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今回は別視点!

久し振りのゼロ、久し振りな街にて!

第三章 帝国編
閑話 ゼロの冒険譚

時は少し遡る。


これはギンが帝都グリムへとエルグリットを護衛している最中の出来事である。



場所は、かつてギンが訪れた街、ビントス。



彼が慢心して死にかけた地、死神に正義を刷り込まれた地、新たな仲間をパーティへと加えた地。


───そして、付近の山を吹き飛ばした地でもある。



「ほえー、なんだかここだけ抉れてるねー?」


「だねー、きっと昔に強い魔物でも暴れたんじゃない?」


「それにしてもそんな噂、聞いたことないけど.........、まぁ、きっとそうなのかもしれないね?」



場所はかつて、ギンがバジリスクの群れとの死闘の果てに、輝夜が吹き飛ばした山の跡。そこに彼女ら三人は立っていた。



白髪の姉弟と紫色の瞳をした女の子。



今回のお話の主人公は彼女らのパーティリーダー、ゼロ。




「それじゃ、盗賊団の足取りを追うついでに、お兄さんの正体でも探ろうかっ!」


「「おーーーっ!!!」」




彼女らはそうして歩き出す。



───すぐ背後に、そのお兄さんとやらの影分身が居ることなど、露ほども知らずに。





☆☆☆




ゼロたちは、門のところで買った大鎌用の鞘をアダマスの大鎌レプリカに被し、街を歩いていた。


タダでさえ白髪蒼眼という伝説上の天魔族と同じ特徴を持っているのにも関わらず、そんなものを持っていれば勿論更に目立つことになってしまうし、その横を歩いている少女のその紫色の瞳を見れば、魔族ではないのかと推測できる。

まぁ、最後のに関しては推測でしかないが、それでも目立つことは目立つのだ。





───だがしかし、彼女達が最も目立っていたのはそのどれのせいでも無い。





「な、なぁ、あのコートって間違いないよな......?」


「あ、あぁ、忘れもしねぇ。あの方(・・・)のもんだぜ」


「あの方が死んだ.....のはないだろうし......」


「......ってことは弟子か!?」




そう、彼女───ゼロの身につけている死神のコート。


それはギンが、もう名前を言われても「は? 誰?」と思えてしまうような領主、オルーガ・ベネフィットの私軍と戦闘した際に『乾いてないけどないよりはマシだよな』となんとなく着ていたものだ。この街のほとんどの住民はそのコートに見覚えがありすぎた。



ゼロは何やら注目を集めてあることに気がついてはいたが、


(もうっ、お兄さん! こんなになるならもうちょっと小さな武器が欲しかったよっ!)


と、内心で勘違いしたまま恥ずかしがっていたため、その真実に気づくことは出来なかった。



と、そんなことがありながらも彼女達はギルド前まで辿り着く。



それは事前に三人で話し合って決めた結果だった。



───まずはギルドに登録して強くなる。



強くならなければ、盗賊団への復讐も、ましてやギンへ借金を返すことすら出来やしない。普通に働く手もあるが、復讐の事や借金の額を考えれば、その手は自然と潰れてゆく。




三人は顔を見合わせてコクリと頷くと、両開きのドアをギギィッと押して、その酒臭いギルド内へと足を踏み入れる。





果たして、彼女達を待っていたモノとは.........、







「「「「ひぃぃぃっ!? 執行者様ァぁぁぁっ!?」」」」




───理解のできない、絶叫だった。





☆☆☆




なんとか落ち着きを取り戻した冒険者達を傍目に、ゼロは思った。



「......執行者、って誰?」と。



その考えは期せずしてゼロの口から漏れだしてしまい、はっと両手で口を押さえるが時すでに遅し。


冒険者達は驚愕に目を見開き、正気かどうかをゼロに問おうとした......、





───その時だった。





カツッ、カツッ、と革靴が地面を踏み鳴らす音がギルドヘと谺響する。



それは非常に小さな音ではあったが、それでもその時冒険者ギルド内に居たものならば、全員がその音に気がつけた。





───足音に含まれる膨大な威圧感と、確かに感じられる殺気。





それはレベルの低い冒険者はもちろん、ギン自身が認めた天魔族───ゼロであっても到底耐えきれるものではなかった。



泡を吹いて倒れる冒険者を傍目に、ゼロは思った。




───こ、これが、外の世界......。




件の集落からここまで、ゼロはほとんどアダマスの大鎌レプリカの性能に頼りきって乗り切ってきた。それに加えて何故だか強い魔物が道中で不自然死していたのも大きい。


だからこそ、今の今まで集落の中でしか生きてこなかった少女にとって、初めて向けられたその明確で強烈な殺気は、外の世界がそれだけ危険に満ち溢れているのだと再確認するのには十分すぎた。




今尚足音はこちらへと近づいてくる。




やがてその人物は、苛立ちを隠そうともせず二階から姿を現す。





その男は茶髪で、その髪からは狼の耳が覗いていた。


服の上から筋肉は主張していないが、それでもその威圧感と佇まいからは、その見た目と事実がどれだけ違うのかを教えてくれる。




果たしてそれは、ギンがお世話になった人物で......、






「僕は、姉さんが彼に乱暴されてイライラしてるんだ。執行者の偽物だって? 万が一クオリティ低かったらぶっ飛ばすぞ?」





───ビントスギルドマスター、ベラミの姿がそこにはあった。





☆☆☆




数分後、パシリアのギルドとは違って地上階に作られた訓練所にて、ゼロとベラミは対峙していた。


あの後イライラしているベラミを前に、ゼロがなんとか事情を説明した途端、これだ。

ちなみに対峙しているのはゼロのみで、その弟のアイクと友達のユイは野次馬に混ざって観戦である。



「いやぁ、ギン君の弟子ならそうと言ってくくればよかったのにー」


「あ、えっと、その......、弟子とかじゃないんですけど」



ベラミの言葉に少し反論するゼロだったが、残念ながらベラミの耳にはそんな言葉は入らない。実に都合のいい狼耳である。



「これよりギルド入会試験を始めます。内容は簡単、僕と戦って自らの力を見せること───あぁ、その大鎌の使用は禁止だよ?それって間違いなく国宝級のヤバイやつだからさ......」


───これでも僕が入会試験で相手するなんて初めてなんだよ? ギン君に感謝するんだね。



と、そう付け足したベラミの言葉にゼロは思わず目を見開く。



(あまり強いとかは思わなかったけど......。お兄さんってけっこうすごい人なのかも......)



残念ながら凄いどころではないのだが、ゼロが真実を知るのはまだまだ先のこと。


ゼロはアダマスの大鎌レプリカを弟のアイクへと預けると、再び訓練所の中央へと向かってゆく。



「アイクとユイちゃんはまだ強くないのですが......、どうすればいいですか?」



ゼロが先ほどとは打って変わってしっかりとした声を出し、ベラミへとそう尋ねる。

ベラミもその変化に一瞬戸惑いを見せたが、「流石はギン君、良い芽を連れてくるじゃないか」と呟くと、再び笑顔に戻る



「まだ戦闘になれてない子供とかは否応なしに最低ランクから開始だねー。まぁ、君たちならすぐに上のランクに上がれると思うから気にしない気にしなーい」



妙に楽しげな、テンションの高いベラミに困惑するゼロだったが、次の瞬間には、彼女の中からはその困惑は消え去っていた。





───少なくとも、それどころでは無くなった。






一気に膨れ上がる威圧感と殺気。


それは瞬く間に訓練場全体を覆い尽くし、その場にいる者達に否応なしに恐怖と絶望を与えてゆく。




「ギン君のせいで僕も弱いみたいになってるけどさ、これでも僕、結構強いギルドマスターなんだよね」



───少なくとも、姉さんよりはずっと強いよ?





少なくともその言葉はゼロ本人に対して言った言葉ではなく、さらに言えばここに野次馬として集まっている誰に対しても言った言葉ではないのだろう。


ならばその言葉は、誰に対して言ったものか。




それは明白ではないが、ベラミの視線はゼロの後ろの方、何も居ないはずの物陰へと向かっていたことだけは、明白なことであった。





☆☆☆





僕はその物陰で姿を隠しながらその戦闘を見ていた。



「まぁ、現状じゃこんなものかな......?」



僕の視線の先には瞬殺された天魔族の少女の姿があった───流石に天魔族とはいえ、バリバリのギルドマスターに勝てるなんて思い上がりだろう。



そんなことを思っていると、ベラミからの敵意の篭った視線に気がついた。




───ギルド長会議、今頃は王都で行われてるはずなんだけどなぁ......。




僕は影分身ながらも、そう考えて鬱になりそうになった。

以上、ゼロの冒険でした。

領主の兵を圧倒してバジリスクの群れを討伐した後に、更には伝説上の魔物までテイムしてきたのだからそりゃ有名にもなりますよね。

それにしてもベラミは何故こんな所に居たのでしょうか? 謎ですね。


次回! 桜町か久瀬か、どっちが先かは決めてませんが、日本で銀と初めて出会った時のお話です!

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