幻獣図鑑 スコルとハティ

スコル ハティ

スコル ☼ Sköll ハティ ☾ Hati

    

北欧神話に伝わる太陽と月を追いかける狼。太陽を食らおうとする狼の名をスコル(Sköll、意味は嘲笑)といい、月を食らおうとする狼をハティ(Hati、意味は憎しみの父、敵)という。この狼の兄弟は天体の現象を表すとされ、日食や月食など天体に異常が起きたならば屡々しばしばこの狼達の仕業であると考えられた。

この二匹の狼はフェンリル狼が鉄の森の女巨人との間に作った巨人の兄弟であるとされ、特にハティはハティ・フローズヴィトニルソン(Hróðvitnisson、意味は名高い狼の息子)と呼ばれることがある。フローズヴィトニル(Hróðvitnir,意味は名高い狼)の部分はフェンリル狼を指す事が多いので、暗黙の内にフェンリル狼の子ハティと解釈されるようだ。また、ハティはマーナガルム(月の犬)と同一視される事がある。

  

  

番外編:英雄ヘルギの歌に出て来るハティの娘

      

古エッダの英雄詩、ヘルギの歌では巨人ハティがヘルギに倒されているが、そこでハティの娘にフリムガズ(Hrimgerth)の名が出ている。フリムガズは詩の中で父がハティである事を語り、ハティは巨人の中で最も強い力を持っていて多くの女性の家から彼は勝利を得ることが出来たが、ヘルギに斬り倒されてしまったと話した。

このフリムガズの父の名前の綴りはhatiであり狼のhatiと同一のものではあるが、結び付けて考える者は少ない。これは神話にある天に影響を与える恐ろしい月食の狼ハティと、人の英雄が斬り倒せる霜の巨人では乖離が強い為であろうか。

北欧神話に登場する名のある巨人達はフレースヴェルグやスルトといった巨人に見られるようにその個性が強く、敵対する者同士で因縁を持つことも多い。ヘルギの歌に出るハティは説明がなく唐突に倒されているので、有名な月食の狼ハティとの関連を見出せないのも当然であるだろう。

英雄の詩で霜の巨人の娘フリムガズとヘルギの間に因縁を作るため、父の名に憎しみ、敵の意味を持つ巨人の名ハティを用いたようにも読める。(古エッダではハティ狼と区別する為かヘイトフル(The Hateful、意味は憎しみ)という名の注釈がつけられていた)

   

   

資料

THE POETIC EDDA 1923年
by Henry Adams Bellows

Den ældre Edda 1821年

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