女子会再び!
前回は恭香もいませんでしたからね。
果たしてどんな話をしているのか、少し覗いて見ましょう。
ギンが名ばかりのリハビリを行った日の晩。
夕食を取り終わり、皆が部屋へと戻った......、
───と、思われていた。
「それでは第二回女子会を開催するッッ!!」
今やロリ共の巣窟と化した恭香の部屋に、いつぞやを思い出すような輝夜の声が響き渡る───ちなみに月光丸は全室防音仕様なので前回の二の舞になることは無いらしい。
───ちなみに「防音か防音じゃないかで聞かれたら前者だろ、防音とかなんか優れてるっぽいし」という考えで作られた部屋だったが、ギン自身は恋人である三人+数名に「もしかしたら....」と思われていることには知る由もない。案外鈍感な主人公である。
今現在、恭香の部屋にいるのは、恭香、白夜、輝夜はもちろん、オリビアにアイギス、暁穂にネイル、わりかし新入りな浦町、そして仲間というよりは居候として空気扱いのポンコツ女神様───エロースである。
ちなみに伽月も藍月もこの部屋に居るのだが、二人共この部屋の隅っこで丸まって眠りについている。もちろん小型化して、なのだが。
とまぁ、今回も今回で、ギン本人の知らないところでの女子会が開催された。
果たしてその女子会はどんな無秩序状態になってしまうのか。
───それは、理の教本でさえ知る由のないことであった。
☆☆☆
まず最初の議題に上がったのは、居候女神様のことであった、
流星のごとく現れてギンを救ったかと思えば突然の壁ドン。いきなり求婚をして振られたのにも関わらず、今度は愛人になると言って舞い戻ってきた頭のおかしいポンコツ女神様。
エロースを簡単に言うならばこんな感じになるのだろう。
今までのように色々なドラマや理由、戦いを経て仲間になるのではなく、なんだかサラッとしすぎていて「え、仲間になってたの?」という感じなのだ。話題に上がらないわけがない。
「そもそも私はエロース
今朝とは違い、さん付けをして話す恭香。
───実は彼女は「流石にパーティの女子率と競争率が高すぎる」と悩んでおり、結局はパーティに入る人物は自分で見極める、と結論付けたのだ。今朝のクズい発言などはそのせいである。
まぁ逆に言えば、さん付けで呼ばれている時点で随分と認められているということなのだが、残念ながらこの中でそれに気づいているのは付き合いの長い白夜と輝夜だけである。
と、そんなこんなでみんなの視線がエロースへと向かう───が、反応はない。
数秒してから、はっ、と声に出して身体を硬直させたエロースは恐る恐ると言った感じで自分の事を指さす。
「......え? もしかして私に聞いてた?」
その反応を見て、元ぼっち共は感づいた。
───あ、コイツは同類だ、と。
その考えは間違ってはおらず、聞いてもいないのにエロースは語り出した。
それは雑談なんかをするような雰囲気ではあったが、やはりエロースは色々と重要なことをサラッと言ってしまう。
「いやぁ、私ってばこんなんだけど友達って呼べる存在がいなくてねー。ウラノスはおじさんって感じだし、タルタロスもお姉さん、って感じだし。ガイアやエウラスのおじちゃん何かは両親みたいなもんだからさ。それに寵愛神だけあって私ってば美人さんでしょ? だから皆が皆遠慮してはれもの扱いだったんだよねぇ......。だから対等に話してくれる男の子なんて惚れないわけがないよぉ。あぁ、護衛団とか親衛組とか勝手に作られてて酷かったんだよぉ?」
かなり自意識過剰とも取れるような言葉を言っていた気もするが、女子一同はエロースの容姿を見てはぁと溜め息をつく。
黄金比を体現しているかのようなプロポーションに可愛さと美しさを両立した顔、そしてその性格も相まって、先ほどの言葉すら嫌味にすら聞こえない。寧ろ納得している自分がいた。
そこまで考えいたって、恭香は溜め息をつく。
(ギンも結構心を許してるみたいだし......、これはうかうかしてられないかな?)
まるで空気ようにサラッとその場に入り込み、そして違和感すら与えずにありとあらゆる人物を魅了し、虜にしてゆく寵愛神エロース。
ギンは
従魔たちをほぼ完全に掌握し、彼女らが事件や事故を起さないように事前に対処出来ている彼ならば、エロース自身のことを支配し、手駒───きっと彼は奴隷だなんだ言ってツンデレるのだろうが───にしてしまうのだろう。現にもう既に絶対服従を約束させたみたいだし。
(まぁ、私がいくら考えて深読みするよりも、ギンに任せておいて私がサポートに回った方が確実なんだけどね......)
恭香はそんなことを思い、やはりギンはあんな性格でもすごい人物なのだろうと再確認する。
果たして彼女はそんな恭香を見つめて、何を考えているかわからないような顔をして首を傾げているのみである。
───何も考えていないポンコツ女神か、
───はたまた何かの思惑を持った凄腕の詐欺師か。
(どちらかは分からないけれど......、まぁ、一先ずは様子見として仲良くしてあげてもいいかもね)
やはり、どこかのツンデレに考え方の似てきた恭香であった。
☆☆☆
エロースに関する議題がまたもやアッサリと終わってしまったので、彼女らは新たな議題を探すことにした。
───そしてそれは、案外目の前に転がっているものである。
「おーい、ネイルよ。起きるのじゃ」
「.........嫌です」
そう、床に(物理的に)寝っ転がってふて狸寝入りしているネイルである。どうやら午前中にあった件の事件について色々と思うところがあるらしい。
「酷いんですよギンさんってば。私と桜町さんがスライムに捕まって......ゴニョゴニョ......されてる間、ずっとニヤニヤしながらこっち見てたんですよ? じーっと見てたんです、じーっとですよ? 人としてどうかと思うんですよねっ......」
もう完全に拗ねちゃってるネイルは寝返りをうって、たまたまその寝返りした先にいたオリビアへとひしっと抱きつく。
オリビアはこんなナリでも一応は女子高校生と同じ年齢。抱きついてきたネイルに「よしよしですぅ」と幼い言葉使いをして話しかけている───オリビアだから許されることであって、もしこんな言葉遣いをしている女子高校生がいたら.........いたら、まぁ......、ねぇ? ご想像にお任せします。
あまり見ないネイルの可愛らしい姿に思わず目を見開く恭香ではあったが、自分がひた隠しにしていたその事件についてネイルが語ったことで、約二名ほど面倒なことを言い出す輩が現れるのを恭香は事前に予測していた。
「な、なな、なんじゃとぉぉっ!? スライムに捕まった姿をまじまじと見つめられるなぞ......、ど、どんな御褒美じゃそれはっ!? 妾でも未だに尻たたきと言葉責めくらいの凌辱しか受けてないのじゃぞ!? なんという事じゃっ!!」
「確かにご褒美以外の何物でもありませんね。二人の女性を捕まえられるスライムで、更にここらにいてもおかしくないスライムといえば恐らくはエンペラースライム。捕まったというのは触手に、ですね? ならばじっくりと服のみを溶かされ、最終的に裸に剥かれ、それをマスターの目の前で大衆に晒される......ッ! な、なんという御褒美ですかっ、羨ましい限りですよネイルさんっ」
───そう、ドMと露出狂という性質の似通った変態二匹である。
恭香にはその二匹の性癖は何が違うのかは理解できないが、どうやら二人の間では確かな線引きをされており、緊急事態には露出狂はドMに、ドMは露出狂に変質してもいいという条約が交わされているらしい。緊急事態とはなんぞや、と恭香は思う。
閑話休題。
馬鹿二匹を無視すると、白夜は「あひゃう......、ガン無視とは、ひ、久しぶりの快・感・じゃぁ......」と言ってピクピクと痙攣し出し、暁穂に至っては「ならば私は全裸になりましょう」という脈絡もへったくれもないような事を言い出して、脱ぎかけた所を輝夜に確保された。
───やはりこのメンバーを纏め上げているギンに尊敬の念が絶えない恭香を始めとした他の面々であった。
因みにギンは、これに加えてレオンという暴食問題児の抑止力としても働いているので、何だかんだで彼に休日は無いのだと思い知らされる。まさにブラック企業ならぬブラックパーティである。
「ふむ、我としてはネイルが主殿のことを好いているのか聞こうと思っておったのだが......、今の状況ではな......」
輝夜が少し残念そうにそう口にすると、ネイルはぷいっと顔を背ける。やはり今の状況では、どんな質問をしたところで「嫌い」の一点張りだろう。
これは困った......、と恭香たちは悩み始め、結局はネイルに関しては後々見極めていこうということになった。
そもそもギンに対して明確な好意を寄せていない女性は、このパーティにおいてネイルのみなのだ。それは逆に、ネイルのみがギンに惚れないなんてのは伽月のように他の人物に恋した場合を除いて考え辛い。
((((まぁ、マックスは無いだろうし...、))))
という考えに至り、ネイルも時間の問題だろうと彼女らは考える。マックスに関しては完全なとばっちりなので、ご愁傷さまとしか言えない。
「なんだかたまには女子会も面白いねっ」
「うむ! 最初に輝夜に唆された時はイラっときたのじゃが慣れれば面白いのじゃっ!」
「おい白夜、ちょっとこっちで我と語り合おうじゃないか。何なら拳で語り合ってもいいのだぞ?」
「嫌なのじゃ、相手との力量差を測れないほど妾も馬鹿ではないのじゃぞ? 少なくとも輝夜と暁穂、あとエロースとも嫌なのじゃっ」
「えええっ!? 私ってば嫌われちゃった!? 話あんまり聞いてなかったから分からないけどー」
「......君はまず、話をきちんと聞くところから始めた方がいいな、寵愛神エロース」
「はははっ.....、また凄い人が入ってきちゃいましたね。お陰様で私の影が尚一層薄くなってきましたよ......」
「大丈夫ですよアイギスさん、順番的に言えば次はオリビアさんと貴女の番です。次章ではきっと二人が主役ですよ? だからクリスマスの時の閑話では少し目立って...」
「ちょっとお姉ちゃん!? それって登場人物が言っちゃいけない部分じゃないの!? 果てしなくグレーゾーンだよ!」
「あははーっ、グレーどころかまっくろくろすけだよぉー」
と、そんな会話をしながらも女子会は続いてゆく。
果たして次はどんな議題に移ってゆくのか。
───まぁ、順当に行けば1人しか居ないわけで、
「次点に私へ天命が降るのは最早必然。天使と悪魔の囁きに基づき、ギン=クラッシュベルの真の姿をここに明かさん! さぁ、導きの元に我が名を告げよっ!」
「おおっ!? そ、そのアイデアはもらっても良いのか!?」
「え? あ、あぁ、す、好きにすればいいだろうっ」
そう、強がり大好きエセ中二病のマッドサイエンティスト、浦町了である。
───果たして彼女はどんな人物で、どんな過去を持っているのだろうか? そして、出来ることならば彼の過去の話も聞いてみたいものだ。
そんなことを思って胸を膨らませる、女子一同であった。
☆☆☆
女子会も大体の議論を終え、次第に終わりへと近づいてきた。
恐らくはこれが最後の話になるだろうというのは皆が皆分かっていたのだろう。だからこそ、彼女らは姿勢を正して、しっかりと今回の司会進行をしている恭香へと視線を向ける。
恭香はふぅ、と一度息を吐き出すと、顔を上げて覚悟の決まったような表情で、こう切り出した。
「今のギンは......、正直な話、結構弱いよ」
考えないようにしていた、その事実。
いつも頼って、頼られることを願っていたのにも関わらず、結局は彼が居なければ何も出来ない。
彼に尻拭いをしてもらえなければ、きっと問題ばかり起こしてしまう。
そんなことを少なからず思っていたところに、恭香は何の含みもなく、純然たる事実を告げたのだ。
知ってはいることであっても、改めて言われると思った以上の衝撃を受ける時もある。今回はそれであった。
彼女たちは悔しげに顔を歪め、拳を握りしめる。
───そして、それは恭香も例外ではない。
今でも鮮明に思い出すあの日のこと。
目の前にまで迫る破壊の光線と、ギンが最後に浮かべていた悲しげな笑顔。
───生憎にもその姿はここにいる誰もが目撃し、その笑顔は今なお脳裏に焼き付いている。
忘れたくても忘れられない。忘れたくても忘れたくない。
辛くて、自分が嫌いになりそうで、今すぐにでも忘れ去りたい記憶。
けれどもそれは、彼が命をかけて自分たちに遺そうとしてくれた何かなのかも知れない。
───そう思うと忘れられないし、忘れたくもない。
たくさんの矛盾を孕んだその考えとともに頭を過ぎったのは、戦いの後に気絶し、まるで死んだかのように動かなくなった彼の顔。
土気色にまで変色し、身体は冷たく、生きているのが不思議なまでに疲労し、衰弱していた。
『あぁ、彼はここまで頑張ってくれていたのか』
近くにいたのに気づけなかった自分が、心底嫌いになった。
そして、もうそんな思いはしたくないと、心の底からそう思った。
───だから、
恭香は視界がぼやけるのを感じながら、それを必死にこらえて、皆へとこう告げた。
「ギンの役に立つには、きっと今しかないんだ。今のギンは弱くて......、だから、今ギンを助けなきゃ......、きっとそれは間違いで、後悔することだと思う。......だから......、」
それは、彼女らしくない、感情のままに口に出した言葉で、奇しくもそれは、他の面々の心へとスゥと入り込んでいった。
「私はギンの事、大好きだからさ。......例え、この命を捨ててでも、絶対に今のギンを救ってみせるよ」
恭香の静かな告白と宣言は、赤い光が差し込み始めたその部屋に響き渡った。
果たして恭香の告白に、彼女らはどう返答したのか。
それは、きっと彼女達しか知らない。そういうことにしておこう。
☆☆☆
先程
「はぁ......、馬鹿はお互い様、ってわけですか」
誰に言うわけでもなくそれだけ呟くと、僕は寝ていたフリをする為に自室へと向かう。
───何故だか、その途中で偶然すれ違ったマックスとレオンが、妙にニヤニヤとした笑みを浮かべて僕の顔を見ていたのは、きっと気のせいだったのだろう。
さて、今日の夕食は久しぶりに外食にでもするかな、と珍しくそんなことを考えた。
ギンは愛されてますねぇ。羨ましいです。
次回! ギンは一体どこへ出かけていたのか?
特に、武闘会が中止となって「は? ボコらないの?」とか思ってた方々。お楽しみに!
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