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劇場型叱責と激情型叱責

授業が終わって見送る時にふとテーブルを見ると、
デッサンモチーフの球体が全てビンの口に乗っています。
いつの間に!と思って、
生徒さんに目をやると私の反応を見ています。
「すごいね、街みたいだね。」と笑うと、
安心したような顔で「あれにあげといて!」と、
後ろ手にリクエストをして帰っていきました。

“あれにあげといて!”ってなんだろう?
インスタグラムか!と思いつきパチリ。
許可してくれる作品をInstagramにあげ始めて半月。
とても楽しい展開になっています。
いろんな子の作品が見られて楽しい。と、お母さん達にも好評。
重い腰をあげて情報のインフラ整備をしなければ、
こんな楽しさも味わえなかったことでしょう。

球体の描き方を説明している間、
光と陰を意識してもらうために部屋の照明を落とします。
スポットライトで明暗を感じてもらい、
影の付け方でどのように作品が変わるかを説明します。
薄暗くなった部屋で、
小さなお嬢さん達が球体を頭に乗せてクスクス。
まるで妖精達が遊んでいるようです。

さきほどのインスタの子もそうですが、
昔の私だったら「きちんと話を聞いて。」「何をやっているの?」とか、
「片付けて帰りなさい。」「いたずらしちゃダメでしょう?」
などと叱っていたはずです。
微笑ましいと思うようになったのは、
それだけ年をとったのと人間理解が進んだことにあります。

“人が人を怒るとき”
それは相手の資質の理解不足による誤解か、
イライラを発散するために自分の感情を正当化している時です。
10年前後通ってくれている生徒達に最近言われました。
「先生って怒らなくなったよね?どうして?いつからだっけ?」と。
それはこういったことが理解できるようになったからです。
その節は本当に失礼しました。

“怒りたくないのに、怒らなければいけない。”という人がいます。
“子どもが怒らせるようなことをするからだ。”という理由です。
そんな親御さんには、以下のような説明をさせて頂いています。
あなたの怒りは劇場型と激情型どちらに当てはまるか、
読みながら考えてみて下さい。

*あなたはいつの間にか劇場型叱責にハマっていませんか?
劇場型叱責とは、
お芝居や二次元の登場人物のように大げさな怒り方を言います。
私たちはなぜ勉強をしない子を「勉強しなさい!」と、
怒るようになったのでしょう?
それはいつからでしょうか?

考えてみるとモデルになるのは、サザエさんのカツオくん、
ドラえもんののび太くん、クレヨンしんちゃんなど、
大人からガミガミ怒られているアニメのキャラクターです。

小さな頃からアニメを見て育った私たち大人は、
勉強しない子どもを反射的に怒ることをいつの間にか学んでしまいました。
よくよく考えてみると怒るなんて百害あって一利なしなのに、
あまりに自然で疑いもせずに。
そこから事件が始まるカツオくんやのび太くんはいいのです。
学校や大人に不満を持った、
できの悪い子や困った子という設定でなければ物語は生まれません。

けれど現実の世界に生きている私たちは、
週1回事件があって決着がついてよかったよかったとはなりません。
子育ては来る日も来る日もずっと続いていくものです。
もちろんカツオくんやのび太くんのようなキャラクターに育てたい場合は、
大げさな叱責が有効です。
よくよく考えてみれば勉強しない時に勉強しなさいと怒鳴るのは逆効果です。

冷静にお子さんの精神状態や環境を見極め、
理解力をつけてからやり方を考えてあげるのが正しいプロセスです。
どうすれば勉強が喜びになるのかを工夫して好奇心を刺激し、
“大人も勉強は楽しい。”という姿勢を見せるのが親の対処の仕方です。
学校の勉強が全てではないという価値観をあげるのも大切な仕事です。

同じ劇場型でも、学ぶべきはジブリの世界に出てくる大人のイメージです。
物静かな対応と落ち着いた声、冒険に旅立つ子どもの背中をそっと見守る。
大人として自分のやるべき仕事に打ち込む背中を見せる。
自分の哲学を持っていて子どもに助言のできる大人です。
尊敬され愛される大人になるために、遅すぎるということはありません。
劇場型で叱る事は感情のコントロールができない大人がすることで、
感情のコントロールができない子どもが育ちます。
子育てに有効な事は何一つありません。

*あなたはいつの間にか激情型叱責にハマっていませんか?
激情型叱責とは
怒ることが目的で怒りを創出してしまう、
コントロール不能な怒り方のことをいいます。

子どもの短所に対して怒りの感情で対応すると、
子どもにも感情的な謝罪を求めてしまうようになります。
感情はどんどんエスカレートしますから、
激情になって相手を屈服させ支配する叱り方でないと気がすまなくなります。
この怒り方をする大人は自分もそういう目に遭ってきた経験を持つとか、
自分自身の資質を生かして生きていない場合です。
親や社会に支配され劣等感しかないと、はけ口は弱い者へと向かうのです。

“ごめんなさい。”“すみません。”等の謝罪の言葉が聞けないと許せなくなり、
よりひどい罰やペナルティーを課して反省を求めてしまうのです。
ひどい罰やペナルティーを課すと、子どもの短所はより強化されます。
それによって怒りが増幅され負のループに陥ります。
怒る理由はなんでもよく、怒ることが目的になります。
その行き着く先が虐待です。

けれど子どもの立場に立ってみると、この世に出てきたばかりです。
言葉で上手く説明できない部分を、
泣いたり怒ったりの感情で表しているだけなのです。
自分の資質について実験を繰り返しているだけなので、
謝罪を求められることに合点がいきません。

人間は自分の資質を曲げて他のことを要求される時に非常に抵抗を示します。
これが反抗期になるので、
反抗期がなかった人と言うのは資質を曲げて育てられていないのです。
支配する力が大き過ぎる場合は抵抗することを諦めてしまうので、
言いなりになったり指示待ち症候群に陥ったりします。
その場合は反抗期がなくても、生きる気力がどんどんなくなっていきます。

親子喧嘩や不仲と言うのはお互いの意思の疎通ができないために起こる、
ただの理解不足であり誤解なのです。
激情型の大人は悲しみや怒りをコントロールすることができません。
自分の激情は他の人や環境が悪いからだと考えるのです。
何かのキッカケでキレるスイッチが入ると、
溢れ出す怒りの激情を止めることができなくなります。

イライラの原因はいろいろあります。
お金がないとか人間関係がうまくいかない、
希望する仕事につけないとか自分の満足する人生を生きていない。
寝不足やストレスで疲れる。
いじめたい理由がたくさんあるのと同じように、
怒りたい理由を見つけたらキリがありません。

けれど激情で子どもを育ててしまうと、
年老いてから子どもにお世話になる時に同じ対応をされてしまいます。
頭ごなしに馬鹿にして怒鳴り暴力を振るう人間に、
ご自身のお子さんが育ってしまったら嫌でしょう?
冷静になって理性と愛を持って育て、
人格を肯定し応援し信頼することが大切です。

愛されることや優しさで包まれることが、
人をどんなに幸福にするかを伝えるのが親の仕事です。
安心と幸せを経験させることによって生まれる、
自己肯定感の高い子を育てる子育てがお勧めです。
感情を発散して怒っても自分の頭でものを考えられる子どもは育ちません。

*そんなことと知っていれば
知っていれば感情的に怒らなかったのにと、
後悔される親御さんもいらっしゃるでしょう。
でも親御さんのせいではないのです。
だってそんなこと知らなかったでしょう?
知っていたらわざわざやりませんよね。
あなたも、あなたのご両親もそんなこととは知らなかったから、
同じように一生懸命怒って育ててきたのです。

怒るのだってエネルギーが必要で眉間にシワがよって人相は悪くなり、
血圧も上がって血管も老化するのです。
怒りのエネルギーは人を斬った刀で自分も斬ります。
だから怒りを振りまく人は孤立してどんどん不幸せになっていきます。
疲れてイライラし頭が痛くなったり具合が悪くなったりするのです。
そんな苦労をわざわざして、
大切な我が子の才能を潰そうだなんて誰も思いません。
社会の常識にがんじがらめになって、
子育ての一番大切なことだけがすっぽりと抜けて伝えられています。

今までみんな知らなかっただけなのです。
最初から叱る必要も怒る必要も罰を与える必要も無かったのです。

人の迷惑になるようなことは、落ち着いて優しく言い聞かせればいいだけです。
幸せな家庭運営も社会の安定も世界平和も、
親が子どもを愛情で包んで育てるところから始まります。
競争や努力はお子さん自身が望んでする時に意味があります。

天から授かった命を慈しみ、
勇気を持って独り立ちできるようにすればそれだけでいいのです。
根拠のない自信を持って、世の中に送り出すだけで良かった。
「あなたは素晴らしい可能性を秘めた子よ。
安心して好きなことを思いっきりできる、
自分も周囲の人も幸せにできる人生を作ってね。」と。

今日もおかげ様


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フェアリーゴッドマザー愛のメソッド 提唱者 夢は誰も叱られることのない世の中にすること。 誰もが勇気を持って天から頂いた才能を生かし、 生き生きと自由に生きられる社会を作ることです。 【すくパラ倶楽部】 https://news.sukupara.jp/item/69632
劇場型叱責と激情型叱責|小鳥遊 樹(たかなし いつき)