すこし急展開です!
正体不明の謎キャラ登場!
結局「まぁ、お前が気にしなくてもいい事だ」とか何だか言われて話を逸らされた僕は、他に疑問に思っていることを先に聞くことにした───まぁ、コイツらが何も心配していないところを見るに、少なくとも今は何ともないのだろう。何処にいるかは分からないけど。
というわけで、僕がまず最初に聞いたのは今はもう天界に帰ったのであろう、あの黒ローブの神様についてだった。
───のだが。
「黒ローブ? あぁ、師匠のことか?」
「.........師匠?」
思わず死神ちゃんの言葉を聞き返してしまった。
え、死神ちゃんの師匠とか、あの黒ローブってかなりヤバい奴なんじゃ......、
と、そこまで考えたところで更なるトンデモ発言が飛び出した。
「黒ローブ......? もしかして...
「........
思わずゼウスの言葉も聞き返してしまった。
「おいギン、お前、とうとう耳まで腐って来たか? あぁ、腐ってんのは口か? よし、その口を殺して......」
「ちょ!? な、何で死神ちゃんってば神器出してんの!? そもそも僕は腐ってなんかないし......。あれっ、もしかしてこれってヤキモチだったり......」
「......殺す」
僕への照れ隠しか、光の消えたその目でこちらを睨みながら、死神ちゃんが神器を構えてジリジリとにじり寄って来た。
───いや、わかってますとも。これはガチなやつですね。
僕は「これはまずい」と思い、咄嗟に頭に浮かんだ単語を、そのまま口に出した。
「ちょっと死神ちゃん! 男のちょっとした冗談くらい聞き流せないと
───瞬間、死神ちゃんの動きが完全に止まった。
死神ちゃんの動きともに、まるで世界が凍りついたかのように背景と化していた獣王やゼウスまでもが凍りつき、先ほどの笑顔のまま冷や汗を流している。
そして、世界が凍りついて数秒後、
「い、い、行き、行き遅れ.........、俺様が? は、ハハッ、行き遅れるよ、か......。残念ながらもう行き遅れてるよーだ。は、ハハハッ.........はぁ。......結婚したい。」
そんなかなりガチなことをひとりでに呟くと、死神ちゃんはそのまま席へと戻って行った。
───死神ちゃんの意外な一面を見ると同時に、とてつもなく申し訳ないことをしてしまったという罪悪感に押しつぶされそうになりながらも、僕は席について何事も無かったかのように次の話へと移ることにした。
きっと、今の僕に出来ることなんてこれくらいしか無いのだろう。
そうして僕は、彼女の目尻に溜まっていた輝くものの存在を頭から追い出した。
───だれか、早く貰ってあげてくれませんかね?
☆☆☆
結局その義兄さんがハデスなのかポセイドンなのかは分からず仕舞い───と言うかあの能力はかの『ハデスの兜』の特殊能力そのものだったし恐らくはハデスなのだろうが、正確なことは分からない───ということになってしまったが、ひとまずそれ以外のことを聞いてみることにした。
「あ、えーっと、僕の腕とステータスは......」
「......戻らねぇよ。俺様のピチピチの青春時代と一緒でな。ハハッ、笑えてくるぜ」
───もう僕の腕とステータスなんてどうでもいいから、まずはこの人をどうにかしてあげたい気持ちで溢れてくる。
僕はコホン、と数回咳をすると、気を取り直して違う質問をすることにした。
「えーっと、じゃあ悪魔については...」
「神のことを恨むゴキブリ共だ。元々はちょっとした小さな勢力だった癖に今じゃ俺様でも危ういゴキブリ揃いだ。その神々の邪魔をしようとする様は、まるであの時の合コンで出くわしたチャラチャラした女にそっくりだせ」
おーっと、また雲行きが怪しくなってきましたね。
「なーにが『あんれーっ? なんかこの女の人、髪黒くないですかーっ? あ、これって迷い人の偽物ってやつですよねーっ?』だよ、まじ死ね、もう死んでると思うけどもし再会したらぶっ殺す.........、はぁ、結婚したい。」
死神ちゃんって昔は髪黒かったんだね、とか。
うわぁ、こっちに来てまで合コンしてたの? とか。
その女の人、多分だけど僕は嫌いだなぁ、とか。
そんな相槌を打ってやっても良かったのだが、多分それも逆効果だろう。
ということで僕は「は、ははは、そうですねーっ」とそう言って相槌を打った。
───よし、次へ行こうか。
「それじゃあ、一応これが最後......だと思うけど、ルシファーについては......」
「ルシファーだぁ? あんな糞イケメンほっとけほっとけ。どうせ俺様みてぇな男臭い女よりもナヨナヨした気持ちの悪ぃ女らしい女でも抱いてハーレム作ってる奴だぜ? ......そう考えるとお前のハーレムは女っぽいのが居なくて嫌悪感が無いな?」
───何もしていないのに被害を受けるアイツらに、少しだけ同情した。
と、そこでようやく死神ちゃんが本来の調子を取り戻したようだ。
「真面目な話をすると、ルシファーは俺様の神器による攻撃に触れたから即死だな。あの斬撃に少しでも触れればその時点でそれはもう命はねぇんだ。ルシファー然り、
「へぇ、ルシファーも世界樹も死んだ......」
っておい。今この人なんて言った?
......世界樹、だって?
僕の頭の中に神器による斬撃を受けて輪切りにされた、世界樹の映像がフラッシュバックされる。
それと同時に僕は頭を抱えた。
───いつもなら両腕でやる所を片手が無いため非常に違和感が強いが、まぁ、とにかく頭を抱えた。
「はぁ......、あの世界樹ってかなり重要なものなんじゃないのか? 輪切りしただけならまだ生えてくるだろうけど.........ねぇ?」
僕は獣王へと視線と言葉を向けたが、何故だか獣王はケロッとしており、まるで「世界樹なんて死んでもいい」と、そんなようにも見えるだろう。
───だがしかし、僕を待っていたのは思いも寄らない、衝撃の事実であった。
「まぁ、世界樹もルシファーも蘇らせておいたから気にすんなよ」
数秒間、僕の時間が凍りつき、
「............へっ?」
今度こそ僕は、正真正銘素で聞き返してしまった。
☆☆☆
どうやら死神ちゃんの主な能力は三つあるらしい。
まず一つ目が、ご存知の通りの影魔法.........だと思ったのだが、正確には違うらしい。
正確には『影魔法』の更に一段階上に存在する『絶影魔法』というものを死神ちゃんは使用するらしい。
───簡単に言えば、影魔法の超強化版のようだ。もちろん影魔法の魔法も使えるし、さらに新しい魔法も生み出せるらしい。
まぁ、一言で言えば真のチートである。
正直言ってこれだけでもかなりヤバイのに、まだまだ彼女の能力は止まらない。
もう一つが神器によって増幅された、どんな相手にも死をもたらす『万物即死』という能力。
これは神器無しならばせいぜいが格下にしか効かないらしいが、神器有りであれば、それこそ『生きているのなら、神様だって殺してみせる』ってレベルの代物だそうだ。
───まぁ、分かってはいたがチート過ぎるよな。
そしてそれと対をなすもう一つの能力。
それこそが『
死んでいれば、人だろうと魔物だろうと悪魔だろうと神だろうと植物だろうと、ありとあらゆる魂を冥府から呼び戻し、元の肉体へと入れ直し、転生させる。
───道理で獣王がケロッとしているわけである。
『絶影魔法』
『万物即死』
『死者蘇生』
その三つの主な能力に加えて『読心』なんてスキルも持っているのだから、死神ちゃんはなるほど『死神』という名に相応しいのかも知れない。
というわけで、僕らは───と言ってもシャルロット様は眠ってしまった為、侍女さんたちにお任せしたが───今現在、帝城の地下に設置されている、ゼウスが強化したらしい牢屋へと向かっていた。
理由は明快、この先に幽閉されているルシファーを拷問するためである。
もちろん拷問が目的なわけではなく、ゼウスでも読み取れない混沌の情報を聞き出そうというわけだ。
薄暗い螺旋階段。
数メートルおきに壁に松明が設置されており、それ以外の光は入ってこない。
ジメジメとしており、ぴとっ、ぴとっ、と少し間隔を置いて水滴の音が聞こえ、いかにも出そうな雰囲気がある場所である。
まぁ、ここが牢屋へと繋がっているのならば、死した罪人の怨念とかが集まって
───が、何でもできるゼウスと、なんでも殺せる死神ちゃんがいるのだ。幽霊なんて恐れるに足らぬ存在であろう。今は。
「そう言えば勇者達......じゃないや、他の黒髪の時代の面々はどうしたんだ? 城では見てないけど」
「ふむ、彼奴らか......。何度かお主との面会を望んでおったが、我もよく知らない人物を城に入れるほど能天気ではないぞ?」
「アイツらならこの街で金稼いでんじゃねぇか? 強くなるための軍資金とか、そんなの」
「私は......、話したことないから、分からない」
と、そんなような雑談を挟みながらも、僕らはその階段を一段、また一段と降りてゆく。
数分歩いて、僕らはようやく階段を降り終えた。
そこには左右に広がる鉄格子が広がっており、その奥の暗闇からは呻き声が聞こえ、更には僕らの存在に気づいた輩がこちらへの伸ばす色白い腕が見て取れた。
残念ながら......ではないが、牢屋間の距離は十メートルほど存在するため、いくら頑張ろうとその通路の真ん中を歩く僕らにはその手は届くことなく、ただ呻き声と、助けてくれ、と言う声ばかりが聞こえてくるばかり。
「済まないな、執行者。噂によれば向こうとは戦いのない平和な場所だったのであろう? こんな光景、お主には見せたくはなかったが......」
「いや、ここに入ってるってことは相当ヤバイ事やらかした奴らなんだろ? 自業自得だし......、心が痛まないわけではないけど、お前が間違ってるとは思わないよ」
僕は獣王の言葉に、素直な感想をこぼした。
確かに彼らを見ていると心が痛むし、可哀想だど思う。
───けれど、僕がもし彼らがやったことを聞けば、きっと逆に「ざまぁみろ」とでも思うのだろう。
つまりは視点の問題だ。
僕の主観で見れば可哀想だが、客観的に、総合的に見ればそれは当然なのだ。
だから僕は彼らに同情なんてしないし、助けようとも思わない。
「ま、冤罪じゃない事を祈るよ」
僕はそう呟いて獣王へと視線を向け、先を促す。
獣王も僕がここまでしっかりとした意見を述べてくるとは思わなかったのか目を丸くしたが、すぐさまニヤリと笑って僕の背を軽く叩いてきた。
本当に軽くだったので倒れるなんてことは無かったが、それでも危ないものは危ない。僕は獣王に非難の視線を向けたが、やはり彼はどこ吹く風、という感じだ。
「存外、我が思っていた以上の逸材なのかもしれないな」
獣王は笑ってそんなことをひとりでに呟くと、どすどすとその通路の先へと進んで行った。
僕にはその言葉の意味は分からなかったし、獣王が何故笑っているのかすらも分からない。
「まぁ、お前が気にしなくていい事だ」
「うん、ギンくんは、気にしなくても、平気......だよ?」
後ろからそんな声がかかり、尚一層僕の疑問が増えたが、彼女らもすたすたと獣王のあとを追ってしまったため、僕はその真意を聞くことは出来なかった。
まぁ、後で聞けばいっか。
そんなことを思っていた僕ではあったが、そんな考えはこの直後には無くなっていた。
───なにより、それどころじゃなくなった。
突如、獣王が足を止める。
着いたのかな? と少し歩くペースを上げ、僕はその陰から獣王の先にあるものを見て、目を疑った。
その目の前にある牢屋は完全に破壊されており、その元牢屋の前には二人の男が立っていた。
一人は満身創痍な様子の赤髪の堕天使───ルシファー。
そして、もう一人。
銀色の刺繍の入った紫色のコートに、紫色のシルクハット。
その耳はエルフ程ではないが、確かに尖っており、そのシルクハットの影から黒い髪と、赤い瞳がこちらを覗く。
ゼウスが有り得ないものを見たような顔をすると同時に、戦闘態勢へと入る。
死神ちゃんと獣王はその男が誰なのかまでは分からずとも、その姿を見て驚き、更には
「......大悪魔、序列
そんなゼウスの呟きとともに、僕は彼を見て驚いていた。
───だって彼は、
「初めまして。我が名は
こうして僕は、何故だか僕に似た悪魔軍の最高幹部様と出会いを果たした。
大悪魔序列2位、メフィストフェレスでした!
何故かギンに瓜二つの彼ですが......、果たしてその正体とは一体?
次回、ゼウスの神器がいよいよ登場!?
ついでに言えば、死神ちゃんを貰ってくれる相手もそろそろ登場して欲しいものですが......あの性格だと無理そうですね。
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