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ギンはまだまだその先へと進みます。

第四章 王国編
第176話

親父───って呼び方はもうぶん殴ったし戻してもいいか。父さんは今の僕、つまりは吸血鬼となって思いっきりステータスの上がった僕の本気の拳を顔面にくらったのにも関わらず、何故かケロッとしていた。


っていうか、この僕の心の中の空間とやらに登場している時点でかなり魔法を齧っていた様子は伺える───そもそも今の僕でも不可能だし。



今現在、僕らは父さんが何処からか取り出した木製の机を挟んで、一人用のソファーに座って対面していた。



まぁ現状、色々と聞きたいことはあるが、僕はまず、このことについて聞いてみたかった。




「なぁ父さん。子供の頃に僕を救ったのって、もしかしなくとも父さんと母さんだよな?」


「もちろんそうだけど? それがどうかしたのかい?」



───この野郎......さらっと『もちろん』とか言いやがった。死神ちゃんやゼウスでも治せないって言ってたのに......コイツどんな方法使ったんだ?



「ん? そんなに知りたい? もう二度と使えない方法なんだけど......」


「......ならいいや。じゃあ次の質も.........ってちょっと待て。今アンタ、僕の思考読まなかったか?」


「ハッハッハー、もちろんだとも。父さんは最強だからね」



.........最強、ねぇ?



僕は父さんがさらっと冗談めかして言ったその言葉に違和感を覚えた。

いや、正確にはこの人がここ───おそらくは本来は僕の世界構築の世界となったであろう、僕の心の中の世界とやらに現れた時......いや、もっと前だな。



───そのずっと前。僕がこのローブを見つけたその時から、ずっとこの違和感が心の中に残っていた。




人の心を読むその力


全能のゼウスができなかったことを可能にする力


人の心の中に勝手に入ってくるこの能力


僕が殴っても傷一つつかないそのステータス


常闇のローブを手にした時の、懐かしさ




それらは、僕の頭の中でとある正解を導いてしまい、僕はその突拍子もない想像に半分冗談で、こう聞いてみることにした。




「なぁ父さん。今からアンタを鑑定してもいいか?」



その言葉を口にした時の父さんはなにか、新しいおもちゃを見つけたような、そんな子供のような笑みを顔に貼り付けて、「もちろんどうぞ」と口にした。



───クソ......、これじゃあまるで、僕の予想が当たっちゃってるみたいじゃないか。





僕はその嫌な予感が外れていますように、と願いながら、彼に向かって鑑定をした。




───のだが、







「.........やっぱり、そういう事か」





残念ながら、僕が鑑定をしたその結果は、自分でも驚く程に、僕の予想通りそのもので......、








名前 ウラノス (???)

種族 世界神

Lv.???

HP ???

MP ???

STR ???

VIT ???

DEX ???

INT ???

MND ???

AGI ???

LUK ???


ユニーク

???


アクティブ

???


パッシブ

???


称号

神族 ???


眷属

???






そうして父さんは、僕の反応を見て少し笑ってから、こう言って僕へと手を差し出した。






「改めまして。全世界で一番偉い神様やってました、神王ウラノスです。ちょっと死にそうになってたから助けに来たよ」






───僕はその名前に、聞き覚えがありすぎた。





☆☆☆




父さん───神王ウラノスの話によると、どうやら僕を助ける際に魔法に関する才能の大半を失ってしまったそうだが、残念ながらその才能の一欠片だけで僕の才能すらも上回る神王ウラノスは、いとも簡単にこうして魔法を使うことが出来るらしい。ほんと化物だな世界神。



「はぁ、一応今の銀の仲間にも世界神、一人いるだろう? まぁアイツは僕らと比べると戦闘力が低いからね......。と言っても今の僕も弱いんだったな! ハッハッハー!」


「......弱いヤツは、こうも簡単に時間を止めて、人様の心の中に入ってこれたりしないと思うんだが......」




あまりの暴論に思わずそう、呟いた僕ではあったが、







「時間を止めて人の心の中に入り込む。確かに神王ウラノスである僕だから出来ることでもあるけど、これに驚いてるってことは弱者の証拠だよ、銀」





先程とはうって変わって、トーンの低い、冷たい声を出した父さんに思わずギョッとする。

僕はこの人と十年近く一緒にいたが、それでも一度もこんな姿を見たことは無かったし、ましてやこんな事を言うこともなかった。


───なるほど、今回ここに来たのは僕の父さんではなく、神王ウラノスだったってわけか。



「その通りだよ。流石に久しぶりに会ったからはしゃいじゃったりもしたけど、僕はここへと『神王ウラノス』としてやってきた。君の父親として会いに来る時は普通に歩いて会いに行くさ」



ウラノスはそう言って少し笑ってから、再び真剣な表情を浮かべてこちらの瞳を覗き込んできた。



「今の現状でいえば、銀。君はメフィストが狂暴化させた悪魔の手によって殺されかけている、という状況だね。今は常闇を使ってガードしているみたいだから無傷だろうけど、まず間違いなくこのまま行けば、死ぬ」



───それは、誇張でも冗談でもなく、純然たる事実。


ウラノスの瞳を見ていれば、流石に僕でもそれくらいには気付けるし、ここに来る前───戦闘中の僕であってもそれくらいには気がついていた。



「実力差は隔絶してるし、経験も足りない。ステータスは相手に届かず、常闇の『神王化』を使ってもなお届かない。......銀、君ならこの状況、どうする?」



その質問は、僕があの黒騎士と戦っていた中でずっと考えていたことでもあった。


今ウラノスが言ったことはすべて承知してるし、アイツとの実力差を身をもって感じた僕だからこそ、気力や根気などという不確定要素でどうにか覆せるものでないのもわかっている。


───圧倒的力量差を覆す方法.........か。


やはりいくら頭で考えてもそれを実行できる地力がないし、さらに言えばそもそも僕があの黒騎士に勝てる道筋が浮かんでこない。


『今のままじゃ勝てない』


メフィストはそう言ったが、人はそう簡単に変われるものじゃないし、変わろうと思ったからと言ってすぐに変われるわけでもない。



───ならば、どうするか。




そう考えると、やっぱり僕は答えなんて一つしかないと思うし、逆に僕がいくら考え、悩み抜いても、これ以外の結論に至るとは思えない。




僕はその不確定要素の塊のような、馬鹿馬鹿しくて愚かしくて、最高に僕らしい考えを、自信を持ってウラノスへと告げた。






「最後まで諦めずに、考え続けるよ」





僕のその答えを聞いたウラノスは、やはり僕の予想通りに、目を見開いて驚いた様子を見せた。


───が、すぐにその様子はなりを潜め、父さん(・・・)はにニヤリと笑うと、僕へとこう告げた。





「流石は僕の息子だね、その考え方嫌いじゃない」




それだけ言うと、父さんはソファーから立ち上がる。


まだ帰らないの? っていうかいつまでいるつもりだよこの人、と半ば考えていた僕は「やっと帰るんだねっ!」と満面の笑みで表現してみるが、父さんは苦笑しているばかり。


ならば一体、この後どうするつもりなのだろうかと考えた所で、父さんはパチンと指を鳴らして僕へとそのイケメンフェイスでこう告げた。




「よし、神器と常闇の使い方について、僕が直々にヒントを与えてあげよう!」




☆☆☆




神器は父さんの孫であるゼウスが開発したものだし、それを父さんにどうこう出来るような代物ではないと思うからあまり期待はしていないのだが......、それでも僕は一応それらの使い方を教えてもらうことにした。神器はともかくこの常闇は父さん以上の適任はいないだろうし。


───あれ? 父さんの息子が僕で、父さんの孫がゼウスだとすると......、僕と時空神クロノスが兄弟になって、......つまりはどういう関係だ? よく分からないけど一応近しい存在ってわけだ。形式上は。



「姪だよ、姪っ子。銀の姪っ子がゼウスにあたるね。血の繋がりはないからどんどん落としちゃって構わないからねッ!」


「姪っ子を落とせって......、それ祖父のいう台詞じゃないよね?」


「まぁ気にしない気にしない、それじゃ早速練習に入ろうか!」



何やら無理矢理話をそらされた気がしないでもないが、まぁこの人にいくら言っても無駄なのは知っている。ついでに言えば母さんはもっと通じない。まるで天魔族(・・・)のような白髪で、名前はリーシャ(・・・・)。はい、まんま歯車のリーダーと特徴が一致してますね。十中八九本人に間違いないだろう。


───そう考えると全世界最強の神王ウラノスと、時の歯車のリーダーのリーシャの間に生まれた凛は、一体どういう種族になるのだろうか? 神魔族とか? ......ま、今はどうでもいっか。



僕は事前に父さんに言われていた通り、さっき父さんが即席で描いた二つの魔法陣の内一つの上に常闇のローブを畳んで置き、もう片方の魔法陣へと向かって神器である炎十字のタトゥーが刻まれた左腕を向ける。まぁ何が起こるかは聞いてないのだが。



「よし、銀、今から詠唱始めるからあんまり動かないでくれよ?」



そう言って父さんが始めた詠唱は非常に簡単なものだった。



「『神王ウラノスの名において命ずる、常闇のローブ、神器炎十字、それぞれに宿る魂、今ここにその姿を顕現せよ』!」




.........魂?



何やら嫌な予感がするが───と言うかもうほとんど分かってしまったが、あまり驚かないように気をつけよう。この二つに宿ってる魂とか絶対洒落にならないだろうし。



───とまぁ、僕のそんな考えが外れるはずもなく、常闇のローブを置いた魔法陣の上からは真っ黒な渦が、僕の左腕を向けている魔法陣の上からは銀色の渦が立ち上る。




「うはぁ......、常闇は知ってたけど、銀の神器もとんでもないのを宿してるね......。これは化けるぞ......?」




そんな父さんの嫌な予感しかしない呟きが合図になったかのように、二つの渦はほぼ時を同じくして霧散する。





果たしてその中から現れたのは、巨大な二体の生物で、






白銀の魔力を纏う、圧倒的威圧感の───白い虎。




黒蛇の尾を持つ、山のように大きな───黒い亀。






僕はそれらを見た瞬間に、思わず身体中へと鳥肌が立つのを感じた。


そして、まるでそれを見計らったかのように父さんは、こう呟いたのだった。







「攻守の白虎(・・)と、防御の玄武(・・)。聖獣のうち二つの魂が同じ主の元に集うなんて......、初めて聞いたよ、こんなこと」




───どうやら僕は、かなり運がいいらしい。





☆☆☆





「やっほー常闇ー、元気してたかい?」


『これはこれはウラノス様。お久しぶりですね、何年ぶりでしょうか?』


「ハッハッハー、忘れちゃったよ!」



.........喋れるんかい!?


おそらくは玄武のものであろうその男性の声に、そんなことを思いはしたが、僕は父さんと玄武の再会を横目でちらりと見た後、僕の方へとまっすぐ歩いてくる白虎の方へと視線を向けた。


───なにやらすごく目つきが怖いが、きっと大丈夫だろう。今現在進行形で目つきがなお怖くなっていっているが気にしない気にしない。きっと仲良く出来るに違いない。


白虎は僕の目の前まで来ると、そこに鎮座し、真っ直ぐに僕を見下ろしてくる。あれ、近くで見ると案外目がぱちくりとしていて可愛いな。



と、そんなことを考えていると、なんと白虎が話しかけてきた。




『おいお前、私の主だな?』


「えっ? あ、うん。一応僕がお前の宿ってる神器の持ち主だよ」



その、少し怖めのお姉さん、と言った感じの声に少し焦りながらもそう答えると、白虎は『ふーん』と言いながら僕の周囲をぐるりと回り始めた。なにこれリンチ?



『言い忘れてたが私はお前の心が読める。さっきから私の目が怖いとか可愛いとか考えてくれちゃってるが全部伝わってるからな。あとリンチは一人じゃできねぇよ』



───あぁ、なるほどなるほど。僕の安寧がまた一つ潰れたということだね。まぁ恭香やゼウスがいる時点でもう何もプライベートなんて守られちゃいないんだろうけど。


そんなことを考えている間にも白虎は僕の周囲を何周か回り終え、再び僕の前で座り込む。


もしかして見定められてたりしたのかな......、お眼鏡に叶わなかったらどうしよう? とそんなことも考えたが、



───なんとまぁ、白虎の口から出たのはある意味僕の予想に反する答えで......、




『イイじゃねぇか。性格と性根はともかく将来はある。考え方も嫌いじゃねぇし、成長次第じゃそこのバケモンすら越える器なんじゃねぇか? 才能はねぇけど、なんでか面白れぇ匂いがするし』


「は? 何お前、さっきから黙ってやってれば性格も性根も腐ってるし才能もねぇしイケメンでもないとか何、僕に喧嘩売ってんのか?」


『ほら、そういう所が性根腐ってるってんだよ、あとイケメンじゃねぇとは言ってねぇぞ。本当のことだけどな』



このドラ猫野郎......、一応初対面だからって大人しくしていれば調子に乗りやがって.........っ!


そんなこんなでイライラしていると、なにやら玄武と話し終えたのであろう父さんが戻ってきた。



「いやぁ、武器や神器って運が良ければ魂が眠ってるから、まぁ居るか分からないけど起こすだけやってみるか、ってやってみたらとんでもないのが出てきちゃったね」



───魂......ねぇ?



実は僕、その『魂』とやらに覚えがあるのだ。


それは、僕がいつも愛用している武器───ブラッディウェポン。アイツは僕の状態や気分によって光ったりしてるから絶対なんか憑いてんな、と思ったら魂だったのか。



破壊と守護のどちらもこなす神器『炎十字(クロスファイア)』に宿るのが聖獣白虎。


絶対的な防御力を誇る『常闇のローブ』に宿るのが聖獣玄武。



───なら、形状変化以外の能力が全くの不明なあの武器には、一体何の魂が宿っているのだろうか?



そんなことを考えてはみたが分からないものは分からない。


それにあの武器に関しては僕自らの手でそいつと会うべきなのだろう。そうでないといつも助けてもらっている恩が返せない。


そんなことを思って再び顔を上げると、何やらニヤニヤとした白虎と玄武、父さんがこちらを見ていた。



「どうだい白虎、常闇。うちの自慢の息子は面白いだろ?」


『たしかに面白い。私はコイツの行く末を見たくなってきたぜ、テメェはどうだ、玄武』


『確かにそうですね。武器である我ら"物"に対して恩返しなどと、とても心優しく、面白いお方ですね。けれどそれと同時に危なっかしいところも』




そう言うと白虎と玄武は顔を見合わせ、コクリと頷き合うと、僕へと視線を移した。




『いいぜ、私はお前を主として認めてやる。私は聖獣白虎、名前はねぇが、破壊と守護を司る聖獣だ』


『私も貴方を主として認めましょう。私は守護を司る聖獣、玄武。名を常闇と言います。以後お見知りおきを』




それらの言葉に思わず唖然としてしまった僕ではあったが、隣の父さんに肩をつつかれてやっと戻ってくることがが出来た。


主だかなんだかは知らないし、コイツらがどういう存在なのかも未だに理解ができない。





───けれど、少なくとも敵ではないことは明らかだ。





だからこそ僕は、わざとらしくニヤリと口の端を吊り上げて、こんなことを言ってやった。






「力を貸してくれ、二人とも」と。


以上、神王ウラノス、聖獣白虎、それに常闇の三名でした!

いつの間にゼウスがギンの姪っ子に......。初期の設定からは全く考えられない現状に戸惑いを覚えています。


というわけで次回! 恐らくはムルムル戦決着です! 銀の新たな力にもご注目を!

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