今回は、公式Xのフォロワーさんからのリクエストにお応えして、千葉県にある須藤本家の房総ウイスキーを飲んでみます。

明治創業の酒蔵のチャレンジ

DSC_0981_01房総ウイスキーを製造、販売する須藤本家は、千葉県君津市、久留里地区にあり、明治18年創業だそうです(茨城県にも須藤本家という酒蔵がありますが無関係とのこと)。

久留里地区は古くから地下水が豊富で、平成の名水百選に選ばれるほどの良い水が採れる場所です。
その水を使い、同社は日本酒の他、様々な素材を使った焼酎も手がけています。

そんな同社がウイスキーの製造に着手したのは2018年で、同年にウイスキーの製造免許を取得し、焼酎で培った蒸溜技術をウイスキーへ応用しようとしたようです。

また、酵母においてもウイスキー用ではなく、日本酒に使われる酵母を使う試みも行っています。
蒸溜釜もウイスキー用のポットスチルではなく、本格焼酎用の単式蒸溜釜を使っているようです。

しかし2019年には豪雨の被害に遭い、2020年からは新型コロナによって従業員を入れての稼働が出来ない状況が続き、一時は諦めることを考えていたようですが、それに屈せず、製造をスタート、ついに製品化にこぎ着けました。

出来上がった房総ウイスキーは、自社製のモルト原酒の他、スコットランドから輸入したバルクのモルト、グレーン原酒をブレンドしたものになります。
ラベルの原材料名ではグレーンが先になっていることから、モルト原酒の割合は低いと推測されます。

テイスティング

グラスからの香り、液色

グラスからはレーズンとリンゴの香りが感じ取れます。
液色は中庸な琥珀色です。

ストレート

まず香りとして、体育館の倉庫を思わせるヒネ臭がやってきます。その後、バナナ、リンゴ、ブドウの香りへと続きます。

味わいは甘味が先んじた後、酸味、ほろ苦さと続きます。

ロック

ピートからのスモーキーな香りの後、ラムレーズン、バナナ、バニラと続きます。
ただ、全体的にヒネ臭が鼻につきます。

味わいは、苦みが前に出て、その後に酸味が続きます。

ハイボール

スモーキーさはあるものの、やはりヒネ臭を思わせる違和感があります。その後、バナナ、カスタードクリームの香りと続きます。

味わいは、苦みと酸味が半々で、甘味はわずかという印象です。

清酒酵母を使ったマイナスが大きい

全体的には、古いウイスキーが経年劣化によって生じるヒネ臭が気になりました。
そもそもこの匂い自体は日本酒をしばらく置いた際にも発生するため、清酒酵母を使っていることも一因なのかも知れません。

日本酒が好きな人であれば、この香りを好む人もいるでしょうけど、ウイスキーを飲み慣れている人だと劣化して飲んではいけないと判断するかも知れません。

日本酒の酒蔵と同じ場所でウイスキーを作るため、ウイスキーの酵母が日本酒の酵母を駆逐しないためのアイデアなのでしょうけど、海外で今後売るにしても賛否が分かれるでしょう。

個人的には、酒蔵から離れた場所に蒸溜所を設けて、ウイスキーの酵母を使って醸造する方がいいと思います。

700mL、アルコール度数40度、価格は2200円ほど。
同社では更に熟成を進めてシングルモルトを出すのかと思いますが、この特徴が顕著になったときにどうなるか、気になるところです。

<個人的評価>

  • 香り D: 体育館の倉庫を思わせるヒネ臭が目立つ。スモーキーさとバナナの香りが続く。
  • 味わい C: ストレートでは甘味が目立つが、加水で苦みが強くなる。
  • 総評 D: ウイスキー好きほど敬遠されてしまうかも。