盲目の少女 作:torinikuyakiyaki
今回もどうぞ宜しくお願いします。
じわじわと百合を滲ませていって、最後にはハッピーエンド百合に出来るように頑張っていく所存です。
ロックハートの授業以外は本当に楽しいものだった。ロックハートも授業だけが最悪だった。ロックハートは私がやろうとすることを先回りして取り上げることを止めなかった。あまりに露骨な行動に我慢が出来なくなり、寮監のスネイプ先生に相談した。スネイプ先生は、最初はロックハートと関わりたくないという思いから、私の訴えをうやむやにしようとしてきた。なので、私はロックハートの授業をボイコットして、スリザリンの点数を下げまくると脅した。実際、スリザリンの得点はクィディッチを除いて、私の授業での得点がかなりのものだったため、スネイプ先生は仕方なく対処に動いてくれた。しかし、ロックハートは今度は私を目立ちたがりで、ロックハートのように名声を強く求める生徒だと勘違いしたらしく、余計な言葉かけが増えていった。
「君は目立ちたいのだろうけど、私のようになるにはまだまだだね!」
とか、私がレポートを出せば、
「君がいくら目立ちたくても、他人の手を借りて書くのはよくないよ!今回は大きな心で見てあげるけどね!」
など、勘違いに勘違いを重ねた発言が増えていった。
イライラする毎日だったが、嬉しいニュースもあった。ドラコがクィディッチのシーカーに選ばれたのだ。ドラコは、初めは父ルシウスの力を借りて賄賂で勝ち取ろうとしていた。しかし、私が誰にも有無を言わせない実力を見せるべきだとアドバイスをしたのが功を奏した。
ドラコは、父ルシウスから賄賂という形の助力ではなく、クィディッチの元選手だった人をコーチにつけるという協力を得て特訓をした。特訓は夏休みの間、休むこと無く続き、彼の実力は元選手の人からみても申し分の無いものとなった。その結果ドラコはスリザリンの選手選抜を勝ち抜き、見事シーカーの座を勝ち取ったのだ。
私はクィディッチというものが特別好きというわけではない。ただ、彼が自分の望みを正当な努力によって叶えたことは、私にとってとても喜ばしいことだった。
私はドラコの父ルシウスのように賄賂などを用いた、人の持つどす黒い欲望を利用して他人を支配する方法が嫌いだ。
それに、賄賂で得たシーカーの座は、叩き上げのグリフィンドールやその他のチームに勝てるとは思えない。スリザリンの勝利のためにも、ドラコには強くなって欲しかった。
そして、そのドラコの初のスリザリンチーム全体の練習の日が来た。ドラコはこの日をとても楽しみにしていた。今までコーチが付いた練習はしたことがあったが、チームの一員としての練習は初めてだった。彼は、前日からとても緊張していて、
『明日はいよいよ僕がスリザリンのシーカーとしての初練習...!この日が来るのをずっと待ってた!!』
と言いながら、靴を左右逆に履いてみたり、フォークとスプーンを間違えたりとそわそわしていた。朝も緊張しっぱなしで、ネクタイを結ぶのにすら何度も失敗していた。
そして、放課後。スリザリンのキャプテン、マーカスはスネイプ先生に競技場の使用許可を貰い、チームを引き連れてグラウンドへと向かった。私は、緊張しすぎのドラコが心配で、特になにか出来るわけではないが練習の見学という事でついていった。
競技場につくと、前方から集団が歩いてきた。スリザリンチームは口々にグリフィンドールのやつらだと言っている。どうやら競技場に、もっとも仲の悪い二つのチームが集まってしまったようだ。グリフィンドール側は、
「僕たちが先に競技場を予約した。スリザリンには出ていってもらう。」
と言い、スリザリンは、
「こっちはスネイプ先生にサインをもらったんだ。お前らこそ出ていけよ。」
と返し、両チームは一歩も引かないどころか、今にも殴り合いをしそうな雰囲気になった。
…お互いに譲り合えば良いのにと思うが、このチーム同士だからこその因縁もあり、譲り合いは無理そうだ。私はぼんやりとそのやり取りを聞いていた。
「こっちは新しいシーカーがいるんだ!だから今日は絶対にスリザリンが使う!」
マーカスがグリフィンドールにそう叫んだ。
「新しいシーカー?誰だ?」
グリフィンドールチームがそう聞くと、ドラコが自慢げに、
「僕がスリザリンの新しいシーカーだ。」
と答えた。グリフィンドール側から驚きの声が上がる。みんながポッターとドラコの仲が悪く、因縁がある者同士だというのは知っているからだろう。しかも、余計なことにスリザリンチームの誰かが、ルシウスさんがチームに差し入れたニンバス2001をグリフィンドールに見せびらかしたのだ。喧嘩直前の空気がますますピリピリし始めた。
そこにウィーズリーとハーマイオニーが駆けつけた。彼らも、私がドラコを応援しに来たように、自分の寮のシーカーであるポッターを応援しようとここに来ていたようだ。ドラコが私にしか聞こえない小さな声で、「グリフィンドールのわからず屋のバカが来た。」と言った。
そんなことをお構いなしに両チームとも相手を貶すことに精一杯になっていた。スリザリンはグリフィンドールチームが貧乏なことを元にした悪口を言い、グリフィンドールは、去年一年生のポッターにまんまと負けたスリザリンをバカにした。
「両チームで殴りあって、最後まで立っていたチームが使えばいいんじゃない?私はもう寮に戻る。……本当にくだらない。」
そう言って、ハーマイオニーがこのくだらない喧嘩に巻き込まれないように、彼女の手をつかんで学校に戻った。
彼女は驚いていたが、ドラコが変なことを彼女に直接言う前にあの場から去ることが出来て本当に良かった。ドラコは、ハーマイオニーにあまり良い印象を持っておらず、特に最近は悪化して来ていた。私と彼女が仲が良いことについて一度だけ理由を聞かれたが、そのときはなんとか納得してもらえた。だが、最近はロックハートのことがあって、私が傷ついていることに気付かないハーマイオニーを見て、私に何度か彼女と距離を置くように言ってきていた。……パンジーたちも同意見だった。
『なぜ、嫌な思いをするのがわかっているのにグレンジャーと一緒にいるんだ?スリザリンにも友人がいるのなら、彼女と距離を置いてもいいだろ?』
ドラコがこんな言葉を前に何度か私に言ってきていた。でも、私に嫌な思いをさせている原因はハーマイオニーではなく、ロックハートだ。
それに、ハーマイオニーが私がロックハートに嫌がらせを受けているのに気付かなくてもしょうがないとも思っている。「好意は賢い人の目を曇らせる」と、さまざまな本で語られていることから、なにもハーマイオニーだけが特別なのではない。
私は、競技場からハーマイオニーを学校の中まで一緒に連れて行った。そして、競技場からここまで強引に引っ張っていってしまったことを謝罪した。ハーマイオニーを引っ張っていった理由として、スリザリンとグリフィンドールの喧嘩が嫌いで、ハーマイオニーに見せたくなかったからということにした。ハーマイオニーは、私の行動によって自分が争いに巻き込まれなかったことに気付き、感謝していた。
ハーマイオニーと別れたあと、図書館に行き、数冊の本を借りて寮へと戻った。今回借りた本はいつもとは趣向を変えて、魂や命についての研究についての本を借りてみた。
人は死ぬとどこへ向かうのか。
死は避けられぬものなのか。
命とは何を持ってして命というのか。
結論から言うと、死の先にあるものはゴーストになった人を除いてあまりわからないというものだった。命とはなにかについて、哲学的な言葉以外に確立された答えはない。それに、死は避けられないが、極限まで死を遠ざける術はあるとも書かれていた。方法はわからなかったが、そんな方法が仮にあるとしたら、世界中の人々がやりそうだと思った。
死を克服するために多くの人がその研究をしていたというのもわかったが、途中で研究者の死という形ですべての研究が終わっている。
あまり今回は面白くない内容がほとんどだったが、一つだけ興味を惹かれたものがあった。それは他者に自分の生命を分けたり奪ったりする方法である。
相手の生命を奪うということは、死の呪いのように相手を殺すのではなく、自分のものとして完全に取り込むということらしい。ただし、奪うといっても相手が死に至るまで奪いきるにはかなり時間がかかったり、奪うには弱っている相手を選ぶ必要があったり、ちょっとしたことで逆に奪い返される可能性があったりなど難しいようだ。
他者に自分の生命を分ける方法は、相手に文字通り命を分けるのだが、分けすぎると死に至るらしい。分けた人、分けられた人ともに生還した例は少なく、どちらかが死ぬということがほとんどで、まれにどちらも命を落とす。……知識としては面白いけど、そんなリスクが大きすぎる魔法を使いたくはないな。
本を閉じて、一旦休憩しようとした時、スリザリンのクィディッチチームが寮に戻ってきた。もうそんなに時間が経っていたのかと思い、
「ドラコお疲れ様。初のチーム練習はどうだった?」
と聞くと、
「あ、あぁ。有意義な練習になったよ。」
そう言いながら足早に寝室に入っていった。他のメンバーたちも、すぐに寝室に向かった。変だなと思ったが、あまり追求しない方が良いと思い、夕食のために大広間へと向かった。
大広間につくと、パンジー達が笑いながら何かを話していた。私が側に行くと、
「ねぇねぇ!グリフィンドールのクィディッチチームとスリザリンチームが競技場で殴りあったんだって!どっちのチームも顔が青アザだらけになっているのよ!」
と教えてくれた。どうやらドラコ達がすぐに寝室に行ったのは、青アザだらけの顔を他の寮生に見せたくなかったからのようだ。あのあと、本当に殴り合いで雌雄を決しようとしていたとは。愚かすぎて何も言えない。
ぼんやりと夕食をつついていると、周りの女子の話題は恋愛話に切り替わっていた。パンジーは、お金のあるイケメン男子が一番だと言い、ミリセントは筋肉質な男性が好みだといい、ダフネは自分を一途に愛してくれる人が良いと話していた。
「デルフィーニは?どういう人が好きなの?」
パンジーは興味津々といった様子だ。
「そういえばデルフィーニはそういう話をしないわね。とても気になるわ。」
とダフネも身を乗り出して聞いてくる。
私は少し考え、そして、
「賢い人、知的な人かな?」
と答えた。三人は、
「デルフィーニらしい答えね。」
「というより、誰のことを指しているのかわかっちゃったんだけど。」
などと言いながら笑っていた。
「?誰のこと?」
と私が聞いても、三人は笑うばかりで教えてはくれなかった。さらに、
「デルフィーニって頭が良いけど、自分のことには鈍感よね。」
なんて笑われた。一体誰のことだと思っているのだろうか。
この話に聞き耳を立てていた人物がいたとは。
このときは思ってもいなかった。