サルースの杯   作:雪見だいふく☃️

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クリスマス休暇がやってきた。

 

ホグワーツ入学以来はじめての帰省期間ということで、勿論私は家に帰る。

 

スリザリンの生徒たちはみんな冬休みを実家で過ごすらしい。

 

 

 

「サルースのお家はクリスマスパーティ開かないの?」

 

「クリスマスパーティ……家族と行いますわ。母様と父様とプティのお料理を囲みますの。あとはボージン叔父様からの贈り物の山分けですわね」

 

 

 

帰省のホグワーツ特急は、パンジーとダフネ、それからドラコと、クラッブとゴイルの6人でコンパートメントを占領し、それぞれのクリスマス休暇の過ごし方について話題に花が咲いている。

 

 

 

「わぁお。すごく庶民的」

 

「ばかね、サルースが言葉通り一般的に過ごしてるわけないじゃないの」

 

「たしかに、御両親と山分けってどういうことだ?」

 

 

とはいえ、話の中心はパンジー、ダフネと私。

女子三人の会話にドラコは苦笑いを、あとの二人はひたすらおやつを食べるといった様子だ。

 

 

 

 

「その信頼は何なんですの……山分けは山分けです。それぞれ使いたい部品がありそうなものを選んだり、解呪したい呪いのものを選んだり、直してみたいものを選んだり……普通ですよね?」

 

「「全然普通じゃない/わ」」

 

 

ボージン叔父様のお店で廃棄品となった魔道具達を、定期的に頂くので確かにクリスマスという事では当てはまらないかもしれない。

 

 

「勿論、普通にプレゼントもいただきますよ?」

 

 

「うーん。そこじゃないのよね」

 

「ちょっと惜しかったわね」

 

「まぁ、サルースが楽しいならいいんじゃないか?」

 

 

 

どうやら我が家のクリスマスパーティーは一般的ではないらしい。

 

 

 

我が家の事はともかくと、それぞれの家で開かれるクリスマスパーティーのことを話し始めた三人の話に耳を傾けつつ、増えてきたゴミを片付ける。

 

みんなでおやつを食べながらの旅だが、先ほど車内販売カートの魔女から、大量のお菓子を買い込んだのに約二名の活躍で既に無くなりそうだ。

 

 

手持ち無沙汰にクラッブとゴイルの食べ終えた蛙チョコからオマケカードを抜き出し簡易的な神経衰弱を行うことにした。

 

このカードの難しいところは、一度伏せたカードをもう一度表に向けた時にさっきまでと同じ住人がいるとは限らないところだ。

 

偉大なる先駆者アルベニック・グラニオン(クソ爆弾の生みの親)のカードを揃えたことで、カードの住人達から揃ってウインクをもらった。

 

 

 

ふと、相変わらず仲直りのできていない友人達のことを思い出す。

 

彼らは何か、もしくは誰かを探しているらしい。

 

……恐らくこれははじめての箒の授業のすぐ後辺りからだ。

ドラコの嘘で彼らが罰則をうけそうになったことがあるらしいが、おそらくその頃だろう。

 

 

キーワードとして彼らが洩らしている言葉はいくつかある。

『ポケットに入る宝物』『三頭犬』『ハリーの命』『ニコラス・フラメル』といったところか。

 

 

これらの単語が出たとき、三人の誰かしらが分かりやすく内緒や秘密を隠そうとするためのおかしな言動があった。

 

……彼らは探偵には向いていないらしい。

 

 

 

 

さて、まずは『ハリーの命』が狙われていると、仮定しよう。

 

クィディッチ中の箒暴走事件、ここから彼らはそれを導いたらしい。

だがそれでは……少し短絡的ではないだろうか。

 

確かにあのときハリーの命は危険にさらされていた。

が、あれでは事故にしたって不自然すぎる。

『ニンバス2000』に呪いをかけられるほどの魔法使いであれば、あんなにも目立つところで事を起こさずとも生徒一人くらい簡単に消せるだろう。

 

 

そうなると、だ。

『ハリーの命』はメイン目的ではなくその過程、もしくはサブミッションだとする。

 

 

次は『三頭犬』これについては私が持っている情報は少ない。

 

マグルの世界でも地獄の門番とされている程有名な魔法生物で、ギリシャ原産の獰猛な生き物だ。

しかし、犬としての性質も強く備えており強者や群れの長、主人と認めたものには従順だという見解もある。

 

そのため、ドラゴンよりも扱いやすい門番なのだとか。

 

広く知られている弱点……といってもよほどの専門書かギリシャの歴史文献くらいでしか取り上げられることはないが……音楽を聴くと眠ってしまうらしい。

 

そのため、グリンゴッツでは起用されていないのだとか。

 

 

ハリーはハロウィーンの夜『三頭犬』とスネイプ教授が一緒にいたと言っていた。

成る程、あの日スネイプ教授の足の噛み傷は『三頭犬』の仕業ということだ。

 

そうなると、『三頭犬』もトロールと一緒に招き入れられた?

 

いや、ハリーは『三頭犬の部屋』だと言っていた。

それならば『三頭犬』はホグワーツの何処かで門番をしていると考えた方がよさそうだ。

 

『門番』が必要とされるのはいつだ?

……何かを守るとき、扉の前に配置される役目。人か、宝かそれらをホグワーツが守っている?

 

 

宝についてもハリーは私に訪ねてきた事がある。

 

『グリンゴッツの金庫破り』について尋ねられたことがある。

 

あの時も不思議だった。

 

なぜ、『何も盗られなかった』と報道された事件に対して、『ポケットに入る宝物』なんて具体的な質問をしたのか。

 

報道はこうだった。

【破られた金庫は奇跡的に空になった直後だった。そのため何も盗られてはいない。】

 

金庫の中身を知っているのは、盗人と持ち主だけ。

ハリーは空になったその時、持ち主と共にいたのだろう。

 

 

 

 

 

 

……あぁ。そうか。

彼らが行き着いた答えに察しがついた。

 

 

 

 

『ニコラス・フラメル』の『ポケットに入る宝物』

 

 

 

どうやらホグワーツでは『賢者の石』が保管されているらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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