「厳しい自粛生活」「運動不足」が原因なのか
この観点から言えば、「自粛」も重要な「変化」のひとつと言えるだろう。内科医で医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏は、そこに着目する。
「一昨年から、特に老衰や肺炎で亡くなる高齢者が増えていることは間違いありません。日本全体の高齢化が進んでいるところに、長期間の自粛を強いられたことによって、人々の体力や免疫力が低下していることが一因ではないかと考えています」
上氏が根拠として挙げるのは、海外と日本の比較データだ。先進各国の中で、日本に次いで高齢化率が高いイタリアやドイツでは、人口あたりのコロナ感染者数や死者数は日本を大きく上回っているが、超過死亡は増えていない。こうした海外の国と日本の差は「厳しい自粛を長期間続けているか、続けていないか」である―というわけだ。
「緊急事態宣言とまん防(まん延防止等重点措置)を合わせた外出自粛期間は、たとえば東京都では過去3年間で347日にも達しています。特に高齢の方が自宅に閉じこもって運動不足になれば、体重増加、高血圧や糖尿病、脂質異常症などのリスクが跳ね上がる。老衰や肺炎、脳卒中によって亡くなる方が増えているのは、長期間の自粛の悪影響が出ているためと言っていいでしょう」
この見方は、コロナ以外の急病人や急死者が増えている、という医療者の訴えとも辻褄があう。コロナ以前から、日本では「運動不足」が喫煙、高血圧に次いで死亡リスクを高める要因であると指摘されてきた。自粛のせいで命を落としている人は、思った以上に多いのかもしれないのだ。
「週刊現代」2023年2月11・18日合併号より