サルースの杯   作:雪見だいふく☃️

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『賢者の石』命の水を生み出し、あらゆる金属を黄金にかえる。

錬金術という学問はこれを生み出すために作られたと語る者もいる。

 

 

無限の黄金も、永遠の命も、多くの人が望む宝だ。

 

 

 

が、クィレル教授がそれを望むだろうか?

スネイプ教授にしても、だが。

 

 

 

たしかにそれらは価値のあるものだし、研究できるのであれば私とてほしい。

 

 

黄金は魔力伝導がとても良いとされており、いつかの時代では杖の一部を金とする手法が生まれ、廃れていったとか。

 

ガリオン金貨が純金なのは有名だが、それも小鬼の秘術が施してあるからだとか。

 

魔法薬によっては、粉末を入れる場合もあるし……だけどそれなら命の水についての成分はなんなのか……老化は止められないと聞くからには『逆転時計』のような時間に及ぼす効果ではなさそうだけど……いや、あれも肉体の経過時間は変わらないから…………研究してみたい。

 

手に入るのなら逆転時計も。

 

もちろん、バーク家では魔法省に保管されている様々な魔法道具に関しても修理依頼を請け負ったりもしている。

 

が、『逆転時計』に関してはさすがに魔法省内の研究機関が一括して管理をしている。

そのため、父様や母様が出向きメンテナンスを行うことはあれど、私の手元には来ないというわけだ。

 

思考が流れてしまった。

 

 

もとい、だ。

 

 

『賢者の石』を研究者としてのお二人ならば求めることがあるかもしれない。

だが、それならば危険を犯さずともしかるべき手続きをとればホグワーツ教授がその訴えを受け入れられないということはないだろう。

 

そもそもお二人ともお金も、寿命も興味がなさそう……というか無頓着な感じがする。

 

 

 

 

あくまでも、これは私の勘だが……これらを欲しがっているのは彼らではない。

 

ダンブルドア校長のお膝元で、これだけ大きな事をやっているのだ。

単独犯ではないということも十分に考えられる。

 

 

サブミッションは『ハリーの命』……?

 

 

ということは……

 

 

 

「ねー!ってばサルース!!」

 

「ひゃい?!!!」

 

 

 

突然の大きな声と肩にかかった手に驚き、顔をあげるとコンパートメントの全員がこちらを見ていた。

 

「話聞いてなかったでしょ?私達の家のパーティーにくるわよね?」

 

「え、あの……何が何やら……」

 

 

「だーかーらークリスマスパーティーよ!!!!」

 

 

 

 

どうやら、考え事に没頭している間に各家で行われるクリスマスパーティーに招待してくださるという話になっていたようだ。

 

改めて、招待状は下さるらしいがとにかく口約束がほしいと。

 

 

「えぇ、勿論ですわ!でも、あの私そういった場にお呼ばれなどしたことがなくて……ご迷惑をおかけしないよう心掛けますわね」

 

「大丈夫よ!身内だけの軽いパーティーだし、本格的なやつは私達なんて呼んでもらえないわよ」

 

「サルースなら問題ないと思うけど……ドレスコードは大丈夫よね?」

 

 

パタパタと手を振り笑うパンジーと、小さく首をかしげるダフネを見返しつつ、実家のクローゼットを思い浮かべる。

 

……パーティードレスはある。

流行りのものではないし、今の自分の体型にあっているかも不明だが……

 

 

 

 

「当日までに揃えておきますわ……」

 

「え。ドレス持ってないの?」

 

「最近の流行とかおすすめのお店について、しっかり教えておかなくちゃ」

 

 

 

 

私の髪型に目を光らせるパンジーを彷彿とさせる勢いのダフネが、がっしりと手を握ってきた。

 

 

「イイわね。私もてつだってあげる!」

 

 

早速と、鞄から雑誌を取り出し始めたパンジーは一体何種類のファッション紙を購読しているのか謎だ。

 

 

「お、お二人とも落ち着いて?ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

それから、ホグワーツ特急がホームに停まるまで男の子たちはおやつと読書に勤しみ、私達3人はどんなドレスがクリスマスパーティーに相応しいかと話に花を咲かせるのだった。

 

 

 

 

******

 

 

「プティ!ただいま戻りましたわ!」

 

「お帰りなさいませ!!サルースお嬢様!プティはお嬢様のお帰りの日を毎日毎日数えては心待ちにしておりました!お顔色も明るくなられて大変ご立派です!!!」

 

 

 

ホームに降り立った私達は、それぞれの家族のもとへと別れた。

もちろん私のお迎えはプティである。

 

 

 

「私も、貴女が変わらずいてくれて嬉しいわプティ。さぁ家に帰りましょう?」

 

「はい!お掴まりくださいませ!」

 

 

プティの長い指が特徴的な手を繋ぎ、独特な姿あらわしの感覚を一瞬味わったあと馴染み深い空気の中へと降り立った。

 

 

 

「ありがとうプティ。母様と父様はいつもの場所?」

 

「いえ!光栄にございます。奥様と旦那様はサルースお嬢様のお帰りに合わせて広間に入らしているはずです」

 

 

「あら……それは珍しいわね。行きましょうか」

 

「はい!それだけお二方もサルースお嬢様のお帰りを心待ちにしておられたのです」

 

 

 

この忙しい時期に私のために時間を作ってくださる母様と父様のためにも足早に屋敷を移動し、広間へ入れば二人とも相変わらずの様子で迎えてくださった。

 

それぞれと抱擁を交わし、プティが夕食を用意する間、このホグワーツであった様々な事を話す。

 

それは夕食中もそのあとも続き、久々の家族との時間にその夜はゆっくりと眠ることができた。

 

 

 

 

 

 

 


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