サルースの杯   作:雪見だいふく☃️

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マクゴナガル教授の案内に続き、入室したホール脇の小さな小部屋。

小さなと言っても1年生全員が入ることができるので先程までいた大理石のホールがそれだけ大きいということなのだろう。

 

さて、マクゴナガル教授は新入生歓迎会での組分けの儀式まで退出された。

 

またしてもザワザワと話し声が広がる。

 

 

ハリー達周囲の生徒達は不安と緊張をどんどんと募らせているらしい。

顔色がとても良くない。

 

 

 

「きゃあ!!」

 

「うわぁぁ!!!」

 

「な、なに??ひっ?!」

 

 

 

突如室内に悲鳴が上がった。

ついに緊張のピークでおかしくなったのかと声のした後方を振り返れば、どうやらそうではないらしい。

 

「ほぅ。本物のゴーストは初めてみました」

 

 

後ろの壁からゴーストが20人程現れた。

真珠のように白く透き通っていることを除けば、その姿は人と変わらない。

生前の姿そのままなのか、死したその時の形をとっているらしい。

 

 

……ロンは私をあれに例えたのか。

 

 

ジトリとロンの顔を見れば、なるほど。

ハリーと揃って真っ青だ。

 

目が合うとキョトンと見返された。

 

 

「ロン?顔が真っ青でゴーストみたいよ?」

 

「ぐう……さっきの事根に持ってたのかい?ごめんってアレに例えてさ!」

 

 

私の視線を察してもらえたらしい。

さすがに死者それも動く半透明の死体と比較されるのはレディとして受け入れられない。

 

まぁ、ロンのデリカシーに関しては置いておく。

受け入れられないだけで、傷つけられた訳ではないし。

 

あくまでもこれは、さっき揶揄われたことの仕返しだ。

 

 

 

「ふふっ気にしてないわ。緊張はほぐれた?」

 

「……あーお陰様でね!おいハリーさっきから笑ってるのバレてるぞ」

 

「ふふふっ……ごめんごめん、サルースありがとう、お陰で元気がでてきた」

 

 

 

ハリーも顔色が戻ったようでなにより。

 

 

「いえ、私は何も。それとね?組分けの儀式の方法ではなくて何処へ入りたいのか、考えるようにマクゴナガル教授はおっしゃられたように思うの。だから青くなるのは内容を知ってからでもいいのではないかしら」

 

 

でなければわざわざホグワーツにおける寮制度のあり方や、各寮の特徴、寮生の関係についてここで口にしたりしないと思うし。

 

 

二人とはホグワーツ特急の中でもどの寮に入りたいのか話し合ったけれど、結局その答えは出たのだろうか?

 

私は変わらず、知識と開発欲を満たすためにはレイヴンクローが良いのではないかと思っているけれど家族の過ごしたスリザリン寮にも興味がある。

私の好きな魔法薬の教授が代々寮監をしているというのもあるが……

 

 

小部屋を通り抜けていくゴースト達が私達より一足はやく大広間へと消えていってからすぐのこと。

 

 

 

私達は大広間へと招かれた。

 

開け放たれた扉の先はまたも魔法に満ちた空間だった。

 

 

見上げるほどに高い天井には屋内にもかかわらず夜空が広がり、無数の蝋燭が星のように浮かんでいる。

正面には教員用の机があり、その向かいに4列の大きな机が並んでいる。

それぞれの寮に別れ座る生徒達は新入生に注目しているようだ。

 

 

 

「名前を呼ばれた者から前へきなさい」

 

 

 

教員席の中央にいる白く長い髭を蓄えたご老人……アルバス・ダンブルドア校長。

星を散らしたような青い瞳が子供達を見守り微笑みを浮かべている。

 

現代魔法界の賢者が目の前にいる。

 

他の教授の皆さんもそう、最高峰の教育者達が並んでいる。

 

 

 

こんなにも胸が高鳴る事があるだろうか。

 

星空の天井も輝く銀の食器も粛々と行われる組分けの儀式もこれから始まる学びの日々に比べたら……

 

 

「バーク・サルース!!!……前へ」

 

 

少々周りの声に疎くなっていたみたいだ。

どうやらもう私の番らしい。

 

マクゴナガル教授の声に促され古びた帽子の待つ椅子へと歩く。

ゆっくりと、覚悟を決めるように。

 

大広間中の視線が全て私に注がれている。

 

椅子の前に立ち座る直前、こっちをみる生徒達を見渡す。

 

 

スリザリン生の中には『私の事』を知っている人が少なからずいるようだ。ドラコの姿もある。

 

ハッフルパフ生は純粋な成り行きを見守る目。

 

レイヴンクロー生は探求心か、探るような目。

 

そしてグリフィンドール生、1番の好奇心を称えた目だ、ロンもハリーもここにいる。

 

 

 

こつり、こつり、と

大理石の床が私の足音を返す。

 

 

微笑むダンブルドア校長やマクゴナガル教授に目礼をし、椅子へと座れば頭より一回りも大きな帽子が被せられた。

 

 

『……おや、バーク家の娘さんか。両親や一族同様に君にも素晴らしい才能があるようだね』

 

 

落とされた帽子から声がする。

直接脳へと語りかけている……というより思考へ干渉している、かな?

 

 

ふむ、そういった類いの魔法具か。

 

何百もの呪文に匹敵する魔術が籠められてなお、創設者の時代から機能し続けるとは叡知の結晶といえる代物だ。

素晴らしい!

 

 

『はじめて私をかぶってそういった感想を抱くのはバーク家に名を連ねる者達くらいだよ。ありがとう、さて若人よ夢を抱き知識と力、未知と平穏を求めているのだね?』

 

 

 

 

貴方が言うのならきっとそうなのだろう。

私は夢を叶えるための知識と力、それからワクワクできる未知と変わらない平穏という矛盾したものを求めている。

 

私は私の開発欲を満たしたい。

魔法薬も魔法具もこれからも作り続けるし、それを邪魔されない環境がほしい。

 

 

『ふぅむ……君の求める平穏は………──スリザリン!!!!」

 

 

 

 

……帽子脱ぐ前に耳元で大声をあげるのはやめてくれないかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お待たせいたしました

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