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ムルムル暴走!

果たしてギンは勝利をつかむことが出来るのか!?

第四章 王国編
第175話

その変化は唐突で、何よりも急激だった。



「ぐ、ぐかぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」



突如ムルムルの身体が爆発的に膨れ上がり、それに応じて着用していた鎧がパチン、パチン、と音を立ててちぎれてゆく。


数秒かけて僕と同じくらいの身長が、五メートル程にまで大きくなり、やがてその体の内から黒色の鎧が浮かび上がってくる。


が、変化はそれだけでは終わらない。



バキッ、バキッ、と硬いものが砕ける音がしたのとほぼ同時に、ムルムルの背中から真っ白な天使の翼が生えたのだ。




───巨大な、天使の翼を持つ黒の騎士。




外見の変化は確かにそれで完結していたのだが、残念ながら、その内面の変化はそれ以上に劇的だった。


なにせ、思わず鑑定した結果が結果だ。





名前 ムルムル (-)

種族 狂暴者

Lv. 861

HP error

MP 144000000

STR error

VIT 120000000

DEX error

INT 123600000

MND error

AGI error

LUK 1860


ユニーク

武器召喚


アクティブ

テイムLv.5


パッシブ

近接戦闘Lv.5

存在耐性Lv.5


称号

理外の狂暴者


従魔

キングスグリフォン





「お、おい......、これは流石に......勝てないんじゃないのか?」



error......、その意味は分からないが、『理外』ということも合わせて考えると、間違いなくステータスが創造神の作ったシステムの上限よりもさらに先へと行っている。

運の数値やほかの写っている数値を見ると......ステータスは十倍。おそらくは悪魔化の五倍と、さらにこの変身での二倍。合わせて十倍。



───なら......、さ、最高ステータス、十五億!?





『gugaaaaaahaaaaaaa!!!!』




まるで僕のその思考をかき消すように、あの時(・・・)の暁穂のような、理性の蒸発した狂人の叫び声がこの処刑場に谺響する。


───そして、黒騎士のその右手の中に一振りの大剣が握られた。




「ま、まずっ......」




そう思ったとほぼ同時に、僕の超直感が馬鹿みたいな警報を頭の中で鳴らしてくる。場所は───右か!



「と、常闇ッッ!!」



場所を把握すると同時に僕は神王のローブ、もとい常闇のローブを右方向へと向かわせる。




───のとほぼ同時に、僕の身体へと今までに感じたことのないような衝撃が襲う。


僕の身体はまるで弾かれたように、あの時の獣王の拳なんか、比べ物にならないほどの速度で吹き飛ばされる。





「ぐぅぅ......」




が、どうやら痛みはない。何とか間に合ったようだ。



常闇のローブ。



今現在分かっているその能力は───



(絶対)破壊不能


超絶硬質化


遠隔操作


形状変化


神王化



───の計五つだ。最後の神王化はまだ試してはいないが、その他の能力はちゃんと試せている。まぁ他にも知らない能力がまだまだありそうなのだが。


それで今回は遠隔操作と超硬質化の二つを組み合わせたのだが......、やはり衝撃までは防げない。正直馬鹿にできない攻撃だ。


───それにしても......、いつもの感じならばあのタイミングでは間に合わないはずなのだが......、もしかしたらこのローブ、名前を呼ぶことで何かが変わるのだろうか? 魂が宿ってたりとか......は無いな。なんか怖いし。



何故か心持ちローブがキツくなった気もしないでもないがきっと気のせいだろう。

僕は地面へと両足をつけて着地し、そのまま数メートル勢いを殺して、やっと立ち止まった。


ふと向こうを見れば、剣を振り下ろした直後の黒騎士が遥か遠くに見える───これは三キロくらいは飛ばされた......



「っておい!? ただの一撃で三キロも飛ばされるとかどんな筋力値してんだよ!?」



───まぁ、おそらくはこれが十五億の力なんだろうけどさっ。


僕は立ち上がって腰を下ろすと、一気に風神雷神、活性化、正義執行を発動し、神王化以外のすべてのブーストをオンにする。


風神雷神が1.7倍、正義執行が2倍、活性化が1.2倍、合わせて───4.08倍かな? たしかそんな感じだったと思う。これに影纏も合わせるとおおよそ8倍。



「けどこれでもまだ二億前後......、だよな」



僕の今のステータスはレベルがかなり上がった今の状態でも2500万に到達していない。2500万×8で、やっと二億くらい。



相手の最高ステータスは十五億、完全な接近戦闘型。


僕の最高ステータスは二億、完全な魔法戦闘型。


更に速度でも僕の方が圧倒的に負けている。



───なんだよこの無理ゲー。神王化だってレベルあるんだぞ? いきなり倍率八倍とか来るわけないじゃないか......。



と、そこまで考えたところでメフィストの言葉を思い出す。





『ええ、今のままでは(・・・・・・)勝てませんよ?』




今のまま、今のままでは......か。


それはつまり、この戦いの中で何かを見つけ、それを自分の力として昇華し、身につけなければならないということ。


体の動かし方だったり、スキルの使い方、はたまた新しい能力だったり、色々と考えられることはあるが......、




───どうやら、考えていられるのはここまでのようだ。





『guooooooooooooouuuuuuuu!!!!』




視線の先では、理性を無くした黒騎士がキングスグリフォンを斬り殺した所で、キングスグリフォンには悪いがもう少し時間稼ぎをしてもらいたかったものだ。




「けど......、あと少しで何か......」



なにか頭の隅の方に引っかかる何かの存在を思い出し、僕は必死に思考を回転させ始める。




───考えろ。




叫び声を上げて、黒騎士がこちらへと向かってくる。


その速度は常軌を逸していて、間違いなく後数秒もしないうちにこの場へと到着するだろう。





───考えろ。




僕の手札は、神王化にグレイプニルにアダマスの大鎌。


それに有効な手段としては、妖魔眼、エナジードレイン、悪鬼羅刹何かも挙げられる。


そして何よりも、今現在僕が生きていく上で最も大切なものは、この『深夜の処刑場』







───もっと、もっと。




この世界構築が無ければ僕はおそらく先ほどのムルムルとの戦いで死んでいただろうし、おそらくはこの先も生き延びることが出来ない。


ならばこの世界すらも破壊してしまう悪鬼羅刹は使用を禁じ、アイツの『狂暴者』という種族名と魔力のどす黒さからエナジードレインも封じることになる───ほんっと、この二つの技は出番がなさすぎるな。


そして接近戦も間違いなく不利。つまりはアダマスの大鎌も使うことが出来ない。






───もっと、考えろ。




ならば残っているのは、妖魔眼に、空間支配、神影、魔導......くらいしかない。


開闢(ジ・オリジン)も万物創造もこの場では使い道は薄そう。ましてやスキル統合やアイテムボックスなんて以ての外だ。







───考えろ。






黒騎士が目の前まで迫り、僕の脳が無理矢理に思考を中断するその直前、何故だか、僕は一つの記憶を思い出していた。







───それに、そろそろコイツも、目覚める頃じゃないかと思ってるし。






いつか僕が考えたその思考を思い出すのとほぼ同時に、黒騎士の剣が僕へと襲いかかった。





☆☆☆





目が覚めたそこには、天井は無かった。



どうやらまっすぐ上空を見て大の字に倒れているらしく、僕の視界には目一杯の青空。


どうやら地面に薄く水が張っているらしく、地面の感触と水の冷たい感触が背中に伝わってくる。



「......は?」



思わず素で二度見してしまうほどに隔絶した景色の変化に、思わず僕の歯の隙間からは間抜けな声が飛び出した。


───え、僕ってば、今さっきまであの黒騎士と戦っていて......、考え事しながら炎十字(クロスファイア)の事まで考えが至って、その後にローブで防御.........したっけか?


そこまで考えたところで記憶があやふやになっていることに気がついた。



あやふやな記憶


僕が覚えている最後の記憶


防御したかどうか



そうして僕は、数秒考え込み......、





「あれっ、僕ってもしかして、防御し忘れて死んだのか?」





そんな間抜けな死にざまに至った。



───いや、なんとなくだけど、(それ)とは違うんじゃないかと思うけどさ......。




僕は一先ず辺りを確認してみることに決め、よっこらせっと立ち上がる。



やはり僕が想像していたように、地平線まで延々と地面に薄く水が張っており、そのまま真っ青な空が水面に映し出されている。



「うはぁ......、すごい綺麗だな.........」


「そうだね。まぁ、ここは銀の心の中の世界なんだし、ある意味当たり前のことでもあるんだけどさ」


「へぇー、僕の心の中の世界.........」





............って、あれっ?



何やら僕の言葉と言葉の合間に、とてつもなく懐かしい声が挟まっていた気がする。


その声が聞こえたのは僕の背後。



......もしも。もしも僕の予想が正しいのならば、おそらく僕の背後にいる人物は僕のよく知る人物で、




僕はそこまで考えたところで、ゆっくりと身体ごと後ろを振り返る。





果たしてそこに居たのは、






「やぁ銀。お父さん復活しちゃっ......ぐはぁっ!?」


「やっぱりお前かッ、クソ親父ッッ!!!」





僕の父親───もとい、死んだと見せかけて旅行を楽しんでいた、クソッタレな馬鹿が居た。




───もちろん考える間もなくぶん殴りましたがね。

なななんとギンパパ登場!

本当は登場はもう少しあとの予定だったのですが、何故か書いてるうちに登場してました。

※ステータスerrorは五億を超えた場合ですね。ちなみに五億はステータスという概念を作った当時の創造神エウラスのステータスでもあります。


次回! ギンが再び最強への階段を数段飛ばしで登り始めます! なんとなくですけれど、ギンはこの章と次の章で正真正銘の化物になる気がします。

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