お忘れかも知れませんが、ギンも一応吸血鬼なのでかなりのバトルジャンキーです。格下や圧倒的格上に対してはあまり気は乗らないようですが。
場所は変わって王城の謁見の間。
そこに恭香曰く『頭がお花畑』の悪魔ムルムルは居た。
「ふん、やはり期待はずれか。途中までは流石としか言えんし、正直行って気づけなかったが、まさか拠点を知らせてくれるように騒ぎ立てるとは......、本当に頭がお花畑な奴だ。メフィストフェレス様もなぜあんな奴を......」
「おや? 呼びましたかムルムル」
───ッッ!?
一瞬にしてその場に緊張が走る。
悪魔ムルムルの下僕であり、その言いなりに従い動くその
「だ、大悪魔メフィストフェレス様と......、ま、まさか貴様は神族か!? なぜ貴様如きがメフィストフェレス様と...」
「お黙りなさい、ムルムル。でないと今すぐ消し炭にしますよ?」
その有無を言わさぬ言葉とその身体から一瞬漏れだした威圧感に思わず息を呑むムルムル。
「この方はギン殿が私へとつけた監視の方ですね。全く、私がどこへどんな方法で逃亡しようとも簡単についてくるのですから嫌になってしまいます。本当に化物ですか、貴女は?」
「あははっ! それほどでもないかなーっ。相性ってのもあるだろうし? それにしてもメフィストちゃんって何だか親友くんににてるよねー? なんでなんでー?」
「め、メフィストちゃん......、ま、まぁいいでしょう。私の身体が彼に似せて造られたからですよ。まぁ、あの方の趣味です」
「へぇ......、あの方、ねぇ? 私ってば何となく分かっちゃったかもー」
「......まじですか」
「まじまじー!」
最早、大悪魔序列二位のメフィストでさえ手を焼く厄介さ。
メフィストフェレスは心の中で思った。この女神を手なずけるとは、流石は私たちが認めたギン殿ですね......。ある意味勝てる気がしませんよ、と。
と、そこでやっとメフィストフェレスはここへと来た本来の目的を思い出した。
「っと、忘れるところでした。ムルムル、貴方先程『ぶっ殺せ』などという台詞を吐きましたね? 一体誰に、誰をぶっ殺せと命じたのです。その答えによっては私はあの方の名により貴方を抹消する必要が出てきます」
「なぁっ!? ま、待ってくださいメフィストフェレス様! そのあの方とは一体誰のことですか! あなたの上にいるお方と言えばサタン様と混沌様しかおりません! あの御二方があのチンケな吸血鬼を守れとでも言ったのですか!?」
───チンケな吸血鬼......ですか。
思わずメフィストフェレスは鼻で笑った。
「私からすればあれほどの危険人物は居ないのですがね」
確かに今はまだまだ未熟。私の手にかかればいとも簡単に潰せることでしょう。
───が、彼はここまで我流で、誰の教えもなくここまでたどり着いた。
魔力の使い方も。
身体の使い方も。
ましてやスキルの使い方も知らない。
そんな彼がここまでたどり着いている時点でそれは脅威にほかならない。例えるなら器具の使い方も分からない初心者が、よく分からないままにギネス記録を大幅に更新してしまったようなものだ。それを脅威と言わずになんというだろうか?
もしも、もしも万が一に。彼が誰かにものを教わり、その教育者がそれ相応の人物だったとしたら......、と考えると、私でも寒気しかしないのですが。
まぁ、寵愛神殿は分かっておいでで彼を守っているのでしょうが、ムルムルにはまだ早すぎた話でしたかね。
そうメフィストは心の中で呟いて、一つため息をつく。
「まぁいいでしょう。私はただ、彼の行く末を見守り、時に敵として立ちはだかり、時に味方として手助けすることしかできませんしね」
そう言ってメフィストフェレスは謁見の間へ続く扉へと視線を向ける。
「さて、それではお力拝見と行きましょうか」
謁見の間の扉が思いっきり蹴破られたのは、丁度それと同時のことだった。
☆☆☆
「あーっ、やっほー親友くん! 恭香ちゃん! お元気げんきだったー?」
「......なんでお前らがここにいるんだよ。全く感知できなかったぞ。あとお元気げんきって何だ」
僕らは経験値稼ぎが終わって謁見の間にたどり着いたのだが、何故かそこにはメフィストとエロースの姿があった。何こいつら、もしかして僕のストーカーか?
「いえいえ、確かに行動は逐一確認させてもらっていますが、それは全能神殿だって同じことでしょう? ねぇ全能神殿?」
もちろんそれに返事はなかったが、何故かそれを見てイライラしている彼女の姿が頭に浮かんでしまった。きっと見てるんだろうなぁ、ゼウス。
「まぁいいや、僕はお前の向こうにいる奴に用があるんだ」
僕はそう言って、その向こうにいるヤツらへ視線を向けると同時に鑑定を行った。
(『鑑定』!)
名前 ムルムル (-)
種族 悪魔
Lv. 861
HP 100000000
MP 14400000
STR 156000000
VIT 12000000
DEX 81890000
INT 12360000
MND 69000000
AGI 82000000
LUK 186
ユニーク
悪魔化
死霊支配Lv.4
音撃破Lv.4
魔導Lv.2
限界突破
アクティブ
身体強化Lv.5
テイムLv.5
威圧Lv.4
パッシブ
剣術Lv.3
槍術Lv.5
体術Lv.3
並列思考Lv.3
魔力操作Lv.2
直感Lv.3
気配察知Lv.3
危険察知Lv.4
気配遮断Lv.2
称号
死と音を司る悪魔 馬鹿悪魔 魔導の神髄 鷹獣の主 超越者 神殺し 竜殺し
従魔
キングスグリフォン
名前 ハスタ (1380)
種族 キングスグリフォン
Lv. 542
HP 12280000
MP 9600000
STR 12620000
VIT 910000
DEX 11800000
INT 9800000
MND 10100000
AGI 16030000
LUK 98
ユニーク
神化
風支配Lv.3
天駆
魔導Lv.3
限界突破
アクティブ
ブレスLv.4
身体強化
威圧Lv.5
パッシブ
爪術Lv.5
体術Lv.5
並列思考Lv.4
魔力操作Lv.5
直感Lv.4
気配察知Lv.2
危険察知Lv.4
気配遮断Lv.2
称号
神格 悪魔の従魔 空の王者 魔導の神髄 超越者 竜殺し
「......why?」
思わずその英単語を見て言葉が弾けた。というか日本語が弾けて英語で言ってしまった。こんなことあるんですね。
「って言うかなにあれ、一億とか何、あんなステータス見たの僕がブーストした時以来なんですけど。勝てっこなくね? なんか年齢の欄も無いし」
『いや、ギンも神王化使えば一億超えるでしょ? それにステータス一億なんてこの先行ったらゴロゴロいるんだよ? それと悪魔に年齢なんて概念存在しないよ』
ゴロゴロ......、ですか?
『うん。私も神様たちの詳しいステータスは知らないけど、最高神になるための最低ステータスが素の状態でオール五千万だからね。本来はもっと強いと思ってもいいんじゃない? 神器って言う切り札もあるし』
五千万......、しかもそれ最低ラインだよね? 僕のステータスでいうVITみたいなものだよね?
あーもうなんか頭痛くなってきた。
───っていうか、軍神が多めに見積もって一億だったとしても、あの時ロキが渡してくれたステータスを考えるとロキのステータスは二億。
......なるほど、たしかに鯖読みすぎだろあのクソ女神。最高神序列四位以上の実力を持ってる奴が戦闘向きじゃない軍神のステータスの二倍しかないわけが無い。きっとそんな感じでゼウスにも嘘ついてたんだろう。
「あー、何だか本格的にこめかみが痛くなってきた......。つまりはどういう事だ? こいつのステータス最高が一億で、直接の戦闘向きじゃない軍神は多めに見積もってその一億が最低ラインで神器も持ってる。そしてステータス二億だと思ってたロキに関してはその数倍は上、ってことか?」
『そうだねぇ......。それだけぶっ飛んでるから下界に介入禁止なんだよ。ちょっと力加えるだけでこんな星丸ごと破壊しちゃうからさ』
え、なにそれ。ちっちゃくなった方の魔神ブ○ですか? 道理であの時ゼウスが戦わなかったわけだよ。
と、そこまでで頭の痛くなるような数字の勉強はやめておこう。さっきから存在を無視され続けているムルムルが可哀想だ。
「......話は終わったかね、クソ吸血鬼」
「おう、お前みたいな卑怯で臆病者の悪魔のことだからいつ不意打ちを仕掛けてくるのかとずっと身構えてたんだけど結局何もしてこなかったな? なに、また何か企んでんのか?」
そう、実は会話しながらいつでも戦闘に入れるように身構えていたのだが......、やはり野生の勘という奴か、こいつはそれに気づくまでは行かずとも、嫌な予感でもしていたのだろう。
だからこそわざわざ話が終わるまで待っていたし、
───今尚、その嫌な予感は高まっていることであろう。
「何を企んでいる......だと? それはこちらの台詞だ。嫌な予感がすると思えば貴様、先程から何を無駄に魔力を消費している。詠唱も無ければそれによる変化もない。幻惑魔法かとも思ったがそれもない」
そう言い終わるとムルムルは玉座の横に立てかけてあった、明らかに聖剣クラスの槍を手に取ると、そのままグリフォンへと跨った。
「考えられるとすれば何かのスキルかはたまた武器への供給か。いづれにしよ、俺のすることに変わりはない」
───貴様を、潰す!
そう言い放つと同時にグリフォンが僕へと馬鹿みたいな速度で駆け出してくる。
流石は敏捷値1600万、僕の二倍以上の敏捷値を持っているだけはある。
けれど、
「残念、これは時間は要るが、詠唱は要らないんだよ」
僕はパチンと指を鳴らし、僕が持つ能力の中でもトップクラスに強力で、最も僕が強くなれる、そのスキルを発動した。
────深夜の処刑場、と。
☆☆☆
空間支配。
そのスキルを製造した際に使用した能力のうち一つに、輝夜と共有していた『世界構築』を盛り込んだ。逆に言えば世界構築とマップという二つのチート+α幾つかが合わさってできた世界で唯一の能力ではないかと思う───文字通り、僕のオリジナルだ。
────まぁ彼女らと共有したスキルを素材にしたその代償として、僕は彼女らから新しくスキルを共有することが出来なくなってしまったが、それもある意味当たり前であろう。
その世界構築とやらは、各々によってその姿を変化させる。
僕の場合は日中はどうしても力が落ちてしまうため、『深夜の処刑場』といういかにも吸血鬼で執行者な僕の力を発揮できそうな場所に
そのため、僕が本来持つべき世界は失われてしまっているのだが、僕は僕のやり方を貫き通す。
───そうして出来たのがこの世界。
帝都グリムの闘技場を彷彿とさせる、広大なコロッセオ。
高いステージと低いステージは階段で繋がっており、僕はその高く、戦うには狭い、そのステージに突き刺さった大きな十字架の上に座り込んでいた。
眼下には、目の前で起きた変化に目を見開いているムルムル。
いや、今回ばかりはメフィストもエロースさえもが驚いているか。
「まぁ、これも元々は輝夜の能力なんだけどさ......」
それでも、強くなるためならどんな能力だって取り込んで、自分のモノにしてみせる。
僕はその十字架の上で立ち上がり、翼と尻尾を出して、思いっきり口の端を釣り上げた。
きっと今の僕の瞳は爛々と、赤く光り輝いていることだろう。
「僕はここでは神に等しい」
あぁ、片腕を失ってから初めての、強敵だ。
───こんな状況、楽しくないわけがないよな?
「これより、執行を開始する」
いやはや、強さのインフレスパイラルが止まりません。自分で書いてて呆れてきました。
というわけで、次回! ギンVSムルムル!
今回はギンが戦ってきた中で史上最大の敵です! 頑張って欲しいものですね!
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