の泊りに船泊てて龍田の山をいつか越え行かむ","#[仮名],おほともの,みつのとまりに,ふねはてて,たつたのやまを,いつかこえいかむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],遣新羅使,天平8年,年紀,羈旅,地名,兵庫,姫路,大阪,難波,奈良,帰途","#[訓異]
おほともの[寛],
みつのとまりに[寛],
ふねはてて[寛],
たつたのやまを[寛],
いつかこえいかむ[寛],
" "#[番号]15/3723","#[題詞]中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌","#[原文]安之比奇能 夜麻治古延牟等 須流君乎 許々呂尓毛知弖 夜須家久母奈之","#[訓読]あしひきの山道越えむとする君を心に持ちて安けくもなし","#[仮名],あしひきの,やまぢこえむと,するきみを,こころにもちて,やすけくもなし","#[左注](右四首娘子臨別作歌)","#[校異]弟 [細] 茅","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,枕詞,悲別,恋情,女歌,中臣宅守","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまぢこえむと,[寛]やまちこえむと,
するきみを[寛],
こころにもちて[寛],
やすけくもなし[寛],
" "#[番号]15/3724","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]君我由久 道乃奈我弖乎 久里多々祢 也伎保呂煩散牟 安米能火毛我母","#[訓読]君が行く道の長手を繰り畳ね焼き滅ぼさむ天の火もがも","#[仮名],きみがゆく,みちのながてを,くりたたね,やきほろぼさむ,あめのひもがも","#[左注](右四首娘子臨別作歌)","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,悲別,恋情,女歌,中臣宅守","#[訓異]
きみがゆく,[寛]きみかゆく,
みちのながてを,[寛]みちのなかてを,
くりたたね[寛],
やきほろぼさむ,[寛]やきほろほさむ,
あめのひもがも,[寛]あめのひもかも,
" "#[番号]15/3725","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]和我世故之 氣太之麻可良<婆> 思漏多倍乃 蘇R乎布良左祢 見都追志努波牟","#[訓読]我が背子しけだし罷らば白栲の袖を振らさね見つつ偲はむ","#[仮名],わがせこし,けだしまからば,しろたへの,そでをふらさね,みつつしのはむ","#[左注](右四首娘子臨別作歌)","#[校異]波 -> 婆 [類][紀][細]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,悲別,恋情,女歌,中臣宅守","#[訓異]
わがせこし,[寛]わかせこか,
けだしまからば,[寛]けたしまからは,
しろたへの[寛],
そでをふらさね,[寛]そてをふらさね,
みつつしのはむ[寛],
" "#[番号]15/3726","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]己能許呂波 古非都追母安良牟 多麻久之氣 安氣弖乎知欲利 須辨奈可流倍思","#[訓読]このころは恋ひつつもあらむ玉櫛笥明けてをちよりすべなかるべし","#[仮名],このころは,こひつつもあらむ,たまくしげ,あけてをちより,すべなかるべし","#[左注]右四首娘子臨別作歌","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,枕詞,悲別,恋情,女歌,中臣宅守","#[訓異]
このころは[寛],
こひつつもあらむ[寛],
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
あけてをちより[寛],
すべなかるべし,[寛]すへなかるへし,
" "#[番号]15/3727","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]知里比治能 可受尓母安良奴 和礼由恵尓 於毛比和夫良牟 伊母我可奈思佐","#[訓読]塵泥の数にもあらぬ我れゆゑに思ひわぶらむ妹がかなしさ","#[仮名],ちりひぢの,かずにもあらぬ,われゆゑに,おもひわぶらむ,いもがかなしさ","#[左注](右四首中臣朝臣宅守上道作歌)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,悲別,恋情,羈旅,配流,狭野弟上娘子","#[訓異]
ちりひぢの,[寛]ちりひちの,
かずにもあらぬ,[寛]かすにもあらぬ,
われゆゑに[寛],
おもひわぶらむ,[寛]おもひわふらむ,
いもがかなしさ,[寛]いもかかなしさ,
" "#[番号]15/3728","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]安乎尓与之 奈良能於保知波 由<吉>余家杼 許能山道波 由伎安之可里家利","#[訓読]あをによし奈良の大道は行きよけどこの山道は行き悪しかりけり","#[仮名],あをによし,ならのおほぢは,ゆきよけど,このやまみちは,ゆきあしかりけり","#[左注](右四首中臣朝臣宅守上道作歌)","#[校異]伎 -> 吉 [天][類][紀][細]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,羈旅,贈答,配流,狭野弟上娘子","#[訓異]
あをによし[寛],
ならのおほぢは,[寛]ならのおほちは,
ゆきよけど,[寛]ゆきよけと,
このやまみちは[寛],
ゆきあしかりけり[寛],
" "#[番号]15/3729","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]宇流波之等 安我毛布伊毛乎 於毛比都追 由氣婆可母等奈 由伎安思可流良武","#[訓読]愛しと我が思ふ妹を思ひつつ行けばかもとな行き悪しかるらむ","#[仮名],うるはしと,あがもふいもを,おもひつつ,ゆけばかもとな,ゆきあしかるらむ","#[左注](右四首中臣朝臣宅守上道作歌)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,羈旅,贈答,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
うるはしと[寛],
あがもふいもを,[寛]あかもふいもを,
おもひつつ[寛],
ゆけばかもとな,[寛]ゆけはかもとな,
ゆきあしかるらむ[寛],
" "#[番号]15/3730","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]加思故美等 能良受安里思乎 美故之治能 多武氣尓多知弖 伊毛我名能里都","#[訓読]畏みと告らずありしをみ越道の手向けに立ちて妹が名告りつ","#[仮名],かしこみと,のらずありしを,みこしぢの,たむけにたちて,いもがなのりつ","#[左注]右四首中臣朝臣宅守上道作歌","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,配流,恋情,羈旅,手向け,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
かしこみと[寛],
のらずありしを,[寛]のらすありしを,
みこしぢの,[寛]みこしちの,
たむけにたちて[寛],
いもがなのりつ,[寛]いもかなのりつ,
" "#[番号]15/3731","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]於毛布恵尓 安布毛能奈良婆 之末思久毛 伊母我目可礼弖 安礼乎良米也母","#[訓読]思ふゑに逢ふものならばしましくも妹が目離れて我れ居らめやも","#[仮名],おもふゑに,あふものならば,しましくも,いもがめかれて,あれをらめやも","#[左注](右十四首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,配流,恋情,羈旅,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
おもふゑに[寛],
あふものならば,[寛]あふものならは,
しましくも[寛],
いもがめかれて,[寛]いもかめかれて,
あれをらめやも[寛],
" "#[番号]15/3732","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]安可祢佐須 比流波毛能母比 奴婆多麻乃 欲流波須我良尓 祢能<未>之奈加由","#[訓読]あかねさす昼は物思ひぬばたまの夜はすがらに音のみし泣かゆ","#[仮名],あかねさす,ひるはものもひ,ぬばたまの,よるはすがらに,ねのみしなかゆ","#[左注](右十四首中臣朝臣宅守)","#[校異]美 -> 未 [天][紀][細]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,恋情,枕詞,恋情,羈旅,配流,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
あかねさす[寛],
ひるはものもひ[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よるはすがらに,[寛]よるはすからに,
ねのみしなかゆ[寛],
" "#[番号]15/3733","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]和伎毛故我 可多美能許呂母 奈可里世婆 奈尓毛能母弖加 伊能知都我麻之","#[訓読]我妹子が形見の衣なかりせば何物もてか命継がまし","#[仮名],わぎもこが,かたみのころも,なかりせば,なにものもてか,いのちつがまし","#[左注](右十四首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,恋情,配流,羈旅,孤独,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
かたみのころも[寛],
なかりせば,[寛]なかりせは,
なにものもてか[寛],
いのちつがまし,[寛]いのちつかまし,
" "#[番号]15/3734","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]等保伎山 世伎毛故要伎奴 伊麻左良尓 安布倍伎与之能 奈伎我佐夫之佐 [一云 左必之佐] ","#[訓読]遠き山関も越え来ぬ今さらに逢ふべきよしのなきが寂しさ [一云 さびしさ] ","#[仮名],とほきやま,せきもこえきぬ,いまさらに,あふべきよしの,なきがさぶしさ,[さびしさ]","#[左注](右十四首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,羈旅,配流,恋情,異伝,贈答,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
とほきやま[寛],
せきもこえきぬ[寛],
いまさらに[寛],
あふべきよしの,[寛]あふへきよしの,
なきがさぶしさ,[寛]なきかさふしさ,
[さびしさ],[寛]さひしさ,
" "#[番号]15/3735","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]於毛波受母 麻許等安里衣牟也 左奴流欲能 伊米尓毛伊母我 美延射良奈久尓","#[訓読]思はずもまことあり得むやさ寝る夜の夢にも妹が見えざらなくに","#[仮名],おもはずも,まことありえむや,さぬるよの,いめにもいもが,みえざらなくに","#[左注](右十四首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
おもはずも,[寛]おもはすも,
まことありえむや[寛],
さぬるよの[寛],
いめにもいもが,[寛]いめにもいもか,
みえざらなくに,[寛]みえさらなくに,
" "#[番号]15/3736","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]等保久安礼婆 一日一夜毛 於<母>波受弖 安流良牟母能等 於毛保之賣須奈","#[訓読]遠くあれば一日一夜も思はずてあるらむものと思ほしめすな","#[仮名],とほくあれば,ひとひひとよも,おもはずて,あるらむものと,おもほしめすな","#[左注](右十四首中臣朝臣宅守)","#[校異]毛 -> 母 [天][類][紀][細]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,恋情,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
とほくあれば,[寛]とほくあれは,
ひとひひとよも[寛],
おもはずて,[寛]おもはすて,
あるらむものと[寛],
おもほしめすな[寛],
" "#[番号]15/3737","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]比等余里波 伊毛曽母安之伎 故非毛奈久 安良末<思>毛能乎 於毛波之米都追","#[訓読]人よりは妹ぞも悪しき恋もなくあらましものを思はしめつつ","#[仮名],ひとよりは,いもぞもあしき,こひもなく,あらましものを,おもはしめつつ","#[左注](右十四首中臣朝臣宅守)","#[校異]之 -> 思 [天][類][紀][細]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,羈旅,配流,贈答,恋情,悲別,怨恨,狭野弟上娘子","#[訓異]
ひとよりは[寛],
いもぞもあしき,[寛]いもそもあしき,
こひもなく[寛],
あらましものを[寛],
おもはしめつつ[寛],
" "#[番号]15/3738","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]於毛比都追 奴礼婆可毛<等>奈 奴婆多麻能 比等欲毛意知受 伊米尓之見由流","#[訓読]思ひつつ寝ればかもとなぬばたまの一夜もおちず夢にし見ゆる","#[仮名],おもひつつ,ぬればかもとな,ぬばたまの,ひとよもおちず,いめにしみゆる","#[左注](右十四首中臣朝臣宅守)","#[校異]登 -> 等 [天][紀]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,枕詞,狭野弟上娘子","#[訓異]
おもひつつ[寛],
ぬればかもとな,[寛]ぬれはかもとな,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
ひとよもおちず,[寛]ひとよもおちす,
いめにしみゆる[寛],
" "#[番号]15/3739","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]可久婆可里 古非牟等可祢弖 之良末世婆 伊毛乎婆美受曽 安流倍久安里家留","#[訓読]かくばかり恋ひむとかねて知らませば妹をば見ずぞあるべくありける","#[仮名],かくばかり,こひむとかねて,しらませば,いもをばみずぞ,あるべくありける","#[左注](右十四首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,後悔,狭野弟上娘子","#[訓異]
かくばかり,[寛]かくはかり,
こひむとかねて[寛],
しらませば,[寛]しらませは,
いもをばみずぞ,[寛]いもをはみすそ,
あるべくありける,[寛]あるへくありける,
" "#[番号]15/3740","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]安米都知能 可未奈伎毛能尓 安良婆許曽 安我毛布伊毛尓 安波受思仁世米","#[訓読]天地の神なきものにあらばこそ我が思ふ妹に逢はず死にせめ","#[仮名],あめつちの,かみなきものに,あらばこそ,あがもふいもに,あはずしにせめ","#[左注](右十四首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,狭野弟上娘子","#[訓異]
あめつちの[寛],
かみなきものに[寛],
あらばこそ,[寛]あらはこそ,
あがもふいもに,[寛]あかもふいもに,
あはずしにせめ,[寛]あはすしにせめ,
" "#[番号]15/3741","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]伊能知乎之 麻多久之安良婆 安里伎奴能 安里弖能知尓毛 安波射良米也母 [一云 安里弖能乃知毛] ","#[訓読]命をし全くしあらばあり衣のありて後にも逢はざらめやも [一云 ありての後も] ","#[仮名],いのちをし,またくしあらば,ありきぬの,ありてのちにも,あはざらめやも,[ありてののちも]","#[左注](右十四首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,枕詞,異伝,狭野弟上娘子","#[訓異]
いのちをし[寛],
またくしあらば,[寛]またくしあらは,
ありきぬの[寛],
ありてのちにも[寛],
あはざらめやも,[寛]あはさらめやも,
[ありてののちも][寛],
" "#[番号]15/3742","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]安波牟日乎 其日等之良受 等許也未尓 伊豆礼能日麻弖 安礼古非乎良牟","#[訓読]逢はむ日をその日と知らず常闇にいづれの日まで我れ恋ひ居らむ","#[仮名],あはむひを,そのひとしらず,とこやみに,いづれのひまで,あれこひをらむ","#[左注](右十四首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
あはむひを[寛],
そのひとしらず,[寛]そのひとしらす,
とこやみに[寛],
いづれのひまで,[寛]いつれのひまて,
あれこひをらむ[寛],
" "#[番号]15/3743","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]多婢等伊倍婆 許等尓曽夜須伎 須久奈久毛 伊母尓戀都々 須敝奈家奈久尓","#[訓読]旅といへば言にぞやすきすくなくも妹に恋ひつつすべなけなくに","#[仮名],たびといへば,ことにぞやすき,すくなくも,いもにこひつつ,すべなけなくに","#[左注](右十四首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
たびといへば,[寛]たひといへは,
ことにぞやすき,[寛]ことにそやすき,
すくなくも[寛],
いもにこひつつ[寛],
すべなけなくに,[寛]すへなけなくに,
" "#[番号]15/3744","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]和伎毛故尓 古布流尓安礼波 多麻吉波流 美自可伎伊能知毛 乎之家久母奈思","#[訓読]我妹子に恋ふるに我れはたまきはる短き命も惜しけくもなし","#[仮名],わぎもこに,こふるにあれは,たまきはる,みじかきいのちも,をしけくもなし","#[左注]右十四首中臣朝臣宅守","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,枕詞,恋情,狭野弟上娘子","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
こふるにあれは[寛],
たまきはる[寛],
みじかきいのちも,[寛]みしかきいのちも,
をしけくもなし[寛],
" "#[番号]15/3745","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]伊能知安良婆 安布許登母安良牟 和我由恵尓 波太奈於毛比曽 伊能知多尓敝波","#[訓読]命あらば逢ふこともあらむ我がゆゑにはだな思ひそ命だに経ば","#[仮名],いのちあらば,あふこともあらむ,わがゆゑに,はだなおもひそ,いのちだにへば","#[左注](右九首娘子)","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,悲別,慰撫,恋情,中臣宅守","#[訓異]
いのちあらば,[寛]いのちあらは,
あふこともあらむ[寛],
わがゆゑに,[寛]わかゆゑに,
はだなおもひそ,[寛]はたなおもひそ,
いのちだにへば,[寛]いのちたにへは,
" "#[番号]15/3746","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]<比>等能宇々流 田者宇恵麻佐受 伊麻佐良尓 久尓和可礼之弖 安礼波伊可尓勢武","#[訓読]人の植うる田は植ゑまさず今さらに国別れして我れはいかにせむ","#[仮名],ひとのううる,たはうゑまさず,いまさらに,くにわかれして,あれはいかにせむ","#[左注](右九首娘子)","#[校異]此 -> 比 [類][紀][細]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,中臣宅守","#[訓異]
ひとのううる[寛],
たはうゑまさず,[寛]たはうゑまさす,
いまさらに[寛],
くにわかれして[寛],
あれはいかにせむ[寛],
" "#[番号]15/3747","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]和我屋度能 麻都能葉見都々 安礼麻多無 波夜可反里麻世 古非之奈奴刀尓","#[訓読]我が宿の松の葉見つつ我れ待たむ早帰りませ恋ひ死なぬとに","#[仮名],わがやどの,まつのはみつつ,あれまたむ,はやかへりませ,こひしなぬとに","#[左注](右九首娘子)","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,中臣宅守","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
まつのはみつつ[寛],
あれまたむ[寛],
はやかへりませ[寛],
こひしなぬとに[寛],
" "#[番号]15/3748","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]比等久尓波 須美安之等曽伊布 須牟也氣久 波也可反里万世 古非之奈奴刀尓","#[訓読]他国は住み悪しとぞ言ふ速けく早帰りませ恋ひ死なぬとに","#[仮名],ひとくには,すみあしとぞいふ,すむやけく,はやかへりませ,こひしなぬとに","#[左注](右九首娘子)","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,中臣宅守","#[訓異]
ひとくには[寛],
すみあしとぞいふ,[寛]すみあしとそいふ,
すむやけく[寛],
はやかへりませ[寛],
こひしなぬとに,[寛]こひのなぬとに,
" "#[番号]15/3749","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]比等久尓々 伎美乎伊麻勢弖 伊<都><麻>弖可 安我故非乎良牟 等伎乃之良奈久","#[訓読]他国に君をいませていつまでか我が恋ひ居らむ時の知らなく","#[仮名],ひとくにに,きみをいませて,いつまでか,あがこひをらむ,ときのしらなく","#[左注](右九首娘子)","#[校異]豆 -> 都 [類][紀][細] / 摩 -> 麻 [類][紀][温][細]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,中臣宅守","#[訓異]
ひとくにに[寛],
きみをいませて[寛],
いつまでか,[寛]いつまてか,
あがこひをらむ,[寛]あかこひをらむ,
ときのしらなく[寛],
" "#[番号]15/3750","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]安米都知乃 曽許比能宇良尓 安我其等久 伎美尓故布良牟 比等波左祢安良自","#[訓読]天地の底ひのうらに我がごとく君に恋ふらむ人はさねあらじ","#[仮名],あめつちの,そこひのうらに,あがごとく,きみにこふらむ,ひとはさねあらじ","#[左注](右九首娘子)","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,中臣宅守","#[訓異]
あめつちの[寛],
そこひのうらに[寛],
あがごとく,[寛]あかことく,
きみにこふらむ[寛],
ひとはさねあらじ,[寛]ひとはさねあらし,
" "#[番号]15/3751","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]之呂多倍能 安我之多其呂母 宇思奈波受 毛弖礼和我世故 多太尓安布麻弖尓","#[訓読]白栲の我が下衣失はず持てれ我が背子直に逢ふまでに","#[仮名],しろたへの,あがしたごろも,うしなはず,もてれわがせこ,ただにあふまでに","#[左注](右九首娘子)","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,枕詞,中臣宅守","#[訓異]
しろたへの[寛],
あがしたごろも,[寛]あかしたころも,
うしなはず,[寛]うしなはす,
もてれわがせこ,[寛]もてれわかせこ,
ただにあふまでに,[寛]たたにあうまてに,
" "#[番号]15/3752","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]波流乃日能 宇良我奈之伎尓 於久礼為弖 君尓古非都々 宇都之家米也母","#[訓読]春の日のうら悲しきに後れ居て君に恋ひつつうつしけめやも","#[仮名],はるのひの,うらがなしきに,おくれゐて,きみにこひつつ,うつしけめやも","#[左注](右九首娘子)","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,中臣宅守","#[訓異]
はるのひの[寛],
うらがなしきに,[寛]うらかなしきに,
おくれゐて[寛],
きみにこひつつ[寛],
うつしけめやも[寛],
" "#[番号]15/3753","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]安波牟日能 可多美尓世与等 多和也女能 於毛比美太礼弖 奴敝流許呂母曽","#[訓読]逢はむ日の形見にせよとたわや女の思ひ乱れて縫へる衣ぞ","#[仮名],あはむひの,かたみにせよと,たわやめの,おもひみだれて,ぬへるころもぞ","#[左注]右九首娘子","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,中臣宅守","#[訓異]
あはむひの[寛],
かたみにせよと[寛],
たわやめの[寛],
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
ぬへるころもぞ,[寛]ぬへるころもそ,
" "#[番号]15/3754","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]過所奈之尓 世伎等婢古由流 保等登藝須 多我子尓毛 夜麻受可欲波牟","#[訓読]過所なしに関飛び越ゆる霍公鳥多我子尓毛止まず通はむ","#[仮名],くゎそなしに,せきとびこゆる,ほととぎす,*******,やまずかよはむ","#[左注](右十三首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,恋情,悲別,女歌,難訓,動物,狭野弟上娘子","#[訓異]
くゎそなしに,[寛]ひまなしに,
せきとびこゆる,[寛]せきとひこゆる,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
*******,[寛]あまたかこにも,
やまずかよはむ,[寛]やますかよはむ,
" "#[番号]15/3755","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]宇流波之等 安我毛布伊毛乎 山川乎 奈可尓敝奈里弖 夜須家久毛奈之","#[訓読]愛しと我が思ふ妹を山川を中にへなりて安けくもなし","#[仮名],うるはしと,あがもふいもを,やまかはを,なかにへなりて,やすけくもなし","#[左注](右十三首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
うるはしと[寛],
あがもふいもを,[寛]あかもふいもを,
やまかはを[寛],
なかにへなりて[寛],
やすけくもなし[寛],
" "#[番号]15/3756","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]牟可比為弖 一日毛於知受 見之可杼母 伊等波奴伊毛乎 都奇和多流麻弖","#[訓読]向ひ居て一日もおちず見しかども厭はぬ妹を月わたるまで","#[仮名],むかひゐて,ひとひもおちず,みしかども,いとはぬいもを,つきわたるまで","#[左注](右十三首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
むかひゐて[寛],
ひとひもおちず,[寛]ひとひもおちす,
みしかども,[寛]みしかとも,
いとはぬいもを[寛],
つきわたるまで,[寛]つきわたるまて,
" "#[番号]15/3757","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]安我<未>許曽 世伎夜麻<故>要弖 許己尓安良米 許己呂波伊毛尓 与里尓之母能乎","#[訓読]我が身こそ関山越えてここにあらめ心は妹に寄りにしものを","#[仮名],あがみこそ,せきやまこえて,ここにあらめ,こころはいもに,よりにしものを","#[左注](右十三首中臣朝臣宅守)","#[校異]末 -> 未 [類][紀][細] / 許 -> 故 [類][紀][細]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
あがみこそ,[寛]あかみこそ,
せきやまこえて[寛],
ここにあらめ[寛],
こころはいもに[寛],
よりにしものを[寛],
" "#[番号]15/3758","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]佐須太氣能 大宮人者 伊麻毛可母 比等奈夫理能<未> 許能美多流良武 [一云 伊麻左倍也] ","#[訓読]さす竹の大宮人は今もかも人なぶりのみ好みたるらむ [一云 今さへや] ","#[仮名],さすだけの,おほみやひとは,いまもかも,ひとなぶりのみ,このみたるらむ,[いまさへや]","#[左注](右十三首中臣朝臣宅守)","#[校異]美 -> 未 [類][紀][細]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,枕詞,贈答,羈旅,配流,怨恨,異伝,狭野弟上娘子","#[訓異]
さすだけの,[寛]さすたけの,
おほみやひとは[寛],
いまもかも[寛],
ひとなぶりのみ,[寛]ひとなふりのみ,
このみたるらむ[寛],
[いまさへや][寛],
" "#[番号]15/3759","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]多知可敝里 奈氣杼毛安礼波 之流思奈美 於毛比和夫礼弖 奴流欲之曽於保伎","#[訓読]たちかへり泣けども我れは験なみ思ひわぶれて寝る夜しぞ多き","#[仮名],たちかへり,なけどもあれは,しるしなみ,おもひわぶれて,ぬるよしぞおほき","#[左注](右十三首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,孤独,狭野弟上娘子","#[訓異]
たちかへり[寛],
なけどもあれは,[寛]なけともあれは,
しるしなみ[寛],
おもひわぶれて,[寛]おもひわふれて,
ぬるよしぞおほき,[寛]ぬるよしそおほき,
" "#[番号]15/3760","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]左奴流欲波 於保久安礼杼母 毛能毛波受 夜須久奴流欲波 佐祢奈伎母能乎","#[訓読]さ寝る夜は多くあれども物思はず安く寝る夜はさねなきものを","#[仮名],さぬるよは,おほくあれども,ものもはず,やすくぬるよは,さねなきものを","#[左注](右十三首中臣朝臣宅守)","#[校異]母毛 [紀][細](塙) 毛母","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲嘆,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
さぬるよは[寛],
おほくあれども,[寛]おほくあれとも,
ものもはず,[寛]ものもはす,
やすくぬるよは[寛],
さねなきものを[寛],
" "#[番号]15/3761","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]与能奈可能 都年能己等和利 可久左麻尓 奈<里>伎尓家良之 須恵之多祢可良","#[訓読]世の中の常のことわりかくさまになり来にけらしすゑし種から","#[仮名],よのなかの,つねのことわり,かくさまに,なりきにけらし,すゑしたねから","#[左注](右十三首中臣朝臣宅守)","#[校異]利 -> 里 [類][紀][細]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲嘆,自覚,狭野弟上娘子","#[訓異]
よのなかの[寛],
つねのことわり[寛],
かくさまに[寛],
なりきにけらし[寛],
すゑしたねから[寛],
" "#[番号]15/3762","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]和伎毛故尓 安布左可山乎 故要弖伎弖 奈伎都々乎礼杼 安布余思毛奈之","#[訓読]我妹子に逢坂山を越えて来て泣きつつ居れど逢ふよしもなし","#[仮名],わぎもこに,あふさかやまを,こえてきて,なきつつをれど,あふよしもなし","#[左注](右十三首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,枕詞,地名,滋賀県,大津市,悲別,悲嘆,狭野弟上娘子","#[訓異]
わぎもこに,[寛]わきもこに,
あふさかやまを[寛],
こえてきて,[寛]こゑてきて,
なきつつをれど,[寛]なきつつをれと,
あふよしもなし[寛],
" "#[番号]15/3763","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]多婢等伊倍婆 許<登>尓曽夜須伎 須敝毛奈久 々流思伎多婢毛 許等尓麻左米也母","#[訓読]旅と言へば言にぞやすきすべもなく苦しき旅も言にまさめやも","#[仮名],たびといへば,ことにぞやすき,すべもなく,くるしきたびも,ことにまさめやも","#[左注](右十三首中臣朝臣宅守)","#[校異]等 -> 登 [類][紀][細]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,自覚,悲嘆,狭野弟上娘子","#[訓異]
たびといへば,[寛]たひといへは,
ことにぞやすき,[寛]ことにそやすき,
すべもなく,[寛]すへもなく,
くるしきたびも,[寛]くるしきたひも,
ことにまさめやも,[寛]こらにまさめやも,
" "#[番号]15/3764","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]山川乎 奈可尓敝奈里弖 等保久登母 許己呂乎知可久 於毛保世和伎母","#[訓読]山川を中にへなりて遠くとも心を近く思ほせ我妹","#[仮名],やまかはを,なかにへなりて,とほくとも,こころをちかく,おもほせわぎも","#[左注](右十三首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
やまかはを[寛],
なかにへなりて[寛],
とほくとも[寛],
こころをちかく[寛],
おもほせわぎも,[寛]おもほせわきも,
" "#[番号]15/3765","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]麻蘇可我美 可氣弖之奴敝等 麻都里太須 可多美乃母能乎 比等尓之賣須奈","#[訓読]まそ鏡懸けて偲へとまつり出す形見のものを人に示すな","#[仮名],まそかがみ,かけてしぬへと,まつりだす,かたみのものを,ひとにしめすな","#[左注](右十三首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,枕詞,狭野弟上娘子","#[訓異]
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
かけてしぬへと,[寛]かけてしのへと,
まつりだす,[寛]まつりたす,
かたみのものを[寛],
ひとにしめすな[寛],
" "#[番号]15/3766","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]宇流波之等 於毛比之於毛<波婆> 之多婢毛尓 由比都氣毛知弖 夜麻受之努波世","#[訓読]愛しと思ひし思はば下紐に結ひつけ持ちてやまず偲はせ","#[仮名],うるはしと,おもひしおもはば,したびもに,ゆひつけもちて,やまずしのはせ","#[左注]右十三首中臣朝臣宅守","#[校異]婆波 -> 波婆 [代匠記精撰本]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,贈答,羈旅,配流,恋情,狭野弟上娘子","#[訓異]
うるはしと[寛],
おもひしおもはば,[寛]おもひしおもはは,
したびもに,[寛]したひもに,
ゆひつけもちて[寛],
やまずしのはせ,[寛]やますしのはせ,
" "#[番号]15/3767","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]多麻之比波 安之多由布敝尓 多麻布礼杼 安我牟祢伊多之 古非能之氣吉尓","#[訓読]魂は朝夕にたまふれど我が胸痛し恋の繁きに","#[仮名],たましひは,あしたゆふへに,たまふれど,あがむねいたし,こひのしげきに","#[左注](右八首娘子)","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,恋情,悲別,悲嘆,女歌,中臣宅守","#[訓異]
たましひは[寛],
あしたゆふへに[寛],
たまふれど,[寛]たまふれと,
あがむねいたし,[寛]あかむねいたし,
こひのしげきに,[寛]こひのしけきに,
" "#[番号]15/3768","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]己能許呂波 君乎於毛布等 須敝毛奈伎 古非能<未>之都々 <祢>能<未>之曽奈久","#[訓読]このころは君を思ふとすべもなき恋のみしつつ音のみしぞ泣く","#[仮名],このころは,きみをおもふと,すべもなき,こひのみしつつ,ねのみしぞなく","#[左注](右八首娘子)","#[校異]末 -> 未 [紀][温][矢] / 弥 -> 祢 [紀][細][温] / 末 -> 未 [紀][温][矢]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,恋情,悲別,悲嘆,女歌,中臣宅守","#[訓異]
このころは[寛],
きみをおもふと[寛],
すべもなき,[寛]すへもなき,
こひのみしつつ[寛],
ねのみしぞなく,[寛]ねのみしそなく,
" "#[番号]15/3769","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]奴婆多麻乃 欲流見之君乎 安久流安之多 安波受麻尓之弖 伊麻曽久夜思吉","#[訓読]ぬばたまの夜見し君を明くる朝逢はずまにして今ぞ悔しき","#[仮名],ぬばたまの,よるみしきみを,あくるあした,あはずまにして,いまぞくやしき","#[左注](右八首娘子)","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,枕詞,後悔,恋情,悲別,女歌,中臣宅守","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よるみしきみを[寛],
あくるあした[寛],
あはずまにして,[寛]あはすまにして,
いまぞくやしき,[寛]いまそくやしき,
" "#[番号]15/3770","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]安治麻野尓 屋杼礼流君我 可反里許武 等伎能牟可倍乎 伊都等可麻多武","#[訓読]味真野に宿れる君が帰り来む時の迎へをいつとか待たむ","#[仮名],あぢまのに,やどれるきみが,かへりこむ,ときのむかへを,いつとかまたむ","#[左注](右八首娘子)","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,地名,福井県,武生市,悲別,恋情,女歌,中臣宅守","#[訓異]
あぢまのに,[寛]あちまのに,
やどれるきみが,[寛]やとれるきみか,
かへりこむ[寛],
ときのむかへを[寛],
いつとかまたむ[寛],
" "#[番号]15/3771","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]宮人能 夜須伊毛祢受弖 家布々々等 麻都良武毛能乎 美要奴君可聞","#[訓読]宮人の安寐も寝ずて今日今日と待つらむものを見えぬ君かも","#[仮名],みやひとの,やすいもねずて,けふけふと,まつらむものを,みえぬきみかも","#[左注](右八首娘子)","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,恋情,悲別,大赦,女歌,中臣宅守","#[訓異]
みやひとの[寛],
やすいもねずて,[寛]やすいもねすて,
けふけふと[寛],
まつらむものを[寛],
みえぬきみかも[寛],
" "#[番号]15/3772","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]可敝里家流 比等伎多礼里等 伊比之可婆 保等保登之尓吉 君香登於毛比弖","#[訓読]帰りける人来れりと言ひしかばほとほと死にき君かと思ひて","#[仮名],かへりける,ひときたれりと,いひしかば,ほとほとしにき,きみかとおもひて","#[左注](右八首娘子)","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,恋情,悲別,大赦,女歌,中臣宅守","#[訓異]
かへりける[寛],
ひときたれりと[寛],
いひしかば,[寛]いひしかは,
ほとほとしにき[寛],
きみかとおもひて[寛],
" "#[番号]15/3773","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]君我牟多 由可麻之毛能乎 於奈自許等 於久礼弖乎礼杼 与伎許等毛奈之","#[訓読]君が共行かましものを同じこと後れて居れどよきこともなし","#[仮名],きみがむた,ゆかましものを,おなじこと,おくれてをれど,よきこともなし","#[左注](右八首娘子)","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,恋情,悲別,大赦,女歌,中臣宅守","#[訓異]
きみがむた,[寛]きみかむた,
ゆかましものを[寛],
おなじこと,[寛]おなしこと,
おくれてをれど,[寛]おくれてをれと,
よきこともなし[寛],
" "#[番号]15/3774","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]和我世故我 可反里吉麻佐武 等伎能多米 伊能知能己佐牟 和須礼多麻布奈","#[訓読]我が背子が帰り来まさむ時のため命残さむ忘れたまふな","#[仮名],わがせこが,かへりきまさむ,ときのため,いのちのこさむ,わすれたまふな","#[左注]右八首娘子","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,恋情,悲別,期待,大赦,女歌,中臣宅守","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
かへりきまさむ[寛],
ときのため[寛],
いのちのこさむ[寛],
わすれたまふな[寛],
" "#[番号]15/3775","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]安良多麻能 等之能乎奈我久 安波射礼杼 家之伎己許呂乎 安我毛波奈久尓","#[訓読]あらたまの年の緒長く逢はざれど異しき心を我が思はなくに","#[仮名],あらたまの,としのをながく,あはざれど,けしきこころを,あがもはなくに","#[左注](右二首中臣朝臣宅守)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,恋情,悲別,女歌,心変わり,狭野弟上娘子","#[訓異]
あらたまの[寛],
としのをながく,[寛]としのをなかく,
あはざれど,[寛]あはされと,
けしきこころを[寛],
あがもはなくに,[寛]あかもはなくに,
" "#[番号]15/3776","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]家布毛可母 美也故奈里世婆 見麻久保里 尓之能御馬屋乃 刀尓多弖良麻之","#[訓読]今日もかも都なりせば見まく欲り西の御馬屋の外に立てらまし","#[仮名],けふもかも,みやこなりせば,みまくほり,にしのみまやの,とにたてらまし","#[左注]右二首中臣朝臣宅守","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,配流,恋情,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
けふもかも[寛],
みやこなりせば,[寛]みやこなりせは,
みまくほり[寛],
にしのみまやの[寛],
とにたてらまし[寛],
" "#[番号]15/3777","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]伎能布家布 伎美尓安波受弖 須流須敝能 多度伎乎之良尓 祢能未之曽奈久","#[訓読]昨日今日君に逢はずてするすべのたどきを知らに音のみしぞ泣く","#[仮名],きのふけふ,きみにあはずて,するすべの,たどきをしらに,ねのみしぞなく","#[左注](右二首娘子)","#[校異]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,配流,恋情,悲別,中臣宅守","#[訓異]
きのふけふ[寛],
きみにあはずて,[寛]きみにあはすて,
するすべの,[寛]するすへの,
たどきをしらに,[寛]たときをしらに,
ねのみしぞなく,[寛]ねのみしそなく,
" "#[番号]15/3778","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]之路多<倍>乃 阿我許呂毛弖乎 登里母知弖 伊波敝和我勢古 多太尓安布末R尓","#[訓読]白栲の我が衣手を取り持ちて斎へ我が背子直に逢ふまでに","#[仮名],しろたへの,あがころもでを,とりもちて,いはへわがせこ,ただにあふまでに","#[左注]右二首娘子","#[校異]信 -> 倍 [西(訂正)][類][紀][細]","#[事項],作者:狭野弟上娘子,天平12年,年紀,枕詞,恋情,期待,女歌,中臣宅守","#[訓異]
しろたへの[寛],
あがころもでを,[寛]あかころもてを,
とりもちて[寛],
いはへわがせこ,[寛]いはへわかせこ,
ただにあふまでに,[寛]たたにあふまてに,
" "#[番号]15/3779","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]和我夜度乃 波奈多知<婆>奈波 伊多都良尓 知利可須具良牟 見流比等奈思尓","#[訓読]我が宿の花橘はいたづらに散りか過ぐらむ見る人なしに","#[仮名],わがやどの,はなたちばなは,いたづらに,ちりかすぐらむ,みるひとなしに","#[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)","#[校異]波 -> 婆 [類][紀][細]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,植物,譬喩,恋情,悲別,狭野弟上娘子","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
はなたちばなは,[寛]はなたちはなは,
いたづらに,[寛]いたつらに,
ちりかすぐらむ,[寛]ちりかすくらむ,
みるひとなしに[寛],
" "#[番号]15/3780","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]古非之奈婆 古非毛之祢等也 保等登藝須 毛能毛布等伎尓 伎奈吉等余牟流","#[訓読]恋ひ死なば恋ひも死ねとや霍公鳥物思ふ時に来鳴き響むる","#[仮名],こひしなば,こひもしねとや,ほととぎす,ものもふときに,きなきとよむる","#[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,動物,恋情,狭野弟上娘子","#[訓異]
こひしなば,[寛]こひしなは,
こひもしねとや[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
ものもふときに[寛],
きなきとよむる[寛],
" "#[番号]15/3781","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]多婢尓之弖 毛能毛布等吉尓 保等登藝須 毛等奈那難吉曽 安我古非麻左流","#[訓読]旅にして物思ふ時に霍公鳥もとなな鳴きそ我が恋まさる","#[仮名],たびにして,ものもふときに,ほととぎす,もとなななきそ,あがこひまさる","#[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,動物,羈旅,配流,恋情,怨恨,狭野弟上娘子","#[訓異]
たびにして,[寛]たひにして,
ものもふときに,[寛]ものものときに,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
もとなななきそ[寛],
あがこひまさる,[寛]あかこひまさる,
" "#[番号]15/3782","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]安麻其毛理 毛能母布等伎尓 保等登藝須 和我須武佐刀尓 伎奈伎等余母須","#[訓読]雨隠り物思ふ時に霍公鳥我が住む里に来鳴き響もす","#[仮名],あまごもり,ものもふときに,ほととぎす,わがすむさとに,きなきとよもす","#[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,動物,羈旅,配流,恋情,狭野弟上娘子","#[訓異]
あまごもり,[寛]あまこもり,
ものもふときに[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
わがすむさとに,[寛]わかすむさとに,
きなきとよもす,[寛]きなきとよます,
" "#[番号]15/3783","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]多婢尓之弖 伊毛尓古布礼婆 保登等伎須 和我須武佐刀尓 許<欲>奈伎和多流","#[訓読]旅にして妹に恋ふれば霍公鳥我が住む里にこよ鳴き渡る","#[仮名],たびにして,いもにこふれば,ほととぎす,わがすむさとに,こよなきわたる","#[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)","#[校異]余 -> 欲 [類][細]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,動物,恋情,羈旅,配流,狭野弟上娘子","#[訓異]
たびにして,[寛]たひにして,
いもにこふれば,[寛]いもにこふれは,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
わがすむさとに,[寛]わかすむさとに,
こよなきわたる[寛],
" "#[番号]15/3784","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]許己呂奈伎 登里尓曽安利家流 保登等藝須 毛能毛布等伎尓 奈久倍吉毛能可","#[訓読]心なき鳥にぞありける霍公鳥物思ふ時に鳴くべきものか","#[仮名],こころなき,とりにぞありける,ほととぎす,ものもふときに,なくべきものか","#[左注](右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌)","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,動物,恋情,羈旅,配流,怨恨,狭野弟上娘子","#[訓異]
こころなき[寛],
とりにぞありける,[寛]とりにそありける,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
ものもふときに[寛],
なくべきものか,[寛]なくへきものか,
" "#[番号]15/3785","#[題詞](中臣朝臣宅守与狭野弟上娘子贈答歌)","#[原文]保登等藝須 安比太之麻思於家 奈我奈氣婆 安我毛布許己呂 伊多母須敝奈之","#[訓読]霍公鳥間しまし置け汝が鳴けば我が思ふ心いたもすべなし","#[仮名],ほととぎす,あひだしましおけ,ながなけば,あがもふこころ,いたもすべなし","#[左注]右七首中臣朝臣宅守寄花鳥陳思作歌","#[校異]","#[事項],作者:中臣宅守,天平12年,年紀,動物,恋情,羈旅,配流,狭野弟上娘子","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
あひだしましおけ,[寛]あひたしましおけ,
ながなけば,[寛]なかなけは,
あがもふこころ,[寛]あかもふこころ,
いたもすべなし,[寛]いたもすへなし,
" "#[番号]16/3786","#[題詞]有由縁并雜歌 / 昔者有娘子 字曰櫻兒也 于時有二壮子 共誂此娘而捐生挌<競>貪死相敵 於是娘子戯欷曰 従古<来>今未聞未見一女之身徃適二門矣 方今壮子之意有難和平 不如妾死相害永息 尓乃尋入林中懸樹經死 其兩壮子不敢哀慟血泣漣襟 各陳心緒作歌二首","#[原文]春去者 挿頭尓将為跡 我念之 櫻花者 散去流香聞 [其一]","#[訓読]春さらばかざしにせむと我が思ひし桜の花は散りにけるかも [其一]","#[仮名],はるさらば,かざしにせむと,わがもひし,さくらのはなは,ちりにけるかも","#[左注]","#[校異]并 [西(削除)] / 竟 -> 競 [尼][類][古] / 来于 -> 来 [尼][類][古] / 散去 [尼][類](塙) 去","#[事項],雑歌,歌語り,櫻児,恋愛,二男一女,物語,悲嘆,譬喩","#[訓異]
はるさらば,[寛]はるさらは,
かざしにせむと,[寛]かさしにせむと,
わがもひし,[寛]わかおもひし,
さくらのはなは[寛],
ちりにけるかも[寛],
" "#[番号]16/3787","#[題詞](昔物有娘子 字曰櫻兒也 于時有二壮子 共誂此娘而捐生挌<競>貪死相敵 於是娘子戯欷曰 従古<来>今未聞未見一女之見徃適二門矣 方今壮子之意有難和平 不如妾死相害永息 尓乃尋入林中懸樹經死 其兩壮子不敢哀慟血泣漣襟 各陳心緒作歌二首)","#[原文]妹之名尓 繋有櫻 花開者 常哉将戀 弥年之羽尓 [其二]","#[訓読]妹が名に懸けたる桜花咲かば常にや恋ひむいや年のはに [其二]","#[仮名],いもがなに,かけたるさくら,はなさかば,つねにやこひむ,いやとしのはに","#[左注]","#[校異]開 [尼] 散","#[事項],雑歌,歌語り,物語,恋愛,櫻児,二男一女,悲嘆,譬喩","#[訓異]
いもがなに,[寛]いもかなに,
かけたるさくら[寛],
はなさかば,[寛]はなちらは,
つねにやこひむ[寛],
いやとしのはに[寛],
" "#[番号]16/3788","#[題詞]或曰 <昔>有三男同娉一女也 娘子嘆息曰 一女之身易滅如露 三雄之志難平如石 遂乃彷徨池上沈没水底 於時其壮士等不勝哀頽之至 各陳所心作歌三首 [娘子字曰<イ>兒也]","#[原文]無耳之 池羊蹄恨之 吾妹兒之 来乍潜者 水波将涸 [一]","#[訓読]耳成の池し恨めし我妹子が来つつ潜かば水は涸れなむ [一]","#[仮名],みみなしの,いけしうらめし,わぎもこが,きつつかづかば,みづはかれなむ","#[左注]","#[校異]<> -> 昔 [尼][類][紀] / イ [西(上書訂正)][尼][類][古]","#[事項],雑歌,歌語り,物語,恋愛,三男一女,悲嘆,地名,奈良,橿原","#[訓異]
みみなしの[寛],
いけしうらめし[寛],
わぎもこが,[寛]わきもこか,
きつつかづかば,[寛]きつつかくれは,
みづはかれなむ,[寛]みつはかれなむ,
" "#[番号]16/3789","#[題詞](或曰 <昔>有三男同娉一女也 娘子嘆息曰 一女之身易滅如露 三雄之志難平如石 遂乃彷徨池上沈没水底 於時其壮士等不勝哀頽之至 各陳所心作歌三首 [娘子字曰<イ>兒也])","#[原文]足曳之 山イ之兒 今日徃跡 吾尓告世婆 還来麻之乎 [二]","#[訓読]あしひきの山縵の子今日行くと我れに告げせば帰り来ましを [二]","#[仮名],あしひきの,やまかづらのこ,けふゆくと,われにつげせば,かへりきましを","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,枕詞,植物,歌物語,物語,三男一女,悲嘆,恋愛","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまかづらのこ,[寛]やまかつらのこ,
けふゆくと[寛],
われにつげせば,[寛]われにつけせは,
かへりきましを,[寛]かへりこましを,
" "#[番号]16/3790","#[題詞](或曰 <昔>有三男同娉一女也 娘子嘆息曰 一女之身易滅如露 三雄之志難平如石 遂乃彷徨池上沈没水底 於時其壮士等不勝哀頽之至 各陳所心作歌三首 [娘子字曰<イ>兒也])","#[原文]足曳之 玉イ之兒 如今日 何隈乎 見管来尓監 [三]","#[訓読]あしひきの玉縵の子今日のごといづれの隈を見つつ来にけむ [三]","#[仮名],あしひきの,たまかづらのこ,けふのごと,いづれのくまを,みつつきにけむ","#[左注]","#[校異]玉 [万葉集童蒙抄](塙)(楓) 山","#[事項],雑歌,枕詞,,植物,歌物語,物語,三男一女,悲嘆,恋愛","#[訓異]
あしひきの[寛],
たまかづらのこ,[寛]たまかつらのこ,
けふのごと,[寛]けふのこと,
いづれのくまを,[寛]いつれのくまを,
みつつきにけむ[寛],
" "#[番号]16/3791","#[題詞]昔有老翁 号曰竹取翁也 此翁季春之月登丘遠望 忽値煮羮之九箇女子也 百嬌無儔花容無止 于時娘子等呼老翁嗤曰 叔父来乎 吹此燭火也 於是翁曰唯<々> 漸T徐行著接座上 良久娘子等皆共含咲相推譲之曰 阿誰呼此翁哉尓乃竹取翁謝之曰 非慮之外偶逢神仙 迷惑之心無敢所禁 近狎之罪希贖以歌 即作歌一首[并短歌]","#[原文]緑子之 若子蚊見庭 垂乳為 母所懐 ウ襁 平<生>蚊見庭 結經方衣 水津裏丹縫服 頚著之 童子蚊見庭 結幡 袂著衣 服我矣 丹因 子等何四千庭 三名之綿 蚊黒為髪尾 信櫛持 於是蚊寸垂 取束 擧而裳纒見 解乱 童兒丹成見 羅丹津蚊經 色丹名著来 紫之 大綾之衣 墨江之 遠里小野之 真榛持 丹穂之為衣丹 狛錦 紐丹縫著 刺部重部 波累服 打十八為 麻續兒等 蟻衣之 寶之子等蚊 打栲者 經而織布 日曝之 朝手作尾 信巾裳成者之寸丹取為支屋所經 稲寸丁女蚊 妻問迹 我丹所来為 彼方之 二綾裏沓 飛鳥 飛鳥壮蚊 霖禁 縫為黒沓 刺佩而 庭立住 退莫立 禁尾迹女蚊 髣髴聞而 我丹所来為 水縹 絹帶尾 引帶成 韓帶丹取為 海神之 殿盖丹 飛翔 為軽如来 腰細丹 取餝氷 真十鏡 取雙懸而 己蚊果 還氷見乍 春避而 野邊尾廻者 面白見 我矣思經蚊 狭野津鳥 来鳴翔經 秋僻而 山邊尾徃者 名津蚊為迹 我矣思經蚊 天雲裳 行田菜引 還立 路尾所来者 打氷<刺> 宮尾見名 刺竹之 舎人壮裳 忍經等氷 還等氷見乍 誰子其迹哉 所思而在 如是 所為故為 古部 狭々寸為我哉 端寸八為 今日八方子等丹 五十狭邇迹哉 所思而在 如是 所為故為 古部之 賢人藻 後之世之 堅監将為迹 老人矣 送為車 持還来 <持還来> ","#[訓読]みどり子の 若子髪には たらちし 母に抱かえ ひむつきの 稚児が髪には 木綿肩衣 純裏に縫ひ着 頚つきの 童髪には 結ひはたの 袖つけ衣 着し我れを 丹よれる 子らがよちには 蜷の腸 か黒し髪を ま櫛持ち ここにかき垂れ 取り束ね 上げても巻きみ 解き乱り 童になしみ さ丹つかふ 色になつける 紫の 大綾の衣 住吉の 遠里小野の ま榛持ち にほほし衣に 高麗錦 紐に縫ひつけ 刺部重部 なみ重ね着て 打麻やし 麻続の子ら あり衣の 財の子らが 打ちし栲 延へて織る布 日さらしの 麻手作りを 信巾裳成者之寸丹取為支屋所経 稲置娘子が 妻どふと 我れにおこせし 彼方の 二綾下沓 飛ぶ鳥 明日香壮士が 長雨禁へ 縫ひし黒沓 さし履きて 庭にたたずみ 退けな立ち 禁娘子が ほの聞きて 我れにおこせし 水縹の 絹の帯を 引き帯なす 韓帯に取らし わたつみの 殿の甍に 飛び翔ける すがるのごとき 腰細に 取り装ほひ まそ鏡 取り並め懸けて おのがなり かへらひ見つつ 春さりて 野辺を廻れば おもしろみ 我れを思へか さ野つ鳥 来鳴き翔らふ 秋さりて 山辺を行けば なつかしと 我れを思へか 天雲も 行きたなびく かへり立ち 道を来れば うちひさす 宮女 さす竹の 舎人壮士も 忍ぶらひ かへらひ見つつ 誰が子ぞとや 思はえてある かくのごと 所為故為 いにしへ ささきし我れや はしきやし 今日やも子らに いさとや 思はえてある かくのごと 所為故為 いにしへの 賢しき人も 後の世の 鑑にせむと 老人を 送りし車 持ち帰りけり 持ち帰りけり ","#[仮名],みどりこの,わかごかみには,たらちし,ははにむだかえ,ひむつきの,ちごがかみには,ゆふかたぎぬ,ひつらにぬひき,うなつきの,わらはかみには,ゆひはたの,そでつけごろも,きしわれを,によれる,こらがよちには,みなのわた,かぐろしかみを,まくしもち,ここにかきたれ,とりつかね,あげてもまきみ,ときみだり,わらはになしみ,さにつかふ,いろになつける,むらさきの,おほあやのきぬ,すみのえの,とほさとをのの,まはりもち,にほほしきぬに,こまにしき,ひもにぬひつけ,*****,なみかさねきて,うちそやし,をみのこら,ありきぬの,たからのこらが,うちしたへ,はへておるぬの,ひさらしの,あさてづくりを,*****,*******,*****,いなきをとめが,つまどふと,われにおこせし,をちかたの,ふたあやしたぐつ,とぶとり,あすかをとこが,ながめさへ,ぬひしくろぐつ,さしはきて,にはにたたずみ,そけなたち,いさめをとめが,ほのききて,われにおこせし,みはなだの,きぬのおびを,ひきおびなす,からおびにとらし,わたつみの,とののいらかに,とびかける,すがるのごとき,こしほそに,とりよそほひ,まそかがみ,とりなめかけて,おのがなり,かへらひみつつ,はるさりて,のへをめぐれば,おもしろみ,われをおもへか,さのつとり,きなきかけらふ,あきさりて,やまへをゆけば,なつかしと,われをおもへか,あまくもも,ゆきたなびく,かへりたち,みちをくれば,うちひさす,みやをみな,さすたけの,とねりをとこも,しのぶらひ,かへらひみつつ,たがこぞとや,おもはえてある,かくのごと,*******,いにしへ,ささきしわれや,はしきやし,けふやもこらに,いさとや,おもはえてある,かくのごと,*******,いにしへの,さかしきひとも,のちのよの,かがみにせむと,おいひとを,おくりしくるま,もちかへりけり,もちかへりけり","#[左注]","#[校異]唯 -> 々 [類][矢][京] / 歌 [西] 謌 / 生之 -> 生 [紀][細] / 判 -> 刺 [尼][類][紀] / <> -> 持還来 [尼]","#[事項],雑歌,歌物語,物語,作者:竹取翁,神仙,枕詞,難訓,植物,地名,堺市,大阪,教訓,嘆老","#[訓異]
みどりこの,[寛]みとりこの,
わかごかみには,[寛]わかこかみには,
たらちし,[寛]たらちしの,
ははにむだかえ,[寛]ははにいたかれ,
ひむつきの,[寛]たまたすき,
ちごがかみには,[寛]はふこかみには,
ゆふかたぎぬ,[寛]むすふかたきぬ,
ひつらにぬひき,[寛]ひつりにぬひき,
うなつきの,[寛]たひつきの,
わらはかみには,[寛]うなひこかみには,
ゆひはたの,[寛]ゆふはたの,
そでつけごろも,[寛]そてつきころも,
きしわれを[寛],
によれる[寛],
こらがよちには,[寛]こらかよちには,
みなのわた,[寛]みなしつらなる,
かぐろしかみを,[寛]かくろなるかみを,
まくしもち[寛],
ここにかきたれ,[寛]ここにかきたる,
とりつかね[寛],
あげてもまきみ,[寛]あけてもまきみ,
ときみだり,[寛]ときみたれ,
わらはになしみ,[寛]うなひこになれる,
さにつかふ,[寛]みつらにつかふる,
いろになつける,[寛]いろになつけくる,
むらさきの[寛],
おほあやのきぬ,[寛]おほあやのころも,
すみのえの[寛],
とほさとをのの[寛],
まはりもち,[寛]まはきもて,
にほほしきぬに[寛],
こまにしき[寛],
ひもにぬひつけ[寛],
*****,[寛]さしへかさね,
なみかさねきて,[寛]へなみかさねきて,
うちそやし,[寛]うちそはし,
をみのこら[寛],
ありきぬの[寛],
たからのこらが,[寛]たからのこらか,
うちしたへ,[寛]うつたへは,
はへておるぬの,[寛]へてをるぬのを,
ひさらしの,[寛]ひにさらし,
あさてづくりを,[寛]あさてつくらひ,
*****,[寛]しきもなせは,
*******,[寛]しきにとりしき,
*****,[寛]やとにへて,
いなきをとめが,[寛]いねすをとめか,
つまどふと,[寛]つまとふと,
われにおこせし,[寛]われにそきにし,
をちかたの[寛],
ふたあやしたぐつ,[寛]ふたあやうらくつ,
とぶとり,[寛]とふとりの,
あすかをとこが,[寛]あすかをとこか,
ながめさへ,[寛]なかめいみ,
ぬひしくろぐつ,[寛]ぬひしくろくつ,
さしはきて[寛],
にはにたたずみ,[寛]にはにたたすみ,
そけなたち,[寛]いてなたち,
いさめをとめが,[寛]いさむをとめか,
ほのききて[寛],
われにおこせし,[寛]われにそこし,
みはなだの,[寛]みはなたの,
きぬのおびを,[寛]きぬのおひを,
ひきおびなす,[寛]ひきおひなれる,
からおびにとらし,[寛]からおひにとらし,
わたつみの[寛],
とののいらかに,[寛]とののみさかに,
とびかける,[寛]とひかける,
すがるのごとき,[寛]すかるのことき,
こしほそに[寛],
とりよそほひ,[寛]とりてかさらひ,
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
とりなめかけて,[寛]とりなみかけて,
おのがなり,[寛]おのかみの,
かへらひみつつ[寛],
はるさりて[寛],
のへをめぐれば,[寛]のへをめくれは,
おもしろみ[寛],
われをおもへか,[寛]われをおもふか,
さのつとり[寛],
きなきかけらふ[寛],
あきさりて,[寛]あきさけて,
やまへをゆけば,[寛]やまへをゆけは,
なつかしと[寛],
われをおもへか,[寛]われをおもふか,
あまくもも[寛],
ゆきたなびく,[寛]ゆきたなひき,
かへりたち[寛],
みちをくれば,[寛]みちをくるには,
うちひさす[寛],
みやをみな,[寛]みやをみてもな,
さすたけの[寛],
とねりをとこも[寛],
しのぶらひ,[寛]しのふらひ,
かへらひみつつ[寛],
たがこぞとや,[寛]たかこそとや,
おもはえてある,[寛]おもひてあらむ,
かくのごと,[寛]かく,
*******,[寛]そしこし,
いにしへ,[寛]いにしへの,
ささきしわれや[寛],
はしきやし[寛],
けふやもこらに,[寛]いふやもこらに,
いさとや,[寛]いさにとや,
おもはえてある,[寛]おもひてあらむ,
かくのごと,[寛]かく,
*******,[寛]そしこし,
いにしへの[寛],
さかしきひとも,[寛]かしこきひとも,
のちのよの[寛],
かがみにせむと,[寛]かたみにせむと,
おいひとを,[寛]おひひとを,
おくりしくるま[寛],
もちかへりけり,[寛]もてかへりこね,
もちかへりけり,
" "#[番号]16/3792","#[題詞](昔有老翁 号曰竹取翁也 此翁季春之月登丘遠望 忽値煮羮之九箇女子也 百嬌無儔花容無止 于時娘子等呼老翁嗤曰 叔父来乎 吹此燭火也 於是翁曰唯<々> 漸T徐行著接座上 良久娘子等皆共含咲相推譲之曰 阿誰呼此翁哉尓乃竹取翁謝之曰 非慮之外偶逢神仙 迷惑之心無敢所禁 近狎之罪希贖以歌 即作歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]死者木苑 相不見在目 生而在者 白髪子等丹 不生在目八方","#[訓読]死なばこそ相見ずあらめ生きてあらば白髪子らに生ひずあらめやも","#[仮名],しなばこそ,あひみずあらめ,いきてあらば,しろかみこらに,おひずあらめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,歌物語,物語,作者:竹取翁,神仙,嘆老","#[訓異]
しなばこそ,[寛]しなはこそ,
あひみずあらめ,[寛]あひみすあらめ,
いきてあらば,[寛]いきてあらは,
しろかみこらに,[寛]しらかみこらに,
おひずあらめやも,[寛]おひさらめやも,
" "#[番号]16/3793","#[題詞]((昔有老翁 号曰竹取翁也 此翁季春之月登丘遠望 忽値煮羮之九箇女子也 百嬌無儔花容無止 于時娘子等呼老翁嗤曰 叔父来乎 吹此燭火也 於是翁曰唯<々> 漸T徐行著接座上 良久娘子等皆共含咲相推譲之曰 阿誰呼此翁哉尓乃竹取翁謝之曰 非慮之外偶逢神仙 迷惑之心無敢所禁 近狎之罪希贖以歌 即作歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]白髪為 子等母生名者 如是 将若異子等丹 所詈金目八","#[訓読]白髪し子らに生ひなばかくのごと若けむ子らに罵らえかねめや","#[仮名],しろかみし,こらにおひなば,かくのごと,わかけむこらに,のらえかねめや","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,歌物語,物語,作者:竹取翁,神仙,嘆老","#[訓異]
しろかみし,[寛]しらかせむ,
こらにおひなば,[寛]こらもいきなは,
かくのごと,[寛]かくのこと,
わかけむこらに[寛],
のらえかねめや,[寛]のられかねめや,
" "#[番号]16/3794","#[題詞]娘子等和歌九首","#[原文]端寸八為 老夫之歌丹 大欲寸 九兒等哉 蚊間毛而将居 [一]","#[訓読]はしきやし翁の歌におほほしき九の子らや感けて居らむ [一]","#[仮名],はしきやし,おきなのうたに,おほほしき,ここののこらや,かまけてをらむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 歌 [西] 哥","#[事項],雑歌,女歌,歌物語,物語,竹取翁,神仙,作者:娘子","#[訓異]
はしきやし[寛],
おきなのうたに[寛],
おほほしき[寛],
ここののこらや[寛],
かまけてをらむ[寛],
" "#[番号]16/3795","#[題詞](娘子等和歌九首)","#[原文]辱尾忍 辱尾黙 無事 物不言先丹 我者将依 [二]","#[訓読]恥を忍び恥を黙して事もなく物言はぬさきに我れは寄りなむ [二]","#[仮名],はぢをしのび,はぢをもだして,こともなく,ものいはぬさきに,われはよりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,女歌,歌物語,物語,竹取翁,神仙,作者:娘子","#[訓異]
はぢをしのび,[寛]はちをしのひ,
はぢをもだして,[寛]はちをもたして,
こともなく[寛],
ものいはぬさきに[寛],
われはよりなむ[寛],
" "#[番号]16/3796","#[題詞](娘子等和歌九首)","#[原文]否藻諾藻 随欲 可赦 皃所見哉 我藻将依 [三]","#[訓読]否も諾も欲しきまにまに許すべき顔見ゆるかも我れも寄りなむ [三]","#[仮名],いなもをも,ほしきまにまに,ゆるすべき,かほみゆるかも,われもよりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,女歌,歌物語,物語,竹取翁,神仙,作者:娘子","#[訓異]
いなもをも,[寛]いなもうも,
ほしきまにまに,[寛]おもはむままに,
ゆるすべき,[寛]ゆるすへし,
かほみゆるかも,[寛]かたちみえめや,
われもよりなむ[寛],
" "#[番号]16/3797","#[題詞](娘子等和歌九首)","#[原文]死藻生藻 同心迹 結而為 友八違 我藻将依 [四]","#[訓読]死にも生きも同じ心と結びてし友や違はむ我れも寄りなむ [四]","#[仮名],しにもいきも,おなじこころと,むすびてし,ともやたがはむ,われもよりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,女歌,歌物語,物語,竹取翁,神仙,作者:娘子","#[訓異]
しにもいきも[寛],
おなじこころと,[寛]おなしこころと,
むすびてし,[寛]むすひてし,
ともやたがはむ,[寛]ともはたかはし,
われもよりなむ[寛],
" "#[番号]16/3798","#[題詞](娘子等和歌九首)","#[原文]何為迹 違将居 否藻諾藻 友之波々 我裳将依 [五]","#[訓読]何すと違ひは居らむ否も諾も友のなみなみ我れも寄りなむ [五]","#[仮名],なにすと,たがひはをらむ,いなもをも,とものなみなみ,われもよりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,女歌,歌物語,物語,竹取翁,神仙,作者:娘子","#[訓異]
なにすと,[寛]なにせむと,
たがひはをらむ,[寛]たかひはをらむ,
いなもをも,[寛]いなもうも,
とものなみなみ[寛],
われもよりなむ[寛],
" "#[番号]16/3799","#[題詞](娘子等和歌九首)","#[原文]豈藻不在 自身之柄 人子之 事藻不盡 我藻将依 [六]","#[訓読]あにもあらじおのが身のから人の子の言も尽さじ我れも寄りなむ [六]","#[仮名],あにもあらじ,おのがみのから,ひとのこの,こともつくさじ,われもよりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,女歌,歌物語,物語,竹取翁,神仙,作者:娘子","#[訓異]
あにもあらじ,[寛]あにもあらす,
おのがみのから,[寛]おのかみからを,
ひとのこの[寛],
こともつくさじ,[寛]こともつくさし,
われもよりなむ[寛],
" "#[番号]16/3800","#[題詞](娘子等和歌九首)","#[原文]者田為々寸 穂庭莫出 思而有 情者所知 我藻将依 [七]","#[訓読]はだすすき穂にはな出でそ思ひたる心は知らゆ我れも寄りなむ [七]","#[仮名],はだすすき,ほにはないでそ,おもひたる,こころはしらゆ,われもよりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,女歌,歌物語,物語,竹取翁,神仙,作者:娘子","#[訓異]
はだすすき,[寛]はたすすき,
ほにはないでそ,[寛]ほにはいつなと,
おもひたる,[寛]おもひてある,
こころはしらゆ,[寛]こころはしれり,
われもよりなむ[寛],
" "#[番号]16/3801","#[題詞](娘子等和歌九首)","#[原文]墨之江之 岸野之榛丹 々穂所經迹 丹穂葉寐我八 丹穂氷而将居 [八]","#[訓読]住吉の岸野の榛ににほふれどにほはぬ我れやにほひて居らむ [八]","#[仮名],すみのえの,きしののはりに,にほふれど,にほはぬわれや,にほひてをらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,女歌,歌物語,物語,竹取翁,神仙,地名,住吉,大阪,歌垣,作者:娘子","#[訓異]
すみのえの[寛],
きしののはりに,[寛]きしののはきに,
にほふれど,[寛]にほはせと,
にほはぬわれや,[寛]にほはぬわれは,
にほひてをらむ[寛],
" "#[番号]16/3802","#[題詞](娘子等和歌九首)","#[原文]春之野乃 下草靡 我藻依 丹穂氷因将 友之随意 [九]","#[訓読]春の野の下草靡き我れも寄りにほひ寄りなむ友のまにまに [九]","#[仮名],はるののの,したくさなびき,われもより,にほひよりなむ,とものまにまに","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,女歌,歌物語,物語,竹取翁,神仙,作者:娘子","#[訓異]
はるののの[寛],
したくさなびき,[寛]したくさなひき,
われもより,[寛]われもよる,
にほひよりなむ[寛],
とものまにまに[寛],
" "#[番号]16/3803","#[題詞]昔者有壮士與美女也[姓名未詳] 不告二親竊為交接 於時娘子之意欲親令知 因作歌詠送與其夫歌曰","#[原文]隠耳 戀<者>辛苦 山葉従 出来月之 顕者如何","#[訓読]隠りのみ恋ふれば苦し山の端ゆ出でくる月の顕さばいかに","#[仮名],こもりのみ,こふればくるし,やまのはゆ,いでくるつきの,あらはさばいかに","#[左注]右或云 男有答歌者 未得探求也","#[校異]<> -> 者 [類][古][温] / 歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,物語,歌物語,密会,婚姻,女歌,人目,作者:娘子","#[訓異]
こもりのみ,[寛]したにのみ,
こふればくるし,[寛]こふれはくるし,
やまのはゆ,[寛]やまのはに,
いでくるつきの,[寛]いてくるつきの,
あらはさばいかに,[寛]あらはれはいかに,
" "#[番号]16/3804","#[題詞]昔者有壮士 新成婚礼也 未經幾時忽為驛使被遣遠境 公事有限會期無日 於是娘子 感慟悽愴沈臥疾エ 累<年>之後壮士還来覆命既了 乃詣相視而娘子之姿容疲羸甚異言語哽咽 于時壮士哀嘆流涙裁歌口号 其歌一首","#[原文]如是耳尓 有家流物乎 猪名川之 奥乎深目而 吾念有来","#[訓読]かくのみにありけるものを猪名川の沖を深めて我が思へりける","#[仮名],かくのみに,ありけるものを,ゐながはの,おきをふかめて,わがもへりける","#[左注]","#[校異]羊 -> 年 [類][古][紀] / 歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,歌物語,物語,悲別,地名,兵庫,挽歌,怨恨","#[訓異]
かくのみに[寛],
ありけるものを[寛],
ゐながはの,[寛]ゐなかはの,
おきをふかめて[寛],
わがもへりける,[寛]わかおもへりける,
" "#[番号]16/3805","#[題詞]娘子臥聞夫君之歌従枕擧頭應聲和歌一首","#[原文]烏玉之 黒髪所<沾>而 沫雪之 零也来座 幾許戀者","#[訓読]ぬばたまの黒髪濡れて沫雪の降るにや来ますここだ恋ふれば","#[仮名],ぬばたまの,くろかみぬれて,あわゆきの,ふるにやきます,ここだこふれば","#[左注]今案 此歌其夫被使既經累載而當還時雪落之冬也 因斯娘子作此沫雪之句歟","#[校異]歌 [西] 謌 / 沽 -> 沾 [矢][京]","#[事項],雑歌,枕詞,歌物語,物語,女歌,恋情,悲別,作者:娘子","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
くろかみぬれて[寛],
あわゆきの,[寛]あはゆきの,
ふるにやきます,[寛]ふりてやきます,
ここだこふれば,[寛]ここたこふれは,
" "#[番号]16/3806","#[題詞]","#[原文]事之有者 小泊瀬山乃 石城尓母 隠者共尓 莫思吾背","#[訓読]事しあらば小泊瀬山の石城にも隠らばともにな思ひそ我が背","#[仮名],ことしあらば,をばつせやまの,いはきにも,こもらばともに,なおもひそわがせ","#[左注]右傳云 時有女子 不知父母竊接壮士也 壮士悚オ其親呵嘖稍有猶預之意 因此娘子<裁>作斯歌贈<與>其夫也","#[校異]預 [類][古](塙) 豫 / 裁 [西(上書訂正)][尼][類][古] / 歌 [西] 哥 / 歟 -> 與 [尼][類][古]","#[事項],雑歌,物語,歌物語,密会,結婚,地名,墳墓,人目,女歌,恋情,伝承,作者:娘子","#[訓異]
ことしあらば,[寛]ことしあらは,
をばつせやまの,[寛]をはつせやまの,
いはきにも[寛],
こもらばともに,[寛]こもらはともに,
なおもひそわがせ,[寛]おもふなわかせ,
" "#[番号]16/3807","#[題詞]","#[原文]安積香山 影副所見 山井之 淺心乎 吾念莫國","#[訓読]安積山影さへ見ゆる山の井の浅き心を我が思はなくに","#[仮名],あさかやま,かげさへみゆる,やまのゐの,あさきこころを,わがおもはなくに","#[左注]右歌傳云 葛城王遣于陸奥<國>之時國司祇承緩怠異甚 於時王意不悦 怒色顕面 雖設飲饌不肯宴樂 於是有前采女 風流娘子 左手捧觴右手持水 撃之王膝而詠此歌 尓乃王意解悦樂飲終日","#[校異]<> -> 國 [西(右書)][尼][類][古]","#[事項],雑歌,物語,歌物語,伝承,地名,福島県,葛城王,女歌,橘諸兄,恋愛,序詞,作者:采女","#[訓異]
あさかやま[寛],
かげさへみゆる,[寛]かけさへみゆる,
やまのゐの[寛],
あさきこころを[寛],
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]16/3808","#[題詞]","#[原文]墨江之 小集樂尓出而 寤尓毛 己妻尚乎 鏡登見津藻","#[訓読]住吉の小集楽に出でてうつつにもおの妻すらを鏡と見つも","#[仮名],すみのえの,をづめにいでて,うつつにも,おのづますらを,かがみとみつも","#[左注]右傳云 昔者鄙人 姓名未詳也 于時郷里男女衆集野遊 是會集之中有鄙人 夫婦 其婦容姿端正秀於衆諸 乃彼鄙人之意弥増愛妻之情 而作斯歌賛嘆美皃也","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,歌物語,物語,伝承,歌垣,野遊び,妻讃美,地名,住吉,大阪","#[訓異]
すみのえの[寛],
をづめにいでて,[寛]をつめにいてて,
うつつにも[寛],
おのづますらを,[寛]さかつますらを,
かがみとみつも,[寛]かかみとみつも,
" "#[番号]16/3809","#[題詞]","#[原文]商變 領為跡之御法 有者許曽 吾下衣 反賜米","#[訓読]商返しめすとの御法あらばこそ我が下衣返し給はめ","#[仮名],あきかへし,めすとのみのり,あらばこそ,あがしたごろも,かへしたまはめ","#[左注]右傳云 時有所幸娘子<也>[姓名未詳] 寵薄之後還賜寄物[俗云可多美] 於是娘子怨恨 聊作<斯>歌獻上","#[校異]<> -> 也 [尼][類][古] / <> -> 斯 [尼][類]","#[事項],雑歌,歌物語,物語,伝承,女歌,怨恨,恋愛,失恋","#[訓異]
あきかへし,[寛]あきかはり,
めすとのみのり,[寛]しらすとのみのり,
あらばこそ,[寛]あらはこそ,
あがしたごろも,[寛]わかしたころも,
かへしたまはめ[寛],
" "#[番号]16/3810","#[題詞]","#[原文]味飯乎 水尓醸成 吾待之 代者曽<无> 直尓之不有者","#[訓読]味飯を水に醸みなし我が待ちしかひはかつてなし直にしあらねば","#[仮名],うまいひを,みづにかみなし,わがまちし,かひはかつてなし,ただにしあらねば","#[左注]右傳云 昔有娘子也 相別其夫望戀經<年> 尓時夫君更<取>他妻 正身不来徒贈L物 因此娘子作此恨歌還酬之也","#[校異]無 -> 无 [尼][類][古] / 羊 -> 年 [類][古][紀] / 娶 -> 取 [尼][類][古]","#[事項],雑歌,歌物語,物語,伝承,怨恨,恋愛,失恋,女歌","#[訓異]
うまいひを,[寛]あちいひを,
みづにかみなし,[寛]みつにかみなし,
わがまちし,[寛]わかまちし,
かひはかつてなし,[寛]よはかつてなし,
ただにしあらねば,[寛]たたにしあらねは,
" "#[番号]16/3811","#[題詞]戀夫君歌一首[并短歌]","#[原文]左耳通良布 君之三言等 玉梓乃 使毛不来者 憶病 吾身一曽 千<磐>破 神尓毛莫負 卜部座 龜毛莫焼曽 戀之久尓 痛吾身曽 伊知白苦 身尓染<登>保里 村肝乃 心砕而 将死命 尓波可尓成奴 今更 君可吾乎喚 足千根乃 母之御事歟 百不足 八十乃衢尓 夕占尓毛 卜尓毛曽問 應死吾之故 ","#[訓読]さ丹つらふ 君がみ言と 玉梓の 使も来ねば 思ひ病む 我が身ひとつぞ ちはやぶる 神にもな負ほせ 占部据ゑ 亀もな焼きそ 恋ひしくに 痛き我が身ぞ いちしろく 身にしみ通り むらきもの 心砕けて 死なむ命 にはかになりぬ 今さらに 君か我を呼ぶ たらちねの 母のみ言か 百足らず 八十の衢に 夕占にも 占にもぞ問ふ 死ぬべき我がゆゑ ","#[仮名],さにつらふ,きみがみことと,たまづさの,つかひもこねば,おもひやむ,あがみひとつぞ,ちはやぶる,かみにもなおほせ,うらへすゑ,かめもなやきそ,こひしくに,いたきあがみぞ,いちしろく,みにしみとほり,むらきもの,こころくだけて,しなむいのち,にはかになりぬ,いまさらに,きみかわをよぶ,たらちねの,ははのみことか,ももたらず,やそのちまたに,ゆふけにも,うらにもぞとふ,しぬべきわがゆゑ","#[左注](右傳云 時有娘子 姓車持氏也 其夫久逕年序不作徃来 于時娘子係戀傷心 沈臥痾エ 痩羸日異忽臨泉路 於是遣使喚其夫君来 而乃歔欷流な口号斯歌 登時逝歿也)","#[校異]歌 [西] 謌 / 盤 -> 磐 [尼][類][紀] / <> -> 登 [代匠記精撰本]","#[事項],雑歌,枕詞,恋情,女歌,歌物語,伝承,作者:車持娘子","#[訓異]
さにつらふ[寛],
きみがみことと,[寛]きみかみことと,
たまづさの,[寛]たまつさの,
つかひもこねば,[寛]つかひもこねは,
おもひやむ[寛],
あがみひとつぞ,[寛]あかみひとつそ,
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
かみにもなおほせ,[寛]かみにもおほすな,
うらへすゑ[寛],
かめもなやきそ[寛],
こひしくに[寛],
いたきあがみぞ,[寛]いたむわかみそ,
いちしろく[寛],
みにしみとほり,[寛]みにしみてほり,
むらきもの[寛],
こころくだけて,[寛]こころくたけて,
しなむいのち[寛],
にはかになりぬ[寛],
いまさらに[寛],
きみかわをよぶ,[寛]きみかわをよふ,
たらちねの[寛],
ははのみことか[寛],
ももたらず,[寛]ももたらぬ,
やそのちまたに[寛],
ゆふけにも[寛],
うらにもぞとふ,[寛]うらにもそとふ,
しぬべきわがゆゑ,[寛]しなむわかゆへ,
" "#[番号]16/3812","#[題詞](戀夫君歌一首[并短歌])反歌","#[原文]卜部乎毛 八十乃衢毛 占雖問 君乎相見 多時不知毛","#[訓読]占部をも八十の衢も占問へど君を相見むたどき知らずも","#[仮名],うらへをも,やそのちまたも,うらとへど,きみをあひみむ,たどきしらずも","#[左注](右傳云 時有娘子 姓車持氏也 其夫久逕年序不作徃来 于時娘子係戀傷心 沈臥痾エ 痩羸日異忽臨泉路 於是遣使喚其夫君来 而乃歔欷流な口号斯歌 登時逝歿也)","#[校異]","#[事項],雑歌,恋情,女歌,歌物語,伝承,作者:車持娘子","#[訓異]
うらへをも[寛],
やそのちまたも[寛],
うらとへど,[寛]うらとへと,
きみをあひみむ,[寛]きみをあひみる,
たどきしらずも,[寛]たときしらすも,
" "#[番号]16/3813","#[題詞](戀夫君歌一首[并短歌])或本反歌曰","#[原文]吾命者 惜雲不有 散<追>良布 君尓依而曽 長欲為","#[訓読]我が命は惜しくもあらずさ丹つらふ君によりてぞ長く欲りせし","#[仮名],わがいのちは,をしくもあらず,さにつらふ,きみによりてぞ,ながくほりせし","#[左注]右傳云 時有娘子 姓車持氏也 其夫久逕年序不作徃来 于時娘子係戀傷心 沈臥痾エ 痩羸日異忽臨泉路 於是遣使喚其夫君来 而乃歔欷流な口号斯歌 登時逝歿也","#[校異]退 -> 追 [尼][類][古][紀]","#[事項],雑歌,歌物語,女歌,枕詞,恋情,伝承,作者:車持娘子","#[訓異]
わがいのちは,[寛]わかいのちは,
をしくもあらず,[寛]をしくもあらす,
さにつらふ[寛],
きみによりてぞ,[寛]きみによりてそ,
ながくほりせし,[寛]なかくほりせし,
" "#[番号]16/3814","#[題詞]贈歌一首","#[原文]真珠者 緒絶為尓伎登 聞之故尓 其緒復貫 吾玉尓将為","#[訓読]白玉は緒絶えしにきと聞きしゆゑにその緒また貫き我が玉にせむ","#[仮名],しらたまは,をだえしにきと,ききしゆゑに,そのをまたぬき,わがたまにせむ","#[左注](右傳云 時有娘子 夫君見棄改適他氏也 于時或有壮士 不知改適此歌贈 遣請誂於女之父母者 於是父母之意壮士未聞委曲之旨 乃作彼歌報送以顕改適之縁也)","#[校異]","#[事項],雑歌,求婚,譬喩,歌物語,伝承,恋愛,贈答","#[訓異]
しらたまは[寛],
をだえしにきと,[寛]をたえしにきと,
ききしゆゑに,[寛]ききしゆへに,
そのをまたぬき[寛],
わがたまにせむ,[寛]わかたまにせむ,
" "#[番号]16/3815","#[題詞]答歌一首","#[原文]白玉之 緒絶者信 雖然 其緒又貫 人持去家有","#[訓読]白玉の緒絶えはまことしかれどもその緒また貫き人持ち去にけり","#[仮名],しらたまの,をだえはまこと,しかれども,そのをまたぬき,ひともちいにけり","#[左注]右傳云 時有娘子 夫君見棄改適他氏也 于時或有壮士 不知改適此歌贈 遣請誂於女之父母者 於是父母之意壮士未聞委曲之旨 乃作彼歌報送以顕改適之縁也","#[校異]歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌 / 縁也 [尼][類][古][細](塙) 縁","#[事項],雑歌,譬喩,歌物語,伝承,恋愛,贈答","#[訓異]
しらたまの[寛],
をだえはまこと,[寛]をたえはまこと,
しかれども,[寛]しかれとも,
そのをまたぬき[寛],
ひともちいにけり,[寛]ひともていにけり,
" "#[番号]16/3816","#[題詞]穂積親王御歌一首","#[原文]家尓有之 櫃尓カ刺 蔵而師 戀乃奴之 束見懸而","#[訓読]家にありし櫃にかぎさし蔵めてし恋の奴のつかみかかりて","#[仮名],いへにありし,ひつにかぎさし,をさめてし,こひのやつこの,つかみかかりて","#[左注]右歌一首穂積親王宴飲之日酒酣之時好誦斯歌以為恒賞也","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:穂積皇子,宴席,伝承,誦詠,戯笑,恋愛","#[訓異]
いへにありし[寛],
ひつにかぎさし,[寛]ひつにさらさし,
をさめてし[寛],
こひのやつこの[寛],
つかみかかりて[寛],
" "#[番号]16/3817","#[題詞]","#[原文]可流羽須波 田廬乃毛等尓 吾兄子者 二布夫尓咲而 立麻為所見 [田廬者多夫世<反>]","#[訓読]かるうすは田ぶせの本に我が背子はにふぶに笑みて立ちませり見ゆ [田廬者多夫世<反>]","#[仮名],かるうすは,たぶせのもとに,わがせこは,にふぶにゑみて,たちませりみゆ","#[左注](右歌二首河村王宴居之時弾琴而即先誦此歌以為常行也)","#[校異]也 [西(訂正右書)] -> 反 [類][紀][古]","#[事項],雑歌,作者:河村王,誦詠,伝承,宴席,戯笑,恋愛","#[訓異]
かるうすは,[寛]かるはすは,
たぶせのもとに,[寛]たふせのもとに,
わがせこは,[寛]わかせこは,
にふぶにゑみて,[寛]にふふにゑみて,
たちませりみゆ,[寛]たちませるみゆ,
" "#[番号]16/3818","#[題詞]","#[原文]朝霞 香火屋之下乃 鳴川津 之努比管有常 将告兒毛欲得","#[訓読]朝霞鹿火屋が下の鳴くかはづ偲ひつつありと告げむ子もがも","#[仮名],あさかすみ,かひやがしたの,なくかはづ,しのひつつありと,つげむこもがも","#[左注]右歌二首河村王宴居之時弾琴而即先誦此歌以為常行也","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:河村王,誦詠,伝承,宴席,戯笑,恋愛","#[訓異]
あさかすみ[寛],
かひやがしたの,[寛]かひやかしたに,
なくかはづ,[寛]なくかはつ,
しのひつつありと[寛],
つげむこもがも,[寛]つけむこもかな,
" "#[番号]16/3819","#[題詞]","#[原文]暮立之 雨打零者 春日野之 草花之末乃 白露於母保遊","#[訓読]夕立の雨うち降れば春日野の尾花が末の白露思ほゆ","#[仮名],ゆふだちの,あめうちふれば,かすがのの,をばながうれの,しらつゆおもほゆ","#[左注](右歌二首小鯛王宴居之日取琴 登時必先吟詠此歌也 其小鯛王者更名置始多久美斯人也)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:小鯛王,宴席,地名,奈良,譬喩,恋愛,伝承,誦詠,置始工,置始多久美,遊行女婦","#[訓異]
ゆふだちの,[寛]ゆふたちの,
あめうちふれば,[寛]あめうちふれは,
かすがのの,[寛]かすかのの,
をばながうれの,[寛]をはなかすえの,
しらつゆおもほゆ[寛],
" "#[番号]16/3820","#[題詞]","#[原文]夕附日 指哉河邊尓 構屋之 形乎宜美 諾所因来","#[訓読]夕づく日さすや川辺に作る屋の形をよろしみうべ寄そりけり","#[仮名],ゆふづくひ,さすやかはへに,つくるやの,かたをよろしみ,うべよそりけり","#[左注]右歌二首小鯛王宴居之日取琴 登時必先吟詠此歌也 其小鯛王者更名置始多久美斯人也","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:小鯛王,置始工,置始多久美,誦詠,宴席,伝承,遊行女婦,恋愛","#[訓異]
ゆふづくひ,[寛]ゆふつくひ,
さすやかはへに[寛],
つくるやの[寛],
かたをよろしみ,[寛]かたちをよしみ,
うべよそりけり,[寛]しかそよりくる,
" "#[番号]16/3821","#[題詞]兒部女王嗤歌一首","#[原文]美麗物 何所不飽矣 坂門等之 角乃布久礼尓 四具比相尓計六","#[訓読]うましものいづく飽かじをさかとらが角のふくれにしぐひ合ひにけむ","#[仮名],うましもの,いづくあかじを,さかとらが,つののふくれに,しぐひあひにけむ","#[左注]右時有娘子 姓尺度氏也 此娘子不聴高姓美人之所誂應許下姓い士之所誂也 於是兒部女王裁作此歌嗤咲彼愚也","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:児部女王,兒部女王,尺度,大阪,坂門氏,嘲笑,伝承,戯笑,恋愛","#[訓異]
うましもの,[寛]よきものの,
いづくあかじを,[寛]なそもあかぬを,
さかとらが,[寛]さかとらか,
つののふくれに[寛],
しぐひあひにけむ,[寛]しくひあひにけむ,
" "#[番号]16/3822","#[題詞]古歌曰","#[原文]橘 寺之長屋尓 吾率宿之 童女波奈理波 髪上都良武可","#[訓読]橘の寺の長屋に我が率寝し童女放髪は髪上げつらむか","#[仮名],たちばなの,てらのながやに,わがゐねし,うなゐはなりは,かみあげつらむか","#[左注]右歌椎野連長年脉曰 夫寺家之屋者不有俗人寝處 亦稱若冠女曰放髪<丱>矣 然則<腹>句已云放髪<丱>者 尾句不可重云著冠之辞哉","#[校異]艸 -> 丱 [類][紀][温] / 脉 [万葉集拾穂抄](塙) 説 / 腰 [西(訂正左書)] -> 腹 [類][古][紀][細] / 艸 -> 丱 [類][紀][温]","#[事項],雑歌,地名,明日香,奈良,古歌,伝承,誦詠,椎野長年,恋愛","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
てらのながやに,[寛]てらのなかやに,
わがゐねし,[寛]わかゐねし,
うなゐはなりは[寛],
かみあげつらむか,[寛]かみあけつらむか,
" "#[番号]16/3823","#[題詞]决<曰>","#[原文]橘之 光有長屋尓 吾率宿之 宇奈為放尓 髪擧都良武香","#[訓読]橘の照れる長屋に我が率ねし童女放髪に髪上げつらむか","#[仮名],たちばなの,てれるながやに,わがゐねし,うなゐはなりに,かみあげつらむか","#[左注]","#[校異]云 -> 曰 [尼][類][古]","#[事項],雑歌,推敲,異伝,伝承,宴席,転用,改作,恋愛,植物","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
てれるながやに,[寛]てれるなかやに,
わがゐねし,[寛]わかゐねし,
うなゐはなりに[寛],
かみあげつらむか,[寛]かみあけつらむか,
" "#[番号]16/3824","#[題詞]長忌寸意吉麻呂歌八首","#[原文]刺名倍尓 湯和可世子等 櫟津乃 桧橋従来許武 狐尓安牟佐武","#[訓読]さし鍋に湯沸かせ子ども櫟津の桧橋より来む狐に浴むさむ","#[仮名],さしなべに,ゆわかせこども,いちひつの,ひばしよりこむ,きつねにあむさむ","#[左注]右一首傳云 一時衆<集>宴飲也 於<時>夜漏三更所聞狐聲 尓乃衆諸誘 奥麻呂曰 關此饌具雜器狐聲河橋等物但作歌者 即應聲作此歌也","#[校異]會 -> 集 [尼][類][紀] / 是 -> 時 [尼][類] / 歌 [西] 哥","#[事項],雑歌,物名,宴席,作者:長意吉麻呂,戯笑,即興,伝承,誦詠","#[訓異]
さしなべに,[寛]さすなへに,
ゆわかせこども,[寛]ゆわかせことも,
いちひつの,[寛]いちゐつの,
ひばしよりこむ,[寛]ひはしよりこむ,
きつねにあむさむ,[寛]きつにあむさむ,
" "#[番号]16/3825","#[題詞]詠行騰蔓菁食薦屋a歌","#[原文]食薦敷 蔓菁煮将来 a尓 行騰懸而 息此公","#[訓読]食薦敷き青菜煮て来む梁にむかばき懸けて休むこの君","#[仮名],すごもしき,あをなにてこむ,うつはりに,むかばきかけて,やすむこのきみ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,物名,宴席,作者:長意吉麻呂,戯笑,即興,誦詠,植物","#[訓異]
すごもしき,[寛]すこもしき,
あをなにてこむ,[寛]あをなにもてこ,
うつはりに[寛],
むかばきかけて,[寛]むかはきかけて,
やすむこのきみ[寛],
" "#[番号]16/3826","#[題詞]詠荷葉歌","#[原文]蓮葉者 如是許曽有物 意吉麻呂之 家在物者 <宇>毛乃葉尓有之","#[訓読]蓮葉はかくこそあるもの意吉麻呂が家なるものは芋の葉にあらし","#[仮名],はちすばは,かくこそあるもの,おきまろが,いへなるものは,うものはにあらし","#[左注]","#[校異]キ -> 宇 [尼][類][古]","#[事項],雑歌,物名,宴席,作者:長意吉麻呂,戯笑,即興,誦詠,植物","#[訓異]
はちすばは,[寛]はちすはは,
かくこそあるもの,[寛]かくこそあれも,
おきまろが,[寛]おきまろか,
いへなるものは[寛],
うものはにあらし,[寛]いものはにあらし,
" "#[番号]16/3827","#[題詞]詠雙六頭歌","#[原文]一二之目 耳不有 五六三 四佐倍有<来> 雙六乃佐叡","#[訓読]一二の目のみにはあらず五六三四さへありけり双六のさえ","#[仮名],いちにのめ,のみにはあらず,ごろくさむ,しさへありけり,すぐろくのさえ","#[左注]","#[校異]<> -> 来 [古]","#[事項],雑歌,物名,宴席,作者:長意吉麻呂,戯笑,即興,誦詠","#[訓異]
いちにのめ[寛],
のみにはあらず,[寛]のみにはあらす,
ごろくさむ,[寛]ころくさむ,
しさへありけり[寛],
すぐろくのさえ,[寛]すくろくのさい,
" "#[番号]16/3828","#[題詞]詠香塔厠<屎>鮒奴歌","#[原文]香塗流 塔尓莫依 川隈乃 屎鮒喫有 痛女奴","#[訓読]香塗れる塔にな寄りそ川隈の屎鮒食めるいたき女奴","#[仮名],かうぬれる,たふになよりそ,かはくまの,くそふなはめる,いたきめやつこ","#[左注]","#[校異]屎 [西(上書訂正)][尼][類][古]","#[事項],雑歌,物名,宴席,作者:長意吉麻呂,戯笑,即興,誦詠,動物","#[訓異]
かうぬれる[寛],
たふになよりそ,[寛]たうになよりそ,
かはくまの,[寛]かはすみの,
くそふなはめる[寛],
いたきめやつこ[寛],
" "#[番号]16/3829","#[題詞]詠酢醤蒜鯛水ク歌","#[原文]醤酢尓 蒜都伎合而 鯛願 吾尓勿所見 水ク乃煮物","#[訓読]醤酢に蒜搗きかてて鯛願ふ我れにな見えそ水葱の羹","#[仮名],ひしほすに,ひるつきかてて,たひねがふ,われになみえそ,なぎのあつもの","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,物名,宴席,作者:長意吉麻呂,戯笑,即興,誦詠,植物,動物","#[訓異]
ひしほすに[寛],
ひるつきかてて[寛],
たひねがふ,[寛]たいねかふ,
われになみえそ,[寛]われになみせそ,
なぎのあつもの,[寛]なきのあつもの,
" "#[番号]16/3830","#[題詞]詠玉掃鎌天木香棗歌","#[原文]玉掃 苅来鎌麻呂 室乃樹 與棗本 可吉将掃為","#[訓読]玉掃刈り来鎌麻呂むろの木と棗が本とかき掃かむため","#[仮名],たまばはき,かりこかままろ,むろのきと,なつめがもとと,かきはかむため","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,物名,宴席,作者:長意吉麻呂,戯笑,即興,誦詠,植物","#[訓異]
たまばはき,[寛]たまははき,
かりこかままろ[寛],
むろのきと[寛],
なつめがもとと,[寛]なつめかもとと,
かきはかむため[寛],
" "#[番号]16/3831","#[題詞]詠白鷺啄木飛歌","#[原文]池神 力土N可母 白鷺乃 桙啄持而 飛渡良武","#[訓読]池神の力士舞かも白鷺の桙啄ひ持ちて飛び渡るらむ","#[仮名],いけがみの,りきじまひかも,しらさぎの,ほこくひもちて,とびわたるらむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,物名,宴席,作者:長意吉麻呂,戯笑,即興,誦詠,動物","#[訓異]
いけがみの,[寛]いけかみの,
りきじまひかも,[寛]りきしまひかも,
しらさぎの,[寛]しらさきの,
ほこくひもちて[寛],
とびわたるらむ,[寛]とひわたるらむ,
" "#[番号]16/3832","#[題詞]忌部首詠數種物歌一首 [名忘失也]","#[原文]枳 蕀原苅除曽氣 倉将立 屎遠麻礼 櫛造刀自","#[訓読]からたちと茨刈り除け倉建てむ屎遠くまれ櫛造る刀自","#[仮名],からたちと,うばらかりそけ,くらたてむ,くそとほくまれ,くしつくるとじ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:忌部首,物名,宴席,戯笑,誦詠,即興,植物","#[訓異]
からたちと,[寛]からたちの,
うばらかりそけ,[寛]むはらかりそけ,
くらたてむ[寛],
くそとほくまれ[寛],
くしつくるとじ,[寛]くしつくるとし,
" "#[番号]16/3833","#[題詞]境部王詠數種物歌一首 [穂積親王之子也]","#[原文]虎尓乗 古屋乎越而 青淵尓 鮫龍取将来 劒刀毛我","#[訓読]虎に乗り古屋を越えて青淵に蛟龍捕り来む剣太刀もが","#[仮名],とらにのり,ふるやをこえて,あをふちに,みつちとりこむ,つるぎたちもが","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,動物,作者:境部王,物名,宴席,即興,穂積王,誦詠","#[訓異]
とらにのり[寛],
ふるやをこえて[寛],
あをふちに[寛],
みつちとりこむ,[寛]さめとりてこむ,
つるぎたちもが,[寛]つるきたちもか,
" "#[番号]16/3834","#[題詞]作主未詳歌一首","#[原文]成棗 寸三二粟嗣 延田葛乃 後毛将相跡 葵花咲","#[訓読]梨棗黍に粟つぎ延ふ葛の後も逢はむと葵花咲く","#[仮名],なしなつめ,きみにあはつぎ,はふくずの,のちもあはむと,あふひはなさく","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,植物,物名,宴席,誦詠,戯笑,譬喩,掛詞,序詞","#[訓異]
なしなつめ[寛],
きみにあはつぎ,[寛]きみにあはつき,
はふくずの,[寛]はふくすの,
のちもあはむと[寛],
あふひはなさく[寛],
" "#[番号]16/3835","#[題詞]獻新田部親王歌一首 [未詳]","#[原文]勝間田之 池者我知 蓮無 然言君之 鬚無如之","#[訓読]勝間田の池は我れ知る蓮なししか言ふ君が鬚なきごとし","#[仮名],かつまたの,いけはわれしる,はちすなし,しかいふきみが,ひげなきごとし","#[左注]右或有人聞之曰 新田部親王出遊于堵裏御見勝間田之池感緒御心之中 還自彼池不任怜愛 於時語婦人曰 今日遊行見勝<間>田池 水影涛々蓮花 灼々 A怜断腸不可得言 尓乃婦人作此戯歌專輙吟詠也","#[校異]<> -> 間 [古][温][矢][京]","#[事項],雑歌,伝承,新田部皇子,植物,地名,奈良,物名,戯笑,宴席","#[訓異]
かつまたの[寛],
いけはわれしる[寛],
はちすなし[寛],
しかいふきみが,[寛]しかいふきみか,
ひげなきごとし,[寛]ひけなきかこと,
" "#[番号]16/3836","#[題詞]謗<侫>人歌一首","#[原文]奈良山乃 兒手柏之 兩面尓 左毛右毛 <侫>人之友","#[訓読]奈良山の児手柏の両面にかにもかくにも侫人の伴","#[仮名],ならやまの,このてかしはの,ふたおもに,かにもかくにも,こびひとのとも","#[左注]右歌一首博士消奈行文大夫作之","#[校異]ケ -> 侫 [尼][細][温] / ケ -> 侫 [尼]","#[事項],雑歌,作者:消奈行文,嘲笑,戯笑,宴席,地名,奈良,植物","#[訓異]
ならやまの[寛],
このてかしはの[寛],
ふたおもに[寛],
かにもかくにも[寛],
こびひとのとも,[寛]ねしけひとかも,
" "#[番号]16/3837","#[題詞]","#[原文]久堅之 雨毛落奴可 蓮荷尓 渟在水乃 玉似<有将>見","#[訓読]ひさかたの雨も降らぬか蓮葉に溜まれる水の玉に似たる見む","#[仮名],ひさかたの,あめもふらぬか,はちすばに,たまれるみづの,たまににたるみむ","#[左注]右歌一首傳云 有右兵衛[姓名未詳] 多能歌作之藝也 于時府家備設酒食 饗宴府官人等 於是饌食盛之皆用荷葉 諸人酒酣歌N駱驛 乃誘兵衛云 <關>其荷葉而作<歌>者 登時應聲作斯歌也","#[校異]将有 -> 有将 [代匠記初稿本] / 歌 [西] 哥 / 歌 [西] 哥 / 開 -> 關 [温] / 此歌 -> 歌 [尼][類][古]","#[事項],雑歌,枕詞,宴席,誦詠,物名,即興,伝承","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あめもふらぬか[寛],
はちすばに,[寛]はちすはに,
たまれるみづの,[寛]たまれるみつの,
たまににたるみむ,[寛]たまににむみむ,
" "#[番号]16/3838","#[題詞]無心所著歌二首","#[原文]吾妹兒之 額尓生<流> 雙六乃 事負乃牛之 倉上之瘡","#[訓読]我妹子が額に生ふる双六のこと負の牛の鞍の上の瘡","#[仮名],わぎもこが,ひたひにおふる,すぐろくの,ことひのうしの,くらのうへのかさ","#[左注](右歌者舎人親王令侍座曰 或有作無所由之歌人者賜以錢帛 于時大舎人 安倍朝臣子祖父乃作斯歌獻上 登時以所募物錢二千文給之也)","#[校異]<> -> 流 [尼][類][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:安倍子祖父,舎人親王,即興,宴席,報償,伝承,誦詠","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
ひたひにおふる,[寛]ひたいにおふる,
すぐろくの,[寛]すくろくの,
ことひのうしの[寛],
くらのうへのかさ[寛],
" "#[番号]16/3839","#[題詞](無心所著歌二首)","#[原文]吾兄子之 犢鼻尓為流 都夫礼石之 吉野乃山尓 氷魚曽懸有 [懸有反云 佐<我>礼流]","#[訓読]我が背子が犢鼻にするつぶれ石の吉野の山に氷魚ぞ下がれる [懸有反云 佐<我>礼流]","#[仮名],わがせこが,たふさきにする,つぶれいしの,よしののやまに,ひをぞさがれる","#[左注]右歌者舎人親王令侍座曰 或有作無所由之歌人者賜以錢帛 于時大舎人 安倍朝臣子祖父乃作斯歌獻上 登時以所募物錢二千文給之也","#[校異]家 -> 我 [類][古] (塙) [尼] 義 / 歌 [西] 哥","#[事項],雑歌,作者:安倍子祖父,舎人親王,即興,宴席,報償,伝承,誦詠,地名,吉野,奈良","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
たふさきにする[寛],
つぶれいしの,[寛]つふれいしの,
よしののやまに[寛],
ひをぞさがれる,[寛]ひをそさかれる,
" "#[番号]16/3840","#[題詞]池田朝臣嗤大神朝臣奥守歌一首 [池田朝臣名忘失也]","#[原文]寺々之 女餓鬼申久 大神乃 男餓鬼被給而 其子将播","#[訓読]寺々の女餓鬼申さく大神の男餓鬼賜りてその子産まはむ","#[仮名],てらてらの,めがきまをさく,おほかみの,をがきたばりて,そのこうまはむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:池田真枚,大神奥守,嘲笑,戯笑,誦詠","#[訓異]
てらてらの[寛],
めがきまをさく,[寛]めかきまうさく,
おほかみの,[寛]おほうわの,
をがきたばりて,[寛]をかきたはりて,
そのこうまはむ,[寛]そのこはをまむ,
" "#[番号]16/3841","#[題詞]大神朝臣奥守報嗤歌一首","#[原文]佛造 真朱不足者 水渟 池田乃阿曽我 鼻上乎穿礼","#[訓読]仏造るま朱足らずは水溜まる池田の朝臣が鼻の上を掘れ","#[仮名],ほとけつくる,まそほたらずは,みづたまる,いけだのあそが,はなのうへをほれ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 哥","#[事項],雑歌,作者:大神奥守,池田真枚,嘲笑,戯笑,誦詠","#[訓異]
ほとけつくる[寛],
まそほたらずは,[寛]あかにたらすは,
みづたまる,[寛]みつたまる,
いけだのあそが,[寛]いけたのあそか,
はなのうへをほれ[寛],
" "#[番号]16/3842","#[題詞]或云 / 平群朝臣<嗤>歌一首","#[原文]小兒等 草者勿苅 八穂蓼乎 穂積乃阿曽我 腋草乎可礼","#[訓読]童ども草はな刈りそ八穂蓼を穂積の朝臣が腋草を刈れ","#[仮名],わらはども,くさはなかりそ,やほたでを,ほづみのあそが,わきくさをかれ","#[左注]","#[校異]<> -> 嗤 [尼][古][紀]","#[事項],雑歌,作者:平群広成,穂積老人,嘲笑,戯笑,誦詠,枕詞","#[訓異]
わらはども,[寛]わらはへも,
くさはなかりそ[寛],
やほたでを,[寛]やほたてを,
ほづみのあそが,[寛]ほつみのあそか,
わきくさをかれ[寛],
" "#[番号]16/3843","#[題詞]穂積朝臣和歌一首","#[原文]何所曽 真朱穿岳 薦疊 平群乃阿曽我 鼻上乎穿礼","#[訓読]いづくにぞま朱掘る岡薦畳平群の朝臣が鼻の上を掘れ","#[仮名],いづくにぞ,まそほほるをか,こもたたみ,へぐりのあそが,はなのうへをほれ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],雑歌,作者:穂積老人,平群広成,嘲笑,戯笑,誦詠,枕詞","#[訓異]
いづくにぞ,[寛]いとこにそ,
まそほほるをか,[寛]あかにほるをか,
こもたたみ[寛],
へぐりのあそが,[寛]へくりのあそか,
はなのうへをほれ[寛],
" "#[番号]16/3844","#[題詞]嗤咲黒色歌一首","#[原文]烏玉之 斐太乃大黒 毎見 巨勢乃小黒之 所念可聞","#[訓読]ぬばたまの斐太の大黒見るごとに巨勢の小黒し思ほゆるかも","#[仮名],ぬばたまの,ひだのおほぐろ,みるごとに,こせのをぐろし,おもほゆるかも","#[左注](右歌者傳云 有大舎人土師宿祢水通字曰志婢麻呂也 於時大舎人巨勢朝臣豊人字曰正月麻呂 与巨勢斐太朝臣[名字忘之也 嶋村大夫之男也]兩人並 此彼皃黒色焉 於是土師宿祢水通作斯歌<嗤>咲者 <而>巨勢朝臣豊人聞之 即作和歌酬咲也)","#[校異]","#[事項],雑歌,枕詞,作者:土師水通,巨勢斐太,巨勢豊人,嘲笑,戯笑,誦詠","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
ひだのおほぐろ,[寛]ひたのおほくろ,
みるごとに,[寛]みることに,
こせのをぐろし,[寛]こせのをくろか,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]16/3845","#[題詞]答歌一首","#[原文]造駒 土師乃志婢麻呂 白<久>有者 諾欲将有 其黒色乎","#[訓読]駒造る土師の志婢麻呂白くあればうべ欲しからむその黒色を","#[仮名],こまつくる,はじのしびまろ,しろくあれば,うべほしからむ,そのくろいろを","#[左注]右歌者傳云 有大舎人土師宿祢水通字曰志婢麻呂也 於時大舎人巨勢朝臣 豊人字曰正月麻呂 与巨勢斐太朝臣[名字忘之也 嶋村大夫之男也]兩人並 此彼皃黒色焉 於是土師宿祢水通作斯歌<嗤>咲者 <而>巨勢朝臣豊人聞之 即作和歌酬咲也","#[校異]尓 -> 久 [尼][類][古] / <> -> 嗤 [西(右書)][尼][類][紀] / <> -> 而 [尼][類][紀]","#[事項],雑歌,土師水通,巨勢斐太,作者:巨勢豊人,嘲笑,戯笑,誦詠","#[訓異]
こまつくる[寛],
はじのしびまろ,[寛]はしのしひまろ,
しろくあれば,[寛]しろにあれは,
うべほしからむ,[寛]さもほしからむ,
そのくろいろを[寛],
" "#[番号]16/3846","#[題詞]戯嗤僧歌一首","#[原文]法師等之 鬚乃剃杭 馬繋 痛勿引曽 僧半甘","#[訓読]法師らが鬚の剃り杭馬繋いたくな引きそ法師は泣かむ","#[仮名],ほふしらが,ひげのそりくひ,うまつなぎ,いたくなひきそ,ほふしはなかむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,戯笑,嘲笑","#[訓異]
ほふしらが,[寛]ほふしらか,
ひげのそりくひ,[寛]ひけのそりくひ,
うまつなぎ,[寛]うまつなき,
いたくなひきそ[寛],
ほふしはなかむ,[寛]ほうしなからかも,
" "#[番号]16/3847","#[題詞]法師報歌一首","#[原文]檀越也 然勿言 <五十>戸<長>我 課役徴者 汝毛半甘","#[訓読]壇越やしかもな言ひそ里長が課役徴らば汝も泣かむ","#[仮名],だにをちや,しかもないひそ,さとをさが,えだちはたらば,いましもなかむ","#[左注]","#[校異]弖 -> 五十 [万葉集古義] / 等 -> 長 [万葉集新考]","#[事項],雑歌,報贈,作者:僧,戯笑,嘲笑","#[訓異]
だにをちや,[寛]たむをちや,
しかもないひそ[寛],
さとをさが,[寛]てこらわか,
えだちはたらば,[寛]えたすはたらは,
いましもなかむ,[寛]なれもなからかも,
" "#[番号]16/3848","#[題詞]夢裏作歌一首","#[原文]荒城田乃 子師田乃稲乎 倉尓擧蔵而 阿奈干稲<々々>志 吾戀良久者","#[訓読]あらき田の鹿猪田の稲を倉に上げてあなひねひねし我が恋ふらくは","#[仮名],あらきたの,ししだのいねを,くらにあげて,あなひねひねし,あがこふらくは","#[左注]右歌一首忌部首黒麻呂夢裏作此戀歌贈友 覺而<令>誦習如前","#[校異]干稲 -> 々々 [尼][類][古] / 不 -> 令 [西(訂正左書)][矢][京]","#[事項],雑歌,作者:忌部黒麻呂,伝承,序詞,恋情,説話","#[訓異]
あらきたの[寛],
ししだのいねを,[寛]ししたのいねを,
くらにあげて,[寛]くらにつみて,
あなひねひねし,[寛]あなうたうたし,
あがこふらくは,[寛]わかこふらくは,
" "#[番号]16/3849","#[題詞]Q世間無常歌二首","#[原文]生死之 二海乎 Q見 潮干乃山乎 之努比鶴鴨","#[訓読]生き死にの二つの海を厭はしみ潮干の山を偲ひつるかも","#[仮名],いきしにの,ふたつのうみを,いとはしみ,しほひのやまを,しのひつるかも","#[左注](右歌二首河原寺之佛堂裏在倭琴面之)","#[校異]","#[事項],雑歌,無常,厭世,仏教,須弥山,華厳経,川原寺,明日香,奈良","#[訓異]
いきしにの[寛],
ふたつのうみを[寛],
いとはしみ,[寛]いとひみて,
しほひのやまを[寛],
しのひつるかも[寛],
" "#[番号]16/3850","#[題詞](Q世間無常歌二首)","#[原文]世間之 繁借廬尓 住々而 将至國之 多附不知聞","#[訓読]世間の繁き仮廬に住み住みて至らむ国のたづき知らずも","#[仮名],よのなかの,しげきかりほに,すみすみて,いたらむくにの,たづきしらずも","#[左注]右歌二首河原寺之佛堂裏在倭琴面之","#[校異]","#[事項],雑歌,仏教,厭世,世間虚仮,極楽,川原寺,明日香,奈良","#[訓異]
よのなかの[寛],
しげきかりほに,[寛]しけきかりほに,
すみすみて[寛],
いたらむくにの[寛],
たづきしらずも,[寛]たつきしらすも,
" "#[番号]16/3851","#[題詞]","#[原文]心乎之 無何有乃郷尓 置而有者 藐狐射能山乎 見末久知香谿務","#[訓読]心をし無何有の郷に置きてあらば藐孤射の山を見まく近けむ","#[仮名],こころをし,むがうのさとに,おきてあらば,はこやのやまを,みまくちかけむ","#[左注]右歌一首","#[校異]","#[事項],雑歌,荘子,遁世,無心","#[訓異]
こころをし[寛],
むがうのさとに,[寛]ふかうのさとに,
おきてあらば,[寛]おきたらは,
はこやのやまを[寛],
みまくちかけむ[寛],
" "#[番号]16/3852","#[題詞]","#[原文]鯨魚取 海哉死為流 山哉死為流 死許曽 海者潮干而 山者枯為礼","#[訓読]鯨魚取り海や死にする山や死にする死ぬれこそ海は潮干て山は枯れすれ","#[仮名],いさなとり,うみやしにする,やまやしにする,しぬれこそ,うみはしほひて,やまはかれすれ","#[左注]右歌一首","#[校異]","#[事項],雑歌,枕詞,仏教,輪廻,無常,旋頭歌,譬喩","#[訓異]
いさなとり[寛],
うみやしにする[寛],
やまやしにする[寛],
しぬれこそ,[寛]しねはこそ,
うみはしほひて[寛],
やまはかれすれ[寛],
" "#[番号]16/3853","#[題詞]嗤咲痩人歌二首","#[原文]石麻呂尓 吾物申 夏痩尓 <吉>跡云物曽 武奈伎取<喫> [賣世反也]","#[訓読]石麻呂に我れ物申す夏痩せによしといふものぞ鰻捕り食せ [賣世反也]","#[仮名],いはまろに,われものまをす,なつやせに,よしといふものぞ,むなぎとりめせ","#[左注](右有吉田連老字曰石麻呂 所謂仁<敬>之子也 其老為人身體甚痩 雖多喫飲形以飢饉 <因>此大伴宿祢家持聊作斯歌以為戯咲也)","#[校異]告 -> 吉 [類][古][紀] / 食 -> 喫 [尼][類]","#[事項],雑歌,吉田老,作者:大伴家持,戯笑,嘲笑,動物","#[訓異]
いはまろに,[寛]いしまろに,
われものまをす,[寛]われものまうす,
なつやせに[寛],
よしといふものぞ,[寛]よしといふものそ,
むなぎとりめせ,[寛]むなきとりめせ,
" "#[番号]16/3854","#[題詞](嗤咲痩人歌二首)","#[原文]痩々母 生有者将在乎 波多也波多 武奈伎乎漁取跡 河尓流勿","#[訓読]痩す痩すも生けらばあらむをはたやはた鰻を捕ると川に流るな","#[仮名],やすやすも,いけらばあらむを,はたやはた,むなぎをとると,かはにながるな","#[左注]右有吉田連老字曰石麻呂 所謂仁<敬>之子也 其老為人身體甚痩 雖多喫飲形以飢饉 <因>此大伴宿祢家持聊作斯歌以為戯咲也","#[校異]漁取 [尼][類] 漁 / 教 -> 敬 [尼][類][古] / <> -> 因 [西(右書)][尼][類][古]","#[事項],雑歌,作者:大伴家持,吉田老,戯笑,嘲笑,動物","#[訓異]
やすやすも,[寛]やせやせも,
いけらばあらむを,[寛]いけらはあらむを,
はたやはた[寛],
むなぎをとると,[寛]むなきをとると,
かはにながるな,[寛]かはになかるな,
" "#[番号]16/3855","#[題詞]高宮王詠數首物歌二首","#[原文]コ莢尓 延於保登礼流 屎葛 絶事無 宮将為","#[訓読]さう莢に延ひおほとれる屎葛絶ゆることなく宮仕へせむ","#[仮名],さうけふに,はひおほとれる,くそかづら,たゆることなく,みやつかへせむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:高宮王,物名,宴席,即興,植物","#[訓異]
さうけふに,[寛]ふちのきに,
はひおほとれる[寛],
くそかづら,[寛]くそかつら,
たゆることなく[寛],
みやつかへせむ[寛],
" "#[番号]16/3856","#[題詞](高宮王詠數首物歌二首)","#[原文]波羅門乃 作有流小田乎 喫烏 <瞼>腫而 幡幢尓居","#[訓読]波羅門の作れる小田を食む烏瞼腫れて幡桙に居り","#[仮名],ばらもにの,つくれるをだを,はむからす,まなぶたはれて,はたほこにをり","#[左注]","#[校異]サ -> 瞼 [古][紀][矢][京]","#[事項],雑歌,作者:高宮王,物名,宴席,即興,動物","#[訓異]
ばらもにの,[寛]はらもんの,
つくれるをだを,[寛]つくれるをたを,
はむからす[寛],
まなぶたはれて,[寛]まなふたはれて,
はたほこにをり[寛],
" "#[番号]16/3857","#[題詞]戀夫君歌一首","#[原文]飯喫騰 味母不在 雖行徃 安久毛不有 赤根佐須 君之情志 忘可祢津藻 ","#[訓読]飯食めど うまくもあらず 行き行けど 安くもあらず あかねさす 君が心し 忘れかねつも ","#[仮名],いひはめど,うまくもあらず,ゆきゆけど,やすくもあらず,あかねさす,きみがこころし,わすれかねつも","#[左注]右歌一首傳云 佐為王有近習婢也 于時宿直不遑夫君難遇 感情馳結係戀實深 於是當宿之夜夢裏相見 覺寤<探>抱曽無觸手 尓乃哽咽歔欷高聲吟詠此歌 因王聞之哀慟永免侍宿也","#[校異]採 -> 探 [尼][紀]","#[事項],雑歌,枕詞,伝承,佐為王婢,遊仙窟,恋情,誦詠","#[訓異]
いひはめど,[寛]いひはめと,
うまくもあらず,[寛]うまくもあらす,
ゆきゆけど,[寛]ありけとも,
やすくもあらず,[寛]やすくもあらす,
あかねさす[寛],
きみがこころし,[寛]きみかこころし,
わすれかねつも[寛],
" "#[番号]16/3858","#[題詞]","#[原文]比来之 吾戀力 記集 功尓申者 五位乃冠","#[訓読]このころの我が恋力記し集め功に申さば五位の冠","#[仮名],このころの,あがこひぢから,しるしあつめ,くうにまをさば,ごゐのかがふり","#[左注](右歌二首)","#[校異]","#[事項],雑歌,恋情,戯笑,嘲笑,誦詠,宴席","#[訓異]
このころの[寛],
あがこひぢから,[寛]わかこひちから,
しるしあつめ[寛],
くうにまをさば,[寛]くうにまうさは,
ごゐのかがふり,[寛]こゐのかうふり,
" "#[番号]16/3859","#[題詞]","#[原文]<頃>者之 吾戀力 不給者 京兆尓 出而将訴","#[訓読]このころの我が恋力賜らずはみさとづかさに出でて訴へむ","#[仮名],このころの,あがこひぢから,たばらずは,みさとづかさに,いでてうれへむ","#[左注]右歌二首","#[校異]項 -> 頃 [温][細]","#[事項],雑歌,恋情,戯笑,嘲笑,誦詠,宴席","#[訓異]
このころの[寛],
あがこひぢから,[寛]わかこひちから,
たばらずは,[寛]たまはすは,
みさとづかさに,[寛]みやこにいてて,
いでてうれへむ,[寛]いててうたへまうさむ,
" "#[番号]16/3860","#[題詞]筑前國志賀白水郎歌十首","#[原文]王之 不遣尓 情進尓 行之荒雄良 奥尓袖振","#[訓読]大君の遣はさなくにさかしらに行きし荒雄ら沖に袖振る","#[仮名],おほきみの,つかはさなくに,さかしらに,ゆきしあらをら,おきにそでふる","#[左注](右以神龜年中大宰府差筑前國宗像郡之百姓宗形部津麻呂宛對馬送粮舶柁師也 于時津麻呂詣於滓屋郡志賀村白水郎荒雄之許語曰 僕有小事若疑不許歟 荒雄答曰 走雖異郡同船日久 志篤兄弟在於殉死 豈復辞哉 津麻呂曰府官差僕宛對馬送粮舶柁師 容齒衰老不堪海路 故来祇候願垂相替矣 於是荒雄許諾遂従彼事自肥前國松浦縣美祢良久<埼>發舶直射對馬渡海登時忽天暗冥暴風交雨竟無順風沈没海中焉 因斯妻子等不勝犢慕裁作此歌 或云 筑前國守山上憶良臣悲感妻子之傷述志而作此歌)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山上憶良,志賀白水郎,荒雄,伝承,同情,恋情,功績,代作,福岡,志賀島,神亀,年紀","#[訓異]
おほきみの[寛],
つかはさなくに,[寛]つかはささるに,
さかしらに[寛],
ゆきしあらをら[寛],
おきにそでふる,[寛]おきにそてふる,
" "#[番号]16/3861","#[題詞](筑前國志賀白水郎歌十首)","#[原文]荒雄良乎 将来可不来可等 飯盛而 門尓出立 雖待来不座","#[訓読]荒雄らを来むか来じかと飯盛りて門に出で立ち待てど来まさず","#[仮名],あらをらを,こむかこじかと,いひもりて,かどにいでたち,まてどきまさず","#[左注](右以神龜年中大宰府差筑前國宗像郡之百姓宗形部津麻呂宛對馬送粮舶柁師也 于時津麻呂詣於滓屋郡志賀村白水郎荒雄之許語曰 僕有小事若疑不許歟 荒雄答曰 走雖異郡同船日久 志篤兄弟在於殉死 豈復辞哉 津麻呂曰府官差僕宛對馬送粮舶柁師 容齒衰老不堪海路 故来祇候願垂相替矣 於是荒雄許諾遂従彼事自肥前國松浦縣美祢良久<埼>發舶直射對馬渡海登時忽天暗冥暴風交雨竟無順風沈没海中焉 因斯妻子等不勝犢慕裁作此歌 或云 筑前國守山上憶良臣悲感妻子之傷述志而作此歌)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山上憶良,志賀白水郎,荒雄,伝承,同情,恋情,功績,悲別,代作,荒雄妻,女歌,福岡,志賀島,神亀,年紀","#[訓異]
あらをらを[寛],
こむかこじかと,[寛]こむかこしかと,
いひもりて[寛],
かどにいでたち,[寛]かとにいてたち,
まてどきまさず,[寛]まてときまさす,
" "#[番号]16/3862","#[題詞](筑前國志賀白水郎歌十首)","#[原文]志賀乃山 痛勿伐 荒雄良我 余須可乃山跡 見管将偲","#[訓読]志賀の山いたくな伐りそ荒雄らがよすかの山と見つつ偲はむ","#[仮名],しかのやま,いたくなきりそ,あらをらが,よすかのやまと,みつつしのはむ","#[左注](右以神龜年中大宰府差筑前國宗像郡之百姓宗形部津麻呂宛對馬送粮舶柁師也 于時津麻呂詣於滓屋郡志賀村白水郎荒雄之許語曰 僕有小事若疑不許歟 荒雄答曰 走雖異郡同船日久 志篤兄弟在於殉死 豈復辞哉 津麻呂曰府官差僕宛對馬送粮舶柁師 容齒衰老不堪海路 故来祇候願垂相替矣 於是荒雄許諾遂従彼事自肥前國松浦縣美祢良久<埼>發舶直射對馬渡海登時忽天暗冥暴風交雨竟無順風沈没海中焉 因斯妻子等不勝犢慕裁作此歌 或云 筑前國守山上憶良臣悲感妻子之傷述志而作此歌)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山上憶良,志賀白水郎,荒雄,伝承,同情,恋情,功績,悲別,代作,荒雄妻,女歌,地名,志賀島,福岡,神亀,年紀","#[訓異]
しかのやま[寛],
いたくなきりそ[寛],
あらをらが,[寛]あらをらか,
よすかのやまと[寛],
みつつしのはむ[寛],
" "#[番号]16/3863","#[題詞](筑前國志賀白水郎歌十首)","#[原文]荒雄良我 去尓之日従 志賀乃安麻乃 大浦田沼者 不樂有哉","#[訓読]荒雄らが行きにし日より志賀の海人の大浦田沼は寂しくもあるか","#[仮名],あらをらが,ゆきにしひより,しかのあまの,おほうらたぬは,さぶしくもあるか","#[左注](右以神龜年中大宰府差筑前國宗像郡之百姓宗形部津麻呂宛對馬送粮舶柁師也 于時津麻呂詣於滓屋郡志賀村白水郎荒雄之許語曰 僕有小事若疑不許歟 荒雄答曰 走雖異郡同船日久 志篤兄弟在於殉死 豈復辞哉 津麻呂曰府官差僕宛對馬送粮舶柁師 容齒衰老不堪海路 故来祇候願垂相替矣 於是荒雄許諾遂従彼事自肥前國松浦縣美祢良久<埼>發舶直射對馬渡海登時忽天暗冥暴風交雨竟無順風沈没海中焉 因斯妻子等不勝犢慕裁作此歌 或云 筑前國守山上憶良臣悲感妻子之傷述志而作此歌)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山上憶良,志賀白水郎,荒雄,伝承,同情,恋情,功績,悲別,代作,荒雄妻,女歌,地名,志賀島,福岡,神亀,年紀","#[訓異]
あらをらが,[寛]あらをらか,
ゆきにしひより[寛],
しかのあまの[寛],
おほうらたぬは[寛],
さぶしくもあるか,[寛]かなしくもあるか,
" "#[番号]16/3864","#[題詞](筑前國志賀白水郎歌十首)","#[原文]官許曽 指弖毛遣米 情出尓 行之荒雄良 波尓袖振","#[訓読]官こそさしても遣らめさかしらに行きし荒雄ら波に袖振る","#[仮名],つかさこそ,さしてもやらめ,さかしらに,ゆきしあらをら,なみにそでふる","#[左注](右以神龜年中大宰府差筑前國宗像郡之百姓宗形部津麻呂宛對馬送粮舶柁師也 于時津麻呂詣於滓屋郡志賀村白水郎荒雄之許語曰 僕有小事若疑不許歟 荒雄答曰 走雖異郡同船日久 志篤兄弟在於殉死 豈復辞哉 津麻呂曰府官差僕宛對馬送粮舶柁師 容齒衰老不堪海路 故来祇候願垂相替矣 於是荒雄許諾遂従彼事自肥前國松浦縣美祢良久<埼>發舶直射對馬渡海登時忽天暗冥暴風交雨竟無順風沈没海中焉 因斯妻子等不勝犢慕裁作此歌 或云 筑前國守山上憶良臣悲感妻子之傷述志而作此歌)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山上憶良,志賀白水郎,荒雄,伝承,同情,恋情,功績,悲別,代作,志賀島,福岡,神亀,年紀","#[訓異]
つかさこそ[寛],
さしてもやらめ[寛],
さかしらに[寛],
ゆきしあらをら[寛],
なみにそでふる,[寛]なみにそてふる,
" "#[番号]16/3865","#[題詞](筑前國志賀白水郎歌十首)","#[原文]荒雄良者 妻子之産業乎波 不念呂 年之八歳乎 将騰来不座","#[訓読]荒雄らは妻子の業をば思はずろ年の八年を待てど来まさず","#[仮名],あらをらは,めこのなりをば,おもはずろ,としのやとせを,まてどきまさず","#[左注](右以神龜年中大宰府差筑前國宗像郡之百姓宗形部津麻呂宛對馬送粮舶柁師也 于時津麻呂詣於滓屋郡志賀村白水郎荒雄之許語曰 僕有小事若疑不許歟 荒雄答曰 走雖異郡同船日久 志篤兄弟在於殉死 豈復辞哉 津麻呂曰府官差僕宛對馬送粮舶柁師 容齒衰老不堪海路 故来祇候願垂相替矣 於是荒雄許諾遂従彼事自肥前國松浦縣美祢良久<埼>發舶直射對馬渡海登時忽天暗冥暴風交雨竟無順風沈没海中焉 因斯妻子等不勝犢慕裁作此歌 或云 筑前國守山上憶良臣悲感妻子之傷述志而作此歌)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山上憶良,志賀白水郎,荒雄,伝承,同情,恋情,功績,悲別,代作,荒雄妻,女歌,地名,志賀島,福岡,神亀,年紀","#[訓異]
あらをらは[寛],
めこのなりをば,[寛]めこのわさをは,
おもはずろ,[寛]おもはすろ,
としのやとせを[寛],
まてどきまさず,[寛]まてときまさす,
" "#[番号]16/3866","#[題詞](筑前國志賀白水郎歌十首)","#[原文]奥鳥 鴨云船之 還来者 也良乃<埼>守 早告許曽","#[訓読]沖つ鳥鴨とふ船の帰り来ば也良の崎守早く告げこそ","#[仮名],おきつとり,かもとふふねの,かへりこば,やらのさきもり,はやくつげこそ","#[左注](右以神龜年中大宰府差筑前國宗像郡之百姓宗形部津麻呂宛對馬送粮舶柁師也 于時津麻呂詣於滓屋郡志賀村白水郎荒雄之許語曰 僕有小事若疑不許歟 荒雄答曰 走雖異郡同船日久 志篤兄弟在於殉死 豈復辞哉 津麻呂曰府官差僕宛對馬送粮舶柁師 容齒衰老不堪海路 故来祇候願垂相替矣 於是荒雄許諾遂従彼事自肥前國松浦縣美祢良久<埼>發舶直射對馬渡海登時忽天暗冥暴風交雨竟無順風沈没海中焉 因斯妻子等不勝犢慕裁作此歌 或云 筑前國守山上憶良臣悲感妻子之傷述志而作此歌)","#[校異]崎 -> 埼 [尼][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:山上憶良,志賀白水郎,荒雄,伝承,同情,恋情,功績,悲別,代作,荒雄妻,女歌,地名,志賀島,福岡,神亀,年紀","#[訓異]
おきつとり[寛],
かもとふふねの,[寛]かもといふふねの,
かへりこば,[寛]かへりこは,
やらのさきもり[寛],
はやくつげこそ,[寛]はやくつけこそ,
" "#[番号]16/3867","#[題詞](筑前國志賀白水郎歌十首)","#[原文]奥鳥 鴨云舟者 也良乃<埼> 多未弖榜来跡 所<聞>許奴可聞","#[訓読]沖つ鳥鴨とふ船は也良の崎廻みて漕ぎ来と聞こえ来ぬかも","#[仮名],おきつとり,かもとふふねは,やらのさき,たみてこぎくと,きこえこぬかも","#[左注](右以神龜年中大宰府差筑前國宗像郡之百姓宗形部津麻呂宛對馬送粮舶柁師也 于時津麻呂詣於滓屋郡志賀村白水郎荒雄之許語曰 僕有小事若疑不許歟 荒雄答曰 走雖異郡同船日久 志篤兄弟在於殉死 豈復辞哉 津麻呂曰府官差僕宛對馬送粮舶柁師 容齒衰老不堪海路 故来祇候願垂相替矣 於是荒雄許諾遂従彼事自肥前國松浦縣美祢良久<埼>發舶直射對馬渡海登時忽天暗冥暴風交雨竟無順風沈没海中焉 因斯妻子等不勝犢慕裁作此歌 或云 筑前國守山上憶良臣悲感妻子之傷述志而作此歌)","#[校異]崎 -> 埼 [尼][類][紀] / 聞礼 -> 聞 [尼]","#[事項],雑歌,作者:山上憶良,志賀白水郎,荒雄,伝承,同情,恋情,功績,悲別,代作,荒雄妻,女歌,地名,志賀島,福岡,神亀,年紀","#[訓異]
おきつとり[寛],
かもとふふねは,[寛]かもといふふねは,
やらのさき[寛],
たみてこぎくと,[寛]たみてこきくと,
きこえこぬかも,[寛]きかしこぬかも,
" "#[番号]16/3868","#[題詞](筑前國志賀白水郎歌十首)","#[原文]奥去哉 赤羅小船尓 L遣者 若人見而 解披見鴨","#[訓読]沖行くや赤ら小舟につと遣らばけだし人見て開き見むかも","#[仮名],おきゆくや,あからをぶねに,つとやらば,けだしひとみて,ひらきみむかも","#[左注](右以神龜年中大宰府差筑前國宗像郡之百姓宗形部津麻呂宛對馬送粮舶柁師也 于時津麻呂詣於滓屋郡志賀村白水郎荒雄之許語曰 僕有小事若疑不許歟 荒雄答曰 走雖異郡同船日久 志篤兄弟在於殉死 豈復辞哉 津麻呂曰府官差僕宛對馬送粮舶柁師 容齒衰老不堪海路 故来祇候願垂相替矣 於是荒雄許諾遂従彼事自肥前國松浦縣美祢良久<埼>發舶直射對馬渡海登時忽天暗冥暴風交雨竟無順風沈没海中焉 因斯妻子等不勝犢慕裁作此歌 或云 筑前國守山上憶良臣悲感妻子之傷述志而作此歌)","#[校異]","#[事項],雑歌,作者:山上憶良,志賀白水郎,荒雄,伝承,同情,恋情,功績,悲別,代作,荒雄妻,女歌,地名,志賀島,福岡,神亀,年紀","#[訓異]
おきゆくや[寛],
あからをぶねに,[寛]あからをふねに,
つとやらば,[寛]つとやらは,
けだしひとみて,[寛]わかきひとみて,
ひらきみむかも,[寛]ときあけみむかも,
" "#[番号]16/3869","#[題詞](筑前國志賀白水郎歌十首)","#[原文]大船尓 小船引副 可豆久登毛 志賀乃荒雄尓 潜将相八方","#[訓読]大船に小舟引き添へ潜くとも志賀の荒雄に潜き逢はめやも","#[仮名],おほぶねに,をぶねひきそへ,かづくとも,しかのあらをに,かづきあはめやも","#[左注]右以神龜年中大宰府差筑前國宗像郡之百姓宗形部津麻呂宛對馬送粮舶柁師也 于時津麻呂詣於滓屋郡志賀村白水郎荒雄之許語曰 僕有小事若疑不許歟 荒雄答曰 走雖異郡同船日久 志篤兄弟在於殉死 豈復辞哉 津麻呂曰府官差僕宛對馬送粮舶柁師 容齒衰老不堪海路 故来祇候願垂相替矣 於是荒雄許諾遂従彼事自肥前國松浦縣美祢良久<埼>發舶直射對馬渡海登時忽天暗冥暴風交雨竟無順風沈没海中焉 因斯妻子等不勝犢慕裁作此歌 或云 筑前國守山上憶良臣悲感妻子之傷述志而作此歌","#[校異]崎 -> 埼 [尼][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:山上憶良,志賀白水郎,荒雄,伝承,同情,恋情,功績,悲別,代作,荒雄妻,女歌,地名,志賀島,福岡,神亀,年紀","#[訓異]
おほぶねに,[寛]おほふねに,
をぶねひきそへ,[寛]をふねひきそへ,
かづくとも,[寛]かつくとも,
しかのあらをに[寛],
かづきあはめやも,[寛]かつきあはむやも,
" "#[番号]16/3870","#[題詞]","#[原文]紫乃 粉滷乃海尓 潜鳥 珠潜出者 吾玉尓将為","#[訓読]紫の粉潟の海に潜く鳥玉潜き出ば我が玉にせむ","#[仮名],むらさきの,こがたのうみに,かづくとり,たまかづきでば,わがたまにせむ","#[左注]右歌一首","#[校異]","#[事項],雑歌,地名,枕詞,動物,民謡,歌謡,恋愛,譬喩","#[訓異]
むらさきの[寛],
こがたのうみに,[寛]こかたのうみに,
かづくとり,[寛]かつくとり,
たまかづきでば,[寛]たまかつきいては,
わがたまにせむ,[寛]わかたまにせむ,
" "#[番号]16/3871","#[題詞]","#[原文]角嶋之 迫門乃稚海藻者 人之共 荒有之可杼 吾共者和海藻","#[訓読]角島の瀬戸のわかめは人の共荒かりしかど我れとは和海藻","#[仮名],つのしまの,せとのわかめは,ひとのむた,あらかりしかど,われとはにきめ","#[左注]右歌一首","#[校異]","#[事項],雑歌,地名,山口,植物,民謡,歌謡,歌垣,譬喩","#[訓異]
つのしまの[寛],
せとのわかめは[寛],
ひとのむた,[寛]ひとのとも,
あらかりしかど,[寛]あれたりしかと,
われとはにきめ,[寛]わかともはわかめ,
" "#[番号]16/3872","#[題詞]","#[原文]吾門之 榎實毛利喫 百千鳥 々々者雖来 君曽不来座","#[訓読]我が門の榎の実もり食む百千鳥千鳥は来れど君ぞ来まさぬ","#[仮名],わがかどの,えのみもりはむ,ももちとり,ちとりはくれど,きみぞきまさぬ","#[左注](右歌二首)","#[校異]","#[事項],雑歌,植物,動物,女歌,怨恨,恋情,民謡,歌謡","#[訓異]
わがかどの,[寛]わかかとの,
えのみもりはむ[寛],
ももちとり[寛],
ちとりはくれど,[寛]ちとりはくれと,
きみぞきまさぬ,[寛]きみそきまさす,
" "#[番号]16/3873","#[題詞]","#[原文]吾門尓 千鳥數鳴 起余々々 我一夜妻 人尓所知名","#[訓読]我が門に千鳥しば鳴く起きよ起きよ我が一夜夫人に知らゆな","#[仮名],わがかどに,ちとりしばなく,おきよおきよ,わがひとよづま,ひとにしらゆな","#[左注]右歌二首","#[校異]","#[事項],雑歌,動物,女歌,遊行女婦,歌謡","#[訓異]
わがかどに,[寛]わかかとに,
ちとりしばなく,[寛]ちとりしはなく,
おきよおきよ[寛],
わがひとよづま,[寛]わかひとよつま,
ひとにしらゆな,[寛]ひとにしらすな,
" "#[番号]16/3874","#[題詞]","#[原文]所射鹿乎 認河邊之 和草 身若可倍尓 佐宿之兒等波母","#[訓読]射ゆ鹿を認ぐ川辺のにこ草の身の若かへにさ寝し子らはも","#[仮名],いゆししを,つなぐかはへの,にこぐさの,みのわかかへに,さねしこらはも","#[左注]右歌一首","#[校異]","#[事項],雑歌,恋愛,回想,歌謡,動物,序詞","#[訓異]
いゆししを,[寛]いるしかを,
つなぐかはへの,[寛]とむるかはへの,
にこぐさの,[寛]にこくさの,
みのわかかへに,[寛]みわかきかへに,
さねしこらはも[寛],
" "#[番号]16/3875","#[題詞]","#[原文]琴酒乎 押垂小野従 出流水 奴流久波不出 寒水之 心毛計夜尓 所念 音之少寸 道尓相奴鴨 少寸四 道尓相佐婆 伊呂雅世流 菅笠小笠 吾宇奈雅流 珠乃七條 取替毛 将申物乎 少寸 道尓相奴鴨 ","#[訓読]琴酒を 押垂小野ゆ 出づる水 ぬるくは出でず 寒水の 心もけやに 思ほゆる 音の少なき 道に逢はぬかも 少なきよ 道に逢はさば 色げせる 菅笠小笠 我がうなげる 玉の七つ緒 取り替へも 申さむものを 少なき道に 逢はぬかも ","#[仮名],ことさけを,おしたれをのゆ,いづるみづ,ぬるくはいでず,さむみづの,こころもけやに,おもほゆる,おとのすくなき,みちにあはぬかも,すくなきよ,みちにあはさば,いろげせる,すげかさをがさ,わがうなげる,たまのななつを,とりかへも,まをさむものを,すくなきみちに,あはぬかも","#[左注]右歌一首","#[校異]","#[事項],雑歌,序詞,問答,恋愛","#[訓異]
ことさけを[寛],
おしたれをのゆ,[寛]おしたれをのに,
いづるみづ,[寛]いつるみつ,
ぬるくはいでず,[寛]ぬるくはいてす,
さむみづの,[寛]ひやみつの,
こころもけやに[寛],
おもほゆる[寛],
おとのすくなき[寛],
みちにあはぬかも,[寛]みちにあひぬかも,
すくなきよ[寛],
みちにあはさば,[寛]みちにあへるさは,
いろげせる,[寛]いろちせる,
すげかさをがさ,[寛]すかかさをかさ,
わがうなげる,[寛]わかうなける,
たまのななつを[寛],
とりかへも,[寛]とりすても,
まをさむものを,[寛]まうさむものを,
すくなきみちに[寛],
あはぬかも,[寛]あひぬかも,
" "#[番号]16/3876","#[題詞]豊前國白水郎歌一首","#[原文]豊國 企玖乃池奈流 菱之宇礼乎 採跡也妹之 御袖所沾計武","#[訓読]豊国の企救の池なる菱の末を摘むとや妹がみ袖濡れけむ","#[仮名],とよくにの,きくのいけなる,ひしのうれを,つむとやいもが,みそでぬれけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,福岡,採菱,労働,民謡,地名","#[訓異]
とよくにの[寛],
きくのいけなる[寛],
ひしのうれを[寛],
つむとやいもが,[寛]つむとやいもか,
みそでぬれけむ,[寛]みそてぬれけむ,
" "#[番号]16/3877","#[題詞]豊後國白水郎歌一首","#[原文]紅尓 染而之衣 雨零而 尓保比波雖為 移波米也毛","#[訓読]紅に染めてし衣雨降りてにほひはすともうつろはめやも","#[仮名],くれなゐに,そめてしころも,あめふりて,にほひはすとも,うつろはめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,大分,民謡,恋愛,歌謡","#[訓異]
くれなゐに[寛],
そめてしころも[寛],
あめふりて[寛],
にほひはすとも[寛],
うつろはめやも[寛],
" "#[番号]16/3878","#[題詞]能登國歌三首","#[原文]<シ>楯 熊来乃夜良尓 新羅斧 堕入 和之 河毛R河毛R 勿鳴為曽弥 浮出流夜登将見 和之 ","#[訓読]はしたての 熊来のやらに 新羅斧 落し入れ わし かけてかけて な泣かしそね 浮き出づるやと見む わし ","#[仮名],はしたての,くまきのやらに,しらきをの,おとしいれ,わし,かけてかけて,ななかしそね,うきいづるやとみむ,わし","#[左注]右一首傳云 或有愚人 斧堕海底而不解鐵沈無理浮水 聊作此歌口吟為喩也","#[校異]楷 -> シ [尼][類][紀] / 河 [類](塙) 阿","#[事項],雑歌,石川,枕詞,民謡,歌謡,中島町,伝承,嘲笑,戯笑","#[訓異]
はしたての[寛],
くまきのやらに[寛],
しらきをの[寛],
おとしいれ,[寛]おとしいるる,
わし[寛],
かけてかけて[寛],
ななかしそね[寛],
うきいづるやとみむ,[寛]うきいつるやとはたみてむ,
わし[寛],
" "#[番号]16/3879","#[題詞](能登國歌三首)","#[原文]シ楯 熊来酒屋尓 真奴良留奴 和之 佐須比立 率而来奈麻之乎 真奴良留奴 和之 ","#[訓読]はしたての 熊来酒屋に まぬらる奴 わし さすひ立て 率て来なましを まぬらる奴 わし ","#[仮名],はしたての,くまきさかやに,まぬらるやつこ,わし,さすひたて,ゐてきなましを,まぬらるやつこ,わし","#[左注]右一首","#[校異]","#[事項],雑歌,石川,枕詞,中島町,民謡,歌謡,嘲笑,戯笑","#[訓異]
はしたての[寛],
くまきさかやに[寛],
まぬらるやつこ,[寛]まのらるの,
わし[寛],
さすひたて[寛],
ゐてきなましを[寛],
まぬらるやつこ,[寛]まのらるの,
わし[寛],
" "#[番号]16/3880","#[題詞](能登國歌三首)","#[原文]所聞多祢乃 机之嶋能 小螺乎 伊拾持来而 石以 都追伎破夫利 早川尓 洗濯 辛塩尓 古胡登毛美 高坏尓盛 机尓立而 母尓奉都也 目豆兒乃<ス> 父尓獻都也 身女兒乃<ス> ","#[訓読]鹿島嶺の 机の島の しただみを い拾ひ持ち来て 石もち つつき破り 早川に 洗ひ濯ぎ 辛塩に こごと揉み 高坏に盛り 机に立てて 母にあへつや 目豆児の刀自 父にあへつや 身女児の刀自 ","#[仮名],かしまねの,つくゑのしまの,しただみを,いひりひもちきて,いしもち,つつきやぶり,はやかはに,あらひすすぎ,からしほに,こごともみ,たかつきにもり,つくゑにたてて,ははにあへつや,めづこのとじ,ちちにあへつや,みめこのとじ","#[左注]","#[校異]屓 -> ス [尼]","#[事項],雑歌,石川,地名,能登島,民謡,歌謡","#[訓異]
かしまねの,[寛]そもたねの,
つくゑのしまの,[寛]つくえのしまの,
しただみを,[寛]したたみを,
いひりひもちきて,[寛]いひろひもちきて,
いしもち,[寛]いしもちて,
つつきやぶり,[寛]つつきやふり,
はやかはに[寛],
あらひすすぎ,[寛]あらひすすき,
からしほに[寛],
こごともみ,[寛]ここともみ,
たかつきにもり[寛],
つくゑにたてて,[寛]つくえにたてて,
ははにあへつや,[寛]ははにまつりつや,
めづこのとじ,[寛]めつちこのまけ,
ちちにあへつや,[寛]ちちにまつりつや,
みめこのとじ,[寛]みめちこのまけ,
" "#[番号]16/3881","#[題詞]越中國歌四首","#[原文]大野路者 繁道森p 之氣久登毛 君志通者 p者廣計武","#[訓読]大野道は茂道茂路茂くとも君し通はば道は広けむ","#[仮名],おほのぢは,しげちしげみち,しげくとも,きみしかよはば,みちはひろけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,富山,転用,女歌,恋愛,民謡,歌謡","#[訓異]
おほのぢは,[寛]おほのちは,
しげちしげみち,[寛]しけちはしけち,
しげくとも,[寛]しけくとも,
きみしかよはば,[寛]きみしかよはは,
みちはひろけむ[寛],
" "#[番号]16/3882","#[題詞](越中國歌四首)","#[原文]澁谿乃 二上山尓 鷲曽子産跡云 指羽尓毛 君之御為尓 鷲曽子生跡云","#[訓読]渋谿の二上山に鷲ぞ子産むといふ翳にも君のみために鷲ぞ子産むといふ","#[仮名],しぶたにの,ふたがみやまに,わしぞこむといふ,さしはにも,きみのみために,わしぞこむといふ","#[左注]","#[校異]","#[事項],雑歌,富山,地名,民謡,歌謡,旋頭歌","#[訓異]
しぶたにの,[寛]しふたにの,
ふたがみやまに,[寛]ふたかみやまに,
わしぞこむといふ,[寛]わしそこうむといふ,
さしはにも[寛],
きみのみために,[寛]きみかみために,
わしぞこむといふ,[寛]わしそこうむといふ,
" "#[番号]16/3883","#[題詞](越中國歌四首)","#[原文]伊夜彦 於能礼神佐備 青雲乃 田名引日<須>良 X曽保零 [一云 安奈尓可武佐備] ","#[訓読]弥彦おのれ神さび青雲のたなびく日すら小雨そほ降る [一云 あなに神さび]","#[仮名],いやひこ,おのれかむさび,あをくもの,たなびくひすら,こさめそほふる,[あなにかむさび]","#[左注]","#[校異]<> -> 須 [代匠記精撰本]","#[事項],雑歌,越後,新潟,地名,神事,歌謡","#[訓異]
いやひこ,[寛]いやひこの,
おのれかむさび,[寛]おのれかみさひ,
あをくもの[寛],
たなびくひすら,[寛]たなひくひすら,
こさめそほふる[寛],
[あなにかむさび],[寛]あなにかむさひ,
" "#[番号]16/3884","#[題詞](越中國歌四首)","#[原文]伊夜彦 神乃布本 今日良毛加 鹿乃伏<良>武 皮服著而 角附奈我良","#[訓読]弥彦神の麓に今日らもか鹿の伏すらむ皮衣着て角つきながら","#[仮名],いやひこ,かみのふもとに,けふらもか,しかのふすらむ,かはころもきて,つのつきながら","#[左注]","#[校異]<> -> 良 [西(左書)][尼][紀][温]","#[事項],雑歌,越後,新潟,仏足石歌体,神事,歌謡","#[訓異]
いやひこ,[寛]いやひこの,
かみのふもとに[寛],
けふらもか[寛],
しかのふすらむ[寛],
かはころもきて,[寛]かはのきぬきて,
つのつきながら,[寛]つのつきなから,
" "#[番号]16/3885","#[題詞]乞食者<詠>二首","#[原文]伊刀古 名兄乃君 居々而 物尓伊行跡波 韓國乃 虎云神乎 生取尓 八頭取持来 其皮乎 多々弥尓刺 八重疊 平群乃山尓 四月 与五月間尓 藥猟 仕流時尓 足引乃 此片山尓 二立 伊智比何本尓 梓弓 八多婆佐弥 比米加夫良 八多婆左弥 完待跡 吾居時尓 佐男鹿乃 来<立>嘆久 頓尓 吾可死 王尓 吾仕牟 吾角者 御笠乃<波>夜詩 吾耳者 御墨坩 吾目良波 真墨乃鏡 吾爪者 御弓之弓波受 吾毛等者 御筆波夜斯 吾皮者 御箱皮尓 吾完者 御奈麻須波夜志 吾伎毛母 御奈麻須波夜之 吾美義波 御塩乃波夜之 耆矣奴 吾身一尓 七重花佐久 八重花生跡 白賞尼 <白賞尼> ","#[訓読]いとこ 汝背の君 居り居りて 物にい行くとは 韓国の 虎といふ神を 生け捕りに 八つ捕り持ち来 その皮を 畳に刺し 八重畳 平群の山に 四月と 五月との間に 薬猟 仕ふる時に あしひきの この片山に 二つ立つ 櫟が本に 梓弓 八つ手挟み ひめ鏑 八つ手挟み 獣待つと 我が居る時に さを鹿の 来立ち嘆かく たちまちに 我れは死ぬべし 大君に 我れは仕へむ 我が角は み笠のはやし 我が耳は み墨の坩 我が目らは ますみの鏡 我が爪は み弓の弓弭 我が毛らは み筆はやし 我が皮は み箱の皮に 我が肉は み膾はやし 我が肝も み膾はやし 我がみげは み塩のはやし 老いたる奴 我が身一つに 七重花咲く 八重花咲くと 申しはやさね 申しはやさね ","#[仮名],いとこ,なせのきみ,をりをりて,ものにいゆくとは,からくにの,とらといふかみを,いけどりに,やつとりもちき,そのかはを,たたみにさし,やへたたみ,へぐりのやまに,うづきと,さつきとのまに,くすりがり,つかふるときに,あしひきの,このかたやまに,ふたつたつ,いちひがもとに,あづさゆみ,やつたばさみ,ひめかぶら,やつたばさみ,ししまつと,わがをるときに,さをしかの,きたちなげかく,たちまちに,われはしぬべし,おほきみに,われはつかへむ,わがつのは,みかさのはやし,わがみみは,みすみのつほ,わがめらは,ますみのかがみ,わがつめは,みゆみのゆはず,わがけらは,みふみてはやし,わがかはは,みはこのかはに,わがししは,みなますはやし,わがきもも,みなますはやし,わがみげは,みしほのはやし,おいたるやつこ,あがみひとつに,ななへはなさく,やへはなさくと,まをしはやさね,まをしはやさね","#[左注]右歌一首為鹿述痛作之也","#[校異]詠歌 [西(右書)] -> 詠 [類][紀][細] / 完 [類] 宍 / 立来 -> 立 [尼] / 婆 -> 波 [尼][類][紀] / 完 [類] 宍 / 々々々 -> 白賞尼 [尼][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:乞食者,寿歌,枕詞,歌謡","#[訓異]
いとこ,[寛]いとふるき,
なせのきみ,[寛]なあにのきみは,
をりをりて[寛],
ものにいゆくとは[寛],
からくにの[寛],
とらといふかみを[寛],
いけどりに,[寛]いけとりに,
やつとりもちき[寛],
そのかはを[寛],
たたみにさし,[寛]たたみにさして,
やへたたみ[寛],
へぐりのやまに,[寛]へくりのやまに,
うづきと,[寛]うつきとや,
さつきとのまに,[寛]さつきほとに,
くすりがり,[寛]くすりかり,
つかふるときに[寛],
あしひきの[寛],
このかたやまに[寛],
ふたつたつ[寛],
いちひがもとに,[寛]いちひかもとに,
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
やつたばさみ,[寛]はたはさみ,
ひめかぶら,[寛]ひめかふら,
やつたばさみ,[寛]はたはさみ,
ししまつと[寛],
わがをるときに,[寛]わかをるときに,
さをしかの[寛],
きたちなげかく,[寛]きたちきなけく,
たちまちに[寛],
われはしぬべし,[寛]われしにぬへし,
おほきみに[寛],
われはつかへむ[寛],
わがつのは,[寛]わかつのは,
みかさのはやし[寛],
わがみみは,[寛]わかみみは,
みすみつほ,[寛]みすみのつほに,
わがめらは,[寛]わかめらは,
ますみのかがみ,[寛]ますみのかかみ,
わがつめは,[寛]わかつめは,
みゆみのゆはず,[寛]みゆみのゆはす,
わがけらは,[寛]わかけらは,
みふみてはやし,[寛]みふてのはやし,
わがかはは,[寛]わかかはは,
みはこのかはに[寛],
わがししは,[寛]わかししは,
みなますはやし[寛],
わがきもも,[寛]わかきもも,
みなますはやし[寛],
わがみげは,[寛]わかみちは,
みしほのはやし[寛],
おいたるやつこ,[寛]おいはてをぬ,
あがみひとつに,[寛]わかみひとつに,
ななへはなさく[寛],
やへはなさくと[寛],
まをしはやさね,[寛]まうさね,
まをしはやさね,[寛]まうさね,
" "#[番号]16/3886","#[題詞](乞食者<詠>二首)","#[原文]忍照八 難波乃小江尓 廬作 難麻理弖居 葦河尓乎 王召跡 何為牟尓 吾乎召良米夜 明久 <吾>知事乎 歌人跡 和乎召良米夜 笛吹跡 和乎召良米夜 琴引跡 和乎召良米夜 彼<此>毛 <命>受牟跡 今日々々跡 飛鳥尓到 雖<置> <々>勿尓到 雖不策 都久怒尓到 東 中門由 参納来弖 命受例婆 馬尓己曽 布毛太志可久物 牛尓己曽 鼻縄波久例 足引乃 此片山乃 毛武尓礼乎 五百枝波伎垂 天光夜 日乃異尓干 佐比豆留夜 辛碓尓舂 庭立 <手>碓子尓舂 忍光八 難波乃小江乃 始垂乎 辛久垂来弖 陶人乃 所作瓶乎 今日徃 明日取持来 吾目良尓 塩と給 <セ>賞毛 <セ賞毛> ","#[訓読]おしてるや 難波の小江に 廬作り 隠りて居る 葦蟹を 大君召すと 何せむに 我を召すらめや 明けく 我が知ることを 歌人と 我を召すらめや 笛吹きと 我を召すらめや 琴弾きと 我を召すらめや かもかくも 命受けむと 今日今日と 飛鳥に至り 置くとも 置勿に至り つかねども 都久野に至り 東の 中の御門ゆ 参入り来て 命受くれば 馬にこそ ふもだしかくもの 牛にこそ 鼻縄はくれ あしひきの この片山の もむ楡を 五百枝剥き垂り 天照るや 日の異に干し さひづるや 韓臼に搗き 庭に立つ 手臼に搗き おしてるや 難波の小江の 初垂りを からく垂り来て 陶人の 作れる瓶を 今日行きて 明日取り持ち来 我が目らに 塩塗りたまひ きたひはやすも きたひはやすも ","#[仮名],おしてるや,なにはのをえに,いほつくり,なまりてをる,あしがにを,おほきみめすと,なにせむに,わをめすらめや,あきらけく,わがしることを,うたひとと,わをめすらめや,ふえふきと,わをめすらめや,ことひきと,わをめすらめや,かもかくも,みことうけむと,けふけふと,あすかにいたり,おくとも,おくなにいたり,つかねども,つくのにいたり,ひむがしの,なかのみかどゆ,まゐりきて,みことうくれば,うまにこそ,ふもだしかくもの,うしにこそ,はなづなはくれ,あしひきの,このかたやまの,もむにれを,いほえはきたり,あまてるや,ひのけにほし,さひづるや,からうすにつき,にはにたつ,てうすにつき,おしてるや,なにはのをえの,はつたりを,からくたりきて,すゑひとの,つくれるかめを,けふゆきて,あすとりもちき,わがめらに,しほぬりたまひ,きたひはやすも,きたひはやすも","#[左注]右歌一首為蟹述痛作之也","#[校異]若 -> 吾 [尼][類][紀] / <> -> 此 [万葉集古義] / 令 -> 命 [尼][類] / 立 -> 置 (塙) / 置 -> 々 (塙) / <> -> 手 [尼][類] / 時 -> セ [尼][類] / 々々々 -> セ賞毛 [尼][類][紀]","#[事項],雑歌,作者:乞食者,寿歌,歌謡,枕詞","#[訓異]
おしてるや[寛],
なにはのをえに[寛],
いほつくり[寛],
なまりてをる,[寛]かたまりてをる,
あしがにを,[寛]あしかにを,
おほきみめすと[寛],
なにせむに[寛],
わをめすらめや[寛],
あきらけく[寛],
わがしることを,[寛]わかしることを,
うたひとと[寛],
わをめすらめや[寛],
ふえふきと[寛],
わをめすらめや[寛],
ことひきと[寛],
わをめすらめや,[寛]わをぬすらめや,
かもかくも,[寛]かれも,
みことうけむと,[寛]うけむと,
けふけふと[寛],
あすかにいたり[寛],
おくとも,[寛]たてれとも,
おくなにいたり,[寛]おきなにいたり,
つかねども,[寛]うたねとも,
つくのにいたり,[寛]つくぬにいたり,
ひむがしの,[寛]ひくかしの,
なかのみかどゆ,[寛]なかのみかとゆ,
まゐりきて,[寛]まいりいりきて,
みことうくれば,[寛]おほすれは,
うまにこそ[寛],
ふもだしかくもの,[寛]ふもたしかくも,
うしにこそ[寛],
はなづなはくれ,[寛]はなはなはくれ,
あしひきの[寛],
このかたやまの[寛],
もむにれを[寛],
いほえはきたり,[寛]いほえはきたれ,
あまてるや[寛],
ひのけにほし,[寛]ひのけにほして,
さひづるや,[寛]さひつるや,
からうすにつき[寛],
にはにたつ,[寛]にはにたち,
てうすにつき,[寛]からうすにつき,
おしてるや[寛],
なにはのをえの[寛],
はつたりを,[寛]はつたれを,
からくたりきて,[寛]からくたれきて,
すゑひとの[寛],
つくれるかめを[寛],
けふゆきて[寛],
あすとりもちき[寛],
わがめらに,[寛]わかめらに,
しほぬりたまひ,[寛]しほぬりたへと,
きたひはやすも,[寛]まうさも,
きたひはやすも,[寛]まうさも,
" "#[番号]16/3887","#[題詞]怕物歌三首","#[原文]天尓有哉 神樂良能小野尓 茅草苅 々々<婆>可尓 鶉乎立毛","#[訓読]天にあるやささらの小野に茅草刈り草刈りばかに鶉を立つも","#[仮名],あめにあるや,ささらのをのに,ちがやかり,かやかりばかに,うづらをたつも","#[左注]","#[校異]波 -> 婆 [尼][類][古]","#[事項],雑歌,宴席,恐怖,動物,誦詠,異界","#[訓異]
あめにあるや[寛],
ささらのをのに[寛],
ちがやかり,[寛]ちかやかり,
かやかりばかに,[寛]かやかりはかに,
うづらをたつも,[寛]うつらをたつも,
" "#[番号]16/3888","#[題詞](怕物歌三首)","#[原文]奥國 領君之 <と>屋形 黄<と>乃屋形 神之門<渡>","#[訓読]沖つ国うしはく君の塗り屋形丹塗りの屋形神の門渡る","#[仮名],おきつくに,うしはくきみの,ぬりやかた,にぬりのやかた,かみのとわたる","#[左注]","#[校異]染 -> と (塙) / 涙 -> 渡 [尼][紀]","#[事項],雑歌,宴席,恐怖,異界,誦詠","#[訓異]
おきつくに[寛],
うしはくきみの,[寛]しらせしきみか,
ぬりやかた,[寛]そめやかた,
にぬりのやかた,[寛]きそめのやかた,
かみのとわたる[寛],
" "#[番号]16/3889","#[題詞](怕物歌三首)","#[原文]人魂乃 佐青有<公>之 但獨 相有之雨夜<乃> 葉非左思所念","#[訓読]人魂のさ青なる君がただひとり逢へりし雨夜の葉非左し思ほゆ","#[仮名],ひとたまの,さをなるきみが,ただひとり,あへりしあまよの,***しおもほゆ","#[左注]","#[校異]君 -> 公 [類][古][紀] / <> -> 乃 [尼][類][古]","#[事項],雑歌,難訓,恐怖,宴席,誦詠","#[訓異]
ひとたまの[寛],
さをなるきみが,[寛]さをなるきみか,
ただひとり,[寛]たたひとり,
あへりしあまよの,[寛]あへりしあまよは,
***しおもほゆ,[寛]ひさしとそおもふ,
" "#[番号]17/3890","#[題詞]天平二年庚午冬十一月大宰帥大伴卿被任大納言 [兼帥如舊]上京之時ソ従等別取海路入京 於是悲傷羇旅各陳所心作歌十首","#[原文]和我勢兒乎 安我松原欲 見度婆 安麻乎等女登母 多麻藻可流美由","#[訓読]我が背子を安我松原よ見わたせば海人娘子ども玉藻刈る見ゆ","#[仮名],わがせこを,あがまつばらよ,みわたせば,あまをとめども,たまもかるみゆ","#[左注]右一首三野連石守作","#[校異]羇 [元][紀][細](塙) 羈","#[事項],天平2年11月,年紀,作者:三野石守,旅人従者,羈旅,大伴旅人,帰京,地名,北九州,福岡,叙景,枕詞","#[訓異]
わがせこを,[寛]わかせこを,
あがまつばらよ,[寛]あかまつはらよ,
みわたせば,[寛]みわたせは,
あまをとめども,[寛]あまをとめとも,
たまもかるみゆ[寛],
" "#[番号]17/3891","#[題詞](天平二年庚午冬十一月大宰帥大伴卿被任大納言 [兼帥如舊]上京之時ソ従等別取海路入京 於是悲傷羇旅各陳所心作歌十首)","#[原文]荒津乃海 之保悲思保美知 時波安礼登 伊頭礼乃時加 吾孤悲射良牟","#[訓読]荒津の海潮干潮満ち時はあれどいづれの時か我が恋ひざらむ","#[仮名],あらつのうみ,しほひしほみち,ときはあれど,いづれのときか,あがこひざらむ","#[左注](右九首作者不審姓名)","#[校異]","#[事項],天平2年11月,年紀,旅人従者,羈旅,福岡,地名,恋情,大伴旅人,望郷","#[訓異]
あらつのうみ[寛],
しほひしほみち[寛],
ときはあれど,[寛]ときはあれと,
いづれのときか,[寛]いつれのときか,
あがこひざらむ,[寛]わかこひさらむ,
" "#[番号]17/3892","#[題詞](天平二年庚午冬十一月大宰帥大伴卿被任大納言 [兼帥如舊]上京之時ソ従等別取海路入京 於是悲傷羇旅各陳所心作歌十首)","#[原文]伊蘇其登尓 海夫乃<釣>船 波C尓家里 我船波C牟 伊蘇乃之良奈久","#[訓読]礒ごとに海人の釣舟泊てにけり我が船泊てむ礒の知らなく","#[仮名],いそごとに,あまのつりぶね,はてにけり,わがふねはてむ,いそのしらなく","#[左注](右九首作者不審姓名)","#[校異]鈎 -> 釣 [元][類][紀]","#[事項],天平2年11月,年紀,旅人従者,羈旅,大伴旅人,漂泊,旅愁","#[訓異]
いそごとに,[寛]いそことに,
あまのつりぶね,[寛]あまのつりふね,
はてにけり[寛],
わがふねはてむ,[寛]わかふねはてむ,
いそのしらなく,[寛]いそのしらなく,
" "#[番号]17/3893","#[題詞](天平二年庚午冬十一月大宰帥大伴卿被任大納言 [兼帥如舊]上京之時ソ従等別取海路入京 於是悲傷羇旅各陳所心作歌十首)","#[原文]昨日許曽 敷奈R婆勢之可 伊佐魚取 比治奇乃奈太乎 今日見都流香母","#[訓読]昨日こそ船出はせしか鯨魚取り比治奇の灘を今日見つるかも","#[仮名],きのふこそ,ふなではせしか,いさなとり,ひぢきのなだを,けふみつるかも","#[左注](右九首作者不審姓名)","#[校異]","#[事項],天平2年11月,年紀,旅人従者,羈旅,枕詞,地名,響灘,山口,土地讃美,大伴旅人","#[訓異]
きのふこそ[寛],
ふなではせしか,[寛]ふなてはかしか,
いさなとり[寛],
ひぢきのなだを,[寛]ひちきのなたを,
けふみつるかも[寛],
" "#[番号]17/3894","#[題詞](天平二年庚午冬十一月大宰帥大伴卿被任大納言 [兼帥如舊]上京之時ソ従等別取海路入京 於是悲傷羇旅各陳所心作歌十首)","#[原文]淡路嶋 刀和多流船乃 可治麻尓毛 吾波和須礼受 伊弊乎之曽於毛布","#[訓読]淡路島門渡る船の楫間にも我れは忘れず家をしぞ思ふ","#[仮名],あはぢしま,とわたるふねの,かぢまにも,われはわすれず,いへをしぞおもふ","#[左注](右九首作者不審姓名)","#[校異]","#[事項],天平2年11月,年紀,旅人従者,羈旅,地名,淡路,兵庫,序詞,望郷,大伴旅人","#[訓異]
あはぢしま,[寛]あはちしま,
とわたるふねの[寛],
かぢまにも,[寛]かちまにも,
われはわすれず,[寛]われはわすれす,
いへをしぞおもふ,[寛]いへをしそおもふ,
" "#[番号]17/3895","#[題詞](天平二年庚午冬十一月大宰帥大伴卿被任大納言 [兼帥如舊]上京之時ソ従等別取海路入京 於是悲傷羇旅各陳所心作歌十首)","#[原文]多麻波夜須 武庫能和多里尓 天傳 日能久礼由氣<婆> 家乎之曽於毛布","#[訓読]たまはやす武庫の渡りに天伝ふ日の暮れ行けば家をしぞ思ふ","#[仮名],たまはやす,むこのわたりに,あまづたふ,ひのくれゆけば,いへをしぞおもふ","#[左注](右九首作者不審姓名)","#[校異]波 -> 婆 [元][類]","#[事項],天平2年11月,年紀,旅人従者,羈旅,枕詞,兵庫,望郷,大伴旅人","#[訓異]
たまはやす,[寛]たまはとす,
むこのわたりに[寛],
あまづたふ,[寛]あまつたふ,
ひのくれゆけば,[寛]ひのくれゆけは,
いへをしぞおもふ,[寛]いへをしそおもふ,
" "#[番号]17/3896","#[題詞](天平二年庚午冬十一月大宰帥大伴卿被任大納言 [兼帥如舊]上京之時ソ従等別取海路入京 於是悲傷羇旅各陳所心作歌十首)","#[原文]家尓底母 多由多敷命 浪乃宇倍尓 思之乎礼波 於久香之良受母 [一云 宇伎C之乎礼八] ","#[訓読]家にてもたゆたふ命波の上に思ひし居れば奥か知らずも [一云 浮きてし居れば] ","#[仮名],いへにても,たゆたふいのち,なみのうへに,おもひしをれば,おくかしらずも,[うきてしをれば]","#[左注](右九首作者不審姓名)","#[校異]","#[事項],天平2年11月,年紀,旅人従者,異伝,羈旅,漂泊,不安,大伴旅人","#[訓異]
いへにても[寛],
たゆたふいのち[寛],
なみのうへに[寛],
おもひしをれば,[寛]おもひしをれは,
おくかしらずも,[寛]おくかしらすも,
[うきてしをれば],[寛]うきてしをれは,
" "#[番号]17/3897","#[題詞](天平二年庚午冬十一月大宰帥大伴卿被任大納言 [兼帥如舊]上京之時ソ従等別取海路入京 於是悲傷羇旅各陳所心作歌十首)","#[原文]大海乃 於久可母之良受 由久和礼乎 何時伎麻佐武等 問之兒<良>波母","#[訓読]大海の奥かも知らず行く我れをいつ来まさむと問ひし子らはも","#[仮名],おほうみの,おくかもしらず,ゆくわれを,いつきまさむと,とひしこらはも","#[左注](右九首作者不審姓名)","#[校異]等 -> 良 [元][類]","#[事項],天平2年11月,年紀,旅人従者,羈旅,望郷,恋情,遊行女婦,大伴旅人","#[訓異]
おほうみの[寛],
おくかもしらず,[寛]きくかもしらす,
ゆくわれを[寛],
いつきまさむと[寛],
とひしこらはも[寛],
" "#[番号]17/3898","#[題詞](天平二年庚午冬十一月大宰帥大伴卿被任大納言 [兼帥如舊]上京之時ソ従等別取海路入京 於是悲傷羇旅各陳所心作歌十首)","#[原文]大船乃 宇倍尓之居婆 安麻久毛乃 多度伎毛思良受 歌乞和我世","#[訓読]大船の上にし居れば天雲のたどきも知らず歌ひこそ我が背","#[仮名],おほぶねの,うへにしをれば,あまくもの,たどきもしらず,うたひこそわがせ","#[左注](右九首作者不審姓名)","#[校異]","#[事項],天平2年11月,年紀,旅人従者,羈旅,,大伴旅人,女歌,遊行女婦","#[訓異]
おほぶねの,[寛]おほふねの,
うへにしをれば,[寛]うへにしをれは,
あまくもの[寛],
たどきもしらず,[寛]たときもしらす,
うたひこそわがせ,[寛]うたこつわかせ,
" "#[番号]17/3899","#[題詞](天平二年庚午冬十一月大宰帥大伴卿被任大納言 [兼帥如舊]上京之時ソ従等別取海路入京 於是悲傷羇旅各陳所心作歌十首)","#[原文]海未通女 伊射里多久火能 於煩保之久 都努乃松原 於母保由流可<問>","#[訓読]海人娘子漁り焚く火のおぼほしく角の松原思ほゆるかも","#[仮名],あまをとめ,いざりたくひの,おぼほしく,つののまつばら,おもほゆるかも","#[左注]右九首作者不審姓名","#[校異]聞 -> 問 [元][類]","#[事項],天平2年11月,年紀,旅人従者,大伴旅人,序詞,地名,西宮,兵庫,旅情","#[訓異]
あまをとめ[寛],
いざりたくひの,[寛]いさりたくひの,
おぼほしく,[寛]おほほしく,
つののまつばら,[寛]つののまつはら,
おもほゆるかも,[寛]
" "#[番号]17/3900","#[題詞]十年七月七日之夜獨仰天漢聊述懐一首","#[原文]多奈波多之 船乗須良之 麻蘇鏡 吉欲伎月夜尓 雲起和多流","#[訓読]織女し舟乗りすらしまそ鏡清き月夜に雲立ちわたる","#[仮名],たなばたし,ふなのりすらし,まそかがみ,きよきつくよに,くもたちわたる","#[左注]右一首大伴宿祢家持作","#[校異]","#[事項],天平10年7月7日,年紀,作者:大伴家持,七夕,独詠,枕詞,織女渡河","#[訓異]
たなばたし,[寛]たなはたの,
ふなのりすらし[寛],
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
きよきつくよに,[寛]きよきつきよに,
くもたちわたる[寛],
" "#[番号]17/3901","#[題詞]追和<大>宰之時梅花新歌六首","#[原文]民布由都藝 芳流波吉多礼登 烏梅能芳奈 君尓之安良祢婆 遠<久>人毛奈之","#[訓読]み冬継ぎ春は来たれど梅の花君にしあらねば招く人もなし","#[仮名],みふゆつぎ,はるはきたれど,うめのはな,きみにしあらねば,をくひともなし","#[左注](右十二年十<二>月九日大伴宿祢<書>持作)","#[校異]太 -> 大 [元][類][紀][温] / 流 -> 久 [元]","#[事項],天平12年12月9日,年紀,作者:大伴書持,追和,梅花宴,植物","#[訓異]
みふゆつぎ,[寛]みふゆつき,
はるはきたれど,[寛]はるはきたれと,
うめのはな[寛],
きみにしあらねば,[寛]きみにしあらねは,
をくひともなし,[寛]をるひともなし,
" "#[番号]17/3902","#[題詞](追和<大>宰之時梅花新歌六首)","#[原文]烏梅乃花 美夜万等之美尓 安里登母也 如此乃未君波 見礼登安可尓勢牟","#[訓読]梅の花み山としみにありともやかくのみ君は見れど飽かにせむ","#[仮名],うめのはな,みやまとしみに,ありともや,かくのみきみは,みれどあかにせむ","#[左注](右十二年十<二>月九日大伴宿祢<書>持作)","#[校異]此 [元] 是 / 可 [元] 加","#[事項],天平12年12月9日,年紀,作者:大伴書持,追和,梅花宴,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
みやまとしみに[寛],
ありともや[寛],
かくのみきみは[寛],
みれどあかにせむ,[寛]みれとあかにせむ,
" "#[番号]17/3903","#[題詞](追和<大>宰之時梅花新歌六首)","#[原文]春雨尓 毛延之楊奈疑可 烏梅乃花 登母尓於久礼奴 常乃物能香聞","#[訓読]春雨に萌えし柳か梅の花ともに後れぬ常の物かも","#[仮名],はるさめに,もえしやなぎか,うめのはな,ともにおくれぬ,つねのものかも","#[左注](右十二年十<二>月九日大伴宿祢<書>持作)","#[校異]","#[事項],天平12年12月9日,年紀,作者:大伴書持,追和,梅花宴,植物","#[訓異]
はるさめに[寛],
もえしやなぎか,[寛]もえしやなきか,
うめのはな[寛],
ともにおくれぬ[寛],
つねのものかも[寛],
" "#[番号]17/3904","#[題詞](追和<大>宰之時梅花新歌六首)","#[原文]宇梅能花 伊都波乎良自等 伊登波祢登 佐吉乃盛波 乎思吉物奈利","#[訓読]梅の花いつは折らじといとはねど咲きの盛りは惜しきものなり","#[仮名],うめのはな,いつはをらじと,いとはねど,さきのさかりは,をしきものなり","#[左注](右十二年十<二>月九日大伴宿祢<書>持作)","#[校異]","#[事項],天平12年12月9日,年紀,作者:大伴書持,追和,梅花宴,植物","#[訓異]
うめのはな[寛],
いつはをらじと,[寛]いつはをらしと,
いとはねど,[寛]いとはねと,
さきのさかりは[寛],
をしきものなり[寛],
" "#[番号]17/3905","#[題詞](追和<大>宰之時梅花新歌六首)","#[原文]遊内乃 多努之吉庭尓 梅柳 乎理加謝思底<婆> 意毛比奈美可毛","#[訓読]遊ぶ内の楽しき庭に梅柳折りかざしてば思ひなみかも","#[仮名],あそぶうちの,たのしきにはに,うめやなぎ,をりかざしてば,おもひなみかも","#[左注](右十二年十<二>月九日大伴宿祢<書>持作)","#[校異]謝 [元][京] 射 / 波 -> 婆 [元][類][細]","#[事項],天平12年12月9日,年紀,作者:大伴書持,追和,梅花宴,植物","#[訓異]
あそぶうちの,[寛]あそふうちの,
たのしきにはに[寛],
うめやなぎ,[寛]うめやなき,
をりかざしてば,[寛]をりかさしては,
おもひなみかも[寛],
" "#[番号]17/3906","#[題詞](追和<大>宰之時梅花新歌六首)","#[原文]御苑布能 百木乃宇梅乃 落花之 安米尓登妣安我里 雪等敷里家牟","#[訓読]御園生の百木の梅の散る花し天に飛び上がり雪と降りけむ","#[仮名],みそのふの,ももきのうめの,ちるはなし,あめにとびあがり,ゆきとふりけむ","#[左注]右十二年十<二>月九日大伴宿祢<書>持作","#[校異]一 -> 二 [元] / 家 -> 書 [元]","#[事項],天平12年12月9日,年紀,作者:大伴書持,追和,梅花宴,植物","#[訓異]
みそのふの[寛],
ももきのうめの[寛],
ちるはなし,[寛]ちるはなの,
あめにとびあがり,[寛]あめにとひあかり,
ゆきとふりけむ[寛],
" "#[番号]17/3907","#[題詞]讃三香原新都歌一首[并短歌]","#[原文]山背乃 久<邇>能美夜古波 春佐礼播 花<咲>乎々理 秋<左>礼婆 黄葉尓保<比> 於婆勢流 泉河乃 可美都瀬尓 宇知橋和多之 余登瀬尓波 宇枳橋和多之 安里我欲比 都加倍麻都良武 万代麻弖尓 ","#[訓読]山背の 久迩の都は 春されば 花咲きををり 秋されば 黄葉にほひ 帯ばせる 泉の川の 上つ瀬に 打橋渡し 淀瀬には 浮橋渡し あり通ひ 仕へまつらむ 万代までに ","#[仮名],やましろの,くにのみやこは,はるされば,はなさきををり,あきされば,もみちばにほひ,おばせる,いづみのかはの,かみつせに,うちはしわたし,よどせには,うきはしわたし,ありがよひ,つかへまつらむ,よろづよまでに","#[左注](右天平十三年二月右<馬>頭境部宿祢老麻呂作也)","#[校異]歌 [西] 謌 / 尓 -> 邇 [元] / 喚 -> 咲 [元][紀][細] / 佐 -> 左 [元][類] / 比美[西(右書)] -> 比 [元][類]","#[事項],天平13年2月,年紀,作者:境部老麻呂,宮廷讃美,地名,京都,植物,儀礼歌,寿歌,恭仁京","#[訓異]
やましろの[寛],
くにのみやこは[寛],
はるされば,[寛]はるされは,
はなさきををり[寛],
あきされば,[寛]あきされは,
もみちばにほひ,[寛]もみちはにほひ,
おばせる,[寛]おはせる,
いづみのかはの,[寛]いつみのかはの,
かみつせに[寛],
うちはしわたし[寛],
よどせには,[寛]よとせには,
うきはしわたし[寛],
ありがよひ,[寛]ありかよひ,
つかへまつらむ[寛],
よろづよまでに,[寛]よろつよまてに,
" "#[番号]17/3908","#[題詞](讃三香原新都歌一首[并短歌])反歌","#[原文]楯並而 伊豆美乃河波乃 水緒多要受 都可倍麻都良牟 大宮所","#[訓読]たたなめて泉の川の水脈絶えず仕へまつらむ大宮ところ","#[仮名],たたなめて,いづみのかはの,みをたえず,つかへまつらむ,おほみやところ","#[左注]右天平十三年二月右<馬>頭境部宿祢老麻呂作也","#[校異]歌 [西] 謌 / 馬寮 -> 馬 [元][古][細][温]","#[事項],天平13年2月,年紀,作者:境部老麻呂,地名,木津川,枕詞,宮廷讃美,寿歌,儀礼歌,京都,恭仁京","#[訓異]
たたなめて,[寛]たてなめて,
いづみのかはの,[寛]いつみのかはの,
みをたえず,[寛]みをたえす,
つかへまつらむ[寛],
おほみやところ[寛],
" "#[番号]17/3909","#[題詞]詠霍公鳥歌二首","#[原文]多知婆奈波 常花尓毛歟 保登等藝須 周無等来鳴者 伎可奴日奈家牟","#[訓読]橘は常花にもが霍公鳥住むと来鳴かば聞かぬ日なけむ","#[仮名],たちばなは,とこはなにもが,ほととぎす,すむときなかば,きかぬひなけむ","#[左注](右四月二日大伴宿祢書持従奈良宅贈兄家持)","#[校異]","#[事項],天平13年4月2日,年紀,作者:大伴書持,植物,動物,贈答,大伴家持,恭仁京,京都","#[訓異]
たちばなは,[寛]たちはなは,
とこはなにもが,[寛]とこはなにもか,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
すむときなかば,[寛]すむときなかは,
きかぬひなけむ[寛],
" "#[番号]17/3910","#[題詞](詠霍公鳥歌二首)","#[原文]珠尓奴久 安布知乎宅尓 宇恵多良婆 夜麻霍公鳥 可礼受許武可聞","#[訓読]玉に貫く楝を家に植ゑたらば山霍公鳥離れず来むかも","#[仮名],たまにぬく,あふちをいへに,うゑたらば,やまほととぎす,かれずこむかも","#[左注]右四月二日大伴宿祢書持従奈良宅贈兄家持","#[校異]","#[事項],天平13年4月2日,年紀,作者:大伴書持,贈答,植物,動物,大伴家持,恭仁京,京都","#[訓異]
たまにぬく[寛],
あふちをいへに[寛],
うゑたらば,[寛]うゑたらは,
やまほととぎす,[寛]やまほとときす,
かれずこむかも,[寛]かれすこむかも,
" "#[番号]17/3911","#[題詞]橙橘初咲霍<公>鳥飜嚶 對此時候タ不暢志 因作三首短歌以散欝結之緒耳","#[原文]安之比奇能 山邊尓乎礼婆 保登等藝須 木際多知久吉 奈可奴日波奈之","#[訓読]あしひきの山辺に居れば霍公鳥木の間立ち潜き鳴かぬ日はなし","#[仮名],あしひきの,やまへにをれば,ほととぎす,このまたちくき,なかぬひはなし","#[左注](右四月三日内舎人大伴宿祢家持従久邇京報送弟書持)","#[校異]<> -> 公 [細][温] / 歌 [西] 謌","#[事項],天平13年4月3日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,動物,贈答,大伴書持,恭仁京,京都","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまへにをれば,[寛]やまへにをれは,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
このまたちくき[寛],
なかぬひはなし[寛],
" "#[番号]17/3912","#[題詞](橙橘初咲霍<公>鳥飜嚶 對此時候タ不暢志 因作三首短歌以散欝結之緒耳)","#[原文]保登等藝須 奈尓乃情曽 多知花乃 多麻奴久月之 来鳴登餘牟流","#[訓読]霍公鳥何の心ぞ橘の玉貫く月し来鳴き響むる","#[仮名],ほととぎす,なにのこころぞ,たちばなの,たまぬくつきし,きなきとよむる","#[左注](右四月三日内舎人大伴宿祢家持従久邇京報送弟書持)","#[校異]","#[事項],天平13年4月3日,年紀,作者:大伴家持,動物,植物,贈答,大伴書持,恭仁京,京都","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なにのこころぞ,[寛]なにのこころそ,
たちばなの,[寛]たちはなの,
たまぬくつきし[寛],
きなきとよむる[寛],
" "#[番号]17/3913","#[題詞](橙橘初咲霍<公>鳥飜嚶 對此時候タ不暢志 因作三首短歌以散欝結之緒耳)","#[原文]保登等藝須 安不知能枝尓 由吉底居者 花波知良牟奈 珠登見流麻泥","#[訓読]霍公鳥楝の枝に行きて居ば花は散らむな玉と見るまで","#[仮名],ほととぎす,あふちのえだに,ゆきてゐば,はなはちらむな,たまとみるまで","#[左注]右四月三日内舎人大伴宿祢家持従久邇京報送弟書持","#[校異]","#[事項],天平13年4月3日,年紀,作者:大伴家持,恭仁京,京都,動物,植物,大伴書持","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
あふちのえだに,[寛]あふちのえたに,
ゆきてゐば,[寛]ゆきてゐは,
はなはちらむな[寛],
たまとみるまで,[寛]たまとみるまて,
" "#[番号]17/3914","#[題詞]思霍公鳥歌一首 田口朝臣馬長作","#[原文]保登等藝須 今之来鳴者 餘呂豆代尓 可多理都具倍久 所念可母","#[訓読]霍公鳥今し来鳴かば万代に語り継ぐべく思ほゆるかも","#[仮名],ほととぎす,いましきなかば,よろづよに,かたりつぐべく,おもほゆるかも","#[左注]右傳云 一時交遊集宴 此日此處霍公鳥不喧 仍作件歌 以陳思慕之意 但其宴所并年月未得詳審也","#[校異]歌 [西] 謌 / 霍公 [類] 霍","#[事項],作者:田口馬長,動物,誦詠,宴席,伝誦","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いましきなかば,[寛]いましきなかは,
よろづよに,[寛]よろつよに,
かたりつぐべく,[寛]かたりつくへく,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]17/3915","#[題詞]山部宿祢明人詠春鴬歌一首","#[原文]安之比奇能 山谷古延C 野豆加佐尓 今者鳴良武 宇具比須乃許恵","#[訓読]あしひきの山谷越えて野づかさに今は鳴くらむ鴬の声","#[仮名],あしひきの,やまたにこえて,のづかさに,いまはなくらむ,うぐひすのこゑ","#[左注]右年月所處未得詳審 但随聞之時記載於茲","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],作者:山部赤人,古歌,伝誦,動物,枕詞","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまたにこえて[寛],
のづかさに,[寛]のつかさに,
いまはなくらむ[寛],
うぐひすのこゑ,[寛]うくひすのこゑ
" "#[番号]17/3916","#[題詞]十六年四月五日獨居平城故宅作歌六首","#[原文]橘乃 尓保敝流香可聞 保登等藝須 奈久欲乃雨尓 宇都路比奴良牟","#[訓読]橘のにほへる香かも霍公鳥鳴く夜の雨にうつろひぬらむ","#[仮名],たちばなの,にほへるかかも,ほととぎす,なくよのあめに,うつろひぬらむ","#[左注](右六首歌者天平十六年四月五日獨居於平城故郷舊宅大伴宿祢家持作)","#[校異]","#[事項],天平16年4月5日,年紀,作者:大伴家持,植物,動物,悲嘆,独詠,奈良","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
にほへるかかも[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なくよのあめに[寛],
うつろひぬらむ[寛],
" "#[番号]17/3917","#[題詞](十六年四月五日獨居平城故宅作歌六首)","#[原文]保登等藝須 夜音奈都可思 安美指者 花者須<具>登毛 可礼受加奈可牟","#[訓読]霍公鳥夜声なつかし網ささば花は過ぐとも離れずか鳴かむ","#[仮名],ほととぎす,よごゑなつかし,あみささば,はなはすぐとも,かれずかなかむ","#[左注](右六首歌者天平十六年四月五日獨居於平城故郷舊宅大伴宿祢家持作)","#[校異]登等 [元] 等登 / 久 -> 具 [元][類][紀][細]","#[事項],天平16年4月5日,年紀,作者:大伴家持,植物,動物,独詠,奈良","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
よごゑなつかし,[寛]よこゑなつかし,
あみささば,[寛]あみささは,
はなはすぐとも,[寛]はなはすくとも,
かれずかなかむ,[寛]かれすかなかむ,
" "#[番号]17/3918","#[題詞](十六年四月五日獨居平城故宅作歌六首)","#[原文]橘乃 尓保敝流苑尓 保登等藝須 鳴等比登都具 安美佐散麻之乎","#[訓読]橘のにほへる園に霍公鳥鳴くと人告ぐ網ささましを","#[仮名],たちばなの,にほへるそのに,ほととぎす,なくとひとつぐ,あみささましを","#[左注](右六首歌者天平十六年四月五日獨居於平城故郷舊宅大伴宿祢家持作)","#[校異]","#[事項],天平16年4月5日,年紀,作者:大伴家持,植物,動物,独詠,奈良","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
にほへるそのに[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なくとひとつぐ,[寛]なくとひとつく,
あみささましを[寛],
" "#[番号]17/3919","#[題詞](十六年四月五日獨居平城故宅作歌六首)","#[原文]青丹余之 奈良能美夜古波 布里奴礼登 毛等保登等藝須 不鳴安良<奈>久尓","#[訓読]あをによし奈良の都は古りぬれどもと霍公鳥鳴かずあらなくに","#[仮名],あをによし,ならのみやこは,ふりぬれど,もとほととぎす,なかずあらなくに","#[左注](右六首歌者天平十六年四月五日獨居於平城故郷舊宅大伴宿祢家持作)","#[校異]<> -> 奈 [代匠記初稿本]","#[事項],天平16年4月5日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,地名,奈良,動物,独詠,懐古","#[訓異]
あをによし[寛],
ならのみやこは[寛],
ふりぬれど,[寛]ふりぬれと,
もとほととぎす,[寛]もとほとときす,
なかずあらなくに,[寛]なかぬあらなくに,
" "#[番号]17/3920","#[題詞](十六年四月五日獨居平城故宅作歌六首)","#[原文]鶉鳴 布流之登比等波 於毛敝礼騰 花橘乃 尓保敷許乃屋度","#[訓読]鶉鳴く古しと人は思へれど花橘のにほふこの宿","#[仮名],うづらなく,ふるしとひとは,おもへれど,はなたちばなの,にほふこのやど","#[左注](右六首歌者天平十六年四月五日獨居於平城故郷舊宅大伴宿祢家持作)","#[校異]","#[事項],天平16年4月5日,年紀,作者:大伴家持,動物,枕詞,奈良,植物,懐古","#[訓異]
うづらなく,[寛]うつらなく,
ふるしとひとは[寛],
おもへれど,[寛]おもへれと,
はなたちばなの,[寛]はなたちはなの,
にほふこのやど,[寛]にほふこのやと,
" "#[番号]17/3921","#[題詞](十六年四月五日獨居平城故宅作歌六首)","#[原文]加吉都播多 衣尓須里都氣 麻須良雄乃 服曽比猟須流 月者伎尓家里","#[訓読]かきつばた衣に摺り付け大夫の着襲ひ猟する月は来にけり","#[仮名],かきつばた,きぬにすりつけ,ますらをの,きそひかりする,つきはきにけり","#[左注]右六首歌者天平十六年四月五日獨居於平城故郷舊宅大伴宿祢家持作","#[校異]","#[事項],天平16年4月5日,年紀,作者:大伴家持,植物,奈良","#[訓異]
かきつばた,[寛]かきつはた,
きぬにすりつけ[寛],
ますらをの[寛],
きそひかりする[寛],
つきはきにけり[寛],
" "#[番号]17/3922","#[題詞]天平十八年正月白雪多零積地數寸也 於時左大臣橘卿率大納言藤原豊成朝臣及諸王諸臣等参入太上天皇御在所 [中宮西院]供奉掃雪 於是降詔大臣参議并諸王者令侍于大殿上諸卿大夫者令侍于南細殿 而則賜酒肆宴勅曰汝諸王卿等聊賦此雪各奏其歌 / 左大臣橘宿祢應詔歌一首","#[原文]布流由吉乃 之路髪麻泥尓 大皇尓 都可倍麻都礼婆 貴久母安流香","#[訓読]降る雪の白髪までに大君に仕へまつれば貴くもあるか","#[仮名],ふるゆきの,しろかみまでに,おほきみに,つかへまつれば,たふとくもあるか","#[左注](藤原豊成朝臣 / 巨勢奈弖麻呂朝臣 / 大伴牛養宿祢 / 藤原仲麻呂朝臣 / 三原王 / 智奴王 / 船王 / 邑知王 / <小>田王 / 林王 / 穂積朝臣老 / 小田朝臣諸人 / 小野朝臣綱手 / 高橋朝臣國足 / 太朝臣徳太理 / 高丘連河内 / 秦忌寸朝元 / 楢原造東人 / 右件王卿等 應詔作歌依次奏之 登時不記其歌漏失 但秦忌寸朝元者 左大臣橘卿謔云 靡堪賦歌以麝贖之 因此黙已也)","#[校異]天平十八 [元] 十八 / 諸臣 [元] 諸 / 卿等 [元] 卿 / 歌 [西] 謌","#[事項],天平18年1月,年紀,作者:橘諸兄,肆宴,宴席,奈良,宮廷,寿歌,大君讃美,応詔","#[訓異]
ふるゆきの[寛],
しろかみまでに,[寛]しろかみまてに,
おほきみに[寛],
つかへまつれば,[寛]つかへまつれは,
たふとくもあるか[寛],
" "#[番号]17/3923","#[題詞](天平十八年正月白雪多零積地數寸也 於時左大臣橘卿率大納言藤原豊成朝臣及諸王諸臣等参入太上天皇御在所 [中宮西院]供奉掃雪 於是降詔大臣参議并諸王者令侍于大殿上諸卿大夫者令侍于南細殿 而則賜酒肆宴勅曰汝諸王卿等聊賦此雪各奏其歌) / 紀朝臣清人應詔歌一首","#[原文]天下 須泥尓於保比C 布流雪乃 比加里乎見礼婆 多敷刀久母安流香","#[訓読]天の下すでに覆ひて降る雪の光りを見れば貴くもあるか","#[仮名],あめのした,すでにおほひて,ふるゆきの,ひかりをみれば,たふとくもあるか","#[左注](藤原豊成朝臣 / 巨勢奈弖麻呂朝臣 / 大伴牛養宿祢 / 藤原仲麻呂朝臣 / 三原王 / 智奴王 / 船王 / 邑知王 / <小>田王 / 林王 / 穂積朝臣老 / 小田朝臣諸人 / 小野朝臣綱手 / 高橋朝臣國足 / 太朝臣徳太理 / 高丘連河内 / 秦忌寸朝元 / 楢原造東人 / 右件王卿等 應詔作歌依次奏之 登時不記其歌漏失 但秦忌寸朝元者 左大臣橘卿謔云 靡堪賦歌以麝贖之 因此黙已也)","#[校異]","#[事項],天平18年1月,年紀,作者:紀清人,肆宴,宴席,奈良,宮廷,寿歌,応詔","#[訓異]
あめのした[寛],
すでにおほひて,[寛]すてにおほひて,
ふるゆきの[寛],
ひかりをみれば,[寛]ひかりをみれは,
たふとくもあるか[寛],
" "#[番号]17/3924","#[題詞](天平十八年正月白雪多零積地數寸也 於時左大臣橘卿率大納言藤原豊成朝臣及諸王諸臣等参入太上天皇御在所 [中宮西院]供奉掃雪 於是降詔大臣参議并諸王者令侍于大殿上諸卿大夫者令侍于南細殿 而則賜酒肆宴勅曰汝諸王卿等聊賦此雪各奏其歌) / 紀朝臣男梶應詔歌一首","#[原文]山乃可比 曽許登母見延受 乎登都日毛 昨日毛今日毛 由吉能布礼々<婆>","#[訓読]山の狭そことも見えず一昨日も昨日も今日も雪の降れれば","#[仮名],やまのかひ,そこともみえず,をとつひも,きのふもけふも,ゆきのふれれば","#[左注](藤原豊成朝臣 / 巨勢奈弖麻呂朝臣 / 大伴牛養宿祢 / 藤原仲麻呂朝臣 / 三原王 / 智奴王 / 船王 / 邑知王 / <小>田王 / 林王 / 穂積朝臣老 / 小田朝臣諸人 / 小野朝臣綱手 / 高橋朝臣國足 / 太朝臣徳太理 / 高丘連河内 / 秦忌寸朝元 / 楢原造東人 / 右件王卿等 應詔作歌依次奏之 登時不記其歌漏失 但秦忌寸朝元者 左大臣橘卿謔云 靡堪賦歌以麝贖之 因此黙已也)","#[校異]波 -> 婆 [元][類][温]","#[事項],天平18年1月,年紀,作者:紀男梶,肆宴,宴席,奈良,宮廷,寿歌,応詔","#[訓異]
やまのかひ[寛],
そこともみえず,[寛]そこともみえす,
をとつひも[寛],
きのふもけふも[寛],
ゆきのふれれば,[寛]ゆきのふれれは,
" "#[番号]17/3925","#[題詞](天平十八年正月白雪多零積地數寸也 於時左大臣橘卿率大納言藤原豊成朝臣及諸王諸臣等参入太上天皇御在所 [中宮西院]供奉掃雪 於是降詔大臣参議并諸王者令侍于大殿上諸卿大夫者令侍于南細殿 而則賜酒肆宴勅曰汝諸王卿等聊賦此雪各奏其歌) / 葛井連諸會應詔歌一首","#[原文]新 年乃婆自米尓 豊乃登之 思流須登奈良思 雪能敷礼流波","#[訓読]新しき年の初めに豊の年しるすとならし雪の降れるは","#[仮名],あらたしき,としのはじめに,とよのとし,しるすとならし,ゆきのふれるは","#[左注](藤原豊成朝臣 / 巨勢奈弖麻呂朝臣 / 大伴牛養宿祢 / 藤原仲麻呂朝臣 / 三原王 / 智奴王 / 船王 / 邑知王 / <小>田王 / 林王 / 穂積朝臣老 / 小田朝臣諸人 / 小野朝臣綱手 / 高橋朝臣國足 / 太朝臣徳太理 / 高丘連河内 / 秦忌寸朝元 / 楢原造東人 / 右件王卿等 應詔作歌依次奏之 登時不記其歌漏失 但秦忌寸朝元者 左大臣橘卿謔云 靡堪賦歌以麝贖之 因此黙已也)","#[校異]","#[事項],天平18年1月,年紀,作者:葛井諸会,肆宴,宴席,奈良,宮廷,寿歌,応詔","#[訓異]
あらたしき[寛],
としのはじめに,[寛]としのはしめに,
とよのとし[寛],
しるすとならし[寛],
ゆきのふれるは[寛],
" "#[番号]17/3926","#[題詞](天平十八年正月白雪多零積地數寸也 於時左大臣橘卿率大納言藤原豊成朝臣及諸王諸臣等参入太上天皇御在所 [中宮西院]供奉掃雪 於是降詔大臣参議并諸王者令侍于大殿上諸卿大夫者令侍于南細殿 而則賜酒肆宴勅曰汝諸王卿等聊賦此雪各奏其歌) / 大伴宿祢家持應詔歌一首","#[原文]大宮<能> 宇知尓毛刀尓毛 比賀流麻泥 零<流>白雪 見礼杼安可奴香聞","#[訓読]大宮の内にも外にも光るまで降れる白雪見れど飽かぬかも","#[仮名],おほみやの,うちにもとにも,ひかるまで,ふれるしらゆき,みれどあかぬかも","#[左注]藤原豊成朝臣 / 巨勢奈弖麻呂朝臣 / 大伴牛養宿祢 / 藤原仲麻呂朝臣 / 三原王 / 智奴王 / 船王 / 邑知王 / <小>田王 / 林王 / 穂積朝臣老 / 小田朝臣諸人 / 小野朝臣綱手 / 高橋朝臣國足 / 太朝臣徳太理 / 高丘連河内 / 秦忌寸朝元 / 楢原造東人 / 右件王卿等 應詔作歌依次奏之 登時不記其歌漏失 但秦忌寸朝元者 左大臣橘卿謔云 靡堪賦歌以麝贖之 因此黙已也","#[校異]之 -> 能 [元][類] / 須 -> 流 [類] / 養 [元] 飼 / 山 -> 小 [元]","#[事項],天平18年1月,年紀,作者:大伴家持,肆宴,宴席,奈良,宮廷,寿歌,応詔","#[訓異]
おほみやの[寛],
うちにもとにも[寛],
ひかるまで,[寛]ひかるまて,
ふれるしらゆき,[寛]ふるすしらゆき,
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]17/3927","#[題詞]大伴宿祢家持以天平十八年閏七月被任越中國守 即取七月赴任所於時 姑大伴氏坂上郎女贈家持歌二首","#[原文]久佐麻久良 多妣由久吉美乎 佐伎久安礼等 伊波比倍須恵都 安我登許能敝尓","#[訓読]草枕旅行く君を幸くあれと斎瓮据ゑつ我が床の辺に","#[仮名],くさまくら,たびゆくきみを,さきくあれと,いはひへすゑつ,あがとこのへに","#[左注]","#[校異]天平十八年閏 [元] 閏","#[事項],天平18年閏7月,年紀,作者:坂上郎女,贈答,枕詞,出発,羈旅,女歌,神祭り,大伴家持","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびゆくきみを,[寛]たひゆくきみを,
さきくあれと[寛],
いはひへすゑつ[寛],
あがとこのへに,[寛]あかとこのへに,
" "#[番号]17/3928","#[題詞](大伴宿祢家持以天平十八年閏七月被任越中國守 即取七月赴任所於時 姑大伴氏坂上郎女贈家持歌二首)","#[原文]伊麻能<其>等 古非之久伎美我 於毛保要婆 伊可尓加母世牟 須流須邊乃奈左","#[訓読]今のごと恋しく君が思ほえばいかにかもせむするすべのなさ","#[仮名],いまのごと,こひしくきみが,おもほえば,いかにかもせむ,するすべのなさ","#[左注]","#[校異]去 -> 其 [元][紀][細][温]","#[事項],天平18年閏7月,年紀,作者:坂上郎女,贈答,出発,羈旅,女歌,悲別,大伴家持","#[訓異]
いまのごと,[寛]いまのこと,
こひしくきみが,[寛]こひしくきみか,
おもほえば,[寛]おもほえは,
いかにかもせむ[寛],
するすべのなさ,[寛]するすへのなさ,
" "#[番号]17/3929","#[題詞]更贈越中國歌二首","#[原文]多妣尓伊仁思 吉美志毛都藝C 伊米尓美由 安我加多孤悲乃 思氣家礼婆可聞","#[訓読]旅に去にし君しも継ぎて夢に見ゆ我が片恋の繁ければかも","#[仮名],たびにいにし,きみしもつぎて,いめにみゆ,あがかたこひの,しげければかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:坂上郎女,贈答,大伴家持,羈旅,悲別,恋情,女歌","#[訓異]
たびにいにし,[寛]たひにいにし,
きみしもつぎて,[寛]きみしもつきて,
いめにみゆ[寛],
あがかたこひの,[寛]あかかたこひの,
しげければかも,[寛]しけけれはかも,
" "#[番号]17/3930","#[題詞](更贈越中國歌二首)","#[原文]美知乃奈加 久尓都美可未波 多妣由伎母 之思良奴伎美乎 米具美多麻波奈","#[訓読]道の中国つみ神は旅行きもし知らぬ君を恵みたまはな","#[仮名],みちのなか,くにつみかみは,たびゆきも,ししらぬきみを,めぐみたまはな","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:坂上郎女,贈答,羈旅,悲別,手向け,大伴家持,女歌","#[訓異]
みちのなか[寛],
くにつみかみは[寛],
たびゆきも,[寛]たひゆきも,
ししらぬきみを[寛],
めぐみたまはな,[寛]めくみたまはな,
" "#[番号]17/3931","#[題詞]平群氏女郎贈越中守大伴宿祢家持歌十二首","#[原文]吉美尓餘里 吾名波須泥尓 多都多山 絶多流孤悲乃 之氣吉許呂可母","#[訓読]君により我が名はすでに龍田山絶えたる恋の繁きころかも","#[仮名],きみにより,わがなはすでに,たつたやま,たえたるこひの,しげきころかも","#[左注](右件十二首歌者時々寄便使来贈非在<一>度所送也)","#[校異]","#[事項],作者:平群女郎,贈答,大伴家持,恋情,地名,奈良,掛詞,悲別,女歌","#[訓異]
きみにより[寛],
わがなはすでに,[寛]わかなはすてに,
たつたやま[寛],
たえたるこひの[寛],
しげきころかも,[寛]しけきころかも,
" "#[番号]17/3932","#[題詞](平群氏女郎贈越中守大伴宿祢家持歌十二首)","#[原文]須麻比等乃 海邊都祢佐良受 夜久之保能 可良吉戀乎母 安礼波須流香物","#[訓読]須磨人の海辺常去らず焼く塩の辛き恋をも我れはするかも","#[仮名],すまひとの,うみへつねさらず,やくしほの,からきこひをも,あれはするかも","#[左注](右件十二首歌者時々寄便使来贈非在<一>度所送也)","#[校異]","#[事項],作者:平群女郎,序詞,贈答,大伴家持,恋情,地名,兵庫,女歌","#[訓異]
すまひとの[寛],
うみへつねさらず,[寛]うみへつねさらす,
やくしほの[寛],
からきこひをも[寛],
あれはするかも[寛],
" "#[番号]17/3933","#[題詞](平群氏女郎贈越中守大伴宿祢家持歌十二首)","#[原文]阿里佐利底 能知毛相牟等 於母倍許曽 都由能伊乃知母 都藝都追和多礼","#[訓読]ありさりて後も逢はむと思へこそ露の命も継ぎつつ渡れ","#[仮名],ありさりて,のちもあはむと,おもへこそ,つゆのいのちも,つぎつつわたれ","#[左注](右件十二首歌者時々寄便使来贈非在<一>度所送也)","#[校異]","#[事項],作者:平群女郎,贈答,大伴家持,恋情,怨恨,悲別,女歌","#[訓異]
ありさりて[寛],
のちもあはむと[寛],
おもへこそ[寛],
つゆのいのちも,[寛]つえのいのちも,
つぎつつわたれ,[寛]つきつつわたれ,
" "#[番号]17/3934","#[題詞](平群氏女郎贈越中守大伴宿祢家持歌十二首)","#[原文]奈加奈可尓 之奈婆夜須家牟 伎美我目乎 美受比佐奈良婆 須敝奈可流倍思","#[訓読]なかなかに死なば安けむ君が目を見ず久ならばすべなかるべし","#[仮名],なかなかに,しなばやすけむ,きみがめを,みずひさならば,すべなかるべし","#[左注](右件十二首歌者時々寄便使来贈非在<一>度所送也)","#[校異]","#[事項],作者:平群女郎,贈答,大伴家持,恋情,悲別,女歌","#[訓異]
なかなかに[寛],
しなばやすけむ,[寛]しなはやすけむ,
きみがめを,[寛]きみかめを,
みずひさならば,[寛]みすひさならは,
すべなかるべし,[寛]すへなかるへし,
" "#[番号]17/3935","#[題詞](平群氏女郎贈越中守大伴宿祢家持歌十二首)","#[原文]許母利奴能 之多由孤悲安麻里 志良奈美能 伊知之路久伊泥奴 比登乃師流倍久","#[訓読]隠り沼の下ゆ恋ひあまり白波のいちしろく出でぬ人の知るべく","#[仮名],こもりぬの,したゆこひあまり,しらなみの,いちしろくいでぬ,ひとのしるべく","#[左注](右件十二首歌者時々寄便使来贈非在<一>度所送也)","#[校異]","#[事項],作者:平群女郎,贈答,大伴家持,恋情,枕詞,人目,うわさ,女歌","#[訓異]
こもりぬの[寛],
したゆこひあまり[寛],
しらなみの[寛],
いちしろくいでぬ,[寛]いちしろくいてぬ,
ひとのしるべく,[寛]ひとのしるへく,
" "#[番号]17/3936","#[題詞](平群氏女郎贈越中守大伴宿祢家持歌十二首)","#[原文]久佐麻久良 多妣尓之婆々々 可久能未也 伎美乎夜利都追 安我孤悲乎良牟","#[訓読]草枕旅にしばしばかくのみや君を遣りつつ我が恋ひ居らむ","#[仮名],くさまくら,たびにしばしば,かくのみや,きみをやりつつ,あがこひをらむ","#[左注](右件十二首歌者時々寄便使来贈非在<一>度所送也)","#[校異]","#[事項],作者:平群女郎,枕詞,贈答,悲別,恋情,大伴家持,女歌","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびにしばしば,[寛]たひにしはしは,
かくのみや[寛],
きみをやりつつ[寛],
あがこひをらむ,[寛]あかこひをらむ,
" "#[番号]17/3937","#[題詞](平群氏女郎贈越中守大伴宿祢家持歌十二首)","#[原文]草枕 多妣伊尓之伎美我 可敝里許牟 月日乎之良牟 須邊能思良難久","#[訓読]草枕旅去にし君が帰り来む月日を知らむすべの知らなく","#[仮名],くさまくら,たびいにしきみが,かへりこむ,つきひをしらむ,すべのしらなく","#[左注](右件十二首歌者時々寄便使来贈非在<一>度所送也)","#[校異]","#[事項],作者:平群女郎,枕詞,贈答,大伴家持,悲別,恋情,女歌","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびいにしきみが,[寛]たひいにしきみか,
かへりこむ[寛],
つきひをしらむ[寛],
すべのしらなく,[寛]すへのしらなく,
" "#[番号]17/3938","#[題詞](平群氏女郎贈越中守大伴宿祢家持歌十二首)","#[原文]可久能未也 安我故非乎浪牟 奴婆多麻能 欲流乃比毛太尓 登吉佐氣受之C","#[訓読]かくのみや我が恋ひ居らむぬばたまの夜の紐だに解き放けずして","#[仮名],かくのみや,あがこひをらむ,ぬばたまの,よるのひもだに,ときさけずして","#[左注](右件十二首歌者時々寄便使来贈非在<一>度所送也)","#[校異]","#[事項],作者:平群女郎,枕詞,贈答,大伴家持,恋情,悲別,女歌","#[訓異]
かくのみや[寛],
あがこひをらむ,[寛]あかこひをらむ,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よるのひもだに,[寛]よるのひもたに,
ときさけずして,[寛]ときさけすして,
" "#[番号]17/3939","#[題詞](平群氏女郎贈越中守大伴宿祢家持歌十二首)","#[原文]佐刀知加久 伎美我奈里那婆 古非米也等 母登奈於毛比此 安連曽久夜思伎","#[訓読]里近く君がなりなば恋ひめやともとな思ひし我れぞ悔しき","#[仮名],さとちかく,きみがなりなば,こひめやと,もとなおもひし,あれぞくやしき","#[左注](右件十二首歌者時々寄便使来贈非在<一>度所送也)","#[校異]","#[事項],作者:平群女郎,贈答,大伴家持,恋情,悲別,女歌","#[訓異]
さとちかく[寛],
きみがなりなば,[寛]きみかなりなは,
こひめやと[寛],
もとなおもひし[寛],
あれぞくやしき,[寛]あれそくやしき,
" "#[番号]17/3940","#[題詞](平群氏女郎贈越中守大伴宿祢家持歌十二首)","#[原文]餘呂豆代尓 許己呂波刀氣C 和我世古我 都美之<手>見都追 志乃備加祢都母","#[訓読]万代に心は解けて我が背子が捻みし手見つつ忍びかねつも","#[仮名],よろづよに,こころはとけて,わがせこが,つみしてみつつ,しのびかねつも","#[左注](右件十二首歌者時々寄便使来贈非在<一>度所送也)","#[校異]尓 [元] 等 / 乎 -> 手 [元]","#[事項],作者:平群女郎,贈答,大伴家持,恋情,女歌","#[訓異]
よろづよに,[寛]よろつよに,
こころはとけて[寛],
わがせこが,[寛]わかせこか,
つみしてみつつ,[寛]つみしをみつつ,
しのびかねつも,[寛]しのひかねつも,
" "#[番号]17/3941","#[題詞](平群氏女郎贈越中守大伴宿祢家持歌十二首)","#[原文]鴬能 奈久々良多尓々 宇知波米C 夜氣波之奴等母 伎美乎之麻多武","#[訓読]鴬の鳴くくら谷にうちはめて焼けは死ぬとも君をし待たむ","#[仮名],うぐひすの,なくくらたにに,うちはめて,やけはしぬとも,きみをしまたむ","#[左注](右件十二首歌者時々寄便使来贈非在<一>度所送也)","#[校異]","#[事項],作者:平群女郎,動物,贈答,大伴家持,恋情,女歌","#[訓異]
うぐひすの,[寛]うくひすの,
なくくらたにに[寛],
うちはめて[寛],
やけはしぬとも[寛],
きみをしまたむ[寛],
" "#[番号]17/3942","#[題詞](平群氏女郎贈越中守大伴宿祢家持歌十二首)","#[原文]麻都能波奈 花可受尓之毛 和我勢故我 於母敝良奈久尓 母登奈佐吉都追","#[訓読]松の花花数にしも我が背子が思へらなくにもとな咲きつつ","#[仮名],まつのはな,はなかずにしも,わがせこが,おもへらなくに,もとなさきつつ","#[左注]右件十二首歌者時々寄便使来贈非在<一>度所送也","#[校異]十二首歌 [元] 歌 / <> -> 一 [西(右書)][元][紀][細]","#[事項],作者:平群女郎,植物,贈答,恋情,怨恨,大伴家持,女歌","#[訓異]
まつのはな[寛],
はなかずにしも,[寛]はなかすにしも,
わがせこが,[寛]わかせこか,
おもへらなくに[寛],
もとなさきつつ[寛],
" "#[番号]17/3943","#[題詞]八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌","#[原文]秋田乃 穂牟伎見我C里 和我勢古我 布左多乎里家流 乎美奈敝之香物","#[訓読]秋の田の穂向き見がてり我が背子がふさ手折り来るをみなへしかも","#[仮名],あきのたの,ほむきみがてり,わがせこが,ふさたをりける,をみなへしかも","#[左注]右一首守大伴宿祢家持作","#[校異]","#[事項],天平18年8月7日,年紀,作者:大伴家持,宴席,女歌,植物,恋愛","#[訓異]
あきのたの[寛],
ほむきみがてり,[寛]ほむきみかてり,
わがせこが,[寛]わかせこか,
ふさたをりける[寛],
をみなへしかも[寛],
" "#[番号]17/3944","#[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)","#[原文]乎美奈敝之 左伎多流野邊乎 由伎米具利 吉美乎念出 多母登保里伎奴","#[訓読]をみなへし咲きたる野辺を行き廻り君を思ひ出た廻り来ぬ","#[仮名],をみなへし,さきたるのへを,ゆきめぐり,きみをおもひで,たもとほりきぬ","#[左注](右三首掾大伴宿祢池主作)","#[校異]","#[事項],天平18年8月7日,年紀,作者:大伴池主,植物,恋愛,宴席,大伴家持","#[訓異]
をみなへし[寛],
さきたるのへを[寛],
ゆきめぐり,[寛]ゆきめくり,
きみをおもひで,[寛]きみをおもひて,
たもとほりきぬ[寛],
" "#[番号]17/3945","#[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)","#[原文]安吉能欲波 阿加登吉左牟之 思路多倍乃 妹之衣袖 伎牟餘之母我毛","#[訓読]秋の夜は暁寒し白栲の妹が衣手着むよしもがも","#[仮名],あきのよは,あかときさむし,しろたへの,いもがころもで,きむよしもがも","#[左注](右三首掾大伴宿祢池主作)","#[校異]","#[事項],天平18年8月7日,年紀,作者:大伴池主,枕詞,宴席,大伴家持,高岡,富山","#[訓異]
あきのよは[寛],
あかときさむし[寛],
しろたへの[寛],
いもがころもで,[寛]いもかころもて,
きむよしもがも,[寛]きむよしもかも,
" "#[番号]17/3946","#[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)","#[原文]保登等藝須 奈伎C須疑尓之 乎加備可良 秋風吹奴 余之母安良奈久尓","#[訓読]霍公鳥鳴きて過ぎにし岡びから秋風吹きぬよしもあらなくに","#[仮名],ほととぎす,なきてすぎにし,をかびから,あきかぜふきぬ,よしもあらなくに","#[左注]右三首掾大伴宿祢池主作","#[校異]","#[事項],天平18年8月7日,年紀,作者:大伴池主,動物,宴席,高岡,富山","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なきてすぎにし,[寛]なきてすきにし,
をかびから,[寛]ちかひから,
あきかぜふきぬ,[寛]あきかせふきぬ,
よしもあらなくに[寛],
" "#[番号]17/3947","#[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)","#[原文]家佐能安佐氣 秋風左牟之 登保都比等 加里我来鳴牟 等伎知可美香物","#[訓読]今朝の朝明秋風寒し遠つ人雁が来鳴かむ時近みかも","#[仮名],けさのあさけ,あきかぜさむし,とほつひと,かりがきなかむ,ときちかみかも","#[左注](右二首守大伴宿祢家持作)","#[校異]","#[事項],天平18年8月7日,年紀,作者:大伴家持,動物,宴席,枕詞,高岡,富山","#[訓異]
けさのあさけ[寛],
あきかぜさむし,[寛]あきかせさむし,
とほつひと[寛],
かりがきなかむ,[寛]かりかきなかむ,
ときちかみかも[寛],
" "#[番号]17/3948","#[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)","#[原文]安麻射加流 比奈尓月歴奴 之可礼登毛 由比C之紐乎 登伎毛安氣奈久尓","#[訓読]天離る鄙に月経ぬしかれども結ひてし紐を解きも開けなくに","#[仮名],あまざかる,ひなにつきへぬ,しかれども,ゆひてしひもを,ときもあけなくに","#[左注]右二首守大伴宿祢家持作","#[校異]","#[事項],天平18年8月7日,年紀,作者:大伴家持,恋愛,宴席,枕詞,高岡,富山","#[訓異]
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなにつきへぬ[寛],
しかれども,[寛]しかれとも,
ゆひてしひもを[寛],
ときもあけなくに[寛],
" "#[番号]17/3949","#[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)","#[原文]安麻射加流 比奈尓安流和礼乎 宇多我多毛 比<母>登吉佐氣C 於毛保須良米也","#[訓読]天離る鄙にある我れをうたがたも紐解き放けて思ほすらめや","#[仮名],あまざかる,ひなにあるわれを,うたがたも,ひもときさけて,おもほすらめや","#[左注]右一首掾大伴宿祢池主","#[校異]母毛 -> 母 [元][類][細][温]","#[事項],天平18年8月7日,年紀,作者:大伴池主,枕詞,恋愛,宴席,高岡,富山","#[訓異]
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなにあるわれを[寛],
うたがたも,[寛]うたかたも,
ひもときさけて,[寛]ひももときさけて,
おもほすらめや[寛],
" "#[番号]17/3950","#[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)","#[原文]伊敝尓之底 由比弖師比毛乎 登吉佐氣受 念意緒 多礼賀思良牟母","#[訓読]家にして結ひてし紐を解き放けず思ふ心を誰れか知らむも","#[仮名],いへにして,ゆひてしひもを,ときさけず,おもふこころを,たれかしらむも","#[左注]右一首守大伴宿祢家持作","#[校異]家持作 [元] 家持","#[事項],天平18年8月7日,年紀,作者:大伴家持,恋愛,望郷,宴席,高岡,富山","#[訓異]
いへにして[寛],
ゆひてしひもを[寛],
ときさけず,[寛]ときさけす,
おもふこころを[寛],
たれかしらむも[寛],
" "#[番号]17/3951","#[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)","#[原文]日晩之乃 奈吉奴流登吉波 乎美奈敝之 佐伎多流野邊乎 遊吉追都見倍之","#[訓読]ひぐらしの鳴きぬる時はをみなへし咲きたる野辺を行きつつ見べし","#[仮名],ひぐらしの,なきぬるときは,をみなへし,さきたるのへを,ゆきつつみべし","#[左注]右一首大目秦忌寸八千嶋","#[校異]大目 [類] 越中大目","#[事項],天平18年8月7日,年紀,作者:秦八千島,宴席,植物,大伴家持,,高岡,富山","#[訓異]
ひぐらしの,[寛]ひくらしの,
なきぬるときは[寛],
をみなへし[寛],
さきたるのへを[寛],
ゆきつつみべし,[寛]ゆきつつみへし,
" "#[番号]17/3952","#[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌) / 古歌一首[大原高安真人作] 年月不審 但随聞時記載茲焉","#[原文]伊毛我伊敝尓 伊久里能母里乃 藤花 伊麻許牟春<母> 都祢加久之見牟","#[訓読]妹が家に伊久里の杜の藤の花今来む春も常かくし見む","#[仮名],いもがいへに,いくりのもりの,ふぢのはな,いまこむはるも,つねかくしみむ","#[左注]右一首傳誦僧玄勝是也","#[校異]毛 -> 母 [元][類] / 加 [元](塙) 賀","#[事項],天平18年8月7日,年紀,作者:玄勝,古歌,伝誦,大原高安,大伴家持,宴席,枕詞,恋愛,高岡,富山","#[訓異]
いもがいへに,[寛]いもかいへに,
いくりのもりの[寛],
ふぢのはな,[寛]ふちのはな,
いまこむはるも[寛],
つねかくしみむ[寛],
" "#[番号]17/3953","#[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)","#[原文]鴈我祢波 都可比尓許牟等 佐和久良武 秋風左無美 曽乃可波能倍尓","#[訓読]雁がねは使ひに来むと騒くらむ秋風寒みその川の上に","#[仮名],かりがねは,つかひにこむと,さわくらむ,あきかぜさむみ,そのかはのへに","#[左注](右二首守大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平18年8月7日,年紀,作者:大伴家持,動物,叙景,望郷,宴席,高岡,富山","#[訓異]
かりがねは,[寛]かりかねは,
つかひにこむと[寛],
さわくらむ[寛],
あきかぜさむみ,[寛]あきかせさむみ,
そのかはのへに[寛],
" "#[番号]17/3954","#[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)","#[原文]馬並C 伊射宇知由可奈 思夫多尓能 伎欲吉伊蘇<未>尓 与須流奈弥見尓","#[訓読]馬並めていざ打ち行かな渋谿の清き礒廻に寄する波見に","#[仮名],うまなめて,いざうちゆかな,しぶたにの,きよきいそみに,よするなみみに","#[左注]右二首守大伴宿祢家持","#[校異]末 -> 未 [温]","#[事項],天平18年8月7日,年紀,作者:大伴家持,宴席,遊覧,地名,高岡,富山","#[訓異]
うまなめて[寛],
いざうちゆかな,[寛]いさうちゆかな,
しぶたにの,[寛]しふたにの,
きよきいそみに,[寛]きよきいそまに,
よするなみみに[寛],
" "#[番号]17/3955","#[題詞](八月七日夜集于守大伴宿祢家持舘宴歌)","#[原文]奴婆多麻乃 欲波布氣奴良之 多末久之氣 敷多我美夜麻尓 月加多夫伎奴","#[訓読]ぬばたまの夜は更けぬらし玉櫛笥二上山に月かたぶきぬ","#[仮名],ぬばたまの,よはふけぬらし,たまくしげ,ふたがみやまに,つきかたぶきぬ","#[左注]右一首史生土師宿祢道良","#[校異]","#[事項],天平18年8月7日,年紀,作者:土師道良,宴席,地名,高岡,富山,大伴家持,枕詞,終宴,叙景","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よはふけぬらし[寛],
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
ふたがみやまに,[寛]ふたかみやまに,
つきかたぶきぬ,[寛]つきかたふきぬ,
" "#[番号]17/3956","#[題詞]大目秦忌寸八千嶋之館宴歌一首","#[原文]奈呉能安麻能 都里須流布祢波 伊麻許曽婆 敷奈太那宇知C 安倍弖許藝泥米","#[訓読]奈呉の海人の釣する舟は今こそば舟棚打ちてあへて漕ぎ出め","#[仮名],なごのあまの,つりするふねは,いまこそば,ふなだなうちて,あへてこぎでめ","#[左注]右館之客屋居望蒼海 仍主人八千嶋作此歌也","#[校異]八千嶋作 [元][古] 作 / 歌 [西] 謌","#[事項],作者:秦八千島,宴席,地名,高岡,富山","#[訓異]
なごのあまの,[寛]なこのあまの,
つりするふねは[寛],
いまこそば,[寛]いまこそは,
ふなだなうちて,[寛]ふなたなうちて,
あへてこぎでめ,[寛]あへてこきてめ,
" "#[番号]17/3957","#[題詞]哀傷長逝之弟歌一首[并短歌]","#[原文]安麻射加流 比奈乎佐米尓等 大王能 麻氣乃麻尓末尓 出而許之 和礼乎於久流登 青丹余之 奈良夜麻須疑C 泉河 伎欲吉可波良尓 馬駐 和可礼之時尓 好去而 安礼可敝里許牟 平久 伊波比C待登 可多良比C 許之比乃伎波美 多麻保許能 道乎多騰保美 山河能 敝奈里C安礼婆 孤悲之家口 氣奈我枳物能乎 見麻久保里 念間尓 多麻豆左能 使乃家礼婆 宇礼之美登 安我麻知刀敷尓 於餘豆礼能 多<波>許登等可毛 <波>之伎余思 奈弟乃美許等 奈尓之加母 時之<波>安良牟乎 <波>太須酒吉 穂出秋乃 芽子花 尓保敝流屋戸乎 [言斯人為性好愛花草花樹而多<植>於寝院之庭 故謂之花薫庭也] 安佐尓波尓 伊泥多知奈良之 暮庭尓 敷美多比良氣受 佐保能宇知乃 里乎徃過 安之比紀乃 山能許奴礼尓 白雲尓 多知多奈妣久等 安礼尓都氣都流 [佐保山火葬 故謂之佐保乃宇知乃佐<刀>乎由吉須疑]","#[訓読]天離る 鄙治めにと 大君の 任けのまにまに 出でて来し 我れを送ると あをによし 奈良山過ぎて 泉川 清き河原に 馬留め 別れし時に ま幸くて 我れ帰り来む 平らけく 斎ひて待てと 語らひて 来し日の極み 玉桙の 道をた遠み 山川の 隔りてあれば 恋しけく 日長きものを 見まく欲り 思ふ間に 玉梓の 使の来れば 嬉しみと 我が待ち問ふに およづれの たはこととかも はしきよし 汝弟の命 なにしかも 時しはあらむを はだすすき 穂に出づる秋の 萩の花 にほへる宿を [言斯人為性好愛花草花樹而多<植>於寝院之庭 故謂之花薫庭也] 朝庭に 出で立ち平し 夕庭に 踏み平げず 佐保の内の 里を行き過ぎ あしひきの 山の木末に 白雲に 立ちたなびくと 我れに告げつる [佐保山火葬 故謂之佐保の内の里を行き過ぎ]","#[仮名],あまざかる,ひなをさめにと,おほきみの,まけのまにまに,いでてこし,われをおくると,あをによし,ならやますぎて,いづみがは,きよきかはらに,うまとどめ,わかれしときに,まさきくて,あれかへりこむ,たひらけく,いはひてまてと,かたらひて,こしひのきはみ,たまほこの,みちをたどほみ,やまかはの,へなりてあれば,こひしけく,けながきものを,みまくほり,おもふあひだに,たまづさの,つかひのければ,うれしみと,あがまちとふに,およづれの,たはこととかも,はしきよし,なおとのみこと,なにしかも,ときしはあらむを,はだすすき,ほにいづるあきの,はぎのはな,にほへるやどを,あさにはに,いでたちならし,ゆふにはに,ふみたひらげず,さほのうちの,さとをゆきすぎ,あしひきの,やまのこぬれに,しらくもに,たちたなびくと,あれにつげつる,,,さほのうちの,さとをゆきすぎ","#[左注](右天平十八年秋九月廿五日越中守大伴宿祢家持遥聞弟喪感傷作之也)","#[校異]里 [元][類](塙) 理 / 久 [元](塙) 安 / 婆 -> 波 [元][類] / 婆 -> 波 [元][類] / 婆 -> 波 [元][類][紀][細] / 婆 -> 波 [元][類][温] / 値 -> 植 [類][矢][京] / 力 -> 刀 [元][類][紀]","#[事項],天平18年9月25日,年紀,作者:大伴家持,挽歌,哀悼,大伴書持,悲別,枕詞,地名,京都,奈良,高岡,富山,大伴書持","#[訓異]
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなをさめにと[寛],
おほきみの[寛],
まけのまにまに[寛],
いでてこし,[寛]いててこし,
われをおくると[寛],
あをによし[寛],
ならやますぎて,[寛]ならやますきて,
いづみがは,[寛]いつみかは,
きよきかはらに[寛],
うまとどめ,[寛]うまととめ,
わかれしときに[寛],
まさきくて,[寛]よしゆきて,
あれかへりこむ[寛],
たひらけく,[寛]たいらけく,
いはひてまてと[寛],
かたらひて[寛],
こしひのきはみ[寛],
たまほこの[寛],
みちをたどほみ,[寛]みちをたとほみ,
やまかはの[寛],
へなりてあれば,[寛]へなりてあれは,
こひしけく[寛],
けながきものを,[寛]けなかきものを,
みまくほり[寛],
おもふあひだに,[寛]おもふあひたに,
たまづさの,[寛]たまつさの,
つかひのければ,[寛]つかひのくれは,
うれしみと[寛],
あがまちとふに,[寛]あかまちとふに,
およづれの,[寛]およつれの,
たはこととかも[寛],
はしきよし[寛],
なおとのみこと[寛],
なにしかも[寛],
ときしはあらむを[寛],
はだすすき,[寛]はたすすき,
ほにいづるあきの,[寛]ほにいつるあきの,
はぎのはな,[寛]はきのはな,
にほへるやどを,[寛]にほへるやとを,
あさにはに[寛],
いでたちならし,[寛]いてたちならし,
ゆふにはに[寛],
ふみたひらげず,[寛]ふみたひらけす,
さほのうちの[寛],
さとをゆきすぎ,[寛]さとをゆきすき,
あしひきの[寛],
やまのこぬれに[寛],
しらくもに[寛],
たちたなびくと,[寛]たちたなひくと,
あれにつげつる[寛]あれにつけつる,
さほのうちの,
さとをゆきすぎ,
" "#[番号]17/3958","#[題詞](哀傷長逝之弟歌一首[并短歌])","#[原文]麻佐吉久登 伊比C之物能乎 白雲尓 多知多奈妣久登 伎氣婆可奈思物","#[訓読]ま幸くと言ひてしものを白雲に立ちたなびくと聞けば悲しも","#[仮名],まさきくと,いひてしものを,しらくもに,たちたなびくと,きけばかなしも","#[左注](右天平十八年秋九月廿五日越中守大伴宿祢家持遥聞弟喪感傷作之也)","#[校異]","#[事項],天平18年9月25日,年紀,作者:大伴家持,挽歌,哀悼,大伴書持,悲別,高岡,富山,大伴書持","#[訓異]
まさきくと[寛],
いひてしものを[寛],
しらくもに[寛],
たちたなびくと,[寛]たちたなひくと,
きけばかなしも,[寛]きけはかなしも,
" "#[番号]17/3959","#[題詞](哀傷長逝之弟歌一首[并短歌])","#[原文]可加良牟等 可祢弖思理世婆 古之能宇美乃 安里蘇乃奈美母 見世麻之物<能>乎","#[訓読]かからむとかねて知りせば越の海の荒礒の波も見せましものを","#[仮名],かからむと,かねてしりせば,こしのうみの,ありそのなみも,みせましものを","#[左注]右天平十八年秋九月廿五日越中守大伴宿祢家持遥聞弟喪感傷作之也","#[校異]<> -> 能 [元][類][紀] / 天平十八年秋九 [元] 九","#[事項],天平18年9月25日,年紀,作者:大伴家持,挽歌,哀悼,大伴書持,悲別,高岡,富山,地名,大伴書持","#[訓異]
かからむと[寛],
かねてしりせば,[寛]かねてしりせは,
こしのうみの[寛],
ありそのなみも[寛],
みせましものを[寛],
" "#[番号]17/3960","#[題詞]相歡歌二首 越中守大伴宿祢家持作","#[原文]庭尓敷流 雪波知敝之久 思加乃未尓 於母比C伎美乎 安我麻多奈久尓","#[訓読]庭に降る雪は千重敷くしかのみに思ひて君を我が待たなくに","#[仮名],にはにふる,ゆきはちへしく,しかのみに,おもひてきみを,あがまたなくに","#[左注](右以天平十八年八月掾大伴宿祢池主附大帳使赴向京師 而同年十一月還到本任 仍設詩酒之宴弾絲飲樂 是<日>也白雪忽降積地尺餘 此時也復漁夫之船入海浮瀾 爰守大伴宿祢家持寄情二眺聊裁所心)","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],天平18年11月,年紀,作者:大伴家持,宴席,大伴池主,恋情,寄物陳思,高岡,富山","#[訓異]
にはにふる[寛],
ゆきはちへしく[寛],
しかのみに[寛],
おもひてきみを[寛],
あがまたなくに,[寛]あかまたなくに,
" "#[番号]17/3961","#[題詞](相歡歌二首 越中守大伴宿祢家持作)","#[原文]白浪乃 余須流伊蘇<未>乎 榜船乃 可治登流間奈久 於母保要之伎美","#[訓読]白波の寄する礒廻を漕ぐ舟の楫取る間なく思ほえし君","#[仮名],しらなみの,よするいそみを,こぐふねの,かぢとるまなく,おもほえしきみ","#[左注]右以天平十八年八月掾大伴宿祢池主附大帳使赴向京師 而同年十一月還到本任 仍設詩酒之宴弾絲飲樂 是<日>也白雪忽降積地尺餘 此時也復漁夫之船入海浮瀾 爰守大伴宿祢家持寄情二眺聊裁所心","#[校異]末 -> 未 [温] / 天平十八年八月 [元] 八月 / <> -> 日 [元][類][紀]","#[事項],天平18年11月,年紀,作者:大伴家持,宴席,大伴池主,恋情,寄物陳思,高岡,富山","#[訓異]
しらなみの[寛],
よするいそみを,[寛]よするいそまを,
こぐふねの,[寛]こくふねの,
かぢとるまなく,[寛]かちとるまなく,
おもほえしきみ[寛],
" "#[番号]17/3962","#[題詞]忽沈<枉>疾殆臨泉路 仍作歌詞以申悲緒一首[并短歌]","#[原文]大王能 麻氣能麻尓々々 大夫之 情布里於許之 安思比奇能 山坂古延弖 安麻射加流 比奈尓久太理伎 伊伎太尓毛 伊麻太夜須米受 年月毛 伊久良母阿良奴尓 宇<都>世美能 代人奈礼婆 宇知奈妣吉 等許尓許伊布之 伊多家苦之 日異益 多良知祢乃 <波>々能美許等乃 大船乃 由久良々々々尓 思多呉非尓 伊都可聞許武等 麻多須良牟 情左夫之苦 波之吉与志 都麻能美許登母 安氣久礼婆 門尓餘里多知 己呂母泥乎 遠理加敝之都追 由布佐礼婆 登許宇知波良比 奴婆多麻能 黒髪之吉C 伊都之加登 奈氣可須良牟曽 伊母毛勢母 和可伎兒等毛<波> 乎知許知尓 佐和吉奈久良牟 多麻保己能 美知乎多騰保弥 間使毛 夜流余之母奈之 於母保之伎 許登都C夜良受 孤布流尓思 情波母要奴 多麻伎波流 伊乃知乎之家騰 世牟須辨能 多騰伎乎之良尓 加苦思C也 安良志乎須良尓 奈氣枳布勢良武 ","#[訓読]大君の 任けのまにまに 大夫の 心振り起し あしひきの 山坂越えて 天離る 鄙に下り来 息だにも いまだ休めず 年月も いくらもあらぬに うつせみの 世の人なれば うち靡き 床に臥い伏し 痛けくし 日に異に増さる たらちねの 母の命の 大船の ゆくらゆくらに 下恋に いつかも来むと 待たすらむ 心寂しく はしきよし 妻の命も 明けくれば 門に寄り立ち 衣手を 折り返しつつ 夕されば 床打ち払ひ ぬばたまの 黒髪敷きて いつしかと 嘆かすらむぞ 妹も兄も 若き子どもは をちこちに 騒き泣くらむ 玉桙の 道をた遠み 間使も 遺るよしもなし 思ほしき 言伝て遣らず 恋ふるにし 心は燃えぬ たまきはる 命惜しけど 為むすべの たどきを知らに かくしてや 荒し男すらに 嘆き伏せらむ ","#[仮名],おほきみの,まけのまにまに,ますらをの,こころふりおこし,あしひきの,やまさかこえて,あまざかる,ひなにくだりき,いきだにも,いまだやすめず,としつきも,いくらもあらぬに,うつせみの,よのひとなれば,うちなびき,とこにこいふし,いたけくし,ひにけにまさる,たらちねの,ははのみことの,おほぶねの,ゆくらゆくらに,したごひに,いつかもこむと,またすらむ,こころさぶしく,はしきよし,つまのみことも,あけくれば,かどによりたち,ころもでを,をりかへしつつ,ゆふされば,とこうちはらひ,ぬばたまの,くろかみしきて,いつしかと,なげかすらむぞ,いももせも,わかきこどもは,をちこちに,さわきなくらむ,たまほこの,みちをたどほみ,まつかひも,やるよしもなし,おもほしき,ことつてやらず,こふるにし,こころはもえぬ,たまきはる,いのちをしけど,せむすべの,たどきをしらに,かくしてや,あらしをすらに,なげきふせらむ","#[左注](右天平十九年春二月廿日越中國守之舘臥病悲傷聊作此歌)","#[校異]狂 -> 枉 [元] / 歌 [西] 謌 / 津 -> 都 [元][紀][細] / 婆 -> 波 [元][紀][細] / 婆 -> 波 [元][紀][細]","#[事項],天平19年2月20日,年紀,作者:大伴家持,病気,枕詞,悲嘆,高岡,富山","#[訓異]
おほきみの[寛],
まけのまにまに[寛],
ますらをの[寛],
こころふりおこし[寛],
あしひきの[寛],
やまさかこえて[寛],
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなにくだりき,[寛]ひなにくたりて,
いきだにも,[寛]いきたにも,
いまだやすめず,[寛]いまたやすめす,
としつきも[寛],
いくらもあらぬに[寛],
うつせみの[寛],
よのひとなれば,[寛]よいひとなれは,
うちなびき,[寛]うちなひき,
とこにこいふし[寛],
いたけくし[寛],
ひにけにまさる,[寛]ひにけにませは,
たらちねの[寛],
ははのみことの[寛],
おほぶねの,[寛]おほふねの,
ゆくらゆくらに[寛],
したごひに,[寛]したこひに,
いつかもこむと[寛],
またすらむ[寛],
こころさぶしく,[寛]こころさふしく,
はしきよし[寛],
つまのみことも[寛],
あけくれば,[寛]あけくれは,
かどによりたち,[寛]かとによりたち,
ころもでを,[寛]ころもてを,
をりかへしつつ[寛],
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
とこうちはらひ[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
くろかみしきて[寛],
いつしかと[寛],
なげかすらむぞ,[寛]なけかすらむそ,
いももせも[寛],
わかきこどもは,[寛]わかきこともは,
をちこちに[寛],
さわきなくらむ[寛],
たまほこの[寛],
みちをたどほみ,[寛]みちをたとほみ,
まつかひも[寛],
やるよしもなし[寛],
おもほしき[寛],
ことつてやらず,[寛]ことつてやらす,
こふるにし[寛],
こころはもえぬ[寛],
たまきはる[寛],
いのちをしけど,[寛]いのちをしけと,
せむすべの,[寛]せむすへの,
たどきをしらに,[寛]たときをしらに,
かくしてや[寛],
あらしをすらに[寛],
なげきふせらむ,[寛]なけきふせらむ,
" "#[番号]17/3963","#[題詞](忽沈<枉>疾殆臨泉路 仍作歌詞以申悲緒一首[并短歌])","#[原文]世間波 加受奈枳物能可 春花乃 知里能麻我比尓 思奴倍吉於母倍婆","#[訓読]世間は数なきものか春花の散りのまがひに死ぬべき思へば","#[仮名],よのなかは,かずなきものか,はるはなの,ちりのまがひに,しぬべきおもへば","#[左注](右天平十九年春二月廿日越中國守之舘臥病悲傷聊作此歌)","#[校異]","#[事項],天平19年2月20日,年紀,作者:大伴家持,病気,悲嘆,無常,高岡,富山","#[訓異]
よのなかは[寛],
かずなきものか,[寛]かすなきものか,
はるはなの[寛],
ちりのまがひに,[寛]ちりのまかひに,
しぬべきおもへば,[寛]しぬへきおもへは,
" "#[番号]17/3964","#[題詞](忽沈<枉>疾殆臨泉路 仍作歌詞以申悲緒一首[并短歌])","#[原文]山河乃 曽伎敝乎登保美 波之吉余思 伊母乎安比見受 可久夜奈氣加牟","#[訓読]山川のそきへを遠みはしきよし妹を相見ずかくや嘆かむ","#[仮名],やまかはの,そきへをとほみ,はしきよし,いもをあひみず,かくやなげかむ","#[左注]右天平十九年春二月廿日越中國守之舘臥病悲傷聊作此歌","#[校異]天平十九年 [元] 十九年 / 廿 [元] 廿一 / 歌 [西] 謌","#[事項],天平19年2月20日,年紀,作者:大伴家持,病気,悲嘆,恋情,高岡,富山","#[訓異]
やまかはの[寛],
そきへをとほみ[寛],
はしきよし[寛],
いもをあひみず,[寛]いもをあひみす,
かくやなげかむ,[寛]かくやなけかむ,
" "#[番号]17/3965","#[題詞]守大伴宿祢家持贈大伴宿祢池主悲歌二首 / 忽沈枉疾累旬痛苦 祷恃百神且得消損 而由身體疼羸筋力怯軟 未堪展謝係戀弥深 方今春朝春花流馥於春苑 春暮春鴬囀聲於春林 對此節候琴チ可翫矣 雖有乗興之感不耐策杖之勞 獨臥帷幄之裏 聊作寸分之歌 軽奉机下犯解玉頤 其詞曰","#[原文]波流能波奈 伊麻波左加里尓 仁保布良牟 乎里C加射佐武 多治可良毛我母","#[訓読]春の花今は盛りににほふらむ折りてかざさむ手力もがも","#[仮名],はるのはな,いまはさかりに,にほふらむ,をりてかざさむ,たぢからもがも","#[左注](<二>月廿九日大伴宿祢家持)","#[校異]沈 [元] 染","#[事項],天平19年2月29日,年紀,作者:大伴家持,大伴池主,贈答,病気,贈答,悲嘆,書簡,高岡,富山","#[訓異]
はるのはな[寛],
いまはさかりに[寛],
にほふらむ[寛],
をりてかざさむ,[寛]をりてかささむ,
たぢからもがも,[寛]たちからをかも,
" "#[番号]17/3966","#[題詞](守大伴宿祢家持贈大伴宿祢池主悲歌二首 / 忽沈枉疾累旬痛苦 祷恃百神且得消損 而由身體疼羸筋力怯軟 未堪展謝係戀弥深 方今春朝春花流馥於春苑 春暮春鴬囀聲於春林 對此節候琴チ可翫矣 雖有乗興之感不耐策杖之勞 獨臥帷幄之裏 聊作寸分之歌 軽奉机下犯解玉頤 其詞曰)","#[原文]宇具比須乃 奈枳知良須良武 春花 伊都思香伎美登 多乎里加射左牟","#[訓読]鴬の鳴き散らすらむ春の花いつしか君と手折りかざさむ","#[仮名],うぐひすの,なきちらすらむ,はるのはな,いつしかきみと,たをりかざさむ","#[左注]<二>月廿九日大伴宿祢家持","#[校異]天平廿年二 -> 二 [元]","#[事項],天平20年2月29日,年紀,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,病気,悲嘆,書簡,高岡,富山","#[訓異]
うぐひすの,[寛]うくひすの,
なきちらすらむ[寛],
はるのはな[寛],
いつしかきみと[寛],
たをりかざさむ,[寛]たをりかささむ,
" "#[番号]17/3967","#[題詞]忽辱芳音翰苑凌雲 兼垂倭詩詞林舒錦 以吟以詠能ニ戀緒春可樂 暮春風景最可怜 紅桃灼々戯蝶廻花N 翠柳依々嬌鴬隠葉歌 可樂哉 淡交促席得意忘言 樂矣美矣 幽襟足賞哉豈慮乎蘭ツ隔テ琴チ無用 空過令節物色軽人乎 所怨有此不能<黙><已> 俗語云以藤續錦 聊擬談咲耳","#[原文]夜麻我比<邇> 佐家流佐久良乎 多太比等米 伎美尓弥西C婆 奈尓乎可於母波牟","#[訓読]山峽に咲ける桜をただ一目君に見せてば何をか思はむ","#[仮名],やまがひに,さけるさくらを,ただひとめ,きみにみせてば,なにをかおもはむ","#[左注](沽洗二日掾大伴宿祢池主)","#[校異]點 -> 黙 [元][紀][温] / 已俗 -> 已 [西(訂正)][元][紀][温] / 尓 -> 邇 [元][類]","#[事項],天平19年3月2日,年紀,作者:大伴池主,贈答,大伴家持,病気,慰撫,書簡,高岡,富山","#[訓異]
やまがひに,[寛]やまかひに,
さけるさくらを[寛],
ただひとめ,[寛]たたひとめ,
きみにみせてば,[寛]きみにみせては,
なにをかおもはむ[寛],
" "#[番号]17/3968","#[題詞](忽辱芳音翰苑凌雲 兼垂倭詩詞林舒錦 以吟以詠能ニ戀緒春可樂 暮春風景最可怜 紅桃灼々戯蝶廻花N 翠柳依々嬌鴬隠葉歌 可樂哉 淡交促席得意忘言 樂矣美矣 幽襟足賞哉豈慮乎蘭ツ隔テ琴チ無用 空過令節物色軽人乎 所怨有此不能<黙><已> 俗語云以藤續錦 聊擬談咲耳)","#[原文]宇具比須能 伎奈久夜麻夫伎 宇多賀多母 伎美我手敷礼受 波奈知良米夜母","#[訓読]鴬の来鳴く山吹うたがたも君が手触れず花散らめやも","#[仮名],うぐひすの,きなくやまぶき,うたがたも,きみがてふれず,はなちらめやも","#[左注]沽洗二日掾大伴宿祢池主","#[校異]","#[事項],天平19年3月2日,年紀,作者:大伴池主,贈答,大伴家持,病気,慰撫,動物,書簡,高岡,富山","#[訓異]
うぐひすの,[寛]うくひすの,
きなくやまぶき,[寛]きなくやまふき,
うたがたも,[寛]うたかたも,
きみがてふれず,[寛]きみかてふれす,
はなちらめやも[寛],
" "#[番号]17/3969","#[題詞]更贈歌一首[并短歌] / 含弘之徳垂恩蓬体不貲之思報慰陋心 載荷<来眷>無堪所喩也 但以稚時不渉遊藝之庭 横翰之藻自乏<乎>彫蟲焉 幼年未逕山柿之門 裁歌之趣 詞失<乎>聚林矣 爰辱以藤續錦之言更題将石間瓊之詠 <固>是俗愚懐癖 不能黙已 仍捧數行式酬嗤咲其詞曰","#[原文]於保吉民能 麻氣乃麻尓々々 之奈射加流 故之乎袁佐米尓 伊泥C許之 麻須良和礼須良 余能奈可乃 都祢之奈家礼婆 宇知奈妣伎 登許尓己伊布之 伊多家苦乃 日異麻世婆 可奈之家口 許己尓思出 伊良奈家久 曽許尓念出 奈氣久蘇良 夜須<家>奈久尓 於母布蘇良 久流之伎母能乎 安之比紀能 夜麻伎敝奈里C 多麻保許乃 美知能等保家<婆> 間使毛 遣縁毛奈美 於母保之吉 許等毛可欲波受 多麻伎波流 伊能知乎之家登 勢牟須辨能 多騰吉乎之良尓 隠居而 念奈氣加比 奈具佐牟流 許己呂波奈之尓 春花<乃> 佐家流左加里尓 於毛敷度知 多乎里可射佐受 波流乃野能 之氣美<登>妣久々 鴬 音太尓伎加受 乎登賣良我 春菜都麻須等 久礼奈為能 赤裳乃須蘇能 波流佐米尓 々保比々豆知弖 加欲敷良牟 時盛乎 伊多豆良尓 須具之夜里都礼 思努波勢流 君之心乎 宇流波之美 此夜須我浪尓 伊母祢受尓 今日毛之賣良尓 孤悲都追曽乎流 ","#[訓読]大君の 任けのまにまに しなざかる 越を治めに 出でて来し ますら我れすら 世間の 常しなければ うち靡き 床に臥い伏し 痛けくの 日に異に増せば 悲しけく ここに思ひ出 いらなけく そこに思ひ出 嘆くそら 安けなくに 思ふそら 苦しきものを あしひきの 山きへなりて 玉桙の 道の遠けば 間使も 遣るよしもなみ 思ほしき 言も通はず たまきはる 命惜しけど せむすべの たどきを知らに 隠り居て 思ひ嘆かひ 慰むる 心はなしに 春花の 咲ける盛りに 思ふどち 手折りかざさず 春の野の 茂み飛び潜く 鴬の 声だに聞かず 娘子らが 春菜摘ますと 紅の 赤裳の裾の 春雨に にほひひづちて 通ふらむ 時の盛りを いたづらに 過ぐし遣りつれ 偲はせる 君が心を うるはしみ この夜すがらに 寐も寝ずに 今日もしめらに 恋ひつつぞ居る ","#[仮名],おほきみの,まけのまにまに,しなざかる,こしををさめに,いでてこし,ますらわれすら,よのなかの,つねしなければ,うちなびき,とこにこいふし,いたけくの,ひにけにませば,かなしけく,ここにおもひで,いらなけく,そこにおもひで,なげくそら,やすけなくに,おもふそら,くるしきものを,あしひきの,やまきへなりて,たまほこの,みちのとほけば,まつかひも,やるよしもなみ,おもほしき,こともかよはず,たまきはる,いのちをしけど,せむすべの,たどきをしらに,こもりゐて,おもひなげかひ,なぐさむる,こころはなしに,はるはなの,さけるさかりに,おもふどち,たをりかざさず,はるののの,しげみとびくく,うぐひすの,こゑだにきかず,をとめらが,はるなつますと,くれなゐの,あかものすその,はるさめに,にほひひづちて,かよふらむ,ときのさかりを,いたづらに,すぐしやりつれ,しのはせる,きみがこころを,うるはしみ,このよすがらに,いもねずに,けふもしめらに,こひつつぞをる","#[左注](三月三日大伴宿祢家持)","#[校異]歌 [西] 謌 / 恩 [天](塙) 思 / 思 (塙) 恩 / 未春 -> 来眷 [万葉集略解] / 于 -> 乎 [元][紀][細] / 于 -> 乎 [元][紀][細] / 因 -> 固 [元] / 家久[西(右書)] -> 家 [元][紀] / 波 -> 婆 [元] / 之 -> 乃 [元][細] / 豆 -> 登 [元][紀]","#[事項],天平19年3月3日,年紀,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,,書簡,枕詞,動物,恋情,悲嘆,高岡,富山","#[訓異]
おほきみの[寛],
まけのまにまに[寛],
しなざかる,[寛]しなさかる,
こしををさめに[寛],
いでてこし,[寛]いててこし,
ますらわれすら[寛],
よのなかの[寛],
つねしなければ,[寛]つねしなけれは,
うちなびき,[寛]うちなひき,
とこにこいふし[寛],
いたけくの[寛],
ひにけにませば,[寛]ひにけにませは,
かなしけく[寛],
ここにおもひで,[寛]ここにおもひて,
いらなけく[寛],
そこにおもひで,[寛]そこにおもひいて,
なげくそら,[寛]なけくそら,
やすけなくに[寛],
おもふそら[寛],
くるしきものを[寛],
あしひきの[寛],
やまきへなりて[寛],
たまほこの[寛],
みちのとほけば,[寛]みちのとほけは,
まつかひも[寛],
やるよしもなみ[寛],
おもほしき[寛],
こともかよはず,[寛]こともかよはす,
たまきはる[寛],
いのちをしけど,[寛]いのちをしけと,
せむすべの,[寛]せむすへの,
たどきをしらに,[寛]たときをしらに,
こもりゐて[寛],
おもひなげかひ,[寛]おもひなけかひ,
なぐさむる,[寛]なくさむる,
こころはなしに[寛],
はるはなの[寛],
さけるさかりに[寛],
おもふどち,[寛]おもふとち,
たをりかざさず,[寛]たをりかささす,
はるののの[寛],
しげみとびくく,[寛]しけみとひくく,
うぐひすの,[寛]うくひすの,
こゑだにきかず,[寛]こゑたにきかす,
をとめらが,[寛]をとめらか,
はるなつますと,[寛]わかなくますと,
くれなゐの[寛],
あかものすその[寛],
はるさめに[寛],
にほひひづちて,[寛]にほひひつちて,
かよふらむ[寛],
ときのさかりを[寛],
いたづらに,[寛]いたつらに,
すぐしやりつれ,[寛]すくしやりつれ,
しのはせる[寛],
きみがこころを,[寛]きみかこころを,
うるはしみ,[寛]むるはしみ,
このよすがらに,[寛]このよすからに,
いもねずに,[寛]いもねすに,
けふもしめらに[寛],
こひつつぞをる,[寛]こひつつそをる,
" "#[番号]17/3970","#[題詞](更贈歌一首[并短歌] / 含弘之徳垂恩蓬体不貲之思報慰陋心 載荷<来眷>無堪所喩也 但以稚時不渉遊藝之庭 横翰之藻自乏<乎>彫蟲焉 幼年未逕山柿之門 裁歌之趣 詞失<乎>聚林矣 爰辱以藤續錦之言更題将石間瓊之詠 <固>是俗愚懐癖 不能黙已 仍捧數行式酬嗤咲其詞曰)","#[原文]安之比奇能 夜麻佐久良婆奈 比等目太尓 伎美等之見C婆 安礼古<非>米夜母","#[訓読]あしひきの山桜花一目だに君とし見てば我れ恋ひめやも","#[仮名],あしひきの,やまさくらばな,ひとめだに,きみとしみてば,あれこひめやも","#[左注](三月三日大伴宿祢家持)","#[校異]悲 -> 非 [元][類][細]","#[事項],天平19年3月3日,年紀,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,書簡,枕詞,植物,恋情,悲嘆,高岡,富山","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまさくらばな,[寛]やまさくらはな,
ひとめだに,[寛]ひとめたに,
きみとしみてば,[寛]きみとしみては,
あれこひめやも[寛],
" "#[番号]17/3971","#[題詞](更贈歌一首[并短歌] / 含弘之徳垂恩蓬体不貲之思報慰陋心 載荷<来眷>無堪所喩也 但以稚時不渉遊藝之庭 横翰之藻自乏<乎>彫蟲焉 幼年未逕山柿之門 裁歌之趣 詞失<乎>聚林矣 爰辱以藤續錦之言更題将石間瓊之詠 <固>是俗愚懐癖 不能黙已 仍捧數行式酬嗤咲其詞曰)","#[原文]夜麻扶枳能 之氣美<登>i久々 鴬能 許恵乎聞良牟 伎美波登母之毛","#[訓読]山吹の茂み飛び潜く鴬の声を聞くらむ君は羨しも","#[仮名],やまぶきの,しげみとびくく,うぐひすの,こゑをきくらむ,きみはともしも","#[左注](三月三日大伴宿祢家持)","#[校異]等 -> 登 [元][類][紀][細]","#[事項],天平19年3月3日,年紀,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,書簡,枕詞,植物,動物,恋情,悲嘆,高岡,富山","#[訓異]
やまぶきの,[寛]やまふきの,
しげみとびくく,[寛]しけみとひくく,
うぐひすの,[寛]うくひすの,
こゑをきくらむ[寛],
きみはともしも[寛],
" "#[番号]17/3972","#[題詞](更贈歌一首[并短歌] / 含弘之徳垂恩蓬体不貲之思報慰陋心 載荷<来眷>無堪所喩也 但以稚時不渉遊藝之庭 横翰之藻自乏<乎>彫蟲焉 幼年未逕山柿之門 裁歌之趣 詞失<乎>聚林矣 爰辱以藤續錦之言更題将石間瓊之詠 <固>是俗愚懐癖 不能黙已 仍捧數行式酬嗤咲其詞曰)","#[原文]伊泥多々武 知加良乎奈美等 許母里為弖 伎弥尓故布流尓 許己呂度母奈思","#[訓読]出で立たむ力をなみと隠り居て君に恋ふるに心どもなし","#[仮名],いでたたむ,ちからをなみと,こもりゐて,きみにこふるに,こころどもなし","#[左注]三月三日大伴宿祢家持","#[校異]","#[事項],天平19年3月3日,年紀,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,書簡,恋情,悲嘆,高岡,富山","#[訓異]
いでたたむ,[寛]いてたたむ,
ちからをなみと[寛],
こもりゐて[寛],
きみにこふるに[寛],
こころどもなし,[寛]こころともなし,
" "#[番号]","#[題詞]七言晩春三日遊覧一首并序","#[原文]上巳名辰暮春麗景 桃花昭瞼以分紅 柳色含苔而競緑 于時也携手ナ望江河之畔訪酒迥<過>野客之家 既而也琴チ得性蘭契和光 嗟乎今日所恨徳星已少歟 若不扣寂<含>章何以<r>逍遥之趣忽課短筆聊勒四韻云尓 / 餘春媚日宜怜賞 上巳風光足覧遊 / 柳陌臨江縟ハ服 桃源通海泛仙舟 / 雲罍酌桂三清湛 羽爵催人九曲流 / 縦酔陶心忘彼我 酩酊無處不淹留","#[訓読]","#[仮名]","#[左注]三月四日大伴宿祢池主","#[校異]","#[事項],天平19年3月4日,年紀,作者:大伴池主,書簡,上巳宴,漢詩,曲水宴,贈答,遊覧,大伴家持,高岡,富山","#[訓異]
" "#[番号]17/3973","#[題詞]昨日述短懐今朝汗耳目 更承賜書且奉不次 死罪々々 不遺下賎頻恵 徳音 英<霊>星氣逸調過人 智水仁山既ヒ琳瑯之光彩 潘江陸海自坐詩書之廊廟 騁思非常託情有理 七歩成章數篇満紙 巧遣愁人之重患 能除戀者之積思 山柿歌泉比此如蔑 彫龍筆海粲然得看矣 方知僕之有幸也 敬和歌其詞云","#[原文]憶保枳美能 弥許等可之古美 安之比奇能 夜麻野佐<波>良受 安麻射可流 比奈毛乎佐牟流 麻須良袁夜 奈邇可母能毛布 安乎尓余之 奈良治伎可欲布 多麻豆佐能 都可比多要米也 己母理古非 伊枳豆伎和多利 之多毛比<尓> 奈氣可布和賀勢 伊尓之敝由 伊比都藝久良之 餘乃奈加波 可受奈枳毛能曽 奈具佐牟流 己等母安良牟等 佐刀i等能 安礼邇都具良久 夜麻備尓波 佐久良婆奈知利 可保等利能 麻奈久之婆奈久 春野尓 須美礼乎都牟<等> 之路多倍乃 蘇泥乎利可敝之 久礼奈為能 安可毛須蘇妣伎 乎登賣良<波> 於毛比美太礼弖 伎美麻都等 宇良呉悲須奈理 己許呂具志 伊謝美尓由加奈 許等波多奈由比 ","#[訓読]大君の 命畏み あしひきの 山野さはらず 天離る 鄙も治むる 大夫や なにか物思ふ あをによし 奈良道来通ふ 玉梓の 使絶えめや 隠り恋ひ 息づきわたり 下思に 嘆かふ我が背 いにしへゆ 言ひ継ぎくらし 世間は 数なきものぞ 慰むる こともあらむと 里人の 我れに告ぐらく 山びには 桜花散り 貌鳥の 間なくしば鳴く 春の野に すみれを摘むと 白栲の 袖折り返し 紅の 赤裳裾引き 娘子らは 思ひ乱れて 君待つと うら恋すなり 心ぐし いざ見に行かな ことはたなゆひ ","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,あしひきの,やまのさはらず,あまざかる,ひなもをさむる,ますらをや,なにかものもふ,あをによし,ならぢきかよふ,たまづさの,つかひたえめや,こもりこひ,いきづきわたり,したもひに,なげかふわがせ,いにしへゆ,いひつぎくらし,よのなかは,かずなきものぞ,なぐさむる,こともあらむと,さとびとの,あれにつぐらく,やまびには,さくらばなちり,かほどりの,まなくしばなく,はるののに,すみれをつむと,しろたへの,そでをりかへし,くれなゐの,あかもすそびき,をとめらは,おもひみだれて,きみまつと,うらごひすなり,こころぐし,いざみにゆかな,ことはたなゆひ","#[左注](三月五日大伴宿祢池主)","#[校異]三日遊覧 [元] 遊覧 / 遏 -> 過 [元] / 含之 -> 含 [元][紀][細] / 瀘 -> r [元][紀][細] / 雲 -> 霊 [元] / 婆 -> 波 [元] / 余 -> 尓 [万葉考] / 等 [西(上書訂正)][元][紀][細] / 婆 -> 波 [元][紀][細]","#[事項],天平19年3月5日,年紀,作者:大伴池主,贈答,枕詞,高岡,富山,遊覧,大伴家持,書簡","#[訓異]
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
あしひきの[寛],
やまのさはらず,[寛]やまのはさらす,
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなもをさむる[寛],
ますらをや[寛],
なにかものもふ[寛],
あをによし[寛],
ならぢきかよふ,[寛]ならちきかよふ,
たまづさの,[寛]たまつさの,
つかひたえめや[寛],
こもりこひ[寛],
いきづきわたり,[寛]いきつきわたり,
したもひに,[寛]したもひよ,
なげかふわがせ,[寛]なけかふわかせ,
いにしへゆ[寛],
いひつぎくらし,[寛]いひつきくらし,
よのなかは[寛],
かずなきものぞ,[寛]かすなきものか,
なぐさむる,[寛]なくさむる,
こともあらむと[寛],
さとびとの,[寛]さとひとの,
あれにつぐらく,[寛]あれにつくらく,
やまびには,[寛]やまひには,
さくらばなちり,[寛]さくらはなちり,
かほどりの,[寛]かほとりの,
まなくしばなく,[寛]まなくしはなく,
はるののに[寛],
すみれをつむと[寛],
しろたへの[寛],
そでをりかへし,[寛]そてをりかへし,
くれなゐの[寛],
あかもすそびき,[寛]あかもすそひき,
をとめらは[寛],
おもひみだれて,[寛]おもひみたれて,
きみまつと[寛],
うらごひすなり,[寛]うらこひすなり,
こころぐし,[寛]こころくし,
いざみにゆかな,[寛]いさみにゆかな,
ことはたなゆひ[寛],
" "#[番号]17/3974","#[題詞](昨日述短懐今朝汗耳目 更承賜書且奉不次 死罪々々 不遺下賎頻恵 徳音 英<霊>星氣逸調過人 智水仁山既ヒ琳瑯之光彩 潘江陸海自坐詩書之廊廟 騁思非常託情有理 七歩成章數篇満紙 巧遣愁人之重患 能除戀者之積思 山柿歌泉比此如蔑 彫龍筆海粲然得看矣 方知僕之有幸也 敬和歌其詞云)","#[原文]夜麻夫枳波 比尓々々佐伎奴 宇流波之等 安我毛布伎美波 思久々々於毛保由","#[訓読]山吹は日に日に咲きぬうるはしと我が思ふ君はしくしく思ほゆ","#[仮名],やまぶきは,ひにひにさきぬ,うるはしと,あがもふきみは,しくしくおもほゆ","#[左注](三月五日大伴宿祢池主)","#[校異]","#[事項],天平19年3月5日,年紀,作者:大伴池主,贈答,大伴家持,恋情,遊覧,書簡,高岡,富山","#[訓異]
やまぶきは,[寛]やまふきは,
ひにひにさきぬ[寛],
うるはしと[寛],
あがもふきみは,[寛]あかもふきみは,
しくしくおもほゆ[寛],
" "#[番号]17/3975","#[題詞](昨日述短懐今朝汗耳目 更承賜書且奉不次 死罪々々 不遺下賎頻恵 徳音 英<霊>星氣逸調過人 智水仁山既ヒ琳瑯之光彩 潘江陸海自坐詩書之廊廟 騁思非常託情有理 七歩成章數篇満紙 巧遣愁人之重患 能除戀者之積思 山柿歌泉比此如蔑 彫龍筆海粲然得看矣 方知僕之有幸也 敬和歌其詞云)","#[原文]和賀勢故邇 古非須敝奈賀利 安之可伎能 保可尓奈氣加布 安礼之可奈思母","#[訓読]我が背子に恋ひすべながり葦垣の外に嘆かふ我れし悲しも","#[仮名],わがせこに,こひすべながり,あしかきの,ほかになげかふ,あれしかなしも","#[左注]三月五日大伴宿祢池主","#[校異]","#[事項],天平19年3月5日,年紀,作者:大伴池主,贈答,大伴家持,恋情,遊覧,書簡,高岡,富山","#[訓異]
わがせこに,[寛]わかせこに,
こひすべながり,[寛]こひすへなかり,
あしかきの[寛],
ほかになげかふ,[寛]ほかにかけかふ,
あれしかなしも[寛],
" "#[番号]","#[題詞]","#[原文]昨暮来使幸也以垂晩春遊覧之詩 今朝累信辱也以フ相招望野之歌 一看玉藻稍寫欝結二吟秀句已ニ愁緒 非此眺翫孰能暢心乎 但惟下僕禀性難彫闇神靡瑩 握翰腐毫對研忘渇終日目流綴之不能 所謂文章天骨習之不得也 豈堪探字勒韻叶和雅篇哉 抑聞鄙里少兒 古人言無不酬 聊裁拙詠敬擬解咲焉 [如今賦言勒韵同斯雅作之篇 豈殊将石間瓊唱聲遊<走>曲歟 抑小兒譬濫謡 敬寫葉端式擬乱曰] / 七言一首 / <杪>春余日媚景麗 初巳和風拂自軽 / 来燕ヘ泥賀宇入 歸鴻引廬迥赴瀛 / 聞君<嘯>侶新流曲 禊飲催爵泛河清 / 雖欲追尋良此宴 還知染懊脚ホマ","#[訓読]","#[仮名]","#[左注](三月五日大伴宿祢家持臥病作之)","#[校異]","#[事項],天平19年3月5日,年紀,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,遊覧,書簡,漢詩,高岡,富山,病気","#[訓異]
" "#[番号]17/3976","#[題詞]短歌<二首>","#[原文]佐家理等母 之良受之安良婆 母太毛安良牟 己能夜万夫吉乎 美勢追都母等奈","#[訓読]咲けりとも知らずしあらば黙もあらむこの山吹を見せつつもとな","#[仮名],さけりとも,しらずしあらば,もだもあらむ,このやまぶきを,みせつつもとな","#[左注](三月五日大伴宿祢家持臥病作之)","#[校異]惟下僕 [元] 走 / 之 -> 走 [元][紀][細] / 抄 -> 杪 [万葉集新考] / 粛 -> 嘯 [元][紀][細] / <> -> 二首 [元][細][温]","#[事項],天平19年3月5日,年紀,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,書簡,病気,怨恨,憧憬,恋情,高岡,富山","#[訓異]
さけりとも[寛],
しらずしあらば,[寛]しらすしあらは,
もだもあらむ,[寛]もたもあらむ,
このやまぶきを,[寛]このやまふきを,
みせつつもとな[寛],
" "#[番号]17/3977","#[題詞](短歌<二首>)","#[原文]安之可伎能 保加尓母伎美我 余里多々志 孤悲家礼許<曽>婆 伊米尓見要家礼","#[訓読]葦垣の外にも君が寄り立たし恋ひけれこそば夢に見えけれ","#[仮名],あしかきの,ほかにもきみが,よりたたし,こひけれこそば,いめにみえけれ","#[左注]三月五日大伴宿祢家持臥病作之","#[校異]古 -> 曽 [西(訂正左書)][元][類][紀]","#[事項],天平19年3月5日,年紀,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,病気,恋情,高岡,富山,書簡","#[訓異]
あしかきの[寛],
ほかにもきみが,[寛]ほかにもきみか,
よりたたし[寛],
こひけれこそば,[寛]こひけれこそは,
いめにみえけれ[寛],
" "#[番号]17/3978","#[題詞]述戀緒歌一首[并短歌]","#[原文]妹毛吾毛 許己呂波於夜自 多具敝礼登 伊夜奈都可之久 相見<婆> 登許波都波奈尓 情具之 眼具之毛奈之尓 波思家夜之 安我於久豆麻 大王能 美許登加之古美 阿之比奇能 夜麻古要奴由伎 安麻射加流 比奈乎左米尓等 別来之 曽乃日乃伎波美 荒璞能 登之由吉我敝利 春花<乃> 宇都呂布麻泥尓 相見祢婆 伊多母須敝奈美 之伎多倍能 蘇泥可敝之都追 宿夜於知受 伊米尓波見礼登 宇都追尓之 多太尓安良祢婆 孤悲之家口 知敝尓都母里奴 近<在>者 加敝利尓太仁母 宇知由吉C 妹我多麻久良 佐之加倍C 祢天蒙許万思乎 多麻保己乃 路波之騰保久 關左閇尓 敝奈里C安礼許曽 与思恵夜之 餘志播安良武曽 霍公鳥 来鳴牟都奇尓 伊都之加母 波夜久奈里那牟 宇乃花能 尓保敝流山乎 余曽能未母 布里佐氣見都追 淡海路尓 伊由伎能里多知 青丹吉 奈良乃吾家尓 奴要鳥能 宇良奈氣之都追 思多戀尓 於毛比宇良夫礼 可度尓多知 由布氣刀比都追 吾乎麻都等 奈須良牟妹乎 安比C早見牟 ","#[訓読]妹も我れも 心は同じ たぐへれど いやなつかしく 相見れば 常初花に 心ぐし めぐしもなしに はしけやし 我が奥妻 大君の 命畏み あしひきの 山越え野行き 天離る 鄙治めにと 別れ来し その日の極み あらたまの 年行き返り 春花の うつろふまでに 相見ねば いたもすべなみ 敷栲の 袖返しつつ 寝る夜おちず 夢には見れど うつつにし 直にあらねば 恋しけく 千重に積もりぬ 近くあらば 帰りにだにも うち行きて 妹が手枕 さし交へて 寝ても来ましを 玉桙の 道はし遠く 関さへに へなりてあれこそ よしゑやし よしはあらむぞ 霍公鳥 来鳴かむ月に いつしかも 早くなりなむ 卯の花の にほへる山を よそのみも 振り放け見つつ 近江道に い行き乗り立ち あをによし 奈良の我家に ぬえ鳥の うら泣けしつつ 下恋に 思ひうらぶれ 門に立ち 夕占問ひつつ 我を待つと 寝すらむ妹を 逢ひてはや見む ","#[仮名],いももあれも,こころはおやじ,たぐへれど,いやなつかしく,あひみれば,とこはつはなに,こころぐし,めぐしもなしに,はしけやし,あがおくづま,おほきみの,みことかしこみ,あしひきの,やまこえぬゆき,あまざかる,ひなをさめにと,わかれこし,そのひのきはみ,あらたまの,としゆきがへり,はるはなの,うつろふまでに,あひみねば,いたもすべなみ,しきたへの,そでかへしつつ,ぬるよおちず,いめにはみれど,うつつにし,ただにあらねば,こひしけく,ちへにつもりぬ,ちかくあらば,かへりにだにも,うちゆきて,いもがたまくら,さしかへて,ねてもこましを,たまほこの,みちはしとほく,せきさへに,へなりてあれこそ,よしゑやし,よしはあらむぞ,ほととぎす,きなかむつきに,いつしかも,はやくなりなむ,うのはなの,にほへるやまを,よそのみも,ふりさけみつつ,あふみぢに,いゆきのりたち,あをによし,ならのわぎへに,ぬえどりの,うらなけしつつ,したごひに,おもひうらぶれ,かどにたち,ゆふけとひつつ,わをまつと,なすらむいもを,あひてはやみむ","#[左注](右三月廿日夜裏忽兮起戀情作 大伴宿祢家持)","#[校異]波 -> 婆 [元][類][紀][細] / 之 -> 乃 [元][類][細] / 有 -> 在 [元][類][紀]","#[事項],天平19年3月20日,年紀,作者:大伴家持,望郷,恋情,悲別,動物,枕詞,高岡,富山,孤独","#[訓異]
いももあれも,[寛]いももわれも,
こころはおやじ,[寛]こころはおやし,
たぐへれど,[寛]たくへれと,
いやなつかしく[寛],
あひみれば,[寛]あひみれは,
とこはつはなに[寛],
こころぐし,[寛]こころくし,
めぐしもなしに,[寛]めくしもなしに,
はしけやし[寛],
あがおくづま,[寛]あかをくつま,
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
あしひきの[寛],
やまこえぬゆき,[寛]やまこえのゆき,
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなをさめにと[寛],
わかれこし[寛],
そのひのきはみ[寛],
あらたまの[寛],
としゆきがへり,[寛]としゆきかへり,
はるはなの[寛],
うつろふまでに,[寛]うつろふまてに,
あひみねば,[寛]あひみねは,
いたもすべなみ,[寛]いともすへなみ,
しきたへの[寛],
そでかへしつつ,[寛]そてかへしつつ,
ぬるよおちず,[寛]ぬるよおちす,
いめにはみれど,[寛]いめにはみれと,
うつつにし[寛],
ただにあらねば,[寛]たたにあらねは,
こひしけく[寛],
ちへにつもりぬ[寛],
ちかくあらば,[寛]ちかくあらは,
かへりにだにも,[寛]かへりにたにも,
うちゆきて[寛],
いもがたまくら,[寛]いもかたまくら,
さしかへて[寛],
ねてもこましを[寛],
たまほこの[寛],
みちはしとほく[寛],
せきさへに[寛],
へなりてあれこそ[寛],
よしゑやし[寛],
よしはあらむぞ,[寛]よしはあらむそ,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きなかむつきに[寛],
いつしかも[寛],
はやくなりなむ[寛],
うのはなの[寛],
にほへるやまを[寛],
よそのみも[寛],
ふりさけみつつ[寛],
あふみぢに,[寛]あうみちに,
いゆきのりたち,[寛]いゆきのりたて,
あをによし[寛],
ならのわぎへに,[寛]ならのわきへに,
ぬえどりの,[寛]ぬえとりの,
うらなけしつつ[寛],
したごひに,[寛]したこひに,
おもひうらぶれ,[寛]をもひうらふれ,
かどにたち,[寛]かとにたち,
ゆふけとひつつ[寛],
わをまつと,[寛]われらまつと,
なすらむいもを[寛],
あひてはやみむ[寛],
" "#[番号]17/3979","#[題詞](述戀緒歌一首[并短歌])","#[原文]安良多麻<乃> 登之可敝流麻泥 安比見祢婆 許己呂毛之努尓 於母保由流香聞","#[訓読]あらたまの年返るまで相見ねば心もしのに思ほゆるかも","#[仮名],あらたまの,としかへるまで,あひみねば,こころもしのに,おもほゆるかも","#[左注](右三月廿日夜裏忽兮起戀情作 大伴宿祢家持)","#[校異]之 -> 乃 [元][細]","#[事項],天平19年3月20日,年紀,作者:大伴家持,望郷,恋情,悲別,枕詞,高岡,富山","#[訓異]
あらたまの[寛],
としかへるまで,[寛]としかへるまて,
あひみねば,[寛]あひみねは,
こころもしのに[寛],
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]17/3980","#[題詞](述戀緒歌一首[并短歌])","#[原文]奴婆多麻乃 伊米尓<波>母等奈 安比見礼騰 多太尓安良祢婆 孤悲夜麻受家里","#[訓読]ぬばたまの夢にはもとな相見れど直にあらねば恋ひやまずけり","#[仮名],ぬばたまの,いめにはもとな,あひみれど,ただにあらねば,こひやまずけり","#[左注](右三月廿日夜裏忽兮起戀情作 大伴宿祢家持)","#[校異]婆 -> 波 [元][紀][細]","#[事項],天平19年3月20日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,望郷,恋情,悲別,高岡,富山","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
いめにはもとな[寛],
あひみれど,[寛]あひみれと,
ただにあらねば,[寛]たたにあらねは,
こひやまずけり,[寛]こひやますけり,
" "#[番号]17/3981","#[題詞](述戀緒歌一首[并短歌])","#[原文]安之比奇能 夜麻伎敝奈里C 等保家騰母 許己呂之遊氣婆 伊米尓美要家里","#[訓読]あしひきの山きへなりて遠けども心し行けば夢に見えけり","#[仮名],あしひきの,やまきへなりて,とほけども,こころしゆけば,いめにみえけり","#[左注](右三月廿日夜裏忽兮起戀情作 大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平19年3月20日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,望郷,恋情,悲別,高岡,富山","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまきへなりて[寛],
とほけども,[寛]とほけとも,
こころしゆけば,[寛]こころしゆけは,
いめにみえけり[寛],
" "#[番号]17/3982","#[題詞](述戀緒歌一首[并短歌])","#[原文]春花能 宇都路布麻泥尓 相見祢<婆> 月日餘美都追 伊母麻都良牟曽","#[訓読]春花のうつろふまでに相見ねば月日数みつつ妹待つらむぞ","#[仮名],はるはなの,うつろふまでに,あひみねば,つきひよみつつ,いもまつらむぞ","#[左注]右三月廿日夜裏忽兮起戀情作 大伴宿祢家持","#[校異]波 -> 婆 [類][紀][細] / 廿 [元] 廿五","#[事項],天平19年3月20日,年紀,作者:大伴家持,望郷,恋情,悲別,高岡,富山","#[訓異]
はるはなの[寛],
うつろふまでに,[寛]うつろふまてに,
あひみねば,[寛]あひみねは,
つきひよみつつ[寛],
いもまつらむぞ,[寛]いもまつらむそ,
" "#[番号]17/3983","#[題詞]立夏四月既經累日而由未聞霍公鳥喧因作恨歌二首","#[原文]安思比奇能 夜麻毛知可吉乎 保登等藝須 都奇多都麻泥尓 奈仁加吉奈可奴","#[訓読]あしひきの山も近きを霍公鳥月立つまでに何か来鳴かぬ","#[仮名],あしひきの,やまもちかきを,ほととぎす,つきたつまでに,なにかきなかぬ","#[左注](霍公鳥者立夏之日来鳴必定 又越中風土希有橙橘也 因此大伴宿祢家持感發於懐聊於裁此歌 [三月廿九日])","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],天平19年3月29日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,動物,怨恨,高岡,富山","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまもちかきを[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
つきたつまでに,[寛]つきたつまてに,
なにかきなかぬ[寛],
" "#[番号]17/3984","#[題詞](立夏四月既經累日而由未聞霍公鳥喧因作恨歌二首)","#[原文]多麻尓奴久 波奈多知<婆>奈乎 等毛之美思 己能和我佐刀尓 伎奈可受安流良之","#[訓読]玉に貫く花橘をともしみしこの我が里に来鳴かずあるらし","#[仮名],たまにぬく,はなたちばなを,ともしみし,このわがさとに,きなかずあるらし","#[左注]霍公鳥者立夏之日来鳴必定 又越中風土希有橙橘也 因此大伴宿祢家持感發於懐聊於裁此歌 [三月廿九日]","#[校異]波 -> 婆 [類][紀][細]","#[事項],天平19年3月29日,年紀,作者:大伴家持,植物,怨恨,高岡,富山","#[訓異]
たまにぬく[寛],
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
ともしみし[寛],
このわがさとに,[寛]このわかさとに,
きなかずあるらし,[寛]きなかすあるらし,
" "#[番号]17/3985","#[題詞]二上山賦一首 [此山者有射水郡也]","#[原文]伊美都河泊 伊由伎米具礼流 多麻久之氣 布多我美山者 波流波奈乃 佐家流左加利尓 安吉<能>葉乃 尓保敝流等伎尓 出立C 布里佐氣見礼婆 可牟加良夜 曽許婆多敷刀伎 夜麻可良夜 見我保之加良武 須賣可未能 須蘇未乃夜麻能 之夫多尓能 佐吉乃安里蘇尓 阿佐奈藝尓 餘須流之良奈美 由敷奈藝尓 美知久流之保能 伊夜麻之尓 多由流許登奈久 伊尓之敝由 伊麻乃乎都豆尓 可久之許曽 見流比登其等尓 加氣C之努波米 ","#[訓読]射水川 い行き廻れる 玉櫛笥 二上山は 春花の 咲ける盛りに 秋の葉の にほへる時に 出で立ちて 振り放け見れば 神からや そこば貴き 山からや 見が欲しからむ 統め神の 裾廻の山の 渋谿の 崎の荒礒に 朝なぎに 寄する白波 夕なぎに 満ち来る潮の いや増しに 絶ゆることなく いにしへゆ 今のをつつに かくしこそ 見る人ごとに 懸けて偲はめ ","#[仮名],いみづがは,いゆきめぐれる,たまくしげ,ふたがみやまは,はるはなの,さけるさかりに,あきのはの,にほへるときに,いでたちて,ふりさけみれば,かむからや,そこばたふとき,やまからや,みがほしからむ,すめかみの,すそみのやまの,しぶたにの,さきのありそに,あさなぎに,よするしらなみ,ゆふなぎに,みちくるしほの,いやましに,たゆることなく,いにしへゆ,いまのをつつに,かくしこそ,みるひとごとに,かけてしのはめ","#[左注](右三月卅日依興作之 大伴宿祢家持)","#[校異]泊 [元] 伯 / 乃 -> 能 [元][類]","#[事項],天平19年3月30日,年紀,作者:大伴家持,地名,高岡,富山,山讃美,寿歌,枕詞,依興,儀礼歌,土地讃美","#[訓異]
いみづがは,[寛]いみつかは,
いゆきめぐれる,[寛]いゆきめくれる,
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
ふたがみやまは,[寛]ふたかみやまは,
はるはなの[寛],
さけるさかりに[寛],
あきのはの[寛],
にほへるときに[寛],
いでたちて,[寛]いてたちて,
ふりさけみれば,[寛]ふりさけみれは,
かむからや[寛],
そこばたふとき,[寛]そこはたふとき,
やまからや[寛],
みがほしからむ,[寛]みかほしからむ,
すめかみの[寛],
すそみのやまの[寛],
しぶたにの,[寛]しふたにの,
さきのありそに[寛],
あさなぎに,[寛]あさなきに,
よするしらなみ[寛],
ゆふなぎに,[寛]ゆふなきに,
みちくるしほの[寛],
いやましに[寛],
たゆることなく[寛],
いにしへゆ[寛],
いまのをつつに[寛],
かくしこそ[寛],
みるひとごとに,[寛]みるひとことに,
かけてしのはめ[寛],
" "#[番号]17/3986","#[題詞](二上山賦一首 [此山者有射水郡也])","#[原文]之夫多尓能 佐伎能安里蘇尓 与須流奈美 伊夜思久思久尓 伊尓之敝於母保由","#[訓読]渋谿の崎の荒礒に寄する波いやしくしくにいにしへ思ほゆ","#[仮名],しぶたにの,さきのありそに,よするなみ,いやしくしくに,いにしへおもほゆ","#[左注](右三月卅日依興作之 大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平19年3月30日,年紀,作者:大伴家持,地名,高岡,富山,序詞,寿歌,儀礼歌,土地讃美,依興","#[訓異]
しぶたにの,[寛]しふたにの,
さきのありそに[寛],
よするなみ[寛],
いやしくしくに[寛],
いにしへおもほゆ[寛],
" "#[番号]17/3987","#[題詞](二上山賦一首 [此山者有射水郡也])","#[原文]多麻久之氣 敷多我美也麻尓 鳴鳥能 許恵乃孤悲思吉 登岐波伎尓家里","#[訓読]玉櫛笥二上山に鳴く鳥の声の恋しき時は来にけり","#[仮名],たまくしげ,ふたがみやまに,なくとりの,こゑのこひしき,ときはきにけり","#[左注]右三月卅日依興作之 大伴宿祢家持","#[校異]","#[事項],天平19年3月30日,年紀,作者:大伴家持,土地讃美,枕詞,地名,高岡,富山,寿歌,儀礼歌","#[訓異]
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
ふたがみやまに,[寛]ふたかみやまに,
なくとりの[寛],
こゑのこひしき[寛],
ときはきにけり[寛],
" "#[番号]17/3988","#[題詞]四月十六日夜裏遥聞霍公鳥喧述懐歌一首","#[原文]奴婆多麻<乃> 都奇尓牟加比C 保登等藝須 奈久於登波流氣之 佐刀騰保美可聞","#[訓読]ぬばたまの月に向ひて霍公鳥鳴く音遥けし里遠みかも","#[仮名],ぬばたまの,つきにむかひて,ほととぎす,なくおとはるけし,さとどほみかも","#[左注]右大伴宿祢家持作之","#[校異]能 -> 乃 [元][類] / 右 [元] 右一首","#[事項],天平19年4月16日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,動物,叙景","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
つきにむかひて[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なくおとはるけし[寛],
さとどほみかも,[寛]さととほみかも,
" "#[番号]17/3989","#[題詞]大目秦忌寸八千嶋之舘餞守大伴宿祢家持宴歌二首","#[原文]奈呉能宇美能 意吉都之良奈美 志苦思苦尓 於毛保要武可母 多知和可礼奈<婆>","#[訓読]奈呉の海の沖つ白波しくしくに思ほえむかも立ち別れなば","#[仮名],なごのうみの,おきつしらなみ,しくしくに,おもほえむかも,たちわかれなば","#[左注](右守大伴宿祢家持以正税帳須入京師 仍作此歌聊陳送別之嘆 [四月廿日])","#[校異]波 -> 婆 [元]","#[事項],天平19年4月20日,年紀,作者:大伴家持,宴席,恋情,羈旅,出発,悲別,地名,富山,高岡,序詞,秦八千島","#[訓異]
なごのうみの,[寛]なこのうみの,
おきつしらなみ[寛],
しくしくに[寛],
おもほえむかも[寛],
たちわかれなば,[寛]たちわかれなは,
" "#[番号]17/3990","#[題詞](大目秦忌寸八千嶋之舘餞守大伴宿祢家持宴歌二首)","#[原文]和<我>勢故波 多麻尓母我毛奈 手尓麻伎C 見都追由可牟乎 於吉C伊加婆乎思","#[訓読]我が背子は玉にもがもな手に巻きて見つつ行かむを置きて行かば惜し","#[仮名],わがせこは,たまにもがもな,てにまきて,みつつゆかむを,おきていかばをし","#[左注]右守大伴宿祢家持以正税帳須入京師 仍作此歌聊陳送別之嘆 [四月廿日]","#[校異]加 -> 我 [元][類] / 歌 [西] 謌","#[事項],天平19年4月20日,年紀,作者:大伴家持,宴席,恋情,羈旅,出発,悲別,富山,高岡,秦八千島","#[訓異]
わがせこは,[寛]わかせこは,
たまにもがもな,[寛]たまにもかもな,
てにまきて[寛],
みつつゆかむを[寛],
おきていかばをし,[寛]おきていかはをし,
" "#[番号]17/3991","#[題詞]遊覧布勢水海賦一首[并短歌] [此海者有射水郡舊江村也]","#[原文]物能乃敷能 夜蘇等母乃乎能 於毛布度知 許己呂也良武等 宇麻奈米C 宇知久知夫利乃 之良奈美能 安里蘇尓与須流 之夫多尓能 佐吉多母登保理 麻都太要能 奈我波麻須義C 宇奈比河波 伎欲吉勢其等尓 宇加波多知 可由吉加久遊岐 見都礼騰母 曽許母安加尓等 布勢能宇弥尓 布祢宇氣須恵C 於伎敝許藝 邊尓己伎見礼婆 奈藝左尓波 安遅牟良佐和伎 之麻<未>尓波 許奴礼波奈左吉 許己婆久毛 見乃佐夜氣吉加 多麻久之氣 布多我弥夜麻尓 波布都多能 由伎波和可礼受 安里我欲比 伊夜登之能波尓 於母布度知 可久思安蘇婆牟 異麻母見流其等 ","#[訓読]もののふの 八十伴の男の 思ふどち 心遣らむと 馬並めて うちくちぶりの 白波の 荒礒に寄する 渋谿の 崎た廻り 松田江の 長浜過ぎて 宇奈比川 清き瀬ごとに 鵜川立ち か行きかく行き 見つれども そこも飽かにと 布勢の海に 舟浮け据ゑて 沖辺漕ぎ 辺に漕ぎ見れば 渚には あぢ群騒き 島廻には 木末花咲き ここばくも 見のさやけきか 玉櫛笥 二上山に 延ふ蔦の 行きは別れず あり通ひ いや年のはに 思ふどち かくし遊ばむ 今も見るごと ","#[仮名],もののふの,やそとものをの,おもふどち,こころやらむと,うまなめて,うちくちぶりの,しらなみの,ありそによする,しぶたにの,さきたもとほり,まつだえの,ながはますぎて,うなひがは,きよきせごとに,うかはたち,かゆきかくゆき,みつれども,そこもあかにと,ふせのうみに,ふねうけすゑて,おきへこぎ,へにこぎみれば,なぎさには,あぢむらさわき,しまみには,こぬれはなさき,ここばくも,みのさやけきか,たまくしげ,ふたがみやまに,はふつたの,ゆきはわかれず,ありがよひ,いやとしのはに,おもふどち,かくしあそばむ,いまもみるごと","#[左注]右守大伴宿祢家持作之 [四月廿四日]","#[校異]末 -> 未 [類]","#[事項],天平19年4月24日,年紀,作者:大伴家持,遊覧,土地讃美,地名,氷見,富山,枕詞,道行き,高岡,寿歌","#[訓異]
もののふの[寛],
やそとものをの[寛],
おもふどち,[寛]おもふとち,
こころやらむと[寛],
うまなめて[寛],
うちくちぶりの,[寛]うちこちふりの,
しらなみの[寛],
ありそによする[寛],
しぶたにの,[寛]しふたにの,
さきたもとほり[寛],
まつだえの,[寛]まつたえの,
ながはますぎて,[寛]なかはますきて,
うなひがは,[寛]うなひかは,
きよきせごとに,[寛]きよきせことに,
うかはたち[寛],
かゆきかくゆき[寛],
みつれども,[寛]みつれとも,
そこもあかにと[寛],
ふせのうみに[寛],
ふねうけすゑて[寛],
おきへこぎ,[寛]おきへこき,
へにこぎみれば,[寛]へにこきみれは,
なぎさには,[寛]なきさには,
あぢむらさわき,[寛]あちむらさわき,
しまみには,[寛]しままには,
こぬれはなさき[寛],
ここばくも,[寛]ここはくも,
みのさやけきか[寛],
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
ふたがみやまに,[寛]ふたかみやまに,
はふつたの[寛],
ゆきはわかれず,[寛]ゆきはわかれす,
ありがよひ,[寛]ありかよひ,
いやとしのはに[寛],
おもふどち,[寛]おもふとち,
かくしあそばむ,[寛]かくしあそはむ,
いまもみるごと,[寛]いまもみること,
" "#[番号]17/3992","#[題詞](遊覧布勢水海賦一首[并短歌] [此海者有射水郡舊江村也])","#[原文]布勢能宇美能 意枳都之良奈美 安利我欲比 伊夜登偲能波尓 見都追思<努>播牟","#[訓読]布勢の海の沖つ白波あり通ひいや年のはに見つつ偲はむ","#[仮名],ふせのうみの,おきつしらなみ,ありがよひ,いやとしのはに,みつつしのはむ","#[左注]右守大伴宿祢家持作之 [四月廿四日]","#[校異]奴 -> 努 [類][紀][細]","#[事項],天平19年4月24日,年紀,作者:大伴家持,遊覧,土地讃美,地名,氷見,富山,寿歌","#[訓異]
ふせのうみの[寛],
おきつしらなみ[寛],
ありがよひ,[寛]ありかよひ,
いやとしのはに[寛],
みつつしのはむ[寛],
" "#[番号]17/3993","#[題詞]敬和遊覧布勢水海賦一首并一絶","#[原文]布治奈美波 佐岐弖知理尓伎 宇能波奈波 伊麻曽佐可理等 安之比奇能 夜麻尓毛野尓毛 保登等藝須 奈伎之等与米婆 宇知奈妣久 許己呂毛之努尓 曽己乎之母 宇良胡非之美等 於毛布度知 宇麻宇知牟礼弖 多豆佐波理 伊泥多知美礼婆 伊美豆河泊 美奈刀能須登利 安佐奈藝尓 可多尓安佐里之 思保美弖婆 都麻欲<妣>可波須 等母之伎尓 美都追須疑由伎 之夫多尓能 安利蘇乃佐伎尓 於枳追奈美 余勢久流多麻母 可多与理尓 可都良尓都久理 伊毛我多米 C尓麻吉母知弖 宇良具波之 布<勢>能美豆宇弥尓 阿麻夫祢尓 麻可治加伊奴吉 之路多倍能 蘇泥布<理>可邊之 阿登毛比弖 和賀己藝由氣婆 乎布能佐伎 <波>奈知利麻我比 奈伎佐尓波 阿之賀毛佐和伎 佐射礼奈美 多知弖毛為弖母 己藝米具利 美礼登母安可受 安伎佐良婆 毛美知能等伎尓 波流佐良婆 波奈能佐可利尓 可毛加久母 伎美我麻尓麻等 可久之許曽 美母安吉良米々 多由流比安良米也 ","#[訓読]藤波は 咲きて散りにき 卯の花は 今ぞ盛りと あしひきの 山にも野にも 霍公鳥 鳴きし響めば うち靡く 心もしのに そこをしも うら恋しみと 思ふどち 馬打ち群れて 携はり 出で立ち見れば 射水川 港の渚鳥 朝なぎに 潟にあさりし 潮満てば 夫呼び交す 羨しきに 見つつ過ぎ行き 渋谿の 荒礒の崎に 沖つ波 寄せ来る玉藻 片縒りに 蘰に作り 妹がため 手に巻き持ちて うらぐはし 布勢の水海に 海人船に ま楫掻い貫き 白栲の 袖振り返し あどもひて 我が漕ぎ行けば 乎布の崎 花散りまがひ 渚には 葦鴨騒き さざれ波 立ちても居ても 漕ぎ廻り 見れども飽かず 秋さらば 黄葉の時に 春さらば 花の盛りに かもかくも 君がまにまと かくしこそ 見も明らめめ 絶ゆる日あらめや ","#[仮名],ふぢなみは,さきてちりにき,うのはなは,いまぞさかりと,あしひきの,やまにものにも,ほととぎす,なきしとよめば,うちなびく,こころもしのに,そこをしも,うらごひしみと,おもふどち,うまうちむれて,たづさはり,いでたちみれば,いみづがは,みなとのすどり,あさなぎに,かたにあさりし,しほみてば,つまよびかはす,ともしきに,みつつすぎゆき,しぶたにの,ありそのさきに,おきつなみ,よせくるたまも,かたよりに,かづらにつくり,いもがため,てにまきもちて,うらぐはし,ふせのみづうみに,あまぶねに,まかぢかいぬき,しろたへの,そでふりかへし,あどもひて,わがこぎゆけば,をふのさき,はなちりまがひ,なぎさには,あしがもさわき,さざれなみ,たちてもゐても,こぎめぐり,みれどもあかず,あきさらば,もみちのときに,はるさらば,はなのさかりに,かもかくも,きみがまにまと,かくしこそ,みもあきらめめ,たゆるひあらめや","#[左注]右掾大伴宿祢池主作 [四月廿六日追和]","#[校異]泊 [元] 伯 / 比 -> 妣 [元][類] / 施 -> 勢 [元][類][紀] / 里 -> 理 [元][類] / 婆 -> 波 [元][類][紀]","#[事項],天平19年4月26日,年紀,作者:大伴池主,追和,大伴家持,遊覧,枕詞,地名,氷見,高岡,寿歌,儀礼歌,土地讃美","#[訓異]
ふぢなみは,[寛]ふちなみは,
さきてちりにき[寛],
うのはなは[寛],
いまぞさかりと,[寛]いまそさかりと,
あしひきの[寛],
やまにものにも[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なきしとよめば,[寛]なきしとよめは,
うちなびく,[寛]うちなひく,
こころもしのに[寛],
そこをしも[寛],
うらごひしみと,[寛]うらこひしみと,
おもふどち,[寛]おもふとち,
うまうちむれて[寛],
たづさはり,[寛]たつさはり,
いでたちみれば,[寛]いてたちみれは,
いみづがは,[寛]いみつかは,
みなとのすどり,[寛]みなとのすとり,
あさなぎに,[寛]あさなきに,
かたにあさりし[寛],
しほみてば,[寛]しほみては,
つまよびかはす,[寛]つまよひかはす,
ともしきに[寛],
みつつすぎゆき,[寛]みつつすきゆき,
しぶたにの,[寛]しふたにの,
ありそのさきに[寛],
おきつなみ[寛],
よせくるたまも[寛],
かたよりに[寛],
かづらにつくり,[寛]かつらにつくり,
いもがため,[寛]いもかため,
てにまきもちて[寛],
うらぐはし,[寛]うらくはし,
ふせのみづうみに,[寛]ふせのみつうみに,
あまぶねに,[寛]あまふねに,
まかぢかいぬき,[寛]まかちかいぬき,
しろたへの[寛],
そでふりかへし,[寛]そてふりかへし,
あどもひて,[寛]あともひて,
わがこぎゆけば,[寛]わかこきゆけは,
をふのさき[寛],
はなちりまがひ,[寛]はなちりまかひ,
なぎさには,[寛]なきさには,
あしがもさわき,[寛]あしかもさわき,
さざれなみ,[寛]さされなみ,
たちてもゐても[寛],
こぎめぐり,[寛]こきめくり,
みれどもあかず,[寛]みれともあかす,
あきさらば,[寛]あきさらは,
もみちのときに[寛],
はるさらば,[寛]はるさらは,
はなのさかりに[寛],
かもかくも[寛],
きみがまにまと,[寛]きみかまにまと,
かくしこそ[寛],
みもあきらめめ[寛],
たゆるひあらめや[寛],
" "#[番号]17/3994","#[題詞](敬和遊覧布勢水海賦一首并一絶)","#[原文]之良奈美能 与世久流多麻毛 余能安比太母 都藝弖民仁許武 吉欲伎波麻備乎","#[訓読]白波の寄せ来る玉藻世の間も継ぎて見に来む清き浜びを","#[仮名],しらなみの,よせくるたまも,よのあひだも,つぎてみにこむ,きよきはまびを","#[左注]右掾大伴宿祢池主作 [四月廿六日追和]","#[校異]","#[事項],天平19年4月26日,年紀,作者:大伴池主,追和,大伴家持,遊覧,枕詞,地名,氷見,高岡,寿歌,儀礼歌,植物,土地讃美","#[訓異]
しらなみの[寛],
よせくるたまも[寛],
よのあひだも,[寛]よのあひたも,
つぎてみにこむ,[寛]つきてみにこむ,
きよきはまびを,[寛]きよきはまひを,
" "#[番号]17/3995","#[題詞]四月廿六日掾大伴宿祢池主之舘餞税帳使守大伴宿祢家持宴歌并古歌四首","#[原文]多麻保許乃 美知尓伊泥多知 和可礼奈婆 見奴日佐麻祢美 孤悲思家武可母 [一云 不見日久弥 戀之家牟加母] ","#[訓読]玉桙の道に出で立ち別れなば見ぬ日さまねみ恋しけむかも [一云 見ぬ日久しみ恋しけむかも] ","#[仮名],たまほこの,みちにいでたち,わかれなば,みぬひさまねみ,こひしけむかも,[みぬひひさしみ,こひしけむかも]","#[左注]右一首大伴宿祢家持作之","#[校異]","#[事項],天平19年4月26日,年紀,作者:大伴家持,宴席,餞別,羈旅,出発,大伴池主,恋情,悲別,枕詞,推敲,高岡,富山","#[訓異]
たまほこの[寛],
みちにいでたち,[寛]みちにいてたち,
わかれなば,[寛]わかれなみ,
みぬひさまねみ[寛],
こひしけむかも[寛],
[みぬひひさしみ[寛],
こひしけむかも][寛],
" "#[番号]17/3996","#[題詞](四月廿六日掾大伴宿祢池主之舘餞税帳使守大伴宿祢家持宴歌并古歌四首)","#[原文]和我勢古我 久尓敝麻之奈婆 保等登藝須 奈可牟佐都奇波 佐夫之家牟可母","#[訓読]我が背子が国へましなば霍公鳥鳴かむ五月は寂しけむかも","#[仮名],わがせこが,くにへましなば,ほととぎす,なかむさつきは,さぶしけむかも","#[左注]右一首介内蔵忌寸縄麻呂作之","#[校異]","#[事項],天平19年4月26日,年紀,作者:内蔵縄麻呂,動物,宴席,餞別,羈旅,出発,大伴家持,大伴池主,恋情,悲別,高岡,富山","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
くにへましなば,[寛]くにへましなは,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なかむさつきは[寛],
さぶしけむかも,[寛]さふしけむかも,
" "#[番号]17/3997","#[題詞](四月廿六日掾大伴宿祢池主之舘餞税帳使守大伴宿祢家持宴歌并古歌四首)","#[原文]安礼奈之等 奈和備和我勢故 保登等藝須 奈可牟佐都奇波 多麻乎奴香佐祢","#[訓読]我れなしとなわび我が背子霍公鳥鳴かむ五月は玉を貫かさね","#[仮名],あれなしと,なわびわがせこ,ほととぎす,なかむさつきは,たまをぬかさね","#[左注]右一首守大伴宿祢家持和","#[校異]","#[事項],天平19年4月26日,年紀,作者:大伴家持,唱和,宴席,餞別,羈旅,出発,大伴池主,内蔵縄麻呂,動物,慰撫,高岡,富山","#[訓異]
あれなしと[寛],
なわびわがせこ,[寛]なわひわかせこ,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なかむさつきは[寛],
たまをぬかさね[寛],
" "#[番号]17/3998","#[題詞]石<川>朝臣水通橘歌一首","#[原文]和我夜度能 花橘乎 波奈其米尓 多麻尓曽安我奴久 麻多婆苦流之美","#[訓読]我が宿の花橘を花ごめに玉にぞ我が貫く待たば苦しみ","#[仮名],わがやどの,はなたちばなを,はなごめに,たまにぞあがぬく,またばくるしみ","#[左注]右一首傳誦主人大伴宿祢池主云尓","#[校異]河 -> 川 [元][類]","#[事項],天平19年4月26日,年紀,大伴池主,伝誦,古歌,石川水通,植物,宴席,餞別,出発,高岡,富山","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
はなごめに,[寛]はなこめに,
たまにぞあがぬく,[寛]たまにそあかぬく,
またばくるしみ,[寛]またはくるしみ,
" "#[番号]17/3999","#[題詞]守大伴宿祢家持舘飲宴歌一首[四月廿六日]","#[原文]美夜故敝尓 多都日知可豆久 安久麻弖尓 安比見而由可奈 故布流比於保家牟","#[訓読]都辺に立つ日近づく飽くまでに相見て行かな恋ふる日多けむ","#[仮名],みやこへに,たつひちかづく,あくまでに,あひみてゆかな,こふるひおほけむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平19年4月26日,年紀,作者:大伴家持,羈旅,出発,餞別,宴席,恋情,富山,高岡","#[訓異]
みやこへに[寛],
たつひちかづく,[寛]たつひちかつく,
あくまでに,[寛]あくまてに,
あひみてゆかな[寛],
こふるひおほけむ[寛],
" "#[番号]17/4000","#[題詞]立山賦一首[并短歌] [此山者有新<川>郡也]","#[原文]安麻射可流 比奈尓名可加須 古思能奈可 久奴知許登其等 夜麻波之母 之自尓安礼登毛 加波々之母 佐波尓由氣等毛 須賣加未能 宇之波伎伊麻須 尓比可波能 曽能多知夜麻尓 等許奈都尓 由伎布理之伎弖 於<婆>勢流 可多加比河波能 伎欲吉瀬尓 安佐欲比其等尓 多都奇利能 於毛比須疑米夜 安里我欲比 伊夜登之能播仁 余<増>能未母 布利佐氣見都々 余呂豆餘能 可多良比具佐等 伊末太見奴 比等尓母都氣牟 於登能未毛 名能未<母>伎吉C 登母之夫流我祢 ","#[訓読]天離る 鄙に名懸かす 越の中 国内ことごと 山はしも しじにあれども 川はしも 多に行けども 統め神の 領きいます 新川の その立山に 常夏に 雪降り敷きて 帯ばせる 片貝川の 清き瀬に 朝夕ごとに 立つ霧の 思ひ過ぎめや あり通ひ いや年のはに よそのみも 振り放け見つつ 万代の 語らひぐさと いまだ見ぬ 人にも告げむ 音のみも 名のみも聞きて 羨しぶるがね ","#[仮名],あまざかる,ひなになかかす,こしのなか,くぬちことごと,やまはしも,しじにあれども,かははしも,さはにゆけども,すめかみの,うしはきいます,にひかはの,そのたちやまに,とこなつに,ゆきふりしきて,おばせる,かたかひがはの,きよきせに,あさよひごとに,たつきりの,おもひすぎめや,ありがよひ,いやとしのはに,よそのみも,ふりさけみつつ,よろづよの,かたらひぐさと,いまだみぬ,ひとにもつげむ,おとのみも,なのみもききて,ともしぶるがね","#[左注](四月廿七日大伴宿祢家持作之)","#[校異]歌 [西] 謌 / 山 [元][類][紀][温] 立山 / 河 -> 川 [元][細][温] / 波 -> 婆 [元][類][紀] / 曽 -> 増 [元][細][温] / 毛 -> 母 [元][類][細]","#[事項],天平19年4月27日,年紀,作者:大伴家持,地名,富山,山讃美,寿歌,儀礼歌,序詞,枕詞,国見,土地讃美","#[訓異]
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなになかかす[寛],
こしのなか[寛],
くぬちことごと,[寛]くぬちことこと,
やまはしも[寛],
しじにあれども,[寛]ししにあれとも,
かははしも[寛],
さはにゆけども,[寛]さはにゆけとも,
すめかみの[寛],
うしはきいます[寛],
にひかはの[寛],
そのたちやまに[寛],
とこなつに[寛],
ゆきふりしきて[寛],
おばせる,[寛]おはせる,
かたかひがはの,[寛]かたかひかはの,
きよきせに[寛],
あさよひごとに,[寛]あさよひことに,
たつきりの[寛],
おもひすぎめや,[寛]おもひすきめや,
ありがよひ,[寛]ありかよひ,
いやとしのはに[寛],
よそのみも[寛],
ふりさけみつつ[寛],
よろづよの,[寛]よろつよの,
かたらひぐさと,[寛]かたらひくさと,
いまだみぬ,[寛]いまたみぬ,
ひとにもつげむ,[寛]ひとにもつけむ,
おとのみも[寛],
なのみもききて[寛],
ともしぶるがね,[寛]ともしふるかね,
" "#[番号]17/4001","#[題詞](立山賦一首[并短歌] [此山者有新<川>郡也])","#[原文]多知夜麻尓 布里於家流由伎乎 登己奈都尓 見礼等母安可受 加武賀良奈良之","#[訓読]立山に降り置ける雪を常夏に見れども飽かず神からならし","#[仮名],たちやまに,ふりおけるゆきを,とこなつに,みれどもあかず,かむからならし","#[左注](四月廿七日大伴宿祢家持作之)","#[校異]","#[事項],天平19年4月27日,年紀,作者:大伴家持,地名,富山,山讃美,寿歌,儀礼歌,国見,土地讃美","#[訓異]
たちやまに[寛],
ふりおけるゆきを[寛],
とこなつに[寛],
みれどもあかず,[寛]みれともあかす,
かむからならし[寛],
" "#[番号]17/4002","#[題詞](立山賦一首[并短歌] [此山者有新<川>郡也])","#[原文]可多加比能 可波能瀬伎欲久 由久美豆能 多由流許登奈久 安里我欲比見牟","#[訓読]片貝の川の瀬清く行く水の絶ゆることなくあり通ひ見む","#[仮名],かたかひの,かはのせきよく,ゆくみづの,たゆることなく,ありがよひみむ","#[左注]四月廿七日大伴宿祢家持作之","#[校異]","#[事項],天平19年4月27日,年紀,作者:大伴家持,地名,富山,山讃美,序詞,儀礼歌,寿歌,土地讃美","#[訓異]
かたかひの[寛],
かはのせきよく[寛],
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
たゆることなく[寛],
ありがよひみむ,[寛]ありかよひみむ,
" "#[番号]17/4003","#[題詞]敬和立山賦一首并二絶","#[原文]阿佐比左之 曽我比尓見由流 可無奈我良 弥奈尓於婆勢流 之良久母能 知邊乎於之和氣 安麻曽々理 多可吉多知夜麻 布由奈都登 和久許等母奈久 之路多倍尓 遊吉波布里於吉弖 伊尓之邊遊 阿理吉仁家礼婆 許其志可毛 伊波能可牟佐備 多末伎波流 伊久代經尓家牟 多知C為弖 見礼登毛安夜之 弥祢太可美 多尓乎布可美等 於知多藝都 吉欲伎可敷知尓 安佐左良受 綺利多知和多利 由布佐礼婆 久毛為多奈i吉 久毛為奈須 己許呂毛之努尓 多都奇理能 於毛比須具佐受 由久美豆乃 於等母佐夜氣久 与呂豆余尓 伊比都藝由可牟 加<波>之多要受波 ","#[訓読]朝日さし そがひに見ゆる 神ながら 御名に帯ばせる 白雲の 千重を押し別け 天そそり 高き立山 冬夏と 別くこともなく 白栲に 雪は降り置きて 古ゆ あり来にければ こごしかも 岩の神さび たまきはる 幾代経にけむ 立ちて居て 見れども異し 峰高み 谷を深みと 落ちたぎつ 清き河内に 朝さらず 霧立ちわたり 夕されば 雲居たなびき 雲居なす 心もしのに 立つ霧の 思ひ過ぐさず 行く水の 音もさやけく 万代に 言ひ継ぎゆかむ 川し絶えずは ","#[仮名],あさひさし,そがひにみゆる,かむながら,みなにおばせる,しらくもの,ちへをおしわけ,あまそそり,たかきたちやま,ふゆなつと,わくこともなく,しろたへに,ゆきはふりおきて,いにしへゆ,ありきにければ,こごしかも,いはのかむさび,たまきはる,いくよへにけむ,たちてゐて,みれどもあやし,みねだかみ,たにをふかみと,おちたぎつ,きよきかふちに,あささらず,きりたちわたり,ゆふされば,くもゐたなびき,くもゐなす,こころもしのに,たつきりの,おもひすぐさず,ゆくみづの,おともさやけく,よろづよに,いひつぎゆかむ,かはしたえずは","#[左注](右掾大伴宿祢池主和之 四月廿八日)","#[校異]婆 -> 波 [元][類][紀]","#[事項],天平19年4月28日,年紀,作者:大伴池主,唱和,大伴家持,枕詞,土地讃美,地名,富山,山讃美,儀礼歌,寿歌,序詞","#[訓異]
あさひさし[寛],
そがひにみゆる,[寛]そかひにみゆる,
かむながら,[寛]かむなから,
みなにおばせる,[寛]みなにおはせる,
しらくもの[寛],
ちへをおしわけ[寛],
あまそそり[寛],
たかきたちやま[寛],
ふゆなつと[寛],
わくこともなく[寛],
しろたへに[寛],
ゆきはふりおきて[寛],
いにしへゆ[寛],
ありきにければ,[寛]ありきにけれは,
こごしかも,[寛]ここしかも,
いはのかむさび,[寛]いはのかむさひ,
たまきはる[寛],
いくよへにけむ[寛],
たちてゐて[寛],
みれどもあやし,[寛]みれともあやし,
みねだかみ,[寛]みねたかみ,
たにをふかみと[寛],
おちたぎつ,[寛]おちたきつ,
きよきかふちに[寛],
あささらず,[寛]あささらす,
きりたちわたり[寛],
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
くもゐたなびき,[寛]くもゐたなひき,
くもゐなす[寛],
こころもしのに[寛],
たつきりの[寛],
おもひすぐさず,[寛]おもひすくさす,
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
おともさやけく[寛],
よろづよに,[寛]よろつよに,
いひつぎゆかむ,[寛]いひつきゆかむ,
かはしたえずは,[寛]かはしたえすは,
" "#[番号]17/4004","#[題詞](敬和立山賦一首并二絶)","#[原文]多知夜麻尓 布理於家流由伎能 等許奈都尓 氣受弖和多流波 可無奈我良等曽","#[訓読]立山に降り置ける雪の常夏に消ずてわたるは神ながらとぞ","#[仮名],たちやまに,ふりおけるゆきの,とこなつに,けずてわたるは,かむながらとぞ","#[左注](右掾大伴宿祢池主和之 四月廿八日)","#[校異]","#[事項],天平19年4月28日,年紀,作者:大伴池主,唱和,大伴家持,土地讃美,地名,富山,山讃美,儀礼歌,寿歌","#[訓異]
たちやまに[寛],
ふりおけるゆきの[寛],
とこなつに[寛],
けずてわたるは,[寛]けすてわたるは,
かむながらとぞ,[寛]かむなからとそ,
" "#[番号]17/4005","#[題詞](敬和立山賦一首并二絶)","#[原文]於知多藝都 可多加比我波能 多延奴期等 伊麻見流比等母 夜麻受可欲波牟","#[訓読]落ちたぎつ片貝川の絶えぬごと今見る人もやまず通はむ","#[仮名],おちたぎつ,かたかひがはの,たえぬごと,いまみるひとも,やまずかよはむ","#[左注]右掾大伴宿祢池主和之 四月廿八日","#[校異]","#[事項],天平19年4月28日,年紀,作者:大伴池主,唱和,大伴家持,土地讃美,地名,富山,山讃美,儀礼歌,寿歌","#[訓異]
おちたぎつ,[寛]おちたきつ,
かたかひがはの,[寛]かたかひかはの,
たえぬごと,[寛]たえぬこと,
いまみるひとも[寛],
やまずかよはむ,[寛]やますかよはむ,
" "#[番号]17/4006","#[題詞]入京漸近悲情難撥述懐一首并一絶","#[原文]可伎加蘇布 敷多我美夜麻尓 可牟佐備弖 多C流都我能奇 毛等母延毛 於夜自得伎波尓 波之伎与之 和我世乃伎美乎 安佐左良受 安比弖許登騰比 由布佐礼婆 手多豆佐波利弖 伊美豆河波 吉欲伎可布知尓 伊泥多知弖 和我多知弥礼婆 安由能加是 伊多久之布氣婆 美奈刀尓波 之良奈美多可弥 都麻欲夫等 須騰理波佐和久 安之可流等 安麻乃乎夫祢波 伊里延許具 加遅能於等多可之 曽己乎之毛 安夜尓登母志美 之努比都追 安蘇夫佐香理乎 須賣呂伎能 乎須久尓奈礼婆 美許登母知 多知和可礼奈婆 於久礼多流 吉民婆安礼騰母 多麻保許乃 美知由久和礼播 之良久毛能 多奈妣久夜麻乎 伊波祢布美 古要敝奈利奈<婆> 孤悲之家久 氣乃奈我家牟曽 則許母倍婆 許己呂志伊多思 保等登藝須 許恵尓安倍奴久 多麻尓母我 手尓麻吉毛知弖 安佐欲比尓 見都追由可牟乎 於伎弖伊加<婆>乎<思> ","#[訓読]かき数ふ 二上山に 神さびて 立てる栂の木 本も枝も 同じときはに はしきよし 我が背の君を 朝去らず 逢ひて言どひ 夕されば 手携はりて 射水川 清き河内に 出で立ちて 我が立ち見れば 東風の風 いたくし吹けば 港には 白波高み 妻呼ぶと 渚鳥は騒く 葦刈ると 海人の小舟は 入江漕ぐ 楫の音高し そこをしも あやに羨しみ 偲ひつつ 遊ぶ盛りを 天皇の 食す国なれば 御言持ち 立ち別れなば 後れたる 君はあれども 玉桙の 道行く我れは 白雲の たなびく山を 岩根踏み 越えへなりなば 恋しけく 日の長けむぞ そこ思へば 心し痛し 霍公鳥 声にあへ貫く 玉にもが 手に巻き持ちて 朝夕に 見つつ行かむを 置きて行かば惜し ","#[仮名],かきかぞふ,ふたがみやまに,かむさびて,たてるつがのき,もともえも,おやじときはに,はしきよし,わがせのきみを,あささらず,あひてことどひ,ゆふされば,てたづさはりて,いみづがは,きよきかふちに,いでたちて,わがたちみれば,あゆのかぜ,いたくしふけば,みなとには,しらなみたかみ,つまよぶと,すどりはさわく,あしかると,あまのをぶねは,いりえこぐ,かぢのおとたかし,そこをしも,あやにともしみ,しのひつつ,あそぶさかりを,すめろきの,をすくになれば,みこともち,たちわかれなば,おくれたる,きみはあれども,たまほこの,みちゆくわれは,しらくもの,たなびくやまを,いはねふみ,こえへなりなば,こひしけく,けのながけむぞ,そこもへば,こころしいたし,ほととぎす,こゑにあへぬく,たまにもが,てにまきもちて,あさよひに,みつつゆかむを,おきていかばをし","#[左注](右大伴宿祢家持贈掾大伴宿祢池主 四月卅日)","#[校異]波 -> 婆 [元][細] / 波 -> 婆 [元][細][温] / 志 -> 思 [元][細][温]","#[事項],天平19年4月30日,年紀,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,地名,高岡,富山,植物,羈旅,出発,悲別,恋情","#[訓異]
かきかぞふ,[寛]かきかそふ,
ふたがみやまに,[寛]ふたかみやまに,
かむさびて,[寛]かむさひて,
たてるつがのき,[寛]たてるとかのち,
もともえも[寛],
おやじときはに,[寛]おやしときはに,
はしきよし[寛],
わがせのきみを,[寛]わかせのきみを,
あささらず,[寛]あささらす,
あひてことどひ,[寛]あひてこととひ,
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
てたづさはりて,[寛]てたつさはりて,
いみづがは,[寛]いみつかは,
きよきかふちに[寛],
いでたちて,[寛]いてたちて,
わがたちみれば,[寛]わかたちみれは,
あゆのかぜ,[寛]あゆのかせ,
いたくしふけば,[寛]いたくしふけは,
みなとには[寛],
しらなみたかみ[寛],
つまよぶと,[寛]つまよふと,
すどりはさわく,[寛]すとりはさわく,
あしかると[寛],
あまのをぶねは,[寛]あまのをふねは,
いりえこぐ,[寛]いりえこく,
かぢのおとたかし,[寛]かちのおとたかし,
そこをしも[寛],
あやにともしみ[寛],
しのひつつ[寛],
あそぶさかりを,[寛]あそふさかりを,
すめろきの[寛],
をすくになれば,[寛]をすくになれは,
みこともち[寛],
たちわかれなば,[寛]たちわかれなは,
おくれたる[寛],
きみはあれども,[寛]きみはあれとも,
たまほこの[寛],
みちゆくわれは[寛],
しらくもの[寛],
たなびくやまを,[寛]たなひくやまを,
いはねふみ[寛],
こえへなりなば,[寛]こえへなりなは,
こひしけく[寛],
けのながけむぞ,[寛]けのなかけむそ,
そこもへば,[寛]そこもへは,
こころしいたし[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
こゑにあへぬく[寛],
たまにもが,[寛]たまにもか,
てにまきもちて[寛],
あさよひに[寛],
みつつゆかむを[寛],
おきていかばをし,[寛]おきていかはをし,
" "#[番号]17/4007","#[題詞](入京漸近悲情難撥述懐一首并一絶)","#[原文]和我勢故<波> 多麻尓母我毛奈 保登等伎須 許恵尓安倍奴吉 手尓麻伎弖由可牟","#[訓読]我が背子は玉にもがもな霍公鳥声にあへ貫き手に巻きて行かむ","#[仮名],わがせこは,たまにもがもな,ほととぎす,こゑにあへぬき,てにまきてゆかむ","#[左注]右大伴宿祢家持贈掾大伴宿祢池主 四月卅日","#[校異]婆 -> 波 [元][類]","#[事項],天平19年4月30日,年紀,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,羈旅,動物,出発,悲別,恋情,高岡,富山","#[訓異]
わがせこは,[寛]わかせこは,
たまにもがもな,[寛]たまにもかもな,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
こゑにあへぬき[寛],
てにまきてゆかむ[寛],
" "#[番号]17/4008","#[題詞]忽見入京述懐之作生別悲<兮>断腸万廻怨緒難禁聊奉所心一首并二絶","#[原文]安遠邇与之 奈良乎伎波奈礼 阿麻射可流 比奈尓波安礼登 和賀勢故乎 見都追志乎礼婆 於毛比夜流 許等母安利之乎 於保伎美乃 美許等可之古美 乎須久尓能 許等登理毛知弖 和可久佐能 安由比多豆久利 無良等理能 安佐太知伊奈婆 於久礼多流 阿礼也可奈之伎 多妣尓由久 伎美可母孤悲無 於毛布蘇良 夜須久安良祢婆 奈氣可久乎 等騰米毛可祢C 見和多勢婆 宇能婆奈夜麻乃 保等登藝須 <祢>能未之奈可由 安佐疑理能 美太流々許己呂 許登尓伊泥弖 伊<波><婆>由遊思美 刀奈美夜麻 多牟氣能可味尓 奴佐麻都里 安我許比能麻久 波之家夜之 吉美賀多太可乎 麻佐吉久毛 安里多母等保利 都奇多々婆 等伎毛可波佐受 奈泥之故我 波奈乃佐可里尓 阿比見之米等曽 ","#[訓読]あをによし 奈良を来離れ 天離る 鄙にはあれど 我が背子を 見つつし居れば 思ひ遣る こともありしを 大君の 命畏み 食す国の 事取り持ちて 若草の 足結ひ手作り 群鳥の 朝立ち去なば 後れたる 我れや悲しき 旅に行く 君かも恋ひむ 思ふそら 安くあらねば 嘆かくを 留めもかねて 見わたせば 卯の花山の 霍公鳥 音のみし泣かゆ 朝霧の 乱るる心 言に出でて 言はばゆゆしみ 砺波山 手向けの神に 幣奉り 我が祈ひ祷まく はしけやし 君が直香を ま幸くも ありた廻り 月立たば 時もかはさず なでしこが 花の盛りに 相見しめとぞ ","#[仮名],あをによし,ならをきはなれ,あまざかる,ひなにはあれど,わがせこを,みつつしをれば,おもひやる,こともありしを,おほきみの,みことかしこみ,をすくにの,こととりもちて,わかくさの,あゆひたづくり,むらとりの,あさだちいなば,おくれたる,あれやかなしき,たびにゆく,きみかもこひむ,おもふそら,やすくあらねば,なげかくを,とどめもかねて,みわたせば,うのはなやまの,ほととぎす,ねのみしなかゆ,あさぎりの,みだるるこころ,ことにいでて,いはばゆゆしみ,となみやま,たむけのかみに,ぬさまつり,あがこひのまく,はしけやし,きみがただかを,まさきくも,ありたもとほり,つきたたば,ときもかはさず,なでしこが,はなのさかりに,あひみしめとぞ","#[左注](右大伴宿祢池主報贈和歌 [五月二日])","#[校異]号 -> 兮 [元] / 弥 -> 祢 [元][紀][細] / 婆 -> 波 [元][細][温] / 々 -> 婆 [元][細][温]","#[事項],天平19年5月2日,年紀,作者:大伴池主,贈答,大伴家持,枕詞,植物,動物,地名,高岡,富山,砺波,恋情,悲別,羈旅,出発","#[訓異]
あをによし[寛],
ならをきはなれ[寛],
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなにはあれど,[寛]ひなにはあれと,
わがせこを,[寛]わかせこを,
みつつしをれば,[寛]みつつしをれは,
おもひやる[寛],
こともありしを[寛],
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
をすくにの[寛],
こととりもちて[寛],
わかくさの[寛],
あゆひたづくり,[寛]あゆひたつくり,
むらとりの[寛],
あさだちいなば,[寛]あさたちいなは,
おくれたる[寛],
あれやかなしき[寛],
たびにゆく,[寛]たひにゆく,
きみかもこひむ[寛],
おもふそら[寛],
やすくあらねば,[寛]やすくあらねは,
なげかくを,[寛]なけかくを,
とどめもかねて,[寛]ととめもかねて,
みわたせば,[寛]みわたせは,
うのはなやまの[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
ねのみしなかゆ[寛],
あさぎりの,[寛]あさきりの,
みだるるこころ,[寛]みたるるこころ,
ことにいでて,[寛]ことにいてて,
いはばゆゆしみ,[寛]いははゆゆしみ,
となみやま[寛],
たむけのかみに[寛],
ぬさまつり[寛],
あがこひのまく,[寛]あかこひのまく,
はしけやし[寛],
きみがただかを,[寛]きみかたたかを,
まさきくも[寛],
ありたもとほり[寛],
つきたたば,[寛]つきたたは,
ときもかはさず,[寛]ときもかはさす,
なでしこが,[寛]なてしこか,
はなのさかりに[寛],
あひみしめとぞ,[寛]あひみしめとそ,
" "#[番号]17/4009","#[題詞](忽見入京述懐之作生別悲<兮>断腸万廻怨緒難禁聊奉所心一首并二絶)","#[原文]多麻保許<乃> 美知能可<未>多知 麻比波勢牟 安賀於毛布伎美乎 奈都可之美勢余","#[訓読]玉桙の道の神たち賄はせむ我が思ふ君をなつかしみせよ","#[仮名],たまほこの,みちのかみたち,まひはせむ,あがおもふきみを,なつかしみせよ","#[左注](右大伴宿祢池主報贈和歌 [五月二日])","#[校異]能 -> 乃 [元][類] / 味 -> 未 [元][類][紀]","#[事項],天平19年5月2日,年紀,作者:大伴池主,贈答,大伴家持,枕詞,羈旅,出発,悲別,恋情,手向け,無事,高岡,富山","#[訓異]
たまほこの[寛],
みちのかみたち[寛],
まひはせむ[寛],
あがおもふきみを,[寛]あかおもふきみを,
なつかしみせよ[寛],
" "#[番号]17/4010","#[題詞](忽見入京述懐之作生別悲<兮>断腸万廻怨緒難禁聊奉所心一首并二絶)","#[原文]宇良故非之 和賀勢能伎美波 奈泥之故我 波奈尓毛我母奈 安佐奈々々見牟","#[訓読]うら恋し我が背の君はなでしこが花にもがもな朝な朝な見む","#[仮名],うらごひし,わがせのきみは,なでしこが,はなにもがもな,あさなさなみむ","#[左注]右大伴宿祢池主報贈和歌 [五月二日]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],天平19年5月2日,年紀,作者:大伴池主,贈答,大伴家持,羈旅,出発,悲別,恋情,高岡,富山,植物","#[訓異]
うらごひし,[寛]うらこひし,
わがせのきみは,[寛]わかせのきみは,
なでしこが,[寛]なてしこか,
はなにもがもな,[寛]はなにもかもな,
あさなさなみむ[寛],
" "#[番号]17/4011","#[題詞]思放逸鷹夢見感悦作歌一首[并短歌]","#[原文]大王乃 等保能美可度曽 美雪落 越登名尓於敝流 安麻射可流 比奈尓之安礼婆 山高美 河登保之呂思 野乎比呂美 久佐許曽之既吉 安由波之流 奈都能左<加>利等 之麻都等里 鵜養我登母波 由久加波乃 伎欲吉瀬其<等>尓 可賀里左之 奈豆左比能保流 露霜乃 安伎尓伊多礼<婆> 野毛佐波尓 等里須太家里等 麻須良乎能 登母伊射奈比弖 多加波之母 安麻多安礼等母 矢形尾乃 安我大黒尓 [大黒者蒼鷹之名也] 之良奴里<能> 鈴登里都氣弖 朝猟尓 伊保都登里多C 暮猟尓 知登理布美多C 於敷其等邇 由流須許等奈久 手放毛 乎知母可夜須伎 許礼乎於伎C 麻多波安里我多之 左奈良敝流 多可波奈家牟等 情尓波 於毛比保許里弖 恵麻比都追 和多流安比太尓 多夫礼多流 之許都於吉奈乃 許等太尓母 吾尓波都氣受 等乃具母利 安米能布流日乎 等我理須等 名乃未乎能里弖 三嶋野乎 曽我比尓見都追 二上 山登妣古要C 久母我久理 可氣理伊尓伎等 可敝理伎弖 之波夫礼都具礼 呼久餘思乃 曽許尓奈家礼婆 伊敷須敝能 多騰伎乎之良尓 心尓波 火佐倍毛要都追 於母比孤悲 伊<伎>豆吉安麻利 氣太之久毛 安布許等安里也等 安之比奇能 乎C母許乃毛尓 等奈美波里 母利敝乎須恵C 知波夜夫流 神社尓 C流鏡 之都尓等里蘇倍 己比能美弖 安我麻都等吉尓 乎登賣良我 伊米尓都具良久 奈我古敷流 曽能保追多加波 麻追太要乃 波麻由伎具良之 都奈之等流 比美乃江過弖 多古能之麻 等<妣>多毛登保里 安之我母<乃> 須太久舊江尓 乎等都日毛 伎能敷母安里追 知加久安良婆 伊麻布都可太未 等保久安良婆 奈奴可乃<乎>知<波> 須疑米也母 伎奈牟和我勢故 祢毛許呂尓 奈孤悲曽余等曽 伊麻尓都氣都流 ","#[訓読]大君の 遠の朝廷ぞ み雪降る 越と名に追へる 天離る 鄙にしあれば 山高み 川とほしろし 野を広み 草こそ茂き 鮎走る 夏の盛りと 島つ鳥 鵜養が伴は 行く川の 清き瀬ごとに 篝さし なづさひ上る 露霜の 秋に至れば 野も多に 鳥すだけりと 大夫の 友誘ひて 鷹はしも あまたあれども 矢形尾の 我が大黒に [大黒者蒼鷹之名也] 白塗の 鈴取り付けて 朝猟に 五百つ鳥立て 夕猟に 千鳥踏み立て 追ふ毎に 許すことなく 手放れも をちもかやすき これをおきて またはありがたし さ慣らへる 鷹はなけむと 心には 思ひほこりて 笑まひつつ 渡る間に 狂れたる 醜つ翁の 言だにも 我れには告げず との曇り 雨の降る日を 鳥猟すと 名のみを告りて 三島野を そがひに見つつ 二上の 山飛び越えて 雲隠り 翔り去にきと 帰り来て しはぶれ告ぐれ 招くよしの そこになければ 言ふすべの たどきを知らに 心には 火さへ燃えつつ 思ひ恋ひ 息づきあまり けだしくも 逢ふことありやと あしひきの をてもこのもに 鳥網張り 守部を据ゑて ちはやぶる 神の社に 照る鏡 倭文に取り添へ 祈ひ祷みて 我が待つ時に 娘子らが 夢に告ぐらく 汝が恋ふる その秀つ鷹は 松田江の 浜行き暮らし つなし捕る 氷見の江過ぎて 多古の島 飛びた廻り 葦鴨の すだく古江に 一昨日も 昨日もありつ 近くあらば いま二日だみ 遠くあらば 七日のをちは 過ぎめやも 来なむ我が背子 ねもころに な恋ひそよとぞ いまに告げつる ","#[仮名],おほきみの,とほのみかどぞ,みゆきふる,こしとなにおへる,あまざかる,ひなにしあれば,やまたかみ,かはとほしろし,のをひろみ,くさこそしげき,あゆはしる,なつのさかりと,しまつとり,うかひがともは,ゆくかはの,きよきせごとに,かがりさし,なづさひのぼる,つゆしもの,あきにいたれば,のもさはに,とりすだけりと,ますらをの,ともいざなひて,たかはしも,あまたあれども,やかたをの,あがおほぐろに,しらぬりの,すずとりつけて,あさがりに,いほつとりたて,ゆふがりに,ちとりふみたて,おふごとに,ゆるすことなく,たばなれも,をちもかやすき,これをおきて,またはありがたし,さならへる,たかはなけむと,こころには,おもひほこりて,ゑまひつつ,わたるあひだに,たぶれたる,しこつおきなの,ことだにも,われにはつげず,とのくもり,あめのふるひを,とがりすと,なのみをのりて,みしまのを,そがひにみつつ,ふたがみの,やまとびこえて,くもがくり,かけりいにきと,かへりきて,しはぶれつぐれ,をくよしの,そこになければ,いふすべの,たどきをしらに,こころには,ひさへもえつつ,おもひこひ,いきづきあまり,けだしくも,あふことありやと,あしひきの,をてもこのもに,となみはり,もりへをすゑて,ちはやぶる,かみのやしろに,てるかがみ,しつにとりそへ,こひのみて,あがまつときに,をとめらが,いめにつぐらく,ながこふる,そのほつたかは,まつだえの,はまゆきくらし,つなしとる,ひみのえすぎて,たこのしま,とびたもとほり,あしがもの,すだくふるえに,をとつひも,きのふもありつ,ちかくあらば,いまふつかだみ,とほくあらば,なぬかのをちは,すぎめやも,きなむわがせこ,ねもころに,なこひそよとぞ,いまにつげつる","#[左注](右射水郡古江村取獲蒼鷹 形<容>美麗鷙雉秀群也 於時養吏山田史君麻呂調試失節野猟乖候 摶風之翅高翔匿雲 腐鼠之<餌>呼留靡驗 於是<張>設羅網窺乎非常奉幣神祇恃乎不虞也 <粤>以夢裏有娘子喩曰 使君勿作苦念空費<精><神> 放逸彼鷹獲得未幾矣哉 須叟覺<寤>有悦於懐 因作却恨之歌式旌感信 守大伴宿祢家持 [九月廾六日作也])","#[校異]短歌 [西] 短謌 / 可 -> 加 [元][類][紀][細] / 登 -> 等 [元][類] / 波 -> 婆 [元] / 奴 -> 能 [元][類][紀][細] / 岐 -> 伎 [元][類][紀] / 比 -> 妣 [元][類] / 能 -> 乃 [元][類] / 未 [元][類][温] 米 / 宇 -> 乎 [元][類] / 婆 -> 波 [元][類][紀][細]","#[事項],天平19年9月26日,年紀,作者:大伴家持,動物,地名,富山,高岡,神祭り,託宣,山田君麻呂,枕詞,狩猟","#[訓異]
おほきみの[寛],
とほのみかどぞ,[寛]とほのみかとそ,
みゆきふる[寛],
こしとなにおへる[寛],
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなにしあれば,[寛]ひなにしあれは,
やまたかみ[寛],
かはとほしろし[寛],
のをひろみ[寛],
くさこそしげき,[寛]くさこそしけき,
あゆはしる[寛],
なつのさかりと[寛],
しまつとり[寛],
うかひがともは,[寛]うかひかともは,
ゆくかはの[寛],
きよきせごとに,[寛]きよきせことに,
かがりさし,[寛]かかりさし,
なづさひのぼる,[寛]なつさひのほる,
つゆしもの[寛],
あきにいたれば,[寛]あきにいたれは,
のもさはに[寛],
とりすだけりと,[寛]とりすたけりと,
ますらをの[寛],
ともいざなひて,[寛]ともいさなひて,
たかはしも[寛],
あまたあれども,[寛]あまたあれとも,
やかたをの[寛],
あがおほぐろに,[寛]あかおほくろに,
しらぬりの[寛],
すずとりつけて,[寛]すすとりつけて,
あさがりに,[寛]あさかりに,
いほつとりたて[寛],
ゆふがりに,[寛]ゆふかりに,
ちとりふみたて[寛],
おふごとに,[寛]おふことに,
ゆるすことなく[寛],
たばなれも,[寛]たはなれも,
をちもかやすき[寛],
これをおきて[寛],
またはありがたし,[寛]またはありかたし,
さならへる[寛],
たかはなけむと[寛],
こころには[寛],
おもひほこりて[寛],
ゑまひつつ[寛],
わたるあひだに,[寛]わたるあひたに,
たぶれたる,[寛]たふれたる,
しこつおきなの[寛],
ことだにも,[寛]ことたにも,
われにはつげず,[寛]われにはつけす,
とのくもり[寛],
あめのふるひを[寛],
とがりすと,[寛]とかりすと,
なのみをのりて[寛],
みしまのを[寛],
そがひにみつつ,[寛]そかひにみつつ,
ふたがみの,[寛]ふたかみの,
やまとびこえて,[寛]やまとひこえて,
くもがくり,[寛]くもかくり,
かけりいにきと[寛],
かへりきて[寛],
しはぶれつぐれ,[寛]しはふれつくれ,
をくよしの[寛],
そこになければ,[寛]そこになけれは,
いふすべの,[寛]いふすへの,
たどきをしらに,[寛]たときをしらに,
こころには[寛],
ひさへもえつつ[寛],
おもひこひ[寛],
いきづきあまり,[寛]いきつきあまり,
けだしくも,[寛]けたしくも,
あふことありやと[寛],
あしひきの[寛],
をてもこのもに[寛],
となみはり[寛],
もりへをすゑて[寛],
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
かみのやしろに[寛],
てるかがみ,[寛]てるかかみ,
しつにとりそへ[寛],
こひのみて[寛],
あがまつときに,[寛]あかまつときに,
をとめらが,[寛]をとめらか,
いめにつぐらく,[寛]いめにつくらく,
ながこふる,[寛]なかこふる,
そのほつたかは[寛],
まつだえの,[寛]まつたえの,
はまゆきくらし[寛],
つなしとる[寛],
ひみのえすぎて,[寛]ひみのえすきて,
たこのしま[寛],
とびたもとほり,[寛]とひたもとほり,
あしがもの,[寛]あしかもの,
すだくふるえに,[寛]すたくふるえに,
をとつひも[寛],
きのふもありつ[寛],
ちかくあらば,[寛]ちかくあらは,
いまふつかだみ,[寛]いまふつかたみ,
とほくあらば,[寛]ととくあらは,
なぬかのをちは,[寛]なぬかのうちは,
すぎめやも,[寛]すきめやも,
きなむわがせこ,[寛]きなむわかせこ,
ねもころに[寛],
なこひそよとぞ,[寛]なこひそよとそ,
いまにつげつる,[寛]いまにつけつる,
" "#[番号]17/4012","#[題詞](思放逸鷹夢見感悦作歌一首[并短歌])","#[原文]矢形尾能 多加乎手尓須恵 美之麻野尓 可良奴日麻祢久 都奇曽倍尓家流","#[訓読]矢形尾の鷹を手に据ゑ三島野に猟らぬ日まねく月ぞ経にける","#[仮名],やかたをの,たかをてにすゑ,みしまのに,からぬひまねく,つきぞへにける","#[左注](右射水郡古江村取獲蒼鷹 形<容>美麗鷙雉秀群也 於時養吏山田史君麻呂調試失節野猟乖候 摶風之翅高翔匿雲 腐鼠之<餌>呼留靡驗 於是<張>設羅網窺乎非常奉幣神祇恃乎不虞也 <粤>以夢裏有娘子喩曰 使君勿作苦念空費<精><神> 放逸彼鷹獲得未幾矣哉 須叟覺<寤>有悦於懐 因作却恨之歌式旌感信 守大伴宿祢家持 [九月廾六日作也])","#[校異]","#[事項],天平19年9月26日,年紀,作者:大伴家持,動物,地名,高岡,富山,狩猟","#[訓異]
やかたをの[寛],
たかをてにすゑ[寛],
みしまのに[寛],
からぬひまねく[寛],
つきぞへにける,[寛]つきそへにける,
" "#[番号]17/4013","#[題詞](思放逸鷹夢見感悦作歌一首[并短歌])","#[原文]二上能 乎弖母許能母尓 安美佐之弖 安我麻都多可乎 伊米尓都氣追母","#[訓読]二上のをてもこのもに網さして我が待つ鷹を夢に告げつも","#[仮名],ふたがみの,をてもこのもに,あみさして,あがまつたかを,いめにつげつも","#[左注](右射水郡古江村取獲蒼鷹 形<容>美麗鷙雉秀群也 於時養吏山田史君麻呂調試失節野猟乖候 摶風之翅高翔匿雲 腐鼠之<餌>呼留靡驗 於是<張>設羅網窺乎非常奉幣神祇恃乎不虞也 <粤>以夢裏有娘子喩曰 使君勿作苦念空費<精><神> 放逸彼鷹獲得未幾矣哉 須叟覺<寤>有悦於懐 因作却恨之歌式旌感信 守大伴宿祢家持 [九月廾六日作也])","#[校異]","#[事項],天平19年9月26日,年紀,作者:大伴家持,動物,地名,高岡,富山,託宣,神祭り","#[訓異]
ふたがみの,[寛]ふたかみの,
をてもこのもに[寛],
あみさして[寛],
あがまつたかを,[寛]あかまつたかを,
いめにつげつも,[寛]いめにつけつも,
" "#[番号]17/4014","#[題詞](思放逸鷹夢見感悦作歌一首[并短歌])","#[原文]麻追我敝里 之比尓弖安礼可母 佐夜麻太乃 乎治我其日尓 母等米安波受家牟","#[訓読]松反りしひにてあれかもさ山田の翁がその日に求めあはずけむ","#[仮名],まつがへり,しひにてあれかも,さやまだの,をぢがそのひに,もとめあはずけむ","#[左注](右射水郡古江村取獲蒼鷹 形<容>美麗鷙雉秀群也 於時養吏山田史君麻呂調試失節野猟乖候 摶風之翅高翔匿雲 腐鼠之<餌>呼留靡驗 於是<張>設羅網窺乎非常奉幣神祇恃乎不虞也 <粤>以夢裏有娘子喩曰 使君勿作苦念空費<精><神> 放逸彼鷹獲得未幾矣哉 須叟覺<寤>有悦於懐 因作却恨之歌式旌感信 守大伴宿祢家持 [九月廾六日作也])","#[校異]","#[事項],天平19年9月26日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,難解,山田君麻呂,怨恨","#[訓異]
まつがへり,[寛]まつかへり,
しひにてあれかも[寛],
さやまだの,[寛]さやまたの,
をぢがそのひに,[寛]をちかそのひに,
もとめあはずけむ,[寛]もとめあはすけむ,
" "#[番号]17/4015","#[題詞](思放逸鷹夢見感悦作歌一首[并短歌])","#[原文]情尓波 由流布許等奈久 須加能夜麻 須加奈久能未也 孤悲和多利奈牟","#[訓読]心には緩ふことなく須加の山すかなくのみや恋ひわたりなむ","#[仮名],こころには,ゆるふことなく,すかのやま,すかなくのみや,こひわたりなむ","#[左注]右射水郡古江村取獲蒼鷹 形<容>美麗鷙雉秀群也 於時養吏山田史君麻呂調試失節野猟乖候 摶風之翅高翔匿雲 腐鼠之<餌>呼留靡驗 於是<張>設羅網窺乎非常奉幣神祇恃乎不虞也 <粤>以夢裏有娘子喩曰 使君勿作苦念空費<精><神> 放逸彼鷹獲得未幾矣哉 須叟覺<寤>有悦於懐 因作却恨之歌式旌感信 守大伴宿祢家持 [九月廾六日作也]","#[校異]<> -> 容 [西(右書)][元][類][紀] / 雉 [新校] 雄 / 鉗 -> 餌 [元][紀][細] / 帳 -> 張 [元][類][紀] / 奥 -> 粤 [拾穂抄] / 情 -> 精 [元][類] / 邪 -> 神 [西(訂正右書)][元][類][紀] / 寐 -> 寤 [元][類]","#[事項],天平19年9月26日,年紀,作者:大伴家持,地名,高岡,富山,恋情,動物","#[訓異]
こころには[寛],
ゆるふことなく[寛],
すかのやま[寛],
すかなくのみや[寛],
こひわたりなむ[寛],
" "#[番号]17/4016","#[題詞]高市連黒人歌一首 [年月不審]","#[原文]賣比能野能 須々吉於之奈倍 布流由伎尓 夜度加流家敷之 可奈之久於毛倍遊","#[訓読]婦負の野のすすき押しなべ降る雪に宿借る今日し悲しく思ほゆ","#[仮名],めひののの,すすきおしなべ,ふるゆきに,やどかるけふし,かなしくおもほゆ","#[左注]右傳誦此歌三國真人五百國是也","#[校異]","#[事項],高市黒人,羈旅,旅情,伝誦,三国五百国,漂泊,地名,高岡,富山","#[訓異]
めひののの[寛],
すすきおしなべ,[寛]すすきおしなへ,
ふるゆきに[寛],
やどかるけふし,[寛]やとかるけふし,
かなしくおもほゆ,[寛]かなしくおもへゆ,
" "#[番号]17/4017","#[題詞]","#[原文]東風 [越俗語東風謂<之>安由乃可是也] 伊多久布久良之 奈呉乃安麻能 都利須流乎夫祢 許藝可久流見由 ","#[訓読]あゆの風 [越俗語東風謂之あゆの風是也] いたく吹くらし奈呉の海人の釣する小船漕ぎ隠る見ゆ ","#[仮名],あゆのかぜ,いたくふくらし,なごのあまの,つりするをぶね,こぎかくるみゆ","#[左注](右四首天平廿年春正月廿九日大伴宿祢家持)","#[校異]<> -> 之 [元][類]","#[事項],天平20年1月29日,年紀,作者:大伴家持,地名,高岡,富山,叙景,方言","#[訓異]
あゆのかぜ,[寛]あゆのかせ,
いたくふくらし[寛],
なごのあまの,[寛]なこのあまの,
つりするをぶね,[寛]つりするをふね,
こぎかくるみゆ,[寛]こきかくるみゆ,
" "#[番号]17/4018","#[題詞]","#[原文]美奈刀可是 佐牟久布久良之 奈呉乃江尓 都麻欲<妣>可波之 多豆左波尓奈久 [一云 多豆佐和久奈里] ","#[訓読]港風寒く吹くらし奈呉の江に妻呼び交し鶴多に鳴く [一云 鶴騒くなり] ","#[仮名],みなとかぜ,さむくふくらし,なごのえに,つまよびかはし,たづさはになく,[たづさわくなり]","#[左注](右四首天平廿年春正月廿九日大伴宿祢家持)","#[校異]比 -> 妣 [元][類]","#[事項],天平20年1月29日,年紀,作者:大伴家持,地名,高岡,富山,叙景,推敲","#[訓異]
みなとかぜ,[寛]みなとかせ,
さむくふくらし[寛],
なごのえに,[寛]なこのえに,
つまよびかはし,[寛]つまよひかはし,
たづさはになく,[寛]たつさはになく,
[たづさわくなり],[寛]たつさわくなり,
" "#[番号]17/4019","#[題詞]","#[原文]安麻射可流 比奈等毛之流久 許己太久母 之氣伎孤悲可毛 奈具流日毛奈久","#[訓読]天離る鄙ともしるくここだくも繁き恋かもなぐる日もなく","#[仮名],あまざかる,ひなともしるく,ここだくも,しげきこひかも,なぐるひもなく","#[左注](右四首天平廿年春正月廿九日大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平20年1月29日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,望郷","#[訓異]
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなともしるく[寛],
ここだくも,[寛]ここたくも,
しげきこひかも,[寛]しけきこひかも,
なぐるひもなく,[寛]なくるひもなく,
" "#[番号]17/4020","#[題詞]","#[原文]故之能宇美能 信濃[濱名也]乃波麻乎 由伎久良之 奈我伎波流比毛 和須礼弖於毛倍也 ","#[訓読]越の海の信濃[濱名也]の浜を行き暮らし長き春日も忘れて思へや ","#[仮名],こしのうみの,しなぬのはまを,ゆきくらし,ながきはるひも,わすれておもへや","#[左注]右四首天平廿年春正月廿九日大伴宿祢家持","#[校異]天平廿 [元] 廿","#[事項],天平20年1月29日,年紀,作者:大伴家持,地名,高岡,富山,望郷","#[訓異]
こしのうみの[寛],
しなぬのはまを,[寛]しなののはまを,
ゆきくらし[寛],
ながきはるひも,[寛]なかきはるひも,
わすれておもへや[寛],
" "#[番号]17/4021","#[題詞]礪波郡雄神河邊作歌一首","#[原文]乎加未河<泊> 久礼奈為尓保布 乎等賣良之 葦附[水松之類]等流登 湍尓多々須良之 ","#[訓読]雄神川紅にほふ娘子らし葦付[水松之類]取ると瀬に立たすらし ","#[仮名],をかみがは,くれなゐにほふ,をとめらし,あしつきとると,せにたたすらし","#[左注](右件歌詞者 依春出擧巡行諸郡 當時<當>所属目作之 大伴宿祢家持)","#[校異]伯 -> 泊 [細][温][矢][京]","#[事項],天平20年春,年紀,作者:大伴家持,部内巡航,地名,富山,植物,叙景,羈旅","#[訓異]
をかみがは,[寛]をかみかは,
くれなゐにほふ[寛],
をとめらし[寛],
あしつきとると[寛],
せにたたすらし[寛],
" "#[番号]17/4022","#[題詞]婦負郡渡鵜坂河邊時作一首","#[原文]宇佐可河<泊> 和多流瀬於保美 許乃安我馬乃 安我枳乃美豆尓 伎<奴>々礼尓家里","#[訓読]鵜坂川渡る瀬多みこの我が馬の足掻きの水に衣濡れにけり","#[仮名],うさかがは,わたるせおほみ,このあがまの,あがきのみづに,きぬぬれにけり","#[左注](右件歌詞者 依春出擧巡行諸郡 當時<當>所属目作之 大伴宿祢家持)","#[校異]伯 -> 泊 [元][類][細][温] / 努 -> 奴 [元][類][紀][細]","#[事項],天平20年春,年紀,作者:大伴家持,地名,富山,動物,部内巡航,羈旅","#[訓異]
うさかがは,[寛]うさかかは,
わたるせおほみ[寛],
このあがまの,[寛]このあかまの,
あがきのみづに,[寛]あかきのみつに,
きぬぬれにけり[寛],
" "#[番号]17/4023","#[題詞]見潜鵜人作歌一首","#[原文]賣比河波能 波夜伎瀬其等尓 可我里佐之 夜蘇登毛乃乎波 宇加波多知家里","#[訓読]婦負川の早き瀬ごとに篝さし八十伴の男は鵜川立ちけり","#[仮名],めひがはの,はやきせごとに,かがりさし,やそとものをは,うかはたちけり","#[左注](右件歌詞者 依春出擧巡行諸郡 當時<當>所属目作之 大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平20年春,年紀,作者:大伴家持,地名,富山,動物,叙景,部内巡航,羈旅","#[訓異]
めひがはの,[寛]めひかはの,
はやきせごとに,[寛]はやきせことに,
かがりさし,[寛]かかりさし,
やそとものをは[寛],
うかはたちけり[寛],
" "#[番号]17/4024","#[題詞]新川郡渡延槻河時作歌一首","#[原文]多知夜麻乃 由吉之久良之毛 波比都奇能 可波能和多理瀬 安夫美都加須毛","#[訓読]立山の雪し消らしも延槻の川の渡り瀬鐙漬かすも","#[仮名],たちやまの,ゆきしくらしも,はひつきの,かはのわたりせ,あぶみつかすも","#[左注](右件歌詞者 依春出擧巡行諸郡 當時<當>所属目作之 大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平20年春,年紀,作者:大伴家持,地名,富山,部内巡航,羈旅","#[訓異]
たちやまの[寛],
ゆきしくらしも[寛],
はひつきの[寛],
かはのわたりせ[寛],
あぶみつかすも,[寛]あふみつかすも,
" "#[番号]17/4025","#[題詞]赴参<氣>太神宮行海邊之時作歌一首","#[原文]之乎路可良 多太古要久礼婆 波久比能海 安佐奈藝思多理 船梶母我毛","#[訓読]志雄路から直越え来れば羽咋の海朝なぎしたり船楫もがも","#[仮名],しをぢから,ただこえくれば,はくひのうみ,あさなぎしたり,ふなかぢもがも","#[左注](右件歌詞者 依春出擧巡行諸郡 當時<當>所属目作之 大伴宿祢家持)","#[校異]氣比 -> 氣 [元][類]","#[事項],天平20年春,年紀,作者:大伴家持,地名,石川,部内巡航,能登,叙景,羽咋,羈旅","#[訓異]
しをぢから,[寛]そをちから,
ただこえくれば,[寛]たたこえくれは,
はくひのうみ[寛],
あさなぎしたり,[寛]あさなきしたり,
ふなかぢもがも,[寛]ふねかちもかも,
" "#[番号]17/4026","#[題詞]能登郡従香嶋津發船射熊来村徃時作歌二首","#[原文]登夫佐多C 船木伎流等伊<布> 能登乃嶋山 今日見者 許太知之氣思物 伊久代神備曽","#[訓読]鳥総立て船木伐るといふ能登の島山今日見れば木立繁しも幾代神びぞ ","#[仮名],とぶさたて,ふなききるといふ,のとのしまやま,けふみれば,こだちしげしも,いくよかむびぞ","#[左注](右件歌詞者 依春出擧巡行諸郡 當時<當>所属目作之 大伴宿祢家持)","#[校異]有 -> 布 [元][類]","#[事項],天平20年春,年紀,作者:大伴家持,地名,能登,富山,部内巡航,旋頭歌,土地讃美,羈旅","#[訓異]
とぶさたて,[寛]とふさたて,
ふなききるといふ[寛],
のとのしまやま[寛],
けふみれば,[寛]けふみれは,
こだちしげしも,[寛]こたちしけしも,
いくよかむびぞ,[寛]いくよかみひそ,
" "#[番号]17/4027","#[題詞](能登郡従香嶋津發船射熊来村徃時作歌二首)","#[原文]香嶋欲里 久麻吉乎左之C 許具布祢能 河治等流間奈久 京<師>之於母<倍>由","#[訓読]香島より熊来をさして漕ぐ船の楫取る間なく都し思ほゆ","#[仮名],かしまより,くまきをさして,こぐふねの,かぢとるまなく,みやこしおもほゆ","#[左注](右件歌詞者 依春出擧巡行諸郡 當時<當>所属目作之 大伴宿祢家持)","#[校異]都 -> 師 [元][類][細] / 保 -> 倍 [元][類]","#[事項],天平20年春,年紀,作者:大伴家持,地名,富山,能登,羈旅,部内巡航,望郷,序詞","#[訓異]
かしまより[寛],
くまきをさして[寛],
こぐふねの,[寛]こくふねの,
かぢとるまなく,[寛]かちとるまなく,
みやこしおもほゆ[寛],
" "#[番号]17/4028","#[題詞]鳳至郡渡饒石<川>之時作歌一首","#[原文]伊母尓安波受 比左思久奈里奴 尓藝之河波 伎欲吉瀬其登尓 美奈宇良波倍弖奈","#[訓読]妹に逢はず久しくなりぬ饒石川清き瀬ごとに水占延へてな","#[仮名],いもにあはず,ひさしくなりぬ,にぎしがは,きよきせごとに,みなうらはへてな","#[左注](右件歌詞者 依春出擧巡行諸郡 當時<當>所属目作之 大伴宿祢家持)","#[校異]河 -> 川 [元][類]","#[事項],天平20年春,年紀,作者:大伴家持,地名,能登,富山,占い,望郷,羈旅,部内巡航","#[訓異]
いもにあはず,[寛]いもにあはす,
ひさしくなりぬ[寛],
にぎしがは,[寛]にきしかは,
きよきせごとに,[寛]きよきせことに,
みなうらはへてな[寛],
" "#[番号]17/4029","#[題詞]従珠洲郡發船還太沼郡之時泊長濱灣仰見月光作歌一首","#[原文]珠洲能宇美尓 安佐<妣>良伎之弖 許藝久礼婆 奈我<波>麻能宇良尓 都奇C理尓家里","#[訓読]珠洲の海に朝開きして漕ぎ来れば長浜の浦に月照りにけり","#[仮名],すずのうみに,あさびらきして,こぎくれば,ながはまのうらに,つきてりにけり","#[左注]右件歌詞者 依春出擧巡行諸郡 當時<當>所属目作之 大伴宿祢家持","#[校異]比 -> 妣 [元][類] / 婆 -> 波 [元][類][紀][細] / <> -> 當 [元]","#[事項],天平20年春,年紀,作者:大伴家持,地名,能登,富山,道行き,氷見,叙景,羈旅,土地讃美","#[訓異]
すずのうみに,[寛]すすのうみに,
あさびらきして,[寛]あさひらきして,
こぎくれば,[寛]こきくれは,
ながはまのうらに,[寛]なかはまのうらに,
つきてりにけり[寛],
" "#[番号]17/4030","#[題詞]怨鴬晩哢歌一首","#[原文]宇具比須波 伊麻波奈可牟等 可多麻C<婆> 可須美多奈妣吉 都奇波倍尓都追","#[訓読]鴬は今は鳴かむと片待てば霞たなびき月は経につつ","#[仮名],うぐひすは,いまはなかむと,かたまてば,かすみたなびき,つきはへにつつ","#[左注]","#[校異]波 -> 婆 [元][類]","#[事項],作者:大伴家持,動物,怨恨,季節,風物","#[訓異]
うぐひすは,[寛]うくひすは,
いまはなかむと[寛],
かたまてば,[寛]かたまては,
かすみたなびき,[寛]かすみたなひき,
つきはへにつつ[寛],
" "#[番号]17/4031","#[題詞]造酒歌一首","#[原文]奈加等美乃 敷刀能里<等其>等 伊比波良倍 安<賀>布伊能知毛 多我多米尓奈礼","#[訓読]中臣の太祝詞言言ひ祓へ贖ふ命も誰がために汝れ","#[仮名],なかとみの,ふとのりとごと,いひはらへ,あかふいのちも,たがためになれ","#[左注]右大伴宿祢家持作之","#[校異]其等[西(朱訂正)] -> 等其 [元][類] / 加 -> 賀 [元][類][紀]","#[事項],作者:大伴家持,祝詞,神祭り,言祝ぎ,寿歌","#[訓異]
なかとみの[寛],
ふとのりとごと,[寛]ふとのりとこと,
いひはらへ[寛],
あかふいのちも[寛],
たがためになれ,[寛]たかためになれ,
" "#[番号]18/4032","#[題詞]天平廿年春三月廾三日左大臣橘家之使者造酒司令史田<邊>福麻呂饗于守大伴宿祢家持舘爰作新歌并便誦古詠各述心緒","#[原文]奈呉乃宇美尓 布祢之麻志可勢 於伎尓伊泥弖 奈美多知久夜等 見底可敝利許牟","#[訓読]奈呉の海に舟しまし貸せ沖に出でて波立ち来やと見て帰り来む","#[仮名],なごのうみに,ふねしましかせ,おきにいでて,なみたちくやと,みてかへりこむ","#[左注](右四首田邊史福麻呂)","#[校異]邊史 -> 邊 [元][類][細]","#[事項],天平20年3月23日,作者:田辺福麻呂,地名,高岡,富山,宴席,挨拶,大伴家持,年紀","#[訓異]
なごのうみに,[寛]なこのうみに,
ふねしましかせ[寛],
おきにいでて,[寛]おきにいてて,
なみたちくやと[寛],
みてかへりこむ[寛],
" "#[番号]18/4033","#[題詞](天平廿年春三月廾三日左大臣橘家之使者造酒司令史田<邊>福麻呂饗于守大伴宿祢家持舘爰作新歌并便誦古詠各述心緒)","#[原文]奈美多<底>波 奈呉能宇良<未>尓 余流可比乃 末奈伎孤悲尓曽 等之波倍尓家流","#[訓読]波立てば奈呉の浦廻に寄る貝の間なき恋にぞ年は経にける","#[仮名],なみたてば,なごのうらみに,よるかひの,まなきこひにぞ,としはへにける","#[左注](右四首田邊史福麻呂)","#[校異]弖 -> 底 [類][紀][温] / 末 -> 未 [万葉集古義]","#[事項],天平20年3月23日,作者:田辺福麻呂,宴席,挨拶,序詞,地名,高岡,富山,恋情,大伴家持,年紀","#[訓異]
なみたてば,[寛]なみたては,
なごのうらみに,[寛]なこのうらまに,
よるかひの[寛],
まなきこひにぞ,[寛]まなきこひにそ,
としはへにける[寛],
" "#[番号]18/4034","#[題詞](天平廿年春三月廾三日左大臣橘家之使者造酒司令史田<邊>福麻呂饗于守大伴宿祢家持舘爰作新歌并便誦古詠各述心緒)","#[原文]奈呉能宇美尓 之保能波夜非波 安佐里之尓 伊<泥>牟等多豆波 伊麻曽奈久奈流","#[訓読]奈呉の海に潮の早干ばあさりしに出でむと鶴は今ぞ鳴くなる","#[仮名],なごのうみに,しほのはやひば,あさりしに,いでむとたづは,いまぞなくなる","#[左注](右四首田邊史福麻呂)","#[校異]R -> 泥 [元][類][紀][細]","#[事項],天平20年3月23日,作者:田辺福麻呂,地名,高岡,富山,動物,叙景,宴席,挨拶,大伴家持,年紀","#[訓異]
なごのうみに,[寛]なこのうみに,
しほのはやひば,[寛]しほのはやひは,
あさりしに[寛],
いでむとたづは,[寛]いてむとたつは,
いまぞなくなる,[寛]いまそなくなる,
" "#[番号]18/4035","#[題詞](天平廿年春三月廾三日左大臣橘家之使者造酒司令史田<邊>福麻呂饗于守大伴宿祢家持舘爰作新歌并便誦古詠各述心緒)","#[原文]保等登藝須 伊等布登伎奈之 安夜賣具左 加豆良尓<勢>武日 許由奈伎和多礼","#[訓読]霍公鳥いとふ時なしあやめぐさかづらにせむ日こゆ鳴き渡れ","#[仮名],ほととぎす,いとふときなし,あやめぐさ,かづらにせむひ,こゆなきわたれ","#[左注]右四首田邊史福麻呂","#[校異]藝 -> 勢 [細]","#[事項],天平20年3月23日,作者:田辺福麻呂,動物,植物,叙景,宴席,挨拶,大伴家持,年紀","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いとふときなし[寛],
あやめぐさ,[寛]あやめくさ,
かづらにせむひ,[寛]かつらにせむひ,
こゆなきわたれ[寛],
" "#[番号]18/4036","#[題詞]于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌","#[原文]伊可尓安流 布勢能宇良曽毛 許己太久尓 吉民我弥世武等 和礼乎等登牟流","#[訓読]いかにある布勢の浦ぞもここだくに君が見せむと我れを留むる","#[仮名],いかにある,ふせのうらぞも,ここだくに,きみがみせむと,われをとどむる","#[左注]右一首田邊史福麻呂 ( / 前件十首歌者廿四日宴作之 )","#[校異]","#[事項],天平20年3月24日,作者:田辺福麻呂,地名,氷見,富山,土地讃美,遊覧,宴席,年紀","#[訓異]
いかにある,[寛]いかにせる,
ふせのうらぞも,[寛]ふせのうらそも,
ここだくに,[寛]ここたくに,
きみがみせむと,[寛]きみかみせむと,
われをとどむる,[寛]われをととむる,
" "#[番号]18/4037","#[題詞](于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌)","#[原文]乎敷乃佐吉 許藝多母等保里 比祢毛須尓 美等母安久倍伎 宇良尓安良奈久尓 [一云 伎美我等波須母] ","#[訓読]乎布の崎漕ぎた廻りひねもすに見とも飽くべき浦にあらなくに [一云 君が問はすも] ","#[仮名],をふのさき,こぎたもとほり,ひねもすに,みともあくべき,うらにあらなくに,[きみがとはすも]","#[左注]右一首守大伴宿祢家持 ( / 前件十首歌者廿四日宴作之 )","#[校異]","#[事項],天平20年3月24日,作者:大伴家持,地名,氷見,布施,富山,土地讃美,宴席,年紀","#[訓異]
をふのさき[寛],
こぎたもとほり,[寛]こきたもとほり,
ひねもすに[寛],
みともあくべき,[寛]みともあくへき,
うらにあらなくに[寛],
[きみがとはすも],[寛]きみかとはすも,
" "#[番号]18/4038","#[題詞](于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌)","#[原文]多麻久之氣 伊都之可安氣牟 布勢能宇美能 宇良乎由伎都追 多麻母比利波牟","#[訓読]玉櫛笥いつしか明けむ布勢の海の浦を行きつつ玉も拾はむ","#[仮名],たまくしげ,いつしかあけむ,ふせのうみの,うらをゆきつつ,たまもひりはむ","#[左注](右五首田邊史福麻呂 / 前件十首歌者廿四日宴作之 )","#[校異]","#[事項],天平20年3月24日,作者:田辺福麻呂,地名,枕詞,氷見,富山,土地讃美,宴席,年紀","#[訓異]
たまくしげ,[寛]たまくしけ,
いつしかあけむ[寛],
ふせのうみの[寛],
うらをゆきつつ[寛],
たまもひりはむ[寛],
" "#[番号]18/4039","#[題詞](于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌)","#[原文]於等能未尓 伎吉底目尓見奴 布勢能宇良乎 見受波能保良自 等之波倍奴等母","#[訓読]音のみに聞きて目に見ぬ布勢の浦を見ずは上らじ年は経ぬとも","#[仮名],おとのみに,ききてめにみぬ,ふせのうらを,みずはのぼらじ,としはへぬとも","#[左注](右五首田邊史福麻呂 / 前件十首歌者廿四日宴作之 )","#[校異]","#[事項],天平20年3月24日,作者:田辺福麻呂,土地讃美,地名,氷見,富山,うわさ,宴席,年紀","#[訓異]
おとのみに[寛],
ききてめにみぬ[寛],
ふせのうらを[寛],
みずはのぼらじ,[寛]みすはのほらし,
としはへぬとも[寛],
" "#[番号]18/4040","#[題詞](于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌)","#[原文]布勢能宇良乎 由<吉>底之見弖婆 毛母之綺能 於保美夜比等尓 可多利都藝底牟","#[訓読]布勢の浦を行きてし見てばももしきの大宮人に語り継ぎてむ","#[仮名],ふせのうらを,ゆきてしみてば,ももしきの,おほみやひとに,かたりつぎてむ","#[左注](右五首田邊史福麻呂 / 前件十首歌者廿四日宴作之 )","#[校異]伎 -> 吉 [元][類]","#[事項],天平20年3月24日,作者:田辺福麻呂,地名,土地讃美,枕詞,富山,氷見,宴席,年紀","#[訓異]
ふせのうらを[寛],
ゆきてしみてば,[寛]ゆきてしみては,
ももしきの[寛],
おほみやひとに[寛],
かたりつぎてむ,[寛]かたりつきてむ,
" "#[番号]18/4041","#[題詞](于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌)","#[原文]宇梅能波奈 佐伎知流曽能尓 和礼由可牟 伎美我都可比乎 可多麻知我底良","#[訓読]梅の花咲き散る園に我れ行かむ君が使を片待ちがてら","#[仮名],うめのはな,さきちるそのに,われゆかむ,きみがつかひを,かたまちがてら","#[左注](右五首田邊史福麻呂 / 前件十首歌者廿四日宴作之 )","#[校異]","#[事項],天平20年3月24日,作者:田辺福麻呂,植物,宴席,年紀","#[訓異]
うめのはな[寛],
さきちるそのに[寛],
われゆかむ[寛],
きみがつかひを,[寛]きみかつかひを,
かたまちがてら,[寛]かたまちかてら,
" "#[番号]18/4042","#[題詞](于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌)","#[原文]敷治奈美能 佐伎由久見礼婆 保等登<藝>須 奈久倍<吉>登伎尓 知可豆伎尓家里","#[訓読]藤波の咲き行く見れば霍公鳥鳴くべき時に近づきにけり","#[仮名],ふぢなみの,さきゆくみれば,ほととぎす,なくべきときに,ちかづきにけり","#[左注]右五首田邊史福麻呂 ( / 前件十首歌者廿四日宴作之 )","#[校異]伎 -> 藝 [元][類][紀][細] / 伎 -> 吉 [元][類]","#[事項],天平20年3月24日,作者:田辺福麻呂,年紀,植物,動物,宴席,季節","#[訓異]
ふぢなみの,[寛]ふちなみの,
さきゆくみれば,[寛]さきゆくみれは,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なくべきときに,[寛]なくへきときに,
ちかづきにけり,[寛]ちかつきにけり,
" "#[番号]18/4043","#[題詞](于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌)","#[原文]安須能比能 敷勢能宇良<未>能 布治奈美尓 氣太之伎奈可<受> 知良之底牟可母 [一頭云 保等登藝須] ","#[訓読]明日の日の布勢の浦廻の藤波にけだし来鳴かず散らしてむかも [一頭云 霍公鳥] ","#[仮名],あすのひの,ふせのうらみの,ふぢなみに,けだしきなかず,ちらしてむかも,[ほととぎす]","#[左注]右一首大伴宿祢家持和之 / 前件十首歌者廿四日宴作之","#[校異]末 -> 未 [万葉集古義] / 須 -> 受 [元][類]","#[事項],天平20年3月24日,作者:大伴家持,年紀,宴席,地名,氷見,富山,植物,動物,季節","#[訓異]
あすのひの[寛],
ふせのうらみの,[寛]ふせのうらまの,
ふぢなみに,[寛]ふちなみに,
けだしきなかず,[寛]けたしきなかす,
ちらしてむかも[寛],
[ほととぎす],[寛]ほとときす,
" "#[番号]18/4044","#[題詞]廿五日徃布勢水海道中馬上口号二首","#[原文]波萬部余里 和我宇知由可波 宇美邊欲<里> 牟可倍母許奴可 安麻能都里夫祢","#[訓読]浜辺より我が打ち行かば海辺より迎へも来ぬか海人の釣舟","#[仮名],はまへより,わがうちゆかば,うみへより,むかへもこぬか,あまのつりぶね","#[左注](前件十五首歌者廿五日作之)","#[校異]部 [元] 「へ」 (楓) / 利 -> 里 [元][類]","#[事項],天平20年3月25日,年紀,作者:大伴家持,土地讃美,叙景,富山,氷見","#[訓異]
はまへより[寛],
わがうちゆかば,[寛]わかうちゆかは,
うみへより[寛],
むかへもこぬか[寛],
あまのつりぶね,[寛]あまのつりふね,
" "#[番号]18/4045","#[題詞](廿五日徃布勢水海道中馬上口号二首)","#[原文]於伎敝欲里 美知久流之保能 伊也麻之尓 安我毛布支見我 弥不根可母加礼","#[訓読]沖辺より満ち来る潮のいや増しに我が思ふ君が御船かもかれ","#[仮名],おきへより,みちくるしほの,いやましに,あがもふきみが,みふねかもかれ","#[左注](前件十五首歌者廿五日作之)","#[校異]","#[事項],天平20年3月25日,年紀,作者:大伴家持,恋情,富山,氷見","#[訓異]
おきへより[寛],
みちくるしほの[寛],
いやましに[寛],
あがもふきみが,[寛]あかもふきみか,
みふねかもかれ[寛],
" "#[番号]18/4046","#[題詞]至水海遊覧之時各述懐作歌","#[原文]可牟佐夫流 多流比女能佐吉 許支米具利 見礼登<毛>安可受 伊加尓和礼世牟","#[訓読]神さぶる垂姫の崎漕ぎ廻り見れども飽かずいかに我れせむ","#[仮名],かむさぶる,たるひめのさき,こぎめぐり,みれどもあかず,いかにわれせむ","#[左注]右一首田邊史福麻呂 ( / 前件十五首歌者廿五日作之)","#[校異]裳 -> 毛 [元]","#[事項],天平20年3月25日,作者:田辺福麻呂,年紀,地名,氷見,富山,土地讃美,遊覧,宴席","#[訓異]
かむさぶる,[寛]かむさふる,
たるひめのさき[寛],
こぎめぐり,[寛]こきめくり,
みれどもあかず,[寛]みれともあかす,
いかにわれせむ[寛],
" "#[番号]18/4047","#[題詞](至水海遊覧之時各述懐作歌)","#[原文]多流比賣野 宇良乎許藝都追 介敷乃日波 多努之久安曽敝 移比都支尓勢<牟>","#[訓読]垂姫の浦を漕ぎつつ今日の日は楽しく遊べ言ひ継ぎにせむ","#[仮名],たるひめの,うらをこぎつつ,けふのひは,たのしくあそべ,いひつぎにせむ","#[左注]右一首遊行女婦土師 ( / 前件十五首歌者廿五日作之)","#[校異]牟 [西(上書訂正)][元][類][古][紀]","#[事項],天平20年3月25日,作者:遊行女婦土師,年紀,地名,氷見,富山,土地讃美,遊覧,宴席","#[訓異]
たるひめの[寛],
うらをこぎつつ,[寛]うらをこきつつ,
けふのひは[寛],
たのしくあそべ,[寛]たのしくあそへ,
いひつぎにせむ,[寛]いひつきにせむ,
" "#[番号]18/4048","#[題詞](至水海遊覧之時各述懐作歌)","#[原文]多流比女能 宇良乎許具不祢 可治末尓母 奈良野和藝<弊>乎 和須礼C於毛倍也","#[訓読]垂姫の浦を漕ぐ舟梶間にも奈良の我家を忘れて思へや","#[仮名],たるひめの,うらをこぐふね,かぢまにも,ならのわぎへを,わすれておもへや","#[左注]右一首大伴家持 ( / 前件十五首歌者廿五日作之)","#[校異]敝 -> 弊 [元][類][紀]","#[事項],天平20年3月25日,作者:大伴家持,年紀,序詞,地名,氷見,富山,望郷,奈良,宴席,遊覧","#[訓異]
たるひめの[寛],
うらをこぐふね,[寛]うらをこくふね,
かぢまにも,[寛]かちまにも,
ならのわぎへを,[寛]ならのわきへを,
わすれておもへや[寛],
" "#[番号]18/4049","#[題詞](至水海遊覧之時各述懐作歌)","#[原文]於呂可尓曽 和礼波於母比之 乎不乃宇良能 安利蘇野米具利 見礼度安可須介利","#[訓読]おろかにぞ我れは思ひし乎布の浦の荒礒の廻り見れど飽かずけり","#[仮名],おろかにぞ,われはおもひし,をふのうらの,ありそのめぐり,みれどあかずけり","#[左注]右一首田邊史福麻呂 ( / 前件十五首歌者廿五日作之)","#[校異]","#[事項],天平20年3月25日,作者:田辺福麻呂,年紀,土地讃美,地名,氷見,富山,遊覧,宴席","#[訓異]
おろかにぞ,[寛]おろかにそ,
われはおもひし[寛],
をふのうらの[寛],
ありそのめぐり,[寛]ありそのめくり,
みれどあかずけり,[寛]みれとあかすけり,
" "#[番号]18/4050","#[題詞](至水海遊覧之時各述懐作歌)","#[原文]米豆良之伎 吉美我伎麻佐婆 奈家等伊比之 夜麻保<登等>藝須 奈尓加伎奈可奴","#[訓読]めづらしき君が来まさば鳴けと言ひし山霍公鳥何か来鳴かぬ","#[仮名],めづらしき,きみがきまさば,なけといひし,やまほととぎす,なにかきなかぬ","#[左注]右一首掾久米朝臣廣縄 ( / 前件十五首歌者廿五日作之)","#[校異]等登 -> 登等 [元][類]","#[事項],天平20年3月25日,作者:久米広縄,年紀,動物,宴席,遊覧,氷見,富山","#[訓異]
めづらしき,[寛]めつらしき,
きみがきまさば,[寛]きみかきまさは,
なけといひし[寛],
やまほととぎす,[寛]やまほとときす,
なにかきなかぬ[寛],
" "#[番号]18/4051","#[題詞](至水海遊覧之時各述懐作歌)","#[原文]多胡乃佐伎 許能久礼之氣尓 保登等藝須 伎奈伎等余米<婆> 波太古非米夜母","#[訓読]多古の崎木の暗茂に霍公鳥来鳴き響めばはだ恋ひめやも","#[仮名],たこのさき,このくれしげに,ほととぎす,きなきとよめば,はだこひめやも","#[左注]右一首大伴宿祢家持 / 前件十五首歌者廿五日作之","#[校異]波 -> 婆 [元]","#[事項],天平20年3月25日,作者:大伴家持,年紀,地名,氷見,富山,動物,宴席,遊覧","#[訓異]
たこのさき[寛],
このくれしげに,[寛]このくれしけに,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きなきとよめば,[寛]きなきとよめは,
はだこひめやも,[寛]はたこひめやも,
" "#[番号]18/4052","#[題詞]掾久米朝臣廣縄之舘饗田邊史福麻呂宴歌四首","#[原文]保登等藝須 伊麻奈可受之弖 安須古要牟 夜麻尓奈久等母 之流思安良米夜母","#[訓読]霍公鳥今鳴かずして明日越えむ山に鳴くとも験あらめやも","#[仮名],ほととぎす,いまなかずして,あすこえむ,やまになくとも,しるしあらめやも","#[左注]右一首田邊史福麻呂 ( / 前<件>歌者廿六日作之)","#[校異]","#[事項],天平20年3月26日,作者:田辺福麻呂,年紀,動物,宴席,久米広縄,季節,高岡,富山","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いまなかずして,[寛]いまなかすして,
あすこえむ[寛],
やまになくとも[寛],
しるしあらめやも[寛],
" "#[番号]18/4053","#[題詞](掾久米朝臣廣縄之舘饗田邊史福麻呂宴歌四首)","#[原文]許能久礼尓 奈里奴流母能乎 保等登藝須 奈尓加伎奈可奴 伎美尓安敝流等吉","#[訓読]木の暗になりぬるものを霍公鳥何か来鳴かぬ君に逢へる時","#[仮名],このくれに,なりぬるものを,ほととぎす,なにかきなかぬ,きみにあへるとき","#[左注]右一首久米朝臣廣縄 ( / 前<件>歌者廿六日作之)","#[校異]","#[事項],天平20年3月26日,作者:久米広縄,年紀,田辺福麻呂,宴席,動物,高岡,富山","#[訓異]
このくれに[寛],
なりぬるものを[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なにかきなかぬ[寛],
きみにあへるとき[寛],
" "#[番号]18/4054","#[題詞](掾久米朝臣廣縄之舘饗田邊史福麻呂宴歌四首)","#[原文]保等登藝須 許欲奈枳和多礼 登毛之備乎 都久欲尓奈蘇倍 曽能可氣母見牟","#[訓読]霍公鳥こよ鳴き渡れ燈火を月夜になそへその影も見む","#[仮名],ほととぎす,こよなきわたれ,ともしびを,つくよになそへ,そのかげもみむ","#[左注](右二首大伴宿祢家持 / 前<件>歌者廿六日作之)","#[校異]","#[事項],天平20年3月26日,作者:大伴家持,年紀,久米広縄,田辺福麻呂,動物,宴席,高岡,富山","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
こよなきわたれ,[寛]こゆなきわたれ,
ともしびを,[寛]ともしひを,
つくよになそへ[寛],
そのかげもみむ,[寛]そのかけもみむ,
" "#[番号]18/4055","#[題詞](掾久米朝臣廣縄之舘饗田邊史福麻呂宴歌四首)","#[原文]可敝流<未>能 美知由可牟日波 伊都波多野 佐<可>尓蘇泥布礼 和礼乎事於毛<波>婆","#[訓読]可敝流廻の道行かむ日は五幡の坂に袖振れ我れをし思はば","#[仮名],かへるみの,みちゆかむひは,いつはたの,さかにそでふれ,われをしおもはば","#[左注]右二首大伴宿祢家持 / 前<件>歌者廿六日作之","#[校異]末 -> 未 [万葉集古義] / 波 [元][類] 婆 / 加 -> 可 [元][類][古] / 婆 -> 波 [元][類][紀] / 伴 -> 件 [元][紀][細]","#[事項],天平20年3月25日,作者:大伴家持,年紀,地名,福井,敦賀,羈旅,別離,出発,宴席,久米広縄,田辺福麻呂,高岡,富山","#[訓異]
かへるみの,[寛]かへるまの,
みちゆかむひは[寛],
いつはたの[寛],
さかにそでふれ,[寛]さかにそてふれ,
われをしおもはば,[寛]われをしおもはは,
" "#[番号]18/4056","#[題詞]太上皇御在於難波宮之時歌七首 [清足姫天皇也] / 左大臣橘宿祢歌一首","#[原文]保里江尓波 多麻之可麻之乎 大皇乎 美敷祢許我牟登 可年弖之里勢婆","#[訓読]堀江には玉敷かましを大君を御船漕がむとかねて知りせば","#[仮名],ほりえには,たましかましを,おほきみを,みふねこがむと,かねてしりせば","#[左注](右<二>首件歌者御船泝江遊宴之日左大臣奏并御製)","#[校異]","#[事項],作者:橘諸兄,地名,難波,大阪,宴席,歓迎,元正天皇,伝誦,行幸","#[訓異]
ほりえには[寛],
たましかましを[寛],
おほきみを[寛],
みふねこがむと,[寛]みふねこかむと,
かねてしりせば,[寛]かねてしりせは,
" "#[番号]18/4057","#[題詞](太上皇御在於難波宮之時歌七首 [清足姫天皇也]) / 御製歌一首[和]","#[原文]多萬之賀受 伎美我久伊弖伊布 保里江尓波 多麻之伎美弖々 都藝弖可欲波牟 [或云 多麻古伎之伎弖] ","#[訓読]玉敷かず君が悔いて言ふ堀江には玉敷き満てて継ぎて通はむ [或云 玉扱き敷きて] ","#[仮名],たましかず,きみがくいていふ,ほりえには,たましきみてて,つぎてかよはむ,[たまこきしきて]","#[左注]右<二>首件歌者御船泝江遊宴之日左大臣奏并御製","#[校異]一 -> 二 [代匠記精撰本]","#[事項],作者:元正天皇,橘諸兄,宴席,地名,難波,大阪,異伝,推敲,伝誦,行幸","#[訓異]
たましかず,[寛]たましかす,
きみがくいていふ,[寛]きみかくいていふ,
ほりえには[寛],
たましきみてて[寛],
つぎてかよはむ,[寛]つきてかよはむ,
[たまこきしきて][寛].
" "#[番号]18/4058","#[題詞](太上皇御在於難波宮之時歌七首 [清足姫天皇也]) / 御製歌一首","#[原文]多知婆奈能 登乎能多知<婆>奈 夜都代尓母 安礼波和須礼自 許乃多知婆奈乎","#[訓読]橘のとをの橘八つ代にも我れは忘れじこの橘を","#[仮名],たちばなの,とをのたちばな,やつよにも,あれはわすれじ,このたちばなを","#[左注](右件歌者在於左大臣橘卿之宅肆宴御歌并奏歌<也>)","#[校異]歌 [西] 謌 / 婆 -> 波 [類]","#[事項],作者:元正天皇,橘諸兄,宴席,肆宴,植物,寿歌,大阪,難波,伝誦,行幸","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
とをのたちばな,[寛]とをのたちはな,
やつよにも[寛],
あれはわすれじ,[寛]あれはわすれし,
このたちばなを,[寛]このたちはなを,
" "#[番号]18/4059","#[題詞](太上皇御在於難波宮之時歌七首 [清足姫天皇也]) / 河内女王歌一首","#[原文]多知婆奈能 之多泥流尓波尓 等能多弖天 佐可弥豆伎伊麻須 和我於保伎美可母","#[訓読]橘の下照る庭に殿建てて酒みづきいます我が大君かも","#[仮名],たちばなの,したでるにはに,とのたてて,さかみづきいます,わがおほきみかも","#[左注](右件歌者在於左大臣橘卿之宅肆宴御歌并奏歌<也>)","#[校異]","#[事項],作者:河内女王,植物,大君讃美,橘諸兄,難波,大阪,伝誦,肆宴,宴席,元正天皇,行幸","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
したでるにはに,[寛]したてるにはに,
とのたてて[寛],
さかみづきいます,[寛]さかみつきいます,
わがおほきみかも,[寛]わかおほきみかも,
" "#[番号]18/4060","#[題詞](太上皇御在於難波宮之時歌七首 [清足姫天皇也]) / 粟田女王歌一首","#[原文]都奇麻知弖 伊敝尓波由可牟 和我佐世流 安加良多知婆奈 可氣尓見要都追","#[訓読]月待ちて家には行かむ我が插せる赤ら橘影に見えつつ","#[仮名],つきまちて,いへにはゆかむ,わがさせる,あからたちばな,かげにみえつつ","#[左注]右件歌者在於左大臣橘卿之宅肆宴御歌并奏歌<也>","#[校異]<> -> 也 [紀][細]","#[事項],作者:粟田女王,植物,元正天皇,橘諸兄,難波,大阪,伝誦,肆宴,宴席,行幸","#[訓異]
つきまちて[寛],
いへにはゆかむ[寛],
わがさせる,[寛]わかさせる,
あからたちばな,[寛]あからたちはな,
かげにみえつつ,[寛]かけにみえつつ,
" "#[番号]18/4061","#[題詞](太上皇御在於難波宮之時歌七首 [清足姫天皇也]) / ","#[原文]保里江欲里 水乎妣吉之都追 美布祢左須 之津乎能登母波 加波能瀬麻宇勢","#[訓読]堀江より水脈引きしつつ御船さすしづ男の伴は川の瀬申せ","#[仮名],ほりえより,みをびきしつつ,みふねさす,しつをのともは,かはのせまうせ","#[左注](右件歌者御船以綱手泝江遊宴之日作也 傳誦之人田邊史福麻呂是也)","#[校異]","#[事項],地名,難波,大阪,宴席,元正天皇,田辺福麻呂,伝誦,行幸,肆宴","#[訓異]
ほりえより[寛],
みをびきしつつ,[寛]みをひきしつつ,
みふねさす[寛],
しつをのともは[寛],
かはのせまうせ[寛],
" "#[番号]18/4062","#[題詞](太上皇御在於難波宮之時歌七首 [清足姫天皇也]) / ","#[原文]奈都乃欲波 美知多豆多都之 布祢尓能里 可波乃瀬其等尓 佐乎左指能保礼","#[訓読]夏の夜は道たづたづし船に乗り川の瀬ごとに棹さし上れ","#[仮名],なつのよは,みちたづたづし,ふねにのり,かはのせごとに,さをさしのぼれ","#[左注]右件歌者御船以綱手泝江遊宴之日作也 傳誦之人田邊史福麻呂是也","#[校異]","#[事項],宴席,元正天皇,田辺福麻呂,伝誦,行幸,肆宴,宴席","#[訓異]
なつのよは[寛],
みちたづたづし,[寛]みちたつたつし,
ふねにのり[寛],
かはのせごとに,[寛]かはのせことに,
さをさしのぼれ,[寛]さをさしのほれ,
" "#[番号]18/4063","#[題詞]後追和橘歌二首","#[原文]等許余物能 己能多知婆奈能 伊夜弖里尓 和期大皇波 伊麻毛見流其登","#[訓読]常世物この橘のいや照りにわご大君は今も見るごと","#[仮名],とこよもの,このたちばなの,いやてりに,わごおほきみは,いまもみるごと","#[左注](右二首大伴宿祢家持作之)","#[校異]","#[事項],作者:大伴家持,追和,元正天皇,橘諸兄,植物,大君讃美,高岡,富山","#[訓異]
とこよもの[寛],
このたちばなの,[寛]このたちはなの,
いやてりに[寛],
わごおほきみは,[寛]わかおほきみは,
いまもみるごと,[寛]いまもみること,
" "#[番号]18/4064","#[題詞](後追和橘歌二首)","#[原文]大皇波 等吉波尓麻佐牟 多知婆奈能 等能乃多知婆奈 比多底里尓之弖","#[訓読]大君は常磐にまさむ橘の殿の橘ひた照りにして","#[仮名],おほきみは,ときはにまさむ,たちばなの,とののたちばな,ひたてりにして","#[左注]右二首大伴宿祢家持作之","#[校異]","#[事項],作者:大伴家持,追和,元正天皇,橘諸兄,植物,大君讃美,追和,高岡,富山","#[訓異]
おほきみは[寛],
ときはにまさむ[寛],
たちばなの,[寛]たちはなの,
とののたちばな,[寛]とののたちはな,
ひたてりにして[寛],
" "#[番号]18/4065","#[題詞]射水郡驛舘之屋柱題著歌一首","#[原文]安佐妣良伎 伊里江許具奈流 可治能於登乃 都波良都<婆>良尓 吾家之於母保由","#[訓読]朝開き入江漕ぐなる楫の音のつばらつばらに我家し思ほゆ","#[仮名],あさびらき,いりえこぐなる,かぢのおとの,つばらつばらに,わぎへしおもほゆ","#[左注]右一首山上臣作 不審名 或云憶良大夫之男 但其正名未詳也","#[校異]波 -> 婆 [類][細]","#[事項],作者:山上臣(山上憶良・息子),伝誦,望郷,序詞","#[訓異]
あさびらき,[寛]あさひらき,
いりえこぐなる,[寛]いりえこくなる,
かぢのおとの,[寛]かちのおとの,
つばらつばらに,[寛]つはらつはらに,
わぎへしおもほゆ,[寛]わかへしおもほゆ,
" "#[番号]18/4066","#[題詞]四月一日掾久米朝臣廣縄之舘宴歌四首","#[原文]宇能花能 佐久都奇多知奴 保等登藝須 伎奈吉等与米余 敷布美多里登母","#[訓読]卯の花の咲く月立ちぬ霍公鳥来鳴き響めよ含みたりとも","#[仮名],うのはなの,さくつきたちぬ,ほととぎす,きなきとよめよ,ふふみたりとも","#[左注]右一首守大伴宿祢家持作之","#[校異]","#[事項],天平20年4月1日,作者:大伴家持,年紀,植物,久米広縄,宴席,動物,季節,高岡,富山","#[訓異]
うのはなの[寛],
さくつきたちぬ[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きなきとよめよ[寛],
ふふみたりとも[寛],
" "#[番号]18/4067","#[題詞](四月一日掾久米朝臣廣縄之舘宴歌四首)","#[原文]敷多我美能 夜麻尓許母礼流 保等登藝須 伊麻母奈加奴香 伎美尓<伎>可勢牟","#[訓読]二上の山に隠れる霍公鳥今も鳴かぬか君に聞かせむ","#[仮名],ふたがみの,やまにこもれる,ほととぎす,いまもなかぬか,きみにきかせむ","#[左注]右一首遊行女婦土師作之","#[校異]妓 -> 伎 [類][京]","#[事項],天平20年4月1日,作者:遊行女婦土師,年紀,久米広縄,宴席,高岡,富山,地名,動物,季節","#[訓異]
ふたがみの,[寛]ふたかみの,
やまにこもれる[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いまもなかぬか[寛],
きみにきかせむ[寛],
" "#[番号]18/4068","#[題詞](四月一日掾久米朝臣廣縄之舘宴歌四首)","#[原文]乎里安加之母 許余比波能麻牟 保等登藝須 安氣牟安之多波 奈伎和多良牟曽 [二日應立夏節 故謂之明旦将喧也]","#[訓読]居り明かしも今夜は飲まむ霍公鳥明けむ朝は鳴き渡らむぞ [二日應立夏節 故謂之明旦将喧也]","#[仮名],をりあかしも,こよひはのまむ,ほととぎす,あけむあしたは,なきわたらむぞ","#[左注]右一首守大伴宿祢家持作之","#[校異]","#[事項],天平20年4月1日,作者:大伴家持,年紀,久米広縄,動物,季節,宴席,高岡,富山","#[訓異]
をりあかしも,[寛]をりあかし,
こよひはのまむ[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
あけむあしたは[寛],
なきわたらむぞ,[寛]なきわたらむそ,
" "#[番号]18/4069","#[題詞](四月一日掾久米朝臣廣縄之舘宴歌四首)","#[原文]安須欲里波 都藝弖伎許要牟 保登等藝須 比登欲能可良尓 古非和多流加母","#[訓読]明日よりは継ぎて聞こえむ霍公鳥一夜のからに恋ひわたるかも","#[仮名],あすよりは,つぎてきこえむ,ほととぎす,ひとよのからに,こひわたるかも","#[左注]右一首羽咋郡擬主帳能登臣乙美作","#[校異]","#[事項],天平20年4月1日,作者:能登乙美,年紀,動物,恋情,季節,宴席,久米広縄,高岡,富山","#[訓異]
あすよりは[寛],
つぎてきこえむ,[寛]つきてきこえむ,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
ひとよのからに[寛],
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]18/4070","#[題詞]詠庭中牛麦花歌一首","#[原文]比登母等能 奈泥之故宇恵之 曽能許己呂 多礼尓見世牟等 於母比曽米家牟","#[訓読]一本のなでしこ植ゑしその心誰れに見せむと思ひ始めけむ","#[仮名],ひともとの,なでしこうゑし,そのこころ,たれにみせむと,おもひそめけむ","#[左注]右先國師従僧清見可入京師 <因>設飲饌饗宴 于時主人大伴宿祢家持作此歌詞送酒清見也","#[校異]日 -> 因 [元][紀]","#[事項],天平21年3月,作者:大伴家持,年紀,清見,宴席,羈旅,出発,餞別,植物,別離,高岡,富山","#[訓異]
ひともとの[寛],
なでしこうゑし,[寛]なてしこうゑし,
そのこころ[寛],
たれにみせむと[寛],
おもひそめけむ[寛],
" "#[番号]18/4071","#[題詞]","#[原文]之奈射可流 故之能吉美良等 可久之許曽 楊奈疑可豆良枳 多努之久安蘇婆米","#[訓読]しなざかる越の君らとかくしこそ柳かづらき楽しく遊ばめ","#[仮名],しなざかる,こしのきみらと,かくしこそ,やなぎかづらき,たのしくあそばめ","#[左注]右郡司已下子弟已上諸人多集此會 因守大伴宿祢家持作此歌也","#[校異]","#[事項],天平21年3月,作者:大伴家持,年紀,枕詞,植物,宴席,高岡,富山","#[訓異]
しなざかる,[寛]しなさかる,
こしのきみらと,[寛]こしのきみのと,
かくしこそ[寛],
やなぎかづらき,[寛]やなきかつらき,
たのしくあそばめ,[寛]たのしくあそはめ,
" "#[番号]18/4072","#[題詞]","#[原文]奴<婆>多麻能 欲和多流都奇乎 伊久欲布等 余美都追伊毛波 和礼麻都良牟曽","#[訓読]ぬばたまの夜渡る月を幾夜経と数みつつ妹は我れ待つらむぞ","#[仮名],ぬばたまの,よわたるつきを,いくよふと,よみつついもは,われまつらむぞ","#[左注]右此夕月光遅流和風稍扇 即因属目聊作此歌也","#[校異]波 -> 婆 [元][類]","#[事項],天平21年3月,作者:大伴家持,年紀,叙景,高岡,富山,枕詞,望郷","#[訓異]
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よわたるつきを[寛],
いくよふと[寛],
よみつついもは[寛],
われまつらむぞ,[寛]われまつらむそ,
" "#[番号]18/4073","#[題詞]越前國掾大伴宿祢池主来贈歌三首 / 以今月十四日到来深見村 望拜彼北方常念芳徳 何日能休 兼以隣近忽増戀 加以先書云 暮春可惜 促膝未期 生別悲<兮> 夫復何言臨紙悽断奉状不備 / 三月一五日大伴宿祢池主 / 一 古人云","#[原文]都奇見礼婆 於奈自久尓奈里 夜麻許曽婆 伎美我安多里乎 敝太弖多里家礼","#[訓読]月見れば同じ国なり山こそば君があたりを隔てたりけれ","#[仮名],つきみれば,おなじくになり,やまこそば,きみがあたりを,へだてたりけれ","#[左注]","#[校異]号 -> 兮 [矢][京]","#[事項],天平21年3月15日,作者:大伴池主,年紀,高岡,富山,大伴家持,贈答,書簡,福井,恋情","#[訓異]
つきみれば,[寛]つきみれは,
おなじくになり,[寛]おなしくになり,
やまこそば,[寛]やまこそは,
きみがあたりを,[寛]きみかあたりを,
へだてたりけれ,[寛]へたてたりけり,
" "#[番号]18/4074","#[題詞](越前國掾大伴宿祢池主来贈歌三首 / 以今月十四日到来深見村 望拜彼北方常念芳徳 何日能休 兼以隣近忽増戀 加以先書云 暮春可惜 促膝未期 生別悲<兮> 夫復何言臨紙悽断奉状不備 / 三月一五日大伴宿祢池主) / 一 属物發思","#[原文]櫻花 今曽盛等 雖人云 我佐不之毛 支美止之不在者","#[訓読]桜花今ぞ盛りと人は言へど我れは寂しも君としあらねば","#[仮名],さくらばな,いまぞさかりと,ひとはいへど,われはさぶしも,きみとしあらねば","#[左注]","#[校異]在 [元][類] 里","#[事項],天平21年3月15日,作者:大伴池主,年紀,大伴家持,高岡,富山,贈答,書簡,福井,恋情,植物","#[訓異]
さくらばな,[寛]さくらはな,
いまぞさかりと,[寛]いまそさかりと,
ひとはいへど,[寛]ひとはいへと,
われはさぶしも,[寛]われはさふしも,
きみとしあらねば,[寛]きみとしあらねは,
" "#[番号]18/4075","#[題詞](越前國掾大伴宿祢池主来贈歌三首 / 以今月十四日到来深見村 望拜彼北方常念芳徳 何日能休 兼以隣近忽増戀 加以先書云 暮春可惜 促膝未期 生別悲<兮> 夫復何言臨紙悽断奉状不備 / 三月一五日大伴宿祢池主) / 一 所心歌","#[原文]安必意毛波受 安流良牟伎美乎 安夜思苦毛 奈氣伎和多流香 比登能等布麻泥","#[訓読]相思はずあるらむ君をあやしくも嘆きわたるか人の問ふまで","#[仮名],あひおもはず,あるらむきみを,あやしくも,なげきわたるか,ひとのとふまで","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],天平21年3月15日,作者:大伴池主,年紀,大伴家持,高岡,富山,贈答,書簡,福井,恋情,怨恨","#[訓異]
あひおもはず,[寛]あひおもはす,
あるらむきみを[寛],
あやしくも[寛],
なげきわたるか,[寛]なけきわたるか,
ひとのとふまで,[寛]ひとのとふまて,
" "#[番号]18/4076","#[題詞]越中國守大伴家持報贈歌四首 / 一 答古人云","#[原文]安之比奇能 夜麻波奈久毛我 都奇見礼婆 於奈自伎佐刀乎 許己呂敝太底都","#[訓読]あしひきの山はなくもが月見れば同じき里を心隔てつ","#[仮名],あしひきの,やまはなくもが,つきみれば,おなじきさとを,こころへだてつ","#[左注](三月十六日)","#[校異]","#[事項],天平21年3月16日,作者:大伴家持,年紀,高岡,富山,贈答,書簡,大伴池主,枕詞,恋情","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまはなくもが,[寛]やまはなくもか,
つきみれば,[寛]つきみれは,
おなじきさとを,[寛]おなしきさとを,
こころへだてつ,[寛]こころへたてつ,
" "#[番号]18/4077","#[題詞](越中國守大伴家持報贈歌四首)一 答属目發思兼詠云遷<任>舊宅西北隅櫻樹","#[原文]和我勢故我 布流伎可吉都能 佐<久>良婆奈 伊麻太敷布賣利 比等目見尓許祢","#[訓読]我が背子が古き垣内の桜花いまだ含めり一目見に来ね","#[仮名],わがせこが,ふるきかきつの,さくらばな,いまだふふめり,ひとめみにこね","#[左注](三月十六日)","#[校異]住 -> 任 [元][細] / 具 -> 久 [元][類]","#[事項],天平21年3月16日,作者:大伴家持,年紀,植物,高岡,富山,贈答,書簡,大伴池主,恋愛","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
ふるきかきつの[寛],
さくらばな,[寛]さくらはな,
いまだふふめり,[寛]いまたふふめり,
ひとめみにこね[寛],
" "#[番号]18/4078","#[題詞](越中國守大伴家持報贈歌四首)一 答所心即以古人之跡代今日之意","#[原文]故敷等伊布波 衣毛名豆氣多理 伊布須敝能 多豆伎母奈吉波 安<我>未奈里家利","#[訓読]恋ふといふはえも名付けたり言ふすべのたづきもなきは我が身なりけり","#[仮名],こふといふは,えもなづけたり,いふすべの,たづきもなきは,あがみなりけり","#[左注](三月十六日)","#[校異]賀 -> 我 [元]","#[事項],天平21年3月16日,作者:大伴家持,年紀,大伴池主,高岡,富山,贈答,書簡,恋愛","#[訓異]
こふといふは[寛],
えもなづけたり,[寛]えもなつけたり,
いふすべの,[寛]いふすへの,
たづきもなきは,[寛]たつきもなきは,
あがみなりけり,[寛]あかみなりけり,
" "#[番号]18/4079","#[題詞](越中國守大伴家持報贈歌四首)一 更矚目","#[原文]美之麻野尓 可須美多奈妣伎 之可須我尓 伎乃敷毛家布毛 由伎波敷里都追","#[訓読]三島野に霞たなびきしかすがに昨日も今日も雪は降りつつ","#[仮名],みしまのに,かすみたなびき,しかすがに,きのふもけふも,ゆきはふりつつ","#[左注]三月十六日","#[校異]","#[事項],天平21年3月16日,作者:大伴家持,年紀,地名,富山,季節,贈答,叙景,大伴池主,書簡,大伴池主","#[訓異]
みしまのに[寛],
かすみたなびき,[寛]かすみたなひき,
しかすがに,[寛]しかすかに,
きのふもけふも[寛],
ゆきはふりつつ[寛],
" "#[番号]18/4080","#[題詞]姑大伴氏坂上郎女来贈越中守大伴宿祢家持歌二首","#[原文]都祢比等能 故布登伊敷欲利波 安麻里尓弖 和礼波之奴倍久 奈里尓多良受也","#[訓読]常人の恋ふといふよりはあまりにて我れは死ぬべくなりにたらずや","#[仮名],つねひとの,こふといふよりは,あまりにて,われはしぬべく,なりにたらずや","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平21年,作者:坂上郎女,年紀,贈答,大伴家持,恋情,高岡,富山","#[訓異]
つねひとの[寛],
こふといふよりは[寛],
あまりにて[寛],
われはしぬべく,[寛]われはしぬへく,
なりにたらずや,[寛]なりにたらすや,
" "#[番号]18/4081","#[題詞](姑大伴氏坂上郎女来贈越中守大伴宿祢家持歌二首)","#[原文]可多於毛比遠 宇万尓布都麻尓 於保世母天 故事部尓夜良波 比登加多波牟可母","#[訓読]片思ひを馬にふつまに負ほせ持て越辺に遣らば人かたはむかも","#[仮名],かたおもひを,うまにふつまに,おほせもて,こしへにやらば,ひとかたはむかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平21年,作者:坂上郎女,年紀,贈答,大伴家持,恋情,高岡,富山,地名","#[訓異]
かたおもひを[寛],
うまにふつまに[寛],
おほせもて[寛],
こしへにやらば,[寛]こしへにやらは,
ひとかたはむかも[寛],
" "#[番号]18/4082","#[題詞]越中守大伴宿祢家持報歌并所心三首","#[原文]安万射可流 比奈能<夜都>故尓 安米比度之 可久古非須良波 伊家流思留事安里","#[訓読]天離る鄙の奴に天人しかく恋すらば生ける験あり","#[仮名],あまざかる,ひなのやつこに,あめひとし,かくこひすらば,いけるしるしあり","#[左注](右四日附使贈上京師)","#[校異]都夜 -> 夜都 [万葉集略解]","#[事項],天平21年4(月4)日,作者:大伴家持,年紀,贈答,坂上郎女,高岡,富山,恋情","#[訓異]
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなのやつこに,[寛]ひなのみやこに,
あめひとし[寛],
かくこひすらば,[寛]かくこひすらは,
いけるしるしあり[寛],
" "#[番号]18/4083","#[題詞](越中守大伴宿祢家持報歌并所心三首)","#[原文]都祢<乃>孤悲 伊麻太夜麻奴尓 美夜古欲<里> 宇麻尓古非許婆 尓奈比安倍牟可母","#[訓読]常の恋いまだやまぬに都より馬に恋来ば担ひあへむかも","#[仮名],つねのこひ,いまだやまぬに,みやこより,うまにこひこば,になひあへむかも","#[左注](右四日附使贈上京師)","#[校異]能 -> 乃 [元][類] / 利 -> 里 [元][類]","#[事項],天平21年4(月4)日,作者:大伴家持,年紀,贈答,坂上郎女,高岡,富山,恋情","#[訓異]
つねのこひ[寛],
いまだやまぬに,[寛]いまたやまぬに,
みやこより[寛],
うまにこひこば,[寛]うまにこひこは,
になひあへむかも[寛],
" "#[番号]18/4084","#[題詞](越中守大伴宿祢家持報歌并所心三首)別所心一首","#[原文]安可登吉尓 名能里奈久奈流 保登等藝須 伊夜米豆良之久 於毛保由流香母","#[訓読]暁に名告り鳴くなる霍公鳥いやめづらしく思ほゆるかも","#[仮名],あかときに,なのりなくなる,ほととぎす,いやめづらしく,おもほゆるかも","#[左注]右四日附使贈上京師","#[校異]","#[事項],天平21年4(月4)日,作者:大伴家持,年紀,動物,贈答,坂上郎女,序詞,恋情,高岡,富山","#[訓異]
あかときに[寛],
なのりなくなる[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いやめづらしく,[寛]いやめつらしく,
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]18/4085","#[題詞]天平感寶元年五月五日饗東大寺之占墾地使僧平榮等 于時守大伴宿祢家持送酒僧歌一首","#[原文]夜伎多知乎 刀奈美能勢伎尓 安須欲里波 毛利敝夜里蘇倍 伎美乎<等登>米牟","#[訓読]焼太刀を砺波の関に明日よりは守部遣り添へ君を留めむ","#[仮名],やきたちを,となみのせきに,あすよりは,もりへやりそへ,きみをとどめむ","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 登等 -> 等登 [元][類]","#[事項],天平感宝1年5月5日,作者:大伴家持,年紀,枕詞,平栄,宴席,羈旅,出発,別離,餞別,高岡,富山,地名,砺波","#[訓異]
やきたちを[寛],
となみのせきに[寛],
あすよりは[寛],
もりへやりそへ[寛],
きみをとどめむ,[寛]きみをととめむ,
" "#[番号]18/4086","#[題詞]同月九日諸僚會少目秦伊美吉石竹之舘飲宴 於時主人造白合花縵三枚疊置豆器捧贈賓客 各賦此縵作三首","#[原文]安夫良火<乃> 比可里尓見由流 和我可豆良 佐由利能波奈能 恵麻波之伎香母","#[訓読]油火の光りに見ゆる吾がかづらさ百合の花の笑まはしきかも","#[仮名],あぶらひの,ひかりにみゆる,わがかづら,さゆりのはなの,ゑまはしきかも","#[左注]右一首守大伴宿祢家持","#[校異]能 -> 乃 [元][類]","#[事項],天平感宝1年5月9日,作者:大伴家持,年紀,植物,宴席,秦石竹,主人讃美,寿歌,高岡,富山","#[訓異]
あぶらひの,[寛]あふらひの,
ひかりにみゆる[寛],
わがかづら,[寛]わかかつら,
さゆりのはなの[寛],
ゑまはしきかも[寛],
" "#[番号]18/4087","#[題詞](同月九日諸僚會少目秦伊美吉石竹之舘飲宴 於時主人造白合花縵三枚疊置豆器捧贈賓客 各賦此縵作三首)","#[原文]等毛之火能 比可里尓見由流 <左>由理婆奈 由利毛安波牟等 於母比曽米弖伎","#[訓読]灯火の光りに見ゆるさ百合花ゆりも逢はむと思ひそめてき","#[仮名],ともしびの,ひかりにみゆる,さゆりばな,ゆりもあはむと,おもひそめてき","#[左注]右一首介内蔵伊美吉縄麻呂","#[校異]佐 -> 左 [元][類]","#[事項],天平感宝1年5月9日,作者:内蔵縄麻呂,年紀,植物,宴席,秦石竹,序詞,主人讃美,恋情,高岡,富山","#[訓異]
ともしびの,[寛]ともしひの,
ひかりにみゆる[寛],
さゆりばな,[寛]さゆりはな,
ゆりもあはむと[寛],
おもひそめてき[寛],
" "#[番号]18/4088","#[題詞](同月九日諸僚會少目秦伊美吉石竹之舘飲宴 於時主人造白合花縵三枚疊置豆器捧贈賓客 各賦此縵作三首)","#[原文]左由理<婆>奈 由<里>毛安波牟等 於毛倍許曽 伊<末>能麻左可母 宇流波之美須礼","#[訓読]さ百合花ゆりも逢はむと思へこそ今のまさかもうるはしみすれ","#[仮名],さゆりばな,ゆりもあはむと,おもへこそ,いまのまさかも,うるはしみすれ","#[左注]右一首大伴宿祢家持[和]","#[校異]波 -> 婆 [元] / 利 -> 里 [元][類] / 麻 -> 末 [元][類][紀][細]","#[事項],天平感宝1年5月9日,作者:大伴家持,年紀,宴席,植物,枕詞,主人讃美,高岡,富山,秦石竹","#[訓異]
さゆりばな,[寛]さゆりはな,
ゆりもあはむと[寛],
おもへこそ[寛],
いまのまさかも[寛],
うるはしみすれ[寛],
" "#[番号]18/4089","#[題詞]獨居幄裏遥聞霍公鳥喧作歌一首[并短歌]","#[原文]高御座 安麻<乃>日継登 須賣呂伎能 可<未>能美許登能 伎己之乎須 久尓能麻保良尓 山乎之毛 佐波尓於保美等 百鳥能 来居弖奈久許恵 春佐礼婆 伎吉<乃> 可奈之母 伊豆礼乎可 和枳弖之努波<无> 宇能花乃 佐久月多弖婆 米都良之久 鳴保等登藝須 安夜女具佐 珠奴久麻泥尓 比流久良之 欲和多之伎氣騰 伎久其等尓 許己呂都呉枳弖 宇知奈氣伎 安波礼能登里等 伊波奴登枳奈思 ","#[訓読]高御座 天の日継と すめろきの 神の命の 聞こしをす 国のまほらに 山をしも さはに多みと 百鳥の 来居て鳴く声 春されば 聞きのかなしも いづれをか 別きて偲はむ 卯の花の 咲く月立てば めづらしく 鳴く霍公鳥 あやめぐさ 玉貫くまでに 昼暮らし 夜わたし聞けど 聞くごとに 心つごきて うち嘆き あはれの鳥と 言はぬ時なし ","#[仮名],たかみくら,あまのひつぎと,すめろきの,かみのみことの,きこしをす,くにのまほらに,やまをしも,さはにおほみと,ももとりの,きゐてなくこゑ,はるされば,ききのかなしも,いづれをか,わきてしのはむ,うのはなの,さくつきたてば,めづらしく,なくほととぎす,あやめぐさ,たまぬくまでに,ひるくらし,よわたしきけど,きくごとに,こころつごきて,うちなげき,あはれのとりと,いはぬときなし","#[左注](右四首十日大伴宿祢家持作之)","#[校異]歌 [西] 謌 / 能 -> 乃 [元][類] / 美 -> 未 [類][紀][細] / 能 -> 乃 [元][類] / 無 -> 无 [元][紀][細]","#[事項],天平感宝1年5月10日,作者:大伴家持,年紀,枕詞,動物,高岡,富山,植物,恋情,独詠","#[訓異]
たかみくら[寛],
あまのひつぎと,[寛]あまのひつきと,
すめろきの[寛],
かみのみことの[寛],
きこしをす[寛],
くにのまほらに[寛],
やまをしも[寛],
さはにおほみと[寛],
ももとりの[寛],
きゐてなくこゑ[寛],
はるされば,[寛]はるされは,
ききのかなしも[寛],
いづれをか,[寛]いつれをか,
わきてしのはむ[寛],
うのはなの[寛],
さくつきたてば,[寛]さくつきたては,
めづらしく,[寛]めつらしく,
なくほととぎす,[寛]なくほとときす,
あやめぐさ,[寛]あやめくさ,
たまぬくまでに,[寛]たまぬくまてに,
ひるくらし[寛],
よわたしきけど,[寛]よわたしきけと,
きくごとに,[寛]きくことに,
こころつごきて,[寛]こころつこきし,
うちなげき,[寛]うちなけき,
あはれのとりと[寛],
いはぬときなし[寛],
" "#[番号]18/4090","#[題詞](獨居幄裏遥聞霍公鳥喧作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]由久敝奈久 安里和多流登毛 保等登藝須 奈枳之和多良婆 可久夜思努波牟","#[訓読]ゆくへなくありわたるとも霍公鳥鳴きし渡らばかくや偲はむ","#[仮名],ゆくへなく,ありわたるとも,ほととぎす,なきしわたらば,かくやしのはむ","#[左注](右四首十日大伴宿祢家持作之)","#[校異]","#[事項],天平感宝1年5月10日,作者:大伴家持,年紀,動物,高岡,富山,植物,恋情,独詠,恋情","#[訓異]
ゆくへなく[寛],
ありわたるとも[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なきしわたらば,[寛]なきしわたらは,
かくやしのはむ[寛],
" "#[番号]18/4091","#[題詞]((獨居幄裏遥聞霍公鳥喧作歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]宇能花能 <登聞>尓之奈氣婆 保等登藝須 伊夜米豆良之毛 名能里奈久奈倍","#[訓読]卯の花のともにし鳴けば霍公鳥いやめづらしも名告り鳴くなへ","#[仮名],うのはなの,ともにしなけば,ほととぎす,いやめづらしも,なのりなくなへ","#[左注](右四首十日大伴宿祢家持作之)","#[校異]開 -> 登聞 [元]","#[事項],天平感宝1年5月10日,作者:大伴家持,年紀,植物,動物,季節,独詠,高岡,富山,恋情","#[訓異]
うのはなの[寛],
ともにしなけば,[寛]さくにしなけは,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いやめづらしも,[寛]いやめつらしも,
なのりなくなへ[寛],
" "#[番号]18/4092","#[題詞]((獨居幄裏遥聞霍公鳥喧作歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]保<登等>藝須 伊登祢多家口波 橘<乃> <播>奈治流等吉尓 伎奈吉登余牟流","#[訓読]霍公鳥いとねたけくは橘の花散る時に来鳴き響むる","#[仮名],ほととぎす,いとねたけくは,たちばなの,はなぢるときに,きなきとよむる","#[左注]右四首十日大伴宿祢家持作之","#[校異]等登 -> 登等 [元][類][紀][細] / 能 -> 乃 [元][類] / 幡 -> 播 [元][類][紀][細]","#[事項],天平感宝1年5月10日,作者:大伴家持,年紀,動物,植物,季節,怨恨,独詠,高岡,富山","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いとねたけくは[寛],
たちばなの,[寛]たちはなの,
はなぢるときに,[寛]はなちるときに,
きなきとよむる[寛],
" "#[番号]18/4093","#[題詞]行<英>遠浦之日作歌一首","#[原文]安乎能宇良尓 餘須流之良奈美 伊夜末之尓 多知之伎与世久 安由乎伊多美可聞","#[訓読]阿尾の浦に寄する白波いや増しに立ちしき寄せ来東風をいたみかも","#[仮名],あをのうらに,よするしらなみ,いやましに,たちしきよせく,あゆをいたみかも","#[左注]右一首大伴宿祢家持作之","#[校異]芙 -> 英 [紀][細]","#[事項],天平感宝1年,作者:大伴家持,年紀,地名,氷見,高岡,叙景","#[訓異]
あをのうらに[寛],
よするしらなみ[寛],
いやましに[寛],
たちしきよせく[寛],
あゆをいたみかも[寛],
" "#[番号]18/4094","#[題詞]賀陸奥國出金詔書歌一首[并短歌]","#[原文]葦原能 美豆保國乎 安麻久太利 之良志賣之家流 須賣呂伎能 神乃美許等能 御代可佐祢 天乃日<嗣>等 之良志久流 伎美能御代々々 之伎麻世流 四方國尓波 山河乎 比呂美安都美等 多弖麻都流 御調寶波 可蘇倍衣受 都久之毛可祢都 之加礼騰母 吾大王<乃> 毛呂比登乎 伊射奈比多麻比 善事乎 波自米多麻比弖 久我祢可毛 <多>之氣久安良牟登 於母保之弖 之多奈夜麻須尓 鶏鳴 東國<乃> 美知能久乃 小田在山尓 金有等 麻宇之多麻敝礼 御心乎 安吉良米多麻比 天地乃 神安比宇豆奈比 皇御祖乃 御霊多須氣弖 遠代尓 可々里之許登乎 朕御世尓 安良波之弖安礼婆 御食國波 左可延牟物能等 可牟奈我良 於毛保之賣之弖 毛能乃布能 八十伴雄乎 麻都呂倍乃 牟氣乃麻尓々々 老人毛 女童兒毛 之我願 心太良比尓 撫賜 治賜婆 許己乎之母 安夜尓多敷刀美 宇礼之家久 伊余与於母比弖 大伴<乃> 遠都神祖乃 其名乎婆 大来目主<等> 於比母知弖 都加倍之官 海行者 美都久屍 山行者 草牟須屍 大皇乃 敝尓許曽死米 可敝里見波 勢自等許等太弖 大夫乃 伎欲吉彼名乎 伊尓之敝欲 伊麻乃乎追通尓 奈我佐敝流 於夜<乃>子等毛曽 大伴等 佐伯乃氏者 人祖乃 立流辞立 人子者 祖名不絶 大君尓 麻都呂布物能等 伊比都雅流 許等能都可左曽 梓弓 手尓等里母知弖 劔大刀 許之尓等里波伎 安佐麻毛利 由布能麻毛利<尓> 大王<乃> 三門乃麻毛利 和礼乎於吉<弖> 比等波安良自等 伊夜多C 於毛比之麻左流 大皇乃 御言能左吉乃 [一云 乎] 聞者貴美 [一云 貴久之安礼婆] ","#[訓読]葦原の 瑞穂の国を 天下り 知らしめしける すめろきの 神の命の 御代重ね 天の日継と 知らし来る 君の御代御代 敷きませる 四方の国には 山川を 広み厚みと 奉る 御調宝は 数へえず 尽くしもかねつ しかれども 我が大君の 諸人を 誘ひたまひ よきことを 始めたまひて 金かも たしけくあらむと 思ほして 下悩ますに 鶏が鳴く 東の国の 陸奥の 小田なる山に 黄金ありと 申したまへれ 御心を 明らめたまひ 天地の 神相うづなひ すめろきの 御霊助けて 遠き代に かかりしことを 我が御代に 顕はしてあれば 食す国は 栄えむものと 神ながら 思ほしめして もののふの 八十伴の緒を まつろへの 向けのまにまに 老人も 女童も しが願ふ 心足らひに 撫でたまひ 治めたまへば ここをしも あやに貴み 嬉しけく いよよ思ひて 大伴の 遠つ神祖の その名をば 大久米主と 負ひ持ちて 仕へし官 海行かば 水漬く屍 山行かば 草生す屍 大君の 辺にこそ死なめ かへり見は せじと言立て 大夫の 清きその名を いにしへよ 今のをつづに 流さへる 祖の子どもぞ 大伴と 佐伯の氏は 人の祖の 立つる言立て 人の子は 祖の名絶たず 大君に まつろふものと 言ひ継げる 言の官ぞ 梓弓 手に取り持ちて 剣大刀 腰に取り佩き 朝守り 夕の守りに 大君の 御門の守り 我れをおきて 人はあらじと いや立て 思ひし増さる 大君の 御言のさきの [一云 を] 聞けば貴み [一云 貴くしあれば] ","#[仮名],あしはらの,みづほのくにを,あまくだり,しらしめしける,すめろきの,かみのみことの,みよかさね,あまのひつぎと,しらしくる,きみのみよみよ,しきませる,よものくにには,やまかはを,ひろみあつみと,たてまつる,みつきたからは,かぞへえず,つくしもかねつ,しかれども,わがおほきみの,もろひとを,いざなひたまひ,よきことを,はじめたまひて,くがねかも,たしけくあらむと,おもほして,したなやますに,とりがなく,あづまのくにの,みちのくの,をだなるやまに,くがねありと,まうしたまへれ,みこころを,あきらめたまひ,あめつちの,かみあひうづなひ,すめろきの,みたまたすけて,とほきよに,かかりしことを,わがみよに,あらはしてあれば,をすくには,さかえむものと,かむながら,おもほしめして,もののふの,やそとものをを,まつろへの,むけのまにまに,おいひとも,をみなわらはも,しがねがふ,こころだらひに,なでたまひ,をさめたまへば,ここをしも,あやにたふとみ,うれしけく,いよよおもひて,おほともの,とほつかむおやの,そのなをば,おほくめぬしと,おひもちて,つかへしつかさ,うみゆかば,みづくかばね,やまゆかば,くさむすかばね,おほきみの,へにこそしなめ,かへりみは,せじとことだて,ますらをの,きよきそのなを,いにしへよ,いまのをつづに,ながさへる,おやのこどもぞ,おほともと,さへきのうぢは,ひとのおやの,たつることだて,ひとのこは,おやのなたたず,おほきみに,まつろふものと,いひつげる,ことのつかさぞ,あづさゆみ,てにとりもちて,つるぎたち,こしにとりはき,あさまもり,ゆふのまもりに,おほきみの,みかどのまもり,われをおきて,ひとはあらじと,いやたて,おもひしまさる,おほきみの,みことのさきの[を],きけばたふとみ,[たふとくしあれば]","#[左注](天平感寶元年五月十二日於越中國守舘大伴宿祢家持作之)","#[校異]飼 -> 嗣 [細][矢][京] / 能 -> 乃 [元][類] / 多能 -> 多 [元] / 能 -> 乃 [元][類] / 御食 [元] 食 / 能 -> 乃 [元][類] / 登 -> 等 [元][類] / 太 [元][類][細](塙) 大 / 能 -> 乃 [元][類] / 余 -> 尓 [類][細] / 能 -> 乃 [元][類] / 弖且 -> 弖 [大系]","#[事項],天平感宝1年5月12日,作者:大伴家持,年紀,寿歌,枕詞,賀歌,高岡,富山,大君讃美,大夫","#[訓異]
あしはらの[寛],
みづほのくにを,[寛]みつほのくにを,
あまくだり,[寛]あまくたり,
しらしめしける[寛],
すめろきの[寛],
かみのみことの[寛],
みよかさね[寛],
あまのひつぎと,[寛]あまのひつきと,
しらしくる[寛],
きみのみよみよ[寛],
しきませる[寛],
よものくにには[寛],
やまかはを[寛],
ひろみあつみと[寛],
たてまつる[寛],
みつきたからは[寛],
かぞへえず,[寛]かそへえす,
つくしもかねつ[寛],
しかれども,[寛]しかれとも,
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
もろひとを[寛],
いざなひたまひ,[寛]いさなひたまひ,
よきことを[寛],
はじめたまひて,[寛]はしめたまひて,
くがねかも,[寛]こかねかも,
たしけくあらむと,[寛]たのしけくあらむと,
おもほして[寛],
したなやますに[寛],
とりがなく,[寛]とりかなく,
あづまのくにの,[寛]あつまのくにの,
みちのくの[寛],
をだなるやまに,[寛]をたなるやまに,
くがねありと,[寛]こかねありと,
まうしたまへれ[寛],
みこころを[寛],
あきらめたまひ[寛],
あめつちの[寛],
かみあひうづなひ,[寛]かみあひうつなひ,
すめろきの[寛],
みたまたすけて[寛],
とほきよに[寛],
かかりしことを[寛],
わがみよに,[寛]わかみよに,
あらはしてあれば,[寛]あらはしてあれは,
をすくには,[寛]みけくには,
さかえむものと[寛],
かむながら,[寛]かむなから,
おもほしめして[寛],
もののふの[寛],
やそとものをを[寛],
まつろへの[寛],
むけのまにまに,[寛]むきのまにまに,
おいひとも[寛],
をみなわらはも,[寛]めぬわらはこも,
しがねがふ,[寛]しかちかひ,
こころだらひに,[寛]こころたらひに,
なでたまひ,[寛]なてたまひ,
をさめたまへば,[寛]おさめたまへは,
ここをしも[寛],
あやにたふとみ[寛],
うれしけく[寛],
いよよおもひて[寛],
おほともの[寛],
とほつかむおやの,[寛]とをつかみおやの,
そのなをば,[寛]そのなをは,
おほくめぬしと,[寛]おほくめもりと,
おひもちて[寛],
つかへしつかさ[寛],
うみゆかば,[寛]うみゆくは,
みづくかばね,[寛]みつくかはね,
やまゆかば,[寛]やまゆくは,
くさむすかばね,[寛]くさむすかはね,
おほきみの[寛],
へにこそしなめ[寛],
かへりみは[寛],
せじとことだて,[寛]せしとことたて,
ますらをの[寛],
きよきそのなを[寛],
いにしへよ,[寛]いにしへゆ,
いまのをつづに,[寛]いまのをつつに,
ながさへる,[寛]なかさへる,
おやのこどもぞ,[寛]おやのこともそ,
おほともと[寛],
さへきのうぢは,[寛]さへきのうちは,
ひとのおやの[寛],
たつることだて,[寛]たつることたて,
ひとのこは[寛],
おやのなたたず,[寛]おやのなたたす,
おほきみに[寛],
まつろふものと[寛],
いひつげる,[寛]いひつける,
ことのつかさぞ,[寛]ことのつかさそ,
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
てにとりもちて[寛],
つるぎたち,[寛]つるきたち,
こしにとりはき[寛],
あさまもり[寛],
ゆふのまもりに[寛],
おほきみの[寛],
みかどのまもり,[寛]みかとのまもり,
われをおきて[寛],
ひとはあらじと,[寛]ひとはあらしと,
いやたて[寛],
おもひしまさる[寛],
おほきみの[寛],
みことのさきの[を][寛],
きけばたふとみ,[寛]きけはたふとみ,
[たふとくしあれば],[寛]たふとくしあれは,
" "#[番号]18/4095","#[題詞](賀陸奥國出金詔書歌一首[并短歌])反歌三首","#[原文]大夫能 許己呂於毛保由 於保伎美能 美許登<乃>佐吉乎 [一云 能] 聞者多布刀美 [一云 貴久之安礼婆]","#[訓読]大夫の心思ほゆ大君の御言の幸を [一云 の] 聞けば貴み [一云 貴くしあれば] ","#[仮名],ますらをの,こころおもほゆ,おほきみの,みことのさきを[の],きけばたふとみ,[たふとくしあれば]","#[左注](天平感寶元年五月十二日於越中國守舘大伴宿祢家持作之)","#[校異]能 -> 乃 [元][類]","#[事項],天平感宝1年5月12日,作者:大伴家持,年紀,大君讃美,寿歌,賀歌,高岡,富山,大夫","#[訓異]
ますらをの[寛],
こころおもほゆ[寛],
おほきみの[寛],
みことのさきを[の][寛],
きけばたふとみ,[寛]きけはたふとみ,
[たふとくしあれば]
" "#[番号]18/4096","#[題詞]((賀陸奥國出金詔書歌一首[并短歌])反歌三首)","#[原文]大伴<乃> 等保追可牟於夜能 於久都奇波 之流久之米多弖 比等能之流倍久","#[訓読]大伴の遠つ神祖の奥城はしるく標立て人の知るべく","#[仮名],おほともの,とほつかむおやの,おくつきは,しるくしめたて,ひとのしるべく","#[左注](天平感寶元年五月十二日於越中國守舘大伴宿祢家持作之)","#[校異]能 -> 乃 [元][類][古]","#[事項],天平感宝1年5月12日,作者:大伴家持,年紀,氏族意識,寿歌,賀歌,高岡,富山","#[訓異]
おほともの[寛],
とほつかむおやの[寛],
おくつきは[寛],
しるくしめたて[寛],
ひとのしるべく,[寛]ひとのしるへく,
" "#[番号]18/4097","#[題詞]((賀陸奥國出金詔書歌一首[并短歌])反歌三首)","#[原文]須賣呂伎能 御代佐可延牟等 阿頭麻奈流 美知<乃>久夜麻尓 金花佐久","#[訓読]天皇の御代栄えむと東なる陸奥山に黄金花咲く","#[仮名],すめろきの,みよさかえむと,あづまなる,みちのくやまに,くがねはなさく","#[左注]天平感寶元年五月十二日於越中國守舘大伴宿祢家持作之","#[校異]能 -> 乃 [元][類]","#[事項],天平感宝1年5月12日,作者:大伴家持,年紀,寿歌,賀歌,高岡,富山,大君讃美","#[訓異]
すめろきの[寛],
みよさかえむと[寛],
あづまなる,[寛]あつまなる,
みちのくやまに[寛],
くがねはなさく,[寛]こかねはなさく,
" "#[番号]18/4098","#[題詞]為幸行芳野離宮之時儲作歌一首[并短歌]","#[原文]多可美久良 安麻<乃>日嗣等 天下 志良之賣師家類 須賣呂伎乃 可未能美許等能 可之古久母 波自米多麻比弖 多不刀久母 左太米多麻敝流 美与之努能 許乃於保美夜尓 安里我欲比 賣之多麻布良之 毛能乃敷能 夜蘇等母能乎毛 於能我於弊流 於能我名負<弖> 大王乃 麻氣能麻<尓>々々 此河能 多由流許等奈久 此山能 伊夜都藝都藝尓 可久之許曽 都可倍麻都良米 伊夜等保奈我尓 ","#[訓読]高御座 天の日継と 天の下 知らしめしける 天皇の 神の命の 畏くも 始めたまひて 貴くも 定めたまへる み吉野の この大宮に あり通ひ 見したまふらし もののふの 八十伴の男も おのが負へる おのが名負ひて 大君の 任けのまにまに この川の 絶ゆることなく この山の いや継ぎ継ぎに かくしこそ 仕へまつらめ いや遠長に ","#[仮名],たかみくら,あまのひつぎと,あめのした,しらしめしける,すめろきの,かみのみことの,かしこくも,はじめたまひて,たふとくも,さだめたまへる,みよしのの,このおほみやに,ありがよひ,めしたまふらし,もののふの,やそとものをも,おのがおへる,おのがなおひて,おほきみの,まけのまにまに,このかはの,たゆることなく,このやまの,いやつぎつぎに,かくしこそ,つかへまつらめ,いやとほながに","#[左注]","#[校異]歌 [西] 謌 / 能 -> 乃 [元][類] / 々々 -> 弖 [万葉集略解] / 久 -> 尓 [万葉考]","#[事項],天平感宝1年,作者:大伴家持,年紀,地名,吉野,奈良,高岡,富山,儲作,宮廷讃美,大君讃美,寿歌","#[訓異]
たかみくら[寛],
あまのひつぎと,[寛]あまのひつきと,
あめのした[寛],
しらしめしける[寛],
すめろきの[寛],
かみのみことの[寛],
かしこくも[寛],
はじめたまひて,[寛]はしめたまひて,
たふとくも[寛],
さだめたまへる,[寛]さためたまへる,
みよしのの[寛],
このおほみやに[寛],
ありがよひ,[寛]ありかよひ,
めしたまふらし[寛],
もののふの[寛],
やそとものをも[寛],
おのがおへる,[寛]おのかおへる,
おのがなおひて,[寛]おのかなになに,
おほきみの[寛],
まけのまにまに,[寛]まけのまくまく,
このかはの[寛],
たゆることなく[寛],
このやまの[寛],
いやつぎつぎに,[寛]いやつきつきに,
かくしこそ[寛],
つかへまつらめ[寛],
いやとほながに,[寛]いやとほなかに,
" "#[番号]18/4099","#[題詞](為幸行芳野離宮之時儲作歌一首[并短歌])反歌","#[原文]伊尓之敝乎 於母保須良之母 和期於保伎美 余思努乃美夜乎 安里我欲比賣須","#[訓読]いにしへを思ほすらしも我ご大君吉野の宮をあり通ひ見す","#[仮名],いにしへを,おもほすらしも,わごおほきみ,よしののみやを,ありがよひめす","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平感宝1年,作者:大伴家持,年紀,地名,吉野,奈良,高岡,富山,儲作,宮廷讃美,大君讃美,寿歌","#[訓異]
いにしへを[寛],
おもほすらしも[寛],
わごおほきみ,[寛]わかおほきみ,
よしののみやを[寛],
ありがよひめす,[寛]ありかよひめす,
" "#[番号]18/4100","#[題詞]((為幸行芳野離宮之時儲作歌一首[并短歌])反歌)","#[原文]物能乃布能 夜蘇氏人毛 与之努河波 多由流許等奈久 都可倍追通見牟","#[訓読]もののふの八十氏人も吉野川絶ゆることなく仕へつつ見む","#[仮名],もののふの,やそうぢひとも,よしのがは,たゆることなく,つかへつつみむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平感宝1年,作者:大伴家持,年紀,地名,吉野,奈良,高岡,富山,儲作,宮廷讃美,大君讃美,寿歌","#[訓異]
もののふの[寛],
やそうぢひとも,[寛]やそうちひとも,
よしのがは,[寛]よしのかは,
たゆることなく[寛],
つかへつつみむ[寛],
" "#[番号]18/4101","#[題詞]為贈京家願真珠歌一首[并短歌]","#[原文]珠洲乃安麻能 於伎都美可未尓 伊和多利弖 可都伎等流登伊布 安波妣多麻 伊保知毛我母 波之吉餘之 都麻乃美許<登>能 許呂毛泥乃 和可礼之等吉欲 奴婆玉乃 夜床加多<左>里 安佐祢我美 可伎母氣頭良受 伊泥C許之 月日余美都追 奈氣久良牟 心奈具佐<尓> 保登等藝須 伎奈久五月能 安夜女具佐 波奈多知<婆>奈尓 奴吉麻自倍 可頭良尓世餘等 都追美C夜良牟 ","#[訓読]珠洲の海人の 沖つ御神に い渡りて 潜き取るといふ 鰒玉 五百箇もがも はしきよし 妻の命の 衣手の 別れし時よ ぬばたまの 夜床片さり 朝寝髪 掻きも梳らず 出でて来し 月日数みつつ 嘆くらむ 心なぐさに 霍公鳥 来鳴く五月の あやめぐさ 花橘に 貫き交へ かづらにせよと 包みて遣らむ ","#[仮名],すすのあまの,おきつみかみに,いわたりて,かづきとるといふ,あはびたま,いほちもがも,はしきよし,つまのみことの,ころもでの,わかれしときよ,ぬばたまの,よとこかたさり,あさねがみ,かきもけづらず,いでてこし,つきひよみつつ,なげくらむ,こころなぐさに,ほととぎす,きなくさつきの,あやめぐさ,はなたちばなに,ぬきまじへ,かづらにせよと,つつみてやらむ","#[左注](右五月十四日大伴宿祢家持依興作)","#[校異]歌 [西] 謌 / 等 -> 登 [元][紀][細] / 古 -> 左 [代匠記初稿本] / 余 -> 尓 [代匠記初稿本] / 波 -> 婆 [元][類]","#[事項],天平感宝1年5月14日,作者:大伴家持,年紀,贈答,地名,能登,富山,枕詞,高岡","#[訓異]
すすのあまの[寛],
おきつみかみに[寛],
いわたりて[寛],
かづきとるといふ,[寛]かつきとるといふ,
あはびたま,[寛]あはひたま,
いほちもがも,[寛]いほちもかも,
はしきよし[寛],
つまのみことの[寛],
ころもでの,[寛]ころもての,
わかれしときよ,[寛]わかれしときき,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よとこかたさり,[寛]よとこかたこり,
あさねがみ,[寛]あさねかみ,
かきもけづらず,[寛]かきもけつらす,
いでてこし,[寛]いててこし,
つきひよみつつ[寛],
なげくらむ,[寛]なけくらむ,
こころなぐさに,[寛]こころなくさに,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きなくさつきの[寛],
あやめぐさ,[寛]あやめくさ,
はなたちばなに,[寛]はなたちはなに,
ぬきまじへ,[寛]むきましへ,
かづらにせよと,[寛]かつらにせよと,
つつみてやらむ[寛],
" "#[番号]18/4102","#[題詞](為贈京家願真珠歌一首[并短歌])","#[原文]白玉乎 都々美C夜良<婆> 安夜女具佐 波奈多知婆奈尓 安倍母奴久我祢","#[訓読]白玉を包みて遣らばあやめぐさ花橘にあへも貫くがね","#[仮名],しらたまを,つつみてやらば,あやめぐさ,はなたちばなに,あへもぬくがね","#[左注](右五月十四日大伴宿祢家持依興作)","#[校異]波 -> 婆 [元][類]","#[事項],天平感宝1年5月14日,作者:大伴家持,年紀,贈答,富山,植物,高岡","#[訓異]
しらたまを[寛],
つつみてやらば,[寛]つつみてやらは,
あやめぐさ,[寛]あやめくさ,
はなたちばなに,[寛]はなたちはなに,
あへもぬくがね,[寛]あへもぬくかね,
" "#[番号]18/4103","#[題詞](為贈京家願真珠歌一首[并短歌])","#[原文]於伎都之麻 伊由伎和多里弖 可豆<久>知布 安波妣多麻母我 都々美弖夜良牟","#[訓読]沖つ島い行き渡りて潜くちふ鰒玉もが包みて遣らむ","#[仮名],おきつしま,いゆきわたりて,かづくちふ,あはびたまもが,つつみてやらむ","#[左注](右五月十四日大伴宿祢家持依興作)","#[校異]具 -> 久 [元][類]","#[事項],天平感宝1年5月14日,作者:大伴家持,年紀,贈答,富山,高岡","#[訓異]
おきつしま[寛],
いゆきわたりて[寛],
かづくちふ,[寛]かつくちふ,
あはびたまもが,[寛]あはひたまもか,
つつみてやらむ[寛],
" "#[番号]18/4104","#[題詞](為贈京家願真珠歌一首[并短歌])","#[原文]和伎母故我 許己呂奈具左尓 夜良無多米 於伎都之麻奈流 之良多麻母我毛","#[訓読]我妹子が心なぐさに遣らむため沖つ島なる白玉もがも","#[仮名],わぎもこが,こころなぐさに,やらむため,おきつしまなる,しらたまもがも","#[左注](右五月十四日大伴宿祢家持依興作)","#[校異]具 [元][類][藍][古] 久 / 左 [元][類][藍][古](塙) 佐","#[事項],天平感宝1年5月14日,作者:大伴家持,年紀,贈答,高岡,富山,恋愛","#[訓異]
わぎもこが,[寛]わきもこか,
こころなぐさに,[寛]こころなくさに,
やらむため[寛],
おきつしまなる[寛],
しらたまもがも,[寛]しらたまもかも,
" "#[番号]18/4105","#[題詞](為贈京家願真珠歌一首[并短歌])","#[原文]思良多麻能 伊保都追度比乎 手尓牟須妣 於許世牟安麻波 牟賀思久母安流香 [一云 我家牟伎波母] ","#[訓読]白玉の五百つ集ひを手にむすびおこせむ海人はむがしくもあるか [一云 我家牟伎波母] ","#[仮名],しらたまの,いほつつどひを,てにむすび,おこせむあまは,むがしくもあるか,[*******]","#[左注]右五月十四日大伴宿祢家持依興作","#[校異]","#[事項],天平感宝1年5月14日,作者:大伴家持,年紀,贈答,高岡,富山,異伝,推敲,難訓","#[訓異]
しらたまの[寛],
いほつつどひを,[寛]いほつつとひを,
てにむすび,[寛]てにむすひ,
おこせむあまは[寛],
むがしくもあるか,[寛]むかしくもあるか,
[*******]
" "#[番号]18/4106","#[題詞]教喩史生尾張少咋歌一首并短歌 / 七出例云 / 但犯一條即合出之 無七出輙<弃>者徒一年半 / 三不去云 / 雖犯七出不合<弃>之 違者杖一百 唯犯奸悪疾得<弃>之 / 兩妻例云 / 有妻更娶者徒一年 女家杖一百離之 / 詔書云 / 愍賜義夫節婦 / 謹案 先件數條 建法之基 化道之源也 然則義夫之道 情存無別 / 一家同財 豈有忘舊愛新之志哉 所以綴作數行之歌令悔<弃>舊之惑 其詞云","#[原文]於保奈牟知 須久奈比古奈野 神代欲里 伊比都藝家良<久> 父母乎 見波多布刀久 妻子見波 可奈之久米具之 宇都世美能 余乃許等和利止 可久佐末尓 伊比家流物能乎 世人能 多都流許等太弖 知左能花 佐家流沙加利尓 波之吉余之 曽能都末能古等 安沙余比尓 恵美々恵末須毛 宇知奈氣支 可多里家末久波 等己之部尓 可久之母安良米也 天地能 可未許等余勢天 春花能 佐可里裳安良<牟等> <末>多之家牟 等吉能沙加利曽 波<奈礼>居弖 奈介可須移母我 何時可毛 都可比能許牟等 末多須良<无> 心左夫之苦 南吹 雪消益而 射水河 流水沫能 余留弊奈美 左夫流其兒尓 比毛能緒能 移都我利安比弖 尓保騰里能 布多理雙坐 那呉能宇美能 於支乎布可米天 左度波世流 支美我許己呂能 須敝母須敝奈佐 [言佐夫流者遊行女婦之字也]","#[訓読]大汝 少彦名の 神代より 言ひ継ぎけらく 父母を 見れば貴く 妻子見れば かなしくめぐし うつせみの 世のことわりと かくさまに 言ひけるものを 世の人の 立つる言立て ちさの花 咲ける盛りに はしきよし その妻の子と 朝夕に 笑みみ笑まずも うち嘆き 語りけまくは とこしへに かくしもあらめや 天地の 神言寄せて 春花の 盛りもあらむと 待たしけむ 時の盛りぞ 離れ居て 嘆かす妹が いつしかも 使の来むと 待たすらむ 心寂しく 南風吹き 雪消溢りて 射水川 流る水沫の 寄る辺なみ 左夫流その子に 紐の緒の いつがり合ひて にほ鳥の ふたり並び居 奈呉の海の 奥を深めて さどはせる 君が心の すべもすべなさ [言佐夫流者遊行女婦之字也]","#[仮名],おほなむち,すくなびこなの,かむよより,いひつぎけらく,ちちははを,みればたふとく,めこみれば,かなしくめぐし,うつせみの,よのことわりと,かくさまに,いひけるものを,よのひとの,たつることだて,ちさのはな,さけるさかりに,はしきよし,そのつまのこと,あさよひに,ゑみみゑまずも,うちなげき,かたりけまくは,とこしへに,かくしもあらめや,あめつちの,かみことよせて,はるはなの,さかりもあらむと,またしけむ,ときのさかりぞ,はなれゐて,なげかすいもが,いつしかも,つかひのこむと,またすらむ,こころさぶしく,みなみふき,ゆきげはふりて,いみづかは,ながるみなわの,よるへなみ,さぶるそのこに,ひものをの,いつがりあひて,にほどりの,ふたりならびゐ,なごのうみの,おきをふかめて,さどはせる,きみがこころの,すべもすべなさ","#[左注](右五月十五日守大伴宿祢家持作之)","#[校異]奇 -> 弃 [元][紀][細] / 奇 -> 弃 [元][紀][細] / 奇 -> 弃 [元][紀][細] / 之 -> 久 [万葉集略解] / <> -> 牟等 [代匠記精撰本] / <> -> 末 [代匠記精撰本] / <> -> 奈礼 [代匠記精撰本] / 無 -> 无 [元][紀][細]","#[事項],天平感宝1年5月15日,作者:大伴家持,年紀,教喩,律令,高岡,富山,尾張少咋,儒教,地名,木津","#[訓異]
おほなむち[寛],
すくなびこなの,[寛]すくなひこなの,
かむよより,[寛]かみよより,
いひつぎけらく,[寛]いひつきけらし,
ちちははを[寛],
みればたふとく,[寛]みれはたふとく,
めこみれば,[寛]めこみれは,
かなしくめぐし,[寛]かなしくめくし,
うつせみの[寛],
よのことわりと[寛],
かくさまに[寛],
いひけるものを[寛],
よのひとの[寛],
たつることだて,[寛]たつることたて,
ちさのはな[寛],
さけるさかりに[寛],
はしきよし[寛],
そのつまのこと,[寛]そのつまのこら,
あさよひに[寛],
ゑみみゑまずも,[寛]ゑみみゑますも,
うちなげき,[寛]うちなけき,
かたりけまくは[寛],
とこしへに[寛],
かくしもあらめや[寛],
あめつちの[寛],
かみことよせて[寛],
はるはなの[寛],
さかりもあらむと,[寛]さかりもあらたしけむ,
またしけむ,
ときのさかりぞ,[寛]ときのさかりそ,
はなれゐて,[寛]なみをりて,
なげかすいもが,[寛]なけかすいもか,
いつしかも[寛],
つかひのこむと[寛],
またすらむ[寛],
こころさぶしく,[寛]こころさふしく,
みなみふき,[寛]みなみかせ,
ゆきげはふりて,[寛]ゆききえまして,
いみづかは,[寛]いみつかは,
ながるみなわの,[寛]なかるみなわの,
よるへなみ[寛],
さぶるそのこに,[寛]さふるそのこに,
ひものをの[寛],
いつがりあひて,[寛]いつかりあひて,
にほどりの,[寛]にほとりの,
ふたりならびゐ,[寛]ふたりならひゐ,
なごのうみの,[寛]なこのうみの,
おきをふかめて[寛],
さどはせる,[寛]さとはせる,
きみがこころの,[寛]きみかこころの,
すべもすべなさ,[寛]すへもすへなさ,
" "#[番号]18/4107","#[題詞](教喩史生尾張少咋歌一首并短歌 / 七出例云 / 但犯一條即合出之 無七出輙<弃>者徒一年半 / 三不去云 / 雖犯七出不合<弃>之 違者杖一百 唯犯奸悪疾得<弃>之 / 兩妻例云 / 有妻更娶者徒一年 女家杖一百離之 / 詔書云 / 愍賜義夫節婦 / 謹案 先件數條 建法之基 化道之源也 然則義夫之道 情存無別 / 一家同財 豈有忘舊愛新之志哉 所以綴作數行之歌令悔<弃>舊之惑 其詞云)反歌三首","#[原文]安乎尓与之 奈良尓安流伊毛我 多可々々尓 麻都良牟許己呂 之可尓波安良司可","#[訓読]あをによし奈良にある妹が高々に待つらむ心しかにはあらじか","#[仮名],あをによし,ならにあるいもが,たかたかに,まつらむこころ,しかにはあらじか","#[左注](右五月十五日守大伴宿祢家持作之)","#[校異]","#[事項],天平感宝1年5月15日,作者:大伴家持,年紀,枕詞,教喩,律令,高岡,富山,尾張少咋,儒教,地名,奈良","#[訓異]
あをによし[寛],
ならにあるいもが,[寛]ならにあるいもか,
たかたかに[寛],
まつらむこころ[寛],
しかにはあらじか,[寛]しかにはあらしか,
" "#[番号]18/4108","#[題詞]((教喩史生尾張少咋歌一首并短歌 / 七出例云 / 但犯一條即合出之 無七出輙<弃>者徒一年半 / 三不去云 / 雖犯七出不合<弃>之 違者杖一百 唯犯奸悪疾得<弃>之 / 兩妻例云 / 有妻更娶者徒一年 女家杖一百離之 / 詔書云 / 愍賜義夫節婦 / 謹案 先件數條 建法之基 化道之源也 然則義夫之道 情存無別 / 一家同財 豈有忘舊愛新之志哉 所以綴作數行之歌令悔<弃>舊之惑 其詞云)反歌三首)","#[原文]左刀妣等能 見流目波豆可之 左夫流兒尓 佐度波須伎美我 美夜泥之理夫利","#[訓読]里人の見る目恥づかし左夫流子にさどはす君が宮出後姿","#[仮名],さとびとの,みるめはづかし,さぶるこに,さどはすきみが,みやでしりぶり","#[左注](右五月十五日守大伴宿祢家持作之)","#[校異]","#[事項],天平感宝1年5月15日,作者:大伴家持,年紀,教喩,律令,高岡,富山,尾張少咋,儒教","#[訓異]
さとびとの,[寛]さとひとの,
みるめはづかし,[寛]みるめはつかし,
さぶるこに,[寛]さふるこに,
さどはすきみが,[寛]さとはすきみか,
みやでしりぶり,[寛]みやてしりふり,
" "#[番号]18/4109","#[題詞]((教喩史生尾張少咋歌一首并短歌 / 七出例云 / 但犯一條即合出之 無七出輙<弃>者徒一年半 / 三不去云 / 雖犯七出不合<弃>之 違者杖一百 唯犯奸悪疾得<弃>之 / 兩妻例云 / 有妻更娶者徒一年 女家杖一百離之 / 詔書云 / 愍賜義夫節婦 / 謹案 先件數條 建法之基 化道之源也 然則義夫之道 情存無別 / 一家同財 豈有忘舊愛新之志哉 所以綴作數行之歌令悔<弃>舊之惑 其詞云)反歌三首)","#[原文]久礼奈為波 宇都呂布母能曽 都流波美能 奈礼尓之伎奴尓 奈保之可米夜母","#[訓読]紅はうつろふものぞ橡のなれにし衣になほしかめやも","#[仮名],くれなゐは,うつろふものぞ,つるはみの,なれにしきぬに,なほしかめやも","#[左注]右五月十五日守大伴宿祢家持作之","#[校異]","#[事項],天平感宝1年5月15日,作者:大伴家持,年紀,教喩,律令,高岡,富山,尾張少咋,儒教,植物","#[訓異]
くれなゐは[寛],
うつろふものぞ,[寛]うつろふものそ,
つるはみの[寛],
なれにしきぬに[寛],
なほしかめやも[寛],
" "#[番号]18/4110","#[題詞]先妻不待夫君之<喚>使自来時作歌一首","#[原文]左夫流兒我 伊都伎之等<乃>尓 須受可氣奴 <波>由麻久太礼利 佐刀毛等騰呂尓","#[訓読]左夫流子が斎きし殿に鈴懸けぬ駅馬下れり里もとどろに","#[仮名],さぶるこが,いつきしとのに,すずかけぬ,はゆまくだれり,さともとどろに","#[左注]同月十七日大伴宿祢家持作之","#[校異]愛 -> 喚 [西(朱書訂正)][元][古][紀][温] / 能 -> 乃 [元][類][古] / 婆 -> 波 [古][紀][矢][京]","#[事項],天平感宝1年5月17日,作者:大伴家持,年紀,教喩,律令,高岡,富山,尾張少咋,儒教,興味","#[訓異]
さぶるこが,[寛]さふるこか,
いつきしとのに,[寛]いしきしとのに,
すずかけぬ,[寛]すすかけぬ,
はゆまくだれり,[寛]はいまくたれり,
さともとどろに,[寛]さともととろに,
" "#[番号]18/4111","#[題詞]橘歌一首[并短歌]","#[原文]可氣麻久母 安夜尓加之古思 皇神祖<乃> 可見能大御世尓 田道間守 常世尓和多利 夜保許毛知 麻為泥許之登吉 時<及>能 香久乃菓子乎 可之古久母 能許之多麻敝礼 國毛勢尓 於非多知左加延 波流左礼婆 孫枝毛伊都追 保登等藝須 奈久五月尓波 波都波奈乎 延太尓多乎理弖 乎登女良尓 都刀尓母夜里美 之路多倍能 蘇泥尓毛古伎礼 香具<播>之美 於枳弖可良之美 安由流實波 多麻尓奴伎都追 手尓麻吉弖 見礼騰毛安加受 秋豆氣婆 之具礼<乃>雨零 阿之比奇能 夜麻能許奴礼波 久<礼奈為>尓 仁保比知礼止毛 多知波奈<乃> 成流其實者 比太照尓 伊夜見我保之久 美由伎布流 冬尓伊多礼婆 霜於氣騰母 其葉毛可礼受 常磐奈須 伊夜佐加波延尓 之可礼許曽 神乃御代欲理 与呂之奈倍 此橘乎 等伎自久能 可久能木實等 名附家良之母 ","#[訓読]かけまくも あやに畏し 天皇の 神の大御代に 田道間守 常世に渡り 八桙持ち 参ゐ出来し時 時じくの かくの木の実を 畏くも 残したまへれ 国も狭に 生ひ立ち栄え 春されば 孫枝萌いつつ 霍公鳥 鳴く五月には 初花を 枝に手折りて 娘子らに つとにも遣りみ 白栲の 袖にも扱入れ かぐはしみ 置きて枯らしみ あゆる実は 玉に貫きつつ 手に巻きて 見れども飽かず 秋づけば しぐれの雨降り あしひきの 山の木末は 紅に にほひ散れども 橘の なれるその実は ひた照りに いや見が欲しく み雪降る 冬に至れば 霜置けども その葉も枯れず 常磐なす いやさかはえに しかれこそ 神の御代より よろしなへ この橘を 時じくの かくの木の実と 名付けけらしも ","#[仮名],かけまくも,あやにかしこし,すめろきの,かみのおほみよに,たぢまもり,とこよにわたり,やほこもち,まゐでこしとき,ときじくの,かくのこのみを,かしこくも,のこしたまへれ,くにもせに,おひたちさかえ,はるされば,ひこえもいつつ,ほととぎす,なくさつきには,はつはなを,えだにたをりて,をとめらに,つとにもやりみ,しろたへの,そでにもこきれ,かぐはしみ,おきてからしみ,あゆるみは,たまにぬきつつ,てにまきて,みれどもあかず,あきづけば,しぐれのあめふり,あしひきの,やまのこぬれは,くれなゐに,にほひちれども,たちばなの,なれるそのみは,ひたてりに,いやみがほしく,みゆきふる,ふゆにいたれば,しもおけども,そのはもかれず,ときはなす,いやさかはえに,しかれこそ,かみのみよより,よろしなへ,このたちばなを,ときじくの,かくのこのみと,なづけけらしも","#[左注](閏五月廿三日大伴宿祢家持作之)","#[校異]歌 [西] 謌 / 能 -> 乃 [元][類] / 支 -> 及 [万葉考] / 幡 -> 播 [元][類][紀] / 能 -> 乃 [元][類] / <> -> 礼奈為 [西(朱書)][紀][細] / 能 -> 乃 [元][類]","#[事項],天平感宝1年閏5月23日,作者:大伴家持,年紀,植物,賀歌,寿歌,橘諸兄,高岡,富山,枕詞","#[訓異]
かけまくも[寛],
あやにかしこし[寛],
すめろきの[寛],
かみのおほみよに[寛],
たぢまもり,[寛]たちまもり,
とこよにわたり[寛],
やほこもち[寛],
まゐでこしとき,[寛]まゐてこしとき,
ときじくの,[寛]ときしくの,
かくのこのみを[寛],
かしこくも[寛],
のこしたまへれ[寛],
くにもせに[寛],
おひたちさかえ[寛],
はるされば,[寛]はるされは,
ひこえもいつつ,[寛]まこえもいつつ,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なくさつきには[寛],
はつはなを[寛],
えだにたをりて,[寛]えたにたをりて,
をとめらに[寛],
つとにもやりみ[寛],
しろたへの[寛],
そでにもこきれ,[寛]そてにもこきれ,
かぐはしみ,[寛]かくはしみ,
おきてからしみ[寛],
あゆるみは[寛],
たまにぬきつつ[寛],
てにまきて[寛],
みれどもあかず,[寛]みれともあかす,
あきづけば,[寛]あきつけは,
しぐれのあめふり,[寛]しくれのあめふり,
あしひきの[寛],
やまのこぬれは[寛],
くれなゐに[寛],
にほひちれども,[寛]にほひちれとも,
たちばなの,[寛]たちはなの,
なれるそのみは[寛],
ひたてりに[寛],
いやみがほしく,[寛]いやみかほしく,
みゆきふる[寛],
ふゆにいたれば,[寛]ふゆにいたれは,
しもおけども,[寛]しもおけとも,
そのはもかれず,[寛]そのはもかれす,
ときはなす[寛],
いやさかはえに[寛],
しかれこそ[寛],
かみのみよより[寛],
よろしなへ[寛],
このたちばなを,[寛]このたちはなを,
ときじくの,[寛]ときしくの,
かくのこのみと[寛],
なづけけらしも,[寛]なつけけらしも,
" "#[番号]18/4112","#[題詞](橘歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]橘波 花尓毛實尓母 美都礼騰母 移夜時自久尓 奈保之見我保之","#[訓読]橘は花にも実にも見つれどもいや時じくになほし見が欲し","#[仮名],たちばなは,はなにもみにも,みつれども,いやときじくに,なほしみがほし","#[左注]閏五月廿三日大伴宿祢家持作之","#[校異]","#[事項],天平感宝1年閏5月23日,作者:大伴家持,年紀,植物,賀歌,寿歌,橘諸兄,高岡,富山","#[訓異]
たちばなは,[寛]たちはなは,
はなにもみにも[寛],
みつれども,[寛]みつれとも,
いやときじくに,[寛]いやときしくに,
なほしみがほし,[寛]なほしみかほし,
" "#[番号]18/4113","#[題詞]庭中花作歌一首[并短歌]","#[原文]於保支見能 等保能美可等々 末支太末不 官乃末尓末 美由支布流 古之尓久多利来 安良多末能 等之<乃>五年 之吉多倍乃 手枕末可受 比毛等可須 末呂宿乎須礼波 移夫勢美等 情奈具左尓 奈泥之故乎 屋戸尓末<枳>於保之 夏能<々> 佐由利比伎宇恵天 開花乎 移<弖>見流其等尓 那泥之古我 曽乃波奈豆末尓 左由理花 由利母安波無等 奈具佐無流 許己呂之奈久波 安末射可流 比奈尓一日毛 安流部久母安礼也 ","#[訓読]大君の 遠の朝廷と 任きたまふ 官のまにま み雪降る 越に下り来 あらたまの 年の五年 敷栲の 手枕まかず 紐解かず 丸寝をすれば いぶせみと 心なぐさに なでしこを 宿に蒔き生ほし 夏の野の さ百合引き植ゑて 咲く花を 出で見るごとに なでしこが その花妻に さ百合花 ゆりも逢はむと 慰むる 心しなくは 天離る 鄙に一日も あるべくもあれや ","#[仮名],おほきみの,とほのみかどと,まきたまふ,つかさのまにま,みゆきふる,こしにくだりき,あらたまの,としのいつとせ,しきたへの,たまくらまかず,ひもとかず,まろねをすれば,いぶせみと,こころなぐさに,なでしこを,やどにまきおほし,なつののの,さゆりひきうゑて,さくはなを,いでみるごとに,なでしこが,そのはなづまに,さゆりばな,ゆりもあはむと,なぐさむる,こころしなくは,あまざかる,ひなにひとひも,あるべくもあれや","#[左注](同閏五月廿六日大伴宿祢家持作)","#[校異]短歌 [西] 短謌 / 能 -> 乃 [元][類] / 波 [類] 婆 / <> -> 枳 [西(右書)][元][類][紀] / 々之 -> 々 [元][類] / R -> 弖 [元][類]","#[事項],天平感宝1年閏5月26日,作者:大伴家持,年紀,植物,枕詞,慰撫,高岡,富山","#[訓異]
おほきみの[寛],
とほのみかどと,[寛]とほのみかとと,
まきたまふ[寛],
つかさのまにま[寛],
みゆきふる[寛],
こしにくだりき,[寛]こしにくたりき,
あらたまの[寛],
としのいつとせ[寛],
しきたへの[寛],
たまくらまかず,[寛]たまくらまかす,
ひもとかず,[寛]ひもとかす,
まろねをすれば,[寛]まろねをすれは,
いぶせみと,[寛]いふせみと,
こころなぐさに,[寛]こころなくさに,
なでしこを,[寛]なてしこを,
やどにまきおほし,[寛]やとにまきおほし,
なつののの[寛],
さゆりひきうゑて[寛],
さくはなを[寛],
いでみるごとに,[寛]いてみることに,
なでしこが,[寛]なてしこか,
そのはなづまに,[寛]そのはなつまに,
さゆりばな,[寛]さゆりはな,
ゆりもあはむと[寛],
なぐさむる,[寛]なくさむる,
こころしなくは[寛],
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなにひとひも[寛],
あるべくもあれや,[寛]あるへくもあれや,
" "#[番号]18/4114","#[題詞](庭中花作歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]奈泥之故我 花見流其等尓 乎登女良我 恵末比能尓保比 於母保由流可母","#[訓読]なでしこが花見るごとに娘子らが笑まひのにほひ思ほゆるかも","#[仮名],なでしこが,はなみるごとに,をとめらが,ゑまひのにほひ,おもほゆるかも","#[左注](同閏五月廿六日大伴宿祢家持作)","#[校異]","#[事項],天平感宝1年閏5月26日,作者:大伴家持,年紀,高岡,富山,植物,恋愛","#[訓異]
なでしこが,[寛]なてしこか,
はなみるごとに,[寛]はなみることに,
をとめらが,[寛]をとめらか,
ゑまひのにほひ[寛],
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]18/4115","#[題詞]((庭中花作歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]佐由利花 由利母相等 之多波布流 許己呂之奈久波 今日母倍米夜母","#[訓読]さ百合花ゆりも逢はむと下延ふる心しなくは今日も経めやも","#[仮名],さゆりばな,ゆりもあはむと,したはふる,こころしなくは,けふもへめやも","#[左注]同閏五月廿六日大伴宿祢家持作","#[校異]","#[事項],天平感宝1年閏5月26日,作者:大伴家持,年紀,植物,慰撫,高岡,富山","#[訓異]
さゆりばな,[寛]さゆりはな,
ゆりもあはむと[寛],
したはふる[寛],
こころしなくは[寛],
けふもへめやも[寛],
" "#[番号]18/4116","#[題詞]國掾久米朝臣廣縄以天平廿年附朝集使入京 其事畢而天平感寶元年閏五月廿七日還到本任 仍長官之舘設詩酒宴樂飲 於時主人守大伴宿祢家持作歌一首[并短歌]","#[原文]於保支見能 末支能末尓々々 等里毛知C 都可布流久尓能 年内能 許登可多祢母知 多末保許能 美知尓伊天多知 伊波祢布美 也末古衣野由支 弥夜故敝尓 末為之和我世乎 安良多末乃 等之由吉我弊理 月可佐祢 美奴日佐末祢美 故敷流曽良 夜須久之安良祢波 保止々支須 支奈久五月能 安夜女具佐 余母疑可豆良伎 左加美都伎 安蘇比奈具礼止 射水河 雪消溢而 逝水能 伊夜末思尓乃未 多豆我奈久 奈呉江能須氣能 根毛己呂尓 於母比牟須保礼 奈介伎都々 安我末<川>君我 許登乎波里 可敝利末可利天 夏野能 佐由利能波奈能 花咲尓 々布夫尓恵美天 阿波之多流 今日乎波自米C 鏡奈須 可久之都祢見牟 於毛我波利世須 ","#[訓読]大君の 任きのまにまに 取り持ちて 仕ふる国の 年の内の 事かたね持ち 玉桙の 道に出で立ち 岩根踏み 山越え野行き 都辺に 参ゐし我が背を あらたまの 年行き返り 月重ね 見ぬ日さまねみ 恋ふるそら 安くしあらねば 霍公鳥 来鳴く五月の あやめぐさ 蓬かづらき 酒みづき 遊びなぐれど 射水川 雪消溢りて 行く水の いや増しにのみ 鶴が鳴く 奈呉江の菅の ねもころに 思ひ結ぼれ 嘆きつつ 我が待つ君が 事終り 帰り罷りて 夏の野の さ百合の花の 花笑みに にふぶに笑みて 逢はしたる 今日を始めて 鏡なす かくし常見む 面変りせず ","#[仮名],おほきみの,まきのまにまに,とりもちて,つかふるくにの,としのうちの,ことかたねもち,たまほこの,みちにいでたち,いはねふみ,やまこえのゆき,みやこへに,まゐしわがせを,あらたまの,としゆきがへり,つきかさね,みぬひさまねみ,こふるそら,やすくしあらねば,ほととぎす,きなくさつきの,あやめぐさ,よもぎかづらき,さかみづき,あそびなぐれど,いみづかは,ゆきげはふりて,ゆくみづの,いやましにのみ,たづがなく,なごえのすげの,ねもころに,おもひむすぼれ,なげきつつ,あがまつきみが,ことをはり,かへりまかりて,なつののの,さゆりのはなの,はなゑみに,にふぶにゑみて,あはしたる,けふをはじめて,かがみなす,かくしつねみむ,おもがはりせず","#[左注]","#[校異]短歌 [西] 短哥 / 津 -> 川 [元][紀][細]","#[事項],天平感宝1年閏5月27日,作者:大伴家持,年紀,宴席,歓迎,帰任,久米広縄,動物,植物,高岡,富山","#[訓異]
おほきみの[寛],
まきのまにまに[寛],
とりもちて[寛],
つかふるくにの[寛],
としのうちの[寛],
ことかたねもち[寛],
たまほこの[寛],
みちにいでたち,[寛]みちにいてたち,
いはねふみ[寛],
やまこえのゆき[寛],
みやこへに[寛],
まゐしわがせを,[寛]まゐしわかせを,
あらたまの[寛],
としゆきがへり,[寛]としゆきかへり,
つきかさね[寛],
みぬひさまねみ[寛],
こふるそら[寛],
やすくしあらねば,[寛]やすくしあらねは,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きなくさつきの[寛],
あやめぐさ,[寛]あやめくさ,
よもぎかづらき,[寛]よもきかつらき,
さかみづき,[寛]さかみつき,
あそびなぐれど,[寛]あそひなくれと,
いみづかは,[寛]いみつかは,
ゆきげはふりて,[寛]ゆききえみちて,
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
いやましにのみ[寛],
たづがなく,[寛]たつかなく,
なごえのすげの,[寛]なこえのすけの,
ねもころに[寛],
おもひむすぼれ,[寛]おもひむすほれ,
なげきつつ,[寛]なけきつつ,
あがまつきみが,[寛]あかまつきみか,
ことをはり[寛],
かへりまかりて[寛],
なつののの[寛],
さゆりのはなの[寛],
はなゑみに[寛],
にふぶにゑみて,[寛]にふふにゑみて,
あはしたる[寛],
けふをはじめて,[寛]けふをはしめて,
かがみなす,[寛]かかみなす,
かくしつねみむ[寛],
おもがはりせず,[寛]おもかはりせす,
" "#[番号]18/4117","#[題詞](國掾久米朝臣廣縄以天平廿年附朝集使入京 其事畢而天平感寶元年閏五月廿七日還到本任 仍長官之舘設詩酒宴樂飲 於時主人守大伴宿祢家持作歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]許序能秋 安比見之末尓末 今日見波 於毛夜目都良之 美夜古可多比等","#[訓読]去年の秋相見しまにま今日見れば面やめづらし都方人","#[仮名],こぞのあき,あひみしまにま,けふみれば,おもやめづらし,みやこかたひと","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平感宝1年閏5月27日,作者:大伴家持,年紀,宴席,歓迎,帰任,久米広縄,高岡,富山","#[訓異]
こぞのあき,[寛]こそのあき,
あひみしまにま,[寛]あひみしままに,
けふみれば,[寛]けふみれは,
おもやめづらし,[寛]おもやめつらし,
みやこかたひと[寛],
" "#[番号]18/4118","#[題詞]((國掾久米朝臣廣縄以天平廿年附朝集使入京 其事畢而天平感寶元年閏五月廿七日還到本任 仍長官之舘設詩酒宴樂飲 於時主人守大伴宿祢家持作歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]可久之天母 安比見流毛<乃>乎 須久奈久母 年月經礼波 古非之家礼夜母","#[訓読]かくしても相見るものを少なくも年月経れば恋ひしけれやも","#[仮名],かくしても,あひみるものを,すくなくも,としつきふれば,こひしけれやも","#[左注]","#[校異]能 -> 乃 [元][類][藍]","#[事項],天平感宝1年閏5月27日,作者:大伴家持,年紀,宴席,歓迎,帰任,久米広縄,高岡,富山,恋情","#[訓異]
かくしても[寛],
あひみるものを[寛],
すくなくも[寛],
としつきふれば,[寛]としつきふれは,
こひしけれやも[寛],
" "#[番号]18/4119","#[題詞]聞霍公鳥喧作歌一首","#[原文]伊尓之敝欲 之<怒>比尓家礼婆 保等登藝須 奈久許恵伎吉弖 古非之吉物<乃>乎","#[訓読]いにしへよ偲ひにければ霍公鳥鳴く声聞きて恋しきものを","#[仮名],いにしへよ,しのひにければ,ほととぎす,なくこゑききて,こひしきものを","#[左注]","#[校異]奴 -> 怒 [元][類] / 藝 [元][類][紀][細] 伎 / 能 -> 乃 [元][類]","#[事項],天平感宝1年,作者:大伴家持,年紀,動物,恋情,季節,高岡,富山","#[訓異]
いにしへよ,[寛]いにしへゆ,
しのひにければ,[寛]しのひにけれは,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なくこゑききて[寛],
こひしきものを[寛],
" "#[番号]18/4120","#[題詞]為向京之時見貴人<及>相美人飲宴之日述懐儲作歌二首","#[原文]見麻久保里 於毛比之奈倍尓 賀都良賀氣 香具波之君乎 安比見都流賀母","#[訓読]見まく欲り思ひしなへにかづらかけかぐはし君を相見つるかも","#[仮名],みまくほり,おもひしなへに,かづらかげ,かぐはしきみを,あひみつるかも","#[左注](同閏五月廿八日大伴宿祢家持作之)","#[校異]乃 -> 及 [西(訂正)][元][類][古]","#[事項],天平感宝1年閏5月28日,作者:大伴家持,年紀,儲作,宴席,恋情,帰任,空想,高岡,富山","#[訓異]
みまくほり[寛],
おもひしなへに[寛],
かづらかげ,[寛]かつらかけ,
かぐはしきみを,[寛]かくはしきみを,
あひみつるかも[寛],
" "#[番号]18/4121","#[題詞](為向京之時見貴人<及>相美人飲宴之日述懐儲作歌二首)","#[原文]朝参乃 伎美我須我多乎 美受比左尓 比奈尓之須米婆 安礼故非尓家里 [<一>云 波之吉与思 伊毛我須我多乎] ","#[訓読]朝参の君が姿を見ず久に鄙にし住めば我れ恋ひにけり [一云 はしきよし妹が姿を] ","#[仮名],てうさむの,きみがすがたを,みずひさに,ひなにしすめば,あれこひにけり,[はしきよし,いもがすがたを]","#[左注]同閏五月廿八日大伴宿祢家持作之","#[校異]一頭 -> 一 [元][類]","#[事項],天平感宝1年閏5月28日,作者:大伴家持,年紀,高岡,富山,恋情,儲作,宴席,帰任","#[訓異]
てうさむの,[寛]まゐいりの,
きみがすがたを,[寛]きみかすかたを,
みずひさに,[寛]みすひさに,
ひなにしすめば,[寛]ひなにしすめは,
あれこひにけり[寛],
[はしきよし,
いもがすがたを]
" "#[番号]18/4122","#[題詞]天平感寶元年閏五月六日以来起小旱百姓田畝稍有<凋>色<也> 至于六月朔日忽見雨雲之氣仍作雲歌一首 [短歌一絶]","#[原文]須賣呂伎能 之伎麻須久尓能 安米能之多 四方能美知尓波 宇麻乃都米 伊都久須伎波美 布奈乃倍能 伊波都流麻泥尓 伊尓之敝欲 伊麻乃乎都頭尓 万調 麻都流都可佐等 都久里多流 曽能奈里波比乎 安米布良受 日能可左奈礼婆 宇恵之田毛 麻吉之波多氣毛 安佐其登尓 之保美可礼由苦 曽乎見礼婆 許己呂乎伊多美 弥騰里兒能 知許布我其登久 安麻都美豆 安布藝弖曽麻都 安之比奇能 夜麻能多乎理尓 許能見油流 安麻能之良久母 和多都美能 於枳都美夜敝尓 多知和多里 等能具毛利安比弖 安米母多麻波祢 ","#[訓読]天皇の 敷きます国の 天の下 四方の道には 馬の爪 い尽くす極み 舟舳の い果つるまでに いにしへよ 今のをつづに 万調 奉るつかさと 作りたる その生業を 雨降らず 日の重なれば 植ゑし田も 蒔きし畑も 朝ごとに しぼみ枯れゆく そを見れば 心を痛み みどり子の 乳乞ふがごとく 天つ水 仰ぎてぞ待つ あしひきの 山のたをりに この見ゆる 天の白雲 海神の 沖つ宮辺に 立ちわたり との曇りあひて 雨も賜はね ","#[仮名],すめろきの,しきますくにの,あめのした,よものみちには,うまのつめ,いつくすきはみ,ふなのへの,いはつるまでに,いにしへよ,いまのをつづに,よろづつき,まつるつかさと,つくりたる,そのなりはひを,あめふらず,ひのかさなれば,うゑしたも,まきしはたけも,あさごとに,しぼみかれゆく,そをみれば,こころをいたみ,みどりこの,ちこふがごとく,あまつみづ,あふぎてぞまつ,あしひきの,やまのたをりに,このみゆる,あまのしらくも,わたつみの,おきつみやへに,たちわたり,とのぐもりあひて,あめもたまはね","#[左注](右二首六月一日晩頭守大伴宿祢家持作之)","#[校異]彫 -> 凋 [西(朱筆訂正)][矢][京] / <> -> 也 [元][細]","#[事項],天平感宝1年6月1日,作者:大伴家持,年紀,雨乞い,寿歌,高岡,富山","#[訓異]
すめろきの[寛],
しきますくにの[寛],
あめのした[寛],
よものみちには[寛],
うまのつめ[寛],
いつくすきはみ[寛],
ふなのへの[寛],
いはつるまでに,[寛]いはつるまてに,
いにしへよ,[寛]いにしへゆ,
いまのをつづに,[寛]いまのをつつに,
よろづつき,[寛]よろつつき,
まつるつかさと[寛],
つくりたる[寛],
そのなりはひを[寛],
あめふらず,[寛]あめふらす,
ひのかさなれば,[寛]ひのかさなれは,
うゑしたも[寛],
まきしはたけも[寛],
あさごとに,[寛]あさことに,
しぼみかれゆく,[寛]しほみかれゆく,
そをみれば,[寛]そをみれは,
こころをいたみ[寛],
みどりこの,[寛]みとりこの,
ちこふがごとく,[寛]ちこふかことく,
あまつみづ,[寛]あまつみつ,
あふぎてぞまつ,[寛]あふきてそまつ,
あしひきの[寛],
やまのたをりに[寛],
このみゆる[寛],
あまのしらくも[寛],
わたつみの,[寛]わたつつの,
おきつみやへに[寛],
たちわたり[寛],
とのぐもりあひて,[寛]とのくもりあひて,
あめもたまはね[寛],
" "#[番号]18/4123","#[題詞](天平感寶元年閏五月六日以来起小旱百姓田畝稍有<凋>色<也> 至于六月朔日忽見雨雲之氣仍作雲歌一首 [短歌一絶])反歌一首","#[原文]許能美由流 久毛保妣許里弖 等能具毛理 安米毛布良奴可 <己許>呂太良比尓","#[訓読]この見ゆる雲ほびこりてとの曇り雨も降らぬか心足らひに","#[仮名],このみゆる,くもほびこりて,とのくもり,あめもふらぬか,こころだらひに","#[左注]右二首六月一日晩頭守大伴宿祢家持作之","#[校異]許己 -> 己許 [元][類]","#[事項],天平感宝1年6月1日,作者:大伴家持,年紀,雨乞い,寿歌,高岡,富山","#[訓異]
このみゆる[寛],
くもほびこりて,[寛]くもほひこりて,
とのくもり[寛],
あめもふらぬか[寛],
こころだらひに,[寛]こころたらひに,
" "#[番号]18/4124","#[題詞]賀雨落歌一首","#[原文]和我保里之 安米波布里伎奴 可久之安良<婆> 許登安氣世受杼母 登思波佐可延牟","#[訓読]我が欲りし雨は降り来ぬかくしあらば言挙げせずとも年は栄えむ","#[仮名],わがほりし,あめはふりきぬ,かくしあらば,ことあげせずとも,としはさかえむ","#[左注]右一首同月四日大伴宿祢家持作","#[校異]波 -> 婆 [元]","#[事項],天平感宝1年6月4日,作者:大伴家持,年紀,雨乞い,寿歌,賀歌,高岡,富山","#[訓異]
わがほりし,[寛]わかほりし,
あめはふりきぬ[寛],
かくしあらば,[寛]かくしあらは,
ことあげせずとも,[寛]ことあけせすとも,
としはさかえむ[寛],
" "#[番号]18/4125","#[題詞]七夕歌一首[并短歌]","#[原文]安麻泥良須 可未能御代欲里 夜洲能河波 奈加尓敝太弖々 牟可比太知 蘇泥布利可波之 伊吉能乎尓 奈氣加須古良 和多里母理 布祢毛麻宇氣受 波之太尓母 和多之弖安良波 曽<乃>倍由母 伊由伎和多良之 多豆佐波利 宇奈我既里為弖 於<毛>保之吉 許登母加多良比 <奈>具左牟流 許己呂波安良牟乎 奈尓之可母 安吉尓之安良祢波 許等騰比能 等毛之伎古良 宇都世美能 代人和礼<毛> 許己<乎>之母 安夜尓久須之弥 徃更 年<乃>波其登尓 安麻<乃>波良 布里左氣見都追 伊比都藝尓須礼 ","#[訓読]天照らす 神の御代より 安の川 中に隔てて 向ひ立ち 袖振り交し 息の緒に 嘆かす子ら 渡り守 舟も設けず 橋だにも 渡してあらば その上ゆも い行き渡らし 携はり うながけり居て 思ほしき 言も語らひ 慰むる 心はあらむを 何しかも 秋にしあらねば 言どひの 乏しき子ら うつせみの 世の人我れも ここをしも あやにくすしみ 行きかはる 年のはごとに 天の原 振り放け見つつ 言ひ継ぎにすれ ","#[仮名],あまでらす,かみのみよより,やすのかは,なかにへだてて,むかひたち,そでふりかはし,いきのをに,なげかすこら,わたりもり,ふねもまうけず,はしだにも,わたしてあらば,そのへゆも,いゆきわたらし,たづさはり,うながけりゐて,おもほしき,こともかたらひ,なぐさむる,こころはあらむを,なにしかも,あきにしあらねば,ことどひの,ともしきこら,うつせみの,よのひとわれも,ここをしも,あやにくすしみ,ゆきかはる,としのはごとに,あまのはら,ふりさけみつつ,いひつぎにすれ","#[左注](右七月七日仰見天漢大伴宿祢家持作)","#[校異]歌 [西] 謌 / 能 -> 乃 [元][類] / 母 -> 毛 [元][類] / 那 -> 奈 [元][類] / 母 -> 毛 [元][類] / 宇 -> 乎 [代匠記精撰本] / 能 -> 乃 [元][類]","#[事項],天平感宝1年7月7日,作者:大伴家持,年紀,七夕,寿歌,高岡,富山","#[訓異]
あまでらす,[寛]あまてらす,
かみのみよより[寛],
やすのかは[寛],
なかにへだてて,[寛]なかにへたてて,
むかひたち[寛],
そでふりかはし,[寛]そてふりかはし,
いきのをに[寛],
なげかすこら,[寛]なけかすこら,
わたりもり[寛],
ふねもまうけず,[寛]ふねもまうけす,
はしだにも,[寛]はしたにも,
わたしてあらば,[寛]わたしてあらは,
そのへゆも[寛],
いゆきわたらし[寛],
たづさはり,[寛]たつさはり,
うながけりゐて,[寛]うなかけりゐて,
おもほしき[寛],
こともかたらひ[寛],
なぐさむる,[寛]なくさむる,
こころはあらむを[寛],
なにしかも[寛],
あきにしあらねば,[寛]あきにしあらねは,
ことどひの,[寛]こととひの,
ともしきこら[寛],
うつせみの[寛],
よのひとわれも[寛],
ここをしも[寛],
あやにくすしみ[寛],
ゆきかはる,[寛]ゆきかへる,
としのはごとに,[寛]としのはことに,
あまのはら[寛],
ふりさけみつつ[寛],
いひつぎにすれ,[寛]いひつきにすれ,
" "#[番号]18/4126","#[題詞](七夕歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]安麻能我波 々志和多世良波 曽能倍由母 伊和多良佐牟乎 安吉尓安良受得物","#[訓読]天の川橋渡せらばその上ゆもい渡らさむを秋にあらずとも","#[仮名],あまのがは,はしわたせらば,そのへゆも,いわたらさむを,あきにあらずとも","#[左注](右七月七日仰見天漢大伴宿祢家持作)","#[校異]","#[事項],天平感宝1年7月7日,作者:大伴家持,年紀,七夕,寿歌,高岡,富山","#[訓異]
あまのがは,[寛]あまのかは,
はしわたせらば,[寛]はしわたせらは,
そのへゆも[寛],
いわたらさむを[寛],
あきにあらずとも,[寛]あきにあらすとも,
" "#[番号]18/4127","#[題詞]((七夕歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]夜須能河波 許牟可比太知弖 等之<乃>古非 氣奈我伎古良河 都麻度比能欲曽","#[訓読]安の川こ向ひ立ちて年の恋日長き子らが妻どひの夜ぞ","#[仮名],やすのかは,こむかひたちて,としのこひ,けながきこらが,つまどひのよぞ","#[左注]右七月七日仰見天漢大伴宿祢家持作","#[校異]許 [万葉集古義](塙) 伊 / 能 -> 乃 [元][類]","#[事項],天平感宝1年7月7日,作者:大伴家持,年紀,七夕,寿歌,高岡,富山","#[訓異]
やすのかは[寛],
こむかひたちて[寛],
としのこひ[寛],
けながきこらが,[寛]けなかきこらか,
つまどひのよぞ,[寛]つまとひのよそ,
" "#[番号]18/4128","#[題詞]越前國掾大伴宿祢池主来贈戯歌四首 / 忽辱恩賜 驚欣已深 心中含咲獨座稍開 表裏不同相違何異 推量所由率尓作策歟 明知加言豈有他意乎 凡貿易本物其罪不軽 正贓倍贓宜<急>并満 今勒風雲發遣<徴>使 早速返報不須延廻 / 勝寶元年十一月十二日 物所貿易下吏 / 謹訴貿易人断官司 廳下 / 別<白> 可怜之意不能黙止 聊述四詠准擬睡覺","#[原文]久佐麻久良 多比<乃>於伎奈等 於母保之天 波里曽多麻敝流 奴波牟物能毛賀","#[訓読]草枕旅の翁と思ほして針ぞ賜へる縫はむ物もが","#[仮名],くさまくら,たびのおきなと,おもほして,はりぞたまへる,ぬはむものもが","#[左注](右歌之返報歌者脱漏不得探求也)","#[校異]忽 -> 急 [元][紀][細] / 微 -> 徴 [元][細] / 日 -> 白 [元] / 能 -> 乃 [元][類][古]","#[事項],天平勝宝1年11月12日,作者:大伴池主,年紀,贈答,大伴家持,書簡,枕詞,戯歌,高岡,富山","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびのおきなと,[寛]たひのおきなと,
おもほして[寛],
はりぞたまへる,[寛]はりそたまへる,
ぬはむものもが,[寛]ぬはむものもか,
" "#[番号]18/4129","#[題詞](越前國掾大伴宿祢池主来贈戯歌四首 / 忽辱恩賜 驚欣已深 心中含咲獨座稍開 表裏不同相違何異 推量所由率尓作策歟 明知加言豈有他意乎 凡貿易本物其罪不軽 正贓倍贓宜<急>并満 今勒風雲發遣<徴>使 早速返報不須延廻 / 勝寶元年十一月十二日 物所貿易下吏 / 謹訴貿易人断官司 廳下 / 別<白> 可怜之意不能黙止 聊述四詠准擬睡覺)","#[原文]芳理夫久路 等利安宜麻敝尓於吉 可邊佐倍波 於能等母於能夜 宇良毛都藝多利","#[訓読]針袋取り上げ前に置き返さへばおのともおのや裏も継ぎたり","#[仮名],はりぶくろ,とりあげまへにおき,かへさへば,おのともおのや,うらもつぎたり","#[左注](右歌之返報歌者脱漏不得探求也)","#[校異]","#[事項],天平勝宝1年11月12日,作者:大伴池主,年紀,大伴家持,贈答,書簡,戯歌,高岡,富山","#[訓異]
はりぶくろ,[寛]はりふくろ,
とりあげまへにおき,[寛]とりあけまへにおき,
かへさへば,[寛]かへさへは,
おのともおのや[寛],
うらもつぎたり,[寛]うらもつきたり,
" "#[番号]18/4130","#[題詞](越前國掾大伴宿祢池主来贈戯歌四首 / 忽辱恩賜 驚欣已深 心中含咲獨座稍開 表裏不同相違何異 推量所由率尓作策歟 明知加言豈有他意乎 凡貿易本物其罪不軽 正贓倍贓宜<急>并満 今勒風雲發遣<徴>使 早速返報不須延廻 / 勝寶元年十一月十二日 物所貿易下吏 / 謹訴貿易人断官司 廳下 / 別<白> 可怜之意不能黙止 聊述四詠准擬睡覺)","#[原文]波利夫久路 應婢都々氣奈我良 佐刀其等邇 天良佐比安流氣騰 比等毛登賀米授","#[訓読]針袋帯び続けながら里ごとに照らさひ歩けど人もとがめず","#[仮名],はりぶくろ,おびつつけながら,さとごとに,てらさひあるけど,ひともとがめず","#[左注](右歌之返報歌者脱漏不得探求也)","#[校異]","#[事項],天平勝宝1年11月12日,作者:大伴池主,年紀,贈答,大伴家持,書簡,戯歌,高岡,富山","#[訓異]
はりぶくろ,[寛]はりふくろ,
おびつつけながら,[寛]おひつつけなから,
さとごとに,[寛]さとことに,
てらさひあるけど,[寛]てらさひあるけと,
ひともとがめず,[寛]ひともとかめす,
" "#[番号]18/4131","#[題詞](越前國掾大伴宿祢池主来贈戯歌四首 / 忽辱恩賜 驚欣已深 心中含咲獨座稍開 表裏不同相違何異 推量所由率尓作策歟 明知加言豈有他意乎 凡貿易本物其罪不軽 正贓倍贓宜<急>并満 今勒風雲發遣<徴>使 早速返報不須延廻 / 勝寶元年十一月十二日 物所貿易下吏 / 謹訴貿易人断官司 廳下 / 別<白> 可怜之意不能黙止 聊述四詠准擬睡覺)","#[原文]等里我奈久 安豆麻乎佐之天 布佐倍之尓 由可牟<等>於毛倍騰 与之母佐祢奈之","#[訓読]鶏が鳴く東をさしてふさへしに行かむと思へどよしもさねなし","#[仮名],とりがなく,あづまをさして,ふさへしに,ゆかむとおもへど,よしもさねなし","#[左注]右歌之返報歌者脱漏不得探求也","#[校異]登 -> 等 [元][類][古]","#[事項],天平勝宝1年11月12日,作者:大伴池主,年紀,贈答,大伴家持,書簡,戯歌,高岡,富山","#[訓異]
とりがなく,[寛]とりかなく,
あづまをさして,[寛]あつまをさして,
ふさへしに[寛],
ゆかむとおもへど,[寛]ゆかむとおもへと,
よしもさねなし[寛],
" "#[番号]18/4132","#[題詞]更来贈歌二首 / 依迎驛使事今月十五日到来部下加賀郡境 面蔭<見>射水之郷戀緒結深海之村 身異胡馬心悲北風 乗月徘徊曽無所為 稍開来<封>其辞[云<々>]者 先所奉書返畏度疑歟 僕作嘱羅且悩使君 夫乞水得酒従来能口 論時合理何題強吏乎 尋誦針袋詠詞泉酌不渇 抱膝獨咲能ニ旅愁 陶然遣日何慮何思 短筆不宣 / 勝寶元年十二月十五日 徴物下司 / 謹上 不伏使君 [記室] / 別奉[云々]歌二首","#[原文]多々佐尓毛 可尓母与己佐母 夜都故等曽 安礼<波>安利家流 奴之能等<乃>度尓","#[訓読]縦さにもかにも横さも奴とぞ我れはありける主の殿戸に","#[仮名],たたさにも,かにもよこさも,やつことぞ,あれはありける,ぬしのとのどに","#[左注]","#[校異]見見 -> 見 [西(訂正)][元][紀][細] / 對 -> 封 [西(朱書訂正)][細] / 著 -> 々 [元] / 歌 [西] 謌 / 婆 -> 波 [元][類][古] / 能 -> 乃 [元][類][古]","#[事項],天平勝宝1年12月15日,作者:大伴池主,年紀,贈答,書簡,大伴家持,戯歌,高岡,富山","#[訓異]
たたさにも[寛],
かにもよこさも[寛],
やつことぞ,[寛]よつことそ,
あれはありける[寛],
ぬしのとのどに,[寛]ぬしのとのとに,
" "#[番号]18/4133","#[題詞](更来贈歌二首 / 依迎驛使事今月十五日到来部下加賀郡境 面蔭<見>射水之郷戀緒結深海之村 身異胡馬心悲北風 乗月徘徊曽無所為 稍開来<封>其辞[云<々>]者 先所奉書返畏度疑歟 僕作嘱羅且悩使君 夫乞水得酒従来能口 論時合理何題強吏乎 尋誦針袋詠詞泉酌不渇 抱膝獨咲能ニ旅愁 陶然遣日何慮何思 短筆不宣 / 勝寶元年十二月十五日 徴物下司 / 謹上 不伏使君 [記室] / 別奉[云々]歌二首)","#[原文]波里夫久路 己礼波多婆利奴 須理夫久路 伊麻波衣天之可 於吉奈佐備勢牟","#[訓読]針袋これは賜りぬすり袋今は得てしか翁さびせむ","#[仮名],はりぶくろ,これはたばりぬ,すりぶくろ,いまはえてしか,おきなさびせむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝1年12月15日,作者:大伴池主,年紀,贈答,書簡,大伴家持,戯歌,高岡,富山","#[訓異]
はりぶくろ,[寛]はりふくろ,
これはたばりぬ,[寛]これはたはりぬ,
すりぶくろ,[寛]すりふくろ,
いまはえてしか[寛],
おきなさびせむ,[寛]おきなさひせむ,
" "#[番号]18/4134","#[題詞]宴席詠雪月梅花歌一首","#[原文]由吉<乃>宇倍尓 天礼流都久欲尓 烏梅能播奈 乎<理>天於久良牟 波之伎故毛我母","#[訓読]雪の上に照れる月夜に梅の花折りて送らむはしき子もがも","#[仮名],ゆきのうへに,てれるつくよに,うめのはな,をりておくらむ,はしきこもがも","#[左注]右一首一二月大伴宿祢家持作","#[校異]能 -> 乃 [元][類] / <> -> 理 [西(右書)][元][類][紀]","#[事項],天平勝宝1年12月,作者:大伴家持,年紀,宴席,題詠,植物,恋愛,文芸","#[訓異]
ゆきのうへに[寛],
てれるつくよに[寛],
うめのはな[寛],
をりておくらむ[寛],
はしきこもがも,[寛]はしきこもかも,
" "#[番号]18/4135","#[題詞]","#[原文]和我勢故我 許登等流奈倍尓 都祢比登<乃> 伊布奈宜吉思毛 伊夜之伎麻須毛","#[訓読]我が背子が琴取るなへに常人の言ふ嘆きしもいやしき増すも","#[仮名],わがせこが,こととるなへに,つねひとの,いふなげきしも,いやしきますも","#[左注]右一首少目秦伊美吉石竹舘宴守大伴宿祢家持作","#[校異]能 -> 乃 [元][類]","#[事項],作者:大伴家持,恋愛,宴席,秦石竹","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
こととるなへに[寛],
つねひとの[寛],
いふなげきしも,[寛]いふなけきしも,
いやしきますも[寛],
" "#[番号]18/4136","#[題詞]天平勝寶二年正月二日於國廳給饗諸郡司等<宴>歌一首","#[原文]安之比奇能 夜麻能許奴礼能 保与等<理>天 可射之都良久波 知等世保久等曽","#[訓読]あしひきの山の木末のほよ取りてかざしつらくは千年寿くとぞ","#[仮名],あしひきの,やまのこぬれの,ほよとりて,かざしつらくは,ちとせほくとぞ","#[左注]右一首守大伴宿祢家持作","#[校異]<> -> 宴 [西(右書)][元][古][紀] / 里 -> 理 [元][類][古]","#[事項],天平勝宝2年1月2日,作者:大伴家持,年紀,枕詞,寿歌,賀歌,高岡,富山,宴席","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまのこぬれの[寛],
ほよとりて[寛],
かざしつらくは,[寛]かさしつらくは,
ちとせほくとぞ,[寛]ちとせほくとそ,
" "#[番号]18/4137","#[題詞]<判>官久米朝臣廣縄之舘宴歌一首","#[原文]牟都奇多都 波流能波自米尓 可久之都追 安比之恵美天婆 等枳自家米也母","#[訓読]正月立つ春の初めにかくしつつ相し笑みてば時じけめやも","#[仮名],むつきたつ,はるのはじめに,かくしつつ,あひしゑみてば,ときじけめやも","#[左注]同月五日守大伴宿祢家持作之","#[校異]刺 -> 判 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年1月5日,作者:大伴家持,年紀,宴席,久米広縄,賀歌,寿歌,富山,高岡","#[訓異]
むつきたつ[寛],
はるのはじめに,[寛]はるのはしめに,
かくしつつ[寛],
あひしゑみてば,[寛]あひしえみては,
ときじけめやも,[寛]ときしけめやも,
" "#[番号]18/4138","#[題詞]縁檢察墾田地事宿礪波郡主帳多治比部北里之家 于時忽起風雨不得辞去作歌一首","#[原文]夜夫奈美能 佐刀尓夜度可里 波流佐米尓 許母理都追牟等 伊母尓都宜都夜","#[訓読]薮波の里に宿借り春雨に隠りつつむと妹に告げつや","#[仮名],やぶなみの,さとにやどかり,はるさめに,こもりつつむと,いもにつげつや","#[左注]二月十八日守大伴宿祢家持作","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年2月18日,作者:大伴家持,年紀,地名,砺波,富山,宴席,多治比部北里","#[訓異]
やぶなみの,[寛]やふなみの,
さとにやどかり,[寛]さとにやとかり,
はるさめに[寛],
こもりつつむと[寛],
いもにつげつや,[寛]いもにつけつや,
" "#[番号]19/4139","#[題詞]天平勝寶二年三月一日之暮眺矚春苑桃李花<作>二首","#[原文]春苑 紅尓保布 桃花 下<照>道尓 出立D嬬","#[訓読]春の園紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ娘子","#[仮名],はるのその,くれなゐにほふ,もものはな,したでるみちに,いでたつをとめ","#[左注]","#[校異]作歌 -> 作 [元][文][紀] / 昭 -> 照 [元][類][紀]","#[事項],天平勝宝2年3月1日,年紀,作者:大伴家持,植物,絵画,高岡,富山","#[訓異]
はるのその[寛],
くれなゐにほふ[寛],
もものはな[寛],
したでるみちに,[寛]したてるみちに,
いでたつをとめ,[寛]いてたてるいも,
" "#[番号]19/4140","#[題詞](天平勝寶二年三月一日之暮眺矚春苑桃李花<作>二首)","#[原文]吾園之 李花可 庭尓落 波太礼能未 遺在可母","#[訓読]吾が園の李の花か庭に散るはだれのいまだ残りたるかも","#[仮名],わがそのの,すもものはなか,にはにちる,はだれのいまだ,のこりたるかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年3月1日,年紀,作者:大伴家持,植物,高岡,富山","#[訓異]
わがそのの,[寛]わかそのの,
すもものはなか[寛],
にはにちる[寛],
はだれのいまだ,[寛]はたれのいまた,
のこりたるかも[寛],
" "#[番号]19/4141","#[題詞]見飜翔鴫作歌一首","#[原文]春儲而 <物>悲尓 三更而 羽振鳴志藝 誰田尓加須牟","#[訓読]春まけてもの悲しきにさ夜更けて羽振き鳴く鴫誰が田にか住む","#[仮名],はるまけて,ものがなしきに,さよふけて,はぶきなくしぎ,たがたにかすむ","#[左注]","#[校異]<> -> 物 [西(右書)][元][類][紀]","#[事項],天平勝宝2年3月1日,年紀,作者:大伴家持,動物,望郷,高岡,富山","#[訓異]
はるまけて[寛],
ものがなしきに,[寛]ものかなしきに,
さよふけて[寛],
はぶきなくしぎ,[寛]はふりなくしき,
たがたにかすむ,[寛]たかたにかすむ,
" "#[番号]19/4142","#[題詞]二日攀柳黛思京師歌一首","#[原文]春日尓 張流柳乎 取持而 見者京之 大路所<念>","#[訓読]春の日に張れる柳を取り持ちて見れば都の大道し思ほゆ","#[仮名],はるのひに,はれるやなぎを,とりもちて,みればみやこの,おほちしおもほゆ","#[左注]思 -> 念 [元][類]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年3月2日,年紀,作者:大伴家持,望郷,植物,高岡,富山","#[訓異]
はるのひに[寛],
はれるやなぎを,[寛]はれるやなきを,
とりもちて[寛],
みればみやこの,[寛]みれはみやこの,
おほちしおもほゆ,[寛]おほちおもほゆ,
" "#[番号]19/4143","#[題詞]攀折堅香子草花歌一首","#[原文]物部<乃> 八<十>D嬬等之 は乱 寺井之於乃 堅香子之花","#[訓読]もののふの八十娘子らが汲み乱ふ寺井の上の堅香子の花","#[仮名],もののふの,やそをとめらが,くみまがふ,てらゐのうへの,かたかごのはな","#[左注]","#[校異]能 -> 乃 [元][類][古] / 十乃 -> 十 [元][古]","#[事項],天平勝宝2年3月2日,年紀,作者:大伴家持,植物,高岡,富山,枕詞","#[訓異]
もののふの[寛],
やそをとめらが,[寛]やそのいもらか,
くみまがふ,[寛]くみまかふ,
てらゐのうへの[寛],
かたかごのはな,[寛]かたかこのはな,
" "#[番号]19/4144","#[題詞]見歸鴈歌二首","#[原文]燕来 時尓成奴等 鴈之鳴者 本郷思都追 雲隠喧","#[訓読]燕来る時になりぬと雁がねは国偲ひつつ雲隠り鳴く","#[仮名],つばめくる,ときになりぬと,かりがねは,くにしのひつつ,くもがくりなく","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年3月2日,年紀,作者:大伴家持,動物,高岡,富山","#[訓異]
つばめくる,[寛]つはめくる,
ときになりぬと[寛],
かりがねは,[寛]かりかねは,
くにしのひつつ,[寛]ふるさとおもひつつ,
くもがくりなく,[寛]くもかくれなく,
" "#[番号]19/4145","#[題詞](見歸鴈歌二首)","#[原文]春設而 如此歸等母 秋風尓 黄葉山乎 不<超>来有米也 [一云 春去者 歸此鴈] ","#[訓読]春まけてかく帰るとも秋風にもみたむ山を越え来ざらめや [一云 春されば帰るこの雁] ","#[仮名],はるまけて,かくかへるとも,あきかぜに,もみたむやまを,こえこざらめや,[はるされば,かへるこのかり]","#[左注]","#[校異]越 -> 超 [元][類][文][紀]","#[事項],天平勝宝2年3月2日,年紀,作者:大伴家持,推敲,帰雁,高岡,富山","#[訓異]
はるまけて[寛],
かくかへるとも[寛],
あきかぜに,[寛]あきかせに,
もみたむやまを,[寛]もみちのやまを,
こえこざらめや,[寛]こえこさらめや,
[はるされば,[寛]はるされは,
かへるこのかり][寛],
" "#[番号]19/4146","#[題詞]夜裏聞千鳥<喧>歌二首","#[原文]夜具多知尓 寐覺而居者 河瀬尋 情<毛>之<努>尓 鳴知等理賀毛","#[訓読]夜ぐたちに寝覚めて居れば川瀬尋め心もしのに鳴く千鳥かも","#[仮名],よぐたちに,ねざめてをれば,かはせとめ,こころもしのに,なくちどりかも","#[左注]","#[校異]鳴 -> 喧 [元][類] / 母 -> 毛 [元][類][文][紀] / 奴 -> 努 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年3月2日,年紀,作者:大伴家持,動物,懐古,望郷,高岡,富山","#[訓異]
よぐたちに,[寛]よくたちに,
ねざめてをれば,[寛]ねさめてをれは,
かはせとめ[寛],
こころもしのに,[寛]こころもののに,
なくちどりかも,[寛]なくちとりかも,
" "#[番号]19/4147","#[題詞](夜裏聞千鳥<喧>歌二首)","#[原文]夜降而 鳴河波知登里 宇倍之許曽 昔人母 之<努>比来尓家礼","#[訓読]夜くたちて鳴く川千鳥うべしこそ昔の人も偲ひ来にけれ","#[仮名],よくたちて,なくかはちどり,うべしこそ,むかしのひとも,しのひきにけれ","#[左注]","#[校異]奴 -> 努 [元]","#[事項],天平勝宝2年3月2日,年紀,作者:大伴家持,動物,懐古,高岡,富山","#[訓異]
よくたちて[寛],
なくかはちどり,[寛]なくかはちとり,
うべしこそ,[寛]うへしこそ,
むかしのひとも[寛],
しのひきにけれ[寛],
" "#[番号]19/4148","#[題詞]聞暁鳴雉歌二首","#[原文]椙野尓 左乎騰流雉 灼然 啼尓之毛将哭 己母利豆麻可母","#[訓読]杉の野にさ躍る雉いちしろく音にしも泣かむ隠り妻かも","#[仮名],すぎののに,さをどるきぎし,いちしろく,ねにしもなかむ,こもりづまかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年3月2日,年紀,作者:大伴家持,動物,恋情","#[訓異]
すぎののに,[寛]すきののに,
さをどるきぎし,[寛]さをとるききす,
いちしろく[寛],
ねにしもなかむ[寛],
こもりづまかも,[寛]こもりつまかも,
" "#[番号]19/4149","#[題詞](聞暁鳴雉歌二首)","#[原文]足引之 八峯之雉 鳴響 朝開之霞 見者可奈之母","#[訓読]あしひきの八つ峰の雉鳴き響む朝明の霞見れば悲しも","#[仮名],あしひきの,やつをのきぎし,なきとよむ,あさけのかすみ,みればかなしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年3月2日,年紀,作者:大伴家持,動物,叙景,枕詞","#[訓異]
あしひきの[寛],
やつをのきぎし,[寛]やつをのききす,
なきとよむ[寛],
あさけのかすみ[寛],
みればかなしも,[寛]みれはかなしも,
" "#[番号]19/4150","#[題詞]遥聞泝江船人之唱歌一首","#[原文]朝床尓 聞者遥之 射水河 朝己藝思都追 唱船人","#[訓読]朝床に聞けば遥けし射水川朝漕ぎしつつ唄ふ舟人","#[仮名],あさとこに,きけばはるけし,いみづかは,あさこぎしつつ,うたふふなびと","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年3月2日,年紀,作者:大伴家持,叙景,地名,高岡,富山","#[訓異]
あさとこに[寛],
きけばはるけし,[寛]きけははるけし,
いみづかは,[寛]いみつかは,
あさこぎしつつ,[寛]あさこきしつつ,
うたふふなびと,[寛]うたふふなひと,
" "#[番号]19/4151","#[題詞]三日守大伴宿祢家持之舘宴歌三首","#[原文]今日之為等 思標之 足引乃 峯上之櫻 如此開尓家里","#[訓読]今日のためと思ひて標しあしひきの峰の上の桜かく咲きにけり","#[仮名],けふのためと,おもひてしめし,あしひきの,をのへのさくら,かくさきにけり","#[左注]","#[校異]思標 [元][類] 標","#[事項],天平勝宝2年3月3日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,植物,宴席,高岡,富山,上巳","#[訓異]
けふのためと[寛],
おもひてしめし[寛],
あしひきの[寛],
をのへのさくら[寛],
かくさきにけり[寛],
" "#[番号]19/4152","#[題詞](三日守大伴宿祢家持之舘宴歌三首)","#[原文]奥山之 八峯乃海石榴 都婆良可尓 今日者久良佐祢 大夫之徒","#[訓読]奥山の八つ峰の椿つばらかに今日は暮らさね大夫の伴","#[仮名],おくやまの,やつをのつばき,つばらかに,けふはくらさね,ますらをのとも","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年3月3日,年紀,作者:大伴家持,植物,宴席,上巳,序詞,高岡,富山","#[訓異]
おくやまの[寛],
やつをのつばき,[寛]やつをのつはき,
つばらかに,[寛]つはらかに,
けふはくらさね[寛],
ますらをのとも[寛],
" "#[番号]19/4153","#[題詞](三日守大伴宿祢家持之舘宴歌三首)","#[原文]漢人毛 筏浮而 遊云 今日曽和我勢故 花縵世奈","#[訓読]漢人も筏浮かべて遊ぶといふ今日ぞ我が背子花かづらせな","#[仮名],からひとも,いかだうかべて,あそぶといふ,けふぞわがせこ,はなかづらせな","#[左注]","#[校異]奈 [細] 余","#[事項],天平勝宝2年3月3日,年紀,作者:大伴家持,宴席,上巳,曲水宴,植物,富山,高岡","#[訓異]
からひとも[寛],
いかだうかべて,[寛]ふねをうかへて,
あそぶといふ,[寛]あそふてふ,
けふぞわがせこ,[寛]けふそわかせこ,
はなかづらせな,[寛]はなかつらせよ,
" "#[番号]19/4154","#[題詞]八日詠白<大>鷹歌一首[并短歌]","#[原文]安志比奇<乃> 山坂<超>而 去更 年緒奈我久 科坂在 故志尓之須米婆 大王之 敷座國者 京師乎母 此間毛於夜自等 心尓波 念毛能可良 語左氣 見左久流人眼 乏等 於毛比志繁 曽己由恵尓 情奈具也等 秋附婆 芽子開尓保布 石瀬野尓 馬太伎由吉C 乎知許知尓 鳥布美立 白塗之 小鈴毛由良尓 安波勢也<理> 布里左氣見都追 伊伎騰保流 許己呂能宇知乎 思延 宇礼之備奈我良 枕附 都麻屋之内尓 鳥座由比 須恵弖曽我飼 真白部乃多可 ","#[訓読]あしひきの 山坂越えて 行きかはる 年の緒長く しなざかる 越にし住めば 大君の 敷きます国は 都をも ここも同じと 心には 思ふものから 語り放け 見放くる人目 乏しみと 思ひし繁し そこゆゑに 心なぐやと 秋づけば 萩咲きにほふ 石瀬野に 馬だき行きて をちこちに 鳥踏み立て 白塗りの 小鈴もゆらに あはせ遣り 振り放け見つつ いきどほる 心のうちを 思ひ延べ 嬉しびながら 枕付く 妻屋のうちに 鳥座結ひ 据えてぞ我が飼ふ 真白斑の鷹 ","#[仮名],あしひきの,やまさかこえて,ゆきかはる,としのをながく,しなざかる,こしにしすめば,おほきみの,しきますくには,みやこをも,ここもおやじと,こころには,おもふものから,かたりさけ,みさくるひとめ,ともしみと,おもひししげし,そこゆゑに,こころなぐやと,あきづけば,はぎさきにほふ,いはせのに,うまだきゆきて,をちこちに,とりふみたて,しらぬりの,をすずもゆらに,あはせやり,ふりさけみつつ,いきどほる,こころのうちを,おもひのべ,うれしびながら,まくらづく,つまやのうちに,とぐらゆひ,すゑてぞわがかふ,ましらふのたか","#[左注]","#[校異]太 -> 大 [元][類] / 能 -> 乃 [元][類] / 越 -> 超 [元][類][紀] / 里 -> 理 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年3月8日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,動物,植物,地名,富山,狩猟,鷹狩り","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまさかこえて[寛],
ゆきかはる,[寛]ゆきかへる,
としのをながく,[寛]としのをなかく,
しなざかる,[寛]しなさかる,
こしにしすめば,[寛]こしにしすめは,
おほきみの[寛],
しきますくには[寛],
みやこをも[寛],
ここもおやじと,[寛]ここもおやしと,
こころには[寛],
おもふものから[寛],
かたりさけ,[寛]ことはさけ,
みさくるひとめ[寛],
ともしみと[寛],
おもひししげし,[寛]おもひししけし,
そこゆゑに[寛],
こころなぐやと,[寛]こころなくやと,
あきづけば,[寛]あきつけは,
はぎさきにほふ,[寛]はきさきにほふ,
いはせのに[寛],
うまだきゆきて,[寛]うまたきゆきて,
をちこちに[寛][寛],
とりふみたて,[寛]とりふみたてて,
しらぬりの[寛],
をすずもゆらに,[寛]こすすもゆらに,
あはせやり[寛],
ふりさけみつつ[寛],
いきどほる,[寛]いきとほる,
こころのうちを[寛],
おもひのべ,[寛]おもひのへ,
うれしびながら,[寛]うれしひなから,
まくらづく,[寛]まくらつく,
つまやのうちに[寛],
とぐらゆひ,[寛]とくらゆひ,
すゑてぞわがかふ,[寛]すゑてそわかふ,
ましらふのたか[寛],
" "#[番号]19/4155","#[題詞](八日詠白<大>鷹歌一首[并短歌])","#[原文]矢形尾乃 麻之路能鷹乎 屋戸尓須恵 可伎奈泥見都追 飼久之余志毛","#[訓読]矢形尾の真白の鷹を宿に据ゑ掻き撫で見つつ飼はくしよしも","#[仮名],やかたをの,ましろのたかを,やどにすゑ,かきなでみつつ,かはくしよしも","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年3月8日,年紀,作者:大伴家持,動物,富山,高岡","#[訓異]
やかたをの[寛],
ましろのたかを[寛],
やどにすゑ,[寛]やとにすゑ,
かきなでみつつ,[寛]かきなてみつつ,
かはくしよしも[寛],
" "#[番号]19/4156","#[題詞]潜鵜歌一首[并短歌]","#[原文]荒玉能 年徃更 春去者 花耳尓保布 安之比奇能 山下響 墜多藝知 流辟田乃 河瀬尓 年魚兒狭走 嶋津鳥 鵜養等母奈倍 可我理左之 奈頭佐比由氣<婆> 吾妹子我 可多見我C良等 紅之 八塩尓染而 於己勢多流 服之襴毛 等寳利C濃礼奴 ","#[訓読]あらたまの 年行きかはり 春されば 花のみにほふ あしひきの 山下響み 落ち激ち 流る辟田の 川の瀬に 鮎子さ走る 島つ鳥 鵜養伴なへ 篝さし なづさひ行けば 我妹子が 形見がてらと 紅の 八しほに染めて おこせたる 衣の裾も 通りて濡れぬ ","#[仮名],あらたまの,としゆきかはり,はるされば,はなのみにほふ,あしひきの,やましたとよみ,おちたぎち,ながるさきたの,かはのせに,あゆこさばしる,しまつとり,うかひともなへ,かがりさし,なづさひゆけば,わぎもこが,かたみがてらと,くれなゐの,やしほにそめて,おこせたる,ころものすそも,とほりてぬれぬ","#[左注]","#[校異]歌 [西][細] 謌 / 波 -> 婆 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年3月8日,年紀,作者:大伴家持,動物,地名,能登,富山,鵜飼い","#[訓異]
あらたまの[寛],
としゆきかはり,[寛]としゆきかへり,
はるされば,[寛]はるされは,
はなのみにほふ[寛],
あしひきの[寛],
やましたとよみ,[寛]やましたひひき,
おちたぎち,[寛]おちたきち,
ながるさきたの,[寛]なかるさきたの,
かはのせに[寛],
あゆこさばしる,[寛]あゆこさはしり,
しまつとり[寛],
うかひともなへ[寛],
かがりさし,[寛]かかりさし,
なづさひゆけば,[寛]なつさひゆけは,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
かたみがてらと,[寛]かたみかてらと,
くれなゐの[寛],
やしほにそめて[寛],
おこせたる[寛],
ころものすそも[寛],
とほりてぬれぬ[寛],
" "#[番号]19/4157","#[題詞](潜鵜歌一首[并短歌])","#[原文]紅<乃> 衣尓保波之 辟田河 絶己等奈久 吾等眷牟","#[訓読]紅の衣にほはし辟田川絶ゆることなく我れかへり見む","#[仮名],くれなゐの,ころもにほはし,さきたかは,たゆることなく,われかへりみむ","#[左注]","#[校異]<> -> 乃 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年3月8日,年紀,作者:大伴家持,地名,能登,富山,鵜飼い,土地讃美,動物","#[訓異]
くれなゐの,[寛]くれない,
ころもにほはし[寛],
さきたかは[寛],
たゆることなく[寛],
われかへりみむ[寛]
" "#[番号]19/4158","#[題詞](潜鵜歌一首[并短歌])","#[原文]毎年尓 鮎之走婆 左伎多河 鵜八頭可頭氣C 河瀬多頭祢牟","#[訓読]年のはに鮎し走らば辟田川鵜八つ潜けて川瀬尋ねむ","#[仮名],としのはに,あゆしはしらば,さきたかは,うやつかづけて,かはせたづねむ","#[左注]","#[校異]歌 [西][細] 謌","#[事項],天平勝宝2年3月8日,年紀,作者:大伴家持,鵜飼い,地名,能登,富山,鵜飼い","#[訓異]
としのはに[寛],
あゆしはしらば,[寛]あゆしはしれは,
さきたかは[寛],
うやつかづけて,[寛]うやつかつきて,
かはせたづねむ,[寛]かはせたつねむ,
" "#[番号]19/4159","#[題詞]季春三月九日擬出擧之政行於舊江村道上属目物花之詠并興中所作之歌 / 過澁谿埼見巌上樹歌一首 [樹名都萬麻]","#[原文]礒上之 都萬麻乎見者 根乎延而 年深有之 神<左>備尓家里","#[訓読]礒の上のつままを見れば根を延へて年深からし神さびにけり","#[仮名],いそのうへの,つままをみれば,ねをはへて,としふかからし,かむさびにけり","#[左注]","#[校異]佐 -> 左 [元][類][古]","#[事項],天平勝宝2年3月9日,年紀,作者:大伴家持,植物,土地讃美,氷見,富山,寿歌,出挙,部内巡行","#[訓異]
いそのうへの[寛],
つままをみれば,[寛]つままをみれは,
ねをはへて[寛],
としふかからし[寛],
かむさびにけり,[寛]かみさひにけり,
" "#[番号]19/4160","#[題詞]悲世間無常歌一首[并短歌]","#[原文]天地之 遠始欲 俗中波 常無毛能等 語續 奈我良倍伎多礼 天原 振左氣見婆 照月毛 盈<ち>之家里 安之比奇能 山之木末毛 春去婆 花開尓保比 秋都氣婆 露霜負而 風交 毛美知落家利 宇都勢美母 如是能未奈良之 紅能 伊呂母宇都呂比 奴婆多麻能 黒髪變 朝之咲 暮加波良比 吹風能 見要奴我其登久 逝水能 登麻良奴其等久 常毛奈久 宇都呂布見者 尓波多豆美 流な 等騰米可祢都母 ","#[訓読]天地の 遠き初めよ 世間は 常なきものと 語り継ぎ 流らへ来たれ 天の原 振り放け見れば 照る月も 満ち欠けしけり あしひきの 山の木末も 春されば 花咲きにほひ 秋づけば 露霜負ひて 風交り もみち散りけり うつせみも かくのみならし 紅の 色もうつろひ ぬばたまの 黒髪変り 朝の笑み 夕変らひ 吹く風の 見えぬがごとく 行く水の 止まらぬごとく 常もなく うつろふ見れば にはたづみ 流るる涙 留めかねつも ","#[仮名],あめつちの,とほきはじめよ,よのなかは,つねなきものと,かたりつぎ,ながらへきたれ,あまのはら,ふりさけみれば,てるつきも,みちかけしけり,あしひきの,やまのこぬれも,はるされば,はなさきにほひ,あきづけば,つゆしもおひて,かぜまじり,もみちちりけり,うつせみも,かくのみならし,くれなゐの,いろもうつろひ,ぬばたまの,くろかみかはり,あさのゑみ,ゆふへかはらひ,ふくかぜの,みえぬがごとく,ゆくみづの,とまらぬごとく,つねもなく,うつろふみれば,にはたづみ,ながるるなみた,とどめかねつも","#[左注]","#[校異]興 -> ち [西(左貼紙訂正)][文][紀]","#[事項],天平勝宝2年3月,年紀,作者:大伴家持,無常,憶良,富山,高岡","#[訓異]
あめつちの[寛],
とほきはじめよ,[寛]とほきはしめよ,
よのなかは[寛],
つねなきものと[寛],
かたりつぎ,[寛]かたりつき,
ながらへきたれ,[寛]なからへきたれ,
あまのはら[寛],
ふりさけみれば,[寛]ふりさけみれは,
てるつきも[寛],
みちかけしけり[寛],
あしひきの[寛],
やまのこぬれも[寛],
はるされば,[寛]はるされは,
はなさきにほひ[寛],
あきづけば,[寛]あきつけは,
つゆしもおひて[寛],
かぜまじり,[寛]かせましり,
もみちちりけり[寛],
うつせみも[寛],
かくのみならし[寛],
くれなゐの[寛],
いろもうつろひ[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
くろかみかはり[寛],
あさのゑみ[寛],
ゆふへかはらひ[寛],
ふくかぜの,[寛]ふくかせの,
みえぬがごとく,[寛]みえぬかことく,
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
とまらぬごとく,[寛]とまらぬことく,
つねもなく[寛],
うつろふみれば,[寛]うつろふみれは,
にはたづみ,[寛]にはたつみ,
ながるるなみた,[寛]なかるるなみた,
とどめかねつも,[寛]ととめかねつも,
" "#[番号]19/4161","#[題詞](悲世間無常歌一首[并短歌])","#[原文]言等波奴 木尚春開 秋都氣婆 毛美知遅良久波 常乎奈美許曽 [一云 常<无>牟等曽] ","#[訓読]言とはぬ木すら春咲き秋づけばもみち散らくは常をなみこそ [一云 常なけむとぞ] ","#[仮名],こととはぬ,きすらはるさき,あきづけば,もみちぢらくは,つねをなみこそ,[つねなけむとぞ]","#[左注]","#[校異]無 -> 无 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年3月,年紀,作者:大伴家持,植物,無常,憶良,富山,高岡,推敲","#[訓異]
こととはぬ[寛],
きすらはるさき[寛],
あきづけば,[寛]あきつけは,
もみちぢらくは,[寛]もみちちらくは,
つねをなみこそ[寛],
[つねなけむとぞ],[寛]つねなけむとそ,
" "#[番号]19/4162","#[題詞](悲世間無常歌一首[并短歌])","#[原文]宇都世美能 常<无>見者 世間尓 情都氣受弖 念日曽於保伎 [一云 嘆日曽於保吉] ","#[訓読]うつせみの常なき見れば世の中に心つけずて思ふ日ぞ多き [一云 嘆く日ぞ多き] ","#[仮名],うつせみの,つねなきみれば,よのなかに,こころつけずて,おもふひぞおほき,[なげくひぞおほき]","#[左注]","#[校異]無 -> 无 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年3月,年紀,作者:大伴家持,無常,推敲,悲嘆,憶良,富山,高岡","#[訓異]
うつせみの[寛],
つねなきみれば,[寛]つねなきみれは,
よのなかに[寛],
こころつけずて,[寛]こころつきすて,
おもふひぞおほき,[寛]おもふひそおほき,
[なげくひぞおほき],[寛]なけくひそおほき,
" "#[番号]19/4163","#[題詞]豫作七夕歌一首","#[原文]妹之袖 和礼枕可牟 河湍尓 霧多知和多礼 左欲布氣奴刀尓","#[訓読]妹が袖我れ枕かむ川の瀬に霧立ちわたれさ夜更けぬとに","#[仮名],いもがそで,われまくらかむ,かはのせに,きりたちわたれ,さよふけぬとに","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年3月,年紀,作者:大伴家持,予作,七夕,儲作,富山,高岡","#[訓異]
いもがそで,[寛]いもかそて,
われまくらかむ,[寛]われまくらせむ,
かはのせに[寛],
きりたちわたれ[寛],
さよふけぬとに[寛],
" "#[番号]19/4164","#[題詞]慕振勇士之名歌一首[并短歌]","#[原文]知智乃實乃 父能美許等 波播蘇葉乃 母能美己等 於保呂可尓 情盡而 念良牟 其子奈礼夜母 大夫夜 <无>奈之久可在 梓弓 須恵布理於許之 投矢毛知 千尋射和多之 劔刀 許思尓等理波伎 安之比奇能 八峯布美越 左之麻久流 情不障 後代乃 可多利都具倍久 名乎多都倍志母 ","#[訓読]ちちの実の 父の命 ははそ葉の 母の命 おほろかに 心尽して 思ふらむ その子なれやも 大夫や 空しくあるべき 梓弓 末振り起し 投矢持ち 千尋射わたし 剣大刀 腰に取り佩き あしひきの 八つ峰踏み越え さしまくる 心障らず 後の世の 語り継ぐべく 名を立つべしも ","#[仮名],ちちのみの,ちちのみこと,ははそばの,ははのみこと,おほろかに,こころつくして,おもふらむ,そのこなれやも,ますらをや,むなしくあるべき,あづさゆみ,すゑふりおこし,なげやもち,ちひろいわたし,つるぎたち,こしにとりはき,あしひきの,やつをふみこえ,さしまくる,こころさやらず,のちのよの,かたりつぐべく,なをたつべしも","#[左注](右二首追和山上憶良臣作歌)","#[校異]無 -> 无 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年3月,年紀,作者:大伴家持,憶良,追和,枕詞,植物,儒教,高岡,富山","#[訓異]
ちちのみの[寛],
ちちのみこと[寛],
ははそばの,[寛]ははそはの,
ははのみこと[寛],
おほろかに[寛],
こころつくして[寛],
おもふらむ[寛],
そのこなれやも[寛],
ますらをや[寛],
むなしくあるべき,[寛]むなしくあるへき,
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
すゑふりおこし[寛],
なげやもち,[寛]なくやもち,
ちひろいわたし[寛],
つるぎたち,[寛]つるきたち,
こしにとりはき[寛],
あしひきの[寛],
やつをふみこえ[寛],
さしまくる[寛],
こころさやらず,[寛]こころさはらす,
のちのよの[寛],
かたりつぐべく,[寛]かたりつくへく,
なをたつべしも,[寛]なをたつへしも,
" "#[番号]19/4165","#[題詞](慕振勇士之名歌一首[并短歌])","#[原文]大夫者 名乎之立倍之 後代尓 聞継人毛 可多里都具我祢","#[訓読]大夫は名をし立つべし後の世に聞き継ぐ人も語り継ぐがね","#[仮名],ますらをは,なをしたつべし,のちのよに,ききつぐひとも,かたりつぐがね","#[左注]右二首追和山上憶良臣作歌","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年3月,年紀,作者:大伴家持,憶良,追和,儒教,高岡,富山","#[訓異]
ますらをは[寛],
なをしたつべし,[寛]なをしたつへし,
のちのよに[寛],
ききつぐひとも,[寛]ききつくひとも,
かたりつぐがね,[寛]かたりつくかね,
" "#[番号]19/4166","#[題詞]詠霍公鳥并時花歌一首[并短歌]","#[原文]毎時尓 伊夜目都良之久 八千種尓 草木花左伎 喧鳥乃 音毛更布 耳尓聞 眼尓視其等尓 宇知嘆 之奈要宇良夫礼 之努比都追 有争波之尓 許能久礼<能> 四月之立者 欲其母理尓 鳴霍公鳥 従古昔 可多<里>都藝都流 鴬之 宇都之真子可母 菖蒲 花橘乎 D嬬良我 珠貫麻泥尓 赤根刺 晝波之賣良尓 安之比奇乃 八丘飛超 夜干玉<乃> 夜者須我良尓 暁 月尓向而 徃還 喧等余牟礼杼 何如将飽足 ","#[訓読]時ごとに いやめづらしく 八千種に 草木花咲き 鳴く鳥の 声も変らふ 耳に聞き 目に見るごとに うち嘆き 萎えうらぶれ 偲ひつつ 争ふはしに 木の暗の 四月し立てば 夜隠りに 鳴く霍公鳥 いにしへゆ 語り継ぎつる 鴬の 現し真子かも あやめぐさ 花橘を 娘子らが 玉貫くまでに あかねさす 昼はしめらに あしひきの 八つ峰飛び越え ぬばたまの 夜はすがらに 暁の 月に向ひて 行き帰り 鳴き響むれど なにか飽き足らむ ","#[仮名],ときごとに,いやめづらしく,やちくさに,くさきはなさき,なくとりの,こゑもかはらふ,みみにきき,めにみるごとに,うちなげき,しなえうらぶれ,しのひつつ,あらそふはしに,このくれの,うづきしたてば,よごもりに,なくほととぎす,いにしへゆ,かたりつぎつる,うぐひすの,うつしまこかも,あやめぐさ,はなたちばなを,をとめらが,たまぬくまでに,あかねさす,ひるはしめらに,あしひきの,やつをとびこえ,ぬばたまの,よるはすがらに,あかときの,つきにむかひて,ゆきがへり,なきとよむれど,なにかあきだらむ","#[左注](右廿日雖未及時依興預作也)","#[校異]罷 -> 能 [万葉集略解] / 理 -> 里 [元][類] / 之 -> 乃 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年3月20日,年紀,作者:大伴家持,動物,依興,予作,預作,植物,高岡,富山","#[訓異]
ときごとに,[寛]ときことに,
いやめづらしく,[寛]いやめつらしく,
やちくさに[寛],
くさきはなさき[寛],
なくとりの[寛],
こゑもかはらふ[寛],
みみにきき[寛],
めにみるごとに,[寛]めにみることに,
うちなげき,[寛]うちなけき,
しなえうらぶれ,[寛]しなゆうらふれ,
しのひつつ[寛],
あらそふはしに[寛],
このくれの,[寛]このくれやみ,
うづきしたてば,[寛]うつきしたては,
よごもりに,[寛]よこもりに,
なくほととぎす,[寛]なくほとときす,
いにしへゆ,[寛]むかしより,
かたりつぎつる,[寛]かたりつきつる,
うぐひすの,[寛]うくひすの,
うつしまこかも[寛],
あやめぐさ,[寛]あやめくさ,
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
をとめらが,[寛]をとめらか,
たまぬくまでに,[寛]たまぬくまてに,
あかねさす[寛],
ひるはしめらに[寛],
あしひきの[寛],
やつをとびこえ,[寛]やつをとひこえ,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よるはすがらに,[寛]よるはすからに,
あかときの,[寛]あかつきの,
つきにむかひて[寛],
ゆきがへり,[寛]ゆきかへり,
なきとよむれど,[寛]なきとよむれと,
なにかあきだらむ,[寛]いかかあきたらむ,
" "#[番号]19/4167","#[題詞](詠霍公鳥并時花歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]毎時 弥米頭良之久 咲花乎 折毛不折毛 見良久之余志<母>","#[訓読]時ごとにいやめづらしく咲く花を折りも折らずも見らくしよしも","#[仮名],ときごとに,いやめづらしく,さくはなを,をりもをらずも,みらくしよしも","#[左注](右廿日雖未及時依興預作也)","#[校異]毛 -> 母 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年3月20日,年紀,作者:大伴家持,依興,予作,預作,植物,高岡,富山","#[訓異]
ときごとに,[寛]ときことに,
いやめづらしく,[寛]いやめつらしく,
さくはなを[寛],
をりもをらずも,[寛]をりもをらすも,
みらくしよしも[寛],
" "#[番号]19/4168","#[題詞](詠霍公鳥并時花歌一首[并短歌](反歌二首))","#[原文]毎年尓 来喧毛能由恵 霍公鳥 聞婆之努波久 不相日乎於保美 [毎年謂之等之乃波]","#[訓読]毎年に来鳴くものゆゑ霍公鳥聞けば偲はく逢はぬ日を多み [毎年謂之等之乃波]","#[仮名],としのはに,きなくものゆゑ,ほととぎす,きけばしのはく,あはぬひをおほみ","#[左注]右廿日雖未及時依興預作也","#[校異]也 [元] 之","#[事項],天平勝宝2年3月20日,年紀,作者:大伴家持,依興,予作,預作,動物,高岡,富山","#[訓異]
としのはに[寛],
きなくものゆゑ[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きけばしのはく,[寛]きけはしのはく,
あはぬひをおほみ[寛],
" "#[番号]19/4169","#[題詞]為家婦贈在京尊母所誂作歌一首[并短歌]","#[原文]霍公鳥 来喧五月尓 咲尓保布 花橘乃 香吉 於夜能御言 朝暮尓 不聞日麻祢久 安麻射可流 夷尓之居者 安之比奇乃 山乃多乎里尓 立雲乎 余曽能未見都追 嘆蘇良 夜須<家>奈久尓 念蘇良 苦伎毛能乎 奈呉乃海部之 潜取云 真珠乃 見我保之御面 多太向 将見時麻泥波 松栢乃 佐賀延伊麻佐祢 尊安我吉美 [御面謂之美於毛和]","#[訓読]霍公鳥 来鳴く五月に 咲きにほふ 花橘の かぐはしき 親の御言 朝夕に 聞かぬ日まねく 天離る 鄙にし居れば あしひきの 山のたをりに 立つ雲を よそのみ見つつ 嘆くそら 安けなくに 思ふそら 苦しきものを 奈呉の海人の 潜き取るといふ 白玉の 見が欲し御面 直向ひ 見む時までは 松柏の 栄えいまさね 貴き我が君 [御面謂之美於毛和]","#[仮名],ほととぎす,きなくさつきに,さきにほふ,はなたちばなの,かぐはしき,おやのみこと,あさよひに,きかぬひまねく,あまざかる,ひなにしをれば,あしひきの,やまのたをりに,たつくもを,よそのみみつつ,なげくそら,やすけなくに,おもふそら,くるしきものを,なごのあまの,かづきとるといふ,しらたまの,みがほしみおもわ,ただむかひ,みむときまでは,まつかへの,さかえいまさね,たふときあがきみ","#[左注]","#[校異]家久 -> 家 [元]","#[事項],天平勝宝2年3月,年紀,作者:大伴家持,動物,植物,枕詞,贈答,代作,坂上郎女,坂上大嬢,寿歌,恋情,高岡,富山","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きなくさつきに[寛],
さきにほふ[寛],
はなたちばなの,[寛]はなたちはなの,
かぐはしき,[寛]かをよしみ,
おやのみこと,[寛]おやのみことの,
あさよひに,[寛]あさゆふに,
きかぬひまねく,[寛]きかぬひまなく,
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなにしをれば,[寛]ひなにしをれは,
あしひきの[寛],
やまのたをりに[寛],
たつくもを[寛],
よそのみみつつ[寛],
なげくそら,[寛]なけくそら,
やすけなくに,[寛]やすけくなくに,
おもふそら[寛],
くるしきものを[寛],
なごのあまの,[寛]なこのあまの,
かづきとるといふ,[寛]かつきとるてふ,
しらたまの[寛],
みがほしみおもわ,[寛]みかほしみおもわ,
ただむかひ,[寛]たたむかひ,
みむときまでは,[寛]みむときまては,
まつかへの[寛],
さかえいまさね[寛],
たふときあがきみ,[寛]たうときあかきみ,
" "#[番号]19/4170","#[題詞](為家婦贈在京尊母所誂作歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]白玉之 見我保之君乎 不見久尓 夷尓之乎礼婆 伊家流等毛奈之","#[訓読]白玉の見が欲し君を見ず久に鄙にし居れば生けるともなし","#[仮名],しらたまの,みがほしきみを,みずひさに,ひなにしをれば,いけるともなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年3月,年紀,作者:大伴家持,贈答,代作,坂上郎女,坂上大嬢,恋情,高岡,富山","#[訓異]
しらたまの,[寛]しらたまの,
みがほしきみを,[寛]みかほしきみを,
みずひさに,[寛]みすひさに,
ひなにしをれば,[寛]ひなにしをれは,
いけるともなし[寛],
" "#[番号]19/4171","#[題詞]廿四日應立夏四月節也 因此廿三日之暮忽思霍公鳥暁喧聲作歌二首","#[原文]常人毛 起都追聞曽 霍公鳥 此暁尓 来喧始音","#[訓読]常人も起きつつ聞くぞ霍公鳥この暁に来鳴く初声","#[仮名],つねひとも,おきつつきくぞ,ほととぎす,このあかときに,きなくはつこゑ","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年3月23日,年紀,作者:大伴家持,動物,季節,高岡,富山,立夏","#[訓異]
つねひとも[寛],
おきつつきくぞ,[寛]おきつつきくそ,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
このあかときに,[寛]このあかつきに,
きなくはつこゑ[寛],
" "#[番号]19/4172","#[題詞](廿四日應立夏四月節也 因此廿三日之暮忽思霍公鳥暁喧聲作歌二首)","#[原文]霍公鳥 来<喧>響者 草等良牟 花橘乎 屋戸尓波不殖而","#[訓読]霍公鳥来鳴き響めば草取らむ花橘を宿には植ゑずて","#[仮名],ほととぎす,きなきとよめば,くさとらむ,はなたちばなを,やどにはうゑずて","#[左注]","#[校異]鳴 -> 喧 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年3月23日,年紀,作者:大伴家持,動物,植物,高岡,富山,立夏","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きなきとよめば,[寛]きなきとよまは,
くさとらむ[寛],
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
やどにはうゑずて,[寛]やとにはうえすて,
" "#[番号]19/4173","#[題詞]贈京丹比家歌一首","#[原文]妹乎不見 越國敝尓 經年婆 吾情度乃 奈具流日毛無","#[訓読]妹を見ず越の国辺に年経れば我が心どのなぐる日もなし","#[仮名],いもをみず,こしのくにへに,としふれば,あがこころどの,なぐるひもなし","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年3月,年紀,作者:大伴家持,悲嘆,別離,贈答,丹比氏,代作,坂上大嬢,高岡,富山","#[訓異]
いもをみず,[寛]いもをみす,
こしのくにへに[寛],
としふれば,[寛]としふれは,
あがこころどの,[寛]わかこころとの,
なぐるひもなし,[寛]なくるひもなし,
" "#[番号]19/4174","#[題詞]追和筑紫<大>宰之時春<苑>梅歌一首","#[原文]春裏之 樂終者 梅花 手折乎伎都追 遊尓可有","#[訓読]春のうちの楽しき終は梅の花手折り招きつつ遊ぶにあるべし","#[仮名],はるのうちの,たのしきをへは,うめのはな,たをりをきつつ,あそぶにあるべし","#[左注]右一首廿七日依興作之","#[校異]太 -> 大 [元][文][紀][矢] / 花 -> 苑 [万葉集略解]","#[事項],天平勝宝2年3月27日,年紀,作者:大伴家持,追和,太宰府,梅花宴,宴席,依興,高岡,富山","#[訓異]
はるのうちの[寛],
たのしきをへは[寛],
うめのはな[寛],
たをりをきつつ,[寛]たおりおきつつ,
あそぶにあるべし,[寛]あそふにかあらむ,
" "#[番号]19/4175","#[題詞]詠霍公鳥二首","#[原文]霍公鳥 今来喧曽<无> 菖蒲 可都良久麻泥尓 加流々日安良米也 [毛能波三箇辞闕之]","#[訓読]霍公鳥今来鳴きそむあやめぐさかづらくまでに離るる日あらめや [毛能波三箇辞闕之]","#[仮名],ほととぎす,いまきなきそむ,あやめぐさ,かづらくまでに,かるるひあらめや","#[左注]","#[校異]無 -> 无 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年,年紀,作者:大伴家持,動物,植物,高岡,富山,恋情","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いまきなきそむ[寛],
あやめぐさ,[寛]あやめくさ,
かづらくまでに,[寛]かつらくまてに,
かるるひあらめや[寛],
" "#[番号]19/4176","#[題詞](詠霍公鳥二首)","#[原文]我門従 喧過度 霍公鳥 伊夜奈都可之久 雖聞飽不足 [毛能波C尓乎六箇辞闕之]","#[訓読]我が門ゆ鳴き過ぎ渡る霍公鳥いやなつかしく聞けど飽き足らず [毛能波C尓乎六箇辞闕之]","#[仮名],わがかどゆ,なきすぎわたる,ほととぎす,いやなつかしく,きけどあきたらず","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2,年紀,作者:大伴家持,恋情,動物,高岡,富山","#[訓異]
わがかどゆ,[寛]わかかとゆ,
なきすぎわたる,[寛]なきすきわたる,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いやなつかしく[寛],
きけどあきたらず,[寛]きけとあきたらす,
" "#[番号]19/4177","#[題詞]四月三日贈越前判官大伴宿祢池主霍公鳥歌不勝感舊之意述懐一首[并短歌]","#[原文]和我勢故等 手携而 暁来者 出立向 暮去者 授放見都追 念<暢> 見奈疑之山尓 八峯尓波 霞多奈婢伎 谿敝尓波 海石榴花咲 宇良悲 春之過者 霍公鳥 伊也之伎喧奴 獨耳 聞婆不怜毛 君与吾 隔而戀流 利波山 飛超去而 明立者 松之狭枝尓 暮去者 向月而 菖蒲 玉貫麻泥尓 鳴等余米 安寐不令宿 君乎奈夜麻勢 ","#[訓読]我が背子と 手携はりて 明けくれば 出で立ち向ひ 夕されば 振り放け見つつ 思ひ延べ 見なぎし山に 八つ峰には 霞たなびき 谷辺には 椿花咲き うら悲し 春し過ぐれば 霍公鳥 いやしき鳴きぬ 独りのみ 聞けば寂しも 君と我れと 隔てて恋ふる 砺波山 飛び越え行きて 明け立たば 松のさ枝に 夕さらば 月に向ひて あやめぐさ 玉貫くまでに 鳴き響め 安寐寝しめず 君を悩ませ ","#[仮名],わがせこと,てたづさはりて,あけくれば,いでたちむかひ,ゆふされば,ふりさけみつつ,おもひのべ,みなぎしやまに,やつをには,かすみたなびき,たにへには,つばきはなさき,うらがなし,はるしすぐれば,ほととぎす,いやしきなきぬ,ひとりのみ,きけばさぶしも,きみとあれと,へだててこふる,となみやま,とびこえゆきて,あけたたば,まつのさえだに,ゆふさらば,つきにむかひて,あやめぐさ,たまぬくまでに,なきとよめ,やすいねしめず,きみをなやませ","#[左注]","#[校異]鴨 -> 暢 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年4月3日,年紀,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,動物,植物,恋情,戯笑,懐旧,高岡,富山","#[訓異]
わがせこと,[寛]わかせこと,
てたづさはりて,[寛]てたつさはりて,
あけくれば,[寛]あけくれは,
いでたちむかひ,[寛]いてたちむかひ,
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
ふりさけみつつ[寛],
おもひのべ,[寛]おもふかも,
みなぎしやまに,[寛]みなきしやまに,
やつをには[寛],
かすみたなびき,[寛]かすみたなひき,
たにへには[寛],
つばきはなさき,[寛]つはきはなさき,
うらがなし,[寛]うらかなし,
はるしすぐれば,[寛]はるしすくれは,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いやしきなきぬ[寛],
ひとりのみ[寛],
きけばさぶしも,[寛]きけはさひしも,
きみとあれと,[寛]きみとわれ,
へだててこふる,[寛]へたててこふる,
となみやま[寛],
とびこえゆきて,[寛]とひこえゆきて,
あけたたば,[寛]あけたては,
まつのさえだに,[寛]まつのさえたに,
ゆふさらば,[寛]ゆふされは,
つきにむかひて[寛],
あやめぐさ,[寛]あやめくさ,
たまぬくまでに,[寛]たまぬくまてに,
なきとよめ[寛],
やすいねしめず,[寛]やすいしなさて,
きみをなやませ[寛],
" "#[番号]19/4178","#[題詞](四月三日贈越前判官大伴宿祢池主霍公鳥歌不勝感舊之意述懐一首[并短歌])","#[原文]吾耳 聞婆不怜毛 霍公鳥 <丹>生之山邊尓 伊去鳴<尓毛>","#[訓読]我れのみし聞けば寂しも霍公鳥丹生の山辺にい行き鳴かにも","#[仮名],われのみし,きけばさぶしも,ほととぎす,にふのやまへに,いゆきなかにも","#[左注]","#[校異]舟 -> 丹 [西(訂正)][元][類][紀] / <> -> 尓毛 [西(左書)][元][類][紀]","#[事項],天平勝宝2年4月3日,年紀,作者:大伴家持,動物,恋情,戯笑,大伴池主,贈答,懐旧,高岡,富山","#[訓異]
われのみし,[寛]ひとりのみ,
きけばさぶしも,[寛]きけはさひしも,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
にふのやまへに[寛],
いゆきなかにも,[寛]いゆきなくにも,
" "#[番号]19/4179","#[題詞](四月三日贈越前判官大伴宿祢池主霍公鳥歌不勝感舊之意述懐一首[并短歌])","#[原文]霍公鳥 夜喧乎為管 <和>我世兒乎 安宿勿令寐 由米情在","#[訓読]霍公鳥夜鳴きをしつつ我が背子を安寐な寝しめゆめ心あれ","#[仮名],ほととぎす,よなきをしつつ,わがせこを,やすいなねしめ,ゆめこころあれ","#[左注]","#[校異]<> -> 和 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年4月3日,年紀,作者:大伴家持,戯笑,大伴池主,贈答,恋情,懐旧,高岡,富山","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
よなきをしつつ[寛],
わがせこを,[寛]わかせこを,
やすいなねしめ,[寛]やすいしなすて,
ゆめこころあれ[寛],
" "#[番号]19/4180","#[題詞]不飽感霍公鳥之情述懐作歌一首[并短歌]","#[原文]春過而 夏来向者 足桧木乃 山呼等余米 左夜中尓 鳴霍公鳥 始音乎 聞婆奈都可之 菖蒲 花橘乎 貫交 可頭良久麻<泥>尓 里響 喧渡礼騰母 尚之努波由 ","#[訓読]春過ぎて 夏来向へば あしひきの 山呼び響め さ夜中に 鳴く霍公鳥 初声を 聞けばなつかし あやめぐさ 花橘を 貫き交へ かづらくまでに 里響め 鳴き渡れども なほし偲はゆ ","#[仮名],はるすぎて,なつきむかへば,あしひきの,やまよびとよめ,さよなかに,なくほととぎす,はつこゑを,きけばなつかし,あやめぐさ,はなたちばなを,ぬきまじへ,かづらくまでに,さととよめ,なきわたれども,なほししのはゆ","#[左注]","#[校異]面 -> 泥 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年4月,年紀,作者:大伴家持,動物,懐旧,恋情,植物,高岡,富山","#[訓異]
はるすぎて,[寛]はるすきて,
なつきむかへば,[寛]なつきむかへは,
あしひきの[寛],
やまよびとよめ,[寛]やまよひとよめ,
さよなかに[寛],
なくほととぎす,[寛]なくほとときす,
はつこゑを[寛],
きけばなつかし,[寛]きけはなつかし,
あやめぐさ,[寛]あやめくさ,
はなたちばなを,[寛]はなたちはなを,
ぬきまじへ,[寛]ぬきましへ,
かづらくまでに,[寛]かつらぬくまてに,
さととよめ,[寛]さととよみ,
なきわたれども,[寛]なきわたれとも,
なほししのはゆ[寛],
" "#[番号]19/4181","#[題詞](不飽感霍公鳥之情述懐作歌一首[并短歌])反歌三首","#[原文]左夜深而 暁月尓 影所見而 鳴霍公鳥 聞者夏借","#[訓読]さ夜更けて暁月に影見えて鳴く霍公鳥聞けばなつかし","#[仮名],さよふけて,あかときつきに,かげみえて,なくほととぎす,きけばなつかし","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月,年紀,作者:大伴家持,動物,懐旧,恋情,高岡,富山","#[訓異]
さよふけて[寛],
あかときつきに,[寛]あかつきつきに,
かげみえて,[寛]かけみえて,
なくほととぎす,[寛]なくほとときす,
きけばなつかし,[寛]きけはなつかし,
" "#[番号]19/4182","#[題詞]((不飽感霍公鳥之情述懐作歌一首[并短歌])反歌三首)","#[原文]霍公鳥 雖聞不足 網取尓 獲而奈都氣奈 可礼受鳴金","#[訓読]霍公鳥聞けども飽かず網捕りに捕りてなつけな離れず鳴くがね","#[仮名],ほととぎす,きけどもあかず,あみとりに,とりてなつけな,かれずなくがね","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月,年紀,作者:大伴家持,動物,高岡,富山","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
きけどもあかず,[寛]きけともあかぬ,
あみとりに[寛],
とりてなつけな[寛],
かれずなくがね,[寛]かれすなくかね,
" "#[番号]19/4183","#[題詞]((不飽感霍公鳥之情述懐作歌一首[并短歌])反歌三首)","#[原文]霍公鳥 飼通良婆 今年經而 来向夏<波> 麻豆将喧乎","#[訓読]霍公鳥飼ひ通せらば今年経て来向ふ夏はまづ鳴きなむを","#[仮名],ほととぎす,かひとほせらば,ことしへて,きむかふなつは,まづなきなむを","#[左注]","#[校異]婆 -> 波 [元][類][文]","#[事項],天平勝宝2年4月,年紀,作者:大伴家持,動物,高岡,富山","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
かひとほせらば,[寛]かひとほせらは,
ことしへて[寛],
きむかふなつは,[寛]いまこむなつは,
まづなきなむを,[寛]まつなきなむを,
" "#[番号]19/4184","#[題詞]従京師贈来歌一首","#[原文]山吹乃 花執持而 都礼毛奈久 可礼尓之妹乎 之努比都流可毛","#[訓読]山吹の花取り持ちてつれもなく離れにし妹を偲ひつるかも","#[仮名],やまぶきの,はなとりもちて,つれもなく,かれにしいもを,しのひつるかも","#[左注]右四月五日従留女之女郎所送也","#[校異]女之 [類] 京","#[事項],天平勝宝2年4月5日,年紀,作者:留女女郎,家持妹,大伴家持,贈答,坂上大嬢,恋情,富山,高岡","#[訓異]
やまぶきの,[寛]やまふきの,
はなとりもちて[寛],
つれもなく[寛],
かれにしいもを[寛],
しのひつるかも[寛],
" "#[番号]19/4185","#[題詞]詠山振花歌一首[并短歌]","#[原文]宇都世美波 戀乎繁美登 春麻氣C 念繁波 引攀而 折毛不折毛 毎見 情奈疑牟等 繁山之 谿敝尓生流 山振乎 屋戸尓引殖而 朝露尓 仁保敝流花乎 毎見 念者不止 戀志繁母 ","#[訓読]うつせみは 恋を繁みと 春まけて 思ひ繁けば 引き攀ぢて 折りも折らずも 見るごとに 心なぎむと 茂山の 谷辺に生ふる 山吹を 宿に引き植ゑて 朝露に にほへる花を 見るごとに 思ひはやまず 恋し繁しも ","#[仮名],うつせみは,こひをしげみと,はるまけて,おもひしげけば,ひきよぢて,をりもをらずも,みるごとに,こころなぎむと,しげやまの,たにへにおふる,やまぶきを,やどにひきうゑて,あさつゆに,にほへるはなを,みるごとに,おもひはやまず,こひししげしも","#[左注]","#[校異]殖 [元][類][細] 植","#[事項],天平勝宝2年4月5日,年紀,作者:大伴家持,植物,恋情,高岡,富山","#[訓異]
うつせみは[寛],
こひをしげみと,[寛]こひをしけみと,
はるまけて[寛],
おもひしげけば,[寛]おもひしけれは,
ひきよぢて,[寛]ひきよちて,
をりもをらずも,[寛]をりもをらすも,
みるごとに,[寛]みることに,
こころなぎむと,[寛]こころなきむと,
しげやまの,[寛]しけやまの,
たにへにおふる[寛],
やまぶきを,[寛]やまふきを,
やどにひきうゑて,[寛]やとにひきうゑて,
あさつゆに[寛],
にほへるはなを[寛],
みるごとに,[寛]みることに,
おもひはやまず,[寛]おもひはやまて,
こひししげしも,[寛]こひししけしも,
" "#[番号]19/4186","#[題詞](詠山振花歌一首[并短歌])","#[原文]山吹乎 屋戸尓殖弖波 見其等尓 念者不止 戀己曽益礼","#[訓読]山吹を宿に植ゑては見るごとに思ひはやまず恋こそまされ","#[仮名],やまぶきを,やどにうゑては,みるごとに,おもひはやまず,こひこそまされ","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月5日,年紀,作者:大伴家持,植物,恋情,高岡,富山","#[訓異]
やまぶきを,[寛]やまふきを,
やどにうゑては,[寛]やとにうゑては,
みるごとに,[寛]みることに,
おもひはやまず,[寛]おもひはやます,
こひこそまされ[寛],
" "#[番号]19/4187","#[題詞]六日遊覧布勢水海作歌一首[并短歌]","#[原文]念度知 大夫能 許<乃>久礼<能> 繁思乎 見明良米 情也良牟等 布勢乃海尓 小船都良奈米 真可伊可氣 伊許藝米具礼婆 乎布能浦尓 霞多奈妣伎 垂姫尓 藤浪咲而 濱浄久 白波左和伎 及々尓 戀波末佐礼杼 今日耳 飽足米夜母 如是己曽 祢年<乃>波尓 春花之 繁盛尓 秋葉能 黄色時尓 安里我欲比 見都追思努波米 此布勢能海乎 ","#[訓読]思ふどち ますらをのこの 木の暗の 繁き思ひを 見明らめ 心遣らむと 布勢の海に 小舟つら並め ま櫂掛け い漕ぎ廻れば 乎布の浦に 霞たなびき 垂姫に 藤波咲て 浜清く 白波騒き しくしくに 恋はまされど 今日のみに 飽き足らめやも かくしこそ いや年のはに 春花の 茂き盛りに 秋の葉の もみたむ時に あり通ひ 見つつ偲はめ この布勢の海を ","#[仮名],おもふどち,ますらをのこの,このくれの,しげきおもひを,みあきらめ,こころやらむと,ふせのうみに,をぶねつらなめ,まかいかけ,いこぎめぐれば,をふのうらに,かすみたなびき,たるひめに,ふぢなみさきて,はまきよく,しらなみさわき,しくしくに,こひはまされど,けふのみに,あきだらめやも,かくしこそ,いやとしのはに,はるはなの,しげきさかりに,あきのはの,もみたむときに,ありがよひ,みつつしのはめ,このふせのうみを","#[左注]","#[校異]能 -> 乃 [元][類] / <> -> 能 [万葉考] / 能 -> 乃 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年4月6日,年紀,作者:大伴家持,地名,氷見,富山,遊覧,国見表現,植物,土地讃美","#[訓異]
おもふどち,[寛]おもふとち,
ますらをのこの[寛],
このくれの,[寛]このくれに,
しげきおもひを,[寛]しけきおもひを,
みあきらめ[寛],
こころやらむと[寛],
ふせのうみに[寛],
をぶねつらなめ,[寛]をふねつらなめ,
まかいかけ[寛],
いこぎめぐれば,[寛]いこきめくれは,
をふのうらに[寛],
かすみたなびき,[寛]かすみたなひき,
たるひめに[寛],
ふぢなみさきて,[寛]ふちなみさきて,
はまきよく[寛],
しらなみさわき[寛],
しくしくに[寛],
こひはまされど,[寛]こひはまされと,
けふのみに[寛],
あきだらめやも,[寛]あきたらめやも,
かくしこそ[寛],
いやとしのはに[寛],
はるはなの[寛],
しげきさかりに,[寛]しけきさかりに,
あきのはの[寛],
もみたむときに,[寛]もみつるときに,
ありがよひ,[寛]ありかよひ,
みつつしのはめ[寛],
このふせのうみを[寛],
" "#[番号]19/4188","#[題詞](六日遊覧布勢水海作歌一首[并短歌])","#[原文]藤奈美能 花盛尓 如此許曽 浦己藝廻都追 年尓之努波米","#[訓読]藤波の花の盛りにかくしこそ浦漕ぎ廻つつ年に偲はめ","#[仮名],ふぢなみの,はなのさかりに,かくしこそ,うらこぎみつつ,としにしのはめ","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月6日,年紀,作者:大伴家持,氷見,富山,遊覧,土地讃美,植物","#[訓異]
ふぢなみの,[寛]ふちなみの,
はなのさかりに[寛],
かくしこそ[寛],
うらこぎみつつ,[寛]うらこきへつつ,
としにしのはめ[寛],
" "#[番号]19/4189","#[題詞]贈水烏越前判官大伴宿祢池主歌一首[并短歌]","#[原文]天離 夷等之在者 彼所此間毛 同許己呂曽 離家 等之乃經去者 宇都勢美波 物念之氣思 曽許由恵尓 情奈具左尓 霍公鳥 喧始音乎 橘 珠尓安倍貫 可頭良伎C 遊波之母 麻須良乎々 等毛奈倍立而 叔羅河 奈頭左比泝 平瀬尓波 左泥刺渡 早湍尓 水烏乎潜都追 月尓日尓 之可志安蘇婆祢 波之伎和我勢故 ","#[訓読]天離る 鄙としあれば そこここも 同じ心ぞ 家離り 年の経ゆけば うつせみは 物思ひ繁し そこゆゑに 心なぐさに 霍公鳥 鳴く初声を 橘の 玉にあへ貫き かづらきて 遊ばむはしも 大夫を 伴なへ立てて 叔羅川 なづさひ上り 平瀬には 小網さし渡し 早き瀬に 鵜を潜けつつ 月に日に しかし遊ばね 愛しき我が背子 ","#[仮名],あまざかる,ひなとしあれば,そこここも,おやじこころぞ,いへざかり,としのへゆけば,うつせみは,ものもひしげし,そこゆゑに,こころなぐさに,ほととぎす,なくはつこゑを,たちばなの,たまにあへぬき,かづらきて,あそばむはしも,ますらをを,ともなへたてて,しくらがは,なづさひのぼり,ひらせには,さでさしわたし,はやきせに,うをかづけつつ,つきにひに,しかしあそばね,はしきわがせこ","#[左注](右九日附使贈之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月9日,年紀,作者:大伴家持,動物,贈答,大伴池主,恋情,地名,高岡,富山,福井,武生","#[訓異]
あまざかる,[寛]あまさかる,
ひなとしあれば,[寛]ひなとしあれは,
そこここも[寛],
おやじこころぞ,[寛]おなしこころそ,
いへざかり,[寛]いへさかり,
としのへゆけば,[寛]としのへゆけは,
うつせみは[寛],
ものもひしげし,[寛]ものおもひしけし,
そこゆゑに[寛],
こころなぐさに,[寛]こころなくさに,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なくはつこゑを[寛],
たちばなの,[寛]たちはなの,
たまにあへぬき[寛],
かづらきて,[寛]かつらきて,
あそばむはしも,[寛]たはるれはしも,
ますらをを[寛],
ともなへたてて,[寛]とももなへたてて,
しくらがは,[寛]しくらかは,
なづさひのぼり,[寛]なつさひのほり,
ひらせには[寛],
さでさしわたし,[寛]さてさしわたし,
はやきせに,[寛]はやせには,
うをかづけつつ,[寛]うをしつめつつ,
つきにひに[寛],
しかしあそばね,[寛]しかしあそはね,
はしきわがせこ,[寛]はしきわかせこ,
" "#[番号]19/4190","#[題詞](贈水烏越前判官大伴宿祢池主歌一首[并短歌])","#[原文]叔羅河 湍乎尋都追 和我勢故波 宇可波多々佐祢 情奈具左尓","#[訓読]叔羅川瀬を尋ねつつ我が背子は鵜川立たさね心なぐさに","#[仮名],しくらがは,せをたづねつつ,わがせこは,うかはたたさね,こころなぐさに","#[左注](右九日附使贈之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月9日,年紀,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,地名,福井,武生,高岡,富山","#[訓異]
しくらがは,[寛]しくらかは,
せをたづねつつ,[寛]せをたつねつつ,
わがせこは,[寛]わかせこは,
うかはたたさね[寛],
こころなぐさに,[寛]こころなくさに,
" "#[番号]19/4191","#[題詞](贈水烏越前判官大伴宿祢池主歌一首[并短歌])","#[原文]鵜河立 取左牟安由能 之我波多波 吾等尓可伎<无>氣 念之念婆","#[訓読]鵜川立ち取らさむ鮎のしがはたは我れにかき向け思ひし思はば","#[仮名],うかはたち,とらさむあゆの,しがはたは,われにかきむけ,おもひしおもはば","#[左注]右九日附使贈之","#[校異]無 -> 无 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年4月9日,年紀,作者:大伴家持,贈答,大伴池主,戯笑,高岡,富山","#[訓異]
うかはたち[寛],
とらさむあゆの[寛],
しがはたは,[寛]しかはたは,
われにかきむけ[寛],
おもひしおもはば,[寛]おもひしおもはは,
" "#[番号]19/4192","#[題詞]詠霍公鳥并藤花一首[并短歌]","#[原文]桃花 紅色尓 々保比多流 面輪<乃>宇知尓 青柳乃 細眉根乎 咲麻我理 朝影見都追 D嬬良我 手尓取持有 真鏡 盖上山尓 許能久礼乃 繁谿邊乎 呼等<余米> 旦飛渡 暮月夜 可蘇氣伎野邊 遥々尓 喧霍公鳥 立久久等 羽觸尓知良須 藤浪乃 花奈都可之美 引攀而 袖尓古伎礼都 染婆染等母 ","#[訓読]桃の花 紅色に にほひたる 面輪のうちに 青柳の 細き眉根を 笑み曲がり 朝影見つつ 娘子らが 手に取り持てる まそ鏡 二上山に 木の暗の 茂き谷辺を 呼び響め 朝飛び渡り 夕月夜 かそけき野辺に はろはろに 鳴く霍公鳥 立ち潜くと 羽触れに散らす 藤波の 花なつかしみ 引き攀ぢて 袖に扱入れつ 染まば染むとも ","#[仮名],もものはな,くれなゐいろに,にほひたる,おもわのうちに,あをやぎの,ほそきまよねを,ゑみまがり,あさかげみつつ,をとめらが,てにとりもてる,まそかがみ,ふたがみやまに,このくれの,しげきたにへを,よびとよめ,あさとびわたり,ゆふづくよ,かそけきのへに,はろはろに,なくほととぎす,たちくくと,はぶれにちらす,ふぢなみの,はななつかしみ,ひきよぢて,そでにこきれつ,しまばしむとも","#[左注](同九日作之)","#[校異]能 -> 乃 [元][類] / 米尓 -> 余米 [代匠記精撰本]","#[事項],天平勝宝2年4月9日,年紀,作者:大伴家持,高岡,富山,動物,植物","#[訓異]
もものはな[寛],
くれなゐいろに[寛],
にほひたる[寛],
おもわのうちに[寛],
あをやぎの,[寛]あをやきの,
ほそきまよねを,[寛]ほそきまゆねを,
ゑみまがり,[寛]ゑみまかり,
あさかげみつつ,[寛]あさかけみつつ,
をとめらが,[寛]をとめらか,
てにとりもてる,[寛]てにとりもたる,
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
ふたがみやまに,[寛]ふたかみやまに,
このくれの[寛],
しげきたにへを,[寛]しけきたにへを,
よびとよめ,[寛]めすらめに,
あさとびわたり,[寛]あさとひわたり,
ゆふづくよ,[寛]ゆふつきよ,
かそけきのへに[寛],
はろはろに,[寛]はるはるに,
なくほととぎす,[寛]なくほとときす,
たちくくと[寛],
はぶれにちらす,[寛]はふれにちらす,
ふぢなみの,[寛]ふちなみの,
はななつかしみ[寛],
ひきよぢて,[寛]ひきよちて,
そでにこきれつ,[寛]そてにこきれつ,
しまばしむとも,[寛]そまはそむとも,
" "#[番号]19/4193","#[題詞](詠霍公鳥并藤花一首[并短歌])","#[原文]霍公鳥 鳴羽觸尓毛 落尓家利 盛過良志 藤奈美能花 [一云 落奴倍美 袖尓古伎納都 藤浪乃花也] ","#[訓読]霍公鳥鳴く羽触れにも散りにけり盛り過ぐらし藤波の花 [一云 散りぬべみ袖に扱入れつ藤波の花] ","#[仮名],ほととぎす,なくはぶれにも,ちりにけり,さかりすぐらし,ふぢなみのはな,[ちりぬべみ,そでにこきれつ,ふぢなみのはな]","#[左注]同九日作之","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月9日,年紀,作者:大伴家持,動物,植物,高岡,富山,推敲","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なくはぶれにも,[寛]なくはふれにも,
ちりにけり[寛],
さかりすぐらし,[寛]さかりすくらし,
ふぢなみのはな,[寛]ふちなみのはな,
[ちりぬべみ,[寛]ちりぬへみ,
そでにこきれつ,[寛]そてにこきれつ,
ふぢなみのはな],[寛]ふちなみのはな,
" "#[番号]19/4194","#[題詞]更怨霍公鳥哢晩歌三首","#[原文]霍公鳥 喧渡奴等 告礼騰毛 吾聞都我受 花波須疑都追","#[訓読]霍公鳥鳴き渡りぬと告ぐれども我れ聞き継がず花は過ぎつつ","#[仮名],ほととぎす,なきわたりぬと,つぐれども,われききつがず,はなはすぎつつ","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月,年紀,作者:大伴家持,動物,恋情,怨恨,高岡,富山","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なきわたりぬと[寛],
つぐれども,[寛]つくれとも,
われききつがず,[寛]われききつかす,
はなはすぎつつ,[寛]はなはすきつつ,
" "#[番号]19/4195","#[題詞](更怨霍公鳥哢晩歌三首)","#[原文]吾幾許 斯<努>波久不知尓 霍公鳥 伊頭敝能山乎 鳴可将超","#[訓読]我がここだ偲はく知らに霍公鳥いづへの山を鳴きか越ゆらむ","#[仮名],わがここだ,しのはくしらに,ほととぎす,いづへのやまを,なきかこゆらむ","#[左注]","#[校異]奴 -> 努 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年4月,年紀,作者:大伴家持,動物,怨恨,高岡,富山","#[訓異]
わがここだ,[寛]わかここた,
しのはくしらに[寛],
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いづへのやまを,[寛]いつへのやまを,
なきかこゆらむ,[寛]なきかゆこらむ,
" "#[番号]19/4196","#[題詞](更怨霍公鳥哢晩歌三首)","#[原文]月立之 日欲里乎伎都追 敲自努比 麻泥騰伎奈可奴 霍公鳥可母","#[訓読]月立ちし日より招きつつうち偲ひ待てど来鳴かぬ霍公鳥かも","#[仮名],つきたちし,ひよりをきつつ,うちしのひ,まてどきなかぬ,ほととぎすかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月,年紀,作者:大伴家持,動物,怨恨,高岡,富山","#[訓異]
つきたちし[寛],
ひよりをきつつ[寛],
うちしのひ[寛],
まてどきなかぬ,[寛]まてときなかぬ,
ほととぎすかも,[寛]ほとときすかも,
" "#[番号]19/4197","#[題詞]贈京人歌二首","#[原文]妹尓似 草等見之欲里 吾標之 野邊之山吹 誰可手乎里之","#[訓読]妹に似る草と見しより我が標し野辺の山吹誰れか手折りし","#[仮名],いもににる,くさとみしより,わがしめし,のへのやまぶき,たれかたをりし","#[左注](右為贈留女之女郎所誂家婦作也 [女郎者即大伴家持之妹])","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月,年紀,作者:大伴家持,植物,留女女郎,家持妹,坂上大嬢,代作,高岡,富山","#[訓異]
いもににる[寛],
くさとみしより[寛],
わがしめし,[寛]わかしめし,
のへのやまぶき,[寛]のへのやまふき,
たれかたをりし[寛],
" "#[番号]19/4198","#[題詞](贈京人歌二首)","#[原文]都礼母奈久 可礼尓之毛能登 人者雖云 不相日麻祢美 念曽吾為流","#[訓読]つれもなく離れにしものと人は言へど逢はぬ日まねみ思ひぞ我がする","#[仮名],つれもなく,かれにしものと,ひとはいへど,あはぬひまねみ,おもひぞわがする","#[左注]右為贈留女之女郎所誂家婦作也 [女郎者即大伴家持之妹]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月,年紀,作者:大伴家持,留女女郎,家持妹,坂上大嬢,代作,恋情,悲別,高岡,富山","#[訓異]
つれもなく[寛],
かれにしものと[寛],
ひとはいへど,[寛]ひとはいへと,
あはぬひまねみ[寛],
おもひぞわがする,[寛]おもひそわかする,
" "#[番号]19/4199","#[題詞]十二日遊覧布勢水海船泊於多<I>灣望<見>藤花各述懐作歌四首","#[原文]藤奈美<乃> 影成海之 底清美 之都久石乎毛 珠等曽吾見流","#[訓読]藤波の影なす海の底清み沈く石をも玉とぞ我が見る","#[仮名],ふぢなみの,かげなすうみの,そこきよみ,しづくいしをも,たまとぞわがみる","#[左注]守大伴宿祢家持","#[校異]祐 -> I [元][文][紀][温] / 月 -> 見 [西(訂正右書)][元][文][紀] / 能 -> 乃 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年4月12日,年紀,作者:大伴家持,遊覧,氷見,富山,植物,土地讃美","#[訓異]
ふぢなみの,[寛]ふちなみの,
かげなすうみの,[寛]かけなるうみの,
そこきよみ[寛],
しづくいしをも,[寛]しつくいしをも,
たまとぞわがみる,[寛]たまとそわかみる,
" "#[番号]19/4200","#[題詞](十二日遊覧布勢水海船泊於多<I>灣望<見>藤花各述懐作歌四首)","#[原文]多I乃浦能 底左倍尓保布 藤奈美乎 加射之C将去 不見人之為","#[訓読]多胡の浦の底さへにほふ藤波をかざして行かむ見ぬ人のため","#[仮名],たこのうらの,そこさへにほふ,ふぢなみを,かざしてゆかむ,みぬひとのため","#[左注]次官内蔵忌寸縄麻呂","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月12日,年紀,作者:内蔵縄麻呂,遊覧,氷見,富山,植物,地名","#[訓異]
たこのうらの[寛],
そこさへにほふ[寛],
ふぢなみを,[寛]ふちなみを,
かざしてゆかむ,[寛]かさしてゆかむ,
みぬひとのため[寛],
" "#[番号]19/4201","#[題詞](十二日遊覧布勢水海船泊於多<I>灣望<見>藤花各述懐作歌四首)","#[原文]伊佐左可尓 念而来之乎 多I乃浦尓 開流藤見而 一夜可經","#[訓読]いささかに思ひて来しを多胡の浦に咲ける藤見て一夜経ぬべし","#[仮名],いささかに,おもひてこしを,たこのうらに,さけるふぢみて,ひとよへぬべし","#[左注]判官久米朝臣廣縄","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月12日,年紀,作者:久米広縄,地名,氷見,富山,遊覧,土地讃美","#[訓異]
いささかに[寛],
おもひてこしを[寛],
たこのうらに[寛],
さけるふぢみて,[寛]さけるふちみて,
ひとよへぬべし,[寛]ひとよへぬへし,
" "#[番号]19/4202","#[題詞](十二日遊覧布勢水海船泊於多<I>灣望<見>藤花各述懐作歌四首)","#[原文]藤奈美乎 借廬尓造 灣廻為流 人等波不知尓 海部等可見良牟","#[訓読]藤波を仮廬に作り浦廻する人とは知らに海人とか見らむ","#[仮名],ふぢなみを,かりいほにつくり,うらみする,ひととはしらに,あまとかみらむ","#[左注]久米朝臣継麻呂","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月12日,年紀,作者:久米継麻呂,植物,遊覧,氷見,富山","#[訓異]
ふぢなみを,[寛]ふちなみを,
かりいほにつくり,[寛]かりほにつくり,
うらみする,[寛]あさりする,
ひととはしらに[寛],
あまとかみらむ[寛],
" "#[番号]19/4203","#[題詞]恨霍公鳥不喧歌一首","#[原文]家尓去而 奈尓乎将語 安之比奇能 山霍公鳥 一音毛奈家","#[訓読]家に行きて何を語らむあしひきの山霍公鳥一声も鳴け","#[仮名],いへにゆきて,なにをかたらむ,あしひきの,やまほととぎす,ひとこゑもなけ","#[左注]判官久米朝臣廣縄","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月12日,年紀,作者:久米広縄,動物,枕詞,氷見,富山,みやげ,遊覧","#[訓異]
いへにゆきて[寛],
なにをかたらむ[寛],
あしひきの[寛],
やまほととぎす,[寛]やまほとときす,
ひとこゑもなけ[寛],
" "#[番号]19/4204","#[題詞]見攀折保寶葉歌二首","#[原文]吾勢故我 捧而持流 保寶我之婆 安多可毛似加 青盖","#[訓読]我が背子が捧げて持てるほほがしはあたかも似るか青き蓋","#[仮名],わがせこが,ささげてもてる,ほほがしは,あたかもにるか,あをききぬがさ","#[左注]講師僧恵行","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月12日,年紀,作者:恵行,植物,氷見,富山,遊覧","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
ささげてもてる,[寛]ささけてもたる,
ほほがしは,[寛]ほほかしは,
あたかもにるか[寛],
あをききぬがさ,[寛]あをききぬかさ,
" "#[番号]19/4205","#[題詞](見攀折保寶葉歌二首)","#[原文]皇神祖之 遠御代三世波 射布折 酒飲等伊布曽 此保寶我之波","#[訓読]皇祖の遠御代御代はい重き折り酒飲みきといふぞこのほほがしは","#[仮名],すめろきの,とほみよみよは,いしきをり,きのみきといふぞ,このほほがしは","#[左注]守大伴宿祢家持","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月12日,年紀,作者:大伴家持,植物,遊覧,氷見,富山","#[訓異]
すめろきの[寛],
とほみよみよは,[寛]とほきみよみよは,
いしきをり,[寛]いひきをり,
きのみきといふぞ,[寛]さけのむといふそ,
このほほがしは,[寛]このほほかしは,
" "#[番号]19/4206","#[題詞]還時濱上仰見月光歌一首","#[原文]之夫多尓乎 指而吾行 此濱尓 月夜安伎C牟 馬之末時停息","#[訓読]渋谿をさして我が行くこの浜に月夜飽きてむ馬しまし止め","#[仮名],しぶたにを,さしてわがゆく,このはまに,つくよあきてむ,うましましとめ","#[左注]守大伴宿祢家持","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月12日,年紀,作者:大伴家持,地名,氷見,富山,道行き,遊覧","#[訓異]
しぶたにを,[寛]しふたにを,
さしてわがゆく,[寛]さしてわかゆく,
このはまに[寛],
つくよあきてむ,[寛]つきよあきてむ,
うましましとめ,[寛]うましましとめよ,
" "#[番号]19/4207","#[題詞]廿二日贈判官久米朝臣廣縄霍公鳥怨恨歌一首[并短歌]","#[原文]此間尓之C 曽我比尓所見 和我勢故我 垣都能谿尓 安氣左礼婆 榛之狭枝尓 暮左礼婆 藤之繁美尓 遥々尓 鳴霍公鳥 吾屋戸能 殖木橘 花尓知流 時乎麻<太>之美 伎奈加奈久 曽許波不怨 之可礼杼毛 谷可多頭伎C 家居有 君之聞都々 追氣奈久毛宇之 ","#[訓読]ここにして そがひに見ゆる 我が背子が 垣内の谷に 明けされば 榛のさ枝に 夕されば 藤の繁みに はろはろに 鳴く霍公鳥 我が宿の 植木橘 花に散る 時をまだしみ 来鳴かなく そこは恨みず しかれども 谷片付きて 家居れる 君が聞きつつ 告げなくも憂し ","#[仮名],ここにして,そがひにみゆる,わがせこが,かきつのたにに,あけされば,はりのさえだに,ゆふされば,ふぢのしげみに,はろはろに,なくほととぎす,わがやどの,うゑきたちばな,はなにちる,ときをまだしみ,きなかなく,そこはうらみず,しかれども,たにかたづきて,いへをれる,きみがききつつ,つげなくもうし","#[左注]","#[校異]短歌 [西] 短哥 / 多 -> 太 [類]","#[事項],天平勝宝2年4月22日,年紀,作者:大伴家持,贈答,動物,植物,久米広縄,恋情","#[訓異]
ここにして[寛],
そがひにみゆる,[寛]そかひにみゆる,
わがせこが,[寛]わかせこか,
かきつのたにに[寛],
あけされば,[寛]あけされは,
はりのさえだに,[寛]ならのさえたに,
ゆふされば,[寛]ゆふされは,
ふぢのしげみに,[寛]ふちのしけみに,
はろはろに,[寛]よりよりに,
なくほととぎす,[寛]なくほとときす,
わがやどの,[寛]わかやとの,
うゑきたちばな,[寛]うえきたちはな,
はなにちる[寛],
ときをまだしみ,[寛]ときをまたしみ,
きなかなく[寛],
そこはうらみず,[寛]そこはうらみす,
しかれども,[寛]しかれとも,
たにかたづきて,[寛]たにかたつきて,
いへをれる,[寛]いへゐせる,
きみがききつつ,[寛]きみかききつつ,
つげなくもうし,[寛]つけなくもうし,
" "#[番号]19/4208","#[題詞](廿二日贈判官久米朝臣廣縄霍公鳥怨恨歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]吾幾許 麻C騰来不鳴 霍公鳥 比等里聞都追 不告君可母","#[訓読]我がここだ待てど来鳴かぬ霍公鳥ひとり聞きつつ告げぬ君かも","#[仮名],わがここだ,まてどきなかぬ,ほととぎす,ひとりききつつ,つげぬきみかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月22日,年紀,作者:大伴家持,贈答,動物,久米広縄,怨恨,恋情","#[訓異]
わがここだ,[寛]わかここた,
まてどきなかぬ,[寛]まてときなかぬ,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
ひとりききつつ[寛],
つげぬきみかも,[寛]つかぬきみかも,
" "#[番号]19/4209","#[題詞]詠霍公鳥歌一首[并短歌]","#[原文]多尓知可久 伊敝波乎礼騰母 許太加久C 佐刀波安礼騰母 保登等藝須 伊麻太伎奈加受 奈久許恵乎 伎可麻久保理登 安志多尓波 可度尓伊C多知 由布敝尓波 多尓乎美和多之 古布礼騰毛 比等己恵太尓母 伊麻太伎己要受 ","#[訓読]谷近く 家は居れども 木高くて 里はあれども 霍公鳥 いまだ来鳴かず 鳴く声を 聞かまく欲りと 朝には 門に出で立ち 夕には 谷を見渡し 恋ふれども 一声だにも いまだ聞こえず ","#[仮名],たにちかく,いへはをれども,こだかくて,さとはあれども,ほととぎす,いまだきなかず,なくこゑを,きかまくほりと,あしたには,かどにいでたち,ゆふへには,たにをみわたし,こふれども,ひとこゑだにも,いまだきこえず","#[左注](右廿三日<掾>久米朝臣廣縄和)","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年4月23日,年紀,作者:久米広縄,和歌,大伴家持,贈答,動物","#[訓異]
たにちかく[寛],
いへはをれども,[寛]いへはをれとも,
こだかくて,[寛]こたかくて,
さとはあれども,[寛]さとはあれとも,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
いまだきなかず,[寛]いまたきなかす,
なくこゑを[寛],
きかまくほりと[寛],
あしたには[寛],
かどにいでたち,[寛]かとにいてたち,
ゆふへには[寛],
たにをみわたし[寛],
こふれども,[寛]こふれとも,
ひとこゑだにも,[寛]ひとこゑたにも,
いまだきこえず,[寛]いまたきこえす,
" "#[番号]19/4210","#[題詞](詠霍公鳥歌一首[并短歌])","#[原文]敷治奈美乃 志氣里波須疑奴 安志比紀乃 夜麻保登等藝須 奈騰可伎奈賀奴","#[訓読]藤波の茂りは過ぎぬあしひきの山霍公鳥などか来鳴かぬ","#[仮名],ふぢなみの,しげりはすぎぬ,あしひきの,やまほととぎす,などかきなかぬ","#[左注]右廿三日<掾>久米朝臣廣縄和","#[校異]様 -> 掾 [西(訂正右書)][元][文][紀]","#[事項],天平勝宝2年4月23日,年紀,作者:久米広縄,贈答,和歌,大伴家持,枕詞,動物,植物","#[訓異]
ふぢなみの,[寛]ふちなみの,
しげりはすぎぬ,[寛]しけりはすきぬ,
あしひきの[寛],
やまほととぎす,[寛]やまほとときす,
などかきなかぬ,[寛]なとかきなかぬ,
" "#[番号]19/4211","#[題詞]追同處女墓歌一首[并短歌]","#[原文]古尓 有家流和射乃 久須婆之伎 事跡言継 知努乎登古 宇奈比<壮>子乃 宇都勢美能 名乎競争<登> 玉剋 壽毛須底弖 相争尓 嬬問為家留 D嬬等之 聞者悲左 春花乃 尓太要盛而 秋葉之 尓保比尓照有 惜 身之壮尚 大夫之 語勞美 父母尓 啓別而 離家 海邊尓出立 朝暮尓 満来潮之 八隔浪尓 靡珠藻乃 節間毛 惜命乎 露霜之 過麻之尓家礼 奥墓乎 此間定而 後代之 聞継人毛 伊也遠尓 思努比尓勢餘等 黄楊小櫛 之賀左志家良之 生而靡有 ","#[訓読]古に ありけるわざの くすばしき 事と言ひ継ぐ 智渟壮士 菟原壮士の うつせみの 名を争ふと たまきはる 命も捨てて 争ひに 妻問ひしける 処女らが 聞けば悲しさ 春花の にほえ栄えて 秋の葉の にほひに照れる 惜しき 身の盛りすら 大夫の 言いたはしみ 父母に 申し別れて 家離り 海辺に出で立ち 朝夕に 満ち来る潮の 八重波に 靡く玉藻の 節の間も 惜しき命を 露霜の 過ぎましにけれ 奥城を ここと定めて 後の世の 聞き継ぐ人も いや遠に 偲ひにせよと 黄楊小櫛 しか刺しけらし 生ひて靡けり ","#[仮名],いにしへに,ありけるわざの,くすばしき,ことといひつぐ,ちぬをとこ,うなひをとこの,うつせみの,なをあらそふと,たまきはる,いのちもすてて,あらそひに,つまどひしける,をとめらが,きけばかなしさ,はるはなの,にほえさかえて,あきのはの,にほひにてれる,あたらしき,みのさかりすら,ますらをの,こといたはしみ,ちちははに,まをしわかれて,いへざかり,うみへにいでたち,あさよひに,みちくるしほの,やへなみに,なびくたまもの,ふしのまも,をしきいのちを,つゆしもの,すぎましにけれ,おくつきを,こことさだめて,のちのよの,ききつぐひとも,いやとほに,しのひにせよと,つげをぐし,しかさしけらし,おひてなびけり","#[左注](右五月六日依興大伴宿祢家持作之)","#[校異]牡 -> 壮 [元][類][文][紀] / 等 -> 登 [元][類][文][紀]","#[事項],天平勝宝2年5月6日,年紀,作者:大伴家持,追同,田辺福麻呂,高橋虫麻呂,依興,物語,兎原娘子,高岡,富山,兵庫,神戸","#[訓異]
いにしへに[寛],
ありけるわざの,[寛]ありけるわさの,
くすばしき,[寛]くすはしき,
ことといひつぐ,[寛]ことといひつき,
ちぬをとこ[寛],
うなひをとこの,[寛]うなひたけをの,
うつせみの[寛],
なをあらそふと[寛],
たまきはる[寛],
いのちもすてて[寛],
あらそひに,[寛]あらそふに,
つまどひしける,[寛]つまとひしける,
をとめらが,[寛]をとめらか,
きけばかなしさ,[寛]きけはかなしさ,
はるはなの[寛],
にほえさかえて[寛],
あきのはの[寛],
にほひにてれる[寛],
あたらしき,[寛]をしきみの,
みのさかりすら,[寛]みのさかりなる,
ますらをの[寛],
こといたはしみ[寛],
ちちははに[寛],
まをしわかれて,[寛]まうしわかれて,
いへざかり,[寛]いへさかり,
うみへにいでたち,[寛]へたにいてたち,
あさよひに,[寛]あさゆふに,
みちくるしほの[寛],
やへなみに[寛],
なびくたまもの,[寛]なひくたまもの,
ふしのまも,[寛]つかのまも,
をしきいのちを[寛],
つゆしもの[寛],
すぎましにけれ,[寛]すきましにける,
おくつきを[寛],
こことさだめて,[寛]ここまさためて,
のちのよの[寛],
ききつぐひとも,[寛]ききつくひとも,
いやとほに[寛],
しのひにせよと[寛],
つげをぐし,[寛]つけをくし,
しかさしけらし,[寛]しかさしならし,
おひてなびけり,[寛]おひてなひけり,
" "#[番号]19/4212","#[題詞](追同處女墓歌一首[并短歌])","#[原文]乎等女等之 後<乃>表跡 黄楊小櫛 生更生而 靡家良思母","#[訓読]娘子らが後の標と黄楊小櫛生ひ変り生ひて靡きけらしも","#[仮名],をとめらが,のちのしるしと,つげをぐし,おひかはりおひて,なびきけらしも","#[左注]右五月六日依興大伴宿祢家持作之","#[校異]能 -> 乃 [元][類][古]","#[事項],天平勝宝2年5月6日,年紀,作者:大伴家持,植物,物語,追同,田辺福麻呂,高橋虫麻呂,依興,兎原娘子,物語","#[訓異]
をとめらが,[寛]をとめらか,
のちのしるしと[寛],
つげをぐし,[寛]つけをくし,
おひかはりおひて[寛],
なびきけらしも,[寛]なひきけらしも,
" "#[番号]19/4213","#[題詞]","#[原文]安由乎疾 奈呉<乃>浦廻尓 与須流浪 伊夜千重之伎尓 戀<度>可母","#[訓読]東風をいたみ奈呉の浦廻に寄する波いや千重しきに恋ひわたるかも","#[仮名],あゆをいたみ,なごのうらみに,よするなみ,いやちへしきに,こひわたるかも","#[左注]右一首贈京丹比家","#[校異]能 -> 乃 [元][類][古] / 渡 -> 度 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年5月,年紀,作者:大伴家持,地名,高岡,富山,序詞,望郷,贈答,丹比家","#[訓異]
あゆをいたみ[寛],
なごのうらみに,[寛]なこのうらわに,
よするなみ[寛],
いやちへしきに[寛],
こひわたるかも[寛],
" "#[番号]19/4214","#[題詞]挽歌一首[并短歌]","#[原文]天地之 初時従 宇都曽美能 八十伴男者 大王尓 麻都呂布物跡 定有 官尓之在者 天皇之 命恐 夷放 國乎治等 足日木 山河阻 風雲尓 言者雖通 正不遇 日之累者 思戀 氣衝居尓 玉桙之 道来人之 傳言尓 吾尓語良久 波之伎餘之 君者比来 宇良佐備弖 嘆息伊麻須 世間之 Q家口都良家苦 開花毛 時尓宇都呂布 宇都勢美毛 <无>常阿里家利 足千根之 御母之命 何如可毛 時之波将有乎 真鏡 見礼杼母不飽 珠緒之 惜盛尓 立霧之 失去如久 置露之 消去之如 玉藻成 靡許伊臥 逝水之 留不得常 枉言哉 人之云都流 逆言乎 人之告都流 梓<弓> <弦>爪夜音之 遠音尓毛 聞者悲弥 庭多豆水 流涕 留可祢都母 ","#[訓読]天地の 初めの時ゆ うつそみの 八十伴の男は 大君に まつろふものと 定まれる 官にしあれば 大君の 命畏み 鄙離る 国を治むと あしひきの 山川へだて 風雲に 言は通へど 直に逢はず 日の重なれば 思ひ恋ひ 息づき居るに 玉桙の 道来る人の 伝て言に 我れに語らく はしきよし 君はこのころ うらさびて 嘆かひいます 世間の 憂けく辛けく 咲く花も 時にうつろふ うつせみも 常なくありけり たらちねの 御母の命 何しかも 時しはあらむを まそ鏡 見れども飽かず 玉の緒の 惜しき盛りに 立つ霧の 失せぬるごとく 置く露の 消ぬるがごとく 玉藻なす 靡き臥い伏し 行く水の 留めかねつと たはことか 人の言ひつる およづれか 人の告げつる 梓弓 爪引く夜音の 遠音にも 聞けば悲しみ にはたづみ 流るる涙 留めかねつも ","#[仮名],あめつちの,はじめのときゆ,うつそみの,やそとものをは,おほきみに,まつろふものと,さだまれる,つかさにしあれば,おほきみの,みことかしこみ,ひなざかる,くにををさむと,あしひきの,やまかはへだて,かぜくもに,ことはかよへど,ただにあはず,ひのかさなれば,おもひこひ,いきづきをるに,たまほこの,みちくるひとの,つてことに,われにかたらく,はしきよし,きみはこのころ,うらさびて,なげかひいます,よのなかの,うけくつらけく,さくはなも,ときにうつろふ,うつせみも,つねなくありけり,たらちねの,みははのみこと,なにしかも,ときしはあらむを,まそかがみ,みれどもあかず,たまのをの,をしきさかりに,たつきりの,うせぬるごとく,おくつゆの,けぬるがごとく,たまもなす,なびきこいふし,ゆくみづの,とどめかねつと,たはことか,ひとのいひつる,およづれか,ひとのつげつる,あづさゆみ,つまびくよおとの,とほおとにも,きけばかなしみ,にはたづみ,ながるるなみた,とどめかねつも","#[左注](右大伴宿祢家持弔聟南右大臣家藤原二郎之喪慈母患也 五月廿七日)","#[校異]無 -> 无 [元][類] / 弧 -> 弓弦 [西(訂正頭書)]","#[事項],天平勝宝2年5月27日,年紀,作者:大伴家持,挽歌,枕詞,悲別,哀悼,藤原久須麻呂母,贈答,高岡,富山","#[訓異]
あめつちの[寛],
はじめのときゆ,[寛]はしめのときに,
うつそみの[寛],
やそとものをは[寛],
おほきみに[寛],
まつろふものと[寛],
さだまれる,[寛]さためたる,
つかさにしあれば,[寛]つかさにしあれは,
おほきみの,[寛]すめろきの,
みことかしこみ[寛],
ひなざかる,[寛]ひなさかる,
くにををさむと,[寛]くにをおさむと,
あしひきの[寛],
やまかはへだて,[寛]やまかはへたて,
かぜくもに,[寛]かせくもに,
ことはかよへど,[寛]ことはかよへと,
ただにあはず,[寛]たたにあはす,
ひのかさなれば,[寛]ひのかさなれは,
おもひこひ[寛],
いきづきをるに,[寛]いきつきをるに,
たまほこの[寛],
みちくるひとの,[寛]みちゆきひとの,
つてことに[寛],
われにかたらく[寛],
はしきよし[寛],
きみはこのころ[寛],
うらさびて,[寛]うらさひて,
なげかひいます,[寛]なけきそいます,
よのなかの[寛],
うけくつらけく[寛],
さくはなも[寛],
ときにうつろふ[寛],
うつせみも[寛],
つねなくありけり[寛],
たらちねの[寛],
みははのみこと,[寛]おものみことの,
なにしかも[寛],
ときしはあらむを[寛],
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
みれどもあかず,[寛]みれともあかす,
たまのをの[寛],
をしきさかりに[寛],
たつきりの[寛],
うせぬるごとく,[寛]うせゆくことく,
おくつゆの[寛],
けぬるがごとく,[寛]きえゆくかこと,
たまもなす[寛],
なびきこいふし,[寛]なひきこいふし,
ゆくみづの,[寛]ゆくみつの,
とどめかねつと,[寛]ととめもえすと,
たはことか,[寛]まかことや,
ひとのいひつる[寛],
およづれか,[寛]さかことを,
ひとのつげつる,[寛]ひとのつけつる,
あづさゆみ,[寛]あつさゆみ,
つまびくよおとの,[寛]つまよるおとの,
とほおとにも[寛],
きけばかなしみ,[寛]きけはかなしみ,
にはたづみ,[寛]にはたつみ,
ながるるなみた,[寛]なかるるなみた,
とどめかねつも,[寛]ととめかねつも,
" "#[番号]19/4215","#[題詞](挽歌一首[并短歌])反歌二首","#[原文]遠音毛 君之痛念跡 聞都礼婆 哭耳所泣 相念吾者","#[訓読]遠音にも君が嘆くと聞きつれば哭のみし泣かゆ相思ふ我れは","#[仮名],とほとにも,きみがなげくと,ききつれば,ねのみしなかゆ,あひおもふわれは","#[左注](右大伴宿祢家持弔聟南右大臣家藤原二郎之喪慈母患也 五月廿七日)","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年5月27日,年紀,作者:大伴家持,挽歌,悲別,哀悼,藤原久須麻呂母,贈答,高岡,富山","#[訓異]
とほとにも,[寛]とほおとにも,
きみがなげくと,[寛]きみかなけくと,
ききつれば,[寛]ききつれは,
ねのみしなかゆ,[寛]ねにのみとかる,
あひおもふわれは[寛],
" "#[番号]19/4216","#[題詞]((挽歌一首[并短歌])反歌二首)","#[原文]世間之 <无>常事者 知良牟乎 情盡莫 大夫尓之C","#[訓読]世間の常なきことは知るらむを心尽くすな大夫にして","#[仮名],よのなかの,つねなきことは,しるらむを,こころつくすな,ますらをにして","#[左注]右大伴宿祢家持弔聟南右大臣家藤原二郎之喪慈母患也 五月廿七日","#[校異]無 -> 无 [元][類]","#[事項],天平勝宝2年5月27日,年紀,作者:大伴家持,挽歌,悲別,哀悼,藤原久須麻呂母,贈答,高岡,富山","#[訓異]
よのなかの[寛],
つねなきことは[寛],
しるらむを[寛],
こころつくすな[寛],
ますらをにして[寛],
" "#[番号]19/4217","#[題詞]霖雨へ日作歌一首","#[原文]宇能花乎 令腐霖雨之 始水<邇> 縁木積成 将因兒毛我母","#[訓読]卯の花を腐す長雨の始水に寄る木屑なす寄らむ子もがも","#[仮名],うのはなを,くたすながめの,みづはなに,よるこつみなす,よらむこもがも","#[左注](右二首五月)","#[校異]逝 -> 邇 [代匠記初稿本]","#[事項],天平勝宝2年5月,年紀,作者:大伴家持,植物,序詞,恋情,鬱屈,高岡,富山","#[訓異]
うのはなを[寛],
くたすながめの,[寛]くたすなかめの,
みづはなに,[寛]みつはなに,
よるこつみなす,[寛]よるこつみなし,
よらむこもがも,[寛]よらむこもかも,
" "#[番号]19/4218","#[題詞]見漁夫火光歌一首","#[原文]鮪衝等 海人之燭有 伊射里火之 保尓可将出 吾之下念乎","#[訓読]鮪突くと海人の灯せる漁り火の秀にか出ださむ我が下思ひを","#[仮名],しびつくと,あまのともせる,いざりひの,ほにかいださむ,わがしたもひを","#[左注]右二首五月","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年5月,年紀,作者:大伴家持,恋情,序詞,高岡,富山","#[訓異]
しびつくと,[寛]しひつくと,
あまのともせる[寛],
いざりひの,[寛]いさりひの,
ほにかいださむ,[寛]ほにかいてなむ,
わがしたもひを,[寛]わかしたおもひを,
" "#[番号]19/4219","#[題詞]","#[原文]吾屋戸之 芽子開尓家理 秋風之 将吹乎待者 伊等遠弥可母","#[訓読]我が宿の萩咲きにけり秋風の吹かむを待たばいと遠みかも","#[仮名],わがやどの,はぎさきにけり,あきかぜの,ふかむをまたば,いととほみかも","#[左注]右一首六月十五日見芽子早花作之","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年6月15日,年紀,作者:大伴家持,植物,高岡,富山","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
はぎさきにけり,[寛]はきさきにけり,
あきかぜの,[寛]あきかせの,
ふかむをまたば,[寛]ふかむをまたは,
いととほみかも[寛],
" "#[番号]19/4220","#[題詞]従京師来贈歌一首[并短歌]","#[原文]和多都民能 可味能美許等乃 美久之宜尓 多久波比於伎C 伊都久等布 多麻尓末佐里C 於毛敝里之 安我故尓波安礼騰 宇都世美乃 与能許等和利等 麻須良乎能 比伎能麻尓麻仁 之奈謝可流 古之地乎左之C 波布都多能 和可礼尓之欲理 於吉都奈美 等乎牟麻欲妣伎 於保夫祢能 由久良々々々耳 於毛可宜尓 毛得奈民延都々 可久古非婆 意伊豆久安我未 氣太志安倍牟可母 ","#[訓読]海神の 神の命の み櫛笥に 貯ひ置きて 斎くとふ 玉にまさりて 思へりし 我が子にはあれど うつせみの 世の理と 大夫の 引きのまにまに しなざかる 越道をさして 延ふ蔦の 別れにしより 沖つ波 とをむ眉引き 大船の ゆくらゆくらに 面影に もとな見えつつ かく恋ひば 老いづく我が身 けだし堪へむかも ","#[仮名],わたつみの,かみのみことの,みくしげに,たくはひおきて,いつくとふ,たまにまさりて,おもへりし,あがこにはあれど,うつせみの,よのことわりと,ますらをの,ひきのまにまに,しなざかる,こしぢをさして,はふつたの,わかれにしより,おきつなみ,とをむまよびき,おほぶねの,ゆくらゆくらに,おもかげに,もとなみえつつ,かくこひば,おいづくあがみ,けだしあへむかも","#[左注](右二首大伴氏坂上郎女賜女子大嬢也)","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年,年紀,作者:坂上郎女,贈答,坂上大嬢,枕詞,恋情","#[訓異]
わたつみの[寛],
かみのみことの[寛],
みくしげに,[寛]みくしけに,
たくはひおきて[寛],
いつくとふ[寛],
たまにまさりて[寛],
おもへりし[寛],
あがこにはあれど,[寛]あかこにはあれと,
うつせみの[寛],
よのことわりと[寛],
ますらをの[寛],
ひきのまにまに[寛],
しなざかる,[寛]しなさかる,
こしぢをさして,[寛]こしちをさして,
はふつたの[寛],
わかれにしより[寛],
おきつなみ[寛],
とをむまよびき,[寛]とをむまよひき,
おほぶねの,[寛]おほふねの,
ゆくらゆくらに[寛],
おもかげに,[寛]おもかけに,
もとなみえつつ[寛],
かくこひば,[寛]かくこひは,
おいづくあがみ,[寛]おいつくあかみ,
けだしあへむかも,[寛]けたしあへむかも,
" "#[番号]19/4221","#[題詞](従京師来贈歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]可久婆可里 古<非>之久志安良婆 末蘇可我美 弥奴比等吉奈久 安良麻之母能乎","#[訓読]かくばかり恋しくしあらばまそ鏡見ぬ日時なくあらましものを","#[仮名],かくばかり,こひしくしあらば,まそかがみ,みぬひときなく,あらましものを","#[左注]右二首大伴氏坂上郎女賜女子大嬢也","#[校異]悲 -> 非 [元][類][紀]","#[事項],天平勝宝2年,年紀,作者:坂上郎女,贈答,坂上大嬢,枕詞,恋情","#[訓異]
かくばかり,[寛]かくはかり,
こひしくしあらば,[寛]こひしくしあらは,
まそかがみ,[寛]まそかかみ,
みぬひときなく[寛],
あらましものを[寛],
" "#[番号]19/4222","#[題詞]九月三日宴歌二首","#[原文]許能之具礼 伊多久奈布里曽 和藝毛故尓 美勢牟我多米尓 母美知等里C牟","#[訓読]このしぐれいたくな降りそ我妹子に見せむがために黄葉取りてむ","#[仮名],このしぐれ,いたくなふりそ,わぎもこに,みせむがために,もみちとりてむ","#[左注]右一首<掾>久米朝臣廣縄作之","#[校異]様 -> 掾 [西(訂正右書)][元][文][紀]","#[事項],天平勝宝2年9月3日,年紀,作者:久米広縄,宴席,高岡,富山","#[訓異]
このしぐれ,[寛]このしくれ,
いたくなふりそ[寛],
わぎもこに,[寛]わきもこに,
みせむがために,[寛]みせむかために,
もみちとりてむ[寛],
" "#[番号]19/4223","#[題詞](九月三日宴歌二首)","#[原文]安乎尓与之 奈良比等美牟登 和我世故我 之米家牟毛美知 都知尓於知米也毛","#[訓読]あをによし奈良人見むと我が背子が標けむ黄葉地に落ちめやも","#[仮名],あをによし,ならひとみむと,わがせこが,しめけむもみち,つちにおちめやも","#[左注]右一首守大伴宿祢家持作之","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年9月3日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,高岡,富山","#[訓異]
あをによし[寛],
ならひとみむと[寛],
わがせこが,[寛]わかせこか,
しめけむもみち[寛],
つちにおちめやも[寛],
" "#[番号]19/4224","#[題詞]","#[原文]朝霧之 多奈引田為尓 鳴鴈乎 留得哉 吾屋戸能波義","#[訓読]朝霧のたなびく田居に鳴く雁を留め得むかも我が宿の萩","#[仮名],あさぎりの,たなびくたゐに,なくかりを,とどめえむかも,わがやどのはぎ","#[左注]右一首歌者幸於芳野宮之時藤原皇后御作 但年月未審詳 十月五日河邊朝臣東人傳誦云尓","#[校異]后 [西(右書)] 后宮","#[事項],天平勝宝2年10月5日,年紀,作者:光明皇后,伝承,誦詠,河辺東人,吉野,動物,植物,古歌,高岡,富山","#[訓異]
あさぎりの,[寛]あさきりの,
たなびくたゐに,[寛]たなひくたゐに,
なくかりを[寛],
とどめえむかも,[寛]ととめえてむや,
わがやどのはぎ,[寛]わかやとのはき,
" "#[番号]19/4225","#[題詞]","#[原文]足日木之 山黄葉尓 四頭久相而 将落山道乎 公之超麻久","#[訓読]あしひきの山の黄葉にしづくあひて散らむ山道を君が越えまく","#[仮名],あしひきの,やまのもみちに,しづくあひて,ちらむやまぢを,きみがこえまく","#[左注]右一首同月十六日餞之朝集使少目秦伊美吉石竹時守大伴宿祢家持作之","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年10月16日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,植物,餞別,旅立ち,出発,秦石竹,高岡,富山","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまのもみちに[寛],
しづくあひて,[寛]しつくあひて,
ちらむやまぢを,[寛]ちらむやまちを,
きみがこえまく,[寛]きみかこえまく,
" "#[番号]19/4226","#[題詞]雪日作歌一首","#[原文]此雪之 消遺時尓 去来歸奈 山橘之 實光毛将見","#[訓読]この雪の消残る時にいざ行かな山橘の実の照るも見む","#[仮名],このゆきの,けのこるときに,いざゆかな,やまたちばなの,みのてるもみむ","#[左注]右一首十二月大伴宿祢家持作之","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年12月,年紀,作者:大伴家持,植物,高岡,富山","#[訓異]
このゆきの[寛],
けのこるときに[寛],
いざゆかな,[寛]いさゆかな,
やまたちばなの,[寛]やまたちはなの,
みのてるもみむ[寛],
" "#[番号]19/4227","#[題詞]","#[原文]大殿之 此廻之 雪莫踏祢 數毛 不零雪曽 山耳尓 零之雪曽 由米縁勿 人哉莫履祢 雪者 ","#[訓読]大殿の この廻りの 雪な踏みそね しばしばも 降らぬ雪ぞ 山のみに 降りし雪ぞ ゆめ寄るな 人やな踏みそね 雪は ","#[仮名],おほとのの,このもとほりの,ゆきなふみそね,しばしばも,ふらぬゆきぞ,やまのみに,ふりしゆきぞ,ゆめよるな,ひとやなふみそね,ゆきは","#[左注](右二首歌者三形沙弥承贈左大臣藤原北卿之語作誦之也 聞之傳者笠朝臣子君 復後傳讀者越中國<掾>久米朝臣廣縄是也)","#[校異]","#[事項],天平勝宝2年,年紀,作者:三形沙弥,藤原房前,笠子君,久米広縄,伝誦,予祝,寿歌,宮廷,高岡,富山,古歌","#[訓異]
おほとのの[寛],
このもとほりの[寛],
ゆきなふみそね[寛],
しばしばも,[寛]しはしはも,
ふらぬゆきぞ,[寛]ふらさるゆきそ,
やまのみに[寛],
ふりしゆきぞ,[寛]ふらししゆきそ,
ゆめよるな[寛],
ひとやなふみそね[寛],
ゆきは[寛],
" "#[番号]19/4228","#[題詞]反歌一首","#[原文]有都々毛 御見多麻波牟曽 大殿乃 此母等保里能 雪奈布美曽祢","#[訓読]ありつつも見したまはむぞ大殿のこの廻りの雪な踏みそね","#[仮名],ありつつも,めしたまはむぞ,おほとのの,このもとほりの,ゆきなふみそね","#[左注]右二首歌者三形沙弥承贈左大臣藤原北卿之語作誦之也 聞之傳者笠朝臣子君 復後傳讀者越中國<掾>久米朝臣廣縄是也","#[校異]作 [元] 依 / 様 -> 掾 [元][文][紀]","#[事項],天平勝宝2年,年紀,作者:三形沙弥,藤原房前,笠子君,久米広縄,伝誦,予祝,寿歌,宮廷,高岡,富山,古歌","#[訓異]
ありつつも[寛],
めしたまはむぞ,[寛]めしたまはむそ,
おほとのの[寛],
このもとほりの[寛],
ゆきなふみそね[寛],
" "#[番号]19/4229","#[題詞]天平勝寶三年","#[原文]新 年之初者 弥年尓 雪踏平之 常如此尓毛我","#[訓読]新しき年の初めはいや年に雪踏み平し常かくにもが","#[仮名],あらたしき,としのはじめは,いやとしに,ゆきふみならし,つねかくにもが","#[左注]右一首歌者 正月二日守舘集宴 於時零雪殊多積有四尺焉 即主人大伴宿祢家持作此歌也","#[校異]我 [元] 義","#[事項],天平勝宝3年1月2日,年紀,作者:大伴家持,寿歌,予祝,宴席,高岡,富山","#[訓異]
あらたしき[寛],
としのはじめは,[寛]としのはしめは,
いやとしに[寛],
ゆきふみならし[寛],
つねかくにもが,[寛]つねかくにもか,
" "#[番号]19/4230","#[題詞]","#[原文]落雪乎 腰尓奈都美弖 参来之 印毛有香 年之初尓","#[訓読]降る雪を腰になづみて参ゐて来し験もあるか年の初めに","#[仮名],ふるゆきを,こしになづみて,まゐてこし,しるしもあるか,としのはじめに","#[左注]右一首三日會集介内蔵忌寸縄麻呂之舘宴樂時大伴宿祢家持作之","#[校異]","#[事項],天平勝宝3年1月3日,年紀,作者:大伴家持,寿歌,予祝,宴席,内蔵縄麻呂,高岡,富山","#[訓異]
ふるゆきを[寛],
こしになづみて,[寛]こしになつみて,
まゐてこし,[寛]まゐりこし,
しるしもあるか[寛],
としのはじめに,[寛]としのはしめに,
" "#[番号]19/4231","#[題詞]于時積雪彫成重巌之起奇巧綵發草樹之花 属此<掾>久米朝臣廣縄作歌一首","#[原文]奈泥之故波 秋咲物乎 君宅之 雪巌尓 左家理家流可母","#[訓読]なでしこは秋咲くものを君が家の雪の巌に咲けりけるかも","#[仮名],なでしこは,あきさくものを,きみがいへの,ゆきのいはほに,さけりけるかも","#[左注]","#[校異]様 -> 掾 [元][文][紀]","#[事項],天平勝宝3年1月3日,年紀,作者:久米広縄,植物,宴席,見立て,内蔵縄麻呂,高岡,富山","#[訓異]
なでしこは,[寛]なてしこは,
あきさくものを[寛],
きみがいへの,[寛]きみかいへの,
ゆきのいはほに,[寛]ゆきはいはほに,
さけりけるかも[寛],
" "#[番号]19/4232","#[題詞]遊行女婦蒲生娘子歌一首","#[原文]雪嶋 巌尓殖有 奈泥之故波 千世尓開奴可 君之挿頭尓","#[訓読]雪の嶋巌に植ゑたるなでしこは千代に咲かぬか君がかざしに","#[仮名],ゆきのしま,いはほにうゑたる,なでしこは,ちよにさかぬか,きみがかざしに","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝3年1月3日,年紀,作者:遊行女婦蒲生,宴席,寿歌,植物,見立て,内蔵縄麻呂,高岡,富山","#[訓異]
ゆきのしま,[寛]ゆきしまの,
いはほにうゑたる,[寛]いはほにおふる,
なでしこは,[寛]なてしこは,
ちよにさかぬか,[寛]ちよにさきぬか,
きみがかざしに,[寛]きみかかさしに,
" "#[番号]19/4233","#[題詞]于是諸人酒酣更深鶏鳴 因此主人内蔵伊美吉縄麻呂作歌一首","#[原文]打羽振 鶏者鳴等母 如此許 零敷雪尓 君伊麻左米也母","#[訓読]うち羽振き鶏は鳴くともかくばかり降り敷く雪に君いまさめやも","#[仮名],うちはぶき,とりはなくとも,かくばかり,ふりしくゆきに,きみいまさめやも","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝3年1月3日,年紀,作者:内蔵縄麻呂,動物,宴席,挨拶,引き留め,後朝,高岡,富山","#[訓異]
うちはぶき,[寛]うちはふり,
とりはなくとも[寛],
かくばかり,[寛]かくはかり,
ふりしくゆきに[寛],
きみいまさめやも[寛],
" "#[番号]19/4234","#[題詞]守大伴宿祢家持和歌一首","#[原文]鳴鶏者 弥及鳴杼 落雪之 千重尓積許曽 吾等立可C祢","#[訓読]鳴く鶏はいやしき鳴けど降る雪の千重に積めこそ我が立ちかてね","#[仮名],なくとりは,いやしきなけど,ふるゆきの,ちへにつめこそ,わがたちかてね","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝3年1月3日,年紀,作者:大伴家持,宴席,内蔵縄麻呂,高岡,富山","#[訓異]
なくとりは[寛],
いやしきなけど,[寛]いやしきなけと,
ふるゆきの[寛],
ちへにつめこそ,[寛]ちへにつむこそ,
わがたちかてね[寛],
" "#[番号]19/4235","#[題詞]太政大臣藤原家之縣犬養命婦奉天皇歌一首","#[原文]天雲乎 富呂尓布美安太之 鳴神毛 今日尓益而 可之古家米也母","#[訓読]天雲をほろに踏みあだし鳴る神も今日にまさりて畏けめやも","#[仮名],あまくもを,ほろにふみあだし,なるかみも,けふにまさりて,かしこけめやも","#[左注]右一首傳誦<掾>久米朝臣廣縄也","#[校異]様 -> 掾 [元][文][紀]","#[事項],天平勝宝3年1月3日,年紀,作者:縣犬養三千代,古歌,伝誦,久米広縄,聖武天皇,高岡,富山","#[訓異]
あまくもを[寛],
ほろにふみあだし,[寛]ほろにふみあたし,
なるかみも[寛],
けふにまさりて[寛],
かしこけめやも[寛],
" "#[番号]19/4236","#[題詞]悲傷死妻歌一首[并短歌] [作主未詳]","#[原文]天地之 神者<无>可礼也 愛 吾妻離流 光神 鳴波多D嬬 携手 共将有等 念之尓 情違奴 将言為便 将作為便不知尓 木綿手次 肩尓取<挂> 倭<文>幣乎 手尓取持C 勿令離等 和礼波雖祷 巻而寐之 妹之手本者 雲尓多奈妣久 ","#[訓読]天地の 神はなかれや 愛しき 我が妻離る 光る神 鳴りはた娘子 携はり ともにあらむと 思ひしに 心違ひぬ 言はむすべ 為むすべ知らに 木綿たすき 肩に取り懸け 倭文幣を 手に取り持ちて な放けそと 我れは祈れど 枕きて寝し 妹が手本は 雲にたなびく ","#[仮名],あめつちの,かみはなかれや,うつくしき,わがつまさかる,ひかるかみ,なりはたをとめ,たづさはり,ともにあらむと,おもひしに,こころたがひぬ,いはむすべ,せむすべしらに,ゆふたすき,かたにとりかけ,しつぬさを,てにとりもちて,なさけそと,われはいのれど,まきてねし,いもがたもとは,くもにたなびく","#[左注](右二首傳誦遊行女婦蒲生是也)","#[校異]無 -> 无 [元][類] / 掛 -> 挂 [元][類][文][紀] / 父 -> 文 [元][類]","#[事項],天平勝宝3年1月3日,年紀,挽歌,悲別,亡妻挽歌,伝誦,古歌,遊行女婦蒲生,宴席,高岡,富山","#[訓異]
あめつちの[寛],
かみはなかれや[寛],
うつくしき[寛],
わがつまさかる,[寛]わかつまはなる,
ひかるかみ[寛],
なりはたをとめ,[寛]なるはたをとめ,
たづさはり,[寛]たつさひて,
ともにあらむと[寛],
おもひしに[寛],
こころたがひぬ,[寛]こころたかひぬ,
いはむすべ,[寛]いはむすへ,
せむすべしらに,[寛]せむすへしらに,
ゆふたすき[寛],
かたにとりかけ[寛],
しつぬさを[寛],
てにとりもちて[寛],
なさけそと[寛],
われはいのれど,[寛]われはいのれと,
まきてねし[寛],
いもがたもとは,[寛]いもかたもとは,
くもにたなびく,[寛]くもにたなひく,
" "#[番号]19/4237","#[題詞](悲傷死妻歌一首[并短歌] [作主未詳])反歌一首","#[原文]寤尓等 念C之可毛 夢耳尓 手本巻<寐>等 見者須便奈之","#[訓読]うつつにと思ひてしかも夢のみに手本巻き寝と見ればすべなし","#[仮名],うつつにと,おもひてしかも,いめのみに,たもとまきぬと,みればすべなし","#[左注]右二首傳誦遊行女婦蒲生是也","#[校異]寤 -> 寐 [元][文][古]","#[事項],天平勝宝3年1月3日,年紀,挽歌,悲別,亡妻挽歌,伝誦,古歌,遊行女婦蒲生,宴席,高岡,富山","#[訓異]
うつつにと,[寛]うつつにも,
おもひてしかも[寛],
いめのみに,[寛]ゆめのみに,
たもとまきぬと[寛],
みればすべなし,[寛]みれはすへなし,
" "#[番号]19/4238","#[題詞]二月二日會集于守舘宴作歌一首","#[原文]君之徃 若久尓有婆 梅柳 誰与共可 吾縵可牟","#[訓読]君が行きもし久にあらば梅柳誰れとともにか我がかづらかむ","#[仮名],きみがゆき,もしひさにあらば,うめやなぎ,たれとともにか,わがかづらかむ","#[左注]右判官久米朝臣廣縄以正税帳應入京師 仍守大伴宿祢家持作此歌也 但越中風土梅花柳絮三月初咲耳","#[校異]","#[事項],天平勝宝3年2月2日,年紀,作者:大伴家持,宴席,植物,餞別,旅立ち,出発,久米広縄,高岡,富山","#[訓異]
きみがゆき,[寛]きみかゆき,
もしひさにあらば,[寛]もしひさにあらは,
うめやなぎ,[寛]うめやなき,
たれとともにか[寛],
わがかづらかむ,[寛]わかかつらせむ,
" "#[番号]19/4239","#[題詞]詠霍公鳥歌一首","#[原文]二上之 峯於乃繁尓 許毛<里>尓之 <彼>霍公鳥 待<騰>来奈賀受","#[訓読]二上の峰の上の茂に隠りにしその霍公鳥待てど来鳴かず","#[仮名],ふたがみの,をのうへのしげに,こもりにし,そのほととぎす,まてどきなかず","#[左注]右四月十六日大伴宿祢家持作之","#[校異]<> -> 里 [万葉集略解] / 波 -> 彼 [元] / 騰末 -> 騰 [元][類]","#[事項],天平勝宝3年4月16日,年紀,作者:大伴家持,動物,怨恨,地名,高岡,富山","#[訓異]
ふたがみの,[寛]ふたかみの,
をのうへのしげに,[寛]をのへのししに,
こもりにし,[寛]こもにしは,
そのほととぎす,[寛]ほとときすまてと,
まてどきなかず,[寛]いまたきなかす,
" "#[番号]19/4240","#[題詞]春日祭神之日藤原太后御作歌一首 / 即賜入唐大使藤原朝臣清河 参議従四位下遣唐使","#[原文]大船尓 真梶繁貫 此吾子乎 韓國邊遣 伊波敝神多智","#[訓読]大船に真楫しじ貫きこの我子を唐国へ遣る斎へ神たち","#[仮名],おほぶねに,まかぢしじぬき,このあこを,からくにへやる,いはへかみたち","#[左注](右件歌者傳誦之人越中大目高安倉人種麻呂是也 但年月次者随聞之時載於此焉)","#[校異]","#[事項],天平5年,年紀,作者:光明皇后,藤原清河,遣唐使,伝誦,古歌,春日野,高安種麻呂,出発,神祭り,餞別,羈旅,天平勝宝3年,高岡,富山","#[訓異]
おほぶねに,[寛]おほふねに,
まかぢしじぬき,[寛]まかちししぬき,
このあこを[寛],
からくにへやる[寛],
いはへかみたち[寛],
" "#[番号]19/4241","#[題詞]大使藤原朝臣清河歌一首","#[原文]春日野尓 伊都久三諸乃 梅花 榮而在待 還来麻泥","#[訓読]春日野に斎く三諸の梅の花栄えてあり待て帰りくるまで","#[仮名],かすがのに,いつくみもろの,うめのはな,さかえてありまて,かへりくるまで","#[左注](右件歌者傳誦之人越中大目高安倉人種麻呂是也 但年月次者随聞之時載於此焉)","#[校異]","#[事項],天平5年,年紀,作者:藤原清河,遣唐使,餞別,出発,神祭り,羈旅,春日野,伝誦,高安種麻呂,天平勝宝3年,高岡,富山","#[訓異]
かすがのに,[寛]かすかのに,
いつくみもろの[寛],
うめのはな[寛],
さかえてありまて,[寛]さきてありまて,
かへりくるまで,[寛]かへりくるまて,
" "#[番号]19/4242","#[題詞]大納言藤原家餞之入唐使等宴日歌一首 [即主人卿作之]","#[原文]天雲乃 去還奈牟 毛能由恵尓 念曽吾為流 別悲美","#[訓読]天雲の行き帰りなむものゆゑに思ひぞ我がする別れ悲しみ","#[仮名],あまくもの,ゆきかへりなむ,ものゆゑに,おもひぞわがする,わかれかなしみ","#[左注](右件歌者傳誦之人越中大目高安倉人種麻呂是也 但年月次者随聞之時載於此焉)","#[校異]","#[事項],天平5年,年紀,作者:藤原仲麻呂,宴席,餞別,出発,羈旅,遣唐使,悲別,伝誦,高安種麻呂,高岡,富山,天平勝宝3年","#[訓異]
あまくもの[寛],
ゆきかへりなむ[寛],
ものゆゑに[寛],
おもひぞわがする,[寛]おもひそわかする,
わかれかなしみ[寛],
" "#[番号]19/4243","#[題詞]民部少輔多治<比>真人土作歌一首","#[原文]住吉尓 伊都久祝之 神言等 行得毛来等毛 舶波早家<无>","#[訓読]住吉に斎く祝が神言と行くとも来とも船は早けむ","#[仮名],すみのえに,いつくはふりが,かむごとと,ゆくともくとも,ふねははやけむ","#[左注](右件歌者傳誦之人越中大目高安倉人種麻呂是也 但年月次者随聞之時載於此焉)","#[校異]<> -> 比 [代匠記精撰本] / 無 -> 无 [元][類]","#[事項],天平5年,年紀,作者:丹比土作,伝誦,遣唐使,高安種麻呂,餞別,宴席,高岡,富山,天平勝宝3年","#[訓異]
すみのえに[寛],
いつくはふりが,[寛]いつくはふりか,
かむごとと,[寛]かみことと,
ゆくともくとも[寛],
ふねははやけむ[寛],
" "#[番号]19/4244","#[題詞]大使藤原朝臣清河歌一首","#[原文]荒玉之 年緒長 吾念有 兒等尓可戀 月近附奴","#[訓読]あらたまの年の緒長く我が思へる子らに恋ふべき月近づきぬ","#[仮名],あらたまの,としのをながく,あがもへる,こらにこふべき,つきちかづきぬ","#[左注](右件歌者傳誦之人越中大目高安倉人種麻呂是也 但年月次者随聞之時載於此焉)","#[校異]","#[事項],天平5年,年紀,作者:藤原清河,遣唐使,餞別,宴席,出発,羈旅,枕詞,悲別,恋情,伝誦,高安種麻呂,高岡,富山,天平勝宝3年","#[訓異]
あらたまの[寛],
としのをながく,[寛]としのをなかく,
あがもへる,[寛]わかおもへる,
こらにこふべき,[寛]こらにこふへき,
つきちかづきぬ,[寛]つきちかつきぬ,
" "#[番号]19/4245","#[題詞]天平五年贈入唐使歌一首[并短歌] [作主未詳]","#[原文]虚見都 山跡乃國 青<丹>与之 平城京師由 忍照 難波尓久太里 住吉乃 三津尓<舶>能利 直渡 日入國尓 所遣 和我勢能君乎 懸麻久乃 由々志恐伎 墨吉乃 吾大御神 舶乃倍尓 宇之波伎座 船騰毛尓 御立座而 佐之与良牟 礒乃埼々 許藝波底牟 泊々尓 荒風 浪尓安波世受 平久 率而可敝理麻世 毛等能國家尓 ","#[訓読]そらみつ 大和の国 あをによし 奈良の都ゆ おしてる 難波に下り 住吉の 御津に船乗り 直渡り 日の入る国に 任けらゆる 我が背の君を かけまくの ゆゆし畏き 住吉の 我が大御神 船の舳に 領きいまし 船艫に み立たしまして さし寄らむ 礒の崎々 漕ぎ泊てむ 泊り泊りに 荒き風 波にあはせず 平けく 率て帰りませ もとの朝廷に ","#[仮名],そらみつ,やまとのくに,あをによし,ならのみやこゆ,おしてる,なにはにくだり,すみのえの,みつにふなのり,ただわたり,ひのいるくにに,まけらゆる,わがせのきみを,かけまくの,ゆゆしかしこき,すみのえの,わがおほみかみ,ふなのへに,うしはきいまし,ふなともに,みたたしまして,さしよらむ,いそのさきざき,こぎはてむ,とまりとまりに,あらきかぜ,なみにあはせず,たひらけく,ゐてかへりませ,もとのみかどに","#[左注](右件歌者傳誦之人越中大目高安倉人種麻呂是也 但年月次者随聞之時載於此焉)","#[校異]舟 -> 丹 [西(訂正)][元][文][紀] / 船 -> 舶 [元][文][紀]","#[事項],天平5年,年紀,遣唐使,枕詞,地名,大阪,儀礼歌,道行き,祈願,餞別,出発,羈旅,伝誦,高安種麻呂,天平勝宝3年","#[訓異]
そらみつ[寛],
やまとのくに[寛],
あをによし[寛],
ならのみやこゆ[寛],
おしてる[寛],
なにはにくだり,[寛]なにはにくたり,
すみのえの[寛],
みつにふなのり[寛],
ただわたり,[寛]たたわたり,
ひのいるくにに[寛],
まけらゆる,[寛]つかはされ,
わがせのきみを,[寛]わかせのきみを,
かけまくの[寛],
ゆゆしかしこき[寛],
すみのえの[寛],
わがおほみかみ,[寛]わかおほみかみ,
ふなのへに[寛],
うしはきいまし[寛],
ふなともに[寛],
みたたしまして,[寛]みたていまして,
さしよらむ[寛],
いそのさきざき,[寛]いそのさきさき,
こぎはてむ,[寛]こきはてむ,
とまりとまりに[寛],
あらきかぜ,[寛]あらきかせ,
なみにあはせず,[寛]なみにあはせす,
たひらけく[寛],
ゐてかへりませ[寛],
もとのみかどに,[寛]もとのみかとに,
" "#[番号]19/4246","#[題詞](天平五年贈入唐使歌一首[并短歌] [作主未詳])反歌一首","#[原文]奥浪 邊波莫越 君之舶 許藝可敝里来而 津尓泊麻泥","#[訓読]沖つ波辺波な越しそ君が船漕ぎ帰り来て津に泊つるまで","#[仮名],おきつなみ,へなみなこしそ,きみがふね,こぎかへりきて,つにはつるまで","#[左注](右件歌者傳誦之人越中大目高安倉人種麻呂是也 但年月次者随聞之時載於此焉)","#[校異]様 -> 掾 [元][文][紀]","#[事項],天平5年,年紀,遣唐使,餞別,出発,羈旅,伝誦,高安種麻呂,天平勝宝3年,高岡,富山","#[訓異]
おきつなみ[寛],
へなみなこしそ[寛],
きみがふね,[寛]きみかふね,
こぎかへりきて[寛],
つにはつるまで,[寛]つにはつるまて,
" "#[番号]19/4247","#[題詞]阿倍朝臣老人遣唐時奉母悲別歌一首","#[原文]天雲能 曽伎敝能伎波美 吾念有 伎美尓将別 日近成奴","#[訓読]天雲のそきへの極み我が思へる君に別れむ日近くなりぬ","#[仮名],あまくもの,そきへのきはみ,あがもへる,きみにわかれむ,ひちかくなりぬ","#[左注]右件歌者傳誦之人越中大目高安倉人種麻呂是也 但年月次者随聞之時載於此焉","#[校異]","#[事項],天平5年,年紀,作者:阿倍老人母,遣唐使,餞別,出発,羈旅,悲別,高安種麻呂,天平勝宝3年,伝誦,高岡,富山","#[訓異]
あまくもの[寛],
そきへのきはみ[寛],
あがもへる,[寛]わかおもへる,
きみにわかれむ[寛],
ひちかくなりぬ,[寛]ひはちかつきぬ,
" "#[番号]19/4248","#[題詞]以七月十七日遷任少納言 仍作悲別之歌贈貽朝集使<掾>久米朝臣廣縄之館二首 /既満六載之期忽値遷替之運 於是別舊之悽心中欝結 拭な之袖何以能旱 因作悲歌二首式遺莫忘之志 其詞曰","#[原文]荒玉乃 年緒長久 相見C之 彼心引 将忘也毛","#[訓読]あらたまの年の緒長く相見てしその心引き忘らえめやも","#[仮名],あらたまの,としのをながく,あひみてし,そのこころひき,わすらえめやも","#[左注](右八月四日贈之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝3年8月4日,年紀,作者:大伴家持,宴席,餞別,悲別,羈旅,出発,久米広縄,高岡,富山,枕詞","#[訓異]
あらたまの[寛],
としのをながく,[寛]としのをなかく,
あひみてし[寛],
そのこころひき,[寛]かのこころひき,
わすらえめやも,[寛]わすられぬやも,
" "#[番号]19/4249","#[題詞](以七月十七日遷任少納言 仍作悲別之歌贈貽朝集使<掾>久米朝臣廣縄之館二首 /既満六載之期忽値遷替之運 於是別舊之悽心中欝結 拭な之袖何以能旱 因作悲歌二首式遺莫忘之志 其詞曰)","#[原文]伊波世野尓 秋芽子之努藝 馬並 始鷹猟太尓 不為哉将別","#[訓読]石瀬野に秋萩しのぎ馬並めて初鷹猟だにせずや別れむ","#[仮名],いはせのに,あきはぎしのぎ,うまなめて,はつとがりだに,せずやわかれむ","#[左注]右八月四日贈之","#[校異]","#[事項],天平勝宝3年8月4日,年紀,作者:大伴家持,地名,富山,鷹狩り,宴席,餞別,悲別,出発,久米広縄,高岡,富山","#[訓異]
いはせのに[寛],
あきはぎしのぎ,[寛]あきはきしのき,
うまなめて,[寛]むまなめて,
はつとがりだに,[寛]はつとかりたに,
せずやわかれむ,[寛]せてやわかれむ,
" "#[番号]19/4250","#[題詞]便附大帳使取八月五日應入京師 因此以四日設國厨之饌於介内蔵伊美吉縄麻呂舘餞之 于時大伴宿祢家持作歌一首","#[原文]之奈謝可流 越尓五箇年 住々而 立別麻久 惜初夜可<毛>","#[訓読]しなざかる越に五年住み住みて立ち別れまく惜しき宵かも","#[仮名],しなざかる,こしにいつとせ,すみすみて,たちわかれまく,をしきよひかも","#[左注]","#[校異]作歌 [元] 作 / 母 -> 毛 [元][類][文]","#[事項],天平勝宝3年8月5日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,餞別,悲別,宴席,内蔵縄麻呂,出発,羈旅,高岡,富山","#[訓異]
しなざかる,[寛]しなさかる,
こしにいつとせ[寛],
すみすみて[寛],
たちわかれまく[寛],
をしきよひかも[寛],
" "#[番号]19/4251","#[題詞]五日平旦上道 仍國司次官已下諸僚皆共視送 於時射水郡大領安努君廣嶋 門前之林中預設<餞饌>之宴 于<此>大帳使大伴宿祢家持和内蔵伊美吉縄麻呂捧盞之歌一首","#[原文]玉桙之 道尓出立 徃吾者 公之事跡乎 負而之将去","#[訓読]玉桙の道に出で立ち行く我れは君が事跡を負ひてし行かむ","#[仮名],たまほこの,みちにいでたち,ゆくわれは,きみがこととを,おひてしゆかむ","#[左注]","#[校異]饌餞 -> 餞饌 [元][類] / 時 -> 此 [元][類]","#[事項],天平勝宝3年8月5日,年紀,作者:大伴家持,餞別,出発,羈旅,悲別,枕詞,内蔵縄麻呂,高岡,富山","#[訓異]
たまほこの[寛],
みちにいでたち,[寛]みちにへいてたち,
ゆくわれは[寛],
きみがこととを,[寛]きみかこととを,
おひてしゆかむ[寛],
" "#[番号]19/4252","#[題詞]正税帳使掾久米朝臣廣縄事畢退任 適遇於越前國掾大伴宿祢池主之舘 仍共飲樂也 于時久米朝臣廣縄矚芽子花作歌一首","#[原文]君之家尓 殖有芽子之 始花乎 折而挿頭奈 客別度知","#[訓読]君が家に植ゑたる萩の初花を折りてかざさな旅別るどち","#[仮名],きみがいへに,うゑたるはぎの,はつはなを,をりてかざさな,たびわかるどち","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝3年8月5日,年紀,作者:久米広縄,大伴池主,大伴家持,福井,武生,羈旅,植物,悲別","#[訓異]
きみがいへに,[寛]きみかいへに,
うゑたるはぎの,[寛]うゑたるはきの,
はつはなを[寛],
をりてかざさな,[寛]をりてかささな,
たびわかるどち,[寛]たひわかるとち,
" "#[番号]19/4253","#[題詞]大伴宿祢家持和歌一首","#[原文]立而居而 待登待可祢 伊泥C来之 君尓於是相 挿頭都流波疑","#[訓読]立ちて居て待てど待ちかね出でて来し君にここに逢ひかざしつる萩","#[仮名],たちてゐて,まてどまちかね,いでてこし,きみにここにあひ,かざしつるはぎ","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝3年8月5日,年紀,作者:大伴家持,植物,大伴池主,久米広縄,福井,武生,羈旅,悲別,離別","#[訓異]
たちてゐて[寛],
まてどまちかね,[寛]まてとまちかね,
いでてこし,[寛]いててこし,
きみにここにあひ[寛],
かざしつるはぎ,[寛]かさしつるはき,
" "#[番号]19/4254","#[題詞]向京路上依興預作侍宴應詔歌一首[并短歌]","#[原文]蜻嶋 山跡國乎 天雲尓 磐船浮 等母尓倍尓 真可伊繁貫 伊許藝都追 國看之勢志C 安母里麻之 掃平 千代累 弥嗣継尓 所知来流 天之日継等 神奈我良 吾皇乃 天下 治賜者 物乃布能 八十友之雄乎 撫賜 等登能倍賜 食國毛 四方之人乎母 安<夫>左波受 ヌ賜者 従古昔 無利之瑞 多婢<末>祢久 申多麻比奴 手拱而 事無御代等 天地 日月等登聞仁 万世尓 記續牟曽 八隅知之 吾大皇 秋花 之我色々尓 見賜 明米多麻比 酒見附 榮流今日之 安夜尓貴左 ","#[訓読]蜻蛉島 大和の国を 天雲に 磐舟浮べ 艫に舳に 真櫂しじ貫き い漕ぎつつ 国見しせして 天降りまし 払ひ平げ 千代重ね いや継ぎ継ぎに 知らし来る 天の日継と 神ながら 我が大君の 天の下 治めたまへば もののふの 八十伴の男を 撫でたまひ 整へたまひ 食す国も 四方の人をも あぶさはず 恵みたまへば いにしへゆ なかりし瑞 度まねく 申したまひぬ 手抱きて 事なき御代と 天地 日月とともに 万代に 記し継がむぞ やすみしし 我が大君 秋の花 しが色々に 見したまひ 明らめたまひ 酒みづき 栄ゆる今日の あやに貴さ ","#[仮名],あきづしま,やまとのくにを,あまくもに,いはふねうかべ,ともにへに,まかいしじぬき,いこぎつつ,くにみしせして,あもりまし,はらひたひらげ,ちよかさね,いやつぎつぎに,しらしくる,あまのひつぎと,かむながら,わがおほきみの,あめのした,をさめたまへば,もののふの,やそとものをを,なでたまひ,ととのへたまひ,をすくにも,よものひとをも,あぶさはず,めぐみたまへば,いにしへゆ,なかりししるし,たびまねく,まをしたまひぬ,たむだきて,ことなきみよと,あめつち,ひつきとともに,よろづよに,しるしつがむぞ,やすみしし,わがおほきみ,あきのはな,しがいろいろに,めしたまひ,あきらめたまひ,さかみづき,さかゆるけふの,あやにたふとさ","#[左注]","#[校異]之 [元] 乃 / 毛 [紀][細] 之 / 天 -> 夫 [万葉集略解] / 未 -> 末 [代匠記精撰本] / 等 [元] 尓","#[事項],天平勝宝3年8月5日,年紀,作者:大伴家持,依興,予作,儀礼歌,応詔,宴席,枕詞,架空,羈旅,寿歌","#[訓異]
あきづしま,[寛]あきつしま,
やまとのくにを[寛],
あまくもに[寛],
いはふねうかべ,[寛]いはふねうけて,
ともにへに[寛],
まかいしじぬき,[寛]まかいししぬき,
いこぎつつ,[寛]いこきつつ,
くにみしせして[寛],
あもりまし[寛],
はらひたひらげ,[寛]はらひたひらけ,
ちよかさね[寛],
いやつぎつぎに,[寛]いやつきつきに,
しらしくる[寛],
あまのひつぎと,[寛]あまのひつきと,
かむながら,[寛]かみなから,
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
あめのした,[寛]あまのした,
をさめたまへば,[寛]おさめたまへは,
もののふの[寛],
やそとものをを[寛],
なでたまひ,[寛]なてたまひ,
ととのへたまひ[寛],
をすくにも,[寛]をしくにの,
よものひとをも[寛],
あぶさはず,[寛]あてさはす,
めぐみたまへば,[寛]めくみたまへは,
いにしへゆ,[寛]むかしより,
なかりししるし,[寛]なかりしみつも,
たびまねく,[寛]たひまねく,
まをしたまひぬ,[寛]まうしたまひぬ,
たむだきて,[寛]こまめきて,
ことなきみよと[寛],
あめつち,[寛]あめつちの,
ひつきとともに[寛],
よろづよに,[寛]よろつよに,
しるしつがむぞ,[寛]しるしつかむそ,
やすみしし[寛],
わがおほきみ,[寛]わかおほきみは,
あきのはな,[寛]あきはなの,
しがいろいろに,[寛]しかいろいろに,
めしたまひ,[寛]みえたまひ,
あきらめたまひ[寛],
さかみづき,[寛]さかみつき,
さかゆるけふの[寛],
あやにたふとさ[寛],
" "#[番号]19/4255","#[題詞](向京路上依興預作侍宴應詔歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]秋時花 種尓有等 色別尓 見之明良牟流 今日之貴左","#[訓読]秋の花種にあれど色ごとに見し明らむる今日の貴さ","#[仮名],あきのはな,くさぐさにあれど,いろごとに,めしあきらむる,けふのたふとさ","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝3年8月5日,年紀,作者:大伴家持,依興,予作,応詔,儀礼歌,宴席,架空,植物,寿歌,羈旅","#[訓異]
あきのはな[寛],
くさぐさにあれど,[寛]くさくさにあれと,
いろごとに,[寛]いろことに,
めしあきらむる,[寛]みしあきらむる,
けふのたふとさ[寛],
" "#[番号]19/4256","#[題詞]為壽左大臣橘卿預作歌一首","#[原文]古昔尓 君之三代經 仕家利 吾大主波 七世申祢","#[訓読]いにしへに君が三代経て仕へけり我が大主は七代申さね","#[仮名],いにしへに,きみがみよへて,つかへけり,あがおほぬしは,ななよまをさね","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝3年8月5日,年紀,作者:大伴家持,予作,橘諸兄,寿歌","#[訓異]
いにしへに[寛],
きみがみよへて,[寛]きみかみよへて,
つかへけり[寛],
あがおほぬしは,[寛]わかおほきみは,
ななよまをさね,[寛]ななよまうさね,
" "#[番号]19/4257","#[題詞]十月廿二日於左大辨紀飯麻呂朝臣家宴歌三首","#[原文]手束弓 手尓取持而 朝猟尓 君者立<之>奴 多奈久良能野尓","#[訓読]手束弓手に取り持ちて朝狩りに君は立たしぬ棚倉の野に","#[仮名],たつかゆみ,てにとりもちて,あさがりに,きみはたたしぬ,たなくらののに","#[左注]右一首治部卿船王傳誦之 久邇京都時歌 [未詳作<主>也]","#[校異]去 -> 之 [元][類] / 至 -> 主 [元][文][紀]","#[事項],天平勝宝3年10月22日,年紀,宴席,古歌,伝誦,船王,狩猟,大君,久邇京,天平13年","#[訓異]
たつかゆみ[寛],
てにとりもちて[寛],
あさがりに,[寛]あさかりに,
きみはたたしぬ,[寛]きみはたちいぬ,
たなくらののに[寛],
" "#[番号]19/4258","#[題詞](十月廿二日於左大辨紀飯麻呂朝臣家宴歌三首)","#[原文]明日香河 々戸乎清美 後居而 戀者京 弥遠曽伎奴","#[訓読]明日香川川門を清み後れ居て恋ふれば都いや遠そきぬ","#[仮名],あすかがは,かはとをきよみ,おくれゐて,こふればみやこ,いやとほそきぬ","#[左注]右一首左中辨中臣朝臣清麻呂傳誦 古京時歌也","#[校異]","#[事項],天平勝宝3年10月22日,年紀,地名,明日香,奈良,中臣清麻呂,伝誦,古歌,恋情,宴席","#[訓異]
あすかがは,[寛]あすかかは,
かはとをきよみ[寛],
おくれゐて[寛],
こふればみやこ,[寛]こふれはみやこ,
いやとほそきぬ[寛],
" "#[番号]19/4259","#[題詞](十月廿二日於左大辨紀飯麻呂朝臣家宴歌三首)","#[原文]十月 之具礼能常可 吾世古河 屋戸乃黄葉 可落所見","#[訓読]十月時雨の常か我が背子が宿の黄葉散りぬべく見ゆ","#[仮名],かむなづき,しぐれのつねか,わがせこが,やどのもみちば,ちりぬべくみゆ","#[左注]右一首少納言大伴宿祢家持當時矚梨黄葉作此歌也","#[校異]","#[事項],天平勝宝3年10月22日,年紀,作者:大伴家持,植物,属目,宴席","#[訓異]
かむなづき,[寛]かみなつき,
しぐれのつねか,[寛]しくれのつねか,
わがせこが,[寛]わかせこか,
やどのもみちば,[寛]やとのもみちは,
ちりぬべくみゆ,[寛]ちりぬへくみゆ,
" "#[番号]19/4260","#[題詞]壬申年之乱平定以後歌二首","#[原文]皇者 神尓之座者 赤駒之 腹婆布田為乎 京師跡奈之都","#[訓読]大君は神にしませば赤駒の腹這ふ田居を都と成しつ","#[仮名],おほきみは,かみにしませば,あかごまの,はらばふたゐを,みやことなしつ","#[左注]右一首大将軍贈右大臣大伴卿作 (右件二首天平勝寶四年二月二日聞之 即載於茲也)","#[校異]","#[事項],天平勝宝4年2月2日,年紀,作者:大伴御行,古歌,伝誦,天武朝,大君讃美","#[訓異]
おほきみは[寛],
かみにしませば,[寛]かみにしませは,
あかごまの,[寛]あかこまの,
はらばふたゐを,[寛]はらはふたゐを,
みやことなしつ[寛],
" "#[番号]19/4261","#[題詞](壬申年之乱平定以後歌二首)","#[原文]大王者 神尓之座者 水鳥乃 須太久水奴麻乎 皇都常成通 [作者<未>詳]","#[訓読]大君は神にしませば水鳥のすだく水沼を都と成しつ [作者<未>詳]","#[仮名],おほきみは,かみにしませば,みづとりの,すだくみぬまを,みやことなしつ","#[左注]右件二首天平勝寶四年二月二日聞之 即載於茲也","#[校異]不 -> 未 [元][類][文]","#[事項],天平勝宝4年2月2日,年紀,伝誦,古歌,天武朝,大君讃美","#[訓異]
おほきみは[寛],
かみにしませば,[寛]かみにしませは,
みづとりの,[寛]みつとりの,
すだくみぬまを,[寛]すたくみぬまを,
みやことなしつ[寛],
" "#[番号]19/4262","#[題詞]閏三月於衛門督大伴古慈悲宿祢家餞之入唐副使同胡麻呂宿祢等歌二首","#[原文]韓國尓 由伎多良波之C 可敝里許牟 麻須良多家乎尓 美伎多弖麻都流","#[訓読]唐国に行き足らはして帰り来むますら健男に御酒奉る","#[仮名],からくにに,ゆきたらはして,かへりこむ,ますらたけをに,みきたてまつる","#[左注]右一首多治比真人鷹主壽副使大伴胡麻呂宿祢也 (右件歌傳誦大伴宿祢村上同清継等是也)","#[校異]","#[事項],天平勝宝4年閏3月,年紀,作者:丹比鷹主,遣唐使,大伴古麻呂,出発,餞別,宴席,羈旅,大伴古慈悲,伝誦,古歌,大伴村上,寿歌","#[訓異]
からくにに[寛],
ゆきたらはして[寛],
かへりこむ[寛],
ますらたけをに[寛],
みきたてまつる[寛],
" "#[番号]19/4263","#[題詞](閏三月於衛門督大伴古慈悲宿祢家餞之入唐副使同胡麻呂宿祢等歌二首)","#[原文]梳毛見自 屋中毛波可自 久左麻久良 多婢由久伎美乎 伊波布等毛比C [作<者>未詳]","#[訓読]櫛も見じ屋内も掃かじ草枕旅行く君を斎ふと思ひて","#[仮名],くしもみじ,やぬちもはかじ,くさまくら,たびゆくきみを,いはふともひて [作<者>未詳]","#[左注]右件歌傳誦大伴宿祢村上同清継等是也","#[校異]主 -> 者 [元][類]","#[事項],天平勝宝4年閏3月,年紀,古歌,伝誦,遣唐使,大伴古慈悲,大伴古麻呂,大伴村上,枕詞,出発,餞別,羈旅,悲別,神祭り,寿歌","#[訓異]
くしもみじ,[寛]くしもみし,
やぬちもはかじ,[寛]やなかもはかし,
くさまくら[寛],
たびゆくきみを,[寛]たひゆくきみを,
いはふともひて[寛],
" "#[番号]19/4264","#[題詞]勅従四位上高麗朝臣福信遣於難波賜酒肴入唐使藤原朝臣清河等御歌一首[并短歌]","#[原文]虚見都 山跡乃國波 水上波 地徃如久 船上波 床座如 大神乃 鎮在國曽 四舶 々能倍奈良倍 平安 早渡来而 還事 奏日尓 相飲酒曽 <斯>豊御酒者 ","#[訓読]そらみつ 大和の国は 水の上は 地行くごとく 船の上は 床に居るごと 大神の 斎へる国ぞ 四つの船 船の舳並べ 平けく 早渡り来て 返り言 奏さむ日に 相飲まむ酒ぞ この豊御酒は ","#[仮名],そらみつ,やまとのくには,みづのうへは,つちゆくごとく,ふねのうへは,とこにをるごと,おほかみの,いはへるくにぞ,よつのふね,ふなのへならべ,たひらけく,はやわたりきて,かへりこと,まをさむひに,あひのまむきぞ,このとよみきは","#[左注](右發遣 勅使并賜酒樂宴之日月未得詳審也)","#[校異]船 [元] 舶 / 期 -> 斯 [元][細]","#[事項],天平勝宝4年閏3月,年紀,作者:孝謙天皇,古歌,伝誦,藤原清河,遣唐使,高麗福信,餞別,出発,羈旅,枕詞","#[訓異]
そらみつ[寛],
やまとのくには[寛],
みづのうへは,[寛]みつのうへは,
つちゆくごとく,[寛]つちゆくことく,
ふねのうへは[寛],
とこにをるごと,[寛]とこにますこと,
おほかみの[寛],
いはへるくにぞ,[寛]しつむるくにそ,
よつのふね[寛],
ふなのへならべ,[寛]ふなのへならへ,
たひらけく[寛],
はやわたりきて[寛],
かへりこと[寛],
まをさむひに,[寛]まうさむひに,
あひのまむきぞ,[寛]あひのまむさけそ,
このとよみきは[寛],
" "#[番号]19/4265","#[題詞](勅従四位上高麗朝臣福信遣於難波賜酒肴入唐使藤原朝臣清河等御歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]四舶 早還来等 白香著 朕裳裙尓 鎮而将待","#[訓読]四つの船早帰り来としらか付け我が裳の裾に斎ひて待たむ","#[仮名],よつのふね,はやかへりこと,しらかつけ,わがものすそに,いはひてまたむ","#[左注]右發遣 勅使并賜酒樂宴之日月未得詳審也","#[校異]","#[事項],天平勝宝4年閏3月,年紀,作者:孝謙天皇,古歌,伝誦,藤原清河,遣唐使,高麗福信,餞別,出発,羈旅,寿歌,神祭り","#[訓異]
よつのふね[寛],
はやかへりこと[寛],
しらかつけ,[寛]しらかつき,
わがものすそに,[寛]わかものこしに,
いはひてまたむ,[寛]してつつまたむ,
" "#[番号]19/4266","#[題詞]為應詔儲作歌一首[并短歌]","#[原文]安之比奇能 八峯能宇倍能 都我能木能 伊也継々尓 松根能 絶事奈久 青丹余志 奈良能京師尓 万代尓 國所知等 安美知之 吾大皇乃 神奈我良 於母保之賣志弖 豊宴 見為今日者 毛能乃布能 八十伴雄能 嶋山尓 安可流橘 宇受尓指 紐解放而 千年保伎 <保>吉等餘毛之 恵良々々尓 仕奉乎 見之貴者 ","#[訓読]あしひきの 八つ峰の上の 栂の木の いや継ぎ継ぎに 松が根の 絶ゆることなく あをによし 奈良の都に 万代に 国知らさむと やすみしし 我が大君の 神ながら 思ほしめして 豊の宴 見す今日の日は もののふの 八十伴の男の 島山に 赤る橘 うずに刺し 紐解き放けて 千年寿き 寿き響もし ゑらゑらに 仕へまつるを 見るが貴さ ","#[仮名],あしひきの,やつをのうへの,つがのきの,いやつぎつぎに,まつがねの,たゆることなく,あをによし,ならのみやこに,よろづよに,くにしらさむと,やすみしし,わがおほきみの,かむながら,おもほしめして,とよのあかり,めすけふのひは,もののふの,やそとものをの,しまやまに,あかるたちばな,うずにさし,ひもときさけて,ちとせほき,ほきとよもし,ゑらゑらに,つかへまつるを,みるがたふとさ","#[左注](右二首大伴宿祢家持作之)","#[校異]保伎 -> 保 [元]","#[事項],天平勝宝4年,年紀,作者:大伴家持,儲作,予作,応詔,儀礼歌,枕詞,地名,大君讃美,寿歌","#[訓異]
あしひきの[寛],
やつをのうへの[寛],
つがのきの,[寛]とかのきの,
いやつぎつぎに,[寛]いやつきつきに,
まつがねの,[寛]まつかねの,
たゆることなく[寛],
あをによし[寛],
ならのみやこに[寛],
よろづよに,[寛]よろつよに,
くにしらさむと,[寛]くにしらしむと,
やすみしし[寛],
わがおほきみの,[寛]わかおほきみの,
かむながら,[寛]かみなから,
おもほしめして[寛],
とよのあかり[寛],
めすけふのひは,[寛]みせますけふは,
もののふの[寛],
やそとものをの[寛],
しまやまに[寛],
あかるたちばな,[寛]あかるたちはな,
うずにさし,[寛]うすにさし,
ひもときさけて[寛],
ちとせほき[寛],
ほきとよもし,[寛]ほききとよもし,
ゑらゑらに[寛],
つかへまつるを[寛],
みるがたふとさ,[寛]みるかたふとさ,
" "#[番号]19/4267","#[題詞](為應詔儲作歌一首[并短歌])反歌一首","#[原文]須賣呂伎能 御代万代尓 如是許曽 見為安伎良目<米> 立年之葉尓","#[訓読]天皇の御代万代にかくしこそ見し明きらめめ立つ年の端に","#[仮名],すめろきの,みよよろづよに,かくしこそ,めしあきらめめ,たつとしのはに","#[左注]右二首大伴宿祢家持作之","#[校異]<> -> 米 [西(右書)][類][古][紀]","#[事項],天平勝宝4年,年紀,作者:大伴家持,儲作,予作,応詔,儀礼歌,大君讃美,寿歌","#[訓異]
すめろきの[寛],
みよよろづよに,[寛]みよよろつよに,
かくしこそ[寛],
めしあきらめめ,[寛]みせあきらめめ,
たつとしのはに[寛],
" "#[番号]19/4268","#[題詞]天皇太后共幸於大納言藤原家之日黄葉澤蘭一株拔取令持内侍佐々貴山君遣賜大納言藤原卿并陪従大夫等御歌一首 命婦誦曰","#[原文]此里者 継而霜哉置 夏野尓 吾見之草波 毛美知多里家利","#[訓読]この里は継ぎて霜や置く夏の野に我が見し草はもみちたりけり","#[仮名],このさとは,つぎてしもやおく,なつののに,わがみしくさは,もみちたりけり","#[左注]","#[校異]太 [類] 大","#[事項],天平勝宝4年,年紀,作者:孝謙天皇,佐々貴山君,誦詠,行幸,光明皇后,藤原仲麻呂,植物,贈答","#[訓異]
このさとは[寛],
つぎてしもやおく,[寛]つきてしもやをく,
なつののに[寛],
わがみしくさは,[寛]わかみしくさは,
もみちたりけり[寛],
" "#[番号]19/4269","#[題詞]十一月八日在於左大臣橘朝臣宅肆宴歌四首","#[原文]余曽能未尓 見者有之乎 今日見者 年尓不忘 所念可母","#[訓読]よそのみに見ればありしを今日見ては年に忘れず思ほえむかも","#[仮名],よそのみに,みればありしを,けふみては,としにわすれず,おもほえむかも","#[左注]右一首太上天皇御歌","#[校異]","#[事項],天平勝宝4年11月8日,年紀,作者:聖武天皇,橘諸兄,肆宴,宴席,主人讃美","#[訓異]
よそのみに[寛],
みればありしを,[寛]みれはありしを,
けふみては,[寛]けふみれは,
としにわすれず,[寛]としにわすれす,
おもほえむかも,[寛]おもほゆるかも,
" "#[番号]19/4270","#[題詞](十一月八日在於左大臣橘朝臣宅肆宴歌四首)","#[原文]牟具良波布 伊也之伎屋戸母 大皇之 座牟等知者 玉之可麻思乎","#[訓読]葎延ふ賎しき宿も大君の座さむと知らば玉敷かましを","#[仮名],むぐらはふ,いやしきやども,おほきみの,まさむとしらば,たましかましを","#[左注]右一首左大臣橘卿","#[校異]","#[事項],天平勝宝4年11月8日,年紀,作者:橘諸兄,聖武天皇,宴席,肆宴,挨拶,植物","#[訓異]
むぐらはふ,[寛]むくらはふ,
いやしきやども,[寛]いやしきやとも,
おほきみの[寛],
まさむとしらば,[寛]まさむとしらは,
たましかましを[寛],
" "#[番号]19/4271","#[題詞](十一月八日在於左大臣橘朝臣宅肆宴歌四首)","#[原文]松影乃 清濱邊尓 玉敷者 君伎麻佐牟可 清濱邊尓","#[訓読]松蔭の清き浜辺に玉敷かば君来まさむか清き浜辺に","#[仮名],まつかげの,きよきはまへに,たましかば,きみきまさむか,きよきはまへに","#[左注]右一首右大辨藤原八束朝臣","#[校異]","#[事項],天平勝宝4年11月8日,年紀,作者:藤原八束,宴席,肆宴,聖武天皇,見立て,橘諸兄","#[訓異]
まつかげの,[寛]まつかけの,
きよきはまへに[寛],
たましかば,[寛]たましかは,
きみきまさむか[寛],
きよきはまへに[寛],
" "#[番号]19/4272","#[題詞](十一月八日在於左大臣橘朝臣宅肆宴歌四首)","#[原文]天地尓 足之照而 吾大皇 之伎座婆可母 樂伎小里","#[訓読]天地に足らはし照りて我が大君敷きませばかも楽しき小里","#[仮名],あめつちに,たらはしてりて,わがおほきみ,しきませばかも,たのしきをさと","#[左注]右一首少納言大伴宿祢家持 [未奏]","#[校異]","#[事項],天平勝宝4年11月8日,年紀,作者:大伴家持,未奏,橘諸兄,宴席,肆宴,大君讃美","#[訓異]
あめつちに[寛],
たらはしてりて,[寛]たらしてらして,
わがおほきみ,[寛]わかきみの,
しきませばかも,[寛]きいまさはかも,
たのしきをさと,[寛]うれしみきをり,
" "#[番号]19/4273","#[題詞]廿五日新甞會肆宴應詔歌六首","#[原文]天地与 相左可延牟等 大宮乎 都可倍麻都礼婆 貴久宇礼之伎","#[訓読]天地と相栄えむと大宮を仕へまつれば貴く嬉しき","#[仮名],あめつちと,あひさかえむと,おほみやを,つかへまつれば,たふとくうれしき","#[左注]右一首大納言巨勢朝臣","#[校異]","#[事項],天平勝宝4年11月25日,年紀,作者:巨勢奈弖麻呂,肆宴,宴席,応詔,大君讃美,寿歌,新嘗祭","#[訓異]
あめつちと[寛],
あひさかえむと[寛],
おほみやを[寛],
つかへまつれば,[寛]つかへまつれは,
たふとくうれしき,[寛]たうとくうれしき,
" "#[番号]19/4274","#[題詞](廿五日新甞會肆宴應詔歌六首)","#[原文]天尓波母 五百都綱波布 万代尓 國所知牟等 五百都々奈波布[似古歌而未詳]","#[訓読]天にはも五百つ綱延ふ万代に国知らさむと五百つ綱延ふ[似古歌而未詳]","#[仮名],あめにはも,いほつつなはふ,よろづよに,くにしらさむと,いほつつなはふ","#[左注]右一首式部卿石川年足朝臣","#[校異]","#[事項],天平勝宝4年11月25日,年紀,作者:石川年足,肆宴,宴席,応詔,大君讃美,寿歌,新嘗祭","#[訓異]
あめにはも[寛],
いほつつなはふ[寛],
よろづよに,[寛]よろつよに,
くにしらさむと,[寛]くにしらしむと,
いほつつなはふ[寛],
" "#[番号]19/4275","#[題詞](廿五日新甞會肆宴應詔歌六首)","#[原文]天地与 久万弖尓 万代尓 都可倍麻都良牟 黒酒白酒乎","#[訓読]天地と久しきまでに万代に仕へまつらむ黒酒白酒を","#[仮名],あめつちと,ひさしきまでに,よろづよに,つかへまつらむ,くろきしろきを","#[左注]右一首従三位文屋<智><努>真人","#[校異]知 -> 智 [元][文][紀][細] / 奴麿 -> 努 [元][古]","#[事項],天平勝宝4年11月25日,年紀,作者:文屋真人,肆宴,宴席,応詔,大君讃美,寿歌,新嘗祭","#[訓異]
あめつちと[寛],
ひさしきまでに,[寛]ひさしきまてに,
よろづよに,[寛]よろつよに,
つかへまつらむ[寛],
くろきしろきを[寛],
" "#[番号]19/4276","#[題詞](廿五日新甞會肆宴應詔歌六首)","#[原文]嶋山尓 照在橘 宇受尓左之 仕奉者 卿大夫等","#[訓読]島山に照れる橘うずに刺し仕へまつるは卿大夫たち","#[仮名],しまやまに,てれるたちばな,うずにさし,つかへまつるは,まへつきみたち","#[左注]右一首右大辨藤原八束朝臣","#[校異]","#[事項],天平勝宝4年11月25日,年紀,作者:藤原八束,肆宴,宴席,応詔,大君讃美,寿歌,新嘗祭,植物","#[訓異]
しまやまに[寛],
てれるたちばな,[寛]てれるたちはな,
うずにさし,[寛]うすにさし,
つかへまつるは[寛],
まへつきみたち,[寛]まうちきみたち,
" "#[番号]19/4277","#[題詞](廿五日新甞會肆宴應詔歌六首)","#[原文]袖垂而 伊射吾苑尓 鴬乃 木傳令落 梅花見尓","#[訓読]袖垂れていざ我が園に鴬の木伝ひ散らす梅の花見に","#[仮名],そでたれて,いざわがそのに,うぐひすの,こづたひちらす,うめのはなみに","#[左注]右一首大和國守藤原永<手>朝臣","#[校異]平 -> 手 [西(訂正右書)][元][文][紀]","#[事項],天平勝宝4年11月25日,年紀,作者:藤原永手,肆宴,宴席,応詔,大君讃美,寿歌,新嘗祭,動物,植物","#[訓異]
そでたれて,[寛]そてたれて,
いざわがそのに,[寛]いさわかそのに,
うぐひすの,[寛]うくひすの,
こづたひちらす,[寛]こつたひちらす,
うめのはなみに[寛],
" "#[番号]19/4278","#[題詞](廿五日新甞會肆宴應詔歌六首)","#[原文]足日木乃 夜麻之多日影 可豆良家流 宇倍尓也左良尓 梅乎之<努>波牟","#[訓読]あしひきの山下ひかげかづらける上にやさらに梅をしのはむ","#[仮名],あしひきの,やましたひかげ,かづらける,うへにやさらに,うめをしのはむ","#[左注]右一首少納言大伴宿祢家持","#[校異]奴 -> 努 [元][類]","#[事項],天平勝宝4年11月25日,年紀,作者:大伴家持,肆宴,宴席,応詔,大君讃美,寿歌,新嘗祭,植物","#[訓異]
あしひきの[寛],
やましたひかげ,[寛]やましたひかけ,
かづらける,[寛]かつらける,
うへにやさらに[寛],
うめをしのはむ[寛],
" "#[番号]19/4279","#[題詞]廿七日林王宅餞之但馬按察使橘奈良麻呂朝臣宴歌三首","#[原文]能登河乃 後者相牟 之麻之久母 別等伊倍婆 可奈之久母在香","#[訓読]能登川の後には逢はむしましくも別るといへば悲しくもあるか","#[仮名],のとがはの,のちにはあはむ,しましくも,わかるといへば,かなしくもあるか","#[左注]右一首治部卿船王","#[校異]","#[事項],天平勝宝4年11月27日,年紀,作者:船王,宴席,橘奈良麻呂,餞別,悲別,出発,羈旅,序詞,地名,奈良","#[訓異]
のとがはの,[寛]のとかはの,
のちにはあはむ[寛],
しましくも[寛],
わかるといへば,[寛]わかれといへは,
かなしくもあるか[寛],
" "#[番号]19/4280","#[題詞](廿七日林王宅餞之但馬按察使橘奈良麻呂朝臣宴歌三首)","#[原文]立別 君我伊麻左婆 之奇嶋能 人者和礼自久 伊波比弖麻多牟","#[訓読]立ち別れ君がいまさば磯城島の人は我れじく斎ひて待たむ","#[仮名],たちわかれ,きみがいまさば,しきしまの,ひとはわれじく,いはひてまたむ","#[左注]右一首右京少進大伴宿祢黒麻呂","#[校異]","#[事項],天平勝宝4年11月27日,年紀,作者:大伴黒麻呂,宴席,橘奈良麻呂,餞別,悲別,出発,羈旅,寿歌","#[訓異]
たちわかれ[寛],
きみがいまさば,[寛]きみかいまさは,
しきしまの[寛],
ひとはわれじく,[寛]ひとはわれしく,
いはひてまたむ[寛],
" "#[番号]19/4281","#[題詞](廿七日林王宅餞之但馬按察使橘奈良麻呂朝臣宴歌三首)","#[原文]白雪能 布里之久山乎 越由加牟 君乎曽母等奈 伊吉能乎尓念,伊伎能乎尓須流","#[訓読]白雪の降り敷く山を越え行かむ君をぞもとな息の緒に思ふ,息の緒にする","#[仮名],しらゆきの,ふりしくやまを,こえゆかむ,きみをぞもとな,いきのをにおもふ,いきのをにする","#[左注]左大臣換尾云 伊伎能乎尓須流 然猶喩曰 如前誦之也 / 右一首少納言大伴宿祢家持","#[校異]","#[事項],天平勝宝4年11月27日,年紀,作者:大伴家持,宴席,橘奈良麻呂,餞別,悲別,出発,羈旅,橘諸兄,推敲,添削","#[訓異]
しらゆきの[寛],
ふりしくやまを[寛],
こえゆかむ[寛],
きみをぞもとな,[寛]きみをそもとな,
いきのをにおもふ[寛],
いきのをにする[寛],
" "#[番号]19/4282","#[題詞]五年正月四日於治部少輔石上朝臣宅嗣家宴歌三首","#[原文]辞繁 不相問尓 梅花 雪尓之乎礼C 宇都呂波牟可母","#[訓読]言繁み相問はなくに梅の花雪にしをれてうつろはむかも","#[仮名],ことしげみ,あひとはなくに,うめのはな,ゆきにしをれて,うつろはむかも","#[左注]右一首主人石上朝臣宅嗣","#[校異]","#[事項],天平勝宝5年1月4日,年紀,作者:石上宅嗣,宴席,植物,見立て,恋愛,譬喩","#[訓異]
ことしげみ,[寛]ことしけし,
あひとはなくに,[寛]あひとはさるに,
うめのはな[寛],
ゆきにしをれて[寛],
うつろはむかも[寛],
" "#[番号]19/4283","#[題詞](五年正月四日於治部少輔石上朝臣宅嗣家宴歌三首)","#[原文]梅花 開有之中尓 布敷賣流波 戀哉許母礼留 雪乎待等可","#[訓読]梅の花咲けるが中にふふめるは恋か隠れる雪を待つとか","#[仮名],うめのはな,さけるがなかに,ふふめるは,こひかこもれる,ゆきをまつとか","#[左注]右一首中務大輔茨田王","#[校異]","#[事項],天平勝宝5年1月4日,年紀,作者:茨田王,宴席,植物,恋愛,見立て,譬喩,石上宅嗣","#[訓異]
うめのはな[寛],
さけるがなかに,[寛]さけるかなかに,
ふふめるは[寛],
こひかこもれる,[寛]こひやこもれる,
ゆきをまつとか[寛],
" "#[番号]19/4284","#[題詞](五年正月四日於治部少輔石上朝臣宅嗣家宴歌三首)","#[原文]新 年始尓 思共 伊牟礼C乎礼婆 宇礼之久母安流可","#[訓読]新しき年の初めに思ふどちい群れて居れば嬉しくもあるか","#[仮名],あらたしき,としのはじめに,おもふどち,いむれてをれば,うれしくもあるか","#[左注]右一首大膳大夫道祖王","#[校異]","#[事項],天平勝宝5年1月4日,年紀,作者:道祖王,宴席,石上宅嗣","#[訓異]
あらたしき[寛],
としのはじめに,[寛]としのはしめに,
おもふどち,[寛]おもふとち,
いむれてをれば,[寛]いむれてをれは,
うれしくもあるか[寛],
" "#[番号]19/4285","#[題詞]十一日大雪落積尺有二寸 因述拙懐<歌>三首","#[原文]大宮能 内尓毛外尓母 米都良之久 布礼留大雪 莫踏祢乎之","#[訓読]大宮の内にも外にもめづらしく降れる大雪な踏みそね惜し","#[仮名],おほみやの,うちにもとにも,めづらしく,ふれるおほゆき,なふみそねをし","#[左注]","#[校異]<> -> 歌 [元][細]","#[事項],天平勝宝5年1月11日,年紀,作者:大伴家持,宮廷,寿歌","#[訓異]
おほみやの[寛],
うちにもとにも,[寛]うちにもともも,
めづらしく,[寛]めつらしく,
ふれるおほゆき[寛],
なふみそねをし[寛],
" "#[番号]19/4286","#[題詞](十一日大雪落積尺有二寸 因述拙懐<歌>三首)","#[原文]御苑布能 竹林尓 鴬波 之波奈吉尓之乎 雪波布利都々","#[訓読]御園生の竹の林に鴬はしば鳴きにしを雪は降りつつ","#[仮名],みそのふの,たけのはやしに,うぐひすは,しばなきにしを,ゆきはふりつつ","#[左注]","#[校異]波 [元] 伎","#[事項],天平勝宝5年1月11日,年紀,作者:大伴家持,動物,叙景","#[訓異]
みそのふの[寛],
たけのはやしに[寛],
うぐひすは,[寛]うくひすは,
しばなきにしを,[寛]しはなきにしを,
ゆきはふりつつ[寛],
" "#[番号]19/4287","#[題詞](十一日大雪落積尺有二寸 因述拙懐<歌>三首)","#[原文]鴬能 鳴之可伎都尓 <々>保敝理之 梅此雪尓 宇都呂布良牟可","#[訓読]鴬の鳴きし垣内ににほへりし梅この雪にうつろふらむか","#[仮名],うぐひすの,なきしかきつに,にほへりし,うめこのゆきに,うつろふらむか","#[左注]","#[校異]尓 -> 々 [元][類][紀]","#[事項],天平勝宝5年1月11日,年紀,作者:大伴家持,動物,植物","#[訓異]
うぐひすの,[寛]うくひすの,
なきしかきつに[寛],
にほへりし[寛],
うめこのゆきに[寛],
うつろふらむか[寛],
" "#[番号]19/4288","#[題詞]十二日侍於内裏聞千鳥喧作歌一首","#[原文]河渚尓母 雪波布礼々之 <宮>裏 智杼利鳴良之 為牟等己呂奈美","#[訓読]川洲にも雪は降れれし宮の内に千鳥鳴くらし居む所なみ","#[仮名],かはすにも,ゆきはふれれし,みやのうちに,ちどりなくらし,ゐむところなみ","#[左注]","#[校異]宮乃 -> 宮 [元][類]","#[事項],天平勝宝5年1月12日,年紀,作者:大伴家持,宮廷,動物","#[訓異]
かはすにも[寛],
ゆきはふれれし[寛],
みやのうちに[寛],
ちどりなくらし,[寛]ちとりなくらし,
ゐむところなみ,[寛]すむところなみ,
" "#[番号]19/4289","#[題詞]二月十九日於左大臣橘家宴見攀折柳條歌一首","#[原文]青柳乃 保都枝与治等理 可豆良久波 君之屋戸尓之 千年保久等曽","#[訓読]青柳の上枝攀ぢ取りかづらくは君が宿にし千年寿くとぞ","#[仮名],あをやぎの,ほつえよぢとり,かづらくは,きみがやどにし,ちとせほくとぞ","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝5年2月19日,年紀,作者:大伴家持,宴席,橘諸兄,植物,寿歌","#[訓異]
あをやぎの,[寛]あをやきの,
ほつえよぢとり,[寛]ほつえよちとり,
かづらくは,[寛]かつらくは,
きみがやどにし,[寛]きみかやとにし,
ちとせほくとぞ,[寛]ちとせほくとそ,
" "#[番号]19/4290","#[題詞]廿三日依興作歌二首","#[原文]春野尓 霞多奈i伎 宇良悲 許能暮影尓 鴬奈久母","#[訓読]春の野に霞たなびきうら悲しこの夕影に鴬鳴くも","#[仮名],はるののに,かすみたなびき,うらがなし,このゆふかげに,うぐひすなくも","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝5年2月23日,年紀,作者:大伴家持,動物,春愁,叙景,依興,悲嘆","#[訓異]
はるののに[寛],
かすみたなびき,[寛]かすみたなひき,
うらがなし,[寛]うらかなし,
このゆふかげに,[寛]このゆふかけに,
うぐひすなくも,[寛]うくひすなくも,
" "#[番号]19/4291","#[題詞](廿三日依興作歌二首)","#[原文]和我屋度能 伊佐左村竹 布久風能 於等能可蘇氣伎 許能由布敝可母","#[訓読]我が宿のい笹群竹吹く風の音のかそけきこの夕かも","#[仮名],わがやどの,いささむらたけ,ふくかぜの,おとのかそけき,このゆふへかも","#[左注]","#[校異]","#[事項],天平勝宝5年2月23日,年紀,作者:大伴家持,依興,植物","#[訓異]
わがやどの,[寛]わかやとの,
いささむらたけ[寛],
ふくかぜの,[寛]ふくかせの,
おとのかそけき[寛],
このゆふへかも[寛],
" "#[番号]19/4292","#[題詞]廿五日作歌一首","#[原文]宇良々々尓 照流春日尓 比婆理安我里 情悲毛 比<登>里志於母倍婆","#[訓読]うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しも独し思へば","#[仮名],うらうらに,てれるはるひに,ひばりあがり,こころかなしも,ひとりしおもへば","#[左注]春日遅々ネノ正啼 悽惆之意非歌難撥耳 仍作此歌式展締緒 但此巻中不稱 作者名字徒録年月所處縁起者 皆大伴宿祢家持裁作歌詞也","#[校異]等 -> 登 [元][類][文][紀]","#[事項],天平勝宝5年2月25日,年紀,作者:大伴家持,悲嘆,春愁,動物,孤独","#[訓異]
うらうらに[寛],
てれるはるひに[寛],
ひばりあがり,[寛]ひはりあかり,
こころかなしも[寛],
ひとりしおもへば,[寛]ひとりしおもへは,
" "#[番号]20/4293","#[題詞]幸行於山村之時歌二首 / 先太上天皇詔陪従王臣曰夫諸王卿等宣賦和歌而奏即御口号曰","#[原文]安之比奇能 山行之可婆 山人乃 和礼尓依志米之 夜麻都刀曽許礼","#[訓読]あしひきの山行きしかば山人の我れに得しめし山づとぞこれ","#[仮名],あしひきの,やまゆきしかば,やまびとの,われにえしめし,やまづとぞこれ","#[左注](右天平勝寶五年五月在於大納言藤原朝臣之家時 依奏事而請問之間 少主鈴山田史土麻呂語少納言大伴宿祢家持曰 昔聞此言 即誦此歌也)","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],天平勝宝5年5月,年紀,作者:元正天皇,伝誦,山田土麻呂,古歌,行幸,奈良,神仙,枕詞,大伴家持,藤原仲麻呂","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまゆきしかば,[寛]やまゆきしかは,
やまびとの,[寛]やまひとの,
われにえしめし[寛],
やまづとぞこれ,[寛]やまつとそこれ,
" "#[番号]20/4294","#[題詞](幸行於山村之時歌二首) / 舎人親王應詔奉和歌一首","#[原文]安之比奇能 山尓由伎家牟 夜麻妣等能 情母之良受 山人夜多礼","#[訓読]あしひきの山に行きけむ山人の心も知らず山人や誰れ","#[仮名],あしひきの,やまにゆきけむ,やまびとの,こころもしらず,やまびとやたれ","#[左注]右天平勝寶五年五月在於大納言藤原朝臣之家時 依奏事而請問之間 少主鈴山田史土麻呂語少納言大伴宿祢家持曰 昔聞此言 即誦此歌也","#[校異]","#[事項],天平勝宝5年5月,年紀,作者:舎人親王,伝誦,古歌,山田土麻呂,行幸,枕詞,奈良,神仙,大伴家持,藤原仲麻呂","#[訓異]
あしひきの[寛],
やまにゆきけむ[寛],
やまびとの,[寛]やまひとの,
こころもしらず,[寛]こころもしらす,
やまびとやたれ,[寛]やまひとやたれ,
" "#[番号]20/4295","#[題詞]天平勝寶五年八月十二日二三大夫等各提壷酒 登高圓野聊述所心作歌三首","#[原文]多可麻刀能 乎婆奈布伎故酒 秋風尓 比毛等伎安氣奈 多太奈良受等母","#[訓読]高円の尾花吹き越す秋風に紐解き開けな直ならずとも","#[仮名],たかまとの,をばなふきこす,あきかぜに,ひもときあけな,ただならずとも","#[左注]右一首左京少進大伴宿祢池主","#[校異]天平勝宝五年八月 [細](塙) 八月 / 酒 [類][春] 須","#[事項],天平勝宝5年8月12日,年紀,作者:大伴池主,地名,高円,奈良,宴席,植物","#[訓異]
たかまとの[寛],
をばなふきこす,[寛]をはなふきこす,
あきかぜに,[寛]あきかせに,
ひもときあけな[寛],
ただならずとも,[寛]たたならすとも,
" "#[番号]20/4296","#[題詞](天平勝寶五年八月十二日二三大夫等各提壷酒 登高圓野聊述所心作歌三首)","#[原文]安麻久母尓 可里曽奈久奈流 多加麻刀能 波疑乃之多婆波 毛美知安倍牟可聞","#[訓読]天雲に雁ぞ鳴くなる高円の萩の下葉はもみちあへむかも","#[仮名],あまくもに,かりぞなくなる,たかまとの,はぎのしたばは,もみちあへむかも","#[左注]右一首左中辨中臣清麻呂朝臣","#[校異]","#[事項],天平勝宝5年8月12日,年紀,作者:中臣清麻呂,宴席,奈良,高円,地名,植物,動物,叙景","#[訓異]
あまくもに[寛],
かりぞなくなる,[寛]かりそなくなる,
たかまとの[寛],
はぎのしたばは,[寛]はきのしたはは,
もみちあへむかも[寛],
" "#[番号]20/4297","#[題詞](天平勝寶五年八月十二日二三大夫等各提壷酒 登高圓野聊述所心作歌三首)","#[原文]乎美奈<弊>之 安伎波疑之努藝 左乎之可能 都由和氣奈加牟 多加麻刀能野曽","#[訓読]をみなへし秋萩しのぎさを鹿の露別け鳴かむ高圓の野ぞ","#[仮名],をみなへし,あきはぎしのぎ,さをしかの,つゆわけなかむ,たかまとののぞ","#[左注]右一首少納言大伴宿祢家持","#[校異]敝 -> 弊 [類][紀][細]","#[事項],天平勝宝5年8月12日,年紀,作者:大伴家持,植物,動物,地名,高円,奈良,宴席","#[訓異]
をみなへし[寛],
あきはぎしのぎ,[寛]あきはきしのき,
さをしかの[寛],
つゆわけなかむ[寛],
たかまとののぞ,[寛]たかまとののそ,
" "#[番号]20/4298","#[題詞]六年正月四日氏人等賀集于少納言大伴宿祢家持之宅宴飲歌三首","#[原文]霜上尓 安良礼多<婆>之里 伊夜麻之尓 安礼<波>麻為許牟 年緒奈我久 [古今未詳]","#[訓読]霜の上に霰た走りいやましに我れは参ゐ来む年の緒長く [古今未詳]","#[仮名],しものうへに,あられたばしり,いやましに,あれはまゐこむ,としのをながく","#[左注]右一首左兵衛督大伴宿祢千室","#[校異]波 -> 婆 [元][類][紀] / 婆 -> 波 [元][類]","#[事項],天平勝宝6年1月4日,年紀,作者:大伴千室,賀歌,寿歌,大伴家持,宴席,古歌,伝誦","#[訓異]
しものうへに[寛],
あられたばしり,[寛]あられたはしり,
いやましに[寛],
あれはまゐこむ[寛],
としのをながく,[寛]としのをなかく,
" "#[番号]20/4299","#[題詞](六年正月四日氏人等賀集于少納言大伴宿祢家持之宅宴飲歌三首)","#[原文]年月波 安良多々々々尓 安比美礼騰 安我毛布伎美波 安伎太良奴可母 [古今未詳]","#[訓読]年月は新た新たに相見れど我が思ふ君は飽き足らぬかも [古今未詳]","#[仮名],としつきは,あらたあらたに,あひみれど,あがもふきみは,あきだらぬかも","#[左注]右一首民部少丞大伴宿祢村上","#[校異]","#[事項],天平勝宝6年1月4日,年紀,作者:大伴村上,賀歌,寿歌,古歌,伝誦,宴席,主人讃美,大伴家持","#[訓異]
としつきは[寛],
あらたあらたに,[寛]あたらあたらに,
あひみれど,[寛]あひみれと,
あがもふきみは,[寛]あかもふきみは,
あきだらぬかも,[寛]あきたらぬかも,
" "#[番号]20/4300","#[題詞](六年正月四日氏人等賀集于少納言大伴宿祢家持之宅宴飲歌三首)","#[原文]可須美多都 春初乎 家布能其等 見牟登於毛倍波 多努之等曽毛布","#[訓読]霞立つ春の初めを今日のごと見むと思へば楽しとぞ思ふ","#[仮名],かすみたつ,はるのはじめを,けふのごと,みむとおもへば,たのしとぞもふ","#[左注]右一首左京少進大伴宿祢池主","#[校異]波 [元](塙) 婆","#[事項],天平勝宝6年1月4日,年紀,作者:大伴池主,宴席,賀歌,寿歌","#[訓異]
かすみたつ[寛],
はるのはじめを,[寛]はるのはしめを,
けふのごと,[寛]けふのこと,
みむとおもへば,[寛]みむとおもはは,
たのしとぞもふ,[寛]たのしとそおもふ,
" "#[番号]20/4301","#[題詞]七日天皇太上天皇皇大后<在>於東常宮南大殿肆宴歌一首","#[原文]伊奈美野乃 安可良我之波々 等伎波安礼騰 伎美乎安我毛布 登伎波佐祢奈之","#[訓読]印南野の赤ら柏は時はあれど君を我が思ふ時はさねなし","#[仮名],いなみのの,あからがしはは,ときはあれど,きみをあがもふ,ときはさねなし","#[左注]右一首播磨國守安宿王奏 [古今未詳]","#[校異]<> -> 在 [元]","#[事項],天平勝宝6年1月7日,年紀,作者:安宿王,古歌,伝誦,宮廷,肆宴,宴席,孝謙天皇,聖武天皇,光明皇后,地名,兵庫,植物,忠誠","#[訓異]
いなみのの[寛],
あからがしはは,[寛]あからかしはは,
ときはあれど,[寛]ときはあれと,
きみをあがもふ,[寛]きみをあかもふ,
ときはさねなし[寛],
" "#[番号]20/4302","#[題詞]三月十九日家持之庄門槻樹下宴飲歌二首","#[原文]夜麻夫伎波 奈O都々於保佐牟 安里都々母 伎美伎麻之都々 可射之多里家利","#[訓読]山吹は撫でつつ生ほさむありつつも君来ましつつかざしたりけり","#[仮名],やまぶきは,なでつつおほさむ,ありつつも,きみきましつつ,かざしたりけり","#[左注]右一首置始連長谷","#[校異]","#[事項],天平勝宝6年3月19日,年紀,作者:置始長谷,宴席,植物,大伴家持,主人讃美","#[訓異]
やまぶきは,[寛]やまふきは,
なでつつおほさむ,[寛]なてつつおほさむ,
ありつつも[寛],
きみきましつつ[寛],
かざしたりけり,[寛]かさしたりけり,
" "#[番号]20/4303","#[題詞](三月十九日家持之庄門槻樹下宴飲歌二首)","#[原文]和我勢故我 夜度乃也麻夫伎 佐吉弖安良婆 也麻受可欲波牟 伊夜登之能波尓","#[訓読]我が背子が宿の山吹咲きてあらばやまず通はむいや年の端に","#[仮名],わがせこが,やどのやまぶき,さきてあらば,やまずかよはむ,いやとしのはに","#[左注]右一首長谷攀花提壷到来 因是大伴宿祢家持作此歌和之","#[校異]壷 [西(右書)] 壷酒","#[事項],天平勝宝6年3月19日,年紀,作者:大伴家持,植物,宴席,賀歌,和歌,置始長谷","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
やどのやまぶき,[寛]やとのやまふき,
さきてあらば,[寛]さきてあらは,
やまずかよはむ,[寛]やますかよはむ,
いやとしのはに[寛],
" "#[番号]20/4304","#[題詞]同月廿五日左大臣橘卿宴于山田御母之宅歌一首","#[原文]夜麻夫伎乃 花能左香利尓 可久乃其等 伎美乎見麻久波 知登世尓母我母","#[訓読]山吹の花の盛りにかくのごと君を見まくは千年にもがも","#[仮名],やまぶきの,はなのさかりに,かくのごと,きみをみまくは,ちとせにもがも","#[左注]右一首少納言大伴宿祢家持矚時花作 但未出之間大臣罷宴而不<擧>誦耳","#[校異]攀 -> 擧 [温][矢][京]","#[事項],天平勝宝6年3月25日,年紀,作者:大伴家持,宴席,橘諸兄,山田比売島,植物,賀歌,寿歌,主人讃美,属目,不誦","#[訓異]
やまぶきの,[寛]やまふきの,
はなのさかりに[寛],
かくのごと,[寛]かくのこと,
きみをみまくは[寛],
ちとせにもがも,[寛]ちとせにもかも,
" "#[番号]20/4305","#[題詞]詠霍公鳥歌一首","#[原文]許乃久礼能 之氣伎乎乃倍乎 保等登藝須 奈伎弖故由奈理 伊麻之久良之母","#[訓読]木の暗の茂き峰の上を霍公鳥鳴きて越ゆなり今し来らしも","#[仮名],このくれの,しげきをのへを,ほととぎす,なきてこゆなり,いましくらしも","#[左注]右一首四月大伴宿祢家持作","#[校異]","#[事項],天平勝宝6年4月,年紀,作者:大伴家持,動物,叙景","#[訓異]
このくれの[寛],
しげきをのへを,[寛]しけきをのへを,
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なきてこゆなり[寛],
いましくらしも[寛],
" "#[番号]20/4306","#[題詞]七夕歌八首","#[原文]波都秋風 須受之伎由布弊 等香武等曽 比毛波牟須妣之 伊母尓安波牟多米","#[訓読]初秋風涼しき夕解かむとぞ紐は結びし妹に逢はむため","#[仮名],はつあきかぜ,すずしきゆふへ,とかむとぞ,ひもはむすびし,いもにあはむため","#[左注](右大伴宿祢家持獨仰天海作之)","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],天平勝宝6年7月7日,年紀,作者:大伴家持,七夕,独詠","#[訓異]
はつあきかぜ,[寛]はつあきかせ,
すずしきゆふへ,[寛]すすしきゆうへ,
とかむとぞ,[寛]とかむとそ,
ひもはむすびし,[寛]ひもはむすひし,
いもにあはむため[寛],
" "#[番号]20/4307","#[題詞](七夕歌八首)","#[原文]秋等伊閇婆 許己呂曽伊多伎 宇多弖家尓 花仁奈蘇倍弖 見麻久保里香聞","#[訓読]秋と言へば心ぞ痛きうたて異に花になそへて見まく欲りかも","#[仮名],あきといへば,こころぞいたき,うたてけに,はなになそへて,みまくほりかも","#[左注](右大伴宿祢家持獨仰天海作之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝6年7月7日,年紀,作者:大伴家持,七夕,独詠","#[訓異]
あきといへば,[寛]あきといへは,
こころぞいたき,[寛]こころそいたき,
うたてけに[寛],
はなになそへて[寛],
みまくほりかも[寛],
" "#[番号]20/4308","#[題詞](七夕歌八首)","#[原文]波都乎婆奈 <々々>尓見牟登之 安麻乃可波 弊奈里尓家良之 年緒奈我久","#[訓読]初尾花花に見むとし天の川へなりにけらし年の緒長く","#[仮名],はつをばな,はなにみむとし,あまのがは,へなりにけらし,としのをながく","#[左注](右大伴宿祢家持獨仰天海作之)","#[校異]波名 -> 々々 [元]","#[事項],天平勝宝6年7月7日,年紀,作者:大伴家持,七夕,独詠,植物","#[訓異]
はつをばな,[寛]はつをはな,
はなにみむとし[寛],
あまのがは,[寛]あまのかは,
へなりにけらし[寛],
としのをながく,[寛]としのをなかく,
" "#[番号]20/4309","#[題詞](七夕歌八首)","#[原文]秋風尓 奈妣久可波備能 尓故具左能 尓古餘可尓之母 於毛保由流香母","#[訓読]秋風に靡く川辺のにこ草のにこよかにしも思ほゆるかも","#[仮名],あきかぜに,なびくかはびの,にこぐさの,にこよかにしも,おもほゆるかも","#[左注](右大伴宿祢家持獨仰天海作之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝6年7月7日,年紀,作者:大伴家持,七夕,独詠,植物","#[訓異]
あきかぜに,[寛]あきかせに,
なびくかはびの,[寛]なひくかはへの,
にこぐさの,[寛]にこくさの,
にこよかにしも[寛],
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]20/4310","#[題詞](七夕歌八首)","#[原文]安吉佐礼婆 奇里多知和多流 安麻能河波 伊之奈弥於可<婆> 都藝弖見牟可母","#[訓読]秋されば霧立ちわたる天の川石並置かば継ぎて見むかも","#[仮名],あきされば,きりたちわたる,あまのがは,いしなみおかば,つぎてみむかも","#[左注](右大伴宿祢家持獨仰天海作之)","#[校異]波 -> 婆 [元][類][細]","#[事項],天平勝宝6年7月7日,年紀,作者:大伴家持,七夕,独詠","#[訓異]
あきされば,[寛]あきされは,
きりたちわたる[寛],
あまのがは,[寛]あまのかは,
いしなみおかば,[寛]いしなみおかは,
つぎてみむかも,[寛]つきてみむかも,
" "#[番号]20/4311","#[題詞](七夕歌八首)","#[原文]秋風尓 伊麻香伊麻可等 比母等伎弖 宇良麻知乎流尓 月可多夫伎奴","#[訓読]秋風に今か今かと紐解きてうら待ち居るに月かたぶきぬ","#[仮名],あきかぜに,いまかいまかと,ひもときて,うらまちをるに,つきかたぶきぬ","#[左注](右大伴宿祢家持獨仰天海作之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝6年7月7日,年紀,作者:大伴家持,七夕,独詠","#[訓異]
あきかぜに,[寛]あきかせに,
いまかいまかと[寛],
ひもときて[寛],
うらまちをるに[寛],
つきかたぶきぬ,[寛]つきかたふきぬ,
" "#[番号]20/4312","#[題詞](七夕歌八首)","#[原文]秋草尓 於久之良都由能 安可受能未 安比見流毛乃乎 月乎之麻多牟","#[訓読]秋草に置く白露の飽かずのみ相見るものを月をし待たむ","#[仮名],あきくさに,おくしらつゆの,あかずのみ,あひみるものを,つきをしまたむ","#[左注](右大伴宿祢家持獨仰天海作之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝6年7月7日,年紀,作者:大伴家持,七夕,独詠","#[訓異]
あきくさに[寛],
おくしらつゆの[寛],
あかずのみ,[寛]あかすのみ,
あひみるものを[寛],
つきをしまたむ[寛],
" "#[番号]20/4313","#[題詞](七夕歌八首)","#[原文]安乎奈美尓 蘇弖佐閇奴礼弖 許具布祢乃 可之布流保刀尓 左欲布氣奈武可","#[訓読]青波に袖さへ濡れて漕ぐ舟のかし振るほとにさ夜更けなむか","#[仮名],あをなみに,そでさへぬれて,こぐふねの,かしふるほとに,さよふけなむか","#[左注]右大伴宿祢家持獨仰天漢作之","#[校異]","#[事項],天平勝宝6年7月7日,年紀,作者:大伴家持,七夕,独詠","#[訓異]
あをなみに[寛],
そでさへぬれて,[寛]そてさへぬれて,
こぐふねの,[寛]こくふねの,
かしふるほとに[寛],
さよふけなむか[寛],
" "#[番号]20/4314","#[題詞]","#[原文]八千種尓 久佐奇乎宇恵弖 等伎其等尓 佐加牟波奈乎之 見都追思<努>波奈","#[訓読]八千種に草木を植ゑて時ごとに咲かむ花をし見つつ偲はな","#[仮名],やちくさに,くさきをうゑて,ときごとに,さかむはなをし,みつつしのはな","#[左注]右一首同月廿八日大伴宿祢家持作之","#[校異]怒 -> 努 [元][類][細]","#[事項],天平勝宝6年7月28日,年紀,作者:大伴家持,植物","#[訓異]
やちくさに[寛],
くさきをうゑて[寛],
ときごとに,[寛]ときことに,
さかむはなをし[寛],
みつつしのはな[寛],
" "#[番号]20/4315","#[題詞]","#[原文]宮人乃 蘇泥都氣其呂母 安伎波疑尓 仁保比与呂之伎 多加麻刀能美夜","#[訓読]宮人の袖付け衣秋萩ににほひよろしき高圓の宮","#[仮名],みやひとの,そでつけごろも,あきはぎに,にほひよろしき,たかまとのみや","#[左注](右歌六首兵部少輔大伴宿祢家持獨憶秋野聊述拙懐作之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝6年,年紀,作者:大伴家持,植物,独詠,地名,高円,奈良,宮廷","#[訓異]
みやひとの[寛],
そでつけごろも,[寛]そてつきころも,
あきはぎに,[寛]あきはきに,
にほひよろしき[寛],
たかまとのみや[寛],
" "#[番号]20/4316","#[題詞]","#[原文]多可麻刀能 宮乃須蘇未乃 努都可佐尓 伊麻左家流良武 乎美奈弊之波母","#[訓読]高圓の宮の裾廻の野づかさに今咲けるらむをみなへしはも","#[仮名],たかまとの,みやのすそみの,のづかさに,いまさけるらむ,をみなへしはも","#[左注](右歌六首兵部少輔大伴宿祢家持獨憶秋野聊述拙懐作之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝6年,年紀,作者:大伴家持,独詠,高円,植物,地名,宮廷,奈良","#[訓異]
たかまとの[寛],
みやのすそみの[寛],
のづかさに,[寛]のつかさに,
いまさけるらむ[寛],
をみなへしはも[寛],
" "#[番号]20/4317","#[題詞]","#[原文]秋野尓波 伊麻己曽由可米 母能乃布能 乎等古乎美奈能 波奈尓保比見尓","#[訓読]秋野には今こそ行かめもののふの男女の花にほひ見に","#[仮名],あきのには,いまこそゆかめ,もののふの,をとこをみなの,はなにほひみに","#[左注](右歌六首兵部少輔大伴宿祢家持獨憶秋野聊述拙懐作之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝6年,年紀,作者:大伴家持,高円,宮廷,奈良,独詠","#[訓異]
あきのには[寛],
いまこそゆかめ[寛],
もののふの[寛],
をとこをみなの[寛],
はなにほひみに[寛],
" "#[番号]20/4318","#[題詞]","#[原文]安伎能野尓 都由於弊流波疑乎 多乎良受弖 安多良佐可里乎 須<具>之弖牟登香","#[訓読]秋の野に露負へる萩を手折らずてあたら盛りを過ぐしてむとか","#[仮名],あきののに,つゆおへるはぎを,たをらずて,あたらさかりを,すぐしてむとか","#[左注](右歌六首兵部少輔大伴宿祢家持獨憶秋野聊述拙懐作之)","#[校異]其 -> 具 [元][類][紀][細]","#[事項],天平勝宝6年,年紀,作者:大伴家持,植物,高円,宮廷,奈良,独詠","#[訓異]
あきののに[寛],
つゆおへるはぎを,[寛]つゆをへるはきを,
たをらずて,[寛]たをらすて,
あたらさかりを[寛],
すぐしてむとか,[寛]すくしてむとか,
" "#[番号]20/4319","#[題詞]","#[原文]多可麻刀能 秋野乃宇倍能 安佐疑里尓 都麻欲夫乎之可 伊泥多都良牟可","#[訓読]高圓の秋野の上の朝霧に妻呼ぶ壮鹿出で立つらむか","#[仮名],たかまとの,あきののうへの,あさぎりに,つまよぶをしか,いでたつらむか","#[左注](右歌六首兵部少輔大伴宿祢家持獨憶秋野聊述拙懐作之)","#[校異]牟 [元][類] 武","#[事項],天平勝宝6年,年紀,作者:大伴家持,動物,地名,高円,奈良,宮廷,独詠","#[訓異]
たかまとの[寛],
あきののうへの[寛],
あさぎりに,[寛]あさきりに,
つまよぶをしか,[寛]つまよふをしか,
いでたつらむか,[寛]いてたつらむか,
" "#[番号]20/4320","#[題詞]","#[原文]麻須良男乃 欲妣多天思加婆 左乎之加能 牟奈和氣由加牟 安伎野波疑波良","#[訓読]大夫の呼び立てしかばさを鹿の胸別け行かむ秋野萩原","#[仮名],ますらをの,よびたてしかば,さをしかの,むなわけゆかむ,あきのはぎはら","#[左注]右歌六首兵部少輔大伴宿祢家持獨憶秋野聊述拙懐作之","#[校異]","#[事項],天平勝宝6年,年紀,作者:大伴家持,独詠,高円,奈良,宮廷,動物,植物","#[訓異]
ますらをの[寛],
よびたてしかば,[寛]よひたてしかは,
さをしかの[寛],
むなわけゆかむ[寛],
あきのはぎはら,[寛]あきのはきはら,
" "#[番号]20/4321","#[題詞]天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌","#[原文]可之古伎夜 美許等加我布理 阿須由利也 加曳<我>牟多祢<牟> 伊牟奈之尓志弖","#[訓読]畏きや命被り明日ゆりや草がむた寝む妹なしにして","#[仮名],かしこきや,みことかがふり,あすゆりや,かえがむたねむ,いむなしにして","#[左注]右一首國造丁長下郡物部秋持 ( / 二月六日防人部領使遠江國史生坂本朝臣人上進歌數十八首 但有拙劣歌十一首不取載之)","#[校異]我伊 -> 我 [元][古] / 乎 -> 牟 [元][類][古]","#[事項],天平勝宝7年2月6日,年紀,作者:物部秋持,防人歌,恋情,静岡,坂本人上","#[訓異]
かしこきや[寛],
みことかがふり,[寛]みことかかふり,
あすゆりや[寛],
かえがむたねむ,[寛]かえかいむたねを,
いむなしにして[寛],
" "#[番号]20/4322","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]和我都麻波 伊多久古<非>良之 乃牟美豆尓 加其佐倍美曳弖 余尓和須良礼受","#[訓読]我が妻はいたく恋ひらし飲む水に影さへ見えてよに忘られず","#[仮名],わがつまは,いたくこひらし,のむみづに,かごさへみえて,よにわすられず","#[左注]右一首主帳丁麁玉郡若倭部身麻呂 ( / 二月六日防人部領使遠江國史生坂本朝臣人上進歌數十八首 但有拙劣歌十一首不取載之)","#[校異]比 -> 非 [元]","#[事項],天平勝宝7年2月6日,年紀,作者:若倭部身麻呂,防人歌,静岡,坂本人上,恋情","#[訓異]
わがつまは,[寛]わかつまは,
いたくこひらし[寛],
のむみづに,[寛]のむみつに,
かごさへみえて,[寛]かこさへみえて,
よにわすられず,[寛]よにわすられす,
" "#[番号]20/4323","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]等伎騰吉乃 波奈波佐家登母 奈尓須礼曽 波々登布波奈乃 佐吉泥己受祁牟","#[訓読]時々の花は咲けども何すれぞ母とふ花の咲き出来ずけむ","#[仮名],ときどきの,はなはさけども,なにすれぞ,ははとふはなの,さきでこずけむ","#[左注]右一首防人山名郡丈部真麻呂 ( / 二月六日防人部領使遠江國史生坂本朝臣人上進歌數十八首 但有拙劣歌十一首不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月6日,年紀,作者:丈部真麻呂,防人歌,恋情,静岡,坂本人上","#[訓異]
ときどきの,[寛]ときときの,
はなはさけども,[寛]はなはさけとも,
なにすれぞ,[寛]なにすれそ,
ははとふはなの[寛],
さきでこずけむ,[寛]さきてこすけむ,
" "#[番号]20/4324","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]等倍多保美 志留波乃伊宗等 尓閇乃宇良等 安比弖之阿良<婆> 己等母加由波牟","#[訓読]遠江志留波の礒と尓閇の浦と合ひてしあらば言も通はむ","#[仮名],とへたほみ,しるはのいそと,にへのうらと,あひてしあらば,こともかゆはむ","#[左注]右一首同郡丈部川相 ( / 二月六日防人部領使遠江國史生坂本朝臣人上進歌數十八首 但有拙劣歌十一首不取載之)","#[校異]波 -> 婆 [元][細][温]","#[事項],天平勝宝7年2月6日,年紀,作者:丈部川相,防人歌,恋情,静岡,坂本人上,地名","#[訓異]
とへたほみ[寛],
しるはのいそと[寛],
にへのうらと[寛],
あひてしあらば,[寛]あひてしあらは,
こともかゆはむ[寛],
" "#[番号]20/4325","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]知々波々母 波奈尓母我毛夜 久佐麻久良 多妣波由久等母 佐々己弖由加牟","#[訓読]父母も花にもがもや草枕旅は行くとも捧ごて行かむ","#[仮名],ちちははも,はなにもがもや,くさまくら,たびはゆくとも,ささごてゆかむ","#[左注]右一首佐野郡丈部黒當 ( / 二月六日防人部領使遠江國史生坂本朝臣人上進歌數十八首 但有拙劣歌十一首不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月6日,年紀,作者:丈部黒當,防人歌,静岡,坂本人上,恋情,望郷,枕詞","#[訓異]
ちちははも[寛],
はなにもがもや,[寛]はなにもかもや,
くさまくら[寛],
たびはゆくとも,[寛]たひはゆくとも,
ささごてゆかむ,[寛]ささこてゆかむ,
" "#[番号]20/4326","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]父母我 等能々志利弊乃 母々余具佐 母々与伊弖麻勢 和我伎多流麻弖","#[訓読]父母が殿の後方のももよ草百代いでませ我が来るまで","#[仮名],ちちははが,とののしりへの,ももよぐさ,ももよいでませ,わがきたるまで","#[左注]右一首同郡生玉部足國 ( / 二月六日防人部領使遠江國史生坂本朝臣人上進歌數十八首 但有拙劣歌十一首不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月6日,年紀,作者:生玉部足國,防人歌,静岡,坂本人上,恋情,植物,序詞,望郷","#[訓異]
ちちははが,[寛]ちちははか,
とののしりへの[寛],
ももよぐさ,[寛]ももよくさ,
ももよいでませ,[寛]ももよいてませ,
わがきたるまで,[寛]わかきたるまて,
" "#[番号]20/4327","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]和我都麻母 畫尓可伎等良無 伊豆麻母加 多<妣>由久阿礼<波> 美都々志努波牟","#[訓読]我が妻も絵に描き取らむ暇もが旅行く我れは見つつ偲はむ","#[仮名],わがつまも,ゑにかきとらむ,いつまもが,たびゆくあれは,みつつしのはむ","#[左注]右一首長下郡物部古麻呂 / 二月六日防人部領使遠江國史生坂本朝臣人上進歌數十八首 但有拙劣歌十一首不取載之","#[校異]比 -> 妣 [元] / 婆 -> 波 [類][紀][細]","#[事項],天平勝宝7年2月6日,年紀,作者:物部古麻呂,防人歌,静岡,坂本人上,望郷,恋情","#[訓異]
わがつまも,[寛]わかつまも,
ゑにかきとらむ[寛],
いつまもが,[寛]いつまもか,
たびゆくあれは,[寛]たひゆくあれは,
みつつしのはむ[寛],
" "#[番号]20/4328","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]於保吉美能 美許等可之古美 伊蘇尓布理 宇乃波良和多流 知々波々乎於伎弖","#[訓読]大君の命畏み磯に触り海原渡る父母を置きて","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,いそにふり,うのはらわたる,ちちははをおきて","#[左注]右一首助丁丈部造人麻呂 ( / 二月七日相模國防人部領使守従五位下藤原朝臣宿奈麻呂進歌數八首 但拙劣歌五首者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月7日,年紀,作者:丈部人麻呂,防人歌,望郷,恋情,神奈川,藤原宿奈麻呂","#[訓異]
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
いそにふり[寛],
うのはらわたる[寛],
ちちははをおきて[寛],
" "#[番号]20/4329","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]夜蘇久尓波 那尓波尓都度比 布奈可射里 安我世武比呂乎 美毛比等母我<毛>","#[訓読]八十国は難波に集ひ船かざり我がせむ日ろを見も人もがも","#[仮名],やそくには,なにはにつどひ,ふなかざり,あがせむひろを,みもひともがも","#[左注]右一首足下郡上丁丹比部國人 ( / 二月七日相模國防人部領使守従五位下藤原朝臣宿奈麻呂進歌數八首 但拙劣歌五首者不取載之)","#[校異]母 -> 毛 [元][類]","#[事項],天平勝宝7年2月7日,年紀,作者:丹比部國人,防人歌,神奈川,藤原宿奈麻呂,地名,難波,大阪,恋情,出発,悲嘆","#[訓異]
やそくには[寛],
なにはにつどひ,[寛]なにはにつとひ,
ふなかざり,[寛]ふなかさり,
あがせむひろを,[寛]あかせむひろを,
みもひともがも,[寛]みもひともかも,
" "#[番号]20/4330","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]奈尓波都尓 余曽比余曽比弖 氣布能<比>夜 伊田弖麻可良武 美流波々奈之尓","#[訓読]難波津に装ひ装ひて今日の日や出でて罷らむ見る母なしに","#[仮名],なにはつに,よそひよそひて,けふのひや,いでてまからむ,みるははなしに","#[左注]右一首鎌倉<郡>上丁丸子連多麻呂 / 二月七日相模國防人部領使守従五位下藤原朝臣宿奈麻呂進歌數八首 但拙劣歌五首者不取載之","#[校異]日 -> 比 [元][紀] / 部 -> 郡 [西(朱書訂正)][元][紀][細]","#[事項],天平勝宝7年2月7日,年紀,作者:丸子多麻呂,防人歌,神奈川,藤原宿奈麻呂,恋情,悲嘆,出発","#[訓異]
なにはつに[寛],
よそひよそひて[寛],
けふのひや[寛],
いでてまからむ,[寛]いたてまからむに,
みるははなしに[寛],
" "#[番号]20/4331","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)追痛防人悲別之心作歌一首[并短歌]","#[原文]天皇乃 等保能朝<廷>等 之良奴日 筑紫國波 安多麻毛流 於佐倍乃城曽等 聞食 四方國尓波 比等佐波尓 美知弖波安礼杼 登利我奈久 安豆麻乎能故波 伊田牟可比 加敝里見世受弖 伊佐美多流 多家吉軍卒等 祢疑多麻比 麻氣乃麻尓々々 多良知祢乃 波々我目可礼弖 若草能 都麻乎母麻可受 安良多麻能 月日餘美都々 安之我知流 難波能美津尓 大船尓 末加伊之自奴伎 安佐奈藝尓 可故等登能倍 由布思保尓 可知比伎乎里 安騰母比弖 許藝由久伎美波 奈美乃間乎 伊由伎佐具久美 麻佐吉久母 波夜久伊多里弖 大王乃 美許等能麻尓末 麻須良男乃 許己呂乎母知弖 安里米具<理> 事之乎波良<婆> 都々麻波受 可敝理伎麻勢登 伊波比倍乎 等許敝尓須恵弖 之路多倍能 蘇田遠利加敝之 奴婆多麻乃 久路加美之伎弖 奈我伎氣遠 麻知可母戀牟 波之伎都麻良波 ","#[訓読]大君の 遠の朝廷と しらぬひ 筑紫の国は 敵守る おさへの城ぞと 聞こし食す 四方の国には 人さはに 満ちてはあれど 鶏が鳴く 東男は 出で向ひ かへり見せずて 勇みたる 猛き軍士と ねぎたまひ 任けのまにまに たらちねの 母が目離れて 若草の 妻をも巻かず あらたまの 月日数みつつ 葦が散る 難波の御津に 大船に ま櫂しじ貫き 朝なぎに 水手ととのへ 夕潮に 楫引き折り 率ひて 漕ぎ行く君は 波の間を い行きさぐくみ ま幸くも 早く至りて 大君の 命のまにま 大夫の 心を持ちて あり廻り 事し終らば つつまはず 帰り来ませと 斎瓮を 床辺に据ゑて 白栲の 袖折り返し ぬばたまの 黒髪敷きて 長き日を 待ちかも恋ひむ 愛しき妻らは ","#[仮名],おほきみの,とほのみかどと,しらぬひ,つくしのくには,あたまもる,おさへのきぞと,きこしをす,よものくにには,ひとさはに,みちてはあれど,とりがなく,あづまをのこは,いでむかひ,かへりみせずて,いさみたる,たけきいくさと,ねぎたまひ,まけのまにまに,たらちねの,ははがめかれて,わかくさの,つまをもまかず,あらたまの,つきひよみつつ,あしがちる,なにはのみつに,おほぶねに,まかいしじぬき,あさなぎに,かこととのへ,ゆふしほに,かぢひきをり,あどもひて,こぎゆくきみは,なみのまを,いゆきさぐくみ,まさきくも,はやくいたりて,おほきみの,みことのまにま,ますらをの,こころをもちて,ありめぐり,ことしをはらば,つつまはず,かへりきませと,いはひへを,とこへにすゑて,しろたへの,そでをりかへし,ぬばたまの,くろかみしきて,ながきけを,まちかもこひむ,はしきつまらは","#[左注](右二月八日兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]短歌 [西] 短謌 / 庭 -> 廷 [元][細] / 里 -> 理 [元][類] / 波 -> 婆 [元][紀][温][矢]","#[事項],天平勝宝7年2月8日,年紀,作者:大伴家持,同情,防人歌,枕詞,地名,福岡","#[訓異]
おほきみの,[寛]すめろきの,
とほのみかどと,[寛]とほのみかとと,
しらぬひ[寛],
つくしのくには[寛],
あたまもる[寛],
おさへのきぞと,[寛]おさへのきそと,
きこしをす,[寛]きこしめす,
よものくにには[寛],
ひとさはに[寛],
みちてはあれど,[寛]みちてはあれと,
とりがなく,[寛]とりかなく,
あづまをのこは,[寛]あつまをのこは,
いでむかひ,[寛]いてむかひ,
かへりみせずて,[寛]かへりみせすて,
いさみたる[寛],
たけきいくさと[寛],
ねぎたまひ,[寛]ねきたまひ,
まけのまにまに[寛],
たらちねの[寛],
ははがめかれて,[寛]ははかめかれて,
わかくさの[寛],
つまをもまかず,[寛]つまをもまかす,
あらたまの[寛],
つきひよみつつ[寛],
あしがちる,[寛]あしかちる,
なにはのみつに[寛],
おほぶねに,[寛]おほふねに,
まかいしじぬき,[寛]まかいししぬき,
あさなぎに,[寛]あさなきに,
かこととのへ[寛],
ゆふしほに[寛],
かぢひきをり,[寛]かちひきをり,
あどもひて,[寛]あともひて,
こぎゆくきみは,[寛]こきゆくきみは,
なみのまを[寛],
いゆきさぐくみ,[寛]いゆきさくくみ,
まさきくも[寛],
はやくいたりて[寛],
おほきみの[寛],
みことのまにま[寛],
ますらをの[寛],
こころをもちて[寛],
ありめぐり,[寛]ありめくり,
ことしをはらば,[寛]ことしをはらは,
つつまはず,[寛]つつまはす,
かへりきませと[寛],
いはひへを[寛],
とこへにすゑて[寛],
しろたへの[寛],
そでをりかへし,[寛]そてをりかへし,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
くろかみしきて[寛],
ながきけを,[寛]なかきけを,
まちかもこひむ[寛],
はしきつまらは[寛],
" "#[番号]20/4332","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)(追痛防人悲別之心作歌一首[并短歌])","#[原文]麻須良男能 由伎等里於比弖 伊田弖伊氣<婆> 和可礼乎乎之美 奈氣伎家牟都麻","#[訓読]大夫の靫取り負ひて出でて行けば別れを惜しみ嘆きけむ妻","#[仮名],ますらをの,ゆきとりおひて,いでていけば,わかれををしみ,なげきけむつま","#[左注](右二月八日兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]波 -> 婆 [元][類]","#[事項],天平勝宝7年2月8日,年紀,作者:大伴家持,悲別,同情,防人歌","#[訓異]
ますらをの[寛],
ゆきとりおひて[寛],
いでていけば,[寛]いてていけは,
わかれををしみ[寛],
なげきけむつま,[寛]なけきけむつま,
" "#[番号]20/4333","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)(追痛防人悲別之心作歌一首[并短歌])","#[原文]等里我奈久 安豆麻乎等故能 都麻和可礼 可奈之久安里家牟 等之能乎奈我美","#[訓読]鶏が鳴く東壮士の妻別れ悲しくありけむ年の緒長み","#[仮名],とりがなく,あづまをとこの,つまわかれ,かなしくありけむ,としのをながみ","#[左注]右二月八日兵部少輔大伴宿祢家持","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月8日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,悲別,同情,防人歌","#[訓異]
とりがなく,[寛]とりかなく,
あづまをとこの,[寛]あつまをとこの,
つまわかれ[寛],
かなしくありけむ[寛],
としのをながみ,[寛]としのをなかみ,
" "#[番号]20/4334","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]海原乎 等保久和多里弖 等之布等母 兒良我牟須敝流 比毛等久奈由米","#[訓読]海原を遠く渡りて年経とも子らが結べる紐解くなゆめ","#[仮名],うなはらを,とほくわたりて,としふとも,こらがむすべる,ひもとくなゆめ","#[左注](右九日大伴宿祢家持作之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:大伴家持,悲別,同情,防人歌","#[訓異]
うなはらを[寛],
とほくわたりて[寛],
としふとも[寛],
こらがむすべる,[寛]こらかむすへる,
ひもとくなゆめ[寛],
" "#[番号]20/4335","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]今替 尓比佐伎母利我 布奈弖須流 宇奈波良乃宇倍尓 <奈>美那佐伎曽祢","#[訓読]今替る新防人が船出する海原の上に波なさきそね","#[仮名],いまかはる,にひさきもりが,ふなでする,うなはらのうへに,なみなさきそね","#[左注](右九日大伴宿祢家持作之)","#[校異]那 -> 奈 [元][類][細]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:大伴家持,出発,同情,防人歌,餞別","#[訓異]
いまかはる[寛],
にひさきもりが,[寛]にひさきもりか,
ふなでする,[寛]ふなてする,
うなはらのうへに[寛],
なみなさきそね[寛],
" "#[番号]20/4336","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]佐吉母利能 保理江己藝豆流 伊豆手夫祢 可治<登>流間奈久 戀波思氣家牟","#[訓読]防人の堀江漕ぎ出る伊豆手船楫取る間なく恋は繁けむ","#[仮名],さきもりの,ほりえこぎづる,いづてぶね,かぢとるまなく,こひはしげけむ","#[左注]右九日大伴宿祢家持作之","#[校異]等 -> 登 [元][類]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:大伴家持,防人歌,恋情,同情,地名,難波,大阪","#[訓異]
さきもりの[寛],
ほりえこぎづる,[寛]ほりえこきつる,
いづてぶね,[寛]いつてふね,
かぢとるまなく,[寛]かちとるまなく,
こひはしげけむ,[寛]こひはしけけむ,
" "#[番号]20/4337","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]美豆等<利>乃 多知能已蘇岐尓 父母尓 毛能波須價尓弖 已麻叙久夜志伎","#[訓読]水鳥の立ちの急ぎに父母に物言はず来にて今ぞ悔しき","#[仮名],みづとりの,たちのいそぎに,ちちははに,ものはずけにて,いまぞくやしき","#[左注]右一首上丁有度部牛麻呂 ( / 二月七日駿河國防人部領使守従五位下布勢朝臣人主實進九日歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]里 -> 利 [元][類][細]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:有度部牛麻呂,防人歌,植物,恋情,悲嘆,静岡,布勢人主","#[訓異]
みづとりの,[寛]みつとりの,
たちのいそぎに,[寛]たちのいそきに,
ちちははに[寛],
ものはずけにて,[寛]ものはすきにて,
いまぞくやしき,[寛]いまそくらしき,
" "#[番号]20/4338","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]多々美氣米 牟良自加已蘇乃 波奈利蘇乃 波々乎波奈例弖 由久我加奈之佐","#[訓読]畳薦牟良自が礒の離磯の母を離れて行くが悲しさ","#[仮名],たたみけめ,むらじがいその,はなりその,ははをはなれて,ゆくがかなしさ","#[左注]右一首助丁生部道麻呂 ( / 二月七日駿河國防人部領使守従五位下布勢朝臣人主實進九日歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:生部道麻呂,防人歌,望郷,悲別,恋情,地名,静岡,布勢人主","#[訓異]
たたみけめ[寛],
むらじがいその,[寛]むらしかいその,
はなりその[寛],
ははをはなれて[寛],
ゆくがかなしさ,[寛]ゆくかかなしさ,
" "#[番号]20/4339","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]久尓米具留 阿等利加麻氣利 由伎米具利 加比利久麻弖尓 已波比弖麻多祢","#[訓読]国廻るあとりかまけり行き廻り帰り来までに斎ひて待たね","#[仮名],くにめぐる,あとりかまけり,ゆきめぐり,かひりくまでに,いはひてまたね","#[左注]右一首刑部虫麻呂 ( / 二月七日駿河國防人部領使守従五位下布勢朝臣人主實進九日歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]具 [元][類] 久","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:刑部虫麻呂,防人歌,静岡,布勢人主,動物,出発,羈旅,悲別","#[訓異]
くにめぐる,[寛]くにめくる,
あとりかまけり[寛],
ゆきめぐり,[寛]ゆきめくり,
かひりくまでに,[寛]かひりくまてに,
いはひてまたね[寛],
" "#[番号]20/4340","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]<等知>波々江 已波比弖麻多祢 豆久志奈流 美豆久白玉 等里弖久麻弖尓","#[訓読]父母え斎ひて待たね筑紫なる水漬く白玉取りて来までに","#[仮名],とちははえ,いはひてまたね,つくしなる,みづくしらたま,とりてくまでに","#[左注]右一首川原虫麻呂 ( / 二月七日駿河國防人部領使守従五位下布勢朝臣人主實進九日歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]知々 -> 等知 [元][類][古] / 江 [古] 波 / 豆 [類] 都","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:川原虫麻呂,防人歌,出発,悲別,羈旅,静岡,布勢人主","#[訓異]
とちははえ,[寛]ちちははか,
いはひてまたね[寛],
つくしなる[寛],
みづくしらたま,[寛]みつくしらたま,
とりてくまでに,[寛]とりてくまてに,
" "#[番号]20/4341","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]多知波奈能 美袁利乃佐刀尓 父乎於伎弖 道乃長道波 由伎加弖<努>加毛","#[訓読]橘の美袁利の里に父を置きて道の長道は行きかてのかも","#[仮名],たちばなの,みをりのさとに,ちちをおきて,みちのながちは,ゆきかてのかも","#[左注]右一首丈部足麻呂 ( / 二月七日駿河國防人部領使守従五位下布勢朝臣人主實進九日歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]奴 -> 努 [元][類][紀]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:丈部足麻呂,防人歌,静岡,布勢人主,植物,地名,望郷,出発,恋情,羈旅,悲別","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
みをりのさとに,[寛]みゑりのさとに,
ちちをおきて[寛],
みちのながちは,[寛]みちのなかちは,
ゆきかてのかも,[寛]ゆきかてぬかも,
" "#[番号]20/4342","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]麻氣波之良 寶米弖豆久礼留 等乃能其等 已麻勢波々刀自 於米加波利勢受","#[訓読]真木柱ほめて造れる殿のごといませ母刀自面変はりせず","#[仮名],まけばしら,ほめてつくれる,とののごと,いませははとじ,おめがはりせず","#[左注]右一首坂田部首麻呂 ( / 二月七日駿河國防人部領使守従五位下布勢朝臣人主實進九日歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]波 [元] 婆","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:坂田部首麻呂,防人歌,静岡,布勢人主,出発,羈旅,悲別","#[訓異]
まけばしら,[寛]まきはしら,
ほめてつくれる[寛],
とののごと,[寛]とののこと,
いませははとじ,[寛]いませははとし,
おめがはりせず,[寛]おめかはりせす,
" "#[番号]20/4343","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]和呂多比波 多比等於米保等 已比尓志弖 古米知夜須良牟 和加美可奈志母","#[訓読]我ろ旅は旅と思ほど家にして子持ち痩すらむ我が妻愛しも","#[仮名],わろたびは,たびとおめほど,いひにして,こめちやすらむ,わがみかなしも","#[左注]右一首玉作部廣目 ( / 二月七日駿河國防人部領使守従五位下布勢朝臣人主實進九日歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:玉作部廣目,防人歌,恋情,悲別,静岡,布勢人主","#[訓異]
わろたびは,[寛]わろたひは,
たびとおめほど,[寛]たひとおめほと,
いひにして,[寛]こひにして,
こめちやすらむ[寛],
わがみかなしも,[寛]わかみかなしも,
" "#[番号]20/4344","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]和須良牟弖 努由伎夜麻由伎 和例久礼等 和我知々波々波 和須例勢努加毛","#[訓読]忘らむて野行き山行き我れ来れど我が父母は忘れせのかも","#[仮名],わすらむて,のゆきやまゆき,われくれど,わがちちははは,わすれせのかも","#[左注]右一首商長首麻呂 ( / 二月七日駿河國防人部領使守従五位下布勢朝臣人主實進九日歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:商長首麻呂,防人歌,静岡,布勢人主,悲別,恋情","#[訓異]
わすらむて,[寛]わすらむと,
のゆきやまゆき[寛],
われくれど,[寛]われくれと,
わがちちははは,[寛]わかちちははは,
わすれせのかも,[寛]わすれせぬかも,
" "#[番号]20/4345","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]和伎米故等 不多利和我見之 宇知江須流 々々河乃祢良波 苦不志久米阿流可","#[訓読]我妹子と二人我が見しうち寄する駿河の嶺らは恋しくめあるか","#[仮名],わぎめこと,ふたりわがみし,うちえする,するがのねらは,くふしくめあるか","#[左注]右一首春日部麻呂 ( / 二月七日駿河國防人部領使守従五位下布勢朝臣人主實進九日歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:春日部麻呂,防人歌,地名,恋情,望郷,静岡,布勢人主","#[訓異]
わぎめこと,[寛]わきめこと,
ふたりわがみし,[寛]ふたりわかみし,
うちえする[寛],
するがのねらは,[寛]するかのねらは,
くふしくめあるか[寛],
" "#[番号]20/4346","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]知々波々我 可之良加伎奈弖 佐久安<例弖> 伊比之氣等<婆>是 和須礼加祢<豆>流","#[訓読]父母が頭掻き撫で幸くあれて言ひし言葉ぜ忘れかねつる","#[仮名],ちちははが,かしらかきなで,さくあれて,いひしけとはぜ,わすれかねつる","#[左注]右一首丈部稲麻呂 / 二月七日駿河國防人部領使守従五位下布勢朝臣人主實進九日歌數廿首 但拙劣歌者不取載之","#[校異]礼天 -> 例弖 [元] / 波 -> 婆 [元][紀][細] / 津 -> 豆 [元]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:丈部稲麻呂,防人歌,望郷,恋情,静岡,布勢人主","#[訓異]
ちちははが,[寛]ちちははか,
かしらかきなで,[寛]かしらかきなて,
さくあれて[寛],
いひしけとはぜ,[寛]いひしことはそ,
わすれかねつる[寛],
" "#[番号]20/4347","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]伊閇尓之弖 古非都々安良受波 奈我波氣流 多知尓奈里弖母 伊波非弖之加母","#[訓読]家にして恋ひつつあらずは汝が佩ける大刀になりても斎ひてしかも","#[仮名],いへにして,こひつつあらずは,ながはける,たちになりても,いはひてしかも","#[左注]右一首國造丁日下部使主三中之父歌 ( / 二月九日上総國防人部領使少目従七位下茨田連沙弥麻呂進歌數十九首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:日下部三中父,防人歌,千葉,茨田沙弥麻呂,出発,恋情,悲別","#[訓異]
いへにして[寛],
こひつつあらずは,[寛]こひつつあらすは,
ながはける,[寛]なかはける,
たちになりても[寛],
いはひてしかも[寛],
" "#[番号]20/4348","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]多良知祢乃 波々乎和加例弖 麻許等和例 多非乃加里保尓 夜須久祢牟加母","#[訓読]たらちねの母を別れてまこと我れ旅の仮廬に安く寝むかも","#[仮名],たらちねの,ははをわかれて,まことわれ,たびのかりほに,やすくねむかも","#[左注]右一首國造丁日下部使主三中 ( / 二月九日上総國防人部領使少目従七位下茨田連沙弥麻呂進歌數十九首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:日下部三中,防人歌,枕詞,悲別,恋情,千葉,茨田沙弥麻呂,羈旅","#[訓異]
たらちねの[寛],
ははをわかれて,[寛]ははこわかれて,
まことわれ[寛],
たびのかりほに,[寛]たひのかりほに,
やすくねむかも[寛],
" "#[番号]20/4349","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]毛母久麻能 美知波紀尓志乎 麻多佐良尓 夜蘇志麻須藝弖 和加例加由可牟","#[訓読]百隈の道は来にしをまたさらに八十島過ぎて別れか行かむ","#[仮名],ももくまの,みちはきにしを,またさらに,やそしますぎて,わかれかゆかむ","#[左注]右一首助丁刑部直三野 ( / 二月九日上総國防人部領使少目従七位下茨田連沙弥麻呂進歌數十九首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:刑部三野,防人歌,羈旅,悲別,悲嘆,千葉,茨田沙弥麻呂","#[訓異]
ももくまの[寛],
みちはきにしを[寛],
またさらに[寛],
やそしますぎて,[寛]やそしますきて,
わかれかゆかむ[寛],
" "#[番号]20/4350","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]尓波奈加能 阿須波乃可美尓 古志波佐之 阿例波伊波々牟 加倍理久麻泥尓","#[訓読]庭中の阿須波の神に小柴さし我れは斎はむ帰り来までに","#[仮名],にはなかの,あすはのかみに,こしばさし,あれはいははむ,かへりくまでに","#[左注]右一首帳丁若麻續部諸人 ( / 二月九日上総國防人部領使少目従七位下茨田連沙弥麻呂進歌數十九首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:若麻續部諸人,防人歌,千葉,茨田沙弥麻呂,羈旅,手向け,神祭り","#[訓異]
にはなかの[寛],
あすはのかみに[寛],
こしばさし,[寛]こしはさし,
あれはいははむ[寛],
かへりくまでに,[寛]かへりくまてに,
" "#[番号]20/4351","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]多<妣>己呂母 夜倍伎可佐祢弖 伊努礼等母 奈保波太佐牟志 伊母尓<志>阿良祢婆","#[訓読]旅衣八重着重ねて寐のれどもなほ肌寒し妹にしあらねば","#[仮名],たびころも,やへきかさねて,いのれども,なほはださむし,いもにしあらねば","#[左注]右一首望陀郡上<丁>玉作部國忍 ( / 二月九日上総國防人部領使少目従七位下茨田連沙弥麻呂進歌數十九首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]比 -> 妣 [元][類] / 倍 (塙) 都 [元] 部 / <> -> 志 [元][類] / 下 -> 丁 [元][紀][細]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:玉作部國忍,防人歌,千葉,茨田沙弥麻呂,恋情,望郷","#[訓異]
たびころも,[寛]たひころも,
やへきかさねて,[寛]やつへかさねて,
いのれども,[寛]いぬれとも,
なほはださむし,[寛]なほはたさむし,
いもにしあらねば,[寛]いもにしあらねは,
" "#[番号]20/4352","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]美知乃倍乃 宇万良能宇礼尓 波保麻米乃 可良麻流伎美乎 波可礼加由加牟","#[訓読]道の辺の茨のうれに延ほ豆のからまる君をはかれか行かむ","#[仮名],みちのへの,うまらのうれに,はほまめの,からまるきみを,はかれかゆかむ","#[左注]右一首天羽郡上丁丈部鳥 ( / 二月九日上総國防人部領使少目従七位下茨田連沙弥麻呂進歌數十九首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:丈部鳥,防人歌,千葉,茨田沙弥麻呂,恋情,悲嘆,悲別","#[訓異]
みちのへの[寛],
うまらのうれに[寛],
はほまめの[寛],
からまるきみを[寛],
はかれかゆかむ[寛],
" "#[番号]20/4353","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]伊倍加是波 比尓々々布氣等 和伎母古賀 伊倍其登母遅弖 久流比等母奈之","#[訓読]家風は日に日に吹けど我妹子が家言持ちて来る人もなし","#[仮名],いへかぜは,ひにひにふけど,わぎもこが,いへごともちて,くるひともなし","#[左注]右一首朝夷郡上丁丸子連大歳 ( / 二月九日上総國防人部領使少目従七位下茨田連沙弥麻呂進歌數十九首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:丸子大歳,防人歌,千葉,茨田沙弥麻呂,望郷,恋情","#[訓異]
いへかぜは,[寛]いへかせは,
ひにひにふけど,[寛]ひにひにふけと,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
いへごともちて,[寛]いへこともちて,
くるひともなし[寛],
" "#[番号]20/4354","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]多知許毛乃 多知乃佐和伎尓 阿比美弖之 伊母加己々呂波 和須礼世奴可母","#[訓読]たちこもの立ちの騒きに相見てし妹が心は忘れせぬかも","#[仮名],たちこもの,たちのさわきに,あひみてし,いもがこころは,わすれせぬかも","#[左注]右一首長狭郡上丁丈部与呂麻呂 ( / 二月九日上総國防人部領使少目従七位下茨田連沙弥麻呂進歌數十九首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:丈部与呂麻呂,防人歌,千葉,茨田沙弥麻呂,恋情,望郷,枕詞,動物","#[訓異]
たちこもの[寛],
たちのさわきに[寛],
あひみてし[寛],
いもがこころは,[寛]いもかこころは,
わすれせぬかも[寛],
" "#[番号]20/4355","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]余曽尓能美 々弖夜和多良毛 奈尓波我多 久毛為尓美由流 志麻奈良奈久尓","#[訓読]よそにのみ見てや渡らも難波潟雲居に見ゆる島ならなくに","#[仮名],よそにのみ,みてやわたらも,なにはがた,くもゐにみゆる,しまならなくに","#[左注]右一首武射郡上丁丈部山代 ( / 二月九日上総國防人部領使少目従七位下茨田連沙弥麻呂進歌數十九首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:丈部山代,防人歌,地名,難波,大阪,恋情,千葉,茨田沙弥麻呂","#[訓異]
よそにのみ[寛],
みてやわたらも,[寛]みてやわたくも,
なにはがた,[寛]なにはかた,
くもゐにみゆる[寛],
しまならなくに[寛],
" "#[番号]20/4356","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]和我波々能 蘇弖母知奈弖C 和我可良尓 奈伎之許己呂乎 和須良延努可毛","#[訓読]我が母の袖もち撫でて我がからに泣きし心を忘らえのかも","#[仮名],わがははの,そでもちなでて,わがからに,なきしこころを,わすらえのかも","#[左注]右一首山邊郡上丁物部<乎>刀良 ( / 二月九日上総國防人部領使少目従七位下茨田連沙弥麻呂進歌數十九首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]努 [元][温] 奴 / 手 -> 乎 [元][細]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:物部乎刀良,防人歌,千葉,茨田沙弥麻呂,悲別,恋情","#[訓異]
わがははの,[寛]わかははの,
そでもちなでて,[寛]そてもちなてて,
わがからに,[寛]わかからに,
なきしこころを[寛],
わすらえのかも,[寛]わすらえぬかも,
" "#[番号]20/4357","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]阿之可伎能 久麻刀尓多知弖 和藝毛古我 蘇弖<母>志保々尓 奈伎志曽母波由","#[訓読]葦垣の隈処に立ちて我妹子が袖もしほほに泣きしぞ思はゆ","#[仮名],あしかきの,くまとにたちて,わぎもこが,そでもしほほに,なきしぞもはゆ","#[左注]右一首市原郡上丁刑部直千國 ( / 二月九日上総國防人部領使少目従七位下茨田連沙弥麻呂進歌數十九首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]毛 -> 母 [元][類]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:刑部千國,防人歌,千葉,茨田沙弥麻呂,悲別,恋情,出発,羈旅","#[訓異]
あしかきの[寛],
くまとにたちて,[寛]くまのにたちて,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
そでもしほほに,[寛]そてもしほほに,
なきしぞもはゆ,[寛]なきしそもはゆ,
" "#[番号]20/4358","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]於保伎美乃 美許等加志古美 伊弖久礼婆 和努等里都伎弖 伊比之古奈波毛","#[訓読]大君の命畏み出で来れば我の取り付きて言ひし子なはも","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,いでくれば,わのとりつきて,いひしこなはも","#[左注]右一首種淮郡上丁物部龍 ( / 二月九日上総國防人部領使少目従七位下茨田連沙弥麻呂進歌數十九首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:物部龍,防人歌,恋情,悲別,出発,羈旅,千葉,茨田沙弥麻呂","#[訓異]
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
いでくれば,[寛]いてくれは,
わのとりつきて,[寛]わぬとりそきて,
いひしこなはも[寛],
" "#[番号]20/4359","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]都久之閇尓 敝牟加流布祢乃 伊都之加毛 都加敝麻都里弖 久尓々閇牟可毛","#[訓読]筑紫辺に舳向かる船のいつしかも仕へまつりて国に舳向かも","#[仮名],つくしへに,へむかるふねの,いつしかも,つかへまつりて,くににへむかも","#[左注]右一首長柄部上丁若麻續部<羊> / 二月九日上総國防人部領使少目従七位下茨田連沙弥麻呂進歌數十九首 但拙劣歌者不取載之","#[校異]年 -> 羊 [西(朱書訂正)][元][紀][細] / 歌 [西] 謌","#[事項],天平勝宝7年2月9日,年紀,作者:若麻續部羊,防人歌,悲嘆,千葉,茨田沙弥麻呂","#[訓異]
つくしへに[寛],
へむかるふねの[寛],
いつしかも[寛],
つかへまつりて[寛],
くににへむかも[寛],
" "#[番号]20/4360","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)陳私拙懐一首<[并短歌]>","#[原文]天皇乃 等保伎美与尓毛 於之弖流 難波乃久尓々 阿米能之多 之良志賣之伎等 伊麻能乎尓 多要受伊比都々 可氣麻久毛 安夜尓可之古志 可武奈我良 和其大王乃 宇知奈妣久 春初波 夜知久佐尓 波奈佐伎尓保比 夜麻美礼婆 見能等母之久 可波美礼婆 見乃佐夜氣久 母能其等尓 佐可由流等伎登 賣之多麻比 安伎良米多麻比 之伎麻世流 難波宮者 伎己之乎須 四方乃久尓欲里 多弖麻都流 美都奇能船者 保理江欲里 美乎妣伎之都々 安佐奈藝尓 可治比伎能保理 由布之保尓 佐乎佐之久太理 安治牟良能 佐和伎々保比弖 波麻尓伊泥弖 海原見礼婆 之良奈美乃 夜敝乎流我宇倍尓 安麻乎夫祢 波良々尓宇伎弖 於保美氣尓 都加倍麻都流等 乎知許知尓 伊射里都利家理 曽伎太久毛 於藝呂奈伎可毛 己伎婆久母 由多氣伎可母 許己見礼婆 宇倍之神代由 波自米家良思母 ","#[訓読]皇祖の 遠き御代にも 押し照る 難波の国に 天の下 知らしめしきと 今の緒に 絶えず言ひつつ かけまくも あやに畏し 神ながら 我ご大君の うち靡く 春の初めは 八千種に 花咲きにほひ 山見れば 見の羨しく 川見れば 見のさやけく ものごとに 栄ゆる時と 見したまひ 明らめたまひ 敷きませる 難波の宮は 聞こし食す 四方の国より 奉る 御調の船は 堀江より 水脈引きしつつ 朝なぎに 楫引き上り 夕潮に 棹さし下り あぢ群の 騒き競ひて 浜に出でて 海原見れば 白波の 八重をるが上に 海人小船 はららに浮きて 大御食に 仕へまつると をちこちに 漁り釣りけり そきだくも おぎろなきかも こきばくも ゆたけきかも ここ見れば うべし神代ゆ 始めけらしも ","#[仮名],すめろきの,とほきみよにも,おしてる,なにはのくにに,あめのした,しらしめしきと,いまのをに,たえずいひつつ,かけまくも,あやにかしこし,かむながら,わごおほきみの,うちなびく,はるのはじめは,やちくさに,はなさきにほひ,やまみれば,みのともしく,かはみれば,みのさやけく,ものごとに,さかゆるときと,めしたまひ,あきらめたまひ,しきませる,なにはのみやは,きこしをす,よものくにより,たてまつる,みつきのふねは,ほりえより,みをびきしつつ,あさなぎに,かぢひきのぼり,ゆふしほに,さをさしくだり,あぢむらの,さわききほひて,はまにいでて,うなはらみれば,しらなみの,やへをるがうへに,あまをぶね,はららにうきて,おほみけに,つかへまつると,をちこちに,いざりつりけり,そきだくも,おぎろなきかも,こきばくも,ゆたけきかも,ここみれば,うべしかむよゆ,はじめけらしも","#[左注](右二月十三日兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]<> -> 并短歌 [元][細][紀]","#[事項],天平勝宝7年2月13日,年紀,作者:大伴家持,地名,難波,大阪,枕詞,大君讃美,都讃美","#[訓異]
すめろきの[寛],
とほきみよにも[寛],
おしてる[寛],
なにはのくにに[寛],
あめのした[寛],
しらしめしきと[寛],
いまのをに[寛],
たえずいひつつ,[寛]たえすいひつつ,
かけまくも[寛],
あやにかしこし[寛],
かむながら,[寛]かむなから,
わごおほきみの,[寛]わかおほきみの,
うちなびく,[寛]うちなひく,
はるのはじめは,[寛]はるのはしめは,
やちくさに[寛],
はなさきにほひ[寛],
やまみれば,[寛]やまみれは,
みのともしく[寛],
かはみれば,[寛]かはみれは,
みのさやけく[寛],
ものごとに,[寛]ものことに,
さかゆるときと[寛],
めしたまひ[寛],
あきらめたまひ[寛],
しきませる[寛],
なにはのみやは[寛],
きこしをす,[寛]きこしめす,
よものくにより[寛],
たてまつる[寛],
みつきのふねは[寛],
ほりえより[寛],
みをびきしつつ,[寛]みをひきしつつ,
あさなぎに,[寛]あさなきに,
かぢひきのぼり,[寛]かちひきのほり,
ゆふしほに[寛],
さをさしくだり,[寛]さをさしくたり,
あぢむらの,[寛]あちむらの,
さわききほひて[寛],
はまにいでて,[寛]はまにいてて,
うなはらみれば,[寛]うなはらみれは,
しらなみの[寛],
やへをるがうへに,[寛]やへをるかうへに,
あまをぶね,[寛]あまをふね,
はららにうきて[寛],
おほみけに[寛],
つかへまつると[寛],
をちこちに[寛],
いざりつりけり,[寛]いさりつりけり,
そきだくも,[寛]そきたくも,
おぎろなきかも,[寛]おきろなきかも,
こきばくも,[寛]こきはくも,
ゆたけきかも[寛],
ここみれば,[寛]ここみれは,
うべしかむよゆ,[寛]うへしかみよゆ,
はじめけらしも,[寛]はしめけらしも,
" "#[番号]20/4361","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)(陳私拙懐一首<[并短歌]>)","#[原文]櫻花 伊麻佐可里奈里 難波乃海 於之弖流宮尓 伎許之賣須奈倍","#[訓読]桜花今盛りなり難波の海押し照る宮に聞こしめすなへ","#[仮名],さくらばな,いまさかりなり,なにはのうみ,おしてるみやに,きこしめすなへ","#[左注](右二月十三日兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月13日,年紀,作者:大伴家持,地名,難波,大阪,植物,寿歌,大君讃美,都讃美","#[訓異]
さくらばな,[寛]さくらはな,
いまさかりなり[寛],
なにはのうみ[寛],
おしてるみやに[寛],
きこしめすなへ[寛],
" "#[番号]20/4362","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)(陳私拙懐一首<[并短歌]>)","#[原文]海原乃 由多氣伎見都々 安之我知流 奈尓波尓等之波 倍<奴>倍久於毛保由","#[訓読]海原のゆたけき見つつ葦が散る難波に年は経ぬべく思ほゆ","#[仮名],うなはらの,ゆたけきみつつ,あしがちる,なにはにとしは,へぬべくおもほゆ","#[左注]右二月十三日兵部少輔大伴宿祢家持","#[校異]努 -> 奴 [元]","#[事項],天平勝宝7年2月13日,年紀,作者:大伴家持,土地讃美,難波,地名,大阪,植物,大君讃美,寿歌","#[訓異]
うなはらの[寛],
ゆたけきみつつ[寛],
あしがちる,[寛]あしかちる,
なにはにとしは[寛],
へぬべくおもほゆ,[寛]へぬへくおもほゆ,
" "#[番号]20/4363","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]奈尓波都尓 美布祢於呂須恵 夜蘇加奴伎 伊麻波許伎奴等 伊母尓都氣許曽","#[訓読]難波津に御船下ろ据ゑ八十楫貫き今は漕ぎぬと妹に告げこそ","#[仮名],なにはつに,みふねおろすゑ,やそかぬき,いまはこぎぬと,いもにつげこそ","#[左注](右二首茨城郡若舎人部廣足) ( / 二月十四日常陸國部領防人使大目正七位上息長真人國嶋進歌數十七首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:若舎人部廣足,防人歌,地名,難波,大阪,茨城,息長国島,恋情,望郷","#[訓異]
なにはつに[寛],
みふねおろすゑ[寛],
やそかぬき[寛],
いまはこぎぬと,[寛]いまはこきぬと,
いもにつげこそ,[寛]いもにつけこそ,
" "#[番号]20/4364","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]佐伎牟理尓 多々牟佐和伎尓 伊敝能伊牟何 奈流<弊>伎己等乎 伊波須伎奴可母","#[訓読]防人に立たむ騒きに家の妹がなるべきことを言はず来ぬかも","#[仮名],さきむりに,たたむさわきに,いへのいむが,なるべきことを,いはずきぬかも","#[左注]右二首茨城郡若舎人部廣足 ( / 二月十四日常陸國部領防人使大目正七位上息長真人國嶋進歌數十七首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]敝 -> 弊 [元][類]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:若舎人部廣足,防人歌,茨城,息長国島,出発,悲別,後悔,羈旅","#[訓異]
さきむりに,[寛]さきもりに,
たたむさわきに,[寛]たたむさわきに,
いへのいむが,[寛]いへのいもか,
なるべきことを,[寛]なるへきことを,
いはずきぬかも,[寛]いはすきぬかも,
" "#[番号]20/4365","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]於之弖流夜 奈尓波能<都由>利 布奈与曽比 阿例波許藝奴等 伊母尓都岐許曽","#[訓読]押し照るや難波の津ゆり船装ひ我れは漕ぎぬと妹に告ぎこそ","#[仮名],おしてるや,なにはのつゆり,ふなよそひ,あれはこぎぬと,いもにつぎこそ","#[左注](右二首信太郡物部道足) ( / 二月十四日常陸國部領防人使大目正七位上息長真人國嶋進歌數十七首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]津与 -> 都由 [元]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:物部道足,防人歌,地名,難波,大阪,望郷,恋情,茨城,息長国島","#[訓異]
おしてるや[寛],
なにはのつゆり,[寛]なにはのつより,
ふなよそひ[寛],
あれはこぎぬと,[寛]あれはこきぬと,
いもにつぎこそ,[寛]いもにつきこそ,
" "#[番号]20/4366","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]比多知散思 由可牟加里母我 阿我古比乎 志留志弖都祁弖 伊母尓志良世牟","#[訓読]常陸指し行かむ雁もが我が恋を記して付けて妹に知らせむ","#[仮名],ひたちさし,ゆかむかりもが,あがこひを,しるしてつけて,いもにしらせむ","#[左注]右二首信太郡物部道足 ( / 二月十四日常陸國部領防人使大目正七位上息長真人國嶋進歌數十七首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:物部道足,防人歌,茨城,息長国島,地名,動物,恋情,望郷","#[訓異]
ひたちさし[寛],
ゆかむかりもが,[寛]ゆかむかりもか,
あがこひを,[寛]あかこひを,
しるしてつけて[寛],
いもにしらせむ[寛],
" "#[番号]20/4367","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]阿我母弖能 和須例母之太波 都久波尼乎 布利佐氣美都々 伊母波之奴波尼","#[訓読]我が面の忘れもしだは筑波嶺を振り放け見つつ妹は偲はね","#[仮名],あがもての,わすれもしだは,つくはねを,ふりさけみつつ,いもはしぬはね","#[左注]右一首茨城郡占部子龍 ( / 二月十四日常陸國部領防人使大目正七位上息長真人國嶋進歌數十七首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:占部子龍,防人歌,茨城,息長国島,地名,筑波,恋情,悲別,望郷","#[訓異]
あがもての,[寛]あかもての,
わすれもしだは,[寛]わすれもしたは,
つくはねを,[寛]つくはねを,
ふりさけみつつ[寛],
いもはしぬはね[寛],
" "#[番号]20/4368","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]久自我波々 佐氣久阿利麻弖 志富夫祢尓 麻可知之自奴伎 和波可敝里許牟","#[訓読]久慈川は幸くあり待て潮船にま楫しじ貫き我は帰り来む","#[仮名],くじがはは,さけくありまて,しほぶねに,まかぢしじぬき,わはかへりこむ","#[左注]右一首久慈郡丸子部佐壮 ( / 二月十四日常陸國部領防人使大目正七位上息長真人國嶋進歌數十七首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:丸子部佐壮,防人歌,地名,恋情,茨城,息長国島","#[訓異]
くじがはは,[寛]くしかはは,
さけくありまて,[寛]さきくありまて,
しほぶねに,[寛]しほふねに,
まかぢしじぬき,[寛]まかちししぬき,
わはかへりこむ[寛],
" "#[番号]20/4369","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]都久波祢乃 佐由流能波奈能 由等許尓母 可奈之家伊母曽 比留毛可奈之祁","#[訓読]筑波嶺のさ百合の花の夜床にも愛しけ妹ぞ昼も愛しけ","#[仮名],つくはねの,さゆるのはなの,ゆとこにも,かなしけいもぞ,ひるもかなしけ","#[左注](右二首那賀郡上丁大舎人部千文) ( / 二月十四日常陸國部領防人使大目正七位上息長真人國嶋進歌數十七首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:大舎人部千文,防人歌,茨城,息長国島,植物,恋情,望郷,序詞","#[訓異]
つくはねの[寛],
さゆるのはなの[寛],
ゆとこにも[寛],
かなしけいもぞ,[寛]かなしけいもそ,
ひるもかなしけ[寛],
" "#[番号]20/4370","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]阿良例布理 可志麻能可美乎 伊能利都々 須米良美久佐尓 和例波伎尓之乎","#[訓読]霰降り鹿島の神を祈りつつ皇御軍に我れは来にしを","#[仮名],あられふり,かしまのかみを,いのりつつ,すめらみくさに,われはきにしを","#[左注]右二首那賀郡上丁大舎人部千文 ( / 二月十四日常陸國部領防人使大目正七位上息長真人國嶋進歌數十七首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:大舎人部千文,防人歌,枕詞,地名,茨城,息長国島","#[訓異]
あられふり[寛],
かしまのかみを[寛],
いのりつつ[寛],
すめらみくさに[寛],
われはきにしを[寛],
" "#[番号]20/4371","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]多知波奈乃 之多布久可是乃 可具波志伎 都久波能夜麻乎 古比須安良米可毛","#[訓読]橘の下吹く風のかぐはしき筑波の山を恋ひずあらめかも","#[仮名],たちばなの,したふくかぜの,かぐはしき,つくはのやまを,こひずあらめかも","#[左注]右一首助丁占部廣方 ( / 二月十四日常陸國部領防人使大目正七位上息長真人國嶋進歌數十七首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:占部廣方,防人歌,植物,地名,茨城,息長国島,望郷,恋情","#[訓異]
たちばなの,[寛]たちはなの,
したふくかぜの,[寛]したふくかせの,
かぐはしき,[寛]かくはしき,
つくはのやまを[寛],
こひずあらめかも,[寛]こひすあらめかも,
" "#[番号]20/4372","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]阿志加良能 美佐可多麻波理 可閇理美須 阿例波久江由久 阿良志乎母 多志夜波婆可流 不破乃世伎 久江弖和波由久 牟麻能都米 都久志能佐伎尓 知麻利為弖 阿例波伊波々牟 母呂々々波 佐祁久等麻乎須 可閇利久麻弖尓 ","#[訓読]足柄の み坂給はり 返り見ず 我れは越え行く 荒し夫も 立しやはばかる 不破の関 越えて我は行く 馬の爪 筑紫の崎に 留まり居て 我れは斎はむ 諸々は 幸くと申す 帰り来までに ","#[仮名],あしがらの,みさかたまはり,かへりみず,あれはくえゆく,あらしをも,たしやはばかる,ふはのせき,くえてわはゆく,むまのつめ,つくしのさきに,ちまりゐて,あれはいははむ,もろもろは,さけくとまをす,かへりくまでに","#[左注]右一首倭文部可良麻呂 / 二月十四日常陸國部領防人使大目正七位上息長真人國嶋進歌數十七首 但拙劣歌者不取載之","#[校異]十 [元][古] 廿","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:倭文部可良麻呂,防人歌,茨城,息長国島,地名,静岡,羈旅,道行き,手向け,寿歌","#[訓異]
あしがらの,[寛]あしからの,
みさかたまはり[寛],
かへりみず,[寛]かへりみす,
あれはくえゆく[寛],
あらしをも[寛],
たしやはばかる,[寛]たしやははかる,
ふはのせき[寛],
くえてわはゆく,[寛]こえてわはゆく,
むまのつめ[寛],
つくしのさきに[寛],
ちまりゐて[寛],
あれはいははむ[寛],
もろもろは[寛],
さけくとまをす[寛],
かへりくまでに,[寛]かへりくまてに,
" "#[番号]20/4373","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]祁布与利波 可敝里見奈久弖 意富伎美乃 之許乃美多弖等 伊O多都和例波","#[訓読]今日よりは返り見なくて大君の醜の御楯と出で立つ我れは","#[仮名],けふよりは,かへりみなくて,おほきみの,しこのみたてと,いでたつわれは","#[左注]右一首火長今奉部与曽布 ( / 二月十四日下野國防人部領使正六位上田口朝臣大戸進歌數十八首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:今奉部与曽布,防人歌,栃木,田口大戸,出発,壮行","#[訓異]
けふよりは[寛],
かへりみなくて[寛],
おほきみの[寛],
しこのみたてと[寛],
いでたつわれは,[寛]いてたつわれは,
" "#[番号]20/4374","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]阿米都知乃 可美乎伊乃里弖 佐都夜奴伎 都久之乃之麻乎 佐之弖伊久和例波","#[訓読]天地の神を祈りて猟矢貫き筑紫の島を指して行く我れは","#[仮名],あめつちの,かみをいのりて,さつやぬき,つくしのしまを,さしていくわれは","#[左注]右一首火長大田部荒耳 ( / 二月十四日下野國防人部領使正六位上田口朝臣大戸進歌數十八首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]伊 [元] 由","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:大田部荒耳,防人歌,地名,壮行,出発,羈旅,栃木,田口大戸","#[訓異]
あめつちの[寛],
かみをいのりて[寛],
さつやぬき[寛],
つくしのしまを[寛],
さしていくわれは[寛],
" "#[番号]20/4375","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]麻都能氣乃 奈美多流美礼波 伊波妣等乃 和例乎美於久流等 多々理之母己呂","#[訓読]松の木の並みたる見れば家人の我れを見送ると立たりしもころ","#[仮名],まつのけの,なみたるみれば,いはびとの,われをみおくると,たたりしもころ","#[左注]右一首火長物部真嶋 ( / 二月十四日下野國防人部領使正六位上田口朝臣大戸進歌數十八首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]波 [紀][細][温] 婆","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:物部真嶋,防人歌,栃木,田口大戸,恋情,望郷","#[訓異]
まつのけの,[寛]まつのきの,
なみたるみれば,[寛]なみたるみれは,
いはびとの,[寛]いはひとの,
われをみおくると,[寛]われをみおくると,
たたりしもころ[寛],
" "#[番号]20/4376","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]多妣由<岐>尓 由久等之良受弖 阿母志々尓 己等麻乎佐受弖 伊麻叙久夜之氣","#[訓読]旅行きに行くと知らずて母父に言申さずて今ぞ悔しけ","#[仮名],たびゆきに,ゆくとしらずて,あもししに,ことまをさずて,いまぞくやしけ","#[左注]右一首寒川郡上丁川上<臣>老 ( / 二月十四日下野國防人部領使正六位上田口朝臣大戸進歌數十八首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]伎 -> 岐 [元][類][古] / 叙 [元] 所 / 呂 -> 臣 [元][紀][細]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:川上老,防人歌,後悔,出発,羈旅,悲別,恋情,栃木,田口大戸","#[訓異]
たびゆきに,[寛]たひゆきに,
ゆくとしらずて,[寛]ゆくとしらすて,
あもししに[寛],
ことまをさずて,[寛]ことまをさすて,
いまぞくやしけ,[寛]いまそくやしけ,
" "#[番号]20/4377","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]阿母刀自母 多麻尓母賀母夜 伊多太伎弖 美都良乃奈可尓 阿敝麻可麻久母","#[訓読]母刀自も玉にもがもや戴きてみづらの中に合へ巻かまくも","#[仮名],あもとじも,たまにもがもや,いただきて,みづらのなかに,あへまかまくも","#[左注]右一首津守宿祢小黒栖 ( / 二月十四日下野國防人部領使正六位上田口朝臣大戸進歌數十八首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:津守小黒栖,防人歌,栃木,田口大戸,恋情","#[訓異]
あもとじも,[寛]あもとしも,
たまにもがもや,[寛]たまにもかもや,
いただきて,[寛]いたたきて,
みづらのなかに,[寛]みつらのなかに,
あへまかまくも[寛],
" "#[番号]20/4378","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]都久比夜波 須具波由氣等毛 阿母志々可 多麻乃須我多波 和須例西奈布母","#[訓読]月日やは過ぐは行けども母父が玉の姿は忘れせなふも","#[仮名],つくひやは,すぐはゆけども,あもししが,たまのすがたは,わすれせなふも","#[左注]右一首都賀郡上丁中臣部足國 ( / 二月十四日下野國防人部領使正六位上田口朝臣大戸進歌數十八首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:中臣部足國,防人歌,恋情,望郷,栃木,田口大戸","#[訓異]
つくひやは,[寛]つくひよは,
すぐはゆけども,[寛]すくはゆけとも,
あもししが,[寛]あもししか,
たまのすがたは,[寛]たまのすかたは,
わすれせなふも[寛],
" "#[番号]20/4379","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]之良奈美乃 与曽流波麻倍尓 和可例奈波 伊刀毛須倍奈美 夜多妣蘇弖布流","#[訓読]白波の寄そる浜辺に別れなばいともすべなみ八度袖振る","#[仮名],しらなみの,よそるはまへに,わかれなば,いともすべなみ,やたびそでふる","#[左注]右一首足利郡上丁大舎人部祢麻呂 ( / 二月十四日下野國防人部領使正六位上田口朝臣大戸進歌數十八首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]波 [元] 婆","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:大舎人部祢麻呂,防人歌,出発,別離,悲別,羈旅,栃木,田口大戸","#[訓異]
しらなみの[寛],
よそるはまへに,[寛]よするはまへに,
わかれなば,[寛]わかれなは,
いともすべなみ,[寛]いともすへなみ,
やたびそでふる,[寛]やたひそてふる,
" "#[番号]20/4380","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]奈尓波刀乎 己岐O弖美例婆 可美佐夫流 伊古麻多可祢尓 久毛曽多奈妣久","#[訓読]難波津を漕ぎ出て見れば神さぶる生駒高嶺に雲ぞたなびく","#[仮名],なにはとを,こぎでてみれば,かみさぶる,いこまたかねに,くもぞたなびく","#[左注]右一首梁田郡上丁大田部三成 ( / 二月十四日下野國防人部領使正六位上田口朝臣大戸進歌數十八首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:大田部三成,防人歌,地名,難波,大阪,叙景,出発,栃木,田口大戸","#[訓異]
なにはとを[寛],
こぎでてみれば,[寛]こきててみれは,
かみさぶる,[寛]かみさふる,
いこまたかねに[寛],
くもぞたなびく,[寛]くもそたなひく,
" "#[番号]20/4381","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]<久>尓<具尓>乃 佐岐毛利都度比 布奈能里弖 和可流乎美礼婆 伊刀母須敝奈之","#[訓読]国々の防人集ひ船乗りて別るを見ればいともすべなし","#[仮名],くにぐにの,さきもりつどひ,ふなのりて,わかるをみれば,いともすべなし","#[左注]右一首河内郡上丁神麻續部嶋麻呂 ( / 二月十四日下野國防人部領使正六位上田口朝臣大戸進歌數十八首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]具 -> 久 [元][類][古] / 々々 -> 具尓 [元][類]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:神麻續部嶋麻呂,防人歌,出発,羈旅,栃木,田口大戸","#[訓異]
くにぐにの,[寛]くにくにの,
さきもりつどひ,[寛]さきもりつとひ,
ふなのりて[寛],
わかるをみれば,[寛]わかるをみれは,
いともすべなし,[寛]いともすへなし,
" "#[番号]20/4382","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]布多富我美 阿志氣比等奈里 阿多由麻比 和我須流等伎尓 佐伎母里尓佐須","#[訓読]ふたほがみ悪しけ人なりあたゆまひ我がする時に防人にさす","#[仮名],ふたほがみ,あしけひとなり,あたゆまひ,わがするときに,さきもりにさす","#[左注]右一首那須郡上丁大伴<部>廣成 ( / 二月十四日下野國防人部領使正六位上田口朝臣大戸進歌數十八首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]<> -> 部 [類][古]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:大伴部廣成,防人歌,怨恨,栃木,田口大戸","#[訓異]
ふたほがみ,[寛]ふたほかみ,
あしけひとなり[寛],
あたゆまひ[寛],
わがするときに,[寛]わかするときに,
さきもりにさす[寛],
" "#[番号]20/4383","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]都乃久尓乃 宇美能奈伎佐尓 布奈餘曽比 多志O毛等伎尓 阿母我米母我母","#[訓読]津の国の海の渚に船装ひ立し出も時に母が目もがも","#[仮名],つのくにの,うみのなぎさに,ふなよそひ,たしでもときに,あもがめもがも","#[左注]右一首塩屋郡上丁丈部足人 / 二月十四日下野國防人部領使正六位上田口朝臣大戸進歌數十八首 但拙劣歌者不取載之","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月14日,年紀,作者:丈部足人,防人歌,出発,恋情,望郷,栃木,田口大戸","#[訓異]
つのくにの[寛],
うみのなぎさに,[寛]うみのなきさに,
ふなよそひ[寛],
たしでもときに,[寛]たしてもときに,
あもがめもがも,[寛]あもかめもかも,
" "#[番号]20/4384","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]阿加等伎乃 加波多例等枳尓 之麻加枳乎 己枳尓之布祢乃 他都枳之良須母","#[訓読]暁のかはたれ時に島蔭を漕ぎ去し船のたづき知らずも","#[仮名],あかときの,かはたれときに,しまかぎを,こぎにしふねの,たづきしらずも","#[左注]右一首助丁海上郡海上國造他田日奉直得大理( / 二月十六日下総國防人部領使少目従七位下縣犬養宿祢浄人進歌數廿二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月16日,年紀,作者:他田日奉得大理,防人歌,叙景,漂泊,旅情,千葉,県犬養浄人","#[訓異]
あかときの[寛],
かはたれときに[寛],
しまかぎを,[寛]しまかきを,
こぎにしふねの,[寛]こきにしふねの,
たづきしらずも,[寛]たつきしらすも,
" "#[番号]20/4385","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]由古作枳尓 奈美奈等恵良比 志流敝尓波 古乎等都麻乎等 於枳弖等母枳奴","#[訓読]行こ先に波なとゑらひ後方には子をと妻をと置きてとも来ぬ","#[仮名],ゆこさきに,なみなとゑらひ,しるへには,こをとつまをと,おきてともきぬ","#[左注]右一首葛餝郡私部石嶋 ( / 二月十六日下総國防人部領使少目従七位下縣犬養宿祢浄人進歌數廿二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]等母 [元] 良毛","#[事項],天平勝宝7年2月16日,年紀,作者:私部石嶋,防人歌,出発,千葉,県犬養浄人","#[訓異]
ゆこさきに[寛],
なみなとゑらひ[寛],
しるへには[寛],
こをとつまをと,[寛]こをらつまをら,
おきてともきぬ,[寛]をきてらもきぬ,
" "#[番号]20/4386","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]和加々都乃 以都母等夜奈枳 以都母々々々 於母加古比須々 奈理麻之都之母","#[訓読]我が門の五本柳いつもいつも母が恋すす業りましつしも","#[仮名],わがかづの,いつもとやなぎ,いつもいつも,おもがこひすす,なりましつしも","#[左注]右一首結城郡矢作部真長 ( / 二月十六日下総國防人部領使少目従七位下縣犬養宿祢浄人進歌數廿二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月16日,年紀,作者:矢作部真長,防人歌,悲別,望郷,恋情,千葉,県犬養浄人","#[訓異]
わがかづの,[寛]わかかとの,
いつもとやなぎ,[寛]いつもとやなき,
いつもいつも[寛],
おもがこひすす,[寛]おもかこひすす,
なりましつしも[寛],
" "#[番号]20/4387","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]知波乃奴乃 古乃弖加之波能 保々麻例等 阿夜尓加奈之美 於枳弖他加枳奴","#[訓読]千葉の野の児手柏のほほまれどあやに愛しみ置きて誰が来ぬ","#[仮名],ちばのぬの,このてかしはの,ほほまれど,あやにかなしみ,おきてたがきぬ","#[左注]右一首千葉郡大田<部>足人 ( / 二月十六日下総國防人部領使少目従七位下縣犬養宿祢浄人進歌數廿二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]郡 -> 部 [西(訂正)][元][細][温]","#[事項],天平勝宝7年2月16日,年紀,作者:大田部足人,防人歌,千葉,県犬養浄人,地名,植物,序詞,自嘲,恋情,望郷","#[訓異]
ちばのぬの,[寛]ちはのぬの,
このてかしはの[寛],
ほほまれど,[寛]ほほまれと,
あやにかなしみ[寛],
おきてたがきぬ,[寛]おきてたかきぬ,
" "#[番号]20/4388","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]多妣等<弊>等 麻多妣尓奈理奴 以<弊>乃母加 枳世之己呂母尓 阿加都枳尓迦理","#[訓読]旅とへど真旅になりぬ家の妹が着せし衣に垢付きにかり","#[仮名],たびとへど,またびになりぬ,いへのもが,きせしころもに,あかつきにかり","#[左注]右一首占部虫麻呂 ( / 二月十六日下総國防人部領使少目従七位下縣犬養宿祢浄人進歌數廿二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]敝 -> 弊 [元][類][紀]","#[事項],天平勝宝7年2月16日,年紀,作者:占部虫麻呂,防人歌,千葉,県犬養浄人","#[訓異]
たびとへど,[寛]たひとへと,
またびになりぬ,[寛]またひになりぬ,
いへのもが,[寛]いへのもか,
きせしころもに[寛],
あかつきにかり,[寛]あかつきにけり,
" "#[番号]20/4389","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]志保不尼乃 <弊>古祖志良奈美 尓波志久母 於不世他麻保加 於母波弊奈久尓","#[訓読]潮舟の舳越そ白波にはしくも負ふせたまほか思はへなくに","#[仮名],しほふねの,へこそしらなみ,にはしくも,おふせたまほか,おもはへなくに","#[左注]右一首印波郡丈部直大麻呂 ( / 二月十六日下総國防人部領使少目従七位下縣犬養宿祢浄人進歌數廿二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]敝 -> 弊 [元][類][紀]","#[事項],天平勝宝7年2月16日,年紀,作者:丈部大麻呂,防人歌,怨恨,千葉,県犬養浄人","#[訓異]
しほふねの[寛],
へこそしらなみ[寛],
にはしくも[寛],
おふせたまほか[寛],
おもはへなくに[寛],
" "#[番号]20/4390","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]牟浪他麻乃 久留尓久枳作之 加多米等之 以母加去々里波 阿用久奈米加母","#[訓読]群玉の枢にくぎさし堅めとし妹が心は動くなめかも","#[仮名],むらたまの,くるにくぎさし,かためとし,いもがこころは,あよくなめかも","#[左注]右一首ミ島郡刑部志可麻呂 ( / 二月十六日下総國防人部領使少目従七位下縣犬養宿祢浄人進歌數廿二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月16日,年紀,作者:刑部志可麻呂,防人歌,恋情,千葉,県犬養浄人","#[訓異]
むらたまの[寛],
くるにくぎさし,[寛]くるにくきさし,
かためとし[寛],
いもがこころは,[寛]いもかここりは,
あよくなめかも[寛],
" "#[番号]20/4391","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]久尓<具尓>乃 夜之呂乃加美尓 奴佐麻都理 阿加古比須奈牟 伊母賀加奈志作","#[訓読]国々の社の神に幣奉り贖乞ひすなむ妹が愛しさ","#[仮名],くにぐにの,やしろのかみに,ぬさまつり,あがこひすなむ,いもがかなしさ","#[左注]右一首結城郡忍海部五百麻呂 ( / 二月十六日下総國防人部領使少目従七位下縣犬養宿祢浄人進歌數廿二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]々々 -> 具尓 [類][紀][細] / 呂 [元](塙) 里","#[事項],天平勝宝7年2月16日,年紀,作者:忍海部五百麻呂,防人歌,千葉,県犬養浄人,恋情,神祭り","#[訓異]
くにぐにの,[寛]くにくにの,
やしろのかみに[寛],
ぬさまつり[寛],
あがこひすなむ,[寛]あかこひすなむ,
いもがかなしさ,[寛]いもかかなしさ,
" "#[番号]20/4392","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]阿米都之乃 以都例乃可美乎 以乃良波加 有都久之波々尓 麻多己等刀波牟","#[訓読]天地のいづれの神を祈らばか愛し母にまた言とはむ","#[仮名],あめつしの,いづれのかみを,いのらばか,うつくしははに,またこととはむ","#[左注]右一首埴生郡大伴部麻与佐 ( / 二月十六日下総國防人部領使少目従七位下縣犬養宿祢浄人進歌數廿二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月16日,年紀,作者:大伴部麻与佐,防人歌,千葉,県犬養浄人,恋情,望郷,神祭り","#[訓異]
あめつしの[寛],
いづれのかみを,[寛]いつれのかみか,
いのらばか,[寛]いのらはか,
うつくしははに[寛],
またこととはむ[寛],
" "#[番号]20/4393","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]於保伎美能 美許等尓<作>例波 知々波々乎 以波比<弊>等於枳弖 麻為弖枳尓之乎","#[訓読]大君の命にされば父母を斎瓮と置きて参ゐ出来にしを","#[仮名],おほきみの,みことにされば,ちちははを,いはひへとおきて,まゐできにしを","#[左注]右一首結城郡雀部廣嶋 ( / 二月十六日下総國防人部領使少目従七位下縣犬養宿祢浄人進歌數廿二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]佐 -> 作 [元][類] / 敝 -> 弊 [元][類][紀]","#[事項],天平勝宝7年2月16日,年紀,作者:雀部廣嶋,防人歌,千葉,県犬養浄人,悲別,出発,恋情","#[訓異]
おほきみの[寛],
みことにされば,[寛]みことにされは,
ちちははを[寛],
いはひへとおきて[寛],
まゐできにしを,[寛]まゐてきましを,
" "#[番号]20/4394","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]於保伎美能 美己等加之古美 由美乃美<他> 佐尼加和多良牟 奈賀氣己乃用乎","#[訓読]大君の命畏み弓の共さ寝かわたらむ長けこの夜を","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,ゆみのみた,さねかわたらむ,ながけこのよを","#[左注]右一首相馬郡大伴<部>子羊 / 二月十六日下総國防人部領使少目従七位下縣犬養宿祢浄人進歌數廿二首 但拙劣歌者不取載之","#[校異]仁 -> 他 [元][類] / <> -> 部 [類][細]","#[事項],天平勝宝7年2月16日,年紀,作者:大伴部子羊,防人歌,千葉,県犬養浄人,悲嘆","#[訓異]
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
ゆみのみた,[寛]ゆみのみに,
さねかわたらむ[寛],
ながけこのよを,[寛]なかきこのよを,
" "#[番号]20/4395","#[題詞]獨惜龍田山櫻花歌一首","#[原文]多都多夜麻 見都々古要許之 佐久良波奈 知利加須疑奈牟 和我可敝流刀<尓>","#[訓読]龍田山見つつ越え来し桜花散りか過ぎなむ我が帰るとに","#[仮名],たつたやま,みつつこえこし,さくらばな,ちりかすぎなむ,わがかへるとに","#[左注](右三首二月十七日兵部少輔大伴家持作之)","#[校異]祢 -> 尓 [元][類]","#[事項],天平勝宝7年2月17日,年紀,作者:大伴家持,独詠,地名,龍田,奈良,植物,難波,大阪","#[訓異]
たつたやま[寛],
みつつこえこし[寛],
さくらばな,[寛]さくらはな,
ちりかすぎなむ,[寛]ちりかすきなむ,
わがかへるとに,[寛]わかかへるとね,
" "#[番号]20/4396","#[題詞]獨見江水浮漂糞怨恨貝玉不依作歌一首","#[原文]保理江欲利 安佐之保美知尓 与流許都美 可比尓安里世波 都刀尓勢麻之乎","#[訓読]堀江より朝潮満ちに寄る木屑貝にありせばつとにせましを","#[仮名],ほりえより,あさしほみちに,よるこつみ,かひにありせば,つとにせましを","#[左注](右三首二月十七日兵部少輔大伴家持作之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月17日,年紀,作者:大伴家持,独詠,地名,難波,大阪,望郷","#[訓異]
ほりえより[寛],
あさしほみちに[寛],
よるこつみ[寛],
かひにありせば,[寛]かひにありせは,
つとにせましを[寛],
" "#[番号]20/4397","#[題詞]在舘門見江南美女作歌一首","#[原文]見和多世波 牟加都乎能倍乃 波奈尓保比 弖里C多弖流<波> 波之伎多我都麻","#[訓読]見わたせば向つ峰の上の花にほひ照りて立てるは愛しき誰が妻","#[仮名],みわたせば,むかつをのへの,はなにほひ,てりてたてるは,はしきたがつま","#[左注]右三首二月十七日兵部少輔大伴家持作之","#[校異]婆 -> 波 [元][類]","#[事項],天平勝宝7年2月17日,年紀,作者:大伴家持,独詠,望郷,難波,大阪","#[訓異]
みわたせば,[寛]みわたせは,
むかつをのへの[寛],
はなにほひ[寛],
てりてたてるは[寛],
はしきたがつま,[寛]はしきたかつま,
" "#[番号]20/4398","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)為防人情陳思作歌一首[并短歌]","#[原文]大王乃 美己等可之古美 都麻和可礼 可奈之久波安礼特 大夫 情布里於許之 等里与曽比 門出乎須礼婆 多良知祢乃 波々可伎奈O 若草乃 都麻波等里都吉 平久 和礼波伊波々牟 好去而 早還来等 麻蘇O毛知 奈美太乎能其比 牟世比都々 言語須礼婆 群鳥乃 伊O多知加弖尓 等騰己保里 可<弊>里美之都々 伊也等保尓 國乎伎波奈例 伊夜多可尓 山乎故要須疑 安之我知流 難波尓伎為弖 由布之保尓 船乎宇氣須恵 安佐奈藝尓 倍牟氣許我牟等 佐毛良布等 和我乎流等伎尓 春霞 之麻<未>尓多知弖 多頭我祢乃 悲鳴婆 波呂<婆>呂尓 伊弊乎於毛比O 於比曽箭乃 曽与等奈流麻O 奈氣吉都流香母 ","#[訓読]大君の 命畏み 妻別れ 悲しくはあれど 大夫の 心振り起し 取り装ひ 門出をすれば たらちねの 母掻き撫で 若草の 妻は取り付き 平らけく 我れは斎はむ ま幸くて 早帰り来と 真袖もち 涙を拭ひ むせひつつ 言問ひすれば 群鳥の 出で立ちかてに とどこほり かへり見しつつ いや遠に 国を来離れ いや高に 山を越え過ぎ 葦が散る 難波に来居て 夕潮に 船を浮けすゑ 朝なぎに 舳向け漕がむと さもらふと 我が居る時に 春霞 島廻に立ちて 鶴が音の 悲しく鳴けば はろはろに 家を思ひ出 負ひ征矢の そよと鳴るまで 嘆きつるかも ","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,つまわかれ,かなしくはあれど,ますらをの,こころふりおこし,とりよそひ,かどでをすれば,たらちねの,ははかきなで,わかくさの,つまはとりつき,たひらけく,われはいははむ,まさきくて,はやかへりこと,まそでもち,なみだをのごひ,むせひつつ,ことどひすれば,むらとりの,いでたちかてに,とどこほり,かへりみしつつ,いやとほに,くにをきはなれ,いやたかに,やまをこえすぎ,あしがちる,なにはにきゐて,ゆふしほに,ふねをうけすゑ,あさなぎに,へむけこがむと,さもらふと,わがをるときに,はるかすみ,しまみにたちて,たづがねの,かなしくなけば,はろはろに,いへをおもひで,おひそやの,そよとなるまで,なげきつるかも","#[左注](右十九日兵部少輔大伴宿祢家持作之)","#[校異]短歌 [西] 短謌 / 麻波 [元](塙) 麻 / 敝 -> 弊 [元][紀][細] / 米 -> 未 [代匠記精撰本] / 波 -> 婆 [元][類][紀][温]","#[事項],天平勝宝7年2月19日,年紀,作者:大伴家持,同情,防人歌,枕詞,動物,難波,大阪","#[訓異]
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
つまわかれ[寛],
かなしくはあれど,[寛]かなしくはあれと,
ますらをの[寛],
こころふりおこし[寛],
とりよそひ[寛],
かどでをすれば,[寛]かとてをすれは,
たらちねの[寛],
ははかきなで,[寛]ははかきなてて,
わかくさの[寛],
つまはとりつき[寛],
たひらけく[寛],
われはいははむ[寛],
まさきくて,[寛]よしゆきて,
はやかへりこと[寛],
まそでもち,[寛]まそてもち,
なみだをのごひ,[寛]なみたをのこひ,
むせひつつ[寛],
ことどひすれば,[寛]かたらひすれは,
むらとりの[寛],
いでたちかてに,[寛]いてたちかてて,
とどこほり,[寛]ととこほり,
かへりみしつつ[寛],
いやとほに[寛],
くにをきはなれ[寛],
いやたかに[寛],
やまをこえすぎ,[寛]やまをこえすき,
あしがちる,[寛]あしかちる,
なにはにきゐて,[寛]なにはにきすて,
ゆふしほに[寛],
ふねをうけすゑ[寛],
あさなぎに,[寛]あさなきに,
へむけこがむと,[寛]へむけこかむと,
さもらふと[寛],
わがをるときに,[寛]わかをるときに,
はるかすみ[寛],
しまみにたちて,[寛]しまへにたちて,
たづがねの,[寛]たつかねの,
かなしくなけば,[寛]かなしみなくは,
はろはろに[寛],
いへをおもひで,[寛]いへをおもひて,
おひそやの[寛],
そよとなるまで,[寛]そよとなるまて,
なげきつるかも,[寛]なけきつるかも,
" "#[番号]20/4399","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)(為防人情陳思作歌一首[并短歌])","#[原文]宇奈波良尓 霞多奈妣伎 多頭我祢乃 可奈之伎与比波 久尓<弊>之於毛保由","#[訓読]海原に霞たなびき鶴が音の悲しき宵は国辺し思ほゆ","#[仮名],うなはらに,かすみたなびき,たづがねの,かなしきよひは,くにへしおもほゆ","#[左注](右十九日兵部少輔大伴宿祢家持作之)","#[校異]敝 -> 弊 [元][類][紀]","#[事項],天平勝宝7年2月19日,年紀,作者:大伴家持,防人歌,同情,望郷,動物,難波,大阪","#[訓異]
うなはらに[寛],
かすみたなびき,[寛]かすみたなひき,
たづがねの,[寛]たつかねの,
かなしきよひは[寛],
くにへしおもほゆ[寛],
" "#[番号]20/4400","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)(為防人情陳思作歌一首[并短歌])","#[原文]伊<弊>於毛負等 伊乎祢受乎礼婆 多頭我奈久 安之<弊>毛美要受 波流乃可須美尓","#[訓読]家思ふと寐を寝ず居れば鶴が鳴く葦辺も見えず春の霞に","#[仮名],いへおもふと,いをねずをれば,たづがなく,あしへもみえず,はるのかすみに","#[左注]右十九日兵部少輔大伴宿祢家持作之","#[校異]敝 -> 弊 [元][紀][細]","#[事項],天平勝宝7年2月19日,年紀,作者:大伴家持,動物,望郷,防人歌,同情,難波,大阪","#[訓異]
いへおもふと[寛],
いをねずをれば,[寛]いをねすをれは,
たづがなく,[寛]たつかなく,
あしへもみえず,[寛]あしへもみえす,
はるのかすみに[寛],
" "#[番号]20/4401","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]可良己呂<武> 須<宗>尓等里都伎 奈苦古良乎 意伎弖曽伎<怒>也 意母奈之尓志弖","#[訓読]唐衣裾に取り付き泣く子らを置きてぞ来のや母なしにして","#[仮名],からころむ,すそにとりつき,なくこらを,おきてぞきのや,おもなしにして","#[左注]右一首國造小縣郡他田舎人大嶋 ( / 二月廿二日信濃國防人部領使上道得病不来 進歌<數>十二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]茂 -> 武 [元][類] / 曽 -> 宗 [元][春] / 奴 -> 怒 [元][類][細]","#[事項],天平勝宝7年2月22日,年紀,作者:他田舎人大嶋,防人歌,悲別,悲嘆,長野,","#[訓異]
からころむ,[寛]からころも,
すそにとりつき[寛],
なくこらを[寛],
おきてぞきのや,[寛]おきてそきぬや,
おもなしにして[寛],
" "#[番号]20/4402","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]知波夜布留 賀美乃美佐賀尓 奴佐麻都<里> 伊波<布>伊能知波 意毛知々我多米","#[訓読]ちはやぶる神の御坂に幣奉り斎ふ命は母父がため","#[仮名],ちはやぶる,かみのみさかに,ぬさまつり,いはふいのちは,おもちちがため","#[左注]右一首主帳埴科郡神人部子忍男 ( / 二月廿二日信濃國防人部領使上道得病不来 進歌<數>十二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]里 -> 理 [元][春] / 負 -> 布 [元][春]","#[事項],天平勝宝7年2月22日,年紀,作者:神人部子忍男,防人歌,羈旅,手向け,地名,長野,悲別","#[訓異]
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
かみのみさかに[寛],
ぬさまつり[寛],
いはふいのちは[寛],
おもちちがため,[寛]おもちちかため,
" "#[番号]20/4403","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]意保枳美能 美己等可之古美 阿乎久<牟>乃 <等能>妣久夜麻乎 古与弖伎怒加牟","#[訓読]大君の命畏み青雲のとのびく山を越よて来ぬかむ","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,あをくむの,とのびくやまを,こよてきぬかむ","#[左注]右一首小長谷部笠麻呂 / 二月廿二日信濃國防人部領使上道得病不来 進歌<數>十二首 但拙劣歌者不取載之","#[校異]毛 -> 牟 [元][類][紀] / 多奈 -> 等能 [元] / <> -> 數 [元][細]","#[事項],天平勝宝7年2月22日,年紀,作者:小長谷部笠麻呂,防人歌,羈旅,長野","#[訓異]
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
あをくむの,[寛]あをくもの,
とのびくやまを,[寛]たなひくやまを,
こよてきぬかむ,[寛]こえてきぬかも,
" "#[番号]20/4404","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]奈尓波治乎 由伎弖久麻弖等 和藝毛古賀 都氣之非毛我乎 多延尓氣流可母","#[訓読]難波道を行きて来までと我妹子が付けし紐が緒絶えにけるかも","#[仮名],なにはぢを,ゆきてくまでと,わぎもこが,つけしひもがを,たえにけるかも","#[左注]右一首助丁上毛野牛甘 ( / 二月廿三日上野國防人部領使大目正六位下上毛野君駿河進歌數十二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月23日,年紀,作者:上毛野牛甘,防人歌,地名,難波,大阪,望郷,悲別,悲嘆,群馬,上毛野駿河","#[訓異]
なにはぢを,[寛]なにはちを,
ゆきてくまでと,[寛]ゆきてくまてと,
わぎもこが,[寛]わきもこか,
つけしひもがを,[寛]つけしひもかを,
たえにけるかも[寛],
" "#[番号]20/4405","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]和我伊母古我 志濃比尓西餘等 都氣志<非>毛 伊刀尓奈流等母 和波等可自等余","#[訓読]我が妹子が偲ひにせよと付けし紐糸になるとも我は解かじとよ","#[仮名],わがいもこが,しぬひにせよと,つけしひも,いとになるとも,わはとかじとよ","#[左注]右一首朝倉益人 ( / 二月廿三日上野國防人部領使大目正六位下上毛野君駿河進歌數十二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]比 -> 非 [元][春]","#[事項],天平勝宝7年2月23日,年紀,作者:朝倉益人,防人歌,悲別,恋情,群馬,上毛野駿河","#[訓異]
わがいもこが,[寛]わかいもこか,
しぬひにせよと,[寛]しのひにせよと,
つけしひも[寛],
いとになるとも[寛],
わはとかじとよ,[寛]わはとかしとよ,
" "#[番号]20/4406","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]和我伊波呂尓 由加毛比等母我 久佐麻久良 多妣波久流之等 都氣夜良麻久母","#[訓読]我が家ろに行かも人もが草枕旅は苦しと告げ遣らまくも","#[仮名],わがいはろに,ゆかもひともが,くさまくら,たびはくるしと,つげやらまくも","#[左注]右一首大伴部節麻呂 ( / 二月廿三日上野國防人部領使大目正六位下上毛野君駿河進歌數十二首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月23日,年紀,作者:大伴部節麻呂,防人歌,群馬,上毛野駿河,枕詞,望郷,悲別","#[訓異]
わがいはろに,[寛]わかいはろに,
ゆかもひともが,[寛]ゆかもひともか,
くさまくら[寛],
たびはくるしと,[寛]たひはくるしと,
つげやらまくも,[寛]つけやらまくも,
" "#[番号]20/4407","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]比奈久母理 宇須比乃佐可乎 古延志太尓 伊毛賀古比之久 和須良延奴加母","#[訓読]ひな曇り碓氷の坂を越えしだに妹が恋しく忘らえぬかも","#[仮名],ひなくもり,うすひのさかを,こえしだに,いもがこひしく,わすらえぬかも","#[左注]右一首他田部子磐前 / 二月廿三日上野國防人部領使大目正六位下上毛野君駿河進歌數十二首 但拙劣歌者不取載之","#[校異]賀 [元][春] 駕","#[事項],天平勝宝7年2月23日,年紀,作者:他田部子磐前,防人歌,群馬,上毛野駿河,悲別,羈旅,地名,望郷,枕詞","#[訓異]
ひなくもり[寛],
うすひのさかを[寛],
こえしだに,[寛]こえしたに,
いもがこひしく,[寛]いもかこひしく,
わすらえぬかも,[寛]わすらえめかも,
" "#[番号]20/4408","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)陳防人悲別之情歌一首[并短歌]","#[原文]大王乃 麻氣乃麻尓々々 嶋守尓 和我多知久礼婆 波々蘇婆能 波々能美許等波 美母乃須蘇 都美安氣可伎奈O 知々能未乃 知々能美許等波 多久頭<努>能 之良比氣乃宇倍由 奈美太多利 奈氣伎乃多婆久 可胡自母乃 多太比等里之C 安佐刀O乃 可奈之伎吾子 安良多麻乃 等之能乎奈我久 安比美受波 古非之久安流倍之 今日太<尓>母 許等騰比勢武等 乎之美都々 可奈之備麻勢婆 若草之 都麻母古騰母毛 乎知己知尓 左波尓可久美為 春鳥乃 己恵乃佐麻欲比 之路多倍乃 蘇O奈伎奴良之 多豆佐波里 和可礼加弖尓等 比伎等騰米 之多比之毛能乎 天皇乃 美許等可之古美 多麻保己乃 美知尓出立 乎可<乃>佐伎 伊多牟流其等尓 与呂頭多妣 可弊里見之都追 波呂々々尓 和可礼之久礼婆 於毛布蘇良 夜須久母安良受 古布流蘇良 久流之伎毛乃乎 宇都世美乃 与能比等奈礼婆 多麻伎波流 伊能知母之良受 海原乃 可之古伎美知乎 之麻豆多比 伊己藝和多利弖 安里米具利 和我久流麻O尓 多比良氣久 於夜波伊麻佐祢 都々美奈久 都麻波麻多世等 須美乃延能 安我須賣可未尓 奴佐麻都利 伊能里麻乎之弖 奈尓波都尓 船乎宇氣須恵 夜蘇加奴伎 可古<等登>能倍弖 安佐婢良伎 和波己藝O奴等 伊弊尓都氣己曽 ","#[訓読]大君の 任けのまにまに 島守に 我が立ち来れば ははそ葉の 母の命は み裳の裾 摘み上げ掻き撫で ちちの実の 父の命は 栲づのの 白髭の上ゆ 涙垂り 嘆きのたばく 鹿子じもの ただ独りして 朝戸出の 愛しき我が子 あらたまの 年の緒長く 相見ずは 恋しくあるべし 今日だにも 言問ひせむと 惜しみつつ 悲しびませば 若草の 妻も子どもも をちこちに さはに囲み居 春鳥の 声のさまよひ 白栲の 袖泣き濡らし たづさはり 別れかてにと 引き留め 慕ひしものを 大君の 命畏み 玉桙の 道に出で立ち 岡の崎 い廻むるごとに 万たび かへり見しつつ はろはろに 別れし来れば 思ふそら 安くもあらず 恋ふるそら 苦しきものを うつせみの 世の人なれば たまきはる 命も知らず 海原の 畏き道を 島伝ひ い漕ぎ渡りて あり廻り 我が来るまでに 平けく 親はいまさね つつみなく 妻は待たせと 住吉の 我が統め神に 幣奉り 祈り申して 難波津に 船を浮け据ゑ 八十楫貫き 水手ととのへて 朝開き 我は漕ぎ出ぬと 家に告げこそ ","#[仮名],おほきみの,まけのまにまに,しまもりに,わがたちくれば,ははそばの,ははのみことは,みものすそ,つみあげかきなで,ちちのみの,ちちのみことは,たくづのの,しらひげのうへゆ,なみだたり,なげきのたばく,かこじもの,ただひとりして,あさとでの,かなしきあがこ,あらたまの,としのをながく,あひみずは,こひしくあるべし,けふだにも,ことどひせむと,をしみつつ,かなしびませば,わかくさの,つまもこどもも,をちこちに,さはにかくみゐ,はるとりの,こゑのさまよひ,しろたへの,そでなきぬらし,たづさはり,わかれかてにと,ひきとどめ,したひしものを,おほきみの,みことかしこみ,たまほこの,みちにいでたち,をかのさき,いたむるごとに,よろづたび,かへりみしつつ,はろはろに,わかれしくれば,おもふそら,やすくもあらず,こふるそら,くるしきものを,うつせみの,よのひとなれば,たまきはる,いのちもしらず,うなはらの,かしこきみちを,しまづたひ,いこぎわたりて,ありめぐり,わがくるまでに,たひらけく,おやはいまさね,つつみなく,つまはまたせと,すみのえの,あがすめかみに,ぬさまつり,いのりまをして,なにはつに,ふねをうけすゑ,やそかぬき,かこととのへて,あさびらき,わはこぎでぬと,いへにつげこそ","#[左注](二月廿三日兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]短歌 [西] 短謌 / 怒 -> 努 [元][類] / 仁 -> 尓 [類] / 之 -> 乃 [元][類] / 登々 -> 等登 [元]","#[事項],天平勝宝7年2月23日,年紀,作者:大伴家持,防人歌,悲別,同情,望郷","#[訓異]
おほきみの[寛],
まけのまにまに[寛],
しまもりに,[寛]さきもりに,
わがたちくれば,[寛]わかたちくれは,
ははそばの,[寛]ははそはの,
ははのみことは[寛],
みものすそ[寛],
つみあげかきなで,[寛]つみあけかきなて,
ちちのみの[寛],
ちちのみことは[寛],
たくづのの,[寛]たくつのの,
しらひげのうへゆ,[寛]しらひけのうへゆ,
なみだたり,[寛]なみたたり,
なげきのたばく,[寛]なけきのたはく,
かこじもの,[寛]かこしもの,
ただひとりして,[寛]たたひとりして,
あさとでの,[寛]あさとての,
かなしきあがこ,[寛]かなしきわかこ,
あらたまの[寛],
としのをながく,[寛]としのをなかく,
あひみずは,[寛]あひみすは,
こひしくあるべし,[寛]こひしくあるへし,
けふだにも,[寛]けふたにも,
ことどひせむと,[寛]こととひせむと,
をしみつつ[寛],
かなしびませば,[寛]かなしひいませ,
わかくさの[寛],
つまもこどもも,[寛]つまもこともも,
をちこちに[寛],
さはにかくみゐ[寛],
はるとりの,[寛]うくひすの,
こゑのさまよひ[寛],
しろたへの[寛],
そでなきぬらし,[寛]そてなきぬらし,
たづさはり,[寛]たつさはり,
わかれかてにと[寛],
ひきとどめ,[寛]ひきととめ,
したひしものを[寛],
おほきみの,[寛]すめろきの,
みことかしこみ[寛],
たまほこの[寛],
みちにいでたち,[寛]みちにいてたち,
をかのさき,[寛]をかしさき,
いたむるごとに,[寛]いたむることに,
よろづたび,[寛]よろつたひ,
かへりみしつつ[寛],
はろはろに[寛],
わかれしくれば,[寛]わかれしくれは,
おもふそら[寛],
やすくもあらず,[寛]やすくもあらす,
こふるそら[寛],
くるしきものを[寛],
うつせみの[寛],
よのひとなれば,[寛]よのひとなれは,
たまきはる[寛],
いのちもしらず,[寛]いのちもしらす,
うなはらの[寛],
かしこきみちを[寛],
しまづたひ,[寛]しまつたひ,
いこぎわたりて,[寛]いこきわたりて,
ありめぐり,[寛]ありめくり,
わがくるまでに,[寛]わかくるまてに,
たひらけく[寛],
おやはいまさね[寛],
つつみなく[寛],
つまはまたせと[寛],
すみのえの[寛],
あがすめかみに,[寛]あかすめかみに,
ぬさまつり[寛],
いのりまをして[寛],
なにはつに[寛],
ふねをうけすゑ[寛],
やそかぬき[寛],
かこととのへて[寛],
あさびらき,[寛]あさひらき,
わはこぎでぬと,[寛]わはこきてぬと,
いへにつげこそ,[寛]いへにつけこそ,
" "#[番号]20/4409","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)(陳防人悲別之情歌一首[并短歌])","#[原文]伊弊婢等乃 伊波倍尓可安良牟 多比良氣久 布奈O波之奴等 於夜尓麻乎佐祢","#[訓読]家人の斎へにかあらむ平けく船出はしぬと親に申さね","#[仮名],いへびとの,いはへにかあらむ,たひらけく,ふなではしぬと,おやにまをさね","#[左注](二月廿三日兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月23日,年紀,作者:大伴家持,悲別,防人歌,望郷,同情","#[訓異]
いへびとの,[寛]いへひとの,
いはへにかあらむ[寛],
たひらけく[寛],
ふなではしぬと,[寛]ふなてはしぬと,
おやにまをさね[寛],
" "#[番号]20/4410","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)(陳防人悲別之情歌一首[并短歌])","#[原文]美蘇良由久 々母々都可比等 比等波伊倍等 伊弊頭刀夜良武 多豆伎之良受母","#[訓読]み空行く雲も使と人は言へど家づと遣らむたづき知らずも","#[仮名],みそらゆく,くももつかひと,ひとはいへど,いへづとやらむ,たづきしらずも","#[左注](二月廿三日兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月23日,年紀,作者:大伴家持,防人歌,望郷,悲別","#[訓異]
みそらゆく[寛],
くももつかひと[寛],
ひとはいへど,[寛]ひとはいへと,
いへづとやらむ,[寛]いへつとやらむ,
たづきしらずも,[寛]たつきしらすも,
" "#[番号]20/4411","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)(陳防人悲別之情歌一首[并短歌])","#[原文]伊弊都刀尓 可比曽比里弊流 波麻奈美波 伊也<之>久々々二 多可久与須礼騰","#[訓読]家づとに貝ぞ拾へる浜波はいやしくしくに高く寄すれど","#[仮名],いへづとに,かひぞひりへる,はまなみは,いやしくしくに,たかくよすれど","#[左注](二月廿三日兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]之之 -> 之 [西(訂正)][元][類][紀]","#[事項],天平勝宝7年2月23日,年紀,作者:大伴家持,防人歌,望郷,悲別,同情","#[訓異]
いへづとに,[寛]いへつとに,
かひぞひりへる,[寛]かひそひりへる,
はまなみは[寛],
いやしくしくに[寛],
たかくよすれど,[寛]たかくよすれと,
" "#[番号]20/4412","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)(陳防人悲別之情歌一首[并短歌])","#[原文]之麻可氣尓 和我布祢波弖C 都氣也良牟 都可比乎奈美也 古非都々由加牟","#[訓読]島蔭に我が船泊てて告げ遣らむ使を無みや恋ひつつ行かむ","#[仮名],しまかげに,わがふねはてて,つげやらむ,つかひをなみや,こひつつゆかむ","#[左注]二月廿三日兵部少輔大伴宿祢家持","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月23日,年紀,作者:大伴家持,防人歌,望郷,同情,恋情","#[訓異]
しまかげに,[寛]しまかけに,
わがふねはてて,[寛]わかふねはてて,
つげやらむ,[寛]つけやらむ,
つかひをなみや[寛],
こひつつゆかむ[寛],
" "#[番号]20/4413","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]麻久良多之 己志尓等里波伎 麻可奈之伎 西呂我馬伎己無 都久乃之良奈久","#[訓読]枕太刀腰に取り佩きま愛しき背ろが罷き来む月の知らなく","#[仮名],まくらたし,こしにとりはき,まかなしき,せろがまきこむ,つくのしらなく","#[左注]右一首上丁那珂郡桧前舎人石前之妻大伴<部>真足女 ( / 二月廿<九>日武蔵國部領防人使掾正六位上安曇宿祢三國進歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]<> -> 部 [元]","#[事項],天平勝宝7年2月29日,年紀,作者:桧前舎人石前妻:大伴部真足女,防人歌,埼玉,安曇三國,女歌,悲別","#[訓異]
まくらたし,[寛]まくらたち,
こしにとりはき[寛],
まかなしき[寛],
せろがまきこむ,[寛]せろかまきこむ,
つくのしらなく[寛],
" "#[番号]20/4414","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]於保伎美乃 美己等可之古美 宇都久之氣 麻古我弖波奈利 之末豆多比由久","#[訓読]大君の命畏み愛しけ真子が手離り島伝ひ行く","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,うつくしけ,まこがてはなり,しまづたひゆく","#[左注]右一首助丁秩父郡大伴部小歳 ( / 二月廿<九>日武蔵國部領防人使掾正六位上安曇宿祢三國進歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月29日,年紀,作者:大伴部小歳,防人歌,埼玉,安曇三國,悲別,羈旅","#[訓異]
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
うつくしけ[寛],
まこがてはなり,[寛]まこかてはなれ,
しまづたひゆく,[寛]しまつたひゆく,
" "#[番号]20/4415","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]志良多麻乎 弖尓刀里母之弖 美流乃須母 伊弊奈流伊母乎 麻多美弖毛母也","#[訓読]白玉を手に取り持して見るのすも家なる妹をまた見てももや","#[仮名],しらたまを,てにとりもして,みるのすも,いへなるいもを,またみてももや","#[左注]右一首主帳荏原郡物部歳徳 ( / 二月廿<九>日武蔵國部領防人使掾正六位上安曇宿祢三國進歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月29日,年紀,作者:物部歳徳,防人歌,埼玉,安曇三國,悲別,恋情,望郷","#[訓異]
しらたまを[寛],
てにとりもして[寛],
みるのすも[寛],
いへなるいもを[寛],
またみてももや[寛],
" "#[番号]20/4416","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]久佐麻久良 多比由苦世奈我 麻流祢世婆 伊波奈流和礼波 比毛等加受祢牟","#[訓読]草枕旅行く背なが丸寝せば家なる我れは紐解かず寝む","#[仮名],くさまくら,たびゆくせなが,まるねせば,いはなるわれは,ひもとかずねむ","#[左注]右一首妻椋椅部刀自賣 ( / 二月廿<九>日武蔵國部領防人使掾正六位上安曇宿祢三國進歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月29日,年紀,作者:妻椋椅部刀自賣,防人歌,枕詞,女歌,留守,恋情,埼玉,安曇三國","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびゆくせなが,[寛]たひゆくせなか,
まるねせば,[寛]まるねせは,
いはなるわれは[寛],
ひもとかずねむ,[寛]ひもとかすねむ,
" "#[番号]20/4417","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]阿加胡麻乎 夜麻努尓波賀志 刀里加尓弖 多麻<能>余許夜麻 加志由加也良牟","#[訓読]赤駒を山野にはがし捕りかにて多摩の横山徒歩ゆか遣らむ","#[仮名],あかごまを,やまのにはがし,とりかにて,たまのよこやま,かしゆかやらむ","#[左注]右一首豊嶋郡上丁椋椅部荒虫之妻宇遅部黒女 ( / 二月廿<九>日武蔵國部領防人使掾正六位上安曇宿祢三國進歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]乃 -> 能 [元][類]","#[事項],天平勝宝7年2月29日,年紀,作者:椋椅部荒虫妻:宇遅部黒女,防人歌,地名,女歌,埼玉,安曇三國,恋情","#[訓異]
あかごまを,[寛]あかこまを,
やまのにはがし[寛]やまのにはかし,
とりかにて[寛],
たまのよこやま[寛],
かしゆかやらむ[寛],
" "#[番号]20/4418","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]和我可度乃 可多夜麻都婆伎 麻己等奈礼 和我弖布礼奈々 都知尓於知母加毛","#[訓読]我が門の片山椿まこと汝れ我が手触れなな土に落ちもかも","#[仮名],わがかどの,かたやまつばき,まことなれ,わがてふれなな,つちにおちもかも","#[左注]右一首荏原郡上丁物部廣足 ( / 二月廿<九>日武蔵國部領防人使掾正六位上安曇宿祢三國進歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月29日,年紀,作者:物部廣足,防人歌,植物,恋情,埼玉,安曇三國","#[訓異]
わがかどの,[寛]わかかとの,
かたやまつばき,[寛]かたやまつはき,
まことなれ[寛],
わがてふれなな,[寛]わかてふれなな,
つちにおちもかも[寛],
" "#[番号]20/4419","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]伊波呂尓波 安之布多氣騰母 須美与氣乎 都久之尓伊多里弖 古布志氣毛波母","#[訓読]家ろには葦火焚けども住みよけを筑紫に至りて恋しけ思はも","#[仮名],いはろには,あしふたけども,すみよけを,つくしにいたりて,こふしけもはも","#[左注]右一首橘樹郡上丁物部真根 ( / 二月廿<九>日武蔵國部領防人使掾正六位上安曇宿祢三國進歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月29日,年紀,作者:物部真根,防人歌,埼玉,安曇三國,望郷,恋情,地名","#[訓異]
いはろには[寛],
あしふたけども,[寛]あしふたけとも,
すみよけを,[寛]すみよけむ,
つくしにいたりて[寛],
こふしけもはも[寛],
" "#[番号]20/4420","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]久佐麻久良 多妣乃麻流祢乃 比毛多要婆 安我弖等都氣呂 許礼乃波流母志","#[訓読]草枕旅の丸寝の紐絶えば我が手と付けろこれの針持し","#[仮名],くさまくら,たびのまるねの,ひもたえば,あがてとつけろ,これのはるもし","#[左注]右一首椋<椅>部弟女 ( / 二月廿<九>日武蔵國部領防人使掾正六位上安曇宿祢三國進歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]埼 -> 椅 [類][紀][古]","#[事項],天平勝宝7年2月29日,年紀,作者:椋椅部弟女,防人歌,埼玉,安曇三國,枕詞,女歌,恋情","#[訓異]
くさまくら[寛],
たびのまるねの,[寛]たひのまるねの,
ひもたえば,[寛]ひもたえは,
あがてとつけろ,[寛]あかてとつけろ,
これのはるもし[寛],
" "#[番号]20/4421","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]和我由伎乃 伊伎都久之可婆 安之我良乃 美祢波保久毛乎 美等登志努波祢","#[訓読]我が行きの息づくしかば足柄の峰延ほ雲を見とと偲はね","#[仮名],わがゆきの,いきづくしかば,あしがらの,みねはほくもを,みととしのはね","#[左注]右一首都筑郡上丁服部於<由> ( / 二月廿<九>日武蔵國部領防人使掾正六位上安曇宿祢三國進歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]祢 [類] 祢尓 / 田 -> 由 [元][万葉考]","#[事項],天平勝宝7年2月29日,年紀,作者:服部於由,防人歌,埼玉,安曇三國,地名,恋情","#[訓異]
わがゆきの,[寛]わかゆきの,
いきづくしかば,[寛]いきつくしかは,
あしがらの,[寛]あしからの,
みねはほくもを[寛],
みととしのはね[寛],
" "#[番号]20/4422","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]和我世奈乎 都久之倍夜里弖 宇都久之美 於妣<波>等可奈々 阿也尓加母祢毛","#[訓読]我が背なを筑紫へ遣りて愛しみ帯は解かななあやにかも寝も","#[仮名],わがせなを,つくしへやりて,うつくしみ,おびはとかなな,あやにかもねも","#[左注]右一首妻服部呰女 ( / 二月廿<九>日武蔵國部領防人使掾正六位上安曇宿祢三國進歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]婆 -> 波 [元][類][紀][細]","#[事項],天平勝宝7年2月29日,年紀,作者:妻服部呰女,防人歌,女歌,恋情,埼玉,安曇三國","#[訓異]
わがせなを,[寛]わかせなを,
つくしへやりて[寛],
うつくしみ[寛],
おびはとかなな,[寛]おひはとかなな,
あやにかもねも[寛],
" "#[番号]20/4423","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]安之我良乃 美佐可尓多志弖 蘇O布良波 伊波奈流伊毛波 佐夜尓美毛可母","#[訓読]足柄の御坂に立して袖振らば家なる妹はさやに見もかも","#[仮名],あしがらの,みさかにたして,そでふらば,いはなるいもは,さやにみもかも","#[左注]右一首埼玉郡上丁藤原部等母麻呂 ( / 二月廿<九>日武蔵國部領防人使掾正六位上安曇宿祢三國進歌數廿首 但拙劣歌者不取載之)","#[校異]波 [元](塙) 婆","#[事項],天平勝宝7年2月29日,年紀,作者:藤原部等母麻呂,防人歌,埼玉,安曇三國,地名,望郷,恋情","#[訓異]
あしがらの,[寛]あしからの,
みさかにたして[寛],
そでふらば,[寛]そてふらは,
いはなるいもは[寛],
さやにみもかも[寛],
" "#[番号]20/4424","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]伊呂夫可久 世奈我許呂母波 曽米麻之乎 美佐可多婆良婆 麻佐夜可尓美無","#[訓読]色深く背なが衣は染めましをみ坂給らばまさやかに見む","#[仮名],いろぶかく,せながころもは,そめましを,みさかたばらば,まさやかにみむ","#[左注]右一首妻物部刀自賣 / 二月廿<九>日武蔵國部領防人使掾正六位上安曇宿祢三國進歌數廿首 但拙劣歌者不取載之","#[校異]<> -> 九 [古]","#[事項],天平勝宝7年2月29日,年紀,作者:妻物部刀自賣,防人歌,埼玉,安曇三國,女歌,恋情","#[訓異]
いろぶかく,[寛]いろふかく,
せながころもは,[寛]せなかころもは,
そめましを[寛],
みさかたばらば,[寛]みさかたはらは,
まさやかにみむ[寛],
" "#[番号]20/4425","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]佐伎毛利尓 由久波多我世登 刀布比登乎 美流我登毛之佐 毛乃母比毛世受","#[訓読]防人に行くは誰が背と問ふ人を見るが羨しさ物思ひもせず","#[仮名],さきもりに,ゆくはたがせと,とふひとを,みるがともしさ,ものもひもせず","#[左注](右八首昔<年>防人歌矣 主典刑部少録正七位上磐余伊美吉諸君抄寫 贈兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月,年紀,防人歌,古歌,伝誦,磐余諸君,女歌,恋情","#[訓異]
さきもりに[寛],
ゆくはたがせと,[寛]ゆくはたかせと,
とふひとを[寛],
みるがともしさ,[寛]みるかともしさ,
ものもひもせず,[寛]ものもひもせす,
" "#[番号]20/4426","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]阿米都之乃 可未尓奴佐於伎 伊波比都々 伊麻世和我世奈 阿礼乎之毛波婆","#[訓読]天地の神に幣置き斎ひつついませ我が背な我れをし思はば","#[仮名],あめつしの,かみにぬさおき,いはひつつ,いませわがせな,あれをしもはば","#[左注](右八首昔<年>防人歌矣 主典刑部少録正七位上磐余伊美吉諸君抄寫 贈兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月,年紀,防人歌,古歌,伝誦,女歌,恋情,磐余諸君","#[訓異]
あめつしの[寛],
かみにぬさおき[寛],
いはひつつ[寛],
いませわがせな,[寛]いませわかせな,
あれをしもはば,[寛]あれをしもはは,
" "#[番号]20/4427","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]伊波乃伊毛呂 和乎之乃布良之 麻由須比尓 由須比之比毛乃 登久良久毛倍婆","#[訓読]家の妹ろ我を偲ふらし真結ひに結ひし紐の解くらく思へば","#[仮名],いはのいもろ,わをしのふらし,まゆすひに,ゆすひしひもの,とくらくもへば","#[左注](右八首昔<年>防人歌矣 主典刑部少録正七位上磐余伊美吉諸君抄寫 贈兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月,年紀,防人歌,古歌,伝誦,磐余諸君,恋情,望郷","#[訓異]
いはのいもろ[寛],
わをしのふらし[寛],
まゆすひに[寛],
ゆすひしひもの[寛],
とくらくもへば,[寛]とくらくもへは,
" "#[番号]20/4428","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]和我世奈乎 都久志波夜利弖 宇都久之美 叡比波登加奈々 阿夜尓可毛祢牟","#[訓読]我が背なを筑紫は遣りて愛しみえひは解かななあやにかも寝む","#[仮名],わがせなを,つくしはやりて,うつくしみ,えひはとかなな,あやにかもねむ","#[左注](右八首昔<年>防人歌矣 主典刑部少録正七位上磐余伊美吉諸君抄寫 贈兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月,年紀,防人歌,古歌,伝誦,女歌,地名,恋情","#[訓異]
わがせなを,[寛]わかせなを,
つくしはやりて[寛],
うつくしみ[寛],
えひはとかなな[寛],
あやにかもねむ[寛],
" "#[番号]20/4429","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]宇麻夜奈流 奈波多都古麻乃 於久流我弁 伊毛我伊比之乎 於岐弖可奈之毛","#[訓読]馬屋なる縄立つ駒の後るがへ妹が言ひしを置きて悲しも","#[仮名],うまやなる,なはたつこまの,おくるがへ,いもがいひしを,おきてかなしも","#[左注](右八首昔<年>防人歌矣 主典刑部少録正七位上磐余伊美吉諸君抄寫 贈兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月,年紀,防人歌,古歌,伝誦,悲別,恋情,磐余諸君","#[訓異]
うまやなる[寛],
なはたつこまの[寛],
おくるがへ,[寛]おくるかへ,
いもがいひしを,[寛]いもかいひしを,
おきてかなしも[寛],
" "#[番号]20/4430","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]阿良之乎乃 伊乎佐太波佐美 牟可比多知 可奈流麻之都美 伊O弖登阿我久流","#[訓読]荒し男のいをさ手挟み向ひ立ちかなるましづみ出でてと我が来る","#[仮名],あらしをの,いをさたはさみ,むかひたち,かなるましづみ,いでてとあがくる","#[左注](右八首昔<年>防人歌矣 主典刑部少録正七位上磐余伊美吉諸君抄寫 贈兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月,年紀,防人歌,古歌,伝誦,磐余諸君,序詞,出発,羈旅","#[訓異]
あらしをの[寛],
いをさたはさみ[寛],
むかひたち[寛],
かなるましづみ,[寛]かなるましつみ,
いでてとあがくる,[寛]いててとあかくる,
" "#[番号]20/4431","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]佐左賀波乃 佐也久志毛用尓 奈々弁加流 去呂毛尓麻世流 古侶賀波太波毛","#[訓読]笹が葉のさやぐ霜夜に七重着る衣に増せる子ろが肌はも","#[仮名],ささがはの,さやぐしもよに,ななへかる,ころもにませる,ころがはだはも","#[左注](右八首昔<年>防人歌矣 主典刑部少録正七位上磐余伊美吉諸君抄寫 贈兵部少輔大伴宿祢家持)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年2月,年紀,防人歌,古歌,伝誦,望郷,恋情,磐余諸君","#[訓異]
ささがはの,[寛]ささかはの,
さやぐしもよに,[寛]さやくしもよに,
ななへかる[寛],
ころもにませる[寛],
ころがはだはも,[寛]ころかはたはも,
" "#[番号]20/4432","#[題詞](天平勝寳七歳乙未二月相替遣筑紫諸國防人等歌)","#[原文]佐弁奈弁奴 美許登尓阿礼婆 可奈之伊毛我 多麻久良波奈礼 阿夜尓可奈之毛","#[訓読]障へなへぬ命にあれば愛し妹が手枕離れあやに悲しも","#[仮名],さへなへぬ,みことにあれば,かなしいもが,たまくらはなれ,あやにかなしも","#[左注]右八首昔<年>防人歌矣 主典刑部少録正七位上磐余伊美吉諸君抄寫 贈兵部少輔大伴宿祢家持","#[校異]年 [西(上書訂正)][元][紀][古]","#[事項],天平勝宝7年2月,年紀,防人歌,古歌,伝誦,磐余諸君,悲別,恋情","#[訓異]
さへなへぬ[寛],
みことにあれば,[寛]みことにあれは,
かなしいもが,[寛]かなしいもか,
たまくらはなれ[寛],
あやにかなしも[寛],
" "#[番号]20/4433","#[題詞]三月三日檢校防人 勅使并兵部使人等同集飲宴作歌三首","#[原文]阿佐奈佐奈 安我流比婆理尓 奈里弖之可 美也古尓由伎弖 波夜加弊里許牟","#[訓読]朝な朝な上がるひばりになりてしか都に行きて早帰り来む","#[仮名],あさなさな,あがるひばりに,なりてしか,みやこにゆきて,はやかへりこむ","#[左注]右一首勅使紫微大弼安倍沙<美>麻呂朝臣","#[校異]祢 -> 美 [元][類]","#[事項],天平勝宝7年3月3日,年紀,作者:安倍沙美麻呂,宴席,動物,望郷,防人検校,大阪","#[訓異]
あさなさな[寛],
あがるひばりに,[寛]あかるひはりに,
なりてしか[寛],
みやこにゆきて[寛],
はやかへりこむ[寛],
" "#[番号]20/4434","#[題詞](三月三日檢校防人 勅使并兵部使人等同集飲宴作歌三首)","#[原文]比婆里安我流 波流弊等佐夜尓 奈理奴礼波 美夜古母美要受 可須美多奈妣久","#[訓読]ひばり上がる春へとさやになりぬれば都も見えず霞たなびく","#[仮名],ひばりあがる,はるへとさやに,なりぬれば,みやこもみえず,かすみたなびく","#[左注](右二首兵部使少輔大伴宿祢家持)","#[校異]婆 [元][類] 波","#[事項],天平勝宝7年3月3日,年紀,作者:大伴家持,動物,叙景,宴席,防人検校,大阪","#[訓異]
ひばりあがる,[寛]ひはりあかる,
はるへとさやに[寛],
なりぬれば,[寛]なりぬれは,
みやこもみえず,[寛]みやこもみえす,
かすみたなびく,[寛]かすみたなひく,
" "#[番号]20/4435","#[題詞](三月三日檢校防人 勅使并兵部使人等同集飲宴作歌三首)","#[原文]布敷賣里之 波奈乃波自米尓 許之和礼夜 知里奈牟能知尓 美夜古敝由可無","#[訓読]ふふめりし花の初めに来し我れや散りなむ後に都へ行かむ","#[仮名],ふふめりし,はなのはじめに,こしわれや,ちりなむのちに,みやこへゆかむ","#[左注]右二首兵部使少輔大伴宿祢家持","#[校異]使 [西(朱筆消去)][元][紀]","#[事項],天平勝宝7年3月3日,年紀,作者:大伴家持,望郷,防人検校,宴席,大阪","#[訓異]
ふふめりし[寛],
はなのはじめに,[寛]はなのはしめに,
こしわれや[寛],
ちりなむのちに[寛],
みやこへゆかむ[寛],
" "#[番号]20/4436","#[題詞]昔年相替防人歌一首","#[原文]夜未乃欲能 由久左伎之良受 由久和礼乎 伊都伎麻<佐>牟等 登比之古良波母","#[訓読]闇の夜の行く先知らず行く我れをいつ来まさむと問ひし子らはも","#[仮名],やみのよの,ゆくさきしらず,ゆくわれを,いつきまさむと,とひしこらはも","#[左注](右件四首上総國大<掾>正六位上大原真人今城傳誦云尓 [年月未詳])","#[校異]左 -> 佐 [元][類]","#[事項],防人歌,古歌,伝誦,恋情,出発,大原今城","#[訓異]
やみのよの[寛],
ゆくさきしらず,[寛]ゆくさきしらす,
ゆくわれを,[寛]ゆくわれや,
いつきまさむと[寛],
とひしこらはも[寛],
" "#[番号]20/4437","#[題詞]先太上天皇御製霍公鳥歌一首 [日本根子高瑞日清足姫天皇也]","#[原文]冨等登藝須 奈保毛奈賀那牟 母等都比等 可氣都々母等奈 安乎祢之奈久母","#[訓読]霍公鳥なほも鳴かなむ本つ人かけつつもとな我を音し泣くも","#[仮名],ほととぎす,なほもなかなむ,もとつひと,かけつつもとな,あをねしなくも","#[左注](右件四首上総國大<掾>正六位上大原真人今城傳誦云尓 [年月未詳])","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],作者:元正天皇,古歌,伝誦,大原今城,動物,悲嘆,懐古","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
なほもなかなむ[寛],
もとつひと[寛],
かけつつもとな[寛],
あをねしなくも[寛],
" "#[番号]20/4438","#[題詞]薩妙觀應詔奉和歌一首","#[原文]保等登藝須 許々尓知可久乎 伎奈伎弖余 須疑奈<无>能知尓 之流志安良米夜母","#[訓読]霍公鳥ここに近くを来鳴きてよ過ぎなむ後に験あらめやも","#[仮名],ほととぎす,ここにちかくを,きなきてよ,すぎなむのちに,しるしあらめやも","#[左注](右件四首上総國大<掾>正六位上大原真人今城傳誦云尓 [年月未詳])","#[校異]歌 [西] 謌 / 無 -> 无 [元][類]","#[事項],作者:薩妙觀,古歌,伝誦,動物,大原今城,応詔","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
ここにちかくを[寛],
きなきてよ[寛],
すぎなむのちに,[寛]すきなむのちに,
しるしあらめやも[寛],
" "#[番号]20/4439","#[題詞]冬日幸于靱負御井之時内命婦石川朝臣應詔賦雪歌一首 [諱曰邑婆]","#[原文]麻都我延乃 都知尓都久麻O 布流由伎乎 美受弖也伊毛我 許母里乎流良牟","#[訓読]松が枝の土に着くまで降る雪を見ずてや妹が隠り居るらむ","#[仮名],まつがえの,つちにつくまで,ふるゆきを,みずてやいもが,こもりをるらむ","#[左注]于時水主内親王寝膳不安累日不参 因以此日太上天皇勅侍嬬等曰 為遣水主内親王賦雪作歌奉獻者 於是諸命婦等不堪作歌而此石川命婦 獨此歌奏之 / 右件四首上総國大<掾>正六位上大原真人今城傳誦云尓 [年月未詳]","#[校異]様 -> 掾 [西(朱訂正右書)][元][紀][細]","#[事項],作者:石川郎女,古歌,伝誦,宮廷,応詔,水主内親王,見舞い,元正天皇","#[訓異]
まつがえの,[寛]まつかえの,
つちにつくまで,[寛]つちにつくまて,
ふるゆきを[寛],
みずてやいもが,[寛]みすてやいもか,
こもりをるらむ[寛],
" "#[番号]20/4440","#[題詞]上総國朝集使大<掾>大原真人今城向京之時郡司妻女等餞之歌二首","#[原文]安之我良乃 夜敝也麻故要弖 伊麻之奈波 多礼乎可伎美等 弥都々志努波牟","#[訓読]足柄の八重山越えていましなば誰れをか君と見つつ偲はむ","#[仮名],あしがらの,やへやまこえて,いましなば,たれをかきみと,みつつしのはむ","#[左注]","#[校異]様 -> 掾 [元][類][紀]","#[事項],作者:上総国郡司妻,大原今城,羈旅,出発,千葉,地名,恋情,餞別","#[訓異]
あしがらの,[寛]あしからの,
やへやまこえて[寛],
いましなば,[寛]いましなは,
たれをかきみと[寛],
みつつしのはむ[寛],
" "#[番号]20/4441","#[題詞](上総國朝集使大<掾>大原真人今城向京之時郡司妻女等餞之歌二首)","#[原文]多知之奈布 伎美我須我多乎 和須礼受波 与能可藝里尓夜 故非和多里奈無","#[訓読]立ちしなふ君が姿を忘れずは世の限りにや恋ひわたりなむ","#[仮名],たちしなふ,きみがすがたを,わすれずは,よのかぎりにや,こひわたりなむ","#[左注]","#[校異]","#[事項],作者:上総国郡司妻,大原今城,羈旅,出発,千葉,恋情,餞別","#[訓異]
たちしなふ[寛],
きみがすがたを,[寛]きみかすかたを,
わすれずは,[寛]わすれすは,
よのかぎりにや,[寛]よのかきりにや,
こひわたりなむ[寛],
" "#[番号]20/4442","#[題詞]五月九日兵部少輔大伴宿祢家持之宅集宴<歌>四首","#[原文]和我勢故我 夜度乃奈弖之故 比奈良倍弖 安米波布礼杼母 伊呂毛可波良受","#[訓読]我が背子が宿のなでしこ日並べて雨は降れども色も変らず","#[仮名],わがせこが,やどのなでしこ,ひならべて,あめはふれども,いろもかはらず","#[左注]右一首大原真人今城","#[校異]<> -> 歌 [元][細][温]","#[事項],天平勝宝7年5月9日,年紀,作者:大原今城,宴席,植物,大伴家持,主人讃美","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
やどのなでしこ,[寛]やとのなてしこ,
ひならべて,[寛]ひならへて,
あめはふれども,[寛]あめはふれとも,
いろもかはらず,[寛]いろもかはらす,
" "#[番号]20/4443","#[題詞](五月九日兵部少輔大伴宿祢家持之宅集宴<歌>四首)","#[原文]比佐可多<能> 安米波布里之久 奈弖之故我 伊夜波都波奈尓 故非之伎和我勢","#[訓読]ひさかたの雨は降りしくなでしこがいや初花に恋しき我が背","#[仮名],ひさかたの,あめはふりしく,なでしこが,いやはつはなに,こひしきわがせ","#[左注]右一首大伴宿祢家持","#[校異]乃 -> 能 [元][類]","#[事項],天平勝宝7年5月9日,年紀,作者:大伴家持,植物,大原今城,客讃美,宴席,枕詞,恋情","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あめはふりしく[寛],
なでしこが,[寛]なてしこか,
いやはつはなに[寛],
こひしきわがせ,[寛]こひしきわかせ,
" "#[番号]20/4444","#[題詞](五月九日兵部少輔大伴宿祢家持之宅集宴<歌>四首)","#[原文]和我世故我 夜度奈流波疑乃 波奈佐可牟 安伎能由布敝波 和礼乎之努波世","#[訓読]我が背子が宿なる萩の花咲かむ秋の夕は我れを偲はせ","#[仮名],わがせこが,やどなるはぎの,はなさかむ,あきのゆふへは,われをしのはせ","#[左注]右一首大原真人今城","#[校異]敝 [元][細] 弊","#[事項],天平勝宝7年5月9日,年紀,作者:大原今城,植物,大伴家持,惜別,恋情","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
やどなるはぎの,[寛]やとなるはきの,
はなさかむ[寛],
あきのゆふへは[寛],
われをしのはせ[寛],
" "#[番号]20/4445","#[題詞]即聞鴬哢作歌一首","#[原文]宇具比須乃 許恵波須疑奴等 於毛倍杼母 之美尓之許己呂 奈保古非尓家里","#[訓読]鴬の声は過ぎぬと思へどもしみにし心なほ恋ひにけり","#[仮名],うぐひすの,こゑはすぎぬと,おもへども,しみにしこころ,なほこひにけり","#[左注]右一首大伴宿祢家持","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年5月9日,年紀,作者:大伴家持,動物,宴席,恋情,大原今城","#[訓異]
うぐひすの,[寛]うくひすの,
こゑはすぎぬと,[寛]こゑはすきぬと,
おもへども,[寛]おもへとも,
しみにしこころ[寛],
なほこひにけり[寛],
" "#[番号]20/4446","#[題詞]同月十一日左大臣橘卿宴右大辨丹比國人真人之宅歌三首","#[原文]和我夜度尓 佐家流奈弖之故 麻比波勢牟 由米波奈知流奈 伊也乎知尓左家","#[訓読]我が宿に咲けるなでしこ賄はせむゆめ花散るないやをちに咲け","#[仮名],わがやどに,さけるなでしこ,まひはせむ,ゆめはなちるな,いやをちにさけ","#[左注]右一首丹比國人真人壽左大臣歌","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年5月11日,年紀,作者:丹比国人,橘諸兄,植物,宴席,客讃美,寿歌","#[訓異]
わがやどに,[寛]わかやとに,
さけるなでしこ,[寛]さけるなてしこ,
まひはせむ[寛],
ゆめはなちるな[寛],
いやをちにさけ[寛],
" "#[番号]20/4447","#[題詞](同月十一日左大臣橘卿宴右大辨丹比國人真人之宅歌三首)","#[原文]麻比之都々 伎美我於保世流 奈弖之故我 波奈乃未等波無 伎美奈良奈久尓","#[訓読]賄しつつ君が生ほせるなでしこが花のみ問はむ君ならなくに","#[仮名],まひしつつ,きみがおほせる,なでしこが,はなのみとはむ,きみならなくに","#[左注]右一首左大臣和歌","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],天平勝宝7年5月11日,年紀,作者:橘諸兄,丹比国人,宴席,戯笑,愛情","#[訓異]
まひしつつ[寛],
きみがおほせる,[寛]きみかおほせる,
なでしこが,[寛]なてしこか,
はなのみとはむ[寛],
きみならなくに[寛],
" "#[番号]20/4448","#[題詞](同月十一日左大臣橘卿宴右大辨丹比國人真人之宅歌三首)","#[原文]安治佐為能 夜敝佐久其等久 夜都与尓乎 伊麻世和我勢故 美都々思努波牟","#[訓読]あぢさゐの八重咲くごとく八つ代にをいませ我が背子見つつ偲はむ","#[仮名],あぢさゐの,やへさくごとく,やつよにを,いませわがせこ,みつつしのはむ","#[左注]右一首左大臣寄味狭藍花詠也","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年5月11日,年紀,作者:橘諸兄,寿歌,丹比国人,宴席,植物","#[訓異]
あぢさゐの,[寛]あちさゐの,
やへさくごとく,[寛]やへさくことく,
やつよにを[寛],
いませわがせこ,[寛]いませわかせこ,
みつつしのはむ[寛],
" "#[番号]20/4449","#[題詞]十八日左大臣<宴>於兵部卿橘奈良麻呂朝臣之宅歌三首","#[原文]奈弖之故我 波奈等里母知弖 宇都良々々々 美麻久能富之伎 吉美尓母安流加母","#[訓読]なでしこが花取り持ちてうつらうつら見まくの欲しき君にもあるかも","#[仮名],なでしこが,はなとりもちて,うつらうつら,みまくのほしき,きみにもあるかも","#[左注]右一首治部卿船王","#[校異]<> -> 宴 [西(右書)][元][紀][細] / 歌 [西] 謌","#[事項],天平勝宝7年5月18日,年紀,作者:船王,宴席,植物,主人讃美,恋愛,橘奈良麻呂","#[訓異]
なでしこが,[寛]なてしこか,
はなとりもちて[寛],
うつらうつら[寛],
みまくのほしき[寛],
きみにもあるかも[寛],
" "#[番号]20/4450","#[題詞](十八日左大臣<宴>於兵部卿橘奈良麻呂朝臣之宅歌三首)","#[原文]和我勢故我 夜度能奈弖之故 知良米也母 伊夜波都波奈尓 佐伎波麻須等母","#[訓読]我が背子が宿のなでしこ散らめやもいや初花に咲きは増すとも","#[仮名],わがせこが,やどのなでしこ,ちらめやも,いやはつはなに,さきはますとも","#[左注](右二首兵部少輔大伴宿祢家持追作)","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年5月18日,年紀,作者:大伴家持,植物,寿歌,宴席,主人讃美,橘奈良麻呂","#[訓異]
わがせこが,[寛]わかせこか,
やどのなでしこ,[寛]やとのなてしこ,
ちらめやも[寛],
いやはつはなに[寛],
さきはますとも[寛],
" "#[番号]20/4451","#[題詞](十八日左大臣<宴>於兵部卿橘奈良麻呂朝臣之宅歌三首)","#[原文]宇流波之美 安我毛布伎美波 奈弖之故我 波奈尓奈<蘇>倍弖 美礼杼安可奴香母","#[訓読]うるはしみ我が思ふ君はなでしこが花になそへて見れど飽かぬかも","#[仮名],うるはしみ,あがもふきみは,なでしこが,はなになそへて,みれどあかぬかも","#[左注]右二首兵部少輔大伴宿祢家持追作","#[校異]曽 -> 蘇 [元][類]","#[事項],天平勝宝7年5月18日,年紀,作者:大伴家持,主人讃美,宴席,寿歌,植物,橘奈良麻呂","#[訓異]
うるはしみ[寛],
あがもふきみは,[寛]あかもふきみは,
なでしこが,[寛]なてしこか,
はなになそへて[寛],
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]20/4452","#[題詞]八月十三日在内南安殿肆宴歌二首","#[原文]乎等賣良我 多麻毛須蘇婢久 許能尓波尓 安伎可是不吉弖 波奈波知里都々","#[訓読]娘子らが玉裳裾引くこの庭に秋風吹きて花は散りつつ","#[仮名],をとめらが,たまもすそびく,このにはに,あきかぜふきて,はなはちりつつ","#[左注]右一首内匠頭兼播磨守正四位下安宿王奏之","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年8月13日,年紀,作者:安宿王,肆宴,宮廷,宴席,叙景","#[訓異]
をとめらが,[寛]をとめらか,
たまもすそびく,[寛]たまもすそひく,
このにはに[寛],
あきかぜふきて,[寛]あきかせふきて,
はなはちりつつ[寛],
" "#[番号]20/4453","#[題詞](八月十三日在内南安殿肆宴歌二首)","#[原文]安吉加是能 布伎古吉之家流 波奈能尓波 伎欲伎都久欲仁 美礼杼安賀奴香母","#[訓読]秋風の吹き扱き敷ける花の庭清き月夜に見れど飽かぬかも","#[仮名],あきかぜの,ふきこきしける,はなのには,きよきつくよに,みれどあかぬかも","#[左注]右一首兵部少輔従五位上大伴宿祢<家持> [未奏]","#[校異]<> -> 家持 [西(右書)][元][紀][細]","#[事項],天平勝宝7年8月13日,年紀,作者:大伴家持,未奏,叙景,宮廷,肆宴","#[訓異]
あきかぜの,[寛]あきかせの,
ふきこきしける[寛],
はなのには[寛],
きよきつくよに[寛],
みれどあかぬかも,[寛]みれとあかぬかも,
" "#[番号]20/4454","#[題詞]十一月廿八日左大臣集於兵部卿橘奈良麻呂朝臣宅宴歌一首","#[原文]高山乃 伊波保尓於布流 須我乃根能 祢母許呂其呂尓 布里於久白雪","#[訓読]高山の巌に生ふる菅の根のねもころごろに降り置く白雪","#[仮名],たかやまの,いはほにおふる,すがのねの,ねもころごろに,ふりおくしらゆき","#[左注]右一首左大臣作","#[校異]","#[事項],天平勝宝7年11月28日,年紀,作者:橘諸兄,植物,橘奈良麻呂,寿歌","#[訓異]
たかやまの[寛],
いはほにおふる[寛],
すがのねの,[寛]すかのねの,
ねもころごろに,[寛]ねもここころに,
ふりおくしらゆき[寛],
" "#[番号]20/4455","#[題詞]天平元年班田之時使葛城王従山背國贈薩妙觀命婦等所歌一首[副芹子L]","#[原文]安可祢<左>須 比流波多々婢弖 奴婆多麻乃 欲流乃伊刀末仁 都賣流芹子許礼","#[訓読]あかねさす昼は田賜びてぬばたまの夜のいとまに摘める芹これ","#[仮名],あかねさす,ひるはたたびて,ぬばたまの,よるのいとまに,つめるせりこれ","#[左注](右二首左大臣讀之云尓 [左大臣是葛城王 後賜橘姓也])","#[校異]佐 -> 左 [元][類]","#[事項],天平1年,年紀,作者:橘諸兄:葛城王,薩妙觀,贈答,枕詞,植物","#[訓異]
あかねさす[寛],
ひるはたたびて,[寛]ひるはたたひて,
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
よるのいとまに[寛],
つめるせりこれ[寛],
" "#[番号]20/4456","#[題詞](天平元年班田之時使葛城王従山背國贈薩妙觀命婦等所歌一首[副芹子L])薩妙觀命婦報贈歌一首","#[原文]麻須良乎等 於毛敝流母能乎 多知波吉弖 可尓波乃多為尓 世理曽都美家流","#[訓読]大夫と思へるものを太刀佩きて可尓波の田居に芹ぞ摘みける","#[仮名],ますらをと,おもへるものを,たちはきて,かにはのたゐに,せりぞつみける","#[左注]右二首左大臣讀之云尓 [左大臣是葛城王 後賜橘姓也]","#[校異]","#[事項],天平1年,年紀,作者:薩妙觀,橘諸兄,葛城王,贈答,植物,戯笑","#[訓異]
ますらをと[寛],
おもへるものを[寛],
たちはきて[寛],
かにはのたゐに[寛],
せりぞつみける,[寛]せりそつみける,
" "#[番号]20/4457","#[題詞]天平勝寶八歳丙申二月朔乙酉廿四日戊申 太上天皇<大>后幸行於河内離宮 經信以壬子傳幸於難波宮也 三月七日於河内國伎人郷馬國人之家宴歌三首","#[原文]須美乃江能 波麻末都我根乃 之多<婆>倍弖 和我見流乎努能 久佐奈加利曽祢","#[訓読]住吉の浜松が根の下延へて我が見る小野の草な刈りそね","#[仮名],すみのえの,はままつがねの,したはへて,わがみるをのの,くさなかりそね","#[左注]右一首兵部少輔大伴宿祢家持","#[校異]太皇太 -> 大 [元][温] / 波 -> 婆 [元][類][古]","#[事項],天平勝宝8年2月24日,年紀,作者:大伴家持,宴席,地名,大阪,難波,植物,恋愛,主人讃美,馬国人","#[訓異]
すみのえの[寛],
はままつがねの,[寛]はままつかねの,
したはへて[寛],
わがみるをのの,[寛]わかみるをのの,
くさなかりそね[寛],
" "#[番号]20/4458","#[題詞](天平勝寶八歳丙申二月朔乙酉廿四日戊申 太上天皇<大>后幸行於河内離宮 經信以壬子傳幸於難波宮也 三月七日於河内國伎人郷馬國人之家宴歌三首)","#[原文]尓保杼里乃 於吉奈我河波半 多延奴等母 伎美尓可多良武 己等都奇米也母 [古新未詳]","#[訓読]にほ鳥の息長川は絶えぬとも君に語らむ言尽きめやも [古新未詳]","#[仮名],にほどりの,おきながかはは,たえぬとも,きみにかたらむ,ことつきめやも","#[左注]右一首主人散位寮散位馬史國人","#[校異]","#[事項],天平勝宝8年2月24日,年紀,作者:馬国人,枕詞,宴席,伝誦,古歌,地名,近江,志賀,大阪,難波","#[訓異]
にほどりの,[寛]にほとりの,
おきながかはは,[寛]おきなかかはは,
たえぬとも[寛],
きみにかたらむ[寛],
ことつきめやも[寛],
" "#[番号]20/4459","#[題詞](天平勝寶八歳丙申二月朔乙酉廿四日戊申 太上天皇<大>后幸行於河内離宮 經信以壬子傳幸於難波宮也 三月七日於河内國伎人郷馬國人之家宴歌三首)","#[原文]蘆苅尓 保<里>江許具奈流 可治能於等波 於保美也比等能 未奈伎久麻泥尓","#[訓読]葦刈りに堀江漕ぐなる楫の音は大宮人の皆聞くまでに","#[仮名],あしかりに,ほりえこぐなる,かぢのおとは,おほみやひとの,みなきくまでに","#[左注]右一首式部少丞大伴宿祢池主讀之 即兵部大丞大原真人今城 先日他所讀歌者也","#[校異]利 -> 里 [元][類]","#[事項],天平勝宝8年2月24日,年紀,作者:大伴池主,地名,難波,大阪,宴席,馬国人","#[訓異]
あしかりに[寛],
ほりえこぐなる,[寛]ほりえこくなる,
かぢのおとは,[寛]かちのおとは,
おほみやひとの[寛],
みなきくまでに,[寛]みなきくまてに,
" "#[番号]20/4460","#[題詞]","#[原文]保利江己具 伊豆手乃船乃 可治都久米 於等之婆多知奴 美乎波也美加母","#[訓読]堀江漕ぐ伊豆手の舟の楫つくめ音しば立ちぬ水脈早みかも","#[仮名],ほりえこぐ,いづてのふねの,かぢつくめ,おとしばたちぬ,みをはやみかも","#[左注](右三首江邊作之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝8年2月24日,年紀,作者:大伴家持,行幸,地名,難波,大阪,叙景","#[訓異]
ほりえこぐ,[寛]ほりえこく,
いづてのふねの,[寛]いつてのふねの,
かぢつくめ,[寛]かちつくめ,
おとしばたちぬ,[寛]おとしはたちぬ,
みをはやみかも[寛],
" "#[番号]20/4461","#[題詞]","#[原文]保里江欲利 美乎左<香>能保流 <梶>音乃 麻奈久曽奈良波 古非之可利家留","#[訓読]堀江より水脈さかのぼる楫の音の間なくぞ奈良は恋しかりける","#[仮名],ほりえより,みをさかのぼる,かぢのおとの,まなくぞならは,こひしかりける","#[左注](右三首江邊作之)","#[校異]可 -> 香 [元][類][古] / 梶乃 -> 梶 [元][類][古]","#[事項],天平勝宝8年2月24日,年紀,作者:大伴家持,行幸,望郷,地名,奈良,序詞,難波,大阪","#[訓異]
ほりえより[寛],
みをさかのぼる,[寛]みをさかのほる,
かぢのおとの,[寛]かちのおとの,
まなくぞならは,[寛]まなくそならは,
こひしかりける[寛],
" "#[番号]20/4462","#[題詞]","#[原文]布奈藝保布 保利江乃可波乃 美奈伎波尓 伎為都々奈久波 美夜故杼里香蒙","#[訓読]舟競ふ堀江の川の水際に来居つつ鳴くは都鳥かも","#[仮名],ふなぎほふ,ほりえのかはの,みなきはに,きゐつつなくは,みやこどりかも","#[左注]右三首江邊作之","#[校異]","#[事項],天平勝宝8年2月24日,年紀,作者:大伴家持,動物,地名,大阪,難波,叙景","#[訓異]
ふなぎほふ,[寛]ふなきほふ,
ほりえのかはの[寛],
みなきはに[寛],
きゐつつなくは[寛],
みやこどりかも,[寛]みやことりかも,
" "#[番号]20/4463","#[題詞]","#[原文]保等登藝須 麻豆奈久安佐氣 伊可尓世婆 和我加度須疑自 可多利都具麻O","#[訓読]霍公鳥まづ鳴く朝明いかにせば我が門過ぎじ語り継ぐまで","#[仮名],ほととぎす,まづなくあさけ,いかにせば,わがかどすぎじ,かたりつぐまで","#[左注](右二首廿日大伴宿祢家持依興作之)","#[校異]","#[事項],天平勝宝8年3月20日,年紀,作者:大伴家持,動物,依興","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
まづなくあさけ,[寛]まつなくあさけ,
いかにせば,[寛]いかにせは,
わがかどすぎじ,[寛]わかかとすきし,
かたりつぐまで,[寛]かたりつくまて,
" "#[番号]20/4464","#[題詞]","#[原文]保等登藝須 可氣都々伎美我 麻都可氣尓 比毛等伎佐久流 都奇知可都伎奴","#[訓読]霍公鳥懸けつつ君が松蔭に紐解き放くる月近づきぬ","#[仮名],ほととぎす,かけつつきみが,まつかげに,ひもときさくる,つきちかづきぬ","#[左注]右二首廿日大伴宿祢家持依興作之","#[校異]","#[事項],天平勝宝8年3月20日,年紀,作者:大伴家持,動物,依興","#[訓異]
ほととぎす,[寛]ほとときす,
かけつつきみが,[寛]かけつつきみか,
まつかげに,[寛]まつかけに,
ひもときさくる[寛],
つきちかづきぬ,[寛]つきちかつきぬ,
" "#[番号]20/4465","#[題詞]喩族歌一首[并短歌]","#[原文]比左加多能 安麻能刀比良伎 多可知保乃 多氣尓阿毛理之 須賣呂伎能 可未能御代欲利 波自由美乎 多尓藝利母多之 麻可胡也乎 多婆左美蘇倍弖 於保久米能 麻須良多祁乎々 佐吉尓多弖 由伎登利於保世 山河乎 伊波祢左久美弖 布美等保利 久尓麻藝之都々 知波夜夫流 神乎許等牟氣 麻都呂倍奴 比等乎母夜波之 波吉伎欲米 都可倍麻都里弖 安吉豆之萬 夜萬登能久尓乃 可之<波>良能 宇祢備乃宮尓 美也<婆>之良 布刀之利多弖C 安米能之多 之良志賣之祁流 須賣呂伎能 安麻能日継等 都藝弖久流 伎美能御代々々 加久左波奴 安加吉許己呂乎 須賣良弊尓 伎波米都久之弖 都加倍久流 於夜能都可佐等 許等太弖C 佐豆氣多麻敝流 宇美乃古能 伊也都藝都岐尓 美流比等乃 可多里都藝弖C 伎久比等能 可我見尓世武乎 安多良之伎 吉用伎曽乃名曽 於煩呂加尓 己許呂於母比弖 牟奈許等母 於夜乃名多都奈 大伴乃 宇治等名尓於敝流 麻須良乎能等母 ","#[訓読]久方の 天の門開き 高千穂の 岳に天降りし 皇祖の 神の御代より はじ弓を 手握り持たし 真鹿子矢を 手挟み添へて 大久米の ますらたけをを 先に立て 靫取り負ほせ 山川を 岩根さくみて 踏み通り 国求ぎしつつ ちはやぶる 神を言向け まつろはぬ 人をも和し 掃き清め 仕へまつりて 蜻蛉島 大和の国の 橿原の 畝傍の宮に 宮柱 太知り立てて 天の下 知らしめしける 天皇の 天の日継と 継ぎてくる 君の御代御代 隠さはぬ 明き心を すめらへに 極め尽して 仕へくる 祖の官と 言立てて 授けたまへる 子孫の いや継ぎ継ぎに 見る人の 語り継ぎてて 聞く人の 鏡にせむを 惜しき 清きその名ぞ おぼろかに 心思ひて 空言も 祖の名絶つな 大伴の 氏と名に負へる 大夫の伴 ","#[仮名],ひさかたの,あまのとひらき,たかちほの,たけにあもりし,すめろきの,かみのみよより,はじゆみを,たにぎりもたし,まかごやを,たばさみそへて,おほくめの,ますらたけをを,さきにたて,ゆきとりおほせ,やまかはを,いはねさくみて,ふみとほり,くにまぎしつつ,ちはやぶる,かみをことむけ,まつろはぬ,ひとをもやはし,はききよめ,つかへまつりて,あきづしま,やまとのくにの,かしはらの,うねびのみやに,みやばしら,ふとしりたてて,あめのした,しらしめしける,すめろきの,あまのひつぎと,つぎてくる,きみのみよみよ,かくさはぬ,あかきこころを,すめらへに,きはめつくして,つかへくる,おやのつかさと,ことだてて,さづけたまへる,うみのこの,いやつぎつぎに,みるひとの,かたりつぎてて,きくひとの,かがみにせむを,あたらしき,きよきそのなぞ,おぼろかに,こころおもひて,むなことも,おやのなたつな,おほともの,うぢとなにおへる,ますらをのとも","#[左注](右縁淡海真人三船讒言出雲守大伴古慈斐宿祢解任 是以家持作此歌也)(以前歌六首六月十七日大伴宿祢家持作)","#[校異]短歌 [西] 短謌 / 婆 -> 波 [元] / 波 -> 婆 [元][紀][細] / 左 [紀][細] 佐","#[事項],天平勝宝8年6月17日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,氏族意識,大伴古慈悲,説教,淡海三船","#[訓異]
ひさかたの[寛],
あまのとひらき[寛],
たかちほの[寛],
たけにあもりし[寛],
すめろきの[寛],
かみのみよより[寛],
はじゆみを,[寛]はしゆみを,
たにぎりもたし,[寛]たにきりもたし,
まかごやを,[寛]まかこやを,
たばさみそへて,[寛]たはさみそへて,
おほくめの[寛],
ますらたけをを[寛],
さきにたて[寛],
ゆきとりおほせ[寛],
やまかはを[寛],
いはねさくみて[寛],
ふみとほり[寛],
くにまぎしつつ,[寛]くにまきしつつ,
ちはやぶる,[寛]ちはやふる,
かみをことむけ[寛],
まつろはぬ,[寛]まつらへぬ,
ひとをもやはし,[寛]ひとをもよはし,
はききよめ[寛],
つかへまつりて[寛],
あきづしま,[寛]あきつしま,
やまとのくにの[寛],
かしはらの[寛],
うねびのみやに,[寛]うねひのみやに,
みやばしら,[寛]みやはしら,
ふとしりたてて[寛],
あめのした[寛],
しらしめしける[寛],
すめろきの[寛],
あまのひつぎと,[寛]あまのひつきと,
つぎてくる,[寛]つきてくる,
きみのみよみよ[寛],
かくさはぬ[寛],
あかきこころを[寛],
すめらへに[寛],
きはめつくして[寛],
つかへくる[寛],
おやのつかさと[寛],
ことだてて,[寛]ことたてて,
さづけたまへる,[寛]さつけたまへる,
うみのこの[寛],
いやつぎつぎに,[寛]いやつきつきに,
みるひとの[寛],
かたりつぎてて,[寛]かたりつきてて,
きくひとの[寛],
かがみにせむを,[寛]かかみにせむを,
あたらしき[寛],
きよきそのなぞ,[寛]きよきそのなそ,
おぼろかに,[寛]おほろかに,
こころおもひて[寛],
むなことも[寛],
おやのなたつな[寛],
おほともの[寛],
うぢとなにおへる,[寛]うちとなにおへる,
ますらをのとも[寛],
" "#[番号]20/4466","#[題詞](喩族歌一首[并短歌])","#[原文]之奇志麻乃 夜末等能久尓々 安伎良氣伎 名尓於布等毛能乎 己許呂都刀米与","#[訓読]磯城島の大和の国に明らけき名に負ふ伴の男心つとめよ","#[仮名],しきしまの,やまとのくにに,あきらけき,なにおふとものを,こころつとめよ","#[左注](右縁淡海真人三船讒言出雲守大伴古慈斐宿祢解任 是以家持作此歌也)(以前歌六首六月十七日大伴宿祢家持作)","#[校異]","#[事項],天平勝宝8年6月17日,年紀,作者:大伴家持,氏族意識,枕詞,説教,大伴古慈悲,淡海三船","#[訓異]
しきしまの[寛],
やまとのくにに[寛],
あきらけき,[寛]あきらけく,
なにおふとものを[寛],
こころつとめよ[寛],
" "#[番号]20/4467","#[題詞](喩族歌一首[并短歌])","#[原文]都流藝多知 伊与餘刀具倍之 伊尓之敝由 佐夜氣久於比弖 伎尓之曽乃名曽","#[訓読]剣太刀いよよ磨ぐべし古ゆさやけく負ひて来にしその名ぞ","#[仮名],つるぎたち,いよよとぐべし,いにしへゆ,さやけくおひて,きにしそのなぞ","#[左注]右縁淡海真人三船讒言出雲守大伴古慈斐宿祢解任 是以家持作此歌也 (以前歌六首六月十七日大伴宿祢家持作)","#[校異]","#[事項],天平勝宝8年6月17日,年紀,作者:大伴家持,氏族意識,説教,大伴古慈悲,淡海三船","#[訓異]
つるぎたち,[寛]つるきたち,
いよよとぐべし,[寛]いよよとくへし,
いにしへゆ[寛],
さやけくおひて[寛],
きにしそのなぞ,[寛]きにしそのなそ,
" "#[番号]20/4468","#[題詞]臥病悲無常欲修道作歌二首","#[原文]宇都世美波 加受奈吉身奈利 夜麻加波乃 佐夜氣吉見都々 美知乎多豆祢奈","#[訓読]うつせみは数なき身なり山川のさやけき見つつ道を尋ねな","#[仮名],うつせみは,かずなきみなり,やまかはの,さやけきみつつ,みちをたづねな","#[左注](以前歌六首六月十七日大伴宿祢家持作)","#[校異]","#[事項],天平勝宝8年6月17日,年紀,作者:大伴家持,無常,仏教,求道","#[訓異]
うつせみは[寛],
かずなきみなり,[寛]かすなきみなり,
やまかはの[寛],
さやけきみつつ[寛],
みちをたづねな,[寛]みちをたつねな,
" "#[番号]20/4469","#[題詞](臥病悲無常欲修道作歌二首)","#[原文]和多流日能 加氣尓伎保比弖 多豆祢弖奈 伎欲吉曽能美知 末多母安波無多米","#[訓読]渡る日の影に競ひて尋ねてな清きその道またもあはむため","#[仮名],わたるひの,かげにきほひて,たづねてな,きよきそのみち,またもあはむため","#[左注](以前歌六首六月十七日大伴宿祢家持作)","#[校異]","#[事項],天平勝宝8年6月17日,年紀,作者:大伴家持,無常,仏教,求道","#[訓異]
わたるひの[寛],
かげにきほひて,[寛]かけにきほひて,
たづねてな,[寛]たつねてな,
きよきそのみち[寛],
またもあはむため[寛],
" "#[番号]20/4470","#[題詞]願壽作歌一首","#[原文]美都煩奈須 可礼流身曽等波 之礼々杼母 奈保之祢我比都 知等世能伊乃知乎","#[訓読]水泡なす仮れる身ぞとは知れれどもなほし願ひつ千年の命を","#[仮名],みつぼなす,かれるみぞとは,しれれども,なほしねがひつ,ちとせのいのちを","#[左注]以前歌六首六月十七日大伴宿祢家持作","#[校異]","#[事項],天平勝宝8年6月17日,年紀,作者:大伴家持,無常,仏教,求道,寿歌","#[訓異]
みつぼなす,[寛]みつほなす,
かれるみぞとは,[寛]かれるみそとは,
しれれども,[寛]しれれとも,
なほしねがひつ,[寛]なほしねかひつ,
ちとせのいのちを[寛],
" "#[番号]20/4471","#[題詞]冬十一月五日夜小雷起鳴雪落覆庭忽懐<感>憐聊作短歌一首","#[原文]氣能己里能 由伎尓安倍弖流 安之比奇<乃> 夜麻多知波奈乎 都刀尓通弥許奈","#[訓読]消残りの雪にあへ照るあしひきの山橘をつとに摘み来な","#[仮名],けのこりの,ゆきにあへてる,あしひきの,やまたちばなを,つとにつみこな","#[左注]右一首兵部少輔大伴宿祢家持","#[校異]盛 -> 感 [西(朱訂正)][元][紀][細] / 之 -> 乃 [元][類] / 波 [元] 婆","#[事項],天平勝宝8年11月5日,年紀,作者:大伴家持,植物","#[訓異]
けのこりの[寛],
ゆきにあへてる[寛],
あしひきの[寛],
やまたちばなを,[寛]やまたちはなを,
つとにつみこな,[寛]つとにつにこな,
" "#[番号]20/4472","#[題詞]八日讃岐守安宿王等集於出雲掾安宿奈杼麻呂之家宴歌二首","#[原文]於保吉美乃 美許登加之古美 於保乃宇良乎 曽我比尓美都々 美也古敝能保流","#[訓読]大君の命畏み於保の浦をそがひに見つつ都へ上る","#[仮名],おほきみの,みことかしこみ,おほのうらを,そがひにみつつ,みやこへのぼる","#[左注]右掾安宿奈杼麻呂","#[校異]","#[事項],天平勝宝8年11月8日,年紀,作者:安宿奈杼麻呂,宴席,出発,安宿王,地名,島根,意宇浦,羈旅,餞別","#[訓異]
おほきみの[寛],
みことかしこみ[寛],
おほのうらを[寛],
そがひにみつつ,[寛]そかひにみつつ,
みやこへのぼる,[寛]みやこへのほる,
" "#[番号]20/4473","#[題詞](八日讃岐守安宿王等集於出雲掾安宿奈杼麻呂之家宴歌二首)","#[原文]宇知比左須 美也古乃比等尓 都氣麻久波 美之比乃其等久 安里等都氣己曽","#[訓読]うちひさす都の人に告げまくは見し日のごとくありと告げこそ","#[仮名],うちひさす,みやこのひとに,つげまくは,みしひのごとく,ありとつげこそ","#[左注]右一首守山背王歌也 主人安宿奈杼麻呂語云 奈杼麻呂被差朝集使擬入京師 因此餞之日各<作>歌聊陳所心也","#[校異]作此 -> 作 [元]","#[事項],天平勝宝8年11月8日,年紀,作者:山背王,安宿王,安宿奈杼麻呂,宴席,出発,羈旅,餞別,島根","#[訓異]
うちひさす[寛],
みやこのひとに[寛],
つげまくは,[寛]つけまくは,
みしひのごとく,[寛]みしひのことく,
ありとつげこそ,[寛]ありとつけこそ,
" "#[番号]20/4474","#[題詞]","#[原文]武良等里乃 安佐太知伊尓之 伎美我宇倍波 左夜加尓伎吉都 於毛比之其等久 [一云 於毛比之母乃乎] ","#[訓読]群鳥の朝立ち去にし君が上はさやかに聞きつ思ひしごとく [一云 思ひしものを] ","#[仮名],むらどりの,あさだちいにし,きみがうへは,さやかにききつ,おもひしごとく,[おもひしものを]","#[左注]右一首兵部少輔大伴宿祢家持後日追和出雲守山背王歌作之","#[校異]","#[事項],天平勝宝8年11月8日,年紀,作者:大伴家持,追和,山背王,推敲","#[訓異]
むらどりの,[寛]むらとりの,
あさだちいにし,[寛]あさたちいにし,
きみがうへは,[寛]きみかうへは,
さやかにききつ[寛],
おもひしごとく,[寛]おもひしことく,
[おもひしものを][寛],
" "#[番号]20/4475","#[題詞]廿三日集於式部少丞大伴宿祢池主之宅飲宴歌二首","#[原文]波都由伎波 知敝尓布里之家 故非之久能 於保加流和礼波 美都々之努波牟","#[訓読]初雪は千重に降りしけ恋ひしくの多かる我れは見つつ偲はむ","#[仮名],はつゆきは,ちへにふりしけ,こひしくの,おほかるわれは,みつつしのはむ","#[左注](右二首兵部大丞大原真人今城)","#[校異]","#[事項],天平勝宝8年11月23日,年紀,作者:大原今城,宴席,大伴池主,恋情","#[訓異]
はつゆきは[寛],
ちへにふりしけ[寛],
こひしくの[寛],
おほかるわれは[寛],
みつつしのはむ[寛],
" "#[番号]20/4476","#[題詞](廿三日集於式部少丞大伴宿祢池主之宅飲宴歌二首)","#[原文]於久夜麻能 之伎美我波奈能 奈能其等也 之久之久伎美尓 故非和多利奈無","#[訓読]奥山のしきみが花の名のごとやしくしく君に恋ひわたりなむ","#[仮名],おくやまの,しきみがはなの,なのごとや,しくしくきみに,こひわたりなむ","#[左注]右二首兵部大丞大原真人今城","#[校異]","#[事項],天平勝宝8年11月23日,年紀,作者:大原今城,植物,大伴池主,宴席,恋情","#[訓異]
おくやまの[寛],
しきみがはなの,[寛]しきみかはなの,
なのごとや,[寛]ことや,
しくしくきみに,[寛]しくしくきみには,
こひわたりなむ[寛],
" "#[番号]20/4477","#[題詞]智努女王卒後圓方女王悲傷作歌一首","#[原文]由布義<理>尓 知杼里乃奈吉志 佐保治乎婆 安良之也之弖牟 美流与之乎奈美","#[訓読]夕霧に千鳥の鳴きし佐保路をば荒しやしてむ見るよしをなみ","#[仮名],ゆふぎりに,ちどりのなきし,さほぢをば,あらしやしてむ,みるよしをなみ","#[左注](右件四首傳讀兵部大丞大原今城)","#[校異]利 -> 理 [元][類][紀]","#[事項],作者:圓方女王,挽歌,悲別,哀悼,動物,地名,奈良,智努女王,伝誦,古歌,大原今城","#[訓異]
ゆふぎりに,[寛]ゆふきりに,
ちどりのなきし,[寛]ちとりのなきし,
さほぢをば,[寛]さほちをは,
あらしやしてむ[寛],
みるよしをなみ[寛],
" "#[番号]20/4478","#[題詞]大原櫻井真人行佐保川邊之時作歌一首","#[原文]佐保河波尓 許保里和多礼流 宇須良婢乃 宇須伎許己呂乎 和我於毛波奈久尓","#[訓読]佐保川に凍りわたれる薄ら氷の薄き心を我が思はなくに","#[仮名],さほがはに,こほりわたれる,うすらびの,うすきこころを,わがおもはなくに","#[左注](右件四首傳讀兵部大丞大原今城)","#[校異]","#[事項],作者:大原櫻井,地名,奈良,序詞,恋歌,大原今城,伝誦,古歌,相聞","#[訓異]
さほがはに,[寛]さほかはに,
こほりわたれる[寛],
うすらびの,[寛]うすらひの,
うすきこころを[寛],
わがおもはなくに,[寛]わかおもはなくに,
" "#[番号]20/4479","#[題詞]藤原夫人歌一首 [浄御原宮御宇天皇之夫人也 字曰氷上大刀自也]","#[原文]安佐欲比尓 祢能未之奈氣婆 夜伎多知能 刀其己呂毛安礼<波> 於母比加祢都毛","#[訓読]朝夕に音のみし泣けば焼き太刀の利心も我れは思ひかねつも","#[仮名],あさよひに,ねのみしなけば,やきたちの,とごころもあれは,おもひかねつも","#[左注](右件四首傳讀兵部大丞大原今城)","#[校異]婆 -> 波 [元][紀][細]","#[事項],作者:藤原氷上夫人,古歌,伝誦,大原今城,枕詞,恋情,相聞","#[訓異]
あさよひに[寛],
ねのみしなけば,[寛]ねのみしなけは,
やきたちの[寛],
とごころもあれは,[寛]とこころもあれは,
おもひかねつも[寛],
" "#[番号]20/4480","#[題詞]","#[原文]可之故伎也 安米乃美加度乎 可氣都礼婆 祢能未之奈加由 安佐欲比尓之弖 [作者未詳]","#[訓読]畏きや天の御門を懸けつれば音のみし泣かゆ朝夕にして [作者未詳]","#[仮名],かしこきや,あめのみかどを,かけつれば,ねのみしなかゆ,あさよひにして","#[左注]右件四首傳讀兵部大丞大原今城","#[校異]","#[事項],伝誦,古歌,大原今城,悲嘆","#[訓異]
かしこきや[寛],
あめのみかどを,[寛]あめのみかとを,
かけつれば,[寛]かけつれは,
ねのみしなかゆ[寛],
あさよひにして[寛],
" "#[番号]20/4481","#[題詞]三月四日於兵部大丞大原真人今城之宅宴歌一首","#[原文]安之比奇能 夜都乎乃都婆吉 都良々々尓 美等母安<可>米也 宇恵弖家流伎美","#[訓読]あしひきの八つ峰の椿つらつらに見とも飽かめや植ゑてける君","#[仮名],あしひきの,やつをのつばき,つらつらに,みともあかめや,うゑてけるきみ","#[左注]右兵部少輔大伴家持属植椿作","#[校異]加 -> 可 [元][類][古]","#[事項],天平勝宝9年3月4日,年紀,作者:大伴家持,宴席,大原今城,序詞,植物,枕詞,主人讃美,属目","#[訓異]
あしひきの[寛],
やつをのつばき,[寛]やつをのつはき,
つらつらに[寛],
みともあかめや[寛],
うゑてけるきみ[寛],
" "#[番号]20/4482","#[題詞]","#[原文]保里延故要 等保伎佐刀麻弖 於久利家流 伎美我許己呂波 和須良由麻之<自>","#[訓読]堀江越え遠き里まで送り来る君が心は忘らゆましじ","#[仮名],ほりえこえ,とほきさとまで,おくりける,きみがこころは,わすらゆましじ","#[左注]右一首播磨介藤原朝臣執弓赴任悲別也 主人大原今城傳讀云尓","#[校異]目 -> 自 [元]","#[事項],天平勝宝9年3月4日,年紀,作者:藤原執弓,地名,難波,大阪,古歌,伝誦,大原今城,宴席,悲別,餞別,転用","#[訓異]
ほりえこえ,[寛]ほりえこええ,
とほきさとまで,[寛]とほきさとまて,
おくりける[寛],
きみがこころは,[寛]きみかこころは,
わすらゆましじ,[寛]わすらゆましめ,
" "#[番号]20/4483","#[題詞]勝寶九歳六月廿三日於大監物三形王之宅宴歌一首","#[原文]宇都里由久 時見其登尓 許己呂伊多久 牟可之能比等之 於毛保由流加母","#[訓読]移り行く時見るごとに心痛く昔の人し思ほゆるかも","#[仮名],うつりゆく,ときみるごとに,こころいたく,むかしのひとし,おもほゆるかも","#[左注]右兵部大輔大伴宿祢家持作","#[校異]","#[事項],天平勝宝9年6月23日,年紀,作者:大伴家持,宴席,無常,悲嘆,三形王","#[訓異]
うつりゆく[寛],
ときみるごとに,[寛]ときみることに,
こころいたく[寛],
むかしのひとし[寛],
おもほゆるかも[寛],
" "#[番号]20/4484","#[題詞]","#[原文]佐久波奈波 宇都呂布等伎安里 安之比奇乃 夜麻須我乃祢之 奈我久波安利家里","#[訓読]咲く花は移ろふ時ありあしひきの山菅の根し長くはありけり","#[仮名],さくはなは,うつろふときあり,あしひきの,やますがのねし,ながくはありけり","#[左注]右一首大伴宿祢家持悲怜物色變化作之也","#[校異]","#[事項],天平勝宝9年,年紀,作者:大伴家持,枕詞,植物,悲嘆,無常,寿歌,永遠","#[訓異]
さくはなは[寛],
うつろふときあり[寛],
あしひきの[寛],
やますがのねし,[寛]やますかのねし,
ながくはありけり,[寛]なかくはありけり,
" "#[番号]20/4485","#[題詞]","#[原文]時花 伊夜米豆良之母 <加>久之許曽 賣之安伎良米晩 阿伎多都其等尓","#[訓読]時の花いやめづらしもかくしこそ見し明らめめ秋立つごとに","#[仮名],ときのはな,いやめづらしも,かくしこそ,めしあきらめめ,あきたつごとに","#[左注]<右>大伴宿祢家持作之","#[校異]可 -> 加 [元][類] / 右一首 -> 右 [元][紀][細]","#[事項],天平勝宝9年,年紀,作者:大伴家持,天皇讃美,寿歌,永遠","#[訓異]
ときのはな[寛],
いやめづらしも,[寛]いやめつらしも,
かくしこそ[寛],
めしあきらめめ[寛],
あきたつごとに,[寛]あきたつことに,
" "#[番号]20/4486","#[題詞]天平寶字元年十一月十八日於内裏肆宴歌二首","#[原文]天地乎 弖良須日月乃 極奈久 阿流倍伎母能乎 奈尓乎加於毛波牟","#[訓読]天地を照らす日月の極みなくあるべきものを何をか思はむ","#[仮名],あめつちを,てらすひつきの,きはみなく,あるべきものを,なにをかおもはむ","#[左注]右一首皇太子御歌","#[校異]歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌","#[事項],天平宝字1年11月18日,年紀,作者:大炊王,肆宴,宴席,宮廷","#[訓異]
あめつちを[寛],
てらすひつきの[寛],
きはみなく,[寛]きはめなく,
あるべきものを,[寛]あるへきものを,
なにをかおもはむ,[寛]なにかおもはむ,
" "#[番号]20/4487","#[題詞](天平寶字元年十一月十八日於内裏肆宴歌二首)","#[原文]伊射子等毛 多波和射奈世曽 天地能 加多米之久尓曽 夜麻登之麻祢波","#[訓読]いざ子どもたはわざなせそ天地の堅めし国ぞ大和島根は","#[仮名],いざこども,たはわざなせそ,あめつちの,かためしくにぞ,やまとしまねは","#[左注]右一首内相藤原朝臣奏之","#[校異]","#[事項],天平宝字1年11月18日,年紀,作者:藤原仲麻呂,肆宴,宮廷,宴席","#[訓異]
いざこども,[寛]いさことも,
たはわざなせそ,[寛]たはわさなせそ,
あめつちの[寛],
かためしくにぞ,[寛]かためしくにそ,
やまとしまねは[寛],
" "#[番号]20/4488","#[題詞]十二月十八日於大監物三形王之宅宴歌三首","#[原文]三雪布流 布由波祁布能未 鴬乃 奈加牟春敝波 安須尓之安流良之","#[訓読]み雪降る冬は今日のみ鴬の鳴かむ春へは明日にしあるらし","#[仮名],みゆきふる,ふゆはけふのみ,うぐひすの,なかむはるへは,あすにしあるらし","#[左注]右一首主人三形王","#[校異]","#[事項],天平宝字1年12月18日,年紀,作者:三形王,宴席,動物,挨拶","#[訓異]
みゆきふる[寛],
ふゆはけふのみ[寛],
うぐひすの,[寛]うくひすの,
なかむはるへは[寛],
あすにしあるらし[寛],
" "#[番号]20/4489","#[題詞](十二月十八日於大監物三形王之宅宴歌三首)","#[原文]宇知奈婢久 波流乎知可美加 奴婆玉乃 己与比能都久欲 可須美多流良牟","#[訓読]うち靡く春を近みかぬばたまの今夜の月夜霞みたるらむ","#[仮名],うちなびく,はるをちかみか,ぬばたまの,こよひのつくよ,かすみたるらむ","#[左注]右一首大蔵大輔甘南備伊香真人","#[校異]","#[事項],天平宝字1年12月18日,年紀,作者:甘南備伊香,三形王,枕詞,叙景,宴席","#[訓異]
うちなびく,[寛]うちなひく,
はるをちかみか[寛],
ぬばたまの,[寛]ぬはたまの,
こよひのつくよ[寛],
かすみたるらむ[寛],
" "#[番号]20/4490","#[題詞](十二月十八日於大監物三形王之宅宴歌三首)","#[原文]安良多末能 等之由伎我敝理 波流多々婆 末豆和我夜度尓 宇具比須波奈家","#[訓読]あらたまの年行き返り春立たばまづ我が宿に鴬は鳴け","#[仮名],あらたまの,としゆきがへり,はるたたば,まづわがやどに,うぐひすはなけ","#[左注]右一首右中辨大伴宿祢家持","#[校異]","#[事項],天平宝字1年12月18日,年紀,作者:大伴家持,枕詞,動物,宴席,三形王","#[訓異]
あらたまの[寛],
としゆきがへり,[寛]としゆきかへり,
はるたたば,[寛]はるたたは,
まづわがやどに,[寛]まつわかやとに,
うぐひすはなけ,[寛]うくひすはなけ,
" "#[番号]20/4491","#[題詞]","#[原文]於保吉宇美能 美奈曽己布可久 於毛比都々 毛婢伎奈良之思 須我波良能佐刀","#[訓読]大き海の水底深く思ひつつ裳引き平しし菅原の里","#[仮名],おほきうみの,みなそこふかく,おもひつつ,もびきならしし,すがはらのさと","#[左注]右一首藤原宿奈麻呂朝臣之妻石川女郎薄愛離別悲恨作歌也 [年月未詳]","#[校異]","#[事項],作者:藤原宿奈麻呂妻:石川女郎,藤原宿麻呂,悲嘆,怨恨,離別,地名,奈良,古歌,伝誦,転用,宴席","#[訓異]
おほきうみの[寛],
みなそこふかく[寛],
おもひつつ[寛],
もびきならしし,[寛]もひきならしし,
すがはらのさと,[寛]すかはらのさと,
" "#[番号]20/4492","#[題詞]廿三日於治部少輔大原今城真人之宅宴歌一首","#[原文]都奇餘米婆 伊麻太冬奈里 之可須我尓 霞多奈婢久 波流多知奴等可","#[訓読]月数めばいまだ冬なりしかすがに霞たなびく春立ちぬとか","#[仮名],つきよめば,いまだふゆなり,しかすがに,かすみたなびく,はるたちぬとか","#[左注]右一首右中辨大伴宿祢家持作","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],天平宝字1年12月23日,年紀,作者:大伴家持,宴席,大原今城","#[訓異]
つきよめば,[寛]つきよめは,
いまだふゆなり,[寛]いまたふゆなり,
しかすがに,[寛]しかすかに,
かすみたなびく,[寛]かすみたなひく,
はるたちぬとか[寛],
" "#[番号]20/4493","#[題詞]二年正月三日召侍従竪子王臣等令侍於内裏之東屋垣下即賜玉箒肆宴 于時内相藤原朝臣奉勅宣 諸王卿等随堪任意作歌并賦詩 仍應詔旨各陳心緒作歌賦詩 [未得諸人之賦詩并作歌也]","#[原文]始春乃 波都祢乃家布能 多麻婆波伎 手尓等流可良尓 由良久多麻能乎","#[訓読]初春の初子の今日の玉箒手に取るからに揺らく玉の緒","#[仮名],はつはるの,はつねのけふの,たまばはき,てにとるからに,ゆらくたまのを","#[左注]右一首右中辨大伴宿祢家持作 但依大蔵政不堪奏之也","#[校異]之也 [元][細](塙) 之","#[事項],天平宝字2年1月3日,年紀,作者:大伴家持,未奏,宮廷,肆宴,宴席,藤原仲麻呂,寿歌,宮廷讃美","#[訓異]
はつはるの[寛],
はつねのけふの[寛],
たまばはき,[寛]たまははき,
てにとるからに[寛],
ゆらくたまのを[寛],
" "#[番号]20/4494","#[題詞]","#[原文]水鳥乃 可毛<能>羽能伊呂乃 青馬乎 家布美流比等波 可藝利奈之等伊布","#[訓読]水鳥の鴨の羽の色の青馬を今日見る人は限りなしといふ","#[仮名],みづとりの,かものはのいろの,あをうまを,けふみるひとは,かぎりなしといふ","#[左注]右一首為七日侍宴右中辨大伴宿祢家持預作此歌 但依仁王會事却以六日於内裏召諸王卿等賜酒肆宴給祿 因斯不奏也","#[校異]<> -> 能 [温][矢][京]","#[事項],天平宝字2年1月6日,年紀,作者:大伴家持,未奏,予作,宮廷,行事,宴席,寿歌,動物","#[訓異]
みづとりの,[寛]みつとりの,
かものはのいろの[寛],
あをうまを[寛],
けふみるひとは[寛],
かぎりなしといふ,[寛]かきりなしといふ,
" "#[番号]20/4495","#[題詞]六日内庭假植樹木以作林帷而為肆宴歌","#[原文]打奈婢久 波流等毛之流久 宇具比須波 宇恵木之樹間乎 奈<枳>和多良奈牟","#[訓読]うち靡く春ともしるく鴬は植木の木間を鳴き渡らなむ","#[仮名],うちなびく,はるともしるく,うぐひすは,うゑきのこまを,なきわたらなむ","#[左注]右一首右中辨大伴宿祢家持 [不奏]","#[校異]歌 [西] 謌 / 歌 [細] 歌一首 / 伎 -> 枳 [元][類]","#[事項],天平宝字2年1月6日,年紀,作者:大伴家持,動物,宮廷,肆宴,宴席,叙景,未奏","#[訓異]
うちなびく,[寛]うちなひく,
はるともしるく[寛],
うぐひすは,[寛]うくひすは,
うゑきのこまを[寛],
なきわたらなむ[寛],
" "#[番号]20/4496","#[題詞]二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首","#[原文]宇良賣之久 伎美波母安流加 夜度乃烏梅<能> 知利須具流麻O 美之米受安利家流","#[訓読]恨めしく君はもあるか宿の梅の散り過ぐるまで見しめずありける","#[仮名],うらめしく,きみはもあるか,やどのうめの,ちりすぐるまで,みしめずありける","#[左注]右一首治部少輔大原今城真人","#[校異]<> -> 五 [元] / 乃 -> 能 [元][類][紀][細]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:大原今城,宴席,中臣清麻呂,植物,怨恨","#[訓異]
うらめしく[寛],
きみはもあるか[寛],
やどのうめの,[寛]やとのうめの,
ちりすぐるまで,[寛]ちりすくるまて,
みしめずありける,[寛]みしめすありける,
" "#[番号]20/4497","#[題詞](二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首)","#[原文]美牟等伊波婆 伊奈等伊波米也 宇梅乃波奈 知利須具流麻弖 伎美我伎麻左奴","#[訓読]見むと言はば否と言はめや梅の花散り過ぐるまで君が来まさぬ","#[仮名],みむといはば,いなといはめや,うめのはな,ちりすぐるまで,きみがきまさぬ","#[左注]右一首主人中臣清麻呂朝臣","#[校異]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:中臣清麻呂,宴席,植物","#[訓異]
みむといはば,[寛]みむといはは,
いなといはめや[寛],
うめのはな[寛],
ちりすぐるまで,[寛]ちりすくるまて,
きみがきまさぬ,[寛]きみかきませは,
" "#[番号]20/4498","#[題詞](二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首)","#[原文]波之伎余之 家布能安路自波 伊蘇麻都能 都祢尓伊麻佐祢 伊麻母美流其等","#[訓読]はしきよし今日の主人は礒松の常にいまさね今も見るごと","#[仮名],はしきよし,けふのあろじは,いそまつの,つねにいまさね,いまもみるごと","#[左注]右一首右中辨大伴宿祢家持","#[校異]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:大伴家持,宴席,中臣清麻呂,主人讃美,寿歌,植物,序詞","#[訓異]
はしきよし[寛],
けふのあろじは,[寛]けふのあろしは,
いそまつの[寛],
つねにいまさね[寛],
いまもみるごと,[寛]いまもみること,
" "#[番号]20/4499","#[題詞](二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首)","#[原文]和我勢故之 可久志伎許散婆 安米都知乃 可未乎許比能美 奈我久等曽於毛布","#[訓読]我が背子しかくし聞こさば天地の神を祈ひ祷み長くとぞ思ふ","#[仮名],わがせこし,かくしきこさば,あめつちの,かみをこひのみ,ながくとぞおもふ","#[左注]右一首主人中臣清麻呂朝臣","#[校異]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:中臣清麻呂,宴席,寿歌,永遠","#[訓異]
わがせこし,[寛]わかせこか,
かくしきこさば,[寛]かくしきこさは,
あめつちの[寛],
かみをこひのみ[寛],
ながくとぞおもふ,[寛]なかくとそおもふ,
" "#[番号]20/4500","#[題詞](二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首)","#[原文]宇梅能波奈 香乎加具波之美 等保家杼母 己許呂母之努尓 伎美乎之曽於毛布","#[訓読]梅の花香をかぐはしみ遠けども心もしのに君をしぞ思ふ","#[仮名],うめのはな,かをかぐはしみ,とほけども,こころもしのに,きみをしぞおもふ","#[左注]右一首治部大輔市原王","#[校異]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:市原王,宴席,中臣清麻呂,植物,恋情,主人讃美","#[訓異]
うめのはな[寛],
かをかぐはしみ,[寛]かをかくはしみ,
とほけども,[寛]とほけとも,
こころもしのに[寛],
きみをしぞおもふ,[寛]きみをしそおもふ,
" "#[番号]20/4501","#[題詞](二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首)","#[原文]夜知久佐能 波奈波宇都呂布 等伎波奈流 麻都能左要太乎 和礼波牟須婆奈","#[訓読]八千種の花は移ろふ常盤なる松のさ枝を我れは結ばな","#[仮名],やちくさの,はなはうつろふ,ときはなる,まつのさえだを,われはむすばな","#[左注]右一首右中辨大伴宿祢家持","#[校異]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:大伴家持,宴席,中臣清麻呂,寿歌,植物,永遠,主人讃美,予祝","#[訓異]
やちくさの[寛],
はなはうつろふ[寛],
ときはなる[寛],
まつのさえだを,[寛]まつのさえたを,
われはむすばな,[寛]われはむすはな,
" "#[番号]20/4502","#[題詞](二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首)","#[原文]烏梅能波奈 左伎知流波流能 奈我伎比乎 美礼杼母安加奴 伊蘇尓母安流香母","#[訓読]梅の花咲き散る春の長き日を見れども飽かぬ礒にもあるかも","#[仮名],うめのはな,さきちるはるの,ながきひを,みれどもあかぬ,いそにもあるかも","#[左注]右一首大蔵大輔甘南備伊香真人","#[校異]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:甘南備伊香,植物,宴席,中臣清麻呂,宴席讃美","#[訓異]
うめのはな[寛],
さきちるはるの[寛],
ながきひを,[寛]なかきひを,
みれどもあかぬ,[寛]みれともあかぬ,
いそにもあるかも[寛],
" "#[番号]20/4503","#[題詞](二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首)","#[原文]伎美我伊敝能 伊氣乃之良奈美 伊蘇尓与世 之婆之婆美等母 安加無伎弥加毛","#[訓読]君が家の池の白波礒に寄せしばしば見とも飽かむ君かも","#[仮名],きみがいへの,いけのしらなみ,いそによせ,しばしばみとも,あかむきみかも","#[左注]右一首右中辨大伴宿祢家持","#[校異]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:大伴家持,宴席,中臣清麻呂,主人讃美,恋愛","#[訓異]
きみがいへの,[寛]きみかいへの,
いけのしらなみ[寛],
いそによせ[寛],
しばしばみとも,[寛]しはしはみとも,
あかむきみかも[寛],
" "#[番号]20/4504","#[題詞](二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首)","#[原文]宇流波之等 阿我毛布伎美波 伊也比家尓 伎末勢和我世<古> 多由流日奈之尓","#[訓読]うるはしと我が思ふ君はいや日異に来ませ我が背子絶ゆる日なしに","#[仮名],うるはしと,あがもふきみは,いやひけに,きませわがせこ,たゆるひなしに","#[左注]右一首主人中臣清麻呂朝臣","#[校異]呂 -> 古 [類][細]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:中臣清麻呂,宴席,恋愛","#[訓異]
うるはしと[寛],
あがもふきみは,[寛]あかものきみは,
いやひけに[寛],
きませわがせこ,[寛]きませわかせこ,
たゆるひなしに[寛],
" "#[番号]20/4505","#[題詞](二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首)","#[原文]伊蘇能宇良尓 都祢欲比伎須牟 乎之杼里能 乎之伎安我未波 伎美我末仁麻尓","#[訓読]礒の裏に常呼び来住む鴛鴦の惜しき我が身は君がまにまに","#[仮名],いそのうらに,つねよびきすむ,をしどりの,をしきあがみは,きみがまにまに","#[左注]右一首治部少輔大原今城真人","#[校異]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:大原今城,宴席,中臣清麻呂,序詞,動物,主人讃美,忠誠","#[訓異]
いそのうらに[寛],
つねよびきすむ,[寛]つねよひきすむ,
をしどりの,[寛]をしとりの,
をしきあがみは,[寛]をしきあかみは,
きみがまにまに,[寛]きみかまにまに,
" "#[番号]20/4506","#[題詞](二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首)依興各思高圓離宮處作歌五首","#[原文]多加麻刀能 努乃宇倍能美也<波> 安礼尓家里 多々志々伎美能 美与等保曽氣婆","#[訓読]高圓の野の上の宮は荒れにけり立たしし君の御代遠そけば","#[仮名],たかまとの,ののうへのみやは,あれにけり,たたししきみの,みよとほそけば","#[左注]右一首右中辨大伴宿祢家持","#[校異]婆 -> 波 [類]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:大伴家持,宴席,中臣清麻呂,依興,高円,離宮,宮廷,懐古,地名,聖武天皇","#[訓異]
たかまとの[寛],
ののうへのみやは[寛],
あれにけり[寛],
たたししきみの,[寛]たたしききみの,
みよとほそけば,[寛]みよとほそけは,
" "#[番号]20/4507","#[題詞](二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首)(依興各思高圓離宮處作歌五首)","#[原文]多加麻刀能 乎能宇倍乃美也<波> 安礼奴等母 多々志々伎美能 美奈和須礼米也","#[訓読]高圓の峰の上の宮は荒れぬとも立たしし君の御名忘れめや","#[仮名],たかまとの,をのうへのみやは,あれぬとも,たたししきみの,みなわすれめや","#[左注]右一首治部少輔<大原>今城真人","#[校異]婆 -> 波 [類][細] / <> -> 大原 [元][古]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:大原今城,宴席,中臣清麻呂,依興,高円,離宮,宮廷,懐古,聖武天皇,地名","#[訓異]
たかまとの[寛],
をのうへのみやは[寛],
あれぬとも[寛],
たたししきみの[寛],
みなわすれめや[寛]
" "#[番号]20/4508","#[題詞](二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首)(依興各思高圓離宮處作歌五首)","#[原文]多可麻刀能 努敝波布久受乃 須恵都比尓 知与尓和須礼牟 和我於保伎美加母","#[訓読]高圓の野辺延ふ葛の末つひに千代に忘れむ我が大君かも","#[仮名],たかまとの,のへはふくずの,すゑつひに,ちよにわすれむ,わがおほきみかも","#[左注]右一首主人中臣清麻呂朝臣","#[校異]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:中臣清麻呂,宴席,依興,高円,離宮,宮廷,懐古,聖武天皇,地名,植物,序詞","#[訓異]
たかまとの,[寛]たかまとの,
のへはふくずの,[寛]のへはふくすの,
すゑつひに[寛],
ちよにわすれむ[寛],
わがおほきみかも,[寛]わかおほきみかも,
" "#[番号]20/4509","#[題詞](二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首)(依興各思高圓離宮處作歌五首)","#[原文]波布久受能 多要受之努波牟 於保吉美<乃> 賣之思野邊尓波 之米由布倍之母","#[訓読]延ふ葛の絶えず偲はむ大君の見しし野辺には標結ふべしも","#[仮名],はふくずの,たえずしのはむ,おほきみの,めししのへには,しめゆふべしも","#[左注]右一首右中辨大伴宿祢家持","#[校異]能 -> 乃 [元][類]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:大伴家持,宴席,中臣清麻呂,依興,高円,離宮,宮廷,懐古,枕詞,植物,聖武天皇","#[訓異]
はふくずの,[寛]はふくすの,
たえずしのはむ,[寛]たえすしのはむ,
おほきみの[寛],
めししのへには[寛],
しめゆふべしも,[寛]しめゆふへしも,
" "#[番号]20/4510","#[題詞](二月於式部大輔中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十<五>首)(依興各思高圓離宮處作歌五首)","#[原文]於保吉美乃 都藝弖賣須良之 多加麻刀能 努敝美流其等尓 祢能未之奈加由","#[訓読]大君の継ぎて見すらし高圓の野辺見るごとに音のみし泣かゆ","#[仮名],おほきみの,つぎてめすらし,たかまとの,のへみるごとに,ねのみしなかゆ","#[左注]右一首大蔵大輔甘南備伊香真人","#[校異]","#[事項],天平宝字2年2月,年紀,作者:甘南備伊香,宴席,中臣清麻呂,依興,高円,離宮,宮廷,懐古,地名,聖武天皇,悲嘆","#[訓異]
おほきみの[寛],
つぎてめすらし,[寛]つきてめすらし,
たかまとの[寛],
のへみるごとに,[寛]のへみることに,
ねのみしなかゆ[寛],
" "#[番号]20/4511","#[題詞]属目山齋作歌三首","#[原文]乎之能須牟 伎美我許乃之麻 家布美礼婆 安之婢乃波奈毛 左伎尓家流可母","#[訓読]鴛鴦の住む君がこの山斎今日見れば馬酔木の花も咲きにけるかも","#[仮名],をしのすむ,きみがこのしま,けふみれば,あしびのはなも,さきにけるかも","#[左注]右一首大監物御方王","#[校異]","#[事項],天平宝字2年,年紀,作者:三形王,宴席,中臣清麻呂,植物,動物,叙景,庭園讃美,属目","#[訓異]
をしのすむ[寛],
きみがこのしま,[寛]きみかこのしま,
けふみれば,[寛]けふみれは,
あしびのはなも,[寛]あしひのはなも,
さきにけるかも[寛],
" "#[番号]20/4512","#[題詞](属目山齋作歌三首)","#[原文]伊氣美豆尓 可氣左倍見要C 佐伎尓保布 安之婢乃波奈乎 蘇弖尓古伎礼奈","#[訓読]池水に影さへ見えて咲きにほふ馬酔木の花を袖に扱入れな","#[仮名],いけみづに,かげさへみえて,さきにほふ,あしびのはなを,そでにこきれな","#[左注]右一首右中辨大伴宿祢家持","#[校異]","#[事項],天平宝字2年,年紀,作者:大伴家持,宴席,中臣清麻呂,植物,庭園讃美,叙景,属目","#[訓異]
いけみづに,[寛]いけみつに,
かげさへみえて,[寛]かけさへみえて,
さきにほふ[寛],
あしびのはなを,[寛]あしひのはなを,
そでにこきれな,[寛]そてにこきれな,
" "#[番号]20/4513","#[題詞](属目山齋作歌三首)","#[原文]伊蘇可氣乃 美由流伊氣美豆 C流麻O尓 左家流安之婢乃 知良麻久乎思母","#[訓読]礒影の見ゆる池水照るまでに咲ける馬酔木の散らまく惜しも","#[仮名],いそかげの,みゆるいけみづ,てるまでに,さけるあしびの,ちらまくをしも","#[左注]右一首大蔵大輔甘南備伊香真人","#[校異]","#[事項],天平宝字2年,年紀,作者:甘南備伊香,宴席,中臣清麻呂,植物,庭園讃美,属目","#[訓異]
いそかげの,[寛]いそかけの,
みゆるいけみづ,[寛]みゆるいけみつ,
てるまでに,[寛]てるまてに,
さけるあしびの,[寛]さけるあしひの,
ちらまくをしも[寛],
" "#[番号]20/4514","#[題詞]二月十日於内相宅餞渤海大使小野田守朝臣等宴歌一首","#[原文]阿乎宇奈波良 加是奈美奈妣伎 由久左久佐 都々牟許等奈久 布祢波々夜家無","#[訓読]青海原風波靡き行くさ来さつつむことなく船は速けむ","#[仮名],あをうなはら,かぜなみなびき,ゆくさくさ,つつむことなく,ふねははやけむ","#[左注]右一首右中辨大伴宿祢家持 [未誦之]","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],天平宝字2年2月10日,年紀,作者:大伴家持,藤原仲麻呂,未誦,小野田守,餞別,宴席,出発,羈旅,無事","#[訓異]
あをうなはら[寛],
かぜなみなびき,[寛]かせなみなひき,
ゆくさくさ[寛],
つつむことなく[寛],
ふねははやけむ[寛],
" "#[番号]20/4515","#[題詞]七月五日於<治>部少輔大原今城真人宅餞因幡守大伴宿祢家持宴歌一首","#[原文]秋風乃 須恵布伎奈婢久 波疑能花 登毛尓加射左受 安比加和可礼牟","#[訓読]秋風の末吹き靡く萩の花ともにかざさず相か別れむ","#[仮名],あきかぜの,すゑふきなびく,はぎのはな,ともにかざさず,あひかわかれむ","#[左注]右一首大伴宿祢家持作之","#[校異]式 -> 治 [西(朱訂正右書)][元][紀][細]","#[事項],天平宝字2年7月5日,年紀,作者:大伴家持,植物,大原今城,餞別,宴席,悲別","#[訓異]
あきかぜの,[寛]あきかせの,
すゑふきなびく,[寛]すゑふきなひく,
はぎのはな,[寛]はきのはな,
ともにかざさず,[寛]ともにかささす,
あひかわかれむ[寛],
" "#[番号]20/4516","#[題詞]三年春正月一日於因幡國廳賜饗國郡司等之宴歌一首","#[原文]新 年乃始乃 波都波流能 家布敷流由伎能 伊夜之家餘其騰","#[訓読]新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事","#[仮名],あらたしき,としのはじめの,はつはるの,けふふるゆきの,いやしけよごと","#[左注]右一首守大伴宿祢家持作之","#[校異]歌 [西] 謌","#[事項],天平宝字3年1月1日,年紀,作者:大伴家持,予祝,寿歌,鳥取,宴席","#[訓異]
あらたしき,[寛]あたらしき,
としのはじめの,[寛]としのはしめの,
はつはるの[寛],
けふふるゆきの[寛],
いやしけよごと,[寛]いやしけよこと,
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