あずめろ「は.......歯ブラシじゃないかな...........」
時は遡ること西暦2022年11月6日(日)午前10時
本日は我らが日本の中心地(物理)たる愛知県から両親が京都にやってくる日である。
京都で紅葉狩りを楽しみ、夜は先斗町で飯を食い、そして翌日にはアウトレットに寄るという予定からは、とてもではないが「息子に会いに行く」という理由が本音であるとは思えない。この建前は、さながら法令違憲を下したくないがために「司法謙抑主義」「民主主義国家」との大層なフレーズを述べる某国家の某最高裁判所と同じくらいのものであろう。
要するに私は両親の小旅行のだしに使われているのである。
しかし私は、なんだかんだ喜んでいるのであった。もちろんそれは両親に会えるという事実それ自体であり、さらに言えば先斗町というとても大学院生では寄りがたい路地で🍚が食べられるからである。あわよくばお小遣いでももらえるかと思っているわけであった。
もちろん親に会えるのが一番うれしんだょ?ほんとだょ。。。
私は父親の金で買った服を着ながら父親とは一切口を利かず、母親の作った飯を食いながら母親に暴言を吐く、中学校では教員の目を引きたいがために登ってはいけない場所に登り、でもお昼はお腹がすくのか給食だけ律儀に食べに来ていた思春期中学生ではもはやないのだ(おっと中学時代のO君のかわいいエピソードを紹介してしまった。反省)。
と、しかし一方でめんどくさいのもまた事実である。すなわち親が来るということは、それは高確率で一人暮らし先であるアパートに乗り込んでくるわけである。
私は新住居権説に立脚するため私の意思に反する立ち入りは直ちに住居侵入罪の構成要件に該当する違法で有責な行為となるわけであるが、まあそんなことを言えば父親からの憲法が保障する人権すらも凌駕するおぞましい鉄拳が飛んでくるわけであって、結局刑法など何の意味もないと思い知らされるわけである。
さて、文句を述べてもしょうがないので親の「侵入」に対する対応策を取らねばなるまい。
もちろん男子大学院生たるもの、部屋には親に見せたくない、あれやこれや、それやどれや、あんなものからこんなものまで種々様々なものが散乱していることであろう。
私的な例えで恐縮であるが、例を挙げるならば、
国際法の勉強時間が確保できないことから「枕を国際法の教科書(浅田国際法(5版))にすれば寝ている間に勉強が出来るのではないか」との思いから、当該教科書に枕カバーを書けた「国際法まくら(仮)」
であったり、
ベッドの下にある一見「こいつエロ本をベッド下に置く保守派か?(リベラル派は電子機器に保存する)」と思わせ実際には二度と使わないであろう司法試験予備試験下4法短答問題集などである。
ちなみに短答問題集がベッド下に隠してあったことから友人から「あずめろは京都で気がくるって問題集で興奮する人間になった」との噂が流布したこともあるが、それはまた別の機会に述べることにしたいと思う。
さて、そういうわけで親が来る前にこれらをきれいさっぱり片付けて「来るべき来訪」に備えたわけであった。
午後2時に親が京大正門前駅に到着。吉田寮を「見たい」(もちろんここでは動物園でパンダを「見たい」と同じ意味)という提案を全力で拒否し、京大構内を案内、そして下宿先に向かったわけである。ちなみにそこで時間をつぶした後は三条に繰り出し、すき焼きというこれまた豪華なごはんをいただく予定であった。
さてさて、親を「きれいな」1人暮らし先に招き、あとはご飯の時間まで、マルクスが主著『資本論』で資本主義の行きつく先と書いたことでも知られる『もちまる』の動画でも見せていれば穏当であろう、と思っていたその時であった。
事件は、洗面台で起こったのである。
冒頭のシーンに戻る。
賢明な読者諸君はもうすぐにお気づきであろう。
もちろん冒頭の写真が意味しているのは、歯磨き粉が2つある案外歯科衛生を気にしているマメさでも、ポッケに入っていた1円玉を4月からずっと置いている怠惰さでも、最近前髪の後退に敏感だから頭皮マッサージでもしようかと思い置いた櫛でもない。
歯ブラシ(青・ピンク)が2本置いてあるという、その事実である。
ここで一般的抽象的な意味からこの写真を論じてみたいと思う。
すなわちここにあるのは
「青とピンクの2種類の歯ブラシ」
が
「一人暮らしをしているはずの男子大学院生」
の洗面台に置いてあるということである。
※なおこれをみて「男女」の歯ブラシだと即決するのはあなたがジェンダーバイアスに掛かっている根拠に他ならないことからして、即刻京大ローの某刑法学者の授業を受けることをおすすめしよう。
さて、ここからの論理的帰結として真っ先に考えられるのは
①同棲又は半同棲をしている
②いわゆる「フレンズ」がいる
のいずれかである。
②「フレンズ」の意味に関しては、映画『TED』よろしく、当ブログ(ちなみに一部界隈(私だけ)ではこのブログを『競へら』と略され呼ばれているらしい)がR18であることからして説明は不要であろう。
ここまでの規範から演繹的推論を経ることができるか、それが法律家たるものの仕事であり責任である(とマコーミック先生も言っていた)。
当ブログを読んでいる方々がお察しの通り、私は①②のいずれでもない。
もしTwitterなどで当ブログ更新の通知を見て、「え、、、あずめろ氏彼女いたんだ。。。(嫉妬)」などと思う読者がいるとすれば、本ブログを真剣に読んでいないか、はたまた、よほど私に期待しているかのいずれかである。
もし「え、あずめろさんと会ってみたかったのに。。。(紅潮)」という方がいればぜひDMください。120%デート商法なので即刻ブロックさせていただきます。
ならばなぜ、このような歯ブラシを置いているのか。これが本件写真最大の謎である。さらにいえば私も不思議でしょうがない。
ことの経緯はこうである。
すなわち、学部4年の2月ころに高校の同期(女性←ここ重要)とご飯を食べていた時のことである。ロースクールはパノプティコンのような監獄類似の生活を送ることになるといったら、それなら精神を安定させ、かつ非常に簡易な方法があると告げられた。
ほう。さすがは高校時代「女帝」として崇め奉られた人間だけある。突拍子もつかないような名案を持っているものだ。私は期待した。
彼女はこう述べたわけだ
「異性のものと思われる歯ブラシを置いておくんです。そうすれば帰った時に、『あ、私にはかわいい恋人がいて、同棲しているんだ。』と感じ、つらいことがあっても同棲している恋人がいると思えば頑張れる!と思い、よって精神が安定するんです」
、と。
私はこう思った。
こいつあたまおかしいんか?????
なるほど、世にいう「尖っている」人間とはこういうことを言うのか。
たしかに、クリスマスに友人とプレゼント交換会をしたと聞いて、女性は恋人がいなくてもそういう風にクリスマスを楽しめるものかと思った矢先、実はそのプレゼントは自分の架空の推しが、自分に買ってくれたプレゼントを披露しあう会であったというエピソードも聞いたことがある。
つまりは、客観的には自分で自分のプレゼントを買っているのに、それをさも彼氏(架空)から貰ったものだと自慢しあう、そんないかれた界隈の発想がこの世には存在しているのだ。
ちなみにこういう女性のことを「夢女子」というらしい。とりあえず広辞苑の「女子」という意味を100回朗読してほしいものである。
そういうわけで、Qアノンもびっくりのやばい界隈の発案を聞いたところで、まあさすがにそれはやらんやろ、と思っていた。
しかしながら時は4月、友人も少ない異国京都において孤独を拗らせていた私は、このエピソードを思い出し、1人自宅で嘲笑しながら(律儀に)ピンクの歯ブラシを置いたのである。
あれ??なんか、良い/////
こういう時人間ってのはすごいもので、絶対に誰も見ていないのに「案外良い」と「さすがに人間としてやばい」の二つの考えが出てくるのである。
カントもさみしさから歯ブラシを2本置いた時に「純粋理性」という考えに至ったというのは非常に有名な話であるが、私もこれを経験したのだ。
しかしさすがに22歳。これは人間としてなにか重要なものを失っていると思い、2日後には歯ブラシを撤収した(2日置いてたんか、と思った方はあとで体育館裏に来てください。江頭会社法の角で殴ります)。
その日からである。帰宅するたびに、なにか猛烈な不安感に襲われるようになった。はじめはロースクールの不安や将来の不安かと思っていたが、どうも違う。
私は、1本しか置いていない歯ブラシ置きに寂しさを覚えていたのだ。
そこでおそるおそる2日前に回収したピンク歯ブラシを置いてみた。
俺って同棲しているかわいい彼女がいたんだぁ~(^.^)。しあわせだぁ~(*^-^*)。
以上がことの経緯である。
実はこの架空同棲歯ブラシ手法は夢女子の策略であり、一度これを実行してしまえば元の通常の人間には戻れなくなってしまうのであった。
さて、そして冒頭に戻る。
半年の同棲(架空)の結果、あまりにも見慣れたピンク歯ブラシに何らの疑問を抱かないほどに脳を麻痺された私は、親の来訪にも関わらずこれを隠しておくことを失念していたのであった。
ままめろ「これ........なに?.........」
あずめろ「は.......歯ブラシじゃないかな...........」
ままめろ「いや.....2本ある......じゃんね.......???」
あずめろ「..........................................................ほんとだ。。。そうだね。。。。」
人間とは恐ろしいもので、脳が思考を停止しても本能でもって自己の不利にならないように行動するものであるようだ。
だが、そのような脊髄から出る防御行為ほど自分を苦しめるものはない。
ままめろ「いや。ここあんたの家でしょ?」
あずめろ「..........................................................」
ままめろ「え?彼女?でもいるわけないよね??」
あ?なんだこのババア??
おっと、ついに訪れなかった思春期がここにきて現れてしまった。
反省反省😓😭😅。
せめていい方に期待しろよ。その息子へのあきらめはなんなんだ。え?
おれがラブライブ見てた時に「そんな金髪の女の子現実にはいないからね」
と唐突につぶやいたこと、おれは聞こえてるんだぞ??
ままめろ「え、結局どういうこと???」
ふーむ困った困った😅😅😅(死)。
さて、突然だがみなさんならここでなんと言いますか?
①「実は彼女がいてね」
②「あー。それはスペアだよ」
③「それは排水溝とかを掃除するようなんだよ」
④「うるせぇババぁ(有形力の行使」
⑤「それは妄想の彼女の歯ブラシなんだ(ガンギマリ)」
④は論外でしょう。女を殴っていいのはミサミサが急に来訪した時くらいです。
②は意味が分からない。歯ブラシのスペアてなんだよ。お前は歯磨いてて急に折れるんか歯ブラシが。
③は矛盾します。なぜならピンク歯ブラシは未使用だから。
ということで①か⑤に絞られます。
①は短期的に見れば良い選択で、しかもその後黙秘(保障されているかは別として)を貫けばこの問題を解決できる可能性もあります。
しかしどうでしょう。彼女と同棲していると宣った息子が、実は妄想彼女の歯ブラシを置いてるだけだったと知ったとき、親はきっと非常に悲しんでしまうでしょう。そうなれば私は私の親を苦しめたその人間を生涯許さないでしょう。
なので私は⑤を選びました。
しかしただ⑤を述べてはやばいやつです。そこで、焦った私はこう述べてしまったのです。
あずめろ「それは架空の彼女の歯ブラシなんだけど、でもそれはロースクールで結構流行ってて、友達との飲み会の時に話題になったからたまたま試しでやってみただけで、特に別に変なことじゃないんだよ(早口)」
ままめろ「....................................................................................................................................................................................................................」
それはそれは長い沈黙でした。
死刑執行宣言を待つ被告人ってこんな気持ちなんだなぁってのが、分かりました。
当然でしょう。息子に会いに行ったら歯ブラシが置いてあって、それを聞いたら、妄想で、しかもそれがロースクールで流行っているという見え見えの嘘をついているのですから。
ままめろ「(あ、察し)そ、そうなんだ。やっぱり京大生は変わってるね😅😅😅。。。」
母親の優しさが身に染みる。
同時にこれほど辛いことはない。
明日帰宅した母親は、この22年間の息子への教育ないし育て方を自問し反省し、息子のためにあえて怒ったことを思い出し、息子のために時にあきらめた夢を振り返り、そして息子と共に笑ったことを思い出しながら、ただただ泣くのである。。。
夕食のすき焼きの春菊は、いつもより苦い気がした。
※この物語はフィクションです