「日本の特別永住権を持つ在日コリアンは、朝鮮総連などの関係諸団体を含め、国から特権的な優遇措置を受けている」と主張する、いわゆる「在日特権」説。陰謀論ともデマとも言われるこの話題が2月28日、国会の俎上に載った。税制上の「在日特権」の有無について質問された国税庁課税部長は、国籍や所属団体によって「特別な取り扱いをすることはない」と回答。しかしこれに関して、元国税調査官の大村氏は「特権はなくとも、特別扱いはあるはず」と首をひねる。大村氏によれば、この“特別扱い”は、保守派の人々が批判する「在日外国人の特権」とは似て非なるもの。背景には国税庁や税務署の「違法行為」があり、ごく普通の善良な納税者ばかりが犠牲になっているという。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より)
「在日特権」に関して国税庁がついた嘘
2月28日の衆院予算委員会分科会で、日本維新の会の高橋英明議員がいわゆる「在日特権」について質問をしました。
国税庁に対して「税制面の優遇措置といった特権はあるのか」と質問したのです。
これに対して国税庁の田原芳幸課税部長は「対象者の国籍や、特定の団体に所属していることをもって特別な扱いをすることはない」と回答しました。
高橋議員はさらに「在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)とか、それに関わる法人個人も一切の優遇措置はないのか」と質問し、国税庁の田原課税部長は「特別な取り扱いをすることはない」と回答しています。
「在日特権」というのは、在日韓国人、在日朝鮮人が持っている特権のことを言います。税金や戸籍など、様々な特権があると言われており、またこれらの特権は全部デマであるという主張もあります。
果たして税金についての在日特権は本当にあるのでしょうか?
「特権」はなくとも“特別扱い”はある
元国税調査官として言わせていただくと、「特権」と言えるかどうかはわからないが、「特別扱いはしている」というのが本当のところです。
そもそもなぜ在日の人たちが「税金に関して特権を持っている」と言われるようになったかというと、平成3年に朝鮮総連が発行した便覧「朝鮮総連」に、朝鮮商工連と国税庁の合意事項として次の5項目が掲載されているからです。
- 朝鮮商工人のすべての税金問題は、朝鮮商工会と協議して解決する
- 定期、定額の商工団体の会費は損金(経費)として認める
- 学校運営の負担金に対しては前向きに解決する
- 経済活動のための第三国旅行の費用は、損金として認める
- 裁判中の諸案件は協議して解決する
朝鮮総連側によると、この合意項目は、1976年に当時の社会党議員と朝鮮総連の幹部が国税庁を訪れて決められたものだということです。
しかし国税庁側は、社会党議員と朝鮮総連幹部の訪問については認めていますが、合意があったことなどは一切認めていません。
“特別扱い”= 本来すべての納税者が受けるべき扱い
では税務の現場で、実際にこの合意項目が守られているかというと、ほぼ守られているのです。
というのも(3)の「学校運営の負担金」は別として、ほかの項目については、本来、納税者に認められているものだからです。
たとえば、(1)については、本来税務に関して団体交渉権は認められていないのに、朝鮮総連だけが認められているとして、バッシングの対象になることがあります。
が、確かに税務に関して団体交渉権は認められていませんが、税理士が交渉することは認められています。
国税庁と税理士会との申し合わせで、税理士に依頼している納税者については、国税庁が直接、納税者本人と交渉するのではなく、必ず税理士を通して交渉するということが決められています。
そして税理士側は、交渉の場に何人いても構いませんし、税理士事務所の職員ということにすれば、税理士資格を持っていない人物が立ち会うこともできます。なので、実質的に「団体交渉権」があるのです。