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帝国編ラストです!

色々と登場です! ほんの少しですけど。

第三章 帝国編
閑話 銀と神王

僕らは目の前の作業台に置かれた、黒光りするソレを見て、はぁとため息を漏らす。



「やっぱりダメだったか......」


「ふむ、やはり君の成長速度や戦闘方法などを鑑みても、ブラッドメタル製の義手(・・)では対応出来ないな。もちろんそれ以下の比較的軽い金属では尚不可能だろう、そもそも強度が足りん」



僕と浦町はお互いに顔を見合わせ、もう一度ため息をつく。



問題点としては、



・重すぎる


・高速戦闘についてこれるほど形状変化が素早くない


・万が一バハムートのような破壊不能すら壊してくる相手と戦った際、義手自体が壊れ、戦闘中に今のような重心のわからない状態になりかねない


・ガシャンギシャンと機動する際の雑音が酷い


・姿を隠す際に透明化や隠蔽などを使用しても、装備扱いにはならない義手はそのままの為、僕の得意とする暗殺術に支障が出る



等々が挙げられる。上記の危険を冒すくらいならば、片腕での高速化に順応した方がよっぽど条件がいいだろう。



「「はぁ......」」



そう考え至った僕達のため息が再び月光丸内の作業室へと響き渡った。




☆☆☆




時刻は朝の七時。何故か(・・・)全員が全員、朝の四時五時には目を覚ましていた───というか徹夜していたため、僕らは六時に朝食を食べ、その後、変身スキルを試した後に、機械を扱えば右に出る者はいないとまで言わしめた天才である浦町と義手作りに励んでいたのだ。


───因みに恭香を含む他の連中は殆どがゼウス家へと向かった。なにやら未だに報酬の件で揉めている......というか、ゼウスやロキの提示する報酬がヤバいもの過ぎて悩んでいるというのが正しいそうだ。流石は最高神のトップ二人だ。他の世界の所有権とか、最高神の座とか、そんなのばっかりで話にならないそうだ。


まぁ、恭香は誰がどう見てもこのパーティ一の天才だからな───頭脳のみだけど。彼女に加えて白夜、輝夜、それにほかの連中まで一緒に行っているのだ。僕が心配する必要性なんて皆無だろう。



そうして今現在、僕らは残った連中とともに居間で休憩をとっていた。流石に朝からの義手作りは万物創造持ちと天才メカニックでもきついものがある。そもそも前例がないし。



「って言うかネイル、そろそろ機嫌直したら?」


「誰のせいだと思ってるんですかッ!? ギンさんがあんなことするからですよっ!」


「はぁ......、仕方ないな。お詫びとして僕のパンツをや...」


「いりませんよそんな物っ!! そんなのどこに需要があるんですかッ!?」


「ネイルさん、ここは大人しくマスターの下着を受け取ってそのまま私に横流ししてくれれば結構ですよ。なんだか珍しく下着を着用したくなってきました。男物ですけど」


「ここにあった!?」



会話から察したであろうが、ここに残っていたのはネイルと暁穂の二人である。ネイルは僕が万が一ギルドへと向かった際に一緒にいなければまずいから。暁穂はなんとなくである。

因みに騎士組はエルグリットからの命令によりゼウス家へ行った為ここには居ない───まぁ、重要度が違うもんな。



と、そんな二人の馬鹿馬鹿しい会話と、何やらビッシリと文字で埋め尽くされた紙に尚何か書き足している浦町を見ながら、僕はお茶を啜る。




「あぁ、平和って素敵」



僕はつい最近の件の死闘を思い出しながら、そんなことをしみじみと呟いた





───が、こんな時に限って何かが起きるのは、もう自明の理であろう。自分でも分かりきって居すぎて警戒してました、はい。





「たのもぉぉぉぉぉっっっ!!!」




月光丸の玄関付近から、大音量な声が響き渡り......、残念な事に僕はその声の主を知っていた。



僕は固まっている三名をよそに立ち上がると、重い足を引きずって玄関へと赴く。




───そこに居たのは、最近さらに拡大した玄関を狭そうにして突っ立っている恐竜様で、




「はぁ......、エロースと言いアンタといい、何でこう易々とここに忍び込めるんだかな......?」


「ぐはははははっ! 我にそこまで細かいことを求めるなっ! だからこの先の罠は破壊するしか無理そうだったからここで待っているのだぞ?」



───玄関こじ開けただけでも脅威に値するのだがな。



僕は溜息をつきながら、この先に貼ってある罠を易々と見破った目の前の赤髪へと目を向ける。





「一体何の用だ、獣王レックス」




そう、我が家へと来訪したのはこの国の王様、獣王レックスであった。





☆☆☆





場所は変わり、つい先日までお世話になっていた帝城の廊下。


ドスンドスンッ、という鈍重そうな足音に続いて僕らの足音が続く───因みにここで言う"僕ら"というのは、僕と暁穂の二人である。

因みにネイルは「は、ははは.....、流石にもう王城に行くのは遠慮したいですね......」との事。浦町は「私はもう少し義手について考えてみることにする」との事だった。



「それで? なんで僕はここに呼ばれたんだ?」



僕は今日何度目か分からないその質問を、前方を歩く獣王に問いかける。


───が、返ってくるのも同じ言葉であった。



「ぐははははっ、まぁお主が損するような事ではないわっ! 逆に我に誠心誠意お礼を言いたくなるから覚悟しておけいっ!」



との事である。


───誠心誠意お礼を言いたくなる......ねぇ?


僕は、「もしかしたら義手でもくれるんだろうか?」とも思いはしたが、やはり獣王といえども、ブラッドメタル以上の素材を持っていてもアレ以上の出来の義手を作るのは難しいだろう。もしそれが可能だとすれば土精族くらいなものだ───それも神級種の。


だからこそ、先程から獣王が何をしたいのか理解できないし、その『お礼』の意味も図りかねている。




と、そんな事を考えていると、獣王の足音が止まっていることに気がついた。



ふと顔を上げると、獣王はとある頑丈そうな扉の前に立って、こちらを振り向くところであった。


こちらへと振り向いた獣王の目は、何か呆れたような感情を浮かべており、その対象が僕であることは明白だった───思いっきり目が合ってるし。




果たして獣王が僕へと言ったその言葉は、僕の予想と想像と、さらに常識になりつつあった僕の戦闘スタイルのをぶち壊し、僕の心に深々と突き刺さった。









「執行者、お主......、防具(・・)はどうした?」



「...............あっ」






───僕は、今の今まで防具を装備していなかったことに、今更ながら気がついたのであった。





☆☆☆





防具。



それは武器と並ぶ戦闘においての必需品。


それを僕がどうして装備し忘れていたか、と聞かれれば、最初に出会った人物───まぁ、人ではないのだが、白夜と死神がここでは対象となるだろう。


二人の服装をよく思い出してほしい。



───そう、二人とも、防具なんざ付けていなかったのだ。



だからこそ僕は無意識のうちに、


「あっ、この世界って防具無しでもやって行けるんだな」


と、馬鹿げた勘違いをしていたのだ。


さらにそれに加えて、僕の不老不死という異常すぎる体質も合わさってしまうと、最早そこには防具という必要性は見当たらず、結果として今の戦闘スタイル(主に服装)に至る。




そうして僕は、過去を振り返る。



まず一番最初に思い至ったのは、大侵攻が起こる直前でのギルドでの出来事。

今はもう既に忘れ去られているであろうSランク冒険者、『双突』の二つ名を冠するフランに絡まれた時の話だ。


僕は確か、あの時思いっきりレイピアで体を貫かれたのではなかっただろうか? それも腹か胸のどっちかを、だ。



きっと、その回想から今の僕が得るべき教訓は、




───防具つけてりゃ、防げてた。




その一言に尽きるのだ。




その他にも、暁穂(フェンリル)との戦いや、その前のバジリスク戦、更にはバハムートと戦った際の首以外全消滅に至るまで『防具さえあれば......』という戦闘はあとを絶たない。

───まぁ、一番最後のはあっても無くても変わらなかったのだろうが。




そうして今現在、僕の目の前には所狭しと置かれたこの国における『国宝』の数々。



「我が息子であるウイラムの救出依頼に対する報酬と、武闘会参加者であるお主を危険に遭わせ、その力を失わせてしまった事への慰謝料のようなものだ」




そうして獣王様は、僕へと有難い一言を仰った。





「遠慮はいらぬ、なんでも一つ持ってゆけいっ!」


「あ、ありがとうございますッッ!!」




期せずして、獣王の予想通りにお礼をする羽目になった僕であった。





☆☆☆





タイタンの棍棒 品質SSS

巨人の王タイタンが持つとされる巨大な棍棒

全てを破壊し、押しつぶす。

とてつもなく重いのだけが欠点。

筋力増加 破壊不能属性付与



グランズの宝剣 品質SSS

グランズ帝国が代々受け継いできた伝説の宝剣。

『危険な時は、この宝剣の力を使え』

そう王族には代々伝えられているとか。

召喚魔法付与 破壊不能属性付与



デビルスライムの粘液 品質SSS

単体で災害すら引き起こすと言われたスライムの王の粘液。

全てを溶かし尽くすと言われ、その保存は非常に難しい。



魔石 品質error

魔物の核。

全世界に数個しか存在しないとすら言われる伝説の中の伝説。

噂によれば大昔、とある冒険者パーティが討伐したある魔物から取れたとされるがその真偽は明らかではない。



世界獣の甲皮 品質EX

世界獣ベヒモスの甲皮。

ありとあらゆる魔法を弾き、衝撃を吸収する。

とてつもないスペックを秘めているが、それと同時に常人では扱えないほどに重い。




「......おい獣王、お前ら一体何を倒したんだ?」



僕がざっとそれらを見渡して鑑定した後、最初に発した言葉はそれだった。

世界獣やら品質errorの魔石やら......僕には到底理解のできないものばかりである。正直ドン引きだ。



僕は入口付近に立っている獣王へと振り向くが、彼は彼で何やら諦めたような顔つきで立っていた。



「あぁ、我らのパーティか......。我と魔王の奴が一番の下っ端で、その上にドナルド、カネクラ、エルザと続くのはいいのだが......その先が問題でな」




───何故だろう、その先を聞いてはいけない気がする。




鬼人族(・・・)のグレイス、天魔族(・・・)のリーシャ。副リーダーとリーダーだな......。そこの世界獣やらは殆ど彼奴ら二人で倒したようなものだ。カネクラ曰く、グレイスはまだしてもリーシャに至っては冥府神や海皇神よりも強いらしい」




ほら見たことか、絶対それフラグだよね、次か次の次か、どっちかの章で登場しちゃうんじゃないですか、その人達ってば。



もう半ばその人達との邂逅を読めてしまった僕は、レックスと同じように半ば光の消えた目で黙々とそれらを鑑定して行った。




「はぁ......、そのうち誰か強い人にでも弟子入りしようかな」



ロキとかメフィストとか、ゼウス......はなんか嫌だな、自力で超えたい。ならもうこの際エウラスでいいかな、暇そうだし。


───それにしても『リーシャ』......ねぇ?




と、そんなことを考えていた───その時だった。







「......? あれ、今なにか......」




───今、何かに呼ばれたような.......、






声ではなく、念話でも無く、



何か漠然とした『呼ばれた』という感覚を覚えた僕は、ふらっとその感覚がする方向へを歩を進める。





「マスター......? どうかしましたか?」



暁穂が僕の迷いのない歩みが気になったのか、僕へとついてくる。何気に獣王も後をついてくる。





そこの角を曲がって。



更にそこを逆に曲がる。



真っ直ぐ歩いて行きあたる、とある衣装棚。



そこの、右から四つ目。




導かれるままに僕はそこへと訪れ、それを手に取ってみる。





果たしてそこにあったのは一着の黒いローブで、どこか懐かしく、体に馴染むような気がした。






「獣王、僕はこれにするよ」





防具でもないし、鑑定もしていない。



───けれど不思議と、僕はそのローブを選ぶことに対して全くの迷いがなかった。





☆☆☆





そのローブは僕の身体より大きめに出来ているのか、今まで着ていた黒地に銀のジャケットを着たその上から着ても尚、袖は余るし裾は死神のローブよりも長いところまで来ている───辛うじて戦闘の邪魔にならない程度かな?


そのローブはスッポリと着るタイプではなく、羽織ってから前で軽く留めるタイプのローブだった。裏地は暗めの赤色で、フードも付いているようだ。暗い赤のお陰でレオンが戦闘時に付けているマントと雰囲気がかぶってる感じがないのでよかった。



と、着てみたところでレックスから声がかかった。





「ふむ......、我はそれでもいいのだが......、」




レックスにしては煮えきらないその声に少し驚き、レックスの方を見た僕ではあったが、彼の口から告げられた言葉に尚驚くことになる。






「我はそんなローブ、見た覚えがない(・・・・・・・)ぞ?」


「.........は?」




見覚えがない。



この場合、それはしまっておいたが忘れてしまい、見覚えがない、という意味にもなるだろう。


───それが、一般人だったならば、の話だが。


獣王は仮にも時の歯車も一員で、僕よりも暁穂よりもずっと強い。それはステータスでも同じこと。



だからこそ僕は疑問に思う。




脳筋とはいえ、高ステータスを持っているレックスが......、常人と同じように物忘れなどするだろうか? と。




「嘘だろ......、か、『鑑定』!」



急激にそのローブが恐ろしくなってきた僕はそれを鑑定する。






───が、







《error》


鑑定スキルでは正体が分かりません。







「ど、どうなってるんだ......?」



僕の脳内に現れたその文字列は、少なくともこのローブが通常使用ではないことを示している。

あの創造神の使ったスキルが効果をなさないだなんて......、はっきり言って尋常じゃない。



僕はそのローブが末恐ろしくなり、咄嗟にそれを脱ごうとしたその時。





僕の瞳に、ローブの裏に刺繍されてあったその持ち主の名前が映し出された。





それはこの世界にないはずの英語表記で、




達筆な、それこそ刺繍されているとは思えないような綺麗な文字で、こう書かれていた。








───Ouranos(ウラノス)、と。





☆☆☆





それと同時刻、地球のとある場所に立つ日本屋敷にて。




「やっとたどり着いたね、銀」



───ま、お下がりだけど我慢しておくれよ。



そう、男は笑う。



ギンよりも高い背に、少し長めの黒い髪。

そして、人とは思えない程の整った顔立ち。



男はどこかで見たような黒いスマホを懐へとしまうと、それとほぼ同時に居間の方から声が聞こえる。



「ちょっとー、銀の行った異世界行くんでしょー? あなたが居ないと今の(・・)私だとなんにも出来ないんだから早くしてよー」


「......二人共、どこかで頭打ったの? って言うか生きてたの?」


「んもぅ、凛ちゃんたらー、私たちが死ぬわけないじゃない! ねぇあなたー」




それは男の妻と娘の話し声。




「はぁ......、凛に言っても理解できないだろうに」



カツカツと足音を鳴らして男は歩き出す。






「銀、ゼウス。そろそろ僕たち(・・・)も参戦するとするよ」





居間へとたどり着いた男は、指先で空間に割れ目を作る。





「行くよ、リーシャ(・・・・)、凛。久しぶりに銀に会いに行こうじゃないか」






こうして大きすぎる隕石が渦中へと放り込まれた。



いや、彼ら彼女らが静かな水面を渦へと変えるのかもしれない。





───いづれにしろ、あの世界がこの先、混迷を極めることになるのは変わらないことであろう。

実はギンって防具つけてないんですよ。神の布は破壊不能ですが、破れないだけでただの布ですしね。

とまぁそんな感じで、帝国編のラストは色々とぶっ込んでみました。どうでしたでしょうか?


次回! 新章開幕、王国編!

次の次の章が超長めになる予定ですので、次章は少し短めかもです。

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