サルースの杯   作:雪見だいふく☃️

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魔法薬学のたびにこれでは……と、スネイプ教授に抗議すべく、授業後少し地下室に残ることにした。

 

 

もちろん、使用済み教材たちの清掃も行う。

あるべき場所へあるべき姿で。

口ずさむように呟くのは母様の癖がうつったから。

 

 

たぶん、杖のひと振りで片付けることも出来るけれど使った道具は手作業で戻したいと思うのは変だろうか。

 

道具の状態も確認できるし、いいと思うのだけど。

 

 

 

「それで、我輩に何のようだ」

 

 

普通に片付けに夢中になってしまっていた。

 

 

 

 

「あ、すみません。私が授業のお手伝いを行うという件ですが……」

 

 

「今年一年は続けてもらうが何か問題でも?」

 

 

 

問題……は、授業の雰囲気が悪いことなのだけれど、これは私が助手でも生徒でも変わらないだろう。

 

スネイプ教授を納得させるにはどうすべきか。

 

 

「僭越ながら……何度か授業を重ねて、調合時の危険性については皆さん身を持ってお分かりになられたかと思います。それにグレンジャーさんをはじめ調合に不安のない方も多い中私だけ調合免除となりますと不公平かと……」

 

 

 

二人係で見て回る必要がなくなってきたこと。

薬を完成まで仕上げられる人が少なからずいること。

 

 

「何より、私が調合を先生に見ていただきたいという…事なのですけれど……」

 

 

せっかくプロがいるのだ。

私とて学びたい。

魔法薬は作り手によって個性が出る。

 

私の場合は効率よりも効能をとるから少々製作に時間がかかるし、使う材料にも人一倍気を付けている。

自宅で栽培する(屋敷の温室でプティが作ったもの)程度には手塩にかけて、魔法薬を作り販売していた。

 

 

スネイプ教授の場合は効率なのか、独創性なのか、味なのか、見た目なのか。

 

授業の様子を見るに一番は正確さ、それから効率だろうとは思うけれど。

 

 

「……フン。よかろう、授業中の助手については1年続けてもらう。加えて、授業後、我輩の調合を手伝いたまえ」

 

 

 

んーーーー。

後半部分だけ受け入れられたと、言うわけか。

 

 

スネイプ教授の調合を近くで見られるなら、授業中のお手伝いくらい仕方がないかとも思える。

 

 

「助手と名乗らせていただける程のものではありませんが……宜しくお願い致しますわ」

 

 

 

 

 

当初の目的とは違うものの、より大きな利益を得られた気がするので良しとしましょう。

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

 

さて、そんなわけで魔法薬学では変わらずお手伝いのためぐるぐると教室を回る役を仰せつかり。

 

加えて夕食後、調合の見学と少しのお手伝いをすることになった。(教授御自身の「こなさなくてはならない調合リスト」の羊皮紙が二巻きを超えた時は空き時間に勝手にやらせてもらえる)

 

 

 

 

 

そして夕食後。

 

 

 

「フレッド、ジョージ、ご機嫌よう」

 

 

「「やぁ!サルース!!」」

 

 

談話室への道でパンジー達と別れて、薬草学の部屋へ向かうと扉の前に二人がいた。

 

どうやら目的地は同じらしく、どっちが先に入るのかでもめているようだった。

 

 

 

「お二人もお手伝いですか?」

 

 

 

「そぉんな崇高なものじゃないね」

 

「まぁ言い様によってはそうとも言える」

 

「「サルースは何をやらかしたんだ??」」

 

 

「やらか…………いえ、私は教授に頼んで魔法薬の授業をうけに来たのですわ」

 

 

 

「「マーリンの髭……」」

 

 

 

大袈裟にくらくらと、倒れて見せた二人はどうやら罰則でここへ来たらしい。

 

この人達こそ何をやらかしたのだか。

 

 

「スリザリンの才女様が罰則な訳なかったか」

 

「我らがグリフィンドールの才女様が御執心って噂だからな」

 

 

 

「なんですかそれ……」

 

 

 

グリフィンドールの才女の名前はスリザリンでも有名だ。

ハーマイオニー・グレンジャーさん。

マグル生まれの天才らしい。

 

図書館でも良く見かけるし、読んでいる本は2学年程上の内容のもののようだから確かに彼女はとても優秀なのだろう。

 

 

スリザリンの才女、とは初めて聞いた。

話の流れからして私の事らしいが……

 

スリザリンのビスクドールだとか、蛇寮の小さい子とか散々言われているいるのは知っている。

 

 

 

「グリフィンドールじゃ有名だぜ?」

 

 

スリザリンではそうでもないと思うけれど……まぁいいか。

 

 

 

 

 

 

「そろそろ、行きましょう?教授を待たせてしまいますわ」

 

 

「「げ……」」

 

 

 

軽く扉を叩けば、暫く中から扉が開かれた。

 

 

するりと、私の後ろにまわった双子に首をかしげつつスネイプ教授へ訪問の目的を告げれば中へと通してもらえた。

 

 

 

「そっちの双子は鍋を磨きたまえ。杖無しで、だ。……バーグはこのリストの品を選り分けて持ってきたまえ」

 

「「仰せのままに~」」

 

「承知致しました」

 

 

ずるずると足を引き摺りながら山となった鍋のもとへ向かう双子を憐れに思いつつ、私も材料保管棚へと向かう。

 

 

瓶に浸けられた魔法動物の素材や乾燥させ吊るされている植物の素材。

鍵のかかった瓶に詰められた粉末や、何かの汁。

 

 

とても充実しているし、保管のされ方も完璧なのだろう。

 

 

屋敷にある私の地下室も同じ作りにしようかなんて算段をたてながらリストの中の材料を少し多めに集めていく。

 

 

 

大きめの銀製のトレーを拝借して、それらを教授と双子のいる部屋へ運び込む。

 

 

大鍋を、火にかけ水を暖めているスネイプ教授へ材料を差し出せば隣の台へ置けとの指示をもらい、そこからは時折手伝いながらも魔法薬が出来上がっていく様子を観察する時間になる。

 

マグル製の『ノート』といつもの『万年インクボールペン』(という、名前で販売されることになった)をかまえ、気づいた点があればメモを取りつつただ無言で作業を見る。

 

 

 

「「……サルースってやっぱりクレバーだよな」」

 

 

「ウィーズリーは発言を禁ずる」

 

 

 

 

 

ちらりと、後ろへ目を向ければ無音で抗議のパントマイムをする二人が目に入った。

 

 

……お二人には負けますよ。

 

 

 

 


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