サルースの杯   作:雪見だいふく☃️

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 誤字報告ありがとうございます。


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さて、クリスマス休暇といえども私の基本的な行動は変わらない。

 

決まった時間に起き、身支度を(プティが)整え、お散歩をしてから図書室へ、それから朝食を摂り、郵便物に目を通してから、地下の自室へ移動して魔法薬を調合し、昼食を摂り(たまに忘れる)、また地下へ。

 

 

 

 

「サルースお嬢様、ご友人方から急ぎのお便りでございます」

 

 

「お返事を書くわ。便箋は薄桃色の……それね、ペンはそれに合わせて適当に」

 

 

いつもどおり、の中に加わったお友達との繋がりの時間。

同じ部屋で寝泊まりをしていなくても、パンジーやダフネとお友達でいるという感覚がある。

 

とても不思議で暖かい気持ちになるけど、すごく嬉しい。

 

 

 

 

「はい!こちらに。それからサルースお嬢様宛のお荷物も届いてございましたので、お部屋にかけておきました。夜の雪原のような素敵なお色、流石サルースお嬢様です。見事な目利きでございます!!」

 

 

「ありがとう。今夜着るから支度を手伝ってね」

 

「はい!!!勿論でございます!!!」

 

 

 

 

そして、家とボージン叔父様のお店と極たまにホグズミード村、魔法省くらいしか外に出ることがなかったというのに、このクリスマス休暇はほぼ毎日どなたかの家の夜会にお呼ばれしている。

 

 

 

母様と父様は、友人たちとの繋がりを喜んでくださったし、プティには泣かれた。

私が外に出て友人と過ごすということがとても嬉しいらしい。

 

 

そして瞬く間に、パンジー達から持たされた、流行のドレスを掲載した雑誌をもとに、夜会の数に合わせてドレスやアクセサリーを用意してくれた。

 

母様からいくら使っても構わないと、任せられたらしい。

 

それはそれでプティが感極まって泣いたのは余談である。

 

 

 

 

勿論、私もプティと一緒にドレスは好みの色や形をえらんだ。

アクセサリーは面倒になったので全て任せてしまったが。

 

 

 

 

「サルースお嬢様、ご不在の間に書斎に本が78冊、菜園の材料各種が増えてございますのでそちらも確認くださいませ」

 

 

「ありがとう、それなら今からそちらへ行くわ。本は……リストを部屋に置いておいて?体力が足りなくて城での生活が大変なの…これからは毎日お庭にも行くわ」

 

 

「サルースお嬢様……ほんとうにご立派になられて……かしこまりました。お嬢様がお怪我などなされませんよう細心の注意を払って整えて参ります」

 

 

「ほどほどでいいわよ。そのうち森にはいるつもりですもの」

 

 

あまり整っていたんじゃそっちに行けないわ。

 

 

「森……そうですかサルースお嬢様まで……かしこまりました。相応に、庭の一角を作り替える許可を旦那様からいただいて参ります」

 

 

 

「?えぇ、お願いね」

 

 

 

我が家の庭……といっても屋敷の周囲は森が広がっており、マグル避けがかけられているため魔法生物も住んでいるとか昔父様がおっしゃられていた。

 

マグル社会でも貴族位のあったバーク家(聖28一族他大きな家はだいたいそうだが)は領地を持っており、森を中心とした一帯の地主である。

 

もちろん、マグル社会における納税や統治に関しては当主が行っていた時もあったが今はこちらの息のかかったマグルや存在を消される運命にあった純血貴族のスクイブが代行してくれているのだが……

 

 

ともかく、我が家の庭がどこまでを指すのかわからないがプティが力を入れるからにはよっぽどのものが出来る事だけはわかる。

 

 

 

「ランチを終えたら支度をはじめるのよね?時間が足りないわ」

 

 

新店舗の商品も増やさなくてはいけないのに、目の前のことで手一杯だなんて!

こんなに忙しいことは今までなかった。

 

とても、充実していて楽しい。

 

「サルースお嬢様が体調を蔑ろにしないよう、プティめはいつも目を光らせていなくてはいけません」

 

「ふふっ……宜しくお願いね、プティ」

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

「サルース!ほんとに来てくれたのね!!」

 

プティに飾り付けてもらい、送ってもらったのはパンジーのお家の門前。

チャイムを鳴らせば、ご当主を押し退けてパンジーが走り出てきた。

 

……ヒールが高くないとはいえよくこの靴で走れますわね。

 

 

「パンジー、ごきげんよう。お友達からのご招待ですもの。ほら、ドレスもちゃんと揃えたのよ?」

 

「うんうん!とっても可愛いわ!ほら!お父様!この子がサルース、バーク家の一人娘よ!」

 

 

走りよってきた勢いのまま、追い付いてきたご当主……パンジーのお父上に手を繋いだまま紹介してくれた。

 

カーテシーと共に御挨拶を交わし広間へと足を運ぶ。

 

エスコートするわ!とはりきるパンジーにつれられ、向かったお部屋には見覚えのある友人達もいて安心した。

 

ご家族と来ているのか、部屋のなかほどで子供たちが集まっている場所と、大人たちが集まっている場所に分かれているらしい。

 

 

 

「あら、サルース!ごきげんよう。素敵なドレスね」

 

「ダフネ、ごきげんよう。ありがとうございます。ダフネもパンジーも、とっても可愛いですわ」

 

 

 

きらびやかな雰囲気に飲まれない、ドレス姿のお二人はそれぞれによく似合ったデザインでお互いにくるくると回って見せあう。

 

ひとしきり、感想を述べ終えたところで私のテンションも戻ってきた。

バーク家としての御挨拶にまわるか、という考えが浮かぶ。

 

 

「パンジー…御挨拶にまわるのが先でしたわ」

 

 

「そんなのパパ達が勝手にやってるわよ」

 

「あら、サルースは一人で来てるんじゃなかった?」

 

 

 

そういうことだ。

 

 

……とはいえ、私もマナーは叩き込まれているもののこういったパーティに参加するのははじめてである。

 

母様と父様がいらしていないことが急に心細くなってしまった。

 

 

 

 

「サルース?こんばんは。二人とも少しサルースを借りてもいいか?」

 

「ドラコ!こんばんは」

 

「「えぇ、どうぞ」」

 

 

 

こちらも綺麗に着飾り、こういった場にとても慣れた様子。

 

 

「よく似合っているな。母上からサルースに礼をと言われているんだ。両親と話してくれないか?」

 

「えぇ、勿論。良かった、大人たちの方へどうやって挨拶にいこうか悩んでいましたの」

 

「あー……一人で来ているのか。わかった」

 

 

 

ドラコに連れられるまま、マルフォイ家のお二人のもとへ向かう。

 

あちらも息子が近づいてくるのに気づいたらしい。

他の大人たちとの会話を切り上げ、寄ってきて下さった。

 

 

「父上、母上、こちらがサルースです」

 

「あぁ。サルース・バークさんだね。ドラコの父のルシウスだ。息子から話は聞いている。とても優秀だとか」

 

「ご機嫌よう、バークさん。ドラコの母のナルシッサですわ。遅くなったけれど素敵なレターセットをありがとう」

 

 

 

ドラコは色合いがお父上、お顔はお母上に似ているらしい。

お二人ともとてもお優しい笑顔で迎えてくださった。

 

「お初にお目にかかります。サルース・バークと申します。ドラコには入学前からお世話になってばかりで……レターセットも気に入っていただけたのなら幸いですわ」

 

カーテシーと共に御挨拶を。

ルシウスさんはボージン叔父様経由の手紙でのやりとりか、店番時のやりとりがあるけれど、それはなかったこととする。

 

 

 

「父上、サルースは先週ホグズミード村に魔法道具の店を開いたんですよ。成績も学年で一番ですし、あのスネイプ教授の助手をしているのです」

 

「ドラコ!大袈裟ですわ。助手だなんて烏滸がましい、お手伝いをさせていただいているだけですの。お店の方はナルシッサさんにお贈りしたような女性向きの雑貨も扱っております。小さなお店ですがお時間ありましたら是非お越しください」

 

 

 

何故か自分の事のように誇らしげにお父様に報告するドラコの腕を引き言葉を止める。

 

せっかくなのでお店の紹介もしておいたけど。

 

 

 

 

「本当に優秀なのだね。君のご家族には昔から世話になっているよ。困ったときにはいつでも相談したまえ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 

ルシウスさんのご厚意には、そのうち甘えさせてもらうとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 


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