今年度末で閉校する樫尾小。仮想空間に学校を再現する取り組みが始まる=富山市八尾町小長谷

  ●再編の課題に対応

 富山市教委は、学校再編に伴い今年度末で閉校する八尾地域の樫尾小を、インターネット上の仮想空間に残す取り組みを始める。学校全体を立体的に再現し、自由に移動したり、視点を変えたりできるようにする。空間の作成に児童や地元住民が参加し、思い出の写真などを組み込む。全国的に珍しい試みで、再編統合の課題である閉校への寂しさや喪失感といった「学校ロス」の軽減を図る。

 「樫尾小デジタル資産化プロジェクト」と題し、校舎やグラウンド、学校生活を送る児童の様子などを3Dカメラで撮影し、人工知能(AI)を活用して画像を組み合わせる。パソコンやスマートフォンなどで無料で見られるようにする予定で、来年3月の閉校式に合わせて公開を目指す。

 仮想空間の樫尾小では、校舎や敷地内を歩き回るように移動し、見る方向を前後左右、上下に動かせる。VR(仮想現実)のゴーグルを使うと実際に校内にいる感覚を味わえるという。

  ●作成に児童、住民参加 

 プロジェクトには同校2~6年生の全21人が参加。今月22日に初回の授業を行い、児童が1人ずつ校内のお気に入りの場所を選ぶ。仮想空間でそれぞれの場所に写真や動画、メッセージを埋め込み、学校の思い出を振り返られるようにする。同校では11月に「回顧展」を予定しており、訪れた地域住民にも場所選びなどに加わってもらう。

 市教委は昨年2月、小中学校の適正規模化を重視した再編計画を策定。小規模校の樫尾小は地元での協議を経て、八尾小との統合が決まった。市教委が各地域で説明を重ねる中で、地元の学校がなくなることを寂しがる声が多く聞かれたといい、担当者は「気持ちは理解でき、何かできないか模索してきた」と話す。

 実証事業として行い、再編を進める上で他の学校への展開を検討する。将来的には仮想空間に利用者の分身「アバター」が集まり「バーチャル同窓会」を開くなど、活用の幅が広がる可能性もあるとしている。

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