サルースの杯   作:雪見だいふく☃️

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ちょこっと長いです。


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さて、ハリー達とのスネイプ教授とクィレル教授の悪巧み考察会は結局のところ見守るに努めるとしてお開きになった。

 

 

 

4階の廊下、三頭犬のフラッフィーがいる部屋に私は入ったことがない。

 

もちろん、世にも珍しい三頭犬はとても気になるし見てみたい。

ハーマイオニーが見つけたという、三頭犬の守る仕掛け扉の先にあるものも興味がある。

 

 

 

だけどそこへ、私は行こうとは思わない。

 

 

「サルースおかえりー」

 

「あら、今日ははやいわね」

 

 

「ただいま戻りましたわ。パンジー、ダフネ」

 

 

 

 

100%の安全が確信できないのならいかない。

 

二人が心配するし、その結果巻き込んでしまうのではないかと思うから。

 

 

 

「ちょっと聞いてよーダフネがノート写させてくれないのよ!」

 

「授業中に寝てる方が悪いでしょ」

 

 

「それは、ダフネが正論ね。パンジーは『闇の魔術に対する防衛術』の授業が苦手よね」

 

 

 

 

八割の確率で寝てるもの。

 

 

 

「べつに苦手ってわけじゃないのよ。実技がない授業がつまんないだけ」

 

「まぁ……クィレルの授業って教科書読んで板書するだけだものね。フリットウィックやマクゴナガルの授業のがやりがいはあるわね」

 

 

 

 

なるほど、座学がダメということか。

 

 

 

「来年からはあると信じて、今は基礎を覚えなくてはですわね」

 

 

知っているだけじゃ実践はできないけれど、知らなかったらそもそもどうしようもない。

そういう意味では闇の魔術に対する防衛術は他の教科よりも、覚えているだけで意味があるのかもしれない。

 

 

 

どのように危険なのかを知り、最適な方法で逃げる。

 

 

戦うよりもずっといい。

 

 

 

「あーあ。勉強飽きちゃった!気分転換にいきましょうよー」

 

「飽きたって……はぁ。まぁいいわ」

 

「明日提出分は終わってるんですものね、天文台なんてどうかしら?」

 

 

 

そろそろホグワーツ城の最上階まであがっても、倒れないはずだ。

私の体力もそろそろ人並みになってきている、はず。

 

 

 

「天文台?いいわよ」

 

「サルースは無理しないでね」

 

「はい!」

 

 

 

森と湖を挟んだ深い渓谷に囲まれたホグワーツ城だから、きっと綺麗な景色がみえるはず。

 

いつか星が見える夜にもあがってみたいとも思っている。

 

一部の魔法生物や、占い師がそうであるように、星読みなんて風流だし、才能があるとは思えないがやってはみたい。

 

 

 

 

*******

 

 

 

 

 

 

スネイプ教授とクィレル教授の密会をハリーが目撃した週末から、しばらく。

 

やきもきしながら日々を過ごすハリー達に対して、私はそこまで心配や不安に苛まれることもなくいたって平和に日々をすごしている。

 

 

「先輩方がピリピリしてるわねぇ」

 

「えぇほんと、図書館も談話室も居づらいわ」

 

「学年が高くなるほど人生がかかってますもの……毎年ノイローゼで倒れる人が出始めるってスネイプ教授がおっしゃられていたわ」

 

 

 

学年末テストが約3ヶ月後に迫る今日この頃。

 

私達3人はノートのまとめを作ったり、それぞれテストに出そうな魔法を見せあっては感想を言い合うなんてことをのんびり行っている。

 

 

おそらく、まだテストの準備に乗り出していない生徒の方が多い中、私達は学年では少数派だろう。

 

とはいえ、レイヴンクロー生は先輩方の雰囲気に当てられたのか、授業後に質問に行っている人達をよく見かけるようになった。

 

 

「あー、毎週二人で会ってればそういう会話もあるのね。サルースのスネイプの助手係もそろそろおしまいじゃない?」

 

「サルースの事だから来年も授業免除の助手なんじゃない?……助手っていうと聞こえはいいけど体よく使われてるわよね。放課後の補講なんてサイアク」

 

「ふふ、そうね。私は楽しくお手伝いさせていただいているのよ?とはいえ来年のことまではわからないわ」

 

 

ハリー達と共にスネイプ教授を疑っている中、二人きりの魔法薬の特別授業を続けているのはリスクもともなう。

 

が、スネイプ教授は慎重な方だ。

 

 

自分が一番疑われる状況で、何かを仕掛けてくることはないだろう。

 

……それにハリーは命を狙われるだけの知名度や影響力がある。

 

だけど私を害したところで、メリットよりもデメリットの方が大きいのだ。

 

なんやかんやと、理由をつけたものの何より私は自分の寮の寮監を信じている……という事が1番の理由だけど。

 

 

「それこそサルースぅ、スネイプ誘惑でもしてテストで作らされる魔法薬が何か聞いてきなさいよ」

 

「サルースが…誘惑……ふふふっ」

 

「無理ねーアハハハハ!」

 

「ちょっとお二人とも酷いですわ!誘惑は、確かにちょっとあれですけど……そんなことを言うパンジーにはもう魔法薬学でフォローはなしですわ!」

 

 

ぼんやりしてる間に二人から笑われてしまった。

 

まったく、遺憾の意である。

 

 

「ごめんごめん!サルース様の助けがないと死んじゃう!」

 

「サルース様のアシストは課題もテストもだけど、授業中の小さいミスをフォローしてくれるとこがすごいものねぇ。ありがとうね」

 

 

「調子いいですわねぇ…まぁ冗談ですわ。テスト、頑張りましょうね」

 

 

 

スリザリン内では、先輩方が代々受け継いでいる、全教科のテスト対策ノートなるものが存在する。

 

過去何十年ものデータが詰まっているのだ。

 

縦の繋がりも横の繋がりも隅々まで、しっかりと強く結ばれているスリザリンならではのもの。

と、ノートを管理している監督生の方が熱く語っていたのも記憶に新しい。

 

一緒に聞かされた、二年生のスリザリン成績トップの先輩と共に少し引いてしまった。

 

談話室にいた他の生徒達がはやしたてるものだから、監督生の熱弁はさらに続き、先輩方が止めに入まで永遠に続くかと思った……閑話休題。

 

 

 

ともかく、既にそのスリザリンの叡知の結晶と呼ばれるノートが回りだしているから、テスト1ヶ月前には全員が写し終わることだろう。

 

なお、このノートは成績優秀者から順に回ってくるため、私はすでに写し終わっていたりする。

 

 

ドラコや、ダフネも同じくだ。

 

 

「そういえば、あのノートの写しに関しては二人とも見せてくれないわよね、なんで?」

 

「なんでかは回ってきたらわかるわよ」

 

「そうですねぇ……お見せしてもいいのですけれど、人が写したやつを又貸ししても意味がないのですわ」

 

 

 

首をかしげるパンジーに、ダフネと顔を見合わせて苦笑する。

 

 

「なになに?何かあるの??」

 

「んーーナイショ。回ってくるまでのお楽しみ」

 

「えー!何でよいいじゃない!」

 

「来週には回ってくるんでしょ?秘密よ」

 

 

 

ふふん、と楽しそうに笑うダフネはパンジーをからかえてご機嫌な様子だ。

 

 

 

 

「サルース!」

 

 

「ダフネに賛成ですわ。楽しみにしていた方がノートを写すのもはかどりますし」

 

 

「えーー二人だけずるーい」

 

 

 

 

スリザリンの叡知の結晶だなんて、大袈裟な名前がついているのには理由がある。

 

 

そのノートは歴々の先輩方が内容を増やしていったのは勿論のこと、より分かりやすく、効率よくと、ノート自体に魔法をかけていったようなのだ。

 

 

それらは複雑に絡み合い、魔法道具と呼べるまでの代物になっていた。

 

 

盗難防止、水濡れ防止、燃えない、スリザリン寮外への持ち出し禁止……などなど。

 

呪文どうしが干渉しないようにするための、諸々の対策もしっかりとられていた。

 

 

 

私が凄いと思ったのは、それらの措置を全て歴代のスリザリンの優秀者が行ってきたという歴史そのもの。

 

ダフネの気にしている部分はこれではなく、そのノートの機能の方だろう。

 

 

そのノートは、開いた者の覚えていないことを教えてくれるようになっていた。

 

開心術や思いだし玉の強化版のようなものだ。

 

 

テスト範囲のうちからそれらをピックアップしてくれるのだから、人それぞれかかれている事は違う。

 

 

だからこそ、他人が写したものを又貸ししても意味がないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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