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メリークリスマスイブ!

果たしてそんな言葉があるのかは疑問ですが、とにかくイブおめでとうございます。

という訳でクリスマス緊急企画、彼らの過ごすクリスマスの内容をお送りします。

第三章 帝国編
閑話 独り身たちの狂想曲

雪がさんさんと降り、吐息が白くなる様を、少し感慨深く僕は見つめていた。



「こっちでも、雪は降るんだなぁ......」



僕はこう見えても北海道在住だったからな。雪には見慣れてる───というか、雪掻きが大変すぎて雪の事まで嫌いになりかけていた。



毎朝毎昼毎晩雪が降って、朝起きたら雪掻き、夜帰ったら雪掻き。そして翌日起きたら雪が降りすぎてて扉が開かない。仕方ないからシャベル片手に窓から脱出、扉の前の雪を排除したものの家の鍵を忘れてさらに面倒なことに......。


さらに翌日は残念なことに晴れ。分厚いコートの上から僕を嘲笑うかのように太陽光が差して暑くなる。が、かと言って脱いだら脱いだで超寒い。その上地面はアイスバーン。気を抜いた途端にアパートの階段からどってんころりん。



とまぁ、独り暮らしなんかしてるとそんなこともあった。



───まぁ、場所や人にもよるけどね。



そうこうしていると、唇が冷えて、痛くなってくる。

次に耳、指、頬ときて、最後に体の芯まで寒気が伝わってきた。


流石にそろそろ動かないとまずいだろう。




「はぁ......、それじゃあ、そろそろ行くかな」



───気は進まないけど。



そう言って僕は一人、憂鬱な気分で街へと繰り出す。

赤いマフラーに顔をうずめて、ジャケットのポケットに手を突っ込む。


ほんの少しの温かみが感じられるが、それも焼け石に水だろう。







今日は12月24日、つまりはクリスマスイブ。






───サンタクロースが独り身たちに絶望を与えにやってくる、クリスマスの前日であった。






☆☆☆





なぜ僕がこんなことをしているか、という話に戻ろう。



それは、件の地獄を乗りこえて数日経ったある日のことだった。




「はぁ? え、何? お前らサンタさん知らないの?」



月光丸の居間に僕の声が響く。



───何故ならば...、




「サンタさんじゃと? 主様がさん付けするなど只者ではないな?」


「ふむ、"惨斬(サンタ)"か。禁項の呪本(アカシックレコード)を狙いき来た紅暁の方舟(ブラッディノア)の最高幹部......。まさか主殿がそこまでたどり着いておったとはな? クックックッ、思わず右腕が疼いてきおったぞ!」


「私は反抗期に封印されてから三億年も経ってますからよく分からないですね。その間に生まれた人物では?」


「サンタと言えば食べ物であろう? ほら、あの......なんか肉まいたヤツである」


「サンタさんなのですか? 知らないのですっ!」


「わ、私も知らないです......」





コイツらがあまりにもサンタさんを知らなかった為である。



知っていたのは、と言うと。



「.........ほぼ全滅だね」


「おいレオン坊、サンタさんは食べ物じゃねぇよ」


「は、はははっ......、本当に常識の通じないパーティですね......」


「......君たちの頭の中には一体何が入ってるんだ?」




僕、恭香、マックス、ネイル、浦町の五人だけだった。


僕と恭香、浦町の三人は当たり前だとしても、この世界出身のやつが十人中二人しか知らないってどういうことだ?


二割だぞ? 二十パーセント、五分の一だぞ?



───もしかしてサンタさんってこの世界では有名じゃないのか?



そんなことを思いながら、僕は皆にサンタクロースの概要を説明した。





「────とまぁ、簡単に言えば、獲物を食らう時に付着した血染めの鼻を見せびらかしながら空を駆ける『聖獣トナカイ』を二匹も従えて、世界中の独り身たちを惨殺しに来る、返血で真っ赤に染まった服を着た悪魔の様なおじいさんだ。一見優しそうだが見てくれに騙されるなよ? 油断したらその時がお前らの最期......ぐばらぁっ!?」


「何変なこと吹き込んでんだァァァっっ!!」



真実を語った途端、マックスによる飛び膝蹴りが僕の脳髄を破壊した。


───コイツも僕に致命傷を与えられるくらいには成長したってことか。


と、そんなことを考えながら一瞬で致命傷を回復させると、話を続けた。




「まぁ、最後のは冗談だが、世界中の子供にプレゼントを届けに来るついでに独り身たちの心に深刻なダメージを、さらにはイチャコラしているリア充共に子供をさずけていくクソッタレなジジイだ。見かけたら即殺すように、な?」


「「「「「り、了解......っ!」」」」」



どうやら彼らは僕のあまりの真摯さに心を打たれて、僕の意見に賛成してくれたようだ。



「......単純に目が血走って怖かっただけなんだけどね」



───僕は何も聞いてないからな。



とまぁ、こんな事があったのだ。




それで、ここからが本題だ。






「そ、それならばサンタさん......とやらは妾たちのところにも来るのかのぅ!?」



.........えっ?


白夜がソワソワしながら口にした言葉に、思わず戦慄した。

ふと視線をスライドさせると同じような雰囲気の他の面々。



───お前ら......サンタさんの事、信じちゃったのか?



子供たちの夢を壊さないためにも言明は避けるが、それでもその歳でサンタさんを信じたことに対する嘲笑(おどろき)が隠せなかった。



(いま嘲笑とか言わなかった?)



......気のせいじゃないか?


それで話を戻すが、よく考えるとそれはある意味当たり前のことなのかもしれない。


通常なら「はっ、一日で世界中にプレゼントとか、馬鹿じゃねぇの? 物理的に不可能だろうが」とでも否定できるところが、この世界では「えっ、その人相当強いんだな....、神様とか?」で終わる。


さらに追い打ちとばかりに僕と恭香というのこのパーティのリーダーと副リーダー(どちらも暫定)が知っているという事実。



───確かに判断材料としては、充分過ぎるだろう。



「は、はははっ......、いい子にしてれば来るんじゃないか......なぁ?」



僕はそう言って引き攣った笑いを浮かべることしか出来ず、今に至る。





───簡潔にいうとサンタの代わりにプレゼントを買いに来ているのだ。



もう言明もへったくれもないが、あそこまで喜んで巨大靴下まで買ってきた奴らに「実はサンタなんて幻想なんだよ」と言ってイマジンブレイクしまったら色々と終わる気がする。


主に僕の信頼とか命とか。



「はぁ......、こんなことになるならサンタの話なんてするんじゃなかったよ.........」





───そんなことを言った時のことだった。






『......召喚。...これであってる、よね?』


『そうだねーっ! 多分あってるよっ!』




どこかで聞いたような神々の声が聞こえ、僕の意識は暗転したのだった。





☆☆☆





「こ、ここは......」



なんだか最近は気絶すること多いなー、とそんなことを思いながら目を開けると、そこには数ヶ月前に三日間滞在した、日本屋敷の天井が広がっていた。



───そう、ゼウス家である。



それに気づくのとほぼ同時に、すぴー、すぴーと可愛らしい音が聞こえて来ていることにも気づいた。



『ふふっ、添い寝はもう少し後...ね?』



そんないつかのゼウスの言葉が蘇り、やっと今の状況が理解出来た。


なるほど、僕と添い寝するために僕を召喚したわけか。ぶっ飛んだ考え方だが可愛らしいじゃないか。


そんな事を考えながら頭でもなでてやろうかと布団の中に隠れた盛り上がりへと手を伸ばしたその時。




────僕は気付いてしまった。






「.........何故ここにいる、狡知神ロキ(・・・・・)




僕の布団の中にある二つ(・・)の盛り上がりのうち一つ、その中に隠れた彼女が、布団の隙間からこちらを覗いていたのだ。



僕が気づいた時の反応が少しお気に召したのか、ロキは布団をバサァっと捲りあげて僕の首へと抱きついてきた。



「ひっさしぶりだねぇギン君! 元気してたー? 着々とハーレムルートを開発してるみたいだけど、お姉さんと離れて寂しかっ...」


「いや、全然全く。逆にうるさいのがいなくてせいせいしてたよ。そもそもお前、見た目は中学生だろうが」



いきなり高テンションでのジャブを繰り出してきたロキだったが、僕がバッサリと切って捨てたことはお気に召さなかったのだろう。ぶうぶうと豚のような声を出して頬を膨らませる。あざとい可愛いからやめなさい。



「あっ、ギン君からしたら私はお姉さんじゃなくお義母さんだったかな? 確かにそれなら怒るのも頷けるねぇ......。いっそ恭香と暁穂、更に私も娶って親子ど...」


「言わせねぇよ!?」



な、なんてことを言おうとしてるんだ......。

普通に食べ物としての卵と鶏肉の丼物はセーフだが、ソッチの親子○は言ってはダメだろう。きっと怒られる。



きっと、僕のその反応が面白かったのだろう。


ロキは僕にその小さな身体を押しつけながらひとしきり笑って......、





───ピタリと、その笑い声が止まった。




「ん?」とロキの方を向いてみれば、彼女は冷や汗をダラダラとかきながら僕の逆隣を見ていた。



そのロキの姿を見ただけで僕は彼女が焦っている理由に思い至った僕にとっては、その方向を向くまでもなく言うべき言葉が決まっていた。






「ゼウス。君は僕のことを信じてくれるって信じてるよ」





僕らはその後、何だかんだでゼウスを落ち着かせるのに一時間ほど時間がかかった。





☆☆☆





「.........依頼?」



場所は変わり、ゼウス家の居間。

僕ら───もう神様のことを『柱』と呼ぶのも面倒だから三人としておく───はお茶をズズズッとすすりながら今回僕が呼ばれた真の理由について話していた。


それを聞いた僕が最初に話した言葉。それが先ほどの言葉である。



「そう、依頼だよん♡ もしかしてゼウスに呼ばれて舞い上がっちゃった?」


「そ、そそ、そんなわけ、ね、ねぇし。勝手なことを言わないでもらおうかッ!」



と、そんな見え見えの嘘をついたところで僕はそんなことよりも優先すべきことがあることに気がついた。



「それより依頼ってなんだよ? ぶっちゃけると今の僕は戦力にはならないぞ?」



辛うじて魔法なんかは使えるようになったし、元々は後衛ができる暗殺者、という立場だっただけにあってある程度の戦力としては数えられるかもしれないが、まだまだ近接戦闘だけなら弱いままなのだ。下手すりゃ格下であるエルグリットと同格だ───もちろん屈辱でしかないが。


そんな僕の心情を読んだのか───そう言えばロキも読めるんだったよな───ロキは安心してくれとばかりに微笑んだ。




───否、嫌な予感しかしない笑みを顔に貼り付けたと言うべきか。




「ねぇ、ギン君はあの大陸に、エルメス王国、グランズ帝国、ミラージュ聖国、魔国ヘルズヘイムの四大王国の他にも国があるのは知ってるよね?」



───コイツは一体何を言っているんだ?

そんなことを思いはしたが、なんだかロキの目が怖かったので素直に答えることにした。



「まぁ......知ってるけど」



僕は彼女のその瞳から逃げるように視線を逸らし、わざとぶっきらぼうにそう言い放つ。


───と言っても僕が知っている他の国と言えば三つしか無いのだが。



帝国と聖国との間に位置する『港国オーシー』



王国と未開地との間に位置する妖精族の住まう『森国ウルスタン』



王国と帝国との間に位置する土精属の住まう『岩国バラグリム』




それぞれがエルメス王国、グランズ帝国、ミラージュ聖国の広大な土地を持つような国ではなく、魔国ヘルズヘイムのように土地は少なくとも過大な戦力を持ちえているわけでもない。


そのため四大王国と呼ばれるそれらの影に埋もれてしまってはいたが、伊達に僕もこの世界にいた訳では無いのだ。ある程度の世界事情は知っている。


───まぁ、必要最低限なのだが。




だが、今この時点でそれの何が関係するのだろうか?


そんな疑問に答えるように、





「ふふっ、それでね、依頼なんだけどさぁ......」




彼女───狡知神ロキは、隣のゼウスへとチラリと視線をやった後、僕へとその依頼内容を語り出した。




と言ってもその依頼の内容としては単純明快だったのだが.........、









「とある国に生息する聖獣サタンクロス(・・・・・・・・)の討伐だよっ!」



「............へっ?」




そのあまりの衝撃に、僕にしては間抜けな声が歯の隙間から漏れだした。






☆☆☆






「うううっ、さ、さむぅぅぅっ......」



死神のコートから神の布へ、そこからさらに衣替えをして、もふっもふな格好をした僕は、先ほどのグランズ帝国など比ではないような猛吹雪が吹き荒れる夜の雪原に立っていた。



ここは魔国ヘルズヘイムのさらに北に位置する、この大陸の最北端の国、雪国ホワイトベルのこれまたその最北端に位置する場所、ひと呼んで『輝きの森』である。


その証拠に目の前には深々とした針葉樹が生い茂っており、それらのどれもが真っ白な雪を被っていた。あの中に入ったら上から雪の塊が降ってきそうで嫌だな......。



足元へと視線を向けると、見事なまでに膝まで埋まってしまうほどに雪が降り積もっており、これだけ厚手をしてもなお寒くて寒くて仕方が無い。これほどの厚手でさえも効果をなさないほどには寒いのだ。


───もうあれだね。手足の指とか耳とかが凍ってポロりとか行きそうだね。わりかし冗談抜きで。



と、そんなことを考えて震えていると、後ろから非難の声が上がった。



「はぁ......。そんなこと思うなら依頼なんて受けなきゃ良かったのに......」



声は恭香のもの一つだけだったが、その後に控えている他の連中も同じような感情を乗せたジト目を送ってくる。

因みにここで言う他の連中といのは、輝夜、レオン、マックス、アイギス、暁穂に伽月、それに加えてネイルと浦町である。

わざわざみんなで来なくてもよかったのだが、やはり僕の体調が心配なのか無理を言ってついてきた───心配性も程々にな?


って言うか勝手について来といてその目はなんだ、その目は。




───だがしかし、その中には数名、この環境に喜んでいる奴もいた。




「ふはーーーっ!! 雪温泉なのじゃーーっ!!」


「ず、ずるいのですぅっ、私もやるのですっ!」


「ヒヒーン......ブルルッ!」



白夜、オリビア、藍月の三名である。


雪温泉がどうのこうの言って、深々と積もった雪へとダイブしている。頭が沸いてやがるとしか思えねぇな。



「おい三人とも、馬鹿は風邪ひかないとは言うけどお前ら一応天才なんだから程々にしとけよー」



僕は一応、そう声をかけるが返ってきたのは「分かった」という意味合いの返事のみで、三人は未だ雪温泉にどっぷりである。



───ほんと、風邪ひいても知らないからな?



僕は"自己責任"という都合のいい常套句を使用して彼女らのことを見捨てると、はぁ、とため息を一つついた。



「これじゃ、この先が思いやられそうだな......」



僕は先ほどのロキとゼウスによる説明を思い出しながら、一人そう呟く。




───聖獣サタンクロス。




サンタクロースでもサンタクロスでも無く、サタンクロス。



そう、あの時メフィストが口にしていた大悪魔サタンの名を冠する魔物だ。間違っても名前が笑えるとか、なにそれ弱そう、とか思ってはいけないのだ。

その証拠に「まぁ、もしも討伐に失敗すれば私たちが出向くという暴挙に出なくちゃいけないからねぇ......。まぁ最悪エルザにでも頼む.........いや、エルザでも荷が重いかな?」との事だった。


───まぁ、どんな魔物かは知らないがかなりの化け物なのだろう。そもそもエルザで荷が重いって言ってる時点で死にに行くようなものだ。



と、ここまでの事実を聞いた感じだと


『はぁ? エルザでも勝てねぇのにポンコツ吸血鬼と異常性癖だけが取り柄の従魔如きに勝てるわけねぇだろうが。馬鹿かよお前は』


とそんなことを疑問に思うだろう。現に心の中の悪堕ちした僕までそう呟いてくる。



もちろん僕もゼウス家でその説明を受けた際、反論をし、その依頼を断ろうと思ったのだ。あまりにも今の僕達には荷が重すぎる。




───だがその時、予期せぬ援軍が後方支援を行った。





「......大丈夫、だよ? サタンクロスは普通の魔物じゃない。ステータスだって、成人男性と同じくらい。だから、相性さえ良ければ......、瞬殺できる、よ?」




そう、ゼウスが向こうに(・・・・)付いてしまったのだ。


ロキによる言葉の前衛と、ゼウスによる全知による後衛。

もうこれより強いファイアウォールがどこに存在するというのだろうか? まぁ、少なくとも僕の言葉で論破(ハッキング)する事など不可能だ。





「まぁ、受けちゃったものは仕方ないか......」


「はぁ......、サタンクロスとか、嫌な予感しかしないよ......」




僕らは顔を見合わせて溜息を吐くと、今なお遊び続ける三名と、それを止めに入って逆に巻きこまれたアイギスとネイルへと視線を向けて、更にもう一つ溜息を吐いた。




溜息を付けば幸せが逃げるならば、きっと僕が味わっている現状に幸せなんてないのだろう。



そんなことを思ったと同時にこうも思った。





───やはり、迷信なんて嘘っぱち、ということなのだろう。






☆☆☆






「すいませんギンさん! そっちに数匹逃げましたっ!」



アイギスのそんな声が聞こえるとほぼ同時に木の影から数匹の黒い魔物が現れる。


余裕を持って身体を捻り、その爪を躱した僕ではあったが、やはりまだまだ近接戦闘においては役に立たないらしい。全力ですら走れないのだからある意味当たり前ではあるが。


僕はそんなことを考えながらも、僕とすれ違った魔物たちのステータスを鑑定する。





種族 エンペラーウルフ (68)

Lv. 312

HP 5600

MP 6900

STR 10200

VIT 4200

DEX 7200

INT 9100

MND 8400

AGI 19600

LUK 13


ユニーク

統率Lv.2


アクティブ

火魔法Lv.3

闇魔法Lv.2

威圧Lv.3


パッシブ

爪術Lv.3

危険察知Lv.2

気配遮断Lv.3

危険察知Lv.2


称号

群れのボス




どうやらたまたま鑑定したのは群れのボスだったらしい。


......それにしてもエンペラーウルフって確かAAAランクの魔物じゃなかったか? 騎士組の三人のステータスと比べたら普通に劣ってるんだが......、アイツらってもうSランクと同位の力を持ってると考えてもいいのかね?



そんなことを思いながらも、影魔法によって作り出した影の刃で僕の方へと逃げてきた狼の群れをボスごと、お役御免とばかりに首を切る(物理)。

狼の魔物だけあって変異型の魔物だったのだろう。狼たちはその場に身体を残して絶命し、首から吹き出した真っ赤な血が純白の雪を濡らしてゆく。



「ギンさーん、大丈夫でした.........よね?」


「なんで最後が確認になってんだよ。もし僕がネイルとかだったら死んでたぞ?」


「す、すいません......」



僕は木の向こうから駆け寄ってきたアイギスへと水筒を投げて渡し、その隙に狼たちの死体をアイテムボックスへとしまっておく───少しでも金にしないと食費が持たないからな。


と、そんなことを考えているとアイギスの休憩も終わったようだ。



「そんじゃ、標的散策の再開と行こうか」


「はい、そうですね!」



こうして僕とアイギスという妙に珍しいペアは、標的であるサタンクロスの捜索を再開するのだった。





☆☆☆





あの後僕たちはジャンケンやらグーチーやらグーパーやらで班を決めて森を散策、見つけた場合は念話にて連絡をする、ということになり、僕はアイギスとペアを組むことになったのだ。


因みに他の班としては、


恭香、マックス、藍月の三人班


白夜、暁穂、ネイルの三人班


輝夜、オリビアの班


レオン、伽月、浦町の三人班


そして僕とアイギスの班、計五組に別れて散策をしている───まぁ、いい感じに戦力が分かれているので問題はないだろう。



「それにしてもこの森......、さっきみたいなAAAランクが普通にそこらを歩いてるとか、かなりヤバい所なんじゃないのか?」



僕らが別れてこの森に入ってからというもの、先程のようなAAAはもちろん、酷い時にはSランクの最上位───ミノタウロスとかグリフォンとか、そういうのが現れる時もあった。

AA最上位のキラースコルピオンが小国の軍隊を滅ぼせるだけの力を持っているのだとすれば......、正直言ってこの国はとうの昔に滅んでいてもおかしくはない。


だからこそ僕は現状に疑問を覚えたわけだが......、



「そうですね......、ここ雪国ホワイトベルは南側に位置する魔国ヘルズヘイムの影響を受けて軍事力が強大になってます。エルメス王国には王都ギルドマスターであるガルム様が居りますから直接戦争になればエルメス王国の圧勝でしょうが、軍事力のみで考えればエルメス王国と同位......のはずです」


───それに、魔国ヘルズヘイムと同盟も組んでいますし。



そう、少し自信なさげにそう話したアイギスを横目で見ながら「へぇ」と相槌をうつ───その相槌は雪国ホワイトベルについてとアイギス本人について、二つの対象へと向けた意味合いのものであり、僕は少しだけ驚いてしまった。


まぁ、もちろん外には出していないが。



と、そうこうしている内に捜索を開始してから数時間が経っていることに気がついた。何だかんだで時計代わりに使用している例のスマホも01:58と時刻を指し示し、空も赤くどころか黒く染まってきた。もう完全に深夜である。




「さてと、そろそろ本格的に捜索開始するか」


「了解です!」




僕らは翼と尻尾を出現させ、空へと舞い上がる。






───さて、ここからが吸血鬼の見せ所だな。


Aパート終了、今回のタッグは珍しくアイギスでした。

次回! サタンクロスの正体とは!?

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