クリスマス休暇が開けたホグワーツでは、クリスマスのプレゼントに対するお礼の応酬と休暇の思い出話で賑わっている。
勿論、私の周囲の友人たちも。
数日続くそんな輪から抜け出して、私は休暇中に思い付いた可愛い私の発明品達をこの世に産み出すべく、足りない知識を補いに図書館へと向かった。
と、ハーマイオニー、ロン、ハリーと鉢合わせる。
「あ、サルース……あのプレゼントありがとう」
「ごきげんよう、ハリー、皆さん。こちらこそ、ありがとうございました」
いただいたお菓子たちはまだ半数残ってるけれど、美味しくいただいております。
「こないだは、ゴメン。サルースにあたった。でも本当に……スネイプは怪しいんだよ。それとクリスマス休暇中に……__」
それから、ハリーが言うにはクリスマス休暇中に事件があったらしい。
夜の廊下でスネイプ教授やフィルチさんに追いかけられ、ダンブルドア校長と遭遇し、と大冒険をしたようだ。
「そうですか……ハリーが見たと言うのなら事実なのでしょう」
「サルースだったらあの鏡について知ってるかと思ってさ」
えぇ、もちろん。
そんなことより、だ。
「えぇ、存じておりますわ!透明マントを手にされたのですね。それから『みぞの鏡』を見つけられたなんて……なんて素敵なの!!」
「さ、サルース?」
「ちょっと、サルース声が大きいわ!落ち着いてちょうだい」
「これが、落ち着いて、ですって?ハーマイオニー!貴女それがどんなものだか知らないから落ち着いていられるのだわ!」
歴史的な価値だけじゃない。
本当に存在していた、という事実に私は大興奮しているのだ。
確かに『みぞの鏡』はマイナーな魔法具ではあるけれど、その存在はあらゆる者の心の奥を写すものとして記述された文献が残されている。
ただ、それは(他の多くの魔法道具と同じように)この世に1つしかない代物だ。
心の奥底に眠る本当の望みを教えてくれる魔法道具。
それが、『みぞの鏡』の機能だ。
よくあるでしょう?
闘争の中に生き、金も、力も、地位も手に入れたものが死ぬ間際になって本当にじぶんが欲しかったのはほんの少しの幸福と愛だった。なんて締め括られる物語。
そんな虚しい生を送った魔法使いが作らせた、なんて逸話もあるのだ。
「わかった!わかったから!サルースほら、一回場所を変えよう?」
「そうだね、ほらサルースちょっと静かにしててくれ」
慌てたロンとハリーに両脇を挟まれる形で来たばかりの図書館から連れ出されることになった。
外はまだ雪が降る真冬の寒さも厳しい。
ということで、適当な狭さの空き部屋に潜り込んで勝手に暖炉に火を入れる。
「これでいいですわね。さ、ハリー続きをお願いしますわ!まずは鏡の大きさから……」
「ちょっと落ち着きなさいってば!重要なのはそっちじゃなくて、『透明マント』があるからって夜に出歩くのは校則違反なのよ!それに……鏡は確かに珍しいものかもしれないけどまだ謎がたくさん残っているでしょう?!」
さぁ、見たものを話せとハリーに迫る私をハーマイオニーが押し止める。
「校則違反はその通りですわね、でも謎はもう残っていないのではなくて?グリンゴッツから持ち出された宝である賢者の石を三頭犬が守っていて、それを誰かが狙っているのでしょう?でもそれは先生方もご存知でだからこそホグワーツで守護されていると」
「サルース?!なんでそれを……!」
「き、君もあの部屋に行ったのか?!??」
クリスマスに入る汽車の中での考察はどうやら当たっていたらしい。
ハリーとロンが分かりやすく狼狽えている。
……君もってことはやっぱりロン達は三頭犬と遭遇していたのね。
大方、立ち入り禁止になっている廊下の部屋にでもいるんだろうけれど。
「サルース……あなたハリーの言った『三頭犬』ってワードだけでそこまで?」
「いいえ、それ以外にもずっと3人とも何かを探していたでしょう?だから少し考えたら分かったわ。それでどうしてそんなにも躍起になっているのかは理解できないけれど……」
そんなことよりずっと『みぞの鏡』の方が大事だ。
もちろん、賢者の石についても興味はある。
しかしこのホグワーツが本当に隠そうとしているものを生徒が見つけるだなんて絶対に不可能だ。
だから三人も、不死や黄金は早く諦めた方がいいのに。
「どうしてって……気にならないのかい?」
「えぇ。先生方が守っているのでしょう?私たちが心配したってしょうがないわ」
「それはそうよね……」
そう……グリンゴッツよりも厳重に守られた宝よりも、ハリーは自分の事を心配した方がいい。
仮にも命を狙われていると仮定してその犯人は校内にいるようだし、もうすぐ次のクィディッチの試合がある。
私の言葉に納得したハーマイオニーは深く頷いているけれど、男の子たちはそれでは納得いかないらしい。
正義感、というやつだろうか。
それとも野次馬根性?まぁどちらでもいい。
好奇心が強いのは結構。
わたしとて人の事を言えたものではないが、それで盗人用の罠に彼らが捕まらないことを祈ろう。
……魔法使いの罠って本当にえげつないものが多いのだ。
彼らの命が危ない。
「でもスネイプが犯人だったら!マクゴナガルに報告しないとだろ?」
「ロン、私たちが気付くようなことに先生方が気づかないわけがないわ。それに……例えスネイプ教授がそうなのだとしても、一番に優先すべきは貴方達の安全よ」
「確かにそうよね、ハリー……もうすぐクィディッチの試合があるのよね?」
「あー、うん。ハッフルパフとね」
肩をすくめるハリーはクリスマス明け早々からほぼ毎日クィディッチの練習三昧だという。
この寒空のなかご苦労なことだ。
私だったら確実に、五分も持たずに風邪を引く。
友人に取られていた原作本が、帰ってきたのでまた随時更新していきます。
お付き合いください。